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政府委員(
京谷昭夫君) ただいま、我が国の各種の
遠洋漁業がこれまでたどってきた経過、今日当面している問題についての
お話があったわけでございます。
お話の中にもございましたように、昭和五十三年にいわゆる二百海里体制というものが大体世界的に定着をしてきたわけでございます。そのひな形として、まだ効力は発生をしておりませんけれ
ども、国連海洋法条約起草案というような成文化された条約案がございまして、これがいわばそういった二百海里体制を表現している条約案として今日存在をしておるわけでございます。
その中で言われて
確認をされております新しい国際的な
漁業秩序と申しますのは、やはり沿岸の、大体国によって若干の考え方の相違はございますけれ
ども、沿岸から二百海里の水域については沿岸国がその中にある
漁業資源を第一次的に管理するという、いわば
資源支配体制でございます。それから同時に、遡河性
魚類、
サケ・
マスがそのたぐいでございますが、遡河性
魚類は、その生まれた母川を所管する国が第一次的な
資源支配力を持つ、この二つの内容が大変大ざっぱに言った二百海里体制秩序の概要であるわけでございます。
実は、この二百海里体制がしかれてから今日まで十年余りたっておるわけでございますけれ
ども、この過程で、この新しい国際秩序を利用するという各沿岸国の姿勢にも大変大きな変化があるわけでございます。最も端的な例は、アメリカのいわば二百海里水域について、我が国は相当量の
底魚類を
中心にしました割り当てを受けて我が国の
遠洋漁業を展開しておったわけでございますが、アメリカが自国の産業育成のために自国の
資源を扱うという方針を大変強く打ち出してきまして、今日アメリカ水域における
日本に対する
漁獲割り当てはゼロとなっております。わずかに合弁形態で、洋上買魚という形態で
日本の加工船が操業をするという道がわずかながら残されておる
状況でございます。
それから、北洋
漁業のもう
一つの柱でございます
ソ連二百海里水域内の操業につきましても、御
承知のとおり、やはり沿岸国たる
ソ連が、自国
資源は自国の需要に優先して充てるという考え方を貫徹してきておりまして、毎年の
漁業交渉を重ねておりますけれ
ども、順次割り当て量が減少をしてきておる、こういう
状況でございます。
それから、北洋
漁業のもう
一つの大きな柱であります
サケ・
マス漁業につきましては、
お話ございましたように、今日二百海里外で、つまり公海上で
サケ・
マスを外国にとらせてくれる例というものは、
ソ連産の
サケ・
マスについて
日本に一定量をとらせるという例が唯一の例であります。我が国自身は、我が国で
生産された
サケ・
マスを外国にとらせるということは許容しておりません。いわばそういう
状態の中で、極めて例外的な措置として認められてきた我が国
漁船による公海上の
ソ連産
サケ・
マスの
漁獲について、御
承知のとおり、
お話にもございましたように、一九九二年以降はこれをやめるという
ソ連の大変強い方針が示され、それを背景にしてことしの
サケ・
マス交渉も大変厳しい
状況になっておるわけでございます。
それからまた、
お話の中にもありましたけれ
ども、実はこの二百海里体制の考え方とはやや異質の問題としまして、
一つは捕鯨問題がございます。これは御
承知のとおり、国際捕鯨取締条約に基づく多国間協議を通じて、鯨
資源の保存と合理的な利用ということを目的に組織されたわけでございますが、最近の
動きというものを見ますと大変大きな対立が生じております。伝統的な捕鯨国であります
日本、ノルウェー、アイスランドそれから
ソ連等々につきましても若干足並みの乱れが生じておりますけれ
ども、そういった捕鯨国の行う捕鯨は全部やめるべきだというふうな意見が多数派を占めておりまして、御
承知のとおり、商業捕鯨モラトリアムがしかれておる
状況でございます。これを我が方としても一応認めて、
資源の再評価の上に立ってこのモラトリアムの解除をすべく科学的なデータの集積を行うことにし、その一環として南氷洋における
調査捕鯨を継続しておる、こういう
状況でございます。これもその継続をめぐって大変大きな論議が国際的にあるわけでございます。
それからまた、もう
一つは、新しいごく最近の
動きといたしまして、昨年の暮れに国連総会で成立を見ました流し網
漁業の
規制に関する国際論議が大変かまびすしくなっておるわけでございます。これは、流し網そのものの漁法が大変
資源略奪的ではないかというふうな問題、そしてまた、流し網という漁法のやむを得ざる副作用でございますけれ
ども、目的にした魚種以外の
水産物なり海産哺乳動物を捕獲するというふうなことをめぐりまして、これを禁止ないし
規制すべきであるという
動きが強化されております。
そういったいろいろな
動きの中で、私
ども関係国との間で個別に協議をすべきものは協議をし、また多国間の会議において我が方の立場を説明して、私
どもの権益確保に努めておるわけでございますけれ
ども、全体の流れとして見ますと、
先生から御
指摘ございましたように、漸次縮小の傾向をたどっておることは事実でございます。ある
程度国際情勢の変化なりあるいは
漁業そのものについての考え方の変化というものもありますけれ
ども、
お話ございましたように、科学的なデータを踏まえながら国際理解を深めて
遠洋漁業の漁場確保に引き続き
努力をしたいと思いますけれ
ども、やはり縮小を余儀なくされる場面もあり得るということで、昨年十二月に国際
漁業再編対策という閣議
了解を行いまして、その再編整備に伴う
国内措置の仕組み等を確立しておる。こういう
状況で、いわば外に対して交渉していくと同時に、再編整備を余儀なくされる場合も想定をした
国内措置の仕組みを準備して私
ども政策運営に当たっておる、こういう
状況であります。
大変冗長になりましたけれ
ども、御
指摘された
遠洋漁業の内容に即しまして
お話しを申し上げた次第でございます。