○正森
委員 そういうことは我々も知っておりますけれ
ども、同じ通産省の中の統計解析課などが苦労して学問的に調べておることを、あなた方は省内の風通しをもっとよくして、そして参考にした上で政策を立てないと、せっかく国際産業連関表なんかをつくっても宝の持ちぐされになるということを私は言おうとしておるわけなんだ。今あなたが言うたことは、そういう点とは関係なくて、平たく言えば、統計解析課は統計解析課、我々は我々でそういう学問とは関係なしにやりますという答弁だ。それでは本当に
国民の利益を守ることはできませんよということを
指摘しておきたいと思います。
そこで、ここに去年十一月二十八日付の日本経済
新聞があります。これは「日米摩擦の処方せん」ということで載せられた記事ですが、その中でマサチューセッツ工科大学教授のラディガー・ドーンブッシュという人が論文を書いておるのです。御参考になるかと思いますのでその要点だけを申し上げますと、こう言っておるのです。
構造協議で米側が提起している問題は日本の流通機構、排他的商慣行、
土地問題、独占禁止法の
運用、貯蓄・投資である。日本側は米国の財政赤字、短期的な
経営、教育・訓練と生産性をあげている。
日本が提起した問題には米国の赤字を現実に削減させる可能性はあるが、米側があげている問題はとっかかりにもならない。
いいですか。これは正森成二が言っておるのではないのです。アメリカの大学教授がそう言っておるのです。そして、その理由としてこう言っておるのです。
米側の交渉担当者は二国間ないしは全体の貿易均衡といった観点で問題をとらえるという決定的な過ちを犯している。
こう言って、
財政赤字と低貯蓄率が続く限り、貿易赤字には外国の貿易制限ではなく、米国自身のマクロ経済の欠陥が色濃く影を落とす。
こう
指摘いたしまして、ここまでは
大蔵大臣も異論がないところだと思いますが、アメリカのゲッパート民主党下院議員の名前を挙げて、
ゲッパート民主党下院議員が主張する保護貿易主義でも二国間不均衡を
中心に据えているが、これもまったく遺憾なことである。二国間均衡はヒトラー・ドイツの一九三〇年代に始まる概念である。その後、計画経済に用いられ、しばらくの間、東側ブロックのコメコン(共産圏経済相互援助
会議)の原則であった。また大戦直後、マーシャルプランと欧州決済同盟が多国間の枠組みに戻る前の欧州でも用いられた。
二国間均衡は国際交易の仕組みとしてはあまりに原始的であり、
「原始的であり」と言っておるのですね。プリミティブ、原始的ですね。
物々交換とほとんど同じである。こうした焦点の当て方には何ら擁護する余地はない。
いいですか。これはアメリカ人の大学教授が言っ
ているのですよ。そう言った上で、こういうぐあいに言っているのです。
具体的に、日本が明日、米国からの輸入を五百億ドル増やすと決定したとし
よう。これは米国の製品・サービス需要の一%増にあたる。若干の乗数
効果もいれると、実質需要の増加で失業率は一%低下する。
しかも、多くの産業では需要増に
対応できるだけの余剰能力がなく、その結果として価格が直ちに上昇する。インフレとそれに
対応した米連邦準備
理事会(FRB)の引き締めによって、金利は上昇し、投資を減退させ、さらにドル高をもたらす。それでもなお貿易が改善するとは期待できない。
米国の貿易収支には、とりわけ国内の貯蓄・投資が大きくかかわっていることこそ、ポイントなのである。
こう言って、最後の結語部分でこう言っているのです。
単純化の危険をおかしていえば、貿易収支が改善するのは、海外市場開放の純
効果が米国貯蓄の対投資比率を引き上げるか、財政赤字が改善するかのいずれかの場合に限られる。
国民所得の恒等式(純輸出=貯蓄マイナス投資)がこの点を理解する助けとなる。
日本は投資する以上に貯蓄し、その結果として対外収支は黒字である。米国では貯蓄が低いばかりでなく、投資をも下回っており、対外収支はマイナスである。米国の赤字は民間貯蓄の低下と膨大な構造的財政赤字を反映している。
この米国の赤字というのは、貿易赤字という
意味ですね。これはアメリカの教授の言っていることですけれ
ども、まさに正論なのです。
だから関税を、ただでさえ引き下げているのにアメリカやECのさらに二分の一以下に下げる、そして関税ゼロのものをたくさん設けて、事もあろうに、それについて輸入促進
税制を
認めるという
ようなことでは、与党の先生も聞いておいていただきたいのですが、本当の貿易摩擦には何ら役立たない。しかも、それだけでなしに、これは後で申し上げますが、輸出
企業にさらなる政策減税への特典を与えるだけで逆に輸出ドライブを起こすおそれすらある。これは
大蔵省が六カ月前には言っていたことなのですよ。どういうわけで変説なさったのか私にはわかりませんけれ
ども、そういう点からいいますと、私は、皆さん方がおとりになっておられる政策には決して賛意を表することはできないという
ように思います。
それと同じことは、同じ
ようにまたアメリカが言っているのです。御存じでしょう。アメリカではナウ・ナウイズムという言葉があるのです。ともかく当面の
経営がよかったらいいというから、
企業の買収やら合併やらMアンドAばかりに
集中して、技術力を鍛えて生産性を上げるという
ようなことをやらないのです。それがアメリカでも非常に批判されております。
これは何も石原慎太郎氏のことを言うわけじゃありませんが、「メード・イン・アメリカ」という本が出ているのです。ここにその要約を持ってまいりました。そこでもこう言っているのです。
米国経済を活性化するには、技術力を蓄積し、モノづくりにおいて競争力を回復させることが何よりも必要である。この競争力
強化の足を引っ張っているのが、
企業をマネーゲームの
対象としてしか考えなくなった最近の社会的風潮だと、リポートは手厳しく批判している。
これは東海大学の唐津さんという教授が、今言いました「メード・イン・アメリカ」などをお読みになって、日経
新聞で言っておられることなのです。ですから、これは日本で言っているだけでなく、いわんや日本共産党が言っているだけでなくて、アメリカの識者が、アメリカのまじめな大学教授が、あるいは「メード・イン・アメリカ」などは非常によく
調査をしてやったのですからね、そういうところが言っておられるのに、それに対して
政府は、もっと正論でアメリカと真っ向からやり合わなければならないのに、それを十分にやらないで、通産省が
指導性を持ったのか、
大蔵省が屈服したのかよくわからないけれ
ども、関税をむやみやたらと引き下げたり、輸入促進
税制というかつて世界に例のない
ような
税制をつくり上げるという
ようなことは、我々としては賛成するわけにはまいらないということを申し上げたいのです。
演説が長くなりますが、五月二十七日の毎日
新聞の社説で、こう言っているのですよ。
EC(欧州共同体)は、すでに四十二項目にのぼる米国の不公正貿易慣行をリストアップしている。また、ガットのパネル(紛争処理小
委員会)は、このほど米国の砂糖の輸入制限をガット規約違反としてクロの裁定を下し、六月の
理事会にかける予定だ。
さらに、伝えられるところでは、二十三日に行われた米経済政策閣僚
会議でも、この問題が取り上げられ、ブッシュ大統領自身「これでは米国にもスーパー三〇一条を適用しなければならない」と冗談を飛ばさざるを得なかったほどだったという。
ブッシュ大統領が、
自分の国がスーパー三〇一条を適用されなければいかぬくらい不公正な貿易慣行があると言って、
認めているのです。
もともと、スーパー三〇一条は、米国は正しく、他の国は間違っているとの前提でつくられたといってよい。果たして、この前提が正しいのか。
そして、「ニューヨーク・タイムズ紙が
指摘している」と言って、「ごう慢かつ無知の認識」だ、こう言っているのですよ。こういう
状況のもとで、一方的な譲歩という
ようなことは非常に問題だ。
そこで、そろそろ時間が参りますから、橋本
大蔵大臣がいいことを言っておられるので、御紹介をしたいと思います。これは九月五日の日経の夕刊であります。その中で、松永通産相が日米構造協議についてアメリカに
協力する的な発言をされたときに、敢然と手を挙げられたのかどうか、そこは見ておりませんからわかりませんが、橋本
大蔵大臣が「日本の
国民感覚から受け入れられるものなら耳を傾けるが、米国の命令に従う
会議ではない」と主張、これに対して高原企画庁長官、さっきも名前が出ましたが、「「日米の貿易不均衡是正は米国財政赤字などマクロ要因の改善の方が大きい」と語るなど、関係閣僚の間で構造協議のとらえ方や
対応に食い違いが出た。」、日経にはこう書いているのです。私は、これは本当だろうと思いますね。だから、そういう点があるのではないですか。
いろいろ申しましたけれ
ども、橋本
大蔵大臣に、これらの問題についての
大臣の哲学的見地をお聞きしたいと思います。細かい技術的なことは
事務方で結構です。