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国務大臣(塚原俊平君) ただいま議題となりました二法案につきまして、その提案
理由及びその
内容の概要を御
説明申し上げます。
まず、
労働者災害補償保険法等の一部を改正する
法律案につきまして申し上げます。
労働者災害補償保険
制度については、高齢化の進展等経済
社会の変化等に的確に対応し、また、一層の公平、
均衡を図る観点から、その
改善について、かねてから労働者災害補償保険審議会において
検討が行われてきたところであります。
同審議会における
検討の結果、昨年十二月、当面講ずるべき措置について労使公益各側
委員全員一致による建議をいただきました。
政府といたしましては、この建議を尊重し、法律改正を要する部分について
改正案を作成し、これを労働者災害補償保険審議会及び
社会保障制度審議会に諮問し、それぞれ了承する旨の答申をいただきましたので、ここに
労働者災害補償保険法等の一部を改正する
法律案として、提案いたした次第であります。
次に、この
法律案の
内容の概要を御
説明申し上げます。
まず、労働者災害補償保険法関係の改正についてであります。
第一は、年金及び一時金たる保険
給付のスライドについて、現在、賃金水準が六%を超えて変動した場合にはその変動率に応じて改定することとしておりますが、これを年度ごとに賃金水準の変動に応じて改定するいわゆる完全自動賃金スライド制とすることとしたことであります。
第二は、休業補償
給付及び休業
給付のスライドについて、現在、賃金水準が二〇%を超えて変動した場合にその変動率に応じて改定することとしておりますが、この賃金水準の変動幅の要件を一〇%に緩和するとともに、現在、
事業場の規模、産業により異なる変動率の算定方式を、全規模、全産業の平均賃金を用いて一本化することとしたことであります。
第三は、療養開始後一年六カ月を経過した者に対する休業補償
給付及び休業
給付に係る
給付基礎日額について、年金たる保険
給付の例にならい、年齢階層ごとに最低
限度額及び最高
限度額を定めることとしたことであります。
次に、失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律関係の改正について申し上げます。
現在、暫定任意適用
事業とされている五人未満の労働者を使用する個人経営の農業の
事業への労災保険の適用拡大を図るため、労災保険に特別加入している者が行う農業の
事業に労働者が使用された場合、当該
事業を強制適用
事業とすることとしたことであります。
以上のほか、この
法律案においては、その附則において以上の改正に伴う所要の経過措置を定めております。
なお、施行期日は、年金及び一時金のスライド制の
改善につきましては
平成二年八月一日、休業補償
給付及び休業
給付のスライド制の
改善並びにこれらの
給付の
給付基礎日額への最低・最高
限度額の導入につきましては同年十月一日、農業の
事業への適用拡大につきましては
平成三年四月一日としております。
次に、
中小企業退職金共済法の一部を改正する
法律案につきまして、申し上げます。
中小企業退職金共済法は、中小企業の労働者の
福祉の増進と中小企業の振興に寄与することを目的として、
昭和三十四年に制定されたものであります。
その後、本
制度は着実に発展し、一般の退職金共済
制度に加入している
事業主の数は約三十六万、加入労働者数は約二百四十三万人に達しており、本
制度は、中小企業の労働
福祉対策の主要な柱の
一つとなっております。
ところで、我が国における退職金
制度の現状を見ますと、大企業ではあまねく普及を見ているものの、中小企業においてはその普及
状況及び
内容はいまだ必ずしも十分なものとは言いがたい
実情にあります。
また、最近における経済
社会情勢を見ると、賃金、退職金水準の上昇、短時間労働者の増加、金利情勢の変動、高齢化の進展等の変化が見られるところであります。
このため、このような本
制度の経緯及び現状を踏まえ、経済
社会情勢の変化に対応しつつ、長期的に安定した
制度としてその一層の充実を図ることが必要となっております。
政府は、このような観点から、本
制度について所要の
改善を行うこととし、先般、中小企業退職金共済審議会に諮問し、その答申をいただきましたので、ここに
中小企業退職金共済法の一部を改正する
法律案を提出した次第であります。
次に、この
法律案の
内容につきまして、概要を御
説明申し上げます。
第一は、掛金月額の最低額及び最高額の引き上げであります。
現行
制度では、掛金月額の最低額は三千円、最高額は二万円となっておりますが、賃金、退職金水準の上昇等を勘案し、退職金
給付水準の向上に資するため、掛金月額の最低額を四千円に、最高額を二万六千円にそれぞれ引き上げることとしております。
第二は、短時間労働被共済者に係る掛金月額の最低額の特例の設定であります。
現行
制度では、短時間労働者が本
制度に加入する場合にも通常の労働者と同様の掛金月額の範囲内から掛金月額を選択して加入することとされていますが、通常の労働者を前提として設定された掛金月額の最低額は高過ぎる場合があることから、短時間労働被共済者については掛金月額の最低額を二千円とし、その加入促進を図ることとしております。
第三は、付加退職金
制度の導入であります。
現行
制度では、退職金の額は、掛金月額及び掛金納付月数に応じて一定の金利の運用収入を前提として計算された
現行法別表のみにより定まる額とされていますが、最近における金利情勢等のもとで、共済
制度の安定を維持するため、退職金の額は、掛金月額及び掛金納付月数に応じて定まる基本退職金の額に金利の変動に応じて定まる付加退職金の額を加えた額とすることとしております。
第四は、分割
支給制度の導入であります。
現行
制度では、退職金は一時金として支払われることとされていますが、高齢化の進展の中で、老後生活の安定化に資するため、被共済者の請求により退職金を分割して
支給することができるものとすることとしております。
この
法律案の主たる改正
内容は以上のとおりでありますが、この法律の附則におきましては、この法律の施行の際被共済者である労働者に関して、最低掛金月額までの掛金月額の引き上げについて一定の猶予期間を置くこと及び施行日前に加入した被共済者で施行日以後に退職した者に係る退職金の額は、掛金のうち施行日前における掛金月額の最高額を超える部分について新法により算定した額と、それ以外の部分について従前の算定
方法により算定して得た額の合算額とすること等の経過措置を定めるとともに、そのほかこれらの改正が円滑に実施されるよう所要の経過措置を規定しております。
なお、この法律のうち掛金月額の最低額の引き上げに係る規定は
平成三年十二月一日から、そのほかの規定は
平成三年四月一日から施行することとしております。
以上、二法案の提案
理由及びその
内容につきまして御
説明申し上げました。
何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。