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1990-03-27 第118回国会 衆議院 建設委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年三月二十七日(火曜日)     午前九時四十一分開議  出席委員    委員長 中島  衛君    理事 金子 一義君 理事 木村 守男君    理事 北村 直人君 理事 桜井  新君    理事 笹川  堯君 理事 小野 信一君    理事 木間  章君 理事 吉井 光照君       大石 正光君    瓦   力君       小坂 憲次君    田中 秀征君       武村 正義君    渡海紀三朗君       東家 嘉幸君    中山 成彬君       松永  光君    村井  仁君       村上誠一郎君    石井  智君       加藤 繁秋君    貴志 八郎君       北沢 清功君    鈴木喜久子君       松本  龍君    三野 優美君       山内  弘君    長田 武士君       伏木 和雄君    森本 晃司君       辻  第一君    柳田  稔君  出席国務大臣         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 佐藤 守良君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房管理室長   櫻井  溥君         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         国土庁土地局長 藤原 良一君         建設省都市局長 真嶋 一男君         建設省河川局長 近藤  徹君  委員外出席者         環境庁自然保護         局企画調整課長 大木 知明君         農林水産省農蚕         園芸局企画課長 渡辺 好明君         自治省行政局振         興課長     篠田 伸夫君         建設委員会調査         室長      吉沢 奎介君     ───────────── 委員異動 三月二十七日  辞任         補欠選任   杉山 憲夫君     小坂 憲次君   松本  龍君     北沢 清功君   山内  弘君     加藤 繁秋君   長田 武士君     森本 晃司君   菅原喜重郎君     柳田  稔君 同日  辞任         補欠選任   小坂 憲次君     杉山 憲夫君   加藤 繁秋君     山内  弘君   北沢 清功君     松本  龍君   森本 晃司君     長田 武士君   柳田  稔君     菅原喜重郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国土調査促進特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第一二号)  明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境整備等に関する特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第一五号)      ────◇─────
  2. 中島衛

    中島委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国土調査促進特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。佐藤国土庁長官。     ─────────────  国土調査促進特別措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 ただいま議題となりました国土調査促進特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  国土調査は、国土開発利用等に資するとともに、あわせて地籍明確化を図るため、国土実態を科学的かつ総合的に調査することを目的として行われるものであり、その成果は、開発を進め、あるいは、土地利用計画策定するに当たって必要な基礎となるものであります。  国土の適正な利用により健康で文化的な生活環境確保国土の均衡ある発展、また、総合的な土地対策推進を図ることが今日の国土行政の主要な課題となっておりますが、これにこたえるためには、その基礎となる国土調査促進がぜひとも必要でございます。  このような国土調査重要性にかんがみ、その計画的実施促進するため、政府は、国土調査促進特別措置法に基づき昭和五十五年度初年度とする十カ年計画策定して事業を進めてまいりました。  この計画は、平成年度をもって終了することとなっておりますが、なお、今後とも国土調査計画的実施促進すべき必要性がありますので、さらに、新たな十カ年計画策定する必要があると考えられます。  以上がこの法律案提出する理由でございます。  次に、この法律案要旨を御説明申し上げます。  この法律案は、内閣総理大臣が新たに平成年度初年度とする国土調査事業十カ年計画の案を作成し、閣議決定を求めなければならないものとすることを内容とするものでございます。  以上がこの法律案提出理由及びその要旨でございます。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。  どうもありがとうございました。
  4. 中島衛

    中島委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  5. 中島衛

    中島委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井智君。
  6. 石井智

    石井(智)委員 ただいま提案されました国土調査促進特別措置法の一部を改正する法律案について、その基本的な問題及び実施していく上での問題点について、私なりに疑問に感じたり、改めるべきであろうと思ったところ等を率直にお尋ねを申し上げてまいりたいと思います。  まず、個々の問題を取り上げる前に、国土調査意義について、大臣の御所見を賜りたいと思います。
  7. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 石井委員にお答えいたします。  国土調査意義につきましては、もう委員御存じのとおりでございますが、国土実態を科学的かつ総合的に調査することを目的としておるわけでございまして、その成果は四つございます。  その一つは、国土開発利用等のための計画策定し、それからまた、これを実施するために必要な基礎となるものでございまして、また不動産登記制度基礎あるいは課税適正化等、広範に利活用されております。  また、今日では、土地に関する施策の総合的かつ効果的な実施を図るための調査としても重要な位置づけをされているということでございます。  こんなことでございまして、国土調査意義はますます多様化してきており、その重要性が高まってきていると考えている次第でございます。
  8. 石井智

    石井(智)委員 どうもありがとうございました。  次に、確認意味を含めまして、この特別措置法制定経緯について御説明をお願い申し上げたいと思います。
  9. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 国土調査制定経緯でございますが、戦後疲弊した我が国経済再建を図るために、国土資源高度利用がぜひとも必要であるということで、国土実態を正確に把握する調査として国土調査が必要になったわけであります。  そこで、昭和二十二年に経済安定本部設置されておりました資源委員会において土地調査に関する検討が進められました結果、二十四年三月、同本部総裁に対し「土地調査に関する勧告」がなされました。これが皮切りであります。  また、国会においても国土調査促進の機運が高まってまいりまして、二十四年の第五回国会衆議院におきまして各党共同提案により「全国統一的土地調査促進に関する決議」が満場一致で採決されております。  これらを受けまして、昭和二十四年十月に国土総合調査に関する閣議決定がなされまして、国土調査に関する構想が具体化されることになり、経済安定本部土地調査準備会においてこれらを踏まえて検討が進められました結果、昭和二十六年三月、第十回国会において、政府提案により国土調査法案が提案されまして、同年五月成立、六月一日公布、施行されたものであります。  国土調査法制定後、その推進を図るために、特定計画策定補助率引き上げ等措置が講ぜられてまいりましたが、それほど進捗はよくなかったわけであります。三十四年には、衆議院において「国土調査事業推進に関する決議」がなされております。  また、政府においても事業推進のための措置をいろいろ講じてまいりましたが、このような状況を背景として、昭和三十七年四月、第四十回国会において、自民、社会、民社各党共同によりまして国及び地方公共団体において、国土調査業務画期的推進を図ることは急務であるということで、昭和三十八年度以降十カ年計画を確立して実施していくとともに、これに必要な行財政上の特段の緊急措置を講ずるために、国土調査促進特別措置法案が提案されまして、同年の五月に公布、施行されたというのがおおよその経緯でございます。
  10. 石井智

    石井(智)委員 ただいまの説明にもございましたけれども昭和二十六年に国土調査法制定されたにもかかわらず国土調査事業実績がはかどらない、そこで特別の目標を定めて早期に実現を図るべきもの、こういうことで特別措置を講ずべきである、こういう考えからこの特別措置法制定されたわけでありますけれども、緊急かつ計画的な実施促進を図る必要性は当時と現在とでいささかも変わっていないと思うわけでございます。  そこで、再確認をしておきたいのですけれども、今日的な意義という観点を含めてこの目的をどのようにとらえてみえるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  11. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 お答えいたします。  戦後の経済再建国土の復興を図るために国土実態を正確に把握し、国土開発及びその利用高度化推進するという観点から、国土開発保全並びにその利用高度化に資するために国土実態を科学的、総合的に調査するというのが当初の目的であります。この国土開発利用高度化という観点は、その後の四次にわたる全国総合開発計画策定あるいは国土利用計画法制定等を通じて、国土行政基本的課題として今日でも維持されておると考えております。  少し具体的に申しますと、国土調査成果は、公共事業の円滑な実施土地利用計画地域開発計画等策定実施するという面で活用されております。さらに、課税適正化不動産登記制度基礎資料でございますし、円滑な災害復旧公共財産管理等、各般の行政に広範に利活用されております。  また、昨年十二月に成立いたしました土地基本法におきましても、国及び地方公共団体土地に関する施策の総合的かつ効率的な実施を図るために土地所有及び利用状況等に関する調査実施して、資料収集等必要な措置を講ずることが土地施策推進する基本だというふうに位置づけております。そういう意味で、国土調査土地自然的特質所有利用状況に関する調査を行う基礎的な調査でございますので、むしろ今日的意味はますます重要になってきておるというふうに考える次第であります。  また、今日ではコンピューターの利活用が容易になっておりますので、これにいろいろな土地情報を重ね合わせまして、土地情報システムとしていろいろな行政に非常に広範に利用されつつあるというふうなことでございまして、重要性は非常に増しておるというふうに考えております。
  12. 石井智

    石井(智)委員 それでは少し具体的にお尋ねを申し上げたいと思いますけれども、第二条で規定をされております国土調査事業について、それぞれの調査実績はどのようになっているのでしょうか。基準点測量地籍調査土地分類基本調査土地分類調査、それぞれの実績を御報告いただきたいと思います。
  13. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 先生が御指摘のとおり、国土調査には幾つか種類がありまして、地籍調査、その地籍調査を行うための基準となります基準点測量調査土地分類調査水調査というふうに分かれております。土地分類調査基本調査と本調査水調査基本調査と本調査にさらに分かれておるわけですが、この促進法対象となっているのは地籍調査基準点測量、それと土地分類調査でございます。  昭和二十六年の国土調査法制定以来今日に至るまでの実績は、まず地籍調査でございますが、全国土から国有林、水面、湖沼を除くいわゆる調査を必要とする面積が二十八万五千平方キロございます。平成年度までに九万八千七百五十二平方キロを完了する見込みでありまして、これは要調査面積の三五%に相当いたします。また、これらの調査に必要な基準点としまして五万一千八百八十九点の測量を完了する見込みであります。  また、土地分類基本調査でございますが、国及び都道府県で行ったものを合わせまして、元年度までに二十四万三千二百八平方キロを完了する見込みであります。土地分類調査、本調査の方は、平成年度までに四千二百六十三平方キロの完了見込みであります。  また、水基本調査は、これまで水調査基礎調査といたしまして、各種のサンプル調査実施、あるいは全国対象としました降水量観測所台帳あるいは流量観測所台帳等を作成してきたわけですが、現在は全国の深井戸を対象とする地下水資料台帳あるいは地下水マップの作成を行っております。本調査の方は、全国百九の一級水系及びその周辺の地域につきまして資料収集等を行っておりまして、利水現況図あるいは調査報告書等を作成しております。元年度末までに七十水系について調査を完了する見込みでございます。
  14. 石井智

    石井(智)委員 地籍調査は、昭和二十六年以来、国土開発及び高度利用に資する観点から実施をされまして、今日ではさらに土地に関する施策の総合的かつ効率的実施に資するといった観点も加わって、その意義多面化をしておるわけでございます。しかしながら、現在までの実績は、ただいままでの答弁にもありましたように三五%にすぎないということであります。なぜこうも遅遅として進まないのでしょうかという疑問がどうしてもわいてまいります。  これは十年前にも指摘されていることでございますけれども、今またこうして同じ質問をしなければならないということは、法の目的考え合わせると非常に残念な状態であろうというふうに思わざるを得ません。今、第四次十カ年計画を立てるに当たり、この進捗率の低さは何に起因をしているのか、おくれた原因を徹底的に究明をしてその欠陥を克服しないことには、せっかくの法改正も期待する成果を得られないのではないだろうか、こういうふうに思うわけでございます。そういう意味で、おくれている理由をどのようにとらまえてみえるのかということでお伺いを申し上げたいと思います。
  15. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 地籍調査進捗が確かにおくれておりまして、私どもも非常に遺憾と思っているわけであります。地籍調査にも、DIDのような人口集中地区、あるいはそれ以外の農地中心とする平場、あるいは林野等がございますが、DID地区以外の平湯、農地中心とする地域につきましてはかなり進んでおりまして六〇%ぐらいの進捗かと思いますが、しかしそれ以外ではおくれておりまして、先生の御指摘のように全体では三五%の進捗にとどまっておるわけでございます。  進捗しなかった理由でありますが、一つは、この調査は個人の権利に関する各筆ごと調査でありまして、正確な調査と厳密な手続を要しております。一筆ごと土地について位置及び境界確認するわけですが、その際、地元関係住民等協力を得なければなりません。そこで非常に多くの時間と労力を費やすことになります。この辺が一つ大きな問題であります。  また、近年市町村における行政需要の多様化する中で、この仕事は非常に地味な仕事でございますので、市町村の認識がいまひとつ十分でないという点に加えまして、予算確保なり専任職員確保が後回しになる、そういう状況地域によってはあったというふうに考えております。  また、近年の厳しい財政事情を反映いたしまして、シーリング等で国の予算も抑制される傾向にございましたので、この点も相当影響しているように思います。  特に地籍調査が遅延しておりますのは三大都市圏等都市部でございますが、この都市部につきましてはまた特に困難な事情もございます。都市地域では地価水準が高くて所有者権利意識が非常に強うございます。また、土地細分化が進んでおりまして、権利関係もふくそうしている。それに、土地異動が激しくて不在地主も多いわけでございます。そういう状況の中で、測量には非常に高い精度が要求される、こういうことがございます。  いずれにしましても、地味な調査で多大の時間と労力を要し、また実施市町村におきましては、専門職員を配置しなければならない、予算量相当予算が必要である、こういうふうな非常に難しい、困難な数々の事情があるわけですが、それにしましても、そういう状況を克服しながらできるだけ早く調査推進するのが我々の義務だというふうに考えておる次第でございます。
  16. 石井智

    石井(智)委員 地方公共団体は、それぞれが多くの行政事務を抱えております。実際の問題として、地籍調査に熱意を持って取り組む状態ではないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。地籍調査は具体的にはどのような形で、また市町村においてどの部局が担当して行っているのでしょうか。また、専門職員はどれぐらい配置をされているのか。それから、測量などは外注をしているのだろうと思いますけれども、これら地籍調査事業の実務を、少し市町村実態をお教えいただきたいと思います。
  17. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 まず地籍調査担当部局でございますが、これは都道府県主管課都道府県では全体の企画市町村指導をしておるわけですが、都道府県では農政関係の課で担当しておるところが七七%でございます。企画関係部局でやっておりますのが二一%となっております。それと、直接地籍調査実施しております市町村における主管課は、建設関係が二一%、農政関係が二〇%、企画関係が一九%、産業関係が一二%、税務関係が一〇%、地籍調査課、独自の課を置いておりますのが一〇%となっております。  このように都道府県及び市町村における主管課はまちまちでございますが、これは国土調査実施を行うに当たって、いろいろそれぞれの公共団体事情あるいは調査成果利活用の面を考慮して、より関係が深いと考えられておられるような課が実情に即して担当しておるということではないかと思っております。  なお、国土調査の円滑な推進を図るためには、いずれの課で所掌しておりましても、自治体内において主管課関係部局の密接な連携が大変大切でありまして、私どもの方ではその点につきまして、会議等開きまして常に緊密な連携を保つようお願いしておるところであります。  また、地籍調査実施市町村における専任職員設置状況についてでありますが、この調査実施測量技術あるいは不動産登記事務等に係る高度の専門的知識を必要といたします。また、毎筆の土地境界確認当たりましては、土地所有者など地元関係者の十分な理解と協力を得る必要があります。実施に慎重を期するため、実施市町村職員等が直接調査を行う必要があるわけであります。こういう点につきまして十分配慮しながら、専任職員を配置するよう常々指導しておるところであります。  ちなみに、六十三年度において地籍調査実施している九百四十一市町村では、三千三百五十二名の専任職員がこれに当たっておりまして、一市町村平均三・六名、その一人当たり平均実施面積は二・九平方キロメートルとなっております。  なお、測量部分につきましては、現在ではほぼ外注により実施しているところでありまして、測量実施に充てられる外注的経費、それと実施主体であります市町村等が直接調査を担当する部分があります、この部分に充当する経費単価につきましては、両者乖離しないように配慮しておりまして、現行十カ年計画計画期間を通じまして、所要単価増予算確保に努めてきたところであります。  平成年度におきましては、現行計画初年度に当たる昭和五十五年度に比べまして、単価では約一・六倍大きくなっております。一平方キロ当たりの額で申しますと、五十五年度は約三百万円でございましたが、平成年度は約四百九十三万円になっております。  また、負担金配分当たりましては、地域実情等をよく勘案して、公平な配分に努めておるところでございます。  国土庁といたしましては、今後とも地籍調査作業内容の充実を図るとともに、円滑な事業実施に必要な実施体制整備及びこれらに必要な調査単価の増額及び所要予算確保に努めてまいりたいと考えております。
  18. 石井智

    石井(智)委員 昭和五十五年の改正の際に附帯決議が付されております。「政府は、本法の施行にあたり、特に地籍調査実施については、地方自治体の間に均衡を欠くことのないよう留意するとともに、強くその促進を図り、運用に遺憾なきを期すべきである。」こういうわけであります。  しかるに、地籍調査都道府県別進捗状況を見てみますと実に大きな隔たりがございます。六十三年度までの進捗率で比較をしてみますと、八〇%台、七〇%台の達成をしている県もあれば一%、二%という府県もあるわけでございまして、このことが地籍調査事業がはかどらない原因一つであると思われるわけでございます。  それと、ただいまの御答弁にもありましたように、事務当局市町村において一貫をしていないということも考えあわせますと、市町村土地調査担当の課を置いて、専任職員を配置して実施体制を整えていかないと、このことの解決にはならないのではないか、こういう気がするわけですが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  19. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 御指摘のとおり、確かに地域的に非常にアンバランスがございまして、北海道、東北や中国、四国、九州では相当進捗を見ているわけですが、特に大都市地域、中でも近畿、東海地域のおくれが目立つわけでございます。その理由はいろいろあろうかと思いますけれども、やはり理事者の方あるいは地域住民の方に対するこの調査重要性についての啓蒙普及が不足しているという面もあろうかと思います。また、やはりそういう点も関連しまして、専任職員確保あるいは養成が十分でないという面もあろうかと思います。  そこで、私どもは常々、その自治体に対しまして専門職員養成をお願いするとともに、できるだけ可能な範囲で外部の、民間の方の力もおかりする。さらには、専任職員専門的な職員でなくても、可能なところは臨時職員等でも内部の体制を強化するというふうに努めてほしいとお願いしてきております。また、今年度からは地籍調査専門職員養成対策事業のようなものを実施しまして、例えば既に現役を退かれた地籍調査専任職員の方にもう一度再研修を施しまして、そういう方にも外部からお手伝いしていただく、そういう中で要員の確保を図っていこうというふうに考えております。  また、予算確保がやはり根っこにはあると思います。シーリングの中で、五十七年度地籍調査関係で九十億を超える規模までいったことがあるのですが、その後毎年のシーリングによりまして、現時点では七十億余になっております。相当の減、二〇%ぐらいの減になっております。やはり、この予算確保を何とかしっかりしていかなければならないと考えておる次第でございます。
  20. 石井智

    石井(智)委員 現在まで市町村あるいは都道府県に対して指導の強化をされてきておりますし、それなりの対応をされているということ、またそのことが不十分であるというお話でもあったわけでございますけれども連絡会議設置をしてその進捗に当たるという意味指導通達をなされているやに聞いておりますが、その内容をお聞かせいただきたいと思います。
  21. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 この地籍調査の円滑な推進を図るためには、国の機関同士連絡調整も必要でございますし、また、県や市町村と国の出先機関あるいは公共団体相互間の連絡調整というのが非常に重要であります。そういうことで、国のレベルでは国土庁建設省国土地理院、これは基準点設置していただいておる役所でございます。また法務省、これは調査成果の送付を受けて登記所の簿冊等を改めておる役所であります。それと農林水産省及び建設省、これは公共事業等を行いまして、その際の確定測量成果国土調査として指定して、国土調査と同様の活用を図っていく調査でございますが、そういった関係仕事をしていただいております役所等と連絡を密にし、所要の調整を行ってきております。また、都道府県段階におきましても、五十四年に「地籍調査事業推進について」という通達を発出しておりまして、国の機関との連絡会議等の機会を設けて、これらの行政機関の地方支分部局との連絡調整を十分行うよう指導をしてきております。  また、土地分類調査水調査につきましても、調査実施あるいは調査後における成果利活用の段階において、農林水産省、建設省等と連絡調整を行いまして、円滑な推進を図るように努めておるわけであります。  ちなみに、少し細かくなりますが、例えば関係官公署間の連絡会議、現在実施しております県は三十七県でありまして、六十三年度の開催状況は八十五回やっております。また、法務関係との連絡会議も大変多いわけですが、法務局との連絡会議は三十県、二十八回、事務打ち合わせ、連絡会議という公式な会議ではございませんが、事実上の事務連絡打ち合わせは三十九県で八十三回というふうにやっておりまして、こういった地方農政局や営林局、地方建設局、財務局、そういったところと都道府県との連絡はかなり綿密に円滑にいっているのじゃないかというふうに考えております。
  22. 石井智

    石井(智)委員 国土調査法第十九条第五項には、国土調査以外の測量及び調査を行った者が当該調査の結果作成された地図及び簿冊をもって認証を受ければ、国土調査成果と同一の効果があるものとして指定できる、こうなっておるわけでございますが、これに基づく事例はどれぐらいあるのでしょうか。また年度別にどのように推移をしているのか、お聞かせをいただきたいと思います。国土調査以外の測量及び調査で認証を受けた事業にはどのようなものがあるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  23. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、国土調査以外の測量調査成果国土調査と同等以上の精度、正確性を有するときには、調査を行った者の申請に基づきまして、国土調査成果と同一の効果があるものとして指定できることになっております。  同一の効果があるものとして指定した実績でございますが、これは昭和五十二年にこのような調査測量が行われる地域国土庁基準点設置するようになりましてから大変ふえておりまして、今年度末までに全実績は約四千八百平方キロメートルに達する見込みであります。  類似調査といたしましては、土地改良事業に伴う確定測量土地区画整理事業に伴う確定測量等が代表的なものでありまして、農林水産省、建設省関係省庁の御協力をいただいて国土調査法第十九条五項の指定を推進しておるところであります。  さらに、この推進を図るために、基準点設置をいたします国土地理院、法務省、農林水産省、建設省に「地籍調査事業実施等について」という文書等も発しまして、一層の協力を要請しているところでございます。  毎年の実績を、少し細かくなりますが申し上げますと、五十五年の第三次十カ年計画のスタートの年は二百四十平方キロメートルでございました。二百八十九、三百二十七、三百三十八、二百二十二、四百五十七と推移してきまして、六十一年には四百五十三平方キロ、六十二年四百七十、六十三年三百五、平成元年では六百四十というふうに、年次によりましては多少出入りがございますが、総じて着実に伸びてきております。今後もこの十九条五項による調査成果の指定等を鋭意進めまして、地籍調査全体の推進に寄与していただきたいというふうに考えております。
  24. 石井智

    石井(智)委員 今それぞれの年度別に進捗状況をお聞かせをいただきました。五十九年に二百少しですか、四百台が続いて三百台にまた落ち込んだという状況にありますけれども、確かにこれが大きく利用されている実績を今御報告いただいたわけでございます。その努力は理解をしたいと思いますが、せっかくこのような指定があるのでありますから、今後これをさらに一層生かしていくことを考えていく必要があるのではないか、こういうことで、今まで関係機関とのそれなりのお話がございましたけれども国土庁としての働きかけはお聞かせをいただきました。相手側はどういう協力体制をとっているのでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  25. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 役所間で連絡会議等を設けながら、規模の大きい土地改良事業あるいは区画整理事業等が行われます際には、ひとつ国土調査の指定を前提としてあらかじめ準備に当たっていただく、そういうふうなお願いをしておるわけでございます。
  26. 石井智

    石井(智)委員 特に農林水産省の関係で、土地基盤整備事業土地区画整理事業というのか、農業基盤の整備が行われるわけですが、特にそういう場合に、国営の場合は当然基準点をもとにして設計されるのでしょうけれども、団体営なんかですとそのことと関係なく、土地の、その地域の利便だけで区画整理の設計をなされていくというようなところもある。そのことが合っていないようなところがあって、登記の段階で国土庁にとめられて登記がつかない、十年も待たされるという形で悩んでおるところも実態としてあるわけです。その辺の関係で、今後その問題点を解決しながら、さらに相手方との密接な協力体制促進して、そのことが実効を上げていけるような方策をお考えかという点、お聞かせをいただきます。
  27. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 確かに十九条五項の指定をお願いする限りは、私どもの方でも事業主体とよく連携をとりまして、タイムリーにその基準点測量してくいを打たないといかぬわけです。その辺を特に連携を密にしながらやっていかないといけないと思っております。  もちろん事業主体の方の調査は、我々の地籍調査と違いましてさらに詳細な調査を求められておる面がございます。また、調査実施するに当たりまして、できるだけ早く事業推進したいということで、基準点設置がないとかあるいはおくれるということでありますと、ついつい指定を前提としない調査に踏み切ってしまうケースが多いようであります。そういうことで、その辺はよく情報交換をしながら、我々の方でも積極的に活用していただくように基準点設置していきたいと思います。  それで、十九条五項の指定を受けますと、そういった事業に伴う測量成果も地球上の緯度、経度の中ではっきりと特定されるわけですから、以後少々地形の改変等がありましても境界等はもう間違いなく再現できるわけでございます。メリットも非常に大きいわけでございますので、そういうふうな形で今後とも一層努力してまいりたいというふうに考えております。
  28. 石井智

    石井(智)委員 今後の進め方についてお伺いを申し上げたいと思います。  現状のままで推移をすれば、完了するまでに百年を要するという見方も今大きなウエートでなされているように思います。地籍調査事業を着実に推進していくには確固とした計画策定するということ、適切な行政指導を行うということが肝要であろうというふうに思うわけでございます。どのような展望をお持ちで第四次十カ年計画の見通しを考えてみえるのか、見通しと完了の目安をどこに置いておるのかというところをお伺いいたします。
  29. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 確かに、御指摘のとおり、この調査相当長年月かかってきておりますし、またこれからも相当の日月を要すると思います。  ただ、地籍調査成果というのは私どもにとりましては早ければ早いほどありがたい、また一般の国民の方にもこれは早く完了すればするほどいろいろなメリットが大きいと思うのです。例えば、現在我が国に土地所有者が何万人いるのかと聞かれましても、これは正確な数字がわからない現状なのです。もちろん課税上の資料等はございますが、これは延べ数になっておりますから、ネットで何万人の方が所有しておられるのか、それさえ正確にわからない、ぞれほど土地情報は不足しておるわけでございます。そういう土地情報の中でも、この地籍調査基礎中の基礎、非常に重要な役割を果たす調査でございます。  そういうことで、百年かかるのじゃないかとおっしゃる方もおられますけれども、我々としてはそういうことでは断固として困るのだ、いけないというふうに考えております。そこで、確固とした長期展望のもとに計画的、着実に進めていく必要があると考えております。しかし、具体的には今後三十年ぐらいはやはり覚悟しなければならないのじゃないかというふうに考えておりまして、この間に国土開発高度利用あるいは土地に関する施策を総合的、効率的に実施する必要が特に高い、そういうプライオリティーの高い地域から順次進めていきたい。その際、先ほど御質問にございました公共事業等の類似調査成果も含めて、遅くとも三十年以内には全域を完了させたいというふうに考えております。  これを地域的に見ますと、人口集中地域以外の平地につきましては、先ほども申し上げましたように既に約六割が完了しております。この地域につきましては今後十年間でほぼ完了させることとしたいと考えております。  また、人口稠密地域、人口集中地域でございますが、この地域につきましては現在調査がほとんど実施されていない実情であります。そこで、新たにこの計画期間中に都市部地籍調査促進事業というのを導入いたしまして、今後約三十年間でこの都市部についても事業を完了させたいと考えております。  さらに、林地につきましては現在約二五%を完了したところでありまして、今後開発及び林業的利用高度化が見込まれる林地につきまして、これもやはり三十年ぐらいで完了させたいと考えております。  土地分類の諸調査につきましては、各種の土地施策を実現していく上で不可欠な基礎資料でございますので、このような観点から、これも調査必要性が特に高いと判断される地域につきましては積極的に推進していきたいと考えております。  土地分類調査の中でも都道府県が行います基本調査につきましては、これはやはり地域開発等の最も基本となる調査でございますので、最終的には全国土を網羅することが望ましいわけであります。調査全体は大体三十三万五千平方キロを全体計画として見込んでおります。これは全国土のうも、全く人が利活用すると考えられないような地域を約四万ぐらい除いておりますので三十三万五千平方キロとなっておりますが、今後十年間で全部完了させたいと考えております。  また、土地分類の本調査の方でございますが、これは全国総合開発計画等の計画に基づく開発整備対象地域あるいは社会的ニーズの高いような緊急度の高い地域、そういうところから逐次実施していきたいと考えております。  それとまた、新たに国が行う土地分類基本調査としまして垂直方向の土地分類調査、平たく申しますと大深度の地下調査でございますが、これを始めさせていただきたいというふうに考えております。大深度の地下利用や地盤災害対策等の観点から、大都市地域では特に調査の緊急性が高まっておりますので、そういうふうな地域につきまして約八千五百平方キロメートルを対象に新たに大深度地下調査実施していきたいというふうに考えております。  こういうふうに調査によって多少出入りがございますが、できるだけ三十年間の間にプライオリティーを的確に判断しながら、計画的、着実に進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  30. 石井智

    石井(智)委員 一つ具体的な事例を挙げて政府の対応をお聞かせをいただきたいと思いますが、現在木曽川河口部で干拓事業が進められております。木曽岬干拓地といいまして、昭和四十一年に開発に着手をいたしまして、平成年度には完工の見通しでございます。木曽川と鍋田川の河口、幅一キロ、長さ四キロの四百四十三ヘクタールを埋め立てて農用地を確保しようという事業でございます。  この土地をめぐって、今三重県と愛知県の主張が対立をいたしております。三重県は漁業権ラインを主張し、県有地という主張をいたしております。一方愛知県は、鍋田川と同川の排水路の流水線を根拠として県有地を主張しているわけでございます。このままでは完工した後もその所有地をめぐっての対立が続くことになるわけですが、国土庁ではこの地籍をどのようにされるのか、県境問題もありますので、お聞かせをいただきたいと思います。
  31. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 私どもが所管しております地籍調査は、御案内のとおり各一筆一筆の境界について確認するものでございまして、その実施主体は主として市町村ということになっております。したがいまして、先生お尋ねのような境界をこの調査確認するということは、この調査の性格上あるいは制度上なかなか難しいわけでございます。これは関係県の方で、あるいは国の方も関係するかもしれませんが、早期調停あるいは早期解決に努めていただきたいというふうに念願しておる次第でございます。
  32. 石井智

    石井(智)委員 そういう国土庁の消極的な姿勢がこの地籍調査をおくらせているのではないかというような感もしないわけではありませんが、一般的に市町村同士の境界争いというときには、県が出かけていってその仲介に入って解決をしていくというのが一般的な状態です。それで解決しないときは裁判ということになるのでしょうけれども、このように県と県というような場合はやはり国がその仲介というのか、行司役を務めていただかないと、かみ合った場合進まないということになりかねないわけでございます。こういう場合、国が当然調停の役割を果たしていただきたいというふうに思うわけですが、その解決に何らかの役割を果たすべき国土庁は、今のようなお話でございました。自治省あたりはどういうお考えでしょうか。
  33. 篠田伸夫

    ○篠田説明員 木曽岬干拓地の問題は、ただいま御指摘になりましたように、愛知、三重両県の境界の問題でございます。その境界確認のために、昭和五十年の五月から両県におきまして鋭意研究協議が重ねられている、このように聞いているわけであります。  ただ、こちらの方で聞いてみますと、両県の主張には大変な隔たりがございまして、自治省といたしまして、現在の段階では両県の協議が速やかに行われまして早急に解決されるように見守ってまいりたい、このように考えているところであります。
  34. 石井智

    石井(智)委員 自治省も見守っていくだけですか。
  35. 篠田伸夫

    ○篠田説明員 県境問題は、法律では自治法の中に規定があるわけでありますが、先ほど先生もお話ありましたように、やはり県と県との問題という形になるわけであります。ある一定の段階になりますと、例えば自治大臣の方でひとつやってくれないかという形で来る場合もあろうかと思いますが、現在の段階では三重県さんの方の主張とそれから愛知県さんの方の主張とが非常に隔たりがありまして、自分の方の主張を繰り返していらっしゃる。それがある程度まとまりをしてくる、あるいは争論といったような紛争状態といいますか、そういう状態になりますと、調停の方に知事さんとして入っていくという形になりますが、今のところは自治大臣の方までいくような段階に至っていないというところでございまして、早く協議が調えられるように私どもとして見守らざるを得ないというような状況でございます。
  36. 石井智

    石井(智)委員 今出ていく用意もないようでございますけれども、両者の主張が今大きく食い違っていますね。食い違っている状態で話が進んでいって、それががちんとかみ合って、もうにっちもさっちも両方引けぬというふうになったときから出ていったのでは遅いのではないか、こんな気がするわけですので、ひとつタイミングを見計らって行司役を果たしていただきたいと思います。  まだ少し時間がありそうです。  今、この調査実施主体がそれぞれ市町村という形で、今までも予算関係で九十億が七十億に減ったというようなこともあっておくれた大きな原因になっているというところもよくわからぬわけではありません。しかし、実施市町村への実施単価というのはやはり全国一律の単価で払われるのだろうと思うのです、そのかさ上げはしたにしろ。そうなると、結局各市町村が行う場合に、実質的に三十分の一の負担でいいんだよと言いながら、市町村としてそれを行うことによって、市町村にどれだけのメリットがあって三分の一でも出してやろうかという気になるのか。また、そうなったところで、三分の一でその事業が完全にできるとは思わないわけですが、市町村によって大きな超過負担が出ておると思うのです。八〇%実施した都道府県はそういうところでの超過負担を余り感じなかったからできたのか、それとも一、二%のところというのは、そんな超過負担までしてやる気がないよということでほうっているのかというところがあるのじゃないか、そんなところはどうですか。
  37. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 この調査制度ができましてから補助率の方も当初よりも随分引き上げていただきまして、現在では、原則は国は三分の二ということになっております。残りを都道府県市町村が持つということでございますが、その裏負担分につきましても相当部分を特別交付税で交付することにしておりまして、先生がおっしゃいましたように、都道府県及び市町村の実質的な持ち分はそれぞれ三十分の一ということになっておりますので、非常に国の負担が高い調査であると言えると思います。  ただ、現実に行っております調査の実費から考えて、それでも超過負担があるのじゃないかという御指摘かと思いますが、一つは、この補助対象のお金の中には職員の人件費はほとんど含まれてない、その辺があるいは問題ということかもしれません。これは、この調査相当期間がかかるとはいいましても、やはり恒常的な地方自治体行政ではないわけです。長くかかるところでも十数年で終わるわけですから、そういう意味で恒常的な人件費までは見れないということになっております。ただ市町村が一筆地調査といいますか、境界確認等のためにはどうしても職員みずからが当たらなければならないわけですから、そういう部分の人件費につきましては近年では少し見させていただいているということでございます。それと、外注に出す部分でございますが、外注に出す部分につきましては、大体公共事業をやっております建設省や運輸省、農林省、そういったところの予算単価と合わせるようにしておりますので、この点につきましてもかなり単価アップを過去にやってきておりますので、またその三省単価ともバランスをとっておりますから、しかも大体予算単価、設計単価の中で円滑に外注契約が締結されておるようでございますので、それほど余分な負担を公共団体にかけておるということはないのではないか。全くないとは申せないと思いますけれども相当いいところにいっておる、そういうふうに考えております。
  38. 石井智

    石井(智)委員 もう時間もありません。  今も、今度の十カ年で三十三万五千は何としてもやり遂げるというお話でございました。そういう意味で、最後に大臣の決意のほどをお伺いをいたしたいと思います。  この特別措置法がこの後採決される予定でありますけれども、第四次国土調査十カ年計画を必ず達成をする、こういう大臣の決意のほどをお聞かせをいただきたいと思います。
  39. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 石井先生にお答えいたしますが、先ほどから土地局長が話していることでございますが、これは極めて重要でございます。それは三つの点で重要だと思っております。一つは、国土の適切な利用による健康で豊かな住みよい生活環境確保すること、もう一つは、国土の均衡ある発展を図ること、それからもう一つは、総合土地政策の推進を図る、この三つの点で絶対不可欠だ、必要だと思っています。  ただ、問題は、実は先生に御理解を願いたいのですが、先ほど局長が申し上げました二つの点でなかなか困難がございます。一つは、国土調査の性格でございます。それからもう一つは、実はこの予算公共事業ではなくて非公共なのですね。この辺が非常に大きなネックになっておるわけでございます。そんなことがございまして、ぜひ私やりたいと思っておりますが、極めて重要でございますので、何分ともこれからも先生の御支援を心からお願いいたします。
  40. 石井智

    石井(智)委員 どうもありがとうございました。これで終わります。
  41. 中島衛

    中島委員長 吉井光照君。
  42. 吉井光照

    ○吉井(光)委員 質問が若干重複するかとも思いますが、お許しを願いたいと思います。  まず最初に、地価対策についてお尋ねをいたします。  去る三月二十三日に公表されました地価公示価格によりますと、地価の上昇が地方に波及をしておる、こういったことが明らかになったわけでございます。このことにつきまして、国土庁としては、金融緩和を背景に割安感のあるところへ余った金が流れている、このままでは地価高騰が各地をぐるぐる回る可能性がある、このように危機感を強めていらっしゃる、こういうふうな報道もあったわけでございますが、この地価上昇率につきましては、御承知のように全用途平均で一六・六%と前年の八・三%の二倍です。住宅地は一年間で一七%、商業地におきましても一六・七%といわば記録的な上昇になっております。特に大阪圏、これは五三・九%という急騰でございます。また、このところ頭打ち状態と言われておりました東京圏でも再び上昇をし始めた。東京圏の場合は、都心部、これはいわゆる超高値で上げどまり状態でございますが、都心から三十キロ以遠の地域、また千葉、茨城、こういったところが地価が上昇しておる。大阪圏におきましても、やはり周辺部が非常に急騰をしておるということでございます。これは東京圏の土地を担保にして生まれた資金というものが割安感に引き寄せられて大阪や地方の中核都市に流れたのではないか、このようにも言われておるわけでございますが、またもう一つ、大阪圏におきましては、二十兆円を超すところの大型プロジェクト、これが進行していることもありまして、投資の目がそちらの方に向けられた、こういったことも大きな要因ではないかと思います。  こうした、いわゆる土地の急騰、最近の動向を見ますと、結果的には今まではサラリーマンも頑張れば何とかなるのではないか、いわば何とか手が届くのではないだろうか、こういった地域まで軒並みに急騰するという、いわゆる生活者にとっては非常に残酷とも思えるような構図が描かれてきたわけでございます。その上、高金利時代に突入をいたしました。恐らく住宅ローンの金利も上がってくるでありましょう。そうなりますと、いわゆる地価と金利というもののダブルパンチを浴びせられることになるわけでございます。したがって、先ほどから大臣もおっしゃっておりますように、この問題は一刻も早く解決をしなければならない、そして今まで言われておった土地神話というものを一刻も早く打ち崩していかなければいけない。  その第一として、土地投機への監視体制の強化ということが挙げられます。二番目としては、金融機関の土地関連融資はもちろん、ノンバンクの投機的土地取引に対する監視も、これはもう当然ながら厳重にしていかなければならない。また、土地が住宅など本来の目的に使われずに資産運用に充てられて有効利用が阻害されているという点も、これも大きな問題であると思います。そして、三大都市圏の市街化区域農地の宅地化、こうしたいろいろな諸問題、いわゆるその土地対策はもう待ったなしの即刻対応を強く迫られているわけでございます。  そこで、まず土地担当大臣として、長官は、今回発表されたこの地価公示価格というものをどのように認識をされ、そして分析をされ、またどう対応をされようとしておるのか。あわせて、総理が非常に強い姿勢で臨むと言われておりますところの地価規制区域の指定の実施、また市街化調整区域の撤廃、そして私たち公明党が提唱しておりますところの公債の額面が地価にスライドして上昇する公債、いわゆる地価インデックス債、この導入、これに対する大臣のお考えをお伺いをしておきたいと思います。  それとともに、さきに開かれた土地対策関係閣僚会議、この運営をめぐっていろいろこれもまた新聞紙上をにぎわしております。いわゆる予定時間が三十分で、正味十五分で意見の交換が行われた、こういうことにつきまして、各閣僚から不満の声が相次いだ、こういう報道でございます。  先ほど申し上げましたように、この土地対策については海部総理も非常な意欲を示しておられる様子が、もう毎日のごとく新聞の活字をにぎわしているわけでございますが、御承知のように、この土地対策というものは海部内閣の最重要政策課題一つだ、このように言っている割には、十五分間で終わるというふうなことは非常にずさんなやり方ではないか、このように言われております。  また、土地対策というものが多省庁にまたがる問題でございます。それだけに、関係閣僚の意見調整は非常に大事なポイントになってこようかと思います。したがって、この会議の充実のために何らかのルールづくりというものが行われないと非常に前へ進みにくい点が出てくるのではないか、私はこのようにも思いますし、その司令役を務められる大臣、こうしたルールづくりについても何か新しい提案をお持ちかどうか、こういった点をまず最初にお伺いをしておきたいと思います。
  43. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 吉井先生にお答えします。  先生の御指摘のとおりでございまして、大変多岐にわたりますので簡単に総論だけを申し上げまして、後ほど局長から補足させたい、こう思っております。  今、先生土地政策の夢をおっしゃいました。私も同じでございます。東京都市圏を中心に西部圏で二十から三十キロ、東部圏で二十から四十キロ、これがサラリーマンの買える範囲であったわけです。今それは困難になってまいりました。実際、所得の二五%、先生御存じのことでございますけれども、これがローンの支払いの限度だと思います。年間所得にすれば五倍から六倍という住まいを獲得する金額でございますが、それが現在九倍から十倍になっている、一体これをどうするかということが土地政策の最終の夢で、お互い政治家としての夢だと思っております。  そんなことでございまして、国土庁におきましても土地局長を中心に、どうしたら給与所得者——大体現在六二%の方が住まいを持っておりまして、残り三八%の方は住まいを持っておりません。この人たちにどうして住まいを持たせるか。しかも給与で、所得でどう持たせるかということが大きな夢の一つということで、国土庁としても今いろいろ検討しておるという現状でございます。  そんなことがございまして、閣僚会議が十五分とございましたが、あれは三十分でございまして、延びて三十五分になりました。ただし、これも少ない時間だとは承知しておりますが、実はああいう会議をやるときに、先生御存じと思いますが、十分根回しというのをやりまして、私、土地局長を含めて各閣僚とほとんどいろいろな話をしているということでございまして、時間は三十分でございますが、実りの多い会議だった。また、特に内閣総理大臣土地政策で十分な認識を持っていただいておるということにつきましては、大変私も喜んだわけでございます。  現在、土地の高騰については率直に言って決め手はございません。監視区域、これは大変、監視区域を的確に適正に運用しながら、価格の高騰を抑える努力をしております。また、後手に回らないように努力をしております。そんなこともございまして、きょうも実は全国から担当者を集めまして会議を開きまして、後手に回らないように監視区域をもっと強化するようにというようなことで会議をいたし、そして全国から集めておるところでございます。  そんなところでございますが、どうしても監視区域で地価の高騰が抑えられない場合は、総理と同じようなことでございますが、規制区域の発動をしたい、念頭に置いてやりたい。ただ問題は、先生御存じと思いますが、規制区域というのは二つの要件がございまして、一つは地価の凍結です。もう一つは、一定取引以外、いわゆる利用目的のはっきりしたもの以外は全部これは許可しません。そうしますと、実はほとんどが許可にならない。そうした場合にはよいデベロッパーが大変迷惑をこうむる、そんな点もございます。また、社会経済上大きな影響を与えるものですから、私は、規制区域の指定については念頭にございますが慎重に対処したい。ただし、どんなことをしてもまず地価の安定を図りたい、それから、でき得れば価格を下げたい、こんなことでこれからも土地政策は進めたいと思っておりますので、何分の御指導を心からお願いする次第でございます。よろしくお願いします。
  44. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 基本的な点は大臣から答弁ございましたので、私はちょっと事務的に補う面で補足させていただきます。  まず規制区域についてでありますが、大臣から答弁ございましたように、この制度は非常に厳しい規制を課する制度でございまして、全取引を許可制、しかも区域指定時で地価をほとんど凍結する状態にいたしますし、一定の利用目的以外の取引は認めないといった内容のものでございます。したがって、社会経済活動に非常に大きな影響を与えるということで、これまで各自治体とも非常に慎重に対応せざるを得なかったのだと思います。  国土庁といたしましても同じような理由から、まず地価高騰に対しては監視区域制度を的確、厳正に運用することが重要だということで対処してきたわけでありますが、ただ、監視区域の指定が後手後手に回るのじゃないかという御指摘もあるわけでございます。この辺を十分念頭に置きながら、できるだけ早目にしかも効果が上がるように、的確な届け出対象面積の設定ということがまず大切じゃないかと思っております。しかし、監視区域制度の運用強化によってもなお地価の急激な上昇等を抑制することが極めて困難だ、そういう事態に立ち至った場合には、総理の御指示も踏まえまして、規制区域の指定について前向きに公共団体と相談し、取り組んでいかなければならないと考えております。  地価インデックス債構想でございますが、この構想につきましては一橋大学の野口教授等が大分前から御提唱になっておりまして、およその内容は承知させていただいております。ただ、この構想を土地政策の上で、有効性、実務上の実行可能性あるいは償還財源、こういったことをいろいろ考えますと、なお相当詰めないといけない課題も残っておるのじゃないかと考えております。それと、この構想の前提として、地価が相当上昇するという前提に立っておるような気がいたしまして、土地担当の一人としましてその辺が非常に懸念される構想だなという印象を私個人としては持っております。  ただ、不動産の証券化ということについては相当各界の方が最近提唱されておられますので、私どもの方としてもこういう新しい動きにつきまして十分勉強も進めておかなければならないというふうに考えております。
  45. 吉井光照

    ○吉井(光)委員 今御答弁をいただいたわけでございますが、いずれにいたしましても土地対策というのはすべて後手後手に回っている嫌いは否めません。したがって、ぜひとも、日米構造協議の問題等もございますし、ここらあたりでひとつ思い切った前向きの対策を心からお願いをしておきたいと思います。  では次に、地籍調査制度についてでございますが、これも先ほどちょっと質問がございました。いわゆる事業実績が悪い理由でございますが、この国土調査事業は御承知のように昭和二十六年の国土調査法制定以来実施をされてきたわけですが、その中心となる事業は言うまでもなく地籍調査でございます。  昭和六十三年度末までの地籍調査事業実施状況を見ますと、これまでの要調査面積の三四%が完了をしたにすぎない。また、地籍調査に着手したことのある市町村数の割合も、約三千三百ある全市町村の六五%。さらに全国進捗率を見ますと、青森が八六%、沖縄が八二%、宮城が七一%、このように地方部では非常に高いわけですが、これが逆に都市部になりますというと、大阪が一%という状況です。千葉が八%。このように一けたの府県が十四もあるという実情、このように全体の進捗が非常に悪い。また、地域間でもこの進捗の不均衡というものが生じておりますが、特に都市地域での進捗が非常に悪い。これはどういうことなのか、ひとつもう一度お尋ねをしておきたいと思います。
  46. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 御指摘のとおり全体で三五%の進捗に終わっております。また、その中でも東北とか四国、九州の方ではまずまず、五〇%前後の進捗を見ておるわけですけれども、それに反しまして三大都市圏、特に近畿、中部では一けたの進捗状況にとどまっておるわけでございまして、非常におくれておるわけでございます。これはやはり都市部では非常に所有者権利意識が強いということが一つございますし、また土地細分化権利関係がふくそうしておりまして、そして土地異動不在地主も多い、そういうことから大変調査も高い精度が要求されるということであります。調査するにいたしましても一々職員が立ち合って、関係者にも出向いていただいて境界、筆界を確認していくわけでございますので、そういう面で非常に時間、労力がかかるということであります。  それに加えまして、やはり公共団体の中でも、こういう行財政を簡素化するという動きの中でございますので、どうしても新たに専任職員等を養成し、ふやしていくということが難しいという面もございますし、予算も思うように、国の予算も伸びませんでしたし、公共団体予算確保も容易ではなかったと、いろいろな理由が複合しておると思いますが、しかしこれは調査重要性を認識していただき、また調査の方法等も合理化する中で、こういう都市部進捗を図っていかなければならないと考えております。それで、この第四次計画をお認めいただきますれば、その中で都市部地籍調査促進事業制度というのも新たに考えさせていただいて、都市部における調査を段階的に、着実に進めるような方策等もとって推進させてまいりたいというふうに考えております。
  47. 吉井光照

    ○吉井(光)委員 この地籍調査事業の持つ意義というのは、先ほどの提案理由説明の中でも大臣がおっしゃっておりましたけれども、これはもう非常に重要な意義を持つわけでございます。特に、四全総の実施、また地価高騰問題を背景としての土地の合理的利用促進、また計画的な開発を総合的かつ効率的に推進していくために成立した憲法とも言える土地基本法、この実行を具体的に進めていくためには、何としても基礎情報となるところの地籍調査の充実というものが非常に重要な意味を持ってくるわけでございます。  ところが、そうした非常に重要な意義を持つこの地籍調査というものが、先ほどからの御答弁にもございましたように、昭和三十八年にスタートした第一次計画から平成年度で切れるところの第三次計画までの三十年、これで全計画の達成率が平均四八%、半分にも満たない状況でございます。このまま今度も推移していくとするならば、この地籍調査完了までには百年かかる。これも先ほどお話があったわけでございますが、今後何十年を目途にこの地籍調査を完了されようとしておるのか。先ほど三十年ぐらいというふうな御答弁もあったやに聞いておりますが、三十年でこれを完了していくためにはどのようなビジョンを持ってこれを完了させようとしておるのか、ちょっとお尋ねをしておきたいと思います。
  48. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 残事業面積的には十八万平方キロ余あるわけでございまして、これまで二十六年から営々積み重ねてきたのが十万平方キロにまだ少し足りないわけでございますので、単純に考えますと、これから非常に調査の進めにくい都市部等を多く残しておりますので百年かかるのじゃないかというふうな御指摘も確かにうなずけない面はなくはないのです。しかし、調査にそういう長期間を要しておりましたのでは、調査成果の活用の面でも非常に支障があるわけでございまして、何とかこれを三十年くらいで仕上げたいというふうに考えておるわけでございます。  そこで、少し先ほどの答弁と重複するかもしれませんが、地域的に御答弁させていただきますと、人口集中地域以外の平地については幸い約六割が完了しております。これは今後十年間でまず完了させることができるというふうに考えております。また、一番問題の人口集中地域でございますが、ここについてはまだ実績も非常にわずかでございます。そこで新たに都市部地籍調査促進事業というのを設けまして事業を進めたいというふうに考えております。  この都市部促進事業と申しますのは、まず地域の概況を調査いたしまして、現況と登記所の公図等がどういうふうな乖離の状態になっておるのか、また、その地域におけるいろいろな地籍関係資料がどれぐらい整備されておるのか、その辺の概況把握をいたしまして、その中で調査の難易度あるいは調査必要性、そういったものを判定しながら調査のプライオリティーを決めていきたいというふうに考えておるわけでございます。それで、公図が混乱していたりあるいは欠落しておるような地域につきましては当然優先度が高いわけでありますので、そういうところにつきましては、本調査に入るべく予備調査等もやっていくというふうなことにしております。  また、一筆ごと調査までは必要がないというふうな地域につきましては、とりあえず街区調査をやりまして、ブロック単位の調査を進めていきたい。そのためにはやはり相当基準点測量を行っていく必要があります。そのために通常の調査よりも密度の高い高密度基準点測量を行いまして、そういう街区調査促進に役立てていきたいと思います。  そういった段階的な調査実施することによりまして、あわせてその街区の中の調査につきましても、あるいは民間で土地の売買あるいは分筆、合筆等が行われる際に測量もされると思いますので、そういう測量も街区さえしっかりしておれば、そこのコーナーからいろいろ測量しやすいわけであります。そういう調査も進めてまいって、できれば国土調査の指定等にも組み込んでいきたい。あるいは再開発される場合にも、そういう枠を設定しておきますと、再開発の際の調査国土調査の方に指定していくことができる、そういうことでいろいろな人の御協力もいただきながら都市部促進していきたいというふうに考えております。この都市部につきましては、そういう調査も導入し、三十年間で完了させたいということであります。  林地につきましては約二五%完了しておりますが、今後はこれは開発、林業的な利用高度化が見込まれる地域について優先的に進めていくわけですが、林地につきましても、過疎化の進展とかあるいは人口の老齢化によりましてなかなか隣地境界がわかりにくくなっておるところが多いわけであります。そういうことで非常に調査が急がれる地域も多いわけでございますし、昨今ではリゾート開発等に伴って調査が急がれるというところも多々ございまして、そういう緊急度の高いところから実施いたしまして、ここにつきましては三十年で調査を完了させたいというふうに考えております。  そういうことでございますが、やはりそれを支えるのは予算であり、あるいは執行体制であるというふうに考えております。法律を制定していただきましたら、この法律に基づいてしっかりした十カ年計画策定させていただき、またそれを執行する体制といたしまして、先ほども申し上げましたように専任職員養成対策事業というのを実施いたしまして、OBも動員いたしまして、そういうOBにも後輩の育成やあるいは事業実施協力していただく、そういう中で執行体制の強化も図ってまいりたいというふうに考えております。
  49. 吉井光照

    ○吉井(光)委員 今、今後の実施体制の強化につきまして人材の登用、それからいわゆる専門知識の習熟、こういったことが非常に重要であるというような御答弁をいただきましたが、「人口集中地域における調査推進するためには、都道府県実施体制整備も必要である。」このように懇談会の報告書では述べているわけですが、これはどのように具体的に整備されるのか。  さらに、地籍調査を円滑に行ってその推進を図っていくためにほ、「調査重要性あるいはその意義について国民全体にPRするような思い切った普及・啓発活動が必要である」このようにも懇談会が指摘をしているわけでございますが、思い切ったPR、これほどのようなことが考えられているのか。例えば消費税導入のときはテレビ等のマスメディア、これは大分活用されたわけでございますが、土地に対する認識、意識改革も含めて、国土調査重要性についても、これだけ普及をしておるところのマスメディア、こういったことも利用していくべきではないか、このように考えるわけですが、いかがですか。
  50. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 地籍調査推進のためには、先ほども申し上げましたように実施体制の強化が大変重要でありまして、特にその中で人材活用の具体的な対策を固めることが必要だと考えております。  私ども国土庁といたしましても、従来から都道府県市町村に対しまして、地籍調査に関する専門的な知識を有しており、調査内容に精通した専門職員養成確保を強くお願いしてきたわけであります。何といいましても境界確認の立ち会いあるいは測量技術、さらには不動産登記等の分野で相当の知識、識見が要求される仕事でございますので、特にそういう観点からお願いしてきたわけでありますが、幸い、昭和六十三年度地籍調査実施市町村について見ますと、全国平均で、これは専任職員でございますが、一市町村当たり三・六名配属されるまでに至っております。  またさらに、この職員の資質の向上とかあるいはすそ野を広げる意味で、研修会とかあるいは検討会を実施してきております。今後も引き続きこれを計画的に、回数もできるだけ多くしながら充実を図ってまいりたいと思います。  それと、平成年度からは、先ほど申し上げましたように地籍調査専門技術者養成対策事業実施することにしておりまして、この事業は一定以上のOBも含めた実務経験者を対象に、専門的な知識の修得あるいは再研修という意味で講習、研修会を行いまして、そういった人を公益法人等一定の機関に登録させておきまして、地籍調査実施する公共団体間で有効に活用し合う、そういうふうな体制をとってまいりたいというふうに考えております。  それと、先生指摘のように予算も執行体制も充実されましても、やはり国民あるいは関係者の皆さんに地籍調査重要性を十分理解し、認識していただくということが何より必要だと考えております。そういう意味で、これも多くの方に地籍調査内容あるいは地籍調査成果がどういうふうに活用できるのか、あるいはその地籍調査結果が個々の土地所有者の皆さんにとっても権利保護のために役に立つのだ、そういう点まで含めましているいるPRを広めていきたいというふうに考えております。  幸い土地基本法制定していただきまして、この中でも土地に関する基本的な認識、土地に関する理念、そういったものを広く啓蒙、普及するように規定されておりますので、私どもの方ではこの平成年度から四月を土地月間と定めまして、この期間中に地籍調査を含めましていろいろな土地に関するPRを関係機関、団体等の応援も求めて全国的に幅広く展開していきたいというふうに考えております。その中でも地籍調査は重要な調査として、その普及、PRに努めたいというふうに考えております。
  51. 吉井光照

    ○吉井(光)委員 地籍調査における具体的な提言といいますか、二、三お尋ねをしておきたいのですが、現行では国土調査事業主体が国、それから実施主体市町村、国から調査を委託された委託事業でございますが、すなわち事業主体と実施主体とが異なっている。ところが、先ほどからお話がございましたように、実施状況がいかに悪くても何らペナルティーを科せられるようなことかない。そうであるならばむしろ人的、財政的な裏づけをきちんとした上でこの事業主体を国から都道府県あるいは市町村へ移行させたらどうか、こういうふうな意見もあるわけですが、この点が一点。  また、調査を本気で推進しようとするのであるならば、この際、実施する自治体及び協力する所有者に対して何らかのメリットを与えるような新しい手法または政策手段、こういったものが考えられないのか。私は、このままいったのではこれはもう本当に進まないと思います。私もずっと各首長、そういったところといろいろお話し合いをしてきたわけですけれども、これを進めても各市町村にとってはもう何のメリットもないから、だから私のところはもうやりませんとか、こういったところがかなりあるわけですよ。やはり市町村というのは、この事業をやればこれだけのメリットがある、こうなれば首長は本気になるわけです。先ほどからいろいろ指導もされておるようでございますし、またいろいろと督促というか、そういったことにも力を入れていらっしゃるようでございますけれども実態としてはなかなかこれが進まないという現実。そういった新しい手法、こういったことも必要ではないか。  また、民間への調査委託、現在では市町村職員の立ち会いのもとでなかったならばこれはできないようになっておるわけですが、これがなかなか調査がはかどらない一つの大きな原因になっているわけです。かといって行革の推進の上から、また財政面から新たに職員を増員させることも非常に難しい状況でございます。こうしたことを考えますと、いっそのこと政府が言う民間の活力を導入、こういったことから土地家屋調査士等専門家に一定の条件のもとに調査委託をしたらどうなのか、また実績のある民間企業にも調査委託をさせたらどうなのか。コスト面、また公共性の面、いろいろあるかと思いますけれども、こういった面はどうだろうかと思います。  それともう一点は、専任職員の強化と予算確保でございます。  私も県下の市町村調査いたしましたけれども、圧倒的に多かった要望というものがやはり予算の増額と人手不足でございます。国土調査予算策定は、調査面積、すなわち事業量によって決まるわけですが、ここ数年の予算額の推移を見ますと、五十八年度以来毎年減額されている。先ほどからの御答弁のように、シーリングの問題もあるでしょう。その一方で政府は、土地住宅対策は今政治に課せられた最大かつ緊急の課題である、このように言っておるわけでございますが、その基本、土台となる地籍調査費というものが削られている。これではどうしようもない。片方では幾ら進めると言ってみたって、予算がだんだん減ってきたのでは、人件費も上がるでしょう、調査費も上がるかもしれない、恐らく上がるでしょう。コストも上がってきます。ここに大きな矛盾がありますね。これほどのように解決をしていけばいいのか。こういった点、三点について最後にお尋ねをしておきたいと思います。
  52. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 まず、調査権限の都道府県あるいは市町村への移行についてでございますが、現在は、市町村等により実施されました地籍調査成果都道府県知事に送付されまして、知事が認証いたしますとその写しが市町村において保管されて、一般の閲覧等に供され利用されるわけであります。また、この成果の写しは登記所にも送付されまして、地籍図は、従来の公図にかわり不動産登記法第十七条の地図として登記所に備えつけられる図面になるわけです。また、地籍簿も土地登記簿に反映されるということになっております。  こういう不動産登記とも非常に密接に地籍調査は連係しておりますので、この調査の適、不適いかんによっては、登記を信頼して不動産取引等を行われる人に不測の損害も及ぼしかねないということでありまして、非常に正確を要しますし、また一たん登記されますと、この訂正は非常に困難だというわけであります。  こういうことで国民の財産等に重大な影響を及ぼす調査でございますので、認証に当たりましては内閣総理大臣が事前に審査するということになっております。これもひとえに成果の精度とか正確性の担保あるいは全国的な横並びの整合性、こういった確保のために措置しておることでございまして、やはりこれを全面的に市町村に移行するというのは適当ではないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  また、民間への調査委託については、先生指摘のとおり、できるだけ民間の力をおかりしながらやっていくのが好ましいと考えております。従来から測量工程につきましては外注するのが一般的となっておりますが、現地における毎筆の土地所有者確認、各一筆一筆の土地所有者確認あるいは境界確認、地目の認定、そういった業務、一筆地調査と言っておりますが、こういう一筆地調査につきましては、作業の性格上、土地所有者基本権利に関する行為を含んでおりますので、問題のない円滑な地籍調査実施するためには、どうしても地域状況に精通し、信頼感を与えるといいますか、そういう市町村職員が直接実施するというのが適切じゃないかということで、外注化につきましても一定の限界があるのじゃないかというふうに考えております。しかし、できるだけ多くの部分土地家屋調査士等にもお願いしながら移行するという方向で検討させていただきたいというふうに考えております。  それと、専門職員あるいは予算確保でございますが、確かにこれまで進捗がはかばかしくなかった理由一つ予算的な要素も大きいと思います。いろいろ御指導いただきまして、発足後昭和五十七年ぐらいまでは順調に伸びてきたわけでございますが、その後いろいろな情勢がございまして、年々少しずつ落ちてきております。しかし、落ちる中でも国土調査については相当財政当局にも御理解をいただいてきたわけでありますが、現実は相当落ち込んでおるということでありまして、何としてもこの予算確保が今後の事業推進に非常に大切だと考えておりますので、この点についてもまた先生方の御指導も得ながら、我々予算確保に努力したいというふうに考えております。
  53. 吉井光照

    ○吉井(光)委員 終わります。
  54. 中島衛

    中島委員長 辻第一君。
  55. 辻第一

    ○辻(第)委員 初めに、地籍調査の現状についてお伺いをいたします。  この地籍調査は、昭和二十六年の調査開始以来今日までに要調査面積の三分の一を超えたところでとどまっておるわけです。こうしたおくれの原因はどこにあるのか、国土庁の見解を伺います。
  56. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 一つには、先ほどから御答弁申し上げておりますように、この調査は個人の権利に関する各筆ごと調査でありまして、正確な調査と厳密な手続を要請されます。そういうことで、一筆の土地について位置、境界確認に関する地元住民等の協力も得ながら進めてまいりますので、非常に多くの時間、労力を費やすわけであります。そのあたりが調査がはかばかしく進展しなかった理由一つかと思います。  それともう一つは、この調査市町村理事者等におきましてもメリットについての理解が十分でなかったのではないか、そういうことで、やはり市町村あるいは県も含めてですが、我々の啓蒙、普及努力が不足しておったということもあろうかと思います。また自治体におきましても、そういうことですから、どうしても予算手当てにしましても、専任職員確保にいたしましても、優先順位がどうもそれほど高順位の方に回されない、そういうふうなこともあったかと思います。また国の方でも十分な事業費の手当てができなかった。そういったもろもろの原因が、今日なお全体の進捗率三五%にとどまらせている主たる原因ではないかと思います。  ただ、おくれておる中でも、大都市地域では非常に土地細分化が進み、権利関係がふくそうしておりますし、また土地異動が激しくて、調査するにも不在地主が多くてなかなかはかどらない。それと、測量も非常に交通量の多いところで測量いたしますので、精度の高い調査をやるにはなかなか手間暇、予算単価が高い、そういうこともございまして、大都市地域では特におくれたわけでありますが、しかしこれからの障害もいろいろな工夫を凝らすことによって乗り越えられない障害ではないと考えておりまして、一つ一つ障害を取り除きながら、新しい十ヵ年計画の中でできるだけ近い将来に完了するような展望を開いていきたいというふうに考えております。
  57. 辻第一

    ○辻(第)委員 いろいろと大変な御苦労があるなということを感じるわけですが、この地籍調査の結果、登記と現状の不一致が出てきたときの政府の対応について伺います。  地籍調査は、一筆ごと土地について、所有者、地番及び地目を調査するとともに、境界及び面積の測定を行うものであり、土地に関する戸籍調査ともいうべき基礎的な調査ということであります。国土庁国土利用に関する年次報告六十三年度版の中に、「我が国における土地の公簿は、主として明治初期に実施された地租改正事業の際の土地調査の結果を基礎とするものであり、不正確なものが少なくない。 また、従来の登記所や市町村に保管されている地図も精度が低く、」このようなところがございます。そうなりますと、地籍調査の結果、登記と現状の不一致が出てくるケースも多いのではないかと思います。都市部での調査では特にこの点が心配をされるわけでありますが、この不一致に対し、政府ほどのように対応されるのか、お伺いをいたします。
  58. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 御指摘のとおり、特に現在登記所に備えつけられております地図は、明治初年つくられました字限図というものでございまして、非常にラフなものでございます。したがって、この字限図と現況が著しく相違する、そういうふうな地域もございまして、我々いわゆる地図混乱地域と称しておるわけでございますが、こういう地域について地籍調査実施いたしますことは、これらの地域における地籍明確化に大いに寄与するわけでありまして、非常に調査のやりがいがあるといいますか、効果の高い地域であります。  しかし、この地籍調査によって権利の変動あるいは権利の確定をすることは、調査制度にはそういった権限が与えられておりませんのでできないわけであります。したがって、地籍調査着手前に関係土地所有者相互間の権利関係の調整をしながら納得をいただいてやっておるわけです。また、不動産登記事務上も問題がない、そういうふうな確認をした上で進めておりますので、それだけに非常に手間暇がかかっておるというわけであります。  実施主体におきましては、こうした問題につきまして関係土地所有者あるいは関係機関と常日ごろ十分連絡協議しながら、こういった調整をとりつつ進めておるというのが実情でございます。
  59. 辻第一

    ○辻(第)委員 昭和の検地とも言える地籍調査は、二十六年の国土調査法制定でスタートし、三十八年度以降は国土調査促進特別措置法に基づく十カ年計画、一次から三次で行われてきたということですね。六十三年度までの調査で、地籍図を作成したのは九万五千九百四十八平方キロメートルと要調査面積の三三・六%であります。しかも調査済み面積は、東北が五二%、北海道は四八%、近畿五%、東海七%、関東二一%、これは六十二年度末時点のようでありますが、大都市周辺ほど進んでおりません。このペースで進めた場合、調査完了にはあと百年以上かかるのではないか、国土庁予算で計上している調査費は年間八十億円で、調査を終えるのに今後一兆円かかるのではないか、このようにも言われております。  そして、一昨年十一月十六日の朝日新聞の記事で、大蔵省は「国が一筆ごと地籍図を作る意義は薄れてきた」、このように言っている。その理由は、明治の地租調査は、租税の基礎だった田畑ごとの収量把握にねらいがあったが、今は税収構造が大きく変わったこと、都市部では、地籍調査の結果、登記と現状の不一致が住民とのトラブルを続発させる危険すら高い、このようなことを指摘しているようであります。  このような新聞報道に対して国土庁長官はどのようにお考えになるのか、見解を伺いたいと思います。
  60. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 辻先生にお答えいたします。  先生の御指摘のとおりでございまして、私も地籍調査が百年かかると聞いたことがございますが、この問題点は二つございまして、一つ予算的問題、もう一つは実は土地権利に関する問題でございます。予算面につきましては御存じのとおりでございますが、これは非公共事業というよぅなことがございまして、なかなか厳しい査定を受けている状況でございます。  また、もう一つの点の問題につきましては、実は大変、特に土地が高くなっていることで、権利関係でございまして、やはり一筆ごと基礎的な調査を正確にする、そのことがまた登記にも反映するというようなことがございまして、その辺が大変厳しい点があるわけでございます。  今おっしゃった新聞記事、私も拝見しましたが、測量の合理化と効率化を図りたいと思いますが、基礎的にはその点十分配慮しながら、先ほど局長が答弁しましたが、何とか三十年以内には完了したい、こんなことでこれからも努力したいと思っております。何分の御指導と御協力をお願いする次第でございます。
  61. 辻第一

    ○辻(第)委員 奈良県では、今地籍調査事業に取り組んでいる市町村は十九市町村であります。四十七市町村ある中で十九市町村なんですが、その中で事業の一番進んでいると思われる吉野町の担当者に意見を伺いました。その中で、国から人件費をつけてほしいことや、地籍測量の委託の単価が他の公共事業測量の委託の場合に比べて約三分の一程度、このような問題を改善してほしいなどといった切実な要望が出されております。  吉野町では、昭和六十三年度一年間で、職員が五名で三千四百九十六筆分、面積で二・三八平方キロメートル分の地籍調査がなされております。一筆一筆について、リュックを背負い、足で歩いて、目で確かめて境界確認していく仕事だということであります。境界が確定しないと地籍調査ができないからであります。吉野の山間部では、若い方がどんどん都会へ出ていきます。親が亡くなって帰ってこられるのですが、そのときに境界争いとなるケースが多いようであります。そうした場合、村の地区の役員の方に入ってもらって和解を進めるようでありますが、町の職員の方もこの紛争の中に巻き込まれて、裁判所の呼び出しや弁護士さんの問い合わせなどで板挟みになってノイローゼになったり、中には自殺に追い込まれた、このようなケースも奈良県ではあったようであります。  大変な御苦労をいただいているのだな、このことを感じるわけでありますが、吉野町の場合は、地籍調査は一平方キロ当たり職員三人、予算は四、五千万円必要というふうに言われているわけでございます。ところが、この事業は国の事業でありますのに人件費がついてこない。先ほどいろいろお話がありましたが、全国市町村重要性を認めておられるところもあるわけであります。しかし、時間と労力の点で取り組めない、このような訴えがございます。いわゆる総事業費のうちで国から出るのは三分の一かあるいはせいぜい十分の四ほどで、市町村の持ち出しが十分の六ほどになっている。市町村から毎年人件費をつけてほしいと国に要望が出されているようでありますが、政府はこれにこたえるべきではないのか、政府予算面でもこうした事態を十分改善すべきではないのか、この点でお伺いをいたします。
  62. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 この地籍調査に要する経費につきましては、地方財政法十条に規定されております国庫負担の対象事業一つとして助成をしてきておるわけでございますが、ただ、その中で、調査の性格が恒常的行政サービスを内容とするものでないという性格を有しておりますので、通常の職員設置についての経費まで見れないということになっておるわけです。そういうことですから、先ほど申しましたように、そういった一市町村大体三・六人程度の専任職員を抱えておられますから、それらの人の人件費まで考えますと、これは確かに国から来る補助額は全体経費のやはり相当少ないお金だ、そういうふうな見方もできるかと思いますけれども、そういう恒常的な職員経費を除きますと、国からは現在のところは百分の五十五、市町村の方と都道府県はそれぞれ百分の二十二・五ですか、そういう負担になっておりますし、またそういった裏負担分につきましても、特別地方交付税で補てんされておりまして、現実には県、市町村ともにそれぞれ三十分の一ということになっておるわけです。この部分につきましては、それほど超過負担的な部分はないのじゃないかというふうに思っておりますが、せっかくの御指摘ですから、我々さらによく実態を調べてみたいと思います。単価というのは都市部によっても違いますし、また同じ山村部でも地形等によってかなりの差があると思います。そういった面もあろうかと思いますが、私どももさらによく勉強したいと思います。  なお、国土庁におきましては、昭和五十一年度から市町村等職員がみずから一筆地調査等に当たられる場合には、これらの職員の方の経費につきましては、一部を事業費の中に組み込んでよろしいということにしておりまして、できるだけ市町村の持ち出し分が多くならないようにそういう配慮を加えておるところであります。今後もこの点については十分注意を払っていきたいというふうに考えております。
  63. 辻第一

    ○辻(第)委員 測量のことでありますけれども、昔は平板測量法という方法でやっておられた。この方法はやはり精度が低い。当初の調査を今になってやり直しておられるところもあるというふうにも聞きます。今は光波測距儀という方法でやっておられるようでありますが、これだと単価が高くつくということであります。吉野町の例では、地籍調査測量委託費が他の公共事業測量単価と比べて低い。私の聞いたのでは、三分の一程度ではないか、このように聞いております。そういうことで、地籍調査測量をやってくれる業者が非常に少ない、なかなかないという現状になってきているというふうにも聞いているのです。  市町村が、これも毎年単価アップを要求してきたがなかなか改善をされない。これはどこがどういうふうに言われたのかはっきりせぬのですが、調査の結果、面積がふえたら固定資産税が市町村に増収となるからよいではないか、こんなことも言われているようであります。市町村にしてみますと、その分交付税でカットされるのだから全然メリットがないのだ、こういう声も聞いたわけでございます。この測量委託費の単価の引き上げ、これはやるべきではないのかなと考えるのですが、いかがでしょうか。
  64. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 地籍調査単価につきましては、昭和五十六年度から五十八年度にかけまして、予算と実行の乖離があるということで改善努力をいたしました。その後も所要の人件費等の改定を行っておりまして、現況では特に大きな乖離はないというふうに考えておるわけです。  ちなみに五十五年の単価を申し上げますと、平方キロメートル三百万でございましたが、平成元年では四百七十二万というふうになっておりまして、伸び率も五十五年を一〇〇といたしますと、一五八となっておるわけです。それで、ちなみに運輸省、建設省、農水省等の三省単価の推移を見ましても、五十五年一〇〇に対しまして平成元年一六〇の指数でございますので、それほど大きな差はないのじゃないかというふうに考えております。  ただ、この単価につきましては、やはり民間に頼む部分も多いわけでございますので、民間がしっかりした調査ができるように、今後もこの実態をよく見きわめて改善すべきときは改善するというふうなことが特に必要だというふうに考えております。今後とも十分注意していきたいと思っております。
  65. 辻第一

    ○辻(第)委員 もう一度具体的に調査をしていただいて、改善すべきところはぜひ改善をしていただきますように、重ねて要望をして次へ移ります。  次に、当面の地価対策について伺いたいと思います。  国土庁が二十三日付で公表されましたことし一月一日現在の公示地価によりますと、この一年の地価の上昇率は、全用途の全国平均で一六・六%、昨年は八・三%だったようですが、再び騰勢を強め、七五年以降では一昨年に次ぐ高い伸びとなっております。大阪圏が五三・九%と調査開始以来の最高の上昇率となったほか、東京圏の地価も七・二%上昇、政府の地価対策の怠慢と私は言わざるを得ないわけであります。地元でいろいろ演説会や集会をやりますと、必ずこの地価の問題が出てくるわけであります。本当にまじめに働くことがもう嫌になったのだ、そういう切実な訴えもたくさん聞くわけであります。  大阪圏が五三・九%、私ども奈良県では五〇・二%ですね。その前年は二六・九%ということでありまして、実態を見ますと、もう二倍や三倍というようなところはざらにあるのですね。こういう状況になってきているわけであります。この土地の高騰の原因でありますとかあるいは責任といいましょうか、あるいは対策というのは言われ尽くしてきたというふうに思うわけです。私も何度も土地特別委員会あるいは建設委員会などでもこの問題を取り上げてまいりました。しかし、結果はこういう極めて残念な結果になっておるわけです。国土庁職員の皆さん方とお話をしますと、努力をいたしましたというお話は聞くのです。しかし、結果から見てまいりますと、これは本当に残念な結果ですね。最近大臣が次々とおかわりになるので、おかわりになるたびに私どもは強く私どもの主張を申し上げ、要請をするわけですが、そのときは非常な決意を持ってやりますというような感じで、やっていただけるのかなと多少思うのですけれども実態はほとんど具体的にきちっとしたことがやられていないということですね。問題はやるかやらないか、ここのところに事はかかってきているのではないか。我々から見れば事既に遅しというような感じがするわけでありますけれども、しかしまだまだ土地を引き下げて国民の皆さん方の期待にこたえたい、この思いがいっぱいであります。  そこで、繰り返しになるのですが、いわゆる規制区域の発動ですね、さびついた感じがあるわけですが、この伝家の宝刀をなぜ抜かれなかったのか、これからも本当にお抜きになる意思があるのかどうか、この点について長官の御意見を伺いたいと思います。
  66. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 辻先生にお答えいたします。  実は、地価高騰は御指摘のとおりでございまして、全国で約一七%、大阪で五四%上がったということで我々も大変苦慮しておるわけでございます。  規制区域の指定でございますが、これは二つの要件が伴うわけでございます。一つは地価の凍結、もう一つは一定の利用目的以外は許可しない、こういう厳しい取引条件がつくものですから、社会経済上大変大きな影響を与えるということで各自治体も自粛しておったと思います。  現在は監視区域制度をどう運用するかということでございますが、この監視制度も、先生御存じと思いますけれども都道府県の知事あるいは政令市の長によって実は運用されるわけでございまして、現在、厳しい行財政の中で人員を確保しながら頑張っているような現状でございます。  きょうも実は国土庁全国の担当者を集めまして、監視制度の的確な運用、後手に回らないように緊急な点検をするようにお願いしているわけでございますが、いずれにいたしましても、先生指摘の点、もっともな点もあるわけでございますが、我々といたしましては何とか後手にならないように地価の安定をしたい。どうしてもそれで地価の安定が難しい場合は、地価の高騰を抑えることが難しい場合は、規制区域の指定を念頭に置いて対処したい、こう考えております。
  67. 辻第一

    ○辻(第)委員 また、繰り返し要求をしてきました金制機関の土地への投機的融資ですね、この問題も何度も言うてまいりました。昨年の十一月でしたか、その質問のときには、前の国土庁の長官が、融資の問題については厳しく要請をしてまいります、こういう並み並みならぬ決意のように感じたのですけれども、これもどのように効果があるのか、最近の状況を見てまいりますと大変な不動産業向けの貸出残高の増であります。  もう時間がありませんのでなんでございますが、これまでの自粛要請では現実的に効果がなかったと私は言わざるを得ないわけであります。ここで、金融機関ごとの土地融資の実態の公表やリース会社などを通じた規制逃れの防止、あるいは日銀による窓口規制、投機資金の回収の指示、土地担保の制限など、踏み込んだ土地関連融資の抑制策をとるべきである、このことを強く要求しておきたいと思います。時間がありませんので答弁は結構でございます。  最後に、市街化区域内農地への宅地並み課税の問題であります。  私ども、これまで一貫して、農業つぶしであり、緑地であるとか防災の問題、そして実際には地価引き下げにはつながらないということで、強行すべきでないと主張してきたわけであります。しかし、日米構造協議などでアメリカも含めてこの宅地並み課税をやろうというような声を聞くわけであります。  私ども奈良県では、市街化区域内農地は三千六百二十七ヘクタールございます。宅地並み課税免除農家の方は五千三十八戸になっております。県の農協中央会にお聞きをいたしましたが、奈良県あたりは東京と違って専業農家が多くて、水田で米をつくっている。田んぼに銀行並みの固定資産税をかけられたら農業などやっていけるわけがない、このようなことをお聞きをいたしたわけでございます。  既に前国会でも土地特別委員会で質問をしたのですが、市街化区域内農地への宅地並み課税を強行することは、農家にとっても土地問題の解決にとっても決して望ましいものでないわけであります。政府は強行すべきでない、このように考えます。  そしてもう一点、政府は奈良県のような水田の多い市街化区域内農地についてどのような方針で臨もうとしておるのか、あわせてお伺いをいたします。
  68. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 先生御承知のように、市街化区域農地問題につきましては、総合土地対策要綱でその方向づけは閣議決定していただいております。また、昨年末の閣僚会議の申し合わせでも、同じような方向で基本的な方針が示されておるわけであります。  要は、市街化区域農地のうち、営農の継続が可能な条件を備えておりましてかつ都市計画の面からも保全すべき農地については、生産緑地等の指定を行い、都市計画上の適切な保全を行っていくということであろうかと思います。  また、市街化区域内農地にかかわる税制につきましては、保全すべきものとそうでないものとの都市計画上の位置づけの明確化を図っていく中で、それに関連づけながらそのあるべき姿を検討していくのが適当だというふうに考えております。
  69. 辻第一

    ○辻(第)委員 終わります。
  70. 中島衛

    中島委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  71. 中島衛

    中島委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  国土調査促進特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  72. 中島衛

    中島委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  73. 中島衛

    中島委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、桜井新君外四名より、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党及び民社党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。桜井新君。
  74. 桜井新

    ○桜井委員 ただいま議題となりました国土調査促進特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党及び民社党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程において委員各位におかれましては十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨説明にかえることといたします。     国土調査促進特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。  一 国土調査実施に当たっては、国土の全域にわたり均衡のとれた進捗が図られるよう留意するとともに、立ち遅れている都市部における地籍調査事業の一層の促進に努めること。  二 地方公共団体における国土調査実施体制及び管理体制を拡充するとともに、所要経費確保に努めること。 以上であります。  委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。
  75. 中島衛

    中島委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  76. 中島衛

    中島委員長 起立総員。よって、桜井新君外四名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、国土庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。佐藤国土庁長官
  77. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 本委員会におかれましては、本法案につきまして熱心な御審議をいただき、ただいま全会一致をもちまして議決されましたことを深く感謝を申し上げます。  本日の委員各位の御意見につきましては、今後その趣旨に沿うよう努力いたしますとともに、ただいま議決になりました附帯決議につきましても、その趣旨に十分沿うよう努力してまいる所存でございます。  本法案の御審議の終了に際し、委員長初め委員各位の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表しまして、私のごあいさつとさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)     ─────────────
  78. 中島衛

    中島委員長 お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 中島衛

    中島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  80. 中島衛

    中島委員長 午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ────◇─────     午後零時三十一分開議
  81. 中島衛

    中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出、明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境整備等に関する特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。坂本内閣官房長官。     ─────────────  明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境整備等に関する特別措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  82. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 ただいま議題となりました明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境整備等に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境整備等に関する特別措置法により、奈良県高市郡明日香村における歴史的風土の保存を住民生活との調和を図りつつ行うため策定された明日香村整備計画に基づき、明日香村が国から負担金または補助金の交付を受けて昭和五十五年度から平成年度までの間において行う事業について、国は財政上の特別の助成を行ってまいりました。  平成年度以降につきましても明日香村整備計画策定し、同計画の円滑な推進を図るため、本年度末で期限切れとなる明日香村に対する財政上の特別措置を引き続き講ずる必要があり、同措置について平成十一年度までの十年間延長するものであります。  以上が、この法律案提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。
  83. 中島衛

    中島委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  84. 中島衛

    中島委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がおりますので、順次これを許します。貴志八郎君。
  85. 貴志八郎

    ○貴志委員 開発が現代における利潤追求の姿であるとするならば、文化は日本人の心、未来にわたって引き継がれるべき民族の財産であると思います。ところが現在、大変な豊かさを追い求めてきた我が国の人々の中には、この大事な心を失いつつあるのではないか、心の砂漠が広がっているのではないか、そういう疑いを持ちたくなるようなことがたくさんございます。国内の開発だけで気の済まない日本企業が、世界各国の土地を買いあさり、あるいはオークションがあれば名画や古美術を想像を超える高値をつけて世界の人々のひんしゅくを買う、これもそれも日本人の心のひずみを象徴しているのではないか、このように思えるわけであります。  その意味で、本日付議されております明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境整備等に関する特別措置法は、物か心か、金か文化かを問い直す、まさに日本の文化度が問われる意義深いものであると思います。  そこで、まず長官にお尋ねをいたします。  この明日香法の原点は、昭和四十五年九月に提出されました歴風審の答申そのものにあると思います。この答申の前文に、「この地方には、宮跡、寺跡、古墳等の遺跡が数多く存在するが、これらの歴史的風土を最近急激に進展している開発の波から守り、一体的に保存し、正しく後世に伝えることは現代に課せられた国民的課題である。」長官は、この十年間の法施行の実績を、今申し上げた原点を踏まえて果たして満足すべき十分な成果があったと御判断をされるかどうか、また整備計画実施や運用について改善を要したり反省したりすべき点がなかったかどうか、まずお答えを賜りたいと存じます。
  86. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 奈良県明日香村は、我が国の律令国家体制が初めて形成された時代における政治及び文化の中心的な地域であります。村内には全域にわたって宮跡、寺跡、古墳等の重要な歴史的文化的遺産が数多く存在し、他に類例を見ない極めて貴重な歴史的風土が形成されております。  法制定後十年が経過し、この間に明日香村を取り巻く社会経済情勢は著しく変化してきたものの、住民の深い理解と協力によって歴史的風土の保存に関してはおおむね所期の目的は達成されてきたものと考えています。  また、明日香村整備計画に基づき各種の事業実施された結果、明日香村整備基金による事業と相まって生活環境等の整備は進んできているものと考えています。  国民的文化遺産である明日香村における貴重な歴史的風土を良好に保存し後世に伝えることは、国家的見地から見て極めて重要な意義を有する課題であり、明日香という日本人にとっての心のふるさとともいうべき地域歴史的風土を守ることを通じて国民の間に心の豊かさをはぐくむことは、今後我が国が文化国家日本として世界に貢献していく上でますます大きな意義を有するものと考えております。  このような観点から、今後ともこれまで以上に住民の理解と協力を求め、住民生活との調和を図りつつ明日香村における歴史的風土の保存を推進してまいりたい所存でございます。
  87. 貴志八郎

    ○貴志委員 この法律には、今長官からお答えをいただきましたように二つの顔があると思います。  その一つは、歴史的風土の保存であり、この点については長官が御答弁されましたように、私もおおむね良好な結果を得ておると思います。しかし、もう一つの顔、この保存を支える住民の生活環境整備という面におきましては、かなり多くの問題点があるのではないかと思います。  十年前に、この法律制定の時点でも論議をされたわけですが、明日香村の歴史的風土を保存するために最も適した産業は何か、十年前に随分論議をされております。その中で得た結論は農業であります。農業ということについては、本委員会で十年前の論議の中で一致した意見であると理解をいたします。私も、農耕民族としての日本人の古代文化の歴史的風土を保存する姿として、黄金の波打つ稲穂そのものが歴史的風土の保存の象徴のように思う一人でございます。  ところが、御承知のとおりに都市近郊農業としてはビニールハウスなどをつくることによって対応できるわけでありますけれども、この地域はビニールハウスを建てることができない、制限をされている。それから、水田のために土地改良を進めようといたしましても、地下掘削を勝手にやることはできない。さらに調べてみますと、耕作面積はこの地域においては一戸当たり大体三反ということでありますから、ひっきょうは兼業をしなければならない。こういう実態にあります。こういう点を踏まえますと稲作、米づくりだけがこの地域における農業の姿ということに絞られてくるわけであります。  ところが、この明日香村の農業に対していわゆる減反、これの網をかぶせて確実に実施をさせておるわけであります。私はその理由をぜひ問いたい。今長官がお答えになりました日本は文化国家を目指すという基本的な立場からいって、この歴史的風土を保存するための農業、その農業で米づくりを取り上げる理由というものは一体何かと私は聞きたいのであります。  同時に、その当時から言われておりますように、明日香村が農業立村でやっていけるという見通しを持つことができるのか。このような減反などを押しつけることによって、将来にわたって地元住民の生活環境がなおかつ良好に保てる、このように理解をされておるのか。その点についてぜひ御意見を承りたいと思います。
  88. 渡辺好明

    ○渡辺説明員 御案内のとおり、現在お米の需給ギャップは四百万トンという極めて膨大なものになっております。この需給を早急に均衡、回復するということが農政の最重要課題でございます。そういうことでございますので、米を守り、そして日本の水田農業を維特発展させていく見地から、日本の稲作農家挙げてこの対策の推進に取り組んでいるところでございます。  例えて申し上げますと、現在米を販売している農家が二百七十万戸ございますけれども、水田農業確立対策、転作への御協力は、米を販売していない農家にもお願いをしている、そういうふうな状況にございます。  次に、転作目標面積を具体的に各県へどういうふうに配分しているかということでございますが、これはもちろん行政だけで配分をしているわけではございません。農業団体と一体になって配分をいたしております。水田農業確立対策におきましては、十ほどの客観的な要素によって面積配分を各都道府県にいたしておりますけれども、それに加えまして、各地域の農業なりあるいは置かれた実情を十分勘案をしてこの面積決定をしているわけでございます。  実は、都道府県内の市町村に対する配分都道府県に、一番地域実情に通じておりますしお詳しいわけでございますので、ゆだねております。それから市町村内の配分につきましては、地域実情を勘案しながらやっていただきたいということで市町村長さんにこれをお願いをしているわけでございます。奈良県の明日香村におきましても同様な配慮が行われているというふうに私どもは理解をいたしております。  とはいえ、今先生から御指摘がありましたように転作率が三〇%にも達しますと非常にやりにくいし、あるいは今御指摘にありましたように、いろいろと制約条件が明日香村についてはあるというふうな実情も承知をいたしております。来年度から水田農業確立対策の後期対策がスタートいたしますが、私どもはその中でできるだけ制限的な作物は廃止する、あるいは今までは収穫をする作物だけでございましたけれども、景観を形成するような作物も転作の対象として取り入れる、あるいは確立対策の中でお米を主食以外につくることもかなり面積を拡大する、数量を拡大する、そしてさらにそれでもできないようなところはほかの地域と共補償で面積を交換する、米をつくる地域と転作をする地域を交換をするというふうないろいろな手法の多様化をいたしました。  明日香村におかれましても、こうした転作手法の多様化の中で何とか確立対策の円滑な推進がなされますよう期待をいたしておるところでございます。
  89. 貴志八郎

    ○貴志委員 一応の御説明をいただいたわけですが、私は納得ができないと思いますのは、政府として明日香村のために必要だということで古都保存法の特例措置としてこの法律をつくったはずであります。ということになってまいりますと、やはり環境を改善する、歴史的風土を保存するという必要からこの法律をつくっているわけでありますから、総合的な観点から何らかの形で、少なくとも原則としてそのために農業を守らなければならぬということをきちんと見ておるわけですから、それに対応した施策というものがなければならぬ。税法のような厳しいものでも、今かかっておりますように租税特別措置法が現にあるじゃありませんか。  昭和五十五年、この明日香法の制定の際に、当時の委員会で減反問題に触れた小渕長官は、関係省庁とこの点についてよく話し合ってみたい、このように記録に出ております。一体どのような話し合いがあったのか、この減反について農水省との間でどのような協議がなされたか、その結果はどうだったのか、今やられているような結果について当時の総理府はこれを了解をしたのかどうか、ぜひ聞いておきたいと思います。
  90. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 農政上の観点からの減反問題につきましては、ただいま農水省の方から御答弁があったところでございます。  今委員お尋ねの件につきましては、この法律が制定されました際に、当時の総務長官が減反問題等につきまして明日香村にどういう適用をするかということについて関係省庁と十分連絡をとってみたいというような趣旨の御答弁があったことについてのお尋ねかと思うわけでございます。  ちょっと抽象的になるかもしれませんが、減反問題そのものずばりということではございませんで、明日香におきます歴史的な風土と、農業立村を目指しております明日香村の今後のあり方等につきまして、私どもは、農水省はもちろんでございますけれども歴史的風土審議会がございます、その中に幹事会がございますので、その場を通じましていろいろな角度から、どのような形で明日香村の基幹産業である農業を歴史的な風土とどういうふうに調和させていくかということにつきましてはいろいろ御相談はしてございますけれども、減反問題ずばりにつきましてはその後特にお話ししたということはございません。
  91. 貴志八郎

    ○貴志委員 念のためにお伺いをしたいと思うのですが、昭和四十六年十二月十五日、当時の奈良県企画部長と明日香村村長との間で覚書が交わされておりまして、その中では減反は行わない旨の内容が含まれております。このことについては、十年前の論議の中でもその事実はわかっておるという農水省のお答えであります。  そこで、今農水省の方からお答えをいただきまして、後期対策の転作目標を示されたわけでありますが、私が先ほど来申し上げておることは、手法の問題、要するに運用の問題をお尋ねしているのではなしに、原則として文化財保存、歴史的風土の保存、そこの住氏の生活環境整備、そういう点からいって転作すなわち減反というものは原則的にそれを認めることができるのかどうか、考え方、原則はどうかということを聞いているわけです。  都道府県なり、あるいはその県内の村の中においての配分の問題については、そこから先の運用の問題でありまして、運用の問題にも私は意見がありますけれども、まず原則が一体どういうことか、農水省と総理府との間の意見の食い違いはないのかどうか。また今度は運用の問題について、先ほど申し上げたように、県と村とそういう約束事があるのに、結局第一種地域においては六十五ヘクタールのうち四ヘクタール分だけはとにかくさじかげんをしておる。しかし、全体としてはそれは考慮されておらないという、そういう具体的な課題について、やはり文化財を保護していく、歴史的風土を我々の子供たちや孫たちに未来永劫に伝えていくというロマンの薫り高い、こういう課題に対して、減反という問題は余りにも生臭い問題であります。しかし、これの調和を図っていかないと、本当の意味における、我が国そのものがこの歴史的文化というものを保存するためにどれだけ熱意を持っておるかということが示せないのではないか、私はそのように思いますので、あえてこの問題についてお答えをいただきたいと思います。
  92. 渡辺好明

    ○渡辺説明員 今御指摘がございましたけれども、私どもといたしましては、この米の需給均衡を図るという極めて重要な問題に対処して、日本全国全農家が取り組みをいただきたいというふうに考えておりまして、各地域地域それぞれ困難な事情は抱えておるわけでございます。今、歴史的風土の問題が出ましたけれども、市街化区域が多く、あるいは飯米農家が多い、担い手に転作がしわ寄せをされる、あるいは飯米を確保したい等等、各地域地域それぞれ困難な状況を抱えておるわけでございますが、そうした困難な事情につきましては、やはり地域実情に精通をいたされた都道府県なり市町村がそれを勘案をして配分をするというのが私どもの転作行政実情でありますし、原則でございます。  もとより、先生のお言葉を返すわけではございませんが、減反という、米の生産を調整するという側面からだけ私どもは事態をとらえているわけではございませんで、水田農業、水田の有効な活用という観点からこの行政推進いたしておりまして、例えば転作、ほかの作物への転換が困難な湿田地域では主食以外のお米をつくって稲作をそのまま続ける、あるいは先ほど申し上げましたように景観を形成する作物を植えて地域としての荒廃を防ぐ、あるいは消費がふえればその分だけ転作目標面積を減らすといったようなことで、水田全体としてこれを維持し育てるという観点から対策を進めているわけでございます。  四十六年当時に比べて面積が多くなりました。三割にも及ぶような状況でございますので、なかなか大きな差をつけることは地域地域で難しいのかもしれませんが、その中でもそれぞれの県あるいは市町村がいろいろな工夫をいたしまして、傾斜配分といいますか、飯米農家にも御協力をいただく、中核農家にはできるだけ転作をさせない、市街化区域ではたくさんやっていただく、そういったようなことをいたしております。どうか明日香村におきましてもそういった多様な手法で対応をされ、円滑な推進を期待いたしたいというふうに考えております。
  93. 貴志八郎

    ○貴志委員 この転作問題については明日香村全体で水田が三百ヘクタール、その中で三割を仮にさじかげんをしたといたしましても百へクタールであります。この減反を明日香村で実施をして、明日香村で水田農業のために全体として恩恵が具体的にどれだけあるかどうかというふうな問題など、たくさんの問題点があります。また、総理府の文化を守るという立場と農水省の農業という立場との相違があるだろうと思います。そういった問題についてきょうのところはひとつ双方において、特に私は総理府の立場に立って、日本が文化国家だという限りはそれに力点を置いた整合性のある施策が必要でないかということだけは、これは意見として申し上げておきたいと思います。  続いて次の問題に入ります。  それは、ここ十年の間、社会経済情勢の変化が非常な勢いで進んでおります。私は半月ほど前に現地へ参りまして、現場の村の当局者の若い担当者の方といろいろと話し合いをいたしました。彼らは目を輝かせて明日香村の未来について話をしてくれました。しかし同時に、政府や地方団体が行っておる事業に対して公共用地の提供を拒む、そういう住民感情のしこりがかなり根強い、このようなことを苦渋に満ちた表情で話をしてくれました。果たせるかな、その後でお会いをいたしました現地の住民の方々は、まことにかたい表情で不満をぶつけられました。もう今さら何を言ってもそれは届かない、もう結構だなどとおっしゃる投げやり的な言葉の中に、私は数々の問題があったように思います。  この人たちのおかげで保存されてきた明日香村の文化、そしてこの方々の協力で後世に伝える文化を保存し守っていかなければならないのに、肝心の基本となるべきこの地域住民の人々の不満が現場で渦巻いているというのは一体どういうことか、これからの法期限延長だけで果たしてこれらの方々の満足を得ることができるのだろうか。私は、この時代の変遷にこたえる対応が必要でありますし、何よりもせっかくつくった法を、法の趣旨を生かす、そういう心が必要だと思います。  この法律施行以来十ヵ年の間に社会経済情勢は大きく変わっております。住民の意識も大変変革をしておるはずであります。そういう観点から見ますと、整備計画、これは内閣総理大臣の承認を受けたものでありますけれども、これの達成率はわずかに六〇%、補助金のかさ上げ実績につきましても十カ年でわずかに八千万円弱というふうな数字であります。この法律のきらきら光った趣旨は、この時代の変遷に対応して生かされておるとは思えない状態であります。法が制定され、計画決定され、レールが敷かれたら後はただ走るだけ、途中で停車も協議も見直しもおやりになったのかどうか、また地元の住民のそういった不満についてくみ上げていく、理解を示す、そういうふうな営みがなされたのかどうか、ぜひお伺いをいたしたいと思います。
  94. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 ただいまの御質問の中に、明日香整備計画進捗状態が非常に悪い、これに関連いたしまして地域住民からの意向をどの程度吸い上げておるのか、こういうようなお尋ねかと思うわけでございます。  この三月三十一日で切れます、いわば第一次の明日香整備計画進捗率は、確かに先生指摘のとおり決してはかばかしいものではございません。これにはいろいろ事情がございまして、整備計画が発足いたしました昭和五十五年、この年はいわゆる財政再建元年と言われた時期でございまして、国・地方を通じまして財政環境が非常に悪かった時期でございました。したがいまして、公共事業等におきましてもゼロシーリングあるいはマイナスシーリングということで、全体の公共投資の規模が縮小した時期であったわけでございます。かてて加えまして、昭和五十七年、八年になりますと第二次オイルショックの影響を受けまして税収が大変落ち込んだ時期がございました。さらにまた、明日香村につきましての特殊な事情でございますけれども昭和五十七年には大和川水系におきまして大災害が起きました。これは百年に一遍ぐらいあるかないかの大災害ということでございまして、現在住んでおります村民はいまだかつて経験のないという大変大きな災害がありましたために、その災害復旧に県あるいは村の財政力が注ぎ込まれた、こういう事情も多々ありまして、こういう要件が重なりまして予定されておりました整備計画進捗状態が悪かった、こういう事情でございます。  そこで、その低かった進捗状況を踏まえて、村民の意向をどのように取り込んだのかということでございますが、とりもなおさずおくれております整備計画を、とにかく取り返して早く達成させたいということで計画を進めておるわけでございます。  なお、形式的なお話でございますけれども、村民の意向ということにつきましては歴史的風土審議会、歴風審の中に奈良県知事もメンバーとして入ってございますし、あるいは専門委員の中には明日香村の村長もメンバーとして加入してございますので、その場を通じまして機会あるごとに地元の意向はなるべく取り入れるようにして私どもは執行しておるという実情でございます。
  95. 貴志八郎

    ○貴志委員 地元の意向を知事や村長を通じて聞いておるということでございますけれども、先ほど申し上げた県と村との減反問題についての覚書、そういったものが住民の意向として最後には政府の方には届いてこないというふうな実例があるわけであります。もう少し地元との風通しをよくするために今後の注意を払っていただきたいと注文をつけておきたいと思います。  さて、本題の問題に入ってまいります。  国土庁が発表いたしました地価公示価格によりますと、奈良県の宅地暴騰は全国で第三位、変動率は県としては史上最高の五〇%を超えております。事ほどさように、大阪へ三十分の至近距離にあるこの明日香周辺への開発の波は容赦なく押し寄せ、地価の格差は拡大するばかりであります。十年前のこの建設委員会の議事録によりますと、格差は四対一、周辺の町、すなわち橿原市や五條市、そういうところから比べると大体四対一であったということであります。その当時でもこれが問題になりました。各委員から、規制ゆえに生じたこの格差をどうするかという追及がございました。その当時の小渕長官は、建築物や開発申請を不許可にするときは申請地を買収し、その金で別な代替地を確保してもらう、このように規制対策をお答えになっております。また、国民全体の歴史的財産を守るという盛り上がりもあって、財政負担に十分たえ得るときが来ている、政府として財政当局や所管庁とも相談をしていきたいと、しっかり答弁をされておるのであります。  ここでお伺いをいたしますが、現在の地価格差はお隣の橿原市や五條市における明日香村と同じような条件の土地で明日香村の買い上げ価格の最低十倍から二十倍以上の地価があるということであります。これを見ると、相対的に明日香村の土地は価格が下がっておるということになります。この明日香村の土地所有者への補償は一体お考えになったことがあるのか。要するに土地買い上げについて、その実績を見る限り近隣自治体の実勢価格を参考にされたという形跡はどうもないように思うのでありますけれども、どうか。特に昭和六十年以降、奈良県における土地狂乱に対応した鑑定価格を出さず、住民側の受忍の限度はそのために爆発寸前にまできています。  長官初め関係省庁は、過去の土地買い上げあるいは価格差の問題についての取り扱いを、今日までの取り扱いはこれでよかったとお思いになるのか。そしてこの十年間にこの土地の狂乱に対して、先ほども農業問題で言いましたが、一回でも立ちどまってこうした問題について関係省庁が集まってどうするかということを協議なさったことがあるのですか。そのことをぜひ聞かせてください。
  96. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 明日香村におきまする土地の買い入れの考え方について御説明をさせていただきます。  明日香村におきましては、明日香法に基づき全村を第一種歴史的風土保存地区または第二種歴史的風土保存地区に指定をいたしまして、歴史的風土の保存のために一定の行為規制を行っているところでございまして、行為の許可が得られない場合は古都保存法第十一条の規定により土地所有者の申し出に基づきまして県において、この場合は奈良県でございますが、時価による買い入れを行ってきているところでございます。  土地の買い入れ価額でございますが、複数の不動産鑑定士による近傍類地の価額の鑑定評価によっているという方法を採用しておりまして、基本的にはこの考え方で今後もやっていきたいと考えているところでございます。
  97. 貴志八郎

    ○貴志委員 ただいまのお答えでは、時価による買い入れを複数の鑑定士の鑑定結果によってやっているということでございます。買い入れ実績の表をちょうだいいたしましたが、それによりますと平米当たり大体二万五千円弱ぐらいというところじゃないでしょうか。坪当たり七万円から十万円以下であります。しかし同じ道路沿いの隣の市、まるっきり条件は変わらないのです。そこで百万も二百万も土地の価格がしている。古都保存法第九条ですか、ここに近傍の地価を参考とするということになっておりますが、複数の土地鑑定士が近傍の地価とは一体どこの地価をおとりになったのか。恐らく規制をかけられて全然売買をされていない、売買をされたのは国が買い上げたときだけ、その地価を参考にして、もうすぐそこまで開発が進んでおる町の地価、こんなものは全然考慮に入れていないとすれば、地元の人が怒るのは無理ないじゃないですか。  国土庁長官はけさほどの討議の中で、本当に土地のことを考えようと思えば地価を凍結するか規制をかけるか、しかしそれは大変なことだから我我はなかなかできないんだというふうな意味のお答えがありました。明日香村はこの規制をかけられているわけなのです。そしてお隣の町には規制がないから、同じ国道のもうすぐそこのところで五十万も百万も、甚だしさは二百万もする、こちらでは六、七万だ、こういうふうになっていることについて一体どのように見ておるのか。ただいまのお答えでは私はどうも納得がいきかねるわけであります。
  98. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 近傍類地でどこを考えているのかという御質問でございますが、具体的に申しますと橿原市内の調整区域の地価、それから同じく隣接しております高取町の調整区域の地価を参考にして近傍類地ということにいたしております。調整区域における地価は、これまで奈良県が明日香村の調整区域であるところの買い入れをしたということと比較して説明のつく範囲であるというふうに私どもは理解をいたしております。
  99. 貴志八郎

    ○貴志委員 いずれにいたしましても、明日香村の方々は自分の子供が結婚するからといって自分の土地にそのために新宅を建ててやることもできないほどの規制を受けております。そういう規制のおかげで歴史的風土が保存をされておる、こういうことに相なります。そうなってまいりますと、歴史的風土を保存するという価値はどうなるか、その文化は対する価値を土地の買い上げ等において、土地の鑑定等の中において勘定されないのだろうか。文化の価値は全然鑑定の基礎に入らないのだろうか。その点についてもう一遍お伺いをいたします。
  100. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 お答えいたします。  古都保存法における買い入れ価額の算定は「近傍類地の取引価額等を考慮して算定した相当な価額とする。」ということになっております。
  101. 貴志八郎

    ○貴志委員 古都保存法にいたしましても明日香村の法律にいたしましても、要するに歴史的な文化を大切にしようという発想から生まれた法律であります。そういう意味からいいますと、ここに住んで千数百年の間農業をやっていてくれたからこそ、この明日香村との境界線で明確にわかるような良好な保存状態が続いておるわけです。この人たちのおかげです。この人たちのおかげで守り得たこの風土をさらに延長して残していこうというのでありますから、ここで当然また協力してもらわなければならぬ。その協力は、過去の協力、現在の協力、さらに未来永劫にわたる。そういう協力に対して、まるで何の関係もない地域を、類地であれば、近傍であれば、そこを参考にすればそれでいいのだという、そういう物の考え方が私には納得ができないわけです。しかも、この六十年以後の土地狂乱の中で、その近傍類地といえども地価がかなり上がっておるはずであります。奈良県全体で去年とことしで五〇%上がっておるわけです。そういう状態にもかかわらず、買い入れ価格はそれほどの変動が見られないというのは一体なぜだろうか。さまざまな疑問があります。  これから法律が改正されて十年延長されます。この法律運営の中で、従来の鑑定によって地元の住民の憤激を買うような、また、地元の皆さん方が、せっかく皆さん方が計画を建てて実行しようとするその施設の土地を、提供を拒む、こんな価格では売れない、そういう実態があることをぜひ踏まえて、これからの実施当たりましては現実に即応して、また、この今日までの歴史と未来にわたるこれからの保存運動というものを考え合わせて、文化的価値、今日までの協力度、そういうふうなものはぜひ積算の中に加えておかなければならぬ、強い意見を申し上げておいて、次の問題に移りたいと思います。  次は、官民協力の問題について少し申し上げておきたいと思います。歴史的風土保存のために参考になると思いますので、和歌山県におけるナショナルトラストの運動に触れながら意見を申し上げ、質問をいたしたいと思います。  天神崎は紀伊水道に面し、黒潮の影響を受け、海岸の海食台となった岩礁はやわらかく平らで、そこには海の生物五百種も生息し、南の海のサンゴ礁にも匹敵すると言われております。このように天神崎は、その位置や地形さらに岩質までが天然の恵みとなってすぐれた景観となり、自然生物の宝庫となったわけでありますが、その背後にある森がこの自然のバランスにまたとない役割を果たしておるのであります。潮風に強い樹木が海岸に近いところに自然生えし、その奥には通常海辺に育たないという雑木が生い茂っております。この森によってろ過された雨水がプランクトンを育てる栄養豊かな清水となってこの天神崎に注がれます。このように、大自然の摂理の中で天然の生物学教室としての天神崎が息づいておるわけです。  この天神崎の背後地の森が自然公園として保護地区に指定されているのは当然でありますが、この規制が行われる前に取引があったということで不動産業者の別荘などの開発が行われようといたしました。そのとき立ち上がったのは地元の人たちであります。そして、天神崎を守れという声は瞬く間に全国に広がり、その拠金によって開発寸前、時価によってその予定地を買い戻すことに成功いたしました。時に昭和五十一年九月のことであります。かくて天神崎は日本最初のナショナルトラスト運動として脚光を浴びることとなり、六十一年には自然環境保全法人の認可を受けることになります。しかしながら、買収できたのは全体の二割でありまして、残り八割は早急に買い取らなければならない。事実、開発目的とする立木伐採事件が先日も起こっておるわけであります。  ここで、本題の明日香保存の問題とこの天神崎を守る住民運動とをダブらせて少し考察をしてみたいと思います。  第一番目は、天神崎の自然が破壊されるとの地元民の悲痛な呼びかけが日本全土に広がり、国民世論の結集として資金が集まり、業者との合意を得て買い戻すことに成功したわけです。ここでは地元住民が主体で全国の人々がそれを支えた、底辺からの盛り上がりが主体でありました。  これに対して明日香村の場合は、もちろん財団の設立や国民世論の盛り上がりがある中で古都保存法ができ、またこの明日香の法律が生まれましたが、先ほど来、減反の問題、農業の問題あるいは地価の問題、土地の買い取りの問題など、住民との連携の面について幾つかの実例を申し上げましたが、この地元住民の協力、盛り上がりといった点についてはどうも十分に機能していないということが大変な問題であると私は思います。どちらかといえばこの明日香村の場合は官制の保護が先行していると受け取れるわけであります。  それから二番目には、天神崎につきましてまたもや第二の危機が訪れております。先ほど申したように、立木の伐採という形で開発がまたもや行われようとしております。そういうことに対して、規制の面について、もちろんこういう住民運動にこたえる強い姿勢の規制が必要でありますし、資金の面からいいましても行政側の対応がいまいちであったように私は思うわけです。せめて資金調達のために個人や企業への呼びかけに行政協力するなり、行政自身が出資の額を増額するなど、民間の運動と連動する道は幾らもあると思います。  私がここで言いたいのは、文化の保存も自然の保存も、物と対比する心の問題であります。その心を後世に引き継ぐためにほ、縦の糸すなわち行政と、横の糸すなわち民間や地元の運動とうまくかみ合わなければならないと思います。もちろんそのために金も要ります。イギリスのナショナルトラスト運動がすっかり国民に定着している姿や、イギリスが芸術家を支えるための予算だけでも三百五十八億という予算を組んでおります。我が国の現状はそういう点と対比いたしますと大変お寒いわけでありまして、到底文化国家日本と大声を出せない状態ではないでしょうか。  私は、この法律に血を通わせること、それは天神崎のナショナルトラスト運動に学ぶということもぜひ必要ではないか。申し上げたように、明日香の文化や天神崎の自然など、日本人全体の心の財産でありますから、ぜひとも地元の犠牲を最小限にとどめていくという行政側の配慮がなければ、本当の意味でのこれからの文化や自然の保存はあり得ない。明日香の歴史文化というものは、現状では過去と現在を一本の釣り糸で結んでいる程度にすぎないと思います。これをより合わせて大きなきずなにしていくためには、これから我々現在に住む者の大きな責務としての仕事があるだろうと思います。官民共同の運動が実るようにともにやっていかなければならぬと思います。  この件については、長官とさらに環境庁の方から御意見なりお答えを賜れば幸いでございます。
  102. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 明日香保存の問題につきましてどういうスタートから始まったかということを御参考に申し上げますと、これは先生御案内のとおり、昭和四十年代におきまして、古都であります鎌倉あるいは京都等におきまして宅地造成の開発が歴史的な風土を破壊するまでに迫ってきたということに対しまして、そういうことでは一たん壊されたこういう歴史的な環境というものは復元することはなかなか難しい、これは国家的な遺産であるという認識のもとに市民が立ち上がりまして、議員立法で古都保存法ができたという経緯があるわけでございます。別名市民立法とまで評価される方もいらっしゃるわけでございます。  そういう意味におきまして、先ほど来、和歌山の天神崎のお話もいろいろと傾聴しておったわけでございますが、やはり歴史的な景観、風土を保存するに当たりましては、役所の方が先行するばかりではなくて、地域住民なり国民的な理解のもとに進めることが非常に肝要ではないだろうかということを、反省を含めまして先生のお話を今承った次第でございます。
  103. 大木知明

    ○大木説明員 天神崎の運動でございますが、先生指摘のとおり住民を主体としたナショナルトラスト運動ということでやっておるということでございます。貴重な自然でございますからできるだけ保全されなければいけないと環境庁としても考えておりますが、その手法としては、住民が主体となって、主として買い取りの方法でもって貴重な自然を買い取り保全するという形でやっておるわけでございます。こういったナショナルトラスト運動は全国的にも方々で試みられておるわけでございます。こういうものにつきまして環境庁といたしましては、できるだけ住民の主体性は確保しながら行政として御援助できることをしなければいけないと考えてやっておるところでございます。  具体的には、天神崎につきましては税制上の特例措置が受けられる道が設けられまして、自然環境保全法人と称しておるわけでございますが、自然環境保全法人としての認定をしたわけでございます。これはナショナルトラスト運動として全国で第一号ということでございます。自然環境保全法人になると、税制上、特に寄附金の所得税、法人税の軽減、あるいは相続税財産に対する軽減措置、さらに不動産取得税あるいは固定資産税の軽減措置といった措置が受けられるわけでございますが、そういう形を通じまして、できるだけ天神崎の自然を大切にする会が活動しやすくなるように我々としても応援をしておるわけでございます。今後もナショナルトラストが健全に発展するように力を尽くしていきたいと考えております。
  104. 貴志八郎

    ○貴志委員 せっかく市民運動の中から生まれたこの明日香村の法律が、十年たった現在、風化の危険にさらされておると私はあえて警告を申し上げておきたいと思います。天神崎の運動にいたしましても、時が経過してまいりますとどうしても当初の生々しいまでの情熱が、よそにも同じような運動が起こってくる中でだんだん失われがちになるおそれがあるわけであります。我々は、常に初心に立ち返りながらこれらの問題を取り上げていかなければならぬ。天神崎にあっては、行政側における規制の強化、資金面における援助といったものをやってもらわなければなりませんし、明日香の問題につきましてはより以上に、住民の渦巻くような不満や住民の協力の意気込みが消えてくるような施策であっては断じてならぬと思います。  せっかくこれから十年法律を延長するわけでありますから、それぞれの問題について本当に住民の方を向いた、そしてそのことが文化の保存に大きく役立つという確信を持って取り組まれますよう心から切望いたしまして、私の質問を終わります。
  105. 中島衛

  106. 森本晃司

    森本委員 明日香立法がこのたび十年延長されるか否かというところでございますけれども、結論から申し上げまして、我が国の大事な文化遺産を守るためにも、また村民の生活向上のためにもぜひこの立法は十年延長していただきたい。中身の問題につきましてはこれからいろいろと議論をさせていただくわけでございますけれども、まずそのことをぜひお願いしながら、同時に住民の側に立った問題点をこれからよく検討していただいて、そしてこの大事な文化遺産が守れるようにしていきたいものだと思うところでございます。  御承知のように明日香村は日本のふるさとでございまして、我が国の律令国家が形成されたその最初の中心地域でございます。それだけに、文化遺産そして自然がそのまま残っているということ、これは同時に国民の誇りでもあるわけであります。私は、ここから十分のところに住まいをしておりまして、小さいときは遠足で行ったり、また自分の子供ができてからもたびたび、車でわずか十分ですから、この明日香村に行きまして、甘樫丘に登ったり、あるいは川原寺の周りを散策したり、私自身も大変心和む思いでございますし、明日香を訪れた人たちも心安らぐ思いをされているに違いない。そういうすぐ隣の住民がきょうは質問に立たせていただくわけでございまして、隣というよりもむしろ明日香の住民と考えていただいた方がいいのではないか、そのように思います。そういった点できょうの私の質問をお聞き取りいただきたいと思います。  この四十一年に古都法がつくられまして村民に大きな規制がかかったわけであります。また、村民の皆さんの大きな声もございまして、昭和五十五年に、これは必ずしもだれもがこの法律を喜んでつくったというわけでもありませんが、この明日香特別措置法制定された。これは国や県、そしてまた村政、行政の方々の多大な努力もあったかと思うのですが、まず第一番に、今もこうして文化財を残そうという意欲が残っていることに、あるいはそれが高まっていることにつきましては、何といっても村民の皆さんの理解と協力がなければ、こういった法律をつくったところで不満が高まっていくばかりであると私は思います。  しかし、この法律がつくられた昭和五十五年当時から十年たちまして、社会の経済変動あるいは社会環境等々が著しく今変わってきております。特に、その明日香の周りの私の住んでいる橿原市等々も開発が進みまして大変な発展をしているわけで、ひとり明日香村だけが取り残されているというふうな状況下を感ずるところもあります。  また、明日香村の大事な基幹産業であります農業を取り巻く環境の変化もこの十年間で大きくあったわけでございます。今、この明日香村の歴史的風土を保存するその一つの大きな岐路に立っているのではないだろうか。ちょうど十年目のこの法律をさらに十年間延長するときに、ただ単に従来の延長ではなしに、岐路に立っているという点を見詰めながらやっていかなければならないと思っております。  御承知のように、明日香村では第二次明日香村総合計画、調和と活力のあるヒューマンビレッジ、この十年から続いてさらにこれから明日香村をどうやっていこうか、こういった計画をまとめられ、これはもう官房長官もよく御承知のことかと思います。  こういった状況考えまして、この十年間の成果はいかなるものであったのか、また今、これから十年間継続し延長しようとしているときに、官房長官はこの法律についてあるいは明日香村についてどのような考え方をお持ちなのか、最初にお尋ねを申し上げたいと思います。
  107. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 明日香村は、我が国の律令国家体制が初めて形成された時代における政治及び文化の中心的な地域であり、村内には全域にわたって宮跡、寺跡、古墳等の重要な歴史的文化的遺産が数多く存在し、他に類例を見ない極めて貴重な歴史的風土が形成されております。  法制定後約十年が経過し、この間に明日香村を取り巻く社会経済情勢は著しく変化してきたものの、法制定により所要措置が講ぜられてきたことに加えて、住民の深い理解と協力によって歴史的風土の保存に関してはおおむね所期の目的は達成されてきたものと考えております。  また、明日香村の生活環境等の整備に関しても、明日香村整備計画に基づき各種の事業実施され、計画進捗にはおくれがあるものの、明日香村整備基金による事業と相まって生活環境等の整備は進んでいるものと考えております。  国民的文化遺産である明日香村における貴重な歴史的風土を良好に保持し後世に伝えることは、国家的見地から見て極めて重要な意義を有する課題であると思います。明日香村という日本人にとっての心のふるさととも言うべき地域歴史的風土を守ることを通じて国民の間に心の豊かさをはぐくむことは、今後我が国が文化国家日本として世界に貢献していく上でますます大きな意義を有するものと考えております。  このような観点から、今後ともこれまで以上に住民の理解と協力を求め、住民生活との調和を図りながら明日香村における歴史的風土の保存を推進していく所存でございます。
  108. 森本晃司

    森本委員 今官房長官から、明日香村保存の重要性、さらにまた村民の皆さんの協力を得ていかなければならないという趣旨の御答弁をいただいたわけでございますが、十年たってこの計画を振り返ってみますと、進捗率は六三・三%であったということであります。特におくれている、五〇%を大きく切っているものを挙げますと、河川三七・四%、都市公園一七・〇%、体育施設二五・一%、林業三一・九%、それから福祉施設あるいは保健衛生施設等々は、私設の保育園ができたりといったことでいまだ実施はされていないわけでありますけれども、福祉施設、保育園は充足しているということで計画をしていないわけでございますが、こういった一連の六三・三%の流れの中で特に低い部分について、なぜおくれたのか、またどのように考えておられるかということをお尋ね申し上げたいと思います。
  109. 近藤徹

    ○近藤政府委員 明日香村整備計画に係る河川としましては飛鳥川等六河川を計上しておりまして、予算制約の中で、まず下流の流下能力に配慮しつつ整備推進しているところでございます。これまでに歴史的文化遺産の多い場所や市街地の被害軽減を第一に整備することを旨として進めてまいりまして、飛鳥川と平田川の整備は既に完了したところでございます。現在、桧前川に主力を置いて整備推進中でございます。他の中の川、百貫川、戒外川の三河川につきましては、明日香村整備計画に係る区間より下流に流下能力の不足している区間がございまして、これらの区間の合計が大体四・一キロになるわけでございますが、その下流は約五キロあるわけでございます。そこを先行的に整備することがまず重要でございまして努力してまいったところでございます。  その下流の区間でございますが、用地取得あるいは取水ぜきの改築等関係者との調整を要する制約事項がございまして、関係者の説得に努め、これらを逐次解決しつつこれまでその改修を推進してきたところでございます。  ちなみに、この下流区間の改修に当たりましては、昭和五十五年度から昭和六十三年度の間に要した事業費は、明日香村の整備区間の事業費約四億円に対しまして約十七億円と、かなり下流の部分にこの計画外ではございますが充当してきたところでございます。今後もこれらの区間の整備に全力を尽くしまして極力早期に明日香村整備計画に係る区間の整備推進してまいりたいと考えております。
  110. 森本晃司

    森本委員 上流からあるいは下流からいろいろと始めていくわけでございますが、いよいよこれから明日香村の中へ入ってまいりますので、さらに力を入れてやっていただきたい。進捗率三七・四%、雨の時期もあったとは申せ、これについてはさらなる尽力をしてもらいたいと思うところであります。  一つ一つ各省庁やっていますと私の持ち時間がございませんので、お尋ねをしたいわけでございますが、例えば体育施設二五・一%というのがあるわけでございます。これは総理府の方でもお答えいただきたいのですが、これについてはどう見ておられますか。
  111. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 今お尋ねの体育施設でございますが、これにつきましては、当初予定しておりました事業につきましてはまだ着手していないわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、本法案を成立させていただきますと直ちにいわゆる第二次の整備計画の作成に着手するわけでございますので、地域住民の意向を十分そんたくいたしまして、御要望があればこれを特定事業に入れることについて積極的に検討してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  112. 森本晃司

    森本委員 従来までは、この体育施設というのは学校教育に関する体育施設が対象だったわけですね。社会教育に関する体育施設は対象になっていなかったわけですが、その辺はいかがですか。
  113. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 委員指摘のとおりでございます。
  114. 森本晃司

    森本委員 そこで私は、次の計画、次十年延長してこういった問題をこれから解決していくについては、明日香村に係る財政上の特別措置、国庫補助の対象となる対象事業を今ここで十年たって見直しをしなければならないのではないだろうか、そうでないといつまでたってもこの従来の政令のままでいきますとこれは達成できない、そしてまた村民の要望と合わない状況になってくるのではないかと思うのです。例えば村が社会体育施設あるいは総合体育施設等々を建てる場合、従来はこれは国庫補助の学校施設ではありませんから対象とならなかった。したがって、これを社会体育施設等々にも該当するように政令を変えていかなければならないのではないかと思うのですが、その辺はいかがですか。
  115. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 ただいまの委員の御意見を拝聴いたしまして、今後の私どもの作業に参考にさせていただきたいと思うわけでございます。     〔委員長退席、桜井委員長代理着席〕
  116. 森本晃司

    森本委員 ほかに村営の例えば埋蔵文化センター等々を建てるという形になります。今、飛鳥資料館と国営の公園のところにそれぞれ埋蔵文化財が少しずつ保存されているわけですけれども、村営の埋蔵文化センター、こういったものを建てて村の人の働く場をつくる、また同時に、そこへ観光客がその地域中心に集まってくる、そして村も潤ってくる、さらにまた村自体から歴史を多くの皆さんに知ってもらうことができる。こういった計画。あるいは、いよいよこれから明日香村も高齢化社会に入っていきます。現在六十五歳以上の人が六十年度で一五%おられるわけでございますけれども、これからだんだんとそういった方々がふえてくる。従来の事業対象であれば福祉センター等々はその対象にならなかったように思うわけです。こういった福祉センター等々も対象にしていくべく政令の変更、これは十分に村とも話し合いまして今見直しをしなければならないと思います。政令を前向きに見直されようとしているのかどうか。  ただいま私が申し上げました埋蔵文化センターあるいは福祉施設等々は、そういった政令の見直しの対象考えられるのかどうか、その辺を御答弁願いたいと思います。
  117. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 御案内のとおり、明日香村における歴史的な風土を良好な状態で保存する上におきましては、住民の積極的な理解と協力を必要とすることは論をまつまでもないわけでございます。村の生活環境等の整備推進していく必要といたしましては、今後は社会情勢の変動等に対応いたしまして新しい住民のニーズを取り入れまして、必要があれば特定事業につきましては周辺市町村との均衡を考慮しながら関係省庁と十分協議して検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  118. 森本晃司

    森本委員 政令の変更については、今申し上げましたのは私の考え方の一つの例でございますけれども、これは実際村人の中からも起きている声でございますので、十分に村の人々の意見を聞きながら政令変更を速やかにやっていただきたいとお願いするところでございます。  次に、明日香村の農業についてでございますけれども、明日香村の産業の中心は何といっても農業であります。現実に農業の実態を見ますと、農家戸数は八百二十三で四八%を占めておりますし、農地面積は村域の二一・三%であります。しかし今、昭和五十年度と六十年度とを比較いたしますと、農地では一二・八%、農家戸数に関しては一〇%の減少を示しています。さらに、農家戸数のうち専業農家、第一種兼業農家の減少が著しく、それぞれ四一・五%、四二・四%になっています。  また、最近のアンケート調査によりますと、これは総理府も手元にお持ちかと思いますが、延長するについて村民一千人に聞かれた調査によりますと、現状のままの農業を続けるという人は四五・八%しかありません。わからないというのは二一・八%、規模を縮小する一八・四%、農業をやめるつもりが八・九%、こういう状況になっているわけです。  明日香の景観を守るためにも、あるいは明日香の基盤産業である農業を育成するためにも、これから農家に対する推進手当てを十分やっていかなければならないわけでありますけれども、この法律ができたときの衆参の附帯決議の中に、「国及び奈良県は、明日香村における歴史的風土の保存と民生の安定に果たす農業の重要な役割にかんがみ、明日香村の農業の振興、農村環境の整備のための施策について特段の配慮を払うこと。」という附帯決議がなされているわけです。  だから、明日香村の農業を守ること自体が歴史的文化遺産が良好な状況で保存されていくわけでございますけれども、今この明日香村で何が起きているかというと、せっかくその景観を保存しようとしているのにもかかわりませず減反政策がとられているので、農家の人にとっては大変な問題になっているわけです。今、明日香村の耕地面積のうちどれほど減反政策で、それは何%ぐらいになりますか。
  119. 渡辺好明

    ○渡辺説明員 奈良県から明日香村に配分をされました転作等の目標面積は、後期対策、つまりこの四月からの対策でございますが、百二十一ヘクタールというふうに聞いております。潜在作付面積との関係でやや数字が前後するかもしれませんが、これはおおむね三五%ではなかろうかと推定いたしております。
  120. 森本晃司

    森本委員 総理府、明日香の景観をそのまま保存するということでこの法律ができたのです。百二十一ヘクタールというと、明日香の第一種地域に指定されている地域が百二十五・六ヘクタールですか、それだけがすっぽりと、同じ面積が休耕田になろうとしているわけです。この話を農水省にいたしましても、農水省は、全国的減反政策であり、その減反政策は県で割り当てて、県とそして村とよく話し合ってくださいという答えしか恐らくこれは出てこないと思うので、私は先にそのことを申し上げておきますけれども全国の減反政策の中で最初から奈良県に割り当てる減反分の中からこの明日香分を引いて、そしてこの景観を保ち、この基幹農業を守っていこうという考え方は農林省にはあるのかないのか。これはノーというお答えになるかと思いますが、あえて聞きます。
  121. 渡辺好明

    ○渡辺説明員 転作等目標面積配分当たりましては、都道府県別の目標面積を国が全国農協中央会と共同でいたしております。十の客観的な要素を使い、さらに地域実情を勘案して配分するということになっておりますが、さらにそれより細かい範囲での、例えば市町村配分あるいは市町村の中での集落別配分につきましては、各地域実情に精通をされました都道府県及び都道府県農協中央会、市町村、さらに市町村内の農協、そういったところが地域実情に即して配分を行うということになっておりまして、私どもが個別の市町村事情全国段階での配分に当たって考慮することはなかなか困難ではないかというふうに考えております。
  122. 森本晃司

    森本委員 そういう答えが出ると最初に僕は言ったのですよ。県に割り当てて、そこから精通した人がいろいろとその地域状況を見てやるといっても、実際県に割り当てが来たならばそれをすることはできない。今の農水省の考え方は、全国的、一般的地域の割り当ての考え方で、僕はさほど間違ってはいないと思う。  しかし、ここは村全体に規制がかかっているのです。一部の文化財に規制がかかっているのではないのです。村全域がこの保存のために規制がかかり、その中で生活している人々なんです。農水省は関係ないとは言うかもわからんけれども、村民にとっては、国が決めた自分たちへの規制を強いられながら、農地を守るための田んぼを耕そうとしても、そうすることができないと言うのです。総理府、明日香村に減反政策があって、そして今何ぼか田んぼが、三五%が休耕になっているのです。一度明日香村へ来てくださいよ。稲穂がたなびく明日香村の景観を保存しようということでこの法律ができ、村民の皆さんに御理解ください、御協力くださいとネットをかけたわけですよ。そして今その田んぼの三五%が荒れ始めているのです。あの板蓋宮の辺に行っても、それでも明日香村の人たちは一生懸命草刈りをしたりはされているけれども、やはり周りの景色と合わない荒れた土地等々が最近至るところに見え始めているのです。私はしょっちゅう行きますけれども……。  農水省、この場合はどうしたらいいのですか。それは県が考えることという答弁はだめだよ。
  123. 渡辺好明

    ○渡辺説明員 二点御質問、御指摘があったかと思いますが、まず初めに県内で市町村間にどういった配慮なり傾斜をするかという問題でございますが、これは各地域でそれぞれ実情に精通いたしました都道府県なりがそうした配慮をいたしております。現に各地域で担い手について、あるいは農用地の流動化をした場合については転作を軽減する、あるいは……(森本委員委員長、僕の持ち時間は四十分しかないから、そんな答弁を繰り返されたら時間がもったいない」と呼ぶ)  それではもう一点、ただいま休耕の状態農地が荒廃をしておるという御指摘がございましたが、明日香村の転作の現在の実情は百二十ヘクタール程度の転作でございますけれども、そのうち実際には大豆、野菜等で六十五ヘクタールが現に作物が作付をされておりますし、水田預託という状態で三十四ヘクタールが良好な状態に保全をされているわけでございます。私どもといたしましては、休耕で荒れているという認識にはございません。
  124. 森本晃司

    森本委員 私が言っているのは、ただ単に田んぼが荒れているというだけじゃないのです。この地域を古都保存法でネットをかけられた農民の人たちが一生懸命それを守ろうとしている、その心も荒れ始めるということを私は言っているわけです。この議論は私が幾ら言っても、あなたは全国のあるいは奈良県に割り当てたという答えしかきょうは出されないと思うし、この辺の問題を総理府、よく考えてもらいたいと思うのです。仮に休耕にするのであれば、例えばその休耕田をレンゲ畑にした場合に補助金は出るかどうか。その辺、考えてください。
  125. 渡辺好明

    ○渡辺説明員 レンゲ畑にする場合の助成金の問題でございますが、地力増進作物としてすき込むケースと、それから景観を形成する作物として栽培をするケースと二つございますが、地力増進作物としてすき込むような場合であれば、十アール当たり最大限五万円までの助成金が出ることになっておりますし、景観を形成するという意味で作付をされました場合には、基本額一万四千円と地域営農加算一万円、あわせて十アール当たり二万四千円が後期対策における制度改正で助成が可能となっております。
  126. 森本晃司

    森本委員 具体的に、明日香の景観保全のためには僕もレンゲ畑あるいは菜の花が咲いているというのは非常にいいと思うのだけれども、レンゲ畑は今おっしゃった景観保全の対象になります
  127. 渡辺好明

    ○渡辺説明員 景観形成作物の対象として考えたいと思っております。
  128. 森本晃司

    森本委員 続きまして、お尋ねを申し上げます。  これも農家の皆さんの大変な、あるいは明日香村に住んでいる人々の大変な問題で、先ほど社会党の先生からもお尋ねがあったので重なることにはなりますが、ちょっと私は角度を変えて申し上げたいと思うのですが、古都保存買収事業費についてお尋ねを申し上げたいと思います。  これは周辺も非常に経済状況土地状況も変わってまいりました。そこで今、同時に村民の状況も変わってきまして買い上げ希望が相次いでおりますが、ここ数年、本来附帯決議では買い上げは速やかに行うということになっているわけです。迅速化を図るということになっているわけでございますけれども、余り速やかになっていないような声を聞くのですが、実情はどうですか。
  129. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 お答えいたします。  明日香村における土地の買い入れについては、県が土地所有者からの買い入れ申し出に基づきまして緊急性の高いものから早期買収に努めているところでございますが、県においては、現状の変更が厳しく規制されております第一種の歴史的風土保存地区内については、通常の生活を営む上で必要な行為が大部分許可されていることになっております第二種の歴史的風土保存地区よりも早期に行うように努めておりまして、現状を見ましても第一種につきましては特別な事情がない限り買い入れが進んでいるということでございます。もちろん第二種につきましても相当数の買い入れに努めているところでございます。  いずれにしましても、今後極力土地所有者の方方の経済的な負担が生じないように、速やかに土地の買い入れに応ずるように県を指導してまいりたいと考えているところでございます。     〔桜井委員長代理退席、委員長着席〕
  130. 森本晃司

    森本委員 今、申請があると第二種地域で買い上げができるのは期間はどれほどかかるかと聞いているのです。
  131. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 現在あるとどれぐらいかかるかということについては、状況によりまして一律には申し上げられませんが、たしか古いもので一番かかっておりますものは五十八年からのものがございます。六件ほどございますが、そのうち四件は今継続買収中のものでございます。最近、この六十一年、六十二年あたりで残っておりますものはそれぞれ一件程度でございます。元年度のものはまだ五件ぐらい残っておりますが、なかなか何年でというところまでは一律に申し上げることはできませんが、スムーズにいく場合には早く買えるけれども、借地権が絡んだりなんかしてなかなかうまくいかないというものも中にはございます。
  132. 森本晃司

    森本委員 六十二年度で未買収延べ件数三十八件あるというふうに私は報告を受けておるわけです。これはやはり相当、一、二年で買えるというものじゃなしに、最近は五、六年かかるんじゃないかなという話も聞くわけであります。今お答えいただきましたけれども、いずれにしても迅速な買い上げをしなければならない。  それで、あと申し上げておきたいのですけれども、これは全体に通じることですけれども、この明日香立法の場合に御答弁いただくのは、すぐに県に指導を申し上げます、あるいは県が割り当てますとか、そういうことじゃなしに、この法律をつくった国がもっとまじめに考えて取り組んでいかないと、何もかもすべてを地方行政課題にして、おくれている理由もそういうことにしてしまうというのは、それは私はよくないと思う。  これは要するに何か不足しているかというと、事業費をふやせばこの問題は解決するのが大半なんでしょう。どうなんですか、事業費の予算の枠をふやすとか。
  133. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 明日香法におきまして、買い入れの主体は先生御存じだと思いますが奈良県でございまして、県が買い入れたものについて私どもがお手伝いするという仕組みになっているところでございます。
  134. 森本晃司

    森本委員 だから、そういった状況をただ単に指導するんじゃなしに、事業費の増額について一生懸命頑張ろうとか、そういう形のものでないと、いつまでも県が県がとか、そういうことではなしに、もっとしっかりとその県民の村民の要望にこたえてもらいたいのです。なぜかというと、今幾らくらいで買い上げているのですか。
  135. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 お答えいたします。  もちろん一律ではないことは当然でございますが、昭和六十三年度の買い入れ価格は一平米当たり一万四千八百円から二万九千百円の範囲というふうに報告を聞いております。
  136. 森本晃司

    森本委員 今のは、それは恐らく第二種地域ではないか。第一種はどれくらいの価格で買い上げましたか。
  137. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 ただいまの数字は、私申し落としましたが第一種でございます。
  138. 森本晃司

    森本委員 今のは第一種ですか。第一種が一万幾らですか、平米当たり
  139. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 一万四千八百円から二万九千百円、六十三年度
  140. 森本晃司

    森本委員 ということは、わかりやすく坪にするとどれほどになるのですか。
  141. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 三・三を掛けて、まあ坪九万円。七、八、九万というところでございましょう。
  142. 森本晃司

    森本委員 はい、結構です。  そこから十分ほど行った橿原市、私の住んでいるところですが、こことの値段の差が大変なんです。私は買い上げをスムーズにやれと申し上げる。あるいは後で申し上げたいんですけれども、買い上げ価格を、先ほどもお話があったけれども、もっともっと村民の協力度というものを検討し加味してやらないと、これは余りにも、ただ単なる見方、平たんな見方だけで計算したりあるいはその時期を延ばしてきたのでは、僕は話にならないと思う。  なぜかというと、あそこの村に住んでいる人たちが、例えば自分の長男が家の跡を継ぐ、次男坊が分家するために自分の田んぼのところに家を建てようと思っても、規制がかかっているから自分の土地でありながら新たに家を建てることができないんですよ。それでも協力して辛抱している。そして息子の分家のためにと思って田んぼを仮に、計算をわかりやすく一反売ったところで一千五百万円か二千万円です。そこまでもいかないかな。それをわずかその明日香村から離れた十分のところでその土地を今度は買おうと思えば、今坪百万しているのはいっぱいあるんですわ、橿原市。その落差の大きさ。こういった人たちが一生懸命、その地域の人たちが守ろうとしているんですから、それに対して国が一生懸命こたえていこうとする姿勢がなければなりません。何でも全国一律の方法で、これはこうこう決まってますから、あるいはそれは県がやりますものですからと、そんなことでは本当に守ろうとしている明日香の人たちの心まですさんでしまうことになってしまうんではないか。  今この買い上げの例を申し上げました。時間が余りありませんので、いろいろと申し上げたいわけでございますけれども、そのほかにいろいろとございます。  明日香村整備基金の目減りが、ちょうど国債がこれから切りかえになります。この基金が国債を買ったときは八・五%の利率であった。それで最近買うとそういう高金利ではない。したがって、せっかくの明日香村整備基金もこれから目減りしていくに違いない。この目減りは一年間でどれほどこれから減っていくと考えていかれるんでしょう。
  143. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 ただいま基金の目減りの問題についての御質問でございますが、御案内のとおり昨年三回にわたりまして公定歩合も引き上げられました。ことしに入りましても一回公定歩合が引き上げられまして、最近の金利情勢といたしましてはやや上昇傾向にあるんじゃないかという認識は一方にはございます。しかし、今先生が御指摘ございましたように、明日香整備基金が持っております債券の切りかえが七月になるわけでございますが、そのときの金利情勢がどうなのかということについての予想は大変難しいわけでございます。  私ども、村当局が管理しておる基金でございますので、その管理しておる担当者から、大体どの程度目安をつけておるのかということを非公式には聞いておりますけれども、大体現在程度の果実はこれからここしばらくは期待できるのではないだろうかというようなことのお話も聞いてございますので、いましばらく状況の変化を見守りたい、かように考えておる次第でございます。
  144. 森本晃司

    森本委員 質問時間がなくなったようでございまして、申し上げたいことはたくさんあるわけでございますが、そういったことに対しても交付税で補っていくとかいろんな考え方を、優秀な役所の皆さんができないことばかりを一生懸命言うのではなくして、明日香村の村民のためにどうしていけばこういったことをできるのか、そして日本の大事な財産を守ろうと一生懸命努力しておられる人々に国としてどうこたえることができるのか、その辺をやっていかなければならないと思います。  買い上げの問題についても、怒っておるおとなしい村民の人々ですからもろには言われませんけれども、気持ちの中で、私たちも直接聞く声の中に、買い上げすら十分にできない、我々の協力度も考えないのであれば規制を外してくれ、買い上げができないくらいなら規制するなというくらいの御意見もあるわけです。そういったこともよく考えて、大事な大事な村民の心、それから日本の財産を守ってもらいたい。  アンケート調査をされた中に、「規制を感じる」と答えられた人が村民の七八・四%もいらっしゃるわけです。そういう規制を感じながら村民の人たちは一生懸命財産を守ろうとしている。しかし一方、この「計画を継続してほしい」という人の考え方は、パーセントで言うと五一・六%、残りの人は「希望しない」「わからない」「不明」という人たちが半数ほどあるのです。これはなぜそんな状況ができてくるかというと、この十年の節目のところで、よほど村民側のことを考えて見直しをやらないと、こういった計画も実ってこないことにもなるのではないだろうか。定住意識は極めて明日香の人は高いです。この村に住み続けたいという気持ちを持っておられます。そういった心をこれからもぜひ大事に大事にしながら、今度のこの延長の際の政令の見直しあるいは減反問題についても特段の配慮をしていく必要がある。農業問題についても特にその点をお願い申し上げたいと思っておるところでございます。  どうか、すばらしい明日香を残す意味からも、さらに重ねてお願いを官房長官に申し上げるわけでございますけれども、村民の心を大事にして、長くこの財産を後世の人のために残していきたいと思います。ぜひ官房長官も、このすばらしい明日香村へ一度来てください。我が家からすぐでございますので、私が運転して御案内をさせていただきます。官房長官の所感を一言お願いします。
  145. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 本当に明日香村へ訪ねたい気持ちかいたしました。皆さんの熱心な御意見を聞いておって、ますますその感を深くいたしました。  ちょっと駄弁でありますが、私も青年時代に、いよいよ戦局が急になってあすの命もどうかなと思いましてね、最後に奈良の古寺を、和辻哲郎さんの「古寺巡礼」を一冊持ちながら奈良近辺を回ったこともあります。日本の心が存在しておるということ、それを確認してという気持ちで私は行ったことがあります。明日香村もまた、そのまさに源流であろうと思うております。  今あなたのおっしゃったような御意見につきまして、私は具体的に今ここで御返事をするというわけにはまいりませんけれども、その日本の心のふるさとであるところの明日香村を守るために、そこにおられる村民の皆さんが大変な御苦労をしておられるという話も聞きまして、今承りましたいろいろな問題がございます。農業を守る問題もあれば、あるいはいろいろな事業、まだ進捗率がおくれておるというお話も聞きましたし、土地の買い上げの問題でも不公平があるというような話も聞きました。そういうような点につきましてもひとつ関係省庁にも一段と考えて勉強してもらうようにと私からもまたお願いをしたいと思っておりますが、ひとつ皆さんのお力でぜひこの法律も通させていただきまして、そしてその中でいろいろな問題の解決に一歩でも前進できるように努力をいたしたいと思っております。どうもありがとうございました。
  146. 森本晃司

    森本委員 ありがとうございました。
  147. 中島衛

    中島委員長 辻第一君。
  148. 辻第一

    ○辻(第)委員 大和は私ども日本民族の心のふるさとだと言われてまいりました。中でも明日香はその中心でもあります。私も奈良県出身の議員でございます。しばしば明日香を訪れるわけでありますけれども、奈良県全体が開発の波に洗われている中で、この明日香村だけが本当に画然とすばらしい歴史的な風土や文化遺産を残している、すばらしい姿に心洗われる、そのような思いを感じているわけでございます。  明日香特別立法が制定されてからもう十年たったわけでありますが、私も国会へ出させていただいてからちょうど十年がたちました。この明日香保存の十年間を地元の議員として見てまいったわけでありますが、この間、住民の皆さんの御協力、明日香村や奈良県当局の御努力、あるいはまた総理府や建設省など政府の御助力で、この明日香の歴史的風土が見事に守られておる、このことについて関係者の皆さんの御努力に心から頭が下がる思いがするわけであります。  さて、住民が日常の生活を営みつつその歴史的風土を保存するというのは大変困難で難しい課題であります。しかしこの十年間、明日香保存行政の実際やあるいは社会経済情勢の変化、住民の意識の変化などの中で新たな問題がいろいろ起こってきているわけでございます。法制定時の本委員会の質疑指摘された事項あるいはまた附帯決議に盛り込まれた内容のうち解決されないまま推移をしている問題、こういう問題もあるわけでございます。今ちょうど十年という節目を迎え、さらに今後の十年間の財政上の特別措置が講じられるこのときに当たって、幾つかの問題についてお尋ねをしたいと思います。  もう既に同僚の議員からお尋ねのあった同じようなことをお尋ねをすることもあるわけでありますが、一つは、住民の皆さん方の意識がやはり十年前とは一定変化をしてきておるということであります。もう先祖代々、すばらしい文化遺産や歴史的風土を明日香村の皆さん方は守ってこられた。そのことに大きな誇りを持ってこられた。そして十年前の法の制定のときには大変な理解、協力ということで、またあるいは期待というものもあってなにをされた。今もその誇りは持っておられるわけでありますけれども、しかし、この十年間の規制の中あるいは変化の中で、大変この規制に対する不自由感、先ほどもお話がありましたが、七八%でしたか、そのように感じておられるということがあるわけであります。そして、このような状況の中で、昨年夏の歴風審答申でも指摘をされましたように「きめ細かな配慮を積み重ねることが必要」、こういうふうにされておるわけであります。経済活動、産業活動の進行、日常生活に、こういう問題できめ細かな配慮を積み上げることが必要だということであろうと思うわけであります。明日香村民の方が本当に将来に展望が持てる、このようなことでない限り、本当にこのすばらしい明日香を守ることはできないのではないか、このように思うわけでございます。こういう問題について、総理府や建設省だけではなしに、国のすべての省庁でこのことを念頭に置いて行政を進めていただきたいとまずお願いをして、質問に入っていきたいと思います。  明日香が経済的に成り立っていく、その産業をどうするのか、これは一つの大きな基本であります。十年前の法制定のときにも、農業立村ということが強く強く言われております。そのとおりであります。ところが、先ほど来お話がありましたように、殊に第一種のところは米をつくる、それを転作すると申しましても、ビニールハウスなどは本当に形だけのビニールハウスしか認められない、本格的なハウス栽培なんかはできないわけですね。こういうところで農業立村と言いながら減反がずっとかかってきた。これも十年前は、正確に覚えぬのですがかなり低かったと思うのですが、毎年毎年ふえてまいりまして、昨今は三五%、ことしも三%ほどふえて三五%になろうか、こういうふうなお話を聞くわけであります。農業立村、その中心は米、ほかの転作ができない、このような状況の中では、この減反対象から除外すべきではないのか、このような声が本当に農家の方には強くございます。村当局もそのようなお声であります。  先ほど来答弁は聞いておるわけでありますが、農林省の答えは大体もうわかっておるのですが、どうでしょう、総理府として、国がこのような規制をする、そしてこのかけがえのない明日香を守っていく、しかもその景観として私はやはり稲作なんというのはすばらしいものだな、こういうふうにも思うのですね。こういう観点から国がこの減反の問題について規制の対象、減反の対象から除外をする、このようなことをはっきりやっていく、このような立場を農林省がぜひ進めていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  149. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 問題が非常に具体的な話でございますので今直ちに即答できる準備はないわけでございますが、休耕地あるいはまた奈良県が買い上げいたしました土地そのものがどのような形で歴史的な風土と調和を保っていくのかあるいは調和を持たしていくべきであろうかということにつきましては、これはなかなか言うはやすく具体的には大変難しい問題だろうと思うわけでございまして、歴風審の中でもこの辺につきましてはいろいろと議論があったわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても明日香村のこれからのなりわいといいましょうか、産業はやはり農業立村でございまして、歴風審の中には、さらにこれにプラスいたしまして質の高い観光というものを加えたものでひとつ検討していくという示唆が一応出ておりますので、この辺も踏まえまして、これから考えます明日香整備基本方針というものを検討する際に、先ほど来いろいろ御提案ございました内容を十分踏まえて検討の材料にさせていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  150. 辻第一

    ○辻(第)委員 時間がありませんので、農水省もよく私どもの意思を踏まえていただきたいということをお願いをして、次に移りたいと思います。  農業の基盤整備は基金の事業対象になっておるわけでありますが、商工業についてはこれは対象になっておらないわけであります。明日香村においてもこの十年の経過の歳月を経て若い後継者が意欲的に事業を展開したい、このような方もあるわけでありますが、規制との関係で将来展望を見出せず事業の本拠を近隣の市に移される、こういう例もあるわけであります。そういう状況の中で、明日香保存の第二期に当たり、商工業の基盤強化のために対象事業に入れるべきではないか、このように考えるのですが、いかがですか。
  151. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 ただいまのお尋ねは、明日香村にございます明日香整備基金の事業内容事業対象の中に商工業の基盤整備を入れたらどうだろうか、こういう御質問かと思うわけでございますが、御案内のとおり、ただいまの商工業の基盤整備のための事業といいましても具体的にはまだ定かではないわけでございます。  しかし、この基金の使途につきましては法律の第八条に三号に分かれて列記してございます。その一つに住民の生活の安定ということがございます。立法当初におきましては、主としてこれは農業立村ということでございましたので、農業を中心とした住民の生活の安定ということを念頭に置いておったことは確かでございます。しかし、法文上は農業というふうに限定しておりません。この法律の範囲内におきまして、基金の運用の事業内容がどういうものがこれから必要であるのかということにつきましては、十分地域の住民の意向を参酌いたしまして運用によろしきを得たいと考えておる次第でございます。
  152. 辻第一

    ○辻(第)委員 次に、明日香特別法による補助金の特例についてお尋ねをするわけですが、この十年間にこの特例による補助金のかさ上げ額は九千二百三十五万円と私どもは聞いておるわけです。この一番初年度に学校を建てる、これで大体六千万ほどということですね。あとは五十六年、六十一年、六十二年、平成元年、半分の年にこの特例が認められているということですね。ですから、もう六千万を取ってしまいますと、九千万といいますと九年であと三千万ほどですね。一年に直しますとごくわずかということになるわけです。当初大変期待されておったようでありますが、実態はこういうことになっておる。端的に言うなら期待外れということですね。  もともと年間の財政規模が十五億円程度の明日香村でありますから、基準財政需要額の十分の一を超える事業という事業はそうたくさんないわけであります。そこでこの補助事業基準財政需要額の十分の一を超える事業という、ここのところをもう少し緩和していただけないか、このような要望が強いわけであります。いかがでしょうか。
  153. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 委員の御質問の前段の部分でございますけれども昭和五十五年にスタートいたしましたこの十ヵ年計画におきましては、明日香村の標準財政規模というのはもっと伸びるだろうという想定のもとに実はつくられたわけでございます。ところが、先ほども説明申し上げましたように、昭和五十五年以降我が国の国あるいは地方を通じましての財政構造というのは非常に悪化いたしまして、思うようには財政規模が伸びなかったという事情がございます。それから昭和五十六年、七年ころになりますと、第二次オイルショックの影響を受けまして税収が非常に極端に落ち込んだというようなこともございます。かてて加えまして、百年に一遍あるかないかというような明日香村にとってみますと大変な不幸な五十七年の大災害があったということでございますので、事業量はあるわけでございますけれども、それをこなす能力といいましょうか、思うようにそれに追いついていけなかったという事情がありました。しかし、これからはこの点を、反省すべき点は反省あるいは修正すべき点は修正いたしまして、第二次の計画には順調にいくようにこれを持っていきたい、こういうように考えておる次第でございます。
  154. 辻第一

    ○辻(第)委員 次は整備基金の問題でありますが、今、国、県、村で三十一億でございますね。当初私ども十年前には、奈良県の超党派の国会議員団で五十億の基金をということを要請した、そのような記憶があるわけです。当時は財政事情が最も厳しい時代ではなかったかと思うわけでありますが、だんだん減りまして、国は二十四億でしたか、そういうことに落ちついたわけです。そういう状態の中で今日まで運用されてきたわけでありますが、その役割は非常に大きかったと思うのです。  これが、先ほど来お話がありましたように、このままでいきますと、運用しておられるその利息が目減りをいたしますね。減ってくるという状況の中で、今、大体二億四千万ぐらいの運用益だそうでありますが、このまま推移をしますと、六%ぐらいの利息になるということになりますと、将来一億九千百万円くらいになるのではないか、こういう心配もあるわけであります。この目減り対策を一体どうお考えなのか。私どもとしては、この基金をさらに増額をしてほしい、このようなお声、そのとおりだと思うのですが、その点についてお尋ねをいたします。
  155. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 基金の目減りというお話でございますが、先ほども申し上げましたように現在三十一億円の基金が造成されておるわけでございます。そのうちの国債等につきましてはちょうど借りかえの時期が迫っておるわけでございますが、その時点での金利水準ほどのようになるのかということにつきましては、なかなか予測が難しいわけでございます。ただ現在、先生が先ほど申し上げましたように、約二億四千方前後の果実でいろいろな事業実施しておるわけでございますが、そんなに支障なくこれからしばらくはこの果実をもって事業実施できるのではないだろうかという見通しを持っておりますので、極端なインフレ等があればまた別でございますけれども、ただいまのところは基金を増額してというようなことは考えていないという状況でございます。
  156. 辻第一

    ○辻(第)委員 これも先ほど来論議のあったところでありますが、古都法による買い上げでございます。一種は大体買い上げが終わった、大体終わったと言うとおかしいですね、滞りなく進んでいるというふうに聞いております。ところが二種のところになりますと、買い上げてほしいという希望がたくさんありますけれども、それが滞っておる。このままでは何年先になるのか、このような御心配もあろうかというふうな状況になっているわけでございます。  さて、先ほどからいろいろお話がありましたが、大変な規制を受けておられる。もう時間がありませんので、そういうもろもろのことについては詳しく申し上げることができませんけれども、大変な規制がある中で御協力をされ、頑張っておられるわけです。しかも、先祖代々の土地を手放すということは、そう簡単なことではお考えにならないようなことです。本当にせっぱ詰まってとかいろいろなことで代々の土地を手放されている、こういうことです。こういうときに、それが非常に先延ばしにされる、滞って前へ進まぬということは本当にゆゆしい問題だと思うわけでございます。  そういうことで、この滞りを一掃するために古都法の買い上げの財源をうんとふやしていただいて、まず二種の地域の買い上げの滞りを一掃する。ここで一掃していただければ、あとはまたスムーズに流れていくということになろうかと思うのですが、まずそのこと。  それから、これも先ほど来お話がありましたけれども、先ほど平米当たりでおっしゃっていたのを聞いていますと、平均して買い上げ大体七万円ですね、少し幅がありますけれども。ところが、明日香村の中の市街化地域、あれは何という駅だったか、飛鳥の駅前のところです。そこは百万円だという。明日香村の中でもそういう声が出ているところがあるということです。一種のところからそんなに遠くないですね。そういうところが七万円ということになりますと、これはなかなか納得していただけない中身だと思うのです。そういうことも含めて、この土地の買い上げについても、買い上げ価格について十分な御配慮をいただきたいと思うわけですが、いかがですか。
  157. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 お答えいたします。  明日香村におきます第二種の歴史的風土保存地区というのは、御案内のとおり、通常の生活を営む上で必要な行為は大部分が許可されている地域でございます。奈良県におきましては、現状の変更を厳しく規制されております第一種の方の歴史的風土保存地区内での買い取りということにつきまして、まずそこからやろうというようなことで、第二種が少しおくれていることは先生指摘のとおりでございます。第二種につきましても、私どもとしてはできるだけ速やかに買い取りを行うように県に対して指導を進めてまいりたいと思っております。  それから土地の価格でございますが、先ほど申し上げましたような数値は調整区域内の価格でございまして、これと市街地、市街化区域内についてある程度の価格の差があるのはやむを得ないと考えておるところでございます。
  158. 辻第一

    ○辻(第)委員 どうも今の答弁はもう一つすっきりしないわけでありますが、真剣に二種のところを買い上げる予算をふやしてくださいよ。それから価格の点についても十分な配慮をいただきたい。重ねて強く要望して、次に移ります。  また話が戻るのですが、整備計画進捗状態事業費ベースで六三・三%ということであります。もう先ほど聞きましたので、なぜそういうふうな状態になったのかということ、皆さんの御答弁は大体わかるわけでありますが、県の事業費ベースで五八・三%、県ももっと御努力をいただかなくてはなという思いもするわけでございます。村事業の方も、村の財政事情が大変な状況、殊に数年前の大水害というお話もありました。そういうことがなくても、もともと財政規模が非常に小そうございますので、村の財政が厳しいということは私もよくわかるわけでございます。それから、建物を建てるということになりますと土地が必要ですね。これのお話を聞いてみますと、建ぺい率の問題だとか高さの問題だとか、そういう点で大変な御苦労をいただいている。大体二階に抑えられていますね。三階、四階はだめだということ。二種のところで建ぺい率が大体三〇%というふうなお話ですね。ですから、三百平米のものを建てるということになりますと千平米の土地が要る。実際問題として、あそこは土地があるようでそんなにないですね。ですから、前へ物が進まないという難しい問題もあるわけです。この点については具体的にこうこうというわけにいきませんけれども、非常に難しい問題もあるわけであります。そういう点でも何かいい知恵はないものかな、こんなことも考えたりするわけでございます。  この問題は申し上げるだけで、これまでは大体十年計画で途中で見直したとかそういうものが具体的にはなかったですね。いろいろな機関で、県知事あるいは村長さんが云々というお話が先ほどありまして、いろいろ聞いていただいているということであります。しかし、これからは途中で見直しあるいは修正というものが必要ではないか。そのような計画策定。それと、本当に村の皆さん方の声をもっともっと十分聞いてやっていただきたい、このように思うのですが、この点いかがですか、お答えいただきたいと思います。
  159. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 実は、この法案が通過いたしますと直ちに第二次の明日香整備計画作成の作業に入るわけでございます。確かにおっしゃいますように、こういうたぐいの計画といたしましてスパンとして十年間というのは非常に長いわけでございまして、毎年とは言えませんけれども、やはり折り返し点におきましてはある程度の見直しが必要ではないだろうかというふうには考えてございますので、第二次計画を作成する場合におきましては当然その点を念頭に入れまして計画策定いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  160. 辻第一

    ○辻(第)委員 繰り返してお尋ねしたいのですが、補助金のかさ上げの問題です。それが大体一〇%と先ほど言いましたね。基準財政需要額の十分の一、それを二十分の一にでもできないか、こういう要望があるのですね。私もぜひそうしていただきたい。先ほどちょっとお尋ねしたのですが、その点については具体的に触れていただかなかったように思うのですが……。
  161. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 この補助率のかさ上げといいましょうか、国の負担をかさ上げすることにつきましては、計算そのものは自治省の方で所管しているわけでございます。自治省といたしましても類似の制度、首都圏あるいは中部圏、近畿圏の整備、あるいは新産・工特等におきますところの地方自治体に対します財政補助のかさ上げとのバランス等もございますので、その中でほどほどのところで結論が出るわけでございます。  今直ちにこの率を改正したりどうこうするということは、所管でもございませんので、承っておきたいということにしてとどめさせていただきたいと思うわけでございます。
  162. 辻第一

    ○辻(第)委員 最後に大臣にお伺いをいたします。  かけがえのない日本民族の文化遺産の宝庫であり、すぐれた歴史、風土、景観を誇る奈良県明日香村の歴史的風土の保存は、まさに国民的課題でございます。それは、繰り返して申しますが、明日香村の皆さん方の生活環境と産業基盤を充実することによってのみ可能だ、このように考えるわけでございます。改めて初心に立ち返って明日香保存に全力を尽くされるように期待をするわけでございます。ひとつ決意のほどをお伺いいたして、私の質問を終わりたいと思います。
  163. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 国民的な文化遺産であります明日香村における貴重な歴史的風土を良好に保存し後世に伝えることは、国家的見地から見て極めて重要な意義を有する課題であるということは申し上げるまでもありませんが、明日香という日本人にとっての心のふるさとともいうべき地域歴史的風土を守ることを通じて国民の間に心の豊かさをはぐくむことは、今後我が国が文化国家日本として世界に貢献していく上でますます大きな意義を持つものと考えております。  今後とも住民の理解と協力を深めていただきながら各種の事業を行うことによって、明日香村における歴史的風土の保存を図ってまいりたいと思うわけであります。特に住民の御協力を得るためにできるだけの努力をいたしたいと思っております。
  164. 中島衛

    中島委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  165. 中島衛

    中島委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境整備等に関する特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  166. 中島衛

    中島委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  167. 中島衛

    中島委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、桜井新君外四名より、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党及び民社党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。木間章君。
  168. 木間章

    ○木間委員 ただいま議題となりました明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境整備等に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党及び民社党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  案文は、お手元に配付してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程において委員各位におかれましては十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨説明にかえることといたします。     明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境整備等に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。  一 平成年度以降における明日香村整備計画策定に当たっては、明日香村と十分に協議するとともに明日香村に対し、住民の意見、要望の集約に努めるよう指導すること。  二 国は、明日香村整備基金については、将来著しい経済変動があった場合には適切な配慮を行うこと。  三 明日香村の農林業は、明日香村における歴史的風土の保存上重要な役割を担っていることにかんがみ、今後とも、その振興に努めること。  四 明日香村の埋蔵文化財等の発掘調査、遺跡範囲確認等を計画的に推進し、その保護、活用に努めること。 以上であります。  委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。(拍手)
  169. 中島衛

    中島委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  170. 中島衛

    中島委員長 起立総員。よって、桜井新君外四名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、内閣官房長官から発言を求められておりますので、これを許します。坂本内閣官房長官
  171. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境整備等に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきましては、本委員会において御熱心な御審議の上、ただいま全会一致をもって議決を賜り、深く感謝申し上げます。  審議中におきます委員各位の御意見につきましては、今後その趣旨を十分生かしてまいりますとともに、ただいま議決になりました附帯決議につきましても、その趣旨を十分に尊重して努力する所存であります。ありがとうございました。(拍手)     ─────────────
  172. 中島衛

    中島委員長 お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  173. 中島衛

    中島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  174. 中島衛

    中島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十九分散会