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飯塚参考人 お答え申し上げます。
問題が非常に多角的にたたきつけられましたので、ちょっとこれ、お答えするのは容易じゃないと思いますけれども、記憶する限りで、先生の提起された問題についてお答えしたいと思います。
まず、
日本の
公認会計士の数は五万人ということを申し上げましたけれども、これはいわば英知的直観によるのだ、実証的な
調査の結果じゃないというふうに申し上げました。
さてそこで、その
公認会計士になることでございますが、ドイツの場合は
会社法じゃありません、経済法、ヴィルトシャフツレヒトと言っている。しかし、
日本の場合は、ドイツと違いまして
経済関係の
法律が非常に少ない。例えば、ドイツの場合は、従業員五人以上持っている
会社の経営者は、毎月一回、
企業の損益と財政状態を従業員の代表に報告しなければいけないという
法律がある。べトリープスフェアファッスングスゲゼッツと申しますが、そういう
法律がある。したがって、底辺から、小
企業からまじめにやらなければならぬという要素がある。ところが、
日本にはそれがない。だから、税務
調査というのはどうせ十年に一遍ぐらいしかないのだから、逃げ回るだけ逃げちゃえという意識が強い。それからもう一つ、実は
日本の場合は、
日本人というのは生き馬の目を抜くというようなするどさがございますから、どこかにうまいところがあればそれに飛びついていくという要素もあろうと思います。そういうことで
日本の
会社というのは多くなっちゃっているんだというふうに私は見ております。
なお、
日本の
税理士を
公認会計士にする件でございますが、それはドイツと全く同じで、基礎的には
日本の
税理士は
会計学を理解し、
会計学を実践しない限りは業務そのものができない、だからその意味では
公認会計士と全く基盤を同じゅうしている、だから区別すべき理由はない。なお、先生とすると、
税理士は喜ぶかもしれぬけれども
公認会計士は喜ばないかもしれないとおっしゃったけれども、私は
公認会計士の
先生方に言うのです、どうか国民経済的に国家を考えるという姿勢をとってくれ、
日本は極端に
公認会計士が少ないんだ、これはいけない、やはり国家国民全体のことを考えると実は
公認会計士の数はもっとふやさにゃいかぬと思うのだ。その場合に、やはり
公認会計士になるのに一番距離が近いところにいるのが
税理士なんだ。それはドイツも全く同じ。だからドイツの場合は、五年、十年、十五年というふうに
三つの段階を設けて彼らを大量に
公認会計士にしようとしたということですね。
それから、
先ほど私は言い落としましたけれども、ドイツの
税理士諸君に会いまして、なぜ君
たちはなりたくないんだと言いましたところ、収入は十分なんだという答えが返ってきました。おれ
たちは、収入は十分なんだ。特に、ドイツの場合は、自宅に温水プールを持っているなんていう
税理士がかなりいるんですよ。私もつき合っている
税理士諸君、何人も自宅にプールがある。見せろと言って私は行ったことがありますけれども、ちゃんと温水プールですよ、温度まで調節されている。そういうぐあいなんです。だから、つまりドイツの場合は
公認会計士になる人が少なかったというのは、
先ほど申し上げたような
商法三百十九条の問題もございますけれども、同時にドイツの
税理士は収入が非常にいい、だから今苦労して
公認会計士になる必要が全くないというようなことがあるわけでございます。
なお、ドイツの場合は
日本と違うのは、試験科目は
会社法じゃありません。ドイツの場合は、アクチエンゲゼッツの試験というのじゃないのです。ヴィルトシャフツレヒト、つまり経済法、その経済法の試験というのは、つまり
先ほど申し上げたような経営組織法だとか、それから賃金協約法という
法律があります。これはちょっと
日本では余りなじんでないようでございますけれども、タリフフェアトラークスゲゼッツという
法律があります。どういうのかといいますと、要するに、どの
会社へ行こうとも仕事が同じなら月給は大体同じということですね。これはすごいですよ。そういうのはドイツの場合確立していますから。
ヨーロッパでは、そういうのを取り入れて今しもやろうとしているのでございますが、ちょっと前後いたしますけれども、先生が
EC対策とおっしゃった。これは私はずばりそのとおりだと思います。と申しますのは、あと二年たつといや応なしに統合しますから、そして彼らの目指すところは完全なる
単一国家ですから、
ヨーロッパの十二カ国が単純な
単一国家になってしまうということは、これは怖いことですよ。つまり、
アメリカもそうですけれども、
アメリカだとか
ヨーロッパだとかが
単一国家になってしまっているという場合に、さあ
日本はどうするんだということになりますから、そのときこそ政治家の
先生方は、自分
たちの立法能力、自分
たちの国政能力について国民に本当に信を問われなければならぬときが来るというふうに私は見ております。
なお、正しい記帳をしなかったときは刑罰をしろということでございますが、これは刑罰しないのはおかしいのです。というのは、文明国全部やっている。
アメリカもイギリスもドイツもフランスも残らずちゃんと、インチキの帳簿をつくったときは処罰するぞということになっている。じゃ
日本は全くないのかというと、そうでもない。
日本にも破産法という
法律がございます。その破産法の三百七十四条、これは故意破産罪。故意破産罪の場合、破産したけれども故意に破産したという場合に、そのときの帳簿が不完全であったときは十年以下の懲役だという
規定がございます。それからなお、三百七十五条には過怠破産罪というのがございます。つまり、経営を余り一生懸命やらなかったものだから、それでよそから不渡りなどもらってしまって破産してしまったという場合、その過怠破産罪が、なお帳簿が悪かったという場合は実は今度は五年以下の懲役、そういう猛烈な
規定がございます。だから、それを実はなぜ実施しないのか。
私の同級生に最高検察庁の検事をやったやつもいますから、クラス会で聞いてみた。そうしたらば、いや、それをやったら
日本じゅう大騒ぎになってしまう、だからやれないんだということを言っていましたけれども、やはり国民の反応を見ているようですね。それで検事としても、実は破産したんだけれども帳簿が不完全なんだと言えば、三百七十四条か三百七十五条かいずれかを適用して、五年以下あるいは十年以下の懲役ということになるんだけれども、おっかなくてやれない。というのは、検察横暴とかというように騒がれてしまって、そこへマスコミが便乗してえらい検察庁をたたくということが行われる、だからやれないということなんですね。そういうふうなことを私のクラスメートが言っていました。なるほど君がそう言うのは無理もないと言ったのですが、しかし先生にお訴えしたいのは、
先進国は全部不正記帳、不実記帳、インチキ記帳に対しては刑罰を科していますよ。
日本だけやらないというのはおかしい。
法律というのは国民生活を方向づけているのですから、
先生方は立法することによって国民の方に生活の方向を与えていくのですから、
先生方はその力をお持ちなんですから、したがってこれはやっていただくべきだ。ここでちゃんとやらなかった場合は
日本は底なしのルーズな
世界になってしまう。文明国全体が不実記帳、不完全記帳に対して刑罰をもって臨むという以上は、しっかりやらなければいけない。
たまたま昨日、韓国の税法が私の手元に入ったので、今思い出したのでございますけれども、韓国の場合は、すべての商人は自分の店にレジスターを置かなければいかぬと書いてある。これはすごいことだと思うのですね、レジスターで逃げ場がなくなりますから。そういうことで、やはりその方向でだんだん国民を方向づけていく必要がある。
そこで私は、まあ
中野先生ばかりではございませんけれども、ともすれば
日本の政治家は選挙民の顔色ばかりうかがう傾向がありはせぬか、残念だ。そうじゃなしに、君
たちきついかもしらぬけれども、これが名誉ある一流国
日本をつくる道なんだ、我慢してやってくれいというぐらいのことを言ってくれたっていいんじゃないかと私は思うのですね。そういう点がちょっと問題だと思うのです。
そこで、先生は、
飯塚の提言があった場合に中小
企業に対してメリットはどうでデメリットはどうだということをおっしゃいましたけれども、結構です。そういう御判断があり得るのも結構です。しかし、注意いただきたいことは、水田の中へ飛び込んでいって、農民諸君に抱きついて、泥んこになっても情き一票を頼むと言うのが正しいのか、ちょっとこれは問題だと私は思うのです。その意味で、私のクラスメートがたまたま群馬県の知事をやっておりますけれども、聞いたところが、さる著名な政治家が驚くばかりのどぶ板選挙をやっているよ、君と言っていました。それでいいのか、いやちょっとそれは問題だ。やはり
先生方は国民のリーダーなんだ、国家の運命を左右する
方々なんだ、だから
先生方はそこは厳格に自分を律していただきたい、こう思うわけなんだ。まあ、そういうことができるかできないかは
先生方の御決意によるのですから。
なお、実は先生の御質問の中でこういうことを言われたんですね。「真実かつ公正なる見解」の原則が
ヨーロッパではどういうふうに表示されておるか。
ヨーロッパ十二カ国ございますから、その十二カ国全部の
法律を言うわけにはいかない。そこで、例えばドイツを申し上げますけれども、ドイツの場合は、
商法の三百二十二条に
公認会計士の
監査報告書はこう書けというふうに、
監査報告のモデルが表示されています。そのモデルによると、この
会社は我が輩が
監査した結果、要するに正規の簿記の原則に基づいて記帳をしておる、同時に、正味財産額と財政状態と所得額、この
三つについて、真実かつ公正なる見解を表示したものと認めるというふうに書けと書いてあるんです、
商法上。そういう文句は、この点について真実かつ公正なる見解を表示しているものと書けというのがドイツ
商法の場合は十三カ条ございます。そこで、なるほどなと感心したんです、私は。ところが、イギリス
会社法を調べてみて驚いた。イギリスの場合は、なるほどツルー アンド フェア ビューの原則というのは一カ条です。一カ条ですけれども、それは
法律が一カ条であるだけなのです。いわゆる政令としては三十七本出ている。実に詳細に、ここは真実かつ公正な見解を表示しているのか、ここは真実かつ公正な見解を表示しているのかというその
項目、三十七
項目あります。たまげた数です。私はそういう点を見て、やはり
中野先生、政審
会長だなと思いましたのは、実はほかでもない、
EC対策という角度で考えなければいかぬ。えらいことですから。
それからなお、先生おっしゃいましたね。どのくらいの頻度で、どのくらいの多角性を持って、どのくらいの分量で
ECの
指令が出ているのかとおっしゃいましたね。実は私もそれは調べてみました。一九五二年、
ヨーロッパにおいて初めて石炭鉄鋼共同体というのが生まれた。一九五二年です。その当時は一年間に二通か三通でした、あの
指令は。ところが、御
承知のように一九七八年からは
EC第四号
指令が出て、
会社法全体が、おまえ
たち直せ、統一しろという
指令が出ちゃって、それでやっていますね。その当時から、だから七八年ごろから今日まで約二十年弱、この間物すごい勢いで
指令が出ております。それは、先生はどの程度の頻度でとおっしゃったけれども、私はおととし一九八八年の
ECの
指令は一体何本出ているのかということを調べてみたんです。そうしたら、一年間に千四百八十七本出ておったですね。つまり、一日当たり四本以上出ているんですよ、休みもなしに。いや、これはすごいなと本当にそう思いまして、私は去年、実は
ECの本部に参りまして調べてみた。調べてみて驚いた。なるほど、これはすごい。十二カ国から役人が七千名、ブラッセルの
EC本部に集まっている。そして、そのうち五千名は翻訳官、あとの二千名は政策担当。だから、大体一カ国から五百人ぐらいの役人を送り込んでいる。まことに
各国とも総ぐるみですよ。総力戦ですよ。そういう形でやっている。したがって、一年間に大体二千通からの
指令、統一
法律をつくれという
指令が出ているんですから。では、全部でどのくらいあるだろうと思って調べてみた。そうしたら、一九五二年から今日まで大体七千五百種類ぐらいの
指令が出ておりました。いや物すごいです。しかも、ここで先生は、頻度ばかりでなく、どのくらいの多角性とおっしゃったけれども、つまり、多角性は生活のあらゆるところに及びます。恐らく、各家庭におけるベッドの中の行動を除いて人間生活全部だと思います。驚くべき多角性を持っております。もう医者なんかについても物すごいですよ。
日本の医師法のようなああいうだらけた医師法はないですね。ないです。もっときちっとしていますよ。
そういういかなる方向に国民を引っ張っていくか、それは一にかかって
国会の
先生方の任務であるというふうに私ども見ておるのでして、我々がやはりその意味では、
先生方を尊敬申し上げるのはそこから来ているので、我々の運命に対する指導者であり、運命に対する
責任を持ってくれる方だ、こう思っていますから。そういうことですよ。
大体それで、先生がお話しになったことの……。