運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1989-10-20 第116回国会 参議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十月二十日(金曜日)    午前十時一分開会     ─────────────   委員氏名     委員長         林田悠紀夫君     理 事         伊江 朝雄君     理 事         石井 一二君     理 事         下稲葉耕吉君     理 事         平井 卓志君     理 事         穐山  篤君     理 事         矢田部 理君     理 事         安恒 良一君     理 事         太田 淳夫君     理 事         吉岡 吉典君                 青木 幹雄君                 井上 章平君                 井上  裕君                 遠藤  要君                 小野 清子君                大河原太一郎君                 合馬  敬君                 片山虎之助君                 北  修二君                 久世 公堯君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 中曽根弘文君                 永野 茂門君                 二木 秀夫君                 稲村 稔夫君                 梶原 敬義君                 久保  亘君                 國弘 正雄君                 竹村 泰子君                 田  英夫君                 堂本 暁子君                 村沢  牧君                 本岡 昭次君                 山本 正和君                 猪熊 重二君                 白浜 一良君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 粟森  喬君                 池田  治君                 足立 良平君                 井上  計君                 喜屋武眞榮君                 野末 陳平君     ─────────────    委員の異動  十月六日     辞任         補欠選任      喜屋武眞榮君     西川  潔君  十月十七日     辞任         補欠選任      井上  裕君     清水嘉与子君      小野 清子君     前島英三郎君     大河原太一郎君     永田 良雄君  十月十八日     辞任         補欠選任      永田 良雄君     山岡 賢次君      粟森  喬君     中村 鋭一君      井上  計君     小西 博行君  十月十九日     辞任         補欠選任      中村 鋭一君     粟森  喬君      野末 陳平君     横溝 克己君  十月二十日     辞任         補欠選任      田  英夫君     栗村 和夫君      横溝 克己君     野末 陳平君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         林田悠紀夫君     理 事                 伊江 朝雄君                 石井 一二君                 下稲葉耕吉君                 平井 卓志君                 穐山  篤君                 矢田部 理君                 安恒 良一君                 太田 淳夫君                 吉岡 吉典君     委 員                 青木 幹雄君                 井上 章平君                 遠藤  要君                 合馬  敬君                 片山虎之助君                 北  修二君                 久世 公堯君                 清水嘉与子君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 中曽根弘文君                 永野 茂門君                 二木 秀夫君                 前島英三郎君                 山岡 賢次君                 稲村 稔夫君                 梶原 敬義君                 久保  亘君                 國弘 正雄君                 栗村 和夫君                 竹村 泰子君                 田  英夫君                 堂本 暁子君                 村沢  牧君                 本岡 昭次君                 山本 正和君                 猪熊 重二君                 白浜 一良君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 粟森  喬君                 池田  治君                 足立 良平君                 小西 博行君                 西川  潔君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   海部 俊樹君        法 務 大 臣  後藤 正夫君        外 務 大 臣  中山 太郎君        大 蔵 大 臣  橋本龍太郎君        文 部 大 臣  石橋 一弥君        厚 生 大 臣  戸井田三郎君        農林水産大臣   鹿野 道彦君        通商産業大臣   松永  光君        運 輸 大 臣  江藤 隆美君        郵 政 大 臣  大石 千八君        労 働 大 臣  福島 譲二君        建 設 大 臣  原田昇左右君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    渡部 恒三君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 森山 眞弓君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  水野  清君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       阿部 文男君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  松本 十郎君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       高原須美子君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       斎藤栄三郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  志賀  節君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  石井  一君    政府委員        内閣法制局長官  工藤 敦夫君        内閣法制局第一        部長       大森 政輔君        内閣総理大臣官        房審議官     文田 久雄君        公正取引委員会        委員長      梅澤 節男君        公正取引委員会        事務局取引部長  土原 陽美君        公正取引委員会        事務局審査部長  植木 邦之君        警察庁刑事局長  中門  弘君        警察庁刑事局保        安部長      森廣 英一君        警察庁警備局長  城内 康光君        宮内庁次長    宮尾  盤君        皇室経済主管   永岡 祿朗君        総務庁長官官房        長        山田 馨司君        総務庁人事局次        長兼内閣審議官  服藤  収君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁長官官房        長        児玉 良雄君        防衛庁人事局長  畠山  蕃君        防衛庁経理局長  藤井 一夫君        防衛施設庁総務        部長       吉住 愼吾君        防衛施設庁労務        部長       竹下  昭君        経済企画庁調整        局長       勝村 坦郎君        経済企画庁物価        局長       栗林  世君        経済企画庁総合        計画局長     冨金原俊二君        経済企画庁調査        局長       田中  努君        科学技術庁科学        技術政策局長   石塚  貢君        国土庁長官官房        長        北村廣太郎君        国土庁土地局長  藤原 良一君        国土庁大都市圏        整備局長     三木 克彦君        国土庁防災局長  市川 一朗君        法務省刑事局長  根來 泰周君        公安調査庁次長  古賀 宏之君        外務大臣官房領        事移住部長    久米 邦貞君        外務省アジア局        長        谷野作太郎君        外務省経済局長  林  貞行君        外務省条約局長  福田  博君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君        大蔵省主計局長  小粥 正巳君        大蔵省主税局長  尾崎  護君        大蔵省関税局長  瀧島 義光君        大蔵省理財局長  大須 敏生君        国税庁次長    岡本 吉司君        文部大臣官房長  國分 正明君        文部省初等中等        教育局長     菱村 幸彦君        文部省高等教育        局私学部長    野崎  弘君        厚生大臣官房総        務審議官     加藤 栄一君        厚生大臣官房老        人保健福祉部長  岡光 序治君        厚生省社会局長  長尾 立子君        厚生省児童家庭        局長       古川貞二郎君        厚生省年金局長  水田  努君        農林水産大臣官        房長       鶴岡 俊彦君        農林水産省構造        改善局長     片桐 久雄君        農林水産省農蚕        園芸局長     松山 光治君        農林水産省畜産        局長       岩崎 充利君        食糧庁長官    浜口 義曠君        林野庁長官    甕   滋君        通商産業大臣官        房商務流通審議        官        山本 貞一君        通商産業大臣官        房審議官     横田 捷宏君        通商産業省通商        政策局長     畠山  襄君        通商産業省産業        政策局長     棚橋 祐治君        中小企業庁長官  見学 信敬君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        総括審議官    大塚 秀夫君        運輸省航空局長  丹羽  晟君        海上保安庁長官  塩田 澄夫君        海上保安庁次長  野尻  豊君        郵政大臣官房長  白井  太君        郵政省電気通信        局長       森本 哲夫君        労働大臣官房長  若林 之矩君        労働省労政局長  岡部 晃三君        労働省婦人局長  佐藤ギン子君        労働省職業安定        局長       清水 傳雄君        建設省建設経済        局長       望月 薫雄君        建設省都市局長  真嶋 一男君        建設省住宅局長  伊藤 茂史君        自治省行政局選        挙部長      浅野大三郎君        自治省財政局長  持永 堯民君        自治省税務局長  湯浅 利夫君    事務局側        常任委員会専門        員        宮下 忠安君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国政調査に関する件 ○予算執行状況に関する調査     ─────────────
  2. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 予算委員会を開会いたします。  国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、予算執行状況に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 次に、予算執行状況に関する調査を議題といたします。     ─────────────
  5. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) まず、理事会における協議決定事項について御報告いたします。  質疑を行う期間は本日二十日及び二十三日から二十七日までの六日間とすること、質疑時間総計は八百三十八分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党護憲共同それぞれ二百八十七分、公明党・国民会議八十八分、日本共産党連合参議院及び民社党・スポーツ・国民連合それぞれ四十四分、参院クラブ及び税金党平和の会それぞれ二十二分とすること、質疑順位及び質疑者等についてはお手元の質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右、理事会決定のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) それでは、これより質疑を行います。穐山篤君。
  8. 穐山篤

    穐山篤君 最初に、海部総理に伺います。  今回、自民党総裁選におきまして再選をされました。改めて敬意を表するところです。非常に内外厳しい状況の中ですが、総裁総理としての抱負と決意をひとつまずお伺いしたいと思います。
  9. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 非常に厳しい内外情勢で、どのような基本で臨むかというお尋ねであります。  私は、日本がきょうまで守り抜いてまいりました平和な生活、明るい社会、豊かな暮らしというものを守っていくためには、外に向かっては、やはり日本が今世界的に大きな役割と責任を求められておる、それを汗をかいて果たしていく、世界の平和と安定に役立つために一生懸命貢献をしていくという基本姿勢で取り組んでいきたいと思っております。  特に、最近の世界情勢というものは、東西両陣営の間でいろいろな変化が起こっております。ペレストロイカとか自由化とか開放・改革問題とかいろいろございます。しかし一方、それは東側の陣営に起こっておる大きな変化でありますが、西側陣営の中においても、我が国は物価は安定はいたしておりますが、やっぱりインフレの懸念とか、あるいは保護貿易主義の影がちらついておるとか、自由貿易体制をどう守っていくかとか、貿易不均衡の問題をどうするかとか、それぞれに努力をしなければならない解決すべき問題がたくさんあると思います。私は、日本の置かれておる立場というものを今十分に認識して、そしてやるべきことをやっていかなければならない、対外的にはそういった基本的な考え西側陣営の一員として、世界の安定とそして平和と生活の向上のために頑張らなければならないと思っております。  また、国内的には、率直に言って、リクルート事件に端を発した政治不信というものから国民皆さんの信頼を取り戻すように、そして将来、二十一世紀に向かっての心豊かな、公正な社会が建設されるように、それに向けての政策努力を続けていかなければならないと考えております。
  10. 穐山篤

    穐山篤君 キャッチフレーズが「対話改革」というふうに伺っているわけですが、歴代内閣、それぞれ特徴のあるキャッチフレーズを出しておりますが、こういうものを出す背景といいますか、あるいは決断といいますか、その点はいかがでしょうか。
  11. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) きょうまで私は、いろいろ一方的に政府側が物を言うだけではなくて、国民皆さんからいろいろ声を聞いて、対話の中から政治が行われてきておるということを認識いたしております。そして、私が組閣いたしましたその日に、これは記者の皆さんに聞かれて答えたんですけれども、やっぱり一方的な発信だけではだめであって、思ったことは率直に言いますが、しかしそれに対する批判やあるいは希望や要望があったときはそれは素直に聞いていこうということも、対話をしていかなきゃならぬという姿勢を表明したものであります。  また、改革というのは、政治改革とか税制改革、これは将来を見通してぜひやらなければならぬ問題でございます。それから、今の公債残高なんかを見ましても、行財政の改革もやらなければなりません。教育改革もやらなければなりません。いろいろ内政問題と取り組むときにやらなきゃならぬ改革は、現状凍結ではなくて、改革をしていくんだというその決意を私はそこににじました。ですから「対話改革」と、こう申し上げたのであります。
  12. 穐山篤

    穐山篤君 従来、総裁再選をされる、あるいはかわるというときには内閣改造というのが恒例であったんです。今回、その点については総理はどうお考えでしょうか。
  13. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 正確に申し上げますと、私はまだ再選されておらないんじゃないでしょうか、三十日の自由民主党の大会で再選が決まるわけでございますので……。
  14. 穐山篤

    穐山篤君 届け出は一人でしょう。
  15. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) はい。  それから、改造をするかしないか今ここで言えと言われても、ちょっとそれは、まだ再選の結果が出ておらぬときでありますから、何とも申し上げるわけにはまいりません。
  16. 穐山篤

    穐山篤君 さて、七月の参議院選挙政治の地図は大変変わりました。参議院では御案内のとおり与野党逆転という状況にあるわけです。  この選挙自民党が大きく敗れたその最大の原因は何とお考えでしょうか。あるいはその中からどういう教訓を学び取っているのか、その点を明らかにしてください。
  17. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 七月の参議院通常選挙で何が原因で敗れたか。これはやっぱりリクルート事件に端を発した政治不信というもの、私はそれが一番前にあった、そしてそれに加えて、税制改革の問題が国民皆さんや有権者に十分御説明し御理解をいただくことができなかった、その他、地域によっていろいろ特殊な問題もあったかと思います。それらのすべてを踏まえて、私たちは謙虚に受けとめております。
  18. 穐山篤

    穐山篤君 三点セットとも四点セットとも言われているわけですね、リクルート問題。消費税の導入、あるいは農業政策、女性の問題もあったでしょうが。もう一つは、私は、富める者と庶民との間の格差について非常に国民全体が不信を感じていた、そういう点が大きくあったのではないかというふうに思います。  それと同時に、この際政権交代があってもいいのではないか、あるいは政権交代のルールをつくらないと日本政治はよくならない、そういう国民の思い詰めた気持ちもあったと私は判断しますが、その点、総理はいかがでしょう。
  19. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 参議院選挙の結果にいろいろな要素があったことは、これは率直に私もそう認めます。同時にまた、具体的に御指摘があったこの数年のいろいろな問題、特に大都市における土地価格の急騰の問題、要するに資金の流れ、あるいは蓄積。大体所得の方では皆だんだん中産階級になりつつあるというときに、ストックといいますか、土地を持つ持たないということによって大変格差ができて、一部の方々が夢を失ったということなんかも背景一つとしてあったんだろうとこれは受けとめております。
  20. 穐山篤

    穐山篤君 政治不信についての自覚が言われましたけれども、選挙の前もそうでありましたが、選挙が終わりまして、この選挙の結果を謙虚に受けとめるという話がしばしばありますけれども、具体的な態度で示されていないのは非常に遺憾に思うのです。言いかえてみれば、政府ないしは自民党諸君意識改革ができていない、私はそういうふうに指摘をします。  一例ですが、例えば福島労働大臣発言であるとか、あるいは水野総務庁長官発言であるとか、これがもっと自己改革ができておればそういう発言は絶対にないと思う。  労働大臣に伺いますが、犬の遠ぼえというお話があるんですが、嫌みを言いますと、犬というのは何を指しているのか。我々の発言が遠ぼえであるのか。非常に遺憾なことですが、これは自民党諸君まで含めて、土屋議長まで含めて参議院に対する侮辱というふうに私どもは認識をしているわけですが、労働大臣いかがでしょう。
  21. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 私は、参議院軽視など夢にも考えたことはございません。私のあるいは不十分な、あるいは不適切とも受け取られる発言のために混乱と御不快の念を誘発したことはまことに申しわけないと思っております。  今後は、発言につきましては慎重の上にも慎重を期しまして、御批判をいただくことのないようにいたしたいと思います。
  22. 穐山篤

    穐山篤君 内閣総理大臣指揮監督責任もありますし、任命もできますし罷免もできるわけでありますが、不用意といいますか、本心といいますか、私に言わせれば意識がまだ変わっていない、内閣全体が。今の問題についての総理大臣考え方をひとつ明確にしてもらいたいと思います。
  23. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 参議院に対する認識は、皆がきちっと持っております。そうして、今も申しましたが、本人が言いますように、参議院を軽視したり、そういった意味のことは自分考えておらないと、こう申しますから、これは官房長官から厳重に注意いたしますとともに、私からも、真意がそうであるなれば、真意が伝わらないようなそんな発言をしては絶対にいけない、自分が大切だと思っておるならばそのようなことをしっかりと踏まえて発言をしてもらいたい、これは厳重に注意をいたしました。皆がその気持ちで今後も取り組んでまいります。
  24. 穐山篤

    穐山篤君 さてそこで、今回逆転をしたわけです。その意味で言えば、与党自民党皆さんとしては非常に残念だとは思うわけですけれども、老婆心ながらお伺いしますが、参議院自民党皆さん考えておりますように過半数まで議席を回復するには、おおむね何年ぐらいかかると思っていますか。
  25. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) なるべく早く過半数にまで回復したいという強い希望を表明させていただきますが、努力する以外道がない、こう思っております。
  26. 穐山篤

    穐山篤君 これから三年ごとに選挙を迎えるわけですが、三年先の選挙では、ダブル選挙の結果出てまいった議員さんばっかりですね。減ることはあったにしてみてもふえることはないと世間では予想をしているわけです。そうなりますと、総理、私は冷やかしで言っているわけじゃない。最低限九年なり十二年かかるという認識をお持ちかどうか、そこを聞いているわけです。
  27. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) それはもう全く仮定の問題でございますので、できるだけ早く私たちも議席が回復できるように願い、努力を続けるということでございます。
  28. 穐山篤

    穐山篤君 できるだけ早くという気持ちは当然だろうと思うんですが、最低限六年ないし九年はかかるでしょう。言いかえてみますと、衆議院の議席がどうあろうとも、参議院政治の地図というのは逆転状況のまま当分の間いくわけです。そのことを総理は十分しっかり受けとめているかどうかということを私はお伺いしているわけですが、いかがですか。
  29. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 参議院では任期というものがあって解散がございませんので、御指摘のように三年先、六年先というのが選挙の時期でございます。そのときまで一生懸命頑張って、できるだけ早い機会に回復したいと思っておるわけです。
  30. 穐山篤

    穐山篤君 回復するかどうかの話は別でありまして、これから六年、九年、十二年、参議院の議席の数というのは御案内のとおりの状況になるわけです。ですから、謙虚に受けとめるとするならば、この国会運営について相当の配慮なり謙虚な気持ちがなければ運営は不可能になると思う。その点をお伺いしているんです。
  31. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 御指摘のとおりの状況だと私どもは受けとめておりますから、議会政治のために十分御議論をいただき、お話し合いをしながら運営をしていかなければならないと心得ております。
  32. 穐山篤

    穐山篤君 選挙に負けた悔しさというのは私どもしょっちゅう持っていますけれども、悔しいからといって国会の運営に重大な障害を与えてはならないと思う。  それから、対話改革というお話はわかりますけれども、少なくとも国会あるいは国の政治においては、野党との協調、与党の互譲の精神というものがなければこれは絶対にうまくいかないわけです。最近見られておりますように、腹いせでけんかを売ってくるような政治の態度というのは絶対に許されないと思う。その点いかがですか。
  33. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) おっしゃるとおりに、やはり負けた悔しさとか、そういった感情的なことで政治というものはやるべきでないと思いますし、与党と野党の国会における討議も最高の対話であろうと私は理解もいたしますし、そういった気持ちで取り組まさせていただきますので、どうか御理解と御協力をお願いいたしたいと思います。
  34. 穐山篤

    穐山篤君 次に、リクルート問題に入りたいと思うんです。  ここに私は「政治倫理綱領を実行する会趣意書」というのを持っています。ある自民党の有力な代表者がわざわざこれを私のところに持ってきていただきまして、ぜひ会に入ってもらいたいと。「国民が、政治家を信頼する。これが民主政治の「基」である。これなくしては健全な民主政治は成り立たない。 現在その「基」が崩れて、国民の間に政治不信の声が日増しに高まっている。われわれが先に国会で政治倫理綱領を議決したのは、このことを憂いたからであり、片時も忘れぬよう議院手帳に、これを記載して日常携帯している。」。  それから、昭和六十年六月二十五日議決の綱領がここに載っています。まとめとして、「私たちはここに右第一項の、国民から疑惑を受けるような行動をしてはならない。との、又第四項の、もし不幸にして国民から疑惑を受けるようなことがあったら自ら進んでこれを解明しなければならない。との趣旨の規定に特に注目し、この倫理綱領を厳粛に考えこれを拳拳服膺することを目的とする会を結成することにした。」。  私は書簡を送りまして、これは衆参両国会議員、政治家が十分心しなければならない問題であるという認識をまず第一に御返事をしました。第二は、こういうものは会をつくり徒党を組むべき仕組みの話ではありませんよと。第三番目に、どうしても会をつくろうとするならば、一番汚染されているあなたの党で会をつくって拳々服膺したらいかがでしょうか、こういう御返事を出したわけであります。  その後、この方が会の座長さんといいますか、会長さんになりました。その後、竹下内閣改造のときに大臣に就任しまして三日後に辞職したわけです。こういう今私が申し上げたようなことの経緯は御存じですか。
  35. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) そういう会ができたということ、それから今おっしゃったようなことがあったということ、存じております。
  36. 穐山篤

    穐山篤君 先ほども申し上げましたように、選挙の前であろうが、あるいは選挙の後であろうが、リクルート問題をもとにして政治不信は非常に高まっているわけです。そういうときに、先ほども指摘をしましたように、わざわざこういう会をつくって大臣に就任して恥をかくという状況というのは、リクルート問題についての本当の反省がなされていない、意識改革が行われていないというふうに私は言わざるを得ないと思うんですが、その点いかがでしょうか。
  37. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 党といたしましては、リクルート問題に対する厳しい反省に立って、そして政治不信を招いたその根源に立ち返っていろいろと政治改革をしなければならぬというので、そういう議員連盟じゃなくて党内に正式の政治改革推進本部というのをつくり、そこで政治改革大綱というのを決定して、それに従って前進をしていこう、こういう態度をとっております。
  38. 穐山篤

    穐山篤君 総理の所信表明の中にはこのリクルートのリの字も入っていなかった。私どもも非常に不愉快でなりませんし、国民の意見としてもこれはどうなっているんだという指摘が多いわけですが、この点、どういうふうに考えられましてリクルート問題についての所信の表明がなかったんでしょうか。その点を明らかにしてもらいたい。
  39. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 確かに固有名詞としてリクルートというのは入っていませんでしたけれども、冒頭に、なぜ参議院選挙があのような結果になったのかということも、これはリクルート問題から端を発した政治不信であったということをその前のときに何回も申し上げておりますし、私 の気持ちにはそれが十分入っております。また、その反省に立って今度は内閣としては政治不信を取り除いてそして政治改革をしなきゃならぬ、これが最初の課題だということを冒頭に申し上げておりますので、リクルートに端を発した政治不信というものを厳しく受けとめ、それを繰り返さないような政治改革をどうやっていくかということの決意をにじませて私は所信表明をした次第でございます。
  40. 穐山篤

    穐山篤君 私どもはリクルート問題についてはまだけじめがついていない、そういう認識に立っているわけであります。世間の言葉をかりますと、巨悪は眠っていると。非常に適切な言葉ではないかと思うんですが、このリクルート問題についての全体の認識として、政治的なあるいは道義的なけじめは全部ついていると認識されていますか。
  41. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) リクルート事件につきましては、大変残念なことでありましたけれども、司法当局の介入もあり、起訴された同僚議員も出てまいりました。それは刑事事件に関する問題でございます。  それから、自民党としては、厳しくこれを受けとめて、そしてそれぞれの方々の御判断によって政治家の責任というものはおとりになるものでありますけれども、一番問題となった未公開株の譲渡に関連した方は、党のつくったけじめ案に従ってただいま対処してもらっておりますし、また党全体としては、全員の問題としてこのことを厳しく受けとめて、さきの国会に、公職選挙法の一部改正案で寄附禁止の問題、そして政治資金規正法の改正案で政治資金の透明化とか限度額を決めるという問題、そういったものをまず提案させていただきましたが、これも第一歩だと思っております。国会において各党各会派の御議論を通じて、国会で適切な結論が出ていきますことを期待させていただいております。  なお、根本的には党の政治改革大綱の示す方針に従って政治改革をなし遂げていくということが、これが国民に対するけじめの問題になる、こう思っております。
  42. 穐山篤

    穐山篤君 ことしの二月一日に自民党が発表しましたリクルート問題についてのけじめの見解、これはどういうものでしょうか。
  43. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 党が二月一日に発表しましたもの、我が党の見解というのがございますが、これは党の見解でありますが、要点だけ申し上げますと、これによって、政治家がリクルート問題を通じて問われているのは、倫理の問題に加えて、基本的には今日の政治活動とそれを支える政治資金のあり方についてであり、このことは公私の峻別などに厳しい問い直しを求めていることに起因していると考える。我が党は政治活動の基本である選挙制度の見直しを含め、政治活動、政治資金のあり方の抜本的改革を目指し、今後、野党にも協力を求めつつ、政府・与党一体となって全力を挙げてその実現を期す決意であるというようなことでくくっております。
  44. 穐山篤

    穐山篤君 今自民党のけじめの考え方が示されたわけですが、それに関連をして本岡議員から以下質問をいたしますので御了解願います。
  45. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 関連質疑を許します。本岡昭次君。
  46. 本岡昭次

    本岡昭次君 今総理から自民党の党のけじめのお話がありましたけれども、私は、自民党が党内の問題としてつけられたけじめ、その評価は別にして、それと国会みずから国会としてつけるけじめとは別の問題だと思います。だから、国会のけじめは果たしてついたとお考えになるのかどうか、それをまず聞いてから入ります。
  47. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) ただいまは二月一日の党のけじめという角度のお尋ねでございましたので、それについてお答えをいたしました。  それから、国会についてのけじめは、これはまさに各党各会派の皆様がお話し合いをされて国会でお決めいただくことであって、自民党がそのことについて、国会のことについてまでいろいろ言わずに、御相談をして決めていかなければならぬ問題だと受けとめております。
  48. 本岡昭次

    本岡昭次君 けじめのつけ方は決めますけれども、総理大臣として、国会としてけじめがついたかどうか、どういうふうにあなたは判断されますかということを聞いておるんです。
  49. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) いろいろ各党で御議論があることは理解しております。その御議論が終わるまではけじめがついたとは言えないと思います。
  50. 本岡昭次

    本岡昭次君 リクルート事件は五月二十九日に捜査が一応終了して、六月十三日にこの参議院でもその捜査報告が行われました。延べ三千八百人が取り調べを受け、その結果十三人が起訴された。政治家が二人含まれていたということなんであります。しかし、リクルートコスモス社からの未公開株の譲渡を受けた人、あるいは膨大な政治献金、パーティー券購入などによって経済的利益を受けた、これは総理を初め多くの国会議員の政治的道義的責任が問われないまま今残っているのであります。  総理は所信表明演説で政治への信頼の回復が内閣の最も緊要な課題であると力説をされましたが、私はその政治への信頼の回復の第一歩が国会における議員の政治的道義的責任の究明である、このように考え国民もそれを注目していると思うのであります。また、選挙の結果もそうなったわけであります。私は必ずや総理の全面的な御協力が、政治的道義的責任を追及することについていただけるものと考えておりますが、これから国会が国会のけじめをつけるについて総理の全面的な御協力がいただけるかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  51. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 政府といたしましては、この前できる限りの最終報告を申し上げたつもりでおりますけれども、国会において各党各会派のお話し合いによって新しいお申し出があれば、その段階で法令に従ってどの程度のことができるのか検討をさせていただきます。
  52. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、私は、協力していただけるかどうか、総理として協力する気があるのかどうかということを聞いたわけなんです。  それでは総理、聞きますけれども、かつてロッキード事件というのがありました。当時の三木総理大臣は、日本の名誉にかけてもこの事件究明に取り組むという基本姿勢を表明して、その関係者の名前を含め、すべての関係資料を明らかにすることの方が日本政治のためによいと考える、こういう立場で取り組まれたんですよ。あなたの政治の師でしょう、三木元総理は。海部総理も三木総理と同じ基本姿勢でもってリクルート事件の解明に当たっていただくのが私は当然じゃないかと思うんですが、いかがですか。
  53. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) いろいろ御議論をいただいてこの事件の疑惑を解明されていくように、国会における御議論が続いておるわけでありますから、適切な御議論を期待しております。
  54. 本岡昭次

    本岡昭次君 三木総理日本の名誉にかけてでもと、あるいはまた関係者の名前を出すこと、すべての関係資料を明らかにすることの方がという言葉は、することとしないこととのこの関係を考えてみて、したことに対するマイナスもあるだろう、しかし、日本政治のためにはすることの方を選ぶ。私はこの判断はすばらしかったと思うんですよ。三木総理政治の師とされるあなたがこのことを学んで、そして今、日本政治のためにリクルート事件政治的道義的責任の解明のために総理大臣として全面的な協力をする、そのぐらいのことが言えなくてはどうしてこの問題の解明ができるんですか。
  55. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 政府としては、新たな御要求があったときにはどのような御協力ができるのか検討させていただきます。
  56. 本岡昭次

    本岡昭次君 それではあなたは、三木総理政治の師であるとか、何か孫であるとかという話があるようでありますが、そういうことの期待が今では持てないということを言わざるを得ません。  それでは総理、あなたもリクルート社から政治献金やパーティー券購入、そして講演料などで一千四百四十万円受け取ったということが公表され ております。そのときは自民党の文教制度調査会の会長あるいは二度目の文部大臣を経験されておるわけでありまして、リクルート事件の文部省関係と全く無縁であったとは私は考えられないと思うんです、あなたの立場は。文部省は、文教行政が国民の信頼を著しく損なったということを深く反省して、懲戒処分一名、戒告処分二名、リクルート社と日常普通のつき合いをしておった職員九名まで厳重処分に付すということまでやっているんですよ。私は総理がこのリクルート問題に対してのその関係の問題は非常に深いものがあるという認識を持っているのでありますが、総理は、このリクルート事件が燃え盛っているときには、あなたは何もおっしゃらなかった。自民党総裁選に出馬するとわかったら、いや実は私は一千四百四十万円もらっているんだという表明をされて、私も実は驚いたわけであります。国民も驚いたと思います。  そしてそのことを新聞で見てみますと、一九八五年、あなたが文部大臣に就任されたときに百万円の政治献金がなされた。翌年の五月、あなたはリクルート社の要請に応じて現職の文部大臣として講演をされた。そして謝礼として百万円もらった。現職の文部大臣として講演して、そして謝礼を百万円ももらう。私はちょっと考えられないことなんであります。同じ月にまた百万円の政治献金をしてもらった。パーティー券三百万円、文部大臣時代八カ月の間に六百万円の政治献金をリクルート社からあなたは受けているわけです、資金を。  これはだれでもおかしいなというふうに思いますよ。やはり総理、それでは総理みずから進んで、一千四百四十万円の資金の流れを、一体何であったのかということをあなた自身そこで具体的に解明をして、そして私の政治的道義的責任はなかったとおっしゃるなら、なかったということをここで立証し、証明する必要があり、あなたはその立場に今あると思うんですが、いかがですか。
  57. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 私の政治資金の中にリクルート社からのものがあったことを総裁選に立候補したときに言ったのはなぜかということにまずお答えしますが、正規の報告をして通常の政治資金だとこう思って受け取っておったものは、それで政治団体を通じて届け出をずっとしておりました。ただ、総裁選挙に立候補するときにリクルート社がこのような社会的な批判を受けるような企業であるということを全く知らないときの献金でありましたけれども、しかし顧みて、そのことは自発的に公表するのが私自身に対する私のけじめでもあると思って、私の方から総裁候補に決まったときに記者会見で公表させていただきました。そして事務所で調査いたしまして、わかる限りのものを全部出しました。けれども、御指摘のように私も文部大臣をしたこともございます。文教制度調査会長をやったことも事実でございます。けれども、文教行政に関して公正を欠くようなことをしたとかいろいろなことをしたとかいうようなことは、私は許されないことはしておらぬという、公正な行政をやってきたということはここで申し上げさしていただきたいと思います。  ただ、顧みて、知らないときにもらった分だとはいいながら不明を恥じますとともに、私はみずから今後は厳しく戒めていかなければならないと反省もいたしております。
  58. 本岡昭次

    本岡昭次君 私が今挙げました数字はお認めになったということだと思います。それはどうなんですか。
  59. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 数字は今おっしゃった千四百四十万円、それから一つ、私の在任中六十一年というのは、その講演そして政治資金、パーティー券、そして毎年毎年五年間にわたって千四百四十万円あったということはそのとおりでございます。
  60. 本岡昭次

    本岡昭次君 私が今申し上げましたのは、一九八五年文部大臣に就任されて文部大臣をおやめになるまでの八カ月間の間に六百万円の資金を受けておられますということで問題にしたんですが、その点はどうですか。
  61. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) そういうことだと思います。
  62. 本岡昭次

    本岡昭次君 総理は、文部大臣時代の問題として何らやましいところはないとおっしゃった。それはそれで、総理自身やましくないということでありますが、問題は果たしてそうであるかどうかの判断をだれがするのか、何によってするのかということが残されております。それは後ほどやらせていただきます。  ただ、総理もそうおっしゃったように膨大な資金が流れて、多くの政治家にその金が渡っていったという問題をこれから国会が究明をしようとするときには、それに資料が必要なわけであります。そのことに対する政府の全面的な協力が本来ない限り、これは大変困難なことである。そういう立場から政府側からの協力を私は要請したわけでありますけれども、今あなた自身の問題を私が問いかけてもなお前回の質問以上の政府の協力というものを具体的にここで表明するあなたの態度、そういうものになりませんか、どうですか。
  63. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) いろいろの御疑問に対して政府としてはできる限りの協力を従来もしてきたと考えておりますけれども、今後もいたします。
  64. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、総理の問題で最後に聞いておきますが、総理は、リクルート社から流れた資金は、一千四百四十万円で、それ以上は一切ないというふうにここで確認さしていただいてよろしゅうございますね。これからいろいろな資料をもし我々が集めたとして、そのときに、いやこれもあったというふうなことは絶対ないということをここで御確認いただけますね。
  65. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 私の事務所でさかのぼって全部調べて出したつもりでおりますから、あれ以上のものはないと思っております。
  66. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、法務大臣に伺います。  法務大臣は十月十三日の記者会見で、これから私どもが国会のけじめの問題として政治的道義的責任を追及するのに必要な資料を要求しても、もう出すべきものは皆出してしまった。灰色高官の問題についても、幾ら言われてももう出すものはないというふうな趣旨の発言を行っておられます。新聞にはそう報道されているわけでありますが、参議院としてこれから具体的にそういうものをやろうとするその前の段階で国政調査権の機能を否定するようなこの法務大臣の発言というのは、国権の最高機関たる国会に対する私は越権行為であると思うんですよ。この発言は絶対に撤回してもらいたいし、その発言そのこと自身に対する私は謝罪を求めたい、こう思います。
  67. 後藤正夫

    国務大臣(後藤正夫君) お答えいたします。  十月十三日の記者会見でただいま本岡委員の御指摘のような発言を私はいたしました。  その発言の趣旨でございますけれども、その真意は、さきの国会におきまして法務省は、国会の国政調査権に対しては法令の許す範囲内でできる限り協力するという立場から、リクルート事件の捜査処理の概要について法令の許す範囲内で可能な限りの最終報告を行ったということを申し上げたのでございました。  私は、海部総理大臣が述べられておりますように、いろいろな、この点につきましては、これからも国会から異なる観点からの報告の御要請等があれば、法令の許す範囲内において御協力をしなければならない、そのように考えております。
  68. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、記者会見でのもう出すものは出し尽くした、何を求められても出せないという、そういう発言はなかったということで、その新聞に報道されている中身の撤回をここで正式にしていただきたい。
  69. 後藤正夫

    国務大臣(後藤正夫君) お答えいたします。  十月十三日の記者会見では、リクルート事件に関する資料は法令の許す範囲内でこれはもう出し尽くしているということでございますので、今後、国会の方からその政治的道義的責任の範囲等についての問題等について新たな御要求がありました場合、あるいはそれについての定義等を出された場合には、またそれに対して法令の許す範囲内で お答えできるかどうかということを検討いたしたいと思います。
  70. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、私は改めてここで政治的道義的責任を究明していくに必要な基準とその資料の要求をさせていただきます。  六月十三日の予算委員会においても私はその要求をしました。そのときの委員長本岡委員のおっしゃることは聞けば聞くほどごもっともでありますと言って引き取っていただきながら、後は一向にその問題が進展しないまま国会が終わりましたので、改めて私はここでその基準を示したいと思います。  まず、その資料の提出を求める対象者の基準でありますが、一、昭和五十九年十二月、株の譲渡を受けた三人の政治家。二、昭和六十一年九月、株の譲渡を受けたが起訴とならなかった十一人の政治家。三、リクルート社や関連会社から政治献金、接待その他金品あるいはサービスの提供を受けた政界関係者。この三つの基準の中に該当する人々について次の資料を求めたいのであります。  それぞれの氏名それから株数、購入資金、譲渡の趣旨、目的、譲渡及び売却の時期と方法、売却利益の帰属。二、職務権限の有無とその内容、職務と株式譲渡との間の対価関係の有無。三、政治献金や接待などの時期と内容、趣旨、目的。  以上、これらの資料が予算委員会に提出されるよう理事会で御協議いただくことを私は委員長に求めたいと思います。国会法百四条に基づく国政調査権、これをひとつ根拠とした資料要求を本予算委員会で行っていただきたいということを私は委員長に求めたいと思います。
  71. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 本岡昭次君要求の資料につきましては、その取り扱いを理事会で協議することといたします。
  72. 本岡昭次

    本岡昭次君 協議していただくのは結構でありますが、私が言いましたように、この一週間という予算委員会の中でその資料を要求し、そして提出を求め、そしてこの予算委員会にそれが提出されるということでなければ何の意味も持たないわけであります。そのことを委員長としてのみ込んで理事会に諮っていただけるのかどうか、それは委員長としての態度を私は聞いておきたい。
  73. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 委員長といたしましては、先ほど申し上げましたように、本岡昭次君要求の資料につきましては、仰せの点も含めまして、その取り扱いを理事会で協議することといたします。
  74. 本岡昭次

    本岡昭次君 委員長はこの委員会を取り仕切っておられるわけでありまして、この予算委員会中にその資料の提出、それに責任を持つのかどうか、あなたの考えでやってもらわなければ、そのことを理事会にかけるのじゃなくて、あなたの判断はどうなのかということを求めているわけであります。
  75. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 委員長といたしましては、やはり理事会での協議が必要でありまするから、その協議の上で取り計らいたいと存じます。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  76. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記を起こして。  本岡昭次君要求の資料につきましては、その取り扱いを理事会で協議、検討し、この予算委員会中に結論を出すようにいたします。
  77. 本岡昭次

    本岡昭次君 私に与えられた時間がもうございませんので、最後に、今理事会に預けました灰色高官の基準、そしてそれに伴う資料は今のとおりで結構でございますが、さらに、もっと全般的な政治家あるいはその関係者の政治的道義的責任の究明に必要な資料もあわせて求めておきたいと思います。  その一は、政治家十六人に譲渡された未公開株の売却利益の税務調査の結果、どういうふうなことになったのか。  その二、昭和五十九年四月から昭和六十一年末までの間のリクルートコスモス社の株主名簿の写し。  その三、政府税調特別委員に江副氏らを選任した具体的経過と理由、この選任に関与した者の氏名と役職。  その四、就職情報誌の法規制問題と就職協定及び進学情報誌問題に関する省内及び審議会等での検討の経過と内容、そしてリクルート社または政治家等からの働きかけの経過と内容。  五、NTTを経由したリクルート社のスーパーコンピューター及び通信機器の導入、転売の詳細な経過、関与した人物、政治家。  六、安比高原スキー場開発の事業主体変更と地元営林局、営林署等のかかわりについての詳細な経過及び当時の加藤農林水産相らの民間借り上げのヘリコプターへの便乗の詳細な経過。  以上について文書報告を、あわせて委員長にお願いしておきたいと思います。
  78. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 本岡君の要求資料は広範にわたりまするので、後刻理事会において検討いたします。
  79. 本岡昭次

    本岡昭次君 先ほどの灰色高官の基準、そしてそれを確定していく資料と同じような扱いをしていただきたい。
  80. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいま要求されました件は、後刻理事会で協議いたします。
  81. 本岡昭次

    本岡昭次君 なぜ先ほどのと同じ扱いができないんですか。
  82. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 本岡君の資料が非常に広範にわたっておりますね、後の分は。だから、理事会で検討、協議した上で決定をしたいと思います。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  83. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記を起こして。  ただいま本岡君から要求の資料につきましては、後刻理事会で協議、検討をいたしまして、できるだけこの予算委員会中に出せるように努力をいたします。
  84. 本岡昭次

    本岡昭次君 これで終わります。
  85. 穐山篤

    穐山篤君 田中ロッキード事件の教訓といいますか反省の上に立って、昭和六十年六月二十五日に政治倫理綱領がつくられたわけです。しかし、現実にはこの時期に水面下では株の譲渡なり、あるいはその他のことが全部行われていたわけですね。非常に遺憾でならないと思うんです。  そこで、総理にお伺いをします。竹下総理が四月二十五日おやめになる、その後、次期の総裁総理を選ぼうというときに相当苦悩されたわけですが、伊東正義先生の話が出てきた。当時の新聞によりますと、伊東先生の気持ちは、この際派閥の解消あるいは若手に交代、リクルート関係議員の辞職というふうに言われたと思うんですが、この伊東先生の言葉に対して総理はどういう御感想をお持ちですか。
  86. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 我が党の伊東先生のお考えはおおむねおっしゃったようなことでできております。そして、その伊東先生を本部長として我が党は政治改革推進本部をつくりました。私としては、伊東先生なりのお考えであった、このように評価しております。
  87. 穐山篤

    穐山篤君 あのリクルートに関与した民間経済人あるいは評論家というのは、社会的な責任を痛感してそれぞれ進退を明確にしているわけです。政界についてはまだ政治的道義的な責任も不十分、不完全でありますが、これを解明するためには、どうしても中曽根元総理大臣参議院に証人として出席をしてもらわなければこの解明が十分に行われない、こう考えます。したがって、この際中曽根元総理大臣の喚問を要求いたしたいと思うんですが、委員長、いかがでしょうか。
  88. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 委員長といたしましては、後刻理事会で協議をいたします。
  89. 穐山篤

    穐山篤君 話をすれば長いわけですけれども、前の国会でも私ども要求をいたしました。断られました。そこで、各党相談の上、国対レベルでリクルート問題特別委員会の設置も要求をしておりますが、これもらちが明かないんです。したがって私は、この予算委員会において中曽根元総理の証人喚問を要求したい、こう申し上げているんです。
  90. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 後刻、理事会で協議いたします。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  91. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記を起こして。  ただいまの穐山君の要求につきましては、理事会で協議をいたします。
  92. 穐山篤

    穐山篤君 十分相談をしてもらいたいと思うんです。  去年六月十八日に朝日新聞の横浜支局から、川崎市の助役の問題が発火点になって、リクルート問題というのは非常に拡大をしたわけですね。もしあれが摘発されていないでリクルート疑惑というものが全部土の下に入っておったとすれば、これは大変背筋の寒い思いがするわけでありまして、日本の民主主義にとって重大な問題です。したがって政治改革の問題を指摘しなければならぬわけですが、時間の都合で税制改正に移ります。  去年の十一月十日、衆議院の税制特別委員会で税法全体についての強行採決が行われたわけですが、そのときに海部総理、あなたが筆頭理事として委員長のところに座っておられたんですけれども、強行採決のときの心境というものをまずお伺いしたいと思うんです。
  93. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 私も税制特別委員会の理事でございました。そして、与野党で合意できる点と合意できない点を明確にしてから民主主義のルールに従って決をとる、これが一番望ましい姿であることは百も理解しておりましたが、あのような騒然たる雰囲気の中で採決をしなければならなかった。やむを得ないことでございますけれども、決していいことだとは思っておりません。あのようなことが繰り返されないようにしたいものだと私は強く思っております。
  94. 穐山篤

    穐山篤君 改革法を含めて六本法律があったわけですが、ことしの三月三十一日まで使っておりました税金の六法全書と四月一日以降現在使われております税金の六法全書というのは全く形も内容も違うわけですね。言いかえてみれば、税金の六法全書を全面的に変える性格の税制改正であったわけだ。したがって、当時の委員長席に座っておられましたあなたの気持ちは、そういう国民生活のことを考えながら採決をされたんですか、それともそれ以外に特別の理由があったんですか。
  95. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 率直に申し上げさしていただきますが、シャウプ税制勧告以来長い間の税の姿を見ておりますと、そのときはよかれと思ってやったこともいろいろひずみやゆがみになってきました。その最たる例が個別物品税の問題だったろうと思います。また、中堅サラリーマンの皆さんの税負担が随分高くなってきた。所得税に偏り過ぎておる。こういった直間比率を変えていかないと、このままほっておけば、御承知のように高齢化社会が来て、二〇一〇年にはこのままでいくと中堅サラリーマンの税負担は率において現在の二倍になるということも予測されております。  私は、税が偏っておる、そしてまた、不公平だ、諸外国と比べて高過ぎる、いろいろな御批判等も当時の世論調査等で知っておりました。ですから、税制全体を新しい時代に合うように変えていかなきゃならぬ。それは、広く社会、公共の費用はすべての国民が負担していただく。そのために税制改革全体を行わなきゃならぬ。所得と資産と消費のバランスのとれた税制にしていかなければ高齢化社会を迎えて安定的な税収の確保もできない。中堅サラリーマンの皆さんの重税感も解消していかなきゃならぬということばかり考えながらあの税制審議には臨んでおりましたので、願わくは反対意見、ここが反対だということを明確にお示しになって採決をさせていただきたかったというのは、先ほど申し上げたとおりでございますが、これは将来のために税制改革はやらなきゃならぬと本当に思っておりますから、そう思って採決をしたわけでございます。しなければ、いつまでもいつまでも今のままのゆがみやひずみやいろいろな問題を抱えたままの税でいったのでは対応できなくなる日が近く来る、こういう気がいたします。
  96. 穐山篤

    穐山篤君 現在ですから冷静な態度でしょうが、この十一月十日前後の政治状況あるいはリクルートの状況というのは、私は次のようなものであった判断をします。  十一月十日の強行採決の前に新聞やいろんなところでもリクルートに関与した問題の報道がありましたね。我が党は十一月九日にビッグウエイ社コースの譲渡先のリストを夕方発表し、それが翌日新聞に公表をされる、こういう状況にあったわけです。これは政治家を含む十四名のリストであったわけです。この中に竹下総理に関係をする重大なかかわりを持っております方がいたわけです。もちろん、それ以外の政治家あるいは官僚も入っておりましたが、このルートを徹底的に暴かれると竹下内閣は崩壊をする、そういう判断をしたのではないかと思われる会合もあったわけです。それから、片方の税制改革の審議については、今のようなお話もありますけれども、公約違反の一般消費税の導入ということで国民的な世論も上がっていたわけです。下手をすると竹下内閣もつぶれる、消費税法案もこれは日の目を見ない、そういう政治的な背後関係にあったというのが十一月九日、十日なんですよ。そういうふうに分析をされますか。
  97. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) たまたまそういった背景がそのとき事実として流れておったのかもしれませんが、私はそのような分析はいたしません。そして、これをきちっとけじめをつけなきゃならぬと思うことと全く別の次元のお話ではないでしょうか。
  98. 穐山篤

    穐山篤君 そういうのが世間ではしらばっくれたということなんです。これはあらゆる情報を分析してみてもつながりがあるというふうに指摘をする以外に法はないと思うんです。今になって取り消そうとしてみてもこの傷は一生ついて回る、私はそういうように指摘をしておきたいと思います。  それでは二つ目に、最近皆さん方もあるいは党の幹部も公約違反ではない、公約違反の大型間接税ではありませんというふうに言っておりますけれども、これはどういう立場で公約違反ではない、あるいは大型ではないというふうに言われているんでしょうか。その点、大蔵大臣からまずお伺いします。
  99. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員のお尋ねでありますが、まず第一に、廃案になりました売上税は、中曽根元総理が六十年二月に発言をされましたその内容、あるいは六十一年の衆参同日選挙の際の同総裁発言というものを踏まえまして、これに反することのないようにさまざまな工夫を凝らして提案をしたものでありました。しかし、これにつきましてはさまざまな御批判があり、結局衆議院議長裁定を経て廃案に至った経緯は委員御承知のとおりであります。  そして、この消費税は、売上税法案が廃案になりました際に示されました六十二年四月二十三日の衆議院議長裁定を出発点とするものと私どもは理解をいたしております。その内容は、「税制改革問題は、今後の高齢化社会に対応する等、将来のわが国の財政需要を展望する時、現在における最重要課題の一つであることは、いうをまたない。従って直間比率の見直し等今後できるだけ早期にこれを実現できるよう各党協調し、最大限の努力をはらうこと。」、これが議長裁定の内容でございました。これを受けて私どもは税制改革に取り組んでまいりました。  現在多くの国民が期待をしておられますのは、税制というものが現在から将来にわたり国民生活に深く関連するものでありますだけに、あるべき姿、具体的な姿というものを国民の前に早く示してもらいたいということではないかと考えております。そうした点から考えてみますと、今回の税制改革全般につきまして政府としても国民に対する説明が不十分であるというおしかりは謙虚に受けとめながら、税制改革全般の意義、またその中における消費税の必要性等につきましてもわかりやすく粘り強く御説明を申し上げている状況であります。
  100. 穐山篤

    穐山篤君 私どは、今回の参議院選挙では公約違反の一般消費税は反対だ、そういう国民の選択 がされた、これは国民の意思であるというふうに考えるわけですが、その点がまだ政府自民党皆さん方は謙虚に民意を受け取っていない、ねじ曲げて理解をしているというふうに思いますが、いかがですか。
  101. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 参議院選のみならず、その前段階に行われました東京都議選におきましても私は党の責任者として国民の御批判の前に身をさらしてまいりました。そして、そのとき私が本当に痛いほど痛感をさせられましたのは、リクルート事件等をきっかけといたしました政治不信の風。この事件は委員御承知のとおりに自由民主党のみならず多くの政党も巻き込んだ事件でありますけれども、結果としては、リクルート事件に対する国民批判というものは、政治不信として自由民主党一身に集められたということでありました。そして、これに対するおわびを申し上げると同時に、リクルート事件というものに対し、どう反省し、政治改革に取り組むかという御説明をし、それに納得をしていただけるまでは、いかなる話を申し上げても国民には耳を傾けていただけないというのが党の責任者としての私の気持ちでありました。全国を転戦しながら、私は痛いほどそうした空気を感じてまいりました。  ですから私は、消費税が、または税制改革が、我が党が二つの大きな選挙に敗北を喫した問題の一つであることを決して否定はいたしませんけれども、それ以前にむしろ政治改革というものに対する自由民主党姿勢が問われ、リクルート事件等に対する政治不信責任が問われ、そしてその上にその他の問題があった選挙である、私自身はそういう感じを持ってこの選挙戦を戦ったということであります。
  102. 穐山篤

    穐山篤君 相当国民気持ちと離れた認識だと思うんです。  そこで、もし皆さん方の方がそれほど胸を張って公約違反ではないとおっしゃられるならば、自民党の税調の中でも皆さん方の同僚議員が公約違反と迫っているわけですね、これは、党内で本当に公約違反ではないというふうに一致しているならば、同僚議員の中から公約違反であった点を認めて陳謝をしろなんていう意見は出てこないはずなんだ。どうなんですか。
  103. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今反省が足りないというお話でありますけれども、むしろ政治不信というものに対する反省から始まるというのが、これは私は参議院選、都議選の責任者として、国民に対する本来の私の姿勢であると思います。  ですから、そのほかの問題、税制だけではございません、個別政策についていろいろな御批判を我々は受けました。それらについて反省をしないと申しておるのではありません。それ以前の政治不信が非常に我々にとって、殊に私自身にとってはつらい戦いでありましたと、率直なことを申し上げたわけであります。  自由民主党の中にもさまざまな御意見はございます。しかし、党は今消費税についての見直し作業を進めていただいておるわけでありまして、その中の個々の御意見について、私今云々をするつもりはございません。
  104. 穐山篤

    穐山篤君 三塚政調会長も、例のテレビの放映に当たりまして、仕切り直しがもう済んだ、こういうことをしばしば言われておったんですが、この仕切り直しというのは、私の記憶によると、これは相撲用語ですね。いかがですか。
  105. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は余り文学的素養がある方ではありませんが、多分そうではなかろうかと存じます。
  106. 穐山篤

    穐山篤君 まあ、仕切るとか仕切り金とかいう話もある。仕切り直しというのは、相撲の、両者の呼吸が合わないからもう一度お客さんの前で仕切り直す、これが仕切り直しです。相撲で言えばお客さんの前です。政治で言えば、国民の前で、呼吸が合わなかったんだからもう一度仕切り直す、こういうことにならざるを得ぬと思う。そこで、議長あっせんで仕切り直しが済んだというその理解は、どういう立場に立っているのでしょう。どうしても理解ができません。
  107. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今申し上げましたように、議長あっせんの中におきまして、税制改革問題というものが「今後の高齢化社会に対応する等、将来のわが国の財政需要を展望する時、現在における最重要課題の一つであること」、また、「直間比率の見直し等今後できるだけ早期にこれを実現できるよう」、こうした議長あっせんの趣旨を踏まえてのことでございます。
  108. 穐山篤

    穐山篤君 この議長あっせんを当時、共産党を除きまして受けたわけですね。仕切り直しに入るわけです。呼吸が合わないですね。合わないものですから、おたくの方は、当時、伊東政調会長が、一方的にその協議を打ち切って、中間報告を取りまとめて発表したというのが実際の経緯ではなかったんでしょうか。その点どういうふうに理解しますか。
  109. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 院の中における与野党の話し合いについて行政府が云々をいたすことは差し控えたいと存じますけれども、いずれにいたしましても、昭和五十年代の半ば過ぎになりますと、国民の中に当時行われておりました税制に対する不満が非常に強くなり、それは殊にサラリーマンの方々の重税感、あるいは個別の物品税の持つ体系上の不満、ゆがみ、ひずみ、さらには貿易上の障壁としての海外からの非難を浴びるなど、税制改正に対する要望が非常に強くなっておりましたことは、委員御承知のとおりでございます。そうした中におきまして、粘り強い御論議の中から私は議長あっせんも生まれてきたと思いますし、その議長見解にいわば準拠し、話し合いが各党の間でも行われたと承知をいたしております。
  110. 穐山篤

    穐山篤君 議長あっせんを受けたことについて否定はしないんです。その後、各政調会長、政審会長が集まって具体的な協議をやったわけですね。呼吸が合っていれば相撲がとれた。呼吸が合わないままに自民党側が打ち切って中間発表をした。その中間発表を受けて政府は税制大綱を閣議で決めたという経緯になっておるわけです。だから、仕切り直しは終わったという評価は、これは国民に対して大変失礼な言い分だというふうに私は思います。総理の見解をもう一度伺います。
  111. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 仕切り直しという表現をどうとるかはちょっと別の問題といたしまして、各党でお話し合いができず、確かに御指摘のような導入時にまつわるいろいろな見解の対立もあり、残念なこと等もありましたので、議長の裁定というのは、もう一回売上税をそのままで議論し直せとおっしゃったのではなくて、売上税は廃案である、反省して出直せということが言外に含まれておったと私は受けとめます。その議長の裁定を厳しく受けとめて、また国会における議長というのは最高の権威でありますから、その指し示される方に従って売上税についての問題等も省みて、そして消費税を議論の場に出してきた。それが自民党考えでありますから、あそこで一応売上税が廃案ということになって、私としては新しい角度からの税制改革の御議論が始まった、それは議長さんの裁定であったと、このように受けとめております。
  112. 穐山篤

    穐山篤君 仕切り直し、出直しについては、もう一度伺いますけれども、この議長あっせんを受けて、その中身について具体的に協議に入ったわけです。その協議の途中で打ち切った。呼吸が合っていないんですよ。ですから、出直すことについては我々も大いに理解をしますけれども、仕切り直しが済んでいるから問題はないという認識はこれは間違いだと思う。その間違いの最高の評価は国民が一般消費税ノーという選択をした、こういうふうに思うんです。  それから大蔵大臣、売上税と一般消費税の仕組みの違いはわかりますよ。しかし、この大型であるかないかの点についての比較の分析をひとつお願いしたいと思います。
  113. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、大型であるか小型であるかというそういう意味での考え方で両税を見比べたことがございませんので、その点についてはお答えをいたしかねますが、少なくとも 売上税が大変論議になりましたとき、例えば非課税品目が多過ぎて不公平を生ずる、あるいは伝票方式が非常に事務的に煩雑になる等々、さまざまな御批判がございました。こうしたものをその反省の上に生かしながら消費税は組み立てられたものと、そのように承知をいたしております。
  114. 穐山篤

    穐山篤君 売上税のときには、投網をかけるようなことはいたしませんと言って売上税をつくった。国民が猛烈に反対をした。で、この仕切り直し、出直しで直間の比率の問題が出ました。私は後で議論をしますが。  この一般消費税というのは、投網じゃないけれども、地びき網で全部引っ張り込んだという大型と私は理解しますが、いかがですか。
  115. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ですから、今率直に申しましたように、その大型とか中型とか小型とかという視点から私考えたことがありませんでしたので、売上税と消費税の差異につきまして、売上税の導入の際の反省に基づいて、その御議論に基づいて消費税は設計されたと承知しております。
  116. 穐山篤

    穐山篤君 大型間接税は導入をしない、減税はいたしますというのが中曽根さんの公約だったんですが、これが公約違反で売上税は廃止になりました。しかし、その精神を受け継いだ消費税が、政府自民党の方では直間の比率などというところに逃げ込もうとしておりますけれども、あくまでも大型の間接税であることについては私は間違いないと思う。  具体的にお伺いします。課税の範囲、課税のべース、あるいは税収面で比較をしてもらいたいと思います。
  117. 尾崎護

    政府委員(尾崎護君) 売上税の税収は当時五兆八千億というように見ておりました。それに対しまして消費税は五兆四千億。税率が違いまして、売上税が五%、消費税が三%でございました。  課税ベースにつきましては、先ほど大臣からお話がございましたように、売上税が作成されましたときに、委員指摘の大型間接税というような御議論も前にございましたので、非常に幅広く例外を認めました。課税ベースから外しました。それに対する国民の御批判の声が非常に強うございまして、その御批判を受け入れまして、例外を極力なくすような形でつくりました。したがいまして、課税ベースは消費税の方が広くなっております。
  118. 穐山篤

    穐山篤君 これは意見が分かれますけれども、中曽根さんのときの精神を継承して一般消費税というものが形を変えて出てきた。これについて国民が公約違反ではないか、我々も公約違反の大型間接税だというふうに指摘をしているわけですが、まだ強情に頑張りますか。
  119. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 強情を張るわけでは決してございませんけれども、どうも見解が一致いたさないことはやむを得ないと存じます。
  120. 穐山篤

    穐山篤君 いろいろありますが、時間の関係で  私ども社会党初め各党は国民皆さんに一般消費税廃止の公約をし、具体的に参議院に法律を出しております。これに対して総理並びに大蔵大臣の御感想をとりあえずお伺いしておきたいと思います。
  121. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 消費税を廃止せよという法案が提出されたことは十分理解しておりますが、私どもは消費税を廃止するという考えはございませんので、消費税は存続させていく。  ただ、今御議論を承っておりますと、消費税のところだけのその議論でございますけれども、ほかに所得税の減税とか間接税の廃止とか、いろいろなものを総合して将来に対する税制改革というものを考えておりますので。しかも、消費税というのは今四月一日から現に行われている恒久税制でございますから、国民皆さんに、謙虚に声を聞きながら見直すべき点は思い切って見直していかなければならない、こう我々は決意をいたしておりますけれども、しかし、野党の皆さんがまだお出しいただいた法案の裏づけになる財源措置というものは提案されていないわけでございますから、提案されました段階でまた内閣の意見を求められれば、そのときに申し上げさしていただこうと、こう考えます。
  122. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今基本的に総理がお述べになりましたけれども、多少敷衍をさせていただきますと、衆議院でも御質問がありましてお答えを申し上げましたのが、去る九月二十六日に発表されました御提案を拝見する限りにおきましては、従来からいろいろなゆがみあるいは不公平ということで御指摘が野党からもございました個別物品税をもう一度戻されるといったようなところには問題があるように思われるということを衆議院でも申しております。いずれ法律案審議の際、また内閣の意見等を求められました時点におきまして、改めて内閣としての意見は申し述べたいと存じます。
  123. 穐山篤

    穐山篤君 参議院選挙でも見直しをしたい、するということを国民に公約されたわけですが、その選挙の当時、どういうイメージを持ちながら国民に見直しの公約をされたんでしょうか。まずそこから伺います。
  124. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 当時、党を代表する立場で私がすべての場所で申し上げておりましたのは、消費税は将来のために必ず必要な税なんです。しかし、初めてやったことですからいろいろな問題があるかもしれません。それについては率直に私どもは見直します。今出ている国民の声は消費者の方々の声とその消費者に触れ合うお店屋さんの窓口の部分の声でありますから、そのうちに今度は納税義務者の方々の御意見も出てくるでしょう。その両方の御意見を伺って私たちはきちんと見直してまいります。そのように申し上げ続けてまいりました。
  125. 穐山篤

    穐山篤君 言葉というのは非常に重要な性格を持つわけですが、思い切った見直しと思い切って見直す、これはどういうふうに違うんでしょうか。ガイドラインをちょっと示してもらいたいと思います。
  126. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は実はそういう言葉を一度も使っておりませんのでその御趣旨はよくわかりかねますけれども、いずれにしても国民に対して誠実な見直しをお約束しておるものと心得ます。
  127. 穐山篤

    穐山篤君 総理にひとつ。思い切ってと思い切ったの違いは具体的にどういうイメージを持ったらいいんですか、総理大臣
  128. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 思い切って見直すというのは、私が党の総裁公選に立候補しましたときの決意の表明の文章にも使っておりますし、それから政府の税制調査会、そこでお願いをするときもそう言いました。思い切って見直すというのは、要するにいいと思っておったことが国民皆さんからのいろいろな御批判やあるいは御注文がある、やっぱり定着させていかなければならない、そのためには思い切って見直すんだという私の決意を申し上げたものでございます。
  129. 穐山篤

    穐山篤君 言葉一つ政治の将来といいますか、国民政治を信頼するしないの重大なかかわりになってくると思うんです。思い切って見直すと思い切った見直しをする、いずれも見直しをするという点では変わりないですね。だから、国民、流通あるいは事業者、各般にわたって、総理が抜本的に見直すと言っているからあれもこれもという幻想を今全部持っているわけです。  この幻想が現実にどうなるかということは政治の根幹にも触れる問題です。この点については午後具体的に指摘をしまして、午前中はこれで終わりたいと思います。
  130. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 穐山篤君の残余の質疑は午後に譲ることとし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  131. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 予算委員会を再開いたします。  予算執行状況に関する調査を議題といたしま す。  休憩前に引き続き、穐山篤君の質疑を行います。穐山君。
  132. 穐山篤

    穐山篤君 直間比率の問題について伺いますが、昭和五十年代、五十五年代、六十年代、それから消費税三%を含めた平成元年、この直間の割合を概略説明願いたいと思います。
  133. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 手元にある数字でお答えをさせていただきます。  最近の数年をとりますと、昭和六十年度直接税七二・八対間接税等二七・二、六十一年度直接税七三・一対間接税等二六・九、六十二年度直接税七三・三対間接税等二六・七、六十三年度直接税七三・二対間接税等二六・八、平成元年度は直接税七二・一対間接税等二七・九でございます。平成元年度の予算におきましては、所得税減税、消費税導入等によりましてこの傾向はさらに進んでいくものと見込んでおります。
  134. 穐山篤

    穐山篤君 よく税の問題で言われますのは、所得、資産、消費、このそれぞれの間で十分バランスがとれる体系がよろしい、こういうふうに言われておるんですが、そのバランスのよい体系というのはどういうガイドラインですか。
  135. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) バランスがいいと申しますかどうか、今回の税制改革が完全に平年度化いたしました場合の直間比率は、直接税六九対間接税など三一程度と見込んでおります。  なお、念のため申し添えますが、昭和六十三年度の直接税の比率は、法人税収が好調でありました反面に、税制改革の一環としての所得税減税が行われましたことなどから、昭和五十六年度以来七年ぶりに直接税の比率が低下をしたわけでございます。
  136. 穐山篤

    穐山篤君 議長裁定でも、あるいは衆議院の答弁を聞いておりましても、直間の比率などという、そういう問題意識がなされているわけですが、大蔵大臣として直接税と間接税の割合はどの程度が最も妥当適正かという点についての認識はいかがでしょうか。
  137. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) シャウプ税制が発足いたしました当時、直接税と間接税の比率はたしか五五対四五ぐらいであったと聞いております。ここまで参らないにいたしましても、今申し上げましたように平年度化いたしました場合七対三という水準を確実に担保する状況になるわけでありまして、一つの目安かと、そのように思います。
  138. 穐山篤

    穐山篤君 総理に伺いますが、一般消費税については三%を堅持すると、こういうお話でありますが、その考え方でいけば、平成元年度七二・一%対二七・九%というこの割合は当分の間変わらないと思うんですが、その点どうでしょうか。
  139. 尾崎護

    政府委員(尾崎護君) 平成元年度、御指摘の七二・一対二七・九の比率でございますけれども、これは御承知のとおりまだ完全に税制改正の効果が出切っておりません。完全に平年度化が終わっておりません。そこで、先ほど大臣が申しましたように、これが平年度化いたしますと多分直接税が七〇をちょっと切る、六九ぐらいのところに落ちつくのではないかというように考えております。
  140. 穐山篤

    穐山篤君 あのシャウプ税制のときには、減税もありましたけれども、総合課税という、そういう精神で貫いていたわけですね。そこで直間の比率というのは割合に均衡がとれておったわけです。今回の税制改正では総合課税制度というものを全く別のところに置いて計算をしているわけですね。もし、これが総合課税の精神に立脚をして直間の比率を見るとするならば、これはシャウプ税制の精神に近くなるというふうに私どもは判断しますが、その点いかがでしょうか。
  141. 尾崎護

    政府委員(尾崎護君) 現行の所得税法も総合課税の原則をとっているわけでございます。ただ、一部の所得につきまして、実際、実質上の把握が十分でないままに総合課税を貫徹しますとかえって問題が生ずるということで一部分離課税をとっておりますが、法の原則といたしましては、総合課税の建前はシャウプ以来変わっていないわけでございます。  御質問でございますが、総合課税を貫徹いたしますとそれによって直接税の比率が上がるのか下がるのかということでございまして、完全な総合課税をした場合に、もし直接税の把握が完全にできることによって直接税の比率が上がるということでございますと、逆にシャウプ税制の比率からは遠のいていくということになるわけでございます。ただ、総合課税の場合には、必ずしも今の分離課税と比べまして税収がふえるのかどうかというのはなかなか難しい問題があらうかと存じます。
  142. 穐山篤

    穐山篤君 大蔵大臣並びに総理にお伺いしますが、国民が持っております税金についての感じというのは、不公平感、重税感ですね。平たい言葉で言えば、同じ程度の所得を持っている人は同じ程度の税金を払う、これはもうやむを得ない。所得の少ない人と高い人の関係については、税負担の応能の精神からいって高い人はたくさん出してもらう、そして、それらを通して再配分機能というものを十分に確立してもらいたいというのが大方の意見だろうと思うんです。  しかし、例えば垂直的な公平の問題で言えば、マル優の問題があります。あるいは所得税の税率の問題があります。消費税の逆進性があります。そういうものをそのまま残しておいて見直しをするということは国民気持ちには沿わないというふうに思いますが、どうでしょうか。
  143. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) マル優につきましては、かつて本院におきましてもさまざまな角度からの御論議があり、結果としての改正が行われたことは委員御承知のとおりであります。また所得税につきましても、午前中にも申し上げましたとおり、五十年代の後半になりますと非常に厳しいこれに対する国民からの不満が上がっておりました。それにはいろいろな問題点がありましたでしょうけれども、例えば一つの例をとりますならば、刻みが細か過ぎるために多少昇給をするとすぐ次の刻みに移ってしまって、税額が引き上げられる、結果としてはせっかくの昇給が何ら家計の足しにならない、こうした声もございました。また、最高税率が高いということから勤労意欲についての問題が生ずるといった批判もございました。課税最低限が低過ぎるという批判もございました。そうした声にこたえながら今回の税制改正の中では所要の改正が行われてまいっております。  そういう状況を一方でとらえ、同時に個別の物品税というものが持っておりましたさまざまな問題点を勘案し、これを廃止すると同時に、広く薄く皆さんにお互いに支え合う仕組みを御協力願うということで消費税が生まれた。これは税制一つ一つを議論いたしますと、それぞれの税制にすぐれた点と同時に問題点があることは委員御承知のとおりでありまして、殊に御指摘になりました逆進性の部分等につきましては、これは消費税に確かにある問題点でありますけれども、これを支えるための社会保障、福祉政策といったものと総合的な御判断をお願い申し上げたいと思います。
  144. 穐山篤

    穐山篤君 衆議院の答弁によりますと、一応直接税を主にする、間接税を従にする、そういう思想には立っているけれども、所得税の割合が多過ぎるというふうな指摘を議事録の中では見るわけですが、所得税の占める割合が多過ぎるというふうに言われた具体的な根拠、合理性というのは何でしょうか。
  145. 尾崎護

    政府委員(尾崎護君) OECDが、地方税も含めまして税全体につきまして各国の資料を集めまして、OECD独自の方法によりまして再計算をしている資料がございます。これは計算の基礎をしっかりそろえているという点で最も信頼できる国際比較の資料であるように思いますが、それが先ほど委員の御質問にございましたように、所得、消費、それからその他資産等というように分かれているわけでございます。  OECD諸国の中で所得課税の割合が一番高いのはニュージーランドでございまして、それで見ますと七〇・五%、日本が第二位で六五・一%、これが所得に対する課税の割合でございます。一方、消費に対する課税の割合ということを見ますと、日本はOECDの最低でございまして一九%とい うことになっております。  OECDと申しますのは先進諸国のクラブのようなものでございますが、そこで見まして我が国の税制が極めて所得に重く偏り消費に対して課税するところが少ない、つまり極端な数字になっているわけでございまして、これがバランスのいいものとはちょっと考えられないわけでございます。
  146. 穐山篤

    穐山篤君 大蔵大臣、本会議でも答弁されましたが、三月三十一日までありました物品税についての認識はいかがでしょうか。
  147. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は物品税について次のような考え方を持っております。  まず第一に、物品税が採用された経緯を考えてみますと、ちょうど私の生まれました年、北支事変における戦費調達のためにこれが生まれたという歴史を学びました。自来、第二次世界大戦の進行と合わせて物品税の対象品目はふえてまいりました。敗戦後、またそれが一たん見直され、そしてまた徐々にふえ続けて今日に至ったと承知をいたしております。  そして、その中にはそのときどきに追加をされ、あるいは取り消された項目等もありますけれども、よく例に引かれます例えばコーヒーと紅茶、一方は物品税の対象であり一方は物品税の対象になっておらないといったような整合性を欠く部分が各所に出てきたことは、この税制の持つ欠陥を端的にあらわしたものではなかろうかと感じております。  また同時に、国際社会の中におきまして、日本の輸入が拡大をしない理由、外国商品がなかなか日本国内に入らない理由として各国から指弾をされておりましたことも御承知のとおりであります。そして、欧米先進国のほとんどが消費税のような税制を採用しておる中におきまして、日本の物品税という体系が非常に特異なものとして指弾を浴びる状況になりましたことは、やはり国際社会の中における日本の役割から考えまして見直すべきポイントの一つであった、そのように思います。
  148. 穐山篤

    穐山篤君 私は昭和五十二年、一九七七年からこの物品税の問題に接触をしておりますが、毎回、私どもこの問題について指摘をしました。言いかえてみれば、十分に時代時代に合った改善を行ってきていなかったために不合理の部分が非常に目立つようになった。したがって、そういう意味で言うと、過去の物品税に対する政府考え方というものが余りに便宜的過ぎたというふうに指摘をしておきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  149. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私はその過去の御論議について十分熟知をいたしておりませんので、その御批判が当たっておるかどうかについてお答えをする資格を持ちません。  しかし、仮に今委員の御指摘のように、個別物品税について御論議をいただき、そしてそれが是正をされておったといたしましても、国際社会の中で果たして通用したでありましょうか。国内において、同種の商品同士のアンバランスというものはあるいは是正をされたかもしれません。しかし、世界的にただ単に物にだけ課税をする状況からサービスを含めた消費に課税をする方向に変わっていきました流れの中で、少なくとも物品税においてサービスに課税ができないという性格は変わらなかったのではなかろうか、そのように思います。
  150. 穐山篤

    穐山篤君 この点はまた別な機会に申し上げます。  さて、見直しについては具体的に政府案はいつごろ、どういう形でお出しになるのでしょうか。
  151. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私どもは今政府税制調査会に見直しの作業をお願い申し上げているところであります。そして、私どもの立場としては年内に何としても明年度の予算編成を完成いたしたい。そのためには十二月の下旬には予算編成作業に着手をいたさなければなりません。その時点におきましては明年度の税制改正の内容を固定いたさなければなりませんから、少なくとも十二月の中旬までにはその結論を私どもとしては固めなければならない、そのように考えております。
  152. 穐山篤

    穐山篤君 私どもが提案をした一般消費税の廃止、これはもう法律が出ているわけです。皆さん方の方は十一月ないし十二月。税制改正についての時間的にも、内容的にも食い違いが起きるわけですね。これでは国民の判断を正しくもらうということにはならないと思う。大蔵大臣の考え方については絶対に納得するわけにいかないと思う。  さてそこで、見直しというのは、一般消費税の中のそれぞれについて見直しをするのか、税制調査会あるいは野党からも提案をしております不公平税制を含んだ見直しを総括的にやるのか、あるいはそれが対象に入っているのかという点、いかがでしょうか。
  153. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 毎年度、予算編成の前に、次年度の税収を確定いたしますために次年度の税制改正は内容を固定いたします。その限りにおきまして税制は不断に見直されております。  一方、今委員が御指摘になりました消費税の見直しという問題につきましては、まさに私どもは政府税制調査会に対して審議をお願いし、今審議を続けていただいておるわけでありまして、消費税について見直すべき点を政府税制調査会としておまとめをいただき、それを次年度税制改正の中に加えていくということでございます。党の方でも現在作業を急いでいただいておりまして、いずれにしても、次年度の予算編成に間に合うようにこれらの御意見も集約し、税制改正の内容を固定いたしたいということでございます。
  154. 穐山篤

    穐山篤君 政府自民党は見直しをすると。政府税調もいろいろな意見がありますよね、そう安易に見直すべきものではないと。しかし、見直しをするならば広範囲にやらなきゃならない。非常に土俵が確定をしていないんです。ですから、税制改正についての議論がかみ合わない。詳しくは久保委員から後ほど質問がありますが、少なくとも国民が期待をしているのは、不公平の税制を正す、あるいは運用についての間違い、不合理も正していく、それが頭になって税制改正が行われてしかるべきだと。これは選挙の前も選挙の後も国民気持ちは変わっていないと思う。その点もう一度伺っておきたいと思います。
  155. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ですから、今申し上げましたように、今、委員不公平是正ということを申し述べられたわけでありますが、不公平是正というものにつきましては、従来から、各党の間で話し合いの行われましたものを踏まえたり、あるいは政府自身の判断においてこれを是正したり、不断の見直しをいたしてまいりました。これはこれからも変わらないことであります。  それと消費税の見直しの話と二つを仰せになりましたので、消費税の見直しにつきましては、今、税制調査会に御審議をお願いしている。ただ、これは少なくとも私どもは年内に予算編成をいたしたいという決心をしておるわけでありますから、その編成に着手いたします時点では歳入が確定しなければなりません。そのためにはどんなに遅くとも十二月の中下旬には、まあ二十日ごろまでがタイムリミットでありましょうか、そのころまでには次年度税制改正として内容が確定をしなければならないということであります。
  156. 穐山篤

    穐山篤君 議論がかみ合いませんので、農業政策について言います。  農林大臣並びに総理大臣に伺いますが、食糧の自給率を上げましょう、上げるように努力しましょうと答弁をされておりますが、当然現行三〇%の自給率を高めていくというように理解をしてよろしゅうございますか。
  157. 鹿野道彦

    国務大臣(鹿野道彦君) 自給率はここのところ、今日の状況を申させていただきますと、カロリーベースでは四九%、そして穀物自給率につきましては三〇%と、こういうふうなことであります。昭和三十五年は、穀物自給率八二%のときもございました。  なぜこんなに自給率が低くなってきたのか。御承知のとおりに、米の消費が落ちてまいりまして、そのかわりに畜産物の消費がふえてきた、このようなことから、畜産に必要ないわゆる飼料穀物と いうふうなものを国土の制限等から輸入に依存せざるを得ない、このようなことで自給率が下がってきたということであります。  そのようなことから、私どもといたしましては、そういう状況にはありますけれども、この自給率が下がってきている中に何とか歯どめをかけたいものだなと、こんな気持ちでおるところでございます。
  158. 穐山篤

    穐山篤君 総理のこの間の答弁では上げるように目標設定をすると、こうなっていた。今の農水大臣の話では歯どめという下の方の話です。これは具体的にどういうことになっているんでしょう。総理、答弁してください。
  159. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 食糧の自給率というのが年々低下してきておりますことは私もよく承知しておりますが、そのよって来る原因というのは、国民皆さん全般の食生活の嗜好方向が変わってきたという大きな背景があったことも委員御承知のとおりでございます。お米の消費量がかっての百四十キロ前後のところからどんどん下がってきておる。七十二キロになって、まだ下がりつつあるということや、お肉の需要がふえてきておるということも、ただいま農林大臣が言ったとおりでございます。  そこで、食糧の供給力を高めていくということは私は必要なことだと思うんです、食糧安全保障という面からいっても。ところが、ただいま今日の三〇%の穀物自給をやっておりますのにも五百三十万ヘクタールの耕地を使ってやっておる。それをどこまで高めるかということになりますと、土地の方の隘路も出てくる。  それじゃ、今度は嗜好を変えていただけるだろうか。ざっと計算すれば、朝一杯御飯をすべての人が食べていただくと、一億二千万人、三百六十五日、粗っぽい計算ですが、二百五十万トンのお米になるんですけれども、そんなことまでは強制できる世の中ではございません。  また、諸外国の人といろいろ話しておると、栄養というものにはバランスが必要だ、いろいろ四つに分けたバランスが必要だ。だから、お米の需要をもっと促進しなさい、自信を持ってやりなさい。お米と野菜とお魚を中心とした日本型の食生活というもののバランスと、パンとお肉と卵、芋を中心とした欧米型のバランスとなると、どうしても食糧の関係から偏りが出るよという栄養学的な御指摘をくださった方もありましたけれども、そんなことも申し上げるわけにもいきません。  どういうところで皆さんに御理解をいただき、自給をふやし、どういうところで食糧の自給力を高めていくかということにこちらはいろいろ頭を絞っておるところでありまして、努力をしなければならぬという点においては私は痛切に感じております。現実は非常に今申し上げたような多くの問題が重なり合って厳しい状況にございますので、食糧の供給力を高めていきたい。この願いを込めてこの間は申し上げました。
  160. 穐山篤

    穐山篤君 今もこちらから話が出ておりますように、長期見通しを立てる、こういう予定になっているわけですが、当然自給率なり、あるいは供給力の数字的な目標、政策手段というものがなければだれも納得しないですね。その点についてはいかがですか。
  161. 鹿野道彦

    国務大臣(鹿野道彦君) 今申し上げましたとおりに、自給率というのは、そのときの経済情勢なり、あるいは国民の食生活というふうな動向によって変動するというふうなことがあるわけでございます。そのようなことから、なかなか自給率をここにというふうなことは難しい点もございますけれども、今先生申されたとおりに、長期的にどうなるのか、こういうふうなことから、二〇〇○年を目標年次といたしまして、需要がどうなるか、あるいは生産がどうなるかというふうな見通しを今策定いたしておるところでございますので、そういう中で自給率を明らかにしてまいりたいと、こんなふうに考えておるところでございます。
  162. 穐山篤

    穐山篤君 具体性が非常に乏しいですね。  十年前、農業の後継者はほぼ一万人いたわけですが、今は二千百人です。将来展望がないんですね。そういう中で減反をする、来年から後期の計画があるわけですが、これについても農民は反対なんです。しかし、政府のお持ちの計画あるいは転作についての考え方、これを明らかにしてください。
  163. 鹿野道彦

    国務大臣(鹿野道彦君) 今申し上げましたとおりに、米の需要が減退をしておる、生産力が向上しているという事情のもとで、いわゆる米の需給ギャップというふうなものの拡大が見込まれるんじゃないか、こんなようなことから、米の消費拡大にいろいろな施策を講じ、そして需要に合ったところの計画的な米の生産というものを図っていくためにも、やはり米の需給調整努力が相当要るんではないかなと、こんなふうに率直に思っておるところでございます。しかしながら、水田農業確立対策の後期対策につきましては、作況がどうなるかというふうな問題等もございますし、また、生産者側から自主的に取り組んでいただきながら、いわゆる需給の安定なり価格の安定を図りつつ、それぞれの地域の実情に合ったところの足腰のしっかりとした水田農業をこれからつくっていかなきゃならないという観点から、関係者ともこれから十分協議をいたしながら詰めてまいりたい、こんなふうに考えておるところでございます。
  164. 穐山篤

    穐山篤君 総理に伺いますが、米は外国から輸入をしない、こう言明されておりますが、もう一度確認をさせてもらいたいと思います。
  165. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 外国からの米の問題については、衆参両院の御決議もございます、私は自給をすることを基本として対処してまいります、そういったことを申し上げております。
  166. 穐山篤

    穐山篤君 私は今慎重に聞いておったんですが、基本にという言葉が最近使われるようになりました。前は使っていなかったんです。どこが違うんですか。
  167. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 初めから私は、衆参両院の御決議を体し国内で自給することを基本として対処しますと言い続けてきております。基本であります。(「後退した」と呼ぶ者あり)いや、後退しません。
  168. 穐山篤

    穐山篤君 私ども後退したと思いますが、また村沢委員の方から質問を専門的にさせてもらいます。  最近、自民党の中の有力幹部が五%程度米の輸入をして圧力を回避したいと、こういうお話があるわけですが、これは自民党の政策として決まったんでしょうか。
  169. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 基本も変わっておりませんし、国会の御決議の趣旨を体し今後とも国内産で自給するとの基本的な方針で対処してまいりますということを私は申し上げております。
  170. 穐山篤

    穐山篤君 渡辺幹部が五%と、渡辺美智雄ですね。これは全く個人の発想で、念頭には政府自民党としてはないんですね。
  171. 鹿野道彦

    国務大臣(鹿野道彦君) 私に対して渡辺先生がそのような考え方であるというふうなことをお聞きしたことはございませんので、定かな発言の内容につきましては承知をいたしておりませんが、党においてそのような決定がなされたということは全然聞いておりません。
  172. 穐山篤

    穐山篤君 次に、国鉄、JR問題について伺います。三つです。  一つは、年金の全面的な改正の問題は国会に出ておりますが、来年から支払いに非常に憂慮さるべき共済は鉄道共済年金です。  そこで、結論だけお願いをしたいと思いますが、支払いに支障がないように確認をしてよろしゅうございますか。
  173. 江藤隆美

    国務大臣(江藤隆美君) 国鉄年金問題につきましては、四十六万八千人のいわゆる受給者が、来年度からおよそ三千億財源が不足するということで一様に実は心配しておるところであります。したがいまして、今回の年金改正の中に、自助努力とそれからいわゆる年金相互間の地ならしによってその財源を補って支給に全きを期するということで実は法案を提出しておりますので、早急に御審議をいただきましてこれを可決願うようにお願 いしたい、こう考えております。
  174. 穐山篤

    穐山篤君 私の聞いているのは、国会で議論をされております、政局の動向もいろいろありますから、私は、そういうものを全部ひっくるめてのみ込んで年金の支払いに支障がないようにしてもらえますな、年金制度の崩壊ということはありませんねということを確認しているんです。
  175. 江藤隆美

    国務大臣(江藤隆美君) 年金の支払いが完全に行われるべく諸般の財源処置を講じて法案を提出しておるわけでありますから、御審議をいただいて、なるべく早く国会を通していただくようにお願いしたいと申し上げておるわけであります。
  176. 穐山篤

    穐山篤君 認識の違いはありますけれども、これは年金制度の信用上の問題であります。公的年金に対する信頼の問題です。支払いに支障がないようにしてもらう。  二つ目は、清算事業団です。  今二千三百数名事業団に残っておりますが、来年三月三十一日まで一〇〇%全員雇用の確保、安定については御心配はないでしょうな。
  177. 江藤隆美

    国務大臣(江藤隆美君) 御承知のように、国鉄が民営化いたしました段階でおよそ一万八千八百人おりました。その中でおよそ一万一千人はもう既に就職先が内定をいたしておりまして、七千六百人余りが実は未確定であったわけであります。したがいまして、国会の御決議もあり、あるいはまた政府の統一見解等もございまして、私どもは全力を挙げてこれらが就職の道を講じてきたわけであります。  したがいまして、この三年間に三千億の実は就職あっせん、あるいは職業訓練あるいはその他の費用を計上して、今お説のようにあと二千三百三人になりました。人間だけでも約一千人の人間を投じてこれらの就職のあっせん、職業訓練をやってきたわけでありまして、残るところあと半年近くございますから、全力を挙げて皆が就職できるようにしたい。特に、北海道、九州が問題があるわけでありますが、私どもが、いかがですかといって就職の先を用意しておるものはおおよそ五倍であります。全国的に言うと十倍の就職口を準備して皆さんどうですかと、こう申し上げておるわけでありまして、個人個人の意見はありましょうが、全力を挙げてこの就職の全きを期していきたいと念願しておるところであります。
  178. 穐山篤

    穐山篤君 一人も路頭に迷うことがないということをお約束してもらえますか。
  179. 江藤隆美

    国務大臣(江藤隆美君) 路頭に迷うことがないように三年間努力してきましたし、残るところも努力をしようと、こう思っておるところであります。
  180. 穐山篤

    穐山篤君 国鉄からJRに変わったわけですが、その前後で組合の所属を理由にした差別、選別、不当労働行為があって、本人並びに組合がそれぞれ地労委に申請をして、今日五十数件組合員の主張が認められているわけです。それが不服として今中労委にあるわけであります。これは国としてもあるいは国会としても、十分審議をしてきた事柄でありますので、我々も共通の責任を負わなきゃならぬと思うんです。  そこで、中労委に問題が出ているわけでありますので、この段階で全面的に問題が解決するように総理の指導性を期待するわけですが、いかがでしょうか。
  181. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 御趣旨に従って、運輸大臣がただいまいろいろここで御答弁しましたように、できる限り政府としても最大の努力を努めていくつもりであります。
  182. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) 総理の御答弁に補足さしていただきます。  御承知のように、国鉄改革法の附帯決議におきまして、JR各社の採用につきましては所属組合による差別が行われないように留意せよということでございまして、そのようなことがあってはならないことはこれまた当然のことでございます。  今御質問にありましたように、JR各社のいわゆる不当労働行為の案件につきましては、中労委におきまして係争中でございまして、今、政府、行政の立場からこの問題につきましては言及するのは差し控えさしていただきたいと存じます。
  183. 穐山篤

    穐山篤君 私が申し上げているのは、労使の紛争ではありますけれども、事の起こりは政治の問題、改革法からスタートをしているわけですから、審議の経過も結果も皆さんおわかりです。そこで、私が注文しておるのは、非常に難しい問題なんだけれども、政府が決断をして問題を解決するようにしてくれと、こう申し上げておるわけです。ですから、今の答弁では納得ができません。
  184. 江藤隆美

    国務大臣(江藤隆美君) ことしの六月二十日に、委員から運輸委員会において当時の山村運輸大臣に質問がありました。それは、宇野内閣において統一見解をなるべく早く示してもらいたいと、こういうことであったと承知をいたしております。  その後、内閣はかわりましたけれども引き続き検討を行ってきたところでありますが、先ほど労働大臣も答えましたように、国鉄改革ということはただ単に財政的な面だけではなくて、労使関係なかんずく労働問題についても自主性を尊重していくということが大きな基本でありまして、今なるほど地労委の裁定は出ましたものの、JR側としては、自分たちの意向がことごとく退けられたということで、いわゆる中労委に裁定をまたゆだねておるわけでありますから、そこで行政機関がとやかく言うことは当面差し控えたがよろしかろう、こういう見解で対応しておるところでございます。
  185. 穐山篤

    穐山篤君 私の言っている趣旨が十分に伝わってないんですよ。
  186. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  187. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記を起こして。  委員長から申し上げます。  ただいまの穐山篤君の質問につきましては、後刻、議事録を精査の上、理事会で協議をいたします。
  188. 穐山篤

    穐山篤君 委員長、それは保留ということですね。保留という意味ですね。
  189. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) そうです。
  190. 穐山篤

    穐山篤君 総理に伺いますが、話はちょっと変わりますよ。朝鮮半島政策については、竹下総理大臣が国会で答弁しておりますが、継承をされますか。
  191. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 朝鮮半島政策につきましては、韓国の関係については引き続き友好関係を発展させていく。他方、北朝鮮との間においても関係改善を積極的に進めていく方針であり、お尋ねの三月の竹下当時総理大臣答弁で明らかにした政府の対北朝鮮政策について、基本姿勢は現内閣のもとでも変更はございません。
  192. 穐山篤

    穐山篤君 先日、衆議院の審議の中で、朝鮮総連は非常に危険な団体と見てよいかという質問に対して、仰せのとおりと答えておりますが、これは具体的にどういう理由でしょうか。
  193. 古賀宏之

    政府委員(古賀宏之君) お答えいたします。  公安調査庁は公共の安全の確保に寄与することを目的として設置された機関であり、その責務を全うする必要上、朝鮮総連を調査しております。なぜ調査をするのかということについてでございますが、朝鮮総連は過去において暴力主義的破壊活動を行った在日朝鮮統一民主戦線、これは略称を民戦と呼ばれておりますが、この民戦を前身とする団体であり、今後の治安情勢いかんによっては将来同種の行動に出る危険性なしとしないという意味で、危険性があるという答弁になったわけでございまして、単純に危険だと申し上げた点については、抽象的過ぎて誤解を生みかねないと思いますので、補足して御説明いたしました。
  194. 穐山篤

    穐山篤君 私は衆議院の答弁書も持っておりますが、今の見解は大変違っていますね。修正をされたんですか。
  195. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  過日の衆議院の予算委員会におきまして、警察が朝鮮総連に対して重大な関心を持っているということを私は申し述べたのであります。その理由と申しますのは、朝鮮総連は北朝鮮と密接な関係にあるということでございます。  さらに、本日補足いたしますれば、朝鮮総連の 議長である韓徳銖氏はその著作の中で、朝鮮総連の行う在日朝鮮人運動というのは北朝鮮の指導のもとに置かれなければならないという趣旨のことをはっきりと書いておるわけでございます。  さらに、北朝鮮が、古い呼称でございますが、ビルマのラングーン事件とか、あるいは大韓航空機爆破事件などについて、これを敢行したということは周知の事実でございますので、そういったことから総合的に判断して、私どもとしては重大な関心を持たざるを得ないということを申し上げたわけであります。
  196. 穐山篤

    穐山篤君 昭和四十八年二月二十八日、衆議院の法務委員会の答弁とは全く違うんです。変わったんですか。
  197. 古賀宏之

    政府委員(古賀宏之君) 昭和四十八年のことでございますので私の頭の中にはありませんし、今ちょっと記録をめくってもらいましたがわかりませんので、今回の答弁と昭和四十八年当時の答弁のどこがどう食い違うかとおっしゃられてもちょっと正確な答弁ができかねますので、御容赦願いたいと思います。
  198. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 穐山君、時間が参りました。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  199. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記を起こして。  ただいまの穐山君の質問につきましては、理事会調査し、政府で統一見解を求めることにいたします。
  200. 穐山篤

    穐山篤君 私は最初、総理の外交政策についてお伺いしました。朝鮮半島をお互いに注目して善隣友好を発展させよう、そういう気持ちがお互いにあるわけです。そういう中で悪意を持っていろいろの団体を指摘するというのは、日本外交にとって決していいことではない、そういう判断と同時に、過去の審議の経緯を踏まえて私は過ちを指摘したわけです。  保留となったようでありますので、改めて統一見解を伺うということを申し上げて、私の質問は終わります。  以上です。
  201. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 以上で槍山篤君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  202. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 次に、前島英三郎君の質疑を行います。前島君。
  203. 前島英三郎

    前島英三郎君 参議院自由民主党を代表いたしまして、海部総理並びに関係閣僚に緊急の課題を質問させていただきます。  まず冒頭、一昨日のアメリカ西海岸サンフランシスコ大地震は大変驚きました。最も友好国であるアメリカでありますし、そしてまた、被害の大きさ、犠牲者の多さ、こういうことを見ますと、心からお見舞いを申し上げたい次第でございます。この地震に対する日本政府の取り組みをまず伺いたいと思います。海部総理
  204. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) サンフランシスコの地震は我々にとっても心痛む問題でありまして、日本政府としましては、それが御指摘のように太平洋を挟んだ友好国の出来事でありますから、まず、災害を受けた方、命を失った方々に心から哀悼の意を表しますとともに、日本国民を代表して私は大統領にもお見舞いの電報を打ちましたし、また外務省が人も既に派遣をいたしまして、そして、もし日本が御協力できることがあるなれば対応して御協力をいたしたいという協力の申し出もいたしました。  今後、政府としてはいろいろの事態の推移を見ながらできる限りの対応をしていきたい、こう考えております。
  205. 前島英三郎

    前島英三郎君 今総理が援助態勢、取り組みについてお話しくださいましたけれども、外務省、何か補足することがございますか。
  206. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 今総理から御答弁申し上げましたような次第でございますが、外務省としては、三名のほかにさらに一名職員を追加派遣いたすことにいたしました。  なお、かつて我々日本が関東大震災のときに、大変多額の見舞い金を米国の方々から御好意のもとにちょうだいしたという歴史的な経過もございますし、この際、我々日本といたしましても、国民各層のアメリカに対するお見舞いの気持ちをできるだけ多く集約してお届けをしたいということで、昨日、日米協会にカリフォルニアのサンフランシスコ地震のお見舞いの寄金の窓口を開設させていただきました。  また本朝は、閣議におきまして海部総理を初め、全閣僚が心ばかりのお見舞いを差し上げるということにもさせていただいております。  自由民主党においてもいろいろと御配慮をいただいているということを伺っておりまして、一日も早いサンフランシスコの被害地域の復旧と、けがをされた方々の御回復を心から祈る次第でございます。
  207. 前島英三郎

    前島英三郎君 歴史的に見ましても、かつてのサンフランシスコ大地震、そして関東大震災、太平洋プレートの問題もありましょうが、何か交互連動のような雰囲気があります。これがもし東京で起きたらという思いを持ちますと、大変心配であります。  国土庁長官、もしこういうような地震が東京に起きたらと、それを想像するのは難しいわけでありますが、すぐ中国で起きた、こういうことを見ますと、地震大国日本でありますから、これはやっぱりまた緊急の課題だと思います。ちょっと伺っておきましょう。
  208. 石井一

    国務大臣石井一君) 御指摘のとおり、地震の予測またその状況というのは客観情勢によっていろいろ違うわけでございますから、断定的なことを申し上げることは非常に難しい御質問でございますが、今回のサンフランシスコの地震はマグニチュード六・九でございます。また、これは昭和五十九年に長野県西部地区で発生した地震とほぼ同程度。なお、御案内のとおり、関東大震災はマグニチュード七・九、大方八ということでございますが、マグニチュードが一違いますということが大体約三十分の一のエネルギーの規模である、こういうふうに地震学者が指摘いたしておるところでございます。したがって、関東大震災がいかに大きかったかということも御指摘できるのではないかと思います。  七十年前の九月一日、関東大震災に見舞われたわけでございまして、我々といたしましてはその日を防災の日と指定し、あらゆる防災意識の高揚に努めております。  当時は、死者が十四万人、全壊、半壊二十六万戸、焼失四十五万戸というふうなことでございますが、その後、いろいろの地震先進国と申しますか、研究を重ねまして、橋梁等の主要構造物につきましても、また高速道路あるいは主要な建物につきましても、現在では関東大震災クラスの地震にも耐え得るような対策が講じられておるところでございます。  また、昨日、海外の事情を聴取いたしました後に、国土庁で二十五機関の専門家、実務レベルの担当者会議を招致いたしまして、災害対策関係省庁連絡会議を開催し、各省庁の情報交換を行った後に、今後、米国の意向を踏まえつつ、相手国の迷惑にならないように十分に意を用いながら視察団を派遣し事情を視察するとともに、我が国に対処し、また世界の地震の防災のために対処したい、このように念願をいたしております。  なお、もう一言、先日クエール副大統領夫妻がお見えになりましたが、マリリン夫人は特別に防災に関心をお持ちになりまして、日本の防災機関をほとんど訪問されました。伊豆大島まで参られたわけでございます。専門的な知識を持って日本訪問を終えられたわけでございますが、その直後にサンフランシスコでこのような事態が起こっておるということに私は何らかの一つの感慨深いものを感じております。
  209. 前島英三郎

    前島英三郎君 ことしは本当にいろいろなことが起きました。ことしは悲しいことから始まったわけで、一月七日、昭和天皇が御崩御あそばされました。戦前、戦中、戦後を通じまして、動乱の中での昭和天皇のお姿をしのぶとき、まことに感慨 深いものがございます。とりわけ、終戦後の混乱した中で、人間天皇として全国を御巡幸されまして、打ちのめされた国民に希望を与えていただいた。そして、あの荒廃の中から私たちの先輩は今日の日本を築き上げていただいた。何かしら世界の中のリーダーの一翼を担う、こういう日本を見届けられての御崩御のような思いをするわけであります。  さて、新天皇も皇位を継承されましたが、来年十一月に、あとわずか一年ちょっとでありますけれども、大嘗祭が御即位の儀式として控えております。この御大礼に内閣としてどのような取り組みをしているか二、三質問さしていただきますが、政府におきましても、即位の礼準備委員会というのを設置しているわけでありますけれども、そもそも大嘗祭とはいかなる儀式なのでしょうか、宮内庁にちょっと御説明いただきたいと思います。
  210. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) 大嘗祭がいかなる儀式かという御質問でございますが、大嘗祭は、天皇陛下が御即位の後、新穀を皇祖及び天神地祇にお供えになりまして、また御みずからもお召し上がりになる儀式だというふうに考えております。  この儀式は、御即位に伴いまして一代に一度行われます重儀でございまして、皇室の長い伝統を受け継いだ、皇位継承に伴う意義深い儀式であるというふうに考えております。
  211. 前島英三郎

    前島英三郎君 世界にも我が国のように君主を仰いだ国が多くありますが、これら世界の王室と比較して我が国の皇室はどのような点が違い、どのようなところが特色でありましょうか。
  212. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) 外国の王室と比較して日本の皇室の特色ということでございますが、外国の王室につきましては、国それぞれのお国柄の特殊性というものもございますし、また王朝の交代等もありまして、比較することはなかなかこれは難しいというふうに思っております。  我が国の皇室について申し上げますと、皇位は世襲によりまして代々皇統において継承されてまいっておりますし、天皇は日本国の象徴及び日本国民統合の象徴であるというふうに定められておるわけでございます。  我が国の長い歴史の中で、皇室は日本の伝統文化というものを継承しつつ、常に国家、国民の安寧を願われてまいっておりますが、これが我が国の皇室の伝統であるというふうに考えておるわけでございます。
  213. 前島英三郎

    前島英三郎君 総理にお伺いいたしますが、さきの百十四国会の衆議院予算委員会におきまして味村法制局長官は、一月に行われた剣璽等承継の儀、それから即位後朝見、私も社会労働委員長として出席させていただきましたが、これらは皇室典範第二十四条に明記された即位の礼の一環をなす儀式である、こうしておりますけれども、来年行われる即位礼、大嘗祭、大饗などの儀式も即位の礼の一環をなすものと解釈してよろしいのでしょうか。いかがですか。
  214. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答え申し上げます。  即位の礼につきましては、ただいま委員指摘のとおり、皇室典範の二十四条におきまして「即位の礼を行う。」ということが規定してございます。  ことしの春でございますけれども、即位後朝見の儀、剣璽等承継の儀というのが国事行為である即位の礼の一環として行われたところでございます。  なお、今後行われることが予定されております即位の礼の儀式のあり方等につきまして、先ほど委員申されましたように、即位の礼準備委員会におきまして慎重に検討しているところでございます。  そういうことで、検討をなお続けることといたしておりますが、いずれにいたしましても憲法の趣旨に沿いまして、かつ皇室の伝統等を尊重したもの、こういうことで検討を続けているところでございます。
  215. 前島英三郎

    前島英三郎君 大嘗祭は大切な御即位の伝統的な行事である。国民皆さんがこれにどれだけ御理解を示していただいているかというのは、私はなかなか難しいと思います。特に子供たち、小中高校生は、これは教科書には載っておりませんので大変この部分の理解は乏しいと思うのでありますが、やはり来年に迫っておりますし、文部省もその辺は歴史教育の一環として取り組むべきだ、こう私は思うんですが、文部大臣、いかがですか。
  216. 石橋一弥

    国務大臣(石橋一弥君) お答えいたします。  学校教育では、天皇について、社会科において児童生徒の発達段階に応じて適切に指導しているところであります。  今回の学習指導要領の改訂においては、天皇についての理解と敬愛の念を深めるよう指導することを明確にいたしたところであります。  なお、即位の礼については、現在、政府として即位の礼に関する諸問題について協議を行っているところでございます。その結果を踏まえ、文部省としても適切に対処いたす所存であります。
  217. 前島英三郎

    前島英三郎君 新天皇が皇太子であられたときに障害者福祉には格別の御理解を賜りました。新天皇が皇位を継承されましたことをみんなの喜びとしまして、国際障害者年がちょうど十年の区切りを間もなく迎えるわけでありますが、例えば記念ホールを創設するとか、あるいは障害者基金とかというような慶事を考えるべきだと提案したいと思うんですが、厚生大臣いかがでしょう。
  218. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) ただいま委員指摘のとおり、天皇陛下におかせられましては、昭和四十年の身体障害者の全国スポーツ大会にお出ましになって以来ずっと、さきのことし九月に二十五回札幌大会が終わりましたけれども、その間、一貫して非常に強い関心をお示しになって御出席くださっております。六十三年、昨年は昭和天皇の御病気もありまして欠席をされましたが、この二十五回の御出席の中で、この北海道における天皇陛下のお言葉も我々一同聞いて非常に感動いたした次第であります。そのように、陛下におかれては障害者に対するお心遣いというものは非常に細かいところに行き届いておられるということをこの目の当たりに拝見いたしました。  今、委員指摘のように、そういうことを考えてやはり何か記念事業をしてみたらどうかという御提言でございますが、私どももそういう意味で幅広く各界の御意見等を聞きながら、そういう方向でひとつ考えてみたいというような気持ちでおりますのでよろしくお願いいたします。
  219. 前島英三郎

    前島英三郎君 新憲法のもとでは初めての儀式になりますが、大切なことは、いかに伝統を将来に継承するか、こういうことだろうと思うんです。そして、憲法第一条におきまして天皇の地位は「国民の総意に基く。」と規定されているとおり、深い伝統に根差したものとして日本国民の統合の象徴としての伝統を継承していくわけでございます。今生きている日本国民は、たかだかというと変ですが一億二千三百万、千数百年の歴史を築き上げた日本国民としての先輩の心を受け継ぐ意味におきましても、大嘗祭は国の公の行為として立派に伝統を守るべきだと思うんですが、この点に対して総理に伺っておきたいと思います。
  220. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 御指摘のように、即位の礼の儀式のあり方については、大嘗祭を含め即位の礼準備委員会で慎重にただいま検討しておるところでありますけれども、憲法の趣旨に沿い、かつ皇室の伝統等を尊重したものとなると、こう考えております。
  221. 前島英三郎

    前島英三郎君 それでは、総理政治姿勢につきましてお尋ねをいたします。  過ぐる参議院選挙におきまして、自由民主党は歴史的な敗北をいたしました。与野党伯仲を通り越しまして与野党逆転という状況となったわけでございます。この選挙で私たちの同志の多くが敗れまして、ともに国政における活動ができないことを私としては寂しくもまた残念に思っております。  さて総理は、この結果を踏まえて、我が党の敗北をどのように見詰めておられるのか、また、この結果の上に立って、今後どのように指導性を発揮していかれるおつもりなのか、改めて承っておきたいと思います。
  222. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 参議院通常選挙の結果は、率直に申し上げて厳しく受けとめております。  それでは、その原因はどこにあったかというお尋ねですが、これは、第一はリクルート事件に端を発した政治不信があった。二つ目は、そのために、今、将来を目指してやろうとしておる税制改革の中で、税制改革全般が議論の対象とならずに、消費税は好きか嫌いか、いいか悪いか、廃止か存続かだけに焦点が絞られたそんな議論がなされた。第三番目には、地域のいろいろな問題であろうと思いますが、例えば、農政に対する積もった不信があった。いろいろなことが報ぜられておりますが、私は、それはすべてそうであったと謙虚に受けとめております。  そして、まずやらなきゃならぬことは、しかし、国の政治は対外的なものもございますから、国際社会においてはやっぱり自由と民主主義と市場経済の価値をきちっと守りながら、日本の与えられた立場と責任を果たしていかなければならない。せっかく世界の大きな変化のさなかでありますから、自由と民主主義の基盤を守った日本の対外政策はしていかなきゃならぬ。そのためには、世界の平和と安定に貢献するように汗を流すという志のある外交をしていかなきゃならぬ。  国内的には、最初に申し上げました三つの問題点が今当面の急務で議論されておりますが、私は、まず政治改革を行うことによって国民不信を取り除いていく。政治改革、そのためには、これは自由民主党は党に政治改革推進本部をつくって政治改革大綱をつくって、まず第一歩からスタートを既にいたしました。そのために、先国会に公職選挙法の改正案とか政治資金規正法の改正案が出されております。これは各党のお話し合いによって適切な結論を願うことでありますが、私は、これは一歩前進と受けとめて成立をさせていただきたいと願っておりますし、政治改革と同時に、やはり税制の改革も将来の高齢化社会等を踏まえて大切な問題でございます。そのほかいろいろあります政策については、将来を見据えて、公正で心豊かな社会をつくっていきたい、これに前進をしていく決意でございます。
  223. 前島英三郎

    前島英三郎君 総理は「対話改革政治」を内閣の旗印とされましたが、なかなかすばらしい旗印だと思うわけであります。  特に、対話ということが本質的に重要な時代になってきたと思うんです。現在の国会の状況は常に衆参両院で異なった結論が出るような姿となっておるわけでありますが、もし対立と対決だけの政治が続くとしたら、重要な政策の決定がいつまでもできず、国民生活はどうなっていくか、大変心配もするわけであります。まさに、違いは違いとして明らかにしつつ、対話ということが大切だろうと思うのでありますが、その対話に対する姿勢ですね、対話というものをどのように総理はとらえておられるか。
  224. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 一方的に自分の意見を言う、自分の意見を発信するというだけじゃなくて、相手の立場に立っていろいろ御意見を聞くとか、あるいは異なる意見があったときにはどこがどう違うのか、どこが納得できるのか、どこが納得できないのか、いろいろなことを話し合っていくのが率直に言って対話の一番大切なところだろう、こう受けとめております。
  225. 前島英三郎

    前島英三郎君 ぜひ粘り強い、そして率直な対話を期待したいと思います。  さて、参議院において与野党が逆転したことで、このところ参議院とは何かという原点が見えにくくなってきたように思えてなりません。国家予算案の衆議院先議等々の憲法の規定は、チェック・アンド・バランスの機能を第二院としての参議院に期待していると解すべきであると思うわけでありますが、そこには党利党略を超えた務めを国民から期待されていると私は思っておるわけであります。参議院の役割、特質につきまして、総理はどのように見詰めておられるでしょうか。
  226. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 日本の国会が二院制度となり、今御指摘のようないろいろな相違はございますけれども、やはり衆議院で行われるいろいろな政治的な論争や論議や判断に対して、参議院がまた違った角度から御意見を述べていただく、議論を闘わせていただくということがあらゆる立場の広い意見をより多く反映させていく議会制民主主義の政治の中では大切なことではないか、こう考えております。
  227. 前島英三郎

    前島英三郎君 政治改革、そして消費税にまつわるいろいろな国民の意見、そこでこれから消費税の問題、税制改革全般にわたっていろいろお話を伺っていきたいと思うわけであります。  一部に、二十歳未満の若い人口が減るから高齢者の比率がふえても働き手の負担はふえないんだという説を主張する向きもあるようです。この間、衆議院の予算委員会で、ちらっとそんな意見をある党の代表の方がおっしゃっていますが、この説についてどのように思いますか。私は若干考えが違うわけでありますけれども。これはまた後ほどで結構ですから伺いますが、日本の将来のために、二十一世紀の日本のために今税制改革が必要なのだということは、私たちはまず率直に考えなければいけないと思います。今、我が国は急速な高齢化社会の到来を迎えておるわけであります。ところがこの高齢化社会ということに対しまして、言葉だけの理解が広まってしまっていって、その実態、その本当の姿というのがまだ十分国民には伝わっていないように思うんです。今、日本が歴史のどのような局面に差しかかっているのか、この点について共通の理解を示した上で、税制の問題とか、年金などの社会福祉の問題を論じ合う必要があると考えるわけであります。  そこで、大蔵省は、税制改革の目的を説明する際に、高齢化社会に対応するためにということを言っているわけですが、その中身を簡潔に述べていただくとともに、そのデータはどこからおとりになったものかもあわせて御説明いただきたいと思います。
  228. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 税制改革の広報用のパンフレットに掲載をいたしました中に、「働き手と高齢者の比率の動き」という資料がございます。これは、高齢者一人を何人の働き手世代が支えることになるかという観点から、二十歳から六十四歳の人口を六十五歳以上人口で割った数の推移を示したものであります。この計数の出典は、昭和六十年度、一九八五年度は国勢調査であります。また、それ以降は厚生省人口問題研究所の日本の将来推計人口によるわけであります。  簡単に申し上げまして、二十歳から六十四歳までの人口は、昭和六十年には七千三百五十五万人であります。しかし、西暦二〇〇〇年、平成十二年になりますと七千八百八十三万人になると推計されておりますし、西暦二〇一〇年には七千五百六十四万人、二〇二〇年すなわち平成三十二年には七千二百三十九万人という推計が出されております。一方、では六十五歳以上人口を同じ年次でとらえてみますと、昭和六十年には一千二百四十七万人でありました。しかし、平成十二年には二千百三十四万人、平成二十二年には二千七百十万人、平成三十二年には三千百八十八万人と累増することが推計をされております。この結果、一九八五年すなわち昭和六十年には、高齢者一人に対して働き手世代は五・九人でありましたものが、西暦二〇二〇年、三十年後には二・三人にと減少することになるというわけであります。  以上、数字の出典はそのとおりであります。
  229. 前島英三郎

    前島英三郎君 そこで、先ほど私が申しました二十未満の若い人口が減るから高齢者の比率がふえても働き手の負担はふえないんだというこの説というのは、したがってこうした一つ考え方からすると非常に間違っている、こういうことも指摘できると思うんですが、いかがでしょうか。
  230. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員が御指摘になりましたような御議論は、衆議院でも行われました。  そして、年少人口と高齢者人口を合わせましていわゆる従属人口というとらえ方をしてまいります場合には、単純に数だけで見てまいりますと今が実は非常に低いわけでありまして、これからま たふえて、かつてありましたような数字に達していくわけであります。そして、出生率の低下により年少人口が減少することは間違いありません。翻って過去を振り返ってみますと、もう既に年少人口は減少に減少を重ねてまいりました。しかし、その間を振り返ってみましても、教育に対する投資というものが落ちておるかといえば、実はGNPに対比して落ちておるわけではございません。私どもは敗戦直後の子供でありますから、二部学級とか、ちょっと一クラスの人数が勘定できないような状態だったわけですが、今どんどん一教室当たりの子供さんの数も減ってきました。また、我々のころには考えられなかったような義務教育課程における施設も整備されてきております。そうなりますと、今後もやはり教育投資というものは当然行われていくでありましょうし、そうすれば年少人口の減というものは費用負担の減には必ずしもつながりません。しかし、高齢者人口の増は、少なくとも年金の増につながり、給付の増につながり、またどうしてもやはりお体をお壊しになりやすいわけでありますから医療費の増につながるということでは、委員が御指摘になりましたとおり私どもも考えております。
  231. 前島英三郎

    前島英三郎君 つまりは出生率がこのところずっと低い水準で来ている、そのために全人口に占める若い人の比率が小さくなっている、一方で寿命も伸びている、だから人口の高齢化が進んでいる、それも世界に例のない勢いで進んでいるということで理解してよろしいわけでしょうか。
  232. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) そのとおりだと思います。
  233. 前島英三郎

    前島英三郎君 人口の高齢化の現象は、欧米先進国に共通するこれはもう大きな悩みだと思うわけでありますけれども、ただ日本の場合、そのあらわれ方が他の先進国に比べまして新しく、そしてかつ急速であるというところが特色であり、実は問題だと、このように私も思うわけであります。欧米先進国では、こうした傾向に対応するために人口政策といいますか、出生促進政策をそれぞれとっておるわけでありますが、その状況を御承知だと思うので、これは厚生省に伺ったらよろしいでしょうか、ちょっと概要を述べていただきたいと思います。
  234. 古川貞二郎

    政府委員古川貞二郎君) お答えいたします。  国連の調査によりますと、出生率の維持または増加を図るために、フランスや東欧諸国におきましては家族手当等の経済的な支援、あるいは育児休暇等の女性の就業と出産、育児を両立させるためのいろいろな施策が講じられているというふうに承知いたしております。  また、フランス以外の主要西欧諸国におきましても、出生率の維持、増加政策ということで特に明示はいたしておりませんけれども、同様の施策が講じられていると、かように承知いたしております。
  235. 前島英三郎

    前島英三郎君 私は昭和十二年生まれでありますので、当時は生めよふやせよの時代の国策もあったやに聞いておるわけでありますが、我が国も今後、次の一つの世代をつくっていくために出生促進策が必要か否かといったこと、これからきっと議論すべきときも来るのではないかと思うんですけれども、いずれにいたしましても、安心して出産できる環境と条件を整えておくということはぜひこれからは必要だと思うわけであります。  その点、参議院国民生活に関する調査会が一昨年から昨年にかけまして出生率の動向と対応について調査を行ったことは大変注目に値すると思います。現科学技術庁長官の斎藤栄三郎先生は我が党の理事としてこの調査に参加されておりますけれども、そのポイントを、まことに申しわけないですけれども御説明いただければと思います。
  236. 斎藤栄三郎

    国務大臣斎藤栄三郎君) 出生率と申しますのは、人口千人について何人生まれるかという統計です。  最近の統計によりますと、一番出生率の低いのはイタリアで一〇・一、次が西ドイツ一〇・二、日本は一〇・八でありまして先進国の中では三番目に低い出生率です。アメリカは一五・五、イギリスが一三・五であります。このままにしておきまするとやがて深刻な労働力不足に陥りますし、高齢化に拍車がかかるであろうと考えます。そういう観点から、国民生活に関する調査会では、与野党協力いたしまして、真剣な討議の結果、八つの提案を行っております。  その内容のうち、特に先生に関心の深いと思われる問題は育児休暇の制度です。なぜ一体出生率が低下するかということを考えますると、大きく分けると三つに分けられます。第一は、婦人が職場に進出したために晩婚になったということです。第二は、家庭、住宅事情が非常に悪いということ。第三点は、子供を生むのはいいけれども子供の教育に金がかかる、大体生活費の二割程度を教育に使わなければならないというようなことが挙げられております。  そこで、その提案の中の一つは税金問題についての考慮を促しました。幸いに、さきの税制改正では、扶養家族、十六歳から二十三歳までのお子さんを抱えている家庭に対しては、扶養控除三十五万円にプラス十万円いたしまして、四十五万円の割り増し扶養控除制度が創設されました。  それから第二に、今ちょっと申し上げましたような、婦人が職場に行きますと、赤ちゃんを生んだときにどうも職場から引かざるを得なくなる場合が多い。この制度、すなわち育児休業制度を拡充することによって職場から婦人がのかなくても済むようにしようじゃないかということです。目標としては、二〇〇〇年までにこの育児休業制度を普及し、さらに拡大する方向に努力してはどうかという提案が行われたのであります。
  237. 前島英三郎

    前島英三郎君 どうもありがとうございました。  科学技術庁長官、まさしくこれは科学で解決すべきものじゃないわけでありますが、しかしライフサイエンスというとらえ方も一面ではございます。  この中の提言では、「現状では育児休業制度の普及は図られていないが、早期法制化へ向けて、啓蒙啓発、世論形成等環境整備、醸成を図り、例えば、西暦二〇〇〇年までに、育児休業制度普及率を飛躍的に高めるべきである。」、これは実に適切かつ重要な提言だと思うんです。日本の未来を考えたときに、女性が働き、働く女性が安心して子供を生み、育てられるようにすることは、極めて人口政策の上でも重要なことだと思うんです。育児休業制度はその意味からいって切り札とさえ考えられるものであります。かといって余りに性急に法制化を進めることは問題がありますし、普及の実態に合わせていたのではおくれをとることになるとも思います。西暦二〇〇〇年といった少し先に目標を設定しまして、官民、労使を挙げて努力するということは大変すばらしい提言だと思うんですが、この辺はひとつ労働大臣にお答えいただければと思います。
  238. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) お答えを申し上げます。  小さなお子さんをお持ちで、そして働く女性の福祉のために、そしてまた次代を担うそういう小さな子供さん方が健全に育っていくためにも、今もお話がありましたような育児休業制度というのは本当に私どももすばらしい制度だと思っております。折から今月は育児休業制度の普及促進月間にも当たっておりますが、今御質問にありましたように、二〇〇〇年に向けてさらに一層この制度が拡充をいたしますように、労働省といたしましても全力を尽くしてまいりたいと考えております。
  239. 前島英三郎

    前島英三郎君 原点に戻りますが、高齢化社会、すなわち人口の高齢化の最も重要な要因は出生率の低下にあるということが明らかになったと思うんです。  西暦二〇一〇年では二十歳から六十四歳までの人口は二・八人で六十五歳以上の方一人を支えることになるという推計でありますが、二〇一〇年とは平成二十二年でございます。つまり、高齢化社会の到来などというと二十年も三十年も先のことのように思いがちでありますけれども、実はそうじゃないわけですね。西暦二〇一〇年の二十歳 から六十四歳の人口とは、現在のゼロ歳の赤ちゃんから四十三歳までの人々、それに来年生まれる赤ちゃんが加わった人口がそういうことになるわけであります。その時点で支えられる側とされる六十五歳の人たちというのは、現在の四十四歳以上の人たちがこの支えられる側に当たる。すなわち、二〇一〇年の人口の高齢化とはほとんど今現在の人口構成がそのまま平行移動した姿にほかならないと思います。そして、高齢化のピークが二〇二〇年と先ほど大蔵大臣 も言いましたけれども、予測されておりますが、それもこれから十年間の出生率が引き続き低い水準で推移するだろうという見通しがこれがまた大きく関係をしているわけであります。つまり、これから十年間に生まれる赤ちゃんが西暦二〇一〇年から二〇二〇年の十年間に新たな支える側になるんです。支える側として大人に加わっていくからであります。その数はこの十年間に六十五歳以上になっていく人よりも少ないのでありますから、高齢化社会の問題とはこのように、将来のことではなくて、非常に現在と未来とのつながりの中で考えなければならないと思っております。  私たちの世代で広く薄く負担を分かち合う制度をつくっておくか、あるいは今の子供たちやこれから生まれてくる子供たちに将来重い負担をしてもらうのか、歴史はそう問いかけていると思うのであります。  そこで大蔵省の、こちらに一つのPR用といいますか、説明用のパンフレットがございますけれども、これでございますが、ちょっと拡大をしてみました。このパンフレットでございますけれども、これに「高齢化社会に対応するために。」と題した、これまで議論してきたようなことが簡単にまとめてあります。この真ん中の絵を見ていただきたいわけでございますけれども、ここに代表選手としておばあちゃんがおられる。おじいさんじゃなくておばあちゃんがいるというところが実は大変重要だと思うんですね。  大蔵省に、なぜこれがおじいさんではなくておばあさんになっているかということを、ちょっと説明していただきたいと思います。
  240. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変細かいところまで目を配っていただきましてありがとうございます。  確かにそのパンフレットにお年寄りの女性の姿を採用させていただきました。それは、現在もそうですけれど、将来的にも六十五歳以上の高齢者の中で女性の占める割合が男性のそれを上回る。しかも、ただ単に上回るわけではなく、女性の平均寿命が男性のそれをも上回る。そうしたことから、高齢者の代表として年をとられた女性の姿を使わせていただいたわけであります。  今、昭和六十三年十月一日現在の男女数及び男女の比率は、男性は六千三十五万人、四九・二%、女性は六千二百四十二万人、五〇・八%でありますけれども、これを六十五歳以上の方でとってみますと、男性は五百五十三万人、四〇・一%、女性は八百二十六万人、五九・九%でありまして、女性の数が男性を大幅に上回っているわけであります。また、昭和六十三年の平均寿命で見ましても、男性の平均寿命は七十五・五四歳でありますし、女性の平均寿命は八十一・三歳。そういう状況の中で高齢化社会のいわばシンボル的な図に御婦人を使わせていただいたということであります。
  241. 前島英三郎

    前島英三郎君 つまり、高齢化の主役は女性であるということなんですね。これは「高齢化の主役は女」という本も出たぐらいであります。単に女性の方が寿命が長いだけでなく、いろんな要素が絡んで高齢化社会と女性とは切っても切り離せないということが言えると思うんです。  実は、ここに一冊の本がありまして、これは一九八一年ですからもう八年前のことでありますが、「女は三度老いを生きる」という本でありまして、著者は高原須美子という方でございます。高齢化社会と女性とのつながりを八年も前にもうしっかりと的確に描いておられる。著者の高原須美子さんは現在経済企画庁長官という海部内閣の重要な位置におられるわけでありますが、ちょっとこの際ですから、ひとつこの本を書いた動機と、それからエキスを少し分けていただければと思うのでございますが。
  242. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) 私が評論家時代に書きました著書につきまして取り上げていただきましてありがとうございます。  最初に私ごとでまことに恐縮なんですが、実は私の実の母は一昨年亡くなりましたが、それまで十五年間以上も寝たきりでございました。その介護が非常に大変であったという経験をもとにいたしましてこの本をまとめたわけでございます。  現在、男女雇用機会均等法なども施行されておりまして、男は仕事、女は家庭という固定的な役割分担というのは意識の上では否定されておりますけれども、実を言いますと、家庭というのはまだ女性の担当というケースが非常に多いわけでございます。したがいまして、在宅の寝たきり老人をだれが介護しているのかという統計調査をあれこれ見ますと、ほとんどの調査が九割までが嫁、妻、娘という女性であるということで、寝たきり老人など弱い老人の介護の負担は女性ということになっているわけでございます。  そこで、女性はまず第一に中年のときに親の介護にぶつかるということで一度目の老いにぶつかるわけです。それから高年になりますと、先ほど橋本大蔵大臣も言われましたように男性の方が寿命が短いし、また夫の方が妻より年上ということもございまして夫が先に死ぬことが多いわけでございますので、高年になりますと夫の老後をみとらなければなりません。そして最後に、女の寿命は八十一年でございますので、自分自身の長い長い老後に対応しなければいけないということになります。このように、女性は三度も老いにぶつかるというケースが非常に多く、高齢化社会は女性にとって男性よりもより深刻であるわけです。  したがいまして、社会保障とか老人福祉といったものが確立されておりませんと、こういった寝たきり老人のような人たちがもし出たような場合には、女性の肩に非常に重荷を背負わせて高齢化社会を乗り切っていくということになってしまいますので、その辺にぜひ御配慮いただきたいと思いましてまとめた本でございます。
  243. 前島英三郎

    前島英三郎君 そこで、三度ではなくて四度にしようかとも考えたというのは、その四度目というのは何でございましょうか。
  244. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) 今申し上げましたように、女性は親、夫、自分という三度の老いにぶつかるということで、一度目にぶつかる老いは中年でぶつかる親の老いだと最初は思っていたわけです。ところが、先ほどから数字が出ておりますけれども、最近の出生率の低下にぶつかりまして、いやいや、一度目にぶつかる老いは中年になってからではなくて、若いうちに子供を通してぶつかる老いではないかということに気がついたわけでございます。つまり、女性が子供を産むときに、実は自分自身の老後をだれが見てくれるかという問題と直面しているわけでございます。  したがいまして、近年のように出生率が低下してまいりますと、高齢化社会は、先ほどから話が出ておりますように働く世代が減りまして、大変深刻な事態になってまいります。そうしますと、今の若い世代が余り子供を生まないで、そして四十年たって自分が高齢者の仲間入りをいたしますと、そのときには大変な深刻な事態になっているということなんですね。人口論などで、人口構成への影響は死亡率だけではなくて出生率も大きく影響するというのがまさに出てきているわけです。したがいまして、高齢化社会というのは寿命が延びて高齢者がふえるから来るというだけではなくて、むしろ出生率の減少というのが大きな影響を与えるのだということを私申し上げたくて、四度という数字で強調したわけでございます。
  245. 前島英三郎

    前島英三郎君 その意味では、男性もそうですが、特に女性が買い物のたびに税を支払うという行為を通して日本の未来を支えることに自分が参加しているんだというこの自覚、御自分でそれを呼び戻すということは大切なことだというふうに思うんですけれども、そういうことに対しては長 官はどのように感じておられますか。
  246. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) 女性の負担意識といったものでございましょうか。
  247. 前島英三郎

    前島英三郎君 そうです。
  248. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) 高齢化社会におきましては、社会的に高齢者を支える仕組みがないと、先ほど申し上げましたように、女性の肩にかなり重荷がかかってくる、負担がかかってくるのではないかというふうに申し上げました。これは先ほどの御質問へのお答えで申し上げたわけですけれども。そうした社会保障とかあるいは弱い老人に対する老人福祉サービスといったものの充実をしてまいりますには、どうしても税金あるいは社会保険料といったものが必要になってくると思います。国民の側の負担というものがやはり必要なのではないかということは御理解、含みはしておられるのではないかと思います。  我が国の高齢化というのは、先ほどからのお話にもありますように、非常に急速でございますので、女性はそういう高齢化に対して男性の方以上に非常に深刻な受けとめ方をしておりますので、税金なりあるいは社会保険料なりの負担というものも必要であるということは、私はきちんとこの高齢化社会への対応というビジョンを出して説明をすれば理解していただけるのではないかと思います。少なくとも私は、母を介護いたしました経験から、自分のお金、自分の力だけではどうにもなりませんので、女性に高齢化社会の重荷を背負わせることなく高齢化社会を乗り切っていくためには、やはりどうしても安定財源というものが必要であるというふうに個人としては考えております。
  249. 前島英三郎

    前島英三郎君 地球全体では人口爆発が問題となっておりますけれども、先進国の中ではどこも人口減少傾向になっている。それが悩みでもあります。ヨーロッパでは日本よりも早く減少傾向があらわれまして、ヨーロッパ衰退の危機という受けとめ方もあったそうでございます。我が国の場合はヨーロッパよりも後から人口減少傾向があらわれましたが、その度合いは一層急速であるということを注目すべきだと思うんです。こうした傾向がさらに勢いを増すとしたら、日本の将来、未来というのは明るいとは決して言えなくなると思うんです。  総理は所信表明演説の中で、「将来の高齢化社会を担う児童が健やかに生まれ、育つための環境づくりに努めます。」と、こう述べました。まさに重要なポイントだと思うのでありますが、これからの大きな課題として位置づけ、総合的な施策として推進していくべきだと考えるんですが、総理の御意見をいただきたいと思います。
  250. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 私もいろいろ今委員が申し述べられた御意見に同感でございます。したがいまして、生まれてくる子供を健やかに育てていくためのいろいろな社会の環境をよくしていかなきゃならない、健やかに育ってもらいたいという願いを込めた政策をとっていかなきゃならぬと、こう考えておりますので、所信表明の中でも申し上げた次第であります。
  251. 前島英三郎

    前島英三郎君 それでは、税制改革について各論に入っていきたいと思うんですが、まず、今月十三日に発表した国税庁の一九八八年分民間給与の実態調査でありますが、新聞各紙の報道は、重税感変わらず、公的負担増が減税を上回るといったトーンでありますが、この発表の読み方はいろいろとらえ方が違うと思う、問題があると思うんですが、もしも今度の税制改革で給与所得減税がなかったらどんな形になってしまっただろうか、こう思うわけであります。それと比較したら所得減税のプラス効果がわかると思うんですが、この実態調査結果の特徴点を述べてもらいたいと思います。
  252. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今回の民間給与の実態調査の結果には、次のような特徴があると思われます。  まず第一に、一年を通じて勤務をされた民間のサラリーマンの方々の給与は、賞与の高い伸び六・五%、これは昭和五十五年の六・三%以来八年ぶりの伸びに支えられまして対前年五兆八千億円、四・一%増の百四十五兆九千億円になっております。  給与階級別に見ますと、五百万円以上の方が大幅に増加をする一方、三百万円以下の方がかなり減少しているという傾向が見られます。このうち約九割の方が課税最低限を上回っておられまして納税をしておられるわけでありますが、これらの方々の給与総額は百四十一兆円でありまして、対前年六兆四千億円、四・七%ふえる一方で、税額は昨年の減税を反映いたしまして八兆二千億円、八百九十億円、一・一%の増にとどまっております。  依然として重税感があるという御意見もありましたけれども、先ほど申し上げましたように、六十三年の減税を反映して総額では給与の相当な増額に対して税額は微増にとどまっておるというのが事実であります。これは一人当たりにしてみますと、納税者の平均給与が四百十三万円で十三万円増加しておりますにかかわりませず、税額では二十四万一千円から二十四万円へと減少いたしております。また、給与総額に対する税額の負担割合は六・〇二%から五・八一%に減少しておりまして、昭和五十九年以来四年ぶりに五%台になりました。  所得減税が行われていなかったらどうなるかと。これはその累進構造から見ますと相当なものになると思うんです。ただ、この調査の計数でのお答えは用意ができませんけれども、今回の税制改革における所得減税を夫婦と子供二人の給与所得者のモデルケースで見てみまして、例えば年収三百万円の場合には所得税、住民税合わせまして六万九千円の減税、減税率で八九%でありますが、所得減税がなかったといたしますと、これがなくなるわけでありますから、九千円で済むはずの税負担は七万八千円となります。年収五百万円の場合には十六万三千円の減税、減税率は四一%、これがなくなるわけでありますから、二十三万一千円で済むはずの税負担が三十九万四千円となります。年収八百万円の場合には同じく減税率で三二%、三十八万円の減税がなくなるわけでありますから、八十二万四千円で済む税負担は百二十万四千円となります。ベースアップなどによります収入増というものを勘案いたしますと、先般の所得減税がなかったといたしました場合には、各家計にとっての税負担感というものはさらにもっと重いものになっておったであろうと思われます。  いろんな考え方はございますけれども、先般の税制改革というものは、昭和五十年代の後半に至って急速に高くなっておりました国民の税制改正を求める声、すなわちゆがみやひずみに対する是正を求め、また特にサラリーマン層を中心とする重税感というもの、これを是正するとともに、まさに先ほどから委員が御指摘になりました急速に進展しつつある高齢化というものに対応して、社会共通の費用をできるだけ広く薄く国民全体で分かち合うといったことから安定的な財源をつくり出そうとして行われたものであるということでありまして、今申し上げましたような数字を御理解いただければ、負担感が重くなったと言われることは事実と反するということは御理解がいただけると思うのであります。
  253. 前島英三郎

    前島英三郎君 つまり新聞の重税感消えずという見出しは、すなわち直接税を減税してもなお重税感が残るからもっと直接税を減らして間接税に移してほしいというふうに解釈もできるんじゃないかと思うんですけれども、その辺はいかがですか。
  254. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは、新聞記事をまとめられました記者さんの主観並びにその見出しをつけられましたデスクの方のお考えでありますから一概に私も申し上げられませんけれども、感覚的にあるいはそのようなお感じもあるのかもしれません。
  255. 前島英三郎

    前島英三郎君 税について考えるときに忘れてならないポイント、それは税体系全体を通じた負担の公平とは何かということだと思うんですが、国が行おうとする施策に必要な費用は、最終的にはこれは税という形で国民みんなが負担しなけれ ばなりません。これは近代国家すべてがそうなっているわけでありまして、我が国でも憲法第三十条で納税の義務が明記されている、これはもう当然のことであります。税の必要性は国民皆さんがわかっておられると思うんですが、問題は、国民皆さんの間でどのようにして負担し合うかということだと思うんですね。そこに公平の問題が出てくるのだと思うんです。  税の負担を求める際のしようとしては所得、消費、資産の三つが考えられておるわけでありますが、一部に所得を基準に税負担を考えることが一番公平であるという意見もあるものの、やはりそれが重税感を引き起こすということもあるわけでありますから、汗をかいた所得はなるべくたくさん手元に置いて、そして使うときにその所得の中からまたそれなりの負担をするという、これが税体系全体としては今回の消費税がまさにこれに大きく役立っているような気がするんですけれども、政府認識はどうでございますか。
  256. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先ほど御答弁を申し上げましたのに多少補足をしながら続けてお答えをさせていただくといたしますと、仮に先ほど申し上げましたような事実がなかなか感じとして御理解がいただけなかったとしても、今回御承知のように所得税の税率の刻みが変わりまして、最低税率一〇%の適用範囲が非常に広がったわけでありますから、毎年昇給のたびに、昇給したらまた税金が高くなったと言われるような事態がなくなったということもこの機会にひとつ私は申し上げたいと思うんです。  殊に、今回発表いたしました民間給与の実態調査は昭和六十三年分でありますから、所得減税効果はまだ完全にあらわれていないということも計算に入れていただければ、さらに住民税が同様な大幅な減税が行われているということもあわせて考えていただければ、私は随分受けとめは変わるであろうと思います。  そこで、今委員が御指摘になりましたように、確かにいろんなケース、それぞれの税には一つずつすぐれた点もありますが、欠点もあるわけでありますから、補わなければなりません。大変極端なケースを想定して、例えば間接税には確かに逆進性はあるわけでありますが、だからといってこれを一切やめてしまって、そして租税収入をすべて所得課税あるいは資産課税にという形をとったと仮定をいたす場合に、所得の多い方、資産の多い方は大変重い負担を課せられるということになるわけであります。この結果が、ただでさえ今も脱税の問題等でおしかりを受けておりますけれども、こういう雰囲気をふやすんじゃないかとかいろんなものがあり、そのために税務職員をふやさなきゃならぬとか言い出したら、これはおよそ陰惨な国になっちゃうと思うんです。同時に、一生懸命に働いて、とにかくそれが全部税金で取られてしまう、これはやっぱり国民意識にも決して明るいものにはなりません。また、行動力のある個人あるいは企業が海外に逃げ出してしまうといった問題も出てまいります。  消費課税というのは、消費という、経済力に応じて、また生活の規模に応じて負担を求めていくわけでありますから、これはお使いになった金額に応じてちょうだいをするという意味での公正性は持っております。ですから、やはり所得と消費とそして資産にバランスのとれた課税を組み合わせていくことが公平なものになるということでありまして、私どもは今回消費税を導入いたしました結果として、日本の税制がそうした意味でのバランスをよりよいものにしたと、そう理解をいたしております。
  257. 前島英三郎

    前島英三郎君 次に、従来の個別間接税なんですけれども、我が国には特定のものをねらい撃ちにした重い負担を求める、こういう間接税が長い間あったわけであります。しかも、その課税対象は著しく物品に偏っていたわけでありますが、その結果、例えばオーディオファンが買うステレオは課税されるけれども、テレビゲームやパソコンは非課税、また、ビデオテープを買って楽しもうとすればこれは課税だけれども、レンタルで借りた場合レンタル料は非課税、こういうようなこと、あるいはコーヒーは課税、紅茶はそうではない、ゴルフは課税、テニスはそうじゃない、こういうものがありまして、同じ趣味の世界でもばらばらであったと思うんですね。多種多様な個人の嗜好や趣味というものを国家が選別したり、あるいは多数決で決めつけるというようなものはそもそも本質的には問題があるんじゃないかと私は思っているわけです。  これに対して消費税というのは、消費支出の額に比例して負担する税ですから非常にわかりやすいのでありますが、個別間接税の問題点、先ほども議論がありましたのですが、ひとつわかりやすくまた説明を願いたいと思います。
  258. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は昭和十二年、委員と同じ年の生まれでありますけれども、期せずして私どもの生まれました年に日本としては初めて戦時財源調達のために物品税が導入をされた。その意味では税制の歴史上の節目に生まれたのかもしれません。そして、私は実はこの個別間接税というものは、国民の所得水準が一般に低かった時代、そして庶民が使うものと特定のお金持ちが使うものにはっきり差異があった時代、こういう時代にはそれなりの意味はあったと思うんです。そしてまた、お互いのその生活の中においても庶民が使うもの、お金持ちが使うもの、非常に判然とした区別のつく時代には私はそれなりの公平さ、税としてのその公平さもあったのではないか、想像してみるとそんな感じもいたします。  しかし、今本当に所得水準が向上して国民の大多数がいわゆる中流意識を持つような社会と言われるような時代になりますと、委員が御指摘になりますように、生活の実態というものもそういう意味での幅は非常に少なくなりました。また、それぞれが自分の趣味とか主張というものに従った暮らしをする部分がふえてもきました。そうなりますと、やはり今の間接税体系、物品税の体系というものにはさまざまな部分で無理が参ります。いろんな例を挙げますとこれは切りがありませんけれども、例えば私は山登りが好きでありますし、冬山に行きますと帰りはスキーで滑っておりてきますが、その冬山で使うスキーは物品税は非課税でありました。しかし、同じスキーでも水上スキーは課税対象でありました。これは私にとっては物品税がない方が助かりましたけれども、不公平であると言えば間違いがありません。そういうものを拾い出しますと実は切りがないわけでありまして、よく言われるコーヒーと紅茶の区別でありますとか、また同じ課税対象物品の中でも、私自身がある方から問いかけられまして、電気掃除機に一五%課税されていて香水が一〇%なのはなぜだと聞かれて、実は答弁不能になったことがございます。  こういう意味では、やはり個別物品税の体系というものは大きく乱れていた。その上、家計消費支出の中に占めるサービスのウエートは非常にふえてきたわけですけれども、従来の枠組みの中でサービスに対する課税というものは、入場税と通行税という国税が二つ、また娯楽施設利用税、料理飲食等消費税、入湯税——地方税の三つ、五品目のみに限られていたわけでありまして、物品とサービスの間には非常に大きなアンバランスがございました。しかも、ここ何年間かの対外経済摩擦を振り返っていただきますと、従来から、例えば輸入ウイスキーあるいは輸入自動車というものが他国から不公平の例示として非常に厳しい攻撃を受けたことでも記憶の新しいように、国際的摩擦を起こす原因にもなっておったわけであります。消費税というものはいわば我々と同じ年に生まれました物品税、税制としては前世紀の遺物になりかかっておりますようなもの、こうしたその制度の持つゆがみを是正して、各国と同様、将来を十分に見詰めた間接税の体系を備えたということではないでしょうか。
  259. 前島英三郎

    前島英三郎君 そして、こうした消費税世界の流れもそういう方向であるということで、既に先進国はほとんど採用している。お隣の韓国もそうですし、台湾そしてまたフィリピン、そして社 会主義国でさえも取り入れている。こういうことですが、今何カ国ぐらい付加価値税も含めましてこの消費税と相通ずるような税ですね、そして何%ぐらいで国民の御理解をいただいているんでしょうか。
  260. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 消費税と同じような間接税である付加価値税というものが一九六〇年代にヨーロッパ諸国を中心として採用されて以来世界各国に広まりまして、現在では日本を含め四十七カ国で採用をされております。アジアでは韓国、台湾等でありますし、中南米ではブラジル、メキシコ等であります。また、社会主義国でもハンガリー等が採用をしておるという状況であります。  税率は、これは相当さまざまなものがありますけれども、標準税率につきましてはおおむね一〇%から二五%の範囲内、そのように御理解をいただけばよろしいかと思います。
  261. 前島英三郎

    前島英三郎君 そうした中で日本は三%ということでありますが、最も低いわけであります。  ところで、消費に対する課税が負担の公平という点から合理性がある反面、所得の少ない人、所得のない人も消費を通じて税を負担することになる、これがいわば逆進性、ひどい、こういう声であると思うんですが、これに対しまして、消費税だけに目を向けるとそうなりますけれども、歳出を含めた全体像を見ていただきたいわけでありますが、この際、消費税導入に伴ってとられた措置につきまして国民にわかりやすく説明してもらいたいと思います。
  262. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに、先ほども申し上げましたように、個々の税制にはそれぞれの利点と同時に欠点がございます。そして、消費税の場合にはまさにその逆進性ということが非常に厳しく言われるわけであります。今回の税制改革におきまして、消費税の導入を含む税負担のあり方というところから、中低所得者層の所得税負担の軽減を図るということがまず第一点の着目点でありました。  基礎的な控除であります基礎控除、配偶者控除、扶養控除を引き上げると同時に、配偶者特別控除の創設、拡充を行う、また、先ほどもお話にちょっと出ておりましたけれども、十六歳から二十二歳のお子さんをお持ちの方につきましては、通常の扶養控除に加えて、学費等が特にかかる年代でありますから、十万円の割り増し控除制度を創設いたしました。こうした制度を組み合わせました結果、夫婦子供二人の標準的なサラリーマン世帯の所得税の課税最低限、これは六十二年改正以前は二百三十五万七千円でありましたものが六十二年の九月改正の後に二百六十一万九千円に引き上げられ、今回改正で三百十九万八千円まで大きく引き上げられたわけであります。ですから、こうした課税最低限の大幅な引き上げと税率の引き下げなどの改正で、所得税や住民税の負担軽減割合は低所得者の方々ほどふえております。  また、こうした一般的な減税のほかに、福祉政策の観点からも障害者控除などの引き上げ、特に先ほどもお話が出ておりましたけれども、寝たきりの年をとった親御さんを在宅で介護される場合の控除額の大幅な引き上げ、あるいは扶養親族である子供を抱えておられる未亡人、そして年間所得が三百万円以下の方に対する寡婦控除の特別加算制度の創設でありますとか、公的年金などに対する課税の見直しによる年金受給者の税負担の軽減、こうした措置をずっととってきたわけであります。そしてそれに加え、今国会において御審議をいただこうとしておりますパート減税を実施するための法律案が成立をいたすとすれば、パート収入や内職収入の非課税限度額の引き上げがこれに加わることになるわけであります。  また、もう一つの問題としては、税を御負担いただかない方々、例えば生活保護を受けておられる方々、さらには年金によって生活を支えておられる方々等に対しましては、平成元年予算におきまして、消費税導入をも踏まえて生活保護に係る生活扶助基準につきまして消費税導入などの国民生活の動向を勘案した引き上げを行っておりますし、老人や障害者に対する在宅福祉施策につきまして、厚生省と御相談をしながら中期的な展望の上に大幅な拡充を図って今日までの努力を進めてまいりました。  今、国会で御審議をお願いいたしております年金関係の法律案を通過させていただきますことによりまして、公的年金に完全自動物価スライド制の導入を図ることも用意いたしておるわけでありますし、公的年金あるいは公務扶助料を初めとする恩給につきましては、年金額の改善を既に提出し、一部は通過をしておるところであります。  細かく挙げてまいりますとまだいろいろな対策がございますし、例えばホームヘルパーを増員してきたりというようなことも広義の対策ではありますが、要は税制改革全体の姿の中で、殊にこの消費税の持つ逆進性と言われる部分につきましては、社会保障、福祉政策と組み合わせて対応策を用意しておるということを御理解いただきたいと存じます。
  263. 前島英三郎

    前島英三郎君 消費税は減税先行という形で実施されたわけでありますが、その導入前にはやっぱりいろんな声がありました。消費者からは、物価が上昇しインフレになるんじゃないかという懸念が示される一方、事業者からは価格への転嫁が難しいのじゃないかというふうな心配。しかし、導入後半年を経た今、世の中を見てみるとどうでしょうか、消費者物価はどのように推移したでしょうか。そして便乗値上げが、心配されたように広範に行われたでしょうか。あるいはまた、自動車や電気製品は、物品税が廃止されたわけでありますから、本当に値段が安くなったんでしょうか。そういう点について国民皆さんは正確に知りたいと思っていると思うんです。そして、事業者の方々が心配した転嫁については、円滑に行われたでしょうか、あるいは下請いじめはなかったでしょうかという点もあわせて、経済企画庁長官、そして通産大臣、公正取引委員会委員長に伺っておきたいと思います。
  264. 高原須美子

    国務大臣高原須美子君) 私からは消費税物価への影響について申し上げます。  経済企画庁といたしましては、消費税の導入に際しまして、物価モニターや地方公共団体を通じた価格動向の調査とか、監視体制の強化を図りましたと同時に、物価ダイヤルなどの相談窓口を拡充いたしまして物価を注視してまいりました。今お尋ねの便乗値上げでございますが、便乗値上げ的な動きは特定の業種に限定されておりまして、かつその一部の事業者に限られておりました。さらに、その品目の価格上昇率も落ちついてまいっておりまして、物価水準全体に大きな影響を与えるところまではいっておりません。  また、お尋ねの家電製品とか自動車などの物品税の廃止に伴う物価の動きでございますけれども、こういった物品税の税負担の軽減分は値下げという形でほぼ適正に価格に反映されていると見ております。  そこで、全体としてでございますけれども、消費税の導入などによりまして消費者物価の水準は、平成元年度に一・二%程度上がるというふうに企画庁では試算しておりました。この物価上昇は、いわゆるインフレとは違いますので、一回限りの上昇でございます。その結果どうであったかといいますと、消費税導入後の物価動向から基調的な上昇分を除いてみますと、消費税の導入による影響は、企画庁が計算いたしました一・二%の試算にほぼ見合っているというふうに見ております。  以上のとおり、消費税の消費者物価への影響は、全体として見ますと、四月中に大部分あらわれまして、五月にも若干あらわれ、六月にはほぼおおむね出尽くしたと見られます。その後も物価は基調としては安定的に推移いたしております。
  265. 松永光

    国務大臣(松永光君) お答えいたします。  通産省では主要な商品、サービス合計百四十七品目について毎月月末時点における転嫁状況調査をしておるところでありますが、それによりますと、おおむね転嫁しているとする事業者の割合が、四月末の時点で八〇・五%でした。しかし、七 月末の時点では八二・五%となっておりまして、転嫁はおおむね円滑に進展しておるというふうに考えられます。  下請関係でございますが、これにつきましては、公正取引委員会と協力して調査をしているところでありますが、ことしの五月から六月末に行った特別調査の結果では下請取引においては、ほとんどの取引が消費税の三%の上乗せとなっており、現在のところ適正かつ円滑に転嫁が行われておると見られます。  なお、今後ともいわゆる下請いじめがないように十分な監視を継続する所存でございます。
  266. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 私からは一つ、やみカルテルによります便乗値上げの問題について御説明を申し上げます。  消費税が実施されます三月以前の段階におきまして、駆け込み的な便乗値上げの動きがございました。三月から四月にかけまして多数の苦情なり情報が寄せられたわけでございますが、これにつきましては、すべて立入検査を含め調査をいたしまして、早期に必要な措置を講じております。自来、今日まで事態はおおむね鎮静化いたしておりまして、やみカルテルによる便乗値上げの動きは現在のところ顕在化していないと判断をいたしております。今後とも監視を強化してまいりたいと思います。
  267. 前島英三郎

    前島英三郎君 そうしますと、消費者物価とか転嫁とかあるいは家計消費とかで見ますと、消費税国民皆さんの御協力によりまして、国民生活や経済取引の中ではスムーズに浸透している、定着してきておる、実施前に心配されたさまざまな懸念は解消しつつあると、このように言えると思うんですけれども、そういう解釈でよろしいでしょうか、大蔵大臣。
  268. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、国民の中における心理的な御不満はまだおさまっているとは決して思いませんけれども、実施については円滑に推移しておると思っております。
  269. 前島英三郎

    前島英三郎君 こうしてやりとりをしていきますと、税制改革の意義、その中の消費税の必要性の理解というのも深まるわけですが、私のところにも実はいっぱい御意見をいただいておりまして、大蔵大臣のところにも全国からたくさん寄せられているということを伺いましたが、いろいろな声があったと思うんです。二、三もしその声を御紹介いただければと思うんですが、いかがでしょうか。
  270. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 九月の中旬に全国紙に、また下旬に地方紙に消費税について御意見のある方はお手紙をくださいという呼びかけをいたしましたところ、昨日現在で一万二千七百四十一通のお手紙をいただきました。この中には単純に廃止を主張される御意見、単純に見直しもせずにこのままの消費税でいけという御意見、さまざまな御意見があります。しかし、それぞれに大変真剣に書いていただいているということに対しては、私は非常にありがたくこれを読ませていただきました。  国会が今動いておりまして、三千通余りに目を通したところから後、目が通せておりませんけれども、今まで私が読ませていただきました中に、例えば障害をお持ちの方で、御主人も障害を持たれ、殊に慢性の腎不全の患者であり透析を必要とするというその奥様から切々とその看病の苦労とあわせて消費税を廃止してほしいというお訴えがありましたもの、あるいは子供さんから、七十円持って買い物に行ったら消費税分あと二円と言われて、あったからよかったけれどももうちょっとで恥をかきそうだった、だけど後で家へ帰ってお母さんに聞いたら後々に大事な税金なんだよと言われたけれどもこれ以上引き上げられるのは困るという意見、そして年金で暮らしておられるお年寄りで同時に老人保健制度のお世話になっておるというお年寄りから、社会にお世話になりっ放しで肩身の狭い思いをしていたが、この消費税によって少しでも自分社会にお返しができるという生きがいを与えていただいたという御意見、心に残りました幾つかを御報告いたします。
  271. 前島英三郎

    前島英三郎君 じゃ、まことに申しわけないんですけれども、私のところにも今消費税に対するいろんな意見、大蔵大臣のところに寄せられた意見は大蔵大臣に御紹介いただいたんですけれども、この際でありますから幾つか私のところの意見にもお答えいただければと思います。  消費税は低所得者や老人の生活を直撃しています、国民年金と貯金、子供たちの援助で細々と生活しています、稼げないので生活の防衛ができません、こういう意見に対してはどうでしょうか。
  272. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員が読み上げられましたようなお手紙は、私どものところにも何通かちょうだいをいたしております。消費税は低所得者や老人の生活を直撃する弱い者いじめの税だ、要約すればこういうことになるかもしれません。  ただ、二十世紀に入りまして社会保障という考え方が広がっていきました中で、現在多くの国々で、低所得者などの社会的弱者というものに対しては財政面での配慮をしたり、お年寄りを各御家庭で扶養するだけではなく広く社会でお世話をする仕組みが採用されております。低所得者やお年寄りなどに手厚い配慮をしている国をよく福祉国家という呼び方をするわけでありますが、福祉国家と言われるとすぐ代表的に頭に浮かぶデンマークあるいはスウェーデンなどに対しては、これらの国がどれだけの費用負担を国民にお願いしているかもあわせて御理解をいただきたいんです。消費税について見るならば、スウェーデンは二三・四六%、デンマークは二二%の消費税であります。しかも、これらの国々の消費税には軽減税率というものは採用されておりません。単独であります。そして、消費税というものは本来どんな方の消費でも同じ比率で負担を求める税だということを高福祉国として知られているデンマークやスウェーデンの方々は皆が理解をし、お年寄りやあるいは低所得者の方が食料品などを購入された場合にも同じ税を負担しておられるわけです。  日本が今福祉国家というものを目指していくその過程において、やはり同じようにこういう考え方をとらせていただけないものか。そして私どもは一方で今、既にその入り口に入りかけている高齢化社会というものを迎えての年金制度や医療制度の見直しをしたり、あるいは弱者対策と一言でくくられる社会保障、福祉政策というものを進めているわけでありまして、消費税だけでどうぞ御議論をいただかないようにお願いをしたい、私たちとしてはそう考えております。しかも、我が国の税制では、消費税を導入した後になりましても所得税のウエートが圧倒的に高いんです。これをぜひ御理解いただきたい。  時間があれば私はもっと細かく申し上げたいと思いますけれども、そういう考え方を申し述べたいと思います。
  273. 前島英三郎

    前島英三郎君 後ろからいろいろお声をいただいておりますが、こういう疑問にこうして答えていく、そして国民皆さんへの御理解をお願いすることが国会でできなかったことを本当に残念に思っております。  参議院選挙以来野党の皆さんは、消費税により国民生活が混乱している混乱していると主張して、消費税の持つ短所をあげつらい非難してまいりました。そして、まさに今国会に消費税廃止法案を提出いたしました。しかし、野党の皆さんのこの消費税廃止法案こそ、実は専門家や関係者の意見を聞くこともなく、野党間の密室協議によった急ごしらえの、国民生活に混乱をもたらす以外の何物でもないと私は思っております。野党の皆さん、あるべき税制の具体的な姿を示しもせず、まず消費税を廃止する、二年間の検討期間中は自然増収や物品税、電気税、ガス税、料理飲食税等の復活などで賄うと言っておりますけれども、税制は経済社会の枠組みの一つであります。展望なき思いつきの朝令暮改は厳に慎むべきだと私は思っております。特に間接税は物やサービスの価格に織り込まれている税金であるだけに、簡単に導入したりまたやめたりということは物価の変動をもたらし、買い急ぎや買い控え、あるいは値札の書 きかえ、経理システムの手直しなど、国民生活国民経済に極めて大きな混乱を与えると私は思うのであります。  そこで、もし野党の皆さんの言うとおりになったらどういう混乱が予想されるか教えていただけますか。二、三で結構でございます。
  274. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは私どもとして非常にお答えを申し上げにくいことでありますし、殊に消費税を廃止された後の代替財源がお示しをいただけていない中で、想像で申し上げることは礼を欠くことだと思います。  ただ、少なくとも言えますことは、今回の税制改正の中で、国民各界各層におきまして消費税導入に対応されるために三千億を超えた投資が行われたと聞いておりますが、これには機械あるいはソフト、さまざまなものがあったでありましょう。これが、一回仮に廃止ということになりますと、少なくともそれをどう変えるのか将来の姿が見えておらないわけでありますから、当面の二年間の対応のためにもう一度切りかえの投資が必要になります。二年後に新たな姿が決まりました時点でまたそれに対応した切りかえを必要とする。少なくとも計算のためのソフト、機械等々につきましてはあと二回の投資が必要になり、切りかえ時の混乱が生ずるということだけは間違いがないでありましょう。
  275. 前島英三郎

    前島英三郎君 じゃ、もし消費税が廃止されて、その分物価が必ず下がるとは私は言えないと思うんですね。他方、増税となるものは値上げが必要であることを考えますと、家計の負担がふえるだけという事態も予想されると私は思っております。安易に廃止とか二年間の暫定措置とかいって、国民の迷惑に目をつぶることは許されるはずはないと思うのであります。  また、消費税廃止の代替財源案なるものは、要は新たに増税を提案するということでありますから、十分な検討が不可欠なはずであります。しかし、拙速に妥協を重ねた結果によるのでしょうか、その内容は単なる数字合わせで無責任なものばかりでありまして、望ましい税体系を目指すという視点が全く欠けていると思っております。野党の代替財源案が明らかになったこととの関連におきまして、先ほども野党の皆さんから我が党に対しまして見直し案の早期提示の要求がありましたけれども、野党の皆さんの代替財源案は再改革までの二年間の暫定的なものなんですね。そういうことでありますから、税制の基本的枠組みの一環をなす現行消費税やその見直し案と対比して論ずるべき性格のものではないと私は思っております。とにかく、二年間か三年ぐらいの間に二回も三回も四回も税制を変えるなどというのは、恐らくどこの国にもありはしないと思うのです。  そういうことを考えますと、見直し案もこれから私たちは責任を持って出していく、こういう気持ちでいるわけでありますが、まさしくその見直し案と対比して私たちが論じてみたいと思うのは、野党の皆さんのおっしゃる税制再改革の具体案だと私は思っております。すなわち、我が党は今回の税制改革によって既に新しい税制のあり方を提示いたしまして、それはいろいろ審議拒否などもありました、いろんな形がありましたけれども、十分国民の御理解をいただいていない部分があるにいたしましても、既に国会では成立をいたしたわけであります。そしてそれが実行されている。そして、その実行されている中においても混乱はそう見当たらない。しかし、野党の皆さんは廃止だと、こうおっしゃるわけでありますから、野党の皆さんこそ早期に消費税廃止後の本建築の具体的な姿を示すべきだと私は思っております。国民皆さんに対しまして新しい本建築の設計図も示さずに、今住んでいる本建築の家を壊して古い材木でつくった仮設小屋に引っ越せというような無責任姿勢は、私はますます国民経済に混乱をもたらすものだと思うわけであります。  したがって、野党の皆さん参議院選挙の際の公約に従っていただきまして、二年間の代替財源法案を一日も早く国会に提出していただきたいと私は思います。代替財源案の審議なしに消費税廃止法案のみを審議するということは、財政運営上無責任のそしりを免れず、到底考えられないところであります。このように、野党の皆さんの言う見直し案早期に出せ出せ論というのは、議論のすりかえをもくろむものであると、私はこのように思っておりますので、これから大蔵委員会でしょうか、もし消費税廃止法案を議論するというようなことになりますと、徹底的に私たちも議論をさせていただきまして、その矛盾や問題点を国民の皆様にも理解していただこうと思うわけであります。しかし、消費税をめぐりましては、国民皆さんの間にさまざまな御意見や御批判があることを十分私たちは承知いたしております。  いずれにいたしましても、消費税の見直しについて、自民党は政権政党といたしまして責任を持ってこれに対処しておるところでありますけれども、十分国民の声を聞いた上でできるだけ早く具体的な姿をお示ししなければと、私たちも毎日税制調査会でも議論はさせていただいております。二年後などという無責任な態度をとるべきではないと思うんです。この点についてのひとつ御意見をしっかりと承りたいと思っております。
  276. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私どもは見直しについて、国民から検討の御要望のある事項はすべてその見直しの俎上にのせるということを申し上げてまいりました。そして私自身も、福祉関係の皆さんからも、あるいは地方自治体の皆さんからも、さらに手紙を通じて非常に多くの国民の方々からも、御意見をいただいております。誠心誠意これを見直しの中で研究しながら、なぜこれが採用できたか、そして見直し、改正を行えたかあるいはこの御意見についてはなぜ採用ができなかったかまで含めて、国民に知っていただける努力を含めて予算編成前にはこの問題に対する決着をつけたいと努力をしてまいります。
  277. 前島英三郎

    前島英三郎君 さきの参議院選挙におきましては、この税制改革なかんずく消費税が争点の一つとされたわけでありますけれども、消費税のみに焦点を当てた、しかも感覚的な議論に終始しておりました。消費税が好きか嫌いか、あるいは廃止か存続か、こういう一部分の全体的な流れであったようにも思うわけであります。今後とも消費税を含む税制改革全体の意義や必要性については、やっぱり国民皆さんにまず全力を挙げて訴えて、そして粘り強く定着の努力を積み重ねていくということが足らなかったし、私はこれが一番大切なことだと、このように思うわけでありますが、消費税の定着につきまして、ひとつ改めて総理の御決意を伺っておきたいと思います。
  278. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 申し上げますが、消費税だけをとらえて税制改革をしようとしておるわけではございませんので、今度は税制改革全般の中でいろいろゆがみやひずみを直したり、高齢化社会に備えての安定的な財源を求めたり、中堅サラリーマンの方の重税感をなくしたり、いろいろな目的の中で消費税も入れて、そして先ほど来前島委員の方が、私どもが答弁申し上げようと思うことと同じ立場、同じ気持ちでおっしゃっていただいておるように、所得と消費と資産とのバランスのある税体系にして安心した将来を迎えよう、こういうことでありますから、この消費税をぜひ御理解いただくように、そしてどのようなところが批判の対象になったのか、どのようなことが問題点として今述べられておるのか、私どもは今度は広く消費者の立場にも立って、あるいは事業者の立場にも立って、いろいろな国民皆さんの声に今耳を傾けておるわけであります。見直すべき点は思い切って見直して定着を図っていきたい、消費税に対する御理解もいただき税制改革全体の中でお認めをいただきたい、こう考えております。
  279. 前島英三郎

    前島英三郎君 先ほど人口問題を論じましたので、我が国の高齢化が世界に類のないスピードで進行しておると、非常に明確になったと思うんです。  そういう状況の中で私たちは立派な福祉社会、福祉国家を建設していかなければなりません。そして、次の世代に引き継いでいかなければならないと思っております。  そこで、一部おさらいの意味を含めましてお尋ねするんですけれども、諸外国と比較すると日本の高齢化はどう位置づけられるか。特に北欧諸国との関係を念頭に置きつつ御説明いただきたいことと、高齢化における先進国として、また福祉の充実における先進国として私たちはよく北欧三国、スウェーデン、デンマークあるいはノルウェーを念頭に置いて今日まで学んできた経緯もあるわけでありますが、ただ日本とこれらの国々を単純に比較するということはいろいろな事情が異なる点もありますから、相違点というものは十分明らかにしておくべきだと思うわけであります。  そこで、政府にお伺いしたいのは、日本の福祉社会の建設に当たりまして、こうした我が国の特性をどう考え、我が国の福祉をどういう方向に持っていくのか。ここがまたこの消費税議論の中で重要なところでありますので、どういう方向に持っていくのか、その辺を御答弁いただきたいと思っております。
  280. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 御答弁いたします。  現在、我が国の総人口の中で六十五歳以上の方々が占めますいわゆる老年人口割合でございますが、先ほど来御説明がありましたように、平成元年の推計で一一・五%、平成二年ですと一一・九%でございます。北欧諸国に比べてみますと、例えばスウェーデンでありますが、一九八五年で同じく老年人口比率が一七・九%でありまして、まだ日本の方が低い水準にございます。しかし、我が国におきましては、今後諸外国に例を見ないほど急速に高齢化が進んでまいります。西暦二〇〇〇年一六・三%、二〇一〇年には二〇・〇%と、この二〇一〇年の段階では、スウェーデンでは二〇一〇年に一九・四%と推計されておりますが、これを上回る水準になるわけでございまして、二〇二〇年に至りますと老年人口割合が二三・五〇%になりまして、これは世界で最もその段階では高齢化の進んだ国になるわけでございます。  これに関連いたしまして、昨年国会にお示ししました「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障の給付と負担の展望」におきましては、我が国社会の高齢化に伴います社会保障の負担率でございますが、これは現行の制度を前提にいたしまして今後どのように進んでいくかということを見たわけですが、社会保障負担率が昭和六十三年度一一・一%が平成十二年度には一四ないし一四・二一%の対国民所得比になります。平成二十二年度には一六カ二分の一%ないし一八カ二分の一%程度に上昇するというふうに見込んでおります。また、現在の租税負担率に社会保障関係の租税負担の増大を単純に上乗せするという前提で考えてみますと、社会保障負担率と租税負担率を合わせまして国民所得に対する国民負担率、昭和六十三年度の三六・六%から平成十二年度では四一ないし四一カ二分の一%程度、平成二十二年度になりますと四四ないし四七%程度に上昇するというふうに見込まれております。  また、スウェーデンと比較してということでございますが、特に我が国はそういう北欧諸国に比較いたしまして高齢化の速度が極めて高いということが一つございます。また、家族構成で見ますと、日本は年老いた親との同居率が非常に高いということが非常に目覚ましいところでございます。それから第三に、日本社会保障の各分野で民間部門を活用している面が多うございます。  そういう意味で同居率等については、今後とも高い同居率が維持されるかどうかは国民の選択にかかわるものでございますけれども、現に我が国の国民の中には老親との同居を望んでいる人が非常に多いということは念頭に置いていかなければならないというふうに考えます。特に福祉の面では、こういう特性に配慮いたしまして今後急激に増加するお年寄りの方々が、施設だけではなくて、住みなれた地域社会の中で友人や子や孫と温かい関係を保ちながら、健康で生きがいを持って暮らしていくことができるように、そういうきめ細かな配慮をしながら諸施策を進めてまいりたいということでございます。
  281. 前島英三郎

    前島英三郎君 大変よくわかりました。  そうはいいましても、北欧諸国の福祉政策は私たちが学ぶべき点が非常に多いわけでありまして、現にノーマライゼーションという言葉もまた理念も北欧から学び取ったものでありますし、個々の政策でも数多くのことを私たちは学んでまいりました。しかし、一方では北欧諸国の負担の高さは事実として見ておく必要があるわけであります。  ここに私のパネルを用意してまいりましたけれども、あれだけやってもらえるのだから当然だという考え方もありましょうが、実態は実態として見たいと思うんです。  日本国民負担率の国際比較を見ましても、税と社会保険料を含めた国民負担率を六割から七割という北欧型にするといったら、恐らく日本では到底容認されるとは思えません。この点やはり、日本日本型の福祉という、あるいは家族同居型あるいは応分の自己負担、こういうことが一方では大切だろうと思うんですね。  そこで、今後の高齢化社会への対応に当たっては、総理が述べられましたように、やっぱりこれからは活力ある老後ということでしょうか、これを所信表明演説でも述べておられますので、ひとつその辺の考え方を総理から伺っておきたいと思うんです。
  282. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 御承知のように、北欧を中心としたヨーロッパ型は、高福祉高負担とされるように、非常に高くなっておりますが負担の方も高くなっておる。(「西ドイツはどうなんだ」と呼ぶ者あり)アメリカの方を見ますと、これは自助努力、民間の努力中心型でありますから、合計の負担は率直に言って今の日本よりやや低くなっていることは委員お示しの図のとおりであります。私は、日本日本独特の日本型の福祉、日本の特色を生かした日本型の福祉をやっていくべきだと考えますし、それが活力ある福祉社会を生むためにはどうしたらいいかという、日本の長い文化や歴史や伝統や家族関係や心のつながりや、そういったもの等を考えながら新たなる目標を定めてやっていくべきではなかろうか。  例えば行革審でも、その目標として置いておりますのは、五〇%平均に達しておるヨーロッパの高負担よりも国民負担率ははるかに下のところへ持っていかなきゃならぬ。しかし、年々いろいろな施策をやりますと高くなっていくことも事実であります。四〇%から四五%、そのあたりのところを念頭に置きながらの議論が今なされておると思いますが、私は、やはり日本型の特色ある福祉社会を目指すべきである、いたずらによその国の高福祉高負担だけをまねするのもよくない、こう考えております。
  283. 前島英三郎

    前島英三郎君 はい、ありがとうございました。  後ろの方から西ドイツはどうなっているということですが、日本が三八・八%、西ドイツは五二・二%、そういう数字もございます。  私は思うんですが、やっぱり四つ提案したいと思うんですね。活力に満ちた明るい高齢化社会のためには、老後の所得保障を確実なものにすること、一つ。それから、健康な老後を保障すること。寝たきりをつくらない。これは寝かせきりというような観点もありまして、畳という生活は、思いやりのゆえに、まあおじいちゃん寝ていてくださいというのが、やっぱりそれがそのまま寝たきりになってしまうというような感もあります。やはり、健康な老後をそのために保障するということが大切ですね。そして三つ目として、もし体が弱った場合でも安心できる介護体制、これが三つ目だと思うんですね。そして四番目として、働きたい高齢者に雇用の場がある。大体、六十歳で赤いちゃんちゃんこなんというのは私は人生五十年時代の一つの産物のような気がするんです。働きたい、そういう高齢者の皆さんにはこれからどんどん雇用の場を確保する。この四つが重要であると思うんです。  それで、この順番に伺っていきたいのでありますけれども、まず、老後の所得保障という点では、これはもう障害者もそうですが、何たって所得保障としては年金制度が挙げられるわけでありま す。この年金制度が途中でぐらつくようなことがあっては大変なことであります。財政のバランスが危うくなった例としては鉄道共済年金がありますけれども、こうした事態に直面することなく、将来にわたって長期的な安定を保ちながら、あわせて社会の発展に見合った給付水準の確保を図る必要がある、こう思うんですね。政府の見解、まず私の挙げた一項目から伺いたいと思います。厚生省。
  284. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 先生の挙げた第一点の年金の保障でございますが、私は、日本の年金制度というのはやはり昭和四十八年に所得保障ということを重点に打ち立てて以来、世代間扶養の形をとってきているように思うわけであります。そして、昔は御承知のとおりに家族の中で、家の中でお年寄りの面倒を見てきた時代がずっと長く続いたわけでありますが、日本の高度成長とともに所得保障という面で将来、現在の働き手の、働いている人の給付の水準の七〇%が保障できるような体制にしていこうというようなことから始まっておるわけであります。  それで、今スウェーデンの話をいろいろしていただきましたけれども、スウェーデンでも今は確かにすばらしい保障をしているけれども、私は見方によったら日本のはもっともっとすばらしい保障になっているんじゃないかと思いますよ。それはまず第一に、現在は六十歳から保障して、そしてずっと生きている時代というのは日本が一番長いんですからね。ですから、早くて長い支給というものを今日本はやっているわけで、これではこれからの人の負担というものは非常に大変になる。その負担というものをこれから考えていかなければいけないというので、御承知のとおり今、年金法の改正をしておるわけであります。  それで、何といっても公的年金の使命というのは、安定した保障ということが確実になされなければいけないわけであります。そういう意味で、生活水準に見合った、賃金上昇に見合った給付をしながら、同時に将来の制度を安定したものにしていく、こういった努力をしていかなければならない、かように思っている次第であります。
  285. 前島英三郎

    前島英三郎君 私たちの子供や孫の世代の負担が過重になることのないように、やっぱり時代の変化を考慮しながら緩やかに調整していこうということが大切だと思うんですね。支給開始年齢、これもやっぱり段階的な引き上げというのは、欧米諸国の実態に比較いたしましても、これはもう将来的な計画を早目に示している点から見ても当然現実的である、私はこのように思っております。そういう意味でも、これからの健康な老後のための保障、年金ということは、一日も早く、しかも消費税の中で逆進性という問題を解消するにはやっぱりことしの四月にさかのぼって、多くの皆さんが期待しておりますから、一日も早く国会で成立していただくことが本当の思いやりの一つの私たちの責任である、このようにも思っておるところであります。  さて、二つ目の健康な老後でありますけれども、厚生省は今度「寝たきり老人ゼロ作戦」というのを出しました。  かねてから私も寝たきりになってからの作戦じゃなくてその前の作戦が重要だということを主張し続けてまいりましたので、評価しますが、この「寝たきり老人ゼロ作戦」の内容、それから、実行されなければこれは意味がありませんから、これを進める決意を伺いたいと思うんです。
  286. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) やはり高齢化社会において一番大切なことは、健やかにそして元気に長生きができるということが大変大事なことだと思うんです。しかし、その元気は、元気で長生きができると同時に寝たきりにならない、年金が非常に豊かに保障されてきても、寝てしまっていたのでは長生きした値打ちがありません。そういう意味で「寝たきり老人ゼロ作戦」というものを展開しているわけでありますが、この間デンマークのアンデルセンという元福祉大臣がお見えになりました。聞いてみましたら、やはり十年前には大変寝たきりが多かったそうです。しかし、介護というものを重点的にして、そして本当に親切なサービスというものを提供していただいたんだと思います。そういった意味でゼロ作戦が成功いたしまして、今では寝たきりの人がいなくなったということを聞いております。  このため総合的な対策を展開するわけでありますが、私たちはまず第一に、老人、家族、医療や福祉団体に対する寝たきりの予防を徹底的に意識啓発、啓蒙をしていかなきゃならない。それから、脳卒中であるとかあるいは骨粗鬆症であるとか、寝たきりの原因になる病気を予防していく。こういったものはやっぱり食べ物やなんかからずっと注意していかないというと、お年をとられたら骨折になる可能性も非常に多いわけでありますから、そういう意味で食事の問題からすべての問題について、そういった意味での注意深い啓蒙をしていく。またそして、早期のリハビリテーションを普及していく。入院して家へ帰る、そうすると病院にいたときの延長線上の生活をしていけばそのままどうしても寝たきりになります。そういう意味で、家庭では介護の手が足りない、そういったものに行き届いた充実した介護のセンターにしよう、こういうふうに考えておるわけであります。
  287. 前島英三郎

    前島英三郎君 簡潔にお願いいたします。後ろから、答弁が長いという御指摘でございました。しかし、丁寧にお願いいたします。  それじゃ、三つ目ですね。  健康づくりや寝たきり防止に努めても、やはり介護が必要な高齢者が増大することは避けられないと思うんですが、介護につきましては、在宅福祉対策の充実という観点と、しかし家族の負担を軽くするという観点と、二つの面が私は必要だと思うんですね。この二つの面を両立させる方向が大切だと思うんです。  ついこの間新聞でちょっと見ました。市区町村の役割を大きくすること、ネットワーク的なそういうことを考えているというようなことを聞きましたが、これはどういう方向のものなんでしょうか。
  288. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 御承知のとおり、昨年税制改革の審議の過程で在宅介護の三本柱、ホームヘルパー、そしてショートステイ、デイサービス、こういったものは公党間で約束をして今実施に移しているわけであります。それで、特にこういったサービスの制度化をしても、実際にそういった町々の隅々の家庭までに行き届かなけりゃいけない。そういうためにはやはり今までと違って、市町村単位にそういったセンターをつくってサービスする調整チームをつくる、そしてそのチームによって情報を刻々に伝え、また情報を吸収し、そして在宅にいて介護をするというものを効率的にやっていこう、こういうことであります。
  289. 前島英三郎

    前島英三郎君 四つ目でありますが、高齢者でも働く意欲や体力のある方には働く場をどんどん用意することが活力につながると思います。  労働大臣、ひとつ見解を伺うわけでありますけれども、同時に今、六十歳から六十五歳までの雇用の場の確保が非常に重要な課題となっているんですね。今非常にこれが重要だ。あるいは福祉就労、生きがい就労、こういうことを考えますと、これはあわせて厚生省も一緒に考えるべきじゃないかということを私は感ずるわけでありますが、ひとつこの活力ある老後のために働く意欲、生きがい対策、労働省、労働大臣の見解を承りたいと思います。
  290. 福島譲二

    国務大臣福島譲二君) お話しのように、元気なお年寄り、まだまだ働きたいぞとおっしゃられるお年寄りがますますふえるだろうと思います。残念ながらまだ、人手不足といいながらそういう方々に対する求人が少ない。そこの調節をいかにやっていくかということは、私どもの大変大きな政策の中心であろうと思っております。そのためにまず六十歳定年というものを定着させると同時に、六十歳から六十四歳、五歳までできるだけ雇用を継続していくということについての具体的な施策の展開を来年度もまた格別図ってまいりたいと思っております。  なお、高齢者の雇用についての法制化の声も大変強いところでございまして、この点につきましては、近く雇用審議会を開催いたしまして、具体的な御意見を伺った上で適切に対処させていただきたいと思っております。
  291. 前島英三郎

    前島英三郎君 一生懸命生きている人が幸せになれる社会、汗を流す人が報われる社会、どんな人も年老いていくわけでありますから、みんなが助け合う心が大切だと思います。  今、障害を持っている人も、あるいは痴呆性老人と言われる方も、あるいは寝たきり老人になってしまった人も、みずから進んでそうなりたいと思った人はだれもいないと思うわけであります。デンマークやスウェーデンを見習えとよく聞くわけでありますが、北欧のような高福祉は、その背景国民皆さん消費税あるいは付加価値税、そういうものの二〇%というような大きな負担があって私は存在しているんじゃないか、このようにも思っております。日本日本としての心の財源を使いつつ、あるいは家族制度のいい面を引き出しつつ、だれしも安心して年老いることができる高齢化時代を迎えたいものだと、このように思います。迎えるための知恵という財源もこれから使っていくことが大切だと。税金は取られるものではなくて支え合うものである、そしてひととき預けるものであるという、それはやがて自分に返ってくるものなんだということも、やっぱりそういう意味を持つこともこの際は大切だと思うんです。  そして、これらの政策を打ち出すためには、信頼される政治がしっかりと基本になければならないと思うのでありますけれども、週刊文春の報道をきっかけとして今パチンコ疑惑が取りざたされておりまして、中には第二のリクルートなどと早合点報道もあるようでありますが、私にはそうは思えません。この疑惑の焦点は、献金の多い少ない、だれが幾らの話ではなくて、献金を受けた背景に疑惑があると報じられている点であります。  今回問題となっているのは、献金そのものではなく、献金を受けて業界の立場に立って動いたか否か、そこに外国の意思が絡んでいたかどうかという点にあると思います。この疑惑報道をこのまま看過しますとまた政治不信を大きくしてしまう危険性を持っているということでありますので、この際ただしておきたいと考えます。  これから幾つか質問しますが、これは決して民族差別とか、そういったたぐいの問題ではありません。一つの疑惑に端を発してはおりますけれども、国際化時代であり、国々の交流が深まれば深まるほど相互に法治国家として尊重し合うべきルールがあるはずだと、そういう観点から、少し幅の広い見地から考えを進めていきながら、幾つか質問をしてまいりたいと思います。  先日、衆議院でもこの問題は触れられました。まず朝鮮総連という団体の名前が出ておるわけでありますが、この団体はいかなる団体でありますか、構成員そしてまた北朝鮮との関係などを御説明いただければと思います。
  292. 城内康光

    政府委員(城内康光君) まず私からお答えいたします。  朝鮮総連は、北朝鮮を支持する在日朝鮮人によって構成される団体でございます。その構成員の数は公表はされておりません。しかし、巷間六万人、基本的には六万人弱というようなことが言われておることを承知しております。  それから……
  293. 前島英三郎

    前島英三郎君 北朝鮮との関係は。
  294. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 北朝鮮との関係についてお答えをいたします。  朝鮮総連は日本におきまして在日朝鮮人活動をやっておるわけでございますが、それは韓徳銖議長の著書などによりまして北朝鮮の指導のもとにそういった活動を行うということになっておりまして、極めて密接な関係にあるというふうに理解しております。
  295. 前島英三郎

    前島英三郎君 朝鮮総連は日本国内でどういった活動を主体にしておるんですか。
  296. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 朝鮮総連は、日本国内で反米活動あるいは朝鮮統一のための活動、あるいは在日朝鮮人の権益を擁護する活動などに従事しておるわけでございます。
  297. 前島英三郎

    前島英三郎君 日本の国内法に触れることはこれまであったんですか。
  298. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  朝鮮総連の前身であります在日朝鮮統一民主戦線、いわゆる民戦は、昭和二十七年ごろ、皇居前メーデー事件あるいは吹田騒擾事件あるいは大須騒擾事件などに参加しております。それからまた、昭和三十年から現在まで、民団との間でいろいろな問題をめぐりまして抗争事件を起こしまして、多数の検挙者を出しております。それからまた、北朝鮮は従来から我が国に秘密工作員を密入国させておるのでありますが、朝鮮総連関係者がこれに関与をしているという幾つかの事例がございます。
  299. 前島英三郎

    前島英三郎君 朝鮮総連幹部の中には北朝鮮の国会議員が何名かいると聞いているんですが、それは事実ですか。
  300. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 事実でございます。
  301. 前島英三郎

    前島英三郎君 何人いて、お名前あるいはその肩書、わかりますか。
  302. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 七名おります。  名前を申し上げます。  朝鮮総連議長韓徳銖氏、第一副議長李珍珪氏、副議長李季白氏、副議長全演植氏、女同、これは在日本朝鮮民主女性同盟でございますが、その委員長の朴静賢女史、それから朝鮮大学校長の南時雨氏、在日本朝鮮文学芸術家同盟委員長許南麒氏、以上七名でございます。
  303. 前島英三郎

    前島英三郎君 その中で商工連の会長と言われる人、全何という方ですか。
  304. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 副議長をしております李季白……
  305. 前島英三郎

    前島英三郎君 商工連の方。
  306. 城内康光

    政府委員(城内康光君) ちょっとお待ちください。——副議長の全演植氏が商工連の幹部でございます。
  307. 前島英三郎

    前島英三郎君 この間マスコミでも報道されましたが、この方は競馬馬を百頭ぐらい持っておられて、中で持ち馬のサクラユタカオーが昨年天皇賞で優勝して、そのお祝いで府中競馬場で三千人ほど御招待して、先着三百名の女性の皆さんには二万五千円相当の金のネックレスを引き出物として贈呈したということですけれども、この報道は間違いないんでしょうか。——結構です。間違いないと思います、これは報道ですから。答えますか——よろしいですね。  そこで、私もいろいろと今マスコミの中で論じられているところを整理しますと、北朝鮮の国会議員がやはりこの朝鮮総連の幹部であるという事実。事業活動の中心的組織である商工連の会長も国会議員であったという事実。学校長さんもそうである——それは別に問題ありません。そして、国際的にいろいろな事件もある。そして報道では、日本から多額の金も持ち出されている。北朝鮮と一体の朝鮮総連と言われる、その朝鮮総連と最も親しい日本の政党が社会党である。そして、パチンコの脱税問題。脱税防止と言われるプリペイドカード導入に絡んで、社会新報でも報じたように、社会党の何人かの皆さんが導入反対の運動をした。そして、政治献金の疑惑も指摘されている。これが週刊誌の告発の発端であったと思うのであります。議論のすりかえのないように私たちは心したいものであります。  衆議院では二日間にわたって集中審議が開かれるということでありますけれども、以下、関連質問といたしまして、同僚の山岡賢次君にお時間をいただきたいと思います。
  308. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 関連質疑を許します。山岡賢次君。
  309. 山岡賢次

    山岡賢次君 今、前島議員から朝鮮総連のことについていろいろ御質問がございました。その関連でひとつ質問をさせていただきます。  朝鮮総連は危険な団体であり当局に監視されていると、さきの衆議院の予算委員会で公安調査庁がこのように指摘をいたしました。その危険な朝 鮮総連から献金を社会党が受けている、このようなマスコミの報道がなされております。  社会党は、週刊文春の記事がこの献金を含めまして事実と違っている、こうおっしゃっているわけでございますが、それならなぜ告訴をしないのでありましょうか。  警察はこの朝鮮総連からの献金について捜査をするお考えがあるのかどうか、自治大臣・国家公安委員長にお伺いをいたします。
  310. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) お答えいたします。  マスコミ報道については承知をいたしております。  さきに政府委員が答弁したとおり、朝鮮総連は治安的にも重大な関心を払わなければならない団体であります。言うまでもありませんが、国防と治安の維持は国家形成の大きな柱であり、政治に携わる者、行政に携わる者、大きな責任を負わなければなりません。そのような団体から献金を公党が受け取っておるとするとこれはゆゆしき問題でありますから、警察当局においてももし違法の事実があるとすれば厳正に対処するものと考えております。
  311. 山岡賢次

    山岡賢次君 よくわかりました。  次に、パチンコ疑惑に関する社会党の見解につきまして、自民党総裁といたしまして海部総理にお尋ねを申し上げます。  社会党はこの十三日に山口書記長の名におきまして、いわゆるパチンコ疑惑についての見解、こういうものを発表いたしました。私は、この見解なるものは次の点において全く意味をなさない、こういう内容であると思うわけであります。  一つには、指摘されている最大の問題点、すなわち社会党とパチンコ業界の一部、朝鮮総連、この構造的癒着の問題、さらにその背後にある北朝鮮の意思が働いていたと言われている疑惑について全く答えていない点であります。  二つ目には、自分の党の中で指摘された当事者につきましては、本人の弁そのままの釈明を採用しているのにもかかわらず、他党の分については、当事者の弁を聞くこともなく、全遊連の主張どおりに採用している点であります。その中に我が党関係者への献金も指摘されているわけでありますが、我が党は我が党といたしまして目下独自の調査を行っているところであり、この点自由民主党総裁の立場で社会党の見解について所見を総理にお伺いしたいと思います。
  312. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 山口書記長が発表された社会党の見解は、社会党関係について党として調査、発表されたものと思いますが、他党分についてはどういう調査に基づいて行われたものか私は承知をしておりません。  いずれにいたしましても、今委員指摘になったように、大切なことは疑惑があるとすればその疑惑は何であったかという点でありますから、その点については当委員会など国会の場で十分に議論し、疑惑を明らかにされることを希望いたしております。
  313. 山岡賢次

    山岡賢次君 それでは、具体的な例をお聞きいたします。社会党とパチンコ業界の一部癒着の構造を示す具体的例の一つでございます。  昭和六十一年、兵庫県三木市におきまして、営業許可の失効したパチンコ店の営業を再開させるために、某国会議員から——先輩議員でもあり同僚議員でもございますので、この際名前は差し控えさしていただきます。某国会議員から警察当局に対する働きかけがあったとこう聞いておりますが、それは事実でありましょうか。また、その目的を達成するために県条例を改正した、こういうふうにも言われているわけでございますが、それも事実でございましょうか。
  314. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) お答えをいたします。  まず、お尋ねのパチンコ屋の許可失効事案の内容でございますが、問題のパチンコ屋さんは昭和五十七年十二月二十一日付で兵庫県公安委員会から営業許可を受けて開業され、その後二回の許可の更新を行って営業をしていたところでございますが、昭和六十年の暮れ、三回目の許可の更新をうっかり受けなかったために営業許可の効力が失われたという事案でございます。当時の条例によりますと、このパチンコ屋の営業場所が風俗営業の制限地域とされていたために、一たん失効すると新規許可が受けられず、事実上廃業に追い込まれていくおそれのあった事案でございます。  この営業者の救済について国会議員から当時の警察庁担当者に働きかけがあったかとのお尋ねでございますが、当時そのような事実があったと聞いております。また、県条例の改正が行われたことも事実でございます。
  315. 山岡賢次

    山岡賢次君 今、働きかけがあったと、こういうお答えでございますが、その県条例の改正の内容について説明をしてください。
  316. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) 御指摘の兵庫県の条例改正につきましては、昭和六十二年二月二十六日に可決成立し、翌二十七日から施行されたものでありまして、改正内容は次のとおりでございます。  すなわち、当時の兵庫県の施行条例では、いわゆる住居地域につきましてはパチンコなどの風俗営業ができない制限地域に指定されておりましたが、国道または主要県道、市道から三十メートル以内の住居地域であって、良好な風俗環境を保全するために特に支障がないと認められる場所につきましては、営業制限地域から除外をするという改正がなされたものでございます。  当時、兵庫県におきましても地域開発等により住居地の商業化が進んでいたこと、及び隣接府県の条例に既に同様規定が盛り込まれていた点等を勘案いたしまして、地域の実情に沿うよう、ただいまの内容の改正をいたしたものでございます。
  317. 山岡賢次

    山岡賢次君 結果はそういうことかもしれません。しかし、(発言する者あり)何が悪いかと言っておられるが、そのプロセスが悪いのでございます。  国民は、一つのパチンコ店の営業を再開するために特例を設けてこのような県の条例の改正を行う、そういう必要がどこにあったのだろうか、非常に不思議に思って当然であります。なぜそんなことをしなければならなかったのであろうか。そこにパチンコ業界の一部とこうした働きかけを行った国会議員及びその所属する政党との間に特別な関係が存在すると見られてもいたし方ないことと思います。そして、その特別な関係こそ今提起されているパチンコ疑惑の核心であると、このことをまずはっきりと申し上げておきます。  具体的にお伺いをいたします。報道によれば、同議員はそのパチンコ店を救うために警察庁に圧力をかけたり、地元の三木警察署署長に電話をしたりとありますが、これは事実でありますか。
  318. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) お答え申し上げます。  パチンコ店の救済につきまして、当時の警察庁の担当者に対して働きかけがあったことは事実であり、また、当時の三木署長に電話があったというふうにも聞いております。
  319. 山岡賢次

    山岡賢次君 働きかけがあったのは事実だと。(発言する者あり)圧力じゃないと、こうおっしゃっておりますが、その働きかけによって警察は大変困りましたか。
  320. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) 当時、そういうような働きかけによりまして種々検討をしたというふうに聞いております。
  321. 山岡賢次

    山岡賢次君 それでは、昭和六十一年十月に参議院議員会館の某室におきまして、その議員に仲介にて、この兵庫県三木市の休業パチンコ店の営業を再開することにおいて、遊技場業界の幹部に警察の担当者が無理に引き合わされたと、こういうふうに報道をされておりますが、これは事実でありましょうか。
  322. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) 御質問のように、当時の警察庁担当者がその引き合わせによりまして業者と面会したことがあると聞いております。
  323. 山岡賢次

    山岡賢次君 面会した事実があると。その事実だけで、もうあとは聞かなくて十分な内容でございます。  さらに、その国会議員は、このパチンコ店の問題が解決しない限りシートベルトの国会審議には応じないと、こういうふうに警察に迫ったと聞いておりますが、これも事実でありましょうか。
  324. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) 議員から具体的にどのような言葉で迫られたかというようなことにつきまして一方的に公表することは差し控えたいと存じますが、シートベルトに関する審議を行っている時期に問題の業者の救済に関する働きかけがあったことは事実でございます。
  325. 山岡賢次

    山岡賢次君 いま一度お伺いいたします。  シートベルトの国会審議を行っている最中に働きかけがあったと、こういうふうに言われましたか。
  326. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) そのとおりでございます。
  327. 山岡賢次

    山岡賢次君 それでは、さらに詳しくお聞きしたいと思います。  昭和六十一年十月七日、参議院地方行政委員会風俗営業等に関する小委員会におきまして、この兵庫県三木市のパチンコ店の営業許可のことの質疑が行われたと。議事録によってその内容を説明していただきたいと思います。
  328. 森廣英一

    政府委員森廣英一君) 御説明いたします。  御指摘の小委員会におきましては、昭和六十年六月に改正されておりました道路交通法を施行するための政令に関しまして、シートベルトの着用率の進捗状況及び反則金等の改正案につきまして警察庁から説明をし、それについて審議をいただいていたという委員会でございますが、その中で今御指摘のような質問がなされております。  質問の内容につきまして、御指示でございますので、当時の議事録を若干引用しつつ御説明を申し上げたいと存じます。  委員会は六十一年の十月の七日の委員会でございますが、冒頭におきまして、まず警察庁の交通局長からただいま申し上げましたシートベルトの着用率の進捗状況並びに政令改正案の内容につきまして説明をいたした上で、最初の質問でございますが、ただいまの警察庁の説明に対し、「交通問題に入る前に一つ確認しておきたい点があるんですが、」という前置きがありまして、先ほど御説明をいたしましたパチンコの失効事案の内容につきまして尋ねた上で、「このような許可後に営業場所の制限に変更があった場合には、更新忘れというわずかなミスが、実質的には廃業という重大な結果につながっていく。」、「うっかりミスということで届け出一年の更新の手続を忘れたがゆえに廃業になる。こういうことになりますと、これは法の趣旨にも合致しませんし、これらの事案について何らかの救済措置が必要であると思うんですが、いかがですか。」という趣旨の質問がございました。  これに対し、当時の保安部長が「御案内のとおり各都道府県におきましては、風営適正化法施行令第六条に定める基準に従いまして、各都道府県施行条例の中で営業制限地域の指定をいたしております。」、「営業場所の制限がなされた場所では、」「新規の許可はできないこととされております。お尋ねの事案につきましても、子細に検討いたしましたけれども、新規に許可をいたすことは不可能でございます。」という答弁を一たんいたしました。  これに対しまして、さらに、「この辺に法の不備があるのか。例えば運転免許の場合、二カ月や三カ月のいわゆる救済期間がございますね。そういうこと等考えてみますと、何らかの対策を講じるべきではないかというように思うんですが、この点はいかがですか。」というお尋ねがございまして、同部長が「申し上げるまでもなく、許可申請を忘れることのないように措置」していただくことが「第一と考えますが、」「何らかの方法をもって救済し得るか、前向きに検討さしていただきたいと考えております。」という答弁がなされました。  これを受けまして、議員が「わかりましたが、当該業者の皆さんから見ますと、うっかりミスが廃業につながるということは生活権にかかわる重大なことですし、」、「法の趣旨というのは、」「保護育成ということを基本に置いているわけですから、ここら辺の取り扱いについては」「慎重に」「適切に、再びこういうことが起こらぬように、」「対処してほしいということを要望しておきたいと思いますが、よろしいですか。」という発言がございまして、「そこで、本論に戻ります」ということで、シートベルトの質疑に移っておられるようでございます。(「堂々たるもんじゃ」と呼ぶ者あり)
  329. 山岡賢次

    山岡賢次君 問題は、その言っていることが堂々たるものを論じているのではないのであります。この審議においては、道交法の政令改正のシートベルト着用に関する審議を行っていたのであります。その内容ではございません。突如として、兵庫県の地方都市の一パチンコ店に関する質疑が行われた。つまり、全く別な審議をしているときにそのことが問われ、その前には、そのパチンコのことをやらなければ審議をしない、こういうことはまことに奇異に感ずる次第であるわけでございます。  道交法所管の国家公安委員長、以上で明らかなとおり、一パチンコ店のために警察に圧力をかけ、県条例を改正させる。そして、その圧力の手段として道交法の審議に応じないと、さらに大きな圧力をかけたことは間違いのないことであります。これは大変ゆゆしき事態であり、大変な問題であると思うわけでございますが、国家公安委員長・自治大臣、いかがでございましょうか。
  330. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) お答えいたします。  御指摘のようなことは決してあってはならないことであると思います。もしそのようなことが事実であるとすれば、大変遺憾な事態であると受けとめております。
  331. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  332. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記を起こして。  暫時休憩いたします。    午後四時四十一分休憩      ─────・─────    午後五時開会
  333. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 委員会を再開いたします。  ただいまの山岡賢次君の発言につきましては、速記録を精査し、事実関係について調査をすることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時一分散会