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1990-03-28 第118回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年三月二十八日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 柿澤 弘治君    理事 愛知 和男君 理事 園田 博之君    理事 浜田卓二郎君 理事 浜野  剛君    理事 牧野 隆守君 理事 上原 康助君    理事 高沢 寅男君 理事 山田 英介君       石原慎太郎君    小渕 恵三君       鯨岡 兵輔君    小杉  隆君       坂井 隆憲君    塩谷  立君       福島 譲二君    福田 康夫君       山口 敏夫君    五十嵐広三君       井上 一成君    岡田 利春君       川島  實君    松原 脩雄君       森井 忠良君    遠藤 乙彦君       神崎 武法君    古堅 実吉君       伊藤 英成君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君  出席政府委員         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         外務政務次官  石井 一二君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省経済局次         長       須藤 隆也君         外務省経済協力         局長      木幡 昭七君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    内田 富夫君         農林水産省食品         流通局砂糖類課         長       熊澤 英昭君         外務委員会調査         室長      藪  忠綱君     ───────────── 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   小杉  隆君     丹羽 兵助君   坂井 隆憲君     倉成  正君   神崎 武法君     市川 雄一君   伊藤 英成君     菅原喜重郎君 同日  辞任         補欠選任   倉成  正君     坂井 隆憲君   丹羽 兵助君     小杉  隆君   市川 雄一君     神崎 武法君   菅原喜重郎君     伊藤 英成君 同月二十七日  辞任         補欠選任   伊藤 英成君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   中野 寛成君     伊藤 英成君 同月二十八日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     森井 忠良君   佐藤 観樹君     川島  實君 同日  辞任         補欠選任   川島  實君     佐藤 観樹君   森井 忠良君     岡田 利春君     ───────────── 本日の会議に付した案件  関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許修正し又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件(条約第一号)  関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許変更についての欧州経済共同体との合意に関する文書締結について承認を求めるの件(条約第二号)      ────◇─────
  2. 柿澤弘治

    柿澤委員長 これより会議を開きます。  この際、中山外務大臣及び石井外務政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。中山外務大臣
  3. 中山太郎

    中山国務大臣 このたび外務大臣に留任いたしましたので、一言ごあいさつを申し上げます。  御承知のとおり、国際社会は、今、歴史的変革の時期を迎えており、欧州情勢中心とする東西関係国際経済等枠組み自体に大きな変化が見られております。このような国際情勢の中にあって、我が国の平和と繁栄を確保するために外交に課せられた使命は極めて大きいものと認識をいたしております。  諸外国の我が国に対する期待と関心はいよいよ高まり、我が国といたしましても、みずからの経済力技術力経験を活用しつつ、世界の平和と繁栄のために貢献をしてまいらなければならないと考えております。  このような認識のもと、私といたしましては、今後とも海部総理のもとで、これまでの日本外交の成果を継承し、これをさらに発展させてまいる考えでございます。  この委員会に御出席皆様方には、多年にわたり外交問題に真摯に取り組んでこられ、この分野に精通せられているわけでございまして、今後とも皆様方の御指導をちょうだいいたしたいと考えております。これまでの経験を踏まえて外務大臣としての重責を果たしてまいる所存でございますので、委員各位の一層の御指導をお願い申し上げます。(拍手
  4. 柿澤弘治

  5. 石井一二

    石井(一)政府委員 このたび外務政務次官に就任いたしました石井一二でございます。  中山大臣を補佐いたしまして、微力ではありますが、職務を全うするため全力を傾ける所存でございます。激動する国際情勢に対応しつつ、日本そして世界の平和と繁栄を確保するため、積極的な外交に取り組んでまいりたいと考えております。  本委員会の諸先生方の御鞭撻と御協力をお願い申し上げまして、私の就任のごあいさつといたします。ありがとうございます。(拍手)      ────◇─────
  6. 柿澤弘治

    柿澤委員長 関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許修正し又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件及び関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許変更についての欧州経済共同体との合意に関する文書締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  これより両件について政府より提案理由説明 を聴取いたします。中山外務大臣。     ─────────────  関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許修正し又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件  関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許変更についての欧州経済共同体との合意に関する文書締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  7. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま議題となりました関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許修正し又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件及び関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許変更についての欧州経済共同体との合意に関する文書締結について承認を求めるの件の二件につきまして、提案理由を御説明申し上げます。この二件は、それぞれ別個の案件でありますが、経緯上も内容的にも互いに密接な関係にありますので、まとめて御説明いたします。  我が国は、ガット理事会の勧告を受けて、一定の農産物に係る輸入割り当て制度の多くを撤廃することとしております。このうち砂糖を主成分とする調製食料品につきましては、輸入割り当て制度を撤廃すると同時に、砂糖類似品が低関税率輸入されることにより国内砂糖価格の安定に対して影響を及ぼすことを防止するため、当該調製食料品一部分について譲許税率引き上げることとし、このため、アメリカ合衆国及び欧州経済共同体とそれぞれ交渉を行ってまいりました結果、本年二月に合意に達しました。  これらの文書は、当該調製食料品のうち砂糖類似品について譲許税率を三五%から一キログラムにつき九十円に引き上げること及び砂糖類似品以外のものの一部分について譲許税率を三五%から三〇%に引き下げることを規定しております。  これらの文書は、国会の御承認を得た後、政府ガット事務局長に対して行う通告によって効力を生じ、実施されることとなっております。  よって、ここに、これらの文書について御承認を求める次第であります。以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  8. 柿澤弘治

    柿澤委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     ─────────────
  9. 柿澤弘治

    柿澤委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浜田卓二郎君。
  10. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 提案されました条約及びそれの関連事項につきまして質疑を行いたいと思います。  まず、ただいま提案理由の御説明がありましたけれども、砂糖調製品輸入割り当て制度の廃止に当たって、その一部、砂糖類似品関税率引き上げるということでありますが、若干敷衍して、なぜそれが必要なのか、そして砂糖業界も含めてどういう状況にあるのか、関税率引き上げ背景について御報告をお願いいたします。
  11. 須藤隆也

    須藤政府委員 御説明させていただきます。  砂糖調製品輸入割り当ての撤廃につきましては、昭和六十三年の二月にガット違反とされた農産物の十二品目一つであります砂糖調製品輸入制限を、その後の対米交渉の結果、本年四月一日から撤廃するということとなっておりますところ、現在我が国におきましては、砂糖輸入に関しては、国内産砂糖価格の安定を図るために、輸入に関して関税調整金とを両方賦課して国内産砂糖との競争が維持できるような仕組みをとっております。  具体的に申しますと、砂糖輸入に関して一キログラム当たり五十七円の関税をかけておりまして、それに加えて調整金、これはそのときどきで金額は変わってきますけれども、キログラム当たり大体三十円前後の調整金をかけておりまして、現在の砂糖輸入価格ですと、一キログラム当たり百円の砂糖に対して大体九十円前後の上乗せがされて、キログラム当たり百九十円程度価格輸入されているということになります。  ところが、この四月一日から砂糖調製品輸入割り当て制度が撤廃されることになりますと、現在砂糖調製品に対する関税が三五%でございますので、一キログラム当たり百円といたしまして三十五円程度関税で入ってくるわけでございます。そうしますと、百三十五円ぐらいで砂糖にちょっとまぜ物をした砂糖のまがい品が輸入されることになるという結果になります。そういたしますと、現在全国で七万三千戸と言われる砂糖農家影響が出てまいりますので、現在の三五%という関税を一キログラム当たり九十円に引き上げますと、現在砂糖に対してとっております国内産砂糖価格安定措置とほぼ同じレベルの保護水準、すなわち一キログラム当たり百九十円程度価格になるということで、国内砂糖農家に対する被害が防止できるのではないか、こういう考え方に基づきましてアメリカ交渉した結果、合意に達したものでございます。
  12. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 我が国自由貿易で生きているわけでありますから、ガット規定を遵守していく、これは大変大事なことであります。それと同時に、国内砂糖産業保護というか、そういう面を調和させた決定であるということで、私は大いに結構なことだと思うのですけれども、この引き上げについて、なぜ米国EC交渉したのか、その辺をちょっと御説明ください。
  13. 須藤隆也

    須藤政府委員 ガット譲許いたしました関税修正あるいは撤回するためには、ガット規定の第二十八条というのがございまして、「締約国は、この協定に附属する該当の譲許表に含まれる譲許を、その譲許について直接に交渉した締約国原交渉国ガット上称しておりますが、「直接に交渉した締約国及び主要供給国としての利害関係を有する他の締約国交渉し、かつ、合意することにより、及び実質的な利害関係を有する他の締約国協議することを条件として、修正し、又は撤回することができる。」というふうに規定しているわけでございます。したがいまして、我が国はこの規定に従いまして、この砂糖調製品につきましては、ガット加入の際に米国交渉の上で譲許しておりますので、米国砂糖調製品について原交渉国の地位を持っているということが言えますので、この譲許税率修正に当たって米国交渉したということでございます。  他方、ECの場合には若干状況が違いまして、EC砂糖類似品譲許については原交渉国ではございませんで、また今度関税引き上げる対象になっております砂糖類似品の対日貿易実績もないわけでございます。したがいまして、我が国としては、EC主要供給国でも実質的な利害関係を有する国でもないという主張をしてきたわけでございますが、これに対しましてECの方は、砂糖類似品を含めまして譲許品目全体、すなわち砂糖調製品全体に関しては主要供給国であるということを主張しまして、ガット条約の第二十八条に基づく交渉権があるという主張をしてきたわけでございます。その後、この見解の相違に対しまして双方交渉してきたわけでございますが、双方主張平行線をたどりましたために、結局二十八条の交渉権の解釈の問題は棚上げにしまして、二十八条の枠外でECとの実際上の調整を図るということにいたしまして、我が国関税引き上げ部分、それからその代償として関税を引き下げる部分、そういうものを内容とした合意文書を作成することにしたということでございます。
  14. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 いずれにせよ、農産物輸入ルール化について、米国及びECとの協議日本砂糖産業実態も見ながら一つの歩み寄りが合意を形成したということでありますから、今ガットウルグアイ・ラウンド農業問題が議論されておりますけれども、粘り強く合意形成を進めていくことが大事であって、その一つの例としてこういうこともできたというふうに受けとめておりますけれども、特にこれからの米の問題をめぐって我が国食糧安全保障論ガットの場に提案しているわけでありますが、この点について若干私の考え方も申し上げ、そして大臣の御所見も伺わせていただきたいと思います。  私もかつて外務政務次官のときに、イスラマバードで行われましたウルグアイ・ラウンド交渉での議論のときに、特に食糧安全保障論を軸にした議論会議の場で展開してきた一人であります。そういう中で感じますことは、食糧安全保障論というのを合意を求めていく中で、日本は特殊な国だから例外にしてくれ、米の生産は特殊なんだから例外にしてくれという議論はどうも通りにくいという気がするわけです。今米国との関係でもリビジョニストとかいろいろ言われておりますけれども、日本特殊論というのはちょっと危険な議論につながる可能性を有しているわけでありますから、特殊だから例外だという論理でない方がいい。あわせて、入り口論になるわけですけれども、精神論が非常に大きいわけです。一粒も入れさせない、一粒でも入れたら敗北だ、このあたりは非常に微妙なところでありますけれども、こういった精神論ルールづくりの上では必ずしも建設的ではないと思うわけです。ですから、むしろヨーロッパ諸国のみならず米国にも農産物輸入制限はあるのだ、だからその国その国の農業事情一般化、普遍化していって、共通するルールづくりという考え方で取り組まないと難しいのではないかと私は感じております。我が国では米不足がかって社会不安の大きな原因だと言われてきたように、欧州諸国では肉不足が社会不安の原因になる。また、我が国で稲作と日本文化が密接な関係を有していると同じように、畜産と米国文化は密接な関係を有してきている。そういうことも各国それぞれにある事情であります。  また、イスラマバードの前のコンスタンツの会議のときも、私は大臣にかわって出席することになったわけでありますが、そのとき農業大臣と、現在スイスの大統領になっておりますけれども、大分議論をする機会がありました。全く日本と同じようなことを言うのです。スイスは山が急峻であって、間に畑がなければ、急峻な山から雪解けの水なんかが来るのだ、それを吸収することができないのだ、だから農業をだめにするということは、スイスにとっては国土の安全を損なうことだ、それは全く私も同じ議論だということで大分意気投合した記憶もあるわけです。特にヨーロッパ諸国については日本と共通な要素がかなりあるはずだと私は思うのです。そういう共通なところをお互いに引っ張り出す努力をしつつ、その中で食糧安全保障論国際世論にしていく努力が大事だと私は思うわけであります。  これだけ言った上で大臣のというのはなかなか問題かもしれませんけれども、それに加えて最近はいわゆる地球環境問題も大きなウエートを占め始めております。そういう観点からも、水田とか畑作の果たす、持つべき役割、機能というのは非常に比重が高くなりつつあるということも背景として考慮していくべきだろうと私は思っているわけであります。  私の見解を申し上げましたけれども、外務省として、また政府として、食糧安全保障論に立脚するどのようなルールづくりをこれからガットの場で進めていこうとされているのか、基本的なお立場について見解をお示しいただきたいと思います。
  15. 須藤隆也

    須藤政府委員 先生よく御案内のとおり、現在ウルグアイ・ラウンド交渉が十五のグループに分かれて行われております。御指摘農業につきましても、ガットの一般的な原則に従って農業貿易自由化を進めるべしという声が強くございまして、現在のガット規定にも農業に関する規定はあるわけでございますが、その規定の仕方が鉱工業品その他に比べて十分でないという認識もありまして、もう少し市場原理を反映したようなルールをつくるべきであるということが特に農産物輸出国中心に行われているわけでございます。  これに対しまして、日本初め農産物輸入国側主張といたしましては、確かに農業分野ガット基本原則とする市場原理自由化の方向に向かって動くことは必要であるけれども、農業というのは気象その他の条件影響される面も多いし、御指摘スイスのような国土保全とか環境維持とか、北欧の国のように辺境地域維持をしなければいけないというような地域開発必要性とか、さまざまな目的のために農業が必ずしも商業的な配慮で行われているわけでもない国もたくさんあるわけでございます。その辺が昨年四月のウルグアイ・ラウンド中間レビューでも争点になりまして非常に会議がもめたわけでございますが、結局農業交渉長期目標といたしましては、農業保護相当程度漸進的削減合意されたわけでございます。しかし、それと同時に、食糧安全保障を含む非貿易的関心事項という名称になっておりますが、これはいわゆる食糧安全保障のほかに国土保全とか環境保全とかいう概念を含むもので、それについての関係国提案についても考慮が払われるということが我が国の強い主張によって合意されたわけでございます。  そのような合意を受けまして、先ほど先生指摘のとおり、米の問題については、これは特殊だから日本だけ例外にしてくれとか、いわゆる精神論ではなかなか国際的な理解を得られないということは確かだと思いますので、我が国といたしましては、このウルグアイ・ラウンド中間レビュー合意された食糧安全保障を含む非貿易的関心事項についての提案という形で既に出しております。具体的には、我が国食糧安全保障観点から国民の主要なカロリー源となるような基礎的な食糧については、所要の国内生産水準維持を図るために必要な国境調整措置の導入がガット上認められるべしという形で、米については特別な扱いが可能となるようなルールをつくるべしという提案を行っているわけでございます。
  16. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 努力をなすっていると思いますが、今日の政府農業政策に対する不信というのは、例えば、何も輸入しませんと言い続けてきて、ある日突然、それはできなかったのだ、そういうところに大きな原因があると私は思っております。ですから、これは農林省も含めて政府全体で交渉に当たっていることでありますけれども、特に外務省は、世界的な全体状況日本にどういうふうにソフトランディングさせていくかという重要な使命を担っているわけでありますので、絶対やらない、それが突然やるといった繰り返しにならないように、このルール化の問題についても、十分国際的な動静を踏まえながら、国内世論情勢も含めて、全体のまとめ役として頑張っていただきたい。外務大臣もそういうお気持ちでウルグアイ・ラウンドに臨んでいただきたいということを申し上げておきます。  次に、同じ経済問題で、日米構造協議について若干の質問をさせていただきます。  この日米構造協議背景についてはいろいろな議論があります。私なりに整理してみますと、一つ経済ボーダーレス化といいますか、マーケット世界じゅうでだんだん一つになってきている。特に日米マーケットは、政治的な国境は厳然としてあるわけですけれども、実際の物の動き、金の流れという面から見ると、もうほとんどボーダーレスという実態に近づいている。そうすると、アメリカマーケット日本マーケットは、海を隔てた遠い国の別々のマーケットというわけにはいかなくなってきている。一つマーケットの問題としてお互いに考えていかなければならなくなりつつある。それが私は大きな問題の背景一つだと思っております。  それと、きのう実は日米議員連盟アマコスト大使を招いていろいろ意見を交換したわけであり ますけれども、その中でアマコスト大使がいみじくも言っておられましたが、日本は力がついたんだ、力がついた日本と同じルールでやらせろということがあるのです。日本は自由自在にやっているけれども、アメリカからやってきたらどうも全く別の要因で自由自在にやれないじゃないか、それは何なんだというのが私が二番目に指摘する大きな背景だと思うわけです。結局日本にもマーケット事情がいろいろあるわけですけれども、向こうのマーケットについては自由自在に入っていって自由自在に活動しているということであれば、少なくともルールは同一化していくということは当然日本側も考えるべきことである。  と同時に、そのスタンスですけれども、私はよくわかりやすい例えで言うのですが、日本は力がついてきた息子であって、力もつき過ぎた息子であって、おやじから見ると頼もしいところはあるけれども、若干生意気で抑えつけたくなる。アメリカは、こう言うと失礼かもしれませんが、少し衰えてきた年とったおやじだ。それが一つ家庭の中にいるという考え方日米関係というのはやっていくのがよかろう。加害者はどっちかといったらむしろ日本だというぐらいの意識でこの問題に取り組んでいくべきだと私は思うのです。おやじの言い方が少しいたけだかで腹に据えかねるというところはどんな家庭でもあるわけですから、そこは力のある息子としては、若干寛容の精神を持って臨んでいくことが私は必要だと思います。  それと、もっと深いところで言えば、これだけ力のついた日本がなぜ安全保障の問題でアメリカに大きく依存しているのか、国家としてどうなんだという非常に根深い問題が私はあるような気がするわけです。これは経済の問題だから経済分野だけで解決するというアプローチではなくて、まさに安全保障の問題、米軍基地の問題も含めた広い日本のあり方の問題として米国と対応していくことが大事だ、そういう背景を持った問題ではないかと私は思います。  きのうのアマコスト氏の発言を続けて引用いたしますと、ソ連とか東欧との関係は変わってきているのだ、つまり東西対立緊張感というのが薄れてきた、そうすると国民の関心はどこに向くかというと、経済に向くんだ、経済といえば日本だ、実はそういう図式も背後にあるのだろうという気がいたしております。  いずれにせよ、一体化しつつあるマーケットの問題であり、かつ今申し上げたような各種の背景のある問題ですから、この構造協議が、例えば四月何日までで終わったら問題がなくなるということではないんだ、一種のモグラたたきみたいなものであって、一つ解決すればまた一つ出てくる。だからといって、じゃ解決しなくていいかというと、私は解決すべきだと思うのですけれども、絶えずそういうことがあるんだということも覚悟していく必要がある。つまり、一時、摩擦の常態化という言葉も使われましたけれども、構造協議の常態化というと妙かもしれませんが、そういった認識で、絶えずある問題、絶えずある同じマーケットの問題をお互いに除去し合いつつ行くんだ、それを基本に据えて対応していく必要がある。だから、一回だめだったからこれでもう終わりだみたいな悲壮感を持った対応というのもまた生産的ではないし、しかしそれはどうでもいいよということもまた生産的ではない。御苦労でありますけれども、絶えず苦労していかざるを得ない問題だというふうに考えるわけです。ですから、そういう中で必要なことは、そういう絶えざる交渉というものが双方のナショナリズム的な対立に発展しないような工夫というのが必要だと私は思うのですね。  そういうことを背景に置きながら二、三質問をさせていただきますが、もう一つ背景は、やはり貿易収支ですね。日本貿易収支の黒字は大き過ぎる、アメリカの赤字が大き過ぎる、だからどうしてくれるかというのがもう一つありますね。ただ、私はそれをずっと前提に考えていくことがやはりおかしいんだということをあえて言いたいわけです。  というのは、我が国貿易黒字の動向には変化があるのです。一九八六年がピークでありましたけれども、経常収支の黒字がGNP比で四・六%になっております。ところが昨年は二%台なのです。それからことしの一月は、実に経常収支は六億ドルの赤字になっておるわけです。そして、これはまだ正確な見通しは難しいんですけれども、一九九〇年のGNP比というのは一%台であろう、そういう予測が多くなりつつあります。つまり経常黒字の対GNP比で見る限り、日本貿易構造というのは完全に変化しつつある。そしてよく言われるのは、経常黒字幅がGNP比の二%を超えると、国際的にいろいろ摩擦を生ずるということは言われてきていたわけですけれども、ことしは多分二%も割るであろう、そういう状況になりつつある。ですから私は、貿易収支が日本はずっと黒字なんだ、アメリカは赤字なんだ、だから何とかしなくてはいけないという前提でこの交渉に臨んでいると間違いが起こる。黒字幅縮小の努力というのをこれから日本がさらにするということは、むしろ日本経済全体からいってマイナスだ、そういうふうにも私は考えざるを得ないと思うわけでありますが、この辺の日本の経常収支の動向を大臣はどう認識されているか。そしてその認識をどのようにSIIの中で生かしていこうとされているのか、その点について御所見を伺います。
  17. 中山太郎

    中山国務大臣 浜田先生から大変深い考え方に根差した御意見をちょうだいして、私も大変感銘をいたしておりますが、私はお説のとおりだと思うのですね。この当面の日米間の貿易のインバランス、日本の一方的な黒字、これは主力製品の輸出がとまれば急激にダウンしてくるだろうと思います。しかし、構造調整協議というものが、経済政策の協調の中でそれを補完するような立場でアルシュ・サミットで日米間で構造調整をやろうという合意に基づいて去年の九月、十一月、ことしの一月とやってきたわけでございますから、そういうことを踏まえていくと、これからボーダーレスの国際社会の中で、日本が相当な経済力を持った国家として孤立をしないで国際経済社会にちゃんと生きていけるというための努力日本としては引き続き努力していかなければならない。それが今回の日本自身が考えるべき日本の構造、制度の改善につながっていくのだろうと思います。それがひいては日本の国民生活の豊かさと消費者の利益というものに通じていく一つの大きな道であるという認識に立って、私どもは、やはり国際経済国家としての協調する立場を崩してはならない、このように考えて、努力をしなければならないと考えております。
  18. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 そういうことでお進めをいただきたいと思いますが、私、注文をつけるというわけではありませんけれども、こういう考えでやってほしいという点を二つ、次に申し上げてみたいと思うのです。  一つは、構造協議を進めることによって日米双方がその経済的な力といいますか成長力といいますか、そういうものを損なう方向というのは、私はこれはマイナスだと思うのです。だから、あくまで拡大均衡的な発想で、あるいはそういう考え方でやるべきものとやってはいけないものを厳格に整理していってもらいたいというふうに思うわけであります。米国にとっても、世界にとっても、あるいはまた何よりも日本にとっても、これから成長していくということはまだまだ必要なわけです。もう成長は十分だという認識は、私は全く間違いだと思うのです。例えばアメリカ指摘しているように、我が国の社会的資産というのはまだまだ整備不十分な状況にあるわけです。ですから、我々も国民資産倍増などと言いながら、今ほぼ日本経済政策というのはそういう方向に向いていると思いますけれども、蓄積の期間に入ったわけですから、蓄積をしていく余裕の期間も必要なわけですね。その蓄積を支えるのは経済成長です。ですから、私はアメリカ主張する資産蓄積のためにも経済成長はまだ続く必要があるというふうに思っています。  さらに、我々は、先ほど日本の国家のあり方ということについてちょっと触れましたけれども、例えば安全保障に対するどれだけの負担がなされるべきか、いわゆるバードンシェアリングの問題、これはおろそかにできない問題であります。さらには、軍事力で貢献するのでなければ経済力と言っているのは、まさに援助の問題であります。ですから、つまり日米関係だけに限定して言えば、日本アメリカが別々にやるのではなくて、日米が共同して一つの事に当たるという発想でなければならないはずでありますから、アメリカはディフィシットを抱えている、であるとすれば、日本経済力というのは日米が共同してやっていく上で大きな武器になる、武器といいますか資源になるわけですから、これは損なってはならない、私は基本的にそういう認識日米双方で持つようにさせていかなければいけないと思うのです。  そういうふうに考えますと、例えば日本の貯蓄率を低下させろなどという発言あるいは要請、これは本当にまじめに行われているとすればかなり問題だ。やはり日本経済の成長の源泉には、貯蓄率の高さがあり、そしてそれと見合った投資率の高さがあるわけですから、それがけしからぬという発想は、私は、根本的に日米双方で持つべきではない、むしろ世界の迷惑ということで考えれば、アメリカの貯蓄率の低さという方が問題である、そういうふうにきちんとした考え方双方が立っていく努力が必要だと思うのです。  それから、もう一つ言わなければいけないのは、あくまで市場原理お互いに重視していかなければいけないということであります。ともかく日米さえうまくいけば、若干市場原理に反するような話でもいいじゃないか、そういう逃げ道が出てくる可能性がありますけれども、私はそういう点は問題だと思うのです。具体的に言えば、例えば公共投資の問題も、量を拡大しろというのは私は結構だと思いますよ。だけれども、向こうの主張を注意深く方々で読んだり聞いたりしていますと、公共投資の量的な管理をしたいという感じがありますね。つまり五カ年計画を出せ、五カ年計画でもっとかさを上げろというだけではなくて、それが毎年きちんと行われるかどうかという管理もしたいという気配があります。私はこれは危険だと思うのです。  日本の公共投資というのは、GNP比で言いますと、既に六、七%になっています。ですから、この量が少し動くということは、日本経済全体に対する影響は非常に大きいわけです。ですから、我々はフィスカルポリシーの重要な手段として公共投資というのを位置づけているわけです。ところがアメリカはちょっと違うのです。アメリカの公共投資の割合というのは、GNP比で言えば一%台か二%ぐらいです。つまりアメリカが公共投資を少しふやすか減らすかというのは、それほど経済全体に影響を与えないという面があるかもしれない。日本に比較しての話です。ですから、資産の充実、倍増という観点からいえば、公共投資は拡大していくべきである。しかし、これを量的に年々に割って管理して、ことしはこれだけやらなかったからけしからぬというような話になったとしたら、それは全くおかしな話であり、それはまさに計画経済的な考えであって、我が国が自由主義経済をフィスカルポリシーをもって景気調整をしながらやっていく手法と真っ向から対立するものであるというふうにも考えるわけです。  ですから、私は、大臣一つお願いしたいことは、こういう考え方から、例えば貯蓄率を下げろ、わかりました、これをやりますというような対応はあってはならないと思いますし、さらに公共投資でどこまで議論が進んでいるのか知りませんけれども、仮に年々の管理みたいな話に入り込んできたら、それはできないのだということを明確にすべきである。つまり全体の、二百項目とか、その前の十八項目とか言われておりますけれども、私どもは資料を持っておりませんが、どうか一つ一つ吟味していただいて、今申し上げた経済力の減殺につながらないということ、さらには市場原理の重視という点から問題があるかないか、そういう基準をきちんと当てはめていただいて、できないものはできない、やらないものはやらないということを明確にしていただきたいと私は思いますが、大臣の所見を伺います。
  19. 中山太郎

    中山国務大臣 お説を十分踏まえて、これから対処してまいりたいと思っております。
  20. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 それでは最後に、構造協議の手法についてもう一つお願いをしたいと思います。  私は、冒頭、この構造協議背景について考え方を申し上げたわけですけれども、常態化していくだろう。そしてマーケット一つなのですけれども、同時に背景、社会的な歴史とか伝統、そういうものは違います。そうすると、違ったところが日米で真っ向から激突してしまうというのが生産的かどうかという問題があります。やはりヨーロッパを間に挟むということは大事なんだと私は思うのです。  例えば大店法みたいな考え方も、これは伝統的に中小企業を大事にする政策理念がある。それは例えばヨーロッパにもそういうものがかなりあって、フランスには私の理解するところでは大店法に似た規制があるというふうに承知しております。さらに独禁法の考え方にもそういう違いがありますね。アメリカのアンチトラスト法と日本の法律、さらにはヨーロッパの独禁政策の違いみたいなものはあります。ですから、私は、違った順から言いますと、アメリカが最右翼か最左翼にあって、その次に長い歴史、伝統を持ったヨーロッパがあって、それから日本がある、こういうふうに物を考えた方がいいと思うのです。そうすると、最右翼のアメリカと最左翼の日本が激突するのではなくて、間にヨーロッパを入れて、これはこうだよというような話も、どうせ面倒くさい話をこれからずっとやっていくという前提でのことですけれども、その方がいいような気がいたします。  ブッシュ・海部会談の中でも、ブッシュ大統領の方から三極構造というのが提案されたやに報道されておりますけれども、その辺の経過と、そしてそういう考えで、むしろ構造協議はバイの場からマルチの場に、どういう形でヨーロッパを入れるかいろいろな問題があると思いますが、そういうふうに移したらどうかという提案であります。その辺についてのお考え方をあわせてお伺いをして、私の質問を終わります。
  21. 中山太郎

    中山国務大臣 今先生お尋ねのブッシュ・海部会談におきまして、お話しのように、日米の現在のこの問題を踏まえて、これからの日米関係のさらなる繁栄についてグローバルパートナーシップとしていろいろとやっていかなければならない。しかし、将来といいますか、日米欧の協力体制というものを考えることも絶対必要だ。そういうふうな考え方の中に立って進めていく最初の仕事として、日米経済問題を解決して、そして日米両国がグローバルパートナーシップとして世界的な問題、例えば地球環境の問題とか麻薬の問題とかテロの問題等にも対処していかなければならないけれども、先生指摘のような日米欧の広い経済社会といいますか、これを活性化していくために双方協力していかなければならない。  お説のように、アメリカが一番右で、一番左が日本としますと、真ん中にヨーロッパがいるということも全くそのとおりだと思います。先生も御案内のように、特許制度一つにしても、アメリカは先発主義でございますし、日本、ヨーロッパは先願主義。アメリカは特許制度の改変を日本にもヨーロッパにも強く押しつけてくる、そういう中で日本とヨーロッパが協力しながらアメリカとの話し合いをやってきた経過もございますし、そういう点も踏まえて、これから十分ヨーロッパも含めた形での話をしていかなければならない。ただ、今のところ日米間の経済問題、構造調整問題に全力を挙げておりますけれども、ECからはまだ構造調整についての具体的な話し合いは来ておりません。十分お説を踏まえながら政府としては最善を尽くしてまいりたい、このように考えております。
  22. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 終わります。
  23. 柿澤弘治

    柿澤委員長 上原康助君。
  24. 上原康助

    ○上原委員 最初に、提案になりました譲許税率修正合意文書の件についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  この修正合意文書が日切れであるということで、外務省の方から急いで審査をしてもらいたいということでいろいろ説明を受けて、内容についてもある程度理解をしているつもりでございます。また、我が党も両案に賛成の立場で協力をするということですので、簡単にお尋ねしますが、そもそもこの案件も、一九八八年二月に、ガット違反だ、いわゆる農産物の十二品目自由化問題とのかかわりで、砂糖調製品目についても規制を撤廃せよということで、ことし四月から自由化に踏み切りたいということで、米側、さらにECとも合意に達した。  そこで、お尋ねしたい点は、その経過については理解をいたしますが、関税率引き上げによって、国内産糖、とりわけサトウキビとかてん菜糖等の生産農家への悪影響を防止するためにこの措置をとりたいということでございますが、具体的にどのような悪影響が防止をされて国内砂糖生産農家の保護になるのか、その点を外務省、農水省、それぞれ御答弁を願いたいと存じます。
  25. 須藤隆也

    須藤政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、本年四月一日から砂糖調製品輸入制限を撤廃するということになりますと、砂糖の含有量の低い調製品、お菓子の原料だとか粉末ジュースだとかゼリーの原料になるような、そういう砂糖の含有量の低い調製品につきましては、国内への影響はごくわずかだと思われますが、砂糖にちょっとまぜ物をして砂糖のまがい品というか、正式には砂糖類似品と呼んでおりますが、砂糖の含有量が八五%以上あるような、ほとんど砂糖に近いような砂糖のまがい品が入ってきますと、現在の関税率では、先ほどもちょっと申しましたように、一キログラム当たり三十五円、三五%の関税でございますから、一キログラム当たり百円としますと、三十五円の関税で入ってきてしまいますと、結局百円プラス三十五円で百三十五円で入ってくるということになってしまいます。ところが現在日本国内砂糖価格は、これは先生の方がよく御案内と思いますけれども、一キログラム当たり百七十五円前後と聞いておりますが、国内砂糖価格が百七十五円前後のところに、百三十五円の砂糖のまがい品が入ってきますと、全国で七万三千戸と言われております国内砂糖生産農家への打撃が非常に大きくなるんじゃないかということが心配されましたので、ガットとの整合性を保つために輸入制限を撤廃する一方で、砂糖類似品関税率を一キログラム当たり九十円に引き上げることによりまして、輸入価格キログラム当たり百九十円になりますので、国内産砂糖の百七十五円との関係国内農家の立場を保護できるんじゃないかという考えに基づいて交渉してまいったわけでございます。
  26. 熊澤英昭

    ○熊澤説明員 お答えいたします。  先生のお話にもございましたように、てん菜は北海道の畑作にとりまして大変重要な作物でございます。それからサトウキビにつきましては、沖縄あるいは鹿児島県の南西諸島で欠くことのできない基幹作物でございます。現在私ども、糖価安定法の制度のもとで価格支持を行って、その安定的な生産を確保しているところでございます。したがいまして、今回のいわゆるその他の加糖調製品自由化当たりましては、糖価安定法の機能あるいは効果が損なわれないようにということを基本的に考えるわけであります。  それで、この際、いわゆる砂糖に極めて近いもの、私ども疑似砂糖あるいは砂糖類似品と呼んでおりますけれども、そういったものにつきましては、これまでの加糖調製品輸入実態等を考えまして、一五%以上その他のものが入っている、すなわち、逆に言いますと、砂糖の含有量が八五%以下のようなものについては、砂糖というよりはむしろほかの商品として使用される形態が多いのではないかということもございまして、砂糖の含有量が八五%でかつ値段の安いもの、そういったものについては九十円の定額関税を課するということで糖価安定法への悪影響というのは防止できるというふうに考えておりますので、今回の措置で糖価安定法に基づく国内の甘味作物の生産については十分これまでのような安定的な生産が確保できるというふうに考えております。
  27. 上原康助

    ○上原委員 これも細かくお尋ねすればいろいろ問題があるわけですが、要するに、今問題になっております日米経済構造問題協議にしましても、農産物自由化輸入枠拡大というところから大きく発展をしてきていることは御承知のとおりです。ですから、こういう国境措置をとることには異存はないわけですが、同時に国内生産農家、もちろん消費者の立場も勘案をしなければいけませんが、そういうことにも十分な御配慮をしていただきたいということでございます。  よく日本農産物自由化は障壁が多いとかいろいろ言われておりますが、ある資料によりますと、日米の一人当たり農産物輸入価格というのは、御承知のように、日本の方がはるかに高いのですね。一九八七年は日本が百七十二ドル、米国はわずかに九十三ドル、八八年は日本が二百二十四ドルに対してアメリカは九十五ドルなのです。だのに米も輸入しなさい、あれもこれもということでは国民は納得しがたい面もあるわけです。砂糖にしても砂糖調製品にしても、そういう観点からもひとつ政府は毅然たる態度をとりながら、堅持しながら、いわゆる地域農業の重要性ということを御認識の上で、これからも国際的にも、ガットにおいても対処をしていただきたいと思いますが、この点についてはどうお考えですか。これは政治の話ですから、大臣の方からひとつ御所見を賜りたいと存じます。
  28. 中山太郎

    中山国務大臣 国内農業従事者の生活に重大な影響を与えないように、政府としては今度とも格段の努力をいたしてまいりたいと考えております。
  29. 上原康助

    ○上原委員 ぜひひとつそういうお立場でやっていただきたいと存じます。  そこで、せっかく外務大臣へのお尋ねができますので、この機会にぜひお尋ねをしておきたい問題がありますので、次の質問に移らせていただきますが、最近の国際情勢あるいは米ソ関係等々から考えて、国際的には非常にデタントの方向に今大きく転換をしつつあることは御承知のとおりであります。しかし、大変残念ながら在日米軍基地、とりわけその専用基地の七五%が狭い沖縄に依然として存在をしておる。そういう状況下で米軍の演習であるとかあるいは事件、事故も相次いでおります。  そこで、きょう具体的にお尋ねしたいことは、米軍のAV8Bハリアー機の訓練問題についてお尋ねをしておきたいわけですが、三月の十六日からまた伊江島において訓練が再開をされました。このことについて政府にもその通告があったのかどうかがまずお尋ねしたい一つですね。  そこで、ことしの一月二十六日に御承知のように伊平屋島沖でこのハリアー機一機が海中に墜落をしております。その事故原因は一体どうなったのか。この二点をまず御答弁をいただきたいと存じます。
  30. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生御質問の最初のハリアー機の訓練再開に関しまして通知があったかどうかという点でございますが、日本政府に対して正式に通知があったわけではございませんが、米側より沖縄県及び伊江村に対しまして文書でハリアー機の訓練を再開する旨通知が行われたということは承知しております。  それから、先生言及されました一月二十六日の事故についてでございますが、これは私どもも外交ルートを通じましていろいろ米側に従来より申し入れを行ってきたところでございますが、今引用させていただきました文書は、これは三月十二日付で沖縄県及び伊江村に対しまして出されておりますけれども、この文書によりますと、事故につきまして「徹底的な調査が行われた結果」「事故機に関する機械又は構造上の欠陥を示すような証拠は全く発見されなかった。」ということが記載されております。  以上でございます。
  31. 上原康助

    ○上原委員 問題は、事故原因が究明されていないわけですね、一月二十六日の墜落事故というのは。そして、その後米軍は、事故原因が究明されるまでは、この種の訓練、演習は中止をするということを公式に発表をしております。にもかかわらず、事故原因が究明をされずに三月十六日から再開をしておる。今引用というかお答えありました米海兵隊作戦並びに訓練副幕僚長ですかね、デビッド・G・パーディ大佐の文書というのは、これは政府には通告があったのですか。
  32. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 お答えいたします。  先ほどもちょっと触れましたけれども、外務省に対しましては正式に文書では連絡が来ておりませんけれども、しかしながら、私どもはその内容に関しましては承知をしております。
  33. 上原康助

    ○上原委員 そこで、この文書によりますと、機体は未回収だが、目撃者の証言を含む調査の結果、機体またはエンジンに欠陥があったことは発見されなかった、こうなっていますね。この墜落の時刻は一月二十六日のいつですか。
  34. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 墜落の時刻は一月二十六日の午後五時五分ごろと承知しております。
  35. 上原康助

    ○上原委員 しかも洋上での墜落ですよね。一月の末といいますと、五時過ぎになりますと、それほど目撃ができるような状況じゃないですね。問題は、こういった抽象的な文書によって訓練が新たに再開をされたということと同時に、この文書の中身をよく見てみますと、他の配備先では過去六週間にわたり無事故であった、こうなっておりますね。一月二十六日以降三月十六日までの六週間の間に無事故であった。なぜ六週間ということに限定をしているのか、それが疑問の一つ、お尋ねしたい一つです。果たしてAV8Bハリアー機の訓練中に三月十六日から過去六週間にわたって事故がなかったのかどうか、この点はどうなんですか。
  36. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生指摘のように、三月十二日付の米側の文書には「(事故後)およそ六週間にわたり、他の展開場所において無事故で飛行及び訓練任務が実施されてきている」というふうに書いてございますが、これは、米側に問い合わせしましたところ、事故の後六週間ということを意味しているわけでございますけれども、第三海兵機動部隊配下のハリアー機というものでございまして、米軍全体を指しているものではなくて、したがいまして、沖縄以外の場所でいえば、具体的には韓国、フィリピンを指しているというふうに承知しております。
  37. 上原康助

    ○上原委員 そういう認識は通りませんよ。同一機種を使っているわけでしょう、沖縄で訓練している、岩国に配備されているハリアー機は。どうなんですか。それは同一機種なの、機種が違うのですか。
  38. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 今私が申し上げましたのは、米側の文書に他の展開場所において無事故であったという記載がございますので、この「他の展開場所」というのは具体的にどこを指しているのかということを照会しましたら、米側は、沖縄におります第三海兵機動展開部隊の配下のハリアー機、これはもちろん同一のハリアー機でございますけれども、このことを指しているので、他の場所というのは、日本以外の、具体的には韓国、フィリピンを指すということを説明しているということを申し上げたわけでございます。
  39. 上原康助

    ○上原委員 それは大変事実をごまかすと言ったら少し言葉が妥当じゃないかもしれませんが、そういう御答弁には納得できないわけですね。  では、韓国、フィリピン以外での事故はあったのですか。米側に照会したのはいつですか。
  40. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 米側に照会しました日取りは現時点ではちょっと正確にわかりませんが、文書が出ましてからでございます。  先生が今お尋ねの、それではハリアー機に関して、日本それからフィリピン、韓国以外で事故があったかどうかという点でございますけれども、私どもは詳細は存じませんが、スターズ・アンド・ストライプスとかネービー・タイムズ等アメリカの新聞によりますと、カリフォルニアでハリアー機の事故が二月十二日にあったという報道がございますことは承知しております。
  41. 上原康助

    ○上原委員 ですから、米カリフォルニア州で、伊江島でやっているような地上部隊に対する近接支援攻撃訓練のときに、おっしゃったように、二月十二日事故があったわけですよね。だが米軍文書では、過去六週間の間にハリアー機による事故はない、だから訓練を再開するんだ。いわゆる事実誤認であり、ある面では沖縄県や各関係市町村に通告をした文書に偽りがあったということになるわけですね。それは認めますか。
  42. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 米側が出しました文書に、今回ハリアー機の訓練を再開する理由として二つ挙げてございまして、一つは、先生も触れられました、私も言わさせていただきましたけれども、今回の墜落事故について徹底的な調査を行った、残念ながら事故機は回収されなかったけれども、目撃者がおりまして、先生目撃者の点についてはいないはずであるとおっしゃいましたけれども、実は当時二機編隊で飛行しておりまして、したがいまして、一機が墜落いたしましたけれども、もう一機に乗っておりましたパイロットが目撃者でございますので、その目撃者の証言を含めまして調査した結果、事故機の機械または構造上の欠陥を示すような証拠は全くなかったという点でございます。これが第一点でございます。  第二点が、今先生が何度も御引用しておられます「(事故後)およそ六週間にわたり、他の展開場所において無事故で飛行及び訓練任務が実施されて」きたという点でございまして、この点に関しましては、先生が疑問を呈しておられますが、私どももまさに「他の展開場所」とはどこだということで照会をしたわけで、この「他の展開場所」というのは、先ほど来御説明しておりますように、沖縄の第三海兵隊の関連のということでございまして、したがいまして、沖縄以外のフィリピン、韓国を指すということを言ってきているわけでございまして、まさにそういう二点を理由として「ハリアー機は安全である」と米側としては判断したということが文書に書いてあるということを繰り返し御披露申し上げておる次第でございます。
  43. 上原康助

    ○上原委員 それは第三海兵隊が演習をしているのです、訓練をしているのです。だから沖縄で不安を持っているのです。一月二十六日に事故を起こしたのは第三海兵隊でしょう。  そこで、時間がありませんから、そういった事故原因も徹底的に解明をすると言いながらやらずに、しかも米本国であろうが、このAV8Bのハリアー機は墜落事故を起こしている。同時に、岩国に配備をされておったAV8Aの場合もしばしば事故があって問題になってきたわけでしょう。イギリスにおいても八七年十月、八七年十一月、二回程度事故を起こしているのですね。そこで、この事故原因が徹底解明できるそれまで少なくともこの演習は中止をすべきだ。しかも、米軍の責任ある副参謀長が出した文書に事実誤認があるということは、これは承服できませんよ。  そういう意味で、政府として、このことについて改めて米軍に事故原因の徹底解明と、これが明らかにされるまでの間は、私たちはもちろん全面的にこの訓練はやめてもらいたいという立場をとりますけれども、少なくともそういう疑惑が持たれている間は、この種の危険な訓練というものはやめるべきだ、そういう申し入れをして事実確認をいたしますか。これは大臣の方からでもいいし、ぜひひとつお答えください。
  44. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 最初に一般論でお答えさせていただきますけれども、私どもも施設区域の安定的かつ円滑な運用を図っていくためには、施設区域の存在と米軍の活動によって生じます周辺住民への影響が最小限にとどめられ、可能な限り地域住民の方々の御理解と御協力を得られることが重要と考えておりまして、機会あるたびに米側に対しましては、この点申し入れを行っているところでございます。したがいまして、今後とも日米合同委員会その他の場を通じまして、米側に対しましては、一般的に事件、事故の防止のために十分な 配慮を求めていきたいと思っております。  それから、先生たびたび御指摘のこのハリアー機の事故に関しましても、先ほど来私どもいろいろな場を通じて米側に注意を喚起してきておりますけれども、この合同委員会の場におきましても、一月二十六日の事故の原因の究明と再発防止はアメリカ側にきちんと要請をしておりまして、その際、アメリカ側から、先ほどの文書にもございましたけれども、機体のエンジン及び構造に欠陥はなかったという説明を受けております。私どもといたしましては、一般的に、引き続き米側が事件、事故防止のために十分配慮するよう合同委員会等の場でも求めていきたい、こういうふうに考えております。
  45. 上原康助

    ○上原委員 時間ですから、これで終えますが、問題は、事故があった。米本国で事故が起きたわけでしょう。これに対して伊江島も関係市町村も非常に懸念を持っているわけですね。また自治体においても、解明されるまでの訓練は少なくとも中止をすべきだという強い決議もなされているわけです。そういう新たな事実が発見された以上は、それに対応するのが政府の責任じゃありませんか。大臣、一言この件についての、単に事務当局に任すのではなくして、もう少し積極的な立場で県民の懸念、不安というものを除去してもらいたい。お答え願いたいと思います。
  46. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま政府委員が御答弁申し上げましたとおりでございますが、政府といたしましても、先生の御意見も十分踏まえて今後米側との話し合いを進めてまいりたいと考えております。
  47. 柿澤弘治

    柿澤委員長 松原脩雄君。
  48. 松原脩雄

    ○松原委員 今回の合意文書ですが、国内砂糖生産農家を保護するためということで、我々も先ほど上原委員が申し上げた立場でおるわけでありますが、この砂糖の件につきまして、粗糖の昨年度の輸入実績につきまして、トン数と割合を国別に明らかにしていただきます。お願いします。
  49. 熊澤英昭

    ○熊澤説明員 お答えいたします。  平成元年の通関統計上の粗糖の輸入数量でございますけれども、合計百七十八万トンでございます。うちオーストラリアからが六十七万トン、これは全体の三八%でございます。タイからが五十一万トン、これが二八%に当たります。それから南アフリカ連邦から三十三万トン、これは一八%でございます。それからキューバから二十三万トン、これが一三%に当たります。この四カ国で全体百七十八万トンのうち九七%を占めております。
  50. 松原脩雄

    ○松原委員 かつてフィリピンからも砂糖輸入がございましたが、五年間ほどの間のフィリピンからの輸入量及びその割合、これもどんなふうになっておりますでしょうか。
  51. 熊澤英昭

    ○熊澤説明員 お答えいたします。  フィリピンからの輸入は、暦年で申し上げまして、昭和六十年まで輸入がございますが、六十年の輸入量が十一万五千トン、これがその当時の輸入量に対しまして六%に当たります。その前年、五十九年が三十万三千トン、これが全体の輸入量のうちの一六・五%、その前年が二十三万四千トン、これがその年の全体の一三%になっております。六十一年以降は輸入がございません。
  52. 松原脩雄

    ○松原委員 そのフィリピンからの輸入が昭和六十一年度以降全く実績がないというところのその原因ですね、これはどうなっておりますでしょうか。
  53. 熊澤英昭

    ○熊澤説明員 お答えいたします。  フィリピンはもともと砂糖生産がかなりございまして、一九八三年以前で見ますと、フィリピンの国内生産が二百三十万トン以上ございまして、当時全体として輸出も百万トン以上あったわけでございますが、その後、国内生産が急激に減少いたしまして、かつての二百三十万トンから半減して百万トン強というような水準になっております。そういうことで、輸出余力が全くなくなったということで、日本への輸入も一九八六年、六十一年から途絶えているわけでございますけれども、私ども承知している限り、もともとフィリピンの国内砂糖は国際糖価に比べて割高であるというふうにも言われておりまして、また米国砂糖輸入が全体として枠が減少したということもございます。その中で、フィリピンに対する輸入割り当て枠の減少というようなこともございました。国内生産が急激に減ったということが基本的な要因で輸出余力がなくなった。それと同時に、同じような時期にアメリカ輸入枠、フィリピンに対する輸入枠の割り当てが極めて減った。そういった要因が重なって輸出がなくなり、日本輸入をしなくなったということでございます。
  54. 松原脩雄

    ○松原委員 そこで、南アフリカの件についてこれから少しお尋ねをしたいと思うのですが、政府は南アフリカについてはアパルトヘイトに断固反対する。そういう断固という言葉を使いながらアパルトヘイトに反対している立場をとっているわけでありますが、その手段としては経済制裁を実施しておるわけです。農産物経済制裁の対象になっておらないのはわかっておるのですが、先ほど御説明ありましたように、南アフリカが第三位、しかも昨年度では二〇%弱という大変多くの輸入割合になっておるわけでありますが、このようないわば大量の砂糖輸入を南アフリカからしておるということは、いわゆる経済制裁措置からいいますと、いわば一種の形骸化というふうな判断もされるんじゃないかと思うのですが、この点いかがでしょうか。
  55. 内田富夫

    ○内田説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘の問題につきまして、通関統計によりますれば、南アからの砂糖輸入量、確かにかなりのものがあるわけでございますけれども、一九八七年、最近の二、三年はむしろ減少傾向にあると承知いたしておりまして、南アとの貿易関係に慎重に対処していくという方針の中で、そうした方針の枠内で運用されておるというふうに認識いたしております。  いずれにいたしましても、先生ただいま御質問の中でおっしゃいましたように、砂糖という品目は、我が国の、品目ということで着目いたしますれば、対南ア貿易規制の対象品目とはなっておりませんので、その点に関して申しましても、特に問題はないというふうに私どもとして考えておる次第でございます。
  56. 松原脩雄

    ○松原委員 そこで、南部アフリカの現在の情勢でありますが、二月の十一日に黒人解放運動の指導者のネルソン・マンデラ氏、これが釈放される。それから三月の二十一日にはアフリカ最後の植民地と言われておりましたナミビアが独立をするということで、南部アフリカ情勢というのは大変今激しく動いてきておるわけでありますが、現時点におきまして、政府が南部アフリカ情勢についてどのような認識をなすっておるのか、お伺いしたいと思います。
  57. 内田富夫

    ○内田説明員 我が国を含みます国際社会は、かねてより南ア政府に対しましてアパルトヘイトの撤廃に向けて具体的な行動をとるように強く求めていたところでございますが、最近この南アのデクラーク大統領が黒人指導者との交渉開始を呼びかけますとともに、ネルソン・マンデラ氏の釈放、ANCなどの反アパルトヘイト団体の合法化等、これまで黒人側が交渉開始の前提条件として要求してまいりました諸点につきまして、かなり大きな譲歩を行ったとの認識でございます。  以上が政府側の動きでございますが、他方黒人側におきましても、このようなデクラーク大統領の対応を評価しつつ、先生指摘の、四月十一日には、ANCと南ア政府との間で本格的な交渉開始に向けての障害を除去する、本格的交渉開始への予備的な会合が行われる運びとなっております。  このような動きを見ておりまして、我が国といたしましては、南アの変革に向けての、根本的な変革に向けての動きを高く評価するというものでございまして、南アの当事者がその交渉を通じて非暴力的、平和的な解決への動きを支援していくことが重要であるというふうに認識いたしております。
  58. 松原脩雄

    ○松原委員 ナミビアが独立しましたけれども、 ナミビア独立と南アのアパルトヘイト政策との関係及びその意義ですね、その辺はいかがでしょうか。
  59. 内田富夫

    ○内田説明員 お答え申し上げます。  ナミビアは国際社会の支援を得まして、長い間の経緯を経た後、この三月二十一日に独立したわけでございます。私どもの見方といたしましては、新しく南アから独立しました新生のナミビアが安定的に発展していくこと、これがお隣の国であり、かつ宗主国でございました南アの国内改革の推移に深く関係がある、それだけでなく南部アフリカ地域全体の将来にとって重要な意味を有するというふうに見ておりまして、そういった位置づけのもとに今後ナミビアの国づくりの努力に対しまして、先方のニーズなどもはかりながらできる範囲で積極的に支援していきたいと考えておる次第でございます。  そうした考え方の具体策といたしまして政府で内々に検討いたしておりますことは、ナミビアに経済技術協力ミッションのような、そういったニーズをはかるミッションを派遣いたしまして、対ナミビア支援策の検討に取りかかりたいと考えております。
  60. 松原脩雄

    ○松原委員 ナミビアが今度独立をして、南アフリカから一つの新しい黒人多数支配の国家というものをつくったわけでして、その国のありようといったものは、確かにおっしゃるように、今後の南アフリカの行く道筋について大変重要な参考例といいますか、我々が物を考える場合の起点を与えたように思うわけです。このナミビアの独立のときは、実際大変大きな意義があったということで、アメリカやソビエトを初めとした多くの国の外務大臣や国務長官といったものも式典に参加をして、今後の南部情勢についていろいろ行動をなすったというふうに報道されていますが、日本では外務大臣がこれに出席をされなかった。この点につきまして、どういう理由で出席をされなかったのか、お伺いしたいと思います。
  61. 中山太郎

    中山国務大臣 先生御案内のとおり、ただいま国会が開会中でございますし、外務省も法案、条約等のお願いを委員会にしておりまして、所管大臣が国外に出張するということについては、日切れ法案の関係もございまして、私どもとしては、希望はございましたけれども、現実的に国会の御意見を十分了解し得ない状態ではないか、そういうことで倉成大臣にお願いをして、政府特使として御出席をいただいたわけでございます。
  62. 松原脩雄

    ○松原委員 そこで、今後の南アフリカの展開ですけれども、先ほどおっしゃった四月から政府と黒人解放組織との間で話し合いに入るということでありますが、その話し合いの前提条件として黒人解放組織の方から言われているのは、具体的にはどんなことを提示されているのでしょうか。
  63. 内田富夫

    ○内田説明員 先ほど若干申し上げた点でございますけれども、黒人のグループの方は、政治犯の全員の釈放及び非常事態宣言の撤廃といったことを本格的な交渉への前提として要求しておるというふうに聞いておるわけでございますけれども、他方黒人の側の陣営と申しますか、交渉当時者は必ずしも一枚岩になっていないというようなことも実はございまして、今後の交渉が円滑に進むということが期待されるわけでございますけれども、なかなか難しい点もあるというふうに私ども認識いたしております。
  64. 松原脩雄

    ○松原委員 今おっしゃったように、黒人解放諸組織の間にいろいろな路線の違い等があるようですが、その点に関して、今回ネルソン・マンデラ氏が釈放されて、今後南アの政治の展開の中でいかなる位置にこのマンデラさんというのがあるのか、この点について外務省の方はどんなふうに認識をされておられますか。
  65. 内田富夫

    ○内田説明員 ネルソン・マンデラ氏はANCと申します最も有力な黒人団体の副議長というお立場でございまして、議長はタンボという方でございますが、現在体を壊してスウェーデンで療養中でございます。したがいまして、このネルソン・マンデラ氏の役割に対する私どもの考え方といたしましては、黒人組織をマンデラ氏の政治力でなるべく取りまとめて円満な交渉に入っていただき、政府との交渉が本格化するということを期待している、そういう役割をネルソン・マンデラ氏に期待しているということでございます。
  66. 松原脩雄

    ○松原委員 先ほど出ましたナミビアの独立は、いわばワン・パーソン・ワン・ボート、これに基づく多数派支配といったものがナミビアで成立をした。いわゆるアパルトヘイトに断固反対するという立場からいいますと、まさにアパルトヘイトを乗り越えた状態が出現したというふうに私は思っているのですが、その点について、南アフリカのデクラーク大統領、彼が今回今までの強硬なアパルトヘイト政策から大きく転換を始めた。いわゆる改革と対話の方向へ動き始めたわけですが、デクラーク大統領をして今回のような措置に踏み切った原因については、外務省はどのようにお考えになっておられますか。
  67. 内田富夫

    ○内田説明員 私どもの認識と申しましても、現地には総領事館しかございませんで、活発な外交活動ないし情報収集活動を行い得る状況にございませんけれども、そうした制約を前提としての私どもの考え方を申し述べさせていただきますれば、南アの最近の動きにつきましては、一つには、アパルトヘイトの社会的なコストと申しますか、国として経済、社会、政治を運営していく上において、むしろアパルトヘイトというものが現在の白人政権にとっても、コストベネフィットと申しますか、マイナスが大きいということで、これはやはり何とかしなければいかぬという認識を白人政権の方でもとるに至ったというのが第一点。それからもう一つは、南アにおける世代の動きと申しますか、古い方々は南アの土地を受け継いできたという意識が非常に強いわけでございますけれども、南アの白人の中にもアパルトヘイトは倫理的に問題があるのではないかという意識が広まってきた、そういったものをデクラーク政権として吸い上げていくということがあったように考えております。それから第三番目には、国際社会、アフリカの南アを取り巻く黒人の国々を中心とする南アに対する非難、批判、それから国連を通じる動き、我が国を含めての先進国の対南ア規制措置といったものがボタ政権からデクラーク政権に移っていくに従ってアパルトヘイト撤廃の方向への動きを促進せしめたというふうに考えてよろしいのではないか。今申し上げましたように、全貌を把握する体制にはないのでございますけれども、そうした考え方を持っておる次第でございます。
  68. 松原脩雄

    ○松原委員 今のお話の中で余りはっきりしなかったのですが、アメリカが八六年に南ア制裁法というものを制定いたしまして、経済制裁のかなり厳しいものをやったはずですね。この経済制裁措置、とりわけアメリカ経済制裁措置が今度のデクラークの方針変換にどのような影響を持っておるのか、この点についてはどうでしょうか。
  69. 内田富夫

    ○内田説明員 先生指摘のとおり、アメリカは包括的反アパルトヘイト法というものが成立いたしておりますので、行政府の判断だけではいろいろな制裁解除措置がとりにくい状況にあるわけでございます。そうした状況でございますので、今度の一連の動きは、米国側としては評価しつつも、制裁解除あるいは緩和については、緩和を行うための条件、特に反アパルトヘイト法に明記されておる前提条件が成就していないという認識を行政府として持っておる。したがいまして、全体としては緩和のための具体的な措置はとっていないと承知いたしております。
  70. 松原脩雄

    ○松原委員 今のお答えはちょっとずれたと思うのです。デクラークがこういうふうにいわゆる対話と改革へ変わってきたんだ、なぜ彼はそこへ変わってきたのかという原因を私は聞きたかったわけです。そして、私が先ほど指摘しましたように、八六年にアメリカが南ア制裁法を制定しました。その効果として、例えば新規の投資が非常に少なくなってきつつある、あるいはハイテク技術が南アには入りにくくなってきた。そういうふうないわゆる経済制裁の効果がデクラークをして、こういう方向へ行かせた相当大きな原因なんじゃない かと私は思っているのですが、その点、いかがですか。
  71. 内田富夫

    ○内田説明員 先生指摘のとおり、主要国の経済制裁ないし規制措置というものが南アの経済に対してかなりのマイナス効果を与えていることはおっしゃるとおりだと思うわけでございます。したがいまして、そうしたことがかなりの効果があったということは申し上げられると思うのでございますけれども、主要国が制裁をしているから南アの政権側が考えを変えるようになったというような論理的な関係があるとは、むしろ私どもは考えておりません。
  72. 松原脩雄

    ○松原委員 今のお答えは事態の分析がちょっと甘過ぎると私は考えますが、いわゆる経済制裁問題について、イギリスは従来の経済制裁の一部解除を既に表明しておる。そして海部首相に対してサッチャー首相から親書が来ておるということを聞いておるわけですが、この経済制裁解除というイギリスの動きも踏まえながら、外務省としては日本経済制裁措置について今どういうふうにしようとお考えでしょうか。
  73. 内田富夫

    ○内田説明員 我が国といたしましては、最近の南ア情勢の進展を高く評価するものでございますけれども、実際には、南ア政府と黒人指導者との交渉に向けて非常事態宣言の撤廃とかすべての政治犯の釈放等の基本的な問題が依然として残っておると考えております。したがいまして、対南ア規制措置の取り扱いにつきましては、引き続き南ア情勢全般の進展を見きわめ、また国際的な協調の必要性を考慮しつつ慎重に検討してまいりたいと考えております。
  74. 松原脩雄

    ○松原委員 今の質問につきまして大臣の御所見はいかがでしょうか。
  75. 中山太郎

    中山国務大臣 今参事官も答弁いたしましたが、政治犯の釈放問題とか非常事態宣言の撤廃とかいうような問題がこれからどのような経過をとってまいりますか、これからの推移を十分見ながら、日本政府としての政策を判断してまいりたいと考えております。
  76. 松原脩雄

    ○松原委員 経済制裁を今後どうするかという問題については、特に黒人解放組織の方々の意向、考え方といったものも大変重要だと思うのです。この間外務省がフランク・チカネ牧師を招いて接触したと思うのですが、そのときにこの方は経済制裁についてはどういうふうな意見を持っておられましたでしょうか、あるいは要望があったでしょうか。
  77. 内田富夫

    ○内田説明員 先生指摘のとおり、チカネ南アキリスト教評議会事務局長外務省のオピニオンリーダーとして去る十三日から十八日まで訪日招聘いたしました。その間各界の方々と会っていただいたのでございますけれども、経済制裁の問題については、チカネ師としては、強化してもらいたい、あるいは少なくとも維持してもらいたいということをおっしゃっていたというふうに承知しております。
  78. 松原脩雄

    ○松原委員 そういうふうに経済制裁を続けてくれあるいは強化してくれというのが黒人解放組織から出てきた意見ですね。これに対して政府はどういうふうに思っておられますか。
  79. 内田富夫

    ○内田説明員 重要なことは、白人政権と黒人全体との平和的な交渉が始まるということでございますから、私どもといたしましては、デクラークの最近とった措置は非常に勇気のあることだったし、高く評価すべきであり、かつ実体的にもそういった交渉事を軌道に乗せるための有益な措置であったと考えておりますので、問題は残っているけれども、それを評価する。したがって、対話の開始、交渉の開始が行われるかどうかといった点を特に注目しながら、対南ア規制措置の取り扱いについて検討してまいりたいという考えでございます。
  80. 松原脩雄

    ○松原委員 先ほどから出ていますように、外務省はアパルトヘイトには断固反対という言葉を使っておられる。それで、ナミビアが既にアパルトヘイト政策を撤廃した独立国になった。南アフリカはまさにその方向性に向かっていくんじゃないか、こうなりますね。そうすると、今は白人支配の政権ですが、いずれ黒人多数派支配へ転換をしていくという見通しがなければいかぬはずなんです。そういう意味で黒人解放組織の意向が極めて重要であると思うのです。したがって、例えばフランク・チカネさんがお越しになって経済制裁をもっと強めてくれということを政府に言ったわけですから、この黒人解放組織の意向を外務省としては一体どういうふうに受けとめるのか、この点について外務大臣、ちょっとお願いしたいと思います。
  81. 中山太郎

    中山国務大臣 先日、オピニオンリーダーをお招きして意見を伺ったわけでありますが、先生指摘のように、この黒人組織の要望、要請というものを日本政府が受け入れるかどうか、我々としては、このナミビアの独立も踏まえて、これからの南アの新しい行き方というものに対して協力するものは協力する、そういうふうな民主的な国家に転換していくための協力は、今後とも考えていかなければならないと考えております。
  82. 松原脩雄

    ○松原委員 そこで、先ほど出ましたネルソン・マンデラさんというのは、先ほどの御説明のとおり、これからの黒人解放組織をまとめて、白人政権と対応していくという場合のいわばキーマンだという認識でいいと私も思うのですが、このマンデラさんに対して、一回日本へお招きをしようという動きがあるはずですけれども、これはもう正式に外務省としてはマンデラさんを御招待するというふうに申し入れしたのですか。
  83. 内田富夫

    ○内田説明員 去る二月十六日、釈放後間もないネルソン・マンデラ氏と現地プレトリアの外交団との間の合同会合がございまして、その際我が方太田駐プレトリア総領事より釈放実現に対する祝意を表明するとともに、我が国政府からのマンデラ氏夫妻に対する訪日招待を申し入れまして、方は訪日招待を喜んで受け入れるという御返事がございました。したがって、正式の招待を申しげているということでございます。これに加えして、先般ナミビアの独立式典に参加されました倉成特派大使もウイントフックでマンデラ氏夫にお会いになりまして、この招待を確認されております。
  84. 松原脩雄

    ○松原委員 そうすると、いつごろマンデラさんが日本にお越しになるのか、その辺のところまではっきりしておりますか。あるいは見通しはどんな状態になっておるのでしょうか。
  85. 内田富夫

    ○内田説明員 訪日招待を喜んで受け入れるということで、マンデラ氏夫妻の意向は非常に固いものがあると思われるのでございますが、具体的な時期につきましては、この四月十一日からの非公式予備会合などもございまして、先方としては、前向きであるけれども、具体的にはちょっと考えたいということでございまして、今後調整してまいることになると思われます。
  86. 松原脩雄

    ○松原委員 ちょっと経済制裁に絡んで、中国のことについてお伺いをしたいと思うのですが、天安門事件以来対中経済制裁というのが行われて、それが徐々に解除に向かってきておるようであります。ところが今九〇年度から九五年度にかけての八千百億円ですか、この第三次円借款というのは凍結されたままの状態になっておるわけです。そこで、この第三次円借款の凍結解除につきまして、そろそろその時期を探るというふうな状態になってきたのじゃないかと思うのですが、ずばり解除の時期といったものについてはどのようにお考えでしょうか。
  87. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 お答え申し上げます。  第三次円借款を含みます新規の対中経済協力につきましては、いわゆる天安門事件後、中国国の情勢あるいは国際的な動向等を見きわめつつ我が国としても慎重に検討してきたところでございます。現在までの状況を踏まえまして、御指摘の九〇年度円借款新規案件に関しましては、予備的な準備行為を開始するということで両国間に意見の一致がございます。  ただし、これらの案件につきまして最終的なコミットメントを行うということにつきましては、今後の諸状況を総合的に勘案しながら決定していく、こういう方針には現在のところ変わりはない わけでございます。
  88. 松原脩雄

    ○松原委員 アルシュ・サミットで中国に関する宣言というのが出されまして、その中で世界銀行からの新規の融資の禁止ということをあのときに措置としては決めたはずなんですが、この点については、今どういう情勢になっておりますでしょうか。
  89. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 世界銀行の案件につきましては、ことしに入りましてから人道的な案件等に絞りまして毎月一件ぐらい認めるということで、ことしに入りまして一月、二月とそういう認めるケースが出てまいっております。
  90. 松原脩雄

    ○松原委員 その人道的なケースを超えて、これはいわゆる新規の融資として理解すべきなんじゃないかなと思う融資が、ことしの二月二十七日に中国の江西省の農業開発に関して第二世銀を通じ六千万ドルの新規融資をしたという報道がありますね。これからしますと、もう人道的な融資という措置を超えた一般融資に世銀は踏み切ったと考えていいんじゃないでしょうか。どうでしょう。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  91. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 人道的な案件の定義にもよるのでございますが、私ども伺っております範囲の情報では、依然として人道的なものに重点を置いてやっていくという姿勢は基本的なところは変わってないように承っております。
  92. 松原脩雄

    ○松原委員 そうしますと、今指摘した二月二十七日の世銀融資が人道的な融資の範囲を超えていないというふうな認識になりますと、アルシュ・サミットで宣言をされた世銀からの新規融資の禁止、こうしたものですね、このうちの人道的な部分までしかまだできてない、あとは一般融資の動きも見なければ第三次円借款の見通しは立たない、こうなりますか。
  93. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 世銀の融資についての態度は私どもの対中経済協力について一つの大変参考になるケースでございますが、私どもは、世銀の動向とともに、さらにそれ以外の諸国の対中関係等も十分見守って、国際的な動向と申します場合に、そういう国際機関あるいは主要な援助国等グローバルな形で十分見させていただきたい、そういうところでございます。
  94. 松原脩雄

    ○松原委員 そうしますと、今おっしゃった国際的な動きのことなんですが、アメリカECも、特にECは強硬だと思うのですが、対中経済制裁を継続するという姿勢をいまだに崩していませんね。これらの対中経済制裁解除についてアメリカ及びECの動きについては、今どのように分析されておりますか。
  95. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 欧米諸国の対中措置につきましては、昨年末から例えばアメリカ米国製の人工衛星の対中輸出を許可するという例があったり、あるいはまた欧州におきましてフランスが対中輸出信用の一部再開を決定するというような動きがございますが、他方、アメリカも欧州も中国に対する措置の全面的な解除につきましては、依然慎重な態度を維持しているというふうに私どもは考えております。
  96. 松原脩雄

    ○松原委員 もう一つは、第三次円借款の凍結解除という問題を考える場合に、中国の国内情勢といいますか、こういったものも非常に重要な判断要素になるだろうと思うのです。昨今の東ヨーロッパとソビエトでの改革の動きということを踏まえて、いわゆる国内における思想引き締め政策といったものが非常に顕著に中国で出てきたように思うのですが、この辺については、こういう中国の現状を凍結解除の時期の判断をすることの絡みでどのように評価をされておられますでしょうか。
  97. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答え申し上げます。  天安門事件という大変不幸な事件が起こりましてかれこれもう九カ月以上たったわけでございますけれども、その後、ただいま先生から御指摘がありましたように、中国の国内におきましては、政治思想の教育の強化あるいは社会主義の道を大切にしなければいけない、共産党の指導を大切にしなければいけないという、いわば保守的な傾向と申しますか、そういう傾向が見られるわけでございます。  しかし、他方におきましては、これも先生御案内のように、北京の戒厳令というのは既に解除という措置がとられましたし、また一部ではございましょうけれども、天安門事件に参加いたしました人たちの釈放ということもございました。それから、私どもはそれはそれで非常に評価しておりますのは、そういう中で中国は少なくとも経済面では引き続き改革・開放ということはきちんと継続していきたいということをいろいろな機会に確認しておるわけでございますし、その延長線上でいろいろ合弁法の改正とか前向きな措置をとっておるわけでございます。  したがいまして、まとめて申し上げれば、一方におきまして御指摘のような保守的な傾向はございますものの、他面において改革・開放は、それはそれで堅持していこう、両様のことが今中国では進行しておるということだと思います。
  98. 松原脩雄

    ○松原委員 第三次円借款の解除に向けて、いわば周辺の方から徐々に状況が動いてきているように思うのですが、今度四月の中旬に双方の外務次官級による日中外交当局間協議、こういうものが開催されるということが決まったようですが、ここでは一体どういうふうな話し合いがなされるのでしょうか。
  99. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、四月の中旬に北京におきまして、私どもの外務省の方からは小和田外務審議官が参りまして、先方のこれに対応する方とお話し合いの機会を持つことにいたしております。そこにおきましては、もちろん御議論がありますような二国間にかかわるいろいろな問題、それぞれの考え方を率直に意見交換をしたいと思っております。それから、それに加えまして、せっかくの機会でございますから、日中の狭い意味での二国間の関係を超えるいろいろな問題、カンボジアの問題あるいは朝鮮半島の情勢についての意見交換、そういったことも突っ込んで意見交換をしてみたいと考えております。
  100. 松原脩雄

    ○松原委員 これは最後の質問にしたいと思うのですが、外務大臣にお願いをしたいと思います。先ほどもございましたように、マルタ会談以降世界が非常に大きく変わってきている情勢なのですが、その変わってきている現状、それから今後の外交方針、それからとりわけソビエト、対ソ外交方針といったものにつきまして、概略で結構ですから最後にお願いしたいと思います。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  101. 中山太郎

    中山国務大臣 先生指摘のように、マルタの米ソ首脳会談が冷戦の終わりの始まりという言葉を残して新聞記者会見が行われた。それ以降、従来の米ソ間の対立から対話、それから協力の時代に入っておりますし、昨日も米国の軍縮局長が来訪いたしまして三十分ほど意見の交換をいたしましたが、ただいま米ソ間では戦略核の縮減問題あるいはヨーロッパにおける通常兵器の削減問題等、六月の米ソ首脳会談に向けて積極的な交渉が展開されているという理解を持っております。そういう中で、米ソがこれから新しい世界の枠組みについての意見の交換も始まっているかと思いますけれども、現在のソ連における経済改革は決して明るい見通しを持った状況にはない。ペレストロイカは非常に困難に直面している。一方、民族運動も大変激しいものがございますし、バルト三国における連邦政府とこの三国間の話し合いも、私どもは重大な関心を持って見守っておる状況でございます。  一方、東ヨーロッパにおきましては、御案内のように、共産党政府が人民の手で倒されて民主化、自由化の方向に向いておりますけれども、何はさて戦後四十数年間、共産党支配の中央統制経済が破綻をいたしておりますし、過大な累積債務を抱えて、これらの国々が自由経済への入り口で非常な困難に直面している、こういう状況ではないか。しかし一方では、日本政府欧州諸国アメリカとも相談をしながらポーランド、ハンガリーへの支援を決定いたしておりますし、既に国会にも御報告申し上げておりますが、ポーランド、ハンガ リー以外の国々でも状況によって日本政府としてはこれから経済協力をしていこうという考え方を示しております。  一方、ECは御案内のような九二年の統合に向かって非常に激しい動きを示しております。また、そういう中で東西ドイツの統合問題が非常なピッチで進みつつある。去る三月十八日の東ドイツの選挙、その結果を受けての東西両ドイツにおける通貨の問題、また十二月に行われる西ドイツの選挙を踏まえて、これからの統一されたドイツがヨーロッパにどのような影響を与えていくのか、これまた重大な関心を払わなければならない問題だと考えております。  こういう中で、ヨーロッパはECの統合を踏まえて、この東ヨーロッパの自由化への動き、それからEFTAとの相互の協力体制でやがてヨーロッパは巨大なヨーロッパに移行していくことは間違いないという判断をしておりますし、東ヨーロッパの変化ももはや逆行することはあり得ない。実は、昨日、東欧大使会議外務省で行っておりましたが、出席いたしておりました大使の意見を聞きましても、東ヨーロッパの変化はもう逆行することはなかろうという判断でございました。  こういう中で、日ソ間の問題は、御案内のように、北方領土の問題がございまして、この問題を解決して平和条約締結してアジア・太平洋地域における平和の構築への努力日本政府としては続けなければならない。一月十五日に行われました安倍元自民党幹事長とゴルバチョフ議長、当時議長でおられましたけれども、その間の首脳会談は極めて有意義であったという評価もソ連側から出されておりますし、今年は択捉島への墓参も事務当局の手続によって明るい見通しになってきております。私どもは、平和条約作業グループの積極的な活動を通じて、このゴルバチョフ大統領の訪日を機に新しい日ソ間の展開が開かれるように積極的に努力をしていかなければならない、このように考えております。
  102. 松原脩雄

    ○松原委員 終わります。
  103. 柿澤弘治

    柿澤委員長 山田英介君。
  104. 山田英介

    ○山田委員 まず、今回審議されております日米及び日・EEC譲許税率修正または変更合意文書についてでございますが、いろいろ御説明を伺っておりますと、その概要は、六十三年二月のガット理事会ガット違反とされました農産物十二品目の中の一つ砂糖調製品輸入制限を四月一日から撤廃する、その際、我が国砂糖価格安定制度あるいは砂糖関連産業への打撃を防ぐために、砂糖類似品譲許税率引き上げる、と同時に、その代償措置として砂糖調製品の中の一部分につきまして譲許税率を引き下げる、こういうことだと理解をいたしているわけでございます。  そこで、米国に対しては代償として、ECに対しましては調整ということで、この譲許税率が三五%から三〇%に引き下げられるということでございますが、ここの部分で、この砂糖調製品一部分譲許税率引き下げが我が国に及ぼす影響ということにつきましてどういうことになっておりますか、御説明を伺いたいと思います。
  105. 須藤隆也

    須藤政府委員 お答え申し上げます。  先生発言のとおり、本年四月一日から砂糖調製品の一部の関税引き上げることと見合いに、同日付で輸入割り当て制度を廃止する砂糖調製品の一部につきまして譲許税率を三五%から三〇%に引き下げることとなるわけでありますが、国内的な影響につきましては、本年四月一日から輸入割り当て制度を廃止するいわゆる砂糖調製品というものに関しましては、これまで輸入されたものを見てみますと、お菓子の原料であるとかゼリーのもとであるとか飲料のもとであるとか種々雑多なものが少量ずつ、わずかずつ輸入されている状況でありまして、国内で特に競合するような業界はないと聞いております。  また、今回の譲許税率引き下げの対象となります品目のうちの多くにつきましては、既に従来から関税暫定措置法によりまして、実行税率が譲許税率より低く設定されてきております。例えば砂糖調製品のうちビタミンをもととした栄養補助食品及び蔗糖の含有量が全重量の五〇%未満のものにつきましては、従来関税暫定措置法によりまして関税率はそれぞれ一二・五%と二八%というように、実行税率で譲許税率よりも低く設定されてきております。  それからさらに、これまで輸入されている砂糖調製品は比較的価格が高いものが多いものでございますので、三五%から三〇%へというこの五%の関税引き下げによっても、価格競争力に変化がある性質のものではないのではないかと考えております。  したがいまして、全体といたしまして国内への影響はほとんどないのではないかというふうに考えております。
  106. 山田英介

    ○山田委員 ウルグアイ・ラウンドについてお尋ねをいたします。  九〇年代の新しい貿易ルールを決めようということで現在交渉がなされているさなかでございますが、今年末の交渉終結へ向けて、そしてまた実質的合意は本年の七月ごろまでにというような状況のもとで、日本政府ガット体制の維持強化が必要であるという御認識に立たれて交渉に当たられているわけでございます。  そこで、この交渉の進捗状況についてですが、十五分野という非常に幅広い分野にわたっての交渉ということになっておりますけれども、特に私関心のございます紛争処理分野、スーパー三〇一条との関係がございます。場合によりましては、ガットの形骸化ということにつながりかねない、こういう大事な分野でございます。いま一つは、我が国の米開放にかかわる農業分野、いま一つは、特にアメリカECが大変なやりとりをいたしております補助金分野、この三分野について進捗状況というものを簡潔に御説明いただければと思います。
  107. 須藤隆也

    須藤政府委員 御指摘のとおり、ウルグアイ・ラウンドはただいま十五の交渉分野に分かれまして、鋭意各国間で折衝が行われているわけでございます。  まず、最初の紛争処理の分野につきましては、先生指摘のとおり、この点はスーパー三〇一条とも関係することもありまして、日本としては非常に重要な分野ではないかということで、積極的に参加して日本の考えも主張しております。紛争処理につきましては、既に紛争が起こった場合の処理の仕方につきまして、例えばパネルを設置するというようなことが現在のガット協定でも書いてございますが、そのパネルの設置の手続とか条件とか結論の出し方とか、そういうものについてもう少し能率的にした方がいいのではないかというような点を含めて紛争処理の改善についていろいろな案が出されて、鋭意折衝が行われているところでございます。しかしながら、まだ幾つかの点について各国の立場が非常に離れている、分かれているというところもございます。例えばパネルに紛争がかけられたときに、その決定についてはコンセンサス方式とするのか、当事国も含めて全員のコンセンサスがないとパネルの決定は採択できないのかどうか、あるいは当事国を除いて、コンセンサス・マイナス・ツーと言っておりますが、当事国二つを除いてそのほかのメンバーで決定すればいいのか、あるいは紛争についてパネルの結論が出た場合に、それを実行しなかった国がある場合、サボる国がある場合に、どういうふうな強制的な手続をとれるかとか、そういうような問題につきまして、まだ各国の意見が大分離れておりますので、これから鋭意折衝が続けられるという状況になっております。  それから次に、米を含む農産物分野でございますが、農産物交渉につきましても、御指摘のとおり、ECアメリカとの立場が非常に違うものでございますから、各交渉分野横並びで見ましても比較的にはおくれているという状況にありまして、各国ともかなり焦りの気持ちがあります。先ほど御発言がありましたとおり、十二月に終結するためには七月までには主要な点について実質的な合意が必要じゃないかということで、農業交渉 につきましても、現在鋭意折衝が行われているところでございますが、交渉の中身につきましては、手続事項に関する合意に従いまして、ECアメリカ、それから我が国食糧安全保障に対する提案その他を出しております。それから輸出国中心とするケアンズ・グループというグループの提案、北欧あるいは韓国、そういうような関係国三十カ国からいろいろな提案がなされておりまして、それをどういうふうに調整していくかということで、これから七月にかけて実質的な交渉が始まるという状況になっております。  その関連で、ECアメリカとの間の補助金の問題でございますが、アメリカ提案によりますと、補助金につきましても、輸出を補助する輸出補助金というのと、それから国内農業政策を支持するための補助金、例えば国内の農産品の価格維持するための価格支持補助金とか、それから国内で構造調整を進めるための補助金とか環境維持のための補助金、あるいは道路とか輸送手段に対する補助金などいろいろな種類の補助金があるわけでございますが、アメリカの立場につきましては、輸出補助金は貿易そのものを直接的に歪曲するものであるからやめるべきである、ただし過渡期間は設けてもいいということで、五年の間に輸出補助金は撤廃すべしということを言っております。それから、そのほかの内国補助金につきましては、大体三種類くらいに分けまして、交通信号で言いますと、赤信号、青信号、黄色信号というふうに例えられておりますが、禁止されるべき補助金、許される補助金、それから一定の規律のもとに置くべき補助金というふうな三種類に分けて、補助金をやめるなり減らしていくなり現状維持のままにするなりということを提案しておるわけでございます。  これに対しまして、ECの方は共通農業政策というものを持っておりますので、共通農業政策の支えとなっておりますものの一つとして輸出補助金というのは非常に大事なものでございますから、輸出補助金については全廃はできない、農業支持政策全体を減らしていく中で少しずつ減らしていくというのであれば話し合いには応じられるけれども、輸出補助金の全廃には応じられない。それから内国補助金につきましても、少しずつ減らしていくということについては検討し得るけれども、アメリカ提案の言うような幅広い補助金を禁止するということについては同意できないというような、細かい点でいろいろ考えの違いがあるように見受けられます。
  108. 山田英介

    ○山田委員 結局、今の御答弁のところなんですが、御答弁のニュアンスからいたしますと、アメリカECも場合によってはお互い譲歩して、ECの方は農業保護政策の補助金について一定の譲歩をします、そのかわりアメリカの方もウエーバー品目につきまして輸入枠を拡大してください、やりましょう、双方そのような形で仮に妥協ができた場合に、一つは、やはり日本の米市場開放というところへ向けてアメリカECの開放せよという声が強くなるだろう。ですから、この補助金、農業保護政策をめぐるアメリカEC交渉の結果というのは極めて重大でございます。  それからいま一つは、ことしの一月に五カ国農相会議が行われているわけでございますが、ヤイター農務長官が、この米問題の解決なしにはウルグアイ・ラウンドはまとまらない、日本が米の自由化阻止に固執をすればウルグアイ・ラウンドをまとめることができず、西側経済にとって非常に大きな損失となるとかなり強い調子で批判をされた、こういう事情があるわけでございます。そうなりますと、両方いろいろ考えてみて、本年七月までの実質合意、年末終結へ向けまして何らかの形で米市場開放をせざるを得ないところに今追い込まれつつあるのではないか。  食糧安保論が展開をされておりますが、各国の理解はなかなか得られないようでございます。その食糧安保論というのは理解できたとしても、例えば、だからといって米一〇〇%自給論を容認するわけにはいかないとか、あるいはまた発展途上国についてはいざというときに要するに食糧を購入する外貨が不足しているわけですが、先進国はいつでもどこからでも外貨があるんだから買えるじゃないかというような反論といいますか切り返しに遭って、我が国政府のいわゆる一〇〇%自給論というのはどうも分が悪い。その辺の見通し、展望について、現時点でお考えになっておられますことを具体的に御答弁をいただきたいと思います。
  109. 須藤隆也

    須藤政府委員 先生ウルグアイ・ラウンドにおける農業交渉状況につきまして非常に御精通されておると思います。状況先生の御説明に非常に近いところにあるのじゃないかと思います。  御指摘のとおり、農業問題につきましては、日本は米という非常に難しい問題を抱えておりますが、日本だけではなくてほかの国も農業についてはそれぞれ非常に困難な国内の問題を抱えているわけでございます。例えばアメリカにつきましては、先ほど言及ございましたように、ウエーバー品目というのがございまして、日本関税分類で言いますと、今十四品目、乳製品とか砂糖とか落花生とかを含めまして十四品目がウエーバーとして、これはガットで認められた例外品目でございまして、ガット上は合法なわけでございますが、我が国から見れば合法ではあっても不公平じゃないかという感じも残りますので、アメリカはそういう十四品目もあるウエーバー品目をどうしてくれるんだというような問題。それからECにつきましても、先ほどちょっと触れましたとおり、共通農業政策というものを堅持しておりまして、課徴金、輸出補助金その他いろいろな形で保護をやっているわけでございますから、そういう各国の抱えている困難な農業問題並びに制度についても議論を行うべきであって、そういう議論を行う段階になれば、日本としても米の問題を含めて討議する用意がある、討議する、そういうふうにほかの問題と一緒に討議することが適切であるという立場を表明してきておりますが、いずれにしましても、米の問題につきましては非常に難しい問題があることは十分承知しておりまして、特に国会におかれましても、我が国における米及び稲作の格別の重要性にかんがみて決議をいただいているわけでございますので、国会の諸決議を体しまして、今後とも国内産で自給するという基本的な方針で交渉に対処してまいりたいというふうに考えております。
  110. 山田英介

    ○山田委員 二十三年ほど前でしょうか、一九六七年、ガット・ケネディ・ラウンドの穀物協定の際に、日本が同意しなければこのラウンドはまとめられないと迫られた経緯があり、そしてこの食糧援助条項をのんだというようなこともございました。  これは外務大臣に御所見をお伺いしたいのでございますが、ヤイター農務長官が、米問題で日本が同意をするといいますか、固執をし続ければ、このウルグアイ・ラウンドはまとまりませんと、同じようなパターンで迫られつつある、このように私は思うわけでございますが、外務大臣としてこの交渉の展望をどのようにお考えになっておられますか。
  111. 中山太郎

    中山国務大臣 先生指摘のように、この食糧をめぐるガットウルグアイ・ラウンド交渉は非常に難しい問題をたくさん抱えていると思います。昨年十月に日本で行われましたガットウルグアイ・ラウンドの非公式の閣僚会議、それから四月十八日には今度はメキシコが主催する会議がございますけれども、七月までいろいろと各国の抱える問題をそれぞれが議論をし合うという中で、政府といたしましては、御案内のように、国会決議の御趣旨また閣議決定の趣旨を踏まえてこれから交渉を続けていかなければならない、このように考えております。大変困難な問題を抱えておりますけれども、御支援をぜひお願い申し上げたいと思います。
  112. 山田英介

    ○山田委員 ことしの一月でございますが、台湾がガットの正式な加盟申請を行っております。一方の中国は一九八六年七月に加盟申請を行っておりますけれども、昨年の天安門事件、不幸な出来事がございまして、この手続等につきましては非 常に停滞をしている。  そこで、従来から台湾のガット加盟については中国の後というような考え方が主要国の間では一般的だったのだろうと私は思うのですけれども、中国とのかかわりで、我が国が台湾のガット加盟申請にどう対応するかということは、また極めて大きな問題であろう、こう思うわけでございます。  これは外務大臣、いかがなのでしょうか。我が国政府としては、この台湾のガット加盟申請、どのような御方針で臨まれておるわけでございますか。
  113. 中山太郎

    中山国務大臣 日本政府としては、中国がガットに加盟できる前に台湾が加盟することは非常に難しいという認識を持っております。
  114. 山田英介

    ○山田委員 もう一つガット関係ですが、マルタ会談でアメリカがソ連のガットへのオブザーバー参加資格を認める、支持します、こういうことになったわけでございます。今月上旬にたしか正式にオブザーバーとしての参加資格を求めてソ連が申請をしているはずでございます。一部報道などでは、このオブザーバー参加資格につきまして拒否するという基本的な方針でまいりました政府が方針を転換するのではないか、これを容認するのではないか、政府がそう内々決めたというところまで報道にかかったわけでございますけれども、この点につきましては、ソ連のガットへのオブザーバー参加資格について引き続き拒否をするという方針を持っていかれるのか、あるいは米国がそういうことで支持あるいは賛成という態度を表明しているということもあわせて、近い将来、シェワルナゼ外相の訪日が延期されまして夏以降と伺っているわけですけれども、そのあたりまでにこの拒否方針を容認に変えられるのかどうか、この辺の御見解をお伺いしておきたいと思います。これは大臣にお願いしたいと思います。
  115. 中山太郎

    中山国務大臣 本件に関しましては、ソ連から近々我が国に対して説明をいたしたいという申し出がございまして、その申し出を承った上で判断をいたしたい、このように考えております。
  116. 山田英介

    ○山田委員 最後の質問になりますが、バルト三国の一つリトアニア共和国のこの一、二日の動き、大変緊迫をしてきているのではないかと思われます。報道によりますと、ソ連軍が共和国共産党本部の建物占拠、脱走したリトアニア人兵士の強制連行あるいはランズベルギス議長がこれらの事態を踏まえて声明を出しまして、ソ連は武力行使を決めたかに見える、ゴルバチョフ大統領はリトアニアへの基本姿勢を変えたようだ、こう声明を発表して西側の支援を訴えている。あるいは二十六日、フィッツウォーター米大統領補佐官が、ソ連軍が撤退しなければ米ソ関係にも影響が生じる、こう初めて警告を発した、こういうここ最近の動きでございます。これは外務省としてどう掌握をされているのか。  それから、実はゴルバチョフ政権にとってアキレス腱とでも言うべき民族問題、もう一つ経済の再建、非常に厳しい課題を抱えている政権だと私は思うわけでございますが、これがアメリカの対ソ政策、そのかなめはマルタ会談以降ソ連のペレストロイカを全面的に支援をする、我が国政府の場合にはペレストロイカのよい方向を支持する、こうなっております。そういう姿勢の中で、先ほど大臣も答弁で触れられておりましたけれども、戦略兵器の削減交渉とか欧州における通常戦力の削減交渉あるいは米ソの通商法、これらを妥結させたい、こういう基本的な外交方針が組み立てられているわけですが、仮に武力行使、アメリカは、報道によれば何らかの形で武力行使をしている、こう認識をしているということでございますが、本格的なといいますか、そういう事態になった場合には、このアメリカの対ソ外交政策というのが大きく崩れるかもしれない。その意味でそういう大変重要な局面ではないか、実は私はこう心配をしているわけでございます。  そこで、現在リトアニア共和国の直面している事態と考え合わせまして、六月に予定されている米ソ首脳会談あるいはまた軍縮を目指しました交渉が妥結をすることについて及ぼす影響外務大臣としてどのように見通されておられるのか。  それから、あわせまして、天安門事件が起きました後には、日本政府として中国政府に自重を求めるとか自制を求める、あるいは懸念を表明するという形で対応なされたわけでございますけれども、今日のリトアニア問題につきまして、我が国政府としてソ連政府に対して懸念の表明あるいは平和的交渉によって解決するようにという形の何かアクションを現時点でとられてもよろしいのではないかなと思いますが、この点も含めまして大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  117. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  現在のリトアニアの情勢先生指摘のような大変緊張した関係にあることは事実でございます。ここでソ連が本格的な実力行使ということになりますれば、おっしゃいますように、東西関係の行方にも大きく影響するということがございます。しかし、ソ連もアメリカも、あるいは西側の国々もリトアニア問題の非常に難しい局面は十分に承知しておりますし、それからこれが民族自決にかかわる問題であるということも十分に承知しつつ、しかしソ連側の慎重な対応をなお求めるという立場で、ソ連に対しては非常に慎重な見方をしているというのが現状だろうと思います。これは困難な問題ではございますけれども、ゴルバチョフ書記長としても、実力行使がこれを本質的に解決することではないということから、やはり説得等いろいろな形の部分的な措置を含めながらやっていくことが今後とも続くのではないかと思いますので、そういう全般的な背景の中で、なお注目していきたいと考えております。
  118. 中山太郎

    中山国務大臣 今都甲局長からお話を申し上げましたけれども、このリトアニアの問題についてソ連政府との間に平和的に話し合いが進むことを日本政府としては心から期待しているということを、この委員会の席を通じて申し上げさせていただきたいと思います。  また、六月の米ソ首脳会談について、ただいま米ソ間で軍縮問題をいろいろと協議をされておりますけれども、私どもとしては、この軍縮問題を中心に米ソの首脳会談が成功裏に終わって、世界でさらに平和への新しい展開が期待されるような情勢がつくられることを念願しているものでございます。
  119. 山田英介

    ○山田委員 終わります。
  120. 柿澤弘治

    柿澤委員長 古堅実吉君。
  121. 古堅実吉

    ○古堅委員 アメリカガットに提訴した十二品目農産物輸入自由化要求の一つである砂糖調製品国内砂糖生産農家の願いに反して四月一日から輸入自由化されようとしています。政府は、この輸入自由化に伴い、もし関税率引き上げができなければ国内生産農家の打撃は避けられない、このように説明しておられます。  それでは、今回の措置で砂糖生産農家の打撃を完全に防止できると言い切ることができるかどうか、最初にお伺いしたい。
  122. 須藤隆也

    須藤政府委員 お答え申し上げます。  今回の譲許税率修正は、砂糖調製品輸入割り当て制度を撤廃するに当たりまして、砂糖価格安定制度の抜け穴を防止するという観点から、いわゆる砂糖類似品あるいは疑似砂糖関税率引き上げることとしているわけでございますが、その際、砂糖類似品関税率砂糖に対する関税及び調整金の合計水準と同じ程度まで引き上げる、先ほど御説明申し上げましたとおり、キログラム当たり九十円上乗せするということで、国内砂糖原料生産者への影響は避けられるのではないかと考えております。
  123. 古堅実吉

    ○古堅委員 砂糖含有率が八五%以上の砂糖類似品で小売容器に入っていないものは一キログラムにつき関税を九十円引き上げるが、八五%未満のものは逆に関税率を三五%から三〇%に引き下げられます。そのことに関連して、精糖工業会の話では、砂糖八四%、ブドウ糖一五%、それに化学物質一%を加えたものであれば、これまでより圧倒的に低い関税類似品日本に入ってくる、業界はこのようなものをねらってくる、このように懸念を表明しています。今回の措置ではこのよ うな懸念を払拭することができるかどうか、お伺いしたいのです。
  124. 熊澤英昭

    ○熊澤説明員 お答え申し上げます。  まず初めに申し上げたいことは、今回の譲許表修正ガットバインドの撤回が、大変困難な交渉を経て、こういう措置をとることができたということでございます。その過程で私どもが考えましたことは、先生指摘のとおり、砂糖価格安定制度の機能を確保するということでございまして、その際、これまで輸入されております商品の実態等から見まして、通常いわゆるその他の加糖調製品に分類されるものはかなり値段も高く、特別の商品として流通しているというのが実態でございます。そういう意味でいえば、もし砂糖価格安定制度のループホール、抜け穴的な輸入をするとすれば、相当程度砂糖を含有して輸入しないと経済的な効果がないというふうに理解いたします。  先生が例として挙げられた商品につきまして、仮にそういうものがあるといたしましても、甘味資源として砂糖の直接の代用として使うのはなかなか難しいということもございます。  いずれにしても、私どもとしては、八五%以上の砂糖の含有率でかつ値段の低いものに対して九十円の関税を課すということで糖価安定制度の機能を十分に確保できるものと考えております。
  125. 古堅実吉

    ○古堅委員 関税が引き下げられれば、もうけのためにそれを利用した新たな商品開発があり得る、それは当然のことだと考えます。精糖工業会が言っている懸念は一切ないと言えるのかどうか。今、ない、そういう立場からの見通しについての御見解であったかと思うのですが、本当にそういうことが起こり得るのじゃないかという懸念があるだけに、皆さんの見解としてここで明らかにしてほしいのですが、念を押してもう一度お聞きします。
  126. 熊澤英昭

    ○熊澤説明員 お答え申し上げます。  あるいは繰り返しになるかと思いますけれども、これまでの加糖調製品輸入、通常これまで自由化された世界輸入されておりますいわゆる加糖調製品と申しますのは、コーヒーの調製品とかココアの調製品あるいは加糖あんと申しましてあんこの調製品等がございます。そういった加糖調製品輸入実態、これはかなり砂糖分が入っておるわけでございますが、さらにこれまでIQをとっておりましたいわゆるその他の加糖調製品輸入実態、この分野は割合値段が高くて、特定の商品、例えばジュースのもととかゼリーのもととか、輸入分量としては非常に小さいものでございますけれども、そういった製品の輸入、これは砂糖の含有率は大体五割から六割といった製品が多いわけでございますが、そういったこれまでの加糖調製品輸入実態等から見ましても、含有率八五%以上のかつ値段の安いものに対して九十円の定額関税を課すということで糖価安定法の機能は十分確保できるというふうに考えております。
  127. 古堅実吉

    ○古堅委員 日本の七万三千戸の砂糖生産農家を本当に守ろうというのであれば、輸入自由化そのものをやめることだというふうに考えます。それを関税率引き上げることによって対処しようというのであれば、砂糖含有率の基準を八五%ではなく、八〇%とか七〇%とかいうふうにもっと引き下げて安全圏を確保する、それがベターではないか、そのようにも考えますが、御意見を伺いたいと思います、
  128. 熊澤英昭

    ○熊澤説明員 今回の八五%以上の砂糖でかつ価格の安いものに九十円の定額関税を課すという結論に達するまでの経緯といたしましては、今回のいわゆるその他の加糖調製品ガットの場で違反というふうに判定をされた後に日米政府協議があったわけでございますが、その過程で私どもが考えましたのは、糖価安定法の機能を担保する、守るという観点でございます。その際に、基本的な考え方といたしましては、糖価安定制度と申しますのは、砂糖価格調整輸入される砂糖国内生産される砂糖との価格調整を通じまして国内産砂糖を守る、安定的な生産を確保するという法律でございますので、糖価安定制度の機能を確保する意味で言えば、極めて砂糖に近いものの抜け穴的輸入を防止するという観点からの考え方が出発点でございます。  そういう意味で、一体このその他の加糖調製品の中でどのような基準がいわば砂糖に極めて近いものであるかという判断をいたしたわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、これまでの加糖調製品輸入実態等を勘案した上で、砂糖に近い類似品としての線を砂糖の含有率八五%以上というふうに判断をしたわけでございます。私どもとしては今回の関税引き上げ措置で糖価安定制度の効果は確保できるというふうに考えております。
  129. 古堅実吉

    ○古堅委員 輸入制限撤廃でこれからは関税率だけが障壁となりますが、一キログラム九十円という関税率の設定そのものが現在の変動相場制のもとでは不安定な状況に置かれることは免れないと思います。  八九年のモントリオール閣僚会議へ参加された農水審議官が、八九年四月号の「世界の農林水産」誌で、「最近のように為替の振れが大きくなってくると、かなり低い程度まで下がった関税について話し合うだけでは、なかなか貿易の問題が解決できないという局面が出てきている」と述べています。アメリカECから九十円の税率を下げろと要求してくることが考えられるのではないかと思われますが、見通しなどについてお伺いしたいと思います。
  130. 熊澤英昭

    ○熊澤説明員 私どもとしては、現在「米国政府あるいはECとの間でこの関税率合意したわけでありますので、今後ともこの関税率を継続してまいりたいというふうに考えております。
  131. 古堅実吉

    ○古堅委員 お答えいただけないのですが、与えられた十五分の時間、もう過ぎようとしていますので、これで質問を終わろうと思いますが、最後に、この二議案に対する私の基本的な態度を明らかにしておきたいと思います。本日は討論の時間が設定されておりません。  今、沖縄、奄美ではサトウキビの収穫期です。政府の発表によれば、サトウキビ一トン当たり生産費が二万八千八百三十三円。ところが農家の手取り価格が二万四百九十円です。一トン当たりのその差額八千三百四十三円の赤字、そういう価格を決定してキビ作農民に押しつけています。沖縄の農業の基幹作物であるサトウキビは、まさに危機的困難な状況下に置かれています。それは政府農産物輸入自由化政策と無関係ではございません。そこに大きな要因があると考えています。  このような状況に加えて、今回の砂糖調製品輸入自由化は、形では確かに生産農家への打撃を避ける方法で実施されようとしているとはいえ、結局はあれもこれも砂糖調製品等の外国からの輸入がふやされる道をつくるものです。これは将来にわたってじわじわと真綿で首を絞めるように生産農家に影響していくことは否定できないと考えます。今求められているのは、アメリカの要求に屈した輸入自由化の施策の撤回です。したがって、提出された二案件には、以上のような基本的な立場で反対いたします。  以上で終わります。
  132. 柿澤弘治

  133. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 まず、日米並びに日本・EECとの譲許税率合意文書についてお伺いいたしますけれども、この二つの文書は、国内砂糖生産農家のこうむる打撃を避けるために必要な措置である、このようになっておりますけれども、もしもこの関税率引き上げが実施できない場合、このときに予想される影響はどういうものがありますか、まず御説明をお願いします。
  134. 須藤隆也

    須藤政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、この関税引き上げが実施できない場合には、我が国が現在砂糖輸入に関しまして関税及び調整金を付加して国内産砂糖価格の安定を図っているところでございますが、ことしの四月一日から砂糖調製品輸入割り当て制度が撤廃されることとなりますと、その中の砂糖類似品が現在の関税率のもとでは三五%という低い関税率で大量に輸入される可能性がありまして、そうなりますと、国内産砂糖に比較しまして格安の値段で市場に出回ることとなるおそれがあるわけでございます。  先ほど来御説明いたしましたように、現在のままの関税ですと、一キログラム百三十五円で輸入砂糖が出回ってしまうというおそれがあるわけで、国内産の百七十五円と比べて価格差があり過ぎるということになりますので、その場合には砂糖に関する現在の価格の安定制度の実効性が失われるんじゃないかということを恐れるわけでございまして、そうなりますと、国内砂糖原料生産農家七万三千戸の生活が打撃を受けるおそれがあると判断いたしまして、所要の関税引き上げ交渉をしてまいったわけでございます。
  135. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私に与えられた時間は十五分間でありますので、要点のところをばしっとお答えいただければ幸いだと思います。  今審議しておりますその対象の一つが、日本ECとの関係の問題でありますけれども、ECの問題についてちょっとお伺いをいたしますが、ECは一九九二年末の市場統合に向けて今準備中でありますが、昨年からいわゆる東欧諸国の変革が非常に激しく、また、そのスピードも大変なものであるわけでありますが、この問題がECの市場統合にどのような影響を与えると考えるか、大臣にお伺いをいたします。  これは、この市場統合の問題が提起され、論議されてきたときには、特に両ドイツの統合問題というのは、このような状況になるというふうには予測されていなかったと私は思うのですね。そういう意味で、特に両独統合の問題がこのEC統合の問題を早めるようになるのか、あるいはブレーキをかけるような格好になるのだろうか、そういうようなことを含めて大臣見解をお伺いいたします。
  136. 中山太郎

    中山国務大臣 東ヨーロッパの変化というものがECにどのような影響を与えるかというお尋ねが第一にございましたが、東ヨーロッパの変化それ自身が、むしろECの統合という新しい経済統合に向かっての動きが東ヨーロッパを刺激したことだと私は認識をいたしております。  それで、今後どのような形になっていくかということにつきましては、今までコメコン体制の中でジョイントベンチャー等が行われてきましたけれども、これからは二国間でのジョイントベンチャーが相当なスピードを上げて進んでいくものだというふうに理解をいたしております。  また、東西ドイツの統合問題につきましては、先生指摘のように、予測もできなかったようなスピードで現在進んでおりますが、あくまでもドイツの統合は民族の自決権によって行われることが好ましいということでございまして、私どもとしては、そのような見解を持って、このドイツの統合を見ておるわけでございます。
  137. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今の話は、東西ドイツの再統一が行われてきますと、その周辺の国々からすればかなり脅威と見られていることも事実だと思うのです。そのことがこのECの統合という問題について、促進するファクターになるのかあるいはブレーキをかけるようなファクターに動いていくのか、そのあたりはどのような見解を持っておられますか。
  138. 中山太郎

    中山国務大臣 御指摘のように、新しいドイツの統一された国家としての人口、経済力というものは、ヨーロッパにおける一つの大きな力となって現存していくだろうと考えております。それについていろいろな国がいろいろな見方をしておることも事実でございますけれども、あくまでもこれがECの統合の妨害になるものではない、あくまでも戦勝四カ国の協議の上でこういう問題がスムーズに進められるものだろうというふうに私は考えております。
  139. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今戦勝四カ国云々という話がありましたけれども、それに関連して、この東西両ドイツの統一の問題で、今統一ドイツがNATOに残留をするのかあるいは中立化するのかという問題が言われたりいたします。日本として考えたときに、これはどういうふうな形になった方が望ましいと大臣は考えられますか。
  140. 中山太郎

    中山国務大臣 先ほど申し上げましたこと、ちょっと一部補足させていただきますと、戦勝四カ国プラス二カ国の話でございます。  それから、日本としてどのように考えるかというお尋ねでございますが、日本といたしましては、新しく生まれるドイツがヨーロッパに不安を与えないような形で存在することが好ましい。そういうことで、NATOに所属することの方がヨーロッパのこれから先の平和のために好ましいと考えるかどうか、これからヨーロッパの各国の協議の推移を見きわめていかなければならないと考えております。
  141. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 日本としてはどういうふうにあってほしいと考えるかというあたりは、大臣としていかがですか。
  142. 中山太郎

    中山国務大臣 いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、戦後の新しい、しかも予測せざるスピードで起こってくる両ドイツの統合でありますから、戦勝四カ国及び周辺国の合意が得られるような形で協議がこれから重ねられていく、その経過をやはり日本政府としては十分見ていかなければならない、私はそのように現在考えております。
  143. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 東欧の問題にちょっと戻りますけれども、欧州復興開発銀行の設立の問題があるわけでありますが、まず欧州復興開発銀行はソ連も対象としているのでしょうか。
  144. 木幡昭七

    ○木幡政府委員 お答え申し上げます。  欧州復興開発銀行につきましては、現在設立の準備交渉が鋭意継続中でございまして、その交渉にはソ連も参加しておりまして、加盟の意向を表明いたしております。しかし、ソ連がこの銀行からの融資等の面で受益するかどうか、その問題についてはなお交渉参加国間で検討しているところでございまして、我が国としましては、本銀行が東欧支援を主たる目的とするという点にかんがみまして、慎重にこの点は検討すべきものだというふうに考えております。
  145. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 実は、今ソ連はゴルバチョフ大統領というふうになっていろいろと努力もされているようでありますが、なかなか経済的にも大変な状況にあるようであります。そして日本からソ連に対して、いわば経済再建と言っていいのでしょうか、そのための支援をすべきではないかとかいうようないろいろな議論がされたりするわけでありますけれども、先般、自民党の小沢幹事長が訪ソを予定されているということが新聞等にも報道もされておりましたけれども、大臣から見てソ連の経済再建のために日本が支援をする必要があると考えられますか。
  146. 中山太郎

    中山国務大臣 日ソの関係におきましてソ連の経済改革に支援をする必要があると考えるかというお尋ねでございますが、日本政府考え方としては政経不可分という原則がございます。しかし、一方におきまして、人的交流というような面も私どもは進めなければならないと考えております。昨年の十一月に政府がかかわる経済改革に関するあり方について調査団が日本に来られまして、これを政府は受け入れてできるだけの便宜を図ったわけでありますが、今後ともそのような形で知的な協力を進めていかなければならない、このように考えております。
  147. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今の問題にも関係するわけでありますが、昨日、一昨日、ソ連・東欧大使会議が行われたようであります。最近の東欧なりあるいはソ連の状況をそれぞれの大使の皆さん方が集まられて議論をされ、それによって今後東欧並びにソ連に対して政策を変えていかなければならぬ、あるいは手直しをしていかなければならぬ、こういう認識を持っておられるのではないかと思うのですが、どういう方向で考えていこうとされているか、お伺いいたします。
  148. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  現在の激動するソ連・東欧情勢背景といたしまして、一昨日、昨日と議論をいたしました。その結果、東欧における民主化、市場経済の改革と いうのは、今や後戻りできないものとなっているということで、その成功を支援するために、日本政府としても、西側諸国と協調して、これをやっていかなければならないという強い意見がございました。それで、そういう観点から東欧諸国との二国間関係も強めていかなければならない。それから、二、三年が重要であるので、民間からの投資が出ていけるような環境整備もしなければならないというのが東欧についての大きな考えでございました。  それから、ソ連につきましては、今のソ連の変化が日ソ関係正常化のために大きな契機となり得るという認識がございますが、しかし他方、ソ連の対日政策がまだ変わったという兆候はない。そういう中で、日本政府としては基本原則をしっかりと守りつつ、拡大均衡という形で関係を進めながら、その契機をつかむ必要があるというのが結論でございました。
  149. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 最後に一つだけ。先ほどリトアニアの問題がございましたけれども、そのときに大臣は、平和的に解決することをこの場で期待をいたしますというお話でございましたけれども、具体的にアメリカなりECなりに、ただ見守っているだけじゃなくて、何らかのアクションをとっているのでしょうか、とるつもりはあるのでしょうか。
  150. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 現在、特に具体的なアクションをとっているということはございません。
  151. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 終わります。
  152. 柿澤弘治

    柿澤委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  153. 柿澤弘治

    柿澤委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許修正し又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  154. 柿澤弘治

    柿澤委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許変更についての欧州経済共同体との合意に関する文書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  155. 柿澤弘治

    柿澤委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  156. 柿澤弘治

    柿澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  157. 柿澤弘治

    柿澤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時十六分散会