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1990-03-28 第118回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年三月二十八日(水曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 亀井 静香君    理事 石破  茂君 理事 大原 一三君    理事 中川 昭一君 理事 穂積 良行君    理事 柳沢 伯夫君 理事 石橋 大吉君    理事 日野 市朗君 理事 西中  清君       阿部 文男君    井出 正一君       内海 英男君    大石 千八君       唐沢俊二郎君    古賀  誠君       杉浦 正健君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    近岡理一郎君       仲村 正治君    原田 義昭君       二田 孝治君   三ツ林弥太郎君       三原 朝彦君    御法川英文君       有川 清次君    遠藤  登君       北沢 清功君    佐々木秀典君       田中 恒利君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    前島 秀行君       目黒吉之助君    倉田 栄喜君       東  順治君    藤原 房雄君       藤田 スミ君    小平 忠正君       江田 五月君    亀井 久興君  出席国務大臣         農林水産大臣  山本 富雄君  出席政府委員         国土庁地方振興         局長      野沢 達夫君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         農林水産省農蚕         園芸局長    松山 光治君         食糧庁長官   浜口 義曠君         林野庁長官   甕   滋君         水産庁長官   京谷 昭夫君  委員外出席者         議     員 大原 一三君         農林水産大臣官         房審議官    武智 敏夫君         農林水産委員会         調査室長    青木 敏也君     ───────────── 委員の異動 三月二十八日  辞任         補欠選任   大石 千八君     原田 義昭君   佐藤  隆君     御法川英文君   丹羽 兵助君     井出 正一君   鳩山由紀夫君     三原 朝彦君   東  順治君     藤原 房雄君   阿部 昭吾君     江田 五月君 同日  辞任         補欠選任   井出 正一君     丹羽 兵助君   原田 義昭君     大石 千八君   三原 朝彦君     鳩山由紀夫君   御法川英文君     佐藤  隆君   藤原 房雄君     東  順治君   江田 五月君     阿部 昭吾君     ───────────── 本日の会議に付した案件  山村振興法の一部を改正する法律案安倍晋太郎君外十四名提出衆法第一号)  農林水産業振興に関する件(畜産問題等)  畜産物価格等に関する件      ────◇─────
  2. 亀井静香

    亀井委員長 これより会議を開きます。  安倍晋太郎君外十四名提出山村振興法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。大原一三君。     ─────────────  山村振興法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ─────────────
  3. 大原一三

    大原議員 山村振興法の一部を改正する法律案について、趣旨の御説明を申し上げます。  昭和四十年に制定された山村振興法に基づく山村振興対策につきましては、昭和五十年及び六十年の法改正を経て今日まで、産業基盤生活環境などの地域格差の是正を図ることを目的とした各般にわたる施策が推進され、一定の成果を上げてきているところでありますが、山村現状は依然として他の地域との格差が解消されず、また、若年層を中心とする人口の減少がなお続くなど極めて厳しいものがあります。  今後、土地条件制約等から総じて生産条件が不利な山村地域について、その活性化を図っていくためには、個別の農林漁業経営改善に加え、地域における就業の改善生活環境整備を進めていくことが必要であり、このため、生産基盤整備等施策とあわせ、地元農林水産物加工の増進、担い手の定住化促進のための生活環境整備等、多様な事業展開していくことが緊要な課題となっているのであります。  また、これらの事業を円滑かつ効果的に推進していくためには、地域を挙げての積極的な取り組みに期待されるところが大きく、最近では、農業協同組合等法人による実施も増加してきていることから、これらの資金需要にこたえ、その取り組みを促進していくことが必要となっております。  このような実情にかんがみまして、農林漁業金融公庫資金に設けられている振興山村過疎地域経営改善資金について、貸し付け相手方及び貸付対象事業の追加を行い、山村地域農林漁業振興地域活性化の推進に資することとし、ここにこの法律案提出いたした次第であります。  以下、改正の主要な内容について御説明申し上げます。  第一に、本資金貸し付け相手方として、農林漁業者の組織する法人を加えることといたしました。  第二に、貸付対象事業として、農林漁業者共同利用施設造成等を加え、これにより、従来の農林漁業経営改善から生活環境整備森林レクリエーション等まで対象を広げることといたしました。  以上が山村振興法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  4. 亀井静香

    亀井委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  5. 亀井静香

    亀井委員長 本案に対しましては、質疑討論とも申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  安倍晋太郎君外十四名提出山村振興法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  6. 亀井静香

    亀井委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 亀井静香

    亀井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  8. 亀井静香

    亀井委員長 次に、農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。穂積良行君。
  9. 穂積良行

    穂積委員 まずは、山本大臣農林水産大臣御就任おめでとうございます。今年末のウルグアイ・ラウンドでの農業交渉の決着に向けて、農業をめぐる非常に困難な情勢のもとで、大臣の取り組まれる課題はいろいろ難しい問題がございますが、大臣の卓越した御指導をお願いする次第でございます。  私は、きのう大臣所信表明を伺いまして、これからの平成二年度の予算審議もございますし、関係法案審議もございますし、この際、農林水産大臣としての基本的な農政についての考え方をお伺いしたいと思っております。お答えをちょうだいする前に、多少私の農政についての考え方も申し上げ、その上で大臣からお伺いしたいと思います。  御承知のとおり、今回の衆議院の総選挙では自民党は全体としては勝利をおさめさせていただいたわけでありますが、昨年の参議院選挙に引き続き、農政にかかわったベテランの先輩の諸先生落選の憂き目を見た方も何人かいらっしゃるわけであります。最近、農政不信という言葉がございます。自民党はもともと、そのときそのときの困難な状況の中で農家及び日本農業を守るために精いっぱい努力を重ねてきたと私は思っております。言うなれば、農家あるいは農業団体の言い分で聞き得る限りのことは聞いて農政を進めてまいったということでありますが、残念ながら、今申し上げたような最近の選挙の結果が出ているわけでございます。そもそも、我が国経済の全体の発展の中で農業分野は極めて難しい局面に立たされ続けてきております。言うなれば農政しんがり戦いであります。過去二度のベテラン農政議員落選などは、しんがり戦いにおける名誉ある戦死者だと私は思っておるわけでございます。  そんな気持ちで、さて農政不信ということをどう考えたらいいかと考えているわけですが、それには、これまでの戦後の日本経済発展の過程で農家それから農村社会を守って、その上に我が国社会あるいは政治が安定を実現できた、こういう事実があると思うわけであります。その上で、その安定した社会、安定した政治の中で自由競争市場原理基本とする他産業分野農家から、農村地域からまじめで優秀な労働力が供給され、日本経済発展の支えになった。その基本農業あるいは農村を守るための農政を続けてきたその上に、現在のような我が国経済発展、豊かな社会に向けての確実な歩みというものが実現できたと思うわけであります。ところが残念なことに、その基盤となった農家農村に対する農政というものが、その農家農村を守るため、他産業に比較して生産性向上合理化などがおくれをとっているという状況の中で全体としての経済国際化を迎えた。その国際経済の中で今や日本農業あり方が問われているという状況の中で、申し上げた農政不信という言葉が出ている、こんなふうに私は受けとめております。  これまでの経済発展国民生活向上基盤となった農政あり方について私は自信を持っていいと思うのですが、問題はこれからでございます。そういうことを踏まえまして、これから本当にしっかりしたビジョンを持って農政を進めていく必要があろうかと思います。そうしたことを申し上げて、大臣農政に対する基本的な考え方をまずお伺いしたいと思う次第であります。よろしくお答えいただきたいと思います。
  10. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  ただいま先生から、貴重な御意見を交えてのお話でございますが、私全く同感でございます。  私は不敏な者でございますけれども、とにかく農は国のもとだということだけは、お米を食べながら小さいときからいつの間にか体じゅうにしみ渡って今日を迎えた。その農は国のもとというのは、明治であろうが大正であろうが、昭和であろうが平成であろうが変わりはない。二十一世紀にも変わりはないというふうに、私は日本農業については基本的には考えられるのじゃないかと思うわけでございます。ただ問題は、先生指摘になりましたとおり、時代の推移の中で生産性向上について対応が非常に難しかった。その点でおくれをとった面がある。しかしまた一方では、日本の国の国内のことだけ考えて農は国のもとをやっていればよかったのですけれども外国との関係が急速に比重を増してきまして、貿易自由化などに伴うさまざまな外圧とでも言うのでしょうか荒波が押し寄せてきて、その中でさらに対応が難しくなったというふうなことだろうと思います。  私は就任いたしましてすぐ鹿野大臣に、命がけで農政不信と闘った御本人ですけれども、いろいろ聞きましたが、とにかく昨年の参議院選挙から本年の衆議院選挙に至るまで鹿野大臣は全国を行脚し続けて、直接団体農民と対話を続けて、そしてまさに農政不信の解消に体を張ってきた、山本も続けてやってくれ、こういう趣旨の精神的な引き継ぎがあった。私は、わかりました、それではやりましょう。ただ問題は、きょう言ってあすできるという問題ではない。世の中何事もそうですけれども、特に農業問題というのは息の長いことでございますから、一服の頓服であしたから日本農業はよくなるとか、そういうことはあり得ないわけでございます。先生承知のとおりです。そしてさらに大事なことは、次の時代を担う若い人が自信を持って農業に取り組める、こういう気持ちを具体的に農政展開を図りながらわかっていただいていく。そして、ともども二十一世紀に向かって日本農業の将来を築く。暗い面ばかりいつも強調されますが、そんなことはない。国土が狭いといえば、その狭い国土の中で、その南北に伸びた、そして高温多雨気象条件というものを逆に活用していけばいいんじゃないか。そしてまた、農業者教育レベルが非常に高い。その高い教育レベルの中で新しい農業というものを各地各様に、まさに適地適産ですけれども進めていけばいいんじゃないか。科学技術も、世界に誇る農業科学技術を持っている。バイオですね。そういうことを総合的に勘案しながら、まさに足腰の強い農業というものを地道に続けていくということに心がけさえすれば、必ず新しい農業展開は可能であるというふうに私は思っております。  これは、農林水産省のみならず国会の先生方、そして生産者、さらに消費者国民全般すべてがお互いの理解を深めつつ、私が今申し上げた農は国のもとだというその姿勢に基づいて新しい農業というものを日本の国の中に確立をしていく。そのために私どもが先頭を切ってやっていけば必ずや信頼を取り戻すことができる、こういうふうに考えております。
  11. 穂積良行

    穂積委員 日本経済世界的な規模に拡大して、国際社会の中で、開かれた経済関係開放経済体制のもとで今後も経済発展させていかなければならないということは自明のことだと思います。そのときに、実は農業というのはそれぞれの国土事情からして特殊性がある、他の産業とは同一に論じられないという中で、大臣おっしゃったように、そうしたことを踏まえた対外、対内の政策をとっていかなければならないと思うわけであります。対外的には、そうした国民経済の中での日本農業が置かれた特殊な状況、その中で他の産業分野とは一律には論じ得ないというようなことでその特殊性理解してもらい、国民基礎的食糧の確保というようなことについては、国際貿易のルールとしても新たな秩序を理解してもらうべきであるという農林水産省あるいは我が国としての今とっている姿勢は、強く諸外国理解を求めるべきだと思うわけであります。そういう一方対内的には、しかし、この農業保護姿勢が足かせとなって今の開放経済体制の中での我が国の生生たる発展ということにマイナスになるようなことがあってはならない。極力国内的には、合理化すべきところは合理化し、生産性向上すべきところは向上するという努力を重ねていく、それが必要なんだということを農民各位にも農業団体にも御理解をいただくように努力を続けなければならないと思うわけであります。  そのようなことにつきまして大変残念なことを時々感じるわけであります。けさの朝日新聞を車の中で見ましたら、農産物価格政策値下げや何やに反対するのは農業改革に反することだという論調がございました。朝日新聞が最近の選挙などにおいてどのような姿勢で報道したかということについては、識者は皆一定の見方を持っているはずでありますが、その朝日が極めて厳しく農業に強い合理化努力農産物価格政策に対する値下げこそが正しいんだ、値下げ政策こそが正しいんだという論調を張っているということなんです。こうしたことについて農林水産当局は、将来のビジョンを踏まえたしっかりした価格政策でさまざまな世間の論調に対して有効な説明、必要な場合には反論ということをしていく必要があるのではないかと思うわけであります。そこで、年度末恒例の繭糸、それから牛肉豚肉加工原料乳政策価格決定の時期を迎えております。食肉に関しては既に審議会に対する農林水産省価格の案が提示されたわけでありますが、これらの価格政策につきまして、農林水産省当局基本的な姿勢をお伺いしたいわけであります。  まず繭糸価格の問題ですが、日本明治以来の産業発展基盤になった養蚕というものが今や極めて局限された分野で、しかし、これに携わる農家は一生懸命努力を重ねている。先行き一体生糸需要は、絹織物は、あるいは繭の生産はどうなるのかという不安のもとに働いておられるのが現状であります。そういう中で今度の繭糸価格決定に当たりましては、農家あるいは農業団体は、ここ数年の原料あるいは製品需給価格の動向を見ながら、できれば将来に意欲を失わない、励みになるよるな価格政策をとってもらいたいということが希望でありますし、そうした農家希望農業団体等を通じて農林水産省も御承知のとおりであります。今回、繭糸について将来の製品需給も含めました見通し、それを踏まえた価格決定についての基本的な考え方、できれば農家の要請というものを十分踏まえた判断をしていただきたいと思うわけでありますが、これについて事務当局からお答えいただきたいと思います。
  12. 松山光治

    松山政府委員 ことしの繭糸価格帯の問題につきましては、いろいろな面を総合的に判断して的確な判断を行っていく必要がある、このように考えております。  今需給の問題につきましてもお話があったわけでございますが、最近の生糸需給状況を若干申し上げておきますと、五十年代後半の急激な需要減退の中で大変過剰問題に悩んだわけでありますけれども、その後六十二年ごろから需要減退につきましてもやや持ち直す気配が出ております。他方生産の方は、高齢化進行等もございまして、去年は減少率が鈍化したという事情はございますけれども減少が続いておりまして、そういう意味で、ある程度の輸入に依存せざるを得ないという状況が生じておるわけでございます。お話のございましたように、養蚕は農山村あるいは畑作地帯におきます重要な農産物でございます。かつまた、絹織物業者におきましても優秀な国産の生糸に対する一定需要というものがあるわけでございます。そういうことを考えますと、今後の課題といたしましては、やはりある程度の輸入依存度は避けられないとは思いますけれども、できるだけの生産改善合理化努力をしていただき、生産性向上を図りながら一定国内の繭、生糸生産を確保していく、そのための各地域での積極的な取り組みを期待したい、このように考えておるわけでございます。  かつまた、最近の価格状況としては、御案内のような取引所価格が非常に大きく振れるという、価格変動が大きくなっておるという事情もあるわけでございます。そういう状況背景にしながら、今御指摘のございましたように、蚕糸生産者団体からは繭糸行政価格帯を引き上げてほしいという御要望をいただいておるわけでございまして、私ども、いろいろとその間の事情はよくお聞きをしておるところでございます。他方、もう一つ需要サイドのことでございまして、かなり大きな内外価格差があるといったような事情背景といたしまして、需要者側からは据え置きを基本とした御要望をいただいておるわけでございます。やはり何と申しましても、需要があっての生産ということを考えますれば、こういった需要者側事情にも十分耳を傾けることが必要な状況にある、このように私どもも認識をいたしております。  したがいまして、今これから具体的な詰めを行う段階にあるわけでございますけれども、ことしの価格決定に当たりましては、今申し上げたような点を十分踏まえた上で、法律の規定に従いまして生糸生産条件あるいは生糸需給事情その他の経済事情を考慮しました上で、特に繭糸世界につきましては蚕糸綿業一体になって発展していく、こういう基本的な立場で適切な決定を行っていく必要があるのではないか、このように考えておる次第でございます。
  13. 穂積良行

    穂積委員 次に畜産物の問題ですが、自民党の中でも熱心な議論が続けられておりまして、その中で特に各議員からの意見として、一つには、農家生産性向上努力を一生懸命払う、そういう中で生産性向上し、合理化が行われ、それによって生産費が下がるというような場合に、政策価格レベルがそれに応じて下げられるのはいかがなものかという問題が提示されております。少なくとも努力した者は報われるというような考え方で、この生産性努力による生産費のダウンの農家への還元という問題は真剣に考えるべきではないかという意見がかなり強いわけであります。これについては、それぞれの政策価格決定方式算定基準等とも絡みますけれども、十分議論して、農家の将来に向けての励みになるような価格政策をとるべきだと思いますが、そうしたことも含めまして、まずは牛肉豚肉政策価格決定に当たっての考え方、さらには加工原料乳保証価格決定に当たっての基本的な考え方、これを事務当局からお答えいただきたい。
  14. 武智敏夫

    武智説明員 先生先ほどお話ございましたとおり、畜産物につきましては、いわゆる食生活の高度化なり多様化に伴いましてかなり順調に伸びてきておるというふうに思っております。当然に長期展望を持って推進しなければならないというふうに考えておりまして、一昨年の二日に酪農と肉用牛に関する長期計画というのをつくっておりまして、それに基づいて一定政策を進めております。これは国が長期計画を決めまして、県と市町村がさらにそれを受けた形で定めていくということで、国と都道府県、市町村一体となった生産振興をやっていくということにいたしております。その定めました計画に基づきますと、例えばコストでいいますと、当面二割ないし三割のコストダウンを進めていこうじゃないかというような目標等も掲げておりますし、あるいは地域別生乳生産需要ですとか生産目標等も設定いたしておりますし、さらにまた取引価格の新たな設定等、いわゆる流通の合理化に関するようなマスタープラン等についても定めておるわけでございます。そういった長期見通し等に基づきまして政策を進めておるところでございます。  ただいまお話ございました平成二年度の具体的な乳価なり食肉価格等でございますが、食肉につきましては、本日の畜産振興審議会食肉部会政府試算提出いたしておりまして、現在委員会にお配りすべく手続を進めておりますので、後ほどお手元に資料が参ろうかと思っております。価格につきましては、豚肉については、一定の従来どおりの試算に基づきまして据え置くことにいたしております。それから牛肉につきましては、来年の四月から自由化されるわけでございますので、それへの円滑な移行というようなこともございまして若干、十円でございますが、それぞれ安定上位価格安定基準価格を下げて試算いたしております。それから新たに、来年度から牛肉は自由化されるわけでございますが、それに先立ちまして、肉用子牛保証基準価格合理化目標価格を定めることにいたしておりますけれども、これはいわゆる三種類について定めることにいたしております。黒牛赤牛一つでございます。それから、黒牛赤牛以外の肉専用種一つグループでございます。それからもう一つ乳用種グループでございます。保証基準価格につきまして、黒牛赤牛につきましては三十万四千円ということで決めております。それから、その他の肉用種につきましては二十一万四千円ということにいたしております。それから、乳用種につきましては十六万五千円ということにいたしております。  先生お話ございましたいわゆる生産性向上分と申しますか、農家方々努力につきましてどういうふうに価格に算定するかでございますが、これは乳価なり食肉価格、それぞれの算定方式が違っておりますけれども、当然農家方々努力につきましては一部は農家に還元するというような形で、我々従来も考えておりますし、今度の価格算定についても当然そういう観点から考えていきたいというふうに思っております。
  15. 穂積良行

    穂積委員 いずれにしましても、こうした一連の価格についての農政判断は、関係農家が将来に向けて楽しみを持ち、希望を待ってやっていけるような、意欲を持たせるような姿勢で取り組んでいただきたいということですが、これについて大臣のお考えを伺いたいと思います。
  16. 山本富雄

    山本国務大臣 今園芸局長からあるいは審議官からお話がございましたとおりでございますけれども食肉につきましては、本日試算値を審議会の方へ諮問をして御論議を願っているということでございます。  それから、御指摘がございましたお蚕の方、それから牛乳ですね、蚕糸と牛乳、これにつきましては、地域における重要な農産品である。先生の福島もそうでございますし、私の出身の群馬も、私はお蚕の中で育ったわけでございまして、小さいときからよく承知をしているつもりでございます。生産条件とか需給事情とか経済事情とかいろいろございます。従来のいろいろな経過もございますが、その都度大変苦心をして政府が決めてきたということだろうと思います。やっと幾らか前が明るくなってきたというふうな感じを私どもは率直に持っておりまして、まだここが足りない、あそこが足りないという御指摘十分ございますけれども、せっかく雲間に幾らか木漏れ日が見えてきたというふうなそれぞれの事情もございますので、生産者のこれからの増産意欲といいましょうか、あるいは仕事をしていく意欲をなくすようなことのないように、これから先しっかり行政が対応していかなくちゃならない。また、それぞれの事情をよくきめ細かにしんしゃくをしながら進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  17. 穂積良行

    穂積委員 ありがとうございました。よろしくお願い申し上げます。  次に、農地開発事業の問題について質問をさせていただきます。  最近NHKが、テレビですけれども、二度にわたって国営農地開発事業母畑地区を取り上げまして、農業基盤整備事業の直面する問題点を指摘いたしました。このテレビの放映は随分大きな反響を呼びまして、実は私の選挙区のただ中の地区でございます。地元の関係農家の皆さんあるいは市町村関係者が、この問題について再三にわたり農林水産省に、この問題は真剣に取り組んで円満な解決を図ってもらいたい、地元代議士にも努力してもらいたい、こういうふうな要請がございます。実は私もかつて農政に関与いたしましたけれども農林水産省の組織あるいは職員は、冒頭から申し上げておりますけれども農家のために、日本農業のためによかれと思って一生懸命仕事をしてきたのは認めてもらっていいと私は思うわけであります。ところが時代の変化によって情勢が変化して、当初の善意に発した政策が途中からうまくいかなくなっているというようなケースがこの母畑地区の問題だと思うわけであります。農家の経営規模を拡大させ、経営を安定させようということで農地開発を進めたというような善意の当初の事情からすれば、後を継いだ現在の諸君はその後始末のようなことで走り回される、苦労させられるということについては悔しい気持ちもあるかと思います。しかし、これはほうっておくわけにはまいらない。これも、この解決いかんによっては、農政不信が本当になるか、あるいは信頼を回復するかという問題になるかと思うわけであります。そこで、これについて農林水産省は十分、東北農政局も再三にわたり現地に入り関係者と相談しているということは私は聞いておりますけれども、かつて開田を前提に農地開発をしようとした、それが米の生産調整、稲作転換という時代を迎えて開田はだめだということになり、畑で水を使い、立派な営農をやったらどうだということに計画は変わってきたわけですけれども、こうした諸情勢の変化の中で農家が困っている。実際これから今のままでいくと、毎年大体米一俵で済むということで話に乗ったのが、実は一年一反当たり四万四千円くらいの負担金の額になりそうだなんということで、これじゃとても返すわけにもいかぬような額になっていくという話もあるわけであります。そうした情勢の変化を見て、従来のいきさつにとらわれないで新たな発想のもとにこの問題の解決を図っていただきたいと思うわけであります。  そこで、これは時間の関係もありますので私から一括して申し上げますけれども、まずこの母畑地区の農地開発については受益面積については思い切って見直しをして、営農意欲を失っている方はもう結構です、受益地から外れるのもやむを得ませんということなども含めまして計画を縮減するということが一つ。それから、既に農地開発あるいは基盤整備を進めて受益が発生しているところであっても、この情勢変化というものを考えた場合、これは農政全般、農地政策全般にも及ぶ話でございますけれども基盤整備事業対象農地の転用についても思い切った発想転換をしてはどうかということが第二点であります。それから、一番大事な話ですけれども計画の見直しとあわせまして農家の分担金、負担金の縮減のための最大限の関係者の努力をお願いしたいわけであります。一つには、全体の計画が縮減されれば事業費も縮減されるはずでありますし、その事業費縮減に伴う負担金軽減、それから農林水産省も例の一千億の基金をベースとする利子負担の軽減策など以外にも工夫をしていただいて、現地で地元農家あるいは関係市町村が納得できるような妥当な水準までの負担金軽減というようなことを真剣に早急に検討いただきたいということでございます。  一括して申し上げましたけれども、まず事務当局からお答えをいただき、最後にこの問題についての大臣基本的な姿勢をお答えいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  18. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 先生指摘の福島県の母畑地区の国営総合農地開発事業の問題点でございますけれども、これは地区を取り巻く状況が変化してきておりまして、計画内容が最近の実情にそぐわなくなってきたということが問題点であると考えております。私どもといたしましても、この母畑地区については、農業をめぐる情勢が厳しくなる中で地元の開発意欲減退傾向にあるというようなこともありまして、地区を取り巻く条件は大きく変化をしておりますので、早急に計画の見直しを図る必要があるというふうに考えておりまして、現在計画変更の作業中でございます。  計画変更の具体的な内容といたしましては、事業効果の早期発現による地域農業の体質強化を図るということを基本方針といたしまして、段階的整備考え方を取り入れたい。具体的に、例えば計画の一部工種を国営事業から外すとか、現計画の受益面積を見直すことによりまして計画を縮小して早期完了を図るというようなこと、また地元負担軽減の観点から上水道との共同事業化とか、また整備水準を再検討するというようなことも考えておりまして、事業計画全体の見直しを検討しておる次第でございます。今後地元関係者とも十分相談した上で計画変更の内容を固めてまいりたいというふうに考えてございます。その際、先生指摘の諸点も十分考慮させていただきたいというふうに考えております。また、計画変更の手続が終了した場合には予算の重点配分に努めまして、事業の早期完了に努力してまいりたいというふうにも考えております。
  19. 山本富雄

    山本国務大臣 先生指摘の件でございますが、私も資料を詳細に見ました。それから、今答弁に立った局長からも詳細にお聞きをいたしました。残念ながらNHKのテレビは見ておりませんでしたが。さまざまな経過はあったようでございますけれども二十三年というのはいかにも長い、そして時代の変遷に対応し切れなかった、それで地元の方が非常に苦しんだという実情、その経過を調べながら聞きながらよく身にしみてわかったわけでございますが、先生は地元ですから私以上にわかっていると思います。  そこで、一番大事なのは、農家の負担をいかにして減らすかということに焦点は絞られるだろうと思っております。ですから、農林水産省といたしましては、出先の局等を十分駆使しながら、市町村、県あるいは改良区などとも相談を詰めまして、そして事業内容を、今計画変更中でございますが、先生のおっしゃるとおりできるだけスリムなものにしていきたい、もちろん皆さん方と御相談の上ですけれども、その努力をできるだけ早急に精力的にさせてみたいと思っております。また、平成二年度に予定されております土地改良負担金総合償還対策事業というのを御承知だと思いますが、これら等も適用できないかということなども含めまして、ひとつ早急に前向きで検討させていただきたい、こう考えております。
  20. 穂積良行

    穂積委員 今大臣がおっしゃったように前向きに早急な問題解決のために御努力を願いまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  21. 亀井静香

    亀井委員長 二田孝治君。     〔委員長退席、穂積委員長代理着席〕
  22. 二田孝治

    ○二田委員 ただいまの穂積議員お話にもありましたけれども、国営総合開発事業につきましては秋田県でもたくさんの問題を抱えておったわけでございます。幾多の事業変遷があったわけでございますけれども昭和三十七年から平成二年三月末で事業完了ということに相なったわけでございます。長期にわたります事業関係上、いろいろな農業の変遷もあった、そしてまたいろいろな事情があったということから大変変更があったわけでございますので、どうかひとつ農水省もこの点につきましては十分に配慮しながら事後措置等についてお願い申し上げたいと思います。この件については答弁は必要ございません。  また、いろいろな国営干拓事業につきまして、秋田県では大潟村というのがございます。これにつきましては、今まで自由米、やみ米で大変御迷惑をおかけしておったわけでございます。この事業昭和三十九年十月に完成いたしまして、人口わずか十四人で大潟村が発足いたしました。このときは大変人気がございまして、六月に募集しましたところ、六百十五人ぐらいの応募者の中からたったの五十人の第一次合格者が出た。これだけ優秀な、意欲を持った方々がこの村に入植なさったわけでございます。自来ずっと五次まで入植が繰り返されまして、五百八十戸が現在では入植しております。  これにつきましては、いろいろと問題がございました。過剰作付とか青刈りとかやみ米とか、秋田県でも大分頭を悩ましましたし、また農林省でも大分お困りになったと思います。しかし、平成二年三月十三日、県が農水省に対し、配分農地十五ヘクタールの水田認知をしてほしいということを骨子といたしまして大潟村の営農方針を求めたわけでございます。これが認められまして、村では今度大変意欲を持って頑張る、こういうことでやっておるわけでございます。農水省が平成二年三月十四日に、県の示した営農方針を御承認いただきまして、今度は十五ヘクタール全部水田と認知するから一生懸命頑張りなさい、こういうことで御承認いただいたことだと思います。これは山本農林大臣の大変な御努力によってできましたことで、大変感謝を申し上げております。どうもありがとうございました。ではございますけれども、この問題はまだまだ米過剰という基調の中で大変問題をはらんでおるわけでございますので、今日まで事態が解決できずにまいったのは、農林省の一つの方針、これがあったのじゃないか、こう思いますので、この村内対立というものを大変招いたのだということについての認識を国がどう思うか、ひとつ農蚕園芸局長から御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  23. 松山光治

    松山政府委員 大潟村問題につきましては、御案内のような諸事情の変化の中で現地も御苦労いただいたし、我々農政当局もいろいろと苦慮を重ねてきた経緯があるわけでございます。今先生からお話がございましたけれども、今回の措置は、大潟村が現段階における日本の米問題の現状というのをきちんと見きわめていただきまして、一致して全国の生産者の輪に加わってもらいたい、こういう願いを込めて判断したつもりでございます。いろいろと難しい状況がなお続くとは思いますけれども、ひとつその辺のところを十分御理解いただき、現地でも既に積極的な取り組みが行われておるというふうに承知いたしておりますけれども、我々もそういった努力をバックアップする必要があると思いますし、また関係方々にもその線でバックアップをお願いしたい、このように考えておる次第でございます。
  24. 二田孝治

    ○二田委員 現在十五ヘクタールが認知されまして、そして二七・二%の減反を課していくわけでございますけれども、これには遵守派と過剰派と両方あるわけでございます。万が一これが守られなかった場合につきましては、国ではこれはどういうお考えで対処するのか。ということは、結局今のところ自由米を販売していってもそれを取り締まるという手だてが余り見受けられません。そういうことで、もしこれが遵守されなかった場合にはこれの取り消しとか、そういうものがあり得るのかどうかということをお伺いしたいのですけれども、いかがでございましょうか。
  25. 松山光治

    松山政府委員 まさに今現地で、私どもの願いを踏まえた積極的な取り組みが行われておる段階でございまして、私としてはその線でしっかりした取り組みをやってもらいたい、このように申し上げるところでございます。
  26. 二田孝治

    ○二田委員 なぜ私が一地域問題である大潟村の問題をこのように取り上げているかといいますと、これは言ってみますれば、日本農業一つのモデルケースといいましょうか、今の日本農業の実情を如実に体現しておる、こう言っても過言ではないと思うわけでございます。現地の首長以下一生懸命取り組んでございます。この中で私どもが一生懸命取り組んでおりますのは、過日、水田農業確立後期対策におきまして、地域間調整という制度が、非常に私たちはいいと思っていろいろお願い申し上げ、皆さん方からも御賛同を得、また農水省もこれはいいのじゃないか、こういうことで決定いただいたことがあるわけでございます。これは転作目標面積で「生産者生産者団体の主体的取組みによる関係者の合意の下に、市町村間・都道府県間で、各年度において調整を可能とする」というような字句で出ておるわけでございます。ところが、生産者それから各団体、こういうところにこれがまだよく理解されてないような感じがいたしますので、この件につきまして、これはどういう制度であるのかということを明確な答弁をお願い申し上げたいと思います。
  27. 松山光治

    松山政府委員 水田農業確立後期対策の策定に当たりましては、これまでの対策の成果と経験を踏まえながら、生産者なり生産者団体の主体的な取り組みということを基礎に置きながら、転作営農と申しましょうか、水田農業の確立という観点からその質的な向上を図っていく、同時に、対策の円滑を期していくという点でいろいろな面での工夫を凝らしたつもりでございます。  その中で、今御指摘のございました地域間調整という制度を一つ制度化したわけでございますけれども、これはねらいといたしましては、地域の創意工夫を生かしました適地適産を進めるという考え方のもとに、生産者なり生産者団体を初めとする関係者の合意のもとに、市町村間なり都道府県間で毎年度の転作等目標面積の調整を可能にするという仕組みでございます。これまで市町村の中では、共補償を軸にしながら一定の目標面積の調整ということが各地で行われているわけでございますが、それをさらに広域的な地域に広げていく道を開く。その場合によく言われますことは、そのことがいわば実績になりまして、次の目標が大きくなって出てくるのではないかという心配がございますので、今回の制度の導入に当たりましては、毎年度の話であるということを制度上明らかにして、できるだけ各地で取り組みやすいような仕掛けにしたつもりでございます。     〔穂積委員長代理退席、大原委員長代理着席〕
  28. 二田孝治

    ○二田委員 局長の話の中で、適地適産を推し進めるためにこういう制度を導入したのだ。とりもなおさず日本農業の将来というのは、余り地域エゴにとらわれていては私はだめだと思うのでございます。どこにどれが合うのかということは、これは天候にも左右されるし土壌にも左右されるし、そんなようなことで農業は自然生態系を対象とする作業でございます。しかるがゆえに適地適産ということは緊急に進めていかなければならない必要な課題だと思うわけでございます。とするならば、この地域間調整といいますのはまさにこれにぴったりの施策じゃないか、私はこう思いますので、これにつきまして、これは強制はできませんでしょうから、もっと積極的に農林省が指導してもらいたいということが一つでございます。  それから、この地域間調整を進めていく場合におきまして、おれのところのものは外に出さないよ、例えば自分のところの米の面積についてはほかの県に配分してやるのはもったいないのじゃないか、だからその枠内だけでやってしまおうという考え方が強いのじゃないか。これは団体にしろ各市町村にしろ都道府県にしろ同じだと思うのです。そういう壁をどうして取り払っていくのかということがまた一つの大きな問題点になると思います。とするならば、やはり農林省はひとつこの際、具体的にどこにどういう作目が合うのか、天候条件、土壌条件、そんなものをみんな勘案しながらそういうもののマップみたいなものをつくってみてもいいのじゃないか。そして、そのぐらいのことをやってやらなければ、日本農業というのは今後容易でないのじゃないか、こんなふうに思うわけでございます。そういう意味がまた、この狭い国土をむだに使わないで有効に生かす一つの道だ、それがまた農業の目的にかなったものだと私は思います。この件につきまして、農林大臣どうですか、農業適地マップぐらい、あなたの御指導でつくってもらうようにしていただけませんでしょうか、御答弁をお願い申し上げます。
  29. 松山光治

    松山政府委員 これまでの転作問題の取り組みにおきましては、やはり適地適産というのが一つ基本的な考え方でございますし、いわば地域分担という考え方に立ちました、先生のおっしゃるようなマップとまではいきにくいかもしれませんけれども一定の見取り図といったようなものを考えながら進めてきたという経緯もあるわけでございますが、各地域のお考えと全体としての需給の枠組みとの間になかなかぴったりいきにくい面のあることも事実でございます。  地域間調整は、私ども目標面積を配分いたしますときに、一種の適地適産の考え方に立ちました傾斜配分というのを行っておるわけでございますけれども、どうしても行政では手の届きにくいような部分について生産者なり生産者団体の主体的取り組みで一種の調整をやっていただくという任組みでございまして、そういう意味では、どれだけ関係団体がその気になってやっていただくかということにかかわってくる面も多いわけでございますが、幸い全中の対策本部におきましても、この問題を農協が中心となって地域の合意を図りながら積極的に取り組んだという方針が既に出されており、かなりの多くの県で行政と団体との間の話し合いが進められておるという状況もあるわけでございます。ただ、何分にも初めてのことでございますし、地域間の折り合いのつきにくさということもございまして、市町村間の調整はかなりの取り組みが見られるようでございますが、県間の調整は一、二という段階に今のところはとどまっております。私どもも、今般補正予算でお認めいただきました特別対策費もそういった推進活動に使ってももちろん結構だということにしておるところでございますし、押しつけはいかぬと思いますけれども、できるだけ地域の自主的な活動が円滑に進むようなお手伝いはしていきたい、このように考えておる次第でございます。
  30. 二田孝治

    ○二田委員 今の適地適産の推進の考え方、それから農業適地マップみたいなものの作成、こういったものを大臣は任期中につくる路線を引いてもらいたいと思うのですけれども、御決心のほどはいかがでございましょうか。
  31. 山本富雄

    山本国務大臣 せっかくの御提案ですから、よく勉強させていただきます。
  32. 二田孝治

    ○二田委員 よろしくひとつお願いを申し上げます。  今、畜産物そして蚕のお話もございました。次に参りますのは、これは米価の決定の季節がやがて来ると思うわけでございます。これは農政不信の最たるものでございましたけれども、この算定方式につきまして、昨年度はおかげさまで据え置いてもらったわけでございますけれども、その中で議論になりましたのは、生産費の中で、一・五ヘクタール以上の農家を青天井にして、基準にして算定するというようなことが盛んに議論になりましたわけでございます。ことしはまだ参らないでしょうけれども、やがては参ることでございますから、ことしの米価の算定といいますか、そういうものの一つの方針みたいなものがもしございましたら、ひとつ教えてもらいたいのです。
  33. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま二田先生から生産者米価方式の点についてのお話がございました。生産者米価につきましては、元年産米価決定におきまして、生産性の高い稲作の担い手層に焦点を置くとともに需給調整機能を強化した新算定方式によりまして算定をしたわけでございますが、諸般の事情から、この算定方式に基づいた計算に関連をいたしまして据え置きとされた経緯、先ほどの先生の御指摘のとおりでございます。この問題に関連をいたしまして、平成二年産以降の生産者米価算定方式につきまして、その際の各般の御論議を踏まえてさらに検討をしていくということになっているわけでございます。私ども、そういう御議論を受けまして現在検討中でございまして、先生御提起の、その内容についてというお話でございますが、現在まだそれにお答えできるような段階になっておりません。なお、繰り返すようでございますが、平成二年産以降の生産者米価方式につきましては、御議論を踏まえまして、十分慎重に対応してまいりたいというふうに考えておるところでございますので、よろしく御理解いただければと思います。
  34. 二田孝治

    ○二田委員 持ち時間が参りましたので、あと一つだけ御質問をいたしますけれども、私は、米価の決定時期につきましても疑問に思っているのでございますが、八月ごろになってしまう。稲穂が垂れてきてから、作付してからになってしまう。そうなりますと農家はやはり指針が立たないわけでございます。どうか作付前にこれを決めて、そしてことしはどのぐらいの米価になるのかということをはっきりしてから農家に作付なりなんなりの営農方針を立ててもらう方が、もっと合理的だといつも思っているわけでございます。今後これにつきまして考慮の余地がありましたら、よろしくお願い申し上げたいと思います。  以上をもちまして終了いたします。
  35. 大原一三

    大原委員長代理 田中恒利君。
  36. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 まず、ガットのウルグアイ・ラウンドの現在の状況、今後の見通し、事務局で結構ですからお答えいただきたいと思います。
  37. 川合淳二

    ○川合政府委員 ガット・ウルグアイ・ラウンドにつきましては、一九八六年、昭和六十一年九月にプンタデルエステ宣言を契機といたしまして交渉が開始されたわけでございます。ようやく昨年末までに主要国の提案が出そろいまして、現在その内容を明確化する作業が行われているところでございます。御承知のように本年末が交渉の期限になっているわけでございますが、これらの提案がどのように調整され、合意に達していくかということは、これからの実質的交渉にまたなければならないという状況はございます。今後の交渉がどのようになるかというのは予断を許さないわけでございますが、ウルグアイ・ラウンドにつきましては、単に関税だけの国境調整措置ということではなくて、もう少し広い各国の農業政策そのものも対象となっておりますので、合意達成には相当の努力を要するのではないかというような感じを今持っているところでございます。
  38. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 大臣、初めて御質問いたしますが、就任、大変御苦労さんです。今農林大臣というのは大変だと私思います。これはなかなか大変な時期に御就任されたわけですが、私ども若干立場は違いますが、ひとつ精いっぱい、思い切った農政の推進に方向づけをしていただきたい。我々は我々の立場で率直に当委員会やさまざまな機会を通して要請をおつなぎをして、徹底した議論の中で、日本農林水産業の行き詰まりを打開するためにお互い全力を尽くしたいと思っておりますので、ひとつよろしくお願いいたします。  そこで私、大臣にお尋ねいたしますが、今局長さんの方から、ガットの五ブロックですが、各ブロックからそれぞれことしの末までに国際的な貿易の秩序をどうするかということについての提案がなされておる。我が国は、食糧安保論を中心として自給率を高める。それぞれの国での一定農政分野というものを示しながらガットの中で議論してもらっておるのだと思いますが、アメリカあるいはECなどを中心に各国の状況について事務局が詰めをしておるということでありますが、その中で最近、米国が農産物のミニマムアクセスというものを設定して、最低輸入数量というものを国内流通量の一%、こういうふうに設定をした。これに基づいて今、日米両国間の農産物貿易の最大の課題になるであろうと言われておる米の問題について言えば、我が国の十万トンの米の輸入自由化が迫ってきたのではないか、こういう形でのマスコミの報道が大きく出て、実は米に関心を持つ農家はもとよりでありますが、国民全体が大きな関心を持っていることは御承知のとおりであります。  この問題について昨日も米についてどうするんだ、こういう御質問がありましたが、大臣は、主食であって国土保全に大きな役割を果たしており、さらに国会の決議などもあるので自給の基本でいく、こういう御答弁をされておるわけでありますが、自給といっても、実は国会の決議といっても、衆議院の決議と参議院の決議と若干ニュアンスが違いますね。参議院では完全自給ということを明確にうたっておりますね。私たちは開放体制というものを、これ以上まかりならぬ、こういう意味での議論をして、文案などはついても議論があったわけでありますが、衆議院は完全という言葉まで入れることはできませんでした。そういるニュアンスの差が率直に言ってあるわけであります。一〇〇%完全に米を自給していくという議論もあれば、少々はしようがないじゃないかという議論も一部出てきております。そういう意味で、一%十万トンというような形で、今アメリカでありますけれども、私いろいろな意見が出てくると思う。そういう状況に今きっかけが出ておるわけでありますが、こういう状況の中で大臣は、この米問題、そして伝えられておるこういう各国の最低輸入数量といったようなものを一%と設定して考えてくるというこの問題はついて、どういうふうに今お考えになっていらっしゃるか、この際お示しをいただきたい、こういうふうに考えます。
  39. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えをいたします前に、先生から大変御激励を賜りまして本当にありがとうございます。立場の相違を越えて応援してやる、こういう大変ありがたいお話でございまして、農政の大先輩である先生からそういうお話を伺ったということは本当に私は感激しておるわけでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  そこで、今御指摘の最低輸入量一%、この間来しきりとマスコミ等の報道をにぎわしておるわけでございます。これははっきりしておるわけでございまして、米国が提案をした関税化構想、これは今までずっと同じことを向こうも言ってきているのです。この間の専門家会議の際にそれらの内容について各国が確認をし合った。わからない点は質問をし合った。こういうことの中で、米国の関税化構想の一環として、輸入実績が当該品目の国内消費量の一%を下回る場合には関税割り当ての初年度の数量は一%を最低限とする、こういう説明があったわけでございます。一%という数字がそこで出てきた。そのほか十年間などというめど、目標なども出ておった。私どもは、今出された米国の主張というものに対して、関税化構想は我が方は受け入れられないということを終始今まで強く表明をしてきておるわけでございます。これからもこの考え方を貫いてまいりたい。  また、米につきましては、先生指摘がございましたけれども衆議院参議院の御決議がある。国会の御決議は非常は重い。特に参議院お話が出ましたが、私は参議院議員として場内におりまして決議に入った一人でございますから、あれは満場一致で採択をしたんだ、そういうこと等を踏まえまして、今後とも国内産で自給をするという基本方針を貫いていきたい、こう考えております。
  40. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 米はついては、気持ちの上では、完全自給という方向で最大限努力をしていく、こういうふうは私は今の大臣の御答弁を聞きながら実は一応承っておきたいと思っております。  そこで、時間の関係がありますから、本論の畜産の問題にちょっと入りたいと思います。  三月末になりましたので畜産の価格決定する時期になったわけでありますが、ことしの畜産物価格決定に当たって、特に政治的には二つの特徴があると私は思うのです。  一つは、やはり総選挙をやった直後の政策決定であるということであります。私たちは総選挙の中で、改めて日本農村の実態というものを嫌というほど知らされたと思う。特に私は、与党自民党はこの問題では厳しく農民の批判を受けたと思っております。私が承知をしておる与党の農林議員の諸君も大分落ちましたね。逆に社会党は実は勝たしてもらった。社会党の政策が立派だからということよりも、自民党に対する批判が社会党に逆に期待を寄せられた、こういうふうに私などは率直に思っておりますよ。思っておりますが、それだけにやはり私たちは、今の日本農村や酪農や肉畜農家の実態がどうなっておるかということを、いろいろな集会やいろいろな機会を通して嫌というほど知らされたと思う。そして私たちは、一定の約束、公約と言っていいかどうかは別にして、皆さんの御期待に沿うように最大限努力をするということも言っておる。あるいは当面の三月の畜産物価格などについては生産費、所得を補償するという視点に立って十分な価格を実現する、こういうことを言っております。今お話を聞くと、値下げするのが農業改革だというようなマスコミの論調があったと言うが、そういう事態ではないということは、私はこの衆議院選挙をやった先生方はみんな同じだと思うのですね。大臣は、きのうの所信表明演説の最後に、私ここにきょう持ってきておりますけれども、あなたはちゃんといいことを言われておるんだ。読み上げる必要もありませんが、ともかくこれはまとめだと思いますが、二十一世紀に向け信頼される農林水産行政を確立し、農林水産業者、特に若い人たちが誇りと希望を持って農林水産業に取り組めるよう、全力を尽くす、こういうように締めくくりで言っていらっしゃるわけですね。こういう農政の信頼というものがないから今こういう状態になっておると思うのですよ。だから、それを取り戻すというか、改めて構築するためにも、ことしの畜産物価格決定が、巷間言われるように引き下げをするとかそんなもので我々の気持ちがおさまるものじゃないと私は思います。いろいろ事情はありますが、そういう総選挙直後の政策決定であるという特徴が一つある。それからいま一つは、今私が御質問したウルグアイ・ラウンドというか、対外的な問題であります。これから出てきておる論調は、内外価格差をどう接近させるか、日本農業をどう近代化していくかということですね。  この矛盾というか、この双方の立場が、今度の三月末のあす最終的に決められるであろう数字の中に実は込められていくと思うのですよね。その点をどういうふうに処理されるかということに非常に関心を持っておるし、注目しておるところでありますが、この際大臣の、私どもにお伝えいただける範囲で結構でございますけれども、お気持ちをお示しいただきたいと思います。
  41. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  今先生からるる御指摘がございました。私は所信におきましても二十一世紀に向けて信頼される農林水産行政を確立する、これを基本理念としてまいりたいということも確かに申し上げ、それを実践をしていきたい、こう考えておるわけでございます。  畜産物価格の問題、いよいよそのタイミングを迎えたわけでございますが、牛肉豚肉につきましては、御承知のとおり我が省でいろいろ苦心の結果、試算値を出しまして、それを審議会の部会に本日お願いをしておるということで、数字等については先ほど来審議官の方からお示しをしたとおりでございます。また、これからの乳価の問題あるいは蚕糸価格の問題、ひいては夏に至るでしょう米価の問題、そういう問題等々につきましても、先生から農政不信のよって来るところ、あるいは選挙結果等々を踏まえてしっかりやれ、こういうお話でございます。これはもうそのとおり私どもは受けとめております。当然のことでございますが、生産事情とか需給事情、あるいは経営実態、生産費調査の結果等を踏まえまして、これからそれぞれ審議会意見を聞きながら非常に苦心をしなければならないと思いますけれども、できる限り国民各般の意向に沿うような形で、確かにあちらを立てればこちらが立たないというふうなことの中で非常に厳しい対応を迫られると思いますが、せっかく努力をしてまいりたい、こう考えております。
  42. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 日本基本的な農業貿易の組み立て方は、食糧安保論ということを言っておりますね。日本の自給率が先進国中一番低い、そして食糧の輸入世界一である、これが我が国の実情であるということを前提にして、これを高くしていくという視点で盛んに食糧安保論というものを言っておる。ガットの中でこれがどういうふうに受け取られておるか。いいニュースもあるが余り芳しくないニュースもいろいろ伝わってくるわけでありますが、しかしいずれにせよ、食糧を自国で賄うということは国の政治一つの重要な柱である、こういう理解の上に立ってこういうものを展開していると思うのですね。ところがどうも現実は、細かく言えば今度の乳価なりあるいは肉畜の価格の形成なり決定を見ても、やはり外国からたくさん輸入せざるを得ないような道筋がだんだん切り開かれてきているように思えてならない。  現実に、例えば酪農家というのは今六万七、八千戸ですか、戸数は。しかし、この十年ほど前までは十一、二万戸あったと思うのですよ。大体半分までは減っていないかもしれませんが、ほとんど半分近く戸数は減っておる。頭数は確かにふえてきておる。全国的に三十頭くらいの飼育頭数になっておると思いますが。つまり、農家生産性合理化をして近代化、つまり農林省の考えておる道筋でありましょうが、そういう方向で努力はしておりますよ。おりますが、現実に乳牛を飼っておる下の層の農家からどんどん脱落をしておる。負債でこたわんとか、これではやっていけないとか、こういうことで落ちてきておる、これが実態なんです。それを政治が直接体験をして、選挙どもその一つの具体的な勝負のときでありますけれども、どうしたらいいのかということを考えるのが我々の仕事だと思うのです。だから、武智君も来ておるが、お役人の皆さんの言うことも、数字を出して言うんだから字にはなっておりますよ。なっておりますけれども、現実の酪農家や今の乳価の実態で果たしてやれるのかどうかということについては、私はやはり疑問が非常に多いわけです。そういうものを我々はここで議論をしておるので、そういう意味で乳価なら乳価決定に当たって、思い切った方法、内容を出していただくということが大切だ、こういうふうに考えておるわけであります。  そういう意味で一つ二つお尋ねいたしますが、昨年はたしか生産費は九・何%、約一〇%と言っておりますが、九・八%ぐらいふえたはずであります。ことしは五・六%ですか、その程度生産費はふえておる、こう言っております。しかし昨年はこの九・八%を据え置きということにいたしました。たまたま数カ月後に参議院選挙を控えて、政治的には非常に一つの緊迫した状況であったという要素もありましょうが、ともかく据え置きをいたしました。その中身は、例えばさっきお話があったが、乳量がふえておる。この乳量は畜産農家努力によってふえたわけでありますから、そのふえた分についてどういうふうに還元をしていくかという問題もある。管理労働費というものを五十四銭ですか、初めてあの中に計算をして入れるということも決められたわけであります。あるいは、子牛というか、ぬれ子ぬれ子といいますが、産まれてわずかな期間の牛が今十一万近くすると思いますね。現実に相当高い。このぬれ子の収入で実は酪農家は大分助かっておる。大分というか、もうほとんど支配的にここで何とか再生産が可能な状況をつくっておるというのが現状だと思うのですね。しかし、考えてみると、乳価決定をするのに、ぬれ子の価格というものでこれが左右されるということは非常におかしい。昨年は恐らくこのぬれ子の価格を七年平均にして一定の操作をして価格の据え置きというところに持っていったという経過がありますね。こういうやり方はいろいろ問題があるといえばあるわけでありますけれども、私はやはり政策的には考えるべき要素や内容をたくさん持っておると思うので、ことしも昨年の方式を取り上げていくという姿勢を持っておるかどうかということが一つ。  それから、これだけではない。生産費の問題については、最近は余り生産費の細かい議論をしなくなったが、つまり一番大きいのは賃金であります。この賃金の評価をどうするかということについて長い間ここでも議論したが、もうどっちも、言う方も答える方も嫌になったのかもしれぬが、最近聞こえませんが、私どもはやはり五人規模以上の製造労働者の平均賃金を採用すべし、こう言っておる。しかし現実は、それを採用すると非常に高くなるということでしょう。やりませんね。あるいは細かく言えば、飼料を刈る労賃と牛を管理する労賃が違うという。大体おかしい。飼料を刈るのも牛を養うのもみんな同じ人がやっておる。同じ労働を提供している。それに対して区別をしている。つまり安いえさ用の労賃というものを採用しておる、こういう問題もありますね。  これから高金利の時代に入っていくと言われている。ことしなんかこれからだんだん金利が高うなるでしょう。相変わらず農協の普通貯金や定期貯金の平均の金利を取っておる。せめて一年物の定期の金利にしてくれということはいつも言っておる。いつも言っておるが、これがやはり相変わらずできていない。  こういう問題から、先ほど来お話のあった生産性のメリットというものを農家にどれだけ復元させていくかということについては、議論をすれば私、いろいろ問題があると思う。昨年は多少やられましたけれども、それだけではない。それは消費者にも還元されなければいけないし、あるいはメーカーにも還元しなければいけないかもしれないが、しかしやはり生産者に相当数のものを還元すべきだと思うのですが、その辺も手抜かりがございます。そういう問題などをこの価格決定に当たって行政当局自体がきちんと取り上げていく、昨年多少やったけれども、これをさらに補強していく、こういう姿勢が私は必要であると思いますが、これは事務当局なんでしょうか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  43. 武智敏夫

    武智説明員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、昨年度の保証価格決定に際しましては、生産費調査は九・八%下がっていたわけでございますが、いろいろ諸般の事情もありまして、結果といたしまして消費税込みで据え置いたことは御承知のとおりでございます。その過程におきまして、先生からも今お話がございましたとおり、例えば乳量の調整ですとか、あるいは子牛価格、ぬれ子価格の調整ですとか、あるいはかねてから例年いつも御要望があったわけでございますが、企画管理労働について初めて制度化するといいますか、算定基礎の中に入れたというような所要のかなりな措置をとったことは事実でございます。明日決める平成二年度の加工原料乳保証価格につきましてはどうするかということでございまして、我々は基本的には、法律の制度本来の趣旨に沿いまして決めていかなければならないというふうに思っておりますけれども、制度本来は生乳の生産条件とか需給事情ですとか、あるいは酪農経営の状況ですとか、そういうこともろもろを考慮いたしまして再生産を確保することを旨とする。当然、生産費が下がった、五・八%ということは考慮するというような形であすの審議会に向けて、また今夜も夜半になろうかと思いますが、現在大蔵省ともいろいろ折衝をいたしております。そういう形で決めていきたいというふうに思っておるわけでございます。  その際にどういう考え方でやっていくかということでございますが、我々、それぞれ生産性向上分農家への還元といいますか、農家努力をどうやって農家に還元するかというようなことを当然一つ一つの要素につきまして検討してやっております。正直言いまして、大蔵省とも各要素の見方でもいろんな意見の違っておる部分が現段階でもございます。相当にこれから激しい調整をしなければいかぬというふうに思っておるわけでございます。ただ、御指摘のような例えばぬれ子一つとりましても、去年いろいろ調整した結果がああいう据え置きになったわけでございますが、その価格は現在の生産費の中にもそのまま残されておるわけでございます。実態の価格はどうかといいますと、ぬれ子は十二万ないし十三万ということでございまして、例えば、去年算定の基礎に用いたぬれ子の価格と現実の実勢の価格と相当大幅に開いておるわけでございます。したがいまして、そういうことを前提にして来年度の価格をどうするかという議論をやるわけでございますが、来年度は御承知のように自由化も決定して施行されることになっておりますので、今までみたいな形でぬれ子が推移するとは少なくとも我々も思っておりません。ただ、それが来年度に向かってどういうふうに動いていくか。去年は、我々は去年の時点で見通してぬれ子も下がるのじゃないかというふうに実は見て調整いたしたわけでございますけれども、結果としては下がるどころか上がっちゃったというようなことになって矛盾をはらんだような要素になっておるわけでございますけれども、いずれにしましても現時点で、ぬれ子にとりましては来年に向かってどういうふうになっていくか、あるいは現段階の数字がどうかというようなことも見まして当然調整していかなければならぬと思っていますし、あるいは乳量の問題等につきましても、御指摘のようなことで調整の方向で我我としては努力いたしておりますが、いろいろなところにおきましてまだまだ大蔵省とは調整がついていないというのが現段階でございます。  具体的にお話のございました賃金の問題でございます。これは毎度毎度御議論になっておるわけでございまして、労賃の評価が、飼育管理労働につきましては北海道におきます五人以上の製造業の賃金をとっておるのに対しまして、飼料作物労働につきまして北海道における農村雇用労賃をとっておるのはおかしいじゃないかというような御指摘がかねてからあるわけでございますが、いわゆる飼育労働の方は、酪農の場合に年中無休で拘束的である、毎日毎日作業しなければいかぬ、休みに休めないというような非常に特殊な理由があるというようなことを考慮いたしまして、特別に北海道におきます製造業賃金並みに取り扱っておるというふうに我々は思っておりまして、要は通常の飼料作物労働につきましては、米以外の一般の農産物価格は全部同じでございますけれども農村雇用労賃をとっておるということでございますので農村雇用労賃をとっておるわけでございます。これを例えば同じとるにしても北海道の平均でなくて全国平均をとればいいじゃないかというような御議論もあろうかと思いますけれども、これも法律趣旨に基づきまして、生乳、加工原料乳の生産が行われている地域生産費をもとにするという前提になっておりますので、そうであれば当然当該地域におきます農村雇用労賃をとるのが妥当でないかというふうに思っております。  それから金利等につきましても、最近三月末にまた金利が上がっておりますので、我々としましては当然そういう金利もまた加味しなければいかぬというふうに思っております。従来から見ております金利、三つの金利の平均で現在とっておりますけれども、そのあたりにつきましては最近ずっとそういうようなものをとっておりますので、そういう考え方で継続していきたいというふうに思っておりますが、いずれにしましても個々の要素につきまして一つ一つ、要はどういう形で還元をし、どういう形でまた一般消費者方々に還元するかというような観点で議論をいたしておるところでございます。
  44. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 去年のやったもの、ぬれ子も入っておるということはわからぬこともありませんけれども、何年分やるかといったようなことが問題になってくるのだろうと思います。しかし、不十分な面がたくさんあるのじゃないですか。例えば企画管理労働、キログラム当たり五十四銭。五十四銭くらいで済むのだろうか。あなたのところの計算は私何となく聞いたけれども、こんなものもこれでいいのだろうかという気もいたしますし、それから今の金利の問題にしたって、どういうふうにやっていくかといったような細かいことをここでは申し上げませんが、しかし相当変えていかなければいけない。特に生産の近代化に努力をして、乳質をよくしていくためにいろいろな努力をしておりますよね。それだけ時間もかかっておるし余分な労働を投下しておる。そういう問題などについてやはりもっと思い切った生産費の仕組みをつくっていく必要があると思う。それが私、あなた方の仕事だと思う、畜産経営の内容は変わってきておるのだから。それはあなたの方は技術者を大分持っておるのだから、調べて実態を知っておることはわかるよ。しかし、現場の実態というのは数字で出てくるもののほかにさらに深刻な状態になっておるということをひとつ十分わきまえてもらって、ことしの生産費決定する場合に、本当は毎年こういうふうに生産費が変わることもおかしいし、豚と牛とのあれが変わるのも法律趣旨といったって全部おかしいのだ。だから、米価を中心として日本農産物価格政策というのが妙になってきたというのは、価格算定方式をめぐって一貫したものがない、極めて多様なさまざまな形でそのときそのときであれしておるという面があるのですよ。あると私は思う。だから、そういう意味でことしの畜産物価格をめぐってはひとつ十分にその辺を念を入れて検討しておいていただきたい、こう思います。  次に進ませてもらいますが、生乳需給表というのをつくっておりますね。そこでことし、来年の生乳の需給計画というのをつくるのですが、今の牛乳の需給状況から見ると、ほとんど国内産の生乳で処理できる、こういう立場を生産者団体などは持っておりますし、五十四年ごろですか、計画生産というものを自主的に、しかも相当強力に展開をして、これは米とほとんど変わらない。酪農家の中にはペナルティーなどの立場も受けて牛を廃牛にしていくというようなのもそれぞれの家の中で何頭かありましたね。そういう形で需給均衡というものを目指した努力がもうずっと続けられてきておるわけですね。そして去年からことし、今はちょっと陰りが出てきたと言われておるけれども、今の状況からいえば生乳での完全な自給体制はできるのじゃないか、こういうふうに言われておりますが、農林省の生乳需給表の中にはあらかじめ計画輸入というか、輸入をしていくということを去年から想定をしておるのですね。これはまたことしもやるつもりですか。去年とちょっとことしは状況がさらに違っておると思うのですが、そういう検討をしておりますか。
  45. 武智敏夫

    武智説明員 お答えいたします。  田中先生おっしゃいましたとおり、来年度の需給計画を今夜じゅうにまたつくらなければいかぬわけでございますが、一つは、御承知のようなことで飲用牛乳の消費の伸びがこの三年ぐらいかなりよかったわけでございます。それが去年の秋ぐらいからかなり伸び率が鈍化しておるということが一つございます。それから一方、生産の方でございますが、これは飲用消費の伸びよりもおくれて生産がふえてきたというようなことでございまして、最近でもなお依然として高い伸びの生産が行われておるというようなことがございます。それからもう一つは、乳製品の方でいわゆるバターと脱粉の関係がやや微妙になっておりまして、従来バターが一に対して脱粉が二という形で生産が行われておったわけでございますが、いろいろ生クリームがふえるといったようなことで、バターが一に対して脱粉が二・二とか二・三というふうにふえるような形になっております。そういう意味におきましてバターと脱粉との関係が、必ずしも消費の対応がうまくいかないというような側面も出てきております。したがいまして、そういうような全体的なことを考慮しながら今度の需給計画をつくらなければいかぬということでいろいろ微妙に難しい問題がございまして、実はまだ案ができ上がっていないわけでございます。  それからもう一つ、我々がいろいろ頭の中で悩んでおりますのは、先ほど先生からお話がございましたウルグアイ・ラウンドの関係ですとか、あるいは、ことしの場合には日米で乳製品につきまして二国間協議をやらなければならないというふうに思っております。その際に、アメリカもいわゆるウェーバーをとりまして乳製品につきましてはいろいろ輸入制限をやっておるわけでございますので、我々も当然堂々とといいますか、アメリカ自身も制限をやっておるわけでありますので、我々としても、何というのですか、それほど後ろめたいという感じで交渉する必要はないと思っておりますけれども、ただその際、ガットの上ではやはり国内で厳しい生産制限するですとか、あるいは先ほどお話も出ておりましたが、一%かどうかは別といたしまして、最低の輸入量を確保しなければいかぬですとか、かなり国際法上はいろいろ難しい義務規定がございます。そういったこともにらみながら考えていかなければいかぬということで、先生指摘のように、国内需給だけとりますと、国内で十分カバーできるぐらいの生産数量は行われておるというふうに思っておりますが、ただそれだけでは、やはり一方で国際的な対応も念頭の中に置いて行動をしておかなければ、これから来るべき日米交渉にも対応しにくいのではないかというようなこともございますので、要は両方考えながらまさにどうすべきかということで、正直言って現時点では悩みながら今夜じゅうに決断を下さなければいかぬという状況でございます。
  46. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 この問題は、二百四十万トンという、私どもはチーズをどう取り入れるかということで違うのだと思う。私ども社会党は大臣にこの間二百五十万トン、これはチーズが入っておるから、私は計算してみると余り変わらぬと思う。だから、二百四十万トンの限度数量を確保するということと関連をしてくると思いますので、やはり限度数量昨年二百三十万トン、これは限度数量二百四十万トンで計算をしていけば完全に国内の生乳の自給はできるという判断を立てておるし、これは大方の一般的な認識のように、私が接した中では皆さんそういうふうに思っていらっしゃるわけだ。ところが、政府がみずから何か輸入するんだ、こういうことになっていくと、生乳が足らぬじゃないか、こういうことになって、何か投機というわけでもなかろうが、ちょっとおかしいのです、これは。それはウルグアイ・ラウンドの問題があることは承知しております。これは酪農だけではない。農林大臣お見えだが、農林省全体がこの輸入農産物の問題をめぐってはウルグアイ・ラウンド対策という布石をやっておるのではないかと思うような動きが、去年ごろからもう出ておると思うのですね。だから、あなたのところの乳の場合は相当大きいからなお配慮しておるのだろうが、これはウルグアイ・ラウンドでまだ決着してないのですから、これから議論をして話し合いをするのですから、別にそんな心配はすることはないのだと思うのです。自給、生乳でやれるという自信があるならそれでやってもらいたいというのが私どもの強い要望でありますから、申し上げておきたいと思います。  それから、乳製品が非常に堅調で、確かに需要がふえておるから乳製品輸入もこの二、三年非常にふえております。大体生乳の四二、三%から多いときは四五、六%ぐらい割合がふえておるわけです。そういう割合になっておるわけです。それだけ外国からたくさん入れておるということなんで、アメリカがウェーバーでほとんどこれはノータッチであるというようなことから考えると、日本はまことに開放体制徹底しておるとすら思うのです。特に擬装乳製品と称せられるココア調製品など、こういうものがいろいろな分野へ入って、これが国産の乳製品市場というものを狭めておるということも現実です。そういう意味でやはり何らかの国内における処置あるいは行政指導の強化、こういうことが必要だと思いますが、この一、二年の国産の乳製品市場の状況を見ると、これについては何か手を考えられますか。
  47. 武智敏夫

    武智説明員 田中先生おっしゃいましたとおり擬装乳製品が、国内の乳製品需給がかなり逼迫しておったというようなこともございまして一昨年かなりふえたわけでございますが、昨年の場合には事業団が輸入したというようなこと等もございまして、輸入はかなり緩和の傾向をたどっております。特に調製食用油脂につきましては対前年比で六八%ぐらいというようなことで、かなり減っておることは事実でございます。我々はかねてからこのココア調製品なり調製食用油脂につきましては、これは自由化されておりますので、行政指導ではございますけれども、例えば調製食用油脂につきましては、主要な輸出国でございますニュージーランドに自主規制を求めるというようなこともやっておりますし、あるいは、国内のマーガリン工業会等国内の実需者に対しましても秩序ある輸入を行うように要請もいたしたりいたしておりますし、またココア調製品等につきましても、チョコレートココア協会等につきまして同じような行政措置を求めておるわけでございますし、これからもまさに輸入の動向を見ながら、今後ともまた関係業界に要請をしていきたいというように考えておる次第でございます。
  48. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 時間が参りましたので、あと五分だそうですから一つ二つだけもう一括してお尋ねをして、あと同僚議員の方からまた詳しくそれぞれ御質問があろうかと思います。  一つは、えさであります。畜産の経営費というか生産費のほとんど大半を占めるえさの値上がりということがもうほぼ間違いないだろうと言われておる状況でありますから、これに対応する配合飼料の基金の対策とかいろいろな点について十分過ちのないように、過ちと言ったら失礼ですが、きちんとしたものをつくってもらっておきたい。このえさ高騰を抑えていくような積極的な施策を組み立てる必要があると思っております。これについてもしお考えがあれば一つ。  それから、これは先ほど資料をいただいたので細かく見ておらぬから余り質問もあれですが、例の牛肉の自由化に伴って不足払いの子牛の保証基準価格ですね。これが今あなたのお話を聞くと三十万四千円、これは黒と赤、それから二十一万四千円、十六万五千円、こういうふうに発表しておるということでありますが、この問題は、これはいろいろ相互関係があるが、子牛の生産地帯にとっては非常に注目をしておるところであります。生産費などを見てみると三十万から三十四、五万、所によっては四十万も五十万もというような説まであるわけでありますが、これは大体どういう考え方でこの数字を出されたのか、大要だけで結構ですがお答えをしていただきたい。あと細かくそれぞれの先生方から御質問があろうかと思います。
  49. 武智敏夫

    武智説明員 えさの問題と肉用子牛保証基準価格等の問題でございます。  まずえさの問題でございますけれども、最近御承知のように円安がかなり進んでおります。御承知のようなことで、えさにつきましては一月から六月まで既に決めておりまして、現時点の為替レートぐらいでありますと四—六月の価格は動かさなくていいのではないかというふうに現時点だけで言えば思っております。ただ、いわゆる七月以降の価格についてでございますが、円安がかなり進んでおるというようなことが一つと、現地のトウモロコシの価格も若干上がっております。ただ、その後のアメリカの穀物の作付、これはアメリカは四月から五月にかけて作付するものでございますので、要はこれからアメリカのトウモロコシの作況といいますか、植えつけがどうなって、作柄がどうなってということが全くわかっておりませんので、現時点では為替レートだけで議論するしかないと思っております。     〔大原委員長代理退席、石破委員長代理着席〕 為替につきましては、我々残念ながら知見を持っておりませんで、きょうはまた円安になっておるようでございますが、これからどういうふうに推移するか、我々では全くわからないというようなこともございまして、そこは今後の推移を見ながら対応していかなければならないというふうに思っております。いずれにしましても、現在安定基金がございまして、いわゆるストックはかなり減ってきてはおりますけれども、積み増し、積み増しをやりまして、何とかそれにたえるような形で対応していきたいというふうに思っております。一義的には本当は円が何とかなってほしいというのが実は現状でございますけれども、そういう対応をいたしたいというふうに思っております。  それから二点目の肉用子牛保証基準価格考え方でございますが、これは御承知のように実は自由化措置そのものは初めてでございますし、こういったことで試算するのは今年度初めてでございます。そんなこともございまして、実は去年の三月、今ごろでございますが、畜産振興審議会に、平成二年度から実際に発動させる肉用子牛保証基準価格なり合理化目標価格についてはどうやって算定したらいいかということで諮問をいたしておったわけでございます。前後四回、せんだって最後の会合を開いて結論を出してもらったわけでございますが、幅広く議論をいたしてもらったわけでございます。小委員会におきましてもいろいろな議論がございました。例えば生産費をもとにやるべきじゃないかというような御議論もありましたけれども、結局は、現在二十九万二千円という制度があるわけでございますが、それを引き継いで拡充するのが今回の制度であるというような趣旨に基づきまして、結論的に言いますと、現在やっているのと同じような需給実勢方式をとることが現時点では妥当なのではないかというような結論になったわけでございます。ただ、先生おっしゃいましたとおり、生産費が四十万前後というような数字が当然出ておるわけでございます、同じ統計情報の数字でございますけれども。ただ、いわゆる実勢といいますか、農家方々等の感覚からいいましても、やや離れておるのじゃないかというのが我々というか先生方の御意見でもございます。これから生産費調査を拡充していって、しかも仮に今の需給実勢方式をとりましても、自由化されて何年かたちますと、例えば今回七年間とっておるわけでございますが、自由化した後の価格をもって需給実勢方式をとるわけにはまいらぬというふうに思っております。いずれにしましても、今回とった方式そのものもこれからいろいろ改善拡充していかなければいかぬというふうに思っておりますが、とりあえずは今申しましたとおり、従来からやっております需給実勢価格生産費の動きを加味させて決定させたらどうかということでやったわけでございます。今後いろいろ工夫しながらといいますか、データも拡充しながら、あるいは内容的にも拡充しながらやっていかぬといかぬのじゃないかなというふうに思っております。
  50. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 終わります。
  51. 石破茂

    ○石破委員長代理 鉢呂吉雄君。
  52. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は、今回の総選挙で北海道三区から初めて当選をしてこの国会に参っております。農水委員会でも三度ほど出席をさせていただきました。四十人という大農水委員会にしてはきょうもごらんのとおり、多くの国民の皆さんが注視をし、さらには農家の皆さんが今大変な農政不信を持っている段階で、我が社会党以外こういった出席の停滞ぶり。私は、その中身についてはわかりませんけれども、もっと真剣な委員会の議論があっていいのではないかというふうに思いますので、まず委員長にそのことについて御要望をしておきたい。過半数を割っているではありませんか。普通の会議では流会というふうな感じもしますけれども、そういった点でもっとこの委員会が真剣な議論の場であってほしいというふうに思います。  そこで、農水大臣にお伺いをしたいわけですけれども、私も農水大臣に短い時間で三度ほどお会いをさせていただきました。大変誠実に対応をいただいておりまして、後輩でありますけれどもその姿に大きな好感を持たさせていただいております。特に昨年の夏の参議院選挙、そして今回の総選挙を通じまして、いわゆる農政不信が吹き荒れたというふうに言われております。私自身も農協の一職員ということで十八年間農業そして農家とともに歩んでまいりました。そういう点で、この私の農協職員としての十八年間、ほとんどが営農指導関係に携わる中で、日本農政、特にこの十八年間は水田においては減反政策を初めとして各種の構造改善政策、あるいは土地改良基盤整備事業、負債対策を含む金融政策、あるいはまた各種の補助事業を通して、北海道庁あるいは町村、地方自治体、そして農家の皆さんと農政に忠実に従いながら懸命の努力をしてきたところでございます。しかしながら、特に米の問題はもとよりでありますけれども、牛乳を初め、各畑作物においては生産調整、いわゆる作付規制が強化されてきております。あるいはまた、いわゆる政府管掌作物と言われておる農産物価格が抑制されてきております。あるいはまた、土地の基盤整備補助事業を中心とするこれらの農家の自己負担が非常に経営を圧迫しておるというような状況で、今や農家みずからの努力あるいは農協や地方自治体の努力だけでは農村部の状態を活力あるものに取り戻すことが困難な状況を生じておる、このことを私は身をもってこれまで体験をしてきた次第でございます。そういうことが今回の農政不信ということであらわれたというふうにも思っております。  そういう点で、まず最初に、これらを一貫して推進をしてきた農政当局者、農水大臣のこの農政不信に対する反省点、それらを踏まえて今後の農政あり方について、お考えをお聞きいたしたいというふうに考えます。
  53. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  今先生が最初にお触れになりましたさまざまな御指摘でございますが、ちょうどきのう、私のところへ農協長の代表の皆さんが価格問題を中心にしておいでになりました。その後、私の地元でございますけれども、農協の職員さんの代表の方々、これは個人的に今まで非常に仲よくしている方が多いものですから、その方々がお祝いと激励においでくだすった。農協長さんのお話もさることながら、農協の現場で農民と一緒になって苦労してきた方々意見というのは、私は非常に貴重だと思って真剣にお聞きをしたのです。私を激励しながらいわく、まず一つは、うそを言うな。二つは、誠実であれ。苦労していることはわかっているのだ、農政が大変なことはみんなわかっておるのだ、だから余り持って回った言い方やごまかしをするな、こういうことを激励かたがた注文していった。私はまさにそのとおりやろうと思うのであります。それは、今先生指摘牛肉・かんきつの自由化を初めといたしまして、ここへ来て大きな貿易自由化の波が押し寄せて、それに対応しなければならなかった、それに対するきめ細かな説明等々の行き渡ってない点もあった、こういうふうにも思います。また、価格をある程度コントロールをしていかないと将来の展望が開けてこないということで御我慢を願っている面も、これがまた農政不信にさらに拍車をかけたというふうに思っております。しかし、何といっても一番いけないのは、もう農業切り捨てだ、農民は切り捨ててしまうのだというみたいな内外の声というものがだんだん増幅をして、それが大きな農政不信につながってきたというふうに思っております。これは政府、また与党である自民党農政に対する責任も十分あるというふうに私は率直に反省をしておるわけなのです。また、ここでも申し上げましたが、野党の皆さんも一緒になって、これは難しい農政でございますから、これから一緒にやっていっていただきたい。きのう山口書記長もちょうどおいでになりましていろいろ話をしたわけでございます。  そこで、今後の農政の推進でございますが、繰り返すようですけれども、やはり農業の展望というものは暗くはないのだ、明るいのだということを言い続けて、しかもそれを実現していくための手順を親切に、しかも細かく生産者あるいは生産者団体関係者に我々が示していく必要がある、また実行していく必要がある。一言で足腰の強い農村を、そして若者に魅力のある農村を、こういう農業を、こういう言葉でございますけれども言葉だけではしようがないのでありまして、それを具体的に法律によって実践をする、予算によって裏づけるという必要が絶対にあるというふうに思っております。「農産物需要生産の長期見通し」、これが書かれておりまして、その書かれたことを私一々読んでおりますけれども、それはもっともなことばかりなのです。しかし、それをいかにして具体化するか、そしてその具体化していく過程の中で、我々だけが幾ら言ってもだめなんだ、国会の御協力もなければならぬ、与野党一緒になって御協力を願う。同時に、一番大事なのは、今農協の職員の皆さんの話をしましたが、一番末端の農協の職員さんを通じながら生産者にわかっていただく、特に若い方にわかっていただくというふうな農政展開をしなければならない。材料は幾らでもあると私は思うのです。繰り返しているとおり、教育レベルは高い。技術も高い。そして、構造改善を初めとして、一朝一夕にはできないけれども、今まで積み上げてきた基盤整備事業というものも徐々に実を結びつつある。そして、国土が狭い、南北に長い、高温多雨だ、こういうふうなこともむしろ逆手にとって有利な農業のバラエティーのある条件づくりに変えていけばいい、こういうふうにも考えております。  まだ十分に私がまとめ切っておらない、こなし切っておらない不十分な点はおわびをいたしますが、先生、長い間農業の現場で、農協の現場でおやりになったという貴重な体験などもぜひまた席を変えてお聞かせを願って、ひとつともども日本農政を何とか守って将来につなげていきたい、こういうふうに考えております。
  54. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣の言うそういうできるだけ自由な議論を通じて、日本農政日本農業をどこに持っていくかということの真剣な取り組みが今こそ必要であるというふうに考えます。往々にして農水省が出されてくるいろいろの文書は、未来はバラ色のような形、あるいは現状の認識についての厳しい見方が足りないといいますか、その点について、現状を十分議論して将来のあり方についてそれが実現可能な政策に高められるような努力が必要だというふうに思っております。  そこで、農業現状は非常に危機的な状況にあるというふうに、私は現場におりまして思っておる次第であります。特に一番顕著にあらわれるのは、農業就業人口なり農家戸数の減少であります。農水省からのデータによりましても、昭和四十五年に比べまして六十三年度、これは全国の農業の就業人口ですけれども、ほぼ五割、半分に減少したという報告もありますし、さらには六十三年度の農家戸数、戸数自体は四十五年に比べて七八%と比較的減少が少ないわけですけれども、その内訳は七二%は第二種兼業農家であるという現状であります。このように急激に減少している。専業農家が多いと言われておる北海道でさえも最近減少が大変激しいわけでありますし、酪農家、これも、農水省の報告によりましても昭和五十五年、八年前に比べまして全国の戸数が四割減少して六割になっておるという現況であります。このような農業を担う人々の減少で果たして将来とも日本国民の生命を守る大変な食糧を供給することができるのかどうか、この辺について大変危機感を持つわけでございます。昨日の大臣所信表明においても、生産体制を整備するのは一朝一夕にいかないということも口頭でございました。私は東京に出てまいりまして、国会の論議、人口が東京に集中しておる、過密問題が大変な事態になっておるということを見ました。また、東京に住んでみまして、本当に人口が爆発的で、住宅も何億円というものをかけなければ持ち家をつくれないという現況を見ました。しかしそのことは裏を返せば、私たち過疎地域に住んでいる者の人口が集中、流入をしておるわけでございまして、表裏一体関係にあるというふうに思った次第でございます。そういう点で、過疎地の均衡ある発展、これまで以上の過疎地の地場産業たる農業、漁業に対する国の施策が講じられなければ、この過密過疎の問題はなお激しくなるというふうに思っております。  そういう点で、今回の選挙が終わって、言葉としては、国民の納得する農産物価格、あるいはまた、国際経済の自由化に対応した農産物の貿易に関する内外価格差の縮小、是正、それに基づく国内農産物価格というようなことが農水省さんから出てくるわけですけれども、これらに対応する農水省の基本的な考え方について、再度お伺いをいたしたい次第でございます。
  55. 山本富雄

    山本国務大臣 先ほど先生基本的な私の姿勢を申し上げたわけでございますが、それに沿って具体策をさまざま総合的に講じていくということだろうと思うのです。先般補正で御可決をいただきました中山間地に対するてこ入れといいましょうか、融資の問題、借金減らしの問題というものを中心にしたああいう施策も強力に推進しなければならないと思っておりますし、また、これから御論議を始めていただきますが、平成二年度の予算に農林水産省といたしましてさまざまな政策を盛り込んでおります。そういうものを着実に一歩一歩有効的に使っていくということしか方法はない。先ほど先生バラ色のような農林水産省の表現が多いというお話でございましたが、率直に私もそういう感じも受けます。受けますが、鼓舞激励をしていくという意味で、先ほどうそを言ってはならぬということを言ったのですけれども、とにかく未来について暗く思うことなかれという方向でこれから先もやらせていただきたいと思っております。要は、一つ一つ政策を単発的にやるのではなくて継続的にしかも総合的にやっていく。そして、一朝一夕にできない特に農業であり漁業であり林業でありますから、積み上げを一つ一つやっていく以外にないと思っております。
  56. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣言葉としてはそのとおりであると私も思います。そういう点で、食べ物に対する国民理解といいますか、もちろん農業者については国内自給ということを求めておりますし、また外務省、通産省を初めとするいわゆる官界の皆さん、それから食品加工、食品を輸入されておる大きな企業の皆さん、そしてマスコミの皆さん、もちろん消費者の皆さんとともに、この日本農業日本の食べ物をどういったふうに生産していくかということについての国民的な合意といいますか話が求められておると思いますし、そのことについては与野党を問わず、合意に向けての粘り強い話し合いをしていく必要があるだろうと思います。  そこで、日本農業については、しかしながら国際的な価格水準というものを全く抜きにして考えるわけにはいかない現況でありますけれども農業の活力を取り戻して就業人口の減少を食いとめるためには抜本的な農政の確立が必要であると私は思います。現実には農業においては、日本農業の非常に特殊な構造的な問題が二つほどあると思っております。一つは、日本という非常に経済発展をした経済大国の中での産業としての農業をどうしていくかということがあろうと思います。労賃水準、所得水準が非常に高い中で他産業並みの所得を農家の皆さんが確保するという観点に立たなければ、だれも農業をやっていく人がいなくなるのは自明のことであります。そういう点で、他産業並みの所得を確保するといった観点の価格政策なり価格誘導政策というものが必要である。またそれに基づく生産性向上ももちろん必要でありますけれども、そのことが一つとしてある。低開発国で私たちの農業はやっておるわけではないという点の難しさがあろうと思います。  それからもう一つは、日本の農地が非常に起伏に富んだ狭隘な農地が多いということでございまして、効率的な機械化農業を進める上に立ってのいわゆる土地の基盤整備事業がこれからも大きく必要になっておるということは論をまたないわけであります。しかしながら、農家は非常にそれに対する経営基盤が弱い、投資の意欲がそがれておるというのが現状でございまして、これまでも幾多の補助事業による土地改良事業をやってきたわけですけれども、過去の土地改良資金関係の平準化という資金対応でなくて、もっと抜本的な土地改良に対する国の施策、例えばもっと高度の補助率化あるいは資金の長期低利の対応が必要になっておるのではないかと私は思って、そのことを克服しなければ農業はどんどん縮小せざるを得ないという考え方をしております。これに対する農政当局、農水省のお考えをお聞きしたいと思います。
  57. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 確かに、経済成長に伴いまして産業構造が変わる中で日本農業がいろいろな影響を受けておる点は事実でございます。ただ、そういう中で私どもが持っておる土地、農地の条件を生かしながら日本に適応した農業を、先ほど大臣も申し上げましたように着実に推進していくということに尽きるのではないかと考えているわけでございます。先生指摘のように、農地の地価の問題、あるいは一極集中、他方における過疎の問題、その他農村地域における活力といいますか、農業経営の問題がいろいろな点で出てきておることは事実でございます。ただ、先ほど大臣も申し上げましたように、日本の条件を考えてみた場合に、土地条件自身は狭隘で土地利用型農業展開に当たりましては、地域的にいろいろな条件が違いますけれども、いろいろな制約があることは事実でございます。温暖多雨であるとか気象条件が各地でいろいろ違う、しかも東京を中心とした大消費地を擁しているということから、それぞれの地域の特性を生かした農業展開を進めていけば、先の見通しはあるのではないかということで、御指摘のように基盤整備とか、資産的保有の強まりから農地の集積は率直に言ってなかなか容易でありませんけれども、賃貸借、あるいは、先ほど御指摘ありましたような老齢化その他によります農業就業人口の減少というのを逆に構造政策の転機としてとらえて、各種の施策を集中しながら規模拡大を進めていくところは進めていく。そうでなくて中山間等地域の立地条件を生かした農業展開が可能なところについてはそういうところに向けて、各地における農業者の真剣な努力に対して私どもも御支援をしていくということで、何とか日本に適した農業展開を進めていきたいと考えております。
  58. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 いずれにいたしましても、私は、今着実な施策と言いましたけれども、もっと抜本的な施策を講じながらこれ以上の農家減少を食いとめるように、農家減少して生産基盤が拡大する方向ではなくて、これ以上農業を担う人々が減らない抜本的な施策を講じなければ、十年後に本当に国民の食糧を供給できない時代が来るのではないかという心配をしておるわけでございます。  そこで、今年一月十九日に閣議決定されました「農産物需要生産の長期見通し」についてと、この関係で今回問題になっております生乳、乳製品関係についての御質問をさせていただきたいと思っております。農業生産力が一朝一夕につかないという点では、このような需要の動向を把握しながら生産について長期的な見通しを持つことは大変大切なことでありますし、我が社会党でも、二十一年後を目指した自給率の向上といった観点から素案を持って国民の前に提示をしておるところでございます。そういった意味では、これらに基づいて農政を推進していく、またこの生産の長期見通しについての農水委員会での議論を高めていくことは大変大事であるというふうに思います。  この生産の長期見通しの作成に当たりまして基本的なことはこの中に書いてございます。特に「まえがき」の中で(4)にこのように書いてございます。「生産見通しについては、需要見通しを踏まえ、生産性向上と食料供給力の確保を基本とし、近年の生産動向、今後の農業労働力生産技術革新等の生産条件の動向、輸入農産物との競合関係、土地利用の在り方等を総合的に勘案して、作目別に作成した。」その後でありますけれども、「生産見通しは、単なる予測とは異なり、我が国農業の持てる力の発揮による実現可能な方向を意欲的に示したものである。」というふうに書いてあるわけでございます。そこで、作目別に需要生産力を書いてあるところでありますけれども、特に牛乳・乳製品に関するものでございますが、自給率を言いますと、六十二年を実績として、平成十二年度を目標年次として、十三年後、十四年後の目標年次を見ておるわけですけれども、自給率については昭和六十二年度の七八%、これと全く同じ目標時の七八%というものを設定しております。先ほど「まえがき」のところで申し上げましたように、生産力を十分見きわめながら実現可能な意欲的な方向でこれを示したということでありますけれども、それらを十分勘案した見方であるのかどうか、その点についてお聞きをしたいわけでございます。     〔石破委員長代理退席、大原委員長代理着席〕
  59. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 牛乳・乳製品につきましては、一人当たり消費量がなお増加するというように私ども見込んでおりまして、人口増もございまして、総需要量は増加していくのではないか。一方、牛乳・乳製品生産というのは、先生御案内のとおり、大家畜はどうしても粗飼料基盤といいますか土地基盤が必要であるというふうなことで、先ほど来お話にありますように、日本土地条件の制約がある中で大家畜生産を伸ばしていくというのは、相当思い切ってやっていく必要がある部門に属するわけでございます。こういうふうに需要が伸びる中で自給率を現状と同じように見込んでやっていくというのは、それ自体相当思い切っていろいろな対応といいますか、技術の問題あるいは品質の問題、牛の改良の問題その他それぞれの部門で持てる力を最大限に発揮することが必要であるということでございまして、牛乳・乳製品振興につきましてはそういう方向で対応するというようなことで見通しを作成したわけでございます。
  60. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 実はこの関係で六十三年二月に、これの出る二年前ですけれども、私たちは酪近計画というふうに通常言っておりますが「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」、これを農水省は策定をしておるわけでございます。この中には自給率を、六十年実績が八九%ということを基本として、この場合は平成七年、このときは昭和七十年という形で目標を設定しておるわけでございます。私は、この二年の間にいわゆる酪農家計画生産を強いられ、その中で加工原料乳の限度枠を狭められる、あるいはまた、需要が若干だぶついているというような形もありましたけれども、潜在自給力はあってもこのような形で日給率が下がった状態でございます。この二年の間のこのような差をそのままにして、将来の平成十二年度の自給率を七八%に置く。今申されましたように種々の条件を十分勘案して自給率を設定したというふうには到底思えないわけであります。その点についてのこの酪近計画との整合性についてお尋ねしたいと思います。
  61. 武智敏夫

    武智説明員 お答えいたしたいと思います。  六十三年、一昨年の二月に公表されました酪農近代化基本方針でございますけれども、これは平成七年度を目標にいたしたわけでございますが、当時八九%の自給率を見込んでおったわけでございます。そして、ことしの一月に公表されました長期見通しにつきましては、先生指摘のように七八%といいますか、これは幅で示しておりまして中位が七八%というふうになっておるわけでございます。  実は、これは説明するのは非常に難しいといいますか、一つは技術的な問題がございます。食料需給表というのをベースにしてはじくわけでございますが、六十二年度に実は食料需給表の出し方が変わっておることが一つ大きな原因になっております。と申しますのは、きょうも田中先生のところで議論になりましたけれども、例えばココア調製品ですとかいわゆる擬装乳製品につきましては、六十一年までの食料需給表には実は輸入量の中にはカウントされておらなかったわけでございます。と申しますのは、いわゆるそういったココア調製品ですとかこれらにつきましては、成分組成が一様でないですとか、生乳換算が非常に難しいといったようなこともございましたし、あるいはまた特定の用途に向けられておりまして、コスト等につきましても国内品と代替関係にないというようなこと等もございましたので、いわゆるココア調製品等食料調製品につきましては、六十一年度までは食料需給表の輸入の中に入ってなかったわけでございます。我々は、輸入の中に入ってなかったことをベースにいたしまして六十三年二月に六十年度をベースとした酪農近代化基本方針を決めたわけでございまして、したがって当時は、今からいえば高い自給率の八九%になっておったわけでございます。  ところが、六十二年度に食料需給表が改正になりまして、いわゆる擬装乳製品が食料需給ベースの中の乳製品輸入の中にカウントするというふうに改められたことがございまして、それをべースにことしの一月にいわゆる農産物需給の長期見通しというのを定めたものですから、そこに五%ぐらいの前後がございます。これは非常に説明しにくくてわかりにくいかと思いますが、技術的なことがございまして五ポイントぐらいございます。それからもう一つは、その後いわゆる近代化計画をつくった後でプロセスチーズ等の自由化が行われたというようなことが一つございます。その後、プロセスチーズ、チーズが伸びておるというようなことがございまして、我々も意欲的に見込んだつもりでございますが、それらの問題がありまして、先ほど先生が御指摘のような数字の差になったわけでございます。
  62. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 簡単に答えていただきたいのですが、そのことも事務当局からお聞きしております。しかしながら、五%程度でも、七八に下がるというようなことにはならない、しかもこの長期見通しの算定基礎をいただいておるわけですけれども生産量のはじき出し方が見通しの年度の生乳・乳製品の総需要量から推計輸入量を差し引いて生産量を推計する、全く逆の出し方をしておるわけでございます、先ほど「まえがき」で述べておることに比べますと。推計輸入量を初めに持ってきて、その差し引きで生産量を出すというようなことをしておるわけでございます。きょうは時間がございませんからまた後ほど伺いますけれども、海部総理大臣もこの生産の自給率については、全体的に三〇から三一にしか上がらない、極めて厳しいと言っておったのですけれども、その中身を見てみますと、牛乳・乳製品だけを見ましても、単純に基礎実績年度を踏襲した自給率をこの将来年度の自給率にしておる。端的に言いますと、飼料基盤が拡大した分だけの自給率の向上しかこの表から見ても言えないわけです。そういった点で、国内の自給率をどう高めるかという点の真剣な議論が必要ではないかと思います。そういう点で、今後とも本当にこの長期見通しでこれを達成していくというのであれば、計画自体を真剣に遵守することが必要ではありませんか。私はそういうふうに考える次第でございます。  そこで、今回の加工原料乳限度数量との関係で申しますと、先ほど先輩の田中委員からもこのことについては述べられておりますけれども、特に昨年の生乳需給表、これが乳価の算定のときに公表されております。この生乳需給表については、当初の計画から特定乳製品、いわゆるバター、脱粉等の輸入が二十四万五千から二十九万五千計画をされておるわけでございます。これは、その前年よりとも大きく違いまして、輸入を前提として需給計画が策定されておるという点で、先ほども田中委員からもお話がありましたけれども、本年、平成二年度の生乳需給表の策定に当たって輸入を前提とした国内生産計画がなされるのかどうか、その点について再度お聞きしたいと同時に、昨年からの輸入を前提とするということが今後踏襲されていくのかどうか、その点についてお聞きをいたします。
  63. 武智敏夫

    武智説明員 昨年の場合は先生指摘のようなことで、いわゆる需給が逼迫しておりました。そういうことで、需給表の中で初めて輸入を計上いたしたわけでございます。  そこで、今年度の場合でございますが、先ほど田中先生からお話もございましたとおり、需給自身は、需要の伸びがかなり鈍化いたしまして、それに対して生産がかなり高い水準で伸びておるというような状況で、計画生産を相当強めなければならないというような状況でございます。したがいまして、そういうような状況を考えまして現在、明日畜産振興審議会の酪農部会に提出する需給表の作成を実はいろいろ悩みながらやっておるわけでございます。先ほど申しましたとおり、国内需給はもちろん一方で考えなければいかぬわけでございますが、他方では、ことし予想される日米協議のことも念頭に置かなければならないわけでございますし、またガットの規定で、いわゆる最低輸入数量の確保ということ等も頭の中には置いて議論をしておかなければならないということでございまして、今のところまだ結論は得ておりませんけれども、いろいろ右を立てれば左がおかしくなるし、左を立てれば右がおかしくなるということで、ある意味で悩みながらあしたの朝までには決断しなければならないというような状況でございます。
  64. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 時間があと十分ないので議論できませんけれども、やはり基本的な姿勢として、国内にそれだけの自給力といいますか生産力があるのであれば、そのことを基本として生乳需給表をつくるべきである。したがいまして、いろいろ頭を悩ませておるというような表現をしておりますけれども基本をきちんと持って、国内生産力によったこれからの酪農についてのあり方を考えるべきである。このことが今一番求められておるし、農家自体も、足りない足りない、余ってる余ってるということで計画生産、本当に毎月のように生産調整して、一部牛を売りながら、生乳を投げながらしておる。そして緊急的に、足りなくなったからということで六十二年ですか、大幅に外国から輸入をされたわけでございます。このようなことが農家の不信感を増幅させておるんだということで、もっとゆとりのある需給計画を、幸い基金の制度もできたわけですけれども加工原料乳についてももっとゆとりのあるものを、先ほど言いました長期見通しにおいても年平均十五万トン程度の生産力の増加をしなければならないわけですから、そういう点で、ことしの限度数量の設定に当たってはこのことを十分勘案して、据え置き、現状維持はあり得ないんだということを申し上げておきたいと考えます。  次に、乳価の算定、乳価決定考え方についてでございます。  今回の畜産物価格決定については、多くの酪農畜産農家が、そしてまた全国の農家の皆さんが、総選挙後の農政不信を解消するかどうかの第一歩だということで大きく注目をしておる次第でございます。そういった点で、この乳価を初めとする畜産物価格決定については、農水省の大きな視野に立った決定が必要であると思っております。先ほどもお話がありましたけれども農家戸数が大変減っております。総体的に再生産を旨とするというこの暫定措置法の趣旨からいっても、酪農家が減るということは大変なことであります。大きな意味で再生産を保障することになりません。そういった点で、価格を維持することがこの際非常に大事であると思いますけれども、その点についてのお考えをお聞きいたしたいと思います。
  65. 武智敏夫

    武智説明員 来年度適用いたします加工原料乳保証価格につきましては、法律に基づきまして、生乳の生産条件とか需給事情とか酪農の実態等いろいろな要素を総合的に勘案いたしまして、再生産を確保することを旨にして定めていきたいと思っております。その際に、一昨年二月に決めました「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」に則してやっていくということは当然でございますし、先般公表されました生産費調査をもとにしましてやっていくというようなことも当然でございまして、先ほど申しましたとおり現在大蔵省と、いろいろな要素のとり方につきまして、あるいはまた農家方々努力の還元をどういうふうにさせるかというようなことにつきまして、非常に細かく詰めておりまして、きょう相当遅くなるまでかかると思いますが、そういうことをやりまして、あしたの酪農部会に諮問いたしたいと思っておるところでございます。
  66. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 酪農については、年中無休である、それから先ほど田中委員から申されましたように、単に物をつくるということでなくて、家畜、動物と自然を相手の大変高度な技術を有する業でございます。そういった点で、製造業五人以上の規模というようなことでなくて、もっと高級技術者並みの労賃というものをきちんと踏まえた、農家希望の持てる乳価の算定ということについて十分考慮をして決定していただきたいと考えております。  先ほど冒頭で、農水委員会の活発な議論ということで委員の出席について要望したわけでございますけれども、共産党の皆さんについても真剣にやっておる、そのことについて見落とししましたので、この点で訂正をさせていただきまして、私の質疑を終わらせていただきます。  大変どうもありがとうございました。
  67. 大原一三

    大原委員長代理 午後一時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十分休憩      ────◇─────     午後一時十一分開議
  68. 亀井静香

    亀井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。有川清次君。
  69. 有川清次

    ○有川委員 私は、鹿児島県第三区から出てきたものでございますが、三区は御承知のとおり非常に過疎も進んでおりまして、第一次産業、とりわけ農業、林業、水産業もここが中心の地域でございます。先ほど鉢呂委員から農業の非常に厳しい状況が出されておりましたが、まさに北も南も同じでございます。ここの活性化をどう図るかがこれから私たちの地域としても非常に問われておるところであるわけでございまして、選挙期間中各地域を回りながら実態を見聞きしてまいりましたけれども、たくさんの課題を与えられまして、きょうはちょっとそうしたローカルの課題について主に質問をしてまいりたいと思っております。  まず、我が国農業は、十二品目の自由化に続きまして牛肉・オレンジの自由化が一方的に進められてまいりました。極めて厳しい現状に立たされていると思います。また、ガット・ウルグアイ・ラウンドの農業交渉は本年十二月までの決着に向けてまさに予断を許さない状況となっており、日本農業を守る立場で、アメリカの一方的な圧力に屈しないで政府はどうこれらに対応するのか、ここが問われておるところだと思います。米を含めましてそれはきちんとしていくという態度を大臣はお示しになったところでございますが、私たちはこれまでの経過を見るにつけまして、その不安は決して簡単にぬぐい去れるという状況ではないわけでありまして、きちんとした態度をお願いを申し上げたいと思います。こうした中で農家は大変不安な材料が山積しておるわけでありますが、政府の買い上げ支持価格、こういうものも年々それぞれ低下するという状況で、さらには足腰の強い農業国際化の中で自立し得る農業、こういうふうに言われておりますけれども、現実には現地はそのような展望を持って対処できるような甘い状況にないというのが実態でございます。  大臣は先ほど、農は国の基だ、そして科学などがどんどん進んでおるので、克服できる展望はあるとおっしゃいました。農家の皆さんに後継者が育つように展望を与える、そういう意味では非常に大事なお話であったし、必要なことだと思います。暗くはない、そしてそれを法律化し、実行していくんだ、こういうふうにおっしゃいました。しかしながら、私たちここで論議する現状と実態はかなりやはり厳しいものがあるんじゃないか。私が代弁してここで言うのではなくて、やはり農家一人一人が直接ぶつけて言えるような場が欲しいと思うぐらいの生の切実な声があるわけであります。農家の皆さんは私たちに、まさに日本農政は猫の目農政じゃないか、こういうふうに言われるわけであります。外圧もありますし、そういう中でどう対処するかとなりますと、そうならざるを得ないと言えばそこまででありますが、本当に着実に、堅実に計画性を持って農業が推進できる、そういう状況にないことを言われておるだろうと思います。そのために農家は離農もありますし、兼業農家もふえる、固定負債も増加をする、さらには高齢化現象が進んでまいりまして、後継者難は今極めて厳しい状況に立たされておると思います。後継者ができても嫁に来てくれる人はなかなかいない、こういうことが言われますし、それを新聞でたたかれますと、余りそれを言ってくれるな、なお来なくなるという農家の不安も不満もあるわけです。現実には、余暇の問題もありますけれども経済的な安定性の問題が大きな問題としてそういうふうな実態になっておると思うわけでございます。このままでは日本農業はつぶされてしまうのではないかという声があるわけでありまして、私たちも、農家が本当に展望を持って今後農作業ができるような事態をつくらなければならないと思います。  私のいる鹿屋市では、最近サツマイモについても、でん粉の心配がある、こういうことから、割り当てをされてもそれをなかなか達成できない状況もあります。それは、今ゴルフブームもありまして芝が非常にいいということで、安いけれども芝に貸し付けてもう仕事をしない、こういう状況もありますし、あるしは花木を植えて、畑を見ますと山ができたな、森ができたなと感ずるような状況もあるわけでありまして、農業政策を根本的に考えていかなければならぬと思います。そのためには、国民の健康と命を守るという立場の食糧でございますから、安全食糧を目指しまして確保するという立場で、大臣になお一層頑張っていただきたいと思うところです。  そこでお伺いいたしますけれども、けさほど畜産審議会に対する子牛金の問題、保証金の問題が提示をされましたけれども、この問題について、現場では少なくとも三十五万という数字が出ておるわけでありまして、若干の努力はされているようであるけれども、展望を見た場合に現地では納得できる数字ではないと思うわけでありまして、大臣としてどのような考え方でこれにお臨みになったのか。特に私のところは畜産地帯でございますから、皆さん真剣に考えておるところでございます。その点についてまずもって、農政基本的な課題も先ほどお話がありましたけれども、含めてお話しいただければありがたいと思います。
  70. 武智敏夫

    武智説明員 大臣が御答弁します前に、きょう諮問しました内容につきまして、先ほど若干足りなかった部分もございますので、簡単に御報告させていただきたいと思います。  お手元に資料をお配りしましたように、肉用子牛保証基準価格合理化目標価格につきましては決めたわけでございますが、そのほかの措置につきまして、実は、鹿児島県初め主として南九州あるいは東北、北海道でございますけれども肉用牛生産奨励をやっていただこうというような特殊な観点から、別途の関連対策も内定いたしております。先ほど言いました黒牛赤牛につきましては、いわゆる法律に基づく価格そのものは三十万四千円でございますが、そのほかに、例えば肉専用種の雌牛をずっと維持していらっしゃる方には生産奨励金を出すということで、三十二万円を下回った場合には一万八千円を別途出すという措置を一つ講ずることにいたしております。  それから、もう一つの措置としまして、今後とも規模拡大を進めていきたいということで、規模拡大奨励金ということを考慮いたしまして、三十五万円を下回った場合には黒牛赤牛の場合には二万八千円を支払うということで、これはダブリはございませんで、いずれか一つということでございますので、例えば規模を維持しました場合には三十方四千円と一万八千円を足しました三十二万二千円になりますし、それから規模拡大をいたしました場合には三十万四千円と二万八千円ということで三十三万二千円ということに相なろうかと思います。これは単年度の措置ではございますけれども、こういうような措置もあわせとることにいたしましたので、先ほど御報告を忘れておりましたのであわせて追加いたしておきたいと思います。
  71. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  今、審議官から中身、数字についてお話をいたしましたが、先生も御承知だと思いますが、この補給金制度は、牛肉の自由化に対処して自由化前の一定の状態を維持し、自由化による悪影響を排除していこう、こういうことを目的にしているわけでございます。このような趣旨から、過去の一定期間において実現した価格を基礎といたしまして今回保証基準価格試算を行ったということでございます。それがこの試算値という形で出てきたわけであります。特に肉用子牛は、これまで市場の実勢価格のもとで若干の増減はありましたけれども、中期的に見ますと生産の緩やかな増加が実現してきておるというふうなことを考えますと、今回この試算をした、相当いろいろな角度から苦労して出したわけでございまして、先生の御指摘によればなかなか御満足のいただける数字ではないのだ、開きがあるのだ、こういう御指摘でございますが、この試算値はそういう苦労をしながらつくり上げた試算値でございまして、我が国肉用牛生産の維持発展を自由化を前にして十分図っていけるという観点で諮問をさせていただいたということでございます。
  72. 有川清次

    ○有川委員 お答えいただきましたけれども、その隠れた対策がわかっていなかったわけでありますが、ともあれ、少しずつ緩やかに生産が伸びてきているというふうにおっしゃったのですけれども、今高騰をしているから幾らかいいわけですが、既に地域によっては十万ぐらい下がり始めたところもあるわけでありまして、高齢化が非常に進みまして高齢者の皆さん方が今後また母牛を買いかえてさらに生産を続けるかといえば、そうした意欲が今そがれるという状況でございますので、施策を含めて今後十分な対処をお願いをしておきたいと思います。  次に、関連いたしまして、現地で一番よく心配されますのが、オーストラリア、アメリカ、カナダ、こういうような主なところに日本の商社が進出をいたしまして、日本人好みの牛肉をつくるのだということで努力をしておる、こういうふうに言われておりますし、二月の七日の朝七時前の報道でしたか、NHKでもその模様がテレビで出されておりまして、阿蘇でつくった赤牛の霜降りと比べればもう見劣りはしない、既にそういうものはできておるという報道がなされておったわけでありますが、自由化を前にいたしましていろいろな施策をしたとしても、そうした肉がどんどん入り込んでくるとなれば押されていくのじゃないかという不安がどうしてもあるわけであります。今現地では、これから先は農家と商社との闘いだな、外国との闘いじゃない、こういう声まで出る状況でございますが、今どの程度の商社が入り込んで、どの程度の土地を買い占め牧場を買い、あるいはそこでどの程度の牛肉生産に励んでおるのか、その辺の事情についてお知らせを願いたいと思います。  二つ目には、肉づくりの実態でありますが、報道されたような実態で大変日本の肉と変わらないというような情報に聞いたのですけれども、その辺の実態をちょっとお知らせ願いたいと思います。
  73. 武智敏夫

    武智説明員 商社なり加工メーカー等がアメリカなりオーストラリアのパッカーですとかあるいは牧場等に進出の動きがございますことは、先生承知のとおりでございます。我々が把握しております情報によりますれば、日本側の企業としましては商社ですとかあるいは食肉加工メーカー等が中心になっておりまして、約三十社ぐらいが進出いたしておるというふうに思っております。進出先国といたしましてはアメリカとオーストラリアが中心でございますが、あわせましてカナダですとかあるいはニュージーランドですとか中国等にも進出いたしております。  進出の形態でございますけれども、一部は例えば肥育牧場ですとかあるいは繁殖から肥育まで一貫する牧場ですとか、それからもう一つの形態は、食肉の処理場、いわゆるパッカーでございますけれども、その買収なり資本参加なり業務提携が主体になっておるというふうに理解いたしております。アメリカとオーストラリアの物件別に見ますと、牧場への投資は大体十件、それから食肉処理場への投資が二十件ぐらいというふうに我々思っております。それからこれらの合計頭数でございますけれども、要は外国に進出しましても全部日本に持ってくるわけではないわけでございまして、現地での販売も当然含んでおるわけでございますが、全体合わせまして四十万頭ぐらいというふうに我々把握いたしております。  それぞれの牧場の面積等につきましては、これは牧場によりまして形がいろいろ違っておりますし、またフィードロットなんかをやる場合には必ずしもそれほど大きな面積を持つ必要がないわけでございますので、それぞれの牧場で見ますと数百ヘクタールから数千ヘクタールというふうに理解いたしております。このような海外進出の動きにつきましては、いわゆる牛肉を来年の四月から自由化するという、それをまた国内に持ってくるというだけではございませんで、いわゆる進出先国での国内営業の拡大等のためにもやるというような機能もあわせ持っておるというふうに思っております。  これら海外に進出した企業等が日本に持ってくる牛肉輸入量でございますけれども、仮に投資先牧場の出荷頭数の半分が日本に輸出されるというふうな仮定を置きまして、極めてラフでございますが計算しますと、四万トンぐらいということになっております。したがいまして、現在間もなく輸入が大体四十万トンぐらいになりますので、新聞報道で言うほどそれほど大きいというふうには我々考えておりませんで、それほどの国内牛肉需給に大きな影響を及ぼすということではないというふうに理解いたしております。  それから一方、先生指摘の、海外におきましていわゆる和牛肉等のサシの入った肉があるのではないかというふうに御指摘ございましたけれども、我々が聞いておる限りでは、現在までのところ成功した事例というのはまだ聞いていないわけでございます。それから、これからの可能性等につきましても、日本のいわゆる優良な種雄牛の正規の輸出の可能性というような問題が一つございますけれども、現地の肉牛の飼い方を考えますと、やはりかなり難しいのではないかというふうに思っておりまして、国内肉用牛農家方々が海外進出につきまして過度に神経質になって不安がらない方がいいのではないかというふうに思っております。  いずれにしましても、これから我が国国内の肉牛の振興をやりますためには、一方で品質の向上をやりながら低コスト生産をやる、また片方で流通の合理化を進めていくというようなことが大事じゃないかなというふうに思っておりまして、これからも対外投資につきましては十分注視していきたいというふうに思っております。
  74. 有川清次

    ○有川委員 今それほど大きな影響はないと思われるということでございまして、それが事実なら皆さん安心して今後努力できる状況でございますが。  次に、そうした牛肉が今日本にどんどん輸入されておるわけですけれども、その在庫が非常に多いというふうに聞くのですが、それは事実なのか。今後、牛肉を入れても輸入物はなかなか売れない、こういうことになれば非常に安心できる面があるのですが、その辺の実態はどうなのでしょうか。
  75. 武智敏夫

    武智説明員 輸入牛肉の現在の在庫数量でございますけれども平成二年の二月末で大体九万五千トンほどございます。去年の同期と比べますと六五%ぐらいふえておるということではございますけれども、在庫が一番多かったのは去年の十月でございまして、ピークから見ますと徐々に減って現在の九万五千トンになっておるという状況でございます。  こういうような在庫数量の増加の要因でございますけれども、御承知のように、一昨年、日米合意に基づきまして輸入割り当て数量を毎年六万トンずつふやすという合意が得られたわけでございますけれども、それらの六十三年度の割り当て分が六十三年の秋以降にずれたといいますか、実際に入ったのは六十三年の秋以降であったというようなことでございますし、それから元年度の六万トンの輸入割り当ても上期にかなり前倒ししたというような状況がございます。そういったことで、割り当て量の数量よりも現実の輸入数量の方が多かったというようなことがございまして、輸入数量といいますか在庫数量がふえておるわけでございます。そういったことに加えまして、畜産振興事業団そのものも売り渡し数量がふえておりますので、そういったことを適切にやりますためにも事業団自身の在庫もやや積み増ししておるというような事情もございますし、それからそれぞれの末端のユーザーにおきましても若干ずつ民間が在庫を積み増しておるというようなことが、まさに九万五千トンになっておる理由かと思います。  ただ、在庫自身は先ほど言いましたようにかなりの数量でございますけれども、いわゆる輸入牛肉需要自身について見ますと、事業団の売り渡し状況から見ましては、全体としてはかなり堅調に売り渡されております。したがいまして現時点で牛肉需給がだぶついておるというふうには理解いたしておりませんけれども、当然輸入量がふえておりますので、輸入牛肉価格そのものは値下がりいたしております。国産の価格は御承知のようなことで、枝肉の卸価格もあるいは子牛の価格もそれほど下がっていないというか、むしろ子牛につきましては九州で若干の例、ちょっと特異な例もございますけれども、一般的にはまだ国産の価格は下がっていないというような状況になっております。したがいまして、これからの需給の推移を見ながら、事業団が的確に売り渡しを行っていくというような措置を講じていきたいというふうに思っております。
  76. 有川清次

    ○有川委員 順調に、堅調に売り上げが伸びておる、進んでおるということでございまして、そういう意味では黒毛和牛のこれからの展望というのもやりは厳しいと思いますので、生産者、肥育農家の安定のために十分な努力をされるよう要望しておきたいと思います。  次に、加工原料乳保証価格の問題でございますが、先ほど北海道の方から出されまして、基本的には北海道の加工原料乳が多いということで、ここを基準にされて決められていくわけでございますけれども、南の方の地域はもっと牧草の地帯も少ないし、非常に厳しい条件の中で進められておるわけでありまして、そういう意味では、飼料畑が大体借地で、そして四、五町歩という条件で、さらに一年に二回回転をさせるなど努力をしながら不足分をカバーする運営をしておる。それだけに機械化も非常に余計要るし、労働力もそがれるという状況があるわけでありますが、ぜひこれは、北海道を基準にしてされるけれども、それも問題があるが、なお一層西日本の方にも目を向けた今後の酪農に関する生き残れる指導、展望、そういうのを与えるような努力をしていただきたいと思うのですが、その辺の特別な努力なり指導なり対策なり、そういうものがあるかどうか、お聞かせください。
  77. 武智敏夫

    武智説明員 明日、酪農部会に諮問いたします保証乳価につきましては、これは加工原料乳価格でございまして、御承知のように北海道の場合には、生乳が出ました場合に約八割ぐらいが加工原料乳に回りまして、二割ぐらいが我々が通常飲む飲用牛乳に回っているわけでございます。鹿児島県の場合には、正確な数字は覚えておりませんけれども、ちょうど北海道の逆ぐらいでございまして、八割がいわゆる我々が飲む飲用牛乳向けに回っておりまして、二割が加工原料用に回っておろうかと思います。したがいまして、明日決めます保証価格につきましては加工原料乳価格が中心でございます。一方、市乳の価格につきましては、これは政府は介入を全くいたしておりませんで、いわゆるメーカーの方々と指定生乳生産者団体方々がそれぞれ決めるということになっておりますので、それぞれまたメーカーによってもいろんな形態がございます。据え置くところもあれば、かなり厳しい価格状況をやっておるところもございます。そういったことで、押しなべて言いますと、北海道はコストは確かに鹿児島に比べて安いと思いますけれども、一方価格でいいますと、飲用向けが鹿児島の方が多いわけですから、売る値段はむしろ鹿児島県の方が高いんじゃないかというふうに思います。  ただ、一般的に言いますと、当然ホルスタインがどちらかといえば冷涼な地域、北欧といいますかオランダ中心で入ってきておる関係もございまして、やはり動物としては鹿児島よりは北海道の方が向いておるというようなこともございますので、乳量等につきましては、あるいはコスト等につきましては北海道の方がまさっておることは当然でございますが、いわゆる西南暖地型の酪農につきましてもそれぞれいろんな、えさのやり方ですとかそれぞれの工夫をしなきゃならぬと思いますが、そういう形でやっていきますれば、まさに市乳化を進めていくというふうなことで、価格的には有利な条件を持っておりますので十分やっていけるんじゃないかというふうに思っております。
  78. 有川清次

    ○有川委員 加工原料乳関係については、この価格決定が現実には商社で決めるとしてもやっぱり地域に影響しておりまして、毎年価格が下がっており、何とかぬれ子の値段でカバーして生き延びておる、こういう状況でございますので、明日決められるそういう問題についても十分な工夫と努力をお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、畜産公害の問題でちょっと質問申したいと思いますが、今生産をどんどん上げなければならない厳しい畜産の実態がありますけれども、反面また畜産公害もひどくなっておる状況にありまして、これは、それに悩まされておる畜産農家の問題を解決することによってまた畜産の振興、充実が図れる、こういう状況もございますので、その点を含めて質問を申し上げたいと思います。  本来、家畜の排せつ物、ふん尿は有機肥料という形で土地に還元をしていく、そしてそれで地力をつくって子牛部門に生かしていくというのが基本だろうというふうに思うわけでございますが、現在の実態は非常に悪臭、土壌汚染、水質汚濁、衛生害虫、地下水の汚染などが進行いたしておりまして、国の一つの資料によりますと、五十六年度までで随分大幅に減少して、今緩やかな減少傾向で推移している、こういうふうに資料がありますけれども、私が住む鹿児島県の大隅半島ですね、今その排せつ物の問題で大変な社会問題化するという状況がございます。ここに現場の写真がございますからちょっと大臣に見ていただきたいと思います。  この現状からいたしまして、実態は、生のままのふん尿を畑にそのまま散布をする、しかも畑地かんがいが行われておりますので、養豚場に掃除をするためにもうどんどん水で流してため込んで、そして固形分でなくてあわせてバキュームカーで流し込むという状況一つにはございます。あるいはまた、公共の川などにパイプを敷き込んで流し込むというやり方をしている悪質なのもございまして、二月の九日には、鹿児島市が飲み物用として取水をしておる万之瀬川の上流でパイプで川に流し込んでおったのが現地で調査されたというのが出ておるわけであります。こういうことを考えますと、今の状態が続く限り、私、鹿屋市ですが、鹿屋市全体的に町の中も朝夕はにおいが立ち込める、車が動き出すとこれが消えていく、こういう状況になっておるわけであります。今写真をお見せいたしましたけれども、死豚もそこに投げ込んでおくというような状況でございまして、やはり経営が非常に厳しいものだからその処理施設を自分たちでつくる余裕がないというのが現状でございます。そして、それに対処するために、鹿屋市の例で申し上げますと、市の畜産課、衛生課、それから農協、それと県が一緒になりまして今一生懸命対策を協議しておるところでございますが、残念ながらこうした大量のものを処理するそういう名案がなかなか出ないというのが現実でございます。  今、豚でいいますと約十万頭おるわけですけれども、一頭分が大体人間の十五人分に当たるということでございますから、鹿屋市だけでも百五十万人分の排せつ物が出る。人口七万八千ですから、人口の約二十倍という排せつ物が正しい処理ができずにそのまま放置されておるという状態になっておると思うわけでございます。そのために、地質はもちろん肥満をいたしますし、硝酸塩含有が非常にふえまして、そこでつくった牧草などを食べた牛が急に死んだり、そういう硝酸塩中毒の現象などというものも出ておりますし、酪農家の場合などは、特にまた乳量の減少とか肉質の低下とか、そういうものも考えられるわけであります。これを適切な処理をしなければならないというふうには思うわけでありますが、一応大臣が今それを見られまして、時間の関係ではしょって申し上げておるので、全体的な感想をまずお聞かせ願いたいと思います。
  79. 武智敏夫

    武智説明員 先生お話のございましたとおり、畜産関係の公害、全体的にはかなり減りつつあるわけでございますが、御指摘のようなことで各地域的にはまだまだやはり残っておるところもございます。  鹿屋の本問題、実は先生に御指摘されるまで我々も残念ながら耳にしてなかったわけでございますけれども、今お話にございましたとおり相当大規模になっておるというようなこともございますので、実は早速県の方に照会いたしております。何がどこまでできるかということは今の段階では何とも申し上げられませんけれども、県にも相談しまして、当然これは市といいますか、市が中心になってやっていかなければいかぬと思っておりますが、とりあえず事情を聞きまして、その上でしかるべくできることをやりたいというふうに思っておりますことを申し上げたいと思います。
  80. 有川清次

    ○有川委員 ぜひ現地に行って指導してほしいと思うのです。これは一つの例だろうと思うのですけれども、私は山川、指宿の方面も調査しました。昨年、一昨年、二年かかって努力しましたけれども、とても解決できない。司直が入って対応してもどうにもならぬという問題があるわけでありまして、海もそのためにどろどろに汚れていくという状況でございます。ぜひ現場を見ながら対応してもらいたいと思いますが、今の問題は、補助対象が固形物のみの処理が主でございまして、堆肥センターなどそういうのは進められておるわけでありますが、尿の方の対応がどうもする道がないという状況にございます。また、国の予算も非常に枠が小さいというのもございますし、事業対象も、個人の農家でやりなさいと言ってみても、法人か組織かあるいはそういうものでないと取り入れることができない、こういう条件等がございますので、今考えられておるのは家畜ふん尿総合の処理プラントというようなのをできないのか、そしてその前に有機肥料を使う運動というのもしなければならぬだろう、こういうことなども協議をしておるわけでありますが、ぜひそれらを実地を見ながら御指導をお願い申し上げておきたいと思います。  時間がなくなりましたので、次に移ります。  次は、振動病の関係でございますが、今日まで森林資源は世界的な規模で失われつつありまして、二十一世紀における環境問題は極めて深刻な事態になっておるところでございます。世界最大の木材輸入国の日本ですが、我が国の責任も当然問われるところだろうし、対処が重要になってくると思います。国内においても森林資源の維持をし、拡充をしていくことが重要なわけでございますが、大臣所信表明でもその辺のことが言われており、担い手の育成もおっしゃっておりますけれども、現実に林業労働者の担い手の育成というのは非常に厳しい状況下にあろうと思います。  その一つには、振動病でこれまでの施策、指導の不十分さもありましたが、振動病が非常にたくさんいらっしゃる。昭和五十三年で鹿児島県で一千四百五十人がございました。六十三年、年々減りまして、百七十三人程度の新規が出ておる模様であります。この予防対策、あるいは補償を受けて打ち切りになった人たちの職場復帰対策などは林野庁で行われているところでございますが、問題は、この認定をされて今振動病で治療されている皆さん方が最近とみに補償打ち切りになってくるという状況があるわけであります。  そこで労働省の方にお伺いしたいのですけれども、主治医の意見を尊重して決める、こういうふうになっておるわけですが、現実はそういうふうになっておるのでしょうか。
  81. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいまお話のございました林業の振動障害の問題で、その治療あるいは療養補償等の問題は労働省所管でございまして、ただいま担当の方が見えておらないようでございますので、私の方からは予防対策につきまして、先生から同様に重要であるという御指摘がございましたので、一言御答弁を申し上げておきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。  振動障害の発生状況をまず一言申し上げますと、新規に認定された人は昭和五十三年度の千四百三十一人、これがピークでございまして、その後年々減少いたしまして、昭和六十三年度には百七十八人、ピーク時の約八分の一という状況になっております。しかしながら、これを一層減少させていかなければならないということから申しますと、その予防、早期発見が非常に大事であるというふうに考えておりまして、これまでも都道府県等を通じまして振動障害等労働災害の防止のための安全管理診断指導、あるいは講習会の開催を行っております。また、振動機械の使用時間の指導の徹底を図るという意味で、その防止のための啓蒙普及に力を入れております。また、振動の少ない機械あるいは代替機械の開発導入を行っております。さらに、一人親方等の特殊健診を促進するというように、いろいろな施策を講じましてその予防と早期発見に取り組んでおるところでございます。  なお、振動障害の対策につきましては、予防のほかに治療、補償等多岐にわたりますので、厚生省、労働省、また私ども林野庁が連携いたしまして振動障害対策推進関係省庁連絡協議会を設けておりまして、連絡調整を密にしながらそれぞれの立場から対策を実施し、実効を上げていこうということで取り組んでいるところでございます。
  82. 有川清次

    ○有川委員 答弁者もいないし、時間もありませんから、振動病の関係はこの次にいたします。  次に、底びき網漁の関係で一点だけ簡単に質問を申し上げます。  種子島、屋久島の付近は、三海里以内は禁止区域だけれども、禁止区域が非常に陸地に近いという状況になっておりまして、さらに種子島と屋久島の間、ここが非常に資源のあるところですが、ここは自由になっておるという状況にあります。ところが、ここはサバ漁が中心の漁場なんですけれども、年々サバ漁が少なくなり落ち込んでまいりまして、漁民の皆さん大変苦労されておる。五十一年度からこの底びき網漁をもっと種子島、屋久島の間を含めて禁止していただきたい、こういう要請を国にしておるわけです。これは国の、大臣の許可条件になっているようでありますけれども、この辺については他県とまたがる関係から当事者間で話し合いをしてということになっておりますが、なかなかそれは厳しくて今まで前進をしない。そのうちに魚族が枯渇をするという問題が出てまいりますので、底びき網の方もあるいは地元の漁協も非常に大変な状況に陥ると思いますので、ぜひ国が仲介をしてこの問題を解決してほしいと思うのですが、その辺の取り扱いについて見解をお伺いしたいと思います。
  83. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいま先生から御指摘ございましたように、屋久島、種子島周辺の水域におきまして、沿岸の各種漁業、それから底びき網漁業、さらにまた、御指摘ございませんでしたけれども一定のまき網漁業が展開をされておるわけでございます。実は、このような状況日本の沿岸水域各地が、歴史的、沿革的な経過で非常にいろいろな漁業がいわば錯綜した形で成立、形成されてきたという経過を持っております。その中で、お話がございますように、沖合の底びき網漁業あるいはまき網漁業について大臣が許可をするという仕組みで運用しておりますけれども、沿岸漁業との調整については、今までの歴史的な経過を踏まえながら、隻数を制限するとか漁期を制限するあるいは操業水域を制限するという、地域によって異なりますが、非常にきめの細かい調整要件をつけて全体としての利害調整をしてきておるというのが実情でございます。  今屋久島、種子島から先生指摘のような問題が出ているということ我々も聞いております。屋久島、種子島の場合にも、御指摘ございましたように水域の制限とか漁期の制限をつけてやっておりますが、これの見直しの機会というのは、五年刻みに許可の更新をすることになっておりますが、その際にいわば集約的にやっていくという運用をしております。現在の状態というのは六十二年の許可のときに形成された秩序でございまして、これの見直し時期というのは平成四年度になろうかと思っております。まだ若干の期間あるわけでございますが、重大な紛争にならないように我々それぞれの取り締まりをしておりますけれども、次の更新期に向けて必要な調整を我々としても検討していきたい。  また、これも今先生からお話がございましたように、関係する漁業者間の自主的な話し合いということが物事を片づけていくために大変重要な事柄であると思います。その話し合いの場をどのような形で持つかということについて、私ども国の立場からだけではなかなか手の届かないところもありますので、県の方とも十分連絡をとりまして、そういった紛争が適切に処理されるように十分心がけていきたい、また次期の更新期に向けて、そういったいろいろな御要望を踏まえてどういう調整をしていくかということについて何らかの結論を出していきたいと考えておるところでございます。
  84. 有川清次

    ○有川委員 時間がありませんので、以上をもって質問を終わります。ありがとうございました。
  85. 亀井静香

    亀井委員長 遠藤登君。
  86. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 私は、山形から初めて出てきました遠藤登という者であります。私は、元来百姓でありますので、現場の立場から問題点あるいは要望点などを提起させていただきながら質問をさせていただきます。  時間もありませんのでなるべく重複しないようにしたいと思いますが、一つは、これは何といっても基本的な問題でありまして、日本農業農政は、大変な環境にありますけれども、後退に後退を重ねている。極端に言えば、日本から農業はなくなるのではないかという心配を現場ではしております。大臣所信表明でも先ほどから誠意あるまじめな答弁をされておりまして、心から敬意を表する次第であります。大変な環境にありますけれども大臣おっしゃるように農は国の基である。古代の歴史をひもといても、農業農村を無視してその民族と国家が栄えたためしがない。このことを踏まえられて頑張っていただきたい。我我も全力を挙げて頑張っていかなければならないなと思っております。これは必ずや国民の共感を得られる、得る努力を積み上げなければならないというふうに思うものであります。  そこで、農政農業振興基本的な考え方についてお伺いするわけでありますが、これは今さら私ごときが言うまでもないと思うのでありますが、先進国は、食糧の自給を確保するということを目指しながらほぼ達成をされている。我が国だけが極端に三〇%、場合によったら三〇%を穀物の自給率は割っているのではないかとも言われている昨今であります。これは大変なことだ。まずその自給政策を確立する、主要な食糧については自給政策を確立するということを基本として農業の再建あるいは農業振興を図っていかなければならないのではないかと考えるのでありますが、その自給政策、食糧の自給の確保というその根幹について、大臣の所信を改めて承りたいと思います。
  87. 山本富雄

    山本国務大臣 今、遠藤先生指摘でございますけれども、また先ほど来お答えを申し上げておるとおりでございますが、まさに農は国の基だと、こういう姿勢で臨んでまいりたいというふうに考えております。  それから需給の問題でございますが、非常に生産者も苦労をし、頑張っていただいております。そしてまた、三割減反というふうな血のにじむような努力も続けていただいておる。私に言わせれば、もうこれ以上のことはやらせてはならないというふうに今思っておるわけでございます。しかし、需要がなければ、これは生産が意味がないわけでございますから、その需要をできるだけ増していくような努力を、これは農林水産省、特に食糧庁が中心になって長年やってまいった。現在も続けておる。ところが、なかなかこの需給のギャップが埋まらないという悩みがございます。例えて言えば、お米の問題についても、米はもう日本人の体をつくってきたのだ、日本人そのものをつくってきたのだ、日本の文化なんだ、そしてまた、この米が体のためにいかにいいかというふうなことなども含めまして再々やっておりましたけれども、なかなかその需給のギャップが埋まらないという悩みがございます。  しかし、最近いろいろな形でこれが論議をされておりますし、また農林水産省努力先生方の地元における努力が少しずつ実ってまいりまして、私は農業全体の前途に関してはいささかも悲観はしておらない。先ほど来申し上げておるとおり、特に主食である米の問題は、これを中心に据えてあらゆる努力国内的にも国際的にも引き続きやってまいりたい。ただ、昨日来申し上げておりますけれども、注射一本打ったから日本農業は新しい展開ができる、あるいは頓服一服飲んだから日本農業に新しい屋望が開ける、そんなことじゃありませんから、従来の努力の上にさらに新しい創意工夫をしながら、総協力の中で新しい農政展開を着実に図っていきたい、こういうふうに考えております。
  88. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 考えてみれば、輸入の拡大が続く中で、特に米の消費なども減退減退を重ねてきたというふうに理解をしております。それは一定程度の歯どめをしていかなければならないのではないか。そして、アメリカがいついかなる場合でも安全な食糧、国民の命である安全性、安定性、その供給を保障できるのか、その期待はできない。二十一世紀に向かって、食は命なり、国民の命である食糧の、特に主要な部分の自給政策というものが不可欠な課題なのではないか。改めて何回も答弁を求めるということはしないわけでありますが、これは国民の命である、安全性が強く求められている、安定供給が求められている、それには主要部分については自給政策の確立以外にない、それは原則なのではないだろうか。長期的な需給見通し一定程度明らかにされておりますが、少なくとも主要部分の農業政策農業の将来展望というものを明確に示す必要があるのではないか。先ほどからも御意見がありますが、希望を持って計画的に努力を重ねる、大臣がおっしゃるように農業の将来は必ず開ける、自信を持って、希望を持って開けるような展望を示す必要があるのではないか。その点についてはどうなんでしょう、もっと明確に。
  89. 山本富雄

    山本国務大臣 御指摘のとおりでございまして、長期計画長期展望に立った指針というものが出ておりまして、それに基づいてステップ・バイ・ステップで積み重ねていくということでございます。また特に生産者方々が、今先生お話のとおり不満ももちろんございましょうし、特に不安がずっと増幅をしていた。いろいろな原因があります。いろいろな原因がありますが、外的な条件に対して先ほど来申し上げた牛肉・かんきつの自由化というふうな問題、あるいはまた今度は米の問題でどうかなるのじゃないかなどということが盛んにマスコミなどで取りざたをされて、それから来る不安感というものが非常に大きいというふうに私は思っております。  私が鹿野前農水大臣から引き継ぎを受けたときにもそのことが強く前農林大臣からありまして、一月にアメリカの農林大臣であるヤイターさんの主唱でフロリダでもって五カ国農相会議というものをやった。そのときにもやはり日本のお米の問題が中心的課題として出た。これに対して鹿野大臣が激しく反論をいたしまして、食糧安保論ですね、これを中心にして一歩も引かずに日本側の主張というものを言いまくった、こういうことなんです。私どももそれをしっかり受けとめまして、これから先いろいろな機会が出てくると思います、その機会に外に対しては、日本の食糧の自給率はこういう状態なんだ、ですからこれ以上自給率を下げるということはいかぬ、自給率を上げていくのだ、お米もそうだというふうな主張を外に向かってしっかり唱えながら、内の方に向かっては、そういうことでまいりますから国内もしっかりやりましょう、特に生産者の皆さん、お互いに協力し合ってこの計画を積み上げていきましょう、実行しましょう、こういうふうにさらに呼びかけていきたい。内外相まってその政策を実りあるものにしていきたい、こういうふうに考えております。
  90. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 この需給計画の長期見通しども、私から言えば、自給政策の根幹をもう少し問い直して見直していく必要があるのではないかというふうに考えるのでありますが、その点は大臣、どんなお考えを持っていらっしゃいますか。
  91. 山本富雄

    山本国務大臣 今、見直せというふうなお話でございますけれども、方針として出してありまして、それに従って今着々と農政展開しておる。繰り返すようですけれども法律もそうです。予算もそうです。これを続けて貫いてまいりたい、こういうふうに考えております。
  92. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 ぜひこの自給政策の根幹について重要視して、総合的な政策を立案をして推進をしていただきたいなと、強く要請をいたします。  農業農村の現場の状況は、これは山形だけの問題じゃないと思いますが、数え上げれば限りないのでありますが、先ほどから申し上げているように農産物輸入拡大がさらに途方もない拡大を続けていく、これは大変な不安を持っております。それから、農家の平均的な農業所得は百万を割らんとしております。これは山形だけの問題じゃないと思います。したがって、農外所得に依存せざるを得ない。三分の一、四分の一農業という状況がさらに拡大を続けている。  それから、きょうも冒頭に山村振興法の一部改正が可決されたわけでありますが、そのための、いわば活性化のための資金の創設なども予算化されております。まず一つは国有林ですね。これは工業部門と違って行革とか合理化、効率化というものは、効率的な運用というものは追求しなければならないと思いますが、先ほどからも話がありますが、なじむものではない。山とか山間とかが七割を占めておりまして、これは国民生活にとって多様な機能の面から考えても不可欠の課題なのですね。山が荒れれば都市が死ぬ、これはまた歴史的な証明がされているのではないか。今、山合いの八戸とか十戸とかそういう集落が何百年という歴史を閉じて解体をして、それが拡大をしてもう里に下がっております。これは国民にとっても日本の国家にとっても大変な問題なのではないか。今放置しておけば、これはもう手の下しようのない状況になっていくのではないだろうかと心配をしております。山形県なども、山奥の山を管理して、沢合いを管理して、そこに文化をはぐくみ生産をはぐくんできた。そして、ある集落が廃屋と化して、その集落の真ん中にお地蔵さんが立っておりますよ。そこに政治があるのか。私は農家の者だから、山形県政の農林に参加して、特に山村を歩いてみて、これは日本列島そのものなのではないかと痛感しております。これは今何らかの手だてをしていかないと、特に国有林などは独立採算性なんというものはなじむものではないんじゃないか。国民の共通の理解に立って一般会計から繰り入れをしていく。山の手抜きはしない。  それから、山の作業班という方、山の植林をしたり下刈りをしたり手入れをするいわば作業労務班というのがおりますが、これをお年寄りたちが細々と守っている。これが五年、十年たつと山の手入れをする人たちが皆無になる。それをいかにして山を守って、山合いの集落、山間を守って活性化、人口の定着をさせて山の文化を守っていくかということが国政の重要な基本的な課題なのではないか、こういうふうに私は思うのでありますが、この点について、いわば山間の国有林の運用のあり方、会計制度のあり方、山間の活性化、そういう問題などについて後でひとつ答弁を願いたい。  お年寄りたちがしがみついて、おら一代で終わりだ、山間の集落にほとんど若い者がいない、ここ五、六年赤ちゃんの産声を集落の中で聞いたことかない、そういう山合いの集落がいっぱいあるのです。おら一代で終わりだ、そういう状況はもう早急に総合的に改めていかなければならないのではないか。山で生活をすることができない、所得の保証がない、後継者がいない、嫁の来手がない、四十歳過ぎでフィリピンからお嫁さんをもらった、韓国からお嫁さんをもらった、そこに政治があるのか。こういう状況が拡大に拡大を続けているのが特に山間の実情なのであります。そういう状況に対して、過疎法あるいは山振法、新農工法、いろいろな角度から総合的に一定の手だては今までもされてきたのであります。それでもそういう状況が拡大をしているということは何なのかという点にメスを入れていかなければならないのではないだろうか。その対処方針などについてお聞かせいただきたいと思います。
  93. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 先生指摘のいわゆる中山間地域につきましては、私ども平成二年度の予算におきましていろいろ工夫をしているところでございます。私ども所管の構造改善局におきましても、中山間地域農村の総合整備事業というものを新たに公共事業として計上いたしまして、中山間地域農業生産基盤、生活基盤を総合的に整備したいということで予算案に計上している次第でございます。
  94. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 それで、先ほど申し上げた人口の定着。このたびの予算措置の中でも、加工とか付加価値を高めるとか、あるいは保養施設、レクリエーション施設などを融資の対象にして拡大をしていくということは、そのとおり大事なことだと思います。それで、特に農村工業というか山間工業のいわば就業の機会を拡大する、人口が定着をする、一定の所得を総合的に見ていくという政策が大事なのではないか。山で生活できないから里に下がらざるを得ないということでありますから。そのため、農村工業いわば山間工業の導入、これは税対策も含めて、労働省等でやっている雇用奨励金のような制度で山間に限って雇用奨励金を出すとか、あるいは山の手入れとかの林業にかかわる従事者の就労交付金のようなものを創設するとか、山の文化、山の人口定着を図って森林を守り山合いの沢を守る、そういう制度を総合的に見直していかなければならないのではないか。それは早急な手だてが欲しい、こういうふうに痛切に感ずるのでありますが、この山村振興の具体的な手だてについて、現場の中から問題点を提起をさせていただいて対処するお考えをお聞かせいただきたい。     〔委員長退席、石破委員長代理着席〕
  95. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 中山間地域活性化というものを図っていくためには、農業とか林業の振興もさることながら、それ以外の所得機会なり就業機会というものを何とか拡充するということが重要であるというふうに考えております。私ども事業におきましても、先生指摘農村工業導入の政策、これは従来からやっておりますけれども、これにつきましても低利資金の導入とか、そういうことでいろいろ工夫をしているわけでございますけれども、今回私どもの方で農業構造改善事業についても新しいメニューをつくりまして、需要創造型の農業をやっていく、これは付加価値の高い山間地向けのそういう独特の農業を創設していくというような考え方。それからまた、地域の資源を活用して所得機会とか就業機会をふやしていく、これは都市農村交流とか、それからまた市民農園とか農村民宿とか、そういうようないろいろな手法を活用いたしまして就業機会を拡充するような、そういう事業をできるような構造改善事業というものを平成二年度の予算から実施したいということで御提案申し上げている次第でございます。
  96. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 まずそれでいわば農村工業の導入の問題なども、農工団地の造成を含めていろいろやってきた。しかし、なかなか山間に工場誘致というのは大変な状況なわけであります。これは一定の対策をとればその環境に適合したような、私は、農村工場と並行しながら特に山村工場、今その点についての手だてを、もっと総合的な立場から税制の問題、雇用奨励の問題を含めてしていただきたい。それから今までは集落センターとか道路とか林道を若干つくったということだけでは、新しい集落センターとか若干の道路とかそういうものがもう廃墟と化している。それだけでは山に定着することができない。一定の生きるすべが総合的に保障されていかなければならない。現実的な重要なポイントがそこにある。そういう意味では、このたびの問題を初めとして、それぞれの制度の運用などについてぜひポイントを絞って政策を追求してもらいたい。そうでなければ大変な状況になるなと私は痛切に感じているものであります。強く要請をさせていただきます。  それから、畜産の問題が先ほどから畜産振興審議会に向かっていろいろ提起されておりまして、重複しない点で申し上げれば、私は何と言ってもこれは自給飼料をいかに確保するか。そして、素牛の安定的な生産と供給と、この自給飼料をいかに確保し拡大をしていくかということが極めて大事な課題ではないかな。もうほとんど素牛代と——例えば肥育牛などにしましても、二年か二年半飼育すれば大体三十五万から四十万もかかる。それで大体もう八割あるいは八割を超えるというような状況では、これはアメリカあたりはまず何としても日本に飼料を買ってもらわなければ困るということだと思いますが、いかにしてこの水田の転作減反、水田の有効利用を含めて、中山間の草地造成を含めて、それから山の薪炭林が四百万ヘクタールとも言われておりますが、これは今一部パルプの材料に資しているということがあるかもしれないけれども、ほとんどこれは放任のような状況にあるわけであります。これを、林間放牧場を開設するとか、有効に素牛の生産、子牛の生産とか自給飼料の確保ということにもっと政策的にも力点を置いて畜産振興というものを目指していく必要があるのではないかというふうに思うものでありますが、その点について所信をお聞かせいただきたい。
  97. 武智敏夫

    武智説明員 先生指摘のとおり、酪農なりあるいは肉用牛の特に繁殖だろうと思っておりますけれども、そういった大家畜の経営のいわゆる低コスト生産をやりますためには、粗飼料の自給率を高めるということが一番大きな課題だというふうに思っております。したがいまして、既存の水田等ももとよりでございますが、畑も含めまして既存の飼料基盤を最大限に活用するということと、それから今御指摘のような転作田等の既耕地の活用が大事なことじゃないかというふうに思っております。特に飼料作物の転作につきましては、転作面積全体の約四分の一弱でございますが、転作作物として既に現実にも重要な位置を占めておるというふうに思っております。これからの課題といいますか、まさに肉用牛を、大家畜をこれからふやしていきますためには粗飼料のための土地集積が要るわけでございますし、当然そのためには排水対策等を兼ねた条件整備をやりながら、転作田なり水田裏を活用したような飼料作物の生産拡大をやっていく必要があるのじゃないかというふうに思っております。  それから、既耕地の利用に制約があるような場合あるいは山間の場合には、当然開発コスト、かなり奥地化いたしましてコストもだんだん高くはなっておりますけれども、これからも適地につきましては草地開発事業を進めていく、そういうようなことをやることによりまして自給飼料をふやして、大家畜のためのいわゆる低コスト生産を進めていくというようなことをやらねばならないというふうに思っております。特に水田につきましては、稲作との関連もございまして、我々もかねてから水田肉用牛というようなことで水田になるべく肉用牛を入れたいということで努力いたしておりますけれども、御承知のようなことでいろいろな沿革的な理由等もございまして、水田地帯で既に畜舎等を撤去したような地域、当然家畜を入れますと非常に労働力が拘束されるといったようなこともございまして、水田に牛を新たにまた呼び戻すというようなこともやっておるわけでございますが、いろいろな難しい事情もあって必ずしも伸びておりませんけれども、我々も力を入れて水田との結びつき等も深めていきたいというふうに思っております。
  98. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 時間もありませんから土地改良の経費負担の問題についてちょっと触れさせていただきたいと思いますが、まず、この土地改良の基盤整備に鋭意努力をされてきたことについては敬意を表するのでありますが、この減反転作面積の拡大と米価の値下げ問題ですね。大体去年の一万六千七百四十三円という政府買い上げ米の米価なんですが、これは十三年前の米価なんです。需要減少しているということがあるけれどもあるいは内外価格差を縮小するということがあるけれども、特に米作農民だけが、それぞれ昇給が行われている状況の中で、十三年前にさかのぼってまたことしも下げようとしているのではないかということが言われております。土地改良の費用負担の軽減について、一定の御配慮もされていらっしゃいますが、ぜひ御配慮を願いたいなというふうに思うのであります。設計基準の見直しあるいは補助単価の見値し、いわば用排水路あるいは特に幹線農道、それから水門などは公共的な資本なのではないか、したがって、これは全額公費負担とすべきではないのか。農民が土地を提供して、費用の負担をして公共の用に供するなんという負担能力は今はもうない。ぜひそれらを検討願いたいな。そして、できれば償還金の借りかえの制度とか、あるいは長期の、物によっては無利子の長期資金の手当てなどを創設をして、なるべく負担の軽減を図る必要があるのではないか。特に、これから行われる部分についてはこれは重要な課題なのではないか。大体山形県内では十アール当たり最高が六万三千円ですよ。それだけの償還の負担をしてとてもやっていける状況がないのです。この点は全国的な課題として、一定の配慮なども予算措置の上でも制度の上でもされているようでありますが、ぜひ重要視して御配慮を願いたいな、お願いを含めて要請をしたいというふうに思いますが、その対応、方向などについてお聞かせをいただきたい。     〔石破委員長代理退席、中川委員長代理着席〕
  99. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 土地改良負担金の問題につきましては、最近の農業をめぐる厳しい情勢を勘案いたしまして各種の対策をこれまでもとってきたところでございます。先生指摘のような、土地改良の事業費単価をいかに抑制するかというようないろいろな工夫、それからまた基幹かんがい排水事業の創設というような形で国営事業改善するとか、国営事業についての償還の方法をいろいろ改善するとか、また負担金の支払いについての融資措置についてもリリーフ資金等を創設する、こういう施策を現在講じているわけでございます。  しかし、さらに最近の厳しい情勢を勘案いたしまして、平成二年度の予算におきましては、五年間に一千億の資金を造成いたしまして、負担金の償還が困難な地区に対して償還総額を増加させないように負担金の償還を平準化するというような助成措置も予算の中に組み込んでいる次第でございます。さらにまた、地方財政措置、都道府県なり市町村が負担するものにつきましても、地方財政の方でいろいろ手当てをしていただくということで現在自治省の方と相談を進めている次第でございます。  今後とも、こういう施策を十分に活用いたしまして、農家負担の軽減に努めてまいりたいと考えております。     〔中川委員長代理退席、委員長着席〕
  100. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 時間がないようでありますから、最後にカモシカの農作物被害問題について。  これは文化庁の所管だと思いますが、農作物の被害が甚大なわけです。これは局地的に限られている部分だと思いますが、特に山形周辺、奥羽山脈系統は大被害、年々被害が拡大をしている。これは今、生息調査を含めて、個体調整を含めて要請行動に立っているわけでありますが、おととしあたりは大体五千万の被害、去年あたりは約八千万の被害というようなことで、ほうっておけない状況があります。したがって、文化庁、環境庁、農作物被害は農林省でありますから、関係省庁で対策協議会をぜひ設置してもらいたいな、そして個体調整を含めて早急な対策をお示しいただきたいな。極端に言えば、天然記念物で国が指定をして保護をしている、被害についてはお構いなし。国が指定しているならば被害については国できちっと補償すべきではないか、農家の声としてはそういう偽らざる声になっております。その対応についてぜひ御検討、対処をいただきたいと思いますが、農林水産省のお考えをひとつお聞かせをいただきたい。     〔委員長退席、穂積委員長代理着席〕
  101. 松山光治

    松山政府委員 カモシカによります農作物被害の問題は、御指摘ございましたように東北あるいは北陸、中部、近畿といったような山間地の一部におきまして、果樹でありますとか野菜でありますとか豆類、雑穀といったようなものについて発生しておるわけでございまして、農作物担当局としては心配をしておるところでございます。  そもそもカモシカの被害対策は、御指摘ございましたように特別天然記念物でございますが、もともと林におきます食害というのが大きかったわけでございまして、先生指摘のありましたような関係省庁といたしましては環境庁と文化庁と林野庁で既に一定の話し合いがずっと行われておるわけでございまして、御指摘のございましたような個体数調整の問題も含めて一定の相談事で対策を講じていくという仕組みに相なっております。山形県におきましては、今個体数の調整の要望があるということは私ども承知しておるわけでありまして、県でそのことが可能かどうかというための基礎資料の収集、調査をやっておると承知しておるわけでございますし、これからの対応といたしましては、我々は県の調査の結果も見ながら関係省庁とよく相談していきたい、このように考えております。  なお、被害についての補償の問題がございましたが、この問題は、カモシカが特別天然記念物であるということからいたしますれば本来的に文化庁でどのように考えるかということになろうかと思うわけでございますが、私ども承知しております限りでは、補償問題は現行制度上いろいろと問題がございまして、食害を防止するための措置を充実することで食害自体を生じないように引き続き頑張りたいのだ、こういうふうな方針だと承知をいたしているところでございます。
  102. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 どうもいろいろありがとうございました。ひとつ十分御配慮をいただきたい。  時間がありませんので終わります。どうもありがとうございました。
  103. 穂積良行

    穂積委員長代理 藤原房雄君。
  104. 藤原房雄

    藤原委員 きょうは、畜産審議会がきょうから食肉部会、そしてまた明日は酪農部会ということで審議が進められる、平成二年度の農産物価格決定という大事なときでございますが、その問題につきまして数点お伺いをいたすわけでございます。  その前に、過日行われました日ソサケ・マス漁業交渉に関しまして一つだけ触れておきたいと思うのであります。私どもは報道機関によってのみしかその状況を知ることができ得ませんので、実際この交渉に当たりました水産庁、農林水産省としまして、この問題について非常に関心を持ち、そしてまた今後の動向にいろいろな心配をいたしております方々に対しまして、この経緯、そしてまた今後の見通し、こういうことについて、今日までの交渉の経緯をとらえまして御報告をいただきたい、こう思うのであります。  私が長々申し上げるまでもなく、北海道の基幹漁業としての北洋サケ・マスにつきましては、水産加工とか関連産業地域経済、こういうことを考えますと非常に大きな影響力を持っております。そしてまた、近年におきましてはソ連の沖取り全面禁止を前提としました漁獲割り当て量の大幅削減とか操業規制の強化、こういうことで、九二年からはこの沖取り全面禁止というようなこともソ連から一方的に指摘されているわけであります。三月十三日から東京で開催されました本年度の日ソサケ・マス漁業交渉の漁獲割り当て量は、日ソ双方の主張が大きな隔たりがあって難航しておるということが報じられておるわけでございます。  今日までサケ・マス漁業につきましては数次にわたります滅船を強いられ、関係漁業者の経営には非常に厳しいものがあることは御存じのとおりでございますが、加えて乗組員の雇用問題とか水産加工関連という関連の産業に大きな影響を及ぼす、それらのことはまた施策も十分に行き届いていないという昨今、またこういう問題が出てきておるわけであります。来月モスクワでまた協議を再開するということも報じられているわけでございますが、漁期のあることでもございますので、早期の妥結と早期の出漁のできるように、そしてまた操業実績を確保できるように、こういうことを関係者は願っているわけでありますが、今後の見通し等につきまして、また今日までの推移について御報告いただきたい、こう思うのであります。
  105. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 お話のございました日ソのサケ・マス問題についての協議でございますが、今月の十三日から東京におきまして協議を開始したわけでございます。結果的には、二十五日の深夜で双方の合意が得られない、ソ連側の日程の都合もあるので滞在延長をして協議を継続することができないという状況になりまして、やむを得ず一たん中断をしまして、四月中旬を目途にモスクワで協議を再開すべく、具体的な日程については今後外交ルートで協議をして最終決定をするという状況に相なっております。  今回の協議でやりました内容というのは、大まかに申しまして二つの問題がございます。一つは、一昨年からソ連側が大変強い姿勢で示しております一九九二年以降我が国の行っておりますいわゆる沖取りのサケ・マス漁業を停止するという問題であります。それから第二点が、一九九〇年におきます我が国の沖取りサケ・マス漁業の操業条件に関する問題であります。  その第一の点につきましては、依然として強い姿勢を示しております。特に、御承知のとおり、この沖取り停止問題というのはいわゆる二百海里体制の中で確立をされております遡河性魚類の母川国主義の原則からいって当然の要求であるという建前を全く崩しておりません。あわせまして、御承知のとおり昨年の暮れに国連総会で決定をされました流し網漁業に関するモラトリアム決議、さらにまたペレストロイカの進展に伴いますサケ・マス魚類についてのソ連国内需要の増加、現在アメリカとソ連の間で進められておりますいわゆる北太平洋における新しい漁業秩序の形成に向けての話し合い、そういう事情をさらに背景といたしまして大変強い沖取り停止の要求を示しております。  私どもとしての主張もしたわけでございますけれども、先方の姿勢も大変強く、早急に結論を得ることはできないということで、この問題を棚上げをした形で第二の課題であります一九九〇年の操業条件の話し合いを進めたわけでございますが、結果的に申し上げますと、漁獲量それから漁業協力費のレベルについて双方に相当の格差がございます。また、新たな問題として操業隻数の制限という問題が提起をされております。これらいずれの問題につきましても双方が合意が得られる状況には至らなかったわけであります。再開後の協議におきまして私ども当然我々の受け入れられるような条件をつくるべく最大限の努力をしたいと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、一九九二年以降サケ・マスの沖取りは停止をするという大変強い姿勢のもとで段階的に漁獲量を削減をしていくという姿勢から見まして、我が方にとって大変厳しい交渉が避けられないというふうに考えておるわけでございます。  いずれにしましても協議の決着に向けて今後さらに努力をしていくつもりでございますけれども、あわせまして、状況によりましては、昨年の十二月に閣議了解で決めました国際漁業再編対策というものがございます、これに基づきまして先般の補正予算におきましても、他の漁業でございますが、北洋はえ縄漁業あるいはベーリング東部におきますツブ漁業については所要の減船対策を講ずべく予算の御承認をいただいたわけでございますが、この例に倣いまして、北洋サケ・マス漁業につきましても再編整備についての検討を進めていく必要があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  106. 藤原房雄

    藤原委員 交渉の経緯と問題点については今お話がございましたが、来月の中旬、交渉が再開されるということでございます。他産業と違いまして操業期間があるわけでございますので、早期の妥結と、また条件は条件といたしまして出漁に支障のないような形で精力的に交渉をいただきますよう要望いたしておきます。  さて、畜産問題でございますが、最近の畜産をめぐります諸情勢につきましては、先ほど来同僚委員からもいろいろお話のございましたとおりでございます。時間も限られておりますので幅広いお話もできませんが、このたび生産費調査によりまして保証価格決定するに当たります諸条件がございますが、その中の家族労働費の評価とか副産物の価格、それから生産性向上のメリットの還元、こういうことが農業団体からも強く要請になっておるわけでございます。  家族労賃の評価につきましては当局も、今日までも生産者のいろいろな立場を勘案いたしまして、企画管理労働時間、これも算入するようにいたしましたり御努力をなさっているわけでありますが、どうも同じ酪農にかかわるお仕事をしていながら自給飼料の生産が、家族労働賃金と飼料の家族労働とは違うということにつきましてはどうも実態にそぐわないのではないか。私に言わせますと、やはりコストダウンするために努力をしなければならぬ、そういうことで御指導もこれあり、今日までいろいろ努力をして生産者も頑張ってきて、政府のいろいろな統計上生産費が下がっておるぞと言われるような状況になってきた。これは一つは一頭当たりの乳量がふえたり規模拡大したり技術が向上したり、こういうものが相重なって総合的に生産費がコストダウンできるようになったのだろうと思うわけであります。その中で、コストを下げるためにはそういう実態に沿ったいろいろな算定要素というものがなければならぬと思うのでありますが、日本の国は、御存じのとおり諸外国に比べまして何十倍も高い土地の中で、また工業国として経済大国と言われておる中にありましても、ほかの製品は非常に高くついておる部門がある。その中でも農業にかかわるものが諸外国よりも非常にコストが高い、肥料にいたしましてもえさにしましても農機具にしましても農業施設につきましても。こういう農業にかかわります肥料やえさや農機具や農業施設、こういうもののコストダウンというものが図られませんと、農家の規模拡大とか頭数をふやすとかこういうことだけでコストダウンを強いる、決して労働強化だけでこれらのことができるわけではないだろうと思うわけであります。えさにつきましては、最近輸入のものが非常に安いということで、それが大きな作用をしておることもありますが、こういう肥料とか農薬とか農機具とか農業施設等につきましては、これはいつも附帯決議や何かにつきまして十分に価格引き下げのために他省庁と連携をとってひとつ厳重に見てもらいたいということを言うのでありますが、その割にこれらのものについては価格引き下げという状況が生まれてきていない。こういう状況が変わらずしてコストダウンということだけ強く言いますと、労働の強化につながって、規模拡大ということになりますとますます負債をふやすということになり、余裕のない営農がまた始まるということになるのではないか。  こういうことからいいまして、何といっても乳価算定に当たります諸条件の一つ一つの問題について、家族労働の見方というもの——肥料それから農機具や農業施設をつくっている方々は、どちらかというと都会、都市にお住まいになっている方々。それらの方々の労働賃金が上がるためにこれらの価格が上がる。そういうものを農家の方がお使いにならなければならぬ。そういうコストアップしたものが価格に転嫁されたものを使って営農しなければならぬということを考えますと、どうも北海道の方々の、同じ仕事をしながら、同じ条件のもとに同一労働が同一賃金体系の中に組み込まれていないというアンバランスさ、やはり都市の企業の労賃というものが基礎になければ、算定から公平さというものは欠くのではないか、つくられているものを使うわけでありますから。北海道の中でつくられたものならそれでよろしいのかもしれませんが、どうしても都市と北海道では労賃の大きな差というのがございますから、こういうことを十分に勘案しなければならぬ。数字の上ではいろいろはじき出されるかもしれませんが、こういう公平さというもの、また農業団体方々の、こういう農業にかかわる投入材価格というもの、また資材価格、こういうものをできるだけ引き下げるようにしてもらいたいということからいたしましても、これは農林省としても今日までも言われてきておることでありますが、本当に努力いたしてこういうものに対する考え方というものをきちっといたしませんと、納得のいく生産費調査というものを私どもは認めるわけにはいかない、こんな気がしてならないのですが、いかがでしょうか。
  107. 武智敏夫

    武智説明員 先生指摘のように今回、先般発表されましたが、北海道の酪農経営の生産費が出たわけでございまして、対前年で五・八%の減というようなことが出たわけでございます。もちろんその五・八%の減の中には、先生指摘のような規模拡大をしたりあるいは農家方々努力によりまして乳量アップしたりというような部分と、それから例えば牛肉価格が高いためにぬれ子の価格が今上がっておるというような部分と、一つ一つ要素をとりますといろいろな要素がたくさんあろうかと思います。したがいまして、先ほど来申し上げますとおり、生産性向上分といいますか、農家方々努力分につきましては、当然それ相当に農家方々にも還元しなければならぬというふうに思っております。  それから、例えばぬれ子の価格につきましても、これは努力というよりはやや他力的な面もございますけれども、来年いわゆる自由化されるというようなこともございまして現在は非常に高いわけでございますが、来年へ向かってどういうような価格になるかということも、これはかなり慎重に判断していかなければならぬというふうに思っています。  それからまた、御指摘のようないろいろな資材がございまして、もちろん上がっておるものもございますし、いろいろな資材がございます。えさですとか、あるいは肥料ですとか、あるいは農機具ですとかいろいろございまして、これらの資材につきましてもなるべく安い価格で供給できるようなふうに我々は極力努力いたしているつもりでございます。例えばえさ等につきましては、かねてから御要望のございました農家方々が単体用の飼料を自家配合したいというような御希望もございましたので、既にこれらにつきましては昨年、平成元年の四月からできるような措置もとりましたし、あるいはえさの工場の競争をさせることによりましてさらにより一層安い価格での配合飼料の供給ができるようにというようなことで、昨年の九月から配合飼料の承認工場制度におきます農林水産省の推薦制の廃止というようなこともやったりいたしております。また肥料につきましては、昨年六月に肥料価格安定臨時措置法を廃止いたしまして、要は競争条件を整備するというようなこともいたしておりますし、また機械等につきましても、中古機械の流通が円滑になるようなことですとかあるいは農業機械銀行の活用等を通じまして、なるべく農家方々が低コストで生産できるような形にいたそうと努力いたしておるわけでございます。不幸にしてコストが高くなりますれば、結果的には一年おくれになるわけでございますが、翌年のコスト高というようなはね返りになりまして、それは結果的にはまた乳価で反映されるというような形になってきておるわけでございますけれども、いろいろな意味におきまして、先生指摘のような農家の方の努力につきましては、我々も、いろいろな意味で還元もし、かつまた一部は消費者にも還元していただくということで再生産ができるというようなことを前提にいろいろ試算しておるところでございます。
  108. 藤原房雄

    藤原委員 時間があれば一つ一つについてお尋ねをしたい。農林省もいろいろな努力をしていることは私も認めますけれども、個々の問題につきましては意見の分かれるところといいますか、実態的にはその割に実効性が上がっていない面もある。毎回この価格問題につきましていろいろ議論になりますときには、こういう問題については附帯決議としましても出ておりますし、さらにまた建議の中にもこういうことについてはどちらかというと努力しなければならぬということが入っているはずであります。特に農機具とか農業施設とか、こういうものにつきましてコストダウンするような条件を当然農林省が考えてあげなければならぬだろうと思います。  補助金ほど高いものはない、こういうことはよく言われるわけでありますが、山の中に建てる牛舎、豚舎、こういうものが建築基準法にのっとらなければならぬなどという、こんなことはないわけでありますし、また建築基準法にのっとって非常口や避難のシグナルがなければならぬなどということはない、やはり実態に即した形でなければ、こういうことについては私も数年来訴え続けました。同僚議員からもいろいろありまして、附帯施設とかいろいろなことについては農林省も随分検討してきておることは存じておりますが、建物そのものについてももう少し幅のある条件に緩和しなければならぬ。私どもがこう申しますと、国から補助金をもらったものが風で倒れるようなそんな弱いものではいかぬ。そんなものを建てたら自分が困るのですから、そんないいかげんな弱いものを建てるわけはございませんし、それは当局で、建物についての検討をいたしております建設省などと十分にお話し合いをしていただきまして、実態に即した、もっとコストダウンできるような条件を十分に考えてあげませんと、数字ではじき出したら今度は生産費が下がっているぞ、こういうことだけで価格決定されると行き詰まってしまう、そしてまた限界が当然出てくるわけであります。今日の酪農につきましては、一頭当たりの乳量とか頭数とかがEC並みになって、条件は大分そろってまいりました。しかし今一番問題になっているのは、農機具とか施設とか、農機具等につきましても中古等についての交換とかいろいろな工夫をしてやっていることは私もよく存じておりますけれども、もっと他省庁といろいろ連携をとりながらそういう環境、条件を整えるような御努力をしていただきたいことを私は御提起を申し上げたい。それから補助金等につきましても、アメリカに言われるとへいへいと言ってすぐ言うことを聞くのだけれども国内のことはなかなかできないなどということではいかぬだろうと思います。もっと実態に即した形で農家のやりやすいような、そしてまたコストダウンにつながるような、生産性の上がるような形に持っていっていただきたいものだと思うのであります。  それから何といっても負債問題でありますが、農家方々といろいろとお話をしますと、何といっても急激に近代化をしてきたところに無理があります。形の上ではさっき申し上げたように一頭当たりの乳量がふえたとか頭数ではEC並みになったとかいろいろなことを言われますけれども、そこにいくには負債を背負っているわけであります。この負債がコストダウンする上においては一番大きなネックになることは当然のことでありまして、そういう中で経営の合理化のために大変に努力していることはよく御存じのことだろうと思います。こういうことからしまして、今日負債の問題につきましては、皆さんのいろいろなお話を聞きますと、統計数字の上では、最近はABCDのランクの上からいいますとCDが非常に減ってABが多くなったのだという言い方をしますけれども、CDの方々は離農なさって、いらっしゃらなくなったから数の上に上がってこなくなったのであって、実際そういう方々が救われたわけでは、また健全経営になったということでは決してないだろうと思うわけであります。いろいろな条件の中でのことでありますから一概には言えないのかもしれませんが、そういうことで数字だけ見ますと非常によくなった数字が出ておるのですけれども、実態的にはそういうことじゃございませんで、負債対策等につきましても十分な状況判断をしていたしませんと、せっかく今基盤を築きつつある、三年連続値下がりいたしまして、生産費が上がって、さてここでというやや基盤を築く条件が整ったところでまた足を引っ張るようなことになってしまったのでは今までの努力が何であったのかということになる。こういうことからいたしまして、負債対策も今日までいろいろやってまいりましたし、またリリーフ資金や何かでいろいろ面倒を見ようといういろいろな条件についても我々もよく存じておりますが、それはそれとしまして、五十年からの経験が必要だと言われているものを十五年、二十年の中に急激に規模拡大をそういうことでやってきたということでありますから、十分な勘案をして進めていただかなければならぬと思うのであります。  さらにまた、最近の輸入食品の検査とか監視体制を強化せよということも言われております。消費者方々は、輸入食品に対する検査は公的なものが最近は非常に少なくなったのじゃないか、行政検査の割合がだんだん少なくなっている、こういう統計等を見ましていろいろ危惧の声も上がっているわけであります。これは一方からいうと、アメリカは早く検査をして簡素化しろと言う。アメリカからいうと日本の方はそれに逆らうことになるかもしれませんが、人間の体をつくる大事な検査ということでありますから、この検査や監視体制の強化も少しも手を緩めてはならないと思います。  また酪農の方々は、先ほど申し上げたように労働強化という、生き物を飼っているということで一日も休むことのできない状況の中にありまして、ヘルパー制度の一日も早い拡充と強化が訴えられておりますが、都会では週休二日という状況の中にありながら休むことのできない環境にある。こういうことからしまして、地方ごとにそれぞれ工夫をしてやっていることはよく存じておりますが、制度として拡充強化を進める、こういうことも農村の後継者育成の上におきましては非常に大事なことだろうと思います。ことしは本当にこういう方向性の見出せるような施策を進めていただきたい。  あれやこれや申し上げましたが、まとめて大臣にこれらのことについての御意見を賜って、終わりたいと思います。
  109. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  今先生の御体験に基づくさまざまな角度からの御指摘がございました。傾聴しておったわけでございますが、ちょうどきょう、あす、審議会でもございます。また、その後もずっと厳しい道が農政全般について続くわけでございますが、今御指摘のあったようなことを一つ一つ吟味をしながら、先ほど来答弁申し上げているような方針に従いまして積極的な農政展開してまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。
  110. 穂積良行

    穂積委員長代理 倉田栄喜君。
  111. 倉田栄喜

    ○倉田委員 倉田栄喜でございます。  畜産物価格決定等に関する質問に先立ち、まず我が国農政基本にかかわる問題について大臣の御所見をお伺いいたします。いわゆる農家の方方に存在する農政不信についてであります。  本年一月十八日、熊本県菊池郡大津町大津町民総合センターにおいて農政を語るシンポジウムが開かれ、私も参加いたしました。このシンポジウムは、熊本県の若手農民方々が中心になって結成された農民政治を考える会が企画したものでありました。この農民政治を考える会の発足に当たって、あすの農業を担うべきこれら若手農民方々は「我々は自らの仕事に対して誇りと信念を持っている。ただ、自信が持てないのである。将来に対する不安、年ごとに減少して行く若い農業従事者、その事からくる農村社会の疲弊、これらを身近かに感じながら日々の不安の中での生活を余儀無くされているのである。」と訴えておられたのであります。このいわば将来の農業を担うべき若手農家方々が、一方で自らの仕事に対して誇りと信念を持っていると言いながら、他方自信が持てず、将来に対する不安があるとなぜ叫ばれるのか。農民政治を考える会の発足に当たっての趣意書には次のように記されているのであります。   我々は先の参議院選挙において、農政に対して、ノーと意志表示をした。その事は農業に従事する者として、農政の在り方に対する現場のギリギリの所からの声でもあった。   水田の減反政策を出発として、農畜産物価格の低迷、減反の強化、農畜産物輸入自由化など一連の流れは我々に、はかりしれない不安とあきらめに近い心を抱かせるに充分であった。この事は、この間の我国農政に「心」が無かった証でもある。いかに政治であろうとも、それを行い、それを受けるのは人間である。その中には信念なり、将来展望なり、人の心が必要であると考える。 大臣、この訴え、叫びをいかがお聞きになりますか。我が国農政に心がなかったと訴えておられるのであります。また、我が国農政に対しては、その激しい批判をあらわす言葉一つとして、猫の目農政なる言葉も存するのであります。このようなことが言われるのは、農家方々の間に我が国農政に対する根本的な不信感があるからだと私は考えております。  そこで、大臣にお伺いいたしますが、大臣は百二十三代目の農林水産大臣として、まず第一に、今までの農政に対してどのような認識、評価をされておられるのか、第二に、農家方々に存在するいわゆる農政不信に対して大臣はどのような認識をされておられるのか、第三に、これらの農政不信に対して大臣はいかなる具体的解消法をお持ちなのか、お伺いをしたいと考えます。
  112. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  私は百二十三代目でございます。農林水産省に参りまして歴代大臣の横顔もずっと見させてもらいました。また、仕事についての歴史的な経過、全部読んだわけじゃありませんけれども、今まで我が国がたどってきた農林水産省農林水産省になる前は農林省あるいは農商務省というのですけれども、その歴代大臣のお仕事ぶりなどもかいま見たわけでございます。先輩はそれぞれの時代、それぞれの工夫をし、それぞれの苦労をしたものだなというのが私の率直な所見でございます。しかし、にもかかわらず、特に最近農政不信などという大変嫌な言葉がちまたをにぎわした、あるいはそれが政治選挙に大きく影響しておるというふうなことは、これは農政関係者として、ただいまは担当者といたしまして極めて悲しいことだ、遺憾なことだ、こういうふうに思っております。  しからばその農政不信なる言葉がどこから出てきたか。天から降ってきたのか、地からわいてきたのか、やはりこれは何か原因があるということでございます。いろいろここにも書いてございますけれども、率直に申し上げまして、たびたび申し上げているとおりやはり生産者の、言うならば農民気持ち気持ちとして、そして率直に話し合う、率直に語らいかけるというふうなことに欠けておったんじゃないかな。法律ができればいい、金が予算としてつけばいい、これでは済まないんですね。ですから、先生おっしゃったように、農政の心が欠けておったというふうな熊本の大会での叫びが出てくるんだろうというふうに思います。  私自身は、今いろいろ勉強させられておりますから、日本農政が口で言うほど簡単ではない、農は国のもとだと言っても、その国のもとの認識はわかった、そして時代が変わってもその思想は変わらないと言いながら、対応の処方せんは着々と変わるわけだ、刻々と変わるわけだ、その対応の仕方にも問題があったんじゃないかという反省なども率直にすべきではないか。しかし、これも正直な話ですけれども、世の中悪く見ればみんな悪いことでして、よく見ればまたいい角度もあるんですね。そして、それを織りまぜながら時代が推移していくわけです。農は国のもとというのは、やはりいつの時代にも農を基本にして国の政治を進めなさい、こういう不磨大典だと思うのですよ。そのことをこれからの若い人にどうやって伝え、どうやってあらわしていくかということにかかっておるというふうに思っております。  いろいろな方策はここで申し上げましたし、先生もよく御存じだと思いますので、百の言よりも一つの実行でございます。その実行も、私流に言わせますと、一本注射を打ったからあしたから日本農政は変わったんだ、一服頓服を飲んだからあしたから体質は強化されて足腰が強くなった、そんなことにはならない。今までの積み上げからさらに積み重ねていく。一粒百行というような言葉がございまして、私どもの先輩の額に入っておりますけれども、一粒をとるには、百の苦しい仕事をしなければ一粒はとれないというのがございます。そういう精神で特に後継者、若い人たちにお話をし、そして話を聞き、実効をともども上げてまいりたい、こう考えております。
  113. 倉田栄喜

    ○倉田委員 ありがとうございました。農家の方方と素直に話し合いをしたいという大臣のお言葉、私もまた現場の方々お話に心を傾けながら、農政不信の解消に全力を尽くしてまいりたいと思います。  以下、畜産、酪農問題についてお尋ねをいたします。  第一に、畜産物価格については、消費者サイドあるいは市場開放への対応からは畜産物価格の引き下げの方向が、他方では、政府自民党選挙公約等の内容に関連して、農家方々には価格の維持に対する強い要望があるものと思われます。この価格決定あり方次第では、先ほど申し上げました農政不信の増幅にもつなかりかねないわけであります。そこで、この点を踏まえた上で今回の畜産物価格決定について政府ほどのような基本姿勢で臨んでおられるのか、お伺いをしたいと思います。
  114. 山本富雄

    山本国務大臣 まず、指定食肉の安定価格、それから肉用子牛保証基準価格等につきまして、本日政府試算値を出しましたものを畜産審議会、部会の方にお諮りをしておる次第でございます。  また、今先生からお話しのどういう態度でどういう基準で決めたのだということでございますが、平成二年度の畜産物価格につきましては、畜産物価格安定等に関する法律などの規定に基づき、それぞれの畜産物生産条件あるいは需給事情、物価の動向などの経済事情等々を考慮して、その再生産を確保することなどを旨として定めることとされておりまして、この線に従って試算値を出したということでございます。
  115. 倉田栄喜

    ○倉田委員 時間が大分詰まってしまいましたので、最後の質問にしたいと思います。  食糧の総合自給率が著しく低下している実情から見て、畜産、酪農についても国内生産を基軸とした政策展開が図られるべきであると考えますが、そのためにも、擬装乳製品を含めた畜産酪農製品についても国内生産に悪影響を及ぼすことのないよう適切な対応をなすべきものと思います。  また、脱脂粉乳など乳製品輸入制限措置の撤廃についてでありますが、これは平成二年度中に米国政府と再協議することになっております。そもそも米国政府は、米国の議会においても正式に承認してないガットを根拠にして我が国に対し強硬に市場開放を追っており、しかも、脱脂粉乳等については米国自身がウエーバー品目としてがっちりと保護しているものであります。それだけではなくて、既に我が国が自由化を決定した牛肉でさえ米国は食肉輸入法で規制をしております。こうした米国の理不尽とも思われる対応について、農水省はどのようにお考えになっておられるのか。また、この意味においても乳製品輸入制限措置は堅持すべきであると考えますが、いかがでしょうか。
  116. 川合淳二

    ○川合政府委員 御指摘のように、アメリカはウエーバーによりまして酪農品等につきまして輸入制限を実施しておりますし、食肉輸入法による食肉に対する輸入制限も行っております。こうした措置につきましては現在進行中のウルグアイ・ラウンドにおきまして、我が国といたしましては、ウェーバーなどによります現在ガット上例外的に認められている輸入制限を含め、貿易に影響を及ぼすようなすべての措置を対象とした新しいガット規則、規律、この策定を通じまして公正で新しい農産物貿易秩序の形成が図られることが必要だということで、そうした主張をしております。我が国といたしましては、ウルグアイ・ラウンドにおきましては、食糧輸入国としての我が国の立場が交渉結果に反映されるように全力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。
  117. 倉田栄喜

    ○倉田委員 ところで、経済社会国際化が進む今後に当たっては、消費者に対し良質な畜産物をより合理的な価格で供給するための努力は怠ることはできないものと思います。そのために生産者の経営の安定向上に配慮しつつ、畜産酪農経営における省力化の推進、飼料、機材など生産資材価格についての対策、先ほど藤原議員が質問したとおりでありますけれども、並びに畜産、酪農の経営診断システムの導入等についてはより一層の促進策を講ずべきものと思いますが、いかがでしょうか。また、畜産物生産費に大きく関係する飼料コストを圧縮するために、自家配合についての技術指導を強化してはどうかと考えますが、いかがでございましょうか。
  118. 武智敏夫

    武智説明員 先ほど藤原先生にもお答えいたしましたけれども国際化する中で畜産経営のコスト低減が非常に重要な課題でございますので、えさを初めとして肥料あるいは農業機械にしましてもそういう方向にいくようにいろいろ努力をいたしておるわけでございます。  先生指摘のありましたように、新しい窓口を設けてやったらどうかという話につきましては、既に平成二年度から新しい予算を要求しております。畜産資材、これはえさもあれば肥料もあれば農業機械もあれば畜舎等もろもろでございますけれども、そういうもののコスト低減をいたしますために県なり市町村段階におきます相談窓口を設置する、あるいはそこに情報を集めたり低コストの機械とか畜舎等の実証展示をする、そのほか畜産資材等の効率的な利用のための推進指導事業をやるということを通じてやってまいりたいと思っております。
  119. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私が熊本で優秀経営者とされる畜産農家を訪ねていろいろとお話を聞かせていただいたときに、今後の方針として規模の拡大路線をとりますかと質問をしたことがあります。そのときにその農家の方は、規模の拡大は設備コスト等危険が大きいばかりではなく労働力等にも限界がありますので、品質で勝負をしていきたいと答えておられました。  そこでお伺いしたいのですが、我が国農業はおおむね家族農業で成り立っているものと認識をしておりますが、この基本的枠組み、構造を守る観点から、例えば品質の向上についての施策等を実施するなど、家族農業を維持する視点についてどのようなお考えをお持ちでありましょうか、大臣にお伺いしたいと思います。
  120. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 我が国はいろいろな条件に恵まれていることもありまして、各地で多彩な農業展開されているのは御案内のとおりでございます。特に施設園芸とか中小家畜とかいう、余り土地を要しない作物につきましては極めて生産性の高い農業展開されております。  一方、土地利用型農業につきましては、従来から賃貸借その他によります中核農家への土地の集積等を通じまして規模の拡大とかあるいはそういう農家を中心にした生産組織の育成によりまして生産性向上を図っているわけでございますけれども、土地に対する農家の方の執着等がありまして、その歩みは着実に進んではおりますけれども、そう急な展開の速度ではございません。ただ、そういう中で、土地利用型につきましては生産単位を個人あるいは集団として拡充しながら生産性を上げていく、それからまた集約的な農業につきましては、付加価値の高い農業を育成していく、そういうふうに地域の実態あるいは農家経営の実態に合った農業をそれぞれ展開していくということが基本であろうというように考えております。
  121. 倉田栄喜

    ○倉田委員 例えば、かのEC、ヨーロッパ共同体は、八五年に公表した「共通農業政策の展望」の中で、米国のような広大な土地と少数者による農業はヨーロッパのような条件下では不可能である、またその必要もない、ヨーロッパには家族農業こそ必要であると訴えており、事実米国との農産物交渉についても強固な姿勢で臨み、域内農業を立派に守り通しているわけであります。  日本とECとは置かれている諸条件が違うと思いますが、我が国においても、せめてECのようなしっかりとした農政理念というものが確立をされれば、冒頭申し上げました農政不信の解消にも大きく寄与するかとも考えますが、この点いかがでございましょうか。
  122. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 我が国の場合に、ECがアメリカ等に比べまして土地条件で規模的には不利である、さらに日本の場合にそのECに比べてさらに狭隘であるということは否めない事実でありますけれども、そういう中にあって、やはり食糧というのは国民の生活基盤にとって欠くことのできないものでありまして、与えられた土地条件を最高度に生かしながら、それぞれ地域の条件に合った生産展開していくことが肝要だと思っています。  私ども昭和三十六年に農業基本法が制定されまして以来、農業基本法の精神にのっとりまして、いわゆる家族経営でやっていく生産、あるいはさらに先ほど来申し上げますように、土地利用を中心とする農業につきましては、規模の拡大を通じながら施策を進めているわけでございます。私どもは、やはり日本の立地条件を生かしながら、各地で将来を見通せる農業展開というものに力を注いでいきたいというように考えております。
  123. 倉田栄喜

    ○倉田委員 ありがとうございました。以上で終わります。
  124. 穂積良行

    穂積委員長代理 藤田スミ君。
  125. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私はまず、九〇年度畜産物価格の問題についてお伺いいたします。  今回の畜産物価格決定は、九〇年代の畜産、酪農の方向、畜産、酪農を発展させるのか、それとも縮小させるのかを決めていく極めて大切なものであります。また、九〇年代最初の農産物価格決定であるだけに、畜産、酪農にとどまらず、米価を初めとする他の農産物価格の動向を決めるものと言えるわけであります。  先日も我が党が大臣に申し入れをいたしましたけれども加工原料乳保証価格は、農民に製造業労働者並みの労働報酬を保障する水準に決めるべきであります。せんだって政府に畜産農民全国協議会並びに農民運動全国連合会がこの保証価格の申し入れをいたしまして、そこでは九十円三十八銭という要求が具体的に出されています。この額は実は七年前の九十円七銭の保証価格とわずか三十一銭の違いであるということから考えましても、これらの団体の要求は決して過分なものではないということが言えるのではないでしょうか。  また、現在円安の方向に急激に進行し、これが長期的になると想定されておりますので、その結果飼料価格が急騰することが予想されるわけであります。このようなときに、これまでの生産費はこれだけだということで、将来の飼料価格の値上がりの可能性を無視して価格を決めるというようなことがあったとしたらそれは生産者無視も甚だしい、私はそういうふうに考えますが、これらの点について明らかにしてください。
  126. 武智敏夫

    武智説明員 来年度の乳価等につきましては、法律の規定に基づきまして適正に決めていきたいと思っておりますけれども、御承知のとおり、先般公表されました生産費調査によりますれば五・八%下がっておるというようなことになっております。もちろんもろもろの要素がございますので、まず現在といいますか、これから明日にかけて試算値をつくるわけでございますが、一つは今おっしゃいましたえさの問題でございますが、えさにつきましては現地の価格が若干上がっておりますのと、円安が十円強安くなっておるというようなことがございます。我々も見通せる限りのものにつきましては試算値の中に織り込む方向でやっておりまして、例えば先般金利が高くなりましたけれども、これも何とか盛り込むようなことで今折衝いたしております。えさの価格につきましても、盛り込めるものであれば盛り込むわけでございますが、正直言いまして為替の方向も将来は不透明でございますし、現地のトウモロコシの価格もまだ作付も終わっていないというような状況でございますので、上がらないということは絶対に言えないわけでございますし、上がる気味の方が強いとは思いますが、残念ながらそれは直ちには織り込めませんで、結果的には来年に織り込むというような格好になろうと思います。ただ、理屈だけの話でございますけれども、年度途中で我我が織り込んでいない価格がそんなに、四十九年のオイルショックみたいな形で起こった場合には法律上の手当てもございますので、そういうもろもろのことを考えながら来年度の乳価決定していきたいと思っております。
  127. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 その制度というのはいわゆる安定基金制度の活用ということを指していらっしゃるのだと思うのですが、えきの価格の上昇いかんということもありますけれども、しかし、実際に最近ずっと上がり続けているわけですね。しかも、ここの安定基金制度を活用して、異常価格の場合と通常価格の場合と補てんの仕方が違いますね。この異常というところになって、八%以上上がれば国の方の応援が入るわけですが、しかし八%以上の部分に関してですし、それから通常補てんという場合は、財源が枯渇してしまうと結局農民が負担するということで、実際には元年七月から十月は千四百円、十月から十二月が千円、一月から三月が千二百円、四月から六月が千三百円、そういうふうに農民はもう既に負担をしているわけであります。したがって、ここに来て円安という動きが出てきましたので、私はそれは決して楽観できない情勢だというふうに言わざるを得ません。したがって、これはどうしても価格に織り込んでいくという方向でぜひ諮問をしていただかなければならないというふうに考えます。もう一度、簡単で結構ですから。
  128. 武智敏夫

    武智説明員 我々は、いわゆる価格といいますか要素がそれぞれありましたときに、明らかに織り込める要素、例えばことしの場合、えさで言いますと四月から六月につきましては二千五百円積み立てておるわけでございますが、その後につきましては積み立てないというような方向が出ております。その限りにおいて、今までの値上げの、おととしに三千六百円上げまして去年の七月三千八百円上げたものに関する部分でございますが、それらにつきましては織り込むつもりでございますけれども先生指摘のような最近のいわゆる円安傾向のものにつきましては、正直言ってこれからどうなるか全くわからぬわけでございますので、残念ながら織り込みようがないというふうに思っております。
  129. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 既にガソリンだとかそういったものはすべて円安という動向の中で値上がりが始まっておりますのに、ここだけがどうしてそういうふうな考え方をしておられるのか、本当に私はそういう姿勢に今怒りを覚えるわけであります。  きょう牛肉及び豚肉の安定価格については諮問案が明らかにされました。政府の諮問案は、去勢牛肉の安定価格を引き下げるなど、これも納得できるものではありません。特に、来年の牛肉の自由化を推進するために今回初めて導入されました肉用子牛価格の安定制度については、現在高騰している子牛価格を強引に引き下げるために、現在繁殖経営が和牛一頭当たり第二次生産費で四十二万円かかっているのに対して、その六二%にしか達しない二十六万七千円までもその生産費を引き下げようというこの肉用子牛合理化目標価格を諮問したわけであります。繁殖農家がどうしてこういう価格でやっていけるというふうにお考えなのか、そこのところが本当に理解に苦しむわけです。  それからもう一つは、私たちは従来から、繁殖農家生産費を償うとともに、肥育農家に対しても牛肉価格の変動があっても経営が成り立つような不足払いを行う不足払い制度の確立が必要なのだということを主張してまいりましたけれども、私はやはり今日そのことを改めて主張したいわけであります。この二つ。
  130. 武智敏夫

    武智説明員 先生承知のとおり、一昨年の暮れにつくっていただきました肉用子牛の暫定措置法と申しますのは、牛肉の自由化に伴いまして枝肉の価格が下がりまして、その枝肉の価格が下がったのがまた子牛の価格に影響する、その結果、繁殖農家が再生産ができなくなるということを防止するためにつくった法律でございます。  当時国内的に通用しておりましたのは、全国平均、これはそれぞれ都道府県別に決めておるわけでございますが、全国平均で二十九万二千円という水準でございまして、子牛もそれほどふえておったわけではないですが、徐々にはふえておったというような状況でございまして、ある意味では再生産は確保されておったというふうに思っております。  そういうふうなことを念頭に置きながら、かつ、先ほど来申しております審議会意見等も聞いた新しい算定方式に基づきましてはじいたのが今回の三十万四千円でございまして、その上に、先ほど申しましたとおり、若干の生産対策ということで一方八千円なり、増頭したときには二万八千円なりというようなことも講じたいというふうに思っておりますので、これで十分やっていけよう、こういうふうに私は思っております。
  131. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それはとても納得のできないことです。とにかく和牛一頭当たり四十二万円かかっているのは、どうして二十六万七千円になるのですか。こんななぞなぞのような数字は本当にないと思います。  時間が本当に限られておりますので、とても残念ですが、さらに重要な問題がありますので続けざるを得ませんが、先ほどから同僚議員も触れておりますが、ことしは日米の乳製品の自由化協議が予定されております。  大臣にお伺いをしたいのですが、日米交渉は当たって乳製品の自由化はしないと明確な立場を明らかにしていただきたいのです。生産調整を酪農民に課しながら計画輸入制度を続けていく、これはまさに乳製品の自由化に道を開くものであって、これも撤回するべきだと考えます。この点いかがでしょうか。
  132. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  今先生お話のとおり、乳製品輸入問題、平成二年度中に米国との再協議が行われることになっております。この再協議に当たっても、従来とってきた姿勢でございますが、我が国酪農の実情を踏まえ、我が国の土地利用型農業の基軸としてその存立が図られるよう適切に対応していきたい、対処してまいりたい、こう考えております。
  133. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 その酪農業の存立が図られるよう適切に対応していくということば、自由化をしないということにイコールされるわけですか。そういうふうに聞いたらいいのですか。
  134. 山本富雄

    山本国務大臣 適切に対処いたします。
  135. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ちょっとよくわからないのです。はっきり言っていただきたい。きのうもでん粉のところで同僚議員に対して、従来の立場を踏まえて基本的な態度を崩さないように取り組みたいと、でん粉の自由化問題でも大臣はおっしゃいました。今は、酪農家の存立がという言葉を使われておられるわけですが、ならば、私たちはそれは自由化をしないということなんだなというふうに理解をしたいわけですが、実は、佐藤前農林大臣は、自由化は困難である、そのことを牛肉・オレンジの輸入自由化の前は繰り返し繰り返しここでおっしゃったのです。私の質問にもそう答えられました。だから、自由化ほ困難であるということは自由化を受け入れないことなんだというふうにみんなが思っていた。そしたら、そうではなくて、自由化を受け入れるということになったわけです。今大臣のお言葉は、自由化は困難であるという当時の佐藤大臣のお言葉よりもさらに別の言葉を使って理解を促そうとされるわけですが、それでは全く私の方に通じませんので、もう一度、日米交渉は当たって乳製品の自由化はしない、明確な立場を明らかにしていただきたいわけであります。
  136. 山本富雄

    山本国務大臣 もう一度申し上げます。  我が国酪農の実情を踏まえ、我が国の土地利用型農業の基軸として、その存立が図られるよう適切に対処してまいります。
  137. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ここで私が二十二分与えられた時間中この問答を繰り返しても果てしなく同じ問答になると思いますが、それではどうなんですか、北海道では生産調整だとして牛乳を捨てる騒ぎになっています。北海道の農民は投げるという表現をするわけです。この事態に、多くの酪農家が今政府に対して怒りをぶつけています。その怒りとは何かというと、農水省が言われているのは、このまま生産を続けると消費が頭打ちになるので、七万トンほど生産過剰になっているから生産調整しろ、こういうことを言っていらっしゃるわけです。ところが、牛乳・乳製品輸入はどうなのかというと、これは生乳に換算したべースで見れば、八七年が百七十六万七千トン、八八年が二百五十五万六千トン、実に七十八万九千トンも輸入がふえているわけです。八五年から見れば実に百万トンもふえているわけであります。その背景には、農水省の自由化措置も反映しているわけですが、この二百五十五万トンの輸入のわずか三%を減らせば、現在の生産水準を維持しても生産過剰は生じないじゃないか。こういう輸入を放置して農民に牛乳を投げさせる、捨てさせる、これに農民が怒っているのは当然のことであります。だから、現在の輸入も抑制し、そして生産調整もやめさせるべきであります。また、加工原料乳の買い入れ限度数量についても大幅に引き上げるべき、これがまさに酪農の存立を進めていくための今重要な問題だというふうに考えますが、いかがですか。
  138. 武智敏夫

    武智説明員 酪農の場合には、いわゆる需要と供給が必ずしも同じような方向をたどっておりません。例えば、飲用牛乳の消費が伸びておるときに必ずしも生産がついていきませんし、逆に、生産が伸びたときに需要は必ずしも伸びないということもございまして、そのときそのときを見ますとかなりギャップが生ずるようなときもあろうかと思います。  それに比べまして輸入は、ある意味では長い目で見たものでございますので、我々は要は国内で、輸入自由化されたものがもちろん入ってくるわけでございますし、先ほど来議論になっておりますような疑似乳製品等につきましてはいろいろな行政指導で無秩序な輸入が入ってこないようにいろいろやっておるわけでございますが、そうしたことを前提にいたしまして国内での需要に見合った計画生産をやっております。  今のお話、北海道では必ずしも、地域によってはかなりシビアにやっておる地域とまだまだそうでない地域といろいろあるように承っておりますけれども、やはり北海道の生産が相当伸びてきたということは事実でございますので、それを中央酪農会議が決めた数量の範囲内で努力するという努力をされておることは事実でございます。これは需要に限りがあるといいますか、需要はかなり動くわけでございますので、その動く需要生産を合わせることが重要であるという観点からすれば、これは不可避であろうかと思っております。
  139. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 計画生産は中央酪農会議がやっているのだ、それは私は、そうではなくて、実に政府自身がやっておられるのだということを申し上げておきたいと思います。畜産局長審議会に出された報告書の中でも、計画生産の厳守が必要となっているというふうに極めて強い言葉で述べておられますが、牛は蛇口じゃないのです。酪農家は水道の蛇口じゃないのです。必要なときには出すが、必要でなくなれば絞る、そういうわけにはいかないのです。どうしてそういうふうに本当に日本の酪農家を守るという立場に立たないのか。そういう立場に立てば、まさに計画生産もやめるべきでありますし、輸入自由化はまして受け入れるわけにはいかない。その態度は堅持されて当然であります。そうでなければ、計画生産そのものも実は自由化を見越して行われてきたものだ、計画輸入そのものもそういうたくらみという、言葉は余り適切じゃないでしょうが、農民から言わせればそういうたくらみを持ってやってきたのか、そういうふうに言われても仕方のないことだと思います。  そこで、時間が限られてまいりましたので、続けざまで二問お伺いをいたします。  一つは、消費拡大のためにの問題です。それは、現在学校給食を行っている学校では毎日牛乳が給食メニューになっていますが、これに対して農水省の予算から交付金として八九年度で六十二億三千六百万円、二百cc当たり二円四十銭の補助金が出されていました。しかしながら、九〇年度予算ではこれを削減して五十五億三千万円にし、二百cc当たり二十銭の削減を実施しました。ただ、そのかわりに畜産振興事業団から交付されている良質牛乳供給奨励金を七十銭から九十銭に引き上げて、実際には父母負担はふえませんでしたが、来年は牛肉の自由化によって畜産振興事業団は牛肉の一元管理から手を引くことになり、奨励金の財源が特定財源ということになるそうですが、とにかく畜産振興事業団でなくなることは確かであります。その結果、奨励金が削減されて父母負担がふえていくということになれば困ると思いますので、父母負担はふやさないという明確な御答弁をお願いをいたします。  また、学校給食だけではなしに、幼稚園や保育園の給食に対する牛乳補助もなされておりますが、カバー率はまだ五〇%を少し超えた程度です。しかもこれは事業団の方が二円九十銭の負担、メーカーが十銭の負担ということで、事業団の指定事業の助成というのがすべてでありますから、この点でも御答弁をいただきたいわけであります。  最後に、酪農ヘルパー制度の問題ですが、これも農水省の規模拡大政策のもとで酪農家の戸数が一九七五年の十六万戸から八九年の六万七千戸まで十万戸減少し、一戸当たりの飼養頭数は三十頭以上が三割になり、そして家族経営における酪農家の負担は大変なことになってきました。とりわけ酪農家の主婦の負担が非常に厳しいわけです。とにかく一日二十四時間、三百六十五日、一日とて搾乳作業をやめるというわけにはいかない、そういう作業であります。世の中は週休二日制になってきております。こういう状態が続けば、もう後継者がなかなか出てこないのは当然であります。  政府は今本当にささやかな事実をやっておりまして、二十八県二百五十組織、酪農家の一割を対象にまだほんの一カ月に一度程度のヘルパーの活用という現状でありますが、これはぜひ酪農ヘルパー元年と言われるような、大臣の実績としてもひとつ制度化を本格的にやっていただきたい。  大きく二つの問題で、最後にします。
  140. 武智敏夫

    武智説明員 学校給食なり幼稚園、保育所に対する補助につきましては、平成三年度の問題だろうと思っておりますので、平成三年度までの間に検討させていただきたいと思っております。いずれにしても非常に重要な事業であると思っております。  それから、ヘルパーにつきましては、酪農団体方々からも非常に強い要望もございますので、今回の乳価決定等の関連におきまして現在検討しておりますので、それとあわせて何らかの結論を得ることになるのではないかと思っております。今、乳価等につきまして、あるいは限度数量、関連対策を含めまして政府部内でいろいろ相談いたしておりますので、その中に大きなウエートを占めておりますので、そういうもろもろのことを考えながら結論を得られるものと思っております。
  141. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 終わります。
  142. 穂積良行

    穂積委員長代理 小平忠正君。
  143. 小平忠正

    ○小平委員 きょうは、我が国の畜産、大事な諮問がなされました。私は北海道が選挙区でありますが、酪農地帯というものは日本の大きな風景であります。都会の人はいわゆる牧場地帯を見まして、ああいいな、すばらしいな、そのように言われますが、そこで働く酪農家あるいは肉牛経営の農家の皆さんは大変な重労働で、しかも休みがない、そういう中での毎日を送っております。そういう中で私は幾つかの質問をいたしますので、よろしくお願いいたします。北海道は我が国酪農の基地であり、特に北海道農業の最大の基幹部門でもあります。将来とも酪農を基盤とした農業振興なくしてその発展はないと考えております。北海道農業が立ち行かなくなれば我が国の酪農全体が危機に陥ることは必至であります。しかし、牛乳や一部乳製品が相次いで自由化され、国内生産への影響が懸念されており、これ以上の酪農、畜産の後退は絶対に許されません。  そこで、まず乳価についてお尋ねいたします。  ここ数年にわたる価格抑制、それに引き続く価格引き下げの中で生産費の引き下げに努力してきた酪農家に対し、政府として十二分にこたえてあげるべきであります。特に北海道における状況を見ますと、最近の需給事情を踏まえて、将来に備え経営の安定化への基盤をつくることが特に重要な問題となっております。加工原料乳保証価格は、生産費と所得を償い、拡大再生産が図られるよう現行価格以上にすべきであると私は考えますが、いかがでしょうか。
  144. 武智敏夫

    武智説明員 来年度の加工原料乳保証価格につきましては、生乳の生産条件ですとか、あるいは需給事情ですとか、酪農経営の状況ですとか、そういったいろいろな要素を総合的に考慮いたしまして、お話のような再生産を確保することを旨として決めたいというふうに考えております。その際には当然、一昨年決めました「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」に示しました酪農振興の方向等を勘案いたしますし、先般出ました生産費調査の結果等も踏まえまして、あす予定いたしております審議会意見を聞いた上、適正に決めていきたいと思っております。
  145. 小平忠正

    ○小平委員 その適正という御表現でありますが、ここに生産者政府とのあれが大きなギャップがあることを特に御留意いただきたいと思います。  次の質問でありますが、北海道酪農の安定的発展を進めるため、需給状況を踏まえた生産を行わなければならないといたしましても、最近乳製品価格が安定指標価格を超えて推移しているという状況を考えると、加工原料乳限度数量はゆとりある需給計画をつくり、拡大すべきと思います。すなわち二百三十万トンを超えて、例えば二百四十万トンというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  146. 武智敏夫

    武智説明員 恐らくきょうもまた酪農団体政府関係方々と御相談し、何回も繰り返すことになろうかと思っております。  後段のバターなり脱粉等との絡みにおきます限度数量を増加することでございますけれども、先ほどからお話しいたしておりますとおり、現在飲用牛乳の伸びがかなり陰りを見せてきております。それに対しまして生産の方はかなり伸びておるというようなこと、あるいはバターと脱粉との間での跛行性といいますか、生産の量が脱粉にかなり傾斜してきておるという問題等がございます。かなりいろいろな難しい問題がございますので、そういうようなことも加味しながらどういう需給計画をつくるか、当然その中には限度数量等の問題もありますし、朝以来いろいろ出ております輸入の問題も絡んでおりますし、非常に難しい方程式になっておるわけでございますが、そういうもろもろの難しい中でこれから需給計画を決める、その中で限度数量をどうするかということを決めていきたいと思っております。
  147. 小平忠正

    ○小平委員 次に、消費拡大のことでお伺いいたしますが、飲用乳の伸びが鈍化している現在、今後の酪農を安定的に伸ばすためには何といっても飲用乳・乳製品の消費拡大を図ることが特に肝要であります。本年四月からはアイスクリーム、プロセスチーズ等々が輸入自由化になるわけですけれども国内生産振興に影響を及ぼさないよう、また輸入加工業者に対する行政指導の強化も特に図ってもらいたいと思います。今後の乳製品の消費拡大に向けてのお考え方をお伺いいたします。
  148. 武智敏夫

    武智説明員 酪農、乳業をこれから安定的に発展させていかなければいけないわけでございますが、それにつけましても牛乳なり乳製品の消費拡大が重要なわけでございます。特に牛乳・乳製品につきましては、栄養的に見ましてもバランスもいい非常にすぐれた食品でございますし、日本人にとりまして食生活上カルシウムが足りないということになっておるわけでございますが、その一つの大きな供給源としてもすぐれておるということもございます。そういったようなことから、これから牛乳・乳製品につきましても積極的に普及させていきたいと思っておりますし、そのためにも今後、学校給食におきます牛乳飲用の推進ですとか、あるいは幼稚園、老人ホームの問題、あるいはそのほかの方々の牛乳に対する基礎知識の普及ですとか、そういったこともやってまいりたいと思っております。     〔穂積委員長代理退席、委員長着席〕  それから、アイスクリーム等の自由化が四月以降行われるわけでございますけれども、これらに備えまして、既に過般でございますが法律等も通してもらいまして、そういったメーカーの方々に安い金利でお金を貸してもらえるような措置もとっておりますし、税制上の優遇措置もとっておるところでございます。ただ、これからの動向につきましては十分キャッチしまして、悪影響が出ないような形で対応していかなければいかぬというふうに思っております。
  149. 小平忠正

    ○小平委員 そこで、消費拡大に向けての後なんですが、今良質な国産乳製品の安定供給及び急激な需要変化に対応できるように、民間及び事業団における在庫水準の見直しを行うべきではないかと思います。例えば、現在二カ月ぐらいが在庫水準であると思いますが、これをもっと拡大して三、四カ月に延ばすとか、そんなことについてはどのようにお考えでしょうか、御質問いたします。
  150. 武智敏夫

    武智説明員 どのくらいの在庫水準が適正であるかということでございますけれども基本的には乳製品の消費の動向なり、製品の流通上どの程度メーカーにストックがあればいいかというようなことを総合的に判断していかなければならないのじゃないかと思っております。現在といいますか従来から我々考えておりますのは、一・五カ月から二カ月分が適当であるというふうに実は考えておるわけでございまして、ある需給バランスが崩れたときに先生指摘のように三、四カ月分もてばいいじゃないかということで、もつこと自体は可能なように我々も既に予算措置等もとっておるわけでございますが、ただ、そういう道を講じたときに、四カ月もったときには次にまた適正規模の二カ月に戻さなければいかぬわけでございます。そういたしますとまた計画生産を非常に強めなければいかぬということもございますので、在庫が暫定的にふえるのはやむを得ないと思いますが、かなり恒常的にふえることは余り好ましくないのじゃないかというふうに思っております。
  151. 小平忠正

    ○小平委員 おっしゃることはよくわかります。しかし、生産者の側としては、例えば急激にそれが不足して緊急になんということがあります。そういうときの生産者の感情を逆なでしないように、そんな意味からもやはり余裕のある在庫というものが必要であると私は考えている次第であります。  次に、今肉用子牛保証価格の諮問がなされました。あしたは乳価保証価格の諮問がされるわけでありますけれども、北海道は酪農とともに乳用子牛の育成肥育にも力を入れているところであり、価格の動向は酪農経営と密接に結びつくので、次のことをお尋ね申し上げます。  乳雄肉用子牛保証価格の設定について、肉用牛振興に向けて農家肉用牛の再生産を可能ならしむるため、肉用子牛保証基準価格生産費と所得を償う現行価格を引き下げることは私は論外と思いますが、これについていかがでしょうか。きょうのこの諮問がなされて三十万四千円、平成元年度の二十九万二千円がアップしたわけであります。前の各党からの質問にもあったかと思うのですが、合理化目標価格等々を考えて、この価格の設定自体がもう少し上がってもいいのではないかという意味からの質問でございます。
  152. 武智敏夫

    武智説明員 きょう審議会に諮問いたしておりますのは、乳用種につきましては保証価格で十六万五千円、合理化目標価格で十四万二千円ということでございます。今までございました乳用種につきましては十六万円、実は去年までは十三万四千円だったわけでございますが、酪農の事情等も考慮して十六万円にいたしておったわけでございます。したがいまして、従来ありました十六万円に見合いますのはこの保証基準価格の十六万五千円でございますので、これは決して引き下げたというふうには我々思っておりません。そして、この十六万五千円ができますれば、いわゆるぬれ子の価格、今まで酪農家方々は実際は、かなり現状は上がっておるのですけれども、これがある線で、九万ないし十万だと思っておりますが、その下あたりでかなりきちっと固まるのじゃないかというふうに思っておりますので、これは酪農家にとっても非常に大きなプラスになるのじゃないかというふうに思っております。
  153. 小平忠正

    ○小平委員 次に、農業生産資材の価格の引き下げについてお尋ね申し上げます。  今、配合飼料等生産資材についてより一層の製造流通段階の合理化を促進し、価格引き下げについての業界指導を強化すべきである、このように考えます。また、配合飼料価格安定基金制度を拡充強化し、農家負担の一層の軽減を図るべき、この二点についていかがでしょうか、お伺いいたします。
  154. 武智敏夫

    武智説明員 えさの安全性等につきましては法律がございまして、それに基づいてきちっとやっていきたいと思っております。特に六十一年のソ連のチェルノブイリ原発事故以降、向こうの諸国から入ってくるものをきちっと検査いたしておりますし、それから一方で、アメリカ等から入ってきますアフラトキシンの汚染問題等も起こっておりますので、これは肥飼料検査所等が末端できちっと検査をいたして、安全性につきましては十全を期していきたいというふうに思っております。  それから、えさの基金につきましては、これは一昨年の値上がり、昨年の七月の値上がりでかなり基金の財源が苦しくなってきております。したがいまして、今農家方々にもあるいはメーカーの方々にも再積み増しをしていただいておりますが、先ほど来から出ておりますように、これからまた七月以降の価格もいろいろ不安な要素もございますので、そういうことにつきましても十分対応していきたいというふうに思っております。
  155. 小平忠正

    ○小平委員 今御答弁ありましたことなんですが、いみじくもソ連のチェルノブイリ、あるいはアフラトキシンですか、発がん性のあるいわゆるカビ毒、そういうことも事実起こっております。そういう中でやはり安全となると国内産が一番であります。私はそんな意味において、今飼料等が海外からも入ってきておりますが、特に輸入飼料のチェックなどについてどのような安全対策といいますか、そういうことがとられているのか、その現状と対策についてお伺いいたします。
  156. 武智敏夫

    武智説明員 えさにつきましては、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律というのがございます。これに基づきまして、飼料とかあるいは添加物につきまして規格なり基準を決めまして、えさの製造業者や販売業者に守らせるということになっておりますし、そのチェック機能としまして、肥飼料検査所による立入検査等を実施いたしております。現実的に起こりました放射能汚染のチェルノブイリ事件以降、ソ連なりその近隣諸国、これは国を指定いたしておりますが、そこから日本に入ってきたものにつきましては、通関前に輸入業者によるチェックを一段階やらせますと同時に、同じサンプルを用いまして肥飼料検査所に報告させまして、肥飼料検査所でダブルチェックをする。今の問題でありますと、例えば食品と同じように基準一キロ当たりで三百七十べクレルを超えるものにつきましては輸出国に返戻するというような措置もとらしておりますし、それから例えば、アメリカからのアフラトキシン等につきましては、一昨年の十月に指導基準をつくっておりまして、いわゆるアフラトキシンの含有量が二〇ppb以下である旨のアメリカの連邦穀物検査局からの証明書を添付させるというような指導もし、必要によっては肥飼料検査所の立入検査もやっておるということでございます。
  157. 小平忠正

    ○小平委員 食糧は安全が一番でありますので、ひとつそこのところはよろしくお願いを申し上げます。  次に、ヘルパー制度のことでありますが、農業、いろいろな分野があります。しかし、口があるいわゆる生き物を扱う農業というのは、お正月もなければお盆もないという、毎日が労働であります。そういう中で人間としての——今余暇の時代と言われております。しかしこれは都会の話であって、農村、特に酪農関係ではそんなことは夢物語で、毎日が厳しい過酷な労働の連続であります。そういう中で、後継者が家族を含めて農業希望を持って入っていける、そういうことをつくるためにも、ヘルパー制度の組織の定着やヘルパー自身の技術の習得等、こういうものの強化に努めるために政府の助成、あるいはそういう事業等を講じてきておりますけれども、その点いかがお考えでしょうか。
  158. 武智敏夫

    武智説明員 酪農につきましては、労働が非常に周年拘束性が強いというようなこともございまして、酪農ヘルパーを活用することが休日の確保なり、あるいは経営の安定なり、後継者の確保に非常に大きな意味を持っておるのではないかと思っております。特に最近におきましては、酪農経営が非常に戸数が減ってきておるというようなこともございまして、相互扶助的な対応が非常に難しくなっているというようなことが一つございます。それから一方で、乳牛の能力が非常によくなっておるということですとか、あるいは機械も非常に高度化されたというようなことで、そういった機械なり乳牛を扱うのに細心の飼養管理が必要になっております。したがいまして、ヘルパーにつきましても、かなり高度な技術を持った方々でないといかぬわけでございまして、そういった方方の研修なりあるいはいろいろな広域活動調整をやるためには、今もわずかではありますけれども国もいろいろ助成措置をやっておるわけでございますが、酪農団体初めいろいろもっと強化したい、あるいは新しい構想のもとにやりたいというような意向もございますので、先ほど来言っておりますように、今回の乳価決定の一環として何らかの結論を得られるのではないかというふうに思っております。
  159. 小平忠正

    ○小平委員 時間が参りましたので、最後に大臣、一言。来年度は乳製品の日米協議が行われるわけでありますけれども、これは、今後の日本の酪農界についても大きないわゆる存亡にかかわる問題に直面してまいります。日米交渉に当たっての大臣基本的な姿勢、そして決意のお言葉をお聞きしたいと存じます。
  160. 山本富雄

    山本国務大臣 先ほども藤田先生に繰り返しお答えをしたのでございますけれどもお話のとおり、平成二年度中に再協議が行われる、こういうことになっております。この再協議に臨む我が方の方針は変わりはありません。酪農の実情を踏まえ、そして酪農は我が国の土地利用型農業の基軸だ、そしてその存立が図られるということをしっかり踏まえながら、適切にしっかり対処してまいりたい、こう考えております。
  161. 小平忠正

    ○小平委員 どうもありがとうございました。終わります。
  162. 亀井静香

    亀井委員長 江田五月君。
  163. 江田五月

    江田委員 農水行政についての一般質疑を行いますが、農水大臣、御就任おめでとうございます。私は、山本農水大臣とは実は参議院同じときに当選をいたしまして、年齢は大分大臣の方が先輩ですけれども、同じように、さあこれから国政で頑張るぞという志を抱いて国会に上ってきて、当選直後何度かいろいろなお話をしたことを思い出しております。本当におめでとうございます。この大変なときに農水大臣という重要なポストにつかれて、ぜひ頑張っていただきたいと思うのですが、それにしても、同じとき国会に出て、片やもう大臣は天下の農水大臣で、私どもの方はまだ野党でくすぶっているわけでありまして、どうもざんきにたえぬところであります。実は、私は今とかくの批判を浴びております二世議員でございまして、私の父は戦前の農民運動から政治活動に飛び込んだ。戦後最初に参議院議員を二期務めまして、その間に農水委員長も務めて畜産振興にも随分力を注いでいたわけでありまして、その後を引き継いだ私ですから農水行政には研さんを積まなければならぬ立場なのですが、十三年国会議員をやっておりますが初めて農水委員会で質問いたしますので、どうも素人の質問ということになるかと思いますが、しかも短い時間ですが、張り切って質問したいと思います。  まず大臣に伺っておきます。  日本農業現状というものを一体どう見るかということでございますが、今国民の中に大変な農政不信というものがありますね。その農政不信はゆえなしともしないわけで、現に農村へ行ってみますと、田んぼの三割程度に草が生えているとか、あるいはまた現に稲が生育しているところでも、昔だったら見られないような稲の真ん中にヒエやアワがどんどん出てきているような、そんな田んぼまであるというような状態になっておる。農家の皆さんは、一体農業を自分たちにやれというのかやめるというのかどっちなんだ、農業の先行きはどうなんだ、大変心配を抱いている。自民党農政に対する農家を初め国民の皆さんの不信が渦巻いて、例えば去年の参議院選挙では、これは愛媛県ですが、愛媛のミカンを守れという候補者に自民党の農水大臣までやった方が敗れるというようなことも起きたわけでございます。私ども自民党農政を批判はしても、それじゃおまえたちはどうするのだということになりますと、これはなかなか簡単でないので、自民党の批判だけでいいとはもとより思いません。思いませんが、今の日本農村状況農業状況というのは、これはある意味では危機的な状況になっている。ゆゆしき状態になっている。田園まさに荒れなんとす、そういう状態になっているというこの危機意識というのを、大臣、我々と共有できるのかどうか、ここをまず伺っておきたいと思います。
  164. 山本富雄

    山本国務大臣 答弁の前に一言だけ。先ほどお話がございまして、本当に私も懐かしい気持ちでいっぱいでございます。江田先生政治家としてのお人柄、御見識はいつも私尊敬しておりまして、今後ともどうぞよろしくお願いをいたしたいと思っております。  今御指摘の点でございますけれども、私、この基本的な気持ちは同じでございます。田園まさに荒れんとすという言葉がありましたけれども農政不信などという言葉が横行しちゃいかぬ。私は常々繰り返し申し上げておりますが、農は国のもとだ、こういうことが先行しなければうそだ、こう思っております。どんな時代にも日本の場合には農業基本だ。明治であろうが大正であろうが、昭和であろうが平成であろうが、二十一世紀になろうが同じだ、こういう気持ちでございます。ただ、さてそうではありますけれども農政不信という言葉ほどこから出てきたのだろう、あるいはそれが政治選挙になぜこれだけ大きな影響を与えているのだろう、政治家としてもはたと考えざるを得ないのでございます。農水省へ行ってみまして、私は、歴代農林大臣はもう随分苦労、苦心をし、そしてお役人の皆さんも日本農政を守るために随分苦労したのだな、血のにじむ思いをしたのだなということを肌身で感じるにつけましても、なぜこれだけやってきて農政不信などという言葉が出るのだろうかと思うわけでございます。  思い当たることは、やはり時代が変わってきた。日本国内だけを見ていく時代、これだけ世界日本に接近をした時代時代が変わってきた。日本国土はちっとも大きくはならない、あるいは平たんにはならない、にもかかわらず外からの波はどんどん押し寄せてくる。例えば国土一つとってもアメリカと日本の対比は二十七倍、二十七分の一だ。最初からスクラッチでは勝負にならないのですね。ハンディがあるというふうなことを考えますと、これはよほど性根を据えてやっていかなければならぬ。歴代大臣の業績を引き継ぎつつ、新しい時代に即応して、そして農政には、農民を守っていこうということには与党も野党もないのですから、どうかこの委員会などでもせっかく御論議を願いまして、我々を叱咤激励して、私どもいつでも腹切る覚悟で頑張りますから、一緒にやってまいりたい。  さらに大事なのは、若い人です。若い人が暗い気持ちになったらおしまいです、これは。ですから、農業後継者、若い担い手に絶対に希望を捨てさせないように、むしろ持たせるようにあらゆる施策展開してまいりたい。微力でございますが、その先頭に立ってまいりますので、どうぞよろしくお願いをいたしたいと思っております。
  165. 江田五月

    江田委員 基本的な見解をお伺いしましたが、農は国のもと、確かに私は大臣のおっしゃるお気持ちはよくわかります。農は国のもとという。では一体どうすれば国のもとになるのかということが実は政策であり、政治であり、行政であるわけですね。そこがどうもはっきりしない。  今時代が大きく変わってきたとおっしゃいました。私もその言葉に集約されるのだろうと思います。国際社会も大きく変わってくる。国際経済あり方も変わってくる。日本経済なり産業なりのあり方も大きく変わってくる中で、農業がそういう時代の大きな流れに本当に追いつくような発展をしてきたのかということですね。では、農業というのはそういう時代の大きな流れに追いつけないものだとして、農業はそれでも大切なのだからひたすら補助金をつぎ込んで何とか底支えをしようということなのか。それともそうではなくて、時代が大きく流れていく中で農業自体も変わっていく。技術的な変化もあるでしょう。農家戸数あるいは農業経営形態の変化もあるでしょう。昔の農地についてのいろいろな法規制がそのまま今でも通用するのかといった問題もあるでしょう。あるいは食管の問題だって、これは昔のままのことで一体時代の趨勢に追いついていけるのかといったこともあるでしょう。そういう新しい時代の変化に農業なり農業政策なりというものが追いつき、そして単に底支えで補助金、補助金で、補助金づけなどという悪口もあるわけですけれども、そう言われかねないような状態を乗り越えて、国際競争力も十分ではなくてもそれなりにある産業として自立できる農業、あるいは農業だけではなくていろいろな産業をきちんと張りつけて、本当に人間がそこできちんと住んでいけるという農村地域をちゃんとつくる、そういう姿勢があるかどうかというところにかかっているのじゃないかと私は思うのです。私は、決して農業というのはこういう時代がどんどん進んだらおくれていって、あとは補助金でどこかから支えていなければしょうがないというものではない。農業というものは、やり方次第では幾らでも未来に開けていくのだ、そういう気持ちを持つことが大切だし、持ち得ると思うのですが、その点、大臣いかがですか。
  166. 山本富雄

    山本国務大臣 全く同感でございます。ただ、先生今補助金が、御承知でおっしゃっているのでしょうけれども、補助金がいかにも悪いというふうなことでございますが、私はそうは思っておらないのです。むだな補助金はいかぬと思います。しかし、赤ん坊が大きくなっていくのにやはり母親のおっぱいは必要なんですね。そして厚い庇護の中で、将来たくましい骨を持ち、肉を持ち、頭を持つ人間が成長していくのだと思うのです。こういうことを考えますと、その都度ただ何とかばらまきだ何だなんとよく言いますけれども、そうじゃなくて、タイミングのいい補助手段というものは絶対必要だと思うのです。それは農は国のもとだからなのだ、むしろ国内のほかの業に携わる人にも外国の方にもよくわかってもらわなければいかぬ。さっき、最初からハンディがある、それは、だって国土のハンディというものはどうしようもないのですから。そういうことを考えつつ、しかし有効に適切に金を使うように考えていかなければならないというふうに考えております。
  167. 江田五月

    江田委員 私は、補助金もいろいろな種類のものがあるだろうと思うのですね。率直に言って、農業というものがこういう時代の変化にきちんと追いついていけるためには、やはり農業も随分変わっていかなければならぬだろう。ところが、変わっていくにはそれなりに痛みも確かに伴うわけで、そこでその痛みをどうぞひとつ何とか乗り越えてくださいよ、そのかわりこういう補助金で何とかそこは国の方で援助いたしますから頑張ってくださいという、いわば前向きの形のそういう補助金もあるでしょう。あるいはこういう方向に農業のやり方を誘導していく、そのための補助金もあるでしょう。しかし、数ある補助金の中には、過去のいろいろなやり方にいわばしがみついて、これを心ならずも温存してしまって、逆に日本農業の国際競争力をますます落としてしまうようなことになってきた、そういう補助金も実はあったのではないかという気がしておりまして、今どの補助金がどうというところは申しませんが、ひとつ、そのあたりのことは大胆に未来を展望しながら、積極的な前向きのものをどんどんやっていただきたいと思うわけです。  そういう中で、とりわけきょうは畜産関係ですけれども、特に酪農の関係で、もう既に多くの皆さんが質問をしたところですけれども、私も聞きたいのは、酪農ヘルパー、これはどうしても日本に定着をさせていかなければならぬと思います。今、例えば雇用労働者について言えば週休二日をどうするかという時代ですね。時短という時代、時間短縮。もうヨーロッパ各国とも年間の労働時間が千何百時間という時代になっているのに、日本は依然として二千時間を超えるような長時間労働で、これではいかぬとやっているわけですね。それが世界の、あるいは日本の大きな流れになっているのは、酪農家はもうお話ございました周年労働。とにかく牛は生きているわけですから、正月にはえさをやらないとか、お盆は乳を搾らないというわけにはいかない。しかし酪農家にもそれなりに休日も必要じゃないかというようなことを考えたら、どうしてもそこにこのヘルパー制度というものが必要で、しかもこのヘルパーは今随分各地で工夫をしてやっているわけです。もっとやりたいという皆さんがたくさんおられるわけです。ところが、なかなかそこまでいかない。一方で、もう既に審議官の方からお話ありましたが、酪農というものがやはり随分変わってきた。一方では酪農家の戸数が減るということがある。あるいは、牛を飼う飼い方といいますか搾乳の仕方といいますか、限度いっぱいで、私もきょう聞いてびっくりしたのですけれども、牛を例えば三十頭なら三十頭飼っておると、一頭一頭、この牛にはこういう飼料を与える、この牛にはこういう飼料を与える、全部別だというのですね。あるいは搾り方も、この牛はここまで搾れる、この牛はここまで、ところがある牛に至っては搾ってみたけれどもこれだけ残っている。そういうのも一頭一頭について全部別々の飼い方、搾乳の化方をしなければならぬ。しかも、えさを与える、搾乳をする、そういう器具も随分開発され、高度なものになってきている。そうすると、隣のおじさんにちょっと頼みますよというようなヘルパーじゃだめなわけで、ヘルパーというものをひとつ専門的に育てていかなければならぬという時代になってきておるというわけですね。ちょっと困ったときにというのじゃなくて、きちんと酪農家にもある程度の休日を保障し、しかもそういう高度なヘルパーを提供していくということのために、例えばヘルパーについて研修の制度をちゃんとつくろう、あるいは広域的なヘルパー運用をつくっていこう、そういうものにきちっとした底支えをしていくためには、とても年間千四百万円の国費なんかじゃどうしようもないので、もっとどおんと国の補助をやっていくためには、基金というようなものをつくって、この運用でヘルパーをちゃんと底支えしていくということが必要だと思いますが、そうしたことについて大臣の覚悟を聞いておきたいと思います。
  168. 山本富雄

    山本国務大臣 先ほど来藤田先生からも小平先生かららもヘルパー制度の問題については御質問もあった。審議官からお答えをいたしましたが、覚悟のほどを聞かせろ、こういう先生お話でございますから覚悟のほどを申し上げますが、今検討しております。これはやはり酪農も日進月歩ですし、相当技術も高くなっているのですね。それを助けようというのですからそれなりの準備も必要だというふうなことでございまして、今いろいろ検討しておりますので、その検討の結果、またある方向が出てまいりましたら御相談をさしていただきたい、こう思っております。
  169. 江田五月

    江田委員 終わります。      ────◇─────
  170. 亀井静香

    亀井委員長 この際、大原一三君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党及び進歩民主連合の共同提案による畜産物価格等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。遠藤登君。
  171. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党及び進歩民主連合を代表して、畜産物価格等に関する件(案)の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     畜産物価格等に関する件(案)   我が国農業の基幹的部門である畜産業は、需給の不均衡、市場開放問題など内外ともに厳しい情勢下にある。   よって政府は、平成二年度加工原料乳保証価格豚肉牛肉安定基準価格並びに肉用子牛保証基準価格等の決定等に当たっては、左記事項の実現に努め、畜産物の安定供給と畜産経営の健全な発展に万遺憾なさを期すべきである。      記  一 加工原料乳保証価格については、長年にわたり計画生産を実施している酪農経営の安定と向上に配慮し、生乳の再生産が損なわれることのないよう適正に決定すること。    また、加工原料乳限度数量については、最近における特定乳製品需給の動向等を踏まえ、適正に決定すること。  二 豚肉牛肉安定基準価格については、再生産を確保することを旨として、経営の安定が図られるよう適正に決定すること。  三 肉用子牛保証基準価格については、繁殖農家の経営の実情、肉用子牛生産条件等を配慮し、肉用子牛の再生産を確保することを旨として決定するとともに、合理化目標価格については、我が国肉用牛生産の実態に配慮しつつ、国産牛肉輸入牛肉に対抗しうるよう適正に決定すること。    また、肉用子牛価格安定基金への加入が促進されるよう指導を強化すること。  四 平成二年度中に予定される粉乳・れん乳等の基幹的乳製品に関する米国との再協議に当たっては、今後とも国内供給を基本とし、現行輸入数量制限措置を継続する方針を堅持すること。    また、偽装乳製品輸入の増大、プロセスチーズ等の輸入自由化が生乳の需給並びに酪農経営に悪影響を及ぼすことのないよう適切に対処すること。  五 畜産経営の一層の合理化を促進し、経営体質の強化を図るため、肉専用種雌牛の繁殖対策、効率的肥育の促進、経営・財務管理指導等を推進するとともに、固定化負債の解消のための施策の推進を図ること。併せて、酪農ヘルパー制度の普及・定着化対策を講ずること。  六 中小家畜の実効ある計画生産を期するため、積極的に指導を行うとともに、豚肉、鶏肉については、供給過剰に陥り易い等の実情を配慮し、秩序ある輸入を確保すること。特に、豚肉の差額関税制度については、適正な運用を図ること。  七 安全でかつ優良な畜産物の供給と需要の拡大を図るため、消費者ニーズに即し、新製品の研究開発、流通・加工合理化、輸出振興対策等を積極的に推進すること。    また、食鳥検査制度の発足に対応し、食鳥処理施設の整備に必要な対策を推進すること。   右決議する。  以上の決議の趣旨につきましては、質疑の過程を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  172. 亀井静香

    亀井委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  大原一三君外四名提出の動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  173. 亀井静香

    亀井委員長 起立総員。よって、本動議のごとく決しました。  この際、ただいまの決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。山本農林水産大臣
  174. 山本富雄

    山本国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に従い、最近の畜産をめぐる厳しい情勢を踏まえつつ、十分検討してまいる所存でございます。
  175. 亀井静香

    亀井委員長 ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  176. 亀井静香

    亀井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十一分散会