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山本正和君 ただいま議題となりました
学校教育法の一部を改正する
法律案について、その
提案理由及び
内容の
概要を御説明申し上げます。
学校には、校長、教頭、教諭、養護教諭、
学校事務職員のほか、
学校栄養職員、司書、給食調理員、用務員、警備員など各種の職員が配置されており、これらの職員が一体となって
活動しなければ、
学校教育の目的を十分に達成することはできません。これらの職種のうち、特に養護教諭及び
学校事務職員につきましては、その職務の重要性にかんがみ、小中
学校及び盲・聾・養護
学校には原則として置かなければならないことを
学校教育法に定めているのであります。
学校教育法が制定された当時の事情によって、未設置の根拠となる経過
規定や例外
規定が付されたのでありますが、同法制定から四十年余が経過した今日においてもなお、これらの
規定が削除されないため、養護教諭及び
学校事務職員の全校配置は実現されていないのであります。すなわち、平成元年度における公立小中
学校の平均配置率を見ますと、養護教諭が九一・三%、定数上八五・五%、
学校事務職員が九二・九%、定数上九〇・一%となっております。
また、昭和五十五年度から発足いたしました第五次学級編制及び教職員定数改善十二年計画は、平成二年度で十一年を経過しようとしておりますが、この間の養護教諭の措置教は、全体計画の五千百二十二名に対し、二千八百三十名、進捗率五五・三%という配置にとどまっています。さらに、
学校事務職員の場合は全体計画の六千三百九十二名に対し、二千五百五十四名、進捗率四〇・〇%という配置状況になっております。
そこで、養護教諭と
学校事務職員の職務の重要性と全校配置の必要性につきまして御説明申し上げます。
まず第一に、養護教諭について申し上げます。
御承知のように、養護教諭は児童生徒の保健、安全に関する管理と
指導という極めて重要な職務を行っております。特に近年、
社会、経済等の急激な変化に伴う生活
環境の悪化と入試準備
教育の過熱を背景として、心臓、腎臓疾患を初めとして、情緒障害の増加、さらには骨折の多発など
子供の健康、体力について極めて憂うべき状況が生じており、養護教諭の
役割の重要性が一段と高まっているのであります。その結果、父母や
学校関係者から
子供の生命と健康を守るために養護教諭の必置を求める声がますます強まっております。この要請にこたえるため、各
都道府県は、標準定数法の定める定員を上回って養護教諭を配置せざるを得ないばかりか、相当数の養護教諭が複数校の勤務を強いられる事態を生じ、
子供の健康管理を十分に行えないだけでなく、養護教諭
自身の過労など人権にかかわる問題まで生ずるに至っております。また、近年、健康診断の機能的検査を初め、保健室を訪れる
子供たちの精神的な相談相手としての勤務に加えて、
学校事故の多発が、その事務処理等養護教諭の職務の過重を招来していることも見逃せないところであります。
次に留意すべき問題は、
学校教育法第二十八条第十二項で、特別の事情のあるときは、養護教諭にかえて養護助教諭を置くことができる旨の
規定が置かれていることであります。
子供の生命と健康に直接にかかわる職種であることから、専門職としての資格を持った養護教諭を早急に配置することが急務であると
考えられるのであります。ちなみに、平成元年度における養護教諭の採用者千百九十七人に対して、資格を持った受験者は七千四百一人であり、また昭和六十三年度に資格を取得した者は四千三百十九人に及んでおり、養護教諭の必置について養成面からの問題は解消しております。
次に、
高等学校及び高等部のみを置く盲・聾・養護
学校の養護教諭については、
学校教育法上任意設置の建前となっておりますが、すべての
高等学校等に養護教諭を配置する必要性のあることは、小中
学校と同様であります。また、このことは、
高等学校における養護教諭が全日制の課程と定時制の課程の兼務を余儀なくされて、労働過重になっている事態を解決するためにも必要な措置であります。
第二に、
学校事務職員について申し上げます。
学校事務職員の職務には、まず文書、統計、給与、福利厚生、
学校予算執行事務などがあり、また直接
子供にかかわる事務としては、教材教具、施設設備、就学奨励及び転出入などに関する事務、さらには
地域の父母にかかわるPTAの諸
活動への
援助など、極めて多方面にわたっております。
さらに、これらの複雑多岐にわたる
学校事務を適正に行うためには、
学校教育の
理念、
教育内容、
教育行政の仕組み及び
子供の
学習環境に関する知識を習得する必要があるなど、一般行政事務とは別の
意味での専門性が要請されており、
学校事務職員は
教員の
教育活動と相まって
学校運営を有機的、一体的に進めるために極めて重要な
役割を果たしているのであります。特に、近年における
学校教育の
役割の増大等による
学校運営の複雑困難化に伴って、
学校事務職員には速やかな校内、
地域及び
教育行政機関との連絡調整機能が要求され、その職務は複雑かつ高度化が一層進みつつあります。さらにまた、
学校事務職員も、日々
子供たちと親しく接する存在でありますから、
子供への深い愛情の持ち主であることが
教員と同様に必要であることも見逃せないところであります。
その上、修学旅行、遠足、キャンプ等の付き添いはもとより、今日の
教育の現状及び
子供の要求もあり、部
活動、クラブ
活動、生活
指導等を担当せざるを得ない実態がふえています。
次に、
学校事務職員の置かれていない
学校は主として小規模校でありますが、
学校事務すなわち
学校運営に必要な業務の種類は
学校規模と
関係なく同様であります。したがって、小規模校においては、少数の
教員が多くの校務を分掌せざるを得ない上に
学校事務を分担しているのであります。そのため、
教育活動や
学校事務の処理に支障を生ずるなど
学校教育の正常な運営が阻害されているのが実情であります。
なお、各
都道府県が標準定数法の定める定員を上回って
学校事務職員を配置していることにも、その必要性があらわれております。
以上述べました
理由から、養護教諭及び
学校事務職員の全校必置を速やかに実現しなければならないものと
考え、本改正案を
提出した次第であります。
なお、
政府が昭和六十年度以降予算編成に当たって、
学校事務職員等の給与費を国庫負担の対象から除外しようといたしましたことは極めて遺憾であります。義務
教育費国庫負担制度は義務
教育無償の原則に基づく国と地方を通ずる行財政制度の
基本であり、国は常にその拡充に努力し、
国民の期待にこたえる責務があります。今後ともこの制度の後退は絶対に許されないものであることを強く主張しておきたいと思います。
最後に、養護教諭の必置制を実現するためには、養成
機関の
内容の充実、養護教諭の地位、処遇の改善等が極めて重要であることを付言しておきたいと存じます。
次に、改正案の
内容について申し上げます。
第一は、
高等学校及び高等部のみを置く盲・聾・養護
学校に置かなければならない職員として養護教諭を加えることとしております。
第二に、小・中・
高等学校及び高等部のみを置く盲・聾・養護
学校に養護教諭を置かないことができる期間を平成四年三月三十一日までの間としております。
第三に、平成四年四月一日以降、養護教諭にかえて養護助教諭を置くことはできないこととしております。
第四に、義務
教育諸
学校に
学校事務職員を置かないことができる期間を平成四年三月三十一日までの間としております。
以上が、この
法律案を
提出いたしました
理由及びその
内容の
概要であります。
何とぞ十分御
審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
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