○
政府委員(
藤原良一君) では、お
手元の「
地価の動向と
土地対策」という
資料に基づきまして、最近の
地価及び
土地対策の概要について御
説明申し上げます。
まず、一ページをお開きいただきたいと思いますが、これは三十一年以降の
地価の
変動状況をあらわしたグラフでございます。上が
住宅地で下が
商業地であります。五十年を除きまして終始
地価は
上昇を続けてきておりますが、特にその中でも三十五、六年、四十七、八年、そして今回と大きな
異常高騰の波を三回経験しております。
次に、二ページでございますが、四十六年以降
地価公示制度を
実施しておりますけれども、これは
地価公示を
実施いたしました四十六年以降の
変動率でありますが、一番
右端に
平成二年の
地価公示の実数が出てございます。上の
住宅地で
全国平均で一七・〇%の
上昇となっております。特にこの中で
大阪圏が五六・一%と非常に高い
上昇を示しております。
次に三ページでございます。これは三
大都市圏の五十九年以降の
地価の推移でございますが、
昭和五十八年を一〇〇とした
累積上昇率をあらわしたものでございます。上が
住宅地でございますが、ちなみに
東京圏、一番上の欄をごらんになっていただきますと、
右端ですが、
平成二年は
指数で二三四・七、二・三四倍になっておるわけでございます。
大阪圏が中ほどにございますが、二七八・一、二・七八倍、
名古屋圏が一・六〇倍、そういうふうな
上昇になっております。
次に、四ページでございますが、
地価公示の
平均価格指数を
圏域別に
比較したものでございまして、これは
東京圏を一〇〇としたものであります。今回の
地価高騰は五十八、九年ころ
東京都心に端を発したわけですが、そのときの
状況は
住宅地で
東京圏を一〇〇といたしますと
大阪圏が八五、
名古屋圏が五〇という
比率だったわけですが、
東京圏が先行して
上昇いたしまして、六十三年には
東京一〇〇に対しまして
大阪圏四三、
名古屋圏二一と、
東京と
大阪、
名古屋、その他の
地域の
格差が非常に広がっております。その後、
東京圏は
東京と
神奈川等で
鎮静化が見られましたが、
大阪圏、
名古屋圏の
上昇が著しく、
平成二年ではその差が一〇〇対九一、三二といったぐあいに、特に
東京、
大阪圏の
格差が縮まっております。
これら
地価高騰の
要因を五ページに記してございます。まず
東京圏の
上昇要因でございますが、
都心部における
事務所ビル需要の急激な
増大、
都心部の
業務地化に伴う
住宅地における買いかえ
需要の
増大、その過程で
投機的取引、あるいは
不要不急の投資的な仮
需要が発生しております。また、
背景といたしましては
金融緩和による
金余り状態があったということだと思います。
また、最近の
大阪圏、
名古屋圏における
地価高騰要因でございますが、依然として
金融緩和基調にあるほか、
東京との
割安感に伴う
投資需要、あるいは
関西学研、新空港、そういった大
規模プロジェクトの
進展によるこの
地域における
期待感の
増大等を挙げることができるのではないかと考えております。
地価高騰に伴う
問題点でございますが、これはいろいろ考えられますが、特に
大都市勤労者の
住宅取得の
困難化、
資産格差の
拡大による
社会的不公平感の
増大、
社会資本整備への支障、そういったことが考えられると思っております。
次に、こういう
地価の
状況に対しまして
政府が講じてきた
対策でございますが、
需給両面にわたる各般の
対策を講じてきておりますが、まず
土地取引規制といたしましては、六十二年六月、
国土利用計画法を
改正いたしまして
監視区域制度を設け、この
制度を
運用してございます。これは小規模な
土地取引についても知事、
指定市の市長に届け出る義務を課しまして
高値取引を行政
指導しようというものでありまして、現在一都二府三十四県十一
政令指定都市、
市区町村数で言いますと七百五十余の
市区町村でこの
制度を
運用しております。
次に、七ページに
監視区域の
指定状況を図で示しております。黒く塗ったところが
指定区域でございます。
さらに八ページでは、さきの国会で
国土利用計画法を一部
改正していただきまして、
監視区域の
運用をより厳正にするために、
利用目的すなわち
土地の
取得後一年以内にみずから利用することなく転売するようなケースにつきましても厳しく
指導できるようにしておりますし、また
遊休土地につきましても、
監視区域の中におきましては
面積要件や
期間要件を厳しく
改正しております。
次に九ページでございます。
不動産、
金融機関に対する
指導でありますが、
不動産業、
金融機関に対しては六十年七月以降繰り返し
指導をしてきております。特に
金融機関に対しましては、いわゆる
特別ヒアリングによりまして
個別銀行の
融資に立ち入って
過剰融資のないよう
指導してきておるところでありますが、
平成元年十月末にはノンバンクも
指導の
対象に加えております。また、三月二十七日には、
土地関連融資の
伸び率を総貸し出しの
伸び率以下に抑制することを目途に
金融機関を
指導することとしております。なお、下の表が
全国銀行の
不動産業向け貸出残高でございますが、
元年十二月末では、表の一番下にございますように、
不動産業向け四十六兆余、対前年
伸び率一四・一%と総
貸出残高の対前年
伸び率一〇・九よりもかなり高い
伸び率になっております。
十ページは
土地税制の
改正でございますが、
土地税制につきましても
投機的取引や
不要不急の
需要を抑制する
観点から
改正を加えてきておりまして、六十二年十月には超短期重課
制度を創設しております。これは
土地転がしの抑制のための
制度でございまして、譲渡益に対して表面税率九一%という重課
制度でございます。
一つ飛ばしまして、その下に居住用財産の買いかえ特例の原則廃止というのがございます。これは十年以上居住していた場合には処分代金の
範囲で買いかえる限り原則無税だったわけですが、それが周辺の
住宅地域の高騰原因の
一つとなっておりましたので、これを原則廃止いたしまして低率分離課税方式に改めております。また、法人の
土地取得に係る借入金利子の損金算入制限措置も六十三年末から
実施しております。
国公有地・国鉄清算事業団用地の処分でありますが、一般
競争入札による処分が
地価高騰地域では高騰に油を注ぐという御批判もありまして、六十二年十月には
地価の異常な高騰が
鎮静化するまで見合わせるということを
閣議決定しております。
平成元年には
東京等の
地価が
鎮静化してまいりましたので、具体的事例に即して
地価に悪
影響を与えないと判断された場合には
競争入札による処分ができるということとしておりますが、なお
東京都等ではまだ一般
競争による入札は行っておりません。また、国鉄清算事業団用地につきましては、
地価を顕在化させない処分方法による処分を積極的に
拡大するということで、この方法も現在進めているところでございます。
十一ページでございますが、
地価対策をより基本的に
推進するためには国土の均衡ある
発展を図ることが重要であります。そういう
観点から多極分散型国土形成促進法を制定いたしまして、国の行政機関の移転を促進しております。御承知のとおり、七十九機関、自衛隊十一部隊の移転
対象機関を決定いたしまして、そのうち七十六機関十一部隊の移転先を先ごろ取りまとめたところであります。できるだけ早い時期に移転を完了すべく現在作業を進めているところでございます。
次に、
供給対策でございますが、宅地開発の
推進といたしまして、大都市
地域における優良宅地開発の促進に関する緊急措置法、あるいはその下の宅地開発及び鉄道整備の一体的
推進に関する特別措置法、こういった法律を制定していただきまして、優良な宅地開発の
推進に取り組んでおります。また再開発の
推進につきましても、都市再開発法の一部
改正を行いまして、工場跡地等の低未利用地における
土地利用
転換を円滑に進めるために再開発地区計画
制度等を創設しております。その他、線引きとか用途
地域の
見直し、容積率の
見直し等も適宜行っているところであります。
次に十二ページでございますが、さきの国会で制定いただきました
土地基本法について簡単に御
説明申し上げます。
土地基本法は、六十二年末ごろから衆参両院の
土地問題等特別
委員会におきまして、
土地の公共性の
観点から
土地の保有、処分、利用に関する制限や負担の
あり方について
国民的規模の合意形成を図るべきだという決議をちょうだいしております。また、
行革審からも
土地対策を
推進するに当たっての基本的な五つの考え方が示されておりまして、例えば
土地の所有には利用の責務が伴うこと、
土地の利用に当たっては公共の福祉が優先すること等を内容とする五つの提言であります。また野党四党からも
土地基本法案が国会に提出されておりました。そういった
状況を踏まえまして、
国土庁におきましても、長官の私的諮問機関として
土地基本法に関する懇談会を設けまして基本法の考え方をまとめ、法案を作成して国会に提案さしていただいたわけであります。国会では衆参両院で非常に熱心に御討議いただきまして、与野党協議、修正の上、可決していただいたわけであります。
その概要は次のページにございます。二十条から成る宣言法的な性格のものでありますが、内容は
土地についての基本理念、国等の責務、
土地に関する基本的施策、そういったことを内容とするものであります。十三ページの上の方にございます「
土地についての基本理念」が特に重要と考えております。
四つから成っておりまして、
土地は公共の利害に
関係する特性を有していることにかんがみ、
土地については公共の福祉が優先されるべきものだというのが大原則であります。さらにそれを敷衍する形で、
土地は
地域の諸条件に応じて適正に利用されるべきものであり、また
土地利用に関する計画に従って利用されるべきだというのが二つ目の原則であります。三番目は、
土地は投機の
対象とされてはならない。四番目が、
土地の利益については適切な負担が求められるのだというのが
土地に関する理念でございます。この理念に基づいて国、公共団体は
土地に関する施策を展開することとされておりますし、また
国民もこの理念を尊重して、
土地に関する取引、利用等を行うというのがこの基本法の内容、主たる骨子であります。
なお、この基本法の制定直後に
土地対策関係閣僚会議を開催いたしまして、十五ページ、十六ページにございますように、今後の
土地対策の重点
実施方針を申し合わせております。十項目から成っておりますが、ごく簡単に御
説明さしていただきますと、
一つは、大都市
地域における住宅宅地
供給の促進でございまして、大都市
地域におきましては広域的な住宅宅地の
供給方針を策定するほか、工場跡地等の低未利用地の有効高度利用を促進するための
制度、市街化区域内農地を都市計画において保全するものと宅地化するものとに明確に区分し、生産緑地
制度の
見直し等を行いながら
関係制度を充実していく、そういったことを
平成二年度末までに行うこととしております。
また、
土地税制の
見直しにつきましては、適正な利用の確保、
投機的取引の抑制、利益に応じた適切な負担といった基本理念にのっとりまして、また
土地に関する施策を踏まえ、税負担の公平の確保を図りつつ
取得、保有、譲渡の各段階における適切な課税の
あり方について総合的な
見直しを行うこととしておりまして、税制
調査会の検討を踏まえつつ、
平成二年度中に成案を得て所要の法律案を提出するということとしております。また、大都市
地域の市街化区域内農地に関する税制につきましても、
関係制度の整備、
充実等とあわせて
見直しを行い、
平成四年度から円滑な
実施を図ることとしております。業務核都市や臨海部の整備につきましても、
平成三年度を目途に首都圏整備計画の
見直し等所要の措置を瀞ずることとしております。
十六ページに入りまして、国公有地等の利活用でございますが、大都市
地域の国公有地につきましては、国有地について使用
状況等を
平成二年度末を目途に点検してその有効利用を図ることとしております。公有地につきましても同趣旨の要請を公共団体に行っております。
借地借家法の
見直しにつきましては、できる限り早期に
改正要綱案が得られるように努め、これが得られ次第速やかに所要の法律案を国会に提出することとしております。
投機的取引等については引き続き的確な
運用等に努めますし、
金融機関等に対する
指導も厳正な
指導を徹底していくということであります。
公的
土地評価の適正化につきましては、
不動産鑑定評価
基準の
見直しを
平成二年度末までに
実施することとしておりますし、相続税評価につきましても同税の性格等を考えながら可及的速やかに
地価公示等との均衡化、適正化を図っていくということとしております。固定資産税評価につきましても、
平成三年度が次の評価がえの年でございますので、固定資産税の性格を考慮し
地価公示との
関係にも十分配慮しつつ均衡化、適正化を
推進することとしております。また
基準地等に係る路線価の一部につきまして公開を行うよう地方公共団体を
指導することとしております。
そのほか、開発利益の社会還元、
土地に関する
情報の整備、
土地に関する基本理念の普及啓蒙についても適宜必要な
努力を行っていくこととしております。
一番最後に、日米構造協議における「
土地利用」の要旨を添付してございますが、日米構造協議におきましては、ただいま御
説明いたしました閣僚会議申し合わせ十項目を中心として協議を進めまして、ほぼその
範囲内で協議を取りまとめ、中間
報告の内容とした次第でありますので、詳しい御
説明は省略させていただきます。
以上でございます。