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参考人(
橋本道夫君) ただいま御紹介いただきました
橋本でございます。
きょうお話し申し上げますのは、非常に広い問題の中で、少し絞りまして、
地球温暖化の問題とその対応ということについてお話しさせていただきたいと思います。
ここのタイトルにございます
海外環
境協力センターというのは、ほんのこの先月末、初めて
環境庁長官のところから社団法人をいただきまして
動き出したばかりのものでございまして、まだ正式に皆さんにごあいさつをいたしておりません。そのことだけを前もって申し上げておきます。今
IPCCの
政府間パネルというところの第二作業部会の副議長をいたしておりまして、議長はソ連の国家気象水利
委員会
委員長のイズラエル大臣でございます。そういう
関係でこの
地球温暖化の問題に触れさせていただきます。
まず、「問題の背景と動向」というところで、これは皆さんよく御存じのことでしょうが、私が特に申し上げたいのは、従来の
環境問題とはおよそもうスケール、規模、複雑さ、長さも全部全く次元の違うすごい問題だということでございます。私は、終戦直後からずっと
環境衛生それから公害の
環境問題を取り上げてまいりました。そういう意味で、戦後は第一次、公害時代が第二次、今度
地球は第三次の問題となっておるわけです。ただ、御注意願いたいのは、第一次の問題が何も片づいたわけではない。特に
途上国では何にも片づいていないということであります。それから第二の問題はだんだん時代によって移り変わってくると、これも別に完全に片づいたわけではない。そういう中で、百年あるいは二百年のタイムスパンで非常な人類の経験したことのないようなところに入ってきているということを特に強調いたしたいと思います。従来の
環境運動的な感覚で取り組めるものではありません。百年間熱意が続くかということが基本であります。これは百年間熱意を続けて、毎十年ごときっちりやってそれをチェックして、そして次に時々飛躍をするというようなことができなければ、
地球としてはもう非常に困ったことになるというわけでありまして、
人口が三倍になりエネルギーが六十倍、これは考えてみるとすごいことであります。さらに二〇三〇年で一九八六年のエネルギーが二倍になりますし、CO2の放出が三倍に
増加するだろうということであります。そしてその中で、現在は
先進国の方がエネルギーの消費が大きいわけですが、一九九〇年代の半ば以降から
途上国の方がふえてきます。そういうようなことになりまして、
途上国の問題もこの問題では決して無視できるような問題ではない。スケールはむしろ
先進国以上に大きくなってくるということであります。そして
熱帯林がどんどん減少し、砂漠がまた拡大してくる。これは全部この気象やそういうものに
関係してきている話であります。現在、五十二億強の
人口が、大体二十一世紀初めに六十二億、二〇三〇年に八十七ないし八十九億、二一〇〇年には百億か百四億くらいではないかと、こう言われておるわけです。ですから、同じ部屋の中でこれだけの割合で人がふえてきた場合にどうなるかということをお考えいただくのが一番ぴったりする感じではないかと思います。
その中で、
温暖化を起こすというガスの寄与度というのは、これはEPAのデータでございますが、CO2がほとんど半分を占めている。それからCH4、メタンですね。それからCFCこれが先ほどのフロンでございます。それからN2Oでございますね。こういうぐあいになっていますが、この中で今対策が加わっているのはCFCだけです。そのCFCを今世紀末までに半分にカットをするというところまで、これは私はUNEPの非常な努力でここまできたと思います。あれだけ小さな弱い国際機関でよくあそこまで持ち込んだと思います。
そういうことで、このCFCはまず半分のところまできましたが、先ほど
安原局長のお話にもありましたように、これだけでは弱いということでさらに厳しくなるという
方向でございます。ただこれは一点集中的にたたいて抑え込めるものであります。抑え込んでも大体十年以上たってからでないと結果があらわれない、そういうような代物であるということをお含みおきください。
その中で、CO2は全然一点集中的にたたき込めるものではありません。そういうもので二〇三〇年代にはCO2の濃度が二倍になったときの状態、これがよく言われるんですが、それと等価、これは当という字を使う場合もありますが、CO2当価量という場合には当を使っています。そういうグリーン・ハウス・イフェクトもされております。ここにWMO、UNEP、ICSUが八五年、八七年の
会合で大体地表全温度が一・五から四・五上昇する、あるいは水位が二十ないし百四十とありますが、現在
IPCCで
検討しております。いずれこれは正式にされてきますでしょう。いろいろな話をずっと聞いていますと、大体二〇五〇年に海水は五十センチぐらい上がるのは間違いないのではないか、それから二一〇〇年には大体一メートル上がるのは間違いないんじゃないかというような感じのところでございます。私は、最も深刻なこの海水上昇で、
日本はもう既に、これは海水上昇ではありませんが、沖ノ鳥島が消えるということに対して二百八十億を
日本は投入した。あのちっぽけな島でそれだけ投入したんです。それが太平洋の島とモルジブの島というのは島が大体消えるのではないかという
議論になっておりまして、バングラデシュ等はよく
日本でも言われますが、島にとってはまさしく生存の問題であるということであります。
そこで、この国際的な取り組みとして、「持続可能な
開発」ということを言っておりますが、このCO2の削減もやっぱり持続可能な
開発ということが根底にあるわけです。我々は確かにもう既に相当
開発しておりますが、
途上国はまだ全然
開発していません。ぜひそれを頭に置いていかなければならないということでございまして、一九八八年の
国連総会の決議で
IPCC、インターガバメンタル・パネル・オン・クライメット・チェンジということで、
政府間の
気候変動に対するパネルというところで、第一作業
委員会は
予測とシナリオ、第二作業
委員会はインパクト、私はここに属しております。それから第三作業
委員会は
規制と対応ということをいたしております。ただ問題は、そうロジカルなシークエンス、
関係で動いておるのではありません。これは非常につらいところでありまして全部同時並行であります。同時並行をやって一番つらいのは実はインパクトでございます。本当は
予測がまず出て、そしてそれによってシナリオが決まって、そしてこうなるとインパクトはどうなるかというんですが、そのような余裕が全くありません。そういう点で、今回のレポートが出ても、これは行動を始める準備段階の取り決めのものでしかない。しかもこれは、これから百年続けてだんだんだんだんやっていかなければならないということでありまして、全体の議長のボーリン博士はおっしゃいましたが、この仕事は百年以上かかる仕事なんだ、今回はその事前の準備
調査に取りかかっただけのことである、それをゆめゆめ忘れないようにということを申されました。
この中で特に申し上げたいのは、
一つはアルシュ・サミットで随分積極的にこれを支持していただいて
方向づけをしていただいた。私は、あれだけ不確かさの多いものの中で
世界のトップの人が合意されたというのはやはり人類と大政治家の英知だと思います。これは
環境運動家や
環境学者や
環境大臣だけが幾ら張り切ってもできる仕事ではありません。大統領あるいは総理という方が
方向づけをしていただいて初めてこれが出発ができたというところであります。そこで
ノルドベイクの
環境大臣の宣言が、これはもう
環境庁長官からいろいろ言われておりますでしょうが、その中で
各国の姿勢が分かれております。このことについては後で申し上げます。
この問題の取り上げというのはUNEPとWMOが
協力してやっているわけでありますが、実際、UNEPもWMOも、エネルギーとか
開発について何の所管もありません。能力、見識も私は乏しいと思います。それを持っているのはやはりUNDP、
国連開発計画とか
世界銀行とかUNIDO、あるいはエネルギーではIEAというようなものが一番キーのものでありますが、まだこれは正式に組み入れて入っているわけではない。今後このような実行していくところではここの問題が非常に大きくなるだろうということであります。そういうことで、先ほど
企画調整局長のお話のように、一九九二年に向けて、ことしの
報告後は
枠組み条約で
環境と
開発の
会議というところが一番の出発点の重要なポイントになります。
その活動を少し簡単に御紹介いたしますと、第一グループは、イギリスの気象庁長官のホーグトン博士という方が議長でございまして、このグループは純粋に学問論文ベースであります。すべて学問論文ベースであります。ほかの人の言った、書いたということは全くございませんで、すべて確認されたアカデミックペーパーを基礎にして
議論をしているということで、
地球を大きく循環するモデルを中心にやっておられますが、海洋をどう組み入れるかとか、雲がどうなるかという点ではまだほとんど入れていない。一番の泣きどころは、いつどこでどのようなことが起こるのかをなかなかはっきり言えないということであります。我々知りたいのは、例えばアジアモンスーン
地域ではどうか、あるいは地中海
地域ではどうか、サヘルではどうか、そういうことが知りたいわけでありますが、なかなかそこに落として具体的なことが言えるまでには至らないというところでございまして、今回どの辺まで
報告で言えるかというところに関心が持たれております。
第二部会は、議長は先ほどのソ連のイズラエル大臣でございますが、ここで私は副議長をいたしておりまして、あと、作業
委員会の
委員長をいたしております。ここはまた、もう
一つのここの泣きどころは、実は学問論文が非常に乏しいわけであります。私はこの仕事をしていまして、いかに
先進国が発展
途上国にいろいろ今まで植民地をやったりいろんなことをしていました。しかし
研究をほとんどしていなかったんだなということをつくづく感じました。これは今後
日本にとっても大事なところだと思います。やはり学問がちゃんとしていないと具体的な対応ができないということでございます。そういうことで並行的に進めますから、なかなか理屈の上では難しい問題がございます。
この中で最も切実なのは、私どもは海面上昇であるというように思っています。確かに
日本にとっては既に相当な護岸が行われております。
日本自身が少しはリスクが高まることが来世紀には起こるかもしれないが、ほかの国のようなことはありません。しかし、先ほど申し上げましたような太平洋の島々、それからインド洋のモルジブアイランド、それからバングラデシュ、それからタイもそうであります。インドネシアのジャカルタももう五十センチ上がったら、大体あそこはもうちょっと荒れると全部つかるんじゃないかと、こう言われております。それから
アフリカの国は首都と工業地帯がほとんど海浜と同じところにあるというわけです。ですから、この問題は非常にじわじわ押し寄せてくる難しい問題であります。
それで、なぜマルタがこの
国連総会で言い出したかということにつきまして、私はマルタの
代表と一緒に食事をしたときに質問をしました。なぜあなたの国は聞いたのかと聞きますと、私の国は小さな島国である、私の国の収入はすべて観光収入がほとんどである、その観光収入というのはすばらしいビーチがある、そこのビーチがだめになったら、もううちの収入はほとんどだめになる。ところが最近、割合高潮とかあらしがふえてきた。私は、米ソ会談のときにあらしの起こったのは象徴的だと思いましたが、それによって住民がパニックになることが比較的ふえてきた、これは大変であるということで主張したんだというわけであります。ですから、
日本がどうもないからこれは大したことはないという感覚は絶対に持ってはならないということを強調いたしたいと思います。
それから、
アフリカ大陸のバイオマスであります。バイオマスというとえらい進んだような話のように聞こえますが、これは簡単に言いますと家をつくる木とか薪であります。これがどんどん減ってきているということでありまして、そして婦人の年間労働時間の三分の二は薪拾いに充てられておる。それから薪の取り合いで人殺しが起こるというような問題であります。そういう植物の資源、エネルギー源がなくなってきている、これは深刻であります。まさしく生存にかかわります。
それから干天と洪水。これは別に
温暖化がなくても起こっておるわけであります。しかし、今起こっている異常がどの程度
温暖化によって起こっているかということはまだわからない。私はこの間初めて知りましたが、
地球の割合暖かい温度というのは
温暖化現象で実は暖かくなっておる、しかももともと
温暖化があるんだ。しかし、そこに
温暖化がまたさらに進み出している、その
影響かどうかがなかなかわからぬのだというよう伺いました。
それから水資源であります。これは、
アフリカ等の
途上国の工業
都市のエネルギーはほとんど水力発電によっているんですね。これ調べてみますと、非常に
途上国の水力は高いです。ところが干天が来ますと水位が下がってしまって電気ができないわけです。それから、ザンベジ川に
関係しましたが、水は谷底を流れているが、それを揚げるポンプを回す電気がない、こういうわけであります。非常に苦しい。これがさらにひどくなる。現在でも、八一年から三年にかけて三年間の干ばつがザンベジ川流域で起こっています。病気の七割がすべて悪い水
関係の病気であります。これが
温暖化になるとさらに激しくなってくるということであります。それから、あと水資源、もちろん塩水化とか、遡上してくるとか、そういう問題がございます。
それから、農業生産は、ウクライナ
地域と米国
中西部の穀倉地帯がどうなるか、ひどいダメージを受けた経験もぽつぽつ今まであるわけでありますが、それを受けて二五から五〇%の削減、それが減産になった場合に
世界の市場に大きなインパクトを起こすということであります。それで、値段は上がる、それから市場のインパクトが起こるということが問題になっています。
人間居住で
環境難民のお話が既にございましたが、砂漠を遊牧の民として歩いている人々も非常にこれは困ってしまうわけです。水がなくなり地下水がなくなってきます。地下水というのはストックであります。それがなくなってくるというわけであります。
まああとは、このようなものを
検討しておるということで、特に御
説明は申し上げません。確かに少し、大体三百から五百キロメートルぐらい暖かいところが北に上がっていく。例えば東京が鹿児島ぐらいのところに来るんじゃないかという感じでございます。それで、ある点で
熱帯エリアが少し上がってくるだろうということの警告はあります。
それから、この中で余り言いませんでしたが、私ソ連の学者の話を聞いていまして、永久凍土帯、パーマフロストと言われます、そこは凍っているところですが、あそこが解けてくるとこれはまたすごく厄介なことになるということをつくづく感じました。先ほどのメタンガスは出てまいりますし、それから有効成分が全部とろけ出して出てしまうし、今まであったわずかな乏しい生物種がすべてだめになってくる。しかし、ある面では
開発ができるようになる。それを目指して今ソ連、
カナダ、ノルウェーは北極の
開発を一生懸命やっておるわけです。しかし、それを超えると今度はまず砂漠になるだろう、数十年の間に砂漠になるだろうと言われております。しかし、ソ連の発表にはその上の住民の話は一切ございません。僕も驚いたんですが、すごく困ると言いながら住民の話が全くないというような姿でございました。
第三作業部会の方は、
アメリカが議長でございます。
日本の通産省の横堀さんが最も重要な工業とエネルギーのセクションで座長をして、非常な努力をしていただいております。ここが
規制と削減に関する警告が最も大きい関心の的でございます。何とかいい
報告がまとまることを期待します。
それから
熱帯林業とか農業、
河川の方の問題がございますが、再度申し上げたいのは、海面上昇という問題は二〇五〇年ころには相当島国では問題になるでしょう。
日本ではございません。島国では問題になるでしょう。あるいはバングラデシュとかそういうところで問題になるだろうということであります。
それから、「政治・
外交行動の実績」としてここに出しておりますが、これは八〇年代はよく言われて私は認識を新たにしたんですが、貧困と対外負債と並んで
環境というのは三つの大きなテーマになっていました。その中で
環境が、これは米ソの冷戦の問題が一応
一つの区切りがついたというようなことで
環境がぐっと上がってきたというところはありますが、ここでソ連・東欧の問題が上がってきますと、果たしてこの問題がどれぐらいのところに今度は位置づけられるか。
国際政治の中での位置づけというのは、私は率直に申して不安であります。特に、東欧の今の
環境問題というのは、
日本の戦争直後か戦前のような全くひどい状態でありまして、ソ連もかなりこれに近い。一九七〇年代の
日本の姿ということでありますから、なかなかこの問題は国際的に関心がどこまで保たれるかということに率直に申して私は不安を持っております。
しかし、アルシュの首脳
会議での宣言で非常に強調していただきました。ここでいろいろのCO2の凍結ということが大きく問題になりますが、皆さんのお手元に
参考資料でアネックスというのが配ってございます。これの三番目をごらんになってください。これは先ほど石先生からもお話がございました。
日本は非常によくやっているが、しかしやる気があるのかというような感じについての御批判でございましたが、どれぐらいよくやっているかということを御理解をお願いするために、私はここに整理をして出したわけであります。
日本と
カナダと
アメリカとフランスとイギリスと
オランダとスウェーデンと西ドイツとあります。この中で省エネをどれだけやったかというと、一九七五年を一〇〇とすると、これは低い方がいいわけですが、
日本が七一、
カナダが八五、
アメリカが七七、フランスが九四、イギリスが八六、
オランダが八八。スウェーデンは九九、何もやっておらぬですね。それから西ドイツが八六。これはOECDのデータであります。
それから、今度はエネルギーをGDP当たりどれぐらい使っておるかというのを、下のところのトータル・プライマリー・エナジー・リクアイアメント、GDPというやつでございますが、
日本が○・二六、
カナダが○・六四、
アメリカが○・四四、フランスが○・三七、イギリスが○・四三、それから
オランダが、随分熱心に言っていますがエネルギーは使っているんですね、〇・五〇。それからスウェーデンが○・五四、西ドイツが○・四一八。
人口割にしてみますと、やはり
日本は、これで見ていただきますと、
最初のけたの数字だけ見ていただきましても
日本というのは非常に抑えておるということは事実であります。
しかし、炭酸ガスにいたしますと、
日本に対してやはりフランスは、そこにございますように、原発が七一%もございますからフランスは非常に低いです、
日本よりも低いという姿であります。それから
カナダも割に低い。
カナダは広い国土で六四%を水力発電でやりますからこれは非常に恵まれております。それからスウェーデンもこれで調べてみますと、原発を四五%、それから水力を四九%。スウェーデンは原発をやめるとこう言っておりますが、
一つはとめようかと言っているだけの話でありまして、原子力を四五%も現在の発電には使っておる。それから水力は四九。最も有利な姿であります。こういう形であります。
次はSOxを見ていただきますと、GDP当たりで見てみますと、
日本が〇・八一に対して
カナダは一一・三八。物すごく出しています。それからフランスは三・六二。原子力があるのになぜこんなに出すのかと思います。それから
オランダは一番努力をしているなと。スウェーデンは二・六三ということであります。西ドイツは四・一一二。それから
人口当たりにしてみましても
日本はSOxを随分抑え込んでおります。それからNOxにつきましても、その下のNOxのGDPを見ましても、
日本はこれは非常に抑え込んでいます。
人口当たりでも抑え込んでおります。
ですから、これは私は
アメリカと
カナダに昨年とことしの初め参りまして、
日本は過去二十五年間かけて必死になって公害対策をやり、そしてエネルギー危機が来ても、
アメリカのようにエネルギーの問題があるから
環境は緩めるということはやらなかった。あるいは代替エネルギー法をつくっても、
日本の法律には
環境保全の条項がちゃんと中に入っておる。そして非常な投資をまず公害対策にやり、それから自動車の対策にやり、それから省エネルギー対策にやり、約二十五年間かけてやっとここに来たんですということを申しました。
しかし、ここで御注意願いたいのは、効率がいいからふやしてもいいという話では全然ないということであります。これは先ほど石さんの言われたとおりであります。ほかの国は効率の非常に悪いことをやっておりますから減らすのは楽であります。
日本はぎりぎりまでやっておりますから減らすのは難しい。しかし、効率がいいから
日本のCO2を出すのをふやしてもいいというようなことには一切つながらないというところが国際的な厳しさだということをよく頭に置いていただきたいと思います。
そこの問題、先ほどのペーパーの方にまた返ってまいりまして、ここの中で、よその国が熱心に言っているというのは確かにこれは僕は偉いと思います。というのは、東欧の変化と中国の変化を見てもわかりますように、確かに西と東とはどうも対応が違うと思います。こうあるべきだという
方向はどっと出します。何をしているかは全然話は別であります。
日本は何をしているか。何ができるかびしっと固めてからしか物を言わないから、非常に煮え切らぬ、けしからぬと、悪い印象を持たれる。しかしやっていることはすごいことをやっている。実はそこが今の一番つらいところであるということを私は申し上げたいと思います。
日本の悪いことは非常に
世界的に喧伝されて、どなたもよく知っておられますが、すぐれている点を言うと、
日本の
国内ではたたかれる、それからそれは無視するということでありまして、私は、
外交の中で
環境というのは十分
外交の道具に使い得る。私はOECDの中にも勤めておりました。
国際会議にはもう随分出ております。ほかのことを別にして、それだけでたたこうと思ったら
日本ぐらいイメージのつぶしやすい国はありません。これをやっぱりどうするかというのは、私は
日本の政治の物すごい問題点であり、
日本の
外交でも猛烈に大きな問題点ではないかということを思います。しかし、
日本の持っている長所と貴重な経験というのは大した人類の資産であります。これだけの国の中に一億二千三百万生きておるわけであります。しかも何とか成長しながらエフィシェンシーはすごいことをやっています。ただ、伸びるのをどうやって抑えるか、そこに問題があるわけであります。
ただ、
日本のやり方のまずさと、フランスの非常にあか抜けしたやり方をちょっとここへ書きました。フランスは三つの
委員会以外に、アルシュのサミットのときに、
IPCCの方とも話をして
途上国だけのグループをつくって、フランスがその座長をして非常によく世話をしております。お金も技術も余り出しません。ただ、世話だけよくやっています。これは実にうまいやり方だと思いますね。そういうやり方をフランスはしている。これはフランス
外交の勝ちであります。
私はずっと今まで
環境のことをやってきまして、
世界でエネルギーと
環境政策が統合的に運用されている国は
日本を除いてはありません。どこの国に比べても、これは実際そのメンバーというのは調べてきましたからはっきり言えると思います。ですから、外国ではSOx対策は大学の四年間ぐらいのステージである、
日本はこれはやりました。NOx対策は大学院の修士課程ぐらいです、これも
日本はやりました。乗用車の
排ガス規制はこれは大学院博士課程ぐらいです、これも
日本はやりました。
世界でやったのは
アメリカだけである。
ヨーロッパはほとんど何もしていない。それから代替エネルギー対策、これはかなり進んできていますが、費用対効果が全然合わないというところに問題があるんです。しかし、
日本の持っている経験と技術というのはすごいものを持っている。私はここに、
日本はたたかれるばかりでなく自信を持って、別に偉そうにやるということじゃなしに、
日本の持っている経験と技術をもって国際的なリーダーシップをとってほしいと思います。
次のところで、
IPCCのメンバーの国の中でのギャップを申し上げます。
環境問題ということについての認識ギャップがすごくございます。これは特に私は強調したいと思います。これは、もう
一つの重要な問題は、ここの
最初に書いてありますように、
先進国と
途上国で問題の受け取り方が違います。
先進国、例えば
日本ですとライフパターンを改めなければいけない。
地球に優しい生活、すばらしい話です。アメニティ、みんなすばらしいです。そのとおりです。いいです。しかし、CO2を
安定化しましょう。それはもういいですね。ところが、
途上国にしますと全く生存の問題であります。現在既に生存の問題であります。
アフリカはまさしくその姿であります。
人口はふえて、GNPの伸びはそれに合わないでむしろダウンして困っている。しかもバイオマスは困っている。こういう姿の中であります。ですから全く受け取り方が違う。そのとき
日本的な
説明だけでは到底相手を説得することはできないという問題であります。しかも島国にとっては国土存立の問題であります。今オーストラリアは非常に熱心に島国のバックをしております。
日本は今まで随分地盤沈下やなんかで困って一生懸命やってきました。それをやはり生かすべきだと私は思うんです。非常に高尚な技術も結構ですが、
日本の治山治水という長年の伝統というのをもっともっと国際的に応用する。これは例のバングラデシュの問題をとりましても、あれはもう
日本とおよそスケールの違う問題でありまして、
日本の利根川のことを考えますと、徳川幕府ができて十六年たって初めて
河川改修を始めて、それで、昭和五十年ごろになって初めて、まあまあよかったかと思ったらぽっと事件が起こったというような姿であります。つまり四世紀ぐらいかかってやっておるわけです。ですから短いことでできることではありません。治山治水というのは本当に基本の姿で、私は
途上国も随分回りましたが、ほとんど治山治水はできていない。ましてや護岸はできていない。それが実はこの
地球問題の非常に大きなポイントだと思います。
政策表現の態度については先ほど申しましたからもう省きます。
日本は何とかここをもう少し政治、政策のロールと行政、技術とをぴしっと分けてやれという
方向を打ち出すというような国にならなければ国際的には非常にまずいということを私は思っております。ですから、三千億も出して非常に一生懸命努力しておりますが、悪いことだけでたたかれているのは全く分が悪いというのが私の現在考えているところであります。
今後の
日本の役割としまして、やはり百年を超える長期間でやらなきゃならない。百年から二百年であります。これはすごい問題であります。今までそういうことは絶対にありません。しかも生存にかかわる問題であります。ですから、そういう問題に取り組むというのは一時の熱気でやれることでは全くないです。それからほかの国もすごいことを言っておりますが、一九六八年から
酸性雨のことを言うものの、いまだほとんど何もしていないというのが
ヨーロッパの姿であります。というのが
アメリカの姿です。私は、だからしないでいいと申しているのではありません。いかにすごい問題であるか、これはエネルギーと
環境が統合されていなければ絶対にできない話です。
日本はそれを超えました。超えましたら今度は、
日本としての今後の問題は、いかにCO2をふやすことなく
日本が成長できるか。特に二〇三〇年以降それができないと袋だたきに遭って単なる孤立どころの騒ぎではないと思います。
通産省は一生懸命今
技術開発、テクノロジーブレークスルー等をやっています。私は通産省と随分けんかもしましたが、随分すばらしいことをやります。しかし、それだけではできない。問題は制度であります。例えば
地球の電力の配分にしましても、やはり草の根の電力が伸びるような制度にどこまできたか、随分最近改良してくれています。電気事業法を改良してやってくれています。まだまだしかしおくれています。
日本のアモルファスはスイスに輸出されて、高速道路の壁に埋め込んで、そしてローカルの電気を供給している。
日本の燃料電池はよその国に輸出されてそれをまた使って発電をしようとしている。
アメリカはインドに対するODAでコジェネレーションをどんどん進めているのです。
日本も随分いいこともしていますが、まずいこともあるのも本当であります。私は両者があるところが本当の姿であると思いますから、今後のODAにおける
環境配慮、これは非常に大きな問題で、
日本の
環境アセスメントとはおよそ違います。これはもう詳しい
説明はいたしませんが、お配りした
資料の中に入っておると思います。
アネックスのIというものの三枚目の
資料に、OECDの
理事会が勧告しました発展
途上国におけるODAの
環境アセスメントはこれを注意しろということを書いております。まず問題としてa)の「土壌及び土壌保全」は
日本はほとんど経験なし。「砂漠化にさらされている
地域」、これもなし。「
熱帯雨林及び
熱帯植生」、これもほとんど全くなしに等しい。「水源」はかなりある。しかしながら集水域単位としてはやっていない。それから「魚及び野生生物の保護」、これはかなりやっていますが、サファリというような大きなスケールでは物をやっておりません。それから「固有の価値を有する
地域」、これはかなり持っていますが、
途上国ではどこまでやっているかわかりません。次のg)はかなり経験を持っております。
都市、産業の公害問題、これはかなり経験があります。しかしh)は先ほど
石参考人のおっしゃった少数部族の問題でありますが、これは国際的な構成、あるいは
地域における構成という問題で極めてセンシティブな問題になっています。
世界銀行もこのことを融資の条件の中に入れてやっています。難しい問題ですが、これは避けて通れません。
そして、次の3のどんなものをアセスするかということの中にございます「再生可能資源の利用における重大な変更」、これは
日本はまずやっていないです。それからb)の「耕作法及び漁法における重大な変更」、これもまずやっていないです。「水資源の
開発利用」、これはやっています。流域管理がやっと建設省の最近の流域の管理
計画ということで、非常にはっきりしてきました。「インフラストラクチャー」はやっています。「産業活動」もやっています。「採掘産業」もやっています。
廃棄物処理もやっています。
このように、
日本のアセスという感覚だけでは到底ODAのアセスの問題をこなすことはできない。これを早急に埋めるというのはよほどの人材の養成と層を広くし厚くする必要があるということを特に申し上げたいと思います。
最後に私が申し上げたいと思いますのは、やはりお金を出すということだけではだめだ。人が出ていって一緒に汗を流して一緒に考えるということをしなければだめだ。非常にそれが不足しております。私は、役所をやめましてからインドネシアのスマトラの田舎で井戸掘りもいろいろやってみました。やはり一緒に汗を流して一緒に考えるということがなければだめです。しかも、いろいろな機関がございますが、現地の長期専門家としてODAでやっている人のすばらしい努力、これはぜひとも買ってください。本当に長期専門家で現地ですばらしいことをしているということを特に申し上げたいと思います。
最後に再度申し上げますが、ぜひとも二十一世紀の中ごろにはCO2をふやさないで、むしろ減らして経済成長をするということを
日本が身につけるか否かというのが
日本の死命を制するということで、
地球環境問題は
日本にとっての問題であります。
終わります。