運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1990-04-23 第118回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年四月二十三日(月曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 近藤 鉄雄君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 宮下 創平君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 村山 富市君    理事 神崎 武法君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君       池田 行彦君    石井  一君       稲村 利幸君    内海 英男君      小此木彦三郎君    越智 通雄君       狩野  勝君    工藤  巌君       小杉  隆君    後藤田正晴君       左藤  恵君    田澤 吉郎君       戸井田三郎君    葉梨 信行君       長谷川 峻君    浜田 幸一君       林  義郎君    村田敬次郎君       村山 達雄君    井上 普方君       川崎 寛治君    串原 義直君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    戸田 菊雄君       藤田 高敏君    松浦 利尚君       武藤 山治君    和田 静夫君       日笠 勝之君    冬柴 鐵三君       山田 英介君    正森 成二君       三浦  久君    大内 啓伍君       川端 達夫君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 長谷川 信君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 保利 耕輔君         通商産業大臣  武藤 嘉文君         建 設 大 臣 綿貫 民輔君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     奥田 敬和君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 塩崎  潤君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      相沢 英之君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 佐藤 守良君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       依田 智治君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       矢部丈太郎君         公正取引委員会         事務局経済部長 糸田 省吾君         公正取引委員会         事務局審査部長 柴田 章平君         総務庁行政管理         局長      百崎  英君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁長官         官房長     斎藤 次郎君         経済企画庁調整         局長      勝村 坦郎君         経済企画庁国民         生活局長    末木凰太郎君         経済企画庁物価         局長      田中  努君         経済企画庁総合         計画局長    冨金原俊二君         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         国土庁計画・調         整局長     長瀬 要石君         国土庁土地局長 藤原 良一君         国土庁大都市圏         整備局長    三木 克彦君         法務省刑事局長 根來 泰周君         法務省入国管理         局長      股野 景親君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      木幡 昭七君         外務省条約局長 福田  博君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵大臣官房審         議官         兼内閣審議官  谷口 米生君         大蔵省主計局長 小粥 正巳君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省理財局長 大須 敏生君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         文部大臣官房会         計課長     吉田  茂君         文部省学術国際         局長      川村 恒明君         通商産業大臣官         房総務審議官  関   収君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       山本 貞一君         通商産業大臣官         房審議官    横田 捷宏君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省通商         政策局次長   堤  富男君         通商産業省機械         情報産業局長  山本 幸助君         中小企業庁長官 見学 信敬君         運輸省海上技術         安全局長    石井 和也君         運輸省航空局長 丹羽  晟君         建設大臣官房長 牧野  徹君         建設大臣官房総         務審議官    福本 英三君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省住宅局長 伊藤 茂史君         自治大臣官房長 小林  実君         自治大臣官房総         務審議官    芦尾 長司君         自治省行政局長 森  繁一君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 四月二十三日  辞任         補欠選任   石井  一君     井奥 貞雄君   倉成  正君     小杉  隆君   松本 十郎君     狩野  勝君   辻  第一君     正森 成二君   大内 啓伍君     川端 達夫君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     石井  一君   狩野  勝君     松本 十郎君   小杉  隆君     倉成  正君   川端 達夫君     大内 啓伍君     ───────────── 本日の会議に付した案件  分科会設置に関する件  平成二年度一般会計予算  平成二年度特別会計予算  平成二年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成二年度一般会計予算平成二年度特別会計予算平成二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、外交防衛及び日米構造問題協議等について集中審議を行います。  質問者並び答弁者にお願いをいたします。きょうは、御承知のようにNHKの生中継が六時まで入っております。したがいまして、時間を厳守していただかないと、最後の方が十分でありますので、なだれ込みは許されませんので、時間が参りましたら質問中であっても答弁中であっても打ち切らしていただきますから、御承知をお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮下創平君。
  3. 宮下創平

    宮下委員 本日の集中審議は、ただいま委員長からお話がございましたように、外交防衛問題と日米経済協議二つということでございます。私は、主として外交防衛問題につきまして、意見を交えながら御質問を申し上げたいと存じます。先般の総括質疑でも若干触れましたが、十分な時間がございませんでした。したがって、多少ダブる点があろうかと思いますが、お許しをいただきたいと存じます。  まず最初に、デタントと軍備管理軍縮問題でございます。  最初に、欧州情勢軍備管理軍縮の問題につきまして外務大臣に、外務大臣はメキシコ、ウルグアイ・ラウンド交渉からお帰り早々でお疲れさまでございますが、まずお伺いしたいと存じます。  最近の国際情勢は、欧州中心に大きく変動しておることは御案内のとおりでございます。ソ連は、一九八五年のゴルバチョフ政権登場以来、ペレストロイカあるいはグラスノスチ等の大胆な国内改革に着手いたしまして、対外的には新思考外交ということで展開をしております。  しかし、ソ連国内政治は必ずしも順調に進んでおるとも言えない。経済低迷状況にございますし、また、バルト三国等の民族問題も深刻化しておるのは御案内のとおりでございます。特に、リトアニアの民族問題につきましては、ソ連としても、対応を一歩誤りますと、これまで進めてきました国内改革でありますとか、あるいは東西協調路線の根底を揺るがしかねないものになるのではないかというようなおそれさえございます。  また、ゴルバチョフ政権西側との対話、協調を重視いたしました政策は、東欧諸国にまさに歴史的な大変革を招来したことでございました。東欧諸国における政治的民主化動き、あるいは自由選挙市場原理導入等はまさに燎原の火のごとくと言ってよろしいでございましょう。そういう状況で広がりまして、今や後戻りを許されない状況にまで到達していると言っても過言ではないと存じます。  このような変化は、第二次世界大戦以降最も大きな変化であります。しかし、この変化が余りに急激であるために、各国の民主的な政権基盤が十分整っているかどうかという点に多少の懸念がございまして、例えばドイツ統一問題に見られますように、今後の欧州情勢の行方は若干不確実でございますし、国際情勢は全般的に流動化不安定化の要因も持っていることは否定できないと思うわけでございます。  そこで、軍事情勢について見ますと、このような政治情勢の好転を受けまして、米ソ間や欧州において戦略兵器削減交渉でございますとか欧州通常戦力交渉、いわゆるCFEなどの軍備管理軍縮交渉が急速に進展をいたしております。しかし、このような動きは、やはり西側諸国が自由と民主主義のもとに一致協力して防衛努力を続けてきたことの成果であると私は思います。  しかしながら、こうした動きの中で、次の三つの点くらい留意しておかなければならないことがあろうかと思います。  第一は、戦略兵器削減交渉、いわゆるSTARTが合意、実行されたといたしましても、依然として米ソ戦略核は圧倒的なものがございます。そしてまた、引き続き核兵器の近代化が実施されると見られております。したがって、核による相互抑止を含む力の均衡、こういう世界軍事構造に本当に根本的な変化が生ずるとは思われないという点が第一点。  第二点は、欧州通常戦力交渉、いわゆるCFEにつきましては、この交渉欧州軍事バランスをより低いレベルで均衡させるため有意義なものであると思いますけれども、しかしこの目的の一つは、やはりああいう地政学的な状況からして奇襲攻撃とか大規模攻撃能力の排除でございまして、また対象地域対象戦力も限定されたものとなっておることは御案内のとおりでございます。したがいまして、欧州通常戦力交渉CFEが実現いたしたといたしましても、欧州における軍事力水準は依然として高い水準にとどまるのではないかとも懸念されるわけでございます。  そしてまた第三点に、このような軍備管理軍縮交渉進展を見せたことの背景には、ヘルシンキ宣言以来培われてきたヨーロッパでの信頼醸成という大きな基盤存在しておったことを考えないわけにはまいりません。  このように、ヨーロッパにおきましては大きな地殻変動を生じておりまして、欧州新秩序への模索が継続いたしておりますけれども政府は、このような欧州情勢中心とした国際情勢変化をどのように認識しておられるのか、まず外務大臣にお伺いをしたいと存じます。
  4. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘ヨーロッパにおける歴史的な変革というものは、ゴルバチョフ大統領の新しい新思考外交がその背景にあると考えております。そういう考え方の中で新しい外交戦略ソ連構築をしている。しかも、この考え方の中で、かつてワルシャワ機構に加盟しておった東ヨーロッパの国々も、それぞれの考え方によってみずからの政府を選び、経済体制を選ぶということについては、ソ連は干渉をしないという考え方が現存しているものと思われまして、ヨーロッパは極めて好ましい方向動きつつあるという認識を持っております。  しかし、委員指摘のように、今軍備削減軍縮米ソの二国間においていろいろと協議が行われている過程にございまして、ヨーロッパ情勢は引き続き、ソ連ペレストロイカによる経済改革は不透明でございますし、不安定な状況がございます。リトアニアにつきましても極めて緊迫した状況が今見られるのではなかろうか。そういう中で私どもは、このヨーロッパの安定がいかに順調に伸びていくか、そのために日本政府としては、この平和の環境が醸成されていく中で今後とも引き続き復興開発に向けてのできるだけの協力をせなければならないと考えております。
  5. 宮下創平

    宮下委員 ヨーロッパの問題、ありがとうございました。  引き続きましてアジア地域の問題についてお伺いしたいわけでありますが、アジア地域におきましては、ヨーロッパにおけるような急激な変化は生じておりません。アジア地域は、ヨーロッパとは政治経済あるいは地政学的環境等を異にしております。  しかし、この地域にはソ連が一方的に膨大な戦力を展開しているところでありまして、確かにソ連はこの地域におきましても戦力の一方的削減を一部実施している模様でもございます。しかしながら、私は、このようなソ連削減は、いわば肥大した極東ソ連軍スリム化つまり軍の行革のようなものでございまして、また老朽装備の廃棄を中心とした軍の再編合理化というものではないかと思われます。過般出された防衛白書においてもそのようなことに言及されております。  さて、先般来の予算委員会での審議を拝聴しておりますと、国際情勢が大きく緊張緩和方向に向かっているにもかかわらず、我が国は依然として従来の冷戦構造にしがみついているのではないかというような趣旨の論議がなされておりますが、私は、やはりヨーロッパ情勢アジア情勢は、これまで述べてまいりましたように一味も二味も違うのではないかというように思います。  これは私だけの意見ではございませんで、米国におきましても国防当局者は同様の認識に立脚しているものと思われます。例えば、本年三月、ローエン国防次官補米議会におきまして次のように述べております。すなわち「欧州とは対照的に、東アジアではほとんど変化が見られない。中ソ国境ソ連軍削減カムラン湾からの航空機の撤去、ソ連太平洋艦隊旧式艦艇の退役などはあるが、近代化努力もあるので、この地域ソ連の海・空軍能力はおそらく増大した。」というように証言をいたしております。  このように、ヨーロッパ変化に比較いたしまして、アジア地域における情勢には、世上言われるような大きな変化が生じたと見られないと思いますが、この点に関する見解外務大臣にお伺いしたいと存じます。
  6. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘のとおりでございまして、アジアにおきましては、日本政府としてはもとより平和の構成、平和が醸成されていくということを心から期待をいたしておりますが、ヨーロッパと違い、地政学的には大きな海洋を有しておりますし、また、ここに展開しておりますソビエトの海軍戦力も極めて近代化されているという認識を持っておりまして、私どもとしては引き続きこれからの事態の推移を監視していかなければならない、このように考えております。
  7. 宮下創平

    宮下委員 次に、対ソ脅威認識についてお伺いをしたいと思うのでございます。  これは防衛庁長官お尋ねしたいと思いますが、こうした国際情勢の中で、我が国におきましても、ソ連脅威でなくなっているのではないか、脅威がなくなっているのではないかとか、あるいは米国もそのように見ているというような趣旨の議論がいろいろ散見されております。米国対ソ脅威認識につきましては私も前回の質問で若干述べましたけれども米国ソ連脅威でなくなったとは見ていないと思うのでございます。  例えば、一九九一年の国防報告では、序文で次のように述べております。「ソ連東欧で始まった変化は歓迎すべきものではあるが、ソ連軍事力は依然として米国及び同盟国にとっても最も重大な軍事的脅威である。」というように国防報告は記述をいたしておりますね。それから、また後でこれは質問をいたしますが、四月十九日の国防省の対議会報告アジア太平洋地域戦略的枠組み—二十一世紀に向けて」という報告におきましても次のように述べております。すなわち「日本に向き合うソ連極東軍管区においては、ソ連軍事能力は、引き続き防衛に必要とされるものをはるかに超えているように見える。」「少なくとも短期的には、特にソ連の海・空軍近代化計画は、北東アジアにおける我々の利益、同盟国戦力に対する脅威の継続を確実にしている。」このように明言いたしております。また、チェイニー国防長官発言等もございます。  私としては、このような米国見解から見まして、ソ連脅威ではなくなったとは言えないものと考えておりますけれどもソ連脅威をどのように見ておられるのか、また米国との間の認識の差はないのかどうか、こういった点について政府見解を、防衛庁長官見解をお承りしたいと存じます。
  8. 石川要三

    石川国務大臣 お答えいたします。  ソ連脅威に対する米国と我が防衛庁との見解の相違という点について御質問をいただいたわけでありますが、御指摘のように、先般の国防省議会報告書アジア太平洋地域戦略的枠組み」などにも示されておりますように、米国ソ連東欧変化を極めて歓迎しているわけでありますけれども、しかし、ソ連軍事的能力というものにつきましては依然として米国同盟国に対する軍事的脅威である、こういう認識にはっきり立っております。我が国といたしましても、先ほど外務大臣アジア太平洋情勢の中にも述べられておりましたように、極めてヨーロッパとは地政学的にも違っておりまして、特に軍事的な面から見ましても、極東ソ連軍につきましては、一部量的な削減というものは見られるものの今日その軍事力の蓄積というものは極めて大きい。またさらに、この質的な強化というものは依然として続けられているわけでございます。そういうような観点から、再三申し上げておりますように、潜在的脅威というものは依然として認識している、私はこういう観点に立っているわけでございまして、したがって、お尋ね米国我が国との見解というものは、私は合致している、このように認識しているわけでございます。
  9. 宮下創平

    宮下委員 続きまして、アジア軍備管理軍縮前提条件目標等について、これは総理並びに外務大臣にお伺いをしたいと存じます。  現在のところは東アジアにおいて軍備管理軍縮進展が見られませんが、それは先ほど申し上げたとおりでございますが、将来東アジアにおいても軍備管理軍縮が行われることは国民だれしも、これはもうぜひ望むところであることは申し上げるまでもございません。ただ、今日欧州において軍備管理軍縮交渉進展が見られますのは、これはもう言われておりますように、NATO対WPO、NATOワルシャワ条約機構が大規模陸上兵力中心に著しく対峙している、こういう軍事的な厳しい緊張状況のもとで軍備管理軍縮に向けての長い歴史の積み重ねがあったからだと思うわけであります。  一方、東アジアに目を向けますと、確かに現在でも、例えば中ソ国境や朝鮮半島におきましては陸上兵力中心といたしまして軍事的な対峙する状況存在はいたしておりますが、ヨーロッパのように全体が二つの陣営に分かれて対峙する、こういうようなはっきりした状況ではございません。また、アジアの場合は地形が複雑なために軍事的にも陸上海上兵力が複雑に対峙している状況にあると思うわけであります。また東アジアでは、多くの国は米ソとそれぞれ二国間の安全保障条約を結んでおるということでございまして、さらに言うならば独自の路線を歩む中国という存在もございます。それからまた、日ソ間の状況を見ましても、我々が熱望しております北方領土問題、この未解決問題が頑として存在しておる。何としても解決していただきたいのですが、さらに前述のような膨大な極東ソ連軍存在がございます。このように、東アジアにおきましては軍備管理とか軍縮を進めるための前提条件というものが欠けているところが多いのは事実ではないかと思うのであります。  しかしながら、この地域におきまして軍備管理軍縮のための努力を行っていくということは、我が国の安全を高めるためにもどうしても必要なことでございます。特に、ソ連極東における膨大な軍事力我が国にとって潜在的な脅威である、これは長官もお答えになったとおりでありますが、特に東アジアにおきましては、ソ連が一方的に大幅な軍事力削減に踏み切ることがアジアにおける軍備管理軍縮への端緒となるというように考えております。  政府といたしましては、こうした状況を踏まえまして、いかなる方法でこのアジア地域における軍備管理軍縮への努力を積み重ねられていくおつもりなのか。日米首脳会談、あるいはサミットもヒューストン・サミットがございますし、また数々の外相会談等がありますが、あらゆる機会に粘り強く主張を重ねていくべきであると考えておりますが、いかがでございましょうか。お尋ね申し上げます。
  10. 中山太郎

    中山国務大臣 委員お尋ねのごとく、アジアの平和と安定というものが我々の国日本にとりましてもアジア各国にとりましても極めて好ましいことでございまして、そのために日本政府としては、外交の面を通じて、二国間あるいは多国間の場におきましても、このようなアジア地域の平和、安定の構築のためにまず信頼醸成をどのように構成していくか、そういうことに今後とも引き続き努力をしなければならないと考えております。
  11. 宮下創平

    宮下委員 次に、最近発表されました、先ほども申しましたようにアジア・太平洋地域戦略的枠組みについての全体の評価等について、総理外務大臣、それから防衛庁長官にお伺いしたいと存じます。  米国国防省は、昨年十一月成立いたしました一九九〇会計年度米国国防予算授権法、この附帯条項に基づきまして、去る四月十九日、ごく最近でございますが、四月十九日に米議会に向けまして「アジア太平洋地域戦略的枠組み—二十一世紀に向けて」と題する報告書を提出いたしました。この報告書につきましては、一部に米国が大幅な戦略の転換をするのではないかとかというようないろいろの論評をされておることもございますけれども、私もこの報告書を読んでみましたけれども、私にはそのようにはどうしても読み取れなかったわけでございます。多少そういう嫌いがあるような感じもしないではございませんが、よく読んでみますと基本的にはそうではないというように思います。  むしろこの報告書では、例えば、引用させていただきますと、「アジア・太平洋地域での米軍の前方展開は戦争抑止、地域及び二国間の目標の維持、軍事的使命の達成に不可欠であり続ける」、このように述べておることからいたしましても、米国が巨額の財政赤字を抱える厳しい状況にあるにもかかわらず、世界の平和と安定のためにグローバルな役割を果たしておりますが、この役割を引き続き維持し、そして同盟国に対しまするコミットメントを今後も果たしていこうというような米国政府の強い決意を私は感ずるわけでございます。  この報告書では、二十一世紀までの今後十年間における米軍の再編成につきましていろいろ地域別にも申しておりますが、日本について申し上げますと、日本については「北東アジアにおける地域的安定と抑止力を提供するために不可欠な基地を維持存続させつつ、」行うものといたしまして、三段階でこれをやろうということを述べております。そしてその第一段階は、今後一—三年の間に沖縄における削減を含めまして約五千人ないし六千人の人員削減を徐々に行うというように述べております。そして第二段階は、今後三年ないし五年間に行うものでございますけれども、「同盟国がより大きな責任を果たし、地域の安定が維持されることを条件として、一層の効率化と削減を進め」ていくというように書かれております。そしてさらに、その後の五年ないし十年、いわゆる第三段階では、「東西関係の状況により、軍事プレゼンスの一層の削減を開始することが可能だが、日本における米国の抑止戦力は、地域的、全世界的な任務を果たし、条約上のコミットメントを守るために留まる。」ということを明確に述べております。これらの点につきましても、この地域における見通しが不透明な軍事情勢を十分見きわめつつ、アジア地域の平和と安定に配慮しつつ、三段階に分けて慎重に進めようとする米国政府の姿勢がうかがわれるものと私は考えます。  政府は、この報告書に見られます米国戦略的枠組みについてどのように評価しておられるのか。これは我が国の今後の防衛政策に大変影響するところが大きいのではないかと私は考えますが、その評価、そしてまた今後の我が国の安全保障政策防衛力整備にどのような影響が出てくるものと考えておられるのか、総理外務大臣防衛庁長官にそれぞれお伺いをしたいと存じます。
  12. 中山太郎

    中山国務大臣 今般、米行政府が議会に提出をいたしましたアジア・太平洋地域戦略的枠組みに関する報告は、米国が引き続き太平洋地域における前方展開戦略、二国間の安全保障取り決めを基本的に維持していくことを明らかにしたものというふうに認識をしておりまして、戦略情勢を十分見きわめながら段階的に米軍の調整を進めていくという考え方であろうと存じております。そうした基本的な考え方につきましては、本年二月に来日されましたチェイニー・アメリカ国防長官の説明と同一でございます。我が国としては、このような米国考え方を慎重なものとしてこれを理解をいたしております。  最近の国際情勢変化の中にあって、日本が効果的な抑止の確保と積極的な対話の展開によってみずからの平和と安全を確保しつつ、広くアジア・太平洋地域の安定と発展を図っていくためには、日米安保体制が今後とも不可欠であり、日米安保体制の円滑な運用のために日本は自主的な努力を続けていかなければならないと考えております。
  13. 石川要三

    石川国務大臣 今外務大臣が述べられましたように、やはり今回のこの米国の議会に対する報告書というものは私も受けとめているわけであります。したがって、アメリカのコミットメントというものは、今後も果たしていくということが明確に述べられておりますし、ただ財政状況勘案の上に三段階で削減という方法が示されておりますけれども、しかしそれには十二分に東アジアにおける情勢というものを前提にしておる、このように認識をしておるわけであります。  したがいまして、今回のアメリカのこの報告の内容と今後の私ども防衛というものにつきましては、基本的には影響がない、私はこのように認識をしておるわけでございます。
  14. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 いろいろ御質問の内容につきましては、今年二月にチェイニー国防長官が来日されたとき私と意見の交換をしましたが、そのときの内容の大筋とほとんど同じものを盛り込んだ報告書が今度アメリカの議会にも報告された。私は、これについては外務大臣防衛庁長官が申し上げましたように、アジア・太平洋地域におけるアメリカの現状認識というものと、同時にこれから十年間の間はやはり戦争抑止のためにアメリカ軍の前方展開戦略は必要であるという認識に立っての態度でありますし、我が方も御承知のように節度ある専守防衛の自衛力でもって、我が国はもちろんのこと、アジアの平和と安定にいろいろ貢献をしてきておるアメリカの存在というものと、日米安保条約の中において日本日本の安全を守る、アメリカはアジアの安全のために引き続きそのような責任を果たすということを言ってくれておるわけでありますから、私は大きな変化は急激にはない、こう見ておりますが、究極的には、アジア・太平洋地域においても軍備管理軍縮方向に向かっていくのが究極の目標としては望ましいと考えておることはアメリカも同様だろうと受けとめております。
  15. 宮下創平

    宮下委員 次に、防衛力整備の基本的な考え方についてお伺いしたいのでございますが、我が国としては激動するこうした世界の中で次期防衛力計画の整備に取り組まなければなりません。その際、最も重要な我が国防衛力整備の基本的な考え方防衛政策を考えるに当たっての基本的な態度についてお伺いをしたいと存じます。  総理にお願い申し上げたいのですが、現在の激動する国際情勢の中にありまして、我が国の安全保障政策防衛政策につきましてはこれまで以上に総合的かつ現実的にならなければならないと私は考えております。すなわち、例えばデタントだとか緊張緩和だ、冷戦は終わった、脅威はなくなったというようなムードに惑わされて、もう防衛力は必要ないのではないかとか、防衛費は不要だ、凍結しろというような短絡的、直線的な議論が現在多いように思います。しかし、一方こうした変革期で次期防の検討に入っておるわけであります。私はこういう変化の時代であればこそ、より冷静に慎重に現実をしっかり見据えた態度、姿勢が必要でありまして、そのような立場に立って我が国がどのようにすべきかということを慎重に検討を重ね、考えていくことが重要であると思っております。大変生意気なことを申し上げるようでございますけれども、私はこのことが基本的に重要であると思いますので、総理認識をぜひお伺いしておきたいと存じます。
  16. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 国民生活の平和と安定、向上を確保していくというのは大きな政治の目指すべき目標であることは委員指摘のとおりであり、また、そのためにみずから必要な節度ある防衛力を常に整備していかなければならぬということも、国防の基本方針の中で我々がとり続けてきた方針であります。そして、専守防衛という物の考え方や、あるいはみずからは文民統制のもとでいろいろな努力をきょうまで続けてまいりました。  今目の前に東西の対立とかデタントとか緩和とか、特に欧州中心に劇的な変化はありますけれども、私もこの前から申し上げておるように、冷戦時代の発想を乗り越えて一つの新しい世界秩序を模索しつつあるという動きは私は歓迎いたしますし、それはそれで定着されていかなければならぬと考えますが、手のひらを返したようにまだそれは全世界に押し及んでおるわけではありませんし、またアジアにはアジアの、ヨーロッパにはヨーロッパの、今おっしゃったような地政学的なあるいは軍事上のいろいろ違った複雑な面もございます。アジアにおいてそれがきちっと定着をすることを願いつつ、望みつつ、その努力を果たしながら、私は国の安全をきちっと守っていくという国の大きな目標に従ってきょうまでやってまいりました。平和時における我が国の安全を保障するための、確保するための防衛力の維持というものには慎重に対処していかなければならぬ、こう考えております。
  17. 宮下創平

    宮下委員 今総理から我が国のとるべき基本的な防衛政策についても言及されました。私もそのとおりであると存じます。そして、今次期防を策定しなければならぬわけでありますが、いわば二十一世紀をにらんだ将来の我が国防衛政策を決定づけるかぎとなる重要な問題であろうかと思います。今総理が述べられましたように、我が国の基本的な防衛政策を、この際私はしっかりとやはり確認した上で次期防の編成作業に取り組まなければならないと思うわけでございます。  この防衛政策、基本的な防衛政策、これについては今さら私が申し上げるまでもございませんけれども、しかし、こういう時代であればこそ、我が国防衛というものはこういう原則に立っているんだということを明確にやはり再確認をし認識をしていく、そして国民に理解を求めていくということが非常に重要なことだと考えます。今総理のおっしゃられたように専守防衛、これは重要な原則でございます。それからまた、海外派兵の禁止でありますとか、我が国は個別的自衛権は認められているけれども集団的自衛権は憲法上認められていないことはもちろんであります。非核三原則の堅持でございますとか、そしてまた、何よりも厳格なシビリアンコントロールということも非常に重要な視点だと私は存じます。それからまた、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国にはならないというような原則、こういった基本的な防衛政策の枠組みは基本理念として今後持ち続けていかなければなりませんが、改めて総理見解をお願いするまでもなく、このことを申し上げさせていただきたいと存じます。  次に、時間の関係で、次期防衛力整備計画の策定について幾つかの点についてお尋ねを申し上げたいと思うわけであります。  まず、この次期防につきましての計画の必要性について総理並びに防衛庁長官にお伺いしたいわけでありますが、平成三年度以降、今の中期防は申し上げるまでもなく平成二年度をもって完了するわけで、平成三年度以降は新たな防衛力整備計画を立てなければならないわけであります。政府は、六十三年の十二月に安全保障会議を開きまして、そこで引き続き現在の中期防のような中期的な計画を政府として策定する必要があるといたしております。この点につきましては過般の当委員会でも議論がございました。単年度主義に戻るべきだというような主張もなされました。しかし私は、防衛力整備の内容がいかなるものであれ、中期的な計画を策定してそのもとに進めていくということがこの防衛計画の本質だろう、こう思いますし、そのことが適切であると考えております。  すなわち、防衛力の整備は装備品の取得や要員の養成に長期を要しますし、一朝一夕にできるものではございません。平素から将来の我が国防衛のあるべき姿を検討をしつつ、長期的な視点に立って計画的しかも継続的にこの努力を行っていくことが大切であると思っております。そしてまた、適切な文民統制、シビリアンコントロールを充実するという観点からも、政府として、つまり政府レベルで中期的な防衛力整備計画を策定することが適切ではないかと考えております。現在の中期防を政府計画として策定したゆえんもここにあらうかと思うわけであります。  振り返ってみますと、一次防から四次防までは政府レベルの防衛計画がございました。しかし、その後防衛計画の大綱かつくられて、そして年々の防衛費はその年々の他の財政事情あるいは施策との絡みで決めるということになってまいりました。しかし、その間も防衛庁としては、中期業務計画というような五三中業とか五六中業というようなものをつくりまして、そして長期的な視点で単年度の予算を要求し決定してきたものであることは御承知のとおりでございます。そして、六十年の九月に現在の中期防衛力整備計画が政府レベルの計画として格上げをいたしまして、総額明示方式で決められたことは御案内のとおりでございます。  私はこのような認識に立ちまして、政府として計画期間を幾らにするか、例えば五年とするか三年とするか、あるいは、当初現在の中期防計画がローリング方式を中に織り込んでおりましたけれども、例えば三年後に国際情勢変化その他があれば見直すというようなローリング方式を織り込んでもおりましたが、こうした問題は今後の検討課題にまつことといたしましても、計画の必要性については私はぜひ必要であるという立場をとっておりますけれども、この点についてどのようにお考えか、総理長官の御意見をお伺いしたいと存じます。
  18. 石川要三

    石川国務大臣 委員承知のとおり、次期防につきましては政府全体としての総合的な立場で策定されるわけでありますが、防衛庁という立場で先に私の方からお答えをさしていただきたい、かように思います。  今の御質問でございますが、次期防の内容、それの計画としての必要性、こういう点を触れられたわけでありますが、とにかく次期防、この策定につきましては、一昨年の十二月の安全保障会議におきまして、防衛力整備というのは継続的かつ計画的に進める必要がある、また、適切な文民統制の充実を図るという観点から、単年度方式によるものではなく現在の中期防のような中期的な防衛力整備計画を策定する必要があることにつきましては、意見の一致を見ておるわけでございます。また、防衛力の整備に当たっては、例えば艦艇、航空機の契約から取得までは、今委員がお述べになりましたように、三年ないし五年ぐらいの年月が必要とされます。また、一つの施設を建設するにも数カ年を要する場合もあるわけであります。このような観点からして、防衛庁としては、中期的な見通しなしに各年度ごとに進めるのではなくして、具体的な中期的な見通しに立って計画的、継続的に防衛力整備を進めていくということが合理的と考えているわけでございます。  いずれにせよ、次期防の内容については、先ほど申し上げましたように、安全保障会議中心として適切な文民統制のもとに政府全体として逐次総合的にこれが検討を進められていく、かように考えているわけであります。
  19. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御承知のように、我が国防衛、それは平和時における必要にして節度のある防衛力の限界というものを定めて、そしてそれが、御承知のとおり、平成二年度の今お願いしております予算措置を通じて一応の中期防の達成を見る、こういうことでございますが、これはあくまで平和時における現在の我が国に必要な節度ある防衛力ということでありまして、有事を想定して編成されておるアメリカ軍が、二カ二分の一戦略という往年の言葉で代表されますように、地球上の至るところで起こる正面作戦を二つ以上引き受けてなお余りあるというような有事を想定してのものでは絶対にないわけでありますから、世界の緊張とか世界情勢変化ということを非常に望ましく受けとめますけれども我が国の安全を確保していくためにはどの程度のものが必要かという、平和時におけるという大前提でありますので、中期防が終わりましたときにも、私は、そのときの国際情勢とか経済情勢、財政情勢、いろいろなものを踏まえてさらに計画は考えていかなきゃならぬものである、こう考えておりますが、以下はまだ中期防が終わっていない現段階でございますので、今後の検討課題であろう、こう受けとめております。
  20. 宮下創平

    宮下委員 今検討中ということでございますが、これから六月、七月あるいは秋までには中期計画をつくらなければならない時期に来ると思います。  そこで、防衛計画の大綱について総理並びに長官にちょっとお伺いをしたいわけでございますけれども国際情勢がこのように緊張緩和の時期であるから大綱は下方修正すべきであるというような議論がございます。大綱は、今総理からお話のございましたように、三木内閣のときの昭和五十一年、すなわち緊張緩和、デタントと言われた時期に策定されたものでございまして、当時の新聞を拝見いたしましても、その見出しは、平和時の限界を示すものだとか、あるいは東西冷戦構造から脱却したものというような大きな見出しでこの防衛計画大綱を報道しております。すなわち、大綱は、こうしたことから察せられるように、国際関係安定化の努力に期待しつつも、憲法の許容する自衛のための必要最小限度の範囲内において我が国が、今総理が述べられたような平時から保有すべき防衛力の水準、いわゆる基盤的な防衛力の水準を示したものであると考えております。  したがって、私は、次期防においても、いわば現在の軍備管理軍縮動きを先取りしたとも言える、この節度ある防衛力のあり方を示した大綱の基本的な考え方を尊重しながら防衛力の整備を進めていくことこそ今必要なことではないかな、このように感ずるわけで、私は改めて大綱を見直して、読み直してみましたけれども国際情勢の記述等に多少の表現上の問題があるといたしましても、基本的には大綱を維持していくべきものと考えます。激動するこの世界の流れ、働きが落ちついてから手をつけるべきではないかとの意見もございますが、基本的には私は大綱をこのまま、基本的な精神がマッチしておるわけでございますから、維持すべきものと思いますが、総理も本委員会において大綱についてしばしば答弁されておられますけれども、改めて総理見解をお伺いしたいと思います。
  21. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私も委員考え方と軌を一にするのでありますが、何度も申し上げるようでありますけれども我が国は、世界の力の対立の時代や力によってつくられておる世界秩序の中へお役に立とうなんという発想も考え方も毛頭持ったことはございませんし、憲法ではそれを禁止しておるわけでありますし、政策としてもそれはやってはならないことだということも委員承知のとおりであります。その上に立っての大綱で、まことにつつましやかなもので、日米安全保障条約というものによってそれは常に補完をされる。小規模の限定的な侵略に対応してみずからの平和をどうして守るかという節度のある、そういったものでございますから、あの大綱が、日本国民生活の平和と安全を守っていくために果たしてきた役割というものを私は評価しておりますし、また、あのつつましやかな節度ある限度の中で行ってきた自衛力の整備でありましたから国民の皆さんの御支持もいただく、またこれは、近隣諸国に対して脅威だとかいうようなことにはならないように、専守防衛、文民統制、非核三原則、いろいろな物の考え方がございますが、そういったものをきちっと踏まえてやってきたものだと私は評価をしておるのです。その防衛計画の大綱によって日本の平和はきょうまで現実に日米安保条約のもとで守られてきた、平和を守り抜いてきたという実績もあるわけでありますから、この考え方を踏まえてさらに、今後の国際情勢変化の中にあっても専守防衛という大きな旗印のもとで、日本の平和を守りながら行かなければならない、こう考えております。
  22. 宮下創平

    宮下委員 さて、次に防衛関係経費のあり方について長官にちょっとお尋ねを申し上げたいと思うのです。  現在の国際情勢の流れを理由といたしまして、防衛費を凍結すべきとか削減すべきだとかいった主張がございますが、本来防衛力整備は、国際情勢や軍事技術の動向等を冷静に的確に見通しながら進めていくべきものでございまして、中身の議論なしに経費の総額がどうだとかといった、先に経費ありきといったことはとり得ない考え方だと存じます。また、大綱水準を達成したからもう装備は買わなくてもいいのではないかとか、防衛費をふやす必要はないという見解は、実態から遊離したものだと思います。  そのような点についてちょっと具体的な例を申し上げますと、まず、どのような情勢のもとであれ、平素から最低限の警戒態勢をとっておくことは主権国家としては当然のことでございますが、例えばスクランブルですね、スクランブル、これは国籍不明の飛行機が飛んできた場合に発進する警戒機能でございますが、これを実施するためには常に航空機を適切に維持、整備しておく、あるいは練度の非常に高いパイロットを待機させておく必要がある。このためには大変な努力と経費も要します。  また、装備というものは幾ら適切に維持いたしましてもどんどん古くなっていくものでございまして、したがって計画的に軍事技術の変化によって更新、近代化を図る必要がございますし、一たん努力を怠っていきますと取り戻しがつかないようなことになります。  また、特に最近は正面と後方のバランスということで、後方、特に隊員の隊舎とか宿舎に代表される生活関連施設につきましてかなりな改善を見ておりますけれども、なおかつ一般社会のレベルに比べますとまだまだおくれております。今後とも力を入れていく必要があろうかと思っております。  さらに申し上げますならば、我が国防衛費の性格についてちょっと触れたいのですが、我が国防衛費の場合、人件費のウエートが約四〇%を占めております。これは諸外国に比べると非常に高い率になっております。したがって、例えば一%のベースアップがあっただけでも防衛費が約百五十億円くらいこれは増加することになります。したがって、三%、今回三%くらいのベアが行われたわけですが、行われれば約五百億円強の増加要因になります。五百億円ということは、今の防衛費に対して約一・二、三%の増加、押し上げになりますね。したがって、給料が上がってそれだけふえたからといって防衛費が増強されたと見るのは間違いだということを申し上げたいわけで、こうした点を踏まえれば、我が国防衛費はその増加というものが直ちに防衛力の量的な拡大につながらない、つながるものでもないということを忘れてはならないと思うのであります。この点指摘をしておきたいと思います。  なお、中期防との関係で防衛関係費のあり方についてという関連でお伺いしたいのですが、大変重要なことなんですが、中期防での防衛関係費のあり方については、計画の中に主要装備をどうするかとか、そしてその見積もりと裏づけとなる経費を一体として明示できる総額明示方式をとることが今後とも私は適切ではないかと思うのでございます。この点、長官、大蔵大臣の御意見をちょうだいしたいと思いますが、特にこの総額明示方式は、現在行われている中期防をつくるときに防衛費の歯どめのめどとして当時の大蔵大臣、竹下元総理が主張されたものでございまして、これを採用したというように伺っておりますが、大蔵大臣いかがでございましょうか。防衛庁長官と大蔵大臣の御答弁をお願いしたい。
  23. 石川要三

    石川国務大臣 今委員の御質問を拝聴しておりまして、実は大変その内容が、どこの点に中心的に御質問されているかちょっとつかみにくかったわけでありますけれども、いろいろとお話を聞いておりまして申し上げたいと思いますが、やはり次期防というものの内容につきましては、今委員が御指摘されましたようないわゆる総額表示方式、こういう点につきましては私はそれが最もふさわしいものではなかろうかな、こういうふうに思うわけであります。しかし、具体的にはこれから検討するわけでありますけれども、それはやはり先ほど言ったように単年度のものではなくして一定の期間を設ける、そしてまたその総額を明示する、こういうことは極めて合理的ではなかろうかな、こういうふうに私は考えているわけでございます。  その内容につきましては、御指摘のように、とにかくこの人件費あるいは正面あるいはその他の経費の内訳を見ても、非常に正面装備というものは、率というものは比較的低い、こういう点もございます。でありますから、一概にこれを増額したから直ちに防衛力が強化された、こういう見解には必ずしも当てはまるものではない、このように私は思っております。先ほどにも申し上げましたように、これからの、要するに次期防の内容につきましては、特に量的な拡大というよりも質的な面、そしてまた特に後方整備というものにつきましても重点的にひとつ考えていきたい、こういう考えに立脚しているわけでございます。
  24. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、今委員の御指摘になりました数々の問題点を踏まえながら、防衛庁が内部で検討しておられる状況はそれなりに承知をいたしております。ただ、これから先、やはり安全保障会議中心にしながら、国際情勢経済財政事情等を判断しながら考え方を整理していかなければなりません。ただ、院におきましてのGNP一%論議が長く続きました後に、この変わる姿をどうするかということから総額明示方式というものが検討され今行われておるわけでありまして、私どもといたしましては、防衛力関係の費用といえども予算上聖域ではないという姿勢はとりつつも、やはり総額明示方式のように国民に御安心のいただける手法は大切なこと、そのように考えております。
  25. 宮下創平

    宮下委員 それでは次に、次期防の具体的な方針についてお伺いしたいわけでありますけれども、次期防につきましては、まだ政府全体でただいま申されておるように検討段階でありまして、明確な答弁は難しいと存じますけれども防衛庁長官、特に柱となる事項は一体何なのでしょうか。その点について、いろいろ報道もされておりますけれども、簡単に御説明いただきたいと思います。
  26. 石川要三

    石川国務大臣 ただいまも一部申し上げたとおりでございますが、やはり具体的な重点、こういうふうな角度から申し上げまして、これを簡潔に申し上げますと、まず第一には、次期防の検討に際しては、正面装備については量的拡大を図るよりも将来方向を展望しつつ質的向上を図りたい。それから第二は、むしろ正面装備よりは、その能力を有効に発揮するための情報、指揮・通信等の各種支援能力の充実等を図っていきたい。そして三点目に、人的資源の制約等を考慮しまして、隊員施策の充実を図るとともに、防衛力全般にわたる効率化、合理化の徹底により省力化を図っていきたい。かような点が強いて言えば重点、かように申し上げて差し支えなかろうと思います。
  27. 宮下創平

    宮下委員 今おっしゃられた質的向上、あるいは情報、通信の重要性、また、特に今人的資源の問題に言及されましたが、人的資源の制約等を考慮いたしまして、隊員施策の充実を図るということ、それから防衛力全般にわたって効率化、合理化の徹底を図って省力化をする、私は評価すべき視点だろうと存じます。  そしてその中で、防衛力の運用に必要となる自衛官の定数でございますが、今人的資源の問題、第三番目に触れられましたけれども、これまで陸上自衛官を除きましてほぼ毎年増員が提案されてきたわけであります。しかし、昨今労働需給の環境が逼迫しておりますし、若年層の価値観の多様化等から良質隊員の確保になかなか困難な状況があるということ、それからまた、かなり先を見越しましても募集対象人口がかなり減少し続けるというような構造的な問題もございます。  したがって、防衛力は他の一般行政事務とは違って、やはりある程度装備や部隊の能力を基本として考えてマンパワーを組み合わせしていくべきものだと思いますけれども、しかし、従来から行ってきている業務の省力化とか合理化等による人員の削減努力をさらに進められまして、何とか現在の定数の水準の中でやりくりして今後中期防の中ではやっていった方が合理的ではないか、そして今も防衛庁長官の言われたような質の高い防衛力を目指すということが必要ではないかと思うのですが、いかがですか。
  28. 石川要三

    石川国務大臣 防衛庁としては、従来から装備の就役等に伴う要員を確保するために必要とする自衛官の定数増につきましては、業務の省力化、合理化等による人員の削減に努めてまいってきたわけでございます。艦艇、航空機の就役、除籍に当たっては、厳格なスクラップ・アンド・ビルドを実施した上で、必要とする最小限の要員の確保に努めてきたわけでございます。  また、御指摘のように、近年におきましては若年層の価値観等が非常に多様化されておりまして、良質隊員の確保というものは非常に難しくなってきているわけであります。こういうような観点からいたしまして、募集対象とする若年人口が逐次減少している、こういう構造的変化を見込まれることが当然でございますので、十分に配慮していきたいと思います。  いずれにしましても、御指摘の点も踏まえつつ、引き続き隊員施策の充実を図るとともに、防衛力全般にわたる効率化、合理化の一層の徹底を図っていきたい、かように考えております。
  29. 宮下創平

    宮下委員 さて、次期防の関係する最後の質問として、いわゆるバードンシェアリングの問題につきまして、これは外務大臣長官にお伺いをしたいと思います。  次期防の策定において検討されるべき問題として、私は、いわばバードンシェアリング、いわゆる責任分担といいますか、経費の負担を含めた責任分担ということだと思います。コストシェアリングとも言われておりますけれども、私は、広い意味でやはりバードンシェアリングだと思いますけれども、このバードンシェアリングの問題がございます。  我が国の安全保障にとって不可欠である日米安保体制の効率的運用を確保していくという視点から、従来から在日米軍の駐留経費の負担については十分努力我が国としてもやってまいりました。また、駐留軍労務費につきまして特別地位協定をつくりまして、その充実に努めておることも私は評価されるところであると思っております。  しかしながら、近年米国は財政的な制約から国防予算の削減が不可避という状況にございますし、一九九一会計年度政府案におきましても実質的な削減が図られる、このように承知しておるわけであります。しかし、米国の果たす役割、これは先ほど来申し上げており、また答弁をいただいておりますように、平和と安定の維持のための前方展開戦略を維持してアジア・太平洋地域にも兵力を配備しておりまして、アジア・太平洋地域に展開された米軍のもたらすこの地域への平和と安定の貢献、これは米国以外の国によってはもたらすことはできないわけでございまして、我が国の発展にとっても必要不可欠なものであることは申し上げるまでもございません。経済発展ができたのも安保体制のおかげだとも言われておるわけですね。このような観点から、我が国が、従業員の雇用の安定というような国内的な理由だけではなくて、まさに同盟国としての責任を全うする、こういうためにできるだけの努力を私はすべきだと思っております。  具体的な支援のあり方としては、我が国は、先ほど総理も言われましたように憲法上の制約もございまして、我が国以外の地域での軍事的役割を果たすことはもちろん不可能であります。しかし、米国の財政事情等を考慮すれば、今まで以上に財政面等で米国を支援し、アジア・太平洋地域の平和と安定の維持に貢献するという大きな目的のために対処することが適切ではないかと私は考えます。これは大変難しい、困難な課題だと思います。野党の諸君の方でもこの質問がございまして、経費負担はまかりならぬというような見解がございますけれども、現在政府において次期防の検討が進められていることでもございますから、このバードンシェァリングの問題は積極的にひとつ御検討いただきまして、みずから我が国が積極的にこれを果たしていくんだという姿勢を次期防の中においても鮮明にいたしまして、米国へアピールすべきではないかと思います。その点について外務大臣の御見解を承りたいと存じます。
  30. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘のように、日本は海洋に囲まれた国家でございます。この我々の国は資源の乏しい国でございますから、絶えず海外から膨大な原料の輸入をしなければならない民族的な宿命を持っております。そういう中で、完成品を輸出していくという貿易立国をしなければこの国は生きていけない国家でございますから、こういう観点から考えますと、アジア・太平洋地域の平和と安定があって初めて輸出入が可能になってくる。こういう観点からとらえますと、我々の国家の国民が引き続き繁栄をしていくという基本的な条件として、平和をどうして維持していくか、それには現行の日米安保体制というものを堅持していくことが基本的な日本の条件ではないかと考えております。  将来の軍備軍縮が進んで、すべて軍備が廃棄されるという時代になれば当然日本外交政策も変わってまいりますけれども、現状ではそういうことはまだ考えられない時点でございますので、私どもとしては、駐留軍経費につきましては今日まで自主的に努力を重ねてまいりましたし、今後とも自主的に努力を続けてまいる、こういう考えでございます。
  31. 宮下創平

    宮下委員 外交防衛問題の最後に、私は安全保障特別委員会の常任委員会化の問題についてお伺いいたします。  自衛隊は、我が国の平和と独立を守って国の安全を確保していくという国家存立の基本にかかわる重大な任務を担っているわけでございますが、これにはやはり防衛に関する国民の理解と積極的な支援、協力が不可欠でございます。そして、このためには、国民の代表であり国権の最高機関である国会において、我が国の安全保障、防衛政策について活発に議論し、理解を深めていくということがぜひ必要であろうかと思います。  かかる観点からすれば、国会における防衛問題を論議する場について、振り返ってみますと、自衛隊が発足しました二十九年から二十五年以上もの長期間にわたって、国会内において防衛問題を専門に議論する委員会はございませんでした。この間、専ら内閣委員会等で法案の処理等が行われてきたことは御案内のとおりでございます。五十五年の四月に安全保障特別委員会が設置されましたけれども、そして防衛問題に関して活発な、安全保障問題に対して活発な審議が行われるようになったことは極めて好ましいことでございますけれども、開催回数も限られておりますし、また、その国会の都度設置するというようなこと、また、法案審議が行われていないという限界がございます。私は、先ほど申しましたように昨今の国際情勢の大きな変化等を考えた場合には、現在、安全保障あるいは防衛政策について総合的かつ専門的に全体として審議する場が以前にも増して求められているのではないかと考えているものでございます。  そこで、従来から国会でも何度か取り上げられておりますが、今こそ私は、安全保障特別委員会を常任委員会に格上げして、かかる要請にこたえなければならないと考えております。シビリアンコントロールの意味からもぜひ必要なものではないかと思いますが、本件は、もとより国会内の問題でございます。安全保障特別委員会を常任委員会に昇格させる問題について、これは国会内の問題ではございますが、総理の御見解を承りたいと存じます。
  32. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 きょうまでもこの問題はしばしば議論されてきた問題でございますし、また、今日の立場に立ってみますと、国際情勢も大きく変化して、新しい世界の枠組みづくりの中に日本はどのような形で参加をしていくのか、貢献していくのかというテーマとともに、アジア・太平洋地域においてどのようにして平和と繁栄を定着させるか、我が国自身の安全保障をどうするか、いろいろ新しい角度の議論等も、こうしてただいまも御議論させていただいておるように重要なテーマであるということは私も率直にそのとおりだと思います。また、文民統制という面からいっても、国会における御議論は極めて大切なものであると受けとめさせていただいております。どうぞ国会におきまして、各党間のお話し合いによって、このことをどう取り扱っていくかということを建設的に御議論賜るように私は期待をさせていただきます。
  33. 宮下創平

    宮下委員 最後に、時間がございませんが、実は、構造協議と公共投資の問題について一問だけちょっと申し上げておきたいのですが、私は、総括質問で時間の関係上質問できなかった一点だけ質問を申し上げたいと思います。  国会では、日米構造協議の中で大店法とか独禁法の問題、これが主体に取り上げられております。そして、公共投資の問題につきましては、拡大は結構なことであるということで、そういう視点から余り取り上げられていないように思うわけでございますが、今後の財政運営との関係で私は多少気がかりな点がございますので、大蔵大臣に最後に一つだけ確認をしておきたい。  つまり、ポイントとしては、高齢化社会到来前に社会資本を整備拡充しておく必要性、これは私もぜひとも必要だと思います。豊かさを実感できる十分な社会資本が乏しいということが言われておりますね。したがって、高齢化の到来する前、つまり高齢化になりますと貯蓄率が下がって投資原資が少なくなりますから、今やはり社会資本の整備を図ることは米国からの指摘をまつまでもございません。  しかしながら、一方、社会資本の整備の要請と財政改革推進の要請との調和をどうするかという問題がございます。先ほど来、前回も大蔵大臣が、赤字国債から脱却したとはいえ財政事情は極めて厳しいのだとか、いろいろ財政改革を引き続き推進していくのだという決意のほどを述べられておりますが、公共投資を急激に拡大をすれば、現在の経済情勢のもとではインフレを招くなど、そういう警戒を要する事態を招来することも明らかでございます。夏の最終報告に向けまして、新聞等では、三百兆円の後半がいいとかあるいは四百兆円前後とかというような規模の公共投資の十カ年計画が検討されているのだというような報道もございますけれども、現在、年間の公共投資規模は大体三十兆円程度だと思いますので、これでいきますとかなり大きなものになりまして、こうしますと労働需給の問題やインフレ、国民生活に重大な影響を与えると思います。最終報告へ向けての公共投資十カ年計画の策定に際しても、どうか、このような事情がありますので、将来の財政運営の機動性、弾力性を制約することのないような留意が必要ではないかと思いますので、この点を大蔵大臣に質問して、質問を終わらしていただきます。
  34. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 委員の御指摘の点は、私ども、まさにその憂いを一にいたします。ですから、中間報告におきましても、今後十年間の新しい総合的な公共投資計画を策定する、そしてその支出総額を最終報告で明らかにするということと同時に、具体的な各年度の進め方については、日本における公共投資というものが我が国経済、景気対策に大きな役割を果たしていることにかんがみ、インフレとか景気過熱を招かないように留意をしながら、各時点での経済、財政状態を踏まえて機動的、弾力的に対応していく方針で臨むと明記をいたしました。まさに委員が御指摘になりますような懸念は対し、そうした事態を招かないために私どもとしては努力をするつもりであります。
  35. 宮下創平

    宮下委員 以上で終わります。
  36. 越智伊平

    越智委員長 この際、長谷川峻君、近藤鉄雄君から関連質疑の申し出があります。宮下君の持ち時間の範囲内でこれを許します。長谷川峻君。
  37. 長谷川峻

    長谷川委員 私は、この予算委員会に出席しておりまして、いろんな方々の議論を聞いております。いずれも国民生活は大事な問題についてお話しであります。しかし、その中にも、やはり外交、国防の問題は最も大事な一つではなかろうかという感じを持ちまして、改めてここに総理大臣に日韓問題について御質問申し上げます。  御承知のとおり、日韓の国交正常化は一九六五年ようやくできました。しかしこれは、その前に日米安保条約、いわゆる安保騒ぎがありました。この日韓の国交正常化の場合も、与野党対決の中に議決されたもので、私は、この二つの条約はいずれも当時の政府・与党の選択でした。これによって自由主義経済、自由国家群の中における日本の地位は高まった、こう思っておりますが、改めて総理に、韓国問題を政府はいかに外交の中に考えておられるか、それをお伺いしたい、こう思うのです。
  38. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 韓国は、アジアにおける日本が最も大切に両国関係を維持していかなければならない国であると私も認識をいたしますし、同時にまた、きょうまでの日本と韓国との間のいろいろな経緯につきましては、今議員御指摘になったとおりの国交回復の事情や、あるいはそれに至るまでの歴史の上の経緯等もございます。私は、そういったこともすべて踏まえて、韓国との関係を良好な、本当に信頼できるものとして、しかも、過去のことに関しては日本側が率直に反省もし、認めるべきは認め、同時に将来に向かってはともに手を携えてアジアの安定と繁栄のために協力をしていかなければならない国である、このように基本的に受けとめさせていただいております。
  39. 長谷川峻

    長谷川委員 総理のおっしゃるとおりです。私は、一番近い韓国が何か一番遠い国のように、ずっと感情が対立したような形でした。これは本当に隣国であればあるほど憂うべきことです。政府も手を尽くしたでしょうけれども、やはり国会議員の中においては、我が党ならば議員連盟あるいは協力委員会、これには歴代総理大臣を経験した人あるいは議長がその責任者に、大勢の同志を集めて、政府の手の届かないところをいろんなかゆいところに根回しして、今日に至りました。  私は、そういう議員外交の中にこの韓国問題というのがスムーズにいっているということを議員外交の一人としてよく思いつつ、先日実は、福田赳夫さんが議員連盟の会長をやめた後、竹下元総理が会長を引き受けました。そこで十五日から、私の方だけではなく民社、公明の有志の方も御一緒しまして、大統領訪問並びに各党の党首、国会、政府、要路の方々大勢とお目にかかった。そのときに異口同音に言ったことは、今度の大統領訪日に当たって、三世問題初め懸案事項の解決に真剣にやってもらいたい、総理のおっしゃるとおり、長い日韓の歴史の中には、廬大統領の話ですと暗いしみが二つもついておりました、それをいかに薄くし、忘れ、そしてこれを一つの基礎として頑張ろうというお話がありました。  そこで、事務的折衝はだんだん進んでいるように思いますから、近く、三十日ですか、中山外務大臣も訪韓されるやに聞いております。そういうことからしますというと、大統領の訪日に当たって、ぜひひとつ私は総理の勇断というものを絶対お願いしたい。竹下元総理は、盧泰愚大統領初め皆さん方が熱心にそのことを説くのを聞いておられました。しかし、何といっても外交政府の特権でございます。それを根回しし、協力し、そして両国の親善のために役に立つことならば自分も協力しようとお答えになっておりました。あの人の誠実な態度と今までの日韓に尽くしたその実績の上にみんなが信頼して、安堵の表情を浮かべているのを私は喜んで見たわけです。  どうぞその意味において、総理、本当にこれは大事なことなんじゃないでしょうか。改めて、それこそ総理の重大な政治的判断ということをお願い申し上げたい、こう思うのです。
  40. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 長谷川委員も御参加をいただき、日韓の議員連盟の方々がお話し合いをしてこられた経過の御報告もこの間承りました。  御説のように極めて大切な二国間の間柄であり、同時に盧泰愚大統領の訪日というのは、その一つの将来に向かっての大きな契機にもならなきゃならぬと思います。そのためには、今抱えております歴史の経緯に基づくいろいろの過去の問題につきましては、私どもが率直な反省の上に立って、同時に、両国ができるだけその問題について共通の理解に到達することができるように、今いろいろどのような対応をしたらいいかということを鋭意取り組んでおる最中でございますが、今の委員の御質疑の御趣旨も踏まえて対応していきたいと考えます。
  41. 長谷川峻

    長谷川委員 そこで私は、大統領訪日に当たりまして、いろんな問題がありますが、事務的折衝はどんどん進んでいるでしょう。しかしその中に、どうしてもやはり総理のおっしゃるように過去にあった不幸なことに対してきちんとしたお互いの態度、それを示すとともに、三世問題と在サハリン韓国人問題、在被爆者問題といった、過去に原因のあるものを誠意を持って処理する必要があると思うのです。指導者の一言は国を興します。その決意を持って、勇気を持って総理が堂々と当たられる。殊に盧泰愚大統領もこのたびの訪日にかけているような感じを私は思いました。それだけに、こちらの誠意というものが相手に通じ、そして将来の両国の国交のよさというものはやはり指導者同士の信頼でございます。そういうチャンスというものをしっかりとおつくりいただくことを私はお願いいたしまして、改めて一層政治決断を期待して、私の質問を終わります。よろしく。
  42. 越智伊平

    越智委員長 次に、近藤鉄雄君。
  43. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 最初に、委員長に御許可いただいて資料をお配りしたいと思うわけでありますが、これは先々週と先週の朝日ジャーナルの記事でございますので、参考に皆さんにお配りさせていただきたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
  44. 越智伊平

    越智委員長 どうぞ。
  45. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 実は、今お配りいたしました朝日ジャーナルの記事でございますけれども、これは先般もこの予算委員会でいろいろな先生、委員の皆さんからお触れになったのでありますけれども、先日の朝日新聞で何ページか飾った記事のこれが全文でございます。聞きますと四回連載されるようでありまして、今二回分しかありませんが、私はこれを読みまして改めて思いました。  当委員会における議論でも、どうも日米関係は不平等ではないか、不公平じゃないか、このようなお話がございましたが、私はこれを読んでみて改めてしみじみと日米関係というものは不平等だ、不公平だと思うのでありますが、それはこんなにもアメリカ側の当局者が日本経済について細かく分析をして、そして大変丁寧にいろいろなことを言ってくれているわけですね。言ってみれば、アメリカ政府というシンクタンクを日本政府はただで活用していろいろなことを言ってもらっているというわけでありますが、逆に一体日本政府は、このように丁寧にアメリカ経済が当面している疾患について、きめ細かい分析をしてアドバイスをしたのかどうか。しないとすると、どうもこれは日本は常にテイク・テイクであって、そしてギブがない。まさに貿易収支じゃありませんが、知的収支においては大変不均衡な状況ではないかと思うわけでありますけれども、衝に当たった外務省、御説明をしていただきたいと思います。
  46. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 今先生御指摘のとおり、この日米構造協議はそれぞれが問題点を指摘し合い、それに基づいてみずからが措置をとるという性格のものでございますが、この協議におきまして、先生御指摘のとおり、アメリカ側の方からいろいろなアイデアの指摘があったことは事実でございます。私どもといたしましても、アメリカ経済の抱えていろいろいろな問題点につき、財政赤字の問題、貯蓄率が少ないこと、それからアメリカの経済の競争力が必ずしも強くないこと、そういうことをいろいろ私どもなりに勉強をいたしまして、そういうことを詳しく指摘いたしました。  アメリカは、この中間報告におきまして日本側が指摘した問題点、提示したアイデア等を十分に参考にいたしまして、財政赤字の削減、貯蓄率の向上、設備投資の促進、それから教育制度の改革等の問題について、みずからとる措置について書いているわけでございます。
  47. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 こういうまとまった形でアメリカ政府から日本政府は受け取っていない、日本政府もまとまった形ではアメリカ政府に出していない、こういうようなことのようでございますが、これは私読んでみて思うわけでありますが、いろいろいいことを書いているのですね。  ですから、国会においても政府は何を議論しておるんだということを与野党の議員から盛んに質問をいたしましたけれども、今交渉中でございますから余り申し上げられない、こういうようなことであったわけでありますけれども、とにかくこういう理論的なこと、そして今ちょっとアメリカを褒めましたけれども、考えてみますと日本国だっていわゆる前川レポートを数年前に出しまして、これは前川レポートは中曽根総理の私的な諮問委員会のアイデアじゃないかということで、これをもっとオーソライズしようというので経済審議会で議論を重ねまして、立派な経済審議会建議「構造調整の指針」が出ております。そういうことに基づいて「経済構造調整推進要綱」というのが出ているわけでありますので、何もこれは交渉じゃない、何じゃない、いろいろなことを言われますけれども、こういうものはもっと大っぴらにどんどん、国民も私ども政治家も信用していただいて、政府内部で大変に胸を痛めて毎晩徹夜をして、こんなことを言ったらどなたかに怒られるのじゃないかとかいろいろなことを言いながらやっているような感じがいたしますので、もっと天下に議論したらいろいろないい知恵が出るんじゃな  何もこれは勝った負けたの議論では全くないのであって、どっちがいいかの議論ですし、それからよく言われますが、日本だけがアメリカの言うことを聞く、アメリカは日本の言うことを聞かない、これは日本はどうもアメリカの植民地かというような議論をおっしゃる方も野党の一部にいらっしゃるようでありますが、そんなことはないので、アメリカも日本もそれぞれ経済欠陥があるわけです。欠点があるわけだから、おまえはここを直せ、向こうはこっちを直せ、こう言い合っているわけですので、おまえが悪いことを直さないからおまえが悪いことを直すまではこっちは悪いことを直さないというのではなく、やはり悪いことは、だれが言ったか言わないかという議論じゃなしにこれは早く直した方が得だと思うのですよ。早く直した方が得なんであって、やはりひとつ損得で議論するべきだと私はまず思うわけであります。  最近、国際経済は激動しておりますし、まさにECが統合して大きなマーケットにこれから発展してくる、大変だな。このECの大きなマーケットに今度は東西ドイツの統一が来て、そしてまさに巨大なドイツ経済が誕生するというときですし、そしてこれに東ヨーロッパが入ってくるわけです。そういう中で私は改めて思うわけでありますが、日本は孤立化をしてはいけない、そうするとやはり日本の周辺にもいい国がたくさんありますが、経済力やいろいろなことを考えてみて、やはりきちっと話し合いをして調整する相手はアメリカではないか。私もさきの委員会でも、世界の国際関係の中で日米ほど大事な関係はない、前のマンスフィールド大使のお話を引用いたしましたが。  私は、だから今度のSII、構造調整はまさにチャンスだと思うのです。やはり日本経済社会構造はもとより、いろいろな問題を国際的にいわば調整をしていって、そして世界的に受け入れられるようなものに変えていく。しかし、日本の従来の制度がしからばみんな間違いかと言ったら、そんなことはないので、日本だっていいのです。  私はよく言うんだけれども、これは和食と洋食の違いだと思うのですよ。私たちはアメリカに行くときに、ハンバーガーも余り好きじゃないしホットドッグも好きじゃないしステーキも好きじゃないけれども、それしかありませんからそれは食べるわけですね。これは国際化だと言って一生懸命食べているわけです。だけれども、今度は日本にアメリカ人が来たときは、すしやそばでやりてくれよ、こう言いたいんだけれども、こっちはこれを食っているんだから。だけれども、向こうはハンバーガーやステーキやホットドッグじゃないと食えない、こう言うから、これはおかしいなと思うけれども、しかし、すしやそばを食べている人よりはハンバーガーやホットドッグやステーキを食べている人が多いんだから、国内でもステーキをつくったりハンバーガーをつくったりホットドッグをつくったりしてつき合おうか、その方がアメリカ人が来たりいろいろな人が来るときに得だな、どっちがマジョリティーかということがあるのです。そうすると、残念ながら日本食を食べている人は少数派だし洋食は多数派だから洋食になじもう。だけれども、やはり日本食もいいところがあるのですね。だから一回振れますが、ビフテキ、ステーキに振れているけれども、いずれ戻ってくる。現にそうでしょう、今アメリカではすしバーが盛んだと言っておるわけでありますから、一回振れるわけでありますが、一回向こうに行ってみて、そしてまた日本のいいところに戻ってくるかなという、これが日本の社会の国際化のプロセスだ、こういうふうに割り切って考えているわけであります。  前置きはそれくらいにいたしますが、そこで、大店法でございますが、私は先週の土曜日、日曜日、その前の週の日曜日も選挙区に帰りました。私の郷里の南陽市とか米沢市とか、それから山形市に参りまして、そこの商店会の皆さんにお集まりいただきまして申し上げたのです。南陽市というところで申し上げましたが、私の生まれ故郷でございますが、本日は皆さん、日曜日のところこうしてお集まりいただきましてまことに申しわけありません、こう申し上げましたら、参加者の方が、近藤代議士、あなたは来るときに町を見てきましたか、だれかに会いましたか、日曜日はだれもこの辺の商店街に人が来ないと言うのですよ。みんな山形市に行っておる、もしくは他市の米沢市、時間のある人はもう仙台まで行っておるから、日曜日はがらんとしておるから私暇なんですとおっしゃるのですね。帰りに歩いてみたら、確かにほとんど人がいないのですね。  話は余談だけれども、その町の端っこに、ある地元のスーパーの店があるのだけれども、それが今度郊外に移ろうとしている。そうするともう住民が反対運動なんです。もしもそのスーパーの店がそこから離れちゃったらますますだれも来なくなるから、何とか郊外に行かないで、そしてぜひひとつそこに残ってくれという反対陳情をしているということを聞いて、私は改めて考えさせられたわけであります。  そこで通産大臣、我が国の地方の商店街の問題は、大店舗法で規制があるとかなんとかという、アメリカがどうだということの以前に、もっともっと深刻な状況にあると思うのでありますが、どうでしょう。日本の商店、そして地方の商店街の振興に対して一体日本政府はどれだけの政策をしてきたのか、ここで御説明していただきたいと思います。
  48. 武藤山治

    武藤国務大臣 その大店法だけでもちろん中小小売商の振興対策ということはないと思いますね。大店法というのは、いつも申し上げておりますように、消費者の保護、それから中小の小売商のいわゆる事業活動の適正な確保、それを考えながら大型店の出店を調整するというのが大店法でございます。それ以外に小売商業振興法とかあるいは商店街振興組合法とかいろいろの法律がございまして、それ以外にいわゆる振興政策というのはどちらかというとほかの法律でやっておると思います。  それを踏まえて、毎年毎年予算においても、商店街の振興については、例えば最近はコミュニティーマートだとか、いろいろアーケードあるいはきれいな舗装の道路、こんなようなものに対する補助であるとかやっておりますし、また一方、御承知のとおり、低利の金融でもってそれぞれの中小小売商独自の皆様方にもそういう政策をとっておるわけでございまして、言ってみますと完全な保護というわけにはいきませんので、やはり一生懸命御努力をいただく、自助努力をしていただく中小小売商に対しては、御指摘のとおり非常に厳しい環境でございますけれども、そういう厳しい環境の中でもひとつ何とかやっていっていただけるように、それから、先ほど申し上げました出店調整の中でも、当然都市計画法の関係とかその地元の小売商とのいわゆる共存共栄という考え方に立って出店調整はやっておるわけでございますから、私どもは総合的に、中小小売商が何とか生きていっていただけるようにということで今日までやってきたわけであります。
  49. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 私の山形県はアメリカのコロラド州と兄弟州になっておりますので、県都山形市は、コロラド州のデンバー市とまさに兄弟関係になっております。そして、山形市の商店街の幹部の人たちが交歓をやっているわけでありますけれども、デンバー市は、まさにほかのアメリカの市もそうだそうでありますが、大店舗、スーパーがどんどん郊外に出てしまって、郊外に立派な大規模ショッピングセンターができてしまって、完全に空洞化してしまっている。それを何とかしなければならないということで、デンバーパートナーシップという会社をつくって、そして新たに金を集めて、商店街をつくって呼び込んできている。問題はパーキング場がないわけですね。郊外のショッピングセンターには大きなパーキング場があってみんな行ってしまうものだから、両側に大きなパーキング場をつくって、そこに乗り入れて、商店街はシャトルバスを無料で走らせている。そうすると、車を入り口に置いていける。そしてシャトルバスでもうどこでも歩けるわけですね。デンバー十六番街だそうですが、見事に再生をしたという話を聞いてきている。その社長さん、ボルダーさんという中年のなかなか美人の経営者でありますが、来て、シンポジウムをやったのです。同じようにカリフォルニア州のサンジエゴ市にも山形市の商店街の方が行って見てきたら、これはもう完全にいっときは空洞化してしまって、まさにいっとき栄えた商店が空になってしまって、麻薬だとか売春だとかそういうことになって、従来の町は完全に空洞化だ。これをまた、みんな金集めて、金を出し合って完全に新しい商店街につくりかえた、こういうことだそうであります。このポルダー社長が、日本はすばらしい、大店舗法があるから郊外にみんなとられないのであって、そしてこうして山形市のような七日町商店街が栄えているんじゃないか、むしろアメリカは見習いたいんだ、こういうことを言っている。  私は、これは大変に大事なことであって、さっき和食と洋食のことを言いましたけれども、洋食も余りステーキ食べておるとだんだん肥満化してしまって、私も太りぎみでありますが、お菓子よりやはりそばやすしの方がいいということもあるわけですから、やはり日本の制度としてもいいところがあるのですね。  そこで、委員長、私はきょうはちょっと一言提案をしたいのだけれども予算委員会で、できれば、こういうアメリカの大店舗の現状はどうなのか、大店舗法に限らずアメリカがSIIでいろいろ言ってきていることがあるわけだけれども、それが本当にちゃんといっているのかどうか、それから、さっき言いましたけれども日本だけやってアメリカがやらないのはということについても、つべこべ言う人はないと言いましたけれども、さはさりながら、アメリカの財政当局、アメリカはいかぬよ、グラム・ラドマン法があるが、本当にちゃんと財政を正すようにやっているのか、そういうことについても我々は日本国の予算委員会のメンバーとしてアメリカの担当議員と話し合って、お互いにきちんとしていくということをぜひやりたいので、これは委員長がおっしゃる前に申し上げておきますが、理事会で諮っていただいて、我々アメリカのいろいろな問題、このSIIに関係することについてひとつ与野党で真剣に調査していくということをぜひやらせていただきたいと思うわけであります。  そのボルダーさんが言っておったそうでありますが、日本は大店法もあってすばらしい、それから中小小売商業振興法、また商店街振興法という法律は、これはすばらしい法律だ、こうアメリカの方が言っているのですね。だから、おれたちは、アメリカのこっちは大店舗法は非常にわかるんだけれどもワシントンが知らない、こう言っておった、こういうことでありますので、いずれにいたしましても、せっかくのいい法律があるんだから、この法律がもっともっと有効に機能していただくように、通産大臣、お願いをいたしたいし、有効にしていれば、大店法改廃かどうかということでこんなに全国の商店街の皆さんが御心配しなかったのじゃないか、やはり多少中小企業庁か通産省の施策がいまいちなところがあるから全国の商店街の皆さんは非常な御心配をしていらっしゃるということもあるのじゃないかとあえて思いますので、ひとつお考えをいただきたいと思います。  時間がないからしゃべりまくって恐縮でございますが、私は都市とは何だと思うのです。都市とは何だ、町とは何だ。これは生活の場であり、買い物の場ですよ。そうでしょう。町の真ん中で生産しようと考える人はないのですよ。町はショッピングですよ。だから生活の場であり、ショッピングであり、そして文化、教養の場であり、金融だとか政府とか行政、そういうことですね。だから私はもっともっと、きょうは建設大臣がお見えになっていないので残念でございますが、自治大臣、国土庁長官がお見えでございますので、これは両大臣、及び建設省からも恐らくどなたか来ていると思いますので要望しておきますが、単にこれは通産省だけに任せないで、商店街は通産省だ、あいつがやっているんだというようなことじゃなしに、地域ぐるみの新しい都市をどうするんだ。  これまで日本は物をつくることで一生懸命だったから、物をつくってつくってつくりまくってきたのです。だけれども、考えてみると日本ぐらい、そうは言ったって買い物の楽しいところはありませんよ。我々海外に行って余り楽しい買い物をしたことがない。だから、やはり楽しい買い物がせっかく日本にあるんだから、これを壊さないでそれを大事にしながら、しかし新しい町づくりの中にこれらの商店街を、まさに関係各省共同で考えられる。商店街の地下にパーキング場をつくる、そうするとお金も要るから、建設省の都市計画の問題であり、市町村の財政の問題でもあるでしょうし、いろいろな問題をひとつ今後総合的はお考えいただきたいということを申し上げるのでありますけれども、代表して自治大臣一言、今後自治省としても県を指導し、市町村を指導して、新しい商店街の開発に努力をしていただくということをひとつお約束、お約束というかお話をしていただきたいのであります。
  50. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 地方自治団体にとっては、地元経済の振興といったら、はっきり言って魅力のあるその町を代表するような商店街形成というものは、まさに自治体、地元経済の死活問題ですね。ですから、今まででもそれぞれの市町村長は、これらの商店街活性化のためにいろいろな知恵を出して努力されていることは当然です。そして自治省も、これらの問題に関しては非常に関心を持って今日までやってまいっております。現に、ふるさと関連事業というと、また一億円のそういった形で考えられる向きもありますけれども、そうではありません、そればかりではありません。商店街、町づくりに関しては、いろいろな形で、起債面も含め、元利償還面も含め、その自治体、自治体の力において今まで大変なお手伝いをさせていただいておるわけです。ですから、知恵を出していただければうんと手伝う、これが地域経済活性化のもとだという観念に立って今後も続けてまいります。  ですから、そういった点において、アメリカのショッピングの大店舗の魅力、しかし、それも日本人は今ようやくなれてきたところですから、そういうのに魅力もあるでしょう。ですけれども日本のショッピングの魅力は、何といったってあの個々の商売屋さんが本当に品質、サービス、価格、きめの細かい、ああいう大味なサービスじゃなくて、そういう中で今日の日本のショッピングの魅力はまさにそういった商店街形成の中にあって、これを充実させていくことで、もう本当の商人道に徹した場合には大店舗恐るるに足らずという形で頑張ってほしいと私たちは願っております。  ですけれども、そういった時代趨勢でもあり、消費者の立場に立てば、バラエティーに富んだ選択がやはり消費者の立場からも考えなければいかぬ大事なことですから、そういった点を両面をよく考えてやっていってほしい、協調してやっていってほしいというのが私の願いでもございます。
  51. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 私は、商業活動調整協議会ですか、その方々とお話をしてまいったわけでありますが、大変あれはいい制度ですね。いい制度というのは、ああいう大店が進出するということをきっかけに、例えば山形市でもいいし高畠の町でもいいし、どこでもいいですよ、町の都市づくり、商店はどうだということについてみんなが考える。だから、大店の代表もおれば地元商店の魚屋さんもいれば主婦もいらっしゃるでしょう。そういう方々がスーパーが来るということで慌てて集まって、真剣に議論したわけですよ。それは非常にレベルの高い議論をしているので、こういう商調協なんという制度はすばらしい制度だと思うのです。  ただ、これはまさに大きな都市づくりの中で地方の商店をどうするんだ、商店街をどうするんだということだから、どうも大店法という法律もくどくどした法律で、いかにも長ったらしい法律、そこに書いておったけれどもなかなか覚えられないような長い法律で、大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律、こういう法律であって、これから新しい角度で日本の商業、そして商店、そして商店街を考えた場合に、どうでしょう。よく言いますね、新しい酒は新しい皮袋だ。私はやっていること自身が悪いと言ったのじゃない、むしろいい面がたくさんあると思う。私は今回改めて再発見したのだけれども、いかにも大店舗法、規制で、法律を読んでみたって、だめだだめだみたいなのが出ている法律だから、もっと前向きに発想を転換して、どうしたら地方の商店を振興し、商店街をつくっていくんだ、そして関係各省協議をやるんだというものをつくるために新しい法律をつくったっていいのじゃないか。新しい酒は新しい皮袋でございますので、ひとつ通産大臣どうでしょう。
  52. 武藤山治

    武藤国務大臣 大変大店法を評価していただきましてありがとうございます。大変評価の高い大店法でございますから、これはこれとしておいて、また別に新しい法律をと、こういう御趣旨かと思うのでございますが、先ほど申し上げたように、現在までは中小小売商については振興法もございますし、また、その小売商で形成しておる商店街振興組合に対しても組合の振興法がございますし、それから、大変都市計画等のお話もございましたけれども、通産省も、先ほどちょっと触れましたけれども、コミュニティーマート構想であるとか、あるいは新しいものではハイマート構想であるとか、あるいはことしから始めました街づくり会社構想であるとか、いろいろ今地域の振興と小売屋さんの振興をかみ合わせたものも考えており、しかもその地域の住民の皆さんにもプラスになるように、こんなようなことを考えて、いろいろ新しい政策をやってきておるわけでございますが、せっかくの新しい法律を将来つくったらどうか、何か新しい観点に立って、それはこれから例えばこの大店法を思い切って運用改善をやってまいりますし、来年は何とか法律改正もお願いしたいと思っておりまして、それによって地域社会の小売業の皆様方にいろいろと影響が出てくるおそれもございますので、そういうときにはまた思い切った財政措置も財政当局にお願いをしてやらなきゃいけないんじゃないかと思っております。場合によると、そういうときには法律が必要になるかということは思いますけれども、今現在ではまだとにかくこれからの話でございますから、せっかくのお話でございますので、貴重な御意見として参考にさしていただきたいと思います。
  53. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 海部内閣発足以来、消費者を大事にする内閣だということで総理が先頭に立ってこれまで頑張ってきたわけでありますが、まさに消費税の問題も、やはりメーカー、スーパーも大事だけれども末端の消費者が大事だよ、やはり国民が大事なんだということの反省に立ってのいろいろなことをお考えいただいた。それから、まさに今度の大店法も、改めて消費者重視の政策の一環でありますので、ぜひひとつ、消費者が大事なんだ、日本は物をつくってばかりいたけれども、末端の消費者にちゃんと買っていただけるかどうかの配慮が、ないとは言いません、結構いいのだけれども、さらに一段の御配慮をしていただきたい。  そういう観点から、くどいようでございますが、一法律の存廃に私は何もこだわらなくていいので、なかなか部分的な改正というのはあれですから、発想を変えちゃって、新しい皮袋をつくるということもぜひひとつ通産大臣お考えいただきたいということを申し上げておきます。  それから次に移りますが、公共投資でございますけれども、今宮下議員からも質問がございまして、大蔵大臣の御答弁があったわけであります。大変によくわかるお話でございますが、ただいずれにいたしましても、相当大規模な公共投資をこれからやるわけであります。  そこでちょっと私気になりますのは、例えば財政審議会の最近の答申にも、建設国債といえども予算額の一〇%に抑えるということだったですかね。いや、五%です。一〇%はアメリカが言ってきたことだった。五%という話だけれども、どうでしょうね、これだけのまさに経済上昇をやっておりますからね。建設国債に向ける金でも五%。だからそれ以上、建設投資はいいのだけれども、国債は全体の五%という枠組みの中で、これからの非常な激動の中に効果的な財政運営ができるのか。むしろ私は、公共事業も政府の支出もみんな大事な支出だから、ある程度そう簡単に変動できない、着実にやっておいて、そしてむしろ景気調整というものを、まさに国庫の赤字、バランスでやる。だから、実体的な支出はコンスタントにある程度成長を伸ばしていきながら、そして歳入の増減が当然景気の変動でぶれるわけだから、それは国債発行でいくということで、余り全体の五%だとか何かという議論にこだわらなくてもいいのじゃないかなという気がいたしますが、大蔵大臣、どうでしょうか。
  54. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは大変失礼でありますけれども、大蔵省出身の委員に対して多少言葉を返させていただきます。  今建設公債につきまして、委員は弾力的な見解を述べられました。しかし私は、建設公債といえども、後代に負担が残るという意味では、その発行はできるだけ今後減らしていく努力をすべきものだと考えております。  なぜなら、既に我が国は、平成二年度末には百六十四兆に上る国債の残高を持つわけであります。そして、一般会計予算の中で、歳出の中の二割に及ぶ利払い費が今も計上されております。この累増にいかに歯どめをかけるかは我々は真剣に考えなければなりません。そして、その意味におきましては、財政再建という道はなお遠いものがあることは、委員よく御承知のとおりであります。  同時に、二十一世紀に入り、高齢化がいよいよ進展していけば、非常に社会資本整備に投入できる原資が不足してくるであろうことも想像のできることであります。そして私どもは、国民生活の質の向上という視点から、今後の十年間に最大限の努力をし、それぞれの分野における社会資本の充実に努めてまいりますけれども、それは、建設公債の発行を前提とするつもりは私はありません。あくまでも、国民から税の形でお預かりをしたお金を投入しながら、非常に厳しい努力を続けながら、その目標に向かって進むのが当然のことであると私は考えております。
  55. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)委員 時間がありませんのでもう大臣と議論はいたしませんが、ただ私は、百六十四兆の国債残高がある、これは確かに考えてみると、累積債務国の借金残高が一兆ドルですから、そうすると百五、六十円で計算すればまさに百六十兆ですね。だから日本の国債残高は累積債務国の借金の残高と同じだ。わかりますよ、わかるけれども、大臣の前だけれども、私は余りいい比喩じゃないと思うのですね。累積債務国の借金の残高と日本のこのまさに大蔵大臣を中心に立派な、世界に冠たる、きちっとした財政経済運営をしている日本経済、その政府の持っている借金が、それは確かに数字は同じだけれども、同じだという言い方は、たしかこれは大蔵省が知恵をつけたものだけれども、それは私は正しい比喩だとは思わないのですね。だから、そんなことを言うから日本経済がおかしくなっちゃって、円か安くなっちゃうようなこともあるかもしれませんので、そこが一点。  第二点として、確かに私は借金は嫌なんです。だけれども問題は、経済というのは一種の選択ですからね。あのときに日本は、まさにドルショック以来日本は積極的な、まさに建設国債、場合によっては赤字国債も発行して景気をよくしてきたから今の経済国日本があるわけで、あのときに借金はだめだ、だめだ、だめだと言っていたらどうでしょうね。日本経済はどうなっているでしょう。だから、結果のただ集まった百六十四兆、今度は大蔵省に物を言っているのだが、百六十四兆というその数字だけにこだわって、これ以上何もできません、何もできないとは言っていないけれども、そういうことでなしに、もうちょっと柔軟な経済運営、財政運営をしていかなければ、私は本当に、二十一世紀に向かって社会基盤を総合整備しよう、二十一世紀に向かって新しい長寿社会をつくるのだと総理最初におっしゃった、それができるのかどうかと思いますし、また単に日本だけが健全財政、健全化するということでなしに、まさにこれから日本の貯蓄を国際的にどういうふうに還元していくか、世界的な新しい経済の枠組み、そして世界的な必要な社会公共投資をしなければならないときには、私は例えば財投債を国債マーケットで発行して、それをもって資金を調達する、もっともっと柔軟な大胆なやりようがあっていいというふうに思います。  もう時間がないから最後に一つだけ、国土庁長官もいらっしゃるので……(発言する者あり)経企庁長官もいらっしゃいますが、そういえば経企庁長官には、「世界とともに生きる日本」というあれがありますが、これはひとつ新しい角度からぜひ考えて、成長率も今のままでいいのかなという感じがいたしますので、長期計画についてもお考え直しいただきたいということであります。  一言最後に土地問題について、我々は頑張っていますが、やはり一番大事な人たちが東京に居座っちゃだめだと思うのですね。私は、国会がこれから地方に移るべきだ。新幹線で一時間以内のところを探して、一番安く提供してくれるところに国会を持っていって、そして新しい静かな国会をやるということにぜひ、国会だけを、全部持っていかない、国会だけを地方に持っていくことを、ひとつ国会始まって百年でありますので、ぜひこれは政府よりも我々が考えることだけれども考えたい、考えさせていただきたいということを最後に申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
  56. 越智伊平

    越智委員長 これにて宮下君、長谷川君、近藤君の質疑は終了いたしました。  次に、川崎寛治君。
  57. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 先般の総括質問でも、国際情勢の問題、それから日本のこれからの安全保障、さらには軍縮の問題等について総理を初め質問をいたしてまいりました。  先般も私は、今の世界情勢の大きな変化というものは、百年に一度とも言えるような大きな変化の時代だということを申し上げました。その見方についてはいろいろあると思います。議論も分かれるところでもあらうと思いますが、しかしそういう立場で今日の情勢を考えますときに、経済大国になりました日本世界の大きな変化の中でどういう役割を果たすべきかということは大変重要な課題でございますし、これはまさに国権の最高機関であります国会で論戦をし、今後の日本の進むべき方向というものを国民の代表がそれぞれ議論を闘わせるということでなければならないと私は思います。そういう立場からいたしますと、防衛問題になりますと防衛庁の役人が出てきていろんな解釈をするということでは済まない、そういう時期である。これは後ほど最後に安全保障会議のあり方等についてもお尋ねをいたしますが、そういう立場でひとつ総理や関係大臣は答弁を行っていただきたいということを冒頭お願いしたいと思います。  そこで、先ほども宮下委員の御質問にもございました、つまりヨーロッパ変化アジア変化は違うのだ。そこは、国際情勢が今日ヨーロッパは変わってアジアは変わらぬというふうに分けられるような時期じゃないわけなんです。そこで、NATOとワルシャワ体制の問題について宮下さんからも御質問がございましたが、私は少しNATOとワルシャワ体制の問題を詰めてみたい、こう思います。そのことは、アメリカの世界戦略、ソビエトの世界戦略というものを考えます場合のやはり大きなポイントになるわけです。つまりソ連にとってはヨーロッパは心臓部です。また、アメリカにとっても三千億ドルの膨大な軍事予算のうちの千五百億ドルはヨーロッパに注がれているわけでございますから、それとアジアとが別だというふうなことはないわけですので、それらの点を詰めてみたいと思います。  北大西洋条約機構が結成をされましたのは一九四九年で、十二カ国、それにギリシャ、トルコが後に入り、一九五五年に西ドイツがNATOに加盟をしたわけです。ワルシャワ条約体制は、その西ドイツがNATOに入った、そこでワルシャワ条約体制というのを急いでつくってくるわけでございますが、ソ連東欧七カ国ということで結成をされました。まさにそれがヨーロッパで対峙をしてきたわけです。まさに対決をしてきたわけです。それは、東西合わせますと四百五十万人余の大軍、そして重装備、それがにらみ合った。それに加えまして、双方が約四百万人の予備兵力、さらには両方で一万発と推定されます戦術核兵器が配備をされてヨーロッパに展開をしてきたわけです。しかし、その軍事対決の構図は、昨年一九八九年、まさにベルリンの壁の崩壊が象徴をいたしますように、大波に洗われます砂の城のように、あっけなく崩れ去ったということが言えると思います。  しかし今日、東ヨーロッパの諸国がワルシャワ条約体制から脱退しておるとか脱退をしようとかというのは今はございません。しかも、ヨーロッパ各国というのは御承知のようにそれぞれ自由化が進んでおりまして、民族主義というものが今高らかにうたい上げられておるわけでありまして、しかも今ヨーロッパ各国、ソビエトも含めまして、これはまさに経済再建というところに全力を集中をしておるというのが今日の状態でございます。そういたしますと、ソビエトが東ヨーロッパを配下に押さえたということは、つまりナポレオンのフランスやヒトラーのドイツが攻めてくるというときには東ヨーロッパを経由して入ってくるわけですね。だからポーランドを押さえる、そういう回廊というものを押さえてきたわけでございますけれども、つまりそういう自己の管理下に置いておった体制というものが壊れたわけです。そうしますと、まさにワルシャワ体制というのは今日においては、コメコンの方も今崩壊しつつありますが、軍事面では完全に形骸化をし、名存実亡の姿となっておると言えると思います。  そこで総理、今のワルシャワ条約体制のそういう実態というものを、私は今名存実亡の状況になったということを申し上げましたが、総理はどう思われますか。
  58. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 るるお述べになりましたヨーロッパにおける問題、これは私も何回も委員にもお答えしましたが、東西、力の対決の冷戦状態の発想を乗り越えて大きな歴史的な流れが起こっている、そこまでは全く認識同じでございます。  ただ、NATOにしてもワルシャワ条約機構にしても、それは軍事的な対立という面から、お互いにヨーロッパの平和と安定をどうするかという政治的な面の重要性に軸足を移しながらも、しかし現実においてはまだそれぞれの役割を果たしておる、私はこう思って見ております。現にドイツの統一の問題をめぐっても、その議論の中に、統一ドイツはNATOに入るべきなのかどうなのかとか、いろんな議論が行われておるさなかですから、欧州における変化も定着して手のひらを返したように終わってしまったというのじゃなくて、私はこの間も進行形現在という言葉を使わせてもらいましたが、今大きな移り変わりのさなかにある、このように流動的な面が非常に多いというように見ております。  同時に、それらのことは、ヨーロッパにおける変化ヨーロッパのみにとどまらせてはいけないわけで、アジア・太平洋にも、そして世界にも、どのような形でこの冷戦状態の発想を乗り越える地球的規模の平和と安定をつくり出していくことができるだろうか、それを考えていかなければならぬときだと受けとめております。     〔委員長退席、佐藤(信)委員長代理着席〕
  59. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 完全に崩壊し去ったということではなくて現に進行形である、そのことはまさに私も、今動いているわけですから。しかし、これまでのワルシャワ条約体制、ソビエトが支配をし、管理をし、そして動かしていたそういう体制は崩れた、つまりそういう機能というものは非常に薄くなってきておる、そういう事実はあなたもお認めになると思うのですね。  そうしますと、一方のNATOはどうか。私は、NATOも今非常に大きな変化を遂げつつある。それはつまりNATOそもそもが、NATOというのを西独が入ってつくりましたのは先ほど言いましたように一九五五年でございますが、それはソ連東欧というものと一線を引く、そして西側を固めるということであったわけです。そしてそれは東西ドイツの分裂ということが前提になっておったわけです。そうでしょう。その東西ドイツの分裂が、今もあなたが言われたように統一に向かってきたわけです。まだ統一はしておりませんが、東側の政権は非親ソ政権になったわけです。そしてこれが東西ドイツの統一を目指しているわけです。そうしますと、NATOというのが東西の、ソ連東欧西側というものを線引きをするというものであった、しかもその大きな柱が東西の分裂であった、東西の分割であった、そのことが今変わってきたわけです。  そうしますと、まさにNATOをつくった、北大西洋条約体制をつくったときの状態というのは変わっているわけです。それは変わっているのですよ。ポーランドも東ドイツもまさに非親ソ政権になったわけでございますし、東西のドイツの分裂が統一の方向に来ておるという意味においては、NATOそのものの変化があるわけです。それは、ですから、今ECなり政治統合という、そういう政治統合という方向で、これはサッチャーさんのイギリスにいたしましてもフランスにしましてもドイツにしましても、それぞれ今模索は猛烈にやっております。猛烈にやっておりますけれども、それはNATOが発足したときの状態ではなくなったわけです。そのことを一つ考えていただきますと、NATOも変わった、変わりつつある。そのことがブッシュ大統領やベーカー国務長官をして冷戦の終わり、冷戦は終わった、さらには米ソ協力の新時代だということを、INF条約からさらにマルタ会談へ、そして今度の五月末の米ソ首脳会談へ、こういうふうに今大きく動いているわけです。  そうしますと、私は総理お尋ねしたいのは、このブッシュ大統領やベーカー国務長官が言っております冷戦の終結、米ソ協力の新時代ということは、ヨーロッパアジアと分けますか、いかがですか。
  60. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 大きな網をかぶせて、そしてマルタ会談における米ソ両首脳の物言いをヨーロッパアジアと分けるかとおっしゃれば、私は分けません。分けませんけれども、各論になってくると、ヨーロッパの事態とアジアの事態とは現実に違いがあるんだということを私は申し上げさせていただいておるわけです。
  61. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 具体的にそれぞれ詰めていきますけれども、しかし、分けられないというそのことは認められる。しかし後は、要するにアジアにはつまり潜在的な脅威と顕在的な脅威ということで、つまり今防衛計画大綱の中の一つの非常に大きな基本的な問題を頭に置いておりますから、あなたはアジアは違うんだ、こういうふうに言われたと思うのです。  そこで、石川防衛庁長官——そうだ、石川防衛庁長官に技術論に入ります前に、じゃもう少し総理お尋ねをしたいと思います。ゴルバチョフ政権というものをあなたはどうごらんになりますか。
  62. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 ゴルバチョフ政権というのは、ソ連において近来まれな政権だと見ております。それは、ゴルバチョフというリーダーの物の考え方、発想が極めて大きくソ連政治を前進させようという意欲、同時にそれは、国内的にはペレストロイカ、対外的には新思考外交とも呼ばれるように大きな移り変わりを見せておることは理解をいたしますし、同時に、共産党の一党独裁体制をやめにして複数政党制に国内政治を変えた、それから対外的にはアメリカの大統領とあのようなマルタ会談をやった、私はそういったことは高く評価をいたします。  同時に、大統領になって国内の権限を集中されたけれども、そして一党の書記長というよりも高い立場に立ってのペレストロイカを進めようとされておりますが、率直に申し上げさせていただくと、ソ連の国内の経済情勢は五年来向上の跡が見られないようであります。ウクライナ地方の平均寿命というのですか、何か非常に厳しい状況で低下傾向にあるということも、この間新聞の論調で読ませていただきました。経済状況が非常に厳しい状況にある、これを乗り越えなければならぬという国内問題を抱えていらっしゃる。同時にまた、民族問題等にどのように対処されるのか。この数日来もいろいろな報道で、私はどのような手腕を発揮されるのか注目をしております。  しかし、国内問題はいざ知らず、対外的には力による対立、対決をやめて、米ソ協調協力で全世界に大きく、戦争から平和共存、競争的共存の時代に変えていきたいという願いを持っておるリーダーだということは私は評価しておりますので、ペレストロイカ方向性を認め、ゴルバチョフ政権が安定的にその目指す方向に向かって着実に歩を進めていくことを私は心から期待をしておるのです。
  63. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 私もあなたの今の分析に賛成です。おおよそにおいてそう変わらないと思います。また細かにいろいろ議論していきますと出ますがね。  そこで、ブレジネフ政権はどうごらんになりますか。
  64. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 ブレジネフ政権というのは、例のブレジネフ・ドクトリンというのがありましたように、ソ連のあの一連の時代の流れの中で、アメリカとソ連が対決し、対立し、いろいろやってきました。今ここで、過ぎ去った人の名前を挙げての御質問でありますから、いろいろ言いたくありませんけれども世界にある意味においては非常な緊張状況をつくり上げたということと、それから世界にいろいろな意味において、正しい考えはこれだけなんだというような、そういった物の考え方に凝り固まり過ぎておった考えではなかったか、私はそう受けとめております。
  65. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 石川長官、そうしますと、あなたは、五十一年の国際情勢は基本的枠組みにおいて変わらない、こう言われた。今明らかに違うことを言っているのです。ゴルバチョフ政権とブレジネフ政権、明らかに違うのですよ。世界戦略も違うのです。そうしましたら、核兵器があるとか施設があるとか、そういう問題で世界情勢を考え防衛を考えることではなくて、今の世界政治全体の中で、では五十一年と今日とどう違うかということを考えますときに、今の総理答弁は、ゴルバチョフ政権、ブレジネフ政権というのは違うと。明らかに違うじゃないですか。大きな国際情勢の基本的な枠組みがいかにこんなに違うかということをいみじくもあなたは説明していただいた。まさにそうじゃないですか。  防衛庁長官どうですか。五十一年の枠組みと国際情勢の枠組みは同じだ、デタントの方向でした、ただそれだけであなたは片づけようとしておるけれども、まさにゴルバチョフ政権とブレジネフ政権は違うのですよ。ブレジネフ政権は、アメリカと肩を並べようといって力んだのです、むちゃくちゃなこともやったのですよ。ブレジネフ・ドクトリンの話もありました。そのブレジネフ・ドクトリンはワルシャワ体制の崩壊で今なくなったのでしょう。ゴルバチョフは、それはやらぬ、こう言ったわけです。そうしますと、ソビエトの世界戦略も明らかに変わっているのです。明らかに変わっていることを、何で五十一年の国際情勢と今日の基本的な枠組みが変わらないと言うのですか、説明してください。
  66. 石川要三

    石川国務大臣 先ほどの総理の御回答の中にもございましたように、現在の特に米ソの関係、そういう緊張緩和の度合いというものについての、非常に最近のデタント的なそういう方向というものについては、私はそのとおり同感であります。ただ、五十一年も、今日の大綱を策定したときの時代もいわゆるデタントと言われた時代であるわけでありますが、それでは、先ほど総理答弁のように、ブレジネフ政権と現在のゴルバチョフとは根本的に違うのじゃないか、こういうようなお話もございました。しかし私は、確かにそれは、そのデタント、いわゆる緊張緩和の時代というものの一つの根底に流れているその枠組みというものについては相共通するものがあろう、こういうふうに認識をしているわけでございます。  特にその内容について、一つには、米ソ両国間の核相互抑止を含む力の均衡が国際社会の平和と安定の条件となっておるということの、いわゆる基本的な、ベーシックなものは私はやはりあるのじゃなかろうか。先ほど総理も述べられましたように、すべてなくなったわけじゃない、非常に大きな変化をしているけれども、しかしまだその根底にはそういうものは存在しているということは、先ほどのお答えの中にもあったように私は思うわけでありまして、そういう点が一つ。  それから二番目には、我が国の周辺においての日米安全保障体制の存在というものが、国際関係の安定維持及び我が国に対する本格的侵略の防止に大きな役割を果たしている。この二点につきましては、昭和五十一年の時代、そしてまた今日の時代におきましても相通ずる一つの国際的な大きな枠組みではなかろうか、かように私は申し上げたわけでございます。
  67. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 ブレジネフ政権とゴルバチョフ政権、そこからきます世界戦略、そういうものの説明には何にもなっていないんですよ。そうでしょう。つまり、ブレジネフ・ドクトリンを踏まえて、そして当時は石油は高かったんです。だからソビエトはオイルポリシーを使えたんです。今のゴルバチョフ政権にとってはそれが使えないんですよ。だから崩壊してきたんじゃないですか。石油危機に対して技術革新ができなかったんですよ。私はこのことをモスコーでも議論しました。あるいは東ドイツの理論家の諸君とも議論をしました。なぜソビエト側、あなた方は技術革新に失敗したんだ。ある国が技術革新をやったら失業者が出るという議論もあった。そういうことでこの技術革新は確かにおくれた。そうしますと、オイルポリシーというものが、ブレジネフ政権のときとこのゴルバチョフ政権の基本において非常に違うわけですよ。そういうまさに国際情勢の基本が違っている。そのことをあなた方は、防衛計画を立てますときに、今ゴルバチョフ政権とブレジネフ政権、どう違うのだ、こうお尋ねをしていることに対しては答えていないんですよ。もう少しわかるように、どこが違わないのか、つまり世界戦略を進める上においてゴルバチョフ政権もブレジネフ政雄も変わらぬ、同じだということを説明してください。
  68. 石川要三

    石川国務大臣 お答えが重複するかもしれませんけれども、私が申し上げたいのは、要するに、現在のヨーロッパ情勢を見ると、確かに五十一年のあの時代とは本当に量的にもスピード的にも非常に大きな変化が今日あるということは、これは先ほど総理もお答えしたとおりで、全く同感であるわけであります。  それで、その一例を特に挙げれば、例えばベルリンのあの壁の崩壊一つとってみても、これはまさに私どもには想像を超えたような大きな一つの現象であるわけであります。そういう点におきましては確かに大きな変化もあるし、それからオイルポリシーも大きく違っておるし、いろいろな現象面においてはかなり大きな差があることは事実だと私は思うのです。  しかし、私どもは国を守るという立場から一つの同じ、五十一年のあのデタントの時代と比べていろいろと検討してみると、先ほど来申し上げましたように基本的な枠組みというものの中に共通点というものがある、そういう二点を私は申し上げたわけでございまして、今日の大きな変化ということは、これは私は否定しているわけではないわけでありますので、御理解をいただければありがたいと思います。
  69. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 情勢が質的にも量的にも非常に変化をしておって、基本的枠組みが変わらぬというのが、国民の皆様はわからないと思いますよ。そこのところをきちっと御説明にならなければ、基本的な枠組みが違わないんだというその説明にはならないんですよ。つまり、五十一年の場合には東西対立というものを前提にしておった。その東西対立の場合のその基本の考え方についても、ブレジネフ政権とゴルバチョフ政権というのはもう明らかに違う。それはもう先ほどいみじくも総理がお答えになられたような分析なんですよ。  じゃ、お尋ねをしますが、今日のゴルバチョフ政権の、いいですか防衛庁長官ゴルバチョフ政権が顕在的な脅威、潜在的な脅威、つまり能力がある、枠組みが同じだ、こう言いたいんだと思いますよね。そうしましたら、その能力を使う意思、それが政権の防衛政策でもありますし、世界戦略でもあるわけですね。じゃ、今日のソビエトの、先ほど総理が御説明になられました経済の危機、なかんずく共産党一党支配から複数政党に変わってきた、さらには民族問題がこれだけ出てきておる、十五の共和国の中で七つの共和国が今独立を要求をしておる。そういう、つまり一党支配の体制から複数政党になってきておる、経済危機が深刻に進んでおる、この経済危機の深刻な状況をどう克服するか。これは今全世界の問題でもあります。  総理も言われたように、私もゴルバチョフ政権ペレストロイカの成功を期待します。それが私は人類のためになると思う。そういう方向世界は動いている。なかんずくヨーロッパは動いておるわけです。まさに大欧州という、それはECの統合、EFTAの問題、そしてさらにはソ連東ヨーロッパ側との大連合といいますか大欧州という、それは一方でいいますとゴルバチョフの欧州の共通の家というふうな思想ともまじり合わさってきますけれども、そういう大きな変化があるわけです。  そういう中で、じゃ、ゴルバチョフ政権が失敗をしても、よしんば失敗をしたにしても、次の政権がもう一度核兵器を使い武力を使って相手を押さえる、対象国を押さえていくという政策に返っていく可能性というのを、防衛庁長官、いつだと思いますか。
  70. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 先ほどはゴルバチョフ、ブレジネフとその政権の固有名詞を挙げてのみ御質問がございましたので、私はその政権の背景について私の考えておることを申し上げましたけれども、アメリカ側にも大きな変化があって、私の記憶に誤りなければ、ロールバックポリシー、巻き返し作戦とか、リタリエートする、報復戦術とか、いろいろ対決時代には激しい論争があったことは委員も御承知のとおりであります。  しかし、それは乗り越えて、冷戦時代の発想を乗り越えてやっていこうという背景には、先ほどはソ連のことだけ御質問があったから、経済政策が極めて厳しい困難な状況だということを申し上げましたが、アメリカ側にも、もう二カ二分の一戦略をこれ以上保持しておいて、一体国内の財政赤字に対してどうしていくのか、できるだけ米ソの間で均衡のとれた軍備管理に持っていくことが世界のためにも米ソのためにもなるんだという発想が、あのマルタ会談のときには両首脳の脳裏にあった問題だ、私はこう思うのです。だから、そういう世界動きがあるから、いわんや、今御質問のように、私がブレジネフのときにこういうふうに答えた、ゴルバチョフをこう見ておるからといって、直ちに日本防衛計画や防衛の体制やなんかが基本的に変わるものではない、私はこう思うのです。  と申し上げますのは、力の対決の時代に、日本は力でお役に立ちましょうといって、力の対決に力で参加をしておったというものではございません。有事を対象として日本防衛力というものはつくってきたものでは、委員、ございません。あくまでもつつましやかに日米安保条約の補完のもとで、軍備の問題や抑止力の問題等については日米安保条約のもとで、日本は、それこそNATOとかワルシャワとかいう条約機構じゃなくて、日米二国間の条約の中で補完作業としての節度ある軍備を持っておったということでありますから、世界情勢緊張状況が、米ソともにだんだん話し合いによって、しかも軍備管理によっていい方向に、私としてはいい方向に進んできておると、平和と繁栄のためにいい方向だと、これは願いますけれども、だからそれと直ちに日本考え方もずっと下がっていかなければならぬという、ちょっと視点が違うわけであって:::(発言する者あり)
  71. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 御静粛に。
  72. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私は、みずからの国の平和と安全を守っていくための節度ある必要にして十分な文民統制に基づいた防衛力の整備というものは、これは、世界情勢が変わりつつあるいい状況を歓迎するとともに、日本においてもじゃどうするかという問題とは、おのずからよって立つ視点が違うわけでありますので、米ソ変化世界情勢変化として極めて望ましいものであるという評価をきちっと立てて、そして考えていくべきである、こう思っております。
  73. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 私は、まだ日本の安全保障のところまで来てないんですよ。五十一年の国際情勢の大きな枠組みと今日の枠組みが同じだと言うから、そんなことを言うのは今全世界どこにもいない、全世界どこにもいない、それを説明してくださいと言ってお尋ねしていたら、あなたは話を別の方に切りかえてこようとしているわけだ。だから、今はブレジネフ政権のときと同じ国際情勢、つまりデタントの中の枠組みだ、こういう議論をしたら笑われますよ、笑われますよということを言っているんだ。あなたも違うということを説明されたんですから。何もゴルバチョフ個人、ブレジネフ個人を議論しているんではなくて、ソビエトの世界戦略、つまりその政権の世界戦略というものを私は先ほど来分析をしながら、違っているんだ。そうしますと、五十一年のそういう状況というものを踏まえた日本防衛計画大綱をつくるのは大変なことなんですから、これは後ほど議論していくわけですから、今は、五十一年当時の国際情勢の大きな枠組み、基本的な枠組みと今の国際的な枠組みが同じだということをわかるように説明してください、こう言っているんですよ。長官、もう一度。
  74. 石川要三

    石川国務大臣 いろいろと委員の御見解を拝聴しておりまして感ずることは、やはり確かにその構造の内容については、私は、かなり五十一年時代、今日の時代というものには大きな、目に映るような大きな差があることは当然だと思うのですね。しかし、私は先ほど申し上げましたのは、我が国防衛を策定する一番前提条件といいますか、そういう国際情勢の枠組み、基本的条件というものを私どもは勘案して政策を立案するわけでありますから、そういう基本的な、その両時代におきまして、デタントの中におきしても、やはりこの二つの点については基本的枠組みとしては前提条件が等しいものがある、こういうひとつ認識のもとに防衛計画を、大綱を立てているわけであるのでございますので、その点を申し上げたわけであります。
  75. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 構造は違う、こう言うんですね。構造が違っておってどうして枠組みが同じなんですか。構造は違うんだ、こう言われたんだ。構造が大きく違っておって何で基本的な枠組みが一緒なんですか。わからぬですよ、これは。構造が大きく違ったんだと認められたんでしょう。構造が違っておって何で枠組みが一緒なんですか。構造のない枠組みというのはどんなのですか。そんな家はだめですよ。
  76. 石川要三

    石川国務大臣 構造というよりも、私は、むしろ、あるいは的確を欠いたかもしれませんが、一つの国際情勢の、映る感じが、手にさわられる、目に映るそういう事象、現象というものが大きく変わっているということは、これは事実だと思うのです。ただ、その基礎となるものの枠組みはやはり相共通するものがある、こういうふうに申し上げたわけであります。
  77. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 手に触れるものは変わった、しかし基礎は同じだ。その基礎はどこにあるんですか。その基礎はどんな基礎ですか。
  78. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 防衛庁日吉防衛局長
  79. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 待ってください。解釈を聞いているんじゃないんですよ。
  80. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 日吉防衛局長
  81. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 だめだ。解釈を聞いているんじゃないんだ。今は、つまり……
  82. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 川崎君、座ってください。
  83. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 待ってくださいよ。質問しているのは僕ですよ。
  84. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 いやいや、私が指名権があるんだから。
  85. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 指名権があっても、僕は聞いているんですから、質問がわかるように答えてもらわなければいかぬ。しかも、冒頭言いました。私が申し上げたのは……
  86. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 それじゃ、もう一回指名しますから。  川崎君。
  87. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 委員長、勝手に指名されちゃ困りますよ。勝手に指名されちゃ困りますよ。委員長は厳正な運営をしなければいけません。  だから、先ほど来申し上げているように、解釈を聞くんじゃない。今の大きな世界変化を我々政治家がどう見るか。我々政治家がどう見るかということを総理外務大臣防衛庁長官と今質疑をしているんです。役人の答弁を聞いているんじゃないんですよ。だから、それを私は今防衛庁長官に伺っているんですから、防衛庁長官から基本的な枠組みというのを理解させてもらわなければいかぬわけです。防衛庁長官
  88. 石川要三

    石川国務大臣 それは先ほど私が申し上げましたように、二点を申し上げたわけでありまして、一点は、今日の状況と五十一年の状況を見ても、やはりその根底にある一つの問題は、米ソのいわゆる均衡というものが今日の国際情勢の平和と安定の前提条件にやはりなっているというのが一点。それから二番目には、我が国防衛にとりまして安全保障体制というものが非常に大きな寄与をされている、こういうことが一点でございます。これを私は枠組みというふうに申し上げたわけであります。
  89. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 今のそれは、五十一年の国際情勢の枠組みと今日の国際情勢の基本的な枠組みは同じだと防衛庁長官は説明しておられるんですから、しかし、今の説明はそれになっていないんですよ。  では、先ほど総理が言われました経済的な危機、これを克服するためにはどれだけの展望があるのか。あるいは民族問題というものを、つまり民族問題があるということは、これは一方でいいますと市場経済が導入をされる、そういうものが成功していけば民族問題というものもまた違った展開をしてくる、こういうふうに私は見ております。それから、何よりも、党と国家の一体化あるいは中央集権、計画経済、そういうものが機能しておった時代のブレジネフ政権というものと、それが行き詰まってしまった、崩壊してしまった今日の事態というのは、明らかに違うんですよ。違うんですよ。そうしますと、そこの大きな変化というものの中で、五十一年の国際情勢の枠組みと今日の枠組みというのはもう明らかに変わってきている。だから、明らかに変わってきているということを前提にしながら、では日本はどうするかというのがこれから先の議論でございますから、そうしますと、まずそこのところを防衛庁長官はぎちっと分析というか説明をしてもらいたい。変わっていないということを説明してもらいたい。
  90. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 日吉防衛局長
  91. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 防衛庁長官ですよ。だめだよ。
  92. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 まず説明させます。まず説明させます。
  93. 日吉章

    ○日吉政府委員 基本的に防衛庁長官のお答えになられたとおりでございますが、事実関係を交えまして若干補足をさせていただきたいと思います。  最近の国際情勢を見ますと、軍事面におきましても、米ソ中心としまして軍備管理軍縮交渉進展等望ましい変化が生じておりますことは委員指摘のとおりでございます。しかしながら、このような動きというのはどういうところから出てきたかと申しますと、主としてヨーロッパにおきまして陸続きに非常に高いレベルで緊張が続いておったわけでございますが、ソ連及び東欧諸国経済情勢その他国内事情等によりまして、できるだけこの膨大な軍事力をより低い水準に引き下げようというようなことから、この軍備管理軍縮交渉が起こっているということをよく御理解いただきたいと思います。  したがいまして、依然として米ソの間におきましては、米ソの核を含みます圧倒的な軍事力中心としました力の均衡と、その均衡によります抑止というものが引き続き国際社会の平和と安定の基本的な前提となっているということでこれらの話し合いが進められているわけでございまして、こういうふうな枠組みにかわる枠組みというものはいまだ見出されておりませんで、こういうふうな基本的な、これを枠組みと申せば、こういうふうな枠組みといいますものは、五十一年度の防衛計画の大綱に書きました、私たち日本政府認識いたしました基本的な枠組みと変わっていないのではないか。  さらに、日本について申し上げますと、その中で、そういう前提の中で、米国との安保条約のもとにおいて日本に対しまして本格的侵攻が抑止されるというふうな前提に立って大綱がつくられております。こういうふうな基本的枠組みというのは、いろいろな軍備管理軍縮交渉等が進められてはおりますけれども、その根底にあります力の均衡とそれによる抑止が働いて平和と安定が保たれている、そこの基本的なところは依然として変わっていないのではないかということでございます。
  94. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 それは、今かわるものはない、こう言われた。それはこの間、私は西廣防衛事務次官の「公研」という雑誌における彼の講演を取り上げて言ったわけですよ。西廣防衛事務次官は、今防衛局長が言っているとおりのことを言っているわけです。  「私はもともと、東欧諸国は実際に東西が戦ったときにどちらを向いて鉄砲を撃つかわからないと思っていました。ところが昨年以来の状況を見ると、東欧諸国がどちらの側につくかはかなり明確だろうと思います。それでもなお、従来のNATOとワルシャワ条約体制という枠組みは崩せないのです。これを崩したらヨーロッパ状況はバラバラになってしまい、軍備管理進展どころの話ではなくなってしまう。各国が勝手に動き出し、場合によってはNATO内、ワルシャワ・パック内でも相対的優位性を追求していくという、いわばバルカン政治——一次大戦前のような状況に戻ってしまいます。それではヨーロッパの安定は図れませんから、たとえフィクションであっても冷戦構造を維持していかなければなりません。」フィクションであっても冷戦構造を維持していかなければなりませんというのが防衛事務次官の公式の会合における講演なんですよ。「つまり、冷戦構造に代わるべき」、これは今、日吉防衛局長が言ったところ、「つまり、冷戦構造に代わるべき新たな枠組みは当分生まれそうもない、また見つけられない。世界の軍事的な安定のためには、既存の枠組みを利用せざるを得ないというのが現状です。」  つまり、フィクションで冷戦構造を持っていこう。だからそれはフィクションだ、冷戦構造はフィクションだ、こう言っているのですよ。防衛庁長官どうですか。これはフィクションだと。だから、これがヨーロッパにおきます全欧安保協力会議等にいたしましても、そこを今模索しているのですよ。だから、フィクションで冷戦構造を土台にしたのじゃだめなんです。  総理は前向きに行こうとしたら足を引っ張られ、冷戦構造を乗り越えて、こう言おうとしたら、乗り越えちゃいかぬ、こうやられているのです。乗り越えちゃいかぬと言って引っ張られる。三木さんは、平和憲法は二十一世紀の世界の基本法だ、ここまで三木さんは言われたんだ。だから、今冷戦構造がフィクションだと言って、必死になって五十一年の枠組みと今日の枠組みが同じだ、変わらないのだ、こういうことで論理立てをすること自体が無理なんですよ。だからフィクションの上に、つまりフィクションの冷戦構造の上に日本の九〇年代から二十一世紀に向かっての国際戦略を立てるのはためですと私は申し上げているのですよ。だから、ここの五十一年の基本的な枠組みと今日の枠組みが同じだということはどうしてもだめなんですよ。そういうことではいけないのです。  あなた方は、冷戦構造というフィクションの上に次の防衛計画も立てようとしているのですか。冷戦構造はフィクションだ、たとえフィクションであってもその上に防衛計画を立てざるを得ない、こう講演をしておる西廣防衛事務次官の考え方、それは今も防衛局長が言ったことなんですね、かわるものがないからだと。しかし、かわるものを今全世界は模索しているわけです。そこを日本が、つまり平和憲法で来た、先ほどあなたも言われたように、積極的な問題ではない、防衛だ、こう言われた。だから、日本の安全を守りながら、なおかつ緊張緩和軍縮というものに向かっていくために日本が何をすべきかということが今日の課題なんですから、そういたしますと、私は冷戦構造をフィクションとして防衛構想を立てようとする考え方には絶対に反対です。そして、五十一年の枠組みと今日の枠組みが同じだということについては絶対に納得できない。もう一度伺います。
  95. 石川要三

    石川国務大臣 委員に御満足いただけないかもしれませんけれども、フィクション、フィクションと言われております、今西廣事務次官の講演内容の中の言葉として言われていらっしゃるようでございますが、私はさらっとそれは一読いたしました。しかし、細かいそういう一つの言葉の持つ意味、ニュアンスというものにつきましては、多少私はまだ理解に達しない点がございます、正直なところ。  しかし、私が聞いておりまして、フィクションを前提にして我が国の大綱が打ち立てられているということにつきましては、私は基本的に違うという考えでございます。そしてそれは確かに五十一年と今日のこの世界情勢、特に軍縮に向かっての速さ、量、質、そういう点につきましては、再三申し上げてきたとおりに大きな相違があることも事実でございますけれども、しかし、その両時代の一番根底のところに探りを入れますと、今日のこの冷戦の構造というものが終えんしつつある、進行形の中におきましても、やはりこの根底というものには米ソの核相互抑止を含むいわゆる力の均衡、そして抑止というものが国際社会の平和と安定の条件になっているということも、これまた否定し得ない事実ではなかろうかな。そしてまた二番目には、先ほど申し上げましたような安保体制が我が国の非常に平和と安全な今日になったということに大きな寄与をされている、こういう点を私どもはやはり共通といいますか、一つの根底の一つの枠組みというふうに認識をしているわけでございます。
  96. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 これは聞いておられる国民の皆さんもわからないと思うのですよね。本当にわからないと思うのです。  そうしますと、これはもう防衛庁長官と論争しておっても水かけ論のような形になりますから先へ進めますが、総理米ソ軍備管理、力で対峙しているのだ、核抑止力だ、こう言われた。しかし今、ブッシュ大統領やベーカー国務長官も言っておるように、新しい協力体制、こういうふうに言っておりますね。そうしますと、今日のこの状況の中で、アメリカにとってソ連というのは、今度五月末の米ソ首脳会談が戦略核兵器の削減について、ここで成功するかどうかこれはわからない、まだまだ難しい面もあろうかと思います。しかし、そういう方向は目指しているのですよね。目指しているということは何か、あるいはINFの撤廃、こうきたわけです。そのことは何かとい、ますと、これはつまり脅威というもので対峙をしておったものからリスクについてお互いにマネージしていく、交渉していく、そういう方向に大きく変わってきておる。つまりそのことは、軍縮が本物だと。軍縮が本物だということを私は確信します。いかがですか、総理
  97. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 一時期、米ソともに世界の対立する陣営のリーダーとして、世界じゅうの平和とそして安定を確保していくためには自分のところの軍事力というものが必要だというので、非常に大きな有事を想定した軍事力膨張競争をやった。そのことに対する反省と、そのことによってもたらされた国内の経済政策へのいろいろなバランスの考え方、そういったことから見て本当にお互いに信頼できるようなものであるなれば、軍備管理方向へ向かって両方で歩みを続けていこうではないか、こういったことが一連の米ソ首脳会談において行われておる核兵器の廃絶問題をめぐる議論の根底にあったことは、私も率直にそうだと思っております。真に友好的な信頼関係に立っての両国の間柄でこの問題が解決されていくように、我々も米ソの首脳会談というものは注意深く見守っていかなければならぬテーマである、こう思っております。
  98. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 そうしますと、世界軍縮方向に確実に歩み出しているというふうに御理解になりますね。
  99. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 米ソ超大国は軍備管理、そして究極の目的としての軍縮方向に歩み始めているということはそうでございましょうし、国連の総会なんかにおいてもそういったような動きが出てきておることは御承知のとおりだと思います。私もそれを否定するものではありません。
  100. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 次には、これは防衛庁の事務局にお尋ねをします。  九日の予算委員会で、市川さんの質問に対してソ連のことについて言っているのですが、「最近戦力の一方的削減などの発表を行いまして、その一部につきましては実施に移されている模様でございますけれども、他方におきまして、海空戦力中心といたしまして近代化、新たな兵器の追加配備等質的強化が続けられているのが事実でございます。」といいますから、その事実を御説明いただきたいと思います。
  101. 内田勝久

    ○内田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員指摘の幾つかのソ連極東ソ連軍近代化の事実につきましては、例えばソ連の潜水艦が原子力推進のものに増強されてきていること、あるいは駆逐艦が在来型のロケット砲のものからミサイル搭載の駆逐艦、これが増強されてきていること、あるいは航空機につきましても、いわゆる私ども第四世代の航空機と呼んでおりますけれども、行動半径の広い機種が数として増強されてきていること等々の事実が看取されているということを指して、事実でございますという御説明を申し上げた次第でございます。
  102. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 それは、今のことは、昨年のヨーロッパの、つまり一九八九年のヨーロッパ変化以後でありますか、以前でありますか。
  103. 内田勝久

    ○内田政府委員 私どもが、ただいま私が申し上げましたような事実を指摘しておりますのは、ゴルバチョフ政権以降の一貫したソ連動きでございます。  ただいま委員指摘の、つい最近の、例えば昨年の暮れからのヨーロッパでの大きな動き以降についてどうであるかという御質問であるといたしますれば、その点につきましてはなかなか事実の確認等所要の時間を必要といたしまして、現時点におきまして私どもがはっきり申し上げられますことは、基本的に平成元年度の防衛白書に記載しているもの、そこに記載しております事実を申し上げた次第でございます。
  104. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 つまり、一九八五年ゴルバチョフ氏が政権を引き継いで以降は、前の政権下のがずっと続いているわけですよね。そして今、大変化になってきたわけです。だから、世界的な大変化の中でどう考えるか、こういうときに、今説明はできないわけです。私は、そういう形で問題を把握してはいけないと思うのです。  これはニューヨーク・タイムズの三月二十七日の社説でございますが、「アジアの冷戦終結をめぐって」という社説がございます。この一部を読んでみますと、「ゴルバチョフ氏のアジア政策の転換は実際、徹底したものである。彼はユーロミサイル交渉において、ソ連アジア部から中距離ミサイル四百基を撤去することに同意した。彼は極東から二十万人の兵力を一方的に引き揚げることを約束した——釣り合いから言えば、これは彼の在欧兵力削減案よりも大規模である。また彼は、アフガニスタンからソ連軍を引き揚げるとともに、ベトナム軍にカンボジア撤退を促した。そして今では、ソ連の太平洋艦隊を三分の一ほど削減しつつあり、ソ連国境の外側のアジアに駐留する全兵力を撤退させつつある——最も顕著なのはベトナムのカムラン湾からの撤退である。」こういうふうにニューヨーク・タイムズ自体が社説で、そのアジア政策転換が徹底したものだ、こういうふうに書いておるわけです。  チェイニー氏の東アジア戦略構想は何と言っているか。そのことについては、みずからアメリカのことも批判をしているわけです。私たちはそういう状況というものを冷静に今日は見詰める必要があるだろう、こう思います。  ここで書かれておりますこのアメリカ側の分析については、「チェイニー国防長官は最近、日本、韓国、フィリピンを歴訪した際、最小限の撤兵——在韓米軍四万三千人のうちの五千人、在日米軍五万人のうちの七千人の引き揚げ——を発表したにすぎない。ゴルバチョフ氏がとった措置と比較して、チェイニー氏の東アジア戦略構想はその名に値しないように思われる。」こういうふうにこの両方を比較しているのです。私たちはやはりこれを冷静に見ていく必要があるだろう、こう思います。  そうしますと、防衛庁長官、今、アメリカの非常に大きなオピニオンリーダーの新聞でございますニューヨーク・タイムズ自身が率直にこういうふうに評価をし、そしてアメリカ側の極東戦略との比較をしてきているわけです。私たちもそれを冷静に見詰めていかなきゃならないと思うのです。  そこで、防衛庁長官お尋ねをいたしますが、今、このニューヨーク・タイムズも指摘をしておりますが、ゴルバチョフ氏がウラジオストク演説以来、あるいは東シベリアにおきますクラスノヤルスクでの演説、そういう方面で大きく出してきているわけでございますが、ウラジオストク演説、八八年九月十六日の今のクラスノャルスク演説、八八年十二月七日の国連総会の演説、これは、二年間でソ連軍を全体で五十万人削減する、こう言っておるわけです。八九年の一月十九日、これは中曽根さんがたしか御出席になったのだと思いますが、日米欧三極委員会メンバーとの会談を去年の一月十九日にしておられますが、国防予算の一四・二%削減と軍需生産の一九・五%削減、その他、それぞれの細かなことを提案をいたしております。さらに、八九年七月六日の欧州議会での演説、さらには八九年十月二十七日のヘルシンキでの演説、こういうふうに軍縮提案をいたしておりますが、この軍縮提案について防衛庁長官はどういうふうに評価をしておられますか。
  105. 内田勝久

    ○内田政府委員 ただいま委員指摘のゴルバチョフの各種の軍備管理軍縮提案につきましては、私ども、その提案はそれなりに意味のあるもの、評価できるものというように考えております。  しかしながら、軍縮軍備管理につきましてそういう発表をするということと、それを現実に実施をするということの間には大きな差がございますし、実際にそのような実施というものがどういう形で行われるのか、既にどの程度行われているのかといった点について実態を見きわめるということが私どもはまず一番大事なことであろうかと思っております。  先ほどもちょっと触れましたけれども、現実にそのような削減状況について、ソ連も一部また発表しておりますけれども、それをはっきりとした形で私どもまだ実証と申しますか、そういう事実を確認するまでに至っておりません。若干の動きはあるようですけれども、私どもとしては、それは実質的なものではまだないのではなかろうかというように見ているというのが現状でございます。
  106. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 今は検証できない、こう言うのですよね。私はやはりヨーロッパにいたしましても、西ドイツが東方外交を進めた、この間申し上げた点です。今日のヨーロッパの大変化というのは、七〇年代におけるドイツ社民党のブラント氏の東方外交というのが、封じ込め政策以上の大きな出発点だったと私は思うのです。そして率直に話し合っているわけです。電話でも話ができるぐらいになっているわけです。それが国境線の問題も解決していく道だ、こういうことで、西ドイツの社民党なり西ドイツの政権はそれぞれ努力をしてきたわけです。今検証の方法がない、こういうことで、検証の方法がないというまま日本のこれからの長期の方向というのを策定をするというのは、こんな危険なことはないんじゃないですか。  私はこれを、あと答弁とると時間がなくなりますから、こういうことを私は指摘をしておいて午前中終わりたいと思います。
  107. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩     午後一時開議
  108. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川崎寛治君。
  109. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 午前中、ゴルバチョフ政権とブレジネフ政権の性格についてお尋ねをいたしました。  そこで、総理もう一つ、軍縮の方に確実に動き出した、そういう認識はお示しになったわけです。そこで、そのゴルバチョフ政権が非常に経済的な危機、これは何年かかるかわからぬ。民族問題も非常に複雑ですね。一党支配から複数政党になってきている。しかし、一方では保守派の非常な抵抗もある。こういう非常に複雑な中で、しかし、新しい世界の秩序というものに対しては彼なりに精いっぱいの努力をしているわけですから、ヨーロッパ側もアメリカ側も何とか支えよう、こういうことにあるわけです。  そうしますと、先ほど総理がお示しになりました、お答えになりましたブレジネフ政権の、ブレジネフ・ドクトリンを持ち、そして力で押した、そういう政権にゴルバチョフ政権が返るということは私はない、こういうふうに思いますが、総理見解伺いたいと思います。
  110. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 そこまで私はゴルバチョフ政権の将来に向かって断言するほどの知識もありません。ただ、今言えることは、米ソの力の対決をやめていこう、協力の時代に入っていこうというゴルバチョフ大統領の目指すペレストロイカの成功を願っておる。  同時に欧州で、この前たしか先生この委員会で私にも御質問くださったように、米ソが今は軍備管理状況に入ってきておる。そして、その軍備管理状況ヨーロッパだけではいかぬ、アジアのことも大切に考えなきゃならぬ。例えば、ヨーロッパで少なくしていく古い兵器のごみ捨て場のようなことにアジアをしてはいけないという角度の御発言にも、私は全く賛成します。先生の御発言のとおりだ、完全に信頼のできるものになっていかなきゃならぬ。それがアジアへ押し及んでくるように私も一生懸命やりますと、きょう現在のことについてはいろいろ申しましたが、何年か先の政権がどうなるかということまで今ここで断言しろと言われても、ちょっとそれは私の答弁の範囲を逸脱すると思いますので、そういったようにならないことを私も強く希望しておるとか望んでおるという考え方を申し上げさしていただきたい、こう思います。
  111. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 そのことが五十一年情勢と今日の情勢の大変な違いだということを改めて指摘をしておきたい、こういうふうに思います。  そこで、次に最近、日米安保というのは日本が軍事大国にならないように、極端な表現は、アメリカの沖縄海兵隊の司令官、ヘンリー・C・スタックポール少将の発言などによりますと、これは「瓶の栓」だというふうな極端な発言まであるわけです。それはアメリカ国防省極東情勢についてのこの報告の中にも、そうした日本が軍事大国になってはならない、防衛力の増強は困るという厳しい指摘があります。しかしこれも、おまえはよく西廣君を目のかたきにしているな、こう言うかもしれませんが、この西廣防衛事務次官の「冷戦構造の変容と日本防衛」、この中でもそのことを的確に言っているのですね。  彼が言っておりますのは、「日米安保によって日本が一人歩きしないという安心を他国に与えている。ソ連脅威が薄くなってアメリカ側が日米安保の価値を低く見がちになるので、」いいですか、これが防衛事務次官の今の見方なんです。「なるので、そのときこそ日本は、安保条約を大事にしなければならない。そのためには、日米が同じ方向でチャレンジする目標を定めることが重要である。」これは非常に奇妙な話なんですよ。同盟のパートナーを、同盟のパートナーに対してその同盟で抑えていく、こういう奇怪な、奇々怪々な、そういう方向日本は目指してはならない、こう思います。  でありますから、こういう日米安保、今軍事的なそういう脅威というものが薄くなってくるにつれて、今西廣次官も言っておりますように、ソ連脅威が薄くなる、アメリカ側が日米安保の価値を低く見がちだ、そういう中で、この安保を大事にしなければならないということ、これは間違いだ。やはりそれは日本自身が、つまりよその国から心配されないような、アジアの国々から心配されないような、つまり事は憲法に従ってきちっとしていくということが、私は日本の進むべき方向だと思います。  こうした安保強化によって日本のひとり歩きをさせないんだという考え方、これは海部内閣はそういう考え方を持っておるのか。これは自民党さんの若手の諸君の座談会の中にもたくさん出てきているのですよ。相当これは自民党の中にもある考え方だなということを、この間雑誌を読みながら感じました。  そこは、日本国民としてもこれからの九〇年代をどうしていくかという場合の大変大事な、つまり軍事対決から経済統合へと、そして二極の体制から多極へと、こういう動いていく大きな時代の中で、これからの方向を定めるわけですから、私はこの西廣君やあるいは沖縄の海兵隊司令官の——沖縄の海兵隊司令官というのはもっと露骨に言っているのです。「もし米軍が引き揚げれば日本は、すでにきわめて、きわめて強力になっている軍隊を一層強化するだろう。われわれは瓶の栓なのだ:::。日本人は人種的優越を信じている:::。彼らは銃を使わず、経済力で大東亜共栄圏を獲得したのだ」こうまで言っておるわけですけれども、私は、アジアにそういう恐怖感を与えてはならない、これは一番これからの大事な点だろう、こういうふうに思いますので、総理見解伺いたいと思います。
  112. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 専守防衛考え方であくまで我が国の平和と安全を維持していくには、どの程度のものが平和時において必要なのかという観点に立って自衛隊というものは整備されてきた、私はこう思っております。そして、それがアジア近隣諸国に脅威を与えるようになってはいけないということ、これは私も全くそのとおりだと思っております。したがって、日本の自衛隊、自衛力の中には、それは本当に専守防衛でありますから、他国に対して侵攻するような物の考え方とか能力とか、それを疑われるような兵器とかいうようなものを持たないということで、航空母艦もなし。そういったようなことをいろいろずっと考えてみていただきますと、これは日米安保条約によって日本はみずからの平和をきょうまで守ってきたと私は何回も申し上げておるわけでありますけれども、それの枠内においての整備を今後も貫いていくべきだ、これは当然のことだと私は受けとめております。
  113. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 残り時間が少なくなりましたので、少し急ぎますが、そこで日本の軍事費の増強というものには非常に今世界アジアも注目をしているわけなんです。  けさ、この「ミリタリーバランス」、これが一番新しい「ミリタリーバランス」でございますが、八九年から一九九〇年、この「ミリタリーバランス」からピックアップしたのが今お手元の数字です。  これをごらんいただきますと、日本は、これは去年ですね。去年で三百億ドル。中国は六十六億ドルですよ。北朝鮮、韓国が、両方合わせて百三十億ドル。北が四十一億七千万、南が八十五億。そしてオーストラリア、ニュージーランドで、両方合わせて七十二億ドル。インドネシアなどASEAN五カ国で七十二億五千万ドルなんです。  そういたしますと、中国を除くと、日本は一国で南北朝鮮、それからオーストラリア、ニュージーランド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、これだけの全部が合わせて二百六十八億ドルでございますから、アジアの国々が大変な恐怖感を持つ。先ほどの沖縄の海兵隊司令官が大東亜共栄圏をつくったのだというところまで言い切るようなことになる。そうしますと、日本は今軍縮方向だということを、あなた、午前中お認めになったわけですね。私は、だから軍事費を伸ばさないということが大事なのですよ。  これはこっち側をごらんください。ドイツがございます。ドイツ、右側に四つありますが、その下の方の左側のジャーマニーですね、これの五番目をごらんください。一九八八年、西ドイツは二百九十一億ドルでしたが、一九八九年には二百八十五億ドルに減らしているのです。削減をしているのです。つまり、この質問の冒頭に、NATOとワルシャワ体制の問題を申し上げました。あれは細かに中身を申し上げておりませんが、しかしその短距離核、いずれにしても核千発、両方で。そして四百万を超す軍隊が対峙しているというあの状況の中で、そして、そういう実力の状況は残っているのだという防衛庁側の説明もこれまであったわけでございますが、その中で西ドイツは、一九八八年の二百九十一億ドルから一九八九年の二百八十五億ドルに削減をしてきている。それがヨーロッパの大きな変化の中でのドイツの姿勢なんです。同じ奇跡の復興をした日本でありますし、これから九〇年代は米ソの対決というものが米ソ協力という方向の新しい方向に参りますと、経済大国になります日本と、それから統一ドイツ、そしてECあるいはEFTAまで入れたヨーロッパ大連合の中のドイツというものの姿勢というのは、これは世界情勢に大変大きな影響を持つわけです。  そうしましたら、日本は、これだけのアジアの国々から恐怖の念を持って見られております状況を考えますならば、私は軍事費の削減をやるべきだ、そのことが世界の人々に日本の姿勢を示す一番正しい方向だ。なぜ日本で軍事費の削減ができないのですか。これは去年ですから、ことしの一九九〇年度の予算を入れますと四兆一千五百九十三億ですから、昨年度の三兆九千百九十八億円に対しましては二千三百九十五億の増、六・一%の増ですね。これをひとつ、ぜひ冷静に見詰めてほしいのです。  そして先ほど来、潜在的脅威というもの、そして冷戦構造はまさにフィクションだ、これは見解の違いですからいろいろございます。いろいろございますけれども、しかし、冷戦構造というのはフィクションででもやらざるを得ぬのだと、こういう言い方をしておる、防衛庁は。そうしますと、この防衛予算の日本の異常な伸び方というものは、これはやはりどうしても抑えなければいかぬ。でありますから、平成三年度の防衛予算を組んでいく、そういう際に、この厳しい、全世界から見詰められております状況というものを、総理、いかがですか、私は、やはり軍縮というものを目指された、日本は軍事費を伸ばさぬ方向に明確な方向づけをしていく、そして平和の日本方向を示すということが大事だし、そしてそれを、ASEANにしろあるいは世界のそうした途上国に対する経済協力に力を尽くしていくということが、日本の本当の平和を保障していく、安全を保障していく道だ、こう考えます。総理見解伺います。
  114. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御質問の中にありましたように、アジアの他国に恐怖の念を与えるようなそんな態度やそんな行動をしてはならぬということは、これはもう全くそのとおりでありますから、そのようなことを考えてやっておるわけでは全くございません。  それからもう一つは、日本の場合は我が国の平和と安全を確保していくためにはどうしたらいいか。まことに節度あるつつましやかな防衛力できょうまで平和を守ってきたわけでありますから、米ソがお互いに軍備管理、究極的には軍縮方向に向かって、今冷戦時代の発想を乗り越えて動きつつあるというこの好ましい動きは率直に私は評価しておりますけれども、その中にあって、日本日本に与えられた国民の生命と安全をきちっと守っていくという、その目標に向かっての自衛力の保持をしていかなきゃならぬ。それはアジアの国々に恐怖を与えるものであってはならぬということは当然のことでありますから、改めて、専守防衛であり憲法の精神に従って文民統制に服していくものであるという大原則も改めて確認をさせていただきたいと思います。
  115. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 だから具体的に、これだけアメリカからも軍事費を伸ばしては好ましくない、アジアからも全部こうきているわけですよね。だから具体的に、ドイツが対立をしておる、鋭く対立をしているドイツがみずから軍事費を減らしている。なぜ日本ができないのか。なぜ日本ができないのかということを説明してほしいのですよ。いかがですか。
  116. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 何度も申し上げますようですが、軍事力で、力で対決をしておる構造のときに、アメリカやソ連やあるいはその一方の国境線に対峙をしておる国が、どのような軍事力をもってみずからの責任が果たし得るかという考えを持つことは、それぞれの国の主権に属する問題ではないでしょうか。そして日本はそのときに、力でもって世界の秩序づくりの中に入ろうとしたこともございませんし、入れる能力もなかったわけだし、それは考えてはいけないという基本原則できょうまでやってきたわけでありますから、世界の対立がだんだん対話へ変わっていくのはいい方向だといってこれは評価もいたします、望みますけれども、だからといって、つつましやかに日米安保条約のもとで守ってきた条件の中で、日本もイコールして、すっと下げていかなければならぬということに直ちにつながるものではないという考え方は、何度もここで申し述べさしていただいております。
  117. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 中国の六十六億を入れて全体が三百三十億ぐらいですね。日本が一国で三百億をもう超しちゃったわけですから。私は、これはひとつ下げるという方向での要求をあくまでもしていきたいと思います。  そこで総理、あなたは九日の日に楢崎委員質問に対して、日米安保条約は「日米両国の本当に友好基本条約的な実質的な意味を持つと言って言い過ぎではない」、こういう表現をしておられる。私たちは、日米友好は極めて大事だ。日米は極めて大事な関係だ。ですから、日米友好というのを基本にしております。日米安保条約の問題についても、これは憲法に従った方向を目指すべきだという考え方を持っております。これは長期の時間がかかると思いますよ。で、社会党としては、日米平和友好条約をという提起もいたしてきております。ですから、あなたがここで友好基本条約、つまり政治同盟的な方向にということだと思うのです。私はこれは賛成です。だから日米平和友好条約、そういう方向に向かって私は行くべきだ、こういうふうに思います。いかがですか。
  118. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 日米安保条約に対する考え方は、私はただ単に軍事面だけを主張したり、日本の安全保障だけに役立つものではなくて、昭和三十五年にこれが変わったときに、名前自身も相互協力及び安全保障条約と、こう変わっておるわけでありますし、両国の有する自由な制度を発展させていこう、そして福祉の条件も上げていこう、経済協力もしていこう、いろいろなことが書いてあるのですから、私は実質的にこれは相互協力及び安全保障条約であって、日米友好の、経済協力も、福祉の条件の向上も、自由な制度の拡張も含めた、基本的には実質的に友好条約的なものである、そういう考え方を持っておりますから、それをお答えをさせていただいたわけでありまして、そのとおりでございます。
  119. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 これはこれから世界の大きな変化アジア変化、そういう中で今言いましたような軍事的なものを薄めていく、政治的なものにしていく、そのことが日本のこれからの方向としては大事だ、こう思います。長期の問題として、これをさらに多極化していくこの情勢の中で追求をしていくことを私たちとしては主張しておきたい、こういうふうに思います。  そこで、今九〇年代の大きな流れの方向を見ますときに、例えば欧州復興開発銀行がつくられました。これは昨年、ミッテラン大統領が、つまりフランス社会党のミッテラン大統領が提起をしたときは、ポーランド、ハンガリーというのがアルシュ・サミットにおける援助の方向だったわけです。しかし、それを今度は八九年の大変化の中でさらに進めていきました。この欧州復興開発銀行というのは、ミッテラン大統領の、つまりフランス社会党の大統領特別経済顧問をいたしておりますアタリ氏が座長をしてこの復興開発銀行というのを設立に持ってきたわけです。  つまり、今世界の全体を見ますと、米ソというのは戦後体制を今変えようとしている、その中でそれぞれ苦悩しております。そういう中でこの新しい秩序というものをつくることは、イギリスのサッチャーさん、新保守主義と言われるサッチャーさんではもう出てこないのですよ。あるいはブッシュさんも、そういう新しいヨーロッパの秩序、世界の秩序というものについては今まだ出せないでおる。そうしますと、ソ連、それから東欧、それからヨーロッパ側というものの全体を今リードいたしておりますのは、欧州大連合にいたしましても、フランス社会党のミッテラン氏なんですね。あるいは、この間もしましたアジア経済の問題につきましても、APECと言われるアジア・太平洋経済協力会議をリードいたしておりますのは、これは提唱してまいりましたのはオーストラリア労働党のホーク首相なんです。午前中も触れましたが、あのヨーロッパの大変革というものをリードしましたのは、七〇年代のドイツ社民党のブラント首相であった。このことについては御異論はないと思います。  そういう意味では、今この欧州の社民、ヨーロッパ社民が今世界の新しい秩序の方向を出してきている、リードしてきている。そのことをひとつぜひ今の大きな動きの中で——じゃ、日本アジアの中で孤立しないでいく、そのためにどうすべきか。  そこで、あなたがソビエトの新聞にも、この日ソ改善についての意欲的な方向というのをソ連紙に回答というのが新聞記事で出ております。この中であなたが言っておりますことは、つまり「欧州政治問題の基本的解決がみられた上で全欧安保協力会議プロセスが開始されたことを想起したい。ソ連が「新思考」外交を積極的にこの地域にも適用し、これらの問題の解決にこれまで以上に貢献することを期待する。」つまり、アジア・太平洋の問題と絡めましてあなたが言っておるわけです、ヨーロッパでやったように。つまりヨーロッパにおける大きな変化、それは、先ほど言いましたような七〇年代の西ドイツのブラント首相、それからこの全欧安保会議、これが非常に大きな一つのベースになるわけですね。あなたはこれをアジアでも、全欧安保協力会議のようなものをアジアでも提起してほしい、こう言われた。  あなたは、ゴルバチョフ氏が来年日本に来るという場合に、ゴルバチョフ大統領の提案を待つということなのですか。これは宮澤さんもそういうことを、第三の道だなんというのを探しちゃいかぬ、ゴルバチョフがどういう提案をするかを待て、こういうことを言って自民党の中でも波紋を呼んでおりますが、あなたの言っておりますことに対しては、あなたもやはりゴルバチョフ氏の提案を待っておるのですか。これに対して日本が積極的に、これは後ほど最後のところで聞きますが、つまり検証ができないままに軍事力近代化され、強められておるという前提を置いておるわけでございますけれども、この全欧安保会議のようなものをアジアでもという場合に、あなた自身はアジアでどうしよう、どういう形で対応しようとしておるのかということをお示しいただきたいと思います。
  120. 中山太郎

    中山国務大臣 委員お尋ねの件につきましては、実はゴルバチョフ大統領が来日をされる前に日ソの外相会談が行われることは既に両国で合意済みでございます。そういう中で、今から十日ほど前でございましたか、仙台で行われました軍縮会議に出席されたソ連の外務次官がシェワルナゼ外務大臣の私あてのメッセージを持参されまして、その中で次のような問題点が伝えられました。  つまり、シェワルナゼ外務大臣の訪日の日程が三月ということで昨年の九月の国連総会で私との間に合意を見ておりましたけれどもソ連の国内事情であれが延期されておりますが、次の来日時期については、目下ソビエトとアメリカの中で事務的な作業が詰められている米ソ首脳会談、これが終わるまではこの準備作業のため大変多忙である、これが終わった時点でシェワルナゼ外相の訪日時期をお伝えしたい、これがメッセージの第一でありました。  また、外相会談の具体的な議題につきましては、ソ連側からシェワルナゼさんの御意向として三つの議題が伝えられました。その一つには、アジア・太平洋における平和の問題、こういうことでございまして、日本政府としては、そのメッセージが全然先に具体的な事務相談なしの話でございましたので、そのメッセージを私が受け取って、日本政府としてはこれからどのような議題で日ソのいわゆる協議を進めていくかということについて検討中でございます。そのような状況でございますから、ゴルバチョフ大統領が来られるまでにいろいろな安全保障の問題、平和の問題についての外相間での議題が協議される可能性は極めて高いと私は認識をいたしております。
  121. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 いよいよ時間がありませんが、最後に、午前中一番最後のところで防衛庁側からソ連の新しい装備や近代化というものについて説明がありました。しかし、それが去年のヨーロッパの大変化の後か、こう言ったら、それはわからぬ、検証できてない、こう言う。ところが、それを前提にして、ソ連ゴルバチョフ政権以後も極東におきましては大きな軍事の削減等が行われておりません、むしろ新しい装備や近代化等が図られておりますので、潜在的脅威はあると考えざるを得ません。検証できないでいて潜在的脅威はあると考えざるを得ません、こういうことではいけないと思うのです。  だから、安全保障会議、これからざっと開くということでございますが、総理、最後に、こういうフィクションで国際情勢を考えてはいけない。だから、本当に真剣に九〇年代を展望する、世界を展望する中での日本の平和の方向、そしてそれがアジア緊張緩和に役立つそういう方向を打ち出す、そのためには防衛庁の、役所の議論をただ受けるということではない、政治家としてのリーダーシップをあなたに強く要求をいたします。その点について決意を伺って終わりたいと思います。
  122. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 具体的にアジア・太平洋地域の安定と平和のためにどのように対処したらいいのか、私もしっかりと検討をし、対処してまいる決意でございます。
  123. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 終わります。
  124. 越智伊平

    越智委員長 この際、嶋崎譲君から関連質疑の申し出があります。川崎君の持ち時間の範囲内でこれを許します。嶋崎譲君。
  125. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 外務大臣、御苦労さんでございました。きのうの夕刊、けさの新聞などで、ウルグアイ・ラウンドの農業交渉に関連して、政府筋が二十二日発表した記事として、EC諸国とアメリカとの間にあった今までの農産物輸入障壁、まあ障壁という言葉は原語が何と使っておるかわかりませんが、それを関税化して、そして今までのECとアメリカとのいわば対立していた局面を、ECが妥協するという働きが始まったという記事が載せられております。したがいまして、アメリカにも農業の保護政策があるしECにも保護政策がありますが、我が国の場合の米問題がまさに最後のとりでと言ってもいいぐらいに国際的に孤立化していくおそれが出てきた、こういう情勢判断が報道されております。  そして、それに対して、参加されました外務大臣は、我が国の今日までの国会決議その他の状況からして今までどおり変わらないとおっしゃった後で、今後の対応を協議しなければならぬと非常に微妙な発言をされて、これが今までの政府のアメリカや世界に述べてきた主張、考え方に微妙な変化が起きるきっかけではないか、このように報道されておりますが、これについて外務大住並びに総理の御見解をただしておきたいと思います。
  126. 中山太郎

    中山国務大臣 先般、お許しをいただきまして私が出席してまいりました非公式の閣僚会議におきましては、私は、日本政府として、国会のたび重なる御決議及び日本政府の閣議の決定に基づいて、先生も御存じのように、食糧の安全保障という立場から日本の農業の考え方について述べました。なお、それについて同じように安全保障の立場から食糧安全保障の面で意見を述べられた国がオーストリア、スイスでございました。そういうことで、我が方の国の方針というものは既に決まっておるわけでありますから、それを正式な会議で発言をしておりますけれども、この流れの中で、アメリカのヒルズ代表とECのアンドリーセン副委員長との間でこの農業政策についての激しい議論があったことは事実でございます。  それで、食糧安全保障に関する事項については特に議論はそのときございませんでした。しかし、これからの、このガット・ウルグアイ・ラウンドというものがどのような経過をこれから十二月の最終ラウンドに向けて引きずっていくか、流れていくかということにつきましては、私は、この七月の中旬に開かれるTNC会議と申しておりますが、この実務者のネゴシェーターたちの会議で大枠を決めなければ、十二月の最終ラウンドでの合意は難しいというのが各国の出席した閣僚たちの感じでありまして、それに向かって努力をするという申し合わせが行われました。これから、日本政府としては、十五項目にわたるすべての項目についてのマキシマムパッケージでこのウルグアイ・ラウンドを成功させようという考え方で臨んでおります。  以上がすべてでございます。
  127. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今のような微妙な変化が、特にアメリカとECの間に新しい妥協点が出てくるとすると、七月のTNCですか、この会合に臨む、実務者会議など、十二月に向けて我が国が今日まで国会や政府が決めてきた基本方針であくまでも臨むということには変わりませんね。総理、いかがですか。
  128. 中山太郎

    中山国務大臣 お説のとおりでございます。
  129. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 では、今の基本的な態度を改めて確認をさせていただいて質問に入ります。  私は、日米構造協議問題を集中的に扱わせていただきたいと思います。先般も総括質問に際しまして構造協議問題に入りましたが、二、三の課題を抱えておりまして体系的に議論を進めることができませんでした。きょうは、少し整理して議論をさせていただきたいと思います。  最初に、今度の中間報告日本の側も中間報告を出した、アメリカの方も中間報告を出した。そして、いよいよ七月に最終報告に向けていくという、日米双方がそれぞれの構造問題について一定の判断を下したというのが今度の中間報告の性格でございます。日本だけじゃなくて、アメリカも今後努力すべき、大統領自身がイニシアチブをとらなければならぬ課題をお互いに確認した。そこで、このような日米双方が今日の段階でお互いに、日米間の経常収支のインバランスから始まった構造協調が今の段階で新たな中間報告をお互いに出すというふうに至ったのには、それなりの歴史的経緯があると思います。  その歴史的経緯は、五〇年代—六〇年代の日米構造摩擦、七〇年代の構造摩擦、そして八〇年代の構造摩擦と、歴史的に見ますと大きく三つの段階。その三つの段階のうちの初めの五〇年代ー六〇年代と七〇年代に関しては、これは二国間で商品、初めのうちは繊維などの軽工業を中心とした貿易摩擦でした。七〇年代に入りますと、日本の基幹産業の貿易摩擦でした。鉄とか自動車とかカラーテレビとか工作機械とかに始まりました。そして、NTT、つまり電電公社の電気通信の調達をめぐる摩擦という意味で、七〇年代になると日本の中のビッグビジネス、大きな基幹の産業をめぐる摩擦に変わりました。八〇年代に入りまして、これがいよいよEC・日本日本・アメリカ、全体を含めての新たな世界的な構造調整の段階に入って、各国の財政経済政策をお互いに問い直すというのが八〇年代に入った世界の摩擦の構造であり、特に日米においてもその摩擦が八〇年代に拡大してきたところに今日までの経緯があると思います。この点はどうですか。そう思いますか。これは御確認できますね。通産大臣ですかな。どなたかな。どちらでもいいです。
  130. 武藤山治

    武藤国務大臣 私も、大体においてはそんなような経過をたどっておると思います。
  131. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこで、いよいよ八〇年代に入ってからの日米貿易摩擦というのは、この構造は、私は三つの側面があったと思います。  一つは、日本がアメリカに輸出することによってアメリカの経済に大きな影響を与えるという摩擦。これは日本の技術や日本の商品がアメリカよりも比較優位であって、こっちの方がすぐれていて、そして向こうが、アメリカが押されていっているという側面。これにはアメリカなりにいろんな法律で対処したり、いざというときは政府日本に向かってきて二国間で、政府間で対処する、こういう対処の仕方をアメリカはやってきた。これが貿易摩擦の一つの側面。日本が輸出する場合に起きた摩擦。  二番目の側面は、今度はアメリカの方が日本よりもすぐれているのに、日本に輸入しようとしたら日本に入ってこないということをめぐる摩擦、これが第二の貿易摩擦の側面であります。  三番目の貿易摩擦というのは、まさに国際収支のインバランス。アメリカの赤字は減ってはいるが、依然として日本との関係では日本は黒だ。日本も確かに減ってはいるが、お互いに努力して減ってはいるが、依然として日本は五百億ドルの黒を抱える。このいわば経常収支をめぐるマクロの経済を頭に置いた摩擦というものに対して中長期にどう対処するか。  この三つの構造が日米構造摩擦の三側面と言えるのではないかと思いますが、異議ありませんね。
  132. 武藤山治

    武藤国務大臣 三側面というか、私は、それぞれ絡み合っているというのが正確な表現ではないかと思います。
  133. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 特に三番目のインバランス問題は一、二と絡むわけですから、だから中長期に見れば三番目には国際収支問題のインバランス問題というものを解かなければならぬ。しかしそれには、今の日本の輸出、それからアメリカからの輸入に関連する摩擦を解かなければ第三番目は解けないという意味で密接不可分であります。  さて、今度の中間報告は、アメリカ側の中間報告は、この八〇年代の日本がアメリカに輸出するということをめぐってアメリカが負けちゃう。その負けちゃうことに対して日本にばかり言うんじゃなくて、アメリカも自分たちの体質を変えなさいと我が日本側がアメリカに言うた。財政赤字というが、アメリカは貯蓄率が低いんじゃないですか、したがって貯蓄率に対して努力しなさい、アメリカの製品は日本に参入するというが、表現は悪いが買う物はありはせぬ、だから皆さんも生産性を高め、良質の物をつくるための努力をしなさい、そのためにはアメリカの働く人たちの教育も含めてアメリカ自身の構造を変えなさいという提案がアメリカ自身の、今後は大統領のイニシアチブでやりましょうという申し合わせがアメリカ側の中間報告の意味するものだと思います。  したがいまして、私のさっき言った第一、日本の輸出に対して、アメリカがそれによって比較優位でやられていくということに対して、アメリカ自身も対抗していくためには内部の体質の改善をしなければならぬという形でまとめ上げたのがアメリカ側の中間報告、こういうふうに理解しますと、日米構造摩擦の第一の側面に対応したのはアメリカの中間報告的対応、こうなると言えると思います。  二番目の、今度はアメリカが日本に入ってくるというときに起きる構造摩擦に対して、今日本が中間報告でまとめた。こういうふうに構造摩擦の側面を相互、日米が受けとめた、貿易摩擦の側面を受けとめたことによって、アメリカ側の中間報告日本の中間報告ができた、こういうふうに現段階の中間報告を整理して議論をしていく必要があると思うのですが、今のまとめは異議ありませんね。
  134. 武藤山治

    武藤国務大臣 大体私もそのように受けとめております。
  135. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 さて、そこでお聞きしますが、この間の総括のときにお聞きしましたが、アメリカは今度の日米構造協議についてストラクチュラル・インペディメント・イニシアチブという言葉を使っているよということをお聞きして、大蔵大臣も外務大臣もちょっとまあ、そういうことになりました。このような構造協議問題をアメリカがストラクチュラル・インペディメント・イニシアチブと表現したのはいつからですか。
  136. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先生御指摘のようなストラクチュラル・インペディメントという言葉が最初に出ましたのは、去年の五月のブッシュ大統領の声明でございます。
  137. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 昨年の五月にアメリカ大統領が日本に向かって、さあ協議しましょうという呼びかけに際して使われた言葉です。そういう意味で一年前の新しい言葉です。EC諸国では、九二年統合をめぐって三百項目の今調整中です、金融、財政。ここにはインペディメントと言っていません。八二年にアメリカが日本の構造障壁について書いた文書、アメリカに対して日本がやはり壁があって、そしてそれをどうするかという提言をしたことがあります。そのときにはジャパニーズバリアと言っています。ツーUSトレードと言っていますから、アメリカの商業貿易に対して日本のバリアがあると言っている。バリアというのは漠然と広い。今度はインペディメントですから、かなり厳しく、ここについて壁がある、障害があるという判断に立った言葉としてストラクチュラル・インペディメント・イニシアチブという意味をとらえなければならぬのではないか、こう私は思いますが、僕が一方的に言っただけで、多分そうだとおっしゃるしかなかろうと思いますが、どうですか。
  138. 中山太郎

    中山国務大臣 大体同じような考え方でございます。
  139. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これが重要なのです。  そこで、日本には、名は体をあらわす、こういう言葉があります。日本側は今度の日米構造協議を、日米構造協議というふうに通産省の役人が翻訳したか外務省の役人が翻訳したか知りませんが、そういう形で日本じゅう報道されているのです。ところが、アメリカは去年のいよいよこの協議に入る寸前に大統領が日本に向かって、今までになかった新しい構造障壁をお互いにイニシアチブをとってなくすために責任を持って努力しよう、こういう呼びかけをしたのでありますから、このときのストラクチュラル・インペディメントという今から議論する構造問題というのは非常に重大な意味を持っている、こう思います。  そこで、お聞きしますが、イニシアチブというのはどういう意味でしょう。
  140. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 イニシアチブというのは日本語でなかなか訳しにくい言葉でございますが、日米構造問題協議は、日米両国がそれぞれの構造問題に自発的に取り組む、話し合っていくという意味でイニシアチブという言葉を使っておりますが、これは日本語でこなれた言葉として私ども協議というふうに訳しているわけでございます。もちろん、日米の正式にこれを合意いたしました昨年のサミットにおける宇野元総理とブッシュとの声明におきましては、イニシアチブという形で訳しております。
  141. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ニューズウイークの東京支局長に人を介して聞いたのでは、このイニシアチブというのは普通、日本世界的な改革の構想みたいなものを出すときにもイニシアチブという言葉を使いますが、このイニシアチブというのは、ここで総理にお聞きするのですけれども日本側が責任を持って指導性を持ちつつ今後対処する、イニシアチブをとる、そういう意味と理解できると思うのです。だから、ブッシュ大統領は、いよいよ構造協議問題が始まる前に総理にお電話を入れて、どうぞ構造協議問題が今から始まるが、ひとつ日本総理として、私もアメリカでイニシアチブをとるが、日本もイニシアチブをとっていただかなければならぬのでひとつよろしゅう頼むという意味でお呼びになったと私は思います。総理、いかがですか。
  142. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 両国でお互いに抱えておる問題について指摘をし合い、話し合い、そして共通の認識に至るように努力をしよう、そういう協議だったと私は受けとめ、理解をし、またブッシュ大統領もそういったことでお互いに力を合わせることがアメリカの議会に起こっておる保護主義の台頭を抑えるために日米両国にとって共通の問題ではないか、こういう極めて真摯な話しかけがございましたので、私もその点は率直にそのとおり受けとめて努力をしたつもりでございます。
  143. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大変御無礼な言い方ですけれども、この間の総括の質問のときに、ストラクチュラル・インペディメント・イニシアチブというのが今度の構造協議よと私が御提案をさしていただいたとき、総理外務大臣もちょっとあいまいだった記憶がございまして、ひょっと総理がアメリカに行ったときにブッシュ大統領が、昨年の五月の段階から新たな協議よ、今までと違う新しい段階の協議よという決意を込めて、いよいよその最終段階に入ったという意味で、やっぱり総理のイニシアチブを、責任をお互いに持ってそれに対処しようということについての腹合わせというか、気持ちの合わせをして、さあ入ろう、そういう手だてをなさったという理解を私は今にしてするわけであります。そういう意味で、総理は当然、我が国を代表して行かれているわけですから、そういう自覚をお持ちであったろうと思います。  そういう意味で、イニシアチブというのは、日本の構造障壁、構造上障害になっている、アメリカの参入や第三世界の参入や、日本の国内の大企業に対して中小企業が参入する、こういう一連の参入についての障壁をどう取っ払っていくのか、どう改革していくのかという課題を秘めた構造問題、それにイニシアチブをとる、総理日本の生活者の立場、消費者の立場に立って日本経済の改革をするというふうに今日まで発言をされてきているのはそういう意味と私は理解しておりますが、それでよろしいですね。
  144. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 日米関係というのは私は非常に大切な二国間関係であると思っておりますから、その二国間関係の中に貿易のインバランスをめぐってのいろいろな不協和音が出ることは、できる限り双方の努力で取り除くようにしなければならぬという点は私も全くそう思っております。  ただ、そのことは、ブッシュ大統領に言われてとか、あるいは去年サミットの後の日米首脳会談でこの構造協議が始まったからやろうということじゃなくて、委員も御承知のように、前川レポートを通じて、日本が国際社会の中で相互依存関係を深めていくためには、もっと内需を拡大して輸入を伸ばして、世界経済秩序の中でより調和のとれた国になっていかなければならないという発想に立って、体質改善を始めてきております。そして、それはあくまで生活者あるいは消費者と言われるすべての国民の皆さんのための利益を考えて努力をしてきたそのことと結果において全く相交わる部分が多いわけでありますから、より一層努力することは内外ともに、両方についていい結果が出るものであると、私はこう受けとめて、真剣に取り組んできたつもりでございます。
  145. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 最後に、総理の決意を、議論した結果をお聞きします。少し聞いておってください。  今度の中間報告を受けまして七月に最終報告をつくることになっているが、アメリカ側は、この七月の最終報告をつくるに当たって、今度の中間報告をより具体的に七月の最終に持っていくために、早く次の会議、七月の最終を決めるまでの間に早い時期、例えば六月などを提案しているやに聞いております。それに対して政府側はもう少し遅くてもいいんじゃないかとか、外務省は割と早くてもいいんじゃないかというようなことが世に報道されておりますが、アメリカ側の早期にという七月の最終案をつくるための提案に対して、政府はどう対処するつもりですか、総理大臣。これは総理大臣じゃないですか、これは事務官の判断じゃないでしょう。
  146. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 昨年のアルシュ・サミットこおきまして、宇野・ブッシュ声明におきまして、この日米構造協議が始まった際に、一年以内に報告書を出すということになっております。一年以内といいますと七月の中ごろになるわけでございますが、最終的にいつにするか、そのための会議をいつにするかということは、現在日米間で打ち合わせ中でございまして、現在のところ決まっておりません。
  147. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 恐らくかなり早目に六月の時期に会議を追ってくる、こう判断をなさっている方がいいと私は思います。それは今からの議論でわかると思います。  今度の中間報告を私は、結論を先に言いますと、アメリカ側の中間報告日本の中間報告、この両方を比べてみた性格の違いを今申しますが、その中間報告は、アメリカから見ると、日本の中間報告は、今度七月に最終報告が出るのを始まりと見ているのであって終わりと見ているのではないと思う。ここから日米の構造協議問題がさらに具体化していくという、つまり七月は最終という受けとめ方をするのではなくて始まりと受けとめるかどうか、これは今後の日米問題を判断していく場合に、非常に最終答申の判断が難しくなると思います。どう判断されていますか、総理。だれでもいいです。
  148. 中山太郎

    中山国務大臣 日米間で最終的に協議を調えて最終報告が出る、こういう段階になりますと、一応構造調整協議というもの、それは七月の最終報告で一応の両国間の、政府間の話し合いというものは終わる、ただそれで、日本政府が自主的にこれから実施をしていく事項がいろいろ法律事項も含めて多数ございます。だから、現実にこの構造上の問題を解決していくための努力は、これから以降努力を続けなければいけない、このように考えております。それがすなわち両国間の信願を確立していく極めて大事な手順である、このように考えております。
  149. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ずっと日米構造協議の報道を見てみますと、この協議の中の特徴があると思うんです。その特徴は、アメリカの対応に対して日本側が受けとめていくうちに、だんだん問題が絞られてきました。絞られた一つは公共投資、いま一つは大店法、非常にシンボリックに二つが絞られてきております。この絞り方は、アメリカ側のスーパー三〇一条に考えている基本理念を交渉上具体化したというふうに私は理解します。  どういうことかというと、アメリカは三〇一条を発動するときには相手の国にスケジュール化を提案し、この時期までにできるなと、スケジュール化を前提にして、そして結果としてこれがやれなかったときに三〇一条を発動するという、三〇一条はそういう基本理念のものであります。ですから、今度の中間報告について、さあ公共投資は十年間で一〇%にするかと初めて日本はかわした。正しかったと思う。そして二つの提案で今後対処しよう、これは恐らくその成果を向こうは見ると思います。同時に、大店法についても、どんな法律改正をしてどんなスケジュールでどんなふうに撤廃に持っていくかということを最後に示さなければ三〇一条を発動するぞという構えでいるという意味で、日米の協議とそれから三〇一条をリンケージにして、両方を結びつけつつ交渉してきていると、こんなふうにとらえるべきではないかと私は思いますが、日本政府側の判断はいかがです。
  150. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 昨年の七月の宇野・ブッシュ声明におきまして、この構造問題協議というものはスーパー三〇一とは全く別の枠組みのものであるというふうにはっきり書かれております。
  151. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 日米構造協議がまとまったのは四月六日だったですね大体、四月初めでしたね。三月三十日にアメリカが九〇年外国貿易障壁報告というものを発表しているのを御存じですね。
  152. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 承知しております。
  153. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それには米国産品の参入を妨げている諸外国の市場の障壁ですね、これを挙げておりますが、そのリストアップの中では我が国が一番多くて、対日関係三十五分野が名指しされて、これが書かれているという事実、御存じですか。
  154. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 承知しております。
  155. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 その中で八月までに、この中には今の日本の中間報告に盛り込まれた項目がほとんど入っております。そして、それについて最終的にこう向こうは言っています。構造協議の進捗状況について言及し、これから七月までどのような協議が進むかという進捗状況について言及して、「深く根付いた(日本の)経済慣行や政策、制度が日米貿易不均衡是正を妨げている」というその事実は変わらぬとした上で、「「四月の中間報告、七月の最終報告のスケジュールに沿った具体的行動とその確たる計画」を日本に求めている。」と書いてあります。読んでいますか。確認していますか。
  156. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 三月末の貿易報告にはそのような記述がございます。
  157. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 だから、非常にはっきりしているのですよ。三〇一条を腹の中に依然として持っているわけ。これはちゃんと世界の品目を全部挙げて、そして日本の問題の障壁はこれこれこれと挙げて、そして四月から七月までの間にどのような具体的行動と計画を出すかを日本に求めると書いてあるのですから。そういう意味で、七月の最終報告は日米の構造障壁協議の始まりであって、そのときが終わりだというふうに理解してかかってはならぬ、こういうふうに私は思います。いかがですか。
  158. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先ほど先生から言及いただきました三月末の貿易報告は、当然のことながら構造問題協議に関する中間報告が出る前のものでございまして、その出る前におきまして、中間報告及び最終報告に向けて日本側で努力をしてほしいということを言っているわけでございます。
  159. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そのとおり。けさの新聞でも、例の著作権問題については別枠でけじめができていますし、それから談合問題についても一定のけじめ、後でやりますが、けじめが出ていますから、向こうが三十日に書いたときの項目が全部また改めてということはありません。しかし、その構えを私は申し上げたのであります。  さてそこで、今度の中間報告に対して、アメリカ代表団が日本の中間報告についてコメントしている。これは大臣、みんなお読みですね、外務大臣も通産大臣も。ここの、まず「貯蓄・投資パターン」の最後はこう言っています。「日本政府が、公共投資への支出の時期及び水準についての積極的かつ具体的な目標を示した場合にはじめて日本の投資・貯蓄パターンや、経常黒字への影響を評価することが可能となる。」非常に具体的なものを出すことを前提にして締めくくってあります。  それから、「流通」の部門で申し上げますと、最後にこう言っています、これは大店法の改正も含めて。「出店及び店舗の増設に係る重要な問題の多くは大店法自体の完全な廃止」、こう言っていますよ、向こうは。「完全な廃止なしに対処されていることとなろう。しかしながら、万一、このようなことにならないことが判明した時は、」廃止の方向が決まらぬときは、「米国政府は、より思い切った法的解決の必要性に関する当初の見解に戻ることとなろう。」こう書いていますから、もう大店法についてのスケジュールと法案をきちんと出して、いつ廃止するかを言わなかったら初めからやり直しよというふうに表現している。そう書いてある。この翻訳が間違っていれば別ですが、日本語の訳はそう書いてある。  それから六ページに、今度は「排他的取引慣行」の最後にも、「これらの計画が、日本における排他的取引慣行を除去するために、よりはっきりとした具体性と実際の実施により、実質化されることが重要である。」排他的慣行を実質化するというのは難しいですよ、今から後で議論しますが。アメリカ政府は、「構造問題協議の過程で、これらのコミットメント及び施策、並びにその実施につき討議していく。」と書いてあります。だから、また先でやるんよ、こんなものは一朝一夕でいく話じゃない、先もやるよ、そしてかなり具体的なことをこう述べています。等々です。  もう一つ言っておきましょうか。「価格メカニズム」のところでは、アメリカ政府は、「日本における価格水準を注視し続けることは、構造問題協議の他の分野における改革が、有効に進められているか否かを監視する有用な手段であろうと信ずる。」こう言っている。だから、価格問題も排他的取引やそのほか系列取引などを通じて、価格メカニズム問題について一定の方向が出てくることを今後とも監視するということを言っているわけです。  ざっと四つのケースを挙げました。これらは、まさに最終報告は終わりではなくて始まりよ、長いこれからの日本の社会の構造改革を意図している、消費者の立場、中小零細の立場から見て日本をどのように改革していくかということの、いわば監視を意味している言葉と受け取られますが、その意味で初めであって終わりではない、こう認識すべきだと私は確信を持ちますが、いかがです
  160. 中山太郎

    中山国務大臣 先ほども先生のお尋ねにお答え申しましたとおり、この最終報告ができました時点で、日本政府がみずからのイニシアチブで国内の関係法令の整備、これを行うことによって消費者の利益のさらなるものを深めるために、また国民の暮らしが一層豊かになるように努力することが始まるわけでありまして、これから続いていくわけだろうと考えております。
  161. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 外務大臣は九〇年代の課題と御認識なされたようでありますから、その意味では私と意見が一致します。  さてそこで、今までこの集中審議では貯蓄・投資バランスに関連した土地政策それから公共投資、これほかなり集中審議で議論がありました。政府も土地政策については、土地基本法を中心にして今後土地税制の改正、土地の利用についての今後の新しい対応などを含めて新たな方向に持っていくという議論を政府側はお互いに確認されました。また同時に、公共投資についても、私が質問した配分率なども含め、そして消費者、国民生活中心の社会資本の充実に力点を移しつつ新しい公共投資の対応をするということも中間報告どおり確認されてきましたので、きょうはこれらの質問は省かせていただきます。  今まで委員会で出ていない競争政策上の措置、この問題に絞って今から少しお尋ねをさしていただきたいと思います。  アメリカ側の要求は、日本の一市場というものを開放するに当たって、日本の市場は自由な公正な競争はどうも行われていないよ、日本の社会の仕組みは自由な公正な競争が行われていない、それは独占の規制が緩くて独占の弊害に基づいているな、言葉をかえて言うと。独占禁止法という法律はあるが、その運用が十分でないために公正な競争について独占の規制が十分でない、こう判断をして、独禁政策に問題があるな、こうにらみをつけて、そして、今までは何でも企業中心、産業中心にやってきた日本経済政策を消費者の立場に立ってもう一遍見直すという方向にすべての日本の社会の仕組みを、独禁法をてこにしつつ、政府側の今までの対応を含めてもう一度検討しなければならぬのじゃないかな、こんな問題意識で中間報告に臨み、政府側の中間報告はそういう問題意識を確認をしてまとめたと理解いたしますが、いかがですか。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕
  162. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 今回の日米構造協議におきまして、日本の市場の自由かつ公正な競争秩序というものが確保されているのかということを中心に彼らの議論を聞き、我々の考え方を述べ、その結果、独占禁止法の運用をより強化し、かつ透明性をより確保するということで、政府の今回の対応といいますか方針が構造協議で盛り込まれたわけであります。  ただ、一言申し上げておきますが、今委員が、日本の独占が問題になるということを言われましたけれども、それは正確ではございませんで、独占禁止法の中の主としてカルテルとか不公正な取引方法の分野が問題になっておるということでございます。
  163. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 法律は独占禁止法なんですから。日本は七〇年代に独占の段階へ行っちゃったんで、集中は終わっているのです。だから、あとはカルテルと不公正取引が問題になっているから七三年に法改正したのですよ。そんなことはわかった上で言っておるのです。  さてそこで、少し具体的な問題に入ります。  この中間報告で問題になっておる排他的取引という場合の一つの例として、建設省の談合問題、これは、アメリカ側から発表された、ワシントン総局発表の項目の中では非常に重要な、不公平取引のモデルないしはカルテル的なものが温存される可能性があるということを含めて、建設談合というのは非常に重視していました。ところが、最終の中間報告には皆さん御承知のように消えました。書いていない。  そこで建設省にお聞きしますが、建設大臣、この建設談合問題に関するアメリカとの交渉の経緯、そして現在までの建設省がとった措置、今後の協議の見通しはいかがですか。
  164. 望月薫雄

    ○望月政府委員 建設業をめぐりますいわゆる談合問題につきましては、いわゆる構造協議の中での話題というよりも、むしろ昨年の通商法三〇二条調査の中、あるいはまた日米経済委員会のフォローアップなどの場でしばしば話題になってきておりますが、いずれにしましても、建設事業の請け負いに当たりまして、いわゆる独禁法違反は絶対容認しないというのが我が国の基本的態度であるということは十二分に説明をしてきているところでございます。  ただ、そういった中にもかかわりませず、今先生おっしゃるように、残念ながら最近幾つかのいわゆる独禁法違反事件というものが出ているわけでございまして、こういったことにつきまして、我が国としては、いささかもいわゆる独禁法違反というものは容認しないんだということをるる説明すると同時に、さらに、独禁法あるいは談合問題をめぐりまして向こうから具体的に、入札に当たってあらゆる段階で談合行為を行わないという証明をするような行為をするとか、あるいは指名停止がいささか軽過ぎやせぬかというような指摘もなされている現実でございますが、これらにつきまして私どもとしては、やれることは徹底してやっていこうという姿勢を示しております。  具体的にそういったものを受けまして、あるいはまたアメリカから言われたからということではなくて、そもそも厳しく規制するということからして、私ども、ことし二月でございますけれども、いわゆる入札に当たりましては入札心得というものを示しておりまして、これは、入札受注者が入札参加するに当たりましていろいろな段階で遵守すべき事項を決めたものでございますが、この入札心得というものを、改めましてしっかりと、独禁法違反というものはいささかも認めないんだというその趣旨をさらに明記して、一層の周知徹底に努めたというのが現在の段階でございます。
  165. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今の報告ではっきりしたように、建設大臣、中間報告では談合という問題は消えて、排他的取引慣行として独禁法の強化問題の中に入っちゃったんだ。だから抽象的になって出ていないんです。ところが、具体的な話はどうなったかというと、二月一日で、今まであった入札心得——政府が業者を指名するでしょう。それは、業者は一定程度の水準の業務内容の高さがなければならないし、そのような建設者は指名していいでしょう。そのときに、業者はそれぞれ心得ていなけりゃならない入札心得の中に、独禁法に違反するようなことはしてはならないとは今まで書いてなかったのに、二月一日に書き入れたんですよ。これまた構造協議の動いていることと密接な関連があるなあと思わざるを得ない。  現にアメリカ側が発表したあの例のワシントン発のこれを見てごらんなさい。これには入札行為の問題は何回も、これには検察も手を入れるから始まって大変なことが書いてあって、これがみんな今度は中間報告では消えているのです。とりあえず今回は独禁法改正の問題で処理しようということで、入札心得に独禁法を守るということを入れて当面は処理できたと思います。当面は処理できた。アメリカの入札の場合は、公の公正証書というものを出して、そしてそれに確認するんですよ。おれは独禁法違反のようなことはせぬという公の文書を出してから入るのです。今まで日本は何をしておったか。いろいろ巷間うわさされているようなことが問題になっている談合問題があって、そしてアメリカから指摘されてここへ入れたんだが、そこで公取委員会の昨年の十月の報告書の中に、米軍工事入札談合事件というので公正取引委員会は警告を発して、そして課徴金を取った。ところが、その課徴金が物すごい安くて、アメリカ側は、こんな程度の課徴金なら談合というのはしょっちゅうやっても損せぬという仕組みになっておるじゃないかということで、アメリカはアメリカの独禁法に則して日本に損害賠償を請求した。その日本の談合問題で取った公取の課徴金の金額と、アメリカが損害賠償で請求した金額は幾らになっていますか。
  166. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 一昨年の十二月になると思いますけれども、今先生御指摘の事件について課徴金の納付を命令いたしてございます。それの課徴金の額のトータルでございますけれども、約二億八千万と承知しております。
  167. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 アメリカ側の損害賠償の請求額。
  168. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 アメリカ側がこの事件について損害賠償を求めるという動きがあることは、これは私ども新聞などで十分承知いたしているところでございますが、日本の独占禁止法あるいは公正取引委員会の仕事と直接関知しているところではございませんものですから、その点については答弁を御容赦いただきたいと思います。
  169. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 アメリカの損害賠償請求額は五十億です。五十億。日本では課徴金はわずか二億八千万で済むわけよ。ところが、そういうような課徴金じゃ何も損したことにならぬから、実際にはその対象になったのは七十名ですが、それを組んだのは百五十社、その百五十社はどうしたかというと、五十億払ったんですよ、もう。何で払ったかといったら、けさの新聞にもありますように、アメリカは今後独禁法を域外に適用する、日本で起きたものを、アメリカの国内に下請があったりなんかしたらアメリカに、それに適用するぞという解釈でやろうかという構えでありますから、この日本の談合でひっかかった人は、アメリカに会社やその企業を持っているとすれば、そこを盾にとって損害賠償してやろうかという動きがあったものだから、アメリカという土壌でやられたらかなわぬということになりまして、百五十社がみんな金出して五十億払っちゃったんです。これで一件落着なんです。このことは、アメリカから見て、米軍の公の工事の入札に当たって日本の業者たちは談合をやって、そして値段を高くつり上げて、そして自分らのカルテル的ないしは公正でない取引のようなことをやっているということの具体的な証拠として、五十億現に損害賠償を取ったんですから、こういう前提に立って日本の排他的取引が問題になっていると考えなきゃなりません。これが一つ。  それからもう一つ。先週の金曜日かな、木曜日の閣議で、アメリカのスパコンに関する輸入手続の改正をやったということを閣議で決定すると新聞に出ていましたが、やりましたか、総理。大臣、知っていますか。通産大臣、知らなきゃいかぬのじゃない。これは文部大臣と関係があるんだけれども
  170. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先週木曜日のアクション・プログラム実行委員会で新しい手続を決定していただきました。
  171. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これは次官会議で決めるんですから、閣議に報告はないんですか、どうなっています。
  172. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 この問題は次官会議ではございませんで、次官会議の直後行われましたアクション・プログラム実行委員会というところで決めさしていただいたわけでございます。
  173. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 じゃ、官房長官を呼ぶのをうっかりしたけれども、閣議には報告していないんだな。その結果を閣議に報告していないんだな。新聞じゃ閣議に報告と出ましたが、閣議に報告していないのですね。
  174. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 次官会議の決定ではございませんので、閣議には報告されていないと思います。
  175. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 さて、このスパコン、木曜日にその会議で決まりましたスパコン問題というのは、アカデミックディスカウントという問題です。アカデミックディスカウント、つまりアメリカやヨーロッパの国々では、大学が物を購入する場合でも政府の調達ですが、そういう場合は市場価格並みに購入するのであってディスカウントしてはならぬというのが、先進諸国の商取引の慣行であります。  さて文部大臣、このスパコンは大変な値引きで購入されたと聞いているが、何%値引きしたか御存じですか。
  176. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま御指摘のスーパーコンピューターに係るアカデミックディスカウントでございますが、国立大学及び国立の大学共同利用機関等ではスーパーコンピューターの使用が大変多いものでございますから、昭和五十八年以来多くのコンピューターをレンタルであるいは買い取りで導入しているということでございます。その際に価格はどうなっているかというお尋ねでございますけれども、これはそれぞれの事情によって一律でございません。実態がそれぞれのコンピューターによってまた違っておりますから一概に申し上げるわけにいきませんけれども、導入時点でのいわゆる定価と調達価格を比べてみると、一般的に相当の値引きが行われているということは事実でございます。
  177. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 時間がありませんから、経過だけ言いますと、この300MFLOPSの、大学は国立大学、言いませんが、八五%値引きなんです。だからいつかの富士通の一円入札、あれと同じなんです、八五%値引きなんですから。それでアメリカは怒っちゃったわけ。これはスーパー三〇一条問題。我々のスパコンだって入れたいと。しかし、政府調達のときにそんなアカデミックディスカウントされて、世界じゅう禁止しているのに日本だけ何でそんなことするんだというんで、三〇一条を適用しちゃいかぬというんで、日本側とも協議した結果が先週の結論が出たものです。その結論は、スーパーコンピューターの導入手続を変えたはずです。文部大臣、御存じですね。これは文部大臣じゃないわ、外務大臣だ。外務大臣、外務省です。相互にみんな、外務省がこれやっていますから……(中山国務大臣「文部省予算ですから」と呼ぶ)文部省予算ですけれども、手続は外務省です。
  178. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 スパコンの政府調達に関しましては、文部省、国立大学という観点からいえば文部省が多いわけでございますが、その他はいろんな研究所でいろいろ買っておられます。  手続ということで説明さしていただきますと、先ほど申し上げましたように、アクション・プログラム実行推進委員会というところで新しいスパコン導入の手続を先週の木曜日に決めさしていただきました。
  179. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これじゃ、国民は聞いていて何のことかさっぱりわからぬですよ。こんなふうに手続を変えたんですよ。変えたのは三点。どういうふうに変えたかというと、このスーパーコンピューターを大学とか公の施設、政府が調達するに当たっては、今までのものは不明瞭だから、公正な競争で入札をして購入するという方向に手続を明文化した、これが一つ。その際の価格は市場価格を前提にして、民間です、現に民間にはこのスーパーコンピューターはいっぱい入っておるのですから。これは時間ありませんから通産に聞きませんけれども、民間に入るときは高くて、国に入るときには七〇、八五%も値引きしているということになりゃ、国際競争から見たらアンフェァだということになるのは当然です。だから、値段は市場価格並みにするということが二番目。  そして三番目、国の予算のあり方として、ここが大事なんです。この手続に関連して予算は、これからは国立大学の予算、これは大蔵省並びに等等になりますが、こういうつまり共同利用研究所や国立のすぐれた研究機関が必要なコンピューター購入に際してディスカウントした、買いたたいて八五%も、ただみたいな購入の仕方をさせない予算のあり方がアカデミックディスカウントという問題なのです。だから、先進国はみんなそういう必要なものについては国の予算を組んでいるということです。  したがって、そういうことを三つ決めて、そのときには、もう一つ重要なのは総合評価せにゃいかぬ。安ければいいというものじゃないのですから、いい機械であるか、そしてすぐれているか、先進的であるかを見た上で、値段は市場価格並みにするという総合評価でやる。しかも理論値だけで計算するんじゃなくて、実際にテストをしてみてこれでいいといった場合に、そこまで決めてこの改正手続をやったのです。大変いいことを僕はやったと思う。我が国のアメリカから見た排他的取引ないしは政府のやる調達というのは、米軍がやった場合を見たら非常に課徴金が安いということがわかった。片や、政府の購入するものは物すごい安いものだ、民間は高いものを買わされている。こういう不公平があってはならない国際競争にとって不公平だということで手続をとったのです。これが今の問題です。これはスパコン問題。  こういうふうにして、今までの政府の調達と言われるいわば予算のあり方、手続の問題において、アメリカから見ればどうしても公正ではないよと言われることがあるがゆえに、そのメカニズム、これを改革せい、これがアメリカ側の排他的取引ないしは不公平な取引問題の一つの具体例です。  今、建設談合とスパコンと例を挙げた。けさは、著作権の問題について我が国が一定の態度を決めたとげさの新聞一面に載っていますね。だんだん変化していますが、これから相当な覚悟でそういう問題を処理せにゃいかぬという具体例です。  排他的取引はここで終わって、今度は系列取引へ行きます。  系列取引については、中間報告をごらんになればおわかりのように、系列取引というのは英語で書いたら何と書いてあるかというと、ケイレッ・リレーションズと書いてあるのです。アメリカはわからぬということです。日本社会の中にある系列というのは翻訳する言葉はないと。しかし、系列というのはわからないが、日本で系列と言っているからというのでケイレツ・リレーションズ、こう言っている。これだけ日本の社会は不透明だとアメリカは見ている、いい悪いかは別として。  さあ、この問題に関連して、日本の社会の中には、アメリカから見ると企業主義、企業の集団、そして片一方に集合主義、グループをなしている。企業主義と集合主義が集団化しておって、そしてアメリカの個人に対してもうとにかく戦艦、駆逐艦で競争するようなものですから、アメリカは吹っ飛んじゃうわけ。負けるわけよ、と向こうは見ているわけ。したがって、日本の企業主義、集合主義というものの裏には系列取引というものがあるんじゃないかというのが今度の中間報告に出ている系列で、皆さん方が改革しますと書いてある。その中に大店法も入るんだ。  最初に聞きますけれども、大店法はいつ、どのような内容で法律を出す予定ですか。
  180. 武藤山治

    武藤国務大臣 この五月中に運用改善のいろいろの、これは去年からもうある程度決まっておる九〇年代の流通ビジョンに基づいた、それをある程度踏み込んだものをこの五月中に決めまして、それを実施をいたします。その実施をした経過も踏まえながら次の通常国会、ことしの暮れに召集される予定の通常国会に法律を提案をしたいと思っております。  中身については、なお一層いわゆる調整期間を短縮することと、それから輸入品の売り場についてはなお一層拡大をすることと、それから商調協その他についてより透明性を確保することと、それから地方のいろいろの出店規制について国でやると同様に緩和をしていただくような訓示規定みたいなものを設けるということ、大体そんなようなものを中身として考えております。
  181. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 なぜそんなことを質問したかといいますと、大店法廃止の目標を立てて、途中の手続をスケジュール化していくということを中間報告に約束しているのですから、今大臣のおっしゃるようなスケジュールになるでしょう。ところが、そのスケジュールでそれをこなすときには公取は大変なんです。公取は今度は、今までの卸、小売から品物が来ておったのに対して、でかい資本のスーパーが入ってくるわけだ。そこへ外国の品物が参入して安いのが出てくるということになると、廉売というのがあり得るのです。安売りだ。それから押しつけ売りというのがあるのです。協賛金なんか取ってやるというタイプのものがあるのです。これは不公平な取引なんです。  だから、そうなると、中小商店の方は損してえらい目に遭うのですから、地元の中小商店というものを守りつつ大店法をなくするということのためには、公取としてきちんと対応しておかないと、その法律を出したときには、町の中小商店はもう救いようがなくなる。だから、法律を出すときには当然、それは通産が出すでしょう、そのときには公職と連絡をとった上で、本来大店法が持っていた、大資本の企業が進出して中小商店が犠牲になるのを規制してきた今までの独禁的性格の手続法を廃止するなら、今度はそれを救済するための手だてを一方で、独禁なら独禁で対応しつつ法律が出てこなかったら、これはもう中小商店はたまったものじゃないです。その意味で、法律を出すという時期の問題と、それに関連して公取はどのような対処をするか、委員長、いかがですか。
  182. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 大規模小売店舗が、中小の納入業者あるいは競争業者である地元商店等との関係におきまして、市場における有力な地位をいわば利用いたしまして各種の不公正な取引方法を行うということは、当然想定されるわけでありまして、この問題につきましては、現に独占禁止法ないし下請法等の運用によりまして、違反事実が起こりました場合には現実にいろいろな措置をとってきております。今回大規模店舗法の改正が行われてどういう状況になるか、今の段階で私ども予断の限りではございませんけれども、その場合の対応といたしましては、法律上の措置というよりは、むしろ現在の独占禁止法に照らしてきちんと対応すべき問題であると考えております。
  183. 武藤山治

    武藤国務大臣 一つちょっと、多分よく御存じのことで御質問いただいていると思うのですが、いわゆる大店法を改正したら、どんどん大型店が出店をして地方の中小小売商がつぶれてしまうというようなことは、私ども考えておりませんので、あくまで大店法の趣旨は、中小小売商の事業活動のいわゆる機会の確保ということも考えながら大型店の出店を調整をする、こう書いてあるわけですから、その点はひとつ誤解のないようにお願いを申し上げたいと思うのです。
  184. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 新潟なんかは、きのうの新聞だ、新潟市の商店とスーパーの関係が、これはモデルケースなんです、外国の入る。これはやはり中小商店は大問題になっています。だから、おっしゃるようにその配慮はしなきゃならぬが、そういう問題性をはらんでおるよということは御存じのとおりなので、だから十分に検討を先でしていただかなければならぬ課題だということだけ申し上げておきます。  そこでお聞きしますが、日本の社会にあるケイレツ・リレーションズ、系列関係、系列関係というのは大きく言って二つあるね。資本中心にして、そして証券会社、そういうタイプ、それから今度は生産会社、巨大企業を中心にしたグループ、大きく言ってこの二つのタイプが系列のタイプだと思う。  さて、この系列というものについて、アメリカは、排他的取引の傾向があるよ、また同時にカルテル的性格を持つ温床になるよというふうににらんでいるわけだ。だから系列をどうかせいと言って、中間報告に幾つか大店法を初めとしてその他の問題が出てきた。さあ、我が国の系列取引というものを政府はいいと言っているのですか、改革すべきだと言っているのですか、どっちですか。
  185. 武藤山治

    武藤国務大臣 私どもは必ずしも悪いとは思っておりません。アメリカに対しても理解を求めるように今努力をいたしておりますのは、例えば自動車の系列取引、正直、部品の工業がそれぞれデザイン・インからメーカーと入って協議をしながらそのよりよい部品をつくって、そのアセンブリーによって日本の自動車はすばらしいものになったわけですから、これはもっとアメリカは評価すべきだということを私どもは主張いたしておるわけであります。現に一九八七年、アメリカとの間でいわゆる自動車部品のMOSS協議が行われました。そのときにそのレポートの中に、アメリカも同意の上でこれに対する評価は十分出ておるわけであります。また、最近はGMが従来の部品会社との契約を一年契約から長期契約に変えまして、やはり自分たちの考え方と部品をつくる会社の人たちの考え方は同じようにしていったらいいんじゃないかということで、デザインをやり、そしてその後それを長期的に契約を結んでいく、こういうこともアメリカも現にやってきているわけでございまして、これは私はいい意味の系列だと思うのです。  ただ問題は、先ほど御指摘のように、いわゆる独禁法にあるように排他的なことをやっておる系列というものがあるとするならば、これはもう独禁法上も問題がございますから、そういうものは排除していかなければいけない。そこで私どもは今産構審にお願いをして、どういうふうにしたらそういうことがなくなるかガイドラインをつくっていただこうということで作業を進めておりまして、これは七月までには十分間に合うと思っております。
  186. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 きのうの日経のトップ記事は、ナショナルが今までやっていた系列販売を見直すと言っているのです、ナショナルが。つまり、系列取引の中には、例えば三つぐらいのケースを挙げますと、第一ケースはこれです。つまりナショナルが、ナショナル製品を扱ってくれる卸や小売が売り上げの中で占めているシェアを見て、去年よりも一〇%上がったとか、時には五〇%以上扱っているとリベートを出すのですよ。そして自分たちの販売のルートを独占化するということによってよそを排除してしまうわけです。それを松下はやめたと言ったのです。やめたと言っていることは、やはり今度の構造協議問題で日本の系列のメリットじゃなくてデメリットを改革しなければならぬということの一つの証左だと僕は思う。  第二番日のケースを言いましょうか、まあどっちでもいいです、第二番目。今度は生産、やはり金融それから保険、こうつながるのがあるんだよね。例えば典型的なものを言うと、三菱、東京海上、キリンビール、こう行くわけね。住友、保険会社、アサヒビール、こう行くわけね。そういうふうに資本に従って系列してビールまで、まあ大体同じような値段だからどっらを選んでもいいということもあるよ。あるが、そういうつまり系列によって販売網を、それぞれシェアを独占するという形で現実に行われている。これが第二番日のケースね。  三番目には、例えば家電なんかで言いますと、家電がナショナルセンターというものを持っていて、そしてナショナルセンターが卸や小売を飛ばして特別に自分の店を持って、そこで独占的にその品物だけ売る。これにはもちろんリベートが動く。すると、よそのものよりも独占化しているという意味で排他的取引になる。  こういう一連のものが系列取引と言われるアメリカ側の見方からすれば、やはり日本の独禁の運用上問題があるというデメリットとして理解しなきゃならぬ。今度中間報告で書いた意味は、メリットを強調するのではなくて、確かに長期性、系列化しているということはお金がお互いに安定して流れる、計画性ができる、そうすると技術革新に対応できる、研究できる、いい品物をつくれる、安くつくれる、そういう意味で系列は必ずしもすべてマイナスじゃないが、アメリカの言っているのは、排他的になっている、例えば外国から参入しようとしてもそれはできない、競争にならないと。そういう第三国、例えば韓国などのテレビやその他が入ってきたいと思ったってシャットアウト食っちゃう。そういう意味で、開かれた日本にしては閉鎖的だというそのデメリットをどうするかというのが、系列関係に関連する中間報告認識だと思う。そういうふうに私は理解します。通産、公取、それぞれ言ってください。
  187. 武藤山治

    武藤国務大臣 先ほど私が申し上げたメリットは、生産部門は案外あると思うんです。ただし流通部門に参りますと、今御指摘のように、不公正取引であったり、また地位利用でいわゆる強制的なことをやったり、あるいはまた銘柄を一つの物しか売れないようにしたり、あるいは今の話でリベートあるいは派遣店員、いろいろな問題が流通部門には確かにあるわけでございまして、この点を重点にして、先ほど申し上げたそういうことを排除するにはどうしたらいいかというガイドラインをつくるようにということで今私ども作業を進めておりますし、公取の方からも御答弁があると思いますが、公取でもガイドラインを今作成中だと承っております。
  188. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 系列問題については、今委員がおっしゃいましたように、今回の日米構造協議で彼らがケイレツ・リレーションシップスと言っているのは、その企業集団の二つの問題であります。もう一つ、広く系列と言われる場合は、今委員がおっしゃったような流通系列の問題もあるわけですが、これらも含めまして、先ほど通産大臣も御言及になりましたけれども公正取引委員会といたしましても具体的なガイドラインというものを示す。  それからもう一つ申し上げますと、この種の問題につきまして、今回の構造協議報告書にも書いてございますけれども、やはり日本の取引社会の実態そのものについて欧米の目から見て非常に不透明で、あるいは事実を余り知らないという面もあるわけでございまして、このような問題につきましては、定期的に公正取引委員会として、ありのままの実態を調査し、公表し、日本の取引社会のありのままの姿をやはり広く世界に示していく、こういう努力もやはりしていかなければならないと考えております。
  189. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 系列はしたがって、私の言うのは、ECもそれからアメリカも、日本の社会を見ていると、今や経済としてはキャッチアップした後ですから、大国日本になっているのですから、その大国日本が国際市場経済における開かれた市場という観点からすると閉鎖的だというふうに言われているものは何と何と何かというのが、排他的取引であり、系列なんですから。系列は幸いに我が国経済成長にとって非常にプラスのメリットを持っていたことは事実。しかし、これはヨーロッパにはそのまま適用できる性格のものじゃない。いいところだけとるでしょう。アメリカは現に始まっていますから、さっき言うMOSS協議なんかで。しかし今問題になっているのは、日本の社会が先進国の国々と同じように、見える自由な市場であるということ、普遍的な性格を持った社会であること、それと同時に、日本社会の持っている歴史的伝統というものでくるもの、それを両方世界に見え、国民に見えるようにせにゃいかぬ。現に日本は、それらは全部、排他的であれ何であれ企業中心であって、消費者の立場に立っていないという批判があるんですから。現に、卸、小売という日本的特殊流通過程、それから今のような系列化が行われれば、高い物、いい物であっても高くつく。それは消費者の側にとっては新しい価格メカニズムの問題になる。というわけで、今度は世界に開かれた普遍的な改革と伝統をどう受け継ぐかという課題が中間報告に課されている課題です。よほど見えるようにアメリカに説明しないとわかりません。僕はわからぬと思う、ケイレツ・リレーションは、と思います。  それで、経済企画庁は価格メカニズム、現実のいろんな、まあ六項目についていろんな調査をなさることになり、いろいろ各省の価格メカニズムの価格差問題というのは相当データが上がりつつあります、まだ最終報告になっていませんが。それで、今日の価格メカニズムというものの内外価格差、こういうものの現状をどう見て、今後どうしようとしているか、企画庁の方。
  190. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 内外価格差の問題は、これは今回の日米構造協議におきましても一つの大きな項目として取り上げられておりますが、そういうような日米間における問題以前に、これは我が国の国内問題としても、消費者の立場、また国民生活の立場からいたしましても是正をしていかなければならないということで、政府といたしましても取り組みを続けているところであります。  御案内のように、ことしの一月には五十二項目にわたるところの内外価格差対策ということを決定をいたしまして、内外価格差の実態調査、またその公表、規制緩和、独禁法の厳正な適用等による競争条件の整備、予算、税制、関税の引き下げ等による輸入促進策、あるいはまたNTTあるいはKDDの料金の引き下げ等、適切な価格、料金政策を進めているところでございます。  今後ともこの内外価格差の是正については積極的な取り組みを続けてまいりたい、このように考えております。
  191. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 価格差で値段が下がるんですか、高どまりですか。これから上がらぬという意味じゃなくて、少しは下がる可能性、国民には期待できるんですか。
  192. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 内外価格差というのはいろいろとらえ方があるわけでありますが、これはまあ主として外国と日本との比較の問題としてとらえられておりますけれども、国内におきましても各地域におきましての物価差、価格差というものはあります。いずれにいたしましても、企画庁といたしましては、無論今御質問のように、それはその高いところに価格差をなくすというようなことは当然考えているわけじゃありませんので、物価を引き下げる方向において価格差を縮めてまいりたい、このように考えております。
  193. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 まあしっかり努力をしていただきたいと思います。  もう残された時間、十数分です。最後、独禁法に入ります。  今まで述べた、議論をしてきました排他的取引、それから系列取引、価格メカニズム、こういう一連の問題は、これまさにすべて独禁と密接不可分であります。そういう意味で、今度の中間報告は六つ項目がありますね。土地それから公共投資その他ありますが、二つを除いて四つは全部公取と関係密接不可分だ。つまりこのことは、アメリカからいうと、独占禁止法に従って日本の社会がきちんと運用されていないのではないかというところに今日の中間報告で我々が受けとめなければならない問題意識があり、そのために法改正の幾つかの提案をするに至っている、こう私は理解しています。  そこで、今までの排他的取引、系列取引、価格メカニズム、こういう競争政策上の諸課題について、公正取引委員会は、これらの中には潜在的なカルテルや不公平な取引が蔓延して、これを日本政府が容認して市場が閉鎖的になっているんじゃないかなというのがアメリカの意見ですから、それだけにこれらについて公正取引委員会は今後どのように対処されますか。
  194. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 基本的には二つあると思います。一つは、現在の独占禁止法の運用をより強くするということと、もう一つは、その運用の透明度をより高めるということであります。で、今回の構造協議報告にも、そういった観点に立ちまして、具体的にこれからとるべき事柄について五つ、六つのことが書いてあると思いますけれども、一つは、これは立法の問題でありますから最終的には立法府の御判断にかかわる問題でありますけれども、課徴金の率の引き上げを含めましてこの制度改正を行うということであります。  二つ目は、独占禁止法の運用の強化と密接に関連するわけでありますけれども公正取引委員会の、なかんずく違反処理事件を担当しております部門の人員なり組織なり予算を強化していただく。これは既に現在提出されております今年度の政府予算案に盛り込まれております。  三つ目は、先ほどの系列問題にも関連するわけでありますけれども、消費財あるいは生産財、資本財等の各種の取引につきまして、独占禁止法上の運用をより具体的に明確にするガイドラインをつくるということであります。  四つ目は、現在の刑罰規定をより活用いたしまして、告発なり刑事訴追をより積極的に活用する問題がございます。  その他、違反事件の警告事案に対する公表の問題とか、先ほども言いました各種の実態調査を公表する問題とかいろいろなことがございますけれども、これらの問題に着実に取り組んでまいる考えでございます。
  195. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大体改正の問題点をおっしゃったのですけれども、課徴金。課徴金は、公取が出している資料、去年の一番新しい資料で、昭和五十二年から今日までの日本で取った課徴金というのは一年にどのくらいかといったら、例えば昭和六十三年をとってみると、一年間にわずか四億一千万円の課徴金しか取らない程度の運用でしかありません。日本と同じ法制度の建前をとっているECでは、日本のお金にして八八年には百億を超えています。百億を超えているのです。日本は四億です。いかに日本の課徴金制度というものは、企業にとっては、このぐらいなら何やっとってもええわいという程度の制度であるということは歴然としている。それだけに、課徴金の制度を変える、これはいいと思う。  それから人員、これは最後にしますが、一つ聞きますけれども、ガイドラインその他、今四点おっしゃいましたが、独禁法の強化という観点に際して一つだけポイントとして大事なのは、今の独禁法でいきますと、公取が告発をしたときだけ検察が動き出すという仕組みになっている。ところが、今度の中間報告では、公取が動き出さなくとも検察がみずから動き出せるという仕組み、アメリカで言うと司法省にある反トラスト局みたいなもの、そういうものを検討すると書いてあるが、これは法務大臣いかがですか。
  196. 長谷川信

    長谷川国務大臣 お答え申し上げます。  法務省におきましては、公正取引委員会等関係各省庁との間において独占禁止法違反事犯に適切に対処するための体制整備を図るなどしつつ、この種の事犯に的確に対処してまいりたいと思っております。  また、今ほどお話ございました検察庁におきましても、具体的な事件が発生した場合は、事件の規模等に応じ適切な捜査体制を整え、的確に対処するものと思います。  以上であります。
  197. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 今法務大臣のお話しになったとおりでございまして、現在、公取と法務省との関係で協議を進めております。  ただ、一言誤解のないように申し上げておきますけれども、独占禁止法違反の事件につきましては、独占禁止法によりまして公正取引委員会がいわゆる専属告発椎を持っておりまして、今回の構造協議でいわゆる違反事件について検察当局が認知で立件をするということまで言及しているものではございません。
  198. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 公取委員長がことしの二月ごろある企業の研究会で行われた講演の速記録が、上中下で載っておりますけれども、これは構造協議が始まる前です。その段階じゃ独禁法の改正は必要でないかのような御意見でした。ところが、今度の中間報告は、幾つかの問題点を今や改正すると変わってきたわけですから、その変わった際に、今言った検察が動けるような仕組み、これをつくり出すということであるとすると、EC型とも違い、アメリカとも似ているが、まあ違うでしょうな、行政罰を軸にしているのですから、新しいタイプの独禁法の創造に私はなると思いますが、それを聞いていると時間がないですから、そういう方向になるのではないかというふうに思います。  さて、今度の構造協議の中間報告に、行政指導の透明化、公正化と書いてありますね。それから政府規制の緩和、二つ目。そして独禁法の適用除外の再検討、こう書いてありますね。  総務長官、総務庁に今行政手続法の改正研究会が動いていて、六月ごろ答申の動きがあると聞き及んでおりますが、いかがですか。
  199. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 この行政指導の問題につきましては、いろいろアメリカ側からも問題が提起されてきましたことは、私が実は大蔵省の事務官時代から大変この問題で教えられたことがあることを今思い出すわけでございます。  やはり行政指導につきまして一つの限界、根拠、そしてまた、その中での公明性、透明性、このようなものを確保することは大変進んでまいりましたが、なおなお私どもは問題があろう、こんなふうに考えておりまして、もう既に行革審の答申において、最終答申においても「統一的な整備に向けて、専門的な調査審議機関を設置して検討するとともに、早期に結論を得て実施に移すものとする。」という最終答申を出したばかりでございます。  そして、委員案内だと思いますが、昭和六十年の六月には行政手続法研究会という私的な諮問機関を総務庁の中につくりまして、そしてその中間報告の概要を昨年の十月に発表いたして大方の御批判を仰いでいるところでございます。
  200. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 つまり、通産省や役所が行政指導したことによって、例えば生産の割り当てだとか販売の割り当てを、これをやると本来独禁法違反のカルテルになるのですけれども、各事業にばらばらにやらせておいて、おれは知らぬと、あとは自主的にやったんだという行政指導をやると、それから排除された人は排他取引になるのですよ。だから行政指導というものは、公取が言っているように本来法律に基づかない行政指導というのはおかしいのです、これ。したがって、それを今検討しているはずですが。したがって、今後そういう行政指導によって企業や個人が被害をこうむった場合にどう救済するか、これは重要な法律問題であります。その検討を今なさっていると思います。  最後に、そこで総理、今までの議論でおわかりのように、今度の中間報告は、ある意味じゃ明治の日本変革、第二次世界大戦後の日本の新しい憲法、そして第三回、新しい段階を迎えるような、かつて明治で開国か攘夷かと言われるほど、今までの日本の伝統的な社会の体質を世界に見えるものにするために改革する、そういう方向づけの民主的な構造改革の路線を中間報告で確認したんだと思う。その意味で、この重大な新しい時代の改革に向かって総理がイニシアチブを発揮されることを願って、最後に決意をお聞きし、質問を終わります。
  201. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御指摘のとおりに、世界経済の中で大きな役割を果たし、それなりに重い責任を負わなければならぬところに来ておる日本経済が、世界との調和をより深めていくように、そして世界との間でより開かれたものにしていくために、今度の構造協議というものの成果を踏まえて前進をさせていかなければならぬと私どもも強く感じておりますので、国会の御議論を踏まえてさらに一層その決意を固めておるところであります。
  202. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 終わります。
  203. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員長代理 これにて川崎君、嶋崎君の質疑は終了いたしました。  次に、神崎武法君。
  204. 神崎武法

    ○神崎委員 初めに、私は、日米構造協議問題についてお尋ねをいたします。  今回の中間報告につきましては、私は、現在の日米間の経済規模というものが世界経済のGNPの四〇%を占めるに至っている現実からいたしますと、日米間が悪化することは世界経済に極めて重大な支障を及ぼす、そういう意味におきまして、この経済摩擦を解消するために日米間が全力で取り組まなければいけない、その意味におきまして今回の一定の合意に達したという点につきましては、一定の評価をしていいのではないか、このように考えるわけでございます。  しかしながら、今後国内調整を進める総理の指導力というもの、責任というものは極めて大きくなったと言わざるを得ないと思います。今回この中間報告で取り上げられたさまざまな問題、その多くの問題は、私どもがこれまで政府に強く主張していたものが多く含まれております。これまでの生産者優先、産業優先の政治のゆがみがこういう日米構造協議という形になってあらわれたのではないか、私はそういう一面があると思うのであります。その意味において、ぜひとも経済構造というものを総合的に見直して生活者優先の政治に転換をさせなければならない、そのように思うわけでございます。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕  そういう中間報告の評価を前提にいたしまして、まずこの資料、交渉経過の公表問題からお尋ねをいたしたいと思います。  私は、この中間報告、それから七月に予定されております最終報告、そしてこの日米合意に基づいてでき上がるもの、これを一軒の家に例えますと、この中間報告と最終報告はいわば設計図に当たるんじゃないか、設計図に基づいて数年後に新しい家ができる、こういう仕組みになっているように思うわけでございます。しかも、その家に国民が入る、そういう家だ、私はこういう位置づけをしているのですけれども総理、どうでしょう
  205. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御指摘のように、日米双方でお互いに問題を提起し合い、お互いに議論をし合い、そして委員冒頭にお触れになりましたように、日米両国が世界経済の大きな責任を持っておる二国間でありますから、それぞれが角突き合わせるようなことではなくて、もっとずばり言うと、保護主義の台頭を抑えてもっと自由な市場経済、自由貿易体制というものをきちっと確立していこう。そのためには、きょうまでやや両国間において共通の理解を得ていなかった問題がかなりあったわけでありますから、それのおさらいをしたといいますか、すべて言い合って、提示し合って、示唆をし合って共通の認識を得たのが今度の中間報告だと思っておりますから、それにつきましては、そこで申し上げたこと、理解を示したことについては今後我々が努力をして、数年かかるのかあるいは一年でできるのか、いろいろ種類はありましょうけれども、誠意を持ってみずからの問題として努力をしていくこと、それはやはり国民生活の質を高めていくという方向にも合致するものであると私は考えますので、誠意を持って取り組んでいきたい、こう思っております。
  206. 神崎武法

    ○神崎委員 総理ははっきりおっしゃらないわけですけれども、私の理解に従って議論をさせていただきたいと思います。  私は、この設計図、日米の専門家がつくった設計図だと思います。国民はこの設計図を見て、またいろいろお話を伺って、今までの家とは違った新しい家ができるんだな、多くの国民はそう思っております。しかしながら、他方、いろいろな戸惑いも感じているのが事実ではなかろうかと私は思うわけでございます。なぜ自分の家をつくるのに隣の家の人がいろいろあれこれ言うのか、そういう戸惑いを感じていらっしゃる方もおります。そしてまた、自分の入る、住む家なのになぜ自分の意見を聞いてもらえないのか、専門家だけでどうしてつくったのか、こういう思いもあります。そしてまた、自分が想像していたのとは違う間取りとかそういう部屋の構造になっている。なぜそのようになったのか、それについての経過が明らかでない。教えてもらいたい、なぜこのようになったのか、そこを知りたい、私は、これが国民の率直な今の要望だろうと思うわけでございます。そういう意味において、ぜひ私は、中間報告だけではなくそれに至る交渉の経過についてもできる限り明らかにする、それが今一番必要なことではないかと思うわけでございます。  今までの議論を伺ってまいりましても、これは交渉ではない、お互いにアイデアを出し合ったんだ、こういう御答弁でございました。交渉ですと、確かに交渉ポジションというものがあります。手のうちを明らかにすることは交渉ポジションを弱める。従来のいろいろな駆け引きもあったでしょう。しかし、これは交渉ではない、アイデアを出し合ったというのであれば、私は、お互いにどんなアイデアを出し合ったのか、これを国民の前に明らかにすることが必要である、このように考えるわけです。いかがでしょうか。
  207. 中山太郎

    中山国務大臣 この協議を行うに際しまして、日米両国の担当者間でこの協議の内容については双方とも公表しないという話し合いができておりまして、大変残念でございますが、両国間の政府の合意事項でございますので、御了承をいただきたいと思っております。  なお、その過程ではなしに中間的に報告案を発表させていただいて、国民の御理解をお願いしたいという考えでございます。
  208. 神崎武法

    ○神崎委員 ところが、そういうふうに日米間の政府の合意で発表しないことになっているんだ、そう言いながら、実際には新聞にアメリカの対日要求二百四十項目、これが全部出ました。また、日本の対米要求八十項目、これも全部出ました。これはおかしいじゃないですか。  私は、まず、二百四十項目になるのかあるいは八十項目になるのかわかりませんけれども、こういった対日、対米の要求項目をまとめたもの、こういった資料があるのかないのか、その点を明らかにしていただきたい。
  209. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先ほど外務大臣から申し上げましたように、今回の協議は双方がアイデアを出し合って、それに基づいてみずから自主的に措置を決めたという性格のものでございます。その過程におきましていろいろなアイデアが双方から出されたのは事実でございますが、日米間で文書を交わしたというようなことはありませんで、しかもそのアイデアというのは、先ほど来先生もおっしゃっておるとおり、要求ということではなく、まさに相手側がみずからの措置を決めるに当たって参考にしてほしいというものでございます。
  210. 神崎武法

    ○神崎委員 そういったまとめた文書はないという御答弁でございました。それならば、いろいろな項目について議論がされました。項目ごとに議論を整理したメモ、これはどういう形になっているかわかりません。ワープロで打ったものかもしれません。そういったメモが当然あると思います。  例えば土地対策で申しますと、当初アメリカ側は市街化区域内の宅地並み課税の問題を大変重視した。しかし、この特別土地保有税の問題、これについていろいろ議論をし、また借地・借家の問題についても議論をした。特別土地保有税の関係では、日本側は、保有についての課税、これはもうこれ以上重くすることはできない、譲渡益課税で対処したい、こういう主張をした。アメリカ側は、いやそうじゃない、やはり保有に対する課税を強化することによって土地の供給の促進を図るべきだ、こういう議論がなされた。そして、いろいろな経過があって最終的な土地問題についての日米間の合意が成り立った。こういう経過を恐らくはまとめたメモというものが当然、大店法の問題にしても、あらゆる問題あると思います。あるかないか、この点。例えば今、土地問題でどうですか、建設大臣。
  211. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 大都市圏の住宅宅地供給策につきましては、今何かアメリカとの話の上でいろんなことをやっておるように言われておりますが、私どもは昨年の十二月の土地対策閣僚会議の方針に沿いまして、この国会に大都市法その他の宅地住宅供給策の法案を出させていただいております。これは決してアメリカに言われたからやったということではなしに、当然我々の宅地供給という基本方針に基づいてやったというものであります。
  212. 神崎武法

    ○神崎委員 私が尋ねたことに答えていない。私は、そういうメモがあるのかないのか、この点を聞いておるのですから、その点について答えてください。
  213. 福本英三

    ○福本政府委員 お答え申し上げます。  アメリカから土地利用などに関するいろんな要求のメモが建設省あたりに届いたかということでございますが、そのようなメモを私どもは全く承知しておりませんし、そういうようなメモが私どもに届いたというようなこともございません。
  214. 神崎武法

    ○神崎委員 また正確でないのですね。私が聞いているのは、そういう日米間で議論をしたその経過をまとめたメモというものが項目別にあるのかないのか、その点を聞いておるわけですよ。何もアメリカから土地問題でこういう要求があったという、要求書が来たかどうかということを聞いているわけじゃないのですよ。正確に答えてください。
  215. 福本英三

    ○福本政府委員 土地利用に関するいろんな中間報告がまとまったわけでございますが、そのまとまるにつきましては、アメリカのワシントンで開かれました構造協議の場で、要するに日米案というか、日本側がっくりました中間報告の案に基づきまして、それぞれ具体的に個別に議論しながらだんだん詰まっていったものでございまして、そのときの経過というような、そういったような文書はないわけでございます。個別にいろいろ話をしながら決めたということでございます。
  216. 神崎武法

    ○神崎委員 それでは、メモはないということでいいのですか。
  217. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先ほど私の方から、アメリカと日本との関係におきまして交換した文書はないということを申し上げました。この話し合いの過程においてメモがあるかないかということでございますが、それは第一回から第四回まで会議があったわけでございますし、それぞれ担当者がいろいろな自分のためのメモというのをつくったことは当然考えられるわけでございます。しかしながら、先ほど大臣から申し上げましたように、この会議の詳細についてはお互いに明らかにしないということになっているわけでございまして、メモの有無にかかわらず、その会議の内容の詳細についてここで述べさせていただくことは差し控えたいと思います。
  218. 神崎武法

    ○神崎委員 本当に、あるかないかはっきり答えないのですね。担当者がそれぞれメモをとっている、そうじゃなくて、交渉経過をまとめた項目別のメモがあるかないか、この点については全然お答えになっていないわけでございます。皆さん方、交渉に当たった方は優秀な方ですからみんな頭に入っていらっしゃるようですから、それではそれはそれとして、私は先ほど申し上げましたように、これは国民生活に密接に関係している事項でございますから、可能な限り交渉経過も含めて国民の前に明らかにすべきであると考えます。  その意味におきまして、アメリカ側から日本に要求した項目の詳細な内容、日本がアメリカに要求した項目の詳細な内容、そして最終報告へ向けて懸案となっている事項につきまして、当委員会に資料の提出を要求いたしたいと思います。委員長、よろしくお願いします。
  219. 越智伊平

    越智委員長 理事会で協議をいたします。
  220. 神崎武法

    ○神崎委員 今回の日米構造協議の経過を見てみますと、これは政府レベルで行われたわけでございますけれども、中身が大変民間の皆さん方に、国民の皆さん方に関係の深い中身になっております。私は、政府レベルだけじゃなくて民間も含めた日米構造協議であるべきであったのじゃないか、このように思いますし、今後もいろいろな形で日米間で協議というものが行われてくると思います。ぜひ、民間も含めた多層的な、多チャンネルの構造協議というものを考えるべきではないか、このように思います。  そしてまた、政府間というよりも、今問題になっているのは、アメリカの議会でいろいろな対日批判というものが強いわけです。その意味では政府間で議論をするというよりもむしろ、それも大事ですけれども、日米の議員同士でこの構造協議問題も含めて日米間の問題についていろいろな角度から議論をする。例えばこの国会に米国の議員を呼んで、この予算委員会の部屋でもどこでも結構ですけれども、定期的に日米の議員で討論会を行う、こういうことも、これからやはりオープンな形で議論を行うためにそういう機会も持つべきではないかと私は考えるわけでございますけれども、あわせて総理の御見解伺いたいと思います。
  221. 中山太郎

    中山国務大臣 日米の議員、議会間の意見の交換というものが極めて重要であることは、委員指摘のとおりでございます。私も就任早々にアマコスト駐日大使に対しましても、議員間の意見の交換というものが民主主義の国家においては最も重要なことだということを強く主張いたしております。なお、日本・EC間においては定期協議が議会と議会の間で行われておりまして、隔年ごとにブラッセルと東京で行われていることは御承知のとおりでございます。
  222. 神崎武法

    ○神崎委員 総理、ちょっと。
  223. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 ただいまの委員の御指摘で私も率直に答えさせていただきますが、いろいろな層において率直な意見の交換をするということは、政府だけで話をするよりも有益ではないか、そう思いますし、また事実きょうまでいろいろなしベルで行われ続けてきておると私は理解しております。  私自身も昨年までは日米議員連盟のメンバーの一人で、毎年行ったり来たりしながらアメリカの議員と忌憚のない話し合いをしておりましたし、今度も、一部野党の代表の皆さんにも御参加いただいてアメリカへ直接議員団にも行っていただきましたし、また今数名の議員の方がアメリカへも行かれて、率直な意見の交換をされております。また、アメリカ側の議員の人でもおいでになれば、私も時間のある限りはお目にかかって直接お話を聞いたり、我が方の話等もしてまいりました。経済界においてもいろいろなところで会合をきょうまでも精力的に重ねていただいておることは十分よく理解しておりますので、どうか今後とも国会においても、それぞれの人脈、それぞれのお立場で日米間の交流、日米間の討議を深めていただきますことを私は心から御期待をさせていただきます。
  224. 神崎武法

    ○神崎委員 総理は、施政方針演説並びに日米構造協議の中間報告の発表記者会見におきましても、消費者重視の政治の重要性を強調されているわけでございます。冒頭私が申し上げましたように、まさに今問われているのは、戦後の生産者優先の政治、産業優先の政治から、国民優先の政治、生活問優先の政治、消費者優先の政治というものが問われていると思うわけでございます。総理もいろいろな機会にいろいろお話をされておりますけれども、私は総理の御答弁を伺っていて、率直に申し上げさせていただいて恐縮ですが、言葉だけあって実体が見えてこないという率直な感想を持っているわけでございます。ぜひ、何を一体どうするのか、消費者重視の政治というそういう立場に立って何をされようとしているのか、この点を具体的に明らかにしていただきたい。
  225. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私が消費者重視の立場を大事にする、そう思っておりますから、思ったことは率直に言わなければならぬと思って申し上げておるのです。そして、現実に消費者重視というのは何だか目に見えてこないとおっしゃいますけれども、例えば、消費者の立場に立って物を考えるということは、生活の豊かさの実感が伴わないという御批判に我々がこたえていかなければならぬ、こう思いますので、具体的に例を言うと、内外の価格差というものがあって、もし日本の方が諸外国と比べて高い物を消費生活の中で買わされているという実態があるとすれば、それは是正していくのが極めて大切だ。この数年来その問題にも、国会挙げてと言った方がいいかもしれませんが、みんなそれは感づいてきておった問題じゃないでしょうか。  ですから私は、私の内閣になってからこれの対策本部をつくって、五十二項目にわたる問題点を指摘をして、内外価格差が少しでも是正していくように努力をしていこう、こう思っておるわけでございます。現に、それによって下がってきておるものもあるわけでございますから。例えば、昭和六十年に比べていただければ、輸入牛肉の肩肉百グラム、中は当時百六十円前後であったのが百十八円前後に下がってきておる。これは三〇%下がったわけです。同じレベルで見ると、エビが二三%、インスタントコーヒーが一〇%下がっておるというのは、これは具体的に消費者の立場に立っての政策的な結果のあらわれであって、こういういいものはどんどんどんどんと繰り返していくことが大事だと私は考えておるのです。  また、勤労時間のことについても、物価だけじゃなくて、働く人々の立場に立って物を考えると、その時間の短縮というのはやはり、追いつけ追い越せできょうまで政治をやってきた日本からすれば、欧米が到達しておるような勤労時間というものをもし当てはめることができるなれば、心豊かな暮らしを毎日してもらいたいという立場に立って物を考えると、心理かな生活を与えましょうというなれば、それは勤労時間も考えなきゃならぬ。考えたら、余った時間はどうするかという問題になりますから、そうしたら芸術や文化にも親しんでいただけるように、芸術文化振興のために、地域のために考えなきゃならぬものがあるならそういう政策も用意をして、いろいろなことを積み重ねながら、私も委員も視点を変えていえば消費者であり、皆さん全部が生活者でありますから、生活の質を高めていくためにはどうしたらいいかということは、そういうようなことを総合的にあらゆることをできるようにやっていこう、こう考えておるわけでございます。
  226. 神崎武法

    ○神崎委員 総理は内外価格差の問題で、総理の時代に物価が下がったじゃないかという具体的な例を出して言われましたけれども、しかし現実には、経企庁が出しています「物価レポート」を見ましても、昨年で日本の東京の物価水準を一〇〇としますとニューヨークでは七二、七割で物が買えるわけです。ドイツのハンブルクでは六八です。商品別に見ましても、食料品は東京を一〇〇とすればニューヨークは六九、自動車等の耐久財で七六、被服・履物等は六七、エネルギー・水道は四四ですね。運輸・通信も七〇、家賃は五四。これはニューヨークの方が日本の半額ですよ。土地利用型のサービスも三七、日本の三分の一ですよ。ちっとも下がっていないじゃないですか。  それは後でまた議論をするといたしまして、私はぜひ第一次臨調、昭和三十九年九月にありましたこの第一次臨調の答申に触れてちょっとお尋ねをしたいわけですけれども、今から二十五年前の第一次臨調の答申を読みますと、こういうことが書かれております。「行政の窮極的な目的は、国民生活を向上し、健康にして文化的な生活を実現することにある。」大変格調の高いことが書かれている。ところが、国民が今の行政に対して思っている、考えていること、これは全然違うんですね。これはある御意見ですけれどもこういう各省庁に対する御意見があります。  「通産省は近代商工業を育成強化することを目的としているし、農林水産省は農業の保護と農民の所得拡大を目的としている。建設省は建設業界のための官庁であり、厚生省は医者と病院の利益を守る官庁だ。労働省も失業者を出さないことには一生懸命だが、それによって消費者物価が釣り上げられていることにはまったく鈍感、ほとんど不感症である。文部省に至っては徹頭徹尾、学校と教員の味方であり、あえて生徒の敵になる覚悟さえ決め込んでいる。 どこの官庁にも、所管の業界の利益と安定を幾分犠牲にしても消費者のためを図ろう、などという発想は微塵もない。」こういう批判、これが私は国民の大方の今の役所に対する批判だろうと思うのです。  この中で触れられている通産省それから建設省、何か御感想があれば、どうですか。
  227. 武藤山治

    武藤国務大臣 私ども今、通商産業政策の大変大きな一つの柱として、ゆとりと豊かな心を持った国民生活実現ということをうたっておるわけでございまして、私、今少なくともそういう考え方で進めさせていただいております。
  228. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 国民のための行政をやれということでございますが、建設業者だけのことをやっておるというような御指摘でございますが、やはり建設業者を健全に育てて、それを通じて適切な公共投資をすることが国民のためになるということで、一貫性を持ってやっておるつもりでございます。
  229. 神崎武法

    ○神崎委員 私はあえてこれを引用して申し上げたのは、国民がどう見ているかということを、実態はともあれ、そういうふうに見ている、そういう視線というものがあるということをぜひ知っていただきたいという思いで申し上げたわけでございます。したがって、消費者重視の政治に転換するのだ、行政に仕組みを変えるのだというのであれば、本当に思い切った仕組みというものを変えていかなければ、私は国民の理解を得られない、このように思うわけでございます。  同じく昭和三十九年の第一次臨調の答申の中に、このような内容の言葉もございます。「また戦後も国民全体が速やかな生活水準の向上を希望していたにもかかわらず、国家としては経済自立が焦眉の急であり、その政策中心国民総生産の増強、資本の蓄積ということにあり、消費は抑制されがちであった。」途中を中略しまして、「わが国の行政機関は、いまだ消費者行政を推進するという点では十分ではなく、また行政機構はいわば縦割りであって、消費者の立場に立った、総合的、統一的な行政はやっとそのきざしをみせた段階となっている。」二十五年前にこういう指摘があったわけでございます。  この答申の意味を総理、どのようにお感じになりますか。
  230. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 おっしゃるように、第一次臨時行政調査会の答申の中に、消費者行政に関するところの勧告がございまして、それに、各省庁の消費者保護行政を統一的見地から総合調整するために内閣府に消費者行政に係る調整部門を設ける、あるいはまた、消費者行政評議会を新設し、内閣総理大臣及び関係大臣の諮問に応じさせるとともに、消費者の意見を積極的に行政に反映せしめる、こういう勧告がございました。これはその後におきまして、昭和四十年六月に企画庁に国民生活局が置かれまして、と同時にまた、総理の諮問機関として国民生活向上対策審議会を国民生活審議会に改組して設置されることになりましたし、また昭和四十三年には消費者保護基本法を公布、施行することになり、消費者保護会議を設置することになったのであります。国民生活センターというものも設けられましたし、消費者行政の問題につきましてはそのような角度から組織の面においても取り細んでおります。  もちろん、まだまだ不十分ではないかとおっしゃると、そういう面もございますし、我々もその点はよく反省をいたしまして取り組んでまいりたい、このように考えております。
  231. 神崎武法

    ○神崎委員 私は、二十五年前にこれだけの指摘を受けていながら、二十五年たってアメリカから今言われて、消費者重視の政治に、行政に転換をいたしますということを言わざるを得ないということに非常に悲しみを覚えるのです。  私は、この第一次臨調答申の中でも、消費者行政の中心機関の必要性ということがもう既に言われているわけです。これがなければだめだということですね。指摘されているわけでございます。その意味におきまして、現在各省でばらばらとなっております消費者行政を統一かつ強力に推し進めるためには、消費生活省あるいは消費者保護省というものを設置する必要があるのではないかと申し上げたいわけでございます。  欧米では、既にもう専ら消費者保護を行う省や庁が早くから設置されておりまして、フランスは一九八一年に消費省、カナダは一九六七年に消費者企業省、スウェーデンは一九七三年に消費者保護省、ノルウェーは一九七二年に消費者行政省、イギリスは一九七四年に物価・消費者保護省、これは一九七九年に商務省に物価消費者問題局を設置いたしまして保護省が廃止されたものの、権能は全く同じということでございます。アメリカは一九六二年三月、ケネディ大統領が消費者利益の保護に関する大統領特別教書を発表いたしまして、消費者の四つの権利を明確に宣言いたしておりますし、一九七九年九月、カーター大統領は政府の主要行政庁のすべての施策において消費者のニーズと利益が考慮されることを目的に、高レベルの消費者問題審議会を設置するなど、大統領みずからリーダーシップをとって消費者保護の行政を強力に推進してきたところでございます。  ところが我が国においては、経企庁、通産省、公正取引委員会、農水省等消費者行政を部分的に行っているところはあるのですけれども、これを統一的に集中的に行う機関がないわけでございます。  総理はこの消費者重視ということをおっしゃる以上、この際、既存の官庁を整理統合いたしまして、消費生活省あるいは消費者保護省の設置を真剣に検討すべきではないかと申し上げたいのでございます。さらにまた、塩崎総務庁長官は閣議後の記者会見で、消費者の声を代弁する生活環境省、この設置の問題、これをポスト新行革審の、後の行革審での対象になるという意味の御発言をされているとも伺っております。この点を含めて、総理いかがですか。
  232. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 確かに諸外国にはおっしゃいますような消費者保護の立場からの行政組織がございますが、おっしゃいますように、必ずしもそれはいわゆる我が国の省に相当するような組織ではなくて、その省のもとにあるところの局に該当するような組織というところのものも多いようであります。また、イギリスにおきましては最初そういう省をつくりましたが、その後改組したというような事例もございます。  そういうよその国がどうかということではなくて、私どもといたしましては、やはり本当に消費者保護のための行政をどのように効率的に行うかということが問題であると思います。おっしゃるように、消費者の関連の行政が各省にまたがるということは、これは当然あり得ることでありまして、また各省が連絡調整をとりつつ進めるところに本当に私は実効が上がっていくのではないか。取りまとめということにつきましては、先ほど申し上げましたように、消費者保護のための総理大臣を長とする消費者保護会議を設ける等いわばそのための中心的な組織というものがあり、また、それを企画庁が取りまとめて各省の施策の調整をするということになっておりますので、私どもは、一つの御意見であると思いますけれども、消費者保護省あるいはそのような名称の省をこの際設けるということはいかがかというふうに考えております。  なお、私は総務庁長官に今おっしゃるようなことを考えておるのかということをただしましたら、おれはそんなことを言っておらぬぜということでございました。
  233. 神崎武法

    ○神崎委員 一番消費者行政の先頭に立って頑張らなければいけない経企庁長官、消費者行政にどうも消極的ですね。総理、いかがですか。
  234. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 今例にお引きになりました第一次臨調の答申を受けて、消費者に対する政府の取り組み方、それは臨調の答申を受けてなるほどそうだということで、政府といたしましては経済企画庁にそのとき国民生活局を設置をした。同時に、国民生活審議会というものをつくって、そこでいろいろ意見も吸い上げるようにする。そうして、その三年後には消費者保護基本法というものをつくって消費者保護会議を置いた。御指摘いただいたように、アメリカにもただいま消費者諮問委員会の助言を受けて消費者問題局というのがありますし、その他御指摘になったヨーロッパのいろいろな国にそれを担当する部局もあるわけでありますけれども日本といたしましては、今の仕組みの中では経企庁において国民生活局が取りまとめる、それだけでは不十分というので、毎年、内閣総理大臣を長とする消費者保護会議において消費者行政にかかわる各般の施策を決定してその推進に努めてきているところでございますし、また、これからも国民のすべてが消費者であるという認識に立って、消費者保護基本法にのっとり、消費者の利益を積極的に擁護し、また増進していくための施策を進めなければならぬと決意をしておるところでございます。  具体的に御指摘の問題につきましては、私もよく研究をさせていただきたいと思います。
  235. 神崎武法

    ○神崎委員 ぜひ総理、前向きに御検討をいただきたいと思います。  国の消費者行政機構の整備とあわせまして、地方公共団体におきます消費者行政を専ら行う部局の設置、これは現実にはいろいろ設置されておると思いますけれども、もっとこれは強化すべきではないか、このように考えますけれども、自治大臣、いかがですか。経企庁長官は何回も出ていますから、自治大臣。
  236. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 先生御指摘のように、地域住民にとっては一番責任というか、この消費者行政の徹底を期するのは地方公共団体に期待するところが大きいわけです。この消費者保護に関しましては、府県段階ではもう既に四十七都道府県全部にこういった消費者行政の担当する課なんかが設置されておりますし、市においてもほとんど九七%以上、町村段階においてはまだ残念ながら七〇%近くの形でありますけれども、重大な関心を持って行政を推進しているということで、私たちもその推進のために全力を挙げるように指導してまいっております。
  237. 神崎武法

    ○神崎委員 ぜひ、全力で取り組んでいただきたいと思います。  次に、今回の日米構造協議背景となっている、あるいは直接の引き金となっております対米貿易収支の黒字問題についてお尋ねをいたしたいわけですけれども、現在四百九十億ドルの貿易収支の黒字が対米で、ある。これがこの引き金になったわけですが、今回の日米構造協議による中間報告、それからこれからの最終報告によりまして一体対米黒字はどのぐらい改善されるのか。人によっては一割ぐらいしか改善効果は望めないということをおっしゃる方もおりますけれども政府としてはこの点についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。
  238. 武藤山治

    武藤国務大臣 これは企画庁の方から御答弁いただくのが本来かもしれませんけれども、私の方からお答えさせていただきます。  正直、この間も申し上げましたけれども、国の間の貿易収支というのは、例えばそのときの為替の相場であるとか、あるいは両国の金利の問題とか、あるいは世界的な経済の動向とかいろいろそういうマクロ的な経済の動向によって左右されるということが私は大きいと思うのでございます。特に日米のこの貿易収支というのは、正直、日本からアメリカへ出ておりますものは、今自動車は多少私は性格を異にしていると思いますけれども、あとは例えばICであるとかあるいは工作機械であるとか、アメリカの経済を支えているものがほとんどでございます。それからいま一つは、消費財ではアメリカでつくられていないもの、例えばビデオであるとかあるいはトランジスタラジオであるとか、アメリカでつくられていないものがその大半でございまして、一方、日本が輸入しているものも最近は決して食料関係だけではなくて、製品関係がもう五割以上占めてきたわけでございまして、現実に数字からまいりましても、昨年度はその前年度と比較をいたしますと、アメリカの統計で一八・二%という輸入の伸び率を示しておりますし、その前の年度は三五%という大変大きな輸入の伸びをいたしておりますし、また昨年度の日本の輸入の金額四百五十億ドルというのは、これはヨーロッパの、私いつも申し上げますけれども、イギリス、フランス、ドイツの輸入金額とほとんど同じでございます。  お互いにそういう努力をしておっても、日本は本当に今アメリカからカナダに次いで最大の輸入国でございますけれども、にもかかわらずバランスがなかなか直らないということで今度の協議が始まったわけでございます。しかし、先ほど申し上げたようなことで現実にいろいろの角度から見ていかなきゃなりませんから、この日米構造協議によって定量的に、今一割とかいろいろおっしゃいましたけれども、なかなかそれを推定するということは非常に困難だと私は思っております。
  239. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、要するに、この構造協議の結果によっては貿易収支の黒字改善、これは数量的には計算できない、期待できない、こういうふうに理解してよろしいですか。
  240. 武藤山治

    武藤国務大臣 期待できないというより、現実に定量的にそういうものを推定するということは大変困難であると私は思っておりますし、現実にこの点は、今度の日米構造協議でいろいろお互いに話し合っている場合においても、これによって定量的に幾ら日本とアメリカとの貿易収支が改善されるかという数字というのはとても出せないということははっきり言っておるわけでございますので、この点はアメリカも理解をしておると私自身理解をいたしております。
  241. 神崎武法

    ○神崎委員 私があえてこの質問をいたしましたのは、結局、この貿易黒字がある限り、これは次次に、この構造協議は終わったにしても、また次次に今後も構造協議問題が生ずるんじゃないか、国民はそういうふうに心配しているんですね。ですからその点、いや、それは関係ないんだ、構造協議と貿易収支の改善問題は全く関係ないんだ、それならそれでいいんですよ。ところが、この日米構造協議におけるアメリカ側の中間報告に対するコメント、これを見ますと、「日米構造問題協議の主要目的は、日米両国の貿易収支及び経常収支の不均衡縮小である。」、明確に書いてあるんですね。そうしますと、貿易収支、経常収支の不均衡が縮小できなければ、結局、この記載からすれば、日米構造問題協議は失敗したということになるじゃないですか、どうなんですか。
  242. 武藤山治

    武藤国務大臣 私が先ほど申し上げておりますのは、定量的に数字を推定するということは非常に困難だということを申し上げておるわけでございまして、当然それは今度の日米構造協議の始まったそもそもが、両国の貿易の不均衡を是正するためのいろいろ経済政策の調整をやってきているけれども、それを補完する意味でやろうじゃないかということから始まったわけでございますから、現実に私どもの方も輸入拡大政策をいろいろ、今中間レポートに出しておる中にもございまして、これは着実に私ども実行してまいりますし、またアメリカに対しても、例えば先ほどもお話がございましたが、労働者のひとつ教育をしていただきたいとか、あるいは技術開発をもっとやっていただきたいとか、あるいは経営者の皆さんも長期的な観点に立って経営をやっていただきたいとか、アメリカの輸出競争力の強化のことをお願いをいたしておりますし、あるいは財政の赤字の縮小ということになれば、マクロ経済的に言えばそれも貿易収支にプラスになっていくだろうと思いますので、決して今より悪くなるとか今関係ないということじゃなくて、よくなることは間違いないと思いますが、先ほど申し上げたような数字で定量的に幾ら減るんだというようなことは私は難しいということを申し上げたわけであります。
  243. 神崎武法

    ○神崎委員 結局、これは日米両国で、数字ではお互いに言いあらわせないものなんだから定量的には無理なんだということで合意ができている、アメリカの議会もそれを了解している、これだったら問題ないと思うのですね。ところが、アメリカ側の主張を聞くと、やはり数字で幾らにしろということを言っている。共和党政権に影響力のあるパッカード博士は、これは一年間のうちに二百五十億ドル、半分にしなければ日米関係は大変なことになる、こういうことをはっきり言っているのです。また自民党の西岡総務会長は、この貿易収支の黒字は三百億ドル以内にすべきだ、こういう発言をしたということも新聞で報道されております。  政府として日米間の貿易収支に対して、この目標値ですね、上限の目標値、これを設定するお考えはあるのですか。
  244. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 そこが非常に難しい問題ですが、率直に申し上げます。  ブッシュ大統領と私がいろいろ話しましたときも、数字を挙げてここまでにいかなければいけないとかいいとかいうことを決めて事を始めますとそれを管理貿易といいます、そして、そういう管理貿易に入り込んではいけないからお互いに努力をしようと、こういうことでございました。そして、アメリカ側からも日本努力は認めて、私も、過去二年間に日本は六百十億ドルもたくさん輸入しましたよ、アメリカからだけでも百七十億も輸入しましたよ、けれども日本が輸入してもアメリカへ出ていくものもあるから、結果としてその差が五百億ドルが四百九十億ドルというところにとどまっておりますけれども、それをどこまでしなければだめだというと、これは自由貿易の精神に反するということを言いましたら、そのことはアメリカもよくわかっておるのです。  ですから、逆に言うと、日本との差が縮まらないからということよりも、日本へ物を売りたいのだ、日本がもっと買うようにもっと自由にしなさい、日本は制度、仕組みの中でアメリカの物が売れないようにしておるのじゃないか、その障害を取るのが今度の話であって、保護主義の台頭を抑えるためにできるだけ努力をしようという角度の話し合いでございましたので、数字を挙げて、目標値を決めてこれだけにしなければいけないという管理貿易的な発想は日米の、少なくとも私が関与しました会議の中では出てこなくて、それを受け入れるための努力がまさに日本の市場開放の方の問題につながってきておるのだ、私はこのように理解をし、そのように努力をすべきだ、こう考えております。
  245. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、西岡総務会長が言ったこの三百億ドル、これはどうなんですか。
  246. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 西岡さん個人のお考え、御意見だろうと思いますが、念のため申し上げますと、一九八七年、八八年、八九年とこの三年続いております数字を見ますと、毎年顕著に下がってきておるのです。そうして、対GNPの比率でいきましても、四%から三・三%、二・七%と一年に一%台ずつ下がってきておるのです。  ただ、問題は、貿易収支だけですと、日本の場合は資源のない国ですから、経常収支の方で物を見ませんと、国民生活の質を維持し、それこそ消費者の立場に立っての豊かな社会というものをつくるためにどうしなければならぬか、いろいろ複雑な計数問題等がございますので、私はここで何百億ドルにするんだということを言い切るだけの自信はございませんけれども、輸入をとにかく促進する、そして内需を拡大して景気を維持していくというこの方向を続けていかなければならない、また、現に最近の数字を見ておりますと、そのような方向に緩やかながら定着をし始めてきておる、このように受けとめさしていただいております。
  247. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、法の内容に入りまして、大店法の問題でこれは一点だけ通産大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  この大店法は大型店、中小小売店、消費者、三者の共存共栄を図ってできた法律でございます。ところが、この十五年にわたるこの法律の運用の中で、消費者の利益というものが大変阻害されたさまざまな弊害というものが起こってきているわけでございます。そういう観点に立ちますと、私は、この大店法の運用についてはこれは改善をしなければいけない、そういう立場に立っているわけでございます。例えば出店調整期間については、この中間報告でも触れられているように一年半ぐらいに短縮をする、あるいは事前商調協の審議経過及び審議結果についてはこれをできる限り公表して透明度を増していく、そういったことが要請されると思います。  そこで、ただしこれからそういう大店法の運用改善が行われている中で一番打撃を受けるのは中小小売店だと思います。中小小売店に対する活性化対策、近代化対策というものに政府は全力で取り組まなければならない、政府の責任で取り組まなければならない、私はこのように考えるわけでございます。  その場合に、考え方の一つとして、例えばアーケード、駐車場等のそういうコミュニティー設備の助成措置、それから超低利の政府系金融機関による融資制度を創設するとか、さらには、やはり中小小売店も消費者のニーズにこたえなければならない、その意味において消費者のニーズの情報を察知できるような情報ネットワークシステムというのですか、これをつくるべきだ、このように私どもは考えております。さらにまた、大型店の進出によりまして中小小売店がやむなく転廃業を余儀なくされることも十分考えられるわけでございますが、新しい事業に転換するための助成策、これも講じなければいけないと考えております。この点についての通産大臣の考え方お尋ねいたしたいと思います。
  248. 武藤山治

    武藤国務大臣 いわゆる運用改善、これは正直私ども日米構造協議でアメリカから言われる前から、昨年六月に産業構造審議会、中小企業政策審議会合同の会議におきましていわゆる答申をいただき、九〇年代の流通ビジョンというものを提言をいただいたわけでございます。それを踏まえまして、私どもの方で運用改善の方は既に考えてきたわけでございますが、その中には今御指摘の消費者の利益をより考えていかなきゃならない、こういう観点に立って、例えば今御指摘のとおり、調整期間を二年ぐらいに短縮したらどうかとか、あるいはもっと透明性を確保して、商調協のあり方などについてももっと公開をしたらどうかとか、いろいろ考えてきたわけでございますが、それをなお一層スピードをアップして一年半ということに一応今度の中間報告で私ども考えたわけでございます。  その点においては、今この運用改善をやることが、例えば二年というのを一年半でございますから、果たして今すぐそんなに大きく中小小売商の皆さんに御迷惑をおかけするようなことになるかどうかは私は多少疑問がございますけれども、いずれにいたしましても、次の通常国会を目指して、このときにはもっと短縮をしていただこうということもお願いをしようと思っておるわけでございまして、そうなってまいりますと、将来においては正直、中小小売商の皆さんの中には一生懸命御努力いただいてもなかなかいかないという方もおありかと思いますし、その辺においては今御指摘の、従来もコミュニティーマート構想あるいは今御指摘のありましたアーケードその他に対する助成措置あるいは低金利の融資、いろいろやってきておりますが、これを一層充実をしてまいりますことと同時に、あわせて、それだけでは足りない、場合によればそれこそもっと思い切った、今どうしてもおやめにならなきゃならない方も出てくるんだ、どうしたらいいのかというような御指摘もございましたが、その辺のところは、将来そういう問題が出てくるような心配があるときには後手にならないようにひとつ手を打っていかなきゃならない。この点は財政当局にもいろいろお願いをいたしていかなければならない場合が十分私はあると考えており、そのときにはそのような方向で対処していきたい、こう考えておるわけであります。
  249. 神崎武法

    ○神崎委員 大蔵大臣、今の大店法の運用改善等に伴いまして、中小小売店対策、中小小売店に対する近代化対策、また振興策というものを講ずべきだ、こういう角度からのお尋ねを今したわけですけれども、財政当局として大蔵大臣いかがですか。
  250. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは事務的にお答えをすれば、きちんといたしておりますという答えで終わるんでしょうけれども、私ども、この大店法が動きました結果どういう状況が生まれてくるのか、必ずしも今的確な想定ができません。その状況を見ながら、通産省から御相談があれば真剣に御相談に応じたいと思います。
  251. 神崎武法

    ○神崎委員 これは政府挙げて真剣に取り組んでいただきたいと思います。  次に、独禁法の問題で何点かお尋ねをいたしたいと思います。  独禁法につきましては先ほどからもいろいろな角度から議論されてまいりました。日本の独禁法については、先ほど私が数字を挙げました経企庁の物価についての国際比較から見ましても、日本の物価水準が極めて国際的には高い、そういう指摘もあります。さらにまた、経団連がまとめました「日米構造問題協議に関する見解」を見ますと、「内外価格差是正への期待」ということで試算が出ております。三つの点について、三例を通しての試算をしているわけでございますが、そのうちの一つとして、「日本の場合、小売のマージンに比べて卸のマージンが多いが、これには、返品制等にみられる業界慣行のために、小売のリスクが少なく、その分卸のリスクが多いという要因がある。従って、卸対小売比率の各国比較だけで、一概に日本の卸に無駄があるとは言えない。しかし、あくまでも一つの試算として、日本の卸対小売比率(一・一三倍)が〇・二ポイント低下したと仮定した場合の影響を見ると、消費者物価は三・四四%低下するという結果になる。」こういう具体的な試算もいたしているところでございます。  これらの内外価格差の問題の背景に独禁法の運用が甘いという点、これがアメリカ側からも強く指摘されているわけでございます。本年に入りましても、この二月、三月のビールの一斉値上げということがありました。この問題については、我が党の二見委員が本委員会でも取り上げて、公取の委員長から、現在調査中である、調査を開始したという御報告を受けているわけでございますけれども総理、こういう点を、こういう経団連の見解等を踏まえて、またビールの値上げを踏まえて、どうですか。独禁法の運用が甘いというふうに思いますけれども、どうですか総理は。
  252. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 公正取引委員会といたしましては、独占禁止法の規定並びに立法趣旨に基づきまして、従来からも厳正な執行のために努力をしているところでございますけれども、社会全般の消費者の利益を確保するという要請がますます高まっておりますから、我々としても今後予算面等でもいろいろな御配慮もお願いしながら、強力な運用を図ってまいりたいと考えております。
  253. 神崎武法

    ○神崎委員 公取委員長は今のような答弁をされたのですが、総理はどうですか。こういう内外価格差の背景に、アメリカ側から言うような独禁法の運用が甘いという点、そういうふうに思いませんか。
  254. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 独禁法の運用を厳正に行わなければならないということは、今度の構造協議のときでも実務者会議のころから話題にも上ってきた問題であり、また中間報告を取りまとめる段階においても、その運用その他の問題について正すべきは正す、厳正な適用をすべきはすべきであるという問題点を日本側でも考えてこれは述べたわけでありますから、これからもその方向に従って厳正な適用をしながら、公正な取引と消費者の立場を守るようにしていく、法本来の役目を果たしていかなければならない、このように受けとめております。
  255. 神崎武法

    ○神崎委員 ビールの問題については公取委員長は、年次報告で通常は報告されるわけですね。ことしの暮れあるいは来年の暮れに報告される、それが通例でありますけれども、国会の答弁におきましては、国会が要請されるならば国会に報告をしたい、こういうこれは極めて画期的な御答弁をされているわけでございますけれども、いつこのビールの調査結果について御報告をされるのか。
  256. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 今事務局で鋭意調査を実施いたしておりまして、今の時点で私の口からいつごろということを責任を持ってお答えする段階にも来ていないわけでございますけれども、少なくとも年末までその調査がかかるというようなことがないように、鋭意作業を急がせております。
  257. 神崎武法

    ○神崎委員 年末ですと、今までと同じ年次報告になるわけですね。それを、いろいろ論議を受けて、公取委員長としてはこの予算委員会に、委員会として必要であれば調査結果を御報告する、こういう答弁をされたのですから、もう少し時期を、今は確かに調査中ですからいつまでとは言えないと思いますけれども、おおよそのめどをここで明らかにしていただきたい。
  258. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 まことに申しわけないのですが、具体的な時期を今申し上げる段階にはございません。ただ、なるべく作業を急がせまして、今委員がおっしゃるような、とにかく早く結果を立法府として聴取したいということでございますから、そういうことを十分念頭に置きまして、作業に全力を挙げたいと思います。
  259. 神崎武法

    ○神崎委員 この中間報告によりまして、平成三年度中に独禁法を改正して課徴金の引き上げを図ることになったわけでございます。しかし、この課徴金の引き上げでカルテル抑止効果が本当に高まるのかどうかという点、この点については、私は課徴金を引き上げるのは当然だと考えますけれども、現在の公取の運用では引き上げても余り効果はないのではないかと思うわけでございます。  課徴金を徴収する場合には、まず勧告をすることから始まるわけでありますけれども、これまでの論議で明らかになりましたように、大変この勧告件数が少ないという実態があるわけでございます。昭和六十年は十件ありましたけれども、それ以降、六十一年八件、六十二年四件、六十三年六件、平成元年は三件、これが勧告の件数であります。審査件数は百九十件ぐらい毎年ありますけれども、勧告件数はわずか十件以内、そして告発件数は最近はゼロ。それに引きかえ、警告件数は非常に多いわけでございます。昭和六十年が八十件、六十一年八十八件、六十二年が八十四件、六十三年六十五件、平成元年八十七件、こういう数字からいたしますと、これでは課徴金を幾ら引き上げても抑止の効果には疑問があると思うわけでありますけれども、どうしてこんなに勧告が少ないのか、この点いかがでしょうか。
  260. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 勧告審決というのは、法律の構成要件に基づきます事実を認定した場合に、公正取引委員会の行政措置として発動するものでございますから、非常に厳格な事実の収集とその判断を委員会として行っております。これは今後ともそういうことでなければならないと思うわけでありますけれども、その場合に事実の基礎となる証拠収集あるいは情報探知の面で、私どもの率直な希望といたしましては、現在の公正取引委員会の違反事件を処理しております担当部の諸君は非常に苦労しながらやっておりますので、ここの体制の強化をぜひお願いしたいということで、今年度の政府予算案におきましても、その点の予算的配慮が盛り込まれておるわけでございます。  私どもは、そういった体制の強化と同時に、経済事象が非常に複雑化してまいりますし、運用を強化してまいりますと手口も巧妙化してまいりますから、我々の方もそういった違反摘発に関する手法を開発しながら、みずからの努力も重ねながら、法的措置、つまり審決に至る件数を今後どんどんふやしていかなければならないと考えております。
  261. 神崎武法

    ○神崎委員 消費者は公取に大いに期待をしているわけですから、ぜひ消費者の期待にこたえる行政というものを公取にお願いしたいと思うのです。  昨年の十二月に灯油カルテルの損害賠償請求訴訟の最高裁判決がありましたけれども、その中で、結局消費者側は、提訴しましたけれども敗訴いたしたわけでございます。その主な理由は、カルテルによる損害額の立証が認められなかったことによるわけでございますけれども、この判決の際、裁判長が特に判決の補足意見で、独禁法の中に損害額の推定規定を設けることを提案をいたしているわけでございます。  そこで、この私人からの損害賠償措置が効果的に活用されるよう、中間報告によりますと、適当な措置をとることになっておりますけれども、この適当な措置の中に、独禁法二十五条に損害額の推定規定を設けることが入っているのかどうか、この点お尋ねしたい。
  262. 梅澤節男

    ○梅澤(節)政府委員 今専門の法律学者で研究会をやっていただいておりまして、恐らく六月にその御報告がいただけると思います。  これは、構造協議報告にも書いてございますように、現行の独占禁止法二十五条に基づく損害賠償請求というものがより活用されるため、どういう方法をとったらいいのかあるいはどういう問題があるのかということでございまして、法二十五条の改正を前提に作業が行われているわけではございません。
  263. 神崎武法

    ○神崎委員 私は、消費者の利益を守るために、さまざまな角度からの法制度を整備するということがこれから必要になってくると思います。欠陥製品に関する損害賠償請求を容易にするための製造物責任、こういう制度の導入も必要だと思います。さらにまた、クラスアクション、民衆訴訟とも言われておりますけれども、消費者が訴訟できるようなそういう仕組みというものもこれから導入していかなければいけないのじゃないか、そのように考えるわけでございます。私ども公明党は、製造物責任法案要綱というものを既に明らかにいたしておりますし、クラスアクションについての法案もたびたび国会に提出をいたしているところでございますが、これらについてどういうふうにお考えですか。
  264. 山本貞一

    山本(貞)政府委員 製造物責任法につきましては、私どもの省でも昭和六十一年から随分勉強を進めております。企画庁の国民生活審議会でも相当前から勉強を進めておられます。  ただ、本件につきましては、先生御承知と思いますけれども、アメリカにおきまして一九七〇年代に製造物責任に基づく訴訟が大変頻発いたしまして、保険制度が破綻するとかいろいろな問題が生じました。アメリカでは今一つの反省期になっておりまして、連邦法でそのあたり若干修正した統一的な基準をつくろうとしているところです。一方ECでは、一九八五年にEC指令というのを出しまして、今その線に基づきまして七カ国が、製造物責任については、これは責任を強めるという方向でございますが、立法化が進められておるところでございます。日本でもそういう消費者保護の観点、あるいは保険制度との関係、あるいは製造業者の新製品開発の意欲に影響があるかどうか、そういう点を今勉強しておるところでございまして、関係省庁とも今連絡をとりながら検討をしておるところでございます。
  265. 神崎武法

    ○神崎委員 中間報告の中でも土地対策が取り上げられております。  この問題の関連で、私どもは住宅費を軽減する必要があるという角度から、賃貸住宅に入っていらっしゃる方には家賃補助制度、これは税金からの控除制度あるいは税金を払われない方には家賃を補助すべき仕組みをつくれという主張をいたしました。そしてまた、持ち家のある方には、固定資産税、相続税が年々高まる中で、そしてまた、今後、一物四価と言われる地価の一元化という方向に恐らくこれから論議がされていくと思います。そういう中でますます固定資産税、相続税が高くなってくる。そこで、ぜひとも居住用の建物、例えば百平米以下、あるいは居住用の土地三百平米以下のものについては固定資産税はできる限り減免をする、ゼロに近づけようじゃないか、そして居住用でない三百平米を超えた部分については、適正な固定資産税を負担していただいたらどうか。そういう議論、また相続税についても同じ議論を、石田委員長総理に本会議お尋ねをいたしました。また、私どもの同僚委員がずっとこの問題を本委員会でも取り上げてきたところでございます。  私は、これから政府の方でも土地対策というもの、また住宅対策を含めて土地住宅問題というものにこれから取り組まなければいけない、これは重大な課題だと思います。その意味で、ぜひその論議の心で、この私どもが提案している課題についても取り上げていただきたい、検討をしていただきたい、このように思うわけでございます。総理、いかがでしょうか。
  266. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員に対して私は論議をいたそうとは思いません。土地税制につきましては、今委員指摘のとおり、政府の税制調査会小委員会をつくって御検討をいただいております。ここには私どもが予断を持たず、関連すると思われるすべての問題点を提起していただき、御論議をフリーにいただきたい、そう考えておりますけれども、同時に、当然院において行われます御論議というものは、それなりに私どもとしては反映をし、御論議をいただけるものと考えております。
  267. 神崎武法

    ○神崎委員 大蔵大臣の方からも示唆に富んだ御答弁をいただいたわけですけれども総理、いかがですか。
  268. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 土地並びに住宅の問題につきましては、御指摘のとおり極めて重要な問題だと受けとめておりますし、これは日米の構造協議のみならず、もっと以前から、働く人々のためにどのような対応が必要なのか、今大蔵大臣が申し上げましたように、土地税制全般については、税制調査会の小安員会もスタートをしていただいて、そこでいろいろな問題について議論を願うことにいたしております。  また、家賃の問題については、確かに委員長から御質問をいただきましたときには、私は、これは生活費であるので、その中からこれだけを取り出して非課税扱いすることは問題があると思いますという基本的な立場をお答えさせていただきましたけれども、すべてを含めて大蔵大臣によく検討をしてもらいたい、こう思っておりますが、御指摘のとおりに、私どもとしても、土地問題、住宅問題は全体として大切に考えなければならない、こう思っております。
  269. 神崎武法

    ○神崎委員 ぜひ、土地問題、住宅問題を今後これから検討をするその作業の中で、私どもが提案しているこの家賃補助制度あるいは固定資産税、相続税の減免制度、これについてもいろいろな角度から御検討をいただきたい、心からお願いをいたしたいと思います。  最後に、対中円借款の問題でお尋ねをいたします。  本委員会でもこの問題は取り上げております。私は、来年ゴルバチョフ大統領が来日をする、そういう中でこれからの日本外交の大きな課題は日ソ関係の改善である、このように思います。しかし、その前提として、日米関係、また日中関係、日韓関係というものは極めて盤石にしなければいけない、このように考えるわけでございます。その意味において、現在政府の方で行っているこの日米構造協議問題、これも真剣に取り組まなければいけない、そのように考えるわけでございます。日韓関係では、この五月に盧泰愚大統領の訪日が予定されておりまずけれども、ぜひ在日韓国人の三世問題については、日本政府として誠意のある対応をしていただきたい、そのように思うわけでございます。  そしてさらに、日中関係につきましては、二千年以上に及ぶ日中間の長い交流の歴史があるわけでございます。そしてまた、先人のつくった日中交流の金の橋があるわけでございます。いろいろその間に出来事があったにせよ、私は、この日中関係はアジアの平和と安定にとっても世界平和にとっても極めて大事な関係である、このように認識をいたしております。  その意味で、この円借款問題、昨年の天安門事件があって起こったわけでございますけれども、確かに隣人に対して言うべきことは言わなければいけないと思います。しかし、中国側も戒厳令も解除をいたしまして、六月四日で天安門事件の一周年になります。そういう時期を今迎えようとしているわけでございます。今までの論議の中で、総理もこの円借款問題の解除につきましては、前向きに検討をしているという趣旨の御発言がございました。ぜひ早期に解除をする方向で検討いたしていただきたい、私はこのように思うわけでございます。  もちろん、配慮しなければいけないのは、人権問題もあります。あるいは、この解除に伴う欧米諸国へのはね返りという問題も考えなければいけません。しかし私は、今中国が置かれている経済危機というものは、これは深刻な状態にあると思うわけでございます。中国のことわざに雪中送炭ということわざがございます。雪の中に炭を送るという古くからのことわざでございます。雪の中で困っている人に炭を送って腰をとってもらう、今中国はそれを日本に求めていると私は思います。そしてまた、釜底地新、かまの底から薪を抜くということわざがあります。せっかく今中国は、中国の近代化のために、経済改革のために取り細んでおりますけれども、その経済改革のために燃えたぎっているかまの薪を今抜いている状況であります。ぜひその意味では、この問題に対して本当に総理も前向きで取り組んでいただきたい。この間の我が党の渡部委員に対する御答弁でも前向きの御答弁をいただきました。さらにその後、小和田審議官を北京に派遣した、そういう結果も踏まえて総理の御決意を伺いたいと思います。
  270. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 今委員がるるお述べになりました中国と日本との関係、これにつきましては、私も心情的には非常に近いものを持っております。そして、中国が改革・開放路線を捨てないというそういった基本的な立場で進んでおります以上、私どもはこれに協力をしてこれを助けていくような方向でいかなければならぬということは、きょうまでのいろいろ隣国としての長い経緯もあるわけでありまして、日本としてはその方向に向かっての努力を続けなければならぬという基本的な考え方は一にいたしております。問題は、一つ大変悲しい出来事がございましたけれども、しかし、それは両方の、お互いの努力によって環境整備をすることによって、これ以上中国を孤立させてはいけないという点においても私はそう思っておりますから、今のところまだ予備的準備行為を始めておりますけれども、中国と日本と双方の努力によってこの環境が一日も早く整備されていくことができますように私も考えていきたいと思っております。
  271. 神崎武法

    ○神崎委員 解除の時期について、具体的に七月のサミットにおいて各国の了解を取りつけて解除をするということが言われております。そしてまた、大蔵大臣はいろいろな機会に、もっと前に解除をすべきだ、こういう御意見も言われているということも承知しております。大蔵大臣、解除の時期についてはいかがですか。
  272. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、基本的に総理外務大臣が述べておられるのと違いはないと思っております。そして、私自身がG7等でもこの問題について日本の立場として述べてまいりましたのは、世銀融資について、これはサミットで決まった内容でありますから、それに異を唱えるつもりはない、しかし同時に、長い日本と中国との歴史の中において、我々は欧米諸国とはおのずから異なった事情にある、そして第三次円借款という問題を現実に抱えている、そして世銀の融資においても、人道的な案件については既に動き始めている状況の中で、この第三次円借款というものにつきましても、民生安定に資するものであり、特に貿易の問題で日本が抜け駆けをするという疑いを避けるためにも、アンタイドの案件であるならばこれはできるだけ早く動かすべきものであると考える、これは日本として留保する、こうした言い方を私はずっと続けてまいりました。総理外務大臣が述べておられる延長線上のものとして、政府部内一枚岩であると私は思っております。
  273. 神崎武法

    ○神崎委員 私は、解除の時期については、六月四日の天安門一周年、これが一つの大きな節目になるのじゃないかと思うのですね。この前後というものは大きな節目になると思うのですが、その点についての認識外務大臣はいかがですか。
  274. 中山太郎

    中山国務大臣 今総理からお答え申し上げましたことと外務大臣としては考え方は何ら違うところはございませんが、天安門の一周年の期日を近く迎えるに当たりまして、中国政府が改革・開放路線を一層進めていただく、そして西側各国ともっと国際協力の面で、あるいは人権の問題で御協議をいただくような機会をつくっていただくように、日本政府としては心から期待をいたしておるものであります。
  275. 神崎武法

    ○神崎委員 日本政府としても、各国政府に十分理解を得るためのそういう機会というものをぜひ早急につくっていただきたいと思いますが、この点についてはどうですか。
  276. 中山太郎

    中山国務大臣 海部内閣として、先生、関係各国に前向きに日本の姿勢を示せというお尋ねだと存じましたが、私は先般の海部首相の外遊に同行いたしまして、各国の首脳会談に立ち会いました。その際に、海部総理は、一貫して、中国を国際社会から孤立させては世界の平和のためにならない、この中国を孤立させないようなことを日本政府はやはり考えているのだということで、各国首脳に日本の意思を十分お伝えになっておられます。  ただ、先生御指摘のように大変国際社会の激動期でございまして、いろいろな動きがソビエトにもございますし、あるいはヨーロッパにもある、あるいはアメリカにもある、また朝鮮半島の問題もございまして、日本外交をお預かりしている立場としては、私どもの国家が国際社会で最も安定し、信頼される立場を堅持しながら、中国との関係の修正のために今後とも努力をしていかなければならないし、中国にも御努力を願いたいと考えているわけであります。
  277. 神崎武法

    ○神崎委員 もともとこれは戒厳令解除というのが条件になっていた節があるのです。いいですか。ですから、もう戒厳令解除から相当期間もたっておりますし、天安門事件一周年という一つの大きな節目をこれから迎えようとしているわけです。ぜひ早期にこの円借款問題、解決ができるように総理として、これは最後は総理の決断で決まることですから、総理、決断してください。
  278. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私は何度も申し上げますが、中国を孤立させたりこれ以上中国のいろいろな立場に問題が起こってくるというのはよくないことであるという基本的な認識各国の首脳との話も進めております。私は、中国側からもそれなりのシグナルが出て、同時に日本側からも、できるだけ今やっております予備的な事前の接触を通じて、双方の努力によって環境が成熟してきますことを私自身も願いながら努力をしておるところでございます。
  279. 神崎武法

    ○神崎委員 総理の決断を期待したいと思います。  関連で私が申し上げた在日韓国人の三世問題、政府として誠意を持って対応していただきたいということを申し上げましたが、この点についての総理のお考えを伺って、終わりにしたいと思います。
  280. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 韓国と日本の間の、アジアの中で果たしていかなければならぬ役割な考えますと、私は、本当に安定的な信頼できる関係を構築していかなければならぬ。したがいまして、今具体的に御指摘の三世問題を含めて過去の問題については、その歴史の経緯等を踏まえて、私どもは、反省すべきことは率直に反省をして、繰り返さないことをお誓いするとともに、将来に向かって日韓両国が果たしていかなければならぬ問題のためにも、三世問題その他については両国の納得できるような線での解決ができるように、今関係各省を指導して鋭意検討をしておるさなかでありますから、盧泰愚大統領の来日、そして協定の期限とされております来年の一月までに実りある成果が出てきますように最善の努力を尽くしたいと考えております。
  281. 神崎武法

    ○神崎委員 終わります。
  282. 越智伊平

    越智委員長 これにて神崎君の質疑は終了いたしました。  次に、正森成二君。
  283. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党を代表して、本日は、まず構造協議の問題について総理並びに関係大臣に質問させていただきます。  まず、総理伺いたいと思いますが、三月初めに米国西海岸のパームスプリングズで海部・ブッシュ会談が行われたことは御承知のとおりであります。ここで、日米構造協議につき海部総理政治的指示をブッシュ大統領から求められ、内閣の最重要課題として決断することが大筋合意され、その後のSII、構造協議進展に官邸主導型の大きな影響を与えました。私どもはそう承知しております。しかし、この会談決定の経過は軽視できない問題を含んでいると私は思います。報道等では、二月二十四日の午前零時前、折田首相秘書官の自宅にブッシュ大統領側近から電話が入り、海部首相の連絡先を聞き、都心のホテルにおられたので、その連絡番号を教え、直ちにベッドに入っていた首相を起こし、米大統領から電話が入ること、その部屋で待機してほしい旨を伝えられたそうであります。約二十分後電話がかかったが、電話の前には海部首相一人だけだった。別の報道では、ホテルにおられたのは令夫人と私設の秘書官だけであった。外務省関係者はだれもいなかったということですが、事実ですか。
  284. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 電話がかかってきたことは事実でございます。
  285. 正森成二

    ○正森委員 私の質問に真っ正面からお答えになりませんでしたが、私が伺うのは、二月二十四日の午前零時前後というのは、二月二十三日に、日米構造協議の第三回協議が終わったのが二十三日の七時ごろであります。それが済むか済まないかの間に、深夜に総理大臣のところへ電話がかかってくる、そして関係外務省の通訳さえいないところでお話をなさるなどというのは、一国の総理として異常なことではありませんか。松浦北米局長も折田秘書官も間に合わないで、親子電話で米側通訳が通訳するという会談だったと言われております。一国の総理が外国の通訳のみで会談し、事を決めるなどというのは前例のないことだと言わなければなりません。  いいですか、日本側にはこんな話をしたということについて、総理以外には確かめる人はいないんですよ。そして、日本語が通用するならともかく、通訳をまさに交渉する相手方の通訳にゆだねるなどということは、いやしくも対等の国の話では少ないんじゃないですか。仮に、日本側が深夜ブッシュ大統領に電話をして、だれもいない、日本側の通訳だけで話をする、そしてその場で——まだ当時はあなたは、選挙が済んで総理に指名もされていなかったんですよ。総理であったことは事実です。しかし、総選挙の後は総辞職しなければいけないんですから。関係閣僚も決まっておらない、外務省も知らないというところで会談を設定するなどということは異例のことじゃないですか。内容だけでなしは、外交というのは、会うか会わないか、いつどこで会うかということもまた非常に重要な内容の一つなんですよ。私どもはそういうところに、今度の日米構造協議が非常に米主導型で行われた、我が国の自主性について問題があったんではないかというように思わざるを得ないということを考えて、総理の御見解伺いたいと思います。
  286. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 事実にいささか違った観点から御質問なさいますので、私も率直に答えさせていただきます。  電話がかかってきたのは事実だと申し上げました。しかも、私は総選挙が終わった直後でありまして、水泳が好きでございますから水泳をして、電話がかかってくるということを聞いたときはもう十二時近かったと思います。かかってきた電話の中身は、選挙に勝っておめでとうということと、議題を決めないで早く一度会いたい、率直に会いたいと思うがどうだろうかという、こういう申し入れでありました。そのとき、おっしゃるように、そこにだれもいないわけでありますから、私は用件を一方的に聞いて、ただそれは国会のお許しも得なきゃならぬということを正確にそのとき言いましたし、そのときにそちらへ行かれるかどうかということもわからないので、アメリカ大使館なり外務省なりを通じて御返事をさせていただきます、こういったことをこれだけ申し上げて、そして電話を切ったわけであります。  その中で、何も中身について話をしたわけでもありませんし、そしてその後到着をしたいろいろな外務省の幹部と、こういう電話がかかってきてこういうことであった、どうするかという相談をしたわけでありまして、その場でオーケーをしたわけでもありませんし、申し入れを受けたというだけのことで、それは外交チャネルを通じて後日返答をいたします、こういうことで電話は切ってございます。  以上でございます。
  287. 正森成二

    ○正森委員 報道されているところでは、西海岸で三月の二、三日にお会いになるということだけは了解を与えられたというように広く報道されております。それは違うのですか。——うなずかれましたから、違うということで。それでは、新聞に訂正の申し入れをされましたか。されておられないでしょう。当時、多くの新聞には、外務省でさえ、こういう決め方には不満であったということまで報道されていますよ。
  288. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 いや、それはすぐに外務省に来てもらって、もうその日のうちにこういう申し入れがあったということで、そしてどうして西海岸まで、それでは行けるのか行けないのか、そのとき国会の日程はまだ決まっておりませんでしたけれども、私は薄々、皆さん方が各党でお話を願って、二日に演説がある、五日に野党の質問があるかもしれないという内定状況であるということを聞いておりましたから、国会の了解をいただかないと行かれないということも大前提で言ってありますし、それから外交チャネルを通じて御返答をしますということもそのとき申し上げたわけでありまして、私のところへ電話がかかってきたのは外務省からでありますから、私の秘書官から電話がかかってきて、そこにいらっしゃいますね、そこヘアメリカ大統領がお電話したいと言っておるがいいですかと、こう言われれば、そういうときに嫌だとか、逃げるわけにはいかないじゃないですか。私は電話を聞いて、聞くだけ聞いて、そして対応しよう、日米関係は大切だと思ったから、そのような措置をしたわけでございます。
  289. 正森成二

    ○正森委員 私は、何も向こうから電話がかかるのをやめろと、そんなことをあなたの秘書官に言ってみたところで仕方がないんですが、直接かかってきたときに、今は自分の身辺には外務省関係者がだれもいない、後日電話をするというのは一国の総理としては当然の措置じゃないかと私は思います。  しかし、これ以上このことについては申しませんが、その後三月二日、三日会談をされた後、ブッシュ大統領は、我々の望んでいたものすべてを得られた、我々は首相がうまくやっていってくれることを期待している、黙って見守っていればよい、こういうように言ったということが報道されておりますが、私は出だしがそもそも問題であったということを一応申し上げ、構造協議の内容に入りたいと思います。  通産省に伺います。  武藤通産相は、二十一日、我が党の小沢委員質問に対し、日本の対米黒字が減るという点では構造協議ではうまくいかない、貿易収支が改善しても大幅な改善にはならないというように二十一日に述べておられます。私は、そのとき後ろでずっと聞いておりましたから、それは間違いありません。おたくの山本審議官も、アメリカは構造協議問題全体が解決したとしても日米貿易収支が改善するとは認識していないと聞いている、日本側としてもそのことはアメリカに言っているというように、当時聞きましたら答えておられます。きょうもまた、同僚委員質問に対して、定量的にどれぐらい削減するということは答えることは困難であるというように言っておられます。  そうすると、今同僚委員も言われましたが、私は別の点について申しますが、そもそも構造協議は、昨年の七月十四日に、宇野首相とブッシュ大統領がパリで会談したときに決まったわけであります。その共同発表では、「両首脳は、新しいイニシアチブを発足させることによって、これまで払われてきている努力を補完することについて合意した。両首脳は、日米構造障害イニシアチブについて合意し、国際収支不均衡の削減に貢献していくとの目的の下に、両国で貿易と国際収支の調整の上で障害となっている構造問題を識別し、解決していくこととなった。」こうなっております。つまり、貿易収支のインバランスの改善というのが明確な目的であります。ところが、定量的にはわからぬとかあるいは通産省の通産大臣や審議官が、さして改善にはならない、それはもう米側も承知していると国会で言っている。そういうことについて、我が国百六十万の中小小売業者の生業権にかかわるような大店法の規制緩和などということを行うなどということは、目的からしても違ってくるんじゃないですか、私どもとしてはそう思わざるを得ませんが、いかがです。
  290. 武藤山治

    武藤国務大臣 私は先ほどから申し上げているのは、定量的に貿易収支の改善が幾ら幾らになるということは、これはもういろいろの観点から出てくるわけでありまして、構造協議のことをお互いに忠実にやっていってもそれは出てこないということを申し上げているわけでありまして、先ほども申し上げましたように、改善に役立つことは役立つのは当然だと思っているのです。私ども輸入拡大も中間レポートの中に書いてありますし、また、アメリカ側に対しても、いろいろ輸出競争力を持つようにこういうことをしなさいということを言っているわけでございますから、貿易収支が改善されるということは間違いなく改善されると思うのですが、いわゆる定量的にどれだけということは、もうなかなかそれは私どもは予測できないということを申し上げているわけであります。
  291. 正森成二

    ○正森委員 ここに米戦略国際研究所の論文集のマーチン・ワインスタインという人のお書きになった「日米関係の展望」というのがあります。それを見ますと、「ほとんどの経済専門家は、米国の巨額な対日貿易赤字のうち、日本の制限的もしくは不公正な貿易慣行に起因するものは、そのわずか一五%にすぎない、との意見で一致している。貿易赤字の残りの八五%は、米国の貿易収支全体および国家予算に巨額の赤字をもたらした原因でもある、米国経済に深く根差した問題に基づくものである。」米側に原因があるということを言っております。また、ヒルズ代表自身、ベンツェン委員長に答えた上院財政委員会の証言で、「不公正貿易慣行がすべてなくなっても、貿易赤字は一五%程度しか減らない」ということを言って符合しております。まして大店法を変えることによってどれだけの改善が得られるかということは、まさに定量的に言えないと言うとおりであります。もっとはっきり言っている米ブルッキングズ研究所のエドワード・リンカーン上席研究員に至っては、「全体として日米貿易不均衡の是正には、構造協議の合意事項は短期的にあまり効果はない。米国の財政赤字削減が肝心だ。大店法の規制緩和はほとんど、あるいは全く役立たないだろう」、そう言っているわけであります。  そして、私はさらにお伺いしたいと思うんですけれども、畠山通商政策局長はおりますか、お願いしておりましたが。——あなたは三月二十六日の東京新聞で、日米の問題について、日本の方がずっと市場がオープンであるということについて、関税や、あるいは輸入障壁の問題や、あるいは日本人一人当たりの製品輸入額等について言っておられるんではないですか。その三点について答えてください。
  292. 畠山襄

    ○畠山(襄)政府委員 御指摘のとおり、三月二十六日の東京新聞のインタビューで今委員が御指摘のような点について言っております。ここで私が申し上げましたのは、第一点は、日本は、まず工業製品に関してでございますけれども、それが、波打ち際での規制はアメリカよりも少ないということでございます。これは例えば半導体に絡みまして、アメリカは実際上の報復もいたしましたし、それから、鉄鋼とか工作機械とか繊維とか、そういうものについて日本に自主規制を要求してきております。日本の方は、そういうものについて、アメリカに対して自主規制を要求したというようなことは一切工業製品でございません。また、関税につきましても、日本の方が関税率が二・数%であって、アメリカの四・数%よりも低い。あるいは残存輸入制限品目は両方ともないというようなことで、総じて見ますと、波打ち際の制度は日本の方がずっとオープンではないかということを申し上げたことは事実でございます。
  293. 正森成二

    ○正森委員 通商の責任者である通商政策局長も、波打ちについては日本の方が規制は少ない、オープンだということを認められました。正確に言いますと、アクションプログラム以後の我が国の関税率は、工業製品は二・一%、アメリカは四・七%であります。それがさらにこの三月三十一日までに、我々の国では一千四品目について工業製品を関税率ゼロにしましたから、現在ではさらにその率は下がっているはずであります。そういうように、我が国が決してオープンでないなどということは、その段階では言えないわけです。  また、実際の輸入製品についても、日本が八八年一年間で買った米国製品は、前年に比べて九十五億ドルもふえております。これは通産大臣よく御存じのように、例えばフランスが米国から輸入した金額は約百億ドル、イタリアは八十億ドルですから、日本の増加額だけで、アメリカにとってはフランス一国、イタリア一国の市場がふえただけに匹敵するわけであります。それぐらい日本はオープンに輸入しているわけであります。日本の輸入、アメリカからの総額は、西独、フランス、イタリア、スペイン、スウェーデンを合計したものよりもまだ大きいぐらいであります。ですから、我が国がそういう点で閉鎖的だということは私は断じて言えないと思います。  そこで、次にお話を進めたいと思いますが、今度は中身の問題について、例えば大店舗法の問題なんかそうですが、アメリカ側が日本の流通は非常に多段階で、そして卸、小売なんかがあって複雑である、したがってアメリカ製品が売りにくいんだ、マージンが高くなっているんだとかいろんなことを言いますが、しかし、通産省の中には統計解析課というのがあるそうであります。私が事前に申し上げておいたからお答え願いたいんですが、国際産業連関表というのを通産省は作成されているようであります。その中では日米国際産業連関表というのがあって、お互いの関係をよく調べております。  それを見ますと、私から申し上げますが、生産者段階を出てから消費者に渡るまでには運輸と商業を通らなけりゃなりません。そのマージンは、最終需要部門に至るまでで日本は四五・五%に対し米国は五一・七%だと通産省は言っております。つまり、工場等から百円で品物が出ると、消費者は日本では百四十六円で買えるのに米国では百五十二円かかる。つまり、流通段階だけを問題にすれば、日本は決して割高ではないということを通産省が調べて言っているわけであります。商業マージンだけをとってみても、日本は二七・七、米国は三一・七で、四%日本の方が低い、これも通産省の言っていることであります。  私の言ったことを、通産省確認してください。
  294. 山本貞一

    山本(貞)政府委員 今委員指摘の一九八五年の日米産業連関表ではおっしゃるとおりの数字でございます。その点につきましては、私ども、実は一九八一年の産業連関表を使った数字を昨年の流通ビジョンを作成しましたときに載せておりまして、それによりますと、若干数字が違うんですが、より鮮明に違いがあるんですが、日本が商業マージン率が、これは消費財部門ですが、消費財部門のマージン率が生産者価格を一〇〇といたしまして日本が四三、アメリカが六五という数字を出しておりまして、このことは日米構造協議の席上でも、私も含めまして再三アメリカには説明をしたところでございます。
  295. 正森成二

    ○正森委員 ですから、日本が流通機構が複雑だとかいうために、そのことのゆえをもって消費者が不利益をこうむっているということはありません。別の問題はありますよ、いろいろ。  そこで、次に伺いたいんですが、アメリカ側がまた言うのは、大規模な店舗というのは輸入品をたくさん売る、あるいは買ってくれる、だからこれがふえれば輸入品がふえるんだと言うんですが、それはそう言えないんではないですか。  私はここに関西大学の保田教授が研究なさった研究資料を持ってきておりますけれども、それでは、小売業が扱うのは消費財ですね。生産財の原料ではないんです。そこで、例えばすぐ消費する消費財ですね。それから非耐久消費財、繊維みたいなものですね。それから耐久消費財、これはビデオとか電気製品とかそういうものですが、それらのうち明らかに小売業が扱わない小麦など穀物ですね、それから粗糖あるいは畜産物の飼料ですね、これは扱わないわけですから、そういうものを引いた額ですね、これは八七年で通産省の統計によれば四兆九千百六十六億円であります。それに対して大手の主要百貨店九社、スーパー八社の計十七店の販売輸入額を計算してみますと、これは二千八百五億円で五・七%にすぎないという数字が出ております。これは小売価格とそれから輸入価格とは違いますからね。小売価格というのは通関手数料が入っていますし、運輸流通マージンが入っておりますから、それを修正した数字です。そうしますと、大手スーパーというのは輸入品の五・七しか売っていないんですよ。保田教授は本の中で、これに対して中スーパーくらい全部入れたら大体大手十七社の二倍余りだろう、ということを見ても一二%ぐらいです。そうしますと、八八%は中小商工業者が一生懸命輸入品を売っているのですよ。それの生業権を奪い、そしてその人たちがやっていけなくなるようなことをして輸入がふえるわけがないのです。まして、大手スーパーの五・七のうち全部がアメリカ品じゃないのですよ。唐津教授などが東京の百貨店に聞いたら、輸入品はあるけれども、その中でアメリカ製品はどれぐらいだと言うたら、微々たるものだということになっているのですよ。だから、大店法の改正が、事アメリカに関して、その輸入実績を定量的にわかるような程度になるということはないと言わなきゃなりません。あるいは、少なくともそれがあると言うなら、中小企業が輸入の点で非常に努力している、八十何%まで努力しているということを離れては考えられないんじゃないですか、いかがです。
  296. 武藤山治

    武藤国務大臣 一つ、先ほど来お話を聞いておって、マージンの問題ですね、これは私はマージンだけを見て、マージンというか、いわゆるその全体の率が四十幾つと五十幾つ、あるいは四十幾つと六十幾つという先ほど数字が出ましたけれども、これは、それによって日本の流通業界が非常に合理化されているとも私は思わないのですね。やはりそれぞれのマージンが、取っているそれぞれの個々のところのマージンが低ければ、トータルは結果的には少ないわけですから、その辺のところを私は複雑ではないとは言えないと思うのです。この点、ひとつぜひ御理解をいただきたいと思うのです。  それからいま一つの、いわゆるどこが一生懸命輸入しているか、これは私は、中小小売商も一生懸命輸入品を扱っておってくれるところは多いわけでございまして、何も大型店だけが輸入品を扱っているとは思いません。ただ、今度の大店法の問題は、そういう貿易収支の問題ももちろん多少はプラス、先ほど申し上げたように定量的には難しいけれども、それは効果はあると私は思うのですが、それよりも、やはり今度の場合には、とにかく国際的な、みんなが理解しやすいルール、日本だけが独特のルールをつくっているんじゃないかという誤解をされないようなルールをつくっていかなければいけない、こういう観点からも大店法の問題を私は取り上げておるわけでございますので、アメリカの議会が保護主義になるから困る、こうブッシュさんは言っているわけでございますから、そういうことにならないように、保護主義でないよ、保護主義はいけないよ、その保護主義に向かいつつあるアメリカの議会の人たちに日本の流通の問題について理解をさせるような方向に私は行かなきゃいけない、こう思って、いわゆる閉鎖的ではないような方向へ持っていこうというのが私ども考え方であります。
  297. 正森成二

    ○正森委員 私は、二十一日に我が党の小沢委員が一般質問質問して、大臣や山本審議官と問答しておられるときに後ろでずっと聞いておりました。そのときにも同趣旨答弁がありましたが、そのときに山本審議官は、米側の考え方として、アメリカには大店法のようなものがないこと自体問題がある、そういうことを言われたと思うのです。これは非常に問題じゃないですか。大体貿易の問題というのは、波打ち際でそういう規制がないということと同時に、国内の問題では、内外無差別であるかどうかということが非常に大きな問題なんです。相手国と同じでなければおかしいなんて、そんなことを言えば一つの州になる以外にないのです。そのことをよく見抜いて、自民党の小沢幹事長は、この間講演をされて、構造協議はよくない、こう言って、同じでなきゃいかぬと言うなら星条旗の星の一つにならなきゃならぬ、小沢幹事長がそう言っているじゃないですか。そういうことをアメリカが要求していることに対して、我が国が国の自主権に基づいて断固たる態度をとるのは私は当然のことだと思うのです。  そして、消費者の利益の点からいえば、重複を避けますが、小沢委員質問をしましたが、自治大臣も何ならお答えいただきたいのです。東京都が毎月調べておりますけれども、生鮮食料品の多くの部分については、これは中小小売店の方が安いのですよ。安いだけでなしに鮮度もいいわけです。しかし、あのときに私は後ろで聞いておりましたから知っておりますが、靴だとか履物だとか一部の工業製品についてはスーパーの方が安いという答弁もありました。  そこで申し上げますが、これらの、全部ではありませんよ、スーパーや量販店が何で安いかといえば、そもそも仕入れ値段が全然違うのですよ。スーパーの仕入れ値段というのは非常に安くて、そこでスーパーの売る小売値段よりもなおかつ高い値段で中小小売店は仕入れなきゃならない。特に家電なんかの量販店ではそうです。そういうことが起こっているから安く売ろうにも売れないような状況になっているのですよ。  そこで、通産省でも公取でもよろしいが、伺いたいと思いますが、アメリカではこういう問題は一定の法律で保護できる建前になっているんじゃないですか。クレートン法二条の修正のロビンソン・パットマン法というのがあるでしょう。その中で、不公正な取引、特に、強大な購買力を利用して安く仕入れて競争を損なうというようなことは罰則をもって禁止されているじゃないですか。そういうのがあるのです。日本には、私は公取で調べましたけれども、そういうことについて発動された例は、今まで裁判所まで行ったのは中部読売新聞が一件だけ。それ以外に審決まで行ったのは、勧告ですか、これは牛乳事件で一件か二件あるだけなんです。なぜ日本ではそういうぐあいに少なかったかといえば、大店法があってアメリカのそういう法律のかわりをしていたからです。ところが、今度は大店法も三年後には取っ払ってしまう、しかもアメリカのようなそういう不公正な競争を阻止するようなものは日本にはない、あるいはあってもほとんど適用されておらないということになれば、中小企業は何によって保護されるのですか。  また、私はもう一つ申し上げたいと思いますが、フランスやイタリアでは大規模店舗の出店というのは許可制ですよ。フランスではロワイエ法、イタリアでは商業基本法とか手工業基本法というのがあります。  そこで、通産省でもどこでもいいですから聞きますが、フランスでは、許可制で許可される割合と却下される割合ほどのぐらいですか。
  298. 山本貞一

    山本(貞)政府委員 フランスの運用の実態、実は私どもは余り十分把握しておりません。ただ、最近の現地からの報告では、相当、何というのですか、運用が緩やかになってきているというふうに聞いております。今の数字はちょっとわかりかねます。
  299. 正森成二

    ○正森委員 通産省も数字を把握していないようですから、これは私が国会図書館にお願いして調べた資料であります。それを見ますと、一九七四年から八一年の間に二千九百のプロジェクトを取り扱ったが、許可されたのは四七%、却下されたのが五三%という数字が出ております。つまり、こういうように、日本の大店法というのは単なる届け出制ですけれども、フランスやイタリアでは許可制があって、しかもその却下率というのは非常に高いのです。ところがアメリカは、こういう国に対して文句を言っていないじゃないですか。なぜ我が国に対してだけ言うてきて、我が国の中小企業、商店数でいえば九九%、売り上げでは七九%以上占めているそういう中小企業に対して大きな打撃を与えるようになるのですか。それがつぶれてから後どういうぐあいに苦痛を和らげるかというようなことを同僚委員からも質問がありましたが、それでは遅いのですよ。そんなことは望んでいないのです。大規模店舗と共存共栄して、そして消費者の利益を守る、みずからも店舗を営業していけるということを中小業者は望んでいるのです。しかもそれは、フランスやイタリアや肝心なアメリカだって別の法律があって守っているじゃないですか。日本だけが丸裸にならにゃいかぬ、そんなことがありますか。
  300. 武藤山治

    武藤国務大臣 どうもお話を聞いておると、大変過激におっしゃるものでございますから、そんなに私どもそこまで考えていないわけでありまして、何か今聞いていると、大店法を廃止しちゃって、中小小売商はみんなつぶれちゃうんじゃないか、こういうようなお話にどうも受けとめるのでございますけれども、私どもはそういうことは全く考えておりません。やっぱりあくまで消費者の皆さんのことも考えながら、そして先ほども申し上げましたように、やっぱり国際的に通用する、それはフランスがどうであろうがアメリカがどうであろうが、日本として、少なくとも国際的な社会の中で生きていかなければいけないのですから、その日本は、国際的な社会の中からやっぱり納得されるルールをつくっていこうということでございますし、そして同時に、一生懸命御努力いただいている中小小売商の皆さんは何としてでもこれはやはり守っていかなければいけないという、その三つの考え方から私どもは考えたわけでございますから、その点どうも何か大変、聞いておると、もう三年先には廃止しちゃうんだというようなお話も聞きますけれども、そんなことは全く考えておりませんので、ひとつその辺は誤解のないようにお願いしたいと思うのです。
  301. 正森成二

    ○正森委員 通産大臣今お答えになりましたので、私は、議事録に残っておりますから、約束を守っていただきたいと思います。皆さん方のイニシアチブでの協議内容によれば、ことしは運用だけ、来年は法を改正して一年半を一年にする、それからさらに二年先、三年先には大都市圏ではこれは撤廃する、こう読み取れるものがあるのですね。だから言っているのですよ。だから、あなたが三大都市圏であろうが何であろうが廃止する気持ちは全然ないと言われたんなら、それは議事録に残っておりますから、中小商工業者は非常にお喜びになるし、私はここで質問したかいもあったということを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。——いやいや、そんな言いわけなんか要らぬですよ。あなたは撤廃しないと言ったじゃないか。
  302. 武藤山治

    武藤国務大臣 今申し上げているのは、私は大店法そのものが廃止ということをないということを言っておるわけでありまして、特定地域についてはこれからいろいろの御意見を聞いてこれは判断をしていこうということで、大店法そのものの廃止をないということを私は申し上げておるわけであります。
  303. 正森成二

    ○正森委員 私は、構造協議の中間報告を前提にして聞いているので、だから大店法の廃止というのは三大都市圏で廃止するということを前提にして言うているのです。だからあなたは答弁のとき、三大都市圏はともかく全体を撤廃することなんか考えていませんと言えばそれは正確だけれども、あなた自体も全く撤廃を考えていぬみたいなことを言ったじゃないですか。だから、私の質問にも不十分な点はあったかもしれませんが、それを利用してあなたのはもっと誤解を与える答弁だったということを申し上げておきたいと思うのです。  それからさらに申し上げますけれども、ここにアメリカ側の研究がありますが、アメリカでは今小売業界のMアンドA、合併と買収が物すごく進んでいるのですよ。そして、独占度が高まるとその消費者に供給する価格は非常に高まっているということを、アメリカのマリオンという有名なこの道の研究家がちゃんと研究しているのです、事実に基づいて。ですから私どもは、独占が進行した場合には消費者の利益にとって重大な問題になるし、またパパママストアと言われる小売業というのは、配達だとか修繕だとか鮮度だとかいろいろな点で消費者に対して有用な役割を果たしている、共存共栄が必要だということを申し上げて、次の問題に移らせていただきたいと思います。  そこで大蔵大臣に伺います。——時間がありません。
  304. 越智伊平

    越智委員長 武藤通商大臣、簡明に願います。
  305. 武藤山治

    武藤国務大臣 また先ほど、既成事実をつくられると困るものですから、三大都市圏ということは私はどこでも申し上げておりませんので、その点だけは誤解のないようにお願いしたいと思います。
  306. 正森成二

    ○正森委員 公共事業について、大蔵大臣、アメリカ側がこの割合をふやせというようなことを言っております。  そこで、資料を配ってください。私は、資料を皆さんにお配りを願いたいのですけれども、アメリカ側はいろいろ言っておりまして、公共投資、それは国と地方と財政投融資その他いろいろございますが、その数字を見ていただきますと、平成元年までは大体実績で、二年は予測値、それから以後は政府経済計画で四・七五%GNPが伸びるということになっておりますから、仮にアメリカの言う五年先に、三から五年となっていますが、五年先に公共事業を一〇%にしたらどうなるか、もう少し緩やかに十年先にしたらどうなるかということを示したわけであります。  それを見ますと、こういうぐあいになるのですね。——後ろ見えますか。これが今までインベストガバメントといいまして、土地取得費を除いた額ですね。それがこういう流れでふえたわけです。ここで非常にふえておりますが、それはどういう場合にふえたかといいますと、昭和五十年から五十五年、あのオイルショックがあったときに、財界の要望もありまして公共事業を猛烈にふやした。そのときにこういうぐあいに伸びたわけです。それでもこれぐらいのカーブですよ。アメリカの要求をそのまま入れればこの赤線になるような、天井を向いた、そういう上に上がる数字になるわけであります。これは国民にとって大変なことだと青わなきゃならないと思うのです。  そこで、次にこれを見ていただきますが、そのときに税金だけでは賄えないから、赤字国債を含めて国債を大量に発行したわけです。国債は四十年から発行されましたが、四十九年までの十年かかって九兆七千億円にすぎませんでした。ところが、五十年を越え、特に五十二、五十三年の福田内閣のときに、GNPを七%成長させるとかいって公共事業を二〇%から多いときには三四%ふやしたために、猛烈なスピードで国債がふえて、次の十年間では十二倍の百二十二兆円までなっているんですよ。こんなスピードです。アメリカが今要求しているのは、まさにこういうぐあいに国債をふやさなければならなかったこのときの対GNP比一〇%、現在は六%台です。それにしろ、こう言っているんです。  私どもは、公共投資が生活基盤を十分にするために使われるということには決して反対ではありません。しかし、公共投資の原資というのは、大部分税金あるいは税金の予約である国債です。決してアメリカが出すものでもなく、また各大臣がポケットマネーで出すものでもなく、全部国民の負担であります。したがって、それには節度とバランスが必要です。しかも、アメリカが言っているのは、夏にはそれだけの補正予算をやれとか、あるいは建設国債は削減するなとか、単年度主義を崩せとか、そういうことを言っているのは、まさに我が国の主権に対する非常に乱暴な介入じゃないですか。財政当局としてはこういうことに対しては、あるいは総理もですが、断固として我が国の自主性を守らなければならない、そしてバランスと節度は守らなければならないということを私は考えますが、いかがでしょうか。
  307. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まさにそういう問題がございますから、私はこの委員会の席上でも、GNP対比一〇%と言われるような数字を認めることはできない、また、我が国の予算というものを工程管理されるようなことはできないということを明言してまいりました。そして同時に私どもは、既に委員が御承知のように、アメリカ側からの要望とは別に、これから先の我が国の社会資本の整備というものが必要なことは間違いないわけでありますから、それについては我が国自身の手によって二十一世紀までの今後の十年間の公共投資計画をまとめると同時に、それぞれの分野における対応をしていくということを、アメリカ側にも中間報告の中にそのとおりの文章を入れたわけであります。委員が御心配になるような、先ほど御主張になりましたような、アメリカ側の主張に我々は屈しているわけではございません。誤解のないようにお願いをいたしたい。
  308. 正森成二

    ○正森委員 これで終わりますが、総額を示すということが言われていますから、それを中心にしてアメリカ側が我が国の財政自主権に干渉してくるおそれがありますので、その点を申し上げておいて、時間が参りましたので私の質問を終わらしていただきます。
  309. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 あと一分ありますから。  総額は日本の自主性においてつくるものでありますので、我々が責任を持ったものを経済企画庁を中心にしてつくってまいります。
  310. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  311. 越智伊平

    越智委員長 これにて正森君の質疑は終了いたしました。  次に、川端達夫君。
  312. 川端達夫

    川端委員 私は、民社党を代表いたしまして、日米構造協議の今日時点で確認をしておきたいことを含めまして、御質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  四月六日に中間報告がまとめられました。各方面、多大な御努力をされた結果だというふうに思いますが、中間報告自体がまさに一つの節目を過ぎたと申しますよりも、ようやくスタートについたというのが正しいのではないかというふうに思いますし、まさにこれから正念場を迎えるのではないかと思います。特に、報告にありますことはかなり具体的な内容に踏み込んでいる。総括的に言いますと、かくかくしかじかの課題はこのようにするというふうに具体的な指針をお示しになっている。その中で特に、今も話題になっていましたが、十年間の総合的な公共投資計画をつくるとか、あるいは大規模小売店舗の出店調整処理期間を一年半以内にする、あるいは法改正をこういうスケジュールでするというふうに具体的にはっきりとお書きになっている。そういう意味で、いずれも実際にこれを本当にこのとおり具体化していこうと思うと、今までの流れから見ますと、かなり広範な国民の理解と協力なしにはどれもできないのではないか。そういう意味で、当然ながら痛みも伴ってくる。こういう課題を実行していくという意味では、日米の問題から国内問題にシフトしてくるということだというふうに思います。  そういう意味で、今日時点での総理の指導性あるいは国会のあり方を含めて我々の責任も大きいというふうに思っているわけですけれども、そのときに、こういう具体的に報告に盛られた個々の課題というものが日米構造協議というもの自体の意義づけの中でどういうものなのか、それから、その問題はどういうふうに国民も受けとめていかなければいけないのかということをはっきりしておかないと、その問題に対する認識が違う中で、こういう問題はとてもじゃないが進んでいかないのではないか、こういうふうに思います。  そういう意味で、まず基本的なことをお伺いをしたいのですが、構造協議に対していろんな議論があることは事実ですし、きょうの集中審議でもいろんな角度からの御議論がありました。そういう中で、例えば各界各方面の知識人といいますか、有識者の方もいろんな論文もお出しになっている。ぱっと見ますと、例えば大前研一さんが「特集 間違いだらけの日米問題 構造協議は即刻中止せよ」、こんな大きな見出しのものをお出しになる。見出しだけ見るとびっくりする、ショッキングな見出しなんですけれども、内容から見ますと、実際にはいろんな角度からこの日米構造協議背景、それからおのおのの経済の実態を含めて分析をしておられる。そういう意味ではそれなりの識見かなというふうに思いますが、その中で例えばこの協議自体、先ほども御議論ありましたけれども、本来アメリカの、日米間の貿易の日本にとっての黒字の問題ということから端を発しているというのは事実だと思うのですが、こういうことをやっても収支は変わらない、余りよくもならない、むしろ本当にこの構造改革を日本がやったら経済がどんどん強くなって、もっと日本の黒字がふえるんじゃないか、こんなことを言う人もおられます。そういう中でいろいろな見方があることは当然であると思いますが、総理としてこれからおやりになっていくという中で、きちっとやはり基本的にこうとらえていますよということがみんなにわかるように、そして認識を一つにして取り組んでいかなければいけないというふうに私は思います。  そういう中で、よく言われる部分で、アメリカが非常に赤字がふえてきた、双子の赤字と言われる。非常にいらつきを持っている。いろいろなことをやってきたけれども、なかなかうまくいかない。そういういら立ちをいろいろ見てみると、日本にそのいら立ちの一つを、焦点をぶつけてきたんだ、かなり無理難題を押しつけをしてきて、満額回答をしろと突きつけてきた。日本としては、それなりの立場もあるし、考え方もあるし、今までの努力もあるから、そうもうまくできない。やるべきでないこともある。だから基本的に言えば、ゼロ回答ということじゃないにしても、満額回答しろと言われてもまあ二、三〇%の回答かな。そうすると、それではだめだ、金てこでおどすぞという部分も何となく見えてくる。だから、本当はそれくらいで回答したいんだけれども、大幅に譲って妥協するというふうなことでつじつま合わせをしているんだ。  先ほど午前中の議論でも、もともと和食を食べているんだ、洋食を食え食えというのはそれは言い過ぎだ、しかし、仕方がないから洋食も食べなければいかぬのだ、こんな議論もありました。そういう中で、アメリカはけしからぬな、むちゃくちゃ言ってくるなという部分と、もともと文化も違い、歴史も違い、習慣も違うんだ、もっとしっかりやれ、政府も弱腰だなというふうな議論を間間耳にするわけですし、そういう観点から今回の中間報告というのを受けとめる向きもあるのですけれども、そういう議論に対してはいかがお考えでしょうか。     〔委員長退席、近藤(鉄)委員長代理着席〕
  313. 中山太郎

    中山国務大臣 この自由貿易体制の中で各国との貿易を基軸にして国を立てている日本として、相手国との間に、特に米国との間には均衡的な貿易の拡大というのが一番望ましいのだろうと私は思っております。しかし、ここに外務省でちょっと調べました計数を御紹介いたしますと、一九六〇年、ちょうど日米安保が改定された年であります。その年の日本からの対米輸出は十億八千万ドルでございました。それが一九八九年、昨年は九百三十一億九千万ドル、実に八十六・三倍に増加をしているわけであります。で、日本の対米輸入、これは一九六〇年に十五億五千万ドルでございました。それが昨年の一九八九年には四百八十二億五千万ドル、三十一・一倍になっております。なお、一九六〇年の日本の対米収支はマイナス四・七億ドルでございました。今日は、昨年度は四百四十九億ドルになっております。  こういうふうな貿易不均衡というものが、経済政策に対しても特に関心の深い米国議会で大変大きな関心を呼び、何としても、この秋の中間選挙を控えたアメリカの議会のいら立ちというものも無視するわけにはまいりません。そういう中で、この議会が、すべて法案の提案権を認められている米国議会が管理貿易、保護貿易に走らないような調整をせなければならない。そのための、日米間が昨年来お互いに抱えている問題点をどうしたらこのバランスがうまくとれるようになるかということの協議が続けられた結果、この四月二日、三日に中間報告という形でお互いのとるべき考え方をまとめるというところに今日の状況があるのではなかろうか。外務省としてはそのような認識をいたしております。
  314. 川端達夫

    川端委員 質問の時間も限られておりますので、できるだけ質問に端的にお答えをいただきたいと思うのです。  今回、最終的にいわゆる報告という形で具体的な問題が出てきたという部分に関して、そういう課題をやること自体への姿勢の問題を私は総理にお伺いしたいと思うのですが、こういうふうにまさにイニシアチブをとってみずからの問題として、国際社会の中で日本が貿易摩擦なんかを持たずに、孤立をしないために、みずからの責任でみずからがやっていかなければならないという課題であり、同時に、そのことが国民生活にとっても重要なことである、やらなければいけない問題である、そういう認識に対して、そうではなくて、本当は嫌なんだけれども、何だかんたというプレッシャーもある、三〇一というのも見えてくる、そして文化も違い、歴史も違い、習慣も違う、だから、その対応をアメリカが言ってくるからやるのか。今外務大臣が言われたいろいろな経緯は別にしまして、結果として最終的な報告というものに対してどういうふうに認識をされているかという、その点をお伺いをしたいと思うのです。
  315. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 この問題の起こりは、昨年日米の首脳で話し合ったときに、結局、日本とアメリカと二国間で、世界経済規模の中で大きな責任を持つ国同士であるにかかわらず、五百億ドルという貿易のインバランスがあるから、これを何とかする、そのためにお互いに提案すべきことは提案しようということで始まったのがこの構造協議でありました。ですから私は、日本の国が、国民生活の質を高めていく、消費者の立場に立って物を考えて、もっと豊かさが実感できるようなそんな社会にしていくためにはやらなきゃならぬことは何だ。この数年来、前川レポートなんかを通じて努力をしてまいりましたことを、そういったことにさらに一層拍車をかけてやっていかなきゃならぬという基本的な立場がございます。そういったときに、日米間でいろいろ話をしましたときに、日本側からもいろいろ言いましたが、アメリカから提案されたいろいろな示唆にこれを重ね絵のように合わせてみますと、合致するところが非常に多い。思い切ってこれをやることは、日本の生活の質を高めることにも役立つし、日米間の問題を解決していくためにも役立つし、日本経済世界に調和させたものにしていくことにも役立つ、積極的に自主的にやるべきことである、こう考えまして取り組んできたわけでございます。
  316. 川端達夫

    川端委員 そういう意味で、私もその部分は基本的に同感であります。どうしてもその部分、むしろ国内的な問題として国民生活に立脚したときに、政治がみずからの責任として国民のためにやるべき問題として位置づけなければ、いろいろな痛みを伴うという問題も含めて乗り越えられないのではないか、こういうふうに思うわけです。  そういう中で私がやや懸念をいたしますのは、先ほど少し申し上げましたように、いろいろな部分で、端的に言えば、アメリカはかなりむちゃくちゃなことを言ってくるというふうな受けとめもあります。そして、貿易収支が本当に変わらないのになぜこんなことをという痛みの部分でいろいろな議論があるのは当然だと思う。そのときの心の心棒としてどこまで本当の決意をお持ちなのかということと同時に、合意形成にどういう過程を経られるのか。  新聞で、先ほども話題になりましたけれども、小沢幹事長が、日米構造協議に関しては、日米の構造が違うのは当たり前だ、同じなら「日本は星条旗の星の一つ」になっているということで構造協議方式を批判、こういうふうな見出しで載る。これは四月十九日にあるところで講演をされた。私は実際に聞いておりませんし、新聞でしか情報を知りませんから、全体の文脈とか真意のほどは定かでありませんけれども、現にマスコミを見た人は、幹事長は構造協議方式は余りよくないと思っているのかなというふうに思う。そうしますと、せっかく御苦労されて本当にみずからの問題として、国内の問題として、国際社会で生きるために、そして国民生活のためにもいろいろなことを乗り越えてやっていこうと、さあスタートについて頑張ろうというときに、何かこんなやり方はおかしいのだという話になると、本当にどうするのかなというふうになってしまう。スタートからこんな状態では本当にできるのかなというふうに思わざるを得ないわけなんですけれども、その部分に関してはどういう御所見でしょうか。
  317. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 日本とアメリカには歴史や文化や伝統や生活環境の違いもございますので、もうすべてことごとくぴたっと合意するということは、これは不可能に近いことであろうと私も思います。現に、きょうまでの何回かの話し合いは、日米双方から実務者が出ていろいろな問題について議論し、提起し合った。その大ざっぱなやりとり等を見ておりましても、受け入れられるものと受け入れられないものがあって、日本側からこれはどうしてもこういう理由でだめですよ、断ったものもたくさんあるはずでございます。それから、日本側もこれは努力をしようと思って受け入れて、こういう努力をしていくんだ、これが日本努力のぎりぎりの限度だということを言ったものもあると思います。同時に、アメリカに対しても日本側からは、これはよく思い切ったことを言ったんだなと思うくらい、アメリカのきょうまでの文化や歴史でいったら、アメリカの企業が短い目盛りで企業というものを計算していく、日本は一年という単位でやっていく、そういった違いについて、もう少し長期にしたらどうか、もう少し投資を考えたらどうだ、あるいは労働者の質をもっと上げるために教育を考えたらどうかとか、いろんなことが議論の中では出ておるはずでございます。それは全部受け入れたものもあれば、受け入れなかったものもあると思います。  けれども、じゃ日本側はどの程度までどうして受け入れたのかという御質問に率直にお答えをするとすれば、日本の場合は、戦後確かに自由経済、自由貿易の中で非常に幸運に明るい社会、豊かな暮らしをつくってきたんです。この考えは間違いなかったと思っておるんです。ただ、孤立しては生きていけない国でありますから、日本日本だけの主張で、他の言い分は一切聞かない、自分でいいと思ったことだけやっていけばいいんだと言っておったのでは成り立たない国でございますから、相互依存関係の世の中で日本経済というものを諸外国とよりよく調和させていくために、まず自由社会の中であるいは地球経済の上で一番大きな影響力を持っておるアメリカと二番目の責任を持たなきゃならぬ日本との間で考えておることを率直に話し合ったのが今度の日米協議でありますから、その中で日本のためになるもの、こうしたら日本のためになるなと思ったものは積極的に日本の立場でこうしたらいい、受けとめ、そしてこの中間報告にまとまった分野についてはこのようなことを自主的に判断をして帰ってきたというわけでございます。  また、この経過において、与党でありますから小沢幹事長とも私はしょっちゅう話をして、政府できちっとこういう判断をしたときには与党の方の支持も協力ももらわなければいけないから、こういうことだというときにはきちっと話をしまして、今おっしゃるようなそんな際どい言い方じゃなくて、日米関係は大切であるし、日本国民生活の質を高めるために大事だからひとつやりましょう、意見一致して進ましていただいておる、こう思っておりますので、私の考えは、少しも心配をしておりません。
  318. 川端達夫

    川端委員 いろんな議論が出る背景の中に、総理はこの中間報告の談話でも、「今後の実施に当たっては、痛みを伴う場合も予想されるが、私は、これは我が国の国益を推進するために必要であり、かつ、国際社会の責任ある一員としての我が国が負うべき責務であると信じて」いる、こういうふうにおっしゃっている。そういう部分のときに、個別の問題でなぜいろいろな議論が出てくるかというときに、結局その問題自体が今までも提起をされていたではないか、国民生活の観点から考えたときに。そして、なかなかそれがうまくいかないという部分で放置をされてきた。そういう部分がアメリカから言われたという部分で進展をして、何かやりますというふうな具体的な形になってきた。だから、アメリカとの関係においては、何かアメリカから言われなければやらないのかというふうな、外圧を利用するのではないか。そういう部分で、国民本位のことであるならばもっと早くから、言われるまでもなくやってきたとおっしゃるかもしれませんが、ここまで具体的な形では示されていなかったことが多いわけですから、そういう部分でどうして今日に至るまでにそういう議論と具体的な動きがなかったのか。やはりアメリカからかなり強く言われることでしか日本は動かないのではないか。そういうことがよく言われるし、私もそういう部分を感じます。  そういう部分で、今日までいろいろな問題、個個によって違いがあると思うのですが、国内問題、国民生活、そして国際社会の中でというときに、なぜ今までこういう場に至るまでに具体的に進まなかったのかということについてはどうですか。
  319. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 委員指摘のような事業も率直に言ってあると思います。けれども、いろいろ努力をしてきたけれども、いろいろな壁があってなかなか手のひらを返したように解決されておらなかったという面もあるわけでございます。同時にまた、気がついて輸入を拡大しなきゃならぬ、内需を拡大しなきゃならぬ、世界の国々との貿易のインバランスはできるだけ解決しなければならぬという努力については、既に幾らかの結果も出てきておって、過去二年間だけでも六百十億ドル輸入をふやしたというような実績等もございます。内需中心の景気の拡大に日本経済が入ってきたということは、これは日本経済の体質改善、前川レポートを掲げて取り組んできたことの成果が出てきておったせいだろうと私は受けとめておるのです。ですから、そういった、物事には光の面と影の面がありますから、一〇〇%努力をしておった、努力をしてきたと言い切るだけの自信はございませんから、率直に委員指摘のような点もございました。アメリカ側との話し合いの中で、そうだと思った点もいろいろございました。だから、これを機会に、国民生活の質の向上に役立つという大きな大義名分もあり、気づいてやってきて、それで十分な成果が出ておらなかったという反省の気持ち等も含めながらこの中間報告はまとめ上げたものだということも、率直に気持ちとして申し上げさせていただきます。
  320. 川端達夫

    川端委員 そういう意味で、結果的には今まで話題になり問題もあってという部分がやはりいろいろあって踏み込めなかった部分が、アメリカからの指摘といろんな環境の中でやはり一歩進んだという部分では、その交渉のあり方自体に私は少し問題というか、今までの日本政府のあり方というのは率直に反省をしていただかなければいけない。それと同時に、これからすれば、そういうふうに報告という形で最終報告に至るまでに具体的にまとめていったときに、そうしたらそれを実行するときに、それは今まで政府が独自でやっていったときにはいろいろあったという表現を今使われましたけれども、いろいろあった部分はやはり依然としていろいろあるわけですね。そこの部分に関してどうクリアしていくのかということがやはり一番大きな問題だというふうに思います。  具体的に大店法の問題についてそういう今までの流れを少し整理をしてみたいと思うのですが、通産大臣、大店法自体がそういう障害、障壁の一つだというふうな指摘の部分の、手短に、一番大きなアメリカとしての指摘というのはどういうところにあると御認識でしょうか。
  321. 武藤山治

    武藤国務大臣 やはり出店のあり方について非常にわかりにくいということではないかと思うのです。と申しますのは、正直、大店法を読んでおりましても、なぜその出店調整に五年も、極端に言えば十年もかかるのかというのは、これは日本人でもわからないと思うのですね。そういう点がやはり私は非常に問題になっていたのじゃないかという感じがいたしております。
  322. 川端達夫

    川端委員 いみじくも大臣おっしゃいましたけれども、やはりそれは法律を読んでいただけでは、こういうふうに出店が長くかかるとはどうしても読めないのですね。ここにまさに問題があるのではないか。  本来、大店法の趣旨というものを今普通の町の方にお伺いをして、大店法というのはどんな法律だと思っておられますかとお伺いをすれば、恐らく、あれはスーパーみたいな大きな店が来ると中小の商店街が非常に影響を受ける、だからそれが来ないように歯どめをかける、規制するための法律だというふうに認識されている人が非常に多いと思うのです。法律を読んでみると全然そういうことが読めない。アメリカの人が読んでも恐らくわかるわけがない。これはなぜこうなったのか。大店法の趣旨から随分ずれてしまったというところに問題がある。なぜずれたのか。  本来、大店法の趣旨というのは、大きな店と中小の店にはそれぞれ役割がある。品物の数とかそういうものも、もちろん値段とかもあるでしょうし、お店が近くにあるか遠くにあるかということも、いろんなものが一遍に買えるかということもあるでしょう。あるいはお店の人の商品の知識なりサービスというものを求める、大型店舗というのは大体自分で商品を選ぶわけですし、小さいというか普通のお店へ行けば、御主人が、あなたにはこういうものの方が合いますよ、少し高いけれどもということもあるでしょう。いろんなことの中で、そういう前提で大きい店と中小がそれなりに特徴を生かしてともに栄えなさい、ただ、一挙に無秩序になると非常に打撃を受ける部分もあるから調整をしよう、こういう趣旨だと思うのですね。  同時に、私も商店街の中の商店に生まれたので、ふるさとへ行きますと随分さま変わりをした、そういう部分では時代も変わったなと。住む人の場所も、随分郊外にどんどん新しい住宅ができて変わっていった。夜遅くまで働く人もいる。そんないろんな要素の中で、みんな車も持つようになったとかいうときに、なぜアメリカがわかりにくいと言ったかというのは、もう実は流通ビジョンに書いてあるのですね。今度の答申はこれを基礎にされたと思うのですけれども、「大店法の本来の趣旨から逸脱した運用を適正化するとともに、出店調整のあり方を経済社会の情勢変化に対応したものとすることが喫緊の課題である」。要するに、本来の趣旨から逸脱したようになってしまっている。まさにここでわからなくなってしまっている。だれが逸脱させたのかということなんですね。ここに私は、今までとられてきた商業政策というものにやはり手抜かりがあったのではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  323. 武藤山治

    武藤国務大臣 手抜かりということはないと思うのですが、アメリカでも今行政指導というのが一つの英語になっているそうでございまして、そういう点が、日本の行政指導というのは大変、法律とはまた別の形で非常に行われてきた。それはやはり外国の人から見れば、何もアメリカだけじゃないと思いますが、非常にわかりにくい点があったと思うのです。私は、やはりその辺は正直反省に立っていかなきゃいけない。今度アメリカが日米構造協議の中でも、その行政指導とか審議会のあり方とか、いろいろこういう点にも触れているわけでございますけれども、もう少しやはりだれにでもわかるような形で行政が行われる、それはあくまで法律に基づいて行政が行われる、こういう形が私は非常に大切なことではなかろうかと思っておりまして、その点については、今御指摘のように、既に昨年の審議会で九〇年代の流通ビジョンという提言をいただきまして、その中にもその点を反省を込めて書いてあると思うのでございます。  今回も私はそういう点はやはりできるだけ透明性を持った形にし、法律で決めるものはきちんと法律で決め、それに基づいて行政をきちんとやるということが非常に大切かと思っております。     〔近藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  324. 川端達夫

    川端委員 今までの議論ではっきりしたと思うのですが、まさに今問題になっていて問われているのは、本来の大店法そのものではなくて、これを直すとかやめるとかいうことでなくて、十五年間大店法の本来の趣旨からどんどんずれて、一般の認識として何か店が来ないようにあるいは長引かすためにあるような法律としてなってきたという、これは行政の責任だけとも申し上げません。政治もやはり反省を大きくしなければいけないことだというふうに思います。そういう意味で、本当の議論というものをしなければいけない。そのときに、総理、今までの状況の中で、構造改革というものが、経済の問題と同時に、政治として取り組む姿勢として、いわゆる総論賛成、各論反対という、これこそまさにアメリカの人とお話をすると一番嫌がる、日本人はまさにエゴイストの象徴だ、総論賛成、各論反対だ、各論になると自分のことは反対だ、そういうことを政治としても脱却をしなければいけない。そのときに、総理として、現実には参議院での与野党の勢力の違いというのも含めて、まさに指導性といいますか、リーダーシップというものが問われていると思います。  今までの議論を聞いていますと、これはやらなければいけないんだ、国際社会のためにも国民のためにもとおっしゃるけれども、これからが法律をつくっていくという段階だからということなんでしょうけれども、実際の部分として、これは本会議あるいは予算委員会の総括でも我が党の方から質問いたしましたけれども、どういうフレームで政治の場でこなしていくという部分に構想をお持ちなのかをお聞かせをいただきたい。
  325. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 これは総論賛成、各論反対にならないようにしなければなりませんので、私は与野党の皆様方の御議論も何回もお願いをいたしますと言いましたし、また、規制緩和その他のことにつきましても、国民の皆さんの中には、きょうまでの立場と異なった立場が出てくる方には、ある意味では非常に痛みを感じていただく場合もあるかもしれませんが、しかし大きな見地から、これは消費者全体の利益を守る社会をつくっていくということと、国際社会で日本が孤立できないという大きな立場がありますから、どうぞ御理解ください、お願いしますということを私は申し上げ続けてきたのでありますけれども、具体的なテーマになりましたら、これは国会で御審議をいただいて、法律の問題になるものは法律をここで御議論願わなきゃならぬわけでございますので、私は誠意を持ってこちらの立場もお願いをし、また御議論をいただいていかなければならない、このように考えております。
  326. 川端達夫

    川端委員 そういうときに、法律が出てという議論の前に、私は、ですから先ほど言いましたように、アメリカから言われてころっと今までできない部分まで踏み込んだという部分がやはり一番問題ではないかな。そういうときに、例えば大店法を話題に取り上げましたけれども、商店街が現実に、大店法がスタートしてからもうどんどん商店数というのは減っているのですね。特にパパママストアみたいなのはどんどん減ってきている。そして、それは大店法の影響ももちろんあるでしょう。しかし、町の人口の分布というものがどんどん変わってしまった、あるいはお客さんのニーズの多様化、あるいは商品知識がふえてきた、お店の人よりも詳しく知っていたら自分で選んだ方がいいというふうなこともあるでしょうし、そういういろいろな部分がある中で、これからの、今までも含めてその大店法、大型店と共存共栄していく、強い競争力を持つ商店にするにはどうなんだということが、やはり私はその部分は非常に弱かったと思うのですね。大きいものは強い、だから規制をする、小さいものは弱いから守ると、小さいものはというふうな何か一つの図式みたいのに当てはめた中で守るというふうに、大店法を運用を変えることによって来ないように守るということにやはりウエートがあり過ぎたのではないか。結局は自分たちが強くなれなかったというのが十五年間たってしまったということではないかなというふうに思います。  そういう中で、それはいろいろ痛みがあるというたらいろいろな議論があると思うのですが、そのときにアメリカとの協議の中で報告が出た。そうしたら、大都市圏を含めて、廃止も含めて検討するという項目がある。そうすると、今までの商業政策のあり方という部分の中でいきなりなぜ廃止という言葉まで出てきたのだろうと。大都市圏という部分も、これは流通ビジョンなんかではそんなことも全然触れていないわけですね。そうすると、今まで議論を積み重ねてきてなかなかできなかったことを今思い切ってやったのだとおっしゃるけれども、その思い切ってのときに、今まで議論もない部分がぽこっと出てくる。そして、それが廃止をにじませたような部分に出てくる。そうすると、アメリカが廃止と言えと言っているから何か何となく場当たりで急に出てきた。そうすると、当事者である商店の方々は、やはり自分たちが強くなるのにどうしたらいいか。今必死に悩んで努力をしよう、何とかバックアップもしてほしい、だから大店法をいろいろ運用改善されるときに、商業政策として強くなる施策も考えてくださいよ、我々も頑張りますという中に、何か先の二年、法改正後二年後の見直しの中にそういうものがいきなり出てくると混乱をするし、非常に不安を持つ、先ほどの議論も何かそういう非常に不安の塊だと思うのですけれども。そうすると、結局は、もうもとから全部反対だというふうになってしまうのですね。私は当然だと思うのです。だから、そこのその過程という部分が随分省略された形で、そうすると、やはり日本の主体性じゃなくてアメリカの外圧を利用して押しつけてくる、それに対しては困る困るという反対の声が出てくる、うまくいかない、つぶれてしまう。もしそんなことになれば、日米構造協議が日米間の問題になってくる、またやはり守らないではないかということになる。  ですから、これは非常に難しい問題ですが、やはりアメリカとの協議ということじゃなくて、国内の問題としてとらえ、国民生活のためと言われるのであれば、本当に基本的なところからの議論をきっちり積み上げるということをしないと、私はこれは混乱のもとだけではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  327. 武藤山治

    武藤国務大臣 今、御議論、御質問いただいておりまして、私どももこれはこれから慎重に対処していかなければいけないと思っておりますが、正直、混乱の起きないようにするということがまず一番大切でございます。  ただ問題は、今御指摘もありましたように町も変化してきているわけですね。人口も変わってきておりますし、あるいは消費者ニーズも非常に変わってきておりますし、それに対応し切っていただくように中小小売商にもこれはお願いをしなければいけないと思うのです。個々の中小企業だけではなかなか大変だということもありまして、今私ども、どちらかというと政策はその地域の中小小売商全体のためにということで、先ほどもお話し申し上げましたが、例えばコミュニティーマートあるいはアーケードあるいは街路といったようなところの舗装をきれいにするとか、いろいろの形で私ども政策を今実行いたしておるわけでございまして、これは何も大店法の今度外圧を利用したということではなくて、今の大型店と中小小売商との関係を見ておりますと、やはり中小小売商の皆さんにより新しい時代に合った経営をしていただきたい、より新しし時代に合った町づくりをしていただきたい、こういう観点から政策を進めてきているわけでございまして、今後も、今大店法は将来改正の方向にございますから、そういうところで中小小売商が非常に御心配になることはよくわかりますけれども、例えば私は、中小小売商の皆さんが、こういうモータリゼーションの時代に全く駐車場がないというのも非常に困ると思うのですね。  例えば一つのアイデアとしては、その中小の小売商の皆さんが一緒になっていただくような一つの大きな建物の中に入っていただいて、それでその中小小売商の皆さんの土地を駐車場に使うとか、いろいろアイデアはあると私は思うのです。これはまだ私個人のアイデアでございますけれども、その点はこれから事務当局ともよく詰めながら、あるいはまた審議会の先生方の御意見もよく承りながら、何か一つこれからの新しい時代の中小小売商の対策というものはぜひ考えていきたい、こう思っておるわけであります。
  328. 川端達夫

    川端委員 おっしゃる趣旨は非常によくわかりますし、ぜひともそうやっていただきたいのですが、ただ気になりますことは、例えばこの中間報告の中でも、「大店法改正後二年後に更に大店法を見直すこととする。この検討には、消費者及び小売分野における競争に対する大店法の影響に関する分析並びにこれを踏まえ大店法を基本的に見直して更なる行動をとることの必要性に関する分析が含まれる。」ということで、小売分野における競争に対する大店法の影響を二年間で分析するのだ。現にもう十五年たっているわけです。その部分に関しての分析というのをどのようにお考えなのか。私は、その部分で、いわゆる中小小売商に対する施策というものがその分析という部分に関してはやはり非常に欠けていたのではないかな。町もどんどん変わっていった、それに対応する、今集めて駐車場をつくってと、現にそういうことも確かに問題があります。そういう部分でいったときに、今度直したときから二年間で分析してということではなくて、むしろこういう状況になってきたという部分では、まさにアメリカから言われるまでもなくというのが欠けていたのではないかというのはそこなんですね。わざわざここに、直したら二年間分析するということでは、今まで分析はどうだったのだろう、それに対する策というのはどうだったのだろうということにやはり疑問を持たざるを得ない。  そういう意味で、過去を振り返ってみても仕方がないことですけれども、本当にこの日本のまさに文化も持つ、地域活動も含めて支えている中小の商店街というものが、消費者の利便も含め、そして町づくりの観点も含めて思い切った施策を打っていただきたいというふうに切にお願いいたしまして、言葉が足りないのですが、時間が来ましたので終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
  329. 越智伊平

    越智委員長 これにて川端君の質疑は終了いたしました。  次に楢崎弥之助君。
  330. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 海部総理は、四月の二十八日からインド、パキスタン、スリランカ、インドネシア、バングラデシュ各国を歴訪されるそうでありますが、今、バングラデシュで非常に問題になっていることがあります。それで、ぜひ総理認識を深めてバングラデシュに行ってもらいたい、このようは思うわけです。  どういう問題が起こっておるかというと、バングラデシュの債務救済無償援助による救命ボート入札にかかわる疑惑の問題であります。それで私は、きょう質問時間は十分でありまして、あさって一時間二十分一般質問がございますから、きょうはまずイントロと申しますか、序幕でございますから、そういうつもりで聞いていただきたい。  疑惑の概要を簡単に申し上げます。  バングラデシュ救援復興省は、八八年に実施された日本の債務救済無償援助約五十二億円のうち二十五億円をかけて三つのタイプの五百二十隻の救命ボート調達計画を立てました。疑惑を生んだ救命ボート購入の入札は、昨年八月十四日首都ダッカの救援復興省で行われたのでありますが、なぜか日本企業の四商社だけが応札をいたしまして、そして直ちにその場で開札をされました。その入札結果は、一番札、金商又一、約二十三億円、二番札、丸紅、約二・六倍の五十九億円、三番札、住友商事、四番札、兼松、そういう順序であります。  ところが、昨年の十二月二日、この救援復興省は、予算枠内で応札をいたしました金商又一ではなくして、二・六倍の高値の丸紅との間で、調達予定隻数五百二十隻をわざわざ半分の二百七十五隻に減らして、そうしてまで予算枠いっぱいの二十五億円で契約を結んだのであります。当然問題が起こります。マスコミが騒ぎ出しました。金商又一を除く三商社の談合の疑いが出てきている。きょうも談合のことがいろいろ出ました。それで、かつて、総理も覚えておられるかもしれぬが、九頭竜川ダム入札事件というものがあった。石川達三さんが「金環蝕」という本を書いた、その中で詳しく述べている。映画にもなりました。このとき言われたのは、水は低きに流れるけれども、入札、応札は高値に流れると言われました。それと同じことなんですね。  そこで、私はお聞きしますが、四月十九日付で海部総理大臣のところに在日バングラデシュ市民フォーラムの議長から訴えの直訴の書簡が郵送されておるのではないですか。時間がありませんから、郵送されたならされたで、ふんと言われりゃいいんですわ。
  331. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 お答え申し上げます。  本件については、私どもスキームとしましては、いわゆる債務救済の無償資金協力ということでやっておるものでございます。
  332. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっと委員長総理のところに手紙が行っているかどうかを聞いているのですよ。
  333. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 それで、その書簡につきましては、私ども正確なところは承知いたしていない次第でございます。
  334. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私のところにその写しが来ているのですよ。だからここにありますから、総理にちょっと見ていただきたい。よろしゅうございますか。
  335. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 お手紙拝見させていただいてよろしゅうございますか。
  336. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それで、こういう手紙が総理のもとへやがて渡ると思います。
  337. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 お答え申し上げます。
  338. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、いいですよ、あなた時間がないから。   この機会をお借りして、昨年日本からバングラデシュへの救援ボートの提供で、日本政府の債務救済基金に対する不法行為が報道されていることに、閣下のご注意を喚起いたしたく存じます。洪水の被害にあった人々を救済するという名目で有効な基金の相当額が誤った目的に使用されようとしています。本件は、バングラデシュで広い関心を呼び起こしております。本件は、最近日本の国会で討議されており、事の重大性を示しているものと、私達は理解しております。   閣下の今回のご訪問は、日本政府及び国民がかくも大規模な援助金がムダに使われていることに対して無関心ではいられないということを示される絶好の機会でございます。私達は、閣下が直ちに疑惑をつぶさに調査され、関係者に対して法的措置をすすめられるよう訴えます。   私達はまた、数百万の貧困者を犠牲にして特権階級を利するだけのこのような事件が将来再び起ることを防ぐために適切な措置を取られるよう懇請いたします。  一九九〇年四月十九日     バングラデシュ市民フォーラム議長         カイザー・アリ・タルクダー    総 理 大 臣 殿 こういう手紙であります。  さらに、在ダッカ日本国大使館の公使がバングラデシュ政府に対して、いわゆる照会の手紙も出されております。内容を明らかにしたいと思います。   拝啓   日本政府は、日本の債務救済援助金が有効に使われているかどうかについて、当然のことながら関心がありますし、同時に、債務救済援助金は、日本が行っている最も重要な無償資金協力の一つでありますので、日本政府は、必要があればいくつかの件で被援助国政府に照合する必要があると考えます。   日本政府は、緊急救助ボート調達の入札で合計金額で二番目に低い値をつけた丸紅が落札したこと、及び地元の新聞が貴政府の緊急ボート調達を批判する記事を何本か載せていることを、最近知るところとなりました。この関連で、日本政府は、本件について照合を行う必要があると考え、貴国政府に対して、右の会社が入札で落札した貴国政府の決定に至る経過をお示し頂くよう要請したいと存じます。   本件に関して貴下の速やかなご回答を頂ければ、幸甚に存じます。                     敬具  一九八九年十二月二十日          在ダッカ日本国大使館              公使 伊藤 哲朗  バングラディシュ人民共和国   計画省・対外資源課    アユブ・クァドリ殿 「日本政府」というのが四回出てきておる。日本政府の代表はあなたでしょう、海部総理日本政府の名前でこういう疑惑が照会されているのですよ、返事をくださいと。私が少なくとも調べたところでは、向こうの新聞を調べました。ベンガル語ですからわからない。ベンガル語を一遍英語に直して、それをまた日本語に直すのですよ。その現地の新聞というのを全部私はここへそろえて持っています。  それで私は、政府ですら疑問に思っているのですから、このODAの資金は国民の税金ですから、もしこれの返答が来ておれば、四月に来たと思うのですね。だから、その返答の内容を明らかにしていただきたい。なぜならば、政府が疑問に思っているぐらいだから、国民の代表である我々はそれを明らかにしなくちゃならない責任があるからであります。総理の御見解を問います。
  339. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘のとおり、このODAの資金は貴重な国民の税金であります。かかる観点から見て、このバングラデシュに対する援助についての疑惑について、在外公館の責任者が相手国政府の責任者に確認をしておるということは国民に対する責任を果たしていると私は思います。
  340. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 内容を明らかにしてください。
  341. 中山太郎

    中山国務大臣 内容につきましては、局長から詳細お話をさせていただきます。
  342. 越智伊平

    越智委員長 はい、簡単に、木幡経済協力局長、時間ですから。
  343. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 先ほど御質問の市民フォーラムの手紙は、私どもいまだ承知しておらない次第でございます。先生のところにあるいは直接届いたものかと推察をいたします。  それから第二点、ODAにつきまして、きちんとやる、適正にやるということは、日ごろ私ども最も意を用いているところでございまして、伊藤公使の書簡であるかどうかまで、私その点について、それを確認する立場にございませんが、先方との間ではいろいろな機会に適正使用について話をしているということでございます。
  344. 越智伊平

    越智委員長 これにて——もう時間ですから。
  345. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いやいや、やめますから。これは日本政府というのが使ってありますからね。だから、この内容は、回答をこの委員会に資料として出していただきたい。お願いします。それで終わりにします。
  346. 越智伊平

    越智委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  347. 越智伊平

    越智委員長 この際、分科会設置の件についてお諮りいたします。  平成二年度総予算審査のため、八個の分科会を設置することとし、分科会の区分は  第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、総理府(ただし経済企画庁、環境庁、国土庁を除く)並びに他の分科会の所管以外の事項  第二分科会は、法務省、外務省、大蔵省所管  第三分科会は、文部省、自治省所管  第四分科会は、厚生省、労働省所管  第五分科会は、総理府(環境庁)、農林水産省所管  第六分科会は、総理府(経済企画庁)、通商産業省所管  第七分科会は、運輸省、郵政省所管  第八分科会は、総理府(国土庁)、建設省所管 以上のとおりにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  348. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、分科会の分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員の補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  349. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次いで、お諮りいたします。  分科会審査の際、最高裁判所当局から出席発言の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  350. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、明二十四日午前十時より委員会を開会し、本日に引き続き集中審議を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会