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政府委員(
清水湛君) 御承知のように、
有限会社につきましては
昭和十三年に
有限会社法という
法律ができまして、その当時の
最低資本金が一万円というふうに
定められていたわけでございます。
昭和十三年当時の一万円というのは、今日の貨幣価値に換算いたしますと、相当巨額なものになるというふうに私
ども考えられるところでございます。当時におきましても、
株式会社というものは
有限会社をさらに上回る規模の
会社組織であるという想定が当然されていたというふうに言われているわけでございますけれ
ども、
株式会社についてはそういうような意味での
最低資本金制度というのは当時においても設けられておらなかったということになっております。戦後、
昭和二十六年の
改正の際に、
有限会社についてはインフレ等を考慮いたしまして、
最低資本金が十万円に引き上げられましたけれ
ども、その際も
株式会社については
最低資本金制度が導入されなかったという結果になっているわけでございます。
その結果、どういう状況が生じてきたかと申しますと、例えば
株式会社を
設立するには発起人が最低七人必要で、発起人は最低一株の株を引き受ける必要があるということでございますから、極端な話でございますけれ
ども七株
発行すればよい。当時は五十円でもよかったわけでございますから、三百五十円あると
株式会社がつくれる、こういうような話がまことしやかに伝えられるというようなことがあったわけでございますが、そのようなことの結果といたしまして、多数の小
規模会社というものが生まれました。小
規模会社が生まれる背景には節税その他いろんな問題があろうかと思いますけれ
ども、しかしながら
会社法という面から見ますと、そういう極めて小規模な
会社、家族的な事業を法人化するというような形での
会社も当然あるわけでございますが、そういうものが生まれる。しかしながら、そういう
会社というのは、ほとんどと申しますか、すべてと言っていいかと思いますけれ
ども、
会社法が予定しているような
会社法の諸
規制というようなものを、これはもうほとんど守らない、一〇〇%守らないというような結果に
現実の問題としてなってくるわけでございます。
そういうような
会社が、例えばいろんな
取引上のトラブルが生じまして、訴訟等が起こるというようなことになりますと、
会社の実体がないわけでございますから、
取引をする相手方としてはどういうふうな形で責任を追及してよいかわからないというようなことにもなってくる。そのために、委員御承知のように、例えば判例の面におきまして法人格、形式的には法人格があるわけだけれ
ども法人格を否認するというような判例法理が形成される。あるいは、本来
有限会社でありながら、取締役個人の責任を追及する、実質無限責任
会社というような扱いを
法律、裁判面においてせざるを得ないというような現象が多々生じてきたというふうになるわけでございます。つまり、相対的に申しますと
債権者、具体的な
取引の当事者である
債権者のみならず、これから
取引をしようとする
債権者、その他もろもろの
会社をめぐる第三者にいろんな形で損害を与えるというような現象が出てまいったというように思われるわけでございます。
そういうようないわば現象を小規模、閉鎖的な
会社の形骸化と申しますか、そういうような形で呼んでいるわけでございますけれ
ども、そういう形骸化現象が極めて顕著になってきたということが
一つの例として
指摘することができるのではないかというふに思うわけでございます。