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政府委員(
鷲野宏君) もう先生は御案内のとおりだと思いますけれ
ども、
商品取引所制度なるものが起こりましたそもそもの原点は、
我が国におきましても、それから欧米におきましてもいずれも農産物から始まっているところでございます。これは御案内のように、農産物というのは出来秋に生産が集中いたします、それから作柄が自然
条件によって変動しやすい、
価格も非常に不安定だ、したがって
リスクヘッジニーズなりあるいは適正公正な先行
価格指標に対するニーズなり、こういったものが高いということによっているところでございます。
戦前はともかくといたしまして、戦後の主要な各国の農業政策というものを見てみますと、多かれ少なかれ
価格支持
制度というものをとっておりまして、例えばアメリカの場合で申し上げますと、トウモロコシ、家畜等につきまして不足払いによる
価格支持
制度がとられておりますが、同時にこういった農畜産物は、シカゴを初めとして
商品市場におきまして上場されて活発な
取引も行われております。農民その他
関係業者がこの
商品市場をいろんな面で活用しているということも事実でございまして、
価格支持
制度あるいは輸入規制
措置の
対象になっているからといって、それがその
商品市場の上場と相入れない、あるいはなじまないというものではないというように
考えている次第でございます。
それで、御
指摘の
繭糸の
価格安定
制度でございますが、これは一定の
価格安定帯の中で
価格変動を抑えることを目的としておりまして、この一定の上下に開いた安定
価格帯の中での
リスクヘッジなり
価格形成機能というものが必要とされるものでございまして、
先物取引と両立し得るのではないかというように
考えているわけでございます。仮に乾繭なり生糸なりの
商品市場というものがなくなってしまいますと、養蚕連にしましても、あるいは製糸にしましても、生糸問屋にしましても、輸入商社にしましても、
リスクヘッジの場あるいは適正な
価格の先行指標の場というものを失ってしまいまして、大変困惑した
事態を生ずるということになると
考えております。したがいまして、私
ども今後の
繭糸市場につきましては、これまでもたびたび
仕手の
介入等によって特に川下サイドに御迷惑をかけたというそういう事例もございますから、今後とも
市場管理の徹底を期しまして、そういったことがこれから起こらないようにより一層努めてまいりたい。特に今回の
法改正によりましてこの
市場管理措置の強化という点につきましてもいろんな規定が整備されることになっておりますので、そういうものも活用いたしましてその面に配慮してまいりたいというように
考えている次第でございます。
それから、インサイダー
取引が行われるおそれがあるのではないかということでございますが、インサイダー
取引の最も典型的な例は、株式の
売買におきましてその株式の企業の内部者が内部情報を活用して
取引を行うという例が最も典型的なものであろうと思いますけれ
ども、
商品先物取引におきましては、
価格そのものが抽象化、
一般化された
価格の先行指標の形成を図るものでございますし、その
価格形成の因子となる情報も大変多岐にわたっておりまして、証券
取引におけるよう
なインサイダー
取引というものは
一般的には起こりがたいというように
考えているわけでございます。問題は、
価格政策がとられている
商品におきまして、
価格政策に基づく
価格の形成に事業団等公的な機関が関与する場合もございまして、そのような場合にはいわゆる内部者に相当する、重要な事実に接近し得る特別な立場にある者も存在し得るわけでございますが、これにつきましてはむしろ
商品取引所法の分野の問題ではなくて、別途公的な機関における情報管理なり規制なりによって対処すべきであるというように
考えております。
それで、昨年来の
繭糸市場における混乱の
事態にそういったインサイダー
取引が行われたのではないかといううわさも流布されてはおりますけれ
ども、この事業団が行う生糸の
一般売り渡しにつきましては市価高騰時に生糸
相場を鎮静化させる目的で行われるものでありますので、この売り渡しに関する情報が一部の者に事前に漏れると不公正な結果をもたらすということは私
ども重々承知しておりまして、情報管理には大変厳正を期しておりますので、そういったようなことはないものというように
考えているわけでございます。