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1990-06-05 第118回国会 衆議院 環境委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年六月五日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 戸塚 進也君    理事 佐藤謙一郎君 理事 戸井田三郎君    理事 持永 和見君 理事 斉藤 一雄君    理事 竹内  猛君 理事 斉藤  節君       青木 正久君    井出 正一君       田辺 広雄君    福島 譲二君       松浦  昭君    山本  拓君      岩垂寿喜男君    宇都宮真由美君       岡崎トミ子君    時崎 雄司君       馬場  昇君    遠藤 和良君       寺前  巖君    塚本 三郎君       中井  洽君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 北川 石松君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       渡辺  修君         環境庁企画調整         局長      安原  正君         環境庁企画調整         局環境保健部長 三橋 昭男君         環境庁水質保全         局長      安橋 隆雄君  委員外出席者         議     員 福島 譲二君         国土庁地方振興         局総務課長   岩崎 忠夫君         厚生省保健医療         局疾病対策課長 松澤 秀郎君         厚生省生活衛生         局乳肉衛生課長 難波  江君         水産庁研究部漁         場保全課長   吉崎  清君         通商産業省基礎         産業局基礎化学         品課長     雨貝 二郎君         環境委員会調査         室長      高橋 昭伍君     ───────────── 委員の異動 六月五日  辞任         補欠選任   野呂田芳成君     松浦  昭君   簗瀬  進君     福島 譲二君   長谷百合子君     馬場  昇君   塚本 三郎君     中井  洽君 同日  辞任         補欠選任   福島 譲二君     簗瀬  進君   松浦  昭君     野呂田芳成君   馬場  昇君     長谷百合子君   中井  洽君     塚本 三郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  水俣病認定業務促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案福島譲二君外四名提出衆法第八号)      ────◇─────
  2. 戸塚進也

    戸塚委員長 これより会議を開きます。  福島譲二君外四名提出水俣病認定業務促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  提出者より趣旨説明を聴取いたします。福島謙二君。     ─────────────  水俣病認定業務促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 福島譲二

    福島議員 ただいま議題となりました水俣病認定業務促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  水俣病対策は、環境行政重要課題一つであり、水俣病患者の迅速かつ公正確実な救済のためには、まず、その認定業務促進することが求められております。  この認定業務は、基本的には、公害健康被害補償等に関する法律、いわゆる補償法に基づき関係県知事等により行われておりますが、その促進のため、これまで熊本県において検診、審査体制充実強化等措置が講じられ、さらに昭和五十三年十月に本臨時措置法が制定され、翌昭和五十四年二月十四日から施行されました。その後、昭和五十九年及び昭和六十二年に認定申請期限を延長する等の改正が行われ、現在に至っております。  この法律においては、旧公害に係る健康被害救済に関する特別措置法、いわゆる旧救済法により県知事等に対し水俣病に係る認定申請をしていた者及び補償法により昭和五十四年八月三十一日以前に同じく申請をしていた者で当該申請に関する処分を受けていないものは、平成二年九月三十日までの間に環境庁長官に対して認定申請をすることができることとされております。  本法施行を含む国及び県の認定業務促進に係る努力の結果、一時は六千人以上を数えた未処分者数平成二年三月末現在で約三千三百人にまで減少してきております。しかしながら、なお相当数の未処分者を抱える現状にあることから、長期にわたる申請滞留者を速やかに解消することにより水俣病対策の推進に資するため、この法律案提出した次第であります。  以下、法律案内容を御説明申し上げます。  第一は、認定申請期限の三年間の延長であります。  旧救済法または補償法による水俣病に係る申請者でいまだ申請に関する処分を受けていないものは、平成五年九月三十日まで環境庁長官に対して認定申請をすることができることといたしております。  第二は、環境庁長官に対して認定申請をすることができる者の範囲の拡大であります。  補償法による水俣病に係る申請をした者で環境庁長官に対して認定申請をすることができるものの範囲を、昭和五十七年八月三十一日以前に補償法による申請をしていた者でいまだ申請に関する処分を受けていないものまで拡大することといたしております。  なお、この法律施行期日は、平成二年十月一日といたしております。  以上が、この法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  4. 戸塚進也

    戸塚委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  5. 戸塚進也

    戸塚委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬場昇君。
  6. 馬場昇

    馬場委員 大臣にまず質問をいたしたいと思います。  水俣病はもう大臣十分御承知と思いますけれども、水俣病世界最大水汚染公害でありまして、その被害はまだ全貌が明らかになっていないのですけれども、私は、原爆被害に匹敵する、人類の経験した最も悲惨な被害だと思っております。  まず大臣水俣病行政に対するその基本認識について伺うのですが、その前に、大臣先生でございます元総理大臣三木武夫先生が、田中内閣の副総理環境庁長官のときに水俣現地を視察をなさいました。私も同行したわけでございますけれども、この悲惨な状況を見て絶句されまして、言葉も最初ありませんでした。そして最初におっしゃった言葉が、こういうことを起こしたのは政治行政に携わる者の責任だ、こういうことをおっしゃいました。  大臣そこまで御存じか知りませんが、生ける人形という胎児性患者がおられました。もうあらゆるものに出ておりますから名前を言いますけれども、松本久美子ちゃん、これは六歳のときに水俣病が発症しまして、そして、二十の成人を迎えたときに晴れ着を着て、その後亡くなられたわけですけれども、まさに生ける人形の姿でございました。二十というのに、見ますとまだ六、七歳の顔ですよ、姿ですよ、寝たきりですから。それから、生ける人形とともに植物人間という言葉が出ましたけれども、上村智子ちゃんという胎児性患者がおります。これはユージン・スミスさんの、おふろにお母さんが抱いて入っている写真で有名ですけれども、その上村智子ちゃん、ともかく胎児性患者というのは生まれながらにして目も見えない、口もきけない、耳も聞こえない、そしてお父さんお母さんという言葉さえ言えないし、お父さんお母さんもわからない、こういう状況です。植物人間という言葉が出たのは、食べ物も食べられないわけですから、ただ物理的に流動食を流し込んで、物理的に下の方に下げる。だから、茶飲み茶わん一杯ぐらいの重湯を食べさせるのに何時間もかかる、こういうような状況であったわけです。そういう松本久美子ちゃんとか上村智子ちゃんとかを三木さんはごらんになりました。  そしてまた、別に大人でいいますと、私のような大きい漁民が一日のうち五十回も六十回も大けいれんを起こすのです。布団から落ちるようなけいれんを起こして塗炭の苦しみでした。そして、ひどいときには壁をかきむしり、コンクリートの壁をかきむしって、手なんか血だらけですよ。そういうようになる日々をずっと激症人たちは送っておったわけでございまして、まさに生き地獄といってもいい状態でございました。そういうときに三木さんがとにかく絶句しながら、こういうことをしでかしたのは行政政治家責任だということをおっしゃった。石原環境庁長官がまた現地に行かれましたけれども、水俣病というのを完全に解決しなければ二十一世紀文明というのは語れない、そういうことを石原さんは言われたわけでございます。  私もこれはもう以前から、私も地元でございますから、見て知っておるわけでございますが、この世界公害原点という水俣病を正しく、しかも完全に解決しなければ、そういうエネルギーを今の国民が、今の政治家が、今の行政家が出さなければ、二十一世紀の新しい文化とか文明とかつくることはできない、私はそう思っているのです。こういう事実認識について、大臣はどういう認識を今水俣病について持っておられますか。
  7. 北川石松

    北川国務大臣 馬場委員水俣病に関しての、元環境庁長官である三木先生がその患者を見て慟哭され、また先生からいろいろの患者の姿を今聞きまして、胸のいっぱいになる悲しみを覚えております。特に、水俣病公害問題としては初めての、日本においての原点といいますか、そういう公害問題であり、環境行政の重要な課題一つであると認識いたしております。国といたしましても、この問題を解決するために最大限努力をしていきたい、こういう思いでございます。
  8. 馬場昇

    馬場委員 長官に今のお言葉を返すようですけれども、最大限努力は全然しておりません。そのことをまず今の答弁について申し上げてから次に移りたいと思うのです。  では、現状どうなっているか、こういうことですけれども、この第一の水俣病というのを解決をしなかったわけです。約十年たった後、新潟に第二の水俣病が起きた。第一の水俣病を完全に解決しておれば新潟の第二の水俣病は起こらなかった、そういう具体的な事実さえあります。そうして、今日本だけじゃありませんよ。世界公害原点水俣病日本が正しく解決をして、それでその治験を全世界でそういうぐあいにやろうということをやっておれば今日のような状況はなかったのでしょうけれども、もう人間は、有機水銀だけじゃございませんけれども、今全く新しい化学物質を発見して、毒性があるのかないのかわからない、あるいは毒性があるということもわかっておりながら、知っておりながら、文明の進展だという名においてこれを使っている事実が今世界じゅうにいっぱいあるわけでしょう。そして、そのことが地球環境を破壊して、そして人類を破滅させるのじゃないかという方向に現在進んでいるわけでしょう。こういう水俣病の教訓を生かさない今日の地球現状日本現状、これについてどう考えておられますか。
  9. 北川石松

    北川国務大臣 委員の重ねての環境問題で、特に水俣病に関しては委員はその地元にあっていろいろな中で患者と接せられ、そして環境をよくし、そういう公害をなくさなければいかないという重要性を強く認識され、今おっしゃっていただきましたように、熊本でその原点のときにこのことのはっきりした処置をとっておけば新潟がなかったのじゃないか、これはまことにそのとおりの御指摘だと思います。ということは、化学的にそういう形が出てきたときに、これはこういう工程、プロセスといいますか、そういう中でこういう患者が出たのだということをはっきりすれば、工場も会社もまた皆さんがそれに認識を深められて第二の新潟がなかっただろうということの御指摘は、私はごもっともだと思っております。  そういう点をよく認識いたしますと、私は環境問題の解決こそが人類の最も大事な課題であるというような思いをいたしておる次第でございます。我が国で水俣病発生を防ぎ得なかったことは、これはまことに遺憾でございまして、今後このようなことのないようにやはり努力をし、そして再びこのようなことのないようにすることが大事であろう、こう思っております。
  10. 馬場昇

    馬場委員 再び起こらないためにどうすべきかということについては後で御質問申し上げますけれども、今、新聞等で報道されただけでも、いわゆる水俣病というのは、カナダにも中国にもベネズエラにもタイにもブラジルにもフィリピンにもニカラグアにもイラクにも起こっているわけです。発生しているわけですね。こういう事実を深刻な気持ちで認識してもらわなければ環境行政はできない、私はこういうぐあいに思います。  さらに、少し具体的に申し上げますけれども、水俣病公式発見というのは昭和三十一年と言われております。だから、もろもろの発言とか書籍に、ことしは公式発見から三十五年経過をしておる、こういうぐあいに出ておるわけですけれども、事実は三十一年発生ではないんですよね。その以前にもありまして、四十年と言ってもいいあるいは五十年と言ってもいいという事実があるわけでございます。これは日本だけではございません。例えば、新日本窒素がつくっておりました、アセトアルデヒド工場発生した有機水銀中毒を解明するという論文がもう既に昭和五年にスイスで出ております。昭和十二年にはドイツでアセトアルデヒド工程水俣工程と同じですが、そういうところで有機水銀中毒発生したという報告も出ておるわけでございます。これは日本でもよく言うのですけれども、イギリスハンターラッセルボンフォードという人たちが、日本ではハンターラッセル症候群というのですけれども、こういう人たち昭和十二年、一九三七年に、イギリス工場労働者有機水銀中毒発生した、こういうことを発表しておるわけでご ざいます。何と、発表されたのでも昭和五年です。水俣でも、三十一年に発症したと言っておりますけれども、昭和二十六年に実は水俣漁民が、どうも水俣湾の魚がおかしい、魚介類がおかしい、来てこれを調べてくれないかということを熊本県の水産課にお願いした。その年は台風があったものだから、その翌年の昭和二十七年に熊本県の水産課の三好という技師調査に行っているのです。そしてきちんとした報告書復命書を出しております。「新日本窒素肥料株式会社水俣工場排水調査」という題で実は復命書を出しておるわけでございます。そして、どう言っておるかというと、現在、漁業被害と考えられるものは、この百間港に排水される汚水の影響と百間港にある従前から堆積したヘドロと考えられる、こういうことをもう昭和二十七年にはっきり指摘しておるわけでございます。そして結論としては、この排水に対して、必要によって分析して成分を明確にする必要がある、チッソ排水についてですね、こういうことを言っておるわけでございます。これは昭和二十七年ですよ。  それから、昭和三十一年公式発見ですが、その翌年の三十二年に、惨たんたる状況です。魚介類は死ぬわ、藻がなくなってしまうわ、とにかくもう烏も、カラスも水鳥も死ぬわ、豚も死ぬわ、こういう状況もございまして、水俣の漁協がまた熊本県に対して調査を依頼しているのです。内藤という水産課技師調査に行って、こんな報告を書いているのです。現在、この水俣湾一帯においては漁獲皆無で、漁民はこの付近で魚介類をとることに恐怖を感じている、奇病発生は今後も予想される。そのころは奇病と言っておった。水俣病と言っておりませんでしたからね。そして水俣湾一帯の死んだ魚とか死んだ貝の殻とか海藻の状況とか、詳細に報告をしておるわけでございます。漁民はそのころ、新日本窒素排水を、浄化槽をつくれという要求をやっているのです。昭和三十二年ですよ。それをみんな熊本県は握りつぶしたのです。その報告書を公表もしていないのですよ。握りつぶして隠ぺいした。対策は全然立てなかったわけです。  そういう事実をかつての大石環境庁長官は知って、十分に対策をとっておれば水俣病患者は十人の単位で済んだかもしれない、あるいは百人の単位で済んだかもしれない、それが千人になり、万単位に広がろうとしておる、これはもう国の行政、県の行政行政がそのことを深くおわびしなければならぬ、こういうことを言っているのですが、大臣はこれについてどう思いますか。
  11. 北川石松

    北川国務大臣 委員がこの水俣水銀被害ということについて、昭和十二年にイギリスで、昭和五年にスイスで、そのように引例をされまして、早くこういう原因がわかっておるのに対処しなかったのではないかというところの厳しい御指摘でございました。早く対応しておれば少数の被害で済んだのではないか、全くそのとおりだと思います。  私は、こういう点を考えまして、政治の権力の上に立って県が握りつぶしたということも今お聞きいたしまして、まことに遺憾であると思っております。このような問題については私は、政治というものは生きとし生けるすべてのもののために行われなければならぬ、この観点に立って取り組んでまいりたい、こういう思いをいたしております。
  12. 馬場昇

    馬場委員 後で具体的な問題について質問しますから、今のような観点でぜひ答弁をお願いしておきたいと思うのです。  それで、今県のことを言いましたけれども、国はどうだったか。チッソはどうだったか。全く同罪、それ以上でございました。さっき言いましたように、県は三好報告書も握りつぶした、内藤報告書も握りつぶしたのでありますけれども、熊本大学が、昭和三十四年ですよ、発症してから三年目の三十四年に、熊本大学研究班水俣病原因物質有機水銀であると公表したわけです。国の機関熊本大学研究班が公表いたしました。ところがそのとき、国もチッソも、原因農薬だとかあるいは戦争中水俣湾に投下された爆弾だ、爆弾説と言われておるのですけれども、農薬説とか爆弾説とかいって、排水の中の有機水銀、重金属とは認めなかったわけでございます。そして、政府水俣病原因有機水銀であると認めたのは、公式発見から九年たった後です。九年間、その間何やかやと言って押しつぶす。東京から工業大学先生が行って水俣湾調査させて、排水ではないという論文を発表させたり、そんなことばかりしておったわけです。九年間、そういうことをやっておりました。そして、原因がやはり有機水銀だと認めたのが九年後ですよ。それから、政府公害病と認めたのは何と昭和四十三年ですから、公式発見から十二年後ですよ。これが政府態度です。  それで、その間チッソはどうしたか。それを政府は、いわゆる石油化学の転換の時期でもあったものですから、アセトアルデヒド生産する過程においてこれは排出されるわけですけれども、アセトアルデヒドの大増産をチッソにさせているのですよ。アセトアルデヒドを、公式に水俣病が発見された昭和三十一年には一万五千九百十九トン生産しておったのです。ところが、公式に発表された後どんどんどんどん生産をふやして、昭和三十五年とか三十六年には何と四万五千二百四十四トン、アセトアルデヒド生産を物すごくふやしているわけです。これをふやすというか、どんどんどんどんその間水銀を流し続けたということになるわけでございます。まさに、公式発見アセトアルデヒド生産水俣で中止したのは、昭和四十三年、十二年後ですよ。十二年間原因を隠ぺいしておきながら水銀を流し続けて、あのような世界公害原点水俣病を拡大したわけです。これは国の態度ですよ。チッソとぐるになっておった態度です。これについてはどうですか。
  13. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 私から、私どもの知っております事実関係を御答弁申し上げます。  水俣病原因解明を踏まえまして、政府水俣病に関する政府統一見解を発表いたしましたのは四十三年でございます。そのため、生産工程廃止までの間に法的な規制措置がとられなかったのは事実でございます。しかしながら、水俣湾内漁業に対する自主規制の要請でございますとか排水クローズド化に対する指導など、当時から可能な範囲内で、取り得るさまざまの措置関係行政機関によって行われていたこともまた事実でございます。
  14. 馬場昇

    馬場委員 答弁をすると恥の上塗りのようになるばかりですよ、自主規制と言って。ちゃんと漁民はもう漁獲禁止しなさいと、今の水産業の問題とか熊本漁業規制の問題とか食品衛生法の問題とか、そして漁業はもう禁止ができるじゃないか、何回でもそれを陳情しているけれども、それをやらない。そうして自主規制自主規制とやってきたということがあるので、今言われたのは、自主規制をやれと言ったのは事実ですけれども、漁民とか住民は、漁獲禁止をやれ、毒を食べないようにしろ、こういう要求をしておったわけですからね。  そこで、これは今あなた方はそう言うけれども、大体自民党の出身大臣の方々が、私が今言っているようなことをみんなおっしゃっているわけです。例えば、この水俣病公害病認定されたのは、まだ環境庁はございませんでしたから厚生省ですから、熊本出身園田直厚生大臣ですよ。私は「水俣病三十年・国会からの証言」という本を書いております。これに園田さんが詳しく寄稿していただいておる園田さんの記述があります。その中で園田さんは、たくさん書いておられますけれども、こういうことを言っておられる。「厚生大臣になってわかったのは、水俣病が新日本窒素から排出された有機水銀であるとの結果が出ているにもかかわらず極秘にされていたことである。私の公害病認定は明治以来続いた工業優先の思想を根底から覆す決断だっただけに、さまざまな場面で体を張らざるを得なかった。人間の心が濁れば空気や水はあっという間に汚れてしまう。他人を犠牲にしてまで己れの利潤を追求する 心が環境を汚し、人の命を平気で犠牲にする。」こういうことを園田さんは書いておられます。そして、これを書かれて私の本に載せていただいてからしばらくして亡くなられたわけでございまして、まさに遺言ともいうべき証言ですよ。そして、二十一世紀に対する警鐘ですよ。  こういうことを園田大臣は書いておられますけれども、この園田大臣発言というのを今の北川大臣はどう受け取られ、どう継承されますか。
  15. 北川石松

    北川国務大臣 委員のただいまの、園田厚生大臣がこの水俣病に関して有機水銀原因であるということでいろいろの反対を押し切って断を下されたことに対しましては、衷心より敬意を表します。また私は、利益を追求する余りに、人間と語り得ない生きとし生けるものがその公害によってみずからの命を絶っていくということは許されないことであろう、その点に対しましては、先人のこの決断に対しまして、深く敬意と感謝を表する次第でございます。
  16. 馬場昇

    馬場委員 石原慎太郎環境庁長官は、カルチュラルラグ、これは難しい言葉ですが、あの人はこれを文化遅滞、こう呼んでおられまして文化遅滞の象徴、水俣病についてそういうタイトルで私のこの本に一文を寄せていただいております。どう書いておられるかといいますと、水俣病原因の正確な分析と把握をおくらせたものは、まだいろいろありますけれども、この出来事を可能な限り隠ぺいという基本姿勢を決定した通産省に象徴される全国家的な目的意識責任にある、こう言っておられる。大臣ですよ。そして、それを何よりも証するものは、まだ行方不明の、研究の途中でどこかに握りつぶされ葬られた水俣病原因に関する細川報告書である。これが厚生省に出ている、これを握りつぶして葬り去って、石原さんがどんなに捜そうとしてもないのだ、そういうことを本人は言っておられました。  この細川報告書というのは、細川さんというのは、新日本窒素水俣工場附属病院の院長さんでした細川一博士でございます。この人が昭和三十一年に、原因不明の中枢神経患者水俣で多発しておるということを当時の水俣の保健所に昭和三十一年五月一日に報告された。今このことを水俣病公式発見の日としておるわけでございますけれども、細川博士はそれで仲間と一緒に研究論文をまとめて細川報告書というものをつくっておられるわけです。それを熊本県を通じて厚生省報告してあるわけです。これが水俣病に関する最初の報告だと言われておるのですけれども、これを行方不明にさせておる。そしてまた、その後は猫実験で、これは水俣の猫ではなくて関係のない人吉、球磨、あの山の方から猫を持ってくる、天草の向こうから猫を持ってくる、そして水俣湾でとれた魚をそれに食わせると直ちに水俣病に発症した、それに排水を飲ませると直ちに水俣病に発症した、そういう実験も報告してあるわけです。そういうことで、石原さんもそう言っているのです。こういうことが今日の悲惨な状況を引き起こしたということは明らかであるわけでございます。先ほど大臣言われましたけれども、やはりこの園田さんのように言わなくてもいいような、石原さんのように憤慨しなくてもいいような環境行政水俣病行政北川長官はぜひやっていただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。  私はなぜ今、少し時間をとり過ぎたかといいますと、私は原爆の被害に匹敵すると言いましたけれども、人類が、特に日本人が、ノーモア広島、ノーモア長崎とともに私はノーモア水俣ということを言わなければならぬ。それでないと人類の未来とか地球の未来は危ない。私はよく言うのですけれども、人間とか企業とか、こういう欲、その欲とくるんだ行政政治、そういうもので地球が病気になって、がんになって、がんの腫瘍が吹き出したのが水俣病だ、だからがん細胞というのは完全に取ってしまわなければ地球にがんが転移してしまうわけですから、これをきちんと完全に解決することがさっき言いました地球を守り環境を守り二十一世紀を守ることだ、そういう気持ちでおるわけです。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕  ところが、最近幾つか、たくさんありますけれどもここで二つ言います。大臣、今これに反する、石原さんとか園田さんが反省したのと全然違うような動きがこの水俣病をめぐって起きております。それを心配するからこそ、少し長くなりましたけれども経過を言ったのですけれども、それは結論から言いますと、この水俣病をもうこの辺で幕引きをしようかというような動きが行政政治の中にあるということを、私は四十年近くこの問題に携わってきて実質そう感じ、肌でも感ずるわけでございます。それは、もうあそこのヘドロ処理がこの三月に終わったのですよ、だからヘドロ処理が終わりました、海はきれいになりました、魚もとっていいですよ、それから、さっき福島先生言われましたが、物すごい認定申請の滞留者があったのですけれども、我々の方で言いますとどんどん切り捨てられておって、大体この一、二年で認定審査を終わるのではないか。終わりますということを細川知事も言っているのです。ヘドロ処理は終わった、そして認定審査も大方終わった、そしてそれを見計らって一九九二年に水俣で国際的なイベントをやろう、祭をやろうという計画があるわけです。そこで、そのときに水俣病の終結宣言、幕引きを政府がするんじゃないか、そういう危険性を私は今感じております。  これは、私が感じるのは杞憂とおっしゃるかもしれませんが、絶対杞憂じゃないんだ。四十年もすれば、その節目節目でこういうことがあったのを私は皆経験しています。例えば昭和三十四年、水俣病が公式に発見されたのは三十一年ですから、それから三年後の三十四年に、当時寺本さんという人が熊本県知事でございました。これは今水俣病にタッチしている者はだれでも知っている悪名高い見舞い金協定というのを、この人のあっせんで患者チッソが結びました。これは死んだ者の命の値段は三十万。そしてそのころはまだ原因を隠しておった。さっき言ったように知っている者は原因を知っていた、行政におる者は。ところがそれは表には隠してあった。そういう中で、「たとえチッソ排水原因があったとわかったときにもこれ以上の要求はいたしません。」そういう一項がその見舞い金契約の中に入れてあるのですよ。そして、そのときどうだったか。ちょうど年の暮れで、みんながもち代もない、年が越せないと言っておる時期ですよ、その時期が。それと時を同じくして漁民、漁協と漁業補償の協定をやったのです。そして見舞い金協定を患者とやった。そういう中で政府は、私ども社会党の議員の質問書に対して、閣議で決めて水俣病は三十五年で終わったという宣言をしているのです。ところが、今このときとよく似ている。再び過ちを犯すのでないか、そういう感じがしているから経過をお話ししたわけでございます。  そこで、絶対に北川長官はそういう幕引きはいたしませんとここではっきり答えてください。
  17. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 事務的に答えさせていただきます。  私ども、今水俣問題の解決のために一生懸命認定促進の業務を行っているところでありまして、いつ幕引きができるとかできないとかいうことではなしに、今現在の認定促進を一生懸命やっている段階でございまして、いつどうのこうのという気持ちは私どもの事務方にはございません。
  18. 北川石松

    北川国務大臣 国といたしまして、このような重要な問題に対して責任を逃れていくような措置はとってはならない、このように思っております。
  19. 馬場昇

    馬場委員 大臣責任を逃れるということもまあ答弁になるのですけれども、具体的に、昭和三十五年には水俣病が終結したと政府は宣言したわけですから、そういうようなことは今の状態の中であり得べきことでもないし、やってもいけないことだから、あなたはそういうことをやる気はないですか、やってはいけませんよ、あなたの決意はどうですかということを聞いているのです。
  20. 北川石松

    北川国務大臣 委員の重ねての御指摘でござい ますが、決して私はそのようなことはいたしません。
  21. 馬場昇

    馬場委員 具体的な問題に入ります前に、私が心配しておることが幾つかあると言いました。まだありますが、いま一つは、この後から質問するのですけれども、IPCSのメチル水銀環境基準の問題について聞いておきたいと思うのです。  このIPCS、これは私が見る限りメチル水銀環境基準を、毛髪水銀で従来五〇ppmであったものをより厳しくしようというIPCSの報告書も来ているわけでございます。こういうことに対して、世界の例が書いてあるわけです。これを読んでみて、私の経験から言うと、先ほど質問しました昭和二十七年の三好さんの復命書、それと同じような位置にあるなと思いましたよ。昭和三十二年、このときの内藤水産課技師復命書、そして事実を書いているわけですから、ああ、これと同じだな。今度のIPCSの報告書にはイラクの例なんかいっぱい書いてある。それが、ちょうどイラクの例なんかが三好報告書内藤報告書と全く同じような位置づけになるなというぐあいに私は感じて、これに対する取り組み、このIPCSの厳しくしようというのに対してあなた方はどう取り組むか。かつて三好報告書内藤報告書を握りつぶしたように、このIPCSの報告書を今の環境庁は握りつぶしてしまうのではないか、そういう心配を私はしている。  そういうことで、これは原則的にIPCSの報告書を握りつぶすようなことはしない、これにはきちんと検討して対策、対応を立てる、そういう格好で大臣おられますか。
  22. 北川石松

    北川国務大臣 馬場委員のIPCSの報告書、今イラクだとかいろいろな国の例をとっておっしゃっていただきまして、それは大変大切なことだと思っておりますし、私は、科学技術者が報告するということはその政治生命というよりはその道に対しての御本人のなにをかけていらっしゃる、それはすばらしいものであり、自分の信念を持って、また自分の経験と報告に基づいて出していらっしゃる。それが今まで行政の中でおろそかにされたということは遺憾であります。環境庁といたしましては、そういうこれからの科学技術者その他の真摯な報告に対しては、やはりこのことをよく踏まえて、その報告がおろそかにならないようにしていかなくては環境は守れない、こんな気持ちを持っております。
  23. 馬場昇

    馬場委員 実は、細川博士の報告書さえどこへ行ったかわからぬというような状況の心配もあるわけです。あなたを環境庁長官に任命されました海部さんも、当時文部大臣だったものですから、私のこの本に巻頭言を載せてくれているのですよ。私に対して、人間愛、人間尊重の精神に基づき水俣病問題を取り上げてやっているということで、その中にいろいろ書いてくれておるわけですが、人間人間らしく生きるその前提というのはあくまでも環境なんだということをあなたを任命された海部さんも書いてくれております。ぜひそういう意思を守っていただきたいと思うのです。  そこで、IPCS、国際化学物質安全性計画についてお尋ねをいたします。これは、一九八〇年に、UNEP、国連環境計画とWHO、世界保健機構、ILO、国際労働機関、この三者で構成されて、活動をずっと続けておることはもう御存じのとおりでございます。  WHOがメチル水銀環境保健クライテリア、評価基準を一九七六年、昭和五十一年に専門家会議を開いて毛髪水銀量は五〇ppmと定めて、評価基準を各国に通知をして、各国ともこの基準値に従って環境保健基準を今定めているわけですね。そして一九八〇年に、メチル水銀に係る、今大臣が言われました各国専門家の研究報告というのがどんどん出ておりまして、知見も明らかになってきておるわけでございます。例えばさっき言いましたイラクの問題などもあるわけでございますけれども、五〇ppm以下でも人体に深刻な影響が出始めておるというのがそういう研究論文にどんどん出てきておるわけでございますので、そういうデータをもとにして環境保健基準を再検討しようということをこのIPCSが決めておるわけですね。そうして一九八八年に、メチル水銀環境保健基準をより厳しくするという方向で第一次改定草案を各国に送ってきて、日本政府にも来たわけでございます。  これはこの前予算委員会の分科会でも長官に質問しましたので、長官からお答えいただいておるわけですけれども、この報告、第一次草案が環境庁に来たわけです。そのときこれを、困ったものだ、つぶさなければいかぬというぐらいな動きが環境庁にありました。私はよく知っている、後でその文章を読みますけれども。そういう動きがあったものだから、私はけしからぬじゃないかと思いまして、社会党を代表して今の衆議院副議長の村山さんと、当時の環境庁長官の青木さんのところへ行って、抗議かたがた話し合いをいたしました。そのときに青木さんは、今はIPCSの第一次草案だから、結論が出たら、基準が一〇ppmであろうと二〇ppmであろうと、それに従う、それが環境庁の使命である、こういうことをはっきり言われました。この前、北川長官にも聞いたわけでございますが、北川長官はこのIPCSの最終報告が来たときに、環境庁の役目は生きとし生ける者の環境をよくすることであり、新しいことが出てくれば対応しなければならない、こういうことを記者発表されているわけですから、この青木さんの発言北川さんの発言、こういうことに現在もいささかも変わりなく、いや真剣に、さらに熱心に、このIPCSの報告書には忠実に従ってやっていくという行政姿勢をお持ちですか。
  24. 北川石松

    北川国務大臣 委員の御質問のIPCSの報告が参りましたときのことについては、先日の予算委員会分科会でも御答弁を申し上げましたように、青木元長官のお考えもあり、またみずからこのような重要な基準というものは御答弁申し上げた、同じ姿勢を持って今後もまいることを御報告いたします。
  25. 馬場昇

    馬場委員 言わずもがなのことですけれども、環境庁設置法の第三条に環境庁の任務というのがきちんと書いてあるわけですからね、今言われたように。環境庁は、公害の防止、自然環境の保護を図り、国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するための環境保全に関する行政を総合的に推進する。このIPCSの提案報告をまじめに実行しますよ、それが環境庁の任務ですよときちんとここに書いてある、今答弁されたとおりでございます。公害基本法の国の責務というところにも、国は国民の健康を保護し、生活環境を保全する使命を有する、公害防止に関する施策を忠実に実施する責務を有すると書いてあるから、当然のことでございます。  これから少し事務方にも聞くのですけれども、この第一次素案が来たときに、環境庁内にメチル水銀環境保健クライテリアに係る調査研究という研究班を設置されております。この研究班といいますか、専門家会議といいますか、これは何の目的で設置をして、どういうメンバーがメンバーになって、予算はどのくらいこれにつぎ込んだのか、まず答えてください。
  26. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 お答えをいたします。  IPCSが環境保健クライテリアの素案を関係いたします研究者あるいは各国政府に送ってまいりましたのは、約二年前でございました。そのときに私どもといたしましては、このIPCSにおける検討というものには大変強い関心を持っていたわけでございます。また、このIPCSの作成いたします環境保健クライテリアと申しますのは、いわば世界じゅうの科学的知見を集約しようというものでございまして、政府も求められれば知見の提供でございますとか、いろいろな研究の評価等について協力することが期待されているものでございます。そのようなことから、その当時、国内の専門家の協力を得ましてメチル水銀に関する既存の科学的知見の収集、整理を行いまして、今後の行政に資するということが一つ、また、必要に応じましてIPCSに知見の提供等の協力をするということを目的にいたしまして、先 生御指摘調査研究班をスタートさせ、研究委託をしたものでございます。  また、メンバーでございますが、メンバーの名前について申し述べさせていただくことはお許しをいただきたいと存じます。
  27. 馬場昇

    馬場委員 メンバーの名前を言うことを、何と言ったんですか、御勘弁くださいと言ったんですか。何事ですか、それは。研究班のメンバーを発表するのを控えさせてくれ。発表してあるじゃないですか。みんな我々特っておりますよ。これを何で発表しないのですか。額は、どれぐらい金を使ったか言わなかったけれども、何でメンバーを公表しないか、理由を言いなさい。
  28. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 失礼いたしました。研究費の方は約六百万でございます。  それから、メンバーを発表することを差し控えさせていただきたいと申しましたのは、この研究をやっていただくときに、このIPCSの素案段階での議論というものは専門家が科学的、技術的に御議論をいただくという趣旨から、自由な研究、自由なおまとめをしていただくという意味で、メンバーの公表はしないということを先生方に申し上げた上で研究をスタートしたといういきさつからでございます。
  29. 馬場昇

    馬場委員 私は文教をやっておりますけれども、学問とか研究というのは、公開で自由にするのは当たり前の話でしょう。水俣病研究とかクライテリアの研究をするのに名前を発表しない。後であなた方の発表しないのを全部言って、なぜ発表しないのかと聞きますけれども、もう想像できる。大臣環境庁というのは、どこの省庁もそうかもしれませんが、省庁の中で一番国民に開かれておらなければ国民の生命や健康は守れませんよ。研究する学者の名前も発表しない。  私は発表しない理由は知っているんです。なぜかというと、これは認定審査会の、切り捨てる審査会の患者さんたちから一番信頼されておらぬ学者でしょう。それからもう一つは、裁判のときにみんな国のことが正しいといって国の側の証人に立った学者でしょう。そういうやつばかりでつくってあるから発表しないのでしょう。  それとともに、ここにこういう文書があります。大臣はこれは見たことないかもしれぬし、聞いたことはないかもしらぬが、よく聞いておいてください。  これは、今六百万と言いましたけれども、五百四十二万四千円要求して、そして五百三十四万円大蔵省から認められておるわけでございます。これは、一九八八年度の後期分の環境庁保全総合調査研究促進調整費という中から出ておるわけです。額は五百三十四万円ですよ。そして、この五百三十四万円を大蔵省から予算を取るというときに、メチル水銀環境保健クライテリアの調査研究の必要性という、大蔵省予算要求段階あるいはこの研究班を構成する段階等でそういう環境庁の見解というのを書いた文書がここにあります。  これによりますと、一九七六年にWHOによってメチル水銀環境保健クライテリアが決められ、我が国を初め各国の環境基準策定の基礎となった。そして、この十二年間、特に改定の動きは認められなかったが、――先にまだたくさんありますけれども、上述のように本年、一九八八年五月ごろからIPCSによる環境保健基準改定の動きがにわかに表面化してきた。またいろいろ書いて、――新クライテリア素案、第一次素案、送ってきた素案の最大の特徴は、これまで基準が毛髪水銀値五〇ppmを基礎に組み立てられていたのに対して、――またこういう言葉を使って書いてある。あいまいな幾つかの報告に依拠して、なんて書いてある。要らぬことも書いてある。そして、一〇ないし二〇ppm程度の毛髪水銀値を有する妊婦の子供に精神運動発達遅滞が生ずる可能性があるとして、より厳しい環境保健基準を志向する方向にこの第一次改定草案がなっている。  そういうことになって、最後にこういうことを書いていますよ。このままでは我が国のメチル水銀環境基準や水俣湾ヘドロ除去基準の見直し、さらに子供の精神運動遅滞を盾に新たな補償問題の発生、現行訴訟への影響など行政への甚大な影響が懸念される、そして、この動きに対して我が国の水俣病水銀専門家を結集してその内容をより妥当な方向に導いていく体制を整えるのは焦眉の急である、こう書いてある。そして、IPCSの日程を勘案すればその対応はまさに遅滞を許されないことは極めて明瞭である、こう書いて、結局、IPCSがより厳しい基準にしようということが起これば、日本水俣病の判断条件やヘドロ処理基準や魚介類の安全基準や、それから遅発性水俣病――メチル水銀を全然流さなくなってアセトアルデヒド生産を中止したのが昭和四十三年で、四十三年以降は水俣病発生しておらぬという見解をとっているのですけれども、それ以降にもどんどん水俣病発生している。遅発性水俣病、こういうものも出てくる。そういうものに対する補償もしなければならぬ、現行裁判に対して五〇ppmで論拠を張っているのに、一〇ないし二〇ppmになったらその裁判に与える影響も甚大である、そういうことをさせないために日本の学者を集めてそれに対抗しなければならぬ、こういうために必要な研究班だ、こういうことを書いて回して、そしてこの研究班をつくっておるじゃないですか。こういう事実があるわけです。だからこそ今名前も言わない。  これは委員長、すべて情報の公開は言うまでもなく、環境庁が物を研究したとき、例えばだれがどう言うた、かれがこう言うたと一言一句残さず出せという点については、学問、研究は自由ですから公開しなければならぬわけですけれども、出さなければいけませんけれども、まとめとかこういう方向になったとか、少なくともこういうことはやはり言わなければいかぬと思う。それについて、今こういう文書について大臣はどう思いますか。
  30. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 ただいま先生が御指摘になっている、また紹介されました文書につきましては、私存じておりません。私は、当時の研究が、WHOが決めましたクライテリアを改定するために必要な知見の提供を行うことということを目的にして、当時調整費の要求を行ったと聞いております。
  31. 馬場昇

    馬場委員 これは、メンバーを明らかにしないそういうメンバーの人が、こういう文書を持っているのですよ。だから、明らかにしないから知らぬとこっちは言うはずですよ、明らかにしないのだから。ちゃんとこういう目的でやった、これはおかしいといってそういう筋の方から私は手に入れた。それはメンバーさえ言わないのですから、これがあるということは多分言わないのじゃないかと思うのですが、しかし、それを言わせない資料がありますよ。  あなた方は予算委員会にちゃんと「昨年一年における委託研究について」、こういうようなものを毎年出すのですが、それよりももう少し詳しい委託研究についての資料を書いた環境庁作成の一覧表があります。その中に「調査研究の目的・必要性」というのが、たくさんのこの調査、この調査、この調査といろいろあって個々の部分についてのコピーをここに持ってきておりますけれども、ちゃんとこういうことを書いてある。「調査研究の目的・必要性」というところに、これはおたくが出している、公表しておる文書ですよ。これはIPCSが出ておるけれども、こういうことがある。  「IPCSで一九八九年を目途に、現行のメチル水銀環境保健クライテリアをより厳しい方向で改定する動きが出ているが、必ずしも十分な根拠に依存していると考えられず、また改定されると、我が国で、水俣湾ヘドロ除去基準の見直し、新たな補償問題の発生、現行訴訟への影響など行政への甚大な影響が生じるおそれがある。この動きに対応するため、改定草案を早急に検討し提言をまとめることが必要である。」この「調査研究の目的・必要性」と公表したものにそう書いている。そして、調査研究内容ということについて、「次の調査検討を行う。IPCSの改定草案の検討、問題点の整理 必要文献、情報の収集・ 分析 メチル水銀の生態系における挙動、健康診断についての評価分析」、これが調査研究内容だ。あなた方は一覧表に出してこれを公表しておるじゃありませんか。この秘密文書、内部文書は公表はしていない。しかし、こういう公表したものに、これに書いてあるようなことを、ほとんど同じようなことを書いてあるじゃないですか。そういう目的でこれをつくったのでしょう。
  32. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 大変申しわけないのでございますけれども、先生が今お示しになりました資料については、私存じておりません。当時この研究を行うに当たりまして記者発表を行ったときの資料しか私持っておりませんけれども、その中には「国連のIPCS(国際化学物質安全性計画)は、既存の化学物質環境保健クライテリアについて、その充実のために科学的知見の進展を踏まえた検討を行っている。今回、一九七六年作成の水銀及び水銀化合物のクライテリアについてもその後の科学的知見を総合的に検討することとなり、各国に知見の収集等の協力を要請している。したがって、我が国でこの間得られた知見を早急に整理の上検討を行う。」こういう資料が私の手元にはございます。
  33. 馬場昇

    馬場委員 環境庁というのは国民の信頼を受けて国民の命と健康を守る、環境を守る、そういう官庁がこういう内部資料をつくってこれをやっている。これを公表もしないし、ほとんど秘密にやっているということはもう許せないことだと思うのです。  私は大臣に言いますけれども、これを大臣に聞くためにさっき長々と経過を言ったのですが、こんなことをして、結局厳しくすることが人間の健康と命を守る、世界じゅうの学者が集まってそういう方向で検討しておるのに、これは今やっておる裁判に困るとか、補償問題に困るとか何に困るから、こういうことはやってもらっては困るというような方向で委員会でもつくってやるというようなことが内部文書で出回っておるわけですからね。これについては、大臣、あなたも最近なられたから御存じないと思うのですが、例えば石原さんは、細川一さんの報告書というのがあるはずだと大臣の権限で捜したのです。ただ、これは見つけ出すことができなかったのじゃないかと思いますが、少なくともこの内部文書というのが、私が持っているのですから、どういうぐあいにしてどうしてどんなことになったのかということと、今度は一覧表があるのですよ、この年にやった調査の一覧表。これは大蔵省にも出ているはずですよ、私が今言ったこのことは。これですね。この二つの書類をぜひ捜して、そしてこの委員会に提出してもらいたい。そうしなければ細川報告書を握りつぶしたと同じような過ちをまた犯すのですよ。そういう点について、この資料を調査をして、そしてその調査の結果を、あるかないか、あれば提出してもらいたい。ないならないでもいいですから、とにかく調査をして明らかにしてもらうということを、大臣、約束してください。
  34. 北川石松

    北川国務大臣 委員の、IPCSからの報告に基づいて我が国の方でもいろいろと検討するために努力していただいた、そのことについて今初めて私は聞かせていただきました。もし本院の中で誤った報告をしては申しわけございませんので、十分に調査をいたしまして改めて御報告をいたしたいと思っております。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  35. 馬場昇

    馬場委員 この内部文書は、これを持って前の青木長官におかしいじゃないですかということで実は話しに行ったわけです。そのときに、さっき言ったようなこういうのが、事務方がそういうことをやっておるかやっておらぬかあの人もはっきり御存じなか。た。しかし、そんなことがあろうがなかろうが、一〇なり二〇なりは私は守るというようなことを言われたわけでございます。  そこで、ここに書いてあるのは、今まだ事務方がないと言うから、IPCSの第一次草案の内容をより妥当な方向に導いていく体制を整えるのが焦眉の急である、妥当な方向――というのは前の方に、行政に甚大な影響を与える、判断条件とかヘドロ基準とか魚介類の安全基準とか裁判とかいろいろ遅発性水俣病とかそういうものが根底から覆されることになる可能性があるわけですから、そういうことがないようにIPCSの方向を導いていかなければならぬ、こういうような文書に実はなっているわけでございます。国費を五、六百万も使いながら、表に出さずにそうしてもみ消そうとするような態度をやる環境庁の姿勢は、もう絶対に許せないわけでございます。  そこで、具体的に聞きますけれども、では、IPCSの専門家会議日本の専門家はだれが行って、どういう資料を持っていったか。そして、その人が例えばIPCSの会議状況などを環境庁にどう報告しているか、そのことを教えてください。
  36. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 IPCSの日本からの参加メンバーは、熊本大学の荒木教授と筑波大学の山口教授でございます。  お二人の先生が、IPCSの御議論の中でどのように日本研究現状でありますとかまた議論を深めるために、どのような資料をお持ちになっていったのか、私どもは存じておりません。
  37. 馬場昇

    馬場委員 環境庁の職員もこの専門家会議に何回か出ているのですよ。だれが出て、どういう報告をしましたか。
  38. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 IPCSの予備の会議環境庁の職員が参加したことはございます。
  39. 馬場昇

    馬場委員 例えば、長官、五百三十五万の金をかけて、国費ですよ、私たちの税金ですよ、税金をかけて研究してもらった。どういう人に頼んでいるということも明かさない。これはIPCSに対するためにつくったわけですから、だれがどういうものを持ってその会合に行ったかも明かさない、こういうことがありますか。熊本大学の荒木教授は、こういうことを新聞記者の人に言っていますね。日本調査のデータがないのが寂しかったということを荒木さんは地元の報道機関に、この会議に出た人が言っている。何も持っていかなかったのではないでしょうかね、データがなかったから寂しかったと出席した荒木教授が言っているのだから。  これはともかくとして、この会合で、先ほど理事会で要求があって出ましたこの「メチル水銀環境保健クライテリアに係る調査」、これがその調査報告ですか。
  40. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 そのとおりでございます。
  41. 馬場昇

    馬場委員 こういう調査報告書には、例えば構成メンバーなんか書かないのですか。「実施担当者(順不同)」と書いて、こういうように墨で塗ってありますね。調査報告書が出ているのに何で名前を墨で消すのですか。
  42. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 今回提出をさせていただきました資料につきましては、この研究を行うに当たりまして、IPCSの検討というのが科学者レベルで純学問的な検討であることということで、公表しないことを前提といたしまして研究者の方々に率直な科学的な意見を求めたこと等でございます。
  43. 馬場昇

    馬場委員 ここにIPCSの最終報告が来ておりますけれども、これにはどこがどうしたというのはみんな書いてあるじゃないですか。いわゆるIPCSの研究専門家会議で、これは最終報告が来ているわけです。これにはどこの研究、どこの研究と書いてある。日本のは全然それを出さない、日本の国内において。外国は出すのが通例じゃないですか、これは。そこで、これは先ほど大臣調査をして報告をするとおっしゃいましたから、ぜひ先ほどの文書を二つとか構成メンバーだとか何とかを検討して、もう時間がたつばかりですから、出していただきたいと思います。  そこで、今は、第一次草案に対する日本の国の態度。もうはっきり申し上げまして、こういうことをすると大臣が先ほど言った過ちを再び犯しますよ。厳しくしなければ危ないという報告が来ているのに、厳しくすると行政に困るから反論をしましょう、つぶしましょうというような研究をしている。これでは日本環境行政、もう環境庁はない方がよっぽどいい。だから、そういう態度は 改めるようにひとつ申し上げておきたいと思います。  それで、これが、大臣ごらんになったかもしれませんが、第一次草案の原文です。それで、これを見てあなた方がさっき言ったような会合をして、慌てて反論をやったわけです。一年以上検討して、これが最終の報告書でございます。表には「IPCS、国際化学物質安全性計画メチル水銀環境保健基準」という形で来ております。これが最終の報告ですが、これは、前はWHOがさっき言いましたように一九七六年、昭和五十一年に基準を出してから、十四年ぶりの改定なんです。そしてある新聞社から、このIPCSの事務所はWHOにあるわけですから、この構成メンバーの一人であるWHOのウィルフレット・クライスルという環境保健部長に問い合わせたのです。そしたら、この文書の内容は、有機水銀も新たな研究成果が蓄積されたので、新しく改定作業を進めたものでございますと。そしてこの新評価基準は、これは新評価基準はと言っておりますけれども、文書に書かれている内容世界有機水銀を専門とする科学者の見解であり、書かれてあるとおりに受け取ってもらいたい、こういうぐあいにWHOの保健部長も言っているのです。この最終報告をどのように受け取っておるのか、説明してください。
  44. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 このクライテリアにつきましては、基本的には、その時点その時点における世界の科学者、専門家がそれまでの知見を集約いたしまして、こういうようなことに注意をすべきである、こういうことを各国政府はやってほしいという一種の勧告と申しますか、報告と申しますか、そういう形で出されるものと理解をしておりますが、このIPCSのクライテリアと申しますのは、そういうその時点における世界の重要な科学データを集めた、集大成したものということでございますので、私どもといたしましてはこれは十分重いものと受けとめまして、これをどうするかという問題について、専門家の皆様とも御相談しながら、対応を誤らないように今検討をしているところでございます。
  45. 馬場昇

    馬場委員 これは大臣もさっき答弁されましたので、今部長の答弁もあったのですけれども、この新評価基準について、文書に書かれている内容世界有機水銀を専門とする科学者の見解であり、書かれてあるとおりに受け取ってもらいたいと、さっき大臣も科学者の良心に基づいてする研究とかなんとかは尊重しなければならぬと言われましたが、そういうことをWHOの保健部長も言っているわけです。だから、今部長も言いましたが、この報告書というのは中には勧告と書いてあります。この勧告というのは十分尊重して、さっき言ったように一〇とか二〇とかというのでしろと書いてはないけれども、勧告にはそういうデータを挙げて書いてあるわけですよね。だからこの勧告は、大臣としてきちんと非常に重要なものとして、今部長も言いましたが、これを尊重して対応を立てるということでいいですか、大臣。あなたがさっき言ったとおり答えればいいんだ。
  46. 北川石松

    北川国務大臣 委員の重ねての御質問でございます。  私はやはり、技術者のデータ、報告というものは、その道に御本人のすべてをかけているという気持ちを持っていることは変わりがありません。  これは、自分の過去をここで言うことは差し控えたいと思いますが、私がその昔、戦争中でありましたが、ある化学会社で勤めておりまして、アメリカからパラジウムが入ってこないというので、既に使い古しのパラジウム触媒の廃液回収を命ぜられまして、それを成功いたしまして、そのピューリティーが九九・九八、九九・九七、九九・九九、九九・九八のピューリティーが専門家のアナリストの分析によって出されました。ところが常務が、アメリカの本にもアメリカで五五%のピューリティーしかないのを、おかしいじゃないか北川のは、もう一遍その分析をやり直せと言われた。その瞬間私はそのデータを、これくらいの厚さでありましたが破り、その四つのサンプル瓶をストーブの中へほうり込みまして、あしたから工員として工場で働きますと言って私はその会社の工場に勤務をいたしまして、研究室へは一切入らなかった。それだけの気持ちを持っておりますので、技術者の報告というものはその人間の命をかけて報告しておる、この気持ちには変わりありません。
  47. 馬場昇

    馬場委員 ぜひ、あなたが捨てられたのと同じぐらいの厚さがあるわけですから、これを命にかけてひとつ守っていただきたいと思います。  そこで、今ちょっと部長が言いましたけれども、これをきちんと実際に研究して対応に移す、こういうことを言っているのですけれども、まさか、さっきつぶそうとやった研究会、あれにこの研究を頼むわけじゃないのでしょうね。どこにどういうプロジェクトをつくって研究するのですか、この勧告を。
  48. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 このたびのIPCSの勧告の中で、今私ども一生懸命勉強している最中でございますけれども、一読をしたといいますか、ポイントのところで私ども理解をしておりますのは、一番重要なところは、胎児に対する有機水銀の感受性が、これは前のクライテリアにも紹介されておりましたけれども、今回のクライテリアはさらにそこを強調しているわけでありますが、成人よりも胎児に対する影響といったもの、感受性が高いことがいろいろな研究結果から示唆されているということでございまして、この部分について各国でしっかりした研究をやってほしい、いわば量と症状、反応との間の関係をはっきりさせますとか、いろいろなことがこの解明に向かって必要だということが指摘をされておりますので、幸いにいたしまして我が国におきましても、国立水俣病研究センターにおきましては実は従来から胎児の動物実験等の研究も手がけております。それからまた、いろいろこの私どもの水俣に関する研究にお手伝いをいただいている先生方も多いわけでございますので、こういう研究班先生方あわせまして、この胎児の影響についての研究には積極的に取り組んでいきたい、このように考えております。
  49. 馬場昇

    馬場委員 いつごろプロジェクトをつくりますか、そういう研究体制を。
  50. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 できるだけ早く先生方とは御相談を始めたいと思っております。
  51. 馬場昇

    馬場委員 できるだけ早くというのは、大体めどはあるのですか。
  52. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 実は、ちょっと日取りがまだ決まっておりませんけれども、比較的近い時期にいろいろ御協力をいただいている先生方が集まっていただけるチャンスがございますので、そのときに御相談をいたしましてその後の対応を決めたいと考えております。
  53. 馬場昇

    馬場委員 これは大臣にも申し上げておきますけれども、どういう学者をまたここに集めるのか。水俣病研究センターでもやると、それはもうあそこのセンターにおる人はわかっておりますけれども、どういう学者を集めるのか。そして、こういうものには、学識経験者というのもそれだけの地位とか経験もあるのでしょうけれども、水俣病に関する限りは、現地に住んでそこの海を見、そこの魚を食べ、そして暮らしている人、例えば魚について言えば、漁民なんかは博士と言ってもいいぐらい何でもよく知っているのですよ。そういう意味で、利害関係者といいますか患者といいますか住民といいますか、そういう者を参加させるとか、そういうものが見れるというか、はっきりした公開で、またメンバーを選ぶときには、この人はおかしいじゃないか、確かに患者側から見れば札つきのような人、私から見てもこの学者のやることはおかしい、かつてチッソ水銀排水のときに爆弾だとか何とか言うた学者もいっぱいおるわけですから、認定審査のときに患者との信頼関係を持つような人をやれと私がここで主張したのもそれですけれども、少なくとも信頼されるような研究者、学者、そして住民も必要に応じて参加させるとか、みんなが見えるところで公開でやるとか、そういう種類のこれに対応する研究プ ロジェクトをぜひつくって公開で早くやってもらいたいと思いますが、どうですか。
  54. 北川石松

    北川国務大臣 委員の重ねての御指摘と、また質問でございます。  私は、学者がそれぞれの専門的メンツにかけて研究データを報告する、これは大変高く評価しなくてはならない。ただし政治的配慮ということになりますとまた別でございます。政治的配慮をして決定するときは別でございますから、ただ学者間の研究のお互いのディスカッションというのは、私はとうといと思いますし、そのことについて、ある学者はこういう見解を持っておる、この学者はこういう見解を持っておるというお互いの研究の討論ということは、時には秘密にもしなければいかないと思っております。ただ、最終的に決定する政治的判断というものは公開しなければいかない、こういう考えを持っております。
  55. 馬場昇

    馬場委員 ちょっと今のは意味がわからないのですけれども、例えばずっと研究がこれに載っておるわけでしょう。これを研究するわけでしょう。どこに秘密がありますか。そして学者の研究は厳正でなければならないけれども、政治的判断は別。学者は一〇、二〇にせいと言うとき、政治的にはいや、やはり五〇にしなければ大変混乱するぞ、そういうことじゃまさにないんでしょうね。どうですか、今の言葉ちょっとよくわからなかったからもう一遍言ってください。
  56. 北川石松

    北川国務大臣 委員の御指摘のときに私の申しておりましたのは、クライテリアだけじゃない見解の中で、学者のそういう意見はとうといということで、あるいは自分の言うていることを公開することは好ましくない、そういう意味で申し上げたのでありまして、このクライテリアの現在まで行われた学者間の、そういう既に行われたことについてのことはみんな承知のことでございますから、ただ、私がきょうここでいろいろと委員からの御質問を受けながら初めてお聞きさせていただくこともたくさんございますので、そういうことを思いながら、つい私は学者のとうとい研究というものに敬意を払って申し上げたのでございまして、政治家政治的判断をするのと学者の研究とはおのずから別個のものでございますから、私の言った言葉の中で間違った点があれば訂正をさせていただきたいと思っております。
  57. 馬場昇

    馬場委員 これは要望しておきます。ぜひ早く、しかも公開で、国民の注視の中で国民が納得するような対応のためのプロジェクトをつくってやってくださいということです。  それから、このクライテリアを見てみますと、いろいろなことが書いてございますが、十五ページに人体への影響というのが書いてあります。人体への影響というところで、メチル水銀の人体への影響は成人と胎児や幼児とは違う、両者への影響は区別して考えられなければならない、人体への影響についてこのクライテリアはこう書いているのですよ。当たり前の話であって、これは大臣もこの間答弁されましたけれども、作物ができてくるとき大きくなった作物と芽のときは違うとおっしゃいました。これはきちんと誠意を持って対処をするとおっしゃったのですが、メチル水銀の人体への影響は成人と胎児や幼児とは違う、両者への影響は区別して考えられるべきである。今五〇ppmで、大人だろうが幼児だろうが胎児だろうがその基準一つでいっているのですが、これを区別しなければならぬと。いとも当然、学者でなくてもわかるのです。学者がきちっとそう言っているわけですから、これは尊重しますね。
  58. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 今お示しになりました数値の話でございますけれども、前のクライテリアの中におきましては数値は一つ、毛髪中の水銀値が五〇ppmということでございましたけれども、今回の新しいクライテリアの中におきましては、成人に対する数値はそれでいいけれども胎児に対する影響はそれよりも低いレベルでもあり得るかもしれないという指摘で、その辺のところを各国政府はよく研究してくれ、こういう御指摘でございますので、そのクライテリアの意を受けまして私どもも努力をしたい気持ちでございます。
  59. 馬場昇

    馬場委員 大臣、これはやはり政治家として常識として言えることは、大臣も言われた強い者と弱い者と個人差があるわけですから、基準をつくるときは弱い者に合わせる。魚だって嫌いな人とたくさん食う人とおるわけだから、こういうぐあいに結局弱い者を、またメチル水銀の暴露に弱い者を基準にして基準はつくらなければいかぬ、こういうことは当然でしょう。
  60. 北川石松

    北川国務大臣 委員の御指摘のとおり、メチル水銀は完全に悪いということははっきりしております、毒性の点について。でございますから、ppmが二〇であろうと五〇であろうと、二〇でもそれはやはり人間だけでなしにすべてに及ぼす害というものはやはりそのことをよく認識しなければいかぬ、私はこういう思いを持っております。
  61. 馬場昇

    馬場委員 次に、これは結論というところがございます。ここにイラクの研究症例が出ておりますね。このイラクは一九七一年に、これはもう御存じと思いますけれども、イラクで穀物の不作がございました。そして小麦の種さえなくなったというときに、小麦の種を輸入したのですね。これがメチル水銀で消毒されてきて輸入したわけです。だからこれには黄色い色をつけてある。そして種が来たが、それをまくときに時期がおくれたわけですよ。それが農家のみんなに配られたわけです。ところが、もうまく時期じゃなかったものだから、黄色く着色してあるのをみんな洗いまして、それを粉にして自分でパンをつくって焼いて食べた。それがいわゆるイラクの集団水銀中毒事件でございます。そうして六千五百人ぐらいが入院して四百五十人が死亡した、こういう事件ですね。このイラクのメチル水銀中毒事件を、バグダッドの医科大学とニューヨークのロチェスター大学、このロチェスター大学の教授がこのIPCSの第一次原案をつくった人ですね、この大学で調べたのが出ておるわけでございますが、この人がどれだけ調べられたかというと、妊娠しておった人の毛髪水銀を集めましたら、大分おりまして、その中で八十四組の人について、妊娠しておったときに暴露を受けた人と生まれた子供、この相関関係を五年にわたって調べているわけです。その中から、やはり妊娠している母体が有機水銀を食べたときに、イラクの研究症例で、母親の毛髪水銀値が最大一〇ないし二〇ppmでも、これには五%と書いてあるようですけれども、幼児に神経障害が出る可能性がある、こういうぐあいにこれに書いてある。そして別に、ここにありますけれども、カナダのインディアンの水銀汚染、母親の妊娠中の毛髪水銀値というのは一三ppm、ニュージーランドで魚を多食する妊娠の毛髪水銀値一三ないし一五ppmで子供に発達遅滞が見られる、こういうことも書いてあるわけでございまして、このように一〇ないし二〇でも胎児に危ないということが出ておるわけでございますから、先ほど答弁ありましたように、その辺に重点を置いて日本の基準をどうするかということについてぜひひとつ対応していただきたいと思います。  このイラクの研究論文についての評価はどういう評価を――研究しておりますか、まだ研究中ですか。
  62. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 今先生からの研究しているかというお尋ねは、我が国においてイラクのケースを研究しているかという……(馬場委員「その論文をそのとおりだときちんと確認しておるかどうか」と呼ぶ)確認でございますか。今クライテリアにつきましては勉強中でございまして、これからいろいろ専門家の御意見も伺いながら、中身について詳細に検討をしていこうというところでございますけれども、私どもが読みました範囲内では、確かにイラクのケースの中で一〇ppmから二〇ppmの毛髪水銀値が出た妊婦から生まれた子供さんに精神、運動遅滞が認められた、したがってそのぐらいのレベルで精神、運動遅滞が起こる可能性がある、こういう指摘がなされているのは事実でございます。
  63. 馬場昇

    馬場委員 このクライテリアの中に防止法という見出しで書いてあるその中に、百グラム・ パー・デー、一日に百グラム以上の魚を食べる人間では、出産年齢にある女性の毛髪水銀量をきちんとはかるべきであると出ているわけです。例えば水俣とか新潟とかこういうところで、従来一回やったことがあるのですけれども、追跡調査などしておりませんが、少なくとも現在において出産年齢にある女性の毛髪水銀量ははかるべきである。事実、熊本とか鹿児島というところが少しずつやろうとかやるとかいう方向でありますけれども、環境庁としてはこういう報告も出ているんだから、妊娠可能性のある女性の毛髪水銀はやはり調査すべきである、こういうふうに指導してもらいたいと思うのですが、どうですか。
  64. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 現時点において妊娠可能年齢の女性の毛髪水銀を調べる気はないかというお尋ねでございますが、今先生も御指摘になりましたように、過去におきまして、それから現在におきましても、少数例ではございますけれども、鹿児島県の出水市等におきまして毎年、それほど多い数ではございませんが毛髪の調査が行われております。このような今までやりましたデータ、それから現在やっておりますデータ等も参考にさせていただきながら、この毛髪調査の問題につきましては、専門家の御意見も聞きながらどうするかということについて検討をさせていただきたいと思っております。
  65. 馬場昇

    馬場委員 検討させてください、何をさせてくださいと言って、だれが日本環境行政をやっているのです。大臣でしょう。調査、検討中でございます、調査をいたします、調査内容は表に出せません、こんな環境行政ありますか。少なくともこの毛髪水銀は危ないとこれに書いてあって、専門家がやったのは尊重すると言っておられるのだから、妊娠可能女性の毛髪水銀をはかれと書いてあるのだから、はかりますと――やり方についてどうするかということは地方自治体の関係もあるだろうから相談することがあるけれども、環境庁の指導方針としてはかる、こういう指導をするのは当たり前じゃないですか、大臣どうですか。
  66. 北川石松

    北川国務大臣 委員の御指摘でございます。これはやはり関係の奥様方の毛髪をはからせていただかなくてはいけないということもございますので、その点をよく踏まえまして、前向きで対処してまいります。
  67. 馬場昇

    馬場委員 毛髪水銀調査を前向きでというのは一体どういう意味ですか。やるならやると、やり方については検討させてくださいと言えばいいでしょう。
  68. 北川石松

    北川国務大臣 それはやはりいろいろの事情も踏まえながら……(馬場委員「どういう事情がある」と呼ぶ)事情といいますのは、やはりその方にもお聞きせにゃいかぬ、専門家にも聞かにゃいかぬ、そういういろいろの方の意見を聞いて、前向きでということはやはり実施の方向に向かっていきたいという含蓄を含めて、答弁させていただいております。
  69. 馬場昇

    馬場委員 あなたは環境庁長官ですよ。やるかということで、そして具体的には専門家にどうすればいいのですかと。あなただって再び過ちを犯しますよ、それでは。さっき一生懸命深刻な顔をして、もう二度と再びこういうことを起こさないように頑張ります、環境庁設置法と公害対策基本法、その趣旨に沿ってやるとあなた言ったでしょう。何でそのくらいのことを言えないのですか。やり方については、私だって思うのですよ。例えば今妊娠しておられる、ではその人を直接やるかどうかになってくると、水銀が高かった場合に出産するかしないかというようないろいろな問題もある。そういうことがあるから、やり方についてはいろいろそういうことを検討してもらわなければいかぬ。しかし危ないんだから、やる方針で具体的には検討させてもらいます、そのことも言えなかったら、あなたはもう環境庁長官、だめですよ。どうですか。
  70. 北川石松

    北川国務大臣 重ねての御指摘でございます。環境に関し、特に人体に関し、それはもう前向きで全部やっていきたい。ただ、やるためにはいろいろの問題があると思いますので、その点をよく踏まえて物をやっていきたい、こういう思いで申し上げておるのでございます。
  71. 馬場昇

    馬場委員 あなたの先生三木さんは、ちゃんとヘドロ処理はします、水俣病研究センターをつくります、そして具体的にどういうことを今から事務当局に検討させます、こういう答弁でしたよ。あなたは全然先生の言うことも聞かぬじゃないですか。それはあなたの先生でしょう。はっきり言いなさい、やりますと。ここに書いてあるのを尊重するとあなたは言ったのでしょう。それをもう一回。――あなたは大臣じゃないですから黙ってなさい。
  72. 北川石松

    北川国務大臣 再度の御質問でございまして、特に三木環境庁長官をここに出してまいられますと、その先生の精神をその門下生として勉強してきた一人でございますので、三木先生以上の情熱を持ってやっていかなければいかぬという思いは持っております。
  73. 馬場昇

    馬場委員 人間思いだけで動けば行政はいいのですけれども、しかし、あなたの気持ちはわかったから、やるという気持ちがわかったから。  そこで、あと一つだけ、また午後やりますけれども、この基準が来ているんですよ。これを日本語に訳して、少なくとも国民が全部読めるように直ちに訳して国民の前に明らかにしていただきたい。それからもう一つは、今すぐ全文ができないというならば、この中の十五ページに人体、人間への影響というのがある。十八ページに結論というのがある。それから、八十六ページにイラクの研究症例があります。百四ページに勧告というのがあります。百六ページに国際的組織による事前評価、こういうのがあります。こういうところは見てみて重要ですよ。こういうところだけ早く訳して、その部分でも国民の目に見えるようにやっていただきたい。大臣どうですか。
  74. 北川石松

    北川国務大臣 御趣旨のとおり、一日も早くでき上がっていくように努力いたします。
  75. 馬場昇

    馬場委員 では、午前中は終わらせていただきます。
  76. 戸塚進也

    戸塚委員長 午後一時五十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ────◇─────     午後一時五十分開議
  77. 戸塚進也

    戸塚委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。馬場昇君。
  78. 馬場昇

    馬場委員 先ほど、大臣、委託研究のことについて触れたわけですが、これほとんど非公開にしてあるのですね、報告書なんか、さっきは委員の名前さえ明らかにしなかったのですが。これはもう一般的に言って今までそうやってきているわけですけれども、これは環境庁だから、そしてもうすべて今のこの情報公開の世の中にこういうことはあり得ないと思うので、原則としてやっぱり環境庁調査委託なんかは公開にすべきだというふうに思うのですよ。今後公開の方向でやはりこういうものには対処していく、そういうことについて大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  79. 北川石松

    北川国務大臣 委員の、公開すべきである、公開の原則という点から見ても公開しなくちゃいけない。ただ、個人のプライバシーのことになったときにはやはり慎重に行わなければいけない、こういう思いを持っております。
  80. 馬場昇

    馬場委員 今言われたとおり、公開の原則を貫く、ただしプライバシーについては公開しないというのが常識でございまして、ぜひ今後調査委託はそういうぐあいにやっていただきたいと思うのです。  そこで、調査委託を大分やっておられるようですが、一覧表も少しもらったのですけれども、ほとんど全部非公開と書いてあるところにただ一つ公表というのが水俣病に関する総合的研究、あとは全部非公表になっているのです。この水俣病に関する総合的研究というのは、昭和六十二年度環境庁公害防止等調査研究委託費によるものであって、水俣病に関する総合的研究ということ で、昭和六十三年三月に委託されました水俣病に関する総合研究班と財団法人日本公衆衛生協会、こういうのが冊子にして報告書を出しているのですよね。これは、もともと始めたときから公表なのか、この冊子が出たから公表にしたのか、どちらですか。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕
  81. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 水俣に関する総合的研究でございますけれども、この研究は相当昔から、昭和四十三年、まだ厚生省時代からの医学研究の継続でございまして、その当時からいろいろな多方面にわたる水俣病に関する総合的な医学研究を進めてきたものでございます。
  82. 馬場昇

    馬場委員 そうしますと、公表にこだわりますけれども、厚生省時代からやっているのだけは公表、環境庁になったら皆非公表、こういうデータが出ておることを指摘しておきたいと思うのですが、この公表されましたデータによりますと、国立予防衛生研究所の室長の衞藤光明さんという先生、この人は元熊大医学部の講師をされて病理学の先生ですけれども、この人が、ここにありますけれども、胎児性水俣病が疑われた猫の解剖検例というので本に書いてございます。これを見ますと、昭和四十八年四月、水俣市内の患者宅に生まれた子猫が、解剖したところが水俣病に罹患しておる、こういう所見を出しておられます。そして、胎児性水俣病が疑われる猫の一部検例を先ほど言ったように発表しておられるのですが、この考察のまとめとして、「本例は明らかに有機水銀中毒症に罹患したネコといえる。本ネコが昭和四十八年に発症した胎児性水俣病であるということは、少なくともその時点まで水銀汚染のある魚介類が存在しており、それを多食したネコが自然発症したという歴史的証拠になる」こう書いてございます。  だから、四十三年から水俣病発生していないという国の方針ですけれども、これを見ますと四十八年に胎児性水俣病猫が発生しているわけですから、四十三年以降も水俣病発生した、こういうことになっているのですが、その辺についてはどうですか。
  83. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 総合的研究の中で、御指摘のように昭和四十八年に水俣市で生まれた子猫が水俣病にかかっていたという論文はございます。その解剖の結果、脳に有機水銀の沈着があったということでございます。ただ、この猫につきましては、確かに病理診断等の結果によりまして水俣病人間でございましたら水俣病と同様の病像を呈していたということでございますけれども、この猫は出生前後におきましてどの程度の水銀暴露を受けていたのか、またこの子猫の母親がどのような生活歴をとっていたのかということがわかりませんために、水俣湾環境状況との関連については詳しい判断はしかねるところでございます。私どもの持っている資料によりますれば、四十三年以降に人間水俣病を発症された方はないと思っております。しかし、水俣湾でとれます魚の摂取、摂食といったものはこの四十三年以降なくなっているのではないかと思っております。この猫の状況をもちまして人間水俣病発症にはすぐには結びつかないと私は考えております。
  84. 馬場昇

    馬場委員 あなた方がお金を出して調査研究を委託して、その学者が猫を解剖して、四十八年に生まれた猫に水俣病が発症しているという、それでこのことは、最後にこれは「歴史的証拠になると考える。」ということまで衞藤先生はつけ加えておるわけでございまして、さっき大臣言いましたIPCSが五〇ppmというのを一〇ないし二〇ppmで胎児には影響があるというのを出したのと同じ研究成果ですよ。イラクの例と全く同じような研究成果が日本においてもここに出ておる。だから、四十三年以降発症していないなんということは考えられないし、発症しておるという歴史的な証拠としてここに研究委託した人が出しているのですから、もうそういう立場で今後水俣病行政をやってもらわなければいかぬと私は思うのです。これについて、大臣、そう思われますか、どうですか。――いや、あなたは一遍答弁したからいいですよ。  じゃ、大臣、とにかくそういうことで、こういうあなた方がしたのにも四十八年に生まれた子猫にも水俣病が発症した、これは歴史的証拠だという、ちょうどイラクの一〇ないし二〇ppm、あれと同じようなのが出ておるんだから、それを参考にしながら、そういう方針をとって今後水俣病認定をやっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから次に、この研究の中で重松委員会というのがございますね。これは総合的調査手法の開発に関する研究というので昭和五十四年度からやっている非公開のものですか。
  85. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 先生お尋ねの重松委員会、総合的調査手法の開発に関する研究班でございますが、五十四年からスタートいたしております。
  86. 馬場昇

    馬場委員 これは昭和五十三年に、委員会もこの場所でやっておりました。この場所で私の方から提案をいたしまして、満場一致で水俣病問題総合調査に関する件というこの環境委員会の決議を上げました。それをちょっと読んでみますと、   水俣病は事実判明後、二十二年を経た今日においても医学的病像さえも、今なお未解明であり、被害の全体像及びそれが及ぼした影響等について、実態が明らかでない。   水俣病問題解決の遅滞をなくし、住民の健康が守られ、環境が改善され、豊かな社会生活がいとなまれるための、完全な水俣病対策を樹立するには、基礎となるべき水俣病問題の総合調査を行う必要がある。   世界最大水汚染公害の実態と影響を正しく総合的に把握するためには、総合調査のための行政措置、立法措置の検討が必要であると考える。   よつて、左記事項を検討し、特別立法化を含め、速やかに成案を得るように努めるものとする。 そして、記として、   水俣病健康被害漁業被害及び環境破壊等、医学的、生物学的調査及び各分野への影響等について このことを満場一致でここで決議を上げておるわけでございます。そして、こういう決議が上がりましたときには慣例として大臣がこれについて所信を申し述べるのですが、普通附帯決議とかのときは、努力しますとか検討しますとかなんですけれども、これには当時の山田環境庁長官は、必ず実施します、そういう政府の意思を表明しているのです。  この総合調査の決議に基づいてこの研究調査は始まったのですか。
  87. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 先生指摘のとおり、調査手法に関する調査研究、五十三年の特別決議に基づいてスタートをしたものでございます。
  88. 馬場昇

    馬場委員 それから、これもまた非公開になっておりますが、きょう、実は一つのレポートを理事会で配付されておるようでございます。これに従って現在調査研究がもう十年たっていますよね。具体的に何か環境庁としてこの決議に基づいた調査を、幾らの予算を使って、いつ実施したということが言えますか。
  89. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 この調査研究は、五十三年の特別決議に基づきまして五十四年からスタートをいたしておりまして、十年以上経過するものでございます。毎年約六百万ほどの研究費をもちまして種々の研究を継続いたしております。当初の時期には、過去におきまして、八代海沿岸で行われました水俣病の住民健康調査、また、新潟において行われました住民健康調査等の評価検討が行われております。その後、五十七年には毛髪調査といったものもやっておりました後、新しくどのような形の手法がこの総合的な調査研究の手法として使えるかということで、死亡登録の問題でございますとかサーベイランスの可能性、また環境モニタリングの手法等々、また地域で行われております老人保健法による健康診査等々のことが行われまして、現時点ではこれらのいろいろな検討の結果に基づいてまとめの段階に入っております。
  90. 馬場昇

    馬場委員 十年たっているのですよね。まとめというのは、いつまとめるのですか。じゃ、いつまでまとめるかということをはっきり言ってください。
  91. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 現在まとめの段階に入ったところでございまして、今いつまとまるかということをこの場で明確にお答えすることはなかなか困難でございますけれども、私どもとしては重松班長さんにできるだけ早い時期にお取りまとめをいただくようにお願いをしているところでございますし、また重松班長も、そのような方向で努力をしたい、こうおっしゃっていただいております。
  92. 馬場昇

    馬場委員 これは経過を言いますと、水俣病総合調査法というのを社会党から私が提案しているのです。これを今審議しております臨時措置法よりも前にこの委員会で提案したわけです。ところがそれを審議していないで、臨時措置法が出ましたものですからやはりそれを審議すべきじゃないかというとき、私どもが出しております総合調査法の項目を全部書いてこれをやるという決議をやったわけです。だから、その法律が通らぬでも、この決議があったから、じゃ臨時措置法の審議に入りましょう、こういう形でこういう決議をしたいきさつがあるわけです。それから十年でしょう。国会決議をした。ところが、これは委員も秘密ですか。それから、報告書も秘密になって、これを見ますと非公開となっています。国会で決議してつくった委員会、そして総合調査するのを研究するのが、何でこれは秘密、非公開ですか。
  93. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 この調査手法の研究でございますけれども、今まで非公開、こういうことで申し上げてまいりましたのは、それぞれ違った研究手法といいますか研究の中身をもって継続してまいりまして、それぞれの個々の研究の中身につきまして今のところ非常にまだ濃淡がございます。非常に議論が熟した部分、また熟してない部分、それからいろいろな手法の中で実現可能性があるもの、ないもの、いろいろまだ濃淡がございまして、このようなものを総合してまとめた段階で公表をする、そういうことで今の段階では非公開ということにしてございます。
  94. 馬場昇

    馬場委員 十年間もたっているのですから、これはきちっとやってもらわなければ。その間に臨時措置法というのが、今回のこの審議で三回延長になるのですよ。ひとつ頭に入れてやっていただきたいと思います。  時間がありませんので、もう一つ、次のに移ります。  大臣も聞いておいてください。この間もちょっと申し上げたのですけれども、まず住民の願いというのは、これは三木さんが行きましたときも、そんなたくさんの願いを持っていないんだ、きれいな海を返してくれというのが第一の願いだ、体をもとどおりにしなさいというのが願いだ、こういうような話を患者さんも悲痛に言われたわけでございます。そのときに三木さんが、水俣湾のヘドロは除去します、そして、治せというのには、研究センターをつくりますということで対応されてきたのですが、この水俣湾ヘドロ処理事業は昭和四十九年に始まりまして、総工費四百八十億で、ことしの三月に竣工、終わった、あなた方はこう言っておられるわけでございます。ところが、二五ppm以上のところを処理したのであって、二五ppm以下のヘドロは水俣湾にはまだいっぱいあるわけです。徳山湾は、あのヘドロ処理をしましたときには一〇ppm以下をやったのです。一五ppmと言っておりましたけれども、実際は一〇ppm以下のヘドロは全部除去したのです。こういうことで、二五ppmのヘドロが残っておるということは、先ほどの猫の発症もあるし、IPCSの胎児性水俣病の話もありますが、きれいになったと絶対に言えない、こういうぐあいに私は思います。  そこで、今問題になっておりますのは、そのヘドロ処理が終わったところで、昨年の夏と冬に二回、熊本県が水俣湾におる魚を全魚種捕獲しまして、水銀汚染調査をしたのです。ところが、二百種の検体のうちから魚介類の規制値を上回った魚が十六種類おったのです。それなのに、今あそこは工事中、魚はとらないと自主規制しているわけですけれども、その自主規制も排除して漁獲禁止を解く、魚をとってよろしい、そういう方針を熊本県が打ち出したわけでございまして、これについては、本当に皆さん、全市民、反対です、そして漁獲禁止自主規制であろうとも続けなさいと。政府が決めた魚介類の安全基準を上回っておる魚が十六種類もおるのですから、それを食ったら、特にこのIPCSの報告もありましたし、IPCSのこの報告の中の百四ページに防止法ということがあって、妊娠中の長期暴露の可能性を減らすためには国際的な許容基準以下にする、例えば今では五〇ppm、一〇―二〇ならそれ以下にする食事の指導をしなければならぬ、これが防止法だ、こういうぐあいにIPCSにも書いてあるわけです。  そこで問題は、今全住民が漁獲禁止を解除するな、こういうことを言っておる。これに対して環境庁はどう考えているか。これは漁獲禁止の問題ですから、水産庁にも関係があります。そして、食品衛生で厚生省にも関係があるのです。だから、この汚染魚は基準以上の魚がおる、それをとってよろしい、食べてよろしい、販売してよろしいという方向に行こうとしておる、それに対する考え方を各省庁言ってください。
  95. 吉崎清

    ○吉崎説明員 水俣湾の漁場開放につきましては、湾内の魚介類の汚染状況を慎重に評価して行うべきことであり、現在なお一部の魚介類が暫定的規制値を超えている状況を考えますと、御指摘のとおり、漁獲禁止の解除は時期尚早と考えております。
  96. 難波江

    ○難波説明員 魚介類のメチル水銀の暫定的規制値でございます〇・三ppmを超える魚介類につきましては、従来から食品としての販売等を規制してきたところでございまして、今後とも引き続き規制してまいりたいと考えておるところでございます。
  97. 安橋隆雄

    安橋政府委員 先生指摘のように、一部の魚から規制値を超えるような値が出ているということでございますので、慎重に扱っていただきたいというふうに考えておるところでございます。
  98. 馬場昇

    馬場委員 大臣。水産庁、厚生省環境庁から同じ問題に対する答弁を今いただいたのですが、お聞きになっておってどうですか。環境庁答弁が一番いいですか、悪いですか。だれが命を守り、健康を守りますか。全く話にならないのです。水産庁は漁獲禁止を解除してはいかぬ、厚生省は基準値を上回るものが食卓に出回るようなことをさせてはいかぬと言うのですが、環境庁は慎重に対処したいと思います、これで命と健康は守られますか。ぜひほかの省庁に倣って、命と健康を守るようなことを環境庁はしなさい。  これは裁判所もちゃんとそういうことを、これまた歴史を言いますと古くなりますけれども、東京高等裁判所がこういうことを言っておるのです。川本君の傷害事件の裁判がありまして、東京高裁から判決が出ておるのです。それに「当初奇病と言われた段階から十五年間も水銀廃液が排出されている状態を放置しておかなければならない理由は見出せない。熊大研究班による地道にして科学的な原因究明が行われた経過の中で、熊本県警も熊本検察庁検察官も、その気がありさえすれば、水産資源保護法、同法等に基づいて定められた熊本漁業調整規則、工場排水等の規制に関する法律漁業法、食品衛生法を発動して加害者を処罰するとともに被害の拡大を防止することができたと考えられる。」これは東京高裁の判決です。確定しておるのです。そういうこともございますから、ぜひ漁獲禁止を解除することはやめさせるということで指導をお願いしたいと思います。  次に、きょうの本論の水俣臨時措置法について、一言二言お聞きしておきたいと思います。  この臨時措置法は、経過は皆さん御存じのとおりでございまして、五十三年にできました。このできます背景には非常に政治的なものがありまして、私も審議のときにこの場所で相当追及したの です。あのころ、不作為違法の認定業務に対する判決が出まして、熊本県知事は認定業務をもう国でやってくれ、熊本県議会は認定業務を返上すると決議をした。そのころチッソも、金融支援とか何かを受けなければ倒産するというような状況がありまして、チッソに対する県債の発行もございました。それで金融支援もございました。そういう中で、結局、県債も出さなければならない、金融支援もしなければならないというときに、官房筋とか大蔵省が、とにかく幾ら患者が出るかわからぬ、そういうときにこういう支援をするのはおかしい、だから、日程とか審査を厳しくするわけです。そういうような意見がそのとき相当出まして、それから、裁判は不作為違法で国は何もしていないという裁判の判決も出ておりますし、そういうもろもろの背景の中に、私に言わせれば切り捨てるために、促進するために、あるいは県債を出すために、あるいは裁判所で何もやっていないという裁判が争われておる、それに対する対策のためにとか、いろいろな政治的な背景を持ってこういうのを出したのではないかということもここで大分議論いたしましたが、きょうはそれはおきます。  とにかく、これについてきょう資料をもらいました。どれだけ認定が、審査があったかといいますと、最近の五年間を出せと言ったものだから五年間ありますが、この臨時措置法で、五十九年度は二十五人おりました。六十年度は処分者が一人もいないのです。六十一年度が二人、六十二年度が六人、六十三年度が七人、これだけしかこの審査会は処分はしていないのです。それが、熊本県を見ますと、五十九年度が五百二十九人、六十年度が四百四十人、六十一年度が千五十三人、六十二年度が千三百四十五人、六十三年度が九百七十五人。この臨時措置法による審査会は、六十年度はゼロです。そういう中で六十年度を見てみますと、処分がゼロだった審査会で使った金は二千四百八十五万六千円。それから、六十一年度から熊本県が一人処分するのに要した費用は、六十一年度三十五万円、六十二年度二十六万円、六十三年度三十八万円。ところが、この臨時措置法では、六十一年度は二人しか処分しておりませんから、一人処分するのに四百十七万円かかるのです。六十二年度は一人処分するのに九十八万円かかる。六十三年度は一人処分するのに九十六万円。熊本県の三倍くらいかかっている。そして数がわずか。こういう点からいいますと、この審査会というのはやはり国費のむだ遣いだと言われるゆえんのものが数字としても出てきておるのですよ。そういう点で、今の状況の中でこれをまた延長して国費のむだ遣いを続けるというのは問題である、私はこういうぐあいに思いまして、これについては熊本県でも進んでいるわけですから、もう延長する必要はない、こういうようなことを申しておきたいと思います。非常に時間が切迫いたしましたので、これはもう答弁は要りません。  次に、今の水俣病患者さんたちの動きあるいは住民の考え、国民の考えというのを見てみますと、象徴的にみんなが言っているのですけれども、もう患者さんが七十歳とか八十歳とかになっているわけですね。だから、処分を受けずに、また、何の救済も受けずに亡くなっていく人が物すごく多いわけです。だから、生きておるうちに救済をというのが、患者さんだけでなしにすべての人たちの声となって今起こっておるのは実は大臣も御承知と思いますが、これは承知しておられま
  99. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 申請をなさっている方が年々高齢化なさっておりまして、また、審査をお待ちになっている間に亡くなっている方もいらっしゃるということも事実でございます。そういう意味から申しましても、私どもといたしましては、今取り組んでおります認定業務というものに力を入れまして、できるだけ早く救済してさしあげられる方は救済するという立場から努力をしているところでございます。
  100. 馬場昇

    馬場委員 この歴史を見ますと、この審査会というのは、さっき私は言いましたが、一人も患者が見捨てられないように救済する、これが法の精神であり、ここで前の山田環境庁長官が統一見解としてちゃんと文章を読み上げて示されました。そういうことがあるのですが、実際は検診拒否が行われたり、審査会を信頼なさっていない。行政のいろいろ事務が進まないということとまた別の角度で、患者が審査会を信用していない。こういう中でおくれてきたという経過もあるわけでございますから、急ぐという場合には両面からやらないと急ぐことにはならないということをまず申し上げておきたいと思います。  これは基本的なことですから大臣に聞きますけれども、公害健康被害補償法、私が読みますから。第一条の目的にその締めくくりとしてこう書いてありますね。「健康被害に係る被害者等の迅速かつ公正な保護」「を図ることを目的とする。」公害健康被害補償法の目的は迅速にかつ公正にやれ。法の最も求めておる迅速にやれというのは当然なことです。法に従ってあなた方は行政をしているわけだから、この補償法の迅速にということを守らなければならぬ立場であるわけですが、この補償法の迅速にかつ公正にということについて、長官は遵守してやるという気持ちを再び患者さんや国民の前に明らかにしてください。言わずもがなのことですけれども、明らかにしてください。
  101. 北川石松

    北川国務大臣 ただいま委員の、公害法の中で迅速にということを御指摘になりまして御質問でございますが、もちろんこれは迅速に進めていかなければいけない。その際には、もちろんいろいろなデータも必要でございますが、専門家の意見も十分聞かなくちゃいけない、いろいろございますが、公健法に基づきまして行わなくちゃいけない、こういう気持ちでございます。
  102. 馬場昇

    馬場委員 もう一つ側面のお話をしますけれども、この水俣病にかかわる民事、刑事、行政、いろいろの裁判がありますね。今まで水俣病にかかわる国、行政、またチッソ、加害者等で幾ら裁判が行われたか、そして行政側はどれだけ勝ってどれだけ負けたか、敗訴、勝訴の数をトータルで、結果だけでいいですから出してください。
  103. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 ただいままでにいろいろな民事上の訴訟が行われておりますが、国がかかわっております今係属中の訴訟は九件あるわけでございます。今までに判決が出ました分につきまして国が勝訴した例はございません。
  104. 馬場昇

    馬場委員 世界じゅう見ても、また日本でも戦前戦後を見ても、同じ事件でこれだけ何十件も裁判が起こるという例は空前絶後ですよ。今までないですよ。今言ったように、国が勝ったためしはないというんだから、いかに国の対応がまずいか、こういうことを園田さんとか石原さんが指摘されておるわけですよ。私も、自分のことですけれども、この委員会で、また予算委員会で環境庁に対してこの水俣病にかかわってきょうの質問で四十八回目です。日本のこの国会の歴史の中で同じ事件についてそんなに質問したのは初めてです。裁判が世界で初めて、日本で初めて。国会の質問、今各政党たくさんの人がおられるわけですから、水俣病にかかわって国会で議論された数を数えますと莫大なものです。それも日本の歴史、国会の歴史始まって以来初めてのこと。そういうものの背景の中に、本当に悪かったという、罪がたくさんあるのです。水俣病被害を未然に防がなかったという罪がある、長引かせたという罪がある、現在でも仕事を余り進めないという罪、たくさんの罪があるのですよ。そういうのがまた裁判にかかっているわけですけれども、そういうことで長引かせているのは環境庁ですよ。  そこで、具体的に一つ申し上げますと、六十二年三月にいわゆる社会的に水俣病第三次訴訟というのが行われまして、熊本地方裁判所で、これは完全に国が敗訴、国とか県に責任がある、患者認定基準は厳し過ぎる、こういう人はちゃんと補償しなさい、賠償もやりなさい、こういうような判決が出たわけですよね。これは六十二年の三月。ところが、これについて政府は控訴したわけです。控訴するとまた何年かかるかわからない。 今また裁判も大分行われておるわけですけれども、この第三次訴訟を控訴したという理由、これが公健法に言う迅速な救済というものとのかかわり、これを考えなかったのかどうか、こういうことについて、そのときも質問しましたけれどもさらに念を押して聞いておきたいと思います。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  105. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 六十二年三月の水俣第三次訴訟の控訴の件でございますけれども、この訴訟におきましても原告と被告との間の主張の隔たりというのは大変大きかったわけでございまして、やはり被告といたしましては国の立場が御理解いただけるように主張また立証に努めていく必要がある、そういう考え方から控訴されたものでございます。
  106. 馬場昇

    馬場委員 控訴されましたときに、あの判決には事実の誤認があるというふうなことで控訴したと私のこの前の質問にも答えられました。しかし、誤認はないです。あれはみんな事実です。歴然とした歴史的な事実です。あなた方に都合が悪いだけであって誤認ではない。だから当然控訴すべきでないという主張を私はやったわけですけれども、そこで大臣、今の議論の本論は、まだ今たくさん裁判があります、また判決が出ます、また控訴する、また判決が出る、また控訴する、そうしたら患者さんの年齢が八十になり、九十になり、百になってしまうでしょう。そういうときに、公健法の迅速に救済するという目的が完全に踏みにじられてしまうわけです。そういう点について大臣は、生きておるうちに救済をというこの願いに対して、公健法に照らしてどういう対処をしようとしておるのか、そのことを知らせてください。
  107. 北川石松

    北川国務大臣 委員の御指摘のとおり、早期に救済しなくちゃいけない、こう考えております。特に水俣病患者の迅速かつ公正な救済ということは大変大事なことであり、関係県あるいは関係者とよく一体になりましてこの問題に対処していきたい、こう思っております。
  108. 馬場昇

    馬場委員 中身が何かわからなかった。(北川国務大臣「迅速かつ……」と呼ぶ)具体的にどうするのですか。「迅速かつ」という言葉はちゃんと法律に書いてある。だから、具体的に環境庁はどういう行政を迅速かつ、生きているうちに救済をという人に対してどうしようと思っているのか。あるかないか。あれば言ってください。
  109. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 私ども、患者救済は公健法に基づきまして迅速に救済を図っていくということで参りました。今後ともそういう方向で努力をいたしたいと考えております。
  110. 馬場昇

    馬場委員 私は大臣にも、今部長も聞いておったでしょう、じゃ具体的に法に照らしてどうするんだということを言うけれども、全然答えが出てこないわけですよ。何か具体的にあったら言ってください。
  111. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 具体的ということでございますけれども、現在未処分の方が三千人を超える段階でございます。この三千人を超える方々の中で、いろいろの立場の方がいらっしゃいます。例えば寝たきりの方もいらっしゃいますし、もう既に亡くなられた方もいらっしゃいます。それから、ほかの県へ既にお移りになっている方もいらっしゃいます。このような方々はなかなか認定審査をお受けになるのに難しい方々でございまして、このような方々にどのような形で認定審査をお受けいただくかということがこれから大きな、いや、今でも大きな問題でございますが、これからさらに大きな問題になってまいります。例えば今取り組んでおります話は、寝たきりでおられる方のところへ出張審査ができないか、また入院していただいて入院しながら検査をお受けいただけないか、こういうことの体制づくりに努力をしておるところでございます。
  112. 馬場昇

    馬場委員 それは非常に患者さんの――寝たきりの人もといろいろ今言われたことも大切です。しかし私は、そういうことも含めながらももう少し大きく、大臣やはり早急に解決するという姿勢をとって行政をしていかぬと、本当に裁判一つとってみても、また控訴、また控訴ということをやっておったらいつになるかわかりませんよ。そのうちに患者さん自体がみんな老齢化してしまうという状況にありますから、これは大臣に、公健法の迅速にという趣旨に従って全力を挙げて立ち向かっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  次に、通産省来ておられると思いますから、チッソの経営状況、それからチッソ水俣工場に対してどういう投資をやっておるか、チッソに対して県債を今どれだけ出して貸しておるか、チッソは金融支援はどういうところからどれだけ受けておるか、こういうことについてまず明らかにしてください。
  113. 雨貝二郎

    雨貝説明員 チッソの経営状況につきまして御説明申し上げます。  国内の内需を中心といたしました景気の拡大を背景といたしまして、石油化学を初めとしまして化学一般に最近好調に推移しております。こうした状況のもとで、チッソにつきましても売り上げを順調に拡大しつつございます。また、売り上げが拡大するに伴いまして経常利益もある程度拡大しております。他方におきまして、昭和六十年度決算以降、特別損益が百億円以上損失を計上しております関係上、決算としましては毎期赤字を計上しておる、こういう状況にございます。  また、水俣工場では、特に地域経済における雇用の安定を図るという観点から、新規事業を中心といたしまして、できるだけファインケミカルといいますかこれから伸びる分野につきまして投資をするようにしております。例えば液晶でありますとか、そうした電子関連の分野への投資、あるいは難燃材、コーティング、尿素といった分野での新規事業への設備投資というのが現在行われておる最中にございます。
  114. 馬場昇

    馬場委員 あなたの答弁、ちょっと具体的でなかったのだけれども、チッソの経営状況というのは、例えばことしは黒字だったのか赤字だったのか、幾ら黒字を出したのか、あるいは累積債務はどのくらい持っているのか、具体的に数字を言わなければわかりませんよ。
  115. 雨貝二郎

    雨貝説明員 御説明申し上げます。  平成元年度におきまして、売上高は一千三百八十六億円でございます。経常利益は約七十三億円という状況にございます。また、特別損益といたしましては百十一億円、したがいまして赤字幅は約四十億円という状況にございます。
  116. 馬場昇

    馬場委員 累積債務は。
  117. 雨貝二郎

    雨貝説明員 累積債務額は元年度で一千百六十五億円に達しております。
  118. 馬場昇

    馬場委員 今のは平成元年度だったね。平成二年度は今どういう状況か、去年よりもいいのか悪いのか。それからもう一つ、投資状況で、金額で幾ら投資しているのか。金融支援で、これはあなたの方か知らぬけれども、どこどこの銀行とかどこどこからどれだけ支援を受けているとか、あるいは県債は、これは環境庁かもしらぬけれども、今幾らヘドロと補償で出しておるのか。数字を言ってください。
  119. 雨貝二郎

    雨貝説明員 平成二年度の状況につきましては、チッソの方から私ども聞いておりますところを申し上げたいと思いますが、売り上げにつきましては本年度を上回る、できれば約千五百億円程度まで伸びないかという期待を持っております。ただ、最近原料が高くなっている、あるいは製品価格が若干下落しているという状況にございますので、経常利益幅は縮小してしまうのではないかと思っております。また、特別損益の方は元年度と同じ程度の損失を計上せざるを得ないのではないか、かように思っております。したがいまして、赤字幅は今年度の三十八億円から若干拡大する、こういう懸念を持っているところにございます。  また、設備投資額は、元年度で申し上げますと約五十億円でございましたが、このうち水俣関係が八割近く、三十七億円になっております。
  120. 馬場昇

    馬場委員 この委員会で、県債を出すときに条件というような意味で通産省に指導を強く要求し て、通産省もきちんと約束されたことがあるのです。やはり県債というのは熊本県民が借金してチッソに貸すわけですから、これは大変な問題でございまして、そのときに、何のために県債を出さねばいかぬか。三十数県に患者さんはまたがっておる。例えば鹿児島にもおる、そしていろいろ三十三県に患者がまたがっておる。そういう補償金を全部熊本県が借金して貸すわけですから、何で熊本県だけがという中で、やはり倒産でもして地域社会に与える影響は非常に強いからということも含めて、それならば地域振興ということも含めて、その当時水俣の従業員は一千名ぐらいおりましたが、この一千名を減らしたら地域振興にならぬじゃないか。県民が県債を借りて出してくれておるのに、従業員をどんどん減らして、さらには撤退をするのじゃないかという御質問をしたことがありますけれども、そういうことで通産省に、絶対に千名体制を下らないようにチッソに対して指導をしなさい。そうしたら、責任を持って指導する、何回も通産省はこの委員会で国民に向かって、私に対して答弁の形で約束をされている。  今現在何人おる、従業員数は。
  121. 雨貝二郎

    雨貝説明員 平成二年四月でございますが、約七百名でございます。
  122. 馬場昇

    馬場委員 これは熊本県民にとってみれば、千名おったのがだんだん減ってきておるのですね。そして、最近ようやく新採用もするというところまでいって、それは非常に喜んでいるのですけれども、やはり千名体制の規模、そしてあそこに残って罪を償え、これが現地の住民の気持ちなんです。そういう意味で、そういう点も約束事ですからぜひ実行させるように今後も強く指導していただきたいと思います。  そこで、県債の現在のトータルと、その償還計画、いつごろがピークで、何年ごろまでこういう返済をしなければならぬという償還計画の見通しを言ってください。
  123. 安原正

    ○安原政府委員 まず県債の発行状況でございますが、第一に、患者補償のための患者県債というのがございますが、これにつきましては、毎年度幅がございますが、昭和六十二年度までおおむね四十億円ないし五十億円程度の発行が続いてまいったわけでございます。先ほど通産省の方から御説明がありましたように、石油化学業界全体の好況を背景にいたしまして、チッソ株式会社が経常利益をかなりの程度計上できるような状況に至っておりますので、昭和六十三年度におきましては十三・六億円という発行額になっております。さらに、それに続きます平成元年度分の県債発行予定額が十六億円ということに相なっておるわけでございます。もう一つの種類でございますヘドロ県債でございますが、これにつきましては、平成二年五月に平成元年度分の県債として七・三億円を発行いたしまして、これをもちましてヘドロ県債の発行計画は終わっておるわけでございます。これまでのヘドロ県債の発行総額は二百九十七億円でございます。したがって、これまで五月末現在の県債発行額は累計で七百六十三億円となっておりまして、その内訳は、患者県債が四百六十六億円、ヘドロ県債が二百九十七億円ということでございます。  そこで、お尋ねの第二点は県債の償還計画でございますが、これにつきましては、今申しました既に発行した県債につきまして今後の元利償還額の総額について試算をいたしてみますと、その総額は約千五百億円ということに相なります。その内訳は、患者県債に係る元利償還額が約九百億円、ヘドロ県債に係る分が約六百億円ということでございまして、年間の元利償還額につきましては年度によって異同がございますが、ピークの年度をとってみますと約六十億円ということに相なります。平成元年度の元利償還額を申し上げますと、総額は五十五億円でございまして、その内訳は、患者県債が三十六億円、ヘドロ県債が十九億円でございます。  先ほどお尋ねの金融機関からの融資でございますが、これは日本開発銀行からチッソ株式会社の子会社の設備投資に対して融資をいたしている分が昭和五十年度からございまして、平成元年度までの融資の累計額は七十六・五億円ということに相なっております。これに伴いまして、他の金融機関からも融資があわせて行われておりまして、その融資総額は百八十六億円でございます。  以上でございます。
  124. 馬場昇

    馬場委員 今数字を聞いて、チッソが果たして償還する能力があるのかないのか、こういう心配もするわけでございます。もちろん政府を挙げて支援をして、償還に滞りないようにということで努力されているわけですが、熊本県民とすれば、それだけ七百億幾らも県債を出しているわけですから、万一のことがあればということで心配しているわけです。これは当然のことだと思うのです。そういうときに大臣熊本県には、万一チッソが倒産することがあっても、これだけ県債を出しているけれども迷惑はかけないという政府の方針があるわけです。これはそのとおりいいですね。
  125. 安原正

    ○安原政府委員 その点につきましては、先生御案内のとおり、五十八年の水俣病に関する関係閣僚会議申し合わせの閣議報告がございます。そのとおりでございまして、確かに今御説明しましたように県債の元利償還額は非常に巨額になっておりますが、今後もその支払いについては確実に行われるものと考えておりますし、環境庁としても、熊本県に滞りなく返済されるよう十分配慮してまいる所存でございます。
  126. 馬場昇

    馬場委員 環境庁は今の答弁ですけれども、関係閣僚会議というのがありまして、福島先生よく御存じですが、そこで政府全体としていささかも熊本県には迷惑をかけないという方針が出ているのです。それはそのままですねということを聞きたい。
  127. 安原正

    ○安原政府委員 ただいま御答弁申し上げましたとおりでございますが、五十八年の水俣病に関する関係閣僚会議申合せを読ませていただきますと、「万一、不測の事態が発生チッソ株式会社からの償還財源の確保が困難となった場合、熊本県財政での対応が極めて困難な実情にあることに留意し、熊本県の当該地方債に係る元利償還財源については、国において所要の対応策を講ずるものとする。」ということで、明確に申し合わせが行われているところでございます。これによりまして今後とも対応していく所存でございます。
  128. 馬場昇

    馬場委員 次に、この水俣・芦北地域というのは、水俣病というのがございましていわば高度経済成長にも、いい悪いは別にして、他の地域に比べて乗りおくれておるわけですよね。そして健康被害なんか、さっき言ったように非常に塗炭の苦しみを受けている。そしてまた、地域では社会的水俣病というのがあるのです。いわゆる健康被害をいう有機水銀中毒水俣病と、水俣病があるからお互いに患者と市民あるいは患者同士が対立とか、今は余りありませんけれども水俣だから就職とか結婚とかに支障を来すとか、大変な苦しみを受けておるのです。  そこで、こういうことも含めまして水俣・芦北地域振興というのは国の力で助けていこう、こういうことになって、この担当局は国土庁ですけれども、私が聞きたいのは、余り時間がございませんが、私が見ているところによると、毎年度の予算要求で、各省庁の要求をまとめて、これが水俣・芦北地域振興計画の事業にかかわる分だというようなトータルの出し方というのがあったように思います。だから私は、それがいかぬ。例えばあの不知火海沿岸に二十万なら二十万のいわゆる国際環境都市、福祉都市、文教都市をつくる、そういうような大きいプロジェクトを出して、それに対して予算を組んでいく、これが芦北・水俣地域の振興じゃないか。たびたびここで議論をしておるわけですけれども、結論だけ聞きますが、水俣・芦北地域を振興するという閣議決定があるために他の地域よりもこういう点で事業が行われたんですよ、あるいは振興が行われたんですよと、その部分だけを説明してください。
  129. 岩崎忠夫

    ○岩崎説明員 お答えします。  水俣・芦北地域の振興につきましては、五十三年六月の閣議了解を受けまして、熊本県において水俣・芦北地域振興計画、さらに六十年に新水俣・芦北地域振興計画を策定したところであります。その新しい計画でございますが、先生今御案内のとおりでございますが、水俣病の影響により社会的経済的に脆弱化したと言われる水俣・芦北地域について、新しい地域イメージの確立と活力ある地域社会の再生を目的といたしまして、博覧会の開催と水俣湾公害防止事業、跡地の有効利用というのを主要プロジェクトとして取り上げておりまして策定されたわけであります。この二つが非常にこの計画の特徴ではなかろうかと考えております。
  130. 馬場昇

    馬場委員 今言われましたヘドロ埋立地の跡地をどういうぐあいに利用しようとしているのか、跡地利用計画の現在の進捗状況までお知らせください。  それからもう一つついでに、一九九二年に国際的なイベントをやろうという計画も今立てておるようですが、それはどういうものをどうしてやるんだというその計画内容。この二つ。
  131. 岩崎忠夫

    ○岩崎説明員 ヘドロ埋め立ての跡地利用の問題でございますが、ただいま申し上げましたように、新水俣・芦北地域振興計画において主要プロジェクトの一つに掲げられているわけでありますし、また六十二年十二月の水俣病に関する関係閣僚会議申合せにおきまして、「公害防止事業埋立地の活用を中心とする新たな熊本県の構想については、検討の上、適切に対処する。」ということにされているわけであります。熊本県はこれを受けまして、平成元年七月に水俣湾埋立地及び周辺地域開発整備具体化構想というのを取りまとめたところであります。そこでヘドロ埋め立ての跡地利用計画の内容について書かれているわけでありますが、その構想によりますれば、その跡地及び明神崎一帯の地域を、環境復元を記念いたしまして二十一世紀に向けて人間と自然との調和を体験学習するエリアととらえまして、同地域を水俣エコロジカル健康パークとして整備することにしているところであります。具体的には、平成四年度のイベントの開催に向けまして、環境センター、水俣病資料館、メモリアルタワー等のさまざまな施設が設置されることになっているところであります。  それらの事業の進捗状況でございますが、跡地利用の前提となりますヘドロ埋立事業につきましては本年三月末に完了したところでありまして、平成二年度におきましては埋立地の地盤沈下対策としての盛り土工事、環境センター、水俣病資料館等の個々の施設の設計調査が行われることになっております。また海岸部におきましては港湾環境整備事業によります親水緑地の整備が進められることになっておるわけであります。  また、九二年に予定されておりますイベント開催のお話でございますが、このイベントの開催は、先ほど申し上げましたように新水俣・芦北地域振興計画におきまして主要プロジェクトの一つとして掲げられておるわけでありますが、先ほど紹介いたしました昨年七月に策定されました県の水俣湾埋立地及び周辺地域開発整備具体化構想におきましては同イベントを水俣環境復元を強くアピールして新しい水俣のイメージを創出する方策として位置づけておるところであります。具体的には、平成四年夏から秋にかけまして水俣湾埋立地を中心に水俣市及びその周辺地域におきまして環境に関する国際会議の開催、地球環境現状に関するシンポジウムの開催、環境をテーマにしたコンサートの開催等の多彩なイベントを開催することにしていると聞いているところであります。なお、その具体的な企画内容につきましては現在県と地元水俣市においてさらに必要な検討が行われているというように聞いておるわけであります。
  132. 馬場昇

    馬場委員 計画は聞いたのですが、これは関係閣僚会議で振興を決めているわけですから、例えば、それに対する経費、予算については国が持つのですか県が出すのですか、あるいはどのくらいを分担するのですか。跡地利用のいろいろな計画がありましたね。九二年度のイベントがありましたね。これの費用のトータルはどのくらいなんですか。どのくらいの国と県の負担割合とするのか。その辺の具体的な数字をおっしゃってください。
  133. 岩崎忠夫

    ○岩崎説明員 この水俣・芦北地域の振興につきましては、五十三年六月の閣議了解を受けまして、国土庁が窓口となって関係省庁において対処する、こういうようにされているわけであります。新水俣・芦北地域振興計画に盛り込まれたこういった内容につきましても、関係省庁説明会の開催だとか予算の重点配分に関する各省庁への依頼等、関係省庁の協力を要請しているというのが基本的な立場でございまして、計画は熊本県の責任において立てられたもの、そして関係省庁について予算的にできるだけ配慮してもらう、重点配分してもらう、そういうように協力要請する立場であろう、こういうように考えておるところでございます。
  134. 馬場昇

    馬場委員 計画があっても予算がなければだめですから、国の方でもぜひ十分配慮していただきたいと思います。  非常に長時間質問させていただいたわけでございますが、大臣に最後要望しておきたいと思うのです。  水俣病公式発見が三十一年ですけれども、この委員会で各政党から質問があって、私も言ったように四十八回目ですけれども質問して、結局、水俣病行政として見ますと、これは申請主義というのですか、例えば認定審査会に申請をするとか裁判所に提訴をするとか、苦しんでいる人たちが立ち上がって自分が申請をする。それに対して、もう配慮するのでなしに行政は、抑えて抑えて抑えてきた、こういう歴史だったと私は思うのです。だから、私が言いたいのは、行政の方から手を差し伸べたことはないのです。  今あそこ、メチル水銀に暴露された住人が二十万人おります。そういう人たちが一番心配しているのは、自分は水銀に暴露されたが自分の体は大丈夫だろうかという心配があるわけです。有症者は何とかして早く治療をしてもらいたい、治してもらいたい。私の教え子の木下レイ子というのが患者ですけれども、その娘の真由美ちゃんというのがおりますが、これが三木さんが環境庁長官のとき、総理大臣が田中角榮さん。田中角榮さんに直接手紙を出した。田中角榮さんはすぐ返事を出しました。世界じゅうの偉いお医者さんを集めて体を治してくれ、金はとらないでと。その娘が書いた手紙を田中角榮さんにやって、角榮さんは、それを見て、絶対やります、そして二度と再びこういうことは起こしませんという返事を出しているわけです。  そういうこともあって、あなた方は行政が手を差し伸べるということをやっていない。だから今度社会党は環境部会で検討しているのですけれども、一番心配なのはおれの体は大丈夫かと思っている人たちがほとんどですよ、そういう人たちの体を診てやるとか健康管理をしてやるとか、あるいは罹患した人を今立派な学者を集めて治療をやるとか、そういう心配していることに対して行政がこたえてやるような、仮称ですけれども、水俣病地域健康管理法案というのもお互い準備をしておるわけです。この臨時措置法については物すごく皆さん方頑張ったのですが、環境庁から出してもらいたいわけですけれども環境庁が出さないからこっちが出すわけです。そういうのが出たら、そのときには十分話をしていただいて、各党ともまた話をしなければならぬと思っておるわけでございますが、そういう行政政治が手を差し伸べる、心配にこたえるというような行政を今後ぜひやっていただきたいということを最後に要求して、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  135. 戸塚進也

    戸塚委員長 中井洽君。
  136. 中井洽

    中井委員 最初に、委員長以下各党の理事の皆さん方の御理解を得まして、時間を大変御配慮をいただきましたことをお礼を申し上げます。  水俣病に関する問題につきましては、ただいま長時間にわたって質問なさいました馬場先生が本当に熱心にお取り組みであります。すべてその中の質問に含まれておるかと考えますけれども、私も与えられました時間の範囲で疑問に思う点、何点かお尋ねをいたします。  最初に、提案者の福島先生にも、馬場先生に対すると同じく水俣病解決に関しまして長年御尽力をいただいておること、そして同時に、三たびこの法案の提出者になられたこと、心から敬意を表するところでございます。同時に、お地元の常に関心を持ってお取り組みいただいた議員として、この認定業務が今日までいまだに残っておる、そして、こういう法案を再び時限立法で三たび出してこなければならない、こういったところにいろいろな思いを私どもは持つものであります。提案者として、またお地元の議員さんとして、率直にどういうふうにお考えかお尋ねをいたします。
  137. 福島譲二

    福島議員 今御質問の中にもございましたように、先ほどから再々馬場委員からもお話がございましたように、水俣病が公式にその原因が発見をされてから既に三十四年になるわけでございます。なおかつ、今三千人以上の申請者が残されておりますし、中にはその認定を受けずに、そしてまたその認定の方向がはっきりわからぬままに亡くなっていったというたくさんの方々もおいででございます。全体としてかなりの高齢者になっておられることでもございますし、何としてもこの問題を早期に決着をさせていくということについては、いろいろな背景、いろいろな困難な問題はありますが、国・県そしてまた私どもも一体となって進めていかなければならないところではないかと考えております。  今回お願いを申し上げましたこの特別措置法によるところのいわゆるバイパス、国の認定審査というものも、最近の傾向からいたしますと必ずしもはかばかしい状態でないことは大変残念でございますが、しかし、少しでも国にも協力をしていただいて認定審査業務を進めていくということは、やはりなお大切なことではなかろうかという趣旨のもとに提案をいたしたことでございます。よろしくお願いを申し上げます。
  138. 中井洽

    中井委員 今福島先生の御発言の中にもうかがい取れるわけでありますが、こういう形で国が少しでも認定業務促進のお手伝いをするという形でこの法案がバイパス的につくられたわけでありますが、なかなか申請者の数が、現地におきましては滞っておるにもかかわらず、東京のこの審査会、国の審査会というところへ申請者が回ってこないという状況であります。これは今後もそういう状態が続くと思うのでありますが、環境庁はこういう状態はなぜ起こっておるとお考えですか。
  139. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 せっかくこの措置法をおつくりいただきまして私ども県の幾ばくかのお手伝いをさせていただくことになってきたわけでございますが、御指摘のように、ただいままで百八十人お引き受けをしている、そして既に約百二十人の方々を処分しておりますけれども、審査をお受けになる皆様方、やはり地元でお受けになりたい、そういうお気持ちが強いと思いますし、また一部では、私どもがもっと国の方へ申請がえをしてくださいというお願いの努力が足らないといった部分もあったかもしれませんけれども、少なくともこの二、三年、それ以前に比べますと幾分かは国の方へ申請がえをなさっていただける方がふえてまいりました。今後、もしこのたびの改正案をお認めいただけるということでございますならば、私ども一生懸命努力をいたします。今回の改正の中身では申請がえをなさる対象の範囲を広げてございますし、努力をいたしたいと思っておりますので、今後は今まで以上に申請がえをしていただけるのではないか、そのように考えております。
  140. 中井洽

    中井委員 三千数百人まだ未処分の方が残っていらっしゃるわけでありますが、この未処分の方、どういう中身になっていらっしゃるか。一度は処分されてまた再申請をされた方がどのぐらいか、そういったことがおわかりでしたら教えていただきたい。それから同時に、今後あとどのぐらいの申請者が新しく出てこられると予想されておられるのか、それについてもお答えをいただきたい。
  141. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 まず、審査を受けられずに待っていらっしゃる方の内訳でございますけれども、うち死亡者が四百二十名、それから寝たきりの方が三百九十名、それから県外にお移りになっている方が五百十名、また、いろいろな御事情と思いますが、検診を拒否されている方が九百名ということでございます。それから、最近の申請者の数でございますが、現在、平均いたしますと一年に二百名ぐらいの方が申請をされております。
  142. 中井洽

    中井委員 私、ここに昭和五十九年のこの法案の審議のときに自分で質疑をした会議録を持っておりますけれども、中身を見ますと、現在ほとんど同じようなことを聞かなければならないかな、こんな思いがいたします。その当時にも、もっと処分の仕方、認定の仕方の工夫をしたらどうだ。例えば、寝たきり老人だから、寝たきりの人が多いからその人はなかなか処分あるいは審査できないのだ、こういうことが当時言われましたけれども、寝たきりの人には先にこっちから出ていって診断をする、こういった親切が必要じゃないか。あるいは、残念ながら、申請はされておるけれども日にちが決まっても診断を拒否をなさる方々もおられる。申しわけないけれども、そういった人たちは順序を飛ばさせていただいてどんどんと申請を処理できるようにしたらどうだ、こんなことを申し上げたことを今読み返しているわけでございます。御努力はいただくというお話はございますけれども、過去三年間あるいは六年間、当時と余り中身は変わっていない。それなりに御苦労はいただいているとは思いますけれども、はっきり申し上げて、急ピッチで進んでいるというわけではないと思うわけであります。  大臣、そういう状況で、この申請を国の審査会へお出しをいただく、またできる限り早く未処分者の方々の診断をする、こういったために創意と工夫あるいは努力をしていただく、そういった意味で大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  143. 北川石松

    北川国務大臣 中井委員の、水俣病に関して、環境庁としてこういうお気の毒な方にもみずから進んで診断したらどうだ、そういうふうな御指摘も受けておりました。今後環境庁といたしましては、この法案を再度三年間延長していただいて、その間におきましては臨時措置法の施行も含めて県と一体となって認定業務努力していきたい、こういうように考えております。
  144. 中井洽

    中井委員 御答弁はそれで理解をいたしますが、認定のスピードアップ、ぜひこういったものに創意と工夫を政治家として御注文いただいて、お助けをいただきますように重ねて要望をさせていただきます。  それから、本当に水俣病というのは公害原点のような難しい問題をいろいろと抱えておりますが、今日までいろいろな病院あるいはいろいろな研究機関水銀の疫学的な問題を含めて研究がなされてきたと思うのでありまして、現在、水銀の人体に及ぼす影響あるいは仕組み、あるいはまたその原因解明患者さんの健康回復、こういったことに関して医学的にどの程度進歩があるのか、あるいは進んでおると環境庁は御理解になりますか。大変難しい答え方であろうかと思いますが、わかりやすい範囲でお答えをいただきます。
  145. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 水俣病患者さんの治療等にかかわる医学研究でございますけれども、御承知のように、水俣市におきまして国立水俣病研究センターというものをつくらせていただいてから、現地においていろいろ臨床から疫学また基礎的な研究というものを進めさせていただいております。特に現時点におきまして、大変残念なことではございますけれども、際立って、目立って治療の効果の上がる方法論とかそういうものがなかなか見つかってこないというのが現状でございますけれども、その中でセンターにおきましては、いかにして機能回復をしていただくかといったようなリハビリの問題にも力を入れている、努力をしているというところでございます。
  146. 中井洽

    中井委員 けさ理事会の方に「メチル水銀環境保健クライテリアに係る調査」という冊子をお出しいただきまして、先ほどからぱらぱらと拾い読みをさせていただいております。私は、日本のメチル水銀の問題についての疫学的なことあるいは病理学的なことは、水俣という大変残念な公害問題を契機にかなり進んでおる、このように思っておったところでございます。このデータ、ぱらぱらっと見まして、問題点というようなところを見ますと、この中身について科学的におかしいとかデータ不足だとかそういった御批判はあるけれども、日本が蓄積をしておる科学的な知識、データ、そういったものはここの文章に出てこない、使われていない、こんなことを率直に思うわけであります。こういうものがつくられて、それに対して日本公衆衛生協会の方でこれらをいろいろと御議論いただくのは結構でありますが、日本みずからがメチル水銀の問題あるいは水銀全体の人体に与える影響、こういったものをまとめて世に出していく、問うていく、こういったことが逆に必要じゃないかと思うのであります。前々からいつも聞くのですけれども、いつでも難しい、なかなか解明ができない、こういったお答えばかりでとどまっておる、大変残念に思うわけであります。しかし、結果としてはああいう悲惨な公害問題が起こっておるわけであります。いまだ患者さんの健康回復に何も明るい見通しもない、こういう状況であります。そういった意味でもっと科学的に、途中であろうとあるいはデータ不足であろうと、どんどん危険性というものを世に問うていく、出していく、こういった姿勢が必要ではないか、私はこんなふうに思いますが、環境庁、いかがですか。
  147. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 先生指摘のように、水俣病研究は幅広くやっていかなければなりませんが、その中で、やはり環境の問題も含めまして、過去におきましてはあのような事件が起こったということを反省した上での、これからあのような問題を起こさないための予防のための研究といったものは大変重要な問題でございまして、そういう意味で、先ほども御答弁申し上げましたように、国立水俣病研究センターにおきまして、特に具体的に申しますと、ネズミを使っての胎児への影響の研究といったものも相当実績を今つくりつつございます。センターを中心といたしまして、またそのほかの研究者の皆様にも御協力をいただいて、そのような方向での研究もこれから大いに力を入れていきたいと考えております。
  148. 中井洽

    中井委員 私も水俣の地を二度三度とお訪ねいたしまして、いろいろなところを見せていただき、またお話も聞かせていただきました。研究一つとりましても、データを集めるという意味で患者さんの協力をいただくのもなかなか難しいときもある、あるいはまた研究所、大学それぞれでいろいろと壁もある、こういったことも聞かせていただいて、大変弱ったことだと心配をいたしております。こういう問題が起こっていまだに病理学的にも疫学的にも十分進んでいない、これらを一刻も早く解明をしていく、そして同時に、なろうことなら患者さんの健康回復といったことに進展が見られるようにしていく、これが一つの大きな問題解決であろうかと思うのです。そういったことに対する国全体としての取り組み、特にトータル的な取り組みが必要だと思うのです。それについて大臣のお考えを承ります。
  149. 北川石松

    北川国務大臣 ただいま委員の、トータル的な取り組みということで御質問を受けますと、環境庁がやはりこれの主たる責務のある官庁でございますので、いろいろな面におきましてこれは積極的に環境庁が取り組まなくては御期待に沿えないと思いますので、そのように、御指摘のように積極的に取り組んでまいりたい、こう思っております。
  150. 中井洽

    中井委員 馬場先生からもお話あったかもしれませんが、本当に当委員会でもたびたび同じような質問が出、同じような御答弁をいただいておる、しかしなかなか解決しない。患者さんの命だとかあるいは一たん信頼を落とした国や地方自治体に対する感情とか、そういったものは別にいたしましても、原因究明、それも科学的な究明、そして健康回復、こういったことに一刻も早く解決を見出さなければならない。したがって、こういう法案が三年後にまた出される、また同じようなことを聞く、ぜひこういうことがないように御努力を賜りたい。特に、環境庁熊本県、一致協力して、申請、診断、こういったことが一刻も早くスムーズに行われるように重ねて希望いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  151. 戸塚進也

    戸塚委員長 遠藤和良君。
  152. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 私は、午前中、午後の質疑を聞いておりまして、まず確認をしたいことがたくさん出てまいりました。したがいまして、通告してなかった問題で申しわけないのだけれども、ちょっと大臣に聞きたいと思います。  水俣病昭和三十一年に公式に発見されて以来、今日まで三十四年たっているわけです。この三十四年というのは余りにも長過ぎる、一体行政は何をしていたんだ、私はこう言いたくなるのでございますが、この長くなった原因は、いろいろ聞いておりますと、どうも行政責任逃れ、そして、資料がありましてもそれをできるだけ公開しない、できれば隠ぺいをしたい、こういうふうな不届き千万な姿勢がこのようにいたずらに時間を経過した根本原因ではないか、このように私は認識をいたします。  そこで、お聞きしたいのですけれども、先ほども細川報告書の話がありました。それからまた、本日はこの委員会の理事会で資料要求をいたしましてようやく資料が出てきたわけです。「メチル水銀環境保健クライテリアに係る調査」、資料は出てきたのですが、これを見ましたら、事業実施担当者のところは、順不同と書いてありますが、墨で真っ黒に塗ってある。これが国会に出す資料なんでしょうか。こういうふうな墨で黒々と塗ったというのは、私は昭和十八年の生まれだから終戦直後のことはよくわからないのですけれども、戦時中の小学校の教科書の不都合なところを全部墨で黒々塗って、それで勉強させられたという先輩の話を聞きます。その当時の政府の姿勢と余り変わらぬのではないか、このように思うのです。こういうやり方というのは国政調査権に対する冒涜だ。何できちっと出さないのか。こんな墨で塗ったような資料を出して、政府は一生懸命取り組んでおりますと言えるのですか。まずこの姿勢から確認したいと思います。
  153. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 研究を担当するメンバーに墨を塗ってお出しをしたということは、これはお許しをいただきたいわけでございますけれども、この研究を担当していただく研究者の方々に対しましては、研究当初、自由にいろいろな議論を集約していただく、そういう趣旨からメンバーの公表はしないということでスタートさせていただいたということがございます。実は、過去におきまして、大変残念でございますけれども、名前が出ることによっていろいろと迷惑を受けられた方もなかったわけではございませんで、そのようなことも配慮いたしまして、今回の資料はそういう形で出させていただいたことをお許しいただきたいと思います。
  154. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 名前を出さないことにしましょうと言うたのは、環境庁が言うたのですか、それとも学者の方の方から名前を出さないようにしてくださいという話があったのですか、どちらですか。
  155. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 私どもの方から、公表はしないということでお願いをいたしました。
  156. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 私はそこに政府の体質があらわれていると思うのですよ。私は、研究者というのは、自分がみずから名のり出て、そして私の見識でございます、私の研究発表です、こういうのが国際的ルールだと思いますよ。それをそういう門を閉ざすようなやり方というのは、いかにも守っているようで守ってない、こう思います。私、この報告書を読みました。例えば十四ページ、イラクの研究についての評価が書いてある。かなり断 定的な評価をしています。「イラクのデータは重要な結論を導くには例数が少なすぎる。」あるいは「このような不安定なデータから重要な結論を出すのは危険である。」これは要するにサンプルの数が少ないという量的な欠陥を言っているわけですね。それから第二点は、「出生時データは存在しない」という理由から、「これらの情報を欠いたままで子供の発達の遅延を一概にメチル水銀に結びつけるのは問題である。」あるいは「不適切な結論である。」このように質的な面でも欠陥があるということを言っている。そして、「このようにイラク研究においては質的に不確かなしかも少数の例によって閾値が推定されているが、このような結果を一般化するのは危険であろう。」とかなり思い切った発言をしています。また、「イラク研究の結論が仮に正しいとしても先述の様にメチル水銀で消毒された種子小麦によるイラク事件の結果を魚による摂取の場合と同列に論じうるかという問題がある。この問題は現在のメチル水銀摂取源が殆ど魚であるという意味で重要である。我が国には、マグロ漁船員、魚市場従業員など魚による天然のメチル水銀汚染を受けている集団が存在しているが、このような問題の報告はない。少なくとも国際的にこのような集団が広汎に調べられた上で結論が下されるべきであろう。」かなりこのイラク研究研究者に対して反論をしているわけでございますが、私は、研究者の良心というのは――このイラクの研究をしている人は覆面じゃありませんよ。名前をちゃんと出している。こちらは覆面で反論しているわけでしょう。こんなことが国際的に許されますか。向こうは実名で研究をしているのですから、日本の学者も実名で同じ場所で議論をする、これが国際的なルールじゃないでしょうか。私は、名前を出したいというのが学者の本当の見識だと思いますよ。これを環境庁が隠ぺいしているのじゃありませんか。どうですか、環境庁
  157. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 隠ぺいしているつもりは全くございません。やはり学者あるいは科学的な議論というのは、相当ある論文に対しましてはいろいろな議論が闘わされるものと考えておりまして、そういう意味で、その調査をお願いしました時点では、自由な科学的な議論をしていただきたいということでお願いしたわけでございます。特に隠ぺいしようとかというつもりはございませんでした。
  158. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 名前を隠さなければ自由な議論ができないと考えること自体がおかしいのですよ。学者というのはそれぞれ自立しているのです。自分の名前を公表して、それで自由な議論ができなくて何で学者と言えるのですか。名前を出さないでください、じゃ話をしましょう。そういうのは政府の御用学者というのですよ。私はそう思いますよ。大臣、どう思いますか。
  159. 北川石松

    北川国務大臣 ただいまの委員の厳しい御質問でございますが、私は、学者に限らず、みずからの所見を出す場合はすべて名前を明記しているのが当然であろう、このように思っております。私もきょうこれを見まして、まことに遺憾であるという思いはいたしております。しかしながら、過去このような形をとったことはただいま遺憾であるという表現をいたしましたが、今後このようなことのないように戒めていきたいと思っております。
  160. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 私は大臣のリーダーシップに期待したいと思うのですよ。本当にこういうことでは国際的に笑われますよ、日本の国は。これは特異な文化社会だ、こういうふうにやられちゃう。世界的な視野の中で、広場の中で議論をするのでしたら、堂々と自分の名前を言って、私はこう思います、こういうのが普通のルールですよ。それを、名前を隠さなければ自由な議論ができないなんというのはどう考えてもおかしい、私はそう思います。  したがって私は、一遍学者の皆さんに本当の意見を聞いてもらいたいのです。名前を出した方がいいんじゃないですかどうですか、どうぞ出してください。本当、出した方がいいんです。私はそう思います。今後のこともありますが、これまでのそういう環境庁の体質を改善していただきまして、閉鎖的な社会の中の環境庁ではなくてもっと国際的にも通用するような環境庁に脱皮してもらいたい、これを強く要望します。
  161. 北川石松

    北川国務大臣 ただいまの委員の御質問を受けまして、現在まで歩んでまいりました環境庁もいろいろの事情の中にあったと思っておりますけれども、環境庁としていろいろの風雪があった中にありましても、これからは、今おっしゃられたそういう点を踏まえまして、やはり環境ということの一番大事な面でございますから、真剣にそして間違ったことのないように取り組んでいかなくてはいけない、このように思っております。
  162. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 では本論に入っていきたいと思いますが、今、三十四年というふうに大変長くかかりまして、しかも解決していなくて、これから何年続くかわからないという状況にあるわけですが、やはり生きているうちに救済をというのが患者の皆さんの願いだと思うのです。しかも、それは一つの人道的な行政として考えなければいけない重要な課題だと思うのですね。法によって認定業務を着実に推進していきたいというふうに行政の皆さんは言っているわけだけれども、それで本当に迅速な解決ができるのかと疑問を持たざるを得ませんね。これを早く解決していく、これは環境庁長官の大事な仕事の一つだと思います。とにかく生きているうちに救済がされた、こういう解決を図るという決意をまず大臣に聞きたいと思います。
  163. 北川石松

    北川国務大臣 遠藤委員の重ねての質問の中で、生きているうちに救済しろ、これは朝の馬場委員の御質問の中にも強く指摘されております。また、各委員もそのようなお気持ちであろうと思っておりますので、鋭意努力をしてまいりたい、こう思います。
  164. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 それから、今、司法上の救済を求めている患者の数は大体一高裁六地裁で二千人と言われているわけでございます。何で司法に救済を求めなければならなかったかという背景をじっくり考える必要があると私は思うのですよ。本来的には行政が先に救済すべきですね。それがどうも、行政がいろいろな認定基準をつくったんだけれども、それが実態に合わない大変厳しいものであった、したがって患者の皆さんが司法の方に救済を求めた、そうすると司法の方では行政で認めなかった人まで救済をした、こういう経緯がありますね。したがって、行政にそれだけの責任感が欠如しているから、司法の方に司法の方にとみんな救済を求めていったという経緯があると私は理解する。  それで、やはり環境行政というのは、司法からおしりをたたかれてようやく動き出すのではだめだと思うのです。もっと早い時期から行政がこの問題に真剣に取り組んで、責任感を持って取り組んでいれば司法に救済を求める人はいなかった、あるいはいても少なかったはずだった、このように思うわけですけれども、司法に救済を求めている実態に対して、環境庁長官行政上の責任者として何か所感はありませんか。
  165. 北川石松

    北川国務大臣 ただいまの委員の御質問でございますが、国は認定業務促進により水俣病被害者の公正な救済に取り組んでまいりました。この認定業務等への不満な方が司法へ訴える、また、水俣病問題がなお解決されていないこと、これはもうまことに遺憾であると思っております。司法に求めるという、行政責任ということは御指摘のとおりだと思う点もありますし、また委員がおっしゃっておられまするが、行政面だけではなしに、やはりその方の個人のミスもあります。しかし、この水俣病に関しては、私は個人のミスということは一切言えない、こういうように思っております。それは、何もわからずに食べた魚、水が患者にしてしまった。それを出してきた根源はどこにあるかというと、工場にあると言わざるを得ない。こういうことを思いますと、私はやはり行政責任であると言われても仕方がない、こういう思いをいたしております。
  166. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 先ほどの司法の実態を聞きましても、国が勝ったためしは実際ないわけですね。勝ったためしがないから高等裁判所で係争中である、こういう状態になっているわけですけれども、私はこの司法上の結果がどうなるかということよりも、まず今日までこのように時間が経過した、このことに対して行政責任者としてこの問題に率直にわびる必要があると思うのですよ。行政上は本当にもっと早く責任のある対応をすべきだった、しかし、今日までおくれてしまって申しわけない、できるだけ早くこの問題を解決するように努力したい、せめてその辺はきちっと明言すべきだと思いますが、どうですか。
  167. 北川石松

    北川国務大臣 委員の重ねての御質問の中の行政責任でございますが、私は先ほども申し述べましたが、不特定なときの食べたものとかそんなものではなしに、これは原因がはっきりしてきておるものだから、しかし今のおくれてきたということは、いろいろな不確定要素というよりは、当時の学者は、あるいは行政責任者もみんな一生懸命やったのだろうと思いますが、おくれてきてしまったことは事実でございまして、そのことは率直に認めなければならない。今後ともこのことを踏まえまして、このような御迷惑をかけないように環境庁としては鋭意努力をしてまいります。
  168. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 過去のことを幾ら申し上げても、もう過ぎ去った過去を現在に返すことはできないわけですね。ですから、それは自分自身も反省をする、また国も反省をする、こういうことから出発をすべきだと思うのですね。これをあいまいにすることは、問題をいたずらに遅延させるばかりだ。認めるのじゃなくて悪かったと言ったら、みんなそうかと思うのですよ。そういうことをはっきりした方が私はいいと思いますよ。  それから、今後のことですけれども、国の責任で早期解決を求める決議というのが熊本県のたくさんの自治体から決議をされまして、それが環境庁にも届いていると承知しているわけでございますが、その実態はどうですか。
  169. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 地方議会におきまして水俣病解決を求める決議が行われておりますことは先生指摘のとおりでございまして、熊本県下の自治体から、平成元年度に十七件の決議書をちょうだいしております。私どもは、水俣病問題が環境行政の重要な課題であると認識をいたしておりまして、その解決のためにもこのような決議をいただきました地元の自治体の御協力もお願いしながら、水俣病問題の一刻も早い解決に向けまして最大限努力を払ってまいりたい、そのように考えております。
  170. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 決議の文面は大体大要どういうふうな文面になっているのでしょうか。
  171. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 ちょっと手元にその文面を持っておりませんけれども、水俣病問題の早期解決を要望するという趣旨の決議書をいただいているわけでございます。
  172. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 私手元にちょっといただいているのですけれども、大体どこの市議会、村議会等もよく似た文面でございますけれども、一つ例として、これは熊本県八代郡坂本村議会というところなんでしょうか、こういうふうな決議でございます。  「水俣病被害者の早期救済に関する決議 水俣病が公式に発見されてからすでに三十三年が経過している。しかし、いまだにその解決を見ていない。多数の水俣病被害者の苦しみが今なお続いていることは、熊本県民として憂慮にたえないものである。また、水俣市をはじめ、不知火海沿岸地域の復興は県民の一致して望むところである。これらにつき、一刻も早く国において解決が図られることを切に望むものである。以上決議する。」 大体こういうふうな内容が多いようでございます。内閣総理大臣環境庁長官、自治大臣厚生大臣、通産大臣等にあてた決議でございますが、この決議、ただ受け取っただけではいかぬと思うのですね。具体的にどういうふうにおこたえになりますか。
  173. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 地元の自治体におかれましても、この水俣病解決に向けて国がしっかり努力をせいというお励まし、また叱咜と受け取っておりまして、その意味におきましても、私ども、今一生懸命やっております認定業務促進、現在の一番最大の課題でございますので、この認定業務促進に全力を挙げて努力をいたしたいと考えている次第でございます。
  174. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 認定業務促進すると、「一刻も早く国において解決」が図られるのですか。
  175. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 私ども、一刻も早い患者さんの救済救済されるべき方は救済していきたいということでございますが、私どもは法による救済ということが救済の本筋である、そのように認識をいたしております。
  176. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 ではお聞きしますけれども、きょう審議しているこの法律によって、この十年間で認定業務はどの程度促進されましたか。
  177. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 この認定業務で今までに申請がえをしていただきました申請者は、トータルで百八十名ということでございます。数の上では、各県において認定をされております数と比較いたしますと甚だ少ないではないかという御意見もあろうかと思いますけれども、私どもも認定業務を行うということで国・県一体となった認定業務が行えるというところにこの制度の大きな役割があるのではなかろうかと考えております。
  178. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 この十年間で本法によって認定されましたのは、百八十人の申請があって、処理済みが百十七で、認定されたのは三十二件、棄却したのは八十五件。認定されましたのは三十二件ですから、十年間で三十二だから、平均すると一年間で三人くらいですよ。こんなことで一刻も早く解決できるのですか。     〔委員長退席、佐藤(謙)委員長代理着席〕
  179. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 私ども、この制度によりまして国と県が一体となって認定業務を行っていくというところに意義があり、また両者一体となりましてこれからも努力をしていきたい、そういう気持ちでございます。
  180. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 環境庁は、今や地球規模の環境問題が非常に重要であるということで、昨年は東京でさまざまな国際会議を主催されました。私も参加をいたしました。確かに、日本が国際的な貢献を果たしていかなければいけないという立場にあることは承知します。しかし、やはり足元の問題、特に水俣病公害原点とも言われる公害病でございますし、しかも公的な発見から三十四年を過ぎておる。しかもその認定業務は遅々として進まない。こういうところで果たして環境行政に対して国際的に日本は十分なことやっているんだろうか、国際的なことを言う前にもっと足元の問題を解決してからいらっしゃいよ、こういうことを言われかねない状況ではないかな、このように思うわけでございますが、諸外国から、日本の国の環境行政、特に水俣病に対してその早期解決ができていないということで、いろいろな非難とかそういうものは届いていませんか。
  181. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 水俣病問題は諸外国におきましてもよく知れ渡っている問題ではございますけれども、お話がございましたように、日本政府に対しまして特段の申し入れがなされたという事実は承知いたしておりません。ただ、民間レベルにおきまして議論がなされたことがあるとは聞いております。
  182. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 諸外国もいろいろ遠慮して言わないのかもわかりませんね、実際は。しかし、民間のいろいろな団体等が日本環境行政のあり方に対していろいろ意見を言う、これはやはり耳を傾けなければいけない問題だと思うのです。この間の大臣の所信表明の中にも、水俣病のところはたしか一行あったと思うのですけれども、たくさんの中で今触れているのはわずか一行というスタンスだと思うのです。やはり日本公害病原点と言われる水俣病の早期解決、これは国際的にも日本が果たす役割である、こう思います。これは今の認定業務を法的に進めるだけでは、本当にそれだけでいいのかという問題があります。司法に 任せてその判断を待つというだけでもいかぬ。やはり国として積極果敢に、過去のことは過去のこととして、本当にこれでいいのかという反省に立って取り組んでいく、早期解決を図る、この強い政治的なリーダーシップが今こそ重要だ、私はこのように思いますよ。裁判所に駆け込んでいる人たち、あるいは認定してもらおうと思ってまだ列をなしている人たち、その人たちの中にはもう老い先短い人もたくさんいらっしゃるわけです。経済大国日本になって、本当にそういう方々にも十分な光が注がれている、これが日本のとる責任のある政治の姿勢だと思うのです。  私は大臣に、過去の経緯は経緯として、人道的な立場からこの問題にもっと積極的に取り組んでもらいたい、こう思うわけです。繰り返して恐縮でございますが、本当にこれは何とかならぬものでしょうか。切に要望したいと思います。
  183. 北川石松

    北川国務大臣 委員水俣病を早急に解決しろ、こういう御指摘の御質問をちょうだいいたしまして、全く私も一日も早く解決しなくちゃならぬという思いをいたしております。そして、今日までおくれてきたのは、いろいろの形があったと思うのですね。いろいろの形があっただろうと思います。それは本当にいろいろな形の中で、環境庁水俣病に対して環境庁なりに取り組んでまいりましても、おくれた事実というものは、御指摘を受ければそのとおりでありますし、今までのような形でおるとそれはマンネリじゃないかというところの御指摘を受けてもやむを得ないと思います。そういう点で、たった一行ではございましたけれども、水俣病に関しては積極的に取り組んでいきたい、こういう思いを込めて書いておりましたので、今後世界環境という中で、日本の国内でもようしないじゃないか、今のきつい御指摘を受けますと、やはりこれは一日も早く解決しなくちゃいけない。そういう点におきまして、今度法律が切れてしまうので、こうして三年延長の法案の御審議を願っているようなわけでございまして、この三年の間に何とか御期待に沿うような形を、再提案された衆議院の福島代議士ほか皆々様の意思を体しまして、また先ほど来の地元馬場委員を初め中井委員、またただいま遠藤委員の御質問を受けながら、そのような皆さんの温かいお気持ちを体して、患者救済に全力を挙げていきたい、このように思っております。
  184. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 事務的な話をお伺いしますが、先ほども問題になりましたUNEPだとかWHOだとかILOによる国際化学物質安全性計画、IPCS、ここで有機水銀環境基準を厳しくすることを求めた勧告をしているわけですが、環境庁はこの草案の段階のときに、意見を求められたんだけれども意見を言っていないという経緯があるのですね。これは何で意見を言わなかったわけですか。それから、この厳しくするという勧告に対してどのように受けとめていくのか。この二点確認したいと思います。
  185. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 第一点目の御質問でございますけれども、意見を言わなかったというお尋ねでございますが、これはIPCSの方から意見を求めてこなかったということでございます。  それから、このIPCSクライテリア、新しいクライテリアが勧告されたことについての受けとめ方でございますが、一九七六年のこの有機水銀のクライテリアと申しますのは、幾つかの化学物質の中で非常に早い時期にできたクライテリアでございまして、そのため今回、現時点での新しい知見が盛り込まれた形で出されたわけでございますので、この新しい科学的な知見を盛り込んだ、国際的な専門家グループの意見が取りまとめられたクライテリアでございますので、私どもといたしましても、このクライテリアは十分重いものと受けとめまして、国内の専門家の御意見も伺いながら、その示されている中身を十分に把握いたしましていろいろな対策等に万全を期してまいりたいと考えております。
  186. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 私先ほど引用しましたけれども、この資料、「メチル水銀環境保健クライテリアに係る調査」、平成元年三月のものでございますが、これはいわゆるIPCSが草案の段階で日本国に示したときに、これは大変なことになるというのでいろいろと資料をつくった。これはIPCSの方には日本国の意見として出した資料なんですか。それは出していないのですね。ちょっと確認させてください。
  187. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 あくまでもIPCSの中の議論は専門家の議論でございまして、政府としての意見を求められておりませんので出してございません。
  188. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 このIPCSが指摘しているのは二つあります。一つはイラクの例なんかを引きながら現行の五〇ppm以下でも胎児に影響があるおそれがあるということですね。それから、魚を多食する住民で妊娠可能な女性の毛髪水銀のチェックの必要性が提言されているわけですが、この二つの項目について環境庁はどう対応していくのですか。
  189. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、まず第一点目の胎児の有機水銀に対する感受性が高いという指摘、それがどのぐらい量的に判定できるか、そのためには研究が必要であるという指摘でございますので、この部分につきましては、国立水俣病研究センターを初めとする御協力をいただいている研究グループにここら辺のところをしっかり受けとめていただいて研究をしていただく、ということと同時に、妊娠可能な女性の毛髪水銀調査につきましては、専門家の御意見を伺いながら、できるだけ早い時期にしかるべく万全の措置をとりたいと考えております。
  190. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 その学者に委託するときにもちゃんと名前の出せるようにしてくださいね。また名前を覆面でやるというんじゃなくて、今度はきちっとだれそれさんの研究グループ、こういう人の話ですと、これは約束してくださいね。
  191. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 御検討をお願いいたしますときには、そのような形でお願いをいたしたいと思っております。
  192. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 それからきょうはもう一つ資料が提出されたわけでございますが、環境庁日本公衆衛生協会に委託した水俣病に関しての総合的調査手法の開発に関する研究班、この班長さんでいらっしゃいます重松博士は、地元の新聞の対談の中でこのようにおっしゃっておりますね。「現在の水俣病問題の議論で欠けているものは何か。」と言うと、重松さんは「認定問題の前に、患者救済という原点の視点が欠けていると思う。否定できない場合は、救済していく姿勢が大切」である、こういうふうなお話をされているわけでございますが、政府はいたずらに認定のみに固執をして、患者救済という一番大事なことを忘れているのではないか、このように思うのですね。やはり患者救済ということは、認定された人だけを救済するのじゃなくて、疑わしい人、これは患者の利益にしていかなければいけないと思うのですね。裁判では疑わしきは被告の利益にという原則があるわけでございますが、大石環境庁長官ですか、前にそういう話をされたことを私は記憶をしているのです。自分のところの認定に合わない人は全部切り捨てちゃうというのではなくて、それが水俣病でないと言い切れない人、断定できない人、水俣病かもわからないけれども水俣病であるということは認定できない、この真ん中の人たち、疑わしい人たち、この人たち救済していくということは非常に大事な公害行政の基本ではないかと私は思います。この点について、どうですか。     〔佐藤(謙)委員長代理退席、委員長着席〕
  193. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 私どもの今行っております認定業務の基本になります判断基準と申しますのは、過去におきましていろいろ専門の先生方の御意見をもとにいたしまして、水俣病の疑いが否定できないと医学的根拠をもって判断できるぎりぎりのレベルまで救済するということで認定を行っているわけでございます。ただいま先生、当時の大石長官のことを出されましたけれども、大石長官の言われた疑わしきは救済という趣旨にも、私どもは今の認定条件というのは合っているのではない か、そのように考えております。
  194. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 最後に大臣に決意を聞きたいのですけれども、早期解決の話をさしていただきました。やはり水俣病問題で一番大切な視点はここにあると思うのですね。早期解決をどうするか、これはまさに政治が判断しなければいけない問題だと思うのですね。具体的にどんなシナリオを考えていらっしゃるのか、あるいはこの件について被害者の代表とお会いして話し合う気持ちはあるのか、この点を確認さしていただきまして、質問を終わりたいと思います。
  195. 北川石松

    北川国務大臣 委員の御質問の早期に解決すること、そしてまた患者と会うかという二つの御指摘でございます。この点は一応担当と十分話し合って、それから決めさせていただきたい、こういうふうに思っております。
  196. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  197. 戸塚進也

    戸塚委員長 斉藤節君。
  198. 斉藤節

    斉藤(節)委員 ただいま同僚委員であります遠藤委員の方からもお話がありましたけれども、けさ理事会におきまして「メチル水銀環境保健クライテリアに係る調査報告書」、日本公衆衛生協会から出されたこの調査をいただきましたので、昨日レクで通告申し上げました以外に質問をしなければならない緊急質問的なところが生じました。それに関しまして質問をしたいと思いますので、御了承願いたいと思います。いずれにしましても、このことにつきましては、前々から公表してほしいということが今年の予算委員会においてもあったわけでありますけれども、それがようやく、これは公表じゃなくて我々に見せられたということだと私は思っているわけですが、そこで、これにつきまして御質問を申し上げたいと思うわけでございます。  まず、環境庁にWHOから新クライテリアの素案が送られてきたわけでありますけれども、どのようなコメントがついてきたのか、御答弁願いたいと思います。
  199. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 このクライテリアの素案を各国に送ってまいります場合に、我が国ではWHOの窓口になっております厚生省が受け取りまして、厚生省から関係省庁へこういうものが来ていますという連絡が来て、コピーが送られてまいります。
  200. 斉藤節

    斉藤(節)委員 厚生省に届いて環境庁にコピーが届いたということでありますけれども、ニュークライテリア、新基準でありますから、何のコメントもなくぽんとただこれだけが来るということは私は絶対あり得ないと思うのですよ。ですから、そういう点で、何か、こういうような素案を送るけれども、これについて日本政府としてはどう考えるのか、あるいは、これに反論があったらこれについて述べるべきなのか、あるいはさらに、いろいろ追試しなければならぬことがあったら追試してほしいと言ってきたのか。ただこの新クライテリアを送ってくるということはあり得ないと私は思うのでありますが、どうですか。
  201. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 先生指摘のように、各国の政府に送ってまいりますときには、何か意見はないかという形で送られてくるのが普通でございますけれども、このIPCSのクライテリアの議論につきましては、政府に対するコメントを求める行為とは別に、主としてIPCSが世界の特定のと申しますか、IPCSが選んだ研究者に対して個人的に研究者レベルで意見を求めていく、こちらのパイプが非常に大きい形になっていると理解をいたしております。
  202. 斉藤節

    斉藤(節)委員 研究者に意見を求めるということであって、政府に何らかの返事をしろということではなかったのですね、くどいようですけれども。
  203. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 このような素案が参りますときには、政府としての意見があるかということは通常聞いてまいります。今回も聞いてきたということでございます。
  204. 斉藤節

    斉藤(節)委員 当然そうでしょうね。でないとちょっとおかしいな、でなければ、各研究者にこのIPCSが送ってくるのではないかなと私は思うのですけれども、政府に来たのですから、やはり政府に対して何らかのこういう基準をこれから設定するけれどもいいかということじゃないかと思うのです。  これはあくまで素案ですね、どうですか。
  205. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 今回の素案と申しますのは、既に一九七六年に最初のクライテリアができておりますので、そういう意味では新しい物質の素案が届いたということではございませんで、一九七六年までの実績を踏まえた上での素案ということでございますけれども、しかし、私の理解をいたしております範囲では、このクライテリアが出されたときに、各国の政府あるいはIPCSと関連のある研究者に対しましてはその素案に対する意見を、特に研究者レベルでの意見を十分に受けとめる、そういう仕組みになっていると理解をいたしております。
  206. 斉藤節

    斉藤(節)委員 じゃ、これは素案じゃなくて、こういう新クライテリアにしましたよという通告と受けとめてもいいわけですか。
  207. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 通常、各国に最初に出てまいりますドラフト、素案といいますのは、必ずしも練れていない、あるいは、場合によりましたら不十分な内容も含まれているかもしれない形での第一次の素案というものがまず最初に参りまして、それに対していろいろ各国あるいは研究者からのコメントがつけ加わっていってだんだんとコンクリートなものになって、最終的に最終報告案、新しいクライテリアとして出される。ですから、最初の素案が出てきてから何回かの素案が研究者あるいは政府のもとに回ってくるという形になっております。
  208. 斉藤節

    斉藤(節)委員 じゃ、今度のあれは何回目ですか。最終なんですか、それともこれから何回か来るのですか。
  209. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 ちょっと申し上げた点で間違っておりました。今回政府にコメントを求めてまいりましたドラフトは一回でございまして、しかし、研究者の間では何回かその議論が交わされたということでございます。
  210. 斉藤節

    斉藤(節)委員 じゃ、今回来ているのは新クライテリアとして、最終案として政府は受けとめているわけでございますね。
  211. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 今回、この四月に厚生省に届き、また厚生省から回ってまいりましたクライテリアは、最終案、新しいクライテリアということでございます。
  212. 斉藤節

    斉藤(節)委員 じゃ、それでわかったのですが、それを最初に言っておいてくれればこんなに時間を食わなかったのですけれども。  そこで、じゃ環境庁としては、このIPCSに対してはオーケーだというふうに言われたのだと思うのですけれども、これに対してどんな評価を下しているのでございますか。
  213. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 一九七六年のクライテリアから相当の期間がたっておりますし、最新のいろいろな科学的知見が含まれた、私どもにとりましても非常に重みのあるクライテリアと受けとっております。
  214. 斉藤節

    斉藤(節)委員 それで大体この環境庁の評価がわかったわけであります。  そこで、けさいただきました公衆衛生協会からのリポート「メチル水銀環境保健クライテリアに係る調査」、こういったものが出されているということがわかったわけですけれども、これは平成元年四月八日の熊本日日新聞の報道によりますと、この送られてきたクライテリア、新クライテリアでは「水俣病など環境行政への影響が大き過ぎる、として緊急調査費を組んで研究班を組織、反論の意見書作りを進めていた」、このような報道があるわけでありますけれども、この報道とけさいただきました日本公衆衛生協会からのリポートと一致するのでございましょうか。
  215. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 午前中にお配りをいたしました研究班報告、これは、IPCSが第一次の素案と申しますか、それを送付してまいりました時点でその素案についてのいろいろな意見を集約しよう ということでまとめたものでございます。先生お尋ねのように、それがIPCSの方向に対して反論をまとめるというふうな報道があったとすれば、私どもは大変残念な評価であろうと思っております。当時、研究をしようというのは、日本における水俣に関する最新のデータを収集してできるだけIPCSのお手伝いをする、御協力をするという目的で、この研究はスタートしたものでございます。
  216. 斉藤節

    斉藤(節)委員 答弁が回りくどくてよくわかりにくいのでありますけれども、つまり、反論のためではないんだ、いわゆる我が国の水俣病研究におけるデータといいますか、そういうものを収集した報告なんだということでございますか。
  217. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 この調査研究の目的は二つございまして、一つ日本水俣病に関するできるだけ新しい文献を収集し整理をする、その整理の内容とクライテリアのドラフトとを突き合わせて、日本研究がどの程度クライテリアの最終案形成に向かって役に立てるのか、そういう議論もあわせて行ったところでございます。
  218. 斉藤節

    斉藤(節)委員 時間がないから余りこんなことでつまずいておるわけにいかないわけでありますけれども、結局熊本日日新聞が報道したこれは、この公衆衛生協会からのリポートとは関係ないわけでございますね、改めてだめ押しみたいにお聞きしますけれども。
  219. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 午前中にも御答弁申し上げましたが、私どもこの研究を進めるに当たって報道関係の皆さんにお話を申し上げた趣旨は、「環境庁としても、このIPCSにおける検討には強い関心を持っており、本年一月昭和六十三年度環境保全総合調査研究促進調整費をとり、専門家の協力を得つつ、メチル水銀に関する既存の科学的知見の収集整理を行い、今後必要に応じてIPCSに知見の提供等の協力をしていくこととしているところである。」こういう発表をいたしております。
  220. 斉藤節

    斉藤(節)委員 余りよくわからないのですけれども、じゃ次へ進みます。  このいわゆる公衆衛生協会からのリポートを読ませていただきました。この報告書の八ページ「新クライテリア草案の問題点について」というところから二十一ページの最後まで、全部この新クライテリアに対する批判なんですね。先ほども同僚の遠藤委員が言っていましたけれども、断定的に、そういうような水銀の影響はないんだというような、もう完全なる反論なんですよ。これが熊本日日新聞が言っていることと違うんだというのであれば、私はそれはうそだろうと思う。これはやはり完全なる反論用の論文であると私は解釈するのですが、どうですか。
  221. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 あるいはいろいろな意見があろうかと思いますけれども、やはり、クライテリアが科学的な根拠に基づくのは当然でございますけれども、最終的なクライテリアが形成される段階におきましては、相当厳しいいろいろな議論の中で形成されていくものと考えております。今回のクライテリアに対するこの報告書が直接的には日本政府からIPCSの方へ送られたわけではございませんけれども、こういうような中身に盛られておりますような議論というのは、このクライテリアが最終的な案にまとまっていく段階におきましては、例えばワーキンググループでありますとかタスクグループといったような形で、徐々に小委員会というべきような段階を経てまとまってまいりますので、その段階における議論というのは学問的に相当厳しい議論が行われている、そのように理解をいたしております。
  222. 斉藤節

    斉藤(節)委員 じゃ、この論文はIPCSには送られていないのですね。
  223. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 日本政府からは送っておりません。
  224. 斉藤節

    斉藤(節)委員 じゃ、これは何のためにやったのですか。どこへ公表するのですか。どういうふうに使われるのですか。しかも、先ほども問題にしていましたが、私も非常に問題にしたいのは、研究者の名前を真っ黒く塗られていただいているわけですよ。これではだれが研究したのか、どういう権威ある人がやったのかわからぬですね。先ほどもよく言われておりましたけれども、私も代議士になるまで研究者でありましたので、自分の研究論文というのはしっかりと名前を書いて、どういう論文誌に何年何月出したということを書きまして、そうしますとアメリカのケミカル・アブストラクトにしっかり載るわけです。そういうことは私たち研究者の一つの仕事でもあるわけです。それが、これはだれのためにやったのか、どういうところに発表するためにやったのか、それがわからない、しかも発表者がわからない。それでは、報告を受けた環境庁さんはこのことに対しまして信用しておられるのですか、どうですか。
  225. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 この調査研究の中身といたしましては、一つは、最新の水俣病に関する文献を収集していただいてそれの解析をしていただく、それから、IPCSから示されたドラフトについての議論をしていただくということでございまして、これはその後私どもが水俣行政を進めていく上の参考資料として使われる、そういう目的も持ってこの研究が始められたものでございます。
  226. 斉藤節

    斉藤(節)委員 いや、私はそれは重大な問題だと思います。これをこれからの水俣病患者に対する対策に使おうというのであれば、新クライテリアで言っていることはかなり、今これからも議論しようと思っておりますけれども、これを読んでみますと、妊産婦と胎児への影響が今度の新クライテリアの主要テーマになってきているわけです。その主要テーマに対して、環境庁の考え方あるいはこの論文を発表した研究者らの考え方がこれにしっかり出ているわけです。しかも、それがすごく食い違っているわけです。その辺が、もし食い違ったら、環境庁さんとしては新クライテリアを採用するのか、それとも、研究費を出してやってもらったこの報告書を信用して、それを中心にこれから環境行政を進めていかれるのか、その辺を私は非常に問題だなと思うのですけれども、どちらを重要視してやられますか。
  227. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 きょうお出しいたしましたその報告書の中身の議論は、IPCSのクライテリアのドラフトの段階での議論でございます。したがいまして、私どもは、最終的にまとまって四月に送付されましたクライテリアを尊重いたします。
  228. 斉藤節

    斉藤(節)委員 では、ドラフトだからその議論は議論であって、最終的には、WHOのIPCSから送られてきたそれをもとにこれから進めていくということでございますね。
  229. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 最終的にまとまって送付されました新クライテリアでございますから、尊重いたします。
  230. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そんなことでしたら、何もこんな金をかけて、研究者四人でやる必要はなかったのではないですか。むだなことをやったのではないかと思うのですけれども、むだだと思いませんか。これは何に使うかわからない、しかも、最終的にはWHOのIPCSから送ってきた新クライテリアをもとにおやりになっていくというのでありますから、これは新クライテリアをことごとく批判している論文なんですから、そういう点で、こんなことをやった意味がわからなくなってくるわけです。また先ほどのを繰り返しますけれども、どういう意味でこれはおやりになったのですか。
  231. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 ドラフトの段階では、ある表現がございましたときに、それの根拠となる文献でございますとか、その引用論文、引用文献等の引用をもとにドラフトが書かれ、また最終的に形づけられていくわけでございますが、そのドラフトの段階では、その辺の引用文献がはっきりしていなかったりといったことが往々にしてございまして、その辺の議論というものは私どもとしても知りたい情報でございます。
  232. 斉藤節

    斉藤(節)委員 とりあえず、しかも、こういうことをやって公表しない、ただ国民に不信感を抱かせるだけではなかったか、そういう点で私は残念に思うわけです。信頼される行政をやっていかなければならぬと私は思うのです。  特に日本の原子力行政は、ここは科学技術委員 会ではないですから私はこんなことは言いたくないのですけれども、私たちは東京電力の福島三号炉を視察しました。あのとき所長さんに対しまして、マスバランスはどうなっておるのだ、羽根が一つ落ちたのだけれども、出てきた報告の量とはがれ落ちたという羽根の量が全然違うじゃないか、何十キロというものが落ちたのに何グラムしか出てこないのはおかしいじゃないか、マスバランスはどうなんだと聞いたのですが、後で徐々に徐々にマスバランスが合うように報告してくるのです。私はこれではまずいと思うのです。もう落ちたのですから、その量はどこにも行っていないわけですから、中に入っておるわけですから、それだけ落ちておるはずですと言えばいいのに言わない。これは原子力行政も国民に不安感を与えることになってしまって、残念だと私は思うのです。  そういう点で、情報公開ということが盛んに言われておりますけれども、余り隠れてこそこそやらない方がいいのではないかと私は思うのであります。これは苦言でありますから、そういうふうにしてください、明らかにしてくださいということを申し上げまして、もう時間がなくなってきましたので次に進みたいと思うのであります。  そこで、今回の新クライテリアの特徴は、先ほども申し上げましたように、胎児への影響に対して強い警告を発しておる点に特に注目されると私は思うわけでありますけれども、これはいかがでございますか。
  233. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 先生の御指摘のとおりでございまして、一九七六年のクライテリアにおいても胎児が有機水銀に対して感受性が高いということは指摘されておりましたが、今回のクライテリアにおきましては、さらにそれが強調され、それをはっきりさせる、ドーズレスポンスの関係等も含めて各国が研究してほしいという、勧告といいますか要請といいますか、その部分がはっきり書かれておるところでございます。
  234. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そこで、私はいろいろと申し上げなければならぬことがあるわけですけれども、環境庁としては水俣病発生地域に住んでおる妊娠可能な女性の頭髪検査を行う予定はございますか。
  235. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、この毛髪調査につきましては、専門家の御意見を聞くチャンスがございますので、御意見を伺った上でしかるべく対処をいたしたいと考えております。
  236. 斉藤節

    斉藤(節)委員 御意見を伺うのは結構でございますけれども、今まで頭髪検査はやってはいないのですか、どうですか。
  237. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 水俣病発生した時期におきまして、熊本においてもまた新潟においても、相当数の毛髪調査が行われております。それから最近の例といたしましては、鹿児島の出水市でございますとか、少数例ではございますが、地域住民に対する毛髪調査というものは行われております。
  238. 斉藤節

    斉藤(節)委員 毛髪検査はやっているわけでございますね。これによりますと、報告いただきました十八ページにあるのですけれども、「母親の毛髪水銀値に関するデータはないが、調査対象の学童は一九六二―一九六七年の間に生まれたものであり、」云々ということがあるのですが、これは母親の毛髪水銀値はないと言っていますけれども、それはあるのですか。
  239. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 当時の調査は母親のものでございませんで、一般住民の毛髪調査でございます。
  240. 斉藤節

    斉藤(節)委員 一般は母親もみんな同じだと私は思うのです。そこから母親を抽出すればいいわけですから、それはやっていなければおかしいと思うのです。だけれども、これはないがというふうに言っているのですよ。これはおかしいと思いますね。この報告書は余り信頼するなという環境庁さんのお話ですから、これは余り読むのをやめるつもりでおりますけれども、ですから、これにのっとって今度云々言ったときには、これは前言取り消しますかということになりますけれども、その辺しっかりと覚えておいていただきたいと思います。この研究者の報告環境庁としては重要視してない、最終的にはニュークライテリアを信頼してやっておりますという御答弁であったと思いますので、よろしいですね、再確認させていただきます。
  241. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 研究が行われておりました当時はドラフトの内容があいまいな点が多かったという意味で、その時期におきましては有効なものであったと考えておりますが、最終的なクライテリアがまとまって送付された現時点では、クライテリアは大変重いものであると思っております。
  242. 斉藤節

    斉藤(節)委員 重いものであるということはわかるのですけれども、その最終クライテリアというのは、昨年のあれに発表されたものがそうですね。
  243. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 ことしの四月に送付されたものでございます。
  244. 斉藤節

    斉藤(節)委員 わかりました。それでは、もう時間がなくなってきましたので、次を質問させていただきます。  そこで、少なくとも妊娠している女性に対しては検査していくべきではないかな、私はそんなふうに考えているわけでございます。それについてはいかがでございますか。
  245. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 毛髪調査につきましては、専門家の御意見を伺って、どのような方法で行っていくのがいいのかというのを確かめた上で行うべきときは行いたい、そのように考えております。
  246. 斉藤節

    斉藤(節)委員 では確かめて行っていただきたいと思います。よろしくお願いします。  では、せっかく厚生省の方来ていらっしゃいますのでお伺いしますけれども、これまでのクライテリアでは、成人の頭髪中の水銀濃度が五〇ppmまでは胎児に影響はないとされていたわけでありますけれども、このたびの新クライテリアではこれより低い胎児に影響があるというふうに言っているのですが、五〇ppmまでは胎児に影響ないというふうに決定されましたのは、厚生省乳肉衛生課としてはどういうような根拠に基づいてこういうことをおやりになったのでございますか。
  247. 難波江

    ○難波説明員 お答え申し上げます。  私どもは、食品の安全確保という観点から魚介類についての暫定規制値を決めるという方式をとっておるわけでございますが、昭和四十八年の七月に魚介類水銀に関する専門家会議を設けまして御検討いただきまして、その結果を踏まえまして、暫定的規制値、総水銀〇・四、メチル水銀〇・三ppmというふうに定めたわけでございますが、当時の専門家会議におきましては、根拠となりましたのは、熊本大学医学部の十年後の水俣病研究班研究成果、それから国立衛生試験所における猿の実験結果、それからFAO、WHOの合同食品添加物委員会の報告等、内外の研究資料をもとに決めたわけでございます。細かい算定は時間がございませんので省略させていただきますが、毛髪水銀との関連でやったのではなくて、一週間のメチル水銀の取り込み量として暫定規制値を一週間〇・一七ミリグラム、それ以下であれば継続してとっても健康障害を生じないという根拠に基づいて決めたものでございます。
  248. 斉藤節

    斉藤(節)委員 改めて質問いたしますけれども、では体内における蓄積というのはないのでありますか。
  249. 難波江

    ○難波説明員 お答えいたします。  当時の専門家会議の御意見といたしましては、水俣病そのものがメチル水銀に汚染された魚介類を長期間にわたり食べ続けた結果、水銀の蓄積量が一定量に達して発病したものである、したがいまして、微量のメチル水銀を長期摂取し続けましても、一定限度以内であれば発症例に達しないという観点からの暫定規制値を決めた、こういうことでございまして、蓄積がないということではなくて、一定レベル以下に抑えるために一定濃度以上の魚介類を市場から排除しようということで決めたわけでございます。
  250. 斉藤節

    斉藤(節)委員 わかりました。  では、せっかく農水省から来ていただいており ますので農水省に御質問いたしますけれども、水俣湾での漁業は現在どのようになっておるのでありましょうか。水俣湾でとれる魚については水銀検査はなされているのでありましょうか。また、どのくらいの水銀濃度になっているのか。また、どのような種類の魚に多く濃縮されているのか。その辺御答弁願いたいと思うのです。
  251. 吉崎清

    ○吉崎説明員 御説明いたします。  水俣湾では、昭和三十二年八月より現在まで、全魚種を対象として漁獲自主規制を実施されております。したがいまして漁業操業は行われておりません。  水俣湾魚介類につきましては、熊本県が二度にわたり水銀分析調査を行っております。平成元年六月から八月にわたって行われました第一次調査では、採捕された七十一魚種の魚介類のうちカサゴ、クロダイなど十六魚種が厚生省の定める暫定的規制値を超えておりました。また、平成元年十一月から十二月にわたって行われました第二次調査では、採捕された六十五種の魚介類のうち十種が暫定的規制値を超えておりました。  一方、水産庁におきましても、昭和四十八年度より熊本県に委託して魚介類水銀汚染状況調査を行っており、そのうち、水俣湾に係る平成元年度の調査結果では二十二魚種、五百検体のうち三魚種、カサゴ、クロダイ、キス、四十七検体が暫定的規制値を超えておりました。  以上でございます。
  252. 斉藤節

    斉藤(節)委員 水俣病患者の問題についてやる時間がなくなってしまいまして残念なのですが、先ほども同僚委員からありましたけれども、重松委員会、これはいわゆる日本公衆衛生協会に環境庁が委託してスタートしたというふうに聞いておりますが、この重松委員会からずっと何回もレポートが出されてきておるわけでございますか。
  253. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 毎年報告はいただいておりますけれども、公表はいたしておりません。
  254. 斉藤節

    斉藤(節)委員 では、このレポートは公表しないわけでございますね。
  255. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、この調査はその時点その時点で、過去におきます地域で行われました健康調査の結果の評価でありますとか、また、健康調査のためのいろいろな手法をどのような形で行ったらいいのか、新しい手法開発があるのかといった研究もございましたりいたしまして、そのそれぞれの研究のレベルがちょっとまだアンバランスという段階、十分に議論がなされているものとなされていないものが混在しているということで、今その総まとめの議論をやっていただきますので、そのまとめができました段階では中間報告ができるものと思っております。
  256. 斉藤節

    斉藤(節)委員 もう時間がなくなってしまいましたので、最後に環境庁長官に御質問申し上げます。  先ほどもお話何回もありますけれども、水俣病が発見されましてから既に三十四年経過しているわけでありますけれども、この間に救済を受けることなく死んでいっている患者さんが後を絶たない、こういうふうにも言われておるわけでございます。このような状況のもとで、先ほどもいろいろ話がありましたけれども、生きているうちに救済をしてほしい、こういうことを求める患者たちの切実な願いがいまだに実現されることなく現在に至っているわけでありますけれども、これは言うまでもなく人道的に極めて重要な国家的緊急課題ではないかな、そんなふうに私は思っているわけでございます。  そういう点で大臣に要望いたしたいことは、いろいろな理由はおありだと思います、いろいろ年もとってきていますから、患者さんも果たしてこれが水銀による影響なのかそれとも老衰によるのか、それともまた別な病気の併発によって起こっているのか、いろいろ事情は、理由とか何かあると思います。しかしやはり水俣のあの付近に住んでいらっしゃる方、またその特異的な患者の症状もあると思いますけれども、そういうような疑わしきものはやはり全部救済するのだということで、全面的な救済を私はお願いしたいと思うわけでございます。そうすれば、患者はもちろんのこと、その家族をも安心させることになると私は思うわけでございまして、ぜひとも大臣にこのことをお願いし、また大臣のお考えあるいは決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思うわけでございます。
  257. 北川石松

    北川国務大臣 斉藤委員水俣病に関しての、人道的に捨てておけないじゃないかと今御指摘がありました点を、私もまたもっともだと思うものでございまして、今日まで、御指摘のありましたように三十四年何しておったのだというところの御叱正だと私は思っておりますし、また、クライテリア一つの先ほど来の御質問を聞かしていただきましても、やはり私はぴしっとした形を示すべき必要がある、こういう思いをいたしておりまして、国家的にもこれは緊急課題と考えているものでございまして、環境庁といたしましては、水俣病被害者の救済のため、関係県と鋭意話し合い、努力してまいりたい、こういうふうに思っております。
  258. 斉藤節

    斉藤(節)委員 じゃ、これで終わります。どうもありがとうございました。
  259. 戸塚進也

    戸塚委員長 寺前巖君。
  260. 寺前巖

    ○寺前委員 質問に入る前に、先ほどから問題になっておりました「メチル水銀環境保健クライテリアに係る調査」、日本公衆衛生協会が平成元年三月に提出したこの資料が、事業実施担当者が書かれていない。まことに遺憾な提案の仕方で、国権の最高機関の国会にこのような報告書を出すということは許される姿ではないと思うのです。速やかに完全な資料として提出されることを要求します。
  261. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 先ほどから御答弁申し上げておりますように、この研究をスタートいたしましたときに、私どもとして、参加していただく研究者に名前は公表しないということで研究をスタートしていただいたいきさつがございますので、お許しいただきたいと思います。
  262. 寺前巖

    ○寺前委員 そんななめられた話で国会が済むと思うとるのかいな。  委員長委員会の名において、きちんとしたものを提出されるよう要求します。
  263. 戸塚進也

    戸塚委員長 寺前君に申し上げます。  ただいまの御要求に対しては、理事会で協議させていただきます。
  264. 寺前巖

    ○寺前委員 質問に入りますが、水俣病と言われてきたわけだけれども、一体どのくらいの人が今日までその関係によって亡くなったのですか。あるいはどのくらいの人が健康を破壊されたのですか。どういうふうに見ておられるのか、環境庁説明してください。
  265. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 現在までのトータルの数字でございますけれども、今までに水俣病として認定をされた患者数が二千九百二十でございます。それから、亡くなっている方が千百九十二名でございます。(寺前委員「何している人が」と呼ぶ)認定をされた方の中で死亡された方が千百九十二名でございます。
  266. 寺前巖

    ○寺前委員 それは認定関係だけだから、実態というのはそんなものじゃないわな。そうでしょう。健康が破壊された人はそんなものでないでしょう。ともかく認定制度ができてから、おれ関係者やでと言うてきた人はどれだけおりますか。
  267. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 認定申請なさった方は一万五千名いらっしゃいます。
  268. 寺前巖

    ○寺前委員 もっとあるのと違うか、申請出した人は。それ、間違うてへんか。そんなものか。
  269. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 認定審査の段階で棄却された後再申請をされた方もいらっしゃいますので、申請総件数は一万八千三百二十六名となっております。
  270. 寺前巖

    ○寺前委員 それで、認定された人はどれだけですか。
  271. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 認定をされた方は二千九百二十名でございます。
  272. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、一万五千の人が、おれ の体どないしてくれるんやということでっしゃろが。  提案者にお聞きしますけれども、今度のこの法改正がその一万五千の人にとって非常に結構な法律だということになるのでしょうか、どうでしょうか。
  273. 福島譲二

    福島議員 御質問の御趣旨は、認定臨時措置法による救済というのが非常に少ないではないかということを背景としての御意見であったかと思います。ただ、この臨時措置法は最初から非常に背景、沿革がございまして、熊本県当局としては、大変困難な難しい問題を地方自治法によるところの機関委任事務として国は熊本県に押しつけて、厄介な話はみんな県に押しつけておる、国も応分の手伝いをやれという気持ちというものがスタートにありまして、それを受けて、国の方でもしからば認定審査に関して国としてできることはやりましょうということからスタートしたという経緯がございます。  そういうことで、実際の運用に当たりましては、やはり国の方が何となく厳しいのではないかという思惑、感情も申請者の方にはおありになったかと思いますが、やはり国の方に、いわゆるバイパスを経由して認定審査に当たってこられる方々が実際に少なかったということは事実ではございますが、しかし何がしかでも認定審査の促進に寄与することはできたし、またそれなりの意味はあったものと考えております。
  274. 寺前巖

    ○寺前委員 一万五千の対象の人に喜ばしい結果になる認定としての法律になるかといえば、そういうお話についてはなかったです。審査を促進させる役割はする。しかし、審査促進されたって、切られてしまったら何の役にも立たぬやないか。一万五千人の人が泣いているんだから、泣いている人を救済するという立場のことが今求められている。何で泣かなければならなくなったんだろうか。これは行政機関に言うだけでは話のけりがつかぬというので裁判ということが起こるんでしょう。さて、裁判がなされて、判決が地裁なり高裁なりでなされているでしょう。さあ、その判決の端的な特徴は何ですか、環境庁
  275. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 今まで、国が絡んでおります訴訟におきまして、一審におきましては国が敗訴してきているわけでございます。しかし、国といたしましては国の主張を御理解いただきたいということで、一部につき控訴した関係もあるわけでございます。
  276. 寺前巖

    ○寺前委員 これ、議事録読んで、全国の人わかるやるか、今の話。何言うたか、わしはわからぬ。何で負けたんやと言うねん、負けた特徴は何やと。判決文に書いてあるわ。それを読んだら明確なんや。そうでっしゃろが。何ですねん、あなたの負けるのは。四つ判決が出ておるのですか、全部負けてしまった。わしらでも、素人が見たってちゃんと書いてある。簡単に言うたら、あなたのところが出している事務次官の通達、これが通らぬようなやり方になっているということをいろいろな角度から言うとるのや。断片的なところだけとらえていって、そして総合的に見なければならぬものを総合的に見へんかったら、こんなものやっとったらいつまでたっても水俣病やというような認定はできませんでと、そう書いてあるのや、簡単に言うたら。そこまで言われておったら、その事務次官通達を変えないかぬのと違いますか。どうですか。  環境庁長官、あなた一番の責任者や。簡単に言うたらそういうことや。そうしたら、その疑わしき者は――さっきから出とったやる。本人に違うと言われたって、わしの証拠を出せと言われたって、こんなものあなた、チッソが持ってきて、さあおまえこれのめと言うてのまされてるのと違うのやさかいに、証明せいと言うたって証明しようがあらへんのや。おまえは水俣病と違うと言うのやったら、こうこうこういう理由で違うということを、逆に証拠を事を起こした側が言わなんだらあかんがな。そうでしょうがな。被害を受けた側に、おまえ水俣病の証拠持ってこいなんてこと言うたって、できへんのや。加害者が、迷惑かけました、だけれどもおたくは病人と違う、うちの被害を与えた結果と違いますわという証拠を持ってこぬ限りは、疑わしき人は、神経やられた人は全部面倒見ましょう、これが基本でなかったらおかしいのと違いますか。だから、今の判断基準というのは見直さないかぬところへ来ている。環境庁長官、そういう腹で、見直しという態度でもって臨みますか。
  277. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 事務次官通知につきまして、いろいろ御意見があろうと思いますけれども、私どもは、六十年の控訴審のときに全国の神経内科の専門家にお集まりをいただきまして、そこで過去における判定条件といったものがその時点で妥当なものであるのかないのかということの御議論をちょうだいし、その判断条件が誤りがないという御結論をいただいたので、今現在もその判断条件に従って認定業務を行っているところでございます。
  278. 北川石松

    北川国務大臣 寺前委員の疑わしきは補償せよ、こういうところからの御質問でございました。今政府委員が御答弁いたしましたのは、認定という形の中で環境庁がとってまいりました形を御報告したのでありまして、そういう中で裁判の問題については形が出ておるような形でございます。そういうことを考えながら、公害健康被害補償等に関する法律という形の中で、やはり医者の判定ということも大切なことだろうと私は考えております。  そういうもろもろのことを考えながら、環境庁としては三年延長していただきました……(寺前委員関係あらへん」と呼ぶ)いや、それは関係ありますよ。三年延長していただきましたこの水俣病に関しての法律に沿いまして全力投球をしていきたい、このように長官としては思っております。
  279. 寺前巖

    ○寺前委員 あなた、これじゃちょっと審議ストップやな。違うんやて。それはバイパスつけただけの話。今の認定制度を、たまっておるから、たまっておる分を国の方でも、審査を受けましょう、助けてあげましょう、こういうバイパスをつけた。それに関連していろいろなことがあるけれども。ところが、もとになる公健法という制度そのものの認定のあり方に問題があるから、一万八千人の人から問題を持ち出されて、今まで三千人の人が認定されたけれども一万五千人の人が放置されたままになっている。えらいこっちゃ。圧倒的諸君たちがほかされておって、それでいてこの認定制度が正しいでは済みませんで。だから裁判所も、出されたらどこへ行ったって全部国が負けたというのはそのことや。負けた基礎は何だったんだ、認定基準にあるんだ、審査の仕方に問題があるんだ、そこまで話が来たら、素直になって、それじゃおれが大臣のときにはそこをちょっと検討し直してみるよ、研究するよというぐらいのことを持ってこそ大臣の値打ちと違うか。それが言えぬようやったら大臣やめた方がええで。わしはそう思う。どっちです、そこのところ。
  280. 北川石松

    北川国務大臣 委員の重ねての質問でございまして、私は至って素直な男だと自分では思っております。私は若き日に、北川よ、おまえは石松や、武蔵と違うてケミカルシンプリーだと言われた。英語でぬかすなと言うたら、化学的単細胞だと言われた。それをいまだにしっかと胸の中に抱いてきておりますので、このことに関しましては、私はやはり全力投球をこの法の認定の中でやっていきたい。そして、今おっしゃった一万八千名のうち二千九百しかおらぬじゃないか、こういう御指摘を受けますと、ああなるほど過去の行政の中でいろいろの御迷惑をかけたなという思いは十分にいたしておりますけれども、この法に対しましては、どうかこの三年の延長ということを御審議の上、御決定願って、その範囲内で全力投球したい、このことを申し上げておきたいと思っております。
  281. 寺前巖

    ○寺前委員 公健法という法律があるのや。その法律に基づいて認定制度がある。その認定をやるのに基準があって、その基準が今の基準ではあかんでというのが判決や。そしたらその認定基準の どこに問題があるのか見直さなかったら、一万八千人の人が二千何百人しか救われないこの現状が救われないのや。そこの問題に、新しく大臣になったんだから情熱を傾けて、ここのところ問題があるようにわしも思うさかい調べてみるわ、このくらいの気持ちがなかったら大臣やめはった方がええでとわしは率直に、あなたの人柄を見て言うてるのやけど、人柄の見間違いやったら知らぬで。どうです。わしの意見はわかったのかいな。
  282. 北川石松

    北川国務大臣 非常によくわかりました。私石松単独であれば、寺前委員のおっしゃったことも、ああそうですね、やめさせてもらいましょうかと言えるのですけれども、今この大臣の職責にある以上は大臣として、この水俣病については、朝から馬場委員を初め皆さんの意見を聞きながら、私は一生懸命にこれはやはり解決しなくては申しわけない、こう思っておる次第でございます。
  283. 寺前巖

    ○寺前委員 それがあかんのや。一生懸命やっているという言葉だけではあかんのや。要するに、今まで政府がやってきたことをわしが大臣の間に見直してみるわ、その気持ちがなかったら一万五千人の人が救われぬままになる、そこの問題だ。認定基準の問題についておれはもう一回調べてみるわ、こう言うてくれたら、もうそれでわしはこの質問終わりや。
  284. 北川石松

    北川国務大臣 重ねての御質問でございますが、特にこの水俣病被害者の救済ということはもちろん公健法に基づいてやっておるのでございますが、判断条件についてはやはり医学の専門家の意見をとうとばなくてはいけない、このことも大事であると思っております。ただ、私としましては、先ほど来御指摘の点については鋭意努力をしたい、これだけは申し上げられると思っております。
  285. 寺前巖

    ○寺前委員 厚生省来てくれてはるのや。長いこと待たせて済んまへん。  特別医療事業というのがなされていますね。水俣の周辺のところ、熊本県から鹿児島、あそこですか、あれは何のためにやっていますか。どのくらいの人が面倒見てもろうてますか。
  286. 松澤秀郎

    ○松澤説明員 御指摘熊本、鹿児島県におきますいわゆる原因がわからない感覚障害等につきまして、現在環境庁の特別医療事業において原因解明等に努力しているものを私ども承知しておりますけれども、厚生省としては、現時点ではこの問題については把握しておらぬのが現状でございます。
  287. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 特別医療事業と申しますのは六十一年からスタートいたしました医療給付事業でございまして、水俣病とは認定できないけれども四肢末端に知覚障害を一部持っている方々に対し、医療給付事業を行うことによりまして、その知覚障害の原因をはっきりしていただくという治療研究的意味と、それから、そういう神経症状を持っていらっしゃいますので御不安をお持ちですので、それを解消するという意味も含めて六十一年から実施したものでございます。
  288. 寺前巖

    ○寺前委員 ほかにこういうところありますか。
  289. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 この事業を実施しておりますのは熊本県と鹿児島県でございます。
  290. 寺前巖

    ○寺前委員 そこに水俣病認定患者が三千人からおって、まだ一万五千人からの人がこれをどうしてくれるのやと言うておって、そこで特別医療事業というのがあるが、似たような疾病が出てきている。そしたら原因は何やといって、だれが考えたって水俣以外にないのと違うか。不思議に思いませんか。環境庁長官、どう思います。ほかにあらへんのや。あそこだけにあるのや。そこにチッソのあれがあったのや。そこに認定患者が三千人からおる。もっと多い一万五千人の人がわあわあ言っておる。そこの中で特別医療事業が始まっている。その特別医療事業は何や言うたら、水俣と同じような神経の症状や。もともとの原因は非常に明確なのに何でこんな扱いするのや。そうすると、認定という制度におかしいところがあるからこのままでは救われへんという何よりの証拠と違いますか。あなたもそういうふうに疑問を感ずるのやったら率直に疑問を感ずると言うておくれやす。
  291. 北川石松

    北川国務大臣 委員の御質問でございますが、基準という形の中でやはり専門家の意見は大事にしなくちゃいかぬ、このように私は思っております。
  292. 寺前巖

    ○寺前委員 それはあかんわ。専門家専門家て、あなた直らへんな。専門家があかんさかいに裁判で負けておるのや。そんな専門家の意見を聞いておったら、いつまでたったってあなた環境庁長官としての仕事でけへんで。日本の国民を相手にして仕事をするのに、環境庁の代表になって、どないするのや。自分が使わなければならぬ方やないか。そこの連中が長年にわたって間違いを犯してきているんだったらそれらしい態度をとらなければあかんがな。  そこで、その特別医療事業において、昭和四十三年までこの地域に居住しているというのが条件の一つに入っているわけでしょう。何で四十三年まで居住なんです。四十三年でもってここの会社の事業はストップした、だからそれ以後は事は起こらへん、そういう立場をとっているんでしょう。特別医療事業でそう入れているやる。四十三年という根拠は何ですか。
  293. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 特別医療事業は、水俣病とは認定されない方々で一定の神経症状をお持ちの方々を特別医療事業として医療給付の対象にしているものでございまして、四十三年というのは一つの割り切りということでございます。
  294. 寺前巖

    ○寺前委員 本当にわしはこれ以上質問やめるよ。なめるなということになるぞ。四十三年て何だ。チッソがここで事業をやめた、だからそれから事が起こってへんという態度をとったんでしょうが。区切りなんて、ょうそんなことをぬけぬけとあなた言うたな。わけのわからぬ区切りなんてあるか。勉強し直してからこの審議をやらなんだら、国会の審議がなめられているやないか。  それで、わし意見言うておくけど、裁判でも資料として出された。四十八年四月に生まれたここの地域の猫が水俣病と同じような姿になったということを、国立予防衛生研究所の安全発熱試験室長が論文に書いて、裁判でも使われている。猫でも四十八年にかかるんだから、四十三年で区切ったってあかんのや。それはそうや。常識から考えても、仕事終わったからといったってそんな海の汚れが消えるはずがあるかいな。いいかげんなことばっかり言うとるからちょっと腹立ってくるじゃないか。本当に大臣、姿勢変えて、おかしいやつばかりおるなぐらいの気持ちでやってくれなかったらおかしいよ、これ。  それから――まともに言わないから時間がなくなってしまった。ちょっとベル調整頼みます。  それで、さっきから問題になっているこれや。これを見たって、何のためにやったんや。何のためにこれをつくったんやということです。これ、英文のつくったんでしょう。英文のこれつくったんでしょう。
  295. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 英訳はしてございません。
  296. 寺前巖

    ○寺前委員 大蔵省に要求したときには、英文にするという要求があったな。それはカットしたんやな。間違いないな。
  297. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 報告書の本文につきましては英訳はしておりません。しかし、収集をいたしました文献のうち一部は英訳をしております。
  298. 寺前巖

    ○寺前委員 それは、その英文にしたものを何に使ったんですか。
  299. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 英文にいたしました一部の文献につきましては、私どもとしてはIPCSにお役に立てる文献ということでその作業をいたしましたが、最終的にIPCSの方に送るということはいたしませんでした。
  300. 寺前巖

    ○寺前委員 何であなた、せっかく国費でもって予算を組んで、これに四百数十万円の予算をかけたんだ。要求は五百数十万円の要求を出して、そして一部英文にまでして、それで出さなかったというたら、一体何をやっておったんだ。しかも、国会に資料出せと言ったら、何や名前消してあるし、一体どないになっとるんや。  そこで、このIPCSが、毛髪水銀が一〇ないし二〇ppmでも胎児の運動と知能の遅滞が起こることがこの報告の中に出てくる。そうすると、IPCSがそういう立場に立って、毛髪水銀五〇ppmの見直し作業を今日本でやっている、IPCSで一〇ないし二〇ppmということを根拠にして出されてきた、だから毛髪水銀の五〇ppmの日本環境基準ではこれはあかんなということになるやる。あかんなということになったら、要するに厳しくなるわけや。今の二・五倍から五倍の基準になってくるんだから。そうすると、さっきからIPCSは尊重するとか重要なものでございますとか、認識はしておりますとか、言葉だけはだあっとすばらしい言葉が走るけれども、要するに、見直しをやるか。どうです。
  301. 三橋昭男

    ○三橋政府委員 このたびの出ましたクライテリアにつきましては、五〇ppmという成人に対する値につきましては変わっておりません。しかし、前のクライテリアにおきましてもその感受性が指摘をされておりました胎児に対する影響、これの指摘がさらに強化された、そういう内容になっておりますが、今回のクライテリアの中におきましては、それによりまして数値を変えるといった表現といいますか、示唆にはなっておりません。そういう意味で、例えば胎児性水俣病認定に際しましても、現時点における認定基準、認定条件というものは、もし仮に五〇ppm以下の値であっても、生まれた後の赤ちゃんの症状等を勘案した上で認定できるということになっておりますので、今すぐいろいろな認定基準における数値を変える必要はない、そのように考えております。
  302. 戸塚進也

    戸塚委員長 寺前君、そろそろベル調整の時間が参りました。
  303. 寺前巖

    ○寺前委員 あなたらが大蔵省に要求したやつの中にこう書いてある。ちょっと紹介しておくわ。   新クライテリア草案の最大の特徴はこれまでの基準が毛髪水銀値五〇ppmを基礎に組み立てられていたのに対して、曖昧な幾つかの報告に依拠して一〇―二〇ppm程度の毛髪水銀値を有する妊婦の子供に精神運動発達遅滞が生じる可能性があるとして、より厳しい環境保健基準を思考していることであり、その他にも不充分な科学的根拠に基づいて、酸性雨による湖沼の酸性化やダム建設による貯水によって魚中のメチル水銀が高まること、わが国の水俣病訴訟の争点のひとつである遅発性水俣病の存在を認める内容になっていることなど、極めて問題の多い内容になっている。このままではわが国のメチル水銀環境保健基準や水俣湾ヘドロ除去基準の見直し、更には子供の精神運動遅滞をタテにとった新たな補償問題の発生、現行訴訟への影響など行政への甚大な影響が懸念される。   従って、こうしたWHOの動きに対してわが国の水俣病水銀専門家に結集してWHOのクライテリア草案の内容を検討し、過去、現在の学術的知見に照らして、その内容をより妥当な方向に導いてゆく体制を整えるは焦眉の課題であって上述したWHOの日程を勘案すればその対応にいささかの遅滞も許されないことは極めて明瞭と考えられる。  必死になって、要するに、このIPCSのような厳しい基準に対して何らかの対応をしなければならぬというて組んだのがこの予算であると言うて大蔵省に駆け込んだのではないか。はっきりしておる。あなたらが言うた文章は大蔵省からわしはちゃんと聞いたから言うておるんですよ。  そういう立場に立って書いた文章だから、さっき斜め読みしたら三十九項目にわたって問題がある。問題がある。問題があるというのは、全部のページで二十五ページだ。二十五ページの中において斜め読みしただけで三十九項目も、要するにこれも問題だ、これも問題だと言うておるだけや。  それで、行った人はどう言ってるのか。行った熊本の荒木先生、その人の新聞に載っている記事を読んだらこう書いてある。「不幸にして公害の”先進国”になったわが国で、研究が進んでいない。水俣病ではまだ分からないことが多いのに」と言って「妊婦の毛髪水銀調査などのチェックも必要で、水俣病像を後世にきちんと伝えていくことは医学者の務めと思う」、こう言って、あの会議に行って何の研究資料もなかったことが残念だと言っているんだよ。行った人が恥ずかしい思いをしたと言っているんだよ。そんなもの、こんな立場で調査研究をしておったら恥ずかしいのは当たり前や。裁判所では負ける、世界会議では負ける、そんな学者を専門家といって何ぼ抱えておったって、国民に対しての責任をとることはできないでしょう。本当にまじめに考えるならば、裁判所で意見を言われたところの専門家の皆さんに、ひとつこの際環境庁の知恵袋になってください、こう言ってその人たちも入れて研究機構、調査機構を発展させなかったら、水俣病対策なんて大きな顔して偉そうなこと言いなさんな、こう言わざるを得ないわけなんです。  わしの真情わかってくれましたか、大臣。ぜひそういう立場に立って、今泣いているところの水俣被害者、この人たち救済救済になっていないという事実、この事実をもう一度見直してみる。それにはちゃんと認定基準そのものに検討のメスを入れなければならぬじゃないだろうか。専門家という諸君たちの態度にも問題があるんじゃないだろうか。他の専門家の意見を聞いてみるという必要があるんじゃないだろうか。環境庁の今までとった態度に全面的なメスを入れる必要があるんじゃないだろうか。改めて環境庁長官にこの三点に対するお答えをいただいて、終わります。
  304. 北川石松

    北川国務大臣 委員の重ねての質問につきまして私なりに鋭意研究をいたしたいと思っておりますし、また、クライテリアの世界の水準も指摘されて、この問題は、私は、世界的に日本の科学者、医学者が笑われることがあってはならないというような問題が頭に出てまいりました。そういういろいろな点を考えて、私なりにこの問題点について研究をいたしたいと思っております。
  305. 寺前巖

    ○寺前委員 お約束の時間、迷惑をかけまして、まことにすべての委員の皆さんにおわびを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。御協力どうもありがとうございました。
  306. 戸塚進也

    戸塚委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  307. 戸塚進也

    戸塚委員長 この際、本案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。北川環境庁長官
  308. 北川石松

    北川国務大臣 水俣病認定業務促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきましては、政府といたしましては異存がございません。     ─────────────
  309. 戸塚進也

    戸塚委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。寺前巖君。
  310. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、日本共産党を代表して、水俣病認定業務促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  反対理由の第一は、本臨時措置法水俣病患者救済の顔をして、水俣病認定申請者の長期大量滞留及びチッソの経営危機の打開の目的で制定されましたが、事態は、患者切り捨て以外の何物でもありません。それは一九七八年、それまでの認定基準を大幅に改悪した事務次官通知とセットで出されてきたからです。本法案は、依然として悪名高い新事務次官通知とセットである点に変わりはなく、現行の判断条件を改めることなく本臨時措置法を改正延長しても、患者救済に役立たないばかりでなく、むしろ患者切り捨て促進につながるものであることです。  第二は、本臨時措置法施行後現在までの約十年半の実績は、水俣病患者の切実な願いである認定の確定とは大きくかけ離れており、期待にこたえ ていないことを端的に示しています。現在、一高裁、六地裁に二千名を超える患者が訴訟を提起し、救済を求めて争っているのもそこにあるからです。  第三は、認定業務は、自治体の事務という公害健康被害補償制度の大原則を崩したものであるということです。公害病認定は、最も住民に近い立場にある自治体が行うべきであり、国での認定審査は、患者と審査業務を切り離し、その意味においても患者切り捨てにつながるものと言わざるを得ません。  第四は、今回の延長措置は、国や県の怠慢による認定業務のおくれを不作為の違法とした判決など一連の裁判対策、県や患者に対して国も努力しているという体裁を繕うためのものでしかないということです。水俣病公式発見されてから既に三十四年が経過し、被害者も高齢化しており、提訴以来既に八十三人の原告患者が死亡しています。生きているうちに救済をしてほしいというのが被害者の切実な願いです。  したがって、このような真の患者救済には実効性が乏しい臨時措置法を制定するよりも、最近の勧告ともいうべき国連のIPCSの新クライテリアや、国・県及びチッソの加害責任を明らかにした一九八七年三月の第三次訴訟判決を厳粛に受けとめ、現行の認定基準を見直し、早期に裁判をしている患者を含めて被害者の全面救済を図ることを強く要請して、本法案に対する反対討論を終わります。
  311. 戸塚進也

    戸塚委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  312. 戸塚進也

    戸塚委員長 これより採決に入ります。  水俣病認定業務促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  313. 戸塚進也

    戸塚委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  314. 戸塚進也

    戸塚委員長 次に、ただいま議決いたしました本案に対し、佐藤謙一郎君、斉藤一雄君、斉藤節君及び中井洽君より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨説明を聴取いたします。斉藤一雄君。
  315. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 私は、ただいま議決されました水俣病認定業務促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につき、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     水俣病認定業務促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一 認定審査に当たっては、水俣病患者が一人でも見落されることのないように、全員が正しく救われるような精神にのっとって行うこと。  二 水俣病については、医学的に判断困難な事例があることにかんがみ、科学的知見の積み重ねを踏まえて水俣病像及び判断条件について一層の検討を重ねること。  三 水俣病問題の重要性にかんがみ、速やかに住民の健康の状態、水質汚濁の状態等について総合的な調査を実施し、その結果に基づいて地域の実情に応じた水俣病対策を確立すること。  四 水俣病多発地域の住民については、その健康状態を長期にわたって把握し、必要に応じて適切な措置を講ずることにより健康被害の予防を図ること。  五 水俣湾公害防止事業の埋立地を含め地域の特性を生かした具体的な振興策を一層推進することにより、水俣・芦北地域の活性化を図るように努めること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。(拍手)
  316. 戸塚進也

    戸塚委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  317. 戸塚進也

    戸塚委員長 起立総員。よって、佐藤謙一郎君外三名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、北川環境庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。北川環境庁長官
  318. 北川石松

    北川国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力いたします。     ─────────────
  319. 戸塚進也

    戸塚委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  320. 戸塚進也

    戸塚委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  321. 戸塚進也

    戸塚委員長 次回は、来る十九日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十九分散会