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1990-06-13 第118回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年六月十三日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 柿澤 弘治君    理事 園田 博之君 理事 浜田卓二郎君    理事 浜野  剛君 理事 上原 康助君    理事 高沢 寅男君 理事 山田 英介君       坂井 隆憲君    塩谷  立君       福島 譲二君    福田 康夫君       井上 一成君    岡田 利春君       佐藤 観樹君    松原 脩雄君       山口那津男君    古堅 実吉君       和田 一仁君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君  出席政府委員         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         外務大臣官房外         務報道官    渡邊 泰造君         外務大臣官房文         化交流部長   小倉 和夫君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省中南米局         長       瀬木 博基君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済協力         局長      木幡 昭七君         外務省条約局長 福田  博君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      藪  忠綱君     ───────────── 本日の会議に付した案件  千九百八十九年七月三日に国際コーヒー理事会決議によって承認された千九百八十三年の国際コーヒー協定有効期間の延長の受諾について承認を求めるの件(条約第六号)(参議院送付)  千九百八十九年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件(条約第七号)(参議院送付)  国際情勢に関する件      ────◇─────
  2. 柿澤弘治

    柿澤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福田康夫君。
  3. 福田康夫

    福田委員 最近大変目覚ましい、目まぐるしいというべきでしょうか、世界情勢変化して、また、これに対応される外務省の当局の方々、大変御苦労されていらっしゃると思うわけでございまして、まず心から敬意を表したい、こういうふうに思う次第でございます。  さて、ことしは安保三十周年、こういうふうな節目になりまして、日米安保、この意義につきましてあらゆる面からの検討が今各面でなされている、こういう状況でございます。いわゆる東西対立冷戦構造の中から今の安保が生まれたのでありますけれども冷戦終えんした、こういうふうに言われております今、これから日米関係考えるときに、日米安保条約意義というのは既に変わったんじゃないか、こういうふうなことも言われておるわけであります。将来的に根本から変質をするんだというふうないろいろな見方があるわけでございますけれども、このような東西対立の構図の変質世界の全地域における安全保障体制、この調整を迫る、こういうふうなことでございまして、言ってみれば、世界規模安保調整時代に入った、こういうふうに言っていいんじゃないかというふうに思います。  そこで、私はまずこの安保変質をさせた客観情勢と申しますか、冷戦構造終えんと申しますか、この冷戦構造が本当に終えんしたのかどうかということについて、まずその認識をお尋ねしたい、かように思う次第でございます。また同時に、日米安保三十年、これの評価についてもあわせてお答えをいただきたい、かように思います。
  4. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生指摘のように、ことしはちょうど安保三十周年でございます。この機会に、私どもは、安保条約締結されまして三十年間の軌跡を振り返り、同時に、この安保条約先生指摘のようないろいろ大きく動いている国際情勢の中での意義を再確認させていただきたいと思っております。  先生指摘のように、国際情勢、特に東西関係が大きく動いております。昨年十二月のマルタにおきます米ソ首脳会談、そして今般のワシントンにおきます米ソ首脳会談で、まさに東西冷戦終えんしつつある、あるいは終えんの始まりが始まった、こういう指摘も行われております。しかしながら、同時に忘れてはいけないことは、国際情勢の中にはまだ引き続き不透明な、不安定な部分が多く残っているということでございます。こういうような国際情勢背景といたしまして、私どもは、日米関係というのは引き続き日本外交の基軸として極めて重要であると考えておりまして、まさに、このような日米間の協調協力というのは、単にこの日米両国にとって重要であるのみならず、世界全体にとっても大きな重要性を持っていると考えております。  安保条約について申し上げますならば、この安保条約がこのような重要な日米関係基礎をなします重要なきずなであると考えております。安保条約は、直接的には日本の平和と安全の維持にあるということでございますけれども、広く申し上げれば、抑止と対話による平和の追求を可能にする基盤をなしている、そして、さらに申し上げれば、このアジア太平洋におきましての平和と安定にとって不可欠な枠組みとして機能していく、こういうふうに考えておりますので、現下の大きく働いております国際情勢の中で安保条約の持ちますこのような意義重要性はいささかも変わるものはない、こういうふうに考えている次第でございます。
  5. 福田康夫

    福田委員 ただいまの日米関係において、日米安保が今後とも揺るぎないものである、こういうふうな御意見を拝聴したわけでありますけれども、この日米安保体制というのは日米だけの関心事ではない。日本を取り巻く諸外国、とりわけ中国とか韓国ソ連、そしてまた東南アジア諸国というふうな国にとりましても、人ごとならず一大関心事であろうかと思うわけでございますけれども、その辺各国の対応、また安保に対する評価、こういうものはどうなっておりますでしょうか。
  6. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 今申し上げましたように、日米安保条約は、日米両国にとって重要であるのみならず、アジア太平洋地域の平和と安定を支える不可欠な枠組みと私ども認識しておりますけれども、多くの近隣諸国からも同様な認識を持ってこの安保条約評価してもらっております。これは先生指摘になりました韓国東南アジア諸国は無論でございますけれども、例えば中国に関しましても、歴代の中国の要人の方々安保条約評価するという発言をしてきておりますし、それからソ連につきましても、昨年の五月三日の日ソ外相定期協議の場におきまして、シェワルナゼ外相より日米安保条約日ソ平和条約締結の障害となるものではないという見解が示されていることも御披露させていただぎたいと思います。
  7. 福田康夫

    福田委員 一つ聞き漏らしたんですけれども日本側日米安保に対する考え方、これは確固たるもの、こういうふうなことでありますけれども米国の方から見た場合のこの安保に対する評価、これはどういうふうなことでございましょうか。日本と全く同じような、裏腹の関係でございますから、まあ同様な評価とは思いますけれども、特別に変わった評価をしているとか、そういうことはございませんでしょうか。また、今後いかよう考えているのか、もしおわかりであればお教えいただきたいと思います。
  8. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 一般的に申し上げますと、アメリカ側におきましても、日米安保条約は高く評価をしておりまして、これは米国指導者のいろんな発言にも出ておりますが、この四月にチェイニー国防長官議会に提出いたしました「アジア太平洋地域戦略的枠組み二十一世紀に向けて」と題する報告書の中にもそういう考えが非常に明瞭に出ておりますし、その中では繰り返し日米安保体制アジア太平洋の重要な柱になっておる、それからアメリカから見て日本アジア戦略における重要なかぎである、英語で申し上げますとリンチピンであるという表現まで使っておりまして、日米安保体制が果たしてきた今までの役割を高く評価するとともに、アメリカとしましては、引き続きこの日米安保体制を堅持していくという姿勢を打ち出しております。  ただ、あわせて申し上げたいのは、この日米安保体制のもとで、アメリカ側はいわゆる前方展開戦力ということで日本にも約五万に及びます駐留米軍展開しておりますけれども財政赤字のため段階的には縮小していかざるを得ないということがございますので、そういうことも背景にいたしまして、全体として、アメリカ議会中心でございますけれども日本に対しますバードンシェアリングの要求が従来よりは厳しくなってきているということもございます。
  9. 福田康夫

    福田委員 最近、世界情勢というのは非常に急変を遂げておりまして、とりわけペレストロイカで揺れますソ連、このソ連動きはまさに目まぐるしいような、こんなふうな状態でございます。その結果、今までだれも予想していなかったような東西ドイツの統合という問題が浮上し、また近くは、先般行われましたワシントンでの米ソ首脳会談、内容はともかくといたしまして、蜜月と言っていいような両首脳の姿を全世界に見せつける、こういうふうなことがありました。さらには韓ソ首脳会談、これは四十年ぶりの首脳同士の握手というふうなことで非常に歴史的なことであったわけであります。  こういうふうに、ここしばらくの世界動きというのは、本当に映画の劇画を見ているような感じがするくらいでございます。そしてまた、先般御苦労いただいた、混迷をきわめたカンボジアの和平問題、これは東京会議を開催したわけでございますけれども、これも完全な和平に向かって大きく一歩踏み出した、こういうふうに考えていいんじゃないかと思っております。アジア地域全体の平和が少しはほの見えてきたというふうな感じもないではないという展開でございまして、そういうふうな会議を、これを我が国のリーダーシップで行ったということは、平和を希求する日本外交という観点からしますと、まことに時宜を得た、またすばらしいことであったというふうに私は評価をしたいと思うわけであります。  こんなふうな激動する世界情勢の中で、我が国が従来志向してきました外交方針、これを今後どういうふうに持っていくのか、これが一つ大きな問題で課題であろうかというふうに思うわけでありまして、この点いかようにお考えになられるか。ソ連中心動きというのは本当に激しいので、ことしの三月初めの国会の冒頭の大臣外交演説で、ソ連東欧変化は早過ぎて不安定性がつきまとう、こういうふうに述べていらっしゃるのでありますけれども、その後の変化もございますし、大臣の御認識は現在いかようなものであるか、また現状認識とあわせまして、今後の見通しなども御説明いただけるとありがたいと思います。
  10. 中山太郎

    中山国務大臣 委員お尋ねソ連における国内政治状況は大変不安定、不確実、不透明な状況にあると思います。ゴルバチョフ大統領が推進しておられるペレストロイカにおきましても、この経済政策は効果を発揮しているとは言いがたい状態でございます。一方、民族運動が大変活発になっておりますし、また新しく民主化の波が進む中でロシア共和国ではエリツィン氏が大統領に選ばれる。そういう中で連邦よりも強化されたような制度をつくっていくという中で、ソ連がこれからどういうふうな方向国内においてたどっていくのか。私ども政府は、ペレストロイカの正しい方向性というものを支持して今日までおりますけれども民主化あるいは自由化が進むこの新しい経験をソ連指導部が十分耐えられて、国民の権利あるいは自由、こういうものが守られるような社会が建設されることを私どもは期待をいたしておる次第でございます。  一方、東欧における変化は、もう再び逆行することのできない大きな自由化民主化の波が襲っている。そういう中でソ連の新思考外交という、つまりペレストロイカを推進するために対外政策においては一つの平和的な思考を求めていくという考え方の中で、米ソ首脳会談あるいはまた韓ソ首脳会談というものが行われて、やはり新しい変化の波がヨーロッパのみならずアジア地域にも伝わってきている。特に、もう既にミャンマーでは民主的な選挙のもとで反政府の政党が圧倒的な議席を確保いたしましたし、ラオスにおきましても、自由化方向経済体制が向かいつつある。また韓ソ関係でもあのような事態が起こってまいりますと、アジアにおいて従来ヨーロッパと違った政治情勢がございましたけれども、私は今日のアジアの流れを見ている中で、アジアにも夜明けが近づいたのじゃないか、このような感じを持って、このアジアの平和が一刻も早くつくられて、アジア地域に繁栄と平和が確保されるような時代をつくるように日本としては努力をしなければならない、このように考えております。
  11. 福田康夫

    福田委員 私は、外交方針としては、今のような非常に不安定な状態の中において外交方針を立てるということはなかなか難しいことであろうかと思うわけでありますけれども、そういうふうな状況であるということを考えまして、むしろその不安定な要因を取り除くような、そして一刻も早く世界情勢が安定するというふうな方向外交をしていただきたいという感じがいたすわけであります。そういう意味におきましては、先ほどのカンボジアの和平問題、こういうふうなものに真剣に取り組んでいただく、こういうふうなことを他地域においても懸命に努力をしていただきたい。これはそういうふうな要望をさせていただきたい、かように思います。  さて、先ほど安保のことで日米関係、これを重視していくというふうなお話を伺いました。私も全く同感でありまして、日米関係重要性、これはこれからもしっかりと堅持していかなければいけない、こういうふうに思っております。特に今後の世界の中では、日本が平和と安定に向かって積極的に貢献するというためにも、また日米が密接な関係を保持するということを実現するためにも最重要な課題であるというふうに思っております。特に現在は、戦後長く続きました冷戦構造が崩れまして、新しい時代の構築を模索するという過渡期時代であります。極めて流動的で、そして不安定な時期にあるわけであります。ということはまた、ともすれば危険な道を歩むこともあり得る時期であるというふうにも思うわけでありまして、そういうふうな時代でありますからこそ、従来から堅持してきた日米協調友好きずなをさらに強くして、水をも漏らさないくらいの体制で取り組んでいかなければいけない、こういうふうに思っておるわけであります。これは御異存ございませんよね。  私、この日米関係を見た場合に、極めて遺憾なことなんでありますけれども日米関係が最近とかくぎくしゃくをしておる、こういう事実があるわけでありまして、その結果、一つの現象として最近の世論調査で、ソ連軍事力よりも日本経済力の方が脅威であるというふうな見方米国人の間に多くなっておる、こういうことであります。このことについては前回、四月十八日でしたか、当委員会伊藤委員から言及をされておりますので、私は詳しく申し上げませんけれども、このこと以外にも日本評判というのは米国においては決してよくないという話は数多く聞いておるわけであります。米国において世論とか評判が悪いというのは本当に憂慮すべき事態だと思うのです。と申しますのは、米国世論の国なんです。世論が国を動かすということが間々ある国でございまして、また、時と所を得ますと、少数派意見も急速に多数の支持を得る、こういうふうな傾向があるわけであります。これは米国政治制度一つの特色でもあるわけでありますけれども、例を挙げますと、カーター大統領選挙出馬当初、これは無名のカーターさんということで「ジミー フー」こういうふうに言われたことがあったのですが、しかし見る見るうちに支持をふやして、最後には予想外の当選を果たしてしまった、こういうふうな例もあるわけでございまして、小さい勢力世論の共感を得れば多数の世論となる、こういうお国柄でございます。そういうのが米国世論動向でありまして、政治もそれを基礎にしているというふうに言ってもいいのじゃないか、こう思うわけであります。  もう一つ米国政治の特徴というのは、政権が変わると政策も大きく変わってしまう、こういうふうなことがありまして、そういう意味からいきまして、我が国としては世論を味方にしてしっかりとつなぎとめておくということもしなければいけないし、また世論動向にも常日ごろ十分注意を払っていなければいかぬ、そういうことではないかと思います。  そういうことで、ちょっとお尋ねしますけれども米国に対する広報とかそういうものは外務省ではどの程度のことをされていますか。もし資料がなければ結構でございますけれども
  12. 渡邊泰造

    渡邊(泰)政府委員 お答えいたします。  先生おっしゃいましたとおり、今米国世論では一部に陰りが見えているというのは事実でございます。基本的には日本は信頼できる友好国、あるいは日本重要性というのを有識者では認めておりますけれども、一般の部の世論調査では、これに対して少し低下しているというのが事実でございます。  そのような傾向を踏まえまして、外務省といたしましては、対米広報の見地から、政府及び民間の双方におきまして広報政策を拡充していきたい、こういうふうに思っております。政府におきましては、外務大臣総理大臣発言をリアルタイムでオンラインですぐ海外に出すと同時に、それ以上に資料の拡充その他に努めております。民間におきましても、広報文化会議というものを現地及び東京において開きまして、民間方々のこの面における努力を一層お願いしている、これが実情でございます。
  13. 福田康夫

    福田委員 第二次大戦以降のアメリカ世論ですけれども、一貫して日本に対しては好意的な目で見てくれた、こういうふうに思います。しかし、近年日本経済力が相対的に強くなって、また米国から見れば経済進出と思われるような事態に直面し、また、片や長年の宿敵であったソ連国内政治体質を変えまして、米国との協調を積極的に求める事態になった、こういうふうなことで、米国の敵はソ連ではなくて日本であるというふうな感情の高まりがあるというふうに私は見ておるわけであります。  このような現在の日米関係の微妙な変化を、二十世紀初頭の、ですから今から九十年前でございますけれども日米関係に酷似している、こういうふうに言う説が最近非常に多くなってきているわけであります。御承知のとおり、黒船到来の一八五〇年、それから我が国日露戦争に勝った一九〇五年までの五十有余年、この五十有余年日米間は極めて友好的な関係にありました。  私ちょっと古い書物を引用して恐縮なんでございますけれども、当時の、ということは日露戦争直後、一九〇七年に書かれた本でございます。これは大臣北米局長御存じかもしれませんけれども朝河貫一という人が書いた「日本禍機」という本がございまして、この本の中に日米関係危機を書いておるわけであります。この著者の朝河貫一さんというのは、東京専門学校を卒業してエール大学に進学し、そこで比較法制史というのを勉強されまして教授になり、最後名誉教授になったのじゃないかと思いますけれども、終生アメリカにいらした方でございます。この方がこういうふうなことを述べておるので、しばらくちょっとその文章を読ませていただきます。ただ、ちょっと意訳をいたしました。  「米国の官民が日本開国の初めより五十年来、日本欧州諸国の野心から防ぎ、文化進歩を助けたのは広大な恩義によるもので、言語で言いあらわせないほどで日本人は長く忘れることはできない。そしてまた、日本が幕末、気ははやれど力が足らないのに乗じて欧州諸強国の爪牙にかかりそうになっていたため、まず誠意をもって開明指導しながら欧州諸国から守る方針を立てたのはまさに米国であった。また開国以来、教育上寛大過ぎるほどの便宜を日本の学生に与えて、絶えず日本を助けたのも米国である。」こういうことでございまして、米国我が国にいかに庇護と恩恵を与えたかということを説明しております。「そしてまた、日露戦争に当たっては米国民は申し合わせたように全面的に日本に同情した。その一大原因は、小国日本大国ロシアに圧迫され生存を賭して自国の将来の自由と東洋進歩、幸福のために戦った真心に同情したためである。」こういうことであります。  ところが日露戦争後はどうか。「小国日本は一躍東洋の雄となり、ロシアの持ち合わせない綿密な考えと集中した勢力で清国、韓国を圧迫し始めた。これを見て米国民の憎悪はロシアから次第に日本に向かうことになった。半世紀間兄弟のごとく親しくしてきた日米は、昨今急に一転して、健全な競争者関係にとどまれるのか、または互いに誤解を重ねてついには武器を持って戦い合う敵となるという、そういう運命の分かれに当たる危機に当たっているということを両国民が深く注意すべきだ。」こういうふうなことも言っておりまして、何かちょうど今の時代のような、それを今再現しているような感じもします。もちろん現在では戦うというふうなことはございませんけれども。  なお、日米関係が悪化した原因もいろいろその中に書いてございますけれども、耳の痛いのは、当時の日本人は、「驕慢である、おごり、そして人を見下す、」こういうことですね。この辺では、日本はおごっているというふうな批判も今ございますし、また日本アメリカプライドを傷つけたのじゃないか。  これは私の友人で国務省におりました方、今民間に行っておりますけれども、それが先般手紙をよこしまして、そこにいみじくも言っておるのは、「ジャパン ハズ ウーンディッド アメリカンプライド」、こういうことを書いてありまして、やはり日本人も現在そういうことを意識しなければいかぬのかな、こういうふうに思っております。  また、こんなふうなことも書いております。「日本人の教養多ければ多いほど、米国の短所を語るを喜ぶの風がある。」当時もそうだったそうでございます。「これでは公正な議論もできないし、これによってかえって日本の将来を害することにならなければ幸いである。」こういうことでございまして、黒船到来以来好意的であった米国の対日世論は、日露戦争勝利を契機といたしまして悪化の道をたどって、朝河博士が危惧したとおりの結果となって日米戦争に突入した、こういう経過をたどったわけであります。  第二次大戦後今日まで、多少のことはあったかもしれませんけれども、基本的には日米友好関係を維持してきたわけであります。ところが、現在は一転して日本脅威論世論となって、世論であるばかりでなく、米国の識者が公然と語る、こういうふうな時代になったわけです。余り酷似しているものですから、ちょっと御紹介をいたしたわけでございます。  この悪化した世論時代というのは、起こったものはしょうがないのでありますけれども、極力短期間に抑制しないと、米国民の間に日本の悪いイメージというものが定着をしてしまいます。米国の対日政策に悪い影響を与えるばかりでなくて、日本は困り、そして米国の心ある指導者も同様に困ることになるのじゃないか、こういうふうに思って、非常に不幸な事態を迎えないようにと私は願っております。中山大臣も先般こういうふうな事態を踏まえて、今こそ政府議会民間を挙げて日米関係の健全な発展に努力しなければならない、こういうふうにおっしゃってくだすったわけで、大変心強く思っておる次第でございますけれども政府として今特に何かそういうものに対処する具体的な道を考えていらっしゃいますでしょうか。
  14. 中山太郎

    中山国務大臣 委員が大変日米関係の現状を憂えて御質問いただいておりますことに敬意を表しますが、日本にとって米国は最も大事な国、そういう日米関係を堅持していくことが日本外交の基本でなければならないと私ども考えております。先般ブッシュ大統領との首脳会談におきまして、ブッシュ大統領は海部総理に対して、自分はアメリカ大統領として、後世このブッシュ大統領時代日米関係が悪くなったと言われないような日米関係を維持していきたいというお話がございましたが、全く日本にとっても同じようなことが言えるのではないか。そういう観点から考えまして、今日の繁栄を築いた日本背景にあったものは、日米安保条約の効果が極めて大きかったものと私どもは高く評価をいたしております。しかるようなことから、この六月二十三日が安保改定の三十周年の記念の日に当たりますので、政府としては、特派大使をワシントンに派遣をいたしまして、改めてこれから次の二十一世紀に向かう日米関係、また日米関係を通じての新しい次の世界への両国の貢献をどうするかということで、日本政府としての一つの意思を明確にアメリカ政府並びに国民に伝えるとともに、新しい時代への日米関係の強化のために努力をいたしたいと考えております。
  15. 福田康夫

    福田委員 たまたま、日米交流基金というものをやるのだ、こういうふうな新聞記事、きのうの会談で決まったということでございます。金丸元副総理と安倍元幹事長が会談して、そういう話をしたということを聞いたわけでございますけれども、これも私は大変いいことだと思います。特に安保三十年というふうなときでございますので、ぜひそういういいことはどんどんやっていただきたい。これも規模が五百億円ということで、決して小さい金額ではない基金のようでございますので、大いに期待をいたしております。この中身とかその他詳細については、まだそれほど固まっていないのじゃないかと思いますので、お答えは結構でございます。  そういうふうに、日米関係を私は申し上げてきたわけでございますけれども、良好で緊密な日米関係を持つということがほかの諸国にも、またひいては全世界にもよい影響を及ぼすのだ、こういうふうな考え方をしまして、特に今世界政治構図が変わろうとしているときでございますので、世界に率先して新しい方策を実施しなければいけない、こういうふうな姿勢でもって考える時期が今や到来したのじゃないかと私は思っております。当面は日米安保体制、こういうものがございますから、これを堅持します。しかし、同時に新しい安保条約ともいうべき国際的なきずなをつくるような何かをつくりたい、こういうふうに私は思っておりますし、またその時期であると思っております。何かというのは、まだ具体的にどういうことというわけではありませんけれども、基本理念としては、世界の平和に貢献し、そして人類の福祉につながるようなものである。そしてまた、我が国の姿勢を正しく理解してもらえるようなものであることが必要である。我が国が軍事や経済で他国を侵略するのだというふうな誤解を受けないような、日本は平和国家であるということがはっきりとわかるようなものをぜひ何かこれから考えていかなければいけない。我々も真剣にそれに取り組んでいかなければいかぬ時期じゃないのかなというのが私の考えでございます。相手の国が、特にアメリカのような国が、国民がはっきりと理解できるようなということになりますと、極めて象徴的な提案をしなければいけないということであります。とかく日本は小出しにするというふうなことで批判があるわけでありますけれど、投資金額もGNPの一%くらいの規模で考えろくらいの象徴的なことをぜひしていただきたい。例えば自然環境維持政策にGNPの一%を投ずる、もしくは無公害エネルギーを開発する、そしてまた、その実用化に努める、こういうことにGNPの一%を使う、こういうくらいの提案をぜひしていただきたい。また、これは政府だけでなくて、もちろん我々政治家も与野党を問わず取り組まなければいけない問題だ、課題であると私は考えております。  そういうことで、日米関係を長期に安定をさせるということと、その結果、国際社会に尽くす日本であるということを全世界に訴えたいと思っております。これは私の念願でありますけれども、どうぞよろしく御理解を賜りたいと思うわけであります。  多少時間がございますので、ちょっと国際交流基金のことをお話をさせていただきたいと思うのですが、これは実はただいま私がお話ししましたGNP一%というふうな規模の話ではないのでありますけれども、しかし、この経緯が何か今と非常に似たようなことで、今度新しく日米交流基金ができる、そういうふうな感じもしないではないので、ちょっとお話をさせていただきたいのであります。  この国際交流基金の設立の経緯でございますけれども、四十六年の夏にアメリカがいわゆるニクソン・ショックという処置を行ったわけであります。それが二つございまして、一つはキッシンジャー大統領補佐官が北京を訪問したということであります。そしてまた、もう一つは、金ドルの交換停止と対日輸入課徴金を課す、こういうことを電撃的に日本に相談なしに決めたというふうなことでありました。このときは日本は相当なショックを受けたわけであります。ニクソン・ショックであります。このアメリカの処置がすべて頭越しに行われたとか抜き打ちに行われたというふうなことで、改めてその時点において日米間のコミュニケーションギャップを感じた、こういうふうなことで急遽日米間のコミュニケーションを図るために交流基金を設立しようという趣旨だったようでございます。当初は一千億基金の財団にしようというふうなことで考えたわけでございますけれども、スタートは百億円です。百億円で四十七年から始まりまして、以後五十億ずつ毎年基金を積み重ねたのでありますけれども、しかし、その後財政再建という課題ができまして、五十五年から五十億の積み増しが二十五億円になり、そして十億円になり、五十七年からは出資ゼロというふうな状態になりました。しかし、最近はまた回復しまして、現在は私の記憶によりますと五百四十九億円ということでありますけれども、そういうことでまだ千億には到達しない。当初は数年間でと言っておりたのでありますけれども、まだそこに到達していないということでございました。日本は何かショックがありますと慌てて何かをする、しかしのど元過ぎれば熱さを忘れるというふうなことでありまして、この交流基金のことなどはまことにいい一つの例ではなかろうかなと思います。財政再建という国の方針もございましたけれども、しかし国際的なことでございますので、そういう国内的な事情に左右されない確固たる国際的な方針というか実行をぜひしていただきたいなと思っております。そういうことで、この辺についてはどうでしょうか。国際交流基金もやる事業は随分たくさんあるようなんです。  私も実は中国大使館に先日参りまして聞いてきた話なのですけれども中国から日本に留学生が一万人来ておる、しかしアメリカには四万人行っておる、こういうことでございます。なぜアメリカが多いのかと言いましたならば、奨学金制度が発達している、こういうことでございました。それがために来ない。もちろんほかにも理由はあろうかと思いますけれども、それもすぐ出てきた言葉でございますから、かなり大きな要因を占めているのじゃないかな、こう思います。  また、アメリカにおきましても、今高等学校などで中等程度の日本語教育をしておるわけであります。二百六十校の高等学校でございます。これに対して教師派遣とか教材を提供するとか、そういうふうなことに若干手をつけているようでございますけれども、まだ十分ではないということであります。むしろ手についたばかりだというふうな話もちょっと伺っておりますが、これは確かな話ではございませんけれども、そういうふうなこととか、恐らく枚挙にいとまがないと思うのですよ。お金を使うところは幾らでもあるのじゃないかというふうに思います。もちろんしっかりした調査も必要ですから、そういう調査をする人員もふやさなければいけない、こういうふうなこともございますけれども、やはりこういうことの積み重ねが日米関係、また国際関係をよくするというふうに思いますので、ぜひこういう面につきましても力を注いでいただきたい。  こういう要望を申し上げまして、私の質問とさせていただきます。
  16. 中山太郎

    中山国務大臣 委員御指摘のように、文化交流、人物交流というものが両国間の人間的な深まりあるいは連帯を強めていくのには極めて重要な要素でございまして、私ども政府としては、御指摘のような点で今後とも一層努力をしてまいりたい、このように考えております。
  17. 福田康夫

    福田委員 どうもありがとうございました。
  18. 柿澤弘治

    柿澤委員長 岡田利春君。
  19. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、与えられた時間、過般行われた米ソ首脳会談、またこれに関連する諸問題について、外務大臣政府の見解をお伺いしたいと思います。  中山外務大臣は、海部内閣の外務大臣としてちょうど十カ月問の時間を若干経過いたしておるわけです。この十カ月間を振り返ってみますと、世界史に残るような出来事が世界に起きておりますし、言うなれば、まさしく激動の十カ月間と申し上げていいのではないかと私は思うのです。そういう意味で、この十カ月間を総括されて、外務大臣として感慨深いものもあるだろう、こう思います。就任以来、非常に精力的に海外出張、外交展開努力されたことに、私は実は敬意を表しておる次第であります。  しかし、今までの外務大臣では、園田外交あるいはまた安倍外交といって、大変精力的に世界を飛び歩いて外交努力もしてこられた先輩もおるわけですが、特に外務大臣の先輩の安倍元外相の場合には、創造的外交展開ということをキャッチフレーズにして、それぞれの国々と精力的な話し合いを続けてきた、こういう記憶を私は持っておるのであります。したがって、この機会に十カ月間を振り返って、これからの中山外務大臣としての外交の姿勢について率直に承っておきたい、こう思います。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  20. 中山太郎

    中山国務大臣 先輩の外務大臣方がそれぞれ特徴のある外交のイメージをつくっておられますが、私は、一言で申し上げると、信頼される日本になりたい、そのための外交努力をいたしたい、このように考えております。  その私の心の中に存在するものは、経済的に大変繁栄をした国家になりました。しかし、俗に言う、金だけで世の中の信頼が買えるものではない。やはり平和を創造するとか発展途上国の援助をやるとか地球環境への日本協力とか、そういった意味で、国家としてあるいはこの国民として、外国から信頼される外交展開する国家にぜひなりたい、このように考えておるものでございます。
  21. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、常日ごろ外務大臣の答弁をお聞きして、非常に素直な率直さがあるということを実は評価をいたしておるわけです。ただいまの姿勢についても、私は同感を覚えることが非常に多いわけであります。  そこで、具体的にお尋ねをいたしますけれども、今回ワシントンで行われた米ソ首脳会談、これに先立って日本政府は特に米側から意見を求められたことがあったのか、あるいはまた、求められなかったけれども日本政府として、この米ソ首脳会談に対していわば日本の要望点を率直に述べたとか、こういうことがあるのでしょうか。
  22. 中山太郎

    中山国務大臣 日米関係におきましては、総理と大統領の間あるいは高級事務レベルの協議を通しまして絶えず綿密な協議を行っておりまして、米ソ首脳会談につきましても、日米両国政府間におきましては極めて高い次元で意見の交換が行われていると思っております。
  23. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そういたしますと、この米ソ首脳会談が終わった後、ゴルバチョフ大統領韓国の盧泰愚大統領と会談をいたしておるわけです。しかも、その直前我が国を訪れて国会でも演説を行っておられるわけであります。しかし、どうも韓ソ首脳会談というものは、日本が関知しない、言うなれば頭越しで行われた、こういう印象が非常に強いのでありますが、この点を率直に事実をお尋ねいたしたいと思うのであります。
  24. 中山太郎

    中山国務大臣 韓ソ首脳会談が行われることは、事前に通告を政府としては受けております。
  25. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうしますと、この韓ソ首脳会談に対して何か非公式にコミットしたことがあるのでしょうか。
  26. 中山太郎

    中山国務大臣 政府としてこれにコミットするというようなことはしておりません。
  27. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今回の米ソ首脳会談が終わって、特に私は、この間八時間にわたるキャンプ・デービッドにおける非公式会談ということが、これは公にはされておりませんけれども、極めて注目される内容である、こう思うのであります。一部伝えられるところによれば、この中では日ソ間の問題についてもブッシュ大統領が触れられたということも実は言われておるわけであります。先般ソ連のロガチョフ次官がこの米ソ首脳会談の報告に日本を訪れておりますし、一体アメリカ側からこの会談の内容をどの程度まで日本政府に説明があったのか、この点、差し支えなければお知らせ願いたい、こう思うわけであります。
  28. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 御承知のように、一般的な形ではブッシュ大統領みずからが海部総理に電話をしてこられまして、会談の主要点に関しましてブッシュ大統領みずから海部総理に連絡をしてこられましたほか、ワシントンにおきまして事務レベルでもブリーフを受けております。先生指摘の個個のこの会談でどうだということでは必ずしもございませんけれども米ソの間で話し合われました主要点に関しましては、事務レベルでブリーフを受けております。
  29. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 外務大臣は、この会談後できるだけ早くベーカー米国務長官に会って、この間の内容を具体的に確かめたい、認識をしたい、こういう希望を持っておられたように漏れ承っておるわけであります。だが、国会の日程の関係上なかなか訪米もできない。しかし、近くブリュッセルにおける東欧支援国の外相会議、これに出席される予定があり、その機会にこれらの問題についてはひとつ十分確かめて、米ソ会談の内容についての認識を深めたい、こういうことを漏らしておられるように思うのですが、この点いかがでしょうか。
  30. 中山太郎

    中山国務大臣 日米外相会談を早急に行って、先般の米ソ首脳会談の経過等についていろいろと意見の交換をいたしたいと考えておりまして、国会のお許しが得られれば、六月十五日金曜日の午前、サンフランシスコにおいてベーカー長官と会談をいたすことになろうかと考えております。
  31. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今回の米ソ首脳会談において、伝えられるところによりますと、約二十項目にわたって合意による宣言、声明、協定に調印をされた、こう伝えられておるわけです。この協定の内容において我が国に直接または間接的にある程度大きな影響を与えるものもあるように思われるのでありますが、この点についてはいかがでしょうか。
  32. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 今回の米ソ首脳会談で発表されました共同声明が十一本、それから首脳レベル、外相レベルで署名されました協定が十三本で、合わせまして二十四本の協定ないし共同声明が出されております。共同声明はSTARTの基本的な合意、戦略核の五〇%削減を中心といたします基本合意、協定では化学兵器の廃棄協定など全世界的な規模で非常に関心を集めたものもございますし、二国間の問題といたしましては通商協定等々も入っております。  したがいまして、全体として私どもも今申し上げましたSTART、化学兵器も非常に関心を持っておりますが、先生指摘の直接的な意味日本関係するものがあるかという点になりますと、ベーリング海の漁業に関する共同声明がございまして、日本もベーリング海で漁業に携わっておりますので、関係しておりますし、共同声明の中に国際熱核融合実験炉に関するものというものがございまして、これには日本も共同プロジェクトで参加をすることになっております。こういうふうに直接的に関係あるものも幾つかございます。
  33. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私も今の答弁のように思うのですね。特にベーリング海域の米ソ境界線の協定はそう問題はないのでしょう。しかし、ベーリング海の海域の漁業に関する共同声明は、我が国も今までアメリカに対して、あるいはまたソ連に対して、本件に関しては我が国の見解をしばしば申し入れているはずであります。この海域で今操業している韓国、ポーランドあるいはまた北朝鮮、そして我が国、これらの関係国と十分話し合いをすべきだということを申し入れしているはずですね。しかし、今回米ソ間でこの共同声明が調印されたということは、隣接する二百海里の二国が言うなれば公海を一応準管理をするという意図が明確に含まれて協定に達した、こう解されるのが私は正しいと思うのであります。これに対して、日本側としては、この声明調印に当たって何か我が国の見解を申し入れをしているのかどうか、指摘をしているのかどうか。指摘をしていないとすれば、私は今指摘した方向に漁業が規制をされるということになると思いますが、見解はいかがでしょうか。
  34. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 今先生が御指摘になりましたベーリング海の漁業に関します米ソの共同声明というのは非常に簡単なものでございまして、大ざっぱに申し上げますと、ベーリング海におきます無規制な漁業の操業は資源の乱獲をもたらし、ベーリング海の生態系のバランスを乱す、さらには米ソの沿岸漁民に悪影響を与えるおそれがある、したがって、早急に保存措置がとられて、すべての関係国が資源保存に協力すべきである、こういうのが共同声明でございまして、先生指摘のように、日本もベーリング公海で操業している一カ国でございまして、ベーリング公海の資源の保存、特にスケソウダラの保存管理には日本も非常に関心を持っておるところでございますので、この具体的な問題に関しましては、まだアメリカとも話をしておりませんけれども先生指摘のような関心は私ども持っておりまして、今後具体的な問題に関しては、もっと具体的に申し上げれば、ベーリング公海のスケソウダラの資源の適正な保存管理に関しましてはいろいろ話し合いをしていく必要がある、こういうふうに思っております。
  35. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 アメリカは海洋法条約の署名国ではないわけですね。我が国は署名国であるわけであります。しかし、漁業に関しては全面的にアメリカ側も海洋法条約の内容について認めておるわけであります。そういう意味では、関係国が話し合うという海洋法の精神に基づいて今後この問題の討議が進められるべきだ、こう私は思います。同時にまた、我が国は署名国であるけれども批准の動きはないのですね。どうでしょう、今日の国際漁業情勢からいって海洋法条約の批准もそろそろ検討しなければならぬ段階ではないかと思うのですが、見解はいかがですか。
  36. 福田博

    福田(博)政府委員 海洋法条約につきましては六十カ国が批准をすることが発効要件になっておりまして、私の記憶では現在四十三カ国が批准していると思います。したがいまして、十七カ国でございますが、特にアメリカは海洋法条約の中の深海底開発部分について非常に強い留保を行っておりまして、これにつきましては、日本ソ連、インド、フランスその他いろいろな国が、それぞれ違った立場ではありますが、問題があるということを思っていることも事実でございます。  海洋法条約は、全体として発効する、つまり一部だけ留保するというわけにはいかない仕組みになっておりますので、そういうことを考えますと、なかなかまだそう簡単に発効することにはならないのではないかと思っております。
  37. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 ベーリング公海の問題は単にここだけの問題にはとどまらないのであります。オホーツク海のど真ん中には、ソ連二百海里に囲まれたオホーツク公海があるわけですね。我が国の底刺し網漁船六隻が今操業いたしておるわけです。ベーリング公海から締め出されるということは、ソ連の二百海里内にある公海間の漁業はいと簡単に完全に締め出されるということに通ずるわけですね。そういうことを、特に外務省として今から正しく認識をされて、これらに対して対してほしいということをまず要望いたしておきたい、かように思います。  次に、今回の米ソ首脳会談において、先ほども説明がありましたように、STARTの基本合意が行われて、いわばSTARTIIの交渉を開始するという点についても合意をされておるわけです。これは結局、マルタ会談に続く今回のこの合意は、言うなれば、冷戦構造が終結をしたのではなくして、今度は協調時代に新しく出発をした、こういう実践過程に入ったというふうに評価できるのではないか、私はかように思います。特に韓ソ会談は、そういう意味で、朝鮮半島をめぐる状況に対して極めて強いインパクトを与えたということがはっきり言えるだろう、こう思います。  そういう意味で、今年の三月、外務大臣は国会の本会議において外交演説を行われているのですが、来月はサミットが行われて、九月にはシェワルナゼ外相日本を訪問するという外交日程が決まっておるわけであります。そういう観点で、外交演説に多少補完して、この際述べておくという点はないでしょうか。
  38. 中山太郎

    中山国務大臣 去る施政方針のときの外交演説と今と、補完をして何か言うことはないかということでございますが、特に今申し添えるとしますれば、新しい韓ソ首脳会談というものが外交演説が行われた後で実は起こったわけでございます。そういう新しい国際環境の変化というものは、朝鮮半島の全域にかかわる大きな問題、ひいてはアジア全域にも日本にもかかわってくる問題だと私は認識をいたしておりまして、このような動きの中で、従来中国を孤立させないという日本外交がございましたけれども、さらに朝鮮民主主義人民共和国も、これを孤立さすことは朝鮮半島の平和に決してつながらない、そのような観点で、前提条件なしに北朝鮮ともこの交渉が得られれば極めて好ましいアジアの環境づくりに日本が貢献できるのではないか、私はこのような考え方を持っておるということをこの機会に申し添えさせていただきたいと思います。
  39. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私も実はそのように思うわけであります。  そこで、この韓ソ首脳会談というものは、まさしく朝鮮半島の新しい政治展開というものを示したわけであります。今大臣が見解を述べられましたけれども、この状況を受けて、友好国である中国動向、これも確かめていかなければなりません。同時にまた、それだけではなくして、我が国の植民地の解放の過程において、朝鮮半島が分断されて、今北朝鮮と韓国、国が二つになっておるのでありますから、こういう新しい政治展開を、機を逸せずして、北朝鮮との関係改善については何らか積極的な外交を進めるべきではないか、私はこういう見解を持つものであります。  そういう意味では、この段階での海外公館の方々の北朝鮮高官との接触や、また場合によっては、まず政府が積極的に接触をする。クロス承認とは言わないけれども、クロス対話をしなければ問題は進まないのでありますから、そういう積極的な姿勢をこの際持たれておるのかどうか、この点もう一つ御説明願いたいと思うのです。
  40. 中山太郎

    中山国務大臣 委員も御存じのように、かねて北朝鮮の政府当局者には在外公館を通じていろいろと連絡をいたしてまいりました。特に、第十八富士山丸の問題がございまして、この二人の抑留された方々を一日も早く日本に連れ戻したいという念願は与野党を通じてございますから、中国における日本の大使館等が積極的に接触をしておりました。また、江沢民総書記がピョンヤンを訪問される際にも、日本の橋本大使からメッセージを託したりしておることも、この機会に申し上げておきたいと思います。  今回の韓ソ会談を受けましても、政府としては、先般参議院の予算委員会でも申し上げましたとおり、社会党の田邊副委員長、深田議員とも私はお目にかかって、いろいろとこれからの日朝の問題について御意見をちょうだいしておりますし、政府としても、前提条件なしに北朝鮮側からの何らかの接触があれば喜んでこれに応ずるという姿勢を持っておるということを申し上げておきたいと思います。
  41. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今回のSTARTの基本的合意、これは既に外相間で合意に達して、両大統領がこれに調印をしたということでありますから、特段、突如これは出てきた問題ではないわけであります。しかし、それ以前の状況からいえば、世界の大方の予想は、我が国政治評論家の間でも言われておったことは、この合意は年内難しかろう、とても合意には達しないであろうということが一般的な見解として述べられていた、こう思うのであります。また、アメリカのニューヨーク・タイムズあたりの論調を見ましても、洋上あるいはまた空中核を含むこのSTARTの合意はなかなか難しかろう、こういう論調もあった、こう思うのであります。しかし事実、この合意に対して、STARTIIの交渉が開始をされる、いわばこの合意は、アジア太平洋展開する米ソの戦略展開に影響を与えることは当然だ、こう思うのですね。  そういう意味考えますと、この合意はどうもアジア太平洋には余り影響がないということがしばしば国会でも述べられたり、あるいはまたソ連の新思考外交というものは、まだアジアに及んでいないとか、そういう答弁が今までの国会の中では繰り返されておるのであります。しかし、私は、この段階でその見解は修正されなければならないのではないか、こう思うのですが、外務大臣、いかがでしょうか。
  42. 中山太郎

    中山国務大臣 私どもは、昨年の九月、ニューヨークの国連総会におきまして日ソ外相会談を開き、そして日ソ間の改善のために両国が信頼のもとに努力をするという話し合いをいたしてまいり、三月にはシェワルナゼ外務大臣日本を訪問されて日ソ外相会談を開くということが合意されておりました。しかし、御案内のように、ソ連国内事情、また米ソ首脳会談を控えての軍縮協議等も踏まえて、国内情勢、それから米ソ間の問題で、ソ連政府首脳は大変多忙な政治日程を送っておったと私ども認識をいたしております。  今週、ソロビヨフ・ソ連大使がモスクワから帰任をされまして、私にシェワルナゼ外務大臣からのメッセージを届けられましたが、九月の上旬に日本を訪問して日ソの外相会議を開きたい、そこでは建設的な話をお互いにしたい、こういうメッセージが既に届いておることは御案内のとおりでありますが、私は、米ソ首脳会談あるいはソ連のこのような会談を通じての合意事項というものがアジア太平洋に及んでくるという可能性は十分承知をいたしております。そういう点では、この米ソ首脳会談におけるSTARTの話し合い、また条約の基本的な合意に至ったという点は、一つの大きな進歩が見られるというふうに認識をいたしております。
  43. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 内外の問題をめぐっての見解はいろいろあるわけであります。アジアにおいても、米ソ冷戦構造は地中海に沈んだとまでは言わないけれども冷戦の氷は確実に解け始めているとか、こういう表現で認識を示している方もおりますし、あるいはまた日本の場合でも、防衛庁の防衛研究所宮内第二研究室長さんは、個人的な見解とは述べられておりますけれども、この中でもはっきり、ソ連世界革命の路線は、これはもう完全に放棄したものであるということが認められる、極東でもソ連脅威時代は完全に終わった、こういう見解を示しているのですね。内外にそういう認識があるわけですよ。私はこの認識が正しいと思うのですね。特にニューヨーク・タイムズなんかの場合は、この合意に達する以前からもう既にそういう諭調を述べておるわけです。そして、今までのゴルバチョフのいわゆる外交政策や軍事政策の面、軍縮の提案、これをつぶさにずっと調べてまいりますと、やはり着実にアジアにおいても兵力の削減やあるいはまたIRBM、中距離弾道弾の撤去とかずっと進んでいるわけですね。太平洋艦隊だって三分の一削減しますということはしばしば述べられておるわけですね。そういう意味では、アジアにおいても冷戦の構造というものは終わりつつある、少なくともそういう認識に立つべきではないかと思うのですが、どうも今外務大臣の答弁では、そういう影響は及ぶであろう、こう言われるのですが、その点、私の認識と大分違うのですが、いかがでしょうか。
  44. 中山太郎

    中山国務大臣 日本政府としては、地理的な条件から考えまして、北方領土がソ連に占領されて、そこに一個師団以上の軍隊が駐留をしておる、また太平洋日本海におけるソ連海軍戦力が、隻数は減少していますけれども、戦闘能力は上昇しているという情報がございます。そういう中で、具体的にアジア太平洋におけるソ連の平和的な外交、そういうものと、実際の軍縮、こういうものが現実的に確認されるということが極めて必要ではないか、そういう状況の中で日ソの新しい信頼醸成というものがつくられていく可能性があるのではないか、私どもはそういう日が来ることを期待をしておるということを心から申し上げておきたいと思います。
  45. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 アジアの緊張緩和に対するソ連側のイニシアチブとして挙げられるものは、アジア配備の中距離ミサイル四百基の削減の合意、地上部隊の約二十万人の一方的削減、アフガニスタンからの撤兵、ベトナム軍のカンボジアからの撤退、太平洋艦隊の三分の一の削減計画、カムラン湾を初めすべての在アジア海外基地からの撤収、中ソ関係の修復、韓国との関係の正常化への努力、そして日本との関係調整努力、こういう一連の動きを見ますと、着実にやはりアジアにおいても緊張緩和の方向に向かって冷戦構造が終わりつつある、終息されつつあるという認識の方が私は正しいと思うのですね。  そこで、しばしば国会で外務大臣初め政府の方方は、どうもまだ日ソの関係にはソ連の新思考外交が及んでいないということを簡単に言葉として使われておるんですね。それでソ連の新思考外交というものはどういうものだと認識されておるのでしょうか。
  46. 中山太郎

    中山国務大臣 強い社会主義国をつくるという一つの大きな理想のもとに、経済改革を推進するためには、やはり安定した国際環境というものがソ連の周辺にでき上がっていくということが好ま しいという考え方のもとに立って新思考という外交展開されていると私は認識をいたしております。
  47. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そういう非常に単純に新思考外交というものを認識をされておるとすれば、それはちょっと間違いではないか、これは言い過ぎでありますけれども、そんな感じが私はするわけであります。  やはりソ連考え方というのは、一つははっきり言えば脱イデオロギーの方向ですね。そして市民権を擁護していく。従来の支配構造というものを実践面と法制面の両面から改革するんだという、まずそういう一つの基本を立てながら、人類の利益が最優先をする。同時にまた、地球規模での相互依存時代であるという認識をきちんとしましょう。軍備については、かつてのブレジネフ・ドクトリンを廃棄をして、合理的十分性、言うなれば、日本型で言えば専守防衛に徹しましょうということですね。そして外交は互譲主義で外交展開を図っていきます、お互いに譲り合わなければならないということを基本に据える。そして国内的には、経済の立て直しとか福祉の優先、あるいはまた複数政党の容認、そういう意味では政治改革の方は随分この四年間急速に進んだということが認められると思うのですね。したがって、グラスノスチで自由な意見が述べられて、北方領土等の問題についてもいろいろな方の意見が堂々と述べられておるというのが今日的情勢であると思うのです。ですから、そういう考え方はもうアジアに及んでいるのですね。そしてまた、日本関係改善をするという場合も、そういう新思考の精神に基づいて日本関係改善をしたいという意思表示がなされているのでしょう。北方領土がどう解決されるかという問題は別ですよ。しかし、少なくとも今回の記者会見でもそう述べているわけですね。ゴルバチョフ大統領は明確に、日本を訪問して、そして抜本的な問題解決の話し合いをしたい、こう述べているわけですね。ですから、新思考考え方というものは、ソ連外交で既にアジアに、我が国に及んでおるのだという認識が当然ではないか、こう思うのですが、いかがでしょう。
  48. 中山太郎

    中山国務大臣 外交を担当している立場で申し上げますと、今日までの日ソの人物の交流、あるいはソ連の経済調査団の受け入れ等を通じて、ソ連方々発言には以前と違った非常に新しい考え方が随所にうかがわれることは事実でございます。しかし、少なくとも国家といたしまして領土問題が未解決という状態の中で、平和条約締結されていない二国間の関係において、私どもがこの二国の健全な関係を醸成するためには、やはりこの領土問題の解決をし、平和条約締結するということを一日も早くつくり上げることが極めて肝要である、不可欠の条件である、私はそのように考えておりますが、委員御指摘のように、この領土問題でこだわっておっては、日ソの関係はなかなか改善される可能性が少ないということで、拡大的に二国間の人物交流も政府は積極的にやっておるということも御理解をいただきたいし、平和条約作業グループでいろいろな協議が行われ、日米安保条約が存在しておっても、ソ連としては日ソ間の平和条約の交渉に何ら差し支えかないということをソ連政府も明言をされておりますから、私どもは九月に予定される日ソの外相会談、この外相会談において建設的な話し合いができることを心から期待をいたしておるものでございます。
  49. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 ゴルバチョフ大統領日本訪問、そしてまた日ソ間の抜本的な話し合いをするということは、先般のブッシュ大統領との共同記者会見でNHKの記者の質問に対して明確に答えておることは御承知のとおりですね。これはもうゴルバチョフ大統領の国際公約でしょう。訪日をして日ソ間の抜本的な問題について私は話し合いをします。いわば記者会見で言われたゴルバチョフ大統領の言葉は、国際公約として我々は当然受けとめるのが常識だと思うのですね。外務省もそういう受けとめ方じゃないのですか。
  50. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先般の米ソ首脳会談の際の共同記者会見におきまして、ゴルバチョフ大統領が、訪日する際には、抜本的な対応を行いたいということを言及されましたけれども、私どもは、これはゴルバチョフ大統領が対日関係において真剣な対応をする用意があるということを示したものとして歓迎しているものでございます。これは、二月に海部総理に対してゴルバチョフ大統領が親書を送ってまいりましたけれども、その中でも、訪日が日ソ関係における重要な道標となり、この関係に新たな質をもたらすものと確信するというふうに述べておられましたが、このような考え方をさらに確認したものとして、これを評価しているものでございます。  そういうことで、私どもとしても、これに真剣に対応しつつ、日ソ関係の基本的な関係の打開に向けて努力をする必要があると考えております。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  51. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 最近の日本人ソ連観というものについて、これは今後の外交を進める場合に非常に重要だと思うのですね。日本人がどういうソ連観を持っているかという点について外務省はどのように把握をされているか、また今日領土問題を含む日ソ間の関係修復について、国民は一体どのようなことを期待しているか、こういう動向把握についてはいかがでしょう。どういう理解をしておりますか。
  52. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 外務省といたしましては、いろいろと総理府が実施している外交に関する世論調査という中で、ソ連に対する国民意見というものを承知しておりますけれども、例えば、この調査は毎年実施しておりますが、昨年十月に実施された調査におきましては、ソ連に対する親近感、日ソ関係は良好かという二つの問いを設定いたしまして、それに対しまして、ソ連に対する親近感ということについては、ソ連に親しみを感じると答えた者が一三・二%、親しみを感じないと答えた者が八一・一%というふうになっております。それから日ソ関係は良好かという設問に対しましては、良好だと思うと答えた者が二四・四%、良好だと思わないと答えた者が六三・七%というふうになっております。この比率は従来の調査と大体同じような推移を示しているというふうに私ども考えております。  結局、やはり戦後四十余年を経た今日、北方領土問題が解決されていなくて平和条約締結されていないという、日ソ関係は基本的に正常化されていないという状況がこのような世論調査に反映されているというふうに考えております。
  53. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 世論調査はいろいろございましして、国際世論調査の機関であるハリス研究所と朝日新聞社の共同世論調査、これもあるわけですね。三年前の一九八七年には、ソ連を信頼できるかどうか、アメリカの五五%に対して日本は三五%という数字なんですね。ところが今年早々に行った調査によりますと、アメリカソ連が信頼できるというのが六二%に上がって、日本は四三%という数字が出て、非常に改善されているという傾向がやはり当然本当だと思うのですね、私は。  それをさらに地域的に分解しますと、おもしろいことには、北海道では五七%が信頼できる、こうお答えになります。北方領土を直接持っている北海道は五七%。東京、甲信越、そして北陸の場合には五〇%の数字であります。一番低いのは九州なんですね。これは三六%、非常に離れていますから、こういうのが国際世論調査機関と共同で行った世諭調査の内容として出ておることもひとつ十分認識されておった方がいいのではないか、こう思います。やはり交流の深まっているところはお互いに知り合って信頼感が増している。北海道の場合、まさしく五七%の数字はそのことを示しているだろうと思うのですね。  それと同時に、では北方領土に対する考え方についてはどうかといいますと、やはり最近は日ソの関係改善には、北方領土を解決してから初めて平和条約を結ぶとか関係改善ができるという人々が三分の一になっているんですね。日ソ間の経済を初めいろいろな関係を改善する中で北方領土の問題を解決すべきだ、この際二島返還でもやむを得ない、こういう二つのことを支持するウエートは過半数をほぼ超える状態になっておるんですね、最近の世論調査では。やはりこの十カ月か一年ぐらいの国際的な情勢動き、そしてこの米ソ首脳会談に至って、それぞれ基本的な問題で合意に達したという状況、随分変化があるんだと思うんですね。  こういう中で我が国は日ソ関係を改善しなければならないのであります。そして、今マルタ会談で冷戦の終結宣言が行われて、今度の米ソ首脳会談では、いわば米ソ依存協調時代、そこに実践的スタートに入った、この認識は国際的にも常識ではないかと思うんですね。先ほど福田さんの安保条約の質問に対して、我が国アメリカの最も大事なパートナーである、その最も大事なパートナーが今まで冷戦構造の中では、我が国が仮想敵国にしていた、しかも日米安保条約を結んで軍事展開をお互いに協力してやってきたという中で、アメリカのその対ソ政策の転換というものは、我が国日米同盟の国でありますから、同盟国でありますから、同盟国が今協調時代に実際的に入っていくのでありますから、当然我が国も日ソ新時代、日ソ協調時代に今入り口に立っている、むしろスタートが始まった、こう理解するのが私は常識じゃないかと思うのですが、無理があるでしょうか。
  54. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生が御指摘のように、米ソ関係におきましては大変実質的な改善が図られておりますけれども、他方においてグローバリーに超大国としての軍事的な問題を中心として、やはり抑止の必要性というものがアメリカ側において感じられておることも事実だと思います。そういう意味で、米ソ関係というのは二面的な面を持っておりまして、私どもとしては、やはり米国の対ソ観において相当改善されたものはございますけれども、基本的なソ連に対する警戒心といいますか、ソ連軍事力を依然として持っている中において、それに対してどのように適正に対処していくかという問題については、なおこれに対する見方というものは相当厳しいものもあるというのも事実だろうと思います。  それで、先ほどから大臣も御答弁申し上げておられますように、極東におきまして、やはりソ連の極東における軍事的な存在というものが根本的な改善を見ていない現状において、私どもとしては、これが将来におきまして欧州においてと同様の改善が見られる方向ソ連側が新思考外交を十分に適用してくるということを望んでいる次第でございます。そういう中におきまして、やはり拡大均衡ということで、関係を拡大しながら基本的な問題を解決するという方向にただいま努力しているということについても御理解を得たいというふうに思っております。
  55. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、対ソ関係について拡大均衡論というのを最近うたわれているのですが、どういう意味かというのはなかなか理解できないのですね。今までも政経不分離だということで、しかもいろいろな問題については、経済協力でもケース・バイ・ケースでありますと、そういうことで進めてきているわけですね。それと、いわゆる拡大均衡論というのはどんなに違うのだろうなと、実質は余り違わないだろう。表現が違うだけかな、まあちょっと格好がいいかな、表現が。実際、実質的にはそういう感じを私は持っているわけであります。そういう意味で、この点は私のそういう理解の仕方はへそ曲がりかどうかお聞きしたいということ。  それから、北方領土の問題が米ソ首脳会談で取り上げられたわけですが、北方領土の問題は、日ソ二国間の問題ですか、それとも東西間の問題という認識でしょうか、日本政府は。その点が第二点。  もう一点は、これは和田春樹東大教授が北方領土問題を考えるということでしばしば論文が発表されておるわけです。しかも、これは条約の解釈の問題なんですね。古くは百三十五年前の日露通好条約、そして百十五年前の交換条約、そしてサンフランシスコ平和条約、これらに触れて展開しているわけですね。ですから、これはゆゆしき問題だと思うのですよ、条約の解釈ですから。これに対して私、外務省の見解を聞いたことがないものですから、この三点についてお答え願いたいと思います。
  56. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 日本政府といたしましては、やはり日ソ関係の基本的な問題である北方領土問題の解決を棚上げにして、経済関係のみが進むということは好ましくないということで、そういう観点から無原則な政経分離はとらないということで、いわゆる政経不可分の原則をとっているわけでございます。  他方、ケース・バイ・ケースということも申し上げておりますけれども、これは具体的な案件に対して政府の立場を決める際に、このような基本的な立場を守る上において問題がないかどうかということを慎重に検討しながら進めていくということを示すための考え方でございまして、これはその政経不可分の原則の中で具体的な実行の方法を示しているというふうにお考えいただければというふうに思います。  それから、領土問題というのは、やはり基本的には日ソ間で交渉されるべき問題であろうと思います。しかし、この問題は、やはりこれが解決されるということが日ソ間の完全な正常化につながるわけでございますから、それはアジア太平洋地域における平和と安定にもつながる、そういう観点から、東西関係の全体の緩和のためには、やはりこの問題が解決されることは必要だという意味で、東西関係の全体のコンテクストの中で大きな意味を持っているというふうに考えております。そして、そういう考え方というのは、現在アメリカを初め西側の友好国の間においてもかなり理解が進んできているというふうに申し上げられると思います。  それから、第三点の問題でございますが、和田春樹東大教授が最近の論文でいろいろと北方領土の問題につきまして、条約の解釈、日露通好条約であるとかサンフランシスコ講和条約を挙げて示しておられますけれども、この問題につきましては、基本的には個人の論文の中におきます主張でございますので、政府として正式なコメントを申し上げるという立場にはないというふうに考えております。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては、北方四島は歴史的にも法的にも我が国の固有の領土であるということで、これはやはりこれらの諸島が歴史上一度も他国の領土となったことがないという歴史的な事実、日露通好条約及び樺太・千島交換条約のいろいろな規定の解釈及びサンフランシスコ平和条約によって放棄した千島列島にこれらのものが含まれていないということが、これらの一連の条約の解釈からしても当然であるという立場をとってきていることは御承知のとおりでございます。
  57. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がありませんから、最後の質問になりますけれども安保の問題は上原君、カンボジア和平の東京会談の問題は井上国際局長から質問があるようであります。  私は最後に述べておきたいのは、今の答弁も、まあ個人の論文だから見解を述べなくてもいいなどと簡単に片づける問題じゃないでしょうね。これは相当もう学者も、支持者が、正しいと言っている人もおりますからね。佐藤紀世夫さんのみならず、別に革新保守とか進歩と何ら関係ないですから、これは。一応そういう意味で注意を喚起しておきたいと思うのであります。  同時に、やはり北方領土問題というのは百三十五年の歴史を経ておりますけれども我が国が実効支配したのがそのうち九十年、ソ連の実効支配したのが四十五年ですね。ちょうど我が国が実効支配した半分の期間をソ連が支配しているのですね。そして、北方領土における住民の動向などを調べてみますと、大体一万人を越えて北方領土に住んだのは、我が国が統治しているときには二十年間です。昭和の年代だけの終戦までの期間、それ以前は一万人を切っているのですね。大体年代的にずっとこれは調査資料があるわけであります。そして今ソ連が四十五年間、政府には不当支配ですが、支配しているという中では、現在一万七、八千人で、大体軍人を除いても、日本のピーク時の人口と同じような状態にあるのです。こういう現実が存在しておるということですから、一挙に問題解決となかなかいかぬということは理解ができるのではないでしょうか。  同時に、私は福田内閣のときに、これは当然領土が返還された場合には非軍事地帯にしてはどうかという提案を述べて、福田さんは、これはやはり検討しなければならない、十分そういう意見を大事にしながら検討していきたいということを述べられておるわけです。中曽根さんの場合には、では安保条約すぐ適用しますとつっけんどんの答弁を予算委員会でもしておるわけであります。また、私が本院に初めて議席を持った昭和三十五年、三十六年に初めて北方領土に関する政府統一見解が出て、我が党の河野密議員がこの質問をしたのを私も直接傍聴しておったわけですが、そのときにいわゆる北方地域等の漁業権者等に対する十億円の基金の積み立ての法律が可決された年でも実はあるわけです。北方領土の日は外務大臣がちょうど総務長官で予算委員会で質問したこともあるわけであります。  そういう意味で、この問題は今日の時点でどうするか、もちろんソ連側でもいろいろ意見がグラスノスチで述べられています。日本だって、例えば与党の中でも安倍元外務大臣のような一応日ソ打開に対する基本的な見解を述べられたり、小沢民党幹事長が意見を述べられて、金丸さんも堂々と意見を述べた。そして何か北方領土の問題を言うと国益に反するようなことを言う人もおるのです。例えば北方領土地域で密漁しても、またほか行って密漁しても、これはわからなければ国益だというような認識が、今次々と事件を起こしておるわけでしょう。それではいけないと思うのです。民主国家として我が国が、ソ連でさえグラスノスチでいろいろ意見を述べられているのに、やはりこの際、この問題についても大いに議論をする、こういう姿勢があって、ゴルバチョフ大統領を迎えて、そして北方領土の問題についても話し合う、日ソの関係改善、そしてひいてはアジアの安全保障の体制構築のために全体がテーブルに着けるような状況をつくり上げていく。それにはカンボジア問題、朝鮮半島の問題もあるわけでしょう。我が国の日ソの関係改善の問題もあるでしょう。こういうもうちょっと活性化した議論というものが必要ではないか。木村汎さんとかあるいはまた袴田さんの参考意見も、そういう意味では従来と違った、やはり現実的な積極的な活性化された意見が述べられていると私は思うのです。そういう点で、外務大臣の見解をこの際私の意見に対して承って終わりたいと思います。     〔委員長退席、園田委員長代理着席〕
  58. 中山太郎

    中山国務大臣 日ソ間の問題について御議論をいただくことは、私はこの民主主義の日本においても結構なことだと考えております。私は、昨年日本に来られましたヤコブレフさんとも二回にわたっていろいろと突っ込んだお話し合いもさせていただきました。やがてお越しになるシェワルナゼ外務大臣ともいろいろな話をしなければならないと考えておりまして、まず常に日ソ間のお互いが信頼し合える立場でこれからの日ソの問題を協議する関係をつくらなければならない。そういうことで、九月に来日されるシェワルナゼ外務大臣に対しては、ゆっくりといろいろとお話を申し上げたいという心構えで、私は実はお待ちをしているということをきょうは申し上げておきたいと思います。
  59. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 どうもありがとうございました。
  60. 園田博之

    ○園田委員長代理 井上一成君。
  61. 井上一成

    ○井上(一)委員 アジアの平和、安定のためにカンボジアの和平実現ということは欠くことのできない重要な問題だ、私はこういうふうに思っておりますし、中山外務大臣が御就任以来常に大変な御努力をいただいていることについては、その労を多とし、かつまた心から敬意を表し、今後ともの精進を期待いたします。  東京会議を終えられて、ホスト国の外務大臣として御苦労された中山外務大臣カンボジア問題に対する御所感をまず承っておきたい、こう思います。
  62. 中山太郎

    中山国務大臣 戦後の日本外交の中で、地域紛争の和平への協議を日本がそのホスト役としてそれに汗をかくということはかつてなかったことではないかと私は認識をいたしております。また、そのような努力をしたことによって、早速中国の大使館もそれなりの御協力をいただきましたし、また、先日来られたエバンス外務大臣も、オーストラリア政府として大変この会談が将来の明るい展望につながることを期待していると言われましたし、ソロビヨフソ連大使からは、ソ連政府日本のこの和平への努力に高い評価をしているというメッセージをいただきました。私どもは、今井上委員から御指摘をいただきましたが、この会談を東京でホスト役としてやらせていただいて大変よかったという印象を持っております。
  63. 井上一成

    ○井上(一)委員 東京会談を持つに当たって、事前にあるいは会談の中身においても在京中国大使が大変御苦労いただいたという報道も聞いておるわけですが、この会談を持つに当たって事前に中国側との折衝あるいは連絡、連携は持っていらっしゃったのでしょうか。
  64. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答え申し上げます。  今回の東京会談開催に当たりましては、もちろんタイとは緊密な連絡のもとにこれを進めたわけでございますが、そのほかにカンボジア問題に大変重要なかかわりを持ちます中国そしてベトナム政府には、日本政府の基本的な考え方を説明いたしまして、先方の政府からは、中国も含めて、この東京会談について基本的な支持をいただいておった経緯がございます。
  65. 井上一成

    ○井上(一)委員 せんだってベトナムのハノイで、ベトナムと中国が十一年ぶりに外務省の事務高官レベルでの話し合いがあったと聞き及んでいるのです。この中では東京会談についての評価あるいは位置づけ等が話されたのかどうか、そういうことは把握していらっしゃるのかどうか、この点についても聞いておきたいと思います。
  66. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 先般のベトナムの外務次官の訪中の際に、具体的に東京会談について先方とどのような話し合いがあったかは承知いたしておりませんが、その前に当の外務次官が東京に参りまして、私どもの外務審議官とカンボジア問題について詳しい意見交換を行っておりまして、その中で東京会談についても、先ほど申し上げましたように、日本政府考え方を述べておりますから、当然外務次官が訪中されたときに、先方との間にこの点も話題になったと想像されます。  また、井上先生御存じと思いますが、ただいまこの時点で徐敦信中国外交部の次官補が訪越、ベトナムに行っておりまして、ちょうど東京会談の直後でございますから、両者、中国とベトナムの間でこの問題についての評価も含めてお話し合いが持たれておるものと想像しております。
  67. 井上一成

    ○井上(一)委員 バンコクにおいてタイ政府、チャチャイ首相が大変御苦労いただいて、一定の合意が既になされたわけなんですね。そして東京で、いわばそれを再確認するという意味での東京会談、詳しいことは私から申し上げる必要はなかろうと思う。私も東京会談については期待もし、そしてその成功をだれよりも願っていたという関係から、バンコクでの合意文書と東京での合意文書、どういう点が違っていたのでしょうか。
  68. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 詳しいお話は時間の関係もありますから省略するといたしまして、バンコクで用意されましたカンボジアの四派がイニシアルしました文書と、今回東京でつくり上げられました文書の間の基本的な違いは、要するにカンボジアの紛争の二つの側面、すなわち停戦の部分と政治的な解決の部分があるわけでございます。その二つの側面を、東京で最終的につくり上げました文書においてはより明確に両者のリンケージといいますか、関係を明記したということがございまし た。バンコクにおいて用意されました文書は、その辺の関係づけが若干不明確であったということでございます。他方、その結果、先生御案内のように、東京での文書においては、これについてキュー・サムファン氏、クメール・ルージュの支持を得られなかったという残念なことはございました。
  69. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は独自にタイのバンコクにおける合意文書も持っているわけなんです。それで、この東京における合意文書には、七月末までに武力行使を自粛する、もちろんそれは最高国民議会を設置してと、そういうことが合意されているわけです。クメール・ルージュ、ポル・ポト派はこのことに参加するという自信をお持ちなんですか。
  70. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 キュー・サムファン氏が来ておられましたけれども、この東京での文書をぜひとも支持してほしいというふうに私どもも強く働きかけた経緯がございます。私どもも決して予断は持っておりませんでしたけれども、キュー・サムファン氏がこれに必ずしも賛同しなかったということについては残念でもあり、率直に申しまして、若干意外な気がいたしました。  と申しますのは、この東京でつくりました文書は、いわゆるカンボジアの包括的な政治解決ということを明確にうたっておるわけでございます。これはキュー・サムファン氏のクメール・ルージュにとっても利益になることでございますから、これについて私ども精いっぱいの説得に努めたわけでございますけれども、今回は必ずしも賛同が得られなかったというのはまことに残念に思っております。
  71. 井上一成

    ○井上(一)委員 バンコクでの合意文書と東京での合意文書との違いの一つを私は今クローズアップしたわけですね。  ポル・ポト派は参加する見通しはあるのか、参加しない場合にはどうなるのか、既に影響力を持つ中国側にそういう話し合いを会談の過程で申し入れをしているのかどうか、そこらはどうなんですか。
  72. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 東京会談の途中で、クメール・ルージュ、キュー・サムファン氏との関係が若干困難なことになりまして、私自身中国大使館に足を運びまして、中国政府、具体的には中国大使館の個々の大使あるいは公使のこの面での尽力を強く要請いたしました。そういうこともございまして、大使自身がクメール・ルージュ、キュー・サムファン氏のところへ足を運ばれて、今回の東京会談についてクメール・ルージュの方も積極的な態度で対応するようにというふうに働きかけを行っていただいたというふうに私は確信いたしております。
  73. 井上一成

    ○井上(一)委員 局長、たわいもないことを言うておったらあかんよ。東京会談を一〇〇%成功させるためには、この七月末を一つのめどに四派それぞれの派が合意しなければいけない。それでないと、さっき私が中山大臣に敬意を表し、御苦労さんと言っているわけなんで、そういうことは局長として、事務方として中国にも申し入れをし、そういう自信があるんですね。ない場合には、ポル・ポト派は排除してでもこの合意文書をそのまま生かそうとしているのかどうか。それは事前にポル・ポト派排除を見込んだ合意になるじゃないか、こういうことになるのです。限られた時間だし、もっとしっかりと答弁をしてもらわないと……。
  74. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 御趣旨はよくわかりました。  要するに、今後の問題点はまさにそこにあると存じます。私どもは今回の東京会談で明示的にポル・ポト派を排除して和平をつくり上げようということに踏み切ったわけでは決してございません。今後私ども日本政府として精いっぱい努力をしなければいけないのは、今回東京で得られた合意のラインというものを、日本政府はもとより、ただいま申し上げましたように、中国政府そしてタイ政府、これらの御協力も得ながら、この東京会談の趣旨、ここで得られた合意の内容というものをクメール・ルージュも受け入れていただくように精いっぱいの外交努力をこれからしなければいけないと思っております。
  75. 井上一成

    ○井上(一)委員 キュー・サムファン、いわゆるポル・ポト派は四派対等を主張している、そういうふうに報じられているわけですが、それはそのとおりなんですか。
  76. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 今回東京会談で得られた合意文書、これを必ずしも支持いたしませんでした一つの理由には、明らかにその点があったと思います。ただ、東京会談を始めます前に、タイ政府あるいは日本政府とシアヌーク殿下との間の合意は、今回はシアヌーク殿下、一つのこちらの当事者、そしてもう一方の当事者としてフン・セン氏を得るということで、基本的には二者の間でお話し合いがなされる、そのシアヌーク殿下がそれぞれのその下にある三派をお連れになって、それで会談に臨まれる、そういう理解で東京会談が開催されたわけでございます。
  77. 井上一成

    ○井上(一)委員 私はタイのバンコクにおける合意文書と東京会談の合意文書の違いをぜひここで局長から聞かしてほしいね。さっき私は、その七月末の、文書の違いを、これはタイのバンコクでの合意文書には入ってないんですよ。そうでしょう。東京で入れたんですよ。さらにもっと違う点があるでしょう。それを説明しなさい。
  78. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 先ほど申し上げましたように、基本的には、停戦、戦闘行為の自粛の部分と、その来るべき政治解決といいますか、その部分を明確に両者をリンクしたということが今回の東京における文書とバンコクにおける文書の違いでございまして、例えば東京の文書におきましては、こういう表現がございます。実質的な停戦が実施されなければならないとした上で、そのような約束は、敵対行為の停止と最高国民議会の創設に関する合意を通じて実現される。要するに、敵対行為の停止と最高国民議会の創設という政治解決の部分が表裏一体のものであるということをより明確にいたしました。  それから第二点は、例えばアンコールワットの遺跡につきまして、この地域を非敵対地域であるということを宣言するというようなくだりもございます。  それから、附属文書、アネックスというのを幾つか今回の東京会談での文書では附属いたしましたが、その中では、例えばただいま申し上げました最高国民議会の第一回会議というのは遅くとも一九九〇年七月末までに招集されるということが書いてございまして、それと並行的に、第一回目の国民議会が招集される日に、前段で申し上げましたカンボジアのすべての派による自発的な武力の行使の自粛というものが実施に移されるというふうに書いてございます。
  79. 井上一成

    ○井上(一)委員 バンコクでの合意文書には、いわゆるSNC、最高国民議会の構成については対立する両派、ボースサイドの著名人同数によって構成される、こういうふうにちゃんと書いているのですよ。四派対等ではないのです。四派対等でなく、両派同数によって構成されるということがバンコクの合意文書では明確にされ、そこには四派それぞれの代表が署名をしているのです。今回なぜ署名をしなかったのか、ここなんですよ。どうして署名しなかったのか、なぜなのだろう。そういう点について外務省はどう受けとめていらっしゃるのか、これは大臣じゃなくあなたから、局長からひとつ答えてください。
  80. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 確かに井上先生のおっしゃるとおりでございます。バンコクでの文書には最高国民議会は二者構成になっておりまして、これはシアヌーク殿下は、大変なシアヌーク派の譲歩だと言っておられましたが、そういう意味におきまして、基本的に二者ということをバンコクでキュー・サムファン氏はその限りにおいては受け入れてこられたというふうに思います。しかし東京では、キュー・サムファン氏が私どもに言っておられたのは、第一点は、カンボジアの紛争に対する彼らの対応というのは、やはり四者構成であるべきだということを言っておられました。その点が非常に不満が残るということと、いずれにいたし ましても、先ほど来お述べの、バンコクでキュー・サムファン氏がイニシアルしたその文書と東京で得られました合意文書は若干違っておりますので、私ども想像では、バンコクでイニシアルをしたものと違った文書を限られた時間で署名するだけの権限は恐らくキュー・サムファン氏には与えられていなかったのではないかというふうに想像いたしております。
  81. 井上一成

    ○井上(一)委員 キュー・サムファンには署名する権限を与えられていなかった。キュー・サムファンは四者署名しているのですよ。同じ構成のメンバーについては両派対等という。それが今回の東京会談では、そのとおりになっておるのだけれども署名しなかった。なぜなんでしょうかと聞いているのです。
  82. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 でありますから、お答え申し上げますが、先ほど申し上げましたように、バンコクでの文書に比べまして、より具体的に、停戦の部分と政治解決の部分が具体的な日を限ってより明確にリンクされたものが今回の東京の文書でございます。これはバンコクの文書より私どもから見れば進んだものだと思っておりますけれども、キュー・サムファン氏は、そこはバンコクで得られた合意を越えるものだという認識がありまして、署名というか、これは自分としては今回は支持できないと言って帰られたわけでございます。
  83. 井上一成

    ○井上(一)委員 ということは、日本政府としては七月末、いわゆる東京合意文書を完全に実施でき得るという自信を持っておるわけなんですね。これができ得なかったら成功じゃないんですよ。私はカンボジアの和平を実現させるために私なりの努力をしてきたつもりなのです。そういう点で、本当にこの合意文書で日本政府は、ただ単なる座敷貸しで、場所貸しで外交をやってはいけないのですよ、そういう意味で自信があるのですね。担当の局長としてしっかりとこれは答えてください。
  84. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 先ほど申し上げましたように、七月末までに東京で得られた合意文書についてキュー・サムファンといいますかクメール・ルージュの支持を取りつけるために、全力を挙げて私どもやりたいと思っております。
  85. 井上一成

    ○井上(一)委員 外務省は、例えばバンコクにおける合意文書の要旨、要点でも国会に出して——国民が非常に注目と関心を寄せているカンボジアの和平問題に対して、汗をかいている外務大臣に比べて事務当局は一体どこまで協力しているのかということを私は申し上げておきたい。谷野アジア局長、しっかりと頑張ってほしいということを申し上げておきます。  次に、私は喜ぶべき問題であろうかと思うのですが、ペルーの大統領、日系人であるフジモリ氏が大統領に選ばれたというか国民支持を得た。このことについて、報道だけによると日本政府は非常に冷たいような感じがするわけです。ペルーの国民の多くは恐らく日本に対してあらゆる面での、物心両面にわたるサポートを期待してフジモリ氏の当選をなさしめた、こういうふうに私は思うのです。  まず、出先の大使館としてこのペルーの大統領選挙についての見通しはどうであったのか、あるいはそのことについて政府はどう受けとめていたのか。
  86. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 ペルーにおける我が方の大使館は、この選挙をペルーの政治上、社会上の大変な一つの事件というか事柄ととらえておりまして、選挙の始まるときから終始情報収集に努める、またいろいろな方との対話を試みるということで、十二分の活動をしていたと我々は受け取っております。  また、先生から日本政府の対応が冷たいのではないかというような御指摘がございましたけれども、私どもとしては、このペルーが選ばれた新大統領に対して心から祝福するということで、いち早く総理からも祝電を打っていただきましたし、できるだけの対応をまたこれからもしていきたいと考えております。
  87. 井上一成

    ○井上(一)委員 別に対立候補がどうこうという意味ではありませんけれども、去年の十月にリョサさんが来たときには、外務省は、海部さんにもあるいは中山大臣にも会われているかもしれませんが、非常に肩入れしておるわけです。肩入れして、フジモリ氏に対しては、私の受けとめる限りでは非常に冷ややかな感じ。これはむしろ、日系人が世界で初めて大統領になったのだから、国外で活躍する日系人のさらなる勇気、さらなる活躍を精神的にも支える意味で大いに歓迎すべき事柄であり、そういう予測も現地大使館ができないような状況、見通しの悪さというのは、本当に外務省、何しているんだ、国際国家日本なんて言いながら、そういうことで本当に——信頼とさらには支援とによって我が国外交の柱にしたいと中山外務大臣がさっき言われているわけなんです。  そこで大臣、このフジモリ新大統領は就任前にでも日本に来たいという訪日の熱い意思があるわけなんです。お招きをする用意があるのかどうか、そういう御意思を持っていらっしゃるのかどうか。  ペルーは大変なインフレ、貧困と大変な累積債務を抱えて経済的にも大変難しい。立て直しが大変だろうと思う。しかし、日系人の大統領が生まれて、日系人の大統領がその手腕を発揮する上において、日本が役立つことはすべて協力すべきではないか、私はこういう考えなんです。もしフジモリ新大統領がペルーの行政において失敗をすることがあれば、ただペルーだけの問題ではない、日系人の国際社会における位置づけ、評価、イメージを落とすのではないでしょうか。そういう意味で、余り冷たいことを言ってはいかぬ。民族意識を高ぶるわけではない。しかし、もっともっとおおらかな気持ちで、何が外交であり、何をすることが国際社会で信頼を得られるか、こういうことを考えたら、ペルーに最大限の援助を早急にやるべきだ。ODAのつまらぬところに金をつぎ込むよりも、こういうことに全面的に協力を惜しまないという中山外務大臣の御意思というか御見解いうものを私は期待して質問を締めくくりたいと思いますが、とりあえずペルーのフジモリ大統領に寄せる中山外務大臣、あなた個人の熱い意見、私が最大の尊敬と敬意を払っている中山外務大臣にひとつ強い決意をお伺いをいたしたいと思います。
  88. 中山太郎

    中山国務大臣 フジモリ大統領候補が当選をされたことは、私は心から祝福を申し上げたいと思っております。  今委員から御指摘のように、この新大統領日本に来られるということについては、私ども政府としては歓迎を率直に申し上げるということをこの機会に申し上げておきたいと思います。  また、ペルーが抱えているいろいろな困難な問題につきまして、この大統領からお話があれば、日本政府としては国の発展のために協力をする、できるだけのことは協力をしなければならないというふうに考えております。
  89. 井上一成

    ○井上(一)委員 ひとつ最大限の協力をしていただくことを私からも強くお願いをしておきます。  さらにODAの件で、私はきょうあえて問題提起をしようと思ったのですが、時間が参りましたので、大変申しわけないですが、次回にまたそれはさせていただくということで、私の質問を終えます。どうもありがとうございました。
  90. 園田博之

    ○園田委員長代理 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  91. 柿澤弘治

    柿澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上原康助君。
  92. 上原康助

    ○上原委員 午前中、日ソあるいはアジアの問題についていろいろお尋ねがありましたが、私は、大変限られた時間でございますので、日米関係についてまずお尋ねをさせていただきたいと存じます。  けさ、与党委員の福田先生のお尋ねにもありましたが、日米安保条約締結をされて来る二十三日で満三十年を迎える。今その評価をめぐっていろいろ意見があるわけですが、政府は一貫して日米安保条約が果たしてきた役割は大きかった、安保条約日米関係きずなとして今日の日米関係はもとより、いわゆる言うところの西側陣営の平和と安定が図られた、これを高く評価する、したがって、今後もそういう考えでいくということをたびたび強調しておられるわけです。そのような国民見方も確かに大きい面があることを私は否定はしません。同時に、安保条約の功罪を言わしてもらうならば、功だけではなくして、それゆえに大変犠牲をこうむった面も多いと思うのですね。そういった面については一体どういうふうに御認識をしておられるのか。これからも安保体制を継続していくということになりますと、犠牲になった分は少数だからあるいはマイナーだからそのままでいいというわけにはまいらないと私は思うのです。このセクターというか分野が非常に政府安保評価の面において欠けている、欠落をしていると言わざるを得ませんが、その点に対する御認識というか御見解からまずお聞かせをいただきたいと存じます。
  93. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生御承知のように、在日米軍は、日本の安全と平和、さらには極東の平和に寄与するために駐留しておりますけれども、全国でかなりの施設、区域を日本側として提供しておりまして、そこに安保条約の目的達成のために駐留しておりますが、その過程におきまして、訓練を通じ、あるいは予期せぬ事故を通じ、その施設、区域の周辺の住民の方々にいろいろな形で御迷惑をおかけするということが間々あるわけでございます。私どもは在日米軍の駐留は安保条約の目的達成のために必要であると考えておりますけれども、その過程におきまして、そういう問題が地域住民との間にできるだけ生じないように、また生じましても、それができるだけ最小限にとどまるよう配慮するように米側に従来から申し入れてきておりますが、この点に関しましては、これからも引き続き留意してまいりたいと思っております。  その点で、施設、区域が集中しております沖縄の方々にはいろいろな形で御迷惑をおかけしていると思いますけれども、その点に関しましても、引き続き今申し上げたようなことで、私どもも米側に注意を喚起する点、注文をつける点は注文をしっかりつけて対応していきたい、こう考えております。
  94. 上原康助

    ○上原委員 その評価というか御認識については大臣の御見解もぜひお聞かせいただきたいと思うのですが、要するに、安保繁栄論あるいは安保を高く評価するということだけが強調され過ぎて、安保体制下でどれだけ多くの犠牲をこうむっているかということについての政府政策転換というか、あるいはそれをどう積極的に解決をしていくかという姿勢の問題を私は今お尋ねしているわけであります。  それと、この安保条約締結されて三十年が経過をしようとする過程で、にわかというか最近強調されている面で、従来の軍事同盟的色彩、軍事面の色彩を、我々から見るとそれも堅持しつつだと思うのだが、その面を薄める考え方というか立場から、最近第二条の経済条項というものが非常に強調されている面があるわけです。これはこれからの議論の問題としてきょうはお尋ねしておくわけですが、三十年を節目として、この第二条の経済条項というものをより重要視していくお考えなのかどうか、最初のお尋ねとあわせて大臣の御見解を聞かせていただきたいと思います。
  95. 中山太郎

    中山国務大臣 今政府委員が答弁申し上げましたように、日米安保条約のもとに日本駐留米軍のために基地を提供するという責任を負っておりますけれども、そういう中で基地周辺の方々には、例えば航空機の騒音等を通じて大変御迷惑をかけているということは、私どもは心からこの方方にも御迷惑をかけているという気持ちを深く持っております。  特に、先生御出身の沖縄は、日本駐留米軍の中で一番大きな基地でございます。なお、さきの大戦の際に沖縄が戦場になり、沖縄の方々がみずから戦火の中で戦われ、そして米軍がそこに上陸をして、さらに本土進攻のためのいわゆる基地を建設するという過程から戦後の米軍基地、こういう長い一つの歴史の中で沖縄の方々には大変御苦労をかけているということは、私が外務大臣としても、心から沖縄の方々にもそういう意味で御迷惑をかけているというふうに感じを持っております。これが第一点のお尋ねでもございます。  第二点のお尋ねにつきましては、日米安保条約の第二条の問題でございまして、これは私は今後ともこれを安保条約一つの大きな柱として政府としては考えていかなければならないと思っております。なお、同じような項目が北大西洋条約にもございまして、文言はまさに同じと申し上げても過言ではないか、このように認識をいたしております。
  96. 上原康助

    ○上原委員 大臣の御認識あるいはそういう安保体制下で犠牲になっている基地周辺住民の立場ということに御理解を示された点には敬意を表しますが、余り繁栄論だけ言われると、やはり我々としても、そういうことだけであり得ない、見解を異にせざるを得ないという点を申し上げておきたいと思います。  そこで、今もお触れになりましたが、これは本委員会あるいは内閣委員会、沖縄北方特別委員会等でもたびたびお尋ねをしてきたことなのですが、沖縄基地の整理縮小問題、これは従来からの懸案事項、安保協での第十四、十五、十六で懸案になって既に十数年経過している。その分野と、またアジア太平洋の新しい戦略枠組みが発表されて、その新戦略枠組みの中での米軍撤退、基地の整理縮小ということも当然予想される、二面性があると思うのですが、これまで政府が御指摘をしてこられたことは、前段のいわゆる懸案の分野についてまず当面日米間の合意を取りつけるように努力をしておるということでありましたが、これまであらまし出てきた日時というものが大変せっぱ詰まっているような感じもしてなりません。そこで、日米間の返還交渉の煮詰まりぐあいについて改めて御見解を明らかにしていただきたいと存じます。
  97. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生がまさに御指摘のように、従来からの懸案の沖縄におきます施設、区域の整理統合のアメリカとの話し合いは、現在最終段階にかかっておりまして、私ども今鋭意残っております点を米側と詰めている段階でございます。これはたびたび国会の場で申し上げてきていることでございますが、できるだけ早期に具体的な成果を出したい、その上で公表させていただきたいということでございまして、近い将来具体的成果が発表できることを期待しておりますが、現時点で、それではいつ発表できるかということでございますと、具体的に何日に発表できるということは、まだ米側と幾つかの点について折衝中でございますので、残念ながら明示的な日取りは申し上げかねることをお許しいただきたいと思います。
  98. 上原康助

    ○上原委員 外務省のお役人のガードのかたさというのか、野党に言わないのか、口の方は金庫におさめてかぎをかけてなかなか、何度聞いても最終段階に入っている、鋭意努力中である、この域は出ないわけで、もう少し外務大臣、そろそろ全容をわかりやすいように明らかになさってはいかがでしょう。これは確かに外交案件なので、いつ何どきどのくらいこうなっていますということは、こういう公の場で見解表明できないかもしれませんが、大臣もおわかりのように、総理大臣がこの六月二十三日の沖縄の全戦没者の追悼、慰霊の日に行かれるというようなこともあって、県民はこの最近の国際情勢日米関係等々の変化もあわせて非常に期待をしているわけです。期待というよりも強い重大な関心を持っている。もう少し、この強い関心、期待にこたえるような政府の何らかの姿勢をお述べになっても、決してこれからの日米交渉に支障を来すようなことにはならないと私は思うのです。その点いかがでしょう、大臣
  99. 中山太郎

    中山国務大臣 基地の返還の交渉経過がもう間もなく終結を迎えるのではないかと考えておりまして、極めて近い将来に発表できるものと考えております。
  100. 上原康助

    ○上原委員 そこで、おおよそのめどづけというか、そういうのは我々もわからぬわけではありませんが、従来非公式というかいろいろ取りざたされてマスコミ等で報道されたものより大きく後退するとか、前進はあっても後退をするというようなことがあってはいかぬと思うのです。その点は篤と御理解をいただいて、県民の期待にこたえてもらいたいということを強く要望を申し上げたいわけです。防衛施設庁も来ていただきましたが、時間の都合で、今大臣がお答えになったから聞かないかもしれませんから、その点あしからず。  そこで、これとの関連で、在日米軍の駐留経費についてお尋ねをさせていただきたいわけですが、きょうは外務省のお考えだけを明らかにしていただければと思うのですが、私はこの件についてはいろいろの意見を持っております。果たしてこれだけ日本側がいろいろな駐留経費を増額する、あるいは負担をして、それが真に我が国の安全保障あるいはアジアの平和と安定ということに資しているのかどうか。在日米軍を日本から撤退させないという瓶のふた論もあるわけで、そういう面からだけなのか。また、米軍軍人軍属にすると、日本は非常に居心地がいい。ましてホスト・ネーション・サービスも大変世界一だということで居残りを希望している面はないのかどうか。そこいらは私はこの安保三十年の過程でよく再吟味をする必要があると思うのです。  そういう前提でお尋ねをいたしますが、この駐留経費の問題で、基地の光熱費負担あるいは労務の基本賃金等々も米側から要求されているやに聞いておる、あるいは報道されている向きもあるわけですが、この点の米側の真意はどうなのか、また日米間のやりとりはどうなのか、聞かせていただきたいと思いますし、もしこれ以上駐留経費を増額するとなると、地位協定とのかかわりも当然出てくると思うのですが、この特別協定あるいは地位協定とのかかわりは、これからどのようにやっていかれようとするのか、御見解を聞かせていただきたいと存じます。
  101. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 在日米軍の経費問題に関しましていろいろ報道があるのは私どもも承知しておりますけれども先生今御質問のように、具体的な形で米国側より在日米軍の経費負担に関しまして日本側に注文がついているということではございませんで、先生も今御指摘になりましたけれどもアメリカ側におきましては、議会中心に一般的な形で日本のバードンシェアリングをさらに求める声が強くなっておりまして、その中で駐留米軍経費の問題に関しましても、日本が一層の負担をすべきであるという声がアメリカ議会中心に高まってきております。例えば、最近でございますけれども、この五月から六月にかけまして、バードンシェアリング担当のホームズ大使が来日されまして、私ども外務省事務当局といろいろ話をいたしましたが、その場でも一般的なアメリカの期待の表明はございましたけれども先生指摘のような具体的な形での要求というのはございませんでしたので、改めて御指摘させていただきたいと思います。  したがいまして、私どもは従来から申し上げていることでございますけれども、在日米軍経費の問題は、安保条約全体が、これは中山大臣が繰り返しいろいろな場で申し上げておりますように、この三十年間大きな成果を上げてきていると私ども考えております。引き続き安保条約のもとで在日米軍が安保条約の目的達成のために駐留していくことが必要であると考えておりますので、自主的に日本としてどういう形で負担ができるか検討していきたいと考えているわけでございまして、具体的に現段階でどの項目についてさらにどういう形で負担をふやしていくかということに関しましては、まだ結論を得ておりません。したがいまして、先生指摘のように、それをどういう形でまたアメリカとの間で約束するのかということに関しましても、これから検討をしていくということでございますので、現段階では私どもはまさにこれからの検討課題であるということでお答えさせていただきたいと思います。
  102. 上原康助

    ○上原委員 なかなか意味深長な御答弁のような感じもします。これはもちろん条約論あるいは協定論でもあるわけですが、大臣、ある面では政治判断の問題でもあるわけですね。今後の日米関係あるいは今問題になる構造改善協議等々も、もちろん米側としては、そういうものとも絡ませていると思うのですが、これだけマスコミ等で円建て分全額負担という米議会あるいは米側からの強い要求があるというようなことがなされますと、当然関係者なりがこのことに関心を持つことはあり得ると思うのですが、この件についての外務大臣としての御所見はどういうお立場ですか。
  103. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先ほど日本の一層のバードンシェアリングを求める声が米議会中心に強くなっているということを申し上げました。具体的には昨年の十一月に成立いたしました米国の国防予算授権法の九百十三条には、これはアメリカ議会としての意向でございますが、米軍人の給料及び手当を除く日本駐留にかかわる経費を日本側がすべて負担するように求めるべきであるというのが、これはアメリカ議会の意向として出ておりますし、そういう点は私ども承知しておりますが、これは先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、日米間のいろいろな話し合いの過程でアメリカ側がどういう形で日本側に経費負担を求めてきているかということでございますと、これはあくまでも一般的な形でございまして、具体的にこの経費を幾ら、この経費を幾らという形でアメリカ側日本側に要求を突きつけているということはございませんで、私どもとしては、先ほど申し上げたような基本的な考えのもとで、これから日本側の対応については検討していきたいと考えている次第でございます。
  104. 上原康助

    ○上原委員 恐らく私が指摘した問題は遠からず表面化してくると思いますが、そういう御答弁ならそれなりに受けとめておきましょう。  そこで、もう一点、ちょっと前後するのですが、私は四月二十六日でしたか、予算の分科会でいわゆる日米安保協のことについて見解をただしました。といいますのは、さっき基地の返還問題等でもお尋ねしましたように、従来安保議会日米間の重要事項については協議しておったのですね。しかし、御承知のように八二年の一月以降、二月ですか、八二年の一月以降日米安保協は開かれていない。それはいろいろ、我が方が外務大臣あるいは防衛庁長官であるのに対して、相手側が在日大使であるとか太平洋軍司令官であるとかというようなことで、ちょっと対等じゃないというようなことで開かれないという非公式な見解も私は聞いたことがあるわけですが、最近の報道によりますと、この安保三十年を契機に安保協を発展改組させていきたい、こういうことで今日米間で話し合われていると承っているわけですが、これについて日本側がそういう話をやっておられるのかどうか。また、仮に構成面を改組するとなると、どういう内容になるのか。その改組の目的あるいは役割等についてお聞かせをいただきたいと存じます。
  105. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生指摘になられました四月にアメリカの国防省が議会に出しました「アジア太平洋地域戦略的枠組み」の報告の関連で、先生から予算委員会の分科会で、政治・軍事の対話をふやし安全保障協議の過程を再活性化することというのがあるけれども、これは何を意味するのだという御質問を当時受けたのを非常によく覚えておりますが、そのときも申し上げたことでございますけれども日米間では政治・軍事の対話がいろいろな形で、大臣レベル、事務レベル、いろいろ従来から行われておりますが、私どもといたしましては、これをさらにどのように強化していくかということは検討していきたいと思っておりますし、アメリカの問題意識も同様でございまして、そういうものを反映いたしまして、先生が当時引用されまして、今私が再度引用させていた だきましたこの報告の安全保障協議の過程を再活性化するという表現になっているものと推察している次第でございます。  ただ、これを踏まえるとすれば、具体的に何を考えているかという点に関しましては、いろいろ私どもは検討しておりますけれども、まだ現段階では結論を得るに至っておりませんで、一般論としては、まさにアメリカ報告書にあると同じような問題意識を私どもも持っておりまして、検討を今後進めていきたいと考えている次第でございます。
  106. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、私がなぜこの安保協を、余り活性化も——軍事面で活性化されても意味はありませんで、日米間の懸案事項について、懸案になっているものが安保協で決められたわけでしょう、沖縄の基地の返還について。これが十数年も懸案のまま置き去りにされている、言葉は的確でないかもしれませんが。そうしますと、当然安保協でもう一遍討議をし直すか、あるいは安保脇にかわる新しい機関をつくるとなると、そこで仕切り直しをしなければいかぬわけでしょう。その責務は政府にあると私は思いますよ。そういう意味大臣、もう時間がありませんから、この安保協の構成を改革するなら改革するで結構なんですが、少なくとも基地の整理、返還、縮小問題あるいは第二条の適用範囲の拡大等々、経済条項等を入れて、新しい安保体制下におけるすべての懸案事項についてはもう少し高度のレベルで、日米間で、日米安保条約締結三十年の節目ということで、すべての懸案事項についてやり直していただく必要があると私は思うのです。そのためにこういうことも新たにお考えになっているというなら、これは幾らか期待も持てるという感じがするわけですが、そこいらを含めてまとめて御見解を聞かせていただきたいと思う。これはもういいです、あなたは。どうぞ外務大臣
  107. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 申しわけございません、ちょっと一言だけ。  先生が御指摘の、沖縄の具体的な施設、区域の整理統合問題の関係では、先生指摘のように、まさに安保協の懸案事項を合同委員会で検討しておりますが、実は安保脇自体におきましても、これは合同委員会で鋭意検討して結論を出してほしいということが当時決められて発表になっているわけでございます。先生御承知のように、合同委員会は、地位協定の二十五条に基づきまして、まさに地位協定の実施問題について話し合う協議機関でございますので、この場で沖縄の施設、区域の整理統合問題も話をしているということでございますので、ぜひそういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  108. 上原康助

    ○上原委員 そういう次元の低い話になるから困るのです。それならなぜ十四、十五、十六で、何十回、何百回あれから合同委員会を開いている。そこでおろされてもできない問題、懸案になっているからできなかった理由を含めて、安保協を開くなら開いて、あるいは安保協を改革するなら改革して、高次元でもう一遍、日米間の沖縄の基地問題とかいろいろなことについて、安保繁栄論だけでなくて、その安保のもとで犠牲になっている懸案処理をどうするかということは政治のレベルで話し合わなければいかぬじゃないかというのが私の従来からの主張なのです。これに対して、大臣、どうぞお答えください。
  109. 中山太郎

    中山国務大臣 在日米軍の基地問題を含めて、日米安保の運用上よりよき制度ができるならば好ましいものと私は考えております。
  110. 上原康助

    ○上原委員 終わります。
  111. 柿澤弘治

    柿澤委員長 山田英介君。
  112. 山田英介

    ○山田委員 冒頭に二問ほどお伺いをしたいと思います。  その一つは、午前中の大臣の御答弁を伺っておりまして、井上委員の質問に答えられまして、ペルーで日系人として初めての大統領に当選したフジモリさん、特にペルーに対する支援はできる限り対応してまいりたいという大変積極的なお話がなされたわけでございます。もう一歩具体的に、伝えられるところによりますと、この六月、今月の下旬にもフジモリ次期大統領日本を訪ねられる、こういうことでございます。そういうことになれば、我が国との経済関係の強化を要請される可能性があると思います。  もう一つは、対外債務が二百億ドル、利払いもできないという大変な経済的な困難に直面しておる。加えて、麻薬問題、いろいろ大変な状況でございますが、金融支援などもあわせて要請をされるのではないか、私はそのように考えます。このことも含めて、できる限りの応援をしてあげたい、このように理解してよろしいのでしょうか。
  113. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 午前中、外務大臣から井上委員にお答え申し上げましたとおり、次期大統領でありますフジモリ氏が日本においでになるということになれば、日本政府としては心から歓迎をいたしたいと存じております。その折、フジモリ氏からどういう話があるかということは、もちろん我我はまだ予測ができないわけでございますけれども、次期大統領としてペルーの経済運営をどうするか、それに当たって日本からどういう援助が欲しいかというようなお話もあるのではないかと推察いたします。ペルーというのは伝統的な友好国でございますから、私どもとしてはできるだけの協力をいたしたいと思う次第でございます。  他方、今委員が御指摘の金融問題は、これは実は国際的な問題でございます。日本だけが抱えている問題ではなくて、いろいろな国際社会、すなわち先進国及び国際機関、IMF、世銀等が持っている債権でございますので、国際社会全体としてこれに対応していくすべを考える必要があると思いますので、フジモリ氏からそういうお話がございました折には、じっくりと話を聞いて、またそれによってペルーの解決が一日も早いようにお話し合いをしたいと思っております。
  114. 山田英介

    ○山田委員 確かに世銀からは融資停止を受けている、あるいは融資不適格国なんという烙印もまた押されている、そういう大変厳しい経済状況である。おっしゃるとおりだと思いますので、そういう国際的な枠組みの中で位置づけられてくるわけですから、ひとつその辺についての親切な、そしてまたきめ細かいアドバイスなり、またペルーの経済が本当に立ち直りあるいは再建されるための日本政府としての支援はぜひしっかりやってあげていただきたい、このように御要望申し上げます。  それから、いま一つでございますが、これも午前中の質疑応答で活発に論議されておりましたが、いよいよシェワルナゼ外相が九月の上旬に日本にお見えになる、本決まりとなりました。当然日ソ外相会談が開かれます。本格的な日ソ対話の幕あけというふうに位置づけができるわけでありますし、当然そこではアジア太平洋地域全体の安全保障の問題、北方領土問題、あるいはゴルバチョフ大統領訪日のための準備、こういう極めて重要なテーマが話し合われることになるのでありましょう。この九月上旬を控えられまして、こういう重要な日ソ外相会談に臨まれる大臣の御決意を御披瀝いただきたいと思います。  あわせまして、この北方領土問題解決へ向けてのソ連側の新しい提案がなされるその時期について伺いたいのでありますが、大統領訪日前にそれはなされるのか、あるいは大統領訪日のときに新しい提案がソ連側からなされると見ておられるのか、あるいは大統領日本にお見えになるのはきっと来年初めてということになるのかなと存じますけれども、まず大統領が御自分の目で日本の国というものをごらんになった後、訪日後に北方領土解決へ向けてのソ連側の新提案が出されると読んでおられるのか。これは国民的な関心を持っている問題でありますので、現在外務省が、あるいは大臣が予測をなされておられます見通しにつきまして、可能な限り明らかにしていただきたいと思います。
  115. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 一番最後の問題について私ども考えているところを申し上げたいと思います。  もちろん政府といたしましては、北方領土問題の解決のために、平和条約作業グループを通じまして鋭意ソ連側と話を続けてきているところでございます。もちろん望むらくは、ゴルバチョフ大統領訪日までにそれのめどをつけるということを事務的にできれば非常にいいということで努力は傾けておりますけれども、現在までのところソ連側の態度は極めてかたい、従来どおりの立場を維持しているという状況でございます。そういうことでございますと、私どもは、現実的に見ますれば、やはりゴルバチョフ大統領が訪日して、日本の現状を十分にごらんになって、日本に対する理解を深め、その過程において、この問題の重要性というものを認識されるということが一つの転機になるというのが現実的な見方かなとも思っておりますけれども、気持ちといたしましては、もちろんそれまでに具体的な前進があることを期し、そのために全力を挙げる方針でございます。
  116. 中山太郎

    中山国務大臣 まず、シェワルナゼ外務大臣をお迎えする、あるいはまたゴルバチョフ大統領をお迎えする日本政府政治姿勢といたしましては、心から来日を歓迎し、そして、この外相会談におきましても、日ソ双方がお互いに相手の立場を尊重しながら信頼される環境の中でいろいろな問題を協議していかなければならない、先方もこの日本の立場を十分理解していると私は認識をいたしております。  そういうことで、これから積極的に日ソの問題解決に努力をするよう私も努めてまいりたいと思いますし、先日ソロピョフ大使がシェワルナゼ外務大臣来日の日程等について私にメッセージを伝えに来られました際にも、シェワルナゼ外務大臣自身が建設的な会談にいたしたい、こういうふうなお話もございましたり私どもは、それに対して、先般も当委員会で質問がございましたけれども、衆議院の外務委員会において、日本政府はチェルノブイリ原子力発電所事故による被曝者に対する医療協力については積極的に協力するということを答弁をしておるということを改めて大使に申し上げたというようなこともつけ加えて申し上げておきたいと思います。
  117. 山田英介

    ○山田委員 それでは、まずカンボジア和平へ向けての東京会議の関連で何点かお尋ねをしたいと思っております。  この東京会議というのは、戦後の外交史上、地域紛争を我が国を舞台としてその仲裁といいますか解決へ向けて大きくかかわりを持った、そういう意味におきまして極めて画期的なものである、こういう位置づけが一つできると思います。と司時に、カンボジア和平へ向けてのこれが大きな転換点となった、こういう指摘も私はそのとおりだというふうに認識をするものでございます。  何が転換点なのかということでございますが、停戦合意がなされた、あるいは最高国民議会の設置等が合意されたということもさることながら、このカンボジア和平へ向けての枠組みが変わったというところに大きな転換点と位置づけされるポイントがあるのじゃないか。ポル・ポト派抜きの調印というのがどこまで実効性を持つのかという実効性に疑問を指摘をする向きもあるわけでございますけれども、それはまさに枠組みが大きく変わってきたという角度からもまた言えるわけでございまして、私は、この東京会議に至るまでの経緯などをずっと拝見をしておりまして、例えばジャカルタにおける非公式協議、またパリにおける国際会議、これらは四派対等で行われてきた。しかし、フン・セン首相、それからシアヌーク殿下、この二つの政府の代表者を東京に呼んで、要するに和平へ向けての合意づくりをしようとされた。私は、むしろ日本政府カンボジア和平へ向けての強いリーダーシップといいますか、そういう枠組みを意欲的に意識をなされてつくり上げてこられたようにも感じるわけでございますけれども、実際のところは局長、新しい枠組みはどういうことなのでございましょうか。
  118. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答え申し上げます。  確かに先生指摘のように、今回東京におきましては、一方においてシアヌーク殿下、他方においてフン・セン氏という両当事者を招いてのお話し合いの舞台を持たせていただいたということが、今枠組みのお話がございましたけれども、確かにそれが一つの大きな特色であったと思います。  それから、大臣も常々言っておられることでございますけれども、ただいま仰せのパリ会議とかあるいはジャカルタでの大きな会議がございましたけれども、やはりカンボジアの紛争のかぎを握りますのは、カンボジアの当事者の方々でございまして、この方々が、民族の、あるいは国家の将来を思って、この紛争を正式に解決するという腹構えといいますか、そこへの踏ん切りがまずは大切なわけでございまして、したがいまして、今回の東京会談では、余人を交えず、まさに当事者の方々が真剣にお話し合いの場を持たれたということにもう一つの大きな意味合いがあったと思います。
  119. 山田英介

    ○山田委員 共同コミュニケが出されまして、ポル・ポト派抜きの共同声明ということ、それはまさに大きな懸案事項を残したという側面と、ただいま指摘いたしましたとおり、新しいカンボジア和平へ向けての枠組みをつくり上げた、この両面の評価がなされて私はしかるべきだろうと思います。この共同コミュニケの中身を見てまいりますと、SNC、最高国民議会を七月末までに設置をして、その日から武力の行使を四派が自発的にやめよう、ここが午前中問題になっておりましたバンコクにおける話し合い等の中身と、東京に来てからの変更というふうに言われる場合もありますけれども、それは外務省政府としては一歩前進というふうに受けとめておられるということでございますが、まさにここが焦点の一つである。問題は、七月末までにSNCを設置できるかどうかということが、実はこの共同コミュニケを空文化させるかさせないかの一つの大きなポイントである、このように理解をいたします。  そうなると、どうなんでしょうか。七月にはヒューストン・サミットもあるし、外交日程、外務大臣も大変お忙しい。しかし、今回の東京会談を価値あらしめるためにも、あるいは和平へ向けての着実な第一歩を記す上からも、この七月末のSNC設置へ向けては大変な努力をしなければならない、このように思うわけでございます。ですから、今後の焦点は、まさにポル・ポト派の出方にかかっているわけであります。ポル・ポト派に対して影響力を行使できる、自制を強く促せる立場にあるのは中国しかない、こういうふうに言っても差し支えありません。したがって、共同コミュニケ、東京会談を和平へ向けて完結を期して、中国に対する働きかけをどのようになさっておるのか、あるいはしようとしているのか、簡潔にお答えをいただければと思います。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  120. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 確かに仰せのように、今後一つの大きなかぎを握るのは中国であろうと思います。午前中も御議論がございましたけれども会議の最中も、私どもは当地の中国大使館の幹部と密接な連絡をとりながら努力をしたつもりでございますし、今後、今回東京で得られました合意文書というものがカンボジア全派、すなわちクメール・ルージュの支持も得られるように、中国はもとよりタイ、あるいは私どもが直接クメール・ルージュに働きかけるということもございましょう、そういう努力を懸命にいたしたいと思っております。その中で中国の役割が大変重要であろうと思っております。
  121. 山田英介

    ○山田委員 大臣にお伺いしますが、極めて重要なことでございます。七月末にこのSNC、国民最高評議会を設置できるかどうか、これは大変な重要課題でございます。例えば中国外務大臣とこの件につきまして会談をするというようなことは視野に入っておられるんでしょうか。
  122. 中山太郎

    中山国務大臣 今の政治日程で中国外務大臣とこの件についてお話をするという予定はございません。
  123. 山田英介

    ○山田委員 今当面ないということでございますが、恐らくそれは一つには外交日程非常に混雑しているということにもよるのかと思います。今回の東京会談にかける外務省の、外務大臣の執念みたいなものを私は感じておりましたもので……。 じゃ、当面ないにしても、近い将来そういうことは検討されるんでしょうか。
  124. 中山太郎

    中山国務大臣 私ども政治日程がこれから相当タイトな日程になっておりますので、定かにどのような時点でというふうに申し上げることはできませんが、機会があればぜひそのような話し合いも必要ではないかと思っております。  なお、その会談とは直接関係はございませんけれども、ASEAN拡大外相会議というものが七月の末にはジャカルタで行われます。これにはかねてカンボジア和平に関連をしてまいりましたASEAN各国、またアメリカ、いろいろな国がこれに出席をいたしますし、あらゆる機会をとらえて、私どもはこのカンボジア東京会談の申し合わせが目的を達成できるように努力をするつもりでおります。
  125. 山田英介

    ○山田委員 関係当事国はたくさんあるわけでございます。しかし、その中でも指摘をいたしましたとおり、中国が要するに決定的に重要な存在である。その働きというものが、動きというものがクメール・ルージュに対する大きな影響力を及ぼすことになる。と同時に、もう一つは、この共同コミュニケにもありますように、パリ国際会談というものにつなげていく、再招集を求める。いま一つは、このパリ国際会議では国連の参加を得て外国軍隊の撤退、これはベトナムのことを言っています。それからいま一つは、外国からの軍事援助停止を監視、検証する措置を講ずる、こうなっておるわけでございます。したがいまして、一方は、武器供与を続けている中国に対して、それをぜひ停止をするように日本政府からの強力な働きかけ、ポル・ポトに対しては中国しか言えないということが言えます。その中国にはまた日本だからこそ言えるんだという、そういう関係もあるわけでございます。これが一方の措置です。もう一方は、ベトナムと中国との長い間の、何といいますか緊張関係、紛争状態というものがあるわけでございますが、やはり一方的に中国だけやめなさい、じゃ、ベトナムは相変わらずへン・サムリンを応援していますよということであれば、これは要するにうまくいくわけはありません。したがつて、ベトナムに対する我が国外交努力というものが同じようにまた大事になってくるわけであります。私は、日本東京会談を実現させた、一定の成果を上げることができたという一つの実績というものを踏み台にして、そして中国、ベトナムに対して本気でカンボジア和平を訴えていくということであれば、両国の姿勢を、何といいますか変えさせる大きなインパクトを日本政府日本は与えることができるはずだ、私はこう思うわけです。  したがいまして、特にこの両国に対する和平へ向けての交渉あるいはその説得、こういうものにかける外務大臣の御決意と、それから展望ですね、我が国が一生懸命やった場合に、絶対にその扉は開かないわけじゃないんだという、そういう展望をお持ちであれば、この際明らかにしていただきたいと思います。
  126. 中山太郎

    中山国務大臣 委員御指摘のように、カンボジアの和平におけるポル・ポトのいわゆる立場、この立場に対する影響力を最も行使する国は中華人民共和国であります。私は既に今年一月、鄒家華国務委員が日本を訪問されました際に、私から直接鄒家華委員に対して、このカンボジア和平に日本政府としてはこれから全力を挙げていくつもりであるけれども、ポル・ポトに対する援助をされている中国におかれては、日本のこのような和平に対する努力に対して理解をされるとともに、ポル・ポトに対して中国の影響力を行使してもらいたいということを私がじきじき申し上げたということを、この機会に明らかにしておきたいと思います。
  127. 山田英介

    ○山田委員 大臣、そういうふうに明らかにされたときに中国外務大臣はどういうふうに反応なされましたか。よろしかったらお知らせください。
  128. 中山太郎

    中山国務大臣 鄒家華国務委員は、私の話を一方的に聞いておられたということでありました。
  129. 山田英介

    ○山田委員 今の明らかにされましたこの話し合いというものは、御答弁のとおり本年の一月でございます。その後にまさにこの東京会談が持たれたわけです。日本の口だけではなくて実際にやってみせたというこの実績を踏まえて、また先ほどの指摘に戻りますけれども、私はASEAN諸国を初め、大臣おっしゃったような諸国との話し合い、あるいはその関係における和平へ向けての積極的なリーダーシップをとるということと同時に、一月から既に半年経過しようとしております。東京会談は行われました。こういう新しい局面を踏まえて、私はできるだけ早い機会に中国外務大臣、国務委員とおっしゃいましたでしょうか、外務大臣にこの点については改めて協力を要請するということが必要だと思っております。もう一度恐縮でございますが、大臣、一言御答弁いただきたいと思います。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  130. 中山太郎

    中山国務大臣 委員の御趣旨を十分踏まえて、これから日本外交努力をさせていただきたいと考えております。
  131. 山田英介

    ○山田委員 カンボジア和平についての問題はまだいろいろお尋ねしたり申し上げたいこともあるわけでございますが、先に進ませていただきます。  国際文化交流というような観点からひとつ外務省また外務大臣にぜひお願いしたいことがございます。それは東ベルリンに森鴎外記念館というのがございまして、日独の友好交流のシンボル的な存在である。しかし、大きな歴史の激動といいますか大変革を遂げつつあるそういう中にあって、すなわち両独統一という大きな流れの中にあって、この森鴎外記念館が逆にその歴史の波に飲み込まれて、そして閉館をされるのではないかという、極めてその存続が危ぶまれているという状況があるわけでございます。この森鴎外記念館というのは、我が国の重要な文化遺産としても、また日独交流のシンボリスティックな存在として全力で保存に取り組んでいただきたい、また政府として取り組むべきである、私はこのように思うわけでございますが、基本的な考え方をお示しをいただきたいと思います。
  132. 中山太郎

    中山国務大臣 この記念館の保存につきましては、政府としては真剣に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  133. 山田英介

    ○山田委員 真剣に取り組みたいということであれば、私は、この森鶴外記念館というものが、例えば平たく言って、その土地がどちらの所有のものなのか、建物の所有関係ほどうなっておるのか、あるいはどのくらいの経費をかけて、今日まで約六年間でございますが、東ドイツ政府のお世話になってきたのか、日本がこれから全力を挙げて保存すべく取り組みたいという御決意を今大臣は表明いただきましたけれども、実際問題として、そういう事実関係というものをまず把握しなければならないはずでございまして、在東ドイツ大使館のみに任せておくというだけではなくて、やはり外務省として調査団を派遣をしてよく調べて、そして、それをベースにして東ドイツ政府あるいは両ドイツ政府との協議あるいはまたこの保全、運営等の方法についてどういう方法がとれるのかどうかということについての詰めもしなければなりません。伺うところによりますと、本年末まではフンボルト大学、この附属機関として森鴎外記念館があるわけでございますが、本年の秋ごろまでは予算措置してあるけれども、その先は全く打ち切られているという、こういう危機的な状況でございます。時間は余りございません。したがいまして、調査団など派遣をなさるべきだと存じますけれども、この点についてはどうなんでしょうか。
  134. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、本件記念館は、東ドイツのフンボルト大学日本語科がずっと今まで経費負担等、その運営に責任を持ってきていただいているものでございますが、私どもといたしましても、この記念館は我が国の誇る文豪の遺品等を陳列しているということで、その記念のための記念館として極めて貴重な日独間の文化交流の中心になり得るものであると考えております。そういうことで、先生指摘のように、とりあえずいろいろな事情を詳細に把握する必要がございますので、機会があれば外務省員を派遣いたしまして調査を行うことを考えております。その調査によりまして詳細を把握した上で、両独政府に、場合によっては我が方の関心を伝え、今後これをどのようにしていくかということについて協議をし、また政府として適当な措置を考えていくということにしたい、そういうふうに考えております。
  135. 山田英介

    ○山田委員 今都甲局長は機会があれば調査団を出したい、機会があればというのは二年とか三年とか、まだ期間的に余裕があれば機会があればという御答弁でも私は結構なんでございますが、ともかくこの秋にも予算が打ち切られるということは決まっているわけですから、機会があれば出したいというのはちょっと私は弱いんじゃないかなと。大臣は冒頭、全力で保全へ向けて取り組みたいとおっしゃっているんですから、もうちょっとそれは答弁の仕方があるんじゃないでしょうか。
  136. 中山太郎

    中山国務大臣 局長答弁をさせていただきましたが、できる限り速やかに調査をさせていただきます。
  137. 山田英介

    ○山田委員 わかりました。我が国の国際協力政府方針を見ましても、平和への貢献、あるいはまたODAの活用、国際文化交流の推進、これは我が国政府の国際協力についての基本姿勢でございますので、その重要な一環に位置づけられる森鴎外記念館の保全という問題でございますので、ぜひひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  それでは、最後の質問になるかと思いますが、米ソ首脳会談でいろいろな大事な問題が話し合われました。その中で注目をいたしますことの一つに、初めて米ソ首脳会談地域問題、地域紛争についても取り上げられた。その中の一つで、エチオピアという国がございます。四百万人が飢餓線上にある。三十年にも及ぶ内戦の継続、そういう中で大変な、何というのでしょうか、もう絶望的な、そういう姿を呈しておると言っても言い過ぎではありません。それを米ソ協力をしてエチオピアを援助しようという共同声明を出しております。それによりますと、アメリカが食糧を出す、ソビエトが航空機を出してこれを運び込む、輸送する、こういう米ソ協力というものが確認をされたわけでございますが、大臣は午前中の質疑応答の中で、どのような外交を基本的に目指していかれるのかということにつきまして、信頼される外交ということをおっしゃられました。それは平和への貢献、あるいは地球環境に対する協力、あるいはまた援助、恐らくそこには人道分野のことも当然念頭に置かれていることと私は存じます。  ということになりますと、米ソ協力してエチオピアを助けよう、援助しようという状況にありますが、そういう中にありまして、我が国も人道上の見地から、一つには食糧援助など応分の協力というものを今後一層行わなければならないのではないか、かように思うわけでございます。具体的に伺いますが、アメリカから日本にもエチオピア援助のための協力を既に要請されているのか、あるいはされているされていないにかかわらず、日本政府としては、この四百万人飢餓線上という悲劇的な状況にあるエチオピアに対しまして、なお一層の応援をする意思があるのかどうか、これにつきましてお伺いをいたしたいと思います。
  138. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 エチオピアの北部におきまして内戦が続いておりまして、また同じところで干ばつによる飢餓の問題が起こっていることにつきましては、私どもも人道的な観点、またエチオピアを含みますいわゆるアフリカの角の平和と安定の問題ということで、かねてから強い関心を持ち、懸念を持っておるところでございます。  先生今御質問の援助の問題でございますが、これにつきましては、特に米国からその具体的な要請があったというわけではございませんけれども、私ども自体といたしまして種々検討いたしまして、ことしの一月から二月にかけまして、総額合わせますと六億七千万円程度になりますが、食糧援助、それからその食糧の実際の輸送、配付等に要する費用の援助を行っております。今後とも現地の情勢、それから国際的ないろいろな動きを見定めながら、何ができるかを引き続き検討してまいりたいと思っております。
  139. 山田英介

    ○山田委員 このエチオピア情勢というのは御案内のとおりでございますが、ソ連東欧がメンギスツ政権に対するてこ入れを打ち切りました。それは政治的解決の方法を支持したからでございます。その背景はいろいろ御案内のとおりでございます。ソ連東欧がメンギスツ政権から手を引いた、かわりにイスラエルと非常に密接な関係をとりまして、そして、この政権をイスラエルが武器援助等を含めて要するに支えておるという側面が一方にある。このメンギスツ政権に対抗する反政府ゲリラ、これは中近東におけるイスラエル、アラブの対決、それをまさに代理戦争という形で持ち込んできたように、イスラエルがそういうことでメンギスツを支援するのであれば、我々は反政府ゲリラに武器を援助強化しようじゃないか、こういうような展開になってきているところでございます。  カンボジア和平へ向けての東京会談にひっかけて言うわけじゃありませんけれども一つは、中東和平に向けて直接日本が乗り出したらどうかということに行く前に、この悲劇的なエチオピアの政治構造あるいは権力闘争の姿というものを分析されたときに、このイスラエルとそれからアラブ諸国がお互いにやめましょうよというような、両国といいますか、両地域ともに日本は良好な外交関係を持っているわけでございますし、また、そういう日本にぜひ和平への貢献、平和への貢献を期待をするという声も強いわけでありますので、やはりこの辺も平和への貢献、国際緊張緩和、地域紛争解消への積極的な貢献ということは、外務省の栗山論文にも明確に記されているところでございますので、ぜひひとつしっかりとお取り組みをいただきたい。これが一点です。  最後になりますけれども、イスラエル、アラブと出ましたけれども、実は先日私はPLOの大使とジョルダン、スーダン、アラブ連盟の合わせて四人の大使と懇談する機会がございました。それで、五月二十日にテルアビブ近郊で元イスラエル兵士が小銃を乱射しまして、数人が死亡、数十人が負傷というこの事件をきっかけにして、要するに抗議デモがパレスチナ人の間で大きく盛り上がってきた。それに対して、今度はイスラエルの警察や軍が銃口を向けて、そして現実に多数の死傷者が一日一日膨れ上がってきているというのが実態でございます。また、この三年ほどの間に四万とも五万人とも言われる膨大なパレスチナの人々がこのイスラエルの銃口によって傷ついているという、これもまた大変悲劇的な状況があるわけでございます。この四人の大使の皆さんが口々におっしゃるには、このイスラエルの銃口によって傷ついたパレスチナ人をどうぞひとつ日本の病院で何人でもいいから治療してもらいたい、そのことは政治的、そしてまた人道的に非常に大きな意味があるものと思います、実はこれは日本外務省にも御要請申し上げたところであります、こういうことでお話がございました。  一点は申し上げました。最後の質問はこの点でございます。皆さんは日本において二人でも三人でもというふうにおっしゃっておられましたけれども、ぜひこれも、何も要請がないのにこっちからやってあげましょうかという話じゃありません、やりなさいという話じゃありません。石油とか資源を大きく依存している大事なアラブの国々でございます。我が国の良好な外交関係をもってすれば、イスラエルと交渉することもできるでしょう。そういうことも踏まえて、要請されているわけでございますので、ひとつ日本の病院における治療についてぜひ前向きにできるだけこたえてあげていただきたいな、このように思うわけでございます。  この二点をお伺いいたしまして、質問を終わらせていただきます。
  140. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 ただいま先生から、一つはエチオピアの情勢について、もう一つは占領地パレスチナ人の負傷者の問題について御質問がございました。  最初の御質問につきましては、実はエチオピアの現在の問題と申しますのは、エチオピア内部におきます民族間の対立の要素が非常に強い内紛でございます。確かにエチオピアに相当数のュダヤ系の人がおりますので、そういう意味でイスラエルはエチオピアに対して非常に関心を持っておりますけれども、私どもの見ますところでは、イスラエルが全面的にエチオピア政府を援助し、それからアラブ側が反乱側を援助しているというような形では必ずしもないように思われます。ただ、これは引き続き私どもも関心をもってフォローしてまいりたいと思います。  それから、占領地パレスチナ人の問題でございますが、東西関係が全体として緩和いたします中で、中東についてはむしろ若干緊張の高まる情勢が見られることは、私どもとしても実は非常に憂慮しております。今回の事件もそういう緊張状態背景にして発生したものというふうに考えておりますし、私どもも安全保障理事会その他の場で、これに対する遺憾の意の表明あるいはイスラエルに対する自制を求める発言等をいたしております。  負傷者の問題につきましては、実は私ども従来から国連のUNRWAあるいはWHOを通じまして現地での医療機関についていろいろ援助をいたしております。例えば負傷者の物療施設の拡充でございますとか救急車の提供、移動式の診療車の提供、その他相当数の金額の援助をやっておりまして、これはまさにこういう負傷者あるいは病人のための援助でございます。  日本に治療に連れてきてはどうかというお話でございますが、私ども先生のところへ伺ったそのアラブの大使の方々といろいろお話をしておりますうちに、一つのサゼスチョンとして確かにそういうお話がございました。ただ、確かにこれは人道的に非常に意味のあることであろうとは思いますけれども、実は実施をするとなりますと、いろいろな意味で技術的になかなか難しいところがございます。したがいまして、我々といたしましては、その問題、これから引き続きむしろ現地での医療援助、いろいろなものを全部含めまして、できるだけのことをしていくように、さらに検討を続けていきたいというふうに思っておるわけでございます。
  141. 山田英介

    ○山田委員 終わります。
  142. 柿澤弘治

    柿澤委員長 古堅実吉君。
  143. 古堅実吉

    ○古堅委員 わずか十五分の時間ですから、御答弁は質問にずばりお答えいただきたいと要望申し上げます。  日米安保条約がこの六月二十三日で三十周年を迎えます。政府はこれまで、ソ連脅威があるから安保が必要だ、このように繰り返し述べてまいりました。新しい情勢のもとで、その脅威はなくなったんではないですか。最初にお答えください。
  144. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連脅威がなくなったかどうかというお尋ねでございます。私どもは、現在のソ連変化というものは、まだ不確定、不安定、不透明、こういう状況で、今後の推移を十分見きわめなければならない、このように考えております。
  145. 古堅実吉

    ○古堅委員 脅威なるものは外部からの武力による侵略、そして防衛はそれに必要だということで安保、そういう説明をしてまいりました。武力による侵略の脅威ソ連の側からまだあるという御理解ですか。
  146. 中山太郎

    中山国務大臣 北方領土におけるソ連軍の展開、またアジア太平洋地域におけるソ連の海軍戦力の増強等を見ますと、一部艦艇数は減っておりますけれども、戦闘能力そのもので考えますと、まだ十分脅威感じる力を持っている。意図は別として、力としては脅威を与える力をまだ現存していると認識をいたしております。
  147. 古堅実吉

    ○古堅委員 これだけの情勢変化があっても、日米安保条約とのかかわりにおいて、ソビエトからの侵略ということに関する限りは何ら変化がないという対処をこれからもされようということですか。
  148. 中山太郎

    中山国務大臣 国家の安全保障の面から申しますと、私ども政府としては、国の安全というものは水も漏らさないような考え方で絶えず考えておかなければならない。そういう意味で、ソ連は大きく変化をしつつあると私は認識をいたしておりますけれども、このソ連首脳部と我々の国と安全保障条約を結んでいるアメリカ政府首脳部との間に相当突っ込んだ話し合いが現在行われ、双方がお互いに信頼醸成をしつつ、巨大な核兵器を含めた戦力というものを削減する話し合いが緒についたという段階でございます。私は、外交をお預かりする立場から考えますと、この実態を十分認識した上で、日本外交方針に新たなる検討を加えるなら加える、あるいは加えない、そういう判断はこれからしばらくの間、この周辺の国際情勢を十分見きわめ、さらに安全保障の条約締結しているアメリカとの考え方も十分すり合わせをしながら日本の周辺に対する配慮というものを考えていかなければならない、このように考えております。
  149. 古堅実吉

    ○古堅委員 ブッシュ大統領が一九九〇年三月、アメリカの国家安全保障戦略という方針を発表いたしました。その中に、我々は、我々の軍事力を行使する必要が起きる可能性にはソ連は含まれず、第三世界においてであろうし、こう述べています。安保の当事国であるアメリカのそういう考えとは日本は見解を異にするということですか。
  150. 中山太郎

    中山国務大臣 いわゆる米ソの対立の背景というものと日本ソ連との関係というものは基本的に違った立場にあるという認識を私は持っておりまして、アメリカにとってソ連脅威でなくなったが、それなら日本にとってもそれは脅威でなくなったかというと、それはまた別の立場で物を考えておらなければならないというふうに私は考えております。
  151. 古堅実吉

    ○古堅委員 アメリカのソビエトとの関係における問題は、安保条約を結んでいる日本とのかかわりも考えた上での見解であろうと考えますが、アメリカの今言ったブッシュ見解なるものは、日本は除外した見解だという御理解ですか。
  152. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 アメリカソ連脅威をどう見ているかという点でございますけれども、この一月三十一日に出ました九一年の国防報告におきましても、アメリカ見方がはっきり出ておりまして、そこでは、ソ連の戦力は、米国及びその同盟国にとり依然最も深刻な軍事的脅威である、こういうふうに明確に書いてございます。  それから、この四月十九日に出ました「アジア太平洋地域戦略的枠組み」の中におきましても、ソ連軍事力に対しまして、こういう表現がございます。ソ連は依然としてアジアにおける主要な脅威であるが、一九七〇年、八〇年代のような重大なものとはもはや認識されていない、しかしながら、日本と対峙するソ連の極東軍管区では、ソ連の能力は依然防衛のための能力をはるかに超えていると思われる、こういう表現がございまして、基本的にアメリカは、アメリカ自身及び同盟国にとってソ連は引き続き脅威であると見ております。
  153. 古堅実吉

    ○古堅委員 先ほど引用いたしましたアメリカの国家安全保障戦略の中にも、今後の十年間にソ連がどのような進路をとろうと、ソ連は引き続き恐るべき軍事大国であり続けるであろう、そういう見解の上で、我々の軍事力を行使する必要が起きる可能性にはソ連は含まれずという見解があるのですよ。ソビエトはなお我が国にとって武力をもって侵略してくる外国ということでの理解に立っておるのですか。
  154. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生が今引用しておられます国家安全保障戦略の全文をちょっと私今手元に持っておりませんけれども、確かに先生指摘のように、ソ連ほどのような変化をたどろうとも、今後十年間強大な軍事大国であり続けるだろうという表現もございますし、ソ連が軍備を量的に削減しても、質的に向上させる努力を行っている事実は無視できないとか、それから米ソ関係改善、軍備管理合意のいかんにかかわらず、アメリカに対する戦略核戦争をしかけることのできるソ連の物理的能力は存在ということで、ソ連の軍事的能力に関しては、相当注意深い表現があることを御指摘させていただきたいと思います。
  155. 古堅実吉

    ○古堅委員 日米安保条約考えるについて言い続けてきたことは、外部からの武力による侵略、その攻撃があるから防衛のために必要だ、こういうことです。ソビエトを相手にしてそういう説明がされてきました。引き続きソビエトが侵略をもって日本に構えてくるという理解に立たない限り、日米安保条約が必要だという根拠はなくなったと言わざるを得ないと思うのです。安保が必要だというからには、ソビエトとの関係においてどうなのか、そこをはっきりここでも説明をいただかなければいけません。もう一度お答えください。
  156. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 私ども安保条約は、日本の平和と安全の維持、さらには極東の平和と安全に寄与するということが基本目的と考えておりますが、同時にアジア太平洋におきます平和と安定の基本的な枠組みでもあると考えております。  最初の我が国の平和と安全の維持に関連いたしましては、これは外務大臣が繰り返しいろいろ国会の場でも申し上げておりますけれどもアジア太平洋地域、特に我が国の周辺地域においては引き続き不安定な要因が存在しているということでございまして、そういう不安定な要因に対応するために、安保条約に基づきますアメリカの抑止力が日本にとって平和と安定の維持のために必要であるということでございます。  その関連でソ連のことを引き続き御指摘でございますけれども、先ほど来アメリカはどう見ているかということは御披露しました。アメリカは、基本的にソ連の極東における軍事力は、その防衛の必要性をはるかに超えているものを持っている、したがってアメリカ及び同盟国に対し引き続き脅威であり続けるだろうと見ておるわけですが、私どもソ連軍事力の三分の一から四分の一がアジア太平洋地域に存在し、その一部が北方領土にも存在しているということは、日本にとりまして引き続き潜在的な脅威になっているという状況は変わりがない、こう認識しております。
  157. 古堅実吉

    ○古堅委員 今言われたアジア周辺地域の国々というのはどこを指していますか。具体的に説明してください。
  158. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 私が申し上げましたのは、我が国の周辺地域ということで一般論で申し上げまして、特にその関連でソ連のことについては具体的に申し上げたつもりでございます。
  159. 古堅実吉

    ○古堅委員 ソビエトとの関係のほかに、アジアの周辺地域ということも安保を必要としている理由づけだという意味で説明をしておられるのですか。
  160. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先ほど私申し上げましたように、安保条約の目的は、我が国の平和と安全の維持、あわせまして極東の平和と安全に寄与するという点がございますので、その関連で先ほど来申し上げているように、我が国の周辺地域についても言及をさせていただいた次第でございます。
  161. 古堅実吉

    ○古堅委員 これまでいろいろと今の関連について言われているものでは、カンボジアとか朝鮮半島とか中国、そこらにおける地域紛争に関して言われてきています。そのように受けとめてよろしいですか。
  162. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生に申し上げたいと思いますのは、一般論としてアジア太平洋地域において不安定な要因が存在するというコンテクストにおきましては、先生が御指摘のようなアジア太平洋におけるいろいろな不安定要因がございますけれども、私は先ほどまさに安保条約との関連において申し上げたのでございまして、具体的には今申し上げておりませんけれども安保条約の関連におきまして我が国の周辺地域ということを申し上げた次第でございます。
  163. 古堅実吉

    ○古堅委員 アジアの周辺地域、例えばカンボジアとか朝鮮とか中国、あるいはフィリピンまで含めてよろしいでしょう、それらの国々が我が国に武力をもって侵略してくるということのかかわりが幾らかでも考えられておるのですか。
  164. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先ほど来の御答弁の繰り返しで申しわけございませんけれども、私が安保条約の目的の関係で議論している限りにおきましては、ここで申し上げておりますのは、まさに非常に一般的な意味での周辺地域と御理解いただく、その関連で具体的に先ほどソ連について申し上げた次第でございます。
  165. 古堅実吉

    ○古堅委員 ずばりお答えをくださいと最初に注文をつけてもなかなか質問にまともに答えてくれない。いたずらに時間ばかりとって、もう十五分なくなった。こういう新しい情勢のもとで、外部の侵略から日本を防衛するためという主張をしてきた日米安保条約、その必要論の根拠がこの情勢のもとではなくなったということにかかわらず、安保が必要だ、堅持しなくちゃいかぬということを前提にして、その理由づけのためにあれを言いこれを言い、質問にもまともに答えない形で安保は必要だ必要だと言うだけではありませんか。もはや安保を必要とするというこれまで三十年にわたって言い続けてきた根拠がなくなった以上、安保条約十条もあります。安保廃棄のために政府として今具体的に検討を進めるべきではありませんか。大臣の御答弁を求めます。
  166. 中山太郎

    中山国務大臣 政府といたしましては、日米安保条約を堅持してまいる考えでございます。
  167. 古堅実吉

    ○古堅委員 最後に、そういうまともな答えもできないような内容を前提にして、こういう安保条約を三十年続けてきただけじゃなしに、これからも続けようという態度はまことに許せません。この安保条約について、世界情勢に見合うような形で日本が積極的にアジアの、世界の平和に貢献できる、そういう立場から安保条約をなくすることが一番だ、そういう立場を踏まえて検討をするよう強く要求して、終わります。
  168. 柿澤弘治

    柿澤委員長 和田一仁君。
  169. 和田一仁

    ○和田(一)委員 きょうは国際情勢一般についての質疑が許されましたので、非常に時間が短いので箇条書きみたいにお尋ねしますが、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  日本外務大臣は近来非常に多忙になりました。中山大臣も、寸暇を惜しんで、それこそ東奔西走、文字どおり大変な活躍をされておりまして、日本の国際的な立場の確率のために大変お骨折りをいただいておりますことを、まず御苦労さまであると敬意を表する次第でございます。  ところで、大臣はまたこの忙しい中で、六月の十五日、きょうは十三日ですからあさってから訪米というふうに伺っております。ベーカー国務長官と会談される予定と聞いておりますけれども、主としてどういう問題についての意見交換がなされようとしているのかお尋ねしたいと思います。  日米構造協議もこの六月二十五日からですか、いよいよ政府間の協議が大詰めに入ってきたと思います。さらにまた、先般は米ソ首脳会談がございましたし、続いて韓ソ首脳会談というふうに目まぐるしく今回際情勢が分刻みというような格好で動きつつあるわけでございますけれども、こういった状態を踏まえて、さらに七月にはサミットが予定をされておるわけでございます。そういう意味で、刻々の変化に対応しながら日米間の意思を疎通しておくということは非常に大事なことであろうと思うのですが、今申し上げたようないろいろな動きの中で、今度の訪米、ベーカー国務長官との外相会談の主たる目的をどのように考え、どのようなものを持っていかれるのか、お聞きしたいと思います。
  170. 中山太郎

    中山国務大臣 国会のお許しを得られたならば、十五日にサンフランシスコにおいて日米外相会談を行いますけれども、その内容といたしまして、現在申し上げられる範囲でお許しをいただきたいと思いますが、二国間関係日米関係のいろいろな問題をいろいろと協議をすることはもちろんでございますが、そのほかに、最近行われました米ソ首脳会談における両国の話し合い、また韓ソ首脳会談がサンフランシスコで行われましたが、これに関しても米側の考え方あるいは朝鮮民主主義人民共和国が米国との間に最近米兵の遺骨の引き渡しを行い、北朝鮮と米国との対話がある程度できております。私どもは、朝鮮半島の安定をいかにして確保するかということに日本政府としては重大な関心を持っておりますので、米朝間のいろいろな協議の経過等についても話を聞きたいとも思っておりますし、私の立場では、日本としての立場では、先般行われましたカンボジア東京和平の会談あるいは中国を国際社会から孤立さすべきでないという日本側の意向等も踏まえて、いろいろと国際情勢全般にわたって協議をしてまいりたい、このように考えております。
  171. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ちょっと箇条書き的な質問になって申しわけないのですけれども、幾つか今大臣がおっしゃられた非常に大事な問題を踏まえながら国務長官とのお話があると思いますが、そういったお話の中で、基本的に米ソ会談を通じて発表されておりますような軍縮、米ソ間の冷戦終えんに近い話し合いとかあるいは新しい通商の話し合い、こういう合意ができてまいりましたけれども、これが世界政治の大きな流れの中でどんなような位置づけにこれからなっていくのか。ヤルタからマルタへと言われるように、米ソ会談が開かれるたびに新しい動きが出てまいりまして、それが東欧中心としてどんどん大きな変化になってまいっておりますね。この動き冷戦と言われていたものを、終えんの始まりという表現もありますけれども、そういう認識のもとにいろいろと極東の問題もお考えになろうと思うのですね、アジアの問題も。  そこで、先ほど来の御質問にもいろいろありましたし、また予算委員会等でも御質問ありましたけれども、こういう東欧の、今までの東西対立が雪解けになってきて、冷戦終えんの始まりであるというのと同じように、アジアにおいてもそういう構造になっていくというふうに見られておるのかどうか。総理大臣は手のひらを返したような変化はない、こういう答弁をされておりますけれども大臣自身は、いや、アジアにおいてもそういう長い意味においての変化が出てくる年だぞ、こういう見解があったように思うのですが、いかがですか。
  172. 中山太郎

    中山国務大臣 アジアにおきましては、アジアで最初に社会主義国となったモンゴル、これは一九二四年に社会化が進んだわけでありますが、この国がいわゆる民主化を進め、西側に接近をし、我が国にも先般来政府の主要な人物が何人かお見えでございますし、日本からも経済協力のための調査団を派遣している。モンゴルがまず変化を起こしていると思います。  続いて、私は、その前に、昨年の天安門事件というものが中国における一つの大きな民主化動きであったろうというふうに思っておりますが、これは中国の内政問題でございますから、あえて日本としてはコメントするわけではございませんが、これに最近のミャンマーにおける反政府の野党の圧倒的な勝利、そういう問題、またラオスにおける新しい動き、またさらに韓ソ首脳会談が行われたというようなこと等を考えてまいりますと、いろいろとアジア地域にも大きな変化が起こる可能性が出始めている。そういう認識に立って、私は、アジアではヨーロッパと地政的にも地理学的にも歴史的にもあるいは宗教的にも民族的にも基本的な違いがございますので、また、軍事条約にいたしましても、二国間軍事条約が非常に多くこの地域にございまして、ヨーロッパのような大きな変化が一挙に起こるということではございませんけれども、それぞれ地域の特性の中で変化が起こりつつあるという認識を持っております。
  173. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ヨーロッパのみならずアジアにおいても新しい台頭がだんだんとはっきり出てきている、そういう認識だと思います。現にそうであるわけですが。  そういう中で、先般のワルシャワパクトの会議で非常に新しい動きが出てきたと思います。今までの軍事的な性格を脱皮して、新しい国家連合というようなものにこれをしていこうというようなことで合意ができた、このことは私は非常に大きい意味があると思うのですね。これは事実上ワルシャワパクトの性格が変化してきている。これはNATOにも当然影響を与えているし、そのことを踏まえて、新欧州秩序といいますか、そういうものの動きも出てきていると思うのですね。ECの統合を目前にしまして、新しいヨーロッパの秩序にこれが育っていこうとしているかどうか。この辺がアジア変化を見る上でも非常に大きなポイントではないかと思うのですが、大臣はその辺をどんなふうに御理解になっているか、また各国を飛び回っておられる中で、この辺の感触はどんなふうなものをお持ちかをお聞かせいただければありがたいと思います。
  174. 中山太郎

    中山国務大臣 先般のワルシャワ条約機構の会議等におきまして、従来とは異なった大きな変化が起こってきたことは御指摘のとおりでございます。そしてワルシャワ条約機構そのものが軍事的な機構から政治機構への流れが始まってきた。こういう中で、これからNATOとワルシャワ条約機構との双方の首脳間の話し合いというものが起こってまいるでございましょう。ECの統合を初めEFTAとの経済的なリンケージができ、さらに東欧自由化が進むという中で、私は大きなヨーロッパの統合へ向かっての動きはとめがたいものがあるというふうに認識をいたしております。
  175. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そういう方向で動くことが望ましいように思いますが、同時に、今世界動き一つの中には民族的な自決の動きが非常に強いということがございます。これは、ソ連国内におけるいろいろな動きもそうでございますけれども、それ以外のところにおいても、この民族主義の台頭といいますか、民族自決の動きというのは非常にあるわけでございますけれども、これが新秩序に対して新しい紛争の種になりはしないか、そういった懸念も若干あるわけですが、そういう点はいかがでしょうか。
  176. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連におきます民族運動が活発化していることも委員御指摘のとおりでございますが、いろいろな地域民族運動がこれから起こる可能性は十分あり得るという認識を私は持っております。
  177. 和田一仁

    ○和田(一)委員 いろいろお聞きしたいのですが、時間がありませんので、先ほど日本で会談が持たれたカンボジアの問題ですけれども、確かに戦後の日本外交史をひもといても、こういう地域紛争について日本みずからがその紛争解決の方向に向かって汗をかいたというようなことはなかったように思います。大臣もそういうふうにおっしゃっておりました。やっただけでも非常に日本外交評価はあると思うのですが、さらに、一応できた合意が本当に効果あるものとなっていくためにはどうしたらいいのか。七月のサミットの後、またこの問題に関して安保理事国がパリですか会議を持たれますけれども、そこに向かって、この東京で行われた合意を効果的に実行していくために、日本はこれからどういう努力をしたらいいのか、それを踏まえてまたさらに新しい東京会談というようなものも考えておられるかどうか、あわせて御見解を伺いたいと思います。
  178. 中山太郎

    中山国務大臣 近く開かれます安保理事会の五大理事国によっての会議にこれがつながっていくように私ども外交努力をしなければならないと思っております。そういう意味で、私は率直に申し上げて、今までこのカンボジア和平のためにいろいろな国の人たちが苦労をしてきておりまして、その人たちともお互いにこの問題の解決に話し合いながら協力し合うということがこれから日本としてもでき得る立場になったのではないか。そういう意味で、この五大理事国による会議にこれがつながり、さらにパリにおけるカンボジア和平の国際会議が再開される道が開ければ、私は何よりのものであると考えております。
  179. 和田一仁

    ○和田(一)委員 時間が来ましたので、これで終わりたいと思いますが、一つだけ最後に、ペルーでフジモリ大統領当選ということになりまして、今月中にも日本へ来たいというような談話をテレビで拝見しました。大臣にもお会いになる機会があるかと思うのですが、この新大統領出現は間もないのですが、就任されて、対ペルー外交に何らかの、こういった大統領出現によって変わることがございますかどうか、一言だけお聞かせいただきたいと思います。
  180. 中山太郎

    中山国務大臣 基本的に考え方をまず申し上げておかなければならないと思います。  それは、このフジモリ大統領候補が当選されたことにまず政府としては心からお祝いを申し上げる。民主的に選ばれた新しい大統領に日系の方が当選されたということは、同じ日本人の血を引く我々にとっては国民全部がうれしいという気持ちを持っているだろうと思います。しかし、私どもはいろいろな国との外交関係を持っている中で、ペルーが抱えている債務の問題あるいはこれからの経済の復興の問題、民生の安定の問題につきまして、このフジモリ新大統領が登場されるという機会に、日本に対するいろいろな協力を要請された場合には、それは日本としては前向きに検討していかなければならない、こういう考え方を基本に持っております。
  181. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ありがとうございました。終わります。      ────◇─────
  182. 柿澤弘治

    柿澤委員長 次に、千九百八十九年七月三日に国際コーヒー理事会決議によって承認された千九百八十三年の国際コーヒー協定有効期間の延長の受諾について承認を求めるの件及び千九百八十九年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  これより両件について政府より提案理由の説明を聴取いたします。中山外務大臣。     ─────────────  千九百八十九年七月三日に国際コーヒー理事会決議によって承認された千九百八十三年の国際コーヒー協定有効期間の延長の受諾について承認を求めるの件  千九百八十九年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  183. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま議題となりました千九百八十九年七月三日に国際コーヒー理事会決議によって承認された千九百八十三年の国際コーヒー協定有効期間の延長の受諾について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  昭和五十八年に作成されました千九百八十三年の国際コーヒー協定は、国際市場におけるコーヒーの著しい価格の変動を防止し、生産国の輸出収入の安定と消費国への安定した供給とを確保することを目的としてコーヒーの輸出割り当ての実施及び停止の操作を行うこと等について規定しておりますが、同協定は昨年九月三十日に終了することとなっておりましたので、昨年七月にロンドンで開催されました第五十三回国際コーヒー理事会において、その有効期間を二年間延長することが決議されました。この有効期間の延長は、コーヒーに関する国際協力を継続するとともに、国際コーヒー理事会における新たな協定の交渉のためは時間的余裕を与えるためのものであります。  我が国は、昨年九月二十九日に、有効期間の延長がされた同協定を正式に受諾するまでの間暫定的に適用する旨の通告を行っておりますが、我が国がこの有効期間の延長を受諾することにより引き続きコーヒーに関する国際協力に積極的に貢献することは、有意義であると考えられます。  よって、ここに、この有効期間の延長の受諾について御承認を求める次第であります。  次に、千九百八十九年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件につきまして御説明いたします。  この協定は、現行の千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定を引き継ぐものとして、昨年十一月三日にジュネーヴで開催されたジュート及びジュート製品に関する国際連合会議で採択されたものであります。我が国は、本年三月二十七日にこの協定に署名いたしました。  この協定は、ジュート及びジュート製品の国際貿易の拡大及び多様化を図ることを主たる目的として、国際ジュート機関のもとで研究開発等に関する事業を実施すること等について規定しております。  我が国がこの協定を締結することは、輸入国たる我が国にとっても利益をもたらすとともに、開発途上にあるジュート及びジュート製品の輸出国たる主としてアジア諸国の経済発展に資するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  184. 柿澤弘治

    柿澤委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  両件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来る十五日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十二分散会