○佐々木
委員 昔から船乗りについては板子一枚下は地獄ということが言われているわけですけれ
ども、このことはつまり、船に乗っている者というのは常に危険にさらされているんだということは今日でも変わっていないわけですね。ただ昔言われていたのは、台風、あらしなどに遭遇しての遭難ということを意識しての言葉だったと思うのですけれ
ども、最近は、遭難事故というのはないわけではないけれ
ども減っていると思うのです。これは何といっても船舶もよくなっているし、いろいろな附属の機械もよくなっているし。それでも、ないことではないと思うのです。今の
お話のように、衝突事故というのがあの広い海の中でもやはりなくならないのですね。殊に
漁船同士の事故というよりは、最近では、
日本の周辺
海域に三宅の例に見られるように外国船、しかも貨物船の航行が多くなっているということから、
漁船がその被害に遭うことが非常に多くなっているのじゃないか、これはゆゆしい問題だろうと私は思うのです。
そこで、
先ほど御紹介しました私の地元の苫前沖の事故、これは恐らく
大臣のところにも新聞などのスクラップが行っていると思いますけれ
ども、時間がないのでごく簡単に申し上げますが、この事故は五月二十七日の午前三時十五分ごろと思われる事故です。現場は留萌支庁の苫前町の北西約十二キロの
日本海上です。加害船、私はあえて加害船と言いますが、これは東大阪市の大興汽船所属の砂利運搬船第二大興丸四百七十六トン、乗組員六人。被害に遭った
漁船は留萌支庁羽幌町で、羽幌の漁協に所属しております吉田友二さん所有のエビかご
漁船第三十六栄丸、構造は繊維
強化プラスチック、いわゆるFRP、きのう藤田
委員からも
質問があったかと思いますけれ
ども、十九トン、乗組員八名。この第三十六栄丸は午前二時ごろ羽幌漁港を出発いたしました。
ちょうど北西七十キロのところに
先ほど申し上げました武蔵堆漁場がございまして、その近くにアマエビの漁場がございます。これもお手元に差し上げているかと思いますけれ
ども、「
平成元年度 留萌の
水産」という留萌支庁でつくりました資料をごらんいただきますとわかるように、また、これは地図が出ておりますから現場の
状況がわかると思うのですが、羽幌漁協あるいは苫前漁協
関連ではエビ漁というのは非常に多いわけです。漁獲量もそうですし、金額の点でも最も多い主要な
水産物になっておるわけです。この事故が起きた
海域はエビのほかにタコですとかカレイの漁場もございますし、またホタテの養殖もやっているという大変良好な漁場であるわけです。第三十六栄丸はアマエビ漁のためにこの漁場に向かう途中のことでありました。
予定では午前六時前に漁場に着いて、六時ごろからエビかごを入れて、それで一日仕事をして、その夜に帰港する
予定だったわけであります。
この地図でごらんいただいておわかりのように、羽幌港から沖合約三十キロのところには天売、焼尻の両島がありまして、これも大変良好な漁場ということになっております。ここに行く途中の事故で、一方の加害船の方は、石狩新港を出て、この羽幌からさらに北の方にあります幌延という町、ここが最近また砂利ブームでございまして、良質の砂利が出る。この砂利の運搬をするために幌延に向かう途中だった。だから、一方漁場に向かって船は沖から出ていく、その左手の方から貨物船が来るという格好になるわけです。
ちなみにこれは申し上げておきますが、ここで
お答えをいただくつもりはないのですが、この幌延の砂利と申しますのは実は三年くらい前から大変良質の砂利が出るということで注目をされているものなのですけれ
ども、北海道では
一つの大きな政治問題になっておりますのに幌延問題というのがあるわけでございまして、これはいわゆる高レベル放射能の核廃棄物の貯蔵工学センターをつくろうという構想がございます。これを動力炉・核燃料開発事業団、いわゆる動燃がこれを計画しておるという土地柄です。そしてここで出ている、これは河口付近で出る海砂利などなのですけれ
ども、この砂利は、これもまた今北海道で政治問題になっております伯の原子力発電所をつくるときに相当使われているというのです。こちらの工事が終わって、今泊の原発は動き出しているわけですけれ
ども、目下のところは建築ブームとあって、札幌周辺あるいはこちらの関東の方にまでこの砂利が運ばれているという
状況です。いずれはこの幌延で貯蔵工学センターがつくられるなどということがはっきりすればこの砂利が使われるだろう、そういうようなことも予想されて、このことも昨年十一月四日の北海道新聞で大きく取り上げられているいわくつきのものであるわけですけれ
ども、こういう砂利を運ぶ船が
漁船にぶつかったのだ、こういうことになります。
一方、港湾管理者であります天塩町と申しますのは、幌延で採取された砂利が天塩港まで運ばれて天塩港から積み出しをされるわけです。天塩港は今大変大規模な整備事業中なのですけれ
ども、この天塩港の港湾管理者であります天塩町の役場にお尋ねをいたしましたら、この三年くらい砂利運搬船が往来が激しくなっている、そして現在のところ八隻くらいが出入りをしておるのだ、ただこの天塩港は地方港湾なので一回届け出があれば何回でも入港できる、これについてはチェックすることは港湾管理者としてはできないというような
お話があるわけであります。しかし、こういう優良な漁場を突っ切っていくということは、この大興丸などという往来する船にしても知っていると思うのです。
そこで、時間がありませんのでできるだけ簡単に
お答えいただきたいと思いますが、海上航行の安全について権限をお持ちになり、責任をお持ちになっているのは
海上保安庁だと私は思うわけです。これは
海上保安庁法の上でも明記をされておるわけですけれ
ども、
海上保安庁としては、こういう
海域の
状況、漁場であることとこういう砂利運搬船、貨物船なんかが往来をしているという
実情、従来と変わったような
状況ができたこと、これについて事故防止の観点から事前に何らかの処置などということはされておられたのかどうか。この間私も現場へ行きまして地元の方にお
伺いしたのですが、漁協などには事前に
海上保安庁からもあるいは留萌支庁の方からもこういう危険についての注意などは全くなかったのだ、ただその
地域の
漁民の中から時々そういう大型貨物船が通って邪魔になる、不安だというような声も聞かれたということは聞いているのですけれ
ども、
海上保安庁、この辺の
状況は掌握されておったかどうか、どうですか。