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参考人(
寺本俊彦君)
寺本でございます。
私からは、
地球環境と
海洋ということで
お話をいたしたいと思います。ただし、
海洋の中でも
化学的なことと
生物に関することは次の
小池参考人の方から
お話があると思います。
さて、水の惑星と
地球は言われますけれども、水があることが一体どういう
役割をしているかということから入っていきたいと思います。
差し上げました
資料の1に、「海は
地球の空調器」という表題をつけました。これはどういうことかと申しますと、太陽から
地球にエネルギーが降り注いでまいります。その様子は図1にかいてございます。図1の一番左のところをごらんいただきますというとおわかりになるように、太陽から降り注いだエネルギーの約半分が
大気を素通りしまして海へ入ってまいります。
大気と申しましても、これは雲とかあるいは
大気中の水蒸気、あるいはちりとかあるいは煙霧、いろいろなものがございますが、そういうところへ蓄えられるものはせいぜい二〇%ぐらい、大
部分が海へ入っていくということがまず第一にございます。
それから、もう
一つ大事なこととして、海が熱を蓄える能力、これを熱容量と言ってよろしいわけですが、それは
大気に比べますとはるかに大きい。どのくらい大きいかということをちょっと御説明いたしますと、その文書にも書いてございますけれども、たとえば
大気と申しましても大ざっぱに申しまして地表から千キロメートルの高さまで及んでおります。その地表から千キロメートルの高さまでの
大気全体の貯熱能力といいますか、熱を蓄える能力というのは、海で申しますと海の中のたった三・五メートルの層の貯熱能力に当たる。海は平均しますというと三千八百メートルありますから、その中のほんの一部、三・五メートルの層だけでもって
大気全体の貯熱能力に匹敵する、そういうことになります。ですから、逆に申しますと、海の
温度がちょっと変わると地表の
温度がすばらしく変わるだろうという想像がすぐできるわけです。
それから、もう
一つ例といたしまして、海の厚さ百メートル層の水温をたった摂氏一度上げるのに必要な熱量というものでもって、一年を通して海から
大気へ出ていく熱量全部を賄うことができる。ですから、海はさっき申しましたように三千八百メートルありますけれども、その中の百メートル層の
温度をたった一度上げるだけでもって
大気へ入っていく熱量を全部賄う、そんなことになっております。ということは、逆に申しますと、海が少し
変化をするとこれは大変なことになるなということになるわけであります。
要するに、海は地
表面の
温度を制御するという非常に大きな
役割を持っているわけです。一般に、今までは海というと
生物あるいは魚とか、そういう方にすぐに関心が持たれるのでありますけれども、それだけではなくて、海はそういうふうな非常に重要な
役割をしているのであるということを御認識いただきたいと思うんです。
しかし、今のは海がとまっている、静止しているということでもって申し上げたわけですけれども、実は海にはいろんな運動があります。すぐ目につくのは波でありますけれども、波なんかは
気候変動から見ますとそのもの自体は余り大した
影響はない。それよりは海の大循環というものが大変重要な
役割をしているわけです。
これは2のところでありますが、そこに「根幹的」と書きましたけれども、海の循環というのは、これは海全体にまたがるような循環のことを申しております。
海洋大循環と申します。これは
二つに大きく分けることができます。
一つは表層の大循環、もう
一つは深層の大循環、その
二つに分けて考えることができます。では、表層とは、あるいは深層とは一体何を指すのかということがございますけれども、それは大ざっぱに言いまして、
表面から大体千五百メートルぐらいまで、場所によって違いますが、せいぜい二千メートルぐらいまでが表層であります。そこから下、太平洋で申しますと六千メートルまでが深層であります。この大きな
二つの層に分かれて、それぞれに大循環という現象があります。
表層の大循環は何によって起こるんだろうかということでありますが、これは風によって起こされるというふうに考えてよろしいと思います。それをごらんいただくために、まず図2というのをごらんいただきたいわけです。
この図2は我々に非常になじみの深い北太平洋の風の
分布をかいております。これは二十年間ぐらいにわたっての平均的な風の
分布図であります。そこに太い点線でもって丸がかいてありますけれども、実は風に沿ってそんなふうに海の表層に循環が起きているというありさまを示したものであります。
さて、その次の図3というのをごらんいただきますと、これは北太平洋の海の方の循環を示しております。ここにも太い点線で輪がかいてありますけれども、これが亜熱帯循環と呼ばれているものであります。この中には黒潮が一部として含まれております。
こんなふうに風の場あるいは風系と申しましょうか、それと海の循環とがまさに一対一に対応していると申し上げてよろしいわけです。そんなふうなことで、まず表層では風によって大循環が起こされているということであります。
それからもう
一つの循環を起こす要因としては、
高緯度地方、極に近い地方では冷やされる、これは御存じのとおりであります。それから低緯度地方、
赤道に近いとるでは温められる。水は冷やされれば重くなります。それから、温められると軽くなります。密度の大きい小さいの差ができますというと、それで対流が起こるわけです。これを我々は熱塩循環と言っております。塩が入っているのはなぜかと申しますと、これは今のような熱だけじゃなくて塩分の濃い薄いというのも循環を起こすことにかかわりますので、ひっくるめて熱塩循環と言っております。
これはどこの循環を起こすかといいますと、実は深層の循環に非常に大きな
関係がございます。では、深層の循環はどうなっているかというのを描いたのが図4であります。
これは海の深層循環でありますが、どんなふうにして起こるかと申しますと、世界の海でもって実は深層の沈み込み、下層の方へ
表面から沈み込んでいく場所がたった二カ所ございます。その一カ所はグリーンランドのちょっと南のところに丸く黒くかいた
部分があります。この
部分でもって大量の水が沈み込んでおります。それからもう一カ所はどこかと申しますと、ずっと南の方の、やはり大西洋の南の方でありますが、
南極のウェッデル海の近くに黒丸がかいてございます。この二カ所でもって大体一秒間に平均いたしますと三千万トンから四千万トン、と申しますと黒潮の流れに匹敵するぐらいの水が沈み込んでいるということになります。では、太平洋はどうか。太平洋にはそういう沈み込んでいる場所がございません。
沈み込んだ水はどうなるかと申しますと、グリーンランドの沖で沈んだ水は
アメリカ大陸の東海岸を通ってずっと南の方へ下ってきて
南極まで至ります。そこで
南極で沈んだ水と一緒になりまして、合体して
南極大陸の
周りを東の方へとぐるっと一回りいたします。御存じのように海はドーナツ型にあいているところというのは
南極のすぐそばしかございません。あとは全部大陸だとか島があって、ドーナツ型に輪になっているところはここだけなんです。深層の水はこの輪になっているところに沿って東向きにどんどん流れていくわけです。その一部が途中でインド洋にも入ります。太平洋にも入ってまいります。というのが、血管
のような絵をかいてございますが、そこにあらわれております。
太平洋で申しますと、こうして
南極海からずっと水がオーストラリアの東の方を通って、
赤道を越えてさらに北へ上がってきて
日本の近海まで来ている。来るだけでなくて、その間にちょうど毛細血管のように太平洋の真ん中の方へ広がっていっているわけです。南半球も同様でありますし、北半球も同様であります。このようにして大循環が起きている。
それでは、水が太平洋へ入ってくるばかりじゃ困るじゃないかと。なるほどそうでありまして、太平洋では表層から水が外へ抜けております。
一つはベーリング海峡を通って北極海へ抜けておりますが、これは量としてはごくわずかであります。大
部分は、実はフィリピン海からインドネシアの近海を通ってオーストラリアの方から
南極へ戻るわけです。それでつじつまが合っているわけです。入ってきた分だけ出ていくということになっているわけです。
ところで、先ほど申し上げました表層の循環の図と今申し上げました深層の循環の図とはまるで形が違うということがおわかりになると思います。しかしながら、どちらも非常に重要なことは、まず熱を運ぶということです。例えば太平洋で、先ほどの図3の表層循環を見ていただきますと、
日本の近くではフィリピンの沖とかあるいはもっと南の方から温かい水が北へずっと上がってきて
日本の近海から東へ流れていく。要するに、西側では南の温かい水を北へ運んでくる。逆にカリフォルニアの沖では冷やされた、冷やされたと申しますのは、海からは大体常に、特に冬場はそうなんですが、
大気の方へ熱が出ていきます。海はどんどん冷えていきます。冷えた水が
アメリカの沖では北から南へと運ばれておるわけです。これはマイナスの熱の輸送であります。西側ではプラスの熱が輸送されて東側ではマイナスの熱が輸送されている。いずれにいたしましてもその熱の輸送量というのは
大気の中で運ばれている熱と同じぐらいだというふうに最近考えられております。ですから、気候が温かいとかあるいは
温度が高いとかいうようなことを
大気の中だけで考えていたのではだめである、海を一緒にして考えなくちゃだめだということが最近非常にはっきりした認識としてとらえられてきたわけです。
それでは、図4の深層循環は一体どういう
役割をしているかと申しますと、その図の中に、例えば太平洋の真ん中の方に傘みたいな小さな矢印がいっぱい書いてあります。これは何を意味しているかと申しますと、実はこういうふうに毛細血管のように太平洋の真ん中、大西洋も同様でありますけれども、ゆっくりした流れが枝分かれして出てきますというと、必ず上向きの、湧昇と申しますけれども、水がわき上がってこなくちゃいけないというそういうことが理論的に出てまいります。これは
地球が自転していて、しかも自転の速さが、速さと申しますか
影響が北と南で違うということによってそんなことが出てくるわけです。この深層から水がわき上がっているということが非常に重要なわけです。
どんなふうにして重要かと申しますと、まず
赤道域で考えますと、
赤道域は温められて表層の水はどんどんどんどん
温度が上がっていくわけです。ところがそんなことにならなくて、大体まあ幾ら高くても摂氏三十度ぐらいでとまります。これはなぜかといいますと、下から上がってきたこういう水が
温度の上がることを防いでいるわけです。それから逆に、北の方ではどんどん冷えてくるんですけれども、それが下から上がってきた冷たいと申しましても零度とか、太平洋で申しますとたかだか摂氏零度ぐらいで、北の方で言えば、冬で言えば温かいわけです。そういう水が上がってきて極端に
温度が冷えることを防いでいるというわけで、深層の循環もそれから表層の循環も熱を運んでいる、そういう非常に大きな
役割をしているわけです。それだけではなくて、先ほども
お話がありましたが、いろんな物質、これは
汚染物質も含めて
海洋の水が運んでいるということは、これは確かなことなんであります。
図5の
日本のごく近くの四国・フィリピン海の深層循環というのは、図4には出ておりません。
日本には伊豆・小笠原海嶺というのがすぐそばにありまして
赤道近くまで行っているものですから、この西側の
日本のすぐ南側、すなわち四国それから近畿地方あるいは遠州灘とかその辺のところは深層の循環がないだろうというふうに言われていたんですけれども、そうではなくて、最近
日本の
大学関係者が集まりまして行った
研究の結果、実は図5のようなそういう循環がある。深層にも循環がございます。これは
赤道を越えてきた水がパラオ諸島のところでフィリピン海に入り込んでいるわけです。そしてこんなふうに枝分かれしているということがわかってまいりました。しかも大事なことは、表層の黒潮の下はどうなっているかということが今までわからなかったんですが、黒潮の真下は黒潮と全く反対方向に流れている。例えば沖縄の近海でもそうでありますけれども、あるいは紀州沖でも反対向きに流れているというようなことがわかってまいりました。これは熱の輸送とかあるいは物質の輸送に非常に重要な
役割をするということが考えられるわけであります。
さて次に、
資料の3に入りまして、先ほどちょっと
お話がありましたエルニーニョのことを少し御説明してみたいと思います。(
OHP映写)
お手元の図6と同じだと思いますが、南北太平洋をここに書いてございます。これはエルニーニョでないときの
状況でございます。これが
赤道であります。
赤道近辺では、この緑で書きました矢印は風をあらわしておりまして、北東貿易風と呼んでおります。この風が
赤道の上まで及んで吹いております。そういたしますと、海はその
影響を受けまして
赤道のすぐ北では風の方向に流れるんじゃなくて、
地球が自転しているということのためにほぼ直角方向に流れるわけです。ですから、ちょうど
赤道から北の方へ離れていくというふうな
状況になります。
南半球では全く作用が反対でありまして、南の方は同じ風が吹いているのに水の
動きは南側に行ってしまう。そういたしますと、この
赤道の上で水がなくなるということになりそうなんですが、そうではなくて、下から補っているわけです。ですから、
赤道の近くは下から水がわいておりますから、ここは意外に
温度が低いわけです。ですから、この青く書きましたのは、
温度が低いということを示す意味で青く書いております。
それから、ペルーの沖もそうでありまして、ここに緑の方向の風が吹いております。そういたしますと、岸から離れるような、これは南半球では風に対して直角、左手方向に水が流れますので沖へ出ていく。したがって、下から水がわき上がってきて、やはりここも冷たい。意外にこの
赤道域でも冷たいわけです。ですから、この辺一帯、カリフォルニアの沖も同じであります。大体この辺は水の方は冷たいんです。
それじゃ、西の方はどうかといいますと、先ほど
お話がちょっとありましたけれども、この
赤道で温められた水が
表面、表層を流れてここへたまってくるわけです。フィリピン近海では非常に
温度の高いところ、世界じゅうでも珍しいくらい高いところでありまして、ここは水がたまっているわけです。したがいまして、東側に比べますとこの西側の方は
海面が一・五メートルから二メートルぐらい高まっております。ですから、
海面というのは勾配があるわけです。そんなふうになっております。これが全くエルニーニョでないときの平常年のありさまであります。
ところが、エルニーニョが起こりますというとその
状況が全くがらりと変わってまいります。
まず、どういうところが変わってくるかと申しますと、今吹いていた北東貿易風という北東の方向から南西に吹く風が非常に弱まってしまいます。これなんです。と申しますのは、余り詳しいことを
お話ししている暇もないんですけれども、この図で申しますと、この日付変更線の少し西側までにわたって、ここではこういう大きな鉛直方
向の渦が風の中にできております。そういう渦があってその隣にもまたその渦があります。その渦のありさまが全く変わってきて、この東側の方の渦がエルニーニョが起こりますというと小さくなってしまって、それに伴ってこの風も弱くなる。そういたしますと、下からわき上がってくるというようなことがなくなりまして、今までここにたまっていた温かい水が波のようにとうとうと東に押し寄せてまいりまして
状況は一変いたします。そして、今まで冷たかったところの東の方の表層の水の
温度が大変温まってきます、赤く書いたわけですが、そんなふうになります。
というわけで、これをエルニーニョと申しますけれども、ただこの
海面だけではなくて、このときには、例えばこの辺がペルーでありますが、この内陸部はふだんは乾燥地帯でありますけれども、
砂漠に近いようなところでありますが、そこに大雨が降るとか、あるいは先ほども
お話がございましたが、オーストラリアの内陸部に雨が降るとか、あるいは逆にそこが非常に干上がってしまう、乾燥してしまうとか、そういういろんな現象が起こります。この海と
大気と両方をひっくるめたこういう現象のことを我々はエルニーニョと呼んでおります。
エルニーニョは一体いつごろから起きているのかと申しますと、これは恐らく
人間の有史以来だろうと思います。図の7をごらんいただきますというと、これは一九五〇年ぐらいから七五年までの二十五年間ぐらいのありさまでありますが、この一番上の①と書いたのは、下の方にも説明がございますが、メキシコ沖の水温であります。これが急に上がる。先ほど申し上げたような理由で、フィリピン海近くにあった海水が東へ伝わってきてこの水温を上げる、これをエルニーニョと呼んでおります。こういうのが数年置きに起こっております。
実は
日本には古文書というのがございます。欽明天皇の元年ですか、その辺からは大体
資料として確実だろうということで古文書を調べてみますというと、と申しますのは、明治二十年に小原さんという方が大変いい仕事をしておられる。古文書を全部あさりまして、干ばつとか、そういう
資料を全部集めてくだすっているわけです。それを調べてみますと、欽明天皇の元年から明治二十年までの約千三百五十年くらいありますけれども、その間にこのエルニーニョに当たるような大干ばつが
日本で二百十五回ぐらい起こっております。単純に割り算をいたしますというと六年に一回ずつ起こるというわけで、このエルニーニョのような現象は繰り返す現象であるというふうに言ってよろしいと思います。しかしながらその
影響は大きくて、これは
地球環境だけではなくて経済面でも大変大きな
影響を及ぼしていることは御存じのとおりであります。
ところが、そういうふうな繰り返し現象とは別に、先ほども
お話がありましたが、今度は我々に徐々にじわりじわりと追ってくるような現象もございます。それとエルニーニョのような繰り返し現象とは原因も全く違うわけでありまして、別に考える必要があるというふうに思います。
資料の4に入ってまいりますが、そういうトレンドと申しますか、そういうものも大変重要なのでありますが、例えばエルニーニョのモデルというのもございます。それもまだわからないところが非常に多いわけです。どうしてかと申しますと、先ほどの図7でございますけれども、この絵をごらんいただきますというと、①から⑨と非常に離れた場所のいろんなものをそこへ並べて
変化を書いてありますが、よく見ると、なるほど大変に似たような感じのものが出ております。①は、さっき申しました水温であります。例えば一番下をとりますというと、これは太平洋のちょうど日付変更線のそばにあるカントン島とかオーシャン島という島の雨量とかあるいは雲量をとっております。それから、⑦は、
赤道反流と申しまして北緯五度から十度の間を東に流れている海流なのでありますが、それの
変化というのを見ますというと、流量の
変化ですが、①のエルニーニョと非常によく対応しているというようなことがわかります。
しかしながら、ここでもって申し上げたいことは、何でこんな離れた点の様子を見るのかと、実は測定がないのであります。こんなふうに離れたオーシャン島の
データはあっても、太平洋の真ん中では風の
データもなければ雨量の
データもないわけです。ですから、我々が得られるところというのは点々と非常に離れたところのものしかないというわけで、この
関係があるものですから、テレコネクションなんて呼んでおります。
問題は、そういうことではエルニーニョのモデルにしましても
気候変動のモデルにしましてもなかなかうまくいかないのであります。これはどうしても
人工衛星を使って調べるしかない、グローバルに調べるしかないわけです。そういたしますと、例えばどこで何が起こって、それがどこへどういうふうに伝わって、どこでどういうことを起こして、その結果こうなったということが一目瞭然でわかってくるわけです。プロセスが全部つかまえられる。そのためにはどうしてもやはり
人工衛星が必要であります。
先ほども
お話がありましたようにADEOSなんという
衛星は、例えば風をはかる
センサーを積むことになっております。
海面の風をグローバルにはかってくれる。そういたしますと、三十度の風だとか言わないで、風の
変化がどうなったか。それから水温もはかってくれる。水温の
変化がどう伝わったか、それに応じて風はどうだったか。あるいは
海面の流れ、これはアルチ
メーターと申しますけれども、先ほどのように黒潮が流れておりますと黒潮に向かって下流側の右手側の方が高くなる、
地球の自転の
影響でそういうことがございます。ですから、黒潮というのは、例えば
日本の近海で申しますと伊豆大島と八丈島の間を流れております。八丈島側の方が右手側ですから、右手側の方が水面が約一・五メートルぐらい高いわけです、というようなことがあります。逆に申しますと、そのでこぼこをはかれば海の
表面の流れが全部わかる。それはやはり
人工衛星によるしかないわけです。そういうわけで我々は、これから
日本も打ち上げるでありましょう
衛星、あるいはよその国も打ち上げるでありましょう
衛星に非常に大きな期待を持っております。
ただ、ここではっきり申し上げたいのは、一九七九年にシーサットという
衛星が
アメリカによって打ち上げられました。このときに、もう既に風もはかれる、それから
表面のでこぼこもはかれるということがわかっていたわけですけれども、その後そのような能力を持った
衛星はまだ打ち上げられていないわけです。
日本も打ち上げておりません。これはいろんな理由がございましょうけれども、このように
環境問題が大きく出てきた折でございますから、
日本もより一層のその方面での努力をお願いしたい、こう存ずる次第であります。
その一環としてWOCEという、ワールド・オーシャン・サーキュレーション・エクスペリメントと申しますけれども、この3の(7)に書いてございますが、それに
日本も積極的に参加しようということでやっております。このWOCEというのは、世界、ワールドですが、オーシャンのO、Cはサーキュレーションで、Eは実験のエクスペリメント、ですから世界
海洋循環実験というのに参加をしようというようなことになっております。
さて、先ほどの4にもう一度戻りまして、先ほど来
温室効果といいましょうか、そういうことで地表の
温度が何度か上がるであろうというようなことが言われております。それに基づいて、例えば
南極の氷も解けるでありましょうし、あるいはヒマラヤやアルプスの氷も解けるでありましょう、ということで
海面が
上昇することが大変心配されているわけです。これはモデリング、
吉野先生なんかもそういうことを御専門にしておられますが、とにかくメートルオーダーで上がる可能性が百年とかあるいは二百年の間に起こるであろうということで、そういう非常に長いトレンドのようなことの
研究も、先ほどのエルニーニョのよう
なものとは別にまた考え、あるいは一緒に考えていかなくちゃいけないということを強調したいわけです。
いずれにいたしましても、それらに海が非常に深くかかわっているということは間違いございません。ところが、
日本の海の
研究体制というのは、残念ながら非常に弱いのでありまして、
日本と
アメリカは
人口比が約一対二であると思いますけれども、
研究者層の比は一対一〇であります。そういうわけで、これは水産
関係はちょっと別だと思いますが、物理とか
化学とかそういう方面の
人口比、
研究者数の比は一対一〇でありまして、もう少しこの辺を増強していただくことが必要であるというふうに考える次第であります。
以上で終わらせていただきます。