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勝村政府委員 大臣が予算委員会に
出席しておりますので、かわりまして私からお答えを申し上げます。
トリプル安の解釈というのは非常に難しゅうございまして、民間の間でもあるいは
政府の中でも必ずしも定まった見方というものがあるわけではございません。したがいまして、ある
程度経済企画庁なりの意見ということで申し上げさせていただきたいと思います。
トリプルメリットと言っていましたときは、石油を加えて言っていたわけですけれども、現在、石油価格は一時
上昇いたしましたが、最近はやや安定した
水準になっている。したがって、
トリプル安というのはおっしゃったとおり、株、為替並びに債券
市場の問題だろうかと思います。
それで、これらの背景といたしましては、けさほどもちょっと申し上げたのですが、国際的に
金利水準がかなり高くなってきているということが
一つあろうかと思います。現在、
ヨーロッパでは大体九%台、
長期金利でございますが九%台、
アメリカで八%台半ば、それから
日本では、これは物によって違いますが、例えば長期プライムレートをとりますと七・九%という
状況にございまして、特に
日本の
長期金利は昨年夏ごろに比べますと総体的にもやや
高目になっているということが申せます。それから
ヨーロッパ、これは普通西ドイツの
金利をとりますが、西ドイツの
金利が昨年後半からかなり急速に
上昇いたしまして、それまでは
アメリカの
長期金利をやや下回っておったのですけれども、現在はむしろ西ドイツの方が上回るという
状況になっております。こういうような国際的な
金利の
上昇というのが
一つの背景としてあるのではないだろうか。
それで、
日本の
金融政策といたしましても、もちろん
国内の、例えばマネーサプライの高い
伸びというようなことを配慮いたしましたのと、それから、
市場実勢に追随したという形で
公定歩合が引き上げられておりますが、市中の
金利の
実勢としてはただいま申し上げましたような背景があろうかと思います。
それで、この三つの関係は一体どうなっているのかということでございますが、これは非常に難しゅうございまして、はっきり申し上げるといいますか、これも定説はないわけでありますのでやや個別になるかと思いますが、株式
市場について申しますと、昨年末に三万九千円近くまで
上昇いたしました。きょうはまた一時二万九千円台、たしか前場の終わりが二万九千六百円台だったと思います。一応そういうような
水準で推移をしている。我々は株については全く素人でございますので、株の実際
市場内での
変動がどうなっているかということを御説明する能力はございませんが、やや理論的な見地に立って申し上げますと、一般に株式価格というのは、
一つは
企業収益の
状況、それからいま
一つは
金利、特に
長期金利でございますね、
金利の
水準、それからいま
一つ言われますのはリスクプレミアムという、ちょっと
日本語で何と申しますか、英語を使って恐縮ですがリスクプレミアムという、大体この三つが
基本的に、長期的に株価を説明する
要因だというふうに言われております。
リスクというのはちょっと計測しがたいものですから、
企業収益と
金利ということに着目して申しますと、
日本の
企業収益の
状況は現在なお極めて堅調でございます。これは先日発表されました日銀の短期
経済観測によりましても明らかなとおりでございます。ただ、
金利の方は、先ほど申しましたように
長期金利がかなり
上昇をしてきた。ですから、これは株価にマイナスに効くのは当然だろうというふうに考えられるわけであります。
さらにもう一点、株についてつけ加えますと、昨年末の三万九千円に近い
水準、これはよく言われておりますが、かなり思惑的な、ちょっと言葉は適切でないかもしれませんが、かなり上げ過ぎなと申しますか
要因があったと考えられるわけでございまして、ある
意味では六十二年の十月の東京
市場の
状況に似ていたのではないだろうかというふうに考えられます。したがって、その三万九千円を基準にして、今三万円近くの
水準にありますものをこれだけ下がったというふうに言うのは必ずしも適切ではない面があるのではないか。もちろん、何円ぐらいが適切だということはちょっと私どもも申し上げかねますけれども、三万九千円のときと比較して大幅に下がったということを必ずしも言う必要はない。むしろ、現在の健全な
企業収益、それから
上昇してまいりました
長期金利の
水準、これを
考慮いたしまして現在の株価
水準を
判断すべきであろうというふうに考えております。そういう
意味では、
企業収益が堅調であるという現状から申しますと、株価がさらにこれ以上の崩落
状態を続けるということは、少なくとも理論的に申しますとあり得ないことであろうというふうに考えております。もちろん、
経済外的な
要因等いろいろございますから、それは一応おくといたしまして、少なくとも株価を説明する一般的な理論から申しますと、そういう
状況ではないだろうか。
それから、為替はさらに説明が難しゅうございまして、なぜ今百六十円か、きょうはたしか百五十八円台だったと思いますが、いずれにいたしましても一時に比べますと相当な
円安状況でございます。これは、私といたしましても一般的に言われていることを並べて申し上げる以上のことはできないわけでございますが――二時過ぎ現在で百五十八円〇五銭だそうでございます。それから株価は二万九千八百三十九円で、昨日に比べますとやや上がっている、こういうことのようであります。それで、
為替レートの問題でありますが、
一つは、
日本の経常収支黒字というのは、
黒字幅としてはこのところかなり顕著に縮小してきております。そういうことが
円安の方向に動く
一つの
要因ではないかというふうに言われておりますのと、それから現在直接対外投資の
水準が非常に高こうございまして、暦年で昨年の経常収支の黒字は五百七十億ドルでありましたが、上半期で対外直接投資が三百億ドルございました。下半期は恐らく同様かあるいはそれ以上の
水準だろうと思います。そういたしますと、現在は経常収支黒字以上の対外直接投資を行っているというような
状況でありまして、そういう対外直接投資はかなり長期的な計画に基づいて実際の資金の支出が行われますものですから、そのときそのときの
為替レートの
状況を見ながらドルを買うということではなくて、一定時期になれば必然的にドルを買わざるを得ない、こういうことのようでございまして、それもドル需要を強めているのではないかということが言われております。
それから、そういうフローの面だけではなくて、もう既に
日本もかなりの、四千億ドル近い対外債権を抱えておりまして、それがいろいろな形の外貨として保有されているわけでありますが、
日本以外にももちろんそういう外貨としてのストックというのは非常に大きいものがございます。そういうストックのいわば各国通貨間のポートフォリオの選択というのが相当激しく行われるのではないかという、これは
一つの説でございます。したがいまして、さっき申しましたようなフローの面だけじゃなくて、ストックにおける国際通貨の選択、ポートフォリオの選択というものが相当国際通貨間の
変動をもたらすのではないか。それで、ここのところ円に対する評価が相対的に弱まっているということがそういうことで強められているのではないかという
一つの説明もございます。
それから、ある
程度の思惑的な
動きというのもあるわけでございまして、例を申しますと、昨日
アメリカの
消費者物価が発表になりまして、これが
前月比〇・五%、エネルギー、食料費を除きますと〇・七%、かなり強い
物価の
上昇でありました。ところが、これで逆にドルが一時的でありますが強まった。なぜ強まったかというと、
アメリカに
インフレ懸念があるので金融緩和は行われないだろう。したがって、内外の
金利差というのは縮まらないというような、これは全くどっちで
判断するのか、本来インフレぎみの通貨というのは安くなってしかるべきだというのがファンダメンタルズ的な考え方なのでありますが、そういうことでむしろ
金利差に着目して逆に動くとか、それから本日
アメリカの
国際収支が発表されましたが、これは三〇%赤字が減っているわけであります。それ自体はむしろドルの評価を高めるものでありますが、これが
予想よりも赤字の減り方が小さかったというので逆にドルがやや弱含みになるとか、こういう卑近の例を見ましても、相当な思惑で為替
市場が動いているということは否定できないのだろうと思います。
では、本来
為替レートというのはどれぐらいが正当なのかという御議論がございますが、これについてはちょっとお答えすることはできません。ただ、我々も勉強といたしましていろいろなモデル等を使いまして、こういう説明の仕方、ああいう説明の仕方、いろいろ考えておりますが、そういう考え方から申しますと、やはり百六十円というのはかなり
円安の方向にぶれているのではないかと考えざるを得ないということは申し上げてよかろうかと思います。そういうような背景がございまして、
日本のみならず国際的な
金利水準の高まり、株式
市場につきましてはさっき申しましたような
状況、それから
為替レートの背景としましては今申しましたような条件がいろいろ重なってこういう
状況になっているのだと思います。
ただ、では
トリプル安は何だとおっしゃいますと非常に当惑するのでありますが、
一つの解釈といたしましては、
円安の方にぶれますと、普通の
状態でありますと
円安というのは
景気刺激的な作用をいたします。これは円高になって輸出が減って不況になったということの裏返しと考えていただけばいいのですが、通常であれば、
円安になればむしろ輸出がふえて
景気はよくなるというのが過去の考え方でございました。ところが最近は、
円安になったからといって急に輸出がふえるという
状況ではございません。あるいは国際環境からいってそう輸出をふやせないという環境もあろうかと思いますし、直接投資の効果もある。現に輸出数量がふえるという
状況にはございません。そういたしますと、
円安になりますと結局、
国内では
輸入価格の
上昇によりますコスト高の方が
国内経済にマイナスの
影響をしてくる。そういうことから
企業収益にはマイナスの効果として響いてまいりますし、
景気に対してもむしろマイナスの見方が強まる
可能性があるということがございます。そういうことも株式
市場の方に反映して、両方が安くなるというような現象があるいは起こっているのかなというふうに考えております。
以上、くだくだといろいろ申し上げました。的確なお答えができませんで恐縮でございますが、考えられる条件としては以上のようなことでございます。