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1990-06-15 第118回国会 衆議院 文教委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年六月十五日(金曜日)     午前九時三十一分開議  出席委員    委員長 船田  元君    理事 麻生 太郎君 理事 臼井日出男君    理事 木村 義雄君 理事 町村 信孝君    理事 松田 岩夫君 理事 中西 績介君    理事 吉田 正雄君 理事 鍛冶  清君       新井 将敬君    岩屋  毅君       狩野  勝君    小坂 憲次君       左藤  恵君    佐田玄一郎君       坂本 剛二君    笹川  堯君       塩谷  立君    福田 康夫君       真鍋 光広君    増田 敏男君       村田 吉隆君    輿石  東君       佐藤 泰介君    佐藤 徳雄君       沢藤礼次郎君    土肥 隆一君       馬場  昇君    矢追 秀彦君       山口那津男君    山原健二郎君       菅原喜重郎君    米沢  隆君  出席国務大臣         文 部 大 臣 保利 耕輔君  出席政府委員         文部大臣官房総         務審議官    佐藤 次郎君         文部省生涯学習         局長      横瀬 庄次君         文部省初等中等         教育局長    菱村 幸彦君         文部省教育助成         局長      倉地 克次君         文部省高等教育         局長      坂元 弘直君         文部省学術国際         局長      川村 恒明君         文部省体育局長 前畑 安宏君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       山本 貞一君  委員外出席者         防衛庁人事局人         事第二課長   西村 市郎君         厚生大臣官房老         人保健福祉部老         人福祉課長   辻  哲夫君         厚生省社会局更         生課長     福山 嘉照君         農林水産省農蚕         園芸局普及教育         課長      鈴木 信毅君         労働省職業能力         開発局能力開発         課長      小島 迪彦君         建設大臣官房政         策課長     清水 一郎君         自治大臣官房企         画室長     石橋 忠雄君         参  考  人         (立教大学社会         学部教授)   岡本 包治君         参  考  人        (東海大学教授) 海老原治善君         参  考  人         (青森総合社         会教育センター         所長)     佐藤圭一郎君         参  考  人         (中央大学文学         部教授)    島田 修一君         文教委員会調査         室長      堀口 一郎君     ───────────── 委員の異動 六月十五日  辞任         補欠選任   新井 将敬君     笹川  堯君   塩谷  立君     福田 康夫君   薮仲 義彦君     山口那津男君   米沢  隆君     菅原喜重郎君 同日  辞任         補欠選任   笹川  堯君     新井 将敬君   福田 康夫君     塩谷  立君   山口那津男君     薮仲 義彦君   菅原喜重郎君     米沢  隆君     ───────────── 六月十五日  私学助成の強化に関する陳情書(第一二六号)  私立高等学校に対する生徒急減対策に関する陳情書(第一二七号)  非木造校舎改修事業に関する陳情書(第一二八号)  埋蔵文化財発掘調査に関する陳情書(第一二九号) は本委員会参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  生涯学習振興のための施策推進体制等整備に関する法律案内閣提出第六四号)      ────◇─────
  2. 船田元

    船田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、生涯学習振興のための施策推進体制等整備に関する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として立教大学社会学部教授岡本包治君、東海大学教授海老原治善君、青森総合社会教育センター所長佐藤圭一郎君、中央大学文学部教授島田修一君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせをいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  岡本参考人海老原参考人佐藤参考人島田参考人の順にお一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対しお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、御発言の際は、その都度、委員長許可を得ることになっております。また、参考人委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。  それでは、岡本参考人にお願いいたします。
  3. 岡本包治

    岡本参考人 岡本でございます。  本日、これから参考人として意見を申し上げますが、まず最初に、本案に対する賛成という立場から意見を申させていただきます。  内容は、大きく分けて二つございます。一つは、私がかかわったり、あるいは見てきた日本各地における生涯学習推進の実例と申しますか、そのことを第一項目として、事例を幾つか挙げさせていただこうと思います。二番目には、そういうものを推進していくときに必要な課題、特に行政上の課題ということについて取り上げさせてもらおうと思っております。  まず最初に、各地における生涯学習推進活動事例でございますが、いきなり市町村名で申しわけございませんが、千葉県の小見川という町がございます。小見川町は最近になってこういう問題に取り組み出したわけでございますが、この町のとらえ方は、遊び、学び、はぐくみ、交流する水の町、こういうまとめ言葉でもって生涯学習推進町づくり活動を展開しております。  この町の場合に特徴的になっておりますのは、住民方々、いろんな各層の方々が、この推進事業計画づくり及びその推進活動主体になっておられます。ちなみにこの町では、今申しました推進事業づくりなどは五つ部会住民方々が分かれておられます。  例えば二、三例挙げてまいりますと、推進組織をどうつくっていくのかという問題、あるいは生涯学習関連施設整備及び活用をどうするかという問題、あるいはそのほか生涯スポーツ、一生涯のスポーツでございますが、生涯スポーツいかよう推進していくのかという問題、あるいは学校、家庭、地域の三者の連携いかようにして進めていくのかという問題、さらにまた、そのほか文化芸術活動文化財関連活動、例えばそんな例でございますが、こういうものを五つ部会に分かれて住民方々がかかわっておられるわけでございます。  住民と申しましても、もちろん学校の方からも御参加いただいておりますし、各団体方々、この中にはもちろん自治組織の方も入っております。いわゆる大きいさまざまな領域からの団体方々の御加入をいただいております。また、議員さんも御加入されております。おのおのが自分関心なり自分の特技みたいなものの領域でその推進事業計画及び推進実施に当たっていくという、こういういわばぐるみ活動みたいなものが展開されております。先ほど申しましたような、遊び、学び、はぐくみ、交流する水の町、こういう合意のもとに行っておるわけでございます。  私がこの活動に多少かかわらせていただきまして持ちました感想を言わせていただきたいと思います。  それは、この生涯学習推進という問題は、地域方々主体者意識みたいなものが非常にわき起こりやすいという感じを持ちました。どちらかというと、地域に関する関心のさほどない方も、あるいは自分生活をめぐる問題に対してさほど関心のない方々も、こうした活動の中で、あるいはこうした活動とかかわりを持って一種の主体者意識、あるいはさらに、意識だけではなくして、主体者的な社会参加活動というものに広がっていっているようでございます。いわゆる町づくり活動に展開しているというように私は考えておるわけでございます。生涯学習は、言うまでもなく個々人が自発的に生涯を通して折々に必要なものを学ぶということでございますが、そこからこういう問題が自然発生的に出てくるという事例かと思ったわけでございます。  それからその次に、第二番目の事例ということで申させていただきたいと思うのでございます。  これは山梨県の韮崎市でございますが、ここでは完全に住民主導のタイプになっておりますが、この市には十一の地区公民館というのがございます。地区公民館単位で生涯学習推進ということを行っております。ですから、そういう地区ごとでいろんな方々がかかわる。これまた例えば一例を申しますと、青少年問題が発生いたしますと、あるいはそのおそれがございますと、お年の方から当の青少年まで加わって、これまたいわゆる市町村単位より地域単位でそういう活動を展開しております。さまざまな集いを持つ、学習集いを持つ、あるいはさまざまなイベントを展開する、それからまた学習会を展開する、こういった活動が多く行われております。  この市の場合は婦人大学というものを持っておるわけでございますが、この婦人大学は、いわゆる韮崎市以外の方にも開放いたしました。これは現代人生活行動としましては、市町村単位だけではとてもその学習圏に対応できないということがございます。そんなことでこの市の方は市の外にもそういうものを開放しておりますが、なかなかこれは困難であったようでございます。市町村単位事業をそういうように市町村をまたいで行っていくことについては、いゆわる市町村そのものの、例えば執行部からもかなり問題が出たようでございますけれども、そういうことで私は勇気ある行為かと思いました。  実は、以上申しましたようなことで住民の手によって推進してまいりますと、そういう推進は表面的にはゆったり、あるいは遅いというイメージを与えるかもしれませんけれども、実はでき上がったものは、あるいはそれが生んでくる成果ははかり知れなくとうといという感じがいたしました。  今、一応二つ事例を挙げさせていただきました。今度は大きく第二の問題にお話を及ぼさせてもらおうと思います。  二番目は、こうした生涯学習推進、展開していくときの課題ということでございます。もちろん前提としては、言うまでもなく住民の方、国民の方々主体的な活動を支援する、これは当然のことでございますが、そうした方向の中でこうしたもののより効果的、より有意義な推進を図っていくためにということで、ここでは四つの項目を申させていただきたいと思います。  こうしたものを支援していく体制をつくっていくためには、地域における生涯学習関連する施策施設、そういうものの相互連携協力ということが不可欠な感じがいたしました。世に言うところの学校教育社会教育、それからさらに文化活動有機的連携ということが大変大事になってまいりますし、またさらには、さまざまな行政領域に及ぶそうした施策ないし施設相互連携ということが大変大事になってくる感じがいたしました。  これは実は、今私こういうことを申し上げたわけでございますが、この相互連携及び協力という問題は現状ではなかなかやりにくいようでございます。ちょっと一例を申させていただきたいと思うのでございますが、ある県の方で子育てを終わられたお母様方社会参加を促進していく事業というものを持たれました。これは具体的には職業への参加ということでございます。そういう事業をお持ちになりました。ところが、教育委員会の持っている能力ではお母様方がお求めになっている内容に対応できないという事実も出てまいりました。  例えばお母様方は具体的に職業情報というものを求められます。あるいは職業に関する技術の習得ということを求められます。残念ながら教育委員会部局の中ではそれに対応し得る例えば職業情報提供などはまずできない。あるいは職業能力向上というものは恐らく労働部局の方にございます。そんなことで、この場合にはその労働部局の方との連携ということを行いました。言うならば、この目的は学習する方に豊かなあるいはすぐれた内容提供したいということからそういうことが始まってまいりました。  ところが、現状ではこういう努力は、一概に申し上げられませんけれども、主として職員の方の個人的努力によるという実態のようでございます。その方が走り回って、それで一応こういういわば連携活動事業を成功させたと思われます。このときになおこの中で、この事業の場合は労働部局の方と御連携いただくと同時に、高等学校コンピューター教室の方をお借りして、つまり学校連携をお申し込みになった。学校の方も種々御検討いただいた結果、御協力をいただいたようでございますが、これまた職員の方の努力というような状態になっております。こういう状態で果たしていいのかという疑問をおのずから持ってまいります。  第一の問題として私が申し上げたかったことは、生涯学習関連施策施設相互連携及び協力ということを今申し上げたわけでございますが、これには実情はかなり困難な問題もなくはない。  二番目に、今度は国及び都道府県及び市町村推進体制整備必要性という問題でございます。  当然これは振興のための行政役割として出てくると思うのでございますが、推進体制整備、例えば生涯学習審議会というものが一つもしできれば、先ほど申しました個人的努力という段階でしかなかった連携活動という問題がもっとはっきり進みやすくなってくると思われます。また、こうしたところでは事実こういった審議会なり、これは国、都道府県両方——都道府県の方は置くことができるということのようでございますが、いずれにしましても、ここではそういった他の部局に対する協力要請も行いやすくなってきますし、また部局を超えた建議もでき得るような話も承っております。いずれにしましてもこういうものが、そういう機能を持つ可能性のある審議会がぜひ欲しいという感じがします。市町村におきましては、その方向でいろいろな体制整備されていけば、それもすばらしいことと思っているわけでございます。  今、二番目に申し上げましたことは、国、都道府県市町村推進体制整備必要性ということでございました。  第三でございますが、後ほど申します理由で、都道府県役割というものが一定の重みを持ってくるという感じがいたしました。それはもちろん生涯学習推進市町村が大いに頑張っていることは間違いないわけでございます。これからももっともっとこの方向はより顕著になっていくと思います。ところが、例えば現代人間現代人行動圏を考えればわかります。つまり現代人は、一市町村の中に居住地をとどめておりますので、したがってその地域を超えたところでさまざまな活動学習をすることができないということから、県ないしそういう地域を超えた事業というものの必要性あるいはアドバイス、情報提供、そういったことが必要と思われます。  時間がありませんので、四番目、こういったことの中で公が大いに努力していくと同時に、いわゆる民間活力の導入ということを図っていく。さらにまた我々考えてみましたら、現在、日本地域は御承知のごとくこういった面においては、いわゆる地域の中にはそういったもののない、いわゆる学習機会地域には少ないところがございます。そういうところにはあえてそういったものを推進する体制をつくるということによって民間能力を導入し、それもまた単価を下げていくことも十分考えなければならぬと思って、その趣旨で私はこの法案に賛成いたすわけでございます。  恐れ入りました。非常に失礼いたしました。(拍手)
  4. 船田元

    船田委員長 ありがとうございました。  次に、海老原参考人にお願いいたします。
  5. 海老原治善

    海老原参考人 一九八七年の六月でございますけれども、ュネスコの生涯教育局責任者でありますエットレ・ジェルピさんが訪日されました。呼ばれましたのはお茶の水女子大学の名誉教授でありました波多野完治先生でございまして、私はその事務局長みたいなことをいたしまして、ジェルピ博士をお招きしたわけでございます。来日されたジェルピさんは、日本の生涯教育について大変強い関心を持っていらっしゃいまして、ちょうど折から八六年の四月には臨教審の第二次答申というものが出まして、そして生涯学習体系への移行という大きな方向が出されたわけだと思うわけであります。そういう状況の中で、またジェルピ博士が帰られて二月後の八月には臨教審最終答申が出まして、ここでも生涯学習体系への移行ということが学歴社会を是正する、こういう観点から打ち出されたわけであります。  それで、私はきょうこの法案に対する意見を申し上げる角度として、国際的な生涯教育動向、こういうものからこの法案をどう見るかという角度から意見を申し述べてみたいわけであります。  さて、ジェルピさんが生涯教育局責任者になる前は、ポール・ラングランという方が一九六五年に第三回の世界の成人教育会議の中で初めて生涯学習ということを提言されたわけであります。そして、その提言の中で、なぜ生涯教育というふうにシステムを変えていかなければならないかということの理由として、変化が加速化している、科学技術の進歩が非常に速い、したがって、こういうものに適応していくためには、学校教育あるいは成人教育をひっくるめて時代に合わせた、変化に適応していくようなシステムに変えていかなくてはならない、こういうことをラングラン氏は提唱され、これが日本にも紹介される中で生涯教育が大きな波紋を広げていったと思うわけであります。  ところで、一九七二年にラングラン氏が定年でユネスコを退任された後ェットレ・ジェルピ氏が就任されたわけでありますが、一九七〇年代に入りますと、生涯教育に対する考え方一つ変化が起こってきたように私には思えるわけであります。七一年にフォール報告というものが出されましたけれども、ここでは学歴だとか資格だとかそういうものを得るために学ぶ、フォール報告によりますと、ラーン・ツー・ハブ、こういうふうに言っておりますが、そういう学習あり方から、ラーン・ツー・ビー、いかに生きるべきかという方向に生涯教育あり方を求めていく、こういった見解がヨーロッパでは生まれてきたように思うわけであります。  そしてさらに、一九七四年には、皆さんも御存じの有給教育休暇というものがILOで採択をされたわけでありますが、ここでは、労働者の生涯にわたる職業訓練権利あるいは一般教育市民教育、そして労働組合教育というものを労働者有給休暇の中で保障していくことが大切である、こういうことも採択されたのであります。日本政府はまだこれを批准してないと聞いておりますけれども、こういった動向が生まれてまいりました。そして、一九七八年には、やはりユネスコ体育及びスポーツ権利憲章というものが採択をされたわけでありますが、それを見ますと、体育及びスポーツはすべての人々にとっての権利であるということがここで明らかにされているわけであります。  このように、生涯にわたる学習というようなものが権利である、あるいはまた、体育及びスポーツというものもすべての人にとって権利である、こういうことが国際的には確認をされていったように思うわけであります。  そして、ラングラン氏が第三回の大会を開いてから二十年後の一九八五年、今お手元に資料が御許可を得て配られていると思いますけれども、八五年にパリで第四回の成人教育国際会議が開かれたわけであります。そして、そのとき学習への権利宣言というものがここでたくさんの国々の人たちによって採択をされているということが明らかになったわけであります。  そして、その学習権宣言というものを私たちが改めて読んでみますと、読み書き権利ということが冒頭に出てまいりますけれども、問題は読み書き権利というふうなところに限定されているのではなくて、歴史を書く権利というふうな今までになかった新しい学習権の中身というものがこの中に登場してきておるわけでありますし、また、この学習への権利というものがすべての人々にとっての権利であるということも確定されておりますし、また、その中には、人間というのは歴史にもてあそばれる客体ではなくて、歴史をつくっていく主体なのである、そういった学習への権利というものを女性にも男性にもすべての人たちに保障をしていく、こういうことが国際会議での結論であったわけであります。  こういった学習権理念というふうなものが国際的に明らかになってきているわけでありますが、もう一つ大事な点は、この国際会議の中で、これまで学習をする上でハンディキャップを持っていたマイノリティーの人たちあるいは障害を負った人たちあるいはまた女性、そして青年あるいは子供たち、こうした社会的に十分学習への権利を保障されていなかった人たち学習権利を保障していくことが今後の成人教育基本的課題であるということがこの国際会議確認をされたわけであります。私は、今こうした生涯教育をめぐる新たなうねりの前に私たちは立っているということを確かめてみなければならないと思うわけであります。  さて、ジェルピ博士日本に参りましてから、現代の生涯教育というのは私たちがパブリックな形でこの格差というものを埋める努力をしていかないと、例えばパイロットの人たちは日々新しい情報科学技術の知識を学ぶことを通して安全な運航が可能になってくるのだけれども、一方では、地下鉄の労働者は日がな単純な切符を切る作業を続けていかなければならない。現代社会労働の中にほっておけばこういう二極の労働の分化というものが広がっていくのだ。したがって、これからの生涯学習課題はこうした労働の分極化した中での人間労働を回復させるためにどういうふうに生涯教育の中でこのギャップを埋めていくのかということではないか、こういうふうな提言をされたわけであります。  私は、そうした観点に立って今度の法案を読ませていただきますと、初めての生涯学習に関する法案であるということで恐らく生涯学習についての基本的な理念あるいは生涯学習とは何かというふうな定義が明快に出されている法案であるのだろうと期待をしていたわけでありますが、出されてきた法案はそうした法案ではなくて、振興法でもなく、また特別措置法でもない、単なる振興のための整備法案でしかなかったということに改めて気づかされるわけであります。  そして、その生涯教育理念というものは一体何なのかというふうなことで注意深く読んでみたわけでありますが、中教審の経過報告に出てくる「生涯学習は、生活向上職業上の能力向上や、自己の充実を目指し、各人が自発的意思に基づいて行うことを基本とするものであること。」というのが書いてあるのと、あと「生涯学習は、必要に応じ、可能なかぎり自己に適した手段及び方法を自ら選びながら生涯を通じて行うものであること。」というのが理念らしいものとしては出されていることを知るわけでありますけれども、この考え方であるならば、もう二十五年前、第三回の国際成人教育会議で出された社会変化への対応、適応といった生涯学習理念のころの考え方がようやくこの中教審の生涯学習理論の中では登場してきたのか、理念においては現在の生涯教育観点からいうと非常におくれてしまった理念しか登場していないのではないかというふうに思えてならないわけであります。  そういう点で、今度出されたこの法案においては、もう少し生涯教育理念あるいは生涯教育の定義というふうなものが明快な形で展開されてしかるべきであったのではないか。そういうことを考えますと、この法案というものについて抜本的な取り組み方を変えていただくことが必要じゃないか、こういうふうに思うわけであります。  第二に、そうした生涯学習理念の国際的動向からいうと、少しというか大幅なずれが見られる中で、先進各国でもやっていないような教育の産業化というふうなことがこの法案の中を通して推進されていくことが非常にはっきりとあらわれているように思うわけであります。  お手元にこれも資料として配らせていただきましたけれども、現在パブリックな形で一千万以上の人たち学習を続けているわけでありますが、民間のカルチャーセンターは百数十万にしかすぎないという状況であります。  これを右の図を見ていただきますとわかりますように、野村総研の資料によりますと、八五年は二十四兆円しか教育産業というものはないけれども、一九九五年にはこれを七十兆円に増加させるということで、もともと教育はすべての人の身近にあり、すべての人々の手の届くものに置く、こういうことが近代の教育改革の基本理念であったと私は考えるわけでありますけれども、現実には、教育は営利事業化され、そして急速な市場拡大の目標となり、野村総研の例でいえば二十四兆円から七十兆円にまで拡大させていくということがここにうたわれているわけであります。  そして「注」のところを見ると、「なお、教育市場を活性化させるような制度的基盤が備わらなければ一九九五年の市場は四十〜五十兆円にとどまる可能性が強い」、こういうふうな注記もこの報告書には書かれているわけであります。つまり、制度的バックアップをしないと教育市場は大きくならないということがここでは指摘されているわけであります。  私は、教育というものは人間基本的な権利にかかわる問題であると考えますときに、果たして教育をこのような営利事業として拡大させていくことが日本の将来にとって望ましいのかどうかということについても大きな疑問を持たざるを得ないわけであります。  そして、これは国土庁の大都市圏整備局がおつくりになった「地域からみた生涯学習」という書物がありますけれども、この最後のところにカルチャーセンターのことが事例として載せられているわけであります。これをあげてみますと、時間がありませんから詳しい紹介はできませんけれども、例えば「本社は新宿にある。年間の売上は」、教育というものを売り上げという言葉で言うわけですけれども、「年間の売上は全体で約三十一億円、その内約二十億円を東京が占めている。」こんな書き出しもありますし、さらに今後の展望というところを読んでみますと、「カルチャーセンターは非常に採算のとりにくい事業である。一回二時間の講義で講師に二万円の謝金を払うためには最低二十五人の受講生を集めなくてはならない。講座は多品種少量生産であり、黒字を出すのは至難のわざである。」講座というものを、教育というものを多品種少量生産というふうな形でとらえて果たしていいのでしょうか、私は大変大きな疑問を覚えるわけであります。  それだけではなくて、N放送協会というものがございまして、そのN放送協会のところを見ますと、「民間の教育機関は公平でないから人気がある、という面を持っている。遠いから、場所が「青山」だから、受講料が高いから、受講仲間の教育レベルがほぼ同じだから集まるのであり、万人向けで近くて安いから必ずしも繁盛するわけではない。もし、公的機関が民活を考えるならば、これらのことをどの程度理解し、受け入れるかが課題ではないだろうか。」というふうにも書かれているわけであります。  生涯学習というふうなものが、すべての人たちにとって生涯にわたる学習権利を保障するというふうなことでなければならないと私は考えるわけですが、民間産業による生涯学習振興にはこうした問題点もはらんでいるのではないかというふうな点からも、この法案については慎重に検討され、もっと生涯教育理念を含んだ法案としておつくり直していただくことを期待したいと思います。  以上で私の意見を終わります。失礼いたしました。(拍手)
  6. 船田元

    船田委員長 ありがとうございました。  次に、佐藤参考人にお願いいたします。
  7. 佐藤圭一郎

    佐藤参考人 社会教育施設事業活動の実態から考えて本法案の制定を強く望んでいる者の一人であります。  私の勤務しております青森総合社会教育センターは、昨年七月オープン、県政第一の柱である人づくりの拠点として次の五つの機能を持って事業を展開しております。  一、調査研究と研修、二、学習情報提供と家庭教育相談、三、新しい学習事業の開発、四、社会教育関係団体の交流、五、県民への施設開放であります。  一の調査研究で実施した青少年の意識調査、それから幼児と地域環境の調査研究の結果と、一一の家庭教育相談事業などを通じまして、今日ほど以前にも増して学校教育、そして社会教育の有機的な連携が望まれているときもないことを感じております。この課題に対応する学習活動や健全育成運動がスムーズに展開できるよう、地域を基盤とした総合的な考え方に立った連携推進を図り、指導する組織が待たれております。  家庭教育ばかりではなく、今日、人々は所得水準の向上、自由時間の増大、そして高齢化の進行などから、学習自体に生きがいを見出すなど、その意欲は極めて高い現状にありますことは御承知のとおりであります。  加えて、近未来の産業構造の急激な変化や本格的に迎える高齢化社会を背景に、人々学習需要は地域においては高度かつ多様なものになりつつあります。現場におる者として、それを非常に強く感じてなりません。したがって、人々学習の需要と供給のバランスを考えるときに、人々文化活動体育、レクリエーション等も含めまして、その活動の体系化や総合的な考え方は、今日極めて大切と言わなければなりません。  需要の増加の傾向を現場から推測するときに、公民館や社会教育センターなど公的な機関と、現在活動されておりますところのカルチャーセンター等民間教育産業だけでは到底対応しきれないことは想像にかたくないと私は解釈しております。  青森県内の二つの市で活動しておりますNHKの文化センターに学ぶ人々の大半は、公民館やその他機関、団体学習経験を持った人がほとんどであります。また、文化センターで学んだ人々は、再び公民館等の講座や研修に参加している状況であります。このことは、公と民間、お互いの学習活動人々学習意欲をより高め、触発しておる証左ではないかというふうに思料されます。  今後は、公と民間の施設間の学習領域内容等の体系化を図る機会と場が必ず求められてきはしないか、現場の者としてそのことを強く感じております。人々が多様な学習領域や高度な内容等を希望されております今日、単に教育サイドからの支援ばかりではいけないと思います。広く、しかも専門的分野の学習が満たされるように、関連行政との連絡、協力、協議が極めて大事ではないかと思います。かかる意味からも、本法案に盛られてあります文部省の生涯学習審議会であるとかあるいは都道府県の生涯学習審議会役割に大きく期待が寄せられます。  一方、民間教育産業の活動は、青森県の現状から見ますと、六十七市町村中七市町にすぎません。また、今後の拡充計画も耳に入っておりません。このような状況が進みますと、生涯学習地域による大きな格差が生ずるのではないかと心配される面もございます。本法案に盛られている民間の活力をも含めた特定地区地域生涯学習振興の指定を望んでやまないものです。現場の立場あるいは県の立場から申しますと、人々学習活動地域的偏在を解消させたいのであります。  以上のことから、民意を十分に反映でき、生涯学習活動振興を図る文部省都道府県の生涯学習審議会の設置及び生涯学習活動の総合的な支援を図る拠点の生涯学習推進センター等の設置など、体制整備を強く望んでおります。  以上、現場の一人の声として受けとめていただければまことにありがたいと思います。(拍手)
  8. 船田元

    船田委員長 ありがとうございました。  次に、島田参考人にお願いいたします。
  9. 島田修一

    島田参考人 私は、長野県の農村で十一年間にわたって社会教育活動の実際に従事したことと、その後、大学で社会教育及び教育法学を研究している立場から、この法案は慎重審議をし、抜本的に組みかえなければならないものであるという見解を持っております。その立場から、以下四点にわたって意見を申し上げたいと思っております。  その第一は、教育の本質に立って生涯学習あり方を考えたいということであります。第二は、本来あるべき生涯学習政策に期待される性格と内容についてであります。第三には、本法案に即して幾つかの問題点を述べたいということであります。それから第四は、先ほども海老原参考人がおっしゃられましたが、生涯学習の国際的展開、動向に即して今後のあり方を考えてみたいという点であります。  第一点の、教育の本質に立って生涯学習あり方を考えたいという点については、何といっても戦後の社会教育活動が本物の教育を生み出してきたという点を確認したいことであります。それは、自己課題を解決できる知恵と力を自分努力人々のつながりの中で高めていき、まさに自己教育の主人公として自分自身を育て上げてきたという成果を戦後社会教育活動は持っているわけであります。古くは青年団、婦人会の活動、そのほかさまざまな生活問題、社会問題に取り組んだ中から民主的な社会の進歩を支える有為な人材が多く生まれてきております。国会議員の先生方の中にもそのような活動を通して今日の立派な活動をなされている方々が少なくございません。  このような学習活動の広がりが多くの社会教育活動関係者を励まし、今日の社会教育を生み出してきていると思いますが、このような活動を支えてきたのは実は教育基本法であり、社会教育法であったということが確認されるべきでありましょう。それは、人々人間的発達とその可能性に期待をしてよりよい世の中をつくろうという高い理想が掲げられており、この理想に励まされて多くの人々活動に従事してきたということでありまして、引用するまでもなく、教育基本法の前文、一条、あるいは社会教育法の三条にみずから実際生活に即する文化的教養を高める、これを国や地方自治体は援助すべきだという、この理念と原則が社会教育活動を発展させてきたと思います。  お手元にお配りしました参考資料の社会教育法の制定趣旨説明の中にも、そのような意図がるる述べられております。それは抜粋でございますが、社会教育自己教育性、公共性、施設が独立的に運営されるべきこと、社会教育活動は自主的に発展させられるべきこと、そのためのサービス機関としての施設住民参加によって運営されるべきこと、国や地方自治体の行政機関による指導は求めに応じてなされるべきであることなど、戦後社会教育の自主的発展を支える諸原則が昭和二十四年の社会教育法制定時に明確に語られておりまして、当時の社会教育課長みずから解説を試みられました「社会教育法解説」という昭和二十四年発行の本にも明らかでありまして、資料の一ページ、二ページにわたって引用してございます。特に二ページの下の段に、公民館の運営審議会という住民参加機関の意義を強く述べて、例えば公民館長の選任に際してもあらかじめ意見を聞くというのは、ほぼ公選と等しいようなものであるという、住民参加の原則を強く訴えていることに注目したいと思います。  このように、社会教育の自主性、共同性、自治原則、人々に身近な市町村が第一線に立って条件整備をするということ、国や都道府県はあくまでも後ろ盾になるということ、そして社会教育委員や公民館運営審議会のような住民参加機関があるということ、そしてまた教育行政は政治に干渉されることのない独立性を持つべきであるということ、そしてまた、社会教育活動は公的な制度で支えられてこそすべての人に開かれ、公共性を持つものであるということ、こういう原理が確認されるべきだと思います。  このようなことがありますので、今社会教育活動を通してその活動領域は、教育、育児はもちろん、社会福祉、健康、自然環境あるいは婦人の社会的自立や職業技術訓練、こういった領域にまで手を広げて、総合的な中身を持つに至ってきているわけであります。  さて、第二点の生涯学習政策に期待される性格と内容は、今も申しましたけれども、現代にふさわしい総合性を持つべきこと、教育行政として、教育行政機関がその中間に座って教育行政としての充実を図るために他の関連分野の協力を仰いで総合性を発展すべきこと、しかしそこには自主的、自発的かつ国民の参加に支えられた教育文化活動であるべきでありますから、教育機関が中心であるべきこと。例えばこれはイギリスにおいて地方教育委員会が設立をするカレッジ・オブ・ファーザー・エデュケーションという施設がございますが、ここは地域のさまざまな人々の代表が参加をすると同時に、地元の教育研究機関や県議会なども代表を送りながら独自の運営委員会を持ち、かつその独立した教育施設技術訓練から趣味、教養あるいは教員免許資格などのような大変広範な教育内容を持つことが可能になっておりまして、もちろん低廉な受講料、場合によっては無料という極めて公共性の高い運営をなしているわけであります。  このことから考えてみますと、現在の社会教育法を一層充実した形で運用する、国の補助も年々公的施設の補助が減額されるというような現状を改めてすべての人々参加し得る基本的な社会教育条件を整備することを通して、そして都道府県市町村教育委員会がその地域の実情に即して知恵を出し切って、市町村の公民館、図書館、博物館、その他の社会教育施設とともに連携を進めて総合的な生涯学習推進体制をつくるべきである。  この点について、第三番目に、この法案に即して若干の問題点を申し述べてみたいと思います。  第一点は、総合行政化で教育行政の独立性が失われることが心配であります。二条、五条、十条、十一条にそのことが考えられるわけでありますが、求められるべき人間像や社会像を打ち出した生涯学習理念がなく、むしろ海老原参考人が申しておりましたように、地域から見た生涯学習には、地域活性化政策の一環として生涯学習が位置づくというような順序の逆な発想というものは改められるべきであろう。したがいまして、教育行政の独立性というものは何といっても保障されなければならない。なぜならば、教育行政というのは教育という人間の精神的内面にかかわる学習活動を支え、援助する行政でありますから、一般行政と同質に論じられない。一般行政に見るような指導助言原則は貫かれるべきではないのでありまして、あくまでも法制定時に述べられた求めに応じた指導という自主性が前提になっていなければならない。またその自律性が保障された教育文化施設にあってそれを自主的、共同的に運営する住民の意欲的な参加があって教育活動は発展するわけでありますから、そのような施設の設立とその充実、予算、職員等を含めた充実策こそ大事なのであります。  時間がございませんから、あとは極めて簡単に申しますが、二番目の問題点としては、中央集権化、これが自治体の教育文化行政の自主性の後退を生む、個性を喪失させるということを憂えるわけでありまして、三条、四条、五条、六条、八条に見られるように、国の指導強化と都道府県主導型によって市町村自治の振興が否定されることが心配であります。  第三点は、特に三条にかかわり、また八条にもかかわりますが、都道府県教育行政機関が直接教育活動を行う。これは今までの原則とは全く逆でございまして、教育施設教育活動を行うべきである。これは、教育施設教育機関としてのとらえ方については、昭和三十二年六月一日に文部省の初等中等教育局長の解釈が示されておりまして、みずからの意思をもって継続的に教育事業を行う。みずからの意思をもってという独立性、継続性というものが強調されていることに留意したいと思っております。  四番目は、民間事業者の教育文化事業への導入による常利事業化、これは海老原参考人が詳しく申されたので私は繰り返しませんが、ただ、大阪大学人間科学部の調査をお手元の資料に入れておきました。公的な施設の行う事業ほど、学習経験が少なく、あるいは所得が低い人にとっては開かれたものであって、公的な施設整備が今大変必要である。とにかく「費用がかかりすぎる」「近くに施設がない」、このような阻害条件のために多くの人々学習から遠ざけられている現状を見たときに、公的整備は非常に必要であるということであります。  五番目に、自主団体への指導強化が三条、八条をめぐって心配されますが、これはあくまでも求めに応ずる指導というもの、これは社会教育主事設置を決めた二十六年の法改正時も、文部当局から繰り返し強調されていた点でございます。  そして六番目に、既に触れたように住民参加原則というものが著しく後退されることについて危惧を感じております。  このような危惧を感じておりますだけに、四番目に申し上げたいことは、国際的動向に沿った水準の高いものをぜひ私たち国民共同の力で生み出していかなければいけないということを痛感するわけでございます。  ユネスコ学習権宣言については海老原参考人がおっしゃられました。資料のその次に載せてありますノルウェー成人教育法は、成人教育の伝統の長い北欧の一国の例でございますが、ここでは、成人教育の目的は、一人一人がより価値ある人生を送れるように助力するところにある。人々自分自身の価値を見出すように促し、一人一人の人間的発達を助ける。労働の場でも地域社会でも自己の確立と他人との共同をなし遂げる基盤がつくられるように、知識や洞察力や技量を身につけるための平等な機会を人々に保障することがこの法律の目的であるという、日本教育基本法にも匹敵すべき高い理想と情熱と、人々学習活動参加しようという気分を高めさせるような法律があることを大変うらやましく思うわけであります。  また、私も在外研究で勉強の機会が与えられましたときにしばらく滞在しておりましたイギリスで成人教育学部の設置の歴史が一番長いノッティンガム大学のトーマス教授が「ラーニング・デモクラシー・イン・ジャパン」という本を書きました。「日本における民主主義の学習」というふうに訳せるのでありましょうが、この日本語版が今準備中でございます。そこに寄せた序文では、「戦後日本人は、社会教育活動を通してホワイを学んだ。」と言っております。なぜだ、どうしてだ、どのようにしたらよいか、こういうことを学んだ。「これは専制政治を許さぬ大事な保証であった。」こういうことを言っております。社会教育における視野広い総合的な生涯学習の意義が改めてとらえ直されなければならないことを、このような国際的な動向あるいは日本社会教育に注目している海外の研究者の発言からも読み取れるわけでございます。  速やかに根本的な練り直しをして、広く国民の前に、国民共同でつくる生涯学習あり方を示すこと、これが必要であろうかと思っております。  以上で私の発言を終わります。(拍手)
  10. 船田元

    船田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 船田元

    船田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。臼井日出男君。
  12. 臼井日出男

    ○臼井委員 本日は、参考人の諸先生方におかれましては、御多用中のところお出かけをいただきまして、ありがとうございました。  私は、時間の関係もございますので、全国的な状況をよく把握していただいております岡本先生と、実際に地方において社会教育活動を実践しておられます佐藤先生、お二人に御質問させていただきたいと存ずる次第でございます。  私どもの今日の状況は、非常に所得水準も上がりましたし、また自由時間の増大、あるいは高齢化の進展によりまして余暇時間がふえた、こういうことによりまして、個人あるいはグループによる学習意欲というものが市民の間で大変増大をしてきている。これは私は大変すばらしい傾向だと思っているわけでございます。  私もかつて、もう約十五、六年前になりますが、青年会議所という団体に入っておりましたときに、私どもの地元の千葉に国立千葉大学がございますが、その施設をお借りいたしまして、開かれた大学という市民講座をやらせていただきました。その際に、まず私どもが驚いたことは、その参加の希望が大変に多かったということでございます。いかに多くの方々学習意欲を持っておられるかということをそのときに痛切に感じた次第でございます。このような人々の欲求に対して適切にこたえていく、またその体制をしっかりとつくっていくということが我々国政における者の大切な役目であるというふうに私どもは感じている次第でございます。  そこで、これらの市民の欲求というものに対して一つ一つ対応していくことによりまして、現在、子供たちが大変苦しんでいるわけでございますが、知識教育偏重といったものからも脱却できる一つの糸口ができるのではないだろうかと思っております。  そこで、岡本佐藤参考人に質問させていただくわけでございますが、最初の質問は御両人に共通の質問でございます。生涯学習振興策を考える場合にどのような視点に特に留意しなければならないか、今概略お話を聞かせていただいたわけでございますが、このことについて改めてお伺いをさせていただきたいと思っております。  それから、岡本先生に対する二番目の質問といたしまして、このような法体制を組むことによりまして、国、都道府県市町村推進体制をしっかりと確立していくということが一つの目的でございますが、現在の地域学習活動の状況にかんがみまして、国の生涯学習審議会都道府県生涯学習審議会及び市町村連携協力体制はどのようにあるべきか、このようなことについて御質問させていただきたいと思っております。  それから、佐藤参考人に対する二つ目の質問といたしまして、先生は実際現場でもって大変御苦労しておられるわけでございます。現在、学習内容は大変に多様化いたしておりますし、また非常に高度化いたしております。学習を希望する者は一体どこに行ってどのような学習を受けたらいいのか、そういう情報等に欠けている部分も非常に多いのではないだろうか、こういうふうに思っている次第でございまして、このような生涯学習に関する情報の収集、提供や、あるいは一つ市町村などではなかなか対応しがたい学習の方法の開発、これらのものを都道府県レベルで進めることが大切だと思うわけでございますが、これらのことについてどのようなお考えをお持ちであるか、お聞かせをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  13. 岡本包治

    岡本参考人 それでは、最初の御質問にお答えさせていただきたいというか、意見を申させていただきます。  最初の問題は、施策を進めていくときの留意点ということでございますが、一番先に大事なことは、言うまでもなく学習する方々自発的意思の尊重という問題、これは今回の法案の中にうたい込まれていることでございますが、このことが当然第一の留意点になっていく、視点になっていくと思います。  二番目に、学校教育社会教育文化活動など、さまざまなそういう施策連携ということ、これがないと恐らく事態が前進しないという感じを持っております。  三番目に、今の問題に関連をしまして、そうした中でも、例えば各地にそれこそ必要とされています学習情報が実はございます。これはさまざまな国民意識調査、実態調査を見ましても、学習情報が入手できなかったと、いうことから、せっかくの学習機会というものとすれ違いを起こしているという方が随分いらっしゃいます。そんなことで、学習情報をきちっと収集し、それからさらにそれを提供していくということ、そういうことによってすれ違い、つまり学習需要に適切に対応していくという体制づくりが緊急に必要かと存じてます。  それから、今、私個人をお名指しいただきました問題でございます。  推進体制の問題でございますけれども、実は先ほども申しましたように、施策相互の連携とか協力がどうしても問われてまいりますので、こういうものを検討していく場が必要でございます。  先ほど申しましたように、職員個人的努力みたいなものに頼ってしまってはまずいと思うのです。したがって、国の審議会あるいは都道府県審議会で十分検討していくと同時に、また市町村の方でもこういうものの設置が必要かと思うのです。ただ、市町村のところまでそういうことについて口出しをすることは、ちょっと私は、かえって統制色を強めやせぬか心配をしますので、そのことにつきましては、そういうことを努力するということで私は考えた方がいいかと思っております。そんな感じを持っております。
  14. 佐藤圭一郎

    佐藤参考人 一の方の回答になりますが、岡本先生とほぼ似たような考え方でおります。  やはり学びたいという人々の自発的な意思、これを尊重して、その面の調査、そしてどのように需要に対して対応するか考える場が必要ではないか。あるいはセンター的なところで、それを市町村段階、さらには実際に行う公民館段階まで情報を流してやる、そういったことが必要ではないかと思います。  また、現場におりますというと、学校と、それから社会教育、そして文化活動なんか、今連携しようと思ってもなかなかできない。その方の面に対して手をかすあるいは指導する、そういった拠点的な組織というかセンター的なものがあるのが大変便利ではないか。  それから、情報の収集とか提供でございますが、これは学習の需要が高まれば高まるほどその回転をうまくやるコンピューター組織その他準備が必要かと思います。  二番目の質問でございますが、地域学習活動振興というのは、何としても市町村都道府県とが手を携えて進めなければいけないことではないか、そういう意味で非常に重要性があると思います。このうち、都道府県役割としては、法案に盛り込まれておりますように、積極的に推進体制をつくりながら進めていくということがアンバランスを防ぐ意味では大切か、そういうふうに思います。
  15. 臼井日出男

    ○臼井委員 どうもありがとうございました。  現代の私どもの地元の状況を見ますと、現実に社会学習というものは行われているわけですね。土曜日、日曜日等になりますと、子供たちがいろいろスポーツをやりたい、民間のボランティアの方々がみずからの暇を割いてやっていらっしゃる。そういうような状況が見られるわけでございまして、これらの方々についても、もっとそれらの御努力に対して報いる何らかの施策というものを私どもはしっかりと持っていかなければならぬということをつくづく感ずる次第でございます。  しかも、やがて私ども週休二日制というものが定着をしようとしておりまして、学校のレベルにおきましても、義務教育におきましては土曜日が休みというふうな状況にもやがてなろうとしております。まさに今この時期に一番必要なのは、子供たちがいろいろ学びたいあるいは高齢者の方々が学びたい、そういう欲求に対して、それを受けて立つ指導者というものも市井にちゃんといるわけですから、そういう方々を有機的に結びつけて、双方が努力し合えるような環境をしっかりつくっていく必要があろうかと思っております。  大分前になりますが、ドイツから日本教育事情の視察に来られた方々が、お帰りになってどういうふうに言ったか。日本が今のような教育の環境であるならば二十一世紀は日本は大したことはない、我がドイツは日本を乗り越えることができるというふうに断言したという話を雑誌か何かで私は見たことがあるわけです。  私は必ずしもそうとは思いませんが、今のように余りにも知的教育に偏重した状況で進むとするならば、やはり個性というものはどんどん失われてしまって、ややもするとそういう予言が当たるような状況になるのではないだろうかという危険性もございます。この生涯学習振興法案というものを一つの起点といたしまして、私どもしっかりとこういう多くの方々の要望にこたえる施策というものを推進していきたいと思っております。  両先生には、きょうは大変ありがとうございました。今後ともよろしく御指導のほどをお願いいたします。  以上をもって質問を終わります。
  16. 船田元

    船田委員長 次に、吉田正雄君。
  17. 吉田正雄

    ○吉田(正)委員 ただいまは参考人の各先生方から貴重な御意見を拝聴させていただきまして、本当にありがとうございました。  私は、日本社会党の吉田正雄でございます。  最初に、次の一点につきまして各先生方から先ほどの順序でお答えを簡潔にお聞かせ願いたいと思います。  御承知のように生涯学習振興のための施策推進体制等整備に関する法律案、以下生涯学習法案と呼びますけれども、この法案には生涯学習なるものの概念、理念が明確でないことから、生涯学習の定義が欠落いたしておりますことは先生方も御承知のとおりでございます。  今日、生涯学習なる言葉は流行語のように国民の間に広く流布されておりますけれども、文部当局は、この法案質疑応答の中で、生涯学習は今や国民の常識であり、定義をするまでもない旨の答弁をなされておりますけれども、果たしてそれは妥当でしょうか。生涯学習に対する国民一人一人の認識や受けとめ方、期待やニーズにはそれなりの共通部分もありますけれども、また差異があるのも事実であります。  そこで、国民の学習権を保障する観点や法形式上とも関連しながら、生涯学習の定義を法案に明示すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。結論的なものがございましたならば、簡潔にお聞かせ願いたいと思います。
  18. 岡本包治

    岡本参考人 私の意見を言わせていただきたいと思います。  生涯教育という問題は、私の考え方ではまだ流動的であると考えます。つまり、さまざまな形でさまざまな方々がさまざまな次元でもって展開されてまいりますので、例えば現時点で法としてもし規定すれば、逆に今度ははみ出るという感じを持ちます。したがって、私としましては、今の時点でこういう規定ができることは、かえって枠外をつくってしまうという感じもいたしまして、そういう感じを持っております。
  19. 海老原治善

    海老原参考人 私は明記すべきだと思います。  教育雑誌で報道されましたデータの中に、この法案文部省の若い方々がおつくりになった初期の原案があるやに資料で読ませてもらいました。それを読みますと、「この法律においては、次のように定義する。生涯学習 学習活動文化活動スポーツ・レクリエーション活動及びこれらに類する活動であって、営利を目的とするものでないものをいう。」というのが一番最初のころ、まだたたき台でおつくりになったレベルの法案だったのだそうですけれども、こういう定義があったやに雑誌等で読ませていただきました。  こういうことを含めて、やはり生涯学習については十六省庁にもわたるだけにはっきりと明らかにすることが必要ではないかと私は思います。
  20. 佐藤圭一郎

    佐藤参考人 私は、明示しなくてよろしいのではないか。社会教育法が生かされておるからであります。
  21. 島田修一

    島田参考人 私は、この法案そのままにおいて載せるということは不適切になるだろう、木に竹を接ぐようなものになるのではないかと思われます。  生涯学習振興のための法律案には、人々が充実した生活を送ることができるように教育、文化、学習活動に自主的に参加できる条件を整える、そしてそれを生きる権利として保障するという意味合いのものがうたわれるべきだと思いますが、この法律では、その定義を掲げてしまいますと、あとの国、都道府県主導型の基準に即して行わせるという考え方とずれを生じてきてしまうので、これに直接盛ることは無理であろうと考えております。しかし、法律としては当然理念は掲げるべきものでなければいけないと思っております。
  22. 吉田正雄

    ○吉田(正)委員 どうもありがとうございました。  先生方の今のお考えについて、さらに時間がございましたらもう少しお伺いをしたい点もございますけれども、非常に限られておりますので、次に海老原先生にお伺いをいたしたいと思います。  国内法との関係、それから諸外国の現状等に絡めて若干お尋ねをいたします。  まず、国内法との関連についてであります。  教育基本法は、憲法の理想の実現は根本において教育の力にまつべきものであるとして、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造を目指す教育の普及徹底を期して制定されたことは御高承のとおりでございます。これを基本学校教育法、社会教育法を柱としながら、スポーツ振興法、地方自治法など多くの関連する法律とともに国、都道府県市町村がそれぞれの行政目的に沿って教育、文化、スポーツ職業能力開発、趣味などの学習機会提供学習の場の整備などの施策を行ってきております。  しかるに、今回提出をされた生涯学習法案内容を見ますと、第三条の「生涯学習振興に資するための都道府県事業」や第四条の「都道府県事業推進体制整備に関する基準」などの内容は、従来の学校教育法、社会教育法、地方自治法など一連の法律で対応できる内容ではないかと思われます。したがって、生涯学習法案は屋上屋を重ねるものではないのか、既存の法律との関係はどうなるのか、国と地方公共団体との任務分担が重複をしたり競合したりする部分や心配が出てこないのかどうか、極めて不明確な部分が多いわけであります。  端的な言い方をいたしますと、この程度の内容の法律なら不必要ではないかとすら思われるのであります。教育基本法、学校教育法、社会教育法、地方自治法の各条文と本生涯学習法案を対比しながらお尋ねをすれば一番よろしいわけでありますけれども、非常に時間が限られておりますので、以上申し上げました関連国内法との関係などについてどのように御理解をされ、判断をされておりますか、お聞かせを願いたいと思います。
  23. 海老原治善

    海老原参考人 私はまずこの法案が出ましたとき、先ほども申し上げましたように、これは生涯学習についての基本的な理念等も出されて、その上で今御指摘になりました教育基本法、学校教育法あるいは社会教育法、地方自治法などとの関連も検討された上で出てくるのではないかと思っておりました。また友人たちも、これは生涯学習振興法だと当初言っていたわけです。ところが、実際出されてみると、振興に関する整備に関する法案であるということになってきたわけだと思います。  一体、教育法の中で整備法というのがあるのかなと改めて教育六法をあげてみたのですが、そのようなものは見当たらないわけでありまして、まず、これは生涯教育の促進法、振興法というふうなことになってまいりますと、法令の中で振興法も幾つかありますが、調べてみますれば、古くは青年学級の振興法とか僻地教育の問題であるとか定時制高等学校振興法だとか、振興法というものをあげてみると、どの条文の中にも教育の機会均等を充実発展させる、そういうことが理念としてうたわれていたように思われます。あるいは特別措置法ということになってくると、これはもう新法で、なくなっておりますが、同和対策事業特別措置法などでは、まさに同和問題というのは国民的課題である、したがってこの同和問題を解決するのは、国民も責任を持ってやっていかなければならないけれども、国の責務であるという形で、同和対策特別措置法には国の責務というふうなことが書かれており、基本的人権として差別を許さない、そういう基本的人権の保障という文言も入っていたように思うわけです。  そういうことから考えると、私、冒頭に申しましたように、生涯学習に関する国際的な動向からいえば、すべての人たち学習権利を保障する、その権利も、先ほど申しましたように、ほっておけば、生涯学習をめぐってはチャンスのある人はどんどんチャンスがあるけれども、チャンスのない人との間に非常に格差が生まれてくる。したがってそれをどう埋めていくかということが現代の生涯教育の根本的な課題だという認識に立ちますと、当然、単なる整備法案ではなくて、これを基本的に振興する、島田参考人も指摘されましたが、もっと抜本的な組み直し、つくり直しということが必要になってくるのではないかと思うわけです。  それとの関連で、今御指摘がありました教育基本法の「教育の目的」をもう一度改めて確認すれば「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」こう明示されているわけであります。  ところが、この整備法で出てきています理念というのは、先ほどもちょっと読みましたけれども、自己の興味や関心に適したものを適切な手段で選んでやっていけばよろしいというふうな生涯学習の規定になっているわけでありまして、この生涯学習というものと教育基本法の言う「教育の目的」は内在的にどういう関係になっているのか、そのことは整備法を見る限りわからないわけでありまして、私は、この点からの整合性の追求がなされてしかるべきではないか、こういうふうに思うわけであります。  あるいは「教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。」こういうふうに言われているわけでありますから、これと、生涯学習で言われている情報センターなどをつくるというふうなことが現在の社会教育法で果たしてできないのかということもまた詰めてみる必要があるのではないかと私は思うわけであります。  社会教育法のところにまいりますと、先ほども御指摘がありましたが、「すべての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成するように努めなければならない。」こういうふうに述べられているわけでありまして、こういう規定と生涯学習と言っている中身は一体どういう関係があるのか、これも整備法を読んでみるとはっきりわからないわけであります。  で、整備法の方では生涯学習とは何かという規定はしていない。そうしておいて体制整備の方では基準を設ける。その基準についてまた許可をする。承認を受ける。全然規定していないものについて基準をつくるというのは一体どういう関係になってくるのか。これもどうも不分明であるというふうに思うわけです。  さらに、地方自治法に入って見てまいりますと、二条五項でございますか、地方公共団体教育、学術、文化に関する事務を行うというふうに書いてありますけれども、地方自治体が行う教育、学術、文化の教育というのは教育基本法を受けているのではないかと思うわけです。そうすると、地方公共団体の事務という中に生涯学習というものを今度やるとすれば、これは地方自治法の改正ということをやらなくてやれるのだろうかというふうな疑問もわいてくるわけであります。  あるいはまた、地方自治法によりますと、各県においては県の行政を総合的、計画的に行うために、市町村を含めて基本構想、長期計画ということが今やられているように思います。県あるいは市町村が自治体の総合的計画行政を行うために基本構想を立て、長期計画を立てて自主的にやっているときに、地域生涯学習振興基本構想というふうなものを都道府県が文部大臣、通産大臣の許可を受けないとやれないということになってくると、地方自治の基本構想で市町村あるいは県が計画的、総合的な計画行政をやっていることと地域生涯学習振興基本構想というものはどういう関係になっているのか、このあたりのところもこの法案を読む限りよくわからないという点があって、そうした現在の教育基本法制あるいは地方自治との整合性をもっと詰めていかないと、この整備法というのは問題なのではないかというふうに思うわけです。  私も機会がありまして、社会党の教育改革案というものの中で生涯教育についての振興のプログラムも読ませていただきましたし、公明党の方でも生涯学習の促進法というふうな極めて体系的な法律案をお考えになっているというふうなことも知りましたが、そうすると、整備法というレベルの法律でこの問題を議論するのではなくて、もっとトータルな形で現在の教育基本法制との関係を吟味しながら検討していくのがよいのではないか、こういうふうに考えた次第です。
  24. 吉田正雄

    ○吉田(正)委員 どうもありがとうございました。  生涯学習の重要性については、私ども日本社会党も従来から非常に重視をいたしてまいっております。これは文部省に負けないくらい重要に受けとめておるわけでありますけれども、何しろ今度出されました法案の中身というものが、ふさわしくないというよりも、余りにも生涯学習法案と呼ぶには、法形式上からも内容からもどうも名に値しないものではないかということでいろいろ御意見をお聞きをいたしておるわけでありますし、先生方もこの法案が極めて不備なものであるということはもう既に御認識をなさっていることを先ほど来のお話で私どももお聞かせをいただいたわけであります。  時間もありませんし、これから私は、文部省当局が今後の生涯学習についてより概念、理念というものを明確にし、国民が真に求める生涯学習法案の作成に向けて努力をされる、また私ども政党もそれに向けて努力をしていくという立場から、先ほども海老原先生からは諸外国の例について若干お話をお聞きいたしたわけでありますけれども、あと残されたところ十分少々ぐらいかと思いますけれども、もう少し詳しく諸外国における実情と申しましょうか、現状等々、それから端的に言って、この法案で果たして日本における生涯学習というものが本当に保障され、発展することができるのかどうなのか、その辺もひとつ見解をお聞かせ願いたいと思います。
  25. 海老原治善

    海老原参考人 生涯学習の世界的展開というふうなことになりますとちょっと荷が重いわけですが、私が知り得ていることを材料にしながら今の御質問に答えてみたいと思います。  私がアメリカの視察等で強く感じさせられましたのは、例えばアメリカでありますと、ハイスクールが終わりました後、州立のコミュニティーカレッジというものが全国的につくられているという実態に調査の中でひしひしと痛感させられたわけであります。コミュニティーカレッジはまさに無試験で入学ができますし、そのコミュニティーカレッジの中は三コースに分かれておりまして、アドバンストコース、勉強して学力をつけて学部の三年生に編入学ができる、そういう”ハイパスコースもあるアドバンストコースがある。あるいはまた、職業訓練のためのコースもある。あるいは趣味というふうなものを生かしていくために学ぶことのできる、そういう三コース制が設けられていて、朝はたしか八時ころから夜は十時ごろまで、すべてのニーズに応ずる形で、しかも地域住民が数十人集まって、こういう講座を開いてほしいということを申し出れば、学校の運営委員会理事会等にその問題が提起されて、その意図が承認されれば開講されるというふうに、地域住民に開かれた成人教育あるいは生涯教育の場がアメリカの場合にはパブリックな形で保障されていたことをかいま見るわけであります。  しかるに日本の場合には、アドバンストコースはほとんど全部私立の予備校でありますし、あるいはまた職業訓練のための学校もほとんど全部と言っていいほど私立の職業専修学校等がいっぱい存在をしている。こういう中で、高い授業料を払って学ばなければならない。また、趣味、娯楽のたぐいでありましても、高いクラブの会費を払わなければそのメンバーになることはできない。そういう意味で、学ぶ権利がパブリックに保障されることが日本の場合は非常に少ないのではないかということを痛感しないわけにはまいりません。  西ドイツに参りますと、労働者職業訓練のための努力日本では考えられないほどの努力で続けられていると私は思うわけであります。  そして、フランスの教育基本法が八九年に出されましたけれども、このフランスの教育基本法を見ますと、教育は最優先的な課題である、そして公的なサービスとして、就学前から成人の段階に至るまでこれを権利として保障していく、そういった理念が八九年の教育基本法の中では打ち出されているように思うわけであります。そういう観点から、生涯にわたる学習権利というものをできるだけパブリックな形で保障していく、つまり現代の生涯学習というものが、放置しておけば、言ってみれば豊かな者には豊かな機会になるけれども、そのチャンスのない人にとっては生涯学習の場は遠くなってしまう。この距離をどう埋めるかということについての努力が続けられていると私は思うわけであります。  したがって、先ほど正確に読みませんでしたけれども。ハリの第四回の国際会議の決議第二項の中で、「成人教育を特に必要とする人びとについて——女性、少数派民族、青年、高齢者、不利な立場におかれている人びと、飢餓難民、移民労働者などのニーズに着目して対処すること」ということが一九八五年の第四回国際成人教育会議で決議をされているわけであります。私たちの国も、外国人労働者を含め、中国からの帰国子女の方も含め、あるいは障害者あるいは女性、こういった方々学習権利をどうパブリックに保障していくか、このことが現代生涯教育に最も問われている課題ではないかと私は思うわけであります。  そういうことを考えますと、この法案というものについては改めて、もちろん私は反対ですけれども、反対するだけではなくて、こうした国際的動向を踏まえてもう一度取り組み直すことが今は必要ではないか、こういうふうに考えております。
  26. 吉田正雄

    ○吉田(正)委員 参考人の諸先生には非常に貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。  私の質問を終わらせていただきます。
  27. 船田元

    船田委員長 次に、鍛冶清君。
  28. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 参考人の先生方にはきょうは大変ありがとうございます。貴重な御意見も先ほどから承っておりました。時間もございませんので端的に二、三お尋ねをいたしたいと思います。  先ほど理念の点については吉田委員から御質問があって、お考えを承りました。これはそれで省きまして、海老原先生のお話の中で教育の産業化ということが心配だ、教育の産業化というようなお言葉でおっしゃったと思いますが、今回の法律案は民間業者の問題も非常に絡んでくるというようなこともあって心配になってくるというお話がございました。そのときにカルチャーセンターの例もそれと関連しておっしゃったわけですが、このカルチャーセンターは運営するのに非常に採算がとりにくい事業だ、こういうことのお話もございました。  そこで、これに関連して、これは各先生方に御意見を簡潔にお伺いしたいのですが、この業者を入れるということ自体は、確かに先生おっしゃったような御心配の上からはあってはならないことだと私も思っております。ただ、実際問題として、カルチャーセンターの例をおっしゃったように、民間でいろいろ推進していく場合に採算がとりにくい、結局財政的な裏づけがないためにそれも進まないという分野もあるいはあるかもわからない。そういうときに民間の業者の資金、国がとめどなくお金を入れるということも厳しいという現状があるとすれば、民間からもそういういい意味で資金を導入してそういうものを活用していくということもあってもいいのではないかなという気もするわけです。  先日、実は国立劇場法の一部改正がございまして、御承知だと思いますが、芸術文化振興基金というものが導入されるようになりました。この基金は政府が五百億、民間が百億出してその運用利益を、いわばいろいろな形の中で運営に入っていただいて、余り政府が首を突っ込まない形の中でひとつうまくそれは運用してもらうという意味で助成しようというような形でこれは全会一致で実は採択されたというのが先日ございました。こういう形のものは、私は、生涯学習というのは膨大な、あるいはすべてにかかわる事業になりますからあってもいいのではないかなという考え方を持っているわけでございますが、こういう私どもの考え方について各先生方の御意見を簡潔にちょっとお承りしたい。
  29. 岡本包治

    岡本参考人 私、実はこう考えております。  先ほどもちょっと私、時間がなくてはしょってしまったのでございますが、現実に日本地域の中で多様な学習機会に恵まれない方がいらっしゃるわけです。例えばそれは地理的条件だとかさまざまな条件で結局、モノトーンと言うと悪いですけれども、少し単調な形で学習をせざるを得ないという方が相当いらっしゃるようでございます。つまり多様な学習機会がないということから、それで、私は多様な学習機会を考えていくためにもそうしたいわゆる民間の活動が期待されていくと思うわけでございます。ところが、今お話があったように、それが恐らくこれから後もっともっと各地にそういうのが実はある意味で多様な機会をつくっていくというふうに考えますと、当然そういう活動があっていいと思うのです。  したがって、そこに資金を導入していってそういった活動を盛んにしていくということについて、私は基本的に賛成しておるわけでございます。もちろんそれはいろいろな審議会その他のチェックがございますから、当然ほしいままにしてはいかぬことでございますので、そのことはこの法案に盛られておりますので、そういう点で、私は今のそういう意見もあっていいのではないかという点では私もそういうふうに考えておる人間だ、このようにお答えしたいと思います。
  30. 海老原治善

    海老原参考人 私は、民間教育事業者という方方が営利のためにやるということには反対です。しかし逆に、企業の方々が社会へ貢献する、そういう意味で蓄積された利潤を社会に貢献するために提供する、それを公的な機関が活用する、これは大いにあってしかるべきだと思います。企業の利潤というものも単に経営者の人が一人でつくり出したものではありませんし、そこは勤労者、労働者とともに利潤というものはつくり出しているものでありますから、その利潤は社会に還元するのが当然だ。教育を営利の事業にすることには私は反対であるということであります。  重ねて言えば、ECの統合の中で今ECの方々人間復興の経済、人間復興の科学技術、アンスロポセントリックな経済、技術をつくろう、社会にとって有用な生産をつくろうというふうな新しい考え方も登場しているとき、日本は少し金もうけ主義になり過ぎてはいないか。もう少し人間教育には人間の触れ合いを大事にする、そうした原点がもう一遍戻ってくることが日本の将来にとっては大切か、このように思います。
  31. 佐藤圭一郎

    佐藤参考人 青森県の方で実は六十年に民間企業、団体提供している生涯学習事業について調査をやりました。その結論は、次の四つに集約されました。  一つは、参加者の確保が公的な機関に比べて非常にやりづらい。それから二番目には、住民学習要求の把握、これが一番問題である。それから運営費の確保。企業、団体内の体制整備と公的な機関との連絡、こういうのが出ました。  ただいま先生からお話しございましたあれについては、これらの調査の結果からしても現場としては賛成でございます。
  32. 島田修一

    島田参考人 民間の教育文化活動の存在というのは大いに結構でありまして、それがさまざまに充実した活動を展開するということは公的な社会教育にとっても大変いい刺激でありまして、その存在自体は結構だと私は思います。  ただ大事なのは、公的な機関が充実し、予算的にも職員体制的にも立派な活動を行っていくことが、先ほどの大阪大学の調査などをもとにしても必要かと思うのでありますが、この間、国の予算で見る限り、公立社会教育施設等の充実費というのは、一九八〇年度が百六十六億九千五百万円だったものが、次の年に若干ふえておりますが、八二年には百五十二億円、八三年には二億円ふえておりますが、八四年には百三十一億円、以降百十一億円、九十三億円、七十八億円というぐあいに減っているわけでございますね。このようなことはすべきではないのであって、基本的な条件を充実させながら、そして一方で民間の活動も盛んにしてもらう。その上で、市町村あるいは都道府県教育委員会主体となり生涯学習振興のための協議会とか会議などをつくる。この中で、先ほど海老原参考人もおっしゃられていたような社会的な有意義な事業を行使する意思のある民間教育文化事業体との協力体制をつくる、そのことは考えられていいのではないかと思うのです。  なぜ公的なものが主体にならなければいけないかというのは、公的な機関というものは常に住民に責任を負うわけでございます。住民自身もみずからの学習文化活動を進めながら、自分たちの選んだ公的な機関のあり方について行方を見定めなければならないという責任を負うわけでございます。ですから、運営委員やそのほかの企画委員などに参加することによって、住民自身が責任を負う公的な組織の中に民間の協力を仰ぐということは考えられていいことだと思います。  今考えられているような民間事業の参入というものは、採算主義も導入されることになり、低所得層あるいは学習経験の比較的少ない層に学習機会を与え充実させる方向にはいかないので、私は、それに対して危惧ないしは反対の意見を持っているわけでございます。
  33. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 あと二つお聞きしたいのですが、これも皆さん全員に簡潔にお願いしたいのですが、一つずつ聞いておりますと時間がございませんので、二つ一緒にちょっと申し上げます。  私は、学問的には専門家でないから法律のつくり方とかいろいろなことはよくわかりませんけれども、先ほどから各先生方の御議論、また質問なさった方々のお話の中でも、この法律案のあいまいさというのがちょっと出ておりました。私は、議員となって政治の世界へ突っ込んで現実に進めていく場合に、あいまいさというのはある意味ではいい面悪い面、両面あるわけですが、この法律の場合、私どもはこのあいまいさがかえって逆にいい方に使っていけるんじゃないか、あとフォローするときにきちっとしておけば、このあいまいさというのはいい形でむしろいくのではないか。これはがっちり締められてしまいましたら、ちょっといろいろ問題点も出てくるんじゃないか、こういうふうに思っておりますが、その点はいかがでしょうか。  それからもう一つは、私も政治家になっていつも苦しむのは、理想と現実との間です。先生方のいろんなお話、貴重な御意見で、これはまさに四人の先生方がおっしゃったのは拝聴に値するし、そのとおりであろうかというふうに私どもは思うわけですが、現実というのは必ずしもそういうわけにいかない場合があります。特に政治の世界へ入って、私がいろいろ悩みながらもいろいろ進める中で肌で感じておりますのは、どうもいろんな問題を新しくつくるときには非常にエネルギーが要るし、力が要る。関係者が多数おる場合はなおさらです。そういう中で進めていこうとすれば、やはりまず芽を出すということが非常に大切であるということを、体験的に私は自分自身でそう思っておるわけです。  ですから、今回の場合でもいろいろマイナス面があるということは先ほどから御指摘のあったところで、私たちもそれはそのとおりだと思っております。また、ほかにもあると思っておりますが、やはりプラス面というものもある。特に今現状が、全国の都道府県四十七の中で十四の箇所でもう既にセンター、今ここで言われているようなものに類似したものがどんどんつくられておりまして、さらにそれがつくられていくという流れが全国的にございます。  そういう流れの中で、臨教審答申もあり、中教審の答申もあり、要するに生涯学習社会への移行ということ、これは世界的にも論じられている中で、国がこれを放置しているというのは、私たちとしてはおかしいぞ。そういう中で出てきたもの、今度の法案ですが、非常に不満もあります。しかし、そういう全国の動きの中でそれをフォローアップして、財政的な裏づけなりいろんなものをきちっとするためにも、また自主的にやっていくためにも、そのてんびんにかけました場合に、これがよりベターなもので、これを実施するということが必要ではないか、私どもはそういう考え方を持っておるわけですが、この今の申し上げた二点、私どもの考え方について、それぞれ先生方の御意見、お時間がありませんので、ひとつ簡潔にお願いいたします。
  34. 岡本包治

    岡本参考人 簡潔に申し上げます。  あいまいという問題が出ましたが、私もかえってあいまいという状態のメリットということもあろうと思っております。  それから、今の後の問題で、芽を出すという問題ですが、こうした法案というのは、私はそうやって一歩一歩進めていかなければ、つまり芽を出していかなければ、完全になるまで待っていると時間がかかってしまうということを思っております。ですから、今の御意見と同じことでございます。
  35. 海老原治善

    海老原参考人 私は学習権のことを申しましたけれども、この会議は、百二十二カ国の加盟国代表五百八十名、六十余りの関連機関や非政府機関、NGOから二百六十名、八百四十名の方が集まって八五年のパリの国際会議学習権宣言をやっています。これは非常に重いものだと私は思います。  あいまいなものがいいという部分もあるのかもわかりませんが、私は、この初めての日本の生涯学習法案整備法という形でしか出ない。これを英訳して国際的に配付したときに、生涯教育について日本の国民は、政府は何を考えているのだろうかといったときに、生涯教育について国際的な会議の中で提起されている学習権理念にも何も触れていないようなあいまいなものであれば、私はちょっと評価は厳しくなるのじゃないか。その意味でも、ぜひ生涯教育とは何かを、十六省庁にまたがるからこそやっていただきたい。  私たちはつい理想を追うとおしかりを受けますが、しかしヨーロッパ統合はやはりそういう中で人間復興の経済、人間復興の科学という理念の中で動かしているパワーも政治的にあるわけだと思いますので、ぜひ理想に現実を近づけるよう御努力をお願いしたい、そんな心境であります。
  36. 佐藤圭一郎

    佐藤参考人 地方の社会教育行政等を勘案した場合に、この法案内容で私はよろしいのではないか、そういうふうに思います。  それからもう一つ、十四の県にセンターがございますが、現に私どもの勤めておりますところのセンターがそれに相当しております。大変すばらしい、早く他の県にもこういったセンターができてくれればいいな、そういう意味で本法案体制整備内容的には非常に尊重されます。
  37. 島田修一

    島田参考人 先ほども申しましたけれども、イギリスの成人教育の研究者の間では、日本社会教育法に対する評価が大変高いわけであります。それは、戦前の日本歴史を知っているから、よくぞ住民参加と自治の原則を法律の中に入れたということを言われます。この点で、この法律は、鍛冶先生はあいまいとおっしゃいましたが、それを入れてないという点ではあいまいではないわけでございます。  そして、第三条で行政機関が必要な事業を行う実施機関であるということも、これもあいまいではございません。それから国が基準を定めるということもあいまいではございません。そして、文部大臣、通産大臣が承認をするという国レベルの権限も、またあいまいではございません。  ただ、あいまいで心配なのは、第五条でも書かれております「民間事業者の能力を活用しつつ」という場合、民間教育文化事業者とは書いておりませんので、いかなる事業者がこの対象になるのか、教育機器、ハードなものの製造業者もあるいはソフトなビデオ等の教材製造業者も、一体どの範囲にわたるのか、そのあいまいさはまことに心配でございます。  また、厳しく御指摘いただきました理想と現実との差ということでございますが、これも私、社会教育実践の場にいた経験から、理想と現実と食い違ったことを平気で申すわけではございません。東京の立川市では、福祉ボランティアをやりたいという希望者を募りまして、公民館がボランティア養成講座をやりました。そうしましたら、最初のうちは、教育と福祉は別物ではないかという批判があったのですが、大変多くの参加者がおりまして、福祉担当部局も、ボランティア養成といっても公民館的に、すなわち一人一人が自分の意欲を自分で開発しながら自分が育っていくというプロセスを入れたボランティア養成はまことによいと言って、ここでは教育と福祉の手が結びついております。  また、長野県の松川町というところでは、健康を考える住民集いを何年にもわたって繰り返す中で、保健婦自身も、啓蒙、普及ではいけない、一人一人の住民自分の健康を考える主体者にならなければいけない、社会教育の手法を保健婦が学ぶということが今とても大事だという形で理解をしまして、この経験は全国に広がっており、健康と教育もまた手を結び始めておりますので、御参考になればと思って一言申し上げたました。
  38. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 どうも貴重な御意見ありがとうございました。  質問を終わらせていただきます。
  39. 船田元

    船田委員長 次に、山原健二郎君。
  40. 山原健二郎

    ○山原委員 四名の先生方には、長い御苦労された経験を背景にされまして、貴重な御意見をありがとうございました。  共産党の山原でございます。  最初に、島田先生に二つの問題についてお聞きしたいのですが、先生おっしゃいました中央集権化の問題、私はこれを一番心配しております。もう一つは、営利への従属の問題です。  今もお話があったわけですが、私どものように戦前派の者にとりましては、戦前社会教育が国民教化とか国民精神総動員とかいう形で使われてきた苦い経験を持っておりまして、そういう経験の上に立って、戦後、教育基本法が生まれ、社会教育法が生まれたわけでございます。その点から考えまして、この法案に中央集権化とか営利への従属といいますか、それに対する歯どめがあるのかどうかという問題を最初にお伺いしておきたいのです。
  41. 島田修一

    島田参考人 私が読む限りにおいてはその歯どめがないのでございます。これまでも、社会教育法においては明らかに、五条に市町村事務、六条に都道府県の事務が書いてありますが、まず五条の市町村の事務についての冒頭が社会教育の奨励に関することということになっておりますけれども、これは、法制定時、社会教育の指導に関することとありましたものが、行政機関は指導ではいけない、奨励であるべきだと、たしか参議院の文部委員会で議論をされ、修正されて法律に確定したといういきさつがございます。  このように、当初から行政機関による指導はいけない、援助であるべきだ、その援助も、例えば六条に見るように、市町村活動が十分に行われるような後ろ盾になるべきである、そしてまた、国があるいは教育委員会が、国の場合は都道府県市町村に、あるいは都道府県市町村や民間団体に、また市町村が民間団体に指導を与える場合も求めに応ずる指導でなければいけないという指導原則を明示してありまして、これは先ほども申しましたが、法改正時の国会答弁の中でも再三確認されているわけでございます。このような歯どめがある場合には、住民参加をベースとした地方自治あるいは教育機関等の施設の自治が明記されておるために歯どめになっているわけであります。これが中央集権に関する歯どめでございます。  それから、営利についても、先ほども申し上げましたように、この法律案では民間事業者としてだけ書いてあるにとどまっておりますので、例えば、教育文化事業にかかわるものということになれば、社会通念上、教育、文化というものは営利一本ではいけないということは明らかでありまして、国民の監視下に置かれることにもなります。しかし、単純に民間事業者と書く場合には、これは当然営利を含んだ事業でなければ成り立たない事業体でございますから、これを入れること自体が既に歯どめをなくしていることになると考えるわけなのであります。  しかしながら、現在の社会教育法においては、例えば二十三条にかかわる公民館の禁止事項の中で、公民館が営利にかかわるような事業をしてはならないという明確な歯どめ事項がございます。このようなものがあるために、公民館は常に公正に、公平に、住民に広く開かれたものでなければいけないということに努めるわけでございまして、これがこれまでに果たしてきた役割は大変大きいものだと思います。  なお、つけ加えますれば、近年自治体が出捐金を出す、補助金を出すなどという形で、いわゆる第三セクターという形の事業体が半官半民的な性格で行われております。その際、やはり明らかに公的な性格と機能を持たなければなりませんから、広く多様な事業を行います。しかしながら、そこでは公的機関が直接やるものではなく、その第三セクターなるものの事業体の一定の財政上の安定性と独立性から、採算を度外視するわけにはまいりません。そうなりますと、そこでは人気のある講座、採算の合う人々の集まりやすい講座に傾斜しがちであります。  公的な場合は、採算を度外視して、例えば婦人の地位向上であるとか職業技術の講座であるとか、あるいは福祉ボランティア養成講座など、社会的に意義のあるものは採算を度外視して行うことができるのでありますが、この法律案がつくられる以前に既に進行しております第三セクターのような事業体の場合、採算を度外視しては行えないという事業の中から、実際には住民にサービスされる事業が制約されてしまう、こういう事態が起きてくることを考えますと、この種の法律には、自治、公共性についての保障事項が明示されるべきだと考えております。
  42. 山原健二郎

    ○山原委員 先生がおっしゃいましたね、教育行政の独立性、あるいは市町村自治といいますか市町村主義といいますか、あるいは教育施設の自治、住民参加、これがこの法案のどこを見ましても全く逆な方向に向かおうとしている点を私は本当に危惧いたしておりまして、今おっしゃった四点の原則が守られてこそ初めて国民の願いにこたえる生涯の学習が保障されるものだというふうに思っているのです。  実は、生涯学習社会という言葉が盛んにこの委員会でも出てくるのです。ところが、この法律にはそれに対する定義も理念もないということが最大の欠陥です。生涯学習社会というもののイメージを持っているわけですが、それならそれの定義とか理念というものがなければ、まさに欠陥法案であるということを言わざるを得ないと私は思っているわけですが、時間がありましたらこれについて御意見を賜りたいと思います。  海老原先生にもう一つの問題でお伺いしたいのですが、教育基本法とこの生涯学習振興法との関係でございますけれども、私は教育基本法に逸脱する疑義を持っております。むしろ教育基本法あるいは社会教育法でやれないこと、むしろ禁止されていることをこの法案がやろうとしておるのではないかという疑義を持っているわけですが、この点について簡明にお考えを伺いたいのです。
  43. 海老原治善

    海老原参考人 もう少し言っていただけますか。ちょっと……
  44. 山原健二郎

    ○山原委員 教育基本法とこの生涯学習振興法との関係をお尋ねしたわけです。教育基本法に逸脱する点を持っているのではないかという疑義を持っているわけですが、その点についてお伺いしたいのです。
  45. 海老原治善

    海老原参考人 私は、教育基本法に書かれている目的が非常にはっきりしている、ところが生涯学習整備法には生涯学習とは何かということが書かれていないので、その関係が非常にあいまいだ、だから生涯学習の中身をはっきり書くべきだということを主張したわけです。わずかに生涯学習理念というふうなものは、「生活向上職業上の能力向上や、自己の充実を目指し、各人が自発的意思に基づいて行うことを基本とするものであること。」というのが中教審の経過報告には書いてあるのですけれども、そういうものとしても、法案の中には書かれていない。強調されているのは、「必要に応じ、可能なかぎり自己に適した手段及び方法を自ら選びながら生涯を通じて行うものである」というふうな、個人サイドの問題にこの問題を解消してしまっている。  そうすると、やはり教育基本法の目指している目的に沿う生涯学習というよりは、六五年代に出てきた成人教育段階の、社会の変化あるいは技術変化に適応していくような生涯教育論の発想にこの中教審の案というのはなっているのではないか。そういう点が、現在の人権としての学習権を生涯にわたって保障していくという生涯学習理念というものとは、提案されている整備法の理念はずれているし、教育基本法との関係でいえば、むしろ教育基本法の教育の目的というものを現代のュネスコの学習権宣言はより普遍的な形で裏づけている、そういう関係になっているのではないか。だから、提案された整備法の生涯学習理念というものが明快に書いていないためにそうした疑義が起こってくるということを申し上げたかったわけです。
  46. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題は、生涯学習とは何か、生涯学習社会とは何かということが明確になっていないために、私は冒頭から言っているのですけれども、この委員会としては、立法府としては非常に審議のしにくい情勢に置かれているということでございます。その意味でお尋ねしたわけでございます。  それからもう一つ岡本先生と佐藤先生にお伺いしたいのですが、随分長期間にわたって実際にいろいろ苦労されているわけでございますが、その中で、今度特定地区を指定するという問題が出てまいりますね。そうしますと、ここで聞きますと、数十ヘクタールあるいは数百ヘクタールの特定地域を指定する、しかも当面一県一構想ですね。  こうなりますと、せっかく今まで努力されてきているのですが、例えば青森県において格差が出てくるのじゃないか。私は高知県ですけれども、高知県ですと、このへクタールの地域でいくと五カ所は地域の指定がなされなければ格差が出てまいります。ところが、一県一構想、こうなってきますと、まず第一番に猛烈な誘致合戦ですよ。目に見えています。今のリゾート法の関係から見ましても、もう生涯学習なんて、教育理念なんということではなくて、ともかくうちの町へ、うちの地域へという誘致合戦が出てくるわけです。  そういうことを考えますと、この法第一条に書かれております「学習する機会があまねく求められている状況」の中で、これにこたえるというこの法第一条の問題が、このやり方で果たして本当に解消できるのか。むしろ、全国に今一万七千五百という公民館があるわけでございますけれども、この現在動いている公民館を本当に活性化して、これに対して国や県が援助を与えていくという、そういうノーコントロールの、そしてこれに支援をしていくという社会教育法の精神でいくならば、もっと大きくこういう面での国民、住民の要求にこたえ得るのではないか。この格差の問題について御検討されたことがありますでしょうか。
  47. 岡本包治

    岡本参考人 今のお話でございますと、具体的な方策のことが出てまいりました。私は、指定地域が幾つか全然わかりませんけれども、数のことはわかりませんけれども、とにかくそういう特定地域を設定していくということによって、少なくともその地域の全体的レベルが上がっていくということではあろうと思います。それで、実はそういうものが一県一地区のままずっとおるのか、あるいはそれが拡大していくのか、ちょっと私は見当がつきませんけれども、そういうことがやがて数多く、特定地域が多くなることを祈っているわけでございます。  以上でございます。
  48. 佐藤圭一郎

    佐藤参考人 ただいまの先生のお話から青森県を一つの基盤として考えてみた場合に、六つの教育事務所単位がございます。その事務所単位に社会教育行政が進められてございます。この法案地区の問題は、私ども具体的に移そうと思えば教育事務所単位になりはしないか、こういうふうに考えます。  幸いに青森県の場合には三つの市が県域のちょうど東、西、北というふうになってございまして、いわゆる高速交通体系が整備されつつある今日、さらに近未来にかけては、恐らくこの三点を中心としながら、エアポケットになっておる地区、そこに指定地区、こういうふうになりはしないかと想定されます。その場合に、恐らくこの法案が制定された場合には、五年も十年も地区指定がなされるだろうか。これまでのいろいろな国の施策等の措置を考えますというと、恐らく三年ないし五年というような地区の指定、それから新たな地区へ、こういうふうなことがなされてくるのではないか、それを期待したいわけでございます。  また、法案制定から時間がかかってそういう地区の指定がないような場合、あるいはその地区が指定されなかったエアポケットの地区には、県としては現在、センターを中心として、届ける生涯学習ということで、県民大学とか中央でなされている講師その他同じレベルの学習を、需要もあったし、また、それをなしている、このような面で、電波を通じてとかカバーできるのではないか、当面はそのようにやっていけはしないか、こういうふうに思っております。  以上でございます。
  49. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、この法案が、教育基本法にのっとるという、教育行政に関する通常の法案と違いまして、この言葉がないのです。ただ説明の中で、教育基本法にのっとるのは当たり前だというふうな、背景にそれがあるんだということを言いますけれども、教育基本法にのっとり得ないものがこの法案の中へは入ってきておるわけですね。  そういうことを考えますと、この法案というのは、教育基本法にのっとるという言葉もなければ、定義もなければ、理念もないという法案なんです。しかも、生涯学習社会をつくるという、言葉だけは存在しておる、そういう中身になっておりまして、この法律というのは、教育基本法、そして社会教育法の理念の枠外のことをやるために、むしろこの二つが禁止している例えば不当な支配であるとか、そういう民主性を逸脱する道を歩むための法律ではないかと私は思うわけでございますが、この点について最後に島田先生の御見解を伺いたいと思います。
  50. 島田修一

    島田参考人 私は、教育基本法に立脚して考えることが大切であると思うわけでありますが、そもそも教育基本法で何が期待されているかということを考えて、それに立脚するという意味をとらえる必要があると思っておるわけであります。それは一人一人の人間的な発達を保障し、その持っている可能性を大きく広げる、その個人的努力と社会の人々の共同的努力を通して民主的で平和的で文化的な社会をつくるという、このことなのであります。ですから、このことに即してあらゆる教育法がその目的と内容と機能が評価されるべきであると思うわけであります。  そういたしますと、法解釈上どの点が沿うか沿わないかというよりも、法の実体を通して得ることのできる内実、法の内容を通して得ることのできるその方向や機能を含めた内実が教育基本法に照らしてどうかというふうに考えてみますと、先ほど申しました観点からいって、この法律では教育基本法の理念を達成することができない。大変言い切った言い方をいたしますと、国民一人一人が意欲的にみずからの学習を充実させようというぐあいに励まされる法律ではない。むしろ比喩的に言えば、これを機会に市場を開拓したいと思う民間事業者を励ます法律になっているのではなかろうか。教育に関する法律というのは、それでは先ほど申した教育基本法の掲げる理念とは反するわけでありまして、まことにこのような法律が現在登場したことは残念でございます。現代にふさわしい人間像をいかに求めるかという理念を高く掲げた生涯学習振興のための施策、場合によっては、法律が抜本的に考えられた上で国民の共同的努力でつくられることを心から願うものでございます。
  51. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、時間が参りましたが、私は、教育という事業が今度初めて、いわば営利の対象として考えられる法律が今や成立しようとしていることを大変心配しまして皆さんに御質問申し上げたわけです。適切な御説明をいただきましてありがとうございました。
  52. 船田元

    船田委員長 次に、米沢隆君。
  53. 米沢隆

    米沢委員 参考人の皆さんには、朝早くから大変御苦労さんでございます。いろいろと各委員から法律の中身等について御質疑がございましたが、私はちょっと角度を変えて伺ってみたいと思います。  先ほどから生涯学習の定義だとか、あるいは生涯学習社会の定義、理念がないという御意見もあれば、あるいはそういうものがなくても実際やれるのだという御意見もありました。その論争はさておきまして、いわゆる生涯学習ということを考えたときに、国民の皆さんのニーズは大変多岐多様にわたっておりますから一概には言えないと思いますが、少なくとも生涯学習社会というものを推進する、あるいはそういう生涯学習というものをこれから考えていく場合に、いわゆる大学というもの、高等教育機関の役割というのは非常に大きいと思っておるわけでございます。  しかしながら、地域社会の大学に対する要望、あるいはこういうものを本当に大学の皆さんに習いたいとか勉強したいとかあるいはアドバイスいただきたいという地域の皆さん方のニーズには、どうも沿いかねておるのが現状ではないだろうかという気がしてなりません。うまくいっておるところもあります。しかし大部分は、結局地域社会の物の考え方と大学人の物の考え方に乖離があり過ぎるというところが非常に問題だと私は思っておるわけです。  そういう意味で、幸いきょうは大学の先生が参考人として来ておられますので、大学がこれから学習社会というものを考える場合に、どういう役割を担い、どういう貢献をすべきだと思っていらっしゃるのか。しかし、現実にはそういう定義の仕方でいろいろ難しい問題があると思いますが、いわゆる学習社会と言うたときに、大学人の役割あるいは貢献をどう考えておられるのか。そうして、現在、残念ながら地域社会と大学とは余りにも乖離が大き過ぎる。なぜ障害がこうなっておるのか、何が障害なのだろうかという点について、大学の先生方三人にお聞かせいただきたいと思います。  同時に、青森県の現場におられる先生には、社会教育センター所長としていろいろと大学との接触とかあるいは大学に対する要望、ニーズはあると思うのですが、現実に携わられてどういう御所見をお持ちか、御意見を伺わせていただきたいと思います。
  54. 岡本包治

    岡本参考人 私は立教大学に今勤務いたしております。今のお話につきまして、大学の状況、それから私の個人もまぜて申し上げたいと思うのであります。  立教大学は、御承知の方も多いかと思いますが、ちょっと年数は忘れました、かなり前から社会人入学というものを行っております。これは法学部だけでございますけれども、つまり十八歳人口ではなくて大学を終わった、厳密に申しますと二十二歳以上、したがって、受験資格は二十二歳以上なわけでございますが、そういう社会人を対象として正規の学生を募集させていただいております。したがって、その部分だけ十八歳人口の若者が入れなくなるということがあるわけでございますけれども、とにかく別枠でそういう社会人に対応していくということをさせていただいております。  これは、実はその当時から論議がありましたのを、私の記憶によって申し上げますと、大学も生涯学習機関であるべきだという論議がありました。それで、その中で具体的にできることは何だろうか。それまでは、大学は、聴講生を募集したり特別な公開講座を行うということはやっていたのでございますけれども、もう一歩進んだものが当然あるべきだという論議がありました。その中で、今のような二十二歳以上の方を対象として、社会人に別枠で入ってもらう。  別枠にした理由は、もちろんもう御了解いただけると思いますけれども、試験の科目なんか一緒にしてはだめですから、これはもう完全に……そういうことですから、別の基準でもって、特にその方の主なキャリアみたいなものを大事にしようということで、高校卒業生みたいに英語だ国語だ社会ということではなくて、別の考え方で対応させていただいております。そういう点では随分、人気というと変でございますけれども、応募者がいらっしゃいます。そういうことで、それはもう大分長くなったわけでございますけれども、そういう状態があります。  その中で私が感じましたこと、自分感じたことでございますけれども、実は大学が変えられるという感じがしました。つまり、学生が変えられるのではなくて大学の姿勢が変えられてしまうという感じがしたわけでございます。  どういうことかと申しますと、その方々の要求されていますものは、何というか、ある意味では具体的ですし、しかもいいかげんなことでは許さないという背景がございます。何といったって自分のお金で入ったわけですから、親からもらったわけではございません。しかもお仕事をやめてくる方もいらっしゃいます。ですから迫力があります。まさに今まで許されたような一種の緩さというか温室育ち、大学のそこが白日にさらされてしまう、世間に放り出されちゃうという感じがいたしました。  また、中にはちゃっかりした方もございました。こんなところで申し上げていいかどうか知りませんけれども、一年間たったら、翌年の三月に私の部屋に来た方がいましたけれども、その方は大学の教員評価書を持ってまいりました。自分で、この教員はこうだああだと評価してくるのです。それでもって、私、びっくりしてすぐ自分のところを見たことを覚えています。  そんなことで、とにかく大学が変えられるという感じがしました。こういうことは、これから後、もっと社会人に門戸を開くべきだと私は思うし、さらにまた、大学の学部だけではなくて大学院も当然そういう対応ができる体制をつくっていくべきだ。  同時に、今のは学生への対応でございますが、地域との関係で申しますと、大学が持っているさまざまな施設がございます。教室も含めて図書館も全部ございますが、これも今、かなり多くの大学がたしか開放し出したはずでございます。私の学校も及ばずながらその方向でやっていこうということで、ある論議をされているようでございます。教室はもちろん開放されていますが、その他の施設の部分です。そんなこともちょっと聞きました。  これは、もちろん私は責任者でございませんので、そんなことは申せません。私個人の考えとしましては、当然もっとオープンにされていって、その中で、ある意味で大学が変えられるべきだという感じを私は持っているわけでございます。  以上でございます。
  55. 海老原治善

    海老原参考人 私の体験の中から御質問に答えたいと思います。  私は一九六九年に関西大学で働くことになりました。御指摘のように大学と地域との関係ですけれども、関西大学は百年の歴史もあり、まさに関西の地域社会の中に根づいた大学であった。そして、地域社会の問題についても研究活動も盛んに行われておりましたし、六九年以来は部落問題と研究のあり方についても問い直すという形で、地域と大学の結びつきは非常に深かったように思います。  八二年に東京学芸大学に、東京の生まれなものですから、人生晩年で生まれ故郷で働きたいなんということもあって学芸大学に参りましたけれども、ここはやはり国立大学でありました。八年間暮らしましたけれども、明治十九年の帝国大学以来の、国家の枢要を研究するというか、やはり国の大学というイメージが強かったように私は体験の中で思います。地域社会と大学というのを考える基盤がとても少なかったように実感として持ちます。図書館長も努力されて、地域社会に図書館を開放する努力もやろうと言いましたけれども、折からの行革でそういった職務、人員等が可能かとか、いろいろ国の機関としての制約の中で地域社会に結びつくことが大変難しい状況だったと思います。その中でも、国立大学の先生も、公開講座その他、あるいは夜間の大学院を開設するとか、そういう努力をお互いに文部省意見等も検討しながら今進んでいるのが実情ではないかと思います。  そういう点で、やはり大学は地域に開くというのはこれからの基本方向だろう、こういうふうに思います。その場合に、地域に開く場合に、企業の幹部の方、若手の方々が大学院で学ぶ、こういう機会がだんだんふえてきていると思うのですが、すべてに開くということになれば働いている労働者人たち有給休暇で学ぶような体制というものもつくらなければなりませんし、若者の、二十代だけの学生を相手に授業をしている時代はもう終わったのではないかと私は思います。もっと年輩の方、そういう方々が大学でともに学び合うことが必要ではないでしょうか。人生晩年になったとき本当に死とは何かということを考える哲学というようなものは、若者よりも差し迫った生のときを迎えた方々の方が宗教であり哲学などという問題は真剣に議論できるのではないか、大学の教師もそういう中で自分の学問を問い返すチャンスが生まれてくるのではないかと私は思います。  四月から東海大学に参りましたが、東海大学は、その辺は、地域社会との関連、結びつきながら同時に世界との結びつきも考えなければならないという意味で、まだ十分とは言えないと思いますが、努力していることはぜひ御承知いただければありがたい、こういうふうに思います。
  56. 島田修一

    島田参考人 大変重要な御指摘をいただきましてありがたく存じております。従来の大学自体も、現在の様相の中で新たな対応が迫られている、加えて生涯学習にどのように対応するかという二つの問題に直面していると思います。従来の大学というイメージでとらえたとしても、近年、高校まで青春期あるいは本物の青年教育を体験できない青年たちにとって、大学は現実に青年期教育を完成させる場としての機能も持たなければならない、そしてまた社会人として育っていくための基礎的な常識や知識も教えていかなければいけないという、本来の大学の機能に加えて二つの機能を持たざるを得ない、大変な課題を背負っておるわけであります。それに加えて、御指摘の地域に開かれた生涯学習機関としての大学ということを考えましたときに、私は四点あると思います。  それは、大学が立脚する地域にある課題をみずからの研究課題としていく姿勢、それからその研究課題住民とともに進めていく共同研究をつくっていく大切さ、と同時に大学の持っているさまざまな機能を開放する、講座も施設利用も含めた開放サービスということがありますが、もう一つ、でき得るならば大学が、ちょうどイギリスの大学が歴史的に成人教育をなぜ重視したかという詳しいお話をする時間はございませんが、それに学んで大学の基礎分野の中に、できればデパートメント、学部・学科の一つとして成人教育社会教育あるいは生涯教育の部門を持つということが求められているのではないかと思っております。この大学の開放的機能を支えるために、教育委員会が大学と共催して授業を行えるような助成措置が今以上にとられる必要があろうかと思います。  さて、この中で、地域との乖離をなくす大学の努力、大学人の自覚にかかわって、多少実例を申し上げたいと思います。  中央大学の場合は、もう設立当初からと言っていいほど長い歴史を持っているのが通信教育の制度でございます。これは時代に即してさらに充実させなければいけないと思っております。聴講生制度もとっております。それから、クレセント・アカデミーと名前をつけておりますが、公開講座も持っております。しかし、それに加えて、先ほどの四つの課題に即して言いますと、共同研究を歩み出していることも御紹介したいと思います。それは、多摩の地に移りまして、社会科学研究所が主になりまして多摩の総合研究というテーマを設定しております。これは、他大学の先生や地域の研究活動関心のある方を加えて進めております。  なお、大変個人的な話で恐縮でございますが、私自身も、教育学科に所属している関係がありまして、オープンユニバーシティーと銘打ちまして、コンティニューイングエデュケーション、継続教育の一環として、現職教育といいますか、社会教育の現場に出ている人のための学習会、及び卒業してなおも勉強したいと思っている卒業生対象の学習会、これを月二回持っておりますが、このような個人的な試みから、大学が歴史的に持っている通信教育も含めて、御指摘いただいたことを参考に、そのような経験を今後とも広げていきたいと思っております。これが個人的な発想や努力に終わらず、また数校の大学の試みに終わらず、潮流になるように私も努力をしたいと念じているところでございます。
  57. 佐藤圭一郎

    佐藤参考人 大学の先生方から大変な御協力をいただいてございます。特にありがたいと思いますのは、各種講座の講師をお願いして、集中講義等がない限り早速返事されてやってきてくださいますし、それからまた、協議会、運営審議会とか、何かそういうような県段階のセンター等においても積極的に御支援をいただいてございます。  そういうような日ごろの行政あるいは機関、そして大学とのコミュニケーションのせいでしょうか、青森県においては、大学の方から、社会教育の専攻生に総合社会教育センター教育実習できないだろうか、私大の例でございますが、そういう申し入れが今日ございます。大変うまくいっております。
  58. 米沢隆

    米沢委員 貴重な御意見、まことにありがとうございました。大学人として生涯学習機関たらんとして一生懸命御努力いただいておりますこと、改めて認識させていただきました。これからもぜひ頑張っていただきたいと心から念じつつ終わりたいと思います。ありがとうございました。
  59. 船田元

    船田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただき、また貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ────◇─────     午後一時三十二分開議
  60. 船田元

    船田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢藤礼次郎君。
  61. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 本法案の審議に当たりましていろいろ法案資料を読ませていただきましたし、審議のやりとりも聞かせていただきました。どうもすっきりしないのです。  なぜだろうといろいろ考えていたのですが、これはやはり生涯あるいは生涯学習というものに対するイメージがはっきりしてない、あるいは共通認識の土壌がまだできていないということも一つあるだろう。あるいはそれを目指しての理念がはっきりしてないという指摘もございました。条文にそれらが欠けているという大変鋭い御指摘もあったように記憶いたしております。  そこで、どうも私も大変な仕事だなという気がするのですけれども、できるだけ共通認識に立ちたいという願いを込めて、まず生涯という言葉から始めてみたいと思うのですが、生涯とはどう把握したらいいのでしょうか、これがまず第一の質問であります。  なお、人間というのは言葉を媒体として自分の意思を伝え、あるいは討論をし、共通認識を深めていく、非常に言葉というのは大切なものでありますから、それを長い歴史を積み重ねて凝縮した、結晶したものの一つに大言海とか広辞苑とか辞典がございます。私は十一の辞典を調べてまいりました。そこから幾つかの、発見とはいいませんが、新しい感懐をもって見させていただきました。その答えは後で申し上げます。  まず最初に、生涯とはどうとらえたらいいだろうか、この質問に答えていただきたいと思います。
  62. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 生涯学習という言葉の中での生涯という意味と一応考えまして、私どもが生涯学習の中で生涯と使っておりますのは、やはり生まれてから死ぬまでということだと思います。
  63. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 「一生の間。」とか「この世に生きている間。」とか「終身。」とか「終生。」いろいろ表現はございます。これはどれでなければならないということはないと思います。ただ私が生涯教育学習、つまり我々が今論じております人間にとってすぐれた営みである教育学習を論ずる場合に、最もふさわしい定義と申しますか「生涯」の言葉の解釈に一つ突き当たったわけであります。それを御披露申し上げて、この把握でもってきょうは論じたいと思うのですが、よろしいかどうか、お伺いします。  「命のある限り。」という言葉であります。どうでしょうか。
  64. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 先ほどの私がお答えを申し上げました生まれてから死ぬまでというのは、またさらにその違う解釈も余地としてあるかもしれません。それは胎児というところですね、胎児である間というものを含めるかどうかということもあると思います。胎教、胎児教育というような言葉もありますので、そういうことも考え合わせて、もしそういう言葉で述べれば、今先生がおっしゃったように「命のある限り。」ということの方がよいのかもしれません。
  65. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 なおずっと見ましたら、生涯教育ということに触れている辞典は割合に多いのです。十一の中に四つほど入っていました、「生涯」の欄に。ところが「生涯学習」という言葉は十一の辞典の中で一つしかなかったのです。ごく最近の辞典です。その中には「生涯教育」については「人間学習を一生継続するものとして家庭、学校社会教育関連を再検討しようとする教育論。」これが生涯教育だ。この中には家庭教育学校教育社会教育、そしてそれらの関連性というとらえ方がなされております。それで「生涯学習」という言葉を掲載している新しい辞典というのは小学館の言泉でありましたが、この定義は「自発的な意思よって生涯を通じて行う学習。」というふうに凝縮されておりました。これについてはいかがでしょう。
  66. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 生涯学習と申しますのは、私どもは、国民一人一人が生涯にわたって行う学習活動というふうに言えると思いますが、法案の第二条にもございますように、「自発的意思を尊重する」ということが極めて大事な配慮事項でございますので、それを加味して申し上げれば、今のような先生の自発的な意思によって行うというところが入ってきても、それはそういう特徴を持ったことであるという意味において正しいというふうに思います。
  67. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 辞典にこだわるようで恐縮ですけれども、私はこのやりとりも生涯学習一つだと思っておりますから、少し深めていきたいと思います。  先ほど申し上げましたように、私たちは言葉をもって意思を伝達し、あるいは理解し合う、あるいは誤解し合う。言葉というのは大変重要な意味を持っております。その言葉が共通の財産として定着するまでにはかなりの時間と時日経過があるわけであります。例えば広辞苑を開いてみたら「男」という欄、「性別の一つで、女でない方。」と書いてある。しからば「女」は男じゃない方と書いてあるかと思って見たら、「性別の一つで、子を産み得る器官をそなえている方。」とあるわけです。初めに女ありきということでしょうか。ということほどに言葉というのは私たち人間の社会における長い積み重ねにおける共通財産、そしてこれをよりどころにしていろいろ物を考えたりコンセンサスを形成しようとしているわけだ。その中で生涯学習という言葉が十一の辞典に一つしかなかったということは、今申し上げた歴史、積み重ね、コンセンサスという点では不十分な状態を示しているのじゃないだろうか。  したがって、私たちが今論じている生涯学習に関しても、イメージがもう一つはっきりしないとか、一体、理念がはっきりしないのじゃないかとかという論議が延々として続いている。そこにも一つの原因があるのじゃないか。したがって、申し上げたいことは、まだ十分にコンセンサスの域に達していない生涯学習というものを一つの法体系で我々が社会に対して大きな影響力を与えようとしているこの時期には、十分なる時間と手だて、そして共通意識を育てるための努力というものが必要であるというのが私は大前提だと思うのです。このことについて、大臣、いかがでしょうか。
  68. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 先生の生涯という御定義あるいは生涯学習に関する辞典等の御紹介、私も大変関心を持って拝聴させていただいたところでございます。  生涯学習というのは、私なりに考えておりますのは、ただいま局長から御答弁申し上げましたとおり、生をうけて、そしてこの世にある限り、生ある限り自分で自発的に学んでいくことというふうに広く解釈ができると思います。  そういう意味で考えますれば、先ほどちょっと申しました胎児教育から始まるかもしれませんが、さらに、最初はお母さんから授かるいわゆる家庭教育、お父さんも入っておりますが、そういった家庭教育から始まり、学校教育から始まり、そして社会へ出てからの社会教育あるいは学校途中でも社会教育というのがある。さらに、文化方面あるいはスポーツ方面におきますいろいろな活動、そういったものから学び取っていく、そういうものも全部学習の中に入ってくると思います。  ただ、教育というのは教え育てるでございますから、若干他動的な意味が入っていると思いますが、学習は学び習うということで、これは自発的な意味が入っていなければ学習というふうには考えられないと私は思っております。そういう非常に広義の、広い範囲の概念を有しているのが生涯学習だと思います。極めて幅の広い概念だと考えております。
  69. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 今までのやりとりの中から、命ある限りということからいきますと、やはり、いわゆる生涯学習主体は一人一人の人間である。生きる、死ぬ、一斉に生きて一斉に死ぬわけにいきませんから、それぞれの生涯がある。それぞれの生涯の中で、それぞれが自分がこうしたい、ああいうことを知りたいということで意思を発動させていろいろな機会に接しながら学んでいく、これが私は生涯学習だろうと思いますね。  そうしますと、学校教育だけじゃないわけですね。それ以前の就学前教育あるいは保育も生涯の学習あるいは生涯教育の期間だろうと思います。それから、胎教という言葉がありますが、やはり胎児も学習が始まっているわけですね。母親の鼓動から何かを伝えてもらっている。でなかったら我々が今存在しないわけですから、少しずつだけれどもやはり積み重ねが始まっている。  もっと申し上げますならば、人間の命を生み出す前に、父親と母親がどのような子供を産みたいあるいは育てたいということのコンセンサスのもとに子を産むという行為も、私は一つの、生涯の中に入れて考えることが必要じゃないか。これは後で触れますけれども、薬害による、あるいは喫煙による異常出産という現象が出てきております。  そうしますと、親に対するそういった基本的な学習の機会を与えるということは、生まれるということにつながる教育でもあるという意味で、胎児教育もあるいはそれをつくり出す以前の状態も含めて、循環的なものも含めて、広い意味でのいわゆる命ある限りの学習であるというふうに私はとらえたいわけです。  そろそろ具体的に問題を絞っていきますが、今申し上げた部分を含めまして、学校教育の分野における学習体育を含めます社会教育における学習、それから文化活動、こうあって、それにかかわる学習を生涯学習だというふうに言っておられるわけですね。ただ、この前のやりとりをお聞きしておりますと、第三条にかかわってでしょうか、「職業能力の開発及び向上、社会福祉」、これがこの法律で言うあるいは我々が言う生涯学習の範疇に入るのかどうかという論議、私はやりとりを聞いて、どうもまだすとんと来ません。入るのでしょうか、入らないのでしょうか、なぜ入らないのか、なぜ入るのか、お聞かせください。
  70. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 今先生がお挙げになりました学校教育社会教育社会教育体育も含む、そしてそれに文化活動というのが生涯学習をする者に対してその機会を与える大きな主要な分野であるというふうに思いますけれども、生涯学習の機会を与える分野というのは、それ以外にも非常に広がっておるものがございまして、文部省以外の省庁が、例えば保健指導でありますとかあるいは健康指導でありますとか、そういうようなことも、いろいろな分野がありまして、前に、昭和六十三年度に文教白書を私どもがつくりまして、生涯学習について初めて特集をしたわけでございますが、その中で十幾つかの省庁にわたって生涯学習にかかわる施策というものがあるということを明示いたしたわけでございます。そのように、生涯学習に機会を与える分野というものは教育、文化だけではなくて、もっと非常に広範囲にわたっているというふうに考えるわけでございます。  そこで、この第二条の「施策における配慮等」の中の後段の方でございますけれども、「職業能力の開発及び向上、」それから「社会福祉等に関し」というのがございますが、この分野は、この下にございますように、「生涯学習に資するための別に講じられる施策」というのに係っているように、この二つの例は、まさに教育、文化以外の部分について生涯学習の機会を与える非常に大きな体系を持つ分野であるという例示でございます。当然含まれるわけでございます。
  71. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 私は法律に全く疎いものですから、我々が使っている普通の文章とあるいは違うのかもしれませんけれども、今含まれるという御答弁でしたけれども、本当に含まれるのかということを疑問に持つ。  言語学的に言いますと、「生涯学習に資するための別に講じられる」、生涯学習に資するための別のものがなぜ生涯学習なのかということはちょっと論理的にわからないのですが、もう一度、その辺、御説明をお願いできませんか。
  72. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この第二条の法文に即して申し上げますと、「生涯学習に資するための」でございますね。ですから、資するための施策、その前に「職業能力の開発及び向上、」それから「社会福祉等」というふうになっております。その二つの分野、体系といいますか、その中での生涯学習に資するための施策、そういう意味でございます。  このことと、それからこの法文に即して言いますと、この法律に規定する生涯学習振興のための施策、この法律で規定する施策ですね。これは後で第三条以下に三つの、つまり都道府県の生涯学習推進事業体制というのと第五条以下の地域生涯学習振興基本構想というのと第十条以下の国や都道府県のあるいは市町村の生涯学習推進対策、この三つの施策を実施するに当たっての配慮事項として、この法律に規定する三つの施策と、それから職業能力開発あるいは社会福祉に関する施策というのと相まって、つまり整合性を持って効果的に実施しなさい、こう言っているわけでございます。
  73. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 ちょっと私の力ではわかりにくいのですが、念のために同僚に聞いたらわからないとやはり言っています、多数決で決めるわけにいきませんけれども。先ほど申し上げたことを繰り返しません。  だったら、なぜ、この二つを別のというふうに分けるのですか。そのほかにも他省庁、関係各省庁のことからいえば農水省だってあるでしょうし、建設省だってあるわけですよね。たくさんの事業、一々申し上げませんが、いただいた資料の中にたくさんあるわけです。なぜこの二つが別にこうなるのか、もう一度。
  74. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 今先生が御指摘のとおり、こういう別に講ぜられる施策というのは職業能力開発、それから社会福祉以外にもたくさんあるわけでございまして、先ほど申しましたように、六十三年度の私どもの文教白書では、我が国の文教施策では十一省庁、たしか四十以上の事業にわたりまして掲げてあるわけでございまして、こういったものが等に当たるわけでございます。  この二つを例示いたしましたのは、やはりこの二つは分量的にも生涯学習に資するための施策というものが非常に多いということから、例示の上で多いものを二つ挙げた、大きいものを二つ挙げた、こういう意味でございます。
  75. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 納得いきません。もうちょっと別な材料をそろえてから、もう一度お聞きします。  たしかこの審議のやりとりの中で、警察庁は入るのかどうか、防衛庁は入るのかどうかという論議があったように思います。これをちょっと再確認させてください。
  76. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 先ほど挙げました十日省庁の中に警察庁は入っています。それから防衛庁は入っておりません。
  77. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 資料の中にも、それぞれの社会教育事業的な事業の中に警察も入ってきているわけですから、これは当然だろうと思います。私も学校時代、学警連携ということで、学校と警察の連携ということでいろいろ苦労をともにしたこともありますから、これは理解できるのです。防衛庁もコミュニティー供用施設学習等供用施設を持っておりまして、一般住民学習、保育、休養または集会の用に供するという事業を持っているのですが、これは生涯学習あるいは社会教育の中には入らないのですか。
  78. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 今お挙げになりました施設とかあるいは設備によりまして、たまたまといいますか、臨時的にあるいはある行事とか、そういう短期間にといいますか、特に取り上げてそういう行事が行われて、それが教育的な性格を持つもの、それはたまには偶然にはあるかもしれませんが、防衛庁の事業の中に生涯学習に資するものがあるというふうに防衛庁自身言っておりませんので、一般住民のための生涯学習としての事業があるということは言っておりませんので、この中に入っていない、こういうことでございます。
  79. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 今の部分について二つの問題が残ります。「職業能力の開発及び向上、社会福祉等に関し」云々、この二つは生涯学習の範疇に含まれるとおっしゃいましたね。それはいいですね。  そのことは含まれないという解釈のもとに国会の運営が行われているという事実があるのです。これは後で、恐らく中西先生から事実をもって指摘すると思いますけれども、これはひとつ覚悟しておいてください。入る、入らない、これは入らないのだ、そういう前提でもって国会運営がなされているという事実があります。これはちょっと大きな問題なので、私のような優しい人間には手に負えませんので、中西先生の方にお願いしたいと思います。  二つ目は、今防衛庁は生涯学習に対して意欲も示していない、あるいは参加する体制もないというふうなことをおっしゃったんですね。  ただ、ここに一九八九年二月五日号の週刊朝日の臨時増刊「生涯学習Vプラン」という特集があります。この中には、もう手ぐすね引いて待っていると思われる教育産業、セミナー、すべて広告を出しています。このページの半分くらいはその広告で埋まっていると言っていいです。その中に、九十三ページですが、二番くらい大きなスペースをもって「生涯学習」、防衛庁の広告が入っているのです。これは関心がないというわけにいかないでしょうね。みずから参加の意思を示したというふうに普通の世間の人はとりますよ。これはどうでしょう。
  80. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この昭和六十三年の文教白書をまとめましたときに、各省庁に連絡照会をいたしまして、そして生涯学習に資するための施策というものを列挙して一覧表にしたわけでございますが、そのときの考え方として、防衛庁は一般住民に対する生涯学習という事業は持っていないというふうにおっしゃって、したがいまして今の中に入れてないという先ほどの答弁をしたわけでございます。  そういうことでございまして、ただ防衛庁の事業の中で、防衛庁内での教育的な事業というのはあると思います。その中で生涯学習という言葉をたまたま使われているんじゃないかということはあると思いますので、すべて生涯学習という言葉を使わないといいますか、事実上使わないということはないというふうに思います。
  81. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 タイムラグはあるかもしれませんが、これを見ますと、「働きながらこんな資格(免許)が取れます!」普通自動車、大型自動車、大型特殊自動車云々といって二十くらいの資格の紹介があって、防衛庁のポスター、広告ということになっているわけですね。これは、この中で行われている学習は生涯学習の枠からはみ出すのでしょうか。  そしてもう一つは、文部省が、あるいは文部省と通産省が、いや、これは防衛庁は違いますよ、範疇じゃないですよと言ったところで、このように資格をうたいながら自衛官募集ということで商業誌に、他の四万円コースですよ、五万円コースですよというような広告と同じように雑誌、週刊誌に出しているという防衛庁の意欲、姿勢、これはあなたの答弁にかかわらず、生涯学習局長の意思にかかわらず、向こうは片思いかもしれないけれどもかなり意欲を持っているということは、これはもう明らかですね。これはどうしましょう。
  82. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 これは今のお話のとおりであるとすれば、防衛庁、自衛隊の隊員といいますか職員ですね、職員職業訓練といいますか、職務上の研修といいますか、そういうものに当たるのではないかと思います。  先ほどから申し上げておりますように、「別に講じられる施策」というのは、これは当然国民一般の生涯学習に関してでございまして、そういう職員というようなものに限定するものではないわけでございます。
  83. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 わかりません。あと私の質問時間が約一時間ありますから、防衛庁にちょっとどなたか確認していただけませんか。これはやはり私たち国民から見れば生涯学習の一部分である。一部をなしておる。そして防衛庁サイドは、今この生涯学習という法体系の中にかなりの意欲を持って参加しようとしているというふうに受けとめざるを得ません。  そのことについて、主管官庁である文部省が防衛庁とどのように意思を整理をされるのか、一時間、時間がありますからやってみてください。この時間内にお答えいただけますか。
  84. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 私が先ほどお答えいたしましたように、それは明らかに隊員という範囲に限定されている話でございまして、それで、先ほど問題にされましたのは、これは国民に対する生涯学習行政一般のことでございます。明らかにそこは範囲を異にしておりまして、個々の職員、ある官庁なり会社なりの、この場合は官庁の問題でございますけれども、ある省庁の職員の研修についてというのは、これは明らかに生涯学習一般の話ではないというふうに、私は明らかにそこは範囲が違う、対象が違うというふうに思っております。
  85. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 内部行為だということをおっしゃりたいと思うのですけれども、こうこうこういう資格が取れますよ、したがって入ってきてください、募集しますという趣旨なんです。隊内でこういうことをやっていますよという報告書じゃないのです。いろいろな資格、セミナーあるいは講座、いろいろありますよ。  これをごらんになればわかるとおり、もうかなりの数のいわゆる民間業者、後ほどまた論議するつもりですけれども、ずらりと並んでいる中に、同じような取り扱いでもって存在しているということが、私はやはり今までのお答え——いや、防衛庁の中における、あるいは自衛隊の中におけるいろいろな学習、運転技術、これも生涯学習の中に入りますよというのであればそれなりに、問題は残りますけれども理解ができそうな気がするんだが、堂々とこのように生涯学習参加する意思表示をしているのに、これはらち外です、十六省庁ですか、関係省庁がたくさんありますが、防衛庁だけは別ですというのは私にはどうも理解できない。どうでしょう。
  86. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 これは第二条の解釈に関して、「職業能力の開発及び向上、社会福祉等に関し生涯学習に資するための別に講じられる施策」という問題に関しての議論でございます。これは明らかに「別に講じられる施策」の対象は国民一般でございまして、ほどから先生が挙げられております対象は自衛隊に限られる。自衛隊員のある資格の取得といいますか、そういうものに関してのいわば企業内研修といいますか、そういうものの一環というふうに考える、そういう性質のものである。したがって、この「別に講じられる施策」というのには明らかに入らないと私は思います。
  87. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 局長のおっしゃることはそうかもしれませんが、私はどうもそれがわからないのですよ。わからないから、当事者が向こうにいるわけだから、話し合ってみたらどうですか。こういうことを指摘されたんだが、本心はどうなんだと。隊内のやっていることの単なるちょっとしたチラシなのか。だとしたら募集まで打ち出すというのもおかしいのだけれども、これだったら、他のカルチャーセンターその他、あるいは何とか学校と同じ性格、同じ姿勢、同じ立場でこの生涯学習の場に参加していると私は解釈せざるを得ない。これが普通の解釈であろうと思うのです。  それが、局長は違うとおっしゃるから、それを明らかにするには、やはり当事者である防衛庁と話し合ってみたらどうですか。そしてその答えを後でお聞かせ願いたい。すぐに済む問題ですよ。どうですか、扱いをちょっと話し合っていただけませんか。
  88. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 私が先ほど申し上げておりますように、それは隊員の一種の研修ということであって、国民一般に対する生涯学習施策ではない。それは防衛庁もはっきりそういうふうに認めております。国民に対する生涯学習についてはやっていないというふうに言っているわけでございますので、そういうことではっきりしているというふうに私は思っております。
  89. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 納得しませんが、これはひとつ理事の方で実物を見て、ちょっと後で相談してください。私は質問は続行します。それでいいですか、委員長。——では続けます。  次に、命ある限りというのの一つの連続性の中の最も重要といいますか、教育という言葉からすぐ連想するのはやはり学校教育だと思うのですね。この生涯学習という帯の中における学校教育の占める位置、果たすべき役割ということについて御所見を賜りたいと思います。
  90. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 学校教育は、国民の生涯にわたる学習において最も大きな役割を果たすものでございます。  二つの役割をその生涯学習観点からは現在重要だというふうに考えておりまして、一つは、人々の生涯学習の基礎を培うということでございます。それからもう一つは、最近、学歴社会の是正とかあるいは学校教育への過度の依存に対する是正というようなことが言われておりまして、社会人に対する学習機会を、それも最も本格的、体系的な学習機会を与える、そういう役割として非常に重要であるという、その二つの点が言われております。
  91. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 学校教育は生涯学習の出発点であるということについてはどうでしょうか。
  92. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 これは、先生が先ほどお挙げになりました生ある限りというようなことから申しますと、そしてまた先生が、胎児教育というところからも考えられるということからいいますと、最初にそういう学校に入る前の胎児教育も入れるとすれば、それも含めて、教育的な働きかけが主に家庭、地域というようなことからあって、そしてそれから幼稚園、小学校学校教育に入っていくにつれて、その学校教育というものの役割が果たされるということだと思います。
  93. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 学校教育に対する反省といいますか、あるいはこれでいいのかということが一つの中教審なり臨教審なりの論議の中で出てまいりまして、学校教育というのはこれでいいのかと……。  ある文章を引用しますと、学校教育だけが学習の場じゃないんだ、学校教育が余りにも肥大化しているといいますか、価値観の上で肥大化しているために、その一つのあらわれとして学歴尊重、学歴社会というふうなものが出てきているんじゃないか、したがって、それを学校教育の肥大性というふうなものを変えることによってこの世の中の価値観というものをもっともっといいものにしていこう。今、学歴だ、学校教育だということが余りにも重要視されているために、生涯を通じての学習のアンバランスとか、あるいは特に学歴社会をつくっているという一つの大きな下地になっているんじゃないかという論議がありましたよね、中教審、臨教審でね。  その延長線でこの生涯教育あるいは生涯学習という考えなり言葉が出てきたと思うのですが、この把握はよろしいでしょうか。
  94. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 今先生がおっしゃいましたその学歴社会の是正あるいは学校自己完結性というものが余りにも強いための弊害、そういうものを是正するために、若いときにどこの大学、どこの学校を出たかということで評価されるようなそういう社会ではなくて、その後、学校を出てからもいつでもまた学校に戻ることができ、そして、そこで修得した学習成果については社会がそれを評価する、そういう社会に直していくことによって学歴社会を是正しよう、そういうのが、我が国における生涯学習社会への要請の一つの要因でございます。  ただ、臨教審はもう二つほど挙げておりまして、一つは、高齢化あるいは自由時間の増大、高学歴化ということから、学習に生きがいを感ずるというような要求が非常に強くなってきて、そういう自由時間の増大に伴う学習需要の増大に対応するための生涯学習社会、これが二つ目でございます。それから三つ目は、科学技術の進展等に伴いまして知識、技術がすぐに陳腐化してしまう、職業生活を主に営んでいくためには、常に知識、技術を更新していかなければいけない、そういうための、そういうものを更新するための学習というものが非常に需要が増大しているということでございます。  その三つの背景をあの臨教審が挙げておりまして、我が国において生涯学習が非常に強く実現が要請される社会的な背景、我が国独特の社会的背景として、その三つを指摘しているわけでございます。
  95. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 学校教育が肥大化している、これは生涯学習の生みの親の一人であります齋藤諦淳さんの文章にもぎちんと出ておるわけでございまして、家庭、地域学校の三つのバランスがどうも崩れていて、学校に偏っているのではないか、偏差値、進学、受験、学歴社会、それがほぼイコールの形で人間評価というふうなことがまず肥大化として挙げられていますし、自己完結性ということを言っていますね、閉鎖的である。つまり学校の卒業証書をもらうのが一つの終わりだということで、実はそこから始まるのだという未来への可能性を重視するという視点が今の学校教育はちょっと欠けている。自己完結型といいますか、自己完結性があるという。主に学校教育に向けての反省なり批判はその二つに絞られていると言っている。  したがって、私も学歴社会というのは本当に大変な、厄介なものだと思うし、なくさなければならないと思う。ずばり言えば、内閣が組閣されて大臣が発表になる、あそこのところに東大卒とか何卒、あれはもう挙げなくてもいいのじゃないか、あるいは履歴書から出身学校の欄を消すなんということを将来に向けて考えてもいいのじゃないか。  生涯が学習であるならば、いつ、ここで終わりということはないわけですから、自己完結を否定するのであれば、まだ途中なわけですから、途中経過として大学卒というふうなことなら話はわかるけれども、思い切ってそこまでいくということがやはり将来のあれじゃないかなと思って、そういう目で見たところが、先ほど申し上げた週刊朝日の対談の中で、当時文部省生涯学習局長であられた齋藤諦淳さんの紹介文章に、「昭和八年大阪生まれ。三十二年に大学を卒業後」と書いてありまして、固有名詞は書いてないのですね。大阪大学を出たとか大学院を出たとかと書いてない。  これは、さすが齋藤さんはもう一歩ずつそれを実践なさったのかなという解釈もあるのかなというちょっと戸惑いを感じているのですが、もう一人の人にはちゃんと出身大学が書いてあるのですね。おもしろいなと思って見たのです。そういったことも本当は将来に向けては考えなければならないと思うのですね。  さて、時間もあれですから先に進めますが、そういった学校教育に対する反省点を一つのてこにして、だから生涯学習なのだという論の組み立て方が今の一つの流れだと思うのです。学校教育だけじゃないぞ、学校教育だけじゃ肥大性があり、自己完結型で、人間一生を通じて見た場合にはここを重視するというのは問題があるぞ、生きている限り、命ある限り学習なんだということに生涯学習という言葉、発想が生まれて、今度の法律提案の基本にそういう考え方があるというふうに理解をしたいのですが、よろしいですか、それで。
  96. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 よろしいかと思います。
  97. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 とすれば、私に残る不満は、なぜこの法律に関連して基本法をつくるなり、それに基づいてこの推進の法体系を整備するなり、それを待てなかったのかということ。  それから、もう一つある。待てよ、学校教育に対するそのような見方は学校教育以外に道を求めなければならない質のものなのかどうか。学校教育そのものを本来的な姿に戻すということで今のような指摘はほとんど解消される。進学のための教育じゃない、知識詰め込みのための教育じゃない、偏差値を上げるための教育じゃありません、人間のための教育なんだ、命ある限りの、これから何十年と生きるその基礎を、基盤を、精神的な、肉体的な基盤をつくるのが学校教育なんだという原点に返れば、今言ったような把握はしないで済む。私は学校教育を言うのはかわいそうだと思う、このままでは。ぬれぎぬを背負わされておる。本来の姿に戻せばいい。私はそう思うのですが、どうですか。
  98. 菱村幸彦

    ○菱村政府委員 ただいまいろいろ御指摘いただきましたように、学校教育はやはり子供たちが生涯を通じて学ぶその基礎を培うということが重要であろうと思います。したがいまして、今日いろいろ問題を抱えておりますが、御指摘いただきましたような受験競争の問題、偏差値等の問題、学校教育の肥大等の問題、さまざまな問題の御指摘がございますが、私どもとしましては、学校教育というのは生涯を通じてみずから学ぶ意欲と態度と能力を培う場である、とりわけ義務教育はそうであるというふうに考えております。  したがいまして、今回の学習指導要領の改訂におきましても、まず基礎・基本を精選しよう、基礎・基本を確実に身につけさせよう、それが生涯にわたって学ぶ一つの基礎的な能力になるわけでございます。それからもう一つ重要なことは、自己教育力を育成しよう、これはまさにみずから学ぶ力、みずから学んでいく意欲、みずから学ぶ態度というものを培う、それが重要であるということで改善を図っているわけでございます。  したがいまして新しい指導要領では、小中高を通じまして基礎的、基本的な内容に精選を図っておりますし、個に応じた指導をすることによりまして確実に基礎・基本を身につけさせょう、そして同時に体験的な学習とか問題解決的な学習というものの充実を図りまして、みずから主体的に学ぶ学習態度の形成を目指すということに力を尽くしているわけでございます。  社会の変化が大変激しゅうございます。その社会の変化主体的に対応できるようにするために、各教科におきましても思考力とか判断力とか表現力とか、そういうものの育成を図ろう、知識の詰め込みだけではなくてそういう能力を図っていこうというところに重点を置いて、新しい指導要領の総則をごらんいただきますと、そのようなことをはっきり書いておりますし、全体を通じましてもそのような方向で改善を図っているところでございます。
  99. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 私は局長のおっしゃったとおりだと思うのですよ。問題は、現実の教育の場がそうなっていないというところにあるわけです。ですから私は、本来の姿に戻すということに努力をして、戻すことによって、学校教育が肥大化している、自己完結型だという指摘は克服できるわけです。  今局長自己教育力というふうなことをおっしゃいましたが、全くそのとおりなんです。じゃ、自己教育力を育てるためには幾つかのファクターがあると思うのですけれども、私は目的意識がはっきりしているということが必要だと思うのですよ。  私はここで少し、教育論ですから遊びじゃないのですけれども、ゆとりのある論議をしてみたいと思うのです。  というのは、スクールという言葉の語源、これはもう既に御承知だと思いますが、ギリシャ語のスコーレ、暇ということから来ていますね。本来スクールは暇、ゆとりの場である。それぞれの歴史があるでしょうけれども。それから原理、原則、プリンシプル、セオリー、セオリーの語源はテオーリア、これはすっと余裕を持って観照する、あるいは観想の生活、これがテオーリア、そしてセオリーに転化した、こういうふうに言われています。学問、学校というものの本質をあらわしている一つの言葉だと私は理解をしております。学校生活からもう何十年かになりますけれども、この言葉は忘れることができません。それが今の学校教育にあるのだろうか。  これは私たち、教師であった私の自己反省も含めて、とにかく教科書のここからここまでを三月の初め、卒業式までこなさなければならないという変な使命感。こうして詰め込んで点数を少しでも高くとらせる、一人でも多く上級学校に進学させたい、これが今の学校教育の大きな目標になっている。ほとんどそれだといってもいいですね。ですから、局長の言われた自己教育力の促進エネルギーである目的意識というものを我々は学校教育の場でもう一回掘り返してみなければならないと思う。  私は理科の教師です。子供たちには理科、数学というものの評判は余りよくありません。しかし、やっています。で、質問します。おまえたち、何のために理数科をやっているんだ、数学を何のためにやるんだ、数学で今一生懸命やっているタンジェント、コサインというのは一生使わなくて済む人が大部分だ、絶対多数だ。私は理科、化学の方ですけれども、アルコールの化学式がC2H5OHだということを知らなくても、いずれおまえたちは酒を飲んで楽しい気分になることはできるぞ。なぜ理科なんだ、なぜ数学なんだ、これを我々は問い詰めなければならないし、我々も理解し合わなければならない。学校教育にそれが欠けているのです。局長、数学、理科は何を目指してあるのでしょうか。
  100. 菱村幸彦

    ○菱村政府委員 教育、とりわけ学校教育の目的は、教育基本法にございますように人格の完成でございます。したがいまして、それはもちろん知育もございます。これは学校教育における重要な位置を占める問題であろうと思います。しかし同時に、体育、徳育、そうしたものがバランスをとって円満な発達をすることによって教育が完成するわけでございます。  したがいまして、私から申し上げるまでもなく、学校教育におきましてはそうした人格の完成を目指す基礎としていろいろなことを学ばせるわけでございますが、まあギリシャ以来と申しましょうか、昔から教育にはいろいろな要素がございますけれども、今先生が御指摘になりましたような理科とか数学というものは、人間形成の上でとりわけ諭理的な思考力とか、それから先ほどおっしゃいましたセオリーなどもそうだと思いますけれども、創造性とか直観力を養うとかいろいろな役割を数学や理科は果たしていると思っています。  また、教育内容としましては、人間と社会と自然について教えることでございますが、理科などはその自然を教えるのに最もふさわしい科目でございます。したがいまして、一見社会に出て役に立たないように感じられますことでも、学校教育ではそうしたことをしっかり教えることによりまして人間が人格の完成を高めていくということであろうと存じます。
  101. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 与えられた時間がどんどんたちますので、いずれまた機会を改めて論議を深めたいと思いますが、私が生徒たちに、なぜ、おまえ数学、理科を勉強するんだと聞きますと、必ず返ってくる答えは、そこに数学があるから、これをやらないと単位をもらえないから、進級、進学ができないから、入試に失敗し大学、上級学校に進めないからという答えが返ってくる。  私は、現実の問題としてそれをネグレクトしろということを要求するのは君たちには無理だろうと思うけれども、おれはこう思う。数学、理科の大切なのは、私たち一人一人の中に抽象の世界をつくる、これは人間にとってすごく大切なことなんだ。物事を判断する、感ずる、意思伝達をする、その場合、抽象の世界がなければできないわけで、これを鍛えるのが理科であり数学なのだ。あるいは行動をする場合の行動の一つの反応の仕方、踏み出し方、帰納と演繹という言葉がありますが、現象をよく見なさいと。群馬のカラスはカアと鳴く、東京のカラスもカアと鳴いているぞということを幾つかこうやって、この中からカラスはカアと鳴くという一つのプリンシプルが認知されれば、佐賀県に行かなくても佐賀のカラスもカアと鳴くという一つの演繹的なあれが出てくるわけですね。  そういう思考方法、思考能力というふうなものを理数科の中で知らず知らずのうちに養っていく、これが数学、理科の持っている大きな意味だろうと思うのです。それぞれの学科には、それぞれの人間として生きる上で非常に重要な目的があるはずなんです。それを学校教育の中ではっきりさせてください。それがややもすれば、塾だ、知識だ、偏差値だということで子供たちは追い立てられている。楽しかるべき学問が楽しくなっていない。この責任は大人ですよ。子供たちに責任はないのです。その大人の中には私も入っています。しかし、より大きな責任は文部行政にあると私は思う。そのことはきちっとやはり総括していただかないといけない。そのことを大切にすることによって生涯学習の展開という皆さんのイメージがまた別な色彩で展開してくるかもしれない。そのくらい重要な作業だと私は思うのです。繰り返すようですが、この作業は性急に結論を出すべきじゃない。七月一日でなければならないという理由はないと思います。  次に進みます。生涯、命ある限りということをもう一度申し上げますが、私たちもこのビジョンをお聞きしている中で、どうも大きくぽかっと空虚な穴があいているなあと感じざるを得ないのは、障害を持っている人たちに対する一生を通じての生涯学習の場をどのようにして保障するかということです。このビジョンが出てきません。教育産業、民間事業基本計画、申請、承認、協議、その中からは、うちから出られない重度の子供たちあるいは大人に対する、人間としての働くこと、生きること、結婚すること、子を産むこと、その道が、展望が開けていない。ましてや学習参加するということはかなり困難ですね。  教育者の一つの体験を言いますと、どうもちょっと心情的になって、感情的になって恐縮なんですけれども、私はこれもまた大切だと思っていますから言いますけれども、けさ私は、念のため私の教え子で、交通事故で下半身の機能を完全に失った子供に電話をしました。なかなか出てくれません。そうしたら、かなり時間がたってから出てきました。どうしたのだと言ったら、その子供はもうすごく不自由でございまして、袋を持ってトイレで排せつをしてまとめて流すというふうなことをやっている子供なんですが、末ごろ入院したと言うのですよ。何で入院したのだと言ったら、腰の方に故障があるものですから、朝出血して便所で倒れたまま意識が薄れて、朝ですよ、うちの人はいつもだったら午前中に行くのだけれども、その日は何かの用事があって行けなかった。夕方行って発見をした。もう一時間おくれたら死んでいた。そういう生命の危険にさらされた子供ときょう話をしたわけです。  それで、どうだと、もちろん若くしてけがしたのですから結婚もしていませんけれども、どういうことをしてほしいのだ、おれにできることがあるかと聞けば、それはもう私たちがやるよりほかないと思うけれども、仲間と交流する機会、可能性というものが欲しい、外に出ることは自力ではなかなかできない。その場合に、一体どういう方法があるだろうか。したがって、生涯学習が特定の地域を指定して、そこにかなり集中的に民間事業者も入ってきて、公的な施策も展開されて、機会あふれる、行こうと思えばあるいは受けようと思えばたくさんの生涯学習のテーマがそこに用意されている。しかし、その子供たちは町に出られないのですよ。車いすで苦労して行く。五センチの段差を上れないのです。十五度の角度以上きつくなったら車いすはなかなか上れないのです。そういう町づくり、町の状況がある。  そういうことに対する一つの手だて、施策なり、あるいはその子供たちが障害児学校を出た後どういう進路にリードしていくかということなしに生涯学習を展開したとしても、彼ら、彼女らには無縁のものでしかない、こういうことになりかねないのです。こういうことについての反省なりあるいは今後の課題に対する御所見を、できれば文部省から、そして次に厚生省からお聞きをしたいと思います。
  102. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 障害者の生涯学習という観点も非常に大事な観点だというふうに思います。  今おっしゃいましたいろいろな状況というのは、それぞれの学習の場面において障害者に対していろいろな配慮をしてあげる、生涯学習施設をつくるときに障害者が利用しやすいものにするとか、放送大学なんかにつきましても、在宅学習基本としておりますので、そういうものについての整備充実を図ってあげるとかいうような、いろいろな場面において障害を持った人々学習をしやすくするための措置を講ずるというのは、これは個々の行政分野において非常に大事なことだというふうに思っておりますし、私ども社会教育とそれから放送大学等を担当しておりますが、それぞれにおいてそれぞれ努力をしてきているところでございます。  この生涯学習ということに関して、本法案に関係することとして申し上げれば、この生涯学習審議会の調査審議事項、これは生涯学習の重要事項について審議をするわけでございますが、その中の一つ観点として、障害者の生涯学習の充実促進ということについてどうするか、こういうことが非常に大きな課題であるというふうに思います。非常に大きな調査審議事項になり得ることであろうというふうに思っております。  この法案自体にあらわれてまいります施策というのは、推進体制という大きな生涯学習の全体的な基盤でございますので、それぞれの施策について具体的にあらわれているわけではございませんけれども、今のように障害者の生涯学習というような観点について、これからの方向を論ずるというようなことは非常に大きな課題としてこれから取り上げていかなければならない、そういうものであろうというふうに思っております。
  103. 福山嘉照

    ○福山説明員 お答えいたします。  障害者が社会に参加するためには、やはり障害者がお持ちになります多様な障害の実態、またニーズからさまざまな支援の措置が必要であると考えております。特に、重度の障害者にとっては、先生がおっしゃいますように、いろいろな社会的な問題等もございますので、その辺については特に留意をしなければならないと考えております。  具体的には、町に出るためのハード面の整備とかまた外出時、重度の障害者に対する支援を行う体制でございますとか、また在宅のまま情報を交換する、そういうようなことを我々としては十分配慮していかなければならないと思っております。  厚生省といたしましては、現在身体障害者福祉法の一部改正を今国会でお願いしているところでありますけれども、その中で地域の身近な行政主体が障害者福祉を一元的に推進できるようになれば障害者の社会参加が一層促進されると考えております。特に留意する必要がある在宅の重度の障害者についても、地域の中で容易に社会参加ができるような体制づくりを今後とも充実に向けて努力をさせていただきたいと考えております。
  104. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 文部省教育制度の問題にしても、あるいは今厚生省にお答え願った福祉関係の問題にしましても、数多くの社会参加をしたい、あるいは展開されるであろう生涯学習社会に対して、我々も少しでも多く参加したいという気持ちは持っているわけですから、これはぜひ心にとめていただきたいと思うのです。正直言って、恐らくこの法案をつくるまでに、障害者に対する対策というのは念頭にありましたかという質問をした場合に、どういう答えが返ってくるだろうなというスリルみたいな期待感がありますが、それはおいておきます。その質問はしません。  ただ、例えば障害児教育の高等部を増設してほしいとか、職業訓練の中に福祉関係の作業所等も含めてほしいとか、あるいは学校教育でも社会でも混合化を進めてほしい、つまりいろいろな種類の障害がありますし、健常者もいるわけですが、混合している場合に相乗効果を発揮するというのが指摘なのです。  一つの例だけ申し上げますと、ある作業所で知恵おくれの人に、手作業でもって単純だけれどもこれをやってくれ、できるか、やったらできる、では五百つくってくれということで、しばらくして行ってみたら、それが全然進んでいない。さっきやったじゃないかと言ったら、五百が数えられない、十しか教えられない。それで入り口でもってストップしてしまった。そこで、体は不自由だけれども、片手しかないけれども、教えることのできる障害者を二人並ばせたらスムーズに作業が流れた。これは一つの例ですけれども。  人間の社会は欠陥がある。これは私らだってありますよ。目に見えない欠陥を持っているかもしれない。それを補い合って共同化し、混合化して生きていくのが人間社会だという基本を障害児教育の場においても、聾学校、盲学校、何々学校という障害別に区別するのではなくて、あるときには混合教育を展開するというふうなこととか、そして社会教育の中でもあるいは今後展開されるであろう生涯学習の中でも、目の不自由な人と耳の不自由な人と手をつないで生涯学習の場に行けます。片一方の一人だったら行けません。というふうなことまで配慮しながら、町づくりもしなければならない、体制づくりもしなければならない、そういう課題はたくさんあるのです。そのことを私は指摘をして次に進んでいきたいと思います。  新聞を見ますと、今度の法案についていろいろなどぎついと申しますか、文部省人たちにしてみれば汗の出るような記事が随分出ましたよ。各省庁の縄張り争いだとか、名を捨てて実をとったとか、またもや何とかかんとかというふうな、これを一々振り返って検証しません。ただ、これからに向けて、この法案ができたとき一体どうなるのだろうなという心配があるのです。  それはさっき言った、別のというふうなこともありますが、たくさんの省庁が関係していますね。さっき防衛庁は別だとおっしゃっていました。そういった各省庁がいろいろないきさつがあったと思うのだが、それぞれの中に生涯学習に向けて、よしこの体系の中で我が省はこういうふうに参加する、その参加の仕方の中で、我が省としては特に障害者に対する配慮としてはこういうことも考えますよというふうな、この法案に対する評価を含めてどう参加するか、今後予想される各省庁としての問題点は何なのか、障害の点は全然心配ないのか、雲一点なく雲量ゼロ、晴天ピカなのかどうか、このことを、順序はどちらでもいいのですが、厚生省は今お話しいただきましたから結構です。自治省、労働省、農水省、建設省、それぞれお願いします。
  105. 石橋忠雄

    ○石橋説明員 自治省でございます。  自治省は、生涯学習につきましては、地方公共団体が深くかかわっておるということでこの問題につきまして関心を持っております。  地方公共団体におきましては、この問題が出る以前から、学校教育ということは当然のことでございますけれども、社会教育あるいは文化活動等幅広い分野におきましてさまざまな学習の場の提供等を通じまして生涯学習推進に努めておられるところでございます。  自治省といたしましても、この生涯学習必要性、重要性ということは十分認識しておるところでございまして、それぞれの地方公共団体におきまして、この法律が制定されましたならば、これを契機といたしまして、この法も活用しながらそれぞれの地域の実情に応じた創意あふれる生涯学習振興を図っていくよう期待しておるところでございます。
  106. 小島迪彦

    ○小島説明員 私ども労働省の行政といたしましては、労働者生活の安定あるいは向上を図るために職業生涯にわたって能力開発をしていただくということで、法律的にも職業能力開発促進法という法律に基づいてやっております。  今回の法律が出まして、生涯学習という観点でいろいろな体制整備ができますと、我々の行政と非常に密接に関連しておりますので、ぜひ協力して、特に我々がこれから進めていかなければなりませんのは、今まで職業訓練を中心にやってまいりましたけれども、これは生産現場とかいわゆる二次産業にかなり偏っておりますので、そちらの方の整備といいますかかなりやっておりますが、これからホワイトカラーその他あるいは高齢者、管理職、そちらの方の能力開発に力を入れてまいりたいと思っておりますので、こういうような生涯学習という面で施策を充実いたしましたならば、ぜひ我々連携をとりましてやってまいりたいというふうに考えております。
  107. 鈴木信毅

    ○鈴木説明員 農林水産省でございます。  農林水産省におきましては、農林漁業の振興あるいは農山漁家の福祉の向上、こういうものを図るといった観点から、農林漁業者の能力の開発向上ということを含めた生涯学習に資する対策を種種講じているところでございます。  例えば、農林漁業に関します普及事業におきまして、農業者に対し技術、経営等の指導を行う。あるいは、各県に農業者大学校というのがございますが、そういうところで農村青少年に実践的な教育を行う。あるいは、普及所等におきまして高校生等を含みます農村青少年の就農促進のための指導、さらには農村婦人のいろいろな学習活動の助長とかあるいは高齢者の方々の知識、技術、経験を生かした活動、こういうことについて農林漁業者のそれぞれのニーズに即応した対策を講じているところでございます。  こういう意味で、繰り返しになりますが、生涯学習振興ということは農林漁業の振興、農山漁家の福祉の向上ということで極めて重要なことだと思っております。そういう意味で、農林水産省としまして関係省庁とよく連携して今後とも強力に推進してまいりたい、そう考えているところでございます。
  108. 清水一郎

    ○清水説明員 建設省といたしましては、心身障害者の方々が一般の人と変わらない安全で快適な生活ができる、こういうふうな住宅の確保であるとか町づくりを進めていくということが非常に重要な課題である、このように考えているところでございます。  具体的に申しますと、このために、身障者の同居世帯に対します住宅金融公庫の割り増し融資でございますとか、公営住宅、公団住宅につきましての設計上の配慮でございますとか、あるいは優先入居、さらには委員お示しのございました道路整備に際しまして歩道の段差を切り下げるというふうな施策でございますとか、官公庁施設へのスロープを設置する、こういった各種の施策を講じてまいっているところでございまして、今後ともこうした生涯学習振興に資します施策を積極的に推進してまいりたい、このように考えているところでございます。
  109. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 各省庁、御苦労さまでした。  ただ、これからの問題として、この生涯学習の法律による事業施策推進する、あるいはそれとかかわりなく、どちらにしても今非常に重要な提起をいただいたと思うのです。  自治省には後でまた申し上げますが、例えば労働省では、多分今までもやりとりがあったと思いますが、職業訓練に対する有給休暇の問題がありますね。これもぜひお願いしたい。  それから農水省、特に私は高校の、農業学校の教師をやってきましたので、農水関係の後継者対策に対して、農業、林業、水産に対する価値観、行政サイドの価値観をもうちょっと高めてもらわないと、世の中の価値観を高めてもらわないと、幾ら農業が大切だから農業をやれと言っても、世の中が農業というものを低く見ている限りは子供たちは行こうと思いません。  これは大臣、農水委員会当時もいろいろ話し合いましたけれども、農業、林業、水産というものの位置を今のままに置いておいて、行く先不安のままの状況に置いておいて、意欲を持てと言っても、これは無理です。やはり農業、林業、水産に関する価値観というものを高めるためにも、国の施策はもう大変力が入っているんだ、将来は大丈夫なんだということを挙げてかからないと、後継者対策に関する指導あるいはその地域における学習活動にも大変大きな支障を来すということを指摘しておきたいと思います。  さて、それぞれ聞いておりますと、生涯学習を展開するのに極めて重要なメンバーなんですよね。すごく重要なメンバーなんです。なぜその中から通産だけが選ばれたんだろうかなという素朴な疑問を持つのですが、いかがでしょう。
  110. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 地域生涯学習振興基本構想の部分について文部大臣と通産大臣の共管になっているわけでございますが、これは、民間事業者の能力を活用しながら社会教育あるいは文化活動その他の生涯学習に資する諸活動の多様な機会の総合的な提供を行うことを目的とした事業でございます。  そこで、文部省教育、文化の振興観点から、通産省はその際民間事業者の能力を活用するという観点から、共管省として協力しながら幅広く多様な生涯学習振興に取り組もうということでございます。  こういう両省の共管関係によりまして、この制度の目的とする生涯学習に係る諸活動の多様な機会の総合的な提供というものがより厚みあるいは深みを持って行われるというふうに私どもとしては理解をしております。
  111. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 大臣、一つお願いしたいのですが、民間事業者が参加する、いわゆる民間活力を活用するということですね。この手法は中曽根さんあたりからぐっと出てきたような感じがします。いい点ももちろんあります。しかし、全体として、流れを見ていますと、本来的にこうしなければならないことで勝負をしないで、その周辺部分の手法でもって活性化を図ろうということが目立ちます。農業、林業、水産業で、これ、指摘できますね。  農業そのものに対する振興策というよりは、農村地域に工業を導入して活力を吹き込もうとか、農地を流動化させて別な用途に役立たせながら活性化しようとか、リゾート手法を導入して山林の開拓開発を進めようとか。水産だって、今度は漁協が遊漁船もやれる、マリーナもやれる、店も開けるというふうに法改正になった、きのう本会議で可決しましたけれども。そういうふうな、本来、水産なら水産、林業なら林業をいかにして振興するかという真正面からの気迫がないままに他の手法に依拠しているというのは、そしてしかもそこには民間の力、そしていろんな形での——民間というのは利益を追求するという宿命を背負っていますからね、そこに危険性があるということを私は指摘せざるを得ない。  山林の開発、保安林の開放なんかもその一つだと思うのですが、ついに教育の場にも民活かという感じを持ったのは私一人だけじゃないと思うのですよ。そうじゃないとおっしゃる。答弁は必ずつじつまが合う。これはプロパーでいらっしゃるから、法律を提案しているから、立派に組み立てたと思うし、質問に対しては答弁なさると思うけれども、しかし今の政治全体の流れをトータルとして眺めてみた場合に、今指摘したような疑問はどうしてもぬぐえない。民間活力の活用というのはもろ刃の剣だと思うのです。これについて大臣の御所見をお願いしたい。
  112. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 ここ数年来民間活力を利用していろいろな施策を講じていこうということはやられております。しかし、やはり目的とするところは、この法案の場合でございますと、生涯にわたって生ある限り学習を続けられる体制というものをきちんとできるだけ早く整備をしていく、こういった観点に民間の活力を使おう、こういうことでこの法案が準備されているわけでありますが、教育という観点あるいは学習という観点に立って考えた場合に、いわゆる民間の企業としての利益追求型だけが先行するというようなことがあってはならない、このように私自身考えております。  そのために中央におきましても審議会をつくり、そしてまた地方におきましてもそうした同じような機関をつくっていただく、そして正しい姿にこの民間活力が利用されるように誘導していくということがまたこの法案の持つ意味でもあろうかと思いますし、また、そうした理念を背景にして行われるべき施策であろうかと思っております。先生御指摘の点は、十分に私どもとしましてもその意を体して誤りのないように方向づけをしていかなければならない、このように思っております。
  113. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 この問題、もう少し時間が欲しかったのですけれども、指摘と要望を申し上げて次に移りたいと思うのです。  今度はソフト面が多いのです。何々カルチャーセンターとかなんかですね。そして、これからもそうだと思うのですけれども、学校教育の場、産業教育の場、視聴覚教育の場あるいは社会教育の場にいろいろな教育機器を多用することが多いし、今までもかなり入ってきた。その中で陥りやすい危険性を一つ指摘しておきますす。  高等学校、小学校、中学校に、私がいたころですから十五、六年前でしょうか、アナライザーという装置が一斉に入った。答えを選んでボタンを押すと私のところに答えが集まってきて、直ちに何%、おまえの考えはちょっとおかしいぞとかいうふうなアナライザーですが、あれは今どうなっているか、わかりますか。ほとんどの学校が使っていませんよ。もう解体しているのです。結局は実用的じゃなかったということ。  それから今花形はマイコン、コンピューターでしょうね。これも私、現場としょっちゅうやりとりしているのですけれども、これは結構だが、入札するのはまとまったすごい額ですから、数ですから、業者にとったら本当によだれの流れるような市場なわけですよ、学校教育に限らず教育の場というのは。ところが、貧乏県の悲しさ、結局安い、古い型のものが入ってくる、あるいはメーカーごとに機能が違ってソフトを打ち込んでも互換性がない、交換できない、こういう指摘がある。これはメーカーが悪いんじゃなくて、そういった計画を立てて視聴覚教育なり実業教育をやっている方の、組み立てる方の責任が大きいのじゃないかと私は思うのですよ。  数え立ててもたくさんあるのですが、映写機があり、オーバーヘッドプロジェクトがあり、ビデオテープがあり、マイクロコンピューターがあり、LL、ランゲージラボラトリーですね、LLは割合に命が長く使われていますけれども、アナライザーは耐用年数が来てないのにほとんど撤去です。すぐに役に立つ教育というのは往々にしてすぐに役に立たなくなる教育だという落とし穴があります。この辺は、今後、学校教育においても社会教育においてもあるいは生涯学習においても、少なくとも民活活用というプラスの面はちょっと私もよくわからないけれども、公の責任というものを常に中心に据えてかかっていただかないと収拾のつかないことになります。  この法律は保利大臣当時につくられた法律だということが末永く残るわけですから、何年後かに振り返ってみて、ああやはり民活は誤りだったとか、公の責任、公教育が崩されてしまって体系としてはぐにゃぐにゃになってしまったとか、それから一コース四万、三万円という広告がこの週刊誌に出ているわけですから、それが今度地域に来るわけでしょう、選べる人と選べない人、行きたくても行けない人と行ける人と、経済の力によって差が出てくる。これは差別、選別です。学力における差別、選別という言葉は随分行き渡ってますけれども、経済力における差別、選別あるいは障害の程度における差別、選別が行われる危険性がある。  そういった意味で私はこの手法というものについては賛成するわけにいかない。どうにも疑問が残る。そしてなぜか力が入ってますけれども、文部、通産というのが主管になって、そこにお並びの各省庁がもっともっと重要な役割を果たすであろうということになると、やはりすっきりしないですね。  あと数分ということですからそろそろ締めくくりたいと思いますが、文部省の中に筆頭局とか第五番目とかというのがあるというのは余りよくないですね。これは私が言うのではなくてあのころの齋藤さんの文章にあるのですね。五番目の社会教育局が今度生涯学習局に変わって、筆頭局になった。そうすると、私らは、序列があるんだな、もし意見が違った場合には、番付一枚違えばかなり違うのかなという心配が出てくる。そういうことはあってはならないと思う。筆頭局、第五番目、五番目から筆頭局になった、こういう感覚は民主的な教育展開の場にはなじまないと私は思う。  筆頭局の局長を前にして言うのはちょっと恐縮なんですけれども、そういう意識はお持ちじゃないと思う。けれどもそういう文章がたまたま公に出てくるものですから、世の中の人はそれを見ればやはりいろいろな感じ方をしますよ。文部省というのはとにかくたくさんの、ファンじゃなくて注目する人を抱えているわけだから、子供、親、社会教育と一番の人数を抱えているのは文部省じゃないですか、ひとつ慎重に、そして公平、公正に今後対処していただきたいということを特にお願いしておきます。  最後になりますが、自治省に対する質問も含めてですけれども、今度の法案は一体国民にどう受けとめられているのかということについて不安があります。もちろん我々が今審議しているわけですから、それを細目、国民に前もってこれからこうなりますがどうですかということはなかなかオープンにできないと思う。しかしヒアリングということはあるわけでしょう。  私は念のために私の出身の岩手県の市町村の担当者に電話を入れてみた。そうしたら、こういう答えが返ってきているのです。提案されていることを知っているか、全自治体で知っているという回答がありました。知っている場合、法案をどうとらえているか、法案への期待、批判はあるかと聞いたら、具体的内容はわからない、検討していないのでコメントができない。これが大部分です。社会教育から生涯教育に名称を変更しただけにすぎないのではないかという反応もありました。経費の負担はどうなるのかなという金の心配をしているところがかなりありました。  まだまだありますけれども時間の関係で省略しますが、もう一つ注目すべきは、既に昭和五十年に入って市町村段階で生涯学習による村おこし、町づくりを進めているところがある。そこの意図は残念ながら、今出しているこの意図とは微妙なというか、かなりのずれがありますね。村おこし、町づくりということに対して集中しているわけです。ですから地方自治体が主役で主なる場なんです。  すると、法体系から見ると頭でっかちで、竹やぶという言葉を使った人があるそうですが、上の方がザワザワして下の方が静かだということで、これはある人の言葉ですから私の表現ではないですよ。そういう大事な、最も住民に近い政府は市町村役場でしょう、住民に最も近い議会は市町村議会ですよ、そこの第一線の人たちがこのような重大な法案について十分な話し合いなり検討の時間がないままに七月一日実施するということは一体どういうことなんだろう。第一線の市町村役場の人たちがこのように言っているのですよ、検討したことがないと。それは当たり前かもしれない。  だったら、このくらい重大な問題ですから、全国で何カ所か公聴会を開くとか、あるいは時間をかけて今回は提起をした、国会でいろいろな問題が出た、どうにもコンセンサスは十分得られていない。私は内容についてどうも賛成できませんからね。こういう状態のままいくのは、教育にとっては不幸だし、ふさわしくない。人間の、国民全体にかかわる、しかも魂の尊厳にかかわる問題にも触れているわけですから、これは時間をかけるべきだ。そして、コンセンサスをじわりじわり、生涯教育をやっているのですから、命ある限り少しは時間をかけてやりましょうよ。何も七月一日目指してえっさえっさゴールする必要はないですよ。  私は、これに対してつぶせとかなんとか言っているのじゃないのです。何とかこういったものを素材にしながら、本来的な目標に向かって学校教育もしゃんとする。それを含めて、胎内の教育、生まれる前の教育も含めて生涯を通じて人間らしい学習をする。その体制を追求していこうということに関しては私どもも熱心なわけですから、これはひとつ真っ正面から受けとめていただきたいと思うのです。  さっき、厚生省の方に言うのを忘れましたけれども、たばこを吸うことによって異常出産、あるいは軽い体重のまま出産するといういわゆる異常出産がふえているという事実があります。これは厚生省からいただいた資料ですけれども、十九歳前に喫煙する人は全然喫煙しない人のがんの発生率が五倍強だという数字も出ているわけですね。大変なことがたくさんあるのですよ。そういった基本的なことを体系的に教える場というのが残念ながらないわけです。  例えば実印というのは大変だぞ、下手に持っていかれて判こつかれたらもう財産持って行かれるぞということを教える場がない。これは山中邦紀先生からいただいてきた、十項目ほどあるのですが、たくさんあるのですよ。もうこれを知らなかったら生きていけないぞと思うようなことがたくさんある。しかし、それを体系的に教えられている場がない。  それから、やがて親になる、生命を生み出す。命ある限りのとうとい一人を生み出す前の知識としてこのぐらいわかっていれば水頭症の発生が防げたのにということだってあるわけですよ。それを厚生省サイド、日本の医師会は、生徒さんたちに私らが行って学術的な立場からお話ししてもいいです。先生方がしゃべると、何だ先生、自分はたばこ吸っていながらおれたちは取り締まるのかというふうなことがくるわけです。それに対して、専門医が行くことによって説明ができる。そういういわゆる教育の社会化、社会の教育化という、生涯学習の本当の意味の姿が一つ一つの工夫によって出てくる。  そのことを見詰めながら全体像をある程度明らかにしながら、よし、しからばこういう体系で組んでいこうというふうに時間をかけるべきだというのが私の主張です。そのことをぜひお願いしたいのですが、自治省、一言お願いしたいのですが、どうでしょう。最前線で苦労するのは自治体の職員ですよ。それでも急ぎますか。
  114. 石橋忠雄

    ○石橋説明員 御指摘のような地方への浸透という問題はあるかもしれませんが、既にこの問題につきましてはいろいろ報道もなされておりますし、また関係各省庁等で協議を重ねて法案という形で合意のもとに提出をしておるということでございまして、国会での御審議をお願いしているという状況でございますので、それ以上のことは私から申し上げる立場にございませんので、よろしくお願いします。
  115. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 それでは最後になりますが、繰り返すようですけれども、生涯学習の中におけるそれぞれの分野ですね。なぜ社会教育じゃいけないのかという疑問がまだ残っている。  実は、「学校教育は生涯学習の第一歩である」という言葉は、委員長のある本における発言から引用させていただきました。私は大変いいことだと思っている。これを大事にしてほしい。そして、生涯学習ですから、生涯にかかわる問題ですから、どうぞ拙速は避けていただきたいということを重ねて要請して、終わります。
  116. 船田元

    船田委員長 次に、中西績介君。
  117. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は、今まで同僚委員から相当の時間をかけてそれぞれの条項についてもあるいは問題点についても指摘があったわけでございますが、ただ先ほど沢藤委員からも指摘があっておりましたように、この法案についてはもう少し慎重にやるべきではないか、あるいはそれぞれの条件なりが整った段階で再度こうした問題についての論議をすべきではないか、こうした期待がある中で進められておるということは、大体ほとんどの皆さんがそのことを指摘をしたわけであります。  私もそうした意味では同じ立場に立ち、生涯学習そのものがわずか一日二日延びたからといってこれがどうだこうだという問題でもなし、あるいは施行時期が七月一日、予算をつけておるのでこれを可決成立させなくちゃならぬというような極めて短絡的な論議がされたのでは、私たちこうした衝にいる者の一人として、大変自分自身の持てる意思というものをみずからが放棄をするような格好になるわけでありますから、できるだけ私は内容についてもう少し深めた上で、そうした問題をもう一度問い直してみたいと思っています。  そこで、この法律はこの前、一条あるいは二条を論議する際に大臣の方からも、条文化をしておらないけれども憲法、教育基本法の精神にのっとるものであるということを答弁されています。私はそうであればあるほど、この内容が果たして憲法あるいは教育基本法に照らして矛盾する点がないのか、こういう面についてもう一度問い直す必要があるのではないかと思っています。  なぜなら、これはまさに今の現状、状況から出発をした法案であるとしか言いようがないからだし、生涯学習の目的というものがもう少し私たちすっきりしない点がある。こうした点をぜひ十分な討論の過程の中で確認をしておく必要があるのではないか、こう私は思います。したがって、目的について、ここに書かれておる「状況にかんがみ」云々、そしてその後に来るいろいろな基盤整備をするためにあるということでなしに、生涯教育そのものの、あるいは生涯学習の目的は何であるかということをもう一度、くどいようですけれども、お答えいただければと思います。
  118. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 生涯学習の目的でございますが、これは、私どもの理解しておりますのは、国民がみずからの自発的意思に基づきまして生涯の各時期におけるさまざまな学習活動を通じて生活向上職業上の能力向上自己の充実を目指していくということにあるものと考えております。  このような生涯学習必要性が指摘される背景というのは、先ほどから申し上げておりますように、国民の所得水準の向上あるいは自由時間の増大、高学歴化といったような社会的な背景のもとに豊かな教養を養う、あるいは科学技術の進歩、国際化、情報化の進展といったものに伴います知識、技術を習得するための学習需要が増大しているというような背景から、国民の生涯における各時期において職場や家庭教育、家庭生活などに関する不断の学習を行うことが必要になっているということでございます。そういうことが国民の行う生涯学習の目的であるというふうに考えております。
  119. 中西績介

    ○中西(績)委員 今言われたような事柄についてここに文章化できなかった理由というのは、そうしたことも含めて、今私が指摘をいたしましたように、振興のための基盤を整備するということだけでなしに、全般的に生涯学習というものを体系的に明らかにしておく必要があったのではないか。  先ほどの四名の参考人の方の意見を聞いてみましても、大体それぞれの皆さんがおっしゃっておられるけれども、一人の方はこうしたことを推進あるいは振興させるためには現状まだ十分な体制が整っておらないという中では時期尚早的なものを指摘しながら、これでいいんではないかということを言われましたけれども、他のほとんどの皆さんは、一人の方は教育基本法だとかこういうことにのっとって社会教育法があるからいいんだということを言っておるわけです。ですから、三名の方はそんなに大きな違いは私はなかったと思っています。ですから、このように急ぐことがどうしてもわからないので、このようにして再度お伺いをしておるわけであります。  そこで、これは一九八八年ですから六十三年の七月一日に生涯学習局が発足をしたときだったと思いますが、生涯学習振興法の案が文部省では練られておるわけですね。そしてこうした文章になってちゃんと出されておるわけです。「第一章総則」から始まり、「目的」「定義」「施策の方針」「基本方針」こうしてずっと出されまして、「基本構想」から「生涯学習圏域の指定」から、随分詳しく発表されていますね。  ですから、そうした考え方があったのに、今一定の期間を過ぎたところでこういう形になって出てきたというのはどうした理由なんですか。
  120. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 今おっしゃいました法律の草案のようなものでございますが、それは、文部省職員ではございましたが個人的な勉強会をやっている方々がおられまして、その勉強会の成果といいますか産物が何かのぐあいで外に、そういう形で新聞に載ったということでございまして、これは文部省がそれに公的に関与したものではございません。  そこで、この今回の法案が提出されます流れ、経過でございますけれども、臨教審答申というものが昭和六十二年八月に第四次にわたる答申最終答申が出されまして、そこで臨教審が終わったわけでございますが、そしてその同じ年の十月に政府が教育改革大綱というものをつくりまして、その中でこれからどういうふうにしていくかということについての、法案の作成ということも含めて教育改革を行っていく上の次の作業日程を決めたということでございます。その線に乗って、先ほどの昭和六十三年七月一日でございますけれども、文部省に生涯学習局が誕生いたしまして、そしてその生涯学習局の最初の作業といたしまして臨教審の生涯学習体系への移行に対する具体的な行政的な手段というものをどうするかという検討に入ったわけでございます。先ほどの教育改革大綱にのっとってでございます。  そして、どういう点についての法案化をするのが最も現実的であるか、有効であるかという観点からいろいろと検討いたしまして、そして皆様御承知のとおり、昨年の四月に第十四期中数審を再開し、その中で生涯学習の基盤整備という諮問をいたしまして、それがことしの一月三十日に答申がなされ、それの中で法律によって実現すべき事項について法案化した、こういう流れでございます。  そういうことで、その臨教審答申から、その中で最も現実に整備すべき生涯学習推進体制等についていかにあるべきかというような観点から、今のような流れで検討をし、今日に至ったということでございます。どうぞ御理解いただきたいと思います。
  121. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、これは個人的な私案であるということを言っているわけですね。しかし、いずれにいたしましても、文部省の中においてこうしたことが論議されておったということは否みようのない事実なんです。  それはやはり一定の方向性というものを見出さなければならぬということが前提になってそうした論議が起こってくるわけでありますから、そのことについてはもう触れませんけれども、いずれにしても一定の方向性のもとにさっき言ったように基盤を整備するという整備法であるということ、それでここに皆さんが大変な不満を持っておられるし問題がある。なぜならば、生涯学習の定義を規定しないということになってまいりますと、行政の恣意的解釈が、この定義をめぐってそれぞれまだ明確になってないわけですから、出てくる可能性がある。学習の自由がそのために将来侵されないとも限らない。  先ほども参考人の方がおっしゃっておられたように、戦争中における社会教育そのものは戦争へ駆り立てるための内容であったし、そしてそのようにまた国家総動員的なものにされておったわけですね。それは戦後における社会教育という問題に立ち返ったときに、初めて今度はそこにいる市町村なら市町村の皆さんが、地域的に言うなら最も小さな範囲、例えば公民館なら公民館、こういうぐあいに、皆さんあるいは個々の希望する社会教育の場合には組織が一つ必要になってくるわけです。  ですから、博物館だとか公民館だとかいうものがそういうことになってきますけれども、今度は個々、一人一人を対象にした場合にはなおさらそうした方向性というものを明らかにした中でやらないと、いかに皆さんがそういうことは今はないんだと言っても、これはいつどうなるかがわからないわけでありますから、そのときどき、勝手な解釈をしていくというようなことになってきたときには大変な過ちを犯すわけでありますから、定義というものはやはりちゃんと決めた上で、今まである法律というのは大体そういう内容になってきておるわけです。  たまたま何かが一つか二つそういう形式になっていないものがあるにいたしましても、少なくともやはりこうした基本的な問題、しかも先ほども言われておりましたように生涯学習というのは生ある限り自発性を持って云々ということで、大変長期間にわたる重要な問題でありますだけに、その中には今度は社会教育学校教育も家庭教育も全部が包含をされていくということになってくれば、なおさら基本法的なものを明確に示しておく必要があるのではないか、私はこう考えますが、その点について、大臣、どうですか。
  122. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 この法律を提案をさせていただきました原点は、やはり生涯にわたって学習をしたいという、いわゆる学習需要が増大をいたしてまいりました。それは、一つ理由は、高齢化社会が到来をしつつあるというようなこともありますし、また、臨教審等で御答申をいただいておりますように、学歴社会からの脱皮を図っていかなければならないというような問題もありますし、そうした学習の成果が正しく評価される社会をつくり上げていかなければならないというようなことがあろうかと思います。  そういうようないろいろな時代背景を持ってこの法案を提出させていただいたのでありますが、それにしては生涯学習という概念がはっきりしていないではないかというような御指摘をいただいております。生涯学習というのは、先ほども申し上げましたとおり、大変広い大きな意義、そして意味を持っております。したがいまして、定義づけてこれが生涯学習だというようなところへはまだなかなか、いろいろ御議論があるところだと思います。  しかし、社会に高まりつつありますいわゆる学習についての要請、需要、そういうものをできるだけ早く満たしてさしあげるような、そういう学習の機会を、これは物理的な問題もありましょうし、あるいはソフトの方もありましょうし、いろいろの機会をできるだけ早期に提供しなければならないという時代の背景があるわけでございますので、そうした機会をできるだけ早く提供するようにこの基盤の整備に関する法律を出させていただいたわけであります。  そこで、社会教育と生涯学習の関係でございますが、教育学習というのは言葉の上でも少し違いますけれども、考え方もちょっと違うだろうと思います。教育というのは教え育てるという意味でございまして、学習は学びそして習うという形でございますので、これに者という字をつけてみれば概念が一層はっきりするのではないか。教育者の立場学習者の立場、そして今この法案でまさに御提案申し上げておりますのは、学習者の立場に立っていろいろな御要請があるという、そういう学習の需要をできるだけ早期に満たしてさしあげたい、そういう意図を持ってこの法案が提出されておりますことは先ほども御答弁を申し上げた次第でございます。  したがいまして、社会教育法の規定しておりますいろいろな概念、それは機会をまさに提供をしていくものでありますが、同時に学習者の立場に立ってその機会をできるだけ早くつくるようにする、一刻も早くというような感じを持っておりますものですから、この法案をあえて提出をさせていただいた次第でございます。  なお、いろいろな筋違いの教育が行われる可能性もあるというような御指摘等もいただいたわけでありますが、やはりこれは学習の場を提供する側から言えば教育でありますが、これにつきましては、やはり教育基本法あるいはさらに上位概念であります憲法の規定あるいはその精神にのっとって行われるべきものと私自身考えておりますので、おのずとそれは制約を持ったものだというふうに考えております。
  123. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、この前の論議を聞いておりましても、国民の間に生涯学習という概念はおおむね定着していると考えるからあえて明文化する必要がないという、強弁はしませんでしたけれども、それに近いようなことが言われておったのです。であればであるほど、生涯学習振興についての基本法的な、もとになるものがなければ、この基盤を整備するというそのことが出てこないのではないか、こうした考えを持っているがゆえに、やはりどうしてもそこにこだわるわけですね。  それと、先ほど私が言いましたように、行政の恣意的な、そのときどきによって判断が異なってくる、これではたまったものではないわけです。ですから、今大臣言われたように教育基本法、そして上位法の憲法、そういうものをもとにしてということが言われたといたしましても、それを言うならなぜやらないかということを言いたくなってくるのですね。  ですから、こうした点について私たちは何としても、性急過ぎたりあるいは急ぐ余りこうした法律を私たちの時代につくったということで、私たち自身も、反対はしたと言ってもそのときにやはりそれがつくり上げられたということは残るわけでありますから、できるだけ皆さんで合意のできるもの、可能ならばそうしていきたいというのがあるわけですね。ですから、ぜひもう一度そうした点をお考えいただきたいと思っています。一応これはここでおいておきます。  ですから、そうなってまいりますと、生涯学習の範囲あるいは対象というものがでは何なのかということになってくるでしょう。今までずっと答弁を聞いたりなんかしておりましたところ、学校教育あるいは家庭教育及び社会教育にかかわる学習が対象になってくる。このほか社会教育法の社会教育についての定義から除外された部分ですね、組織的でない教育活動と申しますか、こういう個人的または自発的な教育活動と言っていいのかどうかわかりませんけれども、それに近いようなもの、そうしたものあたりを指しておるとしか思えないのですが、それは第二条のところの、法案からすると二ページ目ですね、「学習に関する国民の自発的意思を尊重するよう配慮するとともに、」その後に「職業能力の開発及び向上、社会福祉等に関し生涯学習に資するための別に講じられる施策と相まって、」と「別に講じられる」というこの文言があるから、私はやはり先ほど言ったように、この学校教育、家庭教育あるいは社会教育、定義規定から除外される部分、そういうものを統括をして生涯学習と言っておるのではないか。文部省はそういうふうに規定づけておるのかどうか、範囲、対象というのはそういう中身になっておるかどうか、この点について。
  124. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この法案は三つの内容、生涯学習振興に資するための都道府県体制整備というのと、地域生涯学習振興基本構想、それと国、地方公共団体における審議会の設置、市町村では連携協力体制でございますが、大きく分けて三つの生涯学習振興のための施策について決めておりますけれども、国民の生涯学習のために講じられるべき施策というのはこの三つだけではないことは言うまでもないことでございます。  学習者の立場からは、多種多様な施策による学習機会を享受をし得ることが重要なことでございまして、その観点から今回の法案とは別体系のものであるけれども生涯学習に資する施策として職業能力開発あるいは社会福祉等による施策があるということでございます。  そこで、今回の法案による施策と別の体系による生涯学習に資するための施策があるということを一つ明らかにしているということと、それから国と地方公共団体が本法に基づくこの三つの施策を行うに当たって、そういう別にある生涯学習に資する施策との間で十分連携をとり、あるいは作用し合って学習者にとってより効果的に行えるよう努める必要があるということでこの規定を設けたものでございます。
  125. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで私は、先ほどちょっと言っておった問題として、今回のこの生涯学習振興法というのは、文部及び通産両大臣の共管によって行われるものとされており、厚生省だとか労働省だとかいうのは所掌にかかわるものについてはその対象外となったものであるという見解を私たちはいただいておるわけです。  ですから、そういうことになると、この二条に掲げてある「職業能力の開発及び向上、社会福祉等に関し生涯学習に資するための別に講じられる施策と相まって、」だからここは別なんで、それぞれの各省庁の所管の中でやることと相まって効果的にこれを行うものだ、こういうように私は理解をするわけですね。これは社会労働委員会でそういうあれが出てきたから私はそれを今参考例にして言っておるわけです。
  126. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 ただいま先生がお挙げになりましたのは文部大臣と通産大臣の共管の部分でございますが、これはこの法律の第五条から第九条までの地域生涯学習振興基本構想に限っての話でございます。  それで、それにつきましては先ほどもお答えいたしましたように、文部省教育、文化の振興観点から、通産省はその際民間事業者の能力を活用するという観点から、共管省として協力しながらこの地域生涯学習振興基本構想に取り組んでいこう、こういうような趣旨でございます。  それで先ほどお挙げになりましたその第二条の方は、これは総則でございまして、その規定はこの法案全体に係る話でございます。これについては、要するにこの法案に載っている先ほど申しましたように三つの施策、これはこの今の地域生涯学習振興基本構想も入るわけでございますけれども、そういうものを講じていく際に、別に講じられている施策と相まって効果的にやりなさい、こういう趣旨でございまして、その共管という意味と、それから、別に講じられる施策というのは別の次元の話、関係だというふうに御理解いただきたいと思います。
  127. 中西績介

    ○中西(績)委員 法律の中にこうしてちゃんとうたってあるわけですね。「職業能力の開発及び向上、社会福祉等に関し生涯学習に資するための別に講じられる施策」ですから、別に講じられるわけです。文部省とは別に講じられる。そして、しかもそれは、さっき言ったように対象外になっている、こういうふうに言えばこれはつながるわけですね。  そうすると、私がさっき申し上げたように、今までの討論の中から考えると、どうも生涯学習の範囲、対象というのは、あなたは三点について言われたけれども、それはあくまでも学校教育、家庭教育及び社会教育にかかわる学習が対象となる。このほかに社会教育法定義規定から除外される部分、そういう極めて狭い範囲のものでしかないのではないか、こう言っているわけですよ。  ですから、五条から九条にかけていろいろのこれから後この法律でやろうとすることについては、ここに掲げてあります。三点あるということをこれはもう何回もあなたたちは言っておるわけですね。言っておるけれども、生涯学習という対象になる部分ですよ、それはこの文言からすると、あるいはこれからいうと、職業能力の開発及び向上でしょう、労働省。社会福祉、厚生省などを含めて、生涯学習に資するため別に講じられる施策、これは別なんだ、こういうように私は理解をします。こう言っているわけですから……。この点、どこが間違っていますか。
  128. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この法案で挙げておりますのは、先ほど申し上げております主に三つございます。その三つの施策職業能力開発、それから社会福祉というものはこれは別のものだということです。端的に言えばそういうことになるわけでございます。  別に講ぜられるというのは、この法案に規定している施策でございます、具体的には先ほど申し上げたように三つ、その三つの施策と、それからここに「別に」と書いてあります職業能力開発、それから社会福祉というのは明らかに別のものでございますから別に講ぜられる、その中の生涯学習に資する部分というのがあるわけでございますから、それとこの施策とを相まって、相連携させて、そして効果的に講じなさい、配慮しなさい、こういう意味でございますので、おっしゃいますように、別に講ぜられるというのはこの法案施策の中に入っていないというのはそのとおりでございます。
  129. 中西績介

    ○中西(績)委員 それで私は、この論議をする際に大事なことは、今言うように、三点セットについてこの法律は示されておるものだ、こう言っているわけですね。ところが大事なことは、生涯学習というのは、そういうことを五条から九条にある部分をちゃんと実現しさえすれば生涯学習というものがうんと進展をして、私たちが期待をするようなものになり得るかというと、皆さんの多種多様な要求あるいは希望、願い、こういうようなものが総合的になってこないと生涯学習という概念というものは出てこないのじゃないかな。そのためにはこの三つが、三点セットが、さっき私が申し上げたように、基盤になるところが整備されていきさえすればということでこの生涯学習論議を私たちは終わらせていいかどうかというのがまた大きな問題となって残るわけであります。  特に、私たちがかいま聞いたりいろいろあれしたところでは、臨時教育審議会そのものに対して私たちは全面的に賛成だとかなんとかということはなかったのですけれども、疑念のあるところはあったのですけれども、しかしそこが出した分につきましても、今の状況からすると生涯学習へどう移行しなければならぬかということを言い始めたわけですね。そして、中教審がということになって出てきたら、それに基づいたものがこういうものになって出てきた。  私が今一番心配をするのは、臨教審というものを考えると、これは横断的で全省庁にわたるということでつくられたものなんですね。ところが、今度のこの分については、実際さっき私が読み上げましたように、文部省あるいは通産省、この共管であって、ほかのところは対象外なんだ。  だから、そういう考え方からすると、この中には入り得ないし、また一番問題は、後になって五条から九条までになって出てまいりますけれども、地域生涯学習振興のための地域指定までする、そのときにその承認等については審議会の問題とか、いろいろなことの大臣の承認は文部大臣と通産大臣ということで、今度各省庁からすると、今言うような多くの問題があるだけに、すべてがそこに集中する、そしてこれを本物にしていく、こういう考え方には立ち得なくなってきて、むしろ逆に、じゃあみんな勝手にやってもらおうか、こういうような形になって、それがためにがたがたしたのではないかという気がするのです。  長くかかってなかなか法案化されないとかいろいろあったらしいけれども、いずれにしても、そのような、すべてがそこに結集する体制というのはどうしてとらなかったのでしょうか。
  130. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 これは地域生涯学習振興基本構想の部分、つまり第五条から第九条までの分に限っての話でございますけれども、文部大臣、それから通産大臣の共管になっているということでございますが、それは先ほど申しましたように、文部省教育、文化の振側の観点から、通産省は民間事業者の能力を活用する観点からこの振興に取り組むということを目的としているわけでございまして、そこで、他の省庁についてこの構想の中にかかわってくる場合、その可能性もあるわけでございますので、その部分については別に規定がございまして、関係行政機関の長とそういうものが入ってきた場合には協議をする、作成段階で協議をする、あるいは承認の段階で協議をするというような形になっているわけで、そういう形で文部、通産以外の省庁については、関係する場合にはそういう協議という形で関与する、そういうふうな調整になっているわけでございます。
  131. 中西績介

    ○中西(績)委員 だから、民間がかかわるから通産大臣が云々ということになっているようですが、先ほども出ておりましたように、参考人が配付されました資料を見ましても、それは大変ですよ。「学習人口の現状」というのがありますが、教育委員会、公民館、体育施設等が開設する学級、一千八百七万人、知事部局あるいは市町村部局が開設する分は一千十六万人、民間のカルチャーセンター等における受講者は百三十六万人というように、率からするとわずかです。  ところが、今度は実際に今あるものを見てみましても、これは文部省がやったものだと思いますけれども、六十三年に集めた資料ですけれども、各省庁の教育スポーツ、文化関係事業の例として、たくさんここに挙げられていますね。学級、講座、講習会、セミナー、交流集会等の集合学習形態の事業及び社会参加活動を中心にして挙げられたもの、これはもう各省庁全部、皆さんが言っておられる十六なのか十一なのか知りませんけれども、とにもかくにもたくさんのものが挙げられている。  それからもう一つあるのでは、各省庁の会館等、公共施設の例を見ましても、相当の数がそこに示されています。文部省関係、国土庁の関係あるいは農林水産省、厚生省、労働省、通商産業省というぐあいに、その数はもう大変な数になっているわけですね。やはりやるとすれば、こういうように、現有の施設からいたしましてもこれからつくる施設にいたしましても、それの各省庁に、そこに集中して協力を願うということが一番大事じゃないでしょうか。  そしてさらにまた、参加しておるいろいろな人たちの数、そういうものからいたしましても、通産省というところは、民間活力かなにか知りませんけれども、それを活用することが中心になって、文部省とそこの共管になっておる。こういうことでは普通の人は納得しませんよ。どういう形になるかは別にいたしましても、やはり多くの省庁の皆さんがそこにむしろ積極的な発言権を持つぐらいの状況になってこないと、今あれは全部、例えば五条以下になってまいりますけれども、地域生涯学習基本構想をどうするかということから始まりまして、審議会を置くとかいろいろあるでしょう。そうすると、その審議会の皆さんが各省庁なりの長に対して建議をするとか、だからみんな受け身になっているわけです。  建議というのがどういう性格を持つか後でまた聞きますけれども、いずれにしてもそういう状況になってきておるだけに、そういう点を整理をし直して、最初から言っておるように、この生涯学習の目的、定義、そしてそれに基づく生涯学習の範囲だとか対象というものを明らかにしておく必要があるんじゃないだろうか、こう私は言わざるを得ないわけなんですね。  ですから、この点について、大臣あるいは担当の局長あたりがこれから——きょう採決するというから、私、非常に残念なんだけれども、この点をやはり加味をして将来にわたってこのようなことを十分考えながらやっていきますというぐらいに、そこいらが落ちているとするならそうした面についてもこれからは本格的論議をしますとか、こういうことをあれして再提案をしていくとか、きょうぜひしなければならぬということになるなら、これを延期すれば一番いいのですけれども、それができない。どうも雲行きはそうのようです。そういうようなことを将来的に考えてあなたたちはこれを提案しておるのか、いや、それは大臣は一年限りだから、今度だけ通してもらいますとか、これは失礼かもしれませんけれども、そうした考え方なのか、あるいは文部省は、いや、これだけしてもらっておけば将来的にはどうにでもなります、こういうような考え方なのか、ここら辺をもう少し明確にしてください。
  132. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 各省庁との関係でございますが、まず第一に申し上げておきたいなと思っておりますのは、この法案によりまして審議会を発足させていただきます。この審議会の中には労働でありますとかあるいは福祉関係でありますとか、そういったところのいわゆる専門家の方々にお入りをいただいて、いろいろな省庁が行っておりますいろいろな形の事業それぞれについての観点からの御論議をいただき、そういうものをどういう形で将来の生涯学習社会につなげていくかという御論議をいただきたい、こういうふうに私は思っております。  もう一つ通産省との関係でありますが、少々長くなって恐縮でございますが、私がイメージをいたしておりますのは、教育、研修の場というようなものを地域につくっていくということもございますけれども、もう一つは、例えば美術館でありますとか、あるいは博物館でありますとか、あるいはスポーツ施設でありますとか、あるいはいろいろの研修の場でありますとか、そういうようなものを民間の事業者のお力をおかりをしながら、その協力で早期につくり上げていくということをまたイメージをいたしております。そういう意味で、民間事業者に積極的に御参加いただきたいということもあり、通商産業省との協力関係においてこの法案をつくっていこう、こういう趣旨でございます。  私も実は外国におりましたときに、外国でいろいろな博物館あるいは美術館等がございますが、そこで年老いた御夫婦がそれに展示してありますものの解説書を眼鏡を手にしながら一生懸命読んでおられる姿、あるいは四歳、五歳のお子さんにお母さんがその解説書を声を出して読んであげている姿というようなものの中に生涯学習というもののイメージを私は一つ持っております。もちろんそれだけではございませんけれども、できるだけ早くそういったことをしてさしあげたいという意味をもちまして御提案を申し上げていることを御理解をいただきたいと思います。
  133. 中西績介

    ○中西(績)委員 今大臣は答弁の中で、審議会委員には各省庁の関係の専門家、こういう皆さんが対象となって参加をされるというようなことを言っております。そのことはまた一つの手だてだろうと思いますよ。  ただ、通産というものが入ってきたのは、今あなたがおっしゃったように、体育館を初めとするスポーツ関係のいろいろな施設設備、それから美術館あるいは博物館、こういういろいろな教養的な面、これはもう小さな子供のときから年代を問わずに大変重要な施設であろうと私は思いますね。そうすると、果たしてそういうのに民間活力がどうだこうだということになるのか、わざわざそこにしなくてはならぬのか、こういう問題意識一つあるわけですね。そういうことでなくてもちゃんとできるのじゃないかな、こう私は思うわけです。  したがって、後になってどんどん補足をしていけば、ある程度の討論の過程の中から一定の方向性なりあるいは欠けておった部分を補完するということになって、一番当初のもの、また一番最初の答弁とは少しずつ変わってくる部面もあるわけですけれども、いずれにいたしましても拙速主義であってはならぬのじゃないかということに決着づけられるのではないだろうか、私はこういう感じがするわけであります。できればそうした面を補完をしていくという将来に向けての何らかの対応の仕方があるのではないかということを私は考えるのですけれども、これは一番最後にまたまとめの段階で提起をいたしますので、お答えいただければと思います。  そこで、先ほどからちょっと触れました、二条のところにこだわるようでありますけれども、私たちはきのうもちょっと説明をお聞きしたのですが、皆さんの説明なり、それから局長の答弁なんかを聞いておりますと、これは二条の「職業能力」云々から始まって、「別に講じられる施策と相まって」というものは、むしろこれを補完するという意味できのうから説明されていますね。  しかし、そこら辺をそのように極端な言い方をするとなんですが、もやもやしたごまかしみたいなことでなしに、振興策とはあくまでも別個のものである、ですから、他省庁の関連施策は本法案振興策に取り入れることがここでは別個のものだいうことにちゃんとしておいて、その上に立ってこれからもう一度でも、そうしたものを総合的にやるためにも、どれだけの期間かかるかわかりませんけれども、各省庁間におけるそうした話を遂げていただいて、将来的にはこういう方向でいきたいと思うという、これをむしろ明確にしておいていただきたいと私は思うのです。  ですから、おたくの方がそういうように、社会教育なり家庭教育なり学校教育なり、そして社会教育から除外をされている分、そういうものとはここに書かれているものは確かにこれは別ですから、別なんだ、将来にわたってはこれからそうしたことも含んでやっていく、そのときにはまた、さっきからどなたか言っておったように、この法案についてもこういう面において将来はもう少し考えようというようなことになってくるのか、しかし、それではまた他の省庁が非常に反発をするので、それはできませんと言うのか、そうした点についての具体的なものをやはりある程度描いて、私はきょう終わっておきたいと思うのです。  そのためには、これはもう別個のものなんですというところはすきっと割り切っておいて、あとはどうするというぐあいにやっていった方がいいんじゃないか、こう私は感じるのですけれども、その点についてどうでしょう。     〔委員長退席、麻生委員長代理着席〕
  134. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 今回の法案と申しますのは、生涯学習の基盤を整備することが当面する重要な課題であるという認識に立ちまして、生涯学習振興のための推進体制整備という制度上どうしても必要なものを規定しようという基本的な方針で臨んだものでございます。  この三つの施策を実行してまいります段階で各省庁ともいろいろ連携協力をしていくということになっていくというふうに思いますし、その理解は恐らくだんだんに進んでいくというふうに思っておりますので、そういう全体の生涯学習の実態がこれから形成されていくというような状況を見まして、今後また生涯学習審議会なんかでもいろいろ議論することがあろうと思いますけれども、情勢を考えていくうちに必要なものであれば検討すべきものも出てこようというふうに思います。
  135. 中西績介

    ○中西(績)委員 では、もう一回聞きますけれども、そうすると、臨時教育審議会のメンバーであった人たち、生涯学習移行するということを討論をなさった方々、それから中教審の小委員会ですかの方々あたりは、この法律をもって百点満点つけているのですか。審議してきた過程の中からどうなんですか。
  136. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 臨時教育審議会で御答申があったその事項というものは、生涯学習の体系への移行という観点から種々のものがございました。その中で、当面それではその生涯学習社会の建設への道をどういうふうに行政的に持っていったらいいか、その基盤となる体制はどうしたらいいかという観点から昨年の中教審へ諮問をいたしまして、答申、それから今回の法案、こう来たわけでございます。  そういう意味で、臨教審答申のうちで、それを実現していくための基本的な、基礎的な体制あり方というものだけをいわば取り出して、それを実現していこうというのが今回の法案基本的な考え方でございますので、臨教審答申全体についてすべて一〇〇%それを実現するということではございませんので、そういった意味では臨教審答申の中の一部分といいますか、そういうことにはなろうと思いますけれども、しかし、その中で大変重要な推進すべき基盤となる事項について今回その基盤を確立しようということでございますので、御理解いただきたいと思います。
  137. 中西績介

    ○中西(績)委員 それで、私はやはりさっきから申し上げておるように、これはもう明らかにこの二条についてはそうした意味で労働省なり、あるいはこの文言からすると厚生省になりますか、こういうところあたりが別個のもの、あるいは政策としてはそれぞれが実施しているそのことを、あるいはしようとすることが総合的に一本になっておらないわけでありますから、一線を画しておる、極端な言い方をするとばらばらになっておるとしか言いようがないわけですね。  ですから、施策関係が各省庁からすると今度はなかなかわかりにくい、こういう面が出てくるわけですから、そこはそこでもうぴしっと割り切っちゃって、その上でこれからどうしていくかということをやはりしていった方がいいだろう、そのことの方が、我々が考えておる生涯学習という広い範囲での施策からいたしますと、今度のものはもう本当に限られたものになってきておる、そういうように私はとっておきたいと思いますし、これから後、論議をする際にもそうしたことでお聞きをしていきたいと思っています。  そこで、この「生涯学習振興に資するための都道府県事業」、こういうところに今度は入りたいと思います。  これは「都道府県教育委員会は、生涯学習振興に資するため」云々というところから始まっておるわけでありますけれども、今さっきのこととかかわり合って、教育委員会は制限をされた中で中心となってやっていくようなことになるだろう、こう私は思っています。ですから、そこに書かれておるように、「生涯学習振興に資するため」のどういうものを指していくかということは、もう時間がありませんから、そういう制限をされたものになってくるだろう。  なぜかというと、他省庁との関係からいいますと、今さっきのあれにこだわるようでありますけれども、対象外になったなどというようなところが出てくるといたしますと、所管に抵触しないようにしておかないと、逆に今度は問題が他省庁から指摘をされるということになってくるわけですから、こういう点で非常に制限されたものの中でしか発想ができなくなる、こういう欠陥があるのじゃないか、こう私は思います。ここはもう細かくはあれしません。  そこでもう一つ、その中で、四号のところに「住民学習に関する指導者及び助言者に対する研修を行うこと。」ということがございます。社教法からいたしますと、社教法の場合にはいろいろ多くの問題がありますね。制限をされておるのですよ。十条から十二条にかけまして、「公の支配に属しない団体」に対するあれから始まりまして、指導の仕方だとかいろいろなものが制限をされてきています。そして、団体の求めに応じて指導助言、そして援助をするとか、あるいは地方公共団体あるいは国は団体に対して統制的な不当な支配はしないとか、あるいは事業に干渉を加えてはならないとか、いろいろなことが全部決まっておるわけですよ。  そういうときに、「住民学習に関する指導者及び助言者に対する研修を行う」わけでありますけれども、これの場合には要請があってするのか。それとも皆さんがお集めになって一定の枠の中で、ちょうどやっておる教員研修、この前の委員会の中でも明らかになりましたけれども、初任者だけじゃなしに五年あるいは十年の皆さんをやるんですが、その際には自由などということは一切なし、背番号つきで全部発言が規制をされていく、批判をすると講師に対して大変失礼なことをしたということで、だからいろいろな運動面だとか何とか知らない講師に対していろいろなことを指摘すると、それが問題になって今度は処罰をされる、こういう制限の中でやられているようなことがあるから、これは文部省が強行している中にあるわけですから、そういうことにならないようにするために、指導者あるいは助言者に対する研修はどういう形態で行われるのですか。     〔麻生委員長代理退席、委員長着席〕
  138. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この第三条第一項四号の研修でございますが、これは学習と申しますのは、その一号のところにございますような生涯学習に関する研修ということになるわけでございます。ですから、この研修の対象は学校教育の方の専門家、社会教育の方の専門家、主としてその両方からこの生涯学習についての研修を受ける、研修を行うということになるわけでございまして、その内容は、例えば生涯学習概論でありますとか学習情報の活用でありますとか、あるいは一番重要なところは恐らく学習相談技術、カウンセリングであろうと思います。そういうような内容のものを、生涯学習の指導者あるいは助言者として必要な資質を向上させるようなそういう事業をやろうということでございます。  この研修のやり方というのは、この規定そのものは都道府県教育委員会の生涯学習に関する事業のうちの一つの重要な機能であるということを指しているわけでございまして、そのやり方について規定しているわけではございませんけれども、ただ事柄の性質上、社会教育団体方々に対しての研修などであれば、当然それは社会教育団体の求めに応じてしなければいけないわけでございますし、この研修がある意味で押しつけになったりあるいは強制的になったりということはちょっと考えられないことであろうと思います。そういうお互いに求め合ってといいますか要請があって、必要があって行われるべき事業であろうというふうに思っております。
  139. 中西績介

    ○中西(績)委員 先ほどの青森市の所長さんが言われておりましたね。研修なりいろいろな大学との連携等については大変うまくいっています。それは受ける側から要請をすれば長期講座とかなんとかに支障がない限りそこに出席をしていただいて大変うまくいっているということを言っていました。ですから、そのことはやはり社会教育面における佃題と同じように、受ける側からの要請に基づく、テーマの設定にいたしましても何にしても全部そういうところから始まって、それによって対応しておるというところにあったと思うのですね。  ところが、さっき私が申し上げたこの五年研、十年研というのは、テーマそのものを受ける側が設定するのじゃないのですね。受けさせる側がテーマを設定をし、だからそこに行かなくてはならぬし、行ったら今度は全部決められたことが、しかも背番号で発言だって随分制限されてやられておるというような状況があるわけです。だから、そこには何も自由がない。学習権などというのは全然ない。  そういうことであってはならないわけですから、私はあえてここの問題は、例えばそういう「指導者及び助言者に対する研修」、それからその後の五にあります「連携に関し、照会及び相談に応じ、並びに助言その他の援助を行う」という場合におきましても、やはり社会教育法と同じようなことがなされなくてはならぬのではないか。  たとえこれがやられたと仮定をいたしましても、そうしたことが十分確認をされておらないと、もうここまで全部文部省のそうした枠の中でしかすべてができないということになってまいりますと、これはもう社会教育などというものはすっ飛んじゃって、今度は生涯学習そのものが大っぴらに全部をローラーかけていくというような格好になってしまうのじゃないかということを私は一番心配をしておるわけですね。ですから、そうした点で、ぜひひとつその点をもう少しはっきりしておいていただきたいと思います。どうでしょう。
  140. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この五号の機関、団体等に対します連携の照会、相談、それから助言、援助という事業につきましては、これもおっしゃますように、これは性格上、当然相手方の求めに応ずる、求めがあってそれでそれに対して行うという事業であろうというふうに思います。特に、社会教育関係団体につきましては、社会教育法でその求めに応じてということが必要になっておりますし、それから、そもそもこの教育委員会とこうした機関、団体との間というのはそういう強制するという関係は持っておりませんので、当然事業としてお互いの意思の合意のもとで行われる、そういうものであるというふうに思っております。
  141. 中西績介

    ○中西(績)委員 一応私たちが期待をするような方向に向けて、こうした点についての枠、制限、統制、そういうものは一切ないと私は確認をしておきます。  それから、今度は二項目目の「都道府県教育委員会は、前項に規定する事業を行うに当たっては、社会教育関係団体その他の地域において生涯学習に資する事業を行う機関及び団体との連携に努めるものとする。」これはどういう機関あるいは団体を指すのか規定がないわけでありますけれども、これも前項の一から六号まで、このように求めに応じてやるわけでありますから、自主性がちゃんと保たれるように、こうした点について確認をしておきたいのですけれども、これはどういう機関あるいは団体を指しておるのか、そして私が今期特をするようなことがちゃんと守られるかどうか、お答えください。
  142. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 このその他の機関、団体というのは大変包括的に書いてあるわけでございます。例えば市町村教育委員会、それから公民館、図書館、青年の家といった社会教育施設でございます。それから大学、短大、専修学校といったような学校でございます。それから社会福祉施設、それと団体といたしましては文化団体、商工会議所、これは例示でございますが、などなど地方の実情によってさまざまでございますが、このようなものが代表的には当たるというふうに思います。  それで、これは連携を図って第一項各号の各種の事業を実施するわけでございますので、当然、これは連携と書いてございますように強制する関係ではございませんで、お互いにお話し合いをして協議をしながら連携を深めていくという方法になっていくということでございます。
  143. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、今言う学校教育あるいは社会教育にかかわる部分、さらにまた各種の団体があるわけでありますから、そうしたものとの連携、こういうところを、自主性がそがれてまいりましていろいろやられるということになってまいりますと、それぞれの社会教育にしましても学校教育にしましても、さっき私が心配をいたしましたように生涯学習という面からこれが全部再編をされるようなことにならないようにしておかないと、今ある例えば社会教育法あるいは学校教育法、そういうものがあるにかかわらず、今度はこういう法律ができた、それによっていろいろ具体的に施策を推し進めていく過程の中からそうしたものが今度は阻害をされていくということにならぬようにしていかなくてはならぬわけですから、この点はひとつ確認をしておいていただきたいと思います。  それから次が、「都道府県事業推進体制整備に関する基準」であります。  なぜこの基準というのが必要なのか。それから、そこにあります第四条の、「文部大臣は、」から始まりまして、二行目にある「体制整備に関し望ましい基準」、「体制整備」とは何か、こういう点についてお聞かせください。
  144. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 体制と申しますのは施設、組織といったようなものでございます。それらを総称したものでございますが、その三条第一項に規定する体制と申しますのは、結局その都道府県教育委員会が各地域の実情に応じてそれぞれの自主的な判断によって整備していくということになるわけでございます。  その整備に当たって、参考とすることができる広い視野に立った、全国的な視野に立った基準があることの方が、これから体制整備していこうとする各教育委員会にとって便宜になるだろう。そしてまた、その都道府県教育委員会が行いますこの事業の水準の向上にとっても有意義なことではないだろうかということでございまして、そのために、全国的な生涯学習動向について各種の資料を持っていて、それで専門的な助言を行い得る立場にございます文部大臣が都道府県教育委員会参考に供するために「望ましい基準を定める」というふうにしたものでございます。  これは「望ましい基準」でございまして、いわゆる「望ましい」とつかない「基準」ということよりはずっと弾力的なものでございまして、あくまで参考にするというものでございますし、都道府県教育委員会を拘束するものじゃ全くないものでございますので、そういった意味では、都道府県教育委員会のこの体制整備についての質的な向上に役に立つということでありまして、これが何か都道府県に対しての抑制になるとか制約になるとかということはないというふうに考えております。  そしてこのことは、同系統の法律でございます博物館法でございますが、博物館法の第八条にも「博物館の設置及び運営上望ましい基準」というのが出ておりまして、こういう例もございますので、そういうことから申しましても、これが地方公共団体に対する制約になる、あるいは押しつけになるということにはならないというふうに私どもは考えております。
  145. 中西績介

    ○中西(績)委員 局長、博物館法を例にとって基準があるからというこの言い方は大変私、聞きづらいですね。少なくともここにあるように推進体制整備に関する基準なんですね。体制の基準と博物館という一つ社会教育推進、あるいは皆さんのそうした教養的な面を高めるための歴史というものからいろいろなものがその中に含まれるわけですけれども、そうしたものの基準と一体的に論議をすべきではない、私はこう思います。  したがって、この基準というのは、先ほども参考人意見ございましたね。立教大学の岡本さんもそうだったし、それから海老原さん、そして佐藤所長さんですね、それから島田さんという四名の方おられましたけれども、それぞれがやはり具体的な例証を挙げてやっているときに、その地域文部省が介入したりあるいは基準を示したりなどということは全然ない中で、今それぞれその地域における何か今したい、あるいは何が要求されているということによって起こってきた、自然発生的に起こってきた、あるいは意識的に起こってきたは別にいたしましても、そういうものがそこに今度は推進するためのセンターになる、こういう場合にみんなの、住民の創意なり願い、期待、そういうものが結集をされてつくられたもの、そこに先ほども参考人の方が言っておられましたように、地域特有のそうした皆さん、その中に熱心にやられる方がいらっしゃるということで、ボランティア的なものも含めましてうんと立派なものになっておるということを皆さん言っておられた。  ですから、きょう私らの社会党だけだったんですけれども、きょうの参考人四名の方がそれぞれ特徴があって、本当に参考人として聞くだけの内容があったなということをみんなで話をしたのです。ですから、僕はそれでいいと思うのですね。推進をするための体制まで整備をし、そして基準をつくるなどということは私はする必要はないと思っています。この点、どうですか、何かあるんですか。さっきのようなあれを言ったんではいけませんよ、逆になりますから。
  146. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 先生おっしゃったように、住民のニーズに応じてやっていく、そういう体制と申しますのは、まあ典型的には中教審の答申の中で述べております生涯学習推進センターというような施設になることが通常であろうと思います。そういうセンターをつくって、今ここに、第三条の各号に掲げてあります事業をやっていく、その事業のやり方について住民のニーズに応じて、住民の、地域の実情に応じて、地域の特色に応じて計画されていくというのは、それはそれでもうもちろんのことでございます。  ただ、そのことと、その都道府県がそういうものを設置する際にやはり一方では全国的な水準といいますか、全国的にそれぞれの事業というものをどのように整備すべきなのかという、そういう情報についてはどうしても知りたいという、その両方が相まって具体的な計画整備がなされていくんじゃないかというふうに思います。  その都道府県が知りたいという全国的な立場に立った水準といいますか標準といいますか、そういうものをお示ししようというのがこの望ましい基準の中身というふうに私どもは考えております。これは全くそういう望ましい基準でございまして、あくまでも参考のための基準でございます。住民のニーズに応じて特色のある施設をつくるという際に、それはもちろんその方向でやっていただいて結構なんでございまして、これについて何も拘束される必要はない。ただ全国的な水準についてお示しした方がやはり都道府県にとって情報としては必要なことではないだろうかということでここに挙げたものでございますので、どうか御理解いただきたいと思います。
  147. 中西績介

    ○中西(績)委員 私がここにこだわるのは、先ほども大臣が答弁のときに申されましたように、教育は教え育てる、学習は学び習う、それに者をつけたらということを言われました。私はなるほどそうだと感じました。やはり何といっても都道府県事業をやる場合に文部大臣がそういうものまで、全部基準までつくってやるということでなしに、情報でこういうものがあるよとか、これは後の方の事業の中でいろいろ出てくるわけですからいいわけですけれども、いずれにしても、そういう十分皆さんが知り得ないような情報を流すとかいろんなことだったらまだしも、基準までつくってやらなくちゃならぬということにはならないと思います。大臣、どうなんですか、基準までつくらなければいけませんか。  あなたのさっきからおっしゃった言葉からすると、地域でそうして起こってくる、そしてみずからそういうものを多くの皆さんが望むようになってきますと、幾つもの願いなり期待なり要求が出てくるわけですから、そういうものにどう対応していくかということはその地域でやればいいことなんですね。  ですから、金を出しても物を言わぬという、こうしたことが文部省のこれから果たす役割だろうし、そして今度は他の、例えば女性の皆さん、あるいは家庭の皆さん、あるいは高齢者の皆さん、いろいろたくさんの人がおるわけですから、そうなってくると労働省だとか、あるいは厚生省の皆さんとか、あるいは農業に関するいろいろな知識を得るということになってくると、農林水産省あたりになってくるわけですね。  そうすれば、そういうところから一々、何かこの前、農林水産省は法人を設立するときにはおれのところのを入れなければだめだとかなんとかいうようなことが問題になっておったようなことをせぬようにして、ちゃんと金は出すが物は言わぬというようなことにしていただけばちゃんとそれだけのものはできるし、多くの皆さん、今ほうはいとしてそういう声が起こってきているわけですから、そういう基準までつくる必要は私はないと思いますが、大臣、どうですか。
  148. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 これは、まさに第三条第一項の「学校教育及び社会教育に係る学習並びに文化活動の機会に関する情報を収集し、整理し、及び提供すること。」先生おっしゃるように、自主的にそういうものが整理され、そして学習者に対して適時適切に提供ができるようにして、そして学習者の便に供する、こういうことでございますので、基準は必要ないのではないかという先生の御指摘も私はわかります。  しかしながら、いわゆるガイドライン的なものをお示しをし、そしてこういうものをつくっておけば大体いいですよというような形での、いわゆる望ましい基準をつけるということでございまして、あくまでもこれは学習者の立場を尊重し、学習者の立場に便を図るようにしていかなければならない、そのためにこういうこととこういうことを必ずやりなさいというような形でかた苦しくこの基準を定めるというものではないと私は考えております。  国がガイドラインをお示しをしながら学習者の便に供するようにお助けをしていくというような趣旨でこの条項を入れさせていただいたものでございますので、県あるいは地域の自主性を損なうものではない、私はそのように考えております。
  149. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、自主性を尊重するということになれば、地域から大体どういうことがあるかという際に情報がちゃんとまとめて流せればいいことであって、ガイドラインまで私は示す必要はないんじゃないか。そうしないと、どうしても日本の文教行政というのは上から示す、あるいは他の行政におきましてもやはりそういう傾向が強いですよね。そして、みんな右へ倣え、校舎が建ったら県でみんな同じような校舎が建つというような格好にならざるを得ない。  だから、そうでなくて、みずからが発想してみずからがやる、こういうことの方が私はこうした生涯学習なりなんなりを皆さんが満足のいくようにそれを克服するためにはどうするかということをみずからが考えていくというところに生涯学習の大事なところがあると思うのです。ガイドラインを私は示してまでやる必要はない、こう言わなくてはならぬと思います。  その次、ちょっと時間がなくなってきているのですが、地域生涯学習基本構想であります。これはまた五条から九条というのは、率直に言って、大体四全総の関連法に近いような感じがします。  ずっと読んでみますと、どうも、後で通産省が出てくるのですけれども、産業構造審議会に諮ってとかいろいろなことが出てくるようでありますけれども、どうもここいらが四全総関連に近い感じがします。特に、この産業政策に従属をする産業法、そういうものに近いんじゃないか、そういうものと大体軌を一にするような中身になってきておるのじゃないか。特にこのことは地域振興策になっておると断ぜざるを得ないですね。  そういう視点からこれを見ていくと、いろいろ多くの問題があるのではないか。例えば特定地域を指定するということになってまいりますと、この基本法の二条、目的にございますように、「あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。」とあるんですけれども、そうしたことが切って捨てられることになっていくでしょう。教育の一番根幹をなすところが、この地域基本構想を設定することによっていろいろ多くの問題が出てくるだろう。  それともう一つは、広域的な行政圏ということになってくるわけでありますから、さっきから私がるる言っておりますように、その地域、特に市町村という一つの単位、これがだんだん形骸化する、あるいは民間事業能力活用をやるということで、公的な保障を定めた憲法だとか基本法あるいは社会教育法などと、営利事業化する可能性があるわけでありますから、矛盾を来し、機会均等原則が壊れていくのではないか等々、挙げていくと、そしてしかもここにありますように産業構造審議会意見まで入れなくてはならぬということに、もう時間がありませんから一つずつずっとやろうと思っていたのですけれども、それができませんからまとめて申し上げますと、特にこの産業政策を提案しておるこの中枢にある産構審ですね。しかもこれは九〇年代政策部会が既に発表しておりますように、図書館だとかスポーツ施設、こういうものは全部民活化せいというようなことが既に提案をされておるさなかでのこうした問題とのかかわり、こうしたことを考えてまいりますと、私はこの地域生涯学習基本構想なるものが多くの問題を持っておると思う。  さっき同僚議員の質問の中で民間事業者なるものの云々と言っていましたけれども、私は、この民間事業者といったら銀行だとか不動産業者だとか建設だとか、あるいは観光会社などを含みましてそういうものの能力を活用するのかと、こういうことを聞きましたら、それは少し違うようでありますけれども、いずれにしてもそれに近いような形のものになっていくということになりますと、この基本構想について次に掲げる一からずうっとありますよね。そしてさらに、基本構想、文部大臣と通商産業大臣、「当該基本構想に係る地区」、一からまた始まって幾つも問題が出てまいります。  したがって、こうした点でどうも私は一つ地域に集めるということになってまいりますと、他の地域は今度社会教育法による対策でもって十分ではないかということにならざるを得ないわけでありますから、そういう格差が出ないようにしておく必要があるだろう、こういうように考えますが、いかがですか。
  150. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この地域生涯学習振興基本構想でございますが、これは民間事業者によります教育、文化、スポーツというものが最近は大都市部を中心に盛んに行われておりまして、それが民間の創意工夫ということもありますし、それから人人にいろいろな学習需要に適時適切に対応するという、大変魅力的な学習機会提供しているという実情があるわけでございます。そういうような民間事業者による教育、文化、スポーツ等の事業を大都市部以外の地域においても行われるように、ほかの多様な公的な学習機会もその中に含めまして、そしてそれを実現していくという一つの有効な方策として制度化いたしましたのがこの制度でございます。  したがいまして、これはそういう意味で、この制度は生涯学習振興一つの方策でございまして、これを全体に、これだけでそのすべてのものをやっていくということでは当然ないわけでございます。従来から行っております公的な社会教育活動を中心とした教育学習機会というものが、今後とも当然その中心として振興されていかなきゃならないわけでございます。私ども、公的な社会教育社会教育団体によります社会教育を一層盛んになるように努力をしていかなきゃいけないというふうに思っているわけでございます。  それで、この振興基本構想は、各県一つずつということじゃ決してございませんで、むしろこの基本構想によるその地域のカバレージが全国的にあまねく及んでいくというような方になればいいというふうに私どもは期待しているくらいでございまして、そういう意味でこの制度が普及いたしますれば、全体の機会均等というものも非常に図られていくのではないかというふうに考えているところでございます。
  151. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから私は、先ほども指摘をいたしましたように、学習人口の現状がどうなっておるかということからいたしましても、例えばカルチャーセンターというのはこの構想からいきますと、大都市圏、例えば東京二十三区だとか大阪だとかいうのは除外をするということになるでしょう。そうなってくると、その地域におけるカルチャーセンターの受講者あたりはどうなっておるのかということを考えますと、相当数がそういうところに割合集中しておる可能性だってあるわけですね。  それで、これから今度は各地域、例えば政令都市になるようなところについては、こういう基本構想的な地域から除外をするようにいろんな点は大体整備されてき始めていますね。そうなってくると、この政令都市全部を大体総括しますと、大体百万とはいかずとも、地方都市にある程度ありますからなんだけれども、これの半数以上そこに集中するということだってあり得るわけですから、私はむしろ従来からあるものをできるだけ多くの皆さんのニーズにこたえ得るように、要求にこたえ得るようにどれだけ施策としてこれから文部省なり、あるいは他の省庁がそれに対応していくかということになってくれば、これはあえてこうしたことを今設ける必要はないのではないか、こう私は考えます。  ですから、極端な言い方をしますと、煩わしい、しかも民間事業者に対してこういう融通とか、いろんなことをするわけでありますし、資金援助までするということになるわけでありますが、こういうことは、私はむしろこの教育というものを考えたときに、本当に公的なもので可能な限り——金がないからということを理由にいたしましてすべて公的なものを民間活力などということにしておりますけれども、私は今や地方自治体なり地域のこれからのこういう面に対する目の向け方は、だんだんこういう生涯学習的なこの分野におけるいろんな施策というものが物すごく進んでくるだろうと思っています。  もう一つは、下水道の問題等はありますけれども、公共的な施設はありますけれども、こうした面におけるものは、例えば今も中程度のところでは美術館だとか図書館だとかいろいろなものが整備され始めてきました。ですから、それをどのように充実をさせていくのかということになればいいのであって、十分だとは言い得ませんけれども、今あえてこのように、そして先ほど私が申し上げたように、今度それに該当しない地域人たちは、じゃどうするのか、立法化するのですかとかいうようなこと等を含めてまだ明確になっておりませんから、そうした点はおやめになった方がよろしいのではないだろうか、こう考えております。  そこで指摘をしなければならぬのは、その六条の承認基準ということまで関係づけて先ほどいろいろ言われておりましたけれども、推進体制整備に関する基準というもの、私はこれは必要ない、自主的なものでやっていった方がいいのじゃないかと言ったのですけれども、ところが今度は承認をするというのでしょう。出されたものなり何なりを承認をする、そのときの基準というものは、結局前のこの第四条とのかかわりが出てくるわけですね。  ですから、そうしたことを考えていったときに、この承認基準ということをここに設けますと、やはり上から押しつけ、そういうことになってくるわけですから、十分な情報提供だとか、あるいは財政的なもの、こういうものをどのように私たちがこれから保障をしていくかということを中心にして、生涯学習というものをもう一度練り直して方向性というものを出した上で私たちは論議し直す必要があるような感じがします。したがって、この承認基準については、じゃどういうお答えをいただくのですか。
  152. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この承認の制度でございますけれども、これは法律的な効果といたしまして、特定地域に対して主務大臣が協力、指導、援助をするということ、あるいは関係団体協力を求めるということのほかに、もう一つ、基金に対する支出に対して租税特別措置法の特例があるという法律的な効果があるわけでございます。したがいまして、そういう法律的な効果を生ぜしめるための一つの前段階の行為といたしましてその内容を確定する必要があるということから、どうしても行政上、法律上、その承認という制度をつくらなければならないということでございます。  ただ、できるだけその点については地域におきます自主性を尊重する、そして国の関与は必要最小限度に限るということが望ましいわけでございますので、まずその都道府県地域の特性に応じた構想を自主的につくっていただいて、その申請を待って承認するという承認制度をとった方がいいだろう、そしてその承認をする際にはあらかじめその基準を設けて、そして申請者に対してそれがはっきりわかるというような形にしておいた方がいいだろうということでこの承認基準というものをつくっているということでございまして、制度の制約がございますので、どうしても承認制度はとらなければならないわけでございますが、できるだけその自主性を尊重するという意味でこういう規定を設けたわけでございます。
  153. 中西績介

    ○中西(績)委員 私、こうしたものをつくる場合、基本構想をつくって、それから今度承認基準をつくって枠をはめていくわけですね。ですから、ちょっと構想が自分らに浮かんでこないのですよ、そういうものが。だから、むしろその地域住民の皆さんの意見を聞き、また入っていただいて、そしてそういう専門家の人たちがその地域で本格的な論議をしてやることによって、その地域における主体住民自治、こういうものの個性的な計画の上から達成されるのじゃないか。一つのあれをしますと、もう全部それに右へ倣えする。することが今度は金が引き出せるだろうというようなことにつながっていくわけですね。だから誤っているのですよ。もともとの根幹から誤っている。そこが生涯学習というものの位置づけというものを明確にしておかないと、こうした問題が依然として混乱をする、明確になってこない、だから生涯学習の町づくりが行われるということになってきはしないかということを一番懸念します。  ですから、こうした点を考えると、基準そのものは、もう時間がなくなりました。ですから、私はこの点はどんなことがあってもやるべきでない。この基準そのものから始まりまして、こういう構想そのものがやはり問題だし、そしてなおかつこうした基準そのものが問題になってくるわけでありますから、承認をする基準そのものが問題になるわけでありますから、もとになるものからもう一回論議をしていただくということが一番大事ではないかな、こういうように考えるわけであります。  それで、後の方に努めなければならないとか今度は建議をするとかいろいろなものがまた次々に出てくるわけです。そういう、これもたくさんありまして一々あれするわけにいきませんけれども、とにもかくにも先ほど申し上げたように、社教法の十条から十二条にあるそうした一番基本にかかわる問題を踏まえた上でどうしていくかということを発想していくという、このことが今一番大事ではないかな、私はこう思います。  そういう発想から、この法案そのものをもう一回全面的に考え直す。というのは、この後の例えば「前二項に定めるもののほか、文部大臣及び通商産業大臣は、承認基本構想の作成及び円滑な実施の促進のため、関係地方公共団体に対し必要な助言、指導その他の援助を行うよう努めなければならない。」こうありますけれども、そうした点が、さっきの社教法とのかかわり等からいたしましてももう少しきちっと整理をされて、どこに基調を置くかということをやっていただいた上で練り直していただければと思います。  最後に、十条におきましても、この生涯学習審議会が設置をされますと、今度は社会教育審議会は廃止をされることになるわけです。そうすると、この社会教育審議会は、明確に示された教育基本法、それに沿ってつくられたもので、今度の生涯学習審議会というのはそういうもののない中でこれはつくられるわけですから、だからそういうことは全く考えなくてよろしい。今言葉では言ってありますけれども、法文上は何もないわけでありますから、そうなってくると、社数法も第十三条を廃止するということになるわけでしょう。そうなってくると、これまた大変な中身を持っておるということで、この生涯学習審議会そのものが問題だと言わざるを得なくなってくるのです。  ですから、挙げていきますと、十二条にもまだ市町村にはそうした審議会もつくらずに「連携協力体制整備に努めるものとする。」などということで終わっておりますけれども、総括して、私は、この点は何としてももう一度、くどいようでありますけれども、そういう基本を決めていただいて、その上に立ってこの法律というものを再考していただく、このようにお願いを申し上げたいと思いますが、どうでしょう、大臣。
  154. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 ただいまの社会教育審議会の問題でございますけれども、これは政府の行政機構の簡素化、合理化という全体の統一方針が一つあるわけでございまして、それを踏まえていたということは否定できないことでございますけれども、社会教育審議会が従来から生涯学習の要請に積極的に対応して生涯学習振興についての調査審議の中心になっているということ、それから生涯学習に資するための施策の中でも社会教育に関する施策というのは大きな位置を占めているということ、それから社会教育振興というものは、生涯学習振興そのものを全部ではないけれども、生涯学習体系への移行を目指しまして、国民のあらゆる時期に対応した学習機会提供していく上で一番広い対処をしている社会教育が今後も大きな役割を果たすというようなことから、生涯学習に資するための施策に関する重要事項と、それから社会教育一般に関する事項とを一体的に調査審議するということはひとつ適切なことではないだろうかというふうに考えまして、それで社会教育審議会を改組いたしましてその事業を新たに設置されます生涯学習審議会の中に引き継いだわけでございます。  したがいまして、生涯学習審議会がこの法律が成立してできますれば、それは今までの社会教育審議会の機能はそっくりそのままその中に包含されるということになりますので、社会教育審議会の機能は今までと全く変わらずに社会教育法体系の中で機能していくというふうに私どもとしては考えております。
  155. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、今説明をされたようなことであればあるほど私はもう一度再考していただいて、この点についてのこの法案そのものをつくり変えていただく。そしてそれは目的から定義からすべてが包含されたもの、かくあるべき、しよう、そして先ほども出ておりましたように、世界の皆さんに国際的にも我々が認められる生涯学習というものを明示をしていくというこのことが物すごく私は大事だと思うのです。  そこで、私たちはこの附帯決議をまだやっておりませんけれども、十六項目にわたって提示をいたしました。  これには、   国及び地方公共団体は、生涯学習学習する側が自発的に学習計画を立て、自主的に学習を進めることが中心となるものであること、すなわち「国民の学ぶ権利」が尊重されることであることにかんがみ、国民の自主的な学習活動に対して不当な支配・干渉を行うことなく、学習者のニーズに十分留意して「国民の学ぶ権利を保障する国と地方公共団体の環境整備の責務」を果たすように努めること。 あるいは   国は、生涯学習社会が「いつ、どこで、どこから」学んでも能力が正当に評価される社会であることにかんがみ、「学歴偏重社会」、「学校歴社会」、「有名校歴社会」の改革に努めること。 またこのために、国及び地方公共団体は、率先して職員の採用、昇進の制度の抜本的改革を行うこと。 三つ目が、   国は、学校教育が「生涯にわたり学びつづける基礎を育むもの」であることにかんがみ、知識偏重教育あり方について抜本的に見直し図書館教育や問題解決型の教育を充実し、教育現場の創意工夫を尊重すること。 四に、   国及び地方公共団体は、学歴社会と偏差値教育が生みだした「鬼っこ」である「学習塾」を生涯学習にかかわる行政の対象としないこと。 などなど十六項目にわたって私たちは附帯決議案をお示ししたところであります。  こうしたことを、やはり私たちが今まで申し述べてきたことが実現できるようにぜひしていただきたいと思っています。  そこで、もう時間がありませんから一つだけ。皆さんおいでになっていますけれども、厚生あるいは労働、自治、大変残念ですけれども断りを言わなければならぬようになってまいりまして、相済みませんでした。  ただ一つ有給教育あるいは訓練休暇制度、一二・八%に達している、そういう問題について大臣の方から積極的に提起をしていく、あるいはどこかに諮問をするというぐらいにやっていくということがあって一つずつ具体化していくんだろう、私はこう考えるのです。ですから、最後に、各省庁の皆さんには最後までおっていただいて、途中で言えばよかったのですけれども、まことに恐縮であります。  さらにまた週休二日制の普及、実施、これは親と子の関係を強化するためにも、この生涯学習の中における大変重要な問題ですが、この週休二日制については文部省が一番おくれておる、また逃げようとしておる。こういう点をむしろ大臣の方から積極的に推進していくことが大事じゃないかな、こう思うのですけれども、その点だけお聞きします。もう時間がないから、大臣、一言でいいです。
  156. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 御指摘の点につきましては、十分に検討、研究させていただきます。
  157. 中西績介

    ○中西(績)委員 今のような答弁だから、第一、この法律は、本当にそういう意思があるかどうかということが大変危惧されます。  最後に、同僚議員が先ほど保留みたいになっていますから、それについての答弁を願うわけですけれども、正式にまだたくさんございましたけれども、以上でもって終わります。
  158. 船田元

  159. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 お許しをいただきました時間は五時六分までということでございますので、防衛庁、来ておられますか、事務的にお聞きしますから肩の力を抜いてお答えいただきたいと思います。  今私ども審議しております生涯学習に関する法律のこれからの展開につきまして、いわゆる関係省庁は十数省庁に及んでいるというやりとりの中で、警察庁は含まれるが防衛庁は含まれていないという答弁があったわけです。しかし、私どもがいただいております資料も含めて見ますと、防衛庁所管では、「各省庁の会館等公共施設の例」の中に学習等供用施設というのを全国に五百二十一カ所持っておられる。「一般住民学習、保育、休養又は集会の用に供する。」ということで設置されている。これはやはり生涯学習に関係するんじゃないかということが一つ。  それから、特に問題になりましたのは、生涯学習を特集しております週刊誌、一九八九年二月五日号の週刊誌に、掲載されておる記事とは全く無関係なところに自衛官募集という防衛庁のポスターの広告が掲載されている。大きく「生涯学習」と出ていまして、「働きながらこんな資格(免許)が取れます!」と二十六の種目の免許が掲載されています。最後に「自衛官募集 防衛庁」とあるわけですね。こういう生涯学習特集にこういうふうに他のたくさんの教育民間事業の名前と一緒にこれが出ているということは、防衛庁はやはりこの生涯学習に対して大きな関心あるいは意欲を持っていて、働きかけをしているんだというふうに私どもは受け取るわけです。  いい悪いはまるっきり別ですよ。したがって、関係省庁として防衛庁も入るんじゃないか、私はそう指摘しているのですが、防衛庁、どうぞその辺の見解をお願いします。はみ出しているのかどうか。
  160. 西村市郎

    ○西村説明員 御説明いたします。  御質問の第一点の施設関係のことにつきましては、私ちょっと所掌の関係からつまびらかにいたしておりません。防衛庁の施設についても、民間の方のお役に立つ場合には積極的に活用できるようにやっておるというふうに存じておりますが、具体的に生涯学習という施策に絡めて検討したことはちょっと聞いておりませんので、わかりません。  それから、募集の関係で生涯学習ということをうたっておるではないかという御質問でございますが、防衛庁におきましては、所要の各種の教育訓練を自衛官に対して実施いたしております。その過程を通じまして技能の習得、資格の取得という機会がございます。自衛官に入隊してまいります者もそれを大きな動機、希望としておるということでございますので、私どもの人事施策教育訓練の方策として積極的に資格の取得等を進めるようにやってきておるところでございます。  これは私どものそういう施策としてやっておるところでございますので、今御審議いただいております法案との関係はちょっと私つまびらかにいたしませんが、御指摘のポスターにつきましては、私ども早速調べてみたのでございますが、私どもでこういうデザインのポスターを作成したという記録はどうもございませんで、つぶさに見てみますと何か創作のような感じもいたします。こういう事情になりましたのは、やはり私どもがそういう資格の取得ということを重視し、施策を進め、募集に力を入れておるということからこういうものが出てきておるのではないかと存じます。  そういうことでございますが、それで防衛庁、どういう取り組みだという御質問でございますが、そういう次第でございますので、防衛庁といたしましては、この法案の関係等で文部省に対し何か特別の御意見を申し上げたり御要望申し上げたということはないということでございます。ただ、私どもといたしましては、自衛官の教育訓練という形で施策を進めていく立場であるということでございます。
  161. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 本当はもっと論議したかったのですが、もう時間が来てしまいました。今お聞きのとおり、一つ施設関係は、さっき局長は一時的な特殊な、時期的な催し物その他というふうな答弁をなさったけれども、施設として五百二十一もあるということはさっきの答弁には合わないわけです。  それから、防衛庁は今その点については実態を把握していると言いますから、防衛庁がこれから把握しようとしているのに文部省が前もってわかるはずはないと思うので、この辺はちょっとこれから問題にしていきたいと思っております。  これは、関係のある記事の中で取り上げられているのであれば漫画か何かと解釈できるのですけれども、まるっきり関係のないところですからね。これは指摘しておきます。  終わります。
  162. 船田元

    船田委員長 次に、矢追秀彦君。
  163. 矢追秀彦

    ○矢追委員 先ほど来も随分議論も出ておりますので、私も問題点を簡単に指摘をさせていただきますので、明快な御答弁をお願いしたいと思います。  まず最初に、生涯学習ということは大変大事な問題であり、臨教審答申にも出、また中数韓の答申にも明確に出ております。しかし、今度出された法案というものは、ただ単なる環境の整備といいますか促進といいますか、そういうことをやっただけでありまして、私は、生涯教育全体をこれから進めていくということに当たりましては非常に後退をしておると指摘せざるを得ないわけでございます。  臨教審は、「生涯学習体系への移行」、「いつでもどこでも学べ、その成果が適正に評価され、社会で生かせるようなシステムにする必要がある。」こう言っておるわけでございます。また、学歴社会の弊害の是正ということも強く言われておる。そういった中で我々公明党は、既に、こういった法案ではなくて、まだこれは仮の名称でございますが、生涯教育促進法といういわゆる促進法的なものを提案をしてきたわけでございます。これはやはり各省庁の調整も含めて統合的に生涯教育を進めなければならぬ、こういう立場で提案をしておるわけでございますが、今回出てきたこの法案だけですべてができるとは私は思っていない。  となると、極端に言いますと、何のためにこれをやろうとされておるのか。これから生涯教育をやっていくための端緒となるのか、あるいはそういった突破口を開くのにしてはまだまだ弱いものではないか、私はこう指摘せざるを得ないわけでございますが、最初に文部大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  164. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 委員御指摘のとおり、臨教審の第四次答申等に盛り込まれております精神は、学歴社会の弊害を是正するあるいは活力ある社会をつくっていくというようなことが指摘をされておりまして、さらに中教審の答申をいただきまして、できるだけ早い機会に緊急整備すべきものを整備するという立場に立ち、この法案を提出をさせていただきました。  先ほどから申し上げておりますとおり、生涯学習という概念は非常に広範囲のものを含んでおりますし、各省庁にまたがっておりますいろいろな事業も、生涯学習という大きな、広い意味での概念の中には入ってくるわけでございます。しかしながら、そうしたものの整理あるいは各省庁間の問題等のすり合わせ等につきましては、この法案の中にございます審議会等を通じまして、その御論議の中で専門家間でいろいろと意見が闘わされ、そしてあすの生涯学習社会がつくられていくものだと私は思っております。  かかる意味で考えますならば、この法案は生涯学習社会をつくっていく先導的な役割を果たす法案であろう、第一歩を踏み出すための法案であろう、こういうふうに考えておるところでございます。
  165. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今先導的というふうにおっしゃいましたが、既に各県におきましては、いただいた資料では十四県におきまして生涯教育センター、教育会館なんという言葉もございますが、生涯教育におきまして熱心に各県でおやりになっております。私も全部つぶさに勉強したわけではございませんけれども、幾つかを文書によって勉強いたしましたが、かなり熱心に一生懸命やられてそれなりの成果が上がっておると私は思います。  こういったことをやっておるわけですから、これを文部省なりが、あるいはまた各省庁力を合わせてバックアップする体制をつくる。また、できていない県があればそれは行政指導等によって、どんどんやりなさい。そういう意味では、今回の法案の中で、ある程度、基金をつくる、民間の方からもお金を出していただく、そういったことは私は結構だと思いますけれども、何か審議会ができて、そうしていろいろ書いてありますけれども、お金という問題は別に民間だけではなくて政府のお金というのはあるわけですし、都道府県のお金もあるわけで、現実にこの十四県は自分たちでやっておるわけでございますから、やる気になれば決してできないことはない、こう私は思うわけでございます。  しかも、今、日米構造協議でも公共投資につきまして相当な圧力がかかってきておりまして、私としてもこのGNPの一〇%枠ということは反対でございます。しかし、公共投資の中の質を変えるということは賛成でございますから、まさしくこういったところの方に予算を組んでいくことが大事ではないか。そういったことをやる上において、例えばこの十四の県のおやりになっておることと、今回のこの法律ができた場合どうなっていくのか、これがさらに充実、促進をするのか、それはその審議会等があることがプラスなのか、マイナスなのか、その点はいかがにお考えですか。
  166. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 ただいま矢追先生がお挙げになりました都道府県の現在持っております生涯学習センターに類似の施設は十四都道府県にあるわけでございますが、これらの事業につきましては、それぞれ非常に立派にやっていらっしゃるところもございますし、中には非常に特色的な事業をやっておるところもございます。概して申しまして、この第三条の都道府県事業の一号から六号までの事業をなべてすべてやっておるセンターというものはほとんどないというような状況にございます。それと、できました時期によりましては、社会教育センターというようなものもございまして、内容的には、社会教育について専らそのセンターになっているというような生い立ちから始まったものもございますので、全体としてまだその生涯学習振興に資するという本格的な体制にはなっていないのが多くの施設現状でございます。  そこで、この法律によりまして、この一号から六号まで、しかもその範囲といたしまして学校教育社会教育文化活動というものの全体を網羅するようなもの、そして管下の各機関、団体との連携に努めながらこういう機能を果たしていくということ、こういうようなことについては、現在ある十四県の生涯学習センター等につきましてもまだまだこれから充実をしていただかなければならない。そして、この第三条の体制にまさに該当するようなところまで発展充実をさせていただきたい、こういうことでございます。  そして、十四県以外の都道府県につきましては、まだ体制が未整備でございますので、これはぜひ整備をいただきたい、これがその第三条を規定した趣旨でございます。
  167. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今そういうように言われますけれども、実際私も具体的なことはもう一つよくわかりませんけれども、この法案が成立をした、審議会ができた、そこでいろいろ項目に掲げられておるようなものが研究される。しかし、どうも中身を見ておりますと、ただ研究とか調査というようなものばかりが多くて、実際本当にその応援体制といいますか、そういったものにどれだけなるのか、何かもう一つ明確になっていないような気がしてならぬわけです。  例えばその評価の問題一つ取り上げましても、第三条に「学習の成果の評価に関し、調査研究を行うこと。」と、調査研究しか書いてないわけですよ。しかし、実際、答申ではやはり評価の多元化ということが言われて、やはり評価というものをこれからどういうようにしていくのか、あるいはその資格という問題をどうしていくのか、これまた審議会は研究だけですよ。そういったものもちゃんとある程度、今後こういういわゆる社会的な評価というものはこうなんだということを、これは何も国が決めるのがいいのかどうか、いろいろ問題はあろうかと思いますけれども、何かある程度の目安というようなものがなくて、これ研究します、これだけじゃ果たして……  では、評価の問題一つ取り上げても具体的に、例えばその生涯学習センターというものがあって、そこである程度いろいろな勉強をした、私は何かお勉強に行った、例えばドイツ語ならドイツ語の勉強をもう一回私もやり直すということでドイツ語をやったとしますね。そしたら、ドイツ語の検定試験があって、一級、二級というものがあるから、それを受けて取った、それでいいならいいかもしれませんけれども、そういうようなものは今かなりあるわけでしょう。では、これからもっと新しいそんな資格をつくるのか。  あるいはまたそうでないもので、何か私がドイツ語を勉強してもっとしゃべれるようになったと仮に仮定した場合、では、それだけでどういう評価にするのか。それは、この審議会ができて検討して、研究して、それで応援体制とか、そういう推進体制になるのかどうか、それはもっと前にやらなければならぬのじゃないのかな。ちょっと素人的かもわかりませんけれども、そう思うのですが、その点、いかがですか。
  168. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この地域におきます生涯学習につきまして、その学習の成果の評価ということは大変重要なことでございます。学歴社会の是正というような観点から、学んだものを評価されるというような関係が非常にその打破の重要なかぎを握っていると言われているように、成果の評価というものは非常に大事なことでございますが、ただこの評価の仕組みとか対象の、どんなものを評価するのか、評価すべきでないものもあるのではないかというような議論もございますし、それからどの程度の評価水準にするのかというようなことは大変難しい問題でございます。  それで、現在その評価というものが一般的に行われておりますのは学校教育でございますけれども、学校教育以外の分野についてはその評価のいわばスタンダードというようなものがまだ定着していないというような状況にございますが、中には、今矢追先生がお挙げになりましたように民間の団体によります技能検定というのが行われております。それから社会通信教育というのが文部省の認定で行われておりまして、それは文部省が認定したコースについて各実施者がその修了証書を出すというやり方をとっておりまして、そういう意味の民間における社会教育関係の、学校教育以外の評価というものがやられている例はおっしゃいますようにかなりあるわけでございます。  これを一つ参考にいたしまして、さらにその評価の仕方というものを広げて、実際に公民館等の講座の修了者に対して修了証書を出す、あるいはその公民館限りではありますけれども単位を与える、あるいはその単位を集積した者に対して人材バンクに登録するという形のものもそれぞれの社会教育等々の実施主体においてかなり行われておりまして、そういった学習の成果のいろいろな形で行われている評価につきまして、第三条の各教育委員会体制のところではそれぞれの地域における学習成果の評価についてさらにどういうことにしたらいいのかというような調査研究をやるというのがこの内容でございます。  その調査研究によって出てきたところによりまして、また公民館等の実際に行っているところにその成果を戻しまして、評価のあり方がだんだんに実態に即して、かつ住民の意向に即して普及していきますように、そういうことを一応目指しましてここに学習の成果の評価についての調査研究という事業をこの体制一つ事業といたしたわけでございます。
  169. 矢追秀彦

    ○矢追委員 どうも資格にこだわるようで悪いのですけれども、もう一つ私もよく今の答弁でわからないのですけれども、確かに士というのはだんだんふえておりますよね、士一つ取り上げても。これは新しいいわゆる産業の発展あるいは科学技術の進歩によっていろいろな、今までないいわゆる士と言われるものはふえつつあるわけです。まだ政府の認可になるものならないもの、今おっしゃったように企業がやっているものやらないもの、いろいろな団体も山ほどあるわけです。そういったことを先ほどおっしゃったように整理する、あるいはやめる、いろいろなことがあろうかと思いますけれども、その方向としては、士一つ取り上げていった場合どういうふうにお考えになっているのか。  例えば最近バイオ、生命工学、生命科学というのが発達をしてきているわけですが、こういうバイオのいわゆるテクニシャンを養成するための学校をつくっている人もおるわけです。しかし、これはまだ正式ないわゆる生命科学士とかそういうものにはなっていないわけです。しかし、需要はあるわけです。そういった意味において、いわゆる大学を出た学士ではないそういう技術者としての資格としてある程度必要であって、かなりそういった学校も応募者が多い実例を私も知っておるわけですけれども、そういうふうな問題も生涯学習の——それは別に大学を出なければいかぬ、高校を出なければいかぬと決めていないわけですから、試験は一応やっていますけれども、だれでも学校は行けるわけですよね。そういうふうな士の問題をどうやっていくのか。  あるいはお茶とかお花というのは今もずっと資格は取られているわけですね、こういう問題。大変多岐にわたるから調査研究とおっしゃっているのだと思うのですけれども、方向性としてどういうふうにしていくのか、ガイドラインみたいなものはある程度示していかなければならないのじゃないか。余り統制したりするのは問題だと思いますけれども、その点はいかがですか。
  170. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 今先生がお挙げになりましたように、学習の成果の評価の実態はいろいろさまざまでございます。そして、非常に地域的なもの、あるいは非常に高齢者に対する奨励的な意味合いのもの、それから技術の認定というのは大変きちっとしたある程度かたい制度といいますかそういうもの、いろいろな内容のものがございます。  したがいまして、ここに成果の評価についてある一定の範囲を示して、それでそういうことをここで調査研究すると申し上げることはなかなか難しいわけでございますが、都道府県教育委員会が行います生涯学習推進の実施事業体制の中で行いますこの第二号の評価というのは、そういう地域の実情に応じていろいろなものについて実施、実行できる方向になるように調査研究をしていく方向になると思います。  なお、国の段階で、現在、中央教育審議会で生涯学習の基盤整備について残されている問題がございます。それがこの学習の成果の評価でございまして、これについて評価の仕組みとか対象、範囲とか評価水準について、これは全国的なレベルにおきましてどういうふうに整理していくか、どういうふうに考えていくか、学習評価のあり方はどうなのかというようなことについて現在まだ検討中でございまして、これが中教審の御答申が出れば今矢追先生がおっしゃった全体のある程度の方向が明確になってくるのじゃないかと私どもとしては期待をしているところでございます。
  171. 矢追秀彦

    ○矢追委員 だから、そういう答申も出てからこういうことが出てくるならわかるのですけれども、そういったものがまだ出ないのに都道府県で調査研究をやれといったって、二度手間になってしまうのじゃないですか。その点、いかがですか。
  172. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 先生が今御指摘になったようなそういう事情もあると思います。ただ、各都道府県でも、先ほど申しましたように各市町村あるいは公民館等におきましてそれぞれに講座の修了証書とか奨励的な意味の単位を与えるだとかというような実態は進んでいるわけでございますので、そういう地域の実情に応じた学習の成果の評価のあり方などについては、それぞれ調査研究をしていく価値はあると考えまして一応ここにまず事業として挙げたわけでございまして、それが先ほど申しましたように中数審の結論が出て、ある程度全体の方向が明確になればさらに一層この機能は充実していくと考えております。
  173. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、先ほど来からもいろいろ出ておりましたけれども、いわゆる各省庁との問題でございます。いわゆる縦割り行政が、日本の官僚機構が今の新しい時代のニーズになかなかこたえられないということが批判として非常にあるわけでございますが、そういう点から見ますと、今回も生涯学習という面が厚生省あるいは労働省、そういったところを含めましていろいろ調整の問題が大変出てくるわけでございまして、しかもまた、今回通産省が顔を出してきている。そこで、まず通産省が出てきた理由をお聞かせください。
  174. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 これはこの法案の第五条から第九条までの規定に規定されております地域生涯学習振興基本構想についてのみ共管をしているわけでございます。  この構想につきましては、これまでも御説明申し上げましたように、民間事業者の能力の活用ということを主眼にしておりますために、教育、文化、スポーツ内容面を担当いたします文部省と、それから民間事業者を活用するという意味からも通産省、両方が相まってこの事業、制度を盛り上げていこう、そういう趣旨で共管しているというふうに考えております。
  175. 矢追秀彦

    ○矢追委員 私、通産省が悪いという意味で言っているのではございません。日本の企業は経済成長に大きな役立ちをし、技術革新をして世界でこれだけの経済大国になったわけでございますから、決して企業そのものを私は悪とは決めつけませんけれども、文化とか教育とかいった面になりますと、ヨーロッパ等の企業というより財閥、お金持ちと言った方がいいかもわかりませんが、そういったものはむしろ大学をつくったり、あるいはそういった文化事業に力を入れたりする方が非常に多いですね。日本の個人の資産家というのも大変な方もいらっしゃいますけれども、それは比較にならないような資産家がアメリカにしてもヨーロッパにしてもおられるわけでして、そういった方は自分の私財を出して大学をつくる、あるいは文化事業をやる、いろいろなボランティア活動をやる方が多いわけです。  どうも日本の企業を見ておりますと、お金にならないことにはなかなか金を出さぬという傾向が強いように思うわけです。何か金もうけが先に走って、もうかるからやるんだというのがどうも多いような気がしてなりません。だから、教育というのは本来産業にしてはならないのが、教育産業と言われるような面も一部にあるわけでして、そういった点は私は大変遺憾に思います。  民間からお金を出していただくことは結構です。今、日本の産業界にもいろいろ変革は起こっております。確かに企業がホールをつくったりされる場合もどんどん出てきております。これはいいことだと思うのですが、やはりそこに金もうけというのが先に走るとまずいのでして、特にこういった生涯教育というものにはそういうものが考えとして出てきてはならぬ。  となりますと、この民間業者の方が実際現実にどれぐらい寄附をしていただけるのか、また、そういった金もうけということができないような歯どめというものがきちんとあるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  176. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この地域生涯学習振興基本構想というのは、るる申し上げておりますように民間事業者の教育、文化、スポーツという事業が大変人々学習需要というようなものに適時的確に柔軟に対応するということで非常に魅力あるものになっている。そういうものについて、しかし現実には大都市部を中心にして偏在をしているというような状況になっているので、これを大都市部以外の地域においてもこの全体の生涯学習、いろいろな生涯学習の機会の提供の中に含めて行うことができるようにするような一つの有効な方策であろうということで制度化をしたものでございます。  したがいまして、この中におきましては、通常の自然の状態といいますか、自然の放置された状態ではとても民間教育事業が進出できないというようなところにも、都道府県あるいは市町村共同でいろいろ支援をする、あるいは主務大臣が支援をするという形でそういう事業が行われるようにしようというのがこの中のねらいでございます。したがいまして、この振興構想による申請、承認をされるわけでございますが、そういったものの中で、事業が不当に営利を目的とするような形にならないような、そういう歯どめをかけるということは十分できるというふうに思っております。
  177. 矢追秀彦

    ○矢追委員 答申にも出ておりますけれども、「大学・短大等の生涯学習センターについて」という項目にいろいろ書いてございますが、やはり大学全体としても、この生涯学習の機関というふうな方向に大学そのものを変えていくということも発想としては持つべきであると私は思うのですが、この点はいかがですか。
  178. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 確かに大学の持っております教育研究機能を社会に開放するという施策は必要であろうかと思います。  そういう意味で、いわゆる社会人の方々を大学に受け入れやすいような仕組みをつくるというようなことも必要なわけでして、現在、大学審議会におきまして、例えば、既に大学を出て社会人になった方がさらにほかの分野の勉強をしたいという場合に、学士入学という制度が今ございますが、三年次に編入するわけでございます。大幅な三年次の編入定員の設定が可能となるような大学設置基準、現在の大学設置基準には途中年次の定員を大幅にふやすような基準がございませんので、そういう意味でそういう基準を検討するということ。あるいは社会人がデグリーコースといいますか、学士あるいは修士という学位を取るために大学に来るというよりも、限られた分野の科目、授業を受けたいという社会人もいるわけでございますので、そういう意味でそういう社会人を正式の学生として受け入れる科目登録制、コース登録制というパートタイムスチューデント制等についても検討しなければいけないだろうということ。それから、さらには短期大学、高等専門学校を卒業した後に社会人になりまして、こういうような科目登録制、コース登録制としてある一定のまとまりの単位を修得し、その単位を累積加算しまして、一定の要件を満たした場合には大学の卒業認定を行うというような仕組みも検討しなければいけないだろうということで、現在そういうものを含めまして大学審議会におきまして鋭意検討しているところでございます。来年の春ぐらいまでには答申をいただけるものと私ども考えております。  私どもとしても、こういう答申をいただいたらば鋭意検討いたしまして、積極的に、かつ適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  179. 矢追秀彦

    ○矢追委員 理想的なことをおっしゃいますけれども、現実はなかなか厳しいわけですよ。現在だって十分な教育はできてないのです。  私は文科系のことはよく存じませんけれども、特に理科系、技術系というのはスタッフの方が足りない。なかなか人員をふやしてもらえないのです。特に国立大学は予算が決まっておって、総定員法なんかありましてなかなかふやしてもらえないので、私もしょっちゅう後輩の皆さんから苦情ばかり聞かされておるわけですけれども、要するに、教育というのはやはりどうしても人手が要るわけですね。もちろん設備、機械等も要りますけれども、やはり人間が要るわけですから、それだけのいわゆる教授、助教授、講師、助手を含めたきちんとした定員が完備されてないと、幾ら研究生で来られた、あるいは学生の数がふえたとしても、なかなかそれに対応できないわけです。  もちろん文科系も同じだと思いますけれども、特に技術系ほどそういった点は、現状においては予算の問題でなかなか突破口が開けてないのです。これはよく御承知だと思いますけれども、私はもうはっきり言えると思うのです。大学院がある、学部がある、では大学院の教授と学部の教授は別かをいえば、みんな兼任しておるわけですね。しかも教授というのは、教授会はある、学校の管理はしなければいかぬ、後輩の指導もしなければいかぬ、自分の研究もしなければいかぬ、大変忙しいわけです。教授がそんな状況ですから、助手に至るまで大変な状況でして、実験補助も本当におりませんし、アメリカの大学などと比べたら本当に話にならぬのが現在の日本の大学の状況であることは、もう百も承知だと思うのです。  だから、今理想的なことをおっしゃいますけれども、現実に一歩一歩本当に大学をそういうふうにしていくというならば、もう来年度予算だって、それではどうしていくのかという問題があるわけです。答申を待ってということをおっしゃいますけれども、私はそんなことを言うておれぬのじゃないか。本当にやるなら本気になって、いわゆる教育というのはお金、人手がかかるのですから、それなりの予算もきちんとつける。そうしていかなければ、生涯学習の拠点にするといったって、建物はできたとしても中身がなければ何にもならぬわけですから、その点を文部省、大蔵省とは徹底的にかけ合っていただいて予算をきちっと獲得して、本当に教育に……。  今の教育だって十分でない。しかもこれから海外の留学生がどんどん来るわけです。いっぱい申し込みがあるわけですね。この人たちは、特に発展途上国の人たちは、日本は円高ですから大変な状況です。しかしみんな日本に勉強しに来たいというのは随分いるけれども、それも受け入れてやらなければいかぬ。日本の中だってそういう生涯教育までが、大変な状況がこれから出てくるのですから、そんな甘っちょろいことを言っていたら間に合わない。それこそ、二十一世紀へ向けてここまで日本教育の水準も上がり技術も優秀になった、これから本当に世界の中の日本としてやらなければいかぬという場合に、これはもっときちんとしなければいかぬと私は思うのです。文部大臣は非常に海外の経験もある大臣ですから、この点、いかがですか。
  180. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 大学におきます教育だけではなく、教育あるいは学術研究、文化関係・スポーツ関係、そういった問題について予算をたくさんいただくために私たちはこれからも一生懸命に努力をしていかなければならぬ。私も在任わずか三カ月ちょっとでございますが、その間いろいろ勉強させていただきまして、やはりいろいろ施策を行っていくためには予算の裏づけが必要であるということをつくづく感じておりますし、また、そうした方向へ向かって努力をしてまいりたいと思っております。  かかる意味におきまして、本委員会におきましても、あるいは国会全体におきましても、文教政策あるいはそれにまつわるいろいろな施策については、これは国民的な重要な課題であるという御認識のもとにいろいろとまた御支援、御協力をお願い申し上げなければならないと思っておりますが、当然のこととして私どもがその責任者でありますから、しっかり頑張って予算獲得のために努力をしてまいりたい、このように思っております。
  181. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次は、労働省の学習行政について、特に企業の人材養成計画、こういった構想が出てきておるわけでございますけれども、今の高等教育ではどうして十分ではないのか。企業の中でもいろいろな教育をやっておりますし、それだけで十分とは申し上げませんが、私は何か、余り細かい専門家ばかりつくって、それだけでいいのかどうか。もちろん、そういうのは企業の中に入ってから勉強してもいいし、また、企業から出ていってやってもいい。そのための休暇制度の問題もございますけれども、いわゆる今の高等教育ではどうしてだめなのか。この第二条にも「職業能力の開発及び向上、」こういうことが出ておりますけれども、この点についてお伺いしたいと思います。労働省からもお願いします。
  182. 小島迪彦

    ○小島説明員 ちょっと御趣旨がわからないのですが、高等教育が不十分だとかそういう話ではございませんで、私どもは職業生活を送っていく上でいろいろ能力開発した方がいいということでやっております。それで、その中で特に企業に対しまして、雇っている従業員についての能力開発を大いに進めていただきたいということでいろいろな助成措置その他講じておるわけです。  その中で、多分現在の企業ではOJTといいますか職場の中で教育をしていく、これが大体普通のやり方でございますけれども、それだけでなくて職場を離れて、OffJTといいますか、それで教育するのも大事であろうと考えております。そういう面で、特にこれからホワイトカラー層あるいは高齢化していく場合の労働者能力開発ということを考えますと、そういうものも大事だろう、特に職場外でのいろいろな教育訓練も受けさせるようにということで推奨しているところでございます。これも、特にこれからホワイトカラー層を中心といたしましていろいろな情報等堤供する必要もあろうかということで、そういうような情報を入れたデータベース等も設けてやっていこうというふうに考えております。
  183. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 いわゆるリカレント教育でございますけれども、最近は職場を離れて大学等に一回入り直してまたその後職場に戻るという、いわゆるOffJTというのが広く行われておりまして、それで、文部省といたしましてもその受け入れとして社会人の大学への受け入れ態勢というものを推進しているわけでございます。その場合に問題になりますのが有給教育訓練休暇等の労働条件の側の対応でございまして、その辺は労働省の方で有給休暇制度の施策推進しているということは承知しているところでございます。  これからこういった問題につきまして、この法案に規定する諸施策とも非常に深い関係がございますので、労働省とも連携を深めながら、ぜひこの辺について検討していく必要があるというふうに考えておるところでございます。
  184. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、これも厚生省との関係でございますけれども、障害児教育、消費者教育等、こういったことは厚生、文部両省は連携を密にしていかなければならぬと思うのです。その辺の連係プレーというのがどうなっておるのか。これは保育所と幼稚園との問題もずっと前からいろいろ言われてきているわけですね。そういったことを思いますと、本当に果たしてうまくいくのかどうか。厚生省でもいろいろおやりになっておるわけですね。例えば長寿化社会へ向けていろいろなこともやっておられる。もちろん今申し上げたこともある。その点でどういうようにやっていかれるのか、その点、お願いしたいと思います。
  185. 辻哲夫

    ○辻説明員 私ども厚生省と文部省との連携の状況は、さまざまな分野がございますけれども、私どもの方から御報告させていただきますと、一つは、高齢者の心身の自立を促進するといった観点から高齢者の健康づくりや生きがいづくり、例えば老人クラブが健康づくり講座を開催してみんなで勉強いたしますとか、それから生きがい講座を開催して勉強いたしますとか、あるいは老人の福祉、障害者の福祉という観点からボランティアを育成していくといったこと、これはボランティア協力校というものを福祉サイドからも指定させていただきまして、生徒さんが施設に研修にいらっしゃるといったようなことを福祉サイドからやらせていただいたり、そのような社会福祉の向上を図るという観点から生涯学習関連する分野の仕事を所管させていただいております。  具体的に必要な事項がございますときには積極的に文部省連携をいたしまして、生涯学習に関しても十分連携をとって進めたいと考えております。
  186. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、先ほどもたしか出ていたと思うのですけれども、放送大学との連携協力について、放送大学もまだ緒についたばかりでございましてこれからでございますけれども、これの力というか役割は非常に大きいのではないかと思います。この点はいかがでございますか。
  187. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 放送大学は、放送等を効果的に活用した新しい教育システムの大学教育ということで、生涯学習という観点から広く各層の国民に対して学習の機会を提供するという目的で昭和五十八年四月に設置されまして、昭和六十年の四月から学生を受け入れておりまして、現在二万九千余名の学生が学んでおります。  現在のところ、年齢別に申し上げますと、三十歳代及び四十歳代というのが最も多うございまして、二二%ずつぐらいを占めているということで、通常の四年制大学では二十五歳以下の人が九八%を占めているのに対しまして、放送大学は二十五歳以上の者が七五%を占めているというふうに、大変異なった様相を呈しているわけでございます。  それから職業別につきましても、会社員等が三〇%、それから主婦が二四%、公務員が一三%というふうに非常に有職者あるいは家庭の主婦が大部分を占めている。男女別ではちょうど男女同率、五一対四九というふうなところでございますが、これも一般の四年制大学に比べまして女性が非常に多いということでございます。というように、通常の四年制大学にはない非常に広い層の方方がここで学んでいる、まさに生涯学習の中核的な機関でございます。  そこで、この放送大学につきまして、全国これをなるべく対象地域を拡大しようということでいろいろとやっているところでございますが、問題といたしまして、その電波網を広げるということと、それから学習センターを各地に設けていく、この二つのことが非常に大きな課題になっておりまして、それぞれ解決しなければならない課題がたくさんございます。それについて現在いろいろと努力をしているというところでございます。
  188. 矢追秀彦

    ○矢追委員 たしか最初は、答申には生涯学習推進センターが構想としてありまして、その中に放送大学との連携協力があった、しかも専門職員を配置する、こういうことになっておったのが削除をされてしまったわけでございますが、そう私は承知をしておるのですが、その点はいかがですか。その理由はどういうことですか。
  189. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 それは、去る一月三十日の中教審答申「生涯学習の基盤整備について」という中におきまして、生涯学習推進センターにつきまして、「その果たすべき機能や人々学習活動圏の広がりにかんがみ、都道府県が設置し、」そして「生涯学習情報提供及び学習相談体制整備充実に関すること」等々につきまして「集中して行うことが適当である。」ということが書いてありまして、その後、なお書きで「放送大学との連携協力を行うこと」というのが明示されております。  したがいまして、先ほども申しましたように、これから放送大学の対象地域の拡大ということに対して、一つの大きな問題として学習センターの整備があるわけでございますので、この学習センターを全国に整備していく一つの方法といたしまして、大学と連携協力を、これは当然必要ではございますが、大学との連携協力を前提といたしまして、各地方公共団体が設置するこういう生涯学習推進事業体制との間の連携協力によりまして、いろいろと各地における学習センターの業務について協力関係をつくっていただくということは非常に有益なことというふうに考えております。今後、放送大学の学習センターを全国に整備していくということを検討していく段階におきまして、都道府県との連携関係を十分頭に入れて有力な方法が編み出されるようにぜひ努力をしていきたいというふうに思います。
  190. 矢追秀彦

    ○矢追委員 私、先ほど冒頭に、答申より後退と言いましたけれども、これなんかも、推進センター構想もだめになってしまっておるわけです。こういった放送大学がせっかくありながら、これについても何か後退した印象を受けるわけでございますから、今きちんとやるとおっしゃいましたので、ぜひ推進方をお願いする次第でございます。  それから次に、学習情報ネットワークづくりです。現在八府県において進められていると聞いておりますけれども、これは今後とも四十七都道府県全体にまたがるようにお考えになっておりますか。しかし、この情報ネットワークというのはなかなか非常にお金のかかることですから、相当資金は要ると思いますが、その点はいかがですか。  今までいろいろな情報のネットワークございますね。新しくつくるよりもいろいろな、例えば科学技術センターとかそういったところにもありますし、いろいろなものがあるわけですから、その点をどういうふうな、今まで既存のネットワークとこれからつくられるそういったネットワーク、特にいろいろな文献というか図書、そのほかいろいろな情報というのはあるわけですから、これはどうやってやっていくのか。  また非常に保護の面、なかなか出したがらない、企業なんかからもらう場合はなかなか難しいと思います。そういった点も含めましていわゆる情報ネットワークづくりを、どういうものをどういうふうにお考えになっているのか、お願いします。
  191. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この法案の第三条の都道府県教育委員会が実施する推進事業のうちで、第一号の学習情報の収集、整理、提供事業でございます。これに関連して進めておりますのが今お挙げになりました学習情報ネットワーク事業でございます。つまり、この学習情報ネットワーク事業というのは、この法律の第三条の第一号の部分について、特にこれを充実し完成していくための事業というふうに考えていただいてよろしいかと思います。  これは、コンピューター等を利用いたしまして、都道府県と管内の市町村とが連携協力をいたしまして、都道府県内の各種の学習機会施設、指導者等に対する情報のデータベースを構築いたしまして、これらの情報地域住民の求めに応じて提供する、こういうシステムでございます。  昭和六十二年から文部省では補助を行っておりまして、これまでに八府県におきまして整備が進められております。この八府県の中には、先ほど十四の学習センターがあるというふうに申し上げましたが、その学習センターの中に設けられて、いわばほかの事業と一体となって推進されている部分もございます。  それから、今お話しのように、このシステム整備を行っていく際には既存のいろいろな関連するデータベースといいますか、システム、ネットワークがあるという場合には、それとの連携を十分に図るようにということも指導しておりまして、そういう形で進められている県もかなりあると承知しております。
  192. 矢追秀彦

    ○矢追委員 もう時間もございませんので、最後に大臣、この構想としては私も大賛成ですし、これをやられることについては異論はありませんが、私の指摘しましたように、問題点は多々ある。これは相当本気になって、しかも各省庁との調整はもとより、私は特に過疎地域——やはり何だかんだ言っても東京というのは一番、これだけ人が集まってくるわけですから、情報であろうが何であろうが、あらゆるものが東京は恵まれているわけです。問題は土地の値段とか物価は大変高いですけれども、それは高くても来るということは、やはりいいから来るわけなんでありますから、地方との格差というのは相当あるわけで、特に過疎となれば大変な問題になるわけです。そういったところこそテレビの活用ということも言えるわけでございます。  そういった点で第一に申し上げたいことは、指摘された問題点をひとつきちっとクリアしていただいて、これが都道府県を中心としてやられるわけでございますけれども、本当に国民皆さんが喜んで生涯学習が受けられる体制がきちんと整備されること、もう一つはそういった格差の是正ですね。特に、そうすれば地方に人はとどまるわけです。何も東京へ来て勉強しなければならぬということはなくなるわけですから、そういった点でひとつ格差の是正にきちっと努めていただきたい。とともに、特に各省庁との調整、やはり文部省教育ということに責任のある省でございますから、統制をしたりということではなくて、本当に責任を持つという立場からこの各省庁との調整をきちんとやった上で遺漏なきようにしていただきたい。この辺についての文部大臣の所感をお伺いしたいと思います。
  193. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 各省庁との調整の問題、他の省庁が教育のいわゆる類似的な事業をやっておりますから、そうした各省庁との調整については今後ともきちんと留意をして、教育関係の責任部署であります文部省として、これをきちんとした姿にしていかなければならないと私もまた考えております。  さらに、先ほども御答弁申し上げましたように、審議会の中でもいろいろの、労働あるいは厚生というようなところからの専門家もお入りをいただいて、いろいろな観点からの論議をすることによってそれを高めてまいりたい、このように考えております。  さらに、中央と地方との格差でございますが、やはり私も、地方のそうした生涯学習に関するいろいろな整備については、中央と格差が起きないように努力をしていかなければならないと思いますが、なかなか難しい点ではございますけれども、地方の振興ということを考えつつこの整備には当たってまいりたい、このように考えております。
  194. 矢追秀彦

    ○矢追委員 もう時間がなくなりましたので、また改めて詳しくはやりたいと思っておりますが、地球環境の問題が非常に大きな国際的な関心事となり、また国際的な動きも非常に急ピッチで行われておるわけでございまして、そういった意味において環境教育も大事な問題でございますが、これも生涯学習と大きな関係があると思います。  大気汚染から水質汚濁からあるいは温暖化から、最後はごみの問題、ごみの問題などは特に、ただ処理をすればいいというだけではなくて、一人一人がごみについての関心を持ってやっていかなければならないわけでございまして、そういうことも含めまして環境教育、ヨーロッパは大変進んでおります。日本は、私、教科書も勉強いたしておりますけれども、まだまだもう一歩という気がしておるわけでございます。  この環境教育についての文部省現状、それから今後の方針、時間の許す範囲内で簡単にお答えいただきたいと思います。
  195. 菱村幸彦

    ○菱村政府委員 御指摘のように、環境問題は今大変大きな地球的な課題になっていると思います。環境問題につきましては、教育的にもちゃんと教育をしなければならないということで、児童生徒に正しい理解を深めさせるという観点から初等中等教育段階におきましてもいろいろ行っているところでございます。  具体的には社会科、理科が中心になります。社会科、理科を中心にしました教科の学習を通して指導するということが一点でございます。それからまた、自然との触れ合いということを通しまして環境の大切さを学ばせるということもございます。そこで自然教室の推進ということも一方では進めているところでございます。  もう少し具体的に申し上げますと、小学校の社会科では公害の問題なども取り上げますが、単に公害という観点だけではなくて、もう少し国土の保全というような環境保全という観点からも子供たちに教えるというように配慮をいたしております。また、理科でも同じことでございますが、中学校に参りますと、発達段階によりまして、例えば社会科では公害の防止ないしは環境の保全、さらには理科では「地球と人間」という項目も置いておりまして、自然環境の保全に関する態度を育成させる、単に知識を与えるだけではなくて、そうした態度を身につけさせるというようなことも行っております。  また、高等学校でも同じように公民の現代社会の中で「環境と人間生活」というような項目を設けまして、環境と人間生活のかかわりについて理解させる。さらに環境にどうかかわって生きていくかについて考えさせるというような項目も置いているわけでございます。  こうした教科のほかに、もちろん道徳教育でも、自然を大切にするとか自然を愛するというようなことを教えるようにしておりますし、先ほど冒頭に申し上げましたように、実際に自然の中で自然を体験するという形の自然教室の推進等も行っております。  この問題は大変重要な問題でございますので、今回の新しい学習指導要領ではとりわけこれを重視しておりますが、実際の指導の場、実践の場におきましても一層充実を図っていきたい、このように考えております。
  196. 矢追秀彦

    ○矢追委員 最後に、大臣、環境問題というのは日本はまだパッシブなんですよ。公害対策基本法というような、出たらどうやるかという技術も進んできました。しかし、考え方が違うのですね。ヨーロッパでは環境エコロジーということが非常に言われておりまして、例えばスウェーデンなんかは、人間そのものが汚染源だという考え方人間のやる活動、経済活動とかそういったものじゃなくて、人間そのものが。そういう考え方で環境保護法というのをつくっておるわけでして、そういう哲学といいますか考え方そのものが違うわけでして、やはりそういう立場にこれから立っていかなきゃならぬ。  今までは、日本も経済の復興という立場がありましたから、ある程度はやむを得なかったかもしれませんけれども、これからはやはり二十一世紀へ向けて、そういう人間の物の考え方、環境に対する考え方を変えていかない限りだめだと思うのです。それには、やはり教育だと思うのです。スウェーデンの教育が進んできたから、ここまで来たわけでして、そういった意味でひとつ大臣、この問題についての御所見を一言で結構ですから、お伺いして、時間ですから終わります。
  197. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 環境問題は学校教育の中では、今初等中等教育局長からお話を申し上げましたように、きちんと取り扱い、教師用の指導資料等につきましても、平成二年度の予算の中でこれを措置いたしたりしております。  しかし、私自身考えますには、やはり学校教育だけではなく、全体の社会が環境についてこれを維持をしていくということについてさらに目覚めて、これを処置していくことも必要だろうと思っております。いわば、大人の責任も相当強いのではないかということも考えております。  そういった各般のことにつきまして、これは政府を挙げて取り組むべき課題だと存じております。これからの二十一世紀にかけての最大の課題一つであろうか、このように心得ておりますので、十分留意をしてこれからのいろいろな施策に当たりたいと思います。
  198. 矢追秀彦

    ○矢追委員 終わります。
  199. 船田元

    船田委員長 次に、山原健二郎君。
  200. 山原健二郎

    ○山原委員 最初委員長に申し上げたいのですが、この法案が五月十一日に本院に提出をされております。この第百十八特別国会、二月二十七日に始まっておりますから、約二カ月半たちましてこの法案が提出をされたわけです。私は、この法案に対する質疑の中でいろいろの問題が出ておると思います。法案に対する賛否は別にしまして、賛成の政党の方も点数をつければ二十点だという酷評もこの場で出てきたわけですね。そう考えますと、本当にこれは慎重な審議が必要でございまして、そういう意味で、本日議了するというのは余りにも拙速過ぎるということを申し上げざるを得ないのです。このことを最初に申し上げたいと思います。  例えば本委員会では、記録は持っておりませんけれども、筑波大学法は五十六日実質審議をしているのですね。それから、オリンピックセンターにしましても幾つもの国会を経過しておりますし、放送大学の場合は、たしか三つの国会にわたって審議をしております。だから、教育の問題ですから、いかに愚直と言われようとも、法案に対する徹底的な審議をやることがこの委員会の任務だと私は思いますので、そういう意味で、本日議了することに対しては私は賛成することができないということをあらかじめ申し上げたいと思います。  次に、この法案について質問をいたしますが、去る八日に生涯学習の定義について御答弁をいただいたのです。この辺につきましても、法律にないわけですね。したがって、質問をいたしますと、局長は生涯学習の定義について検討するという答弁をなされましたが、この定義をこの委員会に文書として提出するお考えがあるかどうか、最初に伺っておきます。
  201. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 生涯学習とは何かということでございますが、文書という形ではなく答弁という形で御理解をいただきたいと思います。  生涯学習とは、基本的には、国民一人一人が生涯にわたって行う学習活動のことであるというふうに考えます。そして、このような意味での生涯学習という用語は広く一般的に用いられるところでありまして、また立法技術上も、本法案の場合、特に定義規定を設ける必要はないというふうに考えられるものでございます。  また、生涯学習は、国民が自主的に学習を行うという形の中で実態が形成されていくものであり、国が定義すると、本来自由であるべき個人の学習活動について制約をかけるものと受け取られるおそれもあるということから、生涯学習の定義を行わなかったものであるということでございます。
  202. 山原健二郎

    ○山原委員 あなたは、この間の答弁でこう言っております。今おっしゃったことと一緒だと思いますが、「国民一人一人充実した人生を送るため生涯にわたって行われる学習活動」、こう述べましたが、これでよろしいのですか。
  203. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 ただいまの御答弁は、文部省として統一した見解として受け取っていただきたいと思います。したがいまして、もう一度申し上げますが、生涯学習とは、基本的には、国民一人一人が生涯にわたって行う学習活動のことであると考えるということでございます。
  204. 山原健二郎

    ○山原委員 はや変化しておりますね。私は議事録を調べてきているのですが、あなたはこの間、「一人一人充実した人生を送るため生涯にわたって」、こうおっしゃっているわけですが、これはもう変わりましたか。
  205. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 私がただいま答弁した方を文部省としての統一的な考え方として受け取っていただきたいと存じます。
  206. 山原健二郎

    ○山原委員 だから変化するのですよね。ほんのこの間、八日に私は質問をして、そしてあなたがこうおっしゃったのです。その中には「国民一人一人充実した人生を送るため生涯にわたって行われる学習活動」、こういうふうに何遍もおっしゃったから、私は議事録を調べて、これでいいですかと言うと、また変わるわけですね。  しかも、今度の場合、大臣もしばしばおっしゃっておりますように、生涯学習社会という言葉が出てくるのです。これは今、学歴社会という言葉は否定的な意味で使われておりますけれども、生涯学習社会という、人生そのものの学習を網羅した形の言葉すら出てきておる、そんな重大な問題について定義を文書で出せない、あるいは法律で出せないといっても、ここで御答弁になることが八日ときょうと違うということになると、何を信用していいのかわからない。どちらが、きょうおっしゃったことが正しいのですか。
  207. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この前の八日の審議の後で、先生の御指摘もございましたので、文部省において正式に検討いたしました。その結果、文部省の統一見解といたしまして、ただいま申し上げましたように、生涯学習とは、基本的には、国民一人一人が生涯にわたって行う学習活動のことであると考えるということにいたした次第でございますので、どうか御理解いただきたいと思います。
  208. 山原健二郎

    ○山原委員 これは前の答弁が違いますから、しかも重大な変化ですよ。本当に短い言葉ですけれども、「充実した人生」という言葉が入っておったわけでしょう。充実した人生というのは評価の問題です。だれが評価するのか。充実した人生というのは、私自身が生涯を終わるときに判断するのか。そうなってくると、物すごく内容が問題になってくるわけでしょう。これは、こんなことを変えられたのでは審議できませんよ。  それからもう一つ、これは佐藤議員に対するこの間の、十三日の保利文部大臣の答弁ですけれども、こう答弁しておられます。   生涯学習の言葉の定義について御質問がございましたが、大変大きな概念を含んでおると思います。非常に広い意味で申しますならば、生まれたときからのいわゆる家庭教育学校へ入りましてからの学校教育、それから社会へ出てからの社会教育あるいは文化活動といったようなものが広く包含されている概念が広い意味での生涯学習であろうかと思います。 これは大臣の答弁なんです。しかも佐藤議員に対する定義についての答弁がこれなんですよ。  そうしますと、横瀬局長の今おっしゃった答弁と、それから文部大臣がおっしゃったこの少し長目の定義に対する御答弁、どっちが本当なんですか。私たちはどれを審議したらよろしいのですか。
  209. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この法案における生涯学習という言葉の使い方についての定義を私は申し上げた次第でございます。これは私どもが文部省の統一見解としてこういう定義でいくということにいたしたわけでございます。  大臣が御答弁なさいましたのは、大臣のお考えも入って、全体としての一般的な生涯学習の意味について述べられたものと理解いたしております。
  210. 山原健二郎

    ○山原委員 ここは立法府ですから、厳密なことが求められるわけです。だから、法案の中に定義がないから私たちはこのことをお尋ねして、そしてこれは双方意思統一していなければ、ここで行き詰まったら審議はもう本当にこれで終わりです。これは本来ならもう審議ストップですよ。  しかも、大臣はかなり詳しくおっしゃっておられるわけでございますけれども、すると、大臣のおっしゃる定義と文部省の定義、また別にあるのですか。これはちょっと意思統一してください。そうしなければ先へ進めません。
  211. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 当時、先日の文教委員会で私が申し上げましたのは、私の頭の中にあるものをそのまま私の口で申し上げたわけでございますが、厳密な意味での定義と申しますのは、ただいま局長から御答弁を申し上げましたのが文部省としての定義でございます。
  212. 山原健二郎

    ○山原委員 これは文書にして皆さんにお配りいただけませんか。短かい言葉だけれども、これは今後非常に重要な中身ですから、担当局長の御発言ですから、皆さんにお配りいただけませんか。これから先、また参議院の審議もあるわけですから、これが基礎になるわけですから、その点について文書でいただけるかどうか、伺っておきたいのです。
  213. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 私どもといたしましては、ただいま御答弁という形でお答えいたしましたもので御理解いただきたいと思います。  前回、八日の審議の際に山原先生から検討したらどうかということがございまして、私が検討するというふうに御答弁を申し上げたわけでございますが、そのことを受けまして本日の委員会で御答弁を申し上げているわけでございますので、そういうことで御理解をいただきたいと思います。
  214. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省内部で、あれから、八日の日から何か討議されて今のような定義になったのでしょうか。この前と違いますね。  どういう機関で討議されたのですか。それは大臣も含まれておいでになりますか。
  215. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 八日の御答弁は、私ども、私どもといいますか私の段階で一応その定義として考えていたものをお答えしたわけでございますが、前回の御質問におきまして文部省の定義をはっきりさせるようにということでございましたので、改めて正式に文部省内の統一見解を出した次第でございます。  それは、もちろん大臣の御了解をいただいて出したもの、まとめたものとして理解していただきたいと思います。
  216. 山原健二郎

    ○山原委員 局長、これは大変なことですよ。十三日の日には、この委員会は一日質疑が行われておりますね。あの日は社会党の方が三名か四名質疑されたわけでございますけれども、その基礎になったのは、あなたが八日に発表されましたこの生涯学習に対する定義をもとにして質問されているわけですね。これは本当に重大な一日を、まさにその基本のところであいまいなまま質疑に立たされたと言っても過言ではない状態に置かれたわけですよ。  この点については責任をはっきりさせてもらわなければ困りますね。国会というところはそれほど生易しいところではないですよ。定義の問題が論議されているときに、それをきょうになって変更するなんということは許されない。私は断じて認めるわけにはいきません。  しかも、あなたのおっしゃったことは「一人一人充実した人生」という重大な言葉がこの中に入っているわけですからね。これについて釈明があるなら釈明してください。私は納得しません。
  217. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 八日の答弁は、先ほど申しましたように生涯学習というものに対する私の段階での考え方を述べたものでございます。しかし、それに対して山原先生は生涯学習文部省としての定義をきちんと出すようにというお話でございましたので、改めて文部省内で最も正確な定義としてはどうであろうかということをきちっと考えまして検討いたしまして、この法案において生涯学習の定義というものはこのような形でまとめるべきであろうということでまとめた結論でございますので、どうか御了承いただきたいと思います。
  218. 山原健二郎

    ○山原委員 いや、担当局長がこの基本のところで揺るがれたのでは本当に審議のやり直しですね。三日間審議が行われているわけですけれども、これはただのことじゃ済まないですよ。私はそういう意味で本当に少ない時間の中で大変質問がしにくいわけですね。だから、いろいろな意見が出てきて、十三日の日には大臣に対して定義をどうお考えになっているかという御質問が出たわけです。それはまたあなたのおっしゃることと違うものですから、この点はもう本当に強く指摘しておきたいと思います。本当に問題だと思いますよ。  もう一つ、八日の審議で、中央教育審議会でのこの問題についての審議内容を提出してくださいと言いましたら、「中央教育審議会の審議状況」なるものを持ってきました。これなんです。何のことはない、生涯学習に関する小委員会、昨年の七月五日のものですね。「生涯学習理念基本考え方」について事務局より説明、討議をしたと書いてあるだけなんです。  ところが、昨年の七月五日の時点では生涯学習理念基本考え方を事務局、横瀬さんのことではないかと思いますが、この小委員会に対して披瀝しているのですよ。そしてどんな討議がなされたかは書いていない。書いていないけれども、少なくとも文部省の事務を担当しておられるところから生涯学習理念基本考え方について説明しておられる。その説明はどんな説明ですか。そしてどんな論議がなされましたか。これを出してください。
  219. 佐藤次郎

    佐藤(次)政府委員 中央教育審議会におきましては、生涯学習の基盤整備について諮問を行いまして、具体的な審議事項についていろいろ御審議をいただき、先般の一月三十日には答申をいただいたわけでございます。  この教育審議会では生涯学習についての基本的な考え方ということについて第一回のときからいろいろの機会に各委員の先生方から意見が申し述べられました。その基本的な考え方は、生涯学習というのは人々が自発的な意思に基づいて行うということを基本的に考えて行わなければいけない、そういった考えに立って基盤整備を進める必要がある、こういう一貫した考え方が各委員の先生方からの共通の考え方として述べられたわけでございます。それを受けてこの答申の中ではその点を強調をいたしておるという状況でございます。
  220. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省、この委員会に対して随分不親切ですね。去年の七月五日に小委員会に対して文部省として、ここに出ておりますように「事務局より、生涯学習現状等について説明・討議」「生涯学習理念基本考え方」、こう出ています。ここへ何かが出ているわけですね。何かがここへ出て、そして横瀬局長の答弁になってきておるのですが、その間の変化があるわけです。それが私はわからない。どんな討議がなされたか、それを出せませんか。  これだけの重要な問題、生涯学習社会をつくるというのですから、それだけ重要な基礎部分の討議がどんなものであったかということを出せないはずはないと私は思います。どうですか。
  221. 佐藤次郎

    佐藤(次)政府委員 先日、先生のところにお届けいたしました資料の内容でございますが、第一回のときに生涯学習現状等について事務局から説明をした、そしてその事務局の説明に関しましていろいろ討議が行われた、その中で生涯学習理念とか考え方ということについて委員の先生から御発言があった、こういう意味でございます。  どういう発言があったかといいますと、先ほど申しましたように、生涯学習基本的な考え方、生涯学習人々自発的意思に基づいて行われることが基本的に重要ではないかということが各委員の先生方から述べられた、こういうことでございます。
  222. 山原健二郎

    ○山原委員 中教審のこの小委員会は本当につまらぬことをやっているのですね。  教育の問題を論ずるのですよ。基本の問題を論ずるのですよ。しかも生涯学習法という法律を。生涯学習社会という言葉まで使われるような重要な法案でしょう。そのときに、その論議の中身がわからぬ。その論議が基礎になって今度の法律になってくるわけです。そして、それが基礎になって生涯学習とは何ぞやということが論議されているはずなんですよ。  それが全く、あなたの言葉で自発的なとか、それだけのことで私がここで信用できますか。議事録とまでは言いません。けれども、少なくともこの部分に関する資料くらいは、中教審の小委員会でどんな討議がなされたのかくらいは出せないのか出せるのか、聞いておきたい。
  223. 佐藤次郎

    佐藤(次)政府委員 ただいま御答弁申し上げましたのは、先ほど資料のことについて、第一回の会議でそういう意見が出たということを申し上げたわけでございます。その後十一回の会議を重ねて答申を提出したわけでございますが、その間において生涯学習考え方についてはいろいろ議論が行われたわけでございまして、その内容につきましては答申の中にも触れられておるわけでございまして、その部分を要点だけ申し上げてみたいと思います。  今後の生涯学習推進するに当たり特に留意すべき点ということで、次の点を指摘いたしてございます。「生涯学習は、生活向上職業上の能力向上や、自己の充実を目指し、各人が自発的意思に基づいて行うことを基本とするものであること。」「生涯学習は、必要に応じ、可能なかぎり自己に適した手段及び方法を自ら選びながら生涯を通じて行うものであること。」「生涯学習は、学校や社会の中で意図的、組織的な学習活動として行われるだけでなく、人々スポーツ活動文化活動、趣味、レクリエーション活動、ボランティア活動などの中でも行われるものであること。」ということを中教審では取りまとめて答申の中に盛り込んだ、こういうことでございます。
  224. 山原健二郎

    ○山原委員 今おっしゃったことがまとまって答申の中へ出ているわけですね。
  225. 佐藤次郎

    佐藤(次)政府委員 生涯学習の基盤整備答申の構成は、「第一」というところに「生涯学習の基盤整備必要性」、そして「第二」に「生涯学習の基盤整備のための施策」という大きな構成になっておるわけでございますが、ただいま申し上げましたのは「生涯学習の基盤整備必要性」という中で臨教審の生涯学習考え方、それから中数黄の五十六年のときの「生涯教育について」の答申の際の考え方等を述べながら、先ほど申し上げましたような今後の生涯学習推進に当たり留意すべき点としてただいま申し上げましたようなことが触れられている、こういうことでございます。
  226. 山原健二郎

    ○山原委員 今おっしゃったことは何もこの法律に出てこなくたってやれるのですよ。社会教育法でやれますからね。しかも、この生涯学習法案の自発性の問題は打ち消されているのですよ。今度出てきた法律と今おっしゃったこととは違う。  もう時間がありませんから指摘だけにとどめておきますけれども、そんなことだったら社会教育法を少し改正するとか、それで済むわけですよ。何でこんな大法案がすったもんだの末、しかも五月十一日になって出てこなければならぬのか、私は理解できませんね。  現行の社会教育法でも、これは大臣のおっしゃることでもありますけれども、十分対応できるのですね。これは大臣がこういうふうにおっしゃっているわけですね。大臣の答弁でどういうふうにおっしゃっているかというと、先ほど言いましたから申し上げませんけれども、学校教育、家庭教育、それから文化、スポーツの問題、これがなぜ社会教育法の改正によってできなかったのですかね。
  227. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 生涯学習振興と申しますのは、多様な国民の学習需要を背景にいたしまして、生涯にわたった適切な学習機会整備されなければならないという学習者の観点に立った理念に立っているものでございますが、その学習の機会と申しますのは、具体的には学校教育とか社会教育とか、そういう分野から提供されるものでございまして、そして学校教育社会教育のそれぞれの振興というものはちょうど学校教育法、社会教育法というそれぞれの分野にかかわる法令に基づいて行われる、こういう関係にあるわけでございますが、生涯学習という観点から見ますと、この生涯学習社会を実現するための必要な行政としてその部分を抜き出して考えてみますと、一つは生涯学習振興観点からその学校教育とか社会教育等の学習提供等についていろいろな方向づけを行ったり、あるいはそれぞれの間の連携を促進したり、そういうような行政が必要になる。それからもう一つ、生涯学習を奨励したりあるいは学習者が最も適した学習機会にアクセスできるようにそういう学習情報提供等を行ってあげて、そして学習機会、それから学習者が最も適切な形で接近するといいますかアクセスする、こういう作業が一つ必要であるというようなことでございます。  そういうような行政要素というものが加わってくるわけでございまして、その部分について、本法案施策についての関係する部分につきまして法案に盛り込んでいる、こういう関係に私どもは理解しております。
  228. 山原健二郎

    ○山原委員 いろいろおっしゃるけれども、やはりたかが生涯学習ということできちんとしたものがないから、そんなふうになるのですよ。あなたのおっしゃることなんかは全部教育基本法体系の社会教育法で十分対応できるでしょう。  教育基本法では第六条に「学校教育」を定め、第七条に「社会教育」といい、「家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。」として、社会教育法では「教育基本法の精神に則り、」その「「社会教育」とは、」の定義で、「学校教育法に基き、学校教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動体育及びレクリェーションの活動を含む。)をいう。」としているわけですね。  だから、あなたのおっしゃることだったらこの社会教育法でもできるわけだ。あえてここへなぜ生涯学習振興法が出てこなければならないかという説明にならぬのですよ。あなたの説明ではならないのです。今でもできるんですよ。それ、率直に言って今まで政府が十分な対応をしてこなかったことに問題がありますけれども、社会教育法でできる。だから今、説明のしようがないわけでしょう、生涯学習に対する基本がはっきりしてないから。それはどうですか。
  229. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 先ほど申しましたように、生涯学習の個々の機会というものは学校教育社会教育等で行われているその全体を包含するのが生涯学習でございますから、生涯学習行政というのはそういう学校教育社会教育等々を通じてどこに重点を置いていくか、社会の要請に応じてそれぞれの重点というものをどこにこれから置いていったらいいかというようなこと、あるいは学校教育社会教育双方の分野の連携をどういうふうに考えていくかというようなこと、それから、そうした全体の学習、これは学校教育社会教育を通じて学習の機会があるわけでございますから、それと学習者を適切に結びつけていく、そういう作用をすること、これらが生涯学習行政基本的な要素、作用であろうというふうに思います。  今回の法案は、その作用についての基盤、体制について決めようということで盛り込んでいるわけでございますので、これは社会教育法とは別体系の、また社会教育法の範囲を超えた全く別の法体系でなければいけないと私どもは考えております。
  230. 山原健二郎

    ○山原委員 今おっしゃったこと、社会教育法で全部できるんですよ。だから、こういう大法案を出されるに当たってはもう少し理論武装をしないとだめです。社会教育法で今おっしゃったこと全部できるわけですよ。隣接市町村が一緒になって連絡とり合ってやることもできる。それを国や県が支援することもできる、社会教育法は。  だから私は、あえてここへ生涯学習が出てきたのは、社会教育法によってできないものをこの生涯学習振興法はやろうとしておるのではないかというふうに思わざるを得ないのです。この間、前回、教育基本法について、この法案がどういう関係があるかとお尋ねをしますと、あなたは当然教育基本法がその背景にあり、それに基づいていると答弁をされましたね。これは間違いないところです。  では、なぜ通産大臣が所管大臣として出てくるのですか。
  231. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 通産大臣と共管する部分と申しますのは、法案の第五条から第九条までに規定しております地域生涯学習振興基本構想の部分だけでございますが、この制度のねらいが民間事業者の能力の活用を図るというところに特色を持って、大きなねらいを持っているわけでございますので、そのために内容面について文部大臣が、そして民間事業者の能力の活用を図るという面において通産大臣がそれぞれ所管し、その共管によってこれを盛り上げていこう、こういうねらいを持っているわけでございます。  そのことと、教育基本法というのはそれぞれの教育社会教育学校教育あるいは家庭教育といった面についての規範でございます。それはもう当然その規範そのものについては、この構想の中で行われる活動についてもそれにのっとって行われるわけでございますから、特に教育基本法の関係について問題があるというふうに私どもは考えておりません。
  232. 山原健二郎

    ○山原委員 通産省が行う基本構想承認に当たっては何が基準になるのですか。
  233. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 承認基準でございますが、これは各条項に即してそれぞれ承認基準を定めることを考えているわけでございますが、通商産業大臣の承認の実質的な内容につきましては、民間事業者の経営の面といいますか、事業振興の面につきまして関与をするということになろうかと思います。
  234. 山原健二郎

    ○山原委員 そうなんですよね。企業がやられる営利、それを通産省は守る責任があるわけですからね。それが教育基本法と何で関係があるのですか。あなたは教育基本法が背景にあり、当然教育基本法に基づいて行われると言うが、通産大臣が出てくる。通産大臣というのは、御承知のように民間事業者の行ういわゆる営利事業の保障なんですよね。通産省は営利事業を保障するお仕事でございます。きのうもおいでいただいて聞きますとそうなんですね。それを何で教育基本法の範疇の中へ通産大臣が入るのですか。だから、そういう矛盾が出てくるわけですよね。  だから社会教育法ではだめで、社会教育法ではやれないものがこの生涯学習振興法でやられようとしておるから、そこらあたりがあいまいになっているのじゃないですか。
  235. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 これは民営でございましても、事業としては教育スポーツ、文化というものを内容として行われるわけでございます。ですから、その事業内容について、これは教育基本法にまあ即して行われるというのは当然でございまして、そこに何ら問題はないというふうに思います。  それで、事業面についてというのは、この教育スポーツ、文化の事業が行われる基礎になる部分でございますが、その部分に関して通産大臣がいわば関与をする、こういうことになろうかと思います。
  236. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょっとわかりかねますね。教育基本法と民間事業者——民間事業者というのは何といったって営利でしょう。その営利を保障するのが通産省。そういうふうに、教育基本法はここへ結びつけること自体が無理なんですよね。  だから、時間の関係でこれは指摘にとどめておきますけれども、結局、民間事業者が参入するということは採算性の問題が必ず前提になるわけでございますから、したがって学習者の負担も民間業者が利益を確保できる水準に設定されることは間違いありません。しかも、採算を超える学習機会提供はされないわけですね。多様な要求にこたえる学習保障にはならないのではないかと思いますし、ましていわんや教育基本法とつながるなどということは、これはまさにあなたのこじつけなんですよ。  だから、あなたが今お話しになるときに、まあという言葉がついてくる。的確に出てこないのです。教育基本法第三条は、すべての国民がひとしくその能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないのであって、社会的身分、経済的地位または門地によって教育上差別されないことが保障されているわけです。公的保障をうたっているわけでございます。だから、この生涯学習振興法が明らかに教育基本法に抵徹触あるいは逸脱する部分を持っておるということを私は指摘せざるを得ないのでございます。  それからもう一つ、これは時間がだんだんなくなってきましたので、私はここでお聞きしておきたいのですが、過去、戦前におきまして政府による国民教化ということが行われましたね。国民精神総動員、きょうも参考人の方の質問の中でこの言葉を申し上げたわけでありますけれども、この法律によって社会教育あるいは生涯にわたる国民教育が政府機関によって中央集権的な管理を受けないという保証がこの法律の中にどこにあるか、そのことをお尋ねしておきたいのです。
  237. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この法律は、特に第一条におきまして「国民が生涯にわたって学習する機会があまねく求められている状況にかんがみ、」といたしまして、その背景について指摘をしているわけでございますが、これはまさに国民が学習する機会というものを求めている、そういう状況について述べておりますし、それから第二条に、これも「学習に関する国民の自発的意思を尊重するよう配慮する」ということが決められております。  このように、国民の学習需要というものを基礎に生涯学習振興に関する推進体制なり学習機会の創設なりを考えていくという姿勢はこういうところにあらわれているというふうに思っておりまして、決して今御心配になるような方向になるとは全く考えることはできないのではないかというふうに思います。
  238. 山原健二郎

    ○山原委員 あなたが考えなくても体制は動き出すわけです。だから、私は今各県に生涯学習推進本部とかいう名前を聞きますと、本部という言葉は、例えば交通安全本部などというのはどこの県にもありますけれども、こういう教育の問題について本部などといういかめしい名前が使われると、私たち戦前を生きてきた者にとっては本当にぞっとするのですよ。それが権力を持って動かしていく可能性をつくった場合、これが戦前における我が国の失敗の最大の要因であったわけでございますから、そういう意味で、この点についての歯どめはしっかりしておかなければなりません。  今あなたは二条のことをおっしゃいましたけれども、これは確かにそうなっていますが、これは今までと違いますね。「国民の自発的意思を尊重するよう配慮する」、尊重するように配慮するですよ。今までは国民の自発性というものがこれは最大限に重く見られてきたわけですね。ところが、今度の場合は、「国民の自発的意思を尊重するよう配慮するとともに、職業能力の開発及び向上、」こういうふうになってくるわけですね。  この点でもこの問題はついての歯どめというのがどこにあるかというのが聞きたいのです。歯どめはどこにあるのですか、もう一回お答えいただきたい。
  239. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 これは、学習に関する国民の自発的意思を尊重するというのは、生涯にわたる国民の学習が他からの強制によって行われるものではない、みずからの意思に基づいて行うことを基本にするということを明らかにしたものでございます。そして、その配慮するというのは、全体の政策の上で尊重することについてそれを反映させるという意味でございまして、特に配慮するということがあるから全体の意味が弱まっているというような関係では決してないというふうに思います。
  240. 山原健二郎

    ○山原委員 大臣にもこの点を伺っておきたい、これは今後大きな問題になりますから。こういう国家権力が管理する、あるいは介入するというようなことは断じて許されないことでございますが、この点についての大臣の御見解を伺っておきたいのです。  もう一つは、いわゆる企業、民間事業者が関与することによりまして、その営利目的のためにこういう生涯学習というものが変形をされるとか影響を受けるとかということがあってはならぬと思いますが、この二つの点についての歯どめは何なのか、この点も伺っておきます。
  241. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 学習というのは、学習者の自発的意思に基づいて行われるわけでありますから、これはいわば学習者の意思というものが尊重されなければいけないということは自明の理だと思います。したがって、上から抑えつけてこういうふうに指導していくのだとか、そういうことではなくて、学習者がこういう方向で勉強したいというものにお手助けをするという態度が我々に必要でありますし、また、そのように私どもは考えております。  それからまた、営利の問題につきましては、これは、企業は営利をねらう団体だということでございましょうが、そのまた社会的な力をおかりをして営利ではなく社会のために貢献をしていただくという、その意思を尊重してお手助けをいただくものだ、このように思っております。したがって、営利を追求するというようなものではないと私は考えております。
  242. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、この数日来、各委員の皆さんの質問を聞いておりまして、本当に時間が足らないという感じを持ちますし、また随分疑問を持っておられるままですね。そういう状態でございますから、私は、この法案をやはり出し直すべきだということが一つと、ましていわんや七月一日から実施するなどということはぜひやめていただきたいというふうに思いますが、この点について最後に文部大臣の見解を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  243. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 生涯学習社会をつくって、いつでもどこでも望むときに勉強ができる、あるいは学習することができるという機会をできるだけ早く提供をしていくということが私どもに課せられた責務であろうかと思います。  かかる意味におきまして、この法案を御可決をいただき、そのための機会の整備をできるだけ早く行わさせていただきますようにぜひとも御理解をいただき、御可決をいただきますようにお願いを申し上げます。
  244. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  245. 船田元

    船田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  246. 船田元

    船田委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。麻生太郎君。
  247. 麻生太郎

    ○麻生委員 私は、自由民主党を代表して、生涯学習振興のための施策推進体制等整備に関する法律案について、賛成の立場から討論を行うものであります。  二十一世紀の社会を展望し、我が国が創造的かつ活力ある社会を築いていくためには、人々が各人の責任において選択し、生涯を通じて学習できるよう、多様な学習機会整備していくための体制を整えることが重要であると考えます。  今日、社会の各方面で生涯学習の重要性が指摘されておりますが、このような指摘がなされる背景として、私は、次のような点が挙げられることと思っております。  すなわち、我が国近代化の過程で生じた学校教育への過度の期待や依存、学歴尊重の社会的風潮といった状況を改め、人々が生涯を通じて絶えず自己啓発を続けるとともに、その成果が正当に評価される社会へ移行することが求められていることであります。  また、国民の所得水準の向上、自由時間の増大、高学歴化、高齢化などの進行により、生涯の各時期における人々学習需要が高まっていることも挙げられます。  さらに、科学技術の進歩、国際化、情報化の進展等に伴い絶えず新しくなる知識、技術を習得するための学習需要が増大しており、人々の生涯における各時期において、職場や家庭生活などにおいて不断の学習を行うことが必要となっていることもその背景になっていると考えられます。  この法律案は、このような社会的状況を勘案し、学習に関する国民の自発的意思を尊重するよう配慮しつつ、国民の多様化、高度化した学習需要に対応し、生涯にわたる学習が円滑に行われるよう、国、地方公共団体を通じて生涯学習振興のために必要な体制整備を図るためのものであります。  このため、本法律案においては、次のような重要な事項が盛り込まれております。  第一は、生涯学習振興に資するための都道府県における体制整備であります。この法律案においては、都道府県教育委員会が、学校教育社会教育、文化に関する情報の収集、整理、提供等の事業を相互に連携させつつ推進するため必要な体制整備を図るよう努めるものとし、このような体制整備し、望ましい基準を策定することとしております。このような体制整備を図ることは、生涯学習振興のために教育委員会が果たす役割の重要性にかんがみ、まことに時宜を得た適切な施策であると高く評価するものであります。  第二は、地域生涯学習振興基本構想であります。都道府県は、生涯学習の機会の総合的な提供を民間事業者の能力を活用しながら行うことに関する基本的な構想、すなわち地域生涯学習振興基本構想を作成し、文部大臣及び通商産業大臣の承認を申請することができることとしております。さらに、このため文部大臣及び通商産業大臣が必要な援助を行うことや、民間事業者に対する資金の融通を円滑化する等の業務を行う基金等についても規定いたしております。このような基本構想が作成され、地域住民に対して、さらに多様な生涯学習の機会が提供されることは大変有意義なことであり、極めて重要な施策であると考えます。  第三は、生涯学習審議会等であります。生涯学習振興に関し、広くかつ高い立場から的確な判断を下すことができる識見を有する者を構成員として、審議会を設置することは、学習者の視点に立った生涯学習振興施策推進していく上で、極めて有意義なことであると思われます。  以上のように、本法律案は、生涯学習振興を図るため重要な施策が盛り込まれたものであり、このような重要な意義を有する本法律案が速やかに成立し、昨今の高度化、多様化する国民の学習需要に適切に対応する施策が図られんことを切に期待し、委員各位が本法律案の趣旨に賛同されんことを願って、賛成討論を終わります。
  248. 船田元

    船田委員長 次に、吉田正雄君。
  249. 吉田正雄

    ○吉田(正)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、生涯学習振興のための施策推進体制等整備に関する法律案(以下生涯学習法案という)に反対の立場で討論を行います。  まず、本法律案は、臨教審、中教審の答申の趣旨が生かされておらず、生涯学習法案の名に値しないものであります。二つの答申では、科学技術の高度化、情報化、産業構造・就業構造の変化、さらには本格的高齢化社会の到来など、急激な社会変化の中にあって、人々が充実した人生を送ることを目指し、生涯にわたっての学習の需要の高度化、多様化に対応し、また、我が国社会の学歴偏重の弊害を是正し、人々の生涯にわたる学習を正当に評価する社会を築いていくことを重視しての、行政の生涯教育に関する理念課題とその基本政策をそれなりに提示していたと思われます。  したがいまして、文部省の当初の法案内容は、より包括的、体系的ではなかったかと思料いたします。  しかるに、国会に提出された法案は、十六の省庁に及んだと伝えられる政府内の調整がうまくいかず、生涯学習の意図とは遠くかけ離れ、少々の修正ではどうにもならない無残なものになってしまったと推察いたしております。  私たち日本社会党・護憲共同も、文部省に劣らず生涯学習の重要性を認識いたしております。したがいまして、文部省は、このような不幸な経過をたどった法案は提出すべきではなく、さらに周到な準備と十分な努力を払い、国民の理解が得られる法案として次の機会を待つべきだったと考えるものです。  今からでも遅くはありません。メンツや行きがかりを捨て、出直す勇気を持つべきではないかと強く訴えるものであります。  第二は、委員会審議が極めて形式的で不十分であるそしりを免れません。中教審答申が出されたのは平成二年一月三十日、生涯学習法案の閣議決定が五月十一日、本会議における趣旨説明が六月一日、法律の施行が七月一日であります。  政府部内の調整すら思うに任せぬこの重要法案を短期間の形式的な審議で成立させようとすること自体、審議軽視と言わざるを得ません。  私たちは、生涯学習が、ほとんどの省庁にかかわることから、少なくとも社会労働、地方行政、商工など最も関係深い委員会との連合審査を強く求めてまいりました。この結果、文教委員会理事会では、これらの委員会からの連合審査の申し入れがあれば、これを受け入れることを決定していました。  しかるに自民党は、「今回の生涯学習振興法は、文部及び通産両大臣の共管によって行われるものとされており、厚生省及び労働省の所掌に係るものについてはその対象外となったものである。したがって、自民党としては、社会労働委員会との審査については望んでいない。」という回答を六月十四日の社会労働委員会理事会で出してまいりました。この回答は、連合審査を行うという公党間の約束をほごにするものであると同時に、この生涯学習法案がいかに欠陥法案であるかを明らかに物語ったものであります。  次に、法案内容についてであります。  第一に指摘しなければならないのは、本法案に生涯学習の定義が欠けているということであります。文部省は、生涯学習は今や国民の常識であり、定義をするまでもないと答弁されました。しかし、民主主義の社会と言われる今日ですら、民主主義の理解は国民の中でさまざまであります。まして、生涯学習の概念や定義が国民すべてに共通であるなどと考えることはできないのであります。この点は、本委員会における本法案の審議を通じましても、明らかになりました。この生涯学習の定義を、本法案に盛り込むことは欠かせぬ要件であります。  この定義が必要不可欠であると申しますのは、我が国の今日の実情に照らせば、国民一人一人の生涯にわたる学習権を保障する上で多くの解決すべき課題を抱えているからであります。すなわち、何よりも「働き中毒」から「ゆとり」への転換、在宅介護からの解放、さらに「学歴社会」から個人の「多様な能力が評価される生涯学習社会」への転換が必要であると考えます。そのために私たちは、勤労時間の短縮、週休二日制の定着、ILO勧告の有給教育休暇制度の創設、デイケアやショートステイの制度の整備、省庁の雇用政策の抜本的改革などの実現が緊要であると考えます。  しかるに、本法案では、こうした点は労働行政や厚生行政で「別に講じられる施策」として簡単に片づけられています。これでは、生涯学習の本質的な部分がスポイルされていると言わざるを得ないのであります。  次に、生涯学習の主要な部分は学校教育社会教育、文化であるという答弁についてであります。生涯学習をそのようにとらえるのであれば、その主要な部分は文部省の今日までの行政でできるものであり、その充実を行えば、改めて生涯学習を云々する必要はないものであります。  文部省の答弁を聞く限りでは、学校教育社会教育、文化以外の生涯学習分野とは、「学習塾の教育」を除く「個人レベルでの学習」というふうに解されます。そうだとすれば、本法案が最も力を入れ、整備充実を図らなければならないのは、個人が行う自発的な学習に対して、国がいかなる援助ができるのかということになります。  しかし、本法案が構想しているのは、生涯学習の組織化であります。まさに自己矛盾としか言いようがないのではないでしょうか。  次に、本法案の最大のねらいであり、眼目である民間活力の導入についてであります。民間事業者が生涯学習に関与することにより、憲法、教育基本法の精神がゆがめられ、教育費に関する経済的負担増を強いることは明らかであります。その結果、低所得者、高齢者、障害者などが生涯学習権利行使に関し、不利な条件に置かれ、差別されることも明白であります。我が党は、このような構造を生涯学習に持ち込むことを到底認めることはできないのであります。  そのほか多くの問題がありますが、重要なもう一点は、本法案で生涯学習学校教育社会教育にも関係するとの観点から、教育の分野に知事並びに通産大臣の関与を認めているという点であります。  これは、教育教育現場が国民に直接責任を持って行われ、行政は必要な条件整備に責任を持つものの、教育内容への干渉、不当な支配を禁じている教育基本法の規定に反することであり、生涯学習法の制定に名をかりて、教育基本法の実質的な空洞化が行われることに大いなる疑義と危険を感ずるものであります。  最後に、改めて申し述べます。本法案は、経過の内容からして、文部省は勇気を持って撤回すべき法案であります。  もしそれができないとするならば、抜本的な修正を必要とする法案であり、我が党は十分時間をかけて審議し、それを実現するよう各方面に働きかけてきました。しかし、残念ながら、そうした努力が実を結ばずに本日の議了採決を迎え、我が党は最後の努力として、一、生涯学習における「国民の学ぶ権利」とそれを保障する「国と地方公共団体の環境整備の責務」の明確化、二、学歴偏重社会、学校歴社会、有名校歴社会の改革、三、公民館、図書館、体育館及び美術館、博物館等の抜本的拡充とそれらの事業分野の職務に変動を来さないよう配慮し、本法案に基づく新しい事業分野にかかわる専門的職員の養成・配置等について所要の措置を講ずること、四、労働時間の短縮、有給教育休暇制度の実現、障害者対策等の整備充実、五、生涯学習審議会の構成に当たっては、三分の一程度の勤労者代表委員を含むよう配慮し、また、審議会学校教育及び社会教育に関して審議を行う場合には、当該教育関係者の出席を求め、その意見を十分に聴取し、教育行政の整合性を保つよう配慮することなど十六項にわたる附帯決議の提案をいたしましたが、日の目を見させることができなかったことを極めて残念に思うものであります。  多くの国民が望んでいる真の生涯学習法の実現を目指し、日本社会党・護憲共同は今後も奮闘することを宣言し、反対討論を終わります。ありがとうございました。
  250. 船田元

    船田委員長 次に、山原健二郎君。
  251. 山原健二郎

    ○山原委員 日本共産党を代表し、生涯学習振興のための施策推進体制等整備に関する法律案に反対の討論を行います。  問題点の第一は、生涯学習とは何かについて理念や定義が明らかにされていないことであります。これは将来恣意的かつ拡大解釈されるなどの禍根を残しかねないものであります。また、教育基本法にのっとるとの規定もなく、教育法として重大なる欠陥を持つものであるからでございます。生涯学習体系への移行とか生涯学習社会とかを標榜するにしては法律として余りにもずさんなものであるばかりでなく、その結果、行政による勝手な解釈、法の運用を許すものとなることはまことに重大な問題であります。憲法、教育基本法に基づく教育行政の変質、再編が進められる危険があることを指摘せざるを得ないものであります。  第二は、国民の学習活動を上から統制する国、都道府県主導の体制づくりが図られていることであります。国が望ましい基準や承認基準など基本的政策方針を決め、それに沿って都道府県中心で施策が展開されることになっております。これは、現行の社会教育法体系と異なり、住民参加の保障もなく、逆に国の意向が優先される法規定となっております。国民の学習活動についてのノーコントロールという原則が骨抜きにされていることも重大な問題であります。  本来、学習者の多様な要求にこたえるには、身近な自治体が住民参加のもとで主たる役割を果たすべきでありますが、社会教育法体系の市町村主義もこの法案では姿を消しています。また、基本構想作成主体審議会の設置されるところも都道府県であり、教育行政の独立性も無視されております。  第三点は、民間活力導入を強調することにより、公的条件整備責任を後退させ、国民の学習要求を営利事業の対象、もうけの対象として見ている点で教育基本法の精神とは相入れないものであります。この民活優先の規定は民間産業の優位につながり、教育の上に営利の論理が君臨することになりかねません。  かかる重大な内容を持つ本法案でありながら、十分な審議が保障されなかったことはまことに遺憾であります。本法案は直ちに廃案とすべきものであることを強く主張いたしまして、反対討論を終わります。
  252. 船田元

    船田委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  253. 船田元

    船田委員長 これより採決に入ります。  内閣提出、生涯学習振興のための施策推進体制等整備に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  254. 船田元

    船田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  255. 船田元

    船田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  256. 船田元

    船田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十一分散会