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1990-10-04 第118回国会 参議院 決算委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年十月四日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十月三日     辞任         補欠選任      沓脱タケ子君     近藤 忠孝君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         及川 一夫君     理 事                 大浜 方栄君                 後藤 正夫君                 守住 有信君                 会田 長栄君                 千葉 景子君                 猪熊 重二君     委 員                 石渡 清元君                 尾辻 秀久君                 岡野  裕君                 鎌田 要人君                 沓掛 哲男君                 木暮 山人君                 清水嘉与子君                 陣内 孝雄君                 鈴木 省吾君                 福田 宏一君                 二木 秀夫君                 大渕 絹子君                 梶原 敬義君                 喜岡  淳君                 種田  誠君                 渕上 貞雄君                 木庭健太郎君                 諫山  博君                 近藤 忠孝君                 高井 和伸君                 三治 重信君    国務大臣        法 務 大 臣  梶山 静六君        外 務 大 臣  中山 太郎君        大 蔵 大 臣  橋本龍太郎君        文 部 大 臣  保利 耕輔君        厚 生 大 臣  津島 雄二君        農林水産大臣   山本 富雄君        建 設 大 臣  綿貫 民輔君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  塩崎  潤君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  北川 石松君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  佐藤 守良君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 堯躬君    説明員        警察庁刑事局長  中門  弘君        警察庁刑事局保        安部長      加美山利弘君        総務庁行政管理        局長       増島 俊之君        国土庁土地局長  藤原 良一君        外務大臣官房領        事移住部長    久米 邦貞君        外務省アジア局        外務参事官    大塚清一郎君        外務省経済協力        局審議官     茂田  宏君        外務省国際連合        局長       赤尾 信敏君        大蔵省主計局次 長   田波 耕治君        大蔵省銀行局長  土田 正顕君        国税庁直税部長  山口 厚生君        文部省教育助成        局長       菴谷 利夫君        厚生省健康政策        局長       長谷川慧重君        厚生省生活衛生        局長       目黒 克己君        厚生省生活衛生        局水道環境部長  小林 康彦君        厚生省保険局長  黒木 武弘君        農林水産大臣官        房長       鶴岡 俊彦君        水産庁長官    京谷 昭夫君        通商産業大臣官        房審議官     田村 修二君        建設省都市局長  市川 一朗君        建設省河川局長  近藤  徹君        建設省住宅局長  立石  真君        会計検査院事務        総局第一局長   安部  彪君        会計検査院事務        総局第三局長   川崎 恒夫君        会計検査院事務        総局第四局長   白川  健君     ─────────────   本日の会議に付した案件昭和六十二年度一般会計歳入歳出決算昭和六十二年度特別会計歳入歳出決算昭和六十二年度国税収納金整理資金受払計算書昭和六十二年度政府関係機関決算書(第百十四回国会内閣提出) ○昭和六十二年度国有財産増減及び現在額総計算書(第百十四回国会内閣提出) ○昭和六十二年度国有財産無償貸付状況計算書(第百十四回国会内閣提出)     ─────────────
  2. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、沓脱タケ子君が委員を辞任され、その補欠として近藤忠孝君が選任されました。     ─────────────
  3. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 昭和六十二年度決算外二件を議題といたします。  本日は、昨日に引き続き、全般的質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 喜岡淳

    喜岡淳君 きょうは、大蔵大臣お見えでありますが、ちょっと事柄の性格上緊急を要する問題がございますので、外務省の方にお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。  近年、日本人海外渡航が、旅行といいますか、商用、さまざまな分野で急速に増加しておるというふうに聞いておりますが、それに伴って在留邦人の数もどんどんふえておるように思います。最近の日本人海外渡航状況について教えていただきたいというふうに思います。
  5. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 日本人海外渡航者の数というのは、年々非常に急速な勢いでふえておりまして、平成元年度九百六十六万人の海外渡航者がございます。
  6. 喜岡淳

    喜岡淳君 九百六十万ということは、ほぼ一千万人に迫るという勢いだろうと思いますが、そういう人たちの中で、OLとか学生とか若い人たちがどんどん近年は外国に行っておるというふうに聞いておりますが、やはりそういう傾向が強いのでしょうか。
  7. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) おっしゃるとおりの傾向はございまして、従来は、商社の方とかあるいは公務員、一部の商用、用務の方が多かったわけでございますが、最近この数年間、いわゆる観光で 海外に渡航されるという方が急速に増加しております。
  8. 喜岡淳

    喜岡淳君 私の調査でも、どんどん日本人海外渡航増大をしておりまして、昭和三十八年は十万人の海外渡航者でありましたが、平成元年度では九百六十万人、非常に大幅な増加をしておるわけであります。しかも、その中には社会体験の少ない若い世代が非常に多くなっておるという特徴は、私の調査と今の答弁は一致するであろうというふうに思います。  さて、そこで、そういうふうに日本人がどんどん外国へ行けば行くほど、現地での事件トラブル、こういったものも増大しておるというふうに思いますが、最近の、邦人が巻き込まれたトラブル、そういったような事件数字とか、こういった点はどういうふうになっておるでしょうか。
  9. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 私どもは、海外渡航者数のほかにいわゆる邦人保護援護案件件数というものの統計をとっておりまして、これは在外の我が方の公館が、海外に渡航される邦人事故あるいは犯罪それから疾病、そういったものに巻き込まれた邦人援護をした件数でございますけれども、今申し上げた援護案件数というのは、昭和六十二年度が五千八百七十九件、これは前年度比五三%の増でございます。それから六十三年は八千三百五十四件でございます。これは対前年度で四二%増。それから平成元年度は一万件を突破いたしまして一万二百六十八件、対前年度二三%の増ということになっております。  ちなみに、この増加率は、今申し上げました三つの年度についての渡航者増加率でございます六十二年度二四%、六十三年度二三%、それから平成元年一五%という増加率に比べましてはるかに急激に増加しておりまして、これは委員のおっしゃいました社会経験の少ない方々がたくさん出るようになってきているという傾向とも関連することかと考えております。
  10. 喜岡淳

    喜岡淳君 今聞いてちょっと驚いたんですが、犯罪増大といいますか、私の方の調査では昭和五十四年で五百三十九件ということだったわけですけれども、ついに平成元年には今のお話では一万件を突破するという数字がありました。そして、日本人が出ていくのが一千万人ということですから大体千人に一件ですか、一千万人出ていって一万件の事件といいますから、大体外国へ出ていく人の千人に一人は海外で何かのトラブルに巻き込まれる。非常に恐ろしい結果であるように思うわけであります。  そしてそのトラブルといいますのは、いろんな犯罪が起きておるようでありますけれども、一体どういう地域で、例えばアメリカとかヨーロッパとか東南アジアとかいろんな地域の問題もあるかと思いますが、どのあたりでよく発生しておるのでしょうか。
  11. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) まず、誤解があるといけませんので、地域数字に入ります前にちょっと補足させていただきたいと思いますけれども、先ほど一万二百六十八件と申し上げましたのは、これは犯罪に巻き込まれた件数だけではございませんで、疾病事故、その他すべての在外公館援護をした件数でございます。  その内訳の主なものをちなみに申し上げますと、窃盗等財産被害が六千百二十八件、物をなくしたというたぐいのもの、それが千七百四十六件、出入国関係トラブルに巻き込まれたというのが三百四十二件、病気のケースが三百三十件、それからいわゆる行方不明の所在調査というのが二百五十六件ございます。そのほかに精神障害百四十二件、自動車事故百四十件という数字になっております。  それから、今御質問のございました地域別援護件数でございますけれども、一番多いのが欧州地域でございまして三千六百四十一件でございます。次いで北米地域の二千九百六十七件、それからその次がアジア地域二千百六十一件となっております。
  12. 喜岡淳

    喜岡淳君 私は、今のお話の一万件の件数というのは、もちろん単に犯罪だけじゃなくてすべてのトラブルの数、総計だろうというふうに思うわけですが、その一万件というのも連絡のあったもの、確認できたものということでありますから、やはり氷山の一角で、合計すれば一万件ということだろうと理解をいたしております。  さて、次の質問でありますが、当然こういうトラブルの際ですね、もちろんさまざまなトラブルがあるでしょうが、特に邦人犯罪などに巻き込まれたりあるいはさまざまな事件に巻き込まれるとかそういうことがたくさん起こっておるようですが、そういったトラブルの急増に対してどういった対処が行われておるのか。もちろん、昔から君子危うきに近寄らずということがありますから、危険なところには行くなとか危なそうな人には近寄るなとか、そういった、旅行者とか現地企業人たちの個人的な責任は当然でありましょうが、だれだって事故に遭いたくて遭うわけではありませんし、犯罪に巻き込まれようと思って近寄っていく人もいないというのが常識だろうと思うんです。  そこで、外務省としては、こういったさまざまな外地での邦人トラブルを防止するために、一体どういうような犯罪に巻き込まれないような、そういった保護の対策がとられておるのでしょうか。
  13. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 御指摘のとおり、好んで犯罪に巻き込まれる方はおられないわけですけれども、ただ、日本は非常に国内治安状況がいいものでございますから、日本のつもりで行かれて、海外におきましては必ずしも日本のような治安状況のいいところは少ないわけでございまして、そういう現地治安状況に対する認識が十分でないということ、あるいは不注意のためにそういった事件事故に巻き込まれるケースが多いというようなこともございますので、外務省におきましては事前にいろいろな安全に関する情報、それから認識を高めるということが非常に重要なことであろうかと思っておりまして、日ごろから東京におきましては海外旅行社を通じ、あるいは企業関係の方については日本在外企業協会等企業団体を通じまして注意を呼びかけるとともに、各地域ごとの主として在外公館から収集いたしましたいろいろな治安、安全にかかわる情報というものを積極的に民間に提供するという体制をとっておりまして、そのために東京におきまして海外安全ハンドブックというものを一九八七年以来毎年刊行しておりますほか、先ほど申し上げた各地域ごとの時々刻々の情報パソコン通信を用いまして海外進出企業等に提供いたします海外安全ネットワークというものを三年前から開設いたしております。  また、そのほか外務省邦人保護課の中に海外安全相談センターというものを設けまして、各種の情報の提供あるいは相談を受けました場合の相談窓口ということで、これも海外進出企業旅行業界に対するサービスとしてやっております。  また、在外におきましては、平素から各地日本人会あるいは貿易会といった現地の組織を通じまして在留邦人と安全問題に関する意見交換というものに努めておりますし、各地ごと事情を酌んだ防犯の手引といったようなものを作成いたしまして在留邦人に配付するといったような各地域ごと自衛措置というものを講ずることに心がけております。
  14. 喜岡淳

    喜岡淳君 現地日本大使館あるいは外務省邦人保護課がそういった任務に主に当たっておられるということだろうと思います。  そこで、最近中東での日本人の人質問題もありますが、もう一つ大きな問題として、この数年間にわたってずっと言われてきましたのは、やはりフィリピンの問題があると思うわけであります。そこで、フィリピン日本人犯罪に巻き込まれているということが多いわけですけれどもフィリピンという国は治安問題等々含めて一体どういうような状況にあるのでしょうか。これはアジア局の方でしょうか。
  15. 大塚清一郎

    説明員大塚清一郎君) お答え申し上げます。  フィリピン治安状況、あるいは他国の治安状況につきまして一般的に云々するというのはなかなか難しい点がございます。しかしながら、御指摘フィリピンにつきましては、御承知のとおり昨年の十二月にはクーデターもございましたし、それから最近の爆発ないし爆発未遂事件と申しますか、ことしの八月だけでも大体二十件ぐらいと聞いております。九月中にも約十件ぐらいのそういった爆発ないし未遂事件というものがございましたので、治安状況もそういった意味で我々注意しなければいけない点があるのだと思います。  けさ未明入りました情報では、フィリピンの南の方でございますが、ミンダナオにおきまして軍が反乱を起こしているというような情報に接しておりまして、今、私どもさらに情報収集に努めておりますけれども、そういったように、一般的に申しましてフィリピン治安状況につきましては心配される点があるということは言えるのかと思います。  ですから、私どもはそういった状況を踏まえて、邦人方々が不測の事故に巻き込まれることを防ぐために、安全確保については十分注意していただくように、フィリピンに行かれる邦人方々には注意して呼びかけているというところでございます。
  16. 喜岡淳

    喜岡淳君 今のお話ですと、大変物騒といいますか非常に危険な国だという気がいたします。こういうよくわからないようなところにたくさんのODAが注ぎ込まれておるわけですから、なおよくわからないのですが、私の手元にあります産経新聞なんかでも派手な見出しが出ておりまして、「多発する殺人に苦しむ比国」、非常に大きな見出しです。「自衛と称し国会議員まで銃を密輸」とか、「腐敗警官花盛り」、もちろん日本警察もいろいろあるようですけれども、「安月給が動機、犯罪で稼ぐ」、こんな見出しのつくようなフィリピン警察紹介記事が載っておりますので、この国の治安というものについてはおっしゃるとおり心配される点があると、非常に危険な感じを持っておるわけであります。  このフィリピンにもたくさん日本人が出かけておるわけでありまして、フィリピンでは邦人の巻き込まれる事件も非常に続発をしておるというふうに思うわけです。つい最近ではOISCAの水野さんが、これは幸いにも救出をされたわけでありますけれども日本人フィリピンで巻き込まれたような犯罪事件、あるいはフィリピンに出国をしたまま我が国に帰国予定になっても今なお帰っていない人とか、あるいはフィリピンで行方不明になっておる人とか、こういうようなことについての実態はつかんでおられるかと思いますが、何かありましたら。
  17. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 犯罪絡みで行方不明になっている可能性がある方ということでフィリピン調査に当たっている邦人行方不明事件というのは、私ども承知しておりますケースとしては、中村一志さんと瀬戸伸介さんが昨年十二月以来行方不明になっておられるわけですけれども、このケースが現在残っている唯一のケース承知しております。
  18. 喜岡淳

    喜岡淳君 今お話に出ました中村一志さんと瀬戸伸介さんの件について具体的にお尋ねをしたいというふうに思います。  今お話しありましたこの件につきましては、概略私どもは次のように受けとめております。  去年の十二月十一日、大阪日栄建設社長中村一志さんが通訳瀬戸伸介さんを伴って十二月十一日、大阪発タイ航空の飛行機でマニラへ出発をしたというふうに伺っております。この二人はマニラの飛行場に着いた後消息を絶っておる。去年の十二月十一日の出来事でありますから、もう既にそれ以降十カ月以上たっております。  この瀬戸さんという青年は、二十二歳のいわゆる苦学生でありまして、香川県の県立高校を卒業した後、建設会社で働きながら学費をためて大阪英会話スクールへ進学をしたという青年であります。家庭環境母子家庭ということで、母親も本当に心配をしておるわけであります。去年の十二月十一日、マニラのホテルにチェックインをした後消息を絶ったということでありますが、この件については既に三月十九日付の速達外務省に対して捜査のお願いというものが邦人保護課に出されておると思いますが、それについては受け取っておられるでしょうか。
  19. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) ただいまおっしゃいました速達は、我々いただいております。
  20. 喜岡淳

    喜岡淳君 そこで、瀬戸伸介さんの捜査の問題でありますが、邦人保護課の方を中心として――今のところ犯罪が起きたという確証もないしするわけですからいわゆる行方不明人ということになるかと思います。そうなってきますと、もちろん海外での邦人の行方不明という事件になるわけですから、これは警察が捜すというよりも、邦人保護課とか、外務省任務から見ますとこれはあくまでも外務省の方の所管になるかと思います。  そこで、邦人保護課の方では現在どういうような瀬戸さんについての捜査といいますか発見のための活動に取り組まれておるのか、教えていただきたいと思います。
  21. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 先ほどの速達をいただきまして、その後日本国内関係者方々にいろいろ事情を伺った上で、三月三十一日付で現地マニラ総領事館に対してこの問題についての調査を行うようにという指示の訓令を出しております。  現地におきましては、ただいまの訓令に基づきましてフィリピン警察軍の中の犯罪捜査担当部局でございますCISという、犯罪捜査隊と訳しておりますけれども、これに対しまして四月五日付で調査依頼をいたしております。  また同時に、この方たちフィリピンセブ島にいるという未確認情報が入ったこともございますので、今の調査依頼と前後いたしましてセブ島の入国管理局の方にも照会をいたしましたけれどもセブ島の入国管理局の方では、この二人がセブ島に上陸したという事実は確認できないという回答がございました。  また、その後五月八日付で、これは重犯罪捜査を行う機関でございますけれども、司法省の外郭でございます国家捜査局NBIと言っておりますけれども、そこに対しても五月八日付で現地総領事館から調査を要請する書簡を出しております。
  22. 喜岡淳

    喜岡淳君 四月、五月と現地での具体的な捜査依頼が行われたということであります。  そこで、現在の捜査状況についてどういうふうになっておるのか。四月、五月に依頼してからもう既に五カ月たっておりますけれども、それ以降どのように外務省の方では最近の状況としてつかんでおられるのでしょうか。
  23. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) その後も現地大使館からフィリピン側当局に対しまして再三にわたりまして照会を行い、また捜査結果の督促を行っているわけでございます。  具体的に申し上げますと、まず、六月十四日に先方の、先ほど申し上げましたCIS犯罪捜査隊の方から要請がございまして、このお二人の写真を先方に提出するということをやっております。また、七月十二日付でさらに現地当局に対してその後の捜査状況照会すべく本省から現地大使館に対して訓令を出しておりまして、その照会の結果として七月十八日に現地からNBICISの双方に照会した結果を報告してきております。  NBIの方の回答は、本件の捜査を現在鋭意行っているけれども、今までわかった内容については捜査の途中の段階なのでまだ明らかにできないということを言っております。またCISの方からは、中村社長の知人から所在についての情報を得たということもございましたけれども、結局その後その情報のフォローアップについては確認を得られなかったということでございます。またさらに、ごく最近現地に対して再度照会するようにという訓令を打っておりまして、CISの方では現在五人の捜査員を充てて調査を行っているということを言っておりますけれども、具体的な確認された情報についてはまだ得られていないということでございます。
  24. 喜岡淳

    喜岡淳君 今のお話の中では、中村社長通訳瀬戸君の二人を捜しておるけれども、未確認情報が幾つかあってまだ最終的な確認はできていないということになるかと思うんですが、いろいろ報道を取りまとめてみますと、特にこの二人は大阪に在住しておったということもあって大阪方面新聞社ではかなり報道が行われております。その中には、つい最近、中村社長現地秘書であったトニー山本氏が入管当局に引っ張られておる、彼を調べればかなりのことがわかるのではないかというような報道もされておりますが、この件については御承知でしょうか。
  25. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) ただいまおっしゃいました山本氏についてのいろいろな調査現地当局が行ったようでございますけれども内容については、犯罪捜査の問題でございますので詳細なことは申し上げられませんけれども、現在のところ、その結果として確たる確認された証拠が出てきたということはないようでございます。
  26. 喜岡淳

    喜岡淳君 それから、この事件関係してマニラ邦人団体であるメディア・イン・アクションという団体がよく新聞報道に登場いたしておりますが、この団体は一体どういうことをやっておる団体でしょうか。
  27. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 私ども承知しておりますところでは、現地報道関係の仕事をしている団体と聞いております。
  28. 喜岡淳

    喜岡淳君 次にお尋ねしますが、マニラにあるのは日本大使館ですか。総領事館とおっしゃったんですか。
  29. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) マニラにつきましては、日本大使館の中に総領事館がございます。
  30. 喜岡淳

    喜岡淳君 では、マニラにある日本大使館、ここはどれぐらいの人数の方がどういう業務をやられておるのでしょうか。
  31. 大塚清一郎

    説明員大塚清一郎君) マニラ日本大使館につきましては館員が総数四十二名でございまして、先ほど領事移住部長から説明がありましたとおり、総領事館が中に併設されております。そして、政務班、経済班、広報文化班及び官房といったそれぞれの班がございますが、総勢四十二名でございまして、フィリピンとの外交交渉、情報の入手、経済協力、あるいは広報文化、領事、官房、そういった業務をやっておるわけでございます。
  32. 喜岡淳

    喜岡淳君 では、実際この大使館邦人の生命、財産を保護する仕事をやられておるわけですが、この瀬戸さんの問題についてはどの係の方が担当されておるんですか。
  33. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 現地におきましては、この邦人保護の問題は領事部が担当しております。
  34. 喜岡淳

    喜岡淳君 その領事部の方というのは一体何人ぐらいいらっしゃるんですか。
  35. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 領事部の人員は、東京から行っております本官は九名でございます。
  36. 喜岡淳

    喜岡淳君 九名の方が当たっておられると聞くんですが、実際今度の瀬戸さんの、あるいは中村さんの事件については外国で起きた事件であります。失踪事件といいますか行方不明事件といいますか、いずれにせよ外国で起きた事件ですからなかなか日本捜査当局捜査できる問題じゃないと思うんですが、しかし、邦人保護、生命、財産を保護するのは、これは大使館の最大の使命でありますから、ぜひやっていただかなければいけないわけです。  そこで、今大使館の方も頑張ってくれておるようでありますけれども、実際のところどうなんですかね。いろんな意見の中にはさまざまなネックが考えられるのではないかということがあるんですが、今捜査に何かネックになっておることがあるんでしょうか。といいますのは、もう十カ月近くになりますからね、行方不明になって。日本警察フィリピン警察の能力の違いと言う人もおりますが、何か捜査上のネックというものがあるんでしょうか。
  37. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 先ほども申し上げましたとおり、フィリピン大使館からは、現地CIS犯罪捜査隊NBI国家捜査局の双方に対して調査要請を行っておりまして、現在CISの方では五人の捜査員のチームを組んで調査を継続しているということでございます。それからNBIの方も現在なお鋭意調査を続けているということでございますけれども、残念ながら現時点におきましてはまだはっきりした結果が判明していないという状況でございます。
  38. 喜岡淳

    喜岡淳君 その五名の方が捜査をしておる、いわゆるNBIとかCISとかという捜査当局の問題でありますが、つい最近マニラから帰ってきた知り合いの人の話によりますと、この捜査体制については、もう実態として解散したような状況にあるということを聞いたんですが、それは正しいんでしょうか。
  39. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 先ほど申し上げましたこの二つの機関とも、日本側からの強い要請もあり、また外国人を巻き込んだ事件でもあるということで、現在なお調査を鋭意続行中であるという回答をつい数日前に得ております。
  40. 喜岡淳

    喜岡淳君 家族の方から手紙を預かってきたのでちょっと読ませていただきたいと思うんですが、要するに外務省の対応として、三月に手紙を出して、その後外務省からの連絡がないということでありますけれども、家族と外務省との連絡はどういうふうにとられておるのでしょうか。
  41. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 御家族の方からは、三月に先ほど御指摘のありました連絡をいただいて以来、特に外務省の方に照会というものはございません。
  42. 喜岡淳

    喜岡淳君 外務省の方に三月にお願いを出してある。したがって、外務省の方から家族に対する連絡というのはどういうふうにとっておられるんでしょうか。
  43. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 手紙をいただきまして、それに対して、現地当局とのやりとりについて御連絡しておりますけれども、最近の段階におきましては、特に新しい進展はないものでございますからこちらから改めて御連絡はしておりません。
  44. 喜岡淳

    喜岡淳君 いや、それは私ちょっと事実と違うと思うんです。外務省の方から連絡が行かないから家族が心配しておるということを言っておるんです。何かされたんですか、文書や電話で状況を教えるとか、調べた結果こうだとかいうのは。
  45. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 三月に最初に連絡をいただきまして、それに対して、先ほど申し上げたようにフィリピン側とのやりとりの結果をお知らせしております。それから一番最近は、九月に家族の方と直接電話で連絡をしております。
  46. 喜岡淳

    喜岡淳君 三月に家族からの捜査の願いを受けて返事されたと言いますが、その内容は御存じですか。私は、あの内容はひどい話だろうと思うんです。外務省捜査願いを出した後、外務省が家族に電話をしたのはいいんですが、もう中村社長の会社の人が捜査すると言っておるんだからそこに任しておきなさいということを言ったのじゃないんですか。
  47. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) ただいま御指摘のありましたような回答をした覚えはないということでございますけれども……。
  48. 喜岡淳

    喜岡淳君 その言ったとか言わないとかいう泥仕合いのようなことになるとだめですから、私は家族から聞いた意見を言わせていただきます。  三月二十日、外務省から家へ電話があった。外務省が言うのには、事件でも起きていなければ捜査はできないとの返事、がっかりした。会社が捜しているから任しておきなさい、こんなことを言われて私はどうしたらいいんですかと、こういうことを聞いております。外務省を頼りにして家族はお願いを出しておるわけですから、ひとつ外務省としての誠意ある対応をお願いしたいというふうに思うわけです。  私は素人考えでわかりませんけれども、こういった大事な問題を依頼された場合、普通我々庶民の感覚からいきますと、捜査願いが来た、これは大変なことなんだな、母子家庭だからお母さんは心配しておるだろう。そうすればやはり定期的に、一カ月に一度かあるいは忙しければ二カ月に一度ぐらいは捜査状況を家族に伝えるということ、これが人道的な立場じゃないんでしょうか。何か新しい情報がなければ連絡しないのが常だなどというのは、私はちょっと理解できないんですが、そういう対応をされているんですか。
  49. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 先ほど申し上げましたように、一番最近は九月の半ばに御連絡いたしておりますけれども、御家族との連絡については、これからも御家族の方に満足していただけるような形で十分とりたいと思っております。
  50. 喜岡淳

    喜岡淳君 ぜひこれからは捜査状況について適切な間で家族に連絡を流していただきたい。もう十カ月になりますからね。御承知のとおりフィリピン現地の新聞の中には、殺されたのではないかという見出しでさえもう報道された事件でありますから、ひとつ外務省の方も緊急な取り組みをお願いしたいというふうに思うわけです。  それから、この問題についてちょっと警察庁の方にお尋ねをしたいというふうに思います。  警察庁の方へは去る六月十日付をもちまして失踪捜査願というものが渡されておると思いますが、受け取っておられるでしょうか。
  51. 中門弘

    説明員(中門弘君) 受け取っております。
  52. 喜岡淳

    喜岡淳君 そこで、警察庁長官の方にも捜査願が出たわけでありますけれども警察庁としてのこの問題に関する取り組みの状況についてぜひお知らせ願いたいと思います。
  53. 中門弘

    説明員(中門弘君) この件につきましては、警察庁に願いが出される以前、既に三月の時点で大阪府警の方へも捜索願が出されておりまして、そういうことに基づきまして警察庁といたしましてはフィリピン警察当局と必要な連絡をとること、また外務省とも必要な連絡をとること等を行ってきておるわけでございます。  また、大阪府警の方でも関連する情報収集等に努めまして、フィリピンに対しまして必要な情報提供等を行うということをやっておるわけでございますが、現在までのところ、残念ながら先ほど外務省の方からお話がありました以上の情報には接していないということでございます。
  54. 喜岡淳

    喜岡淳君 どうもありがとうございました。  外務大臣、お忙しいところをどうも御苦労さまでございます。席に座られてすぐ質問するのはちょっと申しわけないんですけれども、人命にかかわる問題でありますので、人道主義の外務大臣には御理解いただけるかと思います。  既にお聞きになったかと思いますが、昨年の十二月十一日、大阪の大東市、そこに日栄建設というのがありまして、そこの社長が香川県出身の青年通訳として連れて二人でマニラに向かったわけなんです。そして、十二月十一日にマニラには到着したんですが、その後消息を絶ってしまったわけであります。この香川県出身の青年の方は母子家庭ということもありまして、お母さんを初め家族、親戚皆非常に心配しておるわけです。もう失踪して既に十カ月になりますので、生存も危ぶまれておるわけです。地元の人たちも約六千人に近い早期発見願いの署名を既に集めまして警察庁の方にも出したりしておるわけであります。  そこで、この失踪青年あるいは失踪社長の早期発見のために、ぜひ外務大臣の格別の御勇断をいただきたいと思うわけでありますが、今後早期発見のための手だてとして何か考えておられるようでございましたら教えていただきたいというふうに思うわけです。
  55. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 今委員指摘の方の問題については、外務省としても事件の経過についてはよく認識をいたしておりまして、もちろん在外公館に対しまして、フィリピン政府に対して一日も早い捜索の完了あるいは救出をぜひ進めてもらいたいということで、政府として既に何回か依頼をいたしておりますが、残念ながらまだ具体的に詳報がつかめないというのが現状じゃないかと認識をしております。
  56. 喜岡淳

    喜岡淳君 長引けば長引くほど生死の問題についても心配される。今度の問題については、単なる道に迷ったとかあるいは山の中で迷ったとかそういう問題ではなくて、明らかに犯罪に巻き込まれた可能性というのがもうほとんどの人の指摘するところでありますから、早急な手だてが必要かというふうに思うわけです。  今お話を聞いてみますと、大使館の方で当たっておるというわけでありますが、今後大使館の前向きな積極的な情報収集活動、あるいは大使館の業務の中でも、お忙しいかと思いますが、この問題に対して重点的な人員配置をしてみるとかの方法もあるでしょうし、さらには、水野さんのときには参事官を派遣されましたが、そういった方法が考えられないのかどうか。あるいは現地日本人会の活用ですね。台湾で行方不明になった女性の場合は、教会が活躍をしてチラシを配ってみるとか情報提供し合うとか組織的な取り組みが行われておりますので、ひとつ日本人会の活用をお願いしてみるとかそういったいろいろな方法が考えられるだろうというふうに思うわけです。ぜひ今後具体的な取り組みを強化していただいて早期発見のために御尽力を願いたいというふうに思います。  これに関係してなんですが、大蔵大臣お尋ねをしたいというふうに思います。大変お待たせをいたしまして申しわけありません。  外務省の毎年毎年の予算執行、それを見てきますと、国際化に対応する外務省の予算として、こういう決算が毎年続いておるわけですけれども、果たしてどうかというふうに思うんです。外務省予算、決算を見てみますと、毎年増額はしてきておるわけですが、ふえておるのはODAばかりなんです。外務省本体の予算というのは毎年一千二百億前後でもうほとんど変わっていないわけです。私は、今もずっと議論してきた経過から見てみますと、日本人がどんどん外国に出ていく。もう一千万人の時代が来た。それに伴ってさまざまな事件トラブルがどんどん増大しておる。それに対して、果たして現地大使館あるいは外務省の本省が対応できるだけの人と予算を確保できておるのだろうかどうだろうか、非常に疑問に思うわけでありますが、そのあたり大蔵大臣の御意見を聞かせていただきたいというふうに思います。
  57. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 今委員からの御指摘の問題を聞きながら、私はちょっとあることを思い出しておりました。  私は、若王子さんが誘拐されたとき閣内におりまして、観光行政の立場からこの問題を扱う責任者でありました。そして、当時外交当局と私どもの間には判断の食い違いがありましたが、私は日本人観光客の渡航自粛という手段を講じました。そして、若王子さんが救出をされた時点において、それを再開するという方針を当時提示いたしました。結果として、それがどれだけ効果があったかわかりません。しかし、少なくともフィリピン政府から当時相当なリアクションを私自身が受けましたから、それなりに捜査に対して何らかの影響はあったと考えております。  と同時に、こうした問題の発生について在外公館のみにその責任を負わせることなく、また外務省のみにその責任を負わせることなく、政府の各機関がそれぞれの立場から協力のできる体制をつくる必要があるのではなかろうか、また国内において外務省はそういう他省庁の協力を得る努力もされる必要があるのではなかろうかと当時から感じておったわけであります。  そして同時に、先ほど九百万人にふえたという海外渡航客の話、私は一千万人計画をつくった張本人でありますから、そうした意味では当時から邦人保護という問題についての不安は持ちつつも、それぞれの時点における対応で処理していくべきだという方針を受けて実行してまいりました立場からまいりますと、今の御指摘はいろいろなことを考えさせられる御指摘であります。  しかし、私は、例えば平成年度におきまして一般歳出の伸び率は三・九%でありますが、外務省の予算、これは六・一%の伸びになっております。よく一四・四の伸びというお話が出るわけでありますが、これは元年度まで大蔵省に計上しておりました食糧増産等援助費を平成年度から外務省に移しかえました結果、外務省予算にそれが計上されて非常に大きな伸び率に、見せかけなったわけでありますが、それを除きましても、実は一般歳出の伸びよりも外務省予算というものの伸びは大きくなっております。そういう意味では私どもなりの配慮をしてまいったつもりでありますけれども、これから先も財政事情あるいは他の経費とのバランス等を当然考えなければなりませんので、その中において重点的、効率的な配分というものに努めてまいりたいと考えております。  今委員の御指摘の問題につきましては、かつての所管事項の中から先ほど申し上げたような感想を持っていることも申し添えておきたいと思います。
  58. 喜岡淳

    喜岡淳君 最後に、これはお母さんからいただいた手紙でありますが、もう一度外務省の対応についての家族の御意見を、かわりに読ませていただきたいと思います。  三月二十日東京外務省より電話あり会社の方で現地警察に頼んでいるのでまかせておくようにとの返事、プツンと糸の切れたような気持、事件がない限りどうにもできないと言われる。 こういうふうに書いておられます。  それからもう一つ、今大蔵大臣の方から縦割り行政の問題に関係して発言があったというふうに思いますが、捜査当局についても家族の気持ちがここに書かれております。  今年二月に香川県警に相談すると外事課がないので大内に言えとのこと 地元の町の警察ですね。  大内警察に言ったら大阪府警に言うように言われ、あの時もっと相談に乗ってくれていたら というふうに書いております。  そういう意味で、瀬戸さんの問題については外務省を中心にしてさまざまな政府全体の御協力をいただいて、ぜひ早期発見のために全力を尽くしていただきますようにお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  59. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 瀬戸さんのいわゆる救出について御心配をいただいておりますが、私ども、御家族のお気持ちもよく理解をしておりますので、さらに一層努力をするようにさせていただきたいと考えております。
  60. 喜岡淳

    喜岡淳君 ありがとうございました。
  61. 千葉景子

    ○千葉景子君 まず、昨日に引き続きまして決算のあり方などにつきまして質問をさせていただきたいと思います。  今審議が始まった昭和六十二年度決算でございますけれども、この決算についての本会議質問の際、私ども同僚の大渕委員が、決算の国民への示し方、あらわし方ですが、これについて具体的に三点ほど挙げて、現行の決算の不備、わかりにくさ、こういうことを指摘させていただきました。大蔵大臣にも御答弁をいただいているんですけれども、どうも、この三点の質問には十分に対応した答えになっていないように思います。決算が膨大なものであり、一般的に技術的な面が多いということで、できるだけ参考資料などを工夫するというような御答弁はいただいているわけですけれども、この三点についてもう一回、どういう理由か、あるいは改善することができないのか、お尋ねをさせていただきたいというふうに思います。  まず第一なんですけれども、予算と決算というものを比較するのに、決算が補正後であらわされているために、当初予算の説明文書、これは予算の基本的な考え方のようなものがあらわれるわけですけれども、それとの対比ができなくなっている。例えば、大渕委員も本会議で指摘いたしておりましたけれども昭和六十二年度というのはちょうど当初は売上税の導入というものが考えられた年でございました。しかし、それをめぐって二カ月近い暫定予算が組まれまして、決算の数字の中にはこの売上税に関連するようなことは出てこないわけですね。最初から売上税はなかったのかなというような形であらわされてくる。  こうなりますと、当初予算の考え方と決算というものが対比できませんし、その一年間どういう経緯であったのかということがなかなかわかりにくい。これは、売上税がなかったように見えた方が政府側としてはあのときは都合がよかったような感じがあろうかと思いますけれども、やはりこれを対比して考えられるような形にできないものかどうか。これは制度上の欠陥なのか、そういうふうにやれるものか、あるいは例えば憲法上そういうことはできないのか、その点についてまずお尋ねをしたいと思います。
  62. 田波耕治

    説明員(田波耕治君) 決算書における予算の扱いでございますけれども、先生御指摘のように、現在のところ補正後ということで決算と対比させることになっております。当然のことながら売上税につきまして当時いろいろ御議論があったことは存じ上げておりますけれども、これはまさに全く他意なく、ほかの項目と同様、補正後の予算が第百八国会におきまして売上税が不成立になりましたという事実を受けまして、六十三年の二月二十日に成立させていただきました補正予算(第2号)において減額補正が行われた結果、決算書に出てこないということになっております。  御指摘の点は一つの論点であろうとは思いますけれども、私ども政府側といたしましては、当初予算があり、それにこの年におきましても二回にわたって補正があるというような事実がございますことを考えますと、決算においてそれらの事実を全部今のような決算書の形で盛り込むということになりますと大変膨大なものになり得ると思います。そこで私どもといたしましては、そういう経過等につきましては「決算の説明」という資料をもちまして、その年の予算のいろいろな推移等についても言及をさせていただいて御理解をいただくように努力をしているということでございます。
  63. 千葉景子

    ○千葉景子君 私も、「決算の説明」というものも拝見をさせていただいているわけですけれども、これだけでは本当にその経過等がなかなか十分にわからない。売上税というものが、別に売上税をとりわけ今言いたいわけじゃないんですけれども、そういうことがあったのかというのもこれだけではわからないという状態なんです。そういう意味では、もし「決算の説明」ということでその部分をわかりやすくするとすれば、この部分もさらに経過などが十分にわかるようにぜひしていただきたいというふうに思うところです。  それから、そのときに二点目として指摘をしている点は、予算書には、参考書類の中にではございますけれども、項の下に事項という欄がございます。しかし、決算の方には事項というのは示されておりません。具体的な例で言いますと、厚生省の予算などは、項が「原爆障害対策費」、事項が「原爆障害対策に必要な経費」と一つだけ。項の「保健衛生諸費」というのは事項が十三事項ありまして、さらに目の幾つかを共有をするという形になっています。  こうして予算書では項の下の事項というのがあって、決算ではたくさん事項というのがあるにもかかわらず、今度はそういう事項というものが示されていないということになりまして、どうもこれも予算の中身とそれから決算の結果というものを対比してどうだったかと検討させていただく上でやはり大変わかりにくい。あっちこっち、これはどこに該当するのかと探し出さなければいけないということになります。そういう意味では、事項別にやはり決算をつくっていただくというような工夫、何かそこをまとめていただくような工夫ができないものかどうか、それについてお聞きしたいと思います。
  64. 田波耕治

    説明員(田波耕治君) 委員指摘のように、予算の明細書の中にいわゆる積算の内容を説明するものとして事項というものがございますことは御指摘のとおりでございます。  ただ、予算という形で国会の議決をいただく項目は項ということになっておりまして、以下若干技術的になるわけでございますけれども、そういう形で予算の成立を見ますと、その後の執行につきましては内閣が各省各庁の長に対しまして国会の議決を受けました項を、これは御存じのとおりだろうと思いますけれども、細分をいたしました目というさらに細かい形で区分して配賦を行うことになっておるわけでございます。予算執行は、その配賦を受けました予算の目の区分という制約のもとで執行が行われるわけでございます。これは細かいことは省きますけれども、いろいろな形で財政法等の規制を受ける形で執行が行われる。決算というものは、基本的にはその執行の実績を項と目ごとにさらに細かな形で明示をしておる、そういう形になっておるということでございます。
  65. 千葉景子

    ○千葉景子君 今の御説明は確かにそのとおりだというふうに思うんです。ただ、先ほど述べましたように、私どもが決算を審査させていただく、それを対比して見るときに、やはり予算と決算というものをある程度対比させていただいて、その執行がどうだったか、これで十分であったか、こういう検討を加えなければいけないわけですので、確かに制度上あるいは政府の予算執行上別にこれで問題がないということはわかりますけれども、決算書なりあるいは説明をする場合、何かそれを整理して対比できるような工夫はできるのじゃないかというふうに思うんですけれども、その点はいかがですか。
  66. 田波耕治

    説明員(田波耕治君) 確かに、決算の状況を極力わかりやすく国民の皆様方に理解していただくということは極めて重要なことだと思います。さはさりながら、膨大な決算書の中においてそういうことをすべて行うということについてはおのずから限界があるということだろうかと思います。  そこで私どもといたしましては、極力補足資料の整備充実を図るということで、例えば「決算の説明」の中におきましても可能な限り、例えば事業の施行箇所を記載するとかあるいは主要な長期計画につきましてその実施状況とか決算等につきまして極力物量的な表示等を取り入れることによって御理解を極力得られるように努力はしておるところでございます。  ただ、先生の御指摘も、何せ膨大な数字が載った決算書でございますから、わかりやすくということは常に私ども心がけなければいけないことだと思いますので、今後とも必要に応じましてそういった参考資料の工夫等によりましてできるだけの努力をしてまいりたいと思っております。
  67. 千葉景子

    ○千葉景子君 さらに、三点目なんですけれども、予算は歳入歳出予算以外に予算総則あるいは国庫債務負担行為、継続費等幅広く含まれているんですけれども、決算は歳入歳出というだけなんですね。これも多分法律上とか憲法上違法だということではないんだというふうに思いますけれども、予算総則というのは大変今内容が豊富といいますかいろいろなものを含むようになってきております。そういう意味では、決算でもその予算総則も含むといいますかそれもやはり盛り込んだような、これも対比できるような形にできないものなのかどうか、これについてお聞きしたいと思います。
  68. 田波耕治

    説明員(田波耕治君) 法律上の論点ではないという御指摘でございますから、法律を持ち出すということは極力避けたいと思いますけれども、財政法三十八条におきましては、いわゆる歳入及び歳出の決算という形で規定をされておるところでございまして、御指摘の予算書の総則に盛り込まれている事項、あるいは本会議における御質問では、例えば国庫債務負担行為であるとかあるいは継続費に係る報告はどうなっているんだというような御指摘もあったようでございますけれども、これらにつきましては、その三十八条に続くところの財政法三十九条の規定に従いまして、国の債務に関する計算書、それから継続費決算報告書という形で御報告をいたしておるところでございます。
  69. 千葉景子

    ○千葉景子君 これも前の問いの繰り返しになりますけれども、一定の説明がなされているということですけれども、やはりこういう部分もぜひわかりやすく対比ができるような工夫を続けていただきたいというふうに思います。  それから、財政が大変膨大で複雑になっておりまして、予算総則で定めている事項も今言ったように大変多彩になってきています。内容も単に歳出予算の執行上の指針を定めるだけではなくて、基本的な考え方のようなものが示されるようになっている。予算総則というのは予算書の冒頭でまとめられていて、大変わかりやすく容易に見ることができるんですけれども、決算においては、今言ったように、決算総則といいますかそれに対応するような部分がないものですから、いろんなところに、それが一体どうなったかというのがばらばらに置かれている。そういう意味では、予算総則と対応するような形で、今言ったように法律的にはどうかわかりませんけれども、決算総則というとおかしいですけれども、決算のまとめというか基本を示すような、決算総則という言葉がいいかどうかわかりませんが、何かそれに該当するようなものをつくるということはできないんでしょうか。
  70. 田波耕治

    説明員(田波耕治君) いわゆる予算総則というのは、委員承知のように、非常に言葉で言えば多岐にわたる内容になっておるところでございます。その中には、例えば繰り越しに関すること等決算そのものに結びつく部分もございますし、国の債務に関すること、あるいは継続費等の規定も予算総則の中にあるわけでございます。そういったものにつきましては、先ほど申しましたように、財政法に基づくところの報告書でもってむしろ一括してわかりやすく参照されるように一定の書式に基づいて提出をするというふうになっているのが現在の考え方ではないかなというふうに考えておるところでございます。
  71. 千葉景子

    ○千葉景子君 この三点は本会議の質問でも出ておりまして、きょう御説明をいただいたわけですけれども、今御答弁にもありましたように、わかりやすくするという御努力は続けられているということですので、ぜひ形式上あるいはその内容を含めて今後もさらなるわかりやすい決算づくりということに心がけていただきたいというふうに思います。  ところで、これもちょっと細かい技術的なことかもしれないのですけれども、予算というのは何年度一般会計予算、何年度特別会計予算、それから何年度政府関係機関予算という形で三件に分かれて国会に提出をされております。決算の方はそれが一緒になりまして、ずらずらっと長い件名になって一件として出されてくるということなんですね。これは場合によっては、採決などをするときに、例えば一般会計はこれはよろしかった、しかしどうも特別会計の方は問題がありそうだというように、それぞれやはり分けて審議をするあるいは結論を出すというようなことも可能性としてはあるような気がするんです。  こう考えますと、予算はこうやって別々にやり、決算になるとそれを全部まとめてやるというのは、これもまたなぜなのかよくわからないんですけれども、これは何か特別に理由があるんでしょうか。それともむしろ、分けてそれぞれ審議をするということも一つの考え方ではないかというふうに思うんですけれども、これはどういうことでしょうか。
  72. 田波耕治

    説明員(田波耕治君) 決算の性格でございますけれども、決算というものは、国会の議決を受けまして成立をいたしました予算執行の実績をあらわすものでございまして、そういった事柄の性質上、決算について行われております議決は予算とかあるいは法律におけるような意味での議決とは意味が異なっておるわけでございまして、決算における議決というのは、私どもといたしましては、決算の内容でございます個々具体的な収入、支出行為等の当否につきまして国会の御判断を賜るという性質のものであるというふうに考えておるところでございます。
  73. 千葉景子

    ○千葉景子君 その御説明は先ほどからわかるんです。ただ、私が申したのは、そういう性格のものだけれども、審査に当たってこれを分けることはできないんだろうか、あるいはそういう工夫はできないんだろうかということなんです。そういう点についてお尋ねしているんですが、どうでしょうか。
  74. 田波耕治

    説明員(田波耕治君) ただいま申し上げました ように、決算につきましては法律的に議決対象になるものではなくて、政府としては国会に御提出申し上げておるところのものでございます。したがいまして、その提出された決算につきましてどのような御審議の形態をとるかということは、基本的には国会の方の御判断になるものではないかというふうに考えております。
  75. 千葉景子

    ○千葉景子君 そうなりますと、政府としては、一応それをまとめて国会には提出をする、そうすると、国会の側で例えばそれを個別に分けて審議する、あるいはまとめてやるということは任されているというふうに政府としては理解していると、そう受けとめてよろしいですか。
  76. 田波耕治

    説明員(田波耕治君) 法律の立て方からいたしましても、決算については国会に提出をするということが政府に課せられた義務でございまして、そのように御理解いただいてよろしいかと存じます。
  77. 千葉景子

    ○千葉景子君 何点かお尋ねをさせていただいたのですけれども、決算制度というのはずっと言っているように、大変複雑で膨大でなかなかわかりにくい。相当専門的にやっても私などもまだまだわからない部分があろうかというふうに思うんです。  こういうわかりやすくしようということについては、大蔵大臣も、それから今の御答弁でもいろいろ工夫はしていらっしゃるということなんです。ただ、どうも決算というのは、私も調べたり聞いてみたところによると、制度あるいはやり方というのがほとんど戦前からそのまま引き続いているという状態のように思えます、いろいろ工夫は凝らしたりされているというふうに思うんですけれども。そういう意味では、少し長期的にこの決算のあり方とかあるいは仕組み、そういうものを検討する。例えば、財政制度審議会などで検討するとかそういうことで決算制度そのものを抜本的にちょっと考えてみるというようなお考えはありませんでしょうか。大蔵大臣、いかがですか。
  78. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 専門的な分野でありますので、今、事務方の答弁を求めて、私も拝聴いたしておりました。  確かに、憲法において予算について、また予備費の支出について、そして決算についてそれぞれ書き分けられている。今改めて条文を読み直してみたのですが、確かに書き分けられております。そうした中で、私は、事務方の諸君としては今日までもいろいろな御論議の中からできるだけわかりやすいものをという努力は払ってきてくれたと考えております。にもかかわらず、今委員も御引用になりましたように、先般本会議における御質問でもこうした点についてどうなんだという御指摘は幾つか受けました。また、今それを受けて委員から幾つかの点についての御議論を展開していただいたわけであります。  今私も、そう急にこうすればというような自分で考えがあるわけでもありませんし、また事務方の諸君が今まで努力をしてきた中でこの上どういう工夫があるか、なかなかすぐにお答えのできるテーマではないのかもしれません。また、今委員から審議会等の議論にゆだねてみてはどうかという御指摘もありました。こうしたことも含めてもう少し私も考えさせていただきたいと、率直にそう思います。
  79. 千葉景子

    ○千葉景子君 これは政府サイド、そして国会の側を含めてぜひ前向きに検討したいというふうに思います。  さて外務大臣、いろいろ大変御苦労さまでございました。今世界が大きな関心を寄せこれから取り組んでいこうと言われているのが子供の問題でございます。そして、先般国連で子供サミットも開かれまして、海部総理も出席をされ、サミットとしても大変盛大なものであったというふうに報道されています。それだけ今この問題に関心を寄せ、そして活動していこうという機運が大きく世界で盛り上がっているんだろうというふうに思いますし、私もぜひ積極的に取り組みたいというふうに思います。  その中で海部総理も、これは伺いましたけれども演説をなさって、幾つかの問題提起をされているということでございます。ちょっとその概要を御説明いただけませんでしょうか。
  80. 赤尾信敏

    説明員(赤尾信敏君) 海部総理大臣が世界子供サミットに出席されまして、特に子供の発育、教育の問題につきましていわゆるリードオフをしていただきました。特に子供の人権との関係、あるいは子供の発育に当たっての教育の重要性、特にヒューマニティーを目指した教育の重要性ということを訴えていただきました。特に子供の教育に関連しまして強く訴えられましたことは、各国指導者のかたい決意が非常に重要であるということ。第二点目に、子供の教育に当たりましては家庭、特に母親との関係における家庭地域社会を中心とした教育の重要性などを訴えて、各国から強い支持を得られたということでございます。
  81. 千葉景子

    ○千葉景子君 海部総理は教育の問題については大変造詣が深い専門家であるというようなことも踏まえて問題提起をされたようでございます。これは提起をした以上、そして訴えた以上はぜひ先頭に立って努力をいただかなければいけないというふうに思うわけです。  ところが法務大臣、海部総理も国連で大変世界の皆さんからも評価をいただくような演説をなさっている、そしてこういう子供の人権などにも大変関心があるというところなんですけれども、もう昨日も猪熊委員やあるいは諫山委員からも御質問がございましたように、大臣の御発言、これについては、私はきのうの大臣の御説明といいますか御弁解というのでしょうか、それをお聞きしましたけれども、全く納得いくものではございません。どう考えても、それはおっしゃったことを後から何とか理由づけて正当化しようというように私は思えてならないわけです。大変残念なことです。  特に、今国内でも黒人の団体の皆さんが大変大きな抗議の声を上げられておりますし、それから昨日はアフリカ諸国の大使の皆さんも抗議の声を上げられているというように聞いておりますし、そして海部総理もこの問題については記者会見などで陳謝というか謝罪をされたということも耳にしております。そういう意味では、もう今やこれは大変大きな国際問題になってきているんじゃないか。最初は、日米関係で大分これはまた問題になるのかなというふうな感じもありましたけれども、アフリカ諸国などからもそういう大変厳しい批判の声が上がっているというようなことで、これは私は国際的に非常に重要な時期に大変なことであろうというふうに思います。  そして、さらにこういうことがたび重なりますと、やはり大臣というのは日本の顔でもございます。とりわけ法務大臣といえば人権を守るという立場にあるそういう官庁の顔、その大臣がそういう御発言をなさったということは、日本国民がそういうことを認めているんだろうか、そういう大臣を許しているんだというふうにも受けとめられかねない。そういう意味では、国民にとってもこれは大変な事態なわけですね。あるいは、難しい問題だけれども、このように子供の人権やあるいはさまざまな問題で必死に活動している人にとっても、これはもう本当に情けない話だということだろうというふうに思います。  そういうことを含めて、昨日も御説明はありましたけれども、率直に言って、海部総理の演説で子供の教育というものが大変重要であるということですけれども、私は、大臣の教育というか政府の教育の方がむしろ必要なんじゃないかと思うくらいですけれども、まず率直な大臣のお考えを表明していただきたいと思います。
  82. 梶山静六

    ○国務大臣(梶山静六君) 昨日の当委員会でも申し上げましたとおり、過般の視察後の発言、記者会見において私の表現が極めて不適切で誤解を招き、これによって国内外に多大の御迷惑をかけ、抗議をちょうだいいたし、大変深く反省をいたし、取り消しをいたし陳謝を申し上げたところであります。そのことをもってこれが償い得るものとは思いませんが、どうかひとつ私の行った背景、そういうものをよく御理解を賜って御寛容のほどを願いたいと思います。  もちろん、これからも人権問題に対して積極的に取り組んでまいる決意に変わりはございません。どうぞ御理解のほどを願いたいと思います。
  83. 千葉景子

    ○千葉景子君 どうぞ御理解のほどをというお話ですけれども、これはこれまでももう本当にそのたびに御理解をと、これからは人権について目を向けてという御発言もあるわけですね。  私は、やっぱり人権問題というのは本当に難しい、それから自分の中に差別の意識がないかどうかというのはこれは私自身だって大変わかりにくい問題だというふうに思います。だからこそそれぞれがいつも困難な問題に直面をして本当に苦しむわけです。そういう意味では、大臣の御寛容になんという言葉はとても私は簡単に信用するわけにはいきません。やっぱり無意識に出た言葉――意識して出たらこれは大変なことです。無意識に出た言葉の中にその人間性とかあるいは思想とかそういうものがあらわれるんですから、後からそれは背景がこうだとか、あるいは言葉足らずだったと言われても、これはもう理由になりません。だとすれば、いつも後から理由をくっつければいいわけですからね。これまでも中曽根元総理初めいろいろな御発言があってその都度問題になり、そして陳謝をなさったりしています。しかし、私は思いますけれども、その後一体何をしてきたのか、そこが問題だと思うんです。それについて本当に真剣にどう立ち向かってきたか、あるいはどうそれを回避をするあるいは解消していこうと何をしてきたのか。そしてこれから何をするのか。陳謝は簡単ですけれども、そこが私はこの人権問題というのは本当に重要なところだというふうに思っているわけです。  そういう意味では、これから梶山法務大臣が個人としてか、それも重要だと思いますけれども、法務大臣として、陳謝は結構ですけれども、こういう問題について一体どうすればいいと思っているのか、あるいはどうしようと考えていらっしゃるのか、そこをお聞きしたいと思います。
  84. 梶山静六

    ○国務大臣(梶山静六君) 過去にあったことをくどくどと弁明、弁解をする気はございません。ただ、これからも私は人権尊重の立場から私の真意が御理解いただけるような行動をもってこの答えといたしたいと考えております。
  85. 千葉景子

    ○千葉景子君 それはぜひ拝見をさせていただきたいというふうに思うんですけれども、それでしたらまずやれることがあると思うんです。例えば、今抗議の声を上げていらっしゃる、やはりこれは自分たちが非常に偏見を持たれているんだということで抗議をしている皆さんと直接会って、本当にひざを交えてその声をまず聞いて直面をしてみる、あるいはアフリカ諸国の大使の皆さんもいらっしゃいましたけれども、まずそういうところから始めるべきじゃないですか、今からでも。そういうことを積み重ねていくことで初めて信頼を受け、ああやっぱりあの謝罪の気持ちというのは本当だったんだなということが理解されるんだというふうに思うんです。そんな短時間でできることじゃない。そしたらまず第一歩、すぐにでも何かやれることをすべきではなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  86. 梶山静六

    ○国務大臣(梶山静六君) 確かに私から私の真意を伝えるべき方法を考えなければいけないということも何遍かございました。私の考えと私の行ってきた行動、またこれを世間に伝えるべき手法、こういうものについていろいろ思い悩む点もございました。そういうことを考えますと、これからの効果というものは実質的な私の行動によって示すべきだ、そういう判断のもとに、今日の心境でおるわけであります。
  87. 千葉景子

    ○千葉景子君 それでは法務大臣がどういう行動を始められるか、それが今後やっぱり法務大臣として仕事を続けていただくことが適切かどうか判断する材料にもなってくるだろうというふうに思いますので、私はその点をよく拝見をさせていただいて、私たちの大臣に対する意見あるいは考え方というものをまたお伝えさせていただきたいというふうに思います。  さて、こういう法務大臣の御発言などもありましたけれども、この子供の権利条約、これからの子供の問題を考えるに当たっては、やはりまず、一体子供たちが今どのような状況に置かれているのか、こういうことを認識する必要があるのだろうと思います。子供をめぐる状況というのは、発展途上国などでは毎年千四百万くらいの子供が五歳未満で亡くなられるとか、一億五千万の子供が絶対的な貧困の中にある。あるいは、もう何千万人と言われるようなストリートチルドレンがいるのではないか。また、労働条件も劣悪なもとで働いている子供たちがいる。こういうようなことが言われております。あるいは逆に先進国でも、子供に対する虐待とかホームレスとか教育の荒廃とかあるいはドラッグ、そのような問題が大変指摘されている。  こういう中で、では一体日本はどうなんだろうか。世界のことも当然ですけれども、まず足元の日本というのはどういう状況なんだろうか。この点について、この条約をこれから考え、検討し、そして子供たちのためにさまざまな施策を施そうということに当たってどう認識されているのか。まずその点について確認させていただきたいと思います。
  88. 赤尾信敏

    説明員(赤尾信敏君) ただいま先生からも御指摘のございましたとおり、世界において、これは先進国、開発途上国双方におきまして、いろいろと子供をめぐる問題が多々ございます。そういう中にありまして、国連におきまして先般発効いたしました児童の権利条約といいますのは、児童のいろいろな権利の保護及び促進についていろいろな角度から規定したものでありまして、その趣旨は普遍的な意義を有するというふうに考えております。このような条約の内容は、我が国の憲法に定める基本的人権の理念と共通するものであり、日本政府といたしましてはそのような見地から先月二十一日にニューヨークにおいてこの条約に署名したところでございます。
  89. 千葉景子

    ○千葉景子君 私が質問をさせていただいたのは、世界でも今子供たちが大変な状況にあるけれども、一体我が国ではどうなんだろうか。世界で言われているような状況日本にはないんだろうか。子供たちはもう十分な状況にあるのか。その辺の認識がないことにはこれからさまざまな施策を講じる、あるいは子供たちのために条約を批准をしていこうというときにもこれは全然話が進まないわけでございます。そういう意味でまず基本的な認識をお伺いしたいという質問なんです。
  90. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  91. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 速記を起こしてください。
  92. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 本来なら内閣全体として官房長官があるいはお答えになる方が的確かもしれませんけれども、便宜私から、今回総理が赴かれるについての閣内の共通した認識として申し上げてみたいと思います。  今日、私どもこの議場におりますお互いがそれぞれの世代で成長した時代と、子供の置かれている環境というものは大きく変化をいたしております。そして、それには当然社会経済情勢の変化の中で私どもの育ちました時代に比べてはるかに子供が恵まれる状態になった部分もありましょう。しかし、例えば都市部における遊び場一つをとりましても、かつて私どもが享受したような遊び場を子供たちに与えることができているかと言われれば、こうした点には欠けるものがございます。  また、私自身が子供の親の立場に戻って考えますときに、私どもが育ちました時代と、学校制度の変化の中で、また社会情勢の変化の中におきまして、子供たちの勉強という視点から考えましてもその環境は大きく変化をいたしてまいりました。そして私どものころには、子供たちは学校から帰ればかばんを放り出して遊んでしまうというのが、少なくとも私はそうでしたけれども、今、塾とかさまざまなけいこごとといったものが子供たちの世界にも要求されるようになり、それがまた子供の発育に大きな問題を呼んでおります。  また、婦人の社会進出が進むにつれまして共稼ぎの御家庭がふえていく中において、その両親不在の時間帯の子供たちをどう社会が支えていくかという問題も生じております。また、育児休業制度、これは各党共同でかつて医療関係、福祉関係、教育関係については制度を設けましたけれども、その後の普及のおくれによりまして、むしろ育児休業制度で対応すべき世代の子供たちにする介護の手法を社会が講じなければならない状態も生まれました。そうした中からベビーホテル等の問題も生まれ、本院においても大きな御論議を呼んだと理解をいたしております。  そうなりますと、社会的経済的には非常に大きく変化し、国民の生活水準というものが向上してきたという今日、子供の環境という視点に問題を移しました場合には、私どもが育ちました時代とはまた全く異質な新たな問題を子供たちの社会に投げかけている現実というものを私どもは否定することはできません。こうした視点から考えましたときに、我々は日本においても児童の問題については改めて考えなければならない時代を迎えておると思います。  世界それぞれの国の状況によりまして、それぞれの国が子供たちに対して抱える問題はおのずから異質なものがございます。しかし、その中で私どもが共通して考えなければならないのは、大人の視点からこの問題に取り組むばかりではなく、子供にとって何が幸せかという視点から、それぞれがそれぞれの国においてみずからの国の子供たちに対してできることを考えていき、あわせて他国に対しても協力の手を差し伸べていく。私は総理はそうした考え方をもって子供サミットに臨まれたと理解をいたしております。
  93. 千葉景子

    ○千葉景子君 大蔵大臣は今総理の臨時代理もおやりということでございますけれども、これはそれぞれの担当各省各庁、自分の管轄の部分を含めて基本的な認識をやはり持っていただかなければいけない部分だというふうに思います。  子供の権利条約については政府としても大変積極的な姿勢は見えつつあるようでございますけれども、ただ、子供の権利というのは子供の権利だけ考えればいいというものではない、それだけがうまく確立していくということではないというふうに思うんですね。これは人権、人間の権利全体がどう豊かなものになっていくか、やはりこういう総合的なことが子供の権利をも高めていくということだろうというふうに思うんです。そういう意味では、子供の権利について大変関心を持っていただくことも結構ですけれども、やはり日本の全体の人権に向けた目やあるいは取り組み方、こういうことをもう一回考えてみる必要があるのではないかというふうに思います。  先ほど、梶山法務大臣は、これからそこには全力でというか、大きな力を向けていくというお話でしたけれども、まさに梶山法務大臣のこれからの姿勢というものも大いに問われてくるところだろうというふうに思うんですね。  日本では子供の権利条約はこれからですけれども、これまで重要な人権にかかわる条約というものも、例えば人種差別の撤廃条約であるとか、人権規約のB規約の議定書であるとか、あるいはアパルトヘイトにかかわる条約、拷問の禁止の条約、これ未発効ですけれども、その他奴隷条約とか、未加入とか未批准というものが大変多い。そういうことも含めて、日本は経済は大変に豊かな国になったけれども、人権に関しては一流とはとても言えない。三流あるいは五流と言われているような状況でございます。  そういう意味では、この子供の権利条約を考えるに当たって、やはりもう一回こういう総合的な人権に向かった取り組み、あるいは条約の批准に向けた取り組みなどを再検討、見直す必要があるのではないかというふうに思いますけれども、外務大臣いかがでしょうか。
  94. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 先般私も国連総会に列席をいたしまして、この子供のためのサミットこおける各国首脳の姿勢というものを改めて目の当たりにしたわけでございます。今日、一日四万人の子供たちが地球の上で毎日死んでいっている。また、栄養失調で悩んでいる子供たちの問題も大きく議論をされましたが、私ども国内法との関係をさらにこれから詳細に検討いたしまして、できるだけ早く批准ができるように政府としても努力をいたしたいと考えております。
  95. 千葉景子

    ○千葉景子君 若干お答えがというか、私はもう少しほかの面でもこの子供の権利条約と国内法、これを見直していくということも必要ですけれども、全体的な人権、そういう総合的な観点からほかにももっと積極的に進めるべき問題がたくさん残されているのではないか、こういうことを指摘させていただいたんですけれども、いかがでしょうか。
  96. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) いろいろと日本の国としての長い慣習の中にはいわゆる人権問題についての不十分な点もまだ残されていることは私も率直に認めなければならないと思いますが、そのような問題点を抱えたこの社会が人権が尊重される社会に立派になっていくために、国内法、あらゆる問題点につきまして政府としては努力しなければならないと考えております。
  97. 千葉景子

    ○千葉景子君 世界はこぞって人権問題に取り組み、そして条約などでお互いにこういう問題を高めていこうという時代ですから、遅過ぎるぐらいですけれども、積極的になることは当然のことですのでぜひお願いをしたいと思います。  さて、この子供の権利条約は、もう私はきょうは時間がありませんのでくどくど言いませんけれども、やはり基本的に発想をこれまでと大きく変えるものだというふうに思います。それはやはり子供の自己決定権というんでしょうか、これまで子供は未成熟であり大人が保護をしていこう、むしろその保護をする客体に位置づけていたということから、子供を主体に、子供がやはり意思を持ち自分で自分の意思を決定していく、大人はそれをできるだけ発揮をするように努めていこうじゃないか、そういうやはり発想の転換をしなければいけないというふうに思います。  そういうことを考えてみますと、これはもう各省各庁自分の担当分野で考え直してみなければいけない部分が私は相当あると思うんです。  きょうは法務省と文部省にも来ていただいたわけですが、これはそれぞれにまたお尋ねするべきところかと思いますけれども、法務省、法務大臣ですけれども、一番問題にされていますよ。法務省のさまざまな管轄の問題の中には、この条約を考えるに当たって検討すべきところがもう相当あるのではないか。文部省も法律、制度の上ではわかりませんけれども、例えば子供の意思ということを考えれば、校則の問題、処分の問題、学校でのカリキュラムや教科書の問題、あるいは集会とか子供たちが自分の意思を表明するそういう場があるかどうか。そういうことも含めて大変大きな問題点が残っているのではないかというふうに思うんです。  きょうは法務省それから文部省、両方に、この権利条約をこれから検討するに当たってどんなことを考えていらっしゃるか、どんな問題点があるか、本当に認識なさっているのかどうかお尋ねして終わりにしたいというふうに思います。
  98. 梶山静六

    ○国務大臣(梶山静六君) 先ほどの答えに尽きるわけでありますが、本条約の目的を念頭に置きながら、鋭意国内の具体的な問題について詰めてまいりたいと思いますが、確かに目的と具体的な一つ一つについては問題点が数多くあることをおぼろげながら了解をいたしております。  それは例えば立場の違う子供の相続の問題であるとか、難民の子供が入ってきて親と同居できない問題をどう処理するとか、あるいは国内において犯罪を犯して国外退去を命ぜられた親と子供はどういう関係にあるべきか。それぞれ個々の問題では大変な問題を抱えていることを私も承知をいたしております。しかし、大きな目標に向かってお互いにすり合わせをしながら、この問題に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
  99. 保利耕輔

    ○国務大臣(保利耕輔君) 子供の権利条約につきましては、委員から御指摘のとおり、世界の中で現在初等教育すら受けられない人々が一億人以上いらっしゃるとか、あるいは年に千四百万人も子供さんが亡くなるとか、そういうような状態になっておりまして、日本としてもこうした問題の除去に努めていかなければならないのではないかということが一つ言えると思います。  もう一つは、委員指摘国内の問題でございますけれども、文部省といたしましても児童生徒の基本的人権に十分な配慮をした教育指導やあるいは学校運営が重要であるということを十分に認識いたしております。そういった観点に立って、今後とも児童生徒の基本的人権が守られるように努めてまいりたい、このように思っております。  ただ一つだけ、日本は法治国家でありますから、やはり集団生活において一定のルールを守るという、そういう気持ちも植えつけていかなければならないのではないか。これと基本的人権をどう整合させるかという非常に難しい問題になろうかと思いますが、こういった点も勘案しつつ人権の擁護については十分確保していくように努力をしてまいりたいと思っております。
  100. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 条約等に今申されましたようなことがあり、私どもの所管に関することもございます。通常国会でいろいろと御論議もありましたが、今法務大臣も答えられましたように、人権尊重の観点から私どもも努力していきたいと考えております。
  101. 会田長栄

    ○会田長栄君 会田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  限られた時間でございますし、とりわけ法務大臣の公務の関係で、質問順序を水俣病の裁判問題についてまず聞かせていただきます。限られた時間でございますから率直にお伺いをしていきたいと、こう思っております。  まず、水俣病裁判で東京地裁民事部で和解勧告を受けた被告三者のうち国が和解勧告を拒否したことについて、これからお伺い申し上げたいと思います。  まず、前段にお尋ねしたいのは厚生省でございます。これは食品衛生法四条二号の適用問題についてまずお尋ね申し上げます。  昭和三十二年九月当時、熊本県の県職員の人たち現地の被害の惨状を目の当たりにしまして、何とかしてこの被害を阻止しよう、そのため最善の策として食品衛生法四条二号の適用を図ったらどうかと考えて厚生省にその照会をした、こういう事実はございましたか。
  102. 目黒克己

    説明員(目黒克己君) 御指摘の、昭和三十二年に熊本県は水俣湾の魚介類について食品衛生法第四条第二号の規定に該当するものと解釈されるので、海域を定めて有害または有毒な物質に該当する旨の県の告示を行いたいという旨の照会があったことは事実でございます。
  103. 会田長栄

    ○会田長栄君 もちろん熊本県の公衆衛生課長守住憲明氏が証言しているわけですから、これはあったことは確かだと私も思います。  そこで、次にお尋ねいたしますが、その照会があったときに、厚生省がどのような内容回答をしたでしょうか。
  104. 目黒克己

    説明員(目黒克己君) 私ども厚生省では、慎重に検討をいたしました結果、当時水俣病の原因物質が不明であるとともに有害魚種の特定等が困難であったことなどから食品衛生法に基づきます強制的な措置は困難でありましたが、危険性が疑われる魚介類の摂食は避けるべきである、このような考えのもとに、厚生省といたしましては、熊本県に対し水俣湾の魚介類の摂食が行われないよう行政指導を継続することを通知をいたしますなど、できる限りの措置をとっていたところでございます。
  105. 会田長栄

    ○会田長栄君 その回答は、水俣湾内特定地域の魚介類のすべてが――ここが肝心なのであります。すべてが有毒化しているという明らかな根拠が認められないので食品衛生法四条二号を適用することができないというような内容回答をしている、こう思われます。  しかし、ここで問題になるのは、厚生省は魚介類のすべてが有毒化していることが判明していなかったから、熊本県から、これほど目の当たりにしてほうっておくことはできないからこの法律を適用させてほしいという照会があったにもかかわらず、四条二号は適用できなかったとこの公衆衛生課長は述べているのでございます。ここで厚生省が、とりわけ優秀なスタッフを抱えていながらすべてのというところに集約をしていったところにこの三十四年の苦しみが続いたんだと私自身は思っているんです。  しかし、当時の昭和三十二年九月、厚生省回答の当時、これは食品衛生課で水俣病問題を担当していた熊本県の係官が実は次のように証言をしているんです。原因物質の判明が必要でなかったとして仮にこの第四条二号を適用しないというのであれば、仮に町の弁当屋の食中毒事件はどうなのか、原因がわかるまで差しとめることはできないのか。あるいは静岡県で発生したアサリ、カキ中毒の例、東京昭和二十八年に起きた毒ガスの例、昭和三十一年東京で起きたイシナギの中毒、やはり原因物質さえわからなかったわけでございます。それから昭和四十三年のカネミ油症事件、すべて同様であります。これは食品衛生法四条二号を適用するに当たって食品が有毒性を帯びていればよい、他は必要ないという例でございましょう。  ここでお尋ねいたします。和解勧告を受けたとき、それにどう回答するかの協議でどんな意見のやりとりが厚生省内部でございましたか。
  106. 目黒克己

    説明員(目黒克己君) 私どもは、先般の和解勧告を受けました後、その書面をもとにさまざまな角度から議論をいたしまして、その結果先般のような結論に到達した次第でございます。
  107. 会田長栄

    ○会田長栄君 さまざまな角度から検討していただいた。したがって昭和三十二年の九月十一日、熊本県から照会があったときにこの問題について篤と慎重に積極的に対応していれば今日がなかったのではないかと私は思うんですが、それに対する御所見を承りたい。
  108. 目黒克己

    説明員(目黒克己君) ただいま御指摘の点につきましては、私ども国の法的な責任論ということで裁判所でるる反論をし、あるいは裁判所で主張をいたしているものでございまして、その詳細につきましては現在まだ係争中でございますので、できればお答えを差し控えさせていただきたいと思う次第でございます。  しかしながら、私どもは十分、先生御指摘のその当時の状況につきましても、私ども検討はいたしたのは事実でございます。
  109. 会田長栄

    ○会田長栄君 それでは、昭和三十一年五月、水俣保健所長伊藤さんがこの問題について重大な問題であることを発言していること、訴えていることは御承知だったでしょう。どうですか。
  110. 目黒克己

    説明員(目黒克己君) 私ども、水俣病の経緯につきまして裁判所においてそれぞれの事実についていろいろの角度から御主張があり、あるいは私どもの方からも主張し、そのような事実の確認をいたしておったことは事実でございます。また、先生が御指摘のようなことにつきましても、私ども十分承知をしながら裁判所で対応しているものでございます。
  111. 会田長栄

    ○会田長栄君 それからもう一つお聞きします。  これだけではないんですね。昭和三十二年一月です。国立公衆衛生院で開かれた合同発表会というのがございましたね。ここで水俣病は重金属による中毒とみなされ、かつその媒介は魚介類によると結論づけられているのを御承知でございますか。
  112. 目黒克己

    説明員(目黒克己君) 私ども、その当時から現在までの間、主として環境庁が発足しますまでの間、またあるいはその後の裁判の経過の間、私どもはいろいろな学者あるいはいろいろな方の御意見があったことは承知いたしております。
  113. 会田長栄

    ○会田長栄君 これらの水俣保健所長や国立公衆衛生院での合同発表会などに、厚生省担当官がより真剣に、より国民的な側に立って注目していれば、この問題というのは恐らく今日の方向をたどっていなかったのではないかと私は思います。しかし、今訴訟中でございますから何事も言えませんという話でございまして、特にその点について私は、訴訟中であれ、今三十四年に及ぶ苦しみを味わってきた人たちに政治の信頼を取り戻すためにもここで決断しなければいけないと思っているときでありますから、厚生省自身に行政の継続性というものはございましょうけれども、今苦しんでいる人たちの、熊本県民の立場に立って判断をすべき時期に来ているのではないだろうか。国に責任がないなどということを一方的にやっぱり主張するだけでは済まなくなってきているのではないだろうかということを私は厚生省の皆さんに申し上げておきます。  次に、農水省関係にお伺いします。  昭和三十四年十一月二日、水産庁長官は経済企画庁あてに文書で次の要請が行われていると聞いております。その内容を知ってますか。
  114. 京谷昭夫

    説明員(京谷昭夫君) 申しわけございませんが、ただいまその資料を手元に持っておりません。
  115. 会田長栄

    ○会田長栄君 これはあるんです。これは私から言わせれば水質二法の適用の催促ではなかったのか、こう思っております。このことをひとつ厳に記憶しておいてもらいたい、こう思います。催促の要請書、これが出されていた。にもかかわらず結果的には漁業法、水産資源法を活用することができなかった、こう私は思っているんです。その意味で私は、この水質二法を適用していれば今日の問題はなかったのではないか、こう思いますが、その点についての御所見をお伺いいたします。
  116. 京谷昭夫

    説明員(京谷昭夫君) 水質二法そのものの所管につきましては、私どもが所管しているものではございません。  三十四年の当時の水産庁からの文書の内容については、私今手元にございませんので本席で御答弁できませんが、その経緯につきましては直ちに調査をいたしまして、御報告をさせていただきたいと思います。  なお、私ども、本件訴訟につきましては、御指摘ございましたように、漁業法、水産資源保護法の運用をめぐりまして国または国からの機関委任事務を所掌しております熊本県知事双方について法運用上の懈怠があった、そのゆえをもって賠償請求という形での訴訟が行われると理解しておりますが、この漁業法、水産資源法に基づきます漁獲行為等に対する規制は法律上一定の要件を課せられておりまして、本件訴訟で主張なされておるような視点で各般の規制を行うことは法律上不可能なことであるという認識を持っておりまして、その意味で漁業法あるいは水産資源法の適用不当をもって賠償責任を負うという考え方は私ども容認し得ない、こういう立場で対処をしておるところでございます。
  117. 会田長栄

    ○会田長栄君 私は、この水質二法というものの適用の要請があったときに、やっぱりタイムリーに手を下していれば今日の状態はなかったのではないかということを含めて考えておりますから、そのことを認識しておいていただきたいと思います。  次に、通産省にお尋ねいたします。これは三点でございます。  通産省は、当時チッソの保護育成を図ってきました。これは事実であります。昭和三十四年、水俣病の原因は有機水銀であることが確実となり、被害も拡大し、チッソの排水規制はもはや遅過ぎる段階に入ってきている、こういう情勢でございました。ここで通産省は、水俣工場のアセトアルデヒド生産設備をスクラップ化するということをチッソと通産省の間で念書を交わしております。知っていますか。
  118. 田村修二

    説明員(田村修二君) その事実はないと心得ております。
  119. 会田長栄

    ○会田長栄君 ないと言うのであれば、そのことを一つ確認しておきます。これは私の方ではあると承知しております。実物があるわけでありますから、あるでございましょう。この問題が今後論議される際に、どうぞこれなどもぜひ参考にしていただきたいと私は思います。  私がなぜこの質問をしたかというと、この念書を実行していれば、これまた被害を最小限に食いとめることができたのではないかと思っているんですよ。それを、この念書がありながら実際に規制をしないで生産拡大に走っていったということであるわけであります。私の最も言いたいのは、工場関係者も厚生省の関係者も、化学のすぐれた能力を持っている人たちの集まりではないんですか。県民から指摘されなくたってその歯どめ策というのは当然考えられるべきなのに、この点についてはやはりないがしろにしてきたという経過があります。ましてや、水俣漁協代表の陳情というものがこのときにあります。これは厚生省も農水省も、この漁協代表の陳情行動が那辺にあったかということは、私は知らないわけはないと、こう思っています。  それで結論。これは環境庁長官と法務大臣にお尋ね申し上げます。  国は、今訴訟中でありますからなかなか、この種の問題を積極的に受けとめて、和解勧告を積極的に受けとめて前向きに取り組むわけにはいかないというところで拒否したんでしょう。しかし、もはや私は環境庁長官の政治的決断と取り組み以外にないと、こう見ております。  関係者の皆さんも御承知のとおり、水俣病三次訴訟の第二陣から第十二陣まで今審理が行われております。この点についての和解勧告も出る、こういうことが知らされております。東京地裁が九月二十八日に和解勧告しました。熊本地裁が和解勧告をするであろう。今ごろ出ているんじゃありませんか。福岡高裁、福岡地裁もこの十月中に出るであろうと伝えられております。  こういう情勢の中にあって、東京地裁民事部の裁判長が勧告した内容で明らかなとおり、本当に塗炭の苦しみをしている今の原告の人たちのことを考えたら、私はここで長官自身が拒否したことを再検討すると言うぐらいの政治的決断があってしかるべきだと思いますが、いかがでしょう。
  120. 北川石松

    ○国務大臣(北川石松君) ただいまの委員の、水俣病問題について和解勧告がありながらこれを拒否したことについて長官としてどう思うかという御質問でございます。  私といたしましても、早期に水俣病問題の解決を図りたいという気持ちは強く持っております。ただ、現時点ということを申し上げておりますのは、今委員が御指摘のように、熊本、福岡、それぞれの裁判所において御検討を願っておることも現状の形でございまして、それと同時に政治としての、また行政の筋ということも先ほど御質問の中にも出ておりますので、こういう点を考えまして現時点におきましてはこの勧告に応じることは困難でございます。  ただし、私は、昨日も申し上げましたが、仲裁は時の氏神であるというこのことを考えるならば、現在、結審している原告七十五名に対しての決定を見た上で対処をいたしたい、こういうふうに考えております。
  121. 会田長栄

    ○会田長栄君 環境庁長官にもう一つお聞きします。  四十七年、ストックホルムの国連人間環境会議で、大石環境庁長官は、早期に十分な救助の手を差し伸べ得なかったことに政府は責任を痛感しておりますということを国際的な会議の中で表明しております。第二、五十二年、石原慎太郎環境庁長官時代に、対策が後手後手に回った行政にも一連の不作為の責任があります、早く手を打てばこんな事態にはならなかったと。このお二人の環境庁長官はすべて政府の一閣僚であります。わからないわけではない。しかし筋論だけでは困るんです。だから私は、環境庁長官は政治的決断をする時期に来ているということを申し上げている。  あえて環境庁長官の言葉をかりれば、救いがあるなというのは次の言葉であります。十月二日、北川環境庁長官が記者会見で行った理由説明の中で、何らかの進展があれば臨機の処置をとる、こうおっしゃったそうでございますが、これが一つの救いであります。先ほど申し上げたとおり三次訴訟の問題、福岡高裁、福岡地裁の問題、東京地裁の和解勧告の問題等、まさしく人間愛から司法の手での原告の皆さんを一日も早く救いたいというときにもう今日来ている。そういう意味で、長官の再検討をされる時期を醸成してほしいということを強くお願いしておきます。  したがいまして、次に法務大臣にお尋ねいたしますが、環境庁長官が今日の情勢や経過を受けて臨機に対応したいという決断を協議したときには、法務大臣としても積極的にこれを受け入れてこの問題解決に当たられるかどうか、最後に御所見をお伺いします。
  122. 梶山静六

    ○国務大臣(梶山静六君) 昨日もお答えをいたしましたとおり、法務省としては、裁判所から和解勧告が出された場合、従来から国民の権利、利益と公共の福祉との正しい調和ということを踏まえながら関係行政庁との意見を徴した上、慎重に法的検討を加え対処をしてきたところであり、今回の和解勧告に際しても関係行政庁である環境庁、厚生省、通産省、農水省との各意見を徴したところ、関係各行政庁とも法的責任がなく和解には応じられない旨を述べ、私としても、昨日申し上げましたように、この直接当事者である各行政庁のいわば右代理人として和解はできないと考え、和解を拒否したところであります。このような慎重な手続を経た上で和解勧告を拒否したものであることを御理解をちょうだいしたいと思います。  なお、今環境庁長官が言われている仲裁というものと和解というものはどんなものか、私も法律的によくわかりませんので勉強してまいりたいと考えております。
  123. 会田長栄

    ○会田長栄君 法務大臣に最後にお願いしておきたいのは、環境庁長官が臨機に対応しなければならないときが来れば再検討するように受け取れる内容お話でございましたが、その際、法務大臣としても積極的に受けとめて協議してほしい、こうお願いします。
  124. 梶山静六

    ○国務大臣(梶山静六君) 関係行政庁の構成員である環境庁がそのような決定をするならば、各行政庁と打ち合わせの上、さらに判断を加えてまいりたいと考えております。
  125. 会田長栄

    ○会田長栄君 ありがとうございました。  それでは、ODAに関する問題について質問させていただきます。  日本のODA予算について、量の拡大よりもそれが本当に相手国の役に立っているのか、その点検が必要との見方が強く出されています。一方、日本の援助の贈与比率の改善の必要性があるのも事実であると指摘されております。こうした中で、来年度のODA予算に対する査定方針はどうか、また伸び率をどの程度確保しようとしているのか、そのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  126. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) お答えいたします。  平成年度のODA予算に関しましては、要求基準、いわゆるシーリングですけれども、これが九・七%ということで七月の末に閣議決定がなされております。この中で、平成年度政府全体のODAの一般会計概算要求額というものができておりますけれども、これは八千九百九十七億円でございまして、対前年度比一〇・一%増ということになっております。シーリング枠の九・七%を上回る伸び率になっておりますけれども、これは幾つかの省庁がその所管の予算の中でODA以外の予算枠を若干削りまして、その分ODAをふやして要求しているということによるものでございます。したがいまして、全体の伸び率は一〇・一%になっております。
  127. 会田長栄

    ○会田長栄君 次に、我が国の政府開発援助のうち、一部の被援助国での使途が不明であると批判されている声を聞きます。中山外務大臣は、会計検査院が援助状況を調べることは相手国の主権の関係上できない。国連で援助国と被援助国との間を調整する機能を持ってもらわないとならないと述べております。一体この真意は何なのか、外務大臣にお聞きしたいと思います。
  128. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 今委員指摘のODA予算の執行問題でございますが、日本もこのODAの金額面では現在世界第一という形になってまいりました。また、国民の側から見ますと、自分たちの納めた税金が発展途上国の民生向上あるいは国づくりのためにどのように使われているかという御関心も最近とみに高まっていると私は認識をいたしております。  当院の予算委員会等におきましても何回もこのODAの執行につきまして御質問がございました。そのようないろいろな御意見を踏まえながら、私は外務大臣として、国民の期待にこたえるためには国民の納めた税金が海外の発展途上国の民生向上に十分に役立つようなことでなければ国民はなかなか納得できる状態にはならない、こういう観点から、外務省の事務方に対しましても、このODAの執行についての事後の評価あるいは事前の評価、あらゆる問題について一層努力をするように命じております。  現実問題として、今までの何件かの例を見ますと、例えば今までODAは要請主義でやっておりますから、相手国政府から要請が来る、それに対して事前審査の手続を行う、また調査も行っておりますけれども、現実に相手国政府がこの援助を受けて後執行する場合に、その執行状態の中で例えば政府が急にかわるといったようなことも間々あることでございまして、このようなことからODAの投資の目的というものが十分上がらなかったケースも現実にはあるわけでございます。  そういう点につきまして、日本の会計検査院はこの検査をする場合にでも、相手国の主権に関することで、相手国への会計検査につきましては国際的に権限がございません。そういう意味で、これからODAが金額的にもふえていく日本の国家としては、投下されるODAのコストがどのような形で効果を発揮するかという評価制度を、国際機関である国連等が十分調査あるいは監督をするような仕組みが充実されることが我々の国民の期待にこたえる一つの方法である。  また、外務省におきましても、私は、執行されているODAを絶えず国民の期待に沿うように調査をする専門官を置いて、そして実施している地域調査を行ない、国会あるいは政府に報告をするような制度をこれからつくるべきであるということで、現在、事務方に検討を命じているというのが今日の状態でございます。
  129. 会田長栄

    ○会田長栄君 わかりました。それも一つの考えだと私は思います。しかし、国民の側から見れば、年々ODA予算というのは量的に拡大をしていくという状況から見れば、これは一つの考えでございますが、援助の際、条件をつけることによって会計検査院の検査が可能ではないのかな、こう思うのですが、それは不可能なんですか。
  130. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) お答えいたします。  経済協力は、開発途上国がみずから自国の経済開発のために自助努力をしているというものに対しましてこれを支援するという形で行われております。したがいまして、経済協力案件の実施主体というのは相手国政府でありまして、我々が一たん供与した資金というのは一義的には相手国の主権のもとで使用されるということでございます。この際に、経済協力の供与に当たりまして条件を付して、相手国に対して会計検査のいわば受忍義務を課すという考え方に関しましては、平等な主権国家間の関係ということで成り立っている国際社会におきましては、援助のあり方としても、また相手国の立場、権利の尊重という関係からも不適当であるというふうに考えております。
  131. 会田長栄

    ○会田長栄君 次に、日本のコンサルタントや商社によって現地プロジェクトを計画し、それをODAで実施しようと日本政府に持ち込むために契約業者のタイドがあるのではないですか。日本企業が設計、建設等を行うため、プロジェクト内容に被援助国側の意見、要望等が十分に反映されないとの批判も実は今日出ているところでございます。  ところで、総務庁行政監察局が昭和六十三年度に出した「経済協力(政府開発援助)に関する行政監察(第一次)結果報告書」で契約業者タイドの緩和を勧告しているが、この問題に対する外務省の対応はどうでしょうか。
  132. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) お答えいたします。  総務庁の行政監察で、一般及び水産無償資金協力に関連しまして、コンサルタント及び施工業者が相当に育成されている被援助国に対する援助案件については、今後の課題として契約業者の日本企業タイドの緩和を検討する必要があるという指摘がございました。  外務省といたしましては、我が国の無償資金協力が予算の単年度制度の原則のもとで迅速かつ確実に実施される必要があるということから、我が国の予算及び無償援助の制度を熟知している我が国業者を契約者としているわけですけれども、この行政監察の勧告の趣旨を踏まえまして、我が国が援助を行う際に、被援助国にありますコンサルタントそれから業者というものを下請その他の形でできるだけ使っていくという形で対応をしております。
  133. 会田長栄

    ○会田長栄君 次でございますが、ODAによって環境破壊につながるという批判があります。例えばフィリピンのラグナ湖の堰堤建設計画であります。環境破壊につながるとして東京、千葉、茨城などの市民グループが反対運動に乗り出しています。現地の住民もこれと連携をしている状況にあります。その国の政府が認めても現地の住民の気持ちを無視した計画、環境破壊のプロジェクトには援助すべきではないのではないか、こう思う次第であります。そうしたことから、環境アセスメントや現地住民調査などを行うべきではないのか。  これは環境庁それから外務省にその対応をちょっとお伺いしたいと思います。
  134. 北川石松

    ○国務大臣(北川石松君) 政府開発援助で各国の環境に配慮することは極めて重要であると考えております。また、このため環境庁といたしましては、昭和六十二年に関係分野の専門家の意見を聞きまして、開発援助における環境配慮の基本的方向についての報告を取りまとめました。その趣旨が現行の援助システムの中に生かされるよう関係省庁に働きかけてまいっておる次第でございます。また、昨年六月に地球環境保全関係閣僚会議の申し合わせによりまして、政府開発援助の実施に際しては環境配慮を強化する、この基本方針を確認した次第であります。  これらを踏まえまして、国際協力事業団(JICA)及び海外経済協力基金では、環境配慮のガイドラインの策定、体制の強化等を進めつつございます。環境庁といたしましては、引き続き関係省庁及び関係機関との連携を保ちつつ適切な環境配慮の確保に向けて一層の努力をいたす次第でございます。  以上でございます。
  135. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) お答えいたします。  外務省としましても、政府開発援助を実施する際に環境への配慮を十分に行うということは必要なことだというふうに認識しております。そういう観点から、環境配慮のためのガイドラインの整備ということを行ってきておりまして、これは実施機関でありますJICA及びOECFの両機関において環境配慮のためのガイドラインというものをつくっております。そのガイドラインに基づきまして、今後一定のプロジェクトがどういう環境的な影響があるかというものを十分に考えていきたいと思っております。このガイドラインの中にはいろんな調査項目がありますけれども、その中には住民の移転の問題ですとか、社会経済的な影響ですとか、そういうものについても調査をしていくというふうに考えております。  それから、環境分野に関する援助全体に関して一言申し上げますと、アルシュ・サミットの際に、日本政府としましては環境分野の援助を八九年度から三年間に三千億円程度をめどとして拡充するということを国際的に表明しておりまして、この枠内で熱帯林、森林の保全、それから途上国の環境問題対処能力の強化というものに重点を置いて取り組んでいるというのが現状でございます。
  136. 会田長栄

    ○会田長栄君 昭和六十三年度決算検査報告、会計検査院の中で、「特に掲記を要すると認めた事項」の「政府開発援助の実施について」において、以下三点指摘されております。一つは、直接借款の貸付対象となった機材等が十分稼働していなかったり、直接借款の貸付対象となった機材の一部が長期間未利用になっていたりしているものが四事業。無償資金協力の対象となった施設が十分活用されていないものが一事業。それからプロジェクト方式技術協力の対象となった技術の移転が遅延しているものが一事業といった問題が指摘されています。そこで現在はこれらの問題はどう対応しているか、簡潔にお答えいただきたい。  二つ目は、会計検査院の調査件数的にプロジェクト総数に占める割合が低い比率であること、外国政府が調査を認めたものであることから、程度がよいものに偏っているのではないかと思われるものでございますから、したがってそれ以外のケースにはもっと問題があるのではないかという疑問があります。したがいまして、会計検査院は残りのプロジェクトについてもさらに調査をしてもらいたいと思うが、これに対する御所見を承りたい。
  137. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) 昭和六十三年度決算報告書において言及されておりますODA関連の六事業に関しましては、この事業がうまくいっていない原因というのは、この報告書にもありますとおり、主に相手国の事情により問題が生じているということでございます。ただ、我々としましては、報告書の趣旨を踏まえまして、外交ルート及び海外経済協力基金等を通じまして相手国の事業実施機関に対して事業の進捗方を申し入れております。ただ、事業によりましては、日本側から追加的な協力を行うことによりましてより円滑な事業の実施が確保されるという場合もございますので、その点については追加的な援助をするということを検討し、かつ一部においては実施をしているということでございます。
  138. 安部彪

    説明員安部彪君) ODAの検査に当たりましては、国内におきまして外務省、国際協力事業団、それから海外経済協力基金に対しまして会計検査を実施いたしますとともに、さらにこれらの検査活動の一環といたしまして、海外現地の実態を把握するため、必要に応じまして相手国に赴きまして、我が国の援助実施機関の職員の立ち会いのもとに、相手国の協力が得られる範囲内で現地状況調査してきておるところでございます。  そして、平成元年におきましては五カ国に職員を派遣しまして現地調査を実施した結果、政府開発援助の実施につきまして援助効果の発現が十分と認められないケースが見受けられましたので、六十三年度決算検査報告におきまして特記事項として掲記したものでございます。これらの調査に当たりましては、援助対象案件の規模、内容等につきまして詳細な事前調査を行いまして、それによりまして現地調査の箇所、時期等を選定するなどしまして計画を策定し、十全的、効率的な検査を実施してきているものでございます。  本院といたしましては、今後ともさらに一層検査体制の整備を図り、検査の充実を図るべく最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
  139. 会田長栄

    ○会田長栄君 時間の関係上、ここでODAに関係する質問は終わります。ありがとうございました。  次に、農水大臣、農林水産省の担当局長に御質問いたします。  まず、農水大臣にお伺いしたいのは、九十一国会、これは衆参とも「食糧自給力強化に関する決議」、百一国会、これも衆参とも「米の需給安定に関する決議」、そして去る百十三国会、これも衆参とも「米の自由化反対に関する決議」という形で、三たび日本の米問題について与野党一致して決議がなされております。その内容を見ますと、米及び稲作は我が国にとりまして食生活、農業生産、地域社会、国土保全など多方面にわたって格別な重要な地位にあることを確認したところであります。  しかし、今、アメリカの我が国に対する自由化の要求が厳しくなっている現状は承知しておりますが、極めて私は遺憾だと思います。断固としてこれは農水大臣に米の市場開放反対の決意をしてもらって、交渉に当たってもらいたいという気持ちでいっぱいでございます。その意味で、米市場開放のウルグアイ・ラウンドに臨むに当たって、農林水産大臣の決意のほどを含めて御所見をお伺いしたいと思います。
  140. 山本富雄

    ○国務大臣(山本富雄君) お答えをいたします。  会田委員十分御承知のとおりでございますが、米は日本国民の主食でございます。また、我が国農業の基幹をなす作物でございます。さらに、米づくり、いわゆる水田稲作は、国土や自然環境を保全する機能あるいは今御指摘のように我が国の地域隅々までを活性化させていくというふうな大きな役割を、多面的な役割を持っておるということは申し上げるまでもありません。  このような米及び水田稲作の重要性にかんがみまして、今委員の御指摘なさったような三たびにわたる国会決議が衆参でなされ、与野党一致、全会一致のもとにこれは可決をされておるということをよく承知しておるわけでございます。ですから、政府といたしましては、米は国内産で自給をするという方針を堅持して今日までまいりました。これからもこの方針に沿ってウルグアイ・ラウンド交渉を続けてまいりたいというふうに考えております。
  141. 会田長栄

    ○会田長栄君 決意のほどを大臣からお聞きしまして力強く感じました。どうぞよろしくお願い申し上げます。  さて、農水大臣も御承知と思いますが、水田減反三〇%、畑作物収穫思うに任せず、農業後継者問題など、まことに日本の農業にとりましては重大な課題が横たわっております。そういうときの一部輸入自由化論というものが、同じそれぞれこの決議に参画をしていた、席にあった者が今御意見として出されているような情勢にあります。どうぞひとつ不退転の決意で今後の交渉に当たってほしいし、必ず農業を営む、地域を守っている人たちの願いにこたえられるように、どうぞよろしくお願い申し上げておきたいと思います。  さて、次にお尋ねしておきたいのは、世界の主なる国の食糧自給率というものはどうなっているか、改めてお聞きしたいと思います。
  142. 鶴岡俊彦

    説明員(鶴岡俊彦君) 主要な国の食糧自給率につきまして一九八五年の数字を申し上げますと、カロリー自給率は、アメリカ、フランスなど農産物の輸出国は一〇〇%を上回っております。一方、オランダが九八、西ドイツ九三、イギリス七七、スイス六五というふうになっています。また、穀物自給率につきましても、アメリカ、フランス、イギリスが一〇〇%を上回っておりますが、西ドイツ、スイス、オランダ等はそれを下回る状況でございます。  ちなみに我が国の食糧自給率につきましては、米の消費が減少し畜産物の消費が増大するということを反映しまして、年々低下しております。一九八八年度で見ますと、カロリー自給率が四九%、穀物自給率は三〇%ということになっています。ただ、主食用の穀物自給率につきましては、米を自給しているのを初め全体で六八%というような自給率の水準になっております。
  143. 会田長栄

    ○会田長栄君 もう一つでございますが、みずから生産する能力がありながら減反のような政策をとっている主要な国はございますか。
  144. 鶴岡俊彦

    説明員(鶴岡俊彦君) 正確にはちょっと申し上げられませんけれども、輸出国でありますアメリカ等につきましても、それぞれの作物につきまして国内措置を前提にそういう計画的な生産をやっているというふうに承知しております。
  145. 会田長栄

    ○会田長栄君 それでは、ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉の日程が決められているようでございますから、どうぞ今後の日程の中にあっても、日本の農業を営む者あるいは消費者の期待を十二分に果たせるように、農水大臣を初め関係者に心からお願いをして、農林水産省に関連する質問は終わります。  次に、文部大臣並びに文部省の関係局長にお伺いいたします。  教育予算と父母負担にかかわっての問題でございます。今勤労者の家計負担の中で、教育費が大きな悩みの種となっていることは御承知だと思います。端的に三点質問をいたします。  年々、親の懐とは別に、国の一般会計に占める教育文化予算は比率として下がっているということを昨年までの議会の中でも大きく指摘されてきたところであります。したがいまして、平成年度予算要求に対して、文部大臣としてこの傾向に歯どめをかけることができるのかどうかという点についてお伺いをしたい、こう思います。  二つ目の問題は、都道府県教育委員会及び各都道府県に対し、改めて父母負担軽減の文部省としての通知を出していただけるかどうかお聞きしたい、こう思います。とりわけ歳出削減の問題がここ何年か続いている中で、学校教育にかかわるところの教材費、旅費というものが普通交付税の中に入れられました。これも御承知だと思います。その結果はどうなっているでしょうかということです。結果的に都市型と農村型という大きな傾向が出ていると私は見ています。いわゆる普通交付税に入れられたために、農村型のところにつきましては教材費が年々削減され、一般旅費も年々削減されるという傾向にあります。都市型は何とか歯どめがかかっているところでございます。    〔委員長退席、理事千葉景子君着席〕 そういう状況を見ますと、もう一度改めて要請する必要があるのではないか、こう思うものでありますからお聞きいたします。  三点目は、例年予算編成時に問題となっておりますところの学校事務職員、栄養職員の義務教育費国庫負担除外の問題であります。この問題は、平成年度で終わりにしてもらいたいという気持ちでお尋ねするわけでありますが、文部大臣としての決意と所見のほどをお伺いしたい、こう思います。  それからもう一つは、第五次教職員定数改善計画というのが標準法に基づきまして平成年度が完了の年になっております。これに対しての見通し、決意、それらのところについて高校教員の第四次定数計画と相まって、両方御回答願いたい、こう考えているところでございます。
  146. 保利耕輔

    ○国務大臣(保利耕輔君) まず、平成年度の予算の文部省にかかわります概算要求の件でございますが、平成年度の概算要求につきましては、経常的経費については前年当初比マイナス一〇%、そして投資的経費については前年当初の枠内ということでこれをスタートさせました。いろいろと財政当局と――大蔵大臣おいででございますが、折衝を重ねました結果、現在の要求ベースでは三・〇三%の伸び率の要求をいたしておるところであります。さらにまた、生活関連分野におきます社会資本の充実ということで別途千二百二十三億円の要求をいたしております。これは別枠でお願いを申し上げておるところでございます。    〔理事千葉景子君退席、委員長着席〕  以上、満足であるかどうかという点になりますと、これは私どもとしてはまだまだ十分ではないと思いますが、現在の財政状況その他の勘案する中では、私どもとしては一生懸命努力した結果がこれである、このように考えておるわけでございます。  以下各項目、先生の御質問がございましたが、事務当局からお答えをいたさせますが、一つだけ事務職員並びに学校栄養職員の国庫負担制度の問題につきましては、再三文教委員会で御答弁申し上げておりますとおり、従来の制度を踏襲してそのまま守るという気持ちで現在の予算折衝に臨んでおります。  さらにまた、教職員の改善計画でございますが、これにつきましては平成年度で完了させるという形で予算要求を行っております。  政府予算案の編成に向けて、私どもこれの充実に向けて努力をしてまいりたい、このような決意でおりますことを申し述べ、以下事務当局から順次御答弁いたさせます。
  147. 菴谷利夫

    説明員(菴谷利夫君) 私から二点申し上げたいと思います。  第一点は、先生御指摘の父母負担の問題でございます。これは、経費としてどんなものが考えられるかということでございますが、人件費とか施設費とかあるいは学校に備えている設備、そういったものは近年はいわゆる設置者である市町村がきちっと措置しておりまして、いわゆる父母負担という問題は生じていないと思われます。あるいは光熱水費もそうでございます。事柄は、一つはいわゆる個人が持つ教材のようなもの、これについていろいろと、それぞれ自分で使うわけでございますので、かかるかどうかというようなこともございます。それから、よく言われます教育費の父母負担には、みずから選んで行きまする学習塾ですとかおけいこごと、そういったことも親としてはいわゆる教育という観念で負担がかかるというような感覚があると思います。そのうち個人がみずから選んで行くものについては、これはいわゆる公的にどうこう言えませんのでやむを得ないわけですが、教材に関しては、学校に備えるようなものは、できるだけというよりもほとんどすべて公的な措置をする、個人個人で持つものは個人で消費するわけですから使う、こういう形で従来も指導しておりまして、これからもあらゆる機会等をとらえて都道府県、市町村に徹底してまいりたい、こう思っております。  それから第二点、これは栄養士と学校事務職員の議論の問題でございます。文部省としては、教員とともにこういった職員についても学校を支える基幹的職員と、こう思っておりまして、例年繰り返しその点を御主張申し上げて、理解を得て負担制度の中で措置していきたいと思っております。今後ともそう考えておるわけでございます。
  148. 会田長栄

    ○会田長栄君 最後に大蔵大臣にお願いをしておきます。  先ほど私が申し上げたとおり、教育予算の中で教材費、旅費というのが普通交付税の中で交付されるようになりまして、言葉は悪いが都市型と農村型というように予算規模が分かれました。これが現実です。要するに、それぞれの自治体の中でいろんな考え方がありまして、結局は教材費あるいは旅費という問題について削減する傾向に実は交付税段階でなっている。顕著に出てきました。そういう意味では、ぜひ今後教材費、旅費含めまして、交付税の段階でもそういう視点に立って検討をしていただけないだろうかという気持ちでお願いを申し上げておきます。御所見があれば聞かせていただきたいということを申し上げて私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  149. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 今会田委員の御質問また御要望、そして文部当局、大臣初め事務方の諸君の意見も拝聴させていただきました。いずれも予算編成の段階におきまして十分我々として精査させていただきたいと思います。  ただ、申し上げておきたいことは、国の予算というものは国民からお預かりをした税金で賄っていくものでありますから、すべての御要望を満たすとすれば、逆にそれだけの負担に国民がたえられるかという問題も生ずるわけでありまして、おのずからその限界はあると心得ております。
  150. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 午前の審査はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午後一時休憩      ─────・─────    午後二時開会
  151. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十二年度決算外二件を議題とし、全般的質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  152. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 本日は、私は大蔵大臣に数点御質問をさせていただく予定でございましたけれども、時間の関係で一点だけ御質問させていただいて、残りの部分は九日の日にまたさせていただきたい、こう思うわけでございます。  まず第一点は、財政制度審議会が特例公債依存脱却後の新しい財政再建目標を提言いたしております。それは、平成年度までに公債依存度を五%以下にするというようなことだと思っておりますけれども、最近の我が国を取り巻く内外情勢等を見ていると、この新しい財政再建目標は必ずしも容易ではないのじゃなかろうか。御高承のとおり、中東情勢の緊迫化に伴う石油の高騰、あるいはまた株安あるいは金利の問題等も今後の経済の見通しを非常に不透明にしている部分がございます。かてて加えて、アメリカはまた新しい要求をしている。新聞報道によると、それは国際平和維持国債を日本政府に発行してもらいたいということも報じております。また、中東湾岸諸国への四十億ドルに及ぶ援助もやらなければいけない。あるいは日本に駐留している米軍の経費を持ってもらいたいという新しい要求もしている。さらにまた、台風十九号によってこの災害対策費もまだはっきりしていないけれども、これも大きくなる。いろいろの状況がありまして、私は果たしてこの新しい財政再建目標が達成できるのかどうなのか、非常に危惧の念を持っておるものでございます。  それで、そういうものに対して大蔵大臣はどういうぐあいにお考えになって今後の財政運営を図ろうとしておられるのか御意見を賜りたい、こう思います。
  153. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 今大浜委員が御指摘になりました諸問題、いずれも私自身非常に心を痛めております問題点そのものであります。  最近の我が国の経済情勢というものは、御承知のように石油価格の上昇あるいは金利等の問題はありながらも、依然として内需中心の着実な成長を続けておるわけであります。しかし、そうした状況の中で、財政という視点から見てみますと、歳入面におきましては元年度決算剰余金が従前に比して大幅に減少いたしました。また、これまで好調な税収をもたらしてまいりました経済的諸要因、これは今委員もお触れになりましたように、さまざまな部分で流れを変えてまいっております。これは、従来のような大幅な税収増というものは期待しがたいということになるわけであります。  一方では、歳出面において、今委員は災害復旧事業といったものを例示で挙げられましたけれども、そのほかにも今後義務的な経費等々といった追加財政需要が考えられるわけでありまして、これ自体でも容易なことではないということを日ごろから感じておりました。  おかげさまで、今年度の予算編成に際しまして、ようやく特例公債依存という状況からは我々は抜け出したわけでありまして、今後特例公債依存といった状態に二度と再び陥らないために、なお引き続き厳しい財政政策をとり続け、行政改革についても今までに変わらぬ努力を傾けながら政策の不断の見直し等を積み重ねて、これから先は国債依存度を引き下げていく努力を我々は払わなければならない、そのように考えておったわけであります。そこに御承知のようなイラクのクウェート侵略という事態が発生し、これに伴って多額の中東貢献策というものに対応していかなければならない状態になりました。このように当面の財政事情というものは、歳入歳出の両面において容易ならざる事態にあります。  この前、中東貢献策第二弾を決定いたすに際し、九月十四日の閣議におきまして、私はそうした状況を御説明をしながら、各省庁におかれては既に執行の留保をお願いをしておる予算はあったわけでありますけれども、これに加えてさらに各種の既定経費の見直しを行っていただきたい、そして一層徹底した経費の節減に努めていただく必要がある、平たく言いますならば、この平成年度の予算の中から相当程度支出を抑えていただかなければならない状況が出るかもしれない、そうした趣旨の発言をいたしまして、閣僚各位にも御理解をいただこうとしてまいりました。また、政府・与党首脳会議におきましてもそうした内容の御説明をし、与党側にも御協力をお願いを申し上げたところであります。  私どもとして今本当に祈るような気持ちでおりますのは、この湾岸情勢というものがこれ以上の悪化、戦闘行為の勃発といった事態を招かないことでありまして、こうした事態になりますと、我が国の必要とする石油の七割をこの地域の供給に求めておる日本としては、本当に大変な情勢を迎えなければなりません。しかし、そんな事態を想定しないにいたしましても、こうした対立状態の続く中で、石油価格が上昇を続けてまいります場合には、我々として本当に厳しい情勢に直面するわけであります。我が国の輸入しております石油の価格で申しますならば、一バレル当たり一ドル上昇いたしますたびに経常収支の黒字幅は十六億ドルないし十七億ドル減少すると言われております。こうしたことを考えてみますと、我々としては、本当にがけっ縁に立っておるような思いでありますけれども、同時に、我々は再び特例公債というものに財源を依存することはできません。  そうしたことを考えてまいりますと、これから先の経済情勢、諸情勢というものを注視しながら適切な対応をその折々に続けていく、そうした考え方をとらざるを得ない状況でありまして、非常に厳しい状況の中における本院の御協力をも心からお願いを申し上げる次第であります。
  154. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 次に、私は厚生省に対して、せんだって発表になりました昭和六十三年度の社会保障給付費の件について御質問を申し上げます。  発表によると四十二兆二千七百七十七億円になっておりまして、その特徴は本年度初めて年金が五〇%超えたということでありまして、医療が三九・一%、その他の部分が一〇・七%でございます。このその他の部分というのが欧米先進諸国、特に北欧等に比べて最も低いとされている、いわゆる公共福祉サービスの部門でございます。ちなみに各先進諸国におけるその他の社会保障の部分を比較してみますと、いずれの部分でも二倍三倍、こういうぐあいになっているのは御高承のとおりであります。医療と年金は二倍になっておって、その他の部分は十倍である。私は、日本の医療保障は世界のトップレベルをいっている、こういうぐあいに認識をしております。しかしながら、その他の部分、いわゆる老人ホームとか障害者の施設とか失業手当、児童手当、生活保護等をひっくるめた公共福祉サービスがどうしてもおくれているのだと。私がそれを申し上げるのは、私は一九六四年からほとんど毎年のようにアメリカ、ヨーロッパ、北欧等を回っておりまして、先月も北欧を回ってみましたけれども、エコノミックアニマルと言われるぐらい経済力は持っていながら、医療保障もトップのレベルにありながら、こういう公共福祉サービスが劣っているということを私は痛切に感じているのでございますが、今後の日本の医療保障に次いで今言った公共福祉サービスを上げるには、どうしてもその部分を充実しなければいけない。言ってみると日本の社会保障の新たなる方向づけのときに来ている、私はこういうぐあいに思っております。  それで、厚生省、津島厚生大臣を初め皆さん方、高齢者保健福祉推進十カ年戦略、いわゆるゴールドプランに向かって精魂を傾けておられますけれども、このゴールドプランができるかできないかということは、私はもう一にかかってスリーM、スリーMというのはマンパワー、マネー、それからマインド、この三つのことを言いますけれども、この三つをどういうぐあいに予算配分をしていくか、力を入れていくか、こういうぐあいに思っております。  それで、私が厚生省にお伺いしたいことの一つは、この中でも特にマンパワーの問題をきょうは重点的に御質問をさせていただきたいのでございます。  私は、一九六七年に初めてデンマークのエージドタウンを見た。それからまた一九七四年にも行きまして、その後も行っておりますけれども、少なくとも十年ぐらい前から北欧ではスリーMのうちツーM、マネーはいいんだ、マインドもいいんだ、これから先問題になるのはマンパワーだということを言っておりましたけれども、やっぱり私は、日本も金はどうにかなるだろう、こう思います。それからマインドの方もどうにかなると思うけれども、マンパワーというのはなかなかうまくいかないんじゃないか、こう思っておりまして、その一つの例として、看護婦問題が今大きな問題になっていますけれども、北欧と比べてみますと、今厚生省は訪問看護を充実しよう、在宅ケアを充実しよう、こういうことをやっておられますけれども、訪問看護婦の力は日本の三十八倍あるんですね。そうすると、ホームヘルパーが日本の十五倍向こうはある、そういうような状況で看護婦問題の現状を考えてみると、非常に憂慮にたえないものがある。もう私が気づいてからでも二、三十年来看護婦不足の問題を言っていながら、なかなか実を上げていないというのが現状でございます。  それで看護婦問題を論ずる場合に、私は結局、厚生省の現在の政策のあり方をそのものずばりで言わせていただくならば、とにかく規制緩和の一語に尽きる。世界はもうすべてボーダーレスエコノミーとかいろんなことを言われる。国境がないのにまだ看護婦問題等では行政の中ではいろんな規制が厳しいという一語に尽きる。例えて申し上げると、校舎等の設備、実習施設の規制がなかなか厳しくて従来どおりで、世の中が変わっているのにこの規制は同じような状態。母性実習の実習病院、これが年間二百五十例以上ないといかぬと言われているけれども、今の子供を少なく産む時代に、年間二百五十例上げているという産婦人科の病院というのはないんです。私は沖縄の那覇市ですけれども、那覇市で調べたところ、一カ所あるかないかという状態で、これは私のところに言うてきていますけれども、そういう状態である。それから、数え上げればたくさんあるんですが、看護学校をつくった場合の体育施設、大都会の真ん中でこういう土地の高いところで体育館なんかつくれない。体育館をつくれなければどこかよそを借りてもいいよということになっておるんですね。なっておるけれども、これもまた学校と体育館との距離の問題、時間の問題があるから、そういう規制も緩和をしていただきたい。  それからもう一つは、補助金をもっと出してもらわにゃいかぬ。運営補助金。これは私の記憶では、正看が今国立が七〇%から七五%ぐらいですかね。民間の医療機関がつくっているのが二〇%から二五%。准看護婦のごときは七五%から八〇%で、全部私的医療機関あるいは医師会等でつくっていながら、この生徒一人当たりの運営補助金が国立の場合には十六万二千六百五十円、それから私立その他の場合には二万七千二百円で二割にも足らない、こういうような状態なんですよね。それで、私はぜひそういった規制緩和の問題、それから運営補助金の問題等をひとつこの際考えていただきたいということが一つ。それからもう一つは、准看護婦から正看への道を開くべきである。むやみやたらに開くんじゃなくて、一定の教育を施して、そしてカリキュラムをきちっと終えた者に対しては国家試験を受けるという資格を与えるということですからね、こういうことでもやっていくべきである。  こういうぐあいに思っておりますので、ぜひ今の三つの問題に対して厚生大臣の御意見をお聞かせいただきたいと、こう思うわけでございます。
  155. 津島雄二

    ○国務大臣(津島雄二君) ただいま我が国の社会保障制度につきまして、過去の経緯を振り返りながら基本的なお考えを示されたわけでございますが、私は、大浜委員と全く認識を一にしておるものでございます。  その第一は、我が国が四〇%前後の負担をもちまして今日の社会保障制度を今維持できておる。そして、医療保険と年金制度をほかの先進工業国に比べても遜色がない姿で育ててきたという先人の御努力に対して大きな感謝の気持ちを持っておることを申し上げたいわけでありますが、同時に、今委員が御指摘になりましたようなそれ以外の分野について、社会保障給付費で少なくとも比べる限りはやや比重が低いのではないかと、そのとおりでございます。ただ、この点もう既に御高承でございますけれども、この分野で低い理由は、何と申しましても日本の失業率が圧倒的に低いということがあずかっているわけでございまして、失業保険の給付の金額が、失業率が一〇%に近いところにすぐ上がってしまうという国に比べまして 我が国は現在でも二%という非常に低い水準でおるということが幸いをしている点は否めないわけでございます。そのほか、生活保護あるいは児童手当という面におきまする我が国の独自の展開というものが相対的にその辺の比重を低くしているということは申し添えさせていただきたいと思います。  しかし、いずれにいたしましても年金、医療保険以外の分野で本格的な高齢化社会を控えまして我々は将来に向けての抜本的な充実を図っていかなければならないという認識に基づいて、このたび高齢者保健福祉推進十カ年戦略というものを打ち出させていただいたわけでございます。これの成否が二十一世紀の日本の社会の姿を決めるのではないかというような認識で私ども頑張ってまいりますが、幸いなことに、この計画が公表されますときに大蔵大臣そして自治大臣、この両大臣の御協賛を得て発表させていただいているという意味におきまして、先ほど委員が申された三つのMのうちのマネーの方は、私としてはいささか、大蔵大臣を御信頼申し上げていいのではないかという気持ちでございます。それからマインドの方は、今担当しております行政分野の方々、地方行政の方々まで巻き込んで国民意識の向上のために全力を挙げておりますので、これもおっしゃるとおりいけるのではないだろうか。そこでやはり一番大きい問題は、労働力不足が叫ばれております中で本当に意欲のあるいいマンパワーが福祉とか医療に入っていただけるかどうか、これが私は残された最大の課題であると思っております。そのような意味で、委員の御指摘はまことに当を得たものであるというふうに申させていただきたいと思います。  そういう立場から、今看護婦問題について専門的な御質問がございまして、政府委員に補足をして答弁させていただきますけれども、私の基本的な考え方を申し上げますと、やはり従来の看護婦の需給計画というものをもう一遍ここで真剣に再検討してみる必要があるのではないだろうか。特に医療施設の分野における需給関係にとどまらず、地域における医療というものの新しい展開が必要とされつつある中で、この点について今真剣に省内で検討させていただいております。省内にマンパワー問題を担当する委員会を事務次官のもとにつくらせていただきまして、関係するすべての部局が一体となって今将来に向けての計画の練り直しをしておるということを最初に申し述べさせていただきます。  専門的な点につきましては担当局長から答弁させていただきます。
  156. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) お答えいたします。  国民に適切な医療サービスを提供するためには、先生の方からお話しございましたように、資質の高い看護職員を十分確保していくことが非常に重要であるというぐあいに思っておるところでございます。  そういうことで、先生から三点お尋ねがございましたが、まず第一点の養成施設の基準につきましては、教育水準の確保を図りつつ見直しを行っているところでございまして、本年度から先生お話しございました母性看護実習の規制緩和というようなことで、具体的に申し上げますと、分娩件数が二百五十件未満の病院でございましても、近隣の診療所での実習と合わせまして二百五十件になれば実習病院として認めるというような改正も行っているところでございます。それ以外に、いわゆる実習指導者が配置されているような病院につきましては二百床未満の病院であってもそこを実習病院としてみなしますよというようなところの改正等を行っているところでございまして、今後とも関係者の意見を踏まえなから適切な運用に努めてまいりたいというぐあいに思っております。  それから、第二点目の運営費の補助の件でございますが、平成年度の予算におきましても施設整備費の予算額を五億円増額いたしまして養成施設の拡充を図ってまいっているところでございます。また、あわせまして運営費につきましても所要の増額を行ったところでございまして、今後とも運営費等に対します国庫補助の確保に努めてまいりたいというぐあいに思っている次第でございます。  それから、第三点目の准看から正看への移行の問題でございますが、単位制やあるいは通信教育などを検討するようにというような御提言もいろいろあるわけでございますが、いろいろな問題を抱えておりますので、十分検討させていただきたいというぐあいに思っております。  以上でございます。
  157. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 ただいまの津島大臣並びに局長の前向きの答弁、非常にありがとうございました。  ただ私は、ぜひ行政当局が忘れていけないことは、神崎三益という前の日本病院会の会長、これは公私両方の病院会の会長さんがこういうことを言っているんです。不幸にして病気になった人、けがをした人の治療費の中から看護婦を養成するようなことがあってはならない、そういうことをおっしゃっておられるけれども日本の看護婦養成の現状を見ると、私的医療機関あるいはその他の団体の医療費の中から看護婦、コメディカルの養成費が出ているということは、私はこれは今後深く刻み込んで反省しなければいかぬ、こう思っております。ひとつその点をよろしくお願いします。また、医療法の附則の第四条にも、附則というのは法的効力があるんですから、この中に、「医療機関の経営基盤の安定及び業務の円滑な継続を図るための必要な措置を講ずる」ということをうたっているんだから、それをきちっとやらなければいかぬ、私はその点を強く指摘しておきます。  それから次は、民活の問題に移らせていただきますけれども、六十一年の六月六日の閣議で決定した長寿社会対策大綱及び平成二年の四月十八日の臨時行政改革推進審議会等、あるいはまたOECDの社会保障担当大臣の会議が昭和六十三年七月パリであったわけですけれども、そこここ等で、今後社会保障、特に医療保障の財源を求めていくときには競争原理さえも導入して民間活力への適切な取り組みをやるべきだと、こういうことをうたっております。また、厚生省が本年の一月に出した「二十一世紀をめざした今後の医療供給体制の在り方」の中でも、「民間ビジネスの医療分野への適切な取組みを進める」と、こういうことをうたっておりますけれども、先ほど申し上げましたように、私がアメリカやら欧米等を回ってみて、民活という問題は非常に大きな問題である、こう思っております。  それで、まず厚生省に御質問いたしますけれども日本、アメリカ、イギリス、西ドイツの民間医療保険制度の普及率はどうなっているのか、これをひとつお教えいただきたい、こう思います。
  158. 黒木武弘

    説明員(黒木武弘君) 諸外国における民間保険の適用の状況についてのお尋ねでございます。  公的なデータが各国とも整備されておりませんので確実な数値というものは承知いたしていないわけでございますけれども、いろいろな団体調査数字等を参考にして結論的に申し上げますと、一九八九年時点でございますが、フランスが約六割、西ドイツが約一割、イギリスが約七割、合衆国が約八割という状況でございます。
  159. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 ちょっと今のはでたらめだな。フランスが幾ら……。
  160. 黒木武弘

    説明員(黒木武弘君) イギリスは七%でございます。失礼いたしました。
  161. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 そうでしょう。もう一遍言ってくれませんか。アメリカ、イギリス、西ドイツ。
  162. 黒木武弘

    説明員(黒木武弘君) では、再度正確に申し上げます。  フランスが約六割でございます。西ドイツが約一割でございます。イギリスが七%でございます。それからアメリカが約八割でございます。
  163. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 日本は幾らですか。
  164. 黒木武弘

    説明員(黒木武弘君) 日本は七割でございます。
  165. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 七割、これもちょっと保険局長にしては不勉強だな。民間医療保険の普及率ですよ。日本が七割、日本はそんなことないじゃないの。
  166. 黒木武弘

    説明員(黒木武弘君) 日本の七割でございます けれども、民間の医療関連保険商品によってカバーされている人口の全国民に対する比率を出したわけでございまして、かなりの方が何らかの保険に入っておられるという状況ではないかと思っています。
  167. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 今の数字はまだ統計がきちっとしていない点もあるから今後また一緒に勉強していきたい、こう思います。  それで、私が民活を今取り上げた理由は、今申し上げたような長寿社会対策大綱とか、それからOECDの社会保障担当大臣会議とかいろいろなところで民活の導入がうたわれているけれども、その民活導入の最も盛んなアメリカを見ていると、非常に憂慮にたえないものがあるんです。これは、アメリカでは例えば「メディスンイズインダストリー」、医療は産業であるとはっきりこう言われている。「ペイシェントイズコンシューマー」、患者は消費者である、こう言われているぐらい医療のシルバー産業が盛んであるんですが、そのために中産階級の人、あるいはお年寄りでも一たん病気になると貧困層に転落していく。たしか私の調べたところでは、アメリカでは保険に入っていない者が全人口の一七%あって、三千七百十万人という人々が医療保障から見放されているような状態にある。  それはなぜそうなっているかというと、アメリカでは医療産業の民活が盛んなものだからそういう結果になっておるんですよ。もちろん、その国の医療保障とか社会保障というのは、その国の歴史とか社会構造とか価値観とか、そういうことでアメリカは競争原理が非常に導入されているところだからそれはやむを得ないにしても、そういうような問題を含んでいるから、私は最近厚生省の中にも民活の勉強会があると承っていますが、十分そういうことも考えてやらないといろんな問題が出てくる。私自身、民活を導入することは頭から否定するものではないけれども、民活を入れるに当たっては十分気をつけなきゃいけない、こう思うから、そう申し上げるわけでございまして、実際にまた社会保障の学者の連中もそういうことを憂えている学者の方々がおられる。論文の一例を江見康一教授の論文から引用させていただくと、ひとつ読み上げますからお聞きいただきたい。民間保険が患者本人負担分や室料差額、特に高度先進医療費の給付部分が拡大するようになると、自由診療との間に風穴があげられる、そうすると公的医療保険の機能が相対的に後退していくんだ、それから逆に民間医療保険のメリットが評価されるようになるということを言っておられます。  また第二点目は、今、ゴールドプランとも関係があるんですけれども、在宅医療での訪問看護とか、それから介護介助費とか、いわゆるお世話代、そういうもののサービスまでもカバーされるようになると、従来の公的保険と相並ぶ独自の領域の主役的な地位を今後持つかもしれない、こういうことを言って、公的医療がこれまでの対象としてこなかった分野のいわゆるキュアリングからケアリングへの重点的な移りが起こってきて、そういうニーズがまた生まれる、こういうことを言っているんですね。  そのほかに最も大事なことは、今度は医療機関が民活の中に取り込まれて、アメリカのシルバー医療産業みたいなものに、アメリカでは実際にもう起こっておるんですね。経済の論理に押しまくられていくものですから、医師の主体性が失われてくる。だから、経営の効率性だけではなくて、医療そのものの質の確保向上、これがうっかりすると失われるからだめだと。これは大蔵大臣も自民党の医療基本問題調査会で、日本には医療法の第七条ですか、営利を目的としてはならないという法令があるから、シルバー産業は医療法で防波堤になっている、今後気をつけなきゃいかぬということを前にもおっしゃっておったんですけれども、そういうことを学者も言っていますから、私は民活の問題は非常に大事である、こういうぐあいに思っております。  それで、厚生大臣にひとつ民活のあり方はどうあるべきかということをお伺いしたいわけでございます。
  168. 津島雄二

    ○国務大臣(津島雄二君) 私は、我が国の社会保障制度の中で最も誇るべきものの一つが国民皆保険である医療保険であろうと思います。先ほど各国における民間医療保険の加入率の数字の御披露がございましたけれども、あれは委員も御指摘のとおり、非常に、正確に理解をするには難しい数字でございまして、要するに全人口の中で民間保険を何らかの形で利用している人の比率でありますから、本当の民間保険のウエートというのは医療費の中でどのくらいの部分が払われたかという数字を示さなければ意味がないわけであります。そういう観点から申しますと、圧倒的に大多数の医療費が公的な国民皆保険で維持されておるということが今日の日本の医療制度をしっかりしたものにしてきてくれている、これはどうしても守っていかなければならない宝物だと私は思っております。  外国の例をいろいろ参考にしてみますと、今のアメリカのように大多数を民間の医療保険に頼っているという国もございますけれども、その医療の現場を見ますときに、非常に多くの問題が起こっているという認識委員と全く同一でございます。例えば、最近非常に指摘をされておりますが、大都会におきまして次々と医療機関が倒産をするという現状がアメリカで起こっておりますけれども、これは大都会で病院に担ぎ込まれる方々の中で、医療保険がない方が非常に多い、そういうことがまた社会的混乱と相まちまして、大都会の下町における病院の経営を極度に難しいものにしていると言われておるわけでございます。そういう意味で、私どものこれまで守ってまいりました公的な医療保険制度は何としてもこれはしっかりと維持をしなければならない、こういう気持ちでございます。  一方ヨーロッパの例を見ますと、日本のように皆保険という姿で維持されているのはイギリスあるいは北欧の国ということでございまして、ほかの例えばドイツとかフランスとかあるいはオランダとか、こういう国は基礎的なニーズを超えた部分については日本よりもさらに民間の力を使っているという現象が見られると私は受けとめております。  しからば、これからどういうふうに我が国の医療保険制度あるいは医療制度を持っていくかということについて、私は、やはり先ほど委員が御指摘になりました昭和六十三年の「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方と目標について」というところで示されておりますように、国民の基礎的ニーズについては公的施策をもってしっかりと対応する、そしてこれが国民福祉の基盤の充実の基礎にしなければならない。これに加えまして、多様かつ高度なニーズについては個人及び民間の活力の活用を図るという考え方に立ってこれから進めていかなければならないのではなかろうか。したがいまして、医療保険、医療の制度の根幹はやはり国が中心となってしっかりと維持をしていく。なお、そういうことの中で民間の活力が活用できる分については極力これを活用するべくこれから創意工夫をしていくということではなかろうかと私は考えております。
  169. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 ただいま津島厚生大臣がまとめられましたように、最低のニーズは公的な部分でやる、それを補完するものを民活でやる、こういうことですけれども、今後の日本の社会保障の方向がいわゆるアメリカ的なものになっていくのか、あるいは高福祉高負担の北欧型のものに持っていくのか、あるいは日本が独自のものをつくっていくかの非常に大事なテーマでございますので、ひとつその点をよろしくお願いいたします。  ついでに、そのほか今度は社会保険診療報酬の取り組み、診療報酬体系を三十一年ぶりに見直すということを黒木保険局長が記者会見で述べておられますけれども、黒木局長は非常に優秀な役人さんでございまして、老人保健法等日本の医療保障史上に残るようなすばらしいお仕事もしておられるので、平生からその達見には敬意を表しているところでございますけれども、その問題に関てひとつ御質問をさせていただきたい、こう思います。  まず第一に、厚生大臣にお伺いをいたしますけれども、先ほどから申し上げたとおり、日本の医療保障は今や世界先進諸国のトップを行く、健康保険証一枚あればどこでも最高の治療を受けられるという状況にある、私はこう思っております。乳児死亡率は世界で一番少ない、これは人口千に対して四・八であります。心臓病による死亡率も昭和六十二年度の統計で人口十万に対して百十八・四。それから平均寿命はもう御高承のとおりでございます。  それで、日本の医療レベルは私は世界一だと思っておりますけれども、しかしながら医療費は世界一安い、こう思っております。新聞では高い高いと言って書き立てているけれども、逆に医療費は世界一安いんですね。一人当たりの医療費は十六万円になっておって、もう時間がないので各国との比較はやめますけれども、そういう状況にある。そして、日本の医療機関の八〇%は民間で占めておって、この自由開業医制度と出来高払いのせいで、これはもちろん行政も立派だったし、財政の大蔵も立派だったし、国民も勤勉だったし、教育レベルも高い、いろんなことがこういう成果を上げていると思いますけれども、世界一の安い医療費で世界一の効率を上げている、こういうことに対しては厚生大臣どういう御感想でございますか。
  170. 津島雄二

    ○国務大臣(津島雄二君) 私、就任いたしましてから大変びっくりしておりますのは、欧米のいわゆる先進国と言われている国々から視察団が我が国の医療制度そして医療保険制度について勉強においでになるケースが非常にふえておるということでございます。先般もフランスの上院の社会労委員会の方々委員長以下相当数おいでになりして、厚生省におきまして真剣な御討議を行わ、そして日本の制度について事細かく調べて帰れたわけであります。そのときに私に対する質問は、日本は出来高払いであって皆保険であるけれども、どうして上手に医療費の高騰を防いでこられたか、ヨーロッパの今の軒並みに医療費の高騰に苦労しておられる行政の側あるいは政治の側から申しますと、我が国の現状というのは垂涎に値するというようなことを述べておられたわけであります。  このことが端的に象徴しておりますように、これまでの医療保険そして医療の制度につきましては大変立派にやってこられた。これは行政ばかりでなく、医療の現場におられる方々、そして国民各位の大変な御理解のたまものではなかろうかと私は思っておるところでございます。  そうは申しましても、だんだん老齢化比率が上がってまいりますと、医療費の高騰というものはある程度はこれは免れない現象であると考えておりますが、それを国民の理解を得て負担と給付がうまくバランスし、しかも現場における医療サービスが高度に維持できるという目標を達成していくために、私どもも格段の努力をしなければならないと思っております。委員が最初に御指摘になりました診療報酬の問題につきましても、そういう息の長い基本的な取り組みという角度から担当の方では常時研究しておるというふうに私は受けとめておるところでございます。
  171. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 それで、私は新聞報道でしか知らないんですけれども、黒木局長の、三十一年ぶりに診療報酬体系を見直すと、これは社会構造が変わり物の価値観が変わり、いろんなあれが変わってくれば法律、規則も変わるのは当たり前でございますから、それは私は当然だと思います。ただ、黒木局長は大所高所からお説をお述べになっておられます。また、社会保険診療報酬だけを取り上げているわけじゃなくて、いろいろ医療保険制度全般にわたって述べておられますけれども、私あと三つ四つぐらい質問しなきゃいけないので、時間がないので簡潔に申し上げさせていただきますと、社会保険診療報酬はこれはもう非常に古くて新しいテーマで、日本の医療保険制度というのは結局は医療費の問題だ、社会保険診療報酬だと言われてもしようがないぐらい凝縮されたものですが、この社会保険診療報酬を考える勉強会に当たっては、少なくとも医学医術の進歩に見合うものをやるということ、それから医療経営基盤の安定を期する、あるいは人事院勧告のことも勘案していく、さらにまた拡大再生産も考える余地があるというようなものをつくっていく、こういう四つ五つぐらいの要素がありますけれども、これはもうぜひひとつ御勘案をして、何も急いでやる必要はないんだと、とにかく今厚生大臣がおっしゃったような角を矯めて牛を殺すことがないように希望しておきます。  特に、今大都会の地価の高いところでは、もう開業医の後継者がいなくて、本当に夜なんかは救急できないような状態になっておる。離島、僻地も同じでございますから、プライマリーケアの危機も考えて、ひとつよく関係団体あるいはまた識者の意見、学者の意見も聞いてやっていただきたい、こういうぐあいに思っております。  また、先ほど申し上げた「二十一世紀をめざした今後の医療供給体制の在り方」という厚生省の一月の提言によると、これは医療法附則の第四条ですか、医療経営基盤の安定をうたうという、先ほど申し上げたように、附則というのは法的効力を持つものであると私は思っておりますので、この問題に関して黒木局長の御見解をお伺いしたい。  時間がないのでひとつ一、二分でお願いします。
  172. 黒木武弘

    説明員(黒木武弘君) 診療報酬への取り組みについてのお尋ねでございます。  もう委員承知のとおり、私どもはこれまた御指摘にありましたように、高齢化の進展とか、医学医術の進歩とか、経営の安定とかあるいは人件費の増高等、もろもろの状況を勘案しながら診療報酬に取り組んでおるわけでございまして、現にこの四月にも改定を行ったところでございます。これからも御指摘のようにそのときどきにふさわしいよりよき診療報酬となるように、そのあり方について絶えず検討をしてまいりたいと思っておりますが、特に御指摘になられましたように、長期的な視点に立った取り組みというものは必要だろうと思っております。  私の記者会見のお話が出ましたけれども、私としましても、二十一世紀に向けての望ましい診療報酬体系のあり方という課題につきまして長期的視点から検討すべき時期に来たのではないかという点を申し上げたわけでございます。したがって、現時点ではまだ具体的な中身、方向というものは持っているわけでございませんけれども、いずれにいたしましても、今後各方面の意見を承りながら、そして御指摘のようないろんな要素も考慮しながら十分勉強させていただきたいと思っている次第でございます。
  173. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 次に、去る八月十三日に厚生省の救急医療体制検討会小委員会から報告書が出されておりまして、また消防庁の救急業務研究会小委員会からも同じく救命率向上のための問題が提起されておりますけれども、これは私の要望だけ申し上げておきます。  この趣旨は、救命率を上げるために厚生省の小委員会あるいは消防庁の小委員会がなさっておられる趣旨は私は立派だと思います。消防庁の職員に救急業務を教え、あるいはまた国民に救急のあり方を啓蒙していくということは私は立派だと思いますけれども、ただ私が一番懸念するのは、その中の三点セット、いわゆる救急隊員が気管内挿管をやっていく、それから輸液をやっていく、それから除細動をやるというような、専門医でさえ難しいようなものを、これは早急ということじゃないでしょうけれども、やっていくということにはかえっていろんなマイナスもあるので、ひとつその点は気をつけていただきたい。これは私だけが言うているんじゃなくて、たしか先週の読売新聞で聖マリアンナ大学の教授が同じことを指摘しておられます。もう気管内挿管麻酔というのは、及川委員長みたいに太った人なんかなかなか入らない、僕みたいなやせた者にはさっと入っていくんですけれどもね。近藤忠孝さんなんかだめだ。太った人には入らないんです。だから、そういうことでよく勘案をしてやっていただきたい。  それから次に、沖縄の救急医療体制のことでございます。  ことしの二月に、沖縄の南部徳洲会病院の知花哲という若い先生がヘリコプターで救急に向かう途中命を落とされたわけでございます。心から御冥福をお祈りいたします。御存じのとおり、沖縄は東西千キロ、南北四百キロに及ぶ広大な地域でございまして、那覇市を東京都にした場合に、八丈島から福島、石川、富山、それから兵庫、香川、徳島に及ぶ広大な海域の救急をやらにゃいけないので、今この問題に関して我々県民は非常に憂慮をしておりますけれども、その中で事故連絡会議で要望事項を四つ出しております。離島医療の充実化を図れ。救急患者の空輸における飛行の安全性と添乗医師の確保。離島市町村におけるヘリポートや夜間照明などの設備充実。急患搬送用専用機配置に関する国への要請。これは当然もう厚生省にも御要望が行っていると思いますけれども、何とぞひとつ、これは沖縄だけの問題じゃなくて、経済大国日本と言われている経済力を持っておるんですから、「チャリティーイズフロムユアホーム」という言葉がありますから、まず国のこともできないでいろんなことをやるのは――これはちょっと言葉を言い過ぎるといけないので黙っておきますけれども、ぜひその点を勘案していただきたい、こう思うわけでございます。
  174. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) 救急医療の問題では、先生お話しございましたようにいろんな問題が指摘されております。私ども救急医療体制検討会の中におきまして、先生のお話にございましたようないわゆる三点セットにつきましても、今後どういう形でそれをやっていくかについては十分慎重に検討してまいりたいというふうに思っています。  それから、沖縄の例を取り上げられまして救急医療体制のあり方の問題でいろいろお話があったわけでございますが、申し上げましたように、救急医療体制検討会という場におきまして今後の救急医療体制のあり方、新しい分野の救急問題あるいは僻地等におきます救急医療のあり方につきましても、あるいはヘリポート、ヘリコプターの活用方策につきましても、いろいろ含めまして検討をいただいている次第でございます。本年度末までに報告をいただくことになっておりますので、その検討会の報告をいただきまして、それを踏まえて今後とも関係の各県とも連絡をとりながら体制を整えてまいりたいというふうに思っております。
  175. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 厚生省では、昨年十一月に「医療廃棄物処理ガイドライン」を取りまとめて本年の四月から各県でやるようになっておりますけれども、この問題に関して御質問、御要望を申し上げます。  民間の感染性廃棄物の処理については、民間の処理業者の受け入れ体制が不十分なこともあって現場でいろいろトラブルが起こっているところがございます。それで感染性廃棄物の受け入れを拒否するところも出ているんです。大病院は別にして、小さい病院とか個人の開業医が感染性廃棄物を円滑に処理することが困難な状況でございますので、地域の保健衛生の確保とか向上の観点からも適正処理の推進、これは御高承のとおり国民病と言われているB型肝災の問題とかエイズの問題とか、非常に大きい問題を含んでいますので、この点を御高配いただきたい。東京都はうまくいっていますけれども、その他の県、市町村によっては現場の処理に当たってうまく医療関係団体との連絡調整がとれていないところがございますので、その点御高配をお願いしたい。お答えをちょうだいしたいわけでございます。
  176. 小林康彦

    説明員(小林康彦君) 感染性廃棄物につきましては、昨年十一月にガイドラインを定めまして、それに従いまして適正処理の実施に努めておるところでございます。私ども本年六月に行いました調査では、三分の二の市町村がこの処理を行っておりますが、一部の地域におきましてはまだ処理に十分な対応ができるに至っていない、こういう地域も見られるところでございます。このため産業廃棄物の処理業者の感染性廃棄物の受け入れ体制の整備に努めますとともに、都道府県及び市町村を指導いたしまして感染性廃棄物の適正な処理の推進を今後とも図ってまいりたいと考えております。
  177. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 終わります。
  178. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 きょうは、土地と住宅の問題について少しお伺いしたいと思います。  言われるとおり、世界第二の経済大国と言われながら、今、私もサラリーマン出身ですが、サラリーマンにとっては特に厳しい状況ができている。首都圏を見ましたら、大体平均的なサラリーマンが標準的なマンションを購入しようとすると、都心十キロ圏では今大体年収の十五・三倍、二十キロ圏では十・七倍。これがマンションですから、現在マンションも持てないというような状況になっております。一戸建てのマイホームというと、七千万、八千万でも、そういう値段が出るとみんなが飛びつくというような状況にもなっている現状でもございます。無理にマイホームを手に入れた場合は、今新幹線通勤なんかの問題も非常に話題になっておりますし、まさにサラリーマン残酷物語というような感じを非常に受ける次第でございます。また、国土庁が九月に平成二年の都道府県地価調査を発表されましたけれども、あれを見ると、首都圏に端を発したいわゆる一連の土地高騰というのが地方都市へ広がりを見せている。特に、私の住んでおります九州なんかは今回非常に高騰をするというような現状を見せておりますし、とどまるところを知らないというのが現在の状況だというふうに思いますし、サラリーマンにとっては我が国では永久に家が持てないというのが実感じゃないかとも思います。  こういった現状について建設大臣、それから国土庁長官に、今の地価、住宅問題についての現在の感想をまずお伺いしたいし、あわせて、サラリーマンにも住宅が取得できる水準まで地価を引き下げる決意があるかどうか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  179. 佐藤守良

    ○国務大臣(佐藤守良君) 木庭先生の御質問にお答えしたいと思います。  実は、先生と同じようなことでございまして、この間の国土庁の都道府県地価調査につきましては御指摘のとおりでございまして、特に大阪圏において依然として著しい地価上昇がございます。また、三大都市圏の周辺とか地方都市におきましてはかなり高い地価上昇がございまして、これは厳粛に受けとめております。  そういうようなことでございまして、こうした地価高騰によります先生が御指摘のような住宅取得の困難化や資産格差の拡大に対応するため、実は先般先生方の御協力を得まして土地基本法の制定をいたしますとともに、土地税制の総合的な見直しや工場跡地等低・未利用地の有効利用、あるいは市街化区域内農地の計画的な保全と宅地化等による住宅宅地供給など、今後の土地対策の重点実施方針に掲げられた諸施策の完全実施を図ってきておるところでございます。さらに、土地利用計画とか供給、有効利用促進策、土地関連融資、地価評価、関連情報整備等、幅広い分野について現在土地政策審議会で検討していただいておるところでございまして、今月じゅうには多分取りまとめが行われる、そしてその具体化、実現に全力を挙げてまいる所存でございます。こうした構造的な対策を含めた総合的な諸施策の展開によりまして土地神話を打破し、土地問題を根本的に解決すべく尽力してまいるつもりでございます。先生のおっしゃった適正な地価とは、大変難しいわけでございますが、現在我々は建設省や大蔵大臣の指示を受けながら、基本的にはサラリーマンの年間所得の五、六から数倍で少なくとも住まいが持てるようにしたいということでございます。  実は、これは参考ですが、福山でこの間私現地を視察しましたら、明王台というところがございましたが、土地が六十から六十五坪、住まいが三 十五坪、四十坪で大体三千二百万から四千万の間でございました。その間に住宅金融公庫、よく出てくるんですが、融資ローンが千七百万ございます。そんなことでございまして、これは年間所得の五倍で確保できる。そういう土地もあることを御理解願いたい、こう思うわけでございます。
  180. 綿貫民輔

    ○国務大臣(綿貫民輔君) 三大都市圏の周辺、地方都市等で高い地価の上昇となっておりまして、政府を挙げて対策の推進は急務というふうに考えておるわけでございます。特に東京を中心になお高い地価水準が国民の住宅取得の夢を遠のかせておるということでございまして、さきの国会で都市計画法、大都市法の改正等を受けまして今いろいろその対策に全力を尽くしておるところでございます。いずれにいたしましても、土地・住宅問題の解決は内政の最大重要課題であり、土地税制の見直しを初め総合的に今後全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。
  181. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 長官、大臣おっしゃったように、土地問題、今土地政策審議会でもやっておりますし、税制その他の問題というのはまたそれが出た時点で論議しなくちゃいけないとも思っております。  また、おっしゃるように、土地政策というのは単に一つの政策で解決できる問題でないのも事実でございます。ただ、いつもこの土地問題を見てくると、どうしても、この土地・住宅問題というのは、土地というものを一般の商品と同じように現在の時点では市場原理にゆだねているということが、ある意味では最大の原因じゃないかなというふうに私は思えてならないわけです。特に日本の場合は土地の利用規制が緩やかでございまして、極論してしまえば、自分の土地はどう使おうと勝手だみたいな考え方ができるのも事実ですし、ある意味では、土地が国民共有の財産だというふうな意識が国民自体にないという問題もあると思っております。そういう意味でいけば、欧米を見ると非常にうらやましいとも思うわけです。  もうドイツとなってしまいましたけれども、旧西ドイツは、農村との結婚だとかいう言われ方をするように、非常にそういう都市計画の面、行政指導の意味で土地利用を考えている面もございますし、都市計画でまずその地域に建てられるものを決めて、それ以外のものを厳しく制限するようなやり方をやっております。そうやることが逆に言えば土地高騰を防ぐということにもなっているという論議も起きているのも事実でございます。建設大臣はもう世界各国歩き回っておられるでしょうし、そういう意味では実際自分で見られてみて、この日本の現状、それから海外を見られてみて感じることが多いと思うんです。特に私が思うのは、西ドイツの都市計画のBプランですね。ああいうやり方を見ていると本当に何かもううらやましくてたまらない。何で日本はこうならないのかというような気持ちもあります。私は残念ながら現地をまだ見ておりませんので、現地を見たことのある大臣のBプランに対する感想なりをぜひ聞かせていただきたい。
  182. 綿貫民輔

    ○国務大臣(綿貫民輔君) ドイツにおきますBプランは、ドイツの都市づくりに適したすぐれた制度であるというふうに思っております。我が国におきましても昭和五十五年に、このBプランを参考としながら、我が国都市の実態を踏まえて地区計画制度を創設し、それを積極的に今活用を図っておる次第でありまして、今後とも、このBプランを一つの手本としてさらに都市計画に取り組んでいきたいと考えております。
  183. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 確かに日本も地区計画がありますね。五十五年できたものですね。  ただ、この地区計画というのは、都市計画法を見ますと、必要に応じて定めるということになっておりまして、調べますと、八九年三月現在で地区計画を実施しているのは、全国の自治体のうち、全部調べると百六十五自治体の中で四百十六地区という程度でございまして、札幌市が一番非常に熱心にやっていらっしゃるというので聞きましたけれども、それでも市街化区域の七%の四十地区しか行っておりませんし、例えば大阪市なんか見ると、まるで地区計画はゼロという現状でもあります。  この地区計画を見ている場合、どういうときに地区計画がなされているかというと、地域にマンションが建っていくときなんか、特にワンルームなんか建つ場合、行政が働きかけるというよりはどっちかというと、住民主導型で今ようやくこの地区計画が進み始めているんじゃないかというようなことを感じるんですよ。本当に熱心にこれを進めようという態度があるのかなというのも私の率直な感想でございます。ドイツの例に倣うわけじゃないんですけれども、地区計画をつくり土地の利用を制限すれば、決まった目的以外に使えないわけですから、投機的な売買というものはまずなくなりますし、地価も徐々に下がるということも考えられます。  欧米は、土地については計画なきところに開発なしという言葉がございますし、我が国でもうここまでなっているんですから、ある意味では地区計画を自治体に、必要に応じて定めるじゃなくて、義務づけるというようなことまで踏み込まないといけないんじゃないかと感じるんですけれども、いかがでしょうか。
  184. 市川一朗

    説明員(市川一朗君) 地区計画につきましては、ただいま委員指摘のように、私どもといたしましても、いわゆる都市計画の目標を実現する上におきましては土地利用計画の詳細化ということは一つの重要な課題であるというふうに認識しておりまして、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、昭和五十五年に導入された制度でございまして、一番基本的にイメージしておりますのは、これから市街地開発事業が行われる場所につきまして、建築物の形態まで含めまして詳細に計画決定を定めましてそのとおりの事業がなされ、それが将来的にもそのままの形で維持されていくということをねらいとして定めたものでございますので、そういう意味におきましては都市計画の一つの目標実現に一歩前進しておるのではございますが、土地利用規制の中身がそういった形で建築物の形態まで含めた非常に細かな規制になっておりますので、その関係する市民の方、住民の方のコンセンサスが得られるということが一つの大きな条件になっております。  したがいまして、私どもといたしましては、都市計画制度の中でこれを必ず定めなければならないという義務づけまですることはちょっと難しいかなということで、必要に応じて定める制度としたわけでございますが、今御指摘がありましたように、できるだけこういった制度を活用してよりよい町づくりを目指すとともに、いろんな現在生じております土地問題等の諸問題にも的確に対応できるように、例えば工場跡地の低・未利用地の有効利用、高度利用を図る場合、あるいは宅地化をすべき市街化区域内農地の宅地化を図るような場合には極力地区計画制度を活用するような指導も図ってまいりたいと思っておる次第でございます。
  185. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 本来なら、私自身は地区計画というものは既存地域も含めてというような考えでやるべきものだろうと思うんですけれども、新しく開発する場合ですね、そういった場合というのは、今おっしゃったみたいに、今度宅地並み課税の問題が出てきたり、新しい土地が生まれてくるという場合というのは、必要に応じてということじゃなくてやっぱり、新規開発の場合ですね、このことに関しては思い切って踏み込んで義務化までいくというようなことはできませんか。
  186. 市川一朗

    説明員(市川一朗君) 一つの御見識として私どもも十分理解できる点でございます。  現在私どもは、例えば市街化区域、市街化調整区域の線引きの見直しを行う場合には、土地区画整理事業の実施等が確実と見込まれる区域等を市街化区域編入の一つの優先順位としておりますが、さらに地区計画の策定が行われまして計画的な市街地整備が図られることが確実と見込まれるような場所も、市街化区域への編入、つまり現在市街化調整区域のところを市街化区域に編入して見直す場合に、そういう地区計画をつくる見込みが立っておるようなところあるいは高いところ、そういったところは優先的に編入するといったようなことを行っております。  したがいまして、御指摘のように一つの法的な義務づけという形までには至っておりませんが、できるだけ実質的にリンクするような形で運用してまいろうと思っております。さらに一歩進めて、御指摘のような形で法的な義務づけ等も考えられないかどうかということは一つの課題だとは思っておりますが、私どもといたしましては、こういった形で地区計画制度の積極的活用を図ってまいるということで対応してまいりたいと思っておる次第でございます。
  187. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 日本も昔は、江戸時代まで振り返れば、行政主導じゃないんですけれども、城下町があったり門前町があったり、ある意味ではその都市なりの景観というものをつくり出していたのは、一つの主導性みたいなものがあったからだと思うんです。何か戦後というのは無秩序にやられてしまったというのが正直な感想ですし、大都市に行けば行くほど本当に何でこんな都市がというようなのが今の日本の現状のような気もします。そういった意味では、今積極的運用とおっしゃいましたけれども、より一歩進めた形でそれでできることは、かつて日本はやってきたわけですから、そういう意識に変えることもできると思うし、ぜひこの問題は積極的に取り組んでいただきたい、そう要望しておきます。  そしてもう一つ、今度は、この土地問題で今のところできる唯一緊急なやり方というのは、国土庁がやっていらっしゃる監視区域制度の問題でございます。確かに対症療法にしかすぎないんですけれども、しかし、このことによって効果が上がっている面もありますし、これはやっぱりしっかりやっていかなくちゃいけない問題だと思っております。  国土庁は本年六月、監視区域制度の運用指針というものを自治体にお示しになりました。その結果、この制度の利用は急増いたしまして、九月二十日現在調べましたら、適用市区町村が八百五十四というようなことを聞いておりますし、何か、十月一日ではもう千を突破したというようなことも聞いております。ただ、そういうふうにして広がっているようですけれども、一方の地価の方はなかなか上昇がおさまらない。これはどういうふうにこの辺を分析されているか、ぜひそれをお聞かせ願いたいと思います。
  188. 藤原良一

    説明員(藤原良一君) 地価高騰の要因といたしましてはいろいろあろうかと思います。特に三大都市圏の周辺部あるいは大阪圏初め地方都市での上昇要因は、依然として金融緩和基調が続いておりますし、また東京圏との非常な割安感が生じ、ある程度投資的な資金と申しますか、そういうものが地方部に流れまして、いわば仮需要的なものが増大する中で上昇している部分も相当多いと思います。そういうことで、先ほど御指摘の監視区域制度の運用に努めております。この制度をできるだけ早く区域指定いたしまして、また届け出対象面積も厳しく的確に指定いたしますと相当の効果が上がる、特に急激な上昇を抑制する面ではかなりの効果が上がると考えておりますので、後手にならないように、先ほど申されました指針等も通達いたしまして、できるだけ前倒しに対応するように公共団体を指導しているところでございます。
  189. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 おっしゃるとおりなんです。おくれると、ひどくなるんです。先ほどの、今年度の地価調査を詳しく見させていただきましたけれども、届け出面積が百平米以下になった東京の四十六市区ですか、ここの地価上昇は大体二%と、きっちり効果が出ている。ところが、同じように監視指定地区になっていながら指定面積の引き下げを渋った県がある。御存じのとおり千葉県です。千葉県を見たら、ことしの地価調査で三四・五%。せっかくやっていながらこういうことになっているという現状をやっぱりしっかり認識していただきたいと思うんです。  ただ、これは、届け出面積を小さくすればするほど効果は上がるんですけれども、もう自治体も知っているんでしょうけれども、逆に言えば、ちょっと聞きましたら、大体二百平米から百平米に下げると事務量が二倍から二・五倍、もしかしたら三倍以上になるというんですね。そういう問題もあるし、今度はまた実際に運用する自治体にとってみれば、審査する要員の問題もある、財政の問題もあるということで、なかなか喜んではやってくれない面もあるようです。  だから、国土庁にぜひお願いしたいのは、ガイドラインを示したのは結構なんですけれども、財政的にも、本気で取り組むならばもっと積極的に行う必要があると思うし、そういう点をやっていただきたいと思うんですよね。  ちなみに、ちょっと聞いておきたいんですけれども平成年度のこういうものに財政援助をしております土地利用規制等対策費交付金ですね、これがどれくらいなのか、まず教えてください。
  190. 藤原良一

    説明員(藤原良一君) 御指摘のとおり、監視区域制度の運用等につきましては、土地利用規制等対策費交付金で一括交付をしてきておるわけですが、平成年度の予算は三十八億七千七百万でございます。
  191. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 その予算の問題なんですけれども平成元年度から少し上がっておるんですが、ちょっと見ますと、平成元年のときは監視指定区域がふえたということで補正を行いまして、大体最終的には約五十二億八千万ぐらいまでなっているわけですよね。多分ことしも補正予算のときに大蔵大臣にお願いして上げることになるんじゃないかなと思うんですけれども。ただ、土地の高騰というのが叫ばれている中で、確かにシーリングの問題、いろんな問題で当初予算が大幅にふえるというのはまずいのかもしれないけれども、何でそういうところもやらないのかなという、一般庶民から見れば本気でやるのかなという気持ちにもなると思うんですよ。  だから、まず国土庁に聞いておきたいのは、何で最初の予算のときにきちんと対応できなかったのかということを聞きたいし、またもう一つこの土地利用規制等対策費交付金の問題なんですけれども、これは国が一部負担してあとは自治体が出すわけですよね。私は実は事例として千葉県を挙げようとしたら、千葉県は特殊だと言われたのでやめようかなとも思いつつあるんですが、ここはちょっと極端に低くて、国費がわずか二〇%足らずしかなかった。まあその県の抱えている事情もあるんでしょうけれども、これはちょっとひど過ぎる部分もあるなと思ったんです。それでもよその県が大体四〇%前後ですか、これくらいでいいものかなという気もいたします。そういった意味で、その辺への取り組みをまず国土庁の方にぜひお伺いしたいなと思います。
  192. 藤原良一

    説明員(藤原良一君) 平成元年度は、東京圏の周辺や大阪圏あるいは地方圏で相当地価が上昇いたしまして、この地価上昇に伴いまして監視区域の指定の拡大あるいは届け出対象面積の引き下げを年度途中に行いました関係上、県で処理すべき届け出件数も相当増加したわけでございます。そういう情勢に対処するために補正予算をお願いいたしまして必要経費を補正していただいたわけであります。大変感謝しているところでございます。  平成年度の予算計上に当たりましては、我々懸命に、閣議決定しております総合土地対策要綱に基づきまして、土地対策を実施しております。例えば金融の総量抑制、あるいは監視区域の運用もそうでございますが、宅地の供給促進あるいは土地の有効高度利用の促進、そういった対策を実施しておりますので、そういう対策の効果にも期待しながら、その他諸般の情勢を勘案しまして、先ほど申し上げました三十八億七千七百万円の計上を行ったわけでございます。今後地価の動向等をにらみながら、公共団体が的確、円滑に事務が処理できるように今後とも適切に対処するよう努力してまいりたいと考えております。
  193. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 地方も地方なりに金がない中、要員の問題を抱える中で一生懸命やっておりますし、大蔵大臣もぜひこの交付金のことについては頭の片隅にでも入れていただいて何かぜひお手伝いをいただければという気もいたして、これは要望だけにとどめておきます。  それともう一点、この国土利用計画法の中の問題でお尋ねしたかったのは、異常な地価上昇の場合に、土地利用計画法の規制区域の問題ですね、これをやっぱり発動すべきじゃないだろうか。物価の問題でいえば、物価が二〇%も上がったら日本銀行は必死にそれはやりますわね。物価抑制のためにそれこそもう神経を使いながらやっている。もちろん地価の方も一生懸命やっているけれども、抑え切れない場合はある程度思い切った対策が必要だろうと思うし、この規制区域の問題、伝家の宝刀みたいに言われながらも全然使わないうちにいつかさびが出ちゃうんじゃないかと思いますし、ある意味じゃ異常上昇、二〇%以上のようなひどい上昇が出た場合は直ちに規制区域を発動するというようなことも考えるべきだと思うんですけれども、その点いかがですか。
  194. 藤原良一

    説明員(藤原良一君) 地価高騰に対する取引規制面での対応といたしましては、先ほど来話に出ております監視区域制度の的確な運用により対処することが私どもとしては大前提だというふうに考えております。規制区域制度は御承知のとおり非常に厳しい規制制度でございますし、それだけに、要する要員、予算、膨大なものになろうかと思います。そういうこともありまして、しっかり監視区域で対応したいというのが我々の希望であります。このために、監視区域への取り組みが後手に回ることがないように運用指針等も定めましたし、また、本年四月には国土庁長官から直接、地価の上昇が著しい関係知事にそれぞれ来ていただきまして、監視区域の積極的な取り組みを要請したところでございます。知事さんの方でもそういう長官の要請にこたえて、前向き、厳正にこれから対処していくということでございました。  しかしながら、そういった監視区域制度の厳正、的確な運用によりましても地価の急激な上昇等を抑制することがどうしても困難だ、そういうふうな事態に立ち至った場合には、せっかくの制度でございます、規制区域の指定についても関係県知事において積極的に検討するようにその席でも強く要請したところでございます。
  195. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今度はちょっと、住宅問題についても何点かお伺いしたいと思います。  住宅問題、特に私たちが考えますのは、結局土地問題といっても住む家がどうなるかという住宅の問題が基本になるんじゃないかなというふうに考えます。特に東京あたりになったら、大都市の住宅難というのは、従来の持ち家中心の考え方からやっぱり優良な賃貸住宅の供給に比重を置くというふうに、住宅政策にも新しい発想が求められていると私たち思っております。そういったことをより促進するために、私たちの党では従来から一貫して家賃控除制度、家賃補助制度の導入ということを主張し続けているわけでございます。  建設省が本年度に続いて来年度予算でも家賃控除制度の創設ということを一応要望されようということを聞いておりますけれども、概略で結構ですから、簡単に教えていただければと思います。
  196. 立石真

    説明員(立石真君) 現在、全国で四千二百万戸の住宅があるという時代になっておりまして、非常に住宅ストックが増大しているわけでございます。そのようなことから、今後居住水準を上げていくためには、新規の住宅供給を図ることはもちろん重要でございますが、それと同時に、住みかえによって居住水準の向上を図っていくことが重要であろうというように考えているわけでございます。  平成年度の税制改正要望におきましては、住みかえによって居住水準を上げようとするときに家賃負担が厳しくなることが予想されるわけでございますが、このようなことから、民間借家の居住者が住みかえの際の家賃負担を軽減することによりまして円滑な住みかえを促進して居住水準の向上を図る、また良質な民間借家の供給を促進する、そういうことをねらいといたしまして家賃控除制度の創設を要望しているところでございます。  内容といたしましては、床面積五十平方メートル未満の借家から床面積五十平方メートル以上の民営の借家に住みかえた世帯のうち、年間の所得八百万円以下の世帯が支払う家賃について、その一部を五年間、年間九万円を限度として所得税額から控除しようとするものでございます。
  197. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 昨年度のから見ると、今年度のはやや私たちの党から見れば後退しているというような感じも受けざるを得ないんですけれども、それでも、そういう控除に向かって前進されているということは非常に評価いたします。ぜひ実現できるといいなとは思っております。やっぱり私たち考えますのは、そういうふうに優良な賃貸住宅が十分あれば、国民の持ち家志向というものも少し意識として変わっていくだろうし、地価という意味でも抑えられるということを考えます。特に、住宅取得の場合は住宅取得特別控除というものがあるわけですから、私たちとしてはぜひやっぱり家賃も所得税控除の対象とすべきであるというふうに考えます。  また、アメリカとかイギリス、西ドイツ、フランス、いわゆる先進諸国では家賃控除制度ではございませんけれども、家賃補助制度もしくは在宅手当制度というものが既に行われている現実もございます。ある意味では家賃補助制度を組み合わせた家賃控除制度というものをやっぱり導入して、こういう賃貸住宅への移行を図っていく必要があると思うんですけれども大蔵大臣、ぜひ御見解をお伺いしたいと思います。
  198. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 今建設省側から次年度に向けての御要望、御説明がございました。また、公明党からも従来から何回かこの問題について御論議をいただいております。ただ、私どもとしましては、その控除制度にいたしましても補助制度にいたしましても、やはりどうしても疑念をぬぐい切れないというのが率直な感じであります。今必要がありますならば従来から繰り返して御説明申し上げております問題点を改めて御説明いたしてもよろしゅうございますけれども、時間余り残っておらないことでありますので、建設省の御要望は十分また御論議のできる場もあろうと存じますが、我々としてはなかなか承服しがたいものを持っている、そう感じております。
  199. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 この問題は、またいずれ何かの場で何度でもやらせていただきたいというふうに感じております。  それで、ちょっとお伺いしたかったんですが、東京都の台東区が新婚家賃補助制度というものをスタートさせたんですけれども、実はこの補助制度は、家賃の高騰による人口減少とか、住民の高齢化の打開策みたいなもので始めたんです。台東区のほか新宿区とか文京区、東京の各区がやろうというふうにしているんですけれども、その中で、区の方はこれは一時所得だと考えていたわけですね。ところが、国税庁の方はこの補助金はいわゆる雑所得の方だというような方針を示したというようなことをちょっと聞きましたので、そうなると、せっかくこうやって制度をつくってそういう家賃高騰の面でも解消しようというようなとき、一時所得にしますとこれは税金を取られるのは五万円ぐらいで済むんですよね、七百三十万円ぐらいの平均世帯で。ところが、雑所得にしますと十万六千円取られる格好になる。差し引き五万六千円ぐらいの差が出てきてしまうんです。せっかくこういうふうに自治体が一つの新制度を導入しようとしているときに、何かお互い打ち合わせたり配慮できなかったものなのかなということを感じましたので、この点ちょっと教えてください。
  200. 山口厚生

    説明員(山口厚生君) ちょっと技術的な問題でもございますので、私の方からお答えさせていただきます。  一時所得につきましては、所得税法の第三十四条に規定がございまして、少し長くて恐縮でございますが、そこには「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」、こういうふうに規定をされております。そのように一時的なものでかつ役務等の対価としての性質を有しない、こういうものであるというふうに規定をされております。また、一時所得を含むこれら九つの所得類型に該当しない所得は雑所得として取り扱うこととなっております。  今委員お話しの台東区の件でございますけれども、この台東区の家賃補助につきましては、一カ月につき最高五万円の家賃補助を三カ月ごとに支払いまして、その期間は五年とされているところであります。この家賃補助が役務等の対価としての性質を有するかどうかは検討するまでもなくこれは一時的なものではございませんので、委員指摘の一時所得として取り扱うことは困難でございます。そういうことで御理解をいただきたいと存じます。
  201. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 余り理解したくないですけれどもね。  全然例が違うんですけれども、例えば水田農業確立助成補助金の法人所得税及び法人税の臨時特例に関する法律みたいなやつですね。個人が交付を受ける補助金を一時所得とみなした事例も、これは議員立法なんですけれども、あると思うんです。そんな意味でも少しどうにかならないのかなという気もいたしたんですけれども、どうでしょうかね。
  202. 山口厚生

    説明員(山口厚生君) 今委員お話しのような、特定の法律等に基づいて国あるいは地方公共団体から各種の補助金等の支払い、これを受ける場合がございます。このような補助金等につきましては大体三つの形がございまして、その法律によって租税を課さない旨を規定している場合、これは例えば児童手当法、そういう場合の児童手当がございます。それから二番目は、所得税法上所得税を課さない旨を規定している場合、例えばノーベル賞として交付される金品でございます。それから三番目は、所得税法上収入金額に算入することを要しない旨を規定している場合、これは例えば国等から固定資産の取得等のために補助金を交付してもらっている、こういう場合がございます。  こういう各種の所得税が課されないこととなっているものがございますけれども、これらに該当しない補助金等、例えば雇用対策法に基づいて事業主が支給を受ける職業転換給付金、こういうものがございます。これらについては所得税が課税されることとなっております。
  203. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 まだいろいろ伺いたかったんですけれども時間がございません。最後に、これは回っていると、公共住宅なり住宅についてが一番要望の強い問題でしたので、建設大臣、最後にぜひお伺いしたいと思うんです。  いわゆる高齢化社会への対応の問題なんです。特に高齢者が一般住宅に住む場合、特に高層の場合は現在六階以上の高層住宅にはエレベーター設置というのがきちんと義務づけされているんですけれども、今何が一番要望強いかというと、特に地方に行きますと、五階以下の中層住宅でございますね、こういうところも実際歩こうとすると高齢者の方たちにはかなり厳しいものがございまして、何とかこのエレベーターというものの義務化ができないのか、また、標準建設費で補助できないのかなという要望が物すごく強うございます。やっぱりこれから高齢社会を迎えた場合、そういう細かい配慮が必要だと思うし、ぜひこれだけは何とかどんどん枠を広げるような形にならないのかなと思いますので、最後に、これについての大臣の見解をお伺いして終わりたいと思うんです。
  204. 綿貫民輔

    ○国務大臣(綿貫民輔君) 御指摘のように、今公営住宅、公共住宅につきましては、六階以上にエレベーターをつけるということになっておりますが、高齢者向けの住宅等については五階建てのものについても設置を推進しておるところでございます。今後は、高齢化社会を迎えるわけでございますから、御指摘のように五階以下の中層の公共住宅へのエレベーター設置についても努めてまいりたいと考えております。
  205. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  206. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これは先ほど来何度も言葉では出ております金持ち国日本ということ、国際金融都市東京の世界的地位も急激に高まっておりまして、こういうことで金融取引が飛躍的に拡大しておりますが、その中で庶民の被害も発生しております。これに対する規制や監督の強化が必要だと思うんです。  具体的に警察庁に質問いたしますが、海外商品取引会社ティピーシーに対して神奈川県警は六月五日、出資法違反の容疑で強制捜査を開始いたしました。捜査に至った経過と事件の概要について端的にお答えいただきたいと思います。
  207. 加美山利弘

    説明員加美山利弘君) お答えいたします。  本事件は、神奈川県警察が被害者からの聞き込みによって捜査を開始し、本年六月五日、株式会社ティピーシーの会社事務所等、関係箇所十一カ所に対し、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の預かり金禁止違反容疑で捜索を行い、現在押収資料の分析及び被害者からの事情聴取等、所要の捜査を進めているところでございます。  容疑事実の概要ですが、同社は米国の商品市場における資金運用をうたい文句に、預託金を預けてもらうと二年物で年利二四%の利息を毎月支払い、元金を保証するなどと話して契約勧誘を行い、約二千三百名の顧客から総額約百五十九億円を集め、会社経費や株式投資の資金等として使用していたというものでございます。  以上でございます。
  208. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 被害者二千三百名以上、被害総額百五十九億円という大変な被害が及んでおります。これは個人にとっては大変深刻な状況なんですね。例えば御主人が四十年近く働いて得た退職金をこれにつぎ込んで、一瞬になくしてしまって、老後の生活保障を全く失ってしまったという方、これがAさん。Bさんの場合には、ことしの秋に息子さんと娘さんが結婚する。その貯金を少しでもふやしたいという、これは親心ですわね。それでこれに出資して被害に遭っている。ですから息子と娘の式の費用も出ない。ただただ我が子にわびるだけという状況のBさん。Cさんの場合には、御主人に相談せずに、老後の生活の保障にということで、土地を担保にして融資を受けて被害に遭った。亭主にわからぬものだから、これがわかったら離婚問題だ。Dさんは、生活を切り詰めてこれにつぎ込んだお金が被害に遭いました。そうすると病気でも入院できないという、こういう深刻な状況。実際、歯を抜いた人で、その後歯が入れられないという、こういう方もおるわけですな。Eさんの場合には、御主人に相談せずに、土地を担保に入れて投資をして、金が返ってこないので生活費を抑え、子供の進学もさせられないという、こういう大変深刻な状況が出ております。  そこで、重ねて警察庁にお聞きしますが、先ほども言ったとおり、アメリカにおける上場商品市場による資金運用を行う、こういう宣伝をしておったようですが、海外商品取引はほとんど実際行っていなかった。集めた金は前の出資者への金利払い。だから、前に出資した人は毎月相当来るんですよ、二%ぐらい入ってくるわけ。それですっかり信用をさせておった。それからあとは会社の給与などに使っておった。これが事実かどうか。これがまず第一点です。  それから、元金保証、二年預けて配当二四%なんて、実際こんなのあり得ないことだと思うんですね。だから、もともと実際不可能なこと。大体こんなうまい話があるのか。この二点についてお答えいただきたいと思います。
  209. 加美山利弘

    説明員加美山利弘君) 先ほどもお答えいたしましたように、六月五日強制捜索いたしまして、現在関係資料の分析、それから被害者からの事情聴取等、鋭意進めている段階でございまして、御指摘の御質問につきまして、具体的内容について答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  210. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 だってこれは新聞に出ていることでしょう。被害者の皆さん、こう言われて、しかし実際はこれは破綻しているわけだから。答えてもらっていいんじゃないですか。  それともう一つお答えいただきたいのは、大体不可能なことを相手に告げて金を受け取っておったという、こういう事実があるわけね。大体元金保証、配当二四%、これがあなた可能だと思いますか。しかし私は警察を褒めてあげたいと思います。六月五日にこれは強制捜査をやったんだね。それで初めて被害に気がついた方がたくさんおるわけで、だからそれ以降の被害は発生していない。だから六月五日に強制捜査に乗り出さなければ被害はもっと広がったと思うんですが、その点はどうですか。
  211. 加美山利弘

    説明員加美山利弘君) お答えいたします。  御指摘のように、六月五日強制捜索をしなければもっと被害が広がっただろうというようなことでございますが、私ども聞き込みをいたしまして、やはり消費者の被害の拡大防止という観点からも早期に捜査に着手し、内容を解明すべきだということで着手した次第でございます。
  212. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 具体的な中身についてはお答えいただけないんですが、大蔵大臣、なかなか巧妙なんです。こんなきれいなものをつくりましてね、(資料提示)いかにももうかるように書いてあって、ともかくうたい文句が、元金保証、二年預ければ二四%。これ、実際不可能なことですね、そこをもっと捜査してほしいんですが。しかもアメリカの商品なんかほとんど手を出していなかった。こういう実態でもあるわけですよ。だからうそを言って集めたわけね。警察は早く手を打ってくれた。しかし早く打っても二千三百名以上いるんです。  問題は、自分の持っている金をここにだまされて出して被害に遭った、そういう方もおる。これはまだ我慢がいきますよ、しようがないと。だまされたんだと。ところが、この被害を拡大したのは、実は橋本さんが指揮監督をする都市銀行を初め幾つもの金融会社なんです。要するに金融関係が家を担保に融資をして、自分の金だったらせいぜい数百万ですよ。それが一千万、二千万。多い人は一億円。被害を拡大することに金融機関及び金融関係会社が手をかして被害を拡大した。これは全部橋本さんの指揮監督下――橋本さんが悪いとは言いませんけれどもね、そこで起きた事例です。  そこで、私は具体的に申し上げたい。これは具体的に言いますと都市銀行では住友銀行、それから第一コーポ、エステート、中央信託などのグループ、それからアメニティー、ハウジングローンなどこういうグループ、これが関与したわけですね。金を出したわけ、土地を担保にとって。私は全面的にこれから解明すべきだと思うし、私もそうしたいと思っておるんですが、ただ時間の関係もあり、調査が進んでいる住友銀行の問題で、これも一般的じゃあれだから具体的な問題として一つの代表例として、日高さんの件を例にして具体的に指摘をしたいと思います。これは既に大蔵省に指摘をして調査もしてもらっておりますので、私が指摘する事実について端的にお答えいただきたいと思います。  この日高民子さんは、この方だけじゃなくて多くの人がほぼ同じような状況、同じ手口でやられていますけれども、最初、人に勧められてティピーシーに五十万円投資をしておったんです。それまでの利息の送金先口座は富士銀行だったんだけれども、恐らく富士銀行はこいつはやばいぞと気がついたんでしょう。それで一斉に富士銀行にあった口座を全部住友に移したんです。そういうところでこの日高さんは住友銀行とかかわりを持つわけです。  それで、六十四年四月十日に住友銀行第二東京営業部に預金口座を開設しました。ただこのとき、ほかの方の話も聞いたけれども、預金口座を開設するのに住友に行ったんじゃないんです。このティピーシーのオフィスで、そこでティピーシーが出した書類に判こを押して、それでもう手続ができちゃって、後で通帳を送ってきた。だから大体もうかなりつながっておったということは明らかでしょうね。五月初めにティピーシーの社長の紹介で住友銀行第二東京営業部の大津晋一と面談しました。これは、このティピーシーの社長がもっと投資をしなさい、貸してあげるところがありますよということで会ったんです。これについて既に調査を求めたことに対する回答は、住友銀行はこう言っています。日高さんの方から融資の申し出があったというんですが、とんでもないです。だって日高さんが大津と会ったのはティピーシーの新橋のフロアですよ。だからもうそこにちゃんと来ておったんですから、そこで会ったんです。だから、後はとんとん拍子に話が進んでおるわけです。要するに、このいかがわしい会社であるティピーシーに住友の行員が出向いて、後はとんとん拍子で投資の話が進んじゃう。だからちゃんとこれは一つの経路ができておった。これは何も日高さん一人じゃなくて、たくさんの人が同じ手口で住友銀行から融資を受ける、こういう経過になりました。  要するに、ティピーシーへの投資の資金だということは十分住友はわかっており、積極的に貸すということをティピーシーと住友銀行は合意をしておったということはこの事例から明らかです。その際、大津晋一というこの行員は、ティピーシーという会社は日の出の勢いで社長も才覚のある人物だから出資しても大丈夫だ、こう勧めるものですから、それまで社長の話でもうかりそうだと思いながらもこれはどうかなと思って疑心暗鬼でおったけれども、住友という一流の銀行が言うんだから間違いない、こう信用しまして、融資を受けてその金を投資する気になったんです。住友銀行は、この間の調査の報告では、大津の方から勧めたことはない、こう弁解をしておりますが、とんでもない。大体人間が自分に不利なことを進んで言うことはないんですよ。これは隠している。現に私が、大津の方から勧めたことはないと銀行局の報告があったよと言ったら、さあ大変です、おとといの晩からきのう、私も直接そういうぐあいに言われたんだということで、私はきのう事務所におったけれども、一日もう電話が鳴りっ放し。あるいは十名前後の人が来まして実態を聞き取りました。こういう事態が起きている。  それで、この民子さんは早速亡くなった夫名義の不動産を民子名義にする手続をするが、これを全部やってくれた。完了した六月二日に大津から電話があり、民子名義になったと言うんです。この後が大事なんです。幾ら欲しいのかと。住友の方から幾ら欲しいのかと言ったんです。この担保だと二千万円までなら住友で出せるけれども、欲しければ三千万から五千万出せる会社があると言うんです。そんなに借りるわけにはいかぬというので二千万におさまりました。  ですから、この経過を見ますと、ティピーシーと住友銀行の行員が結託して勧誘している。これに乗ってしまったらどれほど被害が広がったかわからない。ある意味では自分はやっと二千万で抑えたから――しかし二千万は大変ですよ、この人の老後の住まいはなくなっちゃうんだから。  こういう経過ですが、これについては調査を求めておりますけれども、銀行局お答えいただきたい。
  213. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) ただいまお話に出ました会社につきましてまず申し上げます。  この会社はいわゆる貸金業の登録をしているものではないようでございますし、大蔵省として、その会社の概況を把握する方法はないわけでございます。それからまた、一つの通常の方法として、この会社に融資をしております金融機関があればその金融機関を通じて状況を把握する方法もないわけではございませんが、この会社に融資をしている銀行を発見できておりません。それは、ただいま御指摘がありました名前の銀行を含めて調査をしておりますが、この会社に融資をしている銀行は発見できておりません。したがいまして、この会社の顧客に対する金融機関の融資の実態その他についてすべて調査できているわけでもございませんし、また金融機関の個別取引にかかわる問題でございますので、具体的な答弁は差し控えたいと存じます。  ただ、これは一般論的な言い方になりますけれども、そもそも銀行の融資につきましては、やはりこれは銀行業務の公共性や健全性確保の観点に十分留意をしながら、しかし銀行のみずからの経営判断において決定するのが基本でございます。 もちろん、ただいまいろいろお話がありましたようなことがございましたならば、それはやはり顧客の投資資金として行き過ぎた融資を行うことによってその経営の健全性に問題が生じたとか社会的批判を受けるようなことがあるとかいうようなことがあってはならないのは当然であります。そして、そのような融資については慎重に対応すべきものと考えられるわけでございます。  ただ、ただいま委員からも御紹介がございましたように、その特定の個人の方と銀行の方とでいろいろ具体的な取引の進め方なり経緯なりについて意見の相違もあるようでございますし、この詳細につきましては、やはりこれは私どもから調査しお答えを申し上げるべき筋合いのものではなかろうと思っております。仄聞いたしますに、この個人の方と銀行の方で話し合いを続けているということでもございますので、私どもからこれ以上の御説明は差し控えさせていただきたいと存じます。
  214. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私の聞いた中で前半は、今後警察なり銀行局で可能な限りそれは調査をしてほしいと思うんです。  きょうの主題は後半の部分。銀行がこんないいかげんな融資、これを知りながら貸したというそのことで被害を拡大した、これで銀行の公共性が保たれるのか、そういったことなんです。今局長は、具体的なやりとりについては答える立場にないと。とんでもないことです。どうしてですか。銀行が自分の方からこんないいかげんな会社と結託して、その店まで出向いて、しかもこの大津一人じゃない、もう一人の佐藤孝幸というのがいる。これは融資係で銀行におって、来た人の融資を受け付けて貸している。片方は出向いて貸しているんです。こんなことが果たしていいのかどうか。これは当然銀行局として銀行の社会公共性の維持という観点から調査をし、そして国会で答弁すべきじゃないですか。こんなことを放置されたら、私は一般の金融会社も問題だと思うけれども、きょうは特に都市銀行である住友銀行を取り上げたのは、やはり都市銀行といったらみんな信用するんです。その信用に関して大蔵省も一定の役割を果たしている。そこがこんなことをしたんだから、それはもっと踏み込んで、果たしてこんな融資がよかったのか。大体、出資法違反でしょう。出資法違反を知って貸したんでしょう、これは。知らなかったというんですか。その点どうですか。
  215. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) 最前申し上げたことでございますが、この具体的な取引の進め方なりそれからやりとりの経緯その他につきまして、その特定の方と銀行の方で意見の相違もあるようでございます。それから、その他当事者の間で今後お話し合いをする余地もいろいろあるというふうに聞いております。  ただ、これは一般論でございますけれども、最前にも申し上げましたように、やはりこの銀行の融資については銀行業の公共性などの観点から健全な融資態度で臨むべきものであるということは、これは今改めて申し上げるまでもないと考えております。
  216. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これがどうして健全な融資ですか。大体銀行が金を貸す場合は、どこへどんな融資をするのか、それは危なければ貸さぬでしょう。それでも貸していいんですか。しかも、これは出資法違反、出資法二条には、原則として出資を受けることは禁止ですよ。特定の免許を受けた場合だけ。住友銀行ともあろうものが、このティピーシーが出資法違反の出資を受けている、これがわからなかったというんですか。その点答えていただきたい。
  217. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) このいろいろな取引の進め方なり経緯について意見の違いもあるようであると申し上げましたが、ただいまお尋ねがございました、この出資法違反の認識があったかどうかについても、この認識があったというようなことを銀行の担当者は言ってはおらないというような話も聞いております。  ただ、いずれにいたしましても、この個別の融資をするに当たりましては、それは対応はいろいろでございましょうが、お客様の方の借り入れニーズの強さとか、それから資産の状況とか、返済能力などを勘案し、しかるべき審査を経て決定したものと思われるわけでございますが、そのような手続問題は別といたしまして、この銀行の融資の姿勢につきましては、再三申し上げておりますとおり、銀行業の公共性などの観点を踏まえて健全な融資態度で臨む必要があるというふうに私ども常日ごろから指導をしておるところでございます。
  218. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その常日ごろ指導している健全性に反するんじゃないんですか。ここに契約書があります。「住友ローン契約書」。これは単に現場の人間だけじゃなくて、この第二東京営業部のトップの決裁が三つもあるんですよ。ということは、これは現場の大津と佐藤が出資法違反しておったかどうかじゃないですよ。何に貸すのか、恐らくこれは本店は知っておったはずです。こんな大量に出ているんだから、一人や二人じゃないんだから。となれば、まず出資法違反の融資かどうか、これを銀行が確認もせずにこの営業部のトップが判こを押した。これはまずい融資でしょう。  大蔵大臣、あんな局長の答弁でいいんですか。――大蔵大臣答えてください。
  219. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) 私はその具体的な書類を詳しく見たわけではございませんが、これは通常融資を行うときに銀行が作成いたします通常の書類であろうと思います。それで、その限りにおいて、これは銀行の判断として融資をしたことは事実でございますが、その個別の融資をするに当たりましては、やはり先ほど申し上げましたようなことでございますけれども、客の借り入れニーズの強さ、それから資産がどのくらいあるか、返済能力がどのくらいあるかというようなことを勘案した上で、審査の上決定されるのが通常であり、恐らく本件につきましてもそのような手続を経ておると思います。  それで、ただいまお話しのいろいろな状況につきましても、私は決してそれを否定する材料を持っておるというわけではございませんが、現実に個人の方と銀行の方とでいろいろな進め方なりなんなりについての意見の不一致が残っておるというふうに聞いておりますので、立ち入った御説明は控えさせていただきたいと申し上げているわけであります。
  220. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 大蔵大臣、この書類は銀行局にもある書類ですよ。それを局長がよく見もしないで答弁するというのは何ですか、これは。そうでしょう。  それから、当事者間に食い違いがあるんですね。食い違いがあるのは、契約の日とかなんか。それは私も調べてみたら、あったのは大体これは直りました、書類に基づいてね。ところが一番の食い違いは、さっき言ったようにティピーシーは安全ですよ、大丈夫ですよと、こう勧めたかどうか、これがこの事件の決定的な問題点ですよ。勧めておいて、しかもこんなインチキな会社を勧めておって、その責任どうなるのか。これについて当事者間の問題だからお話いただきたいと。大体今住友は逃げ回っておるんですよ。これは逃げ回っておるに対してはひとつ大蔵大臣、逃げ回るなと、誠実に交渉してテーブルに着きなさい、誠実に対応しなさいと、私はそういう指導をこれはしてほしいと思うけれども、その指導はしますね。
  221. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 少なくとも、みずからが関連すると言われている事案から逃げ回るようなひきょうなことはするなということは申します。
  222. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 やっぱり大蔵大臣の方がよろしいわ。  それで銀行局長、さっきの食い違いの問題はどうですか。これは調査するに値するでしょう。これは銀行のまさしく公共性そのものですよね。  それから、これがこんなところへ融資する、しかも、大体元金保証、二四%配当しますなんて、考えられますかこんなこと。そんなところへ融資をした。しかも食い違い点はある。銀行の方から勧めたという。そんなもので大蔵省がうのみにすること自身私はなめられていると思う。なめられないためにも、またこんな事故を再発させないためにも、この点調べてください。どうです。
  223. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) 私どもは、銀行の主張を一方的に是認しておるわけではございませんので、銀行とこの特定の個人の方との間の意見の違いがあるということをそのまま申し上げておるわけでございますが、いずれにいたしましても、このような場で御指摘のあったことでもございますので、今後とも適切な業務運営を確保するように指導してまいりたいと存じます。
  224. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 やっと少しまともな答弁になってまいりましたね。  それで大蔵大臣、これはちょっと政治的な判断も含めてお聞きしたいんだけれども、このように住友銀行が深くかかわって、実際被害者が、もう私どもの方にたくさん来ています。途方に暮れているのに、こういう人々に対して、こういう原因の一端をつくって被害を拡大した住友銀行がこういう気の毒な人々から利息を取ったり、それから貸し金の返済を強く求めたり、返済できないからといって抵当権を実行して家を取ってしまう。こんなことは私は人道的にも法的にも許されぬと思うんですが、これはひとつ大きな観点に立って被害者救済というそういう面からもひとつお答えいただきたいと思うんです。
  225. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 今御指摘になりました被害者の救済という話になりますと、私はそのティピーシーと顧客の関係として民事の問題であると思います。そして、それに行政当局が介入するというのは、答弁の形でありましても避けるべきであろうと思います。
  226. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 だから私は大蔵大臣、全部まけてやれという指導をせいとか、そうは言ってはいないんです。本当はそうしてほしいんだけれども、それは無理だと思うんで言っていないけれども、ただそれは当事者間で、社会的批判もこれは高まるでしょうから、それにこたえて、ちゃんと公共、な立場から処理をするというそういった指導をこれはしてほしいと思います。  きょうはたまたまこの住友銀行の例を取り上げしたけれども、このほかにも先ほど申し上げたうに第一コーポ、エステート、中央信託、それからアメニティー、ハウジングローン、こういうところで――こういう会社になりますと金額がさらに広がって三千万、五千万、八千万、こういう貸し付けがされているわけですね。これはやはり大蔵省の管轄下にある金融会社であります。ですから、こういった事態を真剣に受けとめて、事実関係を全面的に明らかにすべきです。そして銀行に対してそういう金融機関としての責任をとる立場から対処せよと、こういった指導はしてしかるべきだと思いますが、重ねてお伺いしたい。  それから警察庁に対しては、まだ捜査中でということでしたが、新聞に明らかになっていることでも言わないというのはちょっとどうかと思うけれども、しかしこれはお願いしたいのは、さらに捜査を強化し、責任をさらに明確にし、私はこれは詐欺罪ぐらい成立する可能性もあると思うけれども、今の段階で言えないそうですけれども、そういう強い態度でひとつ対処してほしいと思いますが、それぞれ簡潔にお答えいただいて次の質問に入ります。
  227. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) この被害者との関係につきましては、先ほど大蔵大臣から御答弁を申し上げたとおりでございます。  一つだけ補足いたしますと、ただいまいろいろな金融会社についてのお話がございまして、これについて大蔵省としてどうかということでございますが、金融会社に対する大蔵省の監督の関係というのは、これは一般の銀行その他に対する一般的な監督権を持っているというわけではございませんで、これは委員よく御承知と思いますけれども、貸金業の規制等に関する法律によりましてその限られた範囲内におきましての行為規制を命ずるというような権限のみでございますので、一般的な調査監督権を持っていないというところは御理解いただきたいと思います。
  228. 加美山利弘

    説明員加美山利弘君) お答えいたします。  本件捜査が適正に行われ全容が解明できるよう神奈川県警察を指導してまいりたいと存じます。  以上でございます。
  229. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 では、あとは、せっかく両大臣が来ておるので、本当は二十分二十分と思っていたんだけれども、どうも銀行局長の答弁がああいう状況であと十分しかないのでどの程度議論できるかわかりませんが、長良川河口ぜき問題について質問をしたいと思います。  時間がないので端的に申しますと、建設大臣にお聞きしたいのは、河口ぜきの必要の論拠は、要するにしゅんせつをして塩害がいくからというんですが、塩害が果たしてあるのかどうか。塩害がなければこの必要性がなくなりますよね、治水の面からは。そのことも含めてですが、塩害はあるというならばこれは建設省が、要するに建設する側で立証しなきゃいけませんよ。ただ、今あるというだけで実際どういう規模の塩害がどういう仕組みで発生するのか、これは何も言っていません。納得しようがないんです。ということは、なぜ立証責任があるかと申しますと、今ある自然を河口ぜきでとめて自然をがらっと変えちゃうんだからね。現状を変化させる側に変化させる根拠を主張しかつ立証する責任がある。主張しています、塩害発生すると。しかし、主張したその塩害の発生を建設省が立証しなきゃいけませんが、ただ言うだけでしょう。どこにありますか。
  230. 近藤徹

    説明員近藤徹君) 長良川河口ぜきでございますが、この計画は長良川の治水の安全度を確保する意味で、現在の治水計画七千五百トンを安全流下させるために河積の確保が必要になるわけでございます。  その場合に、大規模なしゅんせつが必要でございますが、今おっしゃいましたように、その大規模なしゅんせつに伴って、現在河口の下流の方でとどまっている塩水が上流まで遡上することになります。この区域には工業用水や農業用水の取水口がございまして、これらの取水口に塩分が入ってくるということになりまして、関係の水量に支障がある。また、それぞれの現在淡水に囲まれている区域に塩水が遡上してまいりますので、地下水や土壌への塩分化が進むということでございまして、これらについては既に過去の幾つかの河川におきましても大規模しゅんせつにおいて塩害によって被害が発生し、そのために河口ぜきが必要となった事例もたくさんございまして、従来から得られた知見に基づいて必要と考えておるわけでございます。
  231. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 一つは、取水口であれば取水口を上へ上げりゃいいんですよ。最小限度の自然破壊、自然への変化で水が取れるのだからね。河口ぜきだと完全に川が変わっちゃうんですから。しかも、これは今問題になっておるように上流までダムのない数少ない川だ、どうしても残したいということで大問題になっていますよね。だから取水口だって上でいいんです。  それから、実際塩害が発生するというのであるならば、発生してしかるべきところは現にあるんです。二面が塩水を相当含んだ木曽川、長良川に囲まれて一面が海に囲まれている。発生するんだったらここに発生してしかるべきです。発生していますか、どうですか。
  232. 近藤徹

    説明員近藤徹君) 長良川の下流部で現在塩水に洗われている部分については、過去に大変な塩害の被害がございました。これらの地域については、例えば稲作の塩害被害の防除のためにも大変な努力をしてまいりました。例えば、先生おっしゃいますように、上流に取水口を移すという場合にも、従来は簡単に得られた水源を改めて確保するということ、それに対する水資源開発の努力、またいずれにしても上流で取水するとすれば、現在のせきと同規模のせきを上流に建設すること、その場合にはそのせきから下流部について、結局河川の水量は減るわけでございますから、それによっていろいろな環境への影響がございます。それらを防ぐためには、我々の従来進めてまいりました実例から見ましても、現在の河口の部分にせきを建設し塩水の遡上を防ぐのが最も妥当な計画だと判断して進めておるところでございます。
  233. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 確かに伊勢湾台風の直後に塩害がありました。被害割合三三・九%、その後淡水を入れるとかいろいろの工夫もし努力もした結果、七五年以降は被害割合が一%を割って、七九年以降は〇・三から〇・四、本当にあるかないかの少ないところで安定しておるんです。〇・三なんといえばないと同じですよ。(資料を手渡す)  そこで、そこの写真、それはいつのものだと思いますか。
  234. 近藤徹

    説明員近藤徹君) いつかと言われましても即答はしかねますが、これは恐らく三重県長島町長良川河口に所在する区域内の農業被害の写真だと思います。  ちょっと御説明させていただきますと、長島町ではかつては青取水といいますか、河川の水を取って農業用水に使っておったわけでございますが、この地域は地下水取水あるいは河川のしゅんせつその他によりまして河道が、河床が低くなったということもございまして、塩分の遡上が上流に及んできた。そのために昭和三十年代からは河川水の塩水化、地下水の塩分汚染によって御承知のようなこういう稲作被害が発生して、結局河川水を使用できなくなったわけでございます。その結果としまして、深層の地下水をくみ上げて利用しておったわけでございますが、結果におきましては地盤沈下がさらに一層進行し、地下水の塩分汚染も発生してきた結果、農業用水の利用に支障を来したわけでございます。これらを防ぐためにこの地域は一体となって、まず従来の農業用水の水源を他に求めるということで、例えば木曽川用水等の大事業によってこの水源の確保を行ったということ、特に他の地域以上に土壌の表面に塩分が付着することを防ぐための除塩用水と余計水源が必要となること。また、排水路や排水機場を整備する等多大の経費を投入して長期間にわたるこれらの対策によって辛うじて現在塩害の被害が顕在化しない状況にありますが、それでも現在数量的には少ないわけでございますが、塩害源が発生している状況でございます。  それから申し上げたいのは、同時に、土壌、地下水等への環境汚染も発生するわけでございますので、やはり河口ぜきによる塩水遡上を防ぐことが最も被害も少なく妥当な措置だと考えております。
  235. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その写真は河口ぜき建設現場、要するに見学者コースのところにほかのものと一緒に飾ってあったものです。そこに危険な塩害が書いてあるでしょう。その写真は伊勢湾台風直後です。それは当たり前ですね、塩害があるのは。その赤い図もそうですよ。だってその直前まで海の底だったんだから当たり前じゃないですか。三十何%あったんです。今は〇・三%だから、百分の一ですよ。塩害はない。いろいろ対策をやった結果もあるけれどもね。  それで、環境庁長官せっかく来ていただいたので――いや、局長はちょっと待ってください、時間ないから。環境庁長官、水利用についてもこれは県の計画で、国の方は全然まだチェック何もしていませんよ。それも問題。今言ったとおり塩害なんというのはもうないんだから。にもかかわらず、こんな自然破壊ということは、環境庁としては大変問題だろうと思うし、長官も一定の発言をされております。今の議論もお聞きになった上でひとつ決意をお述べいただきたい。――もう時間がないんだから。私は局長を指名していませんよ。質問をしない者に答えてもらっては困る。
  236. 北川石松

    ○国務大臣(北川石松君) ただいま近藤委員からの御質問でございますが、決意を述べろということでございますが、この点につきましては、いろいろとやはり長年の歳月を経ていることも事実であるから、調査をした上で答えなくては、軽々しく今私がここで決意を表明する段階でないと、このように思っております。
  237. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 では一言。  調査が必要だというそういった発言と承っておきます。調査すれば一定の発言をすると、こういった趣旨であると私は理解しまして、時間がないので質問を終わります。
  238. 高井和伸

    ○高井和伸君 前回は行政手続法制定への動きの中の行政処分を中心に伺いましたけれども、きょうはその続編で、行政指導を中心に伺いたいと思います。  きょうの今までの議論の中でも、行政各庁のいろんな行政指導的な側面の言葉もたくさん出てきました。一般的に行政指導というのは、行政庁がある個人ないしは会社あてに、ある一定の行為をやってくれ、やってくれるなというような両方を要請する行為というふうに一応受けとめた上で、こういった行政指導が行政によって国民のいろんな、特に経済活動が中心だと思いますけれども、いろんな場面で影響を及ぼしてくる。行政指導ですから、柔道の試合でも指導という言葉があるように、聞く聞かぬは別としても、ある程度の効果が期待して行われるわけでございまして、その行政指導が行われることによって、ある種の侵害、損害、そういったものが出てくるのもまた一つの当然の結論だろうと思いますが、その責任は、通常行政指導という場面では行政庁はとらないという前提で行われているはずでございます。  そんなことで考えるときに、やはり日本の全体、国を運営する上での行政指導という役割は、非常に微妙なところで妙味を出して、いいテクニックとしてあちらこちらで使われているんだろう。そのように予測もし、日ごろ見聞しているわけでございますが、これを国民の側から見ますと、聞きたくもない行政指導があるし行政指導が欲しいのにやらない場面もあるというようなことで、つまり国民参加の政治というか、行政がいろんな場面で、行政指導によって逆の、プラス、マイナス両面がある。ある一定のルールがないことには、また国民側から見れば経済を運営するというか、経済を支えている企業活動というか、そういった側面では大変困るというようなことがあります。私はそういった面で行政指導というものが大変きちっとした形で運営されなきゃいけないという見地に立つものでございます。  そこで総務庁、せんだってからのお話のとおり、行政手続法の一環として行政指導も射程距離に入れられまして御検討なさっているということで理解しております。そこで、行政指導はたくさんあちらこちらに散らばって現に行われているというふうに私も理解しますが、この行政手続法研究会の中間報告においては、こういった行政指導手続にはどのような考えでもって臨まれているのか、そこらの点について御見識を伺いたいと思います。
  239. 増島俊之

    説明員(増島俊之君) 行政指導につきましては、御指摘のとおりいろいろな態様のものがあるわけでございます。研究会の中でまず行政指導の評価といいますか、行政指導というものについてどう評価するかということでございますが、行政手続法の研究会では、やはり行政指導というものが行政運営の弾力性の確保あるいは行政ニーズへの迅速な対応というような観点から、現実にあります法令の非常に補完的な機能、そういうものを果たしている、そういう意義がある、そういう評価でございます。    〔委員長退席、理事会田長栄君着席〕  ただ、行政指導につきましては、今先生御指摘のようないろいろな問題があるということで、そこでこの研究会の報告で挙げておりますものは、まず行政指導のうち申請の取り下げ、あるいはまた法令に基づかない負担、そういうものを求めて行われるもの、それから私人間の利害の調整に係るもの、それから行政処分につながる拘束力の強いもの、そういうものにつきましては、行政の透明性、明確さあるいは慎重さ、そういうものを確保する観点から、相手方が要求した場合には文書を必ず交付する、そういうこと。それからこの行政指導につきましていろいろな不服があるわけでございますが、行政機関に対してこの不服を申し出ることができる。それに対してその回答を行政機関側に義務づける、そういう仕組みが要るのではないかというのが研究会の考え方でございます。
  240. 高井和伸

    ○高井和伸君 研究会の考え方はそれなりに文書も見ておりますので理解できます。それで、こういったことが問題にされるきっかけというか、もちろん総務庁ないしはそういった研究会は早くから気づいていたわけでございますが、時あたかも昨年の日米構造協議、ことしに入りましての日米構造協議においても、この行政指導の透明性がかなりいろんな場面で指摘されて、総務庁から見れば我が意を得たりというような側面で、早目に行政指導に対するそれなりの基準ないしは法制を決めなきゃいかぬのじゃないか、こうお思いになったんだろうと思いますけれども、特にアメリカ側からの日本の行政指導についてのある意味ではわかりにくさというようなことで、新聞にも報道されておりましたけれども、そういった点でアメリカ側から求められた行政指導における特に透明性だというふうに私は理解しておりますけれども、それに対する研究会の中間報告で示された基本的な認識と、私の言いたいのは行政指導という問題についての日米構造協議における日米間の確認、最終的に日本側からの措置の確認された事項と研究会で考えている行政指導の運用というんですか。そういったものとのそごというものはあったんでしょうか。    〔理事会田長栄君退席、委員長着席〕
  241. 増島俊之

    説明員(増島俊之君) 日米構造協議の内容につきまして、その意味内容を正確に語るそういう立場ではございませんけれども、文言で、「排他的取引慣行」の中で行政指導について触れておりまして、   日本国政府は、行政指導の政府全体の包括的な原則として透明性及び公正性を確保するため、行政指導の内容が市場閉鎖的でなくかつ公正な競争を阻害しないとの政府の意図と一致するようにすることを保証する。また、行政指導は、可能な限り文書で行うこととし、それが行われた場合には、例えば、安全保障に係る場合、公表すれば営業秘密の漏洩等から生ずるような損害をもたらし又はそのおそれがある場合等公表しない有力な理由がある場合を除き、一般に知り得るようにする。 そういう内容のものがございますが、この文言の理解の限りでございますけれども、恐らく経済活というものを念頭に置きましてこういう日米構造協議の中におきます閣議了解の文書があるのではないかと思うわけでございますが、研究会では行政一般の立場から検討をいたしているわけでございます。しかし、基本的には行政の透明性、公平性の確保ということが基本の考え方として貫かれているわけでございますので、そういう意味では共通の視点に立つ、そういうものではないかというふうに考えております。
  242. 高井和伸

    ○高井和伸君 先ほどの研究会における、文書による行政指導、そして今もここにありましたように、一定の場合を制限はしつつも基本的には文書による行政指導をするということで、行政指導の透明性が双方図られているというふうに理解するわけでございますけれども、今のは非常に抽象的な、総論的な研究会の話であったり、日米構造協議における日本側の対処の措置の内容であったりするわけでございますが、現実的に、具体的に総務庁が把握されていることで結構でございますけれども日本の行政庁が行っている行政指導において、現実的には理由をある程度書いて示せば最高でしょうけれども、理由を必ずいつも示しながら行われているのかどうか、そこら辺の実態。まず、行政指導を行われたときの指導の理由が説明されているかどうか、そして二つ目は文書で示されているのかどうか、そういったような実態面では、今まで抽象的な議論ばかりやっておりますのですが、総務庁で把握の事実はいかがでございましょうか。
  243. 増島俊之

    説明員(増島俊之君) 私どもで行政指導を行う理由、それを各省庁でどういう形で公表しているかどうか、そういうことについては、その実態については把握しておりません。
  244. 高井和伸

    ○高井和伸君 簡潔な質問ですが、今後とも実態を把握する必要があるのじゃなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  245. 増島俊之

    説明員(増島俊之君) 行政手続制度の検討の場合に、研究会の中間報告の中でも中心的に取り上げておりますのは、行政指導手続、それから行政日導手続でございます。したがいまして、これを行政手続法制の中でどのようにとらえるのかということは非常に重要なことでございまして、法制をいろいろ議論しますときに、その基礎としてその種の行政指導のいわば実態、あるいは法制の中で取り上げる場合に当然基礎となる、そういう実情といいますか、情報の把握、そういうものは必要なことであるというふうに考えております。
  246. 高井和伸

    ○高井和伸君 先ほど、総務庁の方々がおられないときに、近藤委員がティピーシーという海外商品取引会社がいろんな事故を起こしている、それに関して、大蔵省の銀行局がその某都市銀行とその会社との間の紛争解決にもう少し行政指導をしたらどうかと、そういうような質問があったりしまして、現実的には大臣答弁では、民事介入はしない、こういうような御判断でございましたけれども、世の中の民事紛争について、商取引だから行政は何も介入しない、こういうわけにはいかない場面が、例えば石油の小売価格の値上げの問題だとか、いろんな場面で出てくるわけでして、私人間において関心を示さなければいけない段階が行政庁にまた出てくるわけでございます。そういったときに、当然値上げを予定している、資本主義の原理で言えば経済法として許される利益の範囲内で行っている経済行為について行政庁が指導するということになれば、当然ある種の損害がそれを指導を受ける側からすれば出てくるわけでございまして、ある意味では理由を聞かせていただかなきゃ納得できない、こういうようなことになるのじゃなかろうかと思うわけです。そういう面で、行政指導の理由というものは、少なくとも行政指導の透明性という、そして一貫性あるいは予測可能性、そういった問題で掌握されなきゃいかぬということになろうかと思うわけですね。その場面で、私の考えるのは、やっぱり行政指導をやるたびにいろんな手続がぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ言われちゃかなわぬと、行政庁としては。それでは機動性にも欠けるし弾力性にも欠ける、そういう側面にもなるかとは思いますけれども、やはり行政は国民のためにあり、行政に対して国民も参加しているという意識があればこそ強い国家になるわけでございまして、ただGNPが大きければいい、経済力があればいいというのじゃなくて、国の品格としての行政庁の役割という面ではかなりの面でいつも自由自在の行政庁の行政指導じゃなくて、かなり安定した行政指導がいつも行われ、国民がそれに納得してある種の損害が生ずることにも唯々諾々と従っていくというような仕組みがやっぱり行政指導の中においても必要ではなかろうか。そういう面で、今後とも行政手続法の制定への中で、行政指導についての一環として行政処分ないしは行政指導という二つの大きい項目をおっしゃられましたけれども、ぜひ一定のルールづくりに励んでいただきたいというふうに感ずるわけでございます。  私もせんだってちょっとフランスへ行きまして、そういったことを掌握している省、ファンクションパブリックとかいうような省へ行きまして、そこの次官のような方にお話を聞いてきますと、やはりそういう理由付記、いろんな場面で行政庁が行うことについて理由を告げる。そしてまた、そういった行政庁の処分によって不利益を得た人に対しては文書をいつも公開する。そういうような側面で、行政庁の行為に対して国民の信用をかち得るような努力を一生懸命なさっておられまして、それで本を一冊もらってきたんですが、それはこんな本で、ぱちっといろんな国民からのアクセスが行政庁にできるように、きちっとした面でかなりの手当てを、フランスは一般法はありませんけれども、個別法の世界でなさっているという実態を見るときに、日本もいよいよもって国際社会において一人前の国になるためにも、まあなっている面もありますが、トータル的になる面でもこの行政手続法の中における行政指導という側面、特に損害が生じても損害賠償しないという前提で行われる行政指導の場面において、特にここに書いてある案文だけでももう早速実施されてもいいんじゃないか。研究会における参考までに示された案文だけ見ても、もうこれで結構じゃないかと思うほど、そう厳しい内容じゃなくて、一般的に法律の趣旨を逸脱しない範囲で行政指導しなきゃならないと、当たり前のことを書いてあるわけですが、えてして行政がしっかりしているからこそ日本の経済が発展したんだ、行政のやることにそんなに手数をかけたんじゃ日本はおくれてしまうというような時代はもう終わったんじゃないか。これからはしっかり、じっくり行く時代じゃなかろうか。戦後四十五年、もうじき五十年で、半世紀になりますけれども、いろんな世の中の動きを見るにつけ行政庁の役割もかなりきちっとしたものになっていかなきゃいけない、このように確信するわけでございます。  長々演説しましたけれども、時間になりますので、最後に行政指導における、総務庁が今後行政指導、行政手続という側面から見るセンスとしてどのようにお考えなのか、長官からお話をいただければありがたいと思います。
  247. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 今の高井委員の御質問のように、行政指導につきましてどのように行政法規の上で取り扱うか、これ大問題だと思っております。実は私は、私の個人的な経験も時々申し上げて恐縮なんですけれども昭和二十年の終戦後からしばらく占領時代に、行政指導について、どうしてそういうことができるのだ、アメリカの占領軍との間に大変な議論が展開されたことがございます。私どもは、当然こういったことは官庁の権限に任されていることであろうと思っておりましたが、アメリカの考え方は全く違っていたことを今しみじみと考えさせられ、当時ありました行政指導もほとんどなくなったような状況でございます。  しかしながら、今申しましたように行政の迅速性、あるいはまた一つの勧告を出すということは、特に日本の社会では何といっても官庁、行政の信頼度というものが私は大変民間にある。したがって、お上が言うからというようなことで迅速に解決できる面がある。これが行政指導だろうと思いますが、それはしかし多分に法律の根拠が必要なものが相当あるんじゃないか。だけれども、法律の根拠なくしてやるものだから、どうしてそういうことができるんだというようなことをアメリカ人に私は言われたことがあるのでございます。  このような長い経験をして、総務庁の方々にも申し上げておりますが、日本の社会におけるところの行政指導のこれまでの存立の意義、これはもう十分考え、しかし同時にやっぱり法治国家の法律に基づく根拠というものもぜひとも考えていかなければならない。救済といいましても、なかなか行政指導に対する救済というのは非常に難しいことでございます。このあたりをどのように法律構成をしていくか、またアメリカに透明性とか、こんなことが出ないような形での、私は大変難しい方向であると思いますけれども、考えて、行政法規の上で取り上げていかなければならない大変難しい問題で、表現の仕方を考えただけでも大変難しいことを私は多年の経験で感ずるものでございますから、そういう形で総務庁で本当に深く研究していきたい、こういうふうに考えております。
  248. 高井和伸

    ○高井和伸君 あと一分ほど時間ありますので。  今のお話を聞いておりまして感想を述べますと、やはりある種の哲学が要るのじゃなかろうか。今お上のことは正しいとおっしゃられました。やはりお上のやっていることについては従うという日本の精神的な風土があったからいいんだろうけれども、それが国際的に通用しない。そういった面でのこれからの哲学づくり、まあ国民参加の行政という側面ないしは国民の理解できる行政というような側面にいくんじゃなかろうかということを特に大臣に今後ともお考え願って、ある種のポリシーがなかったら、哲学がなければなかなかできにくい作業だというふうに私も質問しながら感じておりましたので、感想を述べさせていただきました。  終わります。
  249. 三治重信

    ○三治重信君 私、大蔵省に公債問題についてちょっとお伺いしたいと思うんですが、十年ほどの公債の残高を出していただいたんですけれども、これを見ると、四十年代は三、四年でもう倍額、倍増になっている。金額がだんだん大きくなったから、五十六年から七、八年の間、倍の金額というのが少なくなったということでございますけれども、非常に公債の残高が累増していった結果、私はいつも心配をしておるのは、年度予算の組み方で、公債の利子の支払いが予算の支払いの二〇%を超すようになってきた。これは何としても公債を一遍出して、予算の規模からいってどんどん利子を、予算規模のうちで最大限ですね、今。社会保障費より多いですよね、利子の支払い金額が。そういうのでいいのかどうか、何かそこにめどを大蔵省として持っているのか、財政制度審議会なり何なりというものにあってしかるべきだと思うんだが、どうもその点について、歳出規模の中に占める公債費の割合をどの程度に抑えていくかというような問題についてはどうもまだ余りはっきりしたものが出ていないようなんですが、その点そういうことについての財政制度審議会なり大蔵省の中の研究で、財政規模の中における公債費の占める率は何%が適当か、あるいはそういうふうな基準をつくることが財政政策としてはまずい、そんなことは頭にないんだというふうなお考えなのか。
  250. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 今委員が御指摘になりましたように、連年の公債発行によりまして公債残高は平成年度末において百六十四兆円にも達するものと見込まれております。国債費が歳出予算の二割を超えて他の政策的な経費を圧迫しているという状況委員の御指摘のとおりであります。そして、今後を考えましても、ようやく特例公債に依存せずに予算編成の終わりました本年以降も、なおその国債費の重圧は続いていくわけであります。今委員は、それについて何らかの対応をというお話でありましたけれども、財政審のこの前の報告の中におきましても、とにかく当面五カ年程度を目標として財政運営の新しい努力目標として公債依存度の引き下げを図るという目標を出されている。あわせて、特例公債の早期償還というものに努めることによって国債残高が累増しないような体質を早くつくれという御指示をいただいているわけであります。  私どもはこうした方向に向けてこれから努力をしてまいるわけでありますが、その場合におきまして、今委員が述べられましたような、例えば歳出の中に占める公債費の比率を固定するといったようなことは、私は現実性は余りないのではないか。率直にそう思います。なぜなら、予算そのものがある意味では生き物でありまして、その年その年の経済情勢に応じて対応すべき性格のものであります。その中において、率であるか金額であるかは別といたしまして、公債費のシェアを初めから固定する、これはいかがなものでしょう。私はそう思います。
  251. 三治重信

    ○三治重信君 その御意見、私も歳出の率から公債の面を攻撃するというのは正当ではないような気もするわけです。したがって、公債の残高をふやさないようにするとか公債の残高は国民経済の中、財政制度の中で合理化するという目標をどこに置くかということが次の問題だろうと思うわけなんです。  私は、経済学の本なんかを読んでいると、アメリカの例なんというと、結局公債の残高はGNPの中の割合で抑えるべきだと。GNPに対して公債が四〇%も五〇%もいくというと、初めの少ないときには公債というのがかえって金融の効率化に役立つけれども、ある一定の限度を超すというと民間資金も圧迫するし、財政制度の乱れも出てくるし、だからGNPと国債の割合を十分検討していかなければ、その一番いいのがやはりGNPの伸び率以下に公債の伸び率を、トータルの金額を下げていくというのが公債を抑える一つの方法じゃないかというようなのも読んだことがあるんですけれども、今の、予算額で抑えるということについては必ずしも適当でないという判断に対して、では公債の金額を累増を抑えるというのをどこに目標を置くかということについて、GNPの割合についてGNPの何%ぐらいが国債残高としてそれ以上いかぬように累増を抑えるとかというようなことについて、研究なりある程度の目標なりをお持ちになったことがございますか。
  252. 田波耕治

    説明員(田波耕治君) 多少技術的な面もございますので、補足的に答弁させていただきたいと思います。  委員指摘のように、国債費率、あるいはアメリカのように国債残高対GNPというのは一つの指標だろうかと思います。ただ、私どもが年々の財政運営をやっていく場合に、どの程度国債を出したらいいかということを考えます場合に、確かに例えば国債残高対GNP比というのはどのくらい財政構造が硬直化しているかということが端的にあらわれるという面もございますけれども、逆にそのときの例えば国債費でございましたら、金利情勢であるとかあるいは経済情勢等によってかなり数字がぶれるという、そういう難点がございます。したがいまして、毎年度の予算編成の具体的な指針としてはなかなか用いにくい面があるということでございまして、やはり、現在財政審なんかで言われておりますところの国債依存度というものは、歳入の全体に占める公債収入の割合を示す指標でございますから、そういった指標とは若干違って簡明であり、あるいは一義的であるということで、毎年度の財政運営に当たっての具体的指針としては適切なものではないかというふうに考えております。  ただ、委員指摘のように、やはり国債費率あるいは国債残高のGNP比といったものについても十分注視をしながら今後財政改革をやっていく必要があるということだろうかと思います。
  253. 三治重信

    ○三治重信君 それでは、さらにしつこいことになるかと思うんですが、説明してください。  今の財政運営からいくというと、毎年度出す国債の目標を、財政の規模の割合を一定率以下に下げる、公債の財政依存度を一定の比率以上に上げないように財政規模を考える、こういうことで今公債に対する基本的な態度を決めている、こういうことですね。それでひとつやっていただいて、できるだけ規模を大きくしないようにするという方針がわかりました。  そこで、今の日本経済や財政からいって百六十四兆円という公債残高というものが、実際の今の財政規模なり財政運営からいって多い、少し多過ぎる、何とか減らさにゃならぬ、こういうふうに認められておるのか。あるいは、もう少し下げたいと思うならば、どれぐらいに下げて、この公債残高を下げる目標をここ三年なり五年にという財政計画を持とうとしようとするか、しないか。その点、お答え願いたい。
  254. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 今委員は公債残高を幾ら以下に減らせるかという御指摘でありましたけれども、我々は今その累増にいかにして歯どめをかけるかに心を砕いているさなかであります。剰余金の扱い等につきましても、いろんな御議論がありました際、私は少しでも公債償還財源に充てるべきだと考えているという答弁をかつて本院でもいたしました。同様に、今私どもは、赤字公債についてはおかげさまで発行せずに済むような状態になりましたが、なお建設公債には依存しつつ公共投資を拡大しているさなかであります。  しかし、それも含めて我々はその依存度をまずとにかく五%以下に抑え込みたい。本年ようやく一割の大台を切ることができましたけれども、かつて公債依存度が三〇%を超えておる時期もございました。そしてその過去の公債の利払いというものも年々大きくなっておりますことは御承知のとおりでありまして、我々はできるだけとにかく国民からちょうだいをする税によって事業を進めていくということに心を砕かなければなりません。そして公債依存度そのものを下げる努力をしていくこと自体が極めて大きな苦しい壁になってまいります。しかし、その壁も越えなければなりません。そしていかにして累増に歯どめをかけるかということが今日の問題でありまして、今委員が御指摘になりましたように、三年あるいは五年の間に公債残高が減少するところへ持っていけるか、計画を立てられるかと言われますと、私には到底その自信はない、率直に申し上げます。
  255. 三治重信

    ○三治重信君 そこで、民社党はかねてから国有財産、殊に政府所有の土地や株を売却して公債の削減を図るべきだという政策を提言しているわけなんですが、土地は、最近の土地価格の非常な高騰で、土地を政府が売るということは値上げを刺激するというようなことからこれはちょっとまずいだろう、こう思う。株といっていたやつが、大蔵省はやったんだけれども、最近の急激な値下がりで思うようにいかないということなんですが、しかし、政府の保有の株式も出してもらったんですけれども余り大したものがなさそうですし、それから国有鉄道の株なんかは、いろいろ新聞に時々公開のやつが出ているんですが、これはやはり公債減の財源に使うんじゃなくて、国鉄の赤字を減らす財源として考えている、こういうふうに理解していいんですか。
  256. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) JRの旅客鉄道の六社及び貨物会社、七社あるわけでありますけれども、この株式は国鉄清算事業団が保有しておりますことは御承知のとおりであります。そして、これは国鉄改革の際、本院でも御審議をいただきましたように、清算事業団が引き継ぎました旧国鉄の長期債務などの返済に充てるということにいたしておるわけであります。その際の御議論でも御記憶のように、この株式を予測できる最高の価格で売却いたしましてもなお残る累積債務、長期債務というものをどう国民に御負担をいただくかという問題がこの国鉄の長期債務には残るわけでありまして、JR株式の売却益というものは清算事業団の継承いたしました債務、その弁済に充当することになっております。
  257. 三治重信

    ○三治重信君 公債の関係はその程度にいたします。  この十二日から臨時国会が召集されるように新聞に出ているんですけれども大蔵大臣の見通しとして、臨時国会は平和協力隊法が表面に出てきておるんですけれども、元来からいけば消費税の取り扱いが一番問題になるはずだと思っておるわけなんですけれども、国会の中に両院合同協議会が設けられたことを私も知っておるんですけれども、政府の対応として、どうしてもやはり現実に消費税というものは政府の一番当初の原案どおりでやられており、自民党自身も改正したいという意見表示をしている。そうすると、どうしても政府としてもこれを臨時国会で処理したいというふうな気持ちは当然強くあらねばならぬと思うんですが、それに対する態度はいかがですか。
  258. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 御承知のように、本年の特別国会に私どもは消費税の見直しにつきまして法律案の形で御審議をお願いすべく提出をいたし、御審議をいただいたわけであります。幸いに衆議院段階におきましてはこれを可決させていただきましたが、残念ながら参議院において審議未了、廃案という事態になりました。その法律案提出ということをもって政府としての意思は御理解のいただけることであると考えておりますが、その後、前国会での法律案処理の経過を踏まえられた結果として、与野党がその責任を果たすというお立場から、各党の合意のもとに両院において税制問題等に関する両院合同協議会というものが設置されたわけでございます。  私どもとしては、消費税の存続というものを当然政府として前提に考えておりますけれども、国民の全体的長期的な利益といった高い次元からの御議論をいただきますとともに、その一日も早い建設的な合意というものが得られることを心から期待いたしており、その協議の状況を見守っておるところであります。
  259. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 以上で昭和六十二年度決算外二件の全般的質疑は終了いたしました。  次回の委員会は十月九日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会