○大森政府委員 私どもが前回の当委員会におきましてるる御
説明いたしました諸点につき、非常に多くの
観点から疑問を呈されたわけでございます。
余りにもたくさんの指摘なものでございますから、すべてを網羅してお答えしない場合にはお許しいただきたいと思いますが、まず第一点のお尋ねでございます教会
施設の提供と申しますのは安保条約の効果的運用のために資するとはいえないんじゃないかというのが第一点だったと思いますが、この点につきましては、提供の
趣旨が具体的にどうであるかということは、必ずしも私どもは
あるいは第一次的な判断をする立場でないかもしれませんが、私どもが担当庁から聞いております事実
関係を前提といたしますと、これは
米軍人がその任務を適切に果たすためには家族生活を日本において適切に行うことが必要であるということを踏まえまして、その場合に我々日本人とは米人による米国における生活というものはかなり違う点があるようでございまして、やはり家族生活の中における教会とのかかわりというものが不可欠ではなかろうかという点を考えた次第でございます。
それから第二点の、教会というのは
宗教施設そのものではないかという御質問であったと思いますが、この点は前回も申し上げましたとおり、教会自体が
宗教施設であること、そのことを否定しているものではございません。その点に関する限りはまさにそのとおりであろうかと思います。ただ、私どもが申し上げておりますのは、合衆国軍隊に対してこの教会の建物を
建設して提供するのは、その提供の
趣旨、
目的がキリスト教の
援助、助成という
趣旨、
目的ではないのだ、合衆国軍隊の構成員の日常生活に必要不可欠とされる
施設に着目して提供するのであるということでございます。
それから第三点、効果においてもキリスト教を
援助、助長することは明らかではないかという御指摘でございますが、今までるる御
説明いたしておりますように、この教会
施設、これはキリスト教教団と申しますか、キリスト教の
宗教団体に対して提供しているものではない、あくまで合衆国軍隊に対して提供しているものであるという点に着目しているわけでございまして、その
観点からは特定の
宗教を
援助、助長するという効果はないのではないかというのが私どもの判断でございます。
次に、第四点は、今まで私どもが考え方の基本としております津地鎮祭判決というものと本件とは事案を異にするから参考にならないのではないかという御指摘であったかと思いますが、この点につきましては委員も御承知のとおり、
最高裁判所の大法廷判決を子細に読んでみますと、まず日本国憲法が採用しております政教分離原則とはいかなるものであるかということを一般的に説き起こしまして、要するにそこでは「国家が
宗教とのかかわり合いをもつことを全く許さないとするものではなく、
宗教とのかかわり合いをもたらす行為の
目的及び効果にかんがみ、そのかかわり合いが右の諸条件に照らし」、すなわち社会的、文化的諸条件でございますが、「諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとする」のが我が国憲法が採用している政教分離の原則であるということを一般的に説き起こしまして、そういう考え方のもとで、次に二十条三項により禁止される
宗教的
活動とは一般的にどういうものかということで一般論を展開いたしまして、その内容は今までるる御
説明したとおりでございますが、その上で問題判決の事案である津地鎮祭についてそれに当てはめるとどうなるかという具体的な判断を示しているわけでございまして、私ども、この津地鎮祭とこの
米軍に対する教会
施設の
建設、提供、これはあくまで、それは事案が異なることは承知の上でございますが、この判決において示されました基本的な考え方については援用することができ、また相当であるというふうに考えている次第でございます。
それから重要文化財に対する補助につきまして、前回それを例に挙げて、その考え方は本件にも共通したところがあるのではないかということを申し上げたわけでございますが、これはまさにその考え方を本件に援用するとやはり同様の結論が出るということでございまして、決してこの教会
施設が文化財そのものであるということを申し上げているわけではございません。
それから、憲法八十九条の
宗教上の組織または
団体の解釈につきまして、前回両説あるのだということを申し上げたわけでございますが、私どもの考え方は、狭い意味における
宗教上の組織または
団体に
米軍が当たらないからというだけの理由で憲法八十九条に抵触したいと申し上げたつもりではございません。この点につきましては、もう一つの説といたしまして、そういう組織または
団体には至らないけれども、そういう広く事業または
活動という点に着目して、それが
宗教的な色彩を有する場合にはなお憲法八十九条が想定している対象であるという説もあるわけでございまして、
最高裁判所の判決もございませんので、その広い説に立った場合でも本件については問題がないのではなかろうかというふうに、そこまでの判断をしているわけでございます。
お尋ねの件、網羅的に答えたつもりではございますが、大体私どもの考えているところは以上のとおりでございます。