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説明員(
濱崎恭生君) 御
指摘のとおり、今回の
改正の柱の
一つといたしまして、
利用頻度の高い
仮処分についてその
執行方法及び
効力を
明確化する、あわせてその
内容の
改善を図るという
改正をしているわけでございます。この対象にしておりますのは、
仮処分の中で非常に大きな割合を占めております
係争物に関する
仮処分としてのいわゆる
処分禁止の
仮処分及び
占有移転の
禁止の
仮処分、これが中心でございます。
これらの
仮処分は単に
利用頻度が高いというだけではなくて、
係争物に関する
仮処分として極めて定型的に発令されるものでございます。しかも、その
効力につきましてはこれまで
解釈で大勢において
異論のないところが煮詰まっておって、ただ、
解釈にゆだねておいたのではその
目的を適切に達することができない若干の部分がある。そういう問題でございますがために、その
効力について
明確化を図るということについて余り大きな
異論がない、そういう立法をすることが比較的しやすい、かつそれを
明確化することが適当であるということでございますために、そういう主要な
仮処分につきまして
効力の
明確化、
適正化を図るということにしているわけでございます。
ところで、個々の
制度についてでございますが、まず
不動産登記請求権を
保全するための
処分禁止の
仮処分につきまして
規定を設けることにしております。これは
委員御案内のとおり、
処分禁止の
仮処分は
登記をするという
方法によって行われるわけでありますが、
登記をしましても、その後に
第三者に対するいろんな
登記をするということは禁じられておりません。
登記をすることはできる。しかしながら、
仮処分におくれる
登記につきましては、その
仮処分の被
保全権利としての
登記が実現される場合にはその
登記は抹消されるという
取り扱いが現在
解釈、
運用において定着しているところでございます。まあそれは
仮処分の
当事者でない
第三者に
影響を及ぼす
事柄でございますから、その
効力を明らかにした方がいいと、
規定上明らかにした方がいいということでその
規定の
明確化を図るということが
改正の第一点でございます。
それから、
第三者の
登記は今申しましたようなことで被
保全権利の
登記がされる場合には抹消されるわけでございますが、現在の
運用におきましては抹消される
第三者が全く知らないままに抹消されてしまうという
運用がされておりまして、これでは
第三者の立場を保護するという観点から十分ではないのではないか。もちろん
第三者としてはそういう
登記がされていることを承知の上でおくれる
登記をしたわけでありますから、一般的に言えばそれは後で消されても仕方がないということなのかもしれませんけれ
ども、ただ、その
仮処分の
原因になりました被
保全権利とは別の後から生じた
登記原因に基づいてその
仮処分当事者間で
登記をしたとか、あるいは
第三者が
仮処分債権者に対抗することができる
権利を持っているとか、そういう場合には抹消された
登記をもとに戻してもらう、抹消
登記の回復の
登記の請求をすることができるという実体的な
地位にあるわけであります。そういう
権利を的確に行使することができるようにするためには、少なくとも抹消をする前にあらかじめ抹消するということを通知するぐらいの手当ては必要であろうということで、そういう
第三者の保護のための手当てを設けるというのが第二点でございます。
第三点目といたしまして、これも
委員御案内と思いますが、例えば抵当権の設定
登記請求権を
保全するために
処分禁止の
仮処分をするということも現在認められておりますが、抵当権の設定
登記請求権を
保全するという見地からいたしますと、後に
仮処分におくれてされた
登記をその抵当権設定
登記を実現する際に抹消してしまうまでの必要はないはずであります。後で
所有権を取得した者に対してその被
保全権利たる抵当権が対抗することができる、優先することができるということであれば足りるわけでありますが、現在特別の手当てが設けられておりませんために、一般の場合と同様にその抵当権設定
登記をする際に
第三者の例えば
所有権移転
登記を抹消してしまうという
取り扱いがされておりますが、これは
仮処分の
目的からいえば過ぎたる
効力を与えているということで問題があったわけであります。
そこで、そういう場合につきましては、いわばその被
保全権利の順位を
保全する
効力が与えられれば足りるということにするのが適当である。その
方法としていろいろ検討がされたわけでありますが、
不動産登記法上の仮
登記という手法を借用することによってその順位の
保全の
効力を実現させるということが適当であろうということで、
仮処分による仮
登記、
保全仮
登記と呼んでいますが、その手法を用いましてその
所有権以外の
権利の保存、設定等の
登記請求権の
保全のための
仮処分についてはそういう
執行方法をとり、そういう
効力のみを認めるということにしたわけであります。
いま一点は、
占有移転禁止の
仮処分の
効力の問題でございますが、これも
実務上極めて多用されている
仮処分でございます。これにつきましても現在の
解釈はほぼ定着しているわけでございますが、現在の
解釈運用上問題がありますのは、一点はその
仮処分執行後に占有を債務者から承継した者に対しては
仮処分の
効力が及ぶけれ
ども、占有の承継ということではなくて、例えば空き家になっているところを勝手に占有したとか、あるいは実力でもって占有したとか、そういう非承継の
方法で占有を取得した者に対しては
仮処分の
効力は及ばないというのが定着した
解釈でございます。そういう
解釈でございますといわゆる占有屋という執行妨害を専ら行う人たちの活躍の道をあけるということにつながっておって、その
仮処分の
実効性が十分に確保されない。
そういう問題がありますために、この点につきましては、
仮処分の存在を知って占有をした者につきましては、債務者からの承継という
方法によらないで占有を取得した者に対してもこの
仮処分の
効力を及ぼすことにするという
改正を実現したわけでございます。
あわせてこの点につきましても、そういう執行を受ける
第三者の
主張すべき
権利がある場合にはその
権利の保護の機会が確保されるように、それを争うことができる立場にある
第三者は簡易な執行文付与の
異議の申し立てという
方法によってその執行を排除することができるという道を明確にいたしまして、あわせて
第三者の立場の保護も図るという
改正をしようとしているわけでございます。