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1989-10-05 第116回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十月五日(木曜日)    午前十時二分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   平成元年十月五日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、新議員の紹介  以下 議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 土屋義彦

    議長土屋義彦君) これより会議を開きます。  この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。  議席第五十九番、選挙選出議員、茨城県選出野村五男君。    〔野村五男君起立、拍手
  3. 土屋義彦

    議長土屋義彦君) 議長は、本院規則第三十条により、野村五男君を運輸委員に指名いたします。      ─────・─────
  4. 土屋義彦

    議長土屋義彦君) 日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る二日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。安恒良一君。    〔安恒良一君登壇、拍手
  5. 安恒良一

    安恒良一君 私は、日本社会党護憲共同を代表し、海部総理所信表明に対する質問を行いたいと思います。  さき参議院選挙における与野党の逆転という結果は、消費税強行導入に対する国民審判が下ったものと言わなければなりません。これを受けて、私たち参議院の四会派は、共同して消費税廃止法案並びに税制改革基本法案提案するとともに、廃止に伴う当面の二年間、すなわち一九九〇年、九一年の両年度の暫定的な財源案を発表し、近く法案として本院に提出をする予定であります。  一方、あなた方自民党は、消費税見直し公約として訴えてこられました。しかし、選挙が済んでもう三カ月というのに、総理所信においてその概要さえ示されなかったのは一体どういうことなのでありましょうか。大型間接税導入しないと公約をしておきながら、消費税を強行したその自由民主党の皆さんのやることですから、見直すと言って見直さないこともあるのではないかと疑いたくなるものであります。  そもそも、消費税欠陥については導入の当時竹下総理自身が九つの懸念を指摘されました。それは、逆進性不公平感、低所得者過重負担税率の引き上げ、物価の上昇などであります。これらは大型間接税の持ついわば構造的な欠陥であり、どんなに見直したところで根本的に解決できるものではないのではありませんか。  海部総理、それにもかかわらずこれを見直すというその内容は、一体いつ国民の前に明らかにされるのですか。この国会は、会期は八十日間、十二月十六日までと決まっているのであります。これだけ全国民の関心を集めている問題が会期末まで残りわずかというときにならないと示せない、その上、提案は来年の通常国会になるという主張であります。選挙公約国会審議を無視したやり方ではないでしょうか。あなた方がさき選挙の結果を謙虚に反省しているということは到底認めることはできないわけであります。  税制改革は、国民財産権に直接かかわるものであると同時に、その使い方が問われるという両面から、国会を初めとする開かれた場で、相当長い期間をかけた国民的な討議を必要とするのであります。消費税の新設などは、まさにそれが必要なケースだったにもかかわらず、これを怠ったところに参議院選挙におけるあなた方の大敗があったのではないでしょうか。さき選挙の結果から、海部総理は一体何を学び何を反省したのかとお尋ねをしたいのであります。  既に、これまでの国会審議を通じ、私たち消費税の具体的な問題点を明らかにしています。それは、免税点簡易課税方式限界控除制度帳簿方式税額表示方式、そして大企業が徴収した消費税利用して、軒並みに五億から七億もの利益を稼ぐなどの問題であります。さらに最近では、福祉目的税化非課税範囲拡大見直し課題と言われております。  総理が本当に国民の声に耳を傾け、思い切って大幅な見直しをするというならば、これらの点について一体どう変えるのか、明確な答弁を求めます。  ところで、自由民主党三塚政調会長は、先日談話を発表されました。その中で、私たち会派の合意の過程は密室協議そのもの批判をしているのであります。国民をだますことによって導入した消費税廃止をして、二年がかり税制改革案をみんなで検討しようと野党間で取りまとめましたそのプロセスの一体どこがおかしいというのですか。自民党総裁でもある海部総理から明確な説明を聞かせてもらいたいものであります。  消費税導入について政府自民党は十年もかけて検討してきたのだと胸を張っています。しかし、仮にそれが事実であるとしても、それは政府の機関や自由民主党の中でのことであって、国会を初めとする開かれた場でなかった。そのような密室であったからこそ国民をだまし討ちにするシナリオをつくることができたのではないでしょうか。  私たち提案は、消費税廃止し、国民税制改革協議会を設置して、開かれた場において二年がかりで再改革案を検討しようというものであります。そして、この二年間だけの臨時応急代替財源として五兆九千億に上る具体的な構想を示したわけでありますが、これに対して政府自民党はいろいろ悪宣伝をしているのであります。  そこで海部総理民意に従って国会消費税廃止した場合に、政府としてはどうしても国の財政を運営できないと言われるのかどうか、はっきり御答弁をお願いしたいのであります。  かつて、取引高税廃止を決めた一九四九年には、時の政府がその穴埋めをいたしましたが、今回はできないというのですか。それとも、私たち財源案ではやれないという意味ですか。もし別なやりくりの仕方があるというなら、それをここで明らかにすべきです。それも示さず消費税廃止されてはお手上げだというならば、我々に政権を渡すべきではありませんか。我々の財源案は、まさにそのときに備えたものであります。  ところで、これに対するあなた方の批判一つに、物品税復活は時代おくれではないかという指摘があります。なるほど旧物品税課税品目選定に不合理が目立ちました。しかし、それは自民党政府がそれを放置していたのではないでしょうか。決して物品税固有の宿命ではないのであります。何がぜいたく品かという理解は、時代とともに変化するばかりでなく、生活ニーズ多様化に伴い、人によってもそれは異なるものですから、対象品目については絶えず見直しを図り、調整、修正しなければなりません。それができたにもかかわらず、総理、あなた方はそれを怠ってきたのではありませんか。  ところで、九月二十八日夜のNHKテレビ世論調査では、物品税復活に賛成が四三%で反対の三八%を上回りました。これはおよそ二つ理由があったと思うのであります。その一つは、選択の余地のない生活必需品を含めて税金をかけるやり方よりも、ぜいたく品に課税する道をより多くの人々が望んでいるということです。そしてもう一つは、ぜいたく品選定については、国民参加の場で検討していこうとする提案者側の姿勢に理解を示す者が多かったということであります。  また、法人税税率据え置きは、企業の活力を損なうなどと言われています。一九八八年度四二%、八九年度四〇%、そして九〇年度三七・五%と段階的に引き下げるという政府方針に対して、私たちは、来年と再来年の二年間だけことしと同じ税率四〇%でお願いできませんかと言っているのであります。しかも、主として大企業利用している各種優遇措置を洗い直すなら、次の段階から再び税率を下げることも可能だと考えているのであります。一体これがどうして企業に著しく重い負担になるというのでしょうか。  次に、自然増収についてであります。  近年の税収動向は、景気拡大に伴い毎年度五兆円程度ずつ増加しており、その一部、一兆三千億前後を消費税代替財源に振り向けたからといって、我が国財政運営に何の支障も生じないにもかかわらず、政府自民党は、自然増収を当てにするのは「明日ありと思う心のあだ桜」などと批判をしております。しかし、消費税導入時点で二兆六千億の自然増収を当て込んだ減税を行ったのはほかならぬあなた方ではありませんか。しかも、向こう二年―三年の間はおおむね五%程度成長率が維持できるというのが民間経済研究機関の一致をした見通しなのであります。政府は、これらと全然違う見解だというならば、この際、それをはっきりお示し願いたいと思います。しかも、税収は景気よりもおくれてあらわれるわけでありますから、我々の提起する二年間に限定した臨時措置の安全が保障されていることは、もはやだれの目から見ても明らかだと言わなければなりません。  私たち代替財源案について、特に以上の論点に関する海部総理見解をお尋ねしたいのであります。  さて、総理は「対話改革政治」を掲げられましたが、その内容について伺いたいと思います。  総理政治に携わる者の心得として、自信のない政治家ほど詐術と強権で目標を達成しようとするが、賢明な政治家反対の意見から貴重な教訓を酌み取ると言われています。うそで固めた消費税を数の力で強行突破するような自信のない政治家の手法は二度ととらない、総理の「対話改革政治」はそのように理解してよいのかどうか、端的にお答えをお願いしたいと思います。  さらにもう一つ、私は自信のない政治家ほど官僚の言いなりになるものだと思います。私たち政治家は、官僚と違って選挙によって選ばれており、民意というものについては行政専門家では到底及ばない洞察力代弁力がなければなりません。これまでの国会を振り返ってみると、政府側利用される面ばかりが目立ち、例えばその典型が消費税であったと言えるのであります。  このような実情を是正する第一歩として、国会政治家同士対話改革に専念する所であると考え、この観点から、各常任委員会における質疑討論議員同士政策論争をするようにしたいと思うが、いかがでしょうか。そして、官僚でも政策スタッフでも、与野党ともに必要に応じて議員以外の発言者参考人説明員などとして活用できるようにすればいいと思うのであります。  なお、先進諸国のどこを調べても、我が国のように、委員会審議は事実上野党議員高級官僚の問答でしかないといった国は一つもなく、また、各省庁の官僚が大臣を差しおいて政策基本に関する事項を発言、答弁するような国も皆無であることを申し上げておきたいと思います。  次に、政治改革は一刻の猶予も許されない緊急の課題であります。ところが、あなたの所信表明では、政治腐敗の象徴であるリクルート事件に一言半句も触れないばかりか、改革の熱意がさっぱり伝わってこないではありませんか。総理見解も、自民党が前国会に提出した改革法案の城を一歩も出ていないわけでありますが、これで政治倫理を確立し、政治私物化を改めるような改革はできるはずがありません。  ところで、リクルート事件自民党各派閥の幹部がほとんど汚染されたためにあなたが総理に起用されたのであります。そのリクルート疑惑もいよいよこの十二月から公判が開始されようとしています。この間、自民党リクルート関係議員の役員の自粛は有名無実化し、海部内閣でも、総理を初め七人もの閣僚がリクルートと何らかのかかわりを持っており、その影を引きずっていると言われています。こんなことでは、過去の政治汚職と同様に、人のうわさも七十五日で、やり得、取り得の結末ではありませんか。国民が納得をするリクルート事件けじめとは、未公開株の譲渡を受けた政治家はすべて議員を辞職することだと思いますが、海部総理リクルート事件政治的けじめをどうつけられますか。  特に、本院では中曽根総理証人喚問がかねてから重要な懸案事項として残っております。中曽根総理の喚問には反対しないと明言をしていただきたいのですが、いかがでしょうか。  さらに、さき参議院選挙で、みずから血を流す覚悟で政治改革をやりますと言われましたが、その公約はいつまでにどのような方法で血を流すのか、明確にしていただきたいのであります。  総理政治改革断行には議会制民主主義原則を忠実に守ることが肝要です。既に自民党は、竹下、宇野、海部の三内閣の政権たらい回しを行っています。この間、衆議院解散選挙によって国民審判を仰ごうとしてこなかったことは到底認められないところであります。しかも、海部総理、本院はあなたを首班に指名していないのであります。したがって、あなたは総選挙の洗礼も受けてない、本院の同意も得られなかったという異例の総理なのであります。「信なくば立たず」、これは三木元総理及び海部総理の座右の銘です。たらい回し政権にしがみつくのではなく、衆議院の解散で国民に信を問うところから政治改革をスタートさせるべきではありませんか。  次に、総理外交姿勢国際感覚について、幾つかの角度からお尋ねしたいと思います。  日本は伝統的に外交下手で、世界に友人ができず、孤立しがちなのではないかと指摘されております。例えば、西ドイツのシュミット前総理は、昨年ある雑誌のインタビューに答えて、次のような重大な指摘をしているのであります。すなわち、日本軍による占領を受けた国のすべてが、日本は過去を反省している、またしかるべき謝罪を行っていると本当に感じているだろうかと問題を提起し、韓国、中国、フィリピンなどの人々は、日本が過去を正面から見詰めているとは感じていないと言い切っているのであります。  まず、海部総理、この点についてどのような見解を持たれるのか、ぜひお尋ねしたいのであります。  日本に対するこのような国際世論が根強い現実を知りながら、自民党政府軍備拡張路線を続けているのであります。その結果、防衛費はGNPの一%を突破し、世界第三位の軍事大国と警戒されるようになりました。来年度予算概算要求においても、防衛庁予算の伸びは他と比較してなお突出しているわけですが、総理生活関連予算を切り詰めてでも防衛費を大きく伸ばさなければならない理由は一体どこにあるとお考えなのでしょうか。  なお、直面をする難民問題への対応でありますが、最も憂慮されるのは、いわゆる偽装難民などを本国へ送還したとき、本人が不法出国者として当然受けなければならない処罰以上の危険、特に生命身体の危険が予測される場合についてでありますが、そのような場合に限って、人道上の見地から見ても強制退去させるべきでないと私は考えますが、総理はいかがでしょうか。  そもそも、国際化の進展の中で、日本アジア近隣諸国との著しい賃金の格差や送り出し国における大量の失業など、国際的な労働力の需要と供給のミスマッチによって、外国人労働者の流入は不可避的だと言われているのであります。  そこで、私の試案でありますが、日本アジア諸国との間にそれぞれ二国間協定を結び、受け入れる人員、期間就労等条件を定めて労働許可制度をとり、二年なり三年の期限が過ぎたら帰国をさせ、希望者は現地の日本企業が優先的に雇用する方式等を採用してはどうでしょうか。また、外国人労働福祉センターを何カ所か設け、日本語の教育を初め、各種情報サービス実施してはどうか。これらについて総理見解を伺いたいと思います。  昨日の衆議院における我が党の土井委員長代表質問において、ODA問題が取り上げられました。真に貧しい民衆のために、国民が納得できるようなODA実施が確保されるために、情報の公開を含め、国際開発協力基本法制定が必要であることを強調されました。ところが、海部総理、あなたは答弁で、ODA改善必要性は認めながらも、現行法の体系の枠内で努力すると言うことにとどまり、問題の深刻さも広がりの大きさも全く不十分な認識であると言わざるを得ません。  本院では、既に、抜本的な改革が必要であるとの認識から、国際開発協力の理念、諸原則行政の一元化、国会の責任ある関与などを柱としたODAあり方に関する決議がさき通常国会で採択されており、これを実行するのには国際開発協力基本法制定が不可欠であると思いますが、重ねて総理所見をお伺いしたいと思います。  次に、経済問題でありますが、世はまさに新イザナギ景気とも言われ、戦後三番目の大型景気ともてはやされております。しかし、その一方で、大都市中心地価暴騰株価の急騰という狂乱的な資産インフレが吹き荒れ、資産を持つ者と持たざる者との格差が急激に拡大してしまったという事実を黙って見逃すことはできません。資産格差拡大は、金融の自由化によってさらに拍車がかかり、富める者には高利で運用する財テクが思いのままで、資産を持たない者との格差はますます拡大しているのが実態なのであります。例えば、首都圏における住宅取得の価格をサラリーマンの平均年収で比較すると、五年前は六・五倍であったものが今日は何と十五倍にはね上がっているのです。こうした資産格差の元凶は、土地政策無為無策地価及び株価暴騰を招いた金余りを放置し続けてきた経済政策の失敗が最大の要因であることば明らかだと思いますが、総理所見を承りたいと思います。  特に、土地問題の解決のためには、イギリス、西ドイツの例を見るまでもなく、現在の所有権至上主義土地政策から土地利用権に重点を移し、土地転がしによって暴利をむさぼるようなことができない制度政策をつくることが必要ではありませんか。  土地政策緊急性については、先日初めて行われた日米構造協議においても、アメリカ側から突きつけられた六項目の中に入っており、今日までこれらの問題に有効な対処を怠ってきた政府の責任は今や国際的批判にさらされているのであります。これらの項目のそれぞれについて政府は今後どのような方針現状打開を図る所存か、この際、総理から明確な答弁を承りたいと思います。  なお、これとあわせて、日本政府からアメリカに対し改善要求した七項目についても、各項目ごとに今後の見通しアメリカ側対応について御報告をいただきたいと思います。  国際問題となった我が国土地政策は、同時に都市政策の欠落を意味していることはだれにも異論がないでしょう。例えば首都高速道路低速ぶり、それも同じ場所が一年じゅう同じように渋滞をしている事態について、総理はどう解決しようというのでしょうか。私は、大都市における自家用自動車利用規制に踏み切ることこそ地球環境保護にも貢献する道であると思うが、いかがでしょうか。  また、豊かさやゆとりを実感できない原因一つは、交通渋滞問題に加えて通勤通学の大混雑、そして高速道路の料金や交通運賃割高感などに求められるのであります。これは交通基盤投資の不足によってもたらされたものであり、財源面での創意工夫を凝らすことを含めて、今後積極的な交通投資必要性が高まっているのであります。  従来、ややもすれば道路偏重ぎみであった交通基盤整備あり方についても、総合交通体系観点から再検討するとともに、交通投資による地価上昇分については適切な負担を求めるなど、開発利益の還元問題に一歩踏み込んだ対応をすることが今まさに求められているのではないでしょうか。あわせて総理所見を求めたいと思います。  次に、福祉負担あり方についてであります。  我が国社会保障水準は、社会保障給付費の対国民所得比が先進諸外国との比較において最低であり、現行制度前提とするならば、老齢人口の比率が二〇%となる二〇一〇年の時点でとらえても、国民所得の二六ないし二九%程度にすぎず、同じ老齢化率のとき、ヨーロッパ諸国が四〇%以上と見られているのに比べて著しく見劣りする事態となっています。  それにもかかわらず政府は、我が国社会保障があたかも国際水準に達しているかのような強弁のもとに、給付水準の切り下げや国民負担増などを相次いで強行してまいりました。その背景として考えられるのは、一九八二年の臨調答申我が国の税、社会保障負担率について五〇%よりかなり低位にとどめるとしたことであります。つまり、政府の推計によれば、高齢化のピーク一歩前の二〇一〇年で早くも負担率が四五ないし四七%になってしまいます。現行の施策と水準前提としてさえこうなるのですから、臨調答申を尊重しようとすれば福祉切り詰めしかないというわけでありましょう。  そこで総理、税、社会保障負担率が五〇%よりかなり低くなければならない理由は一体どこにあるかを示していただきたいのであります。今、日本のそれが三九%であるのに対し、スウェーデンの七〇%をトップにヨーロッパ諸国は軒並み六〇%前後、日本を下回っているのは民間福祉中心としたアメリカだけというのが主要諸国の現状なのであります。  一方、国民は何を望んでいるかといえば、福祉水準を上げるためならば負担がふえてもよいという者が最も多いことは既に御承知だろうと思います。ただし、国民が高福祉高負担の方向を本当に納得するのには三つ条件があると考えます。その第一は政治に対する信頼度、第二は福祉プログラムから得られる安心度、第三は負担給付公平度。この三つを高めるために政治は今何をやろうとしているのかが問われているのではないでしょうか。  第一については、既に述べたように、消費税廃止政治改革断行こそ緊急の課題であります。  第二については、国として福祉水準をどこまで達成するかを示す長期基本計画及びその年度別実施計画の策定が必要不可欠であります。  第三については、国庫負担が少ないために、高い保険料を四十年間払っても月五万円余りにしかならない基礎年金給付率は一番低く、保険料は一番高い国民健康保険老人の少ない保険ほど逆に多く拠出させられる老人医療制度家庭崩壊の危機にさらされる在宅ケアの不備など、多くの矛盾を早急に解決しなければなりません。特に、年金給付改善基礎年金に対する国庫負担率二分の一への改善老人医療における加入者按分率据え置き国庫負担改善については焦眉の急であり、何としてもこの国会において措置すべきものだと思うものであります。  以上について、総理所見を承りたいと思います。  次に、農業についてであります。  さき参議院選挙で多くの農民団体がそれまでの自民党の支持を取りやめ、一票一揆などと言われる事態が発生しました。総理、その原因は一体どこにあったとお考えですか。二十年間も続く減反政策公約違反の牛肉・オレンジの自由化、さらに米の自由化をめぐる弱腰の態度、この三点セットが我慢強い農民を決起させたのではないでしょうか。  特に、目の前の自分の水田に米がつくれない農民は、たとえ奨励金を受けても農業者としてはやり場のない気持ちではないかと思うものであります。全水田面積の四分の一を超える減反、しかもこれを今後さらに拡大する方針と伝えられているのです。  総理、この減反政策は、稲作技術水田資産という両面から見て、資源の有効利用に逆行すると思うものであります。そこで、一つにはえさ米生産への利用二つには対外援助米生産への活用を図ることとし、米以外の一般作物等への転換を無理強いすることのない制度を確立すべきではないでしょうか。また、米以外の適地適作に向けた補助金を初め農業関係補助金は、すべて協業化した場合には割り増しになるという協業化シフトを徹底すべきであると考えます。  これらの点について総理お答えをお願いしたいと思います。  ところで、あなたはさきの訪米の際に、ブッシュ大統領に対し、日本には公害防止の豊富な経験と蓄積があるので協力すると言い、熱帯雨林保護のための基金づくりにも協力を約束されました。しかし、総理、みずからの農林業を荒廃させている我が国は、むしろ地球環境破壊加害者であることを忘れてはなりません。今、年間七千万立方という世界一の木材輸入国となり、地球上の森林を破壊している側なのであります。  総理地球環境の保全が人類共通課題と言うならば、まず自国の農林業の振興を図らなければなりません。それに加えて、各省庁が資源の浪費を改める先頭に立つこととし、そのために、まず全面的に再生紙の利用に切りかえることから始めることはできないでしょうか。  さて、大学の先輩で、総理の直接先輩にも当たる鯨岡代議士が昨年八月永年在職議員として表彰された際、選挙区の支持者に送った謝辞の中に次のような三つの反省があります。  それを要約しますと、物質的な面だけに目を奪われ、そこにのみ幸福を求めた結果、心を失った寒々とした社会にしてしまったのではないかという点が一つであります。空気が汚れ、水が濁り、土地はやせ、森林は減り、砂漠はふえる。このようにして地球環境は悪化の一途をたどり、とどまることを知らない。これを防がなければ人類に明日はないと叫び続けたが、力不足であるという点。政治家が金力に支配される傾向に歯どめをかけることができず、ついに国民から大きくその信を失うまでに至った今日の政治の姿を思うとき、申しわけの言葉を知らないという点が三つ、以上であります。  この言葉ににじみ出ているように、本音をもって政治を語り合えるようにしない限りすべてが手おくれになってしまうことを最後に指摘したいのであります。  以上、私の質問に対して、課題あって解答なし、難題を避けずに率直に語れなどと悪評を買っているあなたの所信表明とは違って、ぜひとも具体的に答弁をしていただきたいのであります。特に、注目されている消費税見直しについては、総理、あなた自身の御意見を明確にしていただくよう重ねて要求し、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手
  6. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 安恒議員お答えを申し上げます。  消費税見直し内容にする最初の御質問でありますが、消費税制度は、事業者すなわち消費税の納税者と消費者、実質的な負担者の双方に深く関連するものであり、しかも現に実施されている恒久的な税制でございまして、見直しの検討や結論づけを拙速に行った場合、国民生活や経済取引にははかり知れない混乱を及ぼすようになるのでありますから、先生からここで御指摘をいただいた八つの項目についても、各界の皆さんの御意見を十分に承るとともに、データもしっかりと把握することが極めて大切なことだと考えておりますので、ただいまその努力を続けておる最中であり、既に税制調査会において消費者団体の皆さん、福祉団体の皆さんなどから幅広く生の声を伺うなど見直しのための努力を精力的に進めておるところであります。  御指摘いただいた項目を初め、消費税を取り巻くあらゆる事項につきましては、十分議論をした上でお示しをしなければなりませんし、予算編成の日程をも念頭に置き、できるだけ早い機会に国民の皆さんの御理解と御納得が得られるような具体的な案をお示しすべく努力をしておるところでございます。  消費税の九つの懸念につきまして言えば、例えば物価や転嫁の懸念については、現在のところ物価状況をごらんいただきましても、物価には悪い影響は出てきておらないと、そういう結果が出ておりますし、転嫁の懸念については、円滑な転嫁が行われつつあると私は認識をしております。また、税率引き上げの懸念については、さき所信表明で、私の内閣としてはその引き上げを行わない旨申し上げたところでありますし、いわゆる逆進性の懸念については、歳出面での配慮等可能な限り対応したところであります。  なお、社会的に弱い立場にある方々に対しては、今後ともきめの細かい対策を一層講じてまいる所存でありますし、消費税実施前に心配された各種の懸念については、いろいろな御意見を聞きながらさらに最大限の努力を払っていくつもりでございます。  また、さき参議院選挙公約との関係についてのお尋ねでありますが、見直し法案をこの国会に提出するということについて与党が公約したとは認識しておりません。見直しの努力を一生懸命やりますと言っておるわけでありますから、どうぞそのことは我々の努力をお見守りいただきたいと考えます。  税制改革に関しましては、さきの結果から何を感じ取ったかという御指摘でございます。  私は、売上税法案が廃案となったとき、衆議院議長あっせんが行われ、改めて直間比率の見直し必要性与野党の間で話し合われました。そしてその後、二十五回を数える地方公聴会等を含んで半年以上にわたる精力的な審議を経て、昨年、税制改革についての答申が取りまとめられたところでありますから、先般の税制改革はこのような長期的、精力的な検討を踏まえたものだと御理解をいただきたいのであります。  さきの参議院の選挙においては、消費税の影響があったことはこれは率直に認めております。税制改革全体の姿や、なぜ消費税が必要であったかについて、幅広い見地から十分な御理解をいただくように説明と御納得をいただく努力が十分でなかったという点も率直に反省をいたしております。  幸い、税制に対する国民の皆さんの関心は、先般の選挙を契機にかつてない高まりを見せており、この得がたい環境の中で、政府といたしましては、消費税の創設を含む今次税制改革全般の意義やその必要性国民の皆さんに訴えかけていきたいと考えておるところでございます。  野党四党の代替財源案の合意の過程について、それを密室協議と言うのはよくないという三塚政調会長見解についてどうかというお尋ねでありますけれども、行政府として野党四党の代替財源案の合意のプロセスについて御意見を申し上げることは適当ではないと考え、御遠慮をいたしますが、政府自民党こそ密室と安恒議員ここで仰せられましたけれども、各界各層からの御意見を聞くとともに、党税調においても各団体から意見を聴取し、各地域で開いた公聴会あるいは衆参の特別委員会審議、公聴会、地方の公聴会など極めてオープンな議論も数重ねてきたわけでございますから、お互いに密室という批判は当たらないのではないかという気持ちを私は率直に述べさせていただきたいと思います。  消費税廃止した場合、政府財政運営に困るのかということですが、先般の税制改革は、高齢化国際化の進展、そういったものの将来を展望しながら、これまでの我が国税制が有していたいろいろなゆがみとかひずみを是正し、あわせて安定的な財源確保を目的として税体系全体や個々の税目の構造、内容を抜本的に見直したものでございます。消費税はこの改革の一環として創設したものでありまして、単に消費税税収に見合う代替財源が確保できるかどうかというところにだけ焦点を絞って存続についての論議をすることは私は適当でないと考え、もっと全体としてお考えをいただきたい。政府といたしましては、消費税我が国の将来展望や税負担の公平から考えて必要な骨組みであると考えております。  また、我々の消費税代替財源案に批判があるなら、政府としてもかわりの案を出せというような御趣旨でございましたが、我が国の将来展望から見て必要であると考えており、これを廃止するという考え政府にはありませんので、消費税廃止前提としてこれに伴う代替財源案をお示しする準備はございません。  代替財源としての物品税復活については、御指摘いただいたとおり、従来の物品税は大きな問題点を抱えた税制でありました。高名な安恒先生がこの点について我々と共通の認識を持っていただいたということはまことにありがたいことであります。  ただ、旧物品税問題点は、近年、世の中の価値観や消費者の消費パターンが多様化し、物品税では課税することのできないサービスへの支出が増加する中で、何を課税すべきかという合理的基準を見出すことが困難となってきたこと、また、日本の国際社会における役割が大きくなってきたことなどにより生じてきたものでございます。したがって、このような問題点物品税制度を維持したまま解消することは極めて非現実的な方法となるわけで、古い時代の遺物とも言うべき個別間接税制度を二十一世紀にふさわしい間接税制度に改めようとしたものでございます。  御指摘のテレビの世論調査の結果は私も承知しておりますけれども、旧物品税復活は従来の問題点復活そのものであることや、消費税創設の趣旨について十分御説明することにより、その矛盾については必ず御理解をいただけるものと私は信じてまいります。  二年間の法人税率の据え置きがなぜ過大な負担となるのかという意味のお尋ねですが、経済の国際化が進展する中で、主要先進国は法人税率を大幅に下げておるわけであります。我が国が引き続き高率の法人税負担を求め続けることは、企業負担感を一向に衰えさせず、中長期的には企業の海外逃避など、それが国内の雇用にも悪影響を及ぼすことがあるわけでありますから、私は御理解をいただきたいと思います。  また、税制改革が減税超過となっていることについてもお触れになりましたが、先般の抜本的な税制改革では、中堅サラリーマンを中心とした所得減税など直接税の分野で四兆六千億円のネット減税を行い、一方、間接税の分野で二兆円の増税を考えたところでありますから、これにより、改革全体で見ると二兆六千億円の減税を行うとともに、直接税への偏りを是正したものであります。  一方、野党の代替財源案は、消費税廃止に伴う五兆九千億円の減収に見合う増税案を示すべきものであるにもかかわらず、平年度で四兆六千億円しか制度上の手当てができておりません。足りない分を税収見積もりの是正と称して計算合わせをして、財源の手当てができていないということは私はいかがなものかと考えておることを率直に申し上げさせていただきます。  なお、このとおりの計算でまいりましても間接税の比率の一層の低下を招くものになる、こういった考えも述べさせていただいておきます。  また、経済成長率見通しの問題につきましても、最近の我が国経済の動向を見ますと、物価が安定する中で内需を中心とした持続的成長が続いており、平成元年度の実質経済成長率は四%程度となると見込んでおります。来年度以降については各年度の経済見通しを策定しておりませんが、昨年五月閣議決定しました「世界とともに生きる日本」という経済計画では、計画期間中平成四年度までの間の実質成長率を三・七五%程度と見込んでおるところでございます。  また、自然増収代替財源に充てれば財政運営に支障があるかとの御指摘ですが、制度上の手当てのない自然増収といったものが確保できるかどうかによって存続について議論することは、先ほど申し上げたように、適当でないと考えますし、最近の税収について申し上げれば、最近の税収が好調なのは、先生も御承知のように、株、土地、円高、そして原油、金利安といった三高二安という一時的な要因が寄与している面があるが、これらの要因が変化しつつあることも事実でありまして、いつまでもこのような状況が続くと考えるのは危険であると私は考えております。  なお、「対話改革政治」と消費税導入の問題、国会政治家同士政策論議の場にすべきだという御意見は、私は、国民の皆さんの声にできる限り耳を傾けるとともに、私も信ずるところを率直に申し上げて、対話を重ね、改革を進めていくつもりでございます。  法律の採決は、議論を尽くして、合意できる点、合意できない点を明らかにして決をとるのが議会政治のルールであると私は考えております。  国会運営のわかりにくさが国民政治不信の原因一つとして指摘されておること、国会政治家同士政策論争の場にすべきであるという先生の御提案には、私は、方向として同感の気持ちを表明させていただきたいと思います。どうか与野党間で協議され、早急に実現されますことを強く期待いたしております。  国会審議における参考人説明員などの活用の問題については、これは国会運営に係る問題でありますから、立法府において各党で御議論、お話し合いをされるべきものであると考えております。  また、リクルート事件所信表明の中で言及しなかったのはなぜかとのお尋ねですが、所信表明の中でリクルート事件という言葉こそ使ってはおりませんでしたが、私はきょうまで、総裁公選に立候補した公開討論会や参議院選挙に行った日本至るところで、リクルート事件を反省し、政治信頼を回復することが私の政治改革にかける大きな使命であると申し続けてまいりましたし、また所信表明の中でも、七月の参議院通常選挙の結果を厳粛に受けとめ、政治改革に向けて政治家政治倫理を確立すべきこと、金のかからない政治を実現すること、疑惑を持たれない行政を確立することなどを強調しており、リクルート事件の反省に立って、その教訓は十分に生かす姿勢を述べ続けておることはおわかりいただきたいと思うわけであります。  国民が求めておりますリクルート問題については、いわゆるリクルート問題が政治不信を巻き起こしたことについて深く反省しておりますし、党としては、いわゆる党のけじめ案に従って現在対処しておるところであり、議員の辞職の問題については、議員みずからが判断し対処されるべき問題であると考えております。  国会証人喚問の問題についてもお触れになりましたが、本件については、国会において話し合い、適切な結論を得られるべき問題であると考えております。  また、参議院の選挙中私がいろいろ申し上げましたことは、政治改革というものに取り組む私の熱意を込めて申し上げてきたことでございますから、そのとおり御理解をいただきたいと思います。  なお、解散選挙については、ただいま申し上げた政治改革税制改革、いろいろ与えられた政策課題に全力を挙げて取り組んでいくつもりでございますから、解散考えておりません。  外交問題に参りますと、アジア諸国の歴史認識に対するお話がございましたが、私は、過去において我が国の行為が近隣諸国に多大の苦痛を与えたことは深く自覚をしており、このようなことは繰り返さないよう戦後一貫して平和国家としての道を歩んできたところであります。過去の歴史に対する政府認識は、昭和四十年の日韓共同コミュニケ、昭和四十七年の日中共同声明に述べられておるとおりであり、いささかの変化も来してはおりません。  また、生活関連問題に関して、予算編成についての御意見がございましたが、政府としては各年度予算編成において、財政改革の第一段階である平成二年度特例公債依存体質脱却の目標達成に向けて、既存の制度、施策について見直しを行うなど、徹底した歳出の削減合理化に努めてまいりました。国民生活等にも配慮し、限られた財源の重点的、効率的な配分に努めるとともに、社会保障、文教関係等生活関連予算については、今後の社会経済情勢の変化に対応し、各種施策が安定的、有効に機能するように制度面、運用面の見直しを行いながら、真に必要な施策についてはそれぞれ重点的な配慮を行ってきたところであります。  防衛関係費については、厳しい財政状況のもと、極力規模の圧縮に努める一方、中期防衛力整備計画を踏まえ、効率的かつバランスのとれた節度ある防衛力の整備を図るためぎりぎりの努力を行い、所要の予算措置を講じてきているところであります。  また、難民問題についてお触れになりましたが、我が国への不法入国者に対しては、出入国管理及び難民認定法により退去強制のための手続を実施いたしております。ただし、同法により、難民条約にいうところの政治的意見等のためにその生命または自由が脅威にさらされるおそれの認められる国への送還は行わないとの対応もいたしております。  アジア諸国からの外国人労働者への対応につきましては、政府としては、今後、専門技術的な能力や外国人ならではの能力を有する外国人については、受け入れの範囲や基準を明確化しつつ可能な限り受け入れる方向で対処しますが、いわゆる単純労働者問題については、国民的コンセンサスが得られていない点もあるので、なお多様な角度から御指摘の点も含めまして慎重に検討してまいる所存であります。  国際開発協力基本法について御言及のあったODAに関する決議は、これを本院により示された方向として承っております。政府は、今後、憲法に定められた立法府と行政府との関係を踏まえ、適切、効率的な施策の推進に努力してまいる考えであり、経済協力の一層の効果的、効率的実施のために、現行の関係法令の枠内で改善努力を図っていきたいと考えております。  土地政策については、今回の地価高騰に対してこれまでも国土利用計画法による監視区域制度の機動的な運用、不動産業、金融機関に対する指導、税制上の措置等の対策を講じ、今後とも諸機能の地方分散、住宅宅地の供給促進等各般の施策を推進することにより地価の安定に取り組んでまいりたいと考えております。  近年の地価株価上昇は、保有階層間の資産格差に影響を与えたと思います。こうした資産価格の上昇は金融緩和のもとで生じたものでありますが、上昇の要因には他にもさまざまなものもあろうかと考えられます。  一方、金融緩和の維持は内需の持続的拡大に寄与した面も否定できません。現在、我が国経済は物価安定基調のもとで内需主導型の着実な成長を維持しているところであり、政府としてはこのような景気をできるだけ息の長いものにするよう引き続き適切な政策努力を続けていくつもりであります。  土地転がしによって暴利をむさぼることができないような制度についてのお尋ねがございましたが、私はそのとおりであろうと思います。土地が投機的取引の対象とされてはならないということを基本理念として土地基本法案国会に提出しておるわけでありまして、御審議、成立を心からお願いいたしておく次第でございます。  また、日米構造問題協議においては、対外不均衡是正に向けての経済政策協調努力を補完するものとして、日米それぞれが抱える構造問題について話し合っていくことになっております。  我が国としては、この問題についても、我々の立場も積極的に述べ、米国の立場も十分に聞きながら、国民生活の質の向上という観点からもできる限りの努力を行っていく所存であり、先般第一回の会合が終わったところでありますけれども、引き続き第二回、第三回と協議を重ねて成果を上げていき、議論を深めたいと考えております。  自動車の利用規制についてもお触れになりましたが、自動車利用の抑制については、自動車が全国民の日常の社会経済活動の不可欠な手段となっているだけに、規制を先行させるのではなく、現在の交通管制センターの高度化や代替輸送手段の整備など、総合的な対策を推進する中で、環境問題等にも配慮しつつ、国民合意のもとに可能なところから進めていくものと考えております。  また、交通基盤整備あり方についての問題の御指摘もありましたが、交通機関の適切な競争と利用者の自由な選択を通じて全体としての効率性、整合性が確保されることが重要であります。今後とも、このような観点から各種交通基盤に対する計画的な投資を進めてまいりたいと思っております。  御指摘開発利益の還元については、政府提出の土地基本法案においても、かかる開発利益の還元についての基本的な考え方や施策の方向を明らかにしております。今後とも開発利益の適正な還元に取り組んでまいります。  また、税、社会保障負担率が五〇%よりかなり低目でなければならない理由は何かという趣旨の御質問でありましたけれども、これは、臨調、行革審の答申などにおいては、国民の活力の衰退を避けるといった観点から、国民負担率ヨーロッパ諸国水準、すなわち五〇%前後よりはかなり低いところにとどめることが必要とされておるところであります。今後、国民負担率は長期的にはある程度上昇するものであるということは避けられませんけれども、臨調答申の趣旨を踏まえて、国民全体の活力も失わないようにするために、極力低いところに抑えていく考えでございます。  高福祉高負担については、国際的にもいろいろ御議論が分かれるところであります。しかし、これは国民の皆さんの制度全体に対する御理解と納得が必要であり、さらに政治に対する信頼度を高めることが条件ではないかという御指摘はそのとおりであると受けとめ、その方向に向かっても大いに努力を重ねてまいります。  二十一世紀の本格的高齢化社会を控えて、欧州型の高福祉高負担アメリカ型の自助努力中心型のものと、これを念頭に置きながら、政府は昭和六十一年六月に長寿社会対策大綱を閣議決定し、お示しをしており、また昨年十月には、いわゆる福祉ビジョンを作成して国会の御審議に供しているところでございます。これらを通じて、給付負担の公平を図るなど諸般の施策を着実に進めるつもりでございます。さきに申し上げたビジョン等に基づいて各年度においての実施のための施策も講じていくことは、委員御指摘の趣旨に従っているものと考えます。  また、この国会において年金問題についてどうするかということでありますが、基礎年金水準は老後生活の基礎的な部分を保障するという考え方に立って設定されたものであり、改正案においてもこの考え方に基づいて実質的な改善を図ることとしておるところであります。この水準は、将来の保険料負担との関連から見て適切なものと考えます。  なお、基礎年金に対する国庫負担については、先般の年金改革において、全国民を通じて負担の公平を期するため、基礎年金の三分の一に集中することとしたところであり、これを変更することは考えておりません。  老人保健制度については、来年度見直しに向けて老人保健審議会において御検討をいただいているところであります。  参議院選挙における農政批判、それをどう受けとめるかという御指摘でございますが、農政問題の影響が参議院選挙に出ておったことも、これは率直に認めなければならぬことであります。  農政については、私は、農業が自立できるように確固たる長期展望を示し、農家の方々が誇りと希望を持って農業を営めるような環境をつくり上げていくことが大切と考え、より一層の生産性の向上を進め、国民の納得できる価格での安定的な食糧供給を図っていくよう努力をいたします。米の需要の減退、生産力の向上等の事情のもとで大きな需給ギャップが現在存在しておりますが、このような状況のもとで米の消費拡大対策を講じつつ、需要に応じた米の計画的生産を図っていくことは必要なことであると考えております。  水田については、その高い生産力を生かしつつ、米及びその他の作物による食糧供給力の確保を図ることが肝要であり、このような観点から水田農業確立対策を推進中であります。  なお、飼料用の米は、主食用に比べて大きな価格差があり、大幅な費用負担を伴うことなどの面で、また対外援助米は、FAO余剰処理原則や食糧援助規約等の国際的な関係、財政負担等の面で多くの問題を含んでおりますので、引き続き検討をさせていただきたいと思います。  農業補助金の問題につきましてもお触れになりましたが、個々の農業者に対する助成措置としては、原則として融資により対応しているところであり、農業関係補助金については、原則として農業者の組織する団体等が、農業の構造改善を図るため土地改良事業を行う場合や共同利用の機械、施設等を整備する場合に交付されることとなっており、農業生産の組織化、協業化に資しているところと思いますが、今後とも中核的担い手農家等の育成指導を図るとともに、協業化、共同化を通じて、足腰の強い生産性の高い農業を確立していかなければならないと考えております。  農林業は、食糧等の安定供給や国土・自然環境の保全などの多面的な役割を果たしており、その振興を図ることは地球環境の保全にも資するものと認識をいたしております。  このため、農地や担い手の確保により、農業生産の振興を図るとともに、森林資源の整備充実と有効利用を図ってまいる考えを申し述べます。  最後に、再生紙の利用促進についてもお触れになりましたが、森林資源の保護や廃棄物の減量化につながり、地球環境の保全に大きく貢献するものと認識しております。  政府といたしましては、昭和五十七年から環境白書に再生紙を使用しておりますし、また、封筒やコピー用紙の一部についても試験的に導入しているところであり、今後とも、省資源の推進等地球環境への負荷の少ない方法で経済社会活動が営まれていくよう努力することが重要であり、この再生紙使用拡大を含めて所要の措置を講じていく考えでおります。(拍手)     ─────────────
  7. 土屋義彦

    議長土屋義彦君) 大島友治君。    〔大島友治君登壇、拍手
  8. 大島友治

    ○大島友治君 私は、自由民主党を代表して、当面する国政の重要課題について、総理ほか関係閣僚に対し若干の質問をいたしたいと存じます。  今、参議院は、憲政史上初の大きな転換期を迎えることになりました。過ぐる参議院の通常選挙において、我が党はまことに大敗を喫しました。その原因は、リクルート消費税、農政不信など、いわゆる三点セットという厳しい逆風の中で行われたことによるものと言われていますが、私なりに分析すれば、その根源は、国民自民党に対する政治不信が一挙に爆発したものではないでしょうか。我々は、ややもすると一党支配の長期政権になれ過ぎ、立党の初心を忘れておごりはなかったのか、国民の声に謙虚に耳を傾けたのか、国民とともに苦楽を分かち合い、国民のニーズにこたえた細心の配慮をもって政治を行ってきたのか等々考えれば、政策以前に自民党政治体質に国民の大きな怒りがあらわれたものでありましょう。  私は、この現象を今回の単なる一過性のものとして受けとめるのではなく、やや長期的な変動の兆しがあるのではないかと厳しく認識すべきと思うのであります。  総理は、この国民審判をどう受けとめ、自民党再生の道を模索するのかということについてまず承りたいのであります。  自民党の過半数割れの結果、さきに首班指名をめぐって両院の指名が異なり、四十一年ぶりに両院協議会が開かれるという事態がありました。  問題は、国民生活に関係する法律案の処理がどうなるかであります。自民党の安定多数下の数の論理は当然ながら今後は通じません。と同時に、多数を占めることとなった野党の動向が政治を大きく左右するだけに、その責任は従来以上に増して重いものであります。ここに議席を同じゅうする我々議員は、今回の事態の招来を天の声、国民の声として深く心し、我が党の主張、エゴをあくまでも貫くのではなく、お互い協調と連帯で国家と国民のサイドに立った徹底した審議、話し合いを行い、今こそ参議院がその創設の原点に返って、抑制と補完の使命を果たし、国民の負託にこたえ、その真価を発揮すべきときであると考えるのであります。  総理、今後参議院の議会運営は政府にとって極めて困難な事態となることが予想されますが、総理はこれをどう受けとめて対処されますか、お伺いいたします。  さて、今日、国際情勢は大きな変動期にあり、国内的にも政治税制行政の三大改革を初めとして、農業土地問題、構造調整など重要課題が山積しております。  総理は、就任に当たって、「対話改革」を旗印として、国民の意見に耳を傾け、政治に対する信頼の回復に努め、二十一世紀に向けて、豊かで安定した活力に満ちた社会を築くことを表明されております。我々としては、若いエネルギッシュな行動力を大いに期待いたすのであります。改めて政権担当の御決意を承る次第であります。  総理、今、政治に課せられている最大の課題政治改革であります。  思えば、ここ数年、国民の間では何らかの形で国民政治に対する疑問や不満が顕在化している中にあって、あの忌まわしきリクルート事件が契機となって、国民政治に対する強い不信、怒りが爆発いたしました。  我が党は、早速厳しい反省の上に立って、どうすれば二度とかかる事件を起こさないようになるのかを徹底的に追求いたしました。こうした観点から、政治倫理政治資金、選挙制度国会、党のあり方など、政治家、政党みずからの出血と犠牲を覚悟して政治改革大綱をまとめましたほか、関係議員に対する政治的道義的けじめを行い、自己改革の決意を示したところであります。一方、本件に対する司法当局による解明は終了しており、自後の課題は再発防止のための抜本策をどう講ずるかであります。  「信なくば立たず」の三木哲学を継承する総理は、リクルート事件に端を発した政治不信、腐敗をどう受けとめ、党の再建、新生に向かって政治改革断行する決意であるか承りたいのであります。  およそ、政治家の要諦は政治倫理の確立にあることは申すまでもありません。昭和六十年に決定されている政治倫理綱領を遵守してさえおれば、恐らくはかかる不祥事の発生はなかったのではないでしょうか。  我々は、政治倫理をより一層確立するために、全議員を対象に資産及び所得報告を義務づける資産公開法の制定及び両院の政治倫理審査会の強化を図る案を衆議院議運関係者に提出いたしております。また、我々は、政治資金の収支を明確化するため、冠婚葬祭等への寄附禁止、政治資金の運用の限定、パーティーの法的規制などを盛り込んだ公職選挙法及び政治資金規正法の二改正案も提案済みであります。  これら三法の内容は、政治への信頼の回復のため直ちに実施すべき最小限のものであります。各党の賛同を得て速やかにその成立を図るべきと存じます。総理の御決意を伺います。  私は、政治批判中心はあくまでも政治に金がかかり過ぎることと思います。その代表的なものが現行衆議院の中選挙区制であり、参議院の比例区制であると考えるのであります。  中選挙区制について見れば、一党で複数の候補者を立てる我が党にとって、選挙政策論争以前の選挙民に対するサービス合戦や利益誘導の争いとなり、金のかかる温床となっています。私は、小選挙区制を基本としつつ、少数意見を反映させるため、比例代表制を加味したものを考案してはいかがかと思うのであります。今回の選挙において、二十六の一人区で我が党が勝利したのがわずかに三であることからすれば、これが我が党の党利党略の考えでないことは明らかであります。  また、五十八年から導入した本院の比例代表選挙は既に三回の体験をいたしました。我々に限って申せば、制度改正の目的であった銭酷区、残酷区を解消し、国民から見て本当に選びやすい制度となっているかは疑問のあるところであります。またさらに、制度としての党名投票のあり方に問題があるという指摘もございます。  以上の点について総理の御所見を承ります。  次に、税制改革について伺います。  今般の税制改革は、直接税偏重からくる種々のゆがみ、ひずみを是正し、国際的水準に見合う税体系の確立や働き盛りの中堅サラリーマンを中心とした重税感、不公平感の解消を図って大減税を行うとともに、特定の物品だけに偏って重い負担を課していた個別間接税のひずみを是正するものであります。また、豊かな長寿福祉社会をより堅実なものとして維持するために、国民全体で広く負担を分かち合う仕組みをつくるものであります。  さき参議院選挙においては消費税が大きな争点となりましたが、廃止を言われる方々の多くは、消費税そのもののみを取り上げ、単にこの税をどう思うかといった感覚的な議論に終始いたしまして、今回の税制改革の意義や全体の姿を理解していただけなかったことは極めて遺憾であります。  御承知のように、世界の主な国には皆消費税のような広く薄く負担を求める間接税があります。何よりもあの福祉国家で知られておる北欧諸国においては、消費税と同じタイプの税である付加価値税で福祉を充実していることを忘れてはならないと思います。  消費税実施に当たっては、何分にも新しい税制でなじみが薄く、しかも準備期間が十分でないまま導入された経緯があり、我々としては、今後ともこの消費税を含む税制改革について、国民各層に粘り強くその必要性を訴える等、全力を挙げて円滑な定着に努めていく所存でありまして、消費税廃止することは全く私も考えておりません。  国民へのPRも兼ねて、何ゆえ今消費税かを改めて説明願うとともに、消費税の定着について総理及び大蔵大臣の御決意を承りたいのであります。  さて、消費税廃止法案は、去る九月二十八日本院に提出されました。この案は、一口で申せば、いかに拙速で無責任で、国民生活を混乱に陥れるものであるか、全く税体系の整合性が整っておりません。野党案は、まず消費税廃止し、二年後に将来展望に立った税制の再改革を行うとしていますが、あるべき税制の具体的ビジョンを示しもせず、ただ単に、あのゆがみ、ひずみの生じていた改革前の税制に戻そうとしているにすぎないのであります。当てもなく税制が変更されて迷惑をこうむるのは国民ではないでしょうか。  特に間接税は、それが物やサービスの価格の中に織り込まれている税金であるだけに、その改廃は、物価の変動をもたらし、買い急ぎや買い控え、値札の書きかえ、経理システムの手直しなど、国民生活、国民経済に極めて大きな混乱を生じかねません。間接税の分野については、物品税、入場税、電気税、ガス税及び料飲税などの個別間接税を復元するという考えを明らかにされていますが、今回の消費税の創設を含む間接税の改革は、従来の個別間接税が直面していた諸問題を解決するため、長期にわたる検討の未実施したものであることを全く忘れた議論と言わざるを得ないのであります。  すなわち、消費態様や価値観が多様化し、消費支出に占めるサービスの割合が半分を超えるほどサービス化が進み、また、国際化が経済の隅々にまで及んでいる我が国の実情に顧みると、物品税など個別間接税のままでは、従来指摘されていた個別間接税の課税のアンバランスの是正やサービス課税の充実、さらには諸外国からのさまざまな批判にこたえることは困難であり、個別間接税にのみ依存する間接税制度は先進外国にも例を見ないものであります。また、さまざまな問題が指摘されていた旧物品税をほとんどそのまま復活させることは、たとえ暫定的とはいえ余りにも無責任であり、我が国の国際的信用にも傷をつけるものではないでしょうか。  さらに、野党の諸君は、消費税廃止と言いながら、二年後にはサービス、流通等への適正な課税のあり方について検討するとのことでありますが、消費の半分以上がサービスへの消費であることを考えれば、単なる物品課税では適正な課税とは言えないのではないでしょうか。結局、物やサービス全般を課税対象とするような消費課税が必要との結論に至るのが自然な姿ではないでしょうか。そうであるとすれば、消費税廃止するのではなく、これを見直し国民の皆さんの納得が得られるような姿にしていくことこそが今求められていることではないでしょうか。  野党案では、消費税代替財源として不公平税制の是正を挙げています。確かに、脱負担の公平を確保すべきであるという主張それ自体には何人も異論を差し挟まないと考えますが、何が公平で何が不公平かを具体的に示すとなると、さまざまな意見や主張が存在し、必ずしも一概には言えないのじゃないかと思います。しかるに野党案は、消費税廃止代替財源としての数字合わせのために、国民の意見を何ら聞くことなく、自分たちの独断と偏見により不公平税制是正案を並べ上げ、これを敢行せんとしているのではないでしょうか。不公平の是正と言いますが、要は増税を強いるものでありますから、このような拙速な改正を行えば、かえって新たな不公平が生じることになるのではないでしょうか。  自然増収につきましては、仮に消費税廃止した場合、かわりにどのような税制をつくるかという制度の問題を問うているのに、自然増収を財源とするという発想自体、問題のすりかえであります。結局、代替財源の足りない分を自然増収で埋めることにしてつじつま合わせをしているのではないかと思うのであります。また、自然増収はいつまでも続くものではありません。確かにここ二、三年、政府の当初見積もりを数兆億円上回る税収が出ております。しかし、この増収は、先ほども話がございました土地高、株高、円高、原油安、そして金利安といったいわゆる三高二安という一時的な要因によるもので、極めて不安定なものであると私は思うのであります。円高の進行、金利の上昇など最近の経済環境の変化を考えれば、税収の好調が将来とも続くとは思えないのであります。  このように、自然増収は全く不確実なものであり、自然増収を当てにするというのは、一歩間違えば赤字国債の発行につながる極めて危険な考え方であります。まさに「巧言令色すくなし仁」という孔子の教えが思い出される次第でございます。  重ねて申し上げますが、消費税代替財源と言われるものは、野党間の密室協議によって拙速につくられた単なる数字合わせの無責任な増税案であることを厳しく指摘したいのであります。  したがって、責任政党たる我が党としては、消費税廃止法案は絶対に反対であります。これらの私の主張について大蔵大臣はどう受けとめておられるのでしょうか、お伺いをいたします。  なお、野党の代替財源案が先日明らかになったこととの関連において、野党側から我が党に対し見直し案を早期に提出すべきとの主張がありますが、野党の代替財源案は再改革までの二年間の暫定的なものにすぎず、恒久的税制の一環をなす消費税見直し案と対比して論ずるべき性格のものではありません。また、代替財源案は、これまでるる申し上げたとおり、税制が経済社会の基盤となるものであることを忘れ、安易につまみ食い的に旧税制復活提案するものではないでしょう  これは、二年間の措置とはいえ新鋭制の創設にほかならないで、社会に大きな混乱をもたらし、国民経済にとって到底耐えがたいものであると言わざるを得ないのではありませんか。我が党は、この点について国会等の場において徹底的に明らかにしていきたいと考えております。  そもそも、我が党の見直し案と対比して論ずべきは、野党の言う税制改革の具体案であり、我が党が今回の税制改革によって既に示した新しい税制あり方に比べ、極めて抽象的で名ばかりの考え方を提示したにすぎない野党こそ、早期に再改革後の具体的な税制の姿を示すべきではありませんか。  また、野党は、参議院選挙の際の公約に従い、二年間の代替財源案を一日も早く法制化して国会に提出すべきであり、代替財源法案審議なしに消費税廃止法案のみを審議することは財政運営上無責任のそしりを免れず、到底考えられないことであります。見直し案の早期提出論は、議論のすりかえをもくろむものであり、これに惑わされてはいけません。  さて、我々は、消費税に関して、国民の皆様の間にあるさまざまな御意見や御批判についてはこれを率直に受けとめ、必要な見直しを行うことを既に約束しております。この消費税見直しについては、先月七日、我が党の全国政務調査会会長会議を皮切りに既に見直し作業に着手し、その後、各地で一日政調会を開くなど精力的な作業を行っております。  ただ、消費税制度は納税者である事業者と税の実質的負担者である消費者の双方に密接に関連するものでございますので、見直しを検討するに際しましては、拙速を避け、双方の主張とデータを十分に把握し、それを踏まえ、消費税を取り巻くあらゆる事項について議論した上で結論を出すべきものと考えておるのであります。  したがって、見直し内容については、先般の全国政務調査会会長会議などを通じて吸収した地方の声を初めとして、各方面に意見を十分聴取した上で、党の税制調査会における議論の中でできるだけ早く具体的に詰めていく所存であります。  政府においても税制調査会で作業を進めているとのことでありますが、消費税見直しについて大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。  次に、行政改革について伺います。  我が党は、政府と一体となって、二十一世紀に向かって明るい日本の将来を開くため、国、地方の行政全般について聖域なき見直しを行うとともに、国民の強い要請にこたえて各般にわたる制度改革、三公社の民営化、組織・定員の合理化など行政改革を推進してまいりました。しかし、なお残された課題も多く、また、行政は社会経済情勢の変化に対応して簡素にして効率的でなければならず、今後とも常に監視を怠ることなく、引き続き行政改革に努めていかなければならないと思うのであります。もとより、行政改革は、国民の個々の利害に直接関連してくるため推進が困難な課題であり、国民の声に耳を傾けながら強力に推進する必要があります。  海部内閣は「対話改革」をスローガンとしておりますが、税制改革に関連して、公正でむだのない行政の実現を求める国民の声は一層高まっており、これにどうこたえていくのか、国民の期待は大きいものがあります。これに取り組む総理の御決意をお伺いいたします。  財政問題につきましては、今日まで十年にわたり、財政のスリム化を図るため歳出の節減合理化を行う一方、内需の拡大に努めた結果、近年来大幅な税収増を可能とし、財政は著しく改善されてきました。この結果、平成二年度赤字公債依存体質からの脱却が確実視されるほどになっております。しかしながら、本年度末の公債残高は依然として百六十兆円を上回るという状態は変わらず、その利払い等に要する国債費は一般会計歳出の約二割を占めており、財政はなお厳しい状況にあります。今後急速に進展する人口の高齢化世界の中の日本として国際社会への貢献などを考えるならば、引き続き財政対応力を回復するための財政改革は、我々が取り組まねばならない優先課題であると思います。  昨今の好景気を反映した税収の伸びを背景として財政事情を楽観視する向きがありますが、明年度赤字公債依存からの脱却を確実に達成するためにも、一層財政改革を推進して歳出の節減合理化を目指すべきでありますが、明年度予算編成の方針及び赤字公債脱却後の財政改革の目標について、これまた大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。  次に、外交政策について伺います。  総理、先般のアメリカ、メキシコ、カナダ訪問、まことに御苦労さまでございました。申すまでもなく、日米関係は我が国外交の基軸であり、総理が就任直後に米国を訪問されたのも、かかる認識に基づくものであると私は思うのであります。  今日、日米間の貿易不均衡が大きな改善を示していないことから、米側のいら立ちが高まっており、日米関係の運営は困難な状況にあると思うのであります。このような状況のもとで、両国首脳の間で個人的信頼関係を確立し、懸案の問題を話し合いと双方の努力で解決していくことがとりわけ重要であることは申すまでもありません。日米関係はグローバルパートナーシップと言われていますが、日米両国が力を合わせて世界の平和と繁栄のために貢献していくことが、ひいては二国間の関係をより円滑にしていくことにもつながるものと考えます。  総理は、今次訪米、特にブッシュ大統領との会談ではどのような事項について話し合い、成果があったのかを承りたいのであります。  中でも、貯蓄・投資、土地利用、流通制度、価格メカニズム、金融系列、排他的取引慣行の日米構造問題協議は我々の大きな関心事であります。本件協議は、一方的制裁措置を背景としたスーパー三〇一条とは異なり、日米の協力と共同作業により、今後一年間、日米の貿易不均衡の調整の上で障壁となっている構造問題を識別し、日米双方がおのおのの構造問題と取り組んでいくことを目的としていると聞いておるのであります。私は、経済構造を調整するため積極的に努力することは、日米貿易不均衡の是正の観点からばかりでなく、経済の効率化を高め我が国自身の将来に資する、そういう観点から不可欠であると思うのであります。  この意味から、我が国の経済構造調整の一環として日米構造問題協議に積極的に取り組んでいくことが必要であると考えますが、元来、本件は日本古来の歴史的、社会的な制度、慣行に係るものだけに、早急な転換にはかなりの困難さを伴うことが予想されます。  本件に対する総理の御所見を伺います。  中国につきましては、今般、伊東日中友好議連会長が訪問し、鄧小平党中央軍事委員会主席を初めとする最高首脳との会談が行われました。  我が国は、従来より隣国中国との友好協力関係を維持、発展させていくことを外交の主要な柱の一つとして進めてきているところでありますが、先般起きました天安門事件はまことに遺憾と言わざるを得ないものであります。しかし、我が国としては、中国が孤立化の道を歩むことを望むものではなく、アジアひいては世界の平和と安定にも資するとの観点から、中国の近代化建設の努力に対してはできる限り協力していくことが必要と思うのであります。  総理は、伊東会長の訪中を踏まえ、今後、中国情勢をどう認識して、いかなる対中政策をとられるか、その点につきましてお伺いをいたします。  日ソ関係は、外相会談等を通じて対話の機運が醸成されていましたところ、去る九月二十七日、国連における中山外相とソ連シヱワルナゼ外相との会談により、来年三月にはソ連外相、さらに一九九一年にはゴルバチョフ最高会議議長の訪日が決定されましたことは、日ソ関係に新しい一ページを開くものとして歓迎いたすものであります。かねてよりの問題としての北方領土問題を初め、日ソ間の懸案解決に局面を開いたことも事実であろうと思うのであります。  政府は今回のソ連の予想外の対応をどう受けとめているのか、また、今後の対ソ外交への取り組み方を外務大臣にお伺いいたしたいのであります。  「世界に貢献する日本」を標榜する我が国にとって、政府開発援助の拡充は国際社会において我が国が果たすべき重大な責務であります。我が国の援助量は年々伸びていますが、問題は、我が国の援助が相手国に喜ばれ、かつ効果を上げているかということであります。  政府として、今後政府開発援助の実施体制、評価体制をどう充実して世界に貢献していくのか、外務大臣の御決意を伺います。  次に、農業問題に移ります。  さき選挙敗北の一因に、自民党農政に対する農民の不満、反発が大きくあったことと私は思っております。今、我が国農業、農村は、昨年の牛肉・オレンジ等の自由化の決定、農産物価格の連年の引き下げ、東京一極集中の一方での農村の活力低下など、まことに厳しい状況にあります。このようなときに、農家は、自分たち国際化の進展の中で切り捨てられるのではないかと農業の将来に対し大きな不安を抱きつつも、自民党政府の農政の対応に大きな期待をしていたのが、国際化という名で自由化が強行され、結果としてうそをついた。さらに、ただ一つ残っている米については、私は自由化絶対反対考えでありますが、この問題で農民は重大な不安を感じております。これが農政不信の最たる原因と私は思うのであります。  改めて申し上げるまでもなく、農業は、国民生活に不可欠な食糧の安定供給、活力ある地域社会の形成、国土・自然環境の保全など多面的かつ重要な役割を担っています。来るべき二十一世紀に向かって農業の一層の発展を期するためには、生産性の向上を図り、国際化対応し得る足腰の強い農業を育てていく必要があります。  なお、一口に後継者育成といいますが、昭和三十年前後は約六百万戸の農家に対しまして約二十万人に近い中学以上の学卒の農家子弟が就農していましたが、現在約四百二十万戸の農家に対し、昨年は約三千五百名、本年は実に二千百名と前述の一%程度に激減していることは、将来の我が国農業にとって最も私は憂うべき問題と考えているのであります。  以上の状況を踏まえて、まず農家に対し、農業の将来展望を明示し、その将来に対する不安を取り払い、希望と自信を持って意欲的に農業に取り組むことができるようにすること、これが農政に課せられた喫緊の課題であり、農業者に信頼される農政を確立する道であると私は確信するものであります。  政府は、今後、農政不信の解消にどう取り組み、農業の将来展望をどう確立させるのか、特に、米の自由化を含んでの総理の御見解をお伺いいたします。  我が国農業、農村がこのような内外の厳しい状況を乗り越えて、その機能を十分に発揮し、一層の発展をなし遂げていくためには、国土条件、自然条件の制約の中で可能な限りの生産性の向上を図り、足腰の強い農業を確立することが不可欠であります。そのためには、農業生産基盤の整備を進めるとともに、経営規模の拡大を初めとする構造政策を従来にも増して強化していくことが求められております。今後の構造政策基本方針をどう考えておられるのでしょうか。  また、現在大きな問題となっている土地改良の負担金対策についてどう取り組まれるのか、農林水産大臣の御見解をお伺いいたします。  さらに、食糧自給の問題でありますが、戦後四十年間、我が国経済の発展とともに国民の食生活は質量ともに飛躍的に向上しました。これに伴い、農産物の輸入は増大し、現在我が国世界最大の農産物純輸入国となっております。この結果、食糧自給率は年々低下の一途をたどっており、昨年には、カロリーベースでついに五〇%を割り、また穀物自給率は三〇%と、いずれも主要先進国の中で最も低い水準となっております。輸入された農産物によって我々の食生活が豊かなものとなっていることは否定できませんが、農産物貿易の不安定性を考えた場合、常に国内における食糧供給力の強化に努めていく必要があると私は考えます。  食糧自給についての見解総理に伺うとともに、このように食糧自給率が低下した要因について農林水産大臣にお伺いいたしたいのであります。  次に、高齢化社会への対応について伺います。  まず、年金制度についてでありますが、公的年金は、働いている世代が高齢世代を支えるという世代間の助け合いの仕組みをとることにより、生活水準や賃金が上昇した場合にはこれに応じて年金額を引き上げていくこととされており、高齢者の生活を支えている最大の柱となっております。  今後の高齢化の進展の中で、こうした公的年金の役割はますます高まるものと見込まれ、将来にわたり老後を確実に支えていく年金額を確保していくことがぜひとも必要であります。また、今後増大していく年金受給者を支えていけるよう、公的年金制度の基盤を今から確固たるものとしておくことが必要であります。このためには、保険料を段階的に引き上げていく必要がありますし、また、将来の現役世代が負担にたえられるよう厚生年金の支給開始年齢を引き上げていくことは避けられないものと考えるのであります。  現在継続審議となっている年金改革関連法案を早急に成立させ、年金額を引き上げるとともに、制度の長期安定を図っていく必要があると考えますが、総理の決意はいかがでありましょうか。  長寿社会において重要な課題は、老人福祉の確保であります。お年寄りの方々にいかに充実した老後の生活を安心して送っていただくかは、現在の高齢世代のための福祉施策であるとともに、現在働いている世代が将来を不安に感じることなく社会の中で積極的な営みをすることでもあります。  このような観点から、特に寝たきり老人、痴呆性老人対策については、保健、医療、福祉等の各施策を総合的に推進していくことが必要であります。政府は今後の老人福祉対策をどのように進めようとしているのか。  また、高齢化社会は、これを別の面から見れば、より少ない人口で高齢者を支える社会であり、その意味において、高齢化の問題は次代を担う児童の問題ではないかとも考えるのであります。明日の高齢化社会を担う児童の健全育成をどのように進めるのか、特にその中心となる児童手当制度を今後どのようにしていくのか、お考えをお聞かせいただきたいのであります。  さらに、医療保険制度の問題でありますが、今日、人口の高齢化が一層進展し、就業構造の変化等の社会変動や生活水準の向上等による疾病構造の変容など、医療を取り巻く環境には大きな変化が生じつつあるのであります。これに対して、国民だれもが安心して医療を受けることができるよう長期的に安定した医療保険の仕組みを構築し、将来にわたり国民の医療保障を確固たるものとする必要があります。とりわけ、急増する高齢者の健康を保持し、適切な医療の確保を図るため、老人保健制度や地域の住民の健康を守るための国民健康保険については来年度においてその見直しが予定されております。  これら両制度の帰趨は、将来の医療保険制度あり方考える上でも極めて重要なものになると思われますが、これらについて総理の御所見を伺います。  続いて、土地問題について伺います。  最近の地価動向を見ますと、東京圏では全体として地価の鎮静化が進んできておりますが、その水準は高値横ばい、その外周部では依然として地価上昇が続いているほか、特に大阪圏、名古屋圏等の地価上昇には著しいものがあります。加えて、昨今の金融緩和状況等を勘案するならば、今後の地価動向にはなお予断を許さないものがあるのであります。  東京都心部に端を発した今回の地価高騰は、今後の社会資本整備に支障を及ぼすことはもちろんのこと、特に大都市地域の勤労者にとってはマイホーム取得の夢が遠のき、土地を持つ者と持たざる者との資産格差拡大し、社会的不公平感を増大させてまいります。こうした土地問題に適切に対処していくためには、まずは土地基本法の早期制定を図り、これに基づき、市街化区域内農地の宅地並み課税など土地税制の整備を含む総合的な土地対策を早急に講ずる必要があると思うのであります。  総理土地対策に取り組む決意及び大都市圏の住宅供給促進についての考え方を伺うものであります。  終わりに、一言申し上げます。  我々は、結党以来の厳しい敗北を厳粛に受けとめ、今徹底した原因の分析の中から思い切った出直し的改革を図っております。今日ある我が国が、世界でも例がなく平和と繁栄であるのは、国民が我が党を長きにわたって信頼し、政権をゆだねたからにほかならないのであります。確かに、今回の選挙において、我々を支持する票がムード的に消費税反対、自衛隊を憲法違反としている社会党へ大きく流れました。がしかし、このことから国民は本当に社会主義政権の誕生や社会主義の国となることを心から望んでいるのでありましょうか。断固、そうでないと思うのであります。  我々は、今回の敗北を肝に銘じ、解党的な気持ちでみずからの政治不信を速やかに是正して党の再生を図り、機敏にして大胆な政策を敢行して国民の信頼を取り戻さねばなりません。そのためにも、まず我々がなすべきことの第一は、今次国会において社会党を中心とする野党の消費税廃止法案等の矛盾をつき、非現実性をただし、国民にこの欺瞞性を知らしめることにあると思うのであります。  我々は、これまで国会の駆け引きとして常習されてきた審議拒否と強行採決の悪循環を断ち切り、堂々と論議する国会へさま変わりし、国民から理解され期待される参議院へ前進することが参議院改革の真の姿であると存ずるのであります。  最後に、我々は、国民の心を絶えず銘記して、捲土重来を期し、平成時代の新しい自由民主党へ大きく生まれ変わることをお誓い申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手
  9. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 大島先生にお答えをいたしますが、政治姿勢についての御指摘は、私は厳しく承っておりました。  七月の参議院通常選挙において示された有権者の御意思を厳粛に受けとめるべきことば御指摘のとおりでございます。私は、「対話改革」の精神に基づいて、政治改革の実行を通じて、御指摘のように、政治及び自由民主党に対する国民の信頼の回復のために全力を挙げて努力をしたいと決意しております。  参議院の議会運営につきましても、御提案のように、徹底した審議、話し合いが行われますことを心から期待いたしております。  国政を担当していく上で決意はいかがとおっしゃいますが、第一に、外に向かっては、日本世界のために何ができるか、何をなすべきかを改めて点検してその方策を決定し、世界の平和と繁栄のために汗を流していこうという志のある外交を展開したいと考えますし、日本はまた、一つの価値観を持った国として諸外国から注目されるような国になりたい、これに向けて努力を続けてまいる決意であります。  国内にあっては、「対話改革」を行い、政治への信頼の回復に努め、その上に立って「公正で、心豊かな社会」の実現を図りたく、そして来るべき二十一世紀に向けて、お互い心が通い合い、生気あふれる社会を築いていきたいという強い願いを持って取り組んでいく決意でございます。  政治改革に当たりましては、政治倫理の確立をすることがまず第一の要諦であり、そのため、政治資金における公私の区別の明確化と透明性の確保、金のかからない政治活動や政策中心とした選挙の実現など、抜本的な改革が不可欠であると思っております。政治改革に関する有識者会議の提言や党政治改革委員会政治改革大綱を踏まえて、定数是正を含む選挙制度及び政治資金制度改革のための具体的な方策については、既に選挙制度審議会において御検討をいただくようにお願いしたところでありますが、来年三月を目途になるべく早く御答申をいただくようにお願いしておるわけであります。御答申をいただいた上は、各党各会派の御理解と御協力をいただきながら、実現に向かって御指摘のように努力をしてまいりたいと考えております。  公職選挙法の改正案及び政治資金規正法の一部改正案、資産公開法案等について御意見がございましたが、国会において御審議の上、早急に適切な結論が得られますことを心から期待いたしております。  選挙制度につきましては、政策本位の選挙の実現という見地から選挙区制のあり方を検討することが必要であると考えますし、御指摘の参議院の比例代表選挙についてはいろいろな問題点指摘されておるところでございます。国会でこの点についての御議論も行われるよう期待をするとともに、政府としても、選挙制度審議会等の答申に含まれてくるならば、これをもとに検討させていただくつもりでございます。  消費税の定着に向けた私の決意でありますけれども、消費税というのは、ただ単に消費税だけでこれを御理解いただこうというのではなく、税制改革全体の中の一環として検討し続けてきた問題であること、同時にまた、それは急速に進む高齢化社会に備え、社会共通の費用は、できるだけ広くできるだけ薄く、国民全体で分かち合い、国民全体で支えていくような社会の仕組みをつくろうという、それを今から用意していこうという願いがあるものでありますし、また、サラリーマン層を中心とした重税感、不公平感を解消するためには、働き手に対して大幅な所得減税を行うとともに、国民生活の規模に応じた負担をお願いすることが必要であるとの観点から考え税制改革の一環でございます。さらに、従来の個別間接税制度が直面していたいろいろな矛盾点や問題点を根本的に解決し、二十一世紀にふさわしい間接税制度にする必要があるとの考えからこれは提案し成立させたものでありますから、一層の御理解も求めていきたいと考えております。  見直しにつきましては、いいと思って提案したものをなぜ見直すかという御指摘もありますが、消費税の問題については、参議院選挙各種世論調査等の結果を私どもは謙虚に受けとめておるわけであります。消費税の真の定着を図るためには、どこをどう考え直し、どうしたらいいかということ等について各界の御意見を承らなければなりません。既に税制調査会において消費者団体、福祉団体等各層から生の声を伺うなど精力的に努力はしておりますけれども、実施状況を十分に把握し、消費税を取り巻くあらゆる事項について議論した上で結論を出すことが必要ではないかと考えております。いずれにしましても、できるだけ早い機会に国民の皆さんの御理解と御納得が得られるような具体的な案をお示しできるようにいたしたいと考え、ただいま努力をしておる最中であります。  行政改革は、いついかなる内閣においても、社会経済情勢の変化に応じて絶えず進めていくべき重要な課題でありまして、今後とも引き続き公正でむだのない行政の実現のために全力を挙げて推進していく考えであります。  外交問題にお触れになりましたが、先般の日米首脳会談は、日本アメリカの信頼関係、日本アメリカの友好協力関係の基盤というものが戦後日本を支えてきたものであると考えておりますし、この基盤に揺るぎがないことを私自身からブッシュ大統領自身に直接語るとともに、会談を通じて日米関係の基盤である安全保障体制を堅持していくことを確認し、さらに、二国間のみの問題ではなく、世界的な規模の問題についても責任を分かち合い、平和と安定のために努力をするという、その基本的な考え方について意見の一致を見ましたし、また、経済構造協議問題を初め両国の間にわだかまっております経済不均衡の問題については、話し合いによってお互いの立場を理解し合いながら、信頼関係と包括的な日米関係を見失わないように解決の努力をしていこう、さらに日本としても、この問題に取り組み、経済構造を変えていくことは国民生活の質の向上にも直接つながるものであるという認識から、一層これには努力をしていく決意を固めてきた次第であり、有意義な日米首脳会談が行われたものと私は考えております。  中国情勢につきましても、御指摘のように、伊東日中議連会長その他から御帰国になって報告もいただきました。今、中国は国内の情勢も一応収拾され平静化しているものと思いますが、しかし一方で、北京の中心部には依然として戒厳令が継続していること等も事実である、中国情勢はなお当面注視していく必要があるということでございます。  日中関係は、国交正常化以来おおむね順調な発展をたどってきておりますが、ただ、本年六月四日のあの異常な事態の発生によって、現在のところ、両国間の協力、交流等は制約されており、停滞状態になっておることは御承知のとおりでございます。私は、先生の御意見もあり、中国が開放・改革政策をとり続ける限り近代化建設協力に対してはできる限り協力するとの我が国基本的な方針は変わっておりませんし、中国もまたそのような環境をつくり出すべく積極的に努力されるように期待をし、中国のそのような動きというものは、日本と中国のみならず、アジアの平和と安定にとっても極めて重要な関係があると認識いたしております。  また、農業の将来展望についても申されましたが、農業者に信頼される農政を確立すること、我が国農業に新たな展望を切り開くこと、生産性の向上を考え基本的な食糧供給力を確保していくことが大切ではないかという御意見には私も全く同感でございます。政府といたしましては、将来に希望を持って行っていただくことができるように、現在の長期見通しにかえまして、二〇〇〇年を目標年次とする新たな農産物の需要と生産の長期見通しを策定する考えでございますので、御理解をいただきたいと思います。  米についてのお尋ねもありましたが、米問題については、我が国における米及び稲作の格別の重要性にかんがみ、国会における御決議の趣旨を体し、今後とも国内産で自給するとの基本的な方針で対処してまいる考えでございます。  年金関連法案は、生活水準の向上等に見合った年金額の改善制度の長期的安定を図るためのものであり、今国会においてぜひ成立させていただくことを心から期待いたしております。  本格的な高齢化社会に向けて、国民のだれもが生涯にわたり健康で生きがいを持って暮らせるとともに、寝たきりや痴呆などの介護を受けないで済むような状態に持っていくためにも、住みなれた地域や家庭で安心して暮らしていけるような総合計画が必要だと考えております。積極的にその方向に向けての政策努力を重ねてまいります。  また、将来の高齢化社会を担う児童の健全育成は、今後の我が国の重要な課題でありますことば御指摘のとおりでございます。  老人保健制度国民健康保険制度見直しにつきましても、現在、来年度見直しに向けて老人保健審議会において御検討をいただいているところであり、審議会の御意見を踏まえ、制度の長期的安定を図るため、全般について幅広い視点に立って検討を進めますし、国民健康保険制度については、御意見やあるいは社会保障制度審議会のお考えを十分に踏まえて、平成二年度において制度の長期的安定化のための改革実施したいと考えております。  土地につきましては、御見解を傾聴いたしました。政府としては、さき通常国会土地基本法案を提出いたしております。できるだけ早く成立をしていただくこと、これを希望いたします。本法制定後は、そこに示された基本理念や施策の展開方向に基づき、土地利用計画、土地取引規制、土地税制などの総合的な土地対策の推進に取り組んで問題解決に努力をしてまいりますし、大都市圏の住宅供給促進についても、これは御指摘のように、国民生活に豊かさを実感する上でも大切な課題でございます。かねてより、住宅金融、税制上の措置の充実、公社、公団等公的住宅の供給の促進、優良な宅地開発の促進、宅地開発と交通アクセス整備の一体化などなど、各般の施策を従来講じているところでありますが、今後とも、土地有効利用、住宅宅地対策等を総合的、積極的に進めて、先生の御意見の方向に向いていくように努力をさせていただきます。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手
  10. 橋本龍太郎

    国務大臣(橋本龍太郎君) 私にいただきました御質問の第一点は、消費税必要性、また税制改革自体について考え方を示せというお話でありました。  先般の税制改革は、よく御承知のように、昭和五十年代の後半に至りまして急速に国民の間に高まってまいりました税制改革を求める声、これにこたえるためのものでありました。すなわち、ゆがみやひずみ、またサラリーマン層を中心とする重税感を是正すると同時に、急速に高齢化の進みつつある我が国におきまして、社会共通の費用をできるだけうまく広く薄く国民全体で分かち合うことにより、安定的な財源を確保することを目的として行われたものであります。このため、働き手の所得に対する課税はできるだけ抑え、偏らず、生活の規模に応じて薄く広く負担していただく税を適切に組み合わせた税体系を今のうちから構築していく必要があり、今回の消費税を創設いたしました。  税の体系考えますとき、いかなる税目にも、それぞれに長所がある反面、短所もございます。例えば、所得課税というものは、所得水準に応じた累進的な負担を求めることができますが、所得の把握にはいろいろな困難が伴うものでありますため、実質的には公平の確保ができにくい場合もございます。消費税のような間接税にはいろいろな問題点もまたありますけれども、所得把握の状況いかんにかかわらず、消費の大きさ、すなわち生活の規模に応じて比例的な負担を求め得るという特徴もございます。  税制が特定の税金に偏っております場合には、その特定の税金の短所が増幅されることになる危険性があります。我が国の場合、まさに働いて得た所得に対する税金に偏った税制となっておりましたために、納税者の重税感、不公平感というものが高まっておりました。このため、今回の税制改革において、税制全体として実質的に公平な負担をしていただくという観点から、所得課税を大幅に軽減し、消費にも応分の負担を求めるとしたものであります。  近年、世の中の価値観や消費パターンの多様化、またサービスへの支出が大変大きく発展をしております中で、従来の物品税などはこれらの変化に対応できない時代おくれの税制となっておりました。また、経済の国際化が進展する中におきまして、特定の物品を、ねらい撃ちと言っては言葉が過ぎるかもしれません、特定の物品を選びましてまた高率で課税をいたしましたことから、諸外国からは不公平な制度と受け取られ、国際的摩擦を惹起したことも御記憶に新しいところであります。  消費税は、こうした前時代の遺物とも言うべき個別物品税制度の持つゆがみを是正し、二十一世紀にふさわしい間接税制度に改めることを目的としたものでありまして、ECを含む世界四十数カ国で同種の税金が実施され、既に国民生活に定着をしておりますことにも御留意いただきたいと思うのであります。  しかし、この消費税につきまして、経済取引とかあるいは物価情勢等を見る限りにおきましては、着実に国民生活に浸透しつつあるとも申せます。しかし、他方、消費者を中心消費税に対する御不満がなお残っておりますことも私どもよく承知をいたしております。これにはさまざまな原因があると思います。しかし、税制改革全体の姿、あるいはなぜその消費税が必要であるかについて、幅広い観点から国民に御理解をいただくために必要な説明でありますとか、あるいは御納得をいただくための努力が十分でなかったということば深く反省をいたしております。  幸い、税制に対する国民の御関心が先般の選挙を契機にかつてない高まりと広がりを見せております。この得がたい環境の中で、政府としては、消費者向け広報について従来より一層わかりやすい表現などを工夫したり、また積極的な取り組みの中で、消費税の創設を含む今回の税制改革の意義と必要性についても、全力を挙げて粘り強く国民各層に訴えかけてまいりたいと思います。  また、国税当局におきましては、消費税に関するいわゆる弾力的運営期間が終了したところでありますが、税制改革法の趣旨を踏まえまして、十月以降もしばらくの間は執行面において広報、相談、指導を基本とした施策を引き続き推進し、定着のために資してまいりたいと考えております。  同時に、真の定着を図りますためにも、現行制度見直しを行うために既に税制調査会におきまして消費者団体、福祉団体等から幅広く生の御意見を伺うなど、見直しのための勉強を精力的に進めていただいてまいりました。消費税制度は、納税者であります事業者と税の実質的な御負担をいただく消費者の双方に深く関連するものでありますから、その見直しを検討するに際しましては、まず双方の御意見を、またデータを十分把握することが必要であります。見直し内容につきまして、税制調査会の御議論の中で検討をいただけるものと考えておりますが、現在、私といたしましては、お手紙による御意見等も多数ちょうだいをいたしております。こうした各方面から出された御意見を幅広く議論の対象としていただきたいと考えております。  いずれにしても、各年度税制改正につきましては、予算編成と一体のものでありますから、その日程をも念頭に置きながら、国民の御理解と御納得の得られるような具体的な姿をお示しできるように全力を挙げてまいります。  私どもは消費税廃止する考え方を持っておりませんが、野党の御提案になる消費税廃止に伴う代替財源案について、御意見を述べられながら求められました。去る九月二十六日に発表されました御提案を拝見する限りにおきまして、ゆがみのありました改革前の個別間接税制度を復活されるなど、問題点があるように思われます。  しかし、いずれにいたしましても、四野党の消費税廃止代替財源税制改革等に関する法律案が国会において御審議を受けます場合、内閣意見を求められることと思いますので、政府としての意見はその場において申し上げることになろうと思います。  また、来年度予算編成についてお尋ねがございました。  現在、我が国財政は元年度末百六十一兆円程度の多額の公債残高を抱えまして、これから生じます利払い費が歳出総額の約二割を占め、政策経費を圧迫する状況にあります。また、NTT株式の売却が中止になりましたことによりまして国債整理基金への繰り入れを行わざるを得ない状況に至りましたこと、また、NTTの無利子貸付事業につきましても財源を含め検討する必要が生じましたこと等をあわせて考えますと、我が国財政は一層厳しい状況にあると申し上げて過言ではないと思います。  一方、急速に今後進展してまいります人口の高齢化、また国際社会における我が国の責任の増大等を考えますと、財政対応力の回復は不可欠でありまして、財政改革必要性はいささかも減じておりません。さらに、新しい税制国民の御理解と信頼を得て十分定着をするためにも、行財政の効率化というものは一層重要であると考えております。  なお、現在我が国の経済につきましては、内需を中心として順調な拡大が続いており、労働需給が引き締まり基調となっております等考えまして、現在積極的な財政運営を行うことは必要ではないと考えております。  こうした諸点を踏まえまして、平成二年度予算におきましては、財政事情は厳しい状況にありますけれども、財政改革の第一段階の目標でありました特例公債依存体質脱却というものに対して、この実現に全力を尽くすとともに、引き続き公債依存度の引き下げに努めるなど、健全化、効率化に努力してまいりたいと考えております。  また、その後における目標ということでありましたが、仮に平成二年度に赤字公債依存体質から脱却できましたとしても、国債残高の累増に伴う国債費の重圧はなお持続していくと思われます。また、現状における歳出の繰り延べや国債費の定率繰り入れの停止などの臨時特例措置が継続されていることから考えまして、引き続き財政改革を強力に進めていく必要があると考えております。現在、財政制度審議会において御検討いただいておりますが、引き続き努力をしてまいる所存であります。(拍手)    〔国務大臣中山太郎君登壇、拍手
  11. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 大島議員お答え申し上げます。  まず第一に、お尋ねの日ソ外相会談の問題でございますが、国連での今回の日ソ外相会談におきまして、ソ連側より一九九一年のゴルバチョフ書記長訪日の意向の表明がございました。御案内のように、東西関係が厳しい対立関係から対話の時代に向かいつつある今日、ソ連側が同書記長の訪日時期につきまして具体的に述べたのは初めてのことであり、ソ連側の対日関係の改善について真剣な対応を示してきたものと評価をいたしております。  日ソ間の真の関係改善実現のためには、北方領土問題を解決して、平和条約を締結することにより、両国間に相互信頼の基盤をつくることが不可欠であると考えております。また、平和条約交渉の進展とともに、その他の要素を含め日ソ関係全体を拡大均衡させてまいりたいとの考えを有しております。かかる基本的な考えに立ち、明年三月のシェワルナゼ外務大臣の訪日、それを受けての我が国の外務大臣の訪ソ等、今後とも対話拡大強化を通じ、日ソ関係の改善に努力をしてまいる所存でございます。  次に、お尋ねのございました政府開発援助についてお答えを申し上げます。  我が国は、重要な国際貢献政策の柱の一つといたしまして、政府関係開発援助の計画的な拡充に努めてきた結果、今日、世界でもトップクラスの援助国となりました。その援助の実施を支える体制につきましても、逐次充実が図られておりますけれども、なお一層効果的、効率的な運営を行い、相手国民に喜ばれる、さらに評価される援助を行っていくためには、今後ともその充実に努めなければならないと考えております。  具体的には、第四次中期目標にあるとおり、援助要員の拡充、国別専門家の育成、地域研究の充実、案件の発掘・形成機能の強化、評価活動の充実、コンサルタントの活用等を含む援助実施体制の充実にさらに努めてまいりたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣鹿野道彦君登壇、拍手
  12. 鹿野道彦

    国務大臣(鹿野道彦君) 大島議員お答えをいたします。  まず、今後の構造政策基本方針につきましてでございますが、我が国農業を発展させていくには生産性の向上を一層進めていかなければなりません。そして、国民の納得できる価格で安定的な食糧供給をしていく、この必要があるわけであります。このために、効率的な農業経営を可能にするため、基礎的条件である農業生産基盤の計画的な整備を推進するとともに、担い手の育成と地域農業あり方について合意の形成を図りながら、すなわち、お互いの理解をし合いながら、農用地利用増進法を活用して農地の貸し借り等を進めていくということが重要なことだと思っております。  さらに、構造政策を円滑に進めるために、農村地域におけるところの工業の導入等によりまして就業機会を確保する、都市と農山村との交流を一層高めていく、活動を展開していく、そして地域の資源を生かしていく、このようなことが重要であると思います。このような対策を一層進めながら、農業、農村の活性化を図ってまいりたいと思っております。  次に、土地改良の負担金対策につきましてですが、農業をめぐる内外の非常に厳しい情勢の中で、土地改良事業費の増大等に伴い、農家負担金の軽減が問題になっております。この問題に対処するために、土地改良の事業費単価の抑制なり、国営事業の再編成あるいは負担金の償還方法の改善等、農家負担の軽減のためいろいろな施策を今日まで講じてまいりました。  さらに、最近における厳しい農業情勢の中で、土地改良負担金の償還が困難な場合も考えられますので、農林水産省といたしまして負担金対策は大変重要だと、このような認識からプロジェクトチームを設けまして、そして土地改良事業は全国で今実施されておるのが約五千五百カ所くらいございます。まず、実態を把握しなきゃならない。こういうことで調査検討し、そして、それが明らかになる上においてしっかりとした施策を講じてまいりたい、このように考えておるところであります。  次に、食糧自給率の低下要因、このことにつきましては、我が国の食用農産物の総合自給率、すなわち米、小麦等主要主食用穀物の自給率につきましては七割程度を維持しております。ところが、穀物自給率につきましては、先ほど大島議員のおっしゃいますとおりに、三割程度でございます。これは、食生活の変化が進んできた、すなわち米の消費が減退して畜産物の消費がふえてきた、こういうふうなことでありまして、このような中で、国土資源に制約のある我が国では、畜産に必要となるところの飼料穀物の大部分を輸入に依存せざるを得ない、こういうところが要因であるものと認識を持っておるところであります。  以上でございます。(拍手
  13. 土屋義彦

    議長土屋義彦君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 土屋義彦

    議長土屋義彦君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十三分散会