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1990-05-30 第118回国会 衆議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年五月三十日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 小澤  潔君    理事 逢沢 一郎君 理事 大塚 雄司君    理事 熊谷  弘君 理事 小澤 克介君    理事 小森 龍邦君 理事 中村  巖君       木部 佳昭君    久間 章生君       鈴木 宗男君    古屋 圭司君       簗瀬  進君    渡瀬 憲明君      宇都宮真由美君    鈴木喜久子君       山花 貞夫君    平田 米男君       冬柴 鐵三君    木島日出夫君       中野 寛成君    徳田 虎雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 長谷川 信君  出席政府委員         宮内庁次長   宮尾  盤君         法務大臣官房長 井嶋 一友君         法務大臣官房司         法法制調査部長 濱崎 恭生君         法務省民事局長 清水  湛君         法務省刑事局長 根來 泰周君         法務省人権擁護         局長      篠田 省二君         法務省入国管理         局長      股野 景親君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第二課長   増田 生成君         警察庁警備局外         事第一課長   石附  弘君         最高裁判所事務         総局経理局長  町田  顯君         最高裁判所事務         総局刑事局長  島田 仁郎君         最高裁判所事務         総局家庭局長  山田  博君         法務委員会調査         室長      小柳 泰治君     ───────────── 委員の異動 五月三十日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     鈴木 宗男君   中野 寛成君     大内 啓伍君 同日  辞任         補欠選任   鈴木 宗男君     江崎 真澄君     ───────────── 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ────◇─────
  2. 小澤潔

    小澤委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所町田経理局長島田刑事局長山田家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小澤潔

    小澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。      ────◇─────
  4. 小澤潔

    小澤委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木喜久子君。
  5. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 本日は、ことしの五月六日に発生した在日朝鮮人三名に対する外登法違反について、逮捕勾留、また捜索押収されましたその件について、いろいろと伺っていきたいと思います。  五月の六日に外登法、中身については八条一項に当たるのですが、居住地変更登録申請の懈怠ということについて、早朝に、まず本人本人の妻、妹、その三人が逮捕され、そして都内八カ所だと思うのですが、捜索押収をされたというふうな事件があったわけでございますけれども、まず、その事件の経過について、警察庁の方から伺いたいと思います。
  6. 石附弘

    石附説明員 お答えいたします。  本事件は、警視庁公安部が本年五月六日の日でございますが、在日朝鮮人三名を外国人登録法違反容疑、これは先生指摘の第八条第一項でございます、居住地変更登録申請容疑逮捕する一方、被疑者らの居住地及び勤務先等計八カ所に対して捜索実施したものでございます。各被疑者につきましては、五月七日に東京地検に送致し、五月十五日に同地検から略式起訴された後、同日東京簡裁におきまして罰金十万から十五万円の命令を受けたものと承知しております。  以上でございます。     〔委員長退席熊谷委員長代理着席
  7. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 この事件の発端でございますけれども、一体どういうところからこういった強制捜査端緒というものがあったのでございましょうか。
  8. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  捜査端緒につきましては、その詳細を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、この端緒を得ましたのは比較的最近のことでございます。それで、所要の捜査を進めました結果、本件の場合には、この法の趣旨にかんがみて看過できない悪質な事件ということで強制捜査に踏み切ったものでございます。
  9. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 私が聞きましたのは、一番最初の端緒は何かということを伺ったわけでございます。これは、例えば入居先の大家さんからの知らせがありますとか、それからこれは居住地変更登録の不申請ということでございますので、その居住を所管しています区その他の役所の方からの何かの通告があったとか、そういうことなのでございましょうか。
  10. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  一般に、犯罪ありと思料すれば警察捜査を進めるわけでございまして、どういう端緒、きっかけによって捜査を進めていくかということにつきましては、詳細を申し上げるわけにまいりません。
  11. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 それはちょっとおかしいのじゃないかと思います。ここでは、外国人登録事務取扱要領というものの第六項というところに、この種の事件につきましては、ここは居住地を管轄しておりますその区の方からの告発によらなければならないというような規定があるように聞いておりますが、その点いかがでございましょうか。
  12. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  一般に、外国人登録法違反事件捜査につきましては、これは必ずしも自治体の告発を待って行っているわけではございません。事案態様あるいは悪質性等、それぞれの個々の事案内容によりまして独自に警察としては捜査を行っておるものでございます。  今回の事件も、長期間にわたり親族間で共謀して意図的に居住地変更登録を行わなかったということでございまして、これは法の趣旨にかんがみて、外国人居住関係あるいは身内関係を明確ならしめるという同法のまさに法の根幹にかかわる悪質な事案であるということで判断いたしました。その結果、強制捜査を行ったわけでございます。
  13. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 今私は、外国人登録事務取扱要領第六項という規定によってやるのではないかと伺ったのですけれども、それでやらないということのお答えに伺ってよろしいのでしょうか。
  14. 石附弘

    石附説明員 先生の御指摘の点、私どもも詳細よく承知しておりませんが、我々はあくまでも外国人登録法法違反というものがあればそれぞれ法の趣旨内容に基づいて、かつ犯罪態様に基づいて捜査を進めていくわけでございます。
  15. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 取扱要領御存じないというふうな、大変驚いた答えでございます。外国人日本人問わず、処罰するための身柄を拘束し、またそのためのいろいろと財産権まで及ぶような形で差し押さえ等々をなさるわけですから、そのときに、こうした外国人登録事務取扱要領というものについての詳細を御存じないということは、捜査当局としては非常に大変な怠慢だと私は思います。この点よくお調べになって、今の質問の間にその点についてどうなのかということのお答えをいただきたいと思います。時間が限られておりますから、どうぞよろしくお願いします。
  16. 石附弘

    石附説明員 先生の御趣旨の点、今調べまして、後ほどお答えいたします。
  17. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 では、よろしくお願いします。  この犯罪について、非常に計画的であるとか悪性があるというふうなお答えがあったのですけれども、もしこういう場合に居住地変更についてまだ不申請であるということであれば、本人に注意を促してそこで是正すれば足りるということではないでしょうか。ただそれを黙っていて、そしてそこで急に不意打ち的な強制捜査を行う、これは余りにも人権を無視したものではありませんでしょうか。
  18. 石附弘

    石附説明員 お答えいたします。  一般的に居住地変更の場合の不申請事案捜査当局として常に強制捜査を行っているということでは全くございません。一般的にはまさに軽微な場合も多かろうと思います。  本件の場合は親族の方が共謀して、これは九年間でございますが、三千余日にわたって必要な登録を行わなかった。また、その間一回切りかえの時期がございましたが、その際にも行わなかった。これは極めて意図的なものでございますが、そういう意味で非常に悪質な事案、こう判断いたしまして、かつ親族の共謀ということもこれあり、かつその動機、目的等の解明の必要がある、こういうことで強制捜査に踏み切ったわけでございます。
  19. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 九年間とおっしゃいますけれども、先ほどの捜査端緒のところで伺いましたのは、つい最近になってその事実を知ったとおっしゃいました。そのつい最近になって事実を知ってから、そのときに九年ほど前からであるというような事実というのは、実際問題こういう居住の場合にあり得るのでしょうか。そこからずっと九年間こうであったということは、初めの時点から捕捉していないでどうやってわかるのでしょうか。
  20. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、この件につきましてはつい最近端緒を得たものでございます。しかしながら、捜査を進めていくに従いまして、極めて長期間にわたって居住地変更登録をしていないということがわかりました。その間九年ということで、我々の捜査の結果出てきた数字でございます。
  21. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 大変おかしな説明だと思いますが、理解しがたいところがありますが、このことについては、またもっとおかしくなってくるのは、これほど重大であり悪性があるというふうにおっしゃりながら、この中の逮捕された三名のうちの二名は勾留ということなく短時日で釈放されております。これほど、そのような釈放ということをすぐするような罪について、こういったそもそも逮捕をするような必要というものがもともとなかったというふうに考えるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  22. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  今、すぐ釈放されたからおかしいのではないかという御指摘かと思いますけれども、これは今回三名逮捕をいたしましたが、それぞれの被疑者の今回の場合の犯罪における役割等々それぞれ違いますので、我々の捜査目的が遂げられればまず、また検察官の判断によって釈放ということであろうと思います。
  23. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 それでは、この一名の残った勾留という、本人になりますか、その者ということになるのですが、この勾留については、そうした犯罪役割とおっしゃいましたけれども、そういうものがこの中では明らかにならなかったのでしょうか。そして、この結末というものは十五日にもう既に略式ということでついているというふうに聞いておりますけれども、そうしますと、いずれをとりましてもかなり軽微な事件であったということは間違いがないと考えられるのですが、いかがでしょうか。
  24. 石附弘

    石附説明員 お答えいたします。  先ほどお答えいたしましたように、それぞれの被疑者立場なり役割なり犯罪への関与、そういうことを総合的に、また捜査、つまりこの事件を検察庁へ送致するに当たり、またその後の捜査手続を進めるに当たり、どの程度証拠が得られたかというようなことを総合的に判断いたしまして、個々具体的に処分が決まっていくものというふうに承知しております。
  25. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 それではちょっと裁判所に伺いたいのですけれども、といいますのは、令状発付請求について、どのくらい最近棄却率というものがあるものか、それを伺ってみたいと思います。  これは、逮捕そしてまた勾留という身柄の問題も、それから捜索差し押さえというようなものについても、いずれについてもどのような形で発付請求がされ、それについてそれが棄却される率があるかということ。これは、近ごろ私などが弁護士をしておりまして、数少ない経験でございますけれども、非常に安易にそういう令状というものが発付されるのではないかというふうに考えられますので、この点お答えいただきたいと思います。
  26. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 平成元年について統計を見ますと、逮捕状につきましては、地方裁判所簡易裁判所合計いたしまして、通常逮捕状請求人員数が十万三千五百九十人であります。このうち却下されたのが五十二名あります。ただ、このほかに請求自体が取り下げられたもの、これはまあ我々は実質的に却下と同視することができるというふうに思っておりますが、この取り下げられたものは二百二十九人あります。この却下及び取り下げ、これを合計いたしますと、実質的な却下率が〇・二七%になります。  それから勾留の方でありますが、平成元年における勾留請求人員数が八万一千九百十六人であります。勾留状発付された人員はそのうち八万一千六百四十一人、却下された人員が二百六十一人であります。却下率は〇・三二%であります。取り下げ率を含めまして〇・三四%となっております。  それから、先ほどおっしゃった捜索差し押さえ関係でございますけれども、これは検証許可状もまとめて統計上集計しておりますので、捜索差押並びに検証許可状について、地方裁判所及び簡易裁判所合計で、令状請求された人員が十一万一千五百五十一名、このうち却下されたのが百二十六人、請求が取り下げられたものが八百五十一人です。却下率取り下げ率を合計いたしました実質的な却下率は〇・八七%となっております。
  27. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 どうもありがとうございました。  これを見ますと大変驚くべき、却下されることのない数字というのは非常に大きいものだということがよくわかります。〇・三%前後というところでしか却下されない、それほどに、裁判所というところは私もぅ少し実質的ないろいろな審査というものをされるのかと思ったのですが、まあその結果になるのか、またこの趨勢というものについてもう一度伺いたいんですけれども、例えば十年前、二十年前というものと比べますと、その却下率というのはだんだんと減っているのでしょうか、それとも多くなっているのでしょうか、その点も一応参考までに伺いたいと思います。
  28. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 私ども、過去の逐年と詳細な比較はいまだしておりませんが、しかしおおよそのことを申し上げますと、ここ十年ほどは先ほどの実質的な却下率においてはほぼ変わっておりません。二、三十年前と比べると、かなり減ってきておるという事実がございます。  この理由でございますが、大まかに言いますと、例えばかつては学生事件等が多くて、そのような場合には逮捕必要性、あるいは逮捕はしても勾留必要性までは認められないような特殊なケースがかなり発生しておったという事実が一つございます。それがここ十年ぐらいは鎮静してきて、そのような事案はなくなった。片方において、この十年ほど前から覚せい剤等事件が非常に増加してきております。委員承知のように、こういった覚せい剤等のたぐいの事件につきましては、一般論として言えばやはり逮捕勾留必要性が多い事案が多数を占めておるということがございます。  それからもう一つは、裁判例がおいおい集積してまいりまして、実務が定着してきている。そうすると、基準が大体安定してまいりましたので、捜査官側もこの程度であれば却下される、この程度ならば令状発付される、その辺の見通しがかなり確実にできるようになってまいりました。それとともに、請求の段階で十分絞りをかけて請求してくる、こういうことがございます。こういった理由が幾つか相重なって、二十年、三十年前に比べればここ十年ほどは少し率は下がってきておる、こういうことは言えると思います。
  29. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 決して裁判所のいろいろな審査にけちをつけるわけではございませんけれども、今回の場合について言いますと、今のようなお話の中で考えましても、やはりどうしても〇・二七、〇・三二%の中に入れていただきたかった事案ではないかと思います。  今回の捜索逮捕という問題につきまして、捜索の方について言いますと、五月六日にとりわけ大変な捜索がございました。北区にあります東京朝鮮中高級学校という学校警察官がバス七台、そして武装した警官等々が百何十人ぐらい、百人余りと言った方がいいんでしょうか、そのぐらいの数の警官学校を取り囲んだ。五月六日というのは連休の最後の日曜日でございまして、宿直の教師しかいない早朝にそこを取り囲みました。クラブ活動等で休日にも登校してくる生徒たちがあったのですけれども、それを学校に入れないという形で、入る、入らないという小競り合いも起こったりするほどの大がかりな捜査陣をしきまして、そこで今言いました軽微な略式命令で終わるほどの事件についての捜索差し押さえを行ったわけでございます。これはどう考えましても非常な行き過ぎではないかと思います。これはただ単にその被疑者身内証拠を集めるということだけではなく、学校事務にかかわります給与台帳を持っていかれましたり、また子供たち父兄たちに非常に大きな心理的な打撃を与えたものと思われます。  このほかにも、新宿池袋などの場所捜索されたときにも、無人池袋事務所の中に黙って入る、また新宿におきましては、宿直の者がいるにもかかわらずかぎをあけまして、中の電動のシャッターを無断であげる、そういった形で捜索差し押さえを行おうとしている。こういう形というのは非常に許せないものだと私は考えます。この点で住居の不可侵というものを侵しているし、適正手続保障という憲法の条文からいいましても、何人にも与えられている保障を侵すようなこういう捜索捜査のあり方というものは、これからも非常に反省していただかなければならないと思います。  とりわけこの問題に関しましては、外登法と言われているものの中で、昭和六十二年に衆議院の法務委員会改正案に対する附帯決議があります。外登法等々のいろいろな「違反等に関する規定運用に当たっては、濫用にわたることのないよう、常識的弾力的に行うこと。」という附帯決議がついております。また、昭和六十二年九月四日の法務委員会の議事の中で、社会党の小澤議員の方からの質問とそれに対する遠藤法務大臣回答があります。こういった各種申請の遅延に対する刑罰に関して、公訴権運用においては、第一線の検事さんが実際には処分をすることになるわけですけれども、適切な御指導をいただけますかどうかという問いかけに対して、遠藤法務大臣の御答弁ということで、この外国人登録というものは処罰をするのが目的ではございません。登録の正確さと登録者の快適な生活を期していきたいということが我々としての希望でございます。そういうふうな点で、運用の面に当たっては柔軟な姿勢でやるということで、これは国家公安委員長からの御発言もあったということで承知している。ですから、適切妥当な処置を行うものであると信じておりますというような御回答をいただいているわけでございます。  それにもかかわりませず、今言いましたような、まず身体の拘束というような、不当とも言えるような形をとり、その上にこの学校捜索、また無人あるいは有人でありましても無断で入る等等捜索押収の仕方というものは、国会における議論を全く無視した、踏みにじった警察当局やり方ではないかと私は考えます。この点について警察庁はどのようにお考えでいらっしゃいましょうか。     〔熊谷委員長代理退席委員長着席
  30. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘国会における附帯決議また当時の国家公安委員長発言は我々十分承知しておりまして、まさにそのように法の運用を図っておるわけでございます。例えば昭和五十九年、不携帯違反というのは二千六百七十四件ございましたけれども、平成元年におきましては二百三十一件ということで、検挙件数は約十分の一に減っております。これは、現場的な措置といたしましては従来は検挙強制、任意を含みますが、そのような措置をとっていたもののうち、特に軽微なものあるいは常識的、弾力的に運用すべきものにつきましては、警告処分あるいは始末書処分というようなことで運用を図っておるわけでございます。反面、この法の趣旨にかんがみまして、悪質なものあるいは違法性の高いものにつきましては、やはりこの法を前提に検挙せざるを得ない、また、していかなければならないというのが警察立場でございます。  そこで、今お尋ねの学校捜索ということでございますが、学校教育の場であるということは我々も十分承知をして、かつそのような捜索やり方をしたものでございます。  まず、この捜索理由でございますが、これは被疑者らの居住関係あるいは身分関係等を解明するために、東京朝鮮中高級学校というのが被疑者らの勤務地、また朝鮮総連の新宿支部事務所というのは被疑者らの前勤務地ということでございまして、こういう箇所を捜索することによって、この各被疑者個人に関する書類等、立件上必要な証拠を収集するために必要があるという判断をしたわけでございます。もとより、これらの場所に対します捜索というものは、捜査上の必要により裁判官の発付によります令状に基づきまして適正な手続にのっとって執行されております。  それから、クラブ活動云々というお話でございますけれども、また機動隊の数を挙げての御下問でございますが、この学校捜索実施に際しましては、現場における混乱を防止するために適正かつ必要最小限度措置ということでございまして、同校正門付近機動隊を配備したものでございます。現実に、この日捜索が始まりますと、現場周辺に人が集まってくる、また学校関係者多数、これは百数十名でございますが、抗議活動もございました。そういう実力行使あるいは混乱ということによりまして、現場混乱を防止する責務がございますが、そのために機動隊を配置したということで、御理解をお願いしたいと思います。  それから、この捜索実施に当たって、先ほど教育の場であるということを我々十分念頭に置いてということを申し上げましたが、これは授業のない日曜日という日を選んで、かつ非常に冷静に捜索活動に当たっておる、かつこの捜索実施支障のない範囲内で学生あるいは教職員の方を校内に入れて、クラブ活動等支障のないように配意したということも御理解をいただきたいと思います。
  31. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 大変不満お答えだと思いますけれども、この点については、まずどうして人が集まってきたかという点をお考えいただきたいと思います。それだけの物々しい、七台もの車がとまって、武装して盾やら何やら持った警官が百何十人も来れば、どんなときだって人は集まってきます。それを予想して、混乱を避けるためにそれを集めたというのは非常に論理逆転も甚しいものだと思います。そういうふうな挑発的な行動をとったのはどちらの側にあるかということをよくお考えいただきたいと思います。この点につきましては、何も、もし日本人学校で同じようにこのような略式命令で片のつくような犯罪について学校にいかなる証拠があるという場合に、そこにこういう物々しい警戒陣をしいて、しかもそこに人が集まってきたというのは自分たちが寄せ集めたのと同じだと思うのですけれども、そういうのを集めてまでこういう形で学校捜索するというようなことがおありなのでしょうか。そうなりますと、私たちこれから法治国家として安心して警察というものにこれからの捜査をお任せすることができなくなると思うのですが、この点いかがでしょうか。
  32. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  学校と申しましてもいろいろございまして、例えば日本人の、これは大学の場合でございますが、平成元年中、九校につきまして大体二十六回ほど機動隊の出動、計約二千名でございますが、そういうことで、要するに必要があれば、かつ現場混乱必要最小限度におさめるという警察の責務、これは当然のことでございますが、果たすために必要な措置をとるということでございます。
  33. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 必要があればとか、そしてそこに人が集まってくるのは想像がつく場合であってもやるかどうかということ。今回の場合には、これは中学校と高校ぐらいのところが生徒が入っているところであります。大学の場合とはまた場合が全く違いますし、このような形というものはこれから今後一切とっていただきたくない、これを何とか、こういうふうな形でいつもやられるということがあっては大変たまらないことだというふうに思います。  このような同様の、住居について不申告であったということで、昭和五十九年の八月二十六日、埼玉県の川口市でやはり、このときには身柄の拘束ということはなかったのですけれども、捜索押収がなされた事件がございます。この件に関しましては、日本弁護士連合会の方からも人権の侵害ということで各警察あてに警告書また勧告書というものが出て、二度とこういうことのないようにということを強く警告しているわけでございますけれども、その事実は御承知でいらっしゃいましょうか。
  34. 石附弘

    石附説明員 お答えいたします。  手元に資料がございませんので、承知しておりません。  それから、先ほど先生のお尋ねの外国人登録事務取扱要領の第六項の件でございますが、これは市区町村長が外国人登録事務の執行に当たって外登法違反の容疑があると思料するときは、次の(2)に掲げる場合に該当するときを除き、以下の措置をとらなければならないということで、いろいろ書いてあるわけでございますが、これはあくまでも市区町村に対しまして、この登録事務の執行に当たっての外登法違反の事実を知りたときに市区町村に対します義務規定でございます。捜査機関がどう捜査するかということについての規定ではございませんので、念のため申し上げます。  それから捜索差し押さえの件でございますが、こういう捜索実施に際しまして、捜索実施場所あるいはその付近において、この捜索実施のために必要な範囲内で出入り禁止措置等とることができることにつきましては、刑事訴訟法あるいは各種判例等から見て明らかでございます。  それから朝鮮総連の関係につきましては、これは新潟県警が検挙した事件でございますが、在日朝鮮人商工連合会の幹部によるココム違反事件というのがございました。これは六十三年の九月二十七日でございますけれども、この際におきましても朝鮮総連側の大変激しい抗議活動があったということで機動隊を配置しておるわけでございます。
  35. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 できればこれらの問題については、警察庁の警備局長お答えをいただいた方がよかったというふうに私は思っているのですけれども、その点はもうしょうがないと思うのですが、そういった、法律がこうでありますからこうでございますというような答え方ではなくて、もう少し心のこもったお答えというものをいただきたいと思います。違法でなければ何をやってもいいということではないと思うのです。特にこのような問題に関しましては、もともとのこの刑罰そのものが、日本人が住民票についての申請というものを怠った場合というのが単に二千円の過料だけという行政罰で済んでいることと比較しても、刑罰自体に非常にもう差があるということはこの立法過程の中でも大変問題にされた点で、だからこそこういう形で附帯決議というものがつくぐらいのものでございます。こういう中で、それであるから構わない、こういう法律があるから構わない、こうであるからこのような形での捜索はできるのであるというようなことでやられたのでは、これから我々は安心してだれも暮らしていけないし、そして今、日韓、日朝の問題というのは非常に微妙な、ある程度明るい兆しが見えかけるかなというような時期に差しかかっているときでございます。このようなときにこうした問題を、本当にただ単に略式の罰金で済むというような問題にかこつけて、こうした大々的ないろいろな形で人の心というものを逆なでするようなこういった事件は二度と起こしていただきたくない。この点につきまして、法務大臣どう考えておられますか、一言だけお願いいたします。
  36. 長谷川信

    ○長谷川国務大臣 内容が刑事事件内容にわたっておりますので、法務省の刑事局長来ておりますので、まず刑事局長から御説明させていただきます。
  37. 根來泰周

    根來政府委員 ただいま具体的にいろいろお話がございましたが、具体的な案件はともかくといたしまして、適正な法執行に努めているところでございますし、また将来も努めていくつもりでございます。
  38. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 何かわからないお答えなんですけれども、これから先こういった問題のないように厳重に御指導よろしくお願い申し上げます。そして、警察庁の方にも強く申し上げます。もう二度とこういうことを起こしませんように、そしてこういった形でまた国会で同じような質問をするなどということのないように、これから先よろしくお願い申し上げます。  時間がありませんので、次の問題に移らせていただきたいと思います。  刑事補償法の問題でございますが、刑事補償法一条によりますと、無罪を受けた被告人に対しまして被疑者の段階から刑事補償が行われるわけでございますけれども、この問題について、少年の場合どうなるかということについて法務省に伺いたいと思います。
  39. 根來泰周

    根來政府委員 少年事件は、捜査当局が把握しましてこれを家庭裁判所へ送致するわけでございますが、御承知のように、家庭裁判所で刑事処分相当という逆送決定がございましたら、検察庁の方でこれを捜査いたしまして刑事裁判にのせる、こういうことでございます。その刑事裁判のときに無罪になりましたら、刑事補償法の適用がございます。  ところが、少年について、家庭裁判所に送りまして家庭裁判所で要するに不処分あるいは審判不開始になりましても、刑事補償の対象にはなりません。
  40. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 この刑事補償の対象にならないという中身を見ますと、どういう形で、どうしてこの形だけは刑事補償の対象にならないのでしょうか。
  41. 根來泰周

    根來政府委員 これは先生も十分御承知のことと思いますけれども、刑事事件というのは、俗な言葉で言いますと、シロクロをつけるわけでございます。したがいまして、シロになりました場合にはさかのぼってそのシロになった事件身柄拘束について補償しよう、これは日額幾らということでございますが、そういうことでございます。ところが、少年事件というのはシロクロをつけるという性格のものではない、要するに保護処分をするかどうかということでございますから、シロクロというのは前提としてないわけでございます。したがいまして、刑事補償の前提とするシロクロをつけるという前提要件を欠くものですから刑事補償の対象にはならないというふうに、俗な考え方でございますが、そういう理解であります。
  42. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 処分なしという家庭裁判所手続の中で、少年法の問題でいきますと確かにシロクロはなしといいますが、中身として少年がやっていないということを争って、やった形跡がないからというふうな理由処分なしとなった場合には、これはまさに無罪と同様の内容を持つものではないのでしょうか。
  43. 根來泰周

    根來政府委員 したがいまして、それは事実上の話でございまして、法律的にはシロクロということではないわけでございます。昭和五十二年に法制審議会の答申がございましたけれども、これも十分御承知のことと思いますが、そういうことを踏まえましてやはり非行事実なしという主文をつくったらどうかという御提案がありました。そしてまた、この家庭裁判所の保護処分というのは家庭裁判所が職権的に行うものですから、そのときに当事者として検事も参画したいということで法制審議会の答申があるわけでございます。そういう法律制度が改正になりますと、あるいは御主張のような刑事補償も考えてもいいことではないか、こういうふうに考えております。
  44. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 これについて法務省としては、こういう法改正という形でのお考えというものがあるのでしょうか。
  45. 根來泰周

    根來政府委員 先ほど申しました少年法の改正については相当各方面からの反対がございまして、せっかく法制審議会の御答申がありましたけれども国会上程には至っていないわけであります。先ほど申しましたように、こういう少年法の改正がありましたらまたその刑事補償の検討も当然すべきものと思いますけれども、現行制度の建前の上では、刑事補償というのは全く考慮の外だと考えております。
  46. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 少年法の場合には、身柄の拘束についてはほとんどの場合に鑑別所にまず最初に送られて、そこで処分をされるということではなく通常の成人と同様に警察等の勾留ということで日にちを過ごし、その上にまた鑑別所に入って身柄を拘束されて三週間ないし四週間いるという形をとられます。身柄の拘束という点からいいますと、成人よりも長い間審判までの間あるということになってしまいます。そして、内容につきましても警察にいる間はほとんど成人と同じような扱いを受けているわけでございまして、これが保護処分ということが考えられる場合はそれでも改善という形、少年法の精神にのっとった形ができますけれども、これがそうではなくて無罪である、やってない少年に対してこのような形をいつまでもとって、しかもその後に刑事補償的な補償は何もないというのは非常に片手落ちであり、少年にとって不幸なことではないかと思います。この点をぜひとも今後ともお考えいただきたいと思います。  これで終わります。
  47. 小澤潔

    小澤委員長 御苦労さまでした。  小森龍邦君。
  48. 小森龍邦

    ○小森委員 先ほどの鈴木委員質問に多少関連をいたしまして、私のきょう予定しておりました本論の前に若干のことをお尋ねをしておきたいと思います。  実は、先ほど来問題になっております東京朝鮮高中級学校ですか、その関係者逮捕勾留に絡みまして、私も若干のことを調べてみました。そうすると、関係八カ所のうちの一カ所であります生活相談所の捜査に際しまして、いろいろ現地も見させてもらったり事情も聞かせてもらいまして驚いたのでありますが、捜索する場所関係者に連絡をせずに、捜査令状を持っているから適正だということで突っ張ろうと思うのだろうと思いますけれども、連絡もせずに参りまして、そしてかぎ師を連れていって、そのかぎ師にあげさせて、明くる日出勤した者が何か事務所ががたがたとしておるからこれはどうしたのかな、机をあけてみたらあるべきものがないので、ここも捜索されたのかというようなことが後で気づく、そういう公権力の乱用といいますか、そういう形で行っているということを私は調査をして知りました。これはこういうことに道理はなると私は思うのですね。最近、警察官の不法行為があちこちで起きておりまして、強盗をする者がおるし、強姦をする者がおろし、それから拾得物だといって届け出れば、それを猫ばばをする警察官もおります。もし数名のギャングが警察官に類似した服を着ていきまして、そしてがたがた捜索をしておって、関係者が見ても警察官がやっておるのか、通常ああいうことは警察官がやるのだということになったら、これはそういう意味でまた新たな犯罪の芽が出てくると私は思うのです。そういうでたらめなことを、いかに捜索令状があるからといって、調べる場所について関係者を探してちょっと立ち会ってくれ、なぜこうならないのか。私は法律的には素人でありますけれども、例えば憲法の条文だけとってみても、権限を有する司法官憲が発し、捜索する場所及び押収する物を明示する令状によらなければならぬ、私はこうなっておると思うのです。そうなれば、それは原則として当事者にそのことを捜索する場合に見せて、そしてこれは正当な権力の行使ですよということを明らかにしてやるのが当たり前だと思いますが、そんなことをやっておったら新たなギャングなんか出てきませんか。警察当局の答弁をお願いします。
  49. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  まず、事実関係でございますが、東京同胞生活経営相談所事務室の捜索の関係でございますが、実は、ここのかぎにつきましては被疑者の千さんという方から我々お預かりをして、そのかぎをもって解錠をいたしましたので、御理解をいただきたいと思います。  それから、立ち会いでございますが、これは公務所、つまりその日につきましては消防署の職員の方にお願いをして、法により適正に実施をしております。
  50. 小森龍邦

    ○小森委員 ちょっと聞こえにくかったのですが、だれに立ち会ってもらったですか。
  51. 石附弘

    石附説明員 消防署の職員の方でございます。
  52. 小森龍邦

    ○小森委員 なぜ消防署の職員に立ち会ってもらって、当事者たちあるいは当事者により近い者に立ち会ってもらわなかったのですか。
  53. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  刑訴法の百十四条でございますけれども、捜索差し押さえの場合、人の住居あるいは人の看守する邸宅とか建造物におきまして捜索令状を執行する場合には、「住居主若しくは看守者又はこれらの者に代るべき者をこれに立ち会わせなければならない。」ということが前文で書いてございます。後文に「これらの者を立ち会わせることができないときは、隣人又は地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。」こういうことでございまして、この法によりまして適法に捜索実施を行ったということでございます。
  54. 小森龍邦

    ○小森委員 最大限に法律の一番隅を警察は歩くんですかね。だったら、当事者に連絡して、立ち会ってくれということを拒否したんですか。そこを答えてください。
  55. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  当日の状況でございますが、先ほど申し上げました所長の千さんでございますが、別の場所捜索の立ち会いをしておられました。したがって、この場所での立ち会いということはできませんので、それにかわる者ということで、先ほど御説明を申し上げましたような経緯になったわけでございます。
  56. 小森龍邦

    ○小森委員 先ほどの鈴木委員質問に対しても小出し小出しでしか答えないが、千さんが他のところに立ち会っておったということになれば、あの事務所には数名の事務員がいるわけでしょう。数名の事務員のうちのだれかが立ち会うことの方が、万やむなく地方公共団体の職員に立ち会ってもらうよりは、より法の精神に合致するわけでしょう。なぜそれをやらないのですか。
  57. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  当日の状況は、まさに看守者、その事務所の責任者たる方は、そういうことで他の場所での捜索の立ち会いをお願いをしたわけでございます。我我現場捜査官とすれば、できるだけ早く捜索実施を終了させたいということでございまして、先ほど御説明いたしましたような法により、正当な手続をもって消防署の方に立ち会いをお願いしたわけでございます。
  58. 小森龍邦

    ○小森委員 警察が権力のあるに任せてそういう辛うじて答弁のできる道を歩めば、日本の警察はますます信用を落とすだけです。幹部がそういうふうな弁解を国会でするようだから、強盗、強姦、猫ばば事件、むちゃくちゃなことが起こるでしょう。あなたがそういうふうなことを言われるなら、警察の最近の綱紀の緩みは何が原因か、あなたはどういうふうに理解されておりますか。
  59. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  今先生警察の最近の綱紀の緩みということを、どういうことでそういうことを御指摘されるのかよくわかりませんが、警察としては、まさに警察法の精神、また趣旨にのっとりまして、国民の生命、財産の保持等々公共の秩序の維持に当たっておるわけでございます。誠心誠意やっておるということを御理解いただきたいと思います。
  60. 小森龍邦

    ○小森委員 言葉の上で何をもって言われるかわからぬと言って、あなたは新聞なんか読んでいないのですか。例えば堺西署員か南署員か知らぬけれども、あの猫ばば事件はどうなんですか。これは綱紀の緩みじゃないのですか。そしてあなたは、この今回の事件については逮捕勾留することが適法に行われたと言うて、なるほど法律的な、形式的な手続はとっておるでしょうが、魂はこもっていないのですよ。法の精神に基づいて人人の人権を守るという魂がこもっていないのです。だから、今まで強盗があり強姦があり、猫ばば事件があり、広島県では、おとなしい絵かきの青年をピストルで撃ち殺したという事件もあった。そういう一連の事件をあなたは綱紀の緩みと思わないのですか。どうしてそれで国民の権利を守っているのですか。もう一度答えてください。
  61. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のような一連の事故あるいは事件、これは警察の一員としてまことに残念であり、かつ、今後そのようなことのないように内部規律の引き締めを現在もまた過去においても行ってきたところでございます。先生の御指摘の点、今後とも慎重にまた十分に踏まえさせていただきまして、対内的な意味の引き締めを行いたいと思っております。
  62. 小森龍邦

    ○小森委員 私が尋ねておるのは、そういうふうなことを尋ねておるのじゃないのですよ。警察というものはいかにして民衆の生命、財産を守るか、警察があるから安心だ、こういうことにならなければならぬのに、警察官が普通最も極悪な犯罪だと思われるようなことを次から次へと起こす。その綱紀の緩みは、法の実際の適用の際にその法律の一番端っこを歩いて、ともかくも何とか国会でも答弁ができる一番端っこを歩いておるから、人々の生命とか財産を何とも思わぬ風潮があなた方の部下の中に出てくるのじゃないか、これを尋ねておるのですよ。だから、綱紀を締めるとか言うのだったら、みずから人権を守るという考え方で法律を運用したらどうですか。その点はどうですか。
  63. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  警察がその責務を行うために、法により、適正にその法の運用を図っていく、あるいは犯罪があればこれを捜査していくという部分のものと、それから冒頭先生が申されましたような警察の内部のいろいろなそういう事故、事件というもの、これはそれぞれに重要なことでございます。警察としては、先ほど心がないということを申されましたけれども、あくまでも法の趣旨あるいは目的、また個々の犯罪態様あるいはその内容等々総合的に判断しながら、十分に検討を加えて、法の運用を図っていくということでございます。
  64. 小森龍邦

    ○小森委員 日本の警察の一番悪いところは、自分らのやったことはなるべく陰の方へ隠して、そしてなるべく悪かったということを言わずに、そして自分らだけは、法律の幅がこれだけあるとすれば、そのときそのときの都合のよい一番こっちの端を使う、だから国民が警察に不信感を持つようになるのでしょう。私が住んでおるところは広島県だけれども、私の半径三里か五里の範囲内でも、市長夫妻が惨殺された事件とか銀行員の奥さんが殺された事件とか、みんな迷宮入りじゃないですか。国民に信頼される警察の態度というものが確立できなんだら、本当の犯人を逃がすじゃないか。きょう私はほかのことを尋ねようと思って予定しておったのだけれども、余りにもあなたの答弁が木で鼻をくくったような格好だから私はこうやって言っているのですよ。警察が信用されなくてもいいのだったらそのままで行きなさいよ。最近は警察の方が悪いことをしておるような感じじゃないですか。それをどういう事実で綱紀が乱れておるのかわかりませんがなんて、ようあなたもそういうことを言うたな。とにかくきょうは指摘しておきますよ。これからも機会があるたびに議論は続けますけれども、警察のああいう一連の犯罪というものは、綱紀粛正、言うて聞かすというだけではいかぬよ。幹部がみずから国民のために奉仕するということを実践しておって初めてぴしっと下まで筋が通るのですよ。いずれまた機会をとらまえて、このことでここの場で議論しましょう。  そこで、もうこれだけで余り時間もとれないので、朝鮮学校の問題に戻りますが、今回、盧泰愚大統領が来る前に、先ほど鈴木委員指摘したように、無理に逮捕勾留もせぬでも、そのくらいのことは立件しようと思ったらできると思う。逮捕はしなくても立件しようと思えばできるものをあえて逮捕したというのは、いや、裁判官の勾留令状をもらっておりますから適正です、それは純粋の法律論ではそうかもしれませんよ。しかし、法律を運用するあなた方と国政全般を議論する議員とのやりとりとしては通用しませんよ、それは。そうでしょう。結局、盧泰愚大統領が来るから、来られた本人はそういう気持ちは持っていないのに、日本の警察があたかも南北対立しておることにおべっかを使うような形でこういう事件でがありといったのじゃないですか。違いますか。八四年のときも埼玉でそういう事件があったでしょう。国民はそういうふうに見ますよ。しかし、盧泰愚大統領のこの間の国会の演説を聞いていると、そんなけちな考えは持っていないよ。前の全斗煥大統領のと相符合しておるじゃないですか。あの方が来られたときに埼玉をやった。そして、今度新たに大統領が来られることになれば、また警察はそういうことをする。どうせあなたは、いや、そういうことは因果関係はありませんと言うかもしらぬ。しかし、一度あることは二度ある。一度あることは二度あるということは、本質が現象するということですよ。言葉の上でごまかされても、国民の心までは欺かれませんよ。その点はどうですか。
  65. 石附弘

    石附説明員 お答え申し上げます。  犯罪の摘発というものは常にまんべんなく行われておるわけでございます。今回の事件の場合につきましても、先生指摘のような意図というものがあってのことではございません。今回の事件は、先般来御説明しておりますように、比較的最近認知をしたものでございまして、その端緒を得てから捜査を取り進めた結果、着手の時期がたまたま韓国の大統領の来日時期に近かった、こういうことでございます。捜査の着手の時期と申しますのは、専ら捜査上の観点から行っておるものでございます。警察の職務執行は、不偏不党かつ公平中正を定めた警察法の二条の趣旨にのっとりまして、関係諸法令に基づいて適法かつ適正に行っているということでございます。
  66. 小森龍邦

    ○小森委員 この前の埼玉で起きた事件外国人登録証の不携帯を理由逮捕した事件は、日弁連が違法な捜索だといって警察当局に対して警告を発しておるでしょう。それはあなた方から言えば、日弁連が言うのは勝手だと言うかもしらぬけれども、日弁連はかなり権威がありますよ。法律家ばかりの集まりですよ。その日弁連から警察が警告されるようなことをしているのでしょう。そして、先ほど私どものところの鈴木委員がいろいろ話したでしょう。あなたは先ほど木で鼻をくくったように、あれは何ですか。市区町村長が例の外国人登録法の関係のそれを取り扱うときの第六項のところをあなたは読み上げましたが、あれは市町村長に言うていることで、警察に言うていることではない。確かにそうですよ。警察に言ぅていることではないですよ。市町村長にそういうふうにしなさいということは、世間の一般の常識だったら、警察は一呼吸入れればいいのですよ。そういうことによって日弁連から警告されぬでもいいのですよ。警告されたって、これは法律的な強制力も何もないからあなた方は痛くもかゆくもないと思っているかしらぬけれども、それでまた日本の警察の威信が下がるのですよ。警察いうたら権力を使う。自分らの権力だと思っていたらだめですよ。国民共有の財産ですよ。国民が金を出してあなた方のところを運営してもらっているのですよ。それの信用が下がったら国民が損をするじゃないか。これからはそういうことをよく考えてやりなさいよ。  そして、外国の大統領が来たら、それは多少今も、現に三十八度線のところへコンクリートの大きな壁が四百何十キロ、あそこの朝鮮半島をまたいでいますから、私もこの目で北からも南からも見ましたから実感として持っていますけれども、対立があることは事実ですよ。しかし、北と南がいかにして仲よくしようかと思って、それぞれ朝鮮民族は自主的にいろいろ考えておるわけでしょう。そこへもってきて、ぱっとちゃりを入れるような日本の警察の動きが出たらどうなるのですか。私は、まことにこれは残念でなりません。よう考えておいてください。警察権力の行使ということについては私も思い当たる節がたくさんあるから、いずれまた、それだけ本論で一度お伺いしたいと思いますので、きょうはこの程度にしておきましょう。  では、続きまして、きょう私が予定しておりました本論に戻らしていただきます。  先般、盧泰愚韓国大統領が訪日されまして、非常に大きな日韓親善の成果が上がったように私は思っております。実はそこで一番大きな問題となりましたのは、韓国側は天皇に謝罪をしてもらいたいという話がございまして、そして韓国大使館の、日本におられる大使だと思いますけれども、政府首脳部にも面会を順次され、さらに自民党の幹部の方にもお会いになって切なる韓国民の考えを伝えられた、それはもう新聞に出ておりました。結局私は、人権思想の上で一番大事なことは、被害を与えた者が心から被害者に対しておわびをする、具体的な人間対人間の行動からするならば、これがまず人権擁護の始まりだ、そこが第一歩だと思うのです。そういう意味で今回の謝罪云云は、私とすれば人権の感覚で物を見たいというふうに考えますので、法務省あるいは宮内庁といったところへ考え方をお尋ねしたいと思うのです。  お尋ねしたい第一点は、我が国の憲法によると、第七条ですか、天皇は、この憲法に定める国事に関する行為のみを行う、天皇のすべての国事に関する行為には、内閣の助言と承認を必要とする、多少条文違うかもしれませんけれどもね。それで、結局謝罪というのは、謝罪をしたら国事に関する行為というて決めておるあの憲法の条文に反するということが新聞に政府のコメントとして出ておりましたが、これ、反するのですか。人間対人間の本当に素直な気持ちで、今の天皇からいえば先代の天皇の代に随分いろいろなことがあったわけでしょう。うちのお父さんの代にえらい申しわけないことしましたと言うて、これは普通の民間の素直な気持ちを持っておる者だったら、おやじがしたことでわしのやったこと関係ないんじゃと思うても、他人様に対してはそう言うのが道理だと思いますよ。それが基本的人権とか平和主義とか国際親善とかということをかたくかたく決めた日本の憲法からいうてできないのですか。ちょっとこの見解を法務省とそれから宮内庁とから聞きたいと思うのです。もちろん私もそれは、こういうことは法制局から聞くのが一番中枢部から聞くことになるというのは承知しておりますけれども、こういったことの運用についてはある程度その部署部署で基本的な見解というものを持っていなければなりませんから、そういう意味で法務省と宮内庁から聞きましょう。
  67. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 御質問にありましたように、天皇の地位というのは日本国憲法に定められておりまして、また、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」こういう明文の規定があることはお説のとおりでございます。  そこで、先般のように外国から国賓等がお見えになった場合に宮中晩さんというようなものをお催しになりまして外国からの賓客を御接待を申し上げる、こういう場があるわけでございますが、その場合に天皇陛下が国賓として来日をされました外国元首等に対しましてお言葉をお述べになる、こういうことがあるわけでございます。これはもう当然御承知のように来日をされました外国元首を接遇するというものでありまして、そういう立場からそういうお言葉があるわけでございます。これは専門的には私の方というよりも法制局の方からお答えをしていただくのが正しいかと思いますが、私どもが理解をしているところで申し上げますと、こういうお言葉をお述べになるということはいわゆる天皇の公的行為に当たる、こういうふうに言われております。そこで、その天皇陛下が国賓をおもてなしする場合に行われますお言葉、つまり公的行為というのは憲法に定められている国事行為ではありませんから、国事行為についてその憲法上定められておるような内閣の助言と承認という形で内閣が責任を負うわけではございませんが、公的行為そのものにつきまして、国事行為とはもちろん違う立場でありますが、そのお言葉については、その事務処理というのは当然行政に属するものと考えられますので、最終的には憲法六十五条により行政権の主体とされる内閣がそれについて責任を負う、こういうふうに言われておるわけでございます。そういう意味で、お言葉については内閣が最終的には責任を持つ、こういう立場で陛下は先般の晩さん会の場でお言葉を述べられた、こういうふうに考えておるわけでございます。
  68. 小森龍邦

    ○小森委員 高度な問題だから、法務大臣からお願いします。
  69. 長谷川信

    ○長谷川国務大臣 今委員お話しのとおり、今回の日韓関係の一連の、大統領を初めとしたそれぞれの御努力が非常に成果を生んで、立派な終結を見たということを私ども考えておるわけでありまして、韓国大統領にも、この席をおかりいたしまして、本当に敬意を表する次第であります。  ただ、この問題で、天皇陛下の御発言についてどれだけ法務省の権限があるかないかということでございますが、これは、私も法律の素人でございますし、勉強もしておりませんので、法務省が直接の関係があるかないかはちょっとわかりませんが、いずれにしろ法務省関係の幾つかの問題もありました。例えば指紋の問題だとか、さっき言ったような問題だとか、その他いろいろございましたが、それぞれの両国で円満のうちに、お互いに主張しながら円満のうちにその話が進んで、なお今後閣僚会議を開いてその進展に両国とも一生懸命いたそうということでございますので、本当に立派な成果を上げたと思っております。と同時に、韓国の皆さんにも心から敬意を表する次第であります。  法務省関係のことにつきましては、私もそれだけ知識もございませんし、その点ちょっと保留いたしておきます。
  70. 小森龍邦

    ○小森委員 今のところ、この時点では、宮内庁の答弁を聞いて、大体あれが政府の物の考え方だ、こういうふうに受けとめておきましょう。  そこでお尋ねをしたいと思いますが、天皇のああいう宮中での晩さん会でああいう発言があるのは、憲法の国事行為の条文の中の項目にないから国事行為ではない、これであそこから除外されるのですね。それでは何行為なんですか。公的行為と言うが、その公的というのは、国事行為も国政の行為もひっくるめて公的行為というふうに、私はそれの方が概念が大きいと思うが、単に公的行為と言うただけではいかぬじゃないですか。国事行為の中にはない、しかし公的行為だと言うのだったら、残った行為というのは国政に関する行為ですか。それならなおさらおかしくなるじゃないですか。国政に関する権能は有しないのですよ。人情上やむを得ざる、これはもう人間として最低の、天皇が人間でないと言うなら別ですよ。しかし、マッカーサーのところに行って人間だと言うておるのですからね、本人が。だから私は人間だと思うが、そうなると、人間として言わざるを得ないことが、国事行為でないと言うて、それは公的行為だと言うたら、国事行為と国政の行為というか事務というか、そういうものをひっくるめてこの場合は公的行為というふうに私は受けとめますが、国事行為でない公的行為というのは何ですか、それは。
  71. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 憲法解釈でございますので専門の立場ではございませんが、私どもが理解をいたしておりますのは、天皇の行為には、憲法で明確に規定されております国事行為というものと、そのほかに公的行為、それから国事行為、公約行為のいずれにも当たらないその他の行為、こういうふうに三分類される、こういうふうに言われておるわけであります。もちろん憲法上明確な規定を置いているのは、国事行為について憲法七条で幾つかの規定を置きまして、国事行為としてはこういう行為を行うということになっているわけですね。それ以外に、もちろん陛下は、例えば、国会に行幸になってお言葉を述べられるとか、あるいは国体、植樹祭等にお出ましになってというようないろいろなことがございますから、そういう国事行為以外のものとして公的行為とその他の行為、こういういわゆる三分類説、こういう考え方に立っているわけでございます。  そこで、その公的行為というものについては憲法上明文の規定はないわけでございますけれども、それは考え方といたしましては、象徴たる地位にある天皇陛下のお立場から当然そういういろいろなことがなされることがありますので、そういう象徴天皇という地位に基づく行為である、こういうふうに言われておるわけでございます。もちろんこの公的行為については、性質上、象徴たる地位に反してはいけないとか、あるいは政治的な意味や政治的な影響を持つものではないこととか、あるいは最終的にその行為については内閣が責任を負うという立場にある、こういうようなものとしてその公的行為というものは位置づけられているというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  72. 小森龍邦

    ○小森委員 そうしますと、国政に関する権能を有しないのだから、国事行為の中にもそういうことはないのだから謝罪はできないと政府の責任者は再三、私が新聞で見たところではそういうふうに読み取っているのですが、それはやはり詭弁だったのですな。公的行為でできる余地はあったのですね。国事行為で列挙しておること以外の天皇の公的な行為の一つとしてできる余地はあったのですね。それを、謝罪はできない、謝罪はできないの一点張りだったでしょう。その点はどうですか。
  73. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 公的行為というものも象徴天皇たる地位に基づいて行われるものでございますから、当然そこには一定の限界があるわけでございまして、政府といたしまして、この問題についていろいろ御質問があったときには、先ほど申し上げましたような象徴たる性格に反するものであってはならないとか、先ほど申し上げた三つのことを常に申し上げておるわけでございますが、その中の一つとして、政治的な意味や政治的な影響を持つようなものであってはならない、こういうことが言われておるわけです。これは当然、国事行為につきましても国政に関する権限はないわけでございますから、そういうことと同じように、お言葉について、お言葉というのは公的行為である、その公的行為については天皇陛下というお立場から当然憲法上の一定の限界がある、その限界というのは政治的な意味や政治的な影響を持つものであってはならない、こういうことをいろいろな立場で申し上げておったわけでございます。新聞等でどういうふうに書いたかということについてはちょっと私どももそこは責任持てませんけれども、政府の考え方はただいま申し上げたとおりでございます。
  74. 小森龍邦

    ○小森委員 政治的意味を持ってならぬということは、それは象徴天皇だから当然のことですよね。しかし、その政治というものの概念は、非常に広義な意味で使われるときと非常に狭義に使われる場合とあるのですよ。つまり、我が国の象徴天皇に対して、政治的な行為をさせてはならぬ、象徴天皇でおらさなければいかぬということは、狭義な意味における党利党略、例えば政権を担当しておる政党に有利に日本国をずっと巡回さすというようなことはいかぬ。どんな状況であったとしても、そこに人間が二人、三人、四、五人集まったら、いわゆる広義な意味における政治的作用というのはあるのですよ。だから、外国の大統領が、政治家が来るのですから、政治家を宮中の晩さん会に呼ぶということだって広い意味では政治的行為じゃないですか。我が国憲法が禁じておる精神は、「国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」としておるのは、狭義な意味における党利党略に天皇を使ってはいかぬ。昔、尾崎行雄先生だったかだれだったか、ちょっと私覚えていないけれども、有名な政治家ですよ、その政治家が何を言ぅた。勅語を弾丸に使い、玉座を胸壁に使うということはけしからぬと言って、時の政府を弾劾演説をした人がおりますよ、それは何か国会で懲罰を受けたらしいけれども。帝国憲法の時代でさえ天皇を使うなという考え方があったのですよ。だから、狭い意味の党利党略の政治的な意味ではそれはだめですよ。しかし、それよりももっと大きいのじゃないですかな。要するに、政治という概念がもう少し大きいし、その大きい概念に立てば、外国の政治家、トップの政治家が来た、それを宮中晩さん会に呼ぶ、そして先代の折にいろいろ問題があった、そしたらうちのおやじが、おやじがと言わぬでもいいが、心持ちは、うちのおやじの代にいろいろ問題がございまして申しわけございませんでした。わしなら言いますよ。わしは兄弟でなくても、おじさんがやったことでも言いますよ、そういうことは。そういうのは問題になっておる政治的行為のうちに入らないのですよ。へ理屈つけているのですよ。国民は何だか割り切れぬ気持ちでしょう。いわんや、韓国国民と北の朝鮮民主主義人民共和国の国民も多少ニュースが入るのじゃないかと思うが、おもしろくない気持ちじゃないですか。  そこで、今のところは私の見解を述べたのですが、この間の天皇の発言は謝罪なのですか、謝罪じゃないのですか、どっちなのですか。
  75. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 先般の盧泰愚大統領御来日の際の天皇陛下のお言葉はどうかということでございますが、これは天皇陛下がお述べになったとおりでございまして、これについて宮内庁という立場でその御趣旨を申し上げるということは適当でないというふうに考えておるわけでございます。
  76. 小森龍邦

    ○小森委員 天皇の言ったことがよいとか悪いとかということをあなたにコメントしなさいということを言っているのではないのですよ。要するに、天皇の言った言葉は、韓国大統領、つまり盧泰愚さんに謝罪の気持ちを持って言った言葉かどうかということを私は尋ねているのです。
  77. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 天皇陛下のお言葉につきましては、そのとおりお受け取りいただければ幸いというふうに思っております。先ほども申し上げましたように、天皇陛下のお言葉につきましては、内閣が全面的に責任を負うという立場で陛下がお言葉をお述べになっておられるわけでございますので、そのとおりお受け取りいただければありがたいと思います。
  78. 小森龍邦

    ○小森委員 そういうことをあなたに答弁してもらわぬでも、私もそれは内閣の助言と承認を、厳密な意味における内閣の助言と承認、あなたが今公的行為だと言われたから、すべての国事に関する行為については、「内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」こうなっておるわけで、そこは私は少年時代から暗記しております。それはわかっておるのですよ。わかっておるのですが、謝罪はせぬのじゃ、謝罪はせぬのじゃとずっと言ってきて、マスコミもそういうことを報じてきたわけです。マスコミが謝罪するなと言ったのじゃないのですよ。内閣や与党の幹部の私情の中に、謝罪はせぬのじゃ、謝罪は憲法上できないのだということをずっと言ってきたわけですよ。そして、読んでみると、前の天皇よりはるかに、私らから言ったら外国に対する礼儀を失していない、これは謝罪じゃないかと思うようなことを言われておるわけだ。では、内閣が言うたことは何を言ぅたのかな。謝罪はせぬのだ。ひどいのは、こんなのがおったじゃないですか。謝罪をせい、それで私らに土下座せいと言うのかと言った政治家もおったじゃないですか、それは何か訂正したらしいけれども。そういう我が国の雰囲気があって、そして天皇の発言というものが、あの天皇の発言を私は新聞で見ましたけれども、あれは通常日本語で言い得るところの謝罪の概念に包含されるものかどうかということを問うておるのですよ。あなた、それは天皇の言葉どおり聞いてくれということで、言葉どおりはわかっておりますよ。しかし、謝罪をする、せぬという議論がなかったらこんな質問を、法務委員会人権にかかわって、韓国民の人権というものに対して深い思いを寄せて、日本の国会でこんな議論をしなくてもいいのですよ。あの文章というものは、日本語でぱっとまとめたら謝罪になるのですか、どうなんですか。
  79. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 いろいろなことがあったということは新聞報道で私どもも承知をしておりますけれども、政府として天皇のお言葉について、例えば予算委員会等でも御質問等があって、そういう立場で申し上げておりますのは、天皇陛下には象徴天皇という立場がございますから、そのお言葉については憲法上一定の限界がある、その限界というのは、先ほど申し上げましたように、政治的な意味合いとか影響を持つようなものであってはならない、内閣が最終的に責任を持てるものでなければならない、こういう限界があるということを申し上げておるわけでございまして、謝罪をするとかしないとか、それについての議論というものを正式にお答えをしたことはないと思います。  繰り返すようで恐縮でございますが、天皇陛下の宮中晩さん会におけるお言葉については、内閣が最終的に責任を持つという形でお述べになっておりますし、そのお言葉のとおりにお受け取りいただきたいというふうに思うわけでございます。
  80. 小森龍邦

    ○小森委員 日本の国会においてそういう中途半端なことをこういう質問に対してしたら、国際的にどういう反響があるかということを考えなさいよ。答弁をされるあなたは、何とかこの幾らかの時間を過ごせばよいということで言われているかもしらぬけれども、日本がかっての植民地政策とか侵略政策に対して、迷惑をかけた国の元首に対して、再び戦争の惨禍を起こすことのないように決意したという日本の憲法の精神に沿って率直に物を言うということは非常に大事なことだし、それが一つの概念とすれば、気の毒であったなというような哀れみをかける言葉なのか、いや、うちの方がちょっと悪かったということにするのか、これは国際的に大きな意味がありますよ。だから私は国民の一人として、そしてまた国会議員の一人として、日本の国の態度というものがどうかということを明確にする責任はあるがな。それを、天皇のことだからちょっとそれは触れぬ。いいですか、象徴天皇というのが選挙で選ばれるのなら問題ではないのですよ。あれは前の人がやったんだ、簡単に言うとそういう責任は一切私にはありません、前の人のことです、前の人が借金したことは私が払う責任はありません、これでもいいのかもしらぬのですよ。しかし、裕仁天皇の長男なるがゆえにほぼ自動的に天皇になったのでしょう。そうしたら、前の天皇のやったことに対して、悪いことに対しては今の時期謝罪をするというのは当たり前でしょう。あれだけの言葉を述べておって、謝罪ですかと問うたら、謝罪ですとまだ答えられないんですか。その日本の天皇にまつわっての素直な気持ちがないから、諸外国からいろいろな目で見られるんでしょう。  あなたに同じ質問を繰り返しても時間が惜しいからちょっと角度を変えますが、私が今言っておるような論調と同じことを二十五日のワシントン・ポストが言うておるんですよ。これは二十五日のワシントン・ポストのどうも社説らしいが、こう言うているんです。「韓国大統領が日本に到着するつい数時間前まで、日本政府筋は、一九一〇年から一九四五年までの植民地支配に対して日本が謝罪すべきだという韓国側の執物な要求を天皇が引き受けることは論外である、」こう言うているんですよ。日本政府は数時間前まで論外だと言い続けた。英語で言ったらアウト・オブ・ザ・クエスチョン、問題外だと言われる。そういう「論外である、細々と説明していた。しかし、盧泰愚大統領の歓迎宴で、明仁天皇はこれまでの頑迷で尊大な時代と決別し、帝国時代の過去について国家として初めて明確に謝罪した。」ワシントン・ポストはそう言っているんです。人はそうとっているんですよ。せっかく謝罪をしたのなら、謝罪をしたと素直に言うて、はあ、なるほど、謝罪をしてくれたかと再度確認できるようなことにどうしてできないのですかね。どうなんですか。
  81. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 外国の新聞等を含めましていろいろな論評等があるということは私どもも承知をいたしておりますけれども、それはそれぞれの立場においていろいろな受けとめ方をされておることでございまして、それについてどうこうという、新聞報道について論評するということは適切でないと思います。  それから、陛下のお言葉について、それはこういうことであったというような解説を加えるということも、これは適当なことではないというふうに思うわけでございます。  ただ、前段の方でお話がありましたように、韓国大統領が訪日をされたということは、それはいろいろ両国間での国際関係の問題でございますから、それにつきましては、宮中では天皇陛下は国賓を接遇するという意味で晩さん会というものを行われたわけでございますが、それだけにとどまらず、先生承知のように国会でも韓国大統領は演説をされておりますし、あるいは総理は晩さん会を開きまして、総理という立場で、日本の国政を担当する者としての立場で率直な御意見等も申されておるわけでございます。そういう意味で、全体的な今回の訪日に対するお考え方というものは、そういうものを総合してお受け取りになっておるものだろうというふうに考えておるわけでございます。
  82. 小森龍邦

    ○小森委員 政府は、いいですか、政府は天皇というものを今のような形で守るのでなくて、本当に天皇を守らなければいかぬと思うなら、もう少しみんなが納得のいくような形で守らなければだめなんですよ。つまり、天皇の地位というものは「国民の総意に基く。」という一つの宣言的な規定が憲法にあるでしょう。私は、私の気持ちを一遍も聞いてもらったことはないけれども、しかし、一応国民の総意に基づくことになっておるでしょう。天皇の代がわりのときには国会で一応承認を求めるぐらいにしたらどうかと言う学者もいるんです。これは参考にしておいてください。せめて形式的、本当に形式なら、信任投票をすればいいんです、「日本国民の総意に基く。」となっているんだから。だから、それは一つの説として聞いてもらいたいと思いますが、天皇の言うたことに対しては、それがよいとか悪いとかの価値判断をしてくださいとあなたの立場に対して私は言っておるのではないのですよ。あの言葉が国民として謝罪と思うべきなのか、あるいは諸外国の国民もあれを謝罪と思うべきなのか、それがどうですかということを私尋ねているのですよ。外国の新聞がどう言おうが勝手じゃいうような——外国の新聞はそういうふうに受けとめていますよ。だったらなおさら、せっかくあれだけの言葉を使って、このたびは前の天皇と違って主語が明らかになったわけでしょう。我が国のこれまで取り来った行為によってと、こうなったのでしょう。それは海部総理もそれと同じことを言うているのでしょう。我が国の行為に基づいて御迷惑かけましたというのじゃったら、しかも胸が痛んでかなわぬと言われるのじゃったら、それは謝罪じゃないんですか、どうなんですか。
  83. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 何度も同じことを繰り返してまことに恐縮でございますけれども、天皇陛下のお言葉につきまして、その趣旨なりあるいは字義の解釈なりというようなことを申し上げるのは適当でないというふうに考えておるわけでございます。
  84. 小森龍邦

    ○小森委員 では、ちょっとあれを変えましょう。  内閣はこれならええ言うたんでしょう、あれで。こういう文言を使うのならよいと言うたんでしょう。余り内閣総理大臣と変わらないですよ。論理の中身は内閣総理大臣と変わらないでしょう。内閣総理大臣は謝罪をしたのですかどうですか、これは法務大臣。
  85. 長谷川信

    ○長谷川国務大臣 内閣総理大臣は謝罪の意味を含めて申し上げたと思います。
  86. 小森龍邦

    ○小森委員 そうしたら、同じ日本語を使う人間同士として天皇が謝罪かどうか言えぬというのは、何で言えないのですか。象徴天皇ならなおさら全国民の気持ちというものをソフトに外国の元首に伝える。象徴というのは、あれは天皇は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴なんですよ。私らの気持ちも含めてまことそうじゃなと思うような、そういう日本国民の精神を統合してもらわなければいかぬのですよ。私は少なくとも私のおやじの代に軍靴を履いて中国大陸へ鉄砲持って行ったということについては心外、本当に心の痛みを覚えますよ。だから私、中国へ何回も行ったけれども、会合のたびに冒頭にそのことをおわびをしますよ。そうしたら先方は、軍国主義の悪いやつとやむなく来た人とはちゃんと我々は区別して見ておるから、もうそう気を使うてくれるな、こう言うて非常に麗しい気持ちの交流があるのですよ。どうなんですか。内閣総理大臣が言ぅたことと余り文脈において変わらないことを言われないというのはどういうわけなんですか。  それではもう一つ、ちょっと角度を変えましょうか。あなたは先ほど外国の新聞じゃと言われたから、日本の新聞を出しましょうか、日本の新聞。それは韓国の大統領がソウルへ帰って言うておるのですよ。これは朝日新聞ですよ、五月二十七日です。「盧大統領は帰国声明でまず、天皇陛下と海部首相は日本の植民地統治が「我々に不幸な過去を招いたことを率直に認め、日本の行為によってわが国民が体験した苦痛と悲しみに対してはっきりと謝罪し、反省した」と言明。」こうなっておる。あなた、向こうには謝罪じゃと思わしておいて、こっちは謝罪じゃとかなんとか言われぬのんじゃというような、うれしがらして泣かして帰るようなことを言いなさんな。それをもう一遍答えてみなさい。これが日本の不合理な典型的なことだから、日本の象徴的なことですよ。
  87. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 天皇陛下のお言葉の問題については先ほどもたびたび繰り返しているとおりでございまして、それがどういう意味を持っているかとか趣旨だとかということを申し上げるのは適切でないというふうに思います。  ただ、今新聞にそういう報道があったということを御引用になりましたが、それは先ほども申し上げましたように、宮中での晩さん会もございましたし、国会での演説あるいは国会の議長さん方との御会見、それから内閣総理大臣の晩さん会、そういうところを通じましてそれぞれのお立場でいろいろな会話あるいは言葉が述べられておるわけでございまして、そういうことを総合して韓国大統領はおっしゃっておるのではないかというふうに私は想像しておるわけでございますが、いずれにしても、天皇陛下のお言葉についてはお述べになられたところで御理解をいただきたいというふうに思っております。
  88. 小森龍邦

    ○小森委員 あなた、たびたびで恐縮すると言われたら私の方が恐縮しそうになってくるんじゃけれども。  韓国大統領がこう話したということが日本の新聞に出ておって、それから外側から客観的にアメリカの方から見て、ワシントン・ポストも、たったこの間まで謝罪は論外じゃ論外じゃ言いおったけれども今回はすんなり謝罪をしたと、そしてかなりその言葉に対して好意を持っておるよね。せっかく諸外国が好意を持ってくれるのをこの国会での質問で、いやそれはどうも相手がとるのが勝手じゃ言わんばかりのことではちょっと信義が立たぬのじゃないですか。  憲法の前文の中にはどう書いておりますか。日本国民が平和を希求する態度というのは諸外国の公正と信義に信頼するのですよ。諸外国の公正と信義に信頼するから、その結果として日本国民の安全、生活というものが守れる、こういう意味のことが宣言されているのですよ。だから諸外国が、当事者の韓国の大統領も自分が来て直に聞いたことを帰って国民に報告しておる、太平洋を離れてかなり遠くのアメリカの方もそれを聞いて、こうじゃと言うておるのに、日本の国会における議論ではそれはようわからぬのんじゃ、それからまた言うべきことでねえんじゃと。それじゃ、すかみたいな、幽霊みたいなことを大統領に言うて帰らしたんだ。ごまかした。私の方の備後弁で言うたら、えどかす、そういうことになるのですか、これは。やはり天皇をもてあそぶというたって、ほどがありますよ。国民の常識にかなった考え方で扱い、国民の常識にかのうた天皇の言動というものがあって初めて、天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、その他位は主権の存する国民の総意に基づく。私は投票したことはないけれども、まあそうかいなと私も思うよ。そうなっておる。  とにかく韓国大統領は、これは朝日新聞だけではなしにほかの新聞を見られてもわかると思うし、韓国で発行された新聞を見られてもわかると思うが、天皇からも謝罪をもらった、こう言っておることだけは肝に銘じておってください。そういうことがお互いに確認されて初めて国際関係というものはうまくいくのですよ。  私は、韓国の大統領の国会演説を聞いて、それは感銘しましたよ。それは相当偉い学者もついて原稿をつくられたのかどうか知らぬけれども、国会が用意をしてくれた、これはコピーをしたものじゃけれども、「変化する世界の中の新たな韓日関係」、日本国会における演説の全文、これを読んで、私は立ち聞きしたから、イヤホンで聞かなかったから、これ大統領の発音とところどころ私も知った発音があるから、ああこの辺言いよるなということを思いながらずっとこれを目で追うていったのです。これは後ほどまた昼からの段階で、あなたとのやりとりが長くなったから、午前中にそこを人権擁護局長や法務大臣と質問をやりとりしようと思うたけれども、長うなったからこれは午後に譲らざるを得ぬけれども、非常に崇高な、抑えつけられた者の代表とすれば余り皮肉も言わず、非常に人間として感銘を受けるようなことを言うておられるわけよ。  あの国会における演説の後あの人の所作をじっと見ておったが、気取らず、さりとて余りぺこぺこせず、実に素直なすばらしい態度だったと私は思いますよ。そして、世諭も国会の演説を聞いて、あの人は大変哲学的なよいことを言っとったと言うておる、これは日本の国民にとっても非常にいいこと。そして、大統領も、日本の重立った人が、衆参両院議長も謝罪の気持ちを込めてあいさつしてくれた、内閣総理大臣もそれをやってくれた、天皇もそれをやってくれたということで喜んで帰っておる。これが日本と韓国との友好に成果があったということでしょう。  どう思いますか。この韓国大統領の言うたことで骨身にしみなければならぬことをいっぱい言うておるのですよ。「過ぎ去ったことは神でさえも変えることはできません。」後ほどまた人権擁護局の方から、韓国の、つまり朝鮮半島の日本の国が植民地支配をしておった民衆に対してどういう仕打ちをしたかということをどういう認識をしておるか、事実を聞こうと思うのだけれども、その事実というものがはっきりしないと先ほど警察がやったような仕打ちができてくるから事実を聞こうと思うのだけれども、「過ぎ去ったことは神でさえも変えることはできません。」だからそれを取り返そうということを言っているのじゃありませんという意味のことを言っているでしょう。「しかし歴史は現在のわれわれが過去をどう考え、どう理解するかの問題です。」そうしたら、日韓のあれが非常に効果があったというなら、少しはこの人の言うことの気持ちも受けとめて、せっかく天皇があれだけのことを言われたんだから、しかも内閣が練りに練って言われたんだから、天皇を神格化せずに、今言うたのはもう完全に神格化しておるからそういうことになるのだからね、神格化せずに、物を素直に言われたらどうなんですか。とにかく本当に「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」であるということ、しっかりとそういう立場を守りたいならば、今答弁に終始されたようなことは改められた方がいいですよ。そうしなかったら国民統合の象徴にはなりませんよ。それだけのことをあなたに言うておきましょう。こういうこともまた機会があると思いますからね。国民もキツネにつままれたようなことになっていますよ。謝罪じゃない謝罪じゃないと言うているけれども、天皇の文章を読んだらこれは謝罪じゃないか。韓国の大統領も謝罪だと言うておるし、それからワシントン・ポストもこう言うておる。ワシントン・ポストは私はとっていないけれども、日本の新聞に出ておったから原文を取り寄せたのですよ。それで目を通してみたのです。じゃ、それはあなたにそういうことを私は強く提言したということにしておきましょう。  じゃ、昼までにもう五、六分ありますから、今の韓国のことに関係してちょっとお尋ねをします。  法務省は、広島の原爆被爆者の碑があの平和公園の外にあって、最近これまた反省の意を込めて関係者はこれを平和公園の中に移転しようと、韓国の原爆被爆者だからと言ぅて公園の外へ出して、初めから我々とは関係がないというような、どうなとしなさいということじゃなしに、これを中に移そう、こういう動きがあることは御承知だと思います。これも人間の平等、人は生まれながらにして自由であり平等というこの人権の基本精神の問題がそこに横たわっているから私はお尋ねするのですが、現段階において法務省はどういうふうにこの事実をおつかみになっておられますか。
  89. 篠田省二

    ○篠田政府委員 ただいまの御質問でございますけれども、当局の管轄ではございませんので、詳しいことは存じておりません。
  90. 小森龍邦

    ○小森委員 人権擁護というのは、この前も話しましたように物事の状況というものをそんなに詳しく、それは専門でないのだからそんなに詳しいところまでだれも要求しないけれども、盧泰愚大統領が来てああいうやりとりがあって、しかも特使が広島へ行って、そして長い間平和公園の外に置かれて、後に聞こうと思うけれども、しかもあの折りヅルが火をつけて焼かれてというような状況があるのに、人権擁護局長、私の所管でないからその辺のことはよく知りませんで済みますか。これは普通の一般国民でさえ関心を持っていますよ。じゃ、それはちょっと昼からでも政府が広島市にどうなっておるかと聞いてもらって、国会の議論というのは国民に知らせるための議論ですからね。  それから、火をつけたことに対して、その後何かあの事件の経過というものがあったでしょうか。あれはもう既に二回火をつけられていますよ。それをちょっと聞かせてください。
  91. 根來泰周

    根來政府委員 問題の事件は、現在警察捜査中でございまして、まだ検察庁は受けているわけではありません。ただ、この間の参議院の法務委員会で橋本委員から広島の問題について御質疑がございまして、どういう犯罪が成立するかというお尋ねがございました。それについては詳しく見解を申し述べておきました。
  92. 小森龍邦

    ○小森委員 私もたまたまそのときに参議院法務委員会の方へ出向いていっておりましたので、質疑のやりとりは聞かせてもらいました。だから、どういう条文を適用するということは聞かせてもらいましたが、それでは、その後、だれがやったか、そしてそれに対する取り組みというものは進展していないと理解してよろしいのでしょうか。
  93. 根來泰周

    根來政府委員 先ほど申しましたように、警察当局と連絡しまして、十分捜査をしていると思いますけれども、その後、どういう動機で火をつけたのか、どういう系列の人間がやったのか、偶発的なものかあるいは背後関係があるものか、その辺がはっきりいたしておりません。
  94. 小森龍邦

    ○小森委員 警察は既に退席されておりますが、やはり物事というものは一つのことが孤立して存在するということはないので、相互に関連し合いながらいろいろな事件が起きてくるわけです。だから、韓国大統領の訪日という時期に民族差別の感情の濃い連中がやったということはおよそ予測がつくでしょう。そして、日本政府の対応いかんによっては、例えば在日朝鮮・韓国人の小中学校、高等学校に通っておる子供に対するいじめというものも随分続発したでしょう。だから、人権ということを所掌される法務省人権擁護局は、そういうことに対して世間よりは少し深い理解と情報を持っていないと、私は人権擁護はできないと思いますよ。  これは五月十日ごろの出来事なんですけれども、愛知朝鮮中高級学校の男子生徒A君が警官によって不当に連行され暴行を受けたとして十一日、名古屋・熱田警察署の中村刑事課長ら数人の警官を特別公務員職権濫用罪及び特別公務員暴行陵虐罪で名古屋地検に告訴したという事件が起きています。こういう事件が、しかも告訴をしようという気持ちになるほど痛めつけられたと思うものが出てくるということは、韓国の原爆被爆者の慰霊碑のところの折りヅルを焼くとか、一連のいろいろなことがずっと関連して起きるわけですからね。だから、引き続きまして午後からそういう観点でずっと物を尋ねますので、よろしくお願いしたいと思います。
  95. 小澤潔

    小澤委員長 御苦労さまでした。  午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  96. 小澤潔

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小森龍邦君。
  97. 小森龍邦

    ○小森委員 それでは、午前中に引き続きましてお尋ねをしたいと思います。  もし、原爆の被爆著の慰霊碑の問題につきまして、休憩中に何か情報を入手されておれば、それを冒頭にお答えいただきたいと思います。
  98. 篠田省二

    ○篠田政府委員 それではお答えいたします。  平成二年五月二十三日付の東京新聞の夕刊でございますけれども、「広島の韓国人被爆者慰霊碑 移設控え嫌がらせ」という後にクエスチョンマークがついておりまして、「折りづる燃やされる」という記事がございまして、それを入手しております。
  99. 小森龍邦

    ○小森委員 日本の帝国主義の植民地支配によりまして、韓国そして朝鮮、いずれも大変な抑圧を受けてきたわけですが、そしてその上、我が国に参りまして原爆の被爆を受けた、しかも今度は、原爆の被爆の慰霊碑を建てるときにはわざわざ平和公園の外にそれが位置づけられた、外に建てざるを得ない、その上また、その碑が、千羽ヅル、折りヅルがたくさんそこに飾られておるわけでありますが、それが焼かれるということについては、これは大変な民族べっ視観というものが折り重なっておるように思います。  法務省は人権擁護局という行政機関を持ちまして、法務大臣の言葉をかりれば、法務省は人権擁護ということが大変な表看板である、こういう先般来の発言を聞かせてもらっておるわけでありますが、まずはこの朝鮮・韓国人に対するこれまでの我が国の取り来ったことで、どういう形態の差別、人権侵害というものが繰り返されてきたかということの事実関係からお尋ねをしてみたいと思います。
  100. 篠田省二

    ○篠田政府委員 法務省の対応しておりますのは、具体的な人権侵害の申し立てとかそういうことがあった場合に対応しているわけでございまして、一般論をお尋ねいただいても、ちょっと当局としてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  101. 小森龍邦

    ○小森委員 それが困ったことになるのは、そういうしっかりしたものをあらかじめ持っていなければ、人権侵害だと訴え出たところでこれという具体的な条理にかなった解決ができないと私は思うのですけれども、だれだって自分の専門分野を支えるそのすそ野の方の情報とか知識とかというものは持っていなければならぬと思うのですが、それはどうなんですか。
  102. 篠田省二

    ○篠田政府委員 一般論としては、もちろんできるだけそういう知識の把握に努めたいと思いますけれども、具体的にどういうことがあったかということは、この席上で当局としては申し述べる立場にはないと存じます。
  103. 小森龍邦

    ○小森委員 例えば、俗に言われる強制連行とか、あるいは日本人と、それから当時はくるめて朝鮮人と言っておりましたが、その朝鮮民族との間の日常的な接触の中にどういうべっ視観が働いておったかとか、そういうものがせめて箇条書き程度でも、こういうことがかって日本の仕打ちとしてありましたと——午前中の私の質問の中に、天皇は主語を用いて、我が国の取り来った行為によって大変迷惑をかけております、沈痛の思いでありますという意味のことを言われておりますけれども、その我が国の行為というものを法務省人権擁護局は大体のところここで説明のできる知識を持たなければ、そこから歴史的に出てくる今日時点におけるさまざまな問題の解釈はできないでしょう。それは、その辺はどうなんですか。
  104. 篠田省二

    ○篠田政府委員 私ども、それなりの知識は持っているつもりでございますけれども、ただ、こういう国会の席上で当局として、これこれの事実がありましたということを申し上げる立場にはないと考えております。
  105. 小森龍邦

    ○小森委員 それは、どうして国会でそのことが発言できないんですか。
  106. 篠田省二

    ○篠田政府委員 このたびいろいろ問題となっております事柄に関しましても、全体としての問題ということになりますと、国家レベルで行うべき問題でございますので、一当局としては意見を述べる立場にはないというふうに考えております。
  107. 小森龍邦

    ○小森委員 国会レベルで今話しておるんじゃないですか。
  108. 篠田省二

    ○篠田政府委員 国家レベルというふうに申し上げたのです。国と国でございます。
  109. 小森龍邦

    ○小森委員 国と国で話をすることももちろんありますけれども、国と国との話をする場合にも、正しい態度で臨むためには、我が国内においていろいろ整理すべきものは整理して知識をちゃんと整とんせにゃいかぬでしょう。国会の機能というのは、行政府と国会側がやりとりするような、そういう機能も一つあるのですよ。あなた、何も外務省のアジア局長として答弁してくれよるわけじゃないんですから、法務省の人権擁護局長としてどうなんですかと言うて、何でそれを素直に言われないのですか。
  110. 篠田省二

    ○篠田政府委員 先ほどお答えしたとおりでございまして、そういった具体的な事柄を離れて当局としていろいろなことを申し上げる立場にはないということでございます。
  111. 小森龍邦

    ○小森委員 その立場にないというのは、どうしてないんですか。
  112. 篠田省二

    ○篠田政府委員 当局の所管事項ではないということでございます。
  113. 小森龍邦

    ○小森委員 そうすると、人権侵害というものがどういう形で起きてくるかという背景も知らずして、あなたの所管がうまくいくのですか。どうしてやるんですか、それは。
  114. 篠田省二

    ○篠田政府委員 具体的な事件がある場合には、その背景まで考えて対処してまいりたいと思っております。
  115. 小森龍邦

    ○小森委員 具体的な一つの事件の背景というものは、全体的な知識というものがある程度あった上で、そこで分析できるのであって、全体的な知識というものがなくて、どうしてそこだけ掘り下げて人権が守れるんですか。
  116. 篠田省二

    ○篠田政府委員 だから、それはできるだけ理解するように努力しているわけでございます。
  117. 小森龍邦

    ○小森委員 それは、できるだけそうなら今あなたの思っていることを答えたらいいじゃないの。どういうものがあるかということは、こういう歴史的な経過もあるし、具体的に挙げたら、例えば強制連行という問題を出しましたけれども、あえて言うならば、私らが小さいときに、ドンゴロスへ詰めて朝鮮米という米を輸入しておりました。しかし、現地朝鮮における民衆は何を食べていたかと言ったら、米はよう食べなかったのですよ。こういうのを一つずつずっと考えたらいろいろなことがあるじゃないの。そういう植民地支配のときの、内閣総理大臣が迷惑をかけたと言っているんだから、その迷惑をかけたことがどういうことかも知らずして、そして、その歴史的な経過に基づいて日本に来ておられる人に対して、そこで起きてきた差別事件とか人権侵害事件というものをどう考えるかというのは、そのいわゆる基盤になる知識がなかったらわからぬでしょう。なぜそんな簡単なことが答えられないのですか。
  118. 篠田省二

    ○篠田政府委員 ですから、具体的な事件を通じて、その事件を解決する限度においてということでございまして、先ほどのお話強制連行とかそういった問題につきましては、当局があったとかなかったとかと言うべき立場にはないと思います。しかも、それがどの程度かということについては、当局としてはそういうことを調査研究すべき所管ではございませんので、そこは御理解いただきたいと思います。
  119. 小森龍邦

    ○小森委員 盧泰愚大統領があいさつをしたことで、国会の議席がほとんど埋まって、後ろに二十人ぐらい立っていたように思う。私も立って聞いておったのです。そのときに、さっきも私が読んだように、「過ぎ去ったことは神でさえも変えることはできません。しかし歴史は現在のわれわれが過去をどう考え、どう理解するかの問題です。」この「過去をどう考え、どう理解するかの問題」についてまじめにやったらお互いに接点が出てくる。あなたの考えでは、過去はどうあろうと私は知りません、私らの範囲内じゃありません。しかし、あなたは人権侵害を解決する局の局長でしょう。そして、人権侵犯規程を見たらやはり民族差別もあるのでしょうが。人権侵犯処理規程の中には、特別事件として民族差別というものもあるのでしょうが。そうしたら、民族差別がよって来る、起こる背景というものを知らずしてどうしてできるのですか。
  120. 篠田省二

    ○篠田政府委員 具体的な事件の処理につきましては、その事件をどう解決するかということでございますけれども、それについてどこまでさかのぼるかということは、やはりその事件ごとに異なってくると思います。ただ、一般論としてはもちろんいろいろなことを知っておくべきだとは思いますけれども。
  121. 小森龍邦

    ○小森委員 そのいろいろなことを知っておくべきだというところを、法務委員の一員として、国会議員の一員として行政府に対してどの程度知っておるだろうかということを尋ねているんだから、答えたらいいじゃないの。
  122. 篠田省二

    ○篠田政府委員 ですから、先ほど来お答えしておりますとおり、そういう具体的な事件を離れて一般的なことを答えるべき立場にはないということでございます。
  123. 小森龍邦

    ○小森委員 そうしたらあれですか、各省庁が皆そういう具体的なことを離れては何も知りませんとか考えませんとかいうようなことになったら、日本の行政というものの総合性というものはなくなりますよ。外務省とてれこになってもいかず、官房長官のところの所掌事務とてれこになってもいけず、今の警察とてれこになってもいけず、やはり相互に調和を保ちつついかなければいけないのでしょうが。何のために内閣総理大臣や衆議院議長がああいう発言をしたんだ。そのもとにあって人権擁護局長が、深く反省をするとか済みませんでしたとかいう内閣総理大臣の、その済みませんでしたというその内容人権擁護局長が知らずして、大統領が言うように、韓国側から言うところの約七十万に上る我が同胞が安心して生活できるようにひとつ計らってくださいということに対して、その安心するということの中には人権問題があるよ。それを歴史の過去を知らずしてどうやってできるんだ。
  124. 篠田省二

    ○篠田政府委員 当局といたしましては、外国人であっても差別はいけないという立場でいろいろ啓発をやっておりますし、具体的な事件があれば、それに対応してやっておるわけでございます。
  125. 小森龍邦

    ○小森委員 差別がいけないというぐらいのことはだれでも知っておるのですよ。しかし、差別事件が起きたり、それの侵害というものを救済をするということになれば、差別がいけないということを知っておるだけじゃだめでしょう。どういうふうにそういう事件が起きてくるのか、そうしたら、どういう論点に注意をして啓発をしなければならぬかとか、あるいは他の省庁にどういうことをお願いせねばならぬとか、わかるでしょう。そこらはどうなんですか。余りちぐはぐにならぬようにしなさいよ。後ほど答弁できぬようになるよ。
  126. 篠田省二

    ○篠田政府委員 先ほど来お答えしておりますように、一般論としては、我が国との関係で不幸な歴史があったということは理解しておりますけれども、具体的にどういうということはこの席で当局から述べるのはやはり適当ではないと思います。
  127. 小森龍邦

    ○小森委員 適当でないと言ったって、国会議員が正式の会議の場で尋ねておるのに、あなたが適当でないと言うことはないじゃないの。質問したことに答えたらいいじゃないの。
  128. 篠田省二

    ○篠田政府委員 答えるべき事柄ではないからということでございます。(発言する者あり)
  129. 小澤潔

    小澤委員長 ちょっとお静かに願います。
  130. 小森龍邦

    ○小森委員 やかましいから、委員長、取り締まってください。
  131. 小澤潔

    小澤委員長 お静かに願います。
  132. 小森龍邦

    ○小森委員 そうするとあれですか、人権擁護局長、そういう知識は持っておるけれども答えぬと言うのですか。
  133. 篠田省二

    ○篠田政府委員 答えるべきではないから答えないということでございます。
  134. 小森龍邦

    ○小森委員 だから私が言うておるのは、知識は持っておるけれども答えぬ、答えるべきでないから答えぬと言うのですか。どうなんですか。
  135. 篠田省二

    ○篠田政府委員 一応の知識は持っておるつもりですけれども、答えるべきでないから答えないということでございます。
  136. 小森龍邦

    ○小森委員 そうすると、物を相互に関連してここで議論をしたり質問するということができなくなりますね。これは委員長、ちょっと善処してもらわなければいけませんな。何とかひとつ、善処してください。
  137. 篠田省二

    ○篠田政府委員 お答えすべき事柄についてはお答えしているつもりでございます。
  138. 小森龍邦

    ○小森委員 委員長に、善処してくださいよ。何とかしてください。
  139. 小澤潔

    小澤委員長 小森先生に申し上げます。  貴重な意見でございますが、これは堂々めぐりのような感もこれあり、まことに恐れ入りますが、後日の理事会に検討いたすこととし、この件、お任せをいただきまして、この件以外を続行していただきたいと思います。よろしいでしょうか、小森君。
  140. 小森龍邦

    ○小森委員 しょうがないですね。  一つの議論をしていくのに、答えられないと言ったらそれで終わるようじゃ国会の機能はだめになりますから、委員長の計らいで後日理事会でひとつ議論すると言われるからそれに従いまして、そのことはちょっと飛ばして前へ行きます。  それで、問題は韓国の大統領の発言に絡んで、かなり日本国民の中に共鳴される人が多いから、それを国会で論理的に明らかにして整理したい、こう思ったのですけれども、そこへ行くまでの前提条件というものに対して答えられないから、仕方がないので飛びますから、残念だということだけ言っておきましょう。  それでは、次に質問いたしますが、法務省には人権実務研究会という会がございますか。
  141. 篠田省二

    ○篠田政府委員 人権擁護局の中にございます。
  142. 小森龍邦

    ○小森委員 それは、どの程度公的な性格を持ったものか、あるいは私的な性格を持ったものか、お知らせいただきたいと思います。
  143. 篠田省二

    ○篠田政府委員 当局の中の職員で構成しておりまして、研究などを目的とするもので、任意的な団体でございまして、会自体は私的なものですけれども、公刊物を発行したりする点におきましては公的な色彩も帯びているのじゃないかと思います。
  144. 小森龍邦

    ○小森委員 会は私的なものであるけれども、公刊物を出すときは公的だ。どこでどういうふうにそれが公的につながるのですか。
  145. 篠田省二

    ○篠田政府委員 公刊物を出すということになれば、本が外部へ出るわけですから、その限度ではやはり公の性質を帯びるということでございます。
  146. 小森龍邦

    ○小森委員 本が出たら公の性格を帯びるというのはどういうわけですか。例えば私個人が著作を出したら、それは私個人が出したわけでしょう。しかし、本は世間へ出ますよ、書店にも並びますよ。そういうことを考えたら、あなたの今言われておるのはちょっと論理的に矛盾してはいませんか。答えていただきたいと思います。
  147. 篠田省二

    ○篠田政府委員 純粋に個人でやっている場合はもちろん問題ないわけでございますけれども、会自体は別に私的にやっているわけでございます。ただ、そういう本を出す関係では、やはりある程度公的になるのではないかと思うわけでございます。
  148. 小森龍邦

    ○小森委員 個人的にやっておるものが、本を出した段階で公的になるというのは、それはどういう意味ですか。法務省の金を使うのですか。
  149. 篠田省二

    ○篠田政府委員 法務省の金は全然使っておりません。ですから、そういう点では全く私的でございますけれども、出た本の内容につきましては、やはり人権擁護局としては責任を持つという意味で、公的ということでございます。
  150. 小森龍邦

    ○小森委員 そうすると、個人的にやっているが、人権擁護局が責任を持つというのは、人権擁護局の意図が加わっておるということですか。
  151. 篠田省二

    ○篠田政府委員 事実上、意図は加わっていると考えてよろしいと思います。
  152. 小森龍邦

    ○小森委員 そうすると、その個人的なものへ行政の意図が加わるということは、国家の行政組織の秩序からいうてどうなるのですか。個人的なものへ公的な意図が加わる、何かそれは委託するとか下請さすとかいうことになったのですか。
  153. 篠田省二

    ○篠田政府委員 特別にそういう関係ではございません。人権実務研究会として発行しているというわけでございます。ただ、そのメンバーが当局の構成員という意味で、出た刊行物については当局の意見とお考えになって結構だと思います。
  154. 小森龍邦

    ○小森委員 私的なもので当局の考えを出していくというのは、国の行政の秩序としてどうですかね、法務大臣、その点はどう思われますか。
  155. 篠田省二

    ○篠田政府委員 啓発に役立つという考えのもとに発行しているわけでございますので、特別に問題はないというふうに考えております。
  156. 小森龍邦

    ○小森委員 啓発に役立つ役立たぬは、それはだれがやっても、そういう気持ちを持ってやる人もおるでしょう。しかし、国の意思が加わっておると一面言わざるを得ない、公的な性格も持っておると言わざるを得ないということに、私は行政秩序から見て——そういうことだったら何も国がきちっとした秩序と事務分掌規程を定める必要がなくなるでしょう。寄ってたかってやって、そしていかにもこれは公的ですと、いかにも国家行政組織の意図が加わっておりますというてやり出したら、物すごくこれは行政が恣意的になるのじゃないですか。
  157. 篠田省二

    ○篠田政府委員 現在やっておりますことが恣意的になるというふうには考えておりません。
  158. 小森龍邦

    ○小森委員 そういう答弁をしてくれと言うておるのではなくて、現在やっておることが恣意的になるとは思いませんというだけではいかぬので、そういうようなことを各省がずっとやったらけじめがつかなくなるんじゃないですか。例えば研究委託をして、そしてその委託の成果を発表したとかいうんならわかるけれども、個人的な資格でやったものが、上に法務省と省という字を入れてしたら、かなり人々は迷うのじゃないですかな。そういう意味で、私は法務省の責任者である法務大臣にお尋ねしたわけです。法務大臣、ちょっとその点。
  159. 長谷川信

    ○長谷川国務大臣 適当な答弁であるかないかわかりませんが、そのケース、ケースによって、また書く本によっても、やはりいろいろ解釈が違うので、なかなか一概に申し上げかねるという感じであります。
  160. 小森龍邦

    ○小森委員 それでは、公的性格を持っておると言われるから法務省にお答えをしていただかなければならなくなりますが、非常に大事な、いわば国の方針にかかわる部分を、私的な集まりのものが本を出して、そしてそれが公的でありますというようなことになったら秩序が乱れることはもう間違いないですよ、これは。  それじゃ、もう一つお尋ねしますが、法務省人権擁護局内人権実務研究会という会がございますか。
  161. 篠田省二

    ○篠田政府委員 法務省人権擁護局内人権実務研究会でございます。
  162. 小森龍邦

    ○小森委員 そうすると、法務省人権実務研究会というのと法務省人権擁護局内人権実務研究会というのが二つあるのですか。
  163. 篠田省二

    ○篠田政府委員 二つあるわけではなくて一つでございます。名前は必ずしも正確ではないわけでございますけれども。
  164. 小森龍邦

    ○小森委員 だから私は、公的か私的かということでけじめをつけた答弁をもらいたいんだけれども、そのときどきによってどっちでも使うんですか。
  165. 篠田省二

    ○篠田政府委員 法務省内というのが入っているのと入っていないのが出ているようですけれども、実態は同じでございます。
  166. 小森龍邦

    ○小森委員 そうすると、公的な意味を持っているといって、公的な意味を持ったものが、そういうふうに名前が似ておるけれどもそのときどきによって出版物に入れる名称が違うということになると、混乱が起きるでしょう。しかも、その中身の中にあなた方の意図が加わっておると言うんでしょう。その点はどうでしょうか。
  167. 篠田省二

    ○篠田政府委員 基本的には任意団体でございますので、名称は出る本によって違ったこともあるということでございます。
  168. 小森龍邦

    ○小森委員 そうですか。私はそういう例は余り知りませんけれども、任意団体だったら出るときどきによって名前が違うというのは。だから、本当にこの研究会は実体があるのですか。そこをちょっと聞かせてください。
  169. 篠田省二

    ○篠田政府委員 実体はあるわけでございますけれども、職員の任意団体ということでございます。
  170. 小森龍邦

    ○小森委員 職員が法務省ということを一番上に書き出して、そして研究会をつくるのなら、その名前がそのときどきに違うということはちょっと無責任じゃないですか。しかも公刊物を出すということになれば。
  171. 篠田省二

    ○篠田政府委員 法務省の中に設けた任意団体ということで、法務省内と「内」を入れた方がより実態には合っているかと思います。
  172. 小森龍邦

    ○小森委員 そうなると、例えば法務省人権実務研究会というのが何年も続いておって、どうも紛らわしい、法務省の正式機関のように思われる。だから、その中のサークルだという意味で「内」を入れたというある程度の歴史的経過があってそうなったのか。それとも、どうも都合が悪いといって、余り歴史的経過も何もないのにそのときの気まぐれでそういう名前を使っておるのか。その辺はどうなんですか。
  173. 篠田省二

    ○篠田政府委員 誤解を招かないためには、法務省内と言った方がよかったのかもしれません。
  174. 小森龍邦

    ○小森委員 世間話をしておるのと違うんだから、議事録に残ることを国民の前に明らかにするために質問しておるんだから、よかったかもしれないと言うんでなくて、公的な性格を持っておるというのだったら、こっちが本物ですというのを答えられませんか。
  175. 篠田省二

    ○篠田政府委員 どちらが正確かということではなくて、名前は二つ使ったことがありますけれども、実態は、二つあるわけではないということでございます。
  176. 小森龍邦

    ○小森委員 だから、公的な性格があるというなら、どっちかの名前に統一して、現時点ではこっちが使うべき名称なんだということを言えないのですか。
  177. 篠田省二

    ○篠田政府委員 法務省人権擁護局内人権実務研究会、今後はそれに統一してまいりたいと思います。
  178. 小森龍邦

    ○小森委員 私的な団体だというのに、局長が統一していきたいと思いますと言う、あなたにその権限があるのですか。
  179. 篠田省二

    ○篠田政府委員 局へ戻りまして諮ってまいるつもりでございます。
  180. 小森龍邦

    ○小森委員 それならそう言いなさいよ、何もかにもが少しずつ言葉足らずになるからかみ合わないのですよ。それだったら正確にそう言いなさいよ。局に帰って、恐らく自分の部下のやることだろうから、この方が実態をあらわす上でよいと思うので、私としてはそういうふうに計らいますとか連絡しますとか。それでいいんでしょう。
  181. 篠田省二

    ○篠田政府委員 ただいま委員がおっしゃったとおりでございます。
  182. 小森龍邦

    ○小森委員 それでは、そのことに関してこれからは人権擁護局内人権実務研究会だという前提のもとに私は話しますが、今までどういう出版物が出ていますか。その出版物の発行年月日も同時にお知らせ願えないですか。
  183. 篠田省二

    ○篠田政府委員 まず本の名前を申し上げますと、「同和問題の手引」それから「えせ同和行為対応の手引」「子どものよさを活かす」副題として「父母、教師へのメッセージ」。それから「不登校児の実態について」「人権保障の生成と展開」副題が「世界人権宣言四十周年記念論文集」でございます。発行年月日は調べてまいりませんでしたので、もし必要とあらば調べた結果をお知らせいたします。
  184. 小森龍邦

    ○小森委員 簡単なことでありますから、私は質問させていただく時間がまだ三十分少々ありますので、できればこのやりとりの間にお知らせいただきたいと思います。  お尋ねしますが、あなたは先ほど、朝鮮半島のかつて植民地にしておった地域に住んでいた人に日本の政府がどういう迷惑をかけたかということについては答える限りではありませんという意味のことを言われましたが、それは自分が直接の担当ではないという意味で国会での議論の広がりに対してあなたの都合でそれをとめておられるわけだが、そうすると、この不登校児の実態なんかは文部省所管じゃないのですか。
  185. 篠田省二

    ○篠田政府委員 いじめの問題にかかわり合ってまいります関係では、やはり当局の所管になるわけでございます。
  186. 小森龍邦

    ○小森委員 そうすると、不登校児の実態ということになると、その実態の中にいじめの問題が位置づいておるわけなんで、いじめの問題からいったらこれはすそ野であり、さらにもう少し大きい視野に立った分析でしょう。そうすると、大きい視野に立った分析が必要だということを、公的か私的かという問題はあるが、あなたは先ほど明確に、ここで出した刊行物については公的な性格もあるし自分らの意図も加わっておるし、それは責任を持った対応をしなければならぬという意味のことをおっしゃいましたが、その点はちょっとちぐはぐになっているのじゃないですか。
  187. 篠田省二

    ○篠田政府委員 不登校児の問題すべてが当局の問題ではなくて、やはり教育全般の問題につきましては文部省にもかかわり合いがあるわけでございまして、いじめとかそういった子供の人権に関する側面が当局に関する事柄でございます。
  188. 小森龍邦

    ○小森委員 そうすると、また後ほどこの書物は見させてもらいますが、これはいじめのことに限って書いた書物と解釈してよろしいですね。
  189. 篠田省二

    ○篠田政府委員 不登校児ですから、学校に行かない、行けない子供という点でやはり当局の所管ということで調査しているわけでございます。
  190. 小森龍邦

    ○小森委員 そうしますと、不登校児の問題というのは一番直接的には教育の問題だから、私はこの間、番号は忘れましたけれども、文部省の方にお尋ねをする予算委員会分科会でこの不登校児の問題についてお尋ねをしたのです。それは、文部省が所管だと思うから。しかし、私のその持論からすれば、いじめの問題と不登校児の問題というのはかなりオーバーラップしておりますので、あなたの今まで言われたほかのこととは食い違うけれども、私とすれば、法務省がいじめの問題で子供の人権を考える場合には不登校児の問題としてとらまえるというところまで視野が広がったということば非常に喜ばしいことだと思うのです。あなたはここでは喜ばしいことをしておる。これは後ほど委員長の提言で理事会で話すということになっておるから、これが食い違っておるからといって、さっきの話に戻ってあなたに対して論理的な追及をするというのじゃないのですよ。けれども、食い違っていることだけは事実ですよ。  では、不登校児の実態というものについてどの程度に把握されているのですか。例えば人数とか、あるいはそのトータルの人数のうちおよそどのくらいの割合でいじめによって不登校児になっているか。いじめといったら直接の人権侵害だね。それがどれくらいだとこれでは分析なさっているのですか。
  191. 篠田省二

    ○篠田政府委員 本日そういう質問はちょっと予想しておりませんでしたので、私としてはちょっと細かいところは把握しておりません。
  192. 小森龍邦

    ○小森委員 それはまた別にお聞かせ願ってもいいわけです。しかし、一つのことを深く人権侵害の問題として考えるということになれば、すそ野が必要だ、関連したところが必要だということで、私はこれは歓迎していますよ。中身を読んでみなければわからぬけれども、こういう人権実務研究会が不登校児の問題を、こういう提言というかテーマの出し方をするということは歓迎していますよ。だから、中身はまた後ほど聞かしてもらいましょう。それはこういう正式の会議でなくても結構ですから聞かせてもらいたいと思います。  それで、再度確認をしておきますけれども、では、ここで出た文章については、大体法務省の意向に沿ったものが出ておるというわけですね。
  193. 篠田省二

    ○篠田政府委員 その点はそういうふうにお考えいただいてよろしいと思います。
  194. 小森龍邦

    ○小森委員 そうすると、先ほどの統一された名前の方で出ている法務省人権擁護局内人権実務研究会編「人権保障の生成と展開」、これはいろいろ学識者の論文のようなものを世界人権宣言の四十周年を記念しておさめられていますが、大体人権ということに対する感覚としては、学者ですから何も法務省、行政とぴったり一致するということじゃないが、大まかに、粗筋、方向性においては一致した人の文章を集めて人権実務研究会が編集したものですね。そういうふうに理解していいですね。
  195. 篠田省二

    ○篠田政府委員 その点は、各著者のお考えをそのまま載せて収録したわけでございますから、必ずしもその内容というものは法務省の見解どおりというわけではなくて、それぞれの学者あるいは実務家の意見を尊重して書いていただいたわけですから、中には必ずしも法務省の見解とは一致しない方の論文も登載しております。そういうふうにいろいろな方の意見を載せるということがやはり一つ意味があるというふうに考えております。
  196. 小森龍邦

    ○小森委員 そうすると、あれですか、人権というものは大体一致していないと——人権というものは多数決で決めるような中身じゃないでしょう。そうしたら、私がこういう質問をすると、あなたはぱっと煙幕を張るために、いや、法務省と違う考え方があるかもわからぬ。法務省と違う考え方をわざわざ人権実務研究会という会をつくって、一種の行政実務をスムーズにするためにこういういろいろの出版物を出しておられるのに、意見の食い違うものも出すのですか。
  197. 篠田省二

    ○篠田政府委員 人権の問題というものはいろいろ歴史的あるいは世界的な問題があるわけでございますので、いろいろな立場の方の意見を載せてみるのも非常に有益だということで、いわゆるかなり進歩的な学者の意見も載せておいたわけでございます。
  198. 小森龍邦

    ○小森委員 そうすると、もし意見が違うものが載っておったらこれはどういうふうに——法務省という名前を上につけて、そしてあるときは公的、あるときは私的と言いながら、どういうふうにこれが、違うものが啓発に役立ちますか。もし打ち消すようなもの、前に言うた文章と後で言うものが打ち消すようなことになっておったらちょっと困るでしょう。
  199. 篠田省二

    ○篠田政府委員 ただいま御指摘の本は直接に人権実務にすぐに役立つということではなくて、いろいろな人権思想とかそういった面の論文が主でございますので、特に実務にすぐに響くということはないと思います。
  200. 小森龍邦

    ○小森委員 そうすると、これは学術書ですか。
  201. 篠田省二

    ○篠田政府委員 実務書と学術書の区別もかなり微妙ですけれども、その本はかなり学術的色彩が強い本だと思います。
  202. 小森龍邦

    ○小森委員 これは実務のことについてかなり突っ込んで書いておるのが見受けられますよ。例えば人権擁護委員というものはかくあるべきだというようなところは、もう本当に実務に一番近いところにあるような文章がありますよ。あなたはこれをよく見られておるのですか。
  203. 篠田省二

    ○篠田政府委員 今のお話の溝口弁護士の論文は非常に実務的なところでございますけれども、例えば奥平先生の論文は必ずしも実務に役立つものではないと思います。
  204. 小森龍邦

    ○小森委員 そうすると、結局これは、いろいろな考え方があるけれどもちょっと参考にせいぐらいで出されたのですか。
  205. 篠田省二

    ○篠田政府委員 長い目で見て人権思想の普及高揚に役立つということで、参考という色彩もかなり強いと思います。
  206. 小森龍邦

    ○小森委員 あなたは今、名前まで挙げて言われましたが、人権の実務に関係する比較的近いところを書かれておる論文の、今溝口先生と言われましたか、その人の考え方には法務省は賛成なんですか、反対なんですか。
  207. 篠田省二

    ○篠田政府委員 今それに賛成とか反対とか、ちょっとそこまで意見を述べるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  208. 小森龍邦

    ○小森委員 あなたは、論理を発展さすと次第に自分たちの行政のつまずきが出てくるから、論理を発展さすところはそう言うてなるべくとめるようにするわけです。それから、先にちょっと弁解しておこうと思うことは名前でもぱっぱっと言うのだ。それはちょっとおかしいじゃないですか。本当に真剣に赤裸々に物を出して問題点を明らかにするという行政府と国会の、これは一部ですけれども、そこで議論するあり方とすれば、余りにもこそくじゃないですか。それでは、そう言われるなら後で聞きますけれども、それは随分むだなことになりますよ、そういうことでは。  そうすると、この中に書いていることは、場合によったら法務省人権擁護局の考え方とは全然違う。しかし、それは言論の自由だから、公平に見てもらうために載せたというような性格のものもあるんですね。
  209. 篠田省二

    ○篠田政府委員 そういうたぐいのものもございます。
  210. 小森龍邦

    ○小森委員 ああいうときにはさっと答えられる。それなら、それがどれかと言うたらあなたは答えられますか、どの論文かということは。
  211. 篠田省二

    ○篠田政府委員 今ここで個々のことを申し上げると執筆者に対して、そこは意見を述べるのは著者に対して失礼に当たると思いますので、意見を述べるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  212. 小森龍邦

    ○小森委員 とにかく、こういうふうな議論をしておったら信用する者はいなくなりますよ。こう言えばそこを逃げる、ああ言えば——それは、物理的にあなたが答えないものはどうにもしようがないのだ、ここで今すぐは。だけれども、それでは人権擁護の行政を進めていく局の責任者として物を前に向けていくということにならぬのじゃないですか。  それでは、質問を変えましょう。要するに、そういうような言い方がずっと重なっていったら、日本の人権擁護行政というものがどういうふうに国民から評価されるかということの勝負になるのだから、やはり少しは政府、人権擁護局のプライドを持ってやってもらわなければいけませんよ。  そこで、人権擁護局内が出したのじゃなくて、人権実務研究会という名前で出した「えせ同和行為対応の手引」の中の一部の論理が問題となって、精神障害者、医療実務者から、法務省は差別的である、こう言われておることを局長御存じでしょうね。
  213. 篠田省二

    ○篠田政府委員 そういうことは存じております。
  214. 小森龍邦

    ○小森委員 それについて局長はどういうふうな考え方をお持ちでしょうか。
  215. 篠田省二

    ○篠田政府委員 御指摘のところは宮崎弁護士の講演の中にある部分だと思います。そこの中の、精神異常者でない限りは怖くないという趣旨発言部分についてだと思いますが、その点につきましては、当該箇所の表現は、そこで用いられている精神異常者という意味は、激情して自己抑制のきかない状態となった人の意味で使われている、そういうことで、精神障害者を指すものではないということでございまして、精神障害者を差別するものではないというふうに考えております。
  216. 小森龍邦

    ○小森委員 法務省人権擁護局が一つの言葉を自分の都合のよいように勝手に定義をして、そして、これは改めてくださいと言うてきておる人に対して誠意ある対応をしないということは、私はそれは人権擁護機関いうても法務省自体が差別をして、ほおかぶりをして逃げようとしておる姿勢だと思うから、まことにこれは遺憾なことなんですよ。  それで、今あなたが言われるのは、精神異常者というのを一時的な状態だと言うのですか。通常、精神異常者いうたら、やや恒久的な状態、正常ならざる異常な状態がある程度恒久的に続いておる。その瞬間のことは言いませんよ、精神異常者とは。あなたは日本語の使い方としてその点はどう思われますか。
  217. 篠田省二

    ○篠田政府委員 精神異常それから精神異常者、その単語だけを取り出して考えるわけではなくて、文脈全体の中で読み取っていただきたいと思います。そうすればこの場合には、そういう精神——要するに自己抑制のきかない状態になっている者というそういう意味に理解していただけるものと思います。
  218. 小森龍邦

    ○小森委員 文脈で読めと言われるから、そうすると、私はここへその資料を持ってきてないが、その文脈の前の方に、暴力団でも怖くない、精神異常者は怖い、こう言うておるんですよ。そういう文章、そこにないですか。そうするとあなたが言われるような文脈にはなりませんよ。むしろ暴力団というのが、普通はおとなしくしておってもいざ自分の利害関係になったらばっと常識を超えたことをするということで、みんな怖がるんですよ。要するに、急にばんと激変するような状況は怖くない、その後へ来て精神異常者は怖いと言うたら、むしろ一時的な状況じゃなくてやや恒常的な状況、そういう人を指して言っておるんじゃないんですか。
  219. 篠田省二

    ○篠田政府委員 いや、この講演全体の趣旨から理解していただきたいと思います。
  220. 小森龍邦

    ○小森委員 講演全体からいうても、その講演全体はどこにあるんですか。講演全体いうたらあれでしょうが、暴力団のことを言うておるわけでしょう。暴力団でも怖くない、しかし精神異常者の場合は怖い、こう言うておるんじゃから、そのことは精神障害者、医療実務者たちが非常に気を使って、法務省に対してこれは差別だからひとつ改めてもらいたい、こう言って、それは精神障害者のことを指している、こういう理解を当事者たちが言いよるわけでしょう。それをあなた言葉をすりかえて、しかも一時的状態とは前の文章を読んだら読み切れぬわな、一時的状態を。
  221. 篠田省二

    ○篠田政府委員 精神障害者の団体等からいろいろ抗議が来ているわけですけれども、それに対しては当局の考え方を説明しているわけでございます。したがって、それに対して何も対応していないというわけではございません。  それから、今の表現の点ですけれども、そこはやはり私どもの考えておるように理解していただきたいと思います。
  222. 小森龍邦

    ○小森委員 理解していただきたいと言うても、当事者たちが、そういうことでは我々のことを言っておるようだから困ると言うておるわけでしょう。困るという人が申し出てきておるんじゃから、それは親身になって、改めますとか、今後はそういう用語の使い方は気をつけますとか、なぜ言われないのですか。
  223. 篠田省二

    ○篠田政府委員 その点は立場立場というか解釈が違うわけですから、そういうふうに自分たちが差別されているというふうにおっしゃられても、私どもはそういうことではないわけでございますから、その点をその都度説明しているわけですが、なかなか理解していただけないということでございます。
  224. 小森龍邦

    ○小森委員 同和問題でいうたら、それは同和対策審議会の中に分析しているけれども、差別というのは単なる観念の亡霊ではなくて、だから主観的なものでなくて、いかに客観的な影響を持つか、あるいはいかに客観的な意味を持つかということが問題だと言うておるのです。それは同和問題と精神障害者の問題とを置きかえてみたら、論理的にはすっと通るんだ。それを差別だというて異議を唱えられておる者が、いや、これはこういう考えだから理解してください、理解してくださいだけで通りますか。  だから、この間また新聞に出ておりましたね。今いろいろなことを言っておるのは精神障害者、医療実務者の関係でしょう。今度は学会が異議を唱えておるじゃないですか。「日本精神神経学会は二十四日、法務省人権擁護局編集の「えせ同和行為対応の手引」という冊子に精神障害者を差別した表現があるとして、変更を求める要請書を決議した。」特ってきているか、まだ持ってきていないか知らぬけれども、決議した。「問題としているのは「相手がどんなものであっても精神異常者でない限りは何も恐れる必要はない」という個所。」これは読売新聞の五月二十五日です。  そういうことまで言われて、しかも人権が大事だというのだったら、素直に、そこはどうも私どもが認識不足で、客観的に及ぼす影響等を考えて改めますと親身に言えないのですかね。
  225. 篠田省二

    ○篠田政府委員 ただいまの新聞記事は私どもも見ておりますけれども、いまだに日本精神神経学会からは要望書がこちらには届いておりません。ですから、それを見て、またいろいろと考えてはみたいと思います。
  226. 小森龍邦

    ○小森委員 来てないかもわからぬけれどもと私言うたでしょう。まだ来てないというのはきのうかおとといか聞いたのですよ。来てないかもわからぬけれども、医療実務者があなた方に異議を唱えた、それを追っかけてまた精神神経学会が異議を唱えたということになれば、これは相当重みがある論理じゃないですか。それを、いやまだ見てないからということで、人権が侵害をされた者に思いやりがあるということにもならぬし、果たして人権擁護局の任務が勤まるのかということを言いたいのですよ。
  227. 篠田省二

    ○篠田政府委員 ある表現が差別に当たるかどうかというのは非常に微妙な問題があるわけでございまして、それについては立場によって、ある人は差別になる、ある人は差別にならないというような事例は幾らもあるわけでございます。それで、ある人たちが差別になると言われても、差別にならないということも往々にしてあるわけでございますから、その点はやはり十分に比較考量しなければいけないと思います。
  228. 小森龍邦

    ○小森委員 同じ日本国政府が、不快語、当事者が不愉快を感ずる不快語、これを条例から一掃してくださいと言うて通達が各地方自治体に流れたのは知っておるでしょう。
  229. 篠田省二

    ○篠田政府委員 そういう文書があるということは聞いておりますが、ちょっと今具体的には承知しておりません。
  230. 小森龍邦

    ○小森委員 だから、すそ野がなければいかぬということを言うのですよ。むしろ各省庁のそういうことに類することは、人権侵害にかかわり、しかも当事者が、しかも弱者が不快と感ずるようなことについては、ほかの省庁はちゃんともう手を打っておる。その手を打っておることは知ってはおるが中身を知らないというようなことでどうなりますか。それで、あなたこの間局長になられたばかりで知らなかったら、もう少し長年人権擁護局におられる方に答えてもらってください。
  231. 篠田省二

    ○篠田政府委員 ただいまちょっと答えられませんので、これからよく研究してまいりたいと思います。
  232. 小森龍邦

    ○小森委員 人権擁護局というのは人権擁護行政の専門家だからな、そこのポストについた限りにおいては。答える立場にありませんと言ってその場を逃れるかもしらぬけどね、よく知りませんとかいうようなことが続いたのじゃ、それはだめですよ。用を果たしませんよ。整備された法務省人権擁護局ということになりませんよ。そこはやはりみずからに恥じてやってもらわにゃ困りますね。
  233. 篠田省二

    ○篠田政府委員 その点は、これから努力してまいります。
  234. 小森龍邦

    ○小森委員 それで問題は、努力してやりますと言って、人権侵犯事件が起きたらそのケースでやりますと言って、現在それに対応すべき知識がないのにやりますと言ったところで国民の側は信用できますか。  私は、ここで一つ言いましょう。あなたはこの前の答弁で、特殊部落というのは差別語ではないと言われたでしょう。今もそう思っているのですか。
  235. 篠田省二

    ○篠田政府委員 人によってとり方が違うというふうに申し上げたわけでございます。
  236. 小森龍邦

    ○小森委員 人によってとり方が違うというのは、言い逃れをする者もおるし、全くその言葉を知らずに使う人もいます。元東大教授の大内兵衛先生が、東大安田講堂を糞土と化した特殊部落としてはならないという論文を雑誌「世界」に書いたことがある。そのときに、大内先生はどういう自己批判をしたかといったら、私は長らく日本の学界において社会科学と取り組んできたが、こんな恥ずかしいことはないと自己批判されたのです。それで、雑誌「世界」は手の届く範囲内のその雑誌を回収されたわけです。そして、次のときに大内兵衛先生の自己批判書が載ったわけです。過ちを犯したらさっとそういうふうにやられるわけです。  それで、あなたは、そういうふうに使う人がおると言って、そういうふうに差別でないと思う人がおると言って人権擁護局長としては何の意味があるのですか。
  237. 篠田省二

    ○篠田政府委員 その特殊部落の意味については、その後勉強いたしまして、明治時代に同和地区のべっ称として使われたということは承知しております。ただ、現在それを使う場合に、同和と結びつけて考える人と同和とは結びつけないで使う人がいることはやはり事実だと思います。
  238. 小森龍邦

    ○小森委員 だから、同対審答申にべっ称だと書いてあるということはわかったのでしょう。そしたら、法務大臣のように、それは使わぬ方がいいです、好ましくないですというような態度が人間的な態度じゃないですか。それで、そういうときに、そういう言葉は使うて誤解を招く言葉でもあるし、また、とり方によってはどう波及するかわからぬというところにまず気が向くようでなければ、人権擁護をやろうとする姿勢があるなと見えぬのですよ。その逆に、いや、それは使うても、そうじゃない場合もあるからというところへすっといくということは、差別が残るような余地の方向へのみあなたの頭は回転しておるわけです。それで、あなた、そういうことがわかったのなら、これは何回も何回も討論しておるのだし、言葉の問題が出ておるのだから、この前私はああ言ったけれども、誤解をされちゃいかぬから、実は同対審答申にそれは賤称語だと言って規定しておったと。あなた、学問的に特殊部落という言葉を使わなければならないことがあるのです。これこれの書物の中に特殊部落云々と書いていたところがある。それはどういうわけでどうなるというようなことで使うときには、学問的だからそれは使わざるを得ぬのですよ。しかし、何かのマイナス的な比喩に使う場合には、それがそうなったんじゃずっと悪い雰囲気が広がるでしょう。だから法務大臣は、それは使わぬ方がいいと思いますと言われたわけなんです。  それで局長、時間がもう余りないから言っておきますけれども、例えばこの前法務大臣が、新潟には同和地区がないのでと言われたか、うちの近所にはないのでと言われたか知らぬけれども、よく承知してないということを言われた。私はそれはおかしいよということを言ったのよ。その次のときに法務大臣はすぐ、この間はどうもちょっと私の認識不足でありましたと言って、やはり議論は継続しておるのだから、すぐに言われればお互いに了解つくでしょう。あなたは前の折にそういうことを言っておいて、そしてここで私が聞こうと思っていたのよ、その特殊部落はどういうときに使ったら差別じゃないのかということを。これはまたのときに聞きますけれどもね。  公的な場所ということで言いましたら、一九五三、四年だったと思うけれども、広島地方裁判所福山支部で、部落の青年が二人で駆け落ちをして同棲しておったのが、結婚誘拐、不法監禁だということでやられたことがあるのだ、最高裁まで行って最高裁で差し戻し、広島高裁で無罪になったけれども。そのときの検事の起訴状の中に、例えばAならAとしますか、このA青年はいわゆる特殊部落の出身であって、一般の子女とは尋常一様の手段では容易に結婚することあたわずと思念して営利誘拐、結婚誘拐をなしたるものなり、こういうふうに書いておったのよ。それで、それを出したけれども、どうもこれはちょっと論理が合わぬ、差別だということで、その起訴状から削除してもらうことになった。しかし起訴状というのは、あなたは専門家だから恐らく御存じだと思うけれども、削除しても削除したというのが残るだけなんです。文章はやはり裁判官の目に映るわけですよ。裁判官に予断と偏見を与えるということで大論争になったことがあるのよ。それをあなたは軽々しく、いや、それはそう思わずに使うこともあるというようなところへ力を入れるのじゃなしに、そこから出る被害のことだけ目を向けておっても、あなたの職責は当然じゃないのですか。そこの人間的姿勢というものが問題なんです。ひとつそこを最後に答えてください。
  239. 篠田省二

    ○篠田政府委員 その点は、そういう表現によって被害を受ける人と、それから表現の自由との兼ね合いという問題がございまして、そこは非常に難しい問題だというふうに考えております。
  240. 小森龍邦

    ○小森委員 そういうふうにすぐ私の質問の中身の——学術的に使わねばならぬことがあるということを肯定しておるでしょう。その方は耳に入らずに、すぐ特殊部落という言葉を使ってもいい方へ、使ってもいい方へあなたは論理がずれるでしょう。それでは、差別を受けておる者からしたら信頼がおけないのですよ。だから、これは今のあれでもずっと続きますよ。続きますし、全国的にこれはみんな広がりますよ。今の精神障害者の差別になるというのを、いや、ならぬならぬと言う。そういうことの論争がある間は、法務省人権擁護局が行政を進めていくその貫禄というか信頼というものが保てますか。
  241. 篠田省二

    ○篠田政府委員 いや、その点につきましては、表現によって被害を受けたというその被害の程度と表現の自由との兼ね合いというのがやはりいろいろな場合に非常に問題になっておりまして、その表現によって差別を受け、あるいは被害を受けたという方の立場ももちろん考えなければいけませんけれども、最終的には比較考量の問題も考えなければいけない問題であるというふうに考えております。
  242. 小森龍邦

    ○小森委員 あなたのような考えであったら、日本帝国主義が相手を抑圧して、抑圧した方のことも考えなければいかぬが、それから得る植民地的利益も大変出てくるんだからそれも考えなければいかぬよと同じことになるので、それではもう人は全然信用しませんよ。  時間が来ましたから、最後に一言。法務大臣、このことの関連ではなくて、あなた自身に対してお尋ねしたいのだけれども、罰金を変えるのをこれから着手しようというのをこの間新聞で見ました。しかし、あなたの所信表明にはなかったです。だから、国会と行政府との関係からすれば、間近にやろうと思うことはなるべく全部国会の方に所信表明という方向で知らしてもらうということが大事だと思いますが、その点について一言だけ。
  243. 長谷川信

    ○長谷川国務大臣 委員おっしゃるとおりでございますので、これからも十分注意をしてやります。
  244. 篠田省二

    ○篠田政府委員 先ほどの発行年月日の点でございますが、調べが来ましたのでちょっと申し上げます。  「同和問題の手引」の発行が昭和六十三年四月十日。「えせ同和行為対応の手引」が同じく六十三年四月十日。「子どものよさを活かす」というのが六十三年九月十四日。「不登校児の実態について」が平成元年十一月二十日、昨年でございます。「人権保障の生成と展開」がことしの二月六日でございます。
  245. 小森龍邦

    ○小森委員 ありがとうございました。
  246. 小澤潔

    小澤委員長 御苦労さまでした。  冬柴鐵三君。
  247. 冬柴鐵三

    冬柴委員 公明党の冬柴鐵三でございます。  まず初めに、本年五月二十六、二十七日の両日、ハワイにおいて日米政府間で外国人弁護士の問題について会談を持たれたと聞いたのですが、どのような話し合いが持たれたのか、その経過や結果について、できる範囲のことで結構ですが、お知らせをいただきたい、このように思います。
  248. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 この問題については委員御案内のことが多いと思うわけでございますが、簡単に問題の経緯等も申し上げながらお答えさせていただきます。  我が国における外国人弁護士の受け入れ問題につきましては、御案内のとおり昭和六十一年に外弁法が成立いたしまして、六十二年四月以来約三年にわたって施行運用がされてきたわけであります。以来六十七名の外国人弁護士が外国法事務弁護士として法務大臣の承認を受けておりまして、制度はおおむね適正円滑に運用されておると考えております。また、アメリカ側も、その現行制度のもとにおける適正な運用ということについては相応の評価をしているところでございます。  しかしながら、アメリカ側におきましては、なおこの問題における現行制度の制限が厳し過ぎるという認識に立っておりまして、この制度が実施されてから三年が経過するということを踏まえまして、昨年来この制度に関しまして数点にわたって規制緩和を求めるという要望が参っております。  具体的には、昨年十一月に、アメリカ通商代表部代表から我が国の法務大臣あての書簡をもって具体的な要請が寄せられているわけでございます。その内容は五点ございまして、ごく簡単に申し上げますと、第一点は、外国法事務弁護士と我が国の弁護士との間で共同経営をすることができるようにしてもらいたい。第二点は、外国法事務弁護士がその事務の遂行のために日本の弁護士を雇用するという道もあげてもらいたいということであります。これらはいずれも現行制度のもとでは禁止されておりますが、これを緩和するということを要望しているわけであります。三点目は、外国法事務弁護士として法務大臣が承認をしますための資格要件の問題でありますが、現行法のもとでは、外国の弁護士資格を有する者が当該外国において五年間の実務経験を有することを要求しておりまして、したがいまして、その人が日本において外国法事務弁護士または日本の弁護士のもとで補助者として仕事に従事をいたしましても、その期間は五年の経験年数に算入されないということになっておりますが、これが算入されるように改めるべきだという要求であります。四点目は、外国法事務弁護士の事務所の名称の問題でございます。現行法のもとでは、あくまでも承認が与えられるのは外国法事務弁護士本人がその対象であるということから、その事務所の名称も本人の氏名を付するということを要求しているわけでありますが、アメリカ側の要求は、当該弁護士が本国において所属している法律事務所、いわゆるローファームでありますが、その名称を事務所名として冠するということを認めるということの要求であります。第五点目は、近時国際的な商事関係の仲裁手続の活用が活発になっておりますが、その国際的な商事仲裁が我が国において行われる場合において、その手続に外国法事務弁護士が全面的に関与することができるように改めてもらいたい、こういう要請でございます。  この問題につきましては、ただいま申しました書簡を踏まえまして、ことしの二月にアメリカ通商代表部の次席代表と我が方の法務事務次百との間で協議が行われましたが、今回、五月二十五日、二十六日の両日、この次官レベルでの会談を受けましてもう少しレベルを下げた実務担当者レベルの協議の場を設けるという趣旨で、双方の担当課長レベルでの協議の機会が持たれたわけであります。現在の段階におきましては、日米双方がそれぞれの考え方、意見を述べ合うという段階にございまして、二月の事務次官レベルでの会談では全体の概括的な意見交換が行われたということであり、今回の会談はそれぞれの問題点についてより細かい点にわたって問題を掘り下げて意見を述べ合ったということでございます。この問題については、今後さらに政府間の協議を継続するということになっております。  なお、付言いたしますと、この問題は弁護士の国際的な業務活動のあり方に関する問題でございますから、双方の弁護士がそれぞれ代表を出し合って実務的な面から問題点を詰める、そういう意見交換をする場を設けるということが極めて重要であろうというふうに私ども思っておりまして、政府間の協議と並行してそういう話し合いの場を設けるべきであるということをアメリカ側に申し入れをしているところでございます。
  249. 冬柴鐵三

    冬柴委員 丁寧に説明していただきまして、どうもありがとうございました。  それでは、きょうの主題に移りたいと思います。  盧泰愚韓国大統領の訪日を機会に、長年懸案とされてきました在日韓国人三世の法的地位待遇問題について大筋での合意を得られたということはまことに喜ばしいことであると高く評価したいと思います。しかし、三世問題についてもなお残された問題があります上に、一、二世の待遇問題についても改善すべき点が多々あると私は思っております。これらの困難な問題は二十世紀において生起した歴史の傷跡でありますから、二十世紀を生きる我々の世代の責任において清算されなければならない、このように強く私は認識をしているところであります。二十一世紀を生きる日韓両国民の子孫というものは、盧泰愚大統領の言葉によりますれば、一衣帯水の近くて近い隣人として、アジアの繁栄と安定、ひいては世界の恒久平和実現のために真のパートナーとして協力関係を樹立してもらわなければならないと思うからでございます。  このような観点から、在日韓国人の待遇の問題について、合意された在日三世以下の法的地位待遇に関しまして、現在までに合意を得られたところで簡潔に箇条的で結構ですから御説明をちょうだいしたい、このように思います。
  250. 長谷川信

    ○長谷川国務大臣 今委員から、この間大統領の御訪日を含めた一連の会議等々につきまして非常に成果があったと御評価をいただきまして、私どもありがたく存じ上げておるわけであります。  三世の問題は、今委員お話しのとおりあらかた形ができていると思います。問題は一世、二世あるいは指紋の押捺の問題、携帯の問題等々含めてまだ残余の問題が残っておりますが、これは今回の会談でも時間切れというか時間足らずで、いわば今後歴史的経緯を踏まえて両国で十分検討しましょう、考えましょう、なおまた話を進めましょうということに相なっておりますので、今私どもの間においてもこの問題についていろいろ検討をいたしております。次の閣僚会議が開かれるということでございますが、そのときの議題に上がる上がらないは別にしまして、この一世、二世の問題については前向きで検討いたしたいと思っております。  なお、詳細につきましては入管局長から答弁させます。
  251. 股野景親

    股野政府委員 ただいま委員からお尋ねございました先般の四月に日韓定期外相協議で決着を見た三世問題についての対処方針は、項目的に申し上げまして、法務省の所管事項については以下の五つでございます。  第一に「簡素化した手続きで覊束的に永住を認める。」第二に「退去強制事由は、内乱、外患の罪、国交・外交上の利益にかかわる罪、及びこれに準ずる重大な犯罪に限定する。」第三に「再入国許可については、出国期間を最大限五年とする。」第四に「指紋押捺については、三世以下の子孫の立場に配慮し、これを行わないこととする。このために指紋押捺に代わる適切な手段を早期に講ずる。」第五に「外国人登録証の携帯制度については、三世以下の子孫の立場に配慮した適切な解決策を見いだす。」  以上でございます。
  252. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ここで今言われた優遇といいますか、それは三世に限られると思うわけですが、これは日韓法的地位協定に言う二世、すなわち四十六年一月十七日以降に出生した者の子供を指す、こう私は理解しているわけですが、そのような限られた人だけに適用される、このように理解していいわけですか。
  253. 股野景親

    股野政府委員 ただいま私から御説明申し上げました三世問題についての対処方針は、日韓間の協議が昭和四十年の法的地位協定の第二条に基づく協議でございました関係上、その対象者はいわゆる三世以下の子孫について対象としているわけでございます。その三世という意味については、ただいま委員指摘のとおり、昭和四十六年一月十六日以降に生まれられた方々、これをいわゆる協定上の二世と私ども称しておりますが、その子に当たる方々が三世ということでございまして、そういう方たちについての対処方針となっております。
  254. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そういたしますと、ちょっと疑問なんですけれども、退去強制のことを例にとりますと、本国の韓国の方が日本に入国をして何らかの罪を犯されるという場合には退去強制手続がとられますね。また、日本人が韓国へ行きまして、挙げられた重罪よりももっと軽微な何らかの犯罪を犯しても、その要件に合致すれば退去強制を受ける可能性があるわけですね。そうしますと、三世は本国の韓国の人よりも、また日本人よりも有利なといいますか、そのような法的地位を獲得することになると私は思うわけです。     〔委員長退席熊谷委員長代理着席〕  もう一つ、今度は再入国許可の適用場面について考えてみますと、例えば本国から韓国の方が日本へ来られる。その場合には、日本のビザ、査証が必要になります。日本人が韓国へ行く場合にもまた韓国のビザ、査証が必要とされるわけですね。ところが三世の方は、今おっしゃったように、例えば最長五年以内ということで再入国許可というものが要らないということになりますと、五年以内は日本と韓国をビザなしに行ったり来たりすることができるということは、本国の韓国の方あるいは日本人よりも優位な法的地位を獲得されるということになると思うわけです。  この理屈は、指紋押捺につきましても、例えば韓国の方が日本へ来られて六カ月以上滞在されるという場合には指紋押捺が必要でしょうし、日本人も韓国へ行って長期滞在するという場合にはいわば十指の押捺が要求されるということになるわけですけれども、この三世は今のような待遇、法的地位を獲得いたしますと、韓国へ行っても日本へ来ても、六カ月以上滞在しても両方とも指紋押捺というものは必要でなくなる。すなわち、本国における韓国の人よりも、また日本人よりも優位な扱いを受ける、こういう一見奇妙な結果が生ずるやに思うわけですけれども、その結論だけで結構です、それがいいか悪いかは別として、例えば本国の人が日本に入る場合にビザが要る、日本人が向こうへ行くのもビザが要る、しかし三世はビザなしに自由に行ったり来たりできる、こういう日本人にも本国の韓国人にも認められないような優位な結果が生ずるかどうか、そういうことだけちょっと。     〔熊谷委員長代理退席、逢沢委員長代理着席〕
  255. 股野景親

    股野政府委員 ただいま委員から御指摘の三世問題の対処方針が実際に実現したときに、その内容にかんがみて、日本人が韓国に行く場合あるいは韓国の本国の方が日本に来られる場合の待遇と違いがあるのではないかというお尋ねでございました。  この点について、まず退去強制の点で御指摘ございました。これは退去強制というものについて、今度の三世問題についての対処方針の中で退去強制事由というものは明記をされております。先ほど申し上げたとおりの内容で退去強制事由が明記をされておりますので、退去強制を日本から全く受けないということではございません。  それから、それではこの退去強制の事由がこういうふうに非常に限定されているということ、これはどうかという点もございましょうが、この点につきましても、これらの方々が日本でそれだけ定住性が非常に高いという点にかんがみますと、このような取り扱いをさせていただくことは不合理な扱いではないと考える次第でございます。  再入国許可についても、同様な観点で再入国許可という制度は適用になりますので、そういう点で、査証かないということは再入国許可という制度によるその適用があるという点でひとつ御考慮を願いたいと思います。
  256. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、そういう不合理な扱いをしたらいかぬとかいくとか、その議論をしようと思って言っているわけじゃなしに、そういう現象が生じますねということを確認申し上げたわけですから、誤解のないようにお願いしたいわけです。  三世以下というものが長期いられるということにかんがみ、こうおっしゃいましたけれども、こういう待遇に踏み切られたということは、国籍法は日本人外国人、こう二つのカテゴリーしかないわけですけれども、外国人である韓国人と日本人との間に定住外国人というカテゴリーを暗黙に承認をされたのではないか、こういうふうに私は思うわけです。これは私がかねてそういうふうな必要性を感じて、六十二年九月一日の当衆議院法務委員会質疑において、定住外国人というカテゴリーをここへ導入して、こういう人たちに対してはぜひ日本人に近い待遇を与えるべきだということを申し上げたわけでございますが、そういうカテゴリーを入れようとされている方向なのか、それを伺いたいわけです。  なぜそういうことを申しますかというと、一、二世あるいは本国にいられる韓国の人よりも特に優位な特権的地位を三世だけに限って認めるということは、そこに新たな何かの理屈、理論というものが導入されない限り入管行政というのはもう理念を失ってしまうのではないか、いわゆる法的秩序というものは崩壊してしまうのじゃないかと私は思うわけです。なぜ三世だけ優遇するのですかということを的確に説明できる理論というものがそこになければ入管行政というのはできないと私は思うわけでございます。そのような観点から、観光や留学や業務というような一定の目的のもとにおおむね三年以内に日本を離れる外国人、いわゆる通過外国人と、ずっと日本にいて、そして二世代、三世代にわたって我が国の一定の土地に定住し、日本において生まれ、日本人と同じ言葉で話し、日本の子供と同じ学校で学び遊んだ、そして育ったという人々、社会保障に関する諸制度も適用されている方々、納税の義務も負っている人々、日本の生活習慣に溶け込み、日常生活はもとより、青少年やPTA活動を初め各種コミュニティー活動にも参加、参画しているこれらの人人、何よりも彼らは終生自分の本国へ帰るという意思がほとんどない、日本の地にいわば骨を埋めようという意思が認められるこのような定住した外国人、こういう人々を通過外国人と十把一からげにして外国人というカテゴリーの中へ押し込もうという行政はもう終わりにしなければいけないのじゃないかと僕は思っているわけです。そういう観点から、大筋ですけれども、今回、一、二世よりも、また本国にいる韓国人よりも三世についてまた違う優遇措置をここへ導入したというのは、私が今言ったような理屈を蹄にこの際承認する、そういう思想があるのかどうか、その点についてお尋ねしたい、こういうふうに思います。
  257. 股野景親

    股野政府委員 ただいま委員からの御指摘の点は、かねて委員がお述べになっておられる御意見であるとして私どもも承っておるところでございます。  今般の三世問題に関する対処方針は、先ほども申し上げましたように三世以下の方々の日本における定住性が高いということに着目した一つの対処方針であり、また同時に、この方々が日本に定住するに至ったその歴史的経緯というものについても配慮した、こういうことがあることは事実でございます。そこで、それではこの方たちの今後の取り扱いについて、例えば一世、二世の方々との間でどういう関連づけが出てくるかというのは、法務省としてはこれからこの三世以下の方々についての対処方針を具体的にまとめていく中で検討をさせていただこうと思っております。  具体的にそれではどういう扱いになるかということは今後の課題でございますが、定住性が高いということにかんがみて、この三世以下の方々についての配慮をしたということは事実でございます。ただ、今後それでは法的に具体的にどうなるかという点は、今後なお検討させていただきたいと存じております。
  258. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、今までの入管理論でこれを処理しようと思うとあちこちで破綻が生ずると思っております。これは新聞等でも指摘されているところでありますけれども、なぜ三世以降を一、二世と区別して優遇するのかということは理屈づけられなくなってしまうと私は思います。そして、特にことし、平成二年以降生まれる人々を考えてみますと、この三世である人々のほか、昭和四十六年一月十六日以前に生まれた人、これは一世になるわけですけれども、の子供も同時に生まれるわけでありまして、むしろ今から子供を産む世代の人がたくさんいられるわけですね。四十六年一月十六日以前といったら大体二十五歳以上の人ですから。そうすると、三世とともに二世が生まれる、一緒に生まれてくるわけであって、それを種類分けして、三世にはこんなに優遇します、しかしあなたは二世だからという理屈がつけられないのじゃないかなというふうに私は思うわけでございます。  それから、もう一つ指摘したいのは、これは在日韓国人だけの問題じゃないというふうに思うわけでございます。それはいわゆる朝鮮人民共和国の人々も射程に入れなければなりませんし、また旧台湾の方々も射程に入れなければならないというふうに思うわけでございますから、ぜひ定住外国人、これは広がるわけじゃないので、こういう歴史は、年の経過とともにそういう人々は少なくなっていくわけですから、私は、そういう定住外国人というカテゴリーをここに入れましても、悠久の歴史の中から見ればそれは一時的の現象であろうと思うわけです。しかし、こういうものを今処理する場合に、そういう概念をここに導入しない限り入管行政というものは理念を失ってしまう、私はそのように思うわけでございます。多少議論にわたりますけれども、その点についての法務省のお考えをお示しいただきたいと思います。
  259. 股野景親

    股野政府委員 ただいまの在日韓国人三世以下の方々についての定住性のことについての法務当局としての配慮ということは、先ほど申し上げたとおりでございます。今後の具体的な取り扱いについての中身は、なお法的にいろいろ検討すべきことがございます。私どもとしては、定住性ということを一つの要素として、今後例えば一、二世の方々についてどうするかということもしっかり考えてまいりたいと考えております。  なお、先ほど私、協定第二世の方々について、昭和四十六年一月十六日以降日本で生まれた方々と申し上げましたが、正確には一月十七日以降生まれた方でございます。
  260. 冬柴鐵三

    冬柴委員 その点について私、これはより困難な提案かもわかりませんけれども、三世以降の子孫だけを優遇するという立場をとるのであれば、いっそのこと三世以降の方については出生地主義、生地主義というものをとられて、日本で生まれたらもう日本人にしてしまう、日本の国籍をその人たちに与える、そういう考え方をおとりになれば、入管行政上はもう関係ないですね、日本人ですから。そうすれば、その人たちがいろいろ日本で就職上も差別を受けているとかいう問題も全部解決します。ですから、生地主義というのをおとりになってはいかがかと一つの提案をしたいと思います。もちろんそれについては、両親が日本の国籍は要らないんだとおっしゃる方については、韓国の母国の国籍を留保することは当然であります。しかし、日本がそのように国籍を与えると言っているわけですから、それを私は要りませんという方は、そう優遇しなくてもそちらからは文句は出ないのじゃないか。これはアメリカが今とっている生地主義だと私は思っているのですが、そういう考え方も射程に入れて今後検討をぜひしていただきたい、このように考えるわけですけれども、大臣。
  261. 長谷川信

    ○長谷川国務大臣 今委員のおっしゃることはごもっともだと思います。  そこで、御指摘のような生地主義を基本とする制度は、我が国が明治以来堅持している血統主義の伝統には合致しないし、またこれまで以上に重国籍者が増加する等の問題があり、これを採用することは妥当でないものと考えております。なお、日本国籍の取得を希望する者については、できるだけ速やかに帰化を認める考えであります。  以上であります。
  262. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それも一つの理屈ですから、別に文句を言う筋合いではありません。そういう提案をいたしたい、一つの考え方としてそういう方法もあるのじゃないかということでございます。  それから、今度はもう全く別の話ですが、いよいよ六月一日から新しい出入国管理・難民認定法が、改正法が施行されると伺っております。  一点だけ伺いたいのは、今まで入国審査手続が長期間かかっている、二カ月も三カ月も。私が聞いたのは六カ月かかっているものがありました。こういうものが代議士の方に、余りにも長いんだけれどもどうなっているんだろうというようなことが頻繁に来るようでは我が国の国際信用というのは低下するわけでありまして、これは何とかしなければいけないけれども、今の大変ふくそうしている一時期の現象かなとは思っていたのですが、この新しい法が施行されるとおおむね一カ月ぐらいで入国審査ができるというようなことも、たしかきょうの新聞だったと思うのですけれども書いてあったように思います。本当にできるのですか。その点をお伺いしたい。
  263. 股野景親

    股野政府委員 ただいまの委員指摘の点、私どもも審査に時間をなるべくかけない形で手続を終えるよう最大限努力をする必要があると考えております。  今先生の御指摘の問題について、我々この入管法の改正をお願いいたしましたときに、そのためのいろいろな法的な規定についても整備をさせていただきたいとお願いしたわけでございます。具体的にはいろいろ改善を施させていただいておりますが、特に在留資格認定証明書という制度を新しく導入させていただいておりまして、この制度によって、上陸許可に係る審査を行いますときに、事前にその許可の条件に適合して在留資格のそれぞれの要件が満たされているということが判断をされました場合には、その証明書をお出しするということになっております。この証明書を活用することによって審査手続はかなり短縮できるものと思っておりますが、具体的にどのくらい短縮できるかというのは、これは我々のこれからの努力いかんにもかかっておりますが、この新しくできます在留資格認定証明書制度というものを的確に運用することによって、審査の時間の短縮ということには効果を上げ得るものと考えております。
  264. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ちょっと時間を超過しましたけれども、六月一日からこの改正法が施行されるということで、外国人、不法残留している人たちにちょっとパニック状況が起こっていることも新聞で報道されているところでありますので、法務大臣、せっかく新法ができるわけですから、外国人に対するPRも十分にやっていただきたい。英字紙によってしか情報が彼らに届かないということでは、この法を何のために改正したのかわからない点もあると思いますので、その点についても力を入れていただきたい、その決意などを一言伺って私の質問を終わりたいと思います。
  265. 長谷川信

    ○長谷川国務大臣 今委員お話しのとおり、まさにパニック状況であります。この間、私、入管局に現場視察に行ったのでありますが、もう座っている場所がないのじゃなくて、立っている場所がないくらい、まさに超満員。本当にパニック状態になっておる。その上にいろいろございまして、今あそこへ行った外国人が果たして帰って日本のことを褒めるかどうか心配だなと、胸に手を当ててみるとそういう感じをひしひしと受けながら帰ってきたのでありますが、少なくとも今の入管局の現状は急速に改善しなければならない。そういうことで、今回の予算も若干の金をお願いに上がっておりますので、これはひとつよろしくお願い申し上げなければなりません。  それからもう一つは、今不法の方が約十万人を超える人が入っておる。この人たちが、今委員おっしゃるように、帰ろうと思う、手続が難しい、何だかんだ、罰則がある、いや何だかんだで、日本の今意図していることがやはり理解されておらないのですよ。六月一日になったら全部罰金取られて監獄へぶち込まれるような、そういうデマが流れておりまして、まことにゆゆしさ状況であり、パニック現象を起こしておる。これらも私ども全力を挙げてこれからやるつもりでありますが、今英字新聞なんとかいろいろお話がございましたが、どれもこれも全部採用しまして、徹底的なPRをやっていきたいということでございます。
  266. 冬柴鐵三

    冬柴委員 どうもありがとうございました。
  267. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長代理 これにて冬柴君の質疑は終了いたしました。  続いて、公明党中村巖君。
  268. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今から二年半ちょっと前です。昭和六十二年九月に外国人登録法の改正がございまして、私どももその審議の衝に当たったわけでございますけれども、その外国人登録法の六十二年の改正については、私ども公明党としては、これは大変不十分であるということで反対をしておりました。しかし、これが可決成立をしたわけでありまして、あの改正法は外国人登録に際して指紋押捺を一回きりにするということ、さらにはまた、登録証をラミネートカードにする等々の改正が出されたわけでありますけれども、やはり指紋押捺というものはなくなりませんし、常時携帯義務というものはそのまま保持をされたわけでございます。その点で、私どもは大変不十分であるというふうに思っているわけでございます。  しかし、その審議に際しまして、国会としては、衆議院におきましても参議院におきましても附帯決議というものを付しておりまして、その内容は既に御承知のとおりに、「政府は、次の諸点について格段の努力をなすべきである。」一として「出入国管理行政をとりまく今後の内外の諸情勢の推移を踏まえ、多年にわたり本邦に在留する外国人立場を配慮する等、外国人登録制度のあり方について検討すること。」こういうことでございまして、四として「外国人登録証明書の常時携帯・提示義務違反等に関する規定運用に当たっては、濫用にわたることのないよう、常識的弾力的に行うこと。」こういうふうになっているわけでございます。  総じて言えば、そのときに改正を行ったものの、やはり不十分であるから、今後の取り扱いについては定住外国人の要望に沿うように運用がなされるべきでないか、こういうことでこの決議がなされているというふうに理解をしておるわけでございます。  そこで、例えば外国人登録証の常時携帯義務についても、これをやかましくとがめ立てをするというようなことはやめるべきだということで、実際にその衝に当たっている警察庁等におきましても、従来とその運用方法を改めたということがあるように私どもも理解をしておるわけでありますけれども、まず第一の質問といたしまして、この昭和六十二年九月の外国人登録法の一部改正以降とその以前で、この常時携帯義務についての警察の方の運用に差があるのかどうかということでございまして、検挙件数等によって差があるかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  269. 石附弘

    石附説明員 お答えいたします。  不携帯違反検挙件数でございますけれども、昭和六十二年におきましては、件数において千四百二十八件、平成元年になりますと、これが二百三十一件になっております。  それから人員的には、昭和六十二年が千三百八十八件、平成元年には二百七件、大変減少しておりますけれども、これは先生指摘国会における附帯決議の御趣旨等踏まえて、警察としてはこの不携帯の取り締まりについて特に時間的、場所的な条件、あるいは被疑者の年齢とか違反の態様等総合的に判断をいたしまして、常識的かつ柔軟な姿勢で処理をしておるということでございまして、この数字にあらわれているとおりだと思います。
  270. 中村巖

    ○中村(巖)委員 検挙件数が著しく減少した、一割程度にまでなったということについては、この国会決議が尊重をされたという意味で私どもも大変喜ばしいことだというふうに思っておりますけれども、この国会決議そのものは、ただ単に表面上の問題でなくて、つまり外国人登録証明書の常時携帯についての検挙件数を減らせ、こういうことだけではないのだろうと思っております。六十二年の外登法の改正というものが出てくるに当たりましては、やはり日本に在住する外国人、なかんずく在日韓国・朝鮮人からのいろいろな要求が出されたということで、例えばこの指紋押捺についても、指紋押捺を拒否するというような形での抵抗、あるいは政府に対するさまざまな要望、こういうものがあっての上でこういう改正がなされ、しかもなおかつ附帯決議が出されたわけでありますから、当然のことながら、さきに申しましたように、この外国人登録に伴うところの問題、なかんずく外国人登録法の違反に対する処置についても、これはそれ相応の弾力的な処置が講じられなければならないと思うわけでございます。  ところが、午前中も論議になりましたけれども、本年五月六日、警視庁公安部は、在日の朝鮮の方、これは韓国籍ではなくて朝鮮総連に所属をしている方のようでありますけれども、この人とその妻と妹を外国人登録法違反で逮捕をした、こういうことでございまして、この外国人登録法違反の内容は、住居を移転しながらその届け出をしなかった、こういうことであるようであります。その新聞紙上に報じられておりますところでは、故意に登録をしなかったのだ、というのは都営住宅に不正に入居をするというような意図があってそういうことをしておったんだというようなことでありますけれども、さりとて当該本人に擬せられるべき罰条は極めて軽微なものじゃないか、こういうことであるわけであります。したがいまして、こういう軽微な罰条が問擬せられる人間を逮捕して、しかもなおかつ勾留までつけてやらなければならないのか、こういうことが問題になり得るというふうに思っているわけでございます。殊にこの問題は朝鮮籍の方々にショックを与えただけではなくて、韓国籍を有する人たちにも大変大きなショックを与えているわけでございまして、何でこんなことをしなければならないのだ、こんな軽微な罪で逮捕されるようなことであっては、前回の外登法の改正は何だったのか、国会附帯決議は何だったのかというような強い意見が出されているわけでございまして、これは韓国・朝鮮人のみならず、長年日本に在住する外国人にとっては大変ショッキングな出来事であった、こういうふうに思うわけでございます。そういうふうにまた言われているわけでありますけれども、なぜ逮捕したのか、その経緯を明らかにしていただきたいと思います。
  271. 石附弘

    石附説明員 お答えいたします。  御質問の点にお答えする前に、まず不携帯の関係でございますが、一般論あるいは総論としては先ほど私申し上げたとおりでございます。ただ、不携帯事犯の中にやはり成りかわり事案、つまり他人の名義の外登証を持っていて実は本人ではない、あるいは持っていないが何らかの形で日本に密入国している、そういう方々もたくさんおります。要は、警察としては外国人居住地の正確な登録、これはまさに公正な外国人管理の根本をなすというふうに考えておりまして、その上で居住地変吏届、これの不申請罪でございますが、やはり重大な犯罪であると考えております。「一年以下の懲役若しくは禁錮又は二十万円以下の罰金」というのはまさにそういうことを意味しているのではないかと思います。ただ、具体的な運用につきましては、先ほど申し上げましたように強制捜査に踏み切るケースというのはごくごく少ないわけでございます。  本件の場合でございますが、これはあくまでも朝鮮総連の方ということではございません。被疑者らの個人的な犯罪に対してその具体的な個々の事案内容あるいは背景、期間等々を総合的に十分検討した上で強制捜査をしたわけでございますけれども、今回のケースにつきましては、九年間、約三千日以上、特に親族間で共謀して、かつ都営住宅、非常に安価な入居経費でございますが、そこに入居権を確保するという背景あるいは動機のもとに身分関係を偽っていた、こういうことでございまして、警察としては極めて悪質なケースであるというふうに判断をしておるわけでございます。
  272. 中村巖

    ○中村(巖)委員 その人が故意に住所の届け出を怠った、やらなかった。それは外国人登録法がある以上悪いに決まっていますよ、そんなことは。これは一つの犯罪を構成するということは当然のことであると私も思いますけれども、だからといって、逮捕をして勾留をしてまでそれを追及しなければならない事案なのかどうか。この不携帯について書いてあることですけれども、乱用にわたることがないように常識的弾力的にやれ、こういうふうに書いてあるわけですよ。そういう精神にのっとれば、そんな逮捕して勾留までつけて徹底的にやるような事案じゃないのじゃないか。犯罪があるということは事実であっても、もっと弾力的にやれるはずだったじゃないか、そういうことを私は申し上げたいわけでございまして、こんなことをやりますと、また警察外登法関係について厳しい取り締まりを再開したのか、また旧に復するのかというふうに外国人にショックを与える、こういうことでございます。  今後こういうことは繰り返してはいけない、しかも、なおかつ今の時期、対韓国との問題でいろいろと日本に在住する韓国人、もちろん朝鮮人も同じでありますけれども、こういう問題について微妙な時期に来ている、そういうときにこういうことをやられるというのは大変なことだと思うので、その辺について警察に反省がないのかどうか、その辺の配慮についてどう考えているのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  273. 石附弘

    石附説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたとおり、警察としては、成りかわり事案等現に存するわけでございまして、そういうことは日本の良好な治安の維持に大変マイナスになるということで、やはり不正があれば、また犯罪があれば捜査をしていくのは当然の責務と考えております。片や、先生指摘のような点ももちろんございます。  いずれにいたしましても、国民の理解と協力ということが警察のよって立つ基本でございますので、そういう点は十分配慮をしたいと思いますが、ただ、個々の事案態様あるいは違法性というもの、動機、背景、あるいは共謀の有無、違法性程度等々いろいろな点を十分考慮した上で、任意捜査でいいのかあるいは強制捜査まで必要なのか、そういうことを十分に慎重に検討しながら、警察に与えられた、この法の執行でございますが、法の執行に対して厳正公平に対処してまいる所存でございます。
  274. 中村巖

    ○中村(巖)委員 この点について、一般論として法務省にお伺いをいたします。  昭和六十二年の外登法改正の経緯、さらにはこの附帯決議が付された経緯をかんがみたときに、この外登法違反事件、殊に在日韓国・朝鮮人の外登法違反事件についてどういう配慮をなされる必要があるのか、その点について法務省はどう考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  275. 根來泰周

    根來政府委員 六十二年の外登法改正のときには私が官房長をいたしておりまして、大変法務委員会の方々の御理解を得ましてこの附帯決議をつけていただき、国会を通していただいたわけでございます。そういうことで附帯決議の重さというのは私も十分承知しておりますし、その結果は検察庁の方も十分よく理解しておると思います。また、この間の恩赦に際しましても恩赦の対象になりたということでありまして、附帯決議趣旨は、先ほど警察からも御紹介がありましたように、検察庁においても起訴事案は極めて少なくなっておるわけでございまして、常識的弾力的に行っているものと考えておりますし、将来ともそういう方向で進んでいくものと考えております。  また、先ほど御指摘のあった事件についてはいろいろ御批判があろうと思いますけれども、私どもの立場からいえば常識的な処理をして罰金に処したものと考えております。
  276. 中村巖

    ○中村(巖)委員 じゃ、別の問題をお伺いをしますけれども、最近また話題になったこととして、TBSのテレビ局が暴力団の犯罪現場を取材をした、こういうことがありまして、それに関連をいたしまして警視庁、高輪と牛込両署ですか、TBSから暴力団の債権取り立てシーンのフィルムを押収をした、こういうことがあるわけでありますけれども、これはどういうことからこの押収に至ったのか、御説明をいただきたいと思います。
  277. 増田生成

    ○増田説明員 お尋ねのございました事件は、暴力団組長の被疑者らが被害者から債権の回収を図るために、本年の二月七日、暴力団事務所で被害者を灰皿で殴打するなどの暴行を加えまして、約一カ月の傷害を与えたという事件でございます。警視庁におきましては、この事件につきまして所要の捜査を行いまして、五月九日以降現在までに傷害、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反によりまして被疑者七名を逮捕いたしておりますが、その捜査の過程で、株式会社東京放送が所有をいたします当該番組にかかわりますマザーテープが本件犯罪捜査に必要不可欠であるということが明らかになってまいりまして、このことから報道並びに取材の自由についても十分配慮をいたしました上に、裁判所の差押許可状の発付を得まして、五月十六日に差し押さえを行っております。
  278. 中村巖

    ○中村(巖)委員 新聞でしか経過を知りようがないわけでありますけれども、この暴力団の暴力行為というか、恐喝というのか、この問題につきましては、さきに警察の方で被疑者逮捕して事案の解明に当たっておった。そしてその過程において、逮捕をするくらいですから、あるいは勾留するくらいですから、犯罪事実というものがかなり明らかになっているということが想像されるわけでありまして、巷間言われることによれば、そのフィルムというものが必ずしもなくても暴力行為というものは立証可能であって、そのフィルムというのは必ずしも今後起訴をして公判を維持する上において不可欠ではないんじゃないか、こういうことが言われておるわけでございます。その辺の関係ですね、どうしてこのフィルムが必要であったのかということについてお聞かせをいただきたいと思います。
  279. 増田生成

    ○増田説明員 御指摘の、なぜ差し押さえをしたのかということでございますが、警察といたしましては、報道機関が保有をしておりますビデオテープ等につきましては、最高裁判所の判例等がかってあったことも承知をいたしておりまして、報道及び取材の自由については十分配意をいたしておるところでございますが、本事件について申し上げますと、この事件は先ほどもちょっと申し上げましたが、債権取り立て名下の暴力団組長らによる組織的、計画的な犯行でございまして、被疑者らの暴力行為によりまして被害者が重傷を負わされた重大な事件でございます。また、関係者が多数にわたる暴力団の組織的な犯罪でございまして、事案の性質上、関係者の供述のみでは犯行の事実関係を明らかにすることができませんで、事案内容がありのままに収録されております本件マザーテープは、事件の全容を解明する上で必要不可欠なものであると考えられたことなどから、事前にテレビ局に対しまして任意提出を求めるなどの努力を尽くすなど、報道機関の立場については十分配慮いたした上で裁判所に差押許可状を請求したものでございます。
  280. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今お答えの中にもありますけれども、御承知のとおり、取材フィルムの問題については最高裁の昭和四十四年十一月二十六日の大法廷判決というものがありまして、報道機関が取材のために撮影をしたフィルムについては、これは捜査の必要があるといっても、これを押収をすることは報道機関の取材の自由との関連において大変慎重な考慮を要するのだ、こういうことになっているわけでございます。ちなみにこの最高裁判決を読んでみますと、この場合、「取材したものを証拠として提出させられることによつて報道機関の取材の自由が妨げられる程度およびこれが報道の自由に及ぼす影響の度合その他諸般の事情を比較衡量して決せられるべきであり、これを刑事裁判の証拠として使用することがやむを得ないと認められる場合においても、それによつて受ける報道機関の不利益が必要な限度をこえないように配慮されなければならない。」こういうふうになっているわけでございます。  今、TBS、東京放送の方では法律上の抗争を行っているようでございますけれども、その辺について警察の方で十分の配慮をしたのかどうかということについては疑問なしとしないのではないかというふうに思っております。確かに、暴力団の取り立てを暴力団との何らかの話し合いによって取材をしたということについては倫理的に非難をされる部分というものはあるかもしれないけれども、問題は報道の自由そのものにかかわるわけでありますから、やはりこういうことをみだりに行うべきではないのではないか。最近におきましてはリクルート事件のときに、楢崎弥之助代議士がテレビ局との間で話をして、それを陰から取材をした、その問題についてやはりこのフィルムを押収した、こういうようなケースがあるわけでありまして、それが、犯罪行為が映っているからというだけの安易な考えで何でも押収をするということはまことに当を得ないし、言論の自由に対する一つの抑圧である、こういうことになろうかと思います。本件の場合に、警察としてはその点についてどういう配慮をしたのかということをお伺いをしたいと思います。
  281. 増田生成

    ○増田説明員 報道機関の取材テープに対する捜査機関の差し押さえ処分につきましては、先生がただいまおっしゃられましたとおりでございまして、最高裁判所におきまして、報道機関の報道及び取材の自由が憲法二十一条の趣旨に照らしまして十分に尊重されるべきものであること、しかし他方、公正な刑事裁判を実現するための不可欠な前提である適正迅速な捜査の必要から、報道の自由ないし取材の自由が制約を受ける場合もあることもやむを得ない、その場合、諸般の事情を比較考量すべきであるという趣旨の決定がなされておることは御指摘のとおりでございます。私どもとしましてもそのことは十分承知をしております。  それで、今回の事件につきましては、そういったことも十分に勘案をいたしまして、警視庁におきましては、報道機関に事前に任意提出を求めるなどの努力もいたしまして、その上で本件テープの押収が必要やむを得ないものと判断をいたしまして押収をしたような次第でございます。
  282. 中村巖

    ○中村(巖)委員 先ほどのお話では事案が複雑だということをおっしゃっていましたけれども、そんな微妙な事案でもないのでありまして、債権取り立てのためにおどかしたかおどかさないか、それは被害者もいるわけでありまして、関係者の供述だけで十分立証できる事件であると私どもは感じているわけです。実際、事件のすべてを承知しているわけではありませんし、捜査の中身を知っているわけではありませんから、それ以上のことは申し上げられませんけれども、そういう可能性が非常にあるにもかかわらず、余りにも安易にやり過ぎたのではないかという感じがいたしてならないわけでございます。この点についてマスコミも新聞の論説もいろいろなことを言っておりますけれども、警察としても本当にこれが憲法上の権利に照らしてその権利を侵害していないのかということをもう一度反省をしてもいい事案ではないかと思っているわけでございます。  最後にこの点に関して、一般論的でありますけれども、法務省としては、取材フィルムの押収等をする場合についてどういうふうな見解で今まで臨み、かつまた今後臨んでいくのかということについて、御意見をお伺いいたしたいと思います。
  283. 根來泰周

    根來政府委員 先ほど御指摘のありましたこういう案件につきましては、昭和四十四年のRKB毎日が最高裁に申し立てた事件がございます。一番新しいのでは、リクルート事件で楢崎議員が告発した事件について日本テレビ放送網株式会社が準抗告を申し立て、特別抗告を申し立てた事件がございます。その楢崎さんの事件が一番手本になるわけでございまして、あの特別抗告の中で裁判所が、こういう事情でやむを得ないんだとるる書かれておるわけです。そういう点を十分参酌いたしまして、今後もそういう方針で、報道の自由を侵さない、それから犯罪捜査あるいは公訴の維持という両方のバランスを考えて適正にやっていきたいと考えております。  ただ、昭和四十四年の事件のような典型的報道というのと少し外れた問題が出てきたときに、果たして報道の自由と公訴維持あるいは犯罪捜査とどういうふうにバランスをとっていくかということについては少し研究しなければならない点があろうかと思っております。
  284. 中村巖

    ○中村(巖)委員 終わります。
  285. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長代理 これにて中村巖君の質疑は終了いたしました。  続いて、木島日出夫君。
  286. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫です。  先ほども問題が指摘されておりましたが、六月一日からいわゆる改正入管法が施行されます。それを目前にして、今入管局では在留外国人が押しかけているという状況があることは先ほど大臣からも答弁があったとおりであります。  二つの点で改正法が誤解されていると思うのです。一つは、六月一日以降になると、外国人については法が変わってないにもかかわらず、直ちに警察権力が発動されて逮捕、投獄されるのではないかという不安が外国人に生じてきているということ。もう一つは、既に在留している外国人については改正入管法の七十三条の二の第一項の第一号「事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者」は適用しない。新たに六月一日以降に入国してくる外国人が入管法に基づく資格がない場合に、その者を雇用した場合にのみこれが適用されるというのが附則の正しい解釈なんですが、それが雇用主の方にも誤解がありまして、六月一日以降、現に在留している外国人も雇用すると直ちに懲役三年以下、二百万以下の罰金あるいは併科という重罰に処せられるという、二つの誤解が蔓延した結果こういうパニック状態が今起きているのではないかと思うわけであります。  本日の読売新聞によると、法務省は昨日「旧法から新法に移行する際の留意点を発表した。」とあります。どういう内容をどういう方法で発表したのか、御答弁願います。
  287. 股野景親

    股野政府委員 ただいま委員お尋ねの新法への移行に伴う留意点について、昨日法務省で発表をさせていただきました。内容的には、現在有効な在留資格をもって滞在しておられる外国人の方々が、新法に移行するに当たって、そのまま新法による在留資格に該当するものとみなすとの扱いを受けることによって、何ら御不便をおかけしないように配慮しているという点をまず基本的にお知らせするということがそのポイントでございました。それに関連いたしまして、現在までにいろいろ行われている申請手続等についても、旧法のもとで行われた申請手続が新法における申請手続として取り扱われるという配慮もなしている等の手続面での御説明をいたしました。その際に、あわせて、ただいま委員から御指摘のございました不法就労助長罪について、これは従来からも法の内容説明を関係方面に入管当局として、してまいったところでございますが、改めて念のためにこの点についても御説明をした。もう一つ、アルバイト活動について、従前から就学生あるいは留学生の方々について認められていたものについての今後新法へ移行する際の経過的な取り扱いについても御説明したということがございます。  昨日は入管局の方からお願いいたしまして、関係の報道機関の方々に法務省にお集まりをいただきまして、以上のような経過の留意点を御説明したということでございます。
  288. 木島日出夫

    ○木島委員 昨年、法務委員会では附帯決議があるわけです。一つは「雇用主等に対する処罰規定の新設により、多年にわたり本邦に在留している外国人の就労を含む社会生活に不都合の生じることがないよう、事業主への指導・啓発に努めるなど十分配慮する」、もう一つは「雇用主等に対する処罰規定については、同規定が悪質な雇用主・あっせん者等の取締りの必要性から設けられた経緯にかんがみ、その運用に当たっては、いやしくも濫用にわたることのないよう、十分に配慮すること。」これは大変大事な附帯決議がなされているわけであります。この附帯決議内容趣旨が昨年法律が成立してから今日までの間に外国人やこれを雇用している使用者等に周知徹底されておれば、直前になって今のようなパニックが起きるはずがなかったと思うわけであります。マスコミ等でも今起きているパニックは法務省がPR不足だったからではないかということが指摘されておるのですが、この附帯決議趣旨をPRの中に含めておるのですか。
  289. 股野景親

    股野政府委員 昨年この改正法につきまして国会で御審議をいただき、ただいま御指摘のような附帯決議もちょうだいいたしました。その後、この法律の施行の準備に当たります段階で、法務省としては関係各省庁とも協力をいたしまして、関係各方面、特にまた、これは民間の経済界を初めとする関係各方面にいろいろな形でその内容を周知徹底することに努めてまいりました。  先ほど御指摘の不法就労者の間で動揺が見られるという点について、これは我々も現状について、今大変不法就労者による入管当局への出頭申告が多いということは事実として受けとめておるのですが、この不法就労を行っておる方々については、何分にもこれが違法状態でおられる方々なので、法務省当局としてもこの人々に対するいろいろな情報の周知ということについてはやはり制約というものがあったということも考えられるところでございます。しかし、今後とも先ほどの御指摘附帯決議内容については各界に十分説明をすべきものと考えておりますので、これまでもこの点について法務省の方でのいろいろな広報活動で御説明させていただいておりましたが、なお一層の努力をいたすべきものと考えております。
  290. 木島日出夫

    ○木島委員 附帯決議の雇用主等に対する処罰規定について、いやしくも乱用にわたることのないよう配慮しろということは、乱用する第一次的行政庁としては警察だと思うのですね。処罰規定の乱用ということになると第一次的には警察だと思うのです。改正入管法の七十三条の二の第一項第一号の「事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者」という文言では、悪質な雇用主と、善良といいますか悪質でない雇用主との区分けが法律にはないわけですね。しかし、附帯決議には、本処罰規定は悪質な雇用主に対してそれを取り締まる必要性から設けられた経緯にかんがみて、乱用させてはならないんだということだと思うのですね。この附帯決議趣旨警察庁に対してどのように周知徹底されるおつもりか、あるいは今までしてきたのか、御答弁いただきたいと思います。
  291. 股野景親

    股野政府委員 罰則の運用については、ただいま委員指摘のとおり、これは司法機関の所管になります。そこで私どもとしては、この法律を成立をさせていただきました当初からこの附帯決議内容について十分関係方面に御連絡をし、この内容を踏まえた運用が図られるよう今までお話をしてきておりますが、今後いよいよこれが施行になりますので、こういう点についても改めてその周知徹底が十分図られるよう我々として努力をしてまいりたいと考えております。
  292. 木島日出夫

    ○木島委員 じゃ具体的に警察に対してどういう周知をするのか、答弁がなかったのですが、実は私の手元に建設省の建設経済局長が本年五月二十四日付で各都道府県知事あてに出した「改正入管法の施行について」と題する文書があるわけです。その中に「不法就労外国人の雇用主等に対する罰則等」という欄に「外国人に不法就労活動をさせた者」云々、これは法律の規定そのものですが、「及びこの場合、当該外国人を直接雇用していない建設業者といえども自らの工事に従事させたときは、処罰される場合があるので留意されたいこと。」という文章になっているわけです。  建設省が各都道府県知事、それからまた建設業界に出したこの通知には、法務委員会での附帯決議の今私が指摘した趣旨、精神が全く触れられてないわけですね。周知徹底されてないわけです。されてないだけじゃなくて、どうも「外国人に不法就労活動をさせた者」という文言の拡大解釈がなされているんじゃないか。「直接雇用していない建設業者といえども自らの工事に従事させたときは、処罰される場合がある」、この罰則規定の拡大が建設省によってなされているんじゃないか。まことにこの間の法務省の附帯決議の周知徹底が不十分だということを如実にあらわしている建設省の都道府県知事並びに業界への通達じゃないかと思うのです。これを変えるように指導すべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
  293. 股野景親

    股野政府委員 ただいまの委員指摘の建設省の文書については、これは建設省の立場でお出しになったものと承知しております。我々としては、かねてこの法案が成立後建設省当局と、適正な外国人による就労が日本で図られるように、新しい上陸許可に係る審査基準の策定等の作業を一緒にしてくるという過程においてこの法の趣旨が十分生かされるようにいろいろ御説明をしてきたわけでございます。そういう趣旨で、この附帯決議の点についても我々としては建設省は了承していると思いますが、今後について建設省側にただいまの御指摘のあったような点は改めて指摘をしたいと思います。  なお、「不法就労活動をさせた者」の範囲については、これは建設業界の中での具体的な指導に当たってまた個々に判断されると思いますし、それは先ほど申し上げましたように司法機関が判断をされることと私ども考えておりますが、「不法就労活動をさせた」というのは必ずしも直接の雇用には限られないという法的な解釈があると思います。
  294. 木島日出夫

    ○木島委員 何か建設省が勝手にこういう文書を出したことに対して法務省は関知しないかのごとき答弁でありますが、附帯決議の悪質でない雇用主にまでこの処罰規定を乱用させることのないようにというその精神は、法務省が受けとめて、そして関係する省庁に周知徹底する義務があるわけです。ですから、こういう附帯決議趣旨が全く反映されてない通知が各省庁から業界なり都道府県に流れるということは法務省の怠慢だと私は思わざるを得ないわけでありまして、附帯決議趣旨警察を初め各省庁にしっかり徹底するように特段の配慮をお願いしたいと思うわけであります。  一点だけお伺いしておきますが、この法改正が六月一日から施行されるからといって警察の法の運用が法律改正がなかった部分について急速に変わるということはないわけですね。附帯決議趣旨からもないと思うわけですが、それはいいですか、大丈夫ですか。
  295. 股野景親

    股野政府委員 この法案の御審議の過程でいろいろな御意見を賜りましたので、その内容についても警察当局としても十分御承知であると存じますので、基本的に附帯決議においていただきました内容について、それを踏まえた運用が司法当局、捜査当局によってなされる、こう考えております。
  296. 木島日出夫

    ○木島委員 悪質でない者に対して警察権が乱用されることのないように法務当局として特段の配慮を求めて、次の質問に移らせていただきますが、五月二十四日付で、法務省令第十六号により改正入管法七条の規定に基づく基準が定められました。その点についてお伺いをいたします。  研修の件ですが、この基準を見ますと、研修というものは「技術、技能又は知識が同一の作業の反復のみによって修得できるものではないこと。」とありますね。ただし、そのほかに実務研修というのがありまして、この概念規程は「商品を生産し若しくは販売する業務又は対価を得て役務の堤供を行う業務に従事することにより技術、技能又は知識を修得する研修をいう。」要するに、反復して物を売ったり物をつくったりサービス活動をする、それを通じて技術、技能、知識を修得するのを実務研修という概念でひっくくっているようなのですが、それでいいですか。
  297. 股野景親

    股野政府委員 ただいま委員が御指摘になりました点は、今般公布されました省令の中の規定をお読み上げになられたと存じますが、実務研修について、ただいま委員がお読み上げになったような内容規定されております。
  298. 木島日出夫

    ○木島委員 そうしますと、実務研修というものは、従来政府がかたくなに門戸を閉ざしてきたいわゆる単純労働を実質上指しているように思うわけなのですが、そう受けとめてよろしいのでしょうか。
  299. 股野景親

    股野政府委員 人管法上、実務研修を含めた研修と就労とは明確な区分を設けておりまして、その区分の根本は、就労は報酬を得ることを目的とする活動であるのに対して、研修は報酬を受けることが目的ではなくてあくまで技術、技能を修得するということに目標があるわけで、その点で明確に区分をいたしております。
  300. 木島日出夫

    ○木島委員 大事なところだと思うのです。報酬をもらうことを目的とするかしないかで研修と労働、労務を分けている、まさにそのとおりだと思うのですね。しかし、その研修の中に単なる研修と実務研修という言葉を入れているわけですから、金を、報酬を得ることを目的としないで実質上は商品生産、役務の提供、販売業務、これを繰り返し繰り返しやることをもって実務研修と称しているのでしょうか。
  301. 股野景親

    股野政府委員 実務研修の内容は、これは研修全体が技術ないしは知識の修得にございますので、その修得の過程において、例えば実際に物が生産されるあるいは販売されるという業務の現場でその技術ないし知識を修得する必要がある、そういう意味から実務研修というのは定めたわけでございます。したがって、そういう意味での実務について研修することは研修と考えておりますが、その場合も、先ほど申し上げましたような報酬という点については、報酬ではなくて単に、生活をするための生活費の手当ては必要でございますのでそういう観点からの手当を支給される、しかし内容的にはあくまで技術あるいは知識の修得を目的とするもの、こう判断をいたしております。
  302. 木島日出夫

    ○木島委員 従前問題になってきたのは、研修という建前で外国人労働者を受け入れて実質上は生産ラインに組み込んで労働させていた、しかも研修ですから給与を払わなくていい、むしろ払ってはならぬということで、研修名目の単純労働をさせていたということがまさに問題になっていたと思うわけであります。実務研修というのは、教育的側面と労働的側面が密接不可分だ、切り離すことができないという性質を持っていることは、実は通産省の「外国人労働者問題への対応について」というものが、本日ですか、産業労働問題懇談会報告で書かれているわけです。まさにそのとおりだと思うのですね。そういう面で、私は今度の法務省の基準が研修の中に実務研修をやってもいいということを潜り込ませたことは反対しているわけではないのです。ただし、その要件を見ますと、実務研修ができる要件としては、例えば当該受け入れ機関が宿泊施設を持っていること、研修施設を持っていること、そして常勤の職員の二分の一の数に限ること、そして死亡、負傷、疾病罹患に対して保険に加入していること、労働安全衛生法なんかについての措置を講じていること、生活指導員がいること、そしてまた、この受け入れ機関が外国に合弁企業または現地法人を持っていること、あるいは受け入れ機関が引き続き外地にあって一年以上の取引の実績または過去一年間に十億円以上の取引の実績を有する機関であること、そういう要件を満たした場合は実務研修をやっていい、二十人に一人は実務研修をやっていい。そして、総時間の三分の二までは実務研修をやってもいいという規定になっているわけですね。これは端的に言いまして、要するに二十人に一人ならこういう労働者を受け入れて、そのうちの三分の二は実務研修で生産ラインに組み込んでいいというということを今度の基準では書いてあるわけです。私はこういう方向はいいと思うのです。しかしこの基準では、これが実行できるのは大企業だけに限る。中小零細企業は今まさに人手不足で大変苦しんでいるわけですが、この要件は中小企業は全く満たすことはできない。私は、まさに中小企業にこそこういう形で受け入れを認める道を開くべきではないかと思うわけです。無制限に数を入れてはいけませんから、秩序を持って受け入れる道を切り開くべきではないかと思うわけであります。先ほど私が触れた産業労働問題懇談会報告にもそういう指摘があります。ぜひともそういう方向で、まさに人手不足で苦しんでいる中小企業団体、中小企業に対してこういう道で国人労働ができる、今まで政府が言っているいわゆる単純労働に道を開くようにお願いしたいと思うわけであります。  最後に一点だけ。  この基準では、この研修の要件を満たせば数の規制はない、要件を満たせば無条件にこれは受け入れなくちゃいかぬということなんですか。そこはどうなんですか、政府の政策として。
  303. 股野景親

    股野政府委員 まず研修、それから先ほどの就労という観点についての区分けをしたのがこの基準でございますので、その意味で、この基準は決して企業の規模について考えたことではなくて、こういう基準を満たすということをただいまの区分のためにつくった基準でございます。そして、それでは今後この基準を運用していくに当たって、実際にそれではそれぞれ受け入れる機関の状況というものと研修の効果というものがどう組み合うかという点は、これもなお当局としても関係方面ともよく御相談をしながら考えていきたいと思っておるところでございます。したがって、そういう意味でのいろいろな受け入れ機関について、特に個々の基準の中で法務大臣が告示をもって定めるような受け入れ機関という規定をわざわざ設けてございますのも、そういう意味でこの基準の運用について研修の効果が発揮できるということを確保された場合に、また弾力的な運用を図る道を開いているわけでございます。  それから、ただいまの人数の点は、これはこの法の省令基準の上からは上限というものは設けておりません。
  304. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長代理 時間が来ておりますので、速やかに質問を終了してください。
  305. 木島日出夫

    ○木島委員 この要件では現地法人とか合弁企業でなければ受け入れられないわけですから、とてもじゃないけれども、中小零細企業はこの要件を満たすことはできないということを指摘して、この要件を中小企業にも受け入れられるような要件につくりかえていただくことをお願いして、終わらせていただきます。
  306. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長代理 これにて木島日出夫君の質疑は終了いたしました。  中野寛成君。
  307. 中野寛成

    中野委員 東京家裁、東京簡裁裁判所の合同庁舎の計画、加えて区検察庁等の行政庁舎がドッキングする計画、このことについてお尋ねしたいと思います。これはひとり東京の問題として問題視しようとしているのではないのでございまして、むしろ東京だからこそ、全国のこういう仕組みのモデルケースとして模範を示さなければならない。法務当局また裁判所等の本来の任務、姿勢について、基本的な問題であると思いますからあえてお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず、東京家庭裁判所と東京簡易裁判所の合同庁舎のことにつきまして、家庭裁判所と簡易裁判所の性格の違い、とりわけ家庭裁判所は新憲法のもとで「家庭に光を、少年に愛を」というスローガンで生まれた、言うならば他の裁判所とは全く異なる理念でわざわざ発足したといういきさつがあるわけであります。それらのことをいかように踏まえておられるのか、そのことをきちっと認識した上での今回の計画なのであるかどうか、このことについて裁判所にお伺いいたします。
  308. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 建物の施設の関係は、また別に局長から説明をいたしますが、私の方は理念の面から申し上げたいと思います。  仰せのとおり、家庭裁判所は「家庭に光を、少年に愛を」というモットーを掲げまして、家庭の平和と少年の健全育成ということを目的として発足をした裁判所でございます。機能の面からこれを見ましても、司法機能を営むという面では確かに地裁、簡裁等の裁判所と共通の面もございますけれども、それとは別に、家庭裁判所には福祉教育的な機能あるいは後見的な機能というのも非常に重要な機能としてございます。そういう面を見ますと、やはり家庭裁判所の性格あるいは理念というのは地裁、簡裁とは異なったものがあるであろうと考えております。
  309. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 まず東京の計画でございますけれども、今委員指摘のとおり、私どもが計画いたしておりますのは地下三階地上二十階建ての、面積にいたしますと大体三万九千平米くらいの建物を建てたいと考えております。その建物に入りますのは簡易裁判所の民事関係、それから東京家庭裁判所が入る予定になっております。  今家庭局長から申し上げましたとおり、家庭裁判所裁判所の中で独自の目的を持っておりますことは、先生の御指摘のとおりでございますけれども、広い意味で申しますとやはり裁判所の一つでございますし、司法椎の一翼を担うものでございますから、いわゆる個々の具体的な事案を法に従って適正に解決していくという意味では共通したところもあると考えております。  家庭裁判所と簡易裁判所を一つの建物にすることでございますけれども、実はこれは全国的に見ますとそう珍しいことでもないわけでございまして、御承知のとおり支部というのが二百一ございますけれども、この支部はいずれも家庭裁判所地方裁判所、簡易裁判所が一緒の建物になっております。それから本庁と言っておりますものが全国で五十庁ございますが、このうち現在二十庁ほどは難物が別々でございますけれども、三十庁は地方裁判所、それから簡易裁判所と同じ建物の中に建っているわけでございます。別々に建っております庁でも、敷地が離れたところにあるものもあれば同じ敷地の中に建っているというようなところもございます。そういった全国的な状況等を見、あるいはこれまでの私どもの経験から考えてみましても、この家庭裁判所と簡易裁判所が一緒にあることによって家庭裁判所の理念が損なわれるというようなことにはならない、またそういう声も実はこれまで余り聞いたことがないわけでございます。具体的に、こういう点で問題があったのだというようなことは特には聞いておりません。  もちろん、先ほど来家庭局長が申し上げておりますような相違点もございますので、部屋割りを考えるとか動線を考えるとかいったような場合に家庭裁判所目的が少しでも損なわれることのないよう十分な配慮が必要であることは当然でございますし、これまでの各庁についてもそういった点を配慮して裁判所の建物を建ててきておるつもりでございますし、今度の新しい建物についてもそういった点は十分配慮して建てたいと考えておりますけれども、ただ、形の上で一つの建物の中に両者が入るということが直ちに家庭裁判所の理念を損なうというふうには私どもは考えていないわけでございます。
  310. 中野寛成

    中野委員 全国でたくさん例があるというお話は私も承知をいたしておりますが、むしろ逆に、今日までの東京家裁は別になっていることによって全国のモデルと言われてきたわけです。ですから、むしろ別に建てる、そして機能をより家裁は家裁としての役割、理念に沿った建て方と運用をされるように、逆に全国に別に建てていることを広げていかなければならないのに、逆に東京も同じにするのか、東京よ、おまえもか、これが今回の流れではないかと私は思うわけでございます。  まして、聞きますと、今回は東京二十三区にあった十二の簡裁を統合して霞が関の一カ所にまとめるということなんですね。しかも、最近の簡裁の民事事件といえば、当事者の圧倒的多数がサラ金関係者だというふうにも言われているわけであります。そういたしますと、同じ建物で、しかも、入り口は反対側にそれぞれつける計画になっているそうでございますが、入りますとロビーは同じだ。しかも、家庭裁判所の受付はオープンスペースみたいに、何か仕切りはあるそうですが、それは目隠しの役割を果たさない程度の仕切りになっている。これは将来計画を変更すれば済むことではありますけれども、しかし例えばロビーが一つで同じであること等々も考え合わせますと、これは家庭裁判所の特色、あるべき姿から考えますと、本当にいかがであろうか。地方においてはある意味では高層ビルではなかったり、または周囲のスペースが比較的ゆったりしておったりということで、逆にそこを訪れる人の精神的な安定感というのは地方の場合余り損なわれない。しかし東京の場合は、言うならばビルだけでもでっかいビルを建てますと威圧感みたいなものがある。むしろ家庭裁判所は、その性格からいって建て方や色さえも工夫してしかるべきではないかとさえ私は思うのでございますけれども、そういう配慮が果たしてどこになされているのであろうかと計画を拝見して思うわけでございまして、今のせっかくの御答弁ではございますけれども、私はそういう家庭裁判所のあり方、それから今回の簡易裁判所の統合に基づく中身の問題等々を考え合わせますと、どうにも納得がいきかねるのでございます。  また、時間がありませんからまとめて申し上げますが、加えて、新しい計画では区検庁舎をドッキングさせるということですね。裁判所だけではなくて、区検庁舎を横に建ててドッキングをさせる。そうすると、外から見ますと同じビルの中に区険があり、裁判所があり、しかも裁判所は簡裁があり家裁があり。これでは言うならば司法の独立は一体どこへ行ったんだ。器よりも中身だとおっしゃるかもしれませんが、逆にこういう問題は器が中身を国民に対するイメージとしては反映するとさえ言っても過言ではないと思うのでございまして、これらのことにつきましては裁判所も法務省もどちらも真剣に考えて、建設のスペースだとか容積率だとかそういうことではなくて、むしろその前に憲法の理念を優先させるという精神が必要だと思いますが、そういう理念に基づいてきっちり区分けをしてやっていこうとする前向きの姿勢をお持ちなのかどうかということを逆に疑わざるを得ません。そういうことを含めましての御答弁をお願いしたいと思います。
  311. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 区検等が入ります建物とのドッキングの問題について御説明させていただきたいと存じます。  現在考えておりますのは、建設を予定しております現在の検察庁の建物があります位置から新しい法務省、検察庁のビルが建っておりますところの間ぐらいに、区検等が入りますB棟とそれから先ほど来御説明しております簡易裁判所、家庭裁判所が入りますC棟を建築する予定にしております。そのもう一つ厚生省寄りと申しますか、現在の検察庁の正面玄関がありますあたりに弁護士会の合同ビルが建つという予定になっております。現在私どもが考えております建物はB棟、C棟でございますけれども、そのC棟の一部、二十階分の建物の七階までの部分がB棟とドッキングと言うべきかどうか、壁を接することを計画しておることは間違いございません。  先ほどの問題に返って恐縮でございますけれども、私どもがあそこに家庭裁判所と簡易裁判所の建物を建てることにいたしましたのは、弁護士会を含みます司法関係機関が現在あそこのブロック全部を占めているわけでございます。裁判所あるいは今度の法務省、検察庁等が高層化されることによりまして若干の土地の余裕ができてきたわけでございます。私ども従前から、家庭裁判所を司法機関が集中しておりますAブロックにぜひ移していきたいと考えていたわけでございます。これは裁判所の要望というよりも、やはり国民の方々が裁判所にお見えになるのに、必ずしも家庭裁判所地方裁判所と簡易裁判所というのを厳格に区別されて来られるよりも裁判所に行くというような形で来られる。そうすると、家庭裁判所の方に地方裁判所に用事がある人が行ったり、あるいは家庭裁判所に用事のある人が地方裁判所に行ったりというようなこともそう珍しくはございませんので、なるべく近くにある、しかも弁護士会もすぐそばにあるというところが国民の便利にもなるはずだということで、あの地区に家庭裁判所を持っていきたいと考えていたわけでございます。  ところが、今申し上げましたようなあのAブロックの整備に伴いまして相当規模の建物を建てる余地ができてきたわけでございますし、同時に、今委員指摘のとおり東京の都区内の簡易裁判所を統合するということも先般来法改正によって決まっていることでございますので、この両者の建物をあそこに建てたいと考えたわけでございますが、あの土地の利用状況からいたしますと、別々に建てるということは敷地あるいは町並みからいたしましてまず不可能でございまして、町並みの景観あるいは敷地の広さ等考えますと、合同の庁舎として建てる以外にないということであそこに持ってきたわけでございます。  そういう形であそこに持ってくることにしたわけでございますけれども、当初の計画では、現在の家庭裁判所それから簡易裁判所事件数、職員数等を考えますと三万七千平米程度の建物で十分だと考えたわけでございますが、あそこは一定の容積率がございまして、計画では容積率いっぱいを使う、つまり今後の増築ができないような建物の建て方をするという計画であったわけでございますので、私ども遠い将来のことを考えますと少し多目に確保しておく必要があるだろうということで、関係機関と折衝いたしまして三万七千に二千平米追加するということの了承を得たわけでございます。  その二千平米をどこに建てるかという問題になったわけでございますけれども、非常に限られた土地に建物を建てるわけでございますので、詳しい御説明は省略させていただきますが、結局使えます場所はB棟とC棟の間しかないということになったわけでございます。そこで、そこのB棟とC棟との間を精いっぱい使って建物を建てるということにいたしますと、どうしても隣の建物にくっつけざるを得なくなった。若干離せばよかったじゃないかという御指摘もあろうかと思いますけれども、ビル風等のことも考えますと、技術的にも少しだけ離すというのもいろいろ問題があるようでございまして、そこら辺も考えたわけで、たまたま、たまたまと申しますとあれですが、建物の壁面が接しているというふうに御理解いただきたい。ドッキングというと何となくそこをつなぎ目にして相互に交流ができるような感じになるわけでございますけれども、決してそんな建物を考えているわけではございませんで、むしろ、B棟に裁判所が入るC棟の一部が壁で接している、そういう建物をつくるのだというふうに御理解いただければと思っております。
  312. 中野寛成

    中野委員 都市計画的な考え方が優先して結局行政機関と裁判所というのが、単に建物がくっついていて全く壁で仕切られているのだと言われましても、国民の目から見ればこれは外観として同じビル、同じ中に検察と裁判所があるのか、しかも簡裁と随分と役割が違う家庭裁判所も一緒にあるということは、我々国民サイドから見ると決して気持ちのいいものではない。先ほど、国民はそんなに区別して考えていない、地裁へ行くのも家裁へ行くのも同じ裁判所へ行くんだという気持ちの人が多いとおっしゃられましたが、私は裁判所の中にいるとそう見えるのかなと。私どものところへいろいろな形で、家庭裁判所に御相談をしなければいけないような事案で相談を持ち込まれますけれども、我々は逆に、そこは地方裁判所とかそういうところではありませんよ、何でも気楽に相談に乗ってもらえる家庭裁判所だから、裁判所という名前がついていても気楽に行きなさいというふうに、むしろ我々は御相談を受けた場合にそう申し上げることが多いのです。そういうことを考えますと、私は少なくとも司法と行政、とりわけ司法の独立性を保つためにはやはり外観も大切だ、そして、ましてや家庭裁判所の機能を考えれば、これはむしろあのブロックに集中させるんだ、まとめて建てるんだということを大前提に置かないで、本当は場所が少々離れておっても別に建てるという基本姿勢をまず持った上で今回の計画をお立てになるべきではなかったかなと思うわけであります。また、もし共同ビル、合同ビルということを認めるといたしましても、その配色や入り口やまた受付の与える精神的な影響や、ありとあらゆることにきめ細かな神経を使って配慮しませんと、せっかくの役割が泣く。  むしろ、きょうは私は裁判所の応援団のつもりで申し上げているわけでございまして、裁判所としてはもっと厚かましく、日本の司法を守る立場で財政的な要求もされていいのではないかとさえ思って申し上げているわけでございます。例えば国選弁護人の報酬が安いとか、随分といろいろな問題が今司法を取り巻く環境の中で問われているわけでございます。日本の民主的な司法を確立するためにも、制度運用、そしてそれを包むハードの面において、言うならばまずはハードから直すぐらいの気持ちでないとなかなか中身まで変えることは難しいわけでありまして、こういうごちゃまぜでもいいんだという気持ちが結局代用監獄のことや拘禁二法のことまで精神的につながっていくのではないかという疑いさえ持たれるわけでございます。私どもとしてはそういうことを配慮した計画を立て直すべきだというふうに改めて申し上げざるを得ないわけでございまして、時間が参りましたので、最後にそのことについての裁判所のお考えをお尋ねをして質問を終わりたいと思います。
  313. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 これからB棟、C棟等の設計をやってまいりますし、それから外観等についても検討を加えていくことになっております。委員の御指摘でもございますので、外観にいたしましても、B棟とC棟とが一棟の建物にならないような外観を持たせることも可能だと考えております。そういった点に十分配慮して建築に当たっていきたいと思いますし、もちろんC棟の内部の部屋割りあるいは動線等につきましても、御指摘の点を十分配意した上で、家庭裁判所の特質が少しでも損なわれることのないような建物を建てたいと考えております。
  314. 中野寛成

    中野委員 時間が参りましたので、終わります。
  315. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長代理 これにて中野寛成君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る六月一日金曜日午後一時二十分理事会、午後一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十一分散会