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参考人(
長谷川徳之輔君) 建設
経済研究所の長谷川と申します。
私の
意見は私個人の
意見でありまして、私は研究職として、全く立場がないわけでございまして、
企業の立場でも役所の立場でもございません、全く私個人の、一研究者としての視点でございますので、そういう視点からお聞きいただければと思います。
私がきょう
お話し申し上げるのは、
レジュメに書いてございますとおり、「地価高騰と土地対策」ということで、最近問題でございます地価問題、それに対する土地対策について私の考え方を申し上げさせていただきたいと思います。
資料を準備してございますが、その前に要旨についてコンセプトが書いてございますので、それをざっとごらんいただければと思います。地価高騰と土地対策ということにつきまして六つの提案をしてございます。
一つは、地価高騰の
実態というのは、私は全く泡の地価、バブルそのものだというふうに思います。
そして、そのバブルによって成立した土地の資産というのはこれは全くの虚構の土地資産である。世上
日本を売ると
アメリカが五つ買えると言いますが、実は
東京を売ると
アメリカ全部が買えるという状況であります。土地インフレそのものが実はこれから大きな問題を呼ぶというふうに考えております。
そして、このような地価の高騰をした原因というのは、世上いろいろ言われておりますけれ
ども、私は究極的には法人のスペキュレーション、投機的取引でしょうし、それな可能にした低金利、金利の低さ、金融とそれから税制――財テク、土地テクというものを助長し可能にした税制の欠陥だろうと考えております。
そして、土地税制については特に現在問題になっておりますし、政府税調等で議論が進められておりますが、私は今の土地税制には総合性が欠落しているということ、それから減税の弊害というか、そういうものが端的にあらわれているというふうに思っております。
それから、住宅宅地の供給につきましては、私は土地は十分にあり過ぎるぐらいにあると思っております。ないのは知恵と実行力といいますか、知恵もあるわけであります。問題は実行力であると思っております。ここに「知恵」と書きましたけれ
ども、知恵は実はもう山ほどあるわけでありまして、問題は、我々が議会に期待するのは実行力であります。土地は十分にある、知恵もある、あとは実行力だけということで、この辺を大いに期待したいと思っております。
それから、最近話題になっておる
韓国、台湾の土地政策については、私は土地政策が抽象論ではなく、具体的な目標を持ち、具体的な対策を出すというところに意義を感じております。
以上六つの点について、資料を交えながら
お話し申し上げたいと思います。お
手元の
レジュメの「地価高騰と土地政策」という資料がございます
が、グラフばかりでございますのでわかりやすいと思いますので、グラフを見ながら御説明申し上げます。
四ページ目でございますが、この四ページ目は地価の水準について少し時間的な推移を見ておりますが、何%上がったということは、地価を見る場合に専らパーセントで議論しますが、パーセントというのは非常にわかりにくいわけでございます。本当は、我々のセンスからいえば幾らが幾らになったというのが一番わかりやすいわけでございますので、ここでは幾らが幾らになったということを出してみました。
四ページの左側の図は
東京の商業地、右の図は住宅地の地価水準の推移でありますが、ごらんのとおり
昭和五十二年には実は
東京の商業地で一平方メートル当たり百万円を超えるところは銀座と丸ノ内しかなかったのであります。それが六十年ころから急速に、そこの図にありますとおりスパイラル的に値上がりしまして、区部平均で八百二十四万円、都心部では二千万円に迫るということでございますから、ざっと見て二十倍ぐらいの値上がりを示しております。そして、足立区ですら実は百五十万を超えております。こういうことは、十年間にGNPは一・八五倍、
消費者物価は一・二倍ですから、それしか上がっておらないにもかかわらず土地は二十倍ということは、実は
東京じゅうの商業地が足立区や葛飾区を含めて全部銀座や丸ノ内並みになってしまったということなのであります。売り上げは変わらないのに
値段だけは銀座になったということであります。
右側は住宅地でございますが、同じように住宅地で
昭和五十二年に一坪百万円、平米三十万円を超しているところはこれも千代田区の麹町しかなかったのであります。それが今は六十一年以降の急速な上昇で、区部の平均で平方メートル百三十六万円、千代田区では九百八万円、足立区ですら五十一万円であります。となりますと、所得が大して変わらないのに、住む場所だけは実はみんな麹町のお屋敷並みになってしまったということであります。ですから、この十年間で
東京じゅうが銀座になってしまう、
東京じゅうが実は麹町三番町、海部総理大臣のお屋敷並みになってしまったということであります。こういうことは大変奇妙であります。
そして、その右の図は三十年間の推移を示しております。上の線が住宅地の全国市街地
価格指数、真ん中の線が名目賃金の指数、それから金利七%の指数、それから
消費者物価の指数を見てみますと、
昭和三十年から六十年までに土地はほぼ六十倍、五十六倍であります。賃金は十八倍であります。金利は七倍であります。こういうことを見ますと、例えば
昭和三十年に三百万円の土地を持っていた人と、三百万円を現金で持っていてそれを金融機関に預けた人の差というのは、実は三十年間で全国の市街地で言えば、土地で持っていた人は一億六千七百九十四万円、預金した人は二千二百八十三万円です。七・四倍の差であります。これが六大
都市であれば、土地を持っていた人は四億二百万円になります。差は一七・六倍であります。さらに、六十年以降地価は三倍に上がりましたから、土地を持っていた人は十二億円ということになっております。片方は二千万円で、片方は十二億円になります。単純なポートフォリオの差がこれだけの大きな差をつくってしまいました。まさにこれが土地神話と言われるところでありまして、こういう状況であれば、だれもかも実は借金をして土地を買っていた方が一番有利という状況になったわけであります。これが実は
日本人の拝金思想をつくってしまった一番大きな原因であります。
こういう地価の高騰を少し結果として見ますと、次の六ページに、これは土地の資産というものを地図であらわしてみました。上の図は
昭和五十九年、真ん中の図は
昭和六十三年、
平成二年の図もかきたかったのでありますが、ちょっと時間がなくて数字だけ書いてしまってここではかいてございません。これは御案内のとおり、
昭和五十九年の地図というのは何となく
日本列島に似ております。都道府県別の宅地面積に都道府県別の平均的な住宅地の
価格を掛けて都道府県別の宅地の資産額を出します。それを平方で開いて地図に直したものであります。
そこでごらんいただくとおり、これは
東京でございますと、
昭和五十九年に百四十四兆円の資産がございました。全国でほぼ千二百兆円ございました。それが
昭和六十三年には
東京が四百九十一兆円、周辺の
東京圏を合わせますとほぼ九百四十八兆円という資産になりました。
東京だけが非常に肥大化した非常に奇妙な
日本地図になります。
そして、これが
平成二年になりますと、その数字に書いてございますとおり、全国で二千二百七十四兆円になりまして、大阪の方がふえまして、大阪がほぼ倍以上になっていますから、ちょうど今の地図をかきますと、
東京と大阪を中心とした眼鏡のような形になっていまして、つるになっておるところが東北、北海道ないし九州だというふうな形で、実に奇妙な宅地資産図がかけるわけであります。
日本で見ますとこういうふうな資産の図になっております。
右側が、実は世界の地図で見ておりますが、
日本の土地がどのくらい変なものかということを見るために、
日本の土地についてこういうふうに比べてみました。
日本の土地は三十七万平方キロであります。世界の国土面積が一億三千五百万平方キロですから、その〇・三%ということになります。人口は世界が五十億人、
日本が一億二千万ですから二・五%でございます。GNPは、これは一九八六年の数字でございますが、三百五十兆ですので、ほぼ世界の一六%であります。ここまでは非常に健全な姿であります。
ところが、これが株と土地になりますと、株は五百四十兆円で世界の四四%、土地は千六百三十八兆円、これは一九八七年の数字でございますが、私の計算ではほぼ六〇%ということになります。そういうことになりますと、〇・三%の国土に実は六〇%の資産を持っているという計算に相なります。その一六%のGNPは理解できますが、どうしても六〇%の資産を持っておるということは理解を超えるわけであります。しかし、これが実は我々の常識になっておるということであります。
ちなみにその下の図は、
経済企画庁が計算しました一九八六年の
日本、
アメリカ、イギリスの土地資産を示してございますが、御案内のとおり
日本が千二百六十二兆円、
アメリカが五百五兆円、イギリスが十一兆円ですから、
日本は
アメリカの二・五倍、イギリスの百十五倍ということになります。
日本を売ればイギリスが百十五買えるという計算になるわけであります。
GNPとそれから土地資産の関係を見てみますと、その右の図でございますが、
アメリカのGNPと土地資産というのは、土地の総額はGNPのほぼ半分くらい、〇・五ぐらいでございます。ずっと〇・五で横ばいにきております。横ばいということは実はGNPに相関してしか地価はふえないということでありますね。ところが、
日本の図を見てもらいますと、その上の線になりまして、地価高騰の前でも実は
日本の地価というのは
アメリカよりもずっと高くて、土地係数でいきますと二から三という数字でございました。それも年によって非常に変動があります。ところが、これが一九八五年以降実は六ぐらいに上がっているわけであります。GNPの六倍の土地資産になっているわけであります。こういうことは大変実体
経済とは遊離しております。しかし、個別ではこれが実体
経済として通用しております。
次のページが、これは抜いてしまいましたので、一番前のページに戻っていただきまして、一ページ目に実はこういう資産を前提にした
企業の含み資産を示しておりますが、一ページ目の真ん中あたりに
企業の含み資産は今土地で三百四十二兆円、株で百七十兆円、あわせてほぼ五百十二兆円の含み資産がございます。これは
経済企画庁の計算でございまして、
昭和六十三年の上場
企業の含み資産であります。ほぼGNPの一・二倍という含み資産を持っております。
それから、財政再建の方でございますが、私が見るところ一九八五年、
昭和六十年以降赤字国債がどんどん減ってきましたが、赤字国債の減少の原因というのは決してそれは
消費税でもなければ行政改革でもない、それはひとえにこの間に地価が上がって財政収入の中で相続税や申告所得という土地に係る税金がふえたからであります。これは圧倒的な量でありまして、実は地価の高騰というのは一面財政再建という形での財政の好転をもたらしました。しかし、これは実はこれからツケになって回るということになるわけであります。
それから、これを個人ベースで見てみますと、八ページまで飛んでいただきますが、八ページの左の下の図でございます。これは
東京二十三区部での地主の数、土地所有者の数と資産額を示しております。二十三区部においては土地所有者の数はほぼ九十八万人でございまして、個人が九十万六千人、法人がほぼ七万五千社であります。その中で、実は三百平方メートル未満という自分の住むところしかない人が七七・七%、法人を入れれば八二%が三百平方メートル未満という資産としての意味のない地主なんであります。
その地主の持っている土地というのはその右側の図でございますが、四百六十兆の資産をそれぞれまた階層別に分けますと、三百平方メートル未満の人は百十六兆円で全体の二五・二%の土地を持っております。そういうことは、実は
東京の場合でも一二、三%の人が七五%の土地を持っているということになります。
東京の場合でも土地の所有の均衡化は進んでおりますが、実際には非常に多くの土地がまだまだ独占的な状況にあるということになろうかと思います。
そして、その結果でございますが、一番右の図でございます。一人当たりの資産額に直しますと、
東京二十三区部に何らかの形で土地を持っている人は個人で三億二千万円、法人で十五億二千万円という資産になるわけであります。一万平方メートル以上、これは一ヘクタール以上でございますか、それ以上持っている方の資産は個人で二百十三億円、法人で五百二十九億円ということになります。ということは、
東京の二十三区部に何らかの形で土地を持っておれば全員が億万長者だということになります。年収六百五十万円の億万長者であります。そして、その数は九人に一人、それから三世帯に一世帯、四十代以上になれば二世帯に一世帯は全員が億万長者だということになるわけであります。
トータルで見た数字、
日本の土地資産が世界の六〇%を占めてしまうということは大変奇妙にみんな思います。これはだれしもみんな奇妙に思うわけです。しかし、事自分のことになると、会社のことも個人のこともこの資産があるということを前提に実は
経済は成り立っているというふうになりまして、この辺にマクロで見た場合のおかしさがミクロの世界まで入ってしまっているんな問題を起こしているという原因になっているわけであります。
そして、このような地価が高騰をしてしまった大きな原因は何かということはいろいろ取りざたされておりますが、九ページの右に書いてあるとおりいろんな原因がございました。
日本経済の
国際化、情報化、あるいは
東京の
国際化、情報化というようなことでいろいろな議論がありましたが、そういうのは後から言っただけの話でありまして、私は本当の原因というのは実は金余り現象と土地税制、この二つに尽きるというふうに思います。
この二つが実は地価高騰の原因になりました。もともと土地の需要あるいは住宅の需要というのはこれは人間の数と国民所得の範囲内でしかあり得ないわけでございます。ある時期に二倍、三倍に伸びるということはこれは明らかに投機であるし、投資であります。在庫であります。それを可能にしたのは金融と税制の二つであります。その二つが実は私は最大の原因、九〇%以上の原因はそこにあると思います。
そしてその事実を次のページで少し見ていただきたいと思います。数字ばかりで恐縮でございますが、次のページの図の13という左の図は、実は
東京二十三区部における土地の取引率の推移を示しております。この円が五%の線でございまして、三角形の上が港区、右が世田谷区それから左が足立区というその三区について何%の土地が動いたということを件数と面積で示しております。
これは、字が小さくて恐縮でございます。
昭和四十六年から
昭和六十二年までの時系列で見ておりますが、例えば右の丸の一番上のところが
昭和五十六年の取引の件数でございます。港区で見ますと件数で二・七%、それから世田谷区で二・五%、足立区で五%、それから面積では一・四、一・二、一・四という数字であります。これが実は大体一般的な取引率でございますが、それがずっと下を見ていただきますと、一番下の
昭和六十一年のところを見ますと、実は全部の
地域が五%の円を超えまして、港区が八・八、それから世田谷五・八、足立が六・六、面積でも四・一%になっております。ということは、この間に港区あたりで見ますと件数で三・三倍、面積で二・数倍という取引が上がっております。
実はこういう取引はだれが行ったかということが問題でありますが、その右の図、図の14でございますが、これは取引の内容そのものの推移を示しております。取引というのは、内容を見ますれば、個人が個人に売った場合、それから個人が法人に売った場合、それから法人が法人に売った場合、法人が個人に売った場合、この四つであります。この四つを見ておればどういうマーケットかということがわかります。
そこで、この図は上の図が
昭和五十九年、一番下が
昭和六十一年でございますが、港区、世田谷区、足立区、三区についての取引率を示しております。御案内のとおり、上に三角形が高いということは実は個人のマーケットであります。下に多いということは法人のマーケットでございます。例えば一番上の五十九年の図を見ていただきますと、港区では個人―個人が二一・八、個人―法人が四〇・二、法人―人が二六・七でありまして、まだ個人の市場はかなりあります。それから世田谷区の場合には逆にもっと個人―個人が多くて個人―個人が四〇・五、それから足立区では個人―個人が五九・七というぐあいに、世田谷区、足立区にいくに従ってマーケットは個人から個人に売るマーケットになっております。
それがどんどん下にいきますと三角形の形が崩れてきまして、一番下をごらんいただきますと、地区、世田谷区、足立区とも上の三角形から下の三角形になっているということは、この間に実は土地の取引が非常に法人主体の取引に変わったということでございます。港区の場合で言えば実に九五%が法人の取引であります。個人の取引はほぼゼロになったと言っていいと思います。
実は、
日本の土地の市場というのは、本来個人から個人に売ったものを法人が仲介するというのが伝統的な
日本の土地のマーケットであります。これは常識であります。ところが、これがこの数年、地価高騰の結果変わってしまいまして、法人が主体になるというマーケットになってしまいました。これが実は地価の高騰の大きな原因だったと私思います。個人が個人に売る場合にはこれは個人の所得の範囲内でしか売買は成立しません。しかし、法人が売る場合には、必ずそれはキャピタルゲインもありましょう、節税もありましょう、いろいろな意味で所得から形成されるということでなくて、別な要因から地価が形成されるということになります。それが実は端的にあらわれてしまったということであります。
さらに、次のページをごらんいただきますと、具体的にどういう法人が購入したかということを示しておりますが、左の図の15の下の方のロというのをごらんいただきますと、これは千代田区、中央区、世田谷区、足立区でどの法人が、どういう人が買ったかということの買った人の内訳を示しております。
千代田区でいくと法人が九割、個人がほぼ一割。それから中央区も同じように法人が九割、個人が一割でありますが、その法人の中身について見ますと、実は七割までが中小不動産
業者であります。
大手の不動産
業者というのは一〇%もいません。それから三番目の世田谷区にいきますと、法人
企業の割合は四割に減りますが、実はその法人の七割がやはり中小不動産
業者であります。そして足立区においてもそうであります。かり不動産
業者の中で、実はその区に所在地を持たない、事務所を持たない不動産
業者がふえております。この間に
東京の土地のマーケットは非常に広域化、
ビジネス化しているわけであります。これが、マーケットの転換が地価の大きな原因でありまして、実はこれを支えたのは金融であります。
中小法人が、中小不動産
業者がみずから資金があるわけはないわけであります。中小不動産
業者の土地取引は完全に一〇〇%実は金剛機関の資金によって行われます。その結果、それをごらんいただくと右の図のとおりでございまして、右の図の16は不動産業向けの銀行等の貸出残高と地価上昇の推移を示しています。これは
平成元年の六月までしか示しておりませんが、
平成元年度末でいきますと、実は貸出残高の総額は四十七兆円になります。
昭和五十八年に十四兆円ですからこの間に三・五倍の貸出残高の増になっております。そして同じように地価も三・八倍に上がっております。こういう貸出残高の増が明らかに地価高騰の原因になっていることは明白であります。
もともと列島改造論のときに実は不動産業に銀行等が貸した残高は五兆円でございました。それで全貸出残高に占める割合はほぼ六%ないし七%でございました。ところが、実は今それが五十兆円ということになっております。銀行等の貸出残高が五十兆円。列島改造の時代にはノンバンクとかはありませんでした。今はノンバンク、それから生命保険、そういった迂回金融機関を入れ、なおかつ不動産に投入された資金を入れればほぼ百兆円は超えていると私は思います。これよくわかりませんが、銀行等の貸出残高が五十兆円、これは確実であります。その他を含めれば事不動産に流れた金は百兆円を下らないというふうに思います。
問題は、これがどういうことになっているかということであります。五十兆円という金はどういう金かと申しますと、一平方メートル百万円で買いますと五千ヘクタールの土地が買えます。五千ヘクタールというのは実は世田谷区の宅地面積の一・五倍ございます。それから、もし平米一千万円で買えば五百ヘクタール買えます。五百ヘクタールというのは中央区と千代田区の商業地を足した面積に等しいものでございます。それだけの土地が既に買われておるわけであります。これが実は問題でありまして、問題はこれが売れるかどうかでありますが、私はこれは売れないと思います。一戸三千万円で住宅を売ろうとしまして、そのうち土地代が一千万円払われるとしますと、五十兆円の資金を回収するには五百万戸売れないと返ってこないわけであります。
実はこれだけの金が、五十兆円あるいは百兆円という膨大な金が全体のマーケットがわからないままに土地の投機に投入されました。その結果、今膨大な在庫が積み重なっていると私は見ております。この在庫がどうなるか。この在庫があるいは一方でインフレを起こすかもしれません。あるいは片方でデフレを起こすかもしれません。あるいはクラッシュという形になるかもしれません。これが実は土地問題の最近の最大の課題だと思います。金融が行き着くところまで行ってしまったんではないかと。地価を上げるも下げるもこの五十兆円次第ということに私はなるのではないかと思っております。
さらに、加えて土地税制の転換でございます。
次の十四、十五ページには土地税制について記してございますが、私は土地税制というのはやはり構造的な大きな要因だったと思います。もちろん短期的には無節操な不動産金融というのが地価高騰の大きな原因でした。しかし、構造的にはそういうふうに誘引したのは税制だったと思います。財テク、土地テクというふうなことを実は助長した税制だったと思います。そしてその税制自体がこの三十年の間は土地政策としての位置づけは欠落しておりまして、専ら従的・補完的機能だということだけになっております。本来土地税制というのは歴史的に見ても国際的に見ても土地政策そのものであったはずでありますが、
日本の場合には残念ながら土地税制というのは従的・補完的機能にすぎないというふうに見られておりました。これは私は大変土地政策の発動を阻害したというふうに見ております。
それからなおかつ税制というのは専ら減税だけを重ねてさました。それも無定見に減税を重ねてさました。どういう
効果があるかわからない、減税したらどういう
効果があるんだ、あったんだということがわからないままに減税を積み重ねました。そして複雑、個別の優遇策をどんどんつくりました。これが逆
効果になりました。これが実は土地への執着を強め、財テクを誘導し、不必要な需要を拡大したというふうに思います。
それから税制そのものに、土地利用より資産所有を優遇するという税制をつくりました。固定資産税の実効税率は極端に低くて、金利は七%なのに実は買った土地の固定資産税は〇・一%に満たないわけでありまして、ほとんど固定資産税としての機能を果たしていないという状況まで実は資産が優遇されております。さらに
都市計画や土地利用との連動性も欠落しております。こういうふうに土地保有が非常に安いということが節税あるいは脱税ということを横行させたというふうに思います。
それから法人の過度優遇でございますが、いろいろ言われているとおり、法人にはキャピタルゲインの還収もございません、相続税もございません、含み益はどんどん膨れ上がります。そして損益通算もできます。赤字法人によって節税もできます。そういう法人に非常に有利な税制が、実はまたこれが先ほど申しましたように、法人の土地取得を助長したというふうに思います。さらに、社宅の購入に見られるとおり、個人が住宅を買えば、個人は所得から所得税を払い、住民税を払い、場合によったら固定資産税を払った残りで住宅を買わなきゃなりません。しかし法人が買えば、法人の買った借入金の金利は全額経費で落ちます。減価償却費も経費で落ちます。さらに、買った住宅の固定資産税も法人税から落ちます。
ということは、個人と法人では決定的な差があります。法人にこういう優遇措置を与えれば、あるいは個人にこういう優遇措置がなければ、実は住宅は全部法人にシフトしてしまう。社宅がまさにそのあらわれだというふうに思います。こういうことが、実は法人の
企業経営の中で節税志向あるいは土地を確保しておこうということを助長したというふうに思います。そういう意味で土地税制というのはいろんな問題がありますし、本格的な抜本的な私は改正が必要じゃないかというふうに思っております。
さらに、あと二、三分でございますが、土地税制には基礎的な要件が欠落しております。その基礎的な要件というのは、例えば土地登記制度が極めて立ちおくれておりまして、我々には土地の情報、所有とか移動とか利用の情報は全くありません。それから
評価についても不統一でございまして、どういう
評価がどういう関連性があるかということもわかりません。さらに
評価は非公開でございまして、不均衡であるかどうかということすらチェックできない状況であります。そういう土地税制の資料の未整理、未整備、こういったものが実はマーケットの存在を非常に不明碓にし、これがまた地価高騰をあおるという原因になっていると思います。
最後に、市街化区域内農地の宅地並み課税について、私はこれは不公平、不公正という観点から是正すべきだと思います。いろんな理屈はあると思いますが、不公平、不公正ということをまず第一に見るべきであって、あとのことはその後のつけたりだというふうに思います。そして相続税についても、実は
都市の発展にとって相続税というのは非常に重要な
役割を果たしておりますし、相続税を契機に
都市は発展し、土地の所有の分配が行われます。それをあえて市街化区域内農地を外してしまったというところに、私は戦後の
都市開発の、
都市の展開に対する非常に問題があったんじゃないかと思います。
それぞれそこに書いてございますとおりでございまして、さらにそのことは、市街化区域内農地の宅地並み課税の問題は、固定資産税の本質的な問題に行き当たると思います。この問題についていろいろ問題はあろうかと思います。固定資産税そのものにもいろんな問題があろうかと思いますが、私は今土地税制の論議をするときに本格、本質的な
問題点を糊塗して、それを見ないで次の政策をつくっていこうということはかえって事態を悪くする。私はこういう土地問題が、あるいは土地税制が非常に議論になっているときには、やはり本格的な、本質的な税制の
問題点を見るべきだというふうに思います。
以上であります。