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國弘正雄君 ありがとうございました。これは一
環境庁だけが取り扱うべき問題ではない。マスコミを含め、今
仰せになったように教育を含めてもう少し、さっきの私の
言葉で申しますならば命
の
言葉で物を発想し
考えるような、そういう
日本人でありたい。私も
日本人の一人としてかく願い、またそのために多少とも力を果たしてまいりましたけれども、今後とも
環境庁の
皆さん方と一緒になってこの問題に対応していきたい、かように
考えておりますのでよろしくお願いをいたします。
さて、次の問題ですが、明らかに今
軍縮の
方向に向かっております。私はこのことはもう何と言って喜んでいいかわからない。とにかく軍備というのは、たとえだれが何と言おうと、ありていに言えばできるだけたくさんの人を最も効率よく能率的に殺すための手だてでございます。したがって、そういうものが国際情勢の推移に伴って少なくとも減少の
方向に向かいつつある、私は軍拡よりは
軍縮の
方向というものはもう完全に定着しつつあるというふうに思うわけであります。そういった
軍縮の大きな
流れ――ムードなどという軽佻浮薄なことを私は申したくありません。
流れあるいは動向というふうに申したいんですが、その動向の中で一兆ドルを上回ると言われる
世界各国のいわゆる軍事費、これを少なくともふやさない、でき得べくんばこれを減らしていくことによってこれを平和の
配当金の一種類として
環境保全に回していくべきではないかという提案が実は随分あちこちから出ております。
先ほど私が言及いたしましたゴルバチョフ現
大統領の一月十九日のクレムリンにおける四十五分間の演説もそのことに非常に多くの時間を割いておりました。そしてもう少し今度は具体的な
環境問題の専門家、これは全
世界のいろんなところの人たちの中から、
環境保全に
軍縮で浮いた軍事費の一部を使うべきだというふうに言う人が出てきたわけであります。また、
環境庁の今の
長官、つまり
北川長官の前任者であられる志賀前
長官もそういう趣旨のことをある雑誌に
発言されたこともございます。
一つの例でありますけれども、数字をあえて挙げさせていただきますと、例えば一九八八年に
アメリカは三千億ドルの軍事費を使いました。それに対して
環境保全のための出費はその三分の二が民間の支出であって
政府支出ではなかったにもかかわらず、とにかく八百五十億ドルぐらいでしかなかったわけであります。一方、ソビエトは七百七十億ルーブルを軍事費に使いましたけれども三百億ルーブル程度の
環境保全しかなかったということが言われております。これは国の安全というものを保障するのは何よりも軍備であるべきだという、私としてはやや旧弊なと言いたいような
考え方に
アメリカもソビエトもからめ捕られていた、そして軍事費を増大することが
自分たちを強めるゆえんだというふうに
考えていたんですが、この軍事費の増大のために
アメリカもソビエトも今や御存じのような家庭の事情になってしまった、
経済力も
工業力も弱まってしまったというのが実態であります。
こういうふうにこういう事実を
認識した人々の中から、
米ソ双方から軍事費の一部を
環境保全のために充当することがこの宇宙船
地球号という我々の共通の乗り物であるいとかぼそけき星であるこの
地球というものをより安全なところたらしめるゆえんなんだというふうな
考え方が出てまいりました。
そういったような
考え方にのっとってワシントンにあります
世界的な
環境専門研究所であります、
環境だけじゃありませんが
世界的な研究所でありますワールド・ウォッチ・インスチチュートのレスター・ブラウンというこれはもう国際的に非常に高名な人ですが、レスター・ブラウンさんが
環境安保費、
環境安保というような言い方を提唱しております。これはブラウンさんに私は直接何回も会って聞いてきたことですけれども、ブラウンさんによりますと、一九九〇年から二〇〇〇年の間に総計七千七百四十億ドルの支出を行うことで以下の四つの最重要
分野の
環境の劣化を防ぐことができる、こう言っております。
この四
分野というのは、これは
環境問題に関心のあるお互いにとってはいずれも重要な問題ばかりでありますが、
一つは、表土の流出をとどめる。つまり土壌崩壊の防止、トップソイルの流出を防ぐ。このトップソイルの流出というのは、ブラウンさんによれば
アメリカの抱えている最大の
環境問題である。こういうわけでこれは食糧問題その他、将来を
考えますと非常に恐ろしいことでございますし、
日本においてもどんどんどんどん土が死んでいるという実態を私は知っておるわけですが、とにかく表土の流出をとどめることで土壌崩壊の防止というのが第一の
分野。
それから、第二の
分野は、これは後で
長官にも御質問したいんですが、
地球の再植林の問題。それから三番目は、
エネルギー効率の増進ということ。そして四番目として、再生可能なリサイクルすることのできる新
エネルギーの開発。この四つの
分野にさっき申し上げた七千七百四十億ドルという
お金を十年間かけることによってこれは十分に対処が可能なんだという
一つの試案でございますけれども、しかし何しろレスター・ブラウンさんとその背後のワールド・ウォッチ研究所の実力のほどを
考えるとこれは決して試案あるいは私案というような簡単なものではない。この総額は現在の
世界全体の軍事支出の八%から一〇%ぐらい程度であるということをブラウンさんは言うわけでございます。
そういったようなことを
考えますと、どうでしょうか、
長官、一般的な
考え方で結構でございますけれども、
我が国もその
方向に沿って
地球問題などについて積極的に取り組んでいく
一つの具体的な姿勢として、やはり
日本も
世界の
流れに沿って
軍縮の
方向を図っていくということはこれは不可欠なことだろうと思うんです。ところが、防衛費という名の軍事費が四兆何千億円という
時代にあって、先ほども御披露のありました
環境庁の例えばプロパーの
予算はそのもう本当に九牛の一毛でしかない。これはちょっとバランスを失しているのではないか。もちろん一気にこれをひっくり返すなどということができないことは、これは私だって幾ら何だって知っておりますけれども、徐々にではあってもこの
方向を目指すべきではないだろうか。
地球そのものがおかしくなっていく、
地球そのものがその生存の可能性を大きく今問われているというような
時代に防衛費という名のもとにおける軍事費のみがいたずらに突出をするというのはこれは大体非合理的なことでありますし、また現在の
世界の大きな
流れにも全く逆行することだと
思います。
長官のこれまた個人的な御見解で結構でございますから、率直なところを承りたく
思います。