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1990-05-31 第118回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年五月三十一日(木曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 衛藤征士郎君    理事 遠藤 武彦君 理事 高村 正彦君    理事 田中 秀征君 理事 平沼 赳夫君    理事 村井  仁君 理事 中村 正男君    理事 早川  勝君 理事 宮地 正介君       浅野 勝人君    石原 伸晃君       岩村卯一郎君    岡田 克也君       金子 一義君    河村 建夫君       久野統一郎君    中西 啓介君       野田  実君    萩山 教嚴君       原田 義昭君    松浦  昭君       御法川英文君    村上誠一郎君       柳本 卓治君    山下 元利君       上田 卓三君    大木 正吾君       佐藤 恒晴君    沢田  広君       関山 信之君    仙谷 由人君       富塚 三夫君    細谷 治通君       堀  昌雄君    渡辺 嘉藏君       井上 義久君    日笠 勝之君       正森 成二君    伊藤 英成君       菅  直人君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局経済部長 糸田 省吾君         大蔵政務次官  尾身 幸次君         大蔵省主計局次         長       寺村 信行君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君  委員外出席者         法務省刑事局参         事官      鶴田 六郎君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ───────────── 委員の異動 五月二十五日  辞任         補欠選任   富塚 三夫君     網岡  雄君   中井  洽君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   網岡  雄君     富塚 三夫君   伊藤 英成君     中井  洽君 同月二十九日  辞任         補欠選任   仙谷 由人君     伊東 秀子君 同日  辞任         補欠選任   伊東 秀子君     仙谷 由人君 同月三十一日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     岡田 克也君   中井  洽君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   岡田 克也君     井奥 貞雄君   伊藤 英成君     中井  洽君     ───────────── 五月二十九日  建設省国土地理院職員旅費改善に関する請願(永末英一君紹介)(第一四六四号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出第五九号)      ────◇─────
  2. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出証券取引法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。橋本大蔵大臣。     ─────────────  証券取引法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ただいま議題となりました証券取引法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  最近の我が国証券市場における株券等の売買の実情にかんがみ、証券市場透明性を確保し、投資者保護を一層徹底する観点から株券等大量保有状況に関する開示制度を導入するとともに、証券市場国際化進展等に伴い、諸外国制度との調和を図る等の観点から公開買い付け制度見直し等を行うことが緊要となっております。  したがいまして、証券取引法改正することとし、ここに本法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、株券等大量保有状況に関する開示制度、いわゆる五%ルールを導入することといたしております。これは、上場会社等発行済み株式総数等の五%を超える株券等を実質的に保有することとなった場合及びその後株券等保有割合に一%以上の変動が生じた場合には、五日以内に大蔵大臣報告することを義務づけ、その違反に対しては刑事罰を科することとするものであります。  第二に、公開買い付け制度につきましては、事前届け出制を廃止し、新聞公告の日に届け出書提出させることとするとともに、制度対象範囲について、これまで発行済み株式総数等の一〇%以上を所有することとなる市場外買い付けとされていたのを、五%ルールの導入に合わせて五%超に引き下げることといたしております。  以上のほか、外国証券規制当局が行う行政上の調査に関し要請があった場合には、関係人に対して報告または資料の提出を求めることができることとする等所要改正を行うことといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  5. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村正男君。
  6. 中村正男

    中村正男委員 証券取引法の一部を改正する法律案質問に入る前に、若干日米金融協議の問題について御質問したいと思います。  今回のこの協議につきまして、結論は先送りと いうことになったようでありますが、早急に結論を相互に見出さなければならない情勢だと存じます。そこで、この時点におきます今後の打開のめどを大蔵省としてどの辺に置いておられるのか、それをまずお聞きしたいと思います。とりわけ金融摩擦がこれ以上激しくならないためにも、また預金者立場も極めて大切でございます。しかし何といいましても、この問題の波紋は国内のそれぞれの金融機関に及ぶわけでございまして、とりわけ中小金融機関経営問題が大変重要になってくると思います。そういった観点を含めてお答えお願いしたいと思います。
  7. 土田正顕

    土田政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまの委員の御質問は、二十一日、二十二日に開催されました日米金融協議でいろいろと議論になりました中のいわゆる預貯金金利自由化問題に関連するお尋ねであると心得まして、その点につきまして御説明を申し上げます。  アメリカ側からは、日米金融協議におきまして、我が国預金金利について、我が国というのは日本でございますが、早急な自由化が必要である、具体的には一年以内にすべての預金金利完全自由化せよという主張が行われたわけでございます。これに対しまして当方、私どもでございますが、当方からは、預金金利自由化については今後とも前向きに取り組むこととしておる、しかし一方、信用秩序の維持その他の観点を踏まえますとある程度の時間は必要であるという基本的な考え方説明いたしました上で、具体的に定期性預金金利流動性預金金利についてそれぞれ次のように説明をいたしました。  まず定期性預金金利につきましては、その時点ではまだ金融問題研究会報告は出ておらなかったわけでございますが、その報告は近日中にまとまると思うので、それを受けて早期政府としての考え方を取りまとめたい、これが一点でございます。次に流動性預金金利につきましては、その自由化問題を小口定期預金金利自由化についての金融問題研究会報告がまとまった後で、その研究会において検討を行い、早期結論を出したいという立場説明いたしました。  その後でございますが、五月二十九日に一千万円未満定期性預金金利自由化につきまして金融問題研究会報告が取りまとめられたわけであります。そこでは、「小口預金者自由化に対するニーズの高まり及び金融機関自由化への対応等の要素を総合的に勘案した上で、極力早期定期性預金金利完全自由化を図る方向で、政策当局において検討を行い、速やかに方針を決定するべきである。」という御指摘をいただいております。私どもといたしましては、この御指摘にも沿いまして速やかに方針を取りまとめるべく、今後関係者との意見調整を鋭意行ってまいりたいと考えております。  その際の留意事項といたしましては、ただいま委員指摘になった諸点は非常に重要な問題でございまして、金融摩擦が激しくならないためとか預金者立場とか、それぞれそれは大切であるけれども、そのほかに中小金融機関などの経営問題にも目配りをしなければいけないという御指摘は、全くそのとおりであると存じます。ただ、この中小金融機関経営問題については、これは預金金利自由化のみが当面の問題というわけでもございませんし、そのほか常時私どもいろいろ注意を払ってその経営動向を見てまいっておるわけでございます。  今後、金利以外の面も含めた全般的な金融自由化国際化進展に伴いまして、そういう金融機関を取り巻く経営環境が一段と厳しさを増すことは避けられないでありましょうけれども、私どもとしては、経営健全化効率化努力を切に期待したいと存じますし、また、私どもいろいろ制度面監督面でも中小金融機関状況を注意して見守ってまいりまして、できる限り適時適切な措置を講ずるように考えてまいりたいと思っておるところでございます。
  8. 中村正男

    中村正男委員 もう既に大手銀行の場合自由金利預金が七〇%にもなっておりますし、片や中小の場合はいまだ三〇ないし四〇%ということでありますから、この一年以内に完全自由化ということについては、これはもう極めて中小金融機関の問題だというふうに受けとめておるわけでございます。  そこで、それに関連いたしまして協同組織金融機関労働金庫経営問題について若干お尋ねをしたいと思います。  このような完全自由化を目前にいたしまして、労働金庫自身もみずからその経営体質強化を図らなければならないわけでございますが、ただ多くの制約条件労働金庫の場合ございます。したがいまして、そういった点はぜひひとつ規制を大幅に緩和をしていただきたい、こういう要望が強く出されております。既に金融制度調査会の第一委員会での作業、五月二十五日に一応の結論が出たというふうに聞いております。ただ、この後さらに総会にかけ、そしてこれを逐次実施していくということになるわけでございますが、当面この段階で、第一委員会で出された結論というものをかいつまんでひとつお知らせをいただきたいというふうに思います。
  9. 土田正顕

    土田政府委員 第一委員会関係の御説明をいたします前に、特に御関心のございました労働金庫につきまして簡単に申し上げますと、今大体判明しつつあります平成年度決算状況では、これは平残の数字でございますが、預金、積み金、前年度比八・五%の伸び貸出金、前年度比八・一%の伸びということで一応まずまずの伸びでございますし、それからいわゆる預金貸出金利ざやにつきましても、多少は前年度よりも下がっておりますが、一応の数字を確保しておるようでございます。また、現在のところ、この元年度そのものにつきましては、例えば事業利益がマイナスであるとか総資金利ざやが逆ざやであるという労働金庫は見当たらないようでございます。  そこで、今後の問題でございますが、いろいろの自主的な経営努力とあわせて制度面についてもいろいろ目配りをすべきであるという御意向は、私どもも前向きに考えてまいりたいと思っております。  それに関連いたしまして、委員から御指摘ございましたように、金融制度調査会金融制度第一委員会の中に特に作業部会というものを設けまして、そこで協同組織金融機関業務及び組織のあり方について研究お願いしてきたところでございますが、その作業部会報告金融制度第一委員会提出されまして、第一委員会了承を経たという段階でございます。  その中の概要というお尋ねでございますが、項目が幾つかございますので、ごく簡単に項目のみを申し上げます。  第一に、信用組合労働金庫及び農業協同組合外国為替業務の取り扱い。それから第二に、信用組合労働金庫及び農業協同組合国債等窓口販売業務及び公共債ディーリング業務についての検討。ただ、これはリスク管理能力向上とか自己監査体制の確立とか行政監督体制の整備とか、いろいろな問題がございますので、やや継続検討の形になっております。それから第三に、労働金庫員外貸し出し規制緩和につきましては、ある程度具体的なアイデアが浮かんでおりまして、労働者経済的地位向上に資する事業を行う営利法人に対する貸し出し、それから労働者に対して行った貸出取引を退職後も継続するという貸し出し、それから中小企業労働者のための福利厚生資金貸し出しにつきましては、これらを認めることが適当であるという趣旨報告が出ております。  さらに、そのほか項目といたしましては、農業協同組合員外貸し出し量的規制緩和とか、中小企業金融専門機関における同一人に対する信用供与限度額引き上げとか、農協における員外の一貸出限度引き上げとか、信用金庫、信組合労働金庫における小口員外貸出限度額のき上げとかの項目につきまして、それぞれ報告で言及されているところでございます。
  10. 中村正男

    中村正男委員 今お聞きしたような内容でこ の第一委員会報告書がまとまったわけでありますが、とりわけ従来から主張しておりました営利法人についても貸し出しが可能になった、あるいは一般的に言われる卒業生金融といったことも前進したということで、員外貸し出し対象範囲拡大ということについては、労働金庫側としても大変大きな期待を持っております。  ただ問題は、先ほどの日米金融協議における金利自由化が差し迫っておるわけでして、そういう面でのこの業務範囲拡大体質強化を急がなければなりません。大蔵省としてのこの実施に向けての早急な手だてをお願いしたいわけであります。具体的には法律改正も必要でしょうし、しかし大半は政令、告示、通達でもってこれが実施に移行できるわけでございます。そういう点で、今後の実施に向けての大蔵省対応をお聞きしておきたいと思います。
  11. 土田正顕

    土田政府委員 先ほど委員の方から御指摘がございましたように、この作業部会報告は、今後金融制度第一委員会報告として金融制度調査会総会了承を得ることがまず必要でございます。その総会了承が得られました場合には、実は労働金庫農協その他関係省庁共管になっておるものもございますので、それぞれ関係省庁との協議の上、可能なものから順次速やかにいろいろな所要の手続を進めてまいりたいと考えております。今後具体的に検討をしなければはっきりしたことは申せませんけれども、その中には法律改正事項も含まれておる可能性がございます。そのような事項につきましては、これも実はいずれも他省庁共管法律でございますので、関係各省協議を進めまして対処してまいりたいと考えております。
  12. 中村正男

    中村正男委員 ぜひひとつ速やかな対応お願いをしておきたいと思います。  大臣一つお聞きをしたいと思いますが、今回の日米金融協議、かなり具体的な問題で、しかも差し迫った要求になっております。しかし、これは日米構造協議と一連のものだ、私はそう受けとめるわけでございまして、アメリカ日本に対する経済的な面での同質化を目指している。その背景には、やはり九二年のEC経済統合、さらにはソ連経済の行き詰まりに対するアメリカとしての対応、さらにまたアメリカ自身が中南米におけるさまざまな経済問題にどう対応していくのか等々考えた場合、アメリカとしては既にカナダとの間で自由貿易協定を結び、加えて日本も含めた地域経済統合といいますか、そういうものが根底にあるのではないか、背景にあるんじゃないか、そういうふうに受けとめるわけでございますが、そういった点について、大臣、どのような認識に立っておられるのかお聞きをしたいわけですが、時間がございませんので、その点、基本的なお考えをお聞きをいたします。  同時に、そういうことを考えますと、日本としてはやはり経済主権に立った選択ということが今回の日米金融協議のこれからの進展でも望まれるわけでございます。そういった点で大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  13. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず、委員お願いを申し上げたい第一点は、構造協議同質のものという御指摘が今ありましたし、私はその御指摘が必ずしも不当な御指摘だとは思いませんけれども日米構造協議金融協議については全く別の次元として私どもは位置づけ、交渉いたしておりますので、その点だけはどうぞ御理解をいただきたいと思うのであります。  ややもすると、さまざまな問題を絡めて論議をしようとするアメリカの組み立て、それに対して私どもは、やはり金融の問題というものは大衆討議に向いたものではない、あくまでも専門家論議を必要とするものということで、構造協議と分けて対応いたしております。今後も、私どもとしてはその垣根はしっかりさせておきたい。そして、他の分野における論議金融協議に与える影響垣根で本当に食いとめたい、プロ集団話し合いで終始をしたいという基本線を持っておりますことだけは、どうぞ御理解をいただきたい。  そこで、金融協議の中で出てまいります、殊に今問題になっております金利自由化の問題、これは二つの側面を持っております。一つは、まさに小口預金金利自由化というものが小口預金のウエートの高い中小金融機関経営に与える影響、これは非常に私どもとして考えていかなければならないことでありますし、今後の自由化の進め方を考えてまいります場合にも、やはり中小金融機関というものが十分この自由化対応できるようにしていかなければならない、この視点は私どもとして一つ常に心にとどめておかなければなりません。しかし同時に、この場合の消費者はまさに預金者でありますから、その預金者利益などの観点からまいりますと、早期自由化を進めるべきだという強い御議論もあるわけでありまして、私ども特に、大口の預金自由化はされているのに小口預金規制されているのは不公平だという声があることについて、やはりこたえていかなければなりません。  この二つの事情というものを勘案しながら、問題を起こさないように進めていく必要だけは私どもは見失ってはならない、そのように考えております。
  14. 中村正男

    中村正男委員 もっとグローバルなとらまえ方として論議をしたいわけでございますが、時間にも制約がございますので、次に進みたいと思います。  次の問題は、これにやや関連をするわけでございますが、銀行手数料の問題、それから証券業に対する手数料の問題、大変社会的に大きな論議を呼んでおります。  そういった中で、銀行手数料については、先般四月二日にトップを切って大手都市銀行手数料の下げを実施いたしました。その後、それに大体横並びの形で都市銀行地方銀行その他が手数料改定をいたしておりますが、まず具体的な中身を簡単にひとつ御説明いただきたいと思います。
  15. 土田正顕

    土田政府委員 お答えを申し上げます。  銀行各種サービス手数料につきましては、基本的には各銀行が自主的に決定すべきものでありまして、私どもの方の認可届け出などを一々必要とするものでございませんので、その詳細については承知しかねるわけでございますが、具体的な内容ということでございましたから、一例といたしまして、現在全国銀行協会連合会会長行であります富士銀行振り込み手数料の例を申し上げますと、これも何種類もございますのでごく代表的なもののみを申し上げますが、店頭の窓口を利用する場合、それから振り込みのための機械を近ごろ備えつけておるわけでございますが、その機械を利用する場合とで料金を変えております。機械を利用する場合の方を安くしているようでございます。その一例といたしまして、富士銀行同士のいわば本支店向けの場合に、窓口を利用する場合には改定後の手数料、これは三万円未満の場合二百六円、それから機械を利用する場合は百三円、それから他の銀行に向けます振り込みでございまして、電信扱いのもの、これは三万円未満のものは五百十五円、それから機械利用のものは三万円未満の場合四百十二円というふうになっているようでございます。  なお、先ほど申しましたように、振り込み手数料内容特別横並びをとるべき指導とか、そういうことではございません。認可届け出も必要としませんので、まだ徐々にではございますけれども、各銀行によってその手数料体系中身に相違ができつつあるというふうに私どもは見ておるわけでございます。例えば一万円未満小口振り込みの区分を新設した銀行とか、消費税込みということで端数をつけない体系を採用した銀行とか、同じ都市銀行を見てもいろいろなバラエティーがあるようでございますし、さらに地方銀行以下を見比べましても、だんだんと個性が認められるような状況になっておるというふうに見ております。
  16. 中村正男

    中村正男委員 きょうは銀行協会等直接の方においでをいただいておりませんので、そういう 意味合いでは今の答弁、具体的な数字を正確にお聞きはできないというふうには思います。  ただしかし、今おっしゃったようなやや個性的な手数料に各行あるいは都市銀行地方銀行となりつつある、こういうお話でございますが、私が知る限りでは、余り個性的な手数料体系にまだなってない、大体がまだ横並びからそう大きくは変わってないという認識に立っております。今回の改定でひとまず社会的な批判がおさまったのではないかというふうな銀行側の受けとめ方があろうと思いますが、ちょっとやそっとの手直しではまだ利用者は納得しないというふうに私は思います。口座振替手数料、これなんかほとんど変わってないと思いますし、依然として取るべきところから取らずに利用者が多く負担している、こんな印象はぬぐえません。主張だけ申し上げておきますので、ぜひひとつ銀行側にしかるべく指導お願いしたいと思います。  例えば、今バーコードという装置が消費市場で大変急速に広まっております。御案内のようにスーパーとかのレジで、店員さんが商品をぱっと当てますとぴっと音がしてすぐ価格を読み取る。それがもう既にそのお店の売り上げ数字にきちっとカウントされる。所によってはそれが例えば七十円のガムであればそのガム会社まで、どこでこれだけの売り上げがあったまで集計される。そこまでコンピューターは進んでおる。七十円のガムで高いコンピューターはもったいないというのは今までの認識でございまして、実際のコストというのは二円くらいしかかからない。片や銀行手数料は、引き下げられたといえどもまだ三百九円ですか、大手振り込み機を使った場合。三百円対二円、こういう比較、これはちょっとおかしいじゃないかという指摘もあろうかと思いますけれども銀行側は、いやいやコンピューターの費用は物すごくかかるんだからこれでも赤字なんだという言いわけを今までしておったわけであります。  そういうことを考えると、私は、今回の改定でもまだまだ不十分だ、もっと思い切った改定をすべきであると思いますし、同時に、大手都市銀行話し合いで大体の線を決めていくというふうな時代ではない。むしろ、それぞれの各銀行がそれこそ収益に応じて自主的に料金を決める、あるいはまたお客さんとの取引に応じて手数料を安くする商品の開発など、もっともっと利用者が納得できるそういう競争原理をより導入した、そんな抜本的な見直しが必要ではないのかというふうに思うわけでございまして、その点だけ申し上げておきたいと思います。  銀行局長、一言あるならばちょっとお答えをしてもらっても結構です。
  17. 土田正顕

    土田政府委員 委員のお話にございましたように、この料金は自主的に決めるべきものである、客との取引関係その他を考慮して自主的に決める、そして競争原理を導入するという方向で今後この手数料体系が運用されるべきものであるという点は、全く御指摘のとおりと考えております。  ただ、一言ということでございますので補足を申し上げますが、第一点は、手数料というのは安ければ安いほどよいというものではございませんので、コストに見合った適正な額を受け入れませんことには、その不足分は為替取引関係のない一般の利用者の負担に帰するというようなことにもなるわけでございます。それからまた、自由化の進んでおりますアメリカでは、むしろ金利自由化が進むに従いまして手数料の水準が引き上げられ、条件が厳しくなったということも聞いております。  もう一つは、確かに競争をいたすわけでございますが、その中身はとにかくバーコードよりははるかにインプットすべきデータが多く複雑であるとは思いますけれども、しょせんは、どの銀行でやっておることもサービスの内容というものは、例えば振り込みなんかの場合は全く似たようなサービスでございますので、競争の結果一定の範囲内に収れんしていく、つまり余り極端な差が本来なかなかできにくいという面もあるということは、御了解いただきたいと思うのでございます。  しかしながら、むしろ大事なのは、その手数料を決める意思決定のプロセス、それからその判断におきましてあくまでも自主的に決めるということが非常に大切である。そこに眼目があると思いますので、単純なる横並び的な発想を排除して、それぞれ適正な競争を手数料の面でも反映させるように今後とも私どもも気をつけて見てまいりたいと考えております。
  18. 中村正男

    中村正男委員 これでおきますけれども、これは単に手数料が高いということだけではなしに、今の銀行に対する社会的な目が極めて厳しい見方をしているということに関係するわけでございまして、いつか大蔵委員会でもどなたかが言われましたけれども銀行は町の一等地にでんと店を構えて商売している。また、片や最近の土地高騰の一因は銀行の過剰投資にあるというふうな、結局銀行性悪説といいますか、そういうものが根底にあるということをぜひひとつ大蔵省としては受けとめて、銀行業界に対する指導をよろしくやっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  次に、証券業界のこれまた取扱手数料の問題であります。これはまだ実施をされてないようでありますが、新聞報道等見ますと、近々六月に入れば具体的な値下げが実施をされるというふうに承っております。株式発行の引受手数料ですか、こういったものは十五年間据え置きされている、売買手数料が平均的には七・〇五%引き下げというような報道が出ておりますが、その具体的な点をまず簡単にお聞きをしたいと思います。
  19. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 今の委員お尋ねは、引受手数料と株式の売買手数料と両方のお尋ねでございましたが、引受手数料につきましては、これも各社が自由に決めるということでございますけれども、これにつきましては既に本年の一月に、新日本製鉄の発行するものにつきまして株式の引受手数料あるいは転換社債引受手数料等につきまして、大体一割程度の引き下げを行いました。  それから株式の売買手数料でございますが、これは証券取引所の受託契約準則によりまして、いわゆる固定手数料を取っております。ただ、売買金額が大きくなればなるほど料率が低減するという体系をとっておるわけでございます。この株式の売買委託手数料につきましては、既に昭和六十年四月、六十一年十一月、六十二年十月と三回にわたりまして大体二割ぐらいの引き下げを累計で行ったわけでございますが、最近におきましても、国際的な水準等を勘案いたしまして、本年一月ぐらいから東証において検討を開始いたしました。五月十五日の東証理事会において改定案を決めました。これを五月二十四日に大蔵大臣認可するという形で、六月四日からこれを実施するということにしているわけでございます。  今回の改定案におきましては、国際水準など勘案いたしまして比較的割高となっておりますところの中口部分、大口部分につきまして、手数料体系の整合性も考えながらこれを引き下げる。同時に小口部分につきましても、個人投資家に配慮いたしまして引き下げを行うということでございまして、全体として平均で七・〇五%の引き下げということになるわけでございます。  今後とも私どもは国際的な水準を考えまして、機動的、弾力的にこういった問題に対応してまいりたい、このように考えているわけでございます。
  20. 中村正男

    中村正男委員 国際的な比較もおっしゃいましたけれどもアメリカでは既に一九七五年に自由化がされておりますし、イギリスも一九八六年に自由化に踏み切っております。国際比較で言うならば、一千万円程度以上の中口、大口に対してはむしろ日本の方は割高だというふうな指摘もございまして、早晩、この銀行手数料も含めて、とりわけ証券の手数料については国際的に自由化を要求してくるというふうなことも当然考えられるわけでございます。  今回は、また固定の形での引き下げということになりますが、最低手数料制の導入などを軸にい たしまして、今後の自由化へのプログラムを示す時期に来ているのじゃないかというふうに思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  21. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 株式の委託手数料につきましては、御指摘のようにアメリカとかイギリスとか多くの国におきまして既に自由交渉制といいますか、自由化されているわけでございます。したがいまして、我が国においてもこれを自由化したらどうか、こういう御意見があることは事実でございます。ただ、既に手数料が自由交渉制になりましたところのアメリカとかイギリスとかという実例を見てみますと、幾つかの問題があることも事実でございます。  一つは、確かに自由化された結果、交渉力のある大口の手数料は急速に低下したわけでございますが、交渉力のない小口個人投資家の手数料につきましては逆に引き上げが行われている、手数料が上昇しているという問題が大分起こっております。その結果、個人投資家の市場への参入が減りまして、いわば市場の機関化現象というものが進みまして、そのことによりまして市場における価格形成にいろいろ問題が生じてきているといった問題が出てきております。  それから、証券会社のいわば経営面でございますけれどもアメリカなんかにおきましては、証券会社の収入の過半数を手数料収入が占めていたわけでございますが、この自由化によりまして、最近におきましては二割を割る水準まで低下してきておる。その結果、証券会社としては、収益を上げるために自己売買を行うとか、いわゆるM&Aといった業務事業のウエートを移すといったふうなことが起こったり、あるいは大手証券会社の集中が高まる、こういった現象が起こっているわけでございまして、そういった意味では証券会社経営とか証券市場の面から必ずしも好ましくない影響も出てきている、こういったことが指摘されているわけでございます。  そういったこともございますので、手数料自由化した方がいいかどうかといったことにつきましては、幅広い観点からかなり慎重な検討が必要な事柄であるというふうに考えておるわけでございまして、現在、私どもとしましては、この自由化を進めるということは考えていないわけでございます。
  22. 中村正男

    中村正男委員 海外からの指摘も、大蔵省の承認のもとに証券取引所がこれを決めているというふうなことも、アメリカの証券取引委員会の有力な方も具体的な指摘をしております。同時にまた、証券業界は大手四社の寡占状態というものがますます強まっておるわけでして、そういう中で競争原理がなかなか働かないという基本的な問題もございます。これも、国際的な摩擦に至る前に、今言ったような段階的な自由化へのプログラムというものをぜひ目指してもらいたいということを要望をしておきたいと思います。  次に行きます。次は、銀行、証券の垣根問題。これはまた改めて具体的にいろいろ論議をいたします。  ただ、きょうは一点だけ、ちょっと気になる新聞の社説がございましたので、きょうは公正取引委員会にもお越しをいただいております。見解を求めるわけですが、ちょっとこの社説をその部分だけ読んでみたいと思います。今、垣根問題が大変論議が盛り上がっておるといいますか、激しくなっておるわけでして、それぞれ銀行業界は証券業界に対して、証券業界は銀行業界に対して批判といいますか、かなり強い指摘がなされておるわけです。読み上げますと、   証券界は、大手都銀が関連会社を通じて独占禁止法上の制限(発行済み株式の五%)をはるかに超える株式を保有して産業界に強大な影響力を持つので、証券市場の公正な価格形成に支障を招く、 こういう指摘であります。   他方、銀行側は、四大証券が証券引受額、株式売買高で圧倒的な地位を占めているため株価形成の透明性利用者コストなどの点で問題があり、新規参入が望ましいとする。 この部分だけ読みますとこういう指摘であります。ただ、この中で支配とかあるいは寡占とか、そういったことをお互いが告発しておるような形になっております。公正取引委員会としては、これは独禁法の問題で見逃すことはできないのじゃないかというふうに思うわけですが、どういうふうな受けとめ方をされるのか、お聞きをしたいと思います。
  23. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 ただいま委員指摘の社説は、私どもも読んでいるところでございます。この社説に関しまして、独占禁止法の関係からお話し申し上げたいと思います。  最初に御指摘のございました、銀行がその関連会社を通じてあるいは銀行の関連会社が第三者の会社の株式を大量に持っているといったような点でございますけれども、独占禁止法の関係では、御承知のように第十一条で、銀行など金融会社が株式を所有する場合につきましては、相手方会社の発行済み株式総数の五%を超えてはならない、保険会社については一〇%ということでございますけれども、五%を超えて所有してはならないという規定があるわけでございます。したがいまして、銀行がこの範囲内である会社の株式を持っていて、その持たれている会社がさらに第三者の会社の株式を所有したといたしましても、その点については独占禁止法第十一条の規制はかかってこない、そういった関係にございます。この点をまず第一点として申し上げておきたいと思います。  それから、証券業界におきますいわゆる寡占の問題の御指摘もあったように思います。この問題につきましても、私ども公正取引委員会として、いわば競争原理が一層有効に機能するようにという観点から関心の持っている事柄ではございます。ただ、これまた先生御承知のように、寡占的な状態にある、あるいは市場占拠率が高いということだけで独占禁止法の問題がすぐに出てくるということではないように思っておりますが、いずれにいたしましても、私ども自由な競争が公正に行われるようにという観点からこの問題を認識していきたい、かように考えているところでございます。
  24. 中村正男

    中村正男委員 特に証券業界の四社の寡占状態、これは証券会社中小含めますと二百数十社近い数に上るわけですが、企業経営の状態は四社の寡占状態に引っ張られる形で、中小は大変苦しい経営状態になっているのじゃないだろうかというふうに思います。  詳しい仕組みの問題、論議する時間がございませんが、例えばアンダーライターと言われる引き受け業務、これなども四社でほぼ七〇%から八〇%毎期これが占有されている。中小のシェアというものは全く変わらない。片や、今のように株が乱高下しますと、そのことがもろに中小経営に響いてくる。もっともっと安定した中小の証券企業がいけるような、中身を組みかえといいますか、今言ったようなアンダーライターの問題は、これは四大証券しかだめなのだというふうな従来の既成の概念で見ていくのか、そこのところの枠組みの組みかえというようなことはできないものか、その点だけちょっと質問しておきたいと思います。
  25. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 大手四社のシェアでございますけれども、最近におきましては、一般的に言いまして外国証券会社の参入も相次いでおりまして、競争も激化しているということで傾向的には低下傾向にございます。  株式の売買委託シェアで申しますと、一時は四社だけで大体五割を超えていた時代があるわけでございますが、最近におきましては、昨年の三月期決算におきましては四四・一%というふうに低下してきております。また平成二年の決算におきましては、まだ具体的な数字は出ておりませんが、東京証券取引所だけの売買シェアで見てみますと、三七・七%というふうにかなりの減少になってきております。それから、株式の引き受けでございますけれども、これにつきましても一時期は四社で九割を占めていたという状況でございましたが、これも元年の三月期決算におきまして は五九・五%というふうに、傾向的に低下傾向にあるわけでございます。  こういった意味で競争は促進されてきている結果、いろいろ中小証券におきましては株式の委託シェア、これは何を中小証券と言うかによって定義が違いますが、仮に私ども本省ではなくて財務局で管理しておりますところのシェアを見てみましても、株式の売買高のシェアがそれによって減っているということはございませんし、それから株式の引き受けにつきましても、シェアは若干最近は上昇ぎみであるというふうに思うわけでございます。  ただ、公取からもお話がございましたように、こういった四社のシェアが引き続き高いことは事実でございまして、そういったことによりまして株式市場の価格形成に問題を生じてはいけないといったこともございますので、私どもとしましては、例えば価格形成面について申しますと、特定銘柄の取引につきまして、原則といたしまして、特定の証券会社の月間の取引高が三〇%以上になることによって市場に過度な影響を与えることのないようないわゆる三〇%ルールを導入するとか、あるいは社債につきましても主幹事制についてプロポーザル方式を導入する、こういった形によりまして自由な競争を促進するといったことをいろいろしているところでございます。  なお、中小証券につきましては、これも自主的な経営判断にゆだねる話でございますけれども、今後とも国際化なり自由競争が促進されると経営環境は厳しさを増してくるということも予想されますので、私どもといたしましては、兼業承認基準を緩和するとか、あるいは中小証券独特の例えば投資信託を承認するとか、あるいは証券会社そのものの上場を促進することによって自己資本をふやすとか、あるいは新しい自己資本規制を設けまして、これによりましてきちんとした投資家保護を図るとか、こういった各般の面にわたりまして中小証券につきましていろいろな対応をとっているところでございます。
  26. 中村正男

    中村正男委員 時間が来ましたので、証券取引法改正、三点ばかり質問をして終わりたいと思います。  第一点は、今回の証券取引法改正、TOBルールの弾力化、国際化進展する中で遅きに失したという感がございますが、それは横へ置いておきまして、こういった改正が行われますけれども、このことによって新たな対外摩擦にまた火種をつくることにならないかという懸念がございます。それは簡単に申し上げますと、外為法との関係で、現在では非居住者の国内における株式投資については事前届け出制となっております。そういうことを考えますと今回のこの法改正、国内の投資家にはそれなりの恩典といいますか、それなりの役割を果たすことになろうかと思いますが、その点について外為法を改正しなければ対外摩擦的にもまた問題が起こるのではないかというのが、第一点であります。  それから二つ目は、いろいろ問題はありますけれども、今回、大蔵省と証券取引所等の閲覧室で公表ができるということになっておるわけですが、果たしてこれで一般の投資家に対する情報公開が実質的に担保されるのかという問題があろうかと思います。むしろ官報とか、より広く一般投資家が目にできるそういったことがなぜ考えられなかったのかというのが、二つ目。  最後に三つ目は、こういったアメリカ流の情報の公開制度というものが充実をしてくるわけですけれども、しかし実際上は、行政当局の対応能力が果たしてこれについていけるのか。アメリカのSECのような機能はないわけでありますし、そういった点について大蔵省としてはどういうふうに考えているのか。  以上三つ、お聞きをしたいと思います。
  27. 千野忠男

    ○千野政府委員 第一の外為法の関連につきまして、お答えを申し上げたいと思います。  この外為法上は、対内直接投資につきまして、国の安全保障に関する投資あるいはいわゆる例外四業種、つまり農林水産業、それから鉱業、石油業及び皮革または皮革製品製造業、こういったような例外四業種、これらに対する外からの投資についてチェックをするために事前届け出制になっておるということで、御承知のとおり届け出後三十日の不作為期間が設けられておるわけでございます。しかしながら、実際の運用上はどうなっておるかといいますと、この不作為期間を大いに短縮をいたしまして、かなり迅速な処理をしておるわけでございます。現に、国の安全保障の関連でございますとか例外四業種、これら以外の投資につきましては、届け出をしたその日から投資が行われる、いわゆる即日処理という扱いになっているようなわけでございまして、これらが件数にして約九割という状況でございます。そういうことで、これは非常に限定的なチェックになっておりますので、これが存在することが直ちに摩擦になるというふうには私ども認識をしておりません。  いずれにしましても、この事前届け出制は、今申し上げました国の安全保障に関連する投資でありますとか、あるいは例外四業種といったものに対する投資を有効にチェックをするというためのものでございますので、事前届け出の差し支えない範囲での緩和でございますとか、あるいは今の国の安全保障の関連あるいは例外四業種に関係のない業種についての一部廃止というようなことは当然検討し得るものだと思いますけれども事前届け出制の廃止ということになりますと、これは慎重に対処しなければいかぬ、かように思っております。
  28. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 今回の証券取引法改正、三点ございますが、いずれも非常に証券市場は大衆化してきておりまして、投資家保護を図る必要が非常に大きくなってきておるということと、国際化の流れの中で規制水準の国際的な調和を図るといったことを主眼とするものでございます。  そこで、具体的なお尋ねの二点でございますが、第一点は、五%ルールとかTOBにつきまして新聞公告を義務づけたらどうかということでございます。  この点につきましては、まず証券取引法におけるディスクロージャー制度というのは、従来から有価証券届出書とか有価証券報告書という制度がございますけれども、これにつきましてはいずれも大蔵省及び証券取引所等におきまして公衆縦覧するということにしておるわけでございまして、五%ルールにつきましても、この前例に従いましてこういう取り扱いにいたしておるわけでございます。こういった取り扱いは、アメリカにおける取り扱いと全く同じでございます。五%ルールにつきましては、今後新しく導入されるわけでその推移を見る必要がございますけれどもアメリカ等におきましてもやはりそういった買い占めといった件は非常に関心がございますので、こういった投資家情報は公衆縦覧した段階で新聞等がキャリーするということが一般的に行われているようでございますし、特に日本の場合におきましても、兜町の取引所には記者が詰めているといったこともございますので、恐らく日本におきましても同様なことで事実上新聞等にキャリーされることが大いにあり得るだろうというふうに考えているわけでございます。  それから、公開買い付け制度につきましては、むしろ制度そのものが新聞公告をもって一般の投資家に買い付けを勧誘するという行為でございますから、これは制度上も新聞公告を義務づけておるということでございます。  第二点の、こういういろいろ制度改正をするのはいいけれども大蔵省対応能力は十分であるか、こういうお尋ねでございます。  確かに、いろいろな最近のこういった証券市場の発展に伴いまして、私ども証券局の仕事が忙しくなっているということは事実でございます。そういったことに対応いたしまして我々も精いっぱい努力しているわけでございますけれども、その中で特に本年度におきましては、本省におきまして十名、それから財務局におきまして十名、大蔵省の中の通常の予算定員の中では格段の増員を認 めていただきました。そういったこともございますので、私ども今後ともそういった機構面、予算面の充実も関係当局の理解を得ながら図りつつ、こういった新しい事務に対応してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  29. 中村正男

    中村正男委員 時間が来ましたので終わりますが、この年初から証券業界は非常にさまざまなトラブルが起こっております。昨年十二月には証券局長の通達を出して、各業界に注意を喚起したわけでありますが、一向に効き目がなかった。それにはそれぞれの要因があるわけでして、一律に云々はできないと思いますけれども、こういったことの起こらないような一層の行政お願いいたしまして、終わりたいと思います。
  30. 衛藤征士郎

  31. 仙谷由人

    仙谷委員 仙谷でございます。  証券取引法改正の問題に入る前に、今週の「アエラ」という雑誌に載っておるのでございますが、この問題をいわゆる金融取引におけるプライバシーの問題として少々大蔵省にお話をお伺いしておきたいというふうに思うわけでございます。  大蔵省は、この「アエラ」という週刊誌の記事のみならず、独自にこの種の銀行のいわゆる顧客に関する情報が名簿屋に売られておるというふうな事実を承知しておりますでしょうか。
  32. 土田正顕

    土田政府委員 お答えを申し上げます。  御指摘の「アエラ」の記事は私どもも読んだわけでございますが、一般的にそのようなプライバシー情報が売買されておるというようなことについては、私どもは承知をしておりません。
  33. 仙谷由人

    仙谷委員 この記事が出て以降でも結構なんでございますが、そういうおそれ、可能性があるかないかについて、あるいはこの記事とは関係なしにこの種の財産情報が漏れておるのではないかということについて、大蔵省として調査をなさったことはあるのでしょうか。
  34. 土田正顕

    土田政府委員 その「アエラ」の記事に出ております銀行から、これはどのような話であったのかということを担当官が聞いたということはございます。ただ、一般的な調査はいたしておりません。  むしろこの問題についてやや一般論的に申し上げますと、金融機関は当然、預金者貸し出し先などの顧客の情報につきまして、いわゆる顧客のプライバシー保護の観点から特に慎重な配慮が必要でございます。そのような問題意識はかねてから私どもとしても持っておりまして、いろいろな各方面での審議会の答申とか個人情報の保護に関する法制の整備の状況とか、そのようなものも見比べながら、例えば業界の共同設立をしております金融情報システムセンターというようなところで個人データ保護のための取り扱い指針をかねて定めておるところでございますし、また金融制度調査会の専門委員会消費者信用のあり方について議論せられましたときにも、この個人のプライバシー保護の問題について十分配慮を払うことが重要であるという趣旨の提言をちょうだいしたといういきさつもございます。  そのような全般の状況を受けまして、昭和六十一年三月四日でございますが、銀行局長名で「金融機関等が信用情報機関を設置又は利用する場合の信用情報の取扱い等について」という、これは金融機関の独自の直接的な行動ではなく、いわば共通に利用できる信用情報機関をつくったり利用したりする場合についてもしかるべき注意が必要であるというような指導をするとか、それぞれかねてから適切な取り扱いの指導に努めてきたところでございます。
  35. 仙谷由人

    仙谷委員 この記事を見ますと、一つは三菱銀行の問題が出ております。もう一つは、東洋信託銀行に対する訴訟を既に提起しておる消費者がいる。つまり東洋信託銀行のケースは、ダイレクトメールで送られてきた封筒に張られてあった整理番号が東洋信託銀行のいわゆるお客様番号であった、そういうゆゆしい事態に対して訴訟を提起しておる消費者がいるということが記載されているのです。  そこで、三菱銀行に対する調査の結果と、東洋信託銀行について調査をしたのかどうか、調査をしたとすればどういう調査結果であったのか、そのことについてお答えをいただきたいと思います。
  36. 土田正顕

    土田政府委員 具体的な訴訟事件になっておりますものにつきましては、もしそのような訴訟が現に行われておるということであれば、まずその訴訟の内容を見守るということで、私どもは注意深く見てまいりたいと思います。それから、このような記事の種になるようないろいろな事実があるということで、仮にそういうことでありますならば、それは私どもとしては極めて遺憾なことであると思います。  なお、話題に出ました銀行では、この記事に対応いたしまして、即刻点検、それから規律の強化等について、いわば引き締めのための措置をとったというふうに聞いております。
  37. 仙谷由人

    仙谷委員 法務省の方、来ておればお伺いしたいわけですが、かりそめにもこういう預金の管理台帳あるいは定期預金の期日管理表、あるいはもっと進んで、私どもが融資を受けるときに、子供の年から住宅が持ち家か借り家か、それの資産価値が幾らかというふうなことを書かされて提出するわけですが、そういう銀行が握った財産情報が売られるというふうなことがあっては決してならないといいますか、ゆゆしい事態である、だれもが金融機関や証券会社や生命保険会社を信用して取引ができなくなる、こういうことになるのじゃないでしょうか。  法務省、この種のコンピューターに内蔵された情報が何らかの格好で取り出される、あるいはそれ以外の方法で取り出されて名簿屋に売られるというようなことは、現在の法規制でどういう犯罪になるのか、あるいはどういう防止の手だてがあるのか、おわかりの範囲で御教示をいただきたいのです。
  38. 鶴田六郎

    ○鶴田説明員 お答えいたします。  突然の御質問なので適切にお答えできるかどうか自信がございませんけれども、例えばコンピューターシステムに入りました情報を不正に漏示するとか、そういった問題につきましては、現在のところ刑法の観点からはこれを処罰する規定はございませんが、ただ、何らかの形で財産的な情報が文書とかそういうものに化体しておりまして、それが何らかの形で外に出るといったようなことになれば、窃盗とか業務上横領とかいったような形の犯罪が成立する可能性がある場合があるかと思いますが、その程度でひとつ御了解いただきたいと思います。
  39. 仙谷由人

    仙谷委員 要するに、現在の情報化社会に今の日本の法規制対応できてない、こういうことに尽きると思うのでございますが、時間も余りございませんのでこの点を一点だけお伺いして、次に移りたいと思うのです。  実体経済の中で名簿が売買される。その中で一番価値があるのは財産者の名簿である、財産を多く持っている人の名簿が価値がある、名簿屋の社会ではどうもこういうことになっておるようですね。銀行、証券、保険、いわば消費者、その中でも資産を多く持っておる人をどうも優遇しつつあるといいますか、そういう人を一番大切にしておる銀行とか証券会社、ここから情報が漏れる危険性をいつもはらんだ社会というふうに言っていいと思うのですが、こういう事態を前にして、プライバシーの保護という観点からも大蔵省としては今後どのように対応されようとしておるのか。法規制等々を含めて大蔵大臣及び銀行、証券、どなたからでも結構ですので、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  40. 土田正顕

    土田政府委員 銀行、証券、保険と三つ御指摘がございましたが、その中の二つまで銀行局が所管しておりますので、私の方からまず申し上げます。  殊に銀行につきましては、いろいろな情報が集中するということは、この業務の性格上当然あり得ることでございまして、そのような情報をみだりに外部に漏らすべきでないということは銀行の 基本であるということで、どこでも言われておることでございます。そのような観点から、これは明文の法律の根拠はございませんけれども、判例その他におきまして銀行の守秘義務というものは確立した概念になっておるわけでございます。  そのような、いわば銀行の事務の運営ぶりの基本に関することでございますので、殊にコンピューターの普及に伴ういろいろな個人のプライバシー保護の重要性の問題につきましては、私どももかねてから意識を持ち、最前るる申し上げましたような指導も繰り返してまいったわけでございますが、今後とも個人のプライバシー保護につきまして一層慎重な配慮を払うよう、金融機関等を指導してまいりたいと考えております。
  41. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 一般的には今銀行局長お答え申し上げたとおりでございますが、証券会社につきましては日本証券業協会におきまして協会規則をつくっております。具体的には協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則というものをつくってございますが、そこにおきましては、適正な顧客管理を行うために協会員、つまり証券会社に対しまして顧客カードの管理を義務づけると同時に、顧客カード等によって知り得た秘密を他に漏らしてはならないというふうに規定いたしまして、個人のプライバシーを侵すことのないように証券業協会において協会員を指導するということにしておるわけでございます。私どもといたしましても、こういった趣旨がさらに徹底するよう、証券業協会あるいは証券会社指導してまいりたいと考えております。
  42. 仙谷由人

    仙谷委員 どうも大蔵省、通産はきょうは関係ございませんけれども、企業の秘密を守ることについてはなかなか御熱心な取り組みがあるような気がするわけでございますけれども消費者の例えばこういうプライバシーの保護というところに関しては、今証券業協会の取り扱いをお伺いしましたけれども、どうも全般的に非常に弱いのではなかろうか、そういう感じを持っておるわけでございます。  銀行の、特に金融情報がほかに売られるということについては、こんなことがないように今後ともより一層厳しい指導、あるいはこの「アエラ」の記事から読み取れるのも、三菱銀行だけではなくて他行の情報もダンボールいっぱい入っておるというようなことも書いてあるわけでございますので、これはひとつ改めて全銀行に対して適正なプライバシーの保護についての何らかの指針をお出しいただく、あるいは指導をしていただくということが必要なのではないかと思います。  次に、証券取引法改正についてお伺いをするわけでございます。  時間の関係でほぼ一点に絞ってお伺いをするわけでございますが、証券取引法改正された百九十七条から二百九条まで、ここに罰則規定が置かれております。私、これを読みますとどうも、どうもというよりも多分そうだろうと思うのですけれども、不提出、虚偽報告というこの二本の柱だと思いますが、個人がその罰則を負う対象者になっておる。つまり、会社であれば書類作成者であったり、あるいは提出者というのはだれになるのか、ちょっともう一つイメージがわかないわけでございます。担当部署の責任者ということになるのでしょうか。そういう理解でよろしいのでしょうか。
  43. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 買い占め等の場合には、法人も個人も両方あると思います。個人については、御指摘のとおりでございますが、法人についても罰則がございます。
  44. 仙谷由人

    仙谷委員 そうしますと、この「提出しない者」の「者」の中には会社も含まれるわけでございますか。
  45. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 具体的には、証券取引法二百七条におきまして、「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、」云々といろいろな違反行為をしたときには、「その行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。」ということでございまして、そういったことでございます。
  46. 仙谷由人

    仙谷委員 次にお伺いをしたいわけでございますが、この二十七条の三十の二項というところに、会社に対する大蔵大臣提出命令というのがございます。それから二百五条の十五号というところに「第二十七条の三十第一項」というふうに書かれておって、第二項の会社の不提出については罰則適用がないようになっておるわけでございますが、これとの関係ではどうなるのですか。この項目では罰則適用はないけれども、今証券局長がおっしゃった一般規定で両罰規定の適用があるんだ、こういうことになるわけですか。
  47. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 「者」と書いてございますが、その「者」というのは法人も個人も両方含んだものでございまして、法人につきましても違反行為がありました場合には罰則の適用がある、こういうことでございます。
  48. 仙谷由人

    仙谷委員 よくわかりませんけれども、ちょっと時間の関係で先へ進みます。  従前のインサイダー取引証券取引法改正のときに、ここにいらっしゃる社会党の早川委員が、アメリカのSECに単純に倣えというのではないけれども、もう少し独立的な機関としていわゆる調査、監視あるいはできれば捜査といいますか、そちらにも権限を広げるような組織をつくったらどうかという提案をいたしまして、当時の証券局長が、「屋上屋を重ねるようなものではないかということから、司法関係当局といろいろと議論をしてみなければいけないような問題もあろうかと思いますし、現にそうしなければ取り締まりの実効は全く上げられないのかということにつきましては、またいろいろと議論もあるのではないかと思います。」、こういうお答えをなさっておるのですね。  今度のインサイダー事件として初めて摘発された日新汽船の事件では、これはやはり専門家がいないからこの程度の摘発にしかならない、そういうのが一般の世評でございますね。大山鳴動してネズミ一匹も出てこないような感じの摘発しか行われないというふうなのがどうも世評のようでございます。  この点について、新たな機関をつくってやることについて司法関係当局と議論をしてみなければならない、六十三年の五月に証券局長お答えになっておるわけですが、司法関係当局と大蔵省の方でこの種の議論をなさったのでしょうか。なさったとすれば、現在どういうことになっておるのか、それをお伺いしたいと思います。
  49. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 日本の証券局とアメリカのSECとの性格の差でございますけれどもアメリカのSBCの場合には、日本行政当局と違いまして準司法機関的な権能を持っております。具体的には、広範な規則制定権を持つとか、審問によりまして審決を行うとか、ある程度の一定の捜査権を持っているとかといった意味でのものがございますが、それに対しまして私どもの証券局の方は、全く純粋の行政機関でございます。そういった意味では行政調査ということは可能でございますけれども、犯罪捜査の権限というのは専ら司法当局に専属しているということがございまして、今回のインサイダー取引におきましても、犯罪捜査として行われる限りにおきましては司法当局において行われる、こういう建前になっておるわけでございます。  そういった意味で現在のいろいろな我が国制度がそうなっておりまして、そういった意味で私どもといたしましても、今回の問題を含めましてこういった問題についていろいろ、インサイダーの問題を含め、あるいは今回の五%ルールとかTOB等につきましても議論したわけでございますが、我が国の現在の社会的な風土の中で一般的に証券に関する規制、監督、行政を行うところの機関がそういった一種の準司法的な権能を持つことについては、果たして一般の国民の理解等が得られるような十分な状況にあるのかどうか、あるいは日本行政組織の中でそれは十分なじむものかどうかといった問題がなおいろいろ残されているわけでございます。さらには、そういったことを 行うといたしますと、私ども証券局といたしましてもかなり膨大な組織なり人員を必要とするといった問題もございます。  そういった状況もございますから、こういった問題につきましては、現行の体制を維持しつつ、同時に司法当局との間の密接な連絡協調体制といったことを強化する、あるいは行政といたしましてはそういったことが起こらないような未然の十分な対応関係者に求めると同時に、我々としてできる範囲で、例えば証券取引所等におきます監視機能の充実でありますとか、我々の中におきますところのそういった調査機能の充実を図るといったことをあわせ行うことによりまして対応していくのが基本であろう、こういうことで対応しているわけでございます。
  50. 仙谷由人

    仙谷委員 日新汽船事件におきまして、昨年の六月に大蔵省の方で調査をしたけれどもシロと出た、ところが今度警視庁が捜査に踏み切ったというのが、どうも新聞報道に書かれておるようでございます。だから、今度の初めてのインサイダー取引事件として摘発されたケースは、大蔵省と司法当局が連携を密にしながら、協力をしながらこういう事件が立件されたのだということではなくて、大蔵省はシロと言ったけれども、警視庁が執念の捜査で摘発をしたというような感じになっておるのですね。  早川委員も昭和六十三年のこの国会で質問をしておりますように、早急に、いわば大蔵省管轄の省庁でいえば国税庁のような、捜査あるいは告発の権限を持つ専門の、証券不正を監督し取り締まる機関をつくっていかなければいけないのではないかと私は考えておるわけでございます。そしてまた、それが消費者といいますか一般投資家といいますか、そういう人の利益にかなうものでありますし、あるいは先ほど証券局長がおっしゃった国際化透明性というふうな事柄、そういう趣旨に沿う。その方向に動き出さなければ、今の警視庁がどうだからというふうなことではいかんともしがたいのではないかと考えておるわけでございます。大蔵大臣に一言、その点について御答弁をいただきたいと思います。
  51. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、今委員が御指摘になりました問題点、早川委員と当時の証券局長との議事録を読みました。その上で、今回取引審査体制の拡充を図っております。私は、委員のお考えのような考え方も確かに一つ考え方だと思うのです。ただ、私の脳裏にありますのは、果たしてそういう仕組みをつくることが即座に効果を上げるかどうか、それよりもっと効果のある方法があるのではないかという感じであります。  これは大変過去にさかのぼりました例を引いて恐縮でありますが、ちょうど昭和四十年代の半ばくらいに公害事案が非常に多発いたしました当時、公害Gメンをつくれとか、あるいは環境庁が生まれました時点で環境庁の一定分野に対して準司法的な権限を付与してはとか、さまざまな御議論がございました。当時、環境庁が考え、そしてその結果としては非常に効果を上げましたのは、環境庁と検察当局との連携の中において、公害事案についてある程度専念できる検事の養成を検察当局にお願いをした。そして、当時検察当局はその要請にこたえてくれまして、たしか十名余りであったと思いますが、正確な数字は忘れましたけれども、公害事案について熟達した検事の養成に踏み切っていただいたわけであります。これは、その後の公害事案の処理におきまして非常に効果を発揮をいたしました。そして、むしろ今、恐らく特定のそうした分野専念という必要をなくするくらいまでの効果を上げたと私は思っております。  仮に、今回証券取引審査室が拡充案として仕組まれているわけでありますけれども、その仕組みが機能する中において、自分たちの行政権限の範囲でどうしてもグレーゾーンの残るような分野について連係プレーが司法当局との間に機能いたしますならば、むしろその方が実効が上がるのではないか。私は、率直に過去の公害事案に対する対応を振り返りながら、今そのような印象を持っております。  しかし、いずれにいたしましても、国民の資産を運用する場としての証券業界について、極めて厳しい倫理が求められることは当然であります。そしてまた、それに対し行政当局としての十分なチェックの機能を持つということは必要なことでありますから、今後とも十分御意見も踏まえながら研究させていただきたいと思います。
  52. 仙谷由人

    仙谷委員 今年度予算で十八の証券取引審査室の増員を図ったというふうに報道で承知しておるわけですが、人員の増加と職員の専門化といいますかプロ化といいますか、そういうことに配慮して、この証券市場が我々でも見にくい、見えにくいという状況を何とかして改善する方向で努力をしていただきたいと思います。  最後に、一点だけお伺いいたします。これも証券市場の見えにくさをあらわしておった事例じゃないかと思いますけれども、従前、「東京証券取引所の上場前第三者割当増資についての取扱い」というふうな証券取引所の内規的なものが数多くあったやに伺っております。今申し上げました「取扱い」とか「上場申請日の直前決算期の一年前の日前一年間の第三者割当増資等の運用細目」というものがあって、その中に割り当て禁止先としまして、「東証会員証券会社及びその役員割当てを禁止する。」あるいはその割り当て禁止の証券会社には「証券会社の人的資本的関係会社を含む。」という規定がありながら、その証券会社が資本、人的な出資あるいは派遣をした証券会社系あるいは金融機関系のベンチャーキャピタルには割り当ててもいいんだというふうな運用の細目というのが存在したようでございますけれども、現時点でもベンチャーキャピタルには割り当てていいということになっておるのでしょうか。
  53. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 先般のリクルート問題等を契機といたしまして、御指摘の新規公開あるいは上場前の第三者割り当て、そういった問題につきましては一定の規制を行うことにいたしました。  それに関連いたしまして、今委員指摘の東証の取扱規則につきましてもこれを廃止いたしまして、御指摘のベンチャーキャピタルにつきましても一般原則に従って行う、こういう対応に切りかえてございます。
  54. 仙谷由人

    仙谷委員 そうしますと、一応ベンチャーキャピタルについての割り当てを許容するというのは廃止されたというふうに伺っていいのですか。
  55. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 一般原則に従うものですから、原則としてそのとおりでございます。
  56. 仙谷由人

    仙谷委員 終わります。
  57. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 堀昌雄君。
  58. 堀昌雄

    ○堀委員 最初に銀行局長にお伺いをいたしますが、たしか昭和六十年だったと思うのですが、現在の金融制度調査会が発足したときの課題はどういうことであったか、時間がありませんから簡単にお答えをいただきたいと思います。
  59. 土田正顕

    土田政府委員 金融制度調査会は非常に昔からある諮問機関でございますが、現在の金融制度調査会の発足までに至る経緯は、昭和六十年九月二十六日に、専門金融機関制度をめぐる問題点を広範かつ専門的な観点から研究、整理するということで、具体的に専門金融機関制度をめぐる諸問題研究のための専門委員会制度問題研究会と通称しておりますが、それを設置するということから始まったわけでございまして……
  60. 堀昌雄

    ○堀委員 それだけでいいです、時間がないから。  実は今銀行局長お答えになったように、この金制のスタートは、専門金融機関というのは都市銀行地方銀行、信託銀行、長期信用銀行、この三つについての問題を検討するというのが六十年九月におけるスタートの状況だったのであります。ところが、いつの間にかこれが銀行、証券問題の方にずっと発展してきて、今日一番大きな議題がこの問題に集約されてきておるというのが現状でございます。  そこで、証取審でもこの問題を受けて今作業を続けておられるようでありまして、やがて証取審もそれなりの態度をあらわされると思うのであり ますけれども、ちょっとこの問題について公正取引委員長にお伺いをいたします。  私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第一章第一条「目的」で、「この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、(中略)公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」こう明記をいたしております。非常に重要なのは、ここで事業者への「過度の集中を防止して、」「公正且つ自由な競争を促進し、」こういう問題と、「一般消費者利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」ということで、これが私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律であります。  そこで、十一条で、さっきも既にお答えがありましたけれども、「金融会社の株式保有の制限」「金融業を営む会社は、国内の会社の株式をその発行済の株式の総数の百分の五を超えて所有することとなる場合には、その株式を取得し、又は所有してはならない。ただし、公正取引委員会規則の定めるところによりあらかじめ公正取引委員会認可を受けた場合及び次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。」というふうに記載されております。  ここで問題が一つ出てまいりますのは、さっき中村委員も御指摘になりましたけれども、現在のこの五%の持ち株の中で、実際的に銀行系証券会社というものが何社かあります。ちょっと簡単に証券局長の方でお答えいただきたいと思います。
  61. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 銀行系証券会社でございますけれども我が国におきましては、アメリカと違いまして、今お話がございましたように、独禁法によりまして五%の範囲内ではございますが銀行本体によって株式所有ができることになっておるわけでございまして、銀行は、ほかの事業会社と同様に証券会社にも出資しているものがあります。これらの証券会社のうち、銀行とかその関係会社等が相当割合の株式を持っておりまして、銀行との間で役職員の人事交流等におきましてかなり親密な関係があるといったものにつきまして、これを一般的に銀行系証券会社というふうに呼んでいるということでございます。  これは一般的に、この経緯でございますけれども、昭和三十年代後半から四十年にかけて不況のときに、証券会社経営不振に陥りまして銀行の救済等を仰いだといったことからこういう現象が起こってきたという経緯もかなりあるようでございます。
  62. 堀昌雄

    ○堀委員 今証券界は、最初に問題になっておりますけれども大手四社、その次に総合十社というのがありまして、その下にずっとあるのですけれども、この総合十社というのを見てみますと、十社のうちで純粋な証券会社というのは五社しかない、あとの五社は銀行系証券会社なんですね。  まだたくさんありますけれども時間がないので省きますが、公正取引委員長に伺いたいのは、これは金融制度調査会結論になっていないのでありますけれども、要するに銀行がその子会社に証券会社を持てるということが金融制度調査会のB案というので出されているわけですね。これは今後進行するのだろうと思うのですが、仮にそういうものができたときの銀行会社というのは、今の独占禁止法では一〇〇%の持ち株は禁止されているのですが、ただ、ここに、さっき私が読み上げましたように公正取引委員会規則によって公正取引委員会認可するものはこの限りでないんだ、こうなっているわけです。  そうすると、要するに既に銀行が五%の持ち株で、たくさんありますが、中堅十社の中の五社ある。こういう銀行の持ち株の証券会社と、新たに金融制度調査会が考えておる一〇〇%の持ち株会社というものがある。一体これがどういうふうに違うように独占禁止法の立場でお考えになるのか。さらに、その一〇〇%持ち株というのは、法律は五%になっているのですから、公正取引委員会規則に基づくところの認可ができれば可能なんですけれども、私は、少なくとも独占禁止法マターであるものが、ただ単に金融制度の中だけでこうしよう、ああしようという話になるのは、非常に順序がおかしいのではないか。  私が第一条を読み上げたのも、要するに——今五%になっているのは、かつてこれは一〇%だったのです。御承知のような狂乱物価の後で企業支配力の問題が出てきまして、ちょうど独占禁止法の改正問題が起きました。当時の独禁法の自民党の委員長は山中貞則さんでして、私は三十年以来、税その他で一緒にやっている親しい方でありましたから、私は、銀行が企業の一〇%の株式を持つことは企業支配力が強くなり過ぎる、アメリカはゼロですよ、日本が一〇%は多過ぎるから、足して二で割って五%にしたらどうでしょうかと相談をしましたら、山中さんが、ああそれは堀君大変いいことだ、それでいこうというので、実は五十二年改正で五%になっているのです。  私はかねてから、できるだけ独禁法が定めたような公正な競争、過度の集中による影響力がないようにすることが日本の企業発展のためにいいと考えてこういう問題をやってきたわけです。公正取引委員長の御答弁をいただきます。
  63. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 一点、二点について分けて御説明をした方がいいかと思います。  まず、現行の十一条は、御指摘のように金融力を背景にいたしました金融会社事業支配を排除するという厳しい構造規制でございまして、ただし書きで現在五%の基準を超えて認められます場合は、例えば第三セクターとか業績不振会社に対してやむを得ず銀行が株を持たざるを得ない、あるいは不動産管理とかコンピューターといった従属業務について例外的に認可しておる、つまりあくまでも例外運用でございますから、今委員がおっしゃいましたように、現行制度のもとで証券会社の株式を銀行が一〇〇%持つということは、現行法の認可はできません。すべきではないと思うのです。  もう一つの問題は、制度論として銀行業務証券業務をどういうふうに編成していくかという議論が今あるわけでございます。ただ、これはさまざまな議論がありますから、これに対しての独禁法なり競争政策上の制度論なり考え方については、私は、現状において公正取引委員会は各種の論議に予見を与えるような一切の具体的な見解を述べるべきではない、基本的にはその立場は留保させていただきたいと思うわけでございますけれども、今の十一条は大変厳しい構造規制でございますから、仮にそういった制度論が行われた場合に、将来金融業法が変わってそういうことになった場合に、公正取引委員会としては一体どう対応するのか、今の規定で認可をするのかという御質問になると、この十一条というのは非常に基本的な構造規制の規定と私ども理解しておりますから、恐らく現在の法律の基本的な根幹に触れる根本的な問題を持っておるということだけを申し上げたいと思います。
  64. 堀昌雄

    ○堀委員 委員長、御退席いただいて結構でございます。  そこで、大蔵大臣にちょっと認識をしておいていただきたいことが一つあります。それは、日本金融業、証券業というのは大変収益も上げているし、その市場における株式の時価総額というものが大変大きな順位を占めておるということであります。  そこで、アメリカとちょっと比較をしてみますと、アメリカの全企業の中の時価総額の上位二十社というのを一九七九年と八八年で調べてみますと、全部言いませんが、上の方は、IBM、エクソン、GM、アムコ、シュランバーガー、モービル、GE、AT&T、こんな格好です。その次も、IBM、エクソン、GE、AT&T、GM、フィリップモリスというようなことでして、金融機関が時価総額で頭を出すのは、五十番目に初めてシティコープが頭を出すというのがアメリカの実情です。ところが日本の場合は、一九七九年十 二月には、まだ、一番トヨタ、二番日産、三番日石、四番東電、五番松下、六番新日鉄、七番三菱商事、日立が八番、その後に銀行がずらずらっと出てくるわけです。数で言いますと、銀行は九番、十番、十一番、十二番、十三番、十八番の六行、それから証券が一つ十六番目に入っている。一九八八年末になりますと日本は、銀行が一番、二番、四番、六番、七番、八番と入って、証券が十番目に顔を出す。信託銀行が十四番、十六番、十七番、十八番、十九番というふうな格好です。要するに、アメリカの産業会社に比べて日本では産業会社が大変しっかりやっているけれども、時価総額においては金融機関がずらっと上の方を占めている。  その結果、銀行も証券も含めた金融機関の給与が非常に高くなってきた、格差が出てきているわけです。産業会社金融機関との格差が出ておるものですから、テクノロジー関係の大学卒がどっと金融機関や証券へ行くという問題が起きているということでして、これは日経連の鈴木さんあたりも、適当でないのじゃないかと言っておられる。関係者に言うと、それほどは来ていませんと言われますけれども。  金融機関の大きいところはいずれも実は相当な収益を上げている。それがさらに収益を上げるような方向に金融制度を変えて、それで果たしていいんだろうかという大きな疑問が私はあるわけであります。  ですから、時間がありませんから余り申しません、どうせそのうちに一般質問等でありましょうから詳しい論議をいたしますけれども、少なくとも現在、銀行、証券関係は、先ほど角谷証券局長が答えましたように、五%の持ち株であっても関連会社を使ってやれば系列にできるわけです。この前新聞を見ると、東京都民銀行、これはある意味で地方銀行ですね、この都民銀行がやはり五%持ち株で新しい系列証券会社をつくったというのが報道されているわけであります。  独禁法上そういうふうに認められておるのに、なぜ一体一〇〇%持ち株の子会社銀行が証券についてつくらなければいかぬのか。一〇〇%持ち株の子会社と今ある子会社は一体どういう関係になるのか極めて不明確な問題。そしておまけに、競争原理、市場経済論ですから、この前橋本大蔵大臣から、ちょっと社会党が言うのはおかしいじゃないかと言われているのですけれども、それは別の話として、ともかくも競争論だけれども、ある特定のものが非常に大きな力を持って支配力を持つということは、独禁法の立場から厳に排除されなければならぬ。独禁法第一条で公正な競争というふうに書いてありますね。大臣のこの問題についてのお考えを承りたいと思います。
  65. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 どうもプロにお答えをするには私の方が基礎知識に欠けておりまして、大変申しわけありません。  ただ、今伺いながらふっと私の脳裏に浮かびますことは、ここしばらくの間、日本の黒字性悪論といいますか、そうした議論が横行いたします中に、日本の貯蓄率の高さというものが常に批判を浴びてまいりました。私は、必ずしも貯蓄性向の高いことが悪いことだと考えてはおりません。しかし、そうした国民性というものは、ある意味では今委員が述べられましたような、産業会社に比べ金融、証券といった分野の企業が我が国において大きな位置を占める一つの要因ではなかったろうか、そんな印象はまず持ちます。  その上で、制度が、独禁法上のルールで、先ほど公取委員長が述べられましたような形で銀行系証券と言われるものが既に存在をしている、そういう実態もそのとおりでありましょう。今、金融制度調査会も、また証取審もその垣根について議論をしておられるさなかであり、それについて個人的な見解を述べることは不適当だと考えておりますけれども、私は、両方の御審議の中において、当然そうした現実を踏まえた論議というものがなされ、その上で何らかの共通項が引き出されることを期待をいたしております。
  66. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、けさの新聞に非常に興味のあるものが報道されております。プロクシマイア前上院銀行委員長の「小口金利自由化慎重に 「米で大きな誤り」」というのが実は出ております。この前からグラス・スティーガル法の改正問題その他について主導権を持ってきたプロクシマイアさんですが、前回の選挙で引退をされました。そして今、日本に来ておられておっしゃっている中で、こういうふうに言っていられるわけです。   一、米国で預金金利の上限規制を撤廃したところ、貯蓄金融機関(S&L)の間で金利引き上げによる激しい預金獲得競争が起きた。S&Lは集めた預金を商業不動産や農地、ジャンク・ボンドで運用したため、その後、大量の焦げ付きが発生し、数百のS&Lが倒産した。   一、倒産したS&Lの預金預金保険でカバーされているが、保険基金が底をつき、税金が使われている。米国でも八〇年代までは、銀行倒産で税金が使われたことはない。小口預金金利の急速な自由化は納税者の利益につながらない。   一、預金保険の範囲(米国十万ドル、日本一千万円)を超える大口預金金利自由化すべきだ。しかし、S&L危機の経験を踏まえると、保険の範囲内の小口預金金利には上限があった方がいい。この上限を徐々に引き上げていくのが望ましい。   一、米国でも連邦準備理事会(FRB)が公定歩合を決めるし、金融・為替市場に介入して当局が金利を動かしている。預金金利の上限規制政府による金利操作の一つに過ぎない。米政府は他国のことに関心を持ち過ぎではないか。 こういう発言が出ております。私は、全く適正だと思うのですね。  それはどうしてかといいますと、ちょうど例のブラックマンデーの日に私はニューヨークにおりまして、そこで実は、日本がどうなるかということを米国の銀行の幹部から聞かれました。それで私は、日本は値幅制限というのがあって、一定以上下がってきたらそこでその日の取引は終わりということで、次は翌日、こういうふうになっている。だから、これによってあなたのようなクラッシュは起きない、その他いろいろ言いましたが、一番ポイントはそこなんですね。  株式手数料の話がさっきも出ておりましたけれども完全自由化というのは、大きいところは大したことないんですよ、中小のところに響いてくるわけですから、そのためにはやはりここで、プロクシマイアさんが言うように、かねてからよその国を見ながら段階的にあれを下げていく、あるいは金利を上げていくという格好が必要だというのが大体私の持論でありまして、各段階方式というのは、法律でも何でも段階方式でやっているわけでありますが、プロクシマイアさんのあれは非常に重要な問題ですから、日米構造協議で何でも自由化したらいいと向こうが言っているなら、これをひとつ逆手にとって、日本の国会においてこういう議論がある、プロクシマイアさんの意見に私は全く同感だと。  私も国会に出てこの十二月で三十年、大蔵委員会在籍二十五年でございますから、何もプロクシマイアさんに劣るわけではございませんので、私もプロクシマイアさんの意見に全く賛成なので、どうかひとつこういう論議が国会の中であったということをぜひ構造協議に反映していただきたいと思います。  終わります。
  67. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 宮地正介君。
  68. 宮地正介

    ○宮地委員 証券取引法改正に伴いまして若干の質問をしてまいりたいと思います。  今回の改正の柱は二つございまして、一つは五%ルールの新たなる導入、もう一つはTOBの改正、こういう大変大きな改正になっているわけでございます。  特に、この五%ルール改正等につきまして、経団連の資本対策委員会において横田会長が昨年の十月にこうしたメモを出されております。   「株式の買集め」の問題についてでございます。この問題につきましても、証券取引審議会 において審議が行われ、本年五月に報告書が取りまとめられ、 本年というのは、昨年、平成元年のことでございますが、  近く法律改正案が国会に提出されるとのことでございます。   これにより、いわゆる「五%ルール」が導入され、また、TOBについて改善が行われるとのことでございますが、私どもとしては、市場の公正性、透明性を一層高め、投資者保護をさらに徹底する観点から、制度導入を高く評価しているところでございます。立法化に当たっては、その実効が確保できる制度とされるよう、行政当局の御配意をお願い申し上げる次第であります。 経済界においてもこの改正については非常に賛意を示しております。しかし、この実効性について行政当局に今後大変期待をしているわけですね。  私たちも、今回の法改正、ずっと中を見てまいりますと、二十七条のところが相当改正になるわけですが、さて実効性という問題になると、いわゆる仕手戦の問題など、買い占め問題あるいは株価の操作の問題、こうした面について果たして現在の証券局あるいは日本証券業協会などの機能で実効性が期待できるのかなと若干危惧をせざるを得ないわけでございます。  まず、この点について大蔵大臣はどういうふうに所見を持っておるか、また、事務当局としてはどういうふうにこの実効性を考えておられるか、伺っておきたいと思います。
  69. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 具体的には証券局長から御答弁を申し上げたいと思いますが、先ほど、御質問に対し、証券局の機能の充実の状況については御報告を申し上げました。体制的にもそうした整備を一方で行いながら今回五%ルールを導入する、そして、株券等保有割合が五%を超えた場合にすぐディスクロージャーが行われることになりますことから、発行会社にとりまして従来と異なって例えば買い占めに対しての早期対応が可能になるといったことを考えますと、状況は随分しっかりしてくると私は思っております。  しかし、これは専門家からきちっとした御答弁をさせるべきだと思いますので、証券局長からの答弁をお許しいただきます。
  70. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 まず行政面の整備でございますが、先ほど大臣からお答えがありましたように、取引審査室というのを設けまして、これによりましてインサイダー取引とかこの五%ルールの問題とか、こういった問題に対応していきたいというふうに考えておりまして、本年におきましては、本省十名それから財務局において十名と合わせて二十名という大蔵省としてはかなり大幅な増員をしていただいたわけでございます。  それからもう一つ、五%ルール等について申し上げますと、一般に、買い集めを行う場合におきましては、名義を分散したりいろいろなグループでやったりということでいろいろ手口を分散するというケースが多いわけでございますけれども、そういったことは、第一義的には証券取引所におきますところの売買状況調査によって実はある程度把握が可能でございます。  それからもう一つは、買い占め者の目的というのは、通常はこれを買い占めることによって発行会社に対しましてその株を高値で肩がわりしてもらいたいというふうなこと、あるいは場合によっては経営権を取得するために要求をしてくる。そうなりますと、どこかの段階で名前をきちんと整理いたしまして、そういうことで高値肩がわりなり経営権の獲得のための要求を出してくるということにならざるを得ないわけでございますけれども、そういった段階で、事前に今のような報告書を出していないといたしますとこれは当然刑事罰則が科せられるということにならざるを得ないわけでございまして、そういった面からも制度の実効性が間接的に強制されるというふうになると考えているわけでございます。
  71. 宮地正介

    ○宮地委員 特に、いわゆるこの五%ルールの問題につきましては、昭和六十三年八月四日の衆議院予算委員会におきまして、当時我が党の矢野委員長が、リクルート問題に関連をいたしまして、アメリカのSEC、特に証券取引所法の第十三条のdに規定されている五%条項、これはやはり日本においても導入をすべきではないか、不公正な取引というものを是正するためには非常に参考になるんではないか。この第十三条dに規定されている五%条項というのは、これはもう皆さん御存じのとおり、総発行株式の五%以上の実質的な所有者となった者は、取得の日から十日以内に、名前(身分証明)、住所、資金の出どころ、買う目的、これを証券発行者あるいはSEC、取引所に報告をする義務がある、こういうものを参考にして日本においても導入をすべきではないか。この主張によって、今回諸外国の例を参考にして、また国際化の秩序の維持、透明化、こうした問題で一歩大蔵省が踏み込んだわけでございます。この点については私どもも多とするところでございます。  しかし、この導入によって法的な整備あるいは国際的な対応、こういうものが整ったにせよ、果たして日本において、実際に不公正取引、先ほど申し上げましたような株価の操縦とか、いわゆる仕手戦の問題とか、今まで過去にありました、短期で大口な株を買い占め、買い集めをして売り抜けていくとか、インサイダーの問題とか、こうした問題に対してどの程度効果が出てくるのかな。今まで特にこの証券取引法百二十五条の一項及び二項、いわゆる株の相場の操縦の禁止という規定が日本ではなかなか適用されなかった、そういうことの過去の実際の状況から見て、今回の改正がどの程度実効性があるのか、これがやはりこれから問われる問題だと思うのですね。  制度だけ法律的に整備はされたけれども、実際にはどうも日本は、やはり日本の国特有のいわゆる系列内の株の持ち合いとか、そうした面を考えるとなかなか厳しいのではないか、こういう点を我々は一番危惧をしているわけですが、先ほど証券局長は、証券局の中に証取の審査室を設置して十名増員をした、こういうふうに胸を張っておりますが、恐らく実際はなかなかその反面苦しいところもあるんじゃないかな。先ほどのお話を伺っていますと、行政当局として今後司法当局と連携をとりながら我が国においては対応していきたい、こういう答弁がされておりますが、果たしてこれだけでうまくいくのかな、また、日米構造協議などのそうした審議過程を見ておりますと、特にアメリカなどは今後の実効性を見てまたクレームをつけてくるんではないのかな、こんな感じがするわけですが、この点について率直な御意見を伺いたいと思います。
  72. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 委員指摘のように、五%ルールにつきましては、たしか一昨年の予算委員会におきまして当時の公明党の矢野委員長からこれを創設をすべきだという御指摘がございまして、宮澤大蔵大臣等がこれを前向きに検討するということを申し上げたわけでございまして、それが今日の法案になっているということでございます。昨年の五月に証取審の答申を得たわけでございますが、国会の会期等もございまして今国会に提案をさせていただいたわけでございます。  そこで、こういったことに実効性のある措置をとるべきではないかといったことにつきましては、先ほどから大臣も含めましてるる申し上げているわけでございますけれども、特にこの五%ルールあるいはTOBというのは、先ほどから申しましたように、何がしか高値肩がわりとかあるいは具体的な経営権獲得の要求という形で表に最終的に出てくるということによって、初めてその株を買った人の目的が達成されるわけでございます。したがって、最終的には表に出てくることによりましてそういった要求を貫徹したいということでございますから、その要求を貫徹しようとして表に出てきた段階で、果たして適正な届け出をしていたかどうかといったことが当然問題になるわけでございますので、私どもといたしましては他の問題よりはこれはかなり把握しやすい問題であるというふうに考えているわけでございます。  そういったことを含めまして委員がいろいろとさらに証券局の中のそういった問題に対する監視体制を強化しろということは、委員の方の率直な私どもに対する友情といいますか御支援であるというふうに受けとめまして、さらに私どももそのための努力を一層してまいらなければならないというふうに考えているわけでございます。
  73. 宮地正介

    ○宮地委員 特にアメリカのSEC、証券取引委員会の機能は、行政権の機能もありますが、司法権の機能も非常にあるわけですね。彼らのメンバーも見てみますと、現在二千人近くの人員もおるようでございますし、中には弁護士とか、なかなか専門家が相当いるわけですね。  ですから、例えば証券局の中の証券取引審査室などにおいても今後そうした専門家をやはり配置していく、もちろん行政官の有能な方が配置されていると思いますが、弁護士の資格を持っている者とか、あるいは公認会計士とか、そういう専門的な方々、スペシャリストをそうしたところに配置をして、より機能が強化されるように、人員の量的拡充ももちろん大事だと思いますが、質的なそうした中身の拡充、これも非常に大事ではないか、この点について今後検討していく用意があるかどうか、ここら辺をお伺いしておきたいと思います。
  74. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 御指摘のとおりだと思います。いきなり公認会計士あるいは司法試験を通った人間というものを配置できるかどうか、これは中の人事政策の問題でございますが、御趣旨を体しましていろいろ努力してまいりたいというふうに考えております。特に、この場で申し上げていいことかどうかわかりませんけれども、先ほどから、捜査当局との連携とかいろいろな問題がございました。そういったことを含めまして、と同時に、この審査室等の体制を充実強化していく必要があるといったような観点から、私ども、場合によりましてはその捜査当局の中から例えば人を出していただいてそういったことについていろいろな体制をとっていくということの問題を含めまして、そういった人の派遣をお願いするといったことも今検討しているところでございます。
  75. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ量的な面、また質的なそういう専門的な面からも、よりこうした法的整備に対応できるそうした機能、そういう面も拡充をしていただきたい、こう思うのです。  それから、我が国の場合は非常に企業の系列化といいますか、昔はよくコンツェルンということで、三井とか三菱とか安田とか第一とか、こう言われてまいりました。そうした系列化というものが日本の国でまた最近非常に強くなってまいりました。そういう中で、やはりこの系列内の株の持ち合い、これはある意味では非常に強固な形になっているわけです。株だけでなくて、最近は資本の面においてもあるいは人事、人の面においても系列化が非常に進んでおるわけです。ですから、諸外国からいわゆるM&A、企業の買収とか合併とかいう面で株を購入しようとして、アメリカなどから企業支配権の獲得で日本に来られても、恐らくこれはなかなか難しいであろう、そういう面では日本特有の企業系列化が進んでいるわけですね。この辺が恐らくアメリカあたりから見ると構造的に指摘をしてくるところなのかな。  そういう点において、やはりこれがいい面で、今までは企業活動の面で日本の場合は割と経済の再建また経済の発展、こういうものにプラスに働いてきた面は非常に大きかったと思います。しかし一方では、これもある意味ではインサイダー取引に非常に利用されがちなそうした体質というものも持っているわけですね。この辺をどう改革していくかということも、今回の法整備と同時に大事な我が国の置かれたポイントではないか。こういう点について、証券局長、どういうふうに理解をし、今後こうした問題の改革に取り組んでいかれようとされているのか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  76. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 日本におきましてかなりの株式持ち合いという実態がありまして、それが企業買収を困難にしているのではないかという御指摘があることは事実でございます。しかしながら、株をだれがどのような形で持つかということは、自由な証券取引を通じましてその間の投資家保護を図っていこうとする証券取引法の目的からいいますと、そういった問題につきましてこれを直接規制するということは、制度的にもなかなか困難でございますし、現にアメリカの証取法におきましてもそういったことは行われていないわけでございます。  そういった意味で、その株の持ち合いそのものを証取法がどうこうというわけにはまいらぬわけでございますけれども、ただ、私どもといたしましては、我が国の企業が外国におきまして活発にそういったM&Aを行っているという一方、我が国公開買い付け制度につきましてはアメリカとかイギリスに比べてより制限的な制度になっているといったことから、これが日本において企業買収をしにくくしている一つの原因ではないかというふうな批判にはこたえる必要があるということで、今回公開買い付け制度についての改正を行わせていただいたわけでございます。しかし、直接株式自身を持ち合いするのがいけないとかあるいは買収するのがいいか悪いかといったことにつきまして、証券取引法の世界というのは中立的な立場にあるわけでございます。  ただ、我が国におきましても、この企業買収につきましては、これを改正したからといいまして直ちに増加するというふうには思いませんけれども、最近におきましては産業構造が転換しているとか企業のリストラクチャリングというのでしょうか、企業買収がそういったことで着実に増加していることも事実でございますので、将来的には我が国におきましてもこういった公開買い付け制度というものが次第に一つの有用な手段として定着するのではないかと考えているわけでございます。  直接的なお答えにならないかもしれませんけれども、私ども立場から申し上げますとそういうことでございます。
  77. 宮地正介

    ○宮地委員 そういう点はアメリカのSECなんかは、基本的理念といいますか考え方がもうしっかりしているのですね。御存じだと思いますが、ディスクロージャーが適切かつ正確であれば、ある意味ではあとは一切関与しない、この一線がぴしっとこのSECの場合はしているわけですね。ですから、アメリカなどではこのディスクロージャーの徹底、ここに力を入れている。店頭登録も、業績についての基準を設けていない、売り上げがゼロでも赤字であっても構わない。海のものとも山のものともわからない企業に投資して膨大な損失をこうむっても、ディスクロージャーが適切、適正である限り責任は投資家にある。アメリカのいわゆる投資家保護はこのディスクロージャーにもう尽きているわけですね。そのかわり、そのディスクロージャーに違反をしたり故意に作為をしたらもう徹底して罰則は厳しいですよ。日本の比ではございませんよ。やはりこういう一本、筋がSECの場合は通っているのですね。  この辺は、今証券局長も経済というものは自由市場を尊重していかなければならない、私も同感です。そういう点で、やはりもっとこの辺のディスクロージャーというものを重視した、そうした基本的な哲学に沿ってこれからの証券行政というものを進めていくべきではないか、私はこう考えますが、この点についていかがでしょう。
  78. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 委員のお考えに私は基本的に同感でございます。  委員指摘のように、アメリカ等におきましては、投資家に対して十分適正な情報を提供する、その適正な情報を提供をした上において投資家が自己責任に基づいて証券取引を行うということが基本でございます。私どもも基本的にはそういう方向で行政を進めていくべきものだと考えておりますし、今回の五%ルールでありますとかTOB制度につきましても、同じような趣旨でこれを改正しているわけでございます。  それから、企業系列にかかわるディスクロー ジャーでございますが、この問題につきましては、我が国の有価証券報告書でも、関係会社に対する記述でございますとか、これは一つ一つごらんになりますと二、三十ページにわたりましてかなり詳しいディスクロージャーをいたしております。こういった問題につきましても改善すべき点があれば今後改善を検討してまいる必要があろうかと考えているわけでございます。
  79. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひその点はよろしくお願いしたいと思います。  そこで、今回の法律の新旧対照条文をずっと私も見させていただきまして、今回は、先ほど申し上げましたように第二章の二、第二章の三、いわゆる公開買い付けに関する開示と株券等大量保有状況に関する開示、この二十七条が強化拡充といいますか抜本的改正をされております。  私もこう見ておりまして、政省令に任されている、ゆだねられているところが非常に多いのですね。これはこれから皆さんにいろいろ作業をしていただくわけですが、きょうこの法律が衆議院を通過して、恐らくもうこの法案は通ってまいると思いますが、政省令が非常に多いということはそれだけ大蔵省に責任がゆだねられているということですから、その点についてはぜひ今申し上げたような哲学とか基本的な投資家保護、こういうものをしっかりして対応していただきたい。  そこで、第八章「雑則」の第百八十四条の二、外国証券法令との関係、この三項の中に外務大臣大蔵大臣との協議事項というものも入ってくるわけですね。この点について、まず事務当局としてどういうような運用をしていくのか、ここをちょっと詳しく御説明いただければと思います。
  80. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 今の第百八十四条の二の第三項でございますが、その件に関しましては、これは国からの調査協力の要請があった場合に、それが相手方の外国法令に基づく一種の不利益処分に該当する場合には、これは要請に応ずるに当たりして外務大臣協議しなければならないという定を置いているわけでございます。  これは、一般的に行政処分の場合には利益処分と不利益処分がございますが、不利益処分でございました場合には、とかく日本の国民の権利義務を侵害するようなことになりまして、場合によっては外交問題になる可能性もないわけではないといったようなことから、こういった外交について領事権を持っておりますところの外務大臣にあらかじめ協議してそれの取り扱いを決めよう、こういう趣旨でございますが、外務省と話し合いを進めている段階におきましては、これはかなり特定のケースに限定いたしまして、かなりそういったことの蓋然性が高いケース、そういったものについては外務大臣協議いたしますが、その他のケースにつきましてはかなり包括的に大蔵大臣に委任していただくという形で、今外務省とどういう形のものをつくれるか、今後法案が作成された段階協議していきたいというふうに考えているわけでございます。
  81. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひそうした面につきましてもよろしくお願いをしてまいりたい。  この問題の最後に大蔵大臣に、当初御質問申し上げましたように、外国から見ますとまだまだ日本の国はインサイダーの天国かな、こういう話もちらちら今までも聞こえてくるわけですね。そして、今回の海外に対する投資、特に日本企業の海外における企業の買収あるいは合併、こういうような問題に非常に影響が出てまいりまして、今度は日本外国の、特にアメリカなどの企業が進出してくる場合にはなかなか難しい。そういう中で今回法整備をして五%ルールの導入とかTOBの改正をした。法整備はでき上がった。しかし、現実的には日本の企業はアメリカなどに行って優良企業の買収をどんどんやっている、また、資本もどんどん投下をしてマンハッタンのビルなんかどんどん買収をしている。ところが、アメリカの企業が日本に入ってくると、日本の企業の支配権の獲得とか買収とかいう面においての経済の自由化は認められて法も整備されているけれども、なかなか参入しにくい、こういうものが構造的な問題として日米の一つの大きな経済摩擦に発展をしていく。ここにジレンマというのがやはりアメリカなどにあると思うのですね。  そういう点で、今回証券取引法をこうして大きく改正をして、一つルール、法の整備をされたことは、私はこれを非常に多とし敬意を表したいと思う。ただ、現実のこのジレンマをアメリカにどう理解をさせていくか。また、これからのアメリカなど海外への日本のそうした進出問題についても反省をしなくてはならない点はないのか。特に、ジャパン・マネーなどがどんどんアメリカに流れて、そして企業の買収あるいは不動産の買収、こういうもので非常にひんしゅくを買っておる。この点は、これから我々政治家がその潤滑油になっていく大事な責任があるのかな、こういうふうに考えているわけです。  こういう点について、大蔵大臣政府の重要閣僚として、この法整備を機にどういうふうに改善、改革をしていかれようと考えておられるか、所見を伺っておきたいと思います。
  82. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず、今の委員の御質問に対して私から申し上げたいことは、確かに日本の企業の海外投資、また海外における不動産あるいは企業の取得といったケースは非常にふえております。しかし、それを見ました場合に一つの特色がありますのは、当事者間の取引においては敵対的買収と言われるケースをほとんど見ないということであります。著名な映画会社が買収をされ、アメリカの世論が非常に硬化いたしましたときにも、あるいは著名なビルディングの買収が行われましたときにも、当事者同士においては極めて友好裏にその株式の取得が行われた。しかし、一般の国民からは、いわばアメリカ経済の一つの象徴ということで、その買収についていろいろな世論が出た。しかし、その買収に応じた当事者においては友好裏な取引であったということで、その当事者が日本に見えてもそうした談話を発表してこられた。私は日本の企業買収というものは、今までについてはその意味では非常に友好裏に行われているものが大半であって、敵対的買収と言われるものはほとんどないのではないか、一つそういう基本的な気持ちがございます。  その上で、むしろ問題は、それぞれの企業が今度は現地において地域社会に市民として溶け込む努力をしていないという部分から、実は日本の海外投資に対する批判が非常に強く出ているという現実は、私は踏まえなければならないと考えております。  ただ、たまたまロックフェラー財閥の当主が日本に見えましたときに、我々も日本の企業を買収したい、しかし、現実になかなかこれがスムーズにいかない、これはまさに系列というものが妨害をしている、そうしたことを私にも言われました。そしてまた、その情報が公開されていないために、我々が買収しようと思ってもなかなかその情報を得ることが困難である、あるいは、公開買い付けというものについてその仕組みが機能しない実例がある、こうした御批判を多々受けたわけであります。たまたま山水電気の買収の直後でありましたから、それを例にしながら全く企業買収が不可能ではないという答えをいたしましたけれども、聞きながら、その指摘について私自身が内心ではそうだろうなと思うところが多々ございました。  今回、証取法の改正お願いをし、その中におきまして今委員から御指摘を受けましたような諸点の改善を加えていくわけでありまして、法の仕組みとしてはまさに環境は整うわけであります。これが実効あらしめるように、私どもとしても行政立場からも努力は続けてまいりたい、そのように考えております。
  83. 宮地正介

    ○宮地委員 時間も参ったようですから、最後に証券局長、今証券取引審議会で銀行、証券の相互参入問題がいろいろ議論されているようですが、ここ二、三日の報道を見ておりますと非常ににぎやかになってまいりました。まだ正式な答申も出ていませんから、恐らくきょうここでの御発言にも限界があろうかと思いますが、この問題につい てどの程度今進んでおられるのか、御報告いただきたいと思います。
  84. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 証券取引審議会の進捗状況でございますが、具体的には証券取引審議会の基本問題研究会というところで昨年の九月から我が国資本市場のあり方をめぐりまして幅広く議論を行っておりまして、六月中には何がしかの中間的な取りまとめを行いたいということで、実は本日の午後から報告書案の審議等に入らしていただく、こういう段取りになっているわけでございます。  ただ、この問題につきましては、今申しましたように、我が国の資本市場を全体として今後どのように国際的な市場として構築していくかということを問題意識としているわけでございまして、単に銀行と証券の分離ということだけに焦点を合わしてやっているわけではございません。そういった意味では、我が国の資本市場のあり方につきまして、効率性でございますとか国際性でございますとか、健全性あるいは安定性といったいろいろな基準を設定いたしまして、そういった面からの問題がないかといったことをいろいろ議論しておるわけでございます。  その中での議論といたしましては、一つは、適正かつ十分な競争が行われるような市場とするために、既に実情に合わなくなった既存の諸制度、諸慣行といったものの見直しあるいは撤廃を行うといったことが必要であるということ。第二に、現在の証券取引法が制定後既に四十年経ているわけでございますけれども、こういった証券取引法のあり方につきましても、最近の金融情勢のいろいろな変化に応じましていろいろ実情に合わなくなってきている面がある、あるいは将来に対応するためにはさらにその整備が必要になってきているといったことから、これについても包括的あるいは統一的な見直しを行う必要があるんじゃないか、こういったことを一つの基本的考え方としてやっておりまして、その中で今御指摘銀行の証券の業務分野の問題といったこともいろいろ議論されているわけでございます。  こういった問題につきましては、まだこれから報告書を作成する段階でございますので、現段階で確定的なことを申し上げられませんし、何がしか今の段階で特定の結論に集約化されているわけではございませんけれども、今後審議会の審議をいたしまして、私どもとしては適正、公平な結論が得られることを期待しているわけでございます。
  85. 宮地正介

    ○宮地委員 終わります。
  86. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 正森成二君。
  87. 正森成二

    ○正森委員 今度の証券取引法改正二つの点が重点だという各委員からのお話がございましたが、私は極めて時間が限られておりますので、TOB関係についてのみ若干聞かせていただきたいと思います。  御承知のように、TOBというのはイギリスで最初に考えられて、その後アメリカに導入されて、一九六八年証取法にテンダーオファーに関する規定が盛り込まれたのがアメリカでの始まりだというように言われております。  我が国でも、一九七一年の証取法改正公開買い付け制度が規定されましたが、現在までに実際に行われたのは、物の本によりますと、一九七二年のアメリカのベンディックスによる自動車機器(株)の買い付け、一九七五年の沖縄電力による沖縄配電と中央配電に対する買い付け、一九九〇年のオリックスによるオリックス市岡に対する買い付けという三つだけで、それ以外にはないようであります。私の今のこの指摘が正しいかどうか、もしそうだとすれば、なぜ日本ではそういうぐあいに少ないのか、お答え願います。
  88. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 正森委員指摘のとおり、昭和四十六年にこの制度が導入されてから今まで、この制度によりまして公開買い付けが行われたものは三件でございます。いずれも友好的買い付けでございます。  こういったことで、この制度が今まで使われなかった理由でございますけれども、これは制度的な理由というよりは、むしろ、一般的に申しまして、我が国自身の社会的な風土からいいまして、企業買収、特に敵対的な企業買収というのは余り好まれないといったこともございますし、また、企業買収が行われる場合におきましても、あえて市場外において不特定多数のものを相手にする公開買い付けによらなくても、市場での取引とかあるいは相対取引とか、そういったことで場合によっては目的は十分達成できたといったことが理由になっているものであるというふうに考えているわけでございます。
  89. 正森成二

    ○正森委員 今証券局長の答弁があったのですけれども、それはいささか物事を形式的に美化し過ぎているんじゃないですか。もっといろいろな要因があるのです。  例えば、一九七〇年十二月三日に参議院の商工委員会で、金融等の自由化に絡んで質問がございました。ここに議事録を持ってきておりますが、読めば非常に長くなりますので要点だけを申しますと、当時の宮澤通産大臣は、外資提携では日本側の経営の自主性が守られることが最も重要であり、外資による経営乗っ取り防止策としては、日本側株主で外資に有効に対抗できるだけの株を持った安定勢力を求める必要がある、この安定株主工作は、持ち株会社制度によらず、関係金融機関などの協力で実施可能と思うというように、つまり外資を自由化しても、それを外国に、TOBによるか何によるかわかりませんけれども、乗っ取られないようにしなきゃならぬ、それには安定株主勢力を確保することが大切だ、だから金融会社関係事業会社と株の持ち合いをする、そういうことを努力しなきゃならぬということを、通産大臣が国会で堂々と言っているじゃないですか。  だから、この安定株主工作があるから、外国が資本を買おうと思っても、過半数以上がっちりと、関係の系列と言ったらぐあい悪いですけれども金融機関等お互いに関係のある企業で相互に持ち合っているから、浮動株が五〇%以上出るということは日本では主な企業ではほとんどあり得ないという状況があるから、これはTOBなどが行われないということになるのではないのですか。
  90. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 社会的風土という中に含めて申し上げたつもりでございますが、特に敵対的買収というものにつきましては、御指摘のように安定株主という存在もございまして、必要な株式を買い集めることがなかなか難しいという問題もございますし、また、仮にこれによって企業買収が成功いたしましても、例えば会社の従業員との間の融和関係が非常に難しくなるとか、そういったふうなこと全体を含めて社会的風土という意味で申し上げたつもりでございます。
  91. 正森成二

    ○正森委員 私は、アメリカで横行しているTOBが頭からいいと言っているのじゃないのですね。特に、LBOとかいろいろ好ましからぬ風潮が起こりまして、これがアメリカ経済の空洞化を招いておったり、あるいは近視眼的な経営方法を誘発しているというような危険がございますから、アメリカのTOBあるいはそういう合併、買収が全部いいと言っているわけではありません。しかし、それなら日本の現在の証券業界あるいは資本主義制度、私が資本主義制度などを言うのはちょっとおかしいかもしれませんが、考えますと、これは必ずしも健全でなくて、資本主義制度の将来のために憂慮すべき事態が起こっているのですね。  それはどういう点かというと、株式会社というのは本来個人が金を出し合って制度をつくって運営するということだったのだけれども、その株が大部分株式会社によって持たれて、個人の比率というのがどんどん下がっておりますね。私の手元の資料では、八八年は個人はわずか二二・四%のはずであります。局長、答えてください。
  92. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 八八年のベースで、株主ベースで二二・四%、それから金額ベースで一九・九%でございます。
  93. 正森成二

    ○正森委員 今お答えになりましたように、株主で二二・四%、それから金額でいうとそれよりずっと低いのですね。それでは、それ以外のもの はどこが持っているかというと、同じ資料では、金融機関が四二・五%を持っております。事業法人等が二四・九%を持っております。つまり、これを合わせると三分の二をはるかに超えるわけですね。それが結局安定株主としてそれぞれはめ込まれているという株主の持ち合い制度になっているわけであります。したがって浮動株が非常に少なくて、これらの金融機関事業法人の大部分は売りませんから、わずかの株の移動によって需給関係が逼迫して株価が上がるというのが日本の株式の構造なんですね。ですから、アメリカに比べても、PERというのですか、プライス・アーニングズ・レシオというのですが、それが異常に高いというところまで株価が上がってしまうということになるわけです。  それをまた助長しているのが、配当性向が非常に低いということですね。今、日本では、一九八九年における配当性向は大体二八・三〇%、私の手元にある「商事法務」の昨年の十月五日付の中に出てくる資料ですが、間違いありませんか。
  94. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 私の手元にあります資料、全国証券取引協議会が全国証券取引所の上場企業を対象といたしました昭和六十三年度配当状況調査によりますと、配当性向は二八・一三%でございます。
  95. 正森成二

    ○正森委員 私の手元に持っております二八・三%というのと合っております。  ちなみに、証券局長、全部お答えいただきませんけれども外国と比較するとどういうことになるかといえば、主な国ですが、例えば西ドイツの配当性向は五四・〇二です。イギリスは四九・九五、アメリカ合衆国が四三・二九です。それ以外でも、例えばオーストリアは六九・〇九、ニュージーランド六七・二〇、スペイン六三・九六で、日本は断然低いのですね。日本と同じぐらいというのはデンマークぐらいしかないわけであります。  つまりこれはどういうことかといいますと、株式会社がもうけても本来の主人である株主には配当しない、全部留保するということで、自分の中の資産をよくする、資産がよくなれば当然のこととして株価が上がります。その株価を利用して時価発行だとかあるいはCBとかワラント債だとかエクイティーファイナンスと言われるものをやる。そうするともう利息は本当に低くて、一%にも満たないのです。限りなくゼロに近い価格で資金を大量に確保することができるということになっているのですね。ですから、株主は配当でもらわなくても株の値段が上がるからそれでもうければいいじゃないかという理屈のようですけれども、結局そうだとしましても、その大量の株は株主に対する割り当てでなしに時価発行等になるわけですから、そういう格好で、株主は持っていてもしようがないからやはりどんどん売っていく、ますます個人株主の比率は下がっていく、安定株主がふえるという構造になっていくのです。  大蔵大臣、この状況が続けば、識者は言っておりますが、株主なき株式会社、まともな個人の株主のいない株式会社、株式会社の相互持ち合い、すなわち株式会社の死滅というような事態になるのではないかと言われているのですね。これは健全な資本主義としては、私から言うのもおかしいが、非常な大問題なんですね。私は、繰り返して言いますが、アメリカ構造協議がいいと言っているのじゃないのですよ。アメリカは今TOBで逆に経済が衰退しているのですからね。しかし、別の意味の本当の株主を基本に考える立場からすれば、資本主義として考えるべき点があるんじゃないかというように思うのです。  時間がもう来ましたので、採決があるようですから終わらせていただきますが、大蔵大臣、もし何か御感想がございましたらお答えいただきます。
  96. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、今委員が組み立てられましたような論議が成立しないとは申しません。しかし同時に、その場合の収益というものは企業内に蓄積をされる、言いかえれば資産価値の上昇という形で株価に反映されていくんだということも申し上げられると思います。  この前私は、堀議員を自民党にスカウトいたそうとして失敗をいたしましたが、今正森議員の資本主義経済についての御見識を聞きまして、私よりも自由民主党の中に必要な人材ではないか、率直にそのような印象を持ちました。
  97. 正森成二

    ○正森委員 申しわけございませんが、あと一点だけ聞かせていただきます。  局長、この新旧対照表を見ますと、非常に興味があるのは、二十七条の十三というのが新設されましたね。それの第四項を見てください。第四項の一号を見ますと、一たん公開買い付けを開始してからそれを中止できる規定として、「応募株券等の総数が買付予定の株券等の数に満たないときは、応募株券等の全部の買付け等をしないこと。」こういうことをあらかじめ公告の中でやっておけば、例えば一千万株買いたいと言っても九百万株しか買えなければやめることができるということで、これは前の証取法の規定にはなかったことで、アメリカで非常に活用しているやり方じゃないですか。だから、これをやると、買い付けする者はオファーをして、それで全部買えれば目的を達するけれども、達しない場合は、それをどこが引き取ってくれるかというのでいろいろまた余分なことをやらなければいけないけれども、達しなければ、一から始めてもう全部買わないでいいということになれば、安心してテンダーオファーができるあるいはTOBができるということで、ますます買収とか投機というものが盛んになるのじゃないですか。新設規定でしょう、違いますか。
  98. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 今のは、新設規定というよりは、従来政令に書いたものを法律に格上げしたものでございまして、これは先ほどのたしか宮地委員ですかから御質問がありましたように、なるたけ一覧性を持った法律にした方がいいということで、従来政令であったものを法律に直したものでございます。
  99. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  100. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  証券取引法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  101. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  102. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、平沼赳夫君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党及び進歩民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。早川勝君。
  103. 早川勝

    ○早川委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨説明といたします。     証券取引法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。  一 今後とも、企業会計、株券等大量保有状況取引実態等有価証券取引を行うに際して重要な情報の公開制度の拡充を図ること。  一 内部者取引等有価証券に係る不正取引規制に当たっては、行政当局、証券取引所等関係者において具体的な規制内容について周知、明確化させることを含め未然防止体制の整備に万全を期するとともに、不正取引の監視体制の充実に努めること。なお、今後の取引状況も踏まえ、罰則のあり方も含めて規制のあり方について常に検討を加えること。 以上であります。  何とぞ御賛成を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  104. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  105. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。橋本大蔵大臣
  106. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。     ─────────────
  107. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────   〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  109. 衛藤征士郎

    衛藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時四十九分散会