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小澤(克)
委員 私は、
法律的、経済的というよりは、むしろ社会学的な分析が一番必要なのじゃないだろうかというふうに思うわけでございます。私も事業をやったことなど全然ない方ですからそんなに詳しく知っているわけじゃございませんが、いろいろ
考えをめぐらせてみますと、
会社制度を利用する動機といいますかメリットというのはいろいろあろうかと思いますけれ
ども、その
一つは、やはり事業の会計と消費生活の家計とがきちんと分離される、そのことによって
企業会計が明確化し、合理化される、これが社会学的に言うと実際の一番のメリットじゃないだろうかなと思うわけです。
このように明確化、合理化されることによって経営成績が明確になる、その結果、経営計画も立てやすくなる、そして合理的な経営によって信用が増す、信用が増せば金融機関等との
取引あるいは官公庁も含めて
大会社等との
取引、受注というようなことがしやすくなる。さらには、そういうどんぶり勘定でない
会社であれば
従業員の採用な
どもしやすくなる、これが最大の
理由ではないかなと思うわけです。
ついでに言いますと、
先ほど大会社が一パートを、一
部分を、一分野を子
会社として独立させるというのも、
大会社の経理とその子
会社の独立会計とをきちんと分離させることによって、その子
会社の成績等が
大会社の経理の中に埋没しないようにすることによって、その経営者の意識等も含めて経営成績がきちんと明確になるようにというようなことではないかなと思うわけでございます。これはどんな小さい
企業であってもメリットで、しかもこれは悪いことではない、むしろ
保護すべきメリットかなというふうに思うわけです。
それからまた、よく言われることですけれ
ども、法人成りをしておけば、営業主が不幸にして亡くなったような場合に営業主体が変わらないで済む、これは
現実的な
利益だろうと思います。そして、この
利益は決して奪うべきでない正当な
利益だろうと思うわけです。
それから、
会社にした方が何かとかっこいい、ステータスが上がる。これは最初に申し上げた家計ときちんと分離することによる効果のうちの心理的な
部分というふうに思いますけれ
ども、本当に中小零細の
企業をやっておられる方の
お話などを聞きますと、今どき
会社組織にしておかないと息子の嫁も来ないよというような話も聞きますが、これはステータスといいますか、その
部分だろうと思います。
従業員の採用についても、個人で採用すると家庭の作業にまでこき使われるのではないだろうかというふうに思いますわね。
会社であればそんなことはない。そういったメリット、これまた決して否定すべきメリットではないと思うわけですね。むしろ
保護されるべきメリットだと思うわけです。
それから、よく言われることが節税でございます。節税、これはよく言われることは、所得が分散される、法人の収入とした上で個人に給与として払うという形にして所得が分散されることによって所得税上有利である、あるいは
利益が分散されることによって事業税等も節税になる、それから必要経費が認められやすい、これがかなり大きい
部分であろうと思うわけですけれ
ども、これはある
意味では事業会計と家計との分離から生ずるものですから、節税である限りではこれは決して否定すべきものではない、むしろ
保護されるべきメリットだろうと思うわけですね。
それから、相続税の問題ももちろんございます。これも決して排除されるべき
利益ではないだろうというふうに思うわけです。
それから、有限責任制、これもメリットだといえばメリットなんですけれ
ども、しかし、実際にこれから事業をやっていこうという人は、万一だめになったときに個人は逃げれるからいいやなんという人はそうはいないので、むしろどんどん事業を発展させていってやっていこうという意気に燃えてやるわけですから、この有限責任制を当初から念頭に置いて事業を始める人というのは少ないといいますか、むしろまともではない人じゃないかなというふうにも思うわけです。
このように見てきますと、
会社制度利用というのは何も有限責任制を利用するということに尽きるのではなくて、それはごく一部である。むしろ
先ほどから並べたようなメリット、これは決して否定されるべきではない、
保護されるべきメリットだと思うのですけれ
ども、このようなメリットを求めて
会社制度を利用する、つまり
会社を設立するというのが社会学的な実態だろうというふうに思うわけです。
このように見てきますと、今言った有限責任制以外のメリットを求めて
会社を設立することは決して
乱設とは言えない、むしろ
保護されるべきであろうかと私は思うわけです。そして、
商法が予定したかどうかはともかくとして、
会社制度というものが
制度的に準備されている以上、これを利用しようとすることは決して否定されるべきではない、私はそういうふうに思うわけですよ。したがって、
資本金五万円の
会社をつくることが
乱設だという議論は極めて乱暴な議論だ。そういうふうな切り捨て方というのは、法の
規制を受ける側、国民の意識にはぴったりこないと私は思います。逆に言えば、
大会社が子
会社を独立させるなんというのはむしろ
乱設というふうにも言って言えないことはない。だから、何が
乱設かということは、そういう経済の実態に即した十分な判断が必要かなというふうに思うわけです。
ちょっと長く述べましたが、
法務省としては、そういう
考え方についてはいかがでしょうか。同意していただけるかどうか。