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1989-10-30 第116回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十月三十日(月曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  十月二十七日     辞任         補欠選任      久保  亘君     三石 久江君      近藤 忠孝君     諫山  博君  十月三十日     辞任         補欠選任      田村 秀昭君     二木 秀夫君      中曽根弘文君     成瀬 守童君      永田 良雄君     永野 茂門君      遠藤  要君     岩本 政光君      清水嘉与子君     木暮 山人君      三石 久江君     角田 義一君      國弘 正雄君     喜岡  淳君      村沢  牧君     渡辺 四郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         林田悠紀夫君     理 事                 伊江 朝雄君                 石井 一二君                 下稲葉耕吉君                 平井 卓志君                 穐山  篤君                 矢田部 理君                 安恒 良一君                 太田 淳夫君                 吉岡 吉典君     委 員                 青木 幹雄君                 井上 章平君                 岩本 政光君                 遠藤  要君                 合馬  敬君                 片山虎之助君                 北  修二君                 久世 公堯君                 木暮 山人君                 清水嘉与子君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 中曽根弘文君                 永野 茂門君                 成瀬 守重君                 二木 秀夫君                 前島英三郎君                 山岡 賢次君                 稲村 稔夫君                 梶原 敬義君                 喜岡  淳君                 國弘 正雄君                 竹村 泰子君                 角田 義一君                 田  英夫君                 堂本 暁子君                 村沢  牧君                 本岡 昭次君                 山本 正和君                 渡辺 四郎君                 猪熊 重二君                 白浜 一良君                 和田 教美君                 諫山  博君                 粟森  喬君                 池田  治君                 足立 良平君                 西川  潔君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   海部 俊樹君        法 務 大 臣  後藤 正夫君        外 務 大 臣  中山 太郎君        大 蔵 大 臣  橋本龍太郎君        文 部 大 臣  石橋 一弥君        厚 生 大 臣  戸井田三郎君        農林水産大臣   鹿野 道彦君        通商産業大臣   松永  光君        運 輸 大 臣  江藤 隆美君        郵 政 大 臣  大石 千八君        労 働 大 臣  福島 譲二君        建 設 大 臣  原田昇左右君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    渡部 恒三君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 森山 眞弓君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  水野  清君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       阿部 文男君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  松本 十郎君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       高原須美子君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       斎藤栄三郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  志賀  節君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  石井  一君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        公文  宏君        内閣法制局長官  工藤 敦夫君        内閣法制局第一        部長       大森 政輔君        警察庁長官官房        長        浅野信二郎君        警察庁刑事局保        安部長      森廣 英一君        警察庁警備局長  城内 康光君        総務庁長官官房        長        山田 馨司君        総務庁長官官房        交通安全対策室        長        加美山利弘君        総務庁人事局長  勝又 博明君        総務庁行政管理        局長       百崎  英君        北方対策本部審        議官       鈴木  榮君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        児玉 良雄君        防衛庁装備局長  植松  敏君        防衛施設庁総務        部長       吉住 愼吾君        防衛施設庁建設        部長       黒目 元雄君        防衛施設庁労務        部長       竹下  昭君        経済企画庁国民        生活局長     末木凰太郎君        経済企画庁物価        局長       栗林  世君        国土庁長官官房        長        北村廣太郎君        国土庁計画・調        整局長      長瀬 要石君        法務省民事局長  藤井 正雄君        法務省刑事局長  根來 泰周君        公安調査庁次長  古賀 宏之君        外務省経済局長  林  貞行君        外務省条約局長  福田  博君        大蔵省主計局長  小粥 正巳君        大蔵省主税局長  尾崎  護君        大蔵省証券局長  角谷 正彦君        大蔵省銀行局長  土田 正顕君        国税庁次長    岡本 吉司君        文部大臣官房長  國分 正明君        文部大臣官房総        務審議官     佐藤 次郎君        文部省生涯学習        局長       横瀬 庄次君        文部省初等中等        教育局長     菱村 幸彦君        文部省高等教育        局長       坂元 弘直君        文部省高等教育        局私学部長    野崎  弘君        文化庁次長    遠山 敦子君        厚生大臣官房総        務審議官     加藤 栄一君        厚生大臣官房老        人保健福祉部長  岡光 序治君        厚生省年金局長  水田  努君        農林水産大臣官        房長       鶴岡 俊彦君        農林水産省構造        改善局長     片桐 久雄君        農林水産省食品        流通局長     鷲野  宏君        林野庁次長    小澤 普照君        運輸大臣官房審        議官        兼内閣審議官   井上徹太郎君        運輸省地域交通        局長       早川  章君        運輸省航空局長  丹羽  晟君        郵政省電気通信        局長       森本 哲夫君        労働大臣官房長  若林 之矩君        労働省職業安定        局長       清水 傳雄君        労働省職業安定        局高齢障害者        対策部長     七瀬 時雄君        建設省建設経済        局長       望月 薫雄君        建設省都市局長  真嶋 一男君        建設省住宅局長  伊藤 茂史君        自治大臣官房長  小林  実君        自治大臣官房総        務審議官     芦尾 長司君        自治省行政局長  森  繁一君        自治省行政局選        挙部長      浅野三郎君        自治省税務局長  湯浅 利夫君    事務局側        常任委員会専門        員        宮下 忠安君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○予算執行状況に関する調査     ─────────────
  2. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 予算委員会を開会いたします。  予算執行状況に関する調査を議題といたします。  それでは、これより本岡昭次君の質疑を行います。本岡君。
  3. 本岡昭次

    本岡昭次君 まず最初に、災害遺児育英制度問題について伺います。  どのような人たち災害遺児と言うのか、政府側説明を求めます。
  4. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) お答えいたします。  私どもは一応、政府部内でこういう者が災害遺児であるという確定的な定義ではございませんけれども、次のような原因両親の一方あるいは双方が死亡した子供、または次のような原因両親双方あるいは一方が重度高位障害を持つことになった子供を指すというふうに考えております。一つ道路外交通事故、例えば鉄道事故海難事故飛行機事故。それから二つ目自然災害でございますが、風水害、雪害、地震、津波、山崩れなど。その他といたしまして、火事、水難事故ガス事故転倒事故機械事故、高所からの転落など、あるいは犯罪被害などを私ども災害遺児というふうに考えております。
  5. 本岡昭次

    本岡昭次君 今説明のあった災害遺児実態はどのようになっているか、政府調査をしておるようですから報告していただきたい。
  6. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 私どもは詳細な調査は必ずしもしておりませんが、交通遺児育英会実施した調査によりますと、六十年七月一日現在で、小学生で約六千弱、中学生で約四千五百、それから、交通遺児育英会実施した実態調査は小中学校だけでございますので、その調査結果に基づきまして年齢別人口に対する割合で推計をいたした数字高等学校の数でございますが、これが約六千弱、トータルで一万七千程度と言えるかと思います。
  7. 本岡昭次

    本岡昭次君 その遺児たち生活状態はどういう状態ですか。
  8. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 詳細な実態については私ども把握いたしておりません。
  9. 本岡昭次

    本岡昭次君 内閣の方で、政府として調査をやったのじゃないんですか。
  10. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 文部省としては調査いたしておりません。
  11. 公文宏

    政府委員公文宏君) 政府の方といたしましては調査をやっておりません。先ほどの文部省データ文部省交通遺児育英会から聞きましたのが一つデータでございます。
  12. 本岡昭次

    本岡昭次君 中曽根総理がこの実態調査するように指示をしたというように僕らは聞いているんですが、どうですか。
  13. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) お答えを申し上げます。  いずれにいたしましても、育英制度の問題でありますから……
  14. 本岡昭次

    本岡昭次君 そういうことを聞いてないですよ。
  15. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) ちょっと考え方を申し述べたいと思います。
  16. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、文部省のその育英制度のことなんて聞いてないじゃないの、私。
  17. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) 考え方をお聞き取りいただきたいと思います。お願いいたします。  いずれにいたしましても、育英制度の問題でありますので私ども文部省がこれに対応をいたさねばならないんだなと、このような考え方を持っております。ただこの問題については、委員承知のとおり、与野党党首会談を受けて実務者協議が昨年の五月以来行われているところでございます。この場で、災害遺児育英奨学を目的とする新たな財団法人を設立しようという案も出ているわけであります。  そこで、私どもといたしますと、災害遺児各党専門家会議、これによりまして検討の速やかな結論お願いいたしたいなと、そうした中においてさらに突っ込んだ具体的なものをつくり上げていきたいなと、こう考えておる次第でありますので、どうぞひとつよろしくお願いを申し上げます。
  18. 本岡昭次

    本岡昭次君 これは昭和六十年の二月十四日に当時の中曽根総理調査の陳情、調査の確約を得る、金丸自民党幹事長にも要請、調査費がつけられるよう最善の努力をする、こういうことでスタートしているんですよ。何もやっていないんですか。
  19. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) お答えいたします。  先ほど委員から御指摘でございました中曽根総理答弁しているというのは、六十年二月六日の答弁に、「特に災害遺児実態調査につきましては、御趣旨を体しまして、関係団体等も協力していただいて努力したいと思います。」というような答弁をいたしております。私ども、その答弁趣旨は、先ほど私が交通遺児育英会実態調査に基づく災害遺児数について御説明申し上げましたが、それが六十年七月一日現在の数字でございます。この「関係団体等も協力していただいて努力したい」というのが交通遺児育英会実態調査であるというふうに理解をいたしております。文部省として独自に交通遺児実態について調査はいたしておりません。
  20. 本岡昭次

    本岡昭次君 時間があればそこのところにもう少しこだわりたいんですが、先に進みます。  十月十九日、衆議院予算委員会において民社党玉置議員がこの問題の質問をされています。そのときの政府答弁について質問をいたします。  そのときに文部省は、災害遺児育英会は「船舶振興会に極力早くスタートさせてくれるようにお願いをしている」と答弁をしています。一体どこでだれがそのようなことを決めましたか。
  21. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) もう先生承知かと思いますけれども、この問題についての経緯について若干申し上げまして、それから御説明をいたしたいと思います。  経緯につきましては、六十二年の十二月に与野党党首会談災害遺児育英制度の創設の問題が話題になりまして、それに基づきまして六十三年五月に各党災害遺児に関する専門家に集まっていただきまして専門家会議が設置されました。自民党、社会党、公明党、民社党のそれぞれの国会議員先生方が集まった会議でございます。その会議の第四回の専門家会議、六十三年五月でございますけれども公営競技団体からの援助を求めて交通遺児育英会にその実施を頼むという案が一応各党によって合意されまして、その合意に基づいて文部省から交通遺児育英会意向を打診してもらえないかという指示がございました。その指示に基づきまして、私どもとしまして交通遺児育英会に打診をいたしました。ところが交通遺児育英会は、公営競技団体からの財政援助では所要の金額が期待できないというような理由で、専門家会議での合意に基づく専門家会議案は引き受けられないという回答をいただいたわけでございます。その旨私ども、六十三年六月の災害遺児専門家会議に御報告いたしたところでございます。  ところで、その後、六十三年九月に第六回の災害遺児各党専門家会議が開催されまして、その席に当時の橋本自由民主党幹事長代理も大変この問題について御心配になり出席いたしました。そこで、それならば日本船舶振興会災害遺児のための育英会を創設してもらって、そこで事業をしてもらったらどうであろうかという提案がなされたわけでございます。それで、その提案に基づきまして、その後日本船舶振興会にいろいろな関係者実施方を要請したわけでございます。この案につきまして各党意向を打診されたところ、必ずしも全党的な合意が得られなかったということでございます。それが昨年の十月でございました。  特に、合意が得られなかったというのはいろいろ理由があったんだと思いますが、交通遺児育英会から育英奨学事業を受けております奨学生が中心となりまして、災害遺児高校進学をすすめる会という会をつくっております。その会が、自分たちで何とか災害遺児高校進学についての奨学金制度と申しますか、奨学金事業をやっていきたいというような意向もございまして、災害遺児高校進学をすすめる会が必ずしも賛成はしていないというようなこともございまして、各党コンセンサスが得られなかったというふうに私ども漏れ聞いているところでございます。  そういうような事情もございまして、船舶振興会の方としましては、どうせこの事業を善意で受け入れるということならばみんなから喜んでもらう形で実施したいということで、先ほど申し上げました災害遺児高校進学をすすめる会と船舶振興会で何回か会いまして、さらに現在書簡を交換して、お互いに率直に意見の交換をしているというふうに私ども聞いております。  その船舶振興会書簡の中には、もしか船舶振興会のやることに心配ならば、すすめる会の関係者を、災害遺児高校進学をすすめる会の学生を仮に船舶振興会財団をつくってやる場合には理事に入れてもいいから、入ってもらうような形で誤解のないような運営をしたいということまで提案をして、相手のその真意を確かめているのが現在の段階であるというふうに私ども理解をいたしております。  そういう意味で、私ども船舶振興会のそういう努力を多とすると同時に、災害遺児高校進学をすすめる会の関係者学生船舶振興会のそういう真意を十分理解していただいて、そこで合意ができて、そしてその合意に基づいて災害遺児高校進学をすすめる会の皆さん方もこういうことで賛成しているという形で四党専門家会議にその経緯を御報告して、四党専門家会議で最終的な結論を出していただきたいというようなことを含めまして、私どもそういう形で早く解決されることを心から期待しているということを御説明もし、御答弁申し上げたわけでございます。  ただ、何分時間の関係上、やや経緯等をはしょって御説明したものですから、先生が今御指摘のような形でちょっとわかりにくい答弁になったことは大変遺憾であるというふうに考えております。  そういうような経緯でございます。
  22. 本岡昭次

    本岡昭次君 文部省はこの問題の窓口であって、何の窓口かというと、先ほど言った与野党議員懇談会合意したものをもってやるわけでありまして、橋本幹事長代理がそこで提案されたことは事実であります。しかし、それはそこに集まっている与野党各党合意を得たものじゃないわけで、各党はそれを持ち帰って協議をするというところで皆終わっているわけであります。したがって、文部省が「船舶振興会に極力早くスタートさせてくれるようにお願いをしている」ということは、これは何も与野党議員懇談会の決定を受けて、合意を受けて、そこでまとまったものをあなた方が窓口としてやっているということではないわけでありまして、これはやり過ぎ、文部省窓口としてまことに出過ぎたことを今これやっている、答弁していると私は思うんですが、これは取り消した方がいいんじゃないですか。
  23. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 今長々と御答弁申し上げましたとおりに、与野党コンセンサスが得られなかったということの理由一つとして、災害遺児高校進学をすすめる会の皆さん方船舶振興会にやってもらうことに批判的だということも一つ理由になっているようでありますとお答えしましたが、そのために船舶振興会災害遺児高校進学をすすめる会といろいろ話し合いをしている、そして書簡も交換しているということでございまして、私どもは、その日本船舶振興会災害遺児高校進学をすすめる会の諸君の方々との誤解が解けて、話し合いがうまく前へ進んでくれればいいなということを強く期待しているということでございます。  で、それを私先ほど申し上げましたような理由で、やや舌足らずの答弁衆議院でいたしたことはまことに遺憾ではございますけれども、私どもが積極的に進めておるというのではなくて、話し合いが早く結論を得て合意が得られればいいなということを期待しているということでございます。その合意災害遺児高校進学をすすめる会と船舶振興会合意ができたらば、こういうように関係者の間で話し合い合意ができておりますけれども四党の専門家会議としてはいかがお考えになりますかと、もう一度御検討いただきたいというふうに専門家会議に諮ることといたして、そのつもりでございました。
  24. 本岡昭次

    本岡昭次君 逆なんですよ。この与野党協議会のところでまとまったことを、合意できたことを文部省窓口になってやるという筋書きがずっと五年間続いているんですよ。ところが途中で、その与野党合意していない船舶振興会のところに持っていくという話を、あたかも文部省がそこから仕事を引き受けたような形で言っております。これは明らかに話が逆でありまして、今のような進め方について文部省はやめるべきだというように私は思います。  そこで、その前段にあります当時の橋本幹事長代理の問題なんであります。橋本大蔵大臣もこの予算委員会答弁をされておりますね。そこで、あなたの答弁の中にはやっぱり二つ私は問題があると思います。一つは、「せっかく各党合意をし、数年越しで話し合い一つ解決策が目の前にあるわけでありますから、」とこういうようにおっしゃっている。「せっかく各党合意をし、」とおっしゃっていますけれども、私の持っている資料の中では何も合意したことはないんですよ。合意したことは何もない、この船舶振興会の問題。だけれどもあなたは、各党合意してそして一つ解決案が目の前にあると、こうおっしゃっているんですが、そこはどうなんですか。
  25. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 船舶振興会お願いをしてというのは私の案であります。そして、「各党合意をし、」というのは、災害遺児方々に対して何らかの対応策を講じようという合意があったわけであります。その中で話し合いがされ、行き詰まりの中で私も求められて私の案を出しました。そういうことを申し上げております。そして私から申し上げたかったことは、いずれにしてもどこが合意するしないというよりも、現に災害遺児方々があるわけですから、その遺児に対してどうしてあげるかという原点に返って話し合っていただきたい、そういうことは私はそれぞれの方々にも申し上げてまいりました。
  26. 本岡昭次

    本岡昭次君 だから、合意していないことを今文部省がやっているからそれをやり過ぎだ、出過ぎだ、控えなさいと私は言っているんです。そうでしょう、文部省
  27. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) お答えいたします。  ただいまも大蔵大臣からお話があったわけでありますが、いずれにいたしましても、かわいそうな子供たちがいることは事実です。そして毎年毎年その子供たちは大きくなるわけであります。ですから、何とかして少しでも早くということの熱情がそんなことになったのだと、ひとつこう御理解をいただきたいと思います。  そこで、各党協議の結果、それを進めるのが文部省の立場である、これは厳然たる事実でありますので、どうぞひとつ災害遺児各党専門家会議、この御結論を早く出していただいて、私どもそれに忠実に沿っていきたいと思います、よろしくお願いします。
  28. 本岡昭次

    本岡昭次君 だから、各党合意ができてから文部省は動くべきですね。船舶振興会のところで解決をするように努力していますなんということは出過ぎたことだと私は言っているんですよ。今の大蔵大臣の答弁でそれははっきりしたわけで、各党合意は、何もそれは船舶振興会のところでやるという合意はないということでありますから、そのとおりなんです。  そこで大臣、もう一つ気になる言葉が、「既存の団体のエゴイズムと言っては恐縮」だがと、「恐縮」という言葉を入れておられるんですね、「エゴイズムが事態の解決をおくらせている状況は」とこういう言葉、「既存の団体のエゴイズム」、これは何ですか。
  29. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) たまたま私はそのプロセスをある程度承知する立場におりまして、どこの団体がと申し上げるつもりはありませんが、初めお引き受けをいただけるかと思った団体がお断りになり、そしてその団体がまた途中から御意見を変えられたとかいろいろなプロセスはございました。これは率直に事実としてあったことは委員も御承知のとおりであります。  私どもからしますと、災害によって遺児となられた子供たちをどうして支えてあげるかということであれば、それぞれの団体が御自分の主張とか御自分の立場とかそういうものに固執する余り、状況を二転、三転せられることは決して好ましいことだとは考えておりません。それは今日も私はそう思っております。  それだけに、今も申し上げましたように、災害によって遺児となられたその子供たちをどうして支えてあげるかという原点から考えて物事を進めていっていただきたいと願う気持ちは、今もそのとおりであります。
  30. 本岡昭次

    本岡昭次君 だからといって「エゴイズムが事態の解決をおくらせている」という発言は、私は穏やかでないと思うのです。やはりこの発言は撤回されて、そしてこの問題の初心に返って各政党間を中心に話し合いをやらなければ、ここの大臣の「エゴイズムが事態の解決をおくらせている」というこれは、今後非常に大きな問題になると思うのですが、これは釈明をされておいた方がいいのじゃないですか。
  31. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは大蔵大臣としてではなく、当時、自由民主党の幹事長代理という立場で各党党首会談に陪席をし、そのときの空気の中で、各党の代表の方々が話し合われる中に私もお呼びを受け、私の考えをお述べをさせていただき、そしてその席上でどなたが賛成をされどなたが反対をされたということは申し上げませんけれども各党一定の評価の中で持ち帰っていただいたという事実は御承知のとおりであります。  しかし、それが結果としていろいろな方々の御意見の中で今日も実らず、その結果、災害遺児方々に対しての対応策がおくれているという事実もまた現実のことであります。ですから、エゴイズムと申し上げた言葉がいけなければ、それは私は取り消しましょう。しかし同時に、船舶振興会がこの問題に乗り出そうとした善意が善意として受けとめられていないということも、また私は関係者方々にお考えをいただくべきことではなかろうかと考えております。
  32. 本岡昭次

    本岡昭次君 問題は大臣の答弁をあれこれと細かく論議することじゃありませんので、私は今の大臣の答弁で了といたします。  そこで、問題は、去年、その当時の竹下総理また小渕官房長官が社会党初め各党に対して行ってきた災害遺児育英制度づくりの前向きの決意の表明、これが政府により具体化されていないということなんです。各党合意というのも結局のところ突き詰めて見れば政府に試案を提出させるということなんです。その政府がたたき台、試案を出し得ていないというところに最大の問題がある。昨年の三月二十五日にこの予算委員会で久保亘社会党議員の質問に対して小渕官房長官が、党首会談を経て各党の強い要望だ、政党同士の約束でもある、今後政党間で詰める、政策関係者と話し合うなど万般の手順を経てお約束が果たせるように努力、というふうな趣旨答弁をして今日に至っているわけで、挙げてこれは、各団体のエゴイズムとか誠意とかという問題じゃなくて、政府の側が政党と話し合って関係団体との話し合いを詰めてやっていくということになっているわけなんです。  そこで、海部総理、この問題を海部総理にも引き継いでいただかなければならぬわけで、一日も早く政府の案を出して、そして各党協議会のところへ出して、この解決が図られるよう、そして、一たん公党が国会を通して約束したこと、ある意味では公約ですよね、これが一日も早く実現できるよう総理の決意を伺っておきたいと思います。
  33. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) この問題につきましては、今るるここで質疑応答がありましたように、きょうまでの経緯があることを私も十分報告を受けて承知しております。  各党の実務者の皆さんによる協議が重ねられ、その協議の場で災害遺児育英奨学を目的とする新たな財団法人を設立するという案も出されており、その取り扱いをめぐって今各党話し合いが続いておると私は報告を受けております。政府といたしましても、そういう各党のお話し合い趣旨を十分に踏まえながら、でき得る限り対応を進めていかなければならないと、このように心得ます。
  34. 本岡昭次

    本岡昭次君 竹下総理の当時、四月一日から実施できるように努力するとかいう大変前向きな答弁があって、これはもう具体的に実行に移されているんですね、交通遺児育英会を支えているその人たちによって。だから、もう少し踏み込んだ前向きの決意がなければ、この問題は各党間といいながら、政府がどうするかというその問題がまず基本にあって、政府がたたき台を出して各党がということになっておるんですからね。もう少ししっかりした答弁をいただきたいですね、あなたの決意を。
  35. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) お答えをいたします。  所管大臣といたしまして、今のお話を承り、そして各党間の協議が調いますようにでき得る限り精力的に調査も申し上げ、そして会議も開いて結論をつけるように努力申し上げます。
  36. 本岡昭次

    本岡昭次君 海部総理に要望しておきます。  要するに、この与野党議員懇談会というのを一日も早く開いてもらう、そこに具体的な案を政府の側から出して、そしてこの問題が解決するように海部総理の大きな政治的な手腕を私は期待したい、こう思っておりますので、ひとつよろしくお願いをいたします。よろしいですか。
  37. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 御質問の御趣旨を踏まえて、せっかくの実務者会議でありますから、そこで政府も今とり得ること、考えておることを率直に御報告して御協議賜るようにしたいと思います。
  38. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、文教政策について二、三お聞きしておきます。  中島元文部大臣が会長をしている民間教育振興協会とはどのような組織なんですか。
  39. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) お尋ねの民間教育振興協会でございますが、これは発足はことしの四月十二日、学習塾それから書道塾、そろばん塾といった九十の団体が会員となったものでございまして、形としては任意団体でございます。
  40. 本岡昭次

    本岡昭次君 その塾を中心とした団体が社団法人の認可書類を文部省に提出しているというふうに聞いておりますが、そのとおりですか。
  41. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) この民間教育振興協会は、現在のところ、お話しのとおり、公益法人に向けましての相談は事務的なレベルでお受けしているところでございますけれども、具体的な申請を受けるというような段階にはまだ至っておりません。
  42. 本岡昭次

    本岡昭次君 石橋文部大臣の塾に対する考え方を聞いておきたいと思います。
  43. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) お答えをいたします。  公益法人化に向けて事務的な相談を現在受けておると承知をいたしております。
  44. 本岡昭次

    本岡昭次君 塾についてですよ。
  45. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) まだ具体的に申請を受けている段階には至っておりません。  そこで、認可の問題につきましては、申請を受けました段階で、その目的、事業、資産等について十分審査をいたしまして検討をいたしたく存じております。(「塾に対する文部大臣の考え方を聞いておる。何を答えておるんだ」と呼ぶ者あり)失礼を申し上げました。御了承いただきたいと思います。  塾についての考え方でありますが、文部省といたしますと、いわゆる初等中等教育前期までも含めまして、やはりきちっとした現在の制度の中でやっていかねばならないというのが基本的な考え方であります。  ただ、けいこごと等そうした意味での塾、こうしたことにつきましてはまた別の考え方を持っておりますが、いわゆる学習ということについては今申し上げた考え方であります。  以上です。
  46. 本岡昭次

    本岡昭次君 あなたは教育改革に関する特別調査会長代理をされましたね。そのときに「教育改革への提言」というものをなさっておられるんですよ。その中で「塾についての考え」ということで、こういうふうに述べておる。  「塾はいわば公平な義務教育に咲いたあだ花的性格があるわけです。」、なかなかいい表現でございますね。「塾教育を無用にするような選抜評価方法の抜本的改善と、望ましい子供の成長についての親の意識の変革を強くおし進めることを提案します。」、あなたはこうおっしゃっている。どうなんですか。
  47. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) ただいまのことは、たしか私が書いたことであろうと存じております。書いたことでございます。  そこで、その考え方の基本は、どこまでも義務教育課程においては義務教育の中のことで十分意を達するようなところまでやるべきである、そこまでやっていくことが一番もとでありますよという考え方をそのようなことであらわしたわけであります。
  48. 本岡昭次

    本岡昭次君 塾は公平な義務教育に咲いたあだ花的性格というふうにあなたはおっしゃっているんですが、今でもそのように思っておられますね。
  49. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) お答えいたします。  現実的にはあることは事実であります。そして、日本社会は、はっきり申し上げまして、どの会社に親がやりたいな、子供が行きたいなということになりますと、どの大学に入ったらいい、高校に中学に、あるいは幼稚園にまでその考え方が及ぼされております。そこで、現実的には塾というものがあって、そこに行っていることも事実であります。そうした中において、私はやはりそのようなことを社会の仕組みそのものを直しながらの中において、義務教育というものは今の制度の中にやっていくようにしていかねばならないんだな、その考え方であります。  以上です。
  50. 本岡昭次

    本岡昭次君 時間がたつのでもったいないから、また別の機会にやります。さっぱりわかりません、私はもう。こんな文部大臣に日本の教育を任せられぬじゃないですか、本当に。何ですか、一体。しっかりしてくださいよ。冗談じゃない。  それで、文部省は、民間教育振興協会、要するに塾を民間教育事業一つとしてこれから大いに発展させていこうというこの仕組みに対して、あなたが結構ですと言って公益法人として認可を与えるということは——あなたはあだ花的性格がある。あだ花というのはおのおの咲いたらなくなるということでしょう、こんなものに公益法人の性格を文部省が与えるとしたら私は大変なことになると思う。だから、それはやらないということをはっきり言ってくださいよ。通産省はまた別だ、それは。
  51. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) 考え方として私は今その本を書いたときの考え方をお話し申し上げたわけであります。いわゆる今問題になっておりますことにつきましては、これは先ほどの答弁のように十分検討をいたしまして、そして対処をいたしたい、具体的なものが挙がってきた場合は十分対処していきたい、このような考え方です。(「あだ花に肥料をやるかどうかと聞いている」と呼ぶ者あり)
  52. 本岡昭次

    本岡昭次君 今も出ましたように、あだ花ですか、これに肥料をやってもしょせんはあだ花なんですよ。そういうことは文部省、やらないでください。お願いしておきます。  それからもう一問。石橋文部大臣はこの本の中に、教育憲章というものをつくらなきゃいかぬ、これはもう絶対必要だ、教育基本法の上に教育憲章をつくることが教育改革の一番大事なことなんだ、こんなことを言っているんですが、今でもこのように、教育基本法の上に教育憲章をあなたはつくろうというふうに文部大臣として思っておられるんですか。
  53. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) 現在はそのような考え方は持っておりませんです。
  54. 本岡昭次

    本岡昭次君 別の機会にまた議論させていただきます。  それでは、リクルート事件の問題をお尋ねいたします。委員長にこれはお伺いします。  十月二十日、当委員会がスタートしましたときに、私は関連質問としてこのリクルート事件における政治的道義的責任、政治家の政治的責任を究明するためにぜひとも次の資料が必要だということをここで要求しました。委員長は、最終的に当委員会が終わるまでに結論を出すというふうにそこで約束をされたのでありますが、きょうが最終日であります。どういう結論が出たのか、この場でひとつ私に教えていただきたい。
  55. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 極めて重要な問題でありまするので、理事会において目下協議中であります。
  56. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、きょうじゅうにこの問題の結論を聞かしていただけるのですか。
  57. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいま申しましたように、目下鋭意協議中であります。
  58. 本岡昭次

    本岡昭次君 それであれば、私はその結論をここでお聞かせ願えるまで以下の質問を留保させていただきます。
  59. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 本岡昭次君の残余の質疑は後刻に譲ることにいたします。     ─────────────
  60. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 次に、久世公堯君の質疑を行います。久世君。
  61. 久世公堯

    ○久世公堯君 今国会の二つの課題は、政治改革と消費税を含む税制改革につきまして徹底した論議を行い、国民の理解と納得を得ることだろうと思います。  政治改革につきましては衆参の代表質問予算委員会を通じてかなり質問がなされておりますが、あらゆる問題の根底にあるのが政治改革だと思います。既に提案をされております法案はもちろんのこと、一日も早く政治改革の実を上げることが喫緊の国民的課題と思います。政治改革、さらにこれと関連性のある行政改革につきまして、幅広い視野と将来的な展望に立って御質問を申し上げたいと思います。  まず、総理お願いしたいと思いますが、今国会における総理の所信表明演説で総理は、政治への信頼の回復こそ内閣の最も緊要な課題である、そのために政治改革の前進に誠意を込めて努力を続ける決意である、このように述べておられます。  また、その前に、総裁選挙の立候補の際の政治改革の御意見として、政治改革の第一は、政治家一人一人が内に政治倫理を自覚し、国民の政治への信頼を回復することであるとおっしゃっておられますし、また総理御自身のお言葉として、信なくば立たず、国民とともに歩み、国民の信ずる政治の中で勇気を持って政治改革を進める、このようにおっしゃっておられるわけでございます。  私は、当委員会で総理の御答弁を拝聴しておりますと、総理は誠意に満ちたまなざしと明快なお言葉をもって質問者を通して国民に対して理解と納得を求めておられるように拝見をいたしました。  そこで、政治と国民の立場から改めて総理の政治改革に関する基本的なお考えを承りたいと思います。
  62. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 委員指摘のとおりに、私は総裁候補として立候補しましたときに私の考え方を述べる中で、今一番大切なことは自由民主党が政治改革を行うことである、それは私がそれまで党の政治改革推進本部の行動隊長という立場にございまして、政治改革のいろいろな作業に私も参加をしながらやってきたという体験と、同時にまた、これからの国民の皆さんに政治不信を取り除いていただくためには、まず自由民主党が先頭に立って政治改革をしなければならぬ、こういう決意を述べたわけであります。したがいまして、施政演説のときも今先生指摘のとおりの私の決意を申し上げてまいりました。それは言うまでもなく、政治家の一人一人がまず政治倫理を自分の心の中に立てること、これは言うをまちませんが、それだけで制度、仕組みを何も変えないでは前進しないではないかといういろいろな御批判や御意見等もございます。党の政治改革推進本部の議論もまさにそこに尽きたわけであります。  ですから、党が決定をして、政治資金の少しでも明朗化、公正化に前進するための法律、あるいは選挙を通じていろいろ疑惑を呼んだり批判を受けた資金の出の方の禁止、いわゆる寄附行為の禁止であるとか、あるいは政治資金をもって株を運用することを禁止するとか、いろいろな内容を盛り込んだ法律案を党がつくって前国会に提案しておるわけでございます。こういったものが御議論を通じて一日も早く適切な結論を得て成立をして、政治改革の第一歩を踏み出すことができますように私は心から御期待を申し上げておる次第であります。
  63. 久世公堯

    ○久世公堯君 自由民主党は、政治改革の実現のためにことし一月政治改革委員会を設置して精力的に審議を行い、政治改革大綱をまとめました。私もその起草委員の一人をやらせていただきました。取りまとめるに当たりましては、国民各層二万人のアンケート、それから有識者会議の提言を踏まえました。また、党所属の国会議員全員参加による三日間にわたる徹底的な論議を参考といたしました。私は、この政治改革大綱こそ政治改革のまさに指針だと思います。  この大綱は、御承知のごとく、政治改革の手順と推進体制について当面の改革と中長期の課題とに分けております。大綱を策定いたしました自由民主党は、まずリクルート問題についてけじめの方針を出し、政治家一人一人による政治倫理の自覚を促し、関係議員はこの方針に基づいてしかるべく対処をいたしました。大綱に示しております当面の課題につきましては、今総理がおっしゃいましたように、法案を提出し、また資産公開法の制定とか行為規範、政治倫理審査会規程の改正強化による政治倫理確立の方策につきまして、野党の審議促進を促している最中でございます。また、中長期課題につきましても、現在、政治改革推進本部を中心に専門の委員会を設置して、十一月の初めごろを目途といたしましてかなり進捗をしていると私は承っております。こういうことに対する総理のお考えを承りたいと思います。
  64. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 当面の問題につきましては、先ほど先国会に提出しました法案のことに触れ、また中長期の問題については先生も起草委員のお一人でございまして直接筆をとっていただいたわけでありますから、中長期的な問題の中に何が含まれておるのか、これはよく御理解願っておると思います。結局、中長期の問題の中では、国会の決議となりました衆議院のいわゆる定数是正の問題もございます。選挙区制度の問題もございます。政府といたしましては、これは今選挙制度審議会の方に諮問をいたしまして、遅くとも来年三月をめどに抜本的な御検討を願い答申をいただくようにしておりますので、この問題につきましては予断と憶測でもって今物を言うことは差し控えさしていただきたいと思いますが、党の御議論の中では、少なくとも政策中心の政党本位の選挙ができるような制度を根本的に考えるべきである、この御議論が深まっておったことは私も理解をいたしております。そして、できれば明年の十一月、国会開設百周年を記念して、そんなころまでにきちっと方向性が出て具体的な姿になっていくように党の方でも御議論を続けておっていただくと承っております。  さらにまた、リクルート事件の反省に立っての政治とお金の関係については、今非常にたくさんお金が要るという現実もございます。これをほっておいて、そしてさらに集めろ集めろだけではいけませんので、集めろというよりも、お金が根本的にかからないような方向を中長期的に考えるにはどうしたらいいか。これは政党の持っております公的作業あるいは国と地方に対する政党の性格、こういったものを考えていきますと、政党法の議論にも入ってまいりますが、公費の負担というものも考慮すべきではないかという御議論が強かったことも事実でございますし、私もまたそういった方面でドイツのやっております方式あるいは北欧の国のやっております方式、アメリカのやっております方式、そういったいろいろな公的扶助の方法等も御議論願っておると思いますし、またそれは検討に値する項目ではないか、こう思っております。  いずれにいたしましても、政府は選挙制度審議会の答申の中で、三月に答申を受けたならばそれに従って早急に対応を考えていきたいと思いますし、党の方の御議論も中長期にいろいろなテーマで御議論なさっておる、党の改革の問題も派閥に関する問題も全部含まれておると私は理解しておりますが、党側でさらに促進いただくことを期待いたしております。
  65. 久世公堯

    ○久世公堯君 政治改革は一般にはリクルート問題をきっかけに浮かび上がった政治課題と理解されております。もちろんリクルート問題のようなことは二度と起こらないように謙虚に反省し、政治倫理の確立を図ることが出発点だろうと思います。  ところで、政治改革はこのようなリクルート問題に類する問題が起こらないような改革を進めるだけではございません。最近、社会の伏流として根強く存在しております国民の政治離れ、政治や行政に対する不信を取り除き、国民の政治に対する夢を的確迅速に実現し得るような新しい政治、行政の仕組みを創造する改革、実はこのことは自民党におきましては数年前からこれに取り組んでおりまして、わかりにくい国会の改革を行う方法とか、そういうことについて検討しているわけでございますが、それは総理のお言葉をかりるならば、国民とともに歩み、国民の信ずる政治の中で、政治を国民のものにするための改革だと私は思うわけでございますが、こういう政治、行政の仕組みを創造するような改革、これについて総理の所信をお伺いいたしたいと思います。
  66. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 御指摘をいただきましたように、今政治改革をしなければならないということは、リクルート事件に端を発した一連の政治不信を厳しく受けとめて、加速されておることは事実でありますけれども、しかし自由民主党としては、リクルート事件の起こりますもっと前に、例えば一八八三年の英国の腐敗防止法なんかをみんなで研究してきまして、お金と政治の関係をもっときれいにしていかなければならない、お金のかからないような選挙制度を打ち立てていくにはどうしたらいいかということはかねがね議論が続けられておったことは、これは間違いございません。そしてそのときに、国民とともに歩む政治、国民の信ずる政治の中で政治を国民のものにするための改革を行わなきゃならぬということで、党は常設機関等もつくって一生懸命努力をしてまいりましたが、それが不幸にしてリクルート事件によって大きな節目を迎え、そして加速をされたと私は受けとめております。  これは一つの節目でございますが、この機会にやはり政治不信を脱却して、今まで議論をし続けてきた問題点で解決できるものがあったならばみんなで力を合わせて、一歩前進二歩改革で解決していこうという機運も党内に盛り上がってきたことも先生指摘のとおりで、あのような政治改革大綱ができたのだと私は思っておりますので、私は政治改革大綱に盛り込まれておるその他の問題につきましても、今後皆さんとともにこれが実現するように努力をしてまいりたいと考えております。
  67. 久世公堯

    ○久世公堯君 ありがとうございました。  次に、行政の総合調整と政治の役割について御意見を承りたいと思います。  最近、社会経済的な環境が変化をいたしており、また国民のニーズも多様化いたしております。行政は量的にも質的にも変化をし、新しい行政需要がいろいろ多くなってきております。あらゆる行政に国際的な視点、あるいは技術革新、情報化というような視点が必要とされておりますし、また古くて新しい問題でございますが、行政の総合性、総合調整というものが求められております。国民生活の視点から行政と政治について御質問を申し上げたいと思います。  まず、外務大臣にお願いをいたしたいと思いますが、最近は各国の経済が発展し続ける中で、国境を越えた経済活動が進展しております。経済の相互依存関係が深まっております。国内問題と国際問題というのは相互に絡み合っております。外交上の重要課題は即最大の国内の政治問題、また国内政治の重要課題の多くが国際的な視点に立って解決すべき問題となっております。貿易摩擦、農産物の自由化問題、地球環境問題、雇用、労働問題、また、後ほど詳しくお尋ねしたいと思いますが、最近の構造協議問題等が典型的な事例でございます。  外交と内政は車の両輪と思いますけれども、ひとつ行政、政治に取り組む外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  68. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 委員指摘のように、情報化が進み国際化が進むこの現代の社会において、外交即内政、内政即外交だというのが私の基本的な考え方でございます。そういう意味からいたしまして、国際化を進めていくということが日本の国内政治の大きな課題の一つであろうと考えておりますけれども、それぞれ文化、歴史というものがそれぞれの国家にございます。また、国民の長い間の生活慣習というものがございますから、なかなか相互理解を十分にいたすということも一つの障害となっている点もなきにしもあらずだと思いますが、できるだけ、国際社会の中で経済大国となりました日本は、友好関係のある国家間に信頼される国家として国際社会にこれから生きていかなければならない。そういう意味では、外交の持つ重要性、また内政との関連性、そういうものを十分踏まえてこれからやっていかなければならないと考えております。
  69. 久世公堯

    ○久世公堯君 外務大臣に重ねて日米構造協議問題につきまして承りたいと思います。  日米の経済関係は、最近極めて緊密化いたしております。緊密なるゆえにまた問題が生じておりますことも不可避でございます。従来は物の輸出入に関する貿易問題が中心でございましたが、最近ではサービスや技術の交流に関する問題も数多く発生をいたしております。さらに、九月以来の日米構造問題協議は、日米がそれぞれ抱える構造問題を取り上げて、両国の経済構造調整の推進につなげようとする新しい試みだろうと思います。  あと一週間後ぐらいにたしか二回目の会議が控えていると思います。この問題に関する具体的な問題としては、流通問題であるとか土地利用問題等非常に複雑多岐にわたっておりまして、多くの省庁の所管事項と関連をいたしております。このような複雑な問題に対処して、米国との話し合いを適切かつ整合性のとれたものにしていくためには、外務省がひとつ中心になっていただいて、総合調整を図ることが必要だと思います。  日米構造協議問題を含めて、この日米経済関係への対応につきまして、総合調整という見地から外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  70. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 外務省は日本の外交の総攬者でございまして、各省でそれぞれいわゆる相手国のそれの対象となる省と個別に協議をされておりますけれども、国家といたしましては外務省が、先生お説のとおり外交の総損的立場に立って物事の調整をやる責任を持っておると考えております。特に日米間は、御案内のように日本の一方的な貿易黒字が大幅に計上されておりまして、この問題をできるだけ早期に解決して、日米双方が拡大均衡をやっていく、そして信頼と友好を深めていくということが極めて外交上は大切だと考えております。  そういう意味で先般、海部総理のワシントン訪問におきます日米首脳会談におきまして、アルシュ・サミットで合意が行われました構造調整協議、こういうものを米国側はできるだけ早く結論を出してもらいたい、できれば来春までに結論を出すようにひとつ日本側に協力を求めておきたい、こういうお話がございましたが、海部総理は、この問題は両国が双方にいろいろとお互いの問題点というものをお互いが認識し合いあるいは議論し合って解決する問題であって、時期を切っていつまでに結論を出すということはなかなか難しい問題だと自分は思う、しかし日本としてはできるだけ誠意を持って努力をして期待にこたえるようにやってまいりたいというお話し合いが行われたのであります。  私は、十一月、さらに一月、三月、こういう日程で日米の構造調整協議が引き続き行われていくわけでございますが、そのほかにやはりいろいろとスーパー三〇一条に絡まる問題点がございます。これも明年三月ごろまでが一つの大きな山になってまいるのではなかろうか。しかし、日本政府といたしましては、米国のスーパー三〇一条によって一方的にこれらの問題を日本に押しつけるという考え方の中で、これらの話し合いをするべきことには理解をいたしかねるという政府の姿勢を相手方に示しております。  いろいろと問題が複雑でございますし、私どもは絶えず日米間の貿易の構造がどのように均衡されていくか、これは外務省を初め関係各省が真剣に取り組んでいかなければならない重要な日本の課題である。そういう中で、問題解決をただ単に日を重ねておくらせるだけではなしに、具体的にやはり解決ができるように積極的な努力をやらなければならない、このように考えております。
  71. 久世公堯

    ○久世公堯君 外務大臣、ありがとうございました。  次に、国土庁長官にお伺いをいたしたいと思います。  国土庁は国土政策に関する総合調整官庁としての責務を持っておりますが、必ずしも十分な機能を発揮しているとは思われません。一昨年の総合保養地域整備法や昨年の多極分散型国土形成促進法の運用につきましては、国土庁の調整機能を発揮されまして、農林、運輸、通産、建設、自治といった国土政策関係の五省庁とともにその成果を上げておられることにつきましては敬意を表しております。  土地政策につきましても同じようでございます。しかし、東京一極集中を排除し、均衡ある国土形成を図ることはけだし内政の最大課題だと私は思います。一層の御奮起をお願いしたいと思います。  ただ、国土庁が総合調整官庁としてその機能を発揮するためには、素手では難しいわけでございます。昔から色男、金と力はなかりけりとこう申されます。私は、歴代の国土庁長官は美男の方が多いわけでございますが、国土庁は醜男であっても金と力を持っていただきたい、このように思うわけでございまして、国土庁には幸い国土総合開発調整費がかなりあると思いますので、そういうものをひとつ御活用になってこの調整の妙を図っていただきたいと思いますが、長官の御所見を承りたいと思います。
  72. 石井一

    国務大臣石井一君) 御激励を賜ったというふうに理解をいたしまして、今後も国土の均衡ある発展のために、非常に多岐にわたっておりますが努力を続けたいというふうに考えております。  予算面におきましては御指摘のとおりでありまして、十分な威力を発揮でき得るかどうかという点で確かに問題の指摘理解できるわけでありますが、しかし我が国の行政は伝統的にそれぞれ各省によりましてそれぞれの事業が達成されておるわけでありますから、そこを総合的にいかに調整するかということに力を注いでいくべきではないかというふうに考えております。そういう観点からいたしますと、国土庁の中にございますいわゆる国土総合開発事業調整費というのは、私いろいろこれを研究いたしまして、非常に何と申しますか、味のある予算措置ではないか、今後これをさらに拡充していくということが非常に必要ではないか。  具体的に申しますと、この調整費の中に事業調整費と調査調整費というのが御承知のとおりございます。事業調整費は、公共事業等がいろいろあっちこっちで進んでおりますが、その進度の調査を検討し、特別におくれておる、そこがおくれておることによって全体に画竜点睛を欠くような状況が起こるというような形の地域振興プロジェクトというふうなものがたくさんございます。具体的に申しますと、立体の交差があり、そして団地が進んでおるのに、その間に一本の橋がないためにすべての全体の計画が前へ進まないというふうな性格の問題。これに対しまして、国土庁が全体的な調整をするという意味からその事業費を使っていくというふうなことは、私は各省のそれぞれの努力を集大成するという意味で非常に大きな意味があるというふうに考えております。  調査調整費に関しましても各地域におきましていろいろの調査が進んでおるわけでありますけれども、私はここでその中身を検討いたしましたときに、例えば新奥の細道の整備計画調査、そしてほかにもたくさんございますが、大阪駅北地区の総合整備計画調査、前者は日本の古い伝統、文化、ゆかりのある松尾芭蕉の歩んだ道をどう今後ふるさと創生という観点から新しい観点において創生していくか。これは文部省におかれましても、建設省におかれましても、いろいろ関係することでございますが、まず均衡ある国土の発展という観点から国土庁がこれの原則的な調査をし、その後各省に御相談を申し上げる。  第二のプロジェクトは、歴史、伝統とは全く変わった新しい都市開発の問題でございます。しかしながら、そこにはあらゆる交通の渋滞があり、いろいろの新しい問題が相ふくそうし、それぞれ別々にやっておりますために、そこに統合ということができません。そういう場合にはやはり国土庁がそういう調査費、そういう権限を行使しまして、いろいろな面からこれを完成さしていく。こういう意味では、この事業調査費というのはまだまだ金額は少のうございますけれども、大変大きな意味があるというふうに思っております。  要は、今後各省とも十分連絡、連携をとり、協力を求めながら、さらに与野党の諸先生にお力添えをちょうだいし、国土庁の予算をさらにさらに強化していただきまして、今申しましたような点でバランスのとれた国土の発展を進めさしていただきたいと思いますので、御協力のほどをお願い申し上げる次第でございます。
  73. 久世公堯

    ○久世公堯君 国土庁長官、ありがとうございました。  国土庁に限らず国務大臣を長とする総合調整官庁、科学技術庁、環境庁、経企庁、総務庁、まだほかにもございますが、これらの各省は立派な大臣と優秀なスタッフを持っておられますが、共通して色男の悩み、経済企画庁長官はそうじゃないかもしれませんが、を持っておられるかと思います。総合調整というものは政治改革としても極めて重要でございますので、ひとつ総理、この認識を深めていただきたいと思います。  さて、次に内閣官房長官にお伺いいたしたいと思います。  今から二十七、八年前、第一次臨時行政調査会が三年間開かれました。私も当時そこに出向いたしておりました。当時、行政の総合調整というものが大きな課題でございまして、その主査は小倉武一、今の税調会長でいらっしゃいました。小倉さんは、議院内閣制のもとでは行政の総合調整は政府与党の調整機能にかかっているということで、当時自民党の三役にいろいろと質問に伺いました。当時若き公務員でありました私どもに時間を割いて行政と政治の機微にわたる数々のお話を賜ったのは、当時政調会長をしておられました田中角榮先生でございました。第一次臨調はこの結果、内閣機能の強化を打ち出しまして、その一つの改革として「内閣官房長官は、国務大臣をもって充てる」という法律改正をいたしました。この当時までは「国務大臣を以て、これに充てることができる」ということで、国務大臣でない官房長官もおられたわけでございます。これもその一つの改正でございました。  その当時と比べまして総合調整はますます重要になってきております。特に最近のように、行政が複雑になりまして、かつ国際化とか情報化が進むにつれまして、行政の総合調整の必要性はますます高くなっていると思います。各省庁のセクショナリズムも依然として強く、いわゆる族議員問題も政治改革の大きな課題になっております。政治改革大綱でも族議員の反省を指摘いたしておりますが、ひとつ、内政、外交にわたる総合調整、それも行政の分野だけではなくて政治の面も含めて内閣の機能と思われますが、官房長官の御所見を承りたいと思います。
  74. 森山眞弓

    国務大臣(森山眞弓君) 先生指摘のとおり、非常に行政あるいは政治とのかかわりが複雑になっております。今承りますと、昭和二十年代からそのような問題意識が常にありましてそのときそのときに対応してこられたということでございますが、昭和六十年の六月にも臨時行政改革推進審議会の答申におきまして、新たな世の中の動き、国際化でありますとか情報化でありますとか、そのような新しい動きを踏まえまして、このようなことに対して的確機敏な対応をする必要がある、そして内閣を中心とする総合調整機能の強化は喫緊の課題であるという御答申をちょうだいいたしました。政府といたしましては、この答申の趣旨を最大限に尊重いたしまして、昭和六十一年の七月一日、内閣官房等の組織の再編成を行った次第でございます。重要な課題につきましては適宜適切に関係閣僚会議その他を使いまして行政施策の総合的な調整に努力をしているところでございまして、今後とも内閣官房におきましては、急増し、複雑、重大化してまいりますさまざまな調整課題に対しまして適切に対処してまいりたいと考えます。
  75. 久世公堯

    ○久世公堯君 ありがとうございました。  次に、自治大臣に総合調整と地方分権というような見地からお尋ねをいたしたいと思います。  「ここはお国を何百里 離れて遠き満州の」で始まる軍歌「戦友」は、明治三十八年につくられたものでございまして、もう八十数年になっておりますのに国民に歌い続けられております。戦争を知らない若者もカラオケなどで歌っております。これは日本人の情感に訴える何物かがあそこにあるのだろうと思います。あの歌の主人公は武雄という人ですが、普通歌われておりますものは十四番まででございますが、本当は百五十三番まである長い物語風の歌でございます。  自治大臣、この武雄が最後に村長になるわけでございますが、それを御承知でございましょうか——いや結構でございます。私も自治省に三十年近くおりましたけれども、だれも教えてくれませんでした。この政治の世界に入ってから知り得たことでございます。その百五十二番と百五十三番、最後のところでございますが、実はこの武雄という人は、戦場から帰りましてから、農業にいそしむ傍ら亡き友を墓前に弔い、傷病兵を慰問し、そして金鵄勲章をもらったわけで、さらに実業に身を投じ、最後に郷党の尊敬を集めて村長に選ばれたわけでございます。その百五十二番と百五十三番にはこのように書かれております。「国の政治は自治体が本 自治の本こそ一村の 村長たるべき人にあり」、「一村まづよく治まつて 一国始めて隆々と 富みも栄えもいたすなり武雄の任務は軽からず」。政治は自治がもと、一村よく治まって国初めて栄える。いかがでございますか。自治大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  76. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 大変すばらしい御見識を賜りました。私も「戦友」が大好きで、節は余りつけませんけれども十四番までよく歌うのでありますけれども、その先までは知りませんでした。  地方自治は、これは言うまでもありませんが、民主政治の基盤であり、それから内政のかなめであります。特に、今考えさせられますのは、これは昭和の後半、戦後我が国は、貧しさから豊かさを求めて国民の皆さんがひた走りに働き続けて、今や世界にうらやましがられるような国の富をつくったわけです。残念ながら全国三千三百の市町村は、この経済の急激な発展の中にあった経済格差、これが地域格差をもたらしてしまっている。村、町、市、さっき国土庁長官からも話がありましたけれども、大都市では交通渋滞のいらいらに苦しむ、マイホームは持てない。また北海道や東北や九州の山村に行くと、広い土地、大きな家がありながら、そこには若者たちが魅力を持って定住してくれない。こういったようなことを考えると、まさに平成の年は地方の時代でなければならない。海部内閣の内政の柱は地方自治を強化することでなければならない。久世委員は自治大学の校長でもありましたし、また地方自治のあるべきすぐれたる著書等を今拝見させていただきながら、二十一世紀のすばらしい地方自治、それにはやはり自治体にもっと強い自律性、自主性、こういうものを持っていただく地方自治を進めるために頑張ってまいりたいと思いますので、御指導のほどをお願いいたします。
  77. 久世公堯

    ○久世公堯君 ただいま県方自治体に自主性というふうなお話がございましたが、地方分権の確立とか地方自治に対する権限移譲ということは、行政改革や政治改革が論議をされるたびごとに論じられながら、ほとんど何一つ実ることがなかった問題でございます。総論賛成各論反対の典型的な例だろうと思います。また、新聞によりますと、近く新行革審の国と地方の関係等に関する小委員会が何か報告書を出すということがちらほら出ておりますけれども、また総論賛成各論反対に陥りはしないかという危惧の念を持っております。  そこで、国民に身近な問題は国民に近いところでその意見を反映して行われることが望ましいということは当然でございまして、理念は分権にだれも異論を唱えないわけですが、個々の行政や事務事業というものは各省庁が所管をいたしておりまして、許認可とか国庫補助金に支えられているために、現実には中央集権になっているのが偽らざる姿だろうと思います。  最近におきましては、行政の広域化とか均一化とか専門化とか情報化とか、これをニューセントラリゼーションというような言葉でも言いますが、こういうような時代的な要請によっていよいよ集権に拍車がかかっているかと思います。かつ各省庁のセクショナリズムも依然として強い実態でございます。行政だけではございません。政治が行政における中央集権と縄張り主義を支えていると思います。いわゆる族議員がその典型的な例でございます。  地方自治を尊重した行政、政治体制を築き上げること、それも総論だけではなくて権限移譲や財源配分などの各論を含めて行うことが行政改革にとってもまた政治改革にとっても必要と思いますが、自治大臣の御所見を承りたいと思います。
  78. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 委員指摘のお話、まさにそのとおりであると思います。行革審等でもあるいは党のいろいろの会合でも、地方への権限移譲ということに反対する人はありません。ますますこれから権限の地方移譲をしなければならない、こう言っておるわけでありますけれども、なかなか現実的には、これは長い役所の歴史でもありますが、縦割り行政の中でまたそれぞれの役所のセクショナリズムの中で進んでいかない。そういう中で、今一生懸命新行革審でもまた専門委員会でもやっていただいておりますから、また委員のお力添えをちょうだいして、まさに先ほど申し上げたように、地方自治体は地域住民の生活に一番密着しておる行政団体でありますから、福祉を充実するのにも、地域開発をやるのにも、立派な教育をやるのにも地方自治体がしっかりしていかなければなりませんので、これは委員の今のお言葉をよくかみしめて、これからすばらしい地方自治を進めるために頑張ってまいりたいと思いますので、御指導を賜りたいと存じます。
  79. 久世公堯

    ○久世公堯君 ただいまの地方分権の考え方に基づいて地域の創意と工夫によって行う事業として、最近国民から期待もされておりますし、また一部批判もございますが注目を浴びておりますのが、ふるさと創生一億円事業と私は了解をいたしております。この構想が出されて以来、全国の市町村がそれぞれの地域の特色を生かした自主的、主体的な地域づくりに熱心に取り組んでおられるようでございますが、ふるさと創生の所管大臣としての自治大臣の御所見を承りたいと思います。
  80. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今お話のありましたふるさと創生、私は海部内閣の内政の柱でなければならないと総理にも常に申し上げ、また閣議等で関係閣僚の皆さん方にも御協力をお願いいたしております。  竹下内閣のときに全国の市町村に一億円ずつふるさと事業のお金を差し上げたわけでありますけれども、(「ばらまきだ」と呼ぶ者あり)今ばらまきというようなささやきがありましたが、これはとんでもない間違いでありまして、今私は全国の都道府県、市町村を歩いておりますけれども、今まで恵まれなかった山村あるいは漁村、農村、このふるさと創生資金ぐらい地域社会の人たちに二十一世紀の未来に夢と希望を与え、それぞれが今までは単に役場と議会の皆さん方が地方自治をやっておるという感じであったものが、今度は青年の方も参加する、御婦人の皆さんも参加する、おじいちゃんおばあちゃんも参加する、そしてそれぞれが自分たちの町や村の過去の歴史を振り返り、現在の条件をそれぞれ考えながら、二十一世紀の未来のおれたちの町や村をどういうすばらしい地域にするかということで、各市町村、地域の人たちが今夢を持ってその計画をつくっております。  既に六〇%以上この計画ができておりますが、私はあの事業は決してふるさと創生の終わりでなくて、これは出発である。出発である。言うならば竹下内閣の時代にふるさと創生の種をまいた、そしてそれは地域住民の皆さん方に今勇気を与えて、それぞれの村づくり町づくりを、今までのただ国から押しつけられてやるというようなことでなくて、今度は自分たちがみずから考えみずから村づくりをやろう、芽が吹き出たところでありますから、この芽を大事に育ててここに水を上げ肥やしを上げ花を咲かせるのが海部内閣の使命である、こう考えまして平成二年度には地域づくり推進事業、当面これはハード面で二千億程度のことを考えておりますけれども、さらにこれからやはり地方も情報化あるいは国際化あるいは高齢化、新しい時代にいろんなことを考えていかなければなりません。  また、文化の町づくり、村づくり、そういったようなソフト事業にも財政的なこれから対策を講ずる。これはもっと、二千億というようなものでない相当規模の、今数字を申し上げられないのは残念ですが、今自治省を督励して、これは国民の皆さんが目をみはってくださるような、北海道から九州、沖縄まで全国三千三百の市町村に未来に夢を持っていただくような施策をやろうと考えておりますので、自治省の大先輩である久世委員の御協力も賜りたいと存じます。
  81. 久世公堯

    ○久世公堯君 ありがとうございました。  平成二年度のことはこれからお聞きしようと思ったわけでございますが、お答えを賜ったわけでございますけれども、私も決してこれはばらまきでない。たとえ千に三つのもし過ちがあったとしても、その三つの芽を摘むとしたら自治の芽が摘まれてしまうだろう、このように思うわけでございまして、非常にこれは重要なインセンティブではなかろうかと思います。  そこで、この地方分権の問題の最後に、総理にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほどの「戦友」にも、一村よく治まって国初めて栄えると最後に結ばれております。また、ジェームズ・ブライスの言葉に、地方自治は民主政治の最良の学校、その成功の最良の保証人と言われております。また、有名なトックビルは、地方自治が自由に対して有する関係は小学校が学問に対して持っているそれと同じである、このように述べております。また、言葉は忘れましたけれども、ジョン・スチュワート・ミルも知識は集権であっても権力は分散、分権でなければいけないということを既に百年以上も前に述べております。自治は国、地方を通ずる政治、行政の基盤でございます。今自治大臣から力強いお言葉がございましたが、自治大臣の御経験者はいつになっても同じ考えを持っておられますが、地方自治のそれ以外の職をやられた先生方は、その職にあるときは同じような考え方を唱えておられますが、もとへ戻りますとまたもとの縦割りのタコつぼに入ってしまわれる、こんな方もおられないわけではございません。  そこで総理にお尋ねをしたいわけでございますが、地方分権とか地方自治の尊重を前提として、国民の身近なところで物事を進めるような改革を図ることが、永田町の論理とか霞ケ関の論理に惑わされることなく、国民の論理に従った行政改革や政治改革の実を上げる起点になるだろうと思います。また、同時に考えなければいけないことは政治改革の課題とされております選挙制度、政治資金問題あるいは国会の活性化や党改革に関する諸問題も、この中央集権を是正し、地方分権の確立を図ることによって解決の端緒になるのではなかろうかと思いますが、御所見を承りたいと思います。
  82. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 長い間の御経験に裏づけされた先生の御意見でございますから私も傾聴をいたしましたし、また地方自治というものが民主主義の学校であると言われておることもよく承知をいたしております。そして、本当に地方が力を持ち地方の自主性と地方の自律性で地方のために仕事をしてもらうということが非常に望ましい方向であることは、これはそのとおりだと思います。  ただいま自治大臣も申し上げましたように、自治というものが本当に地方にとってかなめであり、これを大切にすることが政治の要諦であるとも考えますので、今後いろいろ皆様方の御意見等も拝聴しながら、本当の地方自治が大切にされていくような政治の仕組みになっていくように、私も力を注いでまいりたいと考えております。
  83. 久世公堯

    ○久世公堯君 冒頭に総理から政治改革についての基本的な考え方を承りました。またその際に、総理から具体的な当面の改革についても御答弁があったわけでございますが、重ねて重要なことでございますので総理にお尋ねをいたしたいと思います。  公職選挙法と政治資金規正法の改正は五月二十四日に提出されたにもかかわらず、六月二十一日に提案理由説明がなされたまま継続審議になっておりますが、ひとつ早急に審議を進めて成立させていただきたいと思います。また、いわゆる資産公開法や政治倫理関係の法規の改正も、自由民主党におきましては五月に既に衆議院の議運に対してその審議方を申し入れております。  国民がこれら法案の国会における活発な審議を期待していることを念頭に置きまして、野党もひとつこの国民の声にこたえていただいて前向きに審議に応じていただき、一日も早く当面の政治改革の実を上げることに協力をしていただきたいと思いますが、総理の御所見を重ねてお伺いいたしたいと思います。
  84. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 詳しく御指摘いただきましたように、既に国会に公職選挙法の改正案と政治資金規正法の一部改正案を提出を党からしてあるということは御承知のとおりでございます。  これに盛られておりますことは、私はやはり最近の政治不信を取り除いていくための第一歩であることは間違いないと思います。そして、これが一歩前進をして、その上に立ってさらに第二歩、第三歩の御議論を皆さん方とともに重ねながら政治改革の実を上げていきたいというのが私の願う決意でございますので、どうかせっかく提案されております法案につきましては、各党の皆さんの御議論によって適切な結論が出て、そして成立して政治改革が前進しますように、また今議院運営委員会その他でいろいろ御議論を願っておると思いますが、資産公開の法律もあれは議員一人一人の政治倫理を確立して政治不信を取り除いていきたいという大きな決意の表明にもなるわけでございますから、国会の場でこれも御審議をいただき成立させていただきますことを私は心から御期待をしておる次第でございます。
  85. 久世公堯

    ○久世公堯君 重ねて総理にお尋ねをいたしたいと思いますが、国会改革と党の改革につきましては大綱では中長期的な課題とされておりますが、自民党の政治改革推進本部ではかなり具体的な検討と改革の方向が今出されつつございます。党改革の方は既に派閥の問題等実施に移されているようで、まことに結構だと思うわけでございます。国会改革につきましては、野党とも協議すべきものと思います。しかし、この国会改革の要諦と申しますのは、あくまでも国会が言論の府であり、国民生活に係る政策を迅速に審議できるようにすることが中心的な課題だと思います。  過日、当委員会におきまして、他党議員の発言中にこれを妨害して審議をとめたことはまことに遺憾でございます。審議拒否や審議の引き延ばしは、言論の府であるところの国会の自殺行為であろうかと思います。国会の場で大いに政策論議を展開し、国民に対してわかりやすい、開かれた国会にすることが大事なことでございます。もちろん、国会改革は衆参の議会自体の問題でございますが、議会政治の申し子でいらっしゃいます総理に御所見を承りたいと思います。
  86. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 国会改革の問題は、これは国会がまた各党各会派で自主的に御議論をしていただく問題と思いますが、せっかくのお尋ねでございますし、私もまた議院運営委員長という仕事をさせていただきましたときに、各党代表の皆さんと英国の議会政治のあり方その他を選挙法の調査とともに国会の調査にも行ったことがございました。  そのときのこと等を考えますと、やはり合意できる点と合意できない点はどうぞ十分に与野党で御議論をいただく。英国の議会の制度の中に、英国流に言うとギロチンの法則とかクロージャーの採決とかいろいろあるようでありまして、委員長がごらんになっておって、もうこれは与野党の議論が平行線に入ってきたなと思われたら、あと何時間ということを委員長が決めて、何時間たったら決をとりますからそれまでに言い分があったらどうぞもう一回言ってくださいということを発言する権限とか、あるいは聞いていらっしゃる与野党の皆さんの中で、与党にしろ野党にしろこの問題はもう同じことの繰り返しでないかとか、あるいはもう平行線でどこまで議論しても議論が尽きないではないかとお考えになったときには、たしか半数以上の議員の皆さんの動議によって委員長が議決をして、議決をしたらあと何時間ということでそれでクローズになる、そして採決に入るというような制度等があったことも私どもは興味深く聞いてきたわけであります。  そのことが直ちに取り入れられるのかどうかということを議会制度協議会の場でいろいろ議論をした経緯等もございますけれども、やっぱり歴史やあるいは経緯やいろいろなこと等があって、そういったことがそのまままだ実現していないということもこれは事実でございます。私は、諸外国の例、特に英国なんかの例は議会政治の先進国としていろいろ示唆に富んだものがあろうと思いますので、そういった事例等も今後十分国会において御議論をいただき、御研究いただくことが極めて望ましいことであると、私の経験を通じて感想を申し上げさせていただきます。
  87. 久世公堯

    ○久世公堯君 自治大臣にお伺いをいたしたいと思っておりますが、当面中長期の課題を通じて政治改革の中心的な課題は、国民のための政治が行われ国民のための政策が議会制民主主義の原理にのっとって論議をされ、また民意を的確に反映した政権を誕生させることにあると思われます。現在の選挙制度や政治資金のあり方を考えますと、一方におきまして先ほど総理からもお話がありましたように政治に金がかかり過ぎるとともに、他方におきまして国民のための政策論議が選挙の争点となっておりません。政権の担当も固定化している嫌いがございます。野党も、万年野党なるがゆえに、国民のための政治や政策に関する論議に乏しいと思います。  このような問題は、中選挙区制が大きな原因ではなかろうかと思います。今国会に提案されております選挙法や政治資金規正法の改正はいずれも当面の改革でございまして、基本的な事項を解決することになっておりません。政治改革大綱では選挙制度の抜本的な改正を中長期的な課題に設定しておりますが、最近の自由民主党の動きではかなりこの改革を早急に実施すべきだとしております。政府とされましても選挙制度審議会を開かれまして、非常に具体的な改革項目を設定して審議を進めたと先ほど総理もおっしゃっておられましたが、ひとつこの点につきまして自治大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  88. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 政治改革については、総理から御信念の吐露がございました。まさにその総理の意を体して、私どもは力を尽くしていかなければなりません。  私に与えられた政治改革の面での仕事は、今御指摘の政治資金規正法、また選挙制度の問題であります。委員指摘のように、これは前の通常国会に、自由民主党から極めて精力的に、まず当面金のかからない選挙をやるための選挙制度のあるべき姿を決めまして、法案として議員立法で提案をしておりますし、また政治資金についてもパーティー規制等を含めて国民の皆さんから信頼される、なるほどきれいに集めてきれいに使っておると、透明度を高めるための法案が提案されておりまして、私は当時国会対策の責任者でございまして、これこそまさに緊急当面の問題として御審議をいただくように野党の皆さん方に幾たびかお願いをいたしましたけれども、残念ながら野党の皆さんが審議に応じていただけないために今日に至っておりますが、これはやはり当面緊急の問題として国会の場でぜひ一日も早く成立をさせていただきたいと今願っておるところであります。  また、委員指摘の長期的な問題として、選挙制度そのもののあり方、やはり政策中心の議論をし合う、選挙制度はいかにあるべきかということをやらなければならないということで、これは私の方では選挙制度審議会で今精力的に御審議を賜り、先ほど総理からお話がありましたように、来年の三月までには結論を出していただく。必ずすばらしい結論を出していただけるものと期待して、これらを尊重しながら、しかしやはりこれは国会の場で各政党が党利党略を離れて、国民から信頼される議会民主政治を永遠たらしめるという大きな気持ちで御審議をいただかなければ、これ一自治省の力でできる問題ではありませんが、しかしそういうお気持ちで各党間で御審議を賜るときに、自治省としてはできる限りのお手伝いをさせていただきたいと存じておるところでございます。
  89. 久世公堯

    ○久世公堯君 ただいまお話しがありましたように、政治を進める基盤を常に国民に置いて、政党が真に政策中心の選挙を行い責任を持って政権を担うには、やはり選挙制度の改革というのが必要だろうと思います。これについては私も意見を持っておりますが、また別な機会に述べさせていただきたいと思います。  最後に、行財政改革、税制改革、政治改革の関連について御質問を申し上げたいと思います。  今国会の二つの大きな課題は、冒頭にも申し上げましたように、政治改革と税制改革に関して徹底論議によって国民の理解を深めることだろうと思います。この行財政改革、税制改革、政治改革は、相互に関連性を持っております。政治改革大綱の冒頭にもそのことが述べられております。  まず、総務庁長官にお尋ねをいたしたいと思いますが、今回の消費税の創設を含む税制改革は、十数年に及ぶ歴史とその間の議論、改革、経験を踏まえた上での成果であると私は了承いたしております。昭和四十年代の末は、高度成長から低成長ないしは安定成長への転換期でございました。自然増収の伸びは期待できない。経済活動の停滞によって税収は落ち込みました。既に昭和四十八年には福祉元年と言われて、以後福祉関係予算は年々増大しておりました。また、人確法等によりまして教育予算も累増しておりました。国民生活の安定向上に必要な財政支出の確保と景気回復のためには、公共事業に支出しなければいけない、それを拡充しなければいけない。たしか昭和五十年度の補正予算だったと思いますが、その結果政府は赤字国債の発行を決断いたしまして、当時歳入の約三割の公債収入依存の財政運営というものを余儀なくされたわけでございます。  国、地方を通ずる財政赤字の中で当時とるべき道は二つあったわけでございます。一般消費税の創設と行財政改革の実施でございました。追うべきウサギは二兎いたわけでございます。ところが、一般消費税は、昭和五十五年度から実施が決定されたにもかかわらず、実現に至らない。五十四年十二月の財政再建に関する決議では、財政再建は一般消費税によらず、まず行政改革による経費の削減、歳出の節減合理化、税負担の公平の確保、既存税制の見直しなどを抜本的に推進することによって財源の充実を図るべきであると。そして、このような状況のもとに鈴木内閣のもとで第二次臨調が発足をして、行財政改革を強力に推進したわけでございます。  私は、この十数年の間の多くその渦中にありまして、行財政改革に直接タッチをした一人でございました。そこで総務庁長官、第二次臨調、さらにこれに続く行革審、新行革審が出された答申、報告に基づいてどのような行政改革を実施されたか、その成果について伺いたいと思います。
  90. 水野清

    国務大臣(水野清君) 委員は私からもう申し上げる必要もないほどこの行財政改革についてあるいは財政再建についてのうんちくをお持ちでいらっしゃいますが、御質問でございますから申し上げさせていただきます。  御承知のとおり、行政改革は国政上の重要課題でありまして、この十年間、ただいまお話がありましたように、大平内閣鈴木内閣中曽根内閣、竹下内閣、そして今日の海部内閣に至るまでの重要課題でありまして、絶えずこれを追い求めてきたということは御承知のとおりであります。  私も実は、現在の話を申し上げますと、海部内閣に入閣するに当たりまして総理から三大改革を、改革と対話ということで三大改革を命題としてやりたい、行政改革については海部総理は私は重要な課題と思い、内閣として大きな命題であるからこれを担当して引き続いてやってもらいたい、こういう話がございました。  今、お話はこれまでの行政改革の成果ということでございますが、簡単に申し上げますが、国鉄改革あるいはその他三公社の民営化の問題が御承知のとおり実現をいたしました。あるいは日本航空の株の公開による特殊法人の整理合理化ということも実現をいたしました。また、昭和五十七年度から今年度までに至る国家公務員の純減を図ってまいりましたが、約三万人の純減が実現をいたしたわけであります。そのほか、行政機構については総理府と行政管理庁を一本にいたしましてただいま私がおります総務庁という役所ができたことも御承知のとおりでありますし、その他各省庁、十一省二十四局に及ぶ中央省庁の整理統合が実現をしたわけであります。あるいは運輸省におきましては陸運局と海運局というものがございましたが、これを統合さしていただきました。そして、五十四のブロック機関を廃止するなど地方支分部局の整理合理化も実現をいたしました。  このようなことから、平成二年度に至るまで特例公債依存体質から脱却するという目標に向けて着実に私は前進をしてまいったと思うわけであります。ちなみに公債依存度は、先ほどの御質問にもありましたけれども、昭和五十四年度には約六・三兆が平成元年度は一・三兆でありまして、平成二年度の予算編成に当たってはこれをゼロにしたいということを総理、大蔵大臣が言っておられることも御承知のとおりであります。依存度で申しますと、先ほどの三四%余りから今年度は一一%にまで依存度が減っております。  その他、公的年金制度を初めとする各種制度の改革なども現在行われている最中であることも御承知のとおりでありまして、特にNTTと日本航空の株の公開によりまして約十一兆円の利益が入ってまいりました。これが国債の償還あるいは社会資本の整備という形で使われることによりまして、私は今日三十数カ月、三十六カ月に相なりますか、その景気を維持する大きなてこにもなったというふうに思っておるわけでございます。
  91. 久世公堯

    ○久世公堯君 ありがとうございました。  大蔵大臣にお尋ねしたいと思いますが、ただいまお話のございました行政改革の実施とともに、財政当局とされましても年々歳出の削減の努力によって計画的な公債償還を図られまして、ようやく来年度は赤字解消のめどがついたと了解をいたしております。過去十年間はこのような厳しい財政状況の中にあって所得税減税はほとんどできなかったし、法人課税などはむしろ増税になっているのではなかろうかと思います。  今回の消費税の創設を含む税制改革は、このような一般消費税導入に関する論議の歴史、徹底した行財政改革の実施との関係において見ますと政治の到達する最終的な結論であり、まさに汗と血の結晶だろうと思います。さらに国民との対話を重ね、見直すべき点は改革、改善を図って恒久的な税制として確立することが当面の政治課題と思いますが、御所見を承りたいと思います。
  92. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員がお述べになりましたように、昭和五十年代以降二回にわたるオイルショックのもとにおける税収の落ち込み、そして大量の公債に依存しなければならない厳しい財政状況のもとで、本格的な所得税減税がほとんど行い得なかった。そうした中で、税体系全体として税負担が直接税とりわけ給与所得を初めとする個人の稼得所得に偏ってしまった。そして、その裏腹として消費課税のウエートが著しく低下してしまった、こうした中に納税者の重税感、不公平感というものが募っていたという事実はそのとおりでありました。また一方では、その間に人口の高齢化が著しく進展し、従来の税制の延長線上ではさらに国民の負担が働き手世代の稼得する勤労所得に直接的な負担に重なっていくということも心配をされ、その結果の納税者の重税感、不公平感というものも深刻化していた。委員の御指摘のとおりであります。  先般行いました税制改革というものは、まさにそういうことに対する税制面における回答を出したわけでありますし、その中におきまして新たに創設をいたしました消費税について、今私どもは国民の御理解を賜りたいと努力しているさなかであります。そして、将来を考えていきます場合に私は、今委員が御指摘になりました行政の不断の見直し、財政改革への努力というものは、これは状況がどうあろうと常に我々が心がけていかなければならないことであると考えておりますし、またそうした努力を怠りました場合には、私は税制改革そのものに対しての国民の信頼も揺らいでしまうのではないか。そう考えれば行財政に対する不断の見直しの努力は、言葉のいかんにかかわらず、今後とも続けていくべき事項であると認識をいたしております。
  93. 久世公堯

    ○久世公堯君 ありがとうございました。  最後に、総理にお尋ねをいたしたいと思います。  今、総務庁長官、大蔵大臣からお話がありました。今回の消費税を含む税制改革は、過去十数年来のまさに汗と血の結晶であるとともに、今大蔵大臣もお話しになりましたように、二十一世紀の展望に立って子供や孫の未来を見通したものと了解をいたしております。このような由来と必要性を国民にさらに深く理解を求め、国民の信頼の上に立って改革を進めることが重要だろうと思います。そのことがとりもなおさず国民とともに歩む税制改革であり、また同時に国民に負担を願うことに対して政治自体も襟を正すとともに、国民の夢や期待にこたえられる政治、行政を実現することが政治改革そのものであろうと私は思うわけでございます。総理の御所見を承りまして、私の質問を終えさしていただきたいと思います。
  94. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 御指摘のように、社会共通の費用を広く国民の皆さんに負担をしていただくというお願いでありますから、国民の皆さんにお願いをする以上、御理解と納得をいただいていかなければならないことはそのとおりでございます。また、公平でなければならない、所得と消費と資産とバランスのとれたものでなければならない、また安定的に安心して暮らせる高齢化社会を支えていく税制にしていかなければならない、いろいろな問題点を掲げて今国民の皆さんの御理解をいただくべく努力しておるさなかでございますが、久世委員の御指摘なされた点はまさに大切な点であると心得まして、今後ともその御趣旨も踏まえて一層努力を続け、国民の皆さんの御理解をいただきたい、このように考えております。
  95. 久世公堯

    ○久世公堯君 ありがとうございました。
  96. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 以上で久世公堯君の質疑は終了いたしました。(拍手)  速記をとめて。    〔速記中止〕
  97. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記を起こして。  午後二時三十分まで休憩いたします。    正午休憩      ─────・─────    午後五時二十五分開会
  98. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 予算委員会を再開いたします。  予算執行状況に関する調査を議題といたします。  これより山岡賢次君の質疑を行います。山岡君。
  99. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 質疑に入るに先立ちまして、次のことを強く要請いたします。  去る二十日の予算委員会の前島議員の質問に対する私の関連質問の最中に、社会党の理事より審議を中断せしめられましたことはまことに遺憾なことであります。  かつて野党議員がみずからの質問に対する政府側答弁を不満として審議を中断したという例はたびたびございますが、他党の議員の質問中に発言の内容が気に入らないからといってこれを中断せしめたということは、国会史上例を見ないことであります。さらに、委員会での他党の議員の言論を封じておきながら、他方においては一方的な記者会見を行い、委員会での発言内容を事実無根などと誹謗したことは、まさに議会制の否定であり、議会制民主主義を根底から崩すやり方であります。それに対し、私はここに厳重に抗議するものであります。一方においては、このような異議申し立てを容認し審議中断の裁定を下した委員長に、二度とこのようなことがないよう取り計らわれることを強く要請いたします。  この問題については、もし異論があるなら当委員会において国民の前で堂々と論議すべきであり、そのためには関係者の証人喚問が必要であると思われます。その必要の有無については理事会にゆだねますので、別途このことを理事会においてお諮りいただきたいと思います。  委員長、よろしゅうございますか。
  100. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 委員長におきましては、後刻理事会においてさらに協議を続けます。
  101. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 それでは社党議員の問題については理事会での審議を待つことといたしまして、また明日からの衆議院予算委員会における集中審議においても論議されると聞いておりますので、きょうは触れないことといたします。  本日は、朝鮮総連の問題に関する質問から始めさせていただきます。  まず、公安調査庁にお伺いをいたしますが、さきの前島議員の質問で、朝鮮総連の中に七人の現職の北朝鮮の国会議員がいる、こういうふうに承りましたが、それはだれとだれのことで何をしている人たちなのか、また、日本に住んでいる人たちであるか、御説明をいただきたいと思います。
  102. 古賀宏之

    政府委員(古賀宏之君) お答えいたします。  韓徳銖在日本朝鮮人総連合会中央常任委員会議長、李珍珪同第一副議長、全演植同副議長兼在日本朝鮮人商工連合会会長、朴静賢在日本朝鮮民主女性同盟委員長、南時雨朝鮮大学校長の五名が北朝鮮の国会議員であります。  このほか、前に朝鮮総連副議長をしていた李季白氏、在日本朝鮮文学芸術家同盟委員長をしていた許南麒氏の二名も代議員をしておりましたが、李季白氏は既に北朝鮮へ帰還し、許南麒氏は既に故人となっております。  これらの人は、いずれも第二次世界大戦終戦以前から現在まで我が国に継続居住しております。
  103. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 そのようなことから北朝鮮と朝鮮総連との関係についてお伺いいたしますが、両者は親子のように極めて密接で一体的な関係にあると言えるのでありましょうか、公安調査庁。
  104. 古賀宏之

    政府委員(古賀宏之君) お答えいたします。  当庁としては、北朝鮮と朝鮮総連との関係は、委員質問のとおり極めて密接で一体的な関係にあると認識しております。
  105. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 公安調査庁はどのような根拠に基づいてそのような認識を持っておられるのでありましょうか。
  106. 古賀宏之

    政府委員(古賀宏之君) お答えいたします。  朝鮮総連は、まずその綱領の中で「我々は、在日全朝鮮同胞を朝鮮民主主義人民共和国政府の周囲に総結集」させると規定しており、またその規約の中で、北朝鮮の祖国統一民主主義戦線に団体として加盟することを規定しております。一方、北朝鮮は憲法で、在日朝鮮人を自国の海外公民と規定しているほか、北朝鮮国家主席金日成みずからもその著作の中で、在日朝鮮人同胞を共和国の公民として法的に保護する旨述べております。  さらに、先ほど答弁しましたとおり、朝鮮総連及びその傘下にある団体の主要幹部五名が北朝鮮の最高人民会議代議員として選出されている点を指摘することができます。また、最近の例で言うと、北朝鮮側は先月開催された朝鮮総連第十五回全体大会に金日成主席の祝賀文という形で、祖国統一活動など朝鮮総連が今後取り組むべき課題を具体的に命令しており、他方、朝鮮総連側はこれにこたえて、金日成主席あてにその命令を徹底的に貫徹する旨の手紙を送っている。  このような事実にかんがみて、北朝鮮と朝鮮総連は極めて密接な一体関係にあると見ております。
  107. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 よくわかりました。  次に、警察庁にお伺いをいたしますが、最近の北朝鮮の関係した国際テロ事件にはどのようなものがあり、どんな内容であったか、御説明いただきたいと思います。
  108. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  北朝鮮の関与した最近における国際テロ事件の代表的なものとしては、昭和五十八年十月に発生したラングーン爆弾テロ事件、昭和六十二年十一月に発生した大韓航空機爆破事件があります。いずれも北朝鮮の犯行であるとの十分な根拠が存在するのでありますが、内容について御説明申し上げることにつきましては、大変著名な事件でございますのでお許しがあれば省略させていただきたいと思います。
  109. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 もう日本じゅうの人が知っているから、結構でございます。  それでは、北朝鮮の関係した国内の秘密工作事件にはどのようなものがあり、どんな内容であったか、御説明をいただきたいと思います。
  110. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  戦後北朝鮮が関与した事件は、これまで多数検挙しております。その地域も、北海道から九州まで全国に及んでおります。  最近の事例を一つ御紹介申し上げたいと思いますが、これは西新井事件と私どもが呼んでおります、昭和六十年三月一日に警視庁で摘発した事件でございます。北朝鮮の工作員の朴何がしという男が昭和四十六年ごろ秋田県の男鹿半島から密入国いたしまして、二人の日本人の戸籍を次々と盗用して日本人に成りかわって同人ら名義の日本旅券を不正に取得いたしまして、工作員の育成とか、あるいは工作員を韓国に潜入させる工作、あるいは極東における工作拠点の運営等の活動をしていたわけでございます。その朴何がしに育成されました工作員は、昭和四十九年に北朝鮮に密出国しまして、工作員訓練を受けた後再度日本に密入国をいたしまして、朴の指示のもとで工作員候補者の選定等の活動に当たっていたわけでございます。  なお、この事件におきまして、この捜査をしていく過程で宮本明という人物が出てまいりました。これは朴の関係者であるということはわかっておりまして、宮本明こと李京雨という男でございますが、北朝鮮の工作員であることが判明いたしました。この男は大韓航空機爆破事件の犯人が使用いたしました日本人名義の旅券の偽造にかかわっていたことが明らかとなっております。  これらのスパイ事件における北朝鮮工作員の特徴的な手口を若干御説明いたしますと、特殊工作船を用いて海岸線から密入国、密出国を繰り返す、また外国人登録証明書を偽造したり、日本人の戸籍を盗用したりいたしまして在日朝鮮人または日本人に成り済ます、あるいは無線機、乱数表等を用いて北朝鮮から暗号指令を受けて日本を足がかりに韓国に対する特殊な工作、これは彼らの言葉で対韓地下党の工作でございますが、韓国の国内情報、あるいは日韓関係の情報、在日在韓米軍等の軍事情報などを収集しておるということでございます。
  111. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 警察庁、ところで北朝鮮あるいは朝鮮総連の関与をしました最近のココム違反事件にはどんなものがあったか、御説明をいただきたいと思います。
  112. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  昭和六十二年五月に静岡県警が検挙をいたしました東明商事ココム違反事件と本年二月に新潟県警が検挙いたしました在日本朝鮮人商工連合会幹部によるココム違反事件の二件がございます。いずれもハイテク関係のココム規制品の北への不正輸出にかかわっているものでございます。
  113. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 法務省にお伺いいたします。  そのココム違反で摘発された今言った東明商事という会社が先日、すなわち五日前の今月の二十五日に静岡地裁において有罪判決を受けたと聞いておりますが、どういう判決内容であったのか、また関係者の国籍等もあわせて御説明をいただきたいと思います。
  114. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 去る十月二十五日に静岡地裁において、東明商事のいわゆるココム違反事件について判決がございました。  お尋ねの件は、かいつまんで申し上げますと、東明商事株式会社という北朝鮮向けの貿易会社の東京支店長ら三人の役職員、一人は日本人であとは韓国籍と朝鮮籍の者でございますが、多数回にわたりIC等各種製品を朝鮮民主主義人民共和国に向けて輸出するに際し虚偽の輸出申告書を提出し、あるいは所定の許可、承認を受けなかったという関税法並びに外国為替及び外国貿易管理法違反事件のことでございます。  この事件については、先ほど申しましたように十月二十五日に静岡地裁で、会社に対しては罰金五十万円、支店長に対しては懲役六月、執行猶予三年、その他の者については懲役六月、執行猶予三年あるいは罰金二十万円に処せられております。
  115. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 法務省、ところで北朝鮮国籍を有する者が代表者となっております自動販売機製造会社の脱税事件の判決で、北朝鮮関係と通じて架空経費を計上して脱税したという犯行の手段等が記載されているものがあると聞いておりますが、その判示内容についてお伺いをいたします。
  116. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) この事件はもう既に確定しております関係上、被告人の名前等は株式会社A、株式会社Bと申し上げますけれども、いずれも自動販売機等あるいは遊技場の設計工事施行等の仕事をしている会社でございまして、代表者とその会社が起訴されているわけでございます。  代表者は朝鮮籍の方でございますけれども、その判決の中に申していることでございますけれども、これは判決をそのまま読ましていただきますが、被告人は、昭和五十五年十月ごろ、母の仲介で「在日本朝鮮人商工連合会財務部長らと相談の上、同連合会が販売に協力する代わりに」被告A会社において、「同連合会に販売手数料を支払うこと、販売手数料の金額は表向き毎月一〇〇〇万円とするが、実際に支払うのは一か月分程度で、残りは同被告会社の裏金にまわすことなどを取り決め、同被告会社の昭和五六年三月期から右の方法による大幅な所得の圧縮を行うようになり、その後朝鮮商工新聞社、金剛山歌劇団など各種団体との間においても同様の方法をとり、判示の各ほ脱に至ったものである。」、こういうふうな判示がございます。
  117. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 今、在日本朝鮮人商工連合会、朝鮮商工新聞社、金剛山歌劇団というものを通して脱税を行った、こういう説明でありますが、そのような団体はいかなる団体であるのか、公安調査庁、御説明いただきたいと思います。
  118. 古賀宏之

    政府委員(古賀宏之君) お答えいたします。  商工連というのは、正式名称を在日本朝鮮人商工連合会といい、在日朝鮮人商工業者が構成する在日本朝鮮人都道府県商工会の連合体であります。この団体は朝鮮総連の構成員となっており、朝鮮総連はこのような団体を傘下団体と称しております。  また、朝鮮商工新聞社とは、ただいま説明した商工連の機関紙である朝鮮商工新聞を発行している団体であり、商工連の事務所の所在地と同一場所に発行所を置いております。  さらに、金剛山歌劇団とは、朝鮮総連に加盟している幾つかの団体の中の一つでありますが、各地を巡回し、朝鮮民俗芸能の公演を行っている団体であります。金剛山歌劇団は朝鮮総連の構成員であり、朝鮮総連はこのような団体を事業体と称しております。
  119. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 当初に公安調査庁が説明いたしました朝鮮総連の現職国会議員五人のうち、全演植氏は朝鮮総連副議長兼商工連会長と説明をされましたが、その会長とはまさに今法務省が説明いたしました脱税事件の判決の中に出てくる在日本朝鮮人商工連合会の会長であるのでありましょうか。また、この全演植氏というのはいかなる人物であるのか、御説明をいただきたいと思います。
  120. 古賀宏之

    政府委員(古賀宏之君) お答えいたします。  私が先ほど説明した全演植氏とは、脱税事件の判決の中に出てくる在日本朝鮮人商工連合会の会長のことであります。全演植氏は、在日朝鮮人の実業家であるとともに、北朝鮮の経済建設に貢献しているとして北朝鮮の最高勲章である金日成勲章を受章しております。
  121. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 パチンコ業界の団体であります全遊協の副理事長であり、また全遊連の副会長でありました柳勲氏は、その商工連のどのような立場にあった人でありましょうか。
  122. 古賀宏之

    政府委員(古賀宏之君) 柳勲氏は、商工連を構成している商工人団体である在日本朝鮮人栃木県商工会の会長であります。
  123. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 以上の事件の説明で明らかなとおり、商工連等々を含めた朝鮮総連は、さきの予算委員会で公安調査庁が、危険な団体であり当局が監視していると言うまさにその団体であるということがよくわかりました。  さて、その朝鮮総連が一九八八年八月八日付で総連各本部委員長及び中央団体、事業体責任者にあて、「日本警察当局が遊技業界に導入しようとしている「パチンコ全国共通カード」制度を徹底的に阻止させることについて」と題する内部文書を出しております。「この通達が外部に漏えいしないように取り扱いを厳重にしなければならない」と書かれたこの文書の差出人は「在日本朝鮮人総連合会中央常任委員会議長韓徳銖」とありますが、これはさきに説明のありました北朝鮮の現職の国会議員のことであるのでありましょうか、公安調査庁。
  124. 古賀宏之

    政府委員(古賀宏之君) お答えいたします。  ただいまお触れになりました文書にそのような肩書、氏名が記載されているとすれば、それは私が先ほど答弁した韓徳銖氏と同一人物であると考えます。
  125. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 またこの文書の中に、「不当なカード制度の導入を阻止するための商工会の闘争を直ちに掌握し、よく指導しなければならない、具体的な内容については、商工連地方協議会、八月三日を通じて県商工会に浸透させている」ということが記載されておりますが、この八月三日というのは、まだパチンコ業界でもほとんどの人がプリペイドカードの導入計画については知らなかった時期であると承知いたしております。このことは、プリペイドカード導入の反対運動は朝鮮総連が指示してやったということを意味していると思われますが、警察庁、いかがでございましょうか。
  126. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) お答えいたします。  御指摘の八月上旬の時期は確かにいまだに全遊協ではプリペイドカード導入について多くの人がそれを知りませんが、その時期におきましてはもちろん、現在におきましても、全遊連、全遊協、いわゆるパチンコ屋さんの団体においては正式に反対の議決はしておりません。
  127. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 朝鮮総連と業界の一部がプリプイドカード導入に反対している反対理由についてどのように考えるか、警察庁、御説明いただきます。
  128. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) お答えいたします。  私どもは、このプリペイドカードに一部であろうともパチンコ営業者の方々が反対しているという理由が実はよくわからないというのが正直なところでございます。  そもそも、このプリペイドカードの導入という言葉からいたしますと、何かカード制度というものが法律か何かで制度として執行されるような印象を一見与えるのでございますが、これは決してそういうものではない。ある会社がプリペイドカードを作成いたしまして、それを使うようなシステムをパチンコ業者の方に売り込んでまいる、それをパチンコ業者の方が買い入れればそのシステムが働くわけでございまして、それを実施するかしないか、導入するかしないかはパチンコ業者の方の任意のことでございますので、反対というのは余り意味がないのじゃないかというふうに考えております。
  129. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 さらにその文書の中には、「この制度が導入されたならば、「各店舗の売上高はもちろん、経営状態が掌握され企業活動の自由な発展と公正な競争が困難になり、経営活動に大きな支障を来す」とか、「各店舗の経営内容が大企業と日本当局に掌握され、当局の監視と統制のもとで、我が遊技業者に対する民族的迫害と弾圧が一層甚だしくなる」」と記されておりますが、国税庁、もし各店舗の売上高を含めた経営状態が掌握され、各店舗の経営内容が国税当局に掌握できた場合には、脱税はこれを大幅に防止でき得ることになるのでありましょうか。
  130. 岡本吉司

    政府委員(岡本吉司君) 売り上げを初めといたしまして企業の経営内容等が我々国税の資料としてきちんと掌握されるならば、それは脱税といいますか、所得の捕捉漏れを防止するために大いに役立つだろうと考えております。
  131. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 このように、北朝鮮と表裏一体である朝鮮総連がパチンコ業界のプリペイドカード導入に反対する指令を出している。特に国会議員との活動をよく行い、日本の国会で問題化させなければならないと国会議員に働きかけるように指令をしております。  さらに、朝鮮総連は一九八八年十一月二十八日に再び「「遊技業全国共通カード」に反対する闘争を全機関的に強力に展開することについて」と題する文書を出して、前の文書と同じようなことを指令しております。前の文書と少し違いますところは、前文では国会議員への働きかけを指令していただけでありましたが、今回は、「総連中央と商工連では、日本の国会議員との活動も数回にわたって行った」と、国会議員との活動が数回行われたと報告している点であります。  ところで、警察庁、何ゆえ朝鮮総連はこの時期に再び同じような文書を出したのでありましょうか。
  132. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  朝鮮総連の内部事情はよくわからない点があるわけでありますが、当時出されました朝鮮総連の機関紙朝鮮新報、これは一九八八年十一月二十一日付のものでございますが、これなどを見ますと、「売り上げや経営内容などが掌握される恐れがある。」というふうな記載とか、あるいはこのカード問題について「業者らは「死活問題」といっており、」云々というような文言がありますので、そういったところから相当危機感を持っていたのではないかというふうに推察をしております。
  133. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 それではここにおいて、そのパチンコ業界とプリペイドカード導入の問題、さらにはそれにまつわる社会党議員及び社会党との関係の問題に入ります。  まず、パチンコ業界へのプリペイドカード導入問題について警察庁にお伺いをいたします。プリペイドカードは既にいろいろな業界に導入されているところでありますが、このカードをパチンコ業界へ導入するメリットとデメリットを御説明いただきたいと思います。
  134. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) お答え申し上げます。  プリペイドカードシステムは、ファンにとりましては多くの硬貨を用意する必要がなくなりまして、電話やJR切符のカードと同様に非常に便利なものであろうというふうにまず思います。  次に、パチンコ事業者の方々にとりましては、会社の経理が機械化、自動化されますので、このため経理の合理化、適正化が図られることから、パチンコ業の健全化につながります。ひいては、暴力団につけ込まれるような弱点も少なくなるだろうというふうに思います。パチンコ店で取り扱う現金がなくなることによりまして、よくある強盗の被害事件が減ったり、店内の現金の事故も減るのではないかという防犯上の効果も考えられるところであります。また、カードの利用によりましてパチンコのファン層が拡大すれば、それだけ業界の繁栄につながるのではないかというふうに思います。  ただし、そのカードシステムの運営がもし適切さを欠く場合にはいたずらに射幸心をそそることとなるおそれがないわけではございませんので、カードの額面価格を一定のものに抑制するとか、宣伝のあり方につきまして警察庁で所要の指導を行う等によりまして、そのようなデメリットの防止が可能であるというふうに考えております。  このようにいたしまして、警察庁といたしましてはプリペイドカードは結構なものだというふうに考えております。
  135. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 パチンコ業界は、さきの衆議院予算委員会においても質問がございましたが、脱税ワーストワンと言われております。これというのも全く領収書なしの現金商売であるからでありまして、もしプリペイドカードを導入するということになりますと脱税対策面でも非常にプラスになると思いますが、国税庁のお考えをお伺いいたします。
  136. 岡本吉司

    政府委員(岡本吉司君) パチンコ業にかかわりますプリペイドカードの仕組み、制度はまだやや不分明な点もございますけれども、仮に第三者機関、第三者がカードを発行いたしまして、それでパチンコ業者との間で売り上げの決済が行われる、こういった仕組みを前提といたしましてプリペイドカードが導入され、そしてそのカードによりまして各店舗ごとの売り上げが集計、管理される。なおかつ、その集計、管理された資料あるいはその利用代金の決済を我々国税当局が確認できる。もう一つはプリペイドカードが相当程度普及する、こういった前提に立ちますと、パチンコ業者の税務調査におきましては真実の売り上げというものの把握が非常に容易になろうかと考えるわけでございます。  他方、パチンコ業者の税務面におきます不正の手段としましては売り上げ除外が多いわけでございます。したがって、そういった売り上げ除外の多い業者にこういった売り上げの把握のしやすい制度が導入されますと、脱税と申しますか所得の捕捉漏れと申しますか、そういったものを抑止する上で相当の効果があろうと考えております。
  137. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 ただいまの国税庁の答弁をお聞きいたしますと、プリペイドカードの導入は業界の健全化並びに脱税防止に大変プラスになるということでありました。  御案内のとおり、このプリペイドカードの導入をめぐって昨年来、パチンコ業界では大混乱が続いております。パチンコの愛好者は既に三千万人を超えていると言われ、国民にも非常に親しまれているものであります。今や業界の大部分の人たちも、脱税ワーストワンなどと言われることのない健全なゲーム場の提供をいたしたいと願っているところであります。プリペイドカードについて業界の一部が反対するのはわからないでもありませんが、朝鮮総連が反対し、その朝鮮総連の反対に特定の政党の国会議員が加担して警察に圧力をかけたとされているところに大きな問題があるのであります。  そこで、今回のプリペイドカード導入に関して、自民党、公明党、民社党国会議員から導入反対の圧力があったのか否か、警察庁にお伺いをいたします。  まず、自民党からの圧力があったのでございましょうか。
  138. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) お答えします。  若干の御質問やら照会は受けたことはありますが、働きかけを受けたことはございません。
  139. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 では、公明党からの圧力があったのでございましょうか。
  140. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) お答えします。  働きかけを受けたことはございません。
  141. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 それでは、民社党国会議員から圧力を受けたことがありますでしょうか。
  142. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) 働きかけを受けたことはございません。
  143. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 では、社会党の国会議員からの圧力があったのでありましょうか。
  144. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) お答えいたします。  慎重にやるようにとか、あるいは警察主導で導入することはよくないとかいうようないろいろの御意見は承っております。
  145. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 もう一度お伺いいたします。  自民党、公明党、民社党からの圧力があったのかどうか。(発言する者多し)
  146. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 静粛に願います。
  147. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) ございません。
  148. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 それでは、社会党からの圧力があったでしょうか。
  149. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) 圧力という表現は別といたしまして、先ほど御説明したように働きかけを受けております。
  150. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 その社会党からの圧力は、いつごろからであったのでありましょうか。
  151. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) 先ほど御説明いたしましたいろいろ働きかけがありましたのは、昨年の八月ころからであったと記憶をいたしております。
  152. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 その時期は、朝鮮総連がプリペイドカード導入反対を指令した時期、すなわち八月三日とほぼ軌を一にしているということでありましょうか、警察庁。
  153. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) お答えいたします。  軌を一にしているかどうかの認定は別といたしまして、先ほど御答弁いたしましたように、八月の上旬のころであったと記憶いたしております。
  154. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 このように社会党の国会議員からプリペイドカードの導入をやめるようにという圧力があったと警察庁が言っているのにもかかわらず、社会党は去る十三日に発表いたしました「いわゆる「パチンコ疑惑」についての見解」の中で、「プリペイドカード導入について「反対」の立場はとったことはない」と強弁をいたしております。社会党が反対をしたことは、五月一日付の社会党みずからが発刊をしております「社会新報」の記事を見ただけでも明白であります。  すなわち、「党が厳重注意」と題しまして、「社会党も山口書記長はじめ関係議員が昨年から今年にかけ、六回も平沢保安課長を呼び厳重注意した。」云々と、みずからの紙面で明らかにしているところであります。さらに社会党は、「わが党議員が問題にしたのは、プリペイドカード問題は本来警察の権限外のことで、これに対する介入について厳重に注意しただけ」と強弁をしておりますが、これについて大蔵省の見解をお伺いいたします。
  155. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員の御指摘になりました点、誤解を生むといけませんので、正確に申し上げたいと存じます。  今大蔵省におきまして、前払い式証票の規制等に関する法律案を、これ仮称でありますけれども、できるだけ早期に国会に提出すべく鋭的準備を進めております。  この法案は、現在、大蔵省が所管しております商品券取締法を発展的に改組し、カード化の進展という時代の流れに即した消費者保護及び信用秩序維持の仕組みを整備することを目的とするものでございます。これはプリペイドカードに関する金融システムとしての一般的な規制法を大蔵省が所管しているということでありまして、特定の業界や企業においてプリペイドカードを発行するか否かといった個別の問題について業界を指導するというような、いわゆる業界行政の分野には、この法律が通過、成立をいたしましたとしても、同法所管大臣である大蔵大臣の権限は及びません。大蔵省としては特定の業界や企業にプリペイドカードの導入を推進するという立場にございませんで、これを推進されるかどうか、導入されるかどうかにつきましての行政上の判断や指導を必要とする場合でありますならば、それはそれぞれの業界や企業を所管する省庁が行うべきものと考えております。
  156. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 大蔵大臣のお答えのとおり、パチンコプリペイドは本来警察の指導権限内のものであり、社会党が厳重に注意する必要など全くないものであります。(発言する者多し)
  157. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 静粛に願います。
  158. 山岡賢次

    ○山岡賢次君 さきに指摘をいたしましたとおり、このパチンコ業界のプリペイドカード導入に対する猛烈な反対運動を行っている朝鮮総連と社会党は友好関係にあったことが社会党見解にもはっきりと書いてあります。そして、九月二十五日には朝鮮総連の大会に土井委員長が出席をして熱烈なエールを送っております。しかも、今回の社会党のプリペイドカード導入反対は昨年八月前半から活発に動き出しており、さきの朝鮮総連の内部資料のプリペイドカード導入反対の指令と軌を一にしております。このことは、どう考えても社会党は朝鮮総連から頼まれて動いたと言わざるを得ないのであります。しかも、全く人道上の問題である第十八富士山丸釈放問題と絡めた疑いもあります。  繰り返しますが、社会党は、さきの衆議院予算委員会で公安調査庁が「危険な団体」であり「当局が監視をしている」と指摘をしている朝鮮総連からプリペイドカードの導入反対について頼まれた疑いが極めて強いのであります。その朝鮮総連から社会党議員が献金を受けていた、こういう事実も伝えられております。そういった形で社会党が脱税を助けるためプリペイドカードの導入に反対したとするならばこれはゆゆしき一大事であり、社会党というのは果たしてどこの国の政党なのであろうかと言わざるを得ないのであります。そして、その社会党が自民党に次ぐ日本国の第二の政党であり、野党連合政権の盟主たらんとしているのが昨今の実態であります。私は、このことに対し国家的国民的危惧を強く訴えて、私の質問を終わらせていただきます。
  159. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 以上で山岡賢次君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  160. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 去る二十日の本委員会における穐山篤君のJR各社における労働問題に関する質疑について、江藤運輸大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。江藤運輸大臣。
  161. 江藤隆美

    国務大臣(江藤隆美君) 先般穐山委員の質疑に対する総理答弁は、一般論として労使関係が安定することは重要であるとの意向を表明したものであります。  JR各社の労使関係が健全かつ安定することは、JRの経営の安定、安全輸送の確保などの見地からも極めて重要なことであります。  JR各社の労使紛争についても前述の精神に沿って円満な解決ができるだけ早く図られることを期待しているものであります。  政府としても、再就職対策に万全を期す等、その環境の整備のために引き続き誠意をもって努力してまいります。     ─────────────
  162. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 次に、西川潔君の質疑を行います。西川君。
  163. 西川潔

    ○西川潔君 どうぞよろしくお願いいたします。西川潔でございます。  私、国会に参りましてもう丸三年過ぎたところでございますが、予算委員会質問をさせていただくのは初めてでございます。総理初め関係の大臣の皆さん方、ひとつどうぞよろしく、スタッフの皆さん方もよろしくお願いを申し上げます。(「堂々とやれ、堂々と」と呼ぶ者あり)ありがとうございます。  この予算委員会質問をさせていただくということは何と道のりが長いものかなと、今回は実感いたしました。最初は木曜日にやらしていただくということでございましたが、金曜日になり、月曜日になりまして、きょうのお昼ということでございましたが、今もう六時過ぎになりましたんですが、ひとつよろしくお願いいたします。  私は、こちらへ参りまして初めて質問をさせていただきましたのが三年前の十二月、第百七国会の法務委員会の時間でございました。私は、お年寄りが、そして自分たち自身が年をとったときに、そしてまた子供たちが老後を迎えるとき、本当に長生きしてよかったなと思える社会を、そんな生きがいのある社会をつくるために自分の力を精いっぱい傾けて努力してみようと思って国会へ参りました。私のライフワークは、豊かな生きがいのある老後を過ごせる社会づくりです。こちらへ参りましたときには、社会労働委員会というところでお年寄りのために働きたいのですがということをお願いいたしましたところ、法務委員会しか余っておりませんというお話でございまして、どうしてですかと。ここは数の力で、行きたいところには、潔さん、行けないんですというお話をお伺いいたしまして、三年間法務委員会でお世話になりました。法務省の皆さん方には、素人の私に三年間本当に勉強をさせていただきましてありがとうございます。今後とも法務行政には一生懸命頑張らせていただきたいと思います。  そして、法務委員会の三年間で、何とかお年寄りのためになることができないかなと思いまして、自分でいろいろ考えまして、ビデオテープで遺言をつくっていただきたいということを自分で提言いたしました。いろいろ二十四年間、老人ホームとか、我が家へ帰りましても三人の親がおります。私の両親と家内の母親がいるんですが、もう一緒に生活いたしまして二十二年、八十、七十五、七十、いろいろ施設と家の年寄り等を見まして、土地の値上がり、資産の高騰、長男が家を継ぎ、親の面倒を見、一つ屋根の下に二ないし三世代一緒に暮らすという相続制の崩壊などにより、老後の暮らしを自分たちの手で守るにも遺言書の必要性が一般庶民の中にも高まり、第三次遺言ブームとなったと私は思います。しかし現行の民法のままでは、目が悪くなったり、また字が書けなくなったり、お年寄りが心に思っていることを残したくてもなかなか面倒で、添え手は有効だけれども誘導したら無効だとか、いろいろな難しいことがございます。  そこで現在、電話、テープ、テープレコーダー、テレビ、ビデオ——ビデオなどはもう六三%ほど普及しております。音声による意思伝達の発達には目をみはるものがございます。現代生活の中ですっかり定着してしまったこれらの方法を取り入れていただき、目や手が不自由になられたお年寄りでも心置きなく自分の言葉で自分の意思を正しく伝えることができるよう自筆証書、公正証書、秘密証書の三方式に次ぐ四番目の遺言方法として法的に認めていただけないかと、こういうふうに私は思うんですが、このアイデアについて、まず、総理大臣に感想だけお伺いしたいんですが。
  164. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 昨今のビデオの普及が極めて広くなっておることに発想のもとを置かれて、大変ユニークな提案であると、私はそのアイデアには興味を示しますけれども、事はいずれにしましても権利義務が移転するという大変な制度でございますし、私も今詳しいことは存じませんが、いろいろな立場のお方が遺言でもって自分の権利をこのようにしたいとおっしゃる意思の表示方法は、今日どんな立場の方にでもあろうかと思います。必要がありましたら政府委員から詳しく申し上げさせますが、アイデアとしてはなかなかユニークなアイデアだと思いますが、法律上の権利義務の問題については慎重に検討をさせていただきたい、このように受けとめます。
  165. 西川潔

    ○西川潔君 私は昨年三月に、今予算委員長であられます林田元法相から、まだ西川さん、法的にはいろいろ問題がある、今後十分検討していきたいという御答弁をいただいたんですが、地球の裏側のことが今すぐにでもわかるような時代です。星の時代と言われまして、本当に東京—大阪でもテレビでもって会議をやる。また、最高裁でもビデオテープでもって裁判の証拠などにも今は活用されております。  そういう意味でもって法務省にお伺いしたいんですが、いかがでしょう。
  166. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 法律行為一般につきましては方式が自由であるというのが原則になっておりますのに、遺言につきましては大変厳格な方式が定められておりますのは、遺言をする者に慎重に意思表示をさせる、そしてその真意を確保させる、事後においてそれが偽造されたり変造されたりすることがないようにする、そういうことをすることによりまして、亡くなった後でその真意がゆがめられることのないように明確に確保するという意味合いからでございます。  したがって、ビデオテープによる遺言という大変ユニークな御提言でございまして、これを法制化できるかどうかということを考えるに当たりましては、ただいま申し上げましたような観点から、果たしてそういう方法で、つまり口でしゃべることを画像にとらえる、文書にするわけではない、そういう方法でもって遺言者の真意が確保されるものであるのか、内容が不明確、不正確にならないのかというような点、あるいは長期の保存に耐えられるかというような点を考慮いたさなければならないと思います。  また、この問題は遺言に限りませんで、一般に文書とビデオテープとの性質上の差異ということもございますし、今後これを検討するに当たりましては、ほかの制度との整合性あるいは国際的な比較法制でどうなっているかというようなことも検討してまいらなければならないと思います。ただいま先進諸国におきまして、文書以外の方法による遺言というのはまだそう認められるほどには至っていないのではないかと思っております。今後の検討課題であろうかと思います。
  167. 西川潔

    ○西川潔君 今随分心配をしておられたようでございますが、私はタレントとして二十六年、テレビの世界で仕事をしてまいりましたが、本当に悪いことをしようと思えばできるんでしょうが、そこは公証人を二人、前に置いていただきまして、そして公正証書のように、ビデオテープに撮っていただきまして、終わるとすぐに目の前で密封をしていただきまして、信託銀行なら信託銀行にちゃんと預けていただく、そして後々家族があげて見ますね。そうすると、僕は子供たちの教育にも道徳においてもすばらしいことではないかなと思うんですが、子々孫々まで先祖の顔が見られる。また、本当に絵でもって、言葉でもって長男には何々、次男には何々というように財産を譲り渡すということは、その人たちも大変な責任感を持って、先祖のためにもまた頑張らなければいけないような気持ちにもなるのではないかなと思うんですが、次に移らせていただきます。  ひとり暮らしの老人がふえつつある昨今、先日、八十七歳という高齢で女優の浦辺粂子さんが全身やけどでお亡くなりになりました。本当にお気の毒な事故でございました。御冥福をお祈り申し上げます。  ただいま全国では六十歳以上の独居老人は百四十万五千人いらっしゃるんです。政府としては、今後ますますふえ続けると思われるひとり暮らしの老人に対してどのような政策をお持ちか、お伺いします。
  168. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) ひとり暮らしの老人が寂しく、そして社会から隔絶されて、中には動けない方も、動けないというか自由に活発な活動ができない方もおられるだろうと思います。そういうような人たちが社会の中でいろいろな意味で安心を得るのは、やはりだれかが訪ねてくるとか、だれかと電話で話をするとか、あるいはいろいろな心配事があったときに、さっと電話一本でそういったお話し合いができて、そして心に安心を得ることができる、こういう環境をつくり上げることが大事だろうと思います。  そういう意味で、厚生省でも六十二年からシルバー一一〇番、お年寄りの人の相談の電話を設けておるわけであります。まだ十分な活用までには至っておりませんけれども、こういったものがあるんだということがひとり暮らしをしておられるお年寄りにわかるということが非常に大事だと思います。それで、西川議員のように常にテレビに出てお年寄りと画面を通じて対話をしているような立場の方ですから、そういうような場合に、こういうものがあるんだということをちょっと言っていただいたりなんかするというと、お年寄りが非常にそういったヒントで、ああそうか、そういう相談もできるのかというふうなことになるだろうと思います。  それで、その電話も一一〇番と言うけれども、地域によってみんな電話は違うんです。そのために今度は、短縮ダイヤルで全国一律の電話サービスができるように、最近NTTで郵政省の許可を得てそういうことを実行に移すようでありますから、それに向けて私どもはぜひ、短縮電話で、言ったらその地域にきちっと伝わる、そして電話サービスを受けられるというような環境づくりをしていきたい、かように思っております。
  169. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。  お年寄りが大変な勢いでふえていく中で、今もお伺いしたんですが、すべてのお年寄りをどうして我々若い者が支えていくか。福祉というのは僕は支え合いだと思います。消費税の導入の際にも、年金改正の提案の中にも、高齢化のためというのが主たる理由になっているんですけれども、消費税、きょうも経済新聞ですか、見せていただきますと、身体障害者のいろいろお使いになるそういう道具のようなものは非課税にするというような記事を見せていただきまして、大変僕たちうれしい思いをいたしました。  これから将来に備えていく、また年金の問題でもありますが、僕は昭和二十一年生まれでございまして、まさしく六十五歳からになるんですけれども、六十歳からの雇用、六十五歳から——いろいろ心配なことはたくさんございますが、ここでひとつ総理に、総理は老後はどういうふうな夢を描いておられますか。
  170. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 夢を申し上げますと、私は心身ともに健康で成長していきたい。成長というよりも年を重ねていきたいと思っておりまして、今の時代と違って人生は随分長生きになっていきますから、せめて八十歳になったときに皆さんに還暦を祝っていただき、九十歳になったら敬老会にでも入れていただき、百になったらゲートボールでも練習するような、そんな健康な老後が送れたらいいなと。夢です。夢とおっしゃいましたから率直に申し上げます。
  171. 西川潔

    ○西川潔君 総理は老後は奥さんに見てもらうつもりですか、お嬢さんですか、嫁ですか。
  172. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 突然の御質問ですのでどのように答えたらいいのか瞬間迷いますが、やはり家内に面倒を見てもらいたいなという気持ちを持っております。
  173. 西川潔

    ○西川潔君 その場合奥さんが——まあ大変御無礼な質問になるんですが、私現場を回りましてそういうことが本当に多々あるんです。ですから、本当に日本の頂点に立っていらっしゃる海部総理にお伺いしたいんですが、どうぞ総理は、ちょっとこのごろ疲れていらっしゃるような気がするんです、あちらの方から見ましても。体に気をつけていただきたいんです。本当に、富士山の上であぐらをかいているようなつもりで、本当にでんと構えて日本全国、我々国民を見渡していただきたいんです。  そんな中で、ひとりになったとき、寝たきりでひとりになったときどこに相談しますか。
  174. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 寝たきりになることをちょっと想像できませんけれども、もしなったとしたらやっぱり家族の者にまず相談するでしょう。そして家族の者に……
  175. 西川潔

    ○西川潔君 いや、ですから、先ほど言いましたように、奥様は先に倒れられているわけです。
  176. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 息子も娘もおりますので、息子か娘に話をします。
  177. 西川潔

    ○西川潔君 そういう方々がたくさん実は世の中にはいらっしゃるんです。大変御無礼な質問でお許しいただきたいんですけれども。  困ったときにどこに相談に行けばいいのかというようなことで、もう一度厚生大臣にお伺いしたいんですが、今の老人福祉サービスは誠心誠意各省庁で、勉強さしていただきますと本当にやってはいただいておるんですが、実にわかりにくいと思うんです。自分はどれぐらいのサービスをどこへ行けば受けられるのかな。各市や区の広報のポスターがあるんですけれども、小さい字でいっぱい書いてあるんです。朝から晩までお年寄りの面倒を見ていらっしゃいます奥さん、娘、嫁、そういうふうな方々は、朝から晩までの介護で、なかなかそういうところに見に行くとか目を通すとかということが無理でございます、もう疲れてぼろぼろになっていますので。そういうときに先ほどのシルバーサービス一一〇番ということですが、実は厚生大臣、全国の資料を持ってまいりましたんですが、もう七四九三とか四一六五とか一一六六とか〇五三九とか二五六五とか、ばらばらなんです。これ大急ぎで、もう一刻、命を争うようなこともいっぱい現場では聞くんです、何とか全国の番号を統一してもらうことはできないものでしょうか。
  178. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 先ほどもそのことについてお話をしたわけでありますが、電話が、今お話しのように全部ばらばらなんです。一一〇番なら一一〇番、局が変わって全部一一〇番というわけになかなかとれないものですから、その地域で一番いいだろうと思う電話の番号にしておるわけでありますが、先ほどお話し申しましたように、例えば八〇八〇とか一一一一とか、そういうような全国一本の短縮電話でもってそういったサービスができるような電話を今委員から御指摘のように申し込もうと。これはまだ始まったところで、これから抽せんで今度は決まるようですが、必ずしもこちらが申し込んだ電話に当たるかどうかがなかなか難しい。そこで私どもは、お年寄りの人たちにだれでもわかるようなものを幾つか申し込んでおるわけであります。なるべくそういったわかりやすい電話が当たるように郵政大臣にも特にお願いをしているんですが、抽せんのようですから、なかなかぴしっとこちらが期待するような電話に当たるかどうかはまだわかりません。いずれにしても、委員指摘のようにわかりやすいように全国統一の電話にしようと思っております。
  179. 西川潔

    ○西川潔君 そのNTTの話が出ますと、やっぱり次は郵政大臣にお伺いしたいと思います。  郵政大臣は、資料を見せていただきますと、前はたしか厚生省の政務次官をやっておられたということでございますので、特別な御配慮など、こういうことがいただけないものでしょうか。
  180. 大石千八

    国務大臣(大石千八君) その御要望も十分に考えて検討したいと思っております。  いわゆるシャープ、プッシュホンのシャープですね、昔で言うと片仮名のワヰウヱヲのヰ、あれを押すとあとは四けたで通じる、四けたの番号が全国共通と、こういうことをNTTで今度やろうと試みているわけでございまして、その場合にどういう番号がいいか、たくさんの申し込みがいろいろ予想されるわけでございます。そうしますと、一つだけどうしてもこれが欲しいと言われましても、それを最優先できるかどうか、これはNTTの立場もありますので、全体の公平も考えてみなければなりませんので、それは一つだけどうしてもというわけにはいかないかもしれませんが、いろいろ先ほどお話しのように、八〇八〇とか、あるいは一〇〇八でも非常にいい番号ですが、こういう番号は別にして、たくさんある中で、この中でどれかを欲しいというようなことがあった場合には、やはりこれからの高齢社会にかんがみて前向きに検討して、できるだけそういったような御要請にこたえていきたい。この番号だということをそのまま認めるかどうかはNTTにまたいろいろ相談してみたい、このように考えておりますが、できるだけ便利なわかりやすい番号でということで検討していきたい、このように思っております。
  181. 西川潔

    ○西川潔君 大蔵大臣、これは随分お金のかかることなんでしょうか。
  182. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私、自分の所管外でありますので、その電話番号の割り当てがどうなっておるのか実態は存じませんけれども、少なくとも今伺っておりまして、何かそういう点についてNTTで配慮ができないものかという感じは率直に持ちました。私も委員の感じられるようなことを率直に感じております。
  183. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。  もう僕らから見たら雲の上の人たちばっかりですので、やっていただけると——我々本当に選挙に僕みたいな者を出していただいたというのも、不審に思い、疑いを持ってこの国会というところにも来たんですけれども、それはやっぱりやっていただけるのは皆さん方なんですから、悪いことを僕は言っているんじゃないわけですから、いいことですからぜひやっていただきたいと思います。もう本当にお年寄りの命がかかっているようなことがたくさんございますので、よろしくお願いします。  ここに僕は一通のはがきをいただいておりますんです。毎週土曜日に大阪のMBSというラジオで、浜村淳さんという方と銭木美智子さんという方と一緒に「国会報告」というラジオをやらせていただいているんですが、そこへ来たはがきです。  毎週わかりやすい、潔さん、お話ありがとう。早速ですが、厚生年金のことですが、六十五歳になったと新聞に出ていましたが、なぜ六十五歳に延びたんですか。うちの主人は今五十七歳ですが、六十歳まで頑張って働きますが、六十から六十五歳までの間を働くことが、潔さん、大変なんです。今でも仕事をして帰ってくると、もう疲れてすぐ寝てしまいます。私たちはお上の言うまま、するままで、ただ愚痴るだけです。消費税は年寄りのためと言っておりますが、ぜひ詳しいお話を聞かせてください。  まだ平成二十二年というようなことの内訳がわからない人たちが、朝から晩まで仕事をしているとわからないんです。これ、大臣でも結構ですし、政府の方でも結構ですが、御説明お願いします。
  184. 水田努

    政府委員(水田努君) 厚生年金の支給開始年齢の引き上げのスケジュールを法案でお示しをしている内容について、事務的に御説明申し上げさせていただきたいと思います。  男子の方につきましては、平成十年度から六十一歳としまして、その後三年ごとに一歳ずつ引き上げて平成二十二年度に六十五歳といたします。女子の方については、五年おくれの平成十五年度に六十一歳とし、同じく三年に一歳ずつ引き上げて平成二十七年度で六十五歳、こういう計画になっております。したがいまして、男子の方は、ことしの四月一日現在で五十一歳以上の方は現行どおり六十歳支給でございまして、先生お尋ねのケースの方は五十七歳でございますので、仮にこの改正案が施行されたといたしましても現行どおりの六十歳、このようになります。
  185. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございました。  このはがきで、果たして六十歳になったら、潔さん、本当に仕事があるんやろか。五年間の生活費はどないしたらええやろ。このいただくだけの年金で生活が本当にできるんやろかというような不安な気持ちになりますと。  そしてその仕事のことですが、例えば、労働大臣にお伺いしたいんですけれども、欧米なんかでもやっておりますワークシェアリングというんですか、大きい会社で、百人なら百人、千人なら千人という従業員がおりますが、その方々の仕事の量、時間を少なくして、そしてリタイヤした元気な高齢者の方、元気なおじいちゃんやおばあちゃんに仕事をしていただくようなことが日本ではできないものでしょうか。
  186. 福島譲二

    国務大臣(福島譲二君) お答えを申し上げます。  今、厚生年金につきましては年金局長がお話しを申し上げましたように、六十五歳になりますのはまだ二十年余り先のことでございまして、大分時間的な余裕があるわけでございますが、しかしそれはそれといたしまして、むしろもっと先行いたしまして、六十歳、六十五歳の間の方々についても立派に安心して雇用が確保できるように私どもとしては全力を尽くしてまいりたいと思っております。  具体的に申し上げますと、まず六十歳定年というのを定着させるということが大前提でございますが、さらにこれを六十一から六十二、六十三、六十四、六十五、こういう形で定年を延長いたしますとか、あるいは継続雇用をいたしますとか、そういったことをなさる企業にインセンティブを与えるために助成をいたしますとか、あるいは六十一歳から六十五歳のそういった年代の方々を一定率以上雇用するというようなことについて助成をいたしますとか、そういうことで積極的に取り組んでまいりたいと思っております。  さらに今、雇用審議会の方にお願いを申し上げまして、六十五歳までの雇用を確保するための具体的ないろんな考え方、場合によっては法的整備も含めて新たなる制度を考えていこうということについての御審議もいただいておるところでございます。  なお、今委員からお話がありましたように、全体として日本人は少し働き過ぎだという、そういう意味での御批判もあるさなかでございますし、まず人生にゆとりを持とうということの大方針のもとに、少しでも年間の労働時間を短縮させるためのいろんな努力もいたしておりまして、かつ御承知のように、当面人手不足も伝えられておる中でございますので、いろんな意味で私ども高年齢者の雇用の確保につきましてはあらゆる努力を今後とも払ってまいりたいと存じております。
  187. 西川潔

    ○西川潔君 ぜひよろしくお願いいたします。もう本当に、皆さんに聞くんですけれども、働きたくても、シルバー人材センターに参りましてもなかなかやらしてもらえるような仕事がない。まあいろんな方々がいらっしゃいますので、あの仕事は嫌だ、この仕事は嫌だというような方々もいらっしゃるんですけれども、なるべくひとつ雇用の面につきましてはよろしくお願い申し上げます。  次に、住宅のことでお伺いしたいんですが、これからはお年寄りが老人ホームや病院からいわゆる家庭復帰を目指すということで、ねたきり老人ゼロ作戦というのがスタートいたしましたが、老人保健施設からいわゆる病院に行かない、そして老人ホームに行かない、そのままUターンしておうちへ帰るということなんですけれども、これは実は本当にすばらしいことだと思うんです。大都市では本当におうちの購入も厳しい状況にあります。おじいちゃんやおばあちゃんをうちに連れて帰って一緒に生活はしたいんですが——たまたま我が家は両方の親と一緒に生活できることは本当に幸せだと思っております。でも、おうちの中にはいろいろあります。老人ホームを回りましても、おじいちゃん、いいところですな、ここは、景色もいいし湖も見えて。こんなところで朝昼晩おいしいものをいただいて健康でよろしいな。いや、潔さん、そうやない、寂しいんや、帰る思うてもバスも走っていないし電車も走ってへん、孫や息子にも会えぬというような方々がたくさんいらっしゃいます。どうぞひとつ、田舎の老人福祉と都会の老人福祉というのは分けて考えていただきたいと思います。鶏が鳴いて目を覚ますお年寄りと、車のクラクションで目を覚ますお年寄りとは違うんですから。ぜひ細かいところをお考えいただいて、本当によろしく解決方法をお考えいただきたいと思うんです。  ここにこんな新聞記事がございます。家で一緒には住みたいんですけれども、お年寄りの介護というのは口で言うほど簡単ではない。食事の世話から排せつ、入浴の介護。肉体的にも精神的にも疲れ果て、先が見えない。老人を投げ出したくなっている家族も随分あるというのも事実です。  一方、こうした気持ちを持っている家族から介護される老人も、決して心安らかではあるまいと。本当にそうだと思います。お年寄りの我慢や家族の犠牲の上に成り立つような在宅の介護は、双方にとって決して幸せではない。これは本当にそうだと思います。例えば在宅福祉をこれから推進していくわけですから、支えていかなければいけないんですが、住宅の整備等について建設大臣にお伺いしたいんです。
  188. 原田昇左右

    国務大臣原田昇左右君) お答えします。  高齢化時代を迎えまして、在宅福祉の重要性は委員の御指摘のとおり大変大事な問題だと思っておるわけでございますが、その在宅に相当する住宅につきまして、高齢者が、安らぎのある、生きがいのある生活を家族と送れるということは極めて大事な問題だと思いまして、これに合わせるように住宅政策の面でも配慮していかなければならないと、努力しておる最中でございます。  そして、具体的に申しますと、例えば高齢者と同居するために、同居住宅といいますか、三世代住宅というような少し大きな住宅を建てたいという方々には、住宅金融公庫を通じて割り増し融資をするということがまず一つ。  それから、公共の公営住宅あるいは公団住宅等につきまして、老親と同居できるような比較的大きな規模にするとか、あるいは手すりをつけたり階段の段差を解消させたり、こういう設備面での配慮を行った公的な住宅供給をしようと、まだもちろん十分ではございませんけれども、そういう努力をしておるところであります。  さらに、生活指導や相談に応じたり緊急時の対応等のケアサービスの提供ができるような住宅団地というものも進めておるところでございます。  今後とも、福祉政策との連携を強化しつつ、これらの施策の充実に努めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  189. 西川潔

    ○西川潔君 今大臣のお話をお伺いさせていただきまして、現場を回らせていただきますと本当に夢のような部分がございます。ひとつどうぞよろしくお願い申し上げます。  次に、明るい長寿社会ということでお伺いしたいんですが、私は、これまで笑いを通じて庶民の生活に溶け込んで頑張ってまいりました。心から笑いを楽しむことにまさる健康法はないと確信しております。  昨年からお年寄りの健康と福祉の祭典、ねんりんピックですが、ことしは大分県で行われます。第二回目です。もっと幅広く高齢者の方々が楽しむよう工夫してみてはいかがかと思うんです。若い人向けには次から次へと新しい音楽や芸能といった娯楽のイベントが催されておりますが、テレビの番組でも、なかなかお年寄りが楽しむプログラムというのがございません。これまたぜひ郵政大臣にもお考えいただきたいんですが、お年寄りには本当に喜ばれるようなものというのは計画されにくいんでしょうかと疑問に思うんです。僕らも頑張らなければいけないと思うんですが、そしてまたテレビ画面を通して楽しまれるのもいいんですが、生を見ていただく。古典芸能や懐かしい芸や歌に接して、お年寄りが心から笑いを楽しむという機会が各地でもっと身近にたくさんあってもよいのではないでしょうか。  実は、大阪の地元の話なんですが、私は自分の方からしょっちゅう役所に行く人間でございまして、大阪府へ長い間通いまして、やっと平成元年度の予算調査費というのを二百万円いただきまして、演芸の資料館というのを行政の手で初めてつくってもらうことになったんですけれども、こういうものを全国的に広げてみたいなという夢を持っております。特に、本当に地方のお年寄り、また、体の元気な方はいいんですが、少しお体の弱い方などは近くまで行ってやらないとなかなか見れないんです。  厚生省は、明るい老後のために全国都道府県に明るい長寿社会づくり推進機構を設置していろいろなイベントを行われるそうですが、お年寄りが心から楽しめる娯楽も企画に組み込んでみてはいかがでしょうか。おじいさんやおばあさんがお孫さんと、また施設のお年寄りを招待して楽しんでもらうこともできるでしょうし、元気なお年寄りが集まってこうした企画の運営に当たるというのも、頭も使うし肉体も使うし、本当にいいことだと思います。また、日本の古典芸能が世代間に受け継がれることも期待できます。こういうことをひとつやっていただきたいんですけれども、厚生大臣、いかがでしょう。
  190. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) お年寄りが長寿社会で生きがいを持ち、そしてしかも楽しい生活を送っていくという上において、西川議員さんはその第一線でお年寄りに笑いを提供している。そういう意味では、非常にユニークないろいろなお話もありましたし、古典芸能を通じてお年寄りに喜びを与えてもらいたいというようなことも御提案がありました。そういった第一線で活躍されておられる議員の御提案であります。  今、全国健康福祉祭も大分であるということにもお触れになりましたけれども、やはりこういったことも生きがいの問題につながってくるわけであります。ことしは大分であるなといえば、全国で、この次のスポーツ大会、福祉祭には、ぜひすばらしい成績を出してやる、一年間かけてゲートボールをしたり、あるいはいろいろなスポーツを通じて鍛錬をする、そのことがやはりお年寄りの生きがいに通じてくるわけであります。今の、古典芸能を通じた喜びということもそれは一つの大きな考え方だろうと私は思います。それで、一緒になって芸能、スポーツあるいは文化、こういったものを楽しみ合いたいということでございますから、これはやはり貴重な御意見であると思って、生きがいという意味では最高のやはりプレゼントにもつながるだろう、こういうふうに考えます。  お年寄りが健康で生きがいを持つために、今お話がありましたように、ことしから三年間で各都道府県に明るい長寿社会づくり推進機構というものを設置していこうと。今、大体先進的なことを計画されておられる十五ほどの県がその準備を進めているわけでありますが、その中央組織としてこの十一月一日には明るい長寿社会開発センターを発足させたい、かように思っているわけであります。こうした機構の行う企画は、西川議員が今提案されたいろいろな新しいそういう企画というものもここでひとつじっくりと研究をしていったらいいんじゃないか。そういうことから考えるというと、西川議員のような非常に豊富な経験のある人もやはりそういったところに参加もしてもらって、本当に夢のある、豊かな、そして生きがいのある、楽しみがある、笑って暮らせる、そういった長寿社会のために、次々と新しい知恵も、また御指導もいただきたい、かように思います。よろしくお願いします。
  191. 西川潔

    ○西川潔君 本当によろしくお願いします。そういうふうにやさしく言われた後はなかなか期間がかかるような気がいたしますので、なるべくもう早い機会にお願いしたいと思います。僕は大阪の吉本興業というところに所属しておるんですが、吉本とか松竹とか東宝とかいうところには、御年配のもうリタイアしたような芸人さんも元気でたくさんいらっしゃるんです。遠いところでも行けるような方々がたくさんおられますので、それは本当にどうにでも我々を使っていただいて結構だと思いますので、よろしくお願いいたします。  しかし、こうなりますと、全国へ行ったりなんかするとお金が要るんですが、大蔵大臣、お金を出していただけないでしょうか。
  192. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、実は私は委員のお話を伺っておりまして、いろんなことを考えさせられております。ちょうど私が初めて国会に出していただきましたのは昭和三十八年でありました。そのころには、残念ながら地方の都市あるいは町村に今委員が御指摘になりましたように、行ってあげたいという芸能人の方がおられましても、その方々を受け入れる施設自体がまだほとんど整備をされておりませんでした。今は、おかげさまで各地域にそうした施設の整備が順々に進み、それなりの整備が進んでおります。ただ、これは私自分の郷里をも振り返りながら考えておりましたけれども、こうした入れ物そのものを活用するノーハウというものは必ずしも地方に十分ありません。そしてまた、例えばお年寄りの集まりとしてこうしたものを企画する、若い方の場合もありましょう。どこにお願いをすればという悩みは常に出てまいります。たまたま私ども、今までにも私どもの友人の方々お願いをしそういう場をつくってきたこともありますけれども、何かそれがうまくシステムとしてできないものかなと、今そんなことを考えておりました。  むしろそうした点でよい御意見が——特定の興行会社に常にお願いをするというわけにもまいりますまい。また、その地域その地域でどういうものを求めたい、伝統芸能の場合もありましょうし、さまざまな場合があると思います。何かうまくそういうお願いを地方からできる仕組みがつくれたらまたいろいろな工夫の仕方もあるのかなと、そんなことを今私は考えておりました。それなりに、そうした点、私どもも工夫をしてみたいと思いますけれども、また委員の御体験の中からそうしたものについて、何かうまく地方自治体を含めた仕組みが考えられるかどうか。そういう小屋を管理する立場は多分自治体が多いでありましょうから、そうすると、そういう自治体をも含めた何か仕組みが考えられるものだろうか。今そんなことを感じましたので、率直に私自身も考えてみます。委員にも何かいい仕組みが工夫できたらそのお知恵をかしていただきたい。私は今そう思います。(「予算をつけるべきだ」と呼ぶ者あり)
  193. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございます。今、後ろから山本先生がお金をもらえということでございますが、竹下総理は三千四百億円というお金をふるさと創生ということでお出しいただいたんですが、お金お金というのもなんでしょうけれども、まずお金がなかったらこういうことも動かないと思いますし、よろしくお考えいただきたいと思います。  次に、総理、芸術文化振興で一千億円の基金という新聞を見せていただいたんですが、これは本当でしょうか。
  194. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 芸術文化の振興ということは極めて大切だと思いますし、またスポーツに親しんでいただくということも健康な人間の予防医学と申しますか、そちらの面からいっても非常に大切なことであって、私は芸術文化、スポーツの振興には大いに意を用いていきたいと考えております。  基金の問題につきましては、そのような金額にまでまだ及んでここで申し上げることはできませんけれども、そのような方針で今いろいろと取り組んでおるというさなかでございますから、どうぞよろしくお願いいたします。
  195. 西川潔

    ○西川潔君 つくるのはつくっていただけるわけですか。じゃお金の方だけがまだはっきりしていないと。大蔵大臣、お願いします。
  196. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 総理から今御指示がありました。また十分相談をさせていただきます。
  197. 西川潔

    ○西川潔君 その相談が、前向きにとか、善処するとか、可及的速やかにとかということで我々は随分だまされたような気がするんです。ぜひそれは本当に大蔵大臣、今総理大臣が橋本君と言うのがちらっと僕に聞こえましたので、これははっきり、きょうは楽しい予算委員会にしてください、一回、本当に。
  198. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ですから、私は逃げられるような前置きを何らつけておりません。前向きにとも後ろ向きにとも、そういう形容詞を一切つけずにきちんと相談をいたしますと申し上げております。
  199. 西川潔

    ○西川潔君 近いうちに両方の返事をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  200. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 予算編成までは待ってください。
  201. 西川潔

    ○西川潔君 予算編成まではもちろん待ちます。よろしくお願いいたします。  外国に比べて随分と日本の予算は少のうございます。日本は文化予算でも四百九億円、フランスでは千九百四十一億円もあるんです。イタリアは千八百八十億円です。これはもう世界でも本当に一、二を争うようなこんな立派な国になりましたのに、文化の方では随分劣っているようですのでひとつどうぞよろしくお願いいたします。(「いい質問だ」と呼ぶ者あり)ありがとうございます。  私初めてなもんですから、時間の配分がどうもうまくいかずに全部終わったような状態ですが、アドリブでここで一つ聞かしていただいてもよろしいでしょうか。老人福祉をやらしていただきまして大変心配になっております。  まずは、外務大臣にお伺いしたいんですが、外国人の就労ですね。外国人が来る。外務省です。  その次は、仕事のことですから労働省です。労働省はどう考えているんでしょうか。  そしてその次には、仕事、いわゆる人の出入りですから、これは法務省です。入管ですね。  僕はこの三つが物すごく心配になっているわけです。  最後は、厚生省はまたどう考えているんでしょうか。子供ができたり学校へ行ったり、こちらで結婚をしたり。そして二十一世紀に向かって、こうして医療だ年金だと言われて我々びくびくしているわけです。六十五から年金がこうなったとかということを聞かされますと、家に帰りましても、老人ホームへ行きましても、こういうお話ばっかりお伺いするんですが、この四人の大臣にリレー的にひとつ明快にお答えいただきたいと思います。実にわかりにくい問題ですのでよろしくお願いします。
  202. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 外国人の日本における就労問題、これは経済大国となって国際社会で信頼をされる国家としては避けて通れない大きな問題であろうと思っております。  私は、土曜日に品川の国際救援センター、これはベトナムから逃れてこられた難民の方々を訪ねてみましたし、また長崎県の大村のレセプションセンターにも行ってみました。いわゆる不法密入国、この方々と、政府がその国内において技術を研修するとか、あるいは職業について働くことを認める資格を持って日本に入国される方々と、また難民として日本に来てその人生を我々の社会で過ごされる方と、三種類あると思います。  私は率直に申し上げて、不法入国者には、その不法入国である事実が明確になった場合には、日本の法律に基づいて国外退去をしていただく以外にこの秩序は守れない。相手国にお引き取りを願う、これが原則であろうと思っております。またもう一方、正当な国の決めた枠組みの中でこの国に来て研修をされる方々、また研修をしながらその現場で働かれる方々、今委員指摘のように我々の社会に今いわゆる不法労働をしている外国人が約十万人存在しているというのも現実の問題でございます。  私は外務大臣としても外務省に命令をしておりますけれども、早急に、今御指摘のような関係省庁と協議をして、どのように政府考え方を整えて、そしてこれを国会にお示しをし、国会を通じて国民の皆様方に御理解をいただくかということの作業をすべきであるということを申しております。  今御指摘のように、日本へ研修に来られるような方々は比較的年齢の若い外国の方々であろうと思います。もしこの方々が来られて日本の社会で働く場合に、当然そこには保険制度、社会保障制度というものが発展途上国と比べると驚くほど整備をされているわけであります。そういう国々から来られた方々は、委員御案内のように、保険料というものを今まで掛けておられない。我々の社会保険というものはそれぞれ加入をしている方々が自己で負担される保険料の問題もございます。また、今までずっと積み立ててきた厚生年金というような積立金もございます。また、国民の働いて納めていただいた税金で政府が社会保障制度へのいろいろな補助金を出しております。  こういうふうな日本の社会保障制度の中で、入ってこられた外国の方々が研修される場合には、当然日本に滞在をし研修する期間を決めなければならないと思います。期間が終了した場合と期間内の場合を二つ考えておかなければならない。  期間内のいわゆる外国人研修生がどのような生活をされるか。その場合に、当然労働省も厚生省もこれに関連をしてくるわけであります。法務省ももちろん入国、出国には関与をしてまいります。そのときの問題点として考えなければならないことは、まず日本の社会保険制度にこの人たちを受け入れるかどうかということが一つの大きな問題になってまいりましょう。もう一つは、日本の国内において研修中にいわゆる犯罪を起こした場合には、どういうふうなことを国家としてやらなければならないのか。有罪判決を受けた場合にどうするのか。強制退去をこの人に命じて、相手国に身柄を引き取ってもらうというのが、いわゆる刑事犯罪を起こした場合の一つの判断の基準になろうかと思っております。  また、そういうふうな犯罪行為なしに、日本の国内で生活をされている間に日本の婦人と恋愛関係に入られるとか、あるいはまた内縁関係子供を持たれるとか、あるいは結婚をされた場合に、研修の三年間が終わって、果たして人道的見地で、あなたはこの三年間あるいは認められた研修の期間が切れたから祖国にお帰りなさい、自分の母国に帰ってもらいたい、それが国家間のいわゆる取り決めであるというふうなことが人道上考えられるだろうか。  こういうことを考えますとともに、さらに、研修中に労働災害に遭われた場合の労災補償をどうするかとか、大変な問題を実は、外国人の研修生あるいは働かれる方々を受け入れる場合には、我々のようなそういう経験のない国家は、西ドイツのような経験を積んだ国家が受け入れた場合にどのような問題が国家に残ってきたか、それがどのように現在の西ドイツの国民の負担になっているか、こういうものも十分検討した上で国家としては一つの方針を明確に示さなければならないと外務大臣としては考えておりまして、御指摘のように、関係の各省庁と早急にこの協議体制を組んで政府としての考え方をまとめてまいりたい、このように考えております。
  203. 福島譲二

    国務大臣(福島譲二君) 基本的には外務大臣がおっしゃったとおりでございます。労働省の立場から一点だけちょっと補足をさせていただきたいと思います。  今とかく人手不足の中で、いわゆる単純労働者の外国人労働者を入れたらどうかという、そういう声が大変強くございます。しかしこれは私は、今外務大臣のお話がありましたが、西独やフランスの例をとりましても、やはり将来の日本にとって大変大きな影響をもたらす問題でございますので、十分に慎重に考えていきたいと思っております。  格別今、日本の若い方々は、いわゆる三キと申しまして、汚いあるいはきついあるいは危険だと言われるような職場にはつきたくないという、そういう気持ちが大変強いのが現実でございますが、しかし他面、そういう分野については外国人の方々にもう任せてしまうというのは、これはまた国際的な中における日本人のあり方として私は許さるべきことではないのではないかなと思っております。  人手不足の問題は人手不足の問題として十分に対処していかなければならないし、またその余地も十分あることだと、努力をいたしたいと思っております。
  204. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 今外務大臣がお話ししたとおりで、正規の手続を経て日本へ来て、正規に働いて、そして保険料を納めて、そうすれば年金でも医療でもちゃんといただけるようになります。ただ、一定の年限がありますから、その年限が満たなければいけないわけでありますが、そういう意味からは、やはり日本の国は非常に開放されて、そしてそういった制度の恩典というものは受けられるようになっております。
  205. 後藤正夫

    国務大臣(後藤正夫君) お答えいたします。  大体の基本的ないろいろな問題につきましては、先ほど外務大臣から御説明がございました。法務省としては出入国管理の問題を扱っております。それで日本が今、世界に貢献する日本になるためには、すぐれた技術を身につけた技能者を日本で育てて諸外国のためにお役に立たせるということは非常に大事なことだというふうに思っております。したがって、そういうことを実行いたしますために、前国会以来、出入国の管理に関する入管法の改正法案の御審議をお願いしているところでございます。その入管法の改正におきまして、技術、技能を身につけた技術者を少しでも多く日本で育てて諸外国のためにお役に立たせるような道を考えていかなければならない、そのように考えております。しかしただ、今労働大臣もちょっとお触れになっておりましたが、単純労働の問題については、これはいろいろな社会的な問題に及ぼす影響も大きいので、今のところは単純労働者の入国ということは認めないという原則になっておりますけれども、将来の問題ということもあると思いますが、そういう問題については今後いろいろ検討をしていくべきだと、そのように思っております。
  206. 西川潔

    ○西川潔君 どうもありがとうございました。突然に本当に申しわけございません。  これからの高齢化社会を考えますと、本当に不安なことばかりだと思います。ひとつここで、総評ということで、我々が例えば三年後とか五年後とか十年後、夢を持って生きていけるような、そういうまとめを総理お願いしたいんです。  総理は、僕は今この時代に世直しのために来られたと思っています。今までは本当に我々は政治に物すごい不信を抱いていました。廊下でお会いしても、きっちりごあいさつしてくれるのは海部総理だけです。今までの人はたくさんガードの人がついて歩いていますけれども、この間も廊下でお会いしたら海部総理は、西川さん、長い間大変ですね、御苦労さんですと言ってたくさんの方々の中でずうっと行かれる。あの黒山の人だかりの中で、廊下でひとりで歩いている僕に声をかけてくれるというのは、僕らはそういう部分には物すごくうれしさを感じる人間なんですけれども、どうぞ安心する最後の一言を全国の皆さんにお願いします。
  207. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) いろいろな角度から貴重なヒントや御意見を承りまして、私も拝聴しておりましたが、日本の高齢化社会というのは、世界が経験したことのないような非常に速いスピードで参ります。  それからもう一つは、やはり私自身も数年前に八十五歳で父親を亡くしましたけれども、私が時々帰って、私の子供と一緒に夕食を食べるときの話し合いというのを何か晩年は非常に喜んで待ち焦がれておったとも聞いております。  私は、これからの日本の社会というのは、欧米のような高福祉高負担でいくのか、あるいはアメリカのように自助努力、民間の努力、そういったものでいくのか、いろいろありましょうけれども、日本の伝統や日本の歴史やあるいは家族のきずなの中で豊かな暮らしをしていかれるような日本型の福祉社会、日本型の老後というものを何とかきちっと整備していかなきゃならぬなと。今各閣僚が西川委員の御質問に答えましたような施策もみんなあわせて、お年寄りの皆さんが心豊かに生きていっていただけるように、私も全力を挙げて頑張りたいと思います。  またお目にかかりましたら声をかけますから、御意見があったらどうぞ教えてください。お願いします。
  208. 西川潔

    ○西川潔君 本当にありがとうございました。  どうぞ消費税だけは弱者のしわ寄せにならないように、よろしくお願いします。ありがとうございました。
  209. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 以上で西川潔君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  210. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 次に、野末陳平君の質疑を行います。野末君。
  211. 野末陳平

    ○野末陳平君 今国民の大多数の関心は税金、土地、物価などであろうと思いますけれども、まず消費税から質問していきます。  国民が消費税に拒否反応を示したというのは、成立のプロセスにおけるルール違反に端を発すると僕は思っています。そこで、総理は所信表明演説で、国民に理解をしてもらう努力が十分でなかったと反省していると、こうおっしゃったんですが、僕に言わせると強行採決などの不自然な導入についてやや反省が不足しているという気がしますが、いかがですか。
  212. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 私は前回もあるいは本会議でもお答えしたと思いますけれども、導入時にいろいろな問題があったということについては、私は率直にこれを顧みて反省しております。いいことであったとは決して思っておりません。その点は御理解をいただきたいと思います。
  213. 野末陳平

    ○野末陳平君 確かに問題があったわけですが、ただ、事情がどうあれ、あの強行採決が非常に国民の目に不愉快に映って、しかも消費税不信があそこから始まったと私は認識しているんです。あちこち説明に行っても理解してもらえないというところはあれが壁になっている。となると、ただ問題があったというだけではなくして、総理はやはり国民に向かって、これはわびを入れるのが筋なんですね、本来。ですから、たまたまテレビがありますからね、テレビに向かってもうちょっと率直にやはり、迷惑をかけた、悪かったということを一言おっしゃるべきである、そう思うんですが、そこまではいきませんですか。    〔委員長退席、理事平井卓志君着席〕
  214. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 率直に申し上げて、私は残念なことであった、反省をしておりますとこれは申し上げましたけれども、消費税のその中身につきましてはいろいろまた考えや意見もありまして、いろいろな理由がありまして、ぜひこれは導入させてもらいたいということでお願いもしておったわけでございました。ですから、議会制民主主義のルールでいって、やはり合意できる点と合意できない点と論争の上できちっと明らかになってから採決ができるというのが一番望ましい姿であったことは間違いないわけでございますから、あのときに、その前の段階でああいうことになったということを反省しております。謝れとおっしゃいますので、ごめんなさいと言って率直に謝っておきます。
  215. 野末陳平

    ○野末陳平君 そこで、見直しなんですけれども、消費税見直しの第一点は、いわゆる内税化の問題だと思うんですね。総額表示方式と言っておられますが、これは法律を改正しなくてもできますから、ここから先なんですが、大蔵大臣、仮に内税化する場合、事業者間の取引は外税にしておいて、小売段階を内税にしてもらう。そういう形にしませんとまた混乱が起きると思うんですが、これについて大蔵大臣のお考えは。
  216. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに、委員が御指摘のように価格表示の問題は法律の問題ではございません。そして、むしろ実態をどう消費者に御理解いただくかということでありますから、事業者間取引というものは現在主流となっているいわゆる外税方式で別に問題がないと認識をいたしております。ですから、対最終消費者との取引の部分において税額が明示されているかどうかという問題とは別に、消費者にとってどういう表示方法が便利であるか、あるいは有益であるかという考え方をやはり忘れてはいけないと思います。私は、こうした点も含めて、委員の御論議を決して否定するつもりはございませんけれども、総額表示ということを申し上げてまいりましたのも同様な趣旨からであります。
  217. 野末陳平

    ○野末陳平君 その線で検討すべきと思いますが、見直しの第二点は、食料品を初めとする非課税枠の拡大です。  お産とか入学金の非課税はそれほど難しくないと思いますし、それから身障者の方の車いすとか自動車とか、そういうものですね、これもそれほど難しくない。これはやはりやった方がいい、やるべきである、そう思いますが、これについてはいかがですか。
  218. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) たびたび同じことを申し上げてしばしばお怒りをいただきますけれども、私は今政府の税制調査会に対して審議をお願いし、見直しをしていただいているさなかであります。私自体が個人的な見解を申し上げることは、やはりこのせっかくお願いをしております検討に対してそれなりの予見を与えることになると思いますので、その点については控えさせていただきたいと思います。
  219. 野末陳平

    ○野末陳平君 それでは、私の注文ということにしておきますからね。  それから、食料品なんですけれども、これはなかなか厄介なんですね。無理すればやれないことはないでしょうが、全部するか一部にするかとか、あるいは全流通段階にするかとか、非常に厄介な問題があって、食料品に消費税をかけないということにした場合、法改正を伴うだけにどういう点に問題点があると認識しているのか、どこが一番頭の痛い点なのか。この食料品の非課税化について、今のところ答えられる範囲でお願いします。
  220. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは全く理論的なこととしてお答えをさせていただきたいと思いますが、消費税におきまして消費者が購入されるような物品、サービスを非課税とした場合には、三%丸々ではなくても、少なくとも価格が下がるという意味での消費者へのメリットは存在をいたします。  しかし同時に、非課税品目を設けました場合、例えば事業者の事務負担が増大するという問題点は生じます。少なくとも、事業者が売り上げ、仕入れ双方に対して課税、非課税に対する区分をする必要が生じると同時に、税額計算上控除できる税額の算出方法が複雑となるという問題点はございます。    〔理事平井卓志君退席、委員長着席〕 また、制度の変更時には経理ソフトやレジスター等改変などの費用を負担することとなります。  また、非課税品目を用いまして課税物品を製造したり、また課税サービスを提供いたします場合には税の累積が生じます。すなわち、非課税品目ではありましても、その価格の中には仕入れに係る税額が含まれているもの、その価格は例えば一〇一ですとか一〇二とかということになるでありましょう。これが、非課税品目の仕入れの場合には、この一〇一なり一〇二のうちの一ないし二というものは仕入れ控除ができませんから、これらを仕入れて例えば課税物品を製造する事業者あるいは販売する事業者は、原材料価格が一〇一とか一〇二のものをお使いになるのと同じことになるという問題が生じます。ですから、みずからその部分を負担するのか、販売価格に転嫁をするのかという問題も生じるでありましょう。また、こういう場合に、例えば輸入原材料であるものと国産品との間にもアンバランスを生じるという可能性はあります。  そうやってまいりますと、課税品目の仕分けがしにくい、あるいは非課税が波及拡大するといったような問題点も理論的にはあろうかと思います。
  221. 野末陳平

    ○野末陳平君 確かに理屈を言うと非常に厄介な、面倒な問題なんですけれども、これはヨーロッパなどでもいろいろそういう点ではかなりアバウトになったりしているところはありまして、それをクリアしてやはり食べ物の非課税化、これはある程度はやらざるを得ないだろうと思っているんですけれども、なお今後の検討を待ちます。  それから見直しの、見直しと言うよりこれは手直しと言うべきなんですけれども、第三点目は、例の猫ばば税制と悪口を言われるところのあの消費税の欠陥ですけれども、三千万円以下の業者は免税でありそして五億円以下の業者は簡易課税を選べるというあそこなんですが、少なくもあれはほっておいちゃまずいと思いますね。なぜというと、これは主婦の皆さんもはっきりわかっているんだけれども、納税者の払った三%の税金が業者の手元に残って、これが一部もうけになってしまう。これはどう考えても不合理で矛盾していまして、ここをやはりかなり問題視なさる女性がおるわけでして、僕は考えまして、やはり今回見直しの対象にこれをしているのかどうか、これがまず気になるんですが、どうですか。
  222. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 従来何回か御答弁をいたします際に、国民から御要望のありました問題点はそれぞれすべて見直し、検討の対象にいたします、そして政府税調についてもそういうふうな御努力お願い申し上げますということを申し上げてまいりました。その限りにおいて見直しの対象であると私は考えております。  ただ、ちょうど施行いたしまして、納税義務者の方々が十月二日を迎えて、今例えば簡易課税を選択されるかどうかという時期を過ぎ、申告納税が開始されましたやさきでありまして、なお検討に多少の時間がかかるということは御理解をいただきたいと存じます。
  223. 野末陳平

    ○野末陳平君 ですから、来年の四月からやれというようなことは言いませんからね。というのは、当然業者は二年間の約束で課税方式の選択届を出しているわけですから、それがある程度落ちつくというか、少なくも一年間経過してその結果を見なきゃなりませんから、この期間は少なくも二年間は現行のままでいくしかないと思うんですが、しかしその二年が経過した後仕組みを変えまして、少なくも猫ばばと言われるようなそんな疑念を持たれないようなすっきりした制度に改めるという、そういう見直しの方針と同時にスケジュールというものを、今回もしそちらが見直し案を出されるならばそれを盛り込まなければ半端である、こういうふうに考えますが、どうですか。
  224. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 各種の税制度、これはもう委員がよく御承知のことでありますけれども、つくります場合には二つの重大な要請がございます。  一つは、制度はできるだけ例外をなくして精緻なものにすることによって公平性を追求するということでありますが、もう一つは実際に納税等にかかわります納税義務者の事務負担にできるだけ配慮をした、簡素という目的を追求することであります。この二つの目的はしばしば相反する局面もあるわけでありますが、現実に制度を仕組みます場合にはできるだけこの点のバランスをとらなければなりません。  現在御指摘をいただいております事業者免税点制度等は、このいわば公平と簡素という二つの要請の中ですぐれて政策的な判断に帰する問題として御理解をいただきたいことでありますし、諸外国におきましても同様の制度が広く採用されておりますことは委員承知のとおりでありますが、今申し上げましたように、国民の御要望のありました点すべてを見直しの対象とすると申し上げてきたわけでありますから、こうした中で税制調査会等におかれましても御論議は当然行われるものと思っております。
  225. 野末陳平

    ○野末陳平君 自分の意見だけ言っておきますね。  手直しをする場合、免税は一千万円以下の零細な業者に限りまして、あとは一律とりあえず帳簿方式にしておくというのが一番フェアだと思うんですよ。簡易課税における粗利の一〇%とか二〇%とか、そういうようなものは非常に、何といいますか、粗雑なのはもう承知の上でおやりになったわけですが、あれはナンセンスなんですね。仕入れはもう業種業態すべてによって違いますからね。ですから、これはやはり廃止して一律帳簿方式にしておく。業者によっては簡易課税方式を残しておいてほしいと思う人も当然いると思うんですが、そこは業者も我慢しなきゃいけませんよ。あくまでも消費者の立場を貫くというそういう見直しをしなければ、それができなければ見直しなんて意味がないと思うんですね。特に総理は思い切ったとか思い切ってとかということをおっしゃいますから、それだったらあそこの仕組みが一番問題である。もしそれができなければ、もう一たん白紙凍結してゼロから出直すというぐらいしかないと僕は思いますよ。どうでしょう総理、一言。
  226. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 税制改革、これはもう委員の方が専門としてよく御承知のように、一方では所得税、法人税、住民税等の減税を行い、また、物品税を廃止し新たに消費税という税制を設けた、いわば一つの大きなセットの仕組みの一つであります。それだけに、今委員が御主張になりますような凍結、廃止ということは私どもとしては考えられないことでありまして、むしろこの消費税の見直しの中でできる限りの努力をし、国民に御理解をいただくように努めてまいりたい、その中で定着に努めてまいりたい、そのように考えております。
  227. 野末陳平

    ○野末陳平君 僕は白紙凍結して出直せと言ったんで廃止とは言っておりませんから、そこの辺はお考え違いをなさらないように。いずれは帳簿方式からいわゆる伝票式というか税額票方式に移行しなければこれは長期税制としてはもたないと思いますから、それは先のことですから今回は触れておきませんがね。  それよりもっと大切なことをちょっと意見を交えて質問したいんですね。つまり、これからの税制改革、二十一世紀へ向けての、これを考える場合、その場合どういう基本の理念を政府は頭に置いているのか。税制改革の哲学ですよね、これからの。昔は経済優先とか産業保護とかありましたよね、そういう物差しが。あるいは富める者から貧しい者への富の再配分とか、そういうコンセンサスもありました。これらは時代とともに変わっていかなきゃなりませんね。どこがどう変わるかというのは別として、やはりこういう時代とともに変わるべきものが税制改革の基本理念であり哲学であって一向に構わないんだが、さてどういう物差しで政府は将来のあるべき税制の姿を考えていこうとするのか、その基本の哲学、これは明確に簡潔にちょっとお願いしたいですね。その後、僕は自分の考えを言いますから。
  228. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 簡潔に申し上げますならば、私は公平、中立性、簡素という三つの原則が挙げられると思います。  すなわち、負担の公平、また経済の活性化を図るためにも税制が民間の自由な経済活動に極力介入を避けるという意味での経済への中立性、またわかりやすくて明確で納税者の事務負担の少ない制度の簡素さ、私は公平、中立性、簡素、この三つが一つのポイントであると思います。そして、その上で消費と所得と資産とのバランスのとれた税体系を築いていく、これが基本であるべきだと考えております。
  229. 野末陳平

    ○野末陳平君 公平、中立、簡素は確かに常にそれは必要であろうと思いますね。僕は、二十一世紀に向けてのこれからのあるべき姿ですから、それとは違う角度から公平、これは同じですね、それから当然そちらもおっしゃっている高齢化、それから国際化ですね、この三つのKを考えないといけないんで、昔は国鉄、米、健保が三Kだったけれども、僕はこれから三Kの税制でいかなければだめだというふうに考えているわけなんで、これはだれしも異論のないところだと思うんですね。  さらに言うならば、もう一つKがあって、これは個人中心というか、産業優先だったものを個人の生活がワンランク上の生活ができるようなそういう税制というか、それもあるとは思いますが、とりあえず公平と国際化と高齢化、これは全く異論がないところだと思うんですが、総理いかがですか、御所見を。
  230. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 今大蔵大臣が申しましたように、公平、中立、そして簡素、この三つの理念で私たちは税制改革というものを考えてまいりましたが、今御指摘になった高齢化、国際化、この問題につきましても、高齢化時代のいろいろな問題を考えて安定的な税収を確保しなければならぬという立場も私どもにもございますし、さらにまた、国際化時代にいろいろな個別物品税の問題等でいろいろな批判を受けたり、また国際社会に日本が同じルールで同じ物事を考えながら汗を流していこうという時代になりますと、御指摘の国際化というものを考えた税制改革も二十一世紀にとっては大切な目標になると私は受けとめさせていただきます。
  231. 野末陳平

    ○野末陳平君 私は、非常に今回の消費税を含めた税制改革で反対が多くなってこういうような結果になったことについて反省しますと、公平、中立、簡素というような三本柱では今回の消費税は理解してもらうことはなかなか難しいですね。やはりもっと国際化、高齢化、そして公平性ということを訴えるべきであったと思うんです。ただし、この中身が問題なんです、日本語は複雑ですからね。  公平と一言で言いますけれども、公平にも当然縦の公平と横の公平があるわけですね、これは当たり前のことですが。富の再配分機能というのはいわば縦の公平ですから、これは今後とも当然第一に考えるべきことではありますが、これだけで二十一世紀が支えられるかというと、これはなかなか難しいですね。となると、応益負担とかあるいは消費における負担の平等とか、いろいろな新しい公平という物差しも持ち込んでこなきゃならないわけですね。さあ問題はその縦と横、これを、つまり累進構造をとる所得税、この縦の部分とそれから逆進性になる間接税、この縦横をいかにうまくバランスよく組み合わせるかという、ここに新しい公平という物差しを生み出さなきゃいけないんですね。これはもう先進諸国では税の流れとしては当然なんですが、我が国ではなかなかこれはまだ時間がかかると思います。その観点の説明というかそのバランス、直間比率ということになりますが、この縦と横の公平のバランスを国情に合わせながらきめ細かく国民の皆さんにわかっていただくということをしていかないと、絶対に消費税というのは定着がおくれる、あるいはもっと悪いことになる、そういうふうに思っているんですよ。  ですから、言いたいことは、公平とか国際化とか高齢化と言うと、ああわかった、それは異論がないということになっちゃうんですが、日本語というのは一人一人みんなイメージが違う、その中身が違いますから、そこで公平とは何だということをやはりきちっと決めて、それからそれを税制改革の基本に据えないと、ただ公平である、これは不公平である、それだけではかえって議論が混乱すると思いますが、大蔵大臣どうですかね。この辺がかなり混乱していたと思いますよ、今までの議論で。
  232. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員が御指摘になりましたような国際化、高齢化、また個人を重視してということだけでもなかなか御理解をいただくのに困難な部分はあろうかと思います。しかし、私は今委員が示された形というものに異論はありません。  そこで、委員は今度はいわば縦のそして横のという税の上での公平の論議を展開されましたけれども、私どもの立場からいたしますと、それに歳出の組み合わせによって逆進性をカバーする部分等も当然考えなければならないと思います。水平的な公平、垂直的な公平、そして税でカバーし切れない部分を歳出によってカバーする、この組み合わせの中でそれぞれの問題点に答えを出していかなければならないのではなかろうか、そのように考えました。
  233. 野末陳平

    ○野末陳平君 まさに歳出の面は税制を補完するような役割がありますから、これだけはしっかりとやっていただきたいと思うんです。  これ以上税制をやっていますと理屈っぽくなりますから、次に、公平の裏返しであるところの不公平ですね。不公平税制と言われていますが、むしろ不公平感と言うべきだろうと思うんで、この不公平感の問題について二、三質問していきます。  パチンコ業界の脱税はさっきも問題になっておりましたけれども、同様にごまかし所得の常連に公益法人があるでしょう。公益法人白書にも出ていましたけれども、学校法人とか宗教法人というのは、教育とかあるいは信仰とかいうことを仕事にしながら、良心が麻痺しているんじゃないかと思わざるを得ないようなよくない結果が出ておりますね、まじめな納税者から見ると。  そこで、国税庁、お寺とか神社とか宗教団体とか、そういうようなところが副業のごまかし、つまり営利事業、収益事業ですね、そちらの申告のごまかしというのが目に余る。一向に改善されないけれどもどうしてなのかわからないんですね。相手の良心の問題なのか、それともそちらが手抜きをして甘くしているのか一体どっちなんだろうと、毎年同じ結果が出てくると非常に不信感を持つんですが、どうですか。
  234. 岡本吉司

    政府委員(岡本吉司君) 今委員お話しの、公益法人白書とおっしゃいましたけれども、先般我々が発表いたしました法人税の課税実績あるいは源泉所得税の課税実績のお話、その中に公益法人等が入っておりますのでそれかと思いますので、それについて御説明申し上げたいと思っておりますが、公益法人等には御案内のとおり宗教法人を初め学校法人やらあるいは社団、財団等々いろんなものがあるわけでございます。これらの法人が我々の課税の面でどういう場面であらわれてくるかとこう申し上げますと、まず収益事業の面とそれから源泉所得税の面、この二面にあらわれてくるわけでございます。  具体的に申し上げますと、例えば収益事業の面につきましては、いわゆる公益事業と収益事業の区分が正確かどうか、こういった点になろうかと思っています。本来収益事業に挙げるべきものが収益事業からそっくり落ちちゃっている、これは論外でございますけれども、あるいは公益部門に入っちゃっている、あるいは逆に今度公益事業のいわば支出になるべきものが収益事業の経費として落ちちゃっている、こういったものがいわば収益事業にかかわる面かと思っております。  源泉所得税にかかわる面におきましては、主として個人的支出、本来代表者等の個人的支出になるべきものが公益事業で落ちちゃっているとか、あるいは収益事業の経費として落ちちゃっている、いわば俗につけ込み的なものでございます。こういったところが我々の税の面にあらわれてくる公益法人の課税の問題かと思っております。  我々、税の調査等を通じてこういった公益法人の中身を見てみますといろいろあるわけでございまして、意識的にごまかしていると思われるものもありますれば、片や非常に税になれていないというふなれな面で間違いが生じているという面もあるわけでございます。  原因につきまして、それはいかんという御質問でございますけれども、これは非常に難しい御質問だろうと思っております。一概にかくかくしかじかだと申し上げるのは非常に困難だと思っておりますけれども、私、基本的には、現在は申告納税制度をとっておりますので、やはり納税思想といいますか納税道義と申しますか、こういったところが一番の大きな大もとではなかろうかと思っております。したがいまして、我々従来から課税上問題があろうかという公益法人等につきましてはもちろん税務調査等もいたしますけれども、同時にいろんな説明会等を催しまして納税道義の高揚を図っているところでございます。今後も引き続き努力してまいりたいと、こう思っております。
  235. 野末陳平

    ○野末陳平君 執行面で努力なさるのは当然のことなんですが、それは一般の人に不公平感の解消という面ではなかなか見えてこないんで、ここでまた持論を展開しますけれども、公益法人は、なかんずく宗教法人も含めてですが、税法上の優遇を受けた上にごまかし所得とかいうのがあるとすれば、これは非常に不公平の倍増でして一番腹の立つことですから、そこでかねてから主張するように、副業に対する税率が低いからこれを上げろ、それから寄附金の扱いも直せ、こういうことを僕は何度も言っているんですけれども、一向に直してくれない。これは大蔵大臣、手直しの必要はここにはないとこういうことなのかどうか、それをお聞きしたい。
  236. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 宗教法人を含みます公益法人について、現在その収益事業から生ずる所得につきまして二七%の軽減税率で法人税を課していることは委員承知のとおりであります。この軽減税率につきましては、今回の税制改革におきましても、二七%の税率を据え置くことによって基本税率との格差縮小を図ったということは申し上げられると思います。またこのほかにも、税制調査会の答申の中でも、今委員がお触れになりましたが、課税対象となる収益事業の範囲について今後とも一般法人との間に不公平が生じないように実態に即した見直しを行い、また公益法人等の有する金融資産から生ずる収益についても、収益事業に属するもののみが現在課税されているが、公益部門に属する金融資産収益についても、税負担の公平を確保する観点から、それぞれの公益法人の性格あるいは活動実態というものを勘案しながら、応分の負担を求めることを検討しろという御指摘を受けております。  また、昨年ちょうど十月の十七日、与野党協議の場におきましてこの問題についても御論議がなされておるということを承知いたしておりまして、私どもは、税制調査会の答申、また国会における公党間の御協議の場において与党から回答しております内容を踏まえながら、対処していきたいと考えております。
  237. 野末陳平

    ○野末陳平君 もっとやはりきつくやらなきゃだめだと思うんですね。今据え置きにしたと言うけれども、要するに中小企業の方を低くして差は縮まった。差は縮まったけれども、優遇している事実は全然変わらないという面もありまして、ひとつ目に見える形で、きょうはこれだけは検討してもらいたいと思っています、宗教法人に限りますが、学校法人もその扱いを受けていいんですが、まず固定資産税とか都市計画税とか不動産取得税とか、そういうものがただになっているのはおかしい。町の中心にある広大な土地とか家屋が、信仰の用に供されているというだけの理由で税金免除、これは絶対おかしいんですね。世間並みの課税をなぜしないか。昔はともかく、今はそういう時代になった。優遇の必要がまだあるのかどうか、これは自治大臣に聞きたいんです。
  238. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) せっかくのお尋ねでございますが、固定資産税については、宗教法人が専らその本来の用に供する境内建物及び境内地について、宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成するという宗教活動の持つ特性にかんがみ、非課税としております。  この場合において、先ほどいろいろ御心配がありましたが、境内建物、境内地が専ら宗教法人本来の目的に供せられておるものか否かは、宗教法人の各施設の利用の実態を見て判断し、例えば一般の駐車場あるいは旅館等に類似した利用のされている施設については、当然のことでありますが課税をいたしております。  このような宗教法人についての固定資産税の取り扱いは地租、家屋税のころから変わらず、長い期間を経て定着しておる制度であり、宗教活動の持つ特性にかんがみ今後とも継続していくことが適当であると考えておりますが、本来の宗教活動の用に供するか否かの認定については、適正な認定が行われるように努めることによって先生の御意向を反映してまいりたいと思っております。
  239. 野末陳平

    ○野末陳平君 そういう、解釈とか認定の問題ではなくなってきていると思うんです。だって、宗教活動をやるにしてもただというのは甘え過ぎなんで、なぜって、周辺住民の税負担があればこそやっていけるとなれば、せめて固定資産税、都市計画税、不動産取得税などは人並みに負担してもいいじゃないか。これは赤字法人の事業税についても言えるんですけれども、余りにも甘え過ぎである。昔はいざ知らず、これからの時代にこれをそのままにしておくことは一般のまじめな納税者に対して非常に不公平感を植えつける、そういうふうに思っているので質問しているんです。認定や解釈の問題と全然違うんです。となると、もう決断あるのみで、もう時代が変わった。税金をかけたぐらいで神仏の罰が当たるわけじゃないんだからこれはやはりやるべきだ。そういうのが今や現代の公平ですよ、と思うんですが、もう一度。
  240. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 野末先生は私と同じ昭和七年生まれで同窓でもありますので、ぜひ御期待にこたえるような答弁をしたいのでありますけれども、自治大臣としての私の答弁は先ほど申し上げたとおりでございますので、御理解を賜りたいと存じます。
  241. 野末陳平

    ○野末陳平君 不公平の問題はまだいろいろあるんですが、問題は、一挙に大きく変えるというのは難しいですよ。しかし、小さな手直しを積み重ねることによって不公平感の解消に努めるというその努力の跡が見えないと、やはりこれは永久にガス抜きができないということになって、それは皆さんが定着させたいと思う消費税だって定着しませんよ。それがやはり訴えたいところなんです。  土地絡みで、特に土地が今一番怨嗟の的になっているから言いますが、もう一つある。それは言うまでもなく市街化区域内の農地。僕も何回も言っているんだ。これはもちろん宅地並み課税で、もう知れわたっておりますよ。これも非常に根の深い難しい問題を含んでおりますが、しかし売れば数百万円、評価が数百万円というような土地が片一方は宅地、片一方は農地、それによって固定資産税の負担が農地は五十分の一、百分の一というようなばかみたいな開きがある。この負担の不公平が単に固定資産税の不公平にとどまらず、宅地の供給とかあるいは土地の有効利用とかそういうことを妨げ、ひいては地価にも及んで、そして最近の土地を持たない人の不公平感につながっている。こういうふうに思って何度もこれを早く是正しろと言ったけれども、一向にうまくいかない。ただ、建設省が最近やっと宅地並み課税の徹底を図るというようなことですから、まず建設省の方針を聞いて、それによってまたちょっと質問したいと思います。
  242. 原田昇左右

    国務大臣原田昇左右君) お答えします。  市街化区域内の農地は大都市における残された貴重な空間でございますし、その有効利用いかんというのはこれからの宅地供給につきましても最重要課題の一つだと認識いたしておるわけであります。  そこで、市街化区域内の農地の活用方法になるわけでございますが、総合土地対策要綱の趣旨によりましても、まず保全すべきものと宅地化すべきものとに明確に区分する必要があると思うんです。そして、宅地化するものについては、土地区画整理事業あるいは地区計画等を活用しまして計画的に宅地化を図っていくこととあわせて税制面の課題も再検討いたしまして、そして総合的な対策を実施していく必要がある、こういうように考えておる次第であります。
  243. 野末陳平

    ○野末陳平君 何か、再検討であんまり徹底する話になってないですね。困ったものだね。  農水省はどうなの、これについては。
  244. 鹿野道彦

    国務大臣(鹿野道彦君) 市街化区域内における農地は今十七万ヘクタールほどございまして、それを一気に宅地化するというのはなかなか難しい点がございます。  ただいま建設大臣から申されたとおりに、昨年閣議決定いたしておりますところの総合土地対策要綱におきましては、市街化する農地と保全する農地と振り分けていく、そして市街化の農地についてはいわゆる必要な基盤整備を図って宅地化を図っていく、それに応じて税制面においても見直しをやっていくという、こういう基本的な考え方に沿って農林水産省といたしましても協力をしてまいりたい、こういう考え方でございます。
  245. 野末陳平

    ○野末陳平君 僕は都会に住んでいるせいか、もう周辺の意見などは今みたいな話と全然違うんですね。要するに、言うまでもなく税制のみで土地問題の解決ということはもちろん難しいんですけれども、しかし土地税制があくまで総合的な土地政策を補完するものだという基本的な立場に立っちゃうと、農業問題から宅地問題から結局いろいろ絡んできて宅地並み課税はできなくなっちゃうんですよ。そこが問題なんで、僕はもう全体的なそういう農業あるいは土地政策と宅地並み課税はもう切り離して、とにかく固定資産税だけの問題なんですから、これは切り離してやらなきゃいけないと思っているんです。  そこで、大蔵大臣にちょっと聞きたいんだけれども、消費税でも税制改革でもすべて公平とかいろいろお話がありましたけれども、この農地というのはめちゃくちゃに安い固定資産税で自分の土地は保有できる。同時に、もちろんまじめに農業をやる人もほどほどにやる人もあるにしても、とにかく地価はウナギ登りだ。そして、ある時期に売ろうと思えば相場で売れるという自由まで保障されているんですよ。これは幾ら何だってこういう農地というのは少なくも都市部においてはあっちゃいけないことじゃないんですか。これが不公平の一番の典型で、目に見える不公平。これは農業を大事にするということとは全然別じゃないかと思います。どうです。
  246. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大蔵省としても、負担の公平という観点からこの見直しは必要であると考えております。これは先ほど建設大臣の答弁にも総合土地対策要綱を引用してお話しになりまして、むしろ見直しの方向は示されているわけであります。問題意識は委員が御指摘のとおりであります。  そこで、あるべき都市政策、土地利用計画の策定、それに基づく宅地化すべき農地と保全すべき農地の区分というものの前提が前提としてどうしても必要でありますけれども、この部分についてなかなか実施をすることが難しいとしても、各種税制の今後の見直しの一環として私どもとしては対処していきたいと思います。
  247. 野末陳平

    ○野末陳平君 精力的に積極的に対処してもらわないと、不公平感なんというのは土地に絡んだものは簡単には解消しないから、これは一番大事だと思いますよ。  そこで、ちょっと角度を変えて土地の値段の問題との関係を聞きたいんだけれども、東京二十三区に限って聞きますけれども、宅地並み課税を免れている長期営農継続農地というのがどのぐらいあるのか、どの区が多いのか、大体、坪数にした方がわかりいいと思いますから、それをちょっと数字を示してください。
  248. 湯浅利夫

    政府委員(湯浅利夫君) 昭和六十三年度におきまして東京二十三区で長期営農継続農地の認定を受けている農地は、全体で坪数で申し上げますと約四百十九万坪でございます。二十三区で最もこの長期営農継続農地が多い区は練馬区でございまして、練馬区が約百六十万坪、それから二番目は世田谷区で約七十五万坪、三番目は足立区で六十五万坪、こういうような状況になっております。
  249. 野末陳平

    ○野末陳平君 東京二十三区だけの話ですが、約四百二十万坪というんだが、ここでキャベツとかネギとかそういう都市農業をやるという公共性と、それをもっと一般に広く公共利用するという有効利用の公共性と、どっちの公共性を優先するかというところが今まさに問われているので、これを早く解決しなきゃいけないと思うんです。  そこで地価との関係ですけれども、これだけの土地に宅地並み課税を徹底していれば、これは仮定の話ですけれども、土地の値段はどうなっていたかということを考えますと、ここ五、六年こんなに暴騰はしなかっただろうと予測ができるんですが、そういうような何か試算を政府はなさっているか、民間でもいいんですが、何かありましたら答えてください。
  250. 栗林世

    政府委員(栗林世君) お答えいたします。  私どもの方の経済研究所におきまして、農地の固定資産税の宅地並み課税が農地から宅地への土地供給や地価にどういう影響を及ぼすかという研究がなされております。しかし、これはあくまでも岩田上智大学教授をヘッドとします研究グループの研究でありまして、経済企画庁としての公式見解ではございませんので、その点をよろしくお願いしたいと思います。  この研究によりますと、東京都から五十キロ圏内の神奈川県の十三の都市につきまして計量経済モデルを使いまして数量的な事例研究を行ったものでございまして、これはまだあくまでも研究の中間報告の段階でございます。ここでは二ケースに分けましてシミュレーションをやっております。一つは、一九七六年に農地の実効税率を同年の宅地の実効税率まで一挙に引き上げるケースでございます。もう一つは、一九七六年から一九八〇年までの間に毎年三・二倍ずつ上昇していき、五年間で宅地並み課税を実現するケース、この二種類の試算を行っております。  一のケースで申し上げますと、農地の宅地並み課税の実施後約十一年経過しますと、地価は一九八六年の実績値と比較しまして約二八%低い水準にとどまっている、農地は約八二%減少しまして、宅地は一二%ほど増加するという結果が得られております。第二のケースにつきましてもほぼ同じような結果になります。この試算は神奈川県の十三の都市についての事例、あくまでも事例研究でありまして、この結果を直ちに他の地域へ適用することはできないというふうに考えております。また、本試算は研究の中間段階でもありまして、今後この実効税率を初めとするデータの改良とか東京都等の首都圏内の他の地域のデータを追加するとかということによって、研究の精度を高めていかなければならないというふうに考えております。  また、言うまでもないことでございますが、土地問題につきましては、土地利用計画やその他の税制等を加味した総合的な政策が必要であるというふうに考えられます。  以上でございます。
  251. 野末陳平

    ○野末陳平君 やはり固定資産税における負担の不公平と同時に、宅地並み課税の問題だけでなくて土地の有効利用ということを引き出すという、そういう方向をもっとはっきり早くしていただかないと、この問題はなかなか、不公平だけでなくて都市政策にも影響があると思いますね。やりにくい面があるのは承知していますけれども、しかし各省庁一丸となってこういう問題を早くやってほしいと思うんです。  ついでですから、これじゃ物価問題までいかないから、相続税の方をちょっと先にやりますよ。  相続税も、東京、横浜などの大都市圏においては、サラリーマン家庭すら相続税におびえる時代になりました。しかし、都市農家はどうでしょうね。長期営農の届けを出せば何千万、何億円の相続税すらも猶予してもらえる。しかも、二十年我慢すれば相続税がただになっちゃう。その時点で売れば売れるんだから、高くね。こういう相続税における納税猶予制度というのはどうなんですか、不公平のもう一つであるけれども、しかしこれが都市計画や土地の有効利用その他を非常に妨げている、こういう実態がある。  建設省に聞くんだけれども、これで困ったと、この猶予制度を何とかしてほしいんだがというような意見あるいはそんな分析なぞはないんですか、建設省。どうします。これは大蔵省の問題じゃないんですよね。
  252. 真嶋一男

    政府委員(真嶋一男君) お答えいたします。  市街化区域内に農地が存在するということは、計画的な町づくりの上でやはり障害になるということは一般論としては言えると思いますが、具体的にこういう道路をつくるとか下水をつくるとかについて支障になったということは特にはございませんけれども、全体論としてはございます。
  253. 野末陳平

    ○野末陳平君 それはあるということなんだから。じゃその実態はどうだというのだ。相続税の納税猶予あるいは長期営農継続、そういう制度が本当に都市農業の育成とか緑のある潤いのある町づくりに役立っているかというと、個人で勝手に農業をやっているだけなんだから。そういう面を甘く見て、農業の美名のもとに過保護にしているというのはおかしいと思うんだね。  そこで、本来の意味であるところの農業の継承とか発展とかいうものとは大分趣が違ってきたこの制度をもう堅持しちゃいけないと言うのだ、僕は。建設省でもそれから大蔵省でも農水省でもいいんだけれども、もう堅持すべきでないという答えができるんならやってくださいよ。それでも堅持すべきだと言うのか、どっちでもいいんですが、聞きたい。
  254. 鹿野道彦

    国務大臣(鹿野道彦君) 先ほど、昨年の閣議決定の総合土地対策要綱におきましても、いわゆる市街化する農地と保全する農地、その保全する農地にいわゆる明確にそれだけの位置づけがされておらないところに対しましては、相続税の猶予制度については見直しをしていく、そしていわゆる取り扱いの適正化も図っていく、こういうふうなことでございますので、そのような基本的な考え方に沿って農林水産省といたしましても協力をしてまいりたいと、こういうふうに考えておるところであります。
  255. 野末陳平

    ○野末陳平君 実に困ったものだ。東京都議会も実は同じなんですよ。東京都議会もこの制度を堅持しろと、こういうことになっている。だけれども、言い分を読んでみますと、結局は美名のもとにみずからのエゴと利益を守っているという面が少なくないんです。これじゃ都市部のサラリーマンは頭にきますよ。主婦だってこの問題でいらいらしているんですよ。そこへ消費税だから、そんな簡単に定着しませんよ、悪いけれども。だから、不公平の問題を一つ一つきちっと小さい手直しを積み重ねる努力もせずに、今まで二十年、三十年前から続いている理屈だけでもってこの時代の変化に合わせたそんな答えを続ける限りは、非常に先は暗いとこう言うしかない。  ですから、総理、最後に一つ、不公平税制とか不公平感とか言葉はいろいろですが、問題は公平ではなくなっているのを——公共性の面から見てはっきり言えるんですよ、今言った土地の問題その他は。これをほうっておいたら、あなたが幾ら努力しても消費税は暗いな、そう思いますよ。いや、はっきり。お答えを最後に。
  256. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 御指摘になりました土地問題に限って申し上げましても、今内閣も閣僚会議をつくって、全体としてそれは取り組んでいかなきゃならぬと思っておる大きな問題でございますから、各省間の話し合いを進めるとともに、この間六十三年の十二月に決まっております要綱にも基づいて区分をしっかりして、少しずつでも前進させ、直していくようにいたします。
  257. 野末陳平

    ○野末陳平君 どうもありがとうございます。
  258. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 以上で野末陳平君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  259. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) この際、理事会預かりとなりました事項につきまして、委員長から御報告いたします。  一、リクルート問題に関し、公表を求める政治家の基準について、今予算委員会開会中に結論を出すこと。  二、リクルート問題に係る各党要求資料についても、今予算委員会開会中に結論を出すよう努力すること。  三、中曽根康弘君の証人喚問要求。  以上の三件につきましては、理事会におきまして鋭意協議を重ねてまいりましたが、第一の件は合意を見るに至りませんでした。また、第二の件及び第三の件につきましては、引き続き理事会におきまして協議することとなりました。  次に、去る二十日の本委員会における山岡賢次君の発言の件につきましては、見解の相違があり、理事会として結論を得るに至りませんでした。  最後に、パチンコ問題に係る証人喚問要求の件及びパチンコ問題等に関する集中審議の件につきましては、協議が調いませんでした。  以上、御報告いたします。     ─────────────
  260. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 次に、本岡昭次君の残余の質疑を行います。本岡君。
  261. 本岡昭次

    本岡昭次君 今の委員長の報告は全く不満であります。一体、委員長はその委員長の職責というものをどれほど考えておられるのか。後刻預かる、後刻預かる。あなたは幾ら理事会でいろんな問題を預かったんですか。それをほとんど解決できないままここにそういう報告をされる。あなたは委員長不信任に等しい状態に今あるという、私はそのことを強くここで申し上げておきたい。  その上で、私は最初にこの山岡委員の問題発言について抗議をしなければならない、このように思っております。  本委員会における十月二十日、そして本日、山岡委員の発言は、我が党とパチンコ業界の一部、朝鮮総連との間に構造的癒着があるとの独断と偏見に基づく不当な中傷に満ちたものでありました。とりわけ、我が党議員が自民党所属の参議院地方行政委員長及び風俗営業等小委員長らと共同で対処し、円満かつ適正な解決を見た事案について、事実関係を歪曲、捏造した上で、警察に圧力をかけ県条例を改正させたとか、その圧力の手段として道交法の審議に応じないとさらに大きな圧力をかけたなどと、さらに誹謗中傷を展開してまいりました。当該県警の保安部長は圧力など絶対になかったと私に答弁をしております。  このような、事実に基づかず悪意に満ちた虚構によって質問を行ったこと、また政府は警察庁等が質問者の誤りを具体的に指摘、訂正もせず、むしろそれに同調するかのような答弁を繰り返したことは、我が党及び我が党所属議員の名誉を故意に著しく傷つけたばかりでなく、その事案の適正な処理に当たった地方行政委員長、風俗営業等小委員長あるいは当該県当局及び県議会等の真摯な努力に対しても侮辱を加えたものであります。さらに、当該事案の解決の前提となった衆参両院での審議の経過に対する無知または意図的な無視の態度をさらけ出したものであります。  我々は、国会の品位を大きく傷つけたこの質問とそれに呼応した国家公安委員長及び警察庁の答弁のあり方に強く抗議し、少なくとも最も重大な問題発言部分についての取り消しと陳謝を要求してまいりました。しかしながら、山岡委員は本日もまた同様の誹謗中傷を繰り返し、自民党は何ら反省の意をあらわすことなく、我々の当然の要求を拒否し続けております。したがって、我々はここで改めて、山岡委員及びその不当な誹謗中傷に呼応した政府側答弁者並びに正当な要求に応じなかった自民党に対して厳重な抗議を行いたいと思います。  次に、私の求めました資料要求についてでありますが、灰色高官問題であります。合意に至らなかったと今委員長は報告されましたが、どのような経過があって合意に至らなかったのですか。
  262. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) お答えいたします。  理事会において幾たびとなくこの問題につきまして協議を行いました。しかし、各党理事の間で意見の相違がありまして、結局まとまらないということで、さらに継続して協議をしようと、こういうことになった次第であります。
  263. 本岡昭次

    本岡昭次君 この本委員会で結論を得るとあなたはおっしゃったわけで、継続するということでは困る。
  264. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 先ほど御報告いたしましたように、リクルート問題に関して公表を求める政治家の基準について、この問題は理事会において鋭意協議を重ねてまいりましたが、合意を見るに至らなかったわけです。  それから第二の、リクルート問題に係る各党要求資料につきましても、この予算委員会開催中に結論を出すように努力をしたわけでありまするが、引き続き理事会におきまして協議をすると、こういうことになったわけであります。
  265. 本岡昭次

    本岡昭次君 合意に至らなかった経過、各党ということでありますが、どの党が賛成し、どの党が反対したんですか。
  266. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) お答えいたします。  与野党に分かれまして互いに意見を出し合い協議をしたわけでありまするが、与野党理事間の意見が整わない、合意を得るに至らない、こういうような次第であったわけです。
  267. 本岡昭次

    本岡昭次君 海部総理大臣も、政府として新たな御要求があったときはどのような御協力ができるか検討させていただきますと答弁をされました。また、いろいろ御議論をいただいてこの事件の疑惑を解明されていくように国会における御議論が続いておるわけでありますから、適切な御論議を期待しておりますとも述べられました。また、国会において各党会派のお話し合いによって新しい申し出があればその段階で法令に従ってどの程度のことができるのか検討させていただきます、ここまで答弁をされておるのであります。  それに対して、この予算委員会は全くこたえられなかった。これでは、国会の怠慢と言われても私は仕方がない、このように思います。  国民に信頼される政治改革を行うためには、リクルート事件に対する政治家の政治的責任を究明し国会としてのけじめをつける、これが一番大事なことではありませんか。海部総理も、さきの参議院選挙の最大の問題はリクルート事件に端を発した政治不信であったと言っているわけで、そのことに対して何ら国会はけじめをつけられていないわけであります。そのけじめをつけることを総理は期待した。しかし、こたえられなかった。理事会は何ら具体的な検討もできなかった。これでは、この予算委員会においてその決議をもって私は資料の提出を求める以外にない。国会法百四条という、この国会における国政調査権の発動という問題を私はここで提示せざるを得ないのであります。  私は、リクルート事件に関連して政治的道義的責任を有すると思われる政治家について、次の基準により政治家の捜査事項等を本委員会に報告するよう、本委員会として求めることの動議を提出いたします。  その動議の内容でありますが、まずその政治家の基準であります。  昭和五十九年十二月に株の譲渡を受けた三人の政治家。  昭和六十一年九月に株の譲渡を受けたが、起訴とならなかった十一人の政治家。  リクルート社や関連会社から政治献金、接待、パーティー券購入その他金品あるいはサービスの提供を受けた政治家。  この政治家たちに関して報告を求める事項。  それは氏名、譲渡株の数、名義及びその帰属、譲渡の趣旨、目的、譲渡及び売却の日時と方法、購入金額、代金支払いの日時、方法、条件、融資つきの有無及び融資した者、売却利益及びその帰属と使途。  リクルート社その他関連会社の事業内容に関する職務権限の有無とその内容、職務権限と株式譲渡との対価関係及び請託の有無。不起訴処分とした詳細な理由。  三、政治献金の金額、日時、名義上及び実質上の献金者及び受領者。政治献金についての収支報告の有無並びに不正な対価関係が認められなかった理由。  四、接待の時期、内容、趣旨、目的、場所、金額及び講演、原稿の謝礼の時期、金額。  パーティー券の購入の日時、金額、枚数及び収支報告の有無並びに不正な対価関係が認められなかった理由。  六、東京地検が事情聴取した政治家及び秘書等関係者の氏名及び聴取事項の要旨。  七、政治家十六人に譲渡された未公開株の売却利益に関する税務調査の有無と課税処理の内容。  八、NTTが米国クレイ社から、リクルート社がNTTからそれぞれスーパーコンピューター及び通信機器を購入した件につき、それぞれ購入品目、日時、代金、転売の詳細な経過、中曽根総理大臣(当時)その他関与した人物、政治家、関与の内容、関与者への献金の有無並びに不正な対価関係が認められなかった理由。  九、安比高原スキー場開発の事業主体変更と地元営林局、営林署等のかかわりについての詳細な経過、加藤農林水産大臣(当時)の関与の有無、関与の内容並びに同大臣が受けた株の譲渡等との間に不正な対価関係が認められなかった理由。加藤農林水産大臣(当時)らの民間借り上げのヘリコプターへの便乗の詳細な経過。  以上の資料の報告を本委員会で行うことの動議を私は提出いたします。
  268. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいまの本岡昭次君の動議は理事会で協議いたします。理事どうぞ。(「ただいまの動議に賛成します」「反対」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)理事会で協議します。どうぞ理事、集まってください。(「議事進行の動議」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  本日はこれにて散会いたします。    午後八時十五分散会