○板垣正君 それで、話し合いでございますけれ
ども、現在の
世界はいわゆる新デタント、外交ゲームの時代であるということが言われております。そしてこの北方領土問題を含めた日ソ間の平和条約締結もあくまで話し合いによって、つまり両方が合意のもとで安定した日ソ
関係をつくっていこうとするわけでありますから、やはりお互い踏み込んだ話し合いをする必要があるんじゃないか。つまりお互い肝心な問題で踏み込んだ話し合いをしていく、これは外交当局においてもそうしたことで努力しておられると思いますけれ
ども、そういう面ではまさに双方が英知を尽くして話し合う必要があるんじゃないかということもうなずけるわけでございますけれ
ども、端的に言って、じゃ肝心な問題とは何か。
我が方はこの領土問題でございます。その肝心な問題にソ連側がまだなかなか踏み込もうとしない。ソ連側にとって肝心な問題は何かといえば、やはり日ソ間の経済協力の問題であり、かつ彼らの言う
アジア・
太平洋地域における軍縮・軍備管理の問題、こうした問題を大きく打ち上げている。ゴルバチョフ政権を支えているのはそうした国際世論と申しますか、そういう対外姿勢におい
てもたれているわけでございますから、そういう形です。
報道されるところによりますと、シェワルナゼ外相の訪日についても、当然もう実現してもよかったのが延び延びになっておる、延び延びになっておるのみならず、前提条件をつけてきていると伝えられております。専門家
会議を設けて、この日ソ間の軍縮・軍備管理の問題とか
アジア・太平洋の平和の問題とか経済協力の問題とか、もちろん平和条約の話し合いと並行してそうしたテーマを設けて話し合いをやるべきである。あるいは大使館筋の報道として、そういう話し合いをすることがゴルバチョフ大統領が
日本に来る、言ってみれば環境づくりでありその下地なのである、そういう話し合いに
日本が乗ってこなければというふうな条件つきみたいな形であらわれているところにもソ連側の思惑というものが感ぜられるわけであります。
そこで、これは対話であり、話し合いを進めていくわけでありますから、この基本的な北方領土問題についての基本姿勢については、当然ソ連側も踏み込んだ対応を求めるし、我が方もこの経済協力の問題、これは政経不可分の
立場に立ちながら、幸いにして平和条約が締結されるというような
状況になるならば我が方としてはこれだけの青写真が持てるという、やはり一つの経済協力の面においてももう青写真を準備していい
段階ではないのか。ソ連側はソ連側として青写真の作成に秋ごろからかかってくるでございましょう。そういう意味における経済協力において、我が方がどういうことをなし得るのか、どういう展開が予想されるのか、そういうまさに肝心な問題についてもっと踏み込んで明らかにしていくという必要があるのではないか。
さらに、
アジア・
太平洋地域での軍縮の問題であります。
ゴルバチョフ大統領が今度
アメリカの帰りにペトロパブロフスクで六月五日にはまた演説をぶち上げると。恐らく
日本に来ても、
アジア・
太平洋地域でのこの大胆な軍縮というようなことをぶち上げて
立場を強化しようという思惑は考えられるわけでございます。これに対して我が方も、まずは北方領土問題、いわゆるスターリンの遺産と言われる、これを
解決することが何よりも東西の緊張を緩和する一番の根本である、そういう
立場を強く主張することは当然でありますとともに、軍縮問題ということを言われますけれ
ども、ソ連の極東軍の軍事力、このまさに超軍事大国として今なおベールに包まれた、こういう
立場の国が声を大きくして
日本に軍縮を呼びかける、
アジアの軍縮を呼びかける。その前にあなた方が一体
アジアこ——極東における彼らの軍事力というものの実態がどうなっているのか具体的に公表されたことはありません。一部の、軍艦を何隻減らしたとか減らすんだとかいう話は伝わってきますけれ
ども、全くその面については不透明であります。
これに比べ、我が方の防衛体制については極めて制約された、節度のある専守防衛という
立場において、攻撃的な武器は持たない、海外には出ないとか、そういう政策の中で、しかも、じゃ
日本の
自衛隊がどういうふうに配備されているのか、どういう予算で
運営されているのか。まさにガラス張りではありませんか。
そういう
立場において、我が方としても
アメリカとのいろいろな強調、話し合いも必要でございましょうけれ
ども、そういう我が方の平和国家としての基本線に立ち、また具体的に節度ある自衛体制という限界において制約された防衛体制をとってきている
立場においても堂々と、この北東
アジアにおける
緊張緩和構想いかにあるべきか、こういうことを我が方がやはり自主的な
立場に立って、ゴルバチョフの来る前にその構想を内外に明らかにして、そしてまさに肝心な問題で、お互い腹を割って打ち込んだ姿においてこの交渉の決着をつけるというくらいの積極的な姿勢をも必要ではないかと思いますが、この点についていかがですか。