運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1990-05-24 第118回国会 衆議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年五月二十四日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 亀井 静香君    理事 石破  茂君 理事 大原 一三君    理事 中川 昭一君 理事 穂積 良行君    理事 柳沢 伯夫君 理事 石橋 大吉君    理事 日野 市朗君 理事 西中  清君       阿部 文男君    愛野興一郎君       内海 英男君    大石 千八君       唐沢俊二郎君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    近岡理一郎君       仲村 正治君    鳩山由紀夫君       二田 孝治君    松岡 利勝君      三ツ林弥太郎君    御法川英文君       有川 清次君    遠藤  登君       北沢 清功君    佐々木秀典君       田中 恒利君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    前島 秀行君       目黒吉之助君    倉田 栄喜君       東  順治君    藤田 スミ君       小平 忠正君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  山本 富雄君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         農林水産省農蚕         園芸局長    松山 光治君         農林水産省畜産         局長      岩崎 充利君         農林水産省食品         流通局長    鷲野  宏君         食糧庁長官   浜口 義曠君         林野庁長官   甕   滋君         水産庁長官   京谷 昭夫君  委員外出席者         外務省経済局国         際機関第一課長 北島 信一君         文部省体育局学         校健康教育課長 石川  晋君         厚生省生活衛生         局乳肉衛生課長 難波  江君         厚生省生活衛生         局食品化学課長 内山 壽紀君         農林水産委員会         調査室長    青木 敏也君     ───────────── 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     楢崎弥之肋君 同日  辞任         補欠選任   楢崎弥之助君     阿部 昭吾君 同月二十五日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     後藤田正晴君   内海 英男君     長谷川 峻君   古賀  誠君     浜田 幸一君   佐藤  隆君     原田  憲君   杉浦 正健君     松本 十郎君   鈴木 宗男君     村田敬次郎君   近岡理一郎君     村山 達雄君 同月二十六日  辞任         補欠選任   鉢呂 吉雄君     武藤 山治君 同日  辞任         補欠選任   武藤 山治君     鉢呂 吉雄君 同月二十七日  辞任         補欠選任   鉢呂 吉雄君     新盛 辰雄君 同日  辞任         補欠選任   新盛 辰雄君     鉢呂 吉雄君 五月九日  辞任         補欠選任   後藤田正晴君     愛野興一郎君   長谷川 峻君     内海 英男君   浜田 幸一君     古賀  誠君   原田  憲君     佐藤  隆君   松本 十郎君     杉浦 正健君   村田敬次郎君     鈴木 宗男君   村山 達雄君     近岡理一郎君   堀込 征雄君     串原 義直君 同日  辞任         補欠選任   串原 義直君     堀込 征雄君 同月二十四日  辞任         補欠選任   佐藤  隆君     御法川英文君  三ツ林弥太郎君     松岡 利勝君 同日  辞任         補欠選任  松岡 利勝君     三ツ林弥太郎君   御法川英文君     佐藤  隆君     ───────────── 四月十九日  水産業協同組合法の一部を改正する法律案内閣提出第五二号)(予)  海洋水産資源開発促進法の一部を改正する法律案内閣提出第五三号)(予) 同月二十四日  市民農園整備促進法案内閣提出第六一号) 五月七日  米の市場開放阻止等に関する請願外一件(五十嵐広三紹介)(第三九四号)  同外一件(佐々木秀典紹介)(第三九五号)  同(五十嵐広三紹介)(第四〇〇号)  同外一件(佐々木秀典紹介)(第四〇一号)  同外一件(佐々木秀典紹介)(第四五六号)  同(五十嵐広三紹介)(第四六五号)  同外三件(佐々木秀典紹介)(第四六六号)  同(五十嵐広三紹介)(第五〇六号)  同外三件(佐々木秀典紹介)(第五〇七号)  同(五十嵐広三紹介)(第六一九号)  同外一件(佐々木秀典紹介)(第六二〇号)  米の輸入反対に関する請願小沢和秋紹介)(第四九〇号)  同(金子満広紹介)(第四九一号)  同(木島日出夫紹介)(第四九二号)  同(児玉健次紹介)(第四九三号)  同(佐藤祐弘紹介)(第四九四号)  同(菅野悦子紹介)(第四九五号)  同(辻第一君紹介)(第四九六号)  同(寺前巖紹介)(第四九七号)  同(東中光雄紹介)(第四九八号)  同(不破哲三紹介)(第四九九号)  同(藤田スミ紹介)(第五〇〇号)  同(古堅実吉紹介)(第五〇一号)  同(正森成二君紹介)(第五〇二号)  同(三浦久紹介)(第五〇三号)  同(山原健二郎紹介)(第五〇四号)  同(吉井英勝紹介)(第五〇五号) 同月九日  米の市場開放阻止等に関する請願外一件(佐々木秀典紹介)(第八一三号) 同月十六日  米輸入食糧管理制度解体反対等に関する請願藤田スミ紹介)(第九一六号)  食糧管理制度廃止反対に関する請願藤田スミ紹介)(第九一七号)  米の市場開放阻止等に関する請願外一件(佐々木秀典紹介)(第九一八号) 同月二十一日  米の市場開放阻止等に関する請願佐々木秀典紹介)(第一〇一五号) 同月二十三日  米の市場開放阻止等に関する請願五十嵐広三紹介)(第一二四三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 五月七日  食糧管理制度廃止反対に関する陳情書外一件(第五四号)  米の輸入自由化反対に関する陳情書外三十七件(第五五号)  豚オーエスキー病予防ワクチン早期実用化に関する陳情書(第五六号)  農産物市場開放対策農業振興施策の強化に関する陳情書(第五七号)  農林業改良普及事業等交付金制度の堅持に関する陳情書(第五八号)  農業政策の確立に関する陳情書外二件(第五九号)  土地改良事業にかかる農家負担軽減に関する陳情書外三件(第六〇号)  酪農・畜産振興施策に関する陳情書(第六一号)  日本中央競馬会場外馬券発売所に関する陳情書(第六二号)  国営紀の川用水農業水利事業地元負担金軽減に関する陳情書(第六三号)  公海におけるサケ・マス漁業沖獲り禁止提案撤回に関する陳情書外二件(第六四号)  森林・林業の総合対策に関する陳情書外十八件(第六五号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(農林水産業基本施策)      ────◇─────
  2. 亀井静香

    亀井委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柳沢伯夫君
  3. 柳沢伯夫

    柳沢委員 過日の山本新農林水産大臣所信表明につきまして御質問の機会をいただきました。この機会に、私といたしましては、我々の農政が当面する諸問題、いろいろな問題がございますけれども、そのうちで比較的基本的だなと私自身考えておることにつきましてこの際農政当局のお考えをただして、これらにつきましてそのお立場を明らかにしておいていただければ、こんなふうに考えておる次第でございます。  まず第一に、私は農政前提となるような問題につきましてお尋ねをいたしたい、このように思います。  私ども農政を展開して、これに応じてまた我々の農家の方々が意欲的に農業に取り組んでいただくためには、私たち農業についてあるいは農政についての理解というものが、あるいは正しい認識というものがまずその前提でなければならない、こういうように考えるわけでございます。ところが、例えば私、手元に持ってまいりました竹村健一氏の「日本農業改造論」という本がございます。これを見ますと、竹村氏は御自身番組であるところのテレビの「世相を斬る」というところで昭和六十一年に農業あるいは農政についての大変な論陣を張り始めた。「私は、この番組で十年近く論陣を張っているが、この十年来、最も早く、最も大きく日本の世論や政策を動かすのに役立つ発言になったと自負している。」こう彼自身言っているのです。確かに我々が顧みましても、彼のこの発言がその後の日本農業あるいは農政に対するいわば批判的な言論の口火を切ったように私ども思っています。ところが、この本を読んでみましても、また彼が実際いろいろな場面で語っているところを見ても、重大なところで認識不足というか、いろいろな誤解があると私は思うのです。それは農業について、あたかも我々の国の農業だけが問題を抱えている、困難な状況に立たされている、こういう認識前提になっておる。ほかの国の農業は何も問題がないのだ。一番単純な議論は、日本土地が狭い、だから土地利用型の農業に向いてなくて非常に不利であって、農産物も相対的に価格が高いものしかできない。それに対して広い国土を持つ例えばアメリカのような国では、農業は非常に有利に展開できて、安い農産物が供給できる。だから、それに譲ればいいじゃないか、そういう考え方なんですね。これは日本国民の中にも、そういう単純な考え方というのは頭に入りやすいものですから、それは明確にそういうことを言わなくても多分そうだろうということで、いわば日本農業だけが問題を抱えているという議論がすっと耳に入ってしまう、こういう面があるわけなんですね。  ところが実態はどうか。これは農林大臣初め農政当局も十分に承知されておりますように、アメリカ農業も大変な問題を抱えている。EC農業も本当に難しい問題を抱えて七転八倒しているということが実態なんですね。例えばアメリカについては、ここで余り時間を費やすわけにはいかぬかもしれぬが、価格所得支持政策というものをやっておって、そのために農産物の過剰が生じておる。それから不在地主と言われるような大企業支配が行われて、伝統的なアメリカ家族農業が崩壊に瀕している。あるいは一部の者がそういう価格所得政策の仕組みを巧みに利用して不当な利益を上げている。スキャンダルまでマスコミでは指摘されています。さらには環境問題、これは言うまでもないところなんですね。ECもまた同じなんです。国境措置では輸入課徴金輸出補助金、それから国内措置では統一価格を設定して市場介入を図ってその価格を維持する、そういうことをやり過ぎちゃってやはり過剰を生じておる、環境問題も起こっておる。こういう状況でして、これらの問題の解決のために農政当局は非常な苦労をしておるのですね。つまり、問題の性質は違うかもしれない。しかし、問題の難しさ、農政当局が直面している悩み、こういったものはほとんど日本農業日本農政と変わらない、こういうように見ているのです。他の国の農業は何も問題はない、日本農業だけが大きな弱点を抱えておると言うことは、まず事実として間違っておるのですね。  そういうことがわかりますと、我々は日本農業あるいは農政に対する対処の仕方、これももっと冷静なものになってくると思うのです。理論的になってくると思うのです。私はそういう意味合いで、農政当局におきましても農業各国共通でそういった面のいろいろな問題を抱えた難しい分野なんだというPRがやや不足していたんじゃないかな、こういうように思います。例えば農業白書というのがあるわけです。確かに我々の農業あるいは農政の動向についての白書でございますから、人の国のことをいろいろ多く取り上げることは適当を欠くかもしれない。しかし私は、日本農業日本農政に対する本当に正しい認識あるいは冷静な対処というものを求めていって、またそれについて国民皆さんから正しい理解あるいは同意を得るためには、やはりそういう客観的な事実についてきちっと状況国民皆さんにわかってもらう、このことが非常に大事だと思うわけであります。この点について、これは農政を展開する上の大きな前提だと思うのですけれども、まず大臣の御所見を伺いたい、このように思います。
  4. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  先生の御見識に基づく、例も挙げましての数々の御指摘でございますが、全くそのとおりだ、全く同感だ、こういうふうに思っておるわけでございます。各国の例を引いてお話しになりましたけれども、私も不勉強で、今まで何か軽々しく農政を口にした向きもあったなという反省を最近は時々しておるのですが、私がここで農は国のもとだというふうに申し上げている気持ちはその後ますます強くなってきている。やはり農業の上に工業があり、そしてその間に商業がある、こういう社会の組み立てであることは間違いがない、それから、これは時代がどんなに変遷してもこの哲学に変わりはない、これも私はますます信念が固まっておるわけでございます。  各国との比較でございますけれども、その竹村先生のものを私もちょっと拝見をいたしまして、一つ見識ではあろうと思うのです。いわゆる国際分業論とでもいうものを基本にして書いておられる。我々はそれもわかる。しかし食糧、特に主食を中心にして食糧安保ということは、人類が生存していく場合に、あるいは各国が国として独立をしていく場合に、あるいは国民が生き抜いていく場合に絶対に必要だ、こういう観点はこれまたますます強くなっておるわけであります。先生指摘のとおりでございまして、我が国にもさまざまな農業に対する悩み苦しみは今もってございます。前よりもさらに深刻化している面もある。しかし、それであればこそ、農を守り発展させていくために政治と行政が死に物狂いでやらなければならないのじゃないか。ところが、多くの批評家がよく言うとおり、日本だけの問題だ、農業については特に日本だけなんだみたいな指摘は、これは明らかに過ちでございまして、それは先生指摘のとおり、アメリカもあるいはECもそれぞれの国の大変な悩み苦しみを抱えております。しかも共通している問題は、農業を守らなくちゃならない、我が国農業、そしてECならEC農業を守っていかなくちゃならないという考え方に立って大変な保護措置、特別の措置を講じておるということも間違いがない事実でございます。それはもう今までの経過、そして今日の保護しているさまざまな品目を見れば明らかだと思うわけでございます。ただ問題は、これまた先生指摘のとおり、国民理解がやはり大事だな。特に我が国の場合、これだけ狭い国土の中で縦横にマスコミが発達をしているにもかかわらず農業に対する認識というものがいま一つ、あるいは時によっては正しく伝わっていない場合が多いということなどを考えますと、これは国民理解がどうしても必要だ。その国民理解の上に立って我々が頑張っていかなくちゃならない、こういうふうに考えます。  特に農林水産省の場合には、私が見るところ、今まで黙々と粛々とやることが農業を守る者の姿勢なんだ、こういう考え方が非常に強くありまして、言うなれば、派手でなく地味にやろう、やるべきことはやろう、声を余り大にする必要はない、こういう姿勢が非常に強かった。しかし私は、それではもう現在通じないんだ、ありとあらゆる場面で国際的にも国内的にも言うべきことは言う、特に日本国民理解が得られるようなPR先生の御指摘のとおり徹底的にやらなければいかぬ。先生政府・与党の農業責任者でもあられるわけでございますから、ともどもぜひやらせていただきたい、こう思っております。
  5. 柳沢伯夫

    柳沢委員 大臣から大変的確な御答弁をいただきまして、その線で私どももみんなで努力をしていかなければいけない、かように思うわけであります。  今も大臣お話の中にもございましたが、我々もとかく軽々しく農業を見ていた面も率直に言ってあったという正直な御発言がありまして、これは、実は私も出身の省が大蔵省というところで、どちらかというと経済合理性というものを非常に大事にしてきた役所で修行を積んだ人間なものですから、そういう側面から物を見るということになれて、つい親しむというかそういう側面がありました。しかし、農業の問題を本当に真剣に考えてみると、なかなか事はそう薄っぺらなものでないということが正直言って私自身が昨今強く持っている感じなのでもあります。たまたまこの前、臨時行政改革推進審議会瀬島会長代理さん等とお話をする機会を党で持っていただきまして会ったわけですが、どうもいわゆる臨調の人たちも当初は非常に勢い込んで、日本農政何やっているんだみたいなことで、特に経済合理性というような観点から大きな切り込み姿勢を見せたんですが、こう年月を経るに従って少しトーンが変わってきた。私はこれはよく聞いたわけじゃありませんから私の個人的な推測にすぎませんけれども、彼らの心の中の推移もやはり同様の経過をたどったんではないかな、こんなふうにも私なんか思っておるわけです。経済合理性というようなものは本当にその事柄の一つ側面にすぎないみたいなことがどうやらわかってきて、ああいうような緑とか水とかあるいは農業というものに対する彼らの物の言い方の変化がそこに出てきたんじゃないかな、私こういうふうに見受けるわけでありまして、私どもは、やはり昔の人たちが言った農は国のもとということをこの際改めてかみしめて、その言葉の奥にある厚みのある考え方、こういったことに相当敬意を払っていかなくてはいかぬな、これは自戒なんですが、そんなふうに思っておるわけです。  次に、当面の問題として、国民あるいは特に農家、農民の方たちがひとしく強い関心を持っておりますガットウルグアイ・ラウンド農業交渉についてお伺いをいたしたい、このように思います。  ガットウルグアイ・ラウンド、四年の歳月を予定しておったのですが、いよいよその四年目に入って、競馬で言えばまさに第四コーナーを回ってホームストレッチに入ったという最終段階に来ておるわけですが、ここへ来まして、いよいよ交渉枠組みもはっきりしてきたように見受けるわけであります。交渉構造というか、大げさな言葉かもしれませんけれども、大体、国内措置はAMSでやりましょうとかあるいは国境措置関税化というようなことで、数量化してこれを処理できないかとかいうようなことになってきたように見受けます。日本を初めとする一部の国が出している非貿易的関心事項というようなものもその中でどのように処理したらいいか、大体このように論点というか論議の枠組みが明確に浮かび上がってきたように思うわけでありますが、この枠組みそのものについてこれを平板にとらえるような考え方がどうもあるようなんですが、それは果たして正しいアプローチなのかなということを最近私は感じるわけであります。  これはどういうことかというと、そもそもガットウルグアイ・ラウンドガットそのもの自由貿易を推進するということではありますけれども農産物については特別ないろいろな規定がこれまでにあったわけですね。その改革なんですけれども農業とか農産物についてのこれまであった特別な扱いにはそれなりの理由があったわけなんですね。それは農業固有性格に起因している面がある。その農業固有性格というものは変わるものではないわけなんですね。そういう観点で私はあえて申し上げるのですけれども、そもそもこのウルグアイ・ラウンド農業交渉がこれだけクローズアップされた歴史的な背景は何だったのだろうか、ここで顧みなければならぬと思うのですね。  これは先ほど私が指摘したような、例えばアメリカとかEC諸国においてとられておったいろいろな農業政策、この結果、本当に残念なんですけれども、そこに過剰が生まれた。農産物過剰になってしまった。戦後の世界を覆った食料不足あるいは自給率各国における低下、これを何とか回復し向上させよう、こういうような観点からとられた農業政策が裏目に出たというか少し行き過ぎたというか、もうちょっとかじ取りをうまくやればそんなことなかったのになという考え方も成り立つのですが、いずれにしても現実にはそれが過剰を招来してしまった、こういうことがありまして、その過剰農産物貿易を通じて解決しよう、こういうようなことが歴史的な事実としてその背景にあったと考えていいんだろうと私は思うわけですね。そうすると、問題は、それじゃ貿易を円滑にして、その問題の解決を対外的に図るということに力点を置くべきなのか、もっともとにある過剰を招来せしめたような国内政策についてどのような合意をして、お互いに余り余分な物をつくって人様の国に運ばなきゃ物が売れないというようなことはやめにしようということに優先的な配慮を払うべきか、私はそのことを考えると結論は明らかでないのかな、こういうようにすら思う。ですから、今農業交渉枠組みは、申しましたように国境措置国内措置というようなことで、どちらかというとむしろこの国境措置の方に少し交渉の重点が移っているようにも見えるのですけれども、私、ちょっとおかしいんじゃないかなとすら思うわけでございます。  そういう観点で、この農業交渉の今行われている枠組みについて、私の考えはちょっと農業交渉実態からいっておかしいのか、あるいは私の言っていることがある程度適切と考えられるのか、適当であるならばなぜそういうところに日本の主張をしていけないのかといったようなことについてお考えをお聞きしたい、こう思います。
  6. 川合淳二

    川合政府委員 ガットウルグアイ・ラウンド農業交渉背景と申しますか、今先生から御指摘があったわけでございますが、御指摘のように、今回の農業交渉がこれだけクローズアップされてきた背景にはやはり世界的な農産物構造的な過剰というものがあるように私どもも思います。各国農業の持つ特殊的な事情をそれぞれ大事に思いながら進めてきた政策が、ある場合には補助金つき輸出の増大ということになり、そこで輸出競争が激化いたしまして農産物価格が大幅に低下した、世界農産物市場が悪化して混乱したというようなことがこの農業交渉背景にあったことは事実だと思います。したがいまして、今回の交渉の対象といたしまして、あらゆる農業貿易影響を与える措置ということのほかに、やはり農業保護のあり方についての議論が進められているわけでございます。国境措置あるいは国内支持措置というものについてそれぞれ議論が進められている背景には、やはり現在といいますか、この背景として問題になった構造的な問題について何らかの解決を図るべきであるというところから出発していると思います。  そこで問題になりますのは、やはり輸出国輸入国立場は今の国内措置あるいは国境措置につきましてそれぞれ世界農業事情に与えるインパクトと申しますか影響は違うわけでございますので、私どもとしてはこれだけの輸入国という立場に立ちまして交渉に臨んでいるわけでございますので、やはり御指摘のとおりまず過剰生産を行っている輸出国がみずから過剰生産を正していく、さらに、貿易に歪曲的な性格を持っている輸出補助金について段階的であっても削減していくべきではないか、最終的には撤廃していくべきではないかというようなことを提案しているわけでございますが、そういうところに私どもの理論的根拠と申しますか、この農業交渉に臨む背景あるいは考え方を置いているところでございます。
  7. 柳沢伯夫

    柳沢委員 経済局長がおっしゃったとおりだと私は思うのですね。輸出をしなければ解決できないような過剰を生ずるような農業生産、これが一番の焦点になるべきなんですよ。ここをしっかり歯どめをかうということがやはり円満な国際経済社会秩序を構築する道だ、こういうように私は思うわけでありまして、これはよくガット交渉の場でも皆さん、その衝に当たる人たち、我々応援団も含めてなのですが、主張をしていかなければならぬ、このように私は思います。  それで、ガット農業交渉についての御質問の第二点ですけれども国境措置では、ただいまもお話にもありましたように、関税化ということが非常に大きくクローズアップされてきたわけです。私は、最近EC関税化の提案に対応してどうもこれを受け入れるというような動きが報道されて、日本はちょっと困ったなみたいな議論が出てきているのですが、これもよく考えてみるととてもおかしいことだ、ちょっと行き過ぎた反応じゃないかなと思うのですけれども、問題は関税化そのものにあるわけじゃないと思うのです。問題は、アメリカが提案しているように関税化した場合に、それを関税割り当ての方法によって実際に平均関税率を削減していく、これをECが本当にのむのかねというところに問題があると私は思うのですよ。関税化そのもので我々は別に慌てることもたじろぐこともない。関税化したって、アメリカが提案するようにそれを削減して国境措置のいわばバリアーを低めていくということに、何か留保条件をたくさんつけてそれをやらないということだったらそんなもの何も現状を変えるわけじゃないですね。現在のECのとっている可変課徴金も、決して輸入許容的なものじゃなくてむしろ輸入禁止的な性格を持っているわけでありまして、他方、後でも私ちょっと触れたいのですけれどもECの最近の農業構造政策を見ていると、むしろ最近は生産性を低めても環境を守ろうみたいなことの方向に行っているわけですよ。そういうようなことを他方でやりながら、ECがこの国境措置を低めて自分たち農業なりあるいは農村なりをめちゃくちゃにしていいなんということを考えているとは私は到底思えない。ですから、EC関税化――輸入課徴金なんというのはレビーとタリフですけれども、そんなものはわずか五十歩百歩の話なんでございまして、それを受け入れるからといって日本が慌てることはない。この際、ECの出方、つまり関税化を受け入れた後一体ECは本当に何をやるかというところをもっと我々はじっくりにらんで我々としての態度を決めていけばいいのではないか、このように私は思うわけであります。私は、どうも最近の我々農政関係者、マスコミを含めて、その間に見られる関税化を受け入れると大変だぞ、日本はどうするんだみたいなことは、それは少し先走った反応ではないかというように思っているわけでありますけれども、この辺の考え方について、農政当局はどのようにお考えなのでしょうか。
  8. 川合淳二

    川合政府委員 今御指摘ございましたように、ECの現在の農業政策の基幹をなしております可変課徴金は、御承知のように、EC域内の農産物価格価格の安い域外の農産物の輸入によって影響を受けることを防ぐために、境界価格と輸入価格との差額を徴収しているというものでございます。こういうある意味でEC農業政策の基幹にあるこの制度に対しまして、今回ECアメリカの提案の関税化というものにつきまして大略三つの条件をつけて検討をし得ると言っているわけでございますが、一つは御承知の保護の再均衡の問題でございます。それからもう一つは不足払い補助金、これはアメリカなどでやっているものでございますが、関税に転化する。それからもう一つ、これが一番可変課徴金とのかかわりの問題だろうと思うのでございますけれども、固定要素と補正要素といいますか、それを用いるということを条件として提示しております。  今御指摘のように、この条件をどう読むかによってEC考え方は随分変動すると思います。しかも、昨日終わりました非公式の会合でもECはこの関税化考え方についての具体的な内容をまだ示しておりませんので、これ以上のことはわからないのでございますが、今のようなことを考えまして基本的な制度であります可変課徴金を勘案して考えますと、同じ関税化といいながら、今の段階ではアメリカとの間にはかなり大きな隔たりがあるのではないかというふうに考えております。ただ、ウルグアイ・ラウンドをまとめたいという気持ちはECアメリカともにかなり強いものがあろうと思いますので、今後の成り行きというものは十分注意して見ていかなければいけないと思っております。何よりもEC関税化考え方がどういうものかということを私どもとしても早く知ることが大事ではないかと思っております。
  9. 柳沢伯夫

    柳沢委員 EC考え方がまだ明らかになってない、これはそのとおりだろうと思うわけでありますが、私どもも、先ほど言ったように、関税化そのものに別に慌てることはないですよ、関税化そのものはそれほど重要なことじゃない。私の言わんとするところは、なかなか微妙な言い回しが必要なので苦しむわけですけれども、私は個人的に言ったら、関税化の中で勝負するのか関税化の外で勝負するのかということについて相当に考えなければならぬことは確かなのだけれども、しかし、その後この関税の平均税率というものを下げていく仕組みにどういうことが出てくるかということを見定めると、そこの関税化の中で勝負するか外で勝負するかということはそれほどの重要性を持たないのじゃないかな。これは個人的な考えなのですが、こんな感じを持っているということだけあえて発言をさせていただきたい、このように思うわけです。  次の質問に移るわけですけれども、日米構造協議の中間報告で出てきた公共投資十カ年計画に関する質問でございます。  この問題につきましては、現在政府で部内検討が進められておるわけでございますけれども、第一点、これは経企庁だけじゃなくて、国土庁が第四次全国総合開発計画、四全総に基づいてこの政策、投資十カ年計画との整合性を図っていこうというので、この点は大変ありがたい、私はこういうふうに思っております。アメリカの言い分あるいは要求と言われるものが大変都市に偏重した要求であったというふうに伝えられているところから、若干その成り行きを心配しておったのですが、さすがに日本政府はきっちりみずからの国土政策というものにのっとってこの問題に取り組むという姿勢を示しておっていただくわけで、この点は大変多として、我々はそうでなければならぬ、このようにここでもはっきり申させていただくわけです。  問題は、その場合に私ども農政の分野で、では四全総にのっとって他の分野に比べて投資の進捗度合いはどうだということであると思うのですけれども、私は決して農業分野が恵まれているというような情勢にはないと思います。特にその中でも、お互いほぼ合意が見られていると思うのですが、生活環境の整備というか、生活重視の面で投資を行っていこうよということになってきつつあるわけですが、それとの関連で見ても、これは当然我々農村の地域、農業分野というのは大変なおくれをとっているというのが実態であろうと思うわけであります。そういう意味では、あえて私は後の質問との絡みで申し上げるのですが、ぜひともこの伝統的な意味合いでの農業投資のおくれている分野についてこの際この十カ年計画でしっかりした位置づけを確保しなければいけない、このように考えるわけでありまして、このようなことに取り組む農政当局姿勢をお伺いしておきたい、このように思います。
  10. 山本富雄

    山本国務大臣 予算委員会でもこの論議が大分出まして、そこで大蔵大臣からも答弁があり、また私からも農政サイドから、こういう考え方でございますということも申し上げたのですけれども、今先生も御指摘になりましたが、どうもアメリカ側の要求が都市重視、都市への投資を重視するというふうな向きが最初かなり伝えられたわけですね。それで私の方からも早い時期に大蔵大臣にるるお話をいたしました。大蔵大臣もよくわかっておりまして、今先生お話のとおり、伝統的な農山村に対する公共投資、そしてそれがどれだけ日本国土を隅々まで発展させるために効果が上がってきたかというふうなことなども十分承知しておる、ですからこの際その十カ年計画などによって都市の方へ予算をシフトするようなことは一切しない、むしろ隅々に対して気配りをしていく、こういう話がございまして、私もほっとしたわけですけれども、その趣旨を踏まえて予算委員会でも答弁をさせていただいたわけでございます。  今作業が進んでおりまして、経企庁が中心になりまして各省庁からヒアリングを続けておるというふうなことでございますけれども、その中でよく言われるのは生活重視だ、こういうことがもう一つの柱として言われるわけなのです。さらば、生活重視ということならば、都市ももちろんそれは下水の問題あるいは公園の問題いろいろございますけれども、農山村、漁村こそは生活に全く密着しているわけなのですね。産業基盤と生活基盤をバランスよく考えていく、こういう言い方も時々使われておりますけれども、産業基盤といい、生活基盤といい、農山村、漁村では全く一体なんだ、仕事をしているところすなわち生活の地域なんだ、そして生活の向上を図るためにはその地域全体についての配慮をしなければならないんだ、こういうことを考えますと、農山村に至っては生活基盤も産業基盤も一緒だ、こういう観点を私は申し上げてきたところでございます。  なお、これも御承知かと思いますが、最近余暇利用という言葉が非常に盛んになりまして、これだけ経済的に皆さんが余裕ができる、あるいは精神的にも肉体的にも余裕ができるというふうなことになれば、命の洗濯をしようという考え方に立つのは当たり前でございます。その場合に、都市でなかなか命の洗濯はできない、これは農山村、漁村、そして森林等を含めて命の洗濯をするということになるわけでございまして、その意味でも、この公共投資計画の中にはそれらの新しい国民のニーズというものを踏まえて投資を考えていく必要があるのじゃないかということなども力説をしているところでございます。
  11. 柳沢伯夫

    柳沢委員 ちょっと手元に持ってきた本を読ませていただきたいのですけれども、これは司馬遼太郎さんの「街道をゆく」の「愛蘭土紀行」の一節なのです。司馬遼太郎さんがロンドンのユーストン駅からリバプール行きの列車に乗り込んだところの描写なのですが、「走りだすと、ほどなく英国の田園風景が展開しはじめた。牧草におおわれた野や丘、それに林、あるいはわずかに点在する田園の住宅。ときにあらわれる古い領主の館。車窓が切りとってゆくどの瞬間も、よく構成された絵画というほかない。ただ一種類なのだが、見飽きることがないのは、秩序がもつ魅力としかいいようがない。」「文明というのが秩序世界であるとすれば、こういう村を国中にたっぷりもっている英国こそ依然として大文明国かもしれない。」という一節があるわけです。イギリスの田園というのはまさにイギリス人が誇っているものでありますけれども、これは自然にできたものじゃないのですね。自然にできたものじゃなくて、最近におきましても実は大変な努力が傾注されているということがあります。  これは東畑精一先生がお始めになられたそうなのですが、我が国にあります農村開発企画委員会というところがこの種の研究をしているわけですが、そこの研究者の発言もこれまたちょっと読ませていただきたいと思うのです。イギリスについては「農村に対する投資の重要な部分である農地整備(日本土地改良事業に相当)についても、生産性向上という目的ではなくて、むしろ農地を減らして、より自然を豊富にするというような事業を具体的にやり始めた。」こういうことがあります。それから今大臣もおっしゃられた余暇利用との関係で「イギリス人の田舎好きが、一点集中型の農村観光から、分散型の面としての農村観光というところに発展してきた。」こういうことも出ておるわけです。  これは単にイギリスにとどまらないのですね。フランスでも同様であります。フランスについての研究員が「フランス的な農村景観をつくっていくということについては、農業大臣もフランス農村の景観はフランスを代表するものと言っている。特に一九八四年グルノーブルで行われた景観全国大会で、時の農業大臣ミッシェル・ロカールは「景観は地方の発展計画や農村整備・農地整備を実行していく中で、その姿を鮮明にする。それは整備の上につけ加えられるものではない」と述べ、農村の整備の全体像が景観として表出される」、こういうことを言っております。「フランスの場合には、農村の景観をつくるということは、都市住民に対する余暇空間の場所を提供するのだという考え方が非常に強く出ている。」最近我が党でもリゾートについて熱心な議員の先生がたくさんいらっしゃいまして、そこでモデルとしてよく挙げられるラングドック・ルションという地域があることは御承知のとおりだと思いますけれども、ラングドック・ルションだけが観光地ではない、こう言っているのですね。フランス人はみんな、ここに行く間に農村に寄って、そこでむしろ本当にキャンピングサイトでもって余暇を楽しんでいる、こういう指摘がこの研究員からもされているわけであります。  ドイツもしかりでございまして、一九七六年の自然保護及び景域保全法というようなものがあって、これは都市も農村地域も景域保全法を実現しなければいけないということになっているのですが、実態はどうかというと、この研究者がやはり言っているのですが、都市計画でこの景域保全法にマッチしたような地域をつくり出しているところはほとんどない、そうではなくて、農村の土地改良事業でむしろこの景域保全法に適合した地域がっくり出されている、それが大半である、こういうことを言われているのですね。我々、農村民宿とかなんとかということで山間地対策の重要な柱にしようということで今やっていることなんですが、全部そういう方向になってきているわけです。これは、土地改良あるいは農業基盤整備というものの思想が歴史的に変わってきた。戦争直後は土地の生産性を上げる、これは食糧不足に対応するものである。それから次に労働生産性を上げる、その意味で構造改善をやった。それから次は、都市との格差を埋めるということで集落整備や農村工業導入をやった。そして最後に今やこういう段階に来ている。こういう歴史的な歩みを、実は土地改良事業も欧州では歩んできているということのようです。  我々は、あえて申しますと、実はこのことにつとに気がついていたわけなんですけれども、せっかく今日本の農水省で土地改良をやって生産性を上げて国際競争力をつけた農業を実現しようということで一生懸命やっておられますので、その施策に混乱をもたらしたのでは申しわけないなという気持ちで、こういう側面指摘することをあえて控えてきたのですよ。ところが今回事態がこういうように展開してきまして、生活重視の公共投資をやろうというようなことになってきたこの段階では、もうここを控える必要ないのじゃないか。農林水産省の施策においてもここを堂々と打ち出していって、土地改良というのはこういうものなんですよと。もう欧米では、地域の人たちに合意を求めるのに、生産性をアップするためにこの土地改良をやりますなんて言ったって賛成する人はだれもいないと言っていますね。そういうことではなくて、景観とか生態系を維持するためにこういう土地改良をやりますということでなければもう土地改良計画が地域の人間から承認されない、そういう状況になっているんだそうです。我々は下手をすると余りにもおくれをとり過ぎるかもしれない。こういう事態になって生活重視の公共投資を大いにやろうということになったのは非常にいいチャンスじゃないか、私はそのように思います。  これはもう、先ほど私フランスの例で読みましたように、土地改良事業に当たってそういうことも配慮します程度の話じゃないのですね。同等あるいはそれ以上の、もちろん生産性向上のための土地改良というものもゼロにするということは我が国農業の実情からいっても到底あり得ないわけなんですけれども、しかし、非常にそこに力点を置いた土地改良というものが行われるんだということを今やはっきり打ち出しまして、だから我々の公共投資十カ年計画で農業基盤整備の事業費というのは大変大事なんだということをぜひアピールすべきだ、このように私は考えるのでありますけれども、いかがでございましょうか。
  12. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 先生指摘のように、EC諸国で農村の景観を非常に大事にした農村整備事業が行われているということはまさに御指摘のとおりでございます。私どもも、土地改良事業におきまして、農業の生産基盤と生活基盤といいますか、これを一体的に整備するという観点から農村生活環境を重視した事業を積極的に今取り入れ始めているという段階でございます。例えば昭和六十三年度から始めた事業でございますけれども農業水利施設高度利用事業というのがございます。これは農業水利施設を快適な生活空間とか余暇空間、親水水辺空間、そういうものとして整備していきたいということで事業を始めております。また、平成二年度から予算を計上したいということでお願いしておりますけれども、中山間地域の農村総合整備事業、これにつきましても国土保全という観点から、棚田の整備とか等高線圃場整備事業、そういう農村の景観に配慮した土地改良事業というものも推進していきたい。それからまた、市民農園とか体験農園、こういうものにつきましてもいろいろな事業を活用して整備を始めているという段階でございます。  今後さらにこういう仕事を拡大していきたいと考えておりまして、先生指摘のように現在公共投資十カ年計画の策定作業を進めておりますけれども、その中でも、農村地域を快適な居住空間、余暇空間として整備していくような事業を大いに拡大していきたいという考え方で作業に当たっている次第でございます。
  13. 柳沢伯夫

    柳沢委員 これは実は地方の方が先にちょっと進んでいるような面もあるんだそうですね。滋賀県、これは同僚の武村議員が知事さんをやっておったときに、彼は環境に非常に熱心で、こういうことについても大変強い関心を持った農業基盤整備をやっておったそうであります。最近は、熊本県の細川知事がドイツのバイエルンかどこかに出張しまして、その施策に完全に圧倒されて、自分たちもやらなければいけないということで、熊本県は農村景観整備事業というものを始めるんだということを言われておるそうであります。ぜひ私どももそのお手伝いをしなければならないのですけれども、この公共投資十カ年計画の中でそういったアピールを、これはかなり大きな思想の転換ですから相当PRをしてかからないと、私がこの場でこの程度の質問をしただけで風潮が変わるとは到底思えないので、ぜひ真剣に取り組んでいただきたい、このように考えます。  それとも関係があるのですけれども、実は最近の農地の問題についていろいろと感ずるところもありますので、その点について質問をさせていただきたいのでございます。  実は、日本農業新聞、これは宣伝をするわけではありませんけれども、私も愛読をしておるのですが、三月二日に埼玉県経済連が農地利用を電算化しましたというトップ記事が載っておるのですね。私はかねて、最近の農地の状況あるいは農村のたたずまいというものを見ますと、先ほど私が言ったような農村景観を整備して都市住民の余暇利用に利用しようなんといったってちょっと間に合わないのではないかと思うくらい実はスプロールが進んでいるように見受けるわけなのでございます。しかも、それがこれで打ちどめぐらい、頭打ちぐらいの状況かといえばそうではなくて、昨今の風潮でますます農業以外の部門から農地を目がけていろいろな働きかけがあって、農地を何とか転用しろという圧力が強くかかっているわけでございます。そういうような状況を見まして、私は、ここで対応を間違ったらとんでもないことになるのではないか、そう思うのでございます。  かねて私が感じておることですが、これだけ電算機が発達しましてデータベース化というようなものが各分野で進んでいるということを考えてみますと、これは土地、まあわずか五百万ヘクタールぐらいでございましょうか、そのぐらいのものであればもう悉皆でデータベース化できるのではないか、こういうように思うのです。気象だとか水利だとか土壌だとか形状、権利関係あるいは農地法上のいろいろな地位、評価額、税関係、こういうようなものを全部インプットしたような土地の台帳というか、それを電算機に入れるわけですけれども、そういうようなことをやって、土地の転用だとか休耕地だとか、このごろ起こっているいろいろな問題について的確に対応していくということが必要ではないかな。そういうことでもしないともうとてもスプロールが進んでしまって、先ほど言ったようなことをやろうといったってそんなこと絵にかいたもちではないか。私は余りここで言いたくないのですが、農協の施設あたりでも、どうしてこんなところへつくるのだろうというようなのすら、それはそれなりに理由があるのでしょうけれども、素人目ですからそういう感じすら持つケースが多いのですね。そんなことをしないためにも、私はそういうことをぜひお考えいただきたいと思うのでございますけれども、いかがでしょうか。
  14. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 農地行政を進める場合に、農地のデータベースを整備する重要性というのは先生指摘のとおりでございます。  私ども現在、農地についてのデータベースといたしまして二種類準備しているわけでございますけれども一つは、農地の一筆ごとの所有関係とか貸借関係とか、そういう権利関係を整備した農地基本台帳というものを各市町村ごとに整備いたしておりますが、これにつきましても電算化するようにぼつぼつ指導を始めているという段階でございます。それからまた、先生指摘のような気象とか水利とか土壌とかそういう関係で、これは農業基盤整備事業等を計画的に進める場合にぜひ必要な情報でございますけれども、これにつきましては全国の農地を五百メートル程度のメッシュに区分いたしましていろいろな情報を総合的に整備する、これも電算化いたしまして現在整備を進めているという段階でございます。今後とも農地のデータベースの整備につきましては努力をしてまいりたいと思っております。
  15. 柳沢伯夫

    柳沢委員 これはぜひそのようにお願いをいたしたいわけですけれども、大事なのは、意外とこれは図面であらわすことができる、アウトプットを求めることができるというようなことだろうと思うのです。農地台帳を単に計数的あるいは文章的な意味で電算化してもなかなか際立った効果が上がってくるとも思えないわけでございまして、ぜひ電算機のスコープを利用したビジブルな、図面でもこれをアウトプットできるというような形でのデータベース化というものについて考えていただきたい。これは要望でございます。  時間がなくなりまして大変困るわけでございますが、ちょっと問題が飛んで大変恐縮なのですけれども、金融自由化の問題に移らせていただきたいのでございます。  この金融自由化というのは、もともとがアメリカで始まったわけでございますけれども、これはいわゆる証券会社が優良企業に無担保の債券で金融をつけてしまう、それで普通の金融機関、通常の証書貸し付けなどをやっていたところが、いわばBクラスの企業、貸し出し先しか相手にできなくなる、それでリスクが多くなるというようなことで参ってしまって、我々にも証券業務をやらしてくれよ、ボンドを扱わしてくれよ、これが金融自由化の一番最初なのですね。そういう観点から見て、今農協の系統金融機関が置かれている立場などというのは、アメリカで金融自由化が起こったときの一番の原因になったある特定の金融機関グループの置かれていた立場と全く同じなのですね。つまり、今預金金利の自由化というのを日米の委員会で、この間マルフォード財務次官が来て強烈に大蔵省に要求して、大蔵省は、方向は合意なんだけれども中小金融機関があるからちょっと待て、こういうことで論争が中断しているわけですけれども、遅かれ早かれ金利の自由化ということがどんどん少額の貯蓄、預金にまで出てくると、農協の方は、自分の入る方は自由化して相当競争にさらされる、さて、その運用の方はどうなんだというと、これはもうがんじがらめである。これでは到底立ち行かないのでございまして、ここのところは、農協系統金融機関の立場上の制約というのは幾つもあることはわかるわけですけれども、相当心して対処してやらないと金融機関としての存立そのものが危殆に瀕してしまう、私はそのように懸念をするわけであります。  農協の方に聞きますと、先生、法人化するとこれは員外貸し付けになるのだけれども、個人が今まで正会員としていろいろな事業をしておった、そこは貸せた、それが発展して法人成りしたら員外貸し付けでぎゅっと制約されるというのは、少なくともこれは何とか勘弁してくださいよ、全部の法人を相手にさせるとは言わないけれども、そういうものぐらい勘弁してくださいよというようなことも言っております。それから、最近信託というのが脚光を浴びていることは御案内のとおりでありますけれども、この信託についても、まさに農協金融機関というのは土地の所有者の集団なのですから、その土地の信託的な利用というものは彼らの本領発揮の場なのですね。ですから、そういうような信託業務についても、これはやはり金融自由化の中で彼らに業務としてやらせてやるということが農村の活性化、特に彼らは、都市でやろうなどと思いません、むしろ中山間地でこういったことについて自分らのノーハウ、力量を発揮してみたいというようなことも意欲的に述べているのでありまして、このあたりのことで要するに出の方の規制の緩和ということについてかなり本腰を入れた御検討をそろそろ始めていただいたらどうだろう、このように思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  16. 川合淳二

    川合政府委員 先生御承知といいますか、先生の方が専門家でございますが、金融制度調査会それから今お話がございました日米金融協議などの議論がございます、金利の自由化と垣根問題といいますか業際問題といいますか、そうした自由化の方向の影響は、何と申しましても農協の基盤でございます信用事業を揺るがす非常に大きな厳しい情勢だろうと思っております。  御承知のように、金融制度調査会では二つの委員会議論がなされているわけでございますが、これにつきましての協同組織金融機関の機能拡充問題につきまして、個別要望事項につきまして去年の秋以来検討が進められております。早ければ本年五月末にはこれらの個別要望事項についての方向づけが報告される見込みでございます。これにつきまして、この段階ですべてが満たされるということはないと思いますし、検討がなお続くと思いますが、御指摘のように自由化の流れが必然であるとすれば、リスク管理その他で、もちろん別の面でのある種の努力というのは必要になってくると思いますが、機能充実といいますか機能強化といいますか、例えば御指摘の貸付範囲の緩和、拡大というようなことにつきまして十分検討していかなければいけないと思っております。金融制度調査会を中心とした動きそれから日米の動き、そうしたものを十分私どもも注意深く見守りながら、検討に着手しなければいけないというふうに考えております。
  17. 柳沢伯夫

    柳沢委員 予定した質問がかなり残ってしまったわけでありますけれども、時間が参りましたので、私の質疑はこれで終わらせていただきます。残余の分は機会を見ましてまた御質問させていただきたいと思います。大変ありがとうございました。
  18. 亀井静香

    亀井委員長 石橋大吉君。
  19. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 私は、今からガットウルグアイ・ラウンド農業交渉の問題一点に絞りまして一時間ほど質問をしたいと思います。かなりたくさんありますので、できれば簡単明瞭にお答えをいただければ幸せだ、こう思っております。  まず最初に、交渉の現段階と今後に関連をして三点ほど質問したいのですが、一つは、ガット農業交渉の現段階と、十二月上旬交渉終結に向けて果たして終結をするのかしないのか、このことについてまず最初にお尋ねをしたいと思いますが、御承知のとおり、ウルグアイ・ラウンドの多角的貿易交渉は本年十二月の第一週には終了する、こういう予定で進められておるわけであります。その最大の焦点である農業分野については、一九八九年四月の中間見直し合意、同年末の各国の包括的な提案の提示を受けて、現在最終的な交渉に向けてその明確化の作業が行われていると聞いているわけであります。しかし、本年十二月上旬までといえば、もうあと正味わずか六カ月しかないわけであります。  御承知のとおり、この農業交渉をめぐる問題は、大きく言って、ガットをめぐる基本的な問題を整理解決をすること、農業交渉をめぐる幾つかの争点について合意に達すること、この二つが私はあると思います。  例えばガットをめぐる基本問題という観点で言えば、ガットというのは一体いかなる国際条約なのか、ガットの条文がどれだけ守られているのか、建前と実態がかなり乖離をしている、ガット違反は公然化をしている、こういうような問題をどういうふうに整理をするか。また、国際機関としてのガットの問題に関して言えば、ガットには現在九十六カ国が加盟している。社会主義国を除くほとんどの国が加盟しているわけだが、しかし本当にガットが国際機関かどうかは必ずしもはっきりしていない。本来の国際機関ではないという通説もある。加盟国から問題提起をされて初めて腰を上げる、こういう性格の問題、こういうことをどうするか。それから特に問題なのは、御承知のとおりガットアメリカとの関係ですね。大変不思議な話だが、ガットの創設者でありリーダーであるアメリカガットの規制が全く及ばない形になっている。アメリカの連邦法がガットの上位にあるというのがアメリカの判断だそうですが、こういう状態をきちっとすることなしに米の自由化などというのはとんでもない話だ、私はこう思っているわけですが、こういう問題をどうするか。それから、ガットECの関係につきましても、今回の農業交渉の焦点はECアメリカの対立だ、こう言われているわけでありますが、ガットの中でECの位置づけが実は法律的には非常にあいまいだ。ヨーロッパは一種の二重代表制みたいな形になっておりまして、ECも出てくるし域内の各国も出てきて物を言う、こういう形になっているわけであります。ある意味では非常に強力な発言力を我が国などに比べれば持つことができる、こういう仕組みになっているのじゃないかと思うのです。どっちにしても、こういう制度上の問題をどうするか、これが大きな問題としてまず前提にあると思うのです。  それに加えて、本題ともいうべき農業交渉をめぐっていろいろな論点がある。ざっと文献から拾いましても、農業農産物貿易についての考え方の問題、農業の支持、保護についての考え方の問題、非貿易的関心事項、いわゆる食糧安全保障の問題、それから輸出補助金と可変課徴金の問題をどうするか、ガット十一条二項(c)の問題をどうするか、それから関税化の問題、国内の支持政策農業保護政策をどうするか、検疫、衛生措置の問題、開発途上国に対する特別の取り扱いの問題、これだけでも九つあるわけであります。  六カ月で一体こういう問題が全部解決をして合意に達するのかどうか、私は相当な難問だと思います。私が今指摘してきたことは、恐らくほとんどの問題がまだまだ半分の合意にも達していないのじゃないか、こんな感じで私は見ているわけですが、こういう状況で十二月段階を迎えたときに一気に全部決着する、到底考えられませんが、この辺の見通し、判断、こういうことについてまず最初に伺いたいと思います。
  20. 川合淳二

    川合政府委員 今お話がございましたように、ウルグアイ・ラウンドのスケジュールと申しますか、日程的な問題につきましては、昨年四月の中間見直し合意が行われたわけでございます。農業問題に関して申し上げておりますが、ここでは本年七月下旬に開催が予定されております貿易交渉委員会において合意の大枠をつくるという予定が一つございます。その後、九月から十二月の間にこの合意の大枠に基づきまして本格的な交渉を行うということで、十二月の三日から七日という日にちが既に設定されておりますが交渉終結のための閣僚会議を開くスケジュールができております。このスケジュールによりまして、昨年末までに我が国を含みます主要国から各種の提案が出ているわけでございまして、本年初めから、その提案の内容につきまして、明確化と言っておりますけれども、その作業が行われておりまして、その今月の議論が二度、上旬とつい昨日まで行われているわけでございます。そういう意味では徐々に実質的な交渉の段階に入ってきている状況であろうかと思います。しかしながら、今お話がございましたように国境措置あるいは国内支持政策輸出補助金、それから非貿易的関心事項というようなことが重要要素になっておりますので、今の段階で各国の見解が収れんされているというふうにはとても言えない状況にあろうかと思います。  そこで、御質問の十二月までに決着がつくかどうかということでございますが、これは非常に難しい御質問でございますし、私どももこれについての的確な判断を今の時点で申し上げることはできませんけれども、ただ一つ言えますことは、ウルグアイ・ラウンドに対します各国の取り組み方はかなり強いものがございまして、やはり最大限の努力を今後十二月までの間に進めて傾注していくというふうに考えておくべきではないかと思っております。この点については各国とも異論のないところのようでございますので、いずれにいたしましてもかなり精力的な作業が今後行われていくことだけは事実ではないかというふうに考えております。
  21. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 次に、農水省の方も答えてもらって結構ですが、主として外務省にお伺いします。東欧、ヨーロッパをめぐる新しい政治情勢、政治課題の登場とガット農業交渉との関係について伺っておきたいと思います。  非公式の専門家の分析によりますと、昨年末の各国の包括的な提案以来、今も話がありましたが、各レベルにおける若干の交渉のための会議はあったけれども、本格的には見るべき進展はない。そして、この交渉のおくれておる最大の原因は、関係主要国の政治指導者の関心が心そこにあらず、ガットに最大の関心がない、予想外の政治的事件が去年一年間次々と起こってきた、こういうことですね。  それは具体的に言えば、東欧における共産主義の崩壊、そしてドイツの再統一の問題、NATOの変化などの重大事件が起こりまして、これらの問題が西欧各国EC、米国の指導者などの関心を強くとらえている。実際問題として、ドイツ再統一は早ければ一九九〇年の終わりにも実現するだろう、こういうふうに言われておりますし、御承知のとおりこの十八日には東西ドイツ統合へ向けて新しい条約が調印をされた。両ドイツの通貨・経済・社会保障同盟創設に関する国家条約、こういう条約の調印がありまして、東ドイツの経済主権をほぼ全面的に西ドイツに移譲して東ドイツ経済の再建を図り、ドイツ統一に向けて東独社会から社会主義色を一掃し、東独の西側陣営への移行を実現することを目的とする条約、こういうふうに言われているわけですが、ドイツが統一をするということになりますとヨーロッパの政治状況はがらっと変わってしまいますから、そういう意味では、大変失礼ですけれどもガットどころではない。こういう状況がやはり交渉全体をおくらせるのではないか、おくらせている、こういう一部専門家の情勢分析もありますが、この点、外務省はどういうふうにお考えになっているのか。ガット農業交渉だけではありませんので、まず外務省の見解をお伺いいたしたい。    〔委員長退席、柳沢委員長代理着席〕
  22. 北島信一

    ○北島説明員 御説明申し上げます。  先生指摘のとおり、最近の東欧情勢の進展には注目すべきものがあるということで、西欧各国の指導者もこの問題のフォローアップに多大なエネルギーを割いているわけでございます。この点については先生の御指摘のとおりですけれども、同時に、最近の東欧情勢の進展こそまさにガットの標榜する多角的自由貿易体制、それから市場経済体制の正しさといったものを裏づけているというような認識も強いわけで、現在行われていますウルグアイ・ラウンド交渉はまさにそうした多角的自由貿易体制の維持強化を目的としたものでございますので、東欧情勢の進展を見ても、ウルグアイ・ラウンド交渉については予定どおりぜひ本年中に終結する必要があるということについての認識は、西欧各国の間でも広いのではないかというふうに考えております。  具体的には、例えば四月にメキシコでウルグアイ・ラウンドについての非公式の閣僚会議がありまして、中山外務大臣ほか世界じゅうから三十カ国の関係閣僚が集まりました。それから西欧各国につきましては、先週十八日、十九日にアイルランドでEC貿易担当大臣会議というのが開かれましたけれども、いずれの会議においても、つまりヨーロッパの閣僚が参加している会議においても、予定どおり今年中に終結する必要があるということでの共通の認識を得ているということでございます。
  23. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 農水省、いいです、この問題については。  次の質問に移りますけれども、これはさっき柳沢さんの質問の中にちょっとありましたが、今の話とは逆に、アメリカECが急接近をして関税化戦略をめぐって我が国は孤立化か、こういう日本農業新聞の五月四日、五日の記事があるわけです。この辺の事実関係についてちょっとお伺いをしたいと思います。  その新聞記事によれば、「コメの市場開放はじめ日本農業政策を左右する新ラウンド農業交渉は、これまで最も対立してきた米国と欧州共同体(EC)が接近し始めたことで、急展開の様相を見せてきた。」そして「四月二十三日、米国・EC閣僚会議に出席していたヤイター米国農務長官は、新ラウンド農業交渉を推進するため米・ECだけの問題別作業部会を設置することで両者が合意したことを明らかにした。」「これまでの農業交渉の流れ、米・EC基本的思想の対立から判断する限り、「簡単な妥協は有り得ない」としてきた日本にとって、今回の決定は大きな衝撃だった。特に、「急展開を象徴する」突然の米、EC「雪解け」に、農水省の受け止め方は、深刻だ。」まあ本当かうそか知りませんよ。こう新聞記事に書いてある。「米国・欧州共同体が農業交渉で接近する背景には、三つの大きな理由がある。一つ目が、両者とも新ラウンドの成功のためには農業交渉での合意が不可欠との認識を持ち始めたことだ。」「二つ目は、農業交渉農業保護削減の合意ができなければ、互いに国内に向けた保護削減の口実を失ってしまう身内の事情」「三つ目が、互いに作付け制限を実施したことから穀物の国際相場が一時のような暴落から立ち直り、輸出競争が一段落していること」また、今もちょっと外務省から話がありました「「ベルリンの壁の崩壊」に象徴される東欧の変化に対応することを優先し始めたことが、米国・ECの接近を促進したとの分析も出ている。こうした状況から判断すれば、五月下旬に開かれる経済協力開発機構(OECD)閣僚会議や七月のサミット、新ラウンド貿易交渉委員会、五か国農相会議と矢継ぎ早に」これから国際会議が開かれるわけですが、「米国・ECがさらに接近する可能性」があるのじゃないか。「その時、食糧安全保障論を主張する日本は、米国・ECの共通のターゲットにさせられてしまう」のじゃないか。こういうふうに言われているわけです。  私は、これはヤイター一流の交渉戦略ではないか、こう思っておりますが、この辺の事実関係どうか、ちょっと伺いたいと思います。
  24. 川合淳二

    川合政府委員 ウルグアイ・ラウンド農業交渉におきましては、農業の支持あるいは保護のほぼ完全な撤廃を要求しておりますアメリカ、あるいはいわゆるケアンズ・グループといっておりますオーストラリアとかカナダなどの輸出国グループと、それからEC日本のように農業の支持、保護の撤廃は受け入れられないという、大きく言いまして考え方があるわけでございます。ECアメリカの間には、そういう意味ではかなり大きな意見の相違があるのが現状であると思っております。  しかしながら、今お話がございましたように、このウルグアイ・ラウンドをまとめたいという意欲と申しますか事情と申しますか、そういうものはアメリカECともにかなり強いものがあることもまた事実ではないかと思っております。したがいまして、現段階で私どものいろいろな形で把握する段階では、両者の意見の間にはまだかなり隔たりがある。特に関税化の問題につきましては、同じ関税化と言いながら、かなり考え方の基盤が違うのではないかというような点、あるいは輸出補助金の撤廃に対する考え方の相違などにかなり隔たりがあるわけでございますが、今後、今御指摘もございました幾つかの重要な会議が行われていく過程におきまして、両者の話し合いというのも精力的に行われるのではないかということも考えられますので、今の段階では、私どもはこの二つの大きな流れといいますか、動きにつきまして注意深く見守っていく、それから情報の収集に努めるという段階ではないかと思っております。事務的段階では、まだそういう意味での隔たりが狭められたという兆候は、もちろん十分把握しておりませんが、大きな流れというものに注意していかなければならないのではないかという段階だというふうに考えております。
  25. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 交渉の現状をめぐる問題につきましてはそれぐらいにしまして、次に進みたいと思います。ガット農業交渉に対する政府、農水省の基本姿勢と今後の対応について、以下何点か伺いたいと思います。  まず最初に大臣に伺いたいと思いますが、二つ伺います。  一つは、五月二十二日の朝日新聞夕刊によると、山本農林水産大臣の「「内政干渉」の発言は不快 コメ非自由化は約束違反 米農務長官 農水相に抗議書簡」、五月二十三日付日本農業新聞では「ヤイター長官が抗議 コメ問題〃不快感″を表明 農相に書簡」、こういう記事が大きく出ていることは御承知のとおりであります。私はこのヤイター書簡を見ますと、ここに農林水産大臣がおられますから、皆さんもよく御承知のように、ある意味では最高の日本型紳士だと思っておりますが、この山本農林水産大臣に対してこういう不快感の表明をするヤイターの姿勢というものは、これはもう恫喝ですよ。こういう恫喝にもし農林水産大臣が屈して米の自由化に道を開き、ひいては我が国農業を崩壊させるような状況を招いたときには、歴史に最大の汚名を残すことになると思うのです。私は、今言いましたように最高の紳士である山本農林水産大臣にそういう選択はしてもらいたくない、何としてでもここでは、このヤイターの恫喝に屈せず、既定の方針を守ってひとつ日本農業を守ってほしい、こういう意味でぜひ頑張っていただきますようにまずお願いしておきたいと思いますが、この書簡の問題についてどうお考えになっておるか。  二つ目は、御承知のように国会でも再三決議いたしまして、我が国食糧自給率を確保する、あるいは米の輸入自由化はしない、こういう決議もありました。農林水産大もあちこちで、そういう基本姿勢に立って国際交渉に応じていく、こういうことを表明されておるわけですが、いよいよ六カ月を残した現在の段階で、胸突き八丁の交渉に差しかかる段階ですから、改めてきょうここで今後の交渉に向けての農林水産大臣基本的な姿勢について表明していただきたい。
  26. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  まず最初に事実関係から申し上げたいと思うのでありますが、今の先生のおっしゃったヤイター書簡、これは受け取っておりません。新聞、テレビ等でいろいろ言われておりまして、私もそれは承知しております。おりますが、私あてに、親書と称しておるそうですけれども、ヤイター長官の書簡は現時点では来ておらない、したがって、私は正式に見ておらないということでございます。  なお、御指摘、お尋ねの点でございますが、米の貿易問題につきましては、二国間協議の対象とせず、各国の抱える困難な農業問題とともにウルグアイ・ラウンドの場で討議するというのが我が国の一貫した基本姿勢でございます。この点につきましてはアメリカ側も了解しているところであります。昨年四月の中間合意におきまして、我が国の主張によりまして食糧安全保障のような非貿易関心事にも考慮が払われるということが盛り込まれたことを受けまして、昨年十一月、基礎的食糧について必要な国境措置を講じ得ることを内容とする日本提案を行ったところでございます。それで、今申し上げましたような基本的な立場、そして四月並びに十一月、この提案を踏まえまして現在着々粛々と交渉を続けておる、こういうことでございます。  なお、このウルグアイ・ラウンド先生からいろいろ御指摘がございましたが、これは従来しばしば申し上げてきておりますけれども、今の、食糧安全保障等の観点から所要の国内生産水準を維持するために必要な国境調整措置ガット上講じ得るものとするということを、一言で言えばそういうことでございますが、これを旨といたしまして、今後ともこの方針は貫いてまいりますということを申し上げたいと思います。
  27. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 次に、農水省と外務省、通産省等との関係について、念のために伺っておきたいと思います。  衆議院解散、総選挙を前にした本年一月十八日に、当時の松永通産相が記者会見で、米を一粒も入れないという論理は世界的に通らないと述べて大問題になったことは御承知のとおりです。当時の鹿野農相から、通産相の発言は国会決議や政府の統一見解と一致しないところがあると電話で抗議を受け、改めて閣僚として国会決議は尊重していくという釈明を行って一応けりがついたということになっておりますが、率直なところ、これは通産省の本音を通産大臣がぽろっと言ったのではないかという感じを今でも捨て切れないわけであります。  そこで、これから六カ月間の後半の山場の交渉に向けて、農水省、外務省、通産省がかちっと腹を合わせて一致して国際交渉に臨む、これが非常に重要になってくると思うのです。今までの農産物十二品目の自由化の経過やオレンジ・牛肉の自由化の経過などを見ましても、どうも大事なところへ来ると足並みが乱れてきて、農林水産大臣と外務大臣と通産大臣が言うことが違ってくるような、微妙なニュアンスの違いが出てきて最後はアメリカに押し切られる、こういう感じもありますので、農林水産省を中心として外務省、通産省との関係でしっかりした腹合わせをするためにどういう手だてをとっておるか、また、そういう乱れが出ないように今後どういうふうにしていくのか、この点を念のために聞いておきます。
  28. 山本富雄

    山本国務大臣 予算委員会の場でも、私からもただいま申し上げたような答弁をしっかりとやってまいったつもりでございます。また、メキシコから外務大臣が帰ってまいりまして、そのメキシコでのウルグアイ・ラウンドの非公式の閣僚会議、これのこと等に対する報道などによって外務大臣発言があったのではないかなどの質問もございました。また、通産大臣などに対しましても、四極の会議の際に、これはもちろん議題外でございますけれども、そういう話が出たのではないか。この外務大臣、通産大臣ともども、報道を見た上で問いただしたという経過もございます。いずれも、その報道について、政府が現在までとってきましたガットウルグアイ・ラウンド交渉、特に食糧問題などについての方針については、一切の逸脱、変更はない旨の両大臣発言もございました。それを受けまして総理からも再々にわたって発言があったということでございますから、政府はまさに一体でありまして、食糧安全保障等の観点から基礎的食糧については所要の国内生産水準を維持するために必要な国境調整措置ガット上講じ得るものとする、今申し上げたような内容を日本政府の統一的な立場としてしっかりやってまいりますということも答弁をしておるわけでございます。今後とも、政府はまさに一体でございますから、農林水産省だけがどうこうではございません。外務省も通産省も一体でございまして、その上に総理があるということで、内閣一体となってこの方針を堅持してまいりたいと考えております。
  29. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 次に、同じような質問ですが、財界対策について伺っておきたいと思います。  御承知のように、財界の中にもいろいろなことを言う人がおりまして、一番くだらぬというか厳しいのは、もう日本には農業なんか要らぬのじゃないか、フィリピンだとかタイだとか東南アジアに全部任せたらどうかというようなことをかつて言った人もおるぐらい、農業を本当に大事にするという観点のない人も結構おるわけであります。今、外務省、通産省、農水省の関係について言いましたが、やはり同じようなことを財界にもしっかりやっておかぬと、下手をするとそこら辺から崩される、そういう心配もあるように私は思うわけです。  これは単なる杞憂ではなくて、五月十七日の毎日新聞のトップ記事に、「財界と政界」という連載物のナンバーワンが載っておりますが、その記事によりますと、日米構造協議のアメリカ側の対日リストは全部日本製だというわけです。こういうショッキングな事実が報道されておりまして、「先の日米構造問題協議の中間決着を前に、駐日米大使のマイケル・H・アマコストは、「米国の要求は内政干渉」という自民党側の反発に「すべては日本人が私たちに教えてくれたもの。「メード・イン・ジャパン」だ」」こう言っておるというわけですよ。「日本の政界では「米側に内通し、チエをつけたのはだれか」という〝協力者探し″が続いている。しかし、アマコストの言葉は徹底した調査にもとづき、米国が「日本の〝健全野党″の立場と消費者の利益を代弁している」」、こう開き直っておる。こう新聞の記事には書いてあるわけです。「強烈な自負の表明」でもある、こう書かれております。「すべて日本人に教えてもらった。(米側要求は)日本自身が不満に思い、批判していることでもあり、改善は日本国民のためでもある」として、大店法の「廃止を要求するよう仕掛けたのは、流通業界の某幹部だ」、こういうふうになっておるわけであります。  さっき言いましたように、こういう事実を見ると、財界の偉い人たちの米や農業問題に対する日ごろの言動を思うときに、アメリカの自由化や農業交渉に当たってもまたぞろこんなことが出てくるおそれはないか。私は、残念ですが、非常にそのおそれがあるような気がしてしようがないのです。したがって、また農林水産省としてもしっかり財界に手を打っておかなければいかぬ、こういうことを考えるわけであります。そういう意味で、財界の皆さんに、米を自由化したときには非常に高いものにつく、こういうことをあらゆる角度からしっかりたたき込んで、ひとつそういうところから交渉の乱れが出ないようにぜひやってほしいと思いますが、この点はどうですか。農林水産大臣にお伺いします。
  30. 山本富雄

    山本国務大臣 先生からせっかくの御指摘でございまして、本当にありがたいと思っております。しかし、先ほど柳沢先生の御質問にお答えもいたしたのでございますけれども、たまたま名前が出ました瀬島先生などともつい先日、出先でございましたけれども同席をいたしました。農業問題について二、三率直に話し合う機会もございました。私は、財界という立場よりも日本国民として、やはり日本農業の現状というものをよく御理解なすっているなというふうに率直に感じたわけでございます。また、産業界、財界は大きな力を持っているということも事実でございますから、歴代の農林大臣あるいは特に与党でございます自民党の首脳の皆様方が、時に応じ折に触れてそのことについてはしっかり理解を求めておるというふうなことも、繰り返し行われております。私自身も、今の瀬島先生の例じゃありませんけれども機会をとらえまして、できるだけ御理解をいただくように率直に申し上げるつもりでおりますし、また申し上げてもおる。  しかし、私は、これは財界とか産業界とかということでなしに、あまねく国民の各界各層、もちろん国民全体が消費者だ、今こう言われておりますから、その理解をどうしても得なくちゃならない。その理解の上に立って一億二千万人が日本食糧については一つ立場考え、行動をしていくということが、先生のおっしゃるような日本食糧を守り農業を守る道に通じるんだ、こういう認識で、せっかくのお話でございますから、十分注意をしてやってまいりたい、こう思っております。
  31. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 次に、今後の交渉を強化するために、交渉の仲間づくりといいますか、日本グループを強化する、こういうことが非常に大事だと私は思っておりまして、そのことについてちょっと伺いたいと思います。  御承知のとおり、ウルグアイ・ラウンド農業交渉に当たっては、アメリカとケアンズ・グループ、そしてEC日本、三極構造の中で交渉が進んでおりまして、さっきもちょっと言いましたように、その中でもECアメリカが接近か、日本は孤立か、大変なことになる、こういうようなこともあるわけですが、そういうことを思うにつけても、日本グループというか仲間づくりはもう不可欠だ、こう思うのです。早い話、きょう韓国の盧泰愚大統領が来られますが、例えば隣の韓国は同じような米食民族であります。アメリカとの関係も、安全保障条約を初めとして大体同じような条件にある。こういうような点からいえば、韓国などともしっかり連携をしながらこれからの農業交渉に当たっていく必要があるのじゃないか。発展途上国なども、恐らく自国の農業を大事にしなければいかぬという点では我が国食糧安全保障論などについても意見の一致をする国々も多かろうと思うのですが、こういう問題について、これから最後の仕上げに向けていろいろな仕事がたくさんあって大変だと思いますが、こういう日本グループ、仲間づくりということについてどういうふうにお考えになっているか、参考に伺っておきたいと思います。
  32. 川合淳二

    川合政府委員 各国農業交渉に対します考え方はそれぞれあるわけでございますが、今御指摘のように、輸入国立場と申しますか、例えば韓国あるいは北欧、スイス、オーストリアというような国との協調ということも、大きな非常に大事な仕事であると思っております。従来からもこうした各国との連絡あるいは意見交換というものを進めておりまして、一番最初から申し上げますと、八八年十一月の会合時に我が国がこうした国々を招待いたしまして意見交換をしたというようなことを皮切りに、農業交渉グループの会合あるいは貿易委員会の会合などがある都度、その都度でございますので不定期ではございますが、いろいろな機会をとらえて意見交換、あるいは日本だけが知り得た情報を各国に提供するというようなことをやってきているわけでございます。  この輸入国グループの中にもいろいろの立場がございます。例えば米のような非常に主食的な考え方のある日本と、そうではなくて全体的に安全保障を求めていくというスイスのような国とか、立場が必ずしも一致していないところもあるわけではございますが、輸入国という立場では共通点も当然あるわけでございますから、例えば、非貿易的関心事項の取り扱い、あるいは安全保障というような問題については十分意見の交換を行い、連携をとって農業交渉に当たっていくということは非常に重要だと思っておりますので、これからもそうした考え方に立ちまして、機会のある都度こうした会合を開いて意見を交換してまいりたいというふうに考えております。
  33. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 次に、ガットの目的と農業交渉の関係について念のためにちょっと聞いておきたいと思います。  改めてガットの前文を見ますと、最初の国名は略しますが、各国政府は「貿易及び経済の分野における締約国間の関係が、生活水準を高め、完全雇用並びに高度のかつ着実に増加する実質所得及び有効需要を確保し、世界の資源の完全な利用を発展させ、並びに貨物の生産及び交換を拡大する方向に向けられるべきであることを認め、関税その他の貿易障害を実質的に軽減し、及び国際通商における差別待遇を廃止するための相互的かつ互恵的な取極を締結することにより、これらの目的に寄与することを希望して、それぞれの代表者を通じて次のとおり協定した。」こういう前文があるわけであります。このガットの目的に照らして考えたときに、アメリカの要求に屈して米の完全自由化を許したときに、我が国にとってこの目的との関係で一体どういう結果を招くか考えざるを得ないわけであります。米の自由化によって日本農業は致命的な打撃を受ける。農山村はさらに壊滅的な打撃を受ける。結果、生活水準を高め、完全雇用を確保するという目的に対し、農山村では農業の崩壊によって、生活水準を高めるどころか生活そのものが成り立たなくなってしまう。完全雇用とは一〇〇%逆の離農イコール失業が表面化することは必至だ、こう私は思うわけであります。「実質所得及び有効需要を確保」する、これはもう説明をする必要がないほど結果は明白だと私は思うのです。生活基盤がなくなり、失業が表面化しているところで実質所得の確保も有効需要の確保もないでしょう。「世界の資源の完全な利用を発展させ」という点についても、地域の資源は全く荒れほうだいに放棄をされる、そういうことになるわけでありますから逆の結果になるのではないか。  こういうことを考えますと、そもそもガット農業交渉とは何なのか、改めて深刻に考えざるを得ない、こういう感じがするわけであります。ァメリカにとってはガットの目的に沿った結果が出るかもしれませんが、我が国にとってはガットの目的と全く逆の結果が出てくる可能性があるわけであります。この辺、どういうふうにお考えになっておるか。私は、ある意味ではこのガットの目的を踏んまえながら交渉で頑張るべきじゃないか、こういう感じもするわけですが、いかがでしょうか。
  34. 川合淳二

    川合政府委員 ガットの目的と申しますか、一般目的に今御指摘の点があることはそのとおりでございます。「関税その他の貿易障害を実質的に軽減し、及び国際通商における差別待遇を廃止するための相互的かつ互恵的な取極を締結することにより、」若干省略いたしますが、「生活水準を高め、完全雇用並びに高度のかつ着実に増加する実質所得及び有効需要を確保」するというふうにされております。ここで言おうとしておりますのは、世界貿易を拡大あるいは自由化をすることによってこうしたことが実現するということだろうと思っております。農業交渉につきましても、今回のウルグアイ・ラウンドの始まりでありますプンタデルエステ宣言と言われているものでも、農業貿易の一層の自由化を図って、公正かつ市場志向的な農産物貿易制度を樹立するということを目標にしているわけでございます。  しかしながら、農産物貿易につきましては、現行のガット規定におきましてもいわゆる十一条二項などがございます。工業品とは違う取り扱いがなされているわけでございますし、昨年四月の貿易交渉委員会におきましても、長期目標を達成するための交渉においては、参加国の食糧安全保障のような関心事に取り組むことを目的とする提案に考慮が払われるということについて合意がなされているわけでございます。我が国につきましては、こういう工業品と違う農業あるいは農産物立場というものを十分踏まえまして、食糧安全保障あるいは国土環境保全、地域社会の維持など、多面的かつ積極的な機能を有しているという農業の問題につきましては、工業製品とは違う、工業とは違う取り扱いを主張し、かつそうした提案を行っているわけでございます。今後とも、我が国食糧輸入国といいますか、そうした立場が反映されるように全力を挙げていかなければならないと考えているところでございます。
  35. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 ちょっと今の段階で、腹の中で思っておってもなかなか言いにくいことだと思いますが、あえて一つ聞きます。  アメリカの本当のねらいは何かということは、これは時間がありませんから、一つ飛ばします。その次の、ことしの十二月決着は至上命題かどうか、こういうことについて念のために伺っておきたいと思います。  ガットウルグアイ・ラウンド農業交渉は必ず期限内に決着させねばならないかどうか。さっき言いましたように、アメリカECの接近が伝えられる一方で、東欧情勢の激変など新たな情勢も表面化をしたことによりまして、農業交渉を期限内にまとめることは非常に無理ではないか、こういう予測もあるわけであります。実際、東西ドイツの統一とそのヨーロッパ経済に及ぼす影響などを考えると、これらの激動の結果を十分見きわめた上で世界農業生産や農産物貿易のあり方を検討すべきだとする説も極めて重要な意味を持ってくると思うのであります。そのためには十年ぐらい決着を待った方がいいのじゃないか、こんな感じもするわけであります。一方で、環境問題など、ますます重大化する問題もあるわけでありますし、これらの問題についても世界の英知を結集し、十分な見きわめの上に立って世界の、また各国農業問題を考えることが今ほど必要なときはないのじゃないか、こういうふうに思うのです。そういう意味で乱暴に結論を急ぐべき問題ではない、こういうふうに私は思うのです。そういう意味で今年末決着にどうしても縛られなければいかぬのかどうか。縛られる必要はない、こういうふうに思うのですが、答えにくいかもしれませんが、ひとつ答えてください。
  36. 川合淳二

    川合政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、ウルグアイ・ラウンドにつきましては十二月決着というスケジュールが定められているわけでございます。我が国といたしましても、本年末までにウルグアイ・ラウンドを成功裏に終結させるというスケジュールにつきましては、ガットの一員としてこれを最大限に尊重すべきであるというふうに考えるべきではないかと思っております。しかしながら、我が国といたしましては、世界最大の農産物の純輸入国という立場もございます。それに基づきまして、食糧の安全保障等に基づきます一定の措置を提案しているという立場でもございます。こうした立場に立ちまして、こうしたことが十分配慮された新しい貿易ルールの策定が行われるように全力を挙げ、しかも粘り強く交渉に臨んでいかなければいけないと考えております。
  37. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 残り時間が非常に少なくなりましたが、十分間に残ったところを全部、簡単でもいいから答えていただきたいと思います。あとの問題は、ガット農業交渉に関する民間人会議の懸念について、問題点を中心に、農林水産大臣考え方も含めて聞いておきたい、こう思います。  御承知のとおり、本年二月十九日、二十日にスイスのジュネーブでガットウルグアイ・ラウンド農業交渉に関する初めての民間人会議が開かれております。この会議は、ジュネーブに本部がある世界キリスト教会連合主催によるもので、EC加盟国やアメリカ日本など八カ国から環境保護団体や食品の安全性の問題で活動を強めるロンドン消費者委員会などの代表が含まれていたと報告されております。日本からは全中を含め七名の研究者等が参加したと聞いております。この民間人会議は、現在のガット農業交渉の持つ問題点を各方面から検討し、同交渉に対する懸念を内外に表明するとともに、ガット事務局や各国政府交渉担当者に対しましてその懸念を申し入れることを目的に開かれたものであります。その宣言文の指摘する事項は、今後の農業交渉に当たってはもちろんのこと、世界農業あるいは各国農業考える上でも極めて重要な問題提起をしている、こういうふうに私は考えるのであります。特にこの中でヨーロッパ環境保護団体側から、酸性雨の問題などに加え、アメリカ政府農業保護全廃提案を環境を破壊するものとの主張が出されていることは、極めて注目されるところであります。  以下、この宣言文の指摘する事項について、農政当局の所見をただしておきたいと思います。  まず農業問題に関してこういう指摘をしております。一つは、「各国は、みずからが適切と考える食料自給の水準を維持する権利を持つ。」私はこれは食糧主権説、こういう名前で呼んで結構だと思いますが、これはやはりいろいろ事情の違う国々がそれぞれ食糧問題について国民に責任を持つ、こういう観点からいって極めて大事だ、こう思っております。二つ目に、「生産費を下回る価格でのダンピング輸出を禁止すべきである。」三つ目に、「アメリカ政府が提案している全ての非関税障壁の関税化は、各国の需給均衡対策を不可能にするものであり、拒否されるべきである。」こういう主張であります。私は非常に重要だと思いますが、この点をまず伺いたいと思います。
  38. 山本富雄

    山本国務大臣 御説、御指摘のとおりというふうに私も心得ております。これは中長期的に見て、先生御承知のとおりですけれども世界食糧事情というのは、資料を見れば見るほど、気象状況ども含めまして非常に不安定要素が多いのですね。ですから、食糧安保ということは、各国政策の至上命題でなければならないというふうに考えるときに、この方向に沿っていかなければならないということは自明の理だ、私はこう考えております。
  39. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 二つ目の問題、消費者問題についての指摘事項について伺っておきたいと思います。  この中で、消費者問題についてこう言っております。一つ、「食料が政治的な武器とならないよう効果的なルールを確立すべきである。」私はこれは非常に大事だと思いますね。御承知のとおり、一九七三年にアメリカの大豆輸出禁止によって豆腐が何倍かに値上がりし、大変大きな社会問題になりました。一九八〇年にソ連のアフガニスタン侵攻に対しまして対ソ穀物輸出を禁止する、外交の武器に食糧を使う、こういうことをやった経験もあるわけであります。そういう意味からいうと、「食料が政治的な武器とならないよう効果的なルールを確立すべきである。」これは非常に重要だと思います。時間がありませんから、そのほかの説明はつけ加えません。  それから二つ目には、「動植物検疫制度の国際的な標譲化は、自国の法律によって消費者の利益を護るという現在の方向と逆行するものであり、反対である。」環境問題を含めて、これもこれからますます大事になってくると思いますが、この辺についてどういうようにお考えになっているか。
  40. 山本富雄

    山本国務大臣 さきに御指摘の、食糧を政治的武器に使ってはならぬ、こういう例を引いての御指摘ですけれども、私も全く同感です。ですから今度の新しいルールをつくろうということについてこうなっているのですね。農産物輸出及び輸入を含む農業貿易影響を及ぼすすべての措置を対象として新ルールをつくるべきである。こういう提案がなされておるわけなんで、我が国はこの線に沿って進んでいくことでございまして、これは本当の公正、公平な貿易を新しい時代に即してつくっていくということになるわけでございますから、これを確立することが政治的武器に食糧を使わないというふうなことに通じることだと思っております。
  41. 松山光治

    ○松山政府委員 御案内のように動植物検疫、それから、これは私どもの所管ではございませんが、食品衛生についての措置、これはいずれも人なり動物なり植物の生命あるいは健康の保護のために必要な措置ということで、ガットの二十条で、例えば輸入数量制限の措置の対象外といったような一般的な例外の対象になっておるわけであります。同時に、この条文の中でも明らかにされておりますように、各国がばらばらにやったときに恐らく偽装された制限になりかねないといったような心配があるということで、そういうやり方ではやってはいかぬのだということが条件になっておるわけであります。  今回の交渉では、恐らくそういう問題意識のもとに、各国措置のいわゆる標準化といったようなことも念頭に置いてこの問題とどう取り組んでいくかということが対象になっておるわけであります。私どもといたしましては、今申し上げましたような状況の中で、国際的な専門機関によりまして適切に検討されました基準なり指針を基礎としてそういった調和を図っていくということは、一般的にはまず望ましいことだとは思いますけれども、同時に、あくまでもそういうことは正当な科学的根拠に基づくものでなければならないということと、当然のことながら衛生的な条件なり地理的な条件なり、あるいはまた食習慣の違いということがあるわけでありますから、そういうことを踏まえて各国においてそれぞれ異なった措置が具体的な措置においてはとり得る、そういうことでないといかぬのだといったようなことを主張しておるところでございます。これは食品衛生の分野についても基本的には同じ考えで対応している、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
  42. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 もう時間がありませんので、最後の途上国問題については省略しまして、環境問題についての指摘事項について伺っておきたいと思います。  この民間人会議では、環境問題についてこういう指摘をしております。一つは、「現在のガット農業交渉が環境問題を配慮していないことは極めて遺憾である。」二つ目に、「自らの環境を守るため、農産物の輸入制限を行なう権利がガット上保証されるべきである。」三つ目、「現在ガットま、ダンピングの禁止を定めているが、環境を破壊してまでの農産物の安売りを防ぐために「生態的ダンピング(エコロジカル・ダンピング)の禁止」という概念まで拡大すべきである。」  以上三点の指摘をしているわけですが、さっきちょっと言いましたように、こういう問題がこれからはますます世界的に大事になってくるわけですから、ガット農業交渉を拙速に妥結させてはならぬ、十年くらい待ったらどうか、こういうことを私が言う最大の理由の一 つでもあるのですが、この点について最後に農水省の見解をお聞きしたいと思います。
  43. 川合淳二

    川合政府委員 今さら申すまでもございませんけれども農業農産物の生産という経済的な機能だけではなくて、食糧安全保障、そのほかに国土あるいは環境の保全、雇用全般、地域社会の維持など純経済的ではない機能も果たしているわけでございます。  昨年四月の中間見直し合意におきまして、長期目標を達成するための交渉においては、参加国の食糧安全保障等の関心事項に取り組むことを目的とする提案に考慮が払われるというようなことが盛り込まれております。我が国といたしましてもこの交渉に当たりましては、非貿易的関心事項が非常に重要な位置を占める、農業の支持、保護の削減、あるいは新しいガットの規則をつくっていく上にも適切に反映されるべきことが大事である、重要であるということを主張しているところでございまして、今後ともこうした立場を踏まえまして対処してまいりたいと考えております。
  44. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 時間が来ましたので終わりますが、とにかくあと六カ月、農林水産大臣を中心にして一致結束をして、ひとつ我が国農業を守るために頑張っていただきますようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  45. 柳沢伯夫

    柳沢委員長代理 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  46. 亀井静香

    亀井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中恒利君。
  47. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 木材、山問題を中心に、わずかな時間ですので簡潔に御質問をいたしたいと思います。  その前に大臣、御答弁は要りませんが、私どもガットにおける米問題の取り扱いが今年度の農政の最大の課題になる、こういうふうに理解をしておりましただけに、先般のヤイターさんの書簡なるものを、幻のような気が今もなおしておるわけでありますけれども、非常に重視しております。しかし、大臣の言われたこと、我々がガットにおける我が国政府代表のこれまでの取り組みの経過から見ておかしいことは少しもない、もっとしっかりやってもらいたい、そういう気持ちで一応受けとめております。私は、この木材の問題と照らしましても、日本の林業がこれほど荒廃をした糸口になったのは、やはりどう見ても昭和三十年代の丸太木材の輸入自由化であったように思います。あそこがやはり切り口であったと思うのです。少しぼさっとしておったのじゃないかという気すらするわけでありますが、そういう意味で、米の問題については私は最大限のお力添えをいただきたい。その場合に、政府もこれまでしばしば国会決議ということを言っておりました。これは選挙などを通して各政党が国民の前に明示をしておったことであります。この国会決議というのは、少なくとも日本の今の民主主義の政体の中では最大の決定だと思っております。そういう意味で、この趣旨に基づいて今後とも必要な措置大臣としての御判断をいただくようにこの機会に特に申し上げまして、材木、木材関係で長官を中心に御質疑をいたします。  先般の日米構造調整問題の際に改めて製品材の輸入問題が挙げられて、アメリカは、これもどういうことか、通商法三〇一条を適用するとかしないとかという報道が流れて、大変心配だな、そこまで深刻なのかな、こんなふうに実は思ったのでありますが、その後の内容をお聞きしますとさほど大きな問題じゃない、と言ったら失礼ですけれども、しかし、我々がこれまで幾たびか日本の内外材の消費拡大のために日本の建築法は果たしていいのかどうかということは議論したわけでありまして、私自身、二年ほど前に予算委員会で当時の建設大臣に改正の要ありということを言った記憶があります。皆さん、たくさんの人がそういう指摘をしてきたわけでありますが、そういう建築基準法の改正の問題とかJAS規格の問題とか、そういったことが内容であったようでありますが、改めて、簡潔で結構ですが、どういう経過でどういう結論になったのかということと、そして関税の引き下げということがガットで恐らく決められると思いますが、そういう方向と照らして、今後の特に我が国の材木の消費拡大というものについてどういうお考えで林野庁は臨んでおられるか、この機会にお尋ねしておきたいと思います。
  48. 甕滋

    ○甕政府委員 昨年の五月でございましたが、ただいま先生お話しございましたように、木材製品がスーパー三〇一条の対象の一つとされたわけでございますが、我が国といたしましては、一方的な制裁措置の発動を前提とした交渉には応じられない、問題があるのであれば実務的に解決されるべきだ、こういう基本方針で対処してきたわけでございます。昨年六月、日米貿易委員会で技術的問題等が提起をされまして、その後、何回かにわたり専門家会合等を通じて話し合いを重ねてきたわけでございます。その結果、ことしになりまして、四月二十五日でございましたけれども、おおむね合意を見たところでございます。  その内容については、主として申しますと、JAS、関税分類、関税水準、建築基準の四項目になろうかと思います。  JASにつきましては、アメリカの認証を自動的にJASで受け入れよという点がございましたけれども、それは法制上困難であるということでアメリカ側も了承いたしまして、合意した点といたしましては、JAS認定のための提出資料の簡素化、認定までの期間の短縮といった点がございます。また、構造用パネルに対しますくぎの保持力試験等の規格の改正といった技術的な点もございます。また、JAS規格について話し合うJAS技術会合を設けるといった点についても話がまとまったわけでございます。  関税分類につきましては、構造用としてつくられました集成材あるいはLVL、これは単板積層材と言っておりますが、そういったものにつきまして、はりあるいはアーチ等の特定の構造用の用途にそのまま使用されることがはっきりしているものは完成品として四四一八項、これは関税率が三・九%でございますが、これに分類する、その他は半製品ということで四四一二項、これは関税率は一五から二〇%でございますけれども、これに分類するという仕分けが行われたわけでございまして、関税実務上の判断のための基準が明確になったということでございます。  それから木材関税につきましては、ウルグアイ・ラウンドの場において、昨年四月の中間レビュー合意の趣旨を踏まえて今後前向きに対処するということにいたしました。  それから建築基準につきましては、これは建設省の関係でございますけれども、建築基準について、性能基準を原則にいたしまして、また、木造三階建て共同住宅あるいは店舗併用住宅の建築を可能とするといった措置がとられることになったわけでございます。  この結果、今後私どもとしても、一般的に申しまして市場の国際化が進む、あるいは製品輸入の拡大が進むという体制の中で、木材需要の拡大を図りながら林業、木材産業の生産性の向上あるいは付加価値を高めるといった努力がますます重要であると考えております。そのため、これまでもいろいろ取り組んでおりますが、木材のよさを生かした利用技術の開発普及でございますとか、高性能省力化設備の導入でございますとか、産地形成の促進等によります国産材安定供給体制の整備といったことに取り組みを強化いたしまして、森林林業、木材産業の活性化に努めてまいりたいと考えております。今後の建築基準法の緩和も踏まえまして、内装材の問題あるいは三階建ての住宅部材の問題等、さしあたり地道な努力になりますけれども、製品の開発とか技術開発の面で努力をしていくことが重要ではないかと考えております。
  49. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 時間がありませんから簡単にお答えいただきたいと思いますが、前回の関税の引き下げの際に、昭和六十年以降活性化の、五百億の予算を組んで五カ年計画を立てましたね。これは去年で切れたわけでありますが、これでつくってきた事業はこれからも継続して実質的にはやる、ことしの予算の中に多分含まれているんだと思いますが、そういうお考えか、あるいはまた別途に特別な対策事業などを考えておるのか、この点いかがですか。
  50. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま御指摘ありましたように、森林・林業、木材産業活力回復五カ年計画につきましてこれまで進めてまいりまして、これもお話ございましたように、昨年度で計画としては終わったわけでございます。しかしながら、その中に盛り込まれております木材需要の拡大あるいは木材産業の体質強化、さらには間伐の促進といった事業につきましては、本年度以降につきましてもこれを実質的に予算内容に盛り込んで継続をするということで措置考えておるところでございます。
  51. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 長官、あなたは一番御存じのはずだが、どう見たって山はなかなか大変だ。いろいろな理屈を言ったりなんかしましても、日本の山は本当によくなるのかどうか心配であります。第一、造林というものがどうも最近傾向としては下がっておりますね。白書などでも、きれいな絵をかいて示していただいておるが、ずっと下がってきておりますね。昔は、たしか私などの記憶では十年ほど前は密着造林というか、とにかく木を切れば直ちに周辺の整地をして苗木を植える、こういうシステムで国有林などはやっておりましたけれども、最近はすぐやれない、二年か、恐らく三年ほどほったらかしておいてそして植えつけを始めていく、こういう傾向なども出てきておるわけであります。山の木というのは、植えてから周辺の要らない雑木を切り落としてつるを落としたり、そういうことから間伐なりあるいは枝落としなりいろいろな作業が一定の期間積み重ねられないといい木、いい山ができないわけでありますが、昔のようにさっと一貫作業でいけないような状況になって、造林というものがどんどん減っておるように思うのですが、これに対してどういうお考えで臨もうとしていらっしゃるか、お尋ねします。
  52. 甕滋

    ○甕政府委員 御指摘もございましたように、現在造林事業につきましては、森林整備の基本方針を昭和六十二年度以降転換するという中で減少してきております。また、その計画に対しましても実績がなかなか思うようにいかない部分もある、こういう実態でございます。  私ども、この森林整備を資源基本計画あるいは全国森林計画に基づいて今後とも計画的に推進することが基本的に重要なことであるというふうに考えておりまして、林道を初めとする生産基盤を整備するということがそのまた基本になるわけでございますけれども、造林の事業につきましても、市町村が作成した計画に基づいて集団的、組織的に造林事業を行います森林総合整備事業を中心に、複層林整備あるいは育成天然林整備等の多様な森林整備事業を推進していこうということで助成制度の拡充も図っておるところでございます。さらには分収林制度を活用して国民参加による森林整備を進めるということもその一環でございます。  お話の中にございました伐採後の造林についてでございますが、これは全国森林計画におきまして原則として二年以内に更新を完成させるということにしておるわけでございまして、これを励行していただくよう御存じの森林施業計画制度を一層活用することにいたしまして、適切な更新が確保されるように造林事業を進めてまいりたいと考えております。
  53. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 いろいろあるわけですけれども、なかなか計画が思うようにいかないという現実が余りにもたくさんあり過ぎるというところに、この山問題の難しさがあるわけです。一つは間伐です。いろいろ申し上げたいのですが、ことしの白書を見ると、百四十万ヘクタール緊急に間伐をやらなければいけない、こういうふうに指摘をされておりますね。第一次分で百四十万ヘクタール、引き続いて第二次分も考えないといけない、こう言っておるわけでありますが、しかし現状はそれにほど遠いのが実態だと思うのです。多分三十万ヘクタールか三十一万ヘクタール、そういう程度のものしか毎年できていない、こういうことであります。これは、幾ら木を植えて森林ができるようになっておっても、国産材供給時代がやってくる、こう言っておりますけれども、できる木が十分な木になるのかどうか。間伐をやらなければモヤシみたいな木がたくさんできるわけでありますから、そんなものをつくったってしょうがないのです。やはり立派な木、立派な山、緑を形成していくというところが大切なのでありますから、この間伐については、森林計画なりあるいは白書などが指摘するようなものを処理するために必要な施策をどんどんとっていただきたいわけでありますが、どういう考えでこれに臨んでおるかお聞きをいたします。
  54. 甕滋

    ○甕政府委員 現在緊急に間伐を要する森林が百四十万ヘクタール存在する。それに対しまして、間伐総合対策を進めてまいります中で三十一万ヘクタールというところまで着実に年々の実行量が増加をしてきたということでございます。ただいま先生指摘のとおりでございます。しかしながら、今後この間伐を森林整備をきちんとしてまいる上でなお一層進めることが肝要であるといった点は御指摘のとおりでございまして、私どもも、これまでの総合対策に対しまして平成二年度におきましては新たに間伐促進の強化対策を始めるということで、間伐促進を一層強化してまいりたいと考えております。  その対策におきましては、間伐の補助対象林齢の拡大もその中で考えております。また、間伐作業に当たって急傾斜等の立地条件に応じてきめ細かい実行ができるようにということも配慮いたしたいと思います。さらに、基盤の整備に当たって林内作業車が通る程度の作業道の整備を図るといったことも盛り込んでやってまいりたいと考えておるわけでございます。こういった点も含めまして今後集団的な間伐の実施あるいは作業道等の基盤の整備、さらには間伐材の生産、流通、加工に必要な施設の整備、間伐材の利用拡大を図るための技術あるいは施設の整備等、総合的に間伐促進を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  55. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 そういたしますと、平成二年度の強化対策で補助対象を、民有林の場合今まで二十五年生までが補助対象であった、これをさらに延ばすということですか。そうするとどこまで延ばすのか。緊急間伐対象樹齢というのは三、四、五、六、その辺を大体指しておるのだと思うのです。つまり、十四、五年から三十年ぐらいまで、最近はもう少し延びて三十年過ぎてもやらなければいかぬという状況のところもあると聞いておりますけれども、ひとつぎりぎりまで、やはり三十年ぐらいまで認めてあげないと、それをやると補助金を出すということになれば民間の材木を持っておる人は気合いを入れて間伐をやるわけでありますから、間伐材の取り扱いをどうしていくかということはまた一つの大きな問題としてありますが、しかし、いずれにせよ間伐をやることによっていい山ができるわけでありますからこれは努力してもらわなければいけないので、今の長官のお話を聞くと少し延ばすということですが、どの樹齢まで延ばしていくのか、お考えをお聞きしたいのです。
  56. 甕滋

    ○甕政府委員 間伐の実態あるいは必要性の認識はただいま先生述べられたようなことでございますので、現在、間伐促進対策でやってまいりましたのが御承知のように四、五齢級、すなわち十六年から二十五年生までということでございましたが、これを六齢級まで引き上げるということでございますから、十六から三十年生までを対象とするというふうにやってまいりたいと考えております。
  57. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 それから、いま一つは林道でありますが、全国森林計画を見ると、六万七千九百キロですかの林道開設、年平均四千五百二十七キロでありますが、実際はこれは半分か六割かその程度にとどまっておると思うのです。しかも、数字だけではなくて、私ども実は今、営林局単位に全国に散らばって相当丁寧な山の調査をさせていただいておりますが、やはり林道が大型林道のようにできない、ほとんど進まないという問題が一面ある。非常に大きな、国道か林道かわからぬような道路が一方ではできておるが、大雨が降ったらもう全然使えない、側溝なども不十分な形で押し流されてしまっておる、こういう形もありまして、設計その他に問題はありましょうが、まず第一は林道をどういうふうに整備していくか。  特に、私はたしか何年か前に、この間亡くなられました亀岡さんが農林大臣のときだと思いますが、やはり作業道というところに目をつけてほしいということを申し上げました。つまり、山の中に最も合理的な、きめ細かな道を、小さな道でもいいではないか、つくったらどうだ、こういうことを申し上げました。当時から林野庁でもいろいろ検討されたようでありまして、作業道というものが相当大きな比重を持って今公共、非公共などでも進められておるように聞いておりますけれども、この作業道などの問題についても、林道、作業道含めてどういうふうに整備をしていくのか、方針をお示しいただきたいと思います。  同時に、時間がありませんから一緒に申し上げますが、いま一つは、山間地というか中山間地問題がやかましくなっておりますが、山をたくさん持っておる地域ほど苦しいところは今ないと思うのです。ほとんど高齢化、第一人がいないという状況になっておるわけです。実は、この間も四国の特別委員会がありまして私も行きましたら、自民党から後藤田さんなども来ていらっしゃったわけですけれども、葬式を出すのに死んだ人よりも担ぐ人の方が年寄りが多くなっておる、こういう状況がその地帯には出ておるのですよ。そういうところの活性化をどうしたらいいかという問題があるわけです。ところが、林道の整備とか作業道の整備というのは、実はその地域に仕事を与えて働かせて、そこに多少でも潤いを与えさせる、同時にこういうねらいがなければいけないと思うのですが、現状のこういうものの実態は地域の活性化に余り関係ない。つまり、労働者は来ておるけれどもどこかから連れてきておる、そして林道などは大きな機械でばっぱっとやっておるだけだ、その地域の雇用もほとんどない、こういうことでありますので、作業道などはもう少し知恵を働かしてその地域の人が中心になってやるようなことは考えられないのか。いろいろ工法などの問題はあると思いますが、やはり地域が中心になって、森林組合などもあるわけでありますから、そこで作業道を広めることによって、公共事業が広まることによってそこに活力が出てくる、こういう施策と並行してやらなければ意味がないと考えておりますが、林野庁のお考えをあわせてお聞きいたしたいと思います。
  58. 甕滋

    ○甕政府委員 まず林道の整備の状況につきまして一言申し上げますと、六十三年度末現在における開設量が十二万四千キロメートルでございまして、これは森林資源に関する基本計画の数字と比べてみますと、達成率が四三%にとどまっておる現状でございます。ただいまお話もございましたように、林道が森林の生産基盤として、あるいは公益的な機能のための森林施業の上でも基本になるものでございまして、その整備については今後とも一層の予算措置等も講じながら促進をしてまいる必要があると考えておるところでございます。  作業道についてもお話がございましたけれども、生活基盤である基幹となる林道とタイアップいたしまして、造林、保育、間伐等のきめ細かな施業を効率的に実行するために必要な施設ということで、これは一体的、総合的に進めていく必要があるわけでございます。それでまた、現にそういった取り組みをいたしてきております。  これが地元の振興との関連についてどうかといった点についてもお触れになりましたけれども、林道も、基幹となる大変大きなものから、ただいまの作業道といったきめ細かなものまで幅広いものでございますが、この発注先を押しなべて見ますと、大部分が地元といいますか県内の業者になっております。また資本金について見ましても、一億以下といった中小企業がこれも九五%以上を占めるといったことでもございまして、他の公共事業等に比べますと地元密着型の事業になっておるのではないかと考えております。  なお、作業道等といった細かいものを森林組合なり自力なりで進めるといったことも、森林の施業とあわせまして全体としてその山村の事業量あるいは雇用の問題等に寄与する点が大きいといった御指摘はそのとおりだと思いまして、そういった点も頭に置いて今後進めてまいりたいと思っております。
  59. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 いろいろたくさんあるのですけれども、もう時間が余りありませんので、ちょっと一、二ほかのことも聞きたいのです。  一つは、山というものに対する投資の利率は、杉で一・七%、こんなふうに言われておりますから、大体一%からよっぽどいい山で二%、そういう状況で動いておるのですからだれもここへ金を入れるということはないので、郵便局でも農協でも預金をしておればその率の方がよっぽど高い、こういうことになっておるわけであります。そういうところに経済全体の難しい問題があるわけでありますが、林野庁も森林の再建をめぐっていろいろな施策を打たれるが思うようにいかないということになっておるわけでございまして、これをどうするかというところが林政の最大の課題になっておるのです。それにはいろいろございますが、やはり国が責任を持って乗り切っていく、こういう対策を立てるべきであると思うし、また、国民もそう理解をしておるのじゃないかと思うのです。  私、きのう総理府の世論調査をいただいたのですが、五月号です。世論調査、いつもいいのが出るのです。山のことが書いてある。これを見ると、本当に国民は山の現状をよく知っておるように思うのです。つまり、森林に親しみを感じるという人が八九・五%もあるというのだから、ほとんどの人が山に親しみを持っている。山に行ったことがあるか、仕事以外にレクリエーションなどで。年とともに山に行く人が多くなっておりますね。これは総理府が毎年同じ調査をやっておるわけですから、五年ほど前と昨年と比べてみるとずっと上がってきておりますね。つまり、あると言った人が六四・七%、ないという人が三五・三%、大体一〇%くらい四、五年のうちにふえておりますね。そして、これら森林の整備のあり方はどうだというと、経済効率に合わなくとも、つまり銭にならなくともやらなくてはいけない、森林については金を入れよ、こういう意見が七九・三%。やはり金になることを第一に考えなくちゃいけないというのが一〇・六%。そして、この整備の費用はだれが負担するのか。これについても国や地方自治体が見るべきだというのが四七・八%と大半ですね。あとは恩恵を受ける人とかオーナーとか国民の募金とか森林の所有者がやれ、こういうのが続いておりますけれども、これは一〇%内外ですね。  こういう世論調査を見てみると、これは総理府ですから責任を持った機関がやったんだと思いますが、今日の緑、山問題についての国民関心は高い、そして、言うまでもなく地球環境保全の問題が世界的な課題になっておる、こういう時期になっておるわけでありますが、現実に我が国の山の決定的な問題は、御承知のように人がいなくなってきたということがあります。そして、投資をしようと思っても投資をする人がいない。地主だってほとんど不在地主が中心になってき始めておる。そして林道とかあるいは作業道とか、間伐とか保育とか、そういうものが全く手抜きになってきておる。このままいけばいい山ができるとは思えない。  これまで林野庁が一次、二次、三次と国有林の経営改善計画をやってきました。たしか五十三年と五十何年でしたか、六十二年と三回やったと思うのですけれども、その都度変えていく。四万人、二万人、今度は一万人とかなんとかということまで言い始めてきておる。そういうように人を減らしたり営林署をなくしたり、あるいは財産を処分したり、それは全くいけないとは言いませんよ。やるべきことをやらなくてはいけないと思う。自助努力もしなければいけないと思うが、しかし、その道でよくなったかといえばよくならない。ますます赤字は拡大してきております。私はもうぎりぎりだと思う。これ以上進めたら、もう完全に山は荒廃して山の機能を果たさなくなる。一方では、山の機能というものは環境保全の立場から、大気汚染とか災害防止とか、いろいろな形で大きな期待を寄せられておる。だから、農林大臣としてはそういう多様な森林の機能を発揮させるような施策を一方では組まなければいけないと思うのです。それは一口で言えばいい山をつくることだと思うのですよ。何も国有林の財務を健全にして、そしてそこで経営に黒字を出させるということじゃないと思うのです。いい山をつくることが経営改善の最大の課題だと私は思うのです。・そういうものに向かって今は方向転換をしなければいかぬ時期のように思います。そういう時期に国民全体が環境問題と絡んで森林を見つめていると私は思っております。大臣にそういう御決意があるかどうか。そして私たちはそのことのために、それこそ山林の所有者なり国民の世論なりあるいはいろいろな関係団体に御苦労をいただきながら、国会も各政党がそういう意味では相当力を尽くして努めていかなければいけないと思っておりますが、これについての大臣の御所信をお聞かせいただきたいと思います。
  60. 山本富雄

    山本国務大臣 ただいま先生いろいろ例も引きながら御指摘でございますけれども、今総理府の統計を御発表になりましたが、私もそれは見させていただきました。国民の森林に対する関心は非常に深まってきた、高まってきたと、一口に言えば受けとめるわけでございます。  そこで、今御指摘の、山が今荒れておる。田園が荒れておるという言葉がありますけれども、山もまさに荒れておる。これを何とか保全しなくちゃならない。これは、今まで林産物を生むとかあるいは農山村地域を振興していく、こういうことの問題の底辺に国土保全という問題があります、あるいは環境を守らなくちゃならないという問題もございますから、そこで山を経営採算の面からだけで考えるべきではない、そういう先生の御主張、私は当然だと思っております。ただしかし、山は永遠であればあるほど守っていかなければならない、守っていくためにはやはり経営採算を無視するわけにもいかぬということにもなるわけでございまして、その意味で自助努力が非常に必要だということで、さまざまな施策を林野庁が中心になって展開してきたということでございます。  しかし、一方では、昭和五十三年以降、造林、林道の問題等を中心にいたしまして一般会計からの繰り入れもやっておる、あるいは治山事業については別途五十八年度以降一般会計の負担になっておることは御承知のとおりでございます。また平成二年度予算におきましても、これが成立した暁には相当な財政措置を一般会計から仰ぐというふうなこと等もございますが、しかし、なかなかそれだけで二兆円の赤字が克服できるという保証はないわけでございまして、現在、林政審の場で国有林全体に関する経営の健全化を基本にいたしました総括的な対応策について検討していただいておる最中でございますから、これらも十分にらみながら山を守るための施策を財政面を中心にいたしましてやっていきたい。しかし、これは非常に厳しい道であるということも覚悟しておりますので、今与野党一致してというお話がございましたが、まさにそういう対応をしなければ、国有林の問題、ひいては日本の山を守る問題は前途明かりを見出し得ないというふうにも思っておるわけでございます。
  61. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 重ねて大臣に御所見をお聞きしておきますが、私どもも自助努力はやらなければいけないと思いますが、しかし、自助努力によって山がさらに荒れ、山がつぶれるという状況になっておると私ども認識しております。これも私はそんなに間違ったことじゃないと思うのです。これ以上人を減らしたりあるいはいろいろなことをやられても、そうしたら今の赤字が克服できるかといったものではないと思うのです。だから、経営の健全化はやらなければいけませんが、経営の健全化というのは財務の健全化だけではないんだ。将来十五年、二十年先の日本の国産材中心の材積をどういうふうに打ち立てていくかという長期的な見通しの上に立って、必要な体制を今こそつくってみる必要があると思っております。これまでとってきたことに対する反省も一緒にやっていただかないと、私は、妙な形に突っ走っていくような気がしてなりませんので、その点は特に念を押しておきたいと思います。  そこで、どうしても金が要るわけですよ、国の予算が。そういう意味で、今たしか日米構造協議とかなんとかいっておりますが、各省が五〇%増で三百兆とか四百兆とか五百兆、五百兆以上になるとか言われておりますが、そういうものの中に、これは言うまでもなく日本の経済が東京中心の一極集中型の経済の仕組みになっておる、これを地方にというところが基本でなければいけないと思うので、そういう意味で、一番疲弊をしておる林地というか山間地というか、そういうところに向かって必要な予算やいろいろな方策を立てていく。これは内閣の責任でありますけれども、所管大臣として農林大臣がこの新しい十カ年の公共事業の投資の中で思い切った施策を進めてもらいたい、こういうふうに考えておりますから、最後に大臣からの御見解をお聞きしたいと思います。
  62. 山本富雄

    山本国務大臣 重ねての御質問でございますが、その前に、先生とそこのところは多少意見を異にするわけでございますけれども、今までの反省に立ってというその反省の中で、私なりに従来の国有林にまつわる経過についていろいろ勉強もいたしました。いろいろな理由で、一言で言えば社会の変化の中で対応が十二分でなかった。山は、森は、木は物を言わないというふうなことで、どうも十二分に面倒見られなかったなという感じがいたしますけれども、その中で、やはり木を育てたりするためには人が必要なんですね。ところが、その人も余り人数が多いとお金がかかり過ぎてしまうという、人員の問題も確かにあるのです、過去において。ですから、要員の問題についての工夫もある程度は考えなければならないな、そこは先生と意見が若干違うかなということを一言だけ申し上げておきたいわけでございますが、いずれにいたしましても、山を守らなくてはならないということははっきりしておりますから、この公共投資十カ年計画の策定につきましては、山を守っていくということを十二分に頭に入れながら、ひとつこれらの案を盛り込むようにできるだけ努力をいたしたい、こう考えております。
  63. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 以上で終わりますが、実は私は果樹の関係で二、三問用意をいたしておりまして、関係の局長さんには大変失礼いたしましたが、またいずれ機会を得て細かくさせていただきたいと思います。時間が参りましたので失礼します。  きょうは、労働力の問題は時間がありませんからやりませんで、後で同僚議員がやることになっておりますが、その辺は大臣ともちょっと見解を異にしますので、重ねて申し上げておきます。
  64. 亀井静香

    亀井委員長 遠藤登君。
  65. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 まず最初に、私も初めて国会に参加をさせていただいて、国会におきまして大臣の席の問題なんですが、右大臣で一番右ですから、我が国の基幹産業である農業を海部内閣は重視をしているのかな、こう思っているのでありますが、どうも納得できない。内閣ごとに大臣の席が変わっていくのかどうか。どうも見ていると、海部内閣は我が国の基幹産業である農業農林水産大臣を軽視しているのではないかという感じを受けるのでありますが、大臣の所感をひとつお聞きしたい。
  66. 山本富雄

    山本国務大臣 これは先生の御激励だと私受けとめておりますが、海部内閣は決して農林水産行政を軽視もしておりませんし、農林大臣である山本を軽く見ておらない。私は内閣の中におりまして、日々そういう実感を持っております。
  67. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 ぜひ大事な時期でありますので、少なくとも大蔵大臣の隣あたりに位置すべきではないか、こういう御意見もありますが、当然ではないのか。ぜひひとつ、そういう意味でも頑張ってもらいたい。農林省、農林大臣の応援部隊という決意で頑張る覚悟でありますので、ひとつ頑張っていただきたい。  それで、米問題、いろいろありますが、いよいよ米価決定のシーズンを迎えなんとしておりますが、それぞれ準備をされているのではないかと思います。これまで長い歴史において、米価算定方式は改ざんに改ざんを重ねてきたという経過があります。食管法による生産費を償う米価、それが逸脱されてきているのではないか。極端に言えば食管法違反ではないか、そんな強い感じを持つのでありますが、昨年の米価は現行据え置き、審議会では一一%何がしの、算定方式を変えて引き下げるというような諮問案が出されたわけでありますが、選挙を前にして政治的に現行据え置きということになったわけであります。  その政府買い上げ米価、六十キロ一俵当たり一万六千七百四十三円というのは、十年前の米価なんです。私も米作農家の端くれとして、なぜ稲作農民をこんなにいじめるのかという強い不満を持っているのでありますが、漏れ承るところによると、去年の分も含めてことしの生産者米価も大幅に引き下げられるのではないかという心配を皆しているのであります。今年産米の米価の算定についてどのような対応方針にあるのか、お聞かせをいただきたい。
  68. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生御質問の米価の問題でございます。昨年の米価につきましては、これは私の方からちょうちょう申し上げる必要もないと思いますけれども、米価審議会に対しまして、生産性の高い稲作の担い手層を焦点に置くとともに需給調整機能を強化した新しい算定方式により所要の諮問をさせていただきまして、いわゆる新算定方式により諮問をさせていただきましたが、これも先生指摘のとおり、諸般の情勢から新算定方式のもとで据え置きという結果になったわけでございます。そういう決定をさせていただいたわけでございます。  一方、平成二年産米の米価でございますが、昨年の米価決定の際の各般の議論、論議を踏まえましてさらに検討をしていくということになっておるところでございます。また、先生御質問の中でいろいろ引き下げのというお話がございましたが、現在私ども米価の問題に関連いたしまして、今お話をいたしました算定方式につきまして事務局の中で検討をしているところでございます。新聞等々でいろいろ憶測の記事が出ておりますが、一切こういう事実はございません。私どもといたしましては、先ほどのことの繰り返しでございますが、諸般の御議論を踏まえまして算定の方式というものを検討いたしまして、法律に基づきます米価審議会に御諮問をさせていただいて決定をするという段取りになるわけでございまして、通例の従来どおりの、今までの時期等からいきましてまだ、夏になりますけれども、そういった準備をしている段階でございます。
  69. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 いわば新算定方式によって、生産性の高い農家を育成するという政策上のねらいが当然あると思いますけれども、大体一・五ヘクタール以上ということなんですが、五ヘクタールというのを目指して特に生産費などの対象、構造政策をとっている。一・五ヘクタール以下というのは五八%、約六割を占めている。それは、いわば稲作農民の納得できない、現状とは実態のそぐわないものではないか。これは何回かこれまでもそれぞれの立場から指摘されてきた経過があると思いますけれども、ぜひ、多少これは政策的な意味合いを強めていかなければならない部分があると思いますが、日本における稲作農家実態と大幅にかけ離れたような算定方式の対応というものについては慎重に対応していただきたい。強く要請をさせていただきます。  そして、この生産費、去年の算定状況とその後の、例えば一・五ヘクタール以上の稲作農家のいわば生産費の動向というのはどういう状況にありますか。
  70. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御質問の生産費の動向でございますが、これはいろいろのデータに基づきまして対応していくことでございますが、一番基本的な問題は、農林省の統計情報部におきましての生産費調査というのがございます。これは、米価の時期が参りますときに、いろいろな意味での最新のデータに基づきまして前年度の実績というものを勘案して定めるものでございまして、私ども統計情報部からまだ詳細聞いておりません。まだ聞ける段階にありませんけれども、そういった労賃の問題とかあるいはコストの問題等々についてできるだけ、米価を米価審議会において算定していただく段階で最新のデータに基づきまして考えていこうということでございます。一方では労賃の問題、これは春闘とかそういったような問題にもいろいろ影響を受ける問題でございますが、さらに物価の動向等も各省が行っておりますデータに基づいて対応していくということでございます。現実において、今最新の情報というようなことについて私からまだ申し上げられる段階にはありません。
  71. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 米価算定に当たっては、ひとつ実態を十分踏まえて対応していただきたい。重ねて要請をします。  内外価格差の問題でありますが、最近とみに農産物、農産品の内外価格差の問題が論じられている昨今でありますが、これはそれぞれ各国によって、あるいは各民族によって価値観というものは大きく異なるのではないか。したがって、安全性の問題、品質の問題、鮮度の問題、規格の問題、食味の問題など、これは一概に価値判断、比較検討をするということにはならないのではないか。特に、米問題を初め基幹的な我が国の産業、農業の農産品については、これは自信と確信を持って対外的な意味でも対応していただきたい、こういうふうに思うのでありますが、農林省当局の内外価格差、農産品の価格差問題に対する考え方、対応の仕方についてお聞かせをいただきたい。
  72. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 農産物につきましては、先生指摘のように国によって消費の形態が違いますし、またそれに応じまして流通する農産物の品質とか鮮度が異なっております。また、気象条件等による生産変動が大きい、ミカンのようなものについては表年、裏年というようなものもあるということで、ある時点をとらえて規格化されている工業製品と同じような観点で比較をするというのはなかなか問題があろうかというふうに思っております。それからまた、我が国の消費の形態を見ますと、食料品につきましては新鮮で良質なものへの嗜好が高く、また毎日毎日少しずつ、その日その日に買って消費をするというような傾向があるということ等につきましても、農産物内外価格差問題を考える上で十分配慮しておく必要があろうかと思っています。  しかしながら、一般的に言いまして、我が国農産物につきましては、土地の制約等から、施設型農産物では価格差が比較的小さいものの、土地利用農産物につきましては生産性の格差を反映してある程度割高にならざるを得ないという面があることも事実であります。そういうことも踏まえて、内外価格差問題については、そういう中でございますけれども、できるだけ生産性の向上に努めながら、また規模拡大、技術の開発等を通じて着実に推進するということで、やはり食料品につきましてはある程度内外価格差があることはやむを得ないと思いますけれども国民の納得し得る価格食糧を供給していくというのも農政一つの使命であるというふうに認識しております。
  73. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 この問題は、それぞれ各般にわたっていろいろ外圧なり、その論議が深まっていくのではないかという懸念をするのでありますが、やはり国民の命である食糧の問題については、それぞれの国、我が国の環境、条件に立って、不可欠の国民の命にかかわる問題でありますから、生産性の向上を積極的に努力を積み上げる、これは当然なことでありますが、余り内外価格差にこだわってほとんどもう輸入に依存する、日本農業が壊滅をしていくというような状況は絶対避けるべきではないか。したがって、政府あるいは農林省は特に、自信を持って我が国の農産品を守っていく、そして特に基幹作物の生産性向上対策などについて胸を張って対応していく、対外的にもそういう対応をしていくということに努めてもらいたい。  それで、むしろ、年々農産品の輸入拡大が行われておりまして、これはガットの問題を初めとしていろいろ国際的な問題になっているのでありますが、食の安全性について国際的な指標、基準、規格を早急につくるということが今求められている緊急な課題なのではないか、こういうふうにも思うのであります。これは厚生省その他各省、まあ厚生省が中心になるのか、農産品の輸入、通産省を含めて大きな課題だと思いますが、農林省としての、特に農産品の国際的な安全の基準をつくる、その緊急課題と思われるものに対してどのようなお考え方と対応方針を持っていらっしゃいますか、お聞かせをいただきたい。
  74. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 やはり食糧というのは、その国の気候とか風土に合わせたものが中心になっていくのではないかと思います。そういう点から我が国といたしましても、国土は狭いながら多彩な自然条件を有していますし、また広大な市場あるいはすぐれた技術を持っておるわけでございまして、それを生かして農業生産を展開していく。ことし一月に策定しました長期見通しでも、我が国の持てる力をできるだけ発揮するというような方向で対応していくということで長期見通しを閣議決定したわけでございます。その線に沿って、我が国国土の条件を最大限に生かしながら生産の振興を図っていく。それには先ほど申しましたように安定した価格で供給することであろうかと思いますが、それとあわせまして食品の安全性というものについても、これは厚生省が直接所管しているわけでございますけれども、私ども農林省としましても極めて関心を持っておるわけでございます。国際的な基準をつくるとかどうとかいうことは別にいたしまして、私どもとしましても、国民に安価で安全な食品を供給することを旨として行政を進めていきたいというふうに考えております。
  75. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 時間がありませんから、次に、政府米と自主流通米の関係です。これは二六対七四、それがますます拡大していく、こういう状況でありまして、農民も、政府はもうお米から手を完全に抜こうとしているのではないか、どこまで政府米を縮小していくのかということについて大きな懸念を持っているのでありますが、そのことについて、食糧庁なり農水省としての対応の方向についてお聞かせいただきたい。
  76. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生から、政府米の数量の減少に関連する御質問がございました。  現在の食管法の制度のもとにおきまして、先生指摘政府米とあわせて自主流通米について、いわば政府管掌米という形で一体的に食糧の安定的供給として対応しているところでございます。この政府米の方、いわゆる狭義の、狭い意味での政府米は、年間を通じ、あるいは全国を通じた安定的な供給の役割を果たす、あるいは備蓄的な役割を果たす、価格の上ではいわば下支え的な対応をする、そういうような役割があるというように見ていいと思いますし、一方、同じく食管法のもとで行われております自主流通米は、民間流通のよさを生かして需要に対応した生産を確保する、それぞれの消費者の方々がそれぞれの良質米とかいろいろな加工米とか、そういったようなものの需要が分化しておりますので、そういう多様化に民間流通のよさを生かしながら対応しているのがこの自主流通米だというふうに考えているところでございます。これはちょうど二十年になりますか、昭和四十四年に自主流通米制度というのが導入されまして、さらに、五十六年に法律の上でもはっきりとした位置づけがされたわけでございます。  先生指摘のところに戻りまして、現在の政府米の計画のもとにおける数量が百六十五万トンでございます。それから、自主流通米と言われております数字が大体四百七十万トン、そのうち、モチ米、酒米等を除きまして約四百万トンという数字でございますので、この平成元年度におきます比率は、例えば去年あるいはおととしといったようなものから比べますと政府米の比率が大分落ち込んでおりまして、約三割近くになってきたということでございます。ただ、先生が御指摘のような、政府米を軽視しているのではないかというようなことでございますけれども、私どもといたしましては、この政府米、狭い意味での政府米プラス自主流通米というものを政府基本計画のもとで明確にいたしまして対応しているところでありまして、ことしの三月の末に農林大臣のもとで決めさせていただいたこの計画におきましては、来年度は政府米二百十万トン、自主流通米三百八十万トン弱ということを考えておりまして、先ほど御紹介いたしました政府米あるいは自主流通米のそれぞれの機能の分担に応じまして対応していこうということでございます。決して政府米の位置づけを軽視しているということではございません。
  77. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 政府米を減らして、政府米は生産性の向上という部分があるかもしれませんが米価を年々引き下げて、政府米を縮小してもう手を抜くのではないか。そして、今度は自主流通米の価格形成のための市場を設置する。これはもう米の市場、いわば市場制に移していくのではないか。政府は、これはまるっきり管掌しておると言うけれども価格の面から価格を引き下げていく、自主流通米の価格も引き下げる意図があるのではないか、そして政府米のいわば米価も引き下げる、そして市場制に移して、政府は米から手を抜くのではないか、それは農家にとって大変な問題ではないか、農家の現場から見ると、そういう見方をして大変な懸念を持っておるのであります。  それで、米市場も、月一回程度、あるいは数量も百万程度、そして入札に付していくということのようで、今その具体的なあり方についていろいろ詰めが行われておると思いますが、それが市場の回数をふやしていく、量もどんどん拡大していくのではないか、こういうふうに懸念をしておるのでありますけれども、その辺の今後の対応のあり方などについても明確にお聞かせいただきたいと思います。
  78. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生指摘の自主流通米の価格形成の場の問題でございますが、まず私の方から申し上げたい点は、現在の自主流通米、四百万トンになろうという、昭和四十四年に発足して二十年かかりましてかなり大きく成長しておるこの自主流通米については、やはり値決めが行われておるわけでございます。私どもの通達等の形で申し上げますと、いわゆる協議会方式といいまして、片や指定法人というので全農あるいは全集連、片や多数の卸売業者が一つの協議会をつくりまして、それで値決めが、現実の形においても値決めが行われておるわけでございます。  そういったものを、この二十年の歴史の経験と教訓のもとに基づきまして、消費者の方々あるいは生産者、農家の方々にこの協議会方式がもっとよく目に見える形で行うという意味で、この価格形成の場という議論が提起されてきたわけでございます。これは約二年間かかりまして、内閣に置かれておる農政審議会の場で提起された問題でございまして、農政審議会の報告で、価格形成の場といったものを創出すべきであろう、そういうことが現下の食管制度改善の一つの形態であろうという提起が行われたわけでございます。それに基づきまして食糧庁に、いわゆる学識経験者の方といいますか、この協議会に直接関係されておる方々を中心にいたしまして、この議論を検討会の報告という形で出させていただいたわけでございまして、そういう意味におきまして、現在既に行われております値決めの方式について、成人になった自主流通米の姿に相応するような新しい形の価格形成の場をつくらせていただこうという問題でございます。  これは、連休の前に報告がなされまして、食糧庁挙げてこれの具体化をということで、現在いわばプロジェクトチームみたいなものをつくりまして、各方面の関係者の方々の御意見を受けつつ、できればことしの産米から実施したいということで現在検討中でございます。そういう系譜を持っているものでございます。
  79. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 これはいろいろ一連の経過があると思いますが、特に生産者と直接の消費者の声を大事にする必要があるのではないか。中間の流通業者などもさることながら、生産者と消費者の声をもっと大事にして対応されるべきなのではないかということと、価格形成の面から市場も設置をしていく、入札に付していく、これは現行の食管法上からそんなことはできないのではないか、食管法違反じゃないのかというふうに思うのでありますが、その点はどうですか。
  80. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生の今の、価格形成の場あるいはその前身であります現在の協議会方式について、現行の食管法に背馳するのではないかという御提起でございますが、私ども、結論的にそういうふうに思っておりません。先ほど来申し上げておりますように、いわゆる食管法に基づいて政府が管掌しております米の形は、いわゆる狭い意味での政府米とプラス自主流通米という二本立て、二本足で歩いているわけでございます。  それで、この自主流通米におきましては、一番大きな特徴というのが、政府が間に入らない、いわゆる生産者である指定法人、系統を通じます生産者、農家の方々とあるいは流通業者の卸売といったようなもので、先ほど言わせていただいた協議会方式で値決めが行われているわけでございます。この値決めにおきましても、従来、昭和六十年におきましては、建て値といいますか、全国一本でということでございましたが、いろいろな意味での銘柄等々を前提にいたしまして、通常取引、それにプラスするところの変動取引というような工夫も図られてきておりまして、それぞれの品種の特性に応じました値決めがきめ細かく行われるような努力はされてきたわけでございます。  平成元年度におきましては、こういったものにつきまして約二十万トンのものにつきましての入札といった実績が行われておりますが、これと先ほど触れました建て値取引との関係がまだ十分でございませんので、そういった物事に関連するいろいろなルールの御提起が今回の検討会の一つのポイントになっているというふうに理解しております。  いずれにいたしましても、自主流通米においても何らかの意味での値決めの方式が必要であるわけでございまして、先生指摘のように、実際に食べていただく消費者の方々、実際につくっていただく農家の方々の十分の意向というものを反映しながら、それらの方々あるいはさらに流通の方々によく見える形で行うというのが一番の眼目だというふうに考えているところでございます。
  81. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 これからいろいろ、それぞれ質問者によって問題点の提起なり追及が出てくると思いますので、時間がありませんので米問題については終わりたいと思います。  ただ、米問題の最後に、類別指定の問題、このあり方について、類別の指定をどう進めるのかということについて、例えば山形の場合は、はなの舞とかさわのはななど、それぞれ各産地によって消費者のニーズにこたえるために大変な努力を重ねて銘柄産地を確立してきているわけであります。これはぜひ納得できるような類別の指定を強く求めているのでありますが、その対応についてお聞かせをいただきたい。
  82. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生今御提起の類別格付の問題でございますが、産地側も需要者側も納得できるような形で決定されるべきだというふうに思っております。今、山形県におきましてのはなの舞のお話がございましたように、終戦直後のようなことと違いまして、各地でそれぞれの農家の方々がいろいろな創意工夫、英知を傾けられて新しい品種をつくられて、それを育成しておられます。そういったものが消費者の方々に高く評価をされて行われているわけでございまして、それぞれの各県の御努力、農家の方々を反映するような類別格差がどうしても必要でございますし、私ども実際にやらせていただいておるわけでございます。  この自主流通米価格にあらわれている市場価格の動静であるとか、あるいは米穀流通の実情等、客観的な指標に基づきまして、これも先生指摘のような生産者あるいは消費者それぞれ納得できるような形でこの類別格差は決めていかなければいけないと思っておりまして、本年度におきますものは、夏から秋口にかけまして、この三年間のデータに基づいて対応させていただこうというふうな心構えでやっております。
  83. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 ぜひ納得できるような対応をお願いしたい。  林業問題、先ほど田中大先生からいろいろあったわけでありますが、重ねて森林の持つ公益的な機能、これは大変な財政問題を抱えて、しかも国民的な生活の上には、二十一世紀に向けても山と緑の問題、環境問題を含めて極めて重大な問題だと思うわけでございます。  戦後裸にした山、復興のために協力した山が植栽されて二十年、三十年の今、山については保育、投資の時代なんですね、一般的に言えば。金がかかる時代だ。したがって、これは国民の財産として大事に守っていかなければならない。そのために財政問題などで独立採算性、これはできるはずがないのじゃないか。したがって、一般会計の方からもそれ相当の繰り入れをしているけれども、もっと配慮されるべきなのではないか。これは国民の深い理解が当然得られるもの、国民共有の財産として守っていかなければならない、そういう意味で、林野の特別会計制度の中に例えば公益勘定を設定するとか、会計のあり方というものをもっと検討する必要があるのじゃないか。それから、田中先生からもお話がありました人減らし、仕事減らし、山の荒廃化あるいは山村の荒廃化を招くようなことについては十分見直していかなければならぬのじゃないか。そういう意味では、この改善計画も今検討されているというお話を聞くのでありますが、総合的に、抜本的に見直していく必要があるのではないかというふうに思うのでありますが、当局の所見をお聞かせいただきたい。
  84. 甕滋

    ○甕政府委員 森林の問題、特に国有林にもお触れになりまして、その公益性が高い、こういう御指摘でございます。また、それに応じた対策を講ずべきである、こういう御指摘でございます。  私ども、国有林野事業が果たしております重要な使命にかんがみまして、これまでにも経営の健全性を確立するために、改善計画に基づきまして自主的な改善努力を基本に、また五十三年度以降一般会計からの繰り入れ等も行いまして自主的な努力、財政措置をあわせた努力を尽くしてきておるわけでございます。しかしながら、現在の経営の状況等につきましては、林業全般が厳しい状況にある中で国有林の経営の健全化をどういうふうに確立していくかという問題が差し迫っておるところでございまして、ただいま林政審議会の場で国有林野事業の経営の健全性を確立するための総括的対応策ということで検討をいたしておるところでございます。さらに検討を進めて適切に対応してまいりたいと考えておるところでございます。
  85. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 時間が来ましたので、国有林野がいわば大変な赤字を抱えている、そして独立採算制だ、それで国有林野の職員が非常に萎縮しているのではないか、そして現場の声が生かされないような状況にあるのではないか、国民生活にとって大事な山を守っていくという立場から、少なくとも現場を含めて職員が萎縮するようなことがあってはならないのではないか、そういう点はもっと現場の声が生かされていくような体制をぜひつくってもらいたいというふうに強く要請をいたします。  最後に一点、作業道の問題。先ほども話が出たのでありますが、特に豪雪地帯などは、補助事業と同年度に間伐をという条件の問題ですね、これはお盆過ぎに事業にかかる、そしてまごまごすれば豪雪地帯は雪が降る、その年に間伐をしなければ補助対象としない、それは実情に対応して緩和措置をとるべきじゃないか、こういうふうに思いますが、その対応方針についてお聞かせをいただいて、質問を終わりたいというふうに思います。
  86. 甕滋

    ○甕政府委員 それでは、お尋ねの点について簡単にお答えをさせていただきます。  御指摘ございましたように、間伐の促進のために林道、作業道等の基盤整備が重要であるということで各種の助成制度を今とっておりますが、間伐の実施を直接の目的とする間伐作業道の事業につきまして、間伐の早期実施を確保する観点から開設年度に利用区域内の間伐が極力行われるように、そういう指導をしておるわけでございます。しかし、御指摘もございましたように、積雪地帯等におきましては、間伐をやろうといたしますと翌年度になることもやむを得ない事情があるということから、昨年十月でございましたけれども、二カ年にわたってもよろしい、こういうふうに条件を緩和しておるところでございます。まだ不徹底な点があったのかもしれませんけれども、そういう措置をいたしております。
  87. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 ぜひそういう点の緩和についても、県単とか自治体単独事業などで起こしている部分がありますので、周知徹底、指導をされるように強く要請をして終わります。どうもありがとうございました。
  88. 亀井静香

  89. 堀込征雄

    堀込委員 最初に農林水産大臣から所信表明がございました。特に困難な情勢にある農林漁業政策について、みんなで力を合わせてやっていこう、そうすれば必ず二十一世紀に展望は開けていくのだ、困難ではあるけれども展望は開けるのだという意味の決意表明を込めた意思表明がございました。私もそのとおりでございまして、特に農林業、困難ではありますが、国民の合意を得ながらどうしても再建をしていかなければならないというふうに思います。しかも、農政につきましては与野党一致をしてこの難局に当たるべきだ。私ども大臣を助けながら一致してこの難局に当たらなければならない。そういう意味で農林水産委員会も与野党対決の委員会ではなくて、みんなで力を合わせてやっていくのだ、建設的に農林業の振興を目指していく委員会だ、こういうふうに認識をいたしております。  そうではありますけれども、どうも最近審議会というものがたくさんございまして、例えば中曽根内閣時代に行革審がありまして、行革審の声は神の声だということで、どうも国会軽視の風潮が随分あったのではないか。私ども今憂慮をしているのは、農政審議会、林政審議会、米価審議会、私どもに関連する審議会が幾つかございます。そういうところで専門的に議論をされることは結構でございますけれども、国権の最高機関としての国会のありよう、あり方、これはぜひひとつ尊重していただきたい。そして、そういうことで議論をかけられれば私どもも前向きに建設的にそういうふうにやっていきたいと思います。この辺、どうも審議会がオールすべてで、すべてその声に沿って進めなければいけないのではないかというような方向が最近ございますが、大臣、まず最初に審議会と国会のあり方について見解をお示しいただきたいと思います。
  90. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  申し上げるまでもないことなんですけれども、審議会は、行政運営への専門的知識の導入、あるいは行政に関する利害関係者の意向の反映、こういうふうなことを集約をしよう、吸い上げよう、こういうふうなことから国家行政組織法に基づいて法律または政令で設置されておりまして、その審議調査事項も行政の運営にかかわり、基本的な事項に限られておる、こういうふうに基本的にはなっておるわけでございます。  また、今御指摘農政審議会、林政審議会、いろいろお話がございましたが、これもこの線に沿いまして、農林水産行政を推進するに当たりまして幅広く各方面の有識者の意見を聴取して適切な運営を期したい、特にこういう難しい時代でございますから、そういう意味合いも含めて審議会を持っておるというふうに考えております。  ただ、私、先生と同じ意見でございますけれども、審議会等の意見がすべてであるはずがない、これは一つの有力な意見であるということでございまして、俗に言う、その審議会をもってある種の隠れみのにしてはならないというふうに私は心得ております。当然でございますけれども農林水産省が行うさまざまな施策につきましても、審議会で吸い上げたものを、時によって法律になるでしょうし、時によって御論議をいただく場面も持ちまして、これはあくまでも国会で御審議をいただくということが中心でなければならない、国会審議を経ずして審議会の意見がひとり歩きをすべきではない、これは厳に慎むべきだと思っております。  ただ、繰り返すようですけれども、時代の変わり目で非常に難しい時期でもございますから、多くの方々の、特に専門家、学者などの意向は審議会を通して十分吸い上げながら、時代の施策に誤りのないようにそれを集約をし、展開をしていくという必要はあろう、こう考えております。
  91. 堀込征雄

    堀込委員 それでは、私はきょう、食管制度、特に自主流通米の価格形成の場の問題について集中的にお伺いをします。  これも農政審議会の答申を受けて検討会をつくって進められた、こういうことになっています。先ほど遠藤議員の答弁の中で、食管法の法的な根拠は食糧庁としては問題はない、こういう見解表明がございました。しかし、法改正の必要はない、つまり、国会に相談する必要はない、こういうことでありますが、予算は国会の承認を求めなければなりません。私は今年度農林省予算を見たのですが、おおむね去年の予算項目とそんなに変わってない。私どもの判断する限りでは大体変わらないのではないか、こう思っているのですけれども、この価格形成の場をことしじゅうにもやると一方では言っている。どこの予算根拠を使ってやるか、説明してください。
  92. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 予算の点について御提起でありますけれども、現在の食管法に基づいて行うものでございますので、当然食管法で計上しております二千三百二十億の中で行われるべき問題だと思います。  ただ、この点について、先ほど来農林水産大臣に御質問の点に関連をいたしまして、私の方から今先生お話しのような法律制度との関係はどうかという問題についてお話をさせていただければ、やや繰り返すようでございますけれども、まず第一にこの価格形成の場検討会というのを設けさせていただきましたけれども、これはいわゆる審議会とかいうようなことで私ども考えておりません。現に、約この半年間に十一回ほど、いわゆる学識経験者の方々、その学識経験者の方々の中には直接に業務に関連される方々、全農であるとか全中であるとかあるいは卸の団体の方というのに集まっていただきましたけれども、これはあくまでもそれぞれ個別に参集をいたしました。ちなみに、最初は十二名の方でございましたし、主婦連の方が途中で専門委員という形でしたけれどもお入りになり、それで最後の委員というような俗称で私ども言っておりますけれども、参加者の中では加わっていただきましたし、それから農協の指導団体である中央会、この方々がお加わりになりまして、最後の検討会の報告書に関与された方は都合十四名になっております。  そういう形でやられてまいりましたが、この法律的な根拠という形は、先生指摘のようにまず農政審議会で大枠のこの価格形成の場の方向が示されたわけでございます。それはやはり品質格差というものが明確になるようにというのが一つ。それから、その参加者はやはり卸売業者あるいはその他の資格を持った人で構成しようというようなところがございまして、私どもはその大枠組みの中で食糧庁におきます検討をさせていただいたという形でございます。
  93. 堀込征雄

    堀込委員 とにかくこれだけ大変な問題、実際に日本の米の大部分を占める自主流通米の問題、大影響が出る問題を、法的に問題はない、それから予算上問題はないということでありますが、しかしそれにしても、先ほどの大臣所信表明もございましたが、これは国会にはある程度相談をしてもいいのではないか、あるいは、こういう方向でやるのだ、こういうようなことは提示あるいは相談があってもいいと思いますが、その辺食糧庁どうですか、国会なんか関係ありませんか。
  94. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいまの私どもの作業は、これは明々白々なことでございますけれども農政審議会の方針を受けてその具体的なことについて検討会というようなことで、一本化されたような報告をいただいたということでございます。それで、この報告書にも明記をしておりますけれども、この報告に盛り込まれた内容に従って速やかに関係者と具体的な調整を行って準備を進めろということがあります。この問題は自主流通米の値決めの部分についてかなり大きなことだというふうに思っておりますし、二十年の歴史の中でも一つの画期的なことだというように思っております。私どもはこの報告書を参考にし、さらに関係者の方々と御議論をしてこの運用をやっていこうということでございますので、私どもといたしましては、例えば先生お話のように各種の御意見というものをこれからも十分取入れまして、それで納得のいくような形で実施をさせていただく、そういうものであろうというふうに我々は考えているところでございます。現在、この報告書が一つの始まりでございますので、食糧庁の中に準備室もつくり、それから対策本部といったようなものをつくって、現在その中で具体的な食糧庁の案を詰めているという段階でございます。
  95. 堀込征雄

    堀込委員 長官、時間が限られていますから簡潔に。しかも、国会にはどういう相談をかけますかという質問をしたのです。必要がないかどうか。今後ぜひ質問に対して答弁を的確にお願いをしたいと思うのです。  しかし、この経過を見ますと、これは自民党の皆さんに随分苦労いただいて、農林部会や総合農政調査会で、検討会の経過が途中修正になっていますね。食糧庁も、四月十三日初め二十七日まで、自民党さんのところへは相談に行きながら幾つか検討されている、こういう経過がございますね。どうなんでしょうか、これは野党には相談の必要はございませんか。
  96. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 今お話しのように、自由民主党の中におきましてこの御議論があったことは事実でございます。私どもの方は、食糧庁におきます検討会というものが先ほどのような形で去年の九月から行ってきて、そういった都度におきます例えば国会のこの委員会等におきまして、私からもいろいろ食管制度の運営等についてのお話を申し上げたこともございました。  今お話しのように、国会に諮るというような形におきまして、先生が先ほど御提起のように、一つの上では予算ということがあることも事実でございますし、それから、法律案というような形で政府案をつくりまして御審議を賜るという形も事実あるわけでございますが、この価格形成の場というのは、私ども、決して重要ではないという言い方ではございませんけれども、法律という形で行われる分野とはまだ私ども現在で考えているところではございません。自主流通米の価格の値決めの段階でございますので、法律という形ではやや今準備中でございますので、はっきり断定的に申し上げるのは問題があるかもしれませんけれども、今の段階では一つの通達、実際現実においては協議会方式といったようなことも通達で行われております。それから、枠組みを決めるというところにおいては政令というようなことで、政令以下の段階だというふうなことでございますので、法律という形でこの委員会に御相談するという形ではないと思います。  ただ、先ほど来おっしゃっておられるように大きな問題であるということで、先生方の御意見、そういったいろいろな御提議というものは、私どもも十分参照していかなければいけない問題だというふうに考えているところでございます。
  97. 堀込征雄

    堀込委員 答弁、ちょっと納得できないのですが、先に進めます。  検討会は有識者の集まりで、値決めのことについて決めた、こうありますが、特に四月二十七日、これ、自民党さんにうんと頑張ってもらって、検討会の中身あるいは食糧庁、団体等の話し合い決着の場になっていますね。つまり、検討会というのは有識者の集まりで、だれにも惑わされずにその場で検討されることになっているのだけれども、途中で四月二十七日、中身が変えられた、こういう経過はありませんか。
  98. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 御指摘の点について明確ではございませんけれども、検討会の内容が修正されたとか、そういうことは検討会の流れにおいては一切ありません。
  99. 堀込征雄

    堀込委員 私は、実際には四月二十七日に中身は随分よくなったというふうに思うのです。  私がもう一つ言いたいのは、この検討会のメンバーの皆さんですね、私ども、日ごろ食糧関係、米関係などに多少でも興味を持って書物などに目を通す人間にとっては、このメンバーの皆さん、それは新聞社から出たり、学者先生いらっしゃいますけれども、日ごろどういう主張をされている人々か、これは明らかに一方的な主張をされている人たちばかり集まっているというふうに受け取らざるを得ないのですね。この人たちと違った発言をされる学者、ジャーナリストだってたくさんいるわけですよ。あえて特定の人を選ばれたというふうに私は判断をするのです。しかも農水省OBがお二人いらっしゃいます。大蔵省OBも一人いらっしゃる。そういう中で、特定の考え方を持った人だけ集めて検討会をやられて、それで結論を出した、こういうふうに思わざるを得ないのですけれども、この検討会のメンバー、だれがどんな基準でお選びになるんでしょう。
  100. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 メンバーは、これは先ほど来申し上げておりますように、食糧庁におきまして農政審議会の提起された具体的な問題についていろいろ御議論を賜ろう、私どもの実務に参考にさせていただこうということで、食糧庁で選びました。言うならば、私の段階でいろいろな意見というものをやる意味において選んだということでございます。御案内のように十二名で出ましたけれども、その半分の方々は直接自主流通米の値決めの問題に関連する方々、それから今先生が御指摘のようにジャーナリストの方もいらっしゃいますが、私どもは、そういう一つの中で日ごろいろいろ御提起をなさったということももちろんありましょうが、いろいろ発言をしていただくというような意味で最適の方だろうというふうに思っております。
  101. 堀込征雄

    堀込委員 最適か否かは後でも触れます。検討会は隠れみので、どうも食糧庁の意見を通すためにつくったというふうに思えて仕方がないのですね。先へ進めます。  価格形成の場をつくる理由、根拠を説明してください、必然性といいますか。
  102. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 価格形成の場は、先ほどもお答えをいたしましたけれども、自主流通米の二十年にわたる実績等に対応いたしまして、かつまた政府米との比較からいってもかなり大きくなってきたというようなことから、現在ございます協議会方式といったものをいわば一歩進めていこうというような観点から行われているわけでございます。  私どものこの検討することとした理由ということについては、農政審議会から提起された問題点、また、これに対してははっきりと私どもそういう方向に沿って早急に検討するということを日ごろ言ってまいったわけでございまして、この中で価格形成の場についての基本考え方というのは、価格形成の場のねらいということで検討会についても提起されているとおりで、御案内のとおりでございます。それぞれ生産者、流通関係者、消費者に、先ほど来の私の言葉で申し上げますと、よく目に見える形でという形のものを行うべきではないかと考えているところでございます。
  103. 堀込征雄

    堀込委員 検討会報告には、自主流通米の価格が不透明、不公正、こういうふうに書いてあるのですね。さっきも遠藤議員言いましたが、不透明、不公正を感じているのは食糧庁なり一部業界なり一部学者の皆さんじゃないかと私は思うのですね。これは、そういうことで国民の声だなんて言い方はやめてほしいと思うのですよ。別に生産者、消費者は不透明、不公正というようなことを言っていないんじゃないでしょうかね。  例えば私の手元に、ある米の業者が出された記念誌のコピーがございます。ここで座談会をやっていますが、一年も前ですよ。東大の佐伯教授、例の農業自由論者で有名な叶芳和さんとこの会社の会長さん、司会は、今度の検討会のメンバーで日経新聞の岸康彦さんがやられているのです。一年も前のこれを読みますと、検討会報告とそっくり同じことが書いてあるのですよ、この座談会で。全農が九五%もシェアを持っているのは問題だ、不透明、不公正だ、自主流通米の価格形成の場をつくらなければいけない。去年ですよ。これと同じようなことを、既に一部の学者や一部の業界でやられてきた、議論されてきた。そっくりそのまま検討会というものをつくってやった、こういうふうにとらざるを得ないのですが、それは食糧庁どうですか。
  104. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生、昨年の座談会と、そういうふうにおっしゃいますけれども、この価格形成の場の提起が出たのも同じように農政審議会の六月でございます。今の座談会、先生指摘のものがその時期とどういう関係かというのはちょっと私わかりませんが、この価格形成の場をつくっていこうというのは、もう既に内閣に置かれておりますその議論の中で約二年間にわたり議論されてきたものでございます。もちろん食管法の大幅な改善だとかいろいろなものが現状さまざまな方向の方から御提起されております。この農政審の答申の、食管制度の根幹を維持していこうあるいは国内で自給していこうという前提の上で、より市場原理を入れるという形は何か、それは価格形成の場を形成することだという御提起のもとで、この検討会ができたわけでございまして、その方向づけというのは内閣に置かれておる農政審議会で去年の六月にまとめられたと我々は考えているところでございます。そういう意味で、米穀の業界に関連する方々のいわば一つの共通認識があったんだろう。したがって、例えば今回の検討会にも入っておられません佐伯先生とか、そういう方もそういったようなことの御発言をしたのではないかと思っております。
  105. 堀込征雄

    堀込委員 非常に意図的な感じをどうしても受けざるを得ないのですね。冒頭大臣所信表明ございましたように、一部の人の意見で国民の意見だなんてことのないように、ぜひ生産者、消費者の意見、そして国会の意見、これは農水委員会にかけなくとも各党の理事皆さんいらっしゃいますから、こういうことをやりたいんだがどうだとか、あるいは各党の部会にかけてこういうふうにいきたいんだがどうだというようなことはぜひやってもらいたいと思うのですよ。これから価格形成の場を進めるに当たって、ぜひそういうことをやってほしいということを要望し、次の質問に入ります。  検討会報告に沿って進める、こういうことですが、私は、米の需給の安定を図るためには、値決めの方だけではなくして、どうしても生産面の安定が必要だ。今現場の農家は三〇%の減反やっているわけです。県や市町村そして農協の担当者など、汗水流して集落ごとの懇談会を開いて、農民の理解を得ながら減反をやっているわけですね。こんな状態の中で自主流通米の価格形成の場へのせていく。そうすると高値のつく良質米地帯の米がどんどん売れて価格も上がる、だから減反できなくなるのではないか。あるいは安値を余儀なくされる地帯、こういうところでも、低価格でも構わない、売れるものはたとえ安くてもつくろう、こういうことになってくるのではないか。つまり、価格政策で減反政策をやろうというのはかなり無理があるのじゃないかと思うのですが、その辺どうですか。
  106. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御提起の問題、二つの問題があろうと思います。  私の理解価格形成の場というのは極めて重要だということを申し上げてまいりましたけれども、まず価格形成の場の役割というものを今先生御提起の生産調整の問題と絡まして申し上げますと、この検討会の報告にもございますように、米全体の需給均衡は生産調整の実施によって行うということでございます。現在、八十三万ヘクタール、いろいろな水田農業確立対策という形で実施しているわけでございますが、米の需給の大きな枠組みというのはこの生産調整が第一でございます。その中で行われております生産の中で、先ほど来の繰り返しで甚だ申しわけありませんが、政府米と自主流通米があるわけでございます。その政府米の方の価格は米価審議会でお決めいただくわけでございまして、その次に自主流通米については、従来から行われております協議会、あるいは今回価格形成の場と我々称しているものをいろいろ御議論を賜りながらつくっていこう、こういう段階でございます。したがって、価格形成の場といったものの動きが生産調整に影響するということは、論理の上からいうと全然逆でございます。生産調整というような仕組みのもとで行われている自主流通米の一つの形態の価格、値決めがあるわけでございますので、そこのところが一つの我々の考え方であります。決してこれによって生産調整の現行の方式がおかしくなるとかそういうふうに我々は考えておりません。
  107. 堀込征雄

    堀込委員 今の答弁はちょっと納得できないのですが、やはり高く売れるところはどんどんつくれという意味じゃないのですか。市場原理が働いてきますとそういうところはどんどんつくる。今各県、現場で苦労して減反をやってもらっている、こういうところはどうなるかと聞いているのですよ。高く売れるところは原理が違うという話じゃなくて、減反政策政府は今後も責任を持っていきますかということを言っているのですよ。これは崩しやしませんか。その関連。
  108. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 価格形成の場が目指しているのは、ここの答申の中でも明らかにしておりますように、産地、品種、銘柄ごとの需給の動向とか、あるいは品質評価を的確に反映しようということであります。現実に、例えばはなの舞であるとかあるいはコシヒカリであるとか、そういうものが国民の嗜好とか生産者の努力によって、農家の努力によってできているわけでございます。端的に申しまして、例えば価格差といったものがやはりみんなも納得のできる場で決まるということがどうしても必要なのでございます。それから、そういうふうな良質米ができてきたものについて、そこにおいても生産調整をするが、あるいは良質米と言われているもの以外のところについてどうするかという問題は、これはもう生産調整の割り当ての問題でございます。八十三万ヘクタールというものを三年ごとに決めましたときの具体的な問題について、そういうこととの関係についてはこれはまだ関連づけておりません。現在において米の生産の水田農業確立対策の後期対策、この水田面積についてはそれぞれ現状全体の上で固定するという形で決めているわけでありまして、各県ごとの状況をやっております。  ただ、この価格形成の場において考えられていますのは、何度も繰り返し申しておりますけれども、かなり大きなことだというふうに我々認識しております。それはあくまでも現行の協議会方式にかえる形で十分納得できるような形の場をつくっていこうということに限られるものであります。
  109. 堀込征雄

    堀込委員 大変重要な答弁が今ございまして、減反についてはまた別なところで決める、こういうことであります。つまりこれ、価格形成の場で良質米地帯の米はどんどん売れた、高値がついた、そういうところはどんどんつくっていくこともあり得る、価格形成の場で売れない地帯のところは減反面積を今の三〇%からどんどんふやしてもらわなければならない、こういうこともあり得る、こういうことですか。
  110. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 私の答えはそういう言い方をしておりません。あくまでも具体的な減反面積については水田農業確立対策によって、各県の中においての品種等々について一切触れているわけじゃありませんから、そういう形で決められております。  他方、この価格形成の場は、現在の自主流通米において値段が決まっているわけです。現実においても。そういったものがやはり関係者の納得できるような目に見える形で、今までの協議会方式よりも価格形成の場で決めていこうということだけでございます。
  111. 堀込征雄

    堀込委員 不透明、不公正な問題納得できぬとありますが、例えば消費者の方では透明性の確保という問題がありますと。これは例えば卸から小売、小売から消費者という段階でも幾つかあるわけですね。例えば混米、実際にされていますね。大変出回っておる。こういう問題も手をつけられていない。消費者の調査をやりますと、例えば新潟のコシヒカリが二十万トンちょっとしか出回ってないのに、実際には八十万トンぐらい食べているという結果も、ある調査では出ているということもあります。いずれにしても、いろいろな不透明、不公正というのは小売の段階まであるわけでございまして、つまり私は、何でこの場だけ手をつけたかということについて非常に理解しがたいのですね、今の説明を聞いても。しかし、これまた同僚議員が三十日にどんどん質問させてもらいます。  良質米奨励金、これは今まで政府の責任でやってまいりました。大きな役割を果たしてきたわけでありますけれども価格形成の場にこれは関係なく、良質米奨励金は継続をいたしますか、どうですか。
  112. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 良質米奨励金については五十一年から実施をしているわけでございます。これにつきましては、政府米との関係から、良質米奨励金の役割がだんだん薄れてきているのではないかという御意見もありますし、一方では、これは既に米価の一部であるという御意見もございます。私どもは、そういった御意見を十分検討いたしまして、例えば平成二年度の良質米奨励金の実施等については十分納得のいくような形で対応していくことでございまして、世上、新聞等にいろいろな文言が踊っておりますが、私ども今何も決めていないというような状況でございます。
  113. 堀込征雄

    堀込委員 それでは、この検討会どおりに行えるとしたら、例えば入札の量百万トン、四百万トン自主流通米が流通している、そのうち大体三分の一は自県産流通で、大変な量だと思うのですけれども、事実上これは指標価格ではなくて値決めになってしまう、こういう問題があります。それから入札の回数、これも月一回とおっしゃいますけれども、米は御存じのように年一作の作物でございまして、一月ごろにならないと品質もとれ高も大体確定してこない。今現実に、農家に秋に仮渡し金が払われて、そして集荷されて大体決まってくるのは一月だ、こういう問題があります。非常に回数が多いのじゃないかという気がします。実際にその場で価格も決まる、流通も決まる、こういう問題になるのじゃないか。この入札の量と回数の問題、検討会報告どおり考えていますか。
  114. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生、二つの問題を御提起になりました。  一つは、この価格形成の場に乗せる玉といいますか、その玉の量がどのくらいかということでございます。この検討会報告によりますと、市場価格を形成するために必要な相当の量が出ないとみんながそれに従わないのではないかというような御提起がありまして、例えば百万トンという数字でございます。この数字は、先ほど来御説明しているように自主流通米が四百万トンということでございますから、その二、三割、八十万トンから百二十万トンの間というふうな数字だろうと思います。  それから一方、現状の協議会方式で実施されておりますのは二十万トンでございます。したがいまして、先生指摘のように、この百万トンという数字は現状の二十万トンから比べるとかなり大きいわけでございます。全体の上からいえば、いろいろ物事を考える人がいて、百万トンくらいではほかの方が従わない、二百万トンぐらい公入札という方式でやるべきだという御意見もあろうかと思いますのでそういう意味では少ないのかもしれませんが、現実からすればこの百万トンという数字は大きいというふうに思います。したがって、この報告は、そういうものへだんだん目指していけというようなことでございまして、私どもはやはり現実の取引の問題、それから関係者の中で混乱が起こるというようなことがないように、十分慎重にやっていくべき問題だろうと思っております。  次に、二回、三回というのがどうか、それから月一回という回数の問題を御提起になりました。  現在は建値取引という形で、米の出来高のところで協議会方式で一つ行われているわけでございます。入札という形は、ことしから二回行われているわけでございます。もちろんお米というのは年に一回しかとれないのですけれども、そのときどきの需給、それを精米にして消費者の方々にということになりますと、ある意味では三百六十五日いろいろ値段が変わるという面もあろうかと思います。私どもとしては、ほぼ出来高のところは一つ一番大きいと思いますけれども、この検討会の報告は、月一回、具体的には大阪、東京でそれぞれ一回ずつということでございますので、この検討会の報告が今の二回といったようなことからやや多いということもあろうかと思いますので、これは十分関係者の方々と相談をして、だんだんと実施すべき問題だろうというふうに考えております。
  115. 堀込征雄

    堀込委員 時間が来ましたので最後にちょっと要望もしておきます。  第三者機関というのがございますが、ぜひひとつ、さっきの検討会メンバーじゃありませんが、どこから見ても公平だというような形のものをつくり上げてもらいたいということを一つは要望しておきます。  そこで、最後に取引参加者の問題であります。私は今度食糧庁の皆さんがこの問題意識を持った考え方と多少考え方を変えています。やはり農家、農民が共同して生産物を集める、それを出荷してできるだけ高く売りたい、これは農民の願望であるわけですね。これは米に限らず野菜、果樹、畜産、みんなそうです。やはり一元集荷、多元販売というのが農民の願いなんですよ。一銭でも高く売りたい。  きょう、食糧庁の皆さん出てきて、米管理は全農では九五%も占めていて、いけないのだ、こういう言い方はどうも私は、現実に日本の中にある協同組合、この論理に合わないのではないか、あるいは民営化に逆行するのではないかということまでちょっと言いたいわけです。ぜひ全農に一元集荷してできるだけ高く売ってもらおうというこの農民の気持ちというのはやはり大切にしなきゃいけないのじゃないか、こう思いますよ。  これは最後の質問ですが、各県経済連、非常にこの問題で危機を感じています。四十七都道府県連、経済連、仮に全部上部団体、全農に委託をする、こういうことになったら、食糧庁はどうしますか。
  116. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 この研究会、検討会の御報告では、先生先刻御案内のとおりでございまして、現実の産地銘柄が売られている実態、産地の銘柄、県ごとの銘柄ですね、そういったものの販売が行われているのが都道府県単位になっているということを前提にいたしまして、原則として都道府県区域の米を集荷している経済連。それで例外的には、指定法人について、適正かつ円滑な価格形成を図っていく上で支障がないと認められる場合に、全農といいますかあるいは全集連といいますか、そういったものが取引できるというふうになっているわけでございます。  現実にどういう形になっていくかというこの原則と例外の問題については、私ども十分今の段階で検討いたしまして素案をつくりますけれども、さらに具体的な運営の場合には、先生御提起になられた公正第三者機関というものの中に当然ながら集荷業者の代表も入られるでしょうから、その運営委員会という形で現実的に検討されるものだというふうに思っております。
  117. 堀込征雄

    堀込委員 時間が来ましたので質問を終わります。まだ納得できる内容ではありませんので、三十日、同僚議員による質問によってさらに問題点を明らかにしたいと思います。  ありがとうございました。
  118. 亀井静香

    亀井委員長 倉田栄喜君。
  119. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私は、農林水産委員会に所属させていただいて初めての質問で、いわゆる農家の方々の間に存在する農政不信の問題について、これをどのように解消していくかという観点から質問をさせていただきます。  大臣農家の方々との率直な対話という視点から御答弁をいただき、私も大変この点については意を強くした次第でございます。この現場を第一として農家の方々と率直な対話を重ねるということと同時に、農家農業というものがだんだん先細りしていくのではないかという農家の方々の不安を解消していくという意味で、いわゆる農政の根本的な理念というのをきちっともう一度検討し打ち立てていくということはまた必要なことであろうかと思います。  そこで農業基本法でございますけれども、ずっとこれを見てみますと、いろいろ読み方はあるわけでしょうけれども農家の方々が他の産業と比較して遜色ないというか均衡する生活を保障する、こういう観点からほぼ規定されているように思います。農業基本法にも国土保全ということは書いてあるわけでございますけれども、近年この国土保全、自然環境の保護あるいは地域の活性化、さまざまな問題が噴出していることの中で、また大臣も、農は国のもとである、こういうふうな御発言をなさっておられます。そういう観点から日本農業というのはこれからもきちっと守っていきますよ、そういうことを含めて、農業基本法というものをもう一度見直してみてはどうだろうか、こういうふうに私は思うわけでございますけれども、この点について大臣はどのようなお考えをお持ちでしょうか、お伺いをしたいと思います。
  120. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えします。  今先生指摘農業基本法、これは農業の憲法ともいうべきものだと思うのですが、一言で言えば、今お話のあったとおり農業の発展と農業従事者の地位向上ということを基本にして法律が制定をされたというふうに思っております。この法律のもとでは、生産、価格構造等の各般にわたる施策が講ぜられたことによりまして施設型農業中心の生産性向上は進んだ、こういうことでございます。ですから、いわゆるサラリーマン、勤労者世帯などを上回るところまで行っていることは数字によっても明らかなんです。しかし一方では依然として、お米もそうでございますが、土地利用農業においてはなかなか生産性の向上が遅々として運ばないというふうな問題、いろいろ解決しなくちゃならない問題があるということでございます。  ですから、時代の進展とともにこのことを十分留意をしながら、農業基本法の理念とか目標というものは現在も全く変わらない、冒頭申し上げたとおりのことでございます、しかし中身について、時代とともに農業を取り巻く変化というものは大きくあるということを認識しながらこれからも対応していくべきではないか、こういうふうに考えております。
  121. 倉田栄喜

    ○倉田委員 続きまして、現在進められておりますガット農業交渉の問題についてお伺いをしたいと思います。  先ほど社会党の委員の方からも御質問がありましたが、いわゆる農業交渉期限、一応本年末をめどにという御答弁でもありました。かなり精力的な作業であろうかと思いますけれども、これに臨まれる農水省の基本的な態度として、現在どのような主張をされながら臨んでおられるのか、お伺いをしたいと思います。
  122. 川合淳二

    川合政府委員 現在私どもガットウルグアイ・ラウンド農業交渉において主張しておりますのは、一つは、いわゆる安全保障等の観点から、米のような基礎的食糧について所要の国内生産水準を維持するために必要な国境調整措置を講じ得るよう、新たなガット規則、規律をつくるべきであるという提案を行っている点でございます。そのほか、ガット十一条の明確化の問題、それから貿易に対する歪曲効果が最も著しいと考えられます輸出補助金について段階的な削減を通じ最終的に撤廃すべきであるというようなことを中心として、現在主張をし、積極的に交渉に臨んでいるところでございます。
  123. 倉田栄喜

    ○倉田委員 このガットの問題に絡む件でございますけれどもアメリカが一九八五年に制定した食糧安全保障法、いわゆる新農業法でしょうか、そういう法律がございます。この法律の内容というのは主にどういうことを規定されておるわけでございましょうか。
  124. 川合淳二

    川合政府委員 今お話がございました八五年のいわゆる農業法、食糧安全保障法でございますけれども、これは八〇年代後半の農業政策基本方向を定めている法律でございます。この法律は、アメリカの伝統的な農業政策でございます価格所得支持政策あるいは生産調整政策が盛り込まれておりますが、この前の法律、八一年の農業法と比べて新しい点として、輸出促進措置がとられている点でございます。  このうちの価格所得支持制度は、一番中心的なアメリカ農業政策の根幹でございまして、主要穀物につきまして、目標価格とローンレート、融資単価とでも申しましょうか、そういうものの二段階制の支持価格を定めておりまして、いわゆる不足払い制度と短期の融資制度と両方によりまして市場価格を支持いたしますとともに、農家の手取りの価格を保証しているというような制度でございます。このような支持を受けるためには、農家はいわゆる減反を実施するなど、農産物の計画に参加する必要があることになっております。  それから先ほど触れました輸出振興策は、EEPといわれる輸出奨励計画でございまして、これは八〇年代後半の輸出競争と申しますか激化に伴いまして、アメリカのシェアが減少してきたことに伴いまして、そうした減少の著しい市場に輸出する場合に、政府がある種のボーナスを輸出業者に出して輸出を確保するというような制度になっております。  なお、八一年に比べますと、このローンレートあるいは目標価格につきまして、それを段階的に減らすというような要素が入っていることもつけ加えさせていただきます。
  125. 倉田栄喜

    ○倉田委員 このいわゆる農業法の中に価格所得支持制度、あるいは減反政策輸出振興策、国境保護措置等々規定をされているということだと思いますけれども、その中の輸出振興策あるいは国境保護措置、先ほど御答弁の中にありましたいわゆる補助金つき輸出、こういう問題について農水省はアメリカ側に対してどのように主張されておられるわけでございましょうか。
  126. 川合淳二

    川合政府委員 今回の農業交渉のある種の発端と申しますか背景は、世界的な農産物構造的な過剰のもとで補助金つき輸出の増大によりまして輸出競争が激化したということがあると思います。その中で、先ほどのアメリカの奨励政策というものはまさにこの中心といいますか、その大きな要因になっているわけでございまして、補助金つき輸出というのは世界農産物貿易を歪曲させる主な要因であると考えられますので、この輸出補助金は段階的な削減を通じて最終的に撤廃すべきものであるということを我が国としては主張しているわけでございます。
  127. 倉田栄喜

    ○倉田委員 一九八六年九月のウルグアイ・ラウンドのいわゆるガット閣僚会議での宣言でございますけれども農業交渉の目的として、市場アクセスを改善する、競争環境を改善する、一層の自由化を達成する、そういうものに影響を与えるすべての措置というのを新たなガットの規制のもとに置く、これが農業交渉一つの目的となっているんだと理解をしておるわけでございますけれども、これを受けて、昨年四月の高級事務レベルの貿易交渉委員会で、各国は八九年、昨年の十二月までに詳細な提案をすべきである、こういうふうになっていると理解をしております。  そこで、この詳細な提案でありますけれども我が国も当然それなりの提案をしているわけでございましょうから、どういう形でどんな内容の提案をしておられるのか明らかにしていただければと思います。
  128. 川合淳二

    川合政府委員 今お話がございましたように、昨年四月の高級事務レベルの貿易交渉委員会におきまして、交渉の長期目標として、公正かつ市場志向的な農産物貿易制度を樹立するということ、このために農業の支持それから保護について一定の期間にわたって相当程度の漸進的削減を行う、交渉はすべての輸入アクセスあるいは輸出競争影響を与える措置を対象とするというようなことが合意されたわけでございますが、我が国といたしましてはこの段階で、食糧安全保障などを含む非貿易的関心事項についても配慮すべきであるということを主張し、この点も盛り込まれております。  これを受けまして十一月に私どもといたしましては提案を行ったわけでございますが、その提案の内容は、一つは、各国における農業の支持、保護の水準を総合的に計量する適切な手法を用いましてこれを漸進的に削減するための交渉を行うことは異存はないけれども農業保護の撤廃は、土地とか気象条件の制約を受けるという農業の特殊性、それから食糧安全保障など農業が果たしている多様な役割にかんがみまして、受け入れられないという点が第一点。それから、米のような基礎食糧につきまして、特に食糧安全保障等の観点から所要の国内生産調整を維持するために必要な国境調整措置を講じ得るものとすること、三番目といたしましては、これはアメリカがとっているウエーバーでございますけれども、このウエーバーによる輸入制限あるいはECの輸入可変課徴金などについても公平性の観点からガットのルールのもとに置くこと、それから、先ほども触れましたけれども貿易に対します歪曲効果が最も著しい輸出補助金につきましては、段階的な削減を通じ最終的に撤廃すべきであるというようなことを内容といたしまして日本提案を提出したところでございます。
  129. 倉田栄喜

    ○倉田委員 ヤイター長官が農相に抗議書簡を出したと報道されておる点でございますけれども、私は今毎日新聞の五月二十二日付夕刊を持っております。これについてヤイター長官が、米の自由化の問題については、自由化するかどうかではなく、いつどれくらいの数量を日本が輸入するかの段階に来ている、こういう趣旨の発言をされておられる。この発言が事実だとして、大臣がこれに対して非常に強い調子で反論をされたことは非常にもっともなことである、このように私は理解をしております。しっかり頑張っていただきたいというふうに思うわけであります。しかし一方で、先ほど農業交渉経過の問題をお尋ねいたしましたけれども、ヤイター長官がこういうふうな発言をしたことが事実だとした場合、どうしてこういうふうな発言になってしまったかということについては、農水省としてはどのように御認識をされておられるのでしょうか。
  130. 川合淳二

    川合政府委員 ウルグアイ・ラウンドにつきましては、先ほども御質問の中でもお触れになりましたように、現段階では各国の提案が昨年末までに出そろい、それに伴いまして、その提案の内容について明確化を図ってきておるところでございます。昨日まで、五月の二度目の非公式な交渉が行われておりましたけれども、その段階に至りますまでに、アメリカの提案あるいはECの提案、先ほども議論がございました例えば関税化の提案につきましても、ECの内容につきましてはまだ十分な中身を私ども把握していない。ECも提出していないという段階でございます。したがいまして、現在の段階では議論はそういうそれぞれの提案の中身をお互いに知り合っているといいますか、お互いに明確にしているという、そういう段階でございまして、交渉の実質的な中身といいますか、まだそこまで到達していない段階でございます。  したがいまして、私ども認識といたしましては、七月までに一つの大きな枠組みをつくるという合意はございますので、これから先、精力的な交渉の中でそういうものが逐次つくられていくという段階でございますので、今の段階で、今御指摘のようなヤイター農務長官のお話が出るというのは、そういうウルグアイ・ラウンドの流れの中からいって、ややこちらとしては非常に当惑といいますか、時宜に合っていないものではないかというふうに考えているところでございます。
  131. 倉田栄喜

    ○倉田委員 いわゆる米の自由化の問題については、日本国といいますか、全般的に農家の方々にとっては非常に重要な関心を持っておられる事柄でありますので、こういう新聞報道がなされるたびに非常に疑心暗鬼といいますか、大変な不安感を農家の方々というのはお持ちになられるのであろうと思います。そういう農家の方々の不安感がまた農政不信を増幅するということのないように、農水省としてもしっかりした対応をとっていただきたい、こういうように要望しておきたいと思います。  そこで続きまして、先ほど、食糧の安全保障という観点からガット交渉の場においては主張しておるのだ、こういうお答えがありました。この安全保障という考え方について、農水省は基本的にどのような根処でどのような認識をされておられるのか、明確にしていただければと思います。
  132. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 食糧は申すまでもなく国民生活にとって最も基礎的な物資であります。一億二千万人に及ぶ国民食糧の安定供給を図るということは、農政基本的な役割であるというように考えております。    〔委員長退席、穂積委員長代理着席〕 食糧の供給につきましては、穀物等の国際需給は中長期的にはなお不安定な要因を抱えているというようなことにかんがみますと、今後とも国内生産の効率的な展開を図るというのを基本に、安定的な輸入の確保に努め、国民に対して食糧の安定供給と、仮に不測の事態ということをも想定して、そういうものにも対応できる能力、すなわち食糧供給力を確保しておく必要があろうかと思うのです。  そういう中で、制約された国土条件のもとで可能な限り生産性の高い農業を展開していくため、日ごろから基本的な食糧供給力の確保を図っていくということが肝要かと思って、そういう観点に立って国内政策を展開するとともに、また対外的にもそういう立場から主張しておるわけでございます。
  133. 倉田栄喜

    ○倉田委員 その食糧供給力を確保するという観点から展開をしているという御答弁でございますけれども、今の議論からした場合、現在日本食糧自給率は、カロリー自給率で四九%ということでございます。二〇〇年を目途とする展望では五〇%という目途となっているみたいでございますけれども、このカロリー自給率あるいは食糧自給率、そういう数字ではなくてもっと高めていくべきではないかというふうにも私は思うわけでございます。この点についてはいかがでございましょうか。
  134. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 我が国食糧自給率は御案内のとおり低下してきているわけでございますけれども、これは食生活の変化が急激に進みまして、御案内のとおり畜産物の消費の増加等が進む一方、我が国で自給しました米の消費が減る。畜産物を国民に安定的に安価な価格で供給するためにどうしても輸入飼料に頼らざるを得なかったことがこの結果でございます。  そういうことでございますけれども、先国会でもこの自給率問題をめぐりまして各党からいろいろな御議論をいただきました。私どもも先般作成した長期見通しにおきましては、国内農業の持てる力を極力発揮するという観点から、食糧自給率の低下傾向に歯どめをかけたいという点でいろいろ検討したわけでございますけれども、ただいまのような食生活を前提考えました場合に、それをいささかでも上げることは必ずしも容易でないわけでございますが、せめてカロリー自給率で半分を供給したいというような視点を置いて今回の見通しを作成したわけでございます。
  135. 倉田栄喜

    ○倉田委員 カロリー自給率でせめて半分は自給したいということでございますが、具体的に例えば四九%から五〇%にカロリー自給率を一%上げるためには、現在の日本食糧事情あるいは食糧生産を何をどのくらい上げればこういうふうな目標が達成できるわけでございますか。
  136. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 自給率は、先ほど言いましたように食生活との関係で決まってくるわけでございます。現在のような食生活が続き、さらに今の傾向が続いていくということになると、率直に言いまして自給率を一%上げることも、財政的にいろいろな問題から容易でないということでございます。今回の長期見通しでは、個別作目だけでなくて全体として考えまして自給率確保という点を考えたわけでございます。  まず主食糧である米につきましては、消費の低下傾向をできるだけなだらかにしたいということで、良質米や現在の加工用米、他用途米以外の加工用米の供給等を考え、そういう需要に即した生産を振興していきたい。それからまた、小麦とか大豆等につきましては、食品加工が前提になるわけでございまして、食品加工に適した品質でありますとかコストの改善を進めることを前提に生産の拡大を考えているわけでございます。また、野菜、果実等につきましても加工需要がふえているわけでございますけれども我が国の変化に富んだ多彩な土地条件を利用して、その地域地域に適合した生産を展開していくということで、そういう点で生産の維持を図る、あるいは生産を拡大するという方向で今回の見通しを作成したわけでございます。
  137. 倉田栄喜

    ○倉田委員 いわゆる安全保障という考え方についていろいろな反論が多分あるのだろうと思いますが、一つとして、日本農業は油づけになっているのだから食糧の安全保障ということだけ言っても意味がないのではないか、こういう議論もあるみたいでございます。この点についてはどのようにお考えになっておられますか。
  138. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 石油の確保が我が国農業振興にとって必要であるということは言うをまたないわけでございますけれども、しかしながら、食糧自身は人間の生存にとって不可欠な物資であり、ほかの物資とは基本的に異なる性格を持っているのではないかというふうに認識しております。現在、石油の全消費量のうち農林業で使用しているものは五%程度でございます。このような中で、万一仮に石油の輸入量が減少していった場合でも、これは手前勝手かもわかりませんけれども国民の合意を得つつ石油の農業への使用の確保を図る一方、また石油を極力節約するような農法への転換等の対策も考えていく必要があろうかと思います。そういうようなことで、国内資源の有効利用を図ることによって食糧供給の安定を図っていきたいということで、食糧自身は、石油が途絶えれば同じじゃないかという議論もあるわけでございますけれども、それは極論かと思いますけれども、やはり何にも増して国民生活にとって不可欠な物資だという認識のもとに行政を進めていきたいというふうに考えております。
  139. 倉田栄喜

    ○倉田委員 食糧の安全保障を主張するその一方で、我が国のカロリー自給率というのは四九%と非常に低い。このような事情に対して各国はどのように理解というのか、反応をしているわけでございましょうか。
  140. 川合淳二

    川合政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、ウルグアイ・ラウンドにおきまして安全保障の立場から主張を行っているわけでございますが、これに対しまして、特に輸出国の方を含めましても、食糧安全保障という考え方については、この重要性については理解を示していると考えております。しかしながら、安全保障と自給との関係につきましては、先ほども御説明いたしましたように、我が国は基礎的食糧について所要の国内生産水準を維持するため必要である、必要欠くべからざるものであるという主張をしているわけでございますが、これに対しまして、アメリカあるいはケアンズ・グループと申します輸出国グループ側からは、食糧の安全保障と自給とは異なる考え方、概念ではないか、食糧安全保障というのは備蓄とか輸出規制の撤廃あるいは安定的輸入の確保などによって達成できるのではないかという反論が出されております。しかしながら我が国のような輸入国と申しますか、かなりの食糧を輸入している国にとりましては、安全保障というものは国内生産の所要の維持が必要であるという主張をしているわけでございます。いずれにしても、こうした立場でさらに精力的に取り組んでまいりたいと考えております。
  141. 倉田栄喜

    ○倉田委員 現在は食糧というのは過剰ぎみというわけでいわゆる自由化の問題になっているわけでございましょうけれども、国際的な穀物の長期の見通しという観点からいくならば、アメリカにおいては、砂漠化であるとか地下水の激減であるとか、化学肥料の過剰投与によって非常に地力が減退をしているというふうにも報道されている事実があるわけでございます。このような観点から考えるならば、現在の食糧の過剰事態というのは決して長く続かないみたいにも思えるわけでございますけれども、この点における見通しは農水省はどのようにお考えでございましょうか。
  142. 川合淳二

    川合政府委員 御承知のように、短期的には、八〇年代に入りましてウルグアイ・ラウンド交渉背景となりましたような大幅な過剰基調で推移してきたわけでございますが、八八年に至りまして北米を中心とした干ばつなどがありまして、引き締まりの方向に転じました。八九年、九〇年の年度につきましては、その後世界全体で、アメリカはかなりのウエートを占めるわけでございますが、天候が比較的順調であったというようなことによりまして、生産も八八年に比べますと増加しておりまして、今後の見通しも増加が見込まれているわけでございます。ただ期末在庫につきましては、需要が引き続き堅調というようなこともありまして、過剰のときに比べるとかなり低い水準にあるというような傾向にございます。  中長期的に考えますと、今お話がございましたように、開発途上国を中心とする人口の増加あるいは畜産物消費の増加に伴います飼料穀物需要の増大、あるいは開発可能地の減少、それから異常気象とか砂漠化の進行というような不安定な要素がありますので、かなり不透明であり、先行きにつきましては不安定な状況ではないかというような見通しを持っております。
  143. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今安全保障の観点からお伺いをしたわけでございますけれども、次に食糧の安全性ということについてお伺いをさせていただきたいと思います。  問題になっている米の自由化ということに対しても各種の調査がなされておるようでございますけれども、消費者サイドの主婦の方々からも、安全性という観点から考えて非常に不安がある、こういう結果が出ているような調査もあるみたいでございます。また、これは何回も新聞等々で報道されておりますけれども、淡路島のモンキーセンター、過去十二年間の奇形児出生率は三〇%にも上がっている。この原因が何かということに関しては、因果関係が明らかでないということではありましょうけれども、学者の中には、まきえとして継続的に使われている輸入飼料、その輸入飼料の食べ物に付着している有機燐剤が奇形発生の元凶ではないか、こういう指摘もあるわけでございます。実際に、輸入穀物のかわりに国産の穀物を与えているところは奇形児発生率が少ないのでございます。  そこで、輸入食糧の安全性という観点からまずお伺いをいたします。対米輸入食糧、現在、小麦、大豆等入っているわけでありますけれども、この大部分、コクゾウムシやカビなどの病虫害対策として積み出し港で多量の有機燐系防虫剤、こういうものが使用されているのではないかと思いますが、この点について農水省、あるいはこれは厚生省にもお伺いできればと思うのですが、調査というのはされておられるわけでございましょうか、あるいは資料をお持ちでございましょうか。
  144. 松山光治

    ○松山政府委員 輸入食糧の安全性の問題自体につきましては、食品衛生行政立場からまずは厚生省の方で御担当いただくという形になっておるわけでございますが、今お尋ねの点につきましてとりあえず私の方からお答え申し上げたいと思います。  農薬を使用する場合に安全性という点について十分配慮しなければいかぬ、これは各国共通関心事であろうと思いますし、また近年そういう関心が非常に高まっておるということを私ども十分認識をいたしておるわけでございます。他方、国によりまして気象条件が違う、あるいは収穫いたしました農作物の取り扱いが、例えば、輸出国輸出ということになるわけでありますし輸入国では自給というようなことになりますからその違いもあるといったようなことで、農薬の使用状態はそれぞれ違っておるわけでございますが、私どもの方は農薬取締法という法律を持っておりますけれども、そういった各国それぞれの法制度に基づきまして所要の規制を行い、安全性の確保を図っておるというのがまず一般的な状態でございます。  お尋ねのマラソンでございますが、これは御案内のように有機燐系の殺虫剤でございます。我が国の使用は農薬取締法によりまして、米麦のウンカ類でございますとか野菜、果実のハダニだとかアブラムシ類等々といったようなものに対します殺虫剤といたしまして、立毛中の使用を登録によって認めておる、こういうことでございますけれども、今お尋ねのございましたアメリカにおける取り扱いといたしましては、立毛中だけではございませんで、収穫した後のポストハーベスト用としての使用が認められておる、穀類に対します主要なポストハーベスト農薬の一つになっておる、このように承知をいたしておるわけでございます。  使用の仕方といたしましては、一般的には乳剤を希釈いたしましてそれを使うという形でございますけれども、いわば使用基準が決められております。貯蔵庫に入れる前、あるいは貯蔵庫に入れる途中、貯蔵中のもの、そういう具体的なケースに応じまして具体的な使用方法が定められており、それに従った使用を行うような指導が行われておると承知をいたしておるわけでございます。例といたしまして、保管中の害虫防除のための使い方として明定しておりますのは、有効成分五七%の乳剤を十六倍から三十二倍ぐらいに希釈いたしましたものを約四リットルから八リットル、約九十三平米の穀物の表面に均一になるように噴霧する、こういう形で使うのだといったようなことが登録の中に記載されておる、こういうふうに承知いたしておるわけでございます。
  145. 内山壽紀

    ○内山説明員 米国とかオーストラリア等の諸外国におきましては農産物の貯蔵、輸送中の効果を目的といたしましてポストハーベスト農薬の使用が認められてございまして、米国等ではそれに使用するポストハーベスト農薬についての残留基準が設定されている状況にございます。我が国では、こういうものにつきましては安全性確保の観点から、平成元年度よりポストハーベスト農薬対策といたしまして輸入農産物における残留実態調査等を進めておりまして、輸入農産物のポストハーベスト残留基準を順次整備していきたいと考えております。したがいまして、諸外国におけるポストハーベスト農薬を含めました使用実態等につきましては、農林水産省等とも緊密な連携をとりながら情報収集に努めてまいりたい、そういうふうに考えております。
  146. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今積み出し港の方からポストハーベスト用の農薬の使用の観点をお伺いいたしましたけれども日本に入ってくる際のいわゆる水際と申しましょうか、その検疫体制についてお伺いをしたいと思います。  まずは、穀物あるいは動植物について、薫蒸といいますか、その作業はどのようになっておるわけでございましょうか。
  147. 松山光治

    ○松山政府委員 まず私の方から、穀類その他の植物の検疫について御説明申し上げたいと思います。  植物防疫法という法律に基づきまして、海外からの病害虫の侵入なり蔓延を防止するということで、輸入されます穀類なり豆類、果実等々いろいろあるわけでございますが、これについていわゆる植物検疫を実施いたしておるわけでございます。その検査の結果病害虫が間々発見されるわけでございますが、その場合の処置といたしましては、一つは消毒をする、もう一つは返送するあるいは港で焼いてしまうといったような対応をしておるところでございます。  お尋ねの消毒の問題でございますが、穀類等につきましては臭化メチルと燐化水素、それから青果物につきましては青酸ガスを主に使用するという形での薫蒸をいたしております。これらの薬剤はいずれも農薬取締法に基づきまして登録されたものでございます。使用に当たりましては、農薬の定められた使用方法あるいは国際的な残留基準といったようなものを勘案いたしまして決めました消毒方法の基準に従いまして、専門的な知識なり技能を有しております資格者が使用するということで厳しい指導を行いますとともに、植物検疫官が消毒の現場に立ち会いました上で適正に行われるということを確認いたしておるわけでございます。  なお、今申し上げました我が国で今使っております薬剤は、いずれもガス体の形で使用することにいたしておりまして、揮発性が非常に高い、短時間のうちに消失するものでございまして、そういう意味でも安全性の確保には十分な配慮を払っておるつもりでございます。
  148. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 動物検疫について御説明いたしますと、農林水産省の動物検疫所では、海外からの家畜の伝染性疾病の侵入を防止するために、特定の動物と畜産物につきまして厳格な輸入検査を実施しているということでございます。  動物につきましては一定の期間係留してそれを見るということでございますが、輸入検査で不合格となった動物につきましては、動物検疫所内で殺処分後焼却するか、あるいは輸出国へ返送しているということにいたしております。また畜産物につきましても、検査不合格のものにつきましては、同様に焼却処分をするか、また輸出国へ返送するということによりまして防疫上の万全を期しているということでございます。
  149. 倉田栄喜

    ○倉田委員 いわゆる食品安全検査の観点から、厚生省の方としてはいかがでございましょう。
  150. 難波江

    ○難波説明員 お答え申し上げます。  ポストハーベストにつきましては、先ほど食品化学課長から御答弁申し上げましたように、現在残留実態調査を進めておりまして、漸次残留基準を設定してまいる予定になっておりますので、それを受けまして、輸入の時点におきましては、検疫所におります食品衛生監視員によりまして随時収去する等、食品衛生法に基づく検査を強化し、基準を超えるもの等については、積み戻し、廃棄等の処置を講じてまいりたいと考えておるところでございます。
  151. 倉田栄喜

    ○倉田委員 検疫の監視体制でございますけれども、植物防疫所は植物に関して、動物検疫所は動物に関して、これは農林省で担当しておられる、あるいは食品一般に関しては検疫所、これは厚生省で担当しておられる、こういうふうに理解をしておるわけでございますが、この監視体制の人員の問題でございますけれども、それぞれ現在どのような人員構成になっておるのか。農作物の輸入自由化が非常に言われる中で、その体制で果たして十分なのかどうか。消費者の方々は波打ち際で使われる消毒そのものについても、あるいは体制そのものについても非常に不安をお持ちなわけでございますので、その点をひとつお答え願えればと思います。
  152. 難波江

    ○難波説明員 輸入食品の監視業務につきましては、現在二十一の検疫所におきまして八十三名の食品衛生監視員が食品衛生法に基づく監視に携わっておるところでございます。食品衛生法に違反するものにつきましては、先ほども申し上げましたように、廃棄、積み戻し等の処分を行うなど輸入食品の安全確保に努めておるところでございます。また先生指摘のように、近年輸入食品の増加に対応し、従来より検疫所における監視員の増員に加えまして機器の整備等、監視体制の充実強化を図ってきておるところでございますが、平成二年度予算案におきましても食品衛生監視員の十名の増員等を予定しておりまして、今後とも輸入食品の監視体制の充実に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  153. 松山光治

    ○松山政府委員 植物検疫の実施体制でございますが、全国の主要な港、空港に植物防疫所を設置してございます。その数につきましては、五つの本所、十四の支所、七十九の出張所ということに相なっておるわけでございます。今御指摘にございましたように年々輸入量がふえてまいっておるという状況がございます。これに的確に対応していくことが必要だ、こういう観点で、厳しい行財政事情ではございますけれども年々植物防疫官の増員を図っておるわけでございまして、六十年は六百二十人の植物防疫官で対応しておりましたけれども、平成二年度の予算では六百八十五人までの増員をお願いしている。大体年々十数人の増員をしてきておるところでございます。引き続き体制の整備に努めていきたいというふうに思っております。
  154. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 私どもも一本所、五支所、それから必要なところで港湾、空港等に出張所を設けまして動物検疫体制の整備を図っておるところでございますが、検査に当たる家畜防疫官の定員は、昭和六十年度の百五十二名から平成元年度は百九十三名に定員増を図っております。また、平成二年度予算案におきましても十四名の定員増を予定いたしておりまして、検疫体制の整備に努めてまいりたいというふうに考えております。
  155. 倉田栄喜

    ○倉田委員 食糧はともかく命と安全にかかわることでございますので、この監視体制の充実強化をぜひとも図っていただくよう御要望申し上げておきたいと思います。  そこでさらに食糧の安全性確保という観点から、いわゆる農薬の使用問題についてお伺いをしたいわけでございます。  今日本で生産された農薬が海外で使われて付着した農薬がまた食糧として入ってくる、いわゆる農薬ブーメラン現象、こういうことも指摘されておるわけでございます。これは先ほど厚生省の方で食糧の安全という観点から残留農薬というのはきちっとチェックされているわけでございましょうけれども、農薬そのものについて、農薬の生産、販売、使用については現在大体どのような体制になっているのか、御説明を願えればと思っております。
  156. 松山光治

    ○松山政府委員 農薬につきましては、御案内のように農薬取締法に基づきまして所要の規制を行っておるわけでございますが、実はこれはある程度の歴史があるわけでございます。戦後から昭和四十六年ぐらいまでの間は、使用者の立場で農薬の品質を保全するという観点での法規制、それが中心であったわけでございますが、御案内の昭和四十年代中ごろ公害問題が非常に世の中の関心を集めたわけでございます。そういう状況の中で相当大きな改正をいたしまして、品質の保全だけではなくて、毒性なりのチェックあるいは環境に及ぼす影響というのを相当厳しく行うという形での改正を行った形で今法律ができておるわけでございます。  基本的な仕組みといたしましては、国内で農薬をつくる人あるいは海外から農薬を輸入する人、そういう人は農林水産大臣の登録を取っていただくわけでございます。農林水産大臣に申請いたしまして登録を取った者でなければ販売できない、したがってまた使用ができなくなる、こういう形をとっておるんだというふうにまずはお考えいただきたいと思います。農林水産大臣が登録をするかどうかを判定いたします際には、農薬の見本はもちろんでございますけれども、各項目にわたります各種の試験成績、効果があるかどうかから始まりまして急性毒性、慢性毒性、あるいは特に問題にされます発がん性でございますとか催奇性でございますとかいったような特殊毒性、残留性等々、そういった非常に膨大な資料の提出を求めまして、その安全性を厳しく検査するわけでございます。環境庁長官の方で策定いただきました基準に則して検査を行いまして、それにパスいたしましたもののみを登録農薬として登録する。当然その際には、どういう作物についてどういうやり方で使用するかということをあわせて明らかにいたしまして登録をする、こういうことになるわけでございます。  したがいまして、使用に当たりましては、登録されました農薬を定められた目的に従い、また使用方法に則して使用していくということが基本になるわけでございます。ただ、作物への残留性あるいは土地への残留性、水質汚濁に着目した点といったようなことで特に注意を要する特定のものにつきましては、使用面での罰則をつけた形での規制をいたしておりますけれども、一般的には今申し上げましたような、登録された農薬を適正に使うということを私ども、都道府県を通じて厳しい行政指導を行う形で農薬使用の安全性を確保しておるというのが現在の全体のあらましでございます。
  157. 倉田栄喜

    ○倉田委員 いわゆる登録制度でございますけれども、私は今「日本農薬事情」という本をちょっと読んでおったわけでございますけれども事情があって登録を返上する場合、この本によりますと、「農薬の登録を返上する場合、農薬会社は三年置きの再登録をしないという形で返上することになる。これは長年の慣例である。」そういうふうな記載があるわけでございます。この点についてちょっと確認をしたいと思いますが、そういう慣例みたいなものはあるわけでございましょうか。
  158. 松山光治

    ○松山政府委員 結論から申し上げますと、何かそういう慣例があるというわけではございません。若干御説明させていただきたいと思いますが、農薬の有効登録期間は三年間でございます。その三年間の有効登録期間の間に新しい治験が出てくる、何か問題だというふうな事情が出てまいりまして、今までと同じようなやり方ではまずいという事態が明らかになりました場合には、これは農薬取締法に基づきまして使用方法等を変更させる、あるいは登録を禁止する、販売を禁止するといったようなことが行われるようになってございます。現に過去にこういう形で販売禁止の措置がとられました例としてはBHCでございますとかDDTの例もあるわけでございます。もちろん有効登録期間の間何もなくて終わるという場合が多いわけでございますけれども、そしてまた、再登録の申請がございませんで登録が失効するというケースも間々あるわけでございますが、こういうケースのものは、何か問題が出たというよりも、その後の状況の変化の中で当該農薬の市場競争力が低下したといったような、むしろメーカーの経営上の理由によるものが多いというふうに私どもとして承知をいたしているわけでございます。
  159. 倉田栄喜

    ○倉田委員 やはりこの「日本農薬事情」の中に、農薬のデータの問題について触れておるわけでございますけれども、農水省として農薬の判断に関して、いわゆる自前のデータというのがないのではないか、あるいは少ないのではないか、こういう指摘があるわけでございますが、この点についてはいかがでございますか。
  160. 松山光治

    ○松山政府委員 先ほども申し上げましたように、農薬を登録するかどうかという判断をいたします場合には膨大な試験成績を要求をいたすわけでございます。よく言われることでございますが、一つの農薬を開発するのに十年程度かかるとか、あるいはいろいろな経費を含めまして四十億円程度かかるというようなことがよく言われるわけでございます。そういう試験を、あるいは試験成績をどういう形でやっていくかということになるわけでございますけれども、これは私どもだけの考え方ではございませんで各国共通考え方であるというふうに承知をいたしておるわけでございますけれども、いわば効力なり安全であるといったような証明は、登録の利益を受ける人にしてもらうというのが基本であるわけでございます。そういう意味で、農薬メーカーから登録の申請が出てまいりますときには一定の試験成績の提出を義務づけ、それと見本品を一緒に出させまして、これを私どもの農薬検査所という機関で検査する、こういう仕組みをとっておるわけでございます。  そのように申しますと、メーカーが勝手につくったものではないか、こういう話を恐らくお聞きになるかと思うのですが、そういう心配がございませんように、毒性試験につきましては毒性試験のガイドラインというものを定めておりまして、提出を求めます試験の種類なり数なり試験方法等をきちんと決めております。また、当然のことでございますが、データの信頼性を確保するという観点から、GLP基準というふうに呼んでおりますが、農薬の毒性試験の適正実施に関する基準というのを別途設けまして、国の職員が査察をいたしまして、この基準に適合しておるということを確認しておる試験機関で試験されたデータだけを適格なものとして扱っていく、こういう形でデータの信頼性を確保しておるというところでございます。
  161. 倉田栄喜

    ○倉田委員 少し違う観点になりますけれども、いわゆる外国の企業が農水省の農薬登録を取得する場合でございますけれども、これはどのような手続になっておりましょうか。
  162. 松山光治

    ○松山政府委員 国内の製造業者あるいは輸入業者が登録してまいるときと基本的には同じ仕組みになっておるわけでございます。若干違います点は、外国の企業、外国の法人でございますので、我が国に住所を有している人の中から国内管理人というのを選任してもらいまして、その選任されました国内管理人を通じまして同様な手続をとってもらう、こういう仕組みにしておるわけでございます。
  163. 倉田栄喜

    ○倉田委員 日本で使われている農薬でございますけれども、この農薬の使用というものに関して、全体的に農薬の使用量はどうなっているのか、その経過を含めて御説明をいただけますか。
  164. 松山光治

    ○松山政府委員 とりあえず手元の資料で、農薬の生産出荷量の形で量的な面を御説明したいと思います。  昭和四十年代までは増加傾向で推移をいたしておりました。しかし、五十年代に入ってからは年間六十万トン台で推移をし、六十年以降は毎年減少をしてございます。ちなみに、昭和六十三年度の出荷量は約五十四万トンということに相なっております。
  165. 倉田栄喜

    ○倉田委員 五十四万トンということでございますけれども、なお相当多大な量であろうと思いますし、また、現在の日本農業ということを考えていくと、農薬なしでは成り立っていかない事情というのもあるのだろうというふうに理解をいたします。しかしながら、農薬のいわゆる先ほどの登録の問題も含めまして、さらにはその使用という点になりますと、さまざまな問題が指摘されているようでございます。いわゆる庭先混合といいますかタンクミックス、そういう問題も含めてこの農薬の使用という点に関して、その監視体制というのはどのようになっておるのか、あるいは先ほどポストハーベストの問題を申し上げましたけれども、農薬の使用というのは作物のいつの時点まで許されておるのか、この点を御説明いただければと思います。
  166. 松山光治

    ○松山政府委員 先ほども申し上げましたけれども、農薬使用に伴います安全性の確保を図っていきますためには、登録された農薬を定められた使用方法に従って適正に使用していただくということが基本的に重要な点でございます。そういうことでまず私どもは、厚生省なり都道府県と共催で毎年全国的に農薬危害防止運動というのを展開いたしておりまして、農薬の安全使用の啓発等を進めているわけでございます。日々の段階の問題といたしましては、都道府県段階におきまして農薬の使用についての指導を行うわけでございますが、各県に病害虫防除所というのが設けられております。これを中心にいたしまして、市町村なり農協等の関係機関の協力を得て、適正な使用が行われるようにそういう指導をいたしておるわけでございます。  なお、庭先混合の問題がございました。私ども、庭先混合を行いますとき、ちょっとした不注意で事故にもつながりかねないということもございますから、むしろ混合して使う方が有効に使えるといったような種類のものにつきましては、二種混合、三種混合ということで、そういうものとして登録をとっていただくといったような形をとっておるわけでございますけれども農家の段階でやはりコストの問題その他もございまして混合するというふうな場合もございます。先ほど申し上げましたような指導体制の中で、それに伴う事故の起こらないような適正使用を指導しておるところでありますけれども、また、農協等におきましては、混用適用表といったようなものもつくりまして、適正な使用が行われるような指導が行われておる、このように考えております。
  167. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今申し上げました庭先混合の問題ですね。使用基準の異なる農薬の混合の問題であったり、あるいは航空散布の問題であったり、あるいは同じ農薬であっても長年ずっと使用されておられる農家の方々に対する影響、この観点の問題が一つあると思うのですが、調査によれば、農家の方々の四人に一人はいわゆる健康被害というのを訴えておられる、こういう記事も読んだことがあるわけでございます。そこで、農薬が農家の方々に対してどのような影響を及ぼしているのか、どのような健康被害があるのか、この点について農水省として全国的に調査をされておられるのかどうか、あるいは調査をされようとする計画がないのかどうか、お伺いしたいと思います。
  168. 松山光治

    ○松山政府委員 農薬の適正使用を通じましてそういった事故の発生を防止する、これは基本でございますけれども、ちょっとした不注意で事故が起こるということもあるわけでございます。そういう場合には事故の発生を的確に承知をいたしまして、それへの対応を考えていくということが基本でなければならないというふうに考えております。そういう観点から、昭和四十年代の中ごろから特に通達を発しまして、毎年事故の発生状況についての定期的な報告を都道府県から求めておるわけでございます。そのほか、著しい被害が発生した、あるいは新しい形の事故が起こった、被害が発生したといった場合には、その都度報告を求めまして所要の対応をとるといったような体制をとってございます。  その報告を若干申し上げておきたいと思いますが、中毒なり死亡の事故は年々減少の傾向にあるわけでございますが、ここ数年大体五十件程度で推移をいたしておるところでございます。主な原因といたしましては、マスクでございますとか防護衣を着用しないといったような防護装備の不備、あるいは、保管の状態があまりよくございませんで、間違って飲んでしまったといったような不注意によるものがかなり多うございます。農林水産省といたしましては、こういった実態を踏まえながら、事故が発生しないように、先ほども申しました毎年の農薬危害の防止運動を通じてさらに適正な使用、保管といったようなことの指導の徹底に努めていきたい、このように考えておるところでございます。
  169. 倉田栄喜

    ○倉田委員 農薬につきましては、その使用の問題とともにもう一点、農薬の作物残留の問題もあるわけでございます。この点については、これは厚生省の所管であろうと思いますが、どのように安全性というのは確保されておられるわけでございましょうか。
  170. 内山壽紀

    ○内山説明員 農産物の食品残留につきましては、食品衛生法に基づきまして残留農薬基準というものをつくってございます。そういうものにつきましては、私どもも予算を計上いたしまして、年々そういうものについての整備を図っていくということで今対応しているところでございます。
  171. 松山光治

    ○松山政府委員 残留性の問題は、農薬の登録に際しましても重要なチェックポイントでございまして、農作物への残留性あるいは土壌の残留を通じて農作物に残留する可能性、そういうものについての厳密な試験成績の結果に基づいて適否を判断しておるというふうに申し上げておきたいと思います。  なお、先ほど御質問の中で私ちょっと答弁漏れがあったわけでございますが、使用時期の問題でございますけれども、これは登録の際に農薬の特性に応じまして、あるいはどういう作物に使うかといったような事情に応じまして、どの作物にどういうやり方でいつまで可能だというふうな形の使用方法の規定をしておる、このようにお答えさせていただきたいと思います。
  172. 倉田栄喜

    ○倉田委員 農薬の問題については、使用あるいは検査一切を含めて、安全性の視点から農薬取締法等の見直しを含めてさらに強化をされ、充実をされていく必要がある、これが食の安全という観点から非常に重要なことであろうと考えるわけでございますが、農林大臣は農薬に関して全般的にどのようなお考えでございましょうか。
  173. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  先ほど来、農薬のさまざまな問題につきまして先生からいろいろな御指摘を含めて御質問がございました。御承知だと思いますが、我が国は高温多湿でございまして、病害虫だとか雑草の発生率が非常に多いという気象条件下にありますので、農薬は農業の安定的な発展を図るためには欠かすことができない資材であると考えております。しかし農薬は、今先生の御指摘にもございましたように、使用いかんによっては人畜等に影響を及ぼすというふうなことがございます。このために、ただいま松山局長あるいは厚生省の課長からさまざま御答弁がございましたが、農薬取締法を中心といたしましてこれを厳正に検査し、またその使用に当たっては使用方法を遵守するように厳重に指導をし、チェックをしておるというふうなことでございます。今後、農薬の適正使用を徹底的に行うことを心がけながら、農薬の有用性を活用しつつ、安全性の確保等調和を図ってまいりたい、こういう考え方で進めてまいります。
  174. 倉田栄喜

    ○倉田委員 食糧の安全性という観点から、輸入食糧の問題さらには農薬の問題は、消費される方々にとっては本当に重要な問題でありますし、これからますます不安が出てくる可能性もある問題でございますので、ひとつぜひ積極的に消費者の安全にこたえるという観点から、さらなる監視体制の強化を図っていただきたい、このように要望したいと思います。  続きまして、農家の方々の負債問題でございますけれども農業構造あるいは農業政策の問題の中で多大な負債を抱えて非常に困っておられる方々の問題があるわけでございます。通常は、農業生産が予定どおりやっている場合にはいいわけでございましょうけれども、予定どおりいかないような場合、例えば災害によって被害を受けるような場合がございます。例えば、今阿蘇では降灰で大変な被害を受けておりまして、四月二十日の大爆発では百二十トンもの灰が降ってしまった、こういう問題がございます。私も二十一日現地に行きまして、農家の方々の間をよく見て回ったわけですけれども、大変な不安感を持っておられる。しかも、被害というのは、現実に発生したものではなくて見通しということに関して言えば、例えば昨年はキャベツを四ヘクタール植えたけれども、灰が降り続くから植えなかったり半分にしてしまう、こういうことで農業収入の見通しが大幅に狂ってくることもあるわけでございます。  そこで、災害によって被害を受けた場合の既往借入金の償還対策と、さらにこれは阿蘇の問題でございますけれども、阿蘇の降灰被害に対する防災営農対策事業、大変な関心を持っておられますし、現地の方々は非常に不安感を持っておられるわけでございます。そこで、この実施の見通しについてお聞かせ願えればと思います。
  175. 川合淳二

    川合政府委員 災害時におきます既貸し付けといいますか、借入金の償還条件の緩和につきましてまず御答弁させていただきます。  災害などをこうむりまして、既に借りております制度資金の償還が困難になりますケースにつきましては、ケース・バイ・ケースといいますか、借りておられます農家の経営状況などによりまして幾つかの対応をすることになっております。お尋ねのようなケースでございますと何らかの措置がとられ得ると思います。降灰によります対策につきましては、既に私どもも趣旨の徹底を図りまして関係方面に指示をしておりますので、具体的なケースによりましてはその対策が図られると考えております。
  176. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 阿蘇の降灰被害に対する防災営農対策事業の実施見通しにつきましてお答えさせていただきます。  阿蘇火山の活動につきましては昨年七月以来活発化いたしまして、本年四月二十日までの間に五十回余りにわたりまして噴火があって、周辺地域の農作物への被害が深刻な状況にあるということを聞いております。  先生指摘の防災営農施設整備事業の実施につきましては、まず県知事が関係市町村長とか農業団体の意見を聞いた上で整備計画を作成いたしまして、これを農林水産大臣が承認する、そういうことが要件になっております。現在、熊本県におきまして、被害状況を踏まえて防災営農施設整備計画の作成の作業を行っているというふうに聞いております。私どもといたしましては、知事からこの計画の提出があれば、当該地域における被害の状況とか、今後の火山活動の見込みとか、農業経営の動向、それからまた関係者の本事業実施に係る意欲等を総合的に判断いたしまして適切な措置を講じてまいりたいと考えております。
  177. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私が現地へ行きましてお話を伺いましたのは、二十五歳、非常に若手の農家の方々でございました。こういう方々がいわゆる災害によって、せっかく今から農業をしっかりやっていこうという方々がこういうことによって営農意欲をなくしてしまうということは、日本農業にとっても非常に重要な問題、大変な問題であろうかと思いますので、ひとつこういう営農意欲の高い方々をしっかり守っていくという観点からもぜひとも早急な適切な処理をお願いを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  178. 穂積良行

    ○穂積委員長代理 藤田スミ君。
  179. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 けさほどから何遍も質問がありまして重なるところもあると思いますが、よろしくお願いいたします。  まず初めに、米の自由化問題についてお伺いをいたします。  現在のウルグアイ・ラウンドの協議の動向を見ておりますと、言うまでもなくアメリカの非関税障壁の関税化提案が、その試算を発表するということで一つの焦点になっております。アメリカが発表した関税化試算によりますと、日本の米については関税率七〇〇%であるとして、その計算根拠に、国際価格をカリフォルニア産の中粒種の一キログラム二十九・一七セントとして、これに輸送経費を加えた三十一・三四セントを日本の輸入価格と仮定をし、そしてこれと日本の消費者米価二百三十五・六セントとの差額を内外価格差ということで国際価格に対する比率を七〇〇%だ、こういうふうにしているわけです。アメリカがこのような試算を発表したねらいは、日本の米はいかに内外価格差が大きく、そしてそれを関税率にするとこんなに高くなるんだよ、そういうことを国際的に際立たせていこうというねらいがあることは歴然としているわけですが、まず最初に、アメリカのこの関税化試算の問題点について農水省の見解を明らかにしてください。
  180. 川合淳二

    川合政府委員 御指摘のように、アメリカはすべての非関税措置につきまして関税化をするという提案をいたしております。これは関税以外のすべての貿易障壁を内外価格差をもとに関税に置きかえまして、十年間でこの関税をゼロまたはそれに近い水準に逓減するという内容でございます。これにつきましては、我が国といたしましてはガット農業交渉の場におきまして、かねてからこの関税化というものにつきましては、今お話もございましたように農産物の国際価格のとり方、これはまた同時に変動するわけでございますが、それから為替レートなどが変動するというこうした価格に与える影響、それから当然のことながら品質格差の問題、これをどう取り扱うというかなり技術的な面も含まれますけれども、そういう面で問題があるということが一つございます。  それから、私どもが提案しております基礎的食糧、あるいはガットの規定に基づきまして輸入制限品目というものが認められておりますが、こうしたものにつきましては関税化は困難であるということを主張してきております。今後ともこうした立場でやってまいりたいというふうに考えております。
  181. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 輸入数量制限や課徴金といった非関税障壁を、御説明にありますように関税にすべて置きかえて、そして十年間で低水準にするというこのアメリカの提案というのは、私は大変暴論だというふうに思うわけです。したがって、今の御説明にありましたように、ガット十一条二項が適用される品目、基礎的食糧関税化を拒否する、こういうことですが、もう少し具体的にお伺いしますが、そうすれば当然乳産品、でん粉などの非自由化品目については関税化提案に乗るつもりはないというふうに聞いてよろしいでしょうか。
  182. 川合淳二

    川合政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、この関税化の問題につきましては、私が今説明したような内容ではございますが、詳細につきましてはアメリカからも十分説明されておりませんし、それから、これに対しましてある程度関税化についてそういう考え方に乗ってもいいというようなことを言っているECにつきまして、この中身が十分わかってないという状況にございます。そういう状況の中でございますので、私どもの現在数量制限をとっております品目のどれについてどういうふうにという具体的な検討はできないわけでございますので、今私が申しましたように基礎的食糧、それから十一条二項で輸入制限をしているものについては適用することは困難であるという段階にとどまっているわけでございます。
  183. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 ドゼウ農業交渉議長から関税化を受け入れるための条件の提示が求められているそうですが、それについてはそれじゃどうなんですか。
  184. 川合淳二

    川合政府委員 繰り返すようでございますが、今の段階は、先ほど申しましたような関税化についての中身につきまして明確化を図るべく議論がなされている段階でございますので、そういう段階で今御指摘のような議長の要請と申しますか、それについて日本がどうするという段階ではないというふうに考えております。
  185. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 昨年行われましたガット農業交渉に関する国際シンポジウムというのがあるわけです。大臣はもう十分これを読んでいらっしゃると思いますが、まことにうれしくなるような発言ECやその他各国の生産者からされております。この中に、初代EC農業委員長シコ・マンスホルト氏という方が、このウルグアイ・ラウンドにおいてアメリカ関税化提案が討議されていることに対して、「私が最も驚いたのは、交渉が三年もたっているのにそうした提案が依然として真剣に討議されていることである。さらに言えば、その提案の裏にある「貿易世界経済を支配する」という考えに凝り固まった哲学は、非現実的で、それを基盤としたこれ以上の交渉は時間とエネルギーの浪費なのである。」こういうふうに言っておられるわけです。  従来、日本ウルグアイ・ラウンドに対して食糧安保論で対応していましたが、アメリカ関税化提案に対してECが条件つきながら関税化に応じるという構えを見せると日本が孤立するんだということで、マスコミの方も日本は孤立ということを宣伝されております。しかし、もしそういうことで関税化提案に応ずるということになれば、まさに日本政府ガットを隠れみのにして米自由化を進めようとしている、そういうふうにしか言えない、こういうことになるわけであります。したがって、私は、大臣として米輸入自由化阻止のためにどのような具体的な手だてを考えていらっしゃるのか、明らかにしていただきたいわけです。
  186. 川合淳二

    川合政府委員 ガットウルグアイ・ラウンドにおきましては、先ほど来申し上げておりますように、米のような基礎的食糧につきましては特別の国境措置をとるべきであるという主張を私どもは続けております。十一月にはこれを中心とした提案を行っているわけでございまして、この提案をもとに最大限の努力を続けていくということでございます。
  187. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 先ほどからも言われていますが、この三十年間に日本食糧自給率は七九%から四九%に落ちているんです。世界の二千万人以上の人口の国々の中でもこの自給率はまさに最低であります。だから政府自給率を高めるのだ、こういうことで十年間に一%というふうな数字を示されているわけですが、イギリスや西ドイツは二十年前には日本より自給率は低かったんです。ところが、輸入規制等、価格保証を中心にして十五年間にイギリスは七七%、西ドイツは九三%、そこまで高めたわけです。  大臣、米というのは、私たち国民のかけがえのない主食であるばかりか、日本の文化ですよ。そして国土環境保全機能を持っています。自然のダムの機能を果たし、洪水を防止し、そして地表面及び地下で水を貯蔵し、これを浄化し、また、表土の侵食だとか流出を防止し、自然の動植物を保全し、さらに、美しい田園景観を私たちに提供して環境保全の上でかけがえのない役割を果たしているんです。何よりも、私この間、物を読んでいてびっくりしたんですが、ジャガイモが主食だ、主食だとヨーロッパで言われていますけれども、十八世紀に入ってから定着したそうです。日本では紀元前、二〇〇〇年からもう米というものがあらわれていて、そして、実に営々と米の歴史、文化を形成してきたわけです。だから、今米の輸入自由化をもしするということになれば、それは日本の歴史に取り返しのつかないことを、汚点を残してしまう。そういう点で、どんなことがあっても米の輸入自由化は阻止しなければならない。しかも、全量アメリカから輸入してもしょせん三十三億ドルでしょう。だから対米黒字の七%でしょう。トヨタ一社の対米輸出のたった四割にしか当たりません。だから、そのためには最も大きな輸入自由化圧力になっているウルグアイ・ラウンドでの米問題の協議を除外するということが最も確実な道だということを私たちはかねてから主張してまいりましたが、もう一度大臣のお考えをよく聞かせてください。
  188. 川合淳二

    川合政府委員 先ほども御答弁を申し上げましたように、我が国といたしましては、米のような基礎的食糧につきましては食糧安全保障の配慮の観点から国境調整措置を講じ得るものとするという提案を行っております。これは今お話しのような趣旨というふうに私ども考えております。
  189. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 あなた方はそうおっしゃいますが、アメリカは、先ほどもお話ありましたが、ガットの十一条二項(a)ゆを削除する、つまり輸出規制の撤廃ということを言い出しているでしょう。そうすると、食糧の安全保障ということを口実にした輸入制限というのは実にもろい。もろいと思われませんか。  私は、この問題には二つあると思うのです。一つは、自分の国の国民に供給できないようなその国の事情が出てきたとき、不作とかそういう事情が出てきたときに、それでもあえて外国、輸出相手国に対して、つまりお得意さんだからということで供給するかというと、そんなことはあり得ないわけです。自分の国で消費した残りを輸出に回すという農産物貿易性格からしても、それは当然のことなんです。だから、食糧の安全保障論というのは、よりどころにされていてもそれは非常にもろいものがあるというふうに私は考えるわけです。その点いかがですか、大臣大臣に聞いているのです。
  190. 川合淳二

    川合政府委員 私の御説明している点につきましてもう一度御説明させていただきたいと思います。  御承知のように、中間見直しの時点で我が国の主張が入れられまして、「交渉においては、食糧安全保障のような貿易政策以外の各国関心事項に取り組むことを目的とする提案に考慮が払われる」という合意がなされております。我が国といたしましてはこの合意に基づきまして、先ほど申しました食糧安全保障の観点から、我が国の米のような基礎的食糧につきましては、所要の国内生産水準を維持するために必要な国境調整措置を講じ得るものという提案を行っているわけでございます。
  191. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 ならば答えてください。  ヤイター米農務長官は、ウルグアイ・ラウンド交渉の成功のためにはすべての国が農業の保護政策を見直す必要があり、輸入を全面的に禁止している米問題はその最たるものだ、こういうことをこの間五月十一日のNHKのニュースインタビューで述べておられるわけです。そして、このヤイター米農務長官はこれまでもウルグアイ・ラウンドの成功は米市場の開放が不可欠だ、あるいはヒルズ通商代表も、新ラウンドの成功のかぎは農業問題だ、こういうふうに何度も言っておられるでしょう。そして一方、海部総理は三月の首脳会談で、今年末を期限とする交渉の成功をブッシュ大統領と誓い合っておられるわけです。そしてこの間の、いつどれだけ開放するかの段階だということで、大臣は、話にならない、内政干渉だと大変怒りを示され、反発をされました。それに対して、ヤイター農務長官はまたこう言ってきているのです。「私が日本ウルグアイ・ラウンドを通じコメ市場を自由化するだろうと述べたことについて、あなたは内政干渉として非難した。」「この発言は大変迷惑だ。」そして、「日本はコメ市場を絶対に自由化しないと言明しているが、これは日本政府がラウンドを通じ行ってきた約束に反する。」こういうことを言っておられるわけです。そう言ってヤイター農務長官は怒っているわけです。  これでもういよいよ今度OECDの閣僚会議に行ったときに、それならばこの問題で話し合いをしたい、こういうことですが、先ほどから大臣は、まだヤイター農務長官の書簡なるものを見ていないから物が言えないというお話でしたけれども国民はわからないのです。国民は全くわかりませんよ。ウルグアイ・ラウンドの成功を日本政府も言っている。アメリカも言っている。アメリカは、成功ということは米市場開放が不可欠だと言っている。日本政府の方は、食糧安全保障だということで言っている。そしてこういう問題が起こってくると、いよいよわからないわけです。だから私は、今大臣にもう一度、このヤイター農務長官が言っておられる「日本はコメ市場を絶対に自由化しないと言明しているが、これは日本政府がラウンドを通じ行ってきた約束に反する」、約束に反するのかどうか、それだけ聞かせてください。
  192. 山本富雄

    山本国務大臣 私は、先ほど来先生の御質問をよく聞いておりまして、互いに同じ気持ちなんだなという気持ちを持ったわけでございます。  ただ、先生、事実と違いますことが幾つかございまして、その最たるものは、今先生がヤイターの手紙の問題をお話しになりましたが、ヤイターの手紙は私の手元には来ておらないのです。まだ見ておらないのです。ですから、見てないものについて私がコメントするわけにはいかないのです。それは国民はわかりませんよ、こういうお話ですので、それは何としてもわかっていただくようにこれからしていこうと思っておりますけれども、私どものスタンスはきちっとしておりまして、先ほど来ずっと繰り返し答弁を局長からもしておりますし、私からも前の先生方の質疑に対して申し上げておりますけれども、昨年四月の中間合意において我が国の主張により食糧安全保障のような非貿易関心事にも考慮が払われることが盛り込まれたことを受けまして、昨年十一月には、基礎的食糧について必要な国境措置を講じ得ることを内容とする日本提案を行った。これは日本だけの提案ではなくて、その他各国がみんな提案をした。そしてその提案について幾度か確認の作業が委員会で行われ、あるいはグループでも行われたということで今日まで推移しておりまして今のところ、その中で何事も決まってはおらないということでございます。しかも、米の貿易問題につきましては、二国間の協議の対象とせず、各国の抱える困難な農業問題とともにウルグアイ・ラウンドの場で討議するということをお互いが確認し合っておりまして、この点はアメリカ側も先刻御承知だということでございます。  以上でございます。
  193. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 二国間の協議という問題についても、アンダーソン海外農務局長が、農業交渉の成り行きにかかわらずガット日本の米問題を提訴すればアメリカは勝てると思う、こういうことで、これも一つの今アメリカからかけられているいわばおどしだというふうに思うわけです。このアメリカの言うウルグアイ・ラウンドの成功と米の輸入自由化阻止というのは全く二律背反、こういうふうに言えませんか。ガット協議から米問題を外さないということ自身が今輸入自由化に行っている、そういう道筋をたどっているというふうに思われませんか。日本側関係者の中には、残された農業外交のテーマは首相が政治生命をかけて米市場開放を決断するまでの時間稼ぎだ、そんなふうに言い切る者もいるということも大臣は御承知だというふうに思うのです。だからヤイター農務長官も、日本ウルグアイ・ラウンドアメリカ関税化提案に乗るというマスコミの報道を受けて、それは違ったと思いますよ、違ったと思いますが、そういう報道を受けて、米は市場開放論議ではなく、いつどれだけ開放するかの段階に来ている、そういうふうに内政干渉されたのではありませんか。だから、ガット協議から米を外すということはおかしなことでも何でもないわけです。それは当たり前のことなんです。米の自由化を要求しているアメリカ自身が、米国関税法第三百三十七条にかかわるパネルで、そのパネル報告の採択を七回にわたってブロックしたことは皆さんもよく御承知だと思うのです。そういうことを十分御承知だと思います。そういうことはちゃんとやられているわけです。  だから、こういう厳しい情勢の中だからこそ、日本の米を本当に守る、この歴史と伝統を守るということになれば、ウルグアイ・ラウンドの協議から米を外すという断固とした姿勢で当たることが最も確かな道筋だというふうに考えるわけです。いかがでしょうか。
  194. 川合淳二

    川合政府委員 ウルグアイ・ラウンドにつきましては先ほど大臣からるる御説明がございましたように、現在の段階は、昨年末までに我が国を含みます主要国が提案を出し合い、本年初めからそれぞれの提案についてその明確化の作業というものに入っておるわけでございます。五月も二度、昨日まで二度目が行われておりました。現時点におきましては、国境措置あるいは国内支持政策あるいは輸出補助金、それから私どもが主張しております食糧安全保障等の非貿易的な関心事項などにつきまして、各国の見解が収れんされるという段階には至っていないということは先ほど申し上げたとおりでございます。それぞれ各国が自分の主張を行っておるという段階でございます。  したがいまして、アメリカアメリカの提案に従いましてすべての非関税措置関税化するという主張を行っておるわけでございますし、これに対しまして我が国といたしましては、我が国の主張でございます基礎的食糧国境措置の問題を主張しておるという段階になっておるわけでございます。
  195. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そういう経緯を先ほどから何遍も聞いておりますから、私が言っていることにまともに答えていらっしゃらないわけです。  大臣は覚えていらっしゃると思いますが、グレープフルーツの自由化が決定したのは七一年の参議院選挙の三日後でした。私はそのとき議員ではありませんでしたから、だから八八年四月のときのことを思い出しますが、牛肉・オレンジの輸入自由化のときは、ちょうど四月に佐賀の参議院の補欠選挙がありました。そのとき、当時の竹下総理は、農民の心を心としてという有名なすてきなメッセージを送られたわけです。農民の心を心として、だから輸入自由化を絶対に阻止するのだ、そういうふうに大方の人は読んだでしょう。そしてここの論議もそういう感じでした。何を聞いたってちっともまともに答えられない。そして、専ら一生懸命頑張るのだ、まるでハムレットの顔を見ているような思いをいたしました。しかし、佐賀の補欠選挙が四月に終わって、その年の六月に輸入自由化が決定されたのです。だから、今国民は非常に心配しているのです。  そして、ガットというのはあくまでも裁判所ではありません。それぞれの国がそれぞれの考え方を表明し、その考え方が合意されなければ、日本考え方と違う裁定が下されたとしてもガット裁定に従う義務はない。それはアメリカ農業白書の中にも、ガットはフォーラムとして設立されたものであって貿易に関する法を解釈または強制する法廷ではない、農産物貿易ガットで特別に扱われているが、これは加盟国において農産物が特別扱いを受けているためであると言って、決して法廷ではないのだ。そしてヤイターさん自身が、主権国家として日本ガット裁定の実施を拒否することができるのだ、こういうことも言っておられるわけであります。  したがって、今二千年の米文化を守るかどうかの瀬戸際に来ているとき、米の自由化を阻止するためには米問題をガットの協議から排除する、そしてさらに、乳製品やでん粉などの非自由化品目についても守る必要があると私は思いますが、大臣にもう一度その基本的な姿勢を明らかに示していただきたいと思います。
  196. 山本富雄

    山本国務大臣 重ねての御質問でございますが、牛肉・かんきつのお話が出ましたけれども、あのとき私もそばにいてよく事情を承知しておったわけでございますけれども、また農水省へ来ましてからあの当時のことをずっと聞いたりあるいは読んだりしてみました。あの非常に難しい状態の中で、どういう言葉が適当でしょうか、血を吐く思いとでも言うのでしょうか、そういうことで外交交渉農業交渉を続けてきた当時の農林大臣あるいは先輩が非常に苦労したのだな、しかしなかなか国民の皆様、関係者の皆様にはそのことの苦労が十二分にわかっていただけなかったのじゃないかというふうな感じもまたしきりにするわけでございます。しかし当時のことは当時のことで、これは一つの大きな経験だというふうに私は受けとめておりますが、現在ただいまの海部内閣の農林水産大臣山本富雄でございますから、私が本問題の責任者であることに間違いがない。そういう自覚の中で日夜この問題について、当然のことですけれども頭を一瞬たりとも離れたことはない。とにかく今先生がおっしゃったような気持ちと同じ気持ちで、そのときそのときの方法はいろいろあると思います、しかし気持ちはちっとも変わりませんから、その気持ちでとにかく命がけで対応してまいりたい。ウルグアイ・ラウンド交渉はこれからが本番だというふうに心得ております。
  197. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 それでは次に、OECDの報告書の二つの問題についてお伺いします。  一九八六年の農業バッシングに匹敵する攻撃が今OECDからなされているというふうに思うわけです。その一つは、「農業補助政策の効果」というあの報告書ですが、日本農業補助の撤廃と米を含む農産物の輸入自由化を行えば、農業生産は二四・二%減少するものの、消費者物価は一・九%下がり、実質家計所得は一・一%ふえるという、これも驚くべき暴論を展開しているわけであります。しかし、その試算というのは、一九八〇年、八一年の産業連関表を使って、農業補助がないときの八六年の数字と農業補助がある八〇年の数字を比較するという点ではまさに初歩的なミスじゃないかと思うわけでありますが、本来であれば八六年の補助がないときの数字と八六年の補助があるときの数字を比較をする、そうすれば、何のことはない、マイナスということになるわけです。しかしそれでは困るということで、あえて恣意的な計算をされたのじゃないか。いずれにしても、このリポートで消費者の不満をあふる、そういうねらいが感じられます。国民の利益を無視して農業生産者を守る国、そういうことをイメージアップしたいんでしょうか。私は農水省に、この報告書の性格と問題点についてお伺いをしたいと思います。
  198. 川合淳二

    川合政府委員 今御指摘の論文は、OECDの「エコノミックスタディーズ」という雑誌に載りました論文だろうと思います。「OECD諸国における農業政策が経済に及ぼす影響、シミュレーション結果」というものだろうと思います。これは私どもの承知しているところでは、研究者五人の共同論文ということでございまして、この見解といいますか論文は、書いた筆者自身のものでございますので、OECD事務局の見解をまとめたものではないというふうに承知しております。当然のことながら、加盟国の承認というようなものも得たものではございません。新聞報道などに出たのはこの論文に依拠しているというふうに考えております。  今もお話がございましたように、かなり問題点がある論文でございます。PSEの算定の仕方につきましてかなり無理のあることがございますし、先ほどもちょっと申しました為替の変動とか豊凶による国際価格の暴落などの問題で大きく変わるというようなこともあります。PSEにつきましていろいろとまだ技術的な問題があるわけでございますが、このとり方などについて問題があると思っております。それからモデル自身につきましても、食糧の安定供給の確保とか国土・自然環境の保全、あるいは地域社会の均衡ある発展といういわゆる非貿易的事項と申しますか、そういう外部経済効果というようなことは全く考慮しておりませんし、輸入必要量はいつでも調達できるというような前提が置かれているようでございます。いずれにいたしましても、この論文はそういう個人の研究者の論文でございますので、OEC自身の見解ということではないというふうに私ども理解しております。
  199. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 もう一つECDからということで、今のお話では正式じゃないのですが、「農業政策と消費者の利益」という、農業政策が消費者と国家予算に及ぼす負担は受け入れがたい水準になっており、改革が緊急課題だ、こういうことで、各国の予算投資措置に伴う納税者負担と国内価格に反映する関税措置に伴う消費者の負担額ということを明らかにしているわけです。これも今御指摘にあったように多くの問題点があるというふうに思います。  しかしながら、こういうふうなものがたとえ個人のものであってもマスコミを通じて報道されて、そして国民に、農業保護は間違いだ、あるいは日本農産物は非常に高い、そういうような誤った認識を生じさせるねらいは軽視することはできない。今のこの情勢の中ではなおさら軽視することはできないわけです。したがって、私は、農水省がこういう問題に対してどうPRしていくつもりなのか、もっとPRすればいいのに、どこを探してもなかなか反論の記事が見当たらないというような、隅っこにやられている、そういう状態ですから、それはやはりどうPRするのか明らかにしていただきたいわけです。
  200. 川合淳二

    川合政府委員 OECDに関しまして、農業問題は中心は農業委員会でございますけれども、例えば貿易委員会、経済政策委員会あるいは経済開発検討委員会、それから先ほどお話がありました消費者政策委員会、その他多岐にわたる委員会で取り上げられることがあるわけでございます。このOECDの機関と申しますか組織の中での討議につきましては、私どもはその都度この会議に参画する機会を持ちまして、農業への理解を深めるべく積極的に議論に参加するというようなことでやってきているわけでございます。  先ほど御指摘の論文は私的な論文ということでございます。これについてどう対応していくかというのは、この種の論文はいろいろな形で出されるわけでございまして、その都度逐一反論をしていくということはなかなか難しいわけでございますが、影響力のあるような形で取り上げられたものについてはそれなりの反論をしていく、今までもやってまいりましたし、今後もしていかなければならないというふうに考えております。
  201. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 ウルグアイ・ラウンド我が国が追い込まれているときに、日本国内で、それも大蔵大臣が足を引っ張られるというような事態が起こっています。それは五月八日に橋本大蔵大臣が記者会見で、農業補助金の扱いによっては平成三年度の農林関係予算の編成に大きな横風を受ける、農業補助金と農林関係の公共投資に関連する予算については慎重な姿勢で臨むとして、いわば農業予算の大幅削減を示唆されたわけであります。二十一世紀の農業の展望を発表され、そしてまた、この委員会の決議だとか本会議の決議において何度となく農業に対して政府がさまざまな施策を行うよう我々も求めてきました。したがって、大蔵大臣の記者会見はこういうものを真っ向から否定して、農業予算を大幅に削減しようというようなものでありまして、私は絶対に承知することはできないというふうに思いますが、大臣はこの発言を容認するおつもりですか。
  202. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 先ほど来お答えしておりますように、ガットウルグアイ・ラウンド農業交渉におきます国内支持政策の扱いにつきましては、交渉事項の一つとして今話し合いが行われているところでありまして、主要国の主張には依然大きな隔たりがあり、今後どういうような合意がなされるかについて今の段階で見通しを述べることができるような状況にはなっておりません。いずれにしましても我が国としましては、農業補助金を含む各種の農業政策は、単に農業振興のみならず、国土環境保全、地域社会の維持など、農業の持つ多面的な政策要請に応じて実施するものでありまして、このような考え方を踏まえて今、交渉に臨むことにしているわけでございます。まだそういう方向が出た段階ではないわけでございまして、予算維持というのは、意見を述べる話には今の段階ではないというふうに理解しております。
  203. 山本富雄

    山本国務大臣 今官房長から前提を申し上げたのでございますけれども、私に直接大蔵大臣から話があったわけじゃないのです。私も新聞で見た程度なんです。何かおっしゃるかなと思ったら何もおっしゃらない。またこれは御承知のとおりなんですけれども、今平成二年度の予算案の審議をお願いしておるという最中でございます。ですから平成二年度の方に一生懸命でございまして、平成三年度の予算のことはまたこれからだというふうに私は心得ております。これからシーリングが始まるわけでございます。ですから、これからいろいろな国際的な横風が吹いた場合に云々というふうなことのようですけれども、そういうこともあるかもしれません。しかしいずれにいたしましても、私どもの従来の政策を変えずに、しかも先生が今おっしゃるように、農業者がこのことで途端に不利になるようなことは絶対あってはならないというふうなつもりで平成三年度に立ち向かっていこう、こう思っております。いずれにいたしましても今平成二年度予算案をぜひよろしくお願いをいたしたい、こういうことで参議院の方へお願いしている最中でございます。
  204. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 ウルグアイ・ラウンド農業交渉がある中でこういう大蔵大臣発言というのは、本当に生産者に暗い影をますます広げていくという点でも許せないというふうに私は思うわけであります。  生産者米価と良質米奨励金の扱いという問題は先ほどからも御答弁がありましたが、ここにもやはり暗い影が広がっているとは言えないか。それはきょうの麦価の報道を見てもそうでありますが、先ほどから生産者米価については、まだ各般の論議を踏まえて検討していて、算定方式は事務当局でも検討中だ、こういう御答弁でありましたので、あえて生産者米価をこれからどうするんだということをお尋ねしようとは思いませんが、一点だけ聞かせていただきたいのは、農水省は生産者米価の算定方式について、生産費を一・五ヘクタール以上の農家に絞って計算する方式を昨年導入しようとしました。しかし農民から大変強い反対を受けて見送らざるを得ませんでした。つまり、とても実行できるようなものじゃなかったという点で、一体どういうふうにこれを反省していらっしゃるのかということを一点お聞かせをいただきたい。  もう一つは良質米奨励金の問題なんです。これはことしの衆議院選挙を前にして、選挙対策として、自民党離れを防ぐために数々の予算措置がとられました。この良質米奨励金についても、概算段階で削減するんだ、こう宣伝されておりましたが、選挙が近づくと前年並みの予算が取れたということで農民に大宣伝をされました。そして選挙が終わるとその見直しだと、先ほどの御答弁でもやはり見直しということを言っておられるように思うわけですが、これは全く農民をだましているとしか言いようがないじゃないか、私はそういうふうに考えるわけです。全国の農民が自主流通米助成の現行確保を主張していることは全く当然のことであります。この点についていかがでしょうか。
  205. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生二つ御質問なさったわけでございますが、生産者米価の算定方式、これは担い手層に焦点を置いて実施しろ、こういう問題につきましては、米価の算定方式のこれまでの歴史の上に立ちまして六十二年十月以降十回に及ぶ御論議が米価審議会において行われたわけでございまして、一つの御結論というような形で米価審議会の算定小委員会の報告から出された問題でございます。それに関連をいたしまして、昨年の米価というものは、御案内のとおり私ども米価審議会に諮問をいたしましたが、これも先生指摘のような形で諸般の事情から新算定方式のもとで据え置きということでございます。私どもは、そういうことでこれについての御議論があったということを踏まえまして、現在この算定方式について検討中ということでございます。  二番目の良質米奨励金の取り扱いにつきましては、これは毎年食糧庁の通達という形で決めさせていただいております。もちろん予算等に依拠をいたしまして決めるわけでございまして、これについては、一方において五十一年から実施しております良質米奨励金についてのいろいろな御批判があります。他方、これも先ほどの答弁の際に申し上げさせていただいたように、既に米価の一部であるというふうな御主張もあるわけでございまして、私どもこれに従いまして十分検討して、時期が参りましたら決定をしていくということを申し上げたわけでございます。
  206. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、その内容のことじゃなしに、選挙のときにということを言っておりますので大臣の御答弁をお願いしたかったのですが、だんだんに時間がたってきまして、本当にこれはえらいことですよ。これはまた後日詳しくずっとお伺いをしていきたいと思います。  きょうも問題になりました米取引所の設置の問題です。これは食管制度の空洞化を決定的にするものだというふうに私は受けとめております。そして、人気の高い自主流通米は価格が高騰し、山間地などの水田を初め、コスト、収量、市場人気の悪いところ、つまり競争力の弱いところは米作の切り捨てということになりかねないわけです。そして、豊作のときには価格は暴落し不作のときには高騰する、大変な問題になります。もちろん大資本による投機的な場に発展することは避けられないでしょう。私は、六十三年三月に相当この問題に絞ってこの場で質問をしたことがあります。そのときに、甕当時の食糧庁長官は、こういうことを否定されて、自主流通米がどんどんふえて政府米がずっと減っていくという問題についても、政府の管理する数量を流通の一部分にとどめてそれ以外の米は自由流通というような方式だと、これで果たして米の需給、価格の安定が的確に達せられるものかどうか問題点があるように思いますということをおっしゃっておられた。あれからまだ幾らもたっておりませんが、こういうふうに大きな転換をされました。  私は特にここでお答えいただきたいのは、米取引所をてことして国内流通を自由化した場合に、ガットに規定する国家貿易品目として輸入規制をする条件を失いはしないか。そして結局ここから米の輸入自由化に結びつく、そういう施策にならないかという点で、私はこの一点に絞って御答弁をお願いをしたいわけです。同時に、半世紀近い歴史を持つ食管制度にこんなに大きな変革を迫る内容を含んでおりながら国会の審議を経ることなく進められるという点については、私も抗議をしておきたいと思います。時間が限られていますから簡単にお願いします。
  207. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生の御質問の中で取引所というようなお話がございましたが、こういうような問題については取引所という言葉は使っておりません。これはあくまでも価格形成の場という、一見奇異に聞こえるかもしれませんが、ずっと取引所とかそういうものと合体しないような形で明確にしております。このことをなぜ申し上げるかといいますと、農政審議会の答申は先刻御案内のとおりでございまして、明確に二つの前提が置かれております。それは一つは、先ほど来議論がありましたような、しかも先生が御提起された国内で自給するということを明確に文章にされております。それが第一点でございます。それから第二点目は、食管制度の根幹を堅持するということを明確にされた上で、民間流通のよさを入れるために価格形成の場を形成しようということでありまして、そういう意味で先生御提起のウルグアイ・ラウンドとの関係等々、明確な方向が農政審議会報告以来出されていると我々は理解しています。
  208. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 この問題についてはまた後日ぜひ議論をしたいと思います。残念ですが時間がもう本当に近づいてきましたので、きょうせっかく文部省に学校給食の問題についてお伺い  大変申しわけありません。後日必ず。どうも済みません。  そこで、二つだけ質問をしておきたい、文部省じゃありませんが。恐れ入ります、どうぞもうお帰りください。  先日、主婦連の米消費動向調査でも四二%の人が輸入自由化に反対だ。これは昨年の調査より三・七%も伸びているわけですが、その中では、輸入米では安全性をチェックできないということを理由の一つとして挙げております。一方、ヤイター農務長官は、安全性のチェックは消費者の健康と安全のためという見せかけのためにつくられた貿易障壁だというふうに非難をしているわけです。しかし、アメリカの米が決して安全でないことはもうよく知られていることであります。アメリカでは米生産のために、日本では使用禁止されている農薬、パラチオンが使用されていることは有名な話ですが、先ほどお話がありましたようなポストハーベストに日本で禁止ないし中止になっている十七の農薬の使用が認められているだけではなく、精米後のつや出しのために薬剤が塗布されているというようなこともあります。農水省の認識をお伺いをしたいと思います。  二点目は、米の調製品が既に輸入されているわけですが、厚生省はこれらの米の調製品について残留農薬のチェックを行っているのでしょうか。それから、私は前国会で、中国からの輸入山菜並びにマッシュルームですね、キノコの安全性及び原産国表示の問題について質問をいたしましたが、その後どのような状況になり、行政上どういうふうな問題点を克服しようとしていらっしゃるのか、お伺いをしておきたいと思います。
  209. 松山光治

    ○松山政府委員 アメリカの米関係の農薬の使用状況でございますが、カリフォルニアとそれからテキサスのような南部の方では若干事情は違うようでございますけれども、立毛中の使用の状態といたしましては、御案内のように比較的病害虫なりの発生が少ないという事情がございまして、殺虫剤としてはカルボフランあるいはメチルパラチオンといったようなものが認められておる。殺菌剤としてはべノミルが認められている。ただ本田期における使用としては、全く使用しないか、せいぜい一回程度といったような状態だというふうに承知をいたしております。除草剤の方はモリネートでございますとかベンチオカーブといったような薬剤の使用が認められているわけでございますが、これは大体一回程度というふうに承知をいたしておるわけでございます。ちょっと日本と違います点は、御案内のように日本では収穫後は低温倉庫に保管するという形をとっておりまして、一般的には薫蒸の対象にしておりませんけれどもアメリカでは、今御指摘のございましたようなポストハーベスト農薬としてマラソンを初めとする幾つかのものが認められておりまして、これはかなり幅広く使用されておる、こういうふうに承知をいたしておるところでございます。
  210. 内山壽紀

    ○内山説明員 米国では米に対しましての残留農薬の基準設定等の規制が行われておりまして、その安全対策が図られているというように承知しております。  それから、残留農薬基準の安全性確保対策は、国際的にも米、小麦等の農産物に対しまして残留基準を設定する方式がとられておりまして、加工食品については残留基準はほとんど設定されてございません。このような状況にかんがみまして、我が国でも同様に農産物の段階で基準を設定しておりまして、加工食品についての残留基準は設定していないという状況でございます。
  211. 難波江

    ○難波説明員 中国産のキノコ及び山菜に関する御質問にお答えをいたします。  まず、中国産キノコの缶詰の問題でございますけれども、輸入時におきましてエンテロトキシンの検査等を行いましてその安全性の確保を図っておりますと同時に、昨年十二月二十日中国政府に対しまして、原因の究明、製造工程等の十分な衛生管理対策の実施について申し入れをしたところでございます。中国政府からは本年二月になりまして、原料の十分な洗浄、従業員の衛生管理等の対策を講じた旨の連絡があったわけでございますが、近々さらに詳しい状況について報告が寄せられるというふうに承知をしております。なお、輸入時におきます検査につきましてはユンテロトキシンは現在まで検出をされておりません。  それから、二点目の中国産の山菜の異物混入問題でございますが、昨年、国内主要六県に対しまして立入調査を行わせた結果、検体の大半から毛髪でございますとか木片、昆虫の死骸等の異物が発見されたところでございます。このため、昨年の十二月に関連業界に対しまして、原材料の購入及び製造工程等における衛生確保に十分配慮するよう指導するとともに、都道府県に対しましても十分な監視を行うよう指示したところでございます。また同時に、昨年十二月中国政府に対しまして、原料の採取、製造工程における異物混入の防止、異物の除去等、衛生管理の強化による品質の向上について申し入れを行ったところでございます。現在、中国側の衛生対策の実施状況の報告を求めているという状況でございます。
  212. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 国産表示の問題について御答弁がなかったと思いますが、原産国表示の問題、後で一緒に答えてください。  最後の質問にいたします。  卸売市場法の運用の問題ですが、卸売市場はさまざまな関連事業者が存在しているのです。おそば屋さんとか散髪屋さんもそうですが、農林水産省監修の「卸売市場法の解説」を見ますと、関連事業者の中には精算代払い機関も入っているわけです。その精算代払い機関というのは関連事業者の中でも最も取り扱い金額が多く、全国的にも不正事件が起きている事例はたくさんあると聞いております。本来ならばこのような関連事業者は開設者の指導監督に服させるべきでありますが、この関連事業者をどの範囲内にするかということは、市場開設自治体が条例で決めることになっているのです。したがって、多額のお金を扱う精算代払い機関、これはなかなかそういうふうな関連事業者に取り込まれていないのです。農林省がもともとこの機関を設置するように指導されたのですから、この機関については条例で関連事業者に必ず入れるように農水省が指導して市場の信頼性を高めるということは当然必要なことだというふうに考えます。最後にこの問題について、原産国表示とあわせて。
  213. 鷲野宏

    ○鷲野政府委員 お時間もございませんからできるだけ簡略に申し上げたいと思います。  原産国表示の問題につきましては、私どもも重要な問題と考えておりまして、JAS法とかあるいはJAS法以外のガイドラインに基づきましてその表示を指導しております。ただ、先生一点だけ御承知いただきたいことは、原産国についての国際的な慣行と申しますか考え方というものが、その食品についての実質的な変更行為のあった国、場所ということになっているのでございます。これはFAO、WHOの規格においてもそうでございますし、国内におきましても公正取引委員会の景表法における考え方もそうなっております。そういうことで、先生のお考えになっておられますような、例えば中国から山菜の原料を輸入しましてそれを国内において味つけ、加工する、あるいはパックをし直すような場合には日本が原産国になるのでございます。そういうことになっているということでございますが、いずれにしてもこの原産国表示の問題は重要な問題でございますので、よく検討してまいりたいと思います。  それから第二の御質問でございますが、これも申し上げると大変長いことになるのでできるだけかいつまんで申し上げたいと思うのでございます。要するに、中央卸売市場の業者というのは何種類か何段階かあるのでございますが、卸売業者とか仲卸業者とかあるいは売買参加者につきましては、これは卸売市場法の規定に基づきまして、例えば国の大臣が直接監督する、あるいは開設者が許可ないしは承認に係らしめて監督するということにしておりますが、関連事業者というのはいわば従たる機関ということになっておりまして、卸売市場法にはそういう規定は設けてないのでございまして、各市場の実態に応じまして開設者がどこまで関連事業者として取り扱っていくかということを各開設者に任せているという状況でございます。そういうことでございまして、ただいまの精算代払い機関につきましても、重要な業務を営んでいることはよく承知しておりますけれども、それは業務面あるいは行為面からの規制なり指導なりというものは開設者にさせておりますけれども、経営の形態とかあるいは組織運営というものについては一律にそういうものを関連事業者の扱いにするということにはしない、各市場の実態に任せて開設者にゆだねておる、こういうことであるということで御理解いただきたいと思います。
  214. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 終わります。
  215. 穂積良行

    ○穂積委員長代理 小平忠正君。
  216. 小平忠正

    ○小平委員 私は、選挙区の関係もありまして毎週飛行機で国会と選挙区を行き来いたしております。この時期は飛行機の窓から見ますと水田に満々と水が張られて、まさしく冬が終わっていよいよ農業のシーズンが来たな、そんなふうに感じる昨今であります。そういう中で内地府県では大体田植えも終わったようであります。北海道においては今田植えの真っ盛り、そういうシーズンであります。私は、この水田に水が蓄えられておるという状況はいわゆるダムの機能であって、その水田の水が地下に浸透して、その地帯の地下水の源泉にもなり、我が国の良好なる自然環境に大いに役立っておる、こんなふうに考える次第であります。特に最近、いわゆる地球の環境問題、温暖化現象とか砂漠化現象、こういうことが言われておりますけれども日本国土において水田の果たしているこういう役割は非常に重大である、水田は決して我が国土からなくしてはならない重要な風景である、私はこんなふうに考えておる一人であります。  そこで大臣、先般当委員会の場において大臣から所信表明がなされました。私も一新人議員として緊張して拝聴した次第であります。その中で大臣は次のように述べられております。すなわち、「我が国は、豊かな太陽と水、温暖多雨な気候に恵まれ、南北に長く変化に富んだ自然条件にあります。また、消費水準の高い大きな国内市場、優れた生産者、高度な加工技術を有する食品産業などにも恵まれ、農林水産業や関連産業の発展を図る上で有利な条件を備えていると考えております。私は、こうした有利な条件を生かし、我が国農林水産業や関連産業の持てる力を遺憾なく発揮すれば、二十一世紀へ向けて新たな展望が開けるものと確信をしております。」このようにおっしゃっております。しかし、こういう発言大臣ばかりではなく、歴代の農水大臣も同じように何度も繰り返して述べられてきたところであります。今日まで政府が講じてきた施策の内容あるいは農業を取り巻く環境を見る限り、二十一世紀へ向けての新たな展望が果たして開けるのかどうか、このことは私は非常に不安でいっぱいであります。こんなことを申し上げて、まず冒頭に大臣基本的なお考えを重ねてお伺いいたします。
  217. 山本富雄

    山本国務大臣 ただいま先生お話しになったような所信を先般来申し上げたわけでございます。同じようなことをというお話もございましたが、私はちっともおかしくないと思っておるのです。これは、そんなに変わったものが次から次へ出てきたら国の行方はむしろ心配だというくらいに思っておりまして、特に農業は、まさに大地に根を生やして進んでいく基礎産業であることは間違いがないのですから、それがそんなに軽々しく飛ぶような状態に、しかも政策が年がら年じゅう変わるというようなことはむしろあってはならない。農水省の施策の中で、それは時によって足りなかったことも試行錯誤もあったかと思いますけれども、大筋において戦後一貫してやってきた農業政策というものは、日本農民のためにーーそれはそのときどき随分苦しみもありました。また現在も非常に厳しい国際環境にさらされていることも先生御承知のとおりでございます。ですけれども、それであればこそなおさら我々は、もう十年たてば二十一世紀なんですから、その二十一世紀を展望して、跡継ぎの人、すなわち後継者、担い手の皆さんが、よし、とにかくやろうという気持ちになってもらわなければ、それこそ農業の行方は暗い、こう思わなくちゃならない。私どもは自信を持ってこういう施策ああいう施策、もう一つ一つではだめですから、総合的にあらゆる施策を駆使しながら、限られた予算の中ではありますけれども、できる限りその予算を有効適切に使いながら、いろいろな法律の裏づけをもって農山村を足腰の強いものにしていくことに全力投球をしていきたい。しかし、国内だけでこれが進められれば大いに結構なんですけれども、国際的な横風、横波が多い昨今でもございます。きょういろいろ質疑がございましたけれども、そういう中でとにかく日本農業丸というのをしっかりかじ取りしていくのは容易なことではない、これは与党も野党もないのだ、こういうことを私は繰り返し申し上げておりますので、どうかそのつもりで若い方々にしっかり二十一世紀に受け継いでもらえるような農業の施策というものを実効的に推進をしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  218. 小平忠正

    ○小平委員 大臣、私は今のこういう厳しい農業の国際環境、日本が置かれている立場、こういう中で、おっしゃることは私も理解しているつもりであります。しかし、地方における農業の中においてはこのことは皆さん十分に承知されているのでありますけれども、東京とか大都会の中において農業に直接関係ない消費者の皆さん方、こういう方に、単に食糧の問題ですとか国際的な環境を説くだけでは、私は不十分であると思います。やはり農業というものが日本という国家の、いわゆる独立国家としてこれからも建設していく上にも絶対これが必要である、そういうことを総合的な面で訴えてPRをしていかれることが肝要であると思います。そんな意味においては、農水省、特に大臣の御発言等々の姿勢は重要でありますので、ひとつよろしくお願い申し上げます。  次に、私は、ガットウルグアイ・ラウンドにおける農業交渉の問題について御質問いたします。  農業の将来展望を開く上で最も重要なことは、農産物をでき得る限り国内自給する体制を確立することであります。しかるに、本年一月閣議決定された「農産物の需要と生産の長期見通し」においては、西暦二〇〇〇年、平成十二年でありますが、供給熱量自給率は五〇%、穀物自給率は三一%として、今日の状況とそう違わない、余り改善する姿勢が見られないのであります。ECを中心として欧米の先進諸国がここ二十年来年々自給率を高めてきている中で、我が国のみがこうした低い自給率に甘んじていることが果たして適当であるかどうか、このことについての見解をお伺いしたいと存じます。
  219. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 先般決定しました「農産物の需要と生産の長期見通し」の策定に際しましては、衆参の農林水産委員会あるいは予算委員会等におきましていろいろな御指摘、御議論をいただきまして、そういうことを踏まえまして、私どもとしましても関係者が最大限の努力を傾注し、生産性の向上と食糧供給量の確保を基本として、我が国の自然条件や国土条件を有効に活用した多様な農業を展開し、国内農業の持てる力を十分発揮することにより見込める供給を行うというようなことで、供給熱量で五割はせめてやりたいというようなことで見込んだわけでございます。  御指摘のように、食糧自給率がどの物差しを使いましても下がってきておるわけでございますけれども、その原因は、御案内のことだと思いますけれども、国内で自給している米の消費が残念ながら減退しておる。一方、食生活の変化によりまして畜産物の消費の増加等、よその国に見られないような急激な食生活の変化が進んでいるわけでございます。そういう畜産物の消費の増大ということからしますと、良質で安価な畜産物を供給する、あるいは畜産の健全な発展を図るということからしますと、どうしても安価な飼料穀物の安定的な輸入によりそれを振興していくということが不可欠であるというようなことから、自給率が低下しているわけでございます。  しかし、そういう中で、先ほど申しましたようにいろいろな御論議を踏まえて、できるだけ持てる力を発揮するということで、主食である米につきましては国内で自給を基本とする。また、現在低下しています米の消費につきましても、良質米の生産の奨励あるいは加工用米の新しい需要を拡大するというようなことで下げのテンポを緩めるために努力すること、あるいは小麦、大豆につきましては、日本めんでありますとか、あるいは大豆につきましても、伝統的な食生活部門における需要に適応するための品質の改善でありますとかコスト面での改善をさらに進め、生産の拡大を図っていく。あるいは野菜、果実等につきましても、消費者ニーズに即して日本の多彩な立地条件を生かした生産を展開するということで、極力国内の生産の維持拡大を図っていくという観点からああいうものを見通したわけでございます。それに向けまして、すぐれた担い手の育成でありますとか、経営規模の拡大や生産の組織化による農業構造の改善、あるいは生産基盤の整備、あるいは先端技術の開発普及など諸般の政策を進めていって、ああいう見通しました生産の線に沿って、何とか自給率の低下に歯どめをかけて少しでも向上させたい。これは率直に言いまして極めて難しい道でありますけれども、そういう点に全力を挙げていきたいと考えております。
  220. 小平忠正

    ○小平委員 私は思いますに、こうした自給率は、一億二千万の人口を有する我が国としては、一独立国としては非常に低い数字である、これは皆さんも同じであると思います。そういう中でも、特に最近の牛肉やオレンジを初めとする各種農産物の市場開放を見るにつけ、こんな低い自給率さえ果たしてこれから維持ができるのかどうか、こんなことを大変危ぶむ次第であります。つい最近、ヤイター農務長官のあのような強硬な反論発言もありまして、私どもも大変気にしております。こういう中で、今お話しされましたけれども自給率を高めるために具体的に何か方法がないものか、重ねて質問したいと思います。
  221. 山本富雄

    山本国務大臣 自給率の低下傾向にどうしても歯どめをかけたい、そしてこれをいささかでも上げたいというのは農政に携わる者の共通した切なる願いなんです。私も毎日毎日そう思っているのです。  そこで、具体的な問題ですけれども、やはり一にも二にも生産性の向上ということを各般にわたって行う以外に方法はないのだ。そこで具体的には、米についてはきょうずっといろいろ議論ございましたけれども、コストダウンを図り、需要に即した生産を推進する。あるいは小麦、大豆は品質、コスト面での改善を進めることにより生産の拡大を図っていく。また野菜、果実その他農産物についても、多彩な自然条件というものもございますし、それからまた、生産基盤の整備だとかバイオだとか技術の問題もございますから、それらを総合的にこれからさらに駆使をして、施策を強力に展開しながら生産性の向上に努める、そして自給率をどんなことがあっても少しずつでも高めていくという努力を、これは国民的な努力でなければならないと思っているのですけれども、努力を続けていく以外にない、こう思っております。
  222. 小平忠正

    ○小平委員 自給率の向上ということは、党派あるいは与野党を問わず共通の願いであります。そんな意味では、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  そういう中で、ガットウルグアイ・ラウンドにおける農業交渉の動向なんですが、これはそれこそ今もお話ありましたように、我が国の将来の展望を左右する最大の関心事であると思うのです。交渉の中では、米国は非関税障壁を撤廃して関税化を図り、この関税も十年間で撤廃することを提案しております。これとの関連で、米についても最初は一%程度のいわゆる日本のアクセス、市場開放を要求いたしております。私も一昨年アメリカに行きまして、当時のリン農務長官も、このことで党の中で行ってまいりましたが、わずか一%だ、そんなようなことで主張しておりました。その手法は農務長官がかわっても同じように、とにかく門戸を開けよと主張してきているようであります。我が国においては食糧の安全保障の見地から、基礎的食糧については輸入制限ができるようにガットに特別規定を設けることを提案いたしております。今後の交渉の中で日本の主張が通るのかどうか大きな問題点ではあると思うのです。特に関税化の問題については、今まで米国と対立しておりましたECにおいてもその妥協点を見出すべく今模索を始めた、そんなようにも伝えられております。もしECと米国とが妥協点を見つけるようなことになれば、今後の交渉において我が国は完全に孤立化する、こんなふうに思われるのであります。この点について、どのように農水省としては見通しされているのか、そしてまたどのような対応策を講じていくのか、お伺いいたします。
  223. 川合淳二

    川合政府委員 ガットウルグアイ・ラウンド農業交渉に臨みます日本立場は、先生が今お話しになりましたような基礎的食糧を中心とした考え方を提案しているわけでございます。主要なそれぞれの主張の中には、今お話がありました米国の農業保護のほぼ完全な撤廃、これは目的は米国農産物の競争力の回復ということでございますが、その中の中心的な提案といたしまして、すべての非関税措置関税化するという話があるわけでございます。これに対しまして、例えばオーストラリア、カナダなどの輸出国、いわゆるケアンズ・グループといっておりますが、こうしたところの支持があります。これに対しましてECは、農業保護につきましては削減は認めておりますが撤廃は認めない、あるいは一定の条件、この条件がかなり問題といいますか私どももまだ十分把握していない点でございますが、その条件が満たされれば関税化について検討し得るというようなことを言っているというふうなところがございます。一方、日本のようないわゆる輸入国と申しますか、韓国、オーストリアあるいはスイスといった国につきましては、非貿易的関心事項の重要性を主張している、そういう図式であろうかと思っております。  いずれにいたしましても、これからこうした提案に対する実質的な交渉が始まるわけでございますが、例えば我が国の安全保障などの点につきましては、食糧輸出国には当然ながらかなり反応には厳しいものがありますけれども食糧安全保障の重要性自体については、こうした輸出国を含めまして理解が得られているというような点もございます。これからの交渉の帰趨につきましてはいろいろと取りざたされております。例えば今先生指摘ECアメリカの歩み寄りというような問題につきまして、我々事務的な交渉の段階ではそうした兆候というものをまだ見出しておりませんけれども、大きな流れの中でそういうものは出てくるかどうかというようなことも大きな関心事であろうかと思います。いずれにいたしましても、今申し上げましたような食糧輸入国と申しましょうか、そうした我が国立場に立って、そうした同じ条件にあるような国との連携もとりながら、またECアメリカ両者の接近あるいはそういう兆候というものが本当に出てくるかどうかということにも細心の注意を払いながら、今後の交渉に臨んでまいりたいと思います。いずれにいたしましても、非常に重要な交渉でございますので、全精力を傾注して対応してまいりたいと考えております。
  224. 小平忠正

    ○小平委員 局長、まことに御苦労さんでございます。本当に大事な交渉であります。ぜひ頑張ってお願いしたいと存じます。  次に、中核農家、それと若い後継者の育成、確保という問題についての質問をしたいと思いますが、国内における最大の問題は、農業生産の主体となる中核農家とこれを支える若い農業後継者を長期的視点に立ってどのように確保するかということであります。この点、中核農家については年々減少の一途をたどり、昭和六十四年一月では七十万戸と総農家戸数に占める割合ではわずか一七%まで減少いたしました。政府は本年一月に示した農業構造の将来展望において、西暦二〇〇〇年では中核農家は約五十万戸、このようにいたしておりますが、いかなる根拠のもとにこの五十万戸という数値を試算したのか。それと、またこのような厳しい農業環境の中で果たしてこの五十万戸すら確保できるという政策的な裏づけがあるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。  それにあわせてついでに、若い農家の担い手の補充、関連することでありますけれども、今、新規学卒就業者は昨年平成元年では二千百人、三十四歳以下の男子離職就農者、いわゆる農業にUターンする若年の就農者は六十三年で三千二百人、このように私は聞いております。今後一層の減少も予想されるわけですけれども、こんな点を含めてどのように育成、確保を考えているのか、今前段にお聞きしました農家戸数の問題等含めて御答弁をお願いいたします。
  225. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 一月に決定しました長期見通しで示された農業生産がどういう農業構造のもとで担われているかという議論をするために、長期見通しの参考として農政審議会におきまして二〇〇〇年の農業構造等についての試算が取りまとめられたものでございます。この試算では、今御指摘のように五十万戸というように二〇〇〇年の中核農家数を見込んでおるわけでございますけれども、これにつきましては、昭和五十五年から六十年までの動向をもとに就業状態別、経営規模別の農家の移動が今後も継続するという前提で、二〇〇〇年の農業生産の姿や性別、年齢別、就業状態別の農業労働力の移動とか将来展望との関連も見ながら試算されたものでございます。  それで、中核農家の動向につきましては、今後の経済情勢あるいは他産業との生産性格差等によって実際の動きが出てくると思いますけれども、五十万戸の確保自身もそう容易ではないと私どもも思っています。ただ、我が国農業の健全な発展を図るためには、経営感覚あるいは技術にすぐれた、地域農業において中核的な役割を果たす農家を育成、確保していくことが重要であり、そのためにこういう見通し、試算を頭に置きながら魅力ある農業の育成とか住みよい農村づくりを進めていくことが大事だと思っております。そういう点から、すぐれた経営感覚とかあるいは技術を持つ農業者を育成、確保するための研修教育でありますとか、あるいは新たに就農を希望する人に対する農地等の情報提供とか相談活動の実施、また、地域農業において中核的な役割を果たすこれらの方々への農地の利用集積や農作業受委託の促進等の施策を積極的に推進して、こういう見通しに即した農業生産の担い手、またその方を中心とします生産の組織化というものを進めながら、農業振興、展開を図っていきたいというふうに考えております。
  226. 小平忠正

    ○小平委員 農業は、これはもう言うまでもないことですけれども、学校を出て新しく就職をしよう、じゃあできる、そういうものではないと思います。親がやっておって、そこに生産手段である土地があって、そして初めて継承していけるという、こういう特殊な産業であります。そんな意味からも、いわゆる農家戸数が余り減少しないで、そして日本の将来のために大事な生命産業である農業、これを守るための問題について真剣にこれからもとらえてやっていっていただきたい、私はこのように願う次第であります。  次に、漁業問題について御質問いたします。  我が国世界で有数の魚類の消費国であります。ということは、日本人の動物性たんぱく質の供給の多くをこれに頼っている、そういうことであると思います。このような状況にかんがみて、もちろん漁業と自然との調和が大事なことではありますけれども我が国の漁業が国際的にも真に理解されて、そして信頼される漁業の確立のために、政府は科学的データに基づいた資料を作成してそのPRに努め、日本の水産業を守ることが肝要である、このように私は思う次第であります。  なぜなら、現実に今日本の漁業が国際世論の中でいたずらにいわれなき多くの批判を受けている、また外交的圧力に屈して過般決まったサケ・マス交渉の結果、あるいは商業捕鯨の禁止の問題、こういうことに代表されるように、日本の遠洋漁業は年々縮小からそして消滅へ、そういう状況に行っておる、そんな状況にあると思います。まさしく存亡の危機に直面している。中には遠洋漁業としてやっているものも一部ありますけれども、さらに沿岸漁業としては、外国船による我が国近海の横暴な操業によって多くの損害も受けている。こういう状況の中で、農水省としては、関係諸外国から批判をされてから対応して、例えば漁業者に減船等を強いてきたとか、そんなようなこともされてきました。こんな受け身な対応ではなく、日本の漁業の法秩序化をきちんと図って、国際的にも理解される漁業の確立を目指して努力されたいと願う次第であります。日本人の大事なたんぱくエネルギー源としての水産業発展のために、その御所見をお伺いしたいと思います。
  227. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 お話ございましたように、我が国の水産業を取り巻く状況を達観をいたしますと、日本の周辺水域を越えて展開をされておりますいわゆる遠洋漁業につきましては、御承知のとおり昭和五十年代初めごろからいわゆる二百海里体制というものが定着をしてきておりまして、そのことによりまして沿岸諸国の発言力が大変強くなってきておるという状況にございまして、我が方の伝統的な遠洋漁業が漁場を失いかねないという状況が出ております。さらにまた、最近におきましては、いわゆる公海を含んだ水域につきまして、いわゆる環境問題をめぐる関心の高まりに伴いまして、いわば人類共通の財産としての海洋資源を保存をするという観点で、やや漁業と大変深刻な調整を要する問題が出てきておるわけであります。また、周辺漁場につきましても、資源状態が悪化をするというふうな状況がございまして、お話ございますように科学的なデータの集積を通じて、関係国との理解を深めながら漁業の安定振興というものを考えていく必要があると考えております。  ただ残念ながら、いろいろな資源評価なりあるいはまた海洋資源と漁業との調整問題をめぐりまして、国によりまして相当価値観の違いがあることも事実でございます。端的な例としまして、お話がございましたように捕鯨問題をめぐる価値観の国別のずれというものは大変大きな状況にございます。お話の御趣旨を体しまして、私ども、ある程度時間のかかる問題もあろうかと思いますが、科学的なデータの集積を通じまして諸国との理解を深めて我が国の漁業の安定振興を図っていきたい。同様にまた、我が国の周辺水域で展開をされます外国漁業につきましても、そういった観点でお互いの共通の理解の上で漁業をめぐる操業秩序が的確に守られていく、こういう情勢づくりにさらに努力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  228. 小平忠正

    ○小平委員 次に、林業問題について質問いたします。  我が国の国有林野事業は、平成元年度の累積債務残高が二兆円を超えている、しかも毎年二千億円ずつ債務が膨らんでいる、こういう状況にあり、まさしく危機的状況にあるわけであります。そういう中で臨時行革審としても、収支改善の重要性をその中で指摘されております。国有林野の職員を平成五年度までに一万七千人減少して二万人まで削減する、こういう改善計画であるようですけれども、採算優先の合理化対策だけでは重要な国有林野事業に大きな支障を来す、こう考えられます。私は、国土の自然保護のために国有林を中心とする森林を守り育てることが大事だ、こう思う次第であります。職員削減を柱とした改善計画では余りにも消極的過ぎる、そう考え、好調な民間の今の住宅産業ブーム、こういうことを考えるときに、消費者がこれから日本の木材を入手できるように、まだ国内材等若いということもありますが、これからに向かってそうなるように、現代高度情報化社会に適合した流通システムや研究開発体制を整備して、そのための、名称はあれですけれども、例えば木材総合センター、こういうものを設置して需要の拡大、体質の強化、国有林野事業の収益の増大等を図っていく努力が必要であろうと思います。こんな意味で御所見をお伺いいたします。
  229. 甕滋

    ○甕政府委員 国有林の状況、ただいま先生お話ございましたように大変厳しい状況の中で私ども現在改善計画を鋭意進めておる最中でございます。その中で、御指摘のとおり事業運営の合理化あるいは要員の調整等々自助努力を尽くしておりますが、また一方、自己収入の確保増大でございますとか、経営体質の強化といった面で国有林が積極的な取り組みをいたしますように、全職員一丸となって努めておるところでございます。  その中で、国有林材の需要拡大あるいは技術開発といったお話ございましたけれども、私ども、具体的に申し上げてみますと、需要拡大のためには大都市圏のPR拠点を整備するという観点から、ウッディランドと称しまして、これは先生のおっしゃるセンターに若干似たものかとも思いますけれども、東京でございますと木材サービスセンター、名古屋でございますと需要開発センターといったものを拠点にしまして、国有林材を中心とする普及活動に力を入れております。また、サンドライといった乾燥材でございますけれども、これもブランド化いたしまして積極的な販売に努めるということでございますとか、民間の林業と提携した産地銘柄を形成する、こういう努力もいたしております。また、木材情報システムを部内でも整備いたしまして、需要動向を的確に把握する、分析するといったことにも努めております。技術開発につきましても、私どもせっかく森林総合研究所といった研究機関も持っておりますので、連携をいたしまして、国有林野事業の必要とする課題等につきまして推進する仕組みをつくっておるところでございます。それによりまして、造林技術の体系化でございますとか、林業機械化の推進といったことにも積極的に取り組んでおるわけでございます。  そういったいわば前向きの取り組みを重ねることによりまして、御指摘のように、国有林野としてはいい山をつくっていく、また、需要の動向にこたえて国有林の使命を果たしていくといったことに今後とも努力をいたしたいと思っております。
  230. 小平忠正

    ○小平委員 次に、米問題のいわゆる価格形成の場、取引所じゃないそうですけれども、その価格形成の場という問題についてお伺いいたします。政府は、去る四月二十七日、自主流通米の価格形成の場についての検討会の報告を公表されました。以下、この問題について何点か御質問いたします。  そこで、大臣に重ねて恐縮ですが、最初にお伺いしたいのは、食糧管理法の運営に当たっての自主流通米の位置づけ等についてであります。申すまでもなく、食糧管理法の根幹は政府が責任を持って米の需給及び価格の安定を図ることにあると思います。しかしながら、最近の政府米と自主流通米との割合を見ますと、自主流通米の割合が年々増加して、平成元年産米の集荷実績においては自主流通米が七割を超える、そういう状況に至っております。しかも、自主流通米に比して政府米は商品として非常に弱く、かつ需給操作の面から見ても古米が過半数を占めている、そういう中で円滑な需給操作が非常に困難になっている、これが実態だと思います。端的に言えば、現在の政府米の役割は備蓄機能が主体になっております。価格の下支えは別にしても、備蓄機能が主体になっております。  そこで質問なんですが、価格形成の場の設置等とも関連して、今後自主流通米の割合が一層高まったような場合、政府が責任を持って需給及び価格の安定を図ろうとする食管法の根幹が維持されるかどうか、私はここに大きな不安を持っているのですが、大臣はこの点についてどうお考えか、お尋ねいたします。
  231. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生指摘の点の自主流通米あるいは政府米との関係、相互の関係でございますが、やや数字をもって簡単に御説明をしてみたいと思います。  食管法に基づきまして政府が管掌、管理をしているのは、モチ米とか酒米等々除きまして約六百万トンあるわけです。一千万トンつくられているということでございますが、現実に流れているのが六百万トン。去年の数字でいきますと、そのうち百六十五万トンが政府米、狭義の政府米ということで、政府が買い入れて売り渡す、こういう形でございます。一方、これもやみ米とか世間に言われているものとは全然違いまして、自主流通米という名前の政府管理米、政府が管掌しております部分、これが四百万トン強あるわけでございます。これに関連いたしまして、今議論になっております価格形成の場というのは、この四百万トンのある一部を一つ価格形成の場に上場いたしまして、そこで国民皆さんあるいは農家皆さんに十分価格の動きがわかるような、やや役所言葉で言いますと品質格差といいますか、そういったものができることを頭に置いて価格形成の場というのが提起されているわけでございます。  この数字は、検討会の報告では百万トンを努力目標にしろということでございますが、現実に協議会方式という自主流通米の現実の姿で約二十万トン、これが入札という形で既に行われているわけでございます。そういうものを、いろいろな組織改編といったようなものあるいは公平な第三者機関というものに食糧庁の管理のもとで強力に、いわゆる公益法人、単なる公益法人という形じゃなくて、食糧庁が食管法に基づき十分監督した場を設けて、そこで価格形成の場がわかりやすくしたらどうかというのがこの大ざっぱな形でございます。  したがいまして、一方での需給の問題というのは、既に食管法に基づいて毎年農林大臣が年度末に出します基本計画で、例えば先ほど申し上げましたように、政府米は百六十五万トン集めます、来年は二百十万トン集めるというような形で公表をいたしまして、そのところを管理するということでございます。その点が一つの根幹でございまして、結論を急ぎますと、やはりこの価格形成の場というものの役割によって自主流通米がよりふえるというようなことは論理的にはないというふうに我々は考えているわけでございます。
  232. 小平忠正

    ○小平委員 この価格形成の場の設置に当たりまして食管法の根幹がきちんと維持されて運用されるように、このことを強く要望する次第であります。  また次に、この価格形成の場の設置に伴って今後最も懸念されるのは、これは生産調整にどう影響を及ぼすかということだろうと思います。報告書では価格形成の場での品質評価等が生産に結びつくことを期待しておりますが、場合によっては産地間競争を激化させる、さらに不正規流通米の増大とともに生産調整をなし崩し的に崩壊に導いてしまう、こんなことが心配されます。  さらに、この点に関連してお伺いしたいのは、生産調整の実施体制の問題なんですが、現在生産調整は、政府の責任とあわせて生産者団体による自主調整に比重のかかる運営がされておりますが、しかしながら、今回の処置は現行の生産者、農協、経済連――道ではホクレンといいますけれども、それから全農、こういう共販体制に大きな変化をもたらすものだと思います。このことは、共販体制と裏腹の関係にあります全国的な自主的生産調整、これを非常に困難な事態に追い込むことが予想されるのではないかと思います。この点についてどのようにお考えになるかお伺いいたします。
  233. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 価格形成の場での取引の当事者でございますけれども、現在行われておる自主流通米の現行の協議会方式、その取引の相手は、今御指摘のように指定法人といいますか、全農あるいは全集連対卸売業者という形になっているわけでございます。今回検討会が一つの原則、例外を伴っておりますけれども、原則として提起されている取引の方は、価格形成の場、今の値引きの延長線上にあります価格形成の場においては、基本を全農の下部組織であります各県の組織であります経済連というものと卸売にしたらどうか。その理由といたしまして、現在の価格というものが産地、銘柄というような形で行われておるがゆえにそういう形にしてはどうかということになっておりまして、そういう意味におきましては、この価格形成の場はもちろん先物取引とかそういったようなことは一切やりませんで、当事者間のいわゆる系統の集荷団体対卸売団体という形であるわけでございます。したがいまして、先生御提議のような品質の格差というものはよりいろいろの意味において明確になってくるでありましょうけれども、その問題と生産調整、直には絡まないというように思います。  その点からして、この価格形成の場の報告書の中で、「米全体の需給均衡は生産調整の実施により行い、」というのがまず前提になっているわけでございます。そのもとで食管法における狭い意味での政府米プラス自主流通米が安定的な供給を図れる。この政府米は、くどいようですけれども米価審議会で価格が形成されるわけでございます。一方、自主流通米はいろいろ建値取引とか相対取引とかあるわけでございますが、その一部につき価格形成の部分が玉として出される、こういう仕組みでございます。  以上、簡単でございますが、概略お話をした次第でございます。
  234. 小平忠正

    ○小平委員 この問題でもう少し何点か質問したかったのであります。数種類の米価が出現するという問題ですとか、あるいは運用の審議会等の問題、あるいは良質米、俗にそう言われるものに対して大手業者とか商社等が買い占めを図っていくとか、そういう問題が生じないか、流通について混乱が生じないかという問題、そんなことも含めて質問したいのですが、時間が来ましたので、それは次の機会にさせてもらいます。  最後にもう一点だけ、今、本年度の生産者麦価の決定の時期を迎えております。六十一年以来過去四回連続して麦価が引き下げられてきた。今回そんな方向に行くのかどうか、どうされるのかが非常に心配なところであります。それと、その後には生産者米価、これが次に控えております。昨年は据え置きとなりました。しかし今回は新算定方式にのっとって下げるのか、さらには新新算定方式を打ち出していくことも考えられている、こんなことも聞いておりますけれども、このことに関して現在の検討状況といいますか、それと今後の見通しというか、それについて簡単で結構ですから、最後に御質問いたしたいと思います。
  235. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御質問の平成二年産の生産者米価及び麦価につきましては、当然のことながら稲作及び麦作が我が国農業の基幹であるということを十分認識をいたしまして、米価審議会の意見を聞きまして、食管法の規定に基づき適正に決定するということを旨にして実施することとしております。
  236. 小平忠正

    ○小平委員 終わります。ありがとうございました。
  237. 穂積良行

    ○穂積委員長代理 阿部昭吾君。
  238. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 大変時間が経過しておりますので、簡潔に二、三大臣林野庁長官にお尋ねをしてみたいと思います。  実は、米の自由化はノーである、これは国会で両院それぞれ決議をしておる。私は、けさあたりの新聞の報道などを見て、山本大臣のこの態度に対して大変共鳴をしておるのであります。実は、前の牛肉・オレンジのときに、当時の大臣佐藤隆さん、党は違っても私は若い時代からの親友でありました。実は彼を随分激励をしたのであります。彼も牛肉・オレンジのときに随分断固たる態度で健闘したと思っておりました。ところが、いつの間にやらノーであるという態度は吹っ飛んじゃったのである。私は、今度の場合は、少なくとも国権の最高機関たる国会が、両院において米の自由化はノーであるという決議をしておる。これでもし結局、何だかんだやっておる間におかしくなっておったとなったら、これは政治に対する信頼は全く地に落ちると思うのであります。大体私は、重要なときの農林大臣がしょっちゅう何カ月かでかわるなんというのはあしきあり方だと思っておるのでありますが、本当は農林大臣ぐらいは二年か三年か同じポストで頑張らなきゃいかぬときだろうと思うのです。今、アメリカがむちゃ言っておると私も思う。日本の農村の多くの皆さんもそういうふうに見ておる。ウエーバーがあり、あるいはECEC立場での言い分を鮮明にしてやっておる。このとき、今日本にヤイターなどが言っておるようなやり方に対しては、これは横紙破りだという認識をほとんどの皆さんが持っておる。このときに山本農政はやはり頑張り抜かなきゃいかぬだろうと思うのであります。これが、もしいつの間にやらおかしくなっておったとなったら、私は再び農政不信が火を噴くと思っているのであります。ぜひ頑張り抜いてもらわなきゃいかぬ、そういう意味で、山本農林水産大臣の所信を改めて伺いたいと思います。
  239. 山本富雄

    山本国務大臣 大変な御激励を賜りましてありがとうございます。もうこれは与野党なしに、各先生方から大変な御心配やら御激励やら賜りまして、本当に感激をしております。  先生、今佐藤農林大臣の話を出しましたが、個人的なことを申し上げて恐縮ですけれども、私は彼と兄弟分でございまして、分がなくてもいいぐらい兄弟同様の仲で、もう長い長いつき合い。私が農林水産大臣の指名を受けました翌々日でございましたか、福田元総理のところへ私ごあいさつに伺いましたら、ちょうど彼がおりまして、今彼は自民党の総合農政調査会長をやっておる。そして、しばし牛肉・かんきつのときの話など、あるいはいろいろ参考になる話をいたしまして、最後に、とにかく米はまさに格別なんだ、骨が舎利になってもやれよ、こういう激励を彼自身から賜わった。私は上州人でございまして彼は越後なんですけれども、越後の粘りを上州の単純な頭の中にしっかり入れて頑張るからと。また、上州の言葉に戸板に乗って帰るという言葉があるんですよ。これは国定忠治以来の話でして、いよいよとなったら戸板で帰る以外にない、こういう覚悟のほども彼と話し合ったわけでございます。  それは余分でございますが、いずれにいたしましても食糧問題、米交渉を含めまして日本農政はまさに正念場に来ておる。私は農水大臣を受けたときから、なぜ私のような非力で才能のない者が任命を受けたのかなとかねがね不思議にも思っておりますけれども、どうもだんだん考えてみると、参議院から登用したのも意味があったのかなという感じもしておりまして、腹をくくって頑張るつもりでおります。どうぞよろしくお願いいたします。
  240. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 ぜひひとつ政治生命をかけて頑張ってもらいたいと思います。  それから、私はこの白書を見て感ずるのは、今、日本の農村、農業の中で何が問題かということを考えますと、八十三万ヘクタールの減反水田を一体どうするのか。この減反水田というものが他作目に転換が定着しておるものはまだほとんど少ないのであります。つい近年までは、いずれ将来再び米をやる時期が来るのではないかという淡い期待をみんな持っておった。しかし、どうもこの二、三年、再び米をやるという時代は難しいぞという判断を現場の米づくり農業者はほとんど持つようになってきておる。しかし、それじゃこの八十三万ヘクタールの減反水田というものを何にするかということになると、これが全部果樹にかわる、あるいは畑にかわるということになったら、今でも畑も果樹も全部市場は供給の方が過剰なんです。過剰傾向にある。ここにどんどんさらにこの八十三万ヘクタールの減反水田というものをいろいろなものに転換していった場合に、この畑農家なり果樹農家が今非常に苦しみ抜いておる、豊作なるがゆえに経営が全部パンクするというこの事態がありますために、他作目への転換の決断がつかないのです。それじゃよく言われる、えさ穀物とか大豆とか麦は全部輸入じゃないか、これに転換したらどうかということになると、残念ながら全然ペイしないのです。したがってどうするか、この問題があると思うのです。  そこで、私はこの白書あるいは「平成二年度において講じようとする農業施策」をよく読んでみても、減反水田をこれから五年、十年かかって一体どのようにしていこうとするのかということは一行もない。あるとすれば、畑等に転換するという二十文字ぐらい書いてある行が一つだけあるのです。あと、八十三万へクタールの減反水田を年次計画でも立てて一体どのようにするかなんというものは全然ない。したがって、この減反水田を抱えている農家というのは米づくり農家がほとんどですから、この皆さんはここは一体どのようにするのかということを、おのおの模索はしておるけれども確信ある打開のめどをちっとも持っておらないという問題なんです。この問題に山本農政は一体どうやって立ち向かおうとするのか、お伺いしたいのです。
  241. 山本富雄

    山本国務大臣 先生、後で専門家からお答えさせますから。  正直に申し上げますが、私ども答弁しながら、減反三割、血の出るような努力でやってくださったのだ、こういうことを言うのです。言ってきて、私まことに不敏だったと思うのですけれども、後がどうなっているかということを、後をどうしようとしているのかということを、本当に心がそこに及ばなかった、農政の担当者としてまことに恥ずかしいなとけさ思ったばかりなんです。というのは、けさ勉強会をやりましたら、これからの具体策、そうきちんとした具体策かどうか私も疑問ですが、とにかく専門家と称する我が局長が私に教えたわけなんです。その教えた中で、水田の約一割弱が地域輪作農法、かえているのでしょうね。一割だけなんです。そうしたらあとはどうしたのだと言ったら、あとはこれからだと言うのです。ですから、この地域輪作農法が何物なるか私もよくわかりませんけれども、とにかくそれによってほかへ転向、転換していこう、そういう施策を講じてきていることは間違いがない。講じた結果、現状では一割弱にとどまっておるという、まことに申しわけないというか情けない状況でございまして、私どもも心を改めまして、片やガットの問題ばかりに頭が行っておるものですから、うちの一番大事なところを見失ってしまってはならないと思っておりますので、これから局長が答弁いたしますが、その答弁も含めて、また先生のお力もお知恵もかりながら、大事な減反の後始末といいますか、あるいは発展的な後始末を考えていかなくちゃなるまいと思っております。
  242. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 ここは政治の場ですから、専門家の答弁は要りません。専門家の答弁は後でプライベートにお伺いいたします。  そこで、今私は農政審のたび重なるいろいろな提言その他を読んで、農業の中をちまちまとどのようにしていくかというのが綿々と書いてあるのです。それはそれなりに重要なことであります。しかし、今農村がどのように激動しておるかというのは、御案内のように、かつて三〇%近い農業就業人口が今現実に五%くらいまでに圧縮されてきておるわけです。その皆さんが、圧縮された部分がどのようになったかというのは、一つは、この都市社会の今日の発展、高度経済成長の工業なり三次産業の分野に農村から送り出されたる人たちなんです。あるいは農村の中にとどまって、しかし農業だけでは食えませんから、二次産業、三次産業、一次兼業、二次兼業というぐあいになっておる層が莫大にふえておるというのが今の姿です。かつて、石炭から油にかわるという時代に石炭転換政策というものがとられて、国は莫大な金をかけて石炭から石油時代への転換をやったのです。今、日本の近代産業が世界で目を見張るようになっておるというこの原動力は、この工業の担い手を全部、高い教育投資をやって農村から送り出した皆さんが主力なんです。この農村を、都市社会の方は今や、特に無責任な評論家どもはめちゃくちゃなことを言っているわけです。  それはそれとして、この農政審というものは、農業の中をちまちまとどのようにやって構築していくかということをやらなければならないというのは確かに本業ではある。もう一つの視点は、日本の全体構造の中で農業と農村をどのようにしていくのかという、もっと立体的な――私の郷里の大先輩で石原莞爾さんという東条英機と拮抗した軍事戦略家がおりました。この人は農村工化論を旗印にしたある考え方を編み出したというので、僕ら若い時代に随分傾倒したのであります。そういう意味で私は、農業と農村を再構築するためには農業の中をしっかりと再構築しなければならぬけれども、同時に、農業、農村の周りにどういう新しい構造をつくっていくか、これなしには農業もよくできないし、農村も変わっていくことができない、そういう意味で言うとこの農政審の議論は、農業の中からだけの、農業の中だけをちまちまとやっていこうということだけでは日本農業や農村が今直面しておる問題は根本的には解決されないと私は思っておるのです。そういう意味で、この農政審のあり方というものに対して、農村構造という観点に目を向けた立場でいろいろな考え方を練り上げてもらわなければならぬ。それが一つ。  時間がありませんので全部申し上げますが、私は、価格形成の場と言っておりますけれども、つい最近までは正米市場などという言葉がはやっておった。まかり間違えば、これは今の米という厳しさに直面しておるこの中を一遍でがたがたにする危険性も持っておると思っておるのです。その意味では、運営については私は非常な懸念を持っております。これは答弁要りません。今までちまちました答弁を何度も聞いておりましたから、それ以上の答弁が来ると思っておりませんので答弁は要りません。したがって、この運営については、ぜひひとつ相当腹をくくったものを持っていないとえらいことになる、こういう警告をしておきたいと存じます。  林野庁長官、前の松田林野庁長官は我が郷里の先輩であります。大変じっこんにいたしました。そこで、山というのは五十年間たたないと金にならぬのです。私どものような昭和一けたの時代の人間は、五十年先にならなければ金にならぬことでも突っ込んでいきますね。今のこの戦後の新しい世代で生きた皆さんが、五十年先にならぬと銭にならぬ山などに突っ込むかというと、突っ込まぬのです。そこでどうするかなのです。  私は、前の長官とこういうプライベートな議論をし合いました。例えば、この山が今地ごしらえをやって植えつけをやって五十年かかって十億の山になる、しかし、今の山というのは実は三十年間ぐらいは投資のしっ放しなのです。前は、くいになれば田んぼに稲ぐいで全部金になった、もうちょっと長くなれば長木か何かでこれもみんな金になった、間伐材は全部金になったのです。今は金をかけなければ間伐なんかもできませんから、三十年間は投資の連続なのです。そして、五十年先にならなければ金にならぬという林業に突っ込んでいくほど、今農山村に余裕はないのです。そこで、この山が五十年後に十億になる山だというなら、金を突っ込まなければならぬ三十年間に五億なら五億というものを、例えば毎年一千五、六百万ずつ非常に安い金利で貸す。私は金利ただでいいのじゃないかと思っているのです。水資源あるいは災害対策、緑、空気、いろいろな意味で貢献するわけですから、金利はただでもいいというので、将来、五十年後十億になる山ならば、金のかかる三十年間はそのうちの五億円ぐらいを毎年一千五、六百万ぐらいずつお金を貸す、五十年後皆伐をやったときに清算払いにさせるというような制度でもやれば、若い方々も、この山、五十年後になれば清算払いになるのだけれどもというようなことがあったとしても、毎年毎年一年間に非常に金利の安いお金が一千五、六百万ぐらいずつ融資を受けられるとなれば、山に突っ込む人たちも出てくるであろう。  林野庁もぜひひとつ、従来いろいろな努力をされてきましたけれども、これは単に林野庁の山のためだけじゃなくて、民間の山まで含めたいろいろな林道整備などに林野庁随分突っ込んでいるのですよ。今のようになってくると、林野庁、何だ、赤字で何をやっておる、こういうことになってくるわけですよ。これが今の経済合理主義社会の常ですから、その中で林野庁は、将来の林業というもののあり方に新機軸を出すべき時期に来ておるのじゃないかということを提言を申し上げたいのでありますが、長官の感想をお聞かせ願いたい。そして、さっき大まかに申し上げたことに大臣からもう一言お伺いして、長官の御答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  243. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま先生から林野の問題について、激励を含めて御注文をいただいたわけでございます。  現在の日本の森林の造成の段階と申しますか、御承知のとおり、戦中戦後大量に伐採をいたしまして、その後の植林につきまして、これは一千万ヘクタールを実現いたしました。しかしながら、いまだいずれも造成過程にございまして、経費、労力等をつぎ込む一方で、収益は十分上がらない、こういう状況でございます。したがいまして、特に林業者にとりましてこの森林を将来に向けて維持発展させていくという観点から非常に難しさがあるということで、私どももこれまで、これは先生御承知のことを一々申し上げませんけれども、造林等の補助金につきましても、その金利あるいは償還期間等については現在の融資体系の中で可能なぎりぎりのところまでその融資条件を改善するというようなことで進めてきておるわけでございます。しかし、今の林業者あるいは林業労働力の状況等からいたしまして、今後さらにその社会資本の整備でございますとか機械化の問題でございますとか含めまして、林業の生産、流通の条件をどういうふうに改善をして二十一世紀に向かってこの森林を整備していくか、国民の要請もますます公益的機能を中心に多様化、高度化しておりますし、国産材時代のためにいかなる条件整備をするかという観点からも、今の林政の言うなれば点検をいたしまして今後の新たな展開を図っていくにはどうしたらいいか、こういうことが私ども自身にとっても一つの課題であろうかと考えております。  先般、新行革審におきましても、国有林問題と並んで今後の林政の展開について一つの方向が示唆されておる状況でございますので、私ども今、林政審議会にまた改めて今後の林政全般の展開について突っ込んだ御議論も願って、それに基づいてまた施策の新しい展開も図っていきたいと考えておるところでございますし、あわせて国有林問題につきましても、本日もたびたび御議論いただきましたような状況の中で総括的な対応策も検討してまいるということでございます。客観情勢等もろもろ難しい条件の中におきます政策展開を模索するということでございますので、いろいろ難しい問題を抱えておりますけれども、一生懸命取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。よろしくお願い申し上げます。
  244. 山本富雄

    山本国務大臣 どうもありがとうございました。石原莞爾先生の名前、非常に懐かしくて、私は戦後、開拓を三年半ほどやりましたけれども、ランプの下で随分読んだものでございます。大変懐かしく覚えております。  先生指摘の、とにかく農業オンリーで考えてはだめだ、農村全体の問題あるいは国土開発、形成、全体の中でとらえていくような農業政策でなくちゃだめだよ、こういうお話でございまして、そういうことをもとにしてよくそれぞれの機能を使いなさい、こういうふうに承りました。そのつもりでしっかりいたしますが、どうかまた時間を見つけてプライベートでもお教えを賜りたい、こういうふうに考えております。ありがとうございました。
  245. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 終わります。
  246. 穂積良行

    ○穂積委員長代理 次回は、来る三十日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十九分散会