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1990-06-14 第118回国会 衆議院 税制問題等に関する調査特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年六月十四日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 山崎  拓君    理事 加藤 紘一君 理事 工藤  巌君    理事 関谷 勝嗣君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 佐藤 敬治君    理事 村山 富市君 理事 和田 静夫君    理事 渡部 一郎君       井奥 貞雄君    伊吹 文明君       太田 誠一君    金子 一義君       小泉純一郎君    小杉  隆君       佐藤 敬夫君    坂本 剛二君       笹川  堯君    鈴木 宗男君       田原  隆君    高鳥  修君       鳩山由紀夫君    平沼 赳夫君       吹田  愰君    藤井 裕久君       町村 信孝君    村上誠一郎君       柳沢 伯夫君    山村新治郎君       赤松 広隆君    大木 正吾君       嶋崎  譲君    鈴木喜久子君       筒井 信隆君    戸田 菊雄君       中沢 健次君    早川  勝君       武藤 山治君    安田 修三君       渡辺 嘉藏君    井上 義久君       小谷 輝二君    日笠 勝之君       山田 英介君    正森 成二君       吉井 英勝君    中井  洽君       江田 五月君  出席国務大臣         自 治 大 臣 奥田 敬和君  出席政府委員         経済企画庁物価         局審議官    加藤  雅君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         国税庁次長   岡本 吉司君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       山本 貞一君         自治大臣官房審         議官      紀内 隆宏君         自治大臣官房審         議官      小島 重喜君         自治大臣官房審         議官      遠藤 安彦君  委員外出席者         議     員 伊藤  茂君         議     員 神崎 武法君         議     員 中野 寛成君         議     員 菅  直人君         議     員 森井 忠良君         議     員 宮地 正介君         議     員 中村 正男君         議     員 元信  堯君         地方行政委員会         調査室長    渡辺  功君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ───────────── 委員の異動 六月十四日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     坂本 剛二君   村井  仁君     井奥 貞雄君   武藤 山治君     赤松 広降君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     村井  仁君   坂本 剛二君     奥野 誠亮君   赤松 広隆君     武藤 山治君     ───────────── 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  消費税法を廃止する法律案伊藤茂君外七名提出衆法第四号)  消費譲与税法を廃止する法律案伊藤茂君外七名提出衆法第五号)  地方交付税法の一部を改正する法律案伊藤茂君外七名提出衆法第六号)  税制改革基本法案伊藤茂君外七名提出衆法第七号)  消費税法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第一〇号)      ────◇─────
  2. 山崎拓

    山崎委員長 これより会議を開きます。  伊藤茂君外七名提出消費税法を廃止する法律案消費譲与税法を廃止する法律案地方交付税法の一部を改正する法律案及び税制改革基本法案並びに内閣提出消費税法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  本日は、一昨日に引き続き、特に、伊藤茂君外七名提出の各案について質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柳沢伯夫君
  3. 柳沢伯夫

    柳沢委員 今回の税制改革の見直しをめぐりまして、この二日間、実に長時間にわたりまして精力的な論議が交わされてまいりました。私も一人の委員として、この論議応酬かなり熱を入れて拝聴させていただいてまいったわけであります。  これを聞きましての感想は、今回、税制改革の一環として導入された消費税につきまして、さすがに一人当たり国民所得二万ドルの経済を実現しておる日本の国だけあって、この仕組みそのものについては、これは我々国会の内外を問わず、特に実務に携わっておる国民皆さん方、企業の皆さん方が見事にこれをこなされておる、したがって、この国会論議におきましても、さほどに大きな論点になっていなかったように見受けられるわけであります。それに反しまして、国民負担ということで大変議論が熱したわけでありまして、それを聞いておりまして、私はつくづくこの消費税基本的な性格についての認識が、我々と皆さん方野党皆さん方との間で共通でないな、これがどうもこの消費税論議の紛糾する一番の根本原因かな、こんな感じを実は持ったわけであります。  そこで本日、私、端的にこの問題に焦点を絞りまして、皆さん方との間で対話を交わして、そうしてその中から何とか接点を見出して、こんなにも対極的でにっちもさっちもならなくなっている国会論議の中から、そういう対決じゃなくて、お互いに建設的な方向を持って一つ合意点を見出していく、こういうことの役に立ってみたい、こういうことを考えて、以下質問をさせていただくわけでございます。  そこで、皆さん方が御提出になられましたこの税制改革基本法というものを見せていただきまして、特に私は、この「税制改革基本原則」といった、若干税制基本に触れているところについて目を落とさせていただいたわけであります。正直申しまして、余りこんなことで演説していると時間がなくなりますので、はしょった話をさせていただきますが、これ一つ見ても、我々のように若干この問題について、何というか経験を持っている人間からすると、全く体系的でない、一体何を考えているんだろうか、こう思うのですよ。そのことについて私、コメントを求めようとも思わないのですが、正直言って、我々がこういうものを読んだときにどう感ずるかということだけちょっとお聞き願いたいと思うのです。  それは、「一 国民租税に対する信頼を確立するため、税負担の公正及び公平を確保すること。」こういうことを書いてあるのですね。まず、「公正」って何だろうか、我々の普通のワーディングで言いますと、言葉遣いで言いますと、これはすぐれて執行の公正なんですよね。そうすると、こういうものをいきなり出されるとおやっとまず思いますよ。「公平」、これはもう皆さん方ここでしょっちゅう応酬されていますからおわかりのとおり、垂直的公平、水平的公平というものがその中身だな、アリストテレスの昔からこうですよ、これは。そういうことを感ずる。  ところがその次に行って、「二 総合課税主義基本とする応能負担原則を重視し、かつ、応益負担原則にも適切に配慮すること。」こう書いてある。「応能負担原則」というのは、もし垂直的公平というのを一号で言っているのだったら必要ないことなんですね。そうすると、この二号は一体何を言っているのだろうか。「応益負担原則にも適切に配慮する」ということを何かをおもんぱかって言っているのだろうか、こう思うのですよ。  それから三つ目、三号は、「直接税を主とし、間接税を従とする」、こう書いてある。これはもう二号で言っているのですね、総合課税を重視すると言っているから、またトートロジーですね。直接税を主として間接税を従とする。正直言うと、この直接税、間接税というのは徴税技術あるいは課税技術の話であって、その方式の話であって、負担の問題じゃないのですがね。しかし、それでもそう思う。その後で「所得消費資産等に対する課税を適正に行うこと。」と書いてあるから、実体的内容はこの後者にあるのかな、そうすると後者は一体何を言わんとしているのかな、恐らくこれは何も言ってないなという感じが我々はするのですよね。  それから四号は、これはわかりますね、「地方財政の確立を図る」と書いてある。しかし、国税との関係で言うのだったら、その関連をもうちょっとはっきりさせてもらいたいなと思うのですよ。  それから、五号は何を言い出したかというと、「税制活力のある福祉社会を支える基盤となるようにする」、こう書いてあるのだけれども我我ちょっと皮肉を言わしていただくと、「活力のある福祉社会」というのは毒を含んでいるんですよ。どういう毒かというと、福祉社会だけれども公的部門だけでは面倒見切れぬよ、民間の活力でもって福祉社会をそれ相当に支えてもらわぬといかぬよという含意を、インプリケーションを持っているのです、この言葉には。そうすると、こんな言葉税制の中に持ち込んできて一体何を言わんとしているのだ。応能負担で垂直的公平を重視しようと言っているのに、活力ある福祉社会とは一体何だ。私なんて、これをすうっと読んでいくだけで頭があっちへ行ったりこっちへ行ったりして、本当に体系的に腑に落ちないということです。  だから我々は、私の見解だけが別に正しいというわけじゃないのですが、もう少し、法律案なんですから、法律なんですから、私はこれを見て、正直言って、法制局を通っているのだろうか。衆議院法制局には私のかつての同僚がいますから、あのやろうと言っちゃいけないかもしれませんが、あいつ一体何しているのだろうかなって思ったのですよ。言葉を訂正します。そういうふうに思いますよ、私なんて。そういうことで、ことごとく私どもは、もうちょっと何か事を法律として運ぶに当たっては周到であってもらいたい、こういう気持ちを率直に言って持つわけであります。これは皮肉でも何でもないのですよ。本当に我々の立場から見るとそう見えちゃうということをちょっとコメントさせていただきたいのです。  まあしかし、そんなことを議論していても仕方がありませんから先に進みますけれども、結局この基本原則で言っておられることというのは、きのうも我々の尊敬する武藤先生がここで政府側との応酬でおっしゃられたように、要するに皆さん方総合課税主義による所得税中心とした税体系でいきたいよ、こういうことをここで、いろいろ言っておられるけれども、どうもおっしゃっているようだというふうに理解がなされるわけですけれども、それでよろしゅうございますね。どうぞ。
  4. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 委員が冒頭におっしゃいました、議論を通じて合意を形成する、これは私も賛成です。やはりこれらの議論を通じまして国民合意、コンセンサスが形成できるような議論を真剣にやってまいりたいというふうに思っております。  簡潔に考え方を申し述べさせていただきますが、私どもは再改革基本法四条の中で五つの柱を立てました。表現を見ますと、だれが考えても当然のことではないかというふうな意味合いではないだろうか。あえて私どもがこれを提起しましたのは、消費税執行されるときに多くの国民皆様から、このような負担は一体何のためにこれがあるんだろうという疑問が広くあったわけであります。やはりもう一度、目的、ビジョンその他をはっきり立てるということが必要であろうというふうに思いまして立てたわけであります。  ただ、御理解いただきたいのは、第四条に五つの柱を立てました。それを受けまして、第五条に、具体的にどういうことを検討すべきか、ある意味では、同じ章になっておりますが、セットでこれを出しているわけでありまして、例えば公正、公平ということがございます、一点だけ申し上げますと。これは論理学的とか理屈の解釈の論争をすることよりも、やはり国民が納得できる公平感公正感をどうつくるのかということが現実には私ども一番大事なことではないだろうかというふうに思います。  そういう意味で、私ども一昨年でしたか、不公平についての国民皆様から出ている十項目の指摘をいたしました。与党も真剣に対応しようということで、与野党政策責任者の間で十回ぐらいやったと思います。与党野党もその協議に携わった者は、やあ本当にまじめにやったというふうに今でも振り返っているわけでありまして、そういうことを一つ一つどう解決をしていくのかということが必要ではないだろうかと実は思っているわけでありまして、そういう気持ちでこの四条、五条に対応してまいりたい。  一昨年の審議の場合にも、これらの考え方税制基本構想という形で四党合意議題にさせていただきました。多くの与党皆さん方からも、伊藤さん、それは正論だよという言葉をちょうだいしたわけでありまして、その中の一つ総合課税は重要なプリンシプルであるということも表現をさせていただいておるわけでございまして、御質問のとおりに総合課税主義というのは重要な原則であると考えております。
  5. 柳沢伯夫

    柳沢委員 総合課税による所得税中心として税体系を組み立てていきたい、この気持ちであるということが確認できたわけでありますが、世の中にはクロヨンというのがあるんですね。これは正直言うと、総合課税かどうかということとは直接は関係のないこととして、むしろ執行上のこととして、不公平の代表あるいは不公正の代表ということで言われておるわけであります。  私は、実は政治家としていろいろな地域を回り、農家門先に立ったり、農家温室の中に入ってあいさつをしたり、そういうこともしています。それから、商店街に行って、店先に座り込んで商店街の店主の皆さんと話を交わすということもしておるんです。そういうときに、税に対する考えとしてクロヨンクロヨンと言われていますから、彼らも非常に何か自分たちが悪いことをしているような感じを持ちながら、恐縮しながら我我にその苦しい状況というものを訴えるわけでありますが、そのときにこういうことを言うのですね。  サラリーマン病気になっても給料をしばらくの間もらえますね、これは若干の割引なんかの措置は当然付加されますけれども、それでもかなりの期間そういうものをいただける。それに対して我々は、自分たち病気になったりしちゃったら店を閉める、店を閉めたら一銭も収入はないんですよ。それをサラリーマンと同じように、サラリーマン人たちリスクがないということに比べて自分たちリスクがあるから、これは何とか考えてもらいたいですね、こういうことを言われます。  それから農家、私は今自民党農林部会長をしているのですが、だからといって言うわけじゃありませんけれども、こういう冷暖房がきいたところで、いわゆるホワイトカラーで働いているのと比べて実際大変だと思いますよ。私のところはメロンの日本一の産地でありますけれども、その温室の中へ入ってごらんなさい、夏。汗が出るなんてなもんじゃないですよ。あれは汗じゃないですよ。体の中の水分が出ちゃうのですよ。だから体は非常に大変。ですから彼らは言うのですよ。我我はもっと生産を上げて収入を獲得することができるんだけれども、体の方を考えるとこの程度にしておこうというのが我々の経営の方針なんですよと。  家へ帰る、奥さんが、お父さん、今大変頑張ってもらって割に所得を上げてもらっているけれども、こんなのもお父さんの若いうちだけですね、こういうようなことを言って、そうだ若いうちだけだ、あと四、五年かななんという会話が恐らく家庭で交わされているような、そういう状況我我訴えられますと、そういうときに、あなたヨンじゃないですか、クロヨンのあなたヨンと言われているんだよ、もっとしっかり税金出しなさいよ、なかなかこれは言えないと私は感ずる。そういうことを皆さん方聞いて、皆さん方は、ここでクロヨン論議をやっていると同じ調子でそういうような人たちクロヨン論議ができますか。その心情をまずお聞きしたい。
  6. 菅直人

    菅議員 いわゆるクロヨンということについては、私どもの中でもいろいろな議論をこの間してきたところです。今おっしゃったように、これはもう言うまでもないことですけれども、いわゆる給与所得事業所得、あるいは農業所得などのそういう所得把握というものが、果たして公平にというかきちんとなされているだろうかということに対する疑問というのは、特に給与所得サラリーマン層からは率直に言ってかなり強いものがあると思います。  今委員のおっしゃった、例えば自営業の皆さんリスクがある、あるいは農業従事をされている皆さんが、若いうちは元気でやれるけれどもといった、そういった問題はそれぞれの業種の中で、場合によってはそれはサラリーマンの中でも業種によってはそういういろんな問題はあると思うわけです。  逆に言えば、そういった業種間のいろいろな特性というものをどのような形で税制度の中で見ていくかという議論はあってもそれは当然だと思いますけれども、そういう議論ということと同時に、といいましょうか、基本的にはやはり、これは委員の方がそういう経歴を持っておられるわけですからまさに釈迦に説法ですけれども、それこそ公平な税制というときには、同じ所得がある人に対しては同じような課税をするということがやはり原則になるべきであって、それを超えたいろいろな配慮というものは、それはそれとして考えられるかもしれませんけれども基本としては同じ所得に対して同じような課税をする。ですから、その所得把握が公平でないような所得把握になっているとすれば、例えば納税番号制などの導入も含めて検討していく必要があるのではないか。  ですから、全くそういうものに政治的に一切配慮しないでいいということではなくて、税制を考える、総合課税というものを考える原則としては、同一所得に対して同一課税というものは、これは原則として推し進めていく必要があるのではないか、そのように考えております。
  7. 柳沢伯夫

    柳沢委員 菅提案者からお話しをいただいた同一所得に対しては同一課税をしたい、ここに、皆さん方基本的に消費税に対し、また所得税に対して認識不足があるんですよ。そういう認識だから、今提案されている消費税に対してあの程度議論しかできない、正直言っちゃうと。そこが問題なんです。  これは私はいろいろなものにくるんで申し上げましたので、問題点がわからなかったかもしれない。しかし、担税力があるのは所得だけだ、これはもうどの教科書にも書いてある。私、正直言って伊藤先生がどの財政学者学校時代に習ったかまでちょっと調べてきましたけれども、その学者先生方も言っておるわけですね。言っておる。  しかし、この所得担税力というのは毎年毎年、一年一年切って所得を計算するというところに大変な実は問題があるのですよ。それがまさに今言ったように、お父さんあと三年、四年しかこの五百万の所得を上げられない、後はもう下がる一方だ、体の都合で、年齢の都合で、こういうこと。これがしかし、サラリーマンの方も同じように五百万の所得を上げている。ハウスに入って汗だらけで、あと三、四年しか五百万の所得が上げられないという人が、所得税ではどんなにあがいてみても、課税標準の上でこれをどんなに工夫してみても、その本当の持っている担税力に対して適合した税制というのはつくり得ないのです。これが所得税の限界なんです。これは皆さんが言っている総合合算をしたらどうのこうのということと全く関係ない。  そこで、今学者人たちももう言っているのですよ。公平というのは、所得じゃないんだ、消費の方が、結論を言っちゃうようですけれども本当担税力表現しているものですよということを言っておるのです。  それはどういうことかと申しますと、要するに本当担税力というのは、例えば所得に対する一番適切な課税というのは生涯所得が最も適切な課税ベースになるべきだというのです。生涯所得、一生涯の所得なんです。たまたまそのとき、体の都合のいいときに五百万の所得が上がっているという農家の人がいても、それはだんだん縮減していくようなそういうカーブのもとの五百万だ、四百万だという。それに対してサラリーマンの方は、今四十五歳で五百万取ったけれども、またさらに八百万、一千万といくかもしれない。そういう生涯所得カーブ展望のもとの四百万、五百万であるとする。そうすると、一体それは同じ四百万、五百万――今、菅さんは、同一所得は同一課税が正しいと思う、これはその限りではもっともらしく聞こえるのだけれども、そういう生涯の一つ展望のもとに立ったら、ある一年間にたまたま同じ所得である、どんなに厳密に計算しても。そういうものは同じ担税力を持たないのです。そこに所得税の一番の問題があるのです。  それが、一体どうしたら正しい担税力表現した課税ベースがつかめるか。このときに、他方で消費者行動経済学が発展して、皆さん御承知のとおり恒常所得仮説というのが出てきたのです。我々が消費をするときには、自分所得が一体どういうふうに、恒常的にこの一生涯を通じて大体どのぐらいになるかという観点でその都度その都度の消費行動をするのですよということなのです。だから学者は、今や本当の生涯所得というものが最適の課税ベースだとしたら、それはむしろ消費こそ課税ベースにとるべきではないかということを言っているのです。伊藤先生がお習いになった当時の財政学にはこれはなかった。しかし、最近の財政学の本を見れば、どこにも書いてあるこれは全く基礎的な概念なのであります。  ここを忘れてはだめなんです。この消費税論議の一番大事な点が実はここにあるということを皆さん方はもう少し、もし知っていてこれを全然論議に上げないとしたら非常にフェアでないし、知らないのだったらやはりちょっと不勉強のそしりを私は正直言って免れないだろう、こういうように思うのであります。いかがでしょうか。
  8. 菅直人

    菅議員 大変、生涯所得というものの考え方を提示されて、私は残念ながらそういう財政学も習っておりませんので、そういうものがどういう議論になっているか全部はわかりませんが、まずしかし、国民的にいえば、この長年の税制改革議論の中で、いわゆる所得税中心とした不公平の問題というものを、今言われたことをそのまま受けとめるとしても、不公平の問題をそのままにして次の問題に移っていいという議論には私はならないと思うのです。  ですから、先ほどの御質問にも答えましたように、所得税そのものに非常にいろいろなゆがみがあるという問題を、不公平税制の是正という形でこの間議論をしてきたわけです。その中では、先ほども思いましたけれども、特に必要経費などの見方というものがそういった業種間にかなり格差があるということも言われてきたわけです。だからそういった問題。  それからさらに、今生涯所得ということを言われましたけれども資産による所得ないしは資産の増大、まさに資産課税という問題が、自民党といいましょうか政府が出された税制改革から大きく抜け落ちているわけですけれども、そういった問題については、今回の皆さんが行われた税制改革の中ではほとんど先送りというか議論がされていない。つまりは、前提となるべき不公平の問題についての議論が抜け落ち、そしてトータルなビジョンと言われるならば、資産も含めた不公平が非常に今拡大しているわけですから、それをも含めた議論をする必要があるだろう。  私どもは、この再改革基本法の中でも言っておりますように、消費に対するあるいは間接税というものに対して一切考えないでいいというふうな態度はとっておりません。それも含めた、改革をするに当たっても、そういったトータルの合意が得られるようにやっていくべきではないか。政府が出された税制改革法の中でも、所得課税において税負担の公平の確保を図るということは当然あるわけですから、それは所得税においても公平を図り、他の全体の資産を含めたあるいは消費を含めたものの中でも公平を図っていく、その両面からの議論が必要である、このように考えております。
  9. 柳沢伯夫

    柳沢委員 そういう認識だからだめだということを先ほど来から主張しているのです。  資産所得、これはあなた方は納税者番号制でやろうとしている。しかも、事業所得まで納税者番号制でやろうとしているように私は聞いている。大変なことですよ、そんなことをやり始めたら。本当に恐ろしい世の中が出るかもしれない。私は、よっぽど慎重でなければそういうことは言えないと思う。どうするか。その資産所得、あるいは株だとか、株の配当だとかあるいは預金の利子だとか、こういったようなものも実は分離課税しなくて、総合を心の中でするのです、その所得者は。それでそれを消費という格好で表現するのです。あなたが得意のあの土地の含み益、含み益の未実現利益に課税するなんということはできないのですよ、技術的に。どうするのですか、そんなこと。それも実はこの消費にはあらわれるのです。自分資産がこのぐらい上がっているなということで、それが消費行動にあらわれるのです。  だから先ほどから、そっちをやってからじゃないのだ、そうじゃなくて、そっちをちゃんとやるためにも、実は消費というものを課税標準にとるということの意義があるのですよということを私はさっきから言っているのですよ。  そこで、皆さん冷静に聞いてもらいたいのですが、今私が言ってきたことでおわかりのように、消費税というのは所得税なんです。いいですか、消費税というのは所得税なんです。間違っちゃ困るのです。びっくりされるでしょう。消費金額を課税標準として、所得を目がけて消費税という名前をつけてやっているだけの話なんです。それを間違って、何か消費税所得税の対極にあるもののような認識でこれまでの議論を展開してきた。私に言わせたら、それは最近の財政学の進展というものを余りにも無視した議論だな、こういうように私は皆さんの言説を聞いておったわけであります。  そこで、その仕組みの問題に入るのですが、この消費税を仕組むときに、それでは直接税でやったらいいじゃないかという議論だってあり得るのです。直接税で消費税をやる。つまり、消費金額を課税標準とした所得税なんだから、その三月の十五日に過去一年間の消費金額を自分でちゃんと計算できて、そして、ああ自分は去年はこれだけ消費したからそれで税率は幾らでこれだけ税金かかるな、では申告します、こうやるのです。カルドア先生がこの話を初めてしたとき、スリランカで実験したという話もある。しかし、これは言うべくしてなかなかできないのです。  そこで、どうするかというと、間接税の方式に転換するのです。間接税の方式に転換して消費金額で、結果として、消費金額に税率が一定だったらば比例税になりますけれども、そういう税金を引いているというのが今の消費税なんです、皆さん。ありとあらゆる売買が行われるときに、何か買うときに全部一定の率で消費税をかけてお願いしておれば、そうすれば一年間たてばまさに消費金額に比例のその所得税負担したということになりますよということなんです、そういう税金なんです。それを全然前のように、その対極的な税金のように考えるというのは大間違い。  それから、これを物税的に考えていろいろな論議をする人がいる。物税じゃないのです。だから、物品税は物税として、消費所得の一番いい課税ベースだなんという議論が余りなかったときに出てきたものですから、物税物税ということになっていったのです。しかし、私は一般消費税になったらこれはもう人税だなと思っているのですよ。人に帰属して人について考えている税金だな、こういうように思っているのです。  きのうあたりも共産党の人が、新聞、雑誌に何をかけるのは何だとか、消費税をかけるのは何だとかというような議論をしておられましたけれども、全くそんなこと、どういうものに税金をかけるかなんというようなことを何も関心を払っていない、あえて言ってしまえば、この消費税は。消費税が関心を持っているのは消費金額なんです。トータルとして、一年間のその消費活動の結果どれだけ消費をしたかというその金額に対して関心を払って、それに対してどういう税率で税金をかけるかということを、実はこの消費税というのは考えているのだということであります。いいですね。  そこで、次に行きますけれども、しかし、さはさりながら、間接税というものを取るときにいろいろな障害があるのです。私はあえて人税だと言い切ってしまいました。言ったけれども、じゃ人的な控除とかそういう人的な配慮がこの税金のもとでできるか。私、いろいろ考えていますよ、考えた。これは後で申し上げますけれども、なかなかできないというところで限界があるというか、こういう面で制約があることは確かなんですけれども、さて皆さん、私が今言ったような性格づけをした上で、皆さん消費税の逆進性ということを言われるのですが、それについてどういうお答えをなさいますか。
  10. 中村正男

    中村(正男)議員 逆進性の問題についてお答えをしたいと思います。  私は、高邁な財政論よりも現実の問題を、直接お聞きをしたような話をしたいと思うのですが、今回の消費税の導入、非常にこれはいいじゃないか、それに伴う税制改革で私は六百万円の減税があった、こう中堅のある会社の社長さんがおっしゃったわけでございます。反面、私ごとにわたって恐縮でございますが、私の娘が世帯を持ちまして、お父さん、毎年十万円手取りの中から税金持っていかれるのは我々の世帯としてはたまらぬよと、月収二十万、ボーナス入れて約三百万、夫婦と子供一人の生活であります。  そういうことを考えますと、私は国民の大方の人の反対の第一の理由は、この逆進性にあるというふうに思います。
  11. 柳沢伯夫

    柳沢委員 今の十万円というのは、月十万円のことですか。(中村(正男)議員「年です」と呼ぶ)年十万円、月十万円のように聞きましたからびっくり仰天したのですが。  皆さん、きょうは私はもう恐らく議論かみ合わないと思うのですよ。議論かみ合わないでしょう、新しい局面の話をしているわけですから。ですから、それはそれでいいですから、答弁は短くしていただきたい。後で、聞いて帰って、よくもう一回考えてもらいたい、こう思うのですね、正直申して。  そこで、私の議論だけをするわけじゃないのですが、これは今言った生涯所得を考え、あえて私はここで言うのですが、最後に遺産と相続税の関係を一応条件として考えておかなければいけませんが、生涯所得を考えたら、消費税所得に対して比例的なんですね。逆進的じゃないのです。それを一年一年の区切りで見ると、いっとき逆進的に見える、こういうことが先ほど来の私の消費税の性格づけで御納得いただけると思うのですね。ですから、そういうことも、逆進性の議論をするときに、逆進性というより、私は累進か弱い、累進ができていない、だからこれもまた皆さんの立場から、また、私は実はそうなんです、皆さんと同じ立場なんです、そういう立場から見て気に入らない点だということになるわけなんですけれども。  それともう一つは、これは先ほど中村提案者がおっしゃられたとおり、財政論も大事だけれども政治的な側面も大事でしょう、これはまさしくそのとおりなんです。しかしまた私から言わせると、政治論も大事だけれども、事税に関しては租税の理論も大事ですよ。これは皆さんだって理解をしてもらわなければ困るところなんですね。  そういう意味合いで申し上げるのですけれども、現実のヨーロッパの付加価値税を見ると、複数税率、つまり基本税率をもとにして高いやつとか安いやつとかいうようなことを現にやっておるわけですね。ただ、我が消費税ではどうしてそうならなかったかというのは、きのう大蔵大臣も説明されておりましたけれども基本税率がそれをやるにしてはちょっと低過ぎるということ、またやったとしても、皆さん既に言っているわけですが、今度の見直し案で大して逆進性直ってないよ、まさにおっしゃるとおりなんだろうと思うのですね、効果が少ないのですね。乖離の幅がどうしたって大きくはとれませんからね。そういうことで、結果として大変フラットの税率をしいておるわけです。  それともう一つは、この複数税率をやるには、手続的には、的確にやるにはどうしても税額票、インボイスの制度が必要になってくるということがありまして、我々この導入の際にそこのところを踏み切って帳簿方式をとりましたから、その関係でもなかなかこれが難しい問題として我々の前に立ちはだかっている、こういうことなのであります。  ところでお聞きしますけれども皆さん方はこの複数税率制度をしけば考え直すというような余地があるのでしょうか。あるいは、なぜそういうところに議論を持ってこられないのでしょうか。実は、矢追先生とかきのうの武藤先生も、若干その辺、党の拘束がありますからなかなか難しい発言だったようですが、すれすれのところまではおいでになって、私、いいぞなんてつい言い出してしまったのですが、どんなふうにお感じですか。
  12. 中村正男

    中村(正男)議員 今回の見直しの案では、食料品については複数税率の採用をされております。ただ、この程度であれば逆進性は緩和されない。  純粋にお答えするわけでありますが、例えば日常の生活用品、これにはほとんど税金がかからないとか極めて低い税率だとか、一方では生活様式の高度化を選択するための対象品目、こういうものには生活用品に比べれば複数のより高い税率を課す、そういうことになれば逆進性は緩和される、それは当然のことだと私は思っております。
  13. 柳沢伯夫

    柳沢委員 まあ逆進性という言葉は、これからいわゆるということにぜひしていただきたいな、こう思うのですね。生涯所得に対しては比例税率ですよということを皆さんにここで御説明させていただいた。もちろん、それは今すぐそうなれというわけにもいかぬかもしれないですが、少なくともそこのところは慎重にお願いしたいと、私は今この段階でもお願いをしておきたいわけであります。  そこで、次に議論を展開するために、皆さん方、資本主義経済、これは資本の再生産活動あるいは拡大再生産活動で経済が循環をし運行されておるわけでありますけれども、この中で、国が税として担税力を認めて、そこに税金の賦課をお願いするのは所得だけだということは、これはいいでしょうか。もちろん相続税とか戦時の特別な場合による財産税、こういうのは資本に対しても課税して、資本を一部国家に移転しますからこれはまた別ですよ。しかし、通常状態においては所得が究極的には税源だということでよろしいのでしょうか。
  14. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 御指摘ございましたが、消費に対する課税あるいは資産の保有に対する課税、いろいろございますが、確かに税金を支払うのは収入あるいは所得によって支払われることになるというわけでございますから、担税力の究極的な源は所得にあるとも言っていいのかもしれませんが、委員も御指摘なさいましたように、それはやはり通常のと申しましょうか普通のと申しましょうか、所得によって支払われる所得税のような場合、それから相続税のように資産の売却によって一時的に所得を得てそれから払われる場合という場合があると思います。  いずれにいたしましても、それらを含めながら考えますと、やはり所得課税だけで済むのではなくて、政府の方も、私ども言っておるわけでありますけれども消費資産を含めました総合的なバランスのある課税ということをどう組み立てるのかということに現実にはなってまいると思います。
  15. 柳沢伯夫

    柳沢委員 伊藤先生からそういうお話があったのですが、それはそうだろうと思うのですね。ですけれども、私が言っているのは、消費も、実は消費というものを通して最終的に税の負担をお願いしているのは所得ですよ。それから資産税といえども資産の背後に担税力を予想するのですが、それで最終的に担税力を持つのは何かといったら、これは所得なんですよ、こういうことを実は申しているわけです。それ以外のところに食い込んでいってしまったら、これは資本主義経済の自殺行為だ、こういうことになるわけですね。それは相続税とか、さっき言ったように戦争直後の財産税というようなものは、それはちょっと別ですよ。  こういうことを私は申しているわけですが、そこのところは若干まだ腑に落ちないようなお顔もなさっていますから、以降申し上げるのは少し危険な道かと思うのですが、あえて言いますと、私は、今度の消費税は、従来の所得税が、従来型伝統的な所得税を減税してその伝統的な所得税も残したけれども、一部消費金額を課税標準とする所得税に変わったのです。つまり、所得に対する課税負担は、消費金額を課税標準とするものと伝統的な課税所得課税標準とするものとに分かれて、それが合体して所得税として課されているものだ、こういうようにすら私は見ることができる、こういうように思っている人間なんです。  そこで、そういう人間からしますと、もう一つ皆さんのいわゆる逆進性を緩和する道として、実は所得税の累進カーブをもっと上げる、消費税を導入するときに。消費税は比例的あるいは皆さんのいわゆる逆進的だから。そういう道が実はあるのであります。ところが、皆さん方は、何だか知らないけれども、この累進カーブを緩和するということについて、余りにもやすやすと政府の軍門に下ってしまった。私は本当にあきれ返っているのですよ、正直言って。  はっきり申して、私は、自由民主党の党内の税制論議のときに、断固反対の論陣を張ったのです。消費税を入れるのだったら、累進カーブをもっときつ目にするのが当たり前じゃないのか。そういうことをやっているのですよ、自民党税制論議は。皆さん論議が余りにも固定観念に縛られちゃって、消費税の逆進性でこれはどうにもならぬなんて、そんな話は、私は本当にもうちょっと深いところまで突っ込んでいっていただきたいな、こう思うのです。  それからまた、その一つの例として直間比率どうですか。直間なんというのは、余り私は直接税型の消費税もあるから言いたくないのですが、間接税消費税だと、仮に同義語だと仮定した場合、この直間比率ということに対してだって、皆さん伊藤先生どうですか、あなたおっしゃったのは、昔の竹下蔵相も言ったけれども、それは結果として出てくるものでありますなんて、冗談じゃないですよ、私に言わせたら。私に言わせたら、それを合わせてどういう累進カーブになっているか、累進の負担をお願いするかということであって、直間比率があなた任せで結果だけだなんてとんでもない議論だ、私はそう思うのです。皆さん方本当に逆進的だとか、あるいは累進的な税の負担をお願いしようというのだったら、余りにも良心的でない答弁だと私は思ったのです。  なぜ、ああやすやすと皆さん方は累進カーブの緩和に屈し、これをあえて強く問題にしないのか、これを伺います。
  16. 中野寛成

    ○中野議員 累進カーブの問題につきましては、ある意味では自民党皆さんの中の御主張と我々の態度とが一致する部分があろうと思います。消費税を導入するという前提で、その逆進性を累進性だけで解消するということになれば、先生おっしゃるとおりであろうと思います。  しかしながら、言うならばもっと低所得層の、非課税もしくはその非課税の部分に位置します低所得者の皆さんに対する対策はそれでは緩和されないわけでございまして、それらの矛盾をその中に包含をしている。ゆえに我々としては、低所得者のことを考えますと、逆進性の問題はなお深刻であるということを前提として考えましたので、消費税の導入には反対と言わざるを得ない。そういたしますと、累進度を高めるという主張にまで論議を発展させるというきっかけにはならなかったということでございます。
  17. 柳沢伯夫

    柳沢委員 中野先生とは本当に同じ党にいたいくらいの気持ちを持って、今の答弁を聞いておりました。まさしくそうなんです。要するに、今まで所得税を払っていなかった人たち消費税負担するようになる、この問題をどう考えるかということなんですね。  実は、ちょっとここで寄り道をして指摘をしておきたいのですけれども、今まで所得税を払っていなかった最終納税負担者の中で、単に低所得だから払っていなかったという人だけじゃない人たちが実は含まれているということに御注意いただきたいのですね。  私は、消費税を推奨する理由の一つにそれを持っているわけですが、きのう議論になった公益法人、これも表から、おさい銭がたくさん上がったはずだから、あなた、所得税をいただきたいとなかなか言えないですね。しかし、少なくとも、少しは税負担をお願いしたいな。消費税でできるのですね。政治家も同じなんです。私は、政治資金に、パーティー券にどうのこうのなんて本当に枝葉末節な議論だと思った。これは政治団体が消費活動をする、別に何も売るものじゃありません、これは最終のいわば負担者でありますから、これに消費税がかかるということで、まあせめてもの慰めか、こういう感じを私は持っておったわけであります。実は、そういうメリットがある、このことであります。  それから、所得税の非納税者、このいわゆる低所得というか、所得が小さいなるがゆえに非納税者になっている方々については、皆さん、これはもうわかりますね。生活保護世帯は、生活保護が物価スライドで上がれば、消費税の影響をキャンセルできる。年金生活者においてもしかり。ただ、これが最初のときちょっとおくれたのでどうかということを私も気にかけた人間でありますが、それはまあよろしいだろうと思うのです。  では、もう一つ、それ以外の課税最低限に達しない人たち、このことについてどう思うかということですが、ここで私は注意をいたしておきたいのは、二つあるわけでございます。  一つは、課税最低限というのが、それはもうぎりぎりの所得であるから、この人たち所得税をお願いできないなということに最近はなってないということです。これは、参議院の久保亘先生が御質問になっておられましたけれども、減税を所得控除でやるからというような話にかかわるわけですけれども、減税を、物価調整減税といえども所得控除でやるわけですね。その結果、実はどんどん課税最低限が上がっていってしまう。これは非常に悩みがあるわけなんでございます。それはわかっていただきたい。課税最低限以下の人だから必ずしも担税力を国が認められないということではないということですね。これが一つ。  それからもう一つは、これは専修大学の正村教授がまさに税制改革論議のときにおっしゃられておったことでありますけれども、余りこの議論のときに消費税負担所得税の減税額を一々ノミ取り眼で見て、それでプラスがあるだのマイナスがあるだのと言うのは愚かですよ、そうじゃなくて、将来を展望して、白紙で、実際この人たちにこの程度消費税をお願いしていいのかということを真っ正面から議論しないと、非常に矮小な議論になるよということを指摘されておった。このことも申し上げておきたいのであります。  そこで、そういう前提で申し上げたいのでございますけれども皆さん方、これは大蔵省は反対して、何で柳沢はあんなことを言ったと後で多分クレームが来るかと思うのですが、私はあえて申し上げたいのでありますが、宮島東大教授が提唱し、そして伊東光晴京都大学教授がそれを支持された還付という問題、これを何で真剣にお取り上げにならないのですか。私は、本当のことを言って、後でもお話し申し上げたいのですけれども、いわゆる免税業者の免税額、これを三千万円ということについては、やはり国民の間にもうちょっと低くても当たり前じゃないかという気持ちがあるのじゃないかなという気がしている。場合によっては、この三千万円の免税点はもうちょっと下に下がってくるかもしれない。しかし、国税の事務を考えますと、私はこれは、むしろ国税にとどめおくべきかなという感じがするところなんです。  今度の消費税で、正直申して、もう本当にイナゴの大群が田んぼを荒らしたみたいに地方税の固有税源というのがなくなってしまった。全く私は、この姿を見ていてぞっとしたのですね。そういう立場からして、小売段階のところだけ地方税に落としていく、そして免税業者の免税点ももっと落としてもいい。納税義務者が非常に多くなりますから、細かく見ていかなければならないから、国税当局のあの五百とか六百の税務署でなかなか見切らぬでしょう。そういう意味合いでもそう思うのですよ。  それで同時に、その地方税のことと地方税の地方団体の窓口を通じた、今言った還付、どうしても救わなければならぬような方々に対する還付の問題を私は考えているのです。個人的には考えたのです。それをなぜ、せっかく宮島教授とか伊東光晴教授が非常に推奨したこういう考え方について、野党皆さんは一顧だにしなかったのでしょうか、お尋ねしたい。  その議論御存じでしたか、ちょっと聞きたい。
  18. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 御指摘になりました宮島教授も親しい友人でございますし、伊東光晴さんも長い親しい友人でございますから、いろいろと直接伺ったりまた御主張なさっていることを読んだりさせていただいております。いろいろな意味で、還付という発想、もっとやはり私ども研究する必要があるユニークな一つの発想あるいは御提言であろうというふうに思っております。  ただ、今考えますと、税制全体の基本構造というものを考えますときに、還付の問題、さらに大きな研究手続をすることも私は問題意識として持たなければならないと思いますが、全体構造をどう持つのかという場合に、私はやはり総合課税と、それから長年日本で定着をしてまいりました直税、所得税中心というのは、日本の税制の中に社会的に安定した仕組みになっている、やはりこの仕組みは大事にしていきたいというふうに思います。  それから、消費に関する公平という、あるいは生涯所得というものを含めた御意見ございました。確かにそういうさまざまな視点も研究をしなければならないと思います。ただ、今私どもにとって問題なのは、消費税の導入によって公平化が進んだと思っておられる国民は少ないと私は思います。日本の不公平がさらに拡大をしておるのではないかというのが、世論調査で見ても多くの姿ではなかったのか。やはり設計自体の根本に欠陥がある、それをどうしたらいいのかということを私どもはここで真剣にやらなければならないというふうに思います。  なお、一言だけいたしますが、委員おっしゃいましたサラリーマン皆さん農家皆さん、中小企業、零細企業の皆さんということにつきましては、政治家の一人として私はいつも実感をいたします。税を負担している階層が農家は非常に少ないではないか、我々サラリーマンはほとんど負担をしているんだというふうな声もございます。そうかといいますと、零細企業の皆さんは労働時間でも違いますから、夜遅くまで裸電球のもとで働いたりしている現実もある。私は、そういうものの中でお互いの、額に汗して働く階層ですから、どうやってもっと公平感というものを形成したらいいのか。これはある意味では透明性あるいは相互理解、国民的な理解の仕方という面でも格段の努力をしなければならない、膨大な不公平感も、私の考えでは、半分はそういう意味での不透明感、税の全体の不透明感に基づく、あるいは相互理解ができないせいに基づくものが半分、あとの半分は制度自体の課題ではないだろうかという気がいたしております。
  19. 柳沢伯夫

    柳沢委員 伊藤先生のお話で、労働の質が、労働の質というか労働の苦しさ、苦しさの程度、こういったものが本当所得税に反映しなければいけないのじゃないか、私は冒頭そのことを言ったのです。そういう労働の厳しさ、激しさというものを、おまえ汗何キログラムかいた、これはできないのですよ、所得税税制のもとでは。それはしかし消費に実はあらわれるのだよということを消費税の論者は指摘しているのです。これは私が独断的に言っているのじゃないのです。つまり、体がきついからそんな労働はいつまでも続けられないよという将来展望を合理的な思考をする人間だったら持つだろうという前提で、そういう議論がつくられているわけです。それを御指摘しておきます。  もう一つは、今回の税制の全体の姿が公平でないのじゃないか、この点については、私は伊藤先生と同じような感じを持っているのですよ。それはどうしてかというと、余りにも今度、所得水準が上昇しそれが平準化したという、そういう考え方のもとで広く薄くという論理でやり過ぎたんですよ。私は本当に残念だ。もちろん、大蔵省が今度実現したような所得税の累進カーブを低めるというようなことも、いわゆる活力を呼び覚ますために必要な段階が日本にも来るかもしれない、ヨーロッパ諸国がやったように、あるいはアメリカがやったように。しかし、私は今はそう考えない。私自身は、むしろ消費税を入れることをどうやって皆さんに納得していただくかという段階じゃないかという議論をしたのですよ。しかし、これは個人的な話ですから、そういうことが一つ公平感の、皆さんが納得できなかった背景じゃないかな、同じ感じを持っているのかなという感慨をここで申し上げておきます。  次に進むわけですけれども、徴税コスト、納税コストの観点から採用されるいろいろな税の特例措置がありますね。これは皆さん所得税においても給与所得控除自体がそういう性格を持っているのですよ。あれは概算経費率なのですよ。そういうようなもので、あれだって文句言えば文句言いますよ。皆さんが復活しようとしている旧物品税には、一定率というような便宜措置が入っているのです。みんな一定率で、実際は減税効果を納税義務者は獲得していたのですよ、あえて言えば。そういうようなことについては欠陥と言うのですか、言わないのですか。  今度この消費税に入ったこういういろいろな徴税、納税の便宜を図るための制度を一切なくてしかるべきだ、こんなものは一切あってはならない、もう個別具体的な妥当性をとことん突き詰めた税制でなければ自分らは欠陥があると認めるというような立場の議論というのは、はっきり言って私はおかしいと思う。とんでもない話だ、こんなものは。皆さん、これから、きょう以後欠陥と言うことをやめてください。どうですか。
  20. 森井忠良

    ○森井議員 先ほど来いろいろ聞かしていただいておりまして、委員の御指摘の問題の中には、どうも現行の消費税かなり乖離があって、違うものもあるわけですね。私どもは、今の税制上の特例措置を全く不必要と決めつけて、全面的に撤廃をするということはもちろん考えておりません。しかし、特例措置については、それなりの理由、政策目的があって設けられているということは十分承知をいたしておりますけれども税制基本原則と政策目的の調和、それに世論の動向など十分配慮して、適宜見直す必要があると考えております。  政府自民党も適宜見直しを行っていると主張されておるのでありましょうけれども、私どもがすべての特例措置に対して自民党皆様と同様の見方をする必要はありませんし、立場が異なれば見解の相違が生じることは当然であります。徴税や納税コストの観点から設けられている特例措置を改廃する場合に、それによって生ずるコストと増収のバランス、そして税制原則との調和を勘案する必要性は認めております。トータルでコスト増になる見直しというのは合理性に欠けることは申すまでもありません。
  21. 柳沢伯夫

    柳沢委員 結構ですよ。結構ですけれども、私が言っているのは、徴税コストというのは、この前どなたかがおっしゃっておられましたが、要するにアダム・スミスの租税原則ですね、公明党の先生がおっしゃっていた中にも三つしか挙げない。その後ワーグナーが九つにしてしまったくらいの租税原則というのがあるわけですが、その三つしか挙げない中にも入っているぐらい重要な、現実的な税制をしく場合には避け得られない制度なんですね。  ですから、皆さん方はその欠陥、程度問題だということなんですよ、これは。程度問題だったら程度問題らしい物の言い方もあろうし、それから議論の仕方もあろう。そんなものを、欠陥だ、欠陥だって、何かとんでもない、どうにもならぬようなことを言うのは、あなた方だけが神の高みにいて現実を批判する立場だ。だれも神じゃないんだから、やはり皆さんそこのところを踏まえた議論をしないと、これは天につばすることになりますよと言うんです。あなた方の旧物品税の復活だって大変な問題になっちゃうんですよ。そういうことを申し上げておるんです。  それから、あなた方は旧物品税に返りたいと言っている――返りたいとは言ってない、まあ何かそんな感じの個別間接税のようなことを言っていますが、旧物品税の苦難の歴史を少しは知ってもらいたい。私は担当者だったんですよ、そんなに長くやったわけじゃないですが。しかし、この苦しみを皆さん余りにも知らなさ過ぎる。このことを皆さん御存じいただきたいと思うんです。(発言する者あり)こういう程度議論しかできないんです、この人たちは。  その物品の掲げる問題についても、公平性の観点から大変な問題があるんです。実は納税義務者を特定しなきゃならない、蔵出しだとかあるいは小売課税も、これも大変なんです。かばん屋さん一つのことを考えてもわかるでしょう。一回限りの、一段階の課税だとこういう苦しみを味わうわけですね。大変な実は行政コストがかかるんですね。  それから、物品税というのは品目的に課税物品が選べればいいんですが、品目はこれ、まあどうかと思うんだけれども、高いやつもある低いのもある。家具なんかそうですね。免税点を置くでしょう。そうすると経済活動は大変なゆがみを起こしちゃうんですよ。免税点以下のものをつくろうとして大変なゆがみを起こす。こういうことも大変な問題の一つであります。  それから、製造業者庫出税でございますからね。製造業者庫出税というのは、物が製造されたか製造されないかということを一つの物で追っかけていくんです。ですから、どっかちょっとそこへ行って加工してもらうというときに、未納税移出というまことに手間のかかる仕事をさせられるんですよ。もう未納税移出なんてとんでもないというのが、皆さん課税業者だった人たち気持ちですよ。  それからサービス。伊藤先生は、まだサービスは独立したものだと思っていらっしゃる。ところが実際はそうじゃない。  私は、ウインドー型のエアコンと、セントラルヒーティングというのでしょうか、ファンコイル型のエアコンが出たときに、これは本当に悔しい思いをしたですな。安い方はどっちかというとウインドー型なんですね。それでセントラルヒーティングで一つの家全体が冷暖房できるようなものに手足が出なかった。――了解とっているのだから大丈夫、余分なこと言わないで。内部で調整しているんだから。まじめな議論しているんだから聞いてください。  それから業務用のものを外すということ、これは皆さん同じことですよ。冷蔵庫ができたときに、四百リットル以上のものを我々は外しましたよ。四百リットル以上のものは商売屋が使うんだから、物品税は消費税ですから、商売屋が使うものは課税しちゃいけないんですね。ところがどうですか、お金持ちは四百リットル以上の冷蔵庫を家の中へ持っちゃうんですよ、これも悔しい思いをしたんです。  そういうように、個別物品税の困難というのは、今、私のわずかの間の勤務の経験で、主税局から聞いたんじゃないですよ、私の記憶、乏しい記憶力に残っているそういう話として申し上げただけでも、このぐらいです。  それで最後にどうなったかと申しますと、OAとか冷暖房つきの自動販売機、あれに課税すると主税局に言ってきた。私は断々々固として反対した。これは物品税の歴史で自殺行為だ、何で業務用と個人の消費者用の区別のつかない物品にまでこんなものを課税するんだと言って、これはつぶしました。  そういう歴史から、いよいよ個別物品を拾い集めるということは、これは限界だ。主税局の職員というのは、今は、やっているかどうか知りませんが、私がいた当時は、夏休みはデパートの八階からずっと下まで、何か新しいものが出ていないかと探し歩くんですよ、皆さん。そうやってやってもそういうところにまで来てしまったというのが実情なんです。そのことをよくお考えいただきたいということであります。  それから、最後にお聞きしたいのですが、サービスと流通というのをこの基本法案で載っけていますね。これが我々実にわかりにくいのです。考えようがないのですよ。特に流通ですね。中村さんに聞くと、流通でございまして課税負担の帰着があいまいなものでございますなんて言って、何か流通税の教科書に書いてあるようなことを言うのですね。これは印紙税とか登録免許税のことでございますよ。それで、伊藤先生に聞くと、いや、個別間接税をやりますとサービスと流通が抜けるのですというようなことを言うのですね。そうすると、私なんか、これは個別間接税というのをメーカー庫出税でやるということをお考えで、そうすると卸とか小売のいわゆる物品販売業が抜けるということで、これに課税しようとしているのかなと思ったりするのですが、いかがですか。
  22. 中村正男

    中村(正男)議員 物品税の問題だけに限ってお答えしたいと思います。  私ども、物品税にはいい点とそして問題点と両方あると思うのです。先ほど委員が言われましたように、私もOA機器に対する物品税の適用については反対の立場で物特で論議をした経験がございます。  問題点でありますけれども、何よりもやはり課税対象品目の課税、非課税のアンバランス、負担の不均衡というのが一番大きな問題ではないかと私は思うのです。しかもそれはかなり政治的に、また人為的に過去長い歴史の中でゆがめられてきた、そういう点が一番問題だと思います。だからといって、これをすべてなくして一律に消費税でもってカバーするということには、私はストレートに賛成できない。ある一面この物品税にも評価をされる点があるわけです。それは、一つは徴税コストがいわば少なくて済むということ、それから納税義務者が少ないということ、それから逆進性が、お嫌いでしょうけれども緩和をされる、そういう長所もあるという意味合いで、いわゆる税制改革協議会ではそういったことも含めて新たな間接税のありようとして検討いただきたい、このように思っております。
  23. 柳沢伯夫

    柳沢委員 あらかじめ今までの議論の前に用意された御答弁でございますから、それはそういうことでやむを得ないでしょう。  最後に私、一言申し上げておきますが、皆さん方のお立場というのは、私は政治的な戦術としては理解できます、正直言って。私も同じ立場になればひょっとしてやったかもしれないなぐらいに思いますよ。というのは、新税は悪税なんです。はっきりしているんです。新税をやったらどんなにうまくやったとしても反発がないという状況は考えられないです。これは税の本質ですね。ですから、そのエネルギーを野党人たちに利用するなと言ったって、それは無理というものでありまして、これはこれでわかるわけであります。  それで、じゃ、与党はのんだと。私はよく選挙区で言うんですがね。みんな文句言うのはわかっているんだ、わかっているんだけれども、私は政権政党に属しているから、私は賛成するんだ、推進しているんだと言っている。何ですかと言うから、それは責任というものですと。幾らその反発が予想されるものだって、責任でやらざるを得ない。私はあえて言いますよ。為政三部書に、責任どころじゃない、任怨という言葉がある。うらみに任ずるです。うらみに任じましょう。為政者の片棒をかついでいる陣がさ代議士かもしれないけれども、一員だ。だから、うらみに任じましょう。任怨ですよ。皆さん、そういう気持ち与党議員気持ちだということを知ってもらいたいということであります。  そして、皆さん方に申し上げたいことは、要するに、もうそろそろそういう政治的財産も効果が減衰していますね、新税でなくなっているわけだから。これをさらに来年の四月の統一選挙までどうしても持っていって有利に展開しなきゃという、そういうさもしい気持ちはそろそろもうやめにしたらどうだろうか。これ以上やったら、今度は逆に、与野党議員ともに知的怠慢だと言われますよ。政治的にはわかるけれども、知的には怠慢だねと言われますよ。  以上です。
  24. 山崎拓

    山崎委員長 これにて柳沢君の質疑は終了いたしました。  小杉隆君。
  25. 小杉隆

    ○小杉委員 柳沢先生から理論的にいろいろと質疑が行われましたので、私は、観点を変えまして質問をしたいと思います。  もう既に消費税を含むこの税制改革につきましては、昨年の参議院の審議あるいはまたことしも、今回もずっと行われてきているわけでございますが、この消費税をめぐって行われました昨年の参議院の選挙のときに、野党特に社会党が躍進をいたしました。その後、ことしの衆議院におきましてはこれは敗退をしたということでありますが、この原因について改めて伊藤さんからお聞かせいただきたいと思います。
  26. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 昨年の参議院選挙は、日本の政治に劇的な大きな変化を与えました。また、先般の総選挙でも大きな御支援を社会党はちょうだいしたわけであります。  その経過を振り返ってみますと、何といっても消費税への国民の怒りというものが大きな要因であったと思います。それに加えまして、政権交代のない四十年余りの日本の政治というものの中でさまざまの腐敗が起きたことに対する国民の怒り、三点セットとかいろいろなことがございますけれども、それが何といっても大きな原因となってこのような選挙の結果があらわれた。私といたしますと、やはりともに消費税廃止のためにやってまいりました野党全体が平等で勝利すれば本当によかったなという気持ちも強く持っております。
  27. 小杉隆

    ○小杉委員 それでは、ことしの衆議院で野党がトータルとして敗北をした、この原因は何だとお考えですか。
  28. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 私どもの土井委員長が、半分の勝利と申しました。社会党は、復元と申しましょうか、議席をふやしていただきましたが、ただ、共同で目的とした与野党逆転というものが衆議院では実現しなかったという意味で、半分の勝利というふうに率直に私ども評価をいたしておるわけであります。  なぜそうなったのかということを考えてみますと、今までの議論の中でも申しましたように、国民の最大の関心事の一つであった消費税についても、争点隠し、あるいはまた有力な与党議員消費税廃止を公約するというふうなさまざまなことがあったと思います。また、正直申しまして、今までにない膨大なお金の選挙が行われたというようなことが重なりまして、確かに私どもの方から政権交代の鮮明な見取り図を出せなかったということも私ども反省がございますけれども、重なって、このような結果になったというふうに考えております。
  29. 小杉隆

    ○小杉委員 私は、今いろいろ理由を挙げられましたけれども、参議院で野党が勝ったというのは、まだ野党消費税に対する全貌というものがはっきりしない、ただ廃止ということだけで国民の共感を得たということであった、その結果として勝利が得られたと思います。  しかし、その後衆議院に至って、それでは廃止をするという社会党を初めそのほかの政党の人たちが、一体この消費税を含む税制改革についてどんな具体案を持っているのか、それを示し得なかったというところにやはり国民の不安があった。しかも、四党の間にも、先日来の論議にもありますように、物品税一つをとってもいろいろな不協和音が生ずる、こういうことであったと私は考えているわけであります。したがって、中身がはっきりしない、しかも安定した税制の姿が示し得ない、こういう中で今までのあらゆる努力がむだになってしまう、そういうことで、ことしの衆議院の選挙では、責任を持って見直しましょうという方がやはり支持されたというふうに考えるわけでございます。  そこで、土井委員長は終始一貫、これはもうやるっきゃない、だめなものはだめだ、こういうふうな非常に硬直した姿勢でありますけれども、選挙民に対してここずっと選挙公約に掲げてきた消費税の廃止というものが今の政治状況では実現できないということになった場合に、一体土井委員長はどういう責任を感じ、どういう方向にその責任を果たす方途を見出そうとしているのか、その辺をひとつ伊藤さんから聞かしていただきたい。
  30. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 委員長にかわってという意味ではなくて、私ども気持ち全体という立場でお答えをさせていただきたいと思います。  お互いに政党はそうでございますけれども、選挙で国民皆様に公約をしたことを最大限に誠実に努力をするということは言うまでもないことであろうと思います。したがいまして、現在私ども社会党は、建前だけではなくて、まさにそういう国民気持ちを含めまして、基礎にしながら、私ども野党結束をいたしまして廃止、再改革法案を提案をしている。きょうでまだ三日目でございまして、まだまださまざまの議論をしなければならないと思います。今までの議論を振り返りましても、それぞれお互いに攻撃的なさまざまの議論もございましたし、こういう点についてどう考えるのか、突っ込んだ御意見もございました。そういうものをもっと掘り下げて、委員会で、国会議論するということが当面の大きな責任であろうと思います。  ですから、私ども提案者といたしますと、道理の立場に立てば、白紙に戻してやり直そう、こういうお気持ちになっていただけるはずだという気持ちで提案をしているわけでありまして、だめになるから責任はどうするんだというようなことを今全然考えておりませんし、むしろ、おっしゃるならば、与党の見直し法案も同じようにだめというふうにマスコミで報道されております。政府の方がそれにどのように海部総理初め与党として責任をお感じになるのでしょうか。  私は、そういうたたき合いではなくて、本当にこの税制全体を真剣に、国民の御納得を得るために勇断を振るってどうするのかということが今責務ではないだろうか、そんな気持ち審議に当たらせていただいております。
  31. 小杉隆

    ○小杉委員 大分すりかえ的な答弁ですけれども、私どもは、今までこの件に関しては非常に長い経過がありますね。例えば、売上税を提案をして大変な反発を受けてこれを廃案にする、そして、議長裁定によって直間比率の見直しを含めて与野党で協議をしようではないかというような経過もありました。また、消費税を提案をして、そしてその中でいろいろな国民の意見も聞いて、消費税が通った後でも、この見直し案を提示して少しでも国民の願望に近づけたい、こういう努力でやってきているわけでありまして、そうした過去の経緯を考えますと、時代の推移とか国民の意識の変化というものに我々は機敏に対応してきているわけです。  やはり選挙の結果というものは、これは一つの民意ですから、土井さんも、自分の信念を貫くのは立派ですけれども、しかし、国民の多様な要求を敏感にかぎ取って、今置かれた立場をよく考えて、もう少し柔軟な姿勢をとることができないのか。今、与野党が参議院では逆転をしている、参議院では野党が優勢、衆議院は与党が優勢、このままでは両方ともこれは廃案になってしまう。きのうの社会党の武藤質問では、この結果は大蔵省だけが喜ぶ、こういうようなことも言われました。  こういう現時点に立って、社会党の政策責任者として、野党のリーダーとして、こうした現状を踏まえてどういう対応をしていこうというお考えか、聞かせていただきたいと思う。
  32. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 私どもは、税制議論するに当たりまして、タックスデモクラシーの精神からいいましても、お互い将来像をどうするのかという場合に、やはりあるべき方向づけなり、言うならばあるべき理念、目標、そしてまた御納得のいただける制度は何なのかということを、意見の違いがあっても真剣にお互いに詰めていくというのが税制に関するところの議会人としての使命であらうというふうに考えております。  そういう立場でございますから、私どもは反対だけの野党などというつもりは全然ございませんし、やはりそうではない積極的に提言できる野党でなければならないという気持ちで、この数年間も四野党いろいろと語り合いながら結束してやってまいったわけであります。  そういう立場から幾つか今までも提言をいたしてまいりました。先ほど申し上げました税制基本構想あるいは不公平是正の十項目提案、これらにつきましては与党の方積極的に対応するという意思表示をされまして、私は一定の成果があったと思っております。しかし、結果的にはまだ半煮えに終わっているというふうな状況でありまして、何かこういうものも議論を通じて仕上げていきたいというまじめな気持ちを持っているわけであります。そういう気持ちを持ちながら、この私ども提出の法案の中に、あるべき目標、そのために特に議論しなければならない、五つか六つか挙げてございますけれども、幾つかの重要な柱というものを提起をいたしているわけであります。  よく皆様方からの御質問の中に、そういうものについてのはっきりした責任ある具体像がないではないかという御発言がございました。実は私ども不勉強でいるわけではありませんで、各党ごとにもあるいは共同でもさまざまな勉強、努力はいたしているわけであります。  しかし、今日までの経過を考えますと、初めに大型間接税ありきという手法がやはり国民の大きな怒りを買ったという経過であったろう、そういう意味では、やはりこのプロセスを大事にしなければならない。しかも、消費税だけではなくて、やはり公平感をどう実現しますか、御議論ございました福祉と国民負担というものは、一体将来像はどうあるべきなんだろうかなどなどを含めまして、全体像として御納得のいただける税制をどうつくっていくのかということではないかと思います。  私ども、勉地はさまざま努力をいたしておりますけれども、そういうプロセスを特にこの経過上大事にするという意味で、国民税制改革協議会などの形を法案で提案をさせていただいているわけであります。
  33. 小杉隆

    ○小杉委員 社会党以下皆さんの姿勢は、お言葉をそっくりそのまま返上したいと思うのですね。今までの姿勢というのは、まず消費税廃止ありきということで非常に硬直した姿勢が続いているわけですよ。しかし将来像とかあるべき姿を模索している、こういうことを言われましたけれども、これはこれから新しい税制を導入しようという前の段階なら今の答弁でいいですよ。しかし、現実にはやはり今まで、私がさっき申し上げたように売上税の問題、古くはこの前加藤紘一先生から言われた十年前の一般消費税から始まってきているわけですね。そして、現実にもう昨年の四月から導入をされて、今見直すか否かというような、そして現実にもし野党皆さんが言われるようにここでやめて、そして改革協議会で協議をしてまたやるといえば、ここ数年間の間に三回も変わる、国民生活にも重大な影響を及ぼすような時点に立って、まだ廃止だけしか出せない。  廃止法案を出すのならば、なぜもう少し責任ある立場で、特に社会党初め野党は参議院では多数をとっているのですから、どうして廃止法案と同時に代替財源法案を提案しないのか、これを改めて聞きたいと思うのです。
  34. 神崎武法

    ○神崎議員 代替財源についてのお尋ねでございますけれども消費税の廃止に伴う代替財源につきましては、昨年の国会におきまして参議院に代替財源法案五法案として提出をいたしました。参議院では可決され、その後衆議院に送られました経緯があることは委員御承知のことと存じます。  私どもの代替財源に対する今回の廃止法案における考え方も、昨年参議院に提出し衆議院に送付された代替財源法案の考え方を踏襲する、そういう考え方でございます。さらにまた、本年度の政府予算案に対する野党四党の共同組み替え要求の中におきまして、私どもの財源の考え方基本的な考え方をお示ししているところでございます。したがいまして、私どもは財源につきましても責任ある態度で臨んでおりまして、野党は無責任という批判は当たらない、このように考えております。
  35. 小杉隆

    ○小杉委員 昨年財源五法案を提案されたことは十分承知しておりますし、またここにも提案されたことも知っております。  そこで、そういう現実を踏まえて野党側から責任あるその財源法案なるものが出される、そういう前提を踏まえて行われた衆議院の選挙、これで敗れたわけです。私は、さっき申し上げたように、やはり野党展望がよくわからない、税制に対する考えがよくわからないということも、この衆議院の結果にあらわれたと思うのです。  ですから、あれから時間がかなりあったわけですからね。私は、ある意味では参議院の人たちは、非常に乏しい資料、乏しいスタッフであれだけのものをつくり上げたというのは大変な御苦労だったと思うのですよ。私は、あれから時間がたっているのですから、しかも参議院で絶対多数をとっているのですから、とにかくそれまでの経過を踏まえて責任ある財源案を示すべきではなかったのか。それが、土井さんがだめなものはだめ、廃止法案をあくまでも出すんだと言うのだったら、その裏づけとなる財源を出すというのがやはり政治家としての責任じゃないでしょうか。
  36. 神崎武法

    ○神崎議員 先ほど御答弁申し上げましたように、私どもは代替財源につきましても平成二年度の予算要求に対する組み替え要求の中でフレームを明確にお示ししているところでございます。また選挙の前におきましても、既に昨年の国会におきまして明確に代替財源の考え方はお示しをしているところでございます。したがいまして、野党四党が代替財源につきましてどういう考えを持ってこの消費税廃止に臨んでいるか、この点は選挙前においても既に明らかになっていたと考えます。
  37. 小杉隆

    ○小杉委員 この財源法案とかあるいは組み替え要求を見ましても、これで本当国民が安心して納得するかということについては、私は大変疑問がある。それはまた後ほどちょっと触れたいと思いますけれども。  それでは、今度の基本法案で、国民税制協議会ですか、このことを非常に高く位置づけているわけですね。国会が最終的には政策を決定する最高機関であるのに、何ゆえに国民税制協議会にすべてをゆだねるのか、この辺を聞かせていただきたいと思います。
  38. 宮地正介

    ○宮地議員 先生御存じのように、税というのは国民の理解と信頼を得て幅広く国民の声を吸収をしていかなくてはならないわけでございまして、今回の税制改革に当たりましてもこの点は最も重要な点でございます。  税制改革基本法案の第七条の二項におきまして、私ども国民税制改革協議会を設置いたしまして、そして国民の広い知識と経験を有する方々の御意見を伺おうとするものでございます。  国権の最高機関というところは立法府でございまして、この税制改革協議会における調査審議を踏まえまして、そうした御意見を尊重しながら私ども国権の最高機関が最終的に決定をしていく、こういうようなプロセスになっているわけでございます。そして、御存じのとおり、政府税調と同じように国家行政組織法の第八条に基づいているわけでございます。特に、この協議会は法律によって諮問されるというところが特徴でございます。
  39. 小杉隆

    ○小杉委員 国民税制協議会と政府税調との違いというのは、今説明があったように、その指名は国会で行う、それから報告義務を課している、この二点だと思いますが、この国民税制協議会というものが、審議事項が重なるということはないのかどうか。それから、もし重なり合うということがあったならば、同じことを別々の審議会が審議するということがあるし、その両者の結論が違うということもあるわけですね。そういう場合の手だてというのはどうするのか。  それから、「設置後一年」とありますけれども、協議会はいつ設置をする予定なのか。それから、協議会は「一年を目途として、」結論を出すというけれども、実際に中身を分析してみますと、例えば国民総背番号制の導入とか、いろいろ、そんなにすぐに結論の出そうもないような問題がいっぱい含まれているわけですけれども、そういったような問題についてはどう考えておられますか。
  40. 宮地正介

    ○宮地議員 政府税調と国民税制改革協議会がぶつかるではないか、こういう御意見でございます。  私どもは、今回のこの消費税廃止法案が成立をいたしますれば、また、この税制改革基本法が成立を国会できしていただきますれば、直ちにこの協議会をこの法律に基づきまして総理府に設置するわけでございます。そして、国民皆様方の広い知識、専門的な知識を得まして、これからの新しい税制のあり方、改革について調査審議をお願いするわけでございます。そういうことでございますから、政府税調におきましては、これはやはりその間は一時お休みをいただくということも十分に考えられるわけでございます。  また、先生今、それではこの一年間で実際に諮問から答申まで難しいではないか、こうおっしゃいますが、消費税導入のときにおきましても、御存じのように六十二年の十二月に諮問いたしまして約半年間でこれが答申をされている。また、既にこの十年間、税制につきましては国会におきましても論議をしてまいりましたし、また、昨年の参議院におきましても八十四時間という大変な審議もしてきたわけでございますし、その後こうした審議につきましても、国民の前で議論が活発に行われ、前進もしてきているわけでございますので、私どもとしては一年間の時間がありますれば十分に可能である、このように理解をしておるところでございます。
  41. 小杉隆

    ○小杉委員 これでは、政府税調と国民税制協議会、一方は全くお休みをするというようなことで、まさに屋上屋を重ねて行政改革にも反する、こういうことを言わざるを得ません。  それから、今まで十年間の検討があるから早くできると言いますけれども、しかし、ここに示されている内容を一年間ですべての協議は不可能だと私は考えております。  そこで、今十月一日から消費税を廃止しようということですけれども、これからのタイムスケジュールは一体どういうふうになるのか、これをひとつ示していただきたいと思います。
  42. 宮地正介

    ○宮地議員 先ほど申し上げましたようにこの税制改革基本法が成立をさしていただきますれば、私ども消費税というものは九月三十日で廃止をしたい。しかし、法律が成立をいたしますれば、即この基本法に基づきましてこの税制改革協議会を設置するわけでございますから、その点につきましては、国会で成立が早ければ早いほどその審議が早く始まるわけでございます。  この第七条でお示しをしておりますとおり、「協議会は、委員五十人以内で組織する。」ことにしております。また、第八条におきまして、先生先ほど言われましたような、「一年を目途として、その調査審議の結果を、内閣総理大臣に対し、報告する」、こういうものでございますから、基本的には、私ども基本法に基づいての基本原則改革の手順、こうしたものに沿ってこの協議会というものを運営してまいる次第でございます。
  43. 小杉隆

    ○小杉委員 どんなに早くてもまあ二、三年はかかると言わなければいけないわけです。  そこで、昨年の四月から消費税が始まり、そしてことしの十月一日からこれが廃止をされて暫定的な税制を行う、そしてまた二、三年後に新たな税制が始まる、こういうことになりますと、数年の間に三度も変わるということになりますと、これは国民生活に本当に重大な影響を及ぼしますし、経済活動にも非常にそごを来すと思うのですが、この点についてはどうお考えですか。
  44. 宮地正介

    ○宮地議員 既にお話を申し上げておりますとおり、最近の経済情勢というものは非常に好調でございます。そういう点で私ども、組み替え要求あるいは平成三年度の今後の財源措置等につきましても、十分に私どもの代替財源というものは捕捉できる、このように理解をしているわけでございまして、決して先生おっしゃるように二年も三年もかけて結論を見出すわけではございません。先ほど申し上げましたように、政府税調でさえ諮問から答申まで半年、成立までも一年半、こういう過去の実例もあるわけでございますから、国民のこれだけの期待とまた注目のこの税制改革の問題でございますから、精力的に調査審議をし国民の負託にこたえるのが当然である、私はこのように考えております。
  45. 小杉隆

    ○小杉委員 経済状況がいいと言いますけれども、これは後ほど触れますが、そんなに楽観できる状況ではないと思いますし、また、仮にできるだけ短期間に結論を出すとしても、例えば具体的に例を挙げると、今までの商店のレジスターとか値札とかカタログとか、これを全部やり直さなければならないのですね。それから、鉄道とかバスとかタクシーの場合には、料金の改定だけではなくてその表示、あるいは駅の自動切符販売機とかタクシーのメーターとか、そういうのを全部やりかえなければいけない。あるいはまた、六十二円の郵便切手とか四十一円の郵便はがきの印刷のやり直し。こういう国民生活に及ぼす影響ということをやはり十分考えて、現時点でどうするのか。これ以上申しませんが、そのことも十分考えてやはり税制改革というのはやっていかなければいけないということを申し上げておきたいと思います。  ということで、今まで申し上げたように、国民の願いというのは、やはり現実をよく考えて、現在及び将来の我が国に必要な消費税制あるいは税制をどうしたらいいのか、単に廃止をすることだけが国民の意思と期待にこたえる道ではないと思うのです。ですから、冒頭申し上げたように、やはり現時点の状況を踏まえて皆様方も現実的かつ柔軟な対応をしていただきたいということを申し上げたいと思います。これについて、伊藤提出者にお願いします。
  46. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 何か現状を前提にして柔軟に対応することが現実的というお話がございました。  私は、思いますけれども、やはり税制国民の御納得を得られるようにしなければならない、これは税制基本的な原則であります。そうなりますと、今、現状の消費税に対しては圧倒的な国民が納得できない、また、見直し案についても大きな国民の御不満がある、そういう状態の中で、長い目でこういう状態が長期に続くということはまさに私は国民的な不幸であろうと思います。税制に対する国民の信頼感が根底から崩れる危険性があるということではないだろうか。短期間に、御指摘ございました点も含めましてさまざまな努力を私どもはしなければならないと思います。それがあっても、しかし納得できる税制をここでつくるということの方が日本の将来、社会の将来にとって本当にこれが一番大事なことではないだろうかというのが私どもの法案提出気持ちでございます。
  47. 小杉隆

    ○小杉委員 納得のできる案をつくると言いますけれども、全くその青写真が示されてないんですね。わずかに皆様方の考え方の具体的にわかるのはこの間の共同要求、この内容についても極めてこれは疑問点が多いわけでございます。  今の質問に対して、ほかの提出者の意見も聞かしていただきたいと思うのです。
  48. 神崎武法

    ○神崎議員 私どもは、提出者の一人といたしまして、現在国会提出しております廃止法案関連四法案につきまして、ぜひ委員皆様方の御理解をいただきまして可決させていただくよう心からお願いを申し上げる次第でございます。  やはり、今回のこの消費税問題の発端となりましたのは、いわゆるボタンのかけ違えというふうにも言われますけれども、公約違反等々手続的にも内容的にも問題のある消費税を、国民の理解と納得を得られないままに導入したところに大きな混乱の原因があるわけでございます。したがいまして、まず白紙にしてもとの状態に戻して、それからあるべき税制改革について与野党を通じて御論議を重ねる、これが一番望ましいのではないか、このように考えます。
  49. 小杉隆

    ○小杉委員 提出している立場ですからそれ以上のことは言えぬだろうと思います。ただ、提出者の中にも、先日来の答弁の中でかなり現実の局面を考えた御発言もあったということは、国民皆さんもテレビを通じて知っていると思います。  そこで、これ以上の深入りは避けまして、少し代替財源の中身を触れてみたいと思うのですが、一口に言ってこれはもう急場しのぎの帳じり合わせという一語に尽きると思うのです。これを一つ一つ取り上げて一々質疑をするというのもあんまり大人げないのですけれども、一応私は問題点をさらっと申しまして、後から感想なり御意見を聞かしていただきたいと思うのです。  まず、物品税の復活ということでございます。旧課税品目を対象として、全体の税率区分を四%から一〇%の四段階で復元することというふうにしてありますけれども、これは、その個別物品制度を、どの商品に課税するかというのは政府が決めることになるわけですよね。先ほど柳沢さんから物品税をどうやって決めていくかについての苦労話がありましたけれども、むしろ私は、国民が自由に選択できるのですね、消費税の場合には。何がぜいたくで何が必需品であるかということをあらかじめ政府が決定するのではなくて、多様な国民のニーズの中で、これは必要だ、これは買おう、そういうことで、それは消費税が高ければそれは買うのをやめるだろうし、ほかのものに変えるだろうし、そういう利点があると思うのですね、消費税の場合には。そういうあらかじめこちらから国の方で物品税を決めるというようなやり方というのは、多様な国民のニーズを無視するやり方だと思うわけです。  それからもう一つ。現在価値観が多様化して、この間も毛皮とダイヤモンドの話も出ましたし、それからサービス化が非常に進んできておりまして、今、日本の国民経済の中でサービス、流通部門というのが非常に多くなってきているわけですから、こういう物品税を復活するというのは余りにも時代錯誤であるし、国際的にも通用しない。また、具体的にどの品目にどの税率を適用するかというのも、概略は書いてありますけれども、全然そういうはっきりしたものがないということです。  それから、有価証券の関係税についても強化をしていくというのですけれども、現在の株価の低迷というものを考えてみますと、さらにこれに追い打ちをかけるし、また市場の混乱を招くおそれがある。それから、野党の提案では株価が毎年必ず二、三割上昇するというような非現実的な前提に立っておりますけれども、これは最近の経済状況を見ますとそういう状況ではないということで、その見込みどおりの増収が得られるかどうかは全く不確実であるというようなこと。  また、酒税とかたばこ税の増税につきましても、英国とかアメリカとかECというような、そういう国々からも極めて厳しい批判を受けることは必定であります。  そういう面から考えましても、こういった財源案については非常に疑問があるということでございます。  それから、地方財源の減収につきましてもはっきりした補てん策というものが明示されていないとか、そのほか、見積もりの誤差、いわゆる自然増収ということを言っておりますけれども、この自然増収に九千百四十八億円ということを言っておりますけれども、これの試算根拠もはっきりしていない。  また、通行税を五%、三%にすると言いますけれども、この通行税につきましても、非常に、従来の通行税はほとんどが航空機の税でありまして、新幹線とか私鉄の特急にはかかっていないとか、ハイヤーにはかかっていないとか、そういう不合理があったから改めたわけでして、そういうその不合理をそのまま残しているというようなこと。  それから、入場税を五%にして復元すると言いますけれども、かねてから野党の方はこの入場税撤廃を叫んできたはずですね。これは政策的にも非常に整合性がないということでございます。  以上、幾つかの問題点がありましたけれども、何か御意見なり感想があればおっしゃってください。
  50. 中村正男

    中村(正男)議員 代替財源、また組み替えの共同要求の中でのそれぞれの税目についてお尋ねがございました。すべて各税目ごとにお答えするのも、時間が既に大分経過をいたしておりますので、まず物品税の問題についてお答えをしておきたいと思います。  私どもは、今回のこの組み替え共同要求の中における物品税の位置づけとしては、いわゆる暫定措置として考えております。税率につきましても、また対象品目につきましても、いわゆる廃止される前の物品税の復元という位置づけにとどめております。この物品税につきましては、課税品目の消費に示される担税力に対応した課税を行うものである、したがいまして、この消費資金の大きい物品に負担が偏ることはなかなか避けにくいと思います。しかし、それだけに消費すべてに課税される消費税よりは逆進性は緩和される、こういう位置づけにいたしておりまして、あくまでも共同要求の中ではこれは暫定的な措置として今回復元をしておるものでございまして、世論調査によりましても、消費税の見直しとして物品税のような旧間接税を望む声が多くを占めている、したがって、国民の理解は私は得られるのじゃないか、こういうふうな受けとめ方をお願いをしたいと思っております。  その他の酒税の問題にいたしましても、たばこ税等々、小売価格は変わらないという考え方での復元でございます。入場税あるいはその他の旧間接税の復元も同じような考え方に立っております。
  51. 山崎拓

    山崎委員長 森井忠良君、簡潔にお願いします。
  52. 森井忠良

    ○森井議員 今委員から、私どもが御提示をしております、今年度の場合は組み替え要求、来年度の場合はフレームをつけて代替財源をお示しをいたしておるわけでございますが、私ども考え方基本は、とにかくこの十月一日から消費税を廃止する、したがって消費税がないわけですから、基本的な考え方は、物品税にいたしましても、御指摘のように通行税その他の税金にいたしましても、消費税導入以前の状態にとりあえず返すということを基本にいたしておるわけでございまして、それも極めて短期間、私どもとしては一年以内に税制改革協議会で結論を出していただく、こういうことでありますので、るる御質問がございましたけれども基本的には今申し上げました消費税を廃止をするという前提に立って当面の代替財源をお示しをしておる、こういうことでございます。
  53. 小杉隆

    ○小杉委員 余り時間がありませんからこれ以上申し上げませんが、これは、グランドデザインというか将来のあるべき税制の方向というのがはっきりわかっていて、それで暫定案というのなら理解できますよね。しかし、こちらの方はもう現実に消費税というのは行われて、新しい税制がスタートして、ちゃんと鉄筋コンクリートで家が建っているのに、野党案の方はまだバラックも建ってない。参議院のときは財源五法案が出ましたから、まあバラック建てぐらいは出たんだろうと思うのですが、今回はバラックも建たないで、何か材料だけ並べられたという感じで、非常に急場しのぎの帳じり合わせという印象を否めないわけですけれども、まあ、これ以上言うのは武士の情けで差し控えたいと思います。  そこで、特に税収の見積もり誤差というのは、これはやはり相当考えなければいかぬと思うのですね。今まで確かにここ数年来税収は非常に好調でした。これを支えてきたのはいわゆる三高二安、株高、土地高、円高、それから原油安、金利安、これらを具体的に言いますとたくさんありますけれども、株価にいたしましても、これは昨年の十二月が三万八千円台だったのが、ことしの五月までの資料しかありませんが、三万一千円台へおっこっている。それから土地も、東京都心部で端を発した土地高が、今のところ鎮静化の傾向にある、また若干上がってはきていますけれども、そういうことでなかなか土地の譲渡所得その他も見込みがない。円高も最近は円安に振れてきている。原油の方は若干今下がってきておりますけれども、金利はもう非常に、三・二五から五・二五と、ここ一年の間に二%もこれが上がってきている。こういうことを考えますと、これは非常に安易な見積もりではないか、こういうふうに言わざるを得ません。  本会議関係で、私はこれだけ申し上げて、この質問は一応ここで中断をいたします。ありがとうございました。
  54. 山崎拓

    山崎委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十四分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  55. 山崎拓

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小杉隆君。
  56. 小杉隆

    ○小杉委員 もう残り時間がわずかですから、余り多くを申し上げることができません。最後に、税制改革法の中で特に申し上げたいと思うのは、総合課税主義をとるというのですが、このために納税者番号制度を導入するというのですが、これは年来こうしたことをもくろまれてきまして、かつてグリーンカード制度も法案が決定しながら途中で挫折をしたというようなことですが、この納税者番号制度については非常に国民に反対論も根強いわけです。この間からもプライバシーの問題その他出ておりましたけれども、この国民の中に相当反発の多い納税者番号制度をなぜ導入するのか、この点についてまずお答えいただきたいと思います。
  57. 中野寛成

    ○中野議員 御指摘のような御懸念が国民皆さんの中にたくさんあることは、私どももよく承知をいたしております。しかしながら、やはり税の公平化という視点に立って総合課税方式を考えますと、どうしても納税者番号が必要になってくる。ひとつ国民皆さんに公平な税制を確立するために御理解をいただき、御協力をいただけないものだろうかという視点に立って考えているわけでございます。  しかし、御指摘のようにプライバシーの問題があるわけであります。ただ、グリーンカード制のときには、ちょっとその反対の意味が納税者番号とはまた若干ニュアンスが違ったであろうと思います。というのは、グリーンカードの場合には、利子課税だとか配当課税だとか、そういうものにある意味では限定されるという意味で不公平が生ずるとかいうふうな指摘等もございました。今回の場合には、所得全体を把握するために、しかも税務行政に限ってというふうなことなどの厳しい条件をつけた上で、プライバシーを守り、そして納税者番号の導入を図らせていただきたい、こう考えた次第でございます。
  58. 小杉隆

    ○小杉委員 それでは、納税者番号制度と総合課税制度、これとの関係を聞きたいと思うのです。  納税者番号を導入しなければ総合課税をやらないのか、あるいは納税者番号を導入しなくても総合課税制度はやるべきなのか、その点の関係についてお答えいただきたいと思います。
  59. 中野寛成

    ○中野議員 所得把握、それを公平にしようと思いますと、総合課税のためにはどうしても納税者番号が必要不可欠になってくる。おおよそのつかみ方ということとできるだけ完全につかみたいという視点を考えますと、やはり納税者番号があった方がそれだけ正確であるというふうに判断をしているわけであります。
  60. 小杉隆

    ○小杉委員 納税者番号制度をとらないで総合課税制度はできない、こういうことでよろしいですね。
  61. 中野寛成

    ○中野議員 私どもとしては、総合課税、これは原則として考えられていることではございますけれども、絶対要件ではないにいたしましても、しかし納税者番号の方がより正確に全体を把握することができるというふうに考えているわけであります。
  62. 小杉隆

    ○小杉委員 これは重要な問題でして、納税者番号制度が導入できないのに総合課税をやった場合には、相当税の捕捉が難しくなって課税の不公平というものが生ずるということですから、これはやはり相当慎重に、この総合課税制度と納税者番号制度というのは非常に不即不離の関係にあるということを私は申し上げたいと思います。  質問時間が参りましたのでこれでやめますが、最後に、先ほど申しましたようにバラック建てすらもできてないというような状況で、特に私は、野党第一党でリーダーシップを握っている社会党が、しかも二つの選挙で躍進を遂げた社会党が廃止をあくまでも叫ぶならば、本当国民に説得力のある、納得のできる対案というものを出すべきだと思うのです。これはもう四党が共同歩調がそろわなくたって何だって、政党の責任としてやるべきだと思うのですが、最後に伊藤さんの御意見を聞きたいと思います。
  63. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 二、三回バラック建てという御評価をちょうだいしましたが、実は前に与党の政調会長と、バラック建てかがたぴしゆがんだ家の現行消費税かという論争をしたことがありまして、ある市民の方から言われまして、伊藤さん、やはり大事な税制のことですから、特に責任を持つあなた方が、そういうレッテル張りではなくて本当本当、制度をどうしたらいいのだろうかという真剣な議論をしなさいというふうに言われたことがございます。そういう気持ちで私どもも真剣に勉強していきたいと思います。  先ほど来申し上げておりますように、私どもさまざまの勉強を各党としても、共同でもやっているわけでありますが、ただそれをこの法案審議の過程で、あるいは国民税制改革協議会がスタートする前に出すということは、プロセスからいっても国民合意にそぐわない面があるのじゃないだろうかと思っているわけであります。いずれにいたしましても、それぞれ適切な必要な時点に私どもも真剣にさまざまの提案を出し、そしてまた御議論をいただくということは、言うまでもないことだと思っております。
  64. 小杉隆

    ○小杉委員 終わります。
  65. 山崎拓

    山崎委員長 これにて小杉君の質疑は終了いたしました。  鈴木喜久子君。
  66. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 きのう、きょうの新聞の報道などを見ますと、何か頭にどうしようかなというような気が起こってまいりますけれども、しかしどういうふうな政局になりましょうとも、私これまでこの二月に入りましてからの総選挙を、ずっと消費税廃止ということで終始して戦ってきました。私にとってはこの場というものは、国民皆さんの直接の声というものをこういった委員会や国会に伝える絶好のチャンスでございますので、ここでこの問題についてきょうの質問というのは、国民特にお年寄りとか女性とか主婦というものの声を中心に伺うということにいたしました。  そして、朝のうちに自民党議員の方から、物品税というものについては取り立てに大変手間がかかって、大蔵省の主税官がどのくらい多く苦労しているか。だから大変なので、そうでなくて、ここでは消費税という形で網打ちすれば、この漏れの来るところをすっと一網打尽に押さえられる。だから、こういった網羅的な取り立てをする消費税は必要なのだというようなお話を伺ったのでありますけれども、取り立てられる側の方からの議論というのは、こうした取り立てる側からの便宜という問題ではなくて、取り立てられる側からのお話というものをこれからちょっと伺いたいと思います。そのことについて各党の皆さんがどう考えられるかについて考えていきたいと思います。  まず各党の方に伺いたいのですけれども、昨年審議未了で国会で廃案となりました消費税廃止法案を再び提出するということの意義と理由というものを簡単に述べていただきたいと思います。
  67. 中野寛成

    ○中野議員 昨年廃止法案を提出し、残念ながらそれが廃案となった、それを再びなぜ出したか、こういうことでございますけれども、先日来申し上げておりますように、総選挙の結果、自民党は過半数を獲得をして勝った、そして消費税国民が認めたというふうに解釈したがっておられるようでございますけれども、各種世論調査等から見ましても、やはり国民の怒りはますます大きいものがあるわけでありますし、自民党皆さんも、過半数をとったとおっしゃっても現実に議席を減らしておられるということ、それからまた、当選はしたけれども私も票を減らしましたと正直におっしゃった方もいらっしゃいましたが、そういうこと等を考え合わせまして、私どもとしては再び提出をすることが私ども野党の選挙公約にも準ずることだというふうに考えて、共同して出させていただいた次第でございます。  なお、たびたび申し上げておるところでございますが、消費税導入につきましては、その手続及び内容の両面にわたって大きな問題があるというふうに考えているわけであります。とりわけ、税は対価なしに国の権限でもって国民から一つ資産をいわゆる徴収するわけでありますから、その内容も大切でありますけれども、その決める手順はもっと大切だというふうに私ども考えているわけでございます。  そういう意味で、選挙公約に違反して導入したことや強行採決で議決したことなど、私どもとしては納得ができないわけでありますし、内容の点では低所得者ほど負担が重くなるという逆進性、消費者が納税した税金が必ずしもすべて国庫に入らないという不公正を生んでいること等々を私ども考えまして、ぜひともこれは一たん廃止する以外にない。そして、改めて手順を踏んで、最初から政府や政党の考えや思惑を国民に押しつけるという手法ではなくて、ともに考え、ともに論議して、そして十分な手順を踏んだ上で新しい税制のあり方を決めていくという手法が必要だということを考えまして、私どもとしては、廃止法案とともに、その手順を示す再改革基本法案提出させていただいた、こういうことでございます。
  68. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 よくわかりました。  この総選挙を通じて、この結果を見ても、まだ国民の怒りというものはおさまっていないという御見解だったと思いますが、その点については各党、皆さん同じ御意見であろうかと思います。違う御意見の方がおありでしたらば言っていただきたいのですが、――ということでございますので、後ろの声は無視いたしまして、私はその面について少し、今までもいろいろな方からいろいろな議論があったところですので、違った面といいますか。具体的に国民の信任がどうなっているのか、この総選挙を通じて消費税に関してどういうふうな意思を国民が持っているのかということを少しの例をとりながら考えていきたいと思います。  まず第一に、この消費税という問題について、この総選挙の間にこれが本当に争点となって争われたのかということについて、事実どうなんだろうかということを考えてみたいと思います。  私たちは、これは本当国民投票的な意味もあるのだという形で、消費税は廃止だ、消費税に廃止の方は私たちのところに投票してくださいということをずっと言い続けてまいりましたが、それに対して自民党の方々が一体、消費税は必要なんだ、見直しても必要なのだ、またはそういうことに関して、消費税というものはこれこれの理由なんだということで正面切って議論をして、それが対立点となっているかどうかということについて、選挙公報を全国全部調べてみました。そして、ここにいらっしゃる委員の方々もすべてその中には入っているわけでございますけれども、その中で見てみましたところの結果が出ております。  自民党の公認の候補者のうち百五十人の方が、消費税のことについては消費税のショの字にも触れておられないわけでございます。そして、この税特の中で九名の先生は、やはり何もおっしゃっておられない先生がおられるわけです。それで、また見直しということで触れておられる先生方というのもあるのですが、その中でも大幅な見直し、抜本的見直しという形で触れておられる方があるわけで、消費税は大事だからこれを守りましょうという形の御議論をなさっている方というのはほとんど見られない現状でございます。ましてこの中には、廃止それから凍結、そういうふうに堂々と公報の中に書かれて、そして当選されている自民党議員の方もいらっしゃいます。その中には白紙的見直しという、わからない言葉です、白紙的見直しという言葉を使っておられる方もありました。  こういうふうな現状を見ますと、ここで私ども野党に対して投票された方というのは、消費税を廃止しようと思った意思で入れられていることは明らかでございますけれども消費税をずっと続けよう、そして見直しをしようというような意味自民党に入れられたという方がどれだけあったかということについては、非常に疑問に感ずるところでございます。  そして、こういうふうなことを見ますと、私どもは、今回の選挙は消費税ということで国民投票の意味であるのだからということを言ったことがどれだけ効果があったかということは、大変残念なところだとは思います。しかし、この点で今選挙公報というのは、実際にその場で言い散らす問題ではなくて、後々までこうやって一冊の本になって残るほどの大事なものでございます。そこでは政治家の一番きちんとした政見を述べなければいけないし、言ったことに対しては責任をとらなければならないところであることは間違いございませんけれども、言わなかったことに対する責任もやはりとらなければならないものだろうと思います。その点で、こうした形での民意のあらわれとして、こうした公報の中で見た限り百五十人も、しかも税特の中の九名の先生がそういうふうな消費税に対しては何もおっしゃっていないということについて、どのようにお考えでしょうか。
  69. 神崎武法

    ○神崎議員 今回の総選挙で政府自民党消費税の見直し案が信任されたかどうか、また選挙公報における記載についての感想というお尋ねでございます。  確かに、今回の総選挙の結果自民党が安定的多数を得たわけでございますけれども、得票率を見てみますと与野党とも四六%でございますし、自民党が過半数に達していないわけでございます。また、ただいま委員の方から御指摘がございましたように、この選挙におきまして自民党の候補は意図的にと思えるぐらいに消費税隠し、消費税外しというものをしてきたように思いますし、選挙公報に消費税の廃止、凍結、あるいはただいまございましたような白紙的見直しですか、これはまさに廃止ということだろうと思うのですけれども、そういうことを書かざるを得なかった、そういうことによって国民消費税隠しを行った選挙ではないかと思うわけでございます。その意味において、私は、この選挙の結果をもって自民党の見直し案が国民から信任を受けたとは到底考えられないところでございます。  さらにまた、総選挙後の世論調査を見ますと、この選挙で自民党の見直し案が信任されたと考えるかどうか、こういう問いに対してそうは思わないという回答が五六%もあった、そういう世論調査の結果も報告されております。以上の事実からいたしましても、この総選挙の結果をもって政府自民党消費税見直し案が信任を受けたとは到底認められない、このように考えます。
  70. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 私も、この選挙公報というものを見るまでよりも、これを精査したところが一層そういう感覚を持ちました。  ちなみに、見直しというふうにおっしゃっている方々の中でも、抜本的に見直さなければいけない、それからこの制定の、成立の手続に関しては非常に問題があった、率直におわびするという言葉のある公報というものが非常に数多く見られたということをつけ加えておきます。  そしてあと、得票率ということも今ちょっとお話にもありましたけれども国民一人一人の意思として考えた場合には、確かに野党与党という側で考えた場合の議員の数ではなく、一人一人の得票ということを考えた場合に、その人その人は消費税に反対するという意思を持って投票したという観点から考えますと、ほとんど差がないというか、こちらの方が勝っているという形での投票があったというふうに聞いております。そしてその次の福岡県の選挙、補欠選挙におきましても、この参議院の結果では十二万票という大差をつけて、ここで消費税廃止という方に、こういう形でそれが対決に結びついた場合には十二万票の大差をつけたものとしての県民の意思があらわれるわけでございます。これを考えますと、これについて国民の意思というものがこれで信任されたということは、おっしゃるように全くないものだろうと私も考えます。  その次に、果たしてこの消費税というものは、こうした民意の反対ということにもかかわらず結局もう一年余り続いてきたわけでございますけれども、これに対してこの消費税というものはもう既に定着したのか、国民の怒りというのはもう薄れてしまって、おさまってしまって、このままでいいやというふうに思っているのかということについても、今の問題とは少し違う点からまた考えてみたいと思います。  私は、女性の立場ということを考えまして、現在の女性たちの声というものをここのところ足をすり減らしてずっと聞いてきました。そして、話し合いを続けてきていろいろと聞いてまいりました。またもう一つ、手紙でいろいろと中身を、どんなことを考えているかということを聞かせてほしいということで、幾つもの手紙というものをもらってまいりました。こうした話し合いと主婦たちの手紙、それから働く女性たちの声というものを一緒に全部言ってみますと、この中では消費税の問題で一番大きな問題として考えられたのは、家をせっかく建てようとして建てられなくなってしまったという事例を言っておられました。ぎりぎりいっぱいの予定を立てて、これだけでやっと建てられるという予算とそしてその金融を得たのにもかかわらず、それに関して消費税がつくということであと百万円ぐらい多くかかってしまう。そうすると、またその融資と返済を考えなければならない。こういうことでまだ一時ちょっとその計画はとんざしなければならなかったというようなことは、直接の消費税考え方の中にあると思います。  それからまた、年金生活者に関しましては、これはもう何回もいろいろな方から言われていると思います。この問題では、年金生活者では二十万円もらっている、年金生活者の中では相当な大きな金額だと思うのですけれども、二十万円もらっている人が二十万円使って生活をしていた。しかし、それには必ず、これは消費だけで暮らしているわけだから三%は必ずつく。その六千円はどこから一体出てくるのだろうか。毎月毎月そういう問題が出てくるじゃないか、こういうふうな話が伝わってまいりました。  そしてもう一つ、働く女性の中からは、これは消費税ということに関してではないのですが、配偶者控除に関しまして、働く女性とそれからただ家にいる専業主婦の問題として、配偶者控除ということに差があるというのは一体どういうことなんだろうかという疑問とか不公平感を漏らされた方もありました。こういうところを見ますと、女性たちの間では、今の問題、実際問題消費税として困っている問題、それからまた不公平感というものが全体を通じてあるものだというふうに私は考えてまいりました。  それで、そういった結論の中で考えますと、消費税というものについて国民の怒りがあったのか、今もまだ消えずにあるのかということで、一つだけちょっとだけ読ませていただきますと、私はいまだに消費税にはなれていません。だからその都度腹立たしい思いを味わっています。小売店のウインドーに並べられた商品の価格表示は、すべてきちんと税金抜きの金額で書かれている場合が多い。千六百円といって千六百円出すと、そうでなくあと四十八円つくということで、消費税を取る店はせめて消費税を加算した金額で表示したらと思っても、もしかしたらこういう考え方で便乗していくんじゃないかしらとも思われる。消費税になれないための措置なんではないかというふうにも思われるくらいだというようなことを言っております。  こういうふうな手紙というものは毎日のように私のところに来るわけですけれども、こういうところから考えて、消費をする人たち、特に消費をする女性たちという側で消費税というものが果たして定着しているのかということについて言うと、到底定着したとは思われないというふうに考えられます。そしてその怒りというものは、先ほど来御答弁にもありましたところですけれども、成立過程、手続における問題とそれから内容、その両方の面にかかわってくると思われます。  まず、一つの面からいきます。成立過程で非民主的なことがあったということについてでございますけれども、リクルートで汚染された、汚れた手によってつくられたという問題と、それから大型間接税は導入しないという約束に違反したという問題、そして強行採決によって議会制民主主義というものがその点では踏みにじられてしまって議論も何もなかった、こういった成立過程における非民主的な不明朗さというものは、廃止によっては救われるのでしょうか、それとも見直しということでも救われるのでしょうか。この点についてお答えください。
  71. 菅直人

    菅議員 今鈴木さんの方から、本当に具体的な、特に女性を中心とした消費税に対する現在まで変わらない怒りというものをいろいろな形で御紹介をいただきました。  私どもも、消費税について政府やあるいは与党皆さんは定着をした、定着をしたと言って、何かもうみんなが賛成をしているかのようなことを言われておりますけれども、そのようには全く受けとめておりません。今鈴木委員もおっしゃいましたけれども、この消費税については、内容的にも非常に問題があり、同時にその成立過程において大きな問題があったわけであります。  私は特に感じますのは、鈴木さんも東京選出ですけれども、大都市ではそのもう一つのバックグラウンドに土地高騰、先ほど住宅が建たないという話もありましたけれども、ぎりぎりのローンを借りて何とか建てよう、あるいは何とかしようと思っていた人が、そういった意味では消費税に加えてといいましょうか、土地高騰によって非常に厳しい資産格差というものがある。その一方で、先ほども言われたリクルートの問題などを含めて資産をどんどんふやしている人がある。そういう中でこういった大衆課税の超大型間接税を導入しようとしたことに対して、私は強い怒りがわき上がるのは当然だと思いますし、またそれが現在まで続いているというふうに受けとめております。  特に、一部業者間では定着をしているといったような言い方も大蔵省などはしておりますけれども、いわば悪法といえども法だという考え方で、法律ができた以上はそれに従わざるを得ないという意味でそれを運営している人もあり得るといいましょうか、当然あるわけでありまして、そういった意味で、そういうものが実際に行われているから賛成が得られているんだという言い方も、これは二重の意味で飛躍があるのではないか。つまりは、その制度を強引に押し通していわば強制的な法律という形でやっているわけですから、それが強制力を持った形で実行されているからといってそれでみんなが賛成しているんだというのは、二重の意味での飛躍であろう、このように思っております。  そういった意味で、今鈴木さんがおっしゃいましたように、私どもも現在そういった両面を含めて消費税が定着をしたとは決して言えないもの、こんなふうに受けとめております。
  72. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 その定着していないものについて、廃止ということによってもう一度改めて税制問題について考える、またはそういう形での税金というものについてある種の間接税を考えなければならないことがあるかもしれない。そういった形で一回廃止をするということによって、そうした成立過程についての瑕疵といいますか不完全性といいますか、またはもっと言えば不合理性、そういうものは一度ぬぐわれて、この次のときにはすべてここで話し合いをしてもう一度みんなの合意を得れば、そこででき上がったものというものはもうすべてそういった成立過程ということに関しては払拭されたものとして出てくるというふうに考えられるのですが、ただ一点私が考えますのは、今、菅先生の方からも言われたのですけれども、土地税制とかまたはその他の税制改革ですね、そこについての不公平感、こういうものについては、たとえここで廃止をしたということによっても、一般の国民たちがすべてぬぐわれてああよかったということにならないことは間違いがないと思うのです。これがただ見直しというふうな形でもし存続していった場合には、手続的な瑕疵については全く何もここでは払拭されていない、そういう形のままで、気持ちの悪い法律のままでいってしまう、この点は非常に大きな違いだとは思います。  ただ、何といってもその後の抜本的な全体的な税制改革というものがない限り、国民の税に対する不公平感、不信感、不安感というものはなくなりません。これはどなたがおつくりになっても全く同じことなのですけれども、その点、これからの立法ということについてもよろしくお願いをしたいと申し上げておきます。  このみんなの強い不公平感というものは、廃止によって払拭されるかどうかということになりましたときに、みんなにどうして不公平感があるのかということを聞いたときに、消費税というものについては果たしてそれが国に本当にちゃんと入るのかどうかという意味での不公平な問題、途中でそれは懐にだれか入れちゃうんじゃないかという意味で、これでもうけるとは不届き至極であるというような感覚であること。それからもう一つは、よく言われる逆進性でございます。そしてもう一つは土地の税制ということで、こういった意味での税制問題についてのいろいろな不公平感というものは、ずっとなくならないことだと思います。  この不公平感のなくならないところで、もう一つ問題があります。これからの消費税というものの、いつどれだけ値上がりしていくかもしれない、この消費税額というものの税率のアップということに関する不安でございます。この点については、もしもこれが今廃止ということになりまして新たに何か税率をつくるというときには、その税率のアップというものの不安感というものはほとんどないというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  73. 宮地正介

    ○宮地議員 委員、今、手続上の瑕疵の問題等に触れまして税率アップのお話になりましたので、一言お答えをしておきたいと思います。  消費税の導入につきまして、委員が今お話ありましたように、まず六十一年の七月の衆参ダブル選挙における、いわゆる大型間接税は導入しないという政府自民党の公約違反、そして六十三年十一月の強行採決、こういう暴挙が行われたわけでございまして、まさにこれは議会制民主主義を踏みにじるものでございます。特に、租税法定主義ということで憲法三十条によりまして、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」このようになっておりますから、今申し上げましたようなこうした過程を見ておりますと、まさにこれは議会制民主主義を踏みにじり、また租税法定主義、こうした憲法三十条にも大変に抵触をしていくのではないか、こう思うわけでございまして、まずこの消費税は廃止をする、出直す、そこから私は国民の税に対する信頼の回復、ここが始まるのではないか、このように理解をしているところでございます。  また、今委員が税率三%、今後引き上げられる可能性があるのではないかと、私ども大変ここを危惧をしておるわけでございます。福祉目的のためにこの財源を充当する、こう見直しの中には規定しておりますが、委員御存じのように今福祉の財源は約十一兆円でございます。三%の税率で総額で約六兆円、これが国と地方で六、四でございますから、国税分は約三兆六千億でございます。そうしますと、当然にこれは大変な財源が足りないわけでございまして、まともに消費税で財源措置をするということになりますれば、三%が今後引き上げられる、そういう可能性は十分あるわけでございまして、この辺は大変我々も危惧しているところでございます。厳重に国会においてもこの点はチェックをしていかなくてはならない、このように考えております。
  74. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 ところで、この消費税の問題について、物価そのものがこれにつれて値上がりしたのではないかということがありますので、ちょっとその問題について経済企画庁の方にお伺いしたいと思いますけれども、平成元年度については、この消費税が導入された年度についてはどのぐらいの物価の値上がりが消費者物価についてありましたでしょうか。
  75. 加藤雅

    加藤(雅)政府委員 平成元年度につきましては、消費者物価は前年度に比べて二・九%上昇いたしました。このうち一・二%程度消費税の導入による影響分であるというふうに考えております。
  76. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 今の二・九%というのは、消費税の三%のことを除いて純粋に消費者物価が値上がりしたという意味ですね。ちょっとその点をもう一度確認させてください。
  77. 加藤雅

    加藤(雅)政府委員 消費税の上昇による分が一・二%でございまして、それを差し引きますと、いわゆる消費税以外の物価上昇分は一・七%ということになります。
  78. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 今のは、一・二%というのは、消費税による値上がりというのは、消費税を導入したことによる結果として値上がりした分で、消費税ではないですねということを聞いているのですけれども
  79. 加藤雅

    加藤(雅)政府委員 消費税の導入によりまして、消費税そのものは三%、消費税が導入されました物品については三%上昇するわけでございますが、それをならして物価全体について幾らそれが影響したかという計算をいたしますと、消費者物価というものを一・二%程度押し上げたということでございます。
  80. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 そのことについてもう少し聞きます。  その次は、二・九%の値上がりの中で……(発言する者あり)今ちょっと後ろの方で何か言うと、頭が悪いものでわからなくなってしまうのです。
  81. 山崎拓

    山崎委員長 御静粛に願います。
  82. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 ですから、もう一度ちゃんと聞かせていただきたいと思うのですけれども、一・何%というのは、消費税の影響によってということではなくて、消費税によって上がった分がありますね。百円のものが百三円になった。その百三円になったというものが、三円が値上がり分だということを計算していくという意味ですか。それで計算していくのですか、全部を。ちょっとそこだけを伺いたいと思います。(発言する者あり)
  83. 山崎拓

    山崎委員長 御静粛に願います。
  84. 加藤雅

    加藤(雅)政府委員 今御指摘のございました一・二%と申しますのは、非課税業者等の存在あるいは非課税のものもございます。それ自体が非課税のものもございます。それから、物品税等の引き下げによって逆に値下がりしたものもございます。そういうものを全部含めまして、実際に小売物価調査というのを毎月やっておりまして、その調査の結果として出てくる物価指数というものがございますが、その物価指数が昨年度は二・九%上昇したということでございます。それは物品税、消費税を含めて調査をしておりますので、その含めた分の上昇二・九%のうち一・二%程度消費税等の影響によるものであろう、これは私どもが試算をした結果でございます。そのようにお受け取りいただきたいと思います。
  85. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 今のお答えで大体わかったような気がしますけれども、ここでは一・二%というものが消費税の影響によっての値上がりである、そのほかその他もろもろの影響によって値上がりした物価、消費者物価であるというふうに聞いております。これは消費税の影響であって、消費税そのものではないということがわかればそれでよろしいのです。  その次に行きます。それでは、今度の年ですけれども、今年度におきましては大体どのぐらいの物価の値上がりというもの、現在のままではどうでしょうか。それからまた、見直し案によってはどのぐらいの物価の値上がりというものになるんでしょうか。
  86. 加藤雅

    加藤(雅)政府委員 平成二年度につきましては、政府の見通しがございます。政府の見通しによりますと、本年度の物価上昇率は、消費者物価の上昇率は一・六%程度ということになっております。  ただし、政府提出しております消費税の見直し法案の効果を織り込んでおりまして、この効果を平年度〇・四%程度、十月から実施でございますから半年度分の〇・二%程度ということで織り込んでおります。したがいまして、消費税の廃止がもしなければ一・八%程度上昇するというふうに見通しておるわけでございます。
  87. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 どうもありがとうございました。そういうふうな予想を立てられている。そうすると、ある程度、〇・二%ほど今よりは消費者物価としては安くなるかもしれないというふうなことがもたらされるわけですけれども、こうした見直しというもののもたらしてきた一応私たち消費者にとっての利益というものと、それから今まだ残っています不公平感、そして不信感、これからどれだけ税率が上がっていかなければならないのかというような不安、そういった不安というような意味において、どっちが国民にとって納得的なことであるかということについて、どのような見解を持たれているでしょうか。
  88. 中野寛成

    ○中野議員 お答えいたします。  私どもは、あくまでも廃止を提言をいたしておるわけであります。現在、政府の方からは見直し案なるものが提案をされているわけでありますが、先ほど来先生の御指摘で、物価との関係につきましてるる御指摘がございました。見直し案によりまして幾らかでも影響を受けますのは障害者、また教育、それらの問題につきまして非課税措置が講じられるという部分はございますけれども、これはある意味では当初からかけるべきものではなかったものをやっと今ごろ気がついてお外しになる、こういうことであろうと思います。むしろそれ以外の問題につきましては、食料品につきまして生産から卸段階まで三%を一・五%にする、こういうことでございますのと、もう一つは小売段階における非課税、こういうことでございます。  しかし、その流通過程の中における流通経費、そして包装代等々いろいろなコストにつきましては、これは消費税がかかるわけでございますので、幾ら流通段階で一・五%下げますと言われましても、その物価に与える影響というのは極めて少ない。まして、小売段階の非課税と言いますけれども、仕入れまでの消費税はその価格におのずから転嫁をされているわけでありますから、小売段階で三%消費税がかからなくなるという意味ではございませんから、そういう意味ではこれまた、不当表示というふうに本会議で申し上げましたけれども、こういうレッテルを我々としては張らざるを得ないという状況下にあろうと思います。しかも、食料品以外は今までどおりでございますから、そういう意味では、まして物価全体のトータルとして見る場合にはほとんど影響を与えないという状況にあるのではないだろうか、値下がりはまずないと国民感覚の中では思われるということであろうと思います。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕
  89. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 どうもありがとうございました。  さっき経済企画庁の方に聞くのを忘れてしまいましたけれども、もう一つ、これはお答えが出るといいのですけれども、この消費税を廃止した場合の物価というものはどのようになるかということについては、いかがでしょうか。
  90. 加藤雅

    加藤(雅)政府委員 消費税全体を廃止いたしました場合の物価への影響については試算をいたしておりませんので、わかりません。
  91. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 これは今計算のしようがないというようなことがあるんだろうというふうに伺っておりますけれども、その次の問題に行きます。これは皆さんの方に、各党の方の方にもお願いしておきますけれども消費税廃止によっては大体どのくらい物価というものが下がっていくのかということをぜひ御検討いただきたいと思います。  それで、消費税を廃止するということによって予想される歳入減というのを試算でお出しになっておられますけれども、こういった歳入が減ることは当然なんですが、この代替財源ということで、これはさきの国会のときのままの法案がそのまま援用されるということを考えておられるようですが、そこでこうした議論、代替財源論ということで具体的にどうこうというような問題よりは、むしろもう少し先の方を見据えた抜本的な税制そのものの問題の方が私は今回においても重要じゃないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  92. 宮地正介

    ○宮地議員 委員おっしゃいますとおり代替財源の問題も非常に大事でございますが、消費税を一たん廃止をいたしまして、新たな国民の御理解をいただきまして、新しい日本のこれからの税制改革というものをやっていくことは大変重要な問題でございます。  特にこの財源問題につきましては、既に御存じのとおり、今回、平成二年度の十月一日以降の財源につきましては、組み替え要求ということでフレームを出しておるわけでございます。この状況につきましては、最近の経済状況を見ましても大変に好調でございまして、最近のトリプル安の状況にありましても個人消費は堅調に推移をしておりまして、設備投資も増勢を続けております。企業収益も増加を続けて、今後も景気は順調に伸びることは確実だと予想されておりまして、税収もかなりの伸びが期待ができるところでございます。  元年度の税収調べが六月末に発表されますが、補正予算の五十四兆二千二百七十億円をさらに一兆五千億円上回ることがほぼ確実視されているところでございまして、私どもはこうした数字を発射台にいたしまして二年度税収を試算いたしますと、我々が予算の組み替えの際に示しましたとおり、消費税を廃止しても財源は、我々の試算によりますと税収不足額を約九千百四十八億円、これは十分に見合うものと考えております。平成三年度におきましても、私どものそうした発射台をもとに試算してまいりますと、十分に財源の確保はできる。こうなりますと、やはり平成四年度以降税制改革協議会で調査審議をしっかりやっていただきまして、国民の期待できる税制改革、これをお示ししていくのが妥当ではないか、そういうふうに考えているところでございます。
  93. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 お話よくわかりましたけれども、この税制改革協議会というものについて、ここでの議論というものが十分になされて、国民の期待にこたえるだけの具体的なものをこれから十分出されることを期待しております。  その次に、我々の日常の税金の徴収ということについて伺いたいのですけれども、それぞれの税務の情報等について、国税庁ではどうやって個人個人のこれまでの情報というものを収集し、それを管理しておられるのか、その点について伺いたいのです。
  94. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 国税庁におきましては、あらゆる機会をとらえまして資料の収集には努めているわけでございます。  もうちょっと具体的に申し上げますと、例えば法定資料というのがございます。これは法律でもって決められておりまして、例えば各民間会社の方から出していただくというのもございます。それから、あとは我々が調査の際に、これはやはり後ほど我々の税務行政に役立ちそうだといって収集する資料もございます。その他、こういった資料にとらわれずに各納税者の方から出していただいている申告書等もございます。こういったものを我々機械を使いまして管理しているところでございます。ちなみに、そういった法定資料並びに我々が収集しました資料等、年間おおむね一億枚ほどでございます。
  95. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 最後、おおむね一億枚とおっしゃったのでしょうか。そういう資料を私たちが、仮に鈴木喜久子ということでそれをボタンをぽっと押しますと、鈴木喜久子がどこそこにどれだけ何があってというようなことがその中に出てくるというふうなことになっているわけでしょうか。いわゆる税務署等で名寄せという形で何かいろいろなものが集約されるというのと、どのぐらい違いがあるものなんでしょうか。
  96. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 名寄せの話と情報の公開の話は、ちょっと違おうかと思います。  まず、名寄せの方につきまして申し上げたいと思います。先ほどのようなことで資料を収集しましたものを、基本的には納税者の氏名であるとか、会社であれば法人名であるとかあるいはその所在地、住所等々をもとにいたしまして、我々全国的にこれを名寄せしているところでございます。しかも、コンピューターを使いまして名寄せしているところでございます。  それから公開ということにつきましては、これはちょっと資料の性質からいきまして公開できるものとできないものとあろうかと思うわけでございます。それで、御案内のとおり六十三年十二月に一つ法律ができ上がっております。行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律、こういうのがございます。これによりまして、その個人情報の保有機関の長、国税庁の長官でございますが、保有機関の長は、開示請求があったときは、請求に係る情報について開示しなければならない、こういうふうになっているわけでございます。現在、ここのところの施行が本年末までに施行されるということになっておりますので、我々国税庁といたしましても、この施行に合わせまして情報の開示が適切に行えるよう現在準備中でございます。
  97. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 今ちょっと、情報の開示のことはこの次に伺おうと思っていたところなんですけれども、情報の公開について今言われたのだと思います。  要するに、私が今聞きましたのは、管理の問題をお聞きしたのですけれども、管理されている内容というのは、かなり程度個人的なプライバシーにかかわるところまで今国税庁の方では捕捉しておられるのかどうかというその内容と、そして後半で言われたのは、後で私も伺おうと思っていたのですけれども、公開をされている部分、それから個人的なプライバシーにかかわるものをどのような形で公開されているのか、ちょっとそこを伺いたかったのですが、済みませんけれども、もう一度お願いします。  まず、個人的な資産とか財産に関して、どういうふうな形で国税庁は――そのとり方はわかりました。さっきの、あらゆる機会をとらえていろいろな面からいろいろなデータをお集めになって、そしてそれを私なら私というボタンを押せば、そのままそこの中に鈴木喜久子はこれこれ持って、借金がこれだけあってというようなことがいろいろ出てくるようになっているのでしょうかということです。そして、それを今度次に私なら私がどのような形で見せていただくことができるのだろうかということがさっきの法律にかかわる問題だと思うのですが、済みませんけれども、もう一度お願いします。
  98. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 まず、どのように管理しているかということでございますが、我々のところは、まず納税者の方々から申告書等を出していただきます。それらの主要な項目を各税ごとに、例えば申告所得税、源泉所得税、それから法人税、消費税、こういったごとに申告の状況、納付の状況あるいはその他若干の項目、主要な事項を入力いたしましてそれらの管理を行うと同時に、我々の内部事務にも使えるような情報をやっているわけでございます。  それからそのほかに、こういった申告以外に、先ほど申し上げましたいわゆる資料というものの中から我々がこれは各人別に名寄せをいたしまして、先ほど先生がおっしゃいましたようなことがきれいに出てくるかどうかという問題は一つございますけれども基本的にはおっしゃるような姿を念願に置きながら我々は管理しているわけでございます。  それから、公開の点でございますけれども、現在我々の収集、管理しております資料の中で、納税者の申告とか届け出等に基づいて形成されている資料、これは元来納税者御自身が御存じなデータなものですので、特に現時点におきましては制度的に公開するというシステムはございませんけれども、先ほど申し上げました法律が施行された暁には、そのシステムに乗って公開しようかというふうに考えているわけでございます。  その他の資料につきましては、これはやはり事柄の性格上、納税者の方から国税がどういった資料を持っているかというのがわかるようなシステムでは、これはまた逆にいささか問題もあろうかという気もいたしておりますので、ちょっと公開にはなじまないだろうと思っておりますけれども、さはさりながら、我々そういった資料が実際に納税者とどういう接点を持つかというふうに考えてみますと、やはり調査なら調査といったときに我々がその資料を持って使うわけでございますので、いわばどういう資料を持っているということが納税者に直接的にはおわかりにならなくても、調査等の際に間接的にはおわかりになる、こういうことになろうかと思っております。
  99. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 この問題は、要するにこれから先いろいろな管理というものが、どういう名前がつくにせよ、私たちの個人的な情報、財産というものはどこかで捕捉され、それが管理されていくというような状態がもう既にあるということです。こういうような状態でプライバシーの公開に関しては非常に神経を使っていただきたいと同時に、間違ったデータが取り入れられたときに私たち大変迷惑をすることもあるわけでございますので、この点もよろしくお願い申し上げます。  では、その次に法人税の問題に移ります。  法人税の課税が暫定的な期間でもある程度強化をされることがあるということになりますと、これで企業に大きな経済的な影響というものはないものでしょうかということをまず伺います。
  100. 森井忠良

    ○森井議員 私も先ほどから鈴木委員の御質問をお聞かせいただいておったわけでございますけれども、考えてみると、五十人の税特の委員の中で女性は鈴木委員一人でございます。さすがに女性の立場からきめ細かないい質問をしていただきまして、本当に心から敬意を表したいと存じます。  それから、今法人税のお尋ねでございますが、与党皆さんからは、今度法人税の例えば基本税率を四〇%から三七・五%になっているのをまた復元する、あるいはまた配当軽課税率の延長措置を行うなどなど、こんなに法人をいじめたら、法人も困るし、我が国といたしましても国際競争力の問題で大きな問題だという御指摘があるわけでございますが、私どもはそうは思っておりません。八五年のプラザ合意以降、御存じのとおり円は急激に高くなってまいりました。これではとても日本の企業はもたないというふうな指摘があったわけでございますが、現在百五十円台でありますけれども、これはひところ百三十円を切ったこともあるわけでございますが、並み並みならぬ日本の企業の皆さんの努力、もちろんそれに対しまして働いています労働者の協力もあったわけでございますが、とにかく難局を乗り切って今日に至っておりますし、今、日米構造協議の問題が大きな問題になっておるわけでございますけれども、これもまあ一口で言いますと、やはり日本経済の競争力というのが依然として強いということを物語っておると思うわけでございます。  私どもは、法人税の問題について今度は過渡的、暫定的に、先ほど申し上げましたように基本税率等を復元をさせておるわけでありますけれども鈴木委員御指摘のように、これは自民党の方の宣伝でございまして、私どもとしてはこれくらいの法人税をいじったところで大きな影響がない。また、消費税を廃止する代償として暫定的にしばらくの間御無理をお願いしておるわけでございまして、法人税の将来のあり方につきましては、国民税制改革協議会で十分議論をしていただきたいというふうに思っておるわけでございます。
  101. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 法人税をある程度上げるということとともに、課税ベースの拡大というものも図るべきではないのでしょうか。
  102. 森井忠良

    ○森井議員 どうも失礼いたしました。  きのうも我が党の武藤委員からこの問題について政府質問があったわけでございますけれども、もともと現在三七・五%、法人の税率が下がっておるわけでございますけれども、こういうときにはむしろ非常にいい機会ですから特別措置はこの際やはり整理縮小する、これで初めて均衡がとれるというふうに思っておるわけでございます。
  103. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 どうもありがとうございました。  大体私の質問しようと思っていたところは終わるわけで、ここで終わらしていただきたいんですが、最後に各党の皆さん、大変御苦労さまだと思います。そして先ほども申しましたように、国民の意見というものはすべて消費税というものをもう許したわけでもなければ、なれたわけでもありません。そして、そのことに関しては数々のデータが示しておりますし、そして自民党先生方の中でもそういうふうにこれまで、ちょっと前までは反省反省と言っておられた方々もたくさんおられるわけですから、この点は謙虚に考えられて、この廃止法案ということにぜひ御賛同いただくように皆様方の御努力をいただきたいというふうに思います。  これで終わります。
  104. 中村正三郎

    中村(正三郎)委員長代理 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。  次に、井上義久君。
  105. 井上義久

    ○井上(義)委員 この消費税廃止関連三法案並びに税制改革基本法案、発議者の皆さん、大変いろいろ苦労もあったわけでございますけれども、発議をされて、そしてまた審議におきましても明快に答弁をしてくださっていると、後輩の一人といたしまして皆さんの御労苦に心から敬意を表するものでございます。で、これは参議院で既に可決をした法案でございますから、できれば一日も早くこの衆議院でも速やかに可決されることを心から期待をいたしまして若干の質問をさせていただきたい、このように思っている次第でございます。  竹下内閣、中曽根内閣、自民党歴代内閣がシャウプ以来の抜本的な税改正、このようなふれ込みで国民の反対を無視をして強行した今回の税改正、その中身は一体全体どういうものであったのかということでございますけれども、ここに大蔵省監修になる社団法人日本広報協会というところが発行した「新税制…豊かな明日へ」というパンフレットなんかを見ますと、「時代の流れにあった公平でバランスのとれた税制が誕生しました。」こういうふれ込みで、「これまでの税制は、四十年前のシャウプ勧告をもとにしていたので、さまざまな問題点を抱えていました。時代の流れを踏まえた公平で簡素な税制所得消費資産などに対する税の間でバランスのとれた税制の実現が求められていたのです。」こういう前提で、税制改革には五つの大きな柱がある。一つが「所得税・住民税の大幅な減税」、それから二番目が「消費税の創設、個別間接税制度の整理・合理化」、それから三番目が「負担の公平の確保」、それから四番目に「国際的視点に立った法人税の軽減」、五番目に「相続税の軽減・合理化」、こういう五つの柱であるというふうに述べられておるわけでございまして、大きくは所得税の減税と消費税の創設、法人税の軽減、この三つが柱であったんじゃないか、こう思うわけでございます。  それでは、所得税というのはどうなのか。これは累進課税をとっておりますから、毎年この減税をしていきませんとどんどん累進税率は上がってくる。サラリーマンの重税感というものが高まる一方である。ところがそれに見合った減税をしてこなかったために、たまりにたまって、サラリーマン中心とした減税の要求があった。今回のこの所得税の減税というのは、そういうたまりにたまった減税要求というものを是正しただけであって、本来野党が主張してまいりましたようにもっと早くやるべきであった、とても大幅な減税とは言えないというふうに言えるんじゃないかと思うわけでございます。  それから、二番目の法人税の軽減ということでありますけれども、表面税率四〇%から三七・五%に軽減をしたというわけでありますけれども、私はこの法人税というのは思い切った引き下げが必要ではないか。アメリカのレーガン税制基本税率を四六%から三四%に一二%引き下げるというような大幅な減税をしているわけでございまして、この法人税の大幅な引き下げのためにはやはり課税ベースの思い切った拡大が必要である。国際的な視点という意味からいいますと余りにも小幅であって、私は課税ベースの思い切った拡大とセットで大幅な法人税の引き下げが必要ではなかったか。いわゆる法人税は法人税の世界で解決するというのが基本であろうと思うわけです。  こういうふうに見てまいりますと、結局所得税はとても大幅な減税とは言えない、当然の減税であったと思いますし、法人税も非常に中途半端、国際的とはとても言えないものである。結局、抜本的な改正をした、シャウプ以来の抜本改正だ、こう言っているわけでありますけれども、残るのは消費税だけということでございまして、要するに消費税を通すための抜本改正であったというふうに言わざるを得ないのではないか、こう思うわけでございます。  今国民が一番望んでおります、また我が国にとって必要だと思うことは、私は三点あるんではないか。一つは、土地税制資産課税の適正化ということをぜひやらなければいけないんじゃないか。いわゆる持てる者と持たざる者との格差が非常に開いている、これを何とかしてほしいというのがやはり国民の偽らざる率直な願いではなかろうかと思うわけでございます。それから二番目に、これからの高齢化社会ということを考えて給付と負担のバランスということをやはり明確にしてもらいたい。二十一世紀、国が国民に対してこういう給付をしますよということをまず明確にする。そのためにはこれだけの予算が要る、だからこれだけの負担をしてほしいということであれば、私は国民が納得するんじゃないか。この給付と負担のバランスということをぜひ明確にしなければいけない。それから三番目に、やはり経済の活性化、国際化のためにも法人税を欧米並みに引き下げるべきであらう。これは先ほど言いましたように課税ベースを思い切って拡大をして、法人税を思い切って下げる、いわゆる法人税は法人税の中で解決する。こういう三つの点が、これからの税改革にとっては一番大事なことであろうと思うわけでございます。  そういう意味で、先ほども申し上げましたけれども、参議院で一たん可決した法案でありますし、この衆議院でも一日も早く可決をいたしまして、国民税制改革協議会でこういった問題を含めて十分に検討して、ぜひとも国民の期待にこたえられるような税制改正をやっていただきたい。最初に、このことをまずお願いしておきたいと思うわけでございます。  前置きが多少長くなりましたけれども、本題に入りまして、まず消費税ということにつきまして、私は選挙中を含めて町を回っておりまして、消費税ということについていろいろお話をしますときに、母子家庭でありますとか生活保護世帯でありますとかあるいは年金生活をしていらっしゃるお年寄りの方とか、そういった方が消費税の廃止ということを強く望んでいらっしゃる。消費税の構造的欠陥と言われておりますいわゆる逆進性、生活が大変な人ほど負担が重い。このことはこの税を考える上では一番大事な問題じゃないかな、こう思うわけでございます。  少なくとも従来の物品税のような個別消費税でありますと、消費者の、本人の自由な選択に基づいているわけでございます。例えば外に出て食事をするという場合でも、多少高くてもうまい物を食べたいという人は、消費税、旧来でいいますと飲食税を払うことを覚悟して食べていただく。一方、税金を払いたくないという人は、免税点以下の食事をする。このどちらを選ぶかというのは、個人の自由であったわけであります。ところが、消費税は食事をすればすべてに税金がかかってくる。言ってみれば強制的に徴収される税であるわけです。この辺が消費税と従来の個別間接税の決定的な違いでありまして、消費税は強制的に取られる税でありますから、社会的弱者であれ高額所得者であれ、すべて一律に課税される。したがって、低所得者ほど負担が大きい。  この問題は、私も三月二十二日の本会議で取り上げまして海部総理の所信を伺ったわけでありますけれども、そのときの答弁でも、税の仕組みそのものでは逆進性は解消できないということを認めていらっしゃるわけでございまして、「税制面のみならず歳出面も含めたさまざまな措置」というような言い方をされておりまして、いわゆる消費税の逆進性については歳出の問題とあわせて考えるべきだ、こういう論理で答えていらっしゃるわけでございます。しかし、これは議論の意図的なすりかえじゃないか。財政の所得再分配機能というのは確かに存在するわけですけれども、税の不公平の代替機能ではなくて、やはり独立した経済福祉政策の問題として財政というものは考えなければいけないと思います。財政出動のあり方いかんにかかわらず、やはり税は公平でなくてはならない。その公平さの一番の基本をなすものは、応能負担ということじゃなかろうかと私は思うわけでございます。つまり、所得の多い人ほど税負担をお願いする、所得が少なければそれに応じて少なくという、この原則はやはり税の鉄則にしていかなければいけない。  そういう意味からいいますと、廃止、見直しかの議論を今されているわけでありますけれども、この議論というのは、逆進性というものを税の中に認めるか否か、言いかえれば、税の応能負担というこれまでとってきた鉄則を放棄するか否かの大事な選択である、そういうふうに思うわけでございます。この逆進性、そしてまた廃止、見直しというこの議論の重要性について、発議者がどのようにお考えでいらっしゃるか、この辺をまずお伺いしたいと思います。
  106. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 井上さんが冒頭にお考えを述べられました。コメントは避けますが、全く私も賛成であります。本当国民の御納得を得ようとする手順、目標あるいはまた税制の当然のルールとしてやらなければならないことというのが何か非常にねじ曲げられて今日の事態に至ったということから問題が起こっているというふうに私も思います。  所得税減税ということが大きな柱でございましたが、日本の場合には物価調整、インデクセーションの制度はございませんので、非常にこれがたまりにたまっているというふうな状況でございましたし、あるいは最近になりましてから福祉といるふうに非常に目標が移っておりますが、これにいたしましても、本当に将来の福祉と負担という国民のコンセンサスを形成できるようなポリシーには至っていない。非常に残念なことであるというふうに私も思います。  法人税制、キャピタルゲイン、株と議論がございましたけれども、やはり今日の時代ですから、国際的に行われているルール、方法ぐらいは日本でもちゃんと行われるべきではないだろうかというふうに思っているわけであります。  お尋ねの点でございますけれども、私も同感でございます。この大型間接税は本来的に、本質的に逆進性という構造を持っているということは、実態におきましても学説におきましても明らかになっている、望ましい税制ではないと思います。と同時にまた、世界で、さまざまの国で大型間接税が導入されている。それと比べまして日本の今日の消費税というのは、そういう欠陥の是正に対する真剣な対応がなされていないということも非常に特徴的ではないかと思います。  例えば今EC統合、税制の問題で問題にもなっているようですが、イギリスの場合、ゼロ税率なども含めて相当広範なそれらについての問題意識がございました。この間有名な税学者のペックマンさんの本を読んでおりましたら、アメリカで行われている州税についてもさまざま御紹介がございまして、ある国では税額控除という大胆な方法をとってカバーしようとしているというのがございましたが、何か私は、そういう真剣さもなく、しかも世界に例のない形で大きな矛盾をはらんで執行されているのが今日の現状ではないかと、井上さんと認識は同一でございます。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕
  107. 井上義久

    ○井上(義)委員 この逆進性ということに関連して、先般、日本生活協同組合連合会が発表した調査が新聞に出ておりまして、また、資料を取り寄せまして見ましたところ、やはり消費税負担率は低所得者ほど高く高収入層では低いという、税の逆進性が明らかになっているというふうに私は思うわけでございます。  若干内容に触れてみますと、世帯主の平均年齢が約五十歳、家族数は三・八人、平均年収は六百六十五万。この一年間に払った一世帯当たりの消費税負担額は、最低二万四千百六十円から最高三十万九千四百八十七円、平均では十万四千百三十七円となり、年収に対する平均負担率は一・六%であった。負担額を所得層別に計算してみますと、年収が三百万未満の世帯での負担額は五万七千円となり、年収に対する負担率は二・四%。これに対して、年収が七百万超八百万円未満の層では負担額が約十一万五千円、負担率は一・五%。負担率は収入が上がるとともに低くなり、消費税が低所得層に重くのしかかっていることがわかった。また、年金だけで暮らす世帯の平均負担額は約六万六千円で、負担率は一・八%となり、給与世帯の平均負担率の一・五%に比べて高かった。こういう調査結果が出ているわけでございます。  私は、この調査結果を見ても、この消費税の逆進性というのは明らかである、いわゆる消費税の中では解消できない、このように思うわけでございます。政府は、最近所得が平準化してきたと言っておりますけれども、最近のジニ係数なんかを見ても格差は開いてきているわけでございまして、私はパーセントで物を言うということは余り好きではありませんけれども、年収三百万の二・四%の負担と一千万台の一・三%、これは大変な格差があって、その生活の苦しさというのははかり知れないものがあるのじゃないか。このことについて発議者の方、この調査、またその生活実態ということについてどのようにお感じになるか、逆進性という一番基本の問題でございますから、御見解を承っておきたいと思います。
  108. 神崎武法

    ○神崎議員 日本生活協同組合連合会の実態調査の結果を逆進性という観点からどのように評価をするのかというお尋ねでございました。  この消費税の持つ構造的欠陥の中で逆進性が強いという点が指摘されているわけでございますけれども、この日生協の実態調査からいたしましても、消費税は逆進性が極めて強いものである、そういう結果が明確に出ているように思います。取り上げられました日生協の調査によりますと、御指摘がございましたように、一般家庭が負担いたしました平均消費税額が消費支出に占める割合が一・六%ということでございまして、政府の試算を大きく上回っているところでございます。消費税国民生活に重い負担となっていることを浮き彫りにしたものと思います。消費税を福祉に優先して充てるなどということを見直しの中で言っているわけでございますけれども、こういった実態調査からいたしましても、まず消費税を廃止すべきである、そこから出発すべきである、このように考えます。
  109. 井上義久

    ○井上(義)委員 それから、消費税につきまして町の声を聞いておりますと、この逆進性と並んでやはり皆さん大変不満に思っていらっしゃることは、これは先ほどからも出ておりますけれども、要するに払った税金が正しく国庫に入らないということでございます。そもそも消費税というのは、売上税の失敗から業者に受け入れやすい仕組みを大幅に導入をした、こういうことが指摘されているわけでございまして、それが具体的には三千万という大変高いいわゆる免税点、それから限界控除制度、簡易課税制度の導入であるわけでございます。その結果、先般大蔵省の試算でも約四千八百億円、すなわち、この免税点制度、三千方以下の非課税業者、これによるものが約二千四百億円、それから限界控除が六百億円、簡易課税が千八百億円、このうち免税業者のかなりの方がいわゆる消費税を転嫁されていないという実態も確かにあるわけでございますけれども、この点を考慮したとしても、限界控除あるいは簡易課税制度によるものは確実に発生するわけでございます。  税に対する信頼というのは、納めた税が間違いなく国庫に入る、これはもう当たり前のことでございますけれども、ところが国民の納めた税金が途中で消えてしまう、これは税の重要な原則一つである明確の原則、これに著しく反するわけでございまして、これはやはり税として許されるべきではないな。また、こういう制度を導入しなければ実現できなかったような税制は果たしてどうなのかということを率直に思うわけでございます。この点について、発議者のお考えをお尋ねしたいと思います。
  110. 中野寛成

    ○中野議員 お答えをいたします。  逆進性が強い消費税、それだけに納税者は、納めた税金、苦労して納める税金、腹が立つけれども仕方なく納める税金が行き先が不明朗であるということになりますと、なおさらこれは腹立たしい気持ちになるのは当然でございます。まさに御指摘のとおりであろうと思うのであります。このことは竹下元総理も、みずから九つの懸念の中で、簡易課税制度、事業者免税点制度などにより、消費者が負担した税が納付されないことになるのではないかという一つの懸念として、既にみずからお認めになって、表明をされているところでございます。  おっしゃられましたように、現行の消費税は、大蔵省の資料によりましても、平成元年度ベースの消費税見込み額五兆九千億円のうち、約八%にも上る四千八百億円の税金が簡易課税や免税点、限界控除制度によって国庫に納まらないということが明らかになっております。政府の言う公平、公正、簡素を基本原則としているということでございますけれども、その簡素の中に入るのかなという気もしないではありませんし、まして中小零細企業の皆さんへの配慮、また先生御指摘されましたように、そういう方々の中には転嫁が難しいということで泣く泣く転嫁もし切れないでいらっしゃるという方々のことの配慮もあったであろうと思いますけれども、しかし八%もの税金が国庫に入らないというのは何とも許容範囲をはるかに超えたものと言わざるを得ないのではないだろうか、こう思うわけでありまして、これはまさにこの消費税の一番大きな欠陥の一つであろうというふうに私どもも思う次第であります。
  111. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 ちょっと計数の問題で誤解があるといけませんので、発言をお許しいただきたいと思います。  私ども消費税の税収の計算をいたしますときに、事業者の国内の付加価値額をもとにいたしまして、例えば純輸出を調整し、純投資を調整しというようなことをしております。その中で、御指摘の中小事業者に対する特例につきましても付加価値ベースで調整をしておりまして、それが十六兆円ございます。それに三%お掛けになりまして四千八百億円ということが言われているわけでございます。つまり、課税対象額を計算する前に既にそれは外してありまして、したがいまして、今おっしゃいました五兆九千億というような課税対象に三%を掛けた数字、その中にはもう含まれておりません。落ちた後の数字が五兆九千億というようなことになります。今の御説明ですと、五兆九千億のうちにということでございましたので、誤解がないようにちょっと申し上げておきます。しかも、四千八百億というのじゃなくて、付加価値ベースで十六兆という調整をしているという意味でございます。
  112. 井上義久

    ○井上(義)委員 今御説明を聞いて、確かに五兆九千億ですか、そのうちには含まれないということは理解できましたけれども、少なくとも、先ほど申し上げましたように、かなりの額が発生するということはこれは間違いない事実でございまして、その上で次の質問に移りたいと思います。  これはやはりこの制度に関連をして、私は、この問題が、ただ納めた税金が国庫に入らないというだけではなくて、新たな不公正というものを拡大しているのじゃないか、このことを非常に危惧するわけでございます。所得の高い人、低い人の間の垂直的公平を確保するということが戦後税制基本であったわけでございます。そのためには、あらゆる所得を合計し、例外をつくらず、そこに累進課税を課すという総合課税考え方が徹底されなければならないわけでございます。  ところが、我が国の現在の税体系というのは、利子配当などが分離課税になっているのを初め、租税特別措置などによって多くの所得控除があり、この理想から大きくゆがめられている。しかも、所得の種類が違いますと、例えばクロヨン代表されるような所得の捕捉率の違いというものがある。また、所得分割が可能な事業所得と不可能な給与所得者というのは、やはり水平的不公平が特に存在しているわけでございます。私は、この税制改革はこうした不公平をまず是正すべきであったというふうに思うわけでございますけれども、ところが、この消費税はこの不公平を温存したまま導入されてしまった。のみならず、私は先ほど言いましたように、限界控除あるいは簡易課税制度というものによって新たな不公正を持ち込んだというふうに思うわけでございます。すなわち、限界控除制度、簡易課税制度によって、こうした制度を適用されない、例えば年間売り上げ五億円以上の企業あるいはそれ以下の企業との間の不公正、また年間売り上げ六千万以下の企業との間の不公正というものが生まれてきています。  それからさらに、産業間の付加価値率の違いによる不公正も生じているわけでございます。いわゆる仕入れ割合が少なく、労賃比率の高い業種がこの恩恵を受けているわけでございまして、先般もある運送業者の人と話をしていたわけでございますけれども、その業者の人の話によりますと、ことし計算をして支払った税額が大体百八万円であった。受け取った税が五百四十万円であった。それから、仕入れの段階で支払った税額が大体百万ぐらいであった。これは最終的にはっきりしませんでしたが、百万ぐらいであった。結局、売り上げが大体一億八千万ぐらいの企業ですので大体三百万ぐらいのいわゆる税が残った。果たしてこういうことでいいんですかねというふうに率直におっしゃっておりまして、そういう問題が生じているわけでございます。  問題は、こうした業種間の不平等あるいは企業別の不平等だけではなくて、こういった問題も考えられるわけでございます。例えばいわゆる薄利多売の企業、消費者にとっては非常に望ましい努力を続けている店でありますけれども、こういう店は売上利潤率が非常に低いわけですから、この制度によって得はしないということになるわけでございまして、こういうようなことが政策、制度として定着していいのかというような疑問すら持つわけでございます。  もちろん最大の問題は、消費者が払った税金が国庫に納められないということで、それが一部の業者の利益になってしまうということでありますけれども、新たな不公平を拡大をしてしまっている。こうした不公平を温存したまま、さらに不公平を重ねるような限界控除あるいは簡易課税というものをとらざるを得ないような、とらなければ導入できないようなそういう消費税というものは、不公平の格差というものをますます拡大していくんじゃないか、こういうふうに心配をするわけでございますけれども、発議者の御意見いかがでございましょう。
  113. 菅直人

    菅議員 井上委員がおっしゃいました、いわゆる従来の不公平税制をそのまま温存したままに消費税を導入し、しかも消費税の中に簡易課税や限界控除という新たな不公平を盛り込んでいるのはおかしいではないかという御意見であったと思いますが、私どもも全く同様に考えております。  井上委員の最初の御意見の中にも、本来税制改革を行う上で、所得税あるいは法人税の改正とその後のいわゆる消費者に対する税制というもののトータルの議論が必要だとおっしゃいましたけれども、私も全くそのように考えておりまして、昨年来の政府自民党が行った抜本改正というのは、本来やるべきことは、例えば所得税については先ほどお話がありましたように、本来やるべきことをやらないでおいて、それを所得税減税をやったからそのバーターで消費税を導入するんだといったような形で強行し、しかも所得税などに見られる不公平税制には何も手をつけない、そういった形であったというように思います。  そういった点で、新たな不公平といいましょうか、ある種の不合理、不公平、不公正というものが業種によって、特に付加価値率の非常に差のある業種間において、例えば簡易課税というものがそれらにおいて不公平を生むということはそのとおりだと思いますし、また限界控除の問題も、これもいろいろと小さな業種のいわばある種の擁護といった面も言われておりますけれども、その扱い方によっては非常に大きな、納税されたものが国庫に入らないという問題を招くことは、先ほど委員のおっしゃったとおりであります。  特に資産の問題における不公平というのは、いわゆる従来の不公平税制というものには必ずしも含まれていない部分もありますけれども、これがいかに不公平であるかということはこの間のいろいろな委員会の議論でもなされております。  そういった意味で、多くの従来の税制における不公平を残しながら新たにこういった消費税を導入したことそれ自体が最大の問題でありますし、その中におけるこういった簡易課税や限界控除制度の矛盾というものを重ねたことは――やはりそれをなくするためにはとにかく消費税をまず白紙に戻した上で、トータルにおける税制の再改革を行うしかない、このように考えている次第です。
  114. 井上義久

    ○井上(義)委員 それでは次に、消費税の表示の問題について最初にちょっと大蔵省にお尋ねしたいと思います。  最近、買い物に行きますと、これは主婦の皆さんといろいろ懇談した中で出てきたことなんですけれども、いわゆる税額が書いてなくて、消費税が取られているのか取られてないのかわからない、このままいっちゃうと消費税議論もしりすぼみになってしまうのではないか、こういう御指摘をちょっと受けたものですから、いろいろ調べてみましたら、総額表示方式ということが新聞等にも報道されているわけです。  いろいろ資料を見てみますと、昨年十二月に発表されました自民党の「消費税の見直しに関する基本方針」、これによりますと、税額表示方式のあり方について「事業者間の取引においては、現在主流となっている外税万式が望ましいので、これが堅持されるよう、配意する。」それから二番目に、「消費者との取引においては、消費者の利便等に資するため、事業者に対し各商品の最終的な支払額を何らかの形で明示(総額表示)するよう指導を行い、」という方針が示されているわけでございまして、この総額表示ということについて大蔵省も同じ考えである、いろいろな機会に各業者にお願いをしている、このように承っているわけでありますけれども、そのとおりでよろしいのかどうか。また、その総額表示というのは具体的にどういう表示を考えていらっしゃって、その中には今まで言われてきたいわゆる内税方式、税込みの金額だけが示されているというようなことも含まれているのかどうか。この辺の大蔵省の考え方を最初にちょっとお聞きしておきたいと思います。
  115. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 消費税が実施されまして、いろいろな問題が出てまいりました。消費者の方々から多くの御意見をいただいたわけでありますが、その中に、自分が一体物を買うのに幾ら払えばいいのかわかりにくいという御意見が多々ございました。先ほどの鈴木委員の御質問の中にも似たようなお手紙のお話があったように伺っていたわけでございますけれども、それに対しまして一体諸外国はどういうことをやっているのかというのを私どもの方で実は調べてみたわけでございます。そうしますと、やはり消費者の便宜というような見地から、諸外国におきましても御承知のインボイス方式によりまして、言ってみますと業者間の取引はずっと外税で来るわけでございますけれども、最終の段階、消費者が買う段階では価格の総額がわかるように表示をするという指導が行われているわけでございます。  そういうこともございまして、新聞等にも報道されましたが、大蔵大臣と経済企画庁長官とがお会いになったときにもこの問題が話題になりました。そのようなことについて私ども政府税制調査会にも各国の例等も示しまして御相談申し上げたわけでございますけれども、今委員自民党税調のお話をなさいましたが、政府の税調査会におきましても同様の、消費者の便のために総額がわかるというような方法について考えてみる必要があるという御見解でございました。  そこで、それでは一体どういうようなものを言っているのかということでございますけれども基本的には個々の商品の最終的な支払い総額が何らかの形で明示されているというように申し上げてよろしいかと思います。支払い総額がございまして、一番丁寧なものといたしましては、それと同時に本体が幾らであるか、税額が幾らであるかということを示しいる例もありますし、それから支払い総額と括弧をして本体価格が幾らかというようなことを示すという例もございましょうし、また支払い総額を示して、その内訳として税を幾ら含んでおりますという書き方もあろうかと思います。例えばタクシーのメーターなどをお考えいただいたらよろしいわけでございますけれども、そこのメーターどおりにお支払いをすればいい、つまり総額がそこに示されているわけでございますけれども委員御指摘の内税といいますか、税額については特に示されていない。それも総額が示されているという点におきまして、この分類の中に含めて入ってくるのではないかというように私どもは理解しております。  ただ、消費者の便ということを考えましたときには、できるだけ税額あるいは本体が明らかになっている方がより親切であろうというようには考えております。
  116. 井上義久

    ○井上(義)委員 今御説明いただきまして大蔵省のお考えはわかりましたけれども、私は、最後におっしゃいましたように、消費者の利便ということを考えて税額並びに本体価格がきちっと明示されていることがやはり親切であろうというふうにお答えいただいたので、ぜひともそういう方向でお願いをしていただきたいな、ただ総額だけが明示されていればいいですよというような形では困るなというふうに思うわけでございます。  といいますのは、今回の消費税論議が活発になりましたときに、やはりその一番の要因は、お店に行きまして例えば千円の物を買ったら税金として三十円払わなければいけない。主婦の皆さんにとりましては初めての直接の税ということで、初めて税というものを身近なものとして考える、そういう大きなきっかけになったわけでございます。やはり税というのは国の基本でございますから、国民が常に税というものを考え、どういう取られ方をするのか、またその税がどういう使われ方をするのかということは、やはり民主主義を支えていく上で私は大事なポイントだろう、こう思うわけでございます。  ところが、総額表示方式ということでその税額が示されない、最終額だけがわかるということになりますと税を払っているかどうかわからないわけでございまして、これはいわゆる消費税論議の最初にありました内鋭化のやはり第一歩じゃないかという懸念を持たざるを得ないわけでございます。もともと食料品の小売段階非課税ということに見直し案ではなっておりまして、これが実現をされますと、いわゆる仕入れ段階でかかる消費税というのはコストとして入り込んでしまっているわけでございますから、消費税は全く見えなくなってしまうわけでございます。そこへ例えば食料品と他の商品を一緒に扱っている、総額表示方式といってもこれは実際作業が非常に煩雑になりますから、全部内税にしちゃえということになる可能性が極めて高いわけでございまして、一挙に内税化が進んでしまうのじゃないか。  やはり内税というのは、先ほどお話がありましたように、税込み価格のみ表示するもの、例えば酒とかたばこがそうでございまして、要するにこの場合、我々は幾ら一体税金を払っているのかほとんど考えないでたばこや酒を買っているわけでございます。その結果、先ほど言いましたように痛税感が非常に乏しくなる。比較の問題ですけれども、例えばスーパーに行って買い物をしてレジに行く、そこで買い物した合計を合算した後に総額で三%掛けられると、ああ税金を払ったなという気持ちになるわけでございまして、あらかじめ消費税を盛り込んだ総額の請求を受けるのとでは、これは痛税感に全くの違いが出てくるわけでございます。  これが本当にそうなってしまいますと、せっかく盛り上がった税に対する国民の関心というものが下火になっていってしまうのじゃないか。この際、やはり日本の民主主義を支えるという意味でも、払った税金が明確である、またその税金にしっかり関心を持つというような、せっかくでき上った機運というものを私は消すべきではないと思いますし、そういう意味で今おっしゃったような税額、本体価格というものがきちっと示されているような表示方式というものを、これが消費税が廃止されれば一番いいわけでございますけれども、少なくとも廃止されるまでの間だけでも、少なくとも税がわかるというようなことはぜひともやらなければいけないのじゃないか。これはなくなってしまうと存続につながっていくんじゃないかという危惧を抱くわけでございまして、廃止のためにも税額がいつもわかるというようなことはぜひやらなければいけない、こう思うわけでございますが、発議者の御意見を承りたいと思います。
  117. 森井忠良

    ○森井議員 総額表示方式につきましては、今主税局長が説明をいたしましたように私どもとして認識をしておるわけでございます。しかし委員御指摘のように、必ずしも総額表示方式になじまない事象が幾つもある。おっしゃいましたように、自民党の見直し案が仮に成立をいたしますと、食料品は小売段階以前の各流通の段階では一・五%の軽減税率になってまいります。最終的に小売の段階では非課税ということになっていますから、したがって総額表示方式といいましても、これは難しい。結局、税込みの価格にならざるを得ない、そういうことになるわけでございますから、これは内税方式と申し上げていいと思うわけでございます。  非常に困るのは、今ちょっと御質問の中にも出てまいりましたが、食料品とあわせてたくさんの品物を販売をする小売店等の場合でございます。これは品物の振り分けもしていかなければなりません。私には孫がおるわけでありますが、ちょこちょこお菓子とおもちゃと一緒に入ったお土産物を買って帰るわけでございますが、これは食料品と玩具は税率が違うわけでありますから、一体どういう表示ができるのかというふうなことを考えてみますと、これは非常に難しい。結局、指導上は総額表示方式と言っておりますけれども、今申し上げましたように、最終段階では幾つも幾つも困難な状況がございまして、結局税込み価格、内税化をたどるであろうというふうな認識をいたしておるわけでございます。  そうしますと、今度は消費者の方は、一体幾ら税金がかかるのですか、また食料品を買った人でも、おたくは小売は非課税だから、これは消費税分は入っているのですかいないのですかと聞かれたときに、業者間の取引にかかる消費税についてはなかなか説明がしにくいというふうな問題が出てまいります。したがって、これは非常に問題が多いわけでございまして、特に私は、内税化に進みますと、良心的なお店屋さんばかりはない、やはり人間の欲得の弱さもある。そうしますと、便乗値上げにもつながるのではないか、こういうふうに危惧をしておるところでございます。
  118. 井上義久

    ○井上(義)委員 次に、消費税と高齢化社会という問題についてお尋ねをしたいと思います。  近い将来極端な高齢化社会が到来する、このように言われている。そうなると、少人数で多数のお年寄りを扶養することになり、生産年齢人口の負担が急増する。これに備えるためには消費税が必要だ。これが政府自民党の論理でございますけれども、意外とこれが町の人には効いておりまして、いや井上さん、消費税廃止して我々の高齢化社会大丈夫ですか、こういう質問をよく受けるわけでございます。確かに二十一世紀が高齢化社会になることはもう避けられない事実でありますし、それに伴って社会保障費が増大することもある程度やむを得ない。しかし、だからといって私は、消費税が不可欠であるというのは、どうも自分もいつかは高齢者の仲間入りをしなければいけないのではないか、そういう国民の不安、弱みにつけ込んだまことに乱暴かつ短絡的な、高齢化社会おどし論などというのがよく言われておりますけれども、それに近いものじゃないかなというふうに思うわけでございます。  どういうことかといいますと、例えば負担があれば当然給付があるわけでございます。負担消費税。ところが、じゃ給付についてどういう言及があるのか、これがどうもよく見えない。つまり、来るべき高齢化社会における社会保障制度のあり方というものをやはり明示をしていないというのが、私は大きな問題だろうと思うわけです。例えば高齢化社会が、圧倒的な社会保障費が必要だ、そういう社会であるというふうに考えますと、これは北欧型の福祉社会ということを想定していることになりまして、そうなりますと、これは高福祉高負担ということで国民負担率というのは大変高くなるわけでございますし、消費税もとても三%では済まなくなる。ところが、そういう北欧型ということも明言していらっしゃらないわけでございます。一方、もしアメリカ型を想定するのであれば議論はおのずと違ってくるわけでございまして、いわゆる自立自助、これが強調されるわけでございますから国民負担率は低く抑えられる。消費税も必要ではないんじゃないか。  このように、やはり高齢化社会における財源論というものを消費税導入の合理化のために使おうとするのであるならば、まず来るべき高齢化社会のありよう、すなわちこの日本の将来の福祉の方向というものを明示するのが私は先決だろうと思うわけでございます。何か高負担を北欧型に仮託して語り、国民負担率の抑制をアメリカ型に仮託して語るような、そういう感じもしないわけではないわけでありますけれども、いささか御都合主義じゃないかというふうに思うわけでございます。  また、初めに財源ありきという考え方というのは、やはり将来の制度や仕組みに手をつけないおそれがあるのではなかろうかと思うわけです。例えば医療制度一つとっても、最近の老人医療費の伸びというのは経済成長を大幅に上回っておるわけでございまして、しかしながら、例えば予防医学の進展やリハビリの徹底化などによって医療費の将来的な伸びというのは抑制可能でございますし、そうした総合的な政策、中期的な方針、そういうことをきちっと検討せず、初めにやはり財源ありきではこの国民税負担というのは際限なく膨らんでくるんじゃないか、いわゆる水膨れの高齢化社会になってしまうんじゃないか、そして国民活力は低下する一方になるんではないかというふうに思うわけでございまして、やはりこうならないためにも、この財源論や負担を強調する前にまず日本のあり得べき高齢化社会、そこをきちっと議論すべきではなかろうか、このように思うわけでございますけれども、発議者のお考え、いかがでございましょうか。     〔委員長退席、関谷委員長代理着席〕
  119. 宮地正介

    ○宮地議員 委員にお答えしたいと思います。  今、井上委員がおっしゃったこと、私も同感でございます。高齢化社会におきましては財源が必要である、これは確かなことであろうと思います。しかし、この高齢化社会の財源を言うのであれば、まず将来の高齢化社会のあるべき姿、これを国民に示すべきであろうと思います。  しかし、現在政府からは、「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障の給付と負担展望」、これは昭和六十三年三月、厚生省、大蔵省でございます。また「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本考え方と目標について」、これは昭和六十三年十月に同じく厚生省、労働省から示されております。しかし、政府のこうした示された指標というものは、現状の負担状況を二十一世紀初頭までそのままの姿で延ばしたものでございまして、基本的には既にもう大きな狂いが生じているわけでございます。高齢化社会の明確な姿も示さずして、やみくもに高齢化社会への不安をあおっているようにも思えるわけでございます。高齢化に財源が必要というのであれば、来るべき高齢化社会のあるべき姿を国民に明確に示した上で、必要とする財源については国民の理解と納得を求めていくべきではないかと思っております。私どもは、そうしたことにつきまして国民税制改革協議会におきまして慎重に審議を行いながら、消費税に頼るのではなくて、直接税を中心として、そして間接税はあくまでも補完的な立場で総合課税主義税体系、こういうものをやはりつくっていくべきではなかろうか。  また、今委員おっしゃいましたように、最近、アメリカの自立自助型あるいは北欧三国のいわゆる高福祉高負担の問題が議論をされているわけでございますが、委員も御存じのとおり六十三年の七月にOECDにおきまして社会保障大臣会議がパリで行われまして、このとき、当時の藤本厚生大臣がこのような発言をしております。個人の自助努力を尊重し、支援するような形で構築されるべきであるということである。これは具体的に言えば、費用の負担について、社会保険の仕組みを用いて国民各人の自助努力を連帯の精神によって社会的に組織化することは、その有効な一方法である。これに対しまして、アメリカの代表が大変に賛意を表した。ここまで厚生大臣が踏み切っておりながら、政府としての公式な先ほど申し上げましたような対応というものは、全く現在の国民皆さんの理解の得られないようなデータが出されている。大変私どもとしては遺憾に思っているわけでございまして、今後この国民税制改革協議会を中心にいたしまして、委員お話しのような方向に沿いまして積極的に審議をしてまいりたい、こう考えております。
  120. 井上義久

    ○井上(義)委員 ここで来るべき高齢化社会、国民税制改革協議会でとてもそんなことをやっている時間的な余裕はないんだというような議論もございましたけれども、私はそうではないんじゃないかというふうに思うわけでございます。  これは、来るべき高齢化社会をどのように想定するかという問題にも関連するわけでありますけれども、いわゆる高齢化社会というのは、生産年齢人口が大幅に減少して、扶養されるべき高齢者が激増するために高負担になる。早くしなければ間に合わない。本当にそうなのか。それに対して、例えば六十五歳以上のお年寄り一人を何人の生産年齢人口で扶養するかを示すいわゆる老人扶養負担という概念、これはよく使われていますけれども、これでいきますと、一九七五年には九人であったものがピーク時の二〇二〇年には三人というデータもありますし、二・三人というデータもありますし、いずれにしてもそれだけの人を扶養しなければならない。したがって、大変生産年齢人口の負担が高くなるという議論があるわけですが、一方、一九八六年の厚生白書では、六十年代の実年後期は今後の実質的な生産年齢人口と見ていくべきであるという見解を出しておりまして、これは老人扶養負担を割り出す分母が大きくなるということを意味しているわけでございまして、一般に言われるほど負担割合はきつくならないという考えにもつながってくると思います。また一方、生産年齢人口の負担、扶養の対象には高齢者ばかりではなくて幼児、子供なども入っているわけでございまして、高齢化社会では当然これらの人口も減少するわけで、これも負担の急激な増加を否定する材料になり得るわけでございます。  もちろん、これも一つの見解でございまして、高齢化社会における負担は今と変わらないと言うつもりは毛頭ないわけでございますけれども、ただし、やはりこうした見解もあるということをきちっと踏まえて、高齢化社会ということをしっかり考えていかなければいけないんじゃないか。この政府自民党が盛んに唱えております高齢化社会の危機感、いささか誇大に過ぎる面もあるんではないかと思うわけでございます。先ほど申し上げましたとおり、来るべき高齢化社会の姿も提示しないで、いたずらに危機感をあおる、そして消費税を正当化する、合理化しようとするこの手法というのは、これからの将来を考える上で余りいいことではないんじゃないか。私は、こういういたずらなセンセーショナリズムといいますか、そういう危機感をあおる、そういうことではなくて、あくまでも本来の意味での税制改革というものを今迫られているんじゃないかと思うわけでございます。  いずれにしても高齢化社会のピークは二〇二〇年から二五年、まだ三十年ないし三十五年あるわけでございまして、私は、この高齢化社会のためにも税制改革を今本当にしっかりと議論をしてやるべきじゃないかと思いますし、その時間的余裕は十分ある、今こそ本格的な改革を達成するチャンスである、このように認識しておるわけでございますけれども、発議者の皆さんのお考えはいかがでございましょうか。
  121. 神崎武法

    ○神崎議員 高齢化社会を控えて、税制改革の時間は十分あるのではないか、こういう角度からのお尋ねでございました。  御指摘のとおり、政府の高齢化社会に対するパンフレット「新税制…豊かな明日へ」等によりますと、現在は五・九人で一人を支えているけれども、高齢化のピーク時、二〇二〇年には二・三人で一人を支えることになる、こういう形で高齢化社会到来への危機感をあおっているわけでございます。あくまでも生産人口、十五歳から六十四歳までの生産人口が六十五歳以上の高齢者人口を支える、そういう角度からの統計を示しているわけでございます。  しかし、働き手何人で何人を支えるか、そういう角度の問題提起もあるわけでございます。老人の方だけでなく、あくまでもトータルの人口対就業者人口の割合を見なければあるべき高齢化社会の全体というものがわからないではないか、こういう指摘もあるわけでございます。その意味では、高齢化社会は高齢者の社会であると同時に、出生率が低下して子供が大変大事にされる社会である。両方の角度から論じなければ高齢化社会の実態というものは明らかではないという指摘でございます。その意味では、一つは、生産人口でなくて就業者人口で、実際に働いている方が何人を一体支えているのか、そういう角度からの統計が必要である。それと、ただいま申し上げましたトータルの人口で考えるべきだ、高齢者の数の比率ではなくてトータルの人口で考えるべきだ、こういう御意見があるわけでございます。  そのような角度からこの全人口と就業者人口の割合を見ますと、大正九年、一九二〇年にこの割合が〇・四六二、昭和五十五年、一九八〇年にはこれが〇・四七七、昭和百年、二〇二五年には〇・四七七、この全人口と就業者人口の割合というのはほとんど変わっていないというのが実情でございます。それでは、実際に就業者が何人を支えているのか。これを統計上見てみますと、同じく一九二〇年には一人の就業者が二・一六人を支えている、一九八〇年には一人の就業者が二・〇九人を支えている、二〇二五年においても一人の就業者が二・〇九人を支えるであろう、こういう統計の結果も出ておりまして、その点からいたしますと、一人が支えるべき人口は現在と高齢化社会においても全く変わらないのではないか、こういう御指摘もあるわけでございます。  その意味におきまして、確かに高齢化社会には財源が必要でございますけれども、私ども税制改革を行う時間は十分にある、このように考えております。
  122. 井上義久

    ○井上(義)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、私は、月曜来の論議をずっと聞いておりまして率直な感想でございますけれども野党消費税廃止を目指して論議をする、自民党皆さん消費税見直しを目指して論議をされている、これは非常に結構なことだと思うのですけれども自民党皆さんもいろいろ選挙等を通して、今の消費税ではこれはいかぬ、やはり見直さなければいかぬ、そういうお考えをいろいろお持ちになっただろうと私は思いますし、私は、その見直しの案が、できれば政府提案ではなくて自民党皆さん議員立法という形で出していただいて、野党議員立法として出したこの廃止案と、議員同士が率直に議論し合うというような機会があれば、この議論はもっと深まって実りある議論になったんじゃないかなということをずっと座っておりまして率直に感じておりました。  最後にそのことだけ申し上げまして、終わりにしたいと思います。
  123. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  次に、藤井裕久君。
  124. 藤井裕久

    ○藤井委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、消費税廃止法外三法について提案者の方に御質問いたしたいと存じますが、既に私どもの同僚の皆さんがいろいろ適切な御質問をなさいまして、それなりにお答えをいただいておりますもので、どうしてもこの際申し上げておかなければならないこと、伺っておかなければならないこと、これに限定して申し上げます。  まず、どうしても申し上げておかなければならない一つは、提案者の皆様方のお話は、政府自民党消費税法をつくっただけでなく、既に実行されている、これを廃止するというのは一つの大きな変革、基本的な変革だろうと思います、御提案の趣旨は。それにもかかわらず、この廃止法の後にどういう骨格の税制を仕組むのかということについて、全くの展望がない。しかもお答えは、国民税制改革協議会に聞く、これは全く残念至極なお話だと思います。少なくともこれだけの大きな基本を変更しようということを政治家として提案なさるならば、骨格はこうだ、そして皆様方よろしくこういう点について伺いたいということで、謙虚に協議会なりまた多くの皆様国民皆様に伺うということは正しい方法だと思いますが、何の骨格も示さずしてこのような法案を提案していることに対して、私は極めて疑問に思っております。このことをまずどうしても申し上げなければならぬと思っております。  そこで次に、これはどなたに伺うのがいいのかあれでございますが、中村さんがちょっとお話しになっていたもので、恐縮でございますが、そこからお話を始めたいと思います。  中村さんのお話の中に、政府税制調査会が昭和三十六年には個別消費税を是とし、いわゆる一般的消費税はとるべきでないと言っておるではないか、たしかこういうことを言われましたね。それだけ勉強しておられるならあえて伺いたいのでございますけれども、昭和四十年代の前半に、自由民主党がこの大型間接税に対してどういう意見を持って対応していたかについて、どなたかお答えをいただきたいと思います。――お答えがありませんかな。わからない。どうもおわかりにならないようでございますので、それがゆえにいろいろちぐはぐな議論が行われているのではないかと思いますので、私から申し上げます。  御承知のように、昭和四十二年ECにおいて統一的な税制、すなわち付加価値税を仕組むべしということを指令したわけでございますね。これは御承知のとおりだと思います。そこで、私ども自由民主党では、昭和四十五年、時の政務調査会長水田三喜男さん、引き続いて四十六年、これは御承知のようにニクソン・ショックがありました昭和四十六年八月十六日から一月後に、時の政務調査会の財政部会長宇野宗佑さん以下数名でヨーロッパに調査団を派遣いたしました。そして、当時の在外公館にいた連中に話を聞いておりますが、極めてまじめに慎重に勉強をして帰ってきております。そして、そのとき財政部会長が報告書をまとめて、自由民主党としてのいろいろな意見をまとめておりますが、その表題は、「国民福祉と付加価値税」という表題でやっておるのでございますよ。ですから、長寿社会とか福祉のためにこれを使ったのは、つい最近政府が行き詰まってそんなことを言い出したとか、赤字財政の補てんのためにこんなことをやり出したのを今すりかえているとか、これは大うそなんです。まずそれを御理解をいただきたい。  昭和四十六年のこの財政部会長の……(発言する者あり)まあ黙って聞きなさい。これは少し時間を食いますけれども、大事な点ですから読みますよ。「付加価値税が注目される背景」、こういうことが書いてある。そして、ヨーロッパ視察の結果ですが、付加価値税を導入するかどうかという問題は、次の四点から考えるべきであるということが書いてあります。そして、その第一に「高福祉のための財源充実」と書いてあるのです。第二が「財源の多角化と税体系のバランス」、今のはやりの言葉で言えば直間比率なんでしょうか、さっきからお話がありましたように、所得税は余り多くしちゃいけないよ、この話ですよね。第三番目「税制の国際化への動き」、これも今大事な問題です。二十年前に既にこういう問題をみんな勉強しているんですよ。そういう中で――ごめんなさい。一つ抜かしましたけれども、「消費税制度の合理化」というのがあるんです。四つの柱のもう一つが「消費税制度の合理化」。要するに、二十年前に今の個別消費税は問題が起きているということを言っているわけですよ。(発言する者あり)まあ聞きなさいよ。  そこで、この第一の問題の「高福祉のための財源充実」という中には、国民の福祉の立ちおくれがあったことは事実であり、これを是正するためには真に国民福祉を目指した社会資本や社会保障の充実を図っていかなければならないし、そのためには「付加価値税を創設し、そこに新たな財源を求めていこうという構想が成立してくるわけである。」こう言っているんですよ。そして、私どもの同僚加藤議員が、冒頭に大平さんのときの一般消費税の話をされました。あのときは確かに赤字財政対策であったことは間違いない。これは加藤議員がちゃんと申されたとおりなんでありますね。  しかし、これは昭和四十八年の石油ショック、五十四年の二回の石油ショックに当たって財政が大赤字になった。そのとき、皆様方の政党は全部、赤字国債を発行してもこの際財政を通じて国民経済を立て直せという陳情書を出しておられるのです。赤字国債を発行してもですよ、そう言われているのです、全党、そこの前に並んでいらっしゃる党は。そうなんですよ。それを誠実に大平総理が、少しでも早くこの赤字国債を直すために、それじゃ二十年間議論してきたこの問題も使おうじゃないか、こういう話になって、赤字国債補てんという話が出たのは事実なんですが、基本はあくまでも、先ほどというか、この一両日話が出ております、この税制を仕組む本来の目的は国民の福祉の向上、そして福祉の充実ということのためにあったのだということを御理解をいただきたいし、三十年間、自由民主党は少なくともまじめにそういう前提のもとに議論をしてきたということをまず御理解をいただきたいと思うのですね。ひとつそれについて御所見を伺いたいと思います。
  125. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 藤井さんから、付加価値税そして福祉目的ということについて自由民主党が長年真剣な御勉強をなさってきたというお話がございました。  率直に申し上げさせていただきますが、それでは売上税や消費税が出されたときに、そういうことを、長い長い勉強の成果を含めて国民の理解が得られるようにお出しになっただろうか、非常に私は疑問に思います。先ほどの井上さんの御質問の中にございましたが、当初消費税提出されたときには、減税、公平、簡潔などが目的としてスローガン化されたわけであります。そして最近になって、総選挙など終わりました後、福祉、今度の参議院選挙でも、何か新しく全額福祉のために使いますというふうな党の広報、新聞も出されました。ところが、大蔵大臣と論争いたしますと、それは一般財源です、ではそのお金が福祉に回るということはだれか検証できますか、どんぶり勘定ですからというふうな経過になっているわけであります。  私は率直に思います。やはりこれから社会の目標は、経済社会よりも生活社会と申しましょうか、人間生活を高めていくというのが重大な社会目標であろうと思います。何といっても、高齢化社会の進行の中でどのように安心できる福祉の社会をつくるのかということが目標であろうと思います。そういう目標とそのための手段、やはり現在の制度をベースにして、二十五年後、三十年後金額が幾らかかるかと計算したって、これは本当の政策ではありませんから、本当意味でさまざまの新しい手法も含めた勉強をお互いに出し、またお互いに議論し合う、また国民皆様にそういう内容を御理解いただく。そのためにどのような負担をしたらいいのか、さまざまの税目について、不公平是正から起きる税目はあるでございましょう、あるいはそのほか直接税の改革もあるでありましょう、間接税改革もあるかもしれません、いろんなものを含めてどのような設計をするのか。私は、そういうものを拒否する国民はいないだろうと思います。多少負担になっても、やはり社会のためにという大まかなコンセンサスの形成ができる、そういう良識を持った日本国民だってあろうというふうに思うわけでありまして、何かそういう意味での、今熱弁をもちまして勉強なさったことを伺いましたが、現実にはそういう結果になっていなかったということがやはり国民的な不幸な混乱を生んだんではないだろうか。できましたら、改めてそういう角度からどうするのかを共同で考えてまいりたいと思います。
  126. 藤井裕久

    ○藤井委員 まず申し上げたように、そういう事実を認識していただいて、法律に書いてあるとか書いてないということよりも、この税制というものがそういうことを背景にして生まれてきているんだということを理解していただきたいんですね。法律に書いてある、書いてないじゃない。ですから、書いた方がいいということになれば書けばいいんです。それだけのことなんです。特に税制調査会でも、昭和四十六年には、一般消費税が具体的な課題となることが予想されるので、慎重にもう検討を始めろということも言っているんですね。  それじゃ逆に伺いますが、恐らくもう昭和三十年代の末から、今何か盛んに出てくる言葉ですが、合計特殊出生率は一台になった事態があるんですね。もう既にそのころ一台になったことがある。その後二に戻りましたけれども、まだことしなんか一・五七まで落ちちゃっているわけですね。そういう時期に、しかも長寿、平均余命も非常に延びているという事態においてこういう問題が発生してきておることは事実なんですね。ですから、各党におかれましても、そのような将来予想されるであろう事態に対して、今までの税制でいいのか、新しい税制を仕組む必要があるのかについて御検討になったことがあるんですか、ないんですか。
  127. 宮地正介

    ○宮地議員 お答えをしたいと思います。  その前に、先生先ほどからいろいろ大分古いお話をされておりますが、私どもの資料によりますと、昭和三十六年十二月の答申、これは私どもの神崎政審会長から過日答弁いたしました。この答申は先生御存じのとおり、  大型間接税の逆進的性格は、課税対象の選定などによって緩和されるとしても、本質的性格を変えることはできない。 二つ目として、  個別間接税の大型間接税と決定的に異なる点は、担税力との照応関係の点から課税対象を限定でき、税率、免税点等について配慮できることにある。 三、四、五と云々ありまして、  やはり大型間接税よりも個別間接税の方がと、こういう感じの答申をしております。また、その後、昭和四十三年の長期答申におきましても、  個別消費税は、個別物品等の消費に示される担税力に照応した課税を行うことができるという点において、大型間接税よりすぐれた面を持っている。 二つ目として、  現行個別消費税制度自体は、なお整備の余地が残されている。我が国の間接税制の方向としては、まず現行個別消費税のもとで制度の合理化を図っていくべきである。 こういうような答申もやはり以前に行われていることもぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  そこで、将来のいわゆる福祉費用を賄うには増税や国民負担の増額は避けられないのではないか、この辺の御趣旨の御質問だと思いますが、将来の福祉費用の増加を言うのであれば、まずその展望なりあり方を政府は詳細な資料をもって国民に示すべきであろうと私は思います。我々は、税制改革の前提として、医療、年金、福祉等に関する二十一世紀に向けた社会保障総合計画を策定し、税負担に対する国民合意の形成に努めることとしております。我々は、国民の声に耳を傾け、あらゆる方策を探り、その上で増収やむなきとの結論に至った場合には、憲法の理念に沿った税制を確立することにより、しかるべき税収を確保するという道を選択をしてまいりたい、こう検討しておるわけでございます。  私どもの方針といたしましては、憲法の言う公平の理念にのっとり、総合課税主義原則とした直接税を主とする税制を考え、間接税によりそれを補完する。すなわち、総合課税化を推進することにより所得課税の再構築を図る一方、土地税制改革など資産課税の適正化、あるいは租税特別措置法などの不公平税制の一掃を図り、直接税における漏れをなくしてまいりたいと考えております。間接税につきましては、公平の理念のもと、担税力に着目した適正な課税の検討を行いたい。政府は、大型間接税の提案をしながら福祉の具体的計画を示さないなど、国民が納得する材料を提供していないのが現状ではなかろうか、こう私どもは考えておる次第でございます。
  128. 藤井裕久

    ○藤井委員 今のお話はほかの方の答弁にもありましたから、こちらもほかの方と同じような質問はやめますから、同じ答弁は結構でございます。  そこで今、一言だけ加えれば、そのころには確かにそういう議論もあったけれども、それからいろいろな価値観の多様化なんかが出てきて、もうこれがいいとかこれが悪いというような説明がつかなくなっちゃって、個別にこの負担力がどうだとかいうことはもう無理だというふうに話が変わってきているのですね。ですから、今の論点はもはや過去のものであるというふうにまず御理解をいただきたいと思います。  それから、次に負担と給付の関係でございますが、皆様方の法律の中にも書いてありますよね。条件整備の一つに書いてあります。これはいいことだと思います。しかし、残念ながらもはやこれは政府がつくれという事態じゃないのですね。皆さんと一緒につくる事態なんですね。先ほどこの議論でもあるように、廃止法と見直し法を一緒に議論していると同じように、一緒につくらなければいけないのですね。そして、その中に基本的ないろいろな問題があるのですよ。これは一つ一つ基本だけ聞いたっていいのですよ。  例えば今、厚生年金はほぼ標準報酬月額の七〇になっていますね。このベースを守るということでいいのでしょうかね。国民年金五万五千五百円、そのベースでいいのでしょうかね。健保は、本人とか家族とかいろいろ率が違うけれども、おおむね今八割ちょっとになっていますね、給付率が。それを大体守ることにしましょうかね、こういう基本の問題なんですよ。何も抽象論じゃないのです、今の議論のように。全貌を示してとか、難しい話じゃないのです。厚生年金ならこの水準を守ろう、あるいは国民年金ならこの水準を守ろう、そういうことなんです。それをひとつ本当は時間があれば皆さんに聞きたいのですよ。どうでしょうか。厚生年金は今七割という水準になっておりますね。モデル年金ですけれども、十九万九千八百円ですか、なっていますね。この水準を守るということが一つの大きなスローガンであれば、それでよろしいということですか。例えばです。
  129. 森井忠良

    ○森井議員 我々も、これから二十一世紀に向けて社会保障に相当な金が要るであろう、これはもう真剣に考えております。私は、ささやかな経験ですけれども、ほぼ社労畑一筋に歩いてまいりましたから、今藤井委員御指摘のように、厚生年金にしても医療にしても大変な状態になることは、私どももそのまま認識をしております。  例えば厚生年金等も、将来支給開始年齢を六十五歳にしても、今の保険料、先ほどは給付をおっしゃいましたが、保険料の観点からいいましても、現在一四・三%、やがて一四・五%になるわけですけれども、これと将来の保険料の負担はどうなるのか。昨年の国会で一部、負担を少し減らしましたけれども、このまま推移をして二〇二〇年になりますと、今の大方倍、二六・一%ぐらいの保険料になってくる。医療については、これも老人医療、それから国民医療費もふえておりますから、恐らく今の倍額近くになる、八十兆円ぐらいになるのではないかというふうに私どもも考えておるわけでありまして、そうなってまいりますと、これはお金は要るのですよ。そしてまた、そのためなら、ちゃんと手順が明確なら、国民も要るものは出しましょう。私ども先輩の年金生活者の方々と話をしますと、森井さん、要るものは出すよ、しかし消費税の導入の仕方はひどいじゃないか、これが返ってくるのです。  それからついでに申し上げますと、藤井委員非常に御見識の高い方でありますから、率直に自由民主党の消費税等大型間接税の導入等に関して資料をもとにおっしゃったわけでありますけれども、これもやはり年金で暮らしていらっしゃる皆さんの言い方は、昭和五十四年の総選挙、大平さんは正直でございました。今国の財政再建を図るためには一般消費税が必要なんだ、堂々と選挙の公約に掲げて選挙戦を戦われた。もともと私は、率直に申し上げまして、お世辞じゃありません、大平さんは好きでございました。うそ偽りのない正直な方でありまして、そして我々野党議員についても常に気を配っておられまして、余談でありますけれども、私のような者が陳情団を大蔵大臣のところに連れていきましても、ちゃんと大平さんはそれなりに仁義を守って、そして陳情にこたえてくれました。そういう方でございました。比較をするわけではないのですけれども、今度の消費税のもとになったのは、御存じのとおり、大型間接税は導入いたしません、マル優の廃止はいたしませんと言われて、そして八六年の選挙で大勝したら、それこそある日突然売上税の問題が出てきたわけでしょう。これが困るということなんです。  ですから、私どもも二〇二〇年の人口のピーク時に一体社会保障の給付と負担がどうなるのか、真剣に考えております。しかし、真剣に考えておりますが、厚生省や大蔵省が昭和六十三年に出した例の「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障の給付と負担展望」というのを、数字だけ羅列したものでありますが、見せていただきました。根拠も何もない。それから、年金についても医療についても、全く改革を頭に入れないで、今の制度をそのまま適用して、推計をしたらこうなるという法外な数字です。これは今の資料をもとにいたしましても、百九十五兆から二百四十兆ぐらいのお金が要るのです。その当時政権がどこに行っているかわかりませんけれども、少なくとも私どもが連合政権をとった場合でも同じような課題を抱えておるわけでありますから、本気で取り組んでいきたい。しかし、神様といえども人口のピーク時になります二〇二〇年に一体どうなるのかというのはわからない。ですから、私どもも真剣にこの問題を議論をしていきたい。  ただ、藤井委員の発言を聞いておりまして感じましたことは、おまえらが言っておるような社会保障を実現しようとすればお金が足りないだろうと御指摘のはずなんです。したがって、将来あるべき税金の姿を示せ、こうおっしゃるわけです。私どもも将来あるべき税金の姿を示そうと思って、しかも永田町の論理でなしに、広く国民の意見を聞いた上で、揺るぎない税制をつくっていきたいということから税制改革協議会を御提案を申し上げておるわけでありまして、私どもは逃げ込むためにこの協議会をつくるんじゃ決してありません、これは。本当国民皆さんの御納得をいただいて、いい税制をつくっていきたいということで熱意に燃えておりますわけで、御理解いただきたいと思います。私が気になりますのは、同じような論理で、社会保障でお金が足りない、今の消費税は三%、やがてたくさんお金がかかるんだからこの税率を上げようじゃないかという論理にすりかわる危険性の方が私はむしろ大きい、こういうふうに考えておることを申し上げます。
  130. 藤井裕久

    ○藤井委員 代表である伊藤先生、今のようにかみ合ってもらえばいいわけですよね。この負担と給付の関係を抽象論で、あるべき姿が示されてないとか、あるべき姿という事柄は簡単なんですよ。  今の厚生年金の水準をどうするとか、森井先生から御指摘ありましたから言いますけれども、六十五歳を六十歳に持っていっても二六でしょう。六十五歳のまんまだったら三一でしょう。それでどうであろうか、こういう問題なんですよ。それから、医療だって今の八割給付、ほぼ八割給付を健保本人と同じように九割に統一しろという話があるわけですね。これをやればまたふえますね。今国保は、各一般の御家庭の方はもう既に泣いているわけですよね。月、世帯で二万円とかなんとか、これはもう法外ですよね。それがまたふえていく。今の厚生省の推計がけしからぬとおっしゃるけれども、これは一つの大事な推計なんですよね。今のままでいって、こうなりますよ。そしてもう五割、五〇%ちょっと切る。  もうこれも御承知ですから言いませんが、そのときに何がふえるかというと、一般の租税負担率も若干ふえるけれども、社会保険料が急速にふえるのですね。しかも、一般の租税負担率の中で全体は数%しかふえないけれども、給与分というのが倍以上になるのですね。これはもう皆さん専門家だからよくおわかりだと思いますが、それは何よりも所得税が持っている仕組みから来ているわけですね。つまり、厚生省の試算がばかだ、ばかだとおっしゃらないで、一つの試算だ、今の制度のままでもここにいく。内容を見ると、社会保険料の負担率が猛烈に上がる。租税負担率はまあまあなんだけれども、その中の給与者負担分がめちゃくちゃに上がる。これでいいかという話なんですよね。  それを理解していただくためには、あの資料は非常に有効だと思っておりまして、その中で、消費税というものを大幅に取り入れないで、給与所得というか所得税に過度に依存している税制構造のままでそのまま踏み込んでいったら、これはサラリーマンはたまったものじゃない。それは給与分の租税負担率が上がるだけではない。社会保険料負担率も上がる。みんなそこへ集中していくわけですね。(「わかっているよ」と呼ぶ者あり)わかっているなら、今の税制がおかしいと、そしてこう直したことの方がまだよりましであるという認識を持っていただきたいと思うのです。よりましだと思っていますよ。絶体だとも思っていない。また、先ほどのお話のように反省すべき点も多いと思いますね。だけれども、過去のというか、導入前の所得税中心主義の仕組みよりも、日本の経済にとって、日本のサラリーマンにとって、よりましであるということだけは自信を持って申し上げられると思います。
  131. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 藤井さんと今の森井さんとの議論を聞いておりまして、ようやくかみ合ったテーマがあったなという感じがいたしております。私の気持ちは、そういうことについての真剣な議論消費税を強行される前になぜできなかったのだろうか、私は非常にそれが残念でなりません。  今、政府の御提案のいわゆる福祉十カ年戦略に基づく当面の措置の法案も出されております。当面の措置の法案ですから、それなりの議論も本院で真剣に行われているわけでございますけれども、ああいう内容全体について、どうしてあの消費税を決める前に、強行される前にそういうことが行われなかったのか、行われるべきではなかったんだろうかという気がして私もならないわけであります。藤井さんがいろいろと御勉強の内容をおっしゃいました。私どもも、それ以上にもっと突っ込んださまざまのプランをお互いに議論し合いたいと思います。  例えば、大きな費用は医療、年金が中心になることは言うまでもありません。年金制度にいたしましても、今日の長寿社会ですから六十歳、六十五歳の議論もございますが、やはり部分年金・部分雇用のシナリオなどを、スウェーデンモデルなどございますけれども、どう設計していくのか。これはもう新しい行き方の設計として、あるいは年金財政も含めた全体設計をしなければならないと思います。  医療の問題についても、国民医療費の増大という中で、どのようにファイナルケアに対してプライマリーケアなどなどを増強するのかということも大きな課題になっておりますし、同じ神奈川ですが、県の医師会なんかでもその勉強会をしていることも私も聞いているわけでありまして、いろいろなそういうことを設計をする。そういう中から、今の政府が出された、まだそこにとどまっているのですが、今の制度のまま二十五年、三十年何十兆かかります、これじゃしようがないのですよ。これは本当に政策として怠慢だと思います、私は。そうでないものをお互いにどう出し合うのかということをぜひやらなければならない。  先般、当会場で補正予算の冒頭のときに、総理、大蔵大臣に同じ気持ちを申し上げまして、今の問題もあります、今のかみ合ってきた話題もあります、その前に不公平是正もあります。これだっていろいろと御批判はございましたが、十回も与野党議論して、それなりに私は成果があった。しかし、まだ道のりは半分だと思っております。やらなくちゃならぬ。そういうことを順次積み上げていって、あるべき社会の設計と負担をお願いするというのが筋ではありませんか。そういう議論を大いに詰めてやりましょうと申しましたら、総理も結構です、大蔵大臣もそうだと思いますというふうにおっしゃっておられました。そういう中身をできれば議論するのが国会としての責務ではないだろうか、伺っておりましてそういう気持ちがいたします。
  132. 藤井裕久

    ○藤井委員 それでは、また具体的提案なんでございますけれども、そういう中でこういうものをどう位置づけているか。  公的年金に補完するものとして企業年金、私的年金、これはイギリスの揺りかごから墓場の政策においても、この三つがかみ合わさって初めて社会保障政策は完全なものになる、充実したものになるということを言っているわけでして、公的年金偏重というものがまたこういう問題を醸し出している。そこで、これらの企業年金、私的年金についてのお考えを伺いたいのが一つです。  もう一つは、サッチャーとかレーガンが非常に大幅な所得税減税をやっておりますね。今皆さんのおっしゃっている所得税中心主義と直ちにぶつかるとか、そういう言い方じゃありませんが、要するにレーガンのなんかはびっくりするような数字ですね。七〇%の最高税率を二八に落としているわけですね、レーガン税制は。サッチャー税制だってそうですね。これは八三だったわけですね、八三を四〇に落としているのですね。こういう世界の動きというものについてどう考えるか。特に人、金、物というものが国境を低くして動いている中で、今ただひとり日本だけが所得税がどうこうだと言ってはもう動かなくなっている。そういう中で世界の大国イギリス、アメリカが今のような所得税制を仕組んできている。この問題と、前段の私的年金問題について伺っておくということが、今後かみ合わすための大事な点だと思いますので、話していただきたいと思います。
  133. 中野寛成

    ○中野議員 お答えをいたします。  四党、およそ同じ考えだと思いますけれども、公的年金、企業年金、私的年金、この絶妙なバランスをとることがこれからの年金制度の充実にとって大変必要なことであろう。ゆえに、先生御指摘の企業年金や私的年金を否定するものではございません。しかし、公的年金のまさに負担部分については、企業年金や私的年金を認めるがゆえに、なおさら公的年金の国の負担、公的負担についても充実をさせなければならないということもあわせて考えているわけでございます。
  134. 藤井裕久

    ○藤井委員 もう一つの、世界の所得税制が動いている中で……。
  135. 中野寛成

    ○中野議員 最高税率の問題につきましては、それぞれ国の税制の歴史が違いますし、国民の感情といいますか社会的な仕組み、それから国民感情の違い等もございます。ゆえに、それを一列に並べて単純に比較することは難しいと思います。  先ほど来言われておりますように、垂直的公平、水平的公平等々を含め、かつ社会保障制度のあり方等も含めまして、国民の納得する公平性をまず確立することによってそれ以外の税率の問題等についてやっと議論が始まるものだ、まずそれらの公平性を確保することが我が国にとっては先決ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  136. 藤井裕久

    ○藤井委員 それは税でございますから、公平それから不公平感というものが非常に違うと思うのですね。アメリカの今の税制もイギリスの税制も、彼らは彼らなりに公平だという信念のもとにやっているはずなんですね。そこは日本の今のお話の公平感と若干違うということ、それはわかります。わかりますが、世界のただひとりの国になってしまっては、これだけ世界が自由になって国境が低くなっているときに通らなくなってきているわけですね。もう日本人はやめたと言って外国に出ていく人が、そういうインセンチブで出ていく人もいるわけですね、現実に。そういうこともぜひ御配慮をいただきたい、皆さんとの合意の中で御配慮をいただきたいということが一つと、そういう国境問題が出てきたからもう一つあえて申しますが、皆様方の暫定的代替案の中に個別消費税の復活というのがあるのですが、世界で個別消費税をやっている国、調べたのですがないのですが、教えていただけないでしょうか。どうぞ。
  137. 中村正男

    中村(正男)議員 大勢的には、委員御指摘のように、個別の物品税を採用しておる国は先進国ではだんだんなくなってきております。ただ、全くなくなったのかといいますと、例えば西ドイツでは、照明器具に関していわゆる付加価値税と併課をしている。これはわずかでありますよ、わずかでありますが、あることはある、そのことだけ申し上げておきます。
  138. 藤井裕久

    ○藤井委員 要するに、ないのですよ。大変失礼な言い方ですけれども、私は、今ここで個別消費税をやろうという人は徳川日本じゃないかと思うのですよ。幕末の攘夷論者みたいな話なんですね、これ。大変失礼な話なんですが、そのくらい世界の中で孤立した話になる。ただ、税制が孤立して、機能しているならいいのですよ。機能しなくなって、それが対外摩擦になったり、日本人の大事な人が海外へ流出したり、経済が曲がったりしている。この面をひとつどうかこれから、きょう結論をおしゃってくださいとは言いませんが、これからいろいろ御合議があるやにきのうのテレビで見ましたけれども、その点をよく考えていただきたいと思うのです。個別消費税に戻るんだ、それが世界にない、そのために国際摩擦が起こるということですね、この点もひとつ十分御勘案をいただきたいと思います。  それから、実はおととい伺っていて非常に残念に思いましたのは、個別消費税の不合理性を、我が党の同志の方がどういうわけですかというのに対して、それは政府・自由民主党が長い間に蓄積した結果ではないかというお話がありましたが、これはひとつ撤回していただきたいのです。それは事実そうかもしれない。だけれども、それなるがゆえに全般的な消費税に変えたのです。それをまた戻そうということは、今度は皆様方に、しかもその提案した方が、これは矛盾じゃなくて正しいんだということを説明していただかないと困るのですね。これはもう当然のことなんですね。  前回同僚議員が伺ったこととダブってはちょっと申しわけありませんから、私が、これはちょっと説明してくださいと申し上げます。お嫁入りのときに、電気製品全部かかりますね。西陣の着物、かかりませんね。これはどう言って説明しますか。
  139. 中村正男

    中村(正男)議員 その点につきましては、私も極めて矛盾だと思っております。ただ、地域の工芸伝統を守るという意味合いで、長年にわたって極めて政治的な圧力が強かったのではないか、こういうふうに思うわけでございます。
  140. 藤井裕久

    ○藤井委員 では、もう一つ伺います。  総桐のたんすは非課税で、安上がりにしようと思って三方桐のたんすで嫁入りした方に物品税がかかりますね。これはどうしてですか。
  141. 中村正男

    中村(正男)議員 同じようなことだと思います。
  142. 藤井裕久

    ○藤井委員 そのように矛盾があるのですよ。ですから我々も、これはよくない、もはや説明がつかないということから、しかもさっき申したように二十年前からそのことを言っているのですね、自民党では。だけれどもできなかった、しかし今ようやくできた。それをまたわざわざ戻すというその修正案が全く意味がわからないのですよ。ですから、これはまた協議の中の話かもしれないけれども、こんなばかなことだけはやめていただきたいということをつくづく思います。
  143. 中村正男

    中村(正男)議員 ちょっと委員長指名で答弁させていただきますが、結論から申し上げますと、私どもは従来とられてきましたいわゆる個別物品税をそのままそっくり新しい税制改革で採用するとは一言も言っておりません。これはこれからの国民税制改革協議会で十分御論議をいただきたい。  ただ、言えることは、税の公平の原則ということからいたしますと、これは委員にこういうことを申し上げては大変失礼でございますが、いわゆる応能の負担ということは、これはどうしても貫いていかなければならない。それにはやはり直接税しかあり得ないというふうに思うわけですが、しかしこれだけ生活様式が多様化し、高度化してまいりますと、果たしてそれだけでいいのか。やはり個別間接税の問題も当然検討の値としては考えられるのじゃないか。ただ、今申し上げておりますのは、当面この平成二年度の暫定措置としてそういうものを復元したいということでございますので、御理解をいただきたい。
  144. 藤井裕久

    ○藤井委員 これは、これからの段取りです。それでは、一体この矛盾に満ちたそういう制度がどれだけ続くかという意味で段取りを伺いたいのでございますが、国民税制改革協議会というのがある段階でできますね、この案によると。いつごろできるというお考えでしょうか。と申しますのは、これからの政治日程を考えますと、一体国会がいつ開かれるのでしょうか。国会が開かれないと、これは国民税制改革協議会の委員は決められないというのがこの案でございますが、これは一体いつ決まるのか、いつを予定しているか、国会をいつ開会されることを予定しているかということが一つです。  それから、皆様方の、きょうは法案に出てないのですが、大体事柄として今おっしゃったような暫定案がありますが、これも協議会にかけられるのか。そして、次の本格的恒久案はかけられると思います。かけなければこれは話にならないですからね。それが一体いつごろまでに準備できて、どのくらいかけてこれを協議して結論をお出しになるつもりか、これを伺っておきたいと思います。
  145. 神崎武法

    ○神崎議員 国民税制協議会につきましては、この税制改革基本法案が成立いたしまして施行され、委員が選任されて発足するものでございます。したがいまして、この税制改革基本法案が速やかに可決成立をさせていただきますと、委員の選任ができるように国会の開会についても御配慮をいただきたいと考えております。  それから、この基本法によりましては、設置後一年を目途といたしまして結論を得まして、内閣総理大臣に対して報告することといたしております。長期税制についての改革案についての審議をこの国民税制改革協議会では行うことといたしておりますので、代替財源案については審議の対象とはいたしておりません。結論の出たものから順次答申をいただき、法制化をしていくということになろうかと存じますけれども、できる限り平成四年四月一日から実施できますよう、精力的に御審議をお願いいたしたいと存じます。
  146. 藤井裕久

    ○藤井委員 今、国会がいつ開かれるというのは軽々に言えない話ですが、なかなか無理なお話だと思うのですね。これは無理なお話だと思う。そうすると、四年の何月などというのはなかなかいかないと思うんですよね、この案を皆様方お通しになったという前提に立っても。そこで、その間に非常にいびつな、ひずみの多いこの消費税が残っているということ。それともう一つ非常に私は問題だと思うのは、自然増収を数年にわたってこれだけ一兆七千億という数字が出てくるということについて、とてもこれはいかぬのじゃないかと思っております。  私が大蔵政務次官をやったのは昭和五十六年ですが、まあ申しわけないながら三兆何千億の歳入欠陥を出したわけです。五十七年は六兆一千億の歳入欠陥を出した。ですから、自然増収があるばかりじゃないのですね。物すごい歳入欠陥があることも、経済の波ですからこれはあるわけなんですね。ですから、それを一兆七千億もの自然増収を、一年とはもう言えないですよね、二年なり三年なりの間これを見込むということは、赤字国債を出すということを意味しているんですよね、現実の問題として。ここでせっかく今赤字国債がなくなったところでまた赤字国債を出すのかという、極めて私は危険な見積もりであると考えておりますので、そこいらの見積もりについての自信のほどを教えていただきたいと思います。
  147. 菅直人

    菅議員 藤井委員が大蔵政務次官の当時三兆円あるいは昭和五十七年度には六兆円近い歳入欠陥が出たというお話を伺ったわけですけれども、当時のいろいろな資料を私なりに調べてみました。そうしますと、今委員が言われたことを逆に全く今の状況に当てはめてみると、当時なぜ三兆円とか六兆円の歳入欠陥が出たか、それは税務当局がかなり無理な高い見通しを立てて、その結果それだけ入らなかったのです。  なぜ高い見通しを立てたか。これは経済の問題ももちろん、第二いわゆる石油ショックということもバックグラウンドにありますけれども、実は当時は財政再建というものを政府自民党は掲げておられて、かなり無理な数字がわかっていながら、財政再建のために赤字国債をこれだけ抑えるということを前提にして予算を組みたい、そこで無理だということを承知の上で高目の見積もりを出させておいて、つまりはここにもいろいろ皮肉な論文がたくさん出ておりますけれども、これは人為的に出させたんだと言われているような高目の見積もりを出させておいて、そしてできないということで再度赤字国債を増額するということをやられているわけです。今日の状況は、それを振り返ってみると、全くある意味では逆転して同じことをやっているわけですね。つまり、この数年間、常に非常に低目の税収見積もりを出させる。低目の見積もりを出させておいて、だから金が足らないじゃないか、野党は対案を出すんだったら自然増収なんてどこにあるんだと言っておいて、実際にはこの数年間御存じのように数兆円、五兆円とか六兆円という膨大な見積もりミスを犯しているわけです、税務当局が。  ですから、これはもう御存じのとおりでありますけれども、私たちが言っている、例えば先ほど言われた一兆数千億という金額は、この数年間の経済的な動向の中でそんなに無理な話であるかどうであるかということは、これは私よりもある意味では藤井委員の方がよく専門家でかつてあられたからわかるわけでありまして、今の経済の強さというのは、かげりが一部に言われておりますけれども、まだ経済の成長はそれなりのペースでは続いていて、この一年ないし二年の中でその程度の、つまり一兆数千億程度の自然増収が見込めるというのは、これほどの専門家も言っているところでありまして、先ほど申し上げたように、人為的に高くしてできない場合と、逆に今回のように人為的に低く見積もっておいてできないというかおかしいというのは、全くそういう意味での人為的な財政当局の過ちである、そういうふうに言わざるを得ないと思います。
  148. 藤井裕久

    ○藤井委員 経済というのはサイクルですよね。経済はサイクルですから、いろいろな局面があると思います。今のように税収を故意にけ上げたり、け落としたりするということは、これはあり得ない話でございまして、それに今の皆様方の力によってこれは一兆七千億け上げられる可能性があるわけですよね、今のから言えば。そういうことになりますと、やはり非常に経済というのはサイクルする中でございますから慎重でなければならないということで、これもいろいろ御議論になるのでございましょうけれども、こういう自然増収、余分な自然増収というものに対しては、慎重であってほしいということを申し上げたいと思います。  そこで、時間も今迫ってきたようでございますので、それではクロヨンって何ですか。不公平税というとクロヨンという言葉が出てくるのですが、クロヨンとは何かを、ちょっとこれはひとつ申しわけありませんが、四党の代表の方に教えていただきたいと思います。
  149. 菅直人

    菅議員 これはもう言うまでもないことですけれども、いわゆるクロヨンと言われますのは、給与所得あるいは事業所得あるいは農業所得に対する所得把握の率が、九割は給与所得の場合は把握されているであろう、あるいは事業所得の場合はそれが六割程度であろうか、あるいは農業所得の場合は四割程度であろうかという、そういうことについて一般的に言われている言葉だと、そのように承知しております。
  150. 藤井裕久

    ○藤井委員 どうぞ、各党皆さん、おっしゃってください。ちょっとクロヨンという言葉が不公平の代名詞に使われておるのですが、いろいろおっしゃる意味が違いますもので、念のために一言でいいですから、今と同じですでも結構でございますから、ひとつおっしゃっていただきたい。
  151. 中野寛成

    ○中野議員 お答えをいたします。  クロヨンの解釈については、各党同じでございます。ただ、そのクロヨンに対する対策につきましては、若干のニュアンスの違いはあるかと思います。
  152. 藤井裕久

    ○藤井委員 各党同じですね。  なぜ伺ったかといいますと、クロヨンというものを、制度、税制の話とそれから執行の話とひっくるめましてよく話が出るのでございますが、私は、菅さんの言われたとおりだと思うのですよ。そもそもそういう話から出てきたのです。  そうなりますと、これは事業所得者の人、例えば随分怒られると思うのですよ。これ、本当は違うよという言葉で言われるかもしれないけれども、はっきり言えば、印象としては、事業所得者の人はみんな四割脱税しているという話ですよね。そう受け取るのが普通の人ですよね。これは随分人を侮辱した話だと思うのですよ。そんなことが世の中にあるはずがないのですね。そのことについてどうお思いでしょうか。つまり、クロヨンという言葉を今のように定義して、それが実情なのか、あるいはおもしろおかしい言葉であって、そんな実情はないというふうに思っておられるか、その点をおっしゃっていただきたいと思います。
  153. 中野寛成

    ○中野議員 マスコミ用語ですとか学者皆さんがお使いになる言葉ですとか、また、私どもがときどき比喩的に使います用語の解釈は、先ほど申し上げましたとおりでございます。  ただ、四割脱税しているとか六割脱税しているとかというその解釈につきましては、必ずしも私どももそれが脱税であるというふうに考えているわけではありませんで、これにつきましては制度上の問題、運用上の問題等々多岐にわたって検討をし、その真相は解明しなければならないであろうというふうに思っておりまして、そういう意味では先生のお気持ちとほぼ私どもも同じ考えではないかと思います。
  154. 藤井裕久

    ○藤井委員 どうぞ、公明党さんと社会党さんとおっしゃっていただけないでしょうか。
  155. 神崎武法

    ○神崎議員 例えば自営業者とサラリーマン所得捕捉の格差の問題でございますけれども、これは一概に決めることのできない問題であることは事実であると考えます。しかしながら、源泉徴収によりまして所得が一〇〇%捕捉されておりますサラリーマンという立場にとってみますと、必要経費などについてサラリーマンが納得いくようなものでなければならないというふうに考えるわけでございます。また、社会保障給付などで所得制限があるものについては、所得捕捉の格差が給付を受けられるかどうかにかかわってきているわけでございまして、これは見過ごしにできない問題であると考えます。
  156. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 一言申し上げます。  今も中野さんからおっしゃいましたような、このような何か象徴化された言葉として使われている。また、神崎さん答弁申し上げましたような、制度上、執行上のさまざまの改善の努力をしなければならないということだと思います。  私は、つけ加えまして、こういう言葉と、あるいはこういうさまざまのキャンペーンというものが、今日の税に対する信頼性低下あるいは不信というものを非常に広げているという実態があるわけであります。それをどうしていくのかということになりますと、特にそれらを担当している、国政に携わる私どもが、与党野党を含めて一体どうするのかということで、やはりせめて結論を得る努力をしなければならない。今までも一定の努力をしてきたということを先ほど申し上げました。  それと同時に、サラリーマンの層、それから自営業者の皆さん、私は、税制国民と社会という中で、何かお互いに理解し合えるような、そういう共通の場なり国民的な理解なり、広げる努力をしなければならない。そういう努力を経て初めてやはり不公平が大幅になくなった日本の税金だという理解が生まれるというようなことではないだろうか。そういう意味では、与党野党を含めていろいろな共同の責任を持っているというふうに私は考えております。
  157. 藤井裕久

    ○藤井委員 おっしゃるとおりでございまして、これは非常におもしろおかしい言葉になっていて、その言葉の中で、本当に歯を食いしばって泣いている人がいっぱいいるのですよ。自分たちはそんなことしてないのに、商売やっているのはみんな四割脱税している、こういうふうにとられちゃうんだ。サラリーマンの人はそういうふうに物を言ってくる、こういうことでございますから、サラリーマンの方が非常に源泉徴収という形で誠実な納税をしていらっしゃることはもう間違いないわけですが、事業者の方においてもまじめにやって努力している方が大変多いということは、今与野党おっしゃったとおりでございまして、皆様方も、ほらクロヨンクロヨンだなんて言ってあおることなくやっていただきたいということを心からお願いをする次第でございます。  もう時間がなくなりましたけれども、今申し上げたことは、私は決してぶっつぶす意味じゃなく、恐らくこれから与野党間のお話し合いがあると思うのでございますが、さっき申し上げたようなことは私の率直な気持ちでございまして、どうか皆様方、これからお話し合いをされる中で、率直に、かつ意思の通じ合えるようなことで意見を述べていただく。恐らく自由民主党もそういうことに対しては胸を広げて話してもらえると思っておりますので、どうかその点お願いして、ひとつ代表伊藤さんからお気持ちをいただければありがたいと思います。
  158. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 いろんな意味で、私ども国民皆さん代表としての責務を、さまざまの激しい議論はしながらも、やはり国民に対する共通の責任という意味での努力をしなければならないというのが、今日の衆参両院を通じた私どもの責務であろうというふうに思います。  ただ、今一言ひっかかりますのは、協議をなすってください、協議を前提というお話が何カ所かございましたが、私は、やはり国会のあるべきルールですから、大いに審議を尽くす、審議の中でもお互いに、たたき合いではなくてまじめな審議を通じながら、今日の藤井さんとの質疑の中でもありましたような、そういうものを形成していくという努力をしていきたいと思います。そういう議論の上に立って、最終の結論をどうするのかということも国会のあるべきルールに従ってなされるべきでありましょう。そういうものがなされた上に立ってお互いにどうするのかということも、何か密談か密室かそんなことではなくて、まさにやはり国民注目の中で国会の権威と国会のルールにふさわしい対応、あらゆる段階を通じて、国民代表としての責務を果たしていくというつもりで私どももやってまいりたいと思います。
  159. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 これにて藤井君の質疑は終了いたしました。  次に、中沢健次君。
  160. 中沢健次

    ○中沢委員 一時間の時間をいただいておりますので、できるだけ要点を絞りましてお尋ねをしたいと思います。  それにいたしましても、きょうで三日目の実質審議でございまして、廃止法案を提出をされました発議者の皆さん、大変御苦労さんでございます。恐らくその席の座り心地はいいのでしょうけれども、いろいろな準備を含めて恐らく毎晩毎晩徹夜をされて、まだこれから続きますので、ぜひひとつ最後まで健康に留意をされまして頑張っていただきたいと思います。  さて私は、三日間の議論をできるだけ席に座って聞いておりました。私から言えば、各党の代表は税財政のプロでございまして、非常に勉強にもなりました。しかし、これから私が質問する内容は非常にアマチュア的な、もっと言うと生活者の体験、庶民感覚、それをベースにしていろいろお尋ねをしたいと思います。特に私は、北海道の四区の選挙区でございまして、夕張の出身でございます。今までいろいろ議論がありましたけれども、できるだけ少し別な切り口から質問をさせていただきたい、このように考えております。  さてそこで、今回の論議を通じまして、消費税の存廃をめぐって今熱心に論議が続いている。消費税の導入が国民にどういう被害を与えているか、改めて私は多くは申し上げません。しかし、私の選挙区でいうと、炭鉱があり農村があり、あるいは造船や鉄鋼、とりわけ不況産業と言われております産炭地を抱えている。こういう実態を踏まえまして、少し具体的に、そういう実態論から入ってお尋ねをさせていただきたいと思います。  実は、この委員会に私と同じ選挙区から二期目の当選をされました与党委員もいらっしゃいます。私の選挙区は五名区でございまして、実は昭和六十一年、我が党が二人当選、自民党が三名当選をされた。得票の比率からいうと、与野党野党の方が得票の比率が多いのでありますけれども、死に票がありましてそういう状況でありました。さて、消費税が導入をされて参議院選挙が行われた。そして二月の十八日、衆議院選挙が行われた。産炭地や農村、そういうところに住んでいる皆さんは、消費税についてももう大変な怒りを持っている。加えて石炭政策や農業政策についても、政府自民党の政策に同じような被害者としての怒りを持っている。  さて、今度の選挙結果がどうなったか。具体的に申し上げますと、我が選挙区に限定をして言いますと、今度は民社党の新人の方も当選をされまして、野党が三名、与党が二名、我が選挙区は与野党の逆転を果たしたわけであります。しかし、これは我が選挙区だけでありまして、全国的にはもう各委員御案内のような衆議院の勢力分野になりました。  さて、消費税が入ったということで、とりわけ産炭地や農村地区にどういう具体的な被害があるのか。一人一人の国民としては共通でありますけれども、しかしたくさんの失業者がいる。高齢者が多い。もっと言えば生活保護も多い。こういう地域の実情から考えますと、全国共通の被害にそういう特殊的な要素が倍加をされまして、私から言えば、炭鉱がつぶされる、農業がだんだん疲弊をする、これは政治の責任でありますから、オーバーな表現で言えば政治災害だと思うのです。その政治災害の中でも、産炭地というのはもう激甚災害みたいなものでありまして、これはやはり何とかしなければならぬ、そういう論議は別の委員会でいろいろやってまいりました。  さてそこで、具体的にお尋ねをしたいことは、全国の共通のそういう問題は当然今までも議論になった。あえて私は、我が選挙区のことを若干申し上げました。大変な被害を二重にも三重にも受けている。やはり選挙の結果から見ても、我が選挙区の、圧倒的なと言うと語弊がありますけれども、五八%の有権者が野党に投票していただいている。消費税についてもやはり一日も早く廃止をしてもらいたい、こういう本当に血の叫びが選挙の結果に示されているのではないか。したがって、廃止法案をぜひ実現をさしてもらいたい。これは選挙区に帰りますと、そういう話をどんどん私もされますから、今度税特で質問をするからぜひひとつテレビの、全部の放映はないけれども見ておいてもらいたい、こういうことも申し上げてまいりました。  そこで、重ねて申し上げたいのでありますけれども、ぜひひとつ消費税の廃止法案を一日も早く成立をさしていただきたいということを本当に心を込めて願っている国民は、全国的にも我が選挙区にもたくさんいる。そういう心情をしっかりひとつ受けとめていただいて、提出者の代表で結構でありますから、廃止法案についての改めての決意、しっかりひとつお答えをいただきたいと思います。
  161. 菅直人

    菅議員 今中沢委員の方から、特に御自身の選挙区の北海道四区を中心とした状況を踏まえてお話がありました。私も、北海道の状況というのはそれほど詳しくは実感をする機会が少ないわけですけれども、今の話を伺っておりまして、夕張といえば石炭で本当に有名な地域でありますけれども、石炭の山が閉ざされるということも多くのニュースでこの間何度か伺いましたし、また、農村における減反の問題やあるいは造船不況等多くの課題が集中的に加わっているということを、今のお話でも改めて状況を伺ったところです。そういう中で、失業者あるいは高齢者、あるいはそういう方を含めて生活保護世帯が非常に多いということがあるというふうにおっしゃいましたけれども、まさにこの消費税というものが持っている、この間議論のあります最も大きな矛盾点といいましょうか、いわゆる逆進的な性格というものがこういう弱い立場の人に最も厳しく被害を与えてきている。  こういったものに対する怒りというのは、これは北海道に限らず、せんだっての福岡の選挙の結果もそういうものの反映だと思いますし、先ほど鈴木委員の方から女性の意見もいろいろ述べられましたけれども、私も東京を選挙区にしておりますが、東京の中でもそういった意見は大変強く現在でも続いているわけでありまして、そういった意味で内容的に大変矛盾の大きい消費税であり、同時に、もうこれも何度も繰り返し申し上げましたけれども、手続的にも国民合意を得ることをやってこないで、まさに公約違反で強行されてきたこの消費税を廃止することが私たちに与えられた任務であろう、このように考えております。  そういった点で、参議院に引き続いて今回、衆議院に野党四党でこういう形で提出をさしていただいたところであります。そういった意味で、まだ議論が始まって三日、四日という段階でありますけれども、何とかこの消費税廃止法案を成立をさせて、そして、そういった問題のない新しい税制をつくり上げるために再改革という方向で頑張っていきたい、発議者一同その決意で一致をいたしております。
  162. 中沢健次

    ○中沢委員 今菅さんの方から、私も北海道で何回かお会いをしておりますけれども、そういう北海道の実態もそれなりに理解をされまして、非常に心のこもったお答えをいただきました。ひとつ最後まで頑張っていただきたいと思うわけであります。  さて、それに関連をいたしまして、実は一昨年の消費税論議をやっているさなかに、シャウプ税制で有名なシャウプ博士が来日をされておりました。あの当時の新聞をずっと今ひもといて見ておったのでありますけれども、多くは語りませんが、いろいろな新聞の紹介記事の中で、一昨年の十月三十一日の朝日新聞の社説、見出しは「シャウプ博士が残した一言」、こういうことが書かれておりました。「どんな租税制度も、納税者がそれを公平だと思わなければ、うまくいかない」シャウプ税制以来の税制改革だと。一昨年そういう議論が始まって、今日まで続いているわけです。来日されたときはたしか八十五歳の高齢になられていた、こういう話も聞きました。私は、やはりシャウプ博士のこの言葉というのは物すごく重たい意味を持っている。幾ら公約違反、強行突破をやって消費税という制度を導入したけれども国民が納得をしなければうまくいかないのだ、こういうことをシャウプ博士は言われたと思うのです。それに対しましてどういう御見解をお持ちか、一言だけで結構であります。
  163. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 おっしゃいましたように、私もその記事を読みましたけれども、非常に印象的な記事でございました。  私は、公平性ということの意味合いあるいは国民の信頼という意味合い、その背景にやはり近代国家の、今日の民主主義国家のあるべき基本姿勢、あるべき態度を示しているということじゃないかと思います。やはり昔の封建時代の領主と年貢とは違うわけでありますから、そしてまた、参加なくして負担なしということの原則から今日の議会制度が発達をしたことは言うまでもありませんが、今日税を語るときには、どのような負担で、みんなで参加し、努力をしてどのような社会をつくるのかということが語られるということが、やはり税制の一番大事なところではないだろうか。先ほど福祉についてのややかみ合った議論もございました。どのような福祉社会をつくるために、みんなで公平にどういう負担をするのですかということを語り合うのが、私は税制だと思います。  そういう意味で、私も長年大蔵委員会にいたからというわけではありませんが、税制というのは、さまざまのポリシーの中で最もベーシックなポリシーであろうというふうに私は確信をいたしているわけであります。そういう視点がこの十年間、あるいはこの売上税から消費税に至る経過の中に実は欠落していたということが一番残念なことだと思います。私どもが主張しているように、あるいは基本法の幾つかの原則や方針で掲げましたテーマを次々と掘り下げて勉強し、掘り下げて国民に語りかけるというような努力を積み上げれば、私は必ずさまざまの今後の負担についての国民合意は得られる、基本的なルールがそこにも表現をされているということだと思います。
  164. 中沢健次

    ○中沢委員 今、尊敬する政審会長の方からお答えがございました。これはやはり与党野党という立場の違いがありましても謙虚に受けとめて、私は、これからのこともございますけれども、シャウプ博士のせっかくのこういう発言について謙虚に受けとめて、これから政治家として対処をすべきではないか、このことを率直に申し上げておきたいと思います。  さて、自治大臣が出席をされておりますが、後ほど大臣にもいろいろお尋ねをいたします。恐らく参議院で交付税の委員審議が終わっての出席だと思いますが、大変御苦労さんでございました。  さて、二つ目の質問に入らしていただきたいと思いますが、今まで審議を通じましてほとんどだれも取り上げていなかった内容について、改めて取り上げてお尋ねをしたいと思います。  消費税の導入に伴いまして、実は全国の三千を超える自治体、消費税に見合う転嫁をしなければいけない、自治省は盛んにそういう転嫁の指導をやってまいりました。さて、昨年の実態とことしの実態がどういうことになっているのか。自治省から来ていると思いますので、ごく簡潔に、昨年とことしがどういう推移をしているか、消費税の転嫁問題について、その事実関係をまず明らかにしていただきたいと思います。     〔関谷委員長代理退席、委員長着席〕
  165. 小島重喜

    ○小島政府委員 転嫁状況についてお答えを申し上げます。  昨年の四月以来、各自治体、鋭意努力をしてまいりまして、ことしの四月一日現在での転嫁状況は、都道府県及び政令指定都市の使用料あるいは公営企業の料金の状況についてまず申し上げますと、普通会計におきましては七四・一%、五十八団体のうち四十三団体、それから上水道事業につきましては、三十七団体のうち三十一団体、八三・八%、それから工業用水道事業につきましては、四十八団体中四十五団体の九三・八%ということでございますが、概して申し上げまして、年度中の都道府県及び政令指定都市につきましては、大きな変更はございません。それから市町村につきましては、県を通じまして把握をいたしますと、普通会計分で約七割強でございます。それから公営企業の代表といたしまして、水道で八割強、下水で約七割、病院では約八割ということでございまして、この一年間に市町村の方では数字的には若干数字は上がっております。
  166. 中沢健次

    ○中沢委員 今簡潔なお答えをいただきましたけれども、実は、この問題については地方行政委員会でも随分やりとりを行いました。政府や自治省の基本的なスタンスは、やはり消費税が導入をされた、全国の地方公共団体においても三%の転嫁をやるべきである、こういうスタンスであったわけです。しかし、それを受けて各地方公共団体がどういう対応をやっていたか、今数字がありました。しかし、実はこの数字はもう一つそれに関連する資料の中では、今転嫁をしたということは、部分的な転嫁を含めてのパーセンテージなわけですね。私から言えば、完全転嫁をしたパーセンテージ、部分転嫁をしたパーセンテージ、まだ一切手かついていないという、少なくとも三つに分けて公表しなければいけないのじゃないか、こういうふうに言ってまいりました。これはもう極めて常識的なことだと思うのです。それをあえて自治省が、批判になるのかもしれませんけれども、やはり地方に対して転嫁を指導している立場もありまして、部分転嫁をしたものも含めて全部転嫁をした、あるいは転嫁をしない、こういうことに一つは無理があったと思うのですよ。そのことは、私はここでは余り追及をいたしません。  それで、提出者の方にお尋ねをしたいのでありますけれども、一時期、そういう地方の状況に対しまして、国の方針に逆らう地方の反乱だと。これは私はとんでもない話だと思うのですね。もともと、国民に反乱を起こして消費税を入れた。表現はきついかもしれない。したがって、地方が住民の生活実態なんかが一番わかるところでありますから、住民と一番近いところの地方公共団体でありますから、例えば公営住宅の家賃にしても、上下水含めて水道料にしても、やはり中央からいろいろあるけれども、転嫁はできるだけ慎重にやりたいというのは、地方としては良識のあらわれでないか、地方の反乱じゃなくて地方の良識のあらわれだ、一つは私はそのように今でも認識をしております。それに対してどういう見解をお持ちなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  167. 中野寛成

    ○中野議員 お答えをいたします。  私も地方議員の経験がありますが、中央において法律としてもしくは政令で決定をいたしましたことに対してそれと違う決定をするということは、大変に勇気が要ることでありますし、まして反乱と言われなくても、または自治省から強権的な押しつけがないとしても、地方側から受ける印象は大変な圧迫感、圧力感を感じるはずであります。そういう中で、国民、市民と直接接している地方自治体が独自の判断をせざるを得ない。それはやはり国民感情や県民感情、市民感情を考え、その生活実態を勘案して最終的な結論をとらざるを得ないということであったろうと思うのであります。先ほど自治省からの御答弁で、実施率が七割のケースや八割のケース等を言われましたけれども、たとえ一割でも実施しない自治体があるということは、これは定着したとは言えないということを意味すると思うのであります。たとえ一割であっても、その一割は四割、五割に値するぐらいの意味を持つ、政治的に言えばそういうことではないだろうかというふうに思う次第でございます。ゆえに、自治省の調査により自治体・の転嫁率は、完全実施だけでなくて、一部実施及び実施時期のおくれるものも含めて言われたのであろう、それは先生御指摘のとおりであろうというふうに私も思う次第でありまして、やはり事業別に見る必要があります。  ただ、その中で、先ほど自治省のお答えには触れられませんでしたけれども、一番典型的な事例として住宅の問題があります。比較的所得の低い層が利用していると思われます公営住宅につきましては、市町村では該当団体が二千八百二十団体あります中で、転嫁しております団体が千六百四十二団体、転嫁していない団体は千百七十八団体となっておりまして、約四二%の団体が転嫁できないでいる、または転嫁しないでいるというのが実情であろうと思います。このような実態等を踏まえて、自民党といいますか政府の見直し案においても、所得に対する逆進性の緩和の要請や住宅環境の現状等から、個人に対する住宅の貸し付けを非課税の対象としようという案をおつくりになったのであろうというふうに思うわけであります。また、新聞報道等によりますと、一部の地方公共団体では、既に転嫁をしているけれども、市民生活等々を考えてこれはやはり撤回した方がいいかなということで、その撤廃をする方向で検討が始まっているところもあるというふうな報道さえもなされているわけであります。  重ねて申し上げますけれども、これらの実態は実数以上の政治的意味を持つということ、それから自治体が転嫁をしないということはよほどの決断、勇気、決意がなければできないわけでありますから、転嫁を実施していない団体が二割あるということは、それは五割、六割の転嫁をしていない団体があるのと同じくらいの重みをもって受けとめなければならないことであろうというふうに思う次第でございます。
  168. 中沢健次

    ○中沢委員 今具体的な数字を挙げて、それぞれ質問に直接関係がなかったのでありますが、関連するお答えもいただきました。  実は、今お答えいただいた中身は全くそのとおりでありまして、そのほかに都道府県別でいいますと、公営住宅の家賃で転嫁をまだしていないのは四十七のうち十三ある。政令都市は十七のうち十市がまだ転嫁をしていない。市町村に至っては今のように全体の四二%がまだ転嫁をしていない。政府自民党は、消費税は定着をしたんだ、国民の理解と納得をいただいている、しかしまだ手直しをしなければならないのでということを盛んに言われていますけれども、地方公共団体の転嫁の実情なんかを考えますと、私は逆に、転嫁をしないということは消費税は入れていないということでありますから、消費税は決して定着をしていない、これはもう客観的な事実でありますので、あなたも否定のしようがないと思うのです。そのことだけまた改めて具体的な事実として申し上げておきたいと思います。  さて、次の質問に移りますが、実は消費税の導入によって、今までも若干議論がありましたけれども、地方が持っておりました個別地方間接税が廃止になったり、大幅に削減をされたり、地方的な立場からいえばやはり大変な被害を受けている、自治体財政にとっては大変だ。確かにそれは消費譲与税だとか地方交付税でそれなりの補てんはされていますが、現実問題としては、やはり消費税導入によって地方が持っていた貴重な自主財源、個別間接税が廃止になる、縮減をされる、こういう事実もこれまた客観的に存在をしていると思うのです。  これに対する提出者側の認識、あるいはこれからこうしたらいいという見解があると思いますけれども、簡単にひとつお示しをいただきたいと思います。
  169. 宮地正介

    ○宮地議員 委員にお答えしたいと思います。  確かに、消費税の導入によりまして地方間接税が廃止をされた端的な例といたしまして、電気税、ガス税があるわけでございます。これからやはり時代の流れとしては、地方に対する国の権限の移譲あるいは自主財源の確保、これはやはり非常に大事なポイントであろう。そういう点を考えますと、やはり市町村の貴重な自主財源でございました電気税あるいはガス税が国税に吸収されましたことは極めて遺憾な問題である、こういう認識を持っているわけでございます。  しかしながら、地方税としての電気税とガス税の復元につきましては、今回、組み替え要求の中で、平成二年度、また平成三年度のフレームの中でお示しをさせていただいているわけでございます。一方、この電気税、ガス税というのは消費生活にも多大な影響があるわけでございまして、そうした消費生活にかかわる税でありますがゆえに、それぞれに免税点を設けまして、特に中・低所得世帯に対する負担がかからないように配慮したところでございます。  その内容につきましてはもう既に委員御存じのとおりと思いますが、電気税は税率を三%とし、一カ月の電気料金が三千六百円以下の家庭には免税点を設けてございます。これによりまして、約半数、四三%の家庭が電気税がゼロとなりまして、中・低所得世帯に対する負担がかからないように配慮しているわけでございます。ガス税につきましても、税率を二%、一カ月のガス使用量が一万二千円以下には免税点を設けておりまして、免税点を設けているために、約九五%の世帯はガス税がかからないようにしているわけでございます。  このような配慮によりまして、税制的にも経験のあるものでございますから、私どもとしては大きな混乱は起きないものと思います。大体平年度で電気税の場合は三千億、また、ガス税では百億、二年度の組み替え要求におきましては、電気税約一千八十六億、また、ガス税三十三億円の地方財源の復元をしたところでございます。
  170. 中沢健次

    ○中沢委員 今、具体的な数字も含めてお示しをいただきました。とりわけ電気税、ガス税、特に電気税の問題については後ほどまた自治大臣にも改めて、提出者にも改めて別な角度からお尋ねをしたいと思います。  さて、その次の質問でありますけれども、実は消費税が廃止をした後の地方財政本当に大丈夫か、先輩の村山委員の方からも一昨日ですかそういう指摘がありまして、提出者の方からもお答えをいただきました。  私は地方行政委員会理事をやっておりまして、同じそちらの方に座っております元信さんも理事で、今度の地方交付税法をどうやって衆議院段階でさばいていくかいろいろ苦労をいたしまして、別にそのことは多く語りませんけれども、結果的に、自民党理事皆さんともあるいは野党理事皆さんともいろいろ相談をいたしまして、附則を修正をする、こういうことで話が折り合いがつきました。残念ながら共産党の同意は得られませんでしたけれども、四党で共同修正ということにして衆議院を通過をさせて、大臣、出席でありますけれども、恐らくきょうは参議院の地方行政委員会で同じような扱いで地方交付税法が成立をしたと思います。これは地方交付税ということを中心に考えますと極めて画期的な、歴史的なことだと思うのですね。  さてそこで、提出者にお尋ねをいたしますけれども、確かに地方交付税法のそういうさばき方はやりました。附則も修正をさせました。私は個人的にそれで大丈夫だとは思うのです。しかし、消費税を廃止をする法案が成立をいたしますと、交付税だけで一兆一千億程度財源に穴があく。附則の修正では、それも含めて、廃止になってもあるいは見直しになっても、地方交付税の配分の総枠、つまり十三兆七千億は一切影響は受けないという附則の修正にしたのでありますけれども提出者として、私のような御認識をお持ちだとは思うのでありますが、改めてお尋ねをしたいと思います。
  171. 元信堯

    ○元信議員 お答えをいたします。  確かに委員の御指摘のとおり、消費税を廃止をいたしますと、五分の一が地方譲与税に回り、また残りの二四%が交付税に回っておる、この両税源がなくなるわけでありますから大丈夫かと各般のお尋ねがあったわけでございますが、結論から申しますと、消費税を廃止しても地方財政の運営には差し支えがない、これが私どもの結論でございます。  そのわけを申しますと、政府の税収試算に基づきまして私どもが試算をいたしましたところによれば、消費税を廃止することによって地方財政に与える影響額は、平成二年度にあっては、交付税分で四千八百四十二億円、それから譲与税分で五千四十四億円となります。また、三年度にあっては、交付税分が一兆二千二百六十九億円、譲与税分が同様に一兆二千七百八十億円、こういう金額になるわけであります。  既に私どもが昨年お示しをいたしました代替財源案、すなわち地方間接税の復元、今お話がありましたとおりですが、その分と、それから国税の改正、そして現在の税収動向を見てまいりますと、これらは完全に穴埋めをされて多少おつりもあるであろう、こんなふうに思っているわけであります。  私ども考え方は、これも再々申し上げているとおりでございますが、消費税税制並びに地方財政に多大の混乱を与えている、迷惑を与えている、したがいまして、これを廃止をすることがまず第一でございまして、その整理と並行いたしまして地方税財政の拡充並びに地方自治の基盤を強化する税制改革をお願いをする、こういうことになろうかというふうに思います。平成二年度の後半と三年度の計一年半はその経過期間でございまして、したがって、我々の考え方に基づけば、二年度、三年度における交付税についてはその総額は十分確保できる、こういうふうに判断しているわけでございます。  なお、今委員からるるお話がありましたが、平成二年度の交付税につきましては、さきの交付税法の改正案を審議する地方行政委員会におきまして、自民党及び今回の発議者を含む四会派共同で、附則第五項に、「消費税に係る今回の税制改革に当たっては、平成二年度及び平成三年度以降において、地方交付税法の趣旨に基づき、地方財政の円滑な運営に資するため地方交付税の総額の安定的な確保が図られることとする。」こういう加筆修正をいたしましたことは御指摘のとおりでございます。したがいまして、消費税廃止ということになりますれば、これに伴う財源対策につきましては、与野党がそれぞれ責任を持って対処すべきことであるというふうに考えます。  なお、つけ加えますと、一昨日来議論の中で、何ですか、社会党がこの共同修正をいたしましたことは、消費税に賛成をしたかというようなごとき議論が一部あったようでございますが、とんでもないことと、かように思っております。
  172. 中沢健次

    ○中沢委員 時間があれば今の元信さんのお答えに対してもう少し私なりにいろいろな議論もしたいのでありますが、時間がありませんので次の問題に移らせていただきます。  さて、提出者が出しております税制改革基本法案の要綱、これに関連いたしまして少しく具体的にお尋ねをさせていただきたいと思います。  一つは、基本的にはやはり国と地方の税源の再配分の問題、あるいは地方税についてどういうこれからの展望とあるいは税制としての構想を持つか、ここが基本になると思うのでありますが、それを一つの前提にいたしまして、やや各論にわたるかもしれませんが、簡単にそれぞれお尋ねをしたいと思います。  まず一番最初に、国と地方の税源再配分を検討すべきである、私はそのように思います。恐らく基本的には提出者の皆さんも同意見だと思いますが、なぜそういうことを言うかというと、現在の国と地方の税源の配分の関係でいいますと、形式的には国の方が多くて六四%を超える、地方は三六%弱。しかし、実際的ないろいろな仕事に付随をして実質的な税源の再配分のパーセンテージ、いろいろ資料を出していただいていますが、結果的には国が四割で地方が六割だ。税制の仕組みとしては、交付税だとかあるいは地方譲与税あるいは国からの支出金、それが全部こう加算をされて、結果的に実質配分には当然なっているのです。しかし、形式、実質という議論でいろいろ今までもやりとりをやってきましたけれども、この際思い切って、もう実質に近い線で国と地方の税源の思い切った再配分をやるべき時期にあるのではないか。つまり、これはこれからの税制の再改革一つの大きな具体的なテーマではないか、このように考えておりますけれども、いかがでしょう。
  173. 元信堯

    ○元信議員 お答えを申し上げます。  委員御指摘のとおりでございまして、国と地方の実質的な事業の割合に近づけた税源配分というのがあるのが好ましい、これは当然のことであろうかというふうに思うわけであります。しかしながら、税源には地域的な偏在がございまして、一律的に地方に移譲してしまいますと、かなりの一極集中といいますか、東京には税源が多いけれどもその他の地方にはほとんどないというようなことも生じかねませんので、私どもは最終的には財政支出の割合に税源を近づけていくということを目標にしながら、当面、地域的に偏在の少ない、まんべんなく税源のある税について国税から地方税に移譲していくことがよろしいのではないかというふうに考えております。しかし、そのためには、それに付随いたします事務の再配分もございますので、詳細については広い立場から国民税制改革協議会でぜひ御検討をいただきたい、かように思っているところでございます。
  174. 中沢健次

    ○中沢委員 それに関連をいたしまして、各論の二つ目として、これは自治大臣にも見解をぜひお聞かせをいただきたいと思うのであります。  地方税における自主財源が、消費税導入に伴って、先ほど来ありましたように金額にして約一兆円ぐらい減額になってきています。したがって、地方税においても何らかの新税を検討すべきではないか、これはかねてから地方六団体あたりもそういう意向を私どもの方にいろいろ伝えてきているわけです。具体的な中身はまだはっきりしませんけれども基本的に、地方税について新税ということについて言うと、環境はそれほど甘くはないと私は思います。思いますけれども、そういう今の地方の置かれている、自主財源が非常に乏しくなった、こういう現実を踏まえて、私は、やはりもっと積極的に地方税の新税の導入ということを検討すべきだ。  これは自治大臣としてどう思われるか。地方行政委員会の今までの議論もありました。それと、提出者として私の質問に対してどういう見解をお持ちか、もちろんこれから税制改革協議会で議論をする大きな内容だと思いますけれども、そのことも含めてお示しをいただきたいと思います。
  175. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 今委員も御指摘のように、地方のいわゆる財政分担、財政需要というものは、ますます多額に必要になってくるという趨勢は事実でございますし、特に、今政府が立てておるようなゴールドプランとかあるいは生活重視を図っていくための生活関連の公共投資とか、そういった意味では大変地方財政の需要というものが増加していくということは歴然たる事実でございます。したがって、こういった意味を加えて、自主財源の充実という形はまさに喫緊の基本的な課題であるという認識は持っております。  しかし、もう委員はよく御存じのように、もう既に今日税制の抜本改革を行ってきたところでございますし、この際新税創設で住民負担がどうなっていくかという形については、非常に慎重な検討を要する問題だなという認識は持っております。したがって、新税論議もございますけれども、新税を現段階においては制度化することは考えていないということでございます。
  176. 宮地正介

    ○宮地議員 お答えいたします。  税制改革の問題は、何度も申し上げておりますとおり、税制改革基本法に掲げられました基本原則及び基本方針に沿いまして、国民税制改革協議会においてその具体的内容が今後検討をされていくものと考えておるわけでございます。  この場合、地方税の新税の検討につきましても、地方税源の充実及び国と地方の税源配分の見直しの中で、地方公共団体の意見等を踏まえながら必要に応じて検討を行うことになると思われるわけでございます。その際、過去に検討された各種地方税新鋭の検討過程で行われました論議も参考にしつつ、地域レベルでの国際化あるいは経済のストック化等、最近の経済動向の変化等に配慮し、検討をしていくべきであると考えております。  既に委員御存じのように、過去に検討されました新税として、広告課税とかあるいは自動車運転免許税あるいは電話利用税など幾つかの新鋭が検討された経緯もありますので、そうした経緯を踏まえながら、今後税制改革協議会において十二分に検討していただきたい、こう考えておるところでございます。
  177. 中沢健次

    ○中沢委員 自治大臣の方からの御答弁は、正直に言いまして、地方行政委員会議論していたお答えをややトーンダウンをされている。こういう税特という場所でありますから、それのいい悪いの論議はまた地方行政委員会でも議論をしたいと思いますが、いずれにしても、現実問題としては地方の自主財源が非常に少なくなった、こういう現実はもうはっきりしている。それであれば、地方交付税だとか消費譲与税、一般財源として将来的に一体どうなるかということにも関連をするのでありますけれども、やはり自由に使える自主財源を地方税でもしっかりキープをするという基本的な考え方は持つべきである。特に自治大臣としてはそのことをひとつしっかり腹に据えていただいて、確かに現実的にはなかなか厳しいということを私は一〇〇%否定はしません、ぜひ自治大臣ともまた別な場所でも議論をしたいと思いますが、提出者の方の御答弁を聞きまして、ぜひひとつこれからも積極的にお願いを申し上げたいと思います。  さて、まだいろいろありますけれども、各論の最後として、一つ取り出して改めてお尋ねをしたいと思います。  先ほど地方交付税を若干角度を変えて取り上げました。国の国債残高も莫大な金額、これはもう全国民ほとんど承知をされているが、意外と地方公共団体の地方債の残高が幾らあるのだということがほとんど知られていない、国民レベルで言えば。私は、その辺がやはり地方についての税財政が、地方行政委員会ではまじめに議論しているつもりでありますけれども、なかなか全国民のものになっていないということについて非常に残念だと思います。  そちらに座っていらっしゃる皆さんはもうベテランでありますから百も承知だと思いますけれども、地方債残高は平成二年度で、いろいろな要素を入れまして六十七兆を既に超えている、こういう事実。しかも、三千を超える地方自治体は、財政の実態からいうと、これは一本化に当然なっていませんから大変なばらつきがある。よく言われておりますように、公債費の負担比率二〇%を超える自治体はもう自治体財政としては赤信号だ、危険信号だ、こういう一つの目安として、公債費比率二〇%問題が一つの物差しとして議論もされてまいりました。しかし、この二〇%を超えている自治体が、残念ながら全国の、全体の地方公共団体の二〇・四%に達している、これも事実なんです。  そうしますと、地方の自主財源が非常に制約をされる、おのずから地方交付税だとか消費譲与税に依拠をせざるを得ない。ところが問題は、地方交付税でいうと国税三税の三二%という枠がはめられておりまして、随分議論もしてまいりましたけれども、なかなか思うように、地方の要求にこたえるような交付税の枠の拡大にはなかなかなっていない。平成二年度は十三兆七千億が一般財源だと言われている。しかし、実際は、事実はいろいろなひもがついておりまして、地方ではやや特定財源的な要素も、全部とは当然言いませんけれども、交付税とはいいながらそういう要素もある。一方、自治体は二割を超えるところが危険信号を既に突破をしている、こういう状態。  そうすると、予算委員会やこの税特委員会では恐らく今までも議論があったと思うのでありますけれども、一方において地方税の自主財源、税源についてはなかなか新しいものを入れることも難しい。税制改革でもって一兆円に上る自主財源をカットをしたということが一方にある。交付税は三二%の枠でしっかり抑え込まれる。僕はやはりこれはどう考えても地方から見ると片手落ちだと思うのですね。これは党派を超えて、私はそういう共通の認識はそんなに違わないと思うのですよ。  そうすると、この地方交付税制度について言うと、もっともっと制度的な充実を図る、三二%の枠を突破をして三五%にするとか、あるいは地方交付税を本当に文字どおり自主財源として、できるだけひものつかないような形で地方に配分をする、こういう構造的な枠の拡大も含めて本格的な見直しをする時期、ちょうど税制の再改革をやろうとするわけでありますから、格好なタイミング、機会ではないかと僕は思いますが、その辺につきまして提出者の御意見をお伺いをしたいと思います。     〔委員長退席、関谷委員長代理着席〕
  178. 元信堯

    ○元信議員 お答えを申し上げます。  地方財政の現状についての認識は、委員提出者と全く選ぶところはございません。まさに地方財政の危機というものがいまだに払拭をされておらない、こういう現状もあるわけでございます。また、最近、地方の各団体の行政内容というのは非常に画一的といいますか、一定の水準を満たせ、こういう住民からの要望も強まってきておりますし、あるいはまた、日本の道路でありますとか下水道でありますとか、こういうような公共財に対してもっと充実せよというような国際的な要求も高まっておる、こういうような段階に来ております。このために、地方団体間の財政調整制度としての地方交付税制度というのはますます大きな意味を持ってきているわけでございまして、先ほど御答弁を申し上げました地方の自主財源の拡充と相並んで、交付税制度というものがますます拡充されねばならぬというふうに思われます。  したがいまして、現在、現行の三二%の繰り入れ率がこれでいいかどうか、こういうことも含めまして、交付税の財源を長期的に安定確保する、そのことが重要な問題になってくるわけでございまして、私どもは新しい税制の中で今申しました地方財源の充実を図ってまいりたい、このように考えているところでございます。
  179. 中沢健次

    ○中沢委員 この問題について自治大臣からもお答えをいただきたいところでありますけれども、もう時間も迫っておりますので、次の問題についてお尋ねをしたいと思います。  実は先ほど若干の議論を行いました電気ガス税に関連をいたしまして具体的にお尋ねをいたします。これは自治大臣からの御答弁もぜひお願いをしたいと思います。  消費税導入に伴って電気あるいはガス税が廃止になった。しかも、電気にしてもガスにしてもそれぞれ免税点を持っておりまして、消費税のような逆進性を逆に緩和をする、つまり所得の低い人に対する政策効果を具体的に保障していた。これはもう長い、昭和三十六年以来の歴代の経緯が明確にしていると思うのです。さて、ところが消費税が導入をされる、電気税は五%が三%になった、税率が低くなったではないか、しかし免税点も一切なくなった、こういう具体的な事実も当然ある。  私は先ほど夕張出身ということをあえて申しました。もう高齢者や生活保護世帯あるいは年金だけで生活をされている人にとりましては、電気料金というのは、これは本当にばかにならないんですよ。暖房の熱源も最近は電気が多いんですね。そういうことなんかを考えますと、今度自民党の方から出された見直しでは、この問題が一切触れられておりません。地方税という観点から見ると、私は非常に問題だと思う。  それはさておいて、まず大臣にお尋ねをしたいのは、地方税の所管はもともと自治省でありました。消費税が入ったことによって電気税、ガス税が廃止をされた。免税点の効果があったということはもう大臣は十分御承知だと思う。今日は消費税の逆進性で、まあダブルパンチで低所得者の皆さんは非常に困っている。本来的には、消費税の問題でありますから大蔵大臣かもしれません。しかし、私はあえて大臣に出席を求めたのは、三十六年以来ずっと自治省が所管をしていた地方税、電気税なんですよ。したがって、そういうことからいうと、自治大臣として、私は、一歩というよりも相当譲ったにしても自民党の小手先だけの見直しだとは思いますけれども、見直しの中にどうしてこの種の問題が具体的な形で示されてこないのか。自治大臣としてはその辺の痛みは私はわかっていると思いますけれども、それについての、今までの経緯は別にいたしまして、これから恐らくいろいろな意味での政治的な話し合いがされると思いますけれども、今後の問題も含めて、長い間所管をしていた自治大臣としての見解もひとつ率直にお聞かせをいただきたいと思います。  発議者の場合は、もちろんこれは消費税を廃止をする、電気税、ガス税はもとに戻す、免税点もそのとおりだ、こういう立場でありますので、そのことについての改めてのお答えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  180. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 確かに地方財政にとってはこの電気税、ガス税というのは主要な自主財源でございました。これが今回の消費税の導入によって廃止されることになって、その結果、地方の自治体財政に大変大きな影響を与えたということは事実でございます。先ほども委員の御意見にございましたように、自治団体にとっての財政補てん策と申しますか、これは消費譲与税なり消費税分のうちの交付税なり、消費税の約四割分が地方に還元されることになりますから、そういったことでは地方の自治体財政にとっては、手当てというか、多少不足でございますけれども、充てんされてきておるということも事実でございます。  しかし、委員の御指摘になった電気においての三千六百円、ガスにおいての一万二千円という免税点がなくなって、これが広く薄められて三%になったということは事実でございます。そのために、低所得者層を含めて広義の弱者対策という形において従来の電気税、ガス税に関してはそういった措置がなされておったわけでありますが、その枠が取っ払われたということでございますから、逆進性をつかれての御意見開陳は、その形はそうであると理解でぎます。しかし、この消費税がそもそも消費全般に薄く広く例外なしという基本的な形でかけられてきた経緯にかんがみまして、こういったことがやむを得なかった措置であるというふうに理解しておるわけです。  今度の見直しに当たっても、食料品や教育や家賃等々見直しはなされたわけでありますけれども、この面については見直しの中に入れることはできませんでした。しかし、今後とも、こういった低所得者層に対する対策、また、自治体財政に穴があかない具体的な施策というものは懸命に政策的努力をやりたいと思っております。
  181. 宮地正介

    ○宮地議員 お答え申し上げます。  先ほど委員にお答え申し上げましたとおり、私どもは平成二年度の組み替え要求、また平成三年度におきまして電気税、ガス税の復活を行いまして、その際、中・低所得層のそうした方々の負担の問題に考慮いたしまして免税点を復活したところでございます。
  182. 中沢健次

    ○中沢委員 時間が参りましたので、終わります。
  183. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 これにて中沢君の質疑は終了いたしました。     〔関谷委員長代理退席、委員長着席〕
  184. 山崎拓

    山崎委員長 町村信孝君。
  185. 町村信孝

    ○町村委員 前回に引き続きまた機会を与えていただきまして、大変にありがたく思っております。  前回、かなり限られた時間でございましたからすべてを詳細にというわけにはまいりませんでしたので、きょうは、前回少し聞き漏らしたようなことを若干聞かせていただくことと、あと、もう少し別の角度から、きょう既に同僚議員の何人かの方が質問されましたが、国際的な視点から見て、世界の税制の流れなりあるいは今回の税制改革をどう見たらいいのかというようなあたりをちょっと伺わせていただきたい、こう思っております。  その前に、これは別に質問ではなくて、私ども自民党認識している事実関係だけをちょっと申し上げさせていただきますが、一昨日、伊吹議員が、昨年の年末の第百十六臨時国会の終わりのころに参議院で法案が可決をし、そして衆議院にこの税法の案が回ってきて、結果的には審議が行われなかった経緯につきお話をし、たしか中野先生がその経緯の御説明をしていただいたかと思いますが、我々の認識と随分違うものですから、ちょっと私どもは事実認識がこうだということを申し上げさせていただきます。これは別に質問じゃございません。  これはどういうことかというと、十二月十二日に衆議院の税制問題特別委員会、ここで提案理由の説明を聴取した後、断続的に理事会を実は行いまして、私ども自民党に対して野党の方からむしろ――質問自民党は大いにしたいと言ったにもかかわらず残念ながらできなかった。そのとき野党皆さん方は、質問取りが間に合わないとか発議者と連絡がとれないという、ちょっと法案提出者としては信じられないような理由をいろいろ言われ、最終的には委員長の裁断に任せ、委員長も、自民党少し無理言わずに野党の言うとおりやれという裁断が出た。にもかかわらず、野党皆さん方はこれを持ち帰って、結局発議者がいない等々のまた理由を述べて、昨年の年末は大変残念なことに衆議院において質疑が行えなかったという事態がありましたので、最終的にはそれは合意に至らずということで、それは結果的には質疑しないということで協議が調ったと言えばそうかもしれませんけれども、まさにこれは国会対策的な発想で残念ながら審議ができなかったということを、私はこれは国民皆さん、そして野党の新人の皆さん方にもそういう実態があったのだということをひとつ認識をしていただきたい、こんなふうに考えております。これはイントロダクションというか、一昨日の審議のちょっと足りなかった部分ですから、冒頭に申し上げさせていただきます。  まず、国際的な観点から見た野党の提案というようなことで冒頭少しお話をさせていただきたいと思いますが、世界の大きな流れというのが、近年、この一、二年物すごい勢いで起きているということは、もう私が改めて言うまでもない大きな流れになってきているわけでございます。広く言うならば、東の世界が崩れて急速に西側に寄ってきている、東西ドイツの合体も間近い、こんなような状態であります。市場経済の優位性とか、あるいは企業とか個人の創意工夫をもっとどうやって引き出していったらいいかとかいうようなこと、あるいは、大きく言えば世界の経済、これも、先ほど同僚の藤井議員がお話しになられたようなボーダーレス経済といいましょうか、非常に経済に関しては国境の壁が低くなってきた、そんなような動きがあるわけですね。  そういう経済の中にあって、余りそれぞれの国の仕組みというものが違っていると、いろいろな摩擦問題になる。今、日米間にあるような摩擦も、やはりそれは制度が余り違い過ぎるから、そこから来る誤解なりあるいは怒りなりというものがあるので、やはりこれだけ経済がボーダーレス化してくると、できるだけ各国の仕組みというものは、もちろんそれぞれ国の主権にかかわる問題もありましょうし、また同時にその国の独自の歴史なり考え方があるのは当然でございますが、できることならば余り仕組みなり制度なりに違いがない方が、多分国際的な資源配分がうまくいったり国際的な摩擦が少なくなるという意味で、これは必要な配慮事項、重要な配慮事項なんじゃないかな、こう思うのですね。  これは、後々それぞれの各論に入る前にちょっと基本的な認識において伺いたいのですが、社会党の方々に伺いますけれども、つい先般、皆さん方の党の綱領を変えて「社会主義革命」という言葉を落とされて、まあもともとそうだったとおっしゃるようですが、何か「社会民主主義」というお言葉に変えられたということでございます。これは世界の動きがやはり社会党にも影響したのかなと私ども第三者的には承っておりますけれども、私は、そうした違いといいましょうか、ただ単なる党の綱領の違いということが、皆さん方の持っておられる経済政策なりあるいは税制政策なりというものに何か違いがここで出てくるのかどうなのかというあたりを社会党の方にちょっとお伺いをしたいのですが、いかがでしょうか。
  186. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 お答えをさせていただきますが、その前に一言だけ。  中野提出者から御答弁になったことについてお話がございました。質問ではない、見解とおっしゃいましたが、やはり私もきちんとしておきたいと思いますので一言だけ申し上げておきたいと思いますが、あのときの状況、私は当事者ではございませんが、関係者から私どもきちんと伺っているところでは、衆議院の税特理事会が一致しないので進まなかった、発議者の皆さん、参議院の発議者の皆さん、これは全員待機をしてお待ちをしていたということなので、参議院の発議者の名誉のためにも申し上げておきたいと思います。  それから、大変視野の広い御質問がございました。私はこう思っております。飛ぶがごとくとよく表現をされますが、まさにドラマチックな世界の変化であります。こういう中で一体日本はどういう進路をやったらいいのか、あるいは飛ぶがごとく世界は変わるのに日本の政治は牛歩のごとくと言われたりするようでいいのかということを、議会人の一人として真剣に考えさせられるわけであります。  言うまでもありませんが、やはりあの東欧諸国の変化を見ておりますと、一党支配、中央集権経済体制、あるいはさまざまのハードな社会の仕組みではもう対応できない、もう抜本的にこれは変化をしなければならないという状況のあらわれであろうと思います。  同時に、私は見ておりまして、感動して見ておりますのは、何か強力な指導者が、ゴルバチョフの力もございますけれども、それだけではなくて、東欧諸国で民衆が立ち上がって社会を変えるということを非常に感動しながら見詰めているわけでありまして、そういう流れの方向に、もともと私どもの党もそうでございますけれども、規約改正も含めまして、やはり社会民主主義、民主的な手法、民主主義をベースにしながら社会を変えていくという態度を改めて鮮明にいたしているわけであります。  そういう中で何か経済政策や税制がどういうふうに変わってくるのかというお話がございましたが、私は、たくさんの先輩も含めてやってこられたことをさらにどう政策を発展をさせるのかという姿勢で考えております。税について言うならば、私ども基本的に主張してまいりましたのは、一貫して繰り返して申し上げました税制民主主義の精神、またそういうものからどう組み立てていくのかというわけでありまして、私はまずこの経過を考えてみますと、消費税にせよ、売上税にしろ、この十年間の経過にせよ、一番大きな問題は、やはり政治のあり方、政治の姿勢、政治と国民と申しましょうか、これが問われている、三流国家と言われるレッテルの一つ表現ではなかったかという気がするわけであります。先ほども藤井さんといろいろな議論をしていた中で思いましたが、なぜあんな議論消費税の前にやらなかったのか。福祉と負担、不公平の是正その他をきちんと積み上げていれば、おのずからその姿勢のもとに、合意できるあるべき間接税の設計はどうかというのが私はできたのではないかと思います。そういうことが一番基本ではないだろうかと思っておりますし、なお、経済施策につきましても、改めて私どもも新しい努力をいたしております。  何か体制的な対決ではなくて、さまざまの今日の状況の中でより先見性のあるプランを、ポリシーを競い合うというのが今日与野党のあるべき、また私どもも含めました責任ではないだろうか。例えば、何も自分の党のことを言うわけではありませんが、先般、昨年なども政権協議の中で、四野党政策審議会長、世上、連合政治の赤十字などとも言われておりますけれども、合宿勉強会をいたしまして、その中でも公式に発表いたしております。私どもは現実からスタートをしてよりよいシナリオを追求をしていく、緩やかで着実な改革の路線をとる、あくまでもやはり民主的な改革というベースをたどっていこう、そういうベースのもとに幾つかの緊急政策の発表なども共同でやっているというわけでありまして、そういう姿勢のもとにできるだけ早く政権を交代できるよう頑張りたいと思っておりますので……。
  187. 町村信孝

    ○町村委員 大いに御努力をいただきたいと思います。  今、世界の流れの中で、一つは、これはレーガン、サッチャーを例に取り上げるまでもないのですけれども、行政改革というのがかなりうたわれました。皆さん方基本法案の中にも、行財政の改革を一層推進する、こういう表現がございます。やはり大きな政府ではいけないというそういう思想がこの中にはきっと盛り込まれているのだろうというふうに思うわけでございます。  そういう目で、これもちょっと申しわけありません、社会党にお伺いいたしますが、累次の行政改革、一番わかりやすい例で言うと国鉄とか電電とかいうことをやってきましたし、また今でも政府は、私ども中心になりまして定員削減計画、昭和六十二年度から平成三年度まで五カ年間で五%、四万三千九百八十人削減をする、こういうことで今施策を進めておりますが、今まで社会党は、こうした民営化なり定員の削減なりということに一貫して反対の姿勢をとってこられましたね。これはもう過去の法案に対する投票態度を見れば明らかであります。そういう世界の大きな流れと、やはり皆さん方、確かに名前は社会民主主義に変わったかもしれないけれども、どうもそこがしっくり理解ができない面があります。「公務員総数の抑制」と書いてあるが、「削減」とはさすがにお書きになっていない。  この辺は多分中野先生あたりとは微妙に御意見が違うところかなとも思われるのですけれども、この今挙げました行政改革についてのお考え、いかがでございましょうか。
  188. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 行政改革は私どもは必要だと思います。同時に、その意味は何だろうか。何か企業その他で言われるような行革精神といいますか、合理化路線だけでは私はいけないと思います。やはり、行政も政治もそうですが、日に日に努力をして新しい設計図を描いていく精神を持たなければならないと思います。言うならば、本当の行政改革の仕事は何だろうかと考えますと、二十一世紀日本の設計図をどうつくるのかという大きな仕事であろう。  一昨日もちょっと申し上げましたが、そういう意味で申しますと、私はどちらが百点、どちらが零点とかいう意味じゃないのですが、臨調以来のさまざまなレポートを拝見するよりも、大平プロジェクトが出されたさまざまなレポート、例えば田園都市構想にしましても、分権型などをベースに据えてさまざまな構想を描かれています。たくさんの学者の方々が、亡くなられた大平さんへの限りなき哀惜というか、そういう気持ちを込めながら仕上げたそうであります。あの中身の方に非常に私は魅力を感じます。あれと対応できるようなものを我々もつくらなくちゃならぬという気持ちを持っているわけであります。そういう意味で私は行革というものを考えたいというふうに思っているわけでありまして、ある意味では、多少政党ごとの違いはもちろんございますけれども、やはりそういうものを大きくまとめ上げながら、野党全体がそういうものをつくっていく時代にしなければならないと思っている次第であります。  もう一つ申しますと、諸外国の例がございました。やはり先進国の中のいろいろないい例、それからいい政治というものを私は見習っていきたいと思います。  例えば税制について言うならば、公平革命と言われたあのレーガン前大統領の姿勢。あの大統領の演説のときには、公平な税制をつくろう、それによって公平なアメリカをつくろうではないか、与党野党全員起立をして拍手をして、党派を超えてやはりさまざまな努力をしたというそうであります。なぜ一体日本でできないのだろうか。あるいは、当予算委員会の会場とほぼ同じ面積のようでございますけれども、イギリスの議会、キノックさん、それからサッチャーさんなどを含めまして、表の大臣とシャドーのミニスターとちょうちょうはっしとやり合っている、本当の民主主義ではないだろうかという気がするわけでありまして、大胆にそういうものを見習っていくのがこれからの我々の責務ではないだろうかという気がいたしております。
  189. 町村信孝

    ○町村委員 立派なシャドーキャビネットのメンバーがそこにお並びでいらっしゃいますから、大変に敬意を表するところであります。やはり皆さん方も、当然のことですが、国際的な流れというものを十分意識した上でこの再改革のお考えもでき上がっているのだろうと思います。  先般、本会議場でこの提案理由を御説明をいただきました。この委員会でもいただきました。その中で、「海外においても、イギリスにおける人頭税導入、カナダにおける小売売上税導入などが大きな問題となっております」、こういう表現がございます。  ちょっと私は、このカナダ――たまたま私はこのカナダという国が好きでいろいろなことをよく聞くのですが、この「小売売上税導入」というのは、これは何かのお間違いではないでしょうか。既にカナダでは小売売上税があり、連邦では製造業者売上税があり、その連邦政府税制を付加価値税にしようということで今いろいろな作業が進んでいるので、この「カナダにおける小売売上税導入」というのは、ちょっとしたこれはミスプリントでございましょうか。もしそうであるならば訂正をしていただきたいのですが、いかがでしょう。
  190. 神崎武法

    ○神崎議員 ただいま委員の方から、カナダにおける税制に関してのお尋ねがございました。  委員が御指摘のとおり、私ども趣旨説明の際、カナダの税制改正に触れましたけれども、正確にはこれは付加価値税であろうと存じます。  もう少し申し上げますと、現行の製造業者売上税にかえまして、物品サービス税という付加価値税の導入を図る案が検討されていると聞いております。したがいまして、正確には、小売売上税という表現ではなく、蔵出しから小売まで拡大いたしました、基本的には前段階税額控除方式による付加価値税であろうと存じます。この際、訂正させていただきます。
  191. 町村信孝

    ○町村委員 別にあげつらうつもりもございませんので、ただ、事実だけをちょっと直されておかれた方がよいのかなと、老婆心ながら申し上げさせていただきます。  先ほど、レーガン大統領の税制改革、まあ当時、レーガン大統領が登場して、サプライサイド・エコノミックスなるものを出して、そういう基本的な一つ考え方のもとであの税制が出されてきたということだろうと思います。そのレーガンさんにしても、あるいはサッチャーさんにしてもそうですけれども、やはり大きい政府で余り重い税負担があると、働き手の勤労意欲とかあるいは企業の積極的な事業意欲、こういうものに悪影響が出るというようなことが一つあって、それで思い切った簡素化なり税率を下げたりと、こういうことをやったんだろうと私は思うわけであります。  サッチャー政権では、さっき御説明が既にありましたけれども所得税、法人税の減税、付加価値税の拡充、こういう形で直接税から間接税へとシフトをさせて、勤労インセンティブの増加といいましょうか、働く意欲を守り立てよう、もちろんイギリスと日本の国情の違い、発展段階の違いがあるわけですけれども、やはりこうした改革の方向が世界の経済政策なり税制政策の潮流ではなかろうかな、こう思うのですが、さっきの質問と若干重複するかもしれませんが、もう一度その点について、お考えがあれば伺っておきたいと思います。
  192. 神崎武法

    ○神崎議員 ただいま御指摘にありましたイギリスの税制またカナダの税制についての評価と、さらにまたアメリカの税制改革についての感想について、簡単に申し上げたいと思います。  これまでにも何回も御答弁いたしておりますけれども税制はその国の歴史と実情に合わせてつくられるべきものでございまして、イギリスにおきまして、イギリスの税制は英国国民が選択すべき問題であると考えます。したがいまして、現在議論されておりますイギリスの人頭税そのものにつきましても、趣旨説明のところで論評をしているわけではございません。  一般的な課税方式の問題としてこの人顕税につきまして若干の所見をお述べいたしますと、固定資産に対する課税も均等割的課税も、安定的な税収を得るという意味におきましては、我が国のように極端な過疎過密現象がない状態で考えるなら財政効果はあると考えます。しかしながら、逆進性であるとかあるいは税制の富の社会的再配分機能という面で見ますと問題があるのではないか、このように考えます。  いずれにいたしましても、サッチャリズムにおきます今回の税制改正は、長い間無料医療体制を支えてまいりました国家医療制度の見直しや、第三セクター方式などの導入によります水道事業の経営体の変更など、国営企業の民営化等への諸改革と考えを一つにしているものと考えるものでございます。  なお、カナダの税制改正について先ほど訂正をいたしましたけれども、この制度につきましては、大変野党も世論も反発をしている。最近の新聞を見ますと、世論の八〇%ぐらいがこの導入に反対をしている、こういう報道もされているところでございます。この反発につきましては私どもも理解できるような気がいたしますけれども、結論的には、税制はその国の国情、政治経済状況等により異なるものでございますので、その国の国民が選択すべきものと考えます。  なお、先ほどレーガンの税制改革にお触れになりましたけれども、実は私も、レーガンの税制改革実施後にアメリカに参りまして、財務当局といろいろ議論をいたしたことがございます。その際に、アメリカでも付加価値税の導入を検討したけれどもこれを断念した、その理由として特に財務当局が挙げましたのは、一つは、大型間接税を導入することは小さな政府をつくろうというアメリカの政策に反する、必然的にこれは税率が上がってしまう、打ち出の小づちになってしまうので大きな政府になる可能性がある、そういう点。それから、事務が非常に煩雑である、負担が重いという点、あるいは低所得層に打撃が大きい、こういう点を挙げました。さらに州税との関係も指摘をいたしておりました。  以上でございます。
  193. 町村信孝

    ○町村委員 外国は外国でそれぞれの動きがあるからこの程度にいたしますが、日本の話に戻しまして、法人税について、再改革基本方針の中で、「経済取引の国際化及び経済構造の変化に対応したものにする等法人税体系の適正化を図る」、こういう表現になっております。この間もちょっとお聞きしましたように、どうもいまいちぴんとこないのですけれども、この経済取引の国際化に対応したというくだりですけれども、表面税率、実効税率、どちらでもいいのですが、日本でいうと、実効税率を下げる下げると言いながら実はやっと五割を切りて四九・九八という程度で、正直言って私どももこの程度の下げ幅では下げ方としては不満でありまして、この点は昨日来の中野先生の主張と私も同じなんです。  諸外国を見ると、かなりこれは思い切って下げているのですね。アメリカではもう五〇%台のものが四〇%台、やはりイギリスも四五%から三五%、フランスは五〇から三八とかかなり思い切った下げ方です。(発言する者あり)西ドイツの例は、五六から五二ということで日本よりもやや高い。これについては、内部留保で配当した際には支払い済みの法人税額の一部還付制度があるとかいうようなことで、これよりもさらに実態は低いということのようでありますが、いずれにしても、日本よりも思い切って――実効税率で見ると日本はわずか二%弱下がった程度なんですね。これは実は非常に不満が残っております。  ただ、法人税を一%下げると約五千億円の財源が要るということで、なかなか容易なことではないのですが、しかしかなり思い切って日本で下げた下げたとはいうものの、正直言うと私日身も、この程度の下げ幅で果たして国際的な流れの中でうまく日本経済が動くのだろうか。これについては、日本経済活力の低下とか、外国の企業は日本に来ようと思っても非常に税率が高くて出づらいとか、そういう意味では摩擦の原因になっているとか、いろいろな問題が、これは私のみならず既に御質問に立たれた野党議員からも御指摘があったところなんです。  そういう国際的な流れ、実効税率が相当思い切って下がっているという中にあって、どうしてもひっかかるのは、皆さん方が今回、まあ日本の景気がいいし日本の競争力もあるから二・五ポイントぐらい上げても大したことなかろう、こうおっしゃいますけれども、問題は、これは方向性の問題なんですね。ベクトルがどっちに向いているかという問題なんです。これから上がっていってしまうのじゃないだろうかというところと、あるいは下がっていくのだろうかというところで、やはり企業のビジネスマインド、企業のいろいろな投資活動その他を考える際に、どういう方向へ例えば法人税が向かっていくのか。たまたま今それは景気がようございましょう。だから二・五ぐらい大したことあるまい、こうおっしゃるかもしれないけれども、大切なのは、どういう方向に我が国の法人税そのものが向かっていくのかということが大変大きなポイントだと思うのです。  そういう意味からすると、この取引の国際化に対応する法人税体系の適正化という表現皆さん方の今回の御提案がどうもしっくり理解できないのですけれども、どなたからか御説明いただけるでしょうか。
  194. 森井忠良

    ○森井議員 確かに税制改革基本法第五条に国際取引に対応した法人税体系の適正化というのをうたっておるわけでございます。適正化とは何ぞやとよくおっしゃるわけでございますが、これは極めて難しい言い方で恐縮でありますが、適正化という言葉自体は、ある環境、状態などに対応して物事のゆがみを正そうという意味でございます。大変恐縮でございますが、そういうふうに定義をいたしております。経済取引の国際化及び経済構造の変化に対応して法人税の適正化を図るとは、経済の変動によって法人税にゆがみが生じないようにすることを意味しておるわけでございます。  今度の我々の提案は、法人税の税率は確かに引き上げることになります。しかしこれは消費税廃止に伴う暫定的な特別措置でありまして、四〇%の税率を長期にわたって継続することは予定をいたしておりません。その点では、政府の税率引き下げをこれからも踏襲したいという考え方に立っておることを申し上げておきます。  それから、表面税率から機械的にはじき出したいわゆる実効税率の比較では、確かに我が国はアメリカ、イギリス、フランスよりも高く、西ドイツよりはやや低いようであります。しかしこれはあくまでも表面上の数字でありまして、御存じのとおり、我が国では租税特別措置である事項が諸外国では特別措置でないなど、租税特別措置の範囲の相違、会計における損金算入の基準の相違などによりまして課税所得が異なるため、表面税率で実際上の税負担を比較することはできないと思うわけでございます。したがいまして、我が国法人の税負担水準が国際比較で実際にどの程度であるかについてはいろいろ論議があることは、委員御承知のとおりであります。  課税ベースを検討しないで諸外国との税率引き下げ競争を行いますと、これは貿易摩擦を助長することにもなりかねませんし、国際化への対応につながらないこともあるわけであります。また、法人税率と企業の国際競争力は必ずしも一致するものではないようでありまして、法人税率が高いと言われる西ドイツと我が国が企業の競争力が強いということは御存じのとおりであります。  なお、法人税率につきましては、経済実態、企業活動の状況課税ベース、実質的な法人税の国際比較等を慎重に踏まえ、税制改革協議会におきまして十分な検討をお願いしたいというふうに考えておるところでございます。
  195. 町村信孝

    ○町村委員 確認ですが、この適正化というのはゆがみを正すということだと。そうすると、現在の法人税体系にどういうゆがみがあると認識をしておられるのか。ゆがみがあるから適正化しようということですね。現在の法人税体系にどういうゆがみがあるという御認識なのかをそれでは伺います。
  196. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 森井さんの御答弁に補足をして、今のことについて申し上げたいと思います。  私は考え方として、企業税制、法人税についても、今日の国際化の社会ですから、国際レベルでほぼ共通するような性格のものになるということはいいことだと思います。  ただ、今税率についての、基本税率についての比較のお話あるいは実効税率のお話がございました。こういう点は本当はもっともっとその実態を深めたいと思っております。実効税率について何年か前に経団連・大蔵省論争がございまして、中断をされたようであります。これは私はさまざまの、先ほど森井提出者が申しましたような点を含めまして考えますと、実効税率とそれから実際税率という話もございます。  例えは、株のキャピタルゲインの問題でも議論がございましたが、日本でも、もう世界のマーケットに進出をして至るところで正会員取引をしている。そういう場合、それに対する課税制度、さらに言うならば証取法、SECのような制度ですね、あれなんかもやはり国際的に共通した制度をつくってきちんとやる。日本の方はそういう効力が非常に低いわけですから、そういう改善をすべきであろうというのは、私聞いていますと、大蔵省以上に実際商売をやっている業界の方々の声がそうおっしゃいます。例えば土地問題にしたって、法人持ちがどんどんふえていく。税制によって企業が大きな土地を集積をしていく。こんなことは日本だけが世界で非常識であります。あるいは企業会計制度もそうだと思います。例えば株の問題なんかでも、ほとんどの国がやはり時価で会計表示をする。日本の場合には取得時。土地の問題はもっと調べていきたいと思います。  いろいろな問題も含めまして、それをどうしたらいいのか。実効税率の数字の論争だけではない、そういうものを深めて、やはり社会的に公正で、あるべき姿をどうやっていくのかということを深めて議論をし、また結論を得ていくのがやはり私ども共通の責任ではないだろうかという気持ち表現をして、そして、言葉基本法の中に簡単に書いてございますけれども、そういう中身を十分議論をしながら、国民皆様とともに理解を統一し合っていきたいという意味表現をいたしております。
  197. 町村信孝

    ○町村委員 そうすると、法文に即して言いますと、それはどうも法人に関するもろもろの税制にゆがみがあって、それの適正化を図るという意味。これは字面どおり読めば法人税体系。それは、今の法人税そのものにゆがみがあるとさっき森井先生がおっしゃった。しかし今の御答弁は、法人にまつわるもろもろの税なりその他のもの、制度についてゆがみがあるんだ、こういう御答弁です。  法人税体系の中にどういうゆがみがあるかと私は今聞いているんですよ。ちょっとそこはおかしいんじゃないですかね、どうなんでしょうか。
  198. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 質問者にお願いしたいと思うのですが、やはり今大事なことは、さまざまの言葉解釈論ございます、あるいは一昨日来ございましたが、公正の解釈とか公平の解釈とかいろいろなことがございます。私どもは、やはりそれらのことも確かにいろいろなことで正確に表現をしなくちゃならぬと思います。しかし今必要なことは、そういう何か概念論争とか理屈論争ではなくて、やはりあるべき税制全体を、とにかく国民の納得できるように、国際的にもやはり日本は公平で、しかもフェアな税制であるということが理解できるものをどうつくるのかということが私は政治の課題ではないだろうかというふうに思っているわけでありまして、いろいろ言葉についての御意見その他あると思いますが、そういう気持ちを御理解いただきたいと思います。
  199. 町村信孝

    ○町村委員 気持ちは理解をいたします。ただ、あくまでも法律法律ですから、法律をつくることが私どもの仕事ですから、やはりこれは厳密さをたっとばなければいけない。そういう意味で、この「法人税体系の適正化」というのは、どうも今の御答弁では正直言っていまいちはっきりいたしませんが、余り字面にこだわるな、こう伊藤先生がおっしゃるから、もうこれ以上は時間のむだになるからやめますけれども、法文的にはやや問題がある、私はこう思いますよ。  それから今、めぐる環境という中で、野党皆さん方からも、いやいやそれはもう課税ベースが狭くなっているからだ、こういう御意見もありました。その端的な例が法人に対する租税特別措置ということになるのでしょう。(発言する者あり)一例でもいいです。  法人に対する租税特別措置による減収額は今幾らになっていますか、平成二年度。――時間がかかるから私から言いますけれども、五千六百四十億。さっき私は、法人税率一%は約五千億と言いました。今何か法人に対する租税特別措置で非常に課税ベースが小さくなっているような言い方を皆さん方しておられますが、法人税率一%、五千億だからそれは大きいといえば大きいですけれども、そんなに膨大なタックスエロージョンが起きているわけではない。五千六百四十億です。  ちなみに法人税収全体に占める割合は、これは二・九%であります。法人税収を分母とし、分子を各種租税特別措置による減収額と置いた比率が日本は二・九ですが、これに対応する諸外国の数字、じゃこれは大蔵省に聞きましょう。大蔵省ありますか。幾つかでもあればちょっと。質問通告しなくて悪かったですけれども
  200. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 外国の租税特別措置につきましてそのような統計を持っておりませんので、その率は私ども存じておりません。ただ、決して日本は租税特別措置の範囲が広いということを言い切れる状況ではないと思います。
  201. 町村信孝

    ○町村委員 私が、これはある民間機関の調査ですが、それによって調べたところ、その今言った日本が二・九という比率ですが、アメリカでは二七・八、イギリスが三〇・六、若干時点は古いですが西ドイツが一五・二、フランスが一五・六ということで、課税ベースが広いか狭いかという点について議論をするならば、日本は決して狭くはない。日本の狭くなった部分というのはわずか法人税収全体について二・九ということで、決してそんな大きなものではなくて、仮に、まあそうはさっきからなさらないと言っておられるけれども、いわゆる法人関係の租特を全部撤廃しても、それによって上がってくる税収は法人税率の一%相当程度であるということは、事実としてぜひ皆さん方認識をいただきたい。いやいやそれでも公平感、不公平感の問題で話は別だよと言われるなら、それは見解が違うところでわかりますけれども、それによって大きな税収が何か膨大に上がってくるというような錯覚は、よもや税についてお詳しい皆さん方がお持ちではないと私は思います。  かつ、加えて、租特の中には企業の交際費を経費として見ないという仕組みがありまして、これによる増収額というのは八千九百億ある。したがって、租特を全廃するということになって、仮にこの企業の交際費損金不算入をやめてしまうと、むしろネットで三千二百七十億の増収になる、減税でなくて増収になるということがあるわけですね。そこは仕分けをするんだということだろうと思いますけれども租税特別措置というと何か悪の権化のようにおっしゃるが、決してそういう実態にはなっておりませんよということをこの際申し上げたいのでございます。  それからもう一つ、この租税特別措置については、当然のことながらエネルギー対策とか公害対策とか中小企業対策とか技術対策とかいろいろな政策目的があって、それが税になじむものについて、かつ効果があるものはこういう租特をとる。しかるがゆえに皆さん方だってこれを全部やめるとはさすがにおっしゃっておられないので、その政策目的がもう変わったものとか効果がなくなったものは見直していきましょう、こういう御発言がこの間ございました。そのとおりだろうと思います。  私ども自由民主党というのは、毎年毎年十二月になりますと、この租特の全項目はついて、毎日毎日約三週間近くの時間をかけて一項目ずつ詳細な議論をいたします。税調会長山中先生あるいは加藤六月先生、私ども胸をかりていろいろなことを言いますと、君はこんなことも知らぬのかと言っておしかりを受けながら勉強をし、そういう中から私どもは一項目ずつ、この租税特別措置の一項目ずつをまさに俎上に上げて議論をし、見直すものは見直し、導入するものは導入する、やめるものはやめるということを私ども自民党はやってきておりますが、残念ながら野党皆さん方は、そういうお立場にないせいか余りそういうことはやっておられないのかなという感じもいたします。  先般私は一つだけ、一項目で約一千億近い増加試験研究費についてこれは不公平ですかというお尋ねをしたところ、中野先生からこれは不公平だとは思いませんという御発言がありました。  じゃ、次に減収額が非常に大きいのは、ちょっと長ったらしい名前ですが、エネルギー環境変化対応投資促進税制というのが七百六十億あるのですね。略称エネ環税制と私ども自民党の中では呼んでおりますが、これはどうでしょうか。私どもは、省エネとか代エネとか、あるいは中小企業の利用するエネルギーの基盤強化設備、そんな目的で、これは決して不公平な税だとは実は思っていないのですが、どう思われますでしょうか。別に一項目ずつ全部やるつもりもありませんが、何せ減収額が七百六十億、大きいですから、ちょっと御見解があれば承りたいと思います。
  202. 中野寛成

    ○中野議員 お答えをいたします。  この特別措置三十一項目、その中に今おっしゃられたエネ環がございますが、私ども現段階においてその政策目的が終わったとは思っておりませんし、今日必要な制度であろうと考えております。
  203. 町村信孝

    ○町村委員 ありがとうございました。別にお礼を言うこともないか。  では、もう一つだけにとどめておきますが、これも中小企業にとって大変重要な、メカトロ税制と呼んでいるのがあるのですね。中小企業者が特定の電子機器やなんかを利用する設備に投資する際にこれは適用される税制ですが、これも四百八十億ですから決して小さくない減収額になっております。このメカトロ税制について、中野先生、どういう御見解をお持ちでしょうか。
  204. 中野寛成

    ○中野議員 お答えをいたしますが、この制度の導入に当たっても我々特に反対をしたという覚えもございませんし、今日の時点において、その時期的な、時代的な要請の中で機能を果たしていると考えております。
  205. 町村信孝

    ○町村委員 これ以上詳細にわたることは避けますけれども、私は今の御答弁を一つずつ聞いておりまして、確かに一般論としては、それは、課税ベースをもっと広げる努力をしなければいけないとおっしゃる意味は私なりに理解をいたします。  ただ、やはり税制というのは、これを言うとまた伊藤先生にそんな細かい議論をするなと言われるかもしれませんが、しかしやはり税制というのは一つ一つの積み重ねというところもあるわけでして、今この大どころ三本を聞いたところ、全部不公平ではないというお話だった。であるがゆえに私は、この間委員長にお預けをしてありますけれども、一体どれを不公平税制租税特別措置に基づく不公平なものとお考えなのか。代表的な三つを伺ったら全部公平だとおっしゃるわけですから、一体どれがでは不公平税制に具体的に俎上に上ってくるのかなということを実は伺いたいのですが、これは項目数も多いですから、今――何か御返事がありますか。では、どうぞ。
  206. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 個別の一々ではなくてというお話がございましたが、やはり今一番大事なことは、日本の税制、世論調査しますと不幸にして八割を超える不公平感という数字があらわれる。これは民間の調査もそうです。そしてまた総理府の調査でもそうです。やはりデモクラシーの国でそれでいいんだろうかという思いをいつもするわけであります。さまざまな税制改革の前提として、こういう何か膨大な不公平感、確かに負担率からいったら国際的に見ても高い方ではない、ところが不公平感だけは異常に高いという構造があるわけであります。  私は、政治の面での責任というのを非常にそこで感じます。どうしたらいいのかというわけでありまして、幾つか今お話がございましたが、さまざまなことを、何かレッテルを張るか、宣伝するか、キャンペーンするかの段階ではないと思います。これらが不公平なんですか、そうでないんですか、不公平だとすればどうやったら直せるんですかということを、きちんきちんと積み上げて議論をして解決をして、そうして政治の場でこれはこういうふうに解決しました、この点はこうですということをやはり国民皆様に語る責任というのは大きいんじゃないだろうか。  あえて一言申し上げますが、一昨年になりますが、共産党さんからは若干御批判をちょうだいしましたけれども、不公平是正についての共同提案をさせていただきました。与党の方でも積極的に対応していただきまして、何遍か議論をいたしました。そういう中では今指摘をされた問題も含めて相当詰めた議論もしてみたわけであります。  例えば、一つだけ申し上げますが、みなし法人課税の問題もあります。これについて事業主報酬の額を制限をするという措置がとられた直後でございましたが、どうしたらいいのか。世の中には不公平というレッテルが張られている、確かに制度自体から見ればこれは公平ではないかもしらぬ。ところが零細企業の問題がある。制度自体はあと三年、平成四年か五年になりますか、制度自体はもう適用期限がなくなる。制度自体がなくなる。それじゃ、そのなくなった上を踏まえて、むしろ零細企業の皆さんのためのあるべき、どうしても必要な税制を当面どう考えたらいいのだろうかということを与党野党研究しましょうというふうな結論を出すとか、企業税制についても、例えば支払い配当軽課につきましては野党の提案どおり実施しましょう、それから、租特についても引き続き一々チェックしていきましょうというようなことをずっとやっているわけであります。  そういうことを通じて、やはり、何かレッテル張りではない、社会で本当の不公平と言われているものをどうやったらなくせるのか、そうしてお互いに院のこういう努力を、真剣な議論を通じて、こう公平にしましたよということを国民に語れる努力をどうするのかということが必要なことではないだろうかなという気持ちで考えてまいりたい。
  207. 町村信孝

    ○町村委員 まさに今おっしゃったような方向に沿って私どもも党内で議論し、また国会でも議論をすることはもう当然のことだし、現に既にやっております。  ただ、私どもは、ちょっと言いたいのは、えてして、特定の党とは言いませんけれども野党の中で一部かもしれませんが、何か企業関係税はもうすべて悪だ、あるいは大企業に適用されているのは全部不公平税制だと言わんばかりの物の言い方をし、かつ、それによる減収額が何兆円もあるようなことをおっしゃる方が中にいる。私は、そういう間違った誤解を国民に与えないように我々国会議員が努力をするということもまた必要なんではないだろうか、こういうふうに思うわけですね。やはり企業が成長をし、そしてそこで雇用の場も生まれ、そしてそこから収入も生まれ、いい製品が安く国民に供給をされ、そして健全な社会が築かれていく、こういうような側面というのは私ども常に忘れてはならないのでありまして、そういう企業税制即悪というような印象は、やはり私ども国会議員としてはそういうことにならないようなまた努力もしないといけない。  確かに、この不公平の例として医師優遇税制、みなし法人課税、公益法人課税及び企業に対する租税特別措置、四項目が挙げられております。私は、今あえてその四番目の企業に対する租税特別措置だけの例を申し上げましたけれども、個別に幾つか考えていくと結構ないんだねということに実は大体結論は出るんじゃないかと思います。  もちろん、社会保険診療、みなし法人課税、公益法人課税、それぞれ、私は存在するものはすべて善とは言わないけれども、それなりの理屈があってやっているものだと私は思います。ただ、例えば、今伊藤先生がおっしゃったようなみなし法人課税は、確かにサラリーマン皆さんから見ると不満のある税制だ。別の体系で、零細企業対策ということで考えようじゃないか、それは一つの前向きな方向であり、そういう方向で解決していくのも、私どもも、否定するどころかむしろそういう方向で臨みたい。しかしそれとても、もし何かそういうものができると、見ようによってはそれもやはり特別措置であり、企業優遇だとまた言われるかもしれないのですよね。しかしそこは国会でのコンセンサスを得ればいい、そしてきちんと説明をすればいい話かな、このように思うわけでございます。  やはり私どもは、そういう意味からして、正すものは正すにやぶさかでないし、自民党でもそういうことはこれまでも累次にわたってやってきておりますし、またできる限り与野党共同でそういう作業をやることも大いに歓迎をしたい、こんなふうに考えているところでございます。  時間がなくなってまいりましたので、最後に、これも先日伺った中で一点だけ、きょうもいろいろな御議論があったから若干重複になるかもしれませんが、間接税のあり方というところで、どうしてももう一回伺いたいのです。  きょうの御議論、私もほとんど伺っておりましたけれども、最後にはとうとう元信発議者の方から、地方税のあり方、新しい地方税があるかとか、あるいは地方交付税をどのように組みかえていくかとか、これはもう非常に幅広い議論、かつ、そう容易なことで結論が出るものではないようなものも含めて、とにかくこの、新しくつくられることはないと思いますが、この法案が通ればできるであろう国民税制改革協議会でとにかく議論する。もちろん議論することは大変結構でありますが、しかしどう考えても、今の地方と中央の関係だけを取り上げても、これが一年間で結論が出るとは私には到底思えないのです。この一項目一項目ずつの議論だって、租特だって議論に時間がかかるでしょうけれども、新しい中小企業の税制をどうしたらいいかとか、もろもろの山積する課題をどうしてその一年間で答えが出せるのだろうか。それは、神様みたいな人がいて、えいやっと全部さばく、伊藤神様もいらっしゃるから、伊藤先生が座長で全部さばかれれば、それはすばらしいお答えが出るのかもしれませんが、どう考えてもこれが一年で結論が出るというのは正直言って理解に苦しむのですが、本当にこの膨大な作業を一年間でおやりになるつもりなんですか、ちょっともう一度そこを伺います。
  208. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 物事には潮どきという話もありますけれども、いろいろな意味でやはりこの二年、三年、もう全国民と言っていいほどみんなが税制に関心を持ち、真剣に考えているという状況があると思います。やはり二年、三年、四年かけるよりも、集中してやらなくちゃならぬというのが今の時期ではないだろうか。  実は昨年も九法案をつくりますときに、自民党皆様からは大分激しい御批判の議論をちょうだいしましたけれども、あのときにも、参議院選挙が終わって、つくったのは私ども四党の政審会長が責任を持ってあれを作成をしたわけでありまして、参議院で同僚議員に提案していただいたわけでありますが、あのときにも、本当に、お盆休みはもちろん、夏休みも一日も休まず必死になってあれをやったわけであります。短い期間でしたけれども、参議院で成立していただける九法案を作成をいたしました。でき上がったときに感想を求められましたから、私は俳句の趣味はありませんけれども、つい「汗でなく税にまみれて夏終わる」と言ったら、俳句にはなっていないが気持ちはわかるねと言われましたが、そういう努力をどうするかではないだろうか。  先ほど不公平のことについてごく一部だけ申し上げましたが、そのほか医師税制についても、おととしの時点で、この二、三年中には結論を見ようじゃありませんかということまで合意をしているんですね。いろいろな問題が実はあるわけでありまして、本当議論すれば私どもは正論を言っているということも御理解をいただけると思います。町村さんを含めまして、もう一歩ここで思い切って決断をし踏み込んで、我が方の法案に賛成していただければまことにありがたいと思います。
  209. 町村信孝

    ○町村委員 この間接税のあり方について、一昨日の議論で提案者の中で違いが相当あるということがわかったわけですが、伊藤先生は先般の十一日の本会議で、自民党の塩川議員の、野党税制改革基本法案に言うサービス、流通に対する適正な課税とはどのようなものか、個別物品税以外はだめという趣旨かという質問に対してお答えになって、大型間接税を行わないという点で各野党の考えは一致している、サービス、流通に対する課税が一般的なものか個別的なものかは国民税制改革協議会の議論に任せるので、現在予見を与えることは言えない、私、全部きちんとメモしたわけじゃありませんが、こういう趣旨の御答弁をされましたね。  ということは、この御答弁によりますと、サービス、流通に対する一般的な課税がもし国民税制改革協議会の結論として出てきた場合には、それを実施することも当然あり得る、こう解釈してよろしゅうございますね。
  210. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 一般的か個別かということについて予見は持っておりませんという御答弁を申し上げました。それは国民税制協議会という場を尊重する。そこに私は預けるというだけの意味ではありませんで、やはりそこで御議論をいただく、並行してか、参加してか、どちらでも結構ですが、我々政治家も並行して真剣な提案、真剣な議論をしなければならない、私どもの当然の責任であろうと思います。同時に、御答弁に詳しく申し上げませんでしたが、今の消費税のような、あるいは投網のような大型間接税と申しましょうか、そのようなものは私どもは考えてはおりません。我々ももっといろいろな勉強をして、しかるべき場で、しかるべきタイミングにいろいろな提案をしたいと思います。しなければならないと思います。  同時に、与党皆さんの方でも、お願いなんですが、国民からさまざまな批判が出ています。税金が国庫に行かない、どうしますか、あるいは単一税率で大根もダイヤも同じ、これはおかしいじゃないですか、あるいはまた本当の生活必需品などに対して税金がかかるのはどう考えますか、あるいは三%で永久にいくわけじゃないんだから、海部さんがやっているうち、我が内閣だけでは困るので、では将来に向けて一体単一税率でいいんですかとか、いろいろな疑問があるわけであります。その疑問を解消するようなことを与党の方でもきちんとやって提案をしていく、我々も出していくということが望ましいのじゃないでしょうか。そういう意味では、やはり一番の筋は白紙に戻してやり直すということではないかと思っております。
  211. 町村信孝

    ○町村委員 最後の一点を除きますと、私も賛成しようかな、こういう気分になれるのですが、もうまさに伊藤先生がおっしゃったような幾つかの問題点、欠点が確かにそれはあるわけです。人間のつくるものだから、私ども消費税が完璧だと言うつもりももちろんありません。ですから、見直すべき点は再見直しであろうと再々見直しであろうと、それは率直にやっていく。今まさにいみじくも数点言われたようなことについて、我々もそう遠からずうちに答えを出さなければならない。そういう答えを出す作業を、ぜひ消費税存続を前提に、一緒に協議の場を設けて、伊藤先生も御参加をいただきたいということをお願いを申し上げます。  最後に、六時まで大変にお疲れでございました。これで皆さん方二日間お座りになりましたが、衆参通じて予算の総括審議で閣僚の皆さん方は一カ月以上こういう形でべったりと張りつけられる。答弁にお立ちになる閣僚はまだいいのですが、答弁に立たない閣僚はそれでもじっと座っていなければならない。これはむしろ後ろの補助員の方々は、お立ちにならないでじっと座っていて相当お疲れだろうと思う。これは全くこの法案審議とは関係ありませんが、どうかひとつ国会改革の一環の中で、総括審議の最中に全閣僚を張りつけるというようなことはむだなことだな、体力を消耗することだなということをきっと皆さん二日間の体険で実感をお持ちになったでしょうから、ひとつその貴重な御経験を国会改革の中で生かしていただきたいということを御要望を申し上げまして、私の質疑を終えさせていただきます。  ありがとうございました。
  212. 山崎拓

    山崎委員長 これにて町村君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  213. 山崎拓

    山崎委員長 この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております各案につきまして、審査の参考に資するため、委員を派遣いたしたいと存じます。  つきましては、議長に対し、委員派遣承認の申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  214. 山崎拓

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、派遣地、派遣期間、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  215. 山崎拓

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  また、派遣地は仙台市とし、日時は来る二十日水曜日を予定いたしておりますので、さよう御承知おき願います。  次回は、明十五日金曜日午前十時委員会、正午理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時七分散会