○松原脩雄君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表して、ただいま
趣旨説明のありました日仏原子力協定の
改正議定書に関して若干の
質問をいたします。
この
議定書の最大の
目的は、フランスの技術を導入して青森県六ケ所村に使用済み核燃料の大型再処理工場を建設し、大量のプルトニウムを抽出して、
我が国の核燃料サイクルを確立しようとするところにあります。
しかし、この核燃料サイクル構想、プルトニウム社会の実現については、青森県選出の自民党の中で一名が、さきの衆議院選挙の際、建設の白紙撤回を公約して当選をされ、これを促進した元大臣は議席を失うなど、地元青森県でも批判の世論が際立ってまいりました。
世界的にも核燃料サイクル構想が見直されている今日、そのような批判が生まれるのは当然のことであります。
かつて原発推進策をとったアメリカ、オーストリア、スウェーデン、イタリアなどは、根本的にその
政策を転換し、脱原発の方向を進めております。とりわけ、使用済み核燃料の再処理によるプルトニウムの利用は、安全性も経済性も全く成り立たなくなったことが明らかになってきております。
特にアメリカでは、プルトニウム利用関係の高速中性子試験装置開発計画が今年度予算から削られました。かくして、アメリカのプルトニウム社会を目指す路線は過去の
政策となったと言わざるを得ません。
また、西ドイツでは、バッカースドルフの使用済み核燃料再処理工場が、
周辺環境の放射能汚染の危険性を
理由に最近建設中止に追い込まれ、カルカールの実験用増殖炉の運転開始は、無期限に延期されてしまいました。
さらに、イギリスでは、セラフィールド再処理工場に近い
地域では白血病がほかの
地域に比べて十倍にもなっていることが報道され、イギリス
政府は、高速増殖炉の開発計画の中止を一昨年決めています。
こうした最近顕著になってきた脱原発の
世界的な状況と
我が国の核燃料サイクル構想とを比べれば、明らかに時代に逆行していると言わざるを得ないと思いますが、首相並びに
外務大臣はどのように
認識をしておられるのか、まずお聞かせ願いたいと思います。(
拍手)
核燃料サイクルを推進する
理由として、
政府は、その経済性を強調してまいりました。果たしてそうでありましょうか。
最近まで高速増殖炉の開発をがむしゃらに進めてきたフランスでは、スーパーフェニックスIがナトリウム漏えい事故などで挫折し、国際
協力に係るスーパーフェニックスII建設計画は中止に追い込まれました。危険がこの上なく大きく、発電コストが軽水炉の何倍にもなることが判明したからだとされています。アメリカの核管理研究所のレーベンサール所長は、ウラン価格が少なくとも五倍にならない限りプルトニウムの平和利用は成り立ち得ないと指摘されています。このように、プルトニウムを利用した原子力施設には、莫大な費用と安全面における厳しい規制がかかることは
周知の事実であり、最終的には消費者である
国民に大きなッケが回ってくることは明らかであります。
また、九二年秋にはフランス、イギリスからプルトニウムを輸送されるとのことですが、プルトニウムを利用した発電コスト、輸送方法、輸送コストなど、いまだ
国民にはっきり
説明すらしていないのはどのような
理由からなのでしょうか。
また、プルトニウム利用計画が明確になっていない今日、なぜ青森県六ケ所村に再処理工場等の建設を急ぐ
必要性があるのか、明確な御
答弁をあわせてお願いいたします。(
拍手)
この
議定書では、核物質の輸送についても定めております。
科学技術庁は、英仏の再処理施設で委託処理されたプルトニウムを九二年は海上輸送するのは、
我が国のプルトニウムの所有量が九二年度末には不足するためであると
説明しています。ところが、アメリカの核管理研究所は、
日本のプルトニウムは九八年末まで不足せず、輸送の
必要がないことを明らかにし、
我が国の原子力資料室もほぼ同様の結論に至っております。これら権威のある機関の発表が事実とするならば、九二年に海上輸送する
必要がないことは明白であります。この際、プルトニウムの海上輸送という非常に重要な問題にかかわることでありますから、
我が国の現在の手持ちプルトニウム量及び二〇一〇年までの需要推計量を明らかにしていただきたいと思います。
この
議定書に関しては、核兵器の拡散防止の観点からも若干
質問をいたします。
言うまでもなく、戦後の国際政治の基本的
枠組みを形づくってきたのは、巨大な核兵器を保有する
米ソ超大国を軸とする
東西関係にありました。このような国際政治の中において、核兵器の拡散を防止する
目的から核拡散防止条約が作成され、
米ソの管理下において曲がりなりにも核拡散が防止されてまいりました。
しかし、戦後の国際政治の基本的
枠組みは崩れ、
東西冷戦は終えんを迎えようとしており、これにかわる新しい国際秩序の模索が始まろうとしております。この新しい国際秩序が形成されるまでの間、好むと好まざるとにかかわらず、不
確実性や
不安定性要因が存在する時期があると考えます。当然、この間は
米ソ両超大国の核兵器の管理能力が弱まることをも
意味しており、このような過渡的国際政治の中で、私は核拡散防止条約が有効に働き得るかどうかの危惧を抱くものであります。これに対してどのような御所見をお持ちか、
総理はお伺いいたします。
また、いまだ多くの核保有期待国が条約を批准いたしておりません。
周知のとおり、核保有国フランスもこの条約を調印しておらず、その上、独自の核哲学を持ち、また、原子炉を他国に売り込むことにも熱心であります。現にこの二月にはパキスタンに対して原子炉を売却することが決まりました。もとより、パキスタンもまた核拡散防止条約には参加しておりません。そのため、インドは、この原子炉の売却はパキスタンの核兵器開発の疑惑が濃いと直ちに猛反発をしているありさまであります。
このように、原子力発電開発の名のもとに、多くの国が核保有疑惑国となるおそれなしとは言えないのが現実であります。
政府はこれらの国々にどのように条約批准の働きかけをされるのか、あわせてお伺いいたします。
さらに、将来、
我が国が平和
目的でフランスに提供した核物質または機微な技術などが、フランスもしくはフランスを経由して第三国へ移転され、それが軍事に使用されないという歯どめ、すなわち保障
措置はとりわけ厳格でなければなりませんが、この
議定書ではいかなる保障
措置が講じられたのか、お聞かせ願いたいと思います。
この
議定書は、
世界のほとんどが放棄したプルトニウム依存社会に
日本が突進していくかどうかが問われる重要な
内容を含んでいることは、さきに指摘したとおりであります。(
拍手)
プルトニウム、ギリシャ神話の地獄の王プルトーンに由来し、原子爆弾の材料として、神話同様大地を焼き払う恐るべき物質、わずか二キログラムで
世界の全人口をがんで死亡させると言われるほどの猛烈な毒性を持つ物質、自然界には本来存在せず、人間が技術はよって生み出した人工の原子、まさにプルトニウムは、地球温暖化やオゾン層の破壊などで技術に対する
反省が生まれ、自然との共存こそ人類が歩まなければならないことが明白となっている今日、人間が自然をもてあそんでいてよいのかを根本的に問いかけており、もはや科学技術者や数字合わせにきゅうきゅうとしている官僚あるいは利潤第一の企業とその関係者はその処理を任せていてはならないことは明らかであります。政治こそが
責任ある結論を導いていかなければなりません。
各大臣には、
責任と誇りを持って私の
質問に真剣に回答していただくことを要望して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣海部俊樹君
登壇〕