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政府委員(大須敏生君) ただいま
委員から御指摘いただきました点、まことに真剣な御指摘——真剣な御指摘というのは大変失礼でございますけれ
ども、金貨についての問題の
重要性を御認識になった上で、またさらに造幣局の技術等についても御
理解をいただきました上での御発言でございまして、非常に教訓として伺っていたところでございます。
私
どもの
考え方を若干申し上げさしていただきますが、まず認識の点でございます。確かに、
大臣から冒頭
お話ございましたように、日本にとりましては五十四年ぶりの金貨幣の発行ということでございまして、そういう面で我々発行当局もそうでございますし、それから金貨を取り扱いますいろいろな
関係者、例えばコイン商でございますとか、あるいは金融
機関であるとか、そういうところでも非常になれが足りなかった、ふなれであった、こういうことでございまして、そのふなれなところの素地をつくりましたのは何といっても大量な発行がございます。大量な発行の結果、再再御指摘のような環流が始まっても、還流が金融
機関の窓口に起こってもみんな不思議に思わなかったという、そこに恐らく最大の問題があったのではないかと思うわけでございます。
しからばなぜそんな大量の発行をしてしまったかということでございますけれ
ども、それもまさに御指摘いただきましたように、当時の環境といたしましては、議事録等にも明らかでございますが、一千万枚でもなお足りないというような、何というか、
一般的な空気が強かったということで、それを我々は本来ならば冷静に分析してそんなに出ないんではないかということを考えるべきであったのかもしれませんけれ
ども、いわばそういうムードに押されたということは言えるのではないかと存じます。
それと、御記憶だと存じますけれ
ども、昭和六十一年の秋のときは抽せん
制度をとったわけでございます。抽せん
制度で五対一でいわば合格した人だけが引きかえることができるというような抽せん
制度を国がやったわけでございます。抽せん
制度をしきましたために、どうしても手に入れたい、欲しいと思われる
方々がいわば
自分の欲しい数以上に申し込みをしたということがあったんではないかということでございまして、その結果、実際にふたをあけてみますと、さすがに十万円と金額が大きかったために窓口にそれほど引き取りに見えなかったということもございました。そういうところで一種の仮需要のようなものが発生しておった、それを見誤ったというような点があろうかと存じますけれ
ども、何分にも久しぶりの経験でございまして、非常に
国民が金投資についてフィーバーしておった時期でございますので、その辺を見誤ったではないかと言われれば、それは御指摘のとおりでございます。
それから造幣の技術の点でございますが、技術の点については、これは事件が起こりましてからいろいろ
新聞紙上等でも報道がなされておりますけれ
ども、報道にございますような例えばデザインが簡素に過ぎたのではないかとか、あるいは純金であったので加工が容易であったのかということについては、いろいろ調べてみますと必ずしもそうではない、これは後であるいは御議論があるかもしれませんけれ
ども、私
どもそのように感じております。私
どもとしては、当時の造幣局の技術は非常に依然としてすぐれておったというふうに思うわけでございまして、現在でも造幣の
専門家が見ますと偽造貨と真貨の区別は非常に容易であるというふうに聞いておりますけれ
ども、ただ再々申し上げましておりますように、非常にふなれなためにいろいろな取り扱いをする隅々までなかなか真偽の鑑定のところの認識が不十分であったということは、そのとおりでございます。
それから政策的な面でございますが、これも確かに、後から思い起こせば、欧米諸国でとっておりますような額面を非常に低くしてそして売り出しの価格はそれを上回るようないわゆるプレミアム型の金貨にすれば、今回のような金融
機関の窓口に両替を求めてくるという形での偽造の発生というのは防ぐことができたのではないかということでございます。確かにそのとおりでございますけれ
ども、それにつきましては、今度の貨幣法の規定で貴金属を使いました記念貨幣につきまして額面を上回る価格で売り渡すことができるような
制度も導入されたところでございまして、そういう外国の
制度について十分研究をしていたことは事実でございます。
ただ、本
委員会でさきの
委嘱審査の際にも御
説明申し上げましたように、我が国の記念貨幣につきましての
一つの伝統がございまして、非常に
国民の多くの方が頒布というか交換を希望なさるという現実がございます。そういうことがございますので、従来から各国の例に比べますと二けた
程度多い発行枚数を続けてきた、こういう経緯がございまして、そういうことでございますと金融
機関の窓口で交換する法定通貨のやり方というのが一番いいし、それがまた
一つの投資として考えた場合には額面金額が最低保証になるというような意味でも
国民の希望に沿ったものであるというような
一つの伝統があったわけでございます。そういうような伝統を踏襲したということでございまして、それはその
段階におきまして
一つの選択でございましたが、基本的に偽造の点をよく考えればそういうことはしなかったんではなかろうかということでございます。
これはまた新しい金貨について御
説明申し上げますけれ
ども、管理通貨
制度を持っております今の貨幣
制度のあり方として、やはり偽造防止策を万全にすることでその問題に対処するのが正しいというふうに考えておるわけでございます。