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1990-09-26 第118回国会 衆議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年九月二十六日(水曜日)     午後一時開議  出席委員    委員長 亀井 静香君    理事 石破  茂君 理事 大原 一三君    理事 中川 昭一君 理事 穂積 良行君    理事 柳沢 伯夫君 理事 石橋 大吉君    理事 日野 市朗君 理事 西中  清君       愛野興一郎君    内海 英男君       大石 千八君    唐沢俊二郎君       古賀  誠君    杉浦 正健君       鈴木 宗男君    田邉 國男君       近岡理一郎君    仲村 正治君       丹羽 兵助君    二田 孝治君       松岡 利勝君   三ツ林弥太郎君       有川 清次君    遠藤  登君       佐々木秀典君    田中 恒利君       鉢呂 吉雄君    堀込 征雄君       前島 秀行君    目黒吉之助君       藤原 房雄君    藤田 スミ君       小平 忠正君    亀井 久興君  出席国務大臣         農林水産大臣  山本 富雄君  委員外出席者         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         警察庁刑事局保         安部経済調査官 松原  洋君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省農蚕         園芸局長    安橋 隆雄君         農林水産省畜産         局長      岩崎 充利君         農林水産省食品         流通局長    馬場久萬男君         食糧庁長官   浜口 義曠君         林野庁長官   小澤 普照君         水産庁長官   京谷 昭夫君         資源エネルギー         庁石油部流通課         長       岡本  巖君         海上保安庁警備         救難部警備第一         課長      大森 寿明君         農林水産委員会         調査室長    西島  勝君     ───────────── 委員の異動 九月二十六日  辞任         補欠選任  三ツ林弥太郎君     松岡 利勝君 同日  辞任         補欠選任  松岡 利勝君     三ツ林弥太郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ────◇─────
  2. 亀井静香

    亀井委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石破茂君。
  3. 石破茂

    石破委員 大臣並びに政府委員皆様、閉会中にもかかわらず、御苦労さまでございます。  ガットウルグアイ・ラウンドは、交渉期限の十二月を控えましてまさしく大詰めであります。そしてまた、きょうもこの雨の中、多くの農業者皆様方が日比谷の野外音楽堂にお集まりになり、デモ行進を続けておられる。  私どもは、政治というものは未来責任を持つものである、かように考えております。多分大丈夫であろうとか、多分いけるであろうとか、そういうようなものはギャンブラーのすることであって、政治家のすることではない。私どもは、未来の子孫に対して責任を負うまさしく重要な局面にかかっておる、かような認識をいたしております。  私は、七月に同僚議員皆様方と鹿野前農水大臣を団長といたします交渉団の一員に加えていただきまして、ジュネーブガット本部またワシントンにおいて、各国EC大使またヤイター氏、ヒルズ氏と会見する機会を得させていただきました。  そこで痛切に感じましたことは、国内で言われておることと実際に行われておることは随分と異なっておるのではないかという印象であります。国内報道というのは、まるでガット中心議題日本の米だ、日本の米に議題は集中をしておる。そしてまた、ガット恩恵に一番浴しておるのは我が日本の国である、日本がだだをこねておるからまとまらない、しかし、一番恩恵に浴しておるのは我が国であって、やはりこの際部分的な開放もしくは開放に応ずることが我が国の責務である、そういうような論調が最近とみに見られるような気がいたしております。しかし、実際は違うのではないか。まさしくそのような報道論調アメリカ主張そのままではないかというふうに考えており、とてもこれは承服しがたいものであるというふうに考えております。事は外交交渉であります。しかしながら、外交交渉において最も大切なことは、何よりも国論の統一国内の世論の統一、それが必要ではないかというふうに考えておる一人であります。  本日は限られた時間でございますので、論点整理も含めまして政府の御見解を承りたい、かように存じます。  まず最初に、事務的なことからお尋ねをいたしたいと存じます。  十月の一日並びに十五日にそれぞれ提出をすることになっておりますカントリーリスト並びにオファーリスト、それについて我が国はどのような対応を考えておられるか、簡潔に御答弁をいただきたいと存じます。
  4. 川合淳二

    川合説明員 今お話がございましたカントリーリストそれからオファーリストにつきましては、それぞれ十月一日それから十月十五日までに提出するということになっております。  この国別表につきましては、御承知のように各国交渉上の立場を害さないものとされておりますし、オファーリストについても、私ども意味のあるオファーリスト提出のためには交渉方式についての合意形成が先決であるということを主張してきております。しかしながら、十二月のウルグアイ・ラウンド最終合意まであと二カ月余りでございます。そうした現状にかんがみまして、我が国といたしましてもこの国別表並びにオファーリスト期限までに提出するよう、作業並びに検討を進めているところでございます。  現在の私どもの考え方といたしましては、従来の我が国立場に立って、この立場並びに主張を踏まえて、この国別表オファーリスト提出したいということで検討を続けているところでございます。
  5. 石破茂

    石破委員 それでは、第二点をお伺いをいたします。  これはまさしく論点整理でございますが、今回のガットウルグアイ・ラウンド構図図式、これをどのようにとらえるべきかということでございます。  冒頭に申し述べましたように、あたかも日本の米が中心議題のようでありますが、私どもはそのようには思っていない。まさしくこのラウンドというものは、十五も分野があるうちで農業分野というのはその十五分の一である、そしてまた、その中でもEC農業政策をめぐる問題であるとかいろいろなことが論議をされておって、決して米が中心議題ではないというような理解をいたしてはおります。  もちろん、私どもガット成功というものは望むものでありますし、そのようなことであればガットを脱退しろというような勇ましい論を吐くつもりも毛頭ない。ガット成功というものは、心ある者は皆ひとしく願うておるはずであります。しかしながら、ガット成功と引きかえに日本の米を自由化しなければガットがつぶれるのだからというような論は成り立たぬし、日本国民生存、安全、そういうものを代償にしてまで譲るべきものかどうかという気持ちもしておる一人であります。  このガット構図、今回のラウンド構図でありますが、端的に言ってしまえばこれは輸出国同士争いではないか、もっと言ってしまえばECアメリカ争いではないのかな、そしてまた、どちらかといえばアメリカ主張に近いケアンズ・グループがそれに乗っておる、そういうことではなかろうかと思っております。しからば、アメリカの真のねらいは一体どこにあるのかということを私どもは考えてみる必要があるのではないか。アメリカのねらいというのは、実はECたたきにある。EC農業保護政策可変課徴金に代表されるような保護政策、それを打ち砕くことがアメリカの目的であって、そしてまた、アメリカにしてみれば、日本ECの側につかせてはならぬ、少なくとも中立でおってもらわねば困る、そのためには日本の米をここで徹底的にたたいて、日本ECの側に回らせないというようなことを考えておるのではないかというふうに私は考えておるところであります。  先般、ジュネーブガット本部におきまして、ECのトラン、そしてまたアメリカのヨークサ、そういう方々と会見する機会を得た。その折に、EC大使がこういうことを言われました。おまえたち日本ECと組まないかということをはっきり言った。その後でアメリカ大使と会見したときには、アメリカ大使は、おまえたちECと変な取引をしたんじゃないだろうな、自分たちの国がだれのおかげで成り立っているかよく考えてみろというようなことを言うわけであって、まさしく日本を真ん中にしてアメリカECが綱引きを演じておる、そういう構図ではないかというふうな理解をいたすわけであります。  アメリカも、よくよく考えてみれば農業保護の元祖はどこかといえば、これはどこでもないアメリカではないか。ニューディール政策の中にきちんとそのことは書き加えておったはずでありますけれども、その結果として何か招来をされたか、それは、豊かな農民と豊かでない農民の階層の分離を招いてしまったのではないかということだと私は思います。同様に、アメリカはずっと米を輸出してきたわけでありますし、その大きな輸出先イランではなかったか。イランに革命が起こり、ホメイニが政権をとり、そして、そのことによってアメリカは米の大きな輸出先を失った。米が大変に余ってしまって、さあこれをどうするかというのがアメリカ事情ではないかというふうに思っております。  そしてまた、しかし我が国においてはどうか。農産物が余っておるという点においては我が国でも同じではないかということであります。何もアメリカECだけが余っておるわけではない。私どもの国だって米は余っておる。しかるに、私たち農家皆様方に大変な御無理をお願いし、そしてまた第一線の行政官皆様方に御無理をお願いして、減反という手法を使って、米余りというものが生じないように、そしてまた、過去二回の米余りのときに援助米としてそれを用いてタイなど諸外国に迷惑をかけた、そういうことが起こらないように、減反という血を流すやり方でやっておるはずです。しかしアメリカ、これはどのようなやり方か詳しく言及する時間はございませんけれどもマーケティングローンというのは、簡単に言ってしまえばこれは輸出補助金以外の何物でもない、はっきり言ってしまえばダンピング輸出にほかならない。そういうようにアメリカ過剰農産物の後始末を、なぜ血を流してまで、農家皆様方に犠牲を強いてまで生産調整をしておる我が国が負わねばならないのか、私はかような気がしてならないわけであります。  ECにおいても事情は似たようなことではなかろうかというふうに考えております。ECも同じように過剰な余剰農産物を抱えておる、そして、それを補助金つき外国輸出をしておる。つまり、ECアメリカ争い、そういうふうに理解をすることが正しいのではないかというふうに私は考えておりますが、ガットウルグアイ・ラウンド図式につきまして、もう一度政府の御見解を賜りたいと存じます。
  6. 川合淳二

    川合説明員 ただいま先生から詳しくお話がございましたので、重複する点が多いと思いますので、なるべく簡単に私から答えさせていただきたいと思います。  やはり今回のウルグアイ・ラウンド背景といたしましては、一九八〇年代半ばに過剰農産物国際市場で処分するためにアメリカEC間で補助金つき輸出競争が激化いたしまして、農産物貿易の秩序が混乱したということがあると考えております。現在、最終合意に向けていろいろ議論は進められているわけでございますが、各国ともいろいろな困難な問題を抱えておりまして、特に今御指摘のこの輸出補助金をめぐっては、各国間の基本的立場の相違は埋められるに至っていないというふうに考えております。したがいまして、このような中で各国間の利害を調整していくことは非常に大変だろうと思っております。  特に、輸出補助金をめぐる交渉はこれから一番の中心課題になろうと思っております。これは御指摘のとおりでございます。その構図の中で我が国がどういうふうに位置づけられるかということは必ずしも明確にできない点もありますが、やはり食糧輸入国という立場がございますので、こうした立場を十分に反映した交渉結果が得られるように努力していくべきだろうというふうに考えております。
  7. 石破茂

    石破委員 今局長お話しのとおりであろうかと思います。  繰り返すようでありますが、私どもは、アメリカから米を入れることにしたのでもっと減反しろなどということが実際問題言えるかということであろうかと思います。今、それでも米が余っている、だから減反をしてちょうだい、国内消費量も減っている、だから減反をお願いしますというふうなことで何とか農民皆様方の御理解を辛うじて得ておるのでありましょう。しかし、それが仮に、もしアメリカの米を入れますから減反をもっとしなさい、私はそのようなことはとてもではないが言えた話ではない。それがもしアメリカが正しい政策選択をしてきた結果としてならば、それもまたやむを得ない面があるかもしれませんけれども、これはダンピング輸出であり、そしてまた農政の失敗である。それのツケを負うことはいかがなものかというふうに信じて疑わない一人でございますので、ぜひよろしくお願いをいたしたいと存じます。  さて、冒頭申し述べましたように、最近とみに、ある程度の自由化はやむを得ないではないかというお話が出てまいりました。その背景について私は存じません。どのようなことなのかよくわかりません。しかし、意外とその説がかなりの方の御支持を得るに至っておるのではないか。私も国会が休会中でありますので選挙区をあちらこちら回らせていただいております。石破さん、そんなに米は絶対守るなどという勇ましいことはそろそろ言うのはやめたらどうですか、あなた、またうそつきといってみんなにしかられますよ、そろそろそんな旗をおろしたらどうですかというよう な方がおられる。私は、随分とそういうような影響が出てきてしまったなというふうに悲しく、そしてまた残念に思う一人であります。  さて、いろいろと部分自由化は仕方がないではないかというお話がなされております。その一つは、日本が一番ガット恩恵に浴しておるのだから、まあある程度は仕方かないじゃないか。アメリカ国会議員お話をいたしますと、必ずこういうことを言うのですね。おれたちはこんなに自動車を買ってやっているじゃないか、ECはそんなに買っていないでしょう、日本の国はこれだけアメリカ自動車を買ってもらっているのだから、米ぐらい入れたっていいじゃないですかということを言うわけであります。それでなくても中東の問題が勃発をいたしまして、日本の国というのは非常に評判がよくない。特にアメリカ国民には評判がよくない。要するに、日本人というのは戦争はよその国にやらせて自分たちは金だけ出すのだね。自動車を売るだけ売って米も買わない、まことに勝手な国民である。中間選挙を控えてますますそういうような論が盛んになってこようかと思います。ですから、日本もそういうように国際的な責任としてある程度は仕方がないのじゃないかというような説がありましょう。  そしてまた、アメリカ人たちが言うのは、日本の国はお金持ちではありませんか、幾らでも円があるじゃありませんか、食糧が足りなくなったらそのお金で世界じゅうから食糧を買えばいいではないですかということを言う。議会の関係者は特に言う。また日本の中にあっても、食糧安全保障論というのはまことにナンセンスであって、あちらこちらの国に輸入先を求めておいて危険分散をすれば大丈夫だというようなことも言われるのであります。そして、備蓄があるではないかというお話もございましょう。  そしてまたございますのは、これは大前研一先生などが所論として述べておられるところでありますが、どんなに米を守る、自給すると言ってみたところで石油がとまったらどうするのですか、石油がとまったら電気炊飯器は動かぬでしょう、トラクターも動かぬでしょう、コンバインも動かぬでしょう、それであれば米だけ自給したって意味がないのじゃないですか、そういうようなナンセンスな議論はやめなさいというお話がございます。私はそれもおかしいと思う。何のために石油備蓄いたしておるのか、何のために原子力発電をやっておるのか。我が国では、第一次のエネルギー自給率は一七・三三%あるはずであります。もし石油がとまるというような事態になりましても、それは優先順位があって振り分けられていくものでありましょう。食糧生産というのはまず第一番にエネルギー供給先として位置づけられるものであって、石油がとまったら意味がないのだから食糧自給論はナンセンスだ、これも私は当たらないと思う。まず前段、それだけのことにつきまして、お役所の見解を承りたいと存じます。
  8. 鶴岡俊彦

    鶴岡説明員 備蓄輸入先多角化を図るというようなことは、確かに食糧安定供給確保のための一つの手段であると思います。しかしながら、農産物備蓄にはおのずから限界があります。また、輸入先多角化につきましても限界があろうかと思います。またその上に、農産物国際需給が中長期的には不安定な要因を抱えているというようなことから、過度に海外からの輸入供給に依存するということは問題があるというふうに考えております。  そういうことから、我が国農業につきまして、与えられた条件を最大限に生かしながら生産性の向上を進め、国内での基本的な食糧供給力確保を図りながら輸入の安定に努めていくということが肝要かと思います。また、石油自身我が国にとって大切なエネルギー源であることは間違いないわけでございますけれども、今先生指摘のように、食糧は人間の生存にとって最も基礎的な物資であります。また、生産が天候その他自然条件に左右されるというようなことでもございまして、石油等物資とは基本的に異なる性格を持っているというふうに私ども認識して行政を進めているところでございます。
  9. 石破茂

    石破委員 それでは、こういう説はどうですか。消費者選択するものだという説がございますね。つまり、消費者はおいしい安い米が食べたい、それは消費者選択に任せたらどうですかという説がございます。これもかなり説得力を持っているように私は思う。しかしながら、本当に外国の米というのは安いのだろうか、本当に外国の米というのはおいしいのかということをきちんと検証してみる必要があるのではないかというふうに私は思っております。  委員各位御案内のように、米は小麦と違いまして、シカゴの穀物市場のようなものがない。国際市場というものがないから、タイの米の価格国際価格というふうになっているはずでありますが、これは本当に安定したものなのでしょうか。これは乱高下をするものではありませんか。そしてまた、マーケットが狭いがゆえに、少しの減収になったとしてもそれがそれだけにはとどまらず、物すごく大きな価格の変動になってあらわれるのではないか。決して外国の米が日本の米よりも安いと、私は思わない。運賃やその他のものを入れれば実際はほとんど変わらない。そしてまた、食味がまずいということもあり得るはずでありますが、その点につきまして御見解を承りたいと存じます。
  10. 浜口義曠

    浜口説明員 先生指摘のように、一つは米の貿易構造という問題があろうかと思います。米の貿易構造は、今先生指摘のように、麦と比べてみた場合、俗にその構造が薄いと言われておりますように、全世界で生産される部分輸出に回されるものは小麦に比べても五分の一といったようなことでございますので、そういったような意味から、まず第一に、極めて価格が乱高下するというのが過去の経験でございますし、実態でございます。  一方、先生が第二番目に御指摘のように、米の市場というのが小麦市場と同じような単一の市場かということを吟味してみました場合に、御指摘のとおり、私ども日本人が好んでおりますこのジャポニカというものと、インディカ、あるいは各種のいろいろなものが出ておりまして、世界的には我々が国内で食生活に供しておりますものは極めて薄いということでございまして、先生の御指摘のように、一般の国際市場である小麦といったようなものと同日の談に考えられないというのが実態だというふうに考えているところでございます。
  11. 石破茂

    石破委員 今長官からお答えがあったとおりではなかろうかと私も思うのですね。  タイ米価格というのは物すごく振れる。これは円ドル換算レートにもよりますが、一九七三年には一トン当たり幾らかといいますと、四万八千二十三円であった。ところが、これは一九七四年には十五万三千四百六十五円にはね上がっている。たった一年で三倍以上にはね上がっておるということがある。そのときの政府売り渡し価格というのは、一九七四年だけ言いますと、タイ米が円換算して十五万三千四百六十五円なのに対して政府売り渡し価格が十七万九百三十三円ということもある。もちろん円ドル換算レートは変わりますから、この一事をもって断ずることもできませんけれども、やはりそういうようなことも私どもは考えてみる必要があるのではないかというふうに思っております。  また、論者の中には、どうせ外国の米はまずいんだからと言う人がおりますね。外国の米はまずいんだから、消費者選択に任せておけば、日本人は賢いからそんなもの食べやせぬと言う人がありますが、私は決してそうだとは思わない。今讃岐うどんというのはほとんどオーストラリア小麦でつくっておるはずだ。ASWというのでつくっておる。日本が一時期小麦を安楽死させたときに、何のことはない、日本の商社がオーストラリアに行ってASWという、いろいろなものを調合した、日本のめんに一番合ったものを開発したということがある。これはオーストラリアのサシの入った牛肉でも同じことでありまして、しからば 同じように、外国でおいしい米が絶対できない、そんなことは私は言い切れないと思っております。  そしてまた、日本の米は日本農業のエースであるから大丈夫であると言う人がおりますが、しかしアメリカの稲作は何ヘクタールでやっているかというと百六十ヘクタールでやっている。日本は一ヘクタールであって、こんなものは本当に競争になるのでしょうか。  そしてまた、労賃にいたしましたところで、タイ労賃というのは一時間当たり百十円、八六年の市場であります。日本は千八百八十九円。タイは、二期作、三期作、四期作までできると言われておる国であります。こんなものに勝つことができるのか。  もちろん私どもは、日本の国の中で徹底したコスト低減はやっていく。それは農業団体皆さん方生産者方々も、何とか三割のコスト低減をやろうということでやっておられるはずであります。しかしながら、我が国においてこれだけ二種兼業農家がある実態において考えれば、そのように物すごい大規模の拡大、生産性を飛躍的に上げるような、そういうことは難しいのではないか。水の管理はだれがやるんだ、農道の管理はだれがやるんだ。言うことこそ易しいけれども、それはなかなか困難の伴うものではないか。仮に自由化した場合に、五%でとまるとか一〇%でとまるとかそのような保証はどこにもないのではないか。しからば、そのように競争力の劣る私どもの国がどんなに最善の努力をしてみても、これに打ちかつことは甚だ困難ではなかろうか、かように考えておりますが、その辺につきましての御見解を承りたいと存じます。
  12. 安橋隆雄

    安橋説明員 先生ただいま御指摘いただきましたように、アメリカ産の米とタイ産の米と我が国の米というものをコスト面で比べてみますと、やはりアメリカの経営規模の広さ、あるいはタイにおきます我が国と比べての労賃の格差というものを前提にいたします限り、なかなかその差を埋めることは難しいのではないかというふうに思われます。特に、私ども我が国の国土条件でいろいろ制約がございますし、やはり土地利用型作物、米のようなものにつきましては、ある程度国産のものは割高にならざるを得ない、内外価格差を急速に縮小することは困難であるというふうに考えるわけでございます。  しかし、米につきまして、この三月に私ども生産性向上のガイドラインという意味での「土地利用型農作物生産性向上指針」というようなものをつくりまして、これに即しまして今後生産基盤の整備でございますとか経営規模の拡大、それから生産組織の育成等を通じまして内外価格差の縮小に地道な努力を続けていくという必要があろうと考えておりますし、こういった事情にありますことを消費者も含めた国民各位に御理解をいただきまして、その御支援も得ていかなければならないし、私どもとしてもそういう努力を今後続けていかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  13. 石破茂

    石破委員 残り時間がわずかになってまいりましたので、最後に大臣の御見解を承りたいと存じます。  山本大臣はどこに行きましても大変に人気がある。きょうも私のところに生産者の方が随分お越しになりました。立派な大臣だ、あの大臣であれば私たち一生懸命一緒になって闘うというふうに口々におっしゃっておられたことでございました。  私はとにもかくにも、冒頭に申し述べましたように、責任のないことをしてはいかぬと思っておるのであります。私は昭和三十二年の生まれでございますから、戦争後の食糧のなかった時代のことは存じません。しかし、親でありますとか、そしてまた多くの老人の皆様方お話を聞くことがある。戦争が終わって食糧がなくなった、焼け残った着物やら何やらいろいろなものを持って、頼むから米を分けてくれと言ってもほとんど分けてもらえなかった、あんな思いだけはしたくないという話を聞く。アメリカに行って議会の皆さん方と話をして、おまえの国は金があるんだから世界から買えばいいじゃないかと言われたときに、私はそのことがまさしくダブって感じられたことでございました。  日本の国は、国土も狭ければ資源もない、食糧の自給もできなければ、いい悪いは別にして軍隊だってそんなに強くない、人口をたくさん抱えた国なのであります。だとすれば、この国が生き残っていくためには、本当に全知全能を絞ってやっていかないと、これは生き残ることができぬのではないか、私たちの国はそういう国ではなかろうかと思っております。  それで、中東紛争のときに我が国はいろいろな非難を浴びておるわけですね。日本の国は何もしない国だ、恩恵だけ浴して金だけ出して何もせぬ。苦しいこと、汚いこと、きついこと、給料の安いこと、休暇の少ないこと、そんなものは外国人にやってもらいましょう、そしてまた戦争は外国人にやってもらいましょう、食糧は金に飽かせて世界じゅうから買いあさりましょう、そんな国が長続きするとは私はとても思えないのであります。この際、本当に並み並みならぬ決意をもって――何も私たち農家のためにやっておるわけではない、農業団体のためにやっておるわけではない。日本の国の生存をかけて、残された期間はわずかでありますが、正々堂々とガットの場において我が国主張を貫いていただいて我が国の将来の安定を期していただきたい、これが恐らく全国民大臣に対する願いであろう、かように思っておりますが、御見解を最後に承りたいと存じます。
  14. 山本富雄

    ○山本国務大臣 今までずっと先生お話、御質問を聞いておりましたが、大変示唆に富んでおりますし、また並み並みならぬ御見識をお持ちで、傾聴いたしました。  それから、我が方の長官局長からるる答弁がございましたけれども、これはもう先生すべて御承知のとおりでございまして、最後にお触れになりました、金に飽かせて買ったならば、こういう話がございますし、また、我々はただ単に日本生産者のためだけにやっているのじゃないんだ、消費者を含めた日本の国の生存をかけてこの食糧問題、米問題に取り組んでいくんだ、こういう御決意でございまして、私も全く同感でございます。  そこで、先ほど来先生がお触れになりましたが、政治家は将来に責任を持て、こういう冒頭の話がございましたけれども、中長期的な農産物国際需給を見ますと畜産物の消費の増加がどんどん進んでおりまして、飼料穀物需要が大変増大をしておる。あるいはまた、これもよく言われることでございますが、開発途上国を中心とする人口が累増しておる、そして開発可能地が逆に減少しておる。また最近言われます地球温暖化の問題などを含めまして、異常気象、異常現象、地球に頻頻としてあらわれる、いわゆる砂漠化の進行などということもございます。それらを数え上げてまいりますと、いわゆる不安定な要素、要因ばかりでございまして、我々が食をしっかりつかまえていかないと、農業をしっかり各国とも打ち立てていかないと、将来大変なことになるのではないか、こういうことでございます。  また、米の市場の問題、今先生るるお触れでございますが、これも世界的に見てこのパイは小さいわけでございまして、したがって、非常に不安定だ、価格の乱高下も従来の例を見ても、もう明らかに大変な乱高下があるということもはっきりしているわけでございます。  そこで、私どもは、ただ買えばいいじゃないかみたいな考え方に無責任に同調するわけにはいかない。もしそういうことをすれば、世界じゅうから恨まれ、たたかれる。ですから、今生産者のためにだけじゃなくて我が国国民の将来を考えつつ、我が国のことを考えつつと、こう申し上げましたが、実は世界じゅうの各国のことを考えて、ただ金に飽かせて食糧を買えばいいんだ、こういう考え方は他に及ぼす影響が非常に大きい、すな わちこれは輸出国も輸入国もないことなんだということを、我々はこの間来、力説をしておるわけでございます。さればこそ、国会においても三たびにわたって、我が国の基幹作物である米については国内産で自給をすべし、こういうふうにはっきり与野党満場一致で決められているわけでございまして、これはもうしばしば総理も私も、この農水委員会でも予算委員会でもあるいは本会議でもお答えをしているとおりのことでございます。  いよいよウルグアイ・ラウンド、最終段階に入ってまいりました。また、御指摘の十月一日、十五日の山場もすぐ目の前に参りました。参れば参るほど、我々の従来の主張というものがいかに正しかったか、あるいはこれからも正しくあるかということに自信を持って進めてまいりたいというふうに考えております。
  15. 石破茂

    石破委員 終わります。ありがとうございました。
  16. 亀井静香

  17. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 私は、本日はいわゆる国会決議の問題をまず第一に取り上げて質問をさせていただきたいと思います。  初めに、我が事を申し上げて大変恐縮なんですけれども、私は弁護士の仕事をしております。そして、実は私の父親は、もう亡くなりましたけれども、長く自民党の国会議員でもありました。その息子である私が、自民党に行かないで社会党からこうして出させていただいているというのは、実は憲法にこだわり続けてきたからだと言ってもいいのではないかなと考えております。  戦争中、私たちはいわば軍国少年としてまさに軍国主義の教育を受けてまいりましたけれども、あの悲惨な戦争が終わってみたら、今まで私たちが学んでいたことの多くは、これはもう間違っていたことであるということが知らされました。そして、私どもが新しくできた中学に入りました年にこの新しい憲法と出会ったわけでありまして、このときの新憲法に対する思いというのは、私どもは子供心に大変強いものがありました。平和、民主主義、そして基本的人権を大事にしようというこの三本柱、これを旨とすることを考えながら成長いたしまして、そういう憲法を生かす仕事として弁護士を選びました。そしてまた、戦後一貫してこの憲法を大変大切にしてきた政党が日本社会党である、こう私は見てまいりました。もちろん、大石先生のように、自民党の中にも護憲派と言われる議員さんもいるわけでありますけれども、そういうようなところから、私は社会党にくみしたというように御理解をいただきたいと思います。  ところが、そういう立場で見てまいりまして、最近どうも憲法が軽視をされているのではなかろうか。御案内のように、今中東紛争に絡んで自衛隊の派遣の問題などということも議論をされておりますが、これなどもどうも国会での十分な議論を経ないで、政府あるいは与党がいろいろなことをする。今の憲法のもとでも、あるいは自衛隊法のもとでも、やり方によっては自衛隊を派遣することもできるのだというような諭調が出ていることは非常に憂慮にたえない思いがいたします。  そしてまた、農業の問題に関連いたしましては、ただいま石破委員からの御質問の最後でまさに正鵠を得た御質問があったと思って、私も感銘を受けているわけですけれども食糧の問題というのはまさに日本国民生存のあり方にもかかわる問題だろう、こう考えておるわけです。そういうことにかんがみて、国会においても、もう周知のとおり、第九十一回国会においては衆議院の本会議食糧自給力強化に関する決議が全会一致で可決されておりますし、それからまた百一回国会におきましても、これは衆議院で米の需給安定に関する決議が行われております。そして、一番新しくは昭和六十三年九月二十日に、第百十三回国会、衆議院の本会議において米の自由化反対に関する決議が満場一致で可決をされ、そして翌九月二十一日には参議院においても、本会議においてこの衆議院の決議と全く同じ決議がこれまた満場一致で可決をされておるわけでありまして、この決議の重さというのは、私ははかり知れなく大きいものがあろうかと思っております。  ところが最近、例えば一番新しい情報では、去る九月二十一日の参議院商工委員会での質疑において、武藤通産大臣が、今申し上げました特に米に関する決議についても見直しが必要であるかのごとき答弁をなされている。例えば、これは九月二十二日の毎日新聞による要約ですけれども、「日本の一番のウイークポイントは農業問題で、コメの輸入禁止の国会決議があるから動きが取れない」と述べた。これは議事録そのものではありませんから、要約されたものですからあるいは正確を欠くのかもしれないにしても、他の新聞などでも大体同じように、この米禁輸の国会決議の見直しが必要であるかのごとくとられるというような要約がされていることを見ると、やはりそういう御趣旨の答弁ではなかったのか、こう思われるわけであります。  そこで、それでは国会決議というものは一体どれほどの効力を持つものなのか。私は、少なくとも国会の決議というものは、衆議院、参議院、それぞれが決議をさまざまなことについてすることができるわけですけれども、これは当然の権能として持っている、また、できることであり、それがなされた以上は、それが議院の意思の表明になるものだと思われるわけであります。  国会の決議については、憲法上あるいは国会法上で明文規定があるかどうかにつきましては、例えば憲法の六十九条では内閣の信任、不信任決議についての特別な定めがございますけれども、それ以外には必ずしも明らかな規定というのはあるようには見受けられませんが、しかし、国会というものがあくまでも憲法四十一条によって国権の最高機関である、そしてまた憲法の四十三条によって、両議院は全国民を代表する選挙された議員で構成する、いわば国家権力の中での最高の地位にあるというところからし、そしてそれが由来するところは、それぞれの議員が直接に主権者である国民から選定をされて、国民の代表者として行動するんだというところからきている。そこで、この院の決議というものはいわば法律そのもの、あるいは特に全会一致でなされた決議というものの重みは、多数決で決まって成立する法律以上のものがあるのではなかろうかとも考えておるわけであります。  そこで、まずこの際、国会決議の性格それから効力あるいはその拘束力、特に政府及び国会議員に対していかなる拘束力を持つものか、このことについて内閣法制局の御見解をただしておきたいと思います。
  18. 大森政輔

    大森(政)説明員 一般論としてお答えいたしたいと思います。  お尋ねのいわゆる国会決議でございますが、これは議決の形式で行われる衆議院または参議院の意思表示でございます。そして、言うまでもございませんが、国会は憲法上国権の最高機関であるというふうに位置づけられているものでございますから、政府国会を構成する議院の意思として示された決議の趣旨を尊重して行政を遂行すべきものであるということは当然のことでございます。その意味におきまして、政府はいわゆる国会決議の趣旨を尊重し、その実現に努力すべき政治的な責務があるということは、従前から申し上げているとおりでございます。  ただ、先ほど多数決による法律以上の効力があるのではないかという御意見でございましたが、純粋の法理論の問題としてお答えいたしますと、法律とは形式が異なります。したがいまして、法律と同様な意味での法的拘束力というものを、国民に対してのみならず政府あるいは国会議員皆様方に対しても有するものではないということを言わざるを得ないのではないかと考えている次第でございます。  なお、同一趣旨の決議が衆参両院で行われた場合にはどうかというお尋ねも含まれていたと思うわけでございますが、衆参両院で同一趣旨の決議が行われましても、日本の憲法なり国会法上その効力について特別の規定を置いておりませんの で、やはり各議院の意思表示であるにとどまりまして、法律と同様な意味での法的拘束力を有するものではないのではなかろうかというふうに考えている次第でございます。     〔委員長退席、大原委員長代理着席〕
  19. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 今のお答えで最後のところがちょっとひっかかるのですけれども、拘束力の点で各議院の意思の表明と言われたわけですけれども、しかし、例えば今の最後のお米の決議などについては、全く同一のものが衆議院と参議院両方でなされているわけですね。そうすると、これは単なる衆議院と参議院独自の、それぞれの意思というよりは国会そのものの意思として昇華されている、高まっているというようにも考えられる。そうすると、それに加わっている議員である者としては、個々の議員の意思というよりは、まさにその所属する院の意思、あるいは衆参一致している場合には国会そのものの意思として、国会議員である以上拘束されるのではないですか。それに異なる発言をするということは、その国会の決定された意思に反するということになるのではないですか。それに対して一定の責任というものが生じてくるのではないですか。その点についてどうですか、もう一度お尋ねいたします。
  20. 大森政輔

    大森(政)説明員 重ねてのお尋ねでございますが、ただいまお尋ねの件、例えば衆参の一院だけで決議がなされた場合と、全く同内容の決議が両院でなされた場合との比較におきましては、政治的な意味合いにおきましては確かに御指摘のような側面があろうかと思います。  ただ、例えば憲法五十九条によりますと、法律は両議院で可決されたときに成立する、こうありまして、すなわちこれは国会としての制定行為であるという位置づけを受けているわけでございますが、御承知のとおり国会決議の憲法上の明文の根拠というものはございません。国会として一定の国会決議、いわゆる今お尋ねの国会決議を行うんだという憲法上の規定がございませんので、やはり国会を構成する各議院の意思表示ということであろうと思うわけでございます。  したがいまして、重ねて申し上げますが、非常に政治的な意味合いにおきましては、より重要であり、より政府もそれを尊重しなければならないということであろうと思いますけれども、憲法上、法律上の効力ということになりますと、やはりお尋ねの件をそのまま肯定するわけにはいかないのではなかろうかと思うわけでございます。
  21. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 言うまでもなく我が国は議院内閣制をとっているわけでありまして、そういう点からも三権の中での特に行政に対する、内閣に対する国会の優越的地位というものが憲法上明らかにされているのではなかろうかと思います。  内閣総理大臣国会によって指名をされる、そして指名を受けた内閣総理大臣が組閣をされる。もちろん閣僚は国会議員でなければならないことはない、非国会議員も閣僚として存在し得るわけですけれども、しかし国会議員としての閣僚は、内閣の閣僚であると同時に国会議員としての身分も持っているわけであります。その身分から国会決議について参加をしている以上、国会議員としての国会決議の遵守義務、それとまた内閣の閣僚として、内閣は国会決議を尊重すべきものだとすれば、政治的な責任はあるということでしたから、そういう政治的な責任、遵守義務、これを二重に負っていることになるのではなかろうか。そういたしますと、国会議員である閣僚に国会決議についてそれを尊重しないというような言動があるとすれば、これはまさに政治的な責任というものが出てくるのではなかろうかと思われるわけですけれども、その点についての御見解はいかがですか。
  22. 大森政輔

    大森(政)説明員 ただいま御指摘の発言につきましては、その有無及びその内容、詳細については何ら承知しておりませんし、そのことについてとやかく評価すべき立場ではないと思いますので、その件はお答えを差し控えさせていただきたいと思います。  もう一度同じことを申して恐縮でございますが、政府といたしましては、国会決議の趣旨を尊重して行政を遂行すべきことは当然であるというように考えているわけでございます。言葉をかえますと、国会決議の趣旨を尊重してその実現に努力すべき政治的な責務を負うということは、これはもう認めているわけでございますので、そういうことから、先ほどのお尋ねの件についてどのように考えるべきかということはお酌み取りいただければと思う次第でございます。
  23. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 なかなかお酌み取りにくいのですけれども……。  それでは具体的にお聞きした方がいいのかもしれませんが、例えば非核三原則についての国会決議がかつてございました。これは今もって非常に大切な決議として、国会においてもそれからまた政府においても尊重され続けてきているのではなかろうかと思われるわけであります。  この非核三原則の決議に関連して、昭和五十三年三月六日、第八十四回国会の衆議院予算委員会で当時の福田総理大臣が「いかなる政府ができましても、国会が非核三原則を遵守すべしということを決議いたしておるわけでありまするから、この決議が健在である以上、その決議はいかなる政府によっても守られなければならないし、守られる、かように考えます。」という御発言をしておられるわけです。私は、これはまことにもっともであって、まさに国会決議というものはこのようにして遵守をされなければならないものだと考えておるわけです。  ところが、先ほど御紹介いたしましたように、今重大な局面を迎えているガット交渉の中での農業問題、それから日米関係の中でも今大変に農業の問題が重要になり、しかもお米の問題に焦点が当てられているときに、閣僚の一員である通産大臣がこれを見直すべきだと言いかねないような発言、あるいは、残念ながらある政党においてもこれを見直す必要があるかのごとき発言がなされているということは、今国論を統一して事に当たらなければならないときに、まことにゆゆしい問題ではなかろうかと思っております。  残念ながら、この席には総理大臣、官房長官ともにお見えになっていないわけですが、山本農林水産大臣にお尋ねをいたしますけれども、最近の閣議の中で、この国会決議の問題についてはどのようなお話し合いがなされているのか、この通産大臣の発言については、大臣としてどのようにとらえられ、どのように対処をされておられるのか、また、総理大臣はどのように考えておられるのか、この辺についてお答えをいただきたいと思います。
  24. 山本富雄

    ○山本国務大臣 お答えいたします。  最近の閣議の中でというお話ですが、格別に本問題について閣議の中で話し合いがされておるということはございません。  また、今御指摘の武藤通産大臣の発言の真意につきましては承知をしておりませんけれども、しかし、先生が先ほど来、法的な見解を法制局に求められるという御質疑の中で国会決議の重さというものをるるお述べになりましたが、私も先生と同じように考えております。法の専門家の先生に法のことを私は申し上げるつもりはございませんが、しかし先生も触れられたように、我が国の場合には特に議院内閣制でございまして、総理大臣国会で選ばれる、そしてその国会で選ばれた国会議員である総理大臣が閣僚を任命する、その閣僚の大部分はまた国会議員である、私もそうでございまして、例えばこの米の決議にも参加をしておる、こういうことでございますから、その意味で議員としても責任がある。  あるいは総理大臣がどのように考えているか、こういうお尋ねでございますが、これは先ほども石破先生にも申し上げましたが、この予算委員会の席でも、私からも、また総理からも同じ答弁が繰り返しなされております。また、農水委員会でも本会議でもなされておるはずでございます。したがって、総理御自身は、今先生の御指摘のこの米に関する国会決議については十分に承知をしておられるというふうに考えております。
  25. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 これも二十二日の新聞報道によりますと、アマコストアメリカ大使が山本農林水産大臣に対して米についての譲歩を求めたかのごとき記事がございます。しかし、これに対する大臣の対応の仕方は、日本立場というものをきちんと打ち出すんだというように対応されておられるということで、私どもも大変頼もしく思っておるわけであります。  昨日、実は北海道の札幌で北海道農民連盟の農産物自由化阻止に関する集会がございまして、ここでも発言がございました。農林水産大臣が非常に健闘しておられる、そのことを自分たちとしてもたたえたいという御発言があったのですが、あわせて、山本大臣の発言あるいは言動だけが目立つということはいかがなものであろうか、この際、総理大臣を初めとして各閣僚が一致して事に当たっていただかなければ困るというときに、農水大臣だけが目立つというのは、ほかの大臣が、特に今の通産大臣の言動のように、むしろ農水大臣の言動に水をかけるようなことになっているのではないか、こういう批判的な、あるいは事態を憂慮する発言があったわけでありまして、このことをひとつ十分にお心得をいただきたいと思うわけです。  そして、お聞きをいたしますと、この月末に総理大臣アメリカに行かれる、ブッシュ大統領にもお会いになるそうですけれども、過日来のアメリカの対応を見ておりますと、恐らくまたブッシュ大統領は、この米の問題などについて海部総理大臣にもプッシュをするのではなかろうかというように思われるわけでありますけれども、そういう際にはぜひこの国会決議の重みというものを踏まえていただいて、これを後ろ盾にしていただいて総理大臣に対応していただくようにお願いしたいと思うわけです。アメリカの場合にも、大統領はよく議会が、議会がということを言って後ろ盾にしておられるわけですから、議会の決議がある、この重さというものを後ろ盾にするということは私はちっとも不当なことではない、まことに当たり前のことであろうと思っております。  海部総理大臣渡米の前に、大臣として首相にお会いになってこのことなどについて進言されるというような御用意はございましょうか、その点をお伺いさせていただきたいと思います。
  26. 山本富雄

    ○山本国務大臣 ただいま申し上げましたけれども、総理と私どもの考え方は、本件に関しましても全く一致をしております。  また、山本だけが目立つ、あるいは突出するというふうなお話もございましたが、これは私が農林水産大臣という立場上その局面にあるということでございまして、海部内閣としては一致した姿勢で今日までこの問題に対処してきたということでございます。  また、総理が月末アメリカへ子供サミットにお出かけの際、首脳会談あり得べしということでございまして、ただ中身につきましてはただいま調整中というふうに承っております。当然、今まで総理とこの農業問題あるいはガットウルグアイ・ラウンド交渉の刻々の状態などについて、私の方からたびたび御報告もし、お話もしておりますので、そのことは十分御承知の上でお臨みになるであろう、こう考えております。
  27. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 総理渡米の前に機会をとらえていただいて、私どものこうした意思をぜひお伝えいただきたいということを強く要望して、この質問を終わりたいと思います。  余り時間がございませんけれども、次の質問に移りたいと思います。  この今の中東紛争に絡んで、かねて心配されておりました物価の上昇、これがいよいよ目に見えるようになってまいりました。特に石油の値上がりが顕著でございますし、これはただ単に石油だけではなしに、関連する石油製品、それからその他についても値上がり傾向が一挙に出てきております。  けさの新聞報道によりますと、灯油はもう三週間で一五%も上昇しておるということでありますし、それからまた灯油だけではなしに、ガソリン、プロパンガスなどなどについてもそうであります。それからまた合成樹脂などについても上がってきている。ポリエチレンだとかポリプロピレンだとか、こういうものについても高騰の兆しを見せております。  そして、こうした高騰というのは、私なども北海道なものですから、これからいよいよ寒い冬が間近く到来をする、そういうことで一般の消費者も大変に心配をしておりますし、それから農業生産者生産コストにそういうものがはね返ってこないかということを心配しております。特に、北海道ではハウス栽培が大変に今盛んになっておりますものですから、これに重油を多量に使う生産者が多くなっておりますし、それからまたビニールハウスに使うビニールですね、これもなかなか経費がばかにならないところへもってきて値上がり傾向を示しているということになる。御案内のように、ことしはもう春先の乳価を初めとして麦価も米価も全部値下がり、そして畑作三品についてもまたこれが下げられるのではないかという懸念が非常にある、そういう時期に、一方この生産コストが上がるような物価の上昇あるいは石油関連の上昇ということが非常に心配されております。  かつてオイルショックのときには、いわばやみカルテルというようなことまでも行われて、そして消費者から訴訟が起こるというような事態もあったわけですけれども、こうした関連の物価の上昇ということもまた心配されるところでありまして、これに対して農水省あるいは通産省、これを抑制するような消費者保護あるいは農業生産者保護の立場でどんな手を打たれておるのか、あるいは打たれようとしているのか、この辺についてお示しをいただければと思います。
  28. 安橋隆雄

    安橋説明員 農業生産資材の価格は、先生御案内のように、このような農業生産資材をつくっております生産メーカーと、それから農業団体等の販売者との交渉で決められることになっているわけでございます。肥料、農薬、農業機械、農業用ビニールフィルム、農業用ポリエチレンフィルムといったものは、大体一年間ぐらいの取引単位で価格が決められておりまして、現在はこの決められた価格で取引が行われているという現状でございます。  しかしながら、御案内のように石油価格の上昇が見られているところでございまして、今後これらの農業生産資材のコストアップの要因になるというふうなことが当然考えられるわけでございまして、予断を許さないというふうに思っております。  いずれにしましても、農林水産省としましては、関係省庁なりそういった生産メーカーあるいは需要者団体でございます農業団体等と連絡をとりながら、要は適正な価格で安定的な農業生産資材の供給が行われるように見守りながら指導していきたいというふうに考えているところでございます。
  29. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 通産省いかがですか。
  30. 岡本巖

    ○岡本説明員 御説明申し上げます。  石油につきましては、御案内のように八月二日のイラクのクウェート侵攻以降、国際的なスポット価格が大変上がりまして、八月中のスポット価格、ドバイという極東向けの指標になる原油の価格が二十五ドル強になるということで、前月、七月に比べますと十ドル弱上がった。そういう状況の中で、九月十七日以降、石油製品の卸価格の改定を元売各社がやったわけでございますが、私ども通産省としましては、コストが実際に上がった後において、最大限の企業努力をやって必要最小限の範囲内での卸価格の改定はやむを得ないというふうには考えておりますが、その場合においても、便乗値上げということが万々一ございませんように、各社ごとに八月中に船積みして調達した原油を油種別、タンカー別にそれぞれコストをチェックいたしまして、各社のコスト変動の範囲内で、なおかつ企業努力をやって一日でも値上げの実施日をおくらすようにという要請もしたりしまして、九月十七日から元売各社、コスト変動とい うことで見ました場合に八円から九円の範囲内ぐらい、その範囲内でのコストの変動もございましたものですから、それに見合った卸価格の改定が行われているところでございます。  需給につきましては、消費者方々に御迷惑をかけるような事態は当面万々一ないように、それだけの供給の方のめどがついておりますが、価格については、国際的な価格が上がった場合の必要最小限の価格への転嫁というのはやむを得ないものと御理解をいただきたいと存じます。
  31. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 今それぞれの省庁十分に消費者保護あるいは農業生産者立場も配慮した適切な措置をしていただくということなわけですけれども、しかしもうこの情報によって明らかなように、現にどんどんと上がってきているわけですね。恐らく相当強力な手を打っていただかないと、こういう趨勢というのはなかなかにとまってこないのではないだろうかということが心配されますし、現に農業生産者の皆さんなんかは、来年の準備に当たってもうそのことを心配されておるわけです。北海道などは特に、先ほど申し上げましたように冬期間が長いものですから、特に高齢者の皆さんなどは本当に、いただく年金の額は決まっているのに、出すものがだんだん多くなったら一体どういうことになるんだろうかということで、寒さが来る前に震えおののいているというような感じが非常に強いわけでございまして、とにかくまかり間違っても、これに便乗して業者だけが懐が肥える、消費者やあるいは農業生産者にしわ寄せが来るというようなことは絶対ないようにしていただかなければ困る。  やみカルテルの心配もないではありませんので、これは農林水産省においてもそれから通産省においても、公取とも十分に協議をしていただいて、強力、適切な手を打っていただかなければならないのではなかろうか。私どもとしても、この中東紛争が一日も早く解決することが何よりの全体の解決策だ。その解決を願ってはおりますけれども、しかし、それを理由にして、石油関連からさらには波及してすべての物価が上がるというようなことは絶対ないように、これは本当に政治的な責任を果たしていただきたいと思います。  時間がございませんので、その他の質問も用意いたしましたけれども同僚議員に譲ることにいたしまして、以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。
  32. 大原一三

    ○大原委員長代理 有川清次君。
  33. 有川清次

    ○有川委員 先ほどから石破委員、佐々木委員の方から、ガットウルグアイ・ラウンドをめぐる農業交渉の問題については基本的な問題でお触れになりました。私、個別的な問題を含め、重複も若干あろうかと思いますが、できるだけ重複を避けて今から質問を申し上げたいと思います。  貿易交渉委員会では、ダンケル事務局長から今後の日程について提案がありました。これに基づいて農業交渉が、いよいよ十月一日、農業保護の国別データの提出、あるいは十月十五日の農業保護削減計画の提出期限を控えて今非常に大きな山場を迎えようとしております。  私たちは、去る九月五日から三日間、農林水産委員会で第二班として熊本県、鹿児島県、宮崎県を視察いたしましたけれども、三県とも米の市場開放並びに乳製品、でん粉の輸入自由化枠拡大阻止について非常に強い要請を受けてきたところでございます。  日本は、これまでも牛肉・オレンジの自由化を初めといたしまして、世界に先駆けて大幅な市場開放をしてまいりました。特に私の出身県であります鹿児島県は、牛肉では日本一の生産を誇っており、畜産県としてその所得が農業生産額の過半数を超えるだけに、今攻めの農政を目指して努力はしておるわけでありますが、先行き不安についてはなかなか隠せない現状でもあります。この間、アメリカECにおいては目に見える市場開放措置が講じられておらず、我が国は最も開かれた農産物市場となっているところであります。  このように世界最大の農産物の純輸入国となっており、食糧自給率はカロリーベースで四九%、穀物で三〇%となるなど、先進国では例を見ない低さを保っておるところでございます。こうした現状認識につきまして、まず政府見解をお伺いしたいと思います。  さらにまた、アメリカの最近の動向を見てみますと、八月には上院及び下院において主要農産物の目標価格を現行水準で凍結、輸出補助を拡大しようとする九〇年米国農業法が通過するなど、一層の農業保護措置が講じられようとしておりますが、こうした実情を政府はまずどのように分析をされているのか、お伺いいたします。
  34. 川合淳二

    川合説明員 ただいま御指摘ございましたように、我が国農産物輸入額は年々増加しておりまして、八九年の数字は二百九十七億ドル、百六十八億ドルが八五年の数字でございますので、八五年に比較しまして二倍近くになっているということでございます。  それから、御指摘のございましたように牛肉・かんきつ、農産物十二品目の問題などそれぞれ自由化の決定を行っておりますので、一九九二年の四月には輸入制限品目、四けたベースでございますけれども、十三品目ということでございます。これはアメリカのウェーバーや食肉輸入法の持っております輸入制限、それからEC輸入課徴金制度などによります輸入制限と比べまして、決して遜色のない水準であろうと思っております。  また、先ほど来お話がございますように、農産物貿易におきまして最も貿易歪曲的な効果の大きい輸出補助金、これは今回のウルグアイ・ラウンド背景にもなっているわけでございますが、御承知のように我が国はこういうものはないということでございます。  こういう状況でございますので、私どもウルグアイ・ラウンドに対します対応といたしまして、世界最大の農産物輸入国となり世界の農産物貿易の安定に寄与しているということを十分理解してもらうべく努力しているところでございます。  それから、アメリカの新農業法につきまして御質問ございました。  今お話がございましたように、上院、下院それぞれの案が可決されまして、現在両院協議会によって一本化調整が行われているということでございます。この点は、現在上下院で可決されました新農業法は、八五年農業法をほぼ踏襲するものでございます。強いて相違点を挙げれば、むしろその保護のベースをさらに拡大するというような傾向でございます。また、先ほど触れました輸出補助金の増額の可能性も含んでいるというような内容でございまして、ウルグアイ・ラウンドで行おうとしている、アメリカ主張している農業改革の方向とはかなりかけ離れたものとなっております。  ただ、米国政府は財政上の理由から、現在の上下院で可決された農業法はそのままでは拒否するという姿勢を示しておりますので、今後の動向、特に中間選挙などを控えましてこれがどういうふうに処理されていくかということはもちろん私ども予測することはできませんので、一本化調整作業を注視していかなければいけないということだと思っております。
  35. 有川清次

    ○有川委員 次に、ECにおいても、九二年の統合に向けまして輸入可変課徴金輸出補助金制度の継続は今以上に必要となっている、こうしたことから、九六年までに三〇%の補助削減を提案をしておりますが、その内容は具体的につまびらかにされていないだけでなく、アメリカの提案している輸出補助金の削減、非関税障壁の関税化には強く反対しています。我が国は、EC主張している輸出補助金の継続には強く反対はしている経過がありますが、そのほかの事項では共通する部分が多いわけで、こうしたことから、今後EC等と協調して米国に対応するなどの用意があるのか、見解を伺いたいと思います。
  36. 川合淳二

    川合説明員 今回のウルグアイ・ラウンド交渉につきましては、各国とも国内にさまざまな困難な問題を抱えております。御指摘のように、その間の各国立場の相違というのは埋められておら ないと思っております。こうした中で、EC立場農業保護の撤廃は農業の持つ多様な機能などから受け入れられないということでございますので、この点では我が国と同一歩調にあるわけでございますけれども、先ほど来申し上げております歪曲効果が最も著しい輸出補助金につきましては、我が国は最終的には撤廃すべしという立場でございますので、EC立場とは異にするものでございます。  いずれにいたしましても、我が国は先ほど来御指摘がございましたように、食糧輸入国としての立場がございます。これは米国、ECとやや異なる点でございます。したがいまして、こうした立場を反映した交渉結果が得られるよう、今後とも全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。
  37. 有川清次

    ○有川委員 ぜひ、孤立化しない作戦もつくりながら頑張っていただきたいと思います。  それから、我が国は、米、でん粉、乳製品等の市場開放を阻止するためにガット条項の中に食糧の安全保障条項を新たに設けること、ガット十一条二項(c)の規定を明確にすることなどを提案しておるわけでありますが、農業生産自然条件などの影響を受けやすく、需給や価格の均衡が崩れやすいという特殊性を持っているものであります。この特殊性を考えて、食糧の安定的な生産供給確保をする思想は、ガット条項では唯一この十一条二項(c)に体現されていると思うわけでありますが、八月二十七日から三日間開かれた農業交渉各国からどのような反応があったのか、また今後の見通しはどうなのか、農林大臣の方から御答弁をお願いしたいと思います。
  38. 山本富雄

    ○山本国務大臣 お答えいたします。  今先生指摘のとおり、八月のジュネーブの農業交渉グループの会合、ここで我が国は、一つ、基礎的食糧については必要な国境調整措置を講じ得るようガット条文を追加すること、二つ、生産制限を行っている場合に一定の条件のもとで輸入制限を認めるガット十一条二項(c)の規定についても、要件の見直し、明確化を行うことなどの提案を提出をいたしました。  今各国の反応などについてどうか、こういうお尋ねでございますが、さまざまな反応がございましたけれども、その中で、輸出国は総じて大変厳しい反応を示した、当然と言えば当然でございますが、そういうことでございます。それから基礎的食糧の問題などにつきましては、お隣の韓国がこれを非常に大きく支持をする、また十一条二項(c)の問題につきましては、カナダあるいはECなどからも大変好意的な反応が示されたというふうに私ども受けとっております。  いずれにいたしましても、残された交渉期間はわずかでございますから、輸入国としての立場をしっかり踏まえながら、従来の方針に基づきまして、この我が国の提案が実現できますように全力を挙げて交渉を推し進めたい、こういうふうに考えております。
  39. 有川清次

    ○有川委員 かなり厳しい面もあったようでありますが、最後の方でお答えになったように、ぜひそうした精神を貫いて頑張っていただきたいと思います。  次に、十月一日の国別リスト、十五日のオファーリスト提出に当たってどのような内容を盛り込むかという問題でありますが、先ほどの石破委員の質問に対しまして、合意形成が必要と主張して、提出をする方向で作業の準備に入っておる、こういうお話がございました。  九月十九日の日経新聞でありますが、これでは「コメ、でんぷんなどの輸入制限品目は輸入障壁の具体的なデータを示さない方針を固めた。」こう報道としては出されておるところでありまして、この「コメと輸入制限十三品目はデータ提出を拒否する。」とありますが、もう一回この点について、そうした報道との関連もありますので、特に米を初めとするでん粉、乳製品等の輸入制限品目についてどのように対応されようとしておるのか、そしてまた拒否をされるとすれば、その内容等があればちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  40. 川合淳二

    川合説明員 御指摘のように、国別表につきましては十月一日、それからオファーリストにつきましては十月十五日までに提出することになっております。現在検討作業を続けているところでございますので、その内容につきましてはつまびらかにすることを差し控えさせていただきたいと存じますけれども、従来の我が国立場主張を踏まえて、この両表を提出したいと考えております。
  41. 有川清次

    ○有川委員 これはこれ以上聞くのもやぼだと思いますので、差し控えます。  次に、米の問題の最後に、先ほどちょっと佐々木委員から質問がありました国会決議との関連でありますけれども、最近、現政権にも極めて強い影響のあると思われるような人たちの不規則発言等も飛び出しておりまして、それを報道で見る限り、私たち、道義的責任について非常にいらいらするものを感ずるわけでありまして、山本農林大臣の御努力は多としながらも、何とかまず国会議員だけでも統一した方向で進めないものかという気持ちを非常に強く持っておるわけであります。  今までも再三にわたって態度表明はされておるわけですが、政府政治的道義的責任についてもう一回、しかとここで、ちょうど米議会でも中間選挙を前にいたしまして、米の市場開放を求める要求が強いという立場で、動きがアメリカとしてもどうしても出てくる可能性もありますし、そして今月末に総理大臣も行かれるということでございますから、そうした事態を踏まえて大臣のしかとした決意をもう一回お伺いをしたいということと、先ほどの質問と関連をいたしまして、総理大臣はそのことは御承知の上でということだと思っておる、こういう大臣の答弁でございましたけれども、そういう思っておるということではなしに、やはりここで直接強くその面を踏まえて頑張ってきてもらうような要請をしていただきたい。その辺について御見解をお伺いしたいと思います。
  42. 山本富雄

    ○山本国務大臣 先ほど佐々木先生の御質問にもしかとお答えをしたつもりでございますが、米は国内産で自給するという方針には何の変わりもありません。また、国会決議に対する私の見解といいましょうか、考え方も申し上げたとおりでございます。また、国会等でも繰り返し、総理からも私からも申し上げておるということも申し上げたわけでございますが、閣議においてもこのことは既に確認をされておるということもございます。ぜひひとつ国会の御支援も最大限にいただきながら、内閣といたしまして国内産で自給する、この方針が貫かれますように最大限の努力を私も払ってまいりますし、また総理みずからもそういう決意を固めておるはずである、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
  43. 有川清次

    ○有川委員 時間がなくなりましたので、大体要求しておりました質問の項目だけ要点を追ってちょっと質問申し上げたいと思いますので、酌み取って対処願いたいと思います。  まず第一は畑作物の価格の問題で、カンショですが、南九州、特に鹿児島県では基幹産業、基幹作物でございまして、台風の常襲地帯、シラスの土壌という条件下で、防災営農としては欠かすことのできないものでございます。こうした中で、今日、日米交渉の動きを見ながら、米の陰に隠れて局地的な問題でもあるので押し流されるんじゃないかという心配が皆さん非常にあるところでございます。  そこで、まず大臣に、南九州におけるカンショ作を農政上どのように位置づけておられるのか、その点をちょっとお伺いしたいと思います。
  44. 山本富雄

    ○山本国務大臣 先生御地元でございますから、この件は今どき殊さら関心が深いということは私よく承知をしております。カンショが南九州地帯において米と並んで基幹作物である、そしてでん粉、食品加工など地場産業とも大きなかかわりを持っておる、したがって地域産業振興のためにも非常に重要な意味を持つ作物である、こういう認識を持っていることをまず申し上げたいと思いま す。  したがいまして、こういう認識のもとに、従来から土地基盤整備、あるいは省力機械を入れる、あるいは生産流通施設の整備などなど、生産性及び品質向上のためのいろいろな施策を県とも相談しながら展開をしてきたということでございます。  また、でん粉原料用のカンショでございますが、これはさきの日米合意を踏まえまして、一つは需要に即した計画的生産の推進、一一つは需要が伸びている加工食品用等への用途転換を促進していこう、三つは、芋類全体の需要拡大、これをどうしても図らなければならないというふうなことで、これまた各般の施策を総合的に展開をしておるわけでございます。  今申し上げたような認識と施策を総合的に機動的に駆使しまして、カンショ作の体質の強化、ひいては地域産業であるこの作物をしっかり守っていくということで最大限の努力をしてまいりたい、こう考えております。
  45. 有川清次

    ○有川委員 大臣の答弁を聞いてひとまずは安心をしたわけでありますが、ぜひその精神を貫いて、これから基幹作物として重要に位置づけながらカンショの問題に対応していただきたいというふうに思います。  そこで、平成二年産の畑作物の価格決定の時期をどのように考えておられるのか。引き下げる方針であるという報道もちょっとあったんですが、その真意と方針を政府首脳の方から明らかにしていただきたい。特にカンショの場合は、コスト低減など、限界があるわけですが努力をしておりますけれども、これを単に横並び的に画一的にやったり、あるいは中長期的なコストダウンの計画、プランなしに格差是正という観点だけでいろいろやられていくということになれば、大変な問題を来すように思うわけであります。これらの点をどのように受けとめながら今後価格を決めようとされておるのか、その辺のところを具体的に明らかにしていただきたいと思います。
  46. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 お答え申し上げます。  先生御案内のように、甘味資源関連の作物の生産者価格につきましては、糖価安定法及び農産物価格安定法という法律に基づきまして、農業パリティ指数に基づき算出される価格を基準といたしまして、物価その他の経済事情を参酌して定めるということにされておるわけでございます。  具体的に、これまで甘味資源作物の価格決定に当たりましては、他の農産物価格の場合もそうでございますが、生産性向上の動向であるとか、あるいは内外価格差の縮小の要請の強さであるとか、あるいは同じ畑作物の場合は畑作物間のバランスの問題とか、いろいろな要素がございますので、それらについて勘案して決定して決めるということでございます。本年の甘味資源作物の価格につきましては、これらいろいろな点を総合的に勘案してこれから検討するわけでございますが、適正に決定してまいりたいと考えております。
  47. 有川清次

    ○有川委員 予想したような答弁なんですけれども、横並び的な一つの問題点というのを、私時間がなくて中身を言えないで残念ですが、十分おわかりと思いますので、その辺を十分判断をしながら前向きに御検討をお願いしておきたいと思います。  さらに、でん粉の問題では、今国境調整措置については二国間協議ということでなっておるわけですが、いよいよこれが下手に自由化されていきますと、鹿児島県農業にとっては決定的なダメージを受けることになるわけでありまして、これを無条件にいきなりほうり出すことのないように、ぜひ責任を持った交渉をお願いし、対応していただきたいと思いますが、大臣のこの面における決意をちょっとお伺いしたいと思います。
  48. 山本富雄

    ○山本国務大臣 お答えいたします。  でん粉の輸入割り当て制度でございますが、先生よく御承知のとおり、昭和六十三年二月の農産物十二品目、パネル報告、ガット理事会でガット規則違反という認定を受けた。そして、米国から関税化の提案がなされておりますし、国際的には大変厳しい状況がずっと今日まで続いてきた。しかし、今先生に申し上げたような、あるいはお考えのような、芋及びでん粉生産我が国の地域畑作農業で非常に重要な役割を持っておるということをよく承知しておりますので、先ほど来申し上げておるようなウルグアイ・ラウンド交渉の中で、輸入制限に関するガット規定の要件見直し及び明確化提案という中で、これを織りまぜながら主張を続けておる。  なお、米国との再協議をいたさなければなりません。ここも一つの大きな山場でございますので、これにも最善の努力を尽くしまして、地域畑作農業の基本を維持し得るよう、これも本当に先生の地域などでは基幹作目でございますから、そのこともよく承知しておりまして、大変厳しい状況でございますけれども、とにかく片やウルグアイ・ラウンド、片や二国間交渉、並行するような形になりますけれども、全力を挙げたい、こう考えております。
  49. 有川清次

    ○有川委員 この問題は、二年前に一応裁定が出されて今の国の態度が決まったわけであります。そのときの状況と条件というのはまだ変わっていないわけでありまして、努力はしておるわけですが、さらにまた努力しなければならぬと思っておりますけれども、そういう面を踏まえて中長期的な視点できちっと、おっしゃるような対応をお願い申し上げたいと思います。  次に、サトウキビの価格の問題でありますが、鹿児島県の南西諸島及び沖縄県等の基幹作物でありますけれども、地域の経済を支える非常に重要な作目でございます。しかし、台風の常襲地帯あるいは干ばつという問題などございまして非常に苦慮しておるわけでありますが、いよいよまた平成二年産の生産者価格決定の時期を迎えまして、これをどのように考えておるのか、お伺いをしたいと思います。  ことしは特に、与論島の大干ばつがございました。また台風十九号、大型で強力な台風が長く居座って通過をいたしました。私も現地を見たわけでありますが、ほとんど倒伏いたしまして、収穫は大激減をするだろう、こういうふうに予測されます。きょうもテレビのニュースを見ておりますと、また二十号が沖縄にいよいよ上陸するような状況になっておりまして、踏んだりけったりの状況でございます。共済制度もありますけれども、この内容の検討及び加入努力も促進せなければいかぬ、こういうことで今努力をしておるところでありますが、加入率が五〇%を割る地域もございます。  そういう点から考えまして、ことしのキビ価格についてはぜひこうした実情も踏まえて、ことしは、二年産は検討してほしいという地元の強い要望もあるところでございます。考え方を含めてお伺いしたいと思います。
  50. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 御指摘のように、サトウキビは沖縄、鹿児島の特に島嶼部におきまして非常に重要な作物でございまして、それがことしに入って、おっしゃるような干ばつあるいは台風、これも沖縄の場合は十四号、鹿児島の場合は十九号というように台風によって被害が違うのでございますが、かなりの被害を受けているということは私どもも聞いております。  ただ、先生も御案内のように、サトウキビは作物としては比較的台風に強いものでございます。それから、製糖期までまだ日にちがございます。もちろんこれからさらに災害があるかもしれませんが、回復する可能性もありますので、その辺はもう少し事態を見ながら、できれば回復をしてほしいものだなというふうに願っている次第でございます。  価格につきましては、先ほども申し上げましたように、一応法律の規定でパリティ指数に基づく価格を基準として、物価その他の経済事情を参酌して決めるというのが原則でございます。そのほか、そういう事情については、先生も御指摘のように、本来なら災害対策は別であるというのが原則だと思いますが、やはり全体として再生産確保されるようにという点では考えていかなくちゃ いかぬというふうに思っております。
  51. 有川清次

    ○有川委員 血も涙もある、原則だけでなくてそうした判断を、最後の回答は非常に幅があったと思いますので、期待をしておりますので、御判断をお願い申し上げたいと思います。  最後に、乳製品の輸入規制の措置についてでありますけれども、時間がありませんから最後の結論だけ申し上げます。現行の乳製品輸入規制措置を堅持しながら、脱脂粉乳の関税化、自由化などに絶対に応ずべきではないと思うわけでありますが、政府のその辺の見解をお伺いしておきたいと思います。
  52. 岩崎充利

    ○岩崎説明員 先ほど、でん粉につきまして大臣の方からお答えがありましたとおり、脱脂粉乳につきましても同様の事情にあります。なかなか各国の反応等々も厳しい情勢の中でございますが、我が国提案につきましては、ウルグアイ・ラウンドの農業交渉の場なり、今年度中に行われる予定の日米再協議におきまして、関係国の理解が得られるよう最善の努力を尽くして、我が国酪農の存立が図られるよう適切に対処してまいりたいという所存でございます。
  53. 有川清次

    ○有川委員 終わります。ありがとうございました。
  54. 大原一三

    ○大原委員長代理 目黒吉之助君。
  55. 目黒吉之助

    ○目黒委員 きょうはガットの問題について、今ほど来委員の皆さんからいろいろお話がありましたが、私の方から補足的に一、二伺って、その後、林政審議会の答申にかかわる問題、報告に関する問題ですね、それから十月の半ばごろと予想されるいわゆる米市場開設の問題についてお伺いをしてまいりたいと思います。  最初に、ウルグアイ・ラウンド交渉にかかわる問題で、きょうも委員の皆さんが、あすから総理が訪米される予定の中でブッシュ大統領との話し合いが行われる、その中に米が入るんじゃないかということで非常に心配をされる立場で質疑が交わされてまいりました。私もこの点は、どうも伝えられるところによると、アメリカの側からその話が出されて総理の方は何らかの対応をしなきゃならぬような雰囲気にあるのじゃないかという心配は持っております。さらに、十月の一日、二日ですか、日米貿易委員会がある、この中でも米問題についてはやはり話し合いの対象になるんじゃなかろうかといったような心配もされます。こういうことになってまいりますと、ここはどうも一つ間違えますと、ガットの場でそれこそ各国の農業の置かれている困難な問題をみんな出して、そして解決しようとしていく流れを、対応のしようによっちゃ変えなきゃならぬような状況が生まれはしないか、実は非常に心配をいたしておるところでございます。  先ほど来、大臣の方から、そのようなことはないというお話がございましたが、いろいろな地位にある人の発言などがありまして、いま一つどうもすっきりしない発言が総理からもなされておるというふうに伝えられております。新聞報道などで、現状はといったような前書きがあったりして、米は開放できないんだという非常に確固たる姿勢に何か陰りがあるように感ずるわけでありますが、その心配というのは本当にないのかどうか、これが一つ。  それからもう一つは、先ほど来、農業保護に関する国別リストについて、提出期限は十月の一日であります。したがいまして、相当部分についてはもうまとまっているんじゃなかろうかと思うわけであります。これらについてはかなり慎重に扱わなければならぬということは承知をいたしておりますけれども、もうこの辺で、例えば品目では大体十品目ぐらい提出をする、あるいはできないものについてはこれこれの理由でできないんだというようなところまで来ているのじゃないだろうかと思うわけであります。現段階でいわゆる国別リストの品目数、あるいは諸般の事情で出せないもの、新聞の伝えるところによりますと、十三品目については関税化にのめり込む心配もあるのでこれは当面出せないという記事もございますが、この点ほどこまで作業が進んでおりますか。この二点を、前段は大臣で、後段は経済局長に伺います。
  56. 川合淳二

    川合説明員 国別表に対する御質問でございますが、先ほど来答弁しておりますように、十月一日を目途にいたしまして現在作業を続けているところでございます。なお検討すべき点も残っておりますし、調整をすべき関係省庁もあるわけでございます。したがいまして、現時点では、従来の我が国立場主張を踏まえてこの国別表提出したいということにとどめさせていただきたいと思います。  なお、項目につきまして、品目数についてお話がございましたけれども、それぞれの項目によりまして品目数、それぞれ書くことが異なることになっておりますので、それらについても現在調整、検討しておりますので、それにつきましても差し控えさせていただきたいと思います。
  57. 山本富雄

    ○山本国務大臣 総理が二十九、三十日の子供サミットのために渡米をする、なお、その後は前回延期いたしました中近東の方にもお回りになる、こういう予定で今スケジュールその他調整中でございます。  したがって、首脳会談、これは多分あるだろうと私ども見ておりますが、どのタイミングでどの程度の時間で、しかも話し合われる項目というのは、従来の例であらかじめ大体ある程度出るわけでございます。その場でお二人だけでお話しになるわけですから、話が出ることも十分予想されますけれども、今のところは中身については調整中であって、したがって、米の問題が出るか出ないかは定かでないというのが正直な話でございます。なお、念のためといいましょうか、我が省から塩飽審議官を随行させるというふうに今準備をしております。  なお、先ほど来先生方にそれぞれ答弁いたしましたが、総理には私から時々刻々いろいろ状況報告、説明をしておりますので、国会決議も十分承知もしておりますし、現在のガットウルグアイ・ラウンドの進行状況など、あるいは後段で先生がお尋ねの十月一日と十五日の事務的な処理の問題の見通しなどについても、ほぼよくのみ込んでおられると私は思っております。  それから、今川合局長からお話がございまして、現段階で品目、項目についてなかなかまだ詰め切っておらないということでございましたが、これも最終段階で馬力をかけてやっておるわけでございます。私からも中身について一々ここで申し上げかねますけれども、従来の我が国の考え方はきちんと基本に踏まえながら国別表にもオファーにも応じていきたい、こういうことだけは申し上げられると思います。
  58. 目黒吉之助

    ○目黒委員 ぜひ従来の国会決議を頂点とする議論を踏まえて対応していただきたいと思います。  国別リストの問題につきましては非常に関心の高いところでありますけれども、それぞれそれこそ慎重に扱わなければならない、タイミングもありましょうし、いろいろありましょうから、それじゃこれ以上お伺いしないことにして、先へ進ませていただきます。  林政審議会の報告が出されましたことにつきましてはもう御案内のとおりでございます。この中間報告の内容につきましては、既に御承知のとおり、大きく分けて二つになってございます。一つは今後の林政の展開方向、それからもう一つは国有林野事業の経営改善対策、大きく分けて二つになっておると思うのでありますが、全体として非常に積極的な取り組み姿勢と申しますか、現状をシビアにとらえて、できる限りの対応策を検討した中身であるように思うわけであります。例えば展開方向の基本的な問題として、水と緑の源泉である森林の整備、それから国産材時代を実現するための林業生産、あるいはまた海外の林業協力といったようなものを盛り込んだ内容になっておるようでありまして、この点はかなり積極的な方向を示したもの、こんなように受けとめておるわけでありますが、最初に大臣、これを見られてどのように評価をされておられますか。
  59. 山本富雄

    ○山本国務大臣 お答えをいたします。  先生今御指摘のとおり、この中間報告を私もずっと見せていただきました。もちろん、この種のものはいずれも専門家の方々が心血を注いで総合的におまとめになるわけでありまして、権威のあるものですけれども、現在の国有林の状況を中心にいたしまして非常によく見ておられるな、今後の方向についても極めて的確に示唆をしておるというふうに考えて見せていただきました。あれを土台にいたしまして、今林野庁長官を中心といたしまして、今後の林野行政はいかにあるべきかということで具体的な作業にかかっておるわけでございます。  また、中身につきましては長官の方から申し上げると思いますけれども、大きく立ちはだかっている山がございまして、御承知のとおり二兆円の大赤字という問題がございます。どうしてもこの山だけは越えないと次の展望が開けないということが一つございます。その大山を越えることについてはさまざまな努力、工夫が内外にわたって必要だということでございます。  一つは、民有林、国有林を今まで割合に類別をし区分けをして考えておったものを、それでは間に合わない、全体を民有林、国有林の別なくとらえていくという考え方が必要であるという考え方で流域管理という言葉、これは林政審でも出されておりますけれども、こういう考え方を一つ大きく取り入れていこうじゃないか。それからもう一つは、特に国有林野事業の経営改善の問題の場合、森林の機能類型ということを経営改善管理の中に入れていこう、言うなれば二本の柱などを中心にして累積債務の処理をやろう、あるいは事業実行の形態とか組織機構及び要員のあり方などについても方向づけをやっていこうということでございます。  いずれにいたしましても、せっかく出された貴重な答申でございますから、この中間答申を受けて、また林政審の方は年末に向かいまして今取りまとめ作業をやっていただいておりますけれども、我が方はこれを実行する行政の大事な部門を預かっているわけでございますから、繰り返すようですけれども林野庁長官を中心にとにかく積極的にこれを進めていくという方針で日々作業をしておるということでございます。
  60. 目黒吉之助

    ○目黒委員 私はかなり積極的、こう申し上げたのですが、もう一歩踏み込めなかったものかなと思っている部分が実はあるわけであります。  と申しますのは、私も山は非常に好きですので、よく山へ出かけますが、一番心配しておりますのは、五十年代あるいは四十年代に原生林の巨木が切られまして、これは民有林あるいは国有林を問わずそういったところを見受けるわけですが、大きなのを切りますと、やがて切った後に残った、地中に根を張っているかぶつが腐食してまいります。そして大雨なんか降りますと、腐食した根にずっと水がしみ込んで、かなりの量になりますとそこが崩れてまいります。これは必ずそうなってまいります。それが崩れますと、雨で土砂が谷に流れていきます。谷に流れ込んでいきますと、方々で見られますように川に流れ出て川床を埋めてしまう。川床が埋まりますと、私どもは専門家じゃありませんけれども、そこにすんでおる水生昆虫や微生物が死んでしまう。よく言われる、川が死んでしまって自然環境の手の施しようのない荒廃が進む、こういうことを非常に心配をするわけでありますし、現に方々で川床が埋まっておるわけですね。  今後の林政では、建設省のやることとは違いますけれども、伐採した後等については特にそのことに留意をしながら、そのようないわば国土の荒廃を招かないような事業も取り込まなければならないのじゃないだろうか。従来、補足説明がありますと、そこのところは天然造林とかあるいは天然保育とかという形で、少し言葉はきついですけれども、天然保育なんというのは言葉が先走っているのですね。そしてそういうところの説明にかえられておるわけです。まさにこういう状態は、今大臣は二兆円の山とおっしゃいましたけれども、こういう山がたくさんできてしまっておる。少なくともそういった状況について御認識された上で、今回はできるところから対応していかなければならないという決意というふうに私は受けとめたいのですけれども、そこまでターゲットに入っているのかいないのか、どうも少し心配であります。林野行政の中でそれを取り込んでいく、少なくとも切る場合は、いろいろな計算の方法はあるでありましょうけれども、いわばそういう国土のマイナスを来すようなことにならないように配慮をした施策も必要、こう思っておるわけでありますが、大臣並びに林野庁長官の考え方をひとつこの点でお伺いしたいと思います。
  61. 小澤普照

    ○小澤説明員 先生から御質問がございましたが、確かに我が国の森林は、戦後の復興期に特に木材を安定的に供給したわけでございますけれども、その際に大量の伐採を行いまして、そうしてその後、伐採した跡地には造林をしてまいったわけでございますけれども、これが実は確かにまだ若い年齢でございます。人工造林だけで一千万ヘクタール達成しておりますけれども、これにつきましては、今後こういう森林が国土の保全なり木材の安定供給に役割を大きく果たすというふうに我々確信はしておりますけれども、現在植えましてまだ二十年、三十年というものが多くて、まさに森林の本格整備はこれからだというふうに私どもも考えておるわけでございます。したがいまして、今後このような森林の扱いにつきましては、我々も計画的に整備をしてまいりたいということを考えて、関連の諸施策につきましていろいろ詰めさせていただいているところでございます。  それからもう一つ、天然林の保育といいますかあるいは育成ということについて御質問がございましたけれども、この問題につきましては、我が国森林のうち、森林の整備は人工林だけではできませんので、どうしても天然林の部分の育成強化も必要でございまして、私ども、長期的な資源計画の中では、人工林の単層林整備、複層林整備というものと並べまして、天然林の育成という事業に取り組んでおるわけでございます。これにつきましては、非常に地域的な特性もとらえて行わなければいけないということもございまして、私どもは、この部分につきましては育成をないがしろにするということでは決してございませんで、その地域により、あるいはその樹種の分布状態というようなことも考えてやっております。我が国では、このような地域に当たりますのはどちらかといいますと北海道でございますとか北の方が実は多いわけでございまして、このような地域につきましては、天然林のままで、しかし必要なものにつきましてはいろいろと人工的な補助手段も使いまして立派な森林に整備してまいりたい、このょうに考えて取り組んでおるところでございます。
  62. 目黒吉之助

    ○目黒委員 わかりました。  全体として七項目それぞれ見ますと非常に多岐にわたる事業が盛り込まれるわけでありますが、いずれにいたしましても、今私が申し上げましたような部分を含めまして、これを実行しようということになってきますと大変な努力が必要であろうと思います。あわせて、しかし、しなければ今のような状態というのは本当にもう取り返しのつかないことになるわけですね。この点は十分に広く認識される必要も私は痛感しますし、それから大変な費用が必要であることも当然でございます。 私は今日、山を緑にする、それから今まで申し上げましたような荒廃をとめる、自然環境を守るということに公共投資をしていくのに反対するというか疑問を持つ国民はいないと思うのですよ。この時期に、申し上げましたような部分もターゲットにして、そしてやはり積極的に基本的な方向と実行体制というものをきちっとしていかなきゃならないというふうに思います。二兆円の債務とおっしゃいましたけれども、中身をつぶさに検討して具体的に個別に申し上げるつもりはございませんけれども、しかし大ざっぱに言いましてこのような事業というのは、例えば道路をつくる、学校をつくる、あるいは病院を建てるというのとむしろ同じ考え方でやらなければ、ひいては国民生 活に多大な影響を及ぼしてくる課題になっておるというふうに実は思っております。  特に、今日まで機構の合理化、要員の削減といったようなことで対応してきた歴史がございます。しかし、現在はその結果になっておるわけですから、むしろやはり新しい需要に向かって、せめて基幹的な労働者、基幹的労働の確保、あるいは機構の充実強化といったようなものを並行してやっていかないと、新たに発生した国民の需要に対応することができないことは明確でございますから、やはりこれらに対する、特に国有林は民有林と違ってどっちかといいますと上流にありますから、上流が先ほど私が申し上げたようなことになりますれば推して知るべしであるわけでございますので、国有林事業の役割を果たしていく上でこのような事業の推進体制等々についてどのような決意でこれから臨まれようとされるのか。きょうは、しかと決意のほどを伺っておきたいと思います。
  63. 山本富雄

    ○山本国務大臣 特に国有林の場合は、地域からいくとやはり山の奥が多いのですね。私も山で育ちましたので山へ随分登りましたけれども、一番山の上の方、山の奥の方には、ほとんど民有林はありませんで国有林ばかり、こういうことでございます。したがって、国有林の場合にはただ単に経営採算を合わせるためにということなら今までも成り立たなかった、これから先もなかなか難しいというふうに思っております。  もちろん経営採算を合わせることも、貴重な国の財政ですから大事なことですけれども、しかし一方では、今先生指摘のように、特に国有林の地勢を考えた場合に、国の一番頂上を形成しておるわけでありますけれども、まさに国土を守っている一番頂なんだ、国土を守る、環境を守る、その頂点にある、こういう考え方に立ちまして、財政当局などにも国民財産と、この間来予算委員会などでも随分御指摘がございました、大蔵大臣もよくそのことを聞いておりますので、国民財産、そして国土と環境を守るためにということを大きな一つの柱にしながら国有林財政の立て直しも図っていこうじゃないか、こういうことで、これまた極めて異常な決意でといいましょうか、省内では、外は当面ウルグアイ・ラウンド、内は林野問題、こういうふうに私は口癖のように言っているわけでございます。その他の施策ももちろん大事ですけれども、言ってみればそういう言い方をしながらこの国有林問題にはしっかり対応していきたいというふうに腹をくくって考えております。
  64. 目黒吉之助

    ○目黒委員 ぜひひとつ国民の財産という立場で、それこそ一般会計からの投資なども含めて早急にこれらの施策が実行に移されますように強く希望しておきたいと思っております。ちなみに私どもは、緑についてはここまで来てGNPの一%くらい投資をするくらいの構えでこれから対応しなければならないのじゃないかというふうに提起をいたしておるところでございます。ぜひひとつ、法体系の整備なども含めて、まさに喫緊の課題でありますから早急に取り組まれるように要望申し上げておきたいと思います。  ちょっと時間もなくなって中途半端になりましたが、次に米市場について、どうもこれも最終ラウンドのようでございますから一、二伺っておきたいと思います。  価格形成の場につきましては、これまで私ども、食管法の中に価格変動を持ち込むという意味では趣旨に矛盾をするという立場で反対であるという立場から議論を重ねてまいりました。いよいよ取引所が十月の半ばと想定をされますが、開設をされるという段階で、やはり依然としてこれまで主張してきました心配は消えておりません。  入札取引に関する業務規程が出てまいりました。一々全部どうも質疑をする時間がなくなってしまいましたが、一つは、東京と大阪で月一回、合計二十四回の取引が、一年に一度しか生産できない米、しかも市場の指標価格をつくるのに二十四回必要だという議論はどうしても納得できないのですね。もうここは、今日までいろいろな議論をしてまいりましたが、価格形成の場と言いながらも物は売り買いするんですから、ここのところがよほどしっかりしないと、これはまさに市場ですよ。長官のこれまでの答弁は、市場ではない、適正な指標価格を得る場所なんだ、こういうふうにおっしゃっていたんですね。しかし、このまま進みますれば、二十四回ですから買う方がどうか。仕入れ計画なんというのはできるのかできないのか私知りませんけれども、スポット買いになってしまうんじゃないですか、この月は見合わせよう、少しは要るから買っておこうと。まさにこれはスポット買いですよ。そんなことになりましたら、これは適正な価格は得られないですね。ここのところは非常に大事なところですが、一体どういう見通しでこうされたのか。今までのやりとりの中では、節目節目に相当量、こうなっておったんですよね。これではまさに市場です。これが第一点。  それから第二点目は、いよいよ、十月の何日になりますか、きょうはもう既に準備がされておるわけですから、十六日なら十六日ということで、期日については決まっておりましたらひとつ公表していただきたい。と同時に、平成二年産の販売数量についてそれぞれの業者に入札販売数量を示してあると思うのですが、おおむねどのくらいかというのが二つ目でございます。  それから三つ目は値幅制限ですね。値幅制限にはいろいろなやり方がありますが、特にその中で年度の第一回取引、これについては、この業務規程によれば、前年の平均加重を基準にして、需給事情その他経済事情を考慮して、機構が運営委員会の議を経て決める、こうなっていますね。これはもう何度も指摘しておりますように、米審ですね。あわせて経済事情を考慮して決める、まあ食管法は参酌して決める、こうなっているわけですが、ここは幅は五%もしくは一〇%を踏襲するのですか、しないのですか。  それから、これに関連してもう一ついいですか。上場したが買い手がない場合、これまた運営委員会の議を経て決めることになっていますね。これは一〇%、五%の範囲内ですか、外ですか。これが三つ目。  それから、売り手は売り手なりにそれなりに経済事情を参酌をされる権利はあると思うのですよね、上場するかしないか。ここはちょっと上場はまずいのじゃないか、ここはした方がいいのじゃないか、選択する権利というのはある程度保障されてしかるべきと思うが、上場に、何と申しますか、応じなかったと言うとちょっときついのですが、しなかった場合は罰則はつけるのですか、つけないのですか。  とりあえずこの四点にわたって、ひとつ質問します。
  65. 浜口義曠

    浜口説明員 今先生御質問の自主流通米価格形成機構でございますが、この点につきましては、委員会の御審議等々を賜りまして、この重要性にかんがみまして十分慎重に取り運ぶことを旨として今日まで参ったわけでございます。この機構につきましては、去る八月二十四日に設立委員会が関係の団体のもとで行われまして、三十日にこの設立許可がなされました。  まず第一に、先生指摘の点で今後どういうふうに運んでいくかということでございますが、一部の新聞で来月の中ごろという報道もございましたが、この点につきましてはことしの出来秋を目途にということをこれまで申し上げてまいりましたし、この点について十分関係者の意を尽くした御議論のもとで行われるべきだということでございまして、今回新設されました価格形成機構のもとにおきまして、最終的には運営委員会の御議論を賜りながら実施をされるということになります。今の場合におきましては、大体早ければ十月の末ないしは十一月にかかろうかというふうな段取りのように私ども聞いておりますし、そういう運営であろうというふうに考えているところでございます。  それに関連いたしまして、既に九月末までに協議会方式を改定をいたしました協議会の値決めが行われたわけでございますが、さらに暫定的な値 決めといたしまして十月中までの値決めが行われておる状況でございます。その後を受けまして、この価格形成機構の中で十分関係者、特に場といたしましては運営委員会での御議論が十分行われるということになろうと思います。  最初にお話しのように、本委員会におきましての御議論一つの焦点は回数の問題でございましたし、これにつきましては、今先生が御指摘のような運営委員会にかけられるべき業務規程の案というものの中でこれを関係者の中で議論されておりますが、当面平成二年度につきましては従来の取引との連続性も考慮して、回数を申し上げれば四回ないし五回程度実施するということでことしの平成二年産についても行われる見通しではないかと思っております。  なお、この回数でございますけれども、多弁を申し上げませんが、取引の回数、定期的に行うべき問題が一方ではございます。そういったようなことで、先生指摘の月一回というのは都合二十四回になるから市場だということでございましたが、やや計画的なことを実施するということで、ことしの実施の状況も十分見ながらさらに定期的に行うということで考えられるべき問題ではないかというふうに思っております。  それから第二番目の問題でございますが、この上場する玉といいますか、そのものについて集荷業者の方々はどういうふうな形で行われるかという問題でございますが、これについては今週の二十五日に一応省令を改正させていただきまして、これに基づきまして一つの指定法人が立案をいたします自主流通計画の中に都道府県別の数量を掲げるということをしてございます。そういったものの計画の樹立の中に経済連、そういった方々の意思が十分反映をいたしまして計画が樹立されるということにしていただきたいというふうに希望しております。そういったようなことからその計画に即して定期的に上場される米の実態が行われるというふうに考えられますので、それに基づきまして関係者方々の発意に基づきまして上場をされていくことが一番いい姿ではないかというふうに考えているところでございます。  なお、取引の価格の問題でございますが、これにつきましても幅の問題がやはりこの委員会で御議論になりました。これは今の協議会方式におきまして、この入札の幅といたしまして上下一〇%という議論もございました。それを一応踏襲させていただくというのが今の考え方でございますけれども、この中で、先生指摘のようなアップダウンの問題ということで、前回との関係、回数との関係からプラス・マイナス五%という線を出させていただいているわけでございます。そういったものも十分これは具体的な関係者の同意の上で行われるということ、具体的には今回設けられました価格形成機構におきましての、運営委員会を中心といたしまして、そこで十分慎重に御議論をしていただいて実施されるべき問題であろうというふうに考えております。  そういう意味で、今回、出来秋を目途に第一回のものがなされるということでございますが、先生指摘の、じゃ一体どういう数量が、何か通知をされたようだがというお話がございましたが、今の状況の中で具体的に方針みたいなものがこれから御議論して決まっていくことでもございますので、具体的数量、第一回目にこれこれの数量を出す、これくらいのものを各県から出していただくというところまでは決まっておりません。これから業務規程の内容を決め、それから具体的な、十月の末ないし十一月の初め、いわゆる出来秋の段階の第一回目に準備が進められていくものだというふうに考えております。  いずれにいたしましても、これは今委員会におきまして先生初め御議論を賜った案件でございます。その点、委員会の御意見等々を十分参酌、尊重いたしまして、新しい機構の中での運営委員会で議論をされた結果、円満に実施をされることを私どもといたしましても十分監督をしていく所存でございます。
  66. 目黒吉之助

    ○目黒委員 非常に残念ですが、時間がなくなりました。これで終わります。
  67. 大原一三

    ○大原委員長代理 藤原房雄君。
  68. 藤原房雄

    ○藤原委員 私は過日、九月五日から七日の三日間にわたりまして、大原理事を中心としまして六名、北九州の視察に参りました。貴重な体験でもございまして、当地におきますいろいろな陳情、また現地の声、こういうようなこともございました。貴重な国政の一環としての視察でもございますので、この問題につきましては当委員会におきましてもぜひ訴えておきたい、こんな気持ちで何点かにわたりましてお伺いをして、また御要請を申し上げたい、こう思うのであります。  一つは、林業に携わる方々実態でございますが、これは現在、林業につきましては、中間答申も出され、また、国有林野事業にかかわる行政監察、こういう結果もございまして、林業につきましても鋭意今後のあり方については御努力をいただいているわけであります。  熊本県の人吉木材工業団地に参りましたが、当地におきましてのいろいろなお話の中で、やはり農林水産業に携わる方々の後継者の育成確保ということが一つの大きな要請の強い声でございました。高齢化が進んで経営体質がだんだん弱体化しておる、国際化の進展の中で経営体質を強化したいということでありますが、優秀な後継者の確保育成という大きな使命を担っているわけであります。  現在、人吉木材工業団地におきましては、製材工場の受け皿ができておるわけでありますけれども、将来国産材時代と言われる時代になりまして、伐採とか造林とか、こういう労働力不足というものにつきまして今から非常に危惧を持っておる、こういう意見があったわけであります。  これに関連いたしまして、林業労働者の問題につきまして、現状の林業労働者育成確保に対する対策、また、その成果といいますか、学卒者または新規就業者、この実態は一体どうなっておるかということ。それから、林政審の中間報告の中にも具体的に提言されております労働者の技能職員化、就労条件の改善、雇用の通年化、こういうことが言われておるわけでありますけれども、この現状について、また、その対策等についてはいかがなものか、これらのことについて、まずお聞きをしておきたいと思うのでありますり
  69. 小澤普照

    ○小澤説明員 先生指摘のように、林業の就業者数につきましては、その高齢化とともに減少の事態が起きております。  私どもの方で把握している数字について申し上げますと一昭和五十五年には林業就業者は十九万人おったわけでございますけれども、平成元年には十二万人へ減少しておるわけでございます。同時に、山村地域の過疎化の進行に伴いまして、五十歳以上の占める割合が昭和六十年には五九%に達するというようなことで、林業労働力の弱体化は著しいものがあるというように認識しております。もちろん、先ほどお話がございました新規学卒者の就労数につきましても、今細かい数字は持っておりませんけれども、最近は非常に減少しているということは事実であろうというように考えております。  そのような中で、来るべき国産材時代というものを現実のものにするためにどうすればいいかということでございますし、また同時に、国民が森林に対していろいろな要請をしておる、多様なニーズが起きておりますけれども、これに対してどうこたえていくかというために、森林資源の整備が重要でございます。このためにも、林業労働力の育成確保ということが緊要な課題になっているわけでございます。  こういう情勢のもとで、林政審の中間報告ではこの点に触れまして、まず、林業事業体の体質強化を図る必要があるということ、それから高性能機械の開発導入の推進、また月給制等林業労働者の技能職員化、こういうことについて報告がなされているところでございます。  林野庁といたしましては、平成二年度から、担い手の育成確保を図る林業担い手育成総合対策を講じているところでございますけれども、今回の 報告を踏まえまして、新たに林業労働者の月給制の導入、広域就労の促進等を推進する林業労働力育成確保特別対策事業、さらに、林業事業体の体質強化を図るため、高性能機械の導入、事業の共同化等を推進する林業事業体体質強化対策事業等、担い手の育成を図るため総合的対策を講ずることといたしまして概算要求を行っているところでございます。
  70. 藤原房雄

    ○藤原委員 林業問題につきましては、中間答申、また本年の末になるだろうと言われておりますが、最終答申が出されるのだろうと思います。今最も緑の効用をうたわれながら、そういう中にあって独立採算制の中で大変に御努力をいただいてきたわけでありますし、また二度にわたる今日までの経営改善の計画が進められてきたわけであります。五十三年には国有林野事業改善特別措置法の制定、また五十九年、六十二年の二回にわたります法律改正、こういうことで大変な御努力をしてきたわけでありますけれども、しかしながら、平成元年度末では累積債務が二兆円を超すという非常に厳しい状況の中にあるということであります。五十九年、六十二年、長期にわたります五十三年からの、法改正、特別措置法、こういうことの中で、こういう厳しい現実、二兆円からの累積債務を背負う現状というのは、社会の大きな変化の中でそれに対応できない林野行政として非常に難しい運営というものを私どもは感ぜざるを得ないわけであります。  このような二度にわたります法改正を伴う経営改善をしながらも、なおかつそれが一向に解決のめど、明るい光が見えないという根本には一体何があるのか、また、この問題についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。これは本答申が出て、それに向かってまた具体的に経営改善の本格的な取り組みというものがなされるのだろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、根本的な問題についてはどのように受けとめていらっしゃるのか。また、今後新しい対策を立てるに当たりましては、それらのものに対してどうお取り組みになろうとなさるのか、その辺をお聞きしておきたいと思うのであります。  あわせまして、本年七月の総務庁の行政監察結果の勧告によりますと、いろいろなことがここに言われているわけでありますけれども一つは累積債務の増大、これに対しましては、やはり非常に重い荷物であって、これは棚上げする以外にないだろうというようなことも言われておりますし、また要員の二万人につきましても見直しを求めているようなことが書かれているわけであります。  こういう五十九年、六十二年の改革にもかかわらず依然として厳しい状況にある根本と、累積債務そしてまた要員規模、これらのことを中心としまして最終答申が出される、今それに向かっていろいろな作業をなさっていらっしゃると思うのですが、時間もございませんから詳しいお話はここでしませんけれども、基本的な林野庁としてのお考え、厳しい受けとめ方の上に立っての今後の対応策、こういうことについてお聞きしておきたいと思うのです。
  71. 小澤普照

    ○小澤説明員 先生の御質問にもございましたように、国有林野事業につきましては、これまで特別措置法による改善計画に基づきまして経営の改善に努めてきたところでございます。  内容的には、事業運営の改善合理化、要員規模の適正化、組織機構の簡素化、自己財源の確保というような諸点にわたりまして最大限の自主的改善努力を尽くしますとともに、所要の財政措置を講ずることにより経営の健全化に努めてきたところでございます。  しかしながら、先生指摘のように、なかなか改善効果が見えないではないかということでございます。まず、収入の大宗は木材に頼っているわけでございますけれども、過去に大量の伐採を行ったことに伴いまして資源的に制約を受けてございます。また同時に、自然保護等の要請の高まりがございまして伐採量を減少させておるということがございます。一方で、木材の価格が非常に長い期間にわたりまして低迷してきたという状況から、収入が減少傾向になっておるわけでございます。  さらにまた、木材収入以外の継続的な収入の増加を図るために、これまで分収育林あるいはふれあいの郷、ヒューマン・グリーン・プランというような事業を推進してきているところでございますけれども、現時点では収支の改善に大きく寄与するところまでには至っておりません。また、土地の売り払いにつきましても、地価抑制施策の実施に伴いまして高地価地域における土地売却が規制を受けております。  さらに、支出につきましては、事業の拡張期間に増大した要員の調整過程にございまして、給与総額は減少の傾向にはなっておりますものの、退職金等が増大しておりまして、人件費の支出は大幅な減少を示すまでには至っておりません。  このような収支の悪化にもかかわらず、国有林野事業の使命を果たすために、森林の適切な管理、経営を行う必要がありますために、所要の事業を行う上で不足する資金につきましては借入金に頼らざるを得なかったわけであります。このようなことから累積債務が増大し、国有林野事業の財務事情は極めて厳しい状況になったものでございます。  そのような中で日々改善努力は続けておりますが、目立った効果が確かにまだあらわれていない。行政監察の勧告もございますし、また、現在林政審議会で鋭意御審議をお願いしまして中間報告もいただいておる状況でございます。このような中で、国有林の経営改善につきましては、機能区分を行うとか、その他管理組織の簡素化とか、要員につきましては必要最小限度のものを検討するとか、累積債務の解消に努めるよう検討すべしとか種々の報告がなされておりまして、私どもは、このような報告に即しまして今後の国有林の経営の改善に努力をしてまいりたいと考えておるわけでございます。     〔大原委員長代理退席、委員長着席〕
  72. 藤原房雄

    ○藤原委員 いろいろ意見があって、申し述べたいのでありますけれども、時間もございませんからあれですが、今までの延長線上での発想で考えて物事を進めたのでは、今まで以上のことはできるわけがございません。これから最終答申とか総務庁の監察、いろいろなものを参酌するのは当然のことといたしまして、本当に抜本的な改革をいたしませんと、老齢化の実態や若年層の方々の就労が非常に少ない現実等を考え合わせますと、人員削減がこのまま進みましてこの先どうなるのかという定員の問題や、累積債務の問題につきましても最大限努力をしながら今日ここに至っているわけでございまして、ぜひひとつ省を挙げて、また大臣を中心にしまして抜本的な改革をしなければならぬ。私も林野行政、いろいろなことを今日まで当委員会におきまして討議をさせていただいておりますが、過去の独立採算という形、一般会計からも最近はふえておるわけでありますけれども、この形自体というものがそのまま温存されていいのかどうか、本当に新しく考えなければならぬ自然保護ということ等を考え合わせますと、緑の効用を訴えながら、それは全部今までの、従来どおりの経営体の中でということでは限界があるのじゃないか、こんなようにも考えておるわけでございます。御提起をしたこともございますが、今後時間がございましたときにはひとつ林業問題について大いにまた議論してみたいと思います。これは現地へ参りまして、南九州で非常に不安を感じ、また将来のことについての御意見がございましたので申し上げておるわけでございます。  次に、農業基盤整備、それから農村生活環境整備事業の積極的な推進、これも鹿児島、熊本、宮崎、三県から強い要請がございました。これは本年六月に策定されました公共投資基本計画、今後十年間で四百三十兆の公共投資額を予定しておるわけでございますが、国民生活充実に重点を置いた社会資本の整備を図るということでございますが、この実施に当たっては一極集中ということでは困るぞという、あくまでも社会資本整備のおく れている農山漁村に積極的に投資すべきであるということが、この三県のそれぞれの立場から強い要請がございました。  概算要求等につきましてもいろいろ議論されて今日あるわけでありますけれども、農水省の来年度予算案について、取り組みの姿勢とか基盤整備の促進に当たって、国庫補助等の拡大や受益者負担の軽減、こういうことに対する強い要望等がございましたが、来年度予算案でこれらのことについてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、その点について御答弁を求めます。
  73. 鶴岡俊彦

    鶴岡説明員 本年六月に閣議了解されました公共投資基本計画におきましては、今後の公共投資については、多極分散の促進と国土の有効利用を図っていくこととされております。このため、農山漁村の整備に当たりましては、生活基盤の整備あるいは生産性向上のための生産基盤の整備でありますとか、地域活性化に必要な施設の整備等を促進することとされております。  このような農山漁村の整備の方向に沿いまして、平成三年度の概算要求及び生活関連重点化枠要望におきまして、集落排水施設、農道、林道などの整備の促進でありますとか、大区画圃場整備の促進、あるいは農地の大規模な集積等を図るための事業の創設、また快適な居住空間を創出するための事業の創設等に重点を置いておるところでございます。  農家負担につきましても、従来からいろいろな対策を講じまして、今年度特別な対策を講ずることといたしたわけでございますけれども、この大規模な集積を図るための事業の創設も、そういう農家負担の点には配慮した考えを盛り込んでおるわけでございます。  今後とも、首都圏への一極集中の是正でありますとか国土の均衡ある発展を図るため、農山漁村におきます生産基盤の整備、生活環境の整備を積極的に進めるべく、所要の予算の確保に努めてまいりたいというように考えております。
  74. 藤原房雄

    ○藤原委員 大臣、どちらかというと余り明るい話でないことばかり申し上げたのですが、そういう中にありまして、鹿児島県の菱刈町におきまして、五十二年来、町づくり、村づくり運動というのに取り組んで、中核農家方々で、農業古人会、農村婦人百人会とか、また小中学生を対象にしました農業少年団、こういうものをつくりまして、後継者の育成とか確保とか積極的な取り組みをやっておるところがございました。それなりに土に親しむということで、それなりの効果を上げておるということであります。村づくりということについては各県それぞれお取り組みになっていらっしゃる、その町村ごとにもいろいろなことがなされておるわけであります。最近は、農家の子弟自体も農業に誇りが持てないというか、またそれに携わる機会が少ないとか、こういうようなことが非常に多いわけでございますけれども、こういう菱刈町の姿を見まして、私ども非常に感動を受けたわけであります。農林省の事業の中にもいろいろな事業があるのだろうと思いますけれども、こういう地元を中心にした、そしてまた青少年の方々、中核農家方々に対します村づくりということについての意識といいますかそういう活動、こういうことにもっと重点を置いた政策というのが必要だなと痛感をしてきたわけであります。  今、林業のことや基盤整備のこと、また農業の活性化のためにいろいろ工夫していらっしゃる現状、そういうこと等を申し上げたわけでありますけれども、ますますお元気で経験を積まれ、張り切っておられる農林大臣、ひとつ農薬の新しい転換のために頑張っていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  75. 山本富雄

    ○山本国務大臣 御激励賜りまして本当にありがとうございます。  今、最後に明るい話題をということで、この間視察に行かれました鹿児島県内の状況、特に若手のグループ活動などの御指摘もございました。実は過日、宮崎県、鹿児島じゃございませんが、お隣の宮崎で全国の農村青年の大会がございまして、皇太子様もお出かけになりたのですけれども、私も参りまして、いろいろ若手の方々と話す機会がございました。もちろん不満もたくさん持っております。悩みも持っております。しかし、とにかく農業が好きなんだ、そしてまた、農業なくしては日本の国の将来はないんだ、そして地域に根づいた農業をやっていこう、こういう意気盛んな状態を目の当たりにかいま見て、とにかく一生懸命頑張ろうやという話をしてきたばかりでございます。ちょうど先生と同じような体験をつい最近してまいりました。  そこで、先ほどの御指摘の林野問題につきましても、あるいは今のお話の公共投資の問題にいたしましても、これはやはり農山村漁村をつくっていくという意味での投資なんだということを基本にしていかなければならない。従来のような考え方で、ただ予算を分捕ればいいんだというふうなやり方ではなくて、林業でいえば、とにかく国を守るために、今林は危機である、林業は危機である、森は荒れておる、これを何とか救うために国民財産である林業を守ろうや。それから、今一極集中の話が出ましたが、おくれているのは農山村漁村だということは明らかなのですから、そこを整備しなければいい環境はできない、いい環境ができなければ担い手は遠くへ去ってしまう、こういうことになりますので、そういう基本的な農山村漁村づくり、こういうことで公共投資も我々は予算の獲得をしていかなければならないな、こういうつもりでやってまいります。どうぞ御協力をお願いいたします。
  76. 藤原房雄

    ○藤原委員 時間もありませんので本当に申しわけございませんが、次に、畑作の価格決定が間もなくスケジュールに上るわけでございます。新聞等におきましては、もう今日まで乳価を初めといたしまして麦価、米価ずっと値下がりしておりますから、農産物価格が下がるのは当然、こんなような論調報道されておるわけであります。農産物価格はそれぞれの品目によりまして、法律にのっとってそれぞれの価格形成をすることになっておるわけでありますから、全部一斉に横並びということはないわけでありまして、その現状に即した形で算定されなければならぬだろうと思います。しかしながら、非常に厳しい状況であることは論をまたないところだろうと思うわけであります。いずれにしましても、畑作につきましても長い歴史の中で今日までやってきたわけであります。計画的に長期的に今後の対応をしなければならぬだろうと思うのでありますが、適当な、現状に即した価格決定を要望いたしておきたいと思うのであります。  畑作農業の体質強化ということにつきまして、いろいろなことがあるのですけれども農業団体の方からは今一番問題になっております石油高騰に伴います諸物価高騰、こういうことも考え合わせますと、農業用生産資材の価格引き上げはぜひひとつ思いとどまらせるようにしなければならぬ。つくったものが値下がりになりまして、そしてまた使う資材が全部値上がりになる、こういう中で競争ということでも、そんな大きな負担に耐えられる産業じゃないことはよく御存じのとおりであります。そういうことで、この農業用生産資材の価格につきましては、農林省は直接の担当じゃないのかもしれませんが、ひとつよく通産省、それぞれの省庁と協議の上、農業の体質強化のための施策として強力に取り組んでいただきたい。  また、農業団体からはトラクター等の車検制度の改正、規制の緩和ということが言われるわけでありますけれども、農業用大型トラクター、こういうものについては、使用の状況等から小型特殊自動車同様に検査対象外にしていいのではないか、こんな意見もございます。さらにまた、農業用に限定される自家用の貨物自動車、こういうものについては、年間の走行距離などからいいまして、自家用乗用車と同機に車検の有効期限を初回は三年、以後二年、こんなことでいいのではないかとかいろいろなことが言われております。そういうことの積み重ねが結局、諸経費といいますかそういうものを軽減し、そしてまた生産性向上の 一つのよすがになる、こんなことを考えますと、これは非常に大事なことだろうと思います。  規制緩和、あらゆる面につきまして、農業全般の諸問題について、今この石油高騰の影響を受けつつある現状につきまして、農林省としてもひとつ最大の御努力をいただきたい。というのは、漁業等におきましては魚価の低迷の中で燃費の高騰、こういうものが一つの大きな影響を受けることは論をまちません。いろいろな対策についてはお考えだろうと思うのでありますが、これは御提言を申し上げておきたいと思うのであります。これについては何か……。
  77. 鶴岡俊彦

    鶴岡説明員 農業用生産資材の価格につきましては、民間の当事者間での取引にゆだねられておるわけでございますけれども、私どもとしましても、それができるだけ適正な価格で流通するよう、また生産資材の施用とか使用につきまして、できるだけ合理的にするような指導をやっていきたいと思っております。  また、石油の値上がりが問題になったわけでございますけれども、それに伴います便乗値上げ等につきましては、通産省あるいは団体等とも連絡をとりながら、そういうことが起こらないような指導をやっていきたいと考えております。
  78. 藤原房雄

    ○藤原委員 時間がございませんが、次に移らさせていただきます。  最近、根室海域におきます北方領土周辺の密漁のことが地元におきましてはいろいろ大きな問題となっておりまして、過日もサハリンのテレビ局が撮影したものが道内で、札幌のテレビで放映された。私もそれを見させていただきましたが、係官が唖然としておる様子や、いろいろなことが映っておりました。  密漁の問題につきましては、今日までも法改正をしたり、それからまた、何も根室に限ったことじゃございませんが、密漁対策につきましては海上保安庁が中心となりましていろいろな施策を講じておったところだと思うのでありますが、北海道の構想として、一つは取り締まりの強化、二つ目には特攻船に関係している業者やメーカーへの行政指導、三つ目には密漁のカニの販売を禁ずるため、道の海面漁業調整規則の改正、こういうことをしよう、こんなことが報じられておるわけであります。日ソ関係改善の流れの中で、ソ連国内での密漁の反発の声が非常に高まっておることは国際的にも信用を失う非常に重大な問題ではないか、このように思うわけでございます。  海上保安庁、また警察庁、それぞれの立場でこれらの問題については特にいろいろ取り締まりをなさっていらっしゃると思うのでありますが、現状と今後の対応を御報告いただきたいと思います。
  79. 大森寿明

    大森(寿)説明員 お答えいたします。  今先生指摘のいわゆる特攻船によります密漁の取り締まりにつきましては、管内、海上保安庁の出先機関、根室海上保安部というところでございますけれども、そこの取り締まりの最重点課題に取り上げているところでございまして、過去三年間でございますけれども、十隻の船舶を検挙しているところでございます。  今後とも、このような悪質な事犯に対しましては、海上保安庁が持っている巡視船艇なりヘリコプターといったものを活用しながら徹底した取り締まりを実施していくつもりでございます。
  80. 松原洋

    ○松原説明員 根室沖につきましては、いわゆる特攻船による密漁が相当数行われているというふうに警察としても認識をしているところでございます。  北海道警察におきましては、これまでも関係機関との連携のもとに取り締まりを進めてきているところでございますけれども、今後とも関係の行政機関などと緊密な連携を図りながら適切に対応してまいりたい、このように考えております。
  81. 藤原房雄

    ○藤原委員 取り締まりということからいいますと、一義的には海上保安庁または警察庁かもしれませんが、これらの諸問題についてはやはり水産庁が担当になっておるわけでございまして、水産庁の見解といいますか現状認識、また今後の対応をひとつお伺いしておきたいと思います。
  82. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 御指摘ございましたように、日ソ間の漁業関係をめぐる問題の中でいろいろな違反操業問題が大変大きな課題になっております。九月の初めに持たれました日ソ外相会談の席におきましても、ソ連側から大変大きな指摘を受けておるという認識を持っております。  実はその中で、御指摘のございます特攻船問題というのは、漁業許可を持たない方々による越境操業というふうなことでございまして、装備が大変高度化している、あるいは取り締まりに対して暴力的な対応をするというふうなことでございまして、私ども、これまでの日ソの政府交渉におきましても大変強い指摘を受けております。  そういった事態を受けて、私ども、北海道当局に対しまして事態の改善に向けてさらに努力が必要である旨指摘してきたわけでございますけれども、実は九月の初めに、事態の重要性を再認識いたしまして、道庁が中心になりまして、ただいま海上保安庁及び警察庁からお話がございましたように、それらの関係機関、さらに地元市町村、さらには関係する漁協が一堂に会しまして本問題に対するさらに一層の取り組みを論議したわけでございます。私どもとしては、この一連の道を中心にした動きというものを全面的に支援していくつもりでございますが、地域の大変特殊な事情背景にして起こってきている問題だけに、やはり道庁の持っております諸般の権限というものを期待していくことが適当であろうと考えております。  実は、これまでの会合の結果、これからの方針として検討されている課題として大ざっぱに申し上げまして三点ございます。  その一つは、やはりこの種の違法操業によって漁獲された水産物がいわば地域の経済とかなり密着をしているという実態がございますので、これを是正していくために漁民なり一般市民の方々の意識改革を相当していく必要があるのではないかという課題が一つ。それから第二が、通常の漁業取り締まりではなかなか制しがたい側面を持っておりますので、道の警察本部あるいは海上保安部との連携をとった共同取り締まり体制といいますか、そういうものを確立していく。それから三番目が、漁獲された水産物の流通販売を阻止するための法制度上の対応として、漁業法に基づいて道知事に与えられております漁業調整規則の中でそのための措置を具体化するべく検討をしていく、こういう課題設定を行いまして、今後さらに作業が進められていくと思います。それぞれにつきまして、必要に応じて私どもも全面的な協力をしていくつもりであります。
  83. 藤原房雄

    ○藤原委員 時間がございませんで本当に申しわけございませんが、取り締まりということについては、今それぞれの省庁または水産庁からも厳しいお話がございました。これは御存じのとおり、北海道へ流入する観光客が非常に増大したということや、また根室地方における観光資源といいますか、カニの持つ魅力、そういうことが観光客を引きつける非常に大きなウエートを持っておる、こういうことからしまして、取り締まりは取り締まりとしてきちんとしなければならぬのは当然のことでありますけれども、カニの安定的な確保ということもまた重要な問題であることは論をまたないと思うのであります。何でも取り締まればいいということではなくて、地域経済ということからいいますと安定的な確保、そのためには何ができるかということもあわせて考えていただかなければならないわけでございます。  今日までも、北方領土隣接地域安定振興対策等関係省庁連絡会議というところで、根室周辺、北方領土周辺につきましては、予算等につきましても各省庁と連絡をとりましょう、また、漁業が中心になるわけですけれども、あの地域については、やはりまず漁業資源を増大させるように努力しましょうということで、いろいろなことを我々も提起し、御努力もしてきたところでございますが、カニ資源、それは非常に難しい一面もございまして、短兵急にふえるわけではございません。今日までも、安全操業のこととか日ソ昆布採取協 定とか民間協定のようなものもございましたし、国と国との間ということになるとなかなか難しいのかもしれませんが、道漁連とそれに対応するものとかが、このカニの安定確保ということで地域経済の非常に大きな目玉になっているだけに、何かその突破口がそこから開けていかなければ、取り締まる一方だけではなかなかこれは解決する問題ではないのではないか、このように私は感じておりますし、また、地元へも何度か行ったことがございますだけにそういうふうに感ずるわけであります。  いろいろな事情があって、当然そういうことについてはいろいろな角度から分析していらっしゃることだろうと思いますけれども、ぜひひとつ可能な道をお開きいただきまして、取り締まりということとともに、地元の観光資源としてのカニの位置づけからいいまして、安定的な確保の道が一日も早く開かれるような御努力をぜひ、これは水産庁が窓口ということだろうと思いますが、いただきたいと思うのでありますが、長官大臣、どうでしょう。
  84. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 お話しございましたように、いわゆる特攻船の主要対象魚種としてカニがあるわけでございます。実は、日ソの政府間でやっております交渉でございますが、御承知のとおり日ソ漁業協定に基づいて行っておるわけでございますけれども、実はカニはこの協定の対象になっている魚ではない、大陸棚資源であるという認識になっておりまして、現時点で協定に基づく政府交渉の対象に直接することば不可能であります。  さはさりながら、事実上、私どもとしても、この資源利用をめぐりまして何らかの適正な方法があり得ないかということで、一昨年、昨年の協定に基づく交渉のいわばサイドワークとして、例えば民間協力の枠組みというものが可能ではないかということで先方と論議をした経過がございます。ただし、残念ながら、その枠組みの設定の前提としまして、まさに北方四島の領有権の考え方について御承知のとおり双方大きな対立がございまして、軽々に民間協力の枠組みを決めるわけにいかないということで、議論をしながらも結論を得られない状況が今日まで続いておるわけであります。  日ソ関係一連の動きが出てきておるわけでございますが、そういった事態も踏まえながら、民間協力の枠組みとして何が可能であるかということについて我々も引き続き先方と協議をし、何らかの方策が可能であるかどうか、さらに探求をしてまいりたいというふうに考えております。
  85. 藤原房雄

    ○藤原委員 ひとつ各省庁しっかりまた御協力いただきまして、大臣、国務大臣としてひとつ御努力いただきたいと思うわけであります。大臣からひとつ。
  86. 山本富雄

    ○山本国務大臣 御指摘の点をよくわきまえまして、水産庁長官を督励して、また各省庁とも連絡をとりながらしっかり対応してまいりたい、こう考えております。
  87. 亀井静香

    亀井委員長 藤田スミ君。
  88. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大臣、先日はありがとうございました。日本共産党は、先日、大臣を通しまして、今月末に予定されております日米首脳会談においては米の輸入自由化を協議しないように、そういうことで総理に申し入れを行いました。大臣はあのとき私たちに、この申し入れをいただくことに感謝をしたいとまで言っていただいて、大変恐縮をしております。さらに大臣は、選挙公約を守る、国会決議を守るということは当然のこと、内外情勢がどう変わろうとその立場を貫いていきたい、そして、国会決議は三度もなされており、それを変えたら、私はもちろん海部内閣は一日ももたない、今、日本は米の輸入を認めて日本農業を完全に壊滅させるかどうかの土壇場である、何としても守りたいとおっしゃいました。私もその御意見に全く異議はありません。  首脳会議議題は、申し入れの時点ではまだ詰まっていないということでありました。しかし、その後アマコスト駐日大使が、首脳会談については、アメリカ側としては、ウルグアイ・ラウンドの農業問題の打開を重要議題とする考えを明らかにし、アメリカが砂糖の関税化に取り組んでいることを挙げて、米の関税化を再度促しております。  きょうのこの委員会での大臣の御答弁を聞いておりましても、首脳会談の議題はまだ調整中だというふうに聞いておりますが、それでは日本側としては米を議題にする考えはない、そういうふうに確認をしていいでしょうか。同時に、その後総理にお会いになった大臣大臣の御意思はそのまま総理の意思だというふうに考えていいでしょうか。
  89. 山本富雄

    ○山本国務大臣 先日はありがとうございました。  また、今のお話でございますが、私が今申し上げていることは総理のお考えと全く一致しているということをはっきり申し上げておきたいと思います。  それから、先ほど来各先生方にお答えをしておりますが、日米首脳会談につきましては、その日時あるいは内容等につきましてまだまさに調整中ということでございます。また、調整ということは、双方の意見をお互いに交わすということで調整でございますから、その意味で、先ほども申し上げたと思いますけれども、米問題が出るか出ないかは、今の時点で判断をすることは難しいというふうに私ども思っております。ただ、その問題がもし会談の中で出た場合、総理は、従来の日本の考え方というものを踏まえた形で会談をされるであろうということも、先ほど来申し上げたとおりでございます。  なお、本省からは専門家である塩飽審議官を同行させるということも先ほど来申し上げてきているとおりでございまして、万全の態勢を整えて総理には首脳会談に臨んでいただくということでございます。
  90. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 万全の態勢を整えるということは、もし向こう側から米問題が協議になればということで、万全の態勢を整えて出向かれるということであると思うのですが、ただ日本側の考えとしては、それをわざわざ協議の議題にのせる考えはないのだ、そこのところは日本側の判断ですから、そういうことになるかどうかということで、アメリカの意向はともかく、日本の側としてはそういう考えはないのかあるのか、そこのところをお伺いしたいわけですが、いかがでしょうか。
  91. 山本富雄

    ○山本国務大臣 首脳会談の内容につきましては、これは外務省が窓口になりまして、官邸サイドと話をしながらアメリカ側と協議をし調整をする、こういうことでございます。私どもの方からそのことについて、あれを取り上げろとか、これを取り上げるなとか申し上げる立場にもございませんが、私は私なりの見通しを持って、今万全の態勢でということを申し上げたつもりでございます。
  92. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 アメリカは、ガットの場での圧力とそれからいわゆる二国間交渉の場を使って両方から日本に譲歩を迫り、そしてECを孤立化させていこうという考えを今持っていることは、これはもう明らかであります。  大臣も御承知だと思いますが、そのECなんですが、ECのドロール委員長は、自民党の宮澤氏と懇談された中で、今のECの農業を守るためには、ウルグアイ・ラウンドがうまくいかなくてもやむを得ない、ここまで言い切っておられるわけであります。またECは、ウルグアイ・ラウンド日本と共同したいと申し出をしているということも伝えられています。ECの農業は日本と同じ家族労働で支えられておりまして、その点では多分に共通性があるわけであります。アメリカの理不尽な関税化攻撃に対処するためにECと共同することもまた日本選択肢の一つとすべきではないか、私はそのように考えますが、いかがでしょうか。
  93. 川合淳二

    川合説明員 ECとの関係でございますが、ウルグアイ・ラウンドにつきましては、各国とも国内に種々の困難な農業問題を抱えております。ECにつきましても当然でございますし、またEC の中の各国それぞれ事情があろうと思います。  こうした中で、農業保護の撤廃は受け入れられない、特に農業の持つ多面的機能あるいは伝統的な農業が営まれているという点で、我が国ECは共通したところはあるわけでございますが、貿易に対する歪曲効果が最も著しい輸出補助金につきましては、我が国は最終的に撤廃すべしという立場でございまして、この点ではEC立場を異にすることは御承知のとおりでございます。  また、先ほど来御答弁申し上げましたけれども我が国食糧輸入国としての立場を持っております。ECあるいは米国とこの点は異なっているわけでございますので、我が国といたしましては、食糧輸入国立場ということを反映した交渉結果が確保されるように全力を挙げてまいりたいというふうに考えております。
  94. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 今の時点で、米を本当に守ろうとするなら、当面のその課題として当然ECと共同歩調をとるべきではないか、こういう意見も私はそのとおりだというふうに考えざるを得ないわけです。ましてドロール委員長は、いわゆる孤立を恐れる姿勢というものは全く見せておりません。たとえウルグアイ・ラウンドが失敗しても、ECの農業を守るために容認できないのだ、こういう姿勢を本当に今求められているというふうに考えるわけであります。  ところで、先月、ヤイター農務長官が訪日されました。その目的は、行き詰まったウルグアイ・ラウンドを打開するために日米経済協力を義務づけている安保体制のもとで先に日本に米の輸入自由化を認めさせ、そしてECを孤立化させる戦略の一環であるということは、ヤイター長官御自身が語っていらっしゃるわけであります。そして、今回の訪日が単にアメリカの思惑だけで実現したのではない、そうではないのだということは、新聞報道によっても、日程をセットしたのが自民党の加藤政調会長であり、そして日程を発表したのが農林水産省であるということを見ても明らかではないでしょうか。これは異例のことであります。そしてそこでは、ヤイター訪日を通じて世論形成を図っていきたいという思惑が見えているというふうに言わざるを得ないわけであります。それを左証するように、ヤイター長官と秘密会談を行った武藤通産大臣が、国会決議の見直しを発言するありさまでありました。  自民党内の自由化容認発言はこれにとどまるわけではありませんで、私はここで一々名前を挙げませんが、大臣もよく承知をしていらっしゃることだと思います。しかし、国民からすれば、これで本当に米の自由化反対の立場を貫くことができるのかどうかという不安は否めません。だから、私はもう一度この点についての大臣の御見解をお伺いしたいわけであります。
  95. 山本富雄

    ○山本国務大臣 先生の今のお言葉で一つだけ不正確なところがございますので、申し上げておきたいと思います。  私どもの内閣の同僚でございます武藤通産大臣がヤイターさんとひそかに会われた、こういうお話でございますが、ひそかに会ったわけではございませんで、ヤイターさんの方のお申し入れによって通産省で通産大臣がお会いになられた、こういうことでございます。別に秘密裏に会ったわけでも何でもないということを申し上げておきたいと思います。  それから、今御心配の向きで念を押されたわけでございますけれども、繰り返し申し上げているとおり、私ども、従来、国会決議を踏まえながら今日までウルグアイ・ラウンド交渉に対応してまいりました。総理も全く同じ姿勢でやってまいりました。これに今後とも変更はありません。何とか日本の国益を踏まえつつ、各国にわかっていただけるように日本側の提案をさらに主張を続けてまいりたい、理解を求めてまいりたい、こういう姿勢に変わりはありません。
  96. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 先ほどからも問題になっておりましたが、当面の問題としてもう一つの問題は、ウルグアイ・ラウンドの農業交渉の国別リストの提出期限が十月一日に迫っていることであります。これは、関税相当率のデータを出せばアメリカの関税化方針に同意することになって、米の自由化につながるということは明らかでありますので、したがって、米やあるいは輸入制限品目、でん粉だとかあるいは脱脂粉乳だとかそういうものについてはこれを出さない、応じないというのは当然のことだというふうに考えますが、この点ではいかがでしょうか。
  97. 川合淳二

    川合説明員 去る七月のウルグアイ・ラウンドの農業交渉グループ会合におきまして、各国は、国内支持、国境措置、輸出競争に関する事実関係を記した国別表を十月一日までに提出するということになっておりますことは今お話しのとおりでございます。また、この国別表につきましては、各国交渉上の立場を害さないものであるというふうにされております。我が国といたしましては、十二月のウルグアイ・ラウンド最終合意まであと二カ月余りということになっている現状にかんがみまして、従来の我が国立場主張を踏まえて、期限までに提出するように現在作業、検討を進めているところでございます。
  98. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 現在そういう作業進行中ということでありますが、もう一度、そうすると、米や輸入制限品目については農水省としては出さないという方向で、そういう姿勢で検討をしているというふうに確認していいですか。
  99. 川合淳二

    川合説明員 現時点で、作業中でございますので、その対応に関するお答えは差し控えさせていただきたいと思います。現在慎重に検討しているところでございます。
  100. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 最後になりますが、今いわゆる孤立化ということをおどしにして輸入自由化が迫られているわけです。ドロール委員長の例を引くまでもなく、私は、我が国が米の輸入自由化を認めないということが決して国際的にも孤立をしていないという点では、これまでもいろいろな角度から申し上げてきましたし、いよいよ今日、我が国が米の輸入自由化を拒否することは決して国際的に孤立をするものではないということは、そういう世論は一層広がってきているわけであります。  特に、私はきょう細かくここで申し上げることできませんが、せんだって私どもの赤旗特派員が、アメリカの「公正な貿易のためのキャンペーン」調整委員のマーク・リーチー氏と会見をしました。この団体は、消費者団体、生産者団体、そういうところがみんな寄って、世界の環境を守るというような環境保護団体も寄って、そして今アメリカガットにおける政策に対して反対の声を上げて、いろいろな運動をしておられるわけです。  そして、このマーク・リーチーさんがおっしゃるには、日本自動車メーカーがアメリカ農民グループに資金を提供してアメリカの米輸出をあおっていることや、ガットアメリカの提案が、カーギル社を初めとした穀物メジャーの利益のためにつくられているんだということを明らかにしていらっしゃるわけであります。そういう点では、私は、確信を持って、しかも孤立を恐れないで、本当に今アメリカから我が国への譲歩が迫られている中で確固とした姿勢で頑張ってもらいたいというふうに思います。  もう一つの問題として、イラク問題で、日本の共同分担という名のもとに米が犠牲にされるのではないかという危惧も生まれてきています。私は、最後にもう一度大臣の御決意を聞かせていただいて、そしてこの質問を終わりたいと思います。
  101. 山本富雄

    ○山本国務大臣 孤立化ということがございまして、それらはよく報道されるのですけれども、私は先生と同じでございまして、日本が米の問題で孤立化しているとは一回も思ったことはありません。孤立化ということになれば、アメリカECも孤立しているのです。それは孤立化ということよりも、それぞれの国が持つ厳しい農業事情というものを踏まえて、お互いが主張し合っておるということの証左だと私は思っております。したがいまして、ウルグアイ・ラウンド交渉について従 来提案をしてまいりました日本主張というもの、その正しさを理解してもらうために最後の努力をこれから傾けなければならない、こういうふうに私どもは考えております。
  102. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 終わります。ありがとうございました。
  103. 亀井静香

    亀井委員長 小平忠正君。
  104. 小平忠正

    ○小平委員 きょうの委員会の最後の質問になりました。私も与えられた時間が短いのですが、何点かについて質問させていただきます。  大臣、連日の御活動、本当に御苦労さまでございます。特に大臣におかれては、日ごろの御発言そして御活動、私は党派は違うのでありますけれども、この問題についてはまさしく激励し、そして頑張っていただきたい、そういう気持ちでおります。そんな意味でも、大変大事な時期に当たられて陣頭指揮をされている大臣のお立場、本当に御苦労でありますが、今後に向けてさらに一層の御奮闘をこれから期待する次第でございます。  その中で、短い時間でありますので、幾つかお聞かせをさせていただきますけれども、最後の質問になりますので重複することが多々あると思うのでありますが、大事なことでありますので、お伺いいたします。  まず、ガットウルグアイ・ラウンドにおいて、十二月末の決着を控えて、十月一日のいわゆる国別基礎データの提出、それから十五日に向けてのオファーリスト提出時期、こういうものが控えており、本当に大きな山場を今迎えようといたしております。そういう中で政府としては、今日まで国際会議の場等を通じて、我が国主張であります食糧の安全保障、さらには基礎的食糧などの概念を世界の諸外国に訴えられている。これがある程度一定の成果を得ているということは、私もそれについての評価をし、また、その御労苦に対して多としたいと思っている次第でございます。  先ほどお話がありましたように、私も七月に鹿野前農相を団長とした超党派議員団の一行に加えていただきまして訪米をいたしてまいりました。その中で、関係諸外国の要人、首脳にお会いをして我が国の実情をこちらからも訴えました。また、それぞれの皆さんからもそれぞれの事情をお聞きしたのでありますけれども、そういう中で私が得た感触を含めてお伺いするわけであります。  これは皆さん同じくとらえたことであると思うのですけれども、今回のウルグアイ・ラウンドの位置づけなんですが、これについては、御承知のとおり全部で十五分野ですか、その中で農業は一分野である、しかもお米はそのうちの一つのマターである、これはお互いに言っていることです。しかしこの問題は、アメリカが米の市場開放という問題をとらえて、アメリカとして日米貿易摩擦の象徴という形で従来から日本に個別的な問題として指摘をされてきている。そういう中で、私は、ウルグアイ・ラウンドの農業問題の本質というのは、お米にあるのではなくて、いわゆるECアメリカとの輸出補助金というところに本質がある、こう言えると思うのであります。こういう中で、米国にはこの意見、主張に便乗して、さらには、残念ながら我が国のマスコミの中においてもそのような意見がございまして、そして日本が米を中心として農業問題で大幅に譲歩しない限りは、ラウンドの場において農業交渉が不成功に終わり、そしてひいては日本は国際社会で孤立するというようなことが今は流布されております。しかし、私も先般海外に出まして感じたことなんですけれども、国際社会の場では、米の市場開放問題はそういうような位置づけがされていない、日本とは違った形でとらえている、そう言ってもよいと思います。私は、この問題は、米国がEC輸出補助金等々の問題で譲歩を求めるための重要な政治的道具としてこれが利用されている、こんなふうに言えるのではないかと思うのです。  こういう中で、政府としてこのような重大な局面に冷静な対処をされていかれると思うのでありますけれども、まず大臣に、これ等々含めて率直な感想といいますか、御意見を伺いたいと思います。
  105. 山本富雄

    ○山本国務大臣 アメリカまでおいでになりまして、いろいろ御活躍をされたということはよく伺っておりました。  ウルグアイ・ラウンドにつきましては、もうあと二カ月余しかない、時間との競争になってきた、基本的には、何としてもこれは成功させたい、これは日本のみならずアメリカECもみんなそう言っているわけでありまして、これはお互いがお互いの責任で失敗をさせたくないということを強調し合っているという形でございます。  今先生の御指摘のとおり、どうも米だけが先行いたしまして、本来は十五分野があって、十五分野の中の十五分の一が農業で、農業の中の一つの品目が日本の米である、こういうことであるにもかかわらず、テーブルも何もできないうちに米だけが一品でもって空中へ出てきたような格好だ、私は、いつもそういうふうに、なぜなんだろう、なぜなんだろうと今日まで疑問に思いながらまいったわけでございます。ですから、農業以外の分野でも非常に厳しい問題が今あるはずである。現に各国で意見が違って、お互いが最終調整に向かってほかの分野でも努力をしており、なおかつ意見が対立しておるというふうなことだと思います。  農業交渉でございますけれども、これは先ほど藤田先生に申し上げましたが、各国各国の厳しい農業事情というものをぶつけ合っているということだと思うのですけれども、今先生の御指摘のとおり、最大の問題はEC輸出補助金です。これは間違いありません。そして、最近ではアメリカの農業法ということになってきておるんじゃないかな。いずれにいたしましても、いろいろな言い方がされておりますし、報道されておりますが、EC主張アメリカ主張というものは、非常に厳しい対立が今日まで続いておって、容易に妥協、妥結の道は探れないんじゃないかなと私どもは見ております。うまくいってくれればいいなと思っておりますけれども、なかなか難しいのではないか。  それから、私どもの米の問題につきまして、アメリカからもいろいろなお話が従来来ておるし、先ほど例のECのドロールさんの問題も出ましたけれども、これはここにいらっしゃる柳沢先生が一番よく知っていらっしゃるわけなんでして、ECとしても我が国の方へ向かっていろいろアピールがある。しかし、我が国としては我が国の基本的な主張がありますから、その主張を中心にして今までもやってまいりましたし、最終段階もやってまいりたい。ただ、交渉事でありますから、それはECに対しましてもアメリカに対しましても、お互いが駆け引きあり得べしというふうにも思っておりますけれども、基本主張というのは、どちらにも寄らず我が国主張を貫いてまいりたい。  ただ、繰り返すようですけれどもECの補助金問題については、かねがね我が方では、世界の自由貿易を歪曲するものであるというふうな主張を続けてまいりました。また、九二年の統合を控えてEC内でのいろいろな悩みがあるようですが、その問題についてもいわゆる共通農業政策強化という動きの中で、どうも我々が見ていて雲行きが余りよくないなと思われる節が幾つもございます。また、アメリカアメリカで農業法、一九八五年よりもさらに保護色の強いものを九〇年では両院で通した。そして、今両院協議会にかけるところだ。これなどもどもは極めて注目をして見ておる。そして、ウルグアイ・ラウンドは最終段階へ向かって進んでおるというふうなことでございます。我が方の主張は、私は正しい主張だと思っておりまして、各国理解を求めるために最大限の努力を最後まで傾けたい、こう思っております。
  106. 小平忠正

    ○小平委員 今大臣がおっしゃいましたように、アメリカも先般、八月ですか、上院、下院で九〇年米国農業法を通過させました。大変な農業保護をされています。また、EC諸国においても同様に、国は農業自立の基本としてそういうような施 策をされておる。そういう状況であるのですが、私は何点か質問を用意したのですけれども、時間の関係がありますので、もう一点、一転国内に目を向けて、日本国内の状況というものに視点を置いて質問をさせていただきたいと思っております。  といいますことは、今回の農業交渉成功裏に導く最大の原動力は、消費者を含めて国論の統一、いわゆる世論形成を一に図ることがそこにあると思うわけであります。最近、農協など農業団体消費者理解を深めるために積極的な運動を展開いたしております。一方、農水省を初め政府におかれてはどのような努力を具体的にされているのか。私の目から見ますと、そういうことがまだまだ不十分ではないか、そのように思う次第であります。それと、最近のマスコミなどの論調を見ますと、政府の意向が十分に伝わっていないといいますか反映されてない。逆に生産者消費者、両サイドを分断するかのような報道さえ見られている。まことに残念きわまることだと思うのです。  そういう状況において、私が思うに、今日我が国の状況は、世界の目から見ますと金余りの国、特にイラク問題で指摘されていますように、何でもお金で解決しようとする国だ、そんなふうに見られていると思うわけであります。また、国内の世論の傾向としても、何となくおごりの風潮といいますか、そういう気持ちが、すなわちお金で何でも買えるのだ、そういう風潮が特に諸外国に対して出てきたのではないかな、そんな懸念がしてならないのです。特に、先般のヤイター農務長官との会談でも、ヤイター氏はこう言いました。日本という国はお金持ちですから、もし物がなければお金で買える、いわゆる安定供給を受ける力がある。また同様に、日本という国はお金持ちできちんと社会資本も充実しましたから、これは実態とは違いますけれども、農地が十分にあるから、もし欲しかったら幾らでもまた生産を再開できるではないか、いわゆる潜在自給力がある、こんなことも言われましたね。これと同じような意見が我が国においても今たくさんあるような気がしてならないのです。  そういうところなんですけれども、私ごとを言いますと、私は今から二十五年前、ちょうど東京オリンピックの年でありました。そのころ数年間アメリカで生活をしたのですけれども、あのころは我が国のいわゆる外貨の準備がもう非常に少なくて、ドルを求めるのに非常に苦労した、そういう経験をいたしました。それが、わずか四半世紀前のことなんですね。ところが今日では、翻ってきょうの日本を見る場合に非常に変わってきております。しかし、もしかしたらこれが、日本の今日の状況というのは頂点ではないか、そんな懸念すらするのですが、ぜひこの今の日本の繁栄を永続させるというか、国の存立を危うくさせないために今大きな岐路に立っている、こう断言できると思うのですね。その中に、単に経済ベースで農業を工業と一つに律するのではなくて、食糧を国の基本とする国全体の理解を得るために、そんなことを言っているような時期じゃない、こんなふうに私は思うのです。  そんな意味において、大臣に最後に、大臣の今後の行動について重ねて御質問するようでありますけれども、頼もしい決意のほどをお聞かせいただいて、ぜひとも我が国の国益を守り抜くために頑張っていただきたいので、最後にもう一度決意のほどをお伺いしたいと思います。
  107. 山本富雄

    ○山本国務大臣 ちょっと食糧庁長官から……。私からまた最後に申し上げますから。
  108. 浜口義曠

    浜口説明員 ただいま先生指摘の関連でございますが、米の問題は、一つは、あくまでも日本国民生活の主食の問題ということもございます。さらに、稲作の問題ということで、地域経済の問題ももちろんございますが、水田をとりました場合に、国土保全あるいはさらに日本の文化に関連する問題、そういうものが複合している問題でございます。現在ガットウルグアイ・ラウンド議論されている問題について、国会の御決議の趣旨を体し、今後とも国内産で自給するとの基本方針で対処していくためには、先生指摘のように国民皆様方の一層の御理解を得ていく必要があるというふうに十分考えているところでございます。  これにつきまして農林水産省としましては、先ほど御指摘報道機関等に関連をいたしまして、十分この背景等々も御説明をし、御理解を得ようとしているところでございますが、例えば食糧庁で申し上げますと、「私たちとお米」、副題「息子へのある母の手紙より」といったもの、具体的な名前を申し上げましたが、そういう絵入りの、国民の御理解を得られるようなわかりやすいパンフレットをつくったりなどいたしまして、いろいろな機会を通じ広く国民皆様方にこの米の背景等等について、重要性について説明をしているところでございます。今後とも農林水産省は、全力を挙げてこういった対応の道を探っていきたい、努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  109. 山本富雄

    ○山本国務大臣 いろいろ御激励を賜りましてありがとうございます。  最後に申し上げますけれども、ヤイターさんにもアマコストさんにも私は幾度も会いました。それで、いろいろなやりとり、応酬がございましたけれども先生の御指摘の、日本消費者の動向が変わってきているのではないか、一言で言えば、内外価格差も含めまして高い米、アメリカから来るのは安い米だ、こういうことに対して日本消費者の考え方が変わってきているのではないかというふうな趣旨のことを幾度も繰り返し言うんですよ。それで、私は二つのことを言ったのです。  一つは、日本消費者は非常に賢明だ。そして、米についてだけ言ってもいろいろ調べてみました。特に都会の主婦の方々、まさにお米を買ってくださる主婦の皆さん方の声をデータでとりますと、そうしますと一番彼女たちが考えていることは、安全な米ということです。次においしい米ということです。そして最後に、できれば安い米、こういうことになっておるのです。それじゃ、その米がうんと高いと今思っているでしょうか。うんと高いと思っている人はいないのです。確かに内外価格差はあります。これは、今後日本生産者方々とともに我々が一生懸命頑張って価格差を縮めていきます。しかし、基本的には安全でうまい米、安全でうまい食糧、こういうことじゃないんでしょうか。これが一点です。  それから二点目は、国会決議というものがあります。国会というのは、これはおたくもそうだと思いますけれども国民の代表がそこへ出てきておるのです。そしておたくの上院、下院に当たる衆議院、参議院で、与党も野党も一人残らずその決議に参加して、米は国内産で自給すべし、こういうふうに三たびにわたって決議をされておる。我が国アメリカと違って議院内閣制でありまして、特にこのことは強く響くのであります。ですから、言うなれば国民の代表である国会の皆さんが与野党を通じて一体になって決議をしているということは、国民の世論がそこにある。その中には生産者消費者も含めて、国民全体がそうだということでございます。  この二点を私は強調して申し上げたわけでございます。私、言葉で申し上げたのじゃなくて全くそのとおり受け取っておりまして、国会決議と、実際に都会の奥様方が、毎日お米を買っていらっしゃる方が今のような意識でおられるということでございます。  加えて、日本の農業を守ろうという声が主婦の間で非常に最近強いわけでございまして、そのことも心強く私ども思っておるわけでございます。しっかりやりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  110. 小平忠正

    ○小平委員 どうもありがとうございました。ぜひ頑張ってください。      ────◇─────
  111. 亀井静香

    亀井委員長 この際、お諮りいたします。  先般、農林水産業の実情を調査するため、第一 班福島県、宮城県、岩手県、第二班熊本県、鹿児島県、宮崎県に委員を派遣いたしました。  派遣委員からそれぞれの報告書が委員長の手元に提出されておりますので、これを本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 亀井静香

    亀井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────     〔報告書は本号末尾に掲載〕     ─────────────
  113. 亀井静香

    亀井委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十七分散会