○伊藤(茂)
政府委員 お答えします。
幾つかに分けてお答えした方がおわかりいただけるかと思います。
まず第一番目の、大都市
地域において一般勤労者の
住宅取得が非常に困難になっておるけれ
ども、どういう施策で対応をするつもりなのかという
お話でございます。
仰せのとおり、一般勤労者世帯の
住宅の確保が困難化しておるということは私
どもも非常に重大な問題だと
認識しております。このような
状況を踏まえまして、既に今国会にも大都市法の改正案と都市
計画法、建築基準法の改正案を提出してございます。さらに
平成二年度予算案、これも御
審議を
お願いしてございますが、その中には、優良な
住宅供給
事業、農地活用の
住宅供給
事業の助成といった新しい予算措置も講じております。こういうことによりまして、大都市圏におきます工場跡地等の低・未利用地や市街化区域内の農地につきまして有効・高度利用を図っていきたい、あるいはニュータウンの
開発を積極的に進めたい、そういうことの中で良質な
住宅の大量供給を促しまして
住宅価格、家賃の安定ということを通じて、一般勤労世帯の
住宅需要へ十分対応を図っていきたいと考えております。
今申しましたように、
住宅の価格、家賃というのは、
我が国の場合民間主体で供給するものが九割を超しております。したがいまして、ほとんど市場で決まるものとお考えいただいて結構なわけでございますが、
住宅の大量供給によります
住宅、家賃の平均的水準の安定化ということが非常に大事でございますし、
住宅地利用の高度化が大事でございますし、公共賃貸
住宅の的確な供給が大事でございますし、公庫融資及び税制による
住宅取得能力の
拡充が大事でございます。こういういろいろな施策の柱を積極的に
推進をして、先ほど申しました新しい施策とあわせて、一般勤労者、中堅勤労者が良質な
住宅を適切な負担で確保できるようにしていこうということで、これから努力をしたいということでございます。
二番目のお尋ねは、高齢者対策ということが重要ではないか、どういうふうに考えておるかということでございます。
高齢者に対します
住宅対策を進めるに当たりましては、高齢者が年をとってくる段階で次第に身体機能が低下をいたします。それから住まい方も家族から分かれたりなんかをいたしまして多様化をしてまいります。そういうものに配慮いたしますが、可能な限り家庭や住みなれた
地域で
生活を送っていくということができるようにしたいというのが
住宅サイドからの
考え方の基本でございます。
このため、持ち家で手当てをする方々にとりましては、
住宅金融公庫融資におきまして高齢者を含む世帯に対して割り増し貸し付けがございますし、
平成二年度では改良工事に対して新たに割り増し貸付制度を導入しようとしております。さらに公営
住宅や公団
住宅で多人数の方が一緒に住まわれる、あるいは老人だけの世帯等々いろいろな形態がございますが、そういった場合に、
規模、設備等からの配慮を講じました公共
住宅の供給、それから入居面の優遇措置というものが現状ございます。こういうものを進めてまいりたいということと、さらには高齢者の方々だけが入居できる団地というものを
つくりまして、その中心地に簡単な相談を受けるライフサポート・アドバイザー、こう申しておりますが、施設と同時にそういう方々の
住宅を中心に
つくりまして、高齢者の世帯がそこからサービスを受けられる、こういうシルバーハウジング・プロジェクトというものを公共団体が
計画をしてつくっておりますものも私
ども公営
住宅の面からお手伝いをいたしておりますが、そういうものを進めたいと思っております。
さらに、いずれにしましても、現状進めておりますこういう対策に加えて、さらに一層
高齢化が進むわけでございますので、次の五カ年
計画、これは
平成三年度から始まる予定でございますが、これに向けて、
住宅宅地
審議会でどういう対策を打ったらいいかということを今御
審議いただいておりますが、
高齢化の進展に対応した
住宅政策が大きな柱になるものというふうに考えております。
それから、最後に言われました、新聞に大きく取り上げられておったわけでございますが、四月十四日に
国土庁が発表したということで出ておったもので、首都圏では既に
住宅の量的な不足はないということで、
建設省は足らない足らないと言っておるけれ
どもどういうことなのか、こういうお尋ねで、具体的な数字をお出しいただきました。あの新聞の見出しが適当かどうかということがあろうかと思います。単純に世帯数と
住宅数を比較しますと、
昭和三十八年以降、もう二十数年になるわけでございますが、既に
住宅数が世帯数を上回っております。しかし
住宅問題、つまりどういう
住宅にどういう世帯が住んでおるか、これは私
ども居住水準と言っておりますが、居住水準の
状況でありますとか、世帯の収入にとって家賃あるいは
住宅価格がどうかといったような
住宅問題は、大都市
地域を中心に依然として残っておるわけでございます。したがいまして、単純な量的な比較だけで新聞の見出しのような結論が出るというのはいかがかと思うわけでございます。
具体的に申し上げますと、五十八年、
全国で、最低居住水準と私
ども言っておりますが、それ以下の世帯が三百九十四万世帯ほどございました。全世帯に対します割合が一一・四%でございました。その当時、東京圏一都三県では百四十一万世帯が最低居住水準未満でございまして、一五・五%、東京都の場合には七十一万世帯ございまして一七・七%ということでございますから、
全国値との差が一都三県ではプラス四・一、東京都では六・三、つまり大都市圏は東京都ほど
住宅事情が悪いという
状況にございました。
御想像つくかと存じますが、それが六十三年は、全体としては非常に居住水準が上がってよくなっておりますけれ
ども、一部三県と
全国との関係で見ますと、
全国が最低未満が三百五十五万世帯になりまして九・五%と一〇%を割ったわけでございますが、東京圏一都三県では百四十一万世帯ございましてこれが一三・九、五十八年には
全国に対して四・一の差だったものが四・四と広がりました。と同時に、東京都の場合には七十六万世帯ございまして一七・七%、
全国との差が八・二、五十八年当時は六・三%でございましたが八・二というふうにさらに広がったということでございます。
したがいまして、私
どもはそういった大都市圏の
住宅事情の
全国で見た場合の跛行的なおくれといいましょうか、そういうものを非常に重視しているのが一点と、
先生から当初御
指摘いただきましたように、一般の勤労者が一生働いても家は持てないという
状況、これは持たせるのが
住宅対策の目的ではございませんが、居住水準の
向上努力の中でできるだけ一般世帯の希望に沿って持ち家取得をしていきたいということの環境が次第に悪くなっているということでございます。したがいまして、私
どもは大都市対策が非常に重要であろうというふうに考えておるわけでございます。
最後に、百万戸を供給するということだけれ
ども、どういう質的なことを考えているのかということでございます。
先ほど申しましたように、量は既に世帯数を上回っております。しかし、今言いましたように一般の勤労者世帯、三十代、四十代の方が子供を育てながら、家族の人数も多くなり子供も大きくなってくる、こういう方々の
住宅問題というのが大都市では一番大きな問題でございますが、そういう方々の質の
向上を図っていくということのためには百万戸ほど新規に供給が必要だろう、こういう需要面からの推計で出てきた数字でございます。
その場合に私
どもは、一般勤労者が希望に沿って質のいい
住宅を持つということでございますので、最低居住水準は当然ながらクリア、そして西暦二〇〇〇年を目指して約半数の世帯が達成すべきだと考えております誘導居住水準、四人世帯の場合には三LDK九十一平米、マンション形式の場合にはそういう数字でございます。それから三人世帯の場合には二LDKで七十五平米、西暦二〇〇〇年には約半数の世帯がこういう水準を超えられるようにということで政策努力をいたしてまいりたいと存じております。
その場合、負担の問題で
先生御
指摘がございましたが、私
どもも、今現在の政策融資あるいは政策減税を前提にいたしますと、年間収入のおおむね五倍程度、したがいまして平均的な勤労者の所得と市場へ出てまいります
住宅価格の平均値のバランスが五倍以内になることが望ましいのではないかと考えております。
それから家賃でございますが、月収の二〇%以内というふうに
お話がございましたが、私
どもの
考え方は、これは
住宅宅地
審議会で以前からとられている数字でございますけれ
ども、税込み、ボーナス込みの年間収入を十二で割りまして、月収の二〇%程度以内ということで施策の
目標を考えているところでございます。