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1990-06-20 第118回国会 参議院 科学技術特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年六月二十日(水曜日)    午後二時三分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         中西 珠子君     理 事                 岡部 三郎君                 吉川 芳男君                 稲村 稔夫君                 中川 嘉美君     委 員                 岡野  裕君                 鹿熊 安正君                 熊谷太三郎君                 後藤 正夫君                 谷川 寛三君                 前島英三郎君                 庄司  中君                 種田  誠君                 三上 隆雄君                 吉田 達男君                 吉川 春子君                 新坂 一雄君                 小西 博行君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      平野 拓也君        科学技術庁研究        開発局長     須田 忠義君    事務局側        第三特別調査室        長        大平 芳弘君    参考人        筑波大学教授   吉野 正敏君        東海大学情報技        術センター所長  坂田 俊文君        神奈川大学理学        部教授      寺本 俊彦君        東京大学海洋研        究所教授     小池 勲夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (地球環境保全宇宙海洋分野における研究開発役割に関する件)     ─────────────
  2. 中西珠子

    委員長中西珠子君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、地球環境保全宇宙海洋分野における研究開発役割に関する件について、本日の委員会に、筑波大学教授吉野正敏君、東海大学情報技術センター所長坂田俊文君、神奈川大学理学部教授寺本俊彦君、東京大学海洋研究所教授小池勲夫君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中西珠子

    委員長中西珠子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 中西珠子

    委員長中西珠子君) 科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、地球環境保全宇宙海洋分野における研究開発役割に関する件を議題といたします。  本日は、本件について参考人方々から御意見を承ることといたします。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  参考人方々には、大変御多忙中のところ貴重なお時間をお割きいただきまして、当委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。  当委員会は、科学技術振興対策樹立に関する調査を進めているところでございますが、本日は、皆様方から、地球環境保全宇宙海洋分野における研究開発役割に関する件につきまして忌憚のない御意見を賜りまして本調査参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  まず、参考人方々からお一人二十分程度で御意見をいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  これより参考人方々から御意見を承ります。  まず、吉野参考人にお願いいたします。吉野参考人
  5. 吉野正敏

    参考人吉野正敏君) ただいま御紹介いただきました吉野でございます。  最近の地球環境問題についてでございますが、まず環境問題とは何かでございます。  茶封筒資料の1と2と3と入っておりますが、地球環境問題とは何かということに関しましては、私、日本学術会議人間活動地球環境に関する特別委員会委員長をいたしておりまして、ことしの四月の日本学術会議の総会で中間報告としてまとめたものが資料1でございます。これに人間活動地球環境についてどういうふうに考えたらいいか、あるいはどういうことが現在問題点になっているか、それから、そういう地球環境問題を研究するにはどういう研究体制あるいは事務体制教育体制をとるべきであるかというようなことを中間報告の形でまとめてございます。それで、来年の四月までに最終報告をまとめる予定でおります。  それで、まずかいつまんで地球環境問題とは何か、つまり資料1の要約みたいなことになりますが、この人間活動とそれを取り巻く環境という問題につきましては、ギリシャ、ローマ時代以来論じられていることでございまして、決して新しい問題ではございません。しかし、最近どうして急に地球環境問題がクローズアップされてきたかということは、特に産業革命以後、二十世紀になりまして人間活動が急激に活発化した。それで工業化あるいは都市への人口集中が速い速度で展開して、化石燃料の消費が急激に増大した。あるいは、汚染物質や熱などの大気中あるいは水中への拡散が進んできた。しかも、それが地球規模で進んできたというところに問題点があるわけでございます。  ですから、人間が生きている以上、こういう問題というのはもう何千年もあったわけでございますけれども、最近どうしてそれが急に重要視されるようになったかというと、つまり変化速度でございます。しかも、一つ一つの問題はあるいは非常に局地的、局地的というかローカルな問題であっても、それが地球規模であちらでもこちらでも起こっている、しかもそれが大気圏あるいは海洋を通じて地球全体に広がっている、そこにこの問題点があるわけでございます。それで、これまでもそういう変化に対して研究を我々研究者はやってきておるわけでございますけれども、これまでは、例えば物理学あるいは化学だとかあるいは生物学だとか、そういうそれぞれの部門では研究が進められてきておりますが、人間人間活動を含めた、あるいは植物あるいは動物、そういうものを含めた大気あるいは海洋、それを地球系あるいは生態系と呼んでおりますけれども、そういう全体を含めた相互作用というようなものについては、これまで必ずしも研究が進められてきていな い。もちろんゼロというわけではございませんが、研究が非常におくれている。その辺に研究の面から申しますと問題点があるわけでございます。  次に、地球環境問題と申しましてもたくさんございますが、一体何が現在わかっているのか、それから何がわかっていないのかということに少し触れたいと思います。(OHP映写)  それで、お配りしてございます資料にこれと同じ図が載っておりますが、これは地球環境問題、いろいろあるものを大ざっぱにまとめたものでございます。詳しくは、その資料3の九ページに図が載っておりまして、それぞれ書いてございます。いろいろ問題はございますが、一番大きいのは、化石燃料人間が使いまして、それで炭酸ガス大気中に拡散する。その結果、炭酸ガスあるいはそのほかフロンだとかメタンだとか一酸化二窒素とか、我々微量気体と呼んでおりますが、量は非常に少ないんですが、そういうものが炭酸ガスとともに大気中に広がりまして、それが温室効果をするということでございます。  御承知のように温室というのは、入ってくる熱は妨げないで入れるけれども出ていく熱は防ぐというのが温室でございます。そういう温室のような役割をそういう気体がするということで、その結果一・五度ないし四・五度、これは今年の八月に最終報告がまとまります政府間の気候変動に関するパネル、いわゆるIPCCというものがございまして、それで最終報告が出ますが、これは一九八五年の見積もりでございましたので、多少見積もりとしては下がりまして三度くらいというところに落ちつくようでございますが、とにかく、いずれにしても温室効果によって温度が上がるということが一つ問題でございます。  それから、例えばフロンガス南極の上に、何と表現したらよろしゅうございましょうか、ほうきで掃いて、掃きだめみたいにというふうに言ってよろしいかと思いますが、集まりまして、それでフロンガスオゾン層を破壊いたしまして、いわゆるオゾンホールという、ちょっとこれ変な絵ではございますけれども、オゾンホールができる。そうしますと、紫外線がこれまでオゾン層に吸収されていた分だけ地上に到達いたしますので、よく言われておりますように、皮膚がんなどの問題が起こるということが言われております。  それから、高緯度地方の湖沼などでは、工業地域からのいろいろな汚染物資によりまして生物が死滅する。あるいは、アフリカとかアジア、北米の一部では、温暖化いたしまして蒸発が盛んになりますので、水をたくさん必要といたしますので地下水面が下がるとか、あるいは農薬だとかあるいは廃棄物によって汚染が、地下水あるいは土壌悪化が進むとか、それから温暖化いたしまして、まず海水の膨張によりまして大体数十センチ上昇する。百年以上のオーダーで、時間で考えますと、南極大陸の氷が解けてもうちょっと、一メーター以上海面上昇するというふうな想定がございます。それから、生物の種が激減する。それから、砂漠の周辺では人口の急激な増加あるいは土地利用変化によりまして最近では一年に六百万ヘクタールが砂漠化しつつあるとか、あるいは熱帯林の破壊によりまして問題がいろいろ起こる、あるいは工業国では大気汚染酸性の雨が降りまして森林が破壊されるとか、大きくとらえますとこのくらいの、九ページの図に書いてございますような問題点があろうかと思います。  このうち確かに現在わかっておりますことは、炭酸ガスが確実にふえているということでございます。それで、ここにいらっしゃる方であるいは今思い出しておられる方もあるかと思いますが、一九七〇年代には、氷河期来るというふうに特に新聞などジャーナリズムで問題になりまして、あすにでも氷漬けになるようなことが言われた時代がございました。それでまた、今度は温暖化というふうなことを私が申しますと、先生、今度は灼熱地獄ですかというふうなことを時々言われますのですが、その当時の議論とただいま申し上げている温暖化議論との一番の違う点は、炭酸ガスあるいは微量気体が確実にふえているという事実を我々はつかんでいるという点でございます。それが大きな違いでございます。  それで、最近百年くらい、二十世紀になってからもう既に九十年でございますが、この九十年ないし百年くらいの間の気温の上昇見積もりますと、大体〇・三度から〇・五度くらいというふうに、これも確実に認められるところでございます。そのほか、オゾンホールであるとか酸性の雨が降っているとか、海面上昇あるいは土壌悪化砂漠化が進んでいるというふうな、こういうことは世界各地から報告があるわけでございまして、こういう点が、少し前の時代の氷河期来るというような話とは本質的に違うということでございます。  次に、今後何を研究すべきか、つまり何がわかっていないのかという点でございますが、自然科学の立場から申しますと、我々の知識は完全に解明されたというそういうことというのはもちろんないわけでございますが、特に不確実性の強いといいますか、大きいといいますか、そういうことをそこに(1)、(2)、(3)、このほかにたくさんあろうかと思いますが、まとめてございます。  一つは、大気中で温室効果気体が増加しているのは、先ほど申しましたように確かでございますが、これは差し引きの結果でございます。つまり、それにかかわる総排出量の推定というのは、まだ我々確実にはつかんでおりませんし、この後のお三方のお話の中に出てくると思いますが、海洋がどれだけ炭酸ガスを取り込むかという実態の詳細がまだ必ずしも量的にはわかっていないという点でございます。  二番目には、温暖化するということは、先ほど申しましたように過去の資料から推定できますが、もう一つ、我々は、確証と申しますか、確実に温暖化が起こるということは、最近の大型計算機を使いました数値実験によって将来の状態を推定しているわけでございます。しかし、その数値実験過程におきまして、まだ数々の不確定なところがございます。その物理的あるいは化学的過程の量的な関係がまだ必ずしも十分わかっていないというところがございまして、したがいまして温室効果が起こるということは確かでございますが、それがどのくらいの値であるかという信頼性にはまだ研究の余地が残されているということでございます。  それから三番目は、地球規模での人間活動の量的な把握に困難がございます。先ほど申しました工業化が進んだとか、人口都市に集中してきたとか、あるいは人口が非常にふえてきているとかいうことはわかっておりますけれども、例えば炭酸ガスをどのくらいまき散らして排出しているのかというような数字につきましては、国によっては統計がございません。それから、あっても、地球規模研究を進める場合には、必ずしも他国にそれを使わせてもらえる、知らせていただけるというわけではございません。つまり、資料収集にいろいろ非常な困難がございます。それから、地球規模で問題をとらえようとしますと、現在わかっていない地域がまだまだ広いという点でございます。  それで、「何が必要か」というのが二ページの4に書いてございますが、これは資料2のIGBP、Iというのはインターナショナルでございまして、Gというのはジオスフィア、地球圏、Bというのはバイオスフィア、生物圏、Pというのはプログラムでございますが、地球圏生物圏国際協同研究計画というものを国際的に数年かけて研究計画を立ててまいりました。日本でもこの研究を進めるべきであるということで、本年の四月に日本学術会議総理あて勧告を提出いたしましたが、八十ページ余りの厚いもので、それをまとめまして、「何が必要か」というところに(1)から(7)まで書いてございます。  (1)というのは、簡単に申しますと大気中におけるいろいろな現象でございます。(2)が、海洋における物質循環生物生産でございます。(3)が、陸上の生態系への気候変化影響でございます。(4) が、地球圏生物圏を含めた地球環境変化のモデリングでございます。数値実験するための問題点でございます。これも後でお話があろうかと思います。(5)は、衛星画像解析などによる地球環境のモニタリングでございまして、これも後で坂田先生そのほかの方からお話があろうかと思います。  それから、(6)が、少し見方を変えまして、人間歴史は長うございますが、余り昔からというわけではなくて、考古時代あるいは歴史時代になってからの環境変化を、文字を書いたものがある時代はそういうものを使い、それがない時代でもいろいろな方法によりまして環境を復元して、どういうぐあいに変わってきたか、それを参考にすればまた百年先、二百年先の問題点も出てくるであろう、解明されるであろうという、時代、時間に沿った変化研究でございます。  それから、(7)が、人間活動地球環境変化関係の量的な把握でございます。量的な把握というのは非常に難しい問題でございますが、特に社会科学経済学あるいは場合によっては法律の問題等々も関係いたします。御承知のように、「法の精神」というようなモンテスキューの本には気候環境法律の問題などがもう何百年も前に論じられているわけでございますけれども、いろいろな問題がございまして、国際関係にも関係を持ちますし、そういう点でございます。  まとめますと(1)から(7)までというふうに考えられます。  最後に、こういういわゆる境界領域と申しますか、非常に広範囲な分野環境問題というのはまたがりますので、どうしても研究者の不足を招く。したがいまして、若い研究者を、日本研究者はもちろんでございますが、こういう地球規模で考えます場合には、先ほどちょっと申しましたように、国によっては統計がないというようなものは、少し回りくどいようではございますが、やはりそこの国の研究者を育てて、統計というものがいかに重要であるかというふうなことから始めなければならないわけでございまして、我々といたしましては、大学で言えば学部ばかりじゃなくマスターコースあるいはドクターコースなどの第一線の研究者をそれぞれの国というか、それぞれの地域について養成をしなければいけない、それが急務であるというふうに考えます。  そのほか、環境問題と申しますと、いわゆる教育の問題あるいは価値観変化というものまで必要になってくるわけでございまして、これはもう幼児教育から生涯教育まで、先ほど大学の問題を申しましたけれども、大学以外でも環境問題ということはかかわりますので、こういう研究も必要でございますが、いろいろな意味で教育も必要であるというふうに思います。  以上で私の方は終わらしていただきます。
  6. 中西珠子

    委員長中西珠子君) どうもありがとうございました。  次に、坂田参考人にお願いいたします。坂田参考人
  7. 坂田俊文

    参考人坂田俊文君) 私が御説明申し上げたいと思うのは、地球環境とリモートセンシングという分野でございまして、地球環境観測するには人工衛星を使うことが最も現在効果的な方法であります。この人工衛星地球周りをめぐり始めたのが一九五七年ですから、既に三十四年たっているわけですが、この間に年間に約百以上の人工衛星地球の外へ打ち上げられて地球観測しているわけです。もちろん、この中には、通信衛星放送衛星、その他航行衛星とか、その中に入りまして地球観測衛星というのが非常に重要な意味合いを持っております。  地球観測衛星は、一九七二年にアメリカが打ち上げましたランドサットという人工衛星が最初でございまして、その後フランス、それから日本その他の国々が次々と人工衛星を上げているわけです。特に、日本では比較的早く、アメリカフランス、ヨーロッパに続いて非常に研究も活発でありますし、非常に多くのデータを出すようになってきまして、衛星のいわゆる先進国としての地位を保っているわけであります。  この地球観測衛星に搭載されているセンサーというのがございまして、これは一種の電子の目でありまして、これで地球観測しますと、非常に広い地域を非常に短い時間で観測できるという特徴を持っているわけです。例えば、九百キロ上空または七百キロ上空、このような高いところから地上がどのくらいまで見えるかといいますと、大体三十メーターから十メーターであります。九百キロというと、ちょうど東京から熊本を直線でつなぎますと九百キロぐらいです。それから、七百キロというと大体広島ぐらいになると思いますが、広島から東京を見て高さ三十メーター、高さ十メーターのビルが見えるというくらいに鮮明な解像力を持っているわけです。それで非常に広い地域といいますとどのくらい見えるかといいますと、非常に幅の広いところでは一回に観測できるのが三千キロ近い幅で観測ができるわけです。精密に見る場合には、大体百キロから百八十五キロぐらいの幅です。もう少しわかりやすく言いますと、関東地方ぐらいのところを大体三十秒ぐらいで人工衛星が撮影しているわけです。  この人工衛星で得られましたデータは非常に貴重な価値がございまして、非常にたくさんのデータを示しているわけです。特に、地上温度分布、植生、それからいろんな水の分布、いろいろな地形の変化、こういうのも含めて見ることができますし、特に海洋では海洋のいろんな海流の動きとか波とか温度とか、中にはプランクトンの分布というようなことも見ますので、漁業にも大きな影響を与えます。そういうわけで、非常にこの人工衛星による地球観測というのは今重要な位置を占めておりまして、各国非常にこれに注目して研究開発を行っております。  これで使われているセンサーはたくさんございますけれども、一応共通な面がたくさんございます。特に、最終的に人間の目で見てわかりやすくするということで、人工衛星から得られたデータ電波で送られておりますので、地上受信局で受けた後にコンピューター映像にするわけですが、その映像にするときにコンピューター画像処理ということをいたします。そこで、資料の方に「地球観測する」というのをお配りしてありますが、その中に写真が入っております。それは本のちょうど真ん中に三つに分けて黒い色が出ておりますが、これが人工衛星で撮影した画像のサンプルでございますので、それを見ていただければ現在までやられている状況はわかると思います。  そこで、実際には映像で見ていただいた方がわかりますので、ちょっと映像で見てみます。(OHP映写)  これは資料の中に掲載されていますが、人工衛星で撮る場合、地球直径は約一万三千キロメートルありますが、北極と南極、極から極へ回っている極軌道衛星というのがございます。これは大体千キロ以下で地球表面を撮っておりまして、たくさんの衛星地球周りを通っていきます。ちょうど地球周りを一回回るのに大体百分から百十分ぐらいで回ります。そのために、地球が百分の間ぐるっと回りますので、次々と地球表面をちょうどリンゴの皮をむくように撮っていくわけです。それから、地球周り地球直径の三倍のところで、これは赤道上空に代表的な五つの気象衛星が置かれております。この気象衛星は、実は地球の回転と同じ速度地球を回っておりますので、ちょうど下から見るととまっているように見えて静止衛星という名で呼ばれているわけです。大きく分けてこの二つ軌道、極軌道とそれから赤道上の静止軌道、この二つ軌道から送られてくる人工衛星電波地上受信局で受けているんな映像にするわけです。  そこで、人工衛星から得られた映像がどんなものかといいますと、先ほど申し上げたように非常に幅の広い範囲で撮るということと、全球を全部撮って雲の動きを見ている場合もあるわけです。地球全球を見ますと、もちろん人工衛星の場所にもよりますけれども、雲の動きは全体がわかります。この雲の動きによって、どの部分で水が蒸発しているか、どの部分が非常に雨が多いか、どの 部分が乾燥しているかということが非常によくわかるわけです。これらをコンピューターで処理いたしますと、地球状況を全部見るために、雲をコンピューターの上ではがしてしまいます。そうしますと、地球表面乾燥状態が非常によくわかるようになります。アフリカの場合には、植物の生えている部分、それから砂漠化している部分が非常に明確に人工衛星の絵で見られるわけです。  地球は、北半球及び南半球ともに中緯度帯乾燥帯でありまして、人工衛星から見ると非常にはっきりこの地球上の砂漠状況がわかるわけです。この地球の上に雲の姿を見てみますと、雲の発生しているところは赤道の上にたくさん発生しています。それから極地の方へそれが移動して、また極地の方で雲の動きが見えているわけです。  こういうふうなデータをさらに温度変化としてとらえるわけです。これは地球上の温度変化を見ているわけです。例えば非常に温度の高いところは赤く見えておりまして、赤道の下は非常に温度が高くなっています。ここからどんどん水蒸気が上がりまして雲になっていくわけですが、その雲がどういう形で移動していくかということと同時に、海の表面温度がずっとわかってまいります。  特に最近問題になっておりますエルニーニョというような問題は、この西太平洋、東南アジアのこの地域温度が高くなってまいりまして、たくさん雲が発生しまして、これが東の方へ移動して南米の沖までつながってしまいます。こうなると太平洋全域が非常に温度が高くなる。そうしますと、ここでたくさん水が蒸発して雲になって雨になりますので、例えば南米にはたくさん雨が降る、それからバングラデシュの方、このあたりも雨が降る。たくさん雨が降ってしまうところと逆に乾燥してしまうところが出てきますので、今度はあちらこちらで山火事が起きるということがわかります。これは実は人工衛星で見ることによって非常に明確になってまいります。  それから、人工衛星極地方を調べてみますと、これが北半球を上空から見ているわけです。こちらが南半球を上空から見ているわけです。このように北半球と南半球では非常に姿が違って見えていまして、北半球は大陸が非常に多い、南半球は余り大陸がないということですから、雲の動きも違って見えますし、植生それから砂漠のでき方も少し違って見えているわけです。この北半球または南半球の極地方は、実は大気の、地球というのは大気の衣を着ていますが、その衣が薄いんですね。薄いところで、下から上がってくる水分というのは炭酸ガスとかいろんなガスがありますから、そういうものの変化がよく見られるわけです。  これはニンバスという衛星で撮った南極のところです。この南極のところになりますと、大体秋になりますとオゾンの層が薄くなっています。大体オゾンというのは、一番たくさんあるのは地上から二十五キロメーター、二万五千メーターぐらいのところに非常に多いわけです。人工衛星からそれを観測しますと、このオゾンの層の厚さの分布が出てまいります。それで中心部が非常に低くなる。通常はこれはドブソンという指数を使って表示しておりまして、この変化がどの程度出てくるかを調べているわけです。一九七九年にこの人工衛星から撮った画像の場合には、中心部のオゾンの層が通常の観測しているところの大体半分ぐらいの値だったわけです。ところが、一九八七年に撮りますとさらにその半分、約八年間の間に四分の一ぐらいに変動してしまったわけですね。こういう状況を刻々ととらえてくるわけです。一九八八年あたりになりますとまた回復しておりまして、それから八九年にまた減っておりますが八七年ほど激しくは変化はないということで、この人工衛星からの観測を継続的に続けることが非常に重要なことであります。  このようにして、地球上のいろいろな広い地域変化こそ重要なものでありまして、局地的にはかられるデータだけではなかなか地球環境というものは判断できないわけですから、この観測体制を、地上の個々に細かく局地的にやられる観測とこういうような広域の観測を結びつけることによって地球変化の実態が明確につかめるだろうと思います。  例えば関東地方を例に挙げますと、赤外線で関東地方全体を見た場合には、東京のあたりの非常に人口の多いところは非常にたくさん熱を出しているわけです。それから、関東地方でも小都市がたくさんありますから、そういうところもそれぞれ温度が高くなっておりますので、そういうところは赤く見えるように、これは画像の上でわかるわけです。さらに細かいところを見ますと、例えば東京の中心を観測してみますと、皇居のあたりは非常に温度が低いわけですが、渋谷とか新宿とか池袋とか、こういうところの繁華街は温度が高いということがわかります。このようにして、人間の住むところによって赤外線の放射が変わるということで環境変化というのを見ることができるわけです。  こういうふうにして、人工衛星から得られたいろいろな人工衛星データを重ね合わせて地球全体をながめてみようということが現在やられておりまして、世界的なこういう地図をつくることができるわけです。  最近話題になっております非常に大きい問題としましては、人工衛星で現在我々の方のプロジェクトで実施しておりますのは、砂漠化と森林の減少、それから自然災害と気象それから海洋環境、この大きく分けた三つのテーマでやった結果、今お見せしたような画像が出ております。特に自然災害の場合には、こういう火山爆発の場合には、もし人工衛星がそのそばを通りますと非常に明確にわかりますし、それからバングラデシュの洪水のような場合には、洪水の前後でどのような地域まで洪水が影響しているかというのは非常によくわかるわけです。  最近話題になりましたブラジルの森林地帯の変化なんですが、これは人工衛星から調べて、この地域のブラジルの森林の変化がどういうふうにあらわれているかというのを実際に見てみたわけです。これは、一九七三年の人工衛星データですとちょうどグリーンのカーペットのように見えていまして、真ん中に国道があります。一九七九年になりますと伐採が行われて、この地域は熱帯雨林を切ってそこに牧場とか農地をつくっているわけです。一九八五年に人工衛星観測した例では、この地域はほとんど森林が減少してしまったというところであります。この地域は非常に広い地域でして、このロンドニア地方だけを対象に調べたわけなのでありますが、人工衛星で調べたこの地域、大体百キロぐらいの範囲で観測した結果で、同じような形で魚の骨のように国道を中心にして左右にこういう開拓が行われている状況が見えるわけです。この状況がどういうようなものかといいますと、関東地方のこの範囲が百キロぐらいとしますと、百キロ以上の広い地域がたちどころに減少してしまった。この十年間に森林の変化というのはこれほど激しい変化をしているわけであります。こういう状況が刻々と地球観測で得られております。  このようにして、人工衛星で得られましたデータで国際的にはたくさんの共同研究が行われておりまして、最近では、これらのデータを非常に速くお互いに交換しているんな対策を講じよう、特に今重要なことは、現象がどういうものであるか明確にするためには早く観測体制を整えることであります。我が国におきましては、先ほども申し上げましたように地球観測衛星としてはMOS1が上がっておりまして、現在MOS1bが上がる。続けて計画されているERS1という地球資源探査衛星、それから次期の衛星としてはADEOSという非常にデータのたくさんとれる人工衛星、それから米国との間で共同研究が行われる熱帯降雨を調べるためのTRMMという人工衛星、これが共同研究で行われております。  先ごろ、ISY、国際宇宙年という形で、この分野での共同研究が国際宇宙研究機関でやられる ことになりまして、一九九二年に大きな会議が開かれて、ことし京都で第三回の共同研究を含めた将来計画の会議が行われまして、我が国での宇宙開発の非常に重要な地位が認められたわけであります。  以上であります。
  8. 中西珠子

    委員長中西珠子君) どうもありがとうございました。  次に、寺本参考人にお願いいたします。寺本参考人
  9. 寺本俊彦

    参考人寺本俊彦君) 寺本でございます。  私からは、地球環境海洋ということでお話をいたしたいと思います。ただし、海洋の中でも化学的なことと生物に関することは次の小池参考人の方からお話があると思います。  さて、水の惑星と地球は言われますけれども、水があることが一体どういう役割をしているかということから入っていきたいと思います。  差し上げました資料の1に、「海は地球の空調器」という表題をつけました。これはどういうことかと申しますと、太陽から地球にエネルギーが降り注いでまいります。その様子は図1にかいてございます。図1の一番左のところをごらんいただきますというとおわかりになるように、太陽から降り注いだエネルギーの約半分が大気を素通りしまして海へ入ってまいります。大気と申しましても、これは雲とかあるいは大気中の水蒸気、あるいはちりとかあるいは煙霧、いろいろなものがございますが、そういうところへ蓄えられるものはせいぜい二〇%ぐらい、大部分が海へ入っていくということがまず第一にございます。  それから、もう一つ大事なこととして、海が熱を蓄える能力、これを熱容量と言ってよろしいわけですが、それは大気に比べますとはるかに大きい。どのくらい大きいかということをちょっと御説明いたしますと、その文書にも書いてございますけれども、たとえば大気と申しましても大ざっぱに申しまして地表から千キロメートルの高さまで及んでおります。その地表から千キロメートルの高さまでの大気全体の貯熱能力といいますか、熱を蓄える能力というのは、海で申しますと海の中のたった三・五メートルの層の貯熱能力に当たる。海は平均しますというと三千八百メートルありますから、その中のほんの一部、三・五メートルの層だけでもって大気全体の貯熱能力に匹敵する、そういうことになります。ですから、逆に申しますと、海の温度がちょっと変わると地表の温度がすばらしく変わるだろうという想像がすぐできるわけです。  それから、もう一つ例といたしまして、海の厚さ百メートル層の水温をたった摂氏一度上げるのに必要な熱量というものでもって、一年を通して海から大気へ出ていく熱量全部を賄うことができる。ですから、海はさっき申しましたように三千八百メートルありますけれども、その中の百メートル層の温度をたった一度上げるだけでもって大気へ入っていく熱量を全部賄う、そんなことになっております。ということは、逆に申しますと、海が少し変化をするとこれは大変なことになるなということになるわけであります。  要するに、海は地表面温度を制御するという非常に大きな役割を持っているわけです。一般に、今までは海というと生物あるいは魚とか、そういう方にすぐに関心が持たれるのでありますけれども、それだけではなくて、海はそういうふうな非常に重要な役割をしているのであるということを御認識いただきたいと思うんです。  しかし、今のは海がとまっている、静止しているということでもって申し上げたわけですけれども、実は海にはいろんな運動があります。すぐ目につくのは波でありますけれども、波なんかは気候変動から見ますとそのもの自体は余り大した影響はない。それよりは海の大循環というものが大変重要な役割をしているわけです。  これは2のところでありますが、そこに「根幹的」と書きましたけれども、海の循環というのは、これは海全体にまたがるような循環のことを申しております。海洋大循環と申します。これは二つに大きく分けることができます。一つは表層の大循環、もう一つは深層の大循環、その二つに分けて考えることができます。では、表層とは、あるいは深層とは一体何を指すのかということがございますけれども、それは大ざっぱに言いまして、表面から大体千五百メートルぐらいまで、場所によって違いますが、せいぜい二千メートルぐらいまでが表層であります。そこから下、太平洋で申しますと六千メートルまでが深層であります。この大きな二つの層に分かれて、それぞれに大循環という現象があります。  表層の大循環は何によって起こるんだろうかということでありますが、これは風によって起こされるというふうに考えてよろしいと思います。それをごらんいただくために、まず図2というのをごらんいただきたいわけです。  この図2は我々に非常になじみの深い北太平洋の風の分布をかいております。これは二十年間ぐらいにわたっての平均的な風の分布図であります。そこに太い点線でもって丸がかいてありますけれども、実は風に沿ってそんなふうに海の表層に循環が起きているというありさまを示したものであります。  さて、その次の図3というのをごらんいただきますと、これは北太平洋の海の方の循環を示しております。ここにも太い点線で輪がかいてありますけれども、これが亜熱帯循環と呼ばれているものであります。この中には黒潮が一部として含まれております。  こんなふうに風の場あるいは風系と申しましょうか、それと海の循環とがまさに一対一に対応していると申し上げてよろしいわけです。そんなふうなことで、まず表層では風によって大循環が起こされているということであります。  それからもう一つの循環を起こす要因としては、高緯度地方、極に近い地方では冷やされる、これは御存じのとおりであります。それから低緯度地方、赤道に近いとるでは温められる。水は冷やされれば重くなります。それから、温められると軽くなります。密度の大きい小さいの差ができますというと、それで対流が起こるわけです。これを我々は熱塩循環と言っております。塩が入っているのはなぜかと申しますと、これは今のような熱だけじゃなくて塩分の濃い薄いというのも循環を起こすことにかかわりますので、ひっくるめて熱塩循環と言っております。  これはどこの循環を起こすかといいますと、実は深層の循環に非常に大きな関係がございます。では、深層の循環はどうなっているかというのを描いたのが図4であります。  これは海の深層循環でありますが、どんなふうにして起こるかと申しますと、世界の海でもって実は深層の沈み込み、下層の方へ表面から沈み込んでいく場所がたった二カ所ございます。その一カ所はグリーンランドのちょっと南のところに丸く黒くかいた部分があります。この部分でもって大量の水が沈み込んでおります。それからもう一カ所はどこかと申しますと、ずっと南の方の、やはり大西洋の南の方でありますが、南極のウェッデル海の近くに黒丸がかいてございます。この二カ所でもって大体一秒間に平均いたしますと三千万トンから四千万トン、と申しますと黒潮の流れに匹敵するぐらいの水が沈み込んでいるということになります。では、太平洋はどうか。太平洋にはそういう沈み込んでいる場所がございません。  沈み込んだ水はどうなるかと申しますと、グリーンランドの沖で沈んだ水はアメリカ大陸の東海岸を通ってずっと南の方へ下ってきて南極まで至ります。そこで南極で沈んだ水と一緒になりまして、合体して南極大陸の周りを東の方へとぐるっと一回りいたします。御存じのように海はドーナツ型にあいているところというのは南極のすぐそばしかございません。あとは全部大陸だとか島があって、ドーナツ型に輪になっているところはここだけなんです。深層の水はこの輪になっているところに沿って東向きにどんどん流れていくわけです。その一部が途中でインド洋にも入ります。太平洋にも入ってまいります。というのが、血管 のような絵をかいてございますが、そこにあらわれております。  太平洋で申しますと、こうして南極海からずっと水がオーストラリアの東の方を通って、赤道を越えてさらに北へ上がってきて日本の近海まで来ている。来るだけでなくて、その間にちょうど毛細血管のように太平洋の真ん中の方へ広がっていっているわけです。南半球も同様でありますし、北半球も同様であります。このようにして大循環が起きている。  それでは、水が太平洋へ入ってくるばかりじゃ困るじゃないかと。なるほどそうでありまして、太平洋では表層から水が外へ抜けております。一つはベーリング海峡を通って北極海へ抜けておりますが、これは量としてはごくわずかであります。大部分は、実はフィリピン海からインドネシアの近海を通ってオーストラリアの方から南極へ戻るわけです。それでつじつまが合っているわけです。入ってきた分だけ出ていくということになっているわけです。  ところで、先ほど申し上げました表層の循環の図と今申し上げました深層の循環の図とはまるで形が違うということがおわかりになると思います。しかしながら、どちらも非常に重要なことは、まず熱を運ぶということです。例えば太平洋で、先ほどの図3の表層循環を見ていただきますと、日本の近くではフィリピンの沖とかあるいはもっと南の方から温かい水が北へずっと上がってきて日本の近海から東へ流れていく。要するに、西側では南の温かい水を北へ運んでくる。逆にカリフォルニアの沖では冷やされた、冷やされたと申しますのは、海からは大体常に、特に冬場はそうなんですが、大気の方へ熱が出ていきます。海はどんどん冷えていきます。冷えた水がアメリカの沖では北から南へと運ばれておるわけです。これはマイナスの熱の輸送であります。西側ではプラスの熱が輸送されて東側ではマイナスの熱が輸送されている。いずれにいたしましてもその熱の輸送量というのは大気の中で運ばれている熱と同じぐらいだというふうに最近考えられております。ですから、気候が温かいとかあるいは温度が高いとかいうようなことを大気の中だけで考えていたのではだめである、海を一緒にして考えなくちゃだめだということが最近非常にはっきりした認識としてとらえられてきたわけです。  それでは、図4の深層循環は一体どういう役割をしているかと申しますと、その図の中に、例えば太平洋の真ん中の方に傘みたいな小さな矢印がいっぱい書いてあります。これは何を意味しているかと申しますと、実はこういうふうに毛細血管のように太平洋の真ん中、大西洋も同様でありますけれども、ゆっくりした流れが枝分かれして出てきますというと、必ず上向きの、湧昇と申しますけれども、水がわき上がってこなくちゃいけないというそういうことが理論的に出てまいります。これは地球が自転していて、しかも自転の速さが、速さと申しますか影響が北と南で違うということによってそんなことが出てくるわけです。この深層から水がわき上がっているということが非常に重要なわけです。  どんなふうにして重要かと申しますと、まず赤道域で考えますと、赤道域は温められて表層の水はどんどんどんどん温度が上がっていくわけです。ところがそんなことにならなくて、大体まあ幾ら高くても摂氏三十度ぐらいでとまります。これはなぜかといいますと、下から上がってきたこういう水が温度の上がることを防いでいるわけです。それから逆に、北の方ではどんどん冷えてくるんですけれども、それが下から上がってきた冷たいと申しましても零度とか、太平洋で申しますとたかだか摂氏零度ぐらいで、北の方で言えば、冬で言えば温かいわけです。そういう水が上がってきて極端に温度が冷えることを防いでいるというわけで、深層の循環もそれから表層の循環も熱を運んでいる、そういう非常に大きな役割をしているわけです。それだけではなくて、先ほどもお話がありましたが、いろんな物質、これは汚染物質も含めて海洋の水が運んでいるということは、これは確かなことなんであります。  図5の日本のごく近くの四国・フィリピン海の深層循環というのは、図4には出ておりません。日本には伊豆・小笠原海嶺というのがすぐそばにありまして赤道近くまで行っているものですから、この西側の日本のすぐ南側、すなわち四国それから近畿地方あるいは遠州灘とかその辺のところは深層の循環がないだろうというふうに言われていたんですけれども、そうではなくて、最近日本大学関係者が集まりまして行った研究の結果、実は図5のようなそういう循環がある。深層にも循環がございます。これは赤道を越えてきた水がパラオ諸島のところでフィリピン海に入り込んでいるわけです。そしてこんなふうに枝分かれしているということがわかってまいりました。しかも大事なことは、表層の黒潮の下はどうなっているかということが今までわからなかったんですが、黒潮の真下は黒潮と全く反対方向に流れている。例えば沖縄の近海でもそうでありますけれども、あるいは紀州沖でも反対向きに流れているというようなことがわかってまいりました。これは熱の輸送とかあるいは物質の輸送に非常に重要な役割をするということが考えられるわけであります。  さて次に、資料の3に入りまして、先ほどちょっとお話がありましたエルニーニョのことを少し御説明してみたいと思います。(OHP映写)  お手元の図6と同じだと思いますが、南北太平洋をここに書いてございます。これはエルニーニョでないときの状況でございます。これが赤道であります。赤道近辺では、この緑で書きました矢印は風をあらわしておりまして、北東貿易風と呼んでおります。この風が赤道の上まで及んで吹いております。そういたしますと、海はその影響を受けまして赤道のすぐ北では風の方向に流れるんじゃなくて、地球が自転しているということのためにほぼ直角方向に流れるわけです。ですから、ちょうど赤道から北の方へ離れていくというふうな状況になります。  南半球では全く作用が反対でありまして、南の方は同じ風が吹いているのに水の動きは南側に行ってしまう。そういたしますと、この赤道の上で水がなくなるということになりそうなんですが、そうではなくて、下から補っているわけです。ですから、赤道の近くは下から水がわいておりますから、ここは意外に温度が低いわけです。ですから、この青く書きましたのは、温度が低いということを示す意味で青く書いております。  それから、ペルーの沖もそうでありまして、ここに緑の方向の風が吹いております。そういたしますと、岸から離れるような、これは南半球では風に対して直角、左手方向に水が流れますので沖へ出ていく。したがって、下から水がわき上がってきて、やはりここも冷たい。意外にこの赤道域でも冷たいわけです。ですから、この辺一帯、カリフォルニアの沖も同じであります。大体この辺は水の方は冷たいんです。  それじゃ、西の方はどうかといいますと、先ほどお話がちょっとありましたけれども、この赤道で温められた水が表面、表層を流れてここへたまってくるわけです。フィリピン近海では非常に温度の高いところ、世界じゅうでも珍しいくらい高いところでありまして、ここは水がたまっているわけです。したがいまして、東側に比べますとこの西側の方は海面が一・五メートルから二メートルぐらい高まっております。ですから、海面というのは勾配があるわけです。そんなふうになっております。これが全くエルニーニョでないときの平常年のありさまであります。  ところが、エルニーニョが起こりますというとその状況が全くがらりと変わってまいります。  まず、どういうところが変わってくるかと申しますと、今吹いていた北東貿易風という北東の方向から南西に吹く風が非常に弱まってしまいます。これなんです。と申しますのは、余り詳しいことをお話ししている暇もないんですけれども、この図で申しますと、この日付変更線の少し西側までにわたって、ここではこういう大きな鉛直方 向の渦が風の中にできております。そういう渦があってその隣にもまたその渦があります。その渦のありさまが全く変わってきて、この東側の方の渦がエルニーニョが起こりますというと小さくなってしまって、それに伴ってこの風も弱くなる。そういたしますと、下からわき上がってくるというようなことがなくなりまして、今までここにたまっていた温かい水が波のようにとうとうと東に押し寄せてまいりまして状況は一変いたします。そして、今まで冷たかったところの東の方の表層の水の温度が大変温まってきます、赤く書いたわけですが、そんなふうになります。  というわけで、これをエルニーニョと申しますけれども、ただこの海面だけではなくて、このときには、例えばこの辺がペルーでありますが、この内陸部はふだんは乾燥地帯でありますけれども、砂漠に近いようなところでありますが、そこに大雨が降るとか、あるいは先ほどもお話がございましたが、オーストラリアの内陸部に雨が降るとか、あるいは逆にそこが非常に干上がってしまう、乾燥してしまうとか、そういういろんな現象が起こります。この海と大気と両方をひっくるめたこういう現象のことを我々はエルニーニョと呼んでおります。  エルニーニョは一体いつごろから起きているのかと申しますと、これは恐らく人間の有史以来だろうと思います。図の7をごらんいただきますというと、これは一九五〇年ぐらいから七五年までの二十五年間ぐらいのありさまでありますが、この一番上の①と書いたのは、下の方にも説明がございますが、メキシコ沖の水温であります。これが急に上がる。先ほど申し上げたような理由で、フィリピン海近くにあった海水が東へ伝わってきてこの水温を上げる、これをエルニーニョと呼んでおります。こういうのが数年置きに起こっております。  実は日本には古文書というのがございます。欽明天皇の元年ですか、その辺からは大体資料として確実だろうということで古文書を調べてみますというと、と申しますのは、明治二十年に小原さんという方が大変いい仕事をしておられる。古文書を全部あさりまして、干ばつとか、そういう資料を全部集めてくだすっているわけです。それを調べてみますと、欽明天皇の元年から明治二十年までの約千三百五十年くらいありますけれども、その間にこのエルニーニョに当たるような大干ばつが日本で二百十五回ぐらい起こっております。単純に割り算をいたしますというと六年に一回ずつ起こるというわけで、このエルニーニョのような現象は繰り返す現象であるというふうに言ってよろしいと思います。しかしながらその影響は大きくて、これは地球環境だけではなくて経済面でも大変大きな影響を及ぼしていることは御存じのとおりであります。  ところが、そういうふうな繰り返し現象とは別に、先ほどもお話がありましたが、今度は我々に徐々にじわりじわりと追ってくるような現象もございます。それとエルニーニョのような繰り返し現象とは原因も全く違うわけでありまして、別に考える必要があるというふうに思います。  資料の4に入ってまいりますが、そういうトレンドと申しますか、そういうものも大変重要なのでありますが、例えばエルニーニョのモデルというのもございます。それもまだわからないところが非常に多いわけです。どうしてかと申しますと、先ほどの図7でございますけれども、この絵をごらんいただきますというと、①から⑨と非常に離れた場所のいろんなものをそこへ並べて変化を書いてありますが、よく見ると、なるほど大変に似たような感じのものが出ております。①は、さっき申しました水温であります。例えば一番下をとりますというと、これは太平洋のちょうど日付変更線のそばにあるカントン島とかオーシャン島という島の雨量とかあるいは雲量をとっております。それから、⑦は、赤道反流と申しまして北緯五度から十度の間を東に流れている海流なのでありますが、それの変化というのを見ますというと、流量の変化ですが、①のエルニーニョと非常によく対応しているというようなことがわかります。  しかしながら、ここでもって申し上げたいことは、何でこんな離れた点の様子を見るのかと、実は測定がないのであります。こんなふうに離れたオーシャン島のデータはあっても、太平洋の真ん中では風のデータもなければ雨量のデータもないわけです。ですから、我々が得られるところというのは点々と非常に離れたところのものしかないというわけで、この関係があるものですから、テレコネクションなんて呼んでおります。  問題は、そういうことではエルニーニョのモデルにしましても気候変動のモデルにしましてもなかなかうまくいかないのであります。これはどうしても人工衛星を使って調べるしかない、グローバルに調べるしかないわけです。そういたしますと、例えばどこで何が起こって、それがどこへどういうふうに伝わって、どこでどういうことを起こして、その結果こうなったということが一目瞭然でわかってくるわけです。プロセスが全部つかまえられる。そのためにはどうしてもやはり人工衛星が必要であります。  先ほどもお話がありましたようにADEOSなんという衛星は、例えば風をはかるセンサーを積むことになっております。海面の風をグローバルにはかってくれる。そういたしますと、三十度の風だとか言わないで、風の変化がどうなったか。それから水温もはかってくれる。水温の変化がどう伝わったか、それに応じて風はどうだったか。あるいは海面の流れ、これはアルチメーターと申しますけれども、先ほどのように黒潮が流れておりますと黒潮に向かって下流側の右手側の方が高くなる、地球の自転の影響でそういうことがございます。ですから、黒潮というのは、例えば日本の近海で申しますと伊豆大島と八丈島の間を流れております。八丈島側の方が右手側ですから、右手側の方が水面が約一・五メートルぐらい高いわけです、というようなことがあります。逆に申しますと、そのでこぼこをはかれば海の表面の流れが全部わかる。それはやはり人工衛星によるしかないわけです。そういうわけで我々は、これから日本も打ち上げるでありましょう衛星、あるいはよその国も打ち上げるでありましょう衛星に非常に大きな期待を持っております。  ただ、ここではっきり申し上げたいのは、一九七九年にシーサットという衛星アメリカによって打ち上げられました。このときに、もう既に風もはかれる、それから表面のでこぼこもはかれるということがわかっていたわけですけれども、その後そのような能力を持った衛星はまだ打ち上げられていないわけです。日本も打ち上げておりません。これはいろんな理由がございましょうけれども、このように環境問題が大きく出てきた折でございますから、日本もより一層のその方面での努力をお願いしたい、こう存ずる次第であります。  その一環としてWOCEという、ワールド・オーシャン・サーキュレーション・エクスペリメントと申しますけれども、この3の(7)に書いてございますが、それに日本も積極的に参加しようということでやっております。このWOCEというのは、世界、ワールドですが、オーシャンのO、Cはサーキュレーションで、Eは実験のエクスペリメント、ですから世界海洋循環実験というのに参加をしようというようなことになっております。  さて、先ほどの4にもう一度戻りまして、先ほど来温室効果といいましょうか、そういうことで地表の温度が何度か上がるであろうというようなことが言われております。それに基づいて、例えば南極の氷も解けるでありましょうし、あるいはヒマラヤやアルプスの氷も解けるでありましょう、ということで海面上昇することが大変心配されているわけです。これはモデリング、吉野先生なんかもそういうことを御専門にしておられますが、とにかくメートルオーダーで上がる可能性が百年とかあるいは二百年の間に起こるであろうということで、そういう非常に長いトレンドのようなことの研究も、先ほどのエルニーニョのよう なものとは別にまた考え、あるいは一緒に考えていかなくちゃいけないということを強調したいわけです。  いずれにいたしましても、それらに海が非常に深くかかわっているということは間違いございません。ところが、日本の海の研究体制というのは、残念ながら非常に弱いのでありまして、日本アメリカ人口比が約一対二であると思いますけれども、研究者層の比は一対一〇であります。そういうわけで、これは水産関係はちょっと別だと思いますが、物理とか化学とかそういう方面の人口比、研究者数の比は一対一〇でありまして、もう少しこの辺を増強していただくことが必要であるというふうに考える次第であります。  以上で終わらせていただきます。
  10. 中西珠子

    委員長中西珠子君) どうもありがとうございました。  次に、小池参考人にお願いいたします。小池参考人
  11. 小池勲夫

    参考人小池勲夫君) 私は、今の寺本参考人お話で、地球環境において海洋というのが非常に重要であるということは皆さん既におわかりいただけたと思いますので、その具体的な一つの例といたしまして、現在我が国を含む世界の先進十カ国余りが共同して既に調査が進められております地球規模での海洋における炭素の循環に関する国際共同研究、これは略してJGOFSというふうに呼んでおりますけれども、どうしてこういう研究をする必要があるのか、またどのようにしてその研究が進められるか、またこの研究にこれから必要な観測手段はどのようなものがあるかということについて、ここで簡単にお話ししてみたいと思います。  私、資料を用意いたしましたのでそれをごらんいただきながら話を進めたいと思うんですけれども、一ページ目に少し漫画のようなものをかいて大変恐縮なんですけれども、ごらんください。  これは、海洋を中心とした炭素ですね、二酸化炭素も炭素の一つですけれども、その炭素の循環というのが三つのポンプに例えられる力によって動かされているということを模式的に示したものです。そのポンプの一つというのは、陸からの炭素を海の方へ運ぶ、ここに攪拌ポンプというふうに書いてありますけれどもそのポンプでありまして、それからもう一つは、現在温室効果ガスとして大気中に増加していることが明らかな二酸化炭素を海洋表面で有機物に変えてその一部を深層に落とすいわゆる生物ポンプ、ここには生産工場と書いてございますけれどもそのポンプ、それからあとそれを中深層で分解して世界の海に運ぶ深層循環ポンプという三つのポンプになぞらえる海洋の持つ力によって炭素が循環していくわけであります。これらの働きによって、現在では大気中の二酸化炭素の増加のかなりの部分海洋に取り込まれているということが考えられておりますけれども、実際にこの二酸化炭素の海への取り込みが全地球規模で一体どのような具体的な機構によって行われているかということに関してはまだわかっていないところが多くあります。  次の二ページ目をちょっとごらんください。二ページ目は、地球上のさまざまな部分、この場合大気圏あるいは表層水、中深層水あるいは堆積物というところに二酸化炭素や有機物などのさまざまな形の炭素が一体どれくらい存在し、また一年間でどれくらい動いているかというのを大まかに見積もったものであります。この太字で書いてあるのがそこにある存在量なんですけれども、例えばこの図から一番左の方に書いてあります石油や石炭などを燃やしてできた化石燃料からできた二酸化炭素、これは単位がギガトンでございまして、六ギガトンのうち海洋がその約半分を取り込んでいるということがわかります。また、その海洋には二酸化炭素が大気中の約五十倍も多く存在しておりまして、表層だけでも約四倍の二酸化炭素があります。したがいまして、この海洋の持つ二酸化炭素がわずかでもふえても減っても大気中の二酸化炭素濃度には非常に大きな影響を与える可能性があるということもこれによっておわかりいただけると思います。  また、先ほど申しましたように、生物ポンプと申しましたけれども、植物プランクトンを初めといたします海の生物というのは非常に大きな炭素を循環する力を持っておりまして、大体大気海洋との交換速度の約三分の一ぐらいの循環速度を持っております。  そのうちのそこに有機物として書いてあります五ギガトンを中深層へ、これは粒子の形で落としております。この五ギガトンというのは、海洋の持つ二酸化炭素の量から見れば非常に小さい量でありますけれども、先ほどお示ししましたように、化石燃料で出てくるのが六ギガトンでございますので、その海の生物が下へ落とす有機物だけでもほぼそれに見合っただけのものが下へ行ってしまうということで、もともと化石燃料というのは多くの場合生物がつくったものですけれども、それがまた生物作用によってうまく大気から取り除かれて、もう一度その堆積物の方へ持っていける可能性がここに示されるわけです。  今お話ししましたJGOFSという研究は、大気海洋とにおける二酸化炭素の動き生物が重要な役割をしているということを前提として計画が立てられておりまして、三ページにその計画の主な目的とそのプロジェクトの構成要素が書いてございます。このような炭素の循環の研究の場合には、炭素だけ見ていればいいというものではございません。例えば、植物プランクトンなどに二酸化炭素が取り込まれて有機物になる場合、実際の海洋では栄養塩と呼ばれる硝酸やアンモニアあるいは燐、あるいは非常に微量な鉄などの元素が供給されなければ実際には二酸化炭素が有機物にはならない、実際にはそういう濃度がその取り込みを支配していることになります。したがいまして、こういうような元素の研究も同時に極めて大事です。したがいまして、それぞれの海域によって、また季節によっても非常に大きく変わる生物活動を中心にした炭素の循環について全海洋規模で研究し、一体それがなぜ変化するか、そのメカニズムについてきちんと理解をするということが、この共同研究の中心課題であります。  そこにプロジェクトの構成要素がaからeまで出てございますけれども、先ほどから話が出ております人工衛星による観測というのは非常に大きなテーマです。それから、bにあります固定、ある代表的な点における非常に長期の経時観測も必要であります。それからあと、先ほど出ました海水と大気との間の二酸化炭素の交換を、二酸化炭素の濃度をずうっと全海洋ではかってそのデータを蓄積するということも大事ですし、今まで得られたデータを使って全海洋での炭素の出入り、つまり収支のモデルをつくっていく必要もあります。  このような目的でこのプロジェクトが八〇年代の中ごろから立案されて現在実行段階に入っているわけですけれども、四ページに、その計画の参加国と、それぞれの参加国がここならやつてもいいという海域が書いてございます。この海域というのはかなり暫定的なものですけれども、ここならば自分たちのテリトリーとして研究を行うことができるという意味で示してございます。  昨年、大西洋の北側においてこの計画の予備実験が行われたわけですけれども、この場合には、ここに出ている国のうち、大西洋を挟む六カ国が参加しまして、計六隻の大型研究船を使って幾つかの観測点を交代で三月から九月まで七カ月にわたって共同調査を行っています。先ほど申しましたように、人工衛星によるいろいろな、例えば、後でお示ししますけれども、植物プランクトンの水平的な分布や時間的な変化というのがデータとしては非常に貴重なんですけれども、残念ながら現在そのようなセンサーを積んだ人工衛星は飛んでおりません。したがいまして、昨年行いましたこの実験では、アメリカのNASAが航空機を飛ばしてこのかわりを努めております。  大西洋の場合には比較的海域が狭いために非常に密度の高い観測研究が可能なんですけれども、太平洋というのは、大きさからいっても大西洋の 二倍はありまして、しかもそれを取り巻く国の研究体制というのもかなり異なっていますために、共同研究というのはそれほど簡単ではないわけです。  この四月に東京で、太平洋の沿岸の八カ国の研究者が集まりまして、太平洋の赤道域でのこのような炭素循環の研究をどのようにして進めるかということについて話し合ったわけですけれども、大西洋で行われたような幾つかの観測点で同時期に多くの研究船を集中させて研究することは、とても太平洋のような非常に大きな広がりを持つところでは不可能であるということがわかったわけです。そのかわり考えられましたのは、それぞれの国の炭素の循環に少しでも関係がある研究航海を数年にわたって赤道域で積み重ねて共同研究にしたらどうかということでありました。  次の五ページをごらんいただきたいと思うんですけれども、五ページに、そのときの会議でつくりました各国はここをこれから三年か四年ぐらいの間に船を出して研究をしますというのが載せてございます。国からいいますと、日本アメリカ、オーストラリア、中国、フランスなどの国がこれらの海域に、メキシコ沖からフィリピン近海まで非常に広範囲に、これ数えてみますとちょうど最低十度おきぐらいで点がちゃんと並んでおりまして、みんな大変これを見て喜んだわけですけれども、観測点が得られるということになりました。このような非常に緩やかな形での共同研究等においても、特に太平洋の西側に関しては、日本観測あるいは研究船が果たす役割というのは非常に多いということは、そこに十の航海が書いてありますうちの四つが日本で現在計画されている航海でありますので、非常に大きいということがおわかりいただけると思います。  次に、炭素を中心とする、いわゆる生物に関連した元素の動き研究するためには、水温や塩分といった海洋物理学的なデータのほかに、非常に多くの化学的あるいは生物学的なデータが必要です。六ページに、このような研究航海ではからなければならない、調べなければならない観測あるいは研究項目についてまとめてあります。1から4までございますけれども、細かいことは省きますけれども、これは実際に水の中に溶けている、あるいは水の中にいる非常に小さな生物から大きな生物まで、あるいはそのいろいろな化学的な成分、それからそれぞれの生物のいろいろな活性を含めて、全部で二十項目以上の研究をまとめることによって炭素の循環についての情報を得ることができるということであります。  しかも、これらの測定の項目のほとんどは現在非常に分析とかそういうことが進んでおりまして、非常に高度の分析や実験技術が船上で必要とされます。このためには、非常に熟練した約二十人から二十五人の研究者あるいは技術者がここに書いてあります一つの船に乗っかって仕事をしなければならない。そのためにはやはりそれだけの設備を持った大型の研究観測船が必要になってくるわけであります。  実際、ここに1から4まで示しました項目でもまだ欠けているものはたくさんありまして、例えば、最近植物プランクトンが大増殖するのに鉄が非常に効いてくるというような報告もございます。南極海で鉄を入れてやると非常に植物プランクトンがふえるというような報告もあります。このような徴量金属を測定するためには、採水やサンプルの処理に特殊な採水器やクリーンルームと呼ばれる設備が船上で必要になってきます。現在我が国でこのような要求が全部満たされるような研究船というのは、残念ながら私のおります東大の海洋研究所の白鳳丸一隻しかございません。非常に寂しい限りであります。  既に、生物が関与するシステムというのは海域によって大きく変化し、また季節によっても変化するということが特徴であるということをお話ししましたけれども、そのように非常に変化の激しいものを追っかけるためには、幾ら研究船があってもとても広大な海をカバーすることはできないわけです。したがいまして、先ほどからお話に出ております人工衛星によるデータの収集というのは非常に重要になってきます。  その例を一つだけお示ししたいと思うんです。(OHP映写)  これは、アメリカのニンバス7という人工衛星に積まれました水色センサーという、水の色をはかって植物プランクトンの量を見積もってやろうというセンサーによって得られた全海洋での植物プランクトンの量と思っていただければいいんですけれども、これは色で濃度が分かれておりまして、ここのところに紫色で出ているところが一番濃度が低い、黄色からオレンジになるにつれて濃度が高くなってくるということを示しております。これを見ていただくとよくわかるんですけれども、中緯度、低緯度域、非常に広い範囲なんですけれども、というところに紫の植物プランクトンの非常に濃度の低いところが広がっている。高緯度域、例えばこれは大西洋がここに示されていますけれども、大西洋では、その上の、これが一月から三月の値なんですけれども、一月から三月では非常にもうプランクトン濃度が低い。それに対しまして四月から六月になると非常に濃い、もう全面黄色からオレンジ色に変わります。それで、これがまた夏、秋になってくるとどんどん量が減ってくるわけです。  このように、衛星画像を用いて全地球規模での生物量を見積もるということが八〇年代の人工衛星の技術によって可能になったということで、初めて全世界規模の海洋での炭素循環をある程度定量的に見積もることができるようになったということで、これは非常に画期的な手法の開発であります。  この人工衛星データで示されましたような海洋表層での生物量の変化というものは、これは表層なんですけれども、資料の九ページ目を見ていただきたいんですけれども、表層だけではなくて実際に水深三千八百メーターという非常に深い海でも同じような季節変化が起こっているということをこの図は示しています。これは、カナダの気象測点ステーションPというのがあるんですけれども、北緯五十度、かなり北の方の点です。そこで、今アメリカのウッズホールの海洋研究所におられる本庄博士が、三千八百メーターのところにそういう上から降ってくる粒子を集めることのできるトラップを沈めておきまして、それを二カ月置きに一九八二年から一九八五年までとったわけです。そうしてみますと、これを見ていただいてわかるように、一年間の間でも上から降ってくるものの量というのは二十倍も変わる、しかもその年変化も非常に大きいということがわかります。したがって、このデータから、海の上で起こっていることと下で起こっていることというのは非常に密接につながっているということと、生物活動に関係したことというのは非常に密にそのデータをとらないとなかなか全部を把握することはできないということがおわかりいただけると思います。  最後に、大気海洋における二酸化炭素を含む炭素の循環役割研究する上でどうしても必要な手段というものを十ページに三つほど書いてみました。  一つは、先ほどお話ししました水色センサーを積んだ人工衛星であります。現在の計画では、このセンサーを載せた人工衛星というのはアメリカが一九九三年から九四年に一つ上げたい、それから我が国の場合はADEOSが一九九五年の初めにやはりこのセンサーを積んだ人工衛星を上げる予定になっております。ただし、どうもアメリカの計画は今黄色信号がついているようで、ひょっとすると日本衛星が先に上がるということになるかもしれません。ともかく日本の場合おくれないで、なるべく早くこのセンサーを積んだ人工衛星をぜひ上げていただきたいというふうに思っております。  第二の研究船に関してはもう既にお話しいたしましたけれども、もう一つこういうような海洋研究の場合必要なのは、特に我が国の場合親潮域と黒潮域という非常に性格の違った海域が日本のすぐそばにあります。そういうところでの表層の生物環境を含むさまざまな海洋表層の関係をモニタリングするためのシステムがぜひ必要なわけです。というのは、気象の場合というのは随分前からこういう固定ブイでの観測システムというのはあるんですけれども、海洋表層の場合というのはまだこういうようなシステムがございません。  何でこういうのが必要かと申しますと、一つ人工衛星によって得られる水温や植物プランクトンなどのデータを補正するのにも必要でありますけれども、もう一つは、先ほど申しましたように非常に季節変化の激しい表層の海洋環境というものを年間を通じて長期的にモニターすることによって、地球環境変化というものも海洋表層でのさまざまな成分の変化からとらえることができるのではないかと思っているわけです。世界に先駆けて我が国でこのようなシステムがうまく実用化できれば、地球規模での環境問題に我が国としてかなり貢献ができるのではないかというふうに思っております。  以上です。
  12. 中西珠子

    委員長中西珠子君) どうもありがとうございました。  ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  13. 中西珠子

    委員長中西珠子君) 速記を起こしてください。  それでは、これより質疑を行います。
  14. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 大変に有益なお話をいろいろとお伺いさせていただきまして本当にありがとうございました。  各先生にいろいろとお聞きしたいことはたくさんございますが、委員先生方も大勢おいでになりますので、まず吉野先生に、地球的規模の環境変化研究はやはり国際協力でやるのがいいということでここにも幾つかの例を挙げておられるんですが、国際的に見てこういう分野研究の水準といいますか、日本の水準というものはどんなものなのか。専門別に、こういう分野は非常に得意だけれども、こういう分野はまだ諸外国に、特に欧米に比較しておくれておるとか、そういう特徴がございましたらお教えいただきたいと思います。
  15. 吉野正敏

    参考人吉野正敏君) 一般論としてお答えするのは非常に難しゅうございまして、特に地球環境の問題と申しますのは、先ほど申しましたように学問のいろいろな分野にかかわっておりますので非常に難しゅうございますけれども、私が領域を(1)から(7)まで七つにまとめて大きく分類してみますと、大気に関する部分海洋に関する部分、それから陸上の現象に関する部分、まあ私が日本全体の学問の水準を云々する立場にはございませんけれども、いずれもそう劣っているとは申せないと思います。  今WOCEという海洋の問題、あるいはJGOFSという国際共同研究などのお話の御紹介がありましたけれども、こういう国際的な共同研究計画を立てる際に日本研究者も十分にかかわっておるのが最近の状況でございます。もちろんその中で日本がややおくれている部分、あるいは研究者の少ない部分、あるいは諸外国よりか非常に進んでいる部分というのが細かく見れば凹凸はあると思いますが、一時代前と申しますと、それが何年かというのはまた分野によって異なりますけれども、例えば国際共同研究というのはアメリカなりヨーロッパのそれぞれの国が何かこう計画を立てて、じゃ日本もそれに一枚加わりましょうかというようなことで国際共同研究に加わってきたという状況、恐らく十年あるいは十数年前はそういう状況があったかと思いますが、このごろでは日本研究者も国際共同研究を立案するときに加わっているという状況でございます。  しかし、我々と申しますか、さらに進んで日本がイニシアチブをとって国際共同研究としてこういうテーマをやらねばならない、あるいはこういう問題をもっと集中的にと申しますか、強力に進めなければならないというようなことの発言というのは、これは私の全く個人的な見方でございますけれども、まだ十分でないように思います。別に日本が全部牛耳れということを申し上げるつもりはございませんけれども、日本の学問の現在の水準から申しまして、こういう国際共同研究の立案にもっと強い発言があってしかるべきだと思います。  それには、いわゆる基礎研究に対する研究体制あるいは教育体制日本ではまだまだ諸外国に、特にアメリカあるいはヨーロッパの国々に対しまして、研究一つをとっても基礎研究に対する研究費は十分でございませんので、そういうことなどもこれからの問題点だと思いますが、まあお答えになったか、ちょっと一般的に申し上げるのは難しゅうございますが、そういう見解でございます。
  16. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 ありがとうございました。  もう一つだけよろしいですか。坂田先生にお願いをしたいんですが、衛星による観測がこういう分野研究には非常に有効である、これは寺本先生小池先生からもそういう発言があったんですが、例えばADEOSという衛星を平成六年に打ち上げるわけですね。あれはいろいろなセンサーが載せられるようにしたいわゆるプラットホーム衛星ということですが、こういうのにこういうセンサーをこれから開発して載せればこういう地球環境について有効な知見が得られる、世界に対しても非常に貢献できるというふうな具体的な御提案がありましたら何かお聞かせを願いたいと思うんです。
  17. 坂田俊文

    参考人坂田俊文君) 人工衛星に搭載するセンサーというのは、もうたくさん要望がございまして、どれが一番大事かというとなかなか難しいんですが、一番基本的になっているのは、画像として撮るセンサー、地図のように絵にして見えるセンサー、それから数値として観測するセンサーと大きく分けられると思います。もう一つは、今とっている人工衛星からのデータは、太陽からの光を反射してくるセンサーでして、これはパッシブ、受け身の形なんですね。ですから、太陽の状況が変わるとまた変わるというものです。それからもう一つは、人工衛星の方から光を出すなり、電波を出すなりしてとるという、これは能動的な、アクティブセンサー、大きく分けてそういう分け方をしているわけです。  特に重要なのは、地球全体を見る中で、例えば温度を調べるとか、それから具体的にオゾン層の厚さを調べるとか、今地球環境調査するに必要なセンサーの数は多いんです。ですから、人工衛星に搭載するのは、一種類のセンサーではなくて、最近は多種類のセンサーを載せていますし、この分野でも国際的になっていまして、実際に今各国からの要望に沿ってセンサーをそれぞれ搭載するようになっていますね。ですから、一つの国のセンサーではなくて、国際的ないろんな国の提案が出て、その中で甲論乙駁して一番いいセンサーを載せていこうということをやっているわけです。  ADEOSが期待されているのは、やはりそういう意味で今後地球観測するのにどんなセンサーがいいかということでいろいろ討議をされて載せておりますが、基本的には画像として撮れるセンサー、それから幾つかの数値というか、物理的な、科学的な値がとれるようなセンサーということになると思います。  それから、雲がありますと、雲を見る場合には雲がよく写ってくれなきゃならないんですけれども、逆に今度は地上を見ようとするときに雲が邪魔で要らないというようなことになりますと、その雲を抜けて、それから雨の日でも夜間でも撮れるような仕組み、これは電波を使って見るセンサ ー。ですから、光学的に画像を撮るセンサー電波を使って夜間でも雲を通してでも見るというセンサー。それからあと特に重要なのは、先ほど来出ておりますように海の状況を調べるセンサー、非常に専門的なやつで細かくなりますけれども、大きく分けて大体この三つのセンサーが非常に重要だと思います。
  18. 中西珠子

    委員長中西珠子君) 御質問のあります方は、お手をお挙げください。
  19. 吉川春子

    吉川春子君 きょうはどうも貴重な研究成果を聞かせていただきましてありがとうございました。  私、一つ地球温暖化を防ぐことは可能なのか、その方法はあるのかということを吉野参考人にお伺いしたいと思います。  それからまた、それぞれ、研究費が足りないと予算のことを言われましたので率直に伺いたいんですが、例えば小池参考人観測船の問題ですとかあるいはモニタリングシステムの図を示されましたけれども、こういうものにどれぐらい具体的に費用がかかるのかお伺いします。  それから、これは私個人の考えですけれども、地球環境破壊の最大のものは核戦争ではないかと考えているんですが、放射能とかあるいは核爆発、こういうことが起こっては困るんですけれども、そういうものがそれぞれ地球環境にどういう影響を与えるのか、あるいはチェルノブイリの事件がありましたけれども、そういうものが既に地球環境にどういう影響があるのかということをそれぞれ四人の参考人先生にお伺いしたいと思うんです。  予算の問題も、四人の先生にそれぞれ、具体的にどこが足りなくて金額がどれぐらいかかるのかということがわかれば教えていただきたいと思います。  以上です。
  20. 吉野正敏

    参考人吉野正敏君) それではまず、温暖化を防ぐ方法はあるのかという点でございますけれども、温暖化を完全に防ぐ方法というのはないと私は思います。これは新聞等々で既に報じられているので御承知かと思いますけれども、先ほどちょっと私触れましたIPCC、政府間の気候変動に関するパネルというところで過去十年間の研究のアセスメントをやって、その報告書が八月に最終的にまとまる予定でございまして、それが十月末から十一月にかけまして第二回世界気候会議というところで報告される最終報告に、そのIPCCの報告というのは、その第二回世界気候会議報告されるものをつくっておるわけでございますが、十年前に第一回世界気候会議というのがございまして、気候変動に関するいろいろな研究が進められてきたわけでございます。  それで、御承知のようにIPCCには三つのワーキンググループがございまして、第一のワーキンググループは科学的な研究を取りまとめておりまして、これは先ほどの例えば何度上がるとかいうことをまとめているわけです。それから第二のワーキンググループは、例えば温暖化が起こったときには農業にどういう影響があるか、あるいは水産業にどういう影響があるか、あるいは人間の健康にどういう影響があるかということをまとめております。それから第三のグループが、例えば温暖化が起こる一番大きい原因は人間活動の結果炭酸ガスを出すからだ、それに対してどういう対処をするべきかというようなことをまとめております。  その第三のワーキンググループが一番まとめるのに苦労している、苦労しているというのは変な言い方ですが、つまり各国の思惑というのは、工業活動を規制といいますか、これからの工業活動の量的な問題にかかわりますので、例えばアメリカがどういう考え方であるとか、あるいはヨーロッパのオランダなり北欧の諸国あるいはイギリスがどういう考え方であるというのは御承知のとおりと思うんですが、そこで温暖化を防ぐということは、いわば科学的な過程はわかっても、それをどういうぐあいにするかというのは政策の問題、いわば政治の問題でございます。  それで、先ほど言いましたように炭酸ガスは着実にふえております。それからそのほかの微量気体も着実にふえております。ただ、研究者として言えることは、その着実にふえているふえ方をどの程度に、ふえる傾向が急に行くのを例えばもう少しふえ方を少なくするとか、それにはどうしたらいいかということは言えますが、これを減らすことは絶対できません。何千年か前の状況人間社会を置くということは、絶対にあり得ませんし、非現実的なことでございます。  そのためにはどうするかということ、例えば海に炭酸ガスを取り込むためにはどういうことをやったらいいかとか、あるいは排出するのを規制するにも工業的なあるいは技術的な方法でどういうふうにしたらいいかという、これは今いろいろ研究をやっておられる方々がたくさんおられますし、それはまた専門の分野がございまして日本でもかなり強力に進めておられるので、例えば将来五年先にどう十年先にどうというのは、これまた政治的な問題が絡みますので何%ぐらいのところに抑えるかというようなことで変わってまいります。だから、温暖化を全く防ぐことはできないと思いますが、ある程度というか、現在の人間活動、工業活動あるいは人口増加をどの程度にどうするかというようなこと、これは一国なり先進国だけがやっても意味のないことでございまして、やはり地球規模の問題でございますので、途上国なり地球全体を含めて対処しなければ効果のないことでございますので、その辺がこの問題の難しいところだと思います。ですから、防ぐ方法がないというとちょっと何か言い過ぎかもしれませんけれども、非常に難しいということしか言えないかと思います。  それから、予算はどれだけあったらよろしいかということでございますけれども、これは例えば御承知のように地球環境関連予算というのは、日本の国家予算の中でも非常に大きな額になってきております。ところが、そのいわゆる地球環境予算というのに何を含めるかというのは、つまり何でもちょっと地球とか環境とかという名前がついたものを全部ひっくるめるとかなりの額になっていることは御承知のとおりだと思うんですが、その中でいわる基礎研究に、基礎研究と申しますのは、例えば先ほどの炭酸ガスを固定する技術的な開発の問題を含めないで、いわゆる基礎研究でございますね。きょう私とほかの三人の参考人先生方のお話で、例えば衛星を上げるというようなのは非常に莫大なお金がかかるものですからちょっと別にいたしまして、基礎研究にかけるお金というのは、私はまだ一けたも二けたも日本は足りないと思っております。その程度の表現でよろしいかと。ですから、総額でいうと決して、アメリカの私の友人に言うと、日本はそんなに地球環境予算をとっているのかというふうなことを申しますが、それはいわゆる全体を、何からかにから全部含めた、場合によっては研究所の建物まで含めたような予算でございます。研究そのものに使っている予算というのはまあ二けたくらいは私現在まだ日本は足りないというふうには考えております。  それから、放射能、チェルノブイリ等々のことで、これは私の個人的なこれまでの研究といいますか、分野がかかわっているところでございますと影響が非常に大きゅうございますね。しかも、それが簡単な過程でない、例えば灰が広がって、その灰の影響だけという問題でないところにこの問題の深刻さがあるんだと思います。  例えば火山の爆発によって火山灰が広がると、大気中に拡散しまして、例えば日射量が、太陽から地球に注がれる熱が、日傘効果と申しますが、入ってくるものを防ぐのを日傘、温室効果の逆でございますが、そういうものが日傘効果して温度が下がるというふうなことがございます。そういうものですと、例えば一年なりあるいは数年たつ ともとへ戻るということはこれまで大きな火山爆発の結果で言われておりますけれども、こういう汚染物質がただ広く拡散してどうなるということですと、まあ数年とか、そんなに長い効果はないと、後へ残るような効果はないと思いますが、それの結果、例えば雨に含まれた放射能が土壌の中へ入って、それが例えば草に入って、その草を食べた牛が出す乳製品などにその効果があらわれる。それでその乳製品を食べた、食べたといいますか飲んだといいますか、赤ん坊が大きくなってどうのこうのというふうなそういうことの効果もあります。地球環境の問題というといわばそういうことがございますので、そういうことが実は余り研究が十分にはされてないということでございます。  私のお答えできるところはそのくらいでございます。
  21. 坂田俊文

    参考人坂田俊文君) 最初の温暖化を防げるかという問題なんですが、私は、温暖化の程度によると思うんですが、これを防ぐ方向でいかなきゃいけない。その一つの大事なことは、温暖化によってどういうことが起きるかということでございます。環境変化ということを言われているわけですが、現在の段階で温暖化を考えると、今我々の住んでいる、人間が住んでいる都市地域とかそういうところでは、温暖化によって影響を受ける割合がそれぞれ違うわけですね。非常に寒冷地に住んでいる人にとってみれば温暖化は逆にプラスな面が出てくる。逆に暖かいところにいる人はこれ以上温度が上がっては困るというようなことがある。地球上全体で温暖化によって受ける影響というものはいろいろな形であらわれると思うんですね。  ただ、今言われている温暖化は何かというと、ほとんどの問題は海面の水位が上がる。そうすると、人間が大体海岸に近いところにおりますと、水位が上昇して住みにくくなるということが問題になっております。そのためには逆に温暖化によってどういうことが環境として起きてくるかというシミュレーションをして、それによって現在我々が持っている生活の形態を変えていくというのが一つの方向ではないかと思います。  単に現状のままで温暖化を防ぐということで現在一番問題になるのは何かといいますと、人間活動によって温度上昇するということですから、人間活動の与える影響がどういうものであるか分析することによって制限をしていかざるを得ない、これは当然のことなんですよ。同時に、温暖化の傾向はあるわけですから、これに準じたシステムとか社会構造とか都市変化が必要であろう。単に防ぐというのは受け身の形で防ぐわけですから、私が申し上げたいのは、むしろ逆に積極的に、防ぐというより温暖化を逆手にとって生活の形態を変えざるを得ないということだろうと思います。  特に地球の場合は、今の温暖化で何か地球が悪い傾向になるように見えますけれども、地球は非常に変化の激しいところで、地球の誕生以来今日に至るまで驚天動地の変化がたくさんあったわけですね。非常に温和な時代が続いていましたから、それに我々生物が順応してきたわけですから、本来地球の持っている激しい変化に対して人類がどういうふうにそれに順応していくかというのが一番問題なわけですけれども、これはこれからの世界的な変化の中に我々の持っている科学なり技術の知恵の中でやっていく以外に方法はないわけですね。そういう点で、私は、温暖化によって与えられたテーマに対して、我々はエンジニアという立場からいけば、これを解決する方法を見つけようということだと思います。受け身の形では過ごせないだろうと思います。  それから、核エネルギーというか核施設、いろんなものが地球上に散在するわけですが、こういうものは現在のエネルギーの供給としてはどうしても必要な状況で開発されてきたわけですが、これの安全性の問題が今問題になっておりまして、この安全性さえ確保できればいいというだけの問題ではないと思いますね。環境への影響がどうあるかということを考えますと、今の核エネルギーを使ったいろんな施設の形態というか形状というか、こういうものを変えていかなきゃならないだろうと思います。なぜかといいますと、どうしてもエネルギーが必要ですから、これらを利用していく方法研究がまだ足らないんだろうと思います。  それから、特に安全性の研究というのは世界各国全体としてはまだ進んでいない。そういう点では、これらの持つものがいきなり環境に直接影響するかというと、事故が起きない限り環境への影響はないだろうと思います。そういう点で、今この問題については、直接環境への影響というのは、先ほどお話のあったように、放射能そのものが持っている人体への影響生物植物への影響というのは非常に限られたところではあるかもしれませんけれども、今問題になっている地球全体の環境とか都市地域に対するいろいろな環境変化とはちょっと異質な問題だろうと思います。環境という言葉をもう少しある程度分けて考えてみないと、何か同じような問題として討議してしまう危険性があるんじゃないか。  それから、研究費の問題ですが、今言ったような地球環境問題をベースにして考えたときに、これは研究室が果てしもなくみんな要るわけですが、どの程度要るかということも大変難しいんですが、これは財政の規模にもよるでしょうけれども、どれが優先していくかということになると思うんです。ここでの問題点としては、私どもは、日本の持つ技術で国際的な寄与をするためにも、人工衛星を上げる費用が必要である。それから、それだけじゃなくて、受信するシステム、それからデータを処理するシステム、それからそのデータをネットワークとして配るということも考えていかなきゃなりませんので、この分野でのお金の試算というのは、非常に大きい額ですからどのくらい要るかということは言えません。これはむしろ財政規模に応じた形で、今申し上げたような人工衛星、いわゆる地球観測に必要なトータルシステムとしての投資は、今十分いろんな意味での効果があると思いますので、この分野での研究費がふえることが一番望ましいだろうと思います。  以上です。
  22. 寺本俊彦

    参考人寺本俊彦君) まず第一に、温暖化の問題でありますが、これは先ほど来お話しのように、炭酸ガスの増加と結びつけて考えられている。そのことはそれで方向としてはよろしいんだと思うんです。ところで、我々が持っている知識というものがまだ大変不十分である。例えば十五万年とか二十五万年前ぐらいの氷河期から現在に至るまでの空気中の炭酸ガス量、それと気温との相関をとってみると大変よろしい。だからといって、その場合に氷河期は炭酸ガスの減少とかあるいは増加で起こったとかなんとかいうことにはならないのでありますが、ただ相関がいいという事実がある。ですから、結びつきは確かにある。今、氷河期とかいうのは、これはむしろ炭酸ガス問題というよりは、地球の自転軸の変化によるんだろうと一般的には考えられているようですけれども、それもかなり仮定的な要素がありますけれども、一般的にはどうもそのようですね。しかし、重要なことは、炭酸ガス変化と、それから気温とが相関を持っている事実だと思うんです。  それから、近年のことで申しますというと、データが比較的身近にあるというところで申しますと、やはりそれでも今のように相関はよろしいということに一般的になっているようであります。ところが、その場合に重要なことは、見積もり、このくらい炭酸ガスがふえると気温がこのくらい上がるということの定量的な計算、これは幾つかのモデルがあってなされておりますけれども、まだまだわからないこともたくさんその中には含まれている、プロセスがですね。例えば、先ほど海の炭酸ガスに対する作用、これは一方では海に炭 酸ガス――炭酸ガスというよりもカーボンですけれども、これが吸い込まれる。また一方では、海から放出される。一体どっちの方向に行っているんだというようなことがなかなかわかりにくいわけです、海全体としてとらえることが。そういう基礎研究をやはりもっとやらないといけないという面があります。  しかしながら、今行われているモデルが全く信頼の置けないものであると私は思わないのでありまして、やはり炭酸ガスがふえれば、それなりに気温が上がるだろうということは、これは方向としては間違いない。しかし、定量的にやるには、まだまだ基礎研究が必要であるというふうに思うわけであります。特に、そこでもって重要なのは、海の役割が余りわかっていない、炭酸ガス問題に関しては非常に不十分であるということを指摘しておきたいと思うんです。  それから、核の問題でありますけれども、昭和三十年代から、あるいはもっと前からも行われておりますが、人工的な核爆発の実験が行われて、そこで出てきた人工的な核物質が海に入ってきてどの辺まで及んでいるかと申しますと、大体八百メートルから千メートル近くまで及んでいる。ところが、先ほど私が、深層循環でもって海水がわき上がってくるということを申し上げましたけれども、海水が下の方と上の方と入れかわるのには大体少なくても千年のオーダーが要る。数千年と申し上げた方がいいかもしれません。そのくらいゆっくりしたものなんですけれども、上からおっこってくる方はそれの十倍ぐらい早い。要するに百年ぐらいでもって恐らく海底まで達してしまうだろう。要するに海全体が汚染されてしまうことになってしまうというところが非常に重要だろうと思います。  とにかくそんなわけで、出てきたもの、もう既に出されているものについてはそういうことがある。一方で、そういうことを起こさせないような、坂田参考人も言われましたけれども、そういうふうな工夫を技術的にする必要があるというふうに思います。この面での努力が果たして十分であるかどうかということについては、私もその方面の専門家ではございませんけれども、さらにそういうことに力が注がれることを、これはむしろ国民の一人として要望したいわけであります。  それから、研究費の問題でありますが、先ほど吉野参考人が少なくとも十倍ぐらい、一けたぐらい上げることが必要であるというふうにおっしゃいました。私もやはりそう思います。しかし、ただ予算が十倍あればそれでもっていいかといいますと、それだけでは甚だ不十分でありまして、まずそれと同時に人の問題、人の養成、これも予算と直接結びつく面もございますけれども、これを考えていただいて、さっき私は海洋の場合にはアメリカとの対比において五分の一ぐらい少ないと申しましたけれども、五倍ぐらいになったとして、それに予算の方もそれぞれに対して十倍、一けたぐらい上がれば、これはかなり国際的にもウエートのある仕事ができるようになるだろう。  今、日本の学問のレベルはどうかという御質問がございましたけれども、レベルそのものは私は決して低いとは申せないと思います。ところが、人が少ないものですから、ある問題が起こるとある人が出てくる。次の問題が出てくると、やっぱり同じ人が出てくる。要するに同じ人がいろんな問題に対応しなくちゃいけない。そうしますと、結局、場合によるとどれもこれもアブハチ取らずになってしまって、そこでもって国際的にリーダーシップをとるほど突っ込んだ仕事がなかなかやりにくいという状況にあります。その辺、予算の面と人の面と両方パラレルに考えていただくことが非常に重要だというふうに思っております。
  23. 中西珠子

    委員長中西珠子君) どうもありがとうございました。  小池参考人、いかがでしょうか。
  24. 小池勲夫

    参考人小池勲夫君) もうお三方で大体話は尽くされたと思うんですけれども、一、二私の意見を述べさせていただきたいと思います。  それで、温暖化に関しましては、私もそれを完全にとめられるとか、そういうことができるというふうには思っておりません。我々できることは、ここ十年のスケールで一体それがどのような形で進むか、それがどのような機構で起こるかということに関してのともかくある程度確かな証拠を皆さんにお示ししたい、そのための研究をしなければいけないということが一番大事じゃないかと思います。まず、ある程度予測がつけば、それに対する対応もできる。だけれども、非常に不確かな要素が多くて選択肢がたくさんある場合には、その対策というのも非常に難しくなってくるということで、なるべく選択肢を少なくできるようなある確実性を持ったシナリオを書けるような研究というのがこれから非常に大事なんではないか。特に海洋の場合というのは、実際に先ほども実はお話ししましたけれども、二酸化炭素に対して一体どういう挙動をするかという具体的なことがまだよくわかっておりません。それをやはりきちんとさせなければいけないということを考えております。  それから、核エネルギーのことですけれども、私は科学的なことをやっている者といたしまして、特に核の場合というのは、一度事故が起こった場合、その特質から被害が長く、長時間残ってしまうということで、ほかのいわゆる化石燃料とかそういうものによるエネルギーとは大分違った性質を持っているということは皆さん十分理解をしていただきたいと思います。ですから、ほかに何かうまい、太陽エネルギーを使ったものがあればいいのですけれども、今のところ核エネルギーを使うというのは、安全性がきちんと確保できれば悪い選択ではない。ただし、先ほどからお話が出ていますように、果たして安全性が本当に確保できるのかというところで皆さんまだかなり不安を持っていらっしゃるということも確かなので、やはりそこのところにかなりこれからの開発、それが注がれなければいけないというふうに思います。  それから、予算的なことなんですけれども、先ほど船が足りないと申しましたら、どれくらいかかるかという御質問がございましたけれども、私たちの研究所で去年つくっていただきました白鳳丸の場合というのは、大体一船で百億かかっております。何で百億ぐらいかかるかというと、この研究船というのは非常にどの分野でも最新の研究ができるということを目指しておりまして、日本海洋研究のショールームを目指した船でございます。それで百億をかけていただいたわけですけれども、第二船、第三船がこのように百億かける必要は私はないと思います。むしろ、ある幾つかの目的に合った船をそろえて、交代で研究をやるということの方がこれからは重要になってくるのではないかというふうに思っております。  それから、先ほどの私がお話ししましたモニタリングシステムですけれども、このようなシステムというのは、係留すること、あるいはそれを維持することに非常にお金がかかりまして、実際にそれにセンサーを積んでいるんな観測をする、それから後それを人工衛星を通じて陸上にテレメトリーで運ぶということに関してはもう既にほとんどの技術が確立されておりますので、幾らかかるかと言われると私も非常に困るのですけれども、船ほどはかからないというふうにお話ししておきたいと思います。  あともう一つ、先ほど寺本参考人の方からもお話がありましたけれども、日本の場合というのは本当に研究者層が薄いんです。例えば、先ほど申しましたけれども、二十人から二十五人のチームを組んで海に出て行きますと、陸上にはもうほとんど同じことができる人は残りません。ですから、少なくとも交代で観測に出られる、研究に出られる、ですから最低あと倍の研究者あるいは技術者を確保しないと欧米の方の研究にとても太刀打ちできないというのが現状だと思います。  以上でございます。
  25. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 それぞれの先生方には大変有意義なお話をいただきまして、ありがとうございました。  私は、今それぞれの先生方のお話を伺いながら、政治に与えられている課題は何だろうということなどを考えていたわけでありまして、吉野先生からは、少し国際的なことも含めてのことがいろいろ政治の問題だという点も触れられたところがございましたし、また寺本先生小池先生からは、研究者の問題などというかなり具体的な課題も言われたわけであります。  いずれにいたしましても、ちょっと私の簡単な粗っぽい意見が入って恐縮ですけれども、我が国は海洋国と昔から言われていながら、海洋に囲まれていてしかもそういう中で何か海洋研究というのが必ずしも十分ではなかったのかな、それぞれの研究者の皆さんの奮闘にそれこそ依拠していたのかなという感じになるわけであります。  水産などというのでは特別、産業的には物すごく日本は評価をされるものを持っていたといたしましても、何かその辺のところを感じますと、やはり政治の課題というのがその辺も一つあるのかななどと考えたりいたしましたが、この場ではひとつそれぞれの先生方の立場から、今私たち政治に何を要望されるかということをお聞かせいただければ大変ありがたい。それぞれの研究分野で、ここのところを政治でどうしてもやってもらわなければならぬというようなお気持ちがあるんじゃないかと思います。そのことができるかできないかというのは、今度は私たちの課題になるわけでありますから、どうぞそういうものがございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  26. 吉野正敏

    参考人吉野正敏君) この前もある会合で討論しているうちに、皆がそうだそうだという賛成の意見を言ってくれたんですが、防衛予算というのがございまして、一%とかなんとかということを聞いておりますが、私この地球環境問題にかかわって考えている者といたしましては、何%がいいかというのは実は今のところ残念ながら答えられないのでございますけれども、防衛予算というのは絶対必要でございまして、ところがGNPじゃなくて、GNPというのは、御承知のようにグロス・ナショナル・プロダクトで、国家、一つの国ですが、今や一つの国でそういうことを考えている時代じゃなくて、GNPですか、要するに世界全体の生産活動の結果出てくるGWPというのでしょうか、それの何%かは地球環境問題に使うのだ。  これは研究ばかりじゃなくて、研究はもちろん研究者が一生懸命やりますが、一年、二年で結果が出てくる問題ではない。むしろ、未来永劫に次々といろんな新しい問題が出てきますので、研究というのはこれで終わったということには絶対ならないわけです。ですから、研究結果を待っていられないところにこの地球環境問題の重要なところがあるわけですね。  先ほど防げるかという御質問がございましたけれども、防げないとしましても、とにかくふえていく炭酸ガスのふえ方を、少なくもふえる率を減らすように努力しなければならない。具体的に我々は行動を起こさなければならないことがあるわけです、研究とはまた別に。そういうのはもちろん費用といいますか、予算といいますか、お金のかかることで、ほっておけばいいというものじゃないわけです、地球環境というものは。  ですから、何をすべきかということを、それから何ができるかというのは、これはかなり政治の問題だと思うんです。世界全体のGWPのそれこそ一%を使えるかどうか知りませんが、これは地球環境防衛予算とでも名前をつけて、それでサミットでも何でも言っていただいたら、これはかなりアピールするのではないかと私は思うんですが、実はこれは笑い話じゃなくて、そういう考え方でいかなければいけないんだろうと思うんですね。  ですから、明治維新前ですと、各藩の中でこれは大事だとか、これはできるとかできないとか言っていたのが、一つの国となって違った観点からいろんな問題が生じて、それなりにお金も予算もかけたわけですけれども、それと今度はちょっと内容は、性格は違うかもしれませんが、地球全体としてそういう考え方でやっていくのが一つ方法じゃないかなというふうに私思います。
  27. 坂田俊文

    参考人坂田俊文君) 私どもに政治に何を要望するかと言われると非常にとまどうのですが、何を言っていいかわからないんですが、ただここで私個人的な意見として申し上げたいのは、どちらかというと科学とか技術に対しては一般の人たちは余り理解を示すことがないんですね。特に、私は文科系だから科学とか技術はよく知らないとおっしゃる方が多いんです。この点をぜひもっと多くの人が理解をしていただきたい。  先ほどちょっと申し上げたように、温暖化は防げるかというのは、防げるということの積極的な意味で科学技術が一つの柱であろう。あるフランスの哲学者が言った言葉なんですけれども、どちらかというと文科系の人間から見ると、明らかに人類は破滅への道を歩んでいるというんです。しかし、もしかしたら科学技術がそれを救うかもしれないということをおっしゃったことを覚えているんですが、こういうことで、どちらかというと何か余りテンポが速く発展してしまうと科学技術が犠牲者になりまして、文明、文化が発達したり、科学技術が発達すると我々の生活を圧迫するじゃないかというふうにとらえてしまうんです。しかし、少なくとも今日に至るまで、人類が科学ないし技術ということを手にしたために今日の人類の繁栄があるわけですね。また、その使い方を間違えた場合には大きな問題になるので、そういう点で科学技術というのはより大切なものであると同時に、より将来に向かってそれを育てていくということをぜひ政治の場で広げていただきたい。  それから、多くの人たちがこの分野にもっと興味を持っていただきたい。特に環境問題に関しては、悪い悪いということばかりが前へ出てしまうんです。なぜ悪いか、どうすればいいかということが出てこないんですね。常に原因を外に求めて、責任を外に外にと求めていってしまうことがあるんですが、しかし全人類そろって我々生きていく環境を何とか将来につないでいくためにはやっぱり協力していかなければならない。それは国民全体の問題ですし、それから同時に世界全体の問題なんで、これは国際的な意味でもぜひ政治の場としていろいろつないでいっていただきたいということが要望であります。
  28. 中西珠子

    委員長中西珠子君) 寺本参考人、いかがでございますか。
  29. 寺本俊彦

    参考人寺本俊彦君) 私は海を専攻してまいりましたので、先ほど先生方のどなたかから、なるほど海のことは余りやられていなかったんだなということがわかったというお話がございましたが、海洋国といいながらなぜ海のことにそんなに力が入れられなかったか。これは、やはり人間が海に住んでいないという必然的な理由があると思います。海に住んでいないものですから、海に大異変が起こっても、あしたどころかきょうだれかが死ぬとかいうことにはつながらないわけです。大気とか地震とか、そういう現象はすぐに人命にまでかかわってくる。ところが、海の大異変はかなたで起こっておりまして、その影響というのはかなりな時間がたった後でじわりじわりと来るというようなことで、どうしても関心が薄かったというふうに思います。  ところで、この委員会のように環境問題をまともに取り上げていただけたということは大変ありがたいことだと思っております。と申しますのは、今のように大異変があってじわりじわりと来る、そういうネガティブを防ぐということ。また、これはポジティブ、要するにもっと具体的に俗な言葉で申しますと、もうかることにはお金は出すけれども、ネガティブを防ぐことには余りお金が つぎ込まれなかった嫌いがあると思うんです。しかしながら、その両者は、長い目で見るとウエートは私は同じだと思うんです。そういう意味で、これからはこういう委員会等も含めましてそういうことに気を配っていただきたい、これは政治的に配っていただきたいというふうに存じます。  それから、大所高所から政治に何を望むかということを開き直って考えてもなかなか難しいものですから、自分の専攻してきたことを通してこんなことをお願いしておきたいということを一つ二つ申し上げたいと思うんです。  まず、海には余り力が注がれなかったのではないかという、一般的な事柄としてその例を一つ申しますと、今国立大学は全国に幾つかございますが、その中で地球科学とか地学科と呼ばれるものが二十数校にございます。その中で、大気とか海洋ということに関する学科あるいは講座を持っているところというのは数校しかございません。なぜそうなっているかというと、今申し上げたようにやはり関心が低かったということがあると思いますが、もう一つは明治以来の歴史的ないきさつがあると思います。それは、今の大学のかなりな部分は師範学校が昇格したとか、あるいは高等学校が昇格したとか、あるいは高等師範学校がどうしたとかということがございますが、そういうところでは明治以来、流体、すなわち海とか大気の学問というのはほとんどなされていなかったわけです。それがそのままの形でもって来ているということで、先ほどアメリカと比較するとこうということを申し上げましたけれども、そういうことにつながっている。この辺でもう少し大所高所から学問の分野でもバランスのとれた姿というものを考えていただけるとありがたい。これはもちろん文部省のお役人もお考えだと思いますけれども、もう少し政治の面でもそういうことを考えていただけると大変ありがたいと思います。  それからもう一つは、いわゆる基礎科学と応用科学との間の共同研究といいましょうか、そういうふうな組織が余りなかった。一方では、ハードウエアの開発とかそういう工学的な技術は、ある面では非常に進んでおります。それからもう一方、理論のような基礎研究もある面では非常に進んでおります。ところが、それら両者をあわせてとり行うような組織というものが日本には比較的少ないのではないか。これは私の専門の方面でも、例えば海岸開発とか海岸工学、そういう方面と、それから海洋の基礎研究というのが全く別個にやられていて、両者を総合するようなところが、大学にもございませんし官庁の研究所にもございません。その辺も、これからの行き方としてはもう少し総合化を目指すということが必要ではないかと思います。  これは、人工衛星の開発に関しても今のことは同様に申し上げられると思います。利用者側というのと開発側とが今までは別々に進められてきた。しかし、最近になってそれらの間の橋渡しをしなきゃいけないという機運が非常に出てまいりました。それは事実でございます。さらにそれを推し進めるように御援助いただければ、大変ありがたいと存じます。
  30. 小池勲夫

    参考人小池勲夫君) 私も政治に何を望むかと言われると非常に困るんですけれども、私は分野で言えば基礎研究をずっとしてきたわけで、それで今地球環境ということになって、自分のやっていたことは地球環境とかなり結びついているなということがここ数年わかってきたわけです。特に今までの日本の場合の研究というのは、やはり応用研究、それから基礎研究でも実験室に根差した研究というのにかなり重点が置かれていたように思います。それで、自然の仕組みというものを深く理解する、例えば海洋学とかそれから生態学とかそういうような分野研究というのは、どちらかというとなおざりにされていた、あるいはやっている人たちは自分たちの趣味でやっていたというようにとられていたような面がかなり強いのではないかと思います。  地球環境の問題というのは、結局、こういうような自然の仕組みというのを我々がもっと早くわかっていれば今のようになる前にある程度の予測ができたはずのところというのはかなりあると思います。例えば、CO2問題について非常にインパクトを与えました仕事の一つに、アメリカのハワイで一九五〇年代からCO2の濃度をずっとモニターしたという仕事がございます。これは恐らくその研究を始めた段階では何もこういうふうになるとは思っていなかった、ただ純粋な大気中のCO2濃度のきちんとした測定をしたいということで研究が始まって、それをアメリカが数十年にわたってサポートしたということが今こういう問題をはっきりみんなに認識させることになった。  どうして日本の場合こういうことができないのかというと、やはりある程度何か起こったときに、それに対する技術に関してはお金が出るけれども、そこで終わってしまって、そのもとにあるところに目が行かない。ですから、基礎研究をやっている研究者というのは、あきらめてしまうかあるいは応用研究の方に行ってしまう。先ほども話が出ましたけれども、なかなか基礎研究の方に研究者が根づかないというところが、日本大学あるいはそういうところでの研究の一番の問題ではないかというふうに私は思っております。
  31. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 参考人の皆さんには、大変貴重な御意見、ありがとうございました。  海の問題については、先ほど来、寺本参考人小池参考人から私がお聞きしたかったことについてはお答えいただいているように思いますので、時間の関係もありまして、地球環境問題を吉野参考人とそれから坂田参考人にお聞きしたいと思います。時間がございませんので簡単で結構でございますのでお答えをいただきたいと思います。  これは吉野参考人に伺うわけですが、我が国の政府としては、来月に予定されているヒューストン・サミットにおいて地球再生計画を提唱する動きがあるようですけれども、これが間違いなく世界的な広がりとなっていくものかどうか、その可能性について、これが第一点。それからまた、現実にどのようなハードルを越えなければならないのかという問題があると思います。最後に、この地球再生計画の方向性について、特にこういうふうにすべきじゃないかというような御意見があれば伺いたいと思います。  それから、坂田参考人には、科学技術庁と宇宙開発事業団が国産スペースシャトルHOPE開発のための大気圏再突入実験、これを次期国産大型ロケットHIIを使って九三年に行う方針を固めた、こういうことも聞いておりますけれども、今回のこうした計画そのものの意義、それから実験そのものの課題、さらには将来どのような展望が開けていくであろうか、この辺についてお答えをいただければと思います。
  32. 吉野正敏

    参考人吉野正敏君) ヒューストン・サミットで提案される計画の詳しいことは、実は私まだ存じておりません。新聞等々の報道の範囲内の知識でございますが、先ほど私ちょっと触れましたように、過去十年間の研究の結果をIPCCでまとめておる。正式なまとめというのは八月下旬に出まして、それを第二回世界会議報告されて、それでさらに来るべき十年間の方向づけをやるというのが十月の末でございます。その前にもう大体の素案は御承知のようにでき上がって、細かいところで今詰めをやっている状況でございますが、それにのっとってヒューストン・サミットの議題といいますか、内容が出てくるのだろう、これは私、全く個人的な想像でございますが、思っております。  ところが、まだ十月までに時間がございまして、八月の末に正式なものができる前にたまたまここでサミットが七月に設定され、これは確かじゃないかもしれませんが、聞くところによるともう一度アメリカが何か九月にまた計画をしているようでございます。それに対抗してまたオランダ、ヨーロッパの国々が炭酸ガスの規制のパーセ ントの大きな割合のものを出してくるように聞いております。  そういう流れを考えますと、ヒューストン・サミットで出てくる計画というのはかなりことしの秋を想定した計画――取引という言葉はよくないかもしれませんが、何か多少そういうニュアンスがあるのではないかというふうに、全くこれは個人的な見方で、余りこういう席上で予想を言うのはいけないのかもしれませんが、個人的にはそういうぐあいに思っております。  その内容の可能性という先ほどの御質問でございますが、可能性は可能性でございますから、これは十分にあると思います。ただし、それがどの程度、何年くらいで、先ほどのGWPの何%かは地球防衛予算として考えなきゃいけないというのは実はそういうことにも関係しているんですが、これは例えば一%出せるのか、〇・五%なのか、そういう細かい研究というか試算した国もありませんし、個人の研究者もおりません。これは全くの考え方でございます。ですから、そういう何か計画をやるとすれば、それに対してどういう国がどれだけコミットできるのか、予算面あるいは技術的なマンパワー、それを十分に勘案というか、計画に入れてはじき出さないと、その計画というのは可能性はあっても実現、じゃ何年ごろにどのくらいになるのかということは時間をかけて研究しなければいけないことだというふうに私は思っております。
  33. 坂田俊文

    参考人坂田俊文君) 私は、スペースシャトルというか、そういう計画には直接関与しておりませんので一般論として申し上げたいんですが、宇宙空間に対するいわゆる研究施設というのは非常に重要なことで、一般に宇宙に対しては大体夢のように考えておりますけれども、実はもっと厳しい現実問題として、我々人類がどう今後生きていくかということでの基本的な問題がこの宇宙にあるわけです。  特に、今地球観測というのが重要視されておりまして、それには人工衛星がたくさん使われておりますが、将来その人工衛星だけじゃなくていわゆるスペースに基地をつくる。これはいろんな実験をやるためにスペースラブみたいな計画とか、それから観測基地とか、そういうことが必要なわけです。そのためにも、その基地との間を往復するためには、いわゆる宇宙往還といいますか、従来のロケットとは違った形での輸送機関が必要なわけです。これは人間とか資材を送るためにです。  それから、地球の我々が住んでいるところというのは非常に薄い衣を着ているんです。地球が大体一万三千キロありますけれども、その周り地球を覆っている人間が住める範囲というのはほんのわずかなんです。例えば、一億分の一の地球を考えますと十三センチぐらいのボールなんです。そのときに、人間が住んでいるところはちょうど一ミリくらいのところなんです。そこから外は全然人間の住めるところではないんです。ところが、地球周りにはたくさんいろいろなエネルギーがありまして、地球で持っている磁場によって地球の周辺に太陽から来る強いエネルギーをはね返している、いわゆる衣を着ているわけです。その構造がわからないと――太陽がわずかに変動しても地球に大きな影響を与えるわけです。それから、宇宙空間から地球にいろいろなものが降り注いでいるわけですけれども、これがまだまだ未解のものなんです。  そういうためには、どうしても宇宙研究というのは非常に大事で、太陽系の中で唯一生物のいる惑星というのが非常になぞになっているわけです、どうして我々だけいるんだろうと。水があるからだ、海洋があるからだということと、それから緑に覆われているというようなことで我々の生命を保っているわけですが、同時にどうその宇宙空間の生命を保つかということが非常に重要なことで、実はこの環境の変動も意外に太陽の大きな影響を受けているかもしれないわけですが、そのためにも我々の住んでいる、人間生物圏の周辺の情報を十分知る必要があるんじゃないか。そういう点で、このスペースシャトルに類似した人工衛星も含めてのいわゆる機械、機材が非常に重要であろうと思われるわけです。
  34. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 きょうは参考人先生方に大変有益なお話を伺ってありがたいと思っております。  先生方のお話を伺いながら私も考えたんですけれども、先生方は別ですけれども、日本環境問題の重要性ということについて気がつくのがヨーロッパなどよりも非常に遅かったんじゃないか。というのは、日本は島国、先ほど島国という言葉もいろいろな先生から出ておりましたが、と同時に、これは京都大学のある先生でしたか、日本海洋国じゃなくて海岸国だと言われました。それから、ヨーロッパ大陸のように一つの川を幾つもの国が共有しているというような環境にはない。それから、どこかで起きた被害がすぐその隣の方に影響していくことがないというようなこと。それからもう一つは、中国大陸の方から日本汚染した空気が流れてくるということも余りなかった。日本が出していた汚染した空気がほかの国に及ぼす影響も今までは余りなかったというようなことから、日本環境問題についての気がつき方が非常におくれていたんじゃないか。  今から二十年ぐらいも前に既に、例えば有名なフランスのジャック・クストーなどは、海洋が大変汚染しているということについての警告を出しておりましたし、あるいは先ほどもちょっと地球寒冷説というのがあったというお話もございましたが、これも二十年ぐらい前にソ連のブティコーなどという人が地球寒冷説を唱えていたというふうなこともあったように記憶しております。また、二十年前の大阪の万博のときにスカンジナビア館というのは、何にも展示をしないで、カードの上に環境汚染の恐ろしさや公害の恐ろしさを訴えるスローガンだけが映し出されてくるというようなことがあったにもかかわらず、日本人は余りそれに関心を持たなかった。最近ようやく目が覚め始めてきた。  そういうようなことから考えてみますと、先ほど地球環境問題についての研究日本ではまだ人の数も足りないし、予算も少ないと言われましたが、そういう環境の中にあったからそういうことになってしまっているんじゃないかということで、今新たにそういう問題について日本人がもっと自覚をしていかなきゃならないんじゃないかということを実は感じております。  そして、つい四、五日前までEC議会と日本の国会との第十一回目の定例の会議がストラスブールでございまして、私もそれに参加して、実は地球環境の問題は日本側じゃ私が担当みたいな形になっておりましたけれども、そこでも、日本はこの問題についてもっと積極的に人類のために貢献するような努力をしてほしいのだという要望が大変強く出ておりました。そういうことを考えるにつけましても、先生方に非常に大きな責任と負担をこの問題についてかけ過ぎている、もっと日本政府全体としてこういう問題について関心を深くしていかなきゃならないということを私は今政治の分野に入っている者の一人として大変強く感じております。  それから、これもヨーロッパの会議で私が発言したことの一つではあったんですが、一九二八年にイギリスのA・M・ローという人が書いたアワー・ワンダフル・ワールド・オブ・ツモローという一冊の本がありまして、これは二百年、三百年先にどのように社会が変わっていくかということを予測していたんですけれども、そこに書いてあることの大体半分ぐらいは二十年、三十年の間にもう起きてしまっている。ただ、例えば将来は国会というところでは、単に政治や経済の問題だけではなく、地球の寿命はどれぐらいであるか、資源はどれぐらいあるか、それをどういうふうに使うべきかというような問題について国会で議論が行われるようになるだろうというような予測がありまして、だんだんそれに近づきつつあるんじゃ ないかということを感じております。  そういうようなことから、私どもも努力をしなきゃならないと思いますけれども、先生方に現在の問題点についてできるだけあらゆる機会に訴えていただきたい。私どももそういう気持ちでやりたいと思いますけれども、それをお願い申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  35. 吉野正敏

    参考人吉野正敏君) 全く同感でございまして、こちらからもよろしくお願いしたいと思います。できることはいたしたいと思いますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
  36. 坂田俊文

    参考人坂田俊文君) 大変心強い励ましの言葉だと受け取りたいと思います。  環境問題を語らない者は紳士でないというのがヨーロッパで言われているそうですけれども、日本も紳士がもっとふえていくようになるといいと思います。
  37. 寺本俊彦

    参考人寺本俊彦君) 今お話しのように、日本は出おくれたということが確かにございますけれども、また一面、例えば天明の飢饉とかあるいはそういう天変地異、これに対して日本は先鞭をつけていたとも言えると思うんです。それは、明治の終わりから大正の初めにかけて気候変動の問題が気象、海洋学者の間で世界に先駆けて行われておるわけです。ところが、昭和に入りましてその勢いが衰えてしまいまして、一九五〇年になってアメリカの方でいろんな資料を集め始めて、いかにもアメリカが先手を打ったようなふうに見えますけれども、数十年前に日本でそういうことをやっておるわけです。ところが、人が少なかったこと、それが一番大きいと思いますが、そんな問題にかかわっていられなくなってほかの問題に研究者がみんないってしまったということで、そこにギャップができたというようなことがございます。  ですから、必ずしも日本気候変動も含めた環境問題に関心が薄かったとは存じませんけれども、ネックはやはり人にあった、私はそういうふうに思っております。  ただ、御指摘のことには私も全く同感でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  38. 小池勲夫

    参考人小池勲夫君) 私は、先ほど御紹介申し上げましたJGOFSという国際プロジェクトにここ二年ぐらいずっと出ているんですけれども、会議に行くたびに日本というのは本当にやる気があるのかどうかということをいろいろつっつかれまして、何か非常に苦しい思いをしていたんですけれども、このように国会でもちゃんと取り上げてくれたということで、次に行くときには大きな手土産ができたということで、大変ありがとうございます。
  39. 中西珠子

    委員長中西珠子君) どうもありがとうございました。
  40. 小西博行

    ○小西博行君 どなたでも構わぬですが、最近では研究者間の国際交流あるいは共同研究というのがある意味ではいろいろ問題が出ております。つまり研究の成果をどう配分するか、予算はどうするか、そういうようなことでいろいろ聞いておるんですが、今回のようなこういう地球環境ということになりますと、まさにこれは世界じゅうの学者が集まって地球をよくしていこうという目的という意味では非常におもしろい一つのテーマでないか、こう私は思うんですね。  ところが、政府そのもので対応しようといたしますと環境庁ということになりまして、これは御承知だと思いますが、予算も非常に少なくて、国際間のいろんな約束なんかを総理がどんどんやられるわけですが、では果たして具体的にどうなるんだということになりますと非常に心配な面がたくさんあります。したがって、せっかく日本が大きなことを言った割には具体的に協力してないじゃないか、その反動が非常に私は怖いわけです。  ほかの研究の問題でもそういうことがたびたびここでも議論をされておりますので、これからはそのようなことのないような体制づくり、先ほどどなたかおっしゃいましたが、政治で解決しなきゃいけない問題、あるいは省庁できちっとやらなきゃいけない問題、あるいは学者先生あたりの研究分野、こういうふうに連携しながらも明確に分けてやっていかなきゃいけないだろうという気が私はしてならぬのですけれども、そういう意味で世界のそういう協力関係、これをうまくやっていくために一体何が欠乏しているのかなということ、これは地球環境という面で。小池さん、一番若いようですから、一人だけで結構でございますが、お願いいたします。
  41. 小池勲夫

    参考人小池勲夫君) 私の方でも、いわゆる研究者サイドのいろいろな研究計画ルート、それをサポートする、私たちはファンディングエージェンシーと呼んでいるんですけれども、それぞれの国の資金を出す方との間の連携というのは国によってまちまちでございまして、特に今アメリカとかヨーロッパ関係のそういう力というのはかなりこういう国際研究の場合強うございまして、やはりそちらの方に引っ張られてしまう。特に向こうの場合は、計画を立てるとお金を出す方ともう初めから非常に密接に結びついておりまして、一年か二年でぱっと計画を立てて実行に移し出す。日本の場合はどうしてもその辺の連絡、連携がなかなかうまくいかなくて四、五年かかってやっとスタートする。スタートしたころには向こうはかなりの成果を出していて、日本はそれから後で追っかけていくというのがどうも今までの一般的なパターン。ですから、日本の場合ももう少し実際に研究をやる側とそれをいわゆる資金的にサポートする側、体制を組む側というのがもう少し有機的にうまくつながるようなシステムというものをぜひ考えていただきたい。それは私たち研究者の方ではなくて、むしろ政治に携わっている方々が考えていただきたいというふうに思います。
  42. 中西珠子

    委員長中西珠子君) 今の小西委員の発言に対しまして、ほかの参考人方々のコメントがおありになりましたらお願いいたします。
  43. 坂田俊文

    参考人坂田俊文君) 私が心配したのは、環境問題はブームになってはいけない。環境問題を今取り上げますと比較的注目を浴びますし、予算もつくということで、そのブームが去るのが一番危険だろうと思いますね。そこで、先ほどありましたような各省庁間のいろんな調整もあるし、あつれきもあるでしょうけれども、それを超えた形でこれをやっていかなきゃならないだろう。これは政治の問題としてぜひ変えていただきたいということ。それからもう一つは、環境問題というのを私さっきちょっとお話ししたんですが、何もかも全部環境問題にとらえてしまうということは極めて危険だろうと思います。  ここで一つ申し上げたいのは、技術とか工学というのは時代とともに変化していくわけですね。今まで縦割りの技術であったものが横方向に広がってその技術が総合してやってきますので、例えば日本からもっと国際的に提案する技術とか、それからもう一つ大事なことは、世界からある程度評価される、尊敬される技術といいますか、そういうものをぜひここで打ち立てていきたい。そういう意味では地球工学みたいな新しい分野を育てていくのがよろしいんじゃないかと思います。  以上です。
  44. 中西珠子

    委員長中西珠子君) ありがとうございました。  時間も参りましたので、大変残念でございますが参考人方々に対する質疑はこれにて終了させていただきます。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  参考人先生方には、長時間にわたりまして当委員会のために大変貴重な御意見を賜り、またなかなか得がたい大切な資料をいただきまして、まことにありがとうございました。委員一同を代表しまして心から厚く御礼申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四分散会