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説明員(長野厖士君)
企業が合併いたしますときの課税問題、御
指摘のとおり
三つの局面で生じてまいります。
まず被合併法人、合併された法人の
株主に対する課税の問題でございますけれ
ども、端的に申し上げますと、合併法人から金銭とかその他の資産、何らかのものを交付を受けた場合につきまして、その交付を受けたものの
金額がもともとの出資
金額を上回っておるという事態におきましては、その
部分は配当所得として所得税調税が起こるということでございます。したがって、
株主に対してそういった新たな金銭の交付といったことが行われない、従来からの出資分だけで新しい法人に
株主たる地位が引き継がれるというケースでは課税の問題は起こってまいりません。
贈与税の御
指摘もございました。これはまれなケースかと存じますけれ
ども、二つの
企業が本来対等合併すべきでないにもかかわらず、対等合併の形をとるというケースについて贈与税の問題が出ることがございます。お父さんがある
会社Aという
会社を
経営されておられる、息子さんがBという
会社を
経営している。Bという
会社は非常に規模が小さい、持ち分も小さいというときに、このAとBが合併しまして、そしてお父さんとお子さんが同じ割合でこの新しい合併法人の
株主として位置づけられるということ、これも法的には可能といえば可能でございますので、そういたしますと、気がついてみるとお父さんから息子さんへ
財産がそんな形を通じて移転されておるということが起こり得ますので、その場合に、
計算のやり方は大変複雑でございますけれ
ども、本来そのお子さんがもともとBという
会社に対して持っておった持ち分以上のものが合併法人の
株主になったことによってお父さんの方から移ってきたと見られる
部分は、そこは贈与税の課税対象とさせていただくという問題でございます。これは同族
会社間の非常に特殊な合併のケースであろうかと思いますけれ
ども、課税の公平上はそういう扱いをさせていただいておるということでございます。
それから、合併法人自身に対する課税が第二点御
指摘でございます。これにつきましては、どういう資産につきまして帳簿価額をどういう形で引き継ぐかということが課税のポイントになってまいりまして、一種の評価益を発生するような形で、つまり従来は簿価一億円だったものを新たに二億円なり三億円なりという形で、もともとの帳簿価額よりも新しい
会社は高い価額で引き継ぐ、したがってそこにもとの帳簿価額との間に差益が生ずるといったものにつきましては、いわばこれは先ほど先生御
指摘になりました含み益の実現と申します、再評価が結果的に合併を通じて行われたという形になりますから、そこにつきましては通常の法人税課税が行われるということでございます。しかし、これは常に起こるということではございませんで、それは合併のときの
企業の選択でございまして、古い帳簿価額をそのまま引き継ぎたいというケースにつきましては、それは認められる。したがって、合併法人に対する法人税課税の問題は起こらないということになろうかと
考えます。
それから、三番目に被合併法人に対する課税でございます。被合併法人につきましては、合併の時点で金銭その他資産の合計額といったものを
計算いたしまして、その
金額が
資本の
金額とかあるいは利益積立金の合計額を上回る場合には一種の清算に当たりますので、清算所得としての法人税課税が行われるということでございます。これは通常この形の課税が起こるということでございます。