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1990-04-09 第118回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年四月九日(月曜日)     午前九時一分開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 近藤 鉄雄君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 宮下 創平君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 村山 富市君    理事 神崎 武法君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君       石井  一君    稲村 利幸君      小此木彦三郎君    越智 通雄君       工藤  巌君    倉成  正君       後藤田正晴君    左藤  恵君       佐藤 敬夫君    田澤 吉郎君       戸井田三郎君    葉梨 信行君       長谷川 峻君    浜田 幸一君       林  義郎君    原田  憲君       真鍋 光広君    松本 十郎君       村田敬次郎君    村山 達雄君       井上 普方君    川崎 寛治君       北川 昌典君    串原 義直君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    戸田 菊雄君       藤田 高敏君    武藤 山治君       和田 静夫君    市川 雄一君       日笠 勝之君    冬柴 鐵三君       金子 満広君    児玉 健次君       古堅 実吉君    三浦  久君       大内 啓伍君    米沢  隆君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 長谷川 信君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 保利 耕輔君         厚 生 大 臣 津島 雄二君         農林水産大臣  山本 富雄君         通商産業大臣  武藤 嘉文君         運 輸 大 臣 大野  明君         郵 政 大 臣 深谷 隆司君         労 働 大 臣 塚原 俊平君         建 設 大 臣 綿貫 民輔君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     奥田 敬和君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 塩崎  潤君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      砂田 重民君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      相沢 英之君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      大島 友治君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 北川 石松君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 佐藤 守良君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       矢部丈太郎君         公正取引委員会         事務局経済部長 糸田 省吾君         公正取引委員会         事務局審査部長 柴田 章平君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  杉浦  力君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      米山 市郎君         防衛庁人事局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 植松  敏君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁調整         局長      勝村 坦郎君         経済企画庁総合         計画局長    冨金原俊二君         環境庁長官官房         長       渡辺  修君         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         国土庁土地局長 藤原 良一君         法務省刑事局長 根來 泰周君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      木幡 昭七君         外務省条約局長 福田  博君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵大臣官房総         務審議官    篠沢 恭助君         大蔵大臣官房審         議官      中島 公明君         大蔵省主計局長 小粥 正巳君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省理財局次         長       松田 篤之君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         文部大臣官房長 國分 正明君         文部省体育局長 前畑 安宏君         厚生大臣官房総         務審議官    加藤 栄一君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生省生活衛生         局長      目黒 克己君         厚生省社会局長 長尾 立子君         厚生省保険局長 坂本 龍彦君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       山本 貞一君         通商産業省通商         政策局次長   堤  富男君         通商産業省貿易         局長      内藤 正久君         通商産業省立地         公害局長    岡松壯三郎君         中小企業庁計画         部長      高島  章君         中小企業庁小規         模企業部長   川田 洋輝君         運輸大臣官房長 松尾 道彦君         運輸大臣官房会         計課長     岩田 貞男君         運輸省運輸政策         局長      中村  徹君         運輸省地域交通         局長      早川  章君         郵政大臣官房経         理部長     木下 昌浩君         労働大臣官房長 若林 之矩君         労働省労働基準         局長      野崎 和昭君         労働省職業安定         局長      清水 傳雄君         建設大臣官房総         務審議官    福本 英三君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省都市局長 真嶋 一男君         建設省住宅局長 伊藤 茂史君         自治省行政局長 森  繁一君         自治省行政局選         挙部長     浅野大三郎君         自治省財政局長 持永 堯民君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 四月九日  辞任         補欠選任   池田 行彦君     真鍋 光広君   内海 英男君     井奥 貞雄君   越智 通雄君     佐藤 敬夫君   木島日出夫君     古堅 実吉君   三浦  久君     児玉 健次君   大内 啓伍君     米沢  隆君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   佐藤 敬夫君     越智 通雄君   真鍋 光広君     池田 行彦君   児玉 健次君     三浦  久君   古堅 実吉君     金子 満広君   米沢  隆君     大内 啓伍君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成二年度一般会計予算  平成二年度特別会計予算  平成二年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成二年度一般会計予算平成二年度特別会計予算平成二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。市川雄一君。
  3. 市川雄一

    市川委員 私は、公明党・国民会議を代表しまして、当面する諸問題についてお伺いをいたしたいと思います。  最初に、大蔵大臣G7大変に御苦労さまでございました。共同声明を拝見いたしますと、円安名指しで初めて共同声明にその趣旨が盛り込まれて、円の下落世界の不均衡是正に望ましくない、こういう表現共同声明に盛り込まれた。このこと自体は評価することにやぶさかではありませんが、欧州各国ともに、御承知のように、自国通貨を国内のインフレ対策から守るために強く維持したい、こういう意向があって、かなり大蔵大臣御苦労されたようですが、この共同声明に盛られた趣旨それなり協力が得られるのかどうか、果たして円安に歯どめがかかるのかどうか、この辺について、まず承りたいと思います。
  4. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員から御指摘を受けましたが、今回のG7声明の中におきまして、世界金融市場展開、特に円の他の通貨に対する下落とその世界的な調整過程に対する望ましからざる結果というものが、論議の結果、共同声明の中に盛られ、今後常時その展開について検討していくということで合意を得ることができました。また、為替市場における協力を含めまして、経済政策協調についてのコミットメントを再確認することができました。  今後におきましてどうこれに市場が反応するか、私どもとしてその判断を示すことは許されないことでありますけれども、こうしたセブン各国の共通の認識というものが示されましたことは、ここしばらくの間、各国協調体制に対する市場の疑念とかさまざまな論議がありました中でありますだけに、それなりの重みのあるものと受けとめておりまして、これによって為替の安定が果たされることを心から願っております。
  5. 市川雄一

    市川委員 円相場適正水準ということも、これは非常に難しいことではありますが、必ずしも円相場安定のための適正水準というものについての合意というものがあったわけではない。そうしますと、ここから先円安傾向に、市場の反応という問題も今おっしゃられましたが、円安傾向に歯どめがかかったと、こう見ていらっしゃるわけですか。
  6. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私どもといたしまして、為替水準の望ましい姿がどこかということを口頭に上せることについては慎まなければならないことだと考えております。ただ、いずれにいたしましても、世界の中におきまして、円の相場の不安定というものが、例えば貿易収支改善努力に水を差すことがあってはならない、あるいは世界的な資金の流れに大きな影響を及ぼすものでありますだけに、その流れが阻害される状態があってはならない、また同時に、その不安定さが我が国市場開放あるいは産業構造調整に対する努力可能性を否定する方向になってはならない、こうした点については、懸念は世界各国に共通する部分であろうと存じます。ここしばらくの間、思惑的な動きから市場に非常に不安定性を強調する向きがありましただけに、こうした動きについては、私は効果を持ってくれると考えております。
  7. 市川雄一

    市川委員 今回のG7合意にもかかわらず円安傾向に歯どめがかからない、こうなった場合、我が国経済に非常に大きな影響が出ると思いますが、その辺のことについてはどんな見通しでございますか。
  8. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ちょうどけさ出邸前に新聞の紙面に目を通し、また昨夕来のテレビ、その他を見ておりまして、一つ私自身が気になったことがございます。  今度のG7論議の中に、世界的な高金利高金利志向というものに対する警戒というものが非常に強い形で論議の中にございました。金利エスカレーション高金利へのエスカレーションというものに対する警戒というものは、各国に共通する一つ会議の底流をなすものであったと思います。そして、これはIMFの専務理事のコメントの中にも特記されることとして提起をされておりました。金利政策というものは、日本銀行の専管のものでありまして、私どもがどうこう申し上げること自体が問題のあるところでありますけれども、そうした中で、日本として金利エスカレーションの原動力になることは、我々としては決して考えていないということは、日銀総裁とも御相談の上、会議の席上表明をしてきたことであります。  これは、私どもが今日本経済の基調というものが景気の引き締めを必要とする状況にはないという基本認識で一致しておるからでありますが、それが完全に一切の金利政策手足を縛るかのごとき非常に強い表現で報道されておりましたことに、実は私は多少困惑をいたしております。私どもとして日銀当局金利政策に対する手足を拘束するつもりは毛頭ありませんし、その金利エスカレーションにつながらないような形で日銀当局金利政策を運用されるということは、これは当然のことでありまして、私どもとして、少なくとも日本はそのエスカレーションの元凶と言われるような状況に立つ意思はない、こうした点だけは、日銀総裁と御相談の上で、その席上でも表明をしてきたことであります。
  9. 市川雄一

    市川委員 G7について種々承りました。ことしに入りまして円安債券安株安、いわゆるトリプル安ということが言われているわけですが、特に最近のこのトリプル安あるいは円安政府説明ですと、特に日本経済ファンダメンタルズには変化はない、こういう説明を一貫してしておられますが、今の時点でどういう要因でこういうトリプル安というものが引き起こされてきたのか、それは一時的な一過性のものなのか、もっとやはり世界経済構造変化あるいはそれが日本経済に大きな構造変化を起こそうとしているのではないのか、この辺についてはどういう分析をしておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
  10. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員から御指摘を受けましたけれども、確かに年初来為替市場債券市場株式市場ともに不安定な動きを示してまいりました。また、原油価格につきましては、一月の上旬まで上昇いたしましたが、その後軟調に推移しているという状況であります。  しかし、同時に、本当に日本経済そのものの中を見てまいりましても、物価は安定をいたしておりながら依然として力強い拡大が続いている、こうした局面を見てまいりますと、我々は本当に日本経済ファンダメンタルズ変化が生じているとは考えておりません。また、いずれにしても、我々としては現在の好調な景気というものをできるだけ息の長いものにしていくための努力を今後とも続けていかなければならないと考えております。  そこで、たまたま委員から御指摘のありました点につきまして、一点申し述べたいと思いますのは、このセブンの席上でも、実はこのトリプル安という現象につきましては、非常に日本経済の実態がわかりづらいということで各国からさまざまな質問が集中をいたし、それに対しての説明努力を強いられたわけであります。  私ども相当長い説明をいたしまして、長い説明全部を繰り返すつもりはここにございませんけれども、例えば株につきまして、昨年の特に十一月から十二月にかけまして、米国の金融緩和の観測でありますとかあるいは東西緊張緩和などというものが非常に好感をされまして、その二カ月間だけで十月に比べて九・五%の急上昇ということがありました中から高値警戒感というものも台頭しておりました。ところが、本年に入りましてから逆に下降、下落傾向で推移をし、日経平均株価が四月五日には一時二万七千二百五十一円〇四銭、年初来の最安値を記録をした。しかし、それがすぐ反発をし、六日現在、昨年末に比べて九千六百三十七円九銭安の二万九千二百七十八円七十八銭というところまで戻った。こうした非常に動きの激しい局面でありますけれども、年初来の株価下落の背景としては、昨年末における株価急騰調整金利上昇円安など外部環境及び株価の先行きの不透明感、こうした中で模様眺めの軟調な展開となったと見られている。殊に、二月の後半から三月にかけまして、現物株株価指数先物取引との裁定取引に係る現物株の売り圧迫感決算期末を控えた買い手控え気分というものが強くて軟弱な地合いとなった。また、今月に入りましても、一部誤った報道やうわさによって下落をするなど軟調な展開が続いている。しかし、この間の非常に注目すべきこととしては、一日平均出来高は五億二千万株、非常に少ない。総じて買い意欲が乏しい中に小口の売り物が出て、それが値を下げるという展開であった。  こうした点についての状況説明と、あわせてもう一つ問題点として、本年の二月後半から三月にかけまして、昨年末に行われました裁定取引で生じたポジションの解消が行われたこと、そして、その状況一般投資家にディスクローズされていなかったことから、これに対する市場不安感が高まり、株価低落の原因となった。今後こうした不安感を除去するために、裁定取引状況のディスクロージャーを近く実施する方向で検討している。こうしたことを報告いたしまして、最終的に納得を得、共同声明まで持っていったということであります。
  11. 市川雄一

    市川委員 従来は円高金利安原油安というトリプルメリット、これが円安金利高原油高、こういうトリプルデメリットに変わってきた。そういうところからいろいろな専門家が今の日本経済についていろいろな分析をして、もう既に今の景気は一—三月期で終了しているのではないのか、こういういろいろなデータを数字を挙げて立証しておられる方もいらっしゃるわけです。あるいは、この間もこの委員会では議論されていましたけれども日本経済は午後四時、もう夕やみが迫ってきている、こういうことをおっしゃる方もいらっしゃいますが、現時点で政府は今後の景気について基本的にどういう見通しですか。
  12. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大蔵省としての調査またその結果としての分析等を見ましても、私どもは、依然として日本経済というものは非常に底がたい、そして今後ともに内需を中心とした拡大を続けていく能力を十分持っており、我々は政策的にその経済持続性をどこまで長もちをさせていけるか、まだまだ十分に力を持っておる、そう信じております。
  13. 市川雄一

    市川委員 問題を変えまして、総理政治姿勢についてお伺いしたいと思います。  総理は、第二次海部内閣を発足させるに当たりまして、例えばリクルート社からの政治献金などの閣僚からの自主申告というものは要求しなかったのですか。
  14. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 スタートいたしますときに、官房長官にそれぞれ自主申告をするように手続をいたしました。
  15. 市川雄一

    市川委員 宇野内閣当時、平成元年六月十二日の予算委員会宇野総理は、「自主申告の件は全員に私は申し渡してある次第でございます。だから、それに反しているような人はいないと私は思っております。」もし官房長官発表後に、後からそういう人が出てきたらどうするんだ。「当然責任をとってもらう、」明快に言っているのですよ。総理自主申告官房長官から各閣僚に言ったわけですか。——ということは、総理が三月六日の衆議院本会議発表したあの発表原稿は、官房長官が調べた原稿発表した、こういうことですか。
  16. 坂本三十次

    坂本国務大臣 委員のおっしゃるとおり、私が調査をして発表したことを御報告したということです。
  17. 市川雄一

    市川委員 官房長官、私が調査して発表したとおっしゃいましたが、それは各閣僚に、総理がこういう意向です、もしリクルート社からの政治献金があったら自主申告してください、こう各閣僚におっしゃられて、それで閣僚からの自主申告を受けて発表した、こういうことですか。
  18. 坂本三十次

    坂本国務大臣 おっしゃるとおりです。
  19. 市川雄一

    市川委員 そうしますと、総理総理は、今官房長官がおっしゃられた、総理意思として自主申告をしてください、その実際の事務取り扱いというか手続官房長官がかわって各閣僚にやった。官房長官の手元に各閣僚からの自主申告が集まった。総理はそれを信じて本会議発表した。ところが違っていた。総理、これはどういうことですか。総理はこれについて責任は感じませんか。
  20. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのことにつきましては、最初調査の段階において綿密さを欠き、いろいろ不注意があったことは極めて遺憾なことでありますから、本人にもそのことに関しましては厳重に注意をいたしました。
  21. 市川雄一

    市川委員 何か小学生や中学生、大学生を集めて注意しているのと違うのです、これは。閣僚ですよ、閣僚。しかも、一昨年の六十三年の夏以来リクルート事件というのはずっと続いて、竹下内閣では二人の閣僚就任直後二日とか三日でおやめになっている。そういうことが実際に過去の教訓としてあった。そして竹下内閣は退陣した。宇野内閣ができた。宇野さんは非常に厳しくこれを実施した。海部さんはどうなんですか、海部総理は。何か、新入社員を集めて言ったけれども、彼らが言うことを聞きませんでしたみたいな答弁に聞こえるんです、今の答弁は。少なくとも閣僚じゃありませんか。閣僚総理意向官房長官が伝えたんじゃありませんか。自主申告しなかった。虚偽の申告じゃありませんか、これは。総理としてただ注意したで済むんですか。本会議での発表ですよ、総理。どういうふうにお考えですか。ちょっと納得できませんね。
  22. 坂本三十次

    坂本国務大臣 閣僚就任時の調査の際、リクルート社等からの献金はないと深谷大臣が自主申告をしたことの原因について、私が郵政大臣にただしました。  深谷氏は、リクルート社が問題となった段階で、もし同社との関係があればきちんと整理し一切疑惑がないようにするよう指示をした、しかし事務方では、これを受けて同社に後援会から退会してもらい、またそれ以降の会費は返却をしたほか一切六十三年夏以降の献金等はもらっていないが、これで同社との関係は全く清算されたものと考え、閣僚就任時の調査でも一切関係がないと同大臣に報告し、それに基づき同大臣から自主申告がなされたということであります。  私としては、調査が不徹底であったことについて同大臣に対し厳重に注意をいたしました。この点については、同大臣も率直に認めて、まことに申しわけがなかったと深く反省をしておるところであります。
  23. 市川雄一

    市川委員 深谷大臣に伺おうと思っていたんですよ、それは。官房長官に親切に先回りして御答弁いただいたのですが。  私が伺っているのは、深谷大臣のことは深谷大臣のこととして、御本人の問題はこれから、いらっしゃるわけですから伺いますが、総理ですよ。まず総理として、本会議という極めて公式の場で、総理が一定の意思を持って閣僚に言った、官房長官が取りまとめた、それを信じて総理発表した。それが違っていた。この総理の本会議発表というものは全く権威がなかったということになるじゃありませんか。総理、これはそんな、ただ注意しましたというだけの問題でしょうか。どうですか、総理。もう何かさっき以上のお答えはないのですか。
  24. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほども率直に申し上げましたように、極めて遺憾なことでございます。そして、同時にまた、リクルート問題につきましては、事件がこのように社会的な批判を受けるに至った一昨年の夏という時点において党がけじめ案をつくったわけでありますけれども、それに基づいて郵政大臣もその後みずからの意思によってきちっと区別をしておるという、官房長官がいろいろ事情を聞きましたところ、そうなっておるわけでございますから、それに基づいて厳重に注意し、今後は厳しく戒めていくようにしたところであります。
  25. 市川雄一

    市川委員 深谷大臣にお伺いしますが、お聞きのとおりですね。総理自主申告しなさい、官房長官がその事務を取り扱った、あなたは自主申告しなかった、これは極めて総理大臣に対する背信的な行為じゃないのですか。自主申告しなさい、官房長官がどうですかと聞いた、ありません、総理はそれを信じて本会議発表してしまった。後で新聞や何かでリークされて出てきた。総理に対することもありますが、国民に対してそんなことが通用するとお考えなんですか。どういうお考えですか。なぜ自主申告しなかったのですか。篤と承りたいと思います。
  26. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 私の自主申告のおくれたことによって総理やその他関係者に多大の迷惑をおかけしたことを申しわけないと思っております。そして、それ以上に国民の皆様に対して御迷惑をかけたことを本当に申しわけないと思っております。
  27. 市川雄一

    市川委員 自主申告はおくれたのじゃないのですよ。しなかったのです。おくれたのじゃないのですよ。意識的にしなかったのじゃないですか。だって、おくれたというのはおかしいじゃないですか。おくれたのだったら、官房長官は本会議発表を待つはずですよ、まだ来ていませんから総理待ってくださいと。おくれたのじゃなくて、しなかったのじゃないですか。これは非常に責任重大だと私は思いますよ。  それから、深谷大臣は三月八日の予算委員会で楢崎委員の質問に対して楢崎委員は、六十三年の夏ごろ——安倍幹事長が当時出したけじめについて、六十三年夏のリクルート事件が起きたその前の献金はないのかどうか、後の献金はどうなのか、こういうお尋ねをした、この場所で。深谷大臣は「秘書やスタッフを集めて聞きました。それに関しては完全に問題はないということであります。」秘書やスタッフを集めて聞いた。六十三年夏以降の問題についてこれは答弁している部分ですが、六十三年夏以降について秘書やスタッフを集めて聞いた、完全に問題ない、断定しているじやありませんか。秘書やスタッフに聞いたと言うのです。六十三年夏以降は問題ない。じや六十三年夏以前についてはどうなんだ。私の知る限りにおいて特別関係はない、こうはっきり明快におっしゃっておられるわけですよね、三月八日。したがって、自主申告がおくれたというのは理由になりませんね。おくれたんじゃないですね。総理は三月六日に発表しているのですよ。三月六日の衆議院本会議総理は、官房長官が皆さんから集めた自主申告に基づくリクルート社からの献金をもらっている閣僚の名前を、金額を全部三月六日に発表した。八日の予算委員会で深谷大臣は、秘書やスタッフを集めて聞いた、六十三年夏以降については完全に問題ない、夏以前についても特に関係ない。これはおくれたんじゃないじゃありませんか。あなたの認識としてないという認識だから自主申告しなかったんじゃないのですか。おくれたなんというのはおかしいじゃありませんか、これは。
  28. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 六十三年の夏にリクルート社にいろいろ問題があることがわかった段階で、もし同社と関係があるようであれば、この際きちんと整理をして、一切問題のないようにするように指示をいたしました。事務方では、これを受けて、同社に後援会から退会してもらっており、これで同社との関係が全く清算されたものとして一切報告が上がってこなかったのであります。  いずれにしても、私の不明から今回徹底的に調査して判明するまで具体的な事実について総理等に報告しなかったことについては全く申しわけないと思っております。私が申し上げたことと違う事柄が出てきて、再度重ねて徹底して調査をいたしまして、おくればせながら二十三日に官房長官に報告をいたしたわけでございます。
  29. 市川雄一

    市川委員 今の御答弁も納得できないんですよね。六十三年夏、リクルート事件が発覚した。後援会の事務所のスタッフ、秘書を集めて、リクルート社との関係がもしあれば清算するように、こう自分は指示した。しかしそれは清算してなかった。それは秘書のミスだ、こういうふうにおっしゃってはいませんが、伺いようによっては、自分は指示したんだけれども秘書がやらなかったんだ。例の秘書が秘書がというケースみたいな答弁なんですよね。  しかし、それはそれとしても、三月八日の予算委員会では、「秘書やスタッフを集めて聞きました。」あなたが六十三年の夏に指示した、事務方を集めて聞いた、完全に問題ない、おっしゃっているじゃありませんか。これはどういうことですか。
  30. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 市川委員に申し上げますが、秘書や事務方の責任にしようと思っておりません。私の責任だと思っています。ただ、その報告の認識に相違があったのかもしれません。  いずれにいたしましても、私が正確に把握して報告をせずに結果的におくれたことはまことに申しわけないと思っています。
  31. 市川雄一

    市川委員 報告がおくれたとかそういうことじゃないと僕は思うんですよ、どうもその辺が言葉のレトリックというのか。  このリクルート社から後援会費をもらっておりました深谷隆司南陽会という後援会、この後援会の責任者はどなたでしょうか。
  32. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 会計責任者は稲見という秘書でございます。
  33. 市川雄一

    市川委員 後援会全体の責任者はどなたなんですか、会計責任者じゃなくて。
  34. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 南陽会の責任は、私にあると思っております。
  35. 市川雄一

    市川委員 責任者は深谷大臣ですよね、その南陽会の責任者は。ですから、事務方に指示したとか指示しないとか、事務方との認識が食い違っていたとか、報告がおくれたとかという理屈は成り立たない、そういうことをまず指摘をしておきたいと思います。  そうすると、深谷大臣、予算委員会であなたが発言したことは全部食言じゃないですか。違いますか。秘書やスタッフを集めて聞きました、これに関しては完全に問題ない、六十三年夏以降は問題ない、完全に問題ない、六十三年夏以前については私の知る限り特別な関係はありません。両方あったじやありませんか。食言ですよ。三月八日、三月八日の発言ですよ、これは。  海部第二次内閣が成立したのは二月二十八日です、二月二十八日。海部総理は今お聞きのとおり、閣僚自主申告をしてくださいと申し上げた。官房長官総理意向を受けて閣僚に伺った。そして三月六日のうちに総理海部第二次内閣の閣僚リクルート社の関係はしかじかかくのとおり、本会議発表した。三月八日、あなたはこの場で聞かれて、六十三年夏以降は完全に問題ない、以前についても特にない、こういう発言をしておきながら、しかも秘書やスタッフと相談の上、答えているんだ、これは。今になって私とスタッフの間に認識の食い違いがあった、報告が取りおくれて総理や国民に迷惑をかけたのは申しわけない、こういう理屈が通用するんでしょうかね。私はそんな理屈は通用しない。  やはりこれは、かつていろいろな方がここでいろいろな答弁をされましたが、少なくとも予算委員会という場で大臣として答弁したことが、後に全部その事実が崩されてしまった。これはやはり、ただ責任を感じていますということでは済まないんじゃないでしょうか。そういう閣僚が、結果として、総理、今の海部内閣にいらっしゃるわけですけれども総理はその点についてどうなんですか。自主申告しない人が悪かったのか、自主申告しなかったことがわかった段階で、総理としてけじめをつけるべきじゃないんですか。その点について総理はどういうお考えですか。
  36. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 申し上げましたように、当初の段階において調査に徹底を欠いたことはまことに遺憾なことであり、今後厳しく注意をしていかなければならない自身の立場であると思いますけれどもリクルート社の問題につきましては、社会的に批判を受けるようになった一昨年以後の問題において、党のけじめ案にも記してあるわけでありますから、官房長官のところでそのことに関していろいろと込み入った調査もして、その結果、これは深谷さんが言ったことによって自民党のリクルート問題のけじめには抵触しない、こう判断をしたわけでありますから、私は厳重に注意をしてその判断を受けたわけであります。
  37. 市川雄一

    市川委員 自民党のけじめに抵触しないんだったら、何で自主申告しなかったんでしょうかね。中身が結果として抵触しないからいいんだという、そういう答弁ですよ、総理のは。しかし、総理としての手続は無視されているんじゃありませんか。総理は結果として衆参の国会議員並びに国民に向かってうその報告をしたことになっているんですよ。総理はそれだけ傷をつけられているんですよ、総理の発言の信憑性、信用について。それでも総理官房長官調査が余りよくできなかったからということですか。これは毅然として総理としてもっときちんとした対応をされるべきじゃないんですか。もう一度お答えいただきたいと思います。
  38. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 リクルート社の問題が世間的に大きな批判の対象となる以前の通常の政治支援として受け取っておったものを、当初のときの調査に徹底を欠いて申告になかったことは極めて遺憾なことだということを厳重に注意いたしましたし、同時に、その後は自分の意思に基づいてきちっと区別をして処理をしたというのでありますから、私は、それを今後十分自分の戒めとして、社会的な批判も受けるわけでありますから、それを心の戒めとして、今後の政治活動を続けていくように厳重に注意をいたした次第であります。
  39. 市川雄一

    市川委員 同じ繰り返しになるんですよね。全然納得できないんです。  じゃ角度を変えてお伺いします。  昭和六十三年の七月にリクルート事件が発覚をした。それ以前の政治献金については、総理御自身もリクルート社から政治献金受けているわけですよね。これは神ならぬ人の身ですから、リクルート社がどういうことをするかということは予想がつかなかった、したがって企業献金の一環として受け入れた、政治資金規正法に基づいてこれを処理した、合法的な処理が行われている、職務権限はない、ですから、これは問題はない、こういうお考えなんだろうと思うんです。それはそれなりに、私たちと立場は違いますが、一応理解をいたしましょう。しかし、リクルート事件が起きた。国会であれだけ問題になった。その後、会費という形であるかパーティー券という形であるか政治献金という形であるかは別として、リクルート社から資金の提供を受けた。これはやはり総理、政治家としては失格じゃありませんか。あれだけ大騒ぎになっている事件が起きた後も、引き続いてその企業から政治献金なり資金提供を受けたということは、これはまず一般論として、総理、そういう国会議員がいたとしたら、これは全く失格でしょう、政治家として。どうお考えですか。
  40. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 社会的に批判を受けるようになった後の問題については、党のけじめでも申し上げておりますように、それはよろしくないことであるということであります。
  41. 市川雄一

    市川委員 いや、党のけじめ、それは各党各党いろいろなけじめはありますからいいんですが、いわゆる国民世論として見たとき、そういう国会議員は失格じゃありませんか。私はそう思いますよ。  ところが深谷大臣は、六十三年の八、九、十、十一ですか、四カ月間にわたって深谷隆司南陽会という後援会が会費を受け取っていたわけですよね。会費を受け取っていた。したがって、まず深谷大臣の言いわけを全部横へ置いて、受け取っていたという事実を、これだけを見ますと、これは極めてまずいことですよ。しかし、そこへ深谷大臣は気がついたので、退会届を出してもらった。退会届を出してもらって、リクルート社を後援会から引いていただいた。退会届を出してもらった。しかし、じゃ何で十一月まで会費をもらっていたのですかと。リクルート社が間違って、ミスで振り込んだ、こう言っているわけでしょう。どうもこれは話ができ過ぎていて、そういう何か、大変恐縮なんですが、つくり話みたいに聞こえてしようがないわけですよ。それでお返ししたのが翌年の六十四年の一月。  この事実から、私は二つのこと——総理、六十三年の夏というのは、もう国会議員にとっては非常にあのリクルート事件というのは最大関心事、もう世論もそうでした。大事件が起きていた。恐らくリクルート社から政治献金を受けている国会議員というのは針のむしろのような気分だったんだろうと思うのです。それで、それなりにそれぞれ対応した。そして退会届を出してもらった、深谷大臣の場合は。この退会届を出してもらおうと判断をしたのは、深谷大臣、これはあなたの判断ですか、それとも後援会の事務所のスタッフの意見ですか、どちらなんですか。
  42. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 七月に退会をしたいという話はリクルート社の方からございました。  それから、退会届をいただきましてから会費が振り込まれていたことについて気づかなかったということはまことに残念なことでありましたが、会費を振り込む方々の数は非常に多うございまして、極めて事務的にその領収書を送るというふうなことがございまして、その点は事務所の徹底を欠いていたことを残念に思っています。ただ、そのことに気づいたものでありますから、一月に全額をお返しした、退会して以来の金額をお返ししたということでございます。
  43. 市川雄一

    市川委員 ですから、一つは、六十三年の七月は、世上が騒然として、リクルート事件、国会もマスコミもそういう形で取り上げていた。リクルート社からあなたの後援会をやめたいという通知が来た。退会届を出してもらった。しかし、ミスで振り込みが十一月まで続いていた。その続いているということを気がつくのも非常に遅かった。十一月ですからね、もう四カ月たっている、八、九、十、十一と。普通だったら翌月気がついていいはずですよ、七月にあったのですから。それが十一月まで続いてしまった。十一月に気がついた。どうしようか、返そう。六十四年の一月に返した。これだけの経過が、重い事実経過が存在している。六十三年の夏以降、深谷大臣並びに後援会の人々の周辺においては、そういう事実が続いたわけでしょう。これが何で三月八日の、六十三年夏以降、秘書やスタッフを集めて聞きました、それに関しては完全に問題ない、何もない、何でこういう答弁になるのですか、そういう事実経過があったにもかかわらず。あなたの頭の中に記憶として鮮明なはずですよ。違いますか。
  44. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 先ほども申し上げましたように、私の認識の違い、それから判断の違いがございまして、当初あのような答弁をしたことをまことに遺憾に思っております。
  45. 市川雄一

    市川委員 その答弁では全然、委員長、納得できません。これじゃ全然……。だめだ、この答弁じゃ。全然答弁になってない、こんなの。
  46. 越智伊平

    越智委員長 速記をちょっととめて。     〔速記中止〕
  47. 越智伊平

    越智委員長 速記を起こして。  市川委員にお願いをいたします。この問題につきましては、理事会で後で協議をいたしますし、政府側もよく連絡をとって、改めてこの問題について答弁をするということで留保をしていただいて、ほかの問題の質問を続けていただきたいと思います。お願いします。
  48. 市川雄一

    市川委員 まだこの問題終わってないんですよ、実は。もう一つあるんですよ、私が強く申し上げたいことは。  今申し上げたことは、忘れていたとか、認識が違っていたとか、報告がおくれました、こんな次元の問題じゃないということですよ。六十三年の夏、あれだけリクルート事件が大騒ぎになって、リクルート社から政治献金を受け取っていた、どうするか、恐らく関係の国会議員はみんなそれぞれの御心労があったと思うのです。どうしようか、やめよう、あるいは向こうからやめたい、退会届が来た。四カ月間誤って振り込みが続いていた、わかった、翌年の一月に返せ、返却した。こういう国会議員にとってもう忘れられない重い事実があったわけでしょう。忘れましたとか認識が違っていましたなんて、そんな問題じゃないじゃありませんか、あるいは秘書がやってなかったとかいう問題じゃないじゃありませんかと言うんですよ。後援会の責任者は自分なんだし、自分もかんでやっていたことなんだし、記憶に鮮明じゃありませんか。そのことが何で海部内閣に指名されたときに、海部総理から自主申告しなさい、官房長官が取りまとめた、自主申告しなかった。この罪は、大臣、私重いと思いますよ、これは。潔くないですよ、潔く。自民党のけじめに照らして問題がないんだったらきちんと出せばいいじゃないですか。出さない。総理大臣は間違った報告をした。なおかつ御自分は予算委員会で、そういう重い事実が頭の中にしっかり詰まっているにもかかわらず、何も問題ないと発言をしている。何でこれが認識の違いなんですか。認識とか認識じゃないとかという問題じゃないじゃありませんか、これは。うそをついているんじゃないですか、うそを、間違いなく。潔くないじゃありませんか、政治家として、こんなことは。それを私は申し上げているんです。  もう一点。百歩譲って、それなら、さっきから申し上げておりますように、六十三年夏以降受け取っていたということは、これは政治家としては失格ですよ、発覚以後ももらっていたということは。退会届をもらった、間違って四カ月の間振り込まれた、間違いだった、リクルート社の間違いだ。リクルート社から、今伺ったところによると、あなたの後援会を退会したいと向こうから申し出が来たんでしょう。それでいて向こうが間違って振り込んでいるというのも、またこれは非常に首をかしげるんですよね。こんなことちょっと常識じゃ考えられない。こっちがやめてくださいと言って向こうが勝手に振り込んでいたというならまだ話がわかるのですが、向こうからやめたい、向こうから退会したいと言ってきた。それが四カ月間も続いて払われている。これはちょっと単なるミスなんというものじゃなくて、そんなにリクルート社というのはとろい会社なのか、四カ月間も間違って振り込むようなとろい会社なのかと。そんな企業はないと思いますよ、そんな企業は、今、この現代の社会で。  だから、百歩譲って、それも、言うとおりだと認めたとしても、そういう納得しないところがあるのですが、それならば、退会届という物証を出してもらいたい。これが一つのあなたの言い分を立証する証拠だと私は思うのですよ。退会届、これがなければわからないですよ、この話は。退会届をお出しになる用意があるかどうか、深谷大臣にお伺いしたいと思います。
  49. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 当委員会委員長の要請がありますれば、その御指示に従いたいと思います。
  50. 市川雄一

    市川委員 これはあなたが政治家として自分の倫理を立証するんですよ。こんなことは人に言われるんじゃなくて、これだけ問題になっているんですから御自分で出したらどうなんですか。それが普通じゃありませんか。委員長から要求があれば出しますよ、何か持って回ったような言い方をして。そういうことをおっしゃるのですか。納得できませんね、そんな。じゃ御自分で出す意思はないんですか。委員長から言われなければ、自分で出す意思はないと、こういうことですか。おかしいよ、これは。
  51. 越智伊平

    越智委員長 速記をちょっととめて。     〔速記中止〕
  52. 越智伊平

    越智委員長 速記を起こしてください。  市川委員にお願いいたします。質問をできるだけやっていただきまして、この問題について答弁が納得がいかない点は、後理事会に諮りまして、処理をするということにいたしたいと思います。お願いをいたします。(発言する者あり)  速記をとめて。     〔速記中止〕
  53. 越智伊平

    越智委員長 速記を起こして。  それでは答弁を求めます。深谷郵政大臣。(発言する者あり)  それでは市川君に整理をして質問をしていただきます。市川雄一君。
  54. 市川雄一

    市川委員 六十三年夏、リクルート事件が発覚した。発覚後、リクルート社から後援会の会費あるいは政治献金あるいはパーティー券、何の形態にせよ資金提供を受けるということは、これは政治家として好ましくない、あるいは失格である。  深谷大臣の場合はどういう経過であったか、これは我々はつまびらかではありませんが、深谷大臣の説明によりますと、リクルート社から六十三年の七月に退会したいという申し出があった、これを受け入れた、しかし現実には六十三年十一月まで後援会の会費が振り込まれていた、これはリクルート社のミスです、したがって六十四年一月に返却をした、こう言うのですが、どうもその辺は普通の感覚では理解しがたい。リクルート社の方で退会したいと言っておきながら、何で四カ月も間違えて振り込みを続けるのでしょうかという納得しがたい面がある。しかし、そうだと当事者がおっしゃるなら、当事者の言葉を信用するしかないわけですが、しかし過去において、三月八日の予算委員会答弁では、言ったことと後から出てきた事実が違うという、一回そういうことがあるわけですから、この際、六十三年夏以降について退会届をリクルート社が出したとおっしゃるのですから、六十三年夏にリクルート社が出した、後から発行したんじゃなくて、六十三年夏にリクルート社が出した退会届というやつをぜひ拝見したい、それをお出しになったらどうですか、こう申し上げた。委員長から請求があれば出します、こう言う。  私は、これは委員長から言われたから出す出さないという問題ではなくて、政治家として自分自身の出処進退が問われている今瀬戸際なんですから、そういうものがあるならみずから進んで出して、記者会見なりなんなりされるのが筋だと思うのです。ここで委員長に預けますと、委員長を御信頼しないわけじゃないのですが、各党の理事で協議するでしょう、委員長委員長の一存じゃ決められないわけでしょう。自民党の方が反対と言えば、それまでじゃありませんか。そうすると、委員長に預けるということは、自民党の皆さんが反対してくれることを期待しておっしゃっているわけでしょう。納得できませんよ、そんなのは。理事で協議した、結果として、自民党が反対だったので出さないことになりましたという返事を後で伺ってもしようがないのですよ。ここでは、本人がお出しになるのか出さないのか、出さないなら出さないと返事をすればいいのです、それは本人の問題ですから。それを委員長に預ける。委員長一人に預けるのならいいですよ。今ここで答えていただきますから、委員長に。委員長、出しなさいとおっしゃるわけですか。どうですか。そういう質問です。
  55. 越智伊平

    越智委員長 市川委員に申し上げます。  委員長はすべて理事会で協議して運営をいたしておりますので、私の独断でそういうことをやることは、私は適当でない、こう思っております。この件だけでございません。すべて理事会で協議をして運営をしていく、こういうことを行っておりますので、私の判断だけでやる、こういうことには私はできない、こういうふうに思います。  改めて深谷郵政大臣の答弁を求めます。
  56. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 退会届については、出す用意がございます。ただ、この委員会で出された問題でございますので、委員長にお任せしたいという希望を申し上げたのであります。
  57. 市川雄一

    市川委員 それでは、退会届については、委員長に御一任いたします。後で協議していただいて、出す用意があるとおっしゃっているわけですから、やっていただけますか。
  58. 越智伊平

    越智委員長 理事会で協議いたします。
  59. 市川雄一

    市川委員 答弁、いろいろ納得できないこと多々あるのですが、じゃ今の問題を委員長にお預けして、次へ行きたいと思います。  総理、最近の世論調査によりますと、今回の総選挙でリクルート事件のみそぎは終わってないと、終わっているか終わっていないかという問いに対して、終わってないと答える方が非常に多数を占めておるわけでございます。新聞社とかマスメディアの媒体によってパーセントは違うのですが、大体七〇とかいう高率、高いパーセントでみそぎは済んでない、こういう国民の世論の反応があるわけですが、総理、こういう世論調査の結果について、総理は今どんなふうにお感じになっていらっしゃいますか、あるいはどんなふうに見ていらっしゃいますか。
  60. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 選挙中にも非常に広範にわたってこの問題について報道はなされましたけれども、私は世論調査の結果も詳細に承知をいたしております。選挙の結果というのは、それぞれ当該の選挙区において、関係したと言われる議員の皆さんも選挙戦を通じてみそぎを受けてこられた、選挙の洗礼は当該の選挙区で受けてこられた、これは事実でございます。しかし、私としては、リクルート事件というものが世に与えた大きな影響を考えますと、あれはあれで終わったというのではなくて、再発しないようにいろいろな面で反省もし、その反省に立った政治改革というものをしていかなければならないときだということを、自由民主党は与党として本部もつくり、改革大綱もつくり、その方向で行って、そして再発防止をしよう、政治改革を断行することがその姿勢を示すことである、このように党を挙げて既に取り組んでおるところでございます。
  61. 市川雄一

    市川委員 その政治改革に取り組むことが再発防止と、こうおっしゃっているわけですが、総理の言う政治改革というのは何なのでしょうか。  海部第一次内閣発足のときも予算委員会で、私はここで総理に伺いました。どうも自民党歴代内閣の政治改革というのは、リクルート事件が起きてからの流れ宇野内閣海部内閣、こう聞いていますと、リクルート事件が起きた。我々はとらえ方としては、リクルート事件というのは、リクルート社という一つの企業が自己の企業活動を有利にするために、法律の改正とかあるいは労働省の通達とか行政指導とかいうものを変えてもらう、そのためにお金を使った、ばらまいた、あるいは未公開株を渡した、いろいろな方に渡した。全部が全部職務権限はなかった。したがって、リクルート社が企業の持てる金あるいは未公開株、そういうものを使って政治家に資金提供をし、見返りとして自社に有利な国会でのいろいろな措置を頼み込んだ。  ですから、その教訓というのは、企業献金と政治家のあり方、そこに尽きてくると思うのですね。私たちは企業献金は廃止すべきだという立場ですが、これを総理大臣に押しつける気はありません。ですから、企業献金を認める立場で物を考えたとしても、今のままでは、今の政治資金規正法では、これは抜け穴ばかりでとても規制ができない。だから、リクルート事件というようなものが起きてくる。ですから、まず企業献金と政治家の関係をもっときちんとしなければいかぬ、これが教訓だというふうに私たちは思っているのです。  ところが、どうも海部総理にしても、その前の宇野内閣にしても、政治に金がかかるからいけないんだ、だからそれは選挙制度が悪いんだ、それで選挙制度を直すんだ、そっちへ話がいっちゃっているわけですね。それで選挙制度審議会に諮問をして、何か中選挙区ではだめだ、小選挙区プラス比例代表だというような議論になっちゃっている。もちろん選挙制度というものにもいろんな原因が、あるいは問題、要因があるということは十分理解できます。できますが、リクルート事件の直接の教訓は、企業献金と政治家のあり方をどう正すかということに私は尽きてしまうと思うのです。そこへメスを入れる改革をしなかったら国民は納得しないと私は思うのですよ。総理は、そういうお考えなのか、総理の言う政治改革というのは。その辺がどうも漠然としているんじゃないのですか。すぐ選挙制度の方へ責任を転嫁しちゃう。そこをきちっとやる、こういうお考えはあるのですか。
  62. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 選挙制度と、あるいは政治資金と選挙という関係を見ますと、非常に幅広い問題がございますが、今市川委員がスポットを当てていらっしゃるリクルート事件、そしてそれに対する反省という面から見ると、企業と政治資金との関係を正さなければならぬことも一つの大きなテーマでございます。これはもちろんです。  そしてそれには、非常に原則的なことになりますけれども、一人一人の政治家の政治倫理の問題はもちろんでございますが、それがどうしてそれだけのお金を必要としなければならぬかという、制度、仕組みの根幹にまでもう一歩踏み込んで考えてみますと、今日本で行われておる選挙制度というものが、あるいは日常の政治活動というものが、政党活動も含めてお金がかかり過ぎるのではないかという指摘や反省があることも、別の視点に立ってみると事実だろうと私は思うのです。現に、これはいい悪いの議論よりも、各政党ともに政治資金に莫大なものを使っておられる。それは顧みると、政治がお金を集めるというところにどうしてそんなに情熱や時間をかけなきゃならぬのだろうかということを深く掘り下げて考えると、根本は選挙制度とかあるいは日常の政治活動にお金がかかっているんだという点にも謙虚に思いをいたして、そこで政府は選挙制度審議会に各界の代表の皆さんにお集まりをいただきながら、政治家が参加しないで、そこでいろんな角度から御議論をいただいたわけであります。そのときに、定数是正という問題も別の視点から大事なことだということで出てまいりました。あるいは政治資金の問題も、ずばり企業と政治資金との関係はどうしたらいいんだ、現実に各党ともにお金がかかっているというこの現状をどうしたらいいのだろうか、やっぱり根源は選挙制度に入っていかなければ解決できないんだということも、御審議の過程でおおよその議論が出てきたわけであります。  私は、そういった意味で、近く審議会から定数是正を含む選挙制度、今お触れになっております選挙、政治資金、そういったものを全部含めて答申がいただけるわけでありますから、リクルート事件のみならず、一連の今までのいろいろお金と政治行動にまつわった問題を思い切って前進させて、改革させていくためには、政治改革をしなければならないと考えておるところであります。
  63. 市川雄一

    市川委員 この選挙制度という問題は、各党あるいは各国会議員にとって非常に死活的な利害を持っておるわけですよね。ですから、これはやはり時間をかけて議論をしなければならないテーマですよ。しかしリクルート事件が起きた。政治家と企業献金の癒着が問題にされた。政治資金規正法を改正するということは、そんな難しい問題ではないと思うのです。与党にそれなりの決意があれば、私はできるのではないかというように思うのです。それをなかなかおやりにならない。すぐ選挙制度のせいにする。お金がかかり過ぎるというのですが、お金をかけ過ぎている面もあるわけでしょうから、お金をかけられないように罰則を強化するとか、そういうことをきちんとしない限りは改革はできない。  それでは伺いますけれども、六十年に国勢調査をやった。速報値に基づいて確定値が出た段階で中選挙区の定数の不均衡を是正する、こういう国会決議を行った。それがことしまでそのまま放置されてきているわけですね、抜本改革は。ことしまた国勢調査が行われるわけですよ。最近の状況を見てみますと、最高裁が合憲・違憲の判断の目安と見られる格差の三倍を超過して、昨年九月の有権者数による一票の格差が三・一五倍。さきの総選挙時の登録で三・一八倍、二月二日の公示前日の登録です。こういう問題は、昭和六十一年に国会で決議をしながら、六十年の国勢調査の確定値が出たら抜本改革をやるよう努力しましょう、こう決議をしておきながら、もう既に五年経過しながらやっていない。定数是正が行われていない。そしてリクルート事件が起きた。政治改革、肝心の政治資金規正法の方には抜本的なメスを入れない。今の中選挙区制度の定数是正にはしっかりと取り組まない。全部結局最初に小選挙区制ありきのような形で政治改革を政府・自民党はやろうとしているのじゃないのかと、私たちはそう見ざるを得ない。どうも本筋と外れたやり方をしているんではないのか。  総理、そういう意味で中選挙区における定数是正というのは、これはどうお考えなんですか。今三・一八倍。これは定数是正しませんと、総理、解散できないのじゃないですか。総理の解散権がもうさびてしまうのじゃないですか。解散したくとも、三・一八倍。解散権は何物にも縛られない、こうおっしゃいますけれども、今の中選挙区での定数是正、これは皆さん小選挙区がどうのこうのとおっしゃっていますが、参議院で今逆転状態で、そんな簡単に国会で成立なんかしないと思いますよ。野党みんな反対ですから、これは。中選挙区の定数是正というものをどうお考えなんですか。やらないのですか。総理のお考えはいかがなんです。どういうお考えでしょうか。
  64. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政治改革の問題につきましては、委員もよく御承知と思いますが、昨年、公職選挙法の一部改正案というのが自民党から野党の皆さんにも御協議をお願いし、そして成立をさせていただきましたが、あれは平成の政治改革の入り口であった、第一歩であった、こう私は評価をいたしております。  それは選挙の最中の資金の出にまつわる問題、要するに腐敗行為と言われる買収が厳しく禁止されるという、そういう一面を持っておるわけでありますから、私は、それは委員が今おっしゃったように、何もしなかったというんじゃなくて、各党の御協議でそこは一歩進んでおる、こう評価しますし、それから選挙制度審議会の方も、国会ではございませんけれども、あらゆる世の機関の代表が集まられて、経営者の代表や労働者の代表やマスコミの代表や有識者の代表や皆さんが集まられて、国民代表の立場で今の政治資金や選挙制度を見て、それに対して政府の諮問にこたえて答申を書こうとされておるのでありますから、いろいろな御意見がありますときは、初めからどうぞ、反対だ、何もだめだとお決めにならずに、審議会にもお出かけをいただいて、我が党はこうだ、おれの方はこうだという御意見を十分そこでお述べいただきたいということも私は心から願っておったわけでございます。  そういったところにいろいろな御意見を含めながら出てくる答申は、政府は最大限に尊重をいたしまして、同時にまた、国会に御提示をして、各党に御審議、御議論を願うわけでありますから、この政治改革の問題は、今回初めから、またやらないだろう、できないだろう、こうお決めつけにならずに、私たちはそういったようなことをぜひやっていきたい。それは当面足元の問題は、リクルート事件や一連の事件の反省に立って、これの再発を防ぎたいということでありますけれども、そこからさらに踏み込んで——今先生、日本のこの制度というのは、日本が極めて希有な例としてやっておるものじゃないでしょうか。世界のいろいろな国々の選挙制度を見て、それぞれの国の歴史や文化や生い立ちや伝統も違うでしょうけれども、これほど個人中心に、資金の問題も政策の問題も、ここまで言うと、それは与党だけの問題だとおっしゃるかもしれません。しかし、これから政権担当しようとなさるところになれば、中選挙区の中で複数の立候補をしなきやならぬという現実も目の前にあるわけであります。そういうときに、政策中心、政策本位の選挙というものを考えますと、いろいろ審議会で御議論願っておるような問題についても十分これは一考に値するものであると私も考えておりますので、いずれにしましても、近く答申がいただけますから、それは選挙制度のことだけではなくて、政治資金のことや今御指摘になった定数是正の問題も含めて諮問をお願いをしてあるわけでありますから、それらも含めての答申が来るものと私は思っておりますから、参りましたときにまたお示しをして、御議論をいただきたいと思っておりますが、いずれにしても、忠実に従っていきたい、そういう気持ちでおります。
  65. 市川雄一

    市川委員 次に、防衛問題をお伺いしたいと思います。総理と外務大臣と防衛庁長官に私どもの考えておることを一応お渡しをしておきます。  要するに、総理世界の情勢は、米ソを中心にした東西関係というものは、これは根本的に変わってきた。ベルリンの壁の崩壊、あるいは東欧諸国の一斉の共産党の分裂とか、共産党離れとか、共産主義をとらないとか、こういう一連の事象。しかもヤルタからマルタ。米ソ首脳が冷戦終えんを確認している。世界情勢が大きく変わった。そういう中で前年度比六・一%も防衛費をふやす必要はあるのか。あるいはこれからの防衛力の整備に当たって、アメリカも千八百億ドルですか、防衛費の削減を三年ぐらいでやる、こうおっしゃっている。ソ連もかなり防衛費を削ろうとしている。まず基本的に、総理世界の冷戦は終えんした、軍縮がかなり進もうとしている、そういう中で、これから日本の防衛費というものは、まあ今すぐ削減しろと言うと反対でしょうが、凍結をしていくぐらいのお考えがあっていいのではないかと思いますが、総理御自身のお考えはどうでしょうか。
  66. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 大きな国際情勢の流れについて市川委員のお示しになった方向は、私も全体として同じような方向に向かっておると認識をしております。米ソの対決、対立が終わりを遂げて、冷戦時代の発想を乗り越えて何とか共存の道を探りつつある。それが具体的にあらわれておるのがベルリンの壁の崩壊を初めとする欧州の統合への大きな動きになっておる。欧州が統合すれば、あそこで軍事同盟が対立をしたり対決をしたり冷戦の構造を続けていく必要はなくなるわけであります。そのようなふうに動いていくことを心から期待をしながら、またそのような方に動くのに日本がお役に立つならば、国づくり、人づくりあるいは緊張緩和、新しい枠組みづくりというものに向かって私どもも積極的に協力をしていかなければならない、こう考えております。  同時に、欧州だけでそうなったのでは残念ですから、アジア・太平洋にもそれが押し及んでくるように、日本としてもそれについては積極的な努力をしていかなければならない。一昨日もタイのチャチャイ首相が来られて首脳会談をやり、食事をしながらカンボジア問題に対するいろいろな問題について意見の交換をしましたけれども、結局アジアにもそういった、競争的共存になるのかあるいは安定的共存になるのか、先行きちょっと不透明なところはありますけれども、大いに世界の歴史の流れを定着させていこうということで意見の一致はいたしております。  そして、日本では日米安全保障条約のもとで戦後きょうまで平和を守り続けてまいりました。それは節度のある自衛力というものによって日米安保条約による抑止力の補完を受けながら保ち続けてきたわけであります。それはあくまで平和時における必要な防衛力の基盤はこの辺の水準が必要なんだということを決めて、そして、それを整備をし平和を守ってきたという現実でありますから、私は、日本がみずからの責任でみずからの国の安全をまず守るという、そういう体制と同時に、日米安保体制を続けながらアジア・太平洋に対して空白をつくらない、安定を崩さないということにも配慮をしながら平和を構築していかなければならぬ、こう考えておりまして、大きな方向としては、委員の今申されたことと私は近いのではないか、こう思いながら承っておりました。
  67. 市川雄一

    市川委員 最近総理は防衛問題に関連して平和時の防衛力ということをよく発言されますね。ちょっとこのところ総理大臣が平和時の防衛力ということをおっしゃっていなかった。海部総理総理になられてから本会議で随分この平和時の防衛力という懐かしい表現を伺っているんです。この総理の言う平和時の防衛力というのは、簡単に言ってどういう防衛力をおっしゃっているのですか。
  68. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 まさに、簡単に言えとおっしゃいますと、今が平和時でございますし、それから、今日本が日米安保条約の補完と抑止力に頼りながら平和を維持し続けてくることができたということでございますし、日本は専守防衛でありますから、これでもって事を構えるとか、そのような考えや気持ちは毛頭ございません。力でもって世界の中に入っていこうとか力でもってどうこういうことは全く予想もしておりません。したがいまして、私が平和時におけるということを言いますのは、きょう今日のこの姿はまさに平和時、そして、そのとき必要としておる節度ある防衛力というものを国民の皆さんの理解と支持の中で構築されておるものではないだろうか、こんなように受けとめております。
  69. 市川雄一

    市川委員 平和時の防衛力というのは、昭和五十一年十月二十九日でしたか、今の「防衛計画の大綱」を閣議で決定した、その前後の五十一年六月の防衛白書あるいは五十二年七月の防衛白書、ここで平和時の防衛力というものをるる詳細に説明されているわけですね。平和時の防衛力、基盤的防衛力。基盤的防衛力構想あるいは「防衛計画の大綱」、平和時の防衛力、これは、そういう今の「防衛計画の大綱」の前提になっておる基盤的防衛構想、この基盤的防衛構想というのが平和時の防衛力という考え方なんですが、総理の言う平和時の防衛力というのは、この基盤的防衛構想、そして、この基盤的防衛構想が下敷きにあって「防衛計画の大綱」が生まれた。この基盤的防衛構想で言う平和時の防衛力、こういうふうに理解してよろしいんですか。
  70. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのように私は理解をいたしております。
  71. 市川雄一

    市川委員 防衛庁長官にお伺いします。  「防衛計画の大綱」では、対処すべき侵略事態として「限定的かつ小規模な侵略」ということを言っております。これは今日の時点においても変わりないのでしょうか、どうでしょうか。
  72. 石川要三

    ○石川国務大臣 基本的には変わっていないという認識であります。
  73. 市川雄一

    市川委員 基本的には変わっていないという、何かひっかかる言い方をしますね。これが変わってしまうと大変なことですよ。  総理、冷戦は終わったというふうに日本政府認識しているのでしょうか、どうでしょうか。
  74. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 冷戦時代の発想を乗り越えて新しい世界秩序の模索に動きが始まった、私はこう認識をいたしております。
  75. 市川雄一

    市川委員 乗り越えてというのは、冷戦が終わった。ブッシュ大統領も、ソ連を封じ込めるのではなくて、国際社会にソ連を迎え入れたい、マルタをもって冷戦の終えんにしたいということを宣言をしてマルタへ行かれた。ゴルバチョフ書記長も冷戦の終えんをおっしゃった。冷戦というのは米ソを軸にした東西関係を基本的には言っていたわけですからね。もちろん朝鮮半島とかベトナム、カンボジアとか中ソという問題もありましたけれども、基本的な国際情勢の基調としては、米ソを軸にした東西関係、これを冷戦という形で枠組みは言っていたわけですが、これは終わった、こういう御認識ですか。
  76. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 冷戦時代の発想を乗り越えて新しいものを模索しつつあると私が言っておりますのは、どういう表現をしたらいいでしょうか、世の中に先憂後楽という古い言葉がありますけれども、私はいい方向に向かって冷戦の発想を乗り越えて米ソが動きつつあることは率直に認めておりますが、それは手のひらを返したように、世界に全部今日妥当してそう確信できるかというと、不安もあればまだ不透明なところも残っておるという気持ちがいたします。そして、アジア・太平洋地域で本当にこの日本の国の安全、国民の平和というものをしっかり確保しなければならない責任といたしますと、そのことをしっかり見きわめながら、情勢の変化を見きわめながら対応していかなければならぬという一面もございます。  現実にマルタ沖で会談が行われたことは事実でありますし、アメリカ側にもソ連側にもそれぞれの事情はございます。そして、冷戦の発想を乗り越えようとしていることまでは、率直にそのとおりでございます。けれども、まだ希望と不安と両方混在しておりますから、新しい時代づくりに模索しておるさなかである。強いて言えば、進行形現在であって、望ましい方向に向かいつつある、私はこう受けとめさせていただいております。
  77. 市川雄一

    市川委員 何回も申し上げて恐縮ですけれども、国際情勢がデタントであるとか今冷戦激化とか、何かいろいろな場面で言われてきたんですが、やはりそれは基本としては、どこかとどこかの国という関係ではなくて、米ソという超大国を軸とした東西の関係が対立関係にあるのかどうかということが私は基軸になっていたと思うんですね。ですから、そういう意味におきまして、その基本の部分は既にもう壊れたり、次の新しい秩序をつくろうとしておるわけですから、まあ終わったと私は見ているんですが、これは、これを議論をしてもあれですから、神学論争みたいになりますから。  それでは総理、アメリカの関係者は、ブッシュ大統領は、世界で起きている劇的変化の道筋にならって、米国の防衛を再編成する、ことし一月二十九日、一九九一年度国防予算案、こういうふうにブッシュ大統領はおっしゃっている。あるいはレーガン政権において軍縮より軍拡を推進したと言われているリチャード・パール氏、レーガン政権時代は当時国防次官補、一月二十四日、アメリカの上院軍事委員会で、もはやワルシャワ条約機構が欧州中央を越えて西欧に侵攻することは想像だにできない、こう証言をしています。あるいは一月三十日のアメリカの九一会計年度国防報告では、ソ連の米国及び同盟国に対する軍事侵攻の可能性は戦後最低となった、こう述べております。あるいは昨年に発表されましたアメリカの国防総省発行の「ディフェンス」で、ソ連は最終的には以前より敵対的でなく脅威でもない存在となろう、こういう発言をアメリカのチェイニー国防長官がしている。あるいは最近、アメリカのこのチェイニー国防長官は、三月十九日の国防総省の記者会見でこういうことをおっしゃっております。私はソ連が米国やその同盟国にとって軍事的脅威ではないと宣言してもよい、だが国防長官としての職務が保守的立場をとった方がよいと要求していると、かなり正直におっしゃっているのですね。国防長官としてはちょっと脅威が残っているように言った方がいいのだけれども、しかし、それを離れれば、ソ連が米国やその同盟国にとって軍事的脅威ではないと宣言してもよい。あるいは昨年九月の米国防総省が発表した年次報告書「八九年版「ソ連の軍事力」」の最終章で、もう御承知だと思いますが、戦後今日ほど米ソ間で紛争の発生する可能性の低いときはない。重要で劇的な変化がソ連内で起きていることは、もはや疑うことがない。あるいは九一年度版のアメリカの国防報告では、第一章で、ソ連の軍事的侵略の可能性は第二次世界大戦後では、現在が最も低い。あるいはことしの二月一日、パウエル・アメリカ統合参謀本部議長は米国の上院軍事委員会において、日本周辺のソ連の軍事的脅威について、ソ連軍がこの地域で西側の利益を侵す敵対的行動に出る可能性は薄まった、こうパウエル米統合参謀本部議長は証言をしているわけでございます。  まだたくさんあるのですが、要するに、ヤルタからマルタ、そしてベルリンの壁の崩壊に象徴されますように、米ソを軸にした東西関係というものが我々の予想をはるかに超えるスピードと深さでデタントが進んだ、ソ連の脅威がしたがって下がった、こういうふうにみんな言っているのですよ。これについて、ソ連の脅威について総理並びに防衛庁長官の御見解を承りたいと思います。     〔委員長退席、近藤(鉄)委員長代理着席〕
  78. 石川要三

    ○石川国務大臣 ソ連に対する脅威論でありますけれども、私は浅学非才で、実は脅威ということにつきましての概念というのはなかなかつかめないのですね。そこでいろいろと、私なりの解釈かもしれませんが、やはり私ども防衛を預かる立場からいたしまして、先般もいろいろとこの問題についての質疑応答があったわけでありますが、私はその際にも申し上げましたのは、やはり現在のこの軍縮の観点から見ると、ヨーロッパとアジア・太平洋との多少の違いというものを前提にして申し上げたわけでありまして、むしろ一九六〇年以来のやはりソビエトの蓄積した一つの軍事パワーといいますか、そういうストックが非常に大きい。それからもう一つは、確かにゴルバチョフ自身も、北京あるいは国連におきましても軍縮を宣言しておりますけれども、それは事実であるわけでありますけれども、やはり量的に見て確かに減ってはいるといえども、近代化という、そういう観点から見れば、軍事力が果たしてどれだけ削減されているか、そういうような観点もあるわけであります。  いずれにしましても、そういう意味で、今日依然としてソビエトの軍事力の存在というものを私どもはやはり念頭に置かなければいけない、こういうふうに私どもは考えるわけであります。脅威というと、何か潜在的脅威でありますけれども、それを何か潜在的脅威といっても、国民はその言葉、なかなかよくわからないと思うのですね。何か脅威というのは突然襲いかかられるような、そういう恐怖感も与えられる非常に刺激的な言葉だと思うのです。ですから、そういう意味からいうと、いろいろと今の国際情勢からは現象的にはかなり大きく脅威は薄れているわけでありますけれども、実際にこのアジア・太平洋の中の軍事プレゼンスといいますか、そういう点から見るとかなりまだある、私はこういう認識に立っているわけであります。
  79. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろアメリカの責任者の発言や論文等の御披瀝がございましたが、その中でも、特にチェイニー国防長官の率直な意見表明で、ただ国防長官の立場に立つと保守的にならざるを得ないというような表現でございましたが、私は、それはそうだろうとまさに思うのです。ですから、だんだん脅威が薄れ始めておる、冷戦時代の発想を乗り越えて、対決、力の対立ではなくて、協力と協調で共存できる世界をつくっていこうという気持ちが根底にあって動き始めておることは御指摘のとおりでございます。  ただ、現実の問題を見ておりますと、やはりNATOとワルシャワ条約機構軍との対決の構図というものは、今も厳として残っているわけでして、それがむしろ力の対決の構図よりも、政治的な意味合いも含めて、欧州の安定と統一のために役立つにはどのように動くだろうかということがまさに興味の的になってきつつあるのではないだろうか。  ドイツの統一の問題もいろいろ議論されますけれども、その中の一つに、統一ドイツはNATOにとどまるのかとどまってはいけないのかという考え方については、まだ両方に完全な合意ができておらぬというような現実等もあるわけでございます。  だから、そういったこと等を考えながら、私は冷戦が終わりを遂げ、そして力の対決がなくなり、今いろいろ御指摘願ったような脅威にならない相手国、相手国を脅威と考えないような、そういった真に安定的な友好的な世界の関係が定着していくように努力をしていかなければならぬし、それは非常に望ましい姿であると考えておるわけであります。
  80. 市川雄一

    市川委員 防衛庁長官、防衛庁に伺ってもいいのですけれども、アメリカの人たちはみんなもうソ連は脅威は薄まったとか、脅威はもうなくなったと言ってもよいと、チェイニー国防長官はそこまではっきりおっしゃっているわけですね。ソ連が米国やその同盟国にとって軍事的脅威ではないと宣言してよいと、三月十九日です、最近です。国防総省の記者会見。さっきから何回も繰り返し申し上げておりますように、国際的な軍事情勢で見た場合は、米国とソ連という超大国があって、それが軸で東西関係というものが成り立っていた。その関係者が握手した。しかも、一方のアメリカは、同盟国に対して、もうソ連の脅威は薄まったあるいは軍事的脅威ではもうないと言ってもいい、日米安保条約のパートナーである米国でさえこういう認識をどんどんしゃべっているわけですね、皆さんが議会で。あるいはソ連の要人もいろいろなことを言っていますよ、ここにポイントだけ書いてありますけれども日本だけなんですよ、防衛庁長官みたいなことをおっしゃっているのは。これは非常に国際センスが問われてくるんじゃないかという気がするのです。何で日本だけがソ連の脅威にしがみつかなければならないのですか。アメリカがない、ソ連もない、こう言っているのに、日本だけ何か過大におびえている。おびえているのか防衛力増額に利用しているのか、どうもそんな気がしてしようがないのです。     〔近藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕  防衛庁長官が今ここで答弁された、ソ連には軍事能力、軍事力のストックがある、それから量は減ったかもしれないけれども、近代化が進んでいる、近代的な能力が十分にある、だからソ連の脅威というものを念頭に置かなければいけないんだ、こういう答弁の御趣旨だったと思うのですが、こんなことを「防衛計画の大綱」にはどこにも書いていませんよ。ソ連には軍事的な巨大なストックがある、近代化された能力がある、これはずっと昔からそうなんですよ、こんなことは。ずっと昔からソ連は軍事力のストックがある。絶えず軍事力というのは技術革新しているわけですから、近代化されて効率化されているわけですから、近代化されたものがある。だから防衛費を増額していいという理由にはならない。どこかそういう説明をしていますか。「防衛計画の大綱」なりなんなりで、基盤的防衛構想で、防衛庁長官が今おっしゃったようなことが説明されていますか。どこに書いてありますか。
  81. 石川要三

    ○石川国務大臣 政治的な見解という立場で先にお答えをさせていただきたいと思います。  先ほど私の答弁の中にも申し上げましたように、脅威という言葉に私はやや刺激的なことを感じているわけであります。現在の日本の防衛というものは、あくまでも大綱によっているわけであります。その大綱というのは昭和五十一年のあの十月二十九日に策定された。当時の国際情勢というものを前提にしているわけですね。そういうことから、特に私どもはそういう前提に立って、なおかつ憲法の許す範囲内で、限定的な状態を前提にしての、いわゆる憲法で許された自衛権をさらにまた下回って今日の中期防というものが策定されている、私はこういうふうに認識しているわけであります。現在もややそういう意味では国際情勢は非常に緊張緩和という方向に向かっていることは事実であります。確かにその幅といい流れといいスピードというものは違っていると思いますが、基本的な枠組みというものは変わっていない、私はこういう認識に立っているわけであります。  そこで、アメリカと日本の脅威論に違いがあるのじゃないか、こういうことでございますが、私は一つには、アメリカの要するに軍事力の役割といいますか防衛的な役割というものと、日本の、我が国の防衛というものとは根本的に違いがあると思うのですね。ですから、そういう点が一つと、それから、脅威があって私ども日本の防衛というものを今策定しているわけではなくて、あくまでも国際情勢を前提にして、しかも最低の、その節度ある防衛力というものが日本の防衛力の根本であるわけでありますから、したがって、今その脅威があるから、さらにこれからも計画を立てる、そういう考えは、私は必ずしも正しい理解ではないのではないかな、こういうふうに認識をしているわけであります。いずれにしましても、アメリカの、ソビエトの軍事力に対する評価というものと、またアジアの中における日本の、現在までのソビエトの軍事力の存在というものの認識は、多少は私は違いがあるのじゃなかろうかな、こういうふうに思うのです。  いずれにしましても、私どもは、確かに現在は国際情勢が御指摘のような状態にあることは十分に認識しておりますけれども、したがって、大綱の中に言われておりますように、基本理念にありますような、要するに限定ある、もしこの世界の中にそういう不安な状態があるとすれば、そういう状態の中での最低限の、要するに我が国を守るという、そういう基本的な理念に立って私どもの防衛政策というものは確立されている、こういうふうに思うわけであります。
  82. 市川雄一

    市川委員 明快に答えていただきたいですね。今大分問題の発言もしているんですよ、長官は。どっちに攻めようかなと、今考えているんですけれどもね。  それでは、もう一回問題を設定しましょう。  総理には伺ったわけですよね。今世界はこういう情勢だ、それから防衛力は平成元年度の予算で凍結して、三年ぐらい凍結すべし、将来は漸減すべし、ソ連の脅威が薄まったと言うんだったら、我々は当然そういう方向をとっていいと思うのですが、防衛庁長官どうですか。そういうお考えがあるのかないのか、ちょっと答えてください。
  83. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  まず、脅威の認識につきましての御議論が前提でございますので……(市川委員「今の質問は違うんだ。防衛庁長官に方針を聞いているんだ」と呼ぶ)長官からお答えいただきます前に、私の方から脅威につきまして申し上げたいと思います。
  84. 越智伊平

    越智委員長 簡明に答えてください。
  85. 日吉章

    ○日吉政府委員 脅威の中には顕在的脅威と潜在的脅威がございますが、私どもはソ連が顕在的脅威であると今まで申し上げたこともございませんし、現在もそう申し上げております。  長官が申し上げておりますのは、現在もソ連は潜在的脅威であり得るということを申し上げているわけでございます。と申しますのは、脅威というものは、そもそも侵略し得る軍事的能力と侵略しようとする政治的意図とが結びつきまして顕在化するものでございまして、この意味で我が国の周辺におきまして武力をもって侵略しようとする意図を持つ国が現在あるとは考えておりません。ソ連も当然その中に含まれるわけでございます。しかしながら、意図というものは能力に比べれば変化しやすいものでございます。ゴルバチョフ政権が発足いたしまして、ソ連の政治的意図が大きく変わったということからも見ましても、その点は十分わかり得ると思います。  そういう意味で、我が国の防衛を考えます場合には、容易に変化し得ない軍事的能力というものに着目いたしまして防衛力の整備を進める必要があるという観点に立っているわけでございまして、ソ連は、ゴルバチョフ政権以後も、極東におきましては大きな軍事の削減等が行われておりませんで、むしろ新しい装備や近代化等が図られておりますので、潜在的脅威はあると考えざるを得ないということでございます。  なお、先ほど大綱についてもお話ございましたが、この大綱は、我が国が平時から保有すべき防衛力の水準を示したものでございまして、軍事的な脅威に直接対抗することを目的としたものではないということを申し添えさせていただきたいと思います。
  86. 市川雄一

    市川委員 今の発言もちょっと問題なんですよね、二カ所。  まず最初の方、いきましょう。防衛庁長官はここで、日吉防衛局長答弁の前に、日本の防衛力は脅威を念頭に置いてやるものではない、こう言った。今言いました。今日吉防衛局長が出てきて、ソ連の潜在的脅威を念頭に置いてやっているんです、こう言った。これ違うんじゃないですか、防衛庁長官局長
  87. 越智伊平

    越智委員長 防衛庁長官、ちょっとそこで打ち合わせして、簡明に答えてください。違うと言っておるんだから。
  88. 石川要三

    ○石川国務大臣 お答えいたします。  私が先ほど言った言葉があるいは不的確な点が確かに私もあったと思いますが、重ねて明確に申し上げますけれども、いわゆる我が国の大綱というものは、我が国周辺の軍事的な脅威に直接対抗するものを目的としたものではなく、我が国自身が力の空白となって安定を乱すことがないようにするということが基本的な考えである、このように、違っておりましたならば、ここで訂正をさせていただきたい、かように思います。
  89. 市川雄一

    市川委員 いわゆる防衛当局はソ連の潜在的脅威ということをずっと言い続けてきたわけですよ、潜在的脅威を。石川長官は、私は今の防衛力については脅威というものを考えてやってはいけないと思います、こう答えた。全然これ違っているんですよ。  もう一つ、日吉防衛局長、あなた、今脅威には能力と意図があって、意図と能力が結合すると脅威だ、ゴルバチョフ登場によってソ連の意図が変わった、変わったというのは平和の方向へ変わったという意味だろうと思うのですが、しかし能力は変わらない、能力に着目して防衛力の整備を行わなければなりません、こう言いましたね、今ここで。これは「防衛計画の大綱」の考え方と根本的に矛盾する考え方じゃありませんか。「防衛計画の大綱」では、そんなこと説明していませんよ。能力には着目しないでやるというのが「防衛計画の大綱」の考え方じゃありませんか。この「防衛計画の大綱」が五十一年十月二十九日に閣議決定された。それで基盤的防衛構想。それで「防衛計画の大綱」。  さっき確認しましたように、基盤的防衛構想は変わりない、変わってない。従来四次防までの考え方は、限定的な侵略に対処する、言葉をかえれば、限定的な侵略を行い得る能力をもって脅威とみなし、その脅威に対応できるだけの防衛力を建設することを目標としておりました、こう書いてある、第四次防まではね。しかし、「防衛計画の大綱」あるいは基盤的防衛力構想は、それと違うのですと、そういうことをやっていたのでは、いつまでたっても所要の防衛体制がとれないという声があって「防衛計画の大綱」になった。一定のめどをつくらなければならない。ですから、どういうことをしたかというと、限定的かつ小規模までの事態に有効に対処し得ることを能力上の目標にしているのですよ、この大綱は。限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得ることを能力上の目標とする。ですから、ソ連の軍事的能力に着目して防衛力をやるという考え方じゃないのですよ、もちろん参考にはするでしょうけれども。限定的かつ小規模な侵略までの事態に対処できることを能力上の目標だと言っているわけです。防衛局長、これは違うのじゃないですか、今までずっと説明してきたことと今あなたが言ったことと。どうですか。
  90. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま委員から御指摘のありましたとおりでございまして、私が先ほど御説明申し上げましたのも、ただいま委員の御理解と同じように申し上げたつもりでございます。  そもそも国際情勢といいますか、ソ連の極東におきます軍事は潜在的脅威であるということを申し上げたわけでございます。そういうふうな国際情勢を申し上げ、なおかつ大綱についての説明を求められましたので、大綱は、周辺諸国の脅威に直接対抗するものを目的としたものではなくと、私は先ほど申し上げたと思いますが、先生の御理解と私とはその点においては一致していると思います。
  91. 市川雄一

    市川委員 その今の後段の部分は同じなんですけれども、あなたが最初説明した脅威についてのところは違いますよ。あなたははっきりおっしゃいましたよ、能力に着目してと。  じゃ防衛庁は、ソ連の潜在的脅威は撤回しますか。捨てますか。もう冷戦が終わった。防衛庁長官、どうですか。ソ連の見方として、ソ連が潜在的脅威だという見方はもう捨てますか。あるいは捨てないまでも、今までよりずっと弱まったというふうに見方を変えますか。それとも従来と全く同じ見方でいくのですか、従来と同じ見方を多少落とす、あるいは捨てる、三つのうちどれですか。答えてください、長官
  92. 日吉章

    ○日吉政府委員 私からまず事務的にお答え申し上げまして、その後大臣から補足をしていただきたいと思います。  ソ連につきましては、先ほども申し上げましたように、最近戦力の一方的削減などの発表を行いまして、その一部につきましては実施に移されている模様でございますけれども、他方におきまして、海空戦力を中心といたしまして近代化、新たな兵器の追加配備等質的強化が続けられているのが事実でございます。このような極東ソ連軍の動向にかんがみますと、これは我が国に対する潜在的脅威である、かように考えざるを得ないと思います。
  93. 市川雄一

    市川委員 その考え方が非常におかしいのですよね。私はおかしいと思うのですよ。大綱でずっと我々に説明してきた考え方と違うのです。  要するに、限定的な侵略というものに四次防までは対処しようとしていたわけですね。限定的な侵略というのは、全面戦争か大規模な武力衝突に至らない程度の局地戦争というとらえ方をしていますよね、防衛庁は。しかしその場合は、限定的な侵略を行い得る能力をもって脅威とみなし、その能力に対抗する防衛力をつくらなければならない、こういう考え方で四次防までやってきた。が、いつまでたってもこの目標が達成できない、また国民の間から歯どめがないじゃないかという御批判があった。それでこの「防衛計画の大綱」をつくった。  そのときどういうつくり方をしたかというと、あなた方が説明しているように、脅威というのは意図と能力だ、意図と能力が結合したとき脅威になる。意図は可変性だ。いいですか。能力については、「防衛計画の大綱」を決める以前から、ソ連は日本に対して、大規模な侵略だろうが中規模な侵略だろうが小規模であろうが、やる意図さえ固めればできる能力は持っていたのですよ。何も最近そういうものが整ったわけじゃない。ずっとソ連は持っておる。大規模、中規模、小規模。ですから、これを頭に入れていたのでは、日本の防衛力が幾らこういっても足らないから、どこで線を引くか。限定的かつ小規模侵略の事態に対処し得る能力をもって目標とする、こう防衛庁は決めたんじゃありませんか。  ですから、今の日吉防衛局長答弁にありますように、何かソ連の兵器が近代化されて、あるいは何したかにしたから、だからソ連が潜在的脅威だというのは、これはおかしいわけですね。あなたがここで説明したことともおかしいのですよ。脅威というのは意図と能力、今あなたは能力だけ説明したわけでしょう。だけれども意図はどうなんですか。意図はぐっと少なくなっているんじゃありませんか。それではソ連の意図はどういうふうに今見ているのですか。防衛局長、答えてください。
  94. 日吉章

    ○日吉政府委員 先ほど私は脅威を顕在的脅威と潜在的脅威に分けて御説明を申し上げました。そのときに、我が国に対して侵略の意図を持っている国はソ連を含め現在周辺にあるというふうには考えていないと申し上げたわけでございます。したがいまして、私どもは、現時点におきましても、ソ連が顕在的な脅威であるあるいはソ連が我が国を侵略する意図を持っているというふうには考えていないわけであります。しかしながら、侵略し得る能力につきましては、先ほどるる申し上げましたように、能力を持っていると考えているわけでございまして、これを私どもは潜在的脅威、こう称しているわけでございます。こういう国際情勢、周辺諸国の情勢を念頭に置く必要が防衛力を整備する観点からあるということでございます。  しかしながら、誤解のないようにしていただきたいと思いますのは、その潜在的能力、脅威に対しましてフルに直接対抗するというふうな防衛力を整備しようとしているものでない点は委員指摘のとおりでございまして、大綱では、我が国周辺の軍事的な脅威に直接対抗することを目標としたものではなくして、おっしゃられるとおり、「防衛計画の大綱」では、我が国が平時から保有すべき防衛力、それは限定、小規模の侵略に対して原則として独力で対処するということを目的とした防衛力の水準を整備しようとしているものでございます。
  95. 市川雄一

    市川委員 その潜在的脅威という考え方が非常におかしいと思うのですね。意図は可変的だ、こうおっしゃいますけれども、この防衛白書でも説明していますよ。他国を侵攻するという国家意思をもって意図、こう定義しているのです。他国を侵攻するという国家意思をもって意図としている。しかし、そういうことは国際情勢なり国際社会に重大な影響と結果をもたらすから、政策当局者は自由自在にそんな意思決定はできない。そして、大規模なものほど決定がしづらい。同時に、可変性というもの、そのときどきの国際情勢と国際的政治構造に制約を受けると見ることができる、大規模なものほどさらに制約を受ける、こういうふうにちゃんと書いてあるのですよ、そこを隠しているだけでね。  今の国際情勢、国際政治構造、意図という観点で見た場合に、ソ連が潜在的な能力は持っているかもしれません。防衛庁流の言い方をすれば、全世界の国が日本の潜在的脅威ですよ、意図はないのだから。能力だけあるというならアメリカもそうなるわけでしょう。アメリカも潜在的脅威、その防衛庁流な言い方をすれば、こうなってしまうわけでして、ですから、意図は可変的だ、そのときどきの国際情勢、国際政治構造によって制約を受ける。今の国際情勢、国際政治構造、かなり防衛庁が念頭に置いておるソ連、ゴルバチョフ、経済改革、民族問題。日本にある日突然安保条約の綱の目をくぐって奇襲をしようなどという意図を決定する可変性というものは極めて少ないんじゃありませんか。そのときに、そういう国際情勢が生まれたにもかかわらず、なぜ今後も防衛費をふやさなければならないのか。防衛庁は減らす方針だというならこれは話わかるのですよ。その方針はどうなんですかと聞いておるわけです。どうなんですか、防衛庁長官。凍結しますか。ふやしますか。どういう考えなんですか。
  96. 石川要三

    ○石川国務大臣 今後の防衛予算を凍結するかどうかということにつきましては、防衛費というものが最初に凍結するということにまずありきという考えにつきましては、いささか私は見解を異にしているわけでありまして、ただ、委員も御承知のとおり、大綱自体が非常に昭和五十一年のあの時代の国際情勢、今日と相共通するいわゆるデタントといいますか、そういう時代の中の国際情勢を前提にして、なおかつ限定で、先ほど申されましたように、限定的なそういう局地的なものに対応することを目的とする、そういう極めて憲法の枠の中を十分に考慮した、脅威論のためにつくられたものではなくして、あくまでも空白になることによってかえって不安が生じる、こういうふうな角度からの考え、理念で策定されているわけでありますから、私はそういうことから考えてみて、直ちにこれからの防衛費をここで三年間凍結するという、そういう数字の凍結のひとり歩きといいますか、先にそれを凍結するという考え方につきましては、いささか委員と見解を異にせざるを得ない、こういう認識であります。
  97. 市川雄一

    市川委員 ですから、自衛隊をゼロにしろと言っているわけではないですよ。ですから、そんな空白にしろなんて言ってないじゃないですか。自衛隊をゼロにするということは空白をつくるという意味です。空白をつくっていいとは私は思ってませんから、ゼロにしろとは言ってないわけでして、ただ、ソ連の脅威が減った、こう米も言っているわけですよ。空白をつくってはいけない、だから防衛力を整備しているのだ、脅威を念頭にしているわけではないのだ、こう言いつつ、防衛局長は出てきて、ソ連の潜在的脅威を念頭に置いています、こう言う。非常に何かわけのわからないことを言っているわけですよ。そう一方で言いながら、日本の防衛力は他国の脅威に対抗して整備しているわけではありません、また精神分裂症みたいなことを片方では言うわけです。だから、ソ連を脅威としてやるならやると言った方が非常にわかりやすい。ところがそうではないと言うし、今度は意図と能力とあって、能力が増したから潜在的脅威が増した、それは考えなければいけない。あんた何が軸で何が哲学で世界情勢を見、そして世界情勢から何を引き出し防衛政策を形成しようとしているのか、そういう骨組みが見えない、今の防衛庁長官答弁を聞いていても。それにいら立ちを感ずるわけです。世界は大きく変わっているのじゃありませんか。これだけ変わっているのだから、防衛費を検討して凍結したらどうですかということを言っているのであって、何も変化がないのに防衛費の凍結を言っているわけではないのです。ですから、そういう検討をしているのかというと、検討を余りしていませんね。昨年の東欧の劇的な変化が起きてから、総理、国防会議をお開きになって、この国際情勢について検討をして、今後の防衛力をどうするかという御議論をなさっていますか、国防会議で。どうですか。安全保障会議総理、やってますか、議論を。開いてないんじゃないですか。防衛庁でもいいですよ。開いてないんでしょう。
  98. 日吉章

    ○日吉政府委員 安全保障会議そのものは一昨年の十二月に開かれまして、中期防が終了した後どのようにするかということにつきまして御議論をちょうだいいたしましたが、その後は開かれておりません。  次期防、次の中期防衛力整備計画をつくるにいたしましても、まだしばらく時間がございますのと、国際情勢が極めて流動的だというようなこともございまして、閣僚レベルの会議は開かれておりませんけれども、事務的に関係省庁による意見交換等は着々と進めているつもりでございます。
  99. 市川雄一

    市川委員 開かれてないんですよね、安全保障会議は。六十三年十二月二十二日開いて。  それで防衛局長、「防衛計画の大綱」、あなたに伺いましょう。  国際情勢が大きく変化しないということを前提に基盤的防衛構想はできた、「防衛計画の大綱」はできた、国際情勢が大きく変化しないという前提でできた、それを前提としておる。じゃ国際情勢が大きく変化したらどうするのか。そのときは再検討すべきもの、こうはっきり何回も何回も説明してきた。国際情勢が大きく変化したら「防衛計画の大綱」、これは再検討すべきもの、これはもう国会で今まで何回も答弁していますよ。最近の米ソを軸にしたヨーロッパにおける東西の関係の変化、これは大綱を再検討するに足る国際情勢の変化であると私は思いますが、防衛庁はどうお考えですか。
  100. 日吉章

    ○日吉政府委員 「防衛計画の大綱」をどうするかということも含めまして、次の防衛力整備計画をどうするかということは、政府全体、安保会議等を通じまして検討すべきことでございますが、防衛庁限りでの意見として申し上げさしていただきたいと思います。  まず、「防衛計画の大綱」でございますが、「防衛計画の大綱」をつくりました時点と現在の時点におきましては、現象面におきます国際情勢は、委員ただいま御指摘のように、非常に変わっていると思います。しかしながら、「防衛計画の大綱」が前提といたしております基本的な国際的枠組みというものは、基本的には変わっていないのではないかと思います。といいますのは、「防衛計画の大綱」ができましたときは、いわゆるデタントと言われた時代でございまして、「防衛計画の大綱」の基本的枠組みは、米ソ両国間の核相互抑止を含む力の均衡が国際社会の平和と安定の条件となっておって、各般の国際関係安定化の努力が続けられていく、現在も続けられておりますこの各般の国際関係安定化の努力が続けられていく、なお、我が国におきましては、日米安保体制の存在がこの地域あるいは国際的な安定化に寄与している、こういう前提に立っておりまして、この前提そのものは現在も変わっていないと思います。こういう安定化の努力が続けられているという前提に立っているがゆえに、日本としては憲法で認められている自衛のための必要最小限度のさらに範囲内において平時から保有すべき防衛力の水準を整備しておくことが適当ではないか、こう考えたわけでございます。したがいまして、そういう観点に立ちますと、基本的にはこの枠組みは同じではないかというふうに考えておりますが、先ほど申し上げましたように、これは今後、政府レベルでもって各般の検討・判断がなされていくべき問題だと思います。  なお、委員ただいま、最近までのところ政府は、国際情勢が変化した場合に「防衛計画の大綱」を変えることがあり得べしというような答弁があったではないかということでございますが、その情勢は、むしろこの「防衛計画の大綱」が前提としております国際関係安定化の努力が十分には達成できないのではないか、非常に緊張が高まっている状態であったものでございますから、そういうふうな状態の中においても、国際関係安定化を前提としている「防衛計画の大綱」を変える必要はないのかというような観点からのいろいろな御議論がありましたときに、国際情勢の変化も十分考えながら「防衛計画の大綱」を変えるべきか、変えざるべきかを検討すべきであるというような点での議論がなされていたと承知いたしております。
  101. 市川雄一

    市川委員 もちろん、国際情勢が大きく変化した場合は「防衛計画の大綱」を変えるというその論理は、緊張が激化した場合という前提で、とりあえず今の防衛力を四階建てにしておいて、国際情勢が厳しくなったら七階建てにできるようにしておきましょう、そういう考え方ですよという説明のもとになされていることは十分承知しております。しかし、前提とする国際情勢があって、その前提が大きく変化した場合は大綱を再検討するという考え方を持っている以上、前提が大きく変わったのですから、拡大方向は検討しますけれども、縮小、凍結の方向は検討しませんというのはおかしいじやありませんか。それはおかしいです。それは筋が通らない。  自分たちは、恐らくこの防衛庁の考え方としては、これ以上デタントは進まない、ひょっとすると緊張が激化するかもわからないという想像をしていたわけでしょう、ずっと。そこヘアフガニスタンの事件が起きてきた、SS20が配備された、さあソ連の潜在脅威だと大騒ぎしたじゃありませんか。アフガニスタン事件は終わったじゃありませんか。SS20は撤廃されたじゃありませんか。アフガン事件が起きた、SS20が配備されたときは、もう防衛力、大綱水準のスピードをアップしなければいけない。ここにたくさん議事録ありますけれども、当時の防衛庁長官が「最近の極東におけるソ連軍の増強は潜在的脅威と受けとめ、これを念頭に置いて防衛力の充実に至っておるわけでございます」とはっきり言っているわけです。ところがSS20は撤去した、アメリカはF16を撤去しましたか。SS20が来たからF16を配備したと、あのときは防衛庁も外務省もここで説明した。SS20は撤去された、F16は三沢にそのままじゃありませんか。アフガニスタンは終わった。しかも防衛白書で、あるいは「防衛計画の大綱」が想定してなかった国際情勢が生まれちゃったんですよ、これを読みますと。NATOとワルシャワ条約機構がヨーロッパにおいて対峙しているという前提で、国際情勢の基調ということを指摘しているじゃないですか。個別の事象の変化を言うんではない、国際情勢の基調を言うんだ、国際情勢の基調とは何か、それはヨーロッパにおいてNATOとワルシャワ条約機構が対峙している、もう対峙してないじゃありませんか。ワルシャワ条約機構が壊れちゃった、なくなっちゃったじゃありませんか。ないじゃありませんか。ですから、大綱が想定してなかった国際情勢が生まれつつある、大綱を再検討するのは当然じゃありませんか。防衛庁長官、どうお考えですか。あるいは総理、おかしいですよ、これは。
  102. 石川要三

    ○石川国務大臣 今委員が言われたように、国際情勢というものは大変大きく激変している、こういう認識におきましては、私は御指摘のとおりだと思います。  ただ、先ほど局長が細かく触れた中にもございましたように、いわゆる我が国を取り巻くアジア・太平洋、この地域を見ると、やはり必ずしもヨーロッパとは同一のものではない、カンボジアの状態あるいは中国の状態、北朝鮮の対峙、いろいろなことを考えますと、私はかなりそれは異質なものがある、地政学的に違う、そういうことを前提にして答えたわけであります。  私も実は昨年の十月、議運の先生方と一緒にベルリンに行きました。まさかあのときに、あの姿を見たときに、帰ってきて間もなく東西の壁が撤去されたということを聞きまして、余りにもその激変ぶりに驚いたわけでありますが、確かにそういう大きく変化していることは事実でありますけれども、反面また、私どもの防衛大綱、そして、それに伴っての今日の我が国の防衛力の整備というものは、再三先ほど来申し上げましたように、いわゆる昭和五十一年当時の流れやスピードや何かの大きさは違うかもしれませんが、しかし、世界の根底の一つの緊張緩和というものにつきましては、私は基本的には同じであった、そういう時代の中で、しかもさらに憲法、そういったようなものを踏まえて、あの五十一年に閣議決定されておりますいわゆる節度ある防衛力、この精神を堅持しながら今日の防衛政策というものが成り立っているわけでありますから、そういう総合的な観点から見て、私どもは、今日のヨーロッパのあの激変の姿から直ちに大綱を見直すとか、あるいはまたそれに伴う予算の削減をする、そういう見解には、先生の御意見とは若干違っておる、こういうふうに御理解をいただきたいのであります。
  103. 市川雄一

    市川委員 大綱が前提としている国際情勢は、防衛庁長官がおっしゃるようなアジアがどうだとかこうだとかいうことも書いていますけれども、しかし大枠は米ソを中心にした東西関係ですよ。これがまずどんと最初に強調されているわけでして、アジアとかヨーロッパとかそんなことを言っているわけじゃなくて、米ソがやはり大枠の一番の国際情勢の基調という形で位置づけを明確にしていますよ。ここにちゃんと説明してある。  それでは質問を変えますが、平成二年度の予算で「防衛計画の大綱」水準が達成する。では平成三年度以降、防衛庁は防衛力の整備に当たって、この劇的な変化を起こしている国際情勢も踏まえ、どういうポリシーによって防衛力の整備を行うのか、これは明らかにする責務が防衛庁にはあると思います。総理にもあると思う。大綱を継続するのか、あるいは別の新しいポリシーをお出しになるのか。八月には概算要求をされるわけですから、本来ならもう昨年の秋ぐらいまでにそういう方針がお決まりになっていて、この国会でそういう議論がなされて、八月の概算要求、十二月の予算編成と進んでいくのが私は筋だと思うのです。それはさておくとしても、大綱を継続するのか、あるいは新しい方針を決めるのか、何らかの政治的な決断を、総理、これは迫られると思いますよ。無方針のまんまで八月の概算要求は出せないはずですよ、無方針のまんまでは。何らかの方針を政府が持たなければ、防衛力整備についての予算の考え方が生まれてこない。その辺について、これは総理お答えいただけますか。どうですか、大綱でいくのかどうなのか。新しい方針を出すのか。
  104. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、我が国の国民生活の平和と安定を確保していかなければならぬという立場に立って、自衛のための必要最小限度の範囲内において我が国が平時から保有すべき防衛力の水準を示したものが大綱であると私は受けとめておりますし、御説明もしてまいりました。平成三年度以降の防衛力整備につきましては、この点も考慮し、昭和六十三年十二月の安全保障会議における討議を踏まえ、その具体的内容について、大綱の取り扱いを含め国際情勢及び経済財政事情等を勘案しつつ安全保障会議を中心とする適切な文民統制のもとに逐次検討をしていくべきと思います。その際、憲法及び専守防衛等の基本的防衛政策に従っていくことは申し上げるまでもないと思います。
  105. 市川雄一

    市川委員 だから大綱でいくのか、それとも大綱じゃない新しい方針を策定するのか、まだ決まってないのですか。  まず防衛庁長官、今の時点では次期中期防、この中期防が平成二年度で終わる。その後どういう方針でいくかということは、今決まっているのか決まってないのか、どうですか。簡単に、決まっている、決まってない。
  106. 日吉章

    ○日吉政府委員 まだ事務的検討の段階でございますので、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。  先ほど来申し上げておりますように、「防衛計画の大綱」が前提としております国際関係の基本的な枠組みそのものは変わっていないのではないだろうかと防衛庁としては考えておりますので、防衛庁といたしましては、そのような認識のもとに作業を進めていきたいと考えておりますが、これも今後の国際情勢の推移、それから、その後におきます安保会議を中心としました政府レベルの検討によって最終的に判断されるものだ、かように考えております。  なお、先ほど米ソ間の基本的な関係はなくなったのではないかということでございましたが、依然として国際情勢、ヨーロッパにおきます軍備管理、軍縮交渉も、NATOとワルシャワパクト機構という関係でいかに相互の軍事レベルを低くするかという交渉が行われておりまして、やはりあくまでも東西両陣営の枠組みの中で、その中で軍備のレベルをどのように下げていくかという交渉が続けられておりまして……(市川委員「質問しないことに答えないでくれ、質問してないよ」と呼ぶ)
  107. 越智伊平

    越智委員長 簡明に願います。
  108. 日吉章

    ○日吉政府委員 その意味で、枠組みは変わっていないと思います。
  109. 市川雄一

    市川委員 質問していないことに答えないように注意していただきたい。  要するに、大綱にかわる方針が決まっているのですか、決まっていないのですか。イエスですかノーですかと聞いたわけですから、その答えについては何かぐじゅぐじゅほかのことをずっと長く言って、やはりアンフェアだ、討論の態度が。もっときちっとした態度をとっていただきたい。  そこで、決まっていないのですよ、総理、今事務方の答弁は。これはどうするのですか。「防衛計画の大綱」のときは、四次防まで来た五十年の段階で、秋に大体この大綱というものが煮詰まってきた、それで五十一年十月二十九日に閣議決定した、そして五十二年四月からスタートした。かなりゆとりを持って検討しているのですね、次の防衛政策の方針というものは。これはもう八月に概算基準。いつごろまでに結論出すのですか。大綱のままいっちゃうのですか。それとも、大綱でいくのか、大綱にかわるものを考えるのかということをいつまでに決めるのですか。それも決まってないのですか。それも決まってない、何も考えてないというのが今の現実ですか、防衛庁長官。これは長官が一番よく御存じのはずです、防衛庁長官なんだから。どうですか、これは。
  110. 石川要三

    ○石川国務大臣 現在の中期防が九月の十八日に決まっているわけでありますから、できるだけ早く策定したい、かように考えております。
  111. 市川雄一

    市川委員 何か全然防衛はどうでもいいという考えですね、答弁を伺っていると。総理、こういうていたらくの答弁をしていていいのですか。させておいて。  それで総理、ちょっとよく聞いていただきたいのです。だって総理は安全保障会議の議長でしょう。まだ決まってないのですよね。八月には概算要求しなければいけない。平成二年度では大綱水準を達成した、平成三年度の概算要求を八月にしなければいけない。しかし、「防衛計画の大綱」という政策方針で平成三年度以降いくのか、それとも新しい方針でいくのか、その辺は方針が決まってないのです。もとの方針が決まってない。もとの方針が決まってないのに、おかしいのは、六十三年十二月二十二日、安全保障会議を開いて、中期防衛力整備計画終了後の防衛力整備については、引き続き現行のような中期的計画を政府として策定する必要があるという、これだけ安全保障会議では逆に決めているのですね。どういう基本方針で防衛力を整備するのかというのが、大綱なのですか、大綱にかわるものなのですかと今聞いても全然答弁がない。いつまでやるのですか、これも全然答弁があいまい。それでいながら、一昨年、六十三年十二月二十二日、五カ年なのか三カ年なのかは別として、防衛力整備については中期的な計画でいくと、こう決めている。これはおかしいのじゃありませんか。方針が決まってないのに、防衛力整備の手法についてのみ三カ年とか五カ年とか中期でいくということを先に決めちゃうということは、決める手順が逆さまじゃないのですか。方針を決めて、方針に従って単年度方式でいくのか何カ年度方式でいくのかというのが決まるのであって、その方針が決まってないのに、先に中期的な計画を政府は策定する必要がある、六十三年十二月二十二日安全保障会議。この取り決めはおかしいのじゃないでしょうか、御答弁いただきたい。
  112. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  安全保障会議のメンバーで防衛庁長官もおられますので、そういう意味で防衛庁から代表してお答えをさせていただきたいと思います。  ただいま委員が御指摘になられました六十三年十二月二十二日の安全保障会議でございますが、それは官房長官の記者会見の要旨を御引用になられたのだと思います。この会議におきましてはいろいろな意見交換がなされましたけれども、決定というふうな手続はとられておりません。したがいまして、官房長官が、今委員が御説明になられましたように、中期的な防衛力整備計画を政府として策定する必要があるということではないかと述べ、このような方向で云々というような会議の全体の雰囲気を述べているわけでございます。  それはそれといたしまして、会議全体の雰囲気が、中期防終了後も政府計画として中期的な防衛力整備計画をつくるべきではないかというような意見が大勢を占めたゆえんのものというのは、二つの観点があろうかと思います。  一つは、そもそも防衛力整備に内在いたします本質的な問題でございまして、防衛力整備といいますものは、他の国の諸施策も同じでございますが、それと比較いたしますと、より中長期的な展望を持って計画を立てないといけないというような内在的な性質があると思います。例えば主力装備であります航空機、艦艇にいたしましても、調達リードタイムに三年から五年というような期間を要するという点がございます。  それからもう一つは、防衛力整備につきましては、厳しく文民統制というものが課せられると思っておりますので、そういう文民統制の観点からも、中長期的な観点に立って政府レベル全体で検討を進めていくということが重要ではなかろうか。こういうふうな観点から、中期防終了後も、やはり政府計画として中期的な計画があった方がいいのではないかというのが意見の大勢を占めたと理解をしております。
  113. 市川雄一

    市川委員 防衛白書にも書いてありますよ。官房長官の記者会見だけでなくて、平成元年度の防衛白書にもきちんと書いてありますよ。防衛白書は閣議決定じゃありませんか。ですから、要するに大綱でいくのか大綱以外のものでいくのか方針が決まらないで、いつ決めるのだかわからなくて、しかし、さかのぼることもう二年、六十三年十二月二十二日には中期的な計画方式でいくんだといって安全保障会議で意見の一致を見た。これはおかしいのじゃありませんか、総理。まず防衛政策の方針を決めることが先じゃありませんか。そして、その計画を単年度方式にするのか、三カ年にするのか、五カ年にするのかというのは、そこからそういう手段が決まってくるんじゃないですか。方針を決めるのが先で、方針が決まっていない、決めるめどが立っていない、しかし六十三年十二月二十二日、安全保障会議では中期的な計画でいくんだと意見の一致を見た、これは明らかにおかしいと思いますよ。  では、これは決定じゃないというのだったら、撤回しますか、撤回を。六十三年十二月二十二日の安全保障会議における意見の一致は一致ではない、これは単なる参考意見の意見交換にすぎなかったんだ、そういう答弁をしますか、ここで。どうですか。おかしいじゃありませんか。方針が決まってない、中期的にいくことだけ先に決めてしまう。こんなばかな話はありません。  しかも、その間に、平成元年に東欧の劇的な世界情勢の変化が起きているのです。劇的な変化の前に決めてしまった。しかも世界情勢の変化を全然議論していない。さっき聞いたときは、安全保障会議では議論していません。そして三カ年とか五カ年とかという中期的な計画方式だけ決めておいて、世界情勢を議論していない。大綱以後どうするのかという議論もしていない。方針も決めていない。いつ決まるのかもわからない。こんなばかな話がありますか。それならこれを撤回しなさいよ、撤回。
  114. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま委員からもございましたように、白書にも書いてございますように、安全保障会議ではこの方向で逐次検討を行うことで意見の一致を見たわけでございます。  ただ、とにかく防衛計画をつくるかつくらないかというその手法と、それから防衛予算の中身の問題とは別でございまして、ここで意見の一致を見ておりますのは、防衛力整備については、政府として中期的な計画をつくるという意見の一致を見たわけでございまして、その内容はその後の検討の過程で決めていくものだ、かように考えております。
  115. 市川雄一

    市川委員 これは明らかにおかしいと思いますね。「防衛計画の大綱」を決めたときも、大綱をさんざん議論して決めておいて、そして単年度方式という方式を決めて、その後にGNP一%枠を決定した。やはり防衛政策の方針が最初にあって、それでその何年度方式というのは決まるのですよ。先に中期的にいくのかいかないのかなんという議論をして、中身は後ですなんて、そんなばかな話がありますか。そんな答弁納得できませんよ。六十三年十二月二十二日、まだ平成元年のヨーロッパの劇的な変化というのは全然入ってないじゃないですか。議論されてないじゃありませんか。  ですから、そんな今の中期的な計画方式でいくという方針だけ先に決めておいて、「防衛計画の大綱」を続けるのか続けないのか、かわりに新しいものにするのかということを全然検討もしていない。全然これは答弁になっていませんね。これを撤回するか、あるいはもっと明快な答弁をするか、そうしないと答弁になっていません、これは。
  116. 越智伊平

    越智委員長 簡明に願います。
  117. 日吉章

    ○日吉政府委員 最初に私が申し上げましたように、六十三年十二月二十二日の安全保障会議は事柄を決定しているわけではございませんので、撤回というようなことはまずでき得ない性格のものだと思います。  それが一つと、もう一つは、ここで意見の一致を見ました事柄でございますけれども、中身につきましては、まさに今後安全保障会議で議論をしていくということでございまして、ここでは枠組み、中期的な計画を政府として策定するということに意見の一致を見たわけでございます。  ただ、全くその中身につきましての方針はないのかということでございますが、この官房長官談話の中にもございますように、憲法、専守防衛等の基本的防衛政策のもとで、国際情勢及び経済財政事情等を勘案しつつ、節度ある防衛力の整備を行う、この精神は引き続き尊重して検討していくということになっているわけでございます。
  118. 市川雄一

    市川委員 おかしいと思いますよ、中期的計画方式でいくということを先に決めちゃうというのは。  先ほどは、防衛局長答えましたけれども、いろいろな防衛庁で買うものは、調達品はお金が巨額だ、何年間にもわたる、だから計画がいいんだ、こう説明していましたけれども、これもちょっとまやかしの説明でして、「防衛計画の大綱」が原則として単年度方式という方式をとった、後年度債務負担行為である分があるから、これは除外する、こういうことで、それは十分そんなのは、何も計画的にやらなければできないことじゃないのですよ。「防衛計画の大綱」で既に実験済みなんです。単年度でやりますと言いながら、そういうふうに後まで分けて払うものは別ですよ。あなたの今言った理由は、一つはこれは消えちゃうわけだ。  それから、シビリアンコントロール上計画があった方がいい。そうしたら、「防衛計画の大綱」で決めた単年度方式というのは、シビリアンコントロールはきかないということですか。それでずっと十年間やってきたじゃないですか大綱で、単年度方式で。シビリアンというのは国会の議論ですよ。防衛庁のお役人にせっかいやかれる問題ではないのだ、本来は。  ですから、あなたが言った二つの問題は全く理由になってないじゃないですか。国会で議論することがシビリアンコントロール。ですから、単年度だろうが五カ年だろうが関係ない、これは。それから、後年度負担という問題は、「防衛計画の大綱」で単年度方式を用いたときに、既にそういうものは例外扱いするということで決着のついている問題。したがって、防衛方針があって計画方式が決まるのがこれは筋であって、計画方式だけ先に決めて、その後世界変化があったにもかかわらず、それはそのままほっかむり、そして「防衛計画の大綱」でいくのかそうでないのか決めない。これはおかしいんじゃありませんか、総理。おかしいです、これは。
  119. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 最初に私が御答弁申し上げましたことをもう一回ここで正確に申し上げますが、平成三年度以降の防衛力整備につきましては、六十三年十二月の安全保障会議における討議を踏まえ、その具体的内容について、大綱の取り扱いを含め、国際情勢及び財政経済事情等を勘案しつつ、安全保障会議を中心とする適切な文民統制のもとに逐次検討を重ねてまいります。その際、憲法及び専守防衛などの基本的防衛政策に従っていくことは申し上げるまでもございません。そして、現在は中期防衛力整備計画を目指して、来年度それが終わるわけでありますから、努力をしておるさなかであり、同計画終了までに改めて国際情勢及び財政事情等を勘案しつつ、平和国家としての我が国の基本方針のもとで決定を行うということを私は最初に御答弁さしていただきましたが、そのことを改めて申し上げさしていただきます。
  120. 市川雄一

    市川委員 それじゃ総理、そこまでおっしゃるなら、六十三年十二月二十二日の安全保障会議で意見が一致した、何で意見が一致したのかというと、中期防終了後においても、現在の中期防のような中期的な防衛力整備計画を政府として策定する必要があるということで意見が一致した、これが私はおかしいと言っているわけですよ。総理は「防衛計画の大綱」の取り扱いをこれから決めるわけでしょう。中期的な方式で行くのか単年度方式で行くのかというのは大問題なんですよ、これは。一%枠を破るときは、中曽根内閣が単年度方式を破ったわけです。ですから、むしろ単年度方式の方がこれからはいいんですよ。国際情勢は変化していく。大きな変化があった。これからもどういう変化をしていくかわからない。ですから、そういう意味では、最初に中期的計画方式ありきという決め方はおかしいんじゃないですか。  ですから総理、六十三年十二月二十二日のこの決定にはこだわりませんと、意見の一致ですから、これは決定じゃないんだから、総理、一言言ってくださいよ。意見の一致にはこだわらず、今後「防衛計画の大綱」の取り扱いを検討します、そういう趣旨なら理解できますよ。
  121. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように……(市川委員「こだわるのかどっちか」と呼ぶ)いや、こだわるとかこだわらないじゃなくて、やはり六十三年十二月の安全保障会議における討議も踏まえて、そして大綱の取り扱いを含め検討をしていくということでございます。
  122. 市川雄一

    市川委員 では、六十三年十二月二十二日のは意見の一致ではなくて、総理としては、六十三年十二月二十二日の討議、討議を踏まえ、今後「防衛計画の大綱」の取り扱いを検討したい、こういう答弁であると、こう理解しましたが、いいですか。
  123. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 六十三年十二月の安全保障会議における討議を踏まえ、大綱の取り扱いを含めて検討をしてまいりますが、そのときには国際情勢及び財政経済事情等を勘案しつつ行うのは当然のことでございます。
  124. 市川雄一

    市川委員 総理の味方は後ろに大勢いて、こうやっていますけれども、やはり私はおかしいと思いますよ、これは。指摘しておきます。  中期的計画方式で行くか単年度方式で行くかというのは、財政政策上でも大問題だと私は思いますよ。だって、五カ年なら五カ年、三カ年なら三カ年、中期防ということで防衛費を先取りしちゃぅわけですから。財政事情がどうなるか、財政の機動性を奪うじゃありませんか。国際情勢がどう変化するか、その変化をふさいじゃうじゃありませんか。そういう意味で問題にしているのですよ。ですから、どういう考え方でこれからの防衛を整備していくのかという、その基本方針を、国際情勢がこれだけ変化しているのに議論は余りしていない。それを議論して、方針を決めて、その上で三年なのか五年なのか単年度なのかというのが、これが私は本来の筋道のある議論だと思いますよ。この点については譲りませんけれども指摘を申し上げたいと思うのです。総理、そんないいかげんなシビリアンコントロールじゃだめですよ、そんなのじゃ。大蔵省だって同じだと思う。単年度の方がきちっとやりやすいじゃないですか。ですから、この点については私はなお強い指摘を申し上げておきたいと思います。  それで、もう時間が来ていますので、実は、日米構造協議とか消費税とかいろいろあったのですが、これは、これからの人に譲るといたしまして、防衛問題で来ましたから、あと十分だそうですから防衛問題で終わりますが、総理、ヨーロッパはああいう劇的な変化が起きた。しかし考えてみますと、長い間いろいろな努力をしているのですね。全欧安保会議、そこでアメリカとソ連の合意を生み出して、ソ連には思想とか信条の交流の自由というものを約束させて、あるいは信頼醸成措置というものを行い、軍事データを交換する。あるいは軍人の人事を交流する、往来する。演習を公開する、基地を相互視察する。軍事セミナーを開いて、お互いに講師で呼び合って考え方を聞き合う。あるいは軍事サミット、軍人の首脳が集まって議論する。こういうことがかなり長い間積み重ねて行われてきている。一方では全欧安保会議があり、西独のブラント首相の東方政策があり、そういういろいろな積み重ねの努力がああいう結果を生み出しているのであって、ある日突然何かこうなったわけじゃないというふうに思います。  どうも今までの政府答弁を聞いていますと、ヨーロッパは変化があった、アジアはない、こういう何か非常にかたくなな発想なんですね。ヨーロッパは変化があった、アジアはない、だからいいんだ、こういうことじゃないと思うのですね。ソ連という国は、アジア・ソ連という国とヨーロッパ・ソ連という二つの国があるわけじゃなくて、ソ連の国家意思は明快に一つです。ただ、アジアがちょっとおくれているという面はあるかもしれない。セントラルデタントがエリアデタントに波及するのがややおくれているという事情はある。したがって、ヨーロッパは変わった、アジアは変わっていない、だから日本は何もしなくていいんだ、これはないと思うのですね。  アジアに変化がないというのだったら、アジアに変化を起こすような努力をしなければいけないと思うのですが、こういう信頼醸成措置。例えば今後ヨーロッパで間もなく実現しそうなのが、領空を見せ合うオープンスカイ条約、これは調印の見通しです。五月十三日、ブダペストでオープンスカイ条約が調印の見通し。領空を相互査察する。いきなりオープンスカイに日本が行けというのは無理かもしれません。もっと前段のことをやらなければならないと思うのですが、そういうことをやはり努力する必要があると思いますよ。  ソ連の方が太平洋艦隊の演習を見に来てください、日本、米国、中国を招待した。日本は行かない。行ったらいいじゃないですか。防衛庁の制服を行かせたらどうですか。日本の演習も、いいものは見に来てもらったらどうですか。そういうことがだんだんだんだん重ねられていかなければ、お互いの信頼感というのは生まれてこないと思いますよ。そういう信頼醸成措置というものについて、もっと積極的なお考えはありませんか、総理
  125. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 るるお話をいただいて、ヨーロッパにおいては長い間のいろいろな努力の積み重ねがあって今日に来たんだというお話でございました。私は、それはそうだと思います。同時に、我が国においても、戦後きょうまで平和を守るための長い積み重ねの努力をして、そして平和時における節度のある自衛力を持ち、そして抑止力としては日米安保条約のもとで、これはただ単なる軍事同盟だけではなくて、経済協力やあるいは生活のお互いの自由な制度を発展させていこうという相互協力と平和、安全保障の条約に質的に昭和三十五年から変わって、さらに努力を積み重ねてきて今日の平和があるということも、やはり我が国がいいかげんではなくて本気になって平和維持の努力を続けてきた結果であるということも、どうぞ申し上げさしていただきたいと思うのです。  そして、そういったことがヨーロッパで定着をして脅威がなくなったかのようなことになりますと、お言葉を返すようですが、まだワルシャワ条約軍もNATO軍も厳としてあって、それは軍備管理の段階ではないでしょうか。軍縮をどの程度まで持っていくか、相互にどの程度まで下げていくか、十九万五千とかプラス三万とかいろいろな議論がなされたことも私は承知をいたしておりますけれども、それは非常に好ましい方向であるので、そういった方向に進んでいくことを私は心から期待をしておるのです。  ですから、そういったものが今度はアジア・太平洋にも現実にわかるようにあらわれてくることを願いながら対応をしていくわけでありますから、私は、日本の平和と日本の安全のための努力は今後も真剣に続けてまいりますし、同時にまた、アジアにあるいろいろな問題、それは個別にいろいろ違ったケースでございます。今なお内戦の戦闘状態の続いておるところも、今なお力を背景にきちっとした対峙ができてしまって軍縮の話にまでまだ入り込めないところや、あるいはまだ平和条約を結べない、そこで平和条約を結び、北方領土問題を片づけ、その他幅の広い拡大均衡の方式で友好関係を進めていこうとソ連との間では努力もしておるわけでありますから、そういったことに一歩一歩確実な前進ができて、本当の信頼関係に基づいた安定的な状況というものが日本の周辺、アジアに起こりますように積極的な努力をしていかなければならない、その過程の中で考えていかなければならぬのがこれからの我が国の安全と国民生活の確保である、私はこう思っております。
  126. 市川雄一

    市川委員 しかし、ワルシャワ条約機構があると言うけれども総理、共産主義というイデオロギーによって求心力があったのですよ、ソ連に対して東欧諸国は。そのイデオロギーが壊れたわけですよ。求心力を失っちゃったのです。ソ連がもう盟主じゃなくなったのです。しかも、東欧諸国はみんな共産党を名のるのをやめたとか、自由選挙とか、事実上ソ連を盟主にして東欧諸国が団結をして一つの軍事行動を起こすなんという、そんな力は衰弱して、もうなくなっちゃっている。単なる——もちろんまだあるのはわかりますよ。それをただまだある、まだあると言いますと、六日、ソ連の外務省グレミツキフ情報局第一次長、日本国内にはなお冷戦志向の政治家がいるが、日本当局がアジア・太平洋と世界全体で起きている変化に気づかないふりをすることはもはや容易ではないなんて、こうからかわれちゃうのではないかと思うのですね。  ですから、どうかもう少し、防衛費につきましては、世界、国際情勢の変化を受けて、大綱なのか大綱でないのかは別としまして、防衛費を凍結もしくは漸減する、そういう方向を明快に打ち出されてはどうでしょうか。アメリカも千八百億ドル、三年かけて防衛費を削減するということを言っているわけですから、そういう意味で、そういう方向への総理努力を期待しまして、私の質問を終わります。
  127. 越智伊平

    越智委員長 これにて市川君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  128. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。藤田高敏君。
  129. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 海部総理初め閣僚の皆さん、御苦労さまです。私も久しぶりにこの国会に返り咲きまして、皆さんとともに国民のためにその政治に参画することができました。新たな決意と責任感に燃えまして、私も今から質疑をいたしたいと思います。  まず第一に、この質問にも関連するわけでありますが、特に私は、三年半有余の在野の政治活動を通しまして、今国民は国政に何を求めておるだろうか、また国会のあり方に対してどういう意見を持っているだろうか、こういったことをつぶさに身をもって体験してまいりました。その観点から申しますと、決して揚げ足取りをしようと思っておりませんが、選挙のときに総理が、どういう御意思か知りませんけれども、体制論というものを選挙の争点に出そうとしてまいりました。しかし私は、国民の主権者の立場から申しますと、今そのような体制論というようなものについては国民は関心はない、むしろいわゆる憲法の精神に沿って、豊かでゆとりのある生活のできる政治を今の政府がどうしてやってくれるのだろうか、こういうところに関心があるというふうに見てまいりました。特に国会のあり方、政治のあり方については、うそを言わない政治、本音で与野党が語り合うことのできる政治、ガラス張りの政治、そして願わくは健全な国民の常識が政治の中に反映される政治、あえて言えば道理にかなった政治というものを主権者の皆さんが期待しておるというふうに私は痛感しておる一人でございます。  あえて体制的な問題を言わしていただきますなれば、社会主義か資本主義か、社会主義か自由主義かというようなことではなくて、今日の我が国の平和憲法が指し示す、いわゆる平和であって、人権やそして政治的自由が満度に保障されていく憲法体制ともいうべき方向に沿って、日本の政治が与野党を超えて誠実に取り組んでほしいというのが国民の共通した願いであり、意見ではないかと思うわけでありますが、あえて総理の御所見を聞かしていただきたいと思います。
  130. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘でありましたから率直に申し上げますけれども、選挙のときに、確かに党首の討論会でも街頭演説でも、当時テーマになっておりました体制論に私は触れてまいりました。  ただ、私の申し上げたことは、体制の選択といいましても、自由主義か社会主義、共産主義かという体制の選択は歴史の上でもう勝負がついておるのではないか、ベルリンの壁の崩壊一つをとらえても、もうそういったことではなくて、自由民主党に引き続いて政権を担当させていただくかあるいは野党連合に政権をお任せされるのか、そちらの選択ではないでしょうかということを私は言い続けてきたつもりでございますが、ドイツでも、やはり我々と同じように、文化も歴史も伝統もあり、教育も受け、そして技術的にも非常にすぐれたものを持っておる国でも、ベルリンの壁で二十八年間分けておきますと、自由市場経済と統制経済ではあれほどの差がついた。だから、これからは日本も、きょうまで手を差し伸べることもできなかった鉄のカーテンの向こう側の方にも、我々の持っておることでお役に立つならば、人づくり国づくり、御協力には積極的に参加していかなければならないと思っておるということを率直に申し上げてきたつもりでございました。  また、国会において本音の議論をして、きちっとどのように豊かで幸せな国民生活にしていくかということを考えろ、国民の皆さんの願っていらっしゃるのはそれだという委員の御指摘にも私は同感だと思います。ですから、この平和な国、明るい社会、豊かな暮らしというものをどのようにして安定させ、そして向上させていくかということも政治の大きな目標の一つでございますので、それらをめぐって内政上の問題についてはいろいろ議論もしてきたつもりでありますが、今後ともそのように与野党の御議論を通じて結果が出ていきますことをいろんな場面で期待をしていかなきゃならぬと私は考えております。
  131. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 これ以上、この問題について議論をするつもりはございません。ただ私は、今国会が始まりましてから与野党の審議をずっと真剣に拝聴してまいりましたけれども政府の側から必要以上に、野党も責任があるぞ。ということは、特に参議院選挙で与野党逆転になった。国会というのは二院制をとる限り、衆議院、参議院を通して日本の政治の方向を決めるわけですから、そういう点から従来にも増して野党、わけても野党第一党の社会党に責任はありますよ、こういう御主張であろうと思います。私は、そういったことは指摘をされるまでもなく、十分私ども自身が自覚をして、昨年の臨時国会でも対応してきたと思っております。  つきましては、お互い責任のある政治ということになりますと、早い話がその第一歩をどこから踏み出していくか、さまざまな対応の仕方があると思います。しかし、例えば今国会の院の構成につきましても、自民党は全部常任委員長を独占する。参議院ではどうか。野党が議長をとろうと思えば、これは議長を選任することができますけれども、今日政権与党である自民党に議長の座を譲っておる。そして、常任委員長については、各党の比例配分で委員長を決めて、いわば共同の責任をとるような国会運営の体制ができているわけです。私は、こういう体制を政府・与党みずから、また総理自身総裁を兼ねておるわけですから、そういう方向に沿って国会運営というものを円満にやっていく、その中から初めて、私は、国民の期待にこたえ得るような責任政治が生まれてくるんではなかろうか、こう思うわけでありますが、御所見はいかがでございましょうか。
  132. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国会運営の問題につきましては、もとより憲法の定める三権分立の中でまさに最高の機関でありますから、院を構成される各党各会派の皆様方のお話し合いによってそれは決定されていくべきものであるのが筋である、私はこう考えます。そうして、それぞれの御議論、お話し合いを通じて、数が初めから違うから、その問題は最後までその数が背景となって決定されるんだということを決めてしまうのではなくて、その議論の中で触れ合うところがあり話ができるところがあるなれば、与野党がお話し合いを願って前進させていくのが一番願わしい議会政治の姿であると考えておりますので、そのような運営がなされますことを、また、そのようなお話し合いがなされますことを心から御期待をさせていただいております。
  133. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、前段触れましたことについては、そういう対応がなければ国会運営についてもぎくしゃくしてくる面が出てくるのではないだろうかということを憂慮しておる一人でございます。  続いて私は、財政問題について質問をいたしたいと思います。  かつて私も大蔵委員あるいは予算委員として財政問題について少しくかかわってきた一人でございますが、今日出されております平成二年度の予算案を見まして、あるいはまたここ三、四年来の財政事情の推移を見まして、かつて大平内閣あるいは鈴木内閣当時に議論をし合った当時と比較いたしますと隔世の感がある、そういう印象を受けるぐらい財政事情が大変好転をしてきております。なぜ好転をしてきたかというその経過、中身についてはもちろん省略をいたしますし、かたがた後ほど触れたいと思いますけれども、確かに十年さきあるいは五年さきに比較いたしますと財政事情は好転をしてきておりますけれども、これから向こう百六十四兆円という国債残高を抱え、言うところの隠れ借金を払っていき、あるいはまた二十一世紀に向けて社会福祉、高齢化時代に対応する財源をどう捻出していくのか等々を考えますと、これまた容易ならざるものがあるということも事実であります。しかし私は、今日のこの断面を考えますときに、こういう情勢の中でこそ、国論を二分するような消費税、あえてこの消費税を一方的に強行した形の中で、その後始末をするような経緯が続いておるわけでありますが、こういうぎくしゃくした形ではなくて、一度すっきり、財政事情が緩んだ中で、それこそ先ほど総理とのお話ではございませんが、共通の土台をつくる形の中で、長期展望も含め、お互いがこの消費税の問題についてどう対応するかということについて真剣に議論をすべき段階ではないだろうか、こう思うわけでありますが、大蔵大臣もしくは総理の見解を聞かしていただきたいと思います。
  134. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員からの御指摘がございましたけれども、私ども、昨年の参議院選の後、国民の声に耳を傾けながら消費税というものの見直し作業を進めてまいりました。そして、その結果に基づきました見直しの案を今国会に提案をし、御審議をいただきたいと願っております。その中におきまして、私どもは、本当に掘り下げた論議が国会において行われ、そして、それが国民に先般の税制改革全体を消費税を含めて御理解を改めていただくよすがになればと願っておりまして、基本的に委員認識と差異はないと心得ております。
  135. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 あえてこういった財政好転の条件を羅列する必要はないと思うのですけれども、ここ十数年来の経過を振り返ってみますと、あれだけ議論になりました赤字国債が十五年ぶりでようやく新発行しないで予算が組めるようになった、あるいは公債依存率というのが十四、五年前には三四・七%を占めていたのが、本予算の中では八・四%までその依存率が低下をしてきた。これから先、五年先には、これはもちろん消費税が入っておりますが六・一%、七年先には五%以下にこの依存率を下げていくような、そういう条件が出てきております。そして財政法で言うところの定率繰り入れについても、たしかこれ九年ぶりですか、かれこれ九年ぶりで国債残高に対する繰り入れがなされるようになった。私はこの定率繰り入れを停止するときには大変激しくここで財政法上の建前から議論をした記憶がございます。ともあれそのような定率繰り入れもなされるようになってきた。予算書を見てみますと、決算剰余金についても、財政法上では二分の一以上を決算剰余金として繰り入れることになっておりますけれども、できることなれば、先日大蔵省が出しました中期試算を見てみますと、財政法以上に全額繰り入れをやる、そういう状態にまで財政が好転してきておるわけですね。  私はこういう情勢の中で、財政が非常に苦しいので、それだけではありませんが、財政が非常に困窮化しておるので消費税をつくらなければならないんだということであのような議論になり、今日を迎えておりますが、それに加えて自然増収というものが、過去三年来、減税分を含めますと昭和六十二年が七兆四千億、去年が七兆七千億、これはいずれも当初予算に比較しますと一七%から一八%の見込み違いという形で自然増収があるわけであります。さて、ことしは、平成元年度はどれぐらい出るだろうか、経済情勢の変化がありますから、ちょっと情勢の変わっておる向きもありますけれども、大方の研究団体やあるいは専門家の意見を総括いたしましても、五兆円程度の自然増収がこれまたあり得るのではないだろうか、このように見ておるわけでありますが、ここで一つとりあえずお聞きしておきたいと思いますのは、この平成元年度の自然増収がどれぐらい出てくるように見込まれておるのか、この点をひとつまずお聞かせいただきたいと思います。
  136. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今御指摘のありました数字につきましては、政府委員から御説明を申し上げさせますけれども、一点、私は委員の今述べられましたことに対して異論を申し述べたいと思います。  たまたま委員指摘をいただきました中に、税収が苦しいから、財政が苦しいから消費税をというお言葉がございました。これは大変な誤解でありまして、今回の税制改革そのものは、御承知のように、昭和五十年代の後半、国民の中から大変強い税に対する不満が出てまいりましたもの、それは所得税に非常に偏り、勤労者階層からの声が中心であったわけでありますが、そうした税制上のゆがみ、ひずみというものに対しての不満が出てまいりましたものに対し、税制改革全体の中で、所得税、法人税あるいは住民税といった直接税部分における大幅な減税を行いますと同時に、個別の間接税が持っておりましたさまざまな問題点にこたえ、お互いがお互いを支え合う仕組みとしての消費税を導入したということでありまして、消費税導入によって財政の厳しさを云々と言われることは、これは私は論外であると思います。  しかし、委員が述べられましたように、おかげさまで日本の財政事情が赤字公債から脱却できるところまで改善をされたということにつきましては、本当に国民の力というものがそこに示されたと思います。しかし同時に、委員がお述べになりましたように、なお百六十四兆円という平成二年度末の国債残高を考えますとき、また、一連の隠れ借金と言われますもの、さらには国鉄清算事業団の累積債務等々を考えてまいりますとき、なお我々は極めて厳しい財政運営を続けていかなければならないわけでありまして、こうした点につきましては、私は今委員が御指摘になりましたものを否定はいたしませんけれども、消費税の位置づけにつきましては、私は意見が異なるということだけ申し上げさせていただきたい。その上で、事務方から数字の御説明を申し上げます。
  137. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 平成元年度の税収の状況につきましてお答え申し上げます。  ただいま実績のわかっておりますのは二月末まででございまして、二月末の実績は、補正後予算額に対しまして六七・四%の収納ということになっております。昨年の二月末の実績と比べまして、その伸び率は一〇五・〇、五%増ということになっております。これに対しまして、六十三年度決算額に対する元年度補正後予算額の伸び率が六・七%でございまして、二月末現在におきましては、先ほど申しましたように五・〇%、まだ補正で見込んだ六・七%という伸びに届いていない状況にございます。ただ、御承知のとおり、これから法人税でございますとか、それから消費税の税収も非常に後ろ倒しに出てくる計算になっておりまして、いろいろな要素がございますので、今後の動きを十分に注目してまいりたいと考えております。
  138. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 一番肝心な答弁がないわけですけれども、いわゆる年度末までの、三月までの自然増収の見通しについては答弁がありません。これは後ほどもらうことにいたしますが、もう既に自然増収がこんなにあったということについては補正の段階でも議論がありました。  私は古い話を持ち出して恐縮でありますけれども、かつて鈴木内閣の当時、今日とは逆で、税の過大見積もりをやった。そして結果的に四兆円前後の過大見積もりをして予算を編成した。そこで私は、この予算は粉飾予算ではないかということで時の内閣の責任を追及いたしました。その結果、当時の渡辺大蔵大臣、鈴木総理、いずれも、もしこの見込みが違った場合には内閣として責任をとるということで、そのことがすべてではなかったでしょうけれども、結果としてその年の暮れに総辞職をなさった。  自然増収の今回の、今回といいますかここ三年来の伸びというのは、先ほども私が数字で指摘いたしましたように、一七%、一八%に及んでおります。当時あるいはその後の総理大蔵大臣の所見として、自然増収の見込み違いというのはあったにしてもどれぐらいだろうかということをただしましたところ、それは当初予算のあるいは税収の約一%前後であろうというのが政府の見解でございました。一%と一五%の違いがあるわけであります。そして七兆円あるいは八兆円に近いような自然増収が出てきておるわけでありますが、これは鈴木内閣当時とは逆で、まさにこれは過小見積もりを意図的にやって、そしていわば予算を編成する、こういう結果があらわれてきておるのではないだろうかと思います。恐らく、大蔵大臣答弁をこれから聞くわけでありますが、そんなことはないという結論じみた答弁がもう既に出てきておるような気がいたします。  私は、率直に申し上げますが、なぜこのようなことをあえて言うかと申しますと、これをお読みになられましたか。これは自民党の参議院議員で、私は個人としては、鈴木内閣当時の主税局長、福田さんですね、非常に尊敬をしておる方でありましたが、我々はその当時も意図的に過大見積もりをして予算編成をやるというようなことはないと信じておったわけでありますけれども、この本の中では、彼は昨年でしたか亡くなられましたけれども、この本の中では、やはり財政当局は最初からかなり大幅な歳入欠陥が出るということを知りながら予算を出したということを彼は正直に告白しておるわけですね。こういう過去の事実からして、やっぱり消費税というような問題があるだけに、政府は過小見積もりを意図的にやったんじゃなかろうか、こう私は思うわけでありますが、そ のあたりについてのお考えを率直に聞かしてもらいたい。  これは、もう客観的に見ますと、政府がどう答弁しても、これだけ大きな見積もり違いをやれば、かつては内閣の政治責任まで問われた。理屈から言えば、これは財政民主主義の原則に反するわけですね。国民の税金がこれだけあるのに、それをまともに分析調査もしないで、そして年度末になると、このような巨額の自然増収が出るということは、私はやっぱり議会制民主主義の本旨にもとることでありますし、厳しく言えば内閣自身の責任を問われるぐらいな問題ではないか。そういう厳しい姿勢で財政問題に取り組まなければ、これから二十一世紀に向けて、あるいはこのピーク時と言われる二〇一〇年、二〇年に向けて、我が国の健全な財政を任すことはできないのではないか、こう思うわけでありますが、どうでしょうか。
  139. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、故人となられました方がどういう著作にどういう言句を残しておられるか、大変失礼でありますが、読んでおりませんでしたので、その事実については存じません。  ただ、私の方から申し上げたいことは、本院におきましても、私は何回か過去の歳入見積もりの誤りについて非常に残念なことであるということを申し上げてまいりました。ただ同時に、意図的にと言われることは大変私どもは心外でありまして、そうした意思がなかったということについては、私は繰り返し同じことを申し述べなければなりません。現実に三高二安と言われる状況の中で、我が国経済が予想以上に好転し、その状況が持続をいたしております中において、結果としての歳入見積もりの誤りが起こりましたことは、改めて委員にも遺憾の意を私は表します。  ただ同時に、ちょうど五十七年でありますか、むしろ当初見積もりを減額補正をいたしました際に、本院におきましても、御党所属の委員からも、なおその見積もりは甘いのではないかという御指摘を受けたことがございました。しかし、その年、結果として税収は好転をし、六十年度——失礼いたしました。六十年度、減額補正をいたしましたものが裏目に出まして、結果としては状況は好転をしておったということもございます。  財政当局として集め得るデータを最大限駆使して正確な見積もりをする責任があることは、決して私はその責任を逃れるものではございませんけれども、こうした状況が生まれたことについておわびを申し上げると同時に、それが意図的なものではない、今日もなお、またこれから先もなおできるだけ最新の資料を駆使しながら的確な数字をつくり上げていけるように努力をしてまいりたいということのみを申し上げます。
  140. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 これは一年限りでこういう自然増収が誤算が生じたというのであればまたということがありますけれども、やはり二年、三年にわたってこれだけ多くの税収見積もりに違いが出てくるという点については問題があり過ぎるのではないだろうか、この点は率直に私は厳しくその責任指摘しておきたいと思います。  そして、先ほど大臣の御答弁を聞いておりますと、消費税創設については、新設については、これは極端に言えば、財政が苦しいとか財政再建のためにこういう消費税を新設するものではない、こういう御答弁がございましたが、私はこの観点は甚だしく理解に苦しむのです。やはり二十一世紀を展望する中で、高齢化時代を迎えて財政需要が拡大をしていく、そういう中で、当時の財政事情は、先ほど指摘したような好転下にはなかったというようなことも含めて、財政再建の一つの有力な財源としてこの消費税というものを新設したのではないかというふうに私は理解をしておるわけでありますが、これは後ほどひとつもう一度大臣の答弁をお願いいたしたいと思います。  私は、先ほども申し上げましたように、消費税については、見直し案を含めて依然として消費税そのものが持つ欠陥というものは是正されないし、されていない。逆進性の問題にしましても、あるいは国民の納めた税金がまともに国税当局に入らないなんという、こういう不公正、不公平な税金というものは諸外国で余りないのじゃないか、こう私は思うわけであります。  こういうものは、やはりこの際、弱い者いじめの悪税と言われておりますが、こういう税金をつくる前に、我が国の税制全般を振り返ってみますときに、私ども指摘をしておる不公平税制と目されておるものも何十項目に及ぶほどあるわけですね。これはもういろいろな研究団体、専門家あるいは学者等の意見によりますと、百八十以上も不公平税制の項目があるんじゃないか。それを全部この際社会的に見て公正なものに変えていけば、その財源は、消費税に見合う七兆円、あるいは多く見積もる研究団体によっては十兆円を超えるような財源がある、こういう指摘もあります。そういうものを国会を含めてもう徹底的にこの時期に洗い直して、本当に社会的な物差しから見て、今日の税制はこれでいいのかどうかという洗い直しをやる必要があるのじゃないかと思うわけであります。  これは半ばジョークにわたるかもしれませんけれども、私と同じ愛媛出身で尊敬をいたしております塩崎長官ですね、エコノミストではありませんが、かれこれ十年ぐらい前の「エコノミスト」でありますが、大蔵省の主税局長を塩崎さんと同じようにやられた泉さんとか、あるいは国鉄総裁をやられておった高木さんとか、あるいは横浜銀行の頭取をなさっておりました吉國さんとか、そういう方が誌上討論をやっておるのですね。その中で、塩崎主税局長、当時ですね、研究機関の税額控除制度というようなもの、これは一つの例ですよ、一つの例だけれども、そういう税金の制度をつくった。これはやはり間違いだったなと、それで塩崎さん御自身も、この税金はよくないなという意味のことを言っておることがこの対談の中でも出てきておるのですね。  そういう税目というか不公平な税金が、制度がそのまま残っておるわけですよ、これは端的に言えば。それに類するようなものが、今申し上げたように、多くは百八十、百八十もないにしても、百も五十もある。こういうふうなものを、不公平なものをそのまま残しておいて、そうして新税は悪税だと言われるように消費税のようなものを出すことについてはいかがであろうか、こう思うわけでありますが、これは極めて国民の常識的な意見かもわかりませんけれども、所見を伺いたい。  そして、時間の関係が、全体的に私はテレビの合間の質問ですから、ちょうど両方から挟まって一時間半しかありませんので、質問の項目を固めて申し上げますけれども、やはりそういう不公平な税制は、この際徹底的に洗い直す、今の時期でも遅くないという姿勢で取り組まれるお考えがあるかどうかということと、いま一つは、二、三日前でしたか、政府の税調が新しく発足、新しくといいますか、審議を開始することになりました。そして土地税制の見直し問題について論議をするということが新聞の記事にも出されております。私は、既存の税制の不公平なものがいっぱい残っておることと同時に、今日の社会的不公正の最たるものは何かといえば、土地を投機の対象にしてぼろもうけをやる、こういう状態は、これはもう今の社会的な不公平な点からいって許すことはできないのじゃないか。わけても大企業は、直接今生産手段に使っていない土地をたくさん持っておる。そうして、それを利殖の手段に使っておる。こういうものに対してやはり適正な新たな課税を、制度をつくって、そうして、これまた不公平な制度をなくしていく、社会の不公平をなくしていく、こういう手だてを政治の中で、税制の中でやって、あれもこれもやったけれども、消費税のようなものはどうしてもつくらざるを得ない、こういうことであれば、物の運び方として、政治の取り組む姿勢として国民は理解する向きも出てくるかもわからない。しかし、その段階といえども、私は、大事なことは、新しくつくる税金というものはどういうものになるか知らないけれども、いわば二十一世紀をにらむ社会福祉はどういう青写真でいくんだということをその前提として出さなければ、これまた国民が納得する形の負担というものにはならないのじゃないか、こう思うわけでありますが、そのあたりを含めてお答えを願いたいと思います。
  141. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 塩崎大臣からお答えをされます前に、私の方からお答えをすべき点についてまとめてお答えを申し上げます。  今委員から御指摘が再度ありましたけれども、消費税というものは、あくまでも従来の我が国の税制が抱えておりましたさまざまなゆがみの是正、サラリーマン層を中心とする重税感の解消、また急速に進む高齢化社会というものに備えた安定的な税体系の構築を目的として行われた先般の税制改革の一環として創設をされたものであります。そして、その目指すものは、まさに我が国経済社会の活力を維持し、国際化に対応しながら豊かな長寿・福祉社会をつくるにふさわしい税体系の構築が図られるという視点から行われているものであるということを繰り返して申し上げなければなりませんし、そうした視点から見まして、私どもは消費税を含む税制改革全体も正しい選択であったと考えております。  ただ、その消費税につきまして、今委員は逆進性のみを強調されましたが、それぞれの税制は、それぞれの税制のよさと同時にまた問題点を持っておることを今さら申し上げる必要もありません。そして、その中においてそれぞれの仕組みを組み合わせ、さらには歳出まで組み合わせることによって全体の姿ができ上がっているということは指摘をさせていただきたいと思うのであります。     〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕  そこで私どもは、今委員、不公平税制という視点からの御論議をされましたけれども、税制というものは不断に見直していかなければならない性格のものでありますし、租税特別措置の論議のときにも申し上げましたように、税の公平、公正という視点の上にそれぞれの政策目的を持って創設をされております租税特別措置につきましても、その政策目的の遂行の度合い等に見合いながら常に見直しの努力を必要とするものであることは、決して私は委員の御議論を否定するものではございません。そうした視点から、なお今後とも掘り下げた御論議をいただくことを私どもは決して否定するものではないということは申し上げておきたいと思います。  また、土地につきまして幾つかの点の御指摘がございました。これは今税制調査会、土地の問題について小委員会論議がスタートをしたところでございます。私どもとしては、総合的な見直しをお願いをしております立場から、これに予断を与えるような行動は慎むべきでありましょうけれども、今委員がお触れになりましたような企業の土地保有のあり方等につきましても、当然私は論議は行われるであろうと思いますし、その過程において国会における御議論等は適宜事務当局から小委員会の方にもお伝えをしていく努力を払うことにやぶさかではございません。
  142. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 ただいまの大蔵大臣の御答弁で尽きていると思うのですけれども、不公平税制は何かという問題で、私が主税局長のときに設けました税額控除の制度が不公平だというふうに座談会で言われているというお話がございました。私はその記憶はないのですが、実は、私の税額控除制度をつくりました考え方は、御承知のように、税のインセンティブで経済成長を促進していく。それは何かといえば、その手段は、税の減免で企業をあるいは経済を引っ張っていくということにあるとすれば、税の減免の方がはっきりするじゃないか。これまでは多分に特別償却という形で減価償却を大きくする形で減免するというやり方で、減免に結果としてなる形で誘引するというやり方もあるけれども、それは配当可能利益を減殺したりいろいろ弊害もあることは、もう御案内のとおりでございますので、私ははっきり減免という形で経済成長を促進するインセンティブとするならば、法人税の税額控除の方がはっきりするじゃないかということで、これは四十二年かなんかにお願いしたのです。その後、しかし少しまけ過ぎじゃないかという御意見もありました。しかし、いまだに税額控除と特別償却との選択制度なんか設けられておるところを見ると、私は、これが一概に、税額控除の制度が経済成長を促進する、社会目標を達成する税制手段として不公平、特別償却ならいいのだということにはならない、こんなふうに考えております。
  143. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 これはたまたま同郷のよしみで塩崎大臣の顔が見られたので私も指摘をしましたけれども、不公平税制のなには今の税額控除だけではないのですね。これはもう時間もありませんし、そういったことを一々申し上げようとも思いませんが、先ほども言ったように、見方によれば百以上も不公平な税制と目されるものがあるわけですから、そういうものを根本的に洗い直す必要があるのではないか、こういったことを指摘した次第でございます。  そこで私は、それこそ時間の関係もございまして、総理にお伺いしたいのですけれども、この消費税廃止の問題は、政府は見直しでいくのだ、私どもは廃止すべきじゃないか、ところがこの二つの議論でやっていきましても、落ちつく先は、もう世間で言われておりますとおり、参議院で昨年ああいう形の廃止法案が出たといういきさつから見ましても、政府のこの見直し案はよほどのことがない限り否決されるだろうということになれば、現行の消費税が残る、こういうことになるわけですね。私は大変これは知恵のないことではないかと思うのですよ。  そこで、何か第三の道、第三の方法がないものか。国民がやはり納得するのは、この消費税の廃止と見直しを突き合わせた形の中で、先ほど私が指摘いたしております不公平税制のもう全面的な洗い直し、これは租税特別措置を含めて全面的な洗い直し、そうして後ほど触れたいと思いますけれども世界の大勢は、さんざん議論してまいりましたように、冷戦時代が解消される方向に、ニューデタントの時代に入っておる、こういう中でこの防衛費の問題についても見直すべきではないだろうか、あるいは今私が指摘いたしました大企業がたくさん持っておる、保有しておる、遊ばせておる生産に直接かかわってない土地に対しては、これまた適切な課税というようなものも必要ではないだろうか、こういう総合的なことを検討して、これまた国民が納得する結論を出すべきだと私は思うわけであります。  そこで、一つ思い出すことは、政府の今この予算に盛られております見直し案、この見直し案を出すときに、主として食料品に対する課税の問題で卸の段階は一・五%、消費の段階はゼロにします、最後ぎりぎりのところで、宮下委員長さんじゃありませんけれども、この間の質問にも若干ありましたが、総理は最後まで全段階ゼロ、税率ゼロをお考えになられていたんじゃないかと私は思うわけです。私は、一つの方法として、どうも総理が税率ゼロベースということで問題の解決を図る道筋はないのだろうかということを当時非常に熱心に考えられたのじゃないかと思うのですが、そういうお考えはなかったのでしょうか、あったのでしょうか、教えてもらいたいと思うのです。
  144. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろなことを考えました。そして、随分あらゆることを想定しながら御議論をさせていただき、最終的にあのような案に決定をした次第でございます。
  145. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 あえてお尋ねしておきますが、その段階、その消費税問題の見直しの中に、私は野におりまして見ておりますと、総理が「思い切った」「思い切って」とこう言うので、「た」とか「て」とかでここでやったようでありますけれども、その張本人が一人おりますが、私は外目から見ておって、思い切ったというのは、それこそ清水の何とかから飛びおりる、数字で言えば十のものが半分以上になるぐらいなことをやって、初めてこれは思い切ったということになるわけですが、結果論として見直しというのは一兆二、三千億ぐらいですから、予算案に出てきておる六兆何千億という消費税の額からいけば六分の一か五分の一であります。  私は、あえて税率ゼロベースということを総理が考えておられたんじゃないかというのは、思い切った見直しをやるんだということを強調されておる裏には、そういう発想があったんではなかろうか、こういうふうに私は見ておったわけであります。この点は、重ねてお尋ねしますが、総理の頭の中にはなかったのでしょうか。
  146. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ここでてにをは論争を繰り返すつもりは毛頭ございませんけれども、誤解を招くといけませんから申し上げますが、私は、昨年の四月から始まっております税制の改革はいいものだと思ってやったわけであります。けれども、いいと思って自由民主党は一生懸命提案をし、やりましたが、世論のいろいろな角度の御批判や御指摘を受けたわけであります。そこで思い切って見直したわけです。総裁選挙に立候補しますときの私の選挙公報にも、また総理に指名を受けてからの初めての所信表明演説のときも、私は思い切って見直しをいたします、こう言いました。それは世論を尊重し、世論の声を謙虚に反省をして見直していかなければならぬ、それは消費税というものを制度として定着させたいと願ったからでございます。結論を得る前の間においては、最初申し上げたように、いろいろなことを考え、どうしたらいいだろうか、ああしたらいいだろうか、私なりにいろいろなことを考えました。けれども、結論は国会に御提出をした見直し案にまとまっておる、こういうことでございます。
  147. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私もてにをはの論議をやる気持ちはさらさらございません。問題は、これも過去のことを引例して失礼でありますが、中曽根内閣のときであったと思いますが、グリーンカード制というものをつくりましたね。あのときは竹下さんが大蔵大臣でこのグリーンカードの制度をつくった。そのときは、このグリーンカード制がなかったらまともな税制にならないんだ、社会的不公正を税制の面から是正するためには、このグリーンカードはぜひ必要なんだということをさんざん強調されて、それこそ多数決で決定をした。ところがその後、政界の大物か黒幕か知りませんけれども、かなり有力な連中から反対の声が上がってきた。そうしたら、四、五年たって今度はこのグリーンカード制が廃止された。法律として生まれながら全然機能しなかった、四年、五年。そうして、それこそそれで言えば税率ゼロみたいなものですね、これは。そして五年目になってまた同じ大蔵大臣でグリーンカード制がなくなった。まさにこれは私は、こんな不見識なことがあっていいのかどうかということで、当時の竹下大蔵大臣に、戦前戦後の歴史を通してこんな不定見な財政あるいは税制改革をやる大臣はおったでしょうかとまで私は詰問をいたしました。  私はこういう何年か前の生々しい記憶の中から申し上げるのでありますが、そういうことさえあるわけですから、一遍出した消費税は、これはもう立派なものなんです、見直し案はもうこれ以上のものはないんです、こういうかたくななことをおっしゃらないで、過去においてはそういうことさえあったわけですから、政治的にはそういうことをも考慮して、この消費税問題の最終的な決着をどう図っていくのかということを、これはぜひ内閣の責任においても考えるべきじゃないか。そうしないと、廃止か見直しかということだけで、同じ次元でこの非生産的な議論ばかりをやることになると思うわけでありまして、この点についてはぜひ国民の理解を得られるようなひとつ解決策を見出してもらいたい、このことを強く要望いたしたいと思います。  特に所見がございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  148. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは心からお願いを申し上げたいことでございますけれども、選挙中、見直し案というものについて論議をいたしましたときに、野党の皆様の方からも、廃止ということでも現実性を欠くから、間接税の必要性は認めて、個別間接税の方法というものをお示しになったことは、私もそれは非常に評価をさせていただくということを申し上げながら、どのような姿かたちでお出しをいただくのか、国会で議論をしていただきたいということをお願いをし続けたつもりでございます。  同時にまた、消費税廃止法案をお出しいただいたときも、ほかに八本の法案が出ておったわけでありますから、その中には財源法案その他いろいろございました。それには、あるべき間接税の姿というものを所得と消費と資産とにバランスをつけて課税をしようという考え方、野党の皆さんの考え方もその中ににじんでおりました。二年間はこれでいくが二年たったらこうするという法案の内容もございました。そういったことも選挙の中でも議論になったわけでございますので、見直しか廃止かではなくて、野党の皆さんも、このような間接税の必要性は認めておるんだ、ただし政府の言う見直し案とは違うぞというものをお示しいただくことが議論が進んでいく前提になるのではなかろうか、私はこう判断をいたしますので、それらのところについてどこかで議論がかみ合っていくところを、重なっていくところをぜひ見出していきたいものだと心から御期待しておりますので、申し上げさせていただきました。
  149. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 この消費税問題に絡む議論をしますと、大変鬼の首でもとったように個別間接税の問題だけクローズアップさせて、そして答弁をなさるわけでありますが、そういうことでなくて、今一番大事なことは、今日の税制全般を見てどう改革をして、その中でできることなれば消費税のようなものはつくらない方がいいことに決まっておるわけですから、そういう姿勢でどうして議論をしないんだろうかということを私はこの間からもつくづく感じておるわけであります。  それで、こういう議論をしておりますと時間がありませんが、これから私どもが修正案を出し、あるいは組み替え案を出すのか、どういう裏づけ案を出すのかは、もう当然のこととして今準備を進めておりますけれども、私はこのことについても非常に釈然としないことがあるんですよ。政府・与党が去年の臨時国会で——中身のよしあしはともかくとして、政府の行政機関のほとんどの協力も得ないまま野党があれだけの廃止法案を出して、裏づけ財源案を出した。ところが参議院のあの消費税廃止のときには、事もあろうに政府・与党なり政府の方からは対案というものは出なかったのですね、これは。そうしてもう審議が後の方になって、廃止法案が出るような段階になって対案が出てくるというような形になったわけでありますけれども、私はやはりこういう対応の仕方というものは余りにも国会の従来のパターンじゃないか、こう思うわけでありまして、野党にあなたら言い分があるのだったら、その裏づけもきちっと出してきなさいと言う前に、みずからもそういう謙虚な姿勢で反省をする必要があるのじゃないか、これは指摘だけでありますが、申し上げておきたいと思います。私はあえて申しますが、この消費税については、私どもは廃止ということでこれからも具体的に対応してまいりますことをここで強調しておきたいと思います。  そこで、これまた時間もありませんので、通告いたしておりました質問事項の中で、国際情勢の変化に対応する日本外交の新たな展開、これだけでも一時間、二時間やってもいいところでしょうが、時間がありませんので、特に私は、これまた今国会始まって以来、先ほどの議論も聞いておりましたが、一番大事なことは、一昨年のINFの全廃条約ですね。それから昨年のマルタ会談以降、もう既に議論がありましたように、冷戦時代の終えん期を迎えておる。主としてヨーロッパ諸国はそういうふうに、東欧諸国を含めて、これはソ連はもちろんでありますが、大きく変化をしておる。対立の時代から、いうところの対話、協調の時代に入ってきておる。いわゆるヨーロッパはヨーロッパなりにニューデタント時代を迎えておるわけでありますが、これは既存の、ヨーロッパで言えばNATOとワルシャワ体制という既存の枠組みを外してヨーロッパは一つと、これはゴルバチョフではありませんけれども、フランスに行ったときも、ソ連自身が、ロシア自身がヨーロッパの一員だというところまで踏み込んでおるわけですから、こういうヨーロッパに起こっておる変化をアジア・太平洋のこの地域にどう展開をしていくかというのが日本外交の新たな方向でなければなりませんし、けさの議論を聞いておりましても、軍事力が存在をしておる、軍事力が存在をしておるということが即何だか戦争の脅威があると言わんばかりの議論が政府筋から強く言われておるわけでありますが、私は、軍事力が存在しておるということと政治的に侵略の意思があるかないかということは、これは別だと思うわけですね。特に防衛当局の考え方からいけば、けさのような公明党の議員に対する見解もあろうかと思いますが、そういうものを一歩リードして、軍事的に対立する要素があっても、そういうものの枠を越えて、例えば日ソの関係について言えば、かつての日中の国交回復ではありませんけれども、安保条約はあっても、そのことは日ソの平和友好条約の締結にあるいは日ソのさらなる友好発展のためには障害にならないのだというような形で外交当局が一歩リードをしていって、そうして日本がこのアジア・太平洋地域においてそういう新しい枠組みをつくっていくことが、今我が国の外交に課せられておる一番大きな責任ではないだろうか、こう思うわけであります。  私は、一昨晩の新聞でございましたか、米ソの外相会談の模様がワシントンから報道されておりますけれども、いわゆる軍縮・軍備管理の方向に向けて一段と発展をしておる。その中で非常に私が興味を持って見ましたのは、ソ連のシェワルナゼ外相が、現在のNATO、ワルシャワ条約機構にかわって欧州全域を対象とする集団保障機構を提唱し、統一後のドイツも含めて新しい枠組みをつくっていくという方向で、いわば既存の対立してきた枠を乗り越えて新しい機構づくりにまで入っておるわけですね。私は、そういう条件というものを今このアジアにおいてつくっていく、構築していくことが一番大事であり、その時期に到来をしておるのじゃなかろうか。わけても日ソの平和条約の締結に向けて既に日ソ間では平和条約作業グループというようなものをつくって大変な努力をされておるさなかでございますが、そういうことを含めて、私の意見に対する外務大臣並びに総理の見解を承りたいと思います。
  150. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員お尋ねの全欧における安保への努力、安全保障への努力というものは、長い歴史の中でNATO加盟諸国及びワルシャワ条約機構の国々、現在のようにソ連の新思考外交というものが当時ございませんでしたけれども努力は積み重ねてきた。米ソそれぞれの努力の結果、今日のようなヨーロッパの平和への方向が出てきたのじゃなかろうかと思います。アジアにおいてこのような変化が起こることを私どもはもちろん期待をいたしております。  なお、既にモンゴルでは変化が起こりました。そして、この間からモンゴルの首相も来られておりますし、また議長もこの間日本にお越しになって、日モの友好関係を強化したい、しかも日本からは経済協力もぜひお願いをしたい、このような形が整ってきつつあるわけであります。  また、カンボジア和平におきましても、一昨日来られましたタイのチャチャイ首相は、海部首相に対して、ヘン・サムリン政権のフン・セン首相とシアヌーク殿下の和平への協議に日本というものの舞台がどうだろうかというようなお話までございます。  また、日米安保条約の存在が日ソの平和交渉の邪魔にならないということは、ソビエトもそのように認識をしておりますし、日本もそのように認識をいたしておる。このような形で私どもはアジア・太平洋の平和のためにこれから努力をさらに続けていかなければならない、このように考えております。
  151. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は日ソの関係については、今外務大臣からの答弁もありましたが、過去の日中友好——今日の日中関係がここまで発展してきた、天安門事件のようなものがありますけれども、発展をしてきたのは、亡くなられた周恩来総理のようにすばらしい政治家、特に外交的センスのある政治家がおられまして、安保の問題でも、我々は安保条約というものをなくさなければ日中の国交の正常化なり友好関係というものを、平和条約というものを結べないのだろうか、率直に言って最初はそう思っていた。ところが周総理は、とにかく日中の友好のためには、安保条約は妨げにならぬということを喝破して、そうして今日の日中関係というものをつくってこられた。こういうふうに日中関係が友好な状態になってまいりますと、日米安保条約で結ばれておる軍事的な側面というものは、対立しておるものが極端に言えば全部なくなるわけですからね。中国と日本が銃口を突きつけ合うような、そういう状態というものはなくなる。そういう条件というものを今日ソの関係においてつくることが一番焦眉の急務ではないか。そのためには、けさ方の議論ではありませんけれども、なるほどシベリアを中心に極東の軍事力というものはあります。しかし、この日米の関係では、太平洋、海の核を中心にして強大な軍事力の存在しておることも事実です。しかし、私は先ほども言いましたように、軍事力があるということと、そして攻める意思があるかないかということとは別だと思うんですね。マルタ会談以来の米ソの関係を見れば、そういうお互いに攻撃し合う、戦争するという意思は少なくともないんだ、こういう方向にお互いが相互信頼をやったからこそ、今日の軍縮なり軍備管理というものが進んでいっておると私は思うわけであります。  私は、その点ではアメリカのレーガンも偉かったけれども、今のブッシュさんがさらにすばらしかったと思うのは、ソ連を全面的に信頼した。全面的に信頼をして、今のゴルバチョフ政権がどれだけ強大な軍隊を今残しておっても、そのことによって米ソが戦争したり、しかけたりすることはない、こういう相互確認、信頼し合った中で今日のニューデタント時代をつくってきたんだと思うんですよ。そういう信頼がなかったら新しいアジアの平和というものは構築できないんじゃないか、こう思うわけでありまして、その意味合いから、私は、殊さら軍事力のあることを何だか潜在的な脅威があるんだと、そういう認識ではなくて、軍当局といいますか、軍ではなくて防衛当局にそういう意思はあっても、外交面ではそういうものは間違いだという形でこのアジア地域に平和の地帯を構築していくことが大事ではないかと思うわけでありますが、そういう点についてのお考えをぜひ聞かしてもらいたい。  特に、北方領土の問題については、私は、来年ゴルバチョフさんが来られるときに余り大きな期待をし過ぎてはいけませんけれども、やっぱりこれが一つの大きなチャンスになるだろう。歴史的に振り返ってみれば、一九五六年に鳩山さんが行かれたときに、この領土問題は大方解決しておくべきではなかったかという、私にはそういう考えがあるわけでありますけれども、そういうチャンスというものはそう二度、三度とないわけですから、ゴルバチョフ大統領の来日というものを外交的には最大限に生かしていく必要があるんじゃないか、こう思うわけであります。  そういう意味合いからも、私は、今のソ連のペレストロイカを成功さすためにも、当然のことでありますが、北方領土を返還してもらうためにも、今一番大事なことは、前段触れたことと、いま一つは、政経不可分ということを余り声高々に強調しない方がいいんじゃないか。これはあくまでも原則であって、やはり政策なり戦術は柔軟でなければいかぬという例えがありますけれども、やはり原則というものはそういうものであっても、政府は五つの要素で今経済交流、文化交流、技術交流あるいは人的交流、そして北方領土の返還というようなものを中心にして、拡大均衡というんですか、拡大均衡方針でソ連との関係に対応されておるようでありますけれども、私はぜひここで、余り政経不可分ということではなくて、安倍先生がせっかく行かれてああいうすばらしい八項目の条件をつくってこられた。  これは余計になりますけれども海部総理が東欧諸国に行かれたのも、それはそれなりに意義があったと思うんですが、実際言うと、あなたがあのときにソ連へ行かれて、そしてあの八項目の条件を締結されてくることの方が日本外交としては本物の姿だっただろうと私は思うんですよ。そのことはこれ以上言いませんけれどもね。私は、せっかくあの八項目の条件が双方で確認されておるわけですから、これをどんどんどんどん拡大をしていく中で北方領土の返還もひとつ実のあるものにしてもらいたい、こう思うわけでありますが、見解を聞かせていただきたいと思います。
  152. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生御指摘の問題、これからの日ソ関係、私は歴史の流れを見ておりまして、やはりレーガン政権時代には猛烈な軍備の拡張をやった。そしてソビエトも軍備の拡張をやった。双方がぎりぎりまで行ったわけです。その行った中で両者の話し合いの場が出てきたんではないか、私はそのような認識を外務大臣としては持っております。  そういう中で、かつての日中も、日米安保条約は日中共同の敵であるということを社会党の浅沼委員長は言われたことがあります。しかし、日中の平和条約はできた。また歴史は変わったわけであります。日ソの関係も、かつての鳩山首相が行かれたときと今日とでは、もうソビエトの体制自身に大きな変化が出てきておりまして、私どもは昨年結ばれました日ソの平和条約作業グループ、この先生御指摘の五つの課題、これも推進をいたしておりますし、また安倍元自民党幹事長の訪ソによる、提案された八項目についてもソビエト政府は高い評価をいたしておるわけでございますから、来年のゴルバチョフ大統領の来日に対する私ども一つの大きな期待というものはございます。しかし、現実問題として北方領土はソ連軍に不法占拠されたままで、国会は数回にわたって北方領土の一括返還要求をいたしておるというこの現実の中で、日ソ間の平和をどのように構築していくか、こういう問題につきましては、日ソ双方の努力、特にソ連側における考え方の転換というものを日本政府としてはぜひ期待をいたしたいと考えているのであります。
  153. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 質問通告のうち半分以上が残るような不始末になってまいりました。やむを得ないと思うわけでありますが、ぜひ前段私が指摘しましたような方向に沿って外交当局のさらなる努力を要請しておきたいと思います。  そこで、いま一つは日中の関係でありますが、これはもうそのものずばりでお尋ねしますけれども、円の第三次借款、せっかく竹下さんが行かれてああいうふうに取り決められてきておる。ことしからということですから、これはそれぞれ大蔵当局においても、通産当局においても、外務当局においても準備をされておると思いますが、ぜひ政治的な約束を政府レベルできちっと位置づけて、そうして借款の国際協力基金のベースに乗せて、それが実行できるように進めてもらいたい。天安門事件もありましたが、私は、批判と制裁は別だという、そういうスタンスに立っておるわけであります。我々の価値観の立場からいけば、ああいう人権無視と言われるような対応の仕方について、だれでもこれは賛成する人はないでしょう。そういうまずいことはまずいことと批判しながらも、やはり日中友好という将来に向かっての長期の観点から、私は、七月、あの天安門事件が起こった直後には大統領の補佐官あたりはもう北京に飛んでおるわけですよ。そして十二月にもまた北京に飛んでやっておるけれども日本はそんなことを知らぬ間にアメリカはやっておる。まさに惻隠の情ということがありますけれども、もう少しそのあたりは、もうけることばかり考えるような外交であったりそういうことではなくて、もう少しアジアの民衆があるいは世界の民衆がともに豊かになっていく、友好の手を結んで戦争のない平和な国をつくっていくんだ、そういう大きな視点に立って、ひとつこの円借款の問題を早く軌道に乗せてもらいたい。大蔵大臣のひとつ所感、所見、また外務大臣の所見を承りたいと思います。
  154. 中山太郎

    ○中山国務大臣 日中の両国の関係は、天安門事件が発生するまでは非常に良好な関係にございました。残念な事件が起こりまして以来、私どもは中国政府に向かって、改革・開放路線を進めてもらいたい、そして西側の諸国との話し合いを進めてもらいたいということを強く呼びかけ続けているわけでございます。  なお、今年の一月、鄒家華国務委員が訪日されました機会に両国間で意見の一致を見たとおり、現在、九〇年度の新規の案件に関する予備的準備行為として事前調査等を進めておるような段階でございまして、先般も経済協力局長を北京に派遣をいたしまして、事務的な調査も始めておる、このような状況でございます。一日も早く日中間の健全な関係が回復することを私どもも期待をいたしておるものでございます。
  155. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 昨年のサミットにおきまして、御承知のようなサミット加盟各国の首脳の間の合意がつくられ、それ以来随分の時間がたちました。現在、世銀の対中融資につきまして、いわば基本的な人道上の案件と言われるものにつきまして、ようやくこれが動き始めております。こうした中におきまして、この枠組みはやはり先進国首脳会議という場において合意をされましたものでありますから、これはこれといたしまして、私自身、第三次円借款の中において、幾つかの条件はありながら、日本として考えてもいい時期は参っておると思います。  今外務大臣が述べられましたものを補足すれば、いわば民生安定、民生向上に役立つ案件であり、同時に日本が、今委員も述べられましたように、抜け駆けで商売をするという疑いを国際的に避けますためにも、アンタイドの案件といったものから手がけていく時期は参っておるような気がいたしております。
  156. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 この問題につきましても、いま少し触れたいところがありますが、ぜひひとつ軌道に乗せて、友好発展のために努めて取り組んでほしいということを強く要請いたしておきます。できるだけ早くこの協力基金の関係も、秋口とか言わないで、すぐ段取りにかかるような方向でひとつ取り組んでもらいたいと思います。  本当に時間がなくなってなんでありますが、深谷問題ですね。日米構造協議の問題はもう全くネグらざるを得ないことになりましたが、深谷問題については、これまたそのものずばりでお尋ねいたしますが、総理、入閣時にはわかっていなかったことが今日もう御承知のようなとおりの事情がわかってきた。どうでしょうか、今のわかっておるような状態が入閣時にもしわかっておったら、閣僚としては起用をしませんでしたでしょうか。
  157. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは党のけじめ案に従って、社会的に大きな批判を受けるようになったその以後の問題について、私どもは反省しなければならないという厳しい考えを持っておりますので、今官房長官のもとでいろいろ深谷郵政相から聞いてもらっておる範囲というものは、そのけじめ案に照らして私どもは問題はなかった、こう受けとめております。
  158. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私の言っておるのは、入閣時にこういう条件がわかっておったら入閣をさせなかったでしょうかと、こう言っておるのです。
  159. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは事件に直接関係があったというものでもないのでありますし、また、その後の問題については、本人の意思によってきちっと区別をつけておるということでありますから、それはけじめ案に照らして問題にはならなかったと考えております。
  160. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 今までの経過は、入閣時にも自主申告、今日の段階も自主申告と、内閣それ自体としてクリーン内閣のイメージで発足して今日に至っておるわけでありますが、内閣自体責任において深谷さんのこの事実関係はどういうものであったかという、それこそ内閣全体の責任として調査をされたものがどうして出されないんだろうかという疑問が一つあります。  それと、これは事実確認として、実はたくさんやらなければいかぬことがあったわけでありますが、これは後日に譲ることにいたしまして、ただここでお尋ねをしておきたいのは、深谷郵政大臣にお尋ねしておきますが、リクルート社の大沢武志専務とは十年来の親しい関係であったということは御本人も認めておりますけれども、頻繁にゴルフや食事をする仲であったかどうか、そういったことが事実であったかどうか、これが一つですね。  それと、三月十四日のリクルート公判で提出された検事調書のうち、深谷さんのリクルートの接待に関する部分が出ておりますね。これは御承知だと思いますが、五十九年二月、東京・浅草の料亭で、労働省のAという審議官リクルート社の現社長の位田さんらに接待された。六十一年九月、東京・平河町のスナック「ラテン」で、当時労働事務次官だった加藤孝と一緒にリクルート社の接待を受けた、こういったことは事実であったかどうかですね。     〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕  そしてまた、あなたの秘書の石塚猛君の経歴が、つい最近になって秘書になったということを強弁されておるわけでありますけれども、これは随分最初から、五十五年当時から秘書であったんじゃないかということは、自民党の秘書会名簿でも、ここでも議論になりました。こういったことをこじゃんと、やはりめり張りきいた形でけじめをつけていくためには、公設秘書に登録されたのはいつであったのか、その当時の履歴書を提出される御用意があるかどうか。もし御本人が、深谷さんがそういう御意思がないとすれば、この委員会意向として、私はぜひそういったものを出してもらいたい、こう思うわけであります。  それといま一つは、いわゆる自民党のけじめ案と称する六十三年七月以降も、リクルート社の、一番最初質問をいたしました大沢さんと頻繁に会っていたという情報があるわけでありますけれども、このことは間違いないかどうか、本当に七月以降一回も会ったことはないのかどうか、このあたり御本人から直接承っておきたいと思います。
  161. 坂本三十次

    坂本国務大臣 先生の前段の御質問でありますけれども、独自の調査をもっとどうしてやらなかったかとおっしゃることでありますが、政治家の政治資金の調査については、司法手続は別といたしまして、結局、政治倫理の観点から御当人の徹底した調査によるしかないと思っております。郵政大臣から今回の自主申告については徹底的に調査した結果であるとの報告を受けておりますし、私も同大臣から直接説明を聞くなどにより、できる限り確認を行うことに最善を尽くしてきたつもりであります。
  162. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 たくさんのお尋ねがございましたので、抜けていたらどうぞまた御指摘いただきたいと思います。  まず、大沢さんとのつき合いは、私は個人的なつき合いとして非常に長い期間でございます。それから、彼と会う機会というのは、この間も共産党から御指摘がございましたが、仲間のグループで一木会というのがございました。これは月一回勉強会をやっている会でございます。その最初のころに、毎回出席しましたから、月に会うとすれば、五、六カ月は月一回そこではお会いしておりました。それから、リクルート問題が顕在化いたしました後は、私は一木会に出席することも避けてまいりまして、それから以降はほとんど会っておりません。ただ、過日選挙が終わりました二月の二十二日にこの一木会は定例会をやっておったものでありますから、久しぶりに出向いて出席をいたしました。ゴルフ等については、私の記憶では、この一木会の一周年記念の六十三年五月でございますが、このときに一緒に参りました。これは、しかし大沢さん個人というわけではございませんで、一木会の仲間たちと一緒でございます。  それから、石塚君との問題に関しましては、参議院でもお尋ねがございまして、説明不足の点がありますから、若干整理をしてもう一度述べさせていただきたいと思います。  同君は、昭和四十四年に専修大学を卒業いたしまして、湊商事株式会社に入社いたしました。その後五十二年に東栄機工株式会社に転社し、五十四年十二月まで同社に勤務していたとのことでございます。その間、同君は政治家を志望していたこともあり、五十三年ごろから私の事務所に出入りをするようになりました。五十五年一月ごろからは私の事務所で後援会の世話役としての活動をしてくれておりました。なお、五十七年一月からリクルート社に勤務し、六十三年七月同社を退社いたしまして、その同年十一月から公設の秘書になってもらいました。  以上でございます。
  163. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 ちょっと食い込んで済みません。どうもありがとうございました。終わります。
  164. 越智伊平

    越智委員長 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。  次に、金子満広君。
  165. 金子満広

    金子(満)委員 日本共産党を代表して、当面の重要と思われる幾つかの問題について、総理を初め関係閣僚にただしたいと思います。  まず、日米の構造協議の問題、特に先日発表されました中間報告に関連してお伺いをいたします。  今、国民的な関心を呼んでいる大店法の問題ですが、大店法の改正を含めて大きく緩和をする、それからまた、公共投資の問題や土地・住宅の問題など、非常に広範な範囲にわたってのアメリカに対する約束というか合意ができた、こういうことであります。  最初に具体的な問題で伺いたいのは、大店法の問題なんですが、大店法による大幅な規制の緩和という点について、総理はもともと大店法による規制というものは不合理だ、やるべきでなかった、こういうように思っていたかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  166. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 具体的に大店法という御指摘でございますから、そこからお答えをいたしますが、大店法というのは、我が国の流通秩序の中で、消費者の立場を考えながら同時に小売商店の健全な発展を考えるという手続法として出てきたものと考えます。そして、それが政策努力によって調和されていくことは極めて結構なことだと思います。  ただ、現実の運営の上で、指摘されますように八年もかかる、十年もかかる、いわば規制法のような感じがするではないか、また、どこから眺めても、消費者の立場から眺めても、これは問題ではないかと議論が随分出てまいりました。これは日米構造協議のもっと前にそれらのことは問題になって、そして産業構造審議会や中小企業審議会の合同会議でも、九〇年代の流通ビジョンというものは、消費者の立場から見てもあるいは中小小売商の立場から見ても、どのようなものがあるべき姿かというので議論が重ねられてきたことは御承知のとおりと思います。私はそういった意味で、九〇年代には、これは国民のためにも、小売商を将来きちっと位置づけていくためにも、改正を考えていくということは必要なことである、こういう問題意識を持って取り組んできておりました。
  167. 金子満広

    金子(満)委員 大店法の規制の緩和、その改正、それを考えていくべきだというお話ですが、いつごろからそういうことを考えました、総理自身が。
  168. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは今申し上げましたように、数年前からいろいろなところで、八年も十年もかかるという極めて顕著な例が出されるようになった。あるいはまた、別の角度から眺めてみますと、大店と中小小売商との関係というのは必ずしも対立する関係ばかりではないではないか、競争的共存といいますか、そういった道を探ることも必要ではないかという御議論も数年前からあったことは事実でございます。
  169. 金子満広

    金子(満)委員 法の改正をいつごろからお考えになったかということです。
  170. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 法の改正というものについては、中小企業審議会、産業構造審議会の御議論をずっと見ておって、もし必要があるとするなれば規制緩和の問題なんかは運用上でできるかもしれぬけれども、法の問題についてもいろいろ御議論が行われておる、このように問題意識を数年前 から持って見ておりました。
  171. 金子満広

    金子(満)委員 総選挙が終わってまだ二月たたないのですね。その総選挙のときに、規制緩和の問題、特に大店法そのものを、法律そのものを改正するかどうか、この点は自由民主党としても総理としても、公約の中には一言もなかったと思うのですね。そういう中で、法の改正はしないということを、ちょうど二カ月前になりますよ、二月の九日に総理は大阪の記者会見で、法改正はしない、運用だけでと言うのですが、今度の中間報告によりますと法の改正の方向に道はあいたんですね。そうすると、選挙が終わった後こういうことになったんじゃないですか。
  172. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 申し上げましたように、規制に関して、非常に長くかかり過ぎるとか複雑な手続が多過ぎるとか、いろいろな問題があることは私は理解しておりましたから、たまたまおっしゃるように、選挙中どこかの記者会見のときに質問が出ました。それで私は、法の枠組みの中でできる限りのことは規制の緩和をして、例えば期間の短縮であるとかいろいろな問題について、運用上の問題でうまくできないものだろうかということを述べたことは覚えております。
  173. 金子満広

    金子(満)委員 それが今度は枠内でなくて、法そのものを改正するという方向が出たわけですから、これは構造協議の中でアメリカ側からの主張というのがそこに入ったということは、現実問題として客観的に明らかだと思うのですね。  そこで、選挙の公約の中に、この構造協議の問題と絡んで、いろいろな分野での規制緩和という問題は大きく公約としてあるいは政策として自由民主党も政府も出さなかった。これは選挙がどういう結果を生むかということを考えるからだったと私は思いますが、そういう中で、中小小売店の利益、営業を擁護するということは何も日本だけじゃないのですね。イギリスでも、それからフランスでも西ドイツでもイタリアでも、それは全部やっています、許可制のところがヨーロッパは多いわけですから。アメリカでも州によってはやっているわけですね。私はそういう点で、今全国の商店街、その中で中小小売店が一致していることは、大店法を緩和して大型店、スーパーがどんどん攻め込んでくるようなことは絶対させてはいかぬ、これは決議が次々に上がっていると思うのです。それから地方自治体でも大店法の廃止あるいは緩和は反対だという声が上がっていますが、そういう点を考えたときに、今、いや緩和というのは消費者の利益を守る立場だとかいろいろなことが言われます。  そこで、ひとつ具体的な問題でお伺いをしたいのですが、政府は大型店と中小小売店、これがつまり小売価格のところでどういう状況になるのか、大型店が入ると必ず下がるのかどうなのか、調査したことがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
  174. 山本貞一

    山本(貞)政府委員 お答え申し上げます。  実は物価調査の中で、総理府で行われる統計の中で直接は出てまいりませんが、それから推計したものがございまして、大型店の中でも百貨店の場合は、一般の小売価格一〇〇に比べて一割程度高いという統計は出ております。これは、非常に高級品なりそういう特殊なものがあるという、あるいは贈答品、そういうような性格からそういうことになっているんだろうと思いますが、あとスーパーマーケットにつきましては、大型のもの、中小のもの、それぞれについて統計がございますが、一般のものを一〇〇といたしますと、やはり一〇%ないし五%前後大型店の方が安いという統計はございます。
  175. 金子満広

    金子(満)委員 一般的な調査から類推するんではなくて、東京都がこの二月に、都の生活文化局が具体的にこの大型店と中小小売店との価格の調査をやったのがあります。これは三月の月報に出ておりますが、それによりますと、小売店の方が五%以上安い品目は、生鮮食料を中心にして十四品目あります。それから、スーパーが安いのは七品目、それから、一五%以上安い品目はスーパー、大型店はゼロであります。小売店はジャガイモ、長ネギ、ニンジン、白菜の四品目。大型店の方が中小小売店より安いんだというのは、この数字から見ても宣伝のための宣伝だということが言えると思うのですね。ですから、政府の方ではまだ具体的にその調査をしていなくて、していない上に類推で、安くなるであろう、そしてこれは消費者の利益になるんだという推測をして宣伝しているのは、私は、これは正しくないし間違いだ、こういう点は厳密にすべきだ、こういうように思います。  そこでもう一つは、中間報告では、輸入の拡大を促進するために、港とか空港の拡充整備、こういう問題が出ています。そして、手続を緩和すること、あるいは検査などの見直しもしていく、こういうことが言われております。さて、そういう中で、農産物の輸入もどんどん拡大を今しているわけですね。そこで、ここでただしておきたいと思うのは、今大きな問題になっている輸入食品の安全性の問題であります。どんどんこれが入ってくる、検査は余りしない、見直しをする、そして港も空港も大いにそれを迅速化して流していく、こういうことでありますが、御承知のようにカロリー計算では、日本の食糧の自給率四九%ですから、胃袋の半分以上は輸入食品ということになるわけなんですね。  こういう中で、輸入食品というのはもちろんたくさんあるわけですけれども、いろいろの食品を全部含めて、日本と諸外国、また外国でもそれぞれの国によっては、残留農薬とかあるいは添加物とか衛生的な諸施設、そういうものについても差があるということは、これは関係省庁もお認めだと思いますが、どうですか。
  176. 津島雄二

    ○津島国務大臣 金子委員にお答え申し上げます。  いわゆる輸入手続の迅速化の問題は、食品に関しましては、その安全性の確保が大前提でございます。したがいまして、今御指摘の問題につきましても、輸入食品について、食品衛生上の観点から問題のない限られた食品について輸入手続の迅速化を行うという前提でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  177. 金子満広

    金子(満)委員 今、山菜、野菜については、タマネギからジャガイモからカボチャからニラ、ニンニク、ラッキョウ、ショウガ、そして枝豆、もう非常に広範多岐にわたって、農水省の資料でも百種以上にわたっていると思うのですね。そして相手国も五十カ国を超えていると思うのです。そして毎日洪水のように入ってくるわけですが、そこでこの輸入食品、特に野菜、山菜の衛生問題が今重大問題になっている。私は去年の暮れ、横浜の本牧埠頭で実際に輸入の山菜、野菜がどういう状態になっているかを見てきました。まあ野積みですね。そしてドラム缶は塩漬けでありますから、赤さびで穴があいて中の液体が垂れてきている、悪臭がする、こういうのが随所にあるわけですね。そういう中で、塩漬けの野菜、赤さび、そして崩れたもの、これがそのまま加工工場に送られて、そこで製品化して市場に出るわけですね。これはもう皆さん御承知のとおりだと思います。  委員長、ちょっと実物を展示したいのですが、お願いします。  これはそういう輸入の野菜、山菜の中にあるものでありますが、これはツクシですね。この中に束ねたもの、これを結わえているのですが、これが変なゴム製品なのですね。ここで言うのもいかがわしいようなゴム製品もいっぱい入っているのですね、これは。それからドラム缶から出た異物、くぎ、針金、石ころ、こういうものがいっぱいあります。それからキノコのナメコですね。これもドラム缶から出ているのですが、昆虫、毛髪、糸くず、それからこれも同じドラム缶でありますが、糸くずとか輪ゴムとか綿のくずとか、これはもういっぱいあるのですね。これは綿くず、ビニールのひも、いろいろの包装の切れ端、こういうのが食品の中に全部あるのですね。これを、輸入した業者ではなくて製造する工場で全部選別しているのですね、どこでも。これは非常にひどい状況になっているわけです。  これがナメコですよ。この異物の混入を見てください。見ただけで食欲どころの話じゃないのです。寒けがしますね。これを精選してきれいなパックに入ると山菜になるのです。これが温泉地で出てくれば、裏山のワラビかと人が思うのです。これは大変なことだと思うのです。もし我々の周辺の飲食店でこういうのがあったとしたら保健所はどんなことをやるだろう、答えははっきりしていると思うのです。しかし、これが輸入業者と、そして横浜の本牧埠頭の野積みの状態ではそのままなんですね。  このドラム缶には承認という判こが押してあります。腐食して穴があいています。液体が垂れて流れているのです。こういうのが数限りなくあります。これも私が行ったときに全部撮影したものなんです。もう穴のあく寸前です。これは全部野積みなんです。こういう状態です。これがドラム缶。きのうきょうでないというのは赤さびでもわかりますが、草花が咲いています、草が生えています。きのうきょう、一カ月二カ月前にここに置いたのではないというのは、この状態を見れば非常に明白だと思うのですね。  関係省庁も、それから総理もまだ直接それをごらんになったことはないと思うのですが、どうですか。ぜひ一度ごらんになって、その上で、いかにひどいかを見るべきだ。私は、国民がこれを知らずにいる面が相当あると思うのですね。やはり政治はこういう問題について、本当に党派を超えて、何党の人でも食べるのですから、重大問題だと思うのですね。
  178. 目黒克己

    ○目黒政府委員 御指摘の今の点は、たしか中国産のものであったと私記憶いたしておりますが、私どもはこの点については必ずしも衛生上望ましいと思っているわけではございません。しかしながら、現行の食品衛生法上の私どもの行政の中では、このようなものが流通及び販売にこれが入ることはないわけでございまして、この辺につきましては、保健所等を初めといたしまして食品衛生法の監視員等によりまして厳重に私ども取り締まりを行っているところでございまして、食品衛生の安全上このようなものはないのでございます。しかしながら、御指摘の野積みのようなことがあったことは事実でございますが、私どもこれの管理につきましては、適切に行いますよう十分に関係方面に指示をいたしているところでございます。
  179. 金子満広

    金子(満)委員 今担当者から言われるように、中国産もそうです。それから横浜港にはアジア各国から、それこそ十数カ国から入ってきているのですね。もう梅干しなんかでも皆さん、変色していますよ。黒くなって塩漬けでがっちりとなった、これを全部塩抜きをして。そこで業者に聞いてみました。これにかつおぶしをまぶしてこれで販売している。そして決してそこには原産国の名前は表示していないのです。こういう点も考えるとき、今担当官が言われるように、食品衛生上それでは政府としてということでもなかなか規則はない。ずっと出た先の保健所の方でというのは、これは責任転嫁になると思うのです。もとではっきりさせない限り、商品の流れていった先で、食卓のところで気をつけると言ってもこれはできる相談ではないのですね。ですから、やはりそういう非衛生的な、しかもにおいがぷんぷんして見ただけで胸が悪くなる状態というのは、これは大もとでとめなければならぬ。  そこで今私は具体的に提案したいのですが、ある程度手はつけていると思いますけれども、第一は関係機関と業者に対して、この野菜の野積み、これをなくすために万全の措置を政府責任で講じていくこと、これが第一です。  第二は、中国という問題も出ましたが、ほかの国に対しても、輸出国の政府に対して、日本政府から公式にこうした非衛生的なことがないように伝える、申し入れを行う。  第三番目は、特に日本の輸入業者に対して衛生管理について具体的な指導を行ってもらう。  この三つについて提案をしたいんですが、いかがですか。
  180. 目黒克己

    ○目黒政府委員 ただいまの点でございます。ただいまお申し越しの点につきましては、当然私ども既に昨年各方面に通知をいたし、指導をいたしたところでございます。また、関係国に対しましても、私どもの方から御趣旨の点のようなことを既に申し上げ、申し入れを行っているところでございます。  また、先ほど申し上げました中央のことにつきましては、輸入食品の安全性の監視につきましては、現在二十一の海港、空港で行っているわけでございますが、これに対しましても、食品衛生監視員が十分にこの監視に当たっているというところでございます。
  181. 金子満広

    金子(満)委員 去年からといったって、のろくて、これはもう全然寸法が合わないのですよ。私が去年の暮れに行っても野積みのままなんだから。だから、あなた口でそう言っても、行って見た方がいいですよ、どんな状態だか。きょう行ってもいいですよ、同じ状態が続いているんだもの。そういうことが私は官僚的なやり方だと言うのです。これで言ったからいい。じや中国政府に言ったのなら、申し入れをしました、いついつこういう回答が来ましたというくらいは公式に記者会見で発表すべきですよ。そういうものも黙っていて、問われなければ答えないというやり方が私は極めて官僚的だと思うのですね。  それから関係業者については、野積みのままじゃないですか、これは。そうしますと、今度はそれを追及しますと、トラックで運ぶんですよ。そうしていろいろの県の製造工場のところへ行って、また野積みしておくんですよ。同じじゃないですか。こういう点も中央で言うんだったら、それが末端でどこまでどうやっているかという、そこをしっかりと確かめてほしいと思うのですね。そうでないと、同じ回答を何回でも繰り返すと思うのです。これは総理、あなたそういう点ではよくわかると思うけれども、あなたがこういう点についてはしっかりやらなければだめだと、お互いに、食べるものがここへ来るのですから、こういう点は厳密に、厳格に、迅速にやってほしい。これは総理、ひとつ考え方だけ伺いたいと思います。
  182. 津島雄二

    ○津島国務大臣 食品衛生水準の向上につきましては、輸入品であれ国内流通であれ、厳しく行政上配慮してまいります。これからもしっかりやります。
  183. 金子満広

    金子(満)委員 言葉だけじゃなくて、もう全国の母親たちが子供の健康上、本当に神経をすり減らして、食べないんですよ、山菜なんかは。そういう状態なんだから。だから、同じ回答をいつまでもしないで、私は、調査団ぐらい出して徹底的に調査する、こういうことをやってほしいんですね。先ほども申し上げたように、相手国の政府に申し入れたのなら、いつ申し入れて、こういう回答がありましたということを公表することを、私はここのところは本当に要求しますよ、多くの人たちの切実なことなんですから。  それからもう一つお答えがありましたが、確かに十七の港と四つの空港ですね、これは北海道から沖縄まであります。ここに今確かに食品監視官が配置をされています。全国で八十九名です。来年度十名ふやすということだそうです。これで九十九名になる。九十九名で全部皆さんできますか、これは。私はこういう点では、確かにいろいろなことを言われて人員をふやすことは困難だということがあるけれども、こういうところに対しては、国民的な要求なんだから、私はそういう意味では食品監視官、これを増員するという方向でぜひ検討してほしいと思うんですね。こういうところに人件費が幾らかかっても国民は納得しますよ。そういう点でけちらないことだ。これは、もう言わなくてもお互いにわかることですが、この増員について、どうですか。これも厚生大臣ですか。
  184. 目黒克己

    ○目黒政府委員 検疫所におきます食品衛生監視員、これの増員につきましては、私ども平成二年度予算案におきましても十名の増員、それから平成元年度も十名ということで増員を続けているところでございますが、今後とも私どもはこの充実拡張に努力をしていくところでございます。
  185. 金子満広

    金子(満)委員 その十名は聞きましたが、十名で足りませんから、これはさらに増員するということを、まあ大蔵省も余り金のことで渋らないでこの点は考えてほしいと思います。  それでは次に構造協議の問題について、具体的に中間報告でありますが、中間報告が出される前に、米側の方から政策実行提案というのが二百数十項目出された。これはもうマスコミでも全文が報道されているわけです。今度の中間報告の中には、あの政策実行提案の中のかなりの部分が盛り込まれている。これも合わせてみればよくわかります。  そういう中で具体的な問題でただしていきたいのですが、実行提案の中では、大店法と流通問題について次のように触れているところが何カ所かあります。一つは「大店法を将来の一定時点で撤廃する。」これはなくすということであります。それから「法が撤廃されるまでの間、新規出店が遅滞なく行われるよう法の運用を直ちに緩和する。」この点は、もう中間報告の中に織り込まれています。次は「いかなる届け出も拒否されず、すべての届け出は直ちに処理されることを公に宣言する。」これがあります。それからもう一つは「既存の店が増床」つまり床面積ですね。「増床する場合、増床分が輸入品販売に使われるのなら、その増床を直ちに認める。」こと。それから輸入手続については「よく知られている輸入業者の日常的な貨物は物理的な検査なしに輸入できるようにする。」「よく知られている」というのは、商社、業者のことであります。よく知られているものについてはもう検査しないでどんどんやってくれ、さっきの話ともちょっと違いますけれども、そういうことが言われてきている。  それから、土地・住宅問題についても、その一部を挙げただけでも次のような点があります。これはアメリカ側の要求ですから、「東京都の価格監視制度など不動産の移転を制限するような制度を廃止する。」ここまで踏み込んでいます。それから、「市街化区域と市街化調整区域の基準を廃止する。」「広報や」これはニュースですね。「広報やその他の活動を通して、都道府県知事が市街化区域を増やし調整区域を減らすよう促す。」都道府県知事にまでアメリカの側からこういう提案、要求が出ておりますね。さらには、「借地・借家法を改正する。これによって、農家やその他の地主が所有地をアパートのようなより生産的な利用に転換させる」これはもう挙げれば切りがないんです。  そういう点から、だれが見てもこれは日本の内政に対する干渉であります。今言った、予算はこうせい、法の改正をどうせい、廃止をどうせいと、とにかく借地・借家法までこう言ってきているんですから、それも、このためにやることという、そこまで言ってきているのは明らかに指図なんです。日本の主権に対する侵害ですよ。これでも黙って、よかったとは、これはとても私は言えないと思うんですね。アメリカの大国主義的な干渉であり介入だ。ここまで来て自治体の内容まで踏み込むんですから。知事にこうせいよなんというのは今までないですよ。こういう点を考えたときに、こういうことが内政干渉なんだ、この点についてこれは総理の考え方を伺いたいと思います。こういうことがやられてきておる、言われてきておるということについての考えですよ。
  186. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは、世界日本との相互依存関係がますます深まり強くなっていきつつあるという今日において、私はそれを内政干渉としてとらえる金子議員の見方と全然異なった立場で見ておるわけでございますが、日本が小ぢんまりとつじつまを合わせて自分の国一国だけでやっていくんだというような考えはとれないわけでありますから、しかも、日本とアメリカは自由経済の社会の中で、二国だけで世界経済力の四割近くを持っておるわけでありますから、それなり責任影響力も大きな二国間関係でございます。その二国間関係の中で角突き合わせておかしな雰囲気を醸し出すことは、世界経済に対して極めてよくない影響を及ぼすことになるわけであります。  その意味からいって、この数年間特に顕著に目立った貿易のインバランス、これを何とかしなきゃならぬ。五百億ドルを超えるという時代が三年も続きました。日本側のいろいろな内需拡大とか輸入拡大で四百九十億ドルになっている経過状況にあることはおわかりと思いますけれども、そういったものを補完する意味で、お互いにいろいろな問題を提起し合って、そしてそれを聞いて自分の方で、お互いに自主努力をしてうまくいくならばここで相互の関係をきちっと高めていこう、こういうことですから、内政干渉だとか、これは許すとか許さぬとか、そういう角度で見ていきますと私どもの視点と違ったことになっちゃいますから、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  187. 金子満広

    金子(満)委員 内政干渉と感じないほどもう私は従属度は深まっていると思うのです。  大体そういう点でいえば、相互依存だというけれども、今アメリカ側から提案していることは相互依存じゃないですよ。一方的にこれは——これがもし逆だったらどうなりますね。相互で同じじゃないですよ。だから中間報告が出た後、これは一般の新聞ですよ。「押しまくった米」「手を緩めぬ対日攻勢 あらゆる分野で口出しも」「日本への要求ばかり」「米記者から自国批判も」アメリカの記者が自分の国の政府をも批判している。これは全部赤旗でない方で出しますから、よくごらんになってください。そうして、ほとんどの新聞が日本譲歩、アメリカ歓迎という形ですよ。だから、頑張った、頑張ったということを言うけれども、どこで頑張ったか。  そこは内容的に言えば、確かに経済摩擦はあります、貿易収支はこうなっておる、これも事実ですよ。しかし、アメリカの財政赤字とアメリカの貿易赤字はアメリカがっくり出したことなんですよ。では、日本で五百億ドル近い黒字だ、だれの黒字なんですか。国民一人一人の黒字ですかね。貿易商社、大企業がつくり出した黒字でしょう、それは。何でこうなったかというのは、そこには低賃金であり、そして長時間の過密労働であり、下請泣かせであった、これはもうはっきりしているのです。そうして、そういう中での国際競争力を高めての、結果としての貿易の黒字だった。こういうところにメスを入れないで、アメリカがこう言ったからどこまでそれを入れるか入れないかの議論が私はこの日米経済問題での構造協議だ、こう思うのですね。ですから、そういう点でいえば、私は繰り返しはしませんけれども、とにかく構造協議というのが、経済、貿易だけでなくて、これは広範な分野にわたってきていることは事実なんですね。  私は、そういう点でいえば、日米安保条約第二条に経済協力の条項があります。これは総理もよく使うところですが、今、そういう点でいえば、こういうような構造協議の中間報告、そして七月には最終報告ということになります。そして、中間報告に盛り込まれていない点で、アメリカが政策実行提案で出しているあの項目の完全な実施を求めて、さらに中間報告を足場にして出てくることは間違いないと思うのですね。  この点を考えた場合に、私は、農産物の輸入自由化の経過を見ると、アメリカのやり方というのは非常によくわかるわけですね。あのグレープフルーツのとき、サクランボのとき、牛肉・オレンジのとき、今また米ということを見たときに、やはりアメリカのやり方というのは、一つ譲れば二つよこせといってくるんですよ。二つ譲ってしまえば三つも四つもこれもどうか。それも甘い顔をするから米までよこせ、これ今じゃないですか。こういう形に、私は七月の最終報告を前にしてやられることははっきりしているし、その根底にやはり安保条約二条の日米経済協力がある。  これは三月六日の衆議院の本会議で、我が党の不破委員長に対する総理答弁の中で、「安保条約は経済的な問題や福祉条件の向上といったような幅広い両国の国民生活安定的な面に関する問題等もきめ細かに決めた条約」である、したがって、これが軍事だけでなくて政治、経済すべてを含めた同盟であるということを言っているわけですから、ここに私は大きな根源がある。このことを指摘して、次の問題に移りたいと思います。  この構造協議とあわせて同じ時期に、日本に対する軍事費、この増額、これが要求をされてきている。これはアメリカの国防予算権限法、昨年十一月上下両院を通過をいたしました。大統領も署名しているわけですが、その中で、日本に対する具体的な考え方というのが提示をされております。これは外務省でも防衛庁でも、そういうことがあることは御存じですね。
  188. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、昨年の十一月二十九日にアメリカの国防予算授権法が成立しております。その中に九百十三条というのがございまして、その中で経費負担問題について触れられております。
  189. 金子満広

    金子(満)委員 その権限法の九百十三というのは、安全保障への日本の貢献ということで、日本だけに関して四項目にわたって書かれているわけですね。その二項目目では、アメリカの議会の考え方、つまりアメリカの議会の意向として次の二つを挙げています。「日本は、自国の安全保障についてより多くの責任を引き受けるべきである。」「日本は、アメリカが日本防衛のために軍事力を配置していることから生じる直接経費を補償すべきであり、これには、アメリカの軍事要員の日本駐留に関連する(給与と諸手当以外の)諸経費を含むものとする。」  さてここで、この「(給与と諸手当以外の)諸経費」、そしてその総額はどのくらいになるか。これは概算で結構です。どのくらいになるのかということをお聞きしたいと思います。
  190. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生御指摘の九百十三条で言及してございます言及の仕方は先生が読み上げられたとおりでございますが、具体的な経費に関しましては、八八米会計年度におきまして米側の実績を持っております。八九会計年度については私ども承知しておりませんが、アメリカ側が負担しておりますのは全体で四十五億ドルと承知しております。
  191. 金子満広

    金子(満)委員 全額を負担すれば、これははるかに上がるわけですね。我々が日本円で換算しても九千億円を超えるだろうと思います。そういう中で、この第二項では次のような内容まであります。  「日本政府開発援助(ODA)計画費と日本の防衛費とを増額し、一九九二年までに、日本のこれら計画への支出水準が」「NATO加盟諸国の政府開発援助計画と防衛計画への支出の水準の平均にほぼ等しいようにすること。」そうすればこれは概算して十五兆になりますよ。  次に、(F)という項目の中で、「日本の現在の五カ年計画とそのあとの五カ年計画」、この「あとの」というのは来年から始まる五カ年ですね。「計画とで要求される能力を開発するに当たり、「即座に間に合う」」つまりすぐ役立つように、「「即座に間に合う」軍事装備をアメリカから取得すること。(これには、完全装備の長距離早期警戒機、エージス兵器システムの追加、空中給油機、弾薬、予備部品をふくむものとする)。」これはみんな内容が書いてあります。これだけの内容を買えという、こういうものがどういう性格を持っているのか。これは外務省、ただああそうですかでは済まないと思うのです。ここまで踏み込んで、これは米議会の議決ですからね。考え方、見方としてもこういうものが出ておる、これで知らないでは済まないし、アメリカのことですではないのです、日本のことを書いてあるのですから。この点どうですか、外務大臣。
  192. 中山太郎

    ○中山国務大臣 御指摘の国防予算授権法は、在日米軍経費について議会の厳しい意向があらわれたものと理解をいたしておりますが、このアメリカの国内法についてコメントすることは差し控えたいと思っております。
  193. 金子満広

    金子(満)委員 国内法といっても、アメリカはそういう点は非常に深いことを考えてやっているのですね。これはアメリカ議会の意向としてこの項は決定する、考え方ですと。それは当然のことだと思うのですね。これを日本の法律としてやれということを法律で決めたら、これは内部問題、干渉の法律になるわけです。植民地でもないのにこんなばかなことはできませんから、それは意向ということなんですね。しかし、意向だけれども、議会の議決を得ているわけです。だから、こういう点について大統領はこれで努力せい、努力できなくても国会決議の違反でないように、意向ですということになっているのです。だから、意向以上のものはアメリカ議会では絶対決めないです。そういう意向を出しておけば、内容は外交交渉でやりなさい。日本は、今の外務大臣の言葉でありますけれども、アメリカの法律ですがと言うが、これは先日の三月二十七日の内閣委員会で、中山外務大臣は我が党の三浦議員の質問に対しても次のように答えているのですね。これは海部総理が訪米したときのことです。  「お尋ねの点につきましては、」というのが軍事費の増額のことについてですね。「お尋ねの点につきましては、ブッシュ大統領から首脳会談において、在日米軍経費負担について我が国努力を評価する旨の発言がありました。」何か努力したんですね。「これに対し総理から、在日米軍支援を含め、日米安保体制の円滑な運用を引き続き確保するために必要な協力を行っていくとの決意の表明が行われました。さらに、日米外相会談におきまして」、これは中山外相のことですね。「ベーカー国務長官より我が国努力に感謝しつつ引き続き期待したい旨の発言があり、私から今後とも我が国としてふさわしい努力を続けたい旨を申したのであります。」つまり、約束したということですね。  このことを念頭に置いて、次の権限法の第三項を見ると非常によくわかります。ここの項目は「交渉と協議」という項でありますけれども、「大統領は、この法律発効後できる限り早く、次のとおりにしなければならない。」発効後というのは先ほど担当者からお答えがありました。去年の十一月二十九日ですから。措置しなければならない義務づけた内容は、「日本防衛のためのアメリカ軍配置の直接経費を賄うのに十分な価額の拠出をすることに日本合意するむねをうたった協定を結ぶ目的で、日本との交渉に入ること。」これを義務づけているのです。だから、外務大臣が言われたこういう内容については、大統領の方はそういう気持ちでやっておるわけです。だからその会談の前に、選挙が終わった直後に、チェイニー国防長官が来日をして防衛庁長官や外相や総理にも会っていると思うのですね。こういうことが言われておる。  そこで、最後の四項目に、この権限法では、大統領は、一九九〇年四月一日よりも遅くない時点で、日本との交渉の内容についてアメリカの議会に第一次報告を提出しなければならない、こうなっておるのですね。もう所定どおり言えば報告書が出ているわけですよ。この点、つかんでいるかどうか知りませんけれども、何か都合でちょっとおくれているそうですが、やがてこれは全部明らかになります。これは公表されるのです。ですから、政府関係者が何をどう話ししたかも向こうから出ると私は思うのですね。  こういう点で、内政干渉でないということを言われるわけですが、私はいろいろな点から見て、アメリカ側から言えば対日干渉だ、日本側からは、私は政府の態度は対米従属だ。これがどこでこう囲われているかという問題です。私は、今までの事柄を見て、まずアメリカは意向、期待を表明すると、日本は自主的判断で努力しますと言うのですね。そうしますと、結果を見てアメリカは感謝しますと言う。引き続き期待しますと言うのです。そうしますと、今度は日本側の方、政府の方は、日米安保条約の効果的運用でやりますと、こうくるのです。そして干渉と従属点は、ずっとベールに包まれて出てくるのです。それは結果を見ればわかるのです。  一九八〇年代の防衛費という名の軍事費は二兆五千億円台でしたよ。今は皆さん何と四兆一千五百億だ、今審議しているこの予算案で見れば。ここまでぐっと広がるのです。こういう点を見れば、ああこれが、なるほど効果的運用の安保条約というのはこういうことなのか、私はそういうことをここで厳しく指摘しておきたいと思うのです。  もういろいろの面でお話がされているように、確かに世界流れというのはそれは軍縮ですよ。核兵器なくせということです。軍事基地は撤去し、そして外国軍隊の撤退も始まっている。軍事ブロックということも解消の方向を出せと言っているじゃないですか。こういう中で日米安保条約、安保体制を強化する、そして片方ではデタントを言い、そして軍縮を言いながら、軍事費がどんどん上がっていく。こういう点で私は、軍事費は大幅に削減をすべきだ。同時に、この日米安保条約についても、私は、検討し、廃棄の方向を打ち出していかなきゃならぬ、この点をはっきり述べておきたいと思います。  その点で次に移りますが、消費税の問題です。  この四月一日で……
  194. 越智伊平

    越智委員長 答弁はありませんか。
  195. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今年は日米安保条約が改定されてからちょうど満三十年を迎えます。三十年前の日本をめぐる周辺諸国の状況と今日とでは大変大きな変化がございましたが、その変化の一番大きなものはやはりソビエト連邦であったと思います。それから中国でもあったと思います。そのような中で、我々が今日まで、安保改定時に、安保改定によって日本は戦争に巻き込まれるという多数の人たちの意見がございましたけれども、一度もこの日本は平和を侵されることなく、今日までだれ一人軍隊で殺されたこともなく暮らしてこられたということは、これは考え方によると、私は、平和への代償である、平和への費用である、そういうふうに考えなければならないものであって、決してこのデタントというものがずっとあったわけではございません。急激に最近ヨーロッパで起こってきた状態でございまして、東南アジア、アジア・太平洋では引き続き不安定な状況がカンボジアあるいは朝鮮半島、いろんなところでございまして、私どもとしては、この日本の国民の平和と安全を確保するためには平和のコストを当然払わなければならないもの、このように考えておりますし、我々の国の支払うべきコストだけで不足する分を安保条約によってカバーをしておる、補完であるというふうに考えて今日まで運営をしてきたのであります。
  196. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど構造協議の問題のときに、内政干渉であるとか、いろいろこれだけのものを言われて全部受け入れてという御意見がございましたが、日本側からも、アメリカ側に関しては、ある意味では、そういった視点からぎりぎり言えば内政干渉ととって怒る人が出ても仕方がないような、例えば労働者の職業訓練の問題とかあるいは教育の問題についても指摘すべき点を指摘しておりますし、また、両国のインバランスがおさまらない、変わらないと言われても、日本もこの数年来自主的に内需を拡大し輸入を拡大するという努力をして、六百十億ドルの輸入を現に拡大したのでありますが、そのうちアメリカに妥当したものが百七十億ドルであったということ。これはアメリカから日本へ売り込んでくるものを、もっと努力をして、もっとつくって、もっと売り込まれたらどうですかということも率直に申しました。だから米側も副大統領を中心にして輸出競争力の振興の委員会をつくって、日本へもっと物を売れるようにしようということを率直に取り入れておる。また、貯蓄と投資のインバランスの問題の議論の結果、アメリカは日本側の指摘を踏まえて貯蓄に関する特例の制度もつくったというようなことで、お互いに指摘を受け合いながら、それを内政干渉とかなんとかとらないで、両国間の関係、ひいては世界経済に与える影響もあるわけですから、できるだけ体質を、構造を変えていこうという努力をお互いにし合ったのが今度の構造協議のことであります。ですから、そういった意味で、内政干渉だ、従属だ、隷属だというのはちょっと当たらないと思いますので、申し上げさせていただきます。
  197. 越智伊平

    越智委員長 金子委員にお願いをいたします。  一つ一つ区切って、質疑の時間でありますから、演説ではございませんから、一つ一つ区切ってやっていただきたいと思います。
  198. 金子満広

    金子(満)委員 わかりました。  今の点で言えば、内政干渉ではないと総理が言えば、アメリカは、そうです、私は押しつけた意味は一つもありませんと言うと僕は思うのです。全部海部総理の方が自主的に判断していただいたので私の方は感謝しています、思ったことは大部分通りました。みんな論評がそうなっているんだもの。それをあなたは私がなんて言う。論評までそうなっているんだから、これは客観的に判断してもらえばいいこと。これが一つです。  それから、外務大臣から言われましたけれども、安保、三十年たった、これは事実ですよ。三十年戦争がなかった、日本は巻き込まれなかった。しかし、実際の状態はどうだったろう。この三十年間の中で、在日米軍基地は面積は減りました、数も減りました。しかし、質は高まりましたよ。そして、この三十年間に核兵器積載艦船、この寄港というのはいろいろの面でやられてきた、これはもう否定しても否定する科学的な根拠というのは政府の方ではありません。これは、いつも同じ回答です。アメリカから事前協議の申し出がないから核兵器積載艦船の寄港はないと思います、これだけですよ。これが一つ。  それからもう一つ、戦争にということで言われますけれども日本はベトナム、ラオス、カンボジア、あの戦争のアメリカの基地になっていたことは疑いもない事実ですよ。アメリカが中東に出動するときも日本を使っていたことも事実だ。今空母ミッドウェーが横須賀を母港にしてインド洋にしょっちゅう出ていっていることも、これも天下周知のことですよ。  だから、戦争がなかったという中には、日本の平和を願う多くの国民の平和運動があり、反核運動があり、国際的にもそういう運動があったということは現実なんですから、そういう点もよく見ていただきたいと思います。余りやるとまた、これは討論ではありませんから、それだけ述べておきたいと思います。  そこで、御承知のように四月一日で消費税が実施されてちょうど一年たったわけですね。実施されるときに、当時の竹下総理が次のような談話を発表しました。「今日まだ、なじみの薄いことは当然でありますが、」「やがて「消費税を導入してよかった」と感じていただける日が来ることを信じております。」一年前でした。一年たってみて、こういうことになっているかどうか、これは竹下総理が当時言ったことですから、海部総理、どうですか。
  199. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 消費税の実施状況につきまして、税制調査会のフォローアップ小委員会から中間報告が出ております。必要でありましたならその全文を読み上げてもよろしゅうございますけれども、時間の節約上、要点のみを申し上げさせていただきます。そして、その認識は私どもも同様であります。  例えば物価への影響は、物品税等の廃止等の効果も適正に反映し、「概ね政府が見込んだ範囲内で一回限りのものに止まった。」  「転嫁の状況」については、「下請企業も含め、ほとんどの企業において円滑かつ適正な転嫁が実現されている。」  「個人消費の動向」については、「消費税の導入直後には導入前の駆込み需要の反動がみられたが、」その後においては、「堅調に推移している。」  「事業者の事務負担」の面については、「コンピュータ・ソフトやレジスターの改変等を含め相当の設備投資が」行われたが、「事業者の的確な対応等により、基本的には概ね円滑に事務処理がなされてきているとみられる。」  「申告・納付等の状況」については、「従来の新税導入時と比べても予想以上に法令に沿った執行がなされているのではないかと考えられる。」  これらの状況を見る限り、消費税は日一日と国民生活に定着しつつあると考えているが、これも国民の皆様方の御理解と御協力のたまものと感謝申し上げているところである。  また、「事業者の事務負担の状況」につきましては、中間報告にも述べられておりますように、「全事業者の申告・納付等が行われた段階でその実態を十分把握し、最終的な評価を行うべきもの」と考えております。  なお、この中間報告は、関係省庁のヒアリング、消費者団体、事業者団体など団体八十八、個人二十五及び六商店街のヒアリングをもとに取りまとめられまして、平成元年十一月二十四日に総会に提出された内容であります。
  200. 金子満広

    金子(満)委員 これは四月二日、朝日の調査でありますけれども、自由民主党の消費税の見直し、これは「支持された」というのが三六%、「そうは思わない」というのが五六%です。  さらに四月六日、これは東京新聞でありますが、「消費税一年 七割が重税感、物価高進む」となっています。具体的な内容でありますが、「消費税によって、重税感が増し、物価高が進んだと思いますか。」「思う」というのが七十一、「思わない」というのが二十二という数字です。これは客観的に出ていることです。  いずれにしても世論調査というのはこういうものだ。ですから、そういう中で、ああ消費税を導入してよかったというどころか、私は、一年たってみて、消費者にとっては生活に対する重圧は、特に所得の少ない人、ない人、これは非常に深刻な問題だと思います。生活保護世帯であるとか母子家庭であるとか、今まで税金を払っていなくてもよかった年金生活者の家庭とか、これはもう全部かぶってきているわけですから、こういう点も考えに入れておけば、どういうものであったか、よかったか悪かったか、はっきりするのですね。  もう一つは、中小業者や中小の商店街の皆さんにとっては営業妨害だという声が出るほど煩瑣な事務で、これでもう神経すり減らすわけですね。ですから、消費税の申告についても、申告手続だけだっていらいらするようなことがいっぱいあるんですから、こういう点で、よかったというその一面だけを考えるということは私は正しくない、こういうふうに思います。  いずれにしても、衆議院、参議院の与野党のねじれと言われるのが現存しているわけだし、今世紀中は続くということはだれも否定できないんですね。そういう点でどういうことになるかというのは、よく言われるように、消費税の見直し法案は衆議院は通過しても参議院では否決されるだろう、今度は消費税の廃止法案というのは参議院で成立しても衆議院ではできないだろう、じやそこに残るのは現行の消費税だということになります。ところが、現行消費税は、見直ししなければならぬというほど土台が悪いんですね。だから見直しをするというのが政府なんですが、ここで見直しということでなくて、これだけ多くの国民が反対をしているのですから、私は、廃止すべき、そういう方向を打ち出さなければならない、こういう点はこれまでの主張でありますから、繰り返しておきたいと思います。  ただ、こういう中で、よく言われる高齢化社会、二十一世紀ということなんですが、その高齢化社会、老人福祉の問題と関連して具体的な問題で一つお聞きをしておきたいと思います。  それは、医療とかあるいは年金とか住宅とか仕事とか、こういう点では早急に解決しなければならぬ問題があることはもう天下周知のことです。特にお年寄りの問題というのは、あすでは遅過ぎる、今ぜひすぐやってほしいというのが当然の要求でありますが、特にその中で、特養老人ホームの問題について伺っておきたいと思います。それともう一つ、時間がありましたら白内障の治療問題も伺いたいと思います。  特養老人ホームの問題については、今老後の問題で一番心配なのは何かということになれば、国民的な一番関心事というのは、寝たきりになったとき、痴呆症になったときどうするかという、これが一番深刻な問題だと思うんですね。特に介護の問題ということになります。今この点で、厚生省は、特養老人ホームの増設計画を進めていますが、推進十カ年戦略の中でもありますが、具体的にその点だけお話しになってくれませんか。
  201. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員大変巧妙にたくさんの論点を並べられましたあげくに、厚生省にバトンを渡されましたけれども、二、三、私の方から、誤解を生じないように申し上げておきたいことがございます。  消費税という税制が逆進性を持つということは、これは事実です。しかし、それは何回も申し上げているように、税体系全体の中でそれぞれの制度の組み合わせによってそうしたものに対応していき、さらには歳出も含めてお考えをいただくべきものということは何度も申し上げてまいりました。  また、今、例えば年金を生活の柱にしておられる方々あるいは生活保護世帯、こうしたところに対しての問題を提起をされましたが、その額を御検討をいただきますと、政府が見込んでおりました消費税影響以上に生活保護基準も平成元年度も引き上げられておりますし、平成二年度の予算においても同様の措置がとられておることはよく御承知のとおりであり、こうした点を除いて一方的に意見をお述べになるのは多少私は問題があろうかと思います。こうした点はきちんとやはり国民に御承知をいただかなければなりません。  また、今委員は大変高齢化社会に対しての警鐘を乱打されるがごときお話をされました。しかし、本院におきまして同じ共産党の方から、むしろ政府は高齢化社会の深刻さを強調し過ぎるのではないか、なぜなら、従属人口を考えたとき、それは余り変化をしないという趣旨の御質問があったことを私は理解をいたしております。そして、そのとき、高齢者がふえればふえるだけ年金にいたしましても医療にいたしましても負担はふえていく。児童数の減、現に児童数が減ってまいりましたプロセスを考えてみましても、児童に対する投資というものは減っていない。そうすれば、従属人口は変わらなくても、高齢化率が進めばそれだけ負担はふえていくんだということを私は御答弁申し上げたことを改めて想起していただきたいと思います。
  202. 津島雄二

    ○津島国務大臣 我が国の社会がほかに類例のないスピードで高齢化しておることは、委員指摘のとおりでございます。十年後の二十一世紀におきまして本格的な高齢化を迎えるわけでございますが、この際におきまして、活力のある長寿・福祉社会であると言えるような姿を構築していかなければならないということで、私ども、このたび「高齢者保健福祉推進十か年戦略」を打ち出したわけでございます。  その内容は、在宅のお年寄りの介護を緊急にしかも抜本的に整備をするということで、ホームヘルパーの方十万人の養成、あるいはショートステイ、デイサービス等の拡充とあわせまして、委員が御指摘の特別養護老人ホーム、それから老人保健施設、それぞれ二十四万床、二十八万床に充実をするという緊急の施設の充実も進めてまいりたいと思っております。
  203. 越智伊平

    越智委員長 金子君に申し上げます。  一問、一問で区切って質問、答弁と、こういうふうにやってもらいたい、こう思います。金子満広君。
  204. 金子満広

    金子(満)委員 一問、一問でも何問やっても、これはひとつ自由にさしてくださいよ、関連があるのですから。答弁の方もそうなっています。  橋本さん言われました、確かに、いや、おたくの方は高齢化社会、高齢化社会と言い過ぎだということですね、政府は強調し過ぎではないかと。これは、高齢化社会のため、高齢化社会のためと言いながら、実際には高齢化社会のためのことをやっていなくて言葉だけ宣伝をするから、ひどいじゃないかという意味なんです。つまりそれは、無料であった老人医療は有料にする、医療差別は年寄りにはやられている、こういう現実を我々は指摘して言っていることであって、それほど高齢化社会であったら、そういう点を早急に直すことができるんじゃないか、それで申し上げているわけですね。  さてそこで、厚生大臣、今お答えがありました二十四万床というのは、現在の十六万から二十四万という数字は、確かにこれまでからすれば大きな一つの目標ではあります。しかし、二十四万床になったとしても、外国のそれに比べてみると、これはスウェーデンのまだ三分の一なんですね、人口比率で。こういう状態。イギリスの水準にもまだ満たない。ですから、そういう点で大いに、十年間で二十六万になるという計算もありますが、二十六万になるのだったら、二十六万を手前に引き寄せて早くやる方法をひとつ考えてほしい。  なぜなら、これは東京都の調査でありますけれども、今こういう中で特養老人ホームを求めている人たちの数というのは非常に多いのですね。待機者が現在東京が四千八百二十一名、全国が二万。こういう中で、これは東京都心部、私の住んでいるところでありますが、去年文京区でどういうことをやってもらいたいかという区民の調査をしたところが、トップが高齢者対策、これは全体の三八・七%ですね。これは区政に何を望むかのトップですよ。そしてその二年前に、寝たきり、ひとり暮らしの高齢者への対策として何を要望するかという中で、ずっと七項目ありますが、トップが寝たきり老人のための特別養護老人ホームなど入所施設を増設するというのが何と五五%なんですね。こういう点を考えて、ぜひ手前に引き寄せてさらに大きく前進をさせていただきたいわけです。  実はこの寝たきりの方をだれが介護しているかという問題で、東京都の調査によりますと、四万二千の寝たきりの人たちの中で五三%が七十歳以上の夫婦間で介護しているのですね。これは非常に深刻な状態だと思います。特に、二十四時間手が離せないという人はその中の三分の一いるわけですよ。  こういう状態の中で、今もうこれはしょっちゅう新聞に出ることですけれども、介護心中という言葉が生まれるぐらいですよ。五年、十年も介護しながらもうお互いに疲れて、介護している方も病気になって、それで奥さんや御主人を殺して自分も首つりで自殺する。そういう中には、手提げかばんの中に、もう疲れた、死ぬから勘弁してくれというそういう短い遺書しかないようなこともたくさん起こるのですね。だから、介護心中ということが言われるような悲惨な状況というのを考えたときに、やはり十年先といっても、もう十年待てないのですね。ぜひ今すぐやってくれという願いはたくさんあるわけですから、その点も、繰り返しになって恐縮です。ただ、特養老人ホームが必要だというのはみんな一致するのですけれども、特に大都市東京都なんかでは用地が手に入らないのです。  そこで、市民運動でも、それからこれは東京二十三区の特別区の区長会の政府に対する要望にもなっているわけですが、大体一致しているのは三つあるのですね。これを伺いたいのですが、用地確保のために用地取得の補助をぜひやってほしい、これが一つですね。二番目は、建設促進のため未利用地、国有地の払い下げを図ること。三番目、小規模施設の設置が可能となるように整備基準を改正すること。現在この三番目は、最小基準が五十床、五十ベッドになっているために、それにふさわしい用地が手に入らないとできないのです。これを離島とか山間あるいは過疎地では三十ないし四十の基準に特例でしているのですから、ぜひ都心部でもそういうような基準を下げることができないかどうか、この三つが出ておるのですが、この点についてだけひとつ回答していただきたいと思います。
  205. 津島雄二

    ○津島国務大臣 特別養護老人ホームの整備にとどまらず、数のふえてまいります高齢者のための公共サービスを充実する必要があることは言うまでもございません。そういう中で、国によりましていろいろなやり方を実情に合うように組み立てておるわけでございまして、我が国におきましては、特別養護老人ホームあるいは老人保健施設とあわせまして、どこでも安心して安く優良な在宅サービスを受けられるような仕組みをこれから十年間でつくり上げていこう、それがそれぞれの特性を発揮して、相まってきめの細かい福祉社会をつくろうというのが私どものねらいでございます。  そういう中で、東京都で地価が非常に高いために老人施設の整備が非常に難しいという御指摘、それはもっともなことだと思います。私どもはそういうことを十分に念頭に置きまして、これからできるだけ公用地の優先的な活用ということをお願いをいたしたい、これは各省の御理解を得て、それからまた地方団体の御理解を得て、やはりどの地域にも必要な施設がつくれるように工夫をしていただきたいと申し述べておるところでございます。  それからまた、先ほどの整備基準の問題でございますけれども、離島等においては三十床の特別養護老人ホームをつくる方向に踏み切ったわけでございますが、ただ、大都会の場合は、そのことよりもむしろ、先ほど委員がまさに御指摘になりましたように、待機者が非常に多いわけでございますから、五十床の本来の形の施設を十分にこれから拡充していく方が先決であろうというのが私どもの判断でございますし、また三十床でございますと、コストの関係で非常に経営上厳しい環境になるということも私どもは懸念をしておるところでございます。
  206. 松田篤之

    ○松田政府委員 国有地の処分に当たりましては、従来から公用、公共用優先ということでやっておりまして、御指摘の特別養護老人ホーム等につきましても、現に御要望がございました場合には、地方公共団体あるいは社会福祉法人等に対しまして無償貸し付けあるいは減額の払い下げなどを行っております。今後とも、そういう要望がございましたら適切に対処してまいりたいと思っております。
  207. 金子満広

    金子(満)委員 厚生大臣、一つだけですが、基準の問題ですね。確かに待機者が多いのだけれども、そういう基準を三十ないし四十ベッドに下げていただくと用地が入るのですね。だから、もしそれが可能であれば、二カ所できるわけです。三カ所も可能になるかもしれないですね。そういう意味で、ぜひ今後とも検討をしていただきたい、このことはお願いをしておきたいと思います。  それからもう一つは、老人性白内障の治療の問題です。  目の成人病といわれるように、七十歳になると大体七割が、程度の差はあるけれども白内障に侵される。その中のかなりの人たちが視力が極度に低下をする。かつて古い時代には、何といいますか牛乳瓶の底みたいな度の厚い眼鏡で何とかしたけれども、これはとても、光は見えても自由になるわけではない。医学の進歩と同時にコンタクトレンズを使うようになった。しかし、寝たきりの方とか目の不自由な方にコンタクトレンズというものを自分でやれといってもなかなかできない、炎症を起こして。そういう点でいろいろの苦痛が訴えられているのを私もよく知っていますし、そういう点で請願も受けるわけですが、幸い、ここ四、五年の間、眼内レンズ、目の眼球の中にレンズを入れるというのが開発をされる。これは医学の進歩で国際的にも非常に大きな貢献になると私は思います。アメリカでは既に年間百十五万の人たちがこの眼内レンズをやっておる。日本では、去年の資料はないそうですけれども、おととしですか十三万人がこの治療を受けているわけです。全国すべての大学病院の中で眼科のあるところはこれをやっていますし、それから、私立のいろいろの病院でも大体七〇%以上がこれをできる技術を持っている。  問題は、保険適用がないということ。保険適用がありませんから、生活保護者の医療扶助がきかないのですね。おおむね片目十万円だそうです。その基準はどこから出たか知りませんが、大体大学病院が十万円だからと。一遍に両眼することはできませんから、交互にやるんだそうですけれども、問題は低所得者、こういう方でひとり暮らしのお年寄りを何とかと、老後に光をといってもこれができない。そういう点で保険適用ができれば多くの問題が解決つくわけです。しかし、それができなくとも何らかの方向でこれを解決、治療費を出すことができないだろうか。この点で、何もできません、お気の毒ですがそのまま我慢してくださいというわけには私はいかないだろうと思いますね。  そういう点で、もう個人の力ではどうにもならない、政治がやはりそこに手を差し伸べるということが、せめてもこれだけ長い間社会に貢献してくださったお年寄りに対する私は政治がなすべきことではないだろうか、こういう点で厚生大臣に考え方だけ伺いたいと思います。
  208. 津島雄二

    ○津島国務大臣 生活扶助の関係で医療扶助の対象に眼内レンズができないかという御質問でございますが、眼内レンズは委員指摘のとおり今保険の対象になっておりませんから、法律上も現段階では困難でございます。  しからば保険の対象にできぬのかということでございますが、新しい医療技術等を保険給付の対象にするかどうかは、中医協の御議論を踏まえながら逐次判断をしてきておるところでございまして、現在では眼内レンズは使用されるように近年なってまいりましたが、同様の機能を有するものとして眼鏡やコンタクトレンズがあるということで、保険給付の対象とすることは今できないというふうに考えております。
  209. 金子満広

    金子(満)委員 そこで厚生大臣、簡単なことですが、確かにコンタクトレンズを入れる場合には、その直前まではきくのですね、保険が。だから私は、眼内レンズのレンズを入れるまでの手術の過程があるわけです。これは今中医協の方でというお話もありましたが、保険適用をぜひその段階までは考えてもらうとか、あるいは医療貸付制度というのが二十五万円までありますよね。これを医療として認定をすれば貸付制度も活用できる、道はあくと思うのですね。その辺までひとつ考慮してほしい。とにかく検討していただきたいわけですよ。
  210. 坂本龍彦

    坂本(龍)政府委員 眼内レンズを使用する手術の際に、白内障の手術として水晶体に対していろいろな医療技術を施す、これは保険で認められておるわけでございますが、眼内レンズを使用することは認められておりません。したがいまして、ただいま御指摘のように白内障の手術そのものまでが保険の適用の限界ということでございます。
  211. 金子満広

    金子(満)委員 一層の努力を希望して、それでは政治姿勢の問題について児玉議員が関連質問をしたいということで、よろしくお願いします。
  212. 越智伊平

    越智委員長 この際、児玉健次君から関連質疑の申し出があります。金子君の持ち時間の範囲内でこれを許します。児玉健次君。
  213. 児玉健次

    児玉委員 今、海部首相の政治姿勢が深く問われている問題の一つとして、深谷郵政相をめぐる幾つかのことがあります。  私は四月三日のこの委員会で、深谷郵政大臣が同氏の秘書石塚猛さんへの給与という名目でリクルート社から長期にわたり寄金を受けていた事実を指摘しました。その際私は、石塚氏が昭和五十三年ごろ深谷代議士の事務所に入り、一九八〇年、昭和五十五年ですが、このときには秘書であったことを自民党の秘書会名簿を示して明らかにしました。あなたは、きちんと調査しますと答えました。先ほど社会党の藤田委員に対するあなたの御説明の中で、いろいろありますが、昭和五十三年ごろからあなたの事務所に出入りをしていた、そして昭和五十五年一月あたりから後援会の世話役をやっていたということについてはお述べになった。  そこで問題なのは、あなたが先ほどお話しになった、昭和五十七年一月にリクルート社の社員となり、昭和六十三年七月に退社した、そのように言われましたね。その時期、石塚猛氏は、自民党の秘書会名簿によっても——昭和六十年と六十二年のものを私は入手しております。この前あなたは名前が載ってないのを一つ出されたけれども、我々はこれを手に入れるのは大変な苦労をするのですよ。六十年と六十二年の名簿の中で明確に第三位に秘書として石塚猛さんが載っているじゃありませんか。この際、その事実を潔くお認めになってはどうですか。
  214. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 先ほど申し上げましたように、過日、児玉委員から石塚秘書について御質問がありましたときに、私は知る限りにおいてお答えをしたつもりですが、細かいことについてお答えできなかったものですから、詳細を調査しますと、そう申し上げたのであります。その調査した詳細が先ほどお答えを申し上げた内容であります。  すなわち、同君は、昭和四十四年に専修大学を卒業して湊商事株式会社に入社して、その後五十二年に東栄機工株式会社に転社し、五十四年の十二月まで同社で勤務をいたしたのでございます。その間、彼は政治家を志望していたこともございまして熱心に私どもの応援をしてくれましたが、五十五年一月ごろから後援会の世話役ということで事務所で手伝ってくれるようになったのであります。そして、五十七年一月からリクルート社に勤務して、六十三年七月同社を退社いたしまして、その後十一月に私の公設の秘書になったわけでございます。
  215. 児玉健次

    児玉委員 五十七年から六十三年の七月までの間に石塚氏があなたの秘書であったということは明白な事実ですよ。私どものその後の調査では、リクルート社の大沢氏からあなたのところに、秘書の一人をリクルート社で面倒を見てもよいとの話があり、そこで昭和五十七年の初め、石塚秘書はみずから履歴書を持参してリクルート社に赴いた。そのとき応対したのは辰己雅朗氏であった。その上で石塚秘書の口座に社会保険料等を差し引いた約十九万円が振り込まれることになった。これが事実ではありませんか。
  216. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 お答えをいたしますが、私の知る限りそのようなことは存じません。彼がリクルート社に入ったのは彼自身の意思だと思います。
  217. 児玉健次

    児玉委員 私は委員長に、今のことに関連して、石塚氏のリクルート社への入退社を示す雇用関係の資料及びその職務、勤務実態を示す資料の提出を求めたいと思うのです。
  218. 越智伊平

    越智委員長 理事会において協議いたします。
  219. 児玉健次

    児玉委員 法務省に伺います。  リクルート裁判が、いわゆる政界ルートにおける冒頭陳述、「被告人藤波とリクルート及び同江副との関係」、その部分に次のようなくだりがあります。「江副は、藤波が昭和五七年一一月内閣官房長官就任した後、藤波に対し、秘書一人分の給料くらいはリクルートで持たせていただきたい旨申し出て、昭和五八年一月から、三重県伊勢市に在住する藤波の秘書横山哲也をリクルートの従業員扱いにして、毎月約一七万円を送金し、さらに、昭和六一年五月からは、同人をリクルートの関連会社である株式会社大西企画の取締役扱いにして、毎月約二〇万円を送金し、平成元年一月までに合計約一、六〇〇万円の資金を援助した。」当然検察庁は証拠に基づいてこのように判断したと思うのですが、いかがですか。
  220. 越智伊平

    越智委員長 法務省根來刑事局長。時間がありませんので、明快に願います。
  221. 根來泰周

    根來政府委員 冒頭陳述にはそのような記載のあることは承知しております。ただ、御承知のように、冒頭陳述というのは将来検察が証拠によって立証すべき事実を主張したわけでございまして、今後その主張に基づきまして立証を進めていくということでございますので、最終的には裁判所が判定することに相なる事項と思います。  ただ、先ほど申されました藤波官房長官と言いましたけれども、冒頭陳述には官房副長官と書いてありますことを申し添えておきます。
  222. 児玉健次

    児玉委員 その点は私の読み違いです。  そこで、海部総理に私は述べたいのです。  リクルート社から、秘書一人分くらいの給料くらいはリクルートで持たしていただきたい、政治家に持ちかける、深谷さんの場合とこの場合を比べてみまして、物事の進め方、その時期、金額など、余りにもよく似ているじゃありませんか。そして検察は、リクルート社が藤波氏に政治資金として合計約一千六百万円を援助した、そのように証拠に基づいて判断しております。深谷さんの言われている千二百三十六万円のこれまで受け取った政治献金の中にそれが入ってないというのは余りにも明白ですよ。この際、任命権者として……
  223. 越智伊平

    越智委員長 時間ですから、簡明に願います。結論を出してください。
  224. 児玉健次

    児玉委員 余りにも国民に対する答えが変わり過ぎる。許せません。今述べた事実を国会と国民の前に隠そうという意思でしているわけですから、閣僚の資格はありません。任命権者として、海部首相は郵政大臣の罷免を行うべきだと思うのですが、いかがですか。
  225. 越智伊平

    越智委員長 坂本内閣官房長官。簡単に願います、時間ですから。
  226. 坂本三十次

    坂本国務大臣 私が郵政大臣に確かめたところでは、秘書と言われたこの者は、石塚さん、本人が政治家になりたいとの強い希望を持っていたため、ボランティアとして自分の時間を割いて熱心に応援していたとのことであります。このようなことは通常あり得ることであります。このようなことであるとすれば、直ちに献金ととらえることはいかがであろうかと思います。
  227. 児玉健次

    児玉委員 このようなことでは、国民はだれも納得しませんよ。そのことをはっきり言っておきます。
  228. 越智伊平

    越智委員長 これにて金子君、児玉君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  229. 米沢隆

    米沢委員 私は、民社党を代表いたしまして、当面する内外の重要課題につき、政府の所信をただしたいと思います。  まず最初に、激動する国際情勢と我が国の対応という点につき、お尋ねをいたしたいと思います。  御案内のとおり、昨年来、世界の情勢は歴史的な激動を続けております。東西間の軍備管理・軍縮交渉の進展もあります。緊張緩和を通じての東西間の信頼関係は増進しつつあります。昨年来の米ソのマルタ首脳会談におけるいわゆる冷戦終結の宣言もありました。また、ソ連のペレストロイカと、これを契機とした東欧諸国の革命的な民主化へのうねりなどに見られますように、戦後世界を規定しておりました東西の冷戦構造が急速に終結に向けて前進を見せておりますことは、まことに喜ばしいことであります。それと並行して、一九九二年の市場統合に向けたEC諸国の動き、そして東西ドイツの再統一への動きなどを見ておりますと、今まさにアメリカもソ連も欧州の各国も、それぞれポスト冷戦の新しい世界秩序づくりに向けて一斉に動き出しておるということを実感として痛感をいたします。  しかしながら、このように劇的に変化を見せる世界の中で、まあ常に、日本はいつまでも冷戦構造に浸り続けているんではないかという批判がありますように、我が国の外交は、いわゆるポスト冷戦をにらんだ動きについて積極的な動きが見られないということは残念なことだと存じます。  総理、今日のポスト冷戦の世界秩序づくりの動きの中で、一体我が国は基本的な戦略を持っておるのか。基本的戦略があるとするならば、一体どういう目標に向けて、そのための基本的な外交方針をどこに位置づけて頑張っていただいておるのかという点について、まずお伺いをいたします。
  230. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お示しになりました世界の現在の大きな移り変わりについての考え方は、私も米沢委員と同じような方向世界が移り変わりつつある、このようにまず認めさせていただきます。  ただ、東西の対立、対決というものが変化を始めておるのはヨーロッパでありますけれども、そのヨーロッパにおいても、見通しにおいていまだ一部不透明なところはございますが、しかし、当初予想されたよりもはるかに速いテンポで劇的な進歩が行われておるということもまた事実であります。ただ、大切なことは、これがアジア・太平洋地域にもあるいは世界全般にも及ぶのが大切だということでありますから、私は、日本はまず自由主義陣営の一員として、日本とアメリカと、同時にヨーロッパにある西側の首脳の国々との間における協調、政策協同、共同作業、こういったものを通じて新しい世界の枠組みづくりに積極的に参加をしていく、国づくり、人づくりにきょうまで蓄積した技術力や経済協力や人材派遣等を通じて、役に立つことがあったら積極的に役に立っていく。そして、政治的には三極を中心とした大きな世界の秩序づくり、枠組みづくりに日本も応分の参加をしていく、これが一つであります。  反面、アジアに位置する日本は、日米欧のこの三つの一点であるアジア地域とともに生きるという姿の中で、アジアの経済的な繁栄やアジアの安定、アジアの平和のためにもきょうまでも努力を続けてまいりました。したがいまして、アジア諸国が最近世界の国々の平均的な経済成長率を上回る伸び率で伸びておるという事実、そしてそのアジア諸国に対する日本からの投資の伸び方あるいはアジア諸国からの日本の製品輸入のふえ方、こういったものがアジア諸国の安定と発展に大きく役立っておることは、これは事実でございます。  さらに、そういう経済協力のみならず、アジア諸国を中心として、最近はアフリカにも中南米にも行っておりますが、青年海外協力隊、技術を身につけた青年が盛んにそれらの国々へ行って生活と労働をともにしながら、国づくり、人づくりにも積極的に協力をしておる。  このように、多方面に、世界に向かってでき得る限りの御協力をしながら、自由で民主的で、市場経済の価値を信奉する、豊かで明るい世界づくりのために日本も積極的に協力すべきである、このような目標を描いて努力をしていく考えでおります。
  231. 米沢隆

    米沢委員 我が国の基本方針については今お伺いをいたしました。  ただ、今後東西間の緊張緩和がさらに進展を見せるか、あるいは東欧諸国の民主化と自由化がさらに一段と安定する方向に向かうか、これは一にかかってソ連におけるゴルバチョフ体制の政治的基盤の安定度にかかっておると言われております。しかし、ソ連においてはいまだ経済のペレストロイカは成功いたしておりませんし、またソ連邦内には民族問題が煩原の火のごとくに今広がっております。そういう意味では、政治的にも不安定要素がかなりあると見なければなりません。また、東欧諸国内の政治的な混乱や経済的混乱はまだ当分の間続くのではないかと予測をされます。  とすれば、これからソ連の新思考外交がさらに徹底され、そしてデタントがさらに進められ、これがアジア・太平洋地域にぜひ波及してもらわねばならない重要な課題でございますが、そのような方向にソ連が動き、そしてまた東欧諸国の自由化の動きや民主化の波を逆行させないためにも、やはりこれらの国への西側のあらゆる意味での支援措置というものが緊要な課題であり、日本も、今おっしゃったような基本戦略があるとするならば、私は経済大国として相応の貢献をしなければならぬのではないか、そう考えるわけでございます。アメリカは、既にマルタ会談におきましてブッシュ大統領がペレストロイカを支持し、そしてソ連経済に対する相応の支援をする約束ができたのではないか、こう言われております。また欧州諸国もこれについて前向きだと伝えられておるわけでございます。  さて、そこで我が国は一体どうするのかという問題でございます。ペレストロイカの支援のために、アメリカや欧州は今何をしようとしておるというふうに把握をされておるのか、その点についてお答えをいただき、そして我が国は一体このようなペレストロイカの支援について何ができるか、何をしようとしておるのか、その点についてお伺いをしたいと思うのでございます。  既に我が国は、ポーランドやハンガリーにつきましては経済支援措置を打ち出しまして、それ以外の東欧諸国につきましても米欧と協調して対応するというふうに言われておりますが、問題は、ソ連に対してどうするか、支援をする必要があると認めておるのか、なしと認めておるのかという点についてお伺いしたい。
  232. 中山太郎

    ○中山国務大臣 御案内のように、日本とソ連との間にはまだ平和条約が締結されておりませんし、北方領土問題も未解決のままでございます。  しかし、そのような関係の中で、私ども日本政府としては、日ソ間の恒久的な平和を構築するために一日も早い北方領土問題の解決によって平和条約を締結いたしたい、このように考え、平和条約作業グループなるものを日ソ両国で構成をいたしまして、自来数回にわたって協議を続けている中で、人的な交流あるいは科学技術、文化の交流等も進めておる中でございますけれども、特に人的な交流の面では、昨年十一月にソ連より経済改革調査団を積極的に受け入れております。しかし、この知的な協力は今後とも継続していく考え方でございますけれども、いわゆる経済協力というものは現状ではいたさないという政府の考えでございます。
  233. 米沢隆

    米沢委員 答弁漏れがありますから。アメリカや欧州は今何をしようとしておるのか。
  234. 中山太郎

    ○中山国務大臣 大変失礼しました。  アメリカとソ連との関係は、経済協力という面ではまだ行われていない、アメリカはソ連に対する知的協力を行っているというふうに日本政府としては認識をいたしております。  また、ヨーロッパにおきましては、欧州投資開発銀行の設立のために、これのG24なる国々が積極的にこの欧州開発投資銀行の設立に現在関与しつつある経過の中でございまして、これを通じて民主化、自由化、さらに自由市場経済を導入しようとする東側の国々に金融等の協力を行う、ただし、その中にソ連も出資をいたしたいという申し入れが現在あると私ども認識をいたしております。
  235. 米沢隆

    米沢委員 今御答弁いただきましたように、我が国とソ連との間には残念ながらヤルタ体制の残滓とも言える北方領土の問題が厳然としてあるわけでございます。今政府も、領土問題を解決して平和条約を締結するまで政経不可分の原則を堅持するというのが我が国の方針でありますが、安倍訪ソによる八項目の提案とか小沢幹事長の発言、お互いに歩み寄りも必要ではないか等の発言なんかを見ておりますと、やはりこの際、ペレストロイカの支援との関係で何らかの形でこの原則に変更が加わるのではないかという感じもするのですね。今は全然そういう原則を変えるつもりはない、こういうふうにおっしゃいましたけれども、私は、ペレストロイカの支援という問題を密接に北方領土解決の糸口にできるような何か手段はできないものであろうかと考えるのですよ。結局は、ペレストロイカ支援という観点から、もっと北方領土にそれを利用するというようなことで取り組みはできないのか。そういう意味では、何しろ北方領土が返ってこない限り知的支援以外は何もしませんというふうに言い続けるのかどうか、そのことが第一点でございます。  それからもう一つは、これからまた五月に米ソの首脳会談等がありますが、その中でもやはりこういう支援措置等についてかなりソ連の方も要請するであろうし、アメリカの方もかなり乗ってくる可能性があるのではないか、そんないろいろな報道もたくさんございます。そうなったときに、例えば日本の場合には、アメリカが支援を何か決めた場合に、その際日本も何か協力してくれよ、特に経済協力にかかわるような問題でアメリカの方から言ってくる可能性はないのか。言ってきたときに一体どう対応されるのか。また同時に、日本の場合北方領土の問題があるから、いわゆる政経不可分という原則をアメリカが認識をし、自分たちが動いても日本は動けない事情にあるということがアメリカ自身にわかっておるのか。そういう点について御答弁いただきたい。
  236. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ソ連に対するペレストロイカの正しい方向性を支持するということは、日本政府は既に数次にわたってその見解を申し述べておりますけれども、いわゆるペレストロイカを支援するための経済協力をやるという考え方は現在のところございません。アメリカとソ連との間では、この六月に行われる米ソ首脳会談を控えて、米ソの首脳間でいろいろと協議が行われていることも日本政府認識をいたしております。また、先般行われました米ソ外相会談におきましては、米側から北方領土問題が提起されたことも私どもは伺っておるわけでございますが、そのような中で、まだ米側からソ連に対する経済援助、そういうものについて日本側への意向の打診といったようなものは一切ございません。
  237. 米沢隆

    米沢委員 さて、この緊張緩和が米ソ及び東西諸国間の共通認識になる中で、先ほどお話がありましたように、欧州においては、確かにいろいろな軍縮等が軌道に乗って双方の軍縮が進んでおることは御案内のとおりでございます。しかし、この波は、残念ながらアジア・太平洋地域にはまだ押し寄せてきていないというのが現実であろうと思います。いわば目下のデタントの動きは欧州主導、そして地上戦力優先という情勢にあることは私も承知をいたしております。しかし早晩、このような軍縮の動きが、できればアジア・太平洋地域に及んでくるように、連動するように、これは主体的にも努力をしていかなければならぬ重要な課題であろうと思います。  そこで、政府の現状認識をお聞きしたいのでございますが、アジア・太平洋地域の軍縮ということを考えると、やはり日本にとって一番気になるのは海の軍縮という問題だろうと思うのでございます。残念ながら、しかし、INF条約による廃棄リストからは、海のINF、いわゆる海洋発射型の巡航ミサイルは除外されたということでもわかりますように、米ソの間、特にアメリカさんの方は念頭に余り海の軍縮みたいなものは入ってないというような言い方がなされておるわけでございますが、一体これはどういう背景でそういうふうになったと認識をなさっておるのか。それから、今後アメリカ、ソ連のそのようなものに対する戦略がどう展開されると思っておられるのか。そのあたりについて御認識の御開陳をいただき、そしてその場合、いわゆる日本の安全保障政策とか防衛政策が、いかなる条件がそろえばそのあたりに変更を加えるという動き日本政府はなっていくのかという点について御説明をいただきたい。
  238. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員も御存じのごとく、ヨーロッパはいわゆる大陸でございまして、ここでは対峙する膨大な陸上戦力がございます。しかし一方、アジア・太平洋におきましては多くの海洋が存しておりまして、この海洋に面しておる国々、特に同盟関係にある日本とか韓国とかいろいろな国々の安全保障をやる上には、海軍によるいわゆる前方展開戦略と申しますか、均衡と抑止力を働かせるための戦略の展開、これが不可欠のものであるという認識を持っております。  ただ、先生も御指摘のように、将来のアジア・太平洋地域における平和のための軍縮あるいは軍備管理というものは、これは恐らくどの国も期待をしておるものでございましょうけれども、米ソ首脳会談を前に先般来日されましたアメリカの軍縮局長ともお目にかかりましたけれども、ただいま米ソ間の担当者の間で、この米ソ首脳会談における軍縮交渉を成功させるために専門家間の熱心な討議が行われているというふうに承っております。私ども日米安保条約を基軸とする外交を展開する日本政府といたしましては、米側とソ連側との平和への話し合いが前進する過程の中で、アメリカとの十分な協議の上で日本の安全が保障されるという環境が確保されるという時点において、初めて次の新しい平和構築への考え方を整備しなければならない、このように考えております。
  239. 米沢隆

    米沢委員 次は、日米構造協議について御質問をいたします。  いわゆるこの日米構造協議の中間報告が難産の末ようやくまとまりました。これでひとまず当面の危機は回避できたということでございましょうが、国内的にはこれからが大変だというのが実感であります。約束をしたことを実行できなかった場合を想定してみますと、まさにアメリカの対日圧力がますます大きくなるであろうということは容易にこれは予測されるわけでございまして、何としても公約したものはまじめに実行する、実行できるように国内的な調整を進めるというのが今日の我々日本一つ責任だろうと思うわけでございます。  しかし、日本がアメリカに約束された中で非常に難しい問題が余りにも多過ぎる。いろんな問題がありますけれども、特に三つだけ問題を指摘をし、それについて各担当の大臣の皆さん方の御見解を承りたいと思うのでございます。  第一は、何といいましても大店舗法改正の問題でございます。これから大店法の適用除外の地域指定の問題もあります。あるいはまた、これから始まる中小商工業者への国内調整、国内説得みたいなものもありましょうし、あるいは小売店舗の中小企業対策もまとめていかねばなりません。同時に自治省におかれましては、いわゆる地方自治体が条例化しております横乗せ規制、上乗せ規制というものについてどのように行政指導を進めていかれるのか、これも地方自治との関係で非常に難しい問題があると思います。  同時にまた、お約束されましたように、ことしの年末召集される通常国会におきまして、改正から二年後に抜本的に大店舗法を見直す条項を盛り込んだ法改正をしなければならぬ。しかしこういう情勢でございますから、法改正の成立に本当に見込みが立つのだろうかという心配をするのでございますが、通産大臣と自治大臣に御答弁いただきたい。
  240. 武藤山治

    武藤国務大臣 私の方は、いつも申し上げておりますように、今先生御指摘のように、日米関係は特に世界の中で日本が孤立をしないためにも大変大切な関係でございますから、それと同時に、また一方法律にございますように消費者の保護ということも考えていかなければいけない。同時にまた、中小小売商の皆さんが一生懸命御努力なさっておられる、これも考えていかなければならないという三つの観点から、御承知のようなああいう三段ロケットのことを考えたわけでございます。  運用改善のものは、もう既に昨年の六月の審議会で答申をいただきまして、九〇年代の流通ビジョンとして既に申し上げてまいりましたことを、一応それに多少は——そのものずばりではございませんけれども、ほとんどその線に沿ってやるわけでございまして、とりあえずこの五月中からのものは、そんなに大きな何といいますか今度は国内の摩擦と申しますか、そういうものは起きないのじゃないかと思っておりますけれども、今御指摘のような来年度の通常国会を目指して、一層の調整期間の短縮とかあるいは外国品の売り場の自由化とかいうような方向につきましては、法律をつくらなければなりませんし、この法律改正に当たっては、今のおっしゃるとおりねじれ現象でございますから、野党の皆様方にも御協力をいただかなければこの法律が通らないわけでございますが、先ほど申し上げますように、やはりこれは国民の消費者の皆様方のためにもなることだと私は信じておりますので、そういう点においては野党の皆様方にもぜひその辺は御理解をいただく、こういうことで一生懸命これから進めていきたい、こう考えております。  それからまた、二年先のいわゆる法律改正の検討でございますけれども、これにつきましては、この法律の必要性というものをやはり内外に示す必要がありますので、その辺のところと、それから一つの特定地域という表現をしておりますが、この特定地域に対する規制の撤廃を含めて検討する、こういうことになっておりますので、これはまだ相当先の話でございますから、ひとつ時間をかけてその辺はいろいろの角度から、またいろいろの御意見を承りながら対処していきたい、こう考えておるわけでございます。
  241. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 地方自治の原則からいえば、違法でない限りもう地方自治体として特別な規制ができるだろうと思っております。しかし、今委員指摘のように、自治体が現状において横出しあるいは上乗せという形で独自な形で規制を行っている自治体も多いことも御存じのとおりでございます。しかし、法改正という、大店舗法の趣旨に照らして、もし改正という形がどのような形で行われるか、その内容によって異なってまいりますけれども、もし抑制という形の方向で改正が行われるということを仮定した場合、自治体においてもその意はよく理解、周知徹底して配意してくれるであろうと期待しておるわけでありますけれども、やはり法的な措置を講じていただきたいと思っております。そうでないと、自治体に対する抑制という形を適切に理解、指導してまいるということがなかなかできにくいんじゃなかろうかと懸念いたしております。
  242. 米沢隆

    米沢委員 第二の難しい問題は、新総合公共投資十年計画の問題であります。  これはもう七月の最終報告までにはきちっと数字を示さなければなりません。同時にまた、示すためには、今まで従来から指摘されておりましたように、公共事業が配分が固定化してどうも身動きできない。NTTの株を売ったお金をちょっと乗せるときに配分がちょっと変わったくらいのことでございまして、十数年来ほとんど変わっていない。しかし、新しい計画を出されるためには、やはりこれから生活重視という観点からの公共事業ということであれば、そのたびごとに一つ一つは整合性があったとしてもトータルとしてどういう配分をし直していくのかというのはこれは重要な課題でございまして、これについては何か経済企画庁長官が中に立っていろいろと配分等について協議をなさると聞いておりますので、これは経企庁長官にそのあたりの決意をぴしっと伺っておきたいと思いますし、同時にまた、公共事業をやれと言うアメリカの要求の裏には、やり始めたらうちの会社も入れてくれよというアメリカの企業の参入というものがやはり根っこにあるんではないか。ですから、七月に報告される場合には、いわゆるアメリカの、アメリカに限りませんが、外国企業もちゃんとその公共事業にうまく入札ができて、時には仕事がもらえるという状況を確保してあげないと、ただ数字を示したとしても、結局そんなのは冗談じゃないという議論になるのではないか、こういう危惧の念を持つわけです。そういう点について、うまくいくのかどうか。経企庁長官、代表して建設大臣。
  243. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 構造協議における議長省として担当いたしておりました立場から、総合してまずお答えを申し上げたいと思います。  構造協議の中におきまして、アメリカ側からのアイデアとしてGNP対比の公共投資の数字を示せというアイデアがありましたこと、委員が御承知のとおりであります。しかし、私どもとしては、こういう形で数字を示すことは財政の今後の運営に非常に大きな支障を来す可能性があるということから、これにかわる考え方として、今後二十一世紀に向けまして社会資本整備の中長期的なあり方の指針を示すという観点から、今後十年間の新しい総合的な公共投資計画を策定することといたしまして、これを最終報告において総額を明らかにするという考え方を示したわけであります。  この具体的内容は今後経企庁を中心として御検討をいただいていくことになるわけでありますけれども、中間報告の中におきましても、公共投資の配分に当たりましては、国民生活の質の向上に重点を置いた分野にできるだけ配慮していくとしておるわけでありまして、この趣旨を踏まえてこの作業は進められていくと考えております。  また、現在進行中の各長期計画に対してお触れになりましたけれども平成二年度において八本の長期計画がその終期を迎えるわけでありますが、これらのものにつきましては、この新しい十年計画というものを念頭に置きながらこれらを更新し、その主要分野において現行規模を上回る計画を策定する、また、平成三年以降に続いてまいります主要な長期計画につきましても、将来この終期が参りました時点において、平成二年度末において終期を迎える各長期計画と同じように充実が図られるように策定をしていくということでありまして、それなりにバランスをとっていけると私どもは考えております。  ただ、そこで一番大事なことは、各年度の公共事業の配分というものは、やはりそれぞれその年における経済情勢あるいは財政の状況等を勘案しながら機動的に対応していく必要のあるものでありまして、こうした点は今後ともきちんとその時期その時期の財政状態を踏まえながら対処していかなければなりません。  そこで、もう一点ございました参入問題につきましては、既に基本的に我が国は内外無差別の方針をとり、その中におきまして関西国際空港あるいは東京湾横断架橋等幾つかのプロジェクトについて、アメリカとの間には参入についての習熟のプロジェクトというものが選定をされ、その効果がどの程度であったかを判定する機会も間もなく参るわけでありまして、こうした事態についても十分対応しながら今後の努力を進めていけると考えております。
  244. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 ただいま大蔵大臣から答弁がございましたことで大体尽きるわけでありますけれども、若干申し上げますと、この日米の構造協議の中におきまして、十年間の計画につきましては、「貯蓄及び日本経済規模に対する投資の不足が減少するように、実質的な社会資本整備の総額は、十年間に、現在の水準よりも大幅に拡充されることになろう。」云々ということでございまして、十年間の社会資本整備の総額については、今までの水準よりも大幅に拡充するということになっておるわけでありますが、これは、先ほど大蔵大臣から答弁がございましたように、GNPとの対比その他についての規定は別にしていないわけであります。  そこで、企画庁がいろいろ取りまとめをするということになっておりますが、今まで、先ほど答弁がございましたように、十五本のそれぞれの事業の項目につきましての五カ年計画ないし十カ年計画というものがございますけれども、総体を含めての十カ年計画というものは今までつくられたことはないのでございます。そういう意味におきまして、これから七月の最終報告に向けてその内容も含めてつくるわけでありますが、その重点としては国民生活の質の向上に重点を置く云々ということで考えることになっておりますけれども、それぞれ各事業についての重要性はいずれもあるわけでありまして、その間における調整はなかなか難しいものがあると思いますけれども、この構造協議の趣旨に沿いましてこれからも検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  245. 米沢隆

    米沢委員 第三の問題は、いわゆる土地利用とか土地税制の問題とか、特に大都市地域の市街化区域内の宅地並み課税の問題、これも私は大変大きな難しい問題だろうと思います。  土地利用等につきましては、昨年十二月、「今後の土地対策の重点実施方針」というものが、ほとんど盛られましたね。同時にまた、土地税制等についても今動きが始まっておりますが、いずれにしましても、内容は今日までいろいろと提起された問題がほぼ網羅されておると言ってもいいのではないかと思います。しかし、いろいろ問題提起がされてもできなかったという代物でございまして、七月の段階でどういうお答えをなさるのか、これは一面非常に難しい問題でもあるのじゃないか。  特に、土地の収用制度の活用だとか借地・借家法の改正なんというのは、これはもう本当に十年戦争ぐらいじゃないとできないのじゃないかと思うのだけれども、そういうものを約束された真意や、やれるというそんな担保みたいなものは実際あるのでしょうか。そういう意味で、国土庁長官や農林大臣、それから大蔵大臣答弁を聞きたいと思います。
  246. 佐藤行雄

    佐藤国務大臣 米沢先生にお答えいたします。  日米構造協議におきまして、土地利用の問題につきましては実は我が国自身の問題としてアメリカに対応しまして、アメリカ側の理解を得るよう十分努力したわけでございますが、その結果、このたび示された結果につきましては今先生御指摘のとおりでございます。大都市地域における宅地・住宅の促進とかあるいは総合税制の見直し等がございましたが、これは、先生先ほど御指摘になりました昨年の十二月二十三日の土地対策関係閣僚会議で示された重点事項ということでございまして、それを中間報告に盛り込んだということでございます。そんなことでございまして、今度は政府一体となりましてこれに取り組んでおります。これをやる場合、大変いろいろな諸施策、難しい問題はございますが、国民の理解と協力を得ながら政府全体で取り組んで早期に実現したい、このように考えております。
  247. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  今先生御指摘の問題、総合土地対策要綱、これに沿って、市街化する農地、それから保全する農地、こういう区分けの中で今進めております。農林水産省としては、この基本的な方向で国土庁などとも相談をしながら問題点を進めてまいりたい、こう考えております。
  248. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 構造協議の中間報告におきまして、土地税制につきましては「総合的な見直しを行うこととし、今春税制調査会に小委員会を設け検討を開始し、九〇年度中に成案を得て所要の法律案の提出を図る。」旨を述べております。これは、従来から私ども本院においても繰り返しお答えを申し上げてまいりました内容と軌を一にするものでありまして、私どもとしては、税制調査会の小委員会の検討結果を踏まえ、平成二年度中に成案を得て、所要の法律案の提出を図ることにしたい、そのように考えております。
  249. 米沢隆

    米沢委員 まだたくさん重要な難しい問題はありますが、三点に絞って御質問をいたしました。しかし、答弁を聞く限り、いとも簡単にやれそうな、そんな感じが出てきておるのですね、ニュアンスとして。答弁ですから、そういうまじめに答えねばならぬのじゃないかと思いますが、しかし今度の構造協議の対象になった問題は、日本みずから改革しなければならぬ問題がたくさんあるじやないかとか、あるいはまた八六年にできました例の前川レポート、経済構造調整報告、これは政府がやらねばならぬ措置、やるべき措置と言って出てきたもの。だから、意識はあったけれどもできなかった。今、簡単に——簡単にと言うたらいけませんかね、今からまじめにやろうという答弁はいただきましたけれども、これからの国内調整、本当に大変ですよね。この国内調整が大変だから、頭の中では認識していてもできなかったというのが今日の状況ですから。そして、今度は外圧が加わってやっとやらざるを得なくなった。重い腰が上がったわけですよ。私は、そういう意味で、これからは国内調整の問題もあり、あるいはもう、なぜ外圧が出てこなければこういうものに腰が上がらないのか。私は、これは日本の政治の体質そのものが今問われておるのじゃないか、こう思うのですね。ですから、従来の政治感覚、政治意識、政策決定のプロセス、あるいは決める場合の決定するプロセス、政策をつくる場合のプロセス、あるいは国内調整を求めていく、合意をつくるプロセス、こんなものを根っから変えない限り、この話は本当に大変な難行苦行を強いられるのではないか、こう思うのですね。     〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕  そういう意味で、総理大臣、今あなたはそういう総理の立場に立って、これから目の前に国内調整という大事な問題がある。そういうものにいかにしてリーダーシップをとってやっていくか。単に今までの談合政治じゃだめだと思うのですね。やはり、あなた自身がこれから日本の政治を変えるぐらいの決意を持ってこういうものに対処する、そのためには、変えるところはどんどん変えていくというものがないと、実際は野党の協力も得られないのではないか、そんな感じさえするわけです。  この前、社会党の山口委員もおっしゃっておられましたが、そういう意識があるならば、僕はもっとああいうものを、アメリカと交渉しながら決めていく過程でもっと野党あたりにいろいろな報告があり、いろいろな、こういう状況になっておるというぐらいのことは本当はあってしかるべきではないか。いや、それは残念ながら気づかなかったのか、やるつもりがなかったのか、それはわかりませんが、しかし少なくともこれからの日本の政治のやり方そのものをいろいろな意味で変えていかない限り、これからはこんな問題に全然対処できない。結果的には、仲よくやろうと思って協議したけれども、逆にけんかをする材料になってしまうということを繰り返さねばならぬのではないかという意味で、私は、政治改革といいましょうか、政治のあり方の問題意識みたいなものを総理がどれほど痛切に感じていらっしゃるのかどうか、また変えるつもりがあるのかどうか、そのあたりを聞いておきたいと思います。
  250. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今御指摘の日米経済協議の問題につきましては、もう数年前から日本側も気づいて自主的に取り組み始めてきておることは、これは御承知をいただいておることと思います。そして、内需を中心にした経済体質に改革の努力もして、そして輸入を拡大をして、その結果、対前年、八九年度の貿易収支が百七十九億ドル減少したという数字の上の結果も出るように、構造改善の努力もしてまいりました。  このことについては、お互いに協議の間を通じて、あるいは私が首脳会談でブッシュ大統領にも直接このことも言い、しかも日本のいろいろな努力の中で、世界から総計して六百十億ドルも物を輸入するようになってもアメリカの物が百七十億ドルしか買えなかったということは、もう少しアメリカ側からも日本に売れる物をつくってもらうとか、何をどうしたら売れるようになるかという努力もしてもらうべきではないかということを、これも率直に申し上げました。アメリカ側も、アメリカの農民にとって日本の国が一番大きな市場であるということもよく承知しておる。アメリカの製造業者にとって最近は日本世界で二番目の市場になっておることもよく知っておる。しかし、結果は、その数字の結果だけで明らかにお互いに納得できるというものじゃなくて、もっと多くのことをお互いに指摘し合い、そして大きな立場の二国間が角突き合わせるようなことはやめて、お互いに努力をし合いながら、自由陣営の一番、一一番という大きな責任と役割を果たしていこうということで、問題提起し合って協議をし合うわけでありますから。  このことについて、事前に野党の皆さんのみならず与党の皆さんにも、交渉の経緯ややりとりの内部について細部にわたって事細かに御報告ができませんでしたことは、事は外交で、相手方の政府政府との交渉事でもございましたし、途中の段階を一部ずつ出すということもいかがかと思いましたので、このようなことになりましたことは大変遺憾であったとは思いますけれども、事柄の性格上、外交は政府がやらなきゃならぬ責任でございますので、この点はどうぞ御理解とお認めをいただきますとともに、両国が国のために、お互いに孤立して生きていける時代でございませんし、一番大切な二国間関係でありますからこそ、両者が歩み寄ってこのようなことをやろうと言ったわけですし、何もこれはアメリカに譲ったとか譲らなかったとかいうことではなく、大統領も率直に、アメリカの議会に今起こりつつある保護主義と闘わなきゃならぬという言葉まで使われました。保護主義と闘うということは、アメリカの政府と議会の関係だけじゃなくて、アメリカと日本と共通の利益ではないか。自由貿易体制のもとで日本もアメリカもきょうまで来たのだから、アメリカが保護主義と闘うときには日本協力をしてほしいという極めて率直な話もございました。  私は、日本のきょうまでのこの歩みを顧みて、同時にこれから先の日本の国のことも考えますと、この際は自由陣営の方へ世界流れも変わるわけでありますから、その中にあって対決しておってはいけない、対立しておってはいけないという、その一点に立っていろいろと中間報告をまとめる努力をしてきたつもりでございますので、高い次元に立っての御理解と議会の皆様の御協力を心から重ねてお願いを申し上げる次第でございます。
  251. 米沢隆

    米沢委員 肝心なことに答弁はありませんね。私は、この交渉を見ておりましても、やはり外圧がなければ日本の政治が立ち上がらない、この体質を一体どう考えておるのか、そしてそれを変えるために総理としてどういう決断があるのかということを申し上げたのです。御質問したのです。
  252. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 申し上げましたように、外圧があって初めてこの構造協議を始めたものでもございませんし、その前からいろいろ問題意識を持って、内需拡大、輸入の促進もやってきましたし、また、いろいろな中小商工業の流通については、九〇年代の流通ビジョンはどうあらねばならぬかということはもう数年来のテーマであり、昨年流通ビジョンもつくり上げるというところまで来ておるわけでございますから、外圧によって初めてスタートしたものではございません。  けれども、両者の協議の中で、中間報告をまとめるときにいろいろ非常にたくさんの問題についてまとめ上げてまいりました。これは、今後は、消費者の立場に立って物を考えるという視点も政策の中に入れていかなきゃならぬということを私は決意をいたしております。それは、角度を変えればみんな消費者でもあり、同時に、今世間で豊かさ豊かさといっても豊かさの実感がないではないかという御批判が多いことも、これは単に物価の問題のみならず、労働時間の問題を取り上げてみてもそうだと思いますし、土地の問題を取り上げてみても、レジャーの問題を取り上げてみても、公共投資の問題を取り上げてみても、いろいろやはり豊かさの実感という面から見るとこれからまだまだ解決していかなきやならぬものがいっぱいあるわけでございますから、視点を変えてこれからは取り組んでいかなければならないし、外圧によってやるとか、あるいは譲るとか譲り過ぎないとかというような御議論のないように、日本の国内の本当の公正さと豊かさを求める政策努力に切りかえていかなきやならぬということを今度肝に銘じておる次第であります。
  253. 米沢隆

    米沢委員 総論は結構なんです。こだわるようだけれども、今度の交渉を見て、外圧がなかったらスムーズに日本政府が腰を上げたかと問われれば、意外にそんなものじゃなかったんじゃないですか。それは国民はそう見ておるのですね。意識としてはあった、変えていかねばならぬ。しかしそれを緒につけるためには余りにも国内の調整にエネルギーが要るであろうということで、どうも先送り先送りされて今日に来て、それがいわゆるアメリカとの交渉の議題にほとんど投げ出されておるということは客観的な事実じゃないでしょうか。だから、私は、そういうものを考える場合に、総論はいいんです。あなたのおっしゃる総論はいい。しかし、外圧でなければ動かないというこういう政治体質そのものは、自民党体質でもあり、野党の体質でもあり、トータル日本の政党の体質だと思う。そういうものが、残念ながら国際社会の中でどうもおかしいなと言われて、トータルとしての日本に対する非難の的になっているのではないか。そういう意味で、あなた自身は総理大臣ですから、これからその政治体質そのものを、総論はいいですよ、あとはそれを変えていくために政治の体質をどう変えていくのかというところにもっと意を払ってもらいたいし、そしてそのような改革を進めてもらいたいということを申し上げておる。もう答えを聞いても一緒ですから再答弁は求めません。  それから、いろいろとこれから努力をしていかねばなりませんが、今回の中間報告について、またアメリカ、特に議会筋等は本当にやるのかなという疑問の目で見たり、もっと七月の最終報告では加えねばならぬとか、いろんな報道が新聞を通じて流れてきます。そこで聞いておきたいのは、今度の中間報告は、日本政府としては、もう九割近くは七月の最終答申でほとんど網羅しておるというふうな感覚があるように聞いておるし、アメリカさんの方は、全然そんな感じじゃない、もっとやってやるんだという気持ちがあるようにうかがえますね。そういう意味で、あの中間報告をお互いにまとめた段階で、七月までに何が残されておるのですか。特に重要な課題、何が残されていますか。
  254. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大蔵省が議長省として抱えております部分について申し上げますならば、まず公共投資計画の数字の問題が一つ。並びに、例年でありますならば、平成三年度の予算編成の時期においてある程度確定をしていく性格を持っております平成二年度で時限の切れます八本の長期計画について、おおよその事業目標を示す努力、こうしたものが残っております。
  255. 武藤山治

    武藤国務大臣 先ほど申し上げました大店法に関する限りは、今度の中間報告ですべて相手にも理解をしていただいた、こう信じております。  私の所管では、ただクレジットの関係が残っておりまして、これは最終報告までにまとめていきたいと考えております。
  256. 米沢隆

    米沢委員 えらい簡単な話しか残っていませんが、もっと残っているのじゃないですか。大丈夫ですか。  話題を変えましょう。これは日米安保体制との関連もあるのでございますが、昨今アメリカでは、ソ連の軍事的な脅威よりも日本経済の方が脅威だという世論が高まっておるというふうに報道をされております。確かに今回の日米構造協議やスーパー三〇一条の交渉だとかいろいろと出されておりますし、アメリカ議会の管理貿易法案等の動きもあると聞いておりますが、これからかなりの間、日米間には経済摩擦を中心にしてかなりのあつれきがずっと続くであろうという感じがしてなりません。いわばこれは日米安保体制を組んでおる両国のきしみであって、下手をするとそれが結局日米間のいわゆる日米安保体制が空洞化していく方向に行くのではないか等々の深刻な指摘もあることは御案内のとおりでございます。  一方、最近のいわゆる米ソの緊張緩和が始まって、それがアジアにもやってくるだろう。そうなれば日米安保条約の軍事的な評価はかなり低下していって、新しい見直しをしていかねばならぬじゃないか、新しい位置づけを考えていかねばならぬじゃないか、そんな議論があるわけですね。そうなったらば、もう日米安保条約なんか要らぬじゃないかという話さえあるのだそうでございます。国内的にもいろいろなそれに関連して議論があることは御案内のとおりでございます。  しかし、これから日米間の問題がすべてもう安保体制なんか要らないよと言えるほど、世の中がそう変わっておるかと言われれば、かなりこれは先の話であろう、うまくいって先の話であろうと考えますし、また我が国にとりましても、日米安保が基軸である、日米の友好が外交の基軸であるということはいささかも、遠い将来に向かってもそう変化することはないであろう、私はそう考えるのでございます。また、日米安保条約は軍事的な側面をある程度低下していったとしても、すっかりそこらをなくしてしまって、日米友好条約をつくりましょうという環境には、残念ながら今現実の段階ではない。  そういうことを考えた場合、やはりこの段階で、我々はアメリカとこれからも友好を促進していかねばならぬ。残念ながら経済摩擦で何かしらあつれきはあるけれども、やはりそのあたりも安保条約二条にはちゃんと書いてあるのでございますから、そこらに着目して、もう少し新しい協議の枠組みをつくっていこうではないかという世論がアメリカにも日本にもある。私はこれは賛成だと思っておるのでございます。そういう意味で日米安保条約を保持する。そのかわり、ある程度軍事的な側面は低下するかもしれないけれども、逆に政治的なあるいは経済的な側面を強調する意味で、安保第二条を活用して、これから先、日米間にいろいろな摩擦があるたびごとにいつもがたがたするのではなくて、少なくとも一つに受けとめて、そして自由にして公正な貿易とは何かという、ジャッジできるような話をかねてから続けていくことが、これからの日米関係にとっては大変重要な課題ではないのかな、そう確信をするわけでございます。  そういう意味で、これから先、日米安保条約の政治的な経済的な側面では協力していこうということをうたい上げるために、もっと高い次元のところに受けとめるという意味も含めまして、この日米間の新しい協議の枠組み、そういうものをつくる必要があるのではないかということについて、総理大臣ですか、外務大臣ですか、御答弁いただけたらと思います。
  257. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生御指摘のとおり、日米関係の基軸は日米安保体制であります。新しいソ連の変化あるいは東欧の変化を踏まえて、先般、三月の二日、三日に行われました日米首脳会談におきましては、ブッシュ大統領から海部総理に対して、日米間で当面の課題である経済問題、この問題を解決して、これから日米が協力をしながら日米欧の協力体制を強化しなければならない、これが両首脳間で合意を見たわけでございますが、日米間の協議に関しましては、ブッシュ大統領から、これから先の二十一世紀に向かって、地球環境の問題、あるいは麻薬、あるいは国際テロ、いろいろとございます地球規模の問題につきまして、将来どのような国際環境を構築していくかということについて日米間で話をするために、ベーカー国務長官と私とがそれぞれの担当者となって日米間でフレームワークをつくって協議をすることが望ましいという御発言がございました。両国首脳間ではそのようなブッシュ大統領の発言を了承して会談は終わっておりますけれども、私どもは、当面の日米構造調整協議が七月に円満に終結できるような形で努力をしながら、将来の日米間のさらなる協力のためのフレームワークをつくることに、日本政府としては米国政府とともに努力をいたしたいと考えております。
  258. 米沢隆

    米沢委員 この件につきましては、さきの代表質問において永末委員長が日米経済委員会的なことを申し上げましたし、あるいはまた賢人会議的なものでもいいではないかと、いろいろな議論がありますが、私は、個々の経済摩擦に関する解消のための協議は極力まじめに努めていかねばなりませんが、これから日米が大きな経済力を持つ国として世界の中で今後経済の発展を願うというならば、もう少し安定的に日米間で経済の議論を高次元で議論できる、ぜひ常設的な機関をつくっていただくように、これからも努力していただきたいと思っておるわけであります。  それから、次は税制の問題でございます。  先ほどから答弁を聞いておりますと、政府は、消費税につきましては着実に日々の生活に溶け込んでいると評価されておりますが、私は、確かに遵法思想の大変高い国民でございますから、嫌でも守っているという意味では形式的には着実に定着しておると言ってもいいのかもしれませんが、意識の中ではそう簡単に、生易しいものではないという判断をしておるわけでございます。総選挙後の各種の世論調査を見ましても、自民党の過半数は上回ったということでも消費税が認められたものではないというような方々がかなりのパーセントを占める、これも現実的な数字で事実でございます。そしてまた、地方自治体も依然としてまだ混乱が続いておるところが現実にあります。そういう意味で、政治的ないわゆる定着の仕方という観点からすれば、大蔵大臣のおっしゃることは半面しか言っていないと言ってもいいのではないかと私は思うのでございます。  また、今国会も、自民党もやっと見直し法案を出されました。野党の方はまた廃止法案をまとめて近日提出をいたしますが、さきの臨時国会と同様に真正面からぶつかり合うことになる、そして平成二年度の予算審議にもまた混乱が予想されているのではないか、こう思っておるわけでございます。総理、一体なぜこんなことになってしまったのかという、もう一回反省の弁を聞かしてもらいたいと思うのです。——総理
  259. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政府は見直し案を提案をして、去る四月から約一年間行われてきた税制改革の結果の消費税について、国民の皆さんの世論の中から出てきた御不満やあるいはいろいろな要望に対して、でき得る限りおこたえをしてきたつもりでございます。  また、野党の皆さんもそれらに対していろいろな御意見、お考えをお持ちと思いますから、どうかここは、国民生活を安定させていくためにもひとついろいろな御議論を願って、どのような形で新しい時代の税制を定着させていったらいいかという内容についての具体的な御討議をお願いしたい、このことを心から希望いたします。
  260. 米沢隆

    米沢委員 いろいろ議論をして消費税問題等について国民の理解を得るにしても、やはり政府自身が、自民党自身が、あの成立の過程からしていろいろ議論になった、そこらにどれほど思いをいたして反省されておるのかという、そこがないと始まらぬのじゃないですか。
  261. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 税制の委員会で一緒に理事としてお話し合いの相手をしていただいた米沢議員でありますから率直に申し上げさしていただきますけれども、私は、委員会がいろいろな御議論をしたかったにかかわらず十分国民の皆さんに説得できる時間がなかったこと、また採決の事態にあのような騒然たる中で採決をしなければならなかったことに対しては、私は率直に遺憾なことでございましたと申し上げてまいりました。ただ、野党の皆さん、特に米沢議員のイニシアチブもいただいて修正案もつけていただき、衆議院の本会議のときには御出席もいただき、そしてあの法案が成立させていただいたということには、今でも改めて率直に敬意を表するものでございます。  そういう経過、過程があってスタートした消費税でございました。そして、自由民主党も世論に対して謙虚に反省して、改めるべきは改めるということで見直し案をお示ししておるわけでありますから、現行の消費税よりも見直し案の方がいろいろな面において、もういろいろ一々の中身の説明はここでは省略させていただきますけれども、いろいろなことに配慮をして、安くなるように、そして手間が省けていくようなことも考えながら出した見直し案でありますので、どちらがいいかということを御検討いただくのも結構でございますし、同時にまた、どちらがいいかだけの幅の狭いことではいかぬとおっしゃれば、さらに第三のこういう案もあるんだよというものをお示しいただいて御議論をいただくことがまことに望ましい姿でありまして、これはやはり税の公平なあり方、社会が必要とするものを広く薄く国民の皆さんに負担をしていただかないと、税はあったがいいか、ないがいいか、一つの税目だけを取り上げて、あるがいいか、ないがいいかと言えば、それはないがいいという方が率直な感情として当たり前のことだろうと思いますけれども、しかし、国を支えていくためにはどうしても皆さんが負担をしていただかなければ国は成り立っていかないんだというような、別の高い次元に立った長期的な御判断から税のあり方というものを御理解、お考えをいただきたい、このように心からお願いをする次第でございます。
  262. 米沢隆

    米沢委員 私は、この消費税に対する拒否反応、いろいろとこの一年間の間にこの中ではいろいろ変動があったかもしれません。しかし、一つ流れとして拒否反応を分析しますと、四つあると思うのですね。一つは、逆進性があって弱い者いじめなんだから絶対だめだという声があります。もう一つは、高齢化社会の将来を考えたらこういう税金も必要かな、しかし公約違反もあり手続等についても租税民主主義に反しておる、これは出直すべきだという、そんな声もある。あるいは、もともと最初から欠陥消費税だ、政府だって導入すると同時に見直しを言うぐらいの税金ですからやっぱり欠陥消費税だ、そういう最初から不公平が出てくることを織り込んだような税制をつくるとは一体何事か、出直ししろという話もありました。同時にまた、なぜ今消費税しなきゃならぬの、高齢化社会どうなるんですか、行革は一体どうなったんですかという、本当に本源的な疑問を持つ人もおる。そういうさまざまな意見がいわゆる消費税に対する拒否反応をつくっておるんだ、こう思うわけでございます。  したがって、この前自民党が見直し案を出しておりますけれども、私はあれを見る限り、余りにも中途半端で単純な見直しでございまして、時がたてば、その見直しをしさえすればおさまるというものではないと私は判断せざるを得ないのでございます。そういう意味では、これから先やっぱり国民の間に消費税に対する不信がずっと生き続ける。これは税制百年の大計から考えても好ましい条件ではありません。同時にまた政局の不安材料になり続けるだろうということも我々は好ましいことではない、こう思っておるわけでございまして、私はこの際、やはり何か出直しみたいな、やり直しみたいなものをやらないと何かすかっとしないのじゃないかなというのは、私は国民の皆さん方の、わかっていただく方にも理解できるものではないか。一体総理はどういうふうにこれを収束されようとしておるのですか。
  263. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 米沢委員のせっかくの御提言でありますが、私どもは、確かに国民の中に消費税についてさまざまな思いをお持ちの方がおられることを承知しながらも、日に日に消費税が現実のものとして定着をしておる実態というものも、そのとおりに認識をいたしております。そうした中で、仮にこの消費税について一たん凍結、廃止、あるいは本日はゼロ税率という御提言もあったわけでありますけれども、そういう状態を現出した場合、どういう混乱が生ずるかをもう一度冷静にお考えをいただきたいと思うのであります。  そして、先国会、野党の共同提案に成る消費税廃止法案とそれに伴う関連諸法が参議院で御論議がありましたときにも、私ども政府の意見として申し述べましたのは、その廃止という行為、そして当時の野党の御案では、二年後に本質的な案を提出をする、そういう御意見でありましたが、それはもう一回混乱を生ずるということになるわけでありまして、そうした事態を国民生活に招くことは果たしていかがなものか。そして私どもとしては見直し案を出して御審議をいただきたいとお願いを申し上げておるわけでありまして、国会における国民の生活実態に合った有意義な御論議を願いたいと願っております。
  264. 米沢隆

    米沢委員 しかしながら、参議院の方は与野党逆転、衆議院は自民党の安定多数というこのねじれ国会を前提にする限り、見直し案は残念ながら衆議院では通過しますが、参議院では成立をしない。参議院の方は、我々の廃止法案は衆議院で否決。お互いに相打ちになって、結果的には現行税制が残る。しかし、この現行税制は自民党の方は問題があるから見直ししようと提起しておるのでございますから、現行税制でオーケーということにはならないだろう。野党の方も問題があるから一回廃止して、そしてやり直そうではないかと提案しておるわけでございまして、そういう意味では現行消費税についてそれぞれ問題があるから何かしよう、こうやっておるわけでございますね。結果的には自民党も野党も公約違反という状態が続くわけでございます。一体これはどうするおつもりなんですか、大蔵大臣
  265. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 政府は、お約束をいたしましたとおり、昨年秋以来、税制調査会において国民から寄せられますすべての声をそのまま検討の舞台にのせ、誠心誠意の見直しをいたしてまいりました。そしてその結果としての見直し案を国会に提出し、御審議をお願いを申し上げておるのであります。  私は、確かに衆参の勢力が違っているわけでありますけれども、その勢力が違っている限り一切の論議は成立しないということでは、一体どうして国会としての御論議を願えるのか、私どもとして本当に困ることであります。そして、先日も私は本院で申し上げましたが、私どもはむしろ政府と異なった見解のもとに超党派で議員立法をまとめた体験も何回か持っております。そのとき御相談に乗っていただいた各党の方々もこの席にもおられるわけであります。私どもは見直し案というものを御提案を申し上げ、御審議の中において全力を尽くして我々の主張すべき点を説明し、国民にも御理解を願いたい、そう願っておるところであります。
  266. 米沢隆

    米沢委員 残念ながら、自民党が出された見直し案は政治的な解決方法といいましょうか、政治的な見直しというような感じが大変濃厚にするのでございまして、逆に消費税の構造を複雑にしたり事務負担を煩雑にしたりという、私は中途半端なものだという気がしてなりません。  確かにこの見直し案を見ますと、例えば簡易課税のみなし仕入れ率を政令委任化する。これは、一部国庫に入らぬじゃないかというものの是正の一部だろうと思いますね。あるいは大規模事業者の納税、納付回数を増加させる。財テク防止みたいなものでしょう、これは。また、社用消費の仕入れ税額控除の制限。そういう意味では消費者の不満に一部こたえたいということがあることは私は評価します。しかしながら、簡易課税制度だとかあるいは事業者免税点の大幅見直しが実態が把握されてないから残念ながら見送りだというようなところに見直しの中途半端さがあるんだ。政府もこれらについては消費税の申告・納付が一巡する本年五月までの間は実態把握を行い、これらの制度をどう見直すかは十分検討の上提示する、こういうふうな言い方をされておりますが、しかし実際その以前に、この消費税ができた経緯を考えますと、中小企業の皆さんに配慮したものがもう今や既得権みたいなものになっているわけでございまして、果たしてこうおっしゃるような方向で提示できるのかという本源的な疑問を私は持っておるのですね。     〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕  もう一つは、四野党の共同提案については、あの参議院のときに、えらい見直しの減収部分をどう財源確保するかとおっしゃった。しかし、今度の見直し案だって、一兆三千億近い見直しの原資が要ると言いながら、そういうものについては財源確保法が用意されていない。結局、自分たちがやるときは手品みたいに税収見直しが甘いところにみんなうまくやるんだと思いますが、そういうことで言い逃れをされる、これが不信の第一ですね。  それから、今度は全食品について非課税や特別低税率を導入しましたけれども、帳簿方式なんですから、これは事務負担が複雑になることは事実ですよね。同時に、農家の皆さん方が本当に仕入れにかかった税金を完全に転嫁できるような保証があるのかどうか、小売屋さんに出てきた仕入れのかかったものを小売屋さんに卸屋さんが売るときにそれは本当に転嫁できるのかどうか、あるいは非課税になった業界が前段階で仕入れ税率を払った、その分を一体どこで転嫁していくのか等、まさに不透明な部分がたくさん出てきておるわけですね。そういう意味では、私は、まさに今度の見直し法案なんというのは中途半端そのものだ、そう言わざるを得ないのでございます。  あるいは食料品の線引きもある。例えば缶々なんかに入った食料をどう見るかですね。食料の方は一・五%、枠のガラス瓶は三%、こんな面倒くさい計算を一体だれがどうするのか。あるいはまた課税品目の仕分けも、これは帳簿方式でございますから、いわゆる仕入れの中での課税品目あるいはまた非課税品目、売り上げの中での課税売り上げ、非課税売り上げ、これを帳簿方式でやれというのだから、これはまさしく奇々怪々たる難しさがあると私は思うのですよ。また、それを見直しでやれと言えばまた見直しそのものでいろいろな不公平が出てくるわけですから、そういう意味で私は本当に中途半端なものであると言わざるを得ない。  しかし考えてみますと、消費税ができた経過を見ますと、売上税の議論があってそれから消費税が出てきた。やっぱり中小企業の皆さん方の納税負担を軽減するためにとつくった、まさに日本的なこれは税金だと思いますよね。それと同時に、いわゆる伝票方式じゃない、インボイス方式じゃなくて帳簿方式でしたから、非課税をふやそうなんと言うたって本体を変えない限りうまくいかないのはわかっているのですね。そういう一つの大きな限界の中で見直しをされるんですから、私は自民党の見直しは、その限界の中ではまああれぐらいしかできなかったのかなと同情はしますけれども、しかし実際は、見直し案そのものを通してくれさえすれば税金はうまく定着するんだという議論はおかしいのではないかと、そう私は思っておるわけでございます。どうですか。
  267. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 非常にさまざまな角度からの御論議でありましたけれども、私どもの考え方は、国民から寄せられましたすべての疑問点、検討してほしいと言われる項目を全部俎上にのせた上で検討をし、その結果としての見直し案を提示したと、もう一度繰り返して申し上げます。  そしてまた、委員が評価をしつつも、問題点として提起をされました中に、例えば免税点あるいは簡易課税のように、実施後一年の実績を見て検討すると申し上げておるものは、事実そのとおりにこれから私どもは作業をしていくわけでありまして、こうした点についてはこれから先の作業をごらんをいただかなければなりません。  そしてまた、帳簿方式による限界ということを委員指摘をされましたけれども、売上税のとき非常に大きな国民的な反発を受けました経緯を考えますと、帳簿方式というものを消費税において採用した経緯は御理解のいただけることでありまして、その範囲の中における最善の努力を我々はいたしておる、そう考えております。
  268. 米沢隆

    米沢委員 選挙の最中によく自民党の偉い方が、再見直ししなきゃならぬというような話が、各種報道がなされましたね。総理大臣や大蔵大臣は、今出されている見直し法案がそれがすべてだと思って今出されておるのだから、結局はそれがすべてだとおっしゃりたいのはよくわかるが、本当は再見直し派というのはたくさん自民党の中にはおるのですか。あなたはどっちの論者ですか。
  269. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、自分の選挙公約に、公報に載せましたものにつきましても、また選挙期間中各地で街頭遊説等をいたしましたときにも、政府として責任を持って見直し案を提示し、しかも、免税点あるいは簡易課税等につきましては、実施後一年の実績を見てなお引き続き検討ということを申し上げております。
  270. 米沢隆

    米沢委員 総理はどうですか。
  271. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私も率直に、税の話は楽しい話ではありませんけれども、負担をしていただかなければならぬ問題ですから、率直にお願いしますと言って見直し案の内容をるる説明をして、この見直し案をもって税の定着をさせていただきたいということを選挙中も訴え続けてまいりました。
  272. 米沢隆

    米沢委員 総理大臣も大蔵大臣もそういう意見であるならば、この問題は一向これはもう進みませんね、実際の話。私はこの消費税、先ほど申しましたように、ねじれ国会である限り相打ちになって結果的には現行消費税が残る。しかしこの現行消費税は、残れば国民の残念ながら税に対する拒否反応が強うございますから、税に対する国民世論は分裂したままであろう、そして常に政争の材料になり得るということですね。もう一つは、野党が野党案を通そうとすれば衆議院を逆転させなければならぬわけですから選挙に勝つまで言い続けねばならぬ、こういうことですよね。そういう意味では、素直に考えますと、私は、どっちも大変なことだという気がするのでございます。  したがってこの際、この与野党の提案の議論をやっぱり国民の前で徹底的にやった後、相打ちになって、そしていずれの案も成立しないという段階で、私はお互いによろいかぶとを脱いで、一たん白紙の状態にして、そして現行消費税を一体どうするのかという議論を与野党間でオープンに、そして場合によっては税の専門家や国民の代表の皆さんを入れて、そして期限を切って議論をし直すということが今必要なことではないかなと、こう思うわけでございます。  そういう意味では、予算審議等の議論もありますから、税制改革委員会でも早くつくって議論を始めるということも考えていかねばならぬのかもしれません。その際、議論の際に出てくるテーブルの上に何がのるか、これが問題ですね。私は、やっぱり本当に白紙にして議論をするとするならば、テーブルの上には廃止案があってもいいし、凍結案があってもいいし、現行の再見直し案があってもいいし、別のタイプの間接税の議論があってもいい、そう思うのです。無論、この消費税の問題は、単に消費税だけの議論じゃありませんから、税制全体の中での消費税の議論でありますから、その際議論を進めていく場合には、もう一つのテーブルの上にはやっぱり所得、消費、資産のバランス論があってもいいし、直間比率や国民負担率をどうするかの議論もあってもいいし、行財政改革を一体どうするんだという議論もあってもいいし、そして高齢化社会の国民の受益と負担とをどうするかという議論もあっていいと思うのですね。  特に、私はその場合一番大事なことは、竹下税制改革で積み残した問題、ここでもいろいろと指摘をされておりますように、やっぱり不公平税制をどうやっていくのかという議論、あるいは是正していくのかという議論、そして資産課税の適正化の問題、あるいは課税ベースを広げていくという議論等々が本当は抜けておったから、確かに消費税に拒否反応いろいろありますが、どうも竹下税制改革は金持ち優遇の税制だと言われる中に、やっぱりバランス論を言いながらも資産の方には手が加えられてないではないか、どう考えたって金持ちがうまくいくような税制でしかなかった、その上我々に消費税を負担させるとは何事だという議論があったことを考えますと、私は本当は消費税みたいなものは凍結してでも、このような資産課税のあり方だとか、あるいは不公平税制を片づけた上でやったならば、消費税に対する議論ももっと素直に進んだのではないかなと、そう思っておるわけです。  そういう意味で、この際、そのような不公平税制をどう是正していくのか、資産課税をどう適正化していくのか、課税ベースをどう広げていくのか。富裕税をやめるときだって、やめたら累進税率を高くしたのですよね、あのとき。だから高くするときには、どこかでちゃんと全部の皆さん方が痛みを感じるなら感じる、みんなが恩恵を受ければ恩恵を感じる、そういう方向でやらなかったところに、今度の税制改革のこういう拒否反応が続いておる最大の要因があるのではないかと私は思っておるのですね。資産の格差がどんどん広がっていく。持てる者と持てない者の格差がどんどん広がっていく。一生懸命まじめにやって家さえつくれないという世の中をつくって、所得水準が大体平準化したんだから消費税だって取れるじゃないですかという発想が私は大間違いだ、そう思っておるわけでございまして、私はそういう意味で何回も申し上げますように、もっと我々は現行消費税を一体どうするかという議論をテーブルに着いてやろうではないか。そのかわり一からの議論でございますから、廃止論あり、凍結論あり、現行の見直しの再見直し論あり、また新しい間接税のタイプがあるならそれを出してもらって、みんな議論しようじゃないかというようなことを私は謙虚に政府が受けとめることが消費税の前進のために大事なことではないかと思うのでございますが、どうでしょう。
  273. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、今委員がお述べになりましたような視点から、広範な問題について、しかも消費税を含めた税制のみに限定せず、それこそ行政改革から何から含めて論議をする、そういうお考えについて異論を申し述べるつもりは全くありません。また、資産課税あるいは課税ベースの拡大等含めて、税制全体について論議をオープンにしようと言われることについても、全く異論はございません。  そして、委員御自身からもお述べをいただきましたように、その中には見直し案もテーブルにあっていい、廃止案もあっていい、さらに全く違った考え方もあっていいという御論議は、それを私は否定するつもりは全くありません。また、今までに与野党の間において不公平税制について御論議をいただき、その中から今後検討として‐残っておる課題があることも承知をいたしております。こうしたものも論議の対象とされていくことについて、私は全く異論を申し述べるつもりはございません。
  274. 米沢隆

    米沢委員 時間が来ましたが、あと一問だけ経済の問題を取り上げてみたいと思います。  御案内のとおり、景気は順調に今まで来たわけでございますが、ことしに入ってから金融・資本市場が乱調ぎみでございます。そして、トリプル安というものがかなりこれから経済に悪い影響を与えていくのではないかという意味でいろいろ心配される向きがあることも、これは事実でございます。  そこで、私はお聞かせいただきたいのでございますが、これは経済企画庁長官、御答弁いただきたいのですが、いわゆる今この円安株安債券安というトリプル安の金融・資本市場の混乱は、一体我が国経済のどこに起因して発生したものと考えておるかということを経企庁長官として御答弁をいただきたい。  同時に、総理にこれはこの際ぜひお答えいただきたいのでございますが、このようなトリプル安というのは、やはり内外の経済的要因がいろいろありましょう。本当にそういう意味では非経済的な要因までもいろいろありましょう。そういう意味でかなり根の深いものだと考えるわけでございます。最近とみに指摘されるのは、我が国の水膨れ経済のツケが一挙に噴出した現象だという人もありますし、また日本の政治そのものが売りに出されておるという議論もありますし、そういう意味で総理は、このような今金融市場が混乱しているこの状態を、日本経済をどういうふうにつくりかえていったならばこういうものが安定の方向に向かうと考えておられるのか、その点について御答弁いただきたい。
  275. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 いわゆるトリプル安につきましては、私ども、再三御質問ございましたように、日本経済は、鉱工業生産におきましてもあるいは物価におきましても、その他経済の基本的なデータで見る限りにおきましては、その基調に変化はない、いわゆるファンダメンタルズに異常はない、こういうことでありまして、株価あるいは債券の価格あるいは為替につきましても、現象面におきましていろいろと言うなれば攪乱的な要素が出ておりますけれども、それは基調において変化がない限り、それほど今心配することはないのではないかという答弁を申してきたのであります。  ただ、現在におけるこれらのトリプル安の原因についてどう考えるかという御質問がございましたので、あえて申し上げるわけであります。  これがこうという確たる原因を申し上げることはなかなか難しいのでありますが、例えば為替レートについて申し上げますと、日本経済の先行きについて何となく不透明感が出てきたというような見方が外国側にあること、あるいはドルの需要超過、これは対外投資が非常に堅調であるということ、あるいはその対外の証券投資等が盛んに行われていること、あるいはまた御承知のように経常黒字が縮小傾向にある、こういうようなことがございまして、ドルの需要超過の現象がある。あるいはまた日米の、その他各国為替に対する協調介入をすることになっておりますけれども、どうも外国の協調介入の態度についていま一つその歩調がそろっていないではないか、こういうような見方もございます。そういうようなことが原因として言われているわけでございますけれども、これ一つそれぞれをつかまえて、これが原因でそうなっているというふうになかなか申し上げるわけにはいかぬのじゃないか。  それから、株価の問題に……
  276. 越智伊平

    越智委員長 簡明に願います。時間の関係がありますから。
  277. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 はい、わかりました。  株価につきましては、長期金利の上昇その他円安の進行等も影響しておりますし、また、その他いろいろと現象的な面におきましては原因が挙げられますけれども、先ほど申し上げましたように、経済の基調においては多少の不透明感はあるにいたしましても心配はない、このように考えているのであります。
  278. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御質問の、いわゆる最近のトリプル安の問題につきましては、思惑的な動きも含めてさまざまな要因が影響していると思われますが、我が国経済は、個人消費、設備投資などの内需を中心とした景気拡大を続けているところでありまして、特にその良好な基礎的条件に変化はないものと考えます。政府としては、現在の内需中心のこの景気をできるだけ息の長いものとしていくように、こうした金融市場の動向も注視しつつ、引き続き適切な経済運営に努めてまいる所存でございます。
  279. 米沢隆

    米沢委員 余り答弁になっていませんが、私は、現在のこういう状況というのは、日本経済ファンダメンタルズ変化がないとおっしゃるけれども、先行きにもう変化があるのではないかと海外の人は見ておるのではないか。同時に、逆に海外の目からすれば、今我々は円安だと言っていますが、彼らは円が高いのを是正してやるんだというような気持ちも実際持っておるのではないか、あるいは政治的なパフォーマンスに不信があるのじゃないか等々、いろんな要因があるんじゃないかと思います。そういう意味で、単に円安のこの変動の中で読み込む要因を単純化してああだこうだじゃなくて、総合的にこれから円安防止のために頑張ってもらいたいということを注文つけまして、終わりたいと思います。
  280. 越智伊平

    越智委員長 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  281. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 深谷郵政大臣は、ちょっと考え間違いをされておるのではないかと思うのです。というのは、せんだって私は四月三日の日に質問した折に、あなたはこういう答弁を私にされておる。「楢崎委員の御質問の折に、」というのは、恐らく三月八日のことだろうと思うのですが、あなたは六十三年夏以降は完全に関係ないという問題の答弁のところです。その答弁をされたその意味は、こういうふうにあなたは言っている。「楢崎委員の御質問の折に、」ちょっと途中省きますが、「少なくとも自分としては同社から特別何か頼まれるとかあるいは同社のために何かするということがなかったことから、あのような答弁になったわけであります。」何を考えておるのですか、あなたは。もしあなた、同社から何か頼まれたり同社のために何かあなたがしておれば、あなたはそこに座っておれぬ。刑事責任を問われていますよ。私が聞いているのは、リ社との献金の金、金の関係ですね、それを聞いているのです。あなたがリクルートに何か便宜を図ったのかとか、何も聞いていない。  こういうしあさってのような答弁をされるから、あなたはどうも悪質な感じがするのですよ。いいですか。あなたは区会議員から、都会議員から、国会議員になられた。何回当選か知りませんが、とにかくずっと政治で頑張ってこられたことは知っています。そして、下町のナポレオンですか、いやナポレオンはしょうちゅうでしたか、下町のケネディということでいろいろやってこられたことも知っていますよ。しかし、二十三年間、あなたはいわゆる支持者のために、ファンのためにサービスするのにテレホンサービスをずっと続けておったのでしょう。先月二十六日におやめになったでしょう。何で二十三年間続いてきておったのをおやめになったのですか、ファンのために。それは、ファンの人からのいろいろな今度の問題に対する苦情が来ているんじゃないですか。だからおやめになったんじゃないかという感じがするんですよね。  それで私は、もう重複を避けますけれども、まだあなたはお若いのですから、自分で自分の進退についてお考えになった方がいいのではないか。そして私は、どうも私は頭が悪いせいか知りませんが、あなたの秘書がリクルートの社員だったのか、リクルートの社員があなたの秘書だったのか、秘書が社員なのか社員が秘書なのか、どっちが先かさっぱり私はあなたの答弁を聞いておってわからないのですよ。だから、あれはやはりごまかしとしか思えない、客観的に見ても。それで、そのことをあなたには要望をしておきたいと思います。  そこで、海部総理が先ほどの市川公明党書記長その他のあれで答えられたと思いますけれども、深谷郵政大臣も含めてでしょう、みんな今度の総選挙でみそぎをしてきたとさっき答弁なさいましたよね。あなたの考えられているみそぎというのは、どういう意味ですか。
  282. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 選挙という手続を通じて、選挙区の皆さんの洗礼を受けて当選をしてこられたということを、私はいつも答えております。
  283. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 恐らくそう答えられるであろうと思いますが、これは子供たちのためにも定義をはっきりしておかぬといけませんよ。いいですか。三省堂の広辞林それから岩波の広辞苑、どっちも同じことが書いてありますよ。みそぎというのは、身に罪や汚れのあるときまたは神事などを行うに当たって川で水を浴びて身を清めること。何か身に罪がある、身の汚れを清める、それがみそぎなんです。だから、私はいろいろ個人的にはまずいところがありますけれども、何も悪いことしてないから、今度の総選挙でみそぎを受けてきたなんという感じは私はありません。私は有権者の審判を受けてきた、こう思うのです。だから反省のない人には、リクルート事件とかかわった人、反省のない方はみそぎなんてあり得ないのです、罪の意識のない人は。  そうすると、深谷郵政大臣は、総選挙のときには、今明らかになっているようなリクルート社との関係はそのとき明らかになってなかったから、総選挙ではみそぎを受けたことにならないのではないか、そのように私は思うのですよ。だから、みそぎという言葉を正確に使ってもらいたいと思いますが、どうでしょうか。
  284. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 よく選挙の洗礼を受けてこいということを言われたことを私自身も覚えておりましたし、また一連のやりとりの中で、リクルートに関係した人が一体選挙が済んだらそれでみそぎが全部済んだと思うかという質問を私もよく受けましたから、選挙区においては洗礼を受けて当選してこられた、ただ、まだ自由民主党としては政治改革をやって前進をしていくと、こういうことを言い続けてきたつもりでございます。
  285. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 通常はあれでしょうが、正しくこういう場合には使っていただきませんと間違いが起こるのですよ。例えば中曽根元総理ですね、あの方はリクルート事件でいろいろやられたが、あれはマスコミの魔女狩りだ。何の反省もないのですよ、あの人。迷惑しているのはこっちだというような言い方ですよ。それじゃ、今度の総選挙で当選されましたけれども、みそぎを受けたことにならないじゃないですか。  今中曽根さんの話をしましたからついでに言いますが、平成元年五月二十五日、去年ですね、証人としてここへ来ていただきました、中曽根元総理に。そして、リクルート問題に関する証人尋問を行いました。私は、そのときたしか七、八分でございまして、再質問ができませんでした。それで今はっきりしておきますが、あのときあの人は偽証されておるのです。私は、時間がないから中身を後で言いますけれども、ピクセス・インターナショナルという会社を知っておられますかと聞いたのです、昨年五月二十五日。そうしたらこう答えた。「何とかインターナショナルというのはまるきり知りません。」そこで私は、「これで終わりますが、今の答弁にはうそがあります」と言っています。  ピクセス・インターナショナルとはどういう会社か。いいですか、ことしになって、最近でしたか、新しく出てきました山王経済研究会の会計係太田英子さんにかかわる国際航業との株売買の問題が公にされました。そして、この太田さんがこの売買益で、たった一月ぐらいじゃなかったですかね、一億数千万売買利益を上げられた。その利益を、北海道の桧山支庁の厚沢部町というところに原野があるのですが、五万九千平米ぐらい、そこを買って、そしてそこに何か社を建てて、宗教法人でしょう。それからさらに問題は、このピクセス・インターナショナルというのが、いいですか、この社のあるところに何と福祉施設をつくる、養護施設とか老人施設とか、そういうことをつくるという看板を太田英子の名前で立てていらっしゃる。いいですか、ピクセス・インターナショナル、定款をここへ私は持っています。今は名前が変わっていますね、なぜか知らぬが、ことしの二月に上について、ツムラ・ピクセス・インターナショナルになっておる。これはどうしてか知りません。しかし、その当時はピクセス・インターナショナル、この登記簿を見ても、そういうことをすることは書いてないのです、この会社の定款には。  そこで、私はこのピクセス・インターナショナルをなぜ問題にしたかというと、これは問題の太田英子さん、それから中曽根元総理の最大の後援団体である山王経済研究会の実質的なオーナーと言われている有名な松久の神谷さんと読むのですか、あたりがあれになっていらっしゃるのですよ、設立人に、このピクセス・インターナショナル。それでどこにあるかというと、東京平河町の二の一六の一五北野アームスというアパートにある、このピクセス・インターナショナル。山王経済会と同じところですよ。中曽根さんがこんなことを知らぬはずないでしょうが。だから私は、うそを言っていると言っているのです。  そこで、きょうは時間がないから残しておきますけれども、これだけ聞いておきますよ、いいですか。  北海道開発庁長官は砂田先生ですか、自治大臣は結構ですけれども、この太田英子さんつくるところの、北海道の厚沢部町につくっている、これは宗教法人の許可を受けていますか、あるいは福祉施設をつくる、そういう許認可を受けていますか、道から。道議会で、北海道議会で問題になっているはずです。はっきりしてください。
  286. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 北海道開発庁の直接の所管事項ではございませんので、調べまして、お答えをいたします。
  287. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それで結構です。調べて、この予算委員会が終わる最終でよろしゅうございますから、お答えをひとつ理事会の方に出していただきたいと思います。  では次の問題に移りますが、私は、今、日本が日米関係で大変な立場に置かれている、それは皆さんと共通の認識を持っています。海部総理が、この構造協議の問題、野党も協力してくださいと。それはもう差し支えない限りは協力しなければいかぬと思っているのですよ。そうすると、ある程度重要な問題について与野党あるいは政府認識一つにしておかぬとできませんよ。  そういう点で、私はきょうの答弁を聞いておりました、公明党の市川書記長に対する。石川防衛庁長官は、きょうこういうことを言われました。東西両陣営の基本的枠組みは変わっていない、それから、一部にデタントの傾向が見られるけれども云々。私は、これは恐らく海部総理なり橋本大蔵大臣なり外務大臣とは認識が違うのではないかと私は信じたい。どうしてかというと、一部のデタントじゃないのですよ、これは。いいですか。私は、今日の国際情勢はかつての東西冷戦構造から、グランドという言葉を使った方がいいと思う、グランドデタントに向かっている、明らかに。一部じゃありませんよ。そういう国際政治構造に変貌しつつある。そして総合的なデタントのいろいろな様相が出てきていますよ、現に。これは、米ソ間の問題だけではない、地域的にも出ている、あるいは後進国にもミニデタントが出てきていますよ。一部のデタントというような状態ではない。  そして今の状態は、私は、パックス・アメリカーナと申しますか、それが大いに揺らいでおるんではないか、今日の状況は。つまり、かつての米ソの超大国による覇権システムと申しますかヘゲモニックシステムといいますか、それが崩壊しつつあって、その覇権システムの後、つまりポスト覇権システムと申しますか、それを世界は模索し始めておるのではないか。これが新しい情勢なんだ。一部の問題じゃない。ヨーロッパだけの問題じゃないんだ。  だから私は、CSCEですか、それへの参加の問題も出てきているんじゃないですか、日本は。そして四日の日ですか、西独のゲンシャー外相がブッシュ大統領とお会いになって、この全欧安保協力会議を強化せにゃいかぬ、再編せにゃいかぬ、三十五カ国の加盟だけれども五十三カ国ぐらいにせにゃいかぬという提言をゲンシャー外相はなさっている。私はこれは賛成なんですよ。賛成なんです。その米欧のそういう意味の宣言をブッシュさんしてくださいとゲンシャー外務大臣は頼んでいる。  だから私は、そういうふうな情勢があって、それでG5からG7へ、橋本さんも大変御苦労なさっている。そういう経済的なグローバルな問題に移行しつつあるという認識をお互いに持たないと、構造協議でも協力したくても、そういう根本的な問題で認識が違うとなかなか協力をしにくい点が出てくる。私は、今私が言っていることが本当の認識ではないかと思うのですね。その点、時間がございませんから総理認識を聞いておきたいと思います。
  288. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど来申し上げてまいりましたが、今世界の現状の認識、特に部分的ではなくて大きく東西の対立というものの冷戦時代の構想が乗り越えられつつある、新しい秩序づくりが模索し始められておるというラインでの楢崎委員の御指摘は、私もそのような世界流れが起こっておるということを率直に感じております。  そして、そのことが一番今顕著にあらわれておるのは、御指摘のようにヨーロッパでありますが、私は、それはアジア・太平洋地域にも及ばなければならないものである。ただ、残念ながら、アジア・太平洋にはまだ今戦闘の続いておるところや軍事力を背景に対峙しておるところや、いろいろ事情の違うところがございますので、世界共通の秩序を模索するために、アジア・太平洋地域でも日本努力をしなければならぬし、同時に、世界のために何ができるかという面においては、積極的に日本も人づくりや国づくりにできるだけの協力をしていかなければならないときが来ておるんだ、このように認識しております。
  289. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大部分認識が一致しつつあるようでございますから、結構だと思うのです。  そこで、私は安保条約の問題に入りたいと思うのですけれども、私もいわゆる六〇年安保のとき逮捕されましたよ、闘争で。その私が言うのですから。あのときはあのときの条件があって、ああいう闘いは正しかったと私は思っています、アジアの情勢、日本の情勢から考えて。しかし、六〇年安保のときのあの私自身が考えていた、あのときの考えは変えなくてはいけぬのではないか、新しく九〇年安保の時代だ、このように私は認識しつつある。  そこで、そのために聞いておきますが、その安保条約の二条、「締約国は、その自由な諸制度を強化する」と書いてありますが、この「自由な諸制度」、これには社会主義、共産主義はなじまない、そういう認識でしょうね。
  290. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生御指摘のように、「自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進する」ということで、日米両国が共有しております価値、物の考え方を言っておりまして、先生御指摘のような共産主義等は入らないと考えております。
  291. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 過去、私は社会党時代にこれを確認しているんです。そうすると、この第二条の「自由な諸制度」の中に社会民主主義は許容範囲に入っておるのかどうか。つまり、それは定義が必要でしょう。私が言う社会民主主義は、自由、民主主義、基本的人権、そして社会的公正を守る、さらに議会制民主主義、それからマーケットメカニズムを守る、そういう内容の社会民主主義であれば、これは許容限度に入りますね。
  292. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 ここにございます「自由な諸制度」とは、政治的には自由と民主主義、それから経済的には自由経済と自由貿易というような言葉で表現される政治、経済、社会体制を指すものと考えております。
  293. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 実におもしろくない答弁をされますね。毒にも薬にもならない。時間を費やすだけの話でしてね。これは当然入るわけでしょう、社会民主主義の内容がそうであれば。  そこで、前文で「民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、」とある。それから二条の「締約国は、その自由な諸制度を強化する」、これは明らかに政治安保と申しますか、政治同盟と申しますか、そういう性格を持っています。それから、前文の「両国の間の一層緊密な経済協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、」それから第二条では「締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済協力を促進する。」この頃はまさに経済安保です。  そこで、私は、今の状態では、九〇年安保を考え直さなければいけないのではないかと私が思うのは、今直ちには安保条約はなくせませんよ、僕は理由は言いませんが。だから、むしろこの内容を運用で活用すると申しますか、つまり政治安保、経済安保、文化を含めて、そういう面を強調していく。そして、客観的にも軍事的な面は薄くなっていくはずです。だから、そういう運用の仕方を考えていけば、最終的に我々も願っている日米友好条約の方向へ実質的に行くのではないか、私はそう考えております。  そこで、総理認識をお伺いしておきますが、この日米協議は、まさにこの二条のところの、今私が申し上げたところに条約的な根拠がある、私はそう理解している。どうでしょうか。
  294. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今楢崎委員の御質疑の御意見を聞きながら、私は、あれは何十年前でしたか、私も青年部長で、楢崎議員が社会党の青年部の代表で御議論したときのお考えと随分、何というのでしょうか、歩み寄ってというか、あるいは時代の認識をきちっと見てというか、時代の認識をきちっととらえて御質疑をなさったことに、本当に今昔の感にたえぬものがございましたけれども、おっしゃるとおり、日本とアメリカ合衆国との相互協力及び安全保障条約の第二条は、まさに先生御指摘のとおりに「自由な諸制度」というものをさらに「強化することにより、」と書いてあります、条約の中に。このことは、もう軍事的な面のみならず、政治的な面においても、あるいは御指摘のように生活面においても、いろいろな経済協力の面においても、この安保条約は日米両国の本当に友好基本条約的な実質的な意味を持つと言って言い過ぎではないと、私もその点は率直に同感でございます。  そういった意味で、軍事面のみならず経済的にも自由な制度の中でお互いに交流をしていこうというために、この条約にもし根拠を求めるとすれば第二条にそのよりどころはあるな、こういう受けとめ方も同じでございます。
  295. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、冒頭私ども協力すべきところは協力すると、日米構造協議の内容についても。できぬことはぐあいが悪いんじゃないかと言いますけれども。それで、総理は野党に協力を求められた。ところが与党が、例えばあなたがせっかく新しい推進機関をつくりたいとおっしゃっているのに、与党でつぶされたでしょう、新聞の報道が間違ってなければ。与党の方が協力しないで、野党に協力ができますか。もう少しみんなで考えようじゃありませんか。  それで、海部総理は私は非常に苦労されていると思う。それで、私はあのブッシュ大統領との首脳会談のとき、あなたがグローバルパートナーシップとおっしゃいました。私はあれを猛烈に重く考えているのです。これは私の認識では、アメリカの方は政治力、軍事力を持っている、日本経済力を持っている、それがいわゆるパートナーシップになる。つまり、ジョイントヘゲモニーを日米でとる。このグローバルパートナーシップというものは大変な重みを持った認識のし合いであったと、私は日米会談をそのように思っているのです。むしろあのとき個々の、幾つどういう問題が出たとか、そういうこともそれは大事だったかもしれぬが、私はむしろそのレベルよりもこのグローバルパートナーシップ、私の言葉で言えばジョイントヘゲモニーですか、そういうことの重みを私は重要に考えるのですが、どうでしょうか。
  296. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日米首脳会談のときには、日米両国の話だけではなくて、世界の新しい秩序づくりの中に積極的に協力していくための日米の共同作業、政策協調も話しましたし、また、日米以外の地域に対する日米二国間での協調の協力問題等も話しました。また、地球的規模で、アメリカ側が麻薬の問題とかテロの問題とか、あるいは日本側からは途上国の累積債務問題なんかについて意見を述べました。そういったことについても、まさにおっしゃるようにグローバルパートナーシップというとらえ方で、日米は今後世界の平和と繁栄のために積極的に協調をしていくということも議論をし、合意を得てきたところでございます。
  297. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 全く認識を一にさせていただいて結構ですが、もしそれならですが、最後に私は一つ考えていただきたいことがある。  きょうも公明党の市川書記長から防衛力凍結の話が出ました。あるいは拡大をする必要はないのではないかという意見があるのは、今日の政治情勢では、国際情勢では当然ですね。ところが、これはできない仕組みになっているんですよね。  これはまだ生きているんでしょう、昭和三十二年五月国防会議及び閣議で決定されました国防の基本方針。生きているんでしょう、これは。防衛庁長官、どうですか。——こんなことわからぬで、あなたよう市川書記長に答えましたね。
  298. 日吉章

    ○日吉政府委員 三十二年五月二十日の国防会議及び閣議決定の国防の基本方針は、今も生きてございます。
  299. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、この三項目にこういう項目があります、この国防の基本方針に。「国力国情に応じ自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備する。」つまり、漸進的に整備することだけがうたってある。情勢によってあるいは削減しなければならない情勢になるかもしれないが、これがこのままである限りはできないのでしょう。だから今の「効率的な防衛力を漸進的に整備する。」ここの「漸進的に」だけを削除すれば、私は非常に国際情勢にいつでも対応できる、この基本方針は。つまり、国力国情に応じて自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を整備する、それでいいのじゃないですか。「漸進的に」は要らないのじゃないですか、減らすこともあるのだから。私は減らせと今主張していませんよ。そういう可能性を残した国防基本方針にしておく必要があるのではないかということ、これはぜひ安保会議で真剣に検討いただきたい、これが私の願いです。
  300. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 必要に応じてといういろいろな問題がございましたから、研究をさせていただきます。
  301. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これで終わります。ありがとうございました。
  302. 越智伊平

    越智委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二分散会