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1989-12-07 第116回国会 参議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十二月七日(木曜日)   午前十時四分開会     ─────────────   委員異動  十二月六日     辞任         補欠選任      石渡 清元君     山本 富雄君  十二月七日     辞任         補欠選任      斎藤 十朗君     鹿熊 安正君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         黒柳  明君     理 事                 鈴木 省吾君                 福田 宏一君                 安永 英雄君                 白浜 一良君     委 員                 鹿熊 安正君                 下稲葉耕吉君                 中西 一郎君                 林田悠紀夫君                 北村 哲男君                 清水 澄子君                 千葉 景子君                 橋本  敦君                 山田耕三郎君                 紀平 悌子君                 櫻井 規順君    衆議院議員        修正案提出者   井出 正一君    国務大臣        法 務 大 臣  後藤 正夫君    政府委員        法務大臣官房長  井嶋 一友君        法務大臣官房審        議官       米澤 慶治君        法務省民事局長  藤井 正雄君        法務省人権擁護        局長       高橋 欣一君        法務省入国管理        局長       股野 景親君    事務局側        常任委員会専門        員        播磨 益夫君    説明員        警察庁刑事局国        際刑事課長    村上 徳光君        外務大臣官房領        事移住部審議官  田辺 敏明君        文部省学術国際        局学術課長    雨宮  忠君        厚生省保険局国        民健康保険課長  大塚 義治君        労働省労働基準        局監督課長    氣賀澤克己君        労働省職業安定        局次長      齋藤 邦彦君        労働省職業安定        局外国人雇用対        策室長      吉免 光顕君        労働省職業能力        開発局海外協力        課長       南本 禎亮君        労働省職業能力        開発局企画室長  鈴木 直和君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付) ○民事保全法案(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 黒柳明

    委員長黒柳明君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、石渡清元君が委員辞任され、その補欠として山本富雄君が選任されました。     ─────────────
  3. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 清水澄子

    清水澄子君 今回の改正案の中で最も重大な問題点というのは、雇用主処罰であろうかと思います。この雇用主処罰にかかわってですが、日本国内で本当に、単純労働外国人労働者に入られてはもう非常に困るんだという世論とか、それから一日も早く雇用主処罰してほしいという世論が本当に日本国内にあるのかどうかという観点からもお伺いをしたいわけです。  法務省が二月に発表されました外国人就労に関するアンケートを見ましても、この調査の中で雇用主に対する罰則を一層厳しくして取り締まるべきだという回答は二四・六%にとどまっていると思います。そしてまた、朝日新聞の世論調査におきましても、そういう外国人労働者を何らかの条件をつけて受け入れるべきじゃないかというのが五六%。そしてまた都民銀行調査によりましても、条件つき雇用を認めるべきだ、これが五九・一%ございます。そしてまた総理府の調査によりましても、外国人入国と在留に関する世論調査の中でも、一定条件をつけて認めるべきだ、これが五一・九%にも上っています。  こういうふうな国内世論考えました場合に、雇用主処罰強化については、本当に国民がこれを全面的に支持しているとは思えないのですが、その点につきまして法務省はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  5. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) お答えいたします。  この雇用主等処罰規定を設けるに際しましては、例えば使用者側団体あるいは労働者側団体である例えばこの間できました連合方々等にいろいろ御意見伺いました。特に注目すべきことは、連合書面をもちまして、時期は少し忘れましたがこの法案作成中に、雇用主等処罰規定を設けるべきであるということを大臣あて書面でお出しになっておられますし、他方経団連日経連等方々にもお伺いしましたところ、やはり不法就労活動それ自体は何とか防圧しなければならないであろう。他方今清水委員のおっしゃいました単純労働者を受け入れるべきかどうかという点につきましては、アンケート調査等がございますし、あるいはまた関係省庁で議論いたしておるところでございますから、将来におきましてその是非が十分な検討の結果結論を得られることになろうと思うわけであります。  したがいまして、雇用主処罰規定を設ける趣旨と、それから我が国にどのような外国人労働者を入れていくべきかという面とは、正規面不正規面に分けてお考えいただきたいと思うわけでございます。私どもといたしましては日本国社会内においては雇用主等処罰規定を必要だとする意見が相当強いものと確信いたしております。
  6. 清水澄子

    清水澄子君 この間、五日にこの法務委員会で述べられました参考人の御意見をぜひ私は法務大臣に聞いていていただきたかったと思いました。それは、私どもが、今度のこの処罰規定によって不法就労者というものがなくなるだろうか、実効性が上がるでしょうかということの見解を求めました。  それに対しまして四人の方とも、それはこれで問題は解決しないでしょう、実効性は上がらないでしょうというお答えがございました。そしてそれは、雇用主処罰強化をした場合にむしろ大きな問題点は、いわゆるこの不法就労がなくなるというのじゃなくてますますアンダーグラウンド化していく、世間の目から悪質なあっせん業者などが見えなくなって、むしろ、どうしても日本には経済的な弱者の中でアジア諸国から生活を求めて労働者が入ってくるだろう、そういう人たちがこういう悪質なあっせん業者などのえじきになってむしろますます深刻な人権問題を引き起こしていく可能性が強い、アングラ化すればするほどそういう悪質な業者はいい商売になるんだ、だから非常にその点では逆効果も大きくなるのではないかという御指摘がございました。  その点については法務省はどのようにお考えになっておりますか。
  7. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) お答えいたします。  まず、罰則をつくって当該罰則をつくります目的でありますところの反社会的行為が完全に防圧されることがあるのかといいますと、これは委員承知のように、例えば刑法で殺人とか窃盗とかを処罰するという規定を置いておりますが完全にはそういった反社会的行為はなくならない、これは常識でございますので、参考人の方がおっしゃいました御意見もその限度では私正しいかと思うわけでございます。  したがって、今度の罰則をつくりましてその罰則だけで何とかしようというわけではございません。むしろ、この罰則をつくりますことによりまして、現在は不法就労活動を助長しても反社会的ではないという一般意識がもしあるとすれば、それにより意識改善といいますか、意識変革を求めつつ、かつまた悪質な方々に対しては罰則を適用することによって一罰百戒の効果を上げる。他方、こういう法改正を行って、不法就労活動がいかに社会にとってマイナス面が多いかということも広報をし、あるいは我々は入管当局として行政を運営するわけでございますから、行政指導面におきましてその辺の意識開発、啓発をする、あるいは不幸にして若干軽微な事案を惹起された方にはこれを行政指導是正を求めるというようなことも総合的に実施いたしまして、そして不法就労活動ということは何とかこれ以上ふえないようにしていきたいというのが願いでございます。
  8. 清水澄子

    清水澄子君 私は決して悪質な雇用主を放置しておいていいと言っているわけではございません。例えばこの七十三条の二の項にあります「外国人不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者」とか、または「業として、外国人不法就労活動をさせる行為」を「あつせんした者」という、こういう号が罰則対象になっているわけですけれども、この二つを見ましても、これはどちらかといえば労働法規の範囲で対処できる部分が非常に多いと思うわけです。ですから、この辺で私は労働省の方にお伺いをしたいと思います。  これらに掲げられてありますこの二とか三、これらの悪質な業者使用者、いわゆるあっせんした人たちを摘発して処罰するという、そういうことの労働関係法規というものはどういうものがありますか。
  9. 氣賀澤克己

    説明員氣賀澤克己君) お答えいたします。  労働関係法規の中で労働者の適正な労働条件を確保するために必要な措置雇用主に講じさせている法律といたしましては、労働基準法あるいは労働安全衛生法あるいは最低賃金法というような法律がございます。また、労働力の適正な需給調整を図る等によりまして労働者保護を図るということを目的とする法律といたしましては、職業安定法あるいは労働者派遣法というようなものがございます。これらの法律はいずれも、不法就労者を含みます外国人労働者につきましても適用されるというふうになっているところでございます。
  10. 清水澄子

    清水澄子君 もう少しそれらのそれぞれの法の内容を列挙していただきたいと思います。例えば中間搾取はいけないとか強制労働はいけないとか、暴行とか軟禁はいけないとか全部書いてあるわけですから、それぞれの内容を列挙していただいて、そしてそういう列挙された中でこれまで実際にそういう悪質なケースで摘発された具体的な例をぜひ一、二お示しいただきたいと思います。
  11. 氣賀澤克己

    説明員氣賀澤克己君) ただいま申し上げましたような労働関係法令におきましては、労働者労働条件安全衛生の確保を図り、あるいは労働力の適正な需給調整を図るということによりまして労働者保護雇用の安定を図るというようなことを目的としておりまして、事業主等に対してさまざまな義務を課しているところでございます。  具体的に申し上げますと、まず労働基準法におきましては、賃金の支払いですとか労働時間、休憩、休日等に関する規制あるいは強制労働の禁止、中間搾取の排除というような事業主等が遵守すべき労働条件最低基準を定めております。また労働安全衛生法におきましては、例えば事業主機械、器具あるいはそのほかの設備による危険を防止するために必要な措置を講じさせるというようなことで、労働災害の防止のために事業主が遵守すべき基準等を定めております。それから最低賃金法におきましては、事業主に対して最低賃金額以上の賃金を支払うようにというような措置を講じております。また労働者派遣法におきましては、労働力需給の適正な調整を図るというために労働者派遣事業について対象とし得る業務を限定いたしまして、その業務について労働者派遣事業を行う場合におきましても許可制または届け出制というような形で行政監督を行うことができますようにいたしておりまして、これ以外の業務について労働者派遣事業を行うことを禁止するというような措置を講じているところでございます。  これらの労働関係法規違反についての具体的な事例でございますけれども、まず労働基準関係法令に関する違反事例を申し上げますと、一つは、これはパキスタン人労働者でございますが、埼玉県の金属製品製造業事業場におきまして六十トンのプレス機械で自転車のチェーンの型抜き加工というような作業を行っていまして、その製品の取り出し方を誤ったために両手首をプレス機械で挟まれて切断するというような労働災害が発生をいたしまして、これについて、労働安全衛生法プレス機械安全装置等に関する規定違反をしたということで使用者等を送検したというような事例がございます。また、これは千葉県のビジネスホテル清掃作業に従事をしておりましたフィリピン人就学生に関するものでございますけれども法律で決められております事由以外の事由によりまして賃金の一部が控除されていたということで、これも労働基準法賃金全額払いの原則に違反をするということで送検をした事例がございます。  また、労働者派遣法関係で申し上げますと、労働者派遣を行うことが禁止されております自動車部品製造事業におきまして、組み立てとか塗装あるいは検査等業務ブラジル人等日系人を派遣して就業させていたという事業主に対しまして、これは労働者派遣を行うことが禁止されている業務でございますので、こういう業務については労働者派遣を行わないように是正方指導をいたしまして、その適正な改善が図られなかったということで所轄の警察署とも連携をとって、事業主派遣法違反で摘発をされたというような事例もございます。  まだ幾つか事例がございますけれども、二、三申し上げますと以上のとおりでございます。
  12. 清水澄子

    清水澄子君 今お伺いしておりましても、現行法の中でも一定処罰が可能であるというこういう法律現行法にあるわけですが、法務省はなぜこの現行法をさらに有効に機能させるように努力をされないのでしょうか。そして、労働省に対して法務省は、悪質な雇用者やまたはあっせん業者処罰するために法務省がむしろ労働省に通報されて、そして取り調べのためには労働省関係の方の立ち会いを求めていき、そして労働者の方の保 護もあわせながらこの処罰をしていく面はきちんと処罰をする、そういう努力が必要であろうと思うのですけれども、そういう努力をどれほどなさってこられたのでしょうか。もしなされたのであれば、この五年間ぐらいにそれらの法を適用しながらどの程度の例が、ケースがあるのかということをお答えいただきたいと思います。
  13. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 私、現在その統計自体を持っておりませんので数字的なことを直ちにはお答えいたしかねますので、後で調べましてお答えいたしますが、確かに委員指摘のように労働関係法規におきまして例えば中間搾取とか強制労働等に対する罰則がございます。これは当然のことながら労働者保護とかあるいは雇用関係調整等のために設けられておる罰則でございまして、つまり、労働行政を円滑に遂行し得るためにその担保として罰則を設けておるわけでございますが、他方、今度設けますのは入管行政目的にうまくマッチした実態が実現するようにという観点から設けるわけでございまして、導入いたします目的がそこには若干の違いがあるだろうと思うわけでございます。  この罰則をつくります場合に、労働関係法規は当然私どもも十分勉強させていただきまして、重複するところがあるかないか、そして雇用主処罰規定を設けることが妥当かどうかという観点から労働関係法規を調べましたが、例えば一例を挙げますと、あっせん行為者国外におりました場合には国外犯処罰規定というのが要るわけでございます。労働関係法規には例えばそういうふうな罰則を持っていないわけでございますので、一例を挙げればそういうことでありますし、それから法定刑におきましても、例えば利を図る人たちが、そのあっせん者とかあるいは雇用主もそうでございますが、もうけようとしてそういう行為をなさる、その場合にやっぱり財産的な罰則といいますか、罰金額を相当程度上げておかないと防圧には役に立たないであろうという観点からいいますと、労働関係法規法定刑自体もやや軽きに過ぎるのではないかとか、いろいろな観点を吟味いたしまして設けることにしたわけでございます。  それから、統計的なことは後で申し上げますが、我々が入管法違反あるいはその他のことから労働関係法規違反を発見した場合には、当然のことながら労働基準局に通報といいますか、事実上連絡をとりまして、やはり労働者保護を図ってもらいたいということから実際に連絡をとり、その結果として例えば、何というんでしょうか、業務災害の補償を得られて帰国された外国人の例も現実にございます。統計のことは後で申し上げます。
  14. 清水澄子

    清水澄子君 国外におけるリクルーターの問題とかそういう問題に限られているというふうに理解してよろしいですか。
  15. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 私がお答えいたしましたのは、立法必要性についての一つの例を申し上げたのでございまして、一番一般的に申し上げますと、資格外活動なり不法残留なりをしてなお就労されているという実態、これがどんどん年々ふえていくということは看過できない。そうだとすれば入管行政を円滑、適正に実施するためにはその種の反社会的行為をある程度防圧しなければならないというのが眼目でございますから、立法目的がそこに違いがございます。労働者保護だけを考えているわけじゃございません。あるいは労働関係調整だけを考えているわけじゃございませんで、入管行政目的が十分達せられるようにということからつくったものでありますから、国外犯だけに限るわけではございません。
  16. 清水澄子

    清水澄子君 労働基準法でやはり使用者とか悪質な雇用主を罰することができるわけですが、それがさっき法定刑についても非常に軽いというお話がありました。それはむしろ労働基準法法定刑が軽過ぎるならばそちらを引き上げるという方法もありますし、それは大いに、労働者保護しながら悪質な業者処罰する法律ですから、ですからそちらの方にむしろ強化を置くことが本来の趣旨でもあると思います。そしてまた、監督官が不足しているならば定数をふやすというそういう道もあるという。ところが、そちらの方は余り大きくならないで法定刑が軽過ぎるというふうに断定していらっしゃるところが私は問題だと思います。  ところで、法務省にもう一度伺いたいのです。  七十三条の二の一ですね。「事業活動に関し、外国人不法就労活動をさせた者」というのは、この人たち処罰するそうですけれども、現在十万人とも三十万人とも言われているわけですけれども、そういう不法就労者と言われている、——私は不法というのはちょっと非常に問題があると思っているんですが今はそういう言葉を使います、その不法就労者雇用者をどのような方法処罰をし、いつまでに実効性を上げられるおつもりなのですか。
  17. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) まず、仮に可決していただきまして罰則が成立をいたしました場合にはこの法の施行期日を決める必要がございますが、この罰則趣旨も含めまして、今回の改正目的あるいは動機等背景事情あるいは改正内容等十分一般国民方々に周知徹底させる必要がありますから、約六カ月ぐらいの先を施行日にすることを予定はいたしております。その場合に、六カ月先から仮に適用されるわけでございますが、罰則の適用は、御承知のように罰則を設けましたときのいきさつといいますか、立法趣旨を初め諸般の事情考えまして適用いたしますから、そういった観点からどういうふうな効果が出るかはおおよそお察しがつくことと私は思います。  しかしながら、さきにも申しましたように、罰則だけですべてをコントロールしようという考えではございませんで、他方入管当局行政当局でございますから、行政指導等適切な事実的な雇用主に対するアピールとか広報とかいろんなことをいたしまして、行き過ぎた人であってもその是正を図ってくれればまたこれで秩序が回復されたという考えを持って実施していきたい。したがいまして、実行してみませんと、いつまでにどの程度防圧できるかということはちょっとお答えいたしかねますけれども、最善を尽くしてみたいと考えております。
  18. 清水澄子

    清水澄子君 私は、先ほどから入管行政の円滑な運営、遂行のために今度の改正が必要だとおっしゃって処罰があるというところに、非常に危惧をしているわけです。  と申しますのは、法務省入管局関係皆さん方が書いていらっしゃるものを読みましたときに、そこにはありありと今回の改正案に対する考え方、いわゆる思想が非常に露骨にあらわれているわけです。例えば、法務省刑事局参事官とおっしゃる入国管理局付検事倉田さんという方の論文などを読みますと、入管法上の目的というのは、いわゆる今度の処罰のですね、ここでは不法就労外国人来日吸引力撲滅または推進力となっている存在を撲滅することである。「撲滅」という言葉というのは、参考人の方も、今日的な国際化の流れの中でこれからこういう人の交流というのはむしろふえていくだろう、むしろその対処をすべきだろうというお答えが多かったわけです。  そういう中で、こういう来日吸引力というのはこれは別に何が吸引力なんですか。これはもちろん悪質な業者もいるでしょう。しかしそれは日本経済力が非常に発展しているという面とか技術が進んでいるとか、それらを求めて来る人たちが非常に多いというこの背景が大きいと思うわけです。そういう中で、撲滅するという大変な決意でいらっしゃるわけですね。そうすると、撲滅なんていったら相当な荒療治の決意をされているんだと思います。そのためには相当な法定刑を定める以外に選択の余地はない、こういう決意を述べていらっしゃるわけですが、これらの点についてはどのように、ですから私は撲滅なさるのですかとお伺いしたいのです。
  19. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 倉田検事論文を私も承知いたしておりますが、委員承知のように私的見解と断って書いておりますので、まず同局が「撲滅」という言葉を使っているわけではござい ません。ただ先ほど来、私、不法就労活動防圧しなければならないという言葉を使っておるわけであります。  私の言うところの防圧撲滅と同じような意味合いではなかろうかと思いますので、その観点からお答えいたしますが、これ以上不法就労者がふえるということは日本社会にとってマイナス面が多かろうと思うわけでございます。委員指摘のように、我が国経済力の増大といいますか、成長度、高さ、あるいは周辺諸国がいろんな意味で失業率が高かったり経済的に恵まれないがゆえに、その国に住んでいる方々日本に来たいとする、いわゆる押し出し圧力と申しますか、そういうものが高いことは参考人が御指摘のとおりだと思うわけです。しかしながら、そういった場合に果たしてどの程度、どこの国からどういう人たち日本社会に受け入れていいかということ、これは日本社会の健全な発展に寄与する方向で受け入れていくのが当然の施策であるわけでございます。  したがいまして、仮にそこに事実問題として日本に来たがる人がいる、あるいは日本の中に一部それを欲する人がおるといった途端に入れましょうということは、これは非常に問題を生ずることになるわけです。どの国でもさようでございますが、自分の国の健全な発展を阻害しない限度においてあるいは方法において外国人を受け入れるという、そういう施策をすべての国は持っております。その施策を実施するのが入国管理行政であるわけでございますから、そういった観点から在留資格を整備したり、あるいは入りたいとする人たちが不満を持たないようにガラス張りの行政をしようという改正を今回やるわけでございます。  一方において、正規面はそうしますが、他方においてこれ以上不法就労外国人がふえることは日本社会の健全な発展から見てマイナスであろうということから、これを防圧したいといって罰則をつくったわけでございますから、そこにはバランスのとれた行政を実施したいという願望が出ているわけでございます。
  20. 清水澄子

    清水澄子君 ただいまの倉田さんの考え方に対して、それは確かに冒頭に私見であると述べております。しかし、このお方は現在入管行政業務に携わっている方ですね。そういう方の思想で現場ではそれがやっぱり処罰なされるわけですから、単なる私見というふうには、私はそれをそのまま水に流すということは絶対にできないと思うんです。  と申しますのは、今非常に、これから単純労働者日本社会に受け入れるということは日本の健全な発展にならないという考え方で、また、この倉田さんのお考えは、一たんそういう人たちを「受け入れた場合には我が国社会に復元不可能な事態が生じ得る」ので、これは決して軽々しく受け入れてはならない、こういうふうな考え方で、その後に「外国から単純労働力を導入するということは、移民政策を導入するということにほかならず、移民受入国として門戸を開くということは、固有の文化と国民性の変容を招くこと」であるという認識をしなければならない、こういうふうにおっしゃっているわけですね。  ですから、もう今から「手遅れになる前に一刻も早く不法就労助長罪を立法し、入管・警察・検察三者が協力して法執行に努めるのが、我々の子孫に対する義務」である。子孫に対する義務のために今入管法改正をやっていらっしゃるんでしょうか。そして、さらに続けて、よく世論では「安直なヒューマニズムや「人の国際化」などという訳の分からない言葉に踊らされて何ら将来を考えた政策もなく規制の緩和に走ることは、子孫に対する大罪を犯すことになることを、銘記すべきであろう」。これだけはっきり業務に携わる方が断言をしていらっしゃいます。  私はこういう考え方が入管法改正の中に流れているのではないか、こういう点を危惧いたしますので、その点については私は法務大臣からお答えをいただきたいと思います。
  21. 後藤正夫

    ○国務大臣(後藤正夫君) ただいま清水委員の御指摘のございました点ですが、私も今から二十年ほど前にヨーロッパで、西ドイツあるいはフランス等が宗主国であった関係から旧植民地の人たちを入れましたり、あるいはスペイン、イタリア等の労働者を入れ、さらにユーゴスラビア、ギリシャ、トルコ等の労働者等を入れたことのために大きな社会問題が起きているということを目の当たりにいたしましたし、またそういう労働者として受け入れられた人たちが次代も非常に苦しんでいるということを実際にこの目で見て、またそういう問題を目の当たりにした経験がございます。したがいまして、今後の日本の産業界の発展のためにも必要であるという意見もあるかもしれませんけれども、しかしながらそれの受け入れについては非常に慎重にすべきだというように私は考えております。  したがって、この新しい法律の運用に当たりましては、そういうことを念頭に置きまして円滑な運用を図りまして、将来に非常な苦しみを残すことのないようにするために、この法律を適正に運用していくことが必要である、そのように考えております。
  22. 清水澄子

    清水澄子君 その点は内部でも十分に徹底をしていただきたいと思います。やはり人権を優先する、取り締まりとそして人権というこの兼ね合いというものを慎重に考えていただきたいと思います。  しかし、それは今度の、いろいろこの間、北村同僚議員も質問をなさったんですけれども、非常に在日外国人に対する警察の差別捜査というものがいろんなところで問題になっていると思います。先日もパキスタン人の大阪で起きました、警察庁発行の捜査用内部資料の中に「在日外国人被疑者取り扱いの要領」、そういう中に、パキスタン人を取り調べるときには何を留意すべきか、まずパキスタン人は証拠が出るまで徹底的にアラーの名にかけてうそをつきますよ、それから宗教上豚は汚いものとしており、決して食べない。豚肉を豚肉でないと言って食べさせてみたが、後でそれが豚肉とわかったときは非常に怒る。こういうことを書いています。そして、一種の風土病なのか、パキスタン人は疥癬病を持つ者が多く、留置する際及び取り調べ終了後は必ず手を洗う必要がある。独特の体臭のため、取り調べ室、留置場が臭くなる。  こういうことが取り調べのときの留意点というふうになるのでしょうか。むしろ取り調べのときにはこういう人権を考えるべきだと、本来普通の市民はそういうふうに留意点という場合には考えるわけです。同じような考え方が各警察に徹底しておりますために、埼玉でも実は学校現場で同じことが起きているわけですけれども、こういうふうな行政の中にある非常な在日外国人に対する差別、特にアジアとかそういう国々の労働者に対する差別と偏見について、この点はどのように法務大臣考えになりますか。
  23. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 今大臣に御質問でございますが、僣越ですが答えさせていただきたいんです。  警察庁のその内部文書につきまして、法務省として云々することは差し控えたいと思うのでございますが、一般論で申し上げますと、私も捜査官として外事係をやりまして外国人の方の取り調べをしたことがございます。確かに習慣とか風俗とか宗教とか、我々とは違った面をお持ちでございますが、その際には十分相手方のそうした心情等を顧慮しつつ、しかし実態は真実追求をやらなければいけませんので、厳しく取り調べるというのが実情であります。  この場合に、例えば外事係検事といたしましての経験を後輩に伝えておきたい、もちろん人権を尊重しつつ調べるわけでございますが、風土病等をお持ちの方には例えば先に保健室へ連れていってよく診てもらってあげてほしい、例えば留置する場合に十分診てあげてほしい。例えばどこの地域にはこんな食習慣があるから留置中の食事はこういうふうにすべきであるというようなことを事細かく書きますが、そのときの書き方いかんによりまして、第三者の方が見られますと非常に問題 のあるような表現ぶりになっているかもしれません。しかし、これはやはり取り調べ官の心得べきこととしてのノーハウを後輩や同僚に教えるといいますか、書きおきたいというのはまたこれ捜査官の心情でございます。  私、警察庁でお書きになったことの動機、原因あるいは内容をつまびらかにしていませんし、またよその官庁のことをとやかく言えませんけれども、捜査官としては常々人権を十分に考慮しつつ調べているのが実情であります。
  24. 清水澄子

    清水澄子君 でも現実にはそういう事実がいろんなところから出ているということは、それはやはり警察なり取り締まる入管行政の中にそういう問題があるわけですから、ですから私はここで申し上げたいんです。  そういう取り締まる側の人権感覚とか、同じ人間としての通常のお互いの立場を考えるとか、それからまた今日の国際化の中における一員としてどうあるべきかというふうな当たり前の市民感覚を早くつくっていただく、そちらが先だと思います。それをぜひ努力していただきたいのですが、それらがなされていない現状の中で雇用主処罰強化を図るということに私は非常に危惧を覚えます。  そこで、ここで確認をしておきたいんですけれども、この七十三条の二の一で「事業活動に関し、」ということで、「外国人不法就労活動をさせた者」とすべてに縛ってあるわけですけれども、この改正案の条文の中にいわゆる法務省考えていらっしゃるような悪質に当たる、そういう文言をここにやはり限定的に入れるべきではないかと思うわけです。そういう意味でも私は、ここのところに、事業活動に関し不当に利を図る目的とか、またはやっぱり法務省考えられる悪質性というものをここに表現されることが妥当だと思いますが、いかがですか。
  25. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 一つの御意見だと私思いますが、例えば今おっしゃいました不当に利を図る目的を持ってという文言を入れますと、利を全く図らないけれども非常に継続的に大量に不法就労活動をさせている人間、これが落ちこぼれるだろうと思います。それから逆に、悪質なという非常に何というんでしょうか、評価基準といいますか、価値基準といいますか、そういうものを書きましたところで、非常に限界があいまいになりまして、構成要件的には明確でないという非難が起こるであろうと思います。これは刑法全面改正作業をやっておりましたときに、不当にとか不法にとか、そういうのを限ってもそれはいかぬと。あるいはもう少し明確にするためにはそれを取っ払って、逆に罰則の適用で実務面における立法趣旨をわきまえた適用をして適正な運用に努める方がベターであるという考え方が、その際の例えば法制審議会等の御意見でもございました。  私、長年罰則の立案をやっておりますが、そういうふうに考えておりますので、その立法趣旨等を十分踏まえて実務運用が行われるものと確信しております。
  26. 清水澄子

    清水澄子君 それでは、まだまだ内部にも問題があり、そして社会的にも現実があるわけですので、これらの処罰施行期日を延ばすという考えはありませんか。
  27. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 今、罰則だけの施行期日を延ばす考えはないかというお話でございますが、我々がこれを提案いたしておりますのは、車の両輪というと言い過ぎかもしれませんけれども、新しく日本にやってくる外国人の中で、正規に受け入れられ大いに歓迎されるべき側面と、そうではなくて日本社会にとってマイナス面を発生させるおそれのある人たちの、いわゆる不正規に活動される方に対してある程度の抑圧策をとるということ、言うなれば我が国入管行政が適正に運営されるための車の両輪に近い関係にございまして、片方の車を外して一輪で走ってはどうかという御意見かもわかりませんけれども、その運用面におきましてバランスのとれた、そしてかつそれが不法であっても不法でなくても外国人の人権を十分尊重しつつ入管行政をやる所存でございますので、私どもといたしましてはそれだけの、施行期日を延ばす考えはございません。
  28. 清水澄子

    清水澄子君 先日の参考人皆さん方も、現在の入管法並びに入管行政が非常に閉鎖性と排外主義に基づいているという御指摘が非常に多くございました。そして、決して外国人の人権、そういう面ではバランスのとれていない行政という面で非常にこれは早急に緊急に対策を立てるべきだという御意見が多かったと思います。そういう意味では今おっしゃったようなお答えは全く合っていないわけですけれども、しかしその点は今後十分に私はそこを強化されるということを約束していただきたいと思います。
  29. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 重ねて同じことを申し上げるようでございますが、行政機関におきましては当然のことながら内外人を問わずその人権を尊重しつつ行政実務を運用するのが憲法上の義務でございますから、我々役人でもその点は十分腹におさめておるつもりでございます。  それからあえて、発言いたしましたので申し上げますが、今回の法改正で、例えば資格外活動の範囲を明確化するとか、あるいは行政のガラス張りをねらってその審査基準を公表するような形をとるとか、あるいは出入国管理基本計画のようなものをつくって中長期的な入管行政のあり方を国民の皆様の批判にさらすべく公表するとか、いろいろ行政が民主的に運営されるように配慮したつもりでありますし、他方罰則だけ取り上げられまして問題だとおっしゃるのは、私、立案者の一人といたしましては非常に偏った御意見ではなかろうかと私は思うわけでございます。
  30. 清水澄子

    清水澄子君 私は絶対偏っていないと思います。それは、たくさん、多くの実際の市民の皆さんが事実の中で指摘をされている。やっぱり私は現実の中で起きている問題に目を向けるべきだと思います。そこからやはり行政というのが自分たちの姿勢を正していく、これが私は民主主義だと思っておりますので、私に対して偏見とおっしゃるのはお返ししておきたいと思います。  そこで、次に質問させていただきます。就労資格証明書についてですけれども就労資格証明書の必要性ということに非常に疑問があるわけです。今回の在留資格の別表は、日本国内における経済活動の可否をわかりやすく識別できるようにした、そういう目的でつくられたということになっています。そうであれば、原則として経済活動の可否の識別は在留資格を見れば可能であって、さらにまた就労資格証明書を設ける必要はないと考えますがいかがですか。
  31. 股野景親

    政府委員股野景親君) この新しい法改正に伴いまして新しい在留資格が出てまいります。そういたしますと、在留資格について我々の運用の仕方において、どの在留資格が収入を伴う活動ができるかどうかという点は明らかにするよう努めていくわけでございますが、同時に国民の側の方からこういうことについて、さらにこれをいわば補助する方法として、そういう就労ができるのだということを証明する、そういうことについての御要望もあると考えられますし、またそれをすることが我々の方の当局としてのまた便宜を国民及び外国人の方にとってお図りするゆえんでもある、こういうことでございますので、あくまでこの制度はそういう意味で、御要望があったときにこれに応ずるという、そういう趣旨でこれを運用してまいる考えでございます。
  32. 清水澄子

    清水澄子君 次に、就労資格証明書により経済活動の可否の識別が必要なのは活動内容が一様でない特定活動、別表第一の特定活動ですね。それから、本来の活動内容以外の経済活動を資格外活動の許可を受けてなす場合、これなどに限られるのではないでしょうか。
  33. 股野景親

    政府委員股野景親君) 特定活動について、もちろん就労資格証明書というものを御希望になる場合にこれがお役に立つであろうということでございますが、それ以外につきましてもいろいろな形で、例えば別途別表第二の方で日本において特段の活動に制約のない方たちの側からも、その趣旨をもう一遍明らかにするということについての 御要望がある場合に、それを明示的にするという意味においてこういう就労資格証明書というものがやはりお役に立つだろうと考えておりますので、その意味で、ただいま先生の御指摘になった特定活動あるいは資格外活動というものについての便宜性もあると思いますが、それ以外の在留資格についてもこれは有効性があるものと考えております。
  34. 清水澄子

    清水澄子君 あとやはり就労資格証明書についてですけれども、別表第二の在留資格については就労資格証明の必要はないわけですね。  そうして、もう一つ一緒に聞いておきたいんですが、指紋押捺拒否者に対しても申請書類が整っている場合には証明書は発行されるのか。  もう一つ、また在日韓国人の政治犯というのがまだ何人もあるわけですが、そういう方々日本に帰ってこられたときの在留資格はどのようになりますか。
  35. 股野景親

    政府委員股野景親君) まず、就労資格証明書の内容について別表第二の方の方についての御質問がございましたが、これはもともと就労資格証明書があるなしにかかわらず就労ということは可能でございます。就労資格証明書というのは、そういう意味でそれをいわば明らかにするための補助的な手段でございますので、別表第二の方たちは就労資格証明書を持たずとも就労はもとより可能でございます。  それから外国人登録法上の指紋押捺を拒否した方たちに対する就労資格証明書の問題の御質問がございましたが、これは、就労資格証明書というものは既に与えられている在留資格あるいは資格外活動の許可に基づいて当該外国人就労できる者であるというものを証明する文書として交付するものでございますから、仮に申請者が外国人登録法上の指紋の押捺を拒否しているときにおいても、その人が就労し得る者である場合にはこれは交付をされることになります。  それから今政治犯というお言葉がございましたが、外国にいる方が日本に帰ってくる、そしてそれは日本では別表第二の本来資格を持つべき人が帰ってきた場合にどの資格に該当するか、こういう御質問であろうかと思いますが、この場合、我々別表第二の中で考えますと、例えば定住者ということもそれも一つの適用があるものと思います。
  36. 清水澄子

    清水澄子君 時間がありませんので、次に労働行政の運用実態について労働省の方にお伺いしたいと思います。  去る七月二十五日に「職業安定行政における外国人労働者問題への対応について」という労働省職業安定局の通達が出されていると思いますけれども、この文書は七月二十五日の時点で出されているわけですが、まだ国会で審議にも入っていなかった今回の入管法改正案内容を周知徹底するという項目があります。それは、行政府が立法府で判断される前にそのような通達を出すというのは、やっぱり官僚優先と今日言われて、非常に弊害が出ていると言われているわけですけれども立法府を全く軽視されたものだと思いますけれども、その点はどのようにお考えになりますか。
  37. 吉免光顕

    説明員吉免光顕君) 確かに私どもの方から七月二十五日付で各都道府県知事に対しまして通達をいたしております。  その内容は、外国人労働者問題についてその事業主に対して指導をするという点が一点。それから不法就労に係る実効ある対処という点が二点目でございますし、三点目には、現実に外国人の求職者が求職活動に公共職業安定所の窓口に来ております。そういう面での対応について三点目として実は内容を指示したわけでございますが、これらの内容現行法で当然事業主に理解をしていただく内容でありますとか、今申し上げましたような具体的な求職活動に対する対応をうたっておりまして、新しい法案とのかかわりのない対応の部分で指示を出したところでございまして、御指摘のような点はないというふうに考えております。
  38. 清水澄子

    清水澄子君 これは全然そういう私の指摘をしたことは当たっていないとおっしゃるわけですね。  この中に、集団的な周知、啓発及び協力要請をしていくという中に、周知、啓発の内容としてはという中に、出入国管理法の、この入管法改正案法律内容と書いてあるんですね。それは全然関係がないわけですね、七月二十五日の時点でも。どうなんですか。
  39. 吉免光顕

    説明員吉免光顕君) 現実的に事業主の方で例えばよく状況を知らないために誤った理解をして不法雇用をしてしまうとか、そういうことがやはりあるわけでございまして、そういう点での理解を求めるということで、例えば集団的な指導をお願いする等の啓発活動を指示したわけでございます。  そういう中で実は入管法改正の動きもございましたので、そういう動向があるということをお話し、御説明するということを申し上げているまでで、その内容について事業主に周知徹底を図る、あるいはこうなりますよと、そういったことをお話しするということを趣旨にしたものではございません。
  40. 清水澄子

    清水澄子君 私は大変大きな言い逃れだと思います。  それは、まだ法案が決まっていないものを、先にそういうものを徹底するよりも、むしろ今まで決まっている、いろいろ法的に処罰対象になったりまたは不法であるということになるものを、むしろ今日まである決まっているものを徹底されるのが労働行政だろうと思います。その点ではこの辺を私はやっぱり反省していただきたいと思います。  次に、実は十一月三十日のときに、やはり同僚の北村議員の質問に対しまして、労働基準局関係ですけれども入管法不法就労である外国人労働者労働基準監督官に対して申告、相談を行ったときは、入管当局に対して原則として通報を行わないというふうにお聞きしたと思います。そこで、だから労働基準局はそういうやっぱり労働者側保護に立つということをここで原則と言ってくださったんですが、あえて原則としてとおっしゃるのは、そのほかに何かあるんでしょうか、例外とか。その点をぜひお聞かせいただきたいと思います。
  41. 氣賀澤克己

    説明員氣賀澤克己君) ただいま御指摘ございましたように、労働基準監督機関といたしましては、申告、相談等におきまして不法就労事案を把握した場合におきましては、これは原則として情報提供を行わないという扱いを従来からやってきているところでございます。  この点につきましては、原則としてという言葉が入っておりますけれども、申告相談事案の中にはいろんな事案がございまして、例えば大変たくさんな不法就労外国人を雇っておられる、そしてその労働条件が大変劣悪である、例えば労働災害が繰り返し発生するおそれがある、そういうものを放置しておきますとそういうふうな状態が温存されていくというふうなおそれがあるような場合には、そういう関係を除去するような必要がある場合もあるのではないだろうかというふうに考えまして、ごく例外的ではございますけれども通報する場合もあり得るということで、原則としてという表現をとっているところでございます。
  42. 清水澄子

    清水澄子君 そのごく例外のときがあるということは、やはり文書に出ているんですね、そちらの通達の中には。それらは労働行政の中ではできないものなんですか。入管局に通報しなければならない内容として例外があるわけですか。
  43. 氣賀澤克己

    説明員氣賀澤克己君) 私ども労働基準監督機関として、まず、労働基準法等の違反状態を是正させるということで最大限の努力をいたすわけでございますけれども、どうしてもその関係自体を除去しなければそういう状態が改善できないというふうな事態も考え得るのではないだろうかというふうに思いまして、ごく例外的でございますけれども、通報する場合もあり得るというふうな考え方を一応持っているところでございます。
  44. 清水澄子

    清水澄子君 これはこの間やはり参考人皆さん方の中でも花見さんもおっしゃっていましたけ れども、この入管法に基づいて労働行政がなされるとすればそれは全く労働行政の後退である、大変問題だということの御指摘もありました。ぜひそういう点も、今後労働行政本来の業務にやはり専念していただきたいし、強化していただきたいと思います。  次に、この特定活動新設の理由をお伺いしたいわけですが、この特定活動というのは、具体例は一体どういうものが特定活動なのでしょうか。
  45. 股野景親

    政府委員股野景親君) これは、今度の改正におきまして新しく設けました在留資格によりまして現在の外国人日本における活動の多様化に対応するということが我々の意図しているところでございますが、なお、外国人の活動の多様化ということにかんがみますと、必ずしも類型化ということで十分に対応し切れないものというものも今後考え得るわけでございます。  そこで、そういう類型化ということに今の時点で必ずしもなじまないようなもの、こういうものについて法務大臣が特に指定する活動ということを考えているわけでございまして、これは先般の御審議にもお取り上げいただいたわけでございますが、具体的に我々として今念頭にあるのは、例えばワーキングホリデーに係る日本の在留外国人、こういうことで考えております。
  46. 清水澄子

    清水澄子君 家事使用人というのが前にカテゴリーがありましたね。そういうのも入るわけですね。だから、そういうのがなかなかわからないんですね、今一つだけおっしゃるから。その特定活動の中身は何なのかということもぜひお示しいただきたいと思います。後ほど資料をいただきたいと思います。  それから定住者新設の理由です。それもその具体例をおっしゃっていただきたい。
  47. 股野景親

    政府委員股野景親君) まず、特定活動という形につきましては、今委員指摘のように、外交官等の個人的使用人というものもこれに当たることになろうと考えておりますが、そういう例については、また別途お示しをいたしたいと思います。  それから今度は、定住者の在留資格につきまして、これは在留期間の制限というものはあるけれども在留活動上の制限はないというものがこれに当たることになりますが、具体的には、閣議了解に基づいて今まで受け入れておりますところのインドシナ定住難民というものがこれに当たりますし、また、難民条約に基づいて庇護を受けることになるいわゆる条約難民というものもあろうと思います。また、日本人ということを必ずしも確認するに至らなかったような例えば残留孤児の方々あるいはその家族の方々、こういう方たちも入ってくると考えております。
  48. 清水澄子

    清水澄子君 次に、特定活動と定住者の地位については告示で定めるとされているわけです。他の資格は省令となっているんですが、その違いですね、それが一つ。  それからもう一つは、他の資格の身分、地位は在留とされていますけれども、定住者は居住とされているわけです。その理由についてお聞かせください。
  49. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) ただいま局長が申し上げましたように、非常にバラエティーに富んでおりますために、その一々につきましてやはり公に知らせる必要があるだろうということから省令にせずに告示でその都度官報に公表するということにしたわけでございます。
  50. 清水澄子

    清水澄子君 次に、協定永住三代目以降の在日韓国人の在留資格はどこに当たるのですか。そしてまた、国際結婚による国籍留保の状態になる協定永住三代目の方がもし韓国籍を選択した場合には、この改正法ではどの在留資格に当たりますか。
  51. 股野景親

    政府委員股野景親君) まず、現在の在日韓国人、朝鮮人の方々のほとんどが協定永住の許可ないしは入管法上の永住許可を受けておられますので、そういう意味で永住者のカテゴリーに属されることが一般的であろうと思います。  また、それじゃその第三世代の方たちについてどうなるかということの問題がございますが、これは先生も御存じのとおり、在日韓国人の方々の第三世代の方々について現在日韓両国政府間で協議が行われております。そういう協議を通じて双方の満足し得る結論というものを見出すということで配慮をしてまいることといたしております。  それから今の、日本の国籍とそれから韓国の国籍の二重国籍の方についての御下問でございますが、この点は、もし二重国籍者の方が外国の国籍を選択することによって本邦において日本の国籍を離脱される、こういう場合には、これはまず在留資格の取得の申請を行われる必要がありますが、その場合にその方が引き続き本邦に在留するということを希望されるときは、これは入管法上最も安定した地位である永住者の資格が与えられることになると思います。
  52. 清水澄子

    清水澄子君 もう時間が参りましたので、もう一つだけお尋ねして終わりたいと思います。  この別表第二の「永住者の配偶者等」並びに「平和条約関連国籍離脱者の子」など、つまり日本の植民地支配によって、そういう歴史的な関係の中から日本に住むようになられた在日韓国・朝鮮人や元台湾の方——中国人ですね、そういう方々の在留資格や法的地位というものをこの一般的な外来外国人入国管理の法律の中で同一に扱っているということには非常に無理があると思うわけです。ですから、今後こういう人たちには日本がもっときちんと、戦争後の迷惑をかけた民族であるわけですから、そういう面でも私はこれは別建ての立法化が必要だと思いますけれども、その点につきまして法務大臣お答え伺いたいと思います。
  53. 後藤正夫

    ○国務大臣(後藤正夫君) お答えいたします。  在日韓国・朝鮮人また台湾の人たちの法的地位の安定につきましては、その歴史的な経緯等を踏まえまして、従来からも可能な限りの配慮をしてきているところでございますが、今後これらの者の子孫につきましても安定した法的地位のもとで生活ができますよう、適切な配慮を行ってまいるよう努力いたしたいと思っております。
  54. 千葉景子

    千葉景子君 時間が限られておりますので、同僚の清水委員から質問させていただいたことなど、できるだけ重ならないような形で質問させていただきたいというふうに思います。  まず、難民認定問題について何点かお伺いをしたいと思います。  まず、難民認定申請数、処理数。その中では認定されたもの、不認定のもの、審査中のもの。それから処理に要する時間。それから日本へどういう経路で入国をされたか。これについて、難民条約批准後の数で結構ですので、まずお知らせをいただきたいと思います。
  55. 股野景親

    政府委員股野景親君) 御質問につきましてまとめてお答え申し上げます。  まず、昭和五十七年一月に難民認定制度が発足をして以来、平成元年の、本年でございますが十一月三十日までの難民認定の処理状況について申し上げますと、申請数は総数で八百五十七でございます。そのうち、自分からその申請を取り下げたケースが百三十七ございます。そこで、申請実数としては七百二十ということになります。その申請実数七百二十に対しまして、これまで難民の認定を行った数は百九十四でございました。それから、不認定の結論を出しましたものが四百八十四ございました。今審査中というものが四十二という数になっております。  そして難民認定に要する時間でございますが、これは難民の認定ということ自体が外国にかかわることでありまして関係方面への事実の照会などに非常に時間がかかるということが一般的にございまして、そういう事情のもとで、平均的に申しますと一件の認定案件についての処理に要する時間は一年余りとなっております。  それから、認定を申請される方が日本入国してくるルートという点でございますと、これはここ数年の状況を見ますと、ほとんどが短期滞在という形でまず日本入国して、そして難民認定申請を行うという状況になっております。
  56. 千葉景子

    千葉景子君 日本の場合というのは難民の認定が国際的に見ても大変少ないというふうに言われ ております。そして、その一つとして難民調査官が難民の認定申請を受けつけることを余り好んでいないのではないか、あるいは受けつけしにくいような事由が何かあるのではないかということも言われております。もし申請がやりにくい、あるいは不備などがあって受けつけることが困難だというような状況がありましたら、そういうものを是正して、できるだけ外国から来た方のそういう難民申請をしたいという気持ちが率直に受け取られることのできるような措置をとっていただきたいと思いますが、その辺の実情はいかがでしょうか。
  57. 股野景親

    政府委員股野景親君) 難民認定申請がございました場合に、これがきちんと法の要件にかなった申請であればこれはすべて受理するということで臨んでおり、またそういうことで入管局内部で徹底をいたしております。もし申請書などに不備な点がある、そういう点があればこれは是正をして、そして申請がきちんと行われるように難民調査官の方でその申請者に指導を行うということに心がけております。  そこで、先生が御指摘になりましたような、何か受理について難しいというような状況はないと我々考えておりますが、そういうことについては受理がただいま申し上げましたようなことで適正に行われるよう今後とも十分心がけてまいりたいと思っております。
  58. 千葉景子

    千葉景子君 難民申請をなさる皆さんですけれども、申請者に私は難民だということを立証させるということは極めて困難な問題でもございます。例えて考えますと、国を出てくるときに、難民ということになりますから例えば反政府的な考え方を持っている、こういうことになりますと、それをその政府からあなたはうちの国の反政府的な人間だというようなお墨つきをもらって出てくるなどということは考えられないわけでして、そういう意味では何か文書などで証明をするというようなことは大変難しいことだというふうに思うんですね。そういう意味では、証明する手段などについて何かやりやすいといいますか、考慮をすべきところがあろうかと思いますけれども、これについてはどんなふうにお考えでしょうか。
  59. 股野景親

    政府委員股野景親君) 御指摘のとおり、難民申請される方はしばしば自分自身の十分の資料を持ち合わせないで日本に到来するという事態がございます。それがゆえに、その申請が客観的に立証されるものかどうかということについて本人の側の申し立ては十分にこれを聞く。そしてその申し立てについて、今度はそれを客観的に裏づけることができるかどうかという点が、これが認定申請に対する審査で一番時間がかかるところでございまして、これは事が外国にもかかわることでございますので、本人の立場にも十分配慮しながら、当該外国の状況、そしてまたその本人が迫害を受けていたと言われる実際の状況について個別具体的に入管局としてできる限りの手を打って調査をいたしております。  したがって、本人が基本的には立証すべきものでありますが、その申し立てについては十分当局の方でもこれに耳を傾けますと同時に、それを裏づける調査については入管当局の方で非常に努力をして行っているという実態がございますので、この点については今後もそのように行ってまいる所存でございます。
  60. 千葉景子

    千葉景子君 ところで、難民認定申請中の外国人の方の場合、一時庇護による上陸許可を得ている場合はともかくとして、短期滞在ビザで入国をされた場合というのは難民認定申請中に在留期間が経過してしまう、こういう場合が考えられます。先ほどのお答えの中でも処理に要する時間がほぼ一年ぐらい、中には二年程度かかるものもあるというふうに事前にお答えをいただいているわけなんですけれども、これをもうちょっと早く処理できないものか。できるだけ迅速にということもあるんですけれども、このような場合、申請者に対しては審査中どのような措置を講ずることになるのでしょうか。
  61. 股野景親

    政府委員股野景親君) 短期の滞在という形で日本入国された方から難民認定申請が行われますと、御指摘のように在留期間が経過するという問題がございますので、そういう場合には申請中に在留期間が経過するということにかんがみまして、その方から在留期間の更新の申請があれば原則としてこれを認めることにいたしております。  また、もし仮に不法残留というような状態になりまして退去強制手続ということが既に進行しているという状況下でありますと、その場合にもし難民認定申請というものが実際にそこであれば、それはそれに十分留意して退去をその時点で強制するということはしない、申請をきちんと審査して結論を出すということで臨んでおります。
  62. 千葉景子

    千葉景子君 難民認定については時間が大変かかるという問題もございますけれども、西ドイツなどのように、入管とは別な形で客観的な第三者的な機関というんでしょうか、そういうものを設定して扱うような方向を検討してもよろしいのではないかと思いますが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  63. 股野景親

    政府委員股野景親君) 難民認定申請される方は外国人でありまして、かつ日本におられるという状態があります。そういう点でいきますと、外国人の本邦に対する入国及び在留ということを預かる入管局の行政とまさにそこで接点があるわけでございまして、そういう観点から日本の場合には入管当局がその難民認定申請を行うのが一番いいというふうに考えております。
  64. 千葉景子

    千葉景子君 これはなかなか難しい問題はあろうかと思いますけれども、ひとつ検討課題にしていただきたいというふうに思います。  次に、ちょっと仮放免にかかわる問題についてお尋ねをしたいと思いますが、今回入管法改正によりまして就労資格証明書という制度ができましたが、仮放免中の者に対して事実上就労が認められているというのか許されているというのか、ということで就労されておりますが、就労資格証明書をもし求められれば発行する予定はございますか。
  65. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 仮放免中の外国人といいますのは二種類ございまして、分けてお答えいたしますが、退令発付前、つまり退去強制令書発付前の、刑事手続でいえば容疑者的段階といいますか被疑者的段階あるいは被告人的段階、まだ判決が出ていない、こういう人たちが仮放免になっております場合には、従来持っておりました在留資格を背負っておりますので、その在留資格が就労のできる在留資格である限りにおいては就労資格証明書を出せることになろうと一般的には思います。  それから、退去強制令書を発付されて仮放免というのは時としてございますけれども、この場合には在留資格をまず持っていないのが普通、もう追い出される寸前で例えば身辺整理とかいろんなことで一時的に出られる、この場合には就労が原則として認められておりませんので、就労資格証明書を申請されてもそれはとても発行できることにはならない、この二種類に分かれるかと思います。
  66. 千葉景子

    千葉景子君 事実上就労している場合などに付与されないということで、働くことがかなり厳しくなるのではないかなというふうに思うんですが、ぜひ仮放免中の場合についても就労あるいは滞在といいますか、それが困難にならないような形で対処をしていただきたいというふうに思います。  ところで、難民問題にもかかわることでございますけれども日本国内の者も当然ながら、外国の皆さんに対してもやはり人権を守るあるいはそれを確保するということになりますと、やはり裁判を受ける権利を実質的に保障していく必要があるだろうというふうに思うんですね。そのためには実質的な裁判を受ける権利、弁護人依頼権などを保障する制度としては法律扶助事業というのがございます。そして金銭的にそれだけの余裕がないというような場合でも裁判を受けることができるというバックアップをしているわけですけれども、最近の法律扶助事業としても難民に対する 法律援助事業というのが大変活発に行われておりますし、今般法律扶助協会は、東京都支部などを中心として、外国人労働者のための国際法律扶助基金というものを設定して、外国人労働者に対する法律援助活動などを開始していこうと決定をされたようでございます。  憲法の理念からしますと、やはり国民の裁判を受ける権利、それから国民といいますか、だれもが裁判を受けられるということを実質的に保障していくというのも国の責務ではないかというふうに思うわけです。諸外国ではこの法律扶助という問題が立法化をされたり、あるいはかなり多額の額が国庫から援助をされているというふうにも聞いているところですが、この問題についてこれまでも立法化の問題など検討がさまざまな場でされているようにも聞いております。こういうことを踏まえまして、法務省でもこの立法化の問題、あるいは制度拡充、補助金額の増額などを含めて積極的に取り組んでいただきたいというふうに思いますが、今後の取り組み方はいかがでしょうか。
  67. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) 法律扶助制度は、我が国におきましては長年いわゆる予算補助という形で実施してきておりまして、ずっと実績を積んできたところでございます。  ただ、今委員指摘のように、外国の例では法律によっているというところも多いことは承知しておるわけでございますが、かねてからこの立法化の問題というのも論議の対象になってきておりまして、私ども人権擁護の立場といたしましても、かねてから法律扶助制度の拡充ということには力を尽くしてきたつもりでございますが、そういう拡充を考える上で法律扶助制度が今後いかにあるべきかということは常に検討課題としてきております。その中では立法化の是非ということも含めた検討をしてきておりますし、今後もさらに法律扶助制度の拡充ということに向けて検討を続けていきたい、このように考えております。
  68. 千葉景子

    千葉景子君 それでは、就労資格証明書、雇用主処罰にかかわる問題につきまして何点かお尋ねをさせていただきたいと思います。  先ほど同僚の清水議員の方からも何点か確認をさせていただいたわけですが、今回の雇用主処罰について、七十三条の二第一項一号、これは外国人不法就労をさせるということでございますが、これはこれだけとってみますと要するに資格外で労働している者を雇ったら処罰をされるというふうにも読めるわけです。しかしながら、日本のような非常に重層的な雇用関係がある、建設業などに見られるような場合が多いわけですけれども、元請の方からやんやと催促をされる、納期は迫られる、人手は不足である、わかるけれども働いてもらおうと、こういう本当に善意の雇用者もいるわけですね。それから単に本当に町工場で働いてもらっている、うまくいっているよと、何らほかに特別に周りに害悪が加わるわけでもないというような場合もございます。  こういうことまでも処罰をするということになりますと、やはりこの立法趣旨から見て、悪質でそれによってさまざまな利益を得たり、あるいはブローカーなどの暗躍をこれによってできるだけ防止しようという趣旨から見ると、そういうものまで罰するということはいかがなものかというふうに思うんですけれども、この辺の歯どめといいますか基準、そういうものをちょっと明確にしていただきたいと思うんですが。
  69. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 今委員指摘の歯どめもしくは基準というのは、なかなかこれは明確にしがたいものがございます。と申しますのは、例えば仮に悪質というような枠はめをしたといたしましても、犯情悪質といいますのはいろいろなポイントを調べましてそれを総合判断いたしますので、こういう点があれば悪質だとはなかなか言いがとうございます。  しかしながら、御承知のようにこの罰則をつくります趣旨目的、そのようなものは御審議の過程で十分明らかにしておりますので、罰則は当然のことながらその趣旨に沿って運用され、また適正な運用の範囲内にとどまるであろう。先ほども清水委員お答えいたしましたけれども観点を変えて申し上げますと、入管行政目的を達成するためでございますので、行政を担当する当局といたしましてはまた行政指導等他の面からの是正措置を雇い主等に求めてそれによって入管行政目的を達するということも考えております。  ただ、ここで一言申し上げますが、例えば個人がたまたまベビーシッターを雇った、それが就労することのできない女性であることを知って雇ったというようなことが入らないようにというような配慮から、例えば事業活動に関しということを書くということも考えましたし、それから雇用した者という書き方をしなかったのは、雇用に限りませんで例えば労働者を派遣するようなものもありますし、事実上、雇用契約なんてなくて何らかの不法就労活動をさせるという態様もございますので、裸でそこを書いている。したがいまして、今申されました重層構造での請負形態を持っておる建設業界において仮に一番下の方だけが足元をすくわれるというようなことのないように、つまりもっと上の方でそれを知ってそういうことをさせているというような人、雇用主じゃなくて、そういうような者も捕捉できるようなという、構成要件の上ではあれこれ配慮したつもりでございます。
  70. 千葉景子

    千葉景子君 単なる善意に雇った者を処罰しませんとは多分おっしゃれないと思うんですが、この規定からも。ただ、ぜひその趣旨を踏まえて慎重に対応していただきたいというふうに思います。  それからもう一点、第二号、これは「外国人不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた」という要件です。ただ、例えば暴力団とかあるいは売春組織などから逃げてきた、そういう者を何とか人権保護の面から救ってあげたいということで自分のもとに置いて、生活しなきゃいけませんから働きに出かけていたというようなケースがあります。  そういう形で本当に国際的にボランティアで人権救済の活動をなさっている市民の方も多いわけですけれども、こういう場合までやはり処罰をされるということになりますと、これはまさに本来は国でやらなければいけないことを市民がかわってやっている部分、それまでも処罰をするなどということは到底考えていらっしゃらないと思いますが、いかがでしょうか。
  71. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 具体的な事実関係にもよりますけれども、今のような例えば強制労働させられているところから逃げてきたのを、その方の人権を守るためにこれを収容されて三食を提供されておるというような、そういう行為がこの構成要件によって処罰されるとは私も考えておりませんので、その点は問題がないだろうと思います。
  72. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひこの点には温かいといいますか、きちっとした対応をしていただきたいと思います。  ところで、先ほどから法務省の方からも御答弁が出ているんですけれども、この罰則規定だけですべて何事も処理しようとは考えていないということでございますし、現在の体制の中では違反を残らず摘発するなどということは到底不可能なことなわけですね。このような不可能であるというにもかかわらず、その罰則のみつけていくというのは一体どういう効果があるんだろうかというふうに考えるわけですね。逆にこの規定によって、これは本当にるる指摘をされておりますけれども、むしろ良心的な雇用者というのは外国人をできるだけ避けていく、そして、そんなことは構わぬよと裏に回って経済的な利益を得ようということで暗躍をする、そういう部分をむしろ増大させるのではないかという懸念というのはどうしてもこれはぬぐい去れないわけですね。  ますます不法就労を潜在化させて、今でも実態把握というのは難しい、それをより以上に困難にさせてしまうのではないか。それによって人権侵害の増大のおそれということもこれは考えられるわけです。私からいうと何か害あって益なしみたいな、極端に言えばそんな気がするわけです。罰 則というのはそういう意味では、法律の中でもほかのことをすべてやって最終的にこれしかないというときのやはり手段だと思うんですよ。たび重なる質問になりますけれども、どうお考えですか。
  73. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 委員法律家であらせられますので御承知と思いますが、罰則だけですべてのことが解決するということは法律家の内部では解決するものではないというのが常識でございます。  当然のことながら、反社会的行為がもしありとすれば、それがいかに反社会的であるかということ自体社会にいる人たちに十分広報、宣伝をいたしまして、身みずからがそういうことをやらないようにしていただくというのも一つ方法でありましょうし、あるいはさきに申しましたような、行政指導に基づきまして過ちに気がついていただいて是正を図っていただくというのも一つ方法であろうと考えるわけであります。  したがいまして、罰則をつくったからこれで大丈夫、これでいくんだ、これだけでいくんだということは毛頭考えていないわけですが、過日参考人意見聴取を聞いておりました場合にお話が出ておりました、劣悪な条件の下にある移住並びに移民労働者の機会及び待遇の均等の促進に関する条約、これは我が国は未批准ではございますけれども、この条約の話が出ておりました。それの第三条でも、雇用関係等におきまして移民労働者等が劣悪な条件に置かれることが多いので、そういった事態をある程度制圧するために雇用主雇用する者に十分な対処をせよというふうなことが条文に盛り込まれているわけでございます。  これは雇用主だけを書いておりますが、私どもといたしましては不法就労活動自体がやはり反社会的、これがふえることは大変問題だろうと思っております。そうとすれば、その防圧一つの手段としてやはり雇用主等に対する罰則規定は有効であろうと思います。ただ、それがそれだけでできるかとおっしゃれば、それだけではなかなか難しゅうございますから、関係省庁関係団体方々との御協力を得て広報をし、誤ってそういうことを、雇わないような社会をつくっていきたいと考えておるわけでございます。
  74. 千葉景子

    千葉景子君 当然のことですけれども罰則を設けるとすれば、逆に言えばほかの面、人権を保障するそういう手だてがあるか、あるいは外国人が活動する上でいろいろな保障がなされているか、そういうことを整備した上で罰則の問題というのが出てくるのが本筋ではないか。先に罰則が出てくるというのはこれはいかにも突出をしたやり方ではなかろうかというふうに思います。その辺十分注意をしていただきたいと思うんです。  それと関連をいたしまして、今回就労資格証明書の交付というのが導入をされているわけですが、先ほど、罰則によって逆に悪質な者がふえるおそれがある。この就労資格証明書も、最近旅券などを見ても偽造などの手口が非常に巧妙なものがふえているわけですね。そうするとこの就労資格証明書というのも例えば偽造とかブローカーの介入があるなどによってこれもまたむしろ悪質な雇用者とかを介在させる、そういうものにつながる可能性がなきにしもあらずだというふうに思うんですね。こういう偽造などにつきましてどのような対処をされていくつもりでしょうか。
  75. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 確かに委員指摘のように、パスポート等につきましては、特に外国のでございますが、精巧な偽造旅券が出回っておるのは事実でございます。したがいまして、ある種の公の証明書のようなものをつくります場合には、偽造を避けるためにいろいろ工夫をしていきたいと考えておりまして、現在書式あるいはその他紙質とかいうのを吟味しておるところでございます。遺憾ながら、ある制度ができますとこれを悪用しようとする人は常に存在いたしますので、偽造事件を全く皆無にするということは不可能でございましょうが、最善の努力をしたいと思います。
  76. 千葉景子

    千葉景子君 それから就労資格証明書というのは、これは義務ではない、発行を求める者に付与するという建前にはなっているわけですけれども、やはりこれによって持たない者と持つ者、その差というのが現場の中においては出てくるだろうというふうに思うんですね。  それと関連しまして、就労資格証明書については、例えば就労に全く制限のない永住者の皆さんなどについては働くことができるわけですけれども、これによって、また、もらわなきゃいけない、もしこれを持っていなかったらばおかしいじゃないかという、またおかしな差別というか不利益、そういうものを課する、そういうことにもなりかねないというふうに思うんですね。こういうことについては、法務省としては具体的にこういう不利益が生じないようにどんな対処をなさっていくつもりでしょうか。何かお考えはありますか。
  77. 股野景親

    政府委員股野景親君) 外国人雇用の問題につきまして、これは国内で幅広く御理解をいただく必要がございまして、現在労働省側とも御協力しながら国内での広報、啓発のキャンペーンというものを実施いたしております。そういう機会に事業者側の方々あるいは関係の各種団体方々に対しましてこの制度の趣旨を十分に御説明するということによってこの本来の趣旨が生かされるように十分心がけたいと思っておりまして、この入管法改正を御承認いただきました場合にはこれに伴う広報活動というものを、これは既にもう現状のもとでいろいろ実施しておりますが、それをさらに積極的に行うことによってこういう点についての正しい理解が得られるということに十分努力をしてまいりたいと思います。
  78. 千葉景子

    千葉景子君 私は、これは法務省の過剰なサービスというか中途半端なサービスというふうな感じがするんですね。というのは、この就労資格証明書によってそれじゃ労働関係の部分がこれを基礎にして何らの保護をされるような基盤になるかといえば、そうでもない。偽造などによってこれがまたむしろ悪質に利用されるおそれがある。そしてさらには、この就労資格証明書を持つか持たないかでむしろ差別などをもたらしやすい。何か余りいいことはなくて懸念される部分の方が多い。だとすれば、そんなサービスは余り無理しておやりにならない方がよかったのではないかというふうにも思うんですけれども、これについては、今回導入をされるというふうなお話ですけれども、やはり推移を見て、あるいはいろいろな問題点考えて再検討してみる、労働省などとも相談をして再検討してみるとかいうことはいかがですか、お考えになりませんか。
  79. 股野景親

    政府委員股野景親君) 新しい制度でございますので、確かにその制度を開始するに当たりまして必ずしも十分御理解いただけない面というのは残ると思いますので、そういう点についての配慮というものは、先ほど申し上げましたような関係方面に対する周知徹底ということの努力でぜひしてまいりたいと思っております。  そしてまた、その実際の運用につきまして、これは運用していろいろまた御意見もあろうと思いますが、こういうものは行政全般という観点から一つの制度についてのいろいろな御意見というものはその後の運用について参考にさしていただくという精神のもとで、この就労資格証明書も一番適正な運用ができるよう配慮していくということには心がけてまいりたいと思います。
  80. 千葉景子

    千葉景子君 運用の適正というのはなかなかこれをどうやってやるのか私も具体的にいま一つわからないわけでして、例えばこれは将来の問題としてわかりませんけれども就労許可証とか雇用許可証のようなやり方をとっている国もありますね。そういうことも含めて、何か中途半端なものをここで導入するというのはいかがなものか。しばらくこれを使わずに様子を見る、凍結をしてみるというようなことを考えてもよろしいのではないかと思いますが、いかがですか。
  81. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 先ほど委員が御指摘なさいました就労資格証明書は過剰サービスじゃないかという点からまず、ちょっとお言葉を返すようで恐縮ですが申し上げたいと思います。  と申しますのは、御承知かと思いますけれども、 インドシナ半島からおいでになっています定住難民の方々日本に定住を許されている定住難民の方々が例えば公団住宅に入るとか家を借りるとかあるいは就職をするとかの場合に、当然働けるわけでございますけれども、そのことを証明してほしいという希望を持っておられる方がたくさんございまして、これは法律に基づいてやってはおりませんけれども、難民事業本部がプライベートといえばプライベートですが身分証明書を発行いたしまして、それに就職することができるんだとかあるいは公団住宅にも入ることができるんだということを書いている証明書がございます。これは法律に基づいてじゃございません。これが非常に重宝がられているという一面もございますし、先ほど局長が答弁いたしましたように、いわゆる特定活動で入られた方あるいは資格外活動の許可を受けた方あるいは場合によりましてはその他の方々でも、言葉の不自由な方々にとっては、自分が就職できかつ報酬を得られるんだ、そうだから家を借りたいときに家主さんになるべき人にその説明をしたい、その場合には非常に活用の幅があるんだろうと思います。  他方委員指摘のようにいろいろな危惧が各界から指摘されておることも私十分承知いたしておりますので、運用をいたしましてその運用の中においてもしとても問題があるというようなことであれば、十分またそれらの御意見を拝聴して検討していくという方法をとってみたいと思っております。
  82. 千葉景子

    千葉景子君 ところで、今永住者の方の問題もちょっと指摘したんですけれども、現在滞在しているいわゆる資格外の労働者の方、とりわけいろいろな事情で朝鮮半島などから密入国をして家族のもとへ、あるいはいろいろな事情で戦後の混乱の中でという方がたくさんおられると思うんですね。その実態というのは法務省は把握なさっているんでしょうか、どの程度
  83. 股野景親

    政府委員股野景親君) 歴史的な経緯というようなこともあってある時期に日本不法入国をして在留資格というものを持たないでそのまま滞在しているという人たちがあるということは、これは先生御指摘のとおりでありまして、ただ、事柄がやはりそういう入国の経緯にかんがみましておのずと明らかになるというところではございませんので、我々としても実態を十分把握するということには困難を感じております。  ただ、いろいろな情報というものを総合して我々の方で推測をいたしますと、朝鮮半島の出身者の方というものが中心になりますが、こういう潜在的な不法入国に係る居住者というものは現時点で数万人という単位であろうと考えております。
  84. 千葉景子

    千葉景子君 本当に推測の範囲でも数万人、こういう皆さんは、今回の改正によりましても、就労資格証明書などもこれは資格がないということで交付を受けるわけにはいかない、何かあったときに雇用主からどうかと言われるようなことも、今非常にびくびくなさっているようなケースもあるのではないかというふうに思うわけですね。附則に、従来から就労していた者については処罰をしないというようなこともあるんですけれども、これまた証明をするというのも難しい問題点を残します。  そういうことを考え、それからもう長年にわたってこの日本で暮らし、生活もここに基盤がある。もうどこへ帰っても、むしろそっちがもう生活をするには不適切な土地になってしまっている。あるいは人道上考えても、今また出ていっていただくなどということも非常にこれは人道上問題がある。  こういうことを考えますと、こういう新しい法律を導入する、そして改めて資格をきちっと付与していこうとなさっているとするならば、こういう機会にこういう長年にわたるいろいろな経緯もあって滞在をされる皆さんに対する救済ですね、どこかで決着をつけて救済をしていく必要があるのではなかろうか。そうしませんと、いつまでもこういうお互いに不幸な状況を含み込みながら法の運用をしていかなければいけない、そういうことにもなりかねないわけですが、いわゆるアムネスティーというふうに言われておりますが、これを何とか検討されるお気持ちはありませんか。
  85. 股野景親

    政府委員股野景親君) 今委員指摘の、長年日本にもう既に滞在をしておる、そしてその間に例えば地縁血縁というような関係ができておって、そういう意味での日本の国とのかかわり合いというものが非常に深まっている状況にある方々についてどうするかということが法務当局として考えなければならない問題ではございますが、まず従来からこういう方たちにつきましてはやはり人道的な考慮ということを法務当局としてもこれは払う必要があるという観点で臨んできておりまして、不法入国者であるということが明らかになりました場合には、これは退去強制手続ということが当然出てくるわけでございますが、そういう退去強制手続の判断の中で、ただいまの御指摘のような長年本邦でもう居住をした、そしてそういう日本との御縁が非常に深い、こういうような状況にある方については、これは人道的な見地からやはり在留をむしろ認めていった方が適切であると判断されるケースが現にございます。  そういう方たちにつきましては、個別の事情をよく我々実際に吟味いたしまして、私どももそういう吟味には念には念を入れた上で、そういう観点から適当だと考えられる人については個別に在留特別許可というものを現に与えてきておるわけでございます。そういう意味で、その観点からの配慮というのは今後も十分にまずしていくという必要があるというふうに考えております。  それから今の御指摘のアムネスティーの問題でございますが、これは先般来の御論議がございまして、我々の観点から申しますと、この問題のもう一つの側面である今周辺諸国から、日本の近隣諸国から日本に渡航したいということを考えている人が非常に多数に及んでいる状況において、これのアムネスティーというものがどういうふうに海外で受け取られるだろうかということも十分にやはり考えなきゃならぬと思いますので、そういう現状から見ますと一律に在留を合法化するということについては今の情勢からは適当ではないという感じを持っておるわけでございますけれども、ただ先ほど来、人道的配慮ということを申しておりますので、こういう潜在的な不法入国にかかわる居住者の今後のあるべき処遇の仕方ということについては多様な角度からよく検討はしていきたいと、こう考えております。
  86. 千葉景子

    千葉景子君 難しい問題であるということは私も承知をしております。しかし、本当に歴史的なさまざまな経緯などを考慮してそれは知恵を働かせていただきたいと思うんです。どういう条件なり部分に適用するかということも含めて、やはりこれは新しいことをやろう、本来難しいことをやろうということですから、どこかでやっぱり勇気を奮いませんとこれはいつまで行ってもやっぱりやれないことだというふうに思うんですよ。そういう意味では、困難は承知の上ですけれども、ぜひどこかで決断をやはりなさっていただきたいと思いますが、その心構えのような点だけぜひ少しお聞かせいただきたいと思います。
  87. 股野景親

    政府委員股野景親君) 今申し上げました考慮をいろいろ払うべき事柄が今多うございますので、そういう点を十分考えかつ先生御指摘の人道という面もよく考えて、繰り返しになりますが、多様な角度でこの問題は見ていく必要があると思いますので、そういうことからよく検討をしていきたいと考えております。
  88. 千葉景子

    千葉景子君 時間も限られてまいりましたが、少し今回資格を認められた部分の問題についてお尋ねをしたいと思うんですが、今回改正によりまして、例えば技術であるとか、あるいは企業内転勤であるとか、国際業務であるとか、技能などのような資格ができまして、いろいろな形で外国人の方が入ってこられるということになろうかと思うんです。ただ、これまでの経緯を見ておりますと、例えばこれまで研修という形で来られている皆さんがございます。しかし、その実態を見ます とこれは本当に研修の名に値するものかどうか、むしろいわゆる単純労働力を導入する一つの手段として門戸が開かれているんではないかと思われる部分が多いわけですね。  法務省外国人技術研修生にかかわる実態調査というものを実施されておりまして、これは数は少ないんですけれども、その中ですら、生産ラインに組み込まれてほとんど労働をしていたと判断できるようなケースがあるというようなことが指摘されています。こうなりますと、これから労働の分野でさまざまな新しい資格がふえてまいりますと、これからは入り口で物事をチェックするだけではなくて、本当に十分に気持ちよく働いていただけているのかどうかという部分まできちっと把握いたしませんとこれは研修などと同じようなことの繰り返しになっている危険性があるわけですが、この点についてちょっとお聞かせいただきたいと思います。  法務省労働関係について全部責任を持つ官庁ではないと思いますが、本当に激務で過労死というのでしょうか、そういう皆さんが出てしまわれるというような状況にもあり、これはよほど各省庁間などで連携をとっていかなければいけない問題だというふうに思うんです。この実態調査で、実際に生産ラインに組み込まれてほとんど労働実態であったというような、この調査結果というのは労働省の方はこれは御存じでしたか。
  89. 鈴木直和

    説明員鈴木直和君) 現在、外国人研修生の件につきましては法務省、外務省等で入国の審査の手続をやっております。その中で研修期間が一年を超えるような長期の者等につきましては労働省に協議がある、そういう仕組みになっています。御指摘実態調査の件でございますが、その中身を見ますと研修という名で入国しながら事実上は就労している、こういう事例や研修の内容等について問題がある事例、そういったものが上がってきております。したがいまして、この研修生の受け入れがその本来の機能を十分に発揮しますように法務省関係省庁とも十分相談していきたい、かように考えています。
  90. 千葉景子

    千葉景子君 実際にこれは働いていたんだということになりますと、例えば働いたならばそれに応じた賃金が支払われなければいけない。こういう問題は、やはり法務省ではなくて、労働省がきちっと労働者保護労働関係法規の適用をするという意味で関与をしていかなければいけない部分だというふうに思うんです。これからもそういう意味では、入り口でどんどんこういう資格で入れますよと、入ってみたらとてもじゃないけれども労働条件は劣悪である、あるいは十分な賃金も支払われないというようなケース、これが別にふえるかどうかわかりませんけれども、当然出てくる可能性もあるわけです。こういう双方の連携というんでしょうか、その辺はどう考えられていくんでしょうか。  法務省の側とそれから労働省も、やはり労働者保護するという官庁ですから、そういう観点でどういうふうにフォローアップあるいはチェックをしていかれるのでしょうか。法務省労働省それぞれお尋ねしたいと思います。
  91. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 委員指摘のような、研修に名をかりまして実は労働者として稼働しておったというケースがよく見受けられますので、確かにそういった観点からは労働省の所管行政対象として労働条件の確保あるいは労働基準の遵守というようなことを労働省にやっていただかなければいけません。これは研修とか労働力の導入だけじゃございませんで、一例を挙げますと就学生問題でも同じでございまして、本来日本語を勉強しに来る人たちにつきましては、やはり文部行政の側からのいろいろな行政的指導を含め、光が当てられなければならない。したがいまして、これからは日本にやってくる外国人の在留資格のいかんを問わず、関係省庁がたくさんに広がっていくだろうと思います。  そこで、この間参考人は、例えば労働省との合い議について、熟練労働者のところの合い議について、現行法では協議になっておるがこれが削除されたのは後退だという御意見の方がおられたように記憶しておりますが、我々は逆にそうではございませんで、労働行政と法務行政といいますか、入管行政とがタイアップする必要があるというところから、まず入国審査基準につきまして事前にその大枠を労働省あるいは関係省庁と協議をいたしまして決めていく、そして完全に各省庁の基礎的な政策との整合性を合わした物差しをまずつくる。  それから個別的には、入れる入れないにつきまして常に情報を交換し、一たん入ってきた者が今申されましたような研修生のくせに労働者として稼働しておったというような事例につきましては、これは労働省の方へ情報を提供するような事実上の協議の場を設けていこうということで、立法作業過程におきまして労働省と話し合いができておる次第であります。  それから法改正の中でも、職安法の一部改正をやりましたのがその趣旨が一部出ておるわけであります。  それから基本計画等もつくりますし、そして入った後の在留活動が各関係行政機関から見て問題のある者につきましては、各行政機関の御協力を十分賜るというふうな方向で運用していきたいと思っております。
  92. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 労働省といたしまして、外国人労働者を受け入れるに当たりましては、やはり我が国労働市場にどういう影響を及ぼすかということとあわせまして、受け入れた外国人の方の労働条件が十分に確保されなければいけない、こういうようなことが非常に大事な問題ではないかと思っております。  そういう意味におきまして、私どもだけじゃなく、やはり労働省法務省十分に連携をとり、協議した上でこれからの行政というものを進めていかなければならないだろうというふうに思っております。そういう意味におきまして、先ほど米澤議官も御答弁なさいましたように、職業安定法の一部を改正させていただきまして労働大臣と法務大臣の協力に関します規定を設けておるわけでもございますし、あわせましていろいろな場面でこれから法務省とも十分御協議をした上で進めていきたい、こういうふうに思っております。  さらにもう一つ、正規に働かれる外国人労働者の方の労働条件をどのように確保していくかということがございますが、これにつきましてはやはり関係事業主の方たちの御協力、御理解というのが非常に大事な問題になるだろうというふうに思います。そういう意味におきまして啓発周知活動というのも十分にやっていかなければならないと思っております。ことしも外国人労働問題啓発キャンペーン旬間というのもいたしまして、必要なリーフレットも大量に作成をいたしまして事業主等方々の御協力もいただくように指導をしたつもりでございます。  そういうようなことで、今後も十分、繰り返しになりますけれども法務省御当局と十分連携をとりつつ万全を期していきたい、こういうふうに思っております。
  93. 千葉景子

    千葉景子君 ただ、どうも見ておりまして、例えば今回も不法就労させること自体処罰対象になる。しかし、それを裏から考えますと、本当は働くことというのは貴重なことで大変なことなわけですね。むしろ、本当にそれが悪質な雇用関係にないか、あるいはそこに労働法規違反がないか、そういうことをきちっと踏まえてそれに対応していく。それを抜きにして片方だけ、働くこと自体処罰するなどという観点だけで取り締まられてはこれは困るわけですね。  入管が違反事例を摘発されるような場合、労働省から入管へ、これはまあ法的にも、今いろいろ問題がありますので通報しないというような問題もありますが、ルートはある。しかし、入管の側あるいは摘発する側から今度は労働省の側へ通知をするとか、そして一緒になってその現場に赴くというようなことをやはりやっていきませんと、そういう不法入管行政の裏には必ず労働関係違反事例とか不当な労働の権利の侵害、こういう ケースがほとんどだろうと思うんですね。そういう意味では入管の方から労働省へとやはりきちっと通報するそういうような手続といいますか、そういうものを確立していただきたいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  94. 股野景親

    政府委員股野景親君) 御指摘のとおりでございます。まず法違反の状況が認められました場合に、入管当局自身で対応することを初めとしまして、労働省側と御連絡の上で共同で実態を把握し、また事態の是正を行うということを現実に既に行っております。  それからまた、我々の方で判明しました事案につきまして、それが入管法の上で問題があると同時に労働条件という点あるいは災害補償というような点で問題があるということが判明いたしますと、これは入管当局の方から労働基準監督署の方へ御連絡もして、そしてそのことによってむしろ適切な対応が労働行政観点からも払われるということも現実に既に行っておりますので、そういうことを今後も積み重ねていくということは、これは今委員指摘のとおり十分心がけてまいりたいと思っております。
  95. 千葉景子

    千葉景子君 時間になりましたので、最後にまとめをさせていただきたいと思います。  まだ問題点が残されているんですが、いずれにいたしましても来日する外国人労働者外国人の皆さんの問題というのは大変課題が多い。受け入れのルールだとか受け入れの体制あるいは人権の確保、そういう問題に対してまだまだ解決しなければいけない部分が山積をしているのではないか。そういうときにその出入りのところだけで物を見ていこうということはやはりこれはもう慎まなければいけない、総合的に政策をつくった上でじゃそこで出入りのところは法務省に担当してもらおう、こういう形でぜひ考えていただきたいというふうに思うんですね。  そういう意味では、今回こういう改正案が出ましたけれども、これはあくまでもとりあえずやってみたというぐらいに考えていただいて、問題がたくさんあるんだということを十分認識していただきたい。そして今後とも総合的な政策と同時に、ですから常にこの法律が問題があれば見直しを含め、あるいは再度の改正ども含めて、いつもそういう態勢に置かれているんだということを十分に踏まえていただきたいというふうに思うんですね。そういう意味では、罰則などについてもできるだけ慎重な態度で対処をするとか、あるいは労働関係、人権など総合的な観点から今後見直しなども頭に置きながら対処をしていくということをぜひ胸にしっかりと押さえておいていただきたいと思うんですが、大臣の見解をお伺いして、終わりにしたいと思います。
  96. 後藤正夫

    ○国務大臣(後藤正夫君) お答えいたします。  ただいまの千葉委員の御質問、御意見でございますけれども、今後この法律の運用に当たりましてよく留意し、また将来に向かって検討しなければならない多くの問題についての示唆をいただいているように思われますので、この運用に当たりましては十分そういうことも念頭に置きましていきたいというように考えております。
  97. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時十二分休憩      ─────・─────    午後一時十一分開会
  98. 黒柳明

    委員長黒柳明君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  99. 白浜一良

    ○白浜一良君 前回に引き続いて少し御質問をさせていただきたいと思います。  今、単純労働者という呼称がございますが、明快であるわけでございますが、言われた本人からすると余りいい感じはしませんですね、単純労働者というのは。西ドイツの例を見ましても一般労働許可という一般という呼称が使われておりますが、やはり人権尊重という立場から、こういうふうにちょっと見下したような表現を今後変えられないものか。一般労働者という呼称にしてもいいわけでございますが、その辺は人権尊重という立場から私非常に問題であるというふうに思うわけでございますが、できましたら法務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  100. 後藤正夫

    ○国務大臣(後藤正夫君) ただいま白浜委員から御指摘のありました単純労働者、この用語につきましては、出入国管理行政の上では特段の技術や技能、経験年数等を有しなくても就労可能なもの、こういうものを指しているものでございます。確かに、御指摘のように何か適切な言葉があればやはり今後検討していった方がいいのではないかと思いますけれども、今のところは適切な言葉がなかなか見当たらないのでこういう言葉を使っているというのが実情でございます。
  101. 白浜一良

    ○白浜一良君 これがすべてじゃないんですけれども、非常に小さな問題であるわけでございますが、やはりそういう人権尊重という立場からさまざまな御配慮をよろしくお願い申し上げたいと思います。  在留資格につきまして何点かお伺いしたいわけでございますが、前回私、研修という名目で実際就労の事実のある中国からの受け入れの問題を御質問申し上げました。あの件におきまして、いわゆる日本へ研修という名目で来て、実際就労である。十万円の報酬を約束されているというか、そういう内容であったわけでございますが、逆に研修というものの資格名目の問題でございますが、単にいわゆる訓練校で学ぶとか学校で学習するということではなしに、もう少しいわゆる枠をお広げになる考えはないのか。むしろこういう研修という名目で言いましたら、やはり現場で実際働いて、その中でいろんな技術、技能を身につけるということがこれは本来非常に自然なわけでございます。  むやみやたらに広げるわけにいきませんけれでも、例えば政府がそういう業種なり企業なりを指定していただいて、そういうところにおきましては現場労働も含めて研修という枠で受け入れしますよ、こういう枠を拡大されるような考えがないかどうか。当然その場合、そういう研修内容というんですか、非常に大事でございますから、あくまでも政府が指導する立場になって進めていただくということ、これはもう大前提でございますが、その辺もお考え伺いたいと思います。
  102. 股野景親

    政府委員股野景親君) 研修の今後の運用ぶりについての御質問でございますが、研修ということは、これまで我々が取り扱ってまいりました考え方、基本的に技術の移転ということを目的としているものでございまして、その観点からの対応というのは今後もぜひ守っていく必要があると思います。ただ、その具体的な形となりますと、従来これは一定の基準の中で座学の問題それから今度は実際の現場での実習の問題という両面を取り上げて見てきているわけでございます。  そこで、御指摘の点は実習ということのあり方について今後また考えてみる余地はないかとこういう御指摘かと思いますが、これは今後の問題でもございますので、我々としては、まずその技術移転が図られる、技術の習得が行われるというその本来目的を確保するということをしっかり行った上で、それでは今度は現場の実習ということが今までの扱いに比べて今後さらに有機的な活動ができるような取り計らいができるかどうか、これは関係省庁とも相談しながらさらに考えていく余地があると存じております。
  103. 白浜一良

    ○白浜一良君 要するに、現実のいわゆるニーズに即しましてやはり柔軟な対応をまたお願い申し上げたい、このように思うわけでございます。  それから今回、技能資格という項目で、従来の解釈でございましたらいわゆるコックさん、調理士さん等々、そういう例示がされておるわけでございますが、考えましたら、どんな国にもそれぞれ固有のやはり高度なまた貴重なそういう技能と いうのがあるわけでございまして、例えば中国なんかを見ましたら非常に歴史のある国でございまして、さまざまな工芸とかいろんな貴重な仕事を持った方がいらっしゃるわけでございますが、文化の交流という面から考えまして、そういう技能という資格の考え方ですね、その辺がどうなのか若干お伺いをしたいと思いますが。
  104. 股野景親

    政府委員股野景親君) 従来も技術を持った人、あるいは熟練した一つ労働というものに従事する人、こういったような観点からの受け入れということを行ってきたわけでございます。この従来の熟練した労働という観点で例えば外国料理のコックさんであるとかあるいは菓子職人、こういうような人たちが今まで受け入れられてまいりました。これはまた今後新しい技能という在留資格の中で受け入れを引き続き行っていくことになりますが、ただいま委員指摘のように、この分野でさらに従来以上に受け入れを拡大する意味合いというものはあると存じております。  そこで、従来扱っておりましたこういうコックさんあるいは菓子職人というようなカテゴリーの人たちのほかに、例えば貴金属加工というような工芸の分野での熟達した職人で、かつ産業上特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務、こういうもの、これがこの技能という新しい在留資格の中には含まれることになると私どもとしても考えております。  そこで、ただいまも御指摘のような中国の工芸に従事する人について、まさに今のような観点で技能というものが特殊な性格がありかつそれがまた熟達したレベルのものであるかどうかということを判定した上で、これに該当する場合には受け入れていくということになると思います。
  105. 白浜一良

    ○白浜一良君 それと、いわゆる教育、また人文知識・国際業務、また文化活動、こういう在留資格が新設されたわけでございますが、非常に幅のあることでございまして、これらの資格というのはどの程度の技術、どの程度の知識が水準であると考えていらっしゃるのかお伺いをしたいと思います。
  106. 股野景親

    政府委員股野景親君) 御指摘の教育、人文知識・国際業務のこの在留資格、確かに幅のある概念でございまして、その技術または知識というものの程度にかかわる基準、これは今後関係省庁と協議をして定める審査基準の中で定めることになります。そういう今後審査基準を設ける作業を行いますが、それに先立って今の時点において私ども考えておりますところは、その外国人の技術または知識の程度が学術上の素養というものを背景とする一定水準以上のものであるということが必要だろうと思っておりまして、具体的には大学卒業程度の技術または知識というものを持っている者を考えております。
  107. 白浜一良

    ○白浜一良君 一定の水準、大学卒程度ということで伺いましたけれども、将来的にそういう基準の枠が広がる可能性があるのかどうか。  それともう一つは、これだけある意味で在留資格というものが項目もふえまして内容も多岐に及んだわけでございまして、当然入ってくる外国人にもそういうことがわかるということが非常に大事であります。そういう意味から、どのような対策をお考えになっているかお伺いをしたいと思います。
  108. 股野景親

    政府委員股野景親君) 拡大という観点につきましては、これは現時点におきましてはこれから審査基準を関係省庁とも御相談の上決めていく段階でございますので、今の時点ではまず先ほど申し上げましたようなことを念頭に置いて基準をつくってみたいと思います。ただ、でき上がりました基準については、これは省令をもって公にされることでもございますので、またこれについて関係者の御意見等をお寄せもいただくと思いますので、そういうものをその後の基準をつくりました後の参考にさせていただきたいと思っております。  また、御指摘のとおり、外国人の方に十分この内容が知られることが大事でございますので、その面での基準をつくりました後、十分に広報を行い、周知徹底が一般に図られるよう心がけてまいります。
  109. 白浜一良

    ○白浜一良君 外務省の方は来ていらっしゃいますか。
  110. 田辺敏明

    説明員(田辺敏明君) お答えいたします。  在留資格の拡大という問題は、これはいろいろな角度から慎重に検討しなければなりませんし、それには国内的ないろいろな事情、海外における事情、そういうふうな点を総合して関係各省と十分協議してやっていかなければならぬ、こういう問題であろうかと存じます。したがって、今回の入管法改正でいろいろ御検討されている点については、今までの状況等を踏まえた上での改善でありまして、かつ実効が上がるものと我々としても認識しております。
  111. 白浜一良

    ○白浜一良君 そういうことでなしに、要するにこういうふうに改正されて枠が広がったわけでございまして、入国される方にそういうことがわかっていなければいけませんね。要するに告知する必要があるわけでございます。そういうことを何か考えていらっしゃいますかということなんです。
  112. 田辺敏明

    説明員(田辺敏明君) この点につきましても、今回の入管法改正ではできるだけ透明性を高めるというふうなことでやっておられますし、我々の方としましても在外において実際にビザ申請や何かに来られる人については、十分その点周知徹底して、よもや誤解がないような形で努力していきたい、こう考えております。
  113. 白浜一良

    ○白浜一良君 では次に、不法就労者の救済対策について少しお伺いしたいんです。十万人ほどいるというふうに言われているわけでございますが、今回改正されましてもなかなかその改善に当たらない、またいろんな問題が潜在化したり顕在化したりするわけでございます。この不法就労者と言われている方々が具体的に人権上の問題、生活上の問題、さまざまなトラブルに巻き込まれるわけでございますが、実際にこういう方々が困られた場合にどこに相談に行けばいいのか、また救済策としてどんな処置がとられているのか、現状をお伺いしたいと思います。
  114. 股野景親

    政府委員股野景親君) まず、入管当局といたしまして在留外国人の方からいろいろな御相談をお受けすることが重要と考えておりますので、各地方入国管理局に行政相談案内の窓口というものを設けております。そこでまず基本的な在留問題についての御相談というのはいただけると思いますが、このほかに、これはまた人権擁護局の方の観点もございます。昨年の八月から東京の法務局に外国人のための人権相談所というものが開設をされておりますし、そのほかの地域におきましても各地の実情によりまして随時、広島や岐阜などの局で外国人のための人権相談所の開設を行っているという経緯がございます。  それからまた、これは労働省側でお考えいただいていることでございますが、ことしの十一月一日から労働省側で、東京、神奈川、愛知、大阪の各労働基準局外国人労働者相談コーナーというものを設けているというふうに承知をいたしております。
  115. 白浜一良

    ○白浜一良君 今もお話に出ましたけれども、東京法務局に外国人の人権相談所を設立された。実際どの程度の利用状況にあるのかということをまずお伺いしたいと思います。
  116. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) ただいま股野政府委員からお答えいたしましたとおり、東京法務局におきまして昨年の八月から毎週火曜日と木曜日の午後ということで、通訳の人を置きまして外国人のための特設相談所という窓口を開設いたしました。これは現在も続けておるわけでございますが、開設以来の実績は大体開設日に数件ずつの相談、平均しますと日に三件くらいの相談という実績で現在も続いておる状況でございます。
  117. 白浜一良

    ○白浜一良君 今もお話しございましたが火曜日と木曜日、昼の一時から四時まで、日に三件、こういうことで伺いましたけれども、しかし十万人を超える不法就労者がいるという現状から見ましたら、これはいろんな問題があるわけでございます が、余りにいわゆる体制が貧弱である、またそういう相談件数も非常に少ないという現実があるわけでございまして、これからますますそういうトラブルがふえると思いますが、今後もっとこの窓口を広げるべきじゃないか、そのようにも思うわけでございますが、御所見を伺いたいと思います。
  118. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) ただいま日に約三件と申しましたが、これは特設相談所として開いているときの数字でございますが、法務局、地方法務局におきましては常時人権相談ということを行っておりまして、今の東京法務局でも特設日以外でも外国人の方の相談は結構ございます。  そうして、そのときには通訳はおらないわけでございますが、日本語の片言でわかる人とかいう方もございますし、あるいは通訳を連れてこられる方もあるというようなことで、ただいま申しました三件よりは実質的にはもっと外国人相談が多いというふうに私どもは認識しておるわけでございますが、それにいたしましても今後ますます国際交流が盛んになって日本に滞在される外国人の方がふえてくることが予測されますので、それらの情勢を見ながら、また地域によりまして、これも東京は相当実績を上げておると思っておるわけでございますけれども、地方で外国人のための相談窓口というのを開設いたしましても必ずしもこちらが期待したほどの反響がなかった場合もございまして、その地域の実情というのがいろいろあろうと思いますので、そういったことも踏まえながら必要に応じて拡充を検討していきたいというふうに考えております。
  119. 白浜一良

    ○白浜一良君 次に、労災の申請等で労働基準局にいわゆる不法就労者御自身また事業主からいろんな相談がある場合があると思います。その場合に、既にお話も出ておりますがいわゆる告発義務を免責するという措置が講じられていると、そのように伺いました。当然、人道上非常に大事なことであるわけでございますが、どういう実態になっているのか、少し御説明を法務省労働省の方にいただきたいと思います。
  120. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) 法務省の人権擁護機関といたしましては、今申されました相談窓口へ相談に来られた外国人の方、相談を受けております間にいわゆる不法就労者あるいは不法滞在者ということがわかりましても、これは人権擁護という行政目的の立場から入管法六十二条による通報はしないということで行政を進める必要がある、こういう判断をしておるわけでございます。  この点につきましては、入管法六十二条の解釈に関しまして、さらに一般規定であります刑事訴訟法の公務員の告発義務、「犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」という規定がございます。これの解釈について刑訴法学者などの本を読みますと、告発をすることによって当該公務員の担っている行政目的を著しく阻害することになる。他方、告発しないことによってその規定目的としているところの、何と申しますか、告発しないことによる社会の不利益と申しますか、そういうものと比較考量して行政目的を阻害することが非常に著しいと考えられるような場合には、告発しないでも告発義務違反には問われないでいいではないか、こういう解釈が一般的なのでございます。  もっとも、今申しましたように刑訴法の解釈といたしましては利益考量と申しますか、どちらを優先すべきかという判断が個々の事案ごとになされるべきでありますので、一般論として申し上げるわけにはいかないわけでございますけれども入管法六十二条の解釈の上では、外国人が人権が侵害されているということで相談に見えた場合に、人権擁護行政としてはまずその状態、訴えを受けて処理することが先決でございまして、それを六十二条に基づいて通告するということでは人権行政目的に著しく背くと申しますか、行政目的を阻害することになるであろうというふうに考えまして、原則としては通報しないという扱いをするということを、これは入国管理局とも相談の上で取り扱いを定めた次第でございます。
  121. 氣賀澤克己

    説明員氣賀澤克己君) 労働基準監督機関といたしまして、外国人労働者から申告、相談あるいは労災補償の給付の請求ということがありまして、それに関連して不法就労者であるということが判明した場合の取り扱いにつきましては、今法務省などからお答えがありましたのと同様な見地に立ちまして、こういう人を出入国管理行政機関に対して情報提供をするということにいたしますと事実上不法就労者からの申告、相談あるいは労災補償請求というものの道を閉ざしてしまうということになりまして、労働基準関係違反の発見なり是正の端緒を失う、そして本来の行政目的の達成を困難にするということにもなりかねませんので、私どもそういう場合には原則として出入国管理行政機関に対して情報提供は行わないというような扱いをすることにいたしておるところでございます。
  122. 白浜一良

    ○白浜一良君 今回の法改正でいわゆる悪徳雇用者あっせん業者罰則規定が設けられました。それによりまして、いわゆる悪い人ほど自分がないしょで働かしている人に対して、そういうところには行っちゃいけないということで行かせないように力が働くものでございます。また逆に善意の雇用者というか、そういう方も実はいらっしゃるわけでございまして、そういう方もやはり行って罰せられるんじゃないかということで非常に行きにくいという、そういう事情が発生すると思います。  そういうことで、いわゆるこの罰則規定が設けられた、これはそういうことも当然であるわけでございますが、そういうことと人道上の善意からなされる相談、この関係がどのように処理されていくのかということを非常に心配するわけでございまして、ここが非常にうまくいかなければ、ずっと論議されていますようにさらに潜在化してもっと劣悪化した雇用関係また人権問題が生まれるというふうになるわけでございまして、その辺をどのようにお考えになっているか、賢明な措置をお願いしたいわけでございますが、御所見を伺いたいと思います。
  123. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) ただいま委員指摘のように、今の人権擁護の観点からの相談窓口をある程度実効性あるものにするということと、それから他方、放任できないような反社会的な不法就労活動助長行為というものに対する罰則等がうまく機能いたしませんと本来の目的は遂げられないというのは事実でございますので、先ほど来労働省からもあるいは法務省の人権局長からもお話のありましたように、入管当局といたしましても今後とも人権相談窓口が充実強化されるような方向でいろいろ配慮をし、かつまた法律趣旨あるいは罰則趣旨あるいはそうした不法就労活動実態等についても十分な広報活動をし、遺憾のないようにやっていきたいと思っております。
  124. 白浜一良

    ○白浜一良君 労働省見解もどうかよろしくお願いします。
  125. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 労働関係法令は内外人の区別なく適用されるわけでございますし、また合法的な就労者あるいは不法就労者というものを問わず、原則として適用がされております。そういう意味で、労働省といたしましてこういうような関係法令の違反があれば厳正に対処をしていくという態度でおります。  私ども所管の職業安定局におきましては、外国人労働者の適正な雇い入れあるいは不法就労の防止という観点から、事業主に対しまして理解と協力を求めるためのいろいろなPR、指導というのも行っておりますし、また労働基準局におきましても主要の労働基準局の窓口に相談窓口というようなものも設けていろいろな相談に応じるというような体制をつくっておるところでございます。  いずれにいたしましても、事業主に対しまして労働関係法令の遵守の徹底を図るということに重点を置いて今後の行政を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  126. 白浜一良

    ○白浜一良君 いわゆる不法就労者と言われる方、またたくさんの外国人の方が日本にも実はいらっしゃるわけでございますが、いろんなことが考えられるわけでございます。何の身元保証もなく病 気になられたり、場合によっては不幸なことに死に至るようなことがあるわけでございますが、そういうときに私もちょっと調べてもらったんですけれども対応する法律がない。明治三十二年制定の行旅病人及行旅死亡人取扱法、こういう法律しかないというふうに私は伺ったわけでございますが、合法的にしろいろんな形でたくさんの外国人の方が日本に住んでいらっしゃる。またいろんな病気、死亡等が考えられる、そういう現実に対してどのように対応されるのか。また、何か新しいそういう法律をつくるというようなこともいわゆる人道上の立場からお考えになっているのか、お伺いをしたいと思います。
  127. 股野景親

    政府委員股野景親君) 在日、在留される外国人方々のいろいろな問題についてこれを救済するということは、これは人権保護という観点から入管局といたしましても大変重要であると考えております。  ただいまの御指摘の行旅病人及行旅死亡人取扱法というような点の規定ということもあることを我々も存じておりますけれども、この問題あるいはほかの人権保護にかかわるいろいろな救済措置というものが、これは法務省の所管の外に及ぶものが非常に多いということも事実でございます。そこで、関係する方面もいろいろ多いことでございますので、それぞれの所管のお立場からまたいろいろお考えもあることと思いますので、我々としては関係の所管官庁ともよく御相談をしながら、先ほど申し上げました人権保護についての観点で既に行っております法務省内のいろいろな努力、あるいは労働省側とのいろいろな意思疎通といったものと同じ観点での関係省庁間の意思疎通と対応の今後の適切なあり方というものについては、よく検討し御相談をしてまいりたいと考えております。
  128. 白浜一良

    ○白浜一良君 ますます日本入国される外国の方もふえるわけでございまして、そういったことも起こること自身がもう不思議でないということもあるわけでございまして、どうか適切な対応をよろしくお願い申し上げたいと思います。  それから次に、いわゆる社会保障という観点から申しましたら最近多少改善されまして、外国人登録証明書または難民認定ですか、された方は条件つきでございますが年金とか医療保険とか、また生活保護とか公的な住宅への入居、そういうことの門戸が開かれたというふうに伺っておりますが、不法就労者はこれは当然ないわけでございますが、しかし不法就労されているといいましても実際この日本に今生きていらっしゃるわけで、住んでいらっしゃるわけでございまして、先ほど言いましたが、病気になられる場合もございます。またいろんな理由で極度な生活苦に陥られる場合もあるわけでございまして、そういう場合に何か対処できることがあるのか、またそういうことも十分対応できる考えを持たなきゃならないと私は思うわけでございますが、お考えがございましたらお伺いをしたいと思います。
  129. 股野景親

    政府委員股野景親君) 先ほども申し上げましたことと同じ観点でございますが、人権ということについては我々可能な限り配慮をし保障も行っていくべきだと考えておりますが、それじゃ今具体的な御指摘もございました社会保障を実際の各般にわたってどうであるかということになりますと、これまた関係省庁がございまして、法務省が直接所管していないという事情もございますので、具体的な点についてはここで御発言申し上げるのは控えさしていただきたいと思いますが、先ほどのような観点での関係省庁間の意思疎通ということは十分心がけてまいりたいと思います。
  130. 白浜一良

    ○白浜一良君 当然いろんな多岐にわたる問題でございまして、社会保障全般を私は論じるつもりはございません、不法就労者という立場での問題でございまして。しかし、少なくともそういう病気になったり生活苦に陥ったり、これはもう当然あるわけでございまして、その場合のいわゆる現実的な対応というものを考えなきゃならない、そのことを私は問題に思っているわけでございまして、どうか適切な対応をお願い申し上げたいと思います。  次に、そういうずっと不法就労者にかかわる問題を踏まえまして、結局さまざまな問題があるわけでございまして、これは私案でございますが一つの提案をしたいわけでございますが、不法就労者と言われている方々につきまして、確かにいわゆる犯罪に及ぶようなそういう人たちはこれは当然別でございます。いわゆる帰国をしたくない、また日本に滞在をしたい、そういう意思を持っていらっしゃる方で非常に善良な方もたくさんいらっしゃるわけでございまして、そういう方々をいわゆる難民として認定できないのかどうかということでございます。  さまざまな問題をはらんでいるということは私はよく理解はできますけれども、その人たちをいろんな面で保護しようと思えばそういう立場をきちっとしなければできないという問題があると思うわけでございまして、これは私全く個人的な意見でございますが、御提案を申し上げたいわけでございますが、どのようにお考えでしょうか。
  131. 股野景親

    政府委員股野景親君) 難民として扱うという問題になりますと、これは入管法上の難民認定の手続によることになります。そしてその際に、その申請をする人たちにつきまして、先ほどの御審議の中でも答弁申し上げましたように、例えばその在留の期間が申請の間に経過してしまうというような場合に、その在留の期間の更新を図るというような配慮も行ってきておるわけでございますので、難民の認定申請ということについてこれは人道的な観点からきちんと対応いたしたいと思っておりますが、他方、難民の条件、難民認定に係る要件というものがございますので、その点についてはやはり難民に係る要件というものに合致しているかどうかということで対応していくということになると思います。
  132. 白浜一良

    ○白浜一良君 よくわかるわけでございますが、午前中の質疑にもございましたけれども、非常に人数も少ないし時間もかかる、そういう現状であるわけでございまして、実際こういう十万人という方が今後どうなっていくかということ、実際適切にそういう方々が把握できるということすら非常に難しいわけでございますし、そういう方がどのようになっていくかという観点で私は心配を申し上げて言っているわけでございます。  次に、留学制度についてお伺いしたいわけでございますが、実際、留学目的日本にいらっしゃる、しかしなかなかうまくいかないということがございます。いろんな理由があるわけでございますが、一つの大きな理由はやはり日本語が難しい、日本の生活、風習になじみにくい、当然こういう問題もあると思います。しかし、もっと大きなことは、たとえ日本の短大とか大学とかそういうところを出ても日本においてはなかなか就職の保証がない。特に公務員等の公的な職業は一切拒否されているわけでございますし、さまざまな資格を考えましても非常に窓口は閉ざされているわけでございます。  そういうことが非常に大きな原因になっている、そのように思うわけでございますが、私はこれを何としてもこれからの日本社会考えましたら改善しなきゃならない、もっと門戸を開放すべきである、このように思うわけでございますが、法務省、文部省、また労働者の方にそれぞれ御所見を伺いたいと思います。
  133. 股野景親

    政府委員股野景親君) 留学生あるいは就学生というものの受け入れにつきまして、法務省として所管をしているわけでございますが、それじゃそういう方たちが本来の目的を達成するということについては、これは当然教育行政を所管される文部省、あるいは海外交流の見地からの海外におけるいろいろな教育活動との関連での外務省等の関係省庁のいろいろな御意見というものを十分踏まえた対応が我々として必要であろうと思っております。  日本語あるいは日本で勉強をするということについて、これらの方々が将来に希望を持ってせっかく日本に来られるということでございますので、法務省側としましては本来のそういう目的が 十分達成されるように対応をしていきたいと思っております。そのために、ただいま申し上げましたような関係の省庁側とは十分御連絡をとった上で、適切な対応を法務省としては行ってまいりたいと考えております。
  134. 雨宮忠

    説明員(雨宮忠君) 留学生の就職についてのお尋ねでございます。  留学生は基本的には、日本の大学等でしかるべき勉学をして、もといた国に戻って活躍していただくというのが一番基本的な姿ではあろうかと思うわけでございますが、先生御指摘のように、最近日本に留学してきて卒業し、勉学を修了した段階で日本の企業に就職したいという留学生も出てきておるわけでございます。私どもといたしまして、これを大いに積極的に進めるという立場では必ずしもございませんけれども、留学生の希望があり、また国内の企業側におきましてそのニーズがあり、立派にやっていけるということであれば、そのような方途も結構なことだろうかというように考えております。  先生の御意見も踏まえて考えてまいりたいと思うわけでございます。
  135. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 私ども職業安定行政の立場から申し上げますと、やはり国内におきます適正な労働力需給調整するということが大事だろうというふうに思います。そういう意味におきまして、外国人労働者の適正な受け入れというものはそれなりの判断基準に基づいてやらなければならないということだろうというふうに思います。  今先生御指摘外国人留学生の関係につきましては、一つはアルバイト的な労働の問題とそれから大学等を卒業した後の国内における就職の問題と二通りあるだろうというふうに思いますが、外国人国内の大学を卒業され、それなりの技能、技術を習得され、在住資格もそういうことで取得できるという方が日本国内で就職をされるということは、それなりに評価すべき点があろうというふうに思いますし、そういう意味での就職のあっせんと申しますか職業紹介ということであれば、我々も十分に努力をするにやぶさかでない、こういうふうに考えております。
  136. 白浜一良

    ○白浜一良君 いずれにいたしましても、日本がこれだけの経済大国ということで国際化の波に先頭を切らなきゃならないわけでございまして、日本に来て留学をされるその方が日本というものをいい国だという理解をしてもらわなければ困りますし、またそれに就職も含めてやはり適切な対応が要るという、せっかく日本に来られても挫折をしたり嫌な思いをして帰られるということに非常に危惧を持っているわけでございまして、そういった面で、今それぞれ御意見伺いましたけれども適切な積極的な対応をよろしくお願い申し上げたいと思います。  次に、先日の参考人意見聴取の中でもたくさんお話が出ておりましたけれども、今日本でたくさんの日本語学校がございます。悪質な学校もございます。それはそれで、すべていけないということじゃないんですけれども、受け入れるという観点からいけば、やはりもともと自国の中で日本語の学習をする、また日本の風習についてもある程度学ばれてそして日本に来られる、これが非常に自然なあり方である。これからの時代を考えれば当然そういう流れにしなきゃならないと思うわけでございますが、そういった面で、なかなか経済的にも大変な国も多いわけでございますし、いわゆる経済協力という枠をもっと広く解釈していただいてそういった面での考え方ができないのかどうか、特にこれは外務省の方にお伺いしたいと思います。
  137. 田辺敏明

    説明員(田辺敏明君) お答えします。  先生の御指摘なかなかポイントをついているようでございまして、我が国としても御存じのように国際交流基金、これを通じて日本語教育の専門家の派遣だとかあるいは海外の日本語教育機関への助成、あるいは外国人日本語教師の本邦招聘等々いろいろなことをやってきておりますし、ことしの七月にはこういう事業を総合的に実施する中核機関として日本語国際センターというのを設けました。それからさらにODA関係というようなことで、先生御指摘ございましたけれども平成元年度予算では、二十九・四億円のうちの七一%に当たる二十一億円をODAの予算として計上しております。それからさらに、その活躍が大いに称賛されております青年海外協力隊員、この中にも、隊員として派遣された中で日本語を教えている者も二十名以上おりますし、それからさらに一般無償資金協力でインドネシアのパジャジャラン大学に日本語センターというのを建設して協力していくというふうなこともございます。  基本的な考え方として、日本に来る前にできるだけ、少なくとも基本的な初歩的な日本語はそれぞれの国で勉強してくるというのも一つの有益な方法だろうと思いますし、そういうために今申し上げましたようなのは役立つのだろうと思います。と同時にもう一つ、本当に何か日本で勉強したい、日本へ直接来て勉強したいというふうな人がいることも事実でございまして、そういう人たちには直接日本に来て勉強するというふうな道もあわせ開いておくということも必要なのではないのかなと、このように考えております。
  138. 白浜一良

    ○白浜一良君 欧米社会と比べると、今いろいろ力説されましたけれども、非常に乏しいわけでございまして、そういった面で私、積極的に拡大をしていただきたいということを申し上げているわけです。よろしくお願いします。  もう時間がございませんので最後にお伺いしますが、先日参考人に来ていただいて、特に西ドイツのヒールシャー先生もいろいろお話しされておりました。今回の入管法改正ということ、基本的には問題の解決にはならないと断言されておりました。要するに、単純労働者の受け入れということに関しましては、午前中もお話しございましたが、やっぱり総合的に制度化しなきゃならない。先ほどからも、それぞれ各省庁と連携をとってということも何回もおっしゃっているわけであります。それだけおっしゃらなければならないほど問題は大きいということであるわけでございます。  ですから、いろいろ難しい問題もあると思いますが、各省庁間のそれぞれ連携は当然でございますが、労働組合の意見聴取も必要です。また、そういういわゆる業界の方との話し合いも大切でしょうし、どうか総合的なそういう問題としてこれからの日本の将来のために積極的に取り組んでいただきたい。最後にこのことに関しまして法務大臣の御所見をお伺いいたしまして、終わりたいと思います。
  139. 後藤正夫

    ○国務大臣(後藤正夫君) いろいろ御意見を承りましたが、今後この法律が成立いたしました暁には、この法律の運用につきましてはさらに各方面の御意見を十分伺いながら実効のある運営をしていきたいと思います。  それから、先ほど来お話がいろいろ出ておりますが、せっかく日本に留学をしても留学をしただけの成果が得られない、日本においてもなかなか就職の道も狭い、あるいはそれぞれの国に帰りましても、旧植民地時代の旧宗主国であった国で教育を受けた人たちとの間のいろいろな差別のような問題もあるというような、いろんな問題があるように思われます。したがいまして、今後、我が国において勉強した人たちが本当に日本に来て勉強してよかったというふうに思ってもらえるような教育をしなきゃならないと思いますし、またそれぞれの国に帰った後も日本で勉強したことが有益であったということを感じてもらえるようにしていかなければならないという意味をも念頭に置きまして、文部省その他関係省庁とも十分連絡をとりながら本法の運用に当たっていきたいと思っております。
  140. 橋本敦

    ○橋本敦君 前回に引き続いて質問をいたします。  私が一つの課題とする問題は、外国人労働者の皆さんに対する我が国施策なり行政なりが本当に今日的な国際社会に通用する人権感覚をしっかり踏まえて対処をしているかどうかという問題であります。  先回もアメリカの外国人労働者法制に関連をし てシンプソン・ロディノ・マゾリ移民修正管理法の一端について触れました。一八九六年、連邦最高裁判所、ウィン・ウィング対合衆国事件と言われるようでありますが、ここで外国人労働者の地位についての判決が出ております。これはジュリストに出ておりますから御存じのとおりと思いますが、こう言っております。「合法的不法的とを問わず、合衆国の地域的管轄権下に居住するすべての外国人は、正当な法の手続という憲法的保護を享有する合法的「人」である」、こう判決をしております。  さらに、一九七六年のマシュー対ダイアツ事件と言われるようですが、ここでも連邦最高裁判所は「合衆国の管轄権下にある人は、正当な法の手続なくして生命、自由または財産を剥奪されないことは憲法修正第五条及び第一四条によって明らかであり、この国における存在は、たとえそれが不法で一時的でかつまた不本意であったとしても、憲法上の保護を享有するものである」、こう述べているわけですね。  こういう考え方について、大臣は御所見としてどう思われるでしょうか。
  141. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 大臣に対する御質問で僣越ではございますが、非常に法律的な判例を挙げてお尋ねでございますので、とりあえず私からお答えさせていただきます。  今、連邦最高裁判所のアメリカの判決をお示しになりましたが、我が国におきましても労働関係法規は言うに及ばず、裁判を受ける権利等につきましては、その方の存在自体が合法か非合法かということで区別されることはないと確信しておりますし、アメリカの判例の趣旨我が国でも実務上認められているだろうと考えております。
  142. 橋本敦

    ○橋本敦君 この考え方に御異議はないということはよくわかりました。そうすると、こういう考え方で人権感覚をもって本法の改正なりあるいは行政なりが実際に貫かれておるかどうかが次に問題になるわけですね。  もしもこういった考え方に異論がないのであれば、一つの課題としてILO百四十三号条約、これは一九七五年に採択されておりますが、移民労働者はたとえ不法であったとしても報酬、社会保障その他の給付について平等の待遇を受ける、こういったことをファンダメンタルな内容にしておりますが、この条約は批准するように検討するのが筋ではないかと思いますが、法務省いかがですか。これは外務省になりますか。
  143. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 御指摘のILO百四十三号条約は一九七五年に採択された条約でございますが、雇用目的とする移民の秘密裏の移動及び移民の違法な雇用を防止する、あわせまして、移民労働者雇用に関する機会及び待遇の均等を促進するというようなこと等を規定しておる条約でございます。  ILO条約の批准につきましては、我が国政府が従来からとっております態度といたしましては批准後はこれらの条約を適正に厳正に実施する、そういうような基本方針のもとに批准をいたしてきております。したがいまして、国内法制との整合性を十分に確保した上で批准をするという態度でやってきておるわけでございます。しかるにこの百四十三号条約につきましては、それぞれの条約の各個の条文についての解釈上の問題、あるいは我が国におきます国内法制におきまして、実効上の措置が本条約が要求しております要請を満たしているかどうかということにつきましていろいろ検討すべき点がございます。そういう意味におきまして慎重に対処をする必要がある、このように考えておる次第でございます。
  144. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういう姿勢は、根本的な人権尊重ということの国際的通念に本当に積極的にコミットしていくという姿勢がないことのあらわれです。具体的にこの条約批准のために国内法整備に努力し、そして批准しそれを実効あらしめる、こういった方向で処置をするというのが政府のとるべき態度ではないんですか。大臣はどう思われますか。難しいからやらぬというなら、いつまでたってもだめなんじゃないですか。
  145. 後藤正夫

    ○国務大臣(後藤正夫君) この問題は実は法務省の所管でございませんので、意見を述べることを差し控えさせていただきたいと存じます。
  146. 橋本敦

    ○橋本敦君 具体的に、例えば労働省労働保護法の適用についてはたとえ資格を持たない外国人労働者であっても基準法の適用を含めて保護的な処置はとるということをおっしゃるんですが、もしも本当にこの条約を批准する、そしてまた国際的な人権感覚水準に基づいた行政をやるというなら、まさにこの条約が批准できない条項の一つとして労働省自身が持っている問題がありはしませんか。  その一つは、労働者が訴えて出たその場合には、労働法規違反については処置をとろけれども、六十三年一月二十六日通達で、既に議論されておりますけれども不法残留入管法違反に当たる事例があればこれについてはその機関にその旨情報提供する。これはまさに労働者保護の訴えをしにくくさせる規定であるとしてさんざんここでも議論になりましたが、こういうことを持っている。そのことを改善しなければこの条約も批准できない、こういうことになるはずなんです。みずからそういった努力をしないところに問題がある。  私は、この際こういった通達は全面的にはっきり撤回をして、外国人労働者の権利救済については入管に通報するということはやめるという態度をきっぱりとすべきだと思いますが、どうですか。
  147. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 私ども職業安定機関の立場から申し上げますと、やはり国内におきます労働市場が外国人労働者を受け入れることによって悪影響をもたらさないようにということを最大の関心事といたしておるわけでございます。そういう意味におきまして、いわゆる単純労務者と言われる方々不法な形で国内におられるということ自体はやはり我々としては見逃すことができない大きい問題だろうというふうに考えておる次第でございます。そういう意味におきまして、安定機関等が不法就労者というような者についての情報を入手した場合には、必要に応じて入管当局にも御通知をする、御連絡をする、こういうことをやっておるわけでございます。  しかし、一方におきまして、先ほど基準局監督課長が御答弁申し上げましたように、実際に労働基準監督機関等に基準法違反等の問題につきまして申告等がございました場合には、それは行政目的を達成するための必要性から通報しない、こういうふうにいたしておるわけでございまして、それぞれの行政目的に応じて適切な対処をいたしておるつもりでございます。
  148. 橋本敦

    ○橋本敦君 裁判を受ける権利、救済を受ける権利で差別しないという審議官のお話がありましたが、事実上差別されることが余儀なくされるようなそういったことは改めるべきなんですよね。だから、まさに人権感覚という面から見ても、行政に一貫性がないどころか取り締まりに傾いておるという実情があるんですよ。  私は、この際労働省に、外国人労働者の皆さんの労働についての正当な保障と権利、このことをしっかり守るという立場で、今あなたが答弁なさったことはとても納得できませんから真剣に検討してもらいたいし、現に法務局では人権侵害の訴えがあった場合には、その訴えの趣旨は大事にしなくちゃならぬという建前から通報しないという処置もとっておられるわけですから、この点は政府として整合性のある方向で検討する課題として大臣として検討してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  149. 後藤正夫

    ○国務大臣(後藤正夫君) お答えいたします。  ただいまの御指摘の点は私の念頭に置いておきます。
  150. 橋本敦

    ○橋本敦君 外国人労働者の皆さんが本邦で労働するという、そのこと自体は本来的に悪だというように言えない性質のものでしょう、労働すること自体は。だからしたがって、その労働すること、我が国に来て生活をすることそれ自体がどのように合理的に保障され行政として行われるかは、我が国の主権にもかかわりますけれども、国 際的な基準や水準ということを離れるわけにいかないわけですね。  そういう点で私はもう一つお聞きしたいのは、先ほども議論が出ておりますけれども、まさに人間の生命にかかわる医療、そういった問題で適正な保護が与えられるだろうかということであります。この間の読売新聞にも「論点」のところで古池朝子さんという方が書かれておるんですが、「先ごろ孤独な外国人留学生が、医者にもかかれずに寂しく死んだ、という報道を読んで涙をさそわれた。」と、こうあります。涙を誘われたのは古池さんだけじゃありません。日本に留学をしあるいは就学のために在日をして苦労している若い人がたまたま病気になって、それで医者にかかる費用もなしに命を落としたとなりますと、これは私は重大な人権問題だと思うんです。  そういった外国人日本に滞留しておる人たちについて社会保障がどの程度適用されておるのか、国民健康保険にどの程度入っておるのか、それについて統計的なものはございますか。
  151. 大塚義治

    説明員(大塚義治君) 国民健康保険におきます外国人方々の適用状況でございますが、昭和六十三年四月一日現在の数字でございますと、外国人の方で国民健康保険の被保険者になっておられる方、四十五万人という数字がございます。
  152. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは日本に在留しておる全外国人のうちの何%ぐらいになりますか。
  153. 大塚義治

    説明員(大塚義治君) これは市町村からの報告をもとに統計処理したものでございますけれども、登録者数九十万人でございます。そのうち国保の被保険者数が四十五万人、単純に割り返した意味での適用率が五〇・一%でございます。
  154. 橋本敦

    ○橋本敦君 それはまさに外国人登録を受けた数についての話なんです。観光ビザ等で日本に来る外国人は年間二百万とも二百万を超えるとも言われている。そうして、ここで議論になっております不法就労者は十万とも言われておる。そういった状況を考えますと、健康保険証が与えられている外国人というのは長期に滞在することが外国人登録等によって資格づけられておる人についての話であって、いわゆる不法就労者とかあるいは就学生とか、それからさらには観光ビザで来日する外国人等についてはほとんど国民健康保険などということの適用はない、こういう状況でしょう。
  155. 大塚義治

    説明員(大塚義治君) 国保の外国人方々に対する適用につきましては、昭和六十一年にそれまでの取り扱いを改めまして、原則的には外国人方々にも適用するように制度を変えたわけでございます。  ただ、国民健康保険は、申し上げるまでもございませんけれども、市町村に住所を有する方々が相互に保険料を負担し合いましてその拠出をもとに保険給付を行うという制度でございますので、例えば観光その他の目的で短期に滞在をする方々、こういう方々については基本的に国民健康保険の適用を行うことは困難であるというふうに考えております。
  156. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで厚生省に伺いますが、その国民健康保険に入れないそういう人たちで病気になった場合どうするかという問題が出てくる。ところが病気になったからお医者さんのところへ診察を受けに行くと、医者の立場ではどうかとなりますと、これは医師法の規定に基づいて、十九条ですかね、診療拒否することができない、診察してあげなきゃならぬという義務が法律上あるんじゃありませんか。
  157. 大塚義治

    説明員(大塚義治君) 御指摘のとおりだと存じます。
  158. 橋本敦

    ○橋本敦君 したがって、ここに大きな問題がある。私どもが東京の私どもの民医連関係で病院を通じて調査をしたところでも、フィリピンやパキスタンや中国や東南アジア諸国、それからイタリアもあります、バングラデシュもあります、多くの人たちが病気になって病院にかかって診療しました。ところが診療したけれども保険証がない。したがって医療費が実際上支払われないという事例が数多くあるのが見つかりました。そしてまた、そのまま帰国されるという状況も、これもやむを得ない事情として幾つかのケースがあるのもわかりました。だから、おっしゃるように医師は医師法によって診察が義務づけられている。当然であります。診察すべきであります。ところが一方で、労働法務省は認めないとこう言う。  しかし、労働が認められなくても認められようとも、医師にかかるという必要性は人間として病気になったらある。ところが、医者は診察拒否ができないから診察をしますが、その人の生活保障は、保険もないし労働の保障もないとなれば支払うことができないということになって、日本の医療機関がこれを負担しなきゃならぬということになる。負担してでもやっているところがたくさんありますよ。しかし、こういった問題は放置をしておくべきではなくて、何らかの改善策を政府としても検討しなければ、これだけたくさん外国の人がいるという状況の中で、本当に外国人労働者に対する、あるいは外国人に対する温かい人道的な処置ができないことになりますが、こういう点の改善策について厚生省は検討すべきだと思いますが、いかがですか。
  159. 大塚義治

    説明員(大塚義治君) 私どもの所管をしております医療保険という立場からいたしますと、先生御指摘のような事例を新聞紙上等で私ども承知はいたしておりますけれども、医療保険制度あるいは国民健康保険制度の基本的な性格からいたしまして、そういう立場からこの問題に取り組むということはいささか困難であるというふうに存じております。
  160. 橋本敦

    ○橋本敦君 ですから大臣、法務省労働を認めませんよと言う人たちがたくさんいる。しかし、やむを得ず働いている人もありますが、やむを得ず働くから当然労働保護が十分与えられない暗い職場で差別されながら、低賃金で働かざるを得ない状況になる。そこで病気になって医者にかかる。医者はこれは医師としての責任上当然治療をする。ところがそういう支払いができない、こういう矛盾があるわけですよ。ですから、そういう意味で我が国外国人労働者に対する行政がどうあるべきかということは、今言った人道的な観点、医療保障の観点から政府としてやっぱり考えていくべき多くの問題がある。  今度の改正法で、将来法務省としては入管の管理基本計画というものを立てるということになっておりますが、そういった際にも今私が指摘したような問題、各省庁にまたがりますけれども、これはしっかりと頭に置いて、それを踏まえてどう改善できるかも踏まえて計画は検討をすべきであると思いますが、これは大臣、いかがでしょうか。
  161. 後藤正夫

    ○国務大臣(後藤正夫君) 直接法務省の所管する事項だけではございません、関係各省とも関連がある問題でございますが、今後の問題としてやはり検討すべき問題であろうというふうに思っております。
  162. 橋本敦

    ○橋本敦君 その問題はその程度にしておきまして、次に罰則関係についてお伺いいたします。  ひとつ端的に審議官あるいは局長にお伺いいたしますが、七十三条が改正されまして、いわゆるあなた方のおっしゃる不法就労をした者については従来の罰則を六月以下から一年以下の懲役に格上げされましたね、罰則の格上げ。これはそういう必要があったんでしょうか。
  163. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) まずその点でございますが、一年というのは最上限の法定刑を御承知のように決めておるわけでございまして、長年にわたり日本国で不法就労活動をする方が最近ふえてきているのが実情でございます。したがいまして、場合によりましてはその程度の体刑を求刑する事案が出るだろうというのが我々の実務の感覚でございます。  と申しますのは、以前は不法残留期間が非常に短うございました。つまり、言うなれば不法に残留して不法就労なさる方々日本での滞在期間が非常に短うございましたが、最近では、摘発事案の中からこれが明らかになってございますけれども四年とかあるいは五年に及ぶ不法残留者というのが発見されておりまして、やはり相当程度悪質な不法就労という事案も出ております。これが、 こういった形がもし放任されまして不法就労活動をしつつ日本に定住しているということになりますと、入国管理行政の基本的枠組みでございます在留資格制度あるいは在留期間制度というようなものの根幹が損なわれるおそれがございます。このことは国際的な常識でも、各国とも在留資格なり在留期間なりを定めて、そして外国人にはそれを守らせた上で普通いろいろな権利を確保するようにということになってございますので、入管行政をもし適正に運営することが国として必要であるというようなことになりましたら、それはやむを得ないといいますか、ある程度重い処罰をせざるを得ないというふうに思われるわけであります。  ただ、今ちょっと私思い違いをしておりまして、さらに長期間、要するに自分の就労することができない資格であることを十分知りながら、資格外活動として就労を続けているということ自体は、やはり事案によりましては犯情の重いものがあろうかと思いますので、一年程度は相当だと考えているわけでございます。
  164. 橋本敦

    ○橋本敦君 逆ですよ。事案の重いものは七十三条じゃなくて、七十条で三年の刑罰に処するというそういう仕組みがあるんですよ。それと別に、単純に七十三条で報酬を受ける活動を行ったら今までの六月を一年にするんですからね。明らかに刑罰を重くするという合理性がどこにあるかということになりますと、これは今までの六月以下で特段の不利益あるいは不都合があったというそのことが実証された場合なら納得できますが、今のお話では納得できませんね。  それから、いわゆる摘発件数は全体の数の中の二割にもなっていないんじゃないですか、推定は。その点どうですか。
  165. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) まず、今おっしゃいました逆だというお話は、まさに専ら資格外活動をやって不法就労をした者が別途定められておりますから、これは三年以下になっておりますのでそちらが重いわけでございますが、従前は資格外活動の絞り込みが行われておりませんで、ある外国人日本に入りましたときに、ある一定の在留資格が与えられればそれに見合わない活動はすべて資格外活動になり、処罰対象になっていたわけでございます。つまり、言うなれば今度は資格外活動の構成要件を厳格にいたしまして、例えば与えられた在留資格に違反して事業を営んでもうけるとかあるいは働いて報酬を得るということだけをもって資格外活動という構成要件を決めましたので、それ自体犯情の重いものに絞り込んでいるわけです。  それから一年といいますのは、我々、ほかの法定刑もそうですが、罰金の金額との整合性を合わせますので、六月以下の懲役というのは、罰金と合わせます場合には軽い罰金を定めている場合だけ大体六月ぐらいにしておるわけでございまして、そういった比較考量の関係から一年というふうにしたわけであります。
  166. 橋本敦

    ○橋本敦君 もう時間がありませんが、私は今の答弁では納得できないんです。七十三条の二について言うならば、これは創設規定ですが、「事業活動に関し、外国人不法就労活動をさせた者」と、こうありますが、これは一日であっても一時間であっても理論的には全部入るんですよね。この前私が指摘したように、アメリカのシンプソン法では段階的な行政処置を含む手続があって、最終の段階で反復的、計画的、アメリカで言う故意犯という状況になったときに初めて雇い主も処罰する、こうなっている。その処罰の中身は懲役刑じゃなくて禁錮刑が主でしょう。  だから、そういう意味で、たとえ資格外の労働であっても、働く者、雇う者も含めて、中間搾取とかタコ部屋で搾取するとか、暴力を伴う使役とか、そういうことは別に厳しく罰するとして、労働それ自体はクリミナルな悪とは見ないという感覚があるわけです。それで初めに私がその感覚を指摘したんです。この七十三条の二によればまさに構成要件は極めて広いんですよ、これは。絞り込まれていない。こういう広い構成要件で雇用主処罰を創設することは、不当に処罰される雇用主が出てくるおそれがあるだけじゃなくて、このことが今度は働く者、外国人労働者に対しても同時に不利益を及ぼすような働きをする可能性がないとは言えないと私は思うんですね。  そういう意味では私はこの七十三条の規定は非常に問題がある規定だと、こう思っております。構成要件的に、たとえ一時間雇っても一日であっても、計画的、反復的でなくてもいやしくも三年以下の懲役、そういった処罰対象にされるというのは入管行政のあり方として、刑罰として余りにも重過ぎはしませんか。どうですか。
  167. 米澤慶治

    政府委員米澤慶治君) 委員指摘のように、働くことだけを抜き出しますと、私は非常に無色透明の行為であり、あるいは逆に人間としてとうとい行動だろうと思っております。その点では委員の御指摘は私も同感でございます。  ただ、アメリカ法をお取り上げになりましたが、例えば反復継続してという構成要件にするか、あるいは逆に事業活動に関してそういうことをした場合に取り上げるか、これはやはり観点が違っているだろうと思うわけでございます。例えば事業活動に対して、確かに構成要件的には一時間であっても一日であっても形式的にはその犯罪構成要件に当たるわけでございますが、我が国の刑事政策的な刑罰法規の運用は、その刑罰法規がつくられました背景事情とかあるいはねらいとか、立法趣旨と我々言いますが、それにのっとって運用いたしますゆえに、委員法律家であらせられますので釈迦に説法で恐縮ですが、例えばそれに当たりさえすれば刑罰の対象にして起訴するということは必ずしも言えないわけでございまして、犯情軽微な場合には当然のことながらこれは起訴しないという措置が幅広くとられることになろうかと思うわけであります。  その一つの証拠は、性質が違いますが、例えば資格外活動であれ、不法残留者であれ、大方の方々は退去強制の対象にはされつつも、現在実務において起訴される事例は非常に少のうございます。これもやはり犯情悪質な場合についてのみ処理されておるからであろうと思われますので、構成要件の定め方と運用、あるいは法の目的は全部総合的に御判断いただかないと問題かと思うわけでございます。
  168. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 私は、前の委員会で時間の関係で質問できなかった分、さらにはまた法務大臣にまとめとして御所信をいただきたかった分、それらを要約いたしまして二つの要望事項と一つの質問事項にさせていただきましたので、よろしくお願いをいたします。  第一点は、本年はアジアの各地から多数のボートピープルの来航が見られ、大変な混乱を招いたことは御承知のとおりであります。その後、政府は難民と偽装難民とに区分をされ、偽装難民については強制送還で対応するよう決定をされておりますけれども、強制送還もなかなか思うままにならない様子であります。その上、世界の世論は強制送還については極めて厳しいものがありますことは、この間六月のジュネーブにおける会議の結果を見ても、そのことの事実でありますことを物語っております。したがって、単純な対応では世界的批判を招きかねません。  また、今日の入管の施設、人員、わけても語学力では、もし来年もこのような状況を迎えたとしたら入管行政は全くお手上げのように思われてなりません。中国系ベトナム人が多数住みつき、ボートピーブルの香港、日本、さらには東南アジアへの出航基地とさえ言われております中国広西省北海地区の状況等の把握をも含めて、万全の対応をなさるべきだと思います。そういった点を強く要望いたします。  第二点といたしましては、ボートピーブルだけでなしに、合法的に入国しながら在留資格外の活動に従事をしている人たち、いわゆる皆さん方言葉をかりれば不法就労者も激増し、これらに関する多くの問題もまた派生をしております。さきにも申し上げましたとおり、経済大国になった日本に職を求めて人が殺到するのはむしろ当然の現 象かと思われます。  外国人労働者の急増は、経済力に見合った地球規模の政治的責任をどう担うのかを真剣に考えるよう日本に突きつけられた世界的な要求だと私は理解をいたしております。単純労働者入国をいつまでもかたくなに閉鎖を続けるという対策だけでは許されなくなってくるのではないかという心配もございます。私自身、今の時点で適切な処方せんを持ちませんが、世界的にも国内的にも共感を得られる方策の確立をみんなで考えなければならないのだと思っておりますが、特に本件を担当なさいます法務省の責任は第一義的にやっぱり大きいと思いますので、これらの件についても善処をいただくよう要望いたしておきます。  最後に、法務大臣にまとめとしての御所信をいただくために次のことをお尋ねいたします。  先日の質問にも申し上げましたとおり、雇用者罰則制度や就労資格証明書の導入は、罰則を恐れる雇用主が在日韓国・朝鮮人に対しても証明書の提示を求めたり、不法就労を口実に就職を断ったりするなど、在日韓国・朝鮮人に対する労働差別が一層強化されるように予想されます。また、戦後韓国から日本入国をして定着しているいわゆる潜在居住者に対する解雇や摘発が進み、これらの人たちを多く雇用する在日韓国・朝鮮人の零細経営者の経営基盤が危機にさらされるのではないかという心配もあります。この点をどのように対処されようとするのか。  さらに、日本において在日韓国・朝鮮人に対する問題が余りにも多いのは、私たち日本人のこれら在日韓国・朝鮮人がなぜ日本に在留するのかということに対する歴史的認識の欠如があると思います。これは先日も申し上げたとおりでありますが、永住者の子供として日本で生まれ育った在日第三世代の法的地位もいまだ二国間協定の中で明確になっておりません。そういった中で在留資格の新設、細分化は、この人たちをも一般外国人と同列の資格に置いて、第四世代以下はさらに不安定になるのではないかとの不安が存在します。世代を経るごとに安定をしていく方が当然だと思いますのにかかわりませず、世代を経るごとに過去の歴史性が忘却をされたような不安定な法的地位に置かれていくのではないかという不安です。  これも担当局長さんの答弁も承りましたが、ただいま申し上げました二点について、果たして私の心配しておることが杞憂にすぎないのかどうか、改めて法務大臣の御所信を承りたいと思います。
  169. 後藤正夫

    ○国務大臣(後藤正夫君) いろいろな問題についてお尋ねでございましたのでお答えを漏らしてしまってはいけないと思いますが、まず第一には偽装難民の強制送還の問題について御指摘がございました。これは言葉の問題というようなことの御意見がございましたけれども、今回日本政府と中国との間の折衝の結果中国側が引き取ることになっております難民につきましては、これは中国在日大使館の人が直接本人に会った上で確認をしているものでございますので、そういう点からの間違いということが起きることはないというように考えております。  それから資格外のいわゆる不法就労の問題でございますけれども、これは日本も経済大国でございますので、その経済大国に大きな夢を持って日本に来たがっている人が多いということは、これは当然考えられることでございます。しかしながら、きょう午前中からも御意見が出ていたことについてお答えを申し上げましたように、かつて先進国として日本より繁栄しておりました国々が外国人労働者を大量に受け入れてその問題が今大きな社会問題になって苦しんでいるというような事情もございますので、その受け入れについてはやはりある限度を設けていかなければならないということから、今回の法改正におきましても、受け入れるべきものの範囲を今までよりさらに拡大をして考えていこう、しかし不法入国についてはこれは認めるわけにはいかないという態度で臨んでいかなければならないというように思っている次第でございます。  それから第三番目に、在日韓国・朝鮮の方々に対する差別の問題を御指摘でございました。在日韓国の方々のいわゆる二世までの問題につきましては既にいろいろな方途が考えられているわけでございますが、在日韓国の第三世代、いわゆる第三世の問題につきましては、その法的地位については今回のこの入管法改正とは別個の問題といたしまして、韓日両国で外交交渉を通じて双方の満足し得る結論を見出すべく今努力をしているところでございまして、これはなるべく早い機会に結論を得るというようにいたしたいと考えております。  あとの問題につきましては、もし残っていますれば、政府委員の方からお答えをいたしたいと思います。
  170. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 終わります。
  171. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 参考人意見も含めましていろいろと考えさせられながらこの委員会審議を進めてきたものでございます。本法案についての最終委員会で、いわばまとめ的な質問をさしていただきたいと存じます。  国際化社会というよりも文字どおり国際時代、そして日本国内におきまして地域社会においても国際社会というものを確立しなければならない時代が来ていると思います。我々が築くべき国際社会というものがどうあるかということを考えてみた場合に、国内における外国人との関係外国人の人権の問題というのは非常に大きな問題であると存じます。幾つか質問をさしていただきますが、最初に具体的なことから入らしていただきたいと思います。  最初に、労働省の通達の関係について触れたいと思います。  午前に清水先生の方からも御質問があったわけですが、私自身は労働省の通達は、雑誌に載りました昨年の一月の十三日の通達しか読んでございません。その後の調査検討のための懇談会の答申等も読ませていただいたわけですが、七月二十五日の通達につきましては、労働省吉免さんが座談会においでになって要旨の御紹介があるのしか私は存じておりません。資料は関係者に求めたところですが、見ることができなかったんですが、どうもこの通達の構成からして、まず日本における外国人労働不法労働ありきという立場に立った通達になっているやに昨年一月の文書による限り感ずるわけであります。懇談会の調査報告は非常に体系的でまとまったものなんで、それを受けとめてことしの七月の通達は成り立っているのではないかと思いますが、どうも私の聞くところ、見るところによれば、これまた不法就労をいかに情報収集をするかというような観点に立った通達のように感じます。  それはともかくといたしまして、ここ昨年ことしと労働省外国人労働者について労働行政を進めてきた中で、日本の今の国内法において不法就労の問題が非常に大きな問題になっているわけですが、労働省外国人労働者についての通達がどのように都道府県で実施されているかという状況についてお答えいただけたらというふうに思うわけであります。  通達の中身は、御案内のように現行の外国人労働行政についての通達、これの各都道府県における説明会の開催、あるいはことしはキャンペーンを開催したとのことですが、そのキャンペーンの実施状況がどうなのか。それからいろいろと不法就労についての情報収集に御努力されてきたわけですが、その収集実績というのはどうだったのか。その辺のことをまずお聞かせいただけたらと思います。
  172. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 今年の七月二十五日、職業安定局長から各都道府県知事あてに通達をいたしました。これは職業安定行政といたしまして、国内におきます適正な労働力需給調整という観点から、外国人労働者の適正な受け入れを実現するというような観点から通達を出したわけでございまして、一つ外国人労働者問題に関します事業主等に対します指導の徹底ということが第一点でございますし、それから第二番目が不法就労にか かわる実効ある対応、それからあわせまして外国人求職者等に対します適切な対応、こういうような三点につきまして通達を出したわけでございます。具体的にはこの通達に基づきまして事業主指導に最重点を置いて、現在各職業安定行政機関、力を挙げておるところでございます。  具体的に申し上げますと、一つは先月の十一月二十一日から十一月三十日までを外国人労働者問題啓発キャンペーン旬間ということにいたしまして集中的に事業主に対します周知、啓発に努めたところでございますし、あわせましてリーフレット等も作成をいたしまして、そのような事業主方々にお集まりをいただいたところに配布するなどいたしております。それから、あわせまして事業主指導が大体約四百件ぐらい全国において行われたということでございます。
  173. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 関連しまして、労働省の各都道府県に対する指導の中身の構成の問題ですけれども、私の意見というように受けとめてくだすって結構ですけれども、どうも不法就労取り締まりが先行しまして、定住外国人就労の保障の問題、あるいはさまざまな制約条件下に置かれながらも就労者、研修者、就労ができるわけでありまして、そういう外国人の求職の保障の問題ですね、こういう問題、前段の定住居住者については制限はないわけですが、就学、研修の就労の場合制限はあるわけでありまして、そういう点の外国人労働者の求職の保障並びに定住外国人の就職あるいは労働条件の保障の問題を法制上も優先して御指導願いたいと思います。一応御回答を伺いましょうか。
  174. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 先ほどの通達におきましても定着居住者等への配慮ということの一項目を設けまして、外国人就労に関します業務を遂行するに当たりましては外国人方々の人権尊重に十分配慮すべきであるというようなこと、あるいは適法な外国人就労につきましてはその権利を不当に侵害するような結果をもたらさないように十分留意するというようなことについても注意を喚起いたしております。また、あわせまして事業主等の指導に当たりましては、やはり労働関係法令外国人への適用関係ですとか、あるいは外国人労働者雇用する場合の労働条件雇用管理等に際しまして注意すべき点、このようなものもあわせて指導を行っておるわけでございます。
  175. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 こうしてあえて触れるのは、今度の改正案で大分不法就労あるいは不法雇用に対するペナルティーの問題等が正面から取り上げられている関係で、より労働行政もあるいは法務の行政もそちらにウエートがかかるのではないかということを心配しまして質問しているものでございます。  続いて、外国人の人権あるいは権利についての教育あるいは啓発についての問題でございます。これも参考人の間から大分意見として出されているわけでありますが、ただいまの労働省の啓発についても通達の徹底という限りのものでありまして、私はポスター一枚見ておりませんのでなんですが、随分静岡県内も歩いているものでございますが、あるいは事業所も随分訪問しているものですが、見かけたことがないのであれなんですが、ここでひとつ法務省になりますか、労働省になりますか、出入国管理の問題を含めまして、外国人の権利につきまして、事業主というふうに限定しないで日本国民に対して教育、啓発をする必要があるというふうに思うわけであります。  入国の規制というのはもう当然主権の問題であるわけでありまして、しかし、一たび日本国内に住まわれている人あるいは入国された方の外国人の地位、市民権というものは保障されなければならないわけでありまして、とかく日本人の外国人に対する対応の仕方には問題があるやに聞いているわけでございます。ひとつ外国人の市民権、権利あるいは入国の規制の問題も含めてで結構でございますが、国民に対する教育、啓発についてこれまでどんな努力をされてきたのか。そして、これはもう格段の違いのある今後の取り組みを求めるものでございますが、その辺についていかがでしょうか。  念のため、大蔵省の消費税に対する説明なんというのは物すごいものでございまして、大蔵大臣がじきじきに新聞広告に登場しまして三億円の広告を掲載するというふうな事態でありまして、もう少し法務省も、入国管理局もあるいは出先の機関も今日的な国際社会のあり方の追求を求めて今のような教育、啓発について力を入れていただきたいと存じますが、いかがでしょうか。
  176. 股野景親

    政府委員股野景親君) 御指摘のとおり、外国人の権利の問題あるいは入国、在留の適正なあり方の問題について、外国人に対して政府側の考え方というものを十分知らせる、同時に日本国内に向けてさような同じ目的広報あるいは啓発の努力というものをいたすことが非常に重要であると考えております。先ほど来も御説明申し上げました中で、この点についての法務省側の努力について一部触れさせていただきましたが、先月、本年の十一月二十一日以降労働省側ともこの点について事前に御相談をいたしまして、一つのキャンペーンを法務省として行っております。  法務省の行っておりますキャンペーンは現在も引き続き続行しておりまして、今月の二十一日までの間を外国人労働者問題啓発キャンペーン月間と称しまして、各種の広報啓発運動を行っておるところでございます。そのために、ただいま委員指摘のありましたポスターについても用意いたしましたし、また、ここに一部リーフレットを持っておりますが、こういうリーフレットをつくりまして、「ルールを守って国際化」という表題のもとに「外国人労働者の受入れは適正に」というサブテーマあるいは「不法就労の防止に理解と協力を」というサブテーマも持ちまして今呼びかけを行っているところでございます。  そのためには、これは御指摘のように事業主団体にこの関連での連絡を行っておりますほかに、各地方入国管理局による各種の広報プログラム、あるいは教育関係機関、あるいはこれに関係しまして法務省と一緒に協賛を行っております入管協会あるいは日本語教育機関の振興協会等の協力も得て、その意味での広報を行っておりまして、その中で適正な理解が国民に広く得られるよう既にいろいろ努力もいたしております。  また、そのほかに、先ほど申し上げましたいろいろな各地方入管における窓口の設定ということについても今後さらにこれを強化拡充してまいるつもりでありますし、また入管協会という組織が法務省のいわば外郭組織としてありますが、この組織を通じまして、また各種の広報機関あるいはそれ自身の出版物等の発刊によりまして同様の目的の運動を展開しておるところでございます。  そういう意味で、これらの努力を既に重ねておりますが、委員指摘問題点も十分我々は認識しておりますので、引き続き同じ目的努力を重ねてまいりたいと思っております。
  177. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 新しい改正法が実施された段階の不法就労関係の取り締まりの面でいろいろと危惧をするものでございますが、今の外国人の人権あるいは市民権の周知徹底という面から見まして、これも参考人から出ていたわけですが、まだ今日本に住んでおります外国人のいろんな差別がある。特に在日韓国・朝鮮人の皆さんの関係が強いかと思いますが、今日なお国内法で適用すべきもので適用されないものがある、あるいは著しく立ちおくれている、欠けているものがあるという御指摘の中で、参考人の中からも、教師としての就職など教育分野にあるというふうな御指摘や、私の方から指摘した点ですが、社会保障の面では生活保護の適用の問題などがございます。  そうした国内法で外国人に当然付与すべきものでまだ立ちおくれている面について、どんな指導を今後していくかということについてもし触れられれば、これは厚生省なり関係部局にかかわる問題でございますが、就職の差別の問題なんかもかなりあるわけでありまして、お気づきの点、今後の対応でお考えの点があれば御答弁いただけたらと思います。
  178. 股野景親

    政府委員股野景親君) 先ほど来の御審議の中でも、この教育の問題あるいは医療の問題等につ いての御議論をいただいております。  法務省当局といたしましてもその点についての意識をこれまでもいろいろ持って関係の所管の省庁側といろいろお話し合いはしておりましたが、日本国内での外国人の地位が安定したものであり、また日本社会の中でこれらの方々が安定した生活を営めるようにするということが重要な行政目標であると考えておりますので、その点については所管の各官庁におかれてそれぞれまた御検討いただいていると思いますが、今後も関係の所管の省庁との間の意思疎通というものは十分重ねながら法務省としてこの問題についての適切な対応を図るということで努力していく所存でございます。
  179. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 人権相談所が法務局の中に開設されたわけですが、この位置づけというのは、私も直接まだ現場を見ていないわけですが、あるいは実際にやっている皆さんともお話をしていないわけですが、世界人権宣言四十周年と社会国際化、人権の保障に対応して人権相談所を開設する、非常にすばらしい位置づけのもとで開設されているというふうに思うわけであります。この人権相談所をもう少し全国各地に開設するということ、それから、民間の手で随分やられているわけでありますがこういったものに対するもっと国の側からの補助が必要かと思うんですけれども、その辺についてはどうでしょうか。
  180. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) まず、外国人のための相談所、先ほどもお答えいたしましたが、東京で昨年の八月初めて開設したわけでありますが、その後、各地の地方局でも開設を試みておるところもございます。こういったものをさらに今後拡大していくかどうかということにつきましては、私どもはそれぞれの地域の実情を検討しながら前向きに考えていきたいというふうに思っております。  それから次の、民間の方々の活動でございますが、これら民間の人権相談所の活動につきましては必ずしもすべてを把握しているわけではございませんけれども、多くの方々がいろいろ努力されていること等も理解いたしております。  外国人に対する人権擁護という観点から、当省の人権擁護機関における相談活動もさらに充実させていきたいというふうに考えます。
  181. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 外務省にお聞きをしたいと思いますが、非常に我が国入国規制というのは厳しいわけであります。その中で、国内におきまして年々急速ないわゆる不法就労問題というものが発生しているわけですが、国は偏っているわけでございます。そういう意味で当該の国、例えばフィリピンあるいはバングラデシュ、パキスタン、こうした国と入国規制あるいは我が国におけるそれぞれの国からお見えになった皆さんの実情についてどんなふうにお話をされているのか、お答えいただけますか。
  182. 田辺敏明

    説明員(田辺敏明君) お答えします。  御指摘のフィリピン、バングラデシュあるいはパキスタン、こういう国とは特にいわゆる不法就労防止というふうな観点から先方の政府といろんな機会をとらえて協議をやっております。  例えば、先方政府が日本に来る自国民に出すパスポートの発給あるいはその出国管理等についてより厳格にしてもらうということとか、それから日本における外国人の扱い方だとか、そういうふうなことについて常時協議をして、本来の入国目的に沿って来れるようにということで折あるごとに関係二国間協議を現地でもやっておりますし、場合によって東京において在京のこれら大使館と外務省とやっているということでございます。
  183. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 今度の改定法で出入国管理基本計画なる改正点が非常に大きな改正点になって、これは妥当な条項だというふうに思うわけであります。  問題は、法務大臣関係大臣から意見を聞くという構成になっているわけであります。形式的にはそういうふうな表現になるかと思いますが、問題はその追求すべき総合政策、総合施策の確立の問題で、少々しつこいですが質問したいと思います。  外国人日本社会における権利の保障という問題であるわけであります。これから日本の地域社会の中に国際的な人権規約に基づいた国際社会をとにかく生み出さなければならないと存じます。経済、文化、平和の発展のためにも我が国の中に国際社会が生まれるということは必要なことだと存じます。しかし、日本の主権の問題があるわけでございまして、それは一定の制限が加わると思います。これは専ら外国人を受け入れるというサイドに主権の発動があると思うわけであります。しかし、国内外国人がお住まいになった以上、これは内外国民平等主義の立場に立って徹底する必要があると存じます。そういう意味で、総合施策あるいは長期計画を立てる場合に、国際的な視野とそれから国内的な政策体系の問題があると存じます。  とにかく国際的な視野に立って見た場合には、さんざん議論しておりますように近隣諸国の一つはやはり人口の爆発的な増加という問題があるというふうに思います。数はあえて言いませんが、倍々の数で十年くらいの単位でふえていくわけでございます。それと合わせて我が国への労働者押し出し圧力というものが近隣諸国からかかっているわけでございます。  そういう中で、国際的な協力関係の問題でも、これはもう各省の大臣に聞くというふうにありますように、国際的な協力関係の中でないとこの爆発的人口拡大と押し出し圧力の解消にはならないと存じます。ただNIES諸国に見られますように、シンガポールにしてもタイにしても、あるいは台湾も比較的少ないかと思いますが、みずからの国に一定の工業力と産業のバランス、労働需給バランスが確立されている国については、そういう力は我が国に極めて限定された力が働いているわけでありまして、そうしたそれぞれの国における産業、労働力バランスというものを図るために水平的な国際協力という問題を意識的に我が国は追求しなければならないと存じます。そういう観点から一つは外交的な調整がなされなければならないと思います。  いま一つは、時間がなくて残念でございますが、教育、住宅、社会保障あるいは労働条件の整備の問題が重要だと思います。あるいはドイツに見られるような政治参加の問題等々があります。  こうした総合的な施策の中で、入国の規制に関連をした国際協力の問題、それから国内における内外平等主義に立った総合政策の確立の問題、これは大変総合的な施策が要求されるわけでございます。そういう観点に立ってかなり抜本的な長期的な計画のもとでやらないと、不法労働というものは倍加こそすれ減少、規制することはできないと存じます。そういう点で改めてこの辺のお考えを、願わくば法務省労働省からお聞きしたいと存じます。
  184. 股野景親

    政府委員股野景親君) 出入国管理基本計画の意図するところについてただいまお触れになられたわけでございますが、これは従来の御審議の中でも御説明申し上げましたように、中長期的な観点も含めまして総合的な視野に立っての管理の指針というものを打ち出すことが中心となります。その指針の中には御指摘のように国際的あるいは外交的な観点というものも十分配慮をする必要があると思いますし、また同様に、在留の管理という観点から外国人方々国内における安定した地位ということに伴う各種の関連行政の問題というものも考えていくべきものだと思います。  その中で国際的な視点について、特に出入国の管理という点から申しますと、これは近隣の諸国を含めまして、日本との交流が非常に多い国を初めとして関係する国側の理解というものもよく確保する必要があると思います。その観点で、今後こういう出入国管理基本計画につきましてはその策定に当たって関係する外国との関係についても十分考慮を払うし、また現実に外国における旅券発給のあり方あるいは外国から日本へ来る場合の渡航についての各種の外国における管理というもののあり方、これが日本における問題と非常に連 動をしてまいっておるわけでありますので、その点はまず近隣諸国における出入国管理当局との話し合いを、これまでも既に行っておりますが、今後ともいろいろそれを積み重ねながら効果的な方法というのを見出してまいりたいと思っております。  内外平等主義という観点からの外国人に対するいろいろな施策についてもお触れになりました。これは基本的には関係国内の省庁がそれぞれのお立場でお考えをいただくことだと思いますが、それぞれ関係省庁の側において適切な対応をなさるよう配慮されていくものと考えております。
  185. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 先生ただいま御指摘出入国管理基本計画でございますが、この計画の策定に当たりましては労働省といたしましても、労働力需給調整あるいは労働条件の確保というものを所管しております立場から、十分法務省と御相談しながら策定に参画させていただきたい、こういうふうに考えております。
  186. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 本件最後の質疑になりますので、多くをお伺いしたいという気持ちはございますけれども伺い残した部分につきましてまず法務省にお伺いいたします。  五日の参考人の御意見の中に、本件に関して非常に重要なことは外国人労働者実態調査というものがどのくらいされているかということが大事な視点だという御意見もございました。現在不法就労者の国籍別の状況はどうなっておりますか。お示しください。また、六十二年、六十三年、そして平成元年度までの推移を伺いたいと思います。  また、変化がそこにあるとすれば、その原因の主なるものを挙げていただきたいと思います。  また、今後の国籍別の状況の推移はどうなってくるだろうかということを、できたらお答えいただきたいと思います。なぜならば世界にはさまざまな風俗、慣習あるいは宗教の人々がおられます。同一宗教であってもいろいろな派に分かれているという場合がございます。法務省がこれから対応なさいます場合の施策の細やかさというのが非常に大事な時代に入ってくると思いますので、お願いをしたいと思います。
  187. 股野景親

    政府委員股野景親君) それでは今の御質問にまとめてお答えを申し上げたいと思います。  まず、不法就労外国人実態でございますが、これは実際に法務省当局で摘発を行った件数について見てみますとその実態が一番明らかであると思いますので、摘発を行った件数について御説明を申し上げたいと思います。  不法就労外国人として法務省入管当局で摘発を行いました件数について見ますと、昭和六十二年が全体で一万一千三百七人でございます。それから昭和六十三年においては一万四千三百十四人となっておりまして、本年、平成元年上半期においては九千三百十人という数になっております。  御質問の国籍別でこれを見てみますと、昭和六十二年の状況で見ますと、フィリピン人が八千二十七人という数で圧倒的に多いという状況がありました。以下、タイ人が千六十七人、パキスタン人が九百五人、中国人が四百九十四人、バングラデシュ人が四百三十八人の順になっております。今度は昭和六十三年について見てみますと、フィリピン人が五千三百八十六人と依然トップを占めておりますが、バングラデシュ人が二千九百四十二人、そしてまたパキスタン人が二千四百九十七人となりまして、この両国の不法就労者の摘発者が急激にふえておるという状況が見られます。以下、六十三年において、タイ人は千三百八十八人、それから韓国人が一千三十三人、こうなっております。  次に、今度は本年に入りましてからの状況を見てみますと、本年の上半期におきましては、先ほど来申し上げてまいりましたフィリピン人が昭和五十八年以来トップを占めていた状況に変化が見られまして、パキスタン人が最も多くて二千二百四十六人ということになりました。以下、フィリピン人二千百七人、バングラデシュ人千六百九十五人、韓国人千三百四十五人、マレーシア人七百六人という順になっております。  これの背景を見てみますと、韓国人についての数の急増ということが見られますが、これは韓国が海外渡航の自由化措置をとっておって、本年一月からは大幅な自由化を行ったということが一つ指摘できると思いますし、また韓国内においてオリンピック等の大きな工事が終了したということに伴う就労先の変化、減少というようなことが挙げられるかと思います。また、パキスタンとバングラデシュという両国についての急増ということも見られたわけでございますが、これについてはその後、本年一月に両国との査証免除取り決めの一時停止を行いました。したがって、こういう二国について今後のことについて見ますと、減少傾向を見るものと思っております。それからフィリピンにつきましては、これはかねてフィリピンにあります我が日本大使館における査証発給につきまして、その厳格化という措置を外務省側の協力を得て行っておるわけでございますが、そういう効果というものも最近になってあらわれてきているのでフィリピン人の数について増加が鈍化しているという現象も見られるものと考えます。
  188. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 パキスタン、フィリピン、バングラデシュ、韓国、マレーシア、タイなどですね。  言語、習慣について入国審査係官または外事事件担当捜査官に対して、その対応について養成のときにどのような内容で行われているか、まずお伺いしたいと思います。  殊にイスラム教など非常に厳格な戒律を宗教上課せられている外国人に対する配慮については、どんな行政内部での指導が行われているんでしょうか。できれば実例を挙げて御教示をいただきたいと思います。
  189. 股野景親

    政府委員股野景親君) まず、職員のこれらの諸外国から見えている方たちの言語、習慣についての知識の修得ということが御質問の第一点でございますが、これは職員がその行政を執行していくに当たってこれらについての研修の機会を可能な限り十分持つように法務省として配慮をいたしておりまして、まず語学の点についても基本的な研修というものを心がけることにいたしておりますほかに、これらの国のそれぞれの独特の風俗、習慣というものがございますので、こういうものについても職員に各種の研修の機会を設けることによって遺漏なきように努力をいたしているところでございます。最近、これらの国々からの入国者がふえておるという状況がございまして、そういうことについての理解を深める必要性はますます高まっておりますので、研修の充実ということ、あるいは必要な語学の研修の拡大ということについて、これからも努力を行ってまいりたいと思っております。  また、特にイスラム教の関係の方たちについて入管当局として対応する場合に、そのイスラム教の方たちの宗教上の慣習、あるいはそれに関連する各種の習慣というもの、これも十分職員が念頭に置いて対応するようにいたしておりまして、この点は実際の応対に当たって心がけているところでございます。例えば収容所という施設の中で、これらのイスラム教の国から見えている人たちについての処遇につきましては、当然宗教による戒律あるいはその生活様式というものを十分尊重するように心がけておりまして、例えば礼拝というようなことについては十分これを尊重する。また食物、食事につきましても当然宗教上の戒律があるわけでございますので、それを尊重したことを行って、これらの方々についての処遇については十分そういう点の配慮を行っておるということでございます。
  190. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 警察庁の方から、同じことのお答えをいただきたいと思うんです。
  191. 村上徳光

    説明員(村上徳光君) お答え申し上げます。  ただいまの御質問でございますけれども、まず警察の取り調べ官に対する教養でございますけれども、警察といたしましてはこれまで捜査官等を対象とした英語、韓国語、中国語等の教養を行ってきたところでございますけれども、昭和六十年の四月からは犯罪の国際化に対処するために警察大学校に国際捜査研修所というものを設置いたし まして、国際犯罪捜査に関する研修等を行っております。これまで行ってきた語学教養に加えまして、少数の者に対してではございますけれども他のアジア系の言語にかかる教養を行うことといたしまして、昭和六十三年度からはタガログ語、平成元年度からはさらにタイ語の委託教養を実施しております。来年度以降には、タガログ語とともに広東語、ウルドゥー語等についても逐次教養していきたいと思っております。  しかしながら、現状では取り調べに際しましては、英語、韓国語、中国語を除きましては民間の方に通訳を委託しているところでございます。これらの国の習慣につきましては警察官にとってなじみの薄いものでありますことから、国際捜査研修所、関係課等において各種の資料等をもとに、警察官を対象とする執務資料を作成して都道府県警察に配付しているところでございます。  また、以上のほか、警察庁におきましてはこれらの国の警察幹部を招くセミナー等を積極的に開催いたしまして相互理解を深めるように努めているところでございます。  外国人の被疑者につきまして、言葉の問題だけでなく、その国の宗教、生活習慣等異なるところがございますから、よりきめ細かい配慮が必要と考えております。それぞれの国の慣習等につきまして各種の交換資料等をもとに、都道府県警察の参考とする資料を作成し、それを尊重した捜査を行うように指導しております。  具体的な点でございますけれども、先ほどイスラム教徒のお話がございましたけれども来日外国人の取り調べにおきましては相手方の慣習等に十分配慮するようにいたしております。例えば宗教上の理由で一定の時間に礼拝行為を行うことを希望する者に対しましては、取り調べを一時中断する等の配慮を行っているところでございます。なお、食事その他の被留置者の処遇に関する事項については、捜査官ではなく留置担当官が措置するものでございますけれども、これにつきましては例えばイスラム教徒については豚肉を食べないという者が多うございますので、豚肉を食べない者に対しては本人の希望に基づいて、それを含まない食事を供するなど、生活習慣等に応じた適切な処遇を行っているところでございます。  いずれにいたしましても、人種的、宗教的に差別とか侮辱とか受けとめられることのないよう十分な配慮をしているところでございます。
  192. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 どうぞその御配慮が実際の現場においてきちっと行われますように、なおよろしくお願いをしたいというふうに申し上げておきます。  次に、労働省にお聞きしたいのですが、労働省のお立場で見た研修制度の実態、いわゆる研修目的で単純作業に就業させている実例について、おわかりの範囲で結構ですからお願いいたします。
  193. 南本禎亮

    説明員(南本禎亮君) お答えいたします。  研修生につきましては法務省等で入国審査が行われておるわけでありまして、労働省につきましてはその入国審査の段階で研修期間が一年を超える者、その他技術的に研修かどうかといったような者についてのみ協議があることになっておりまして、したがいましてその全容を全部把握することは非常に困難な状況にあるわけでございます。しかし、法務省が実施されました調査結果の中におきましても、研修を目的として研修生として受け入れながら事実上労働者として就労させているという事例が少なからずあったというような報告にも接しておりまして、承知いたしております。  労働省といたしましては、今後とも外国人研修生の受け入れにつきまして、研修本来の目的に沿って適切な研修の実施が確保されるように関係省庁とも協力いたしまして対処してまいりたい、そのように考えております。
  194. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 続いて、法務省にお伺いしたいと思います。  研修生が研修終了後ですけれども、研修実績などのチェック、それからフォロー、その体制はどうなっておりますでしょうか。日本と相手国との間でどうなっているかということと、また二国間で研修生の受け入れなどについて、これは何回も御答弁の中にあったかと思いますが、協議の必要があると思うのですけれども、この点でどこまで進んでいるのでしょうか。できましたら、全部の国でなくてもいいですから、幾つかの国を挙げて御説明いただきたいと思います。
  195. 股野景親

    政府委員股野景親君) 研修を終わった後の実績ということ、これは日本国内で研修を行っております機関に当たっての調査ということが一つ行われていることでございまして、もう一つは、今度は外国でその方たちが帰国した後、どのように日本で習得した技術、技能というものを活用しているかということについての実態把握という面での調査がございます。  どちらにつきましても入管当局としてこれを行うことに心がけておりまして、研修の実績につきましては、これはいろいろな形で日本で行われておる研修の実施機関との関係がありますので、これらの機関に当たって、あるときは実地に入国管理局から職員が現場まで出向きまして、そしてその事情を聴取する、そして、その研修というものが日本で行われた後、本国に帰って実態的に行われていることについての状況を十分確認するということを行っております。これは研修計画というものを行う際に当たって、何回にも分けて研修生が来日するという実態がありますので、その意味で研修生が新しく来ることに備えての実際の研修効果があるかどうかという点を把握する上で必要なことであるので、そういう観点からも日本国内における研修の実態を通じて帰国後の実績を把握するということに心がけておるわけでございます。  それからもう一つ、海外における実績でございますが、これは海外のことにもなりますので、この点も日本国内における研修実施機関が一つの情報源であるわけですが、もう一つは外務省を初めとする関係省庁を通じてそれに関連する情報を得るということに心がけておりまして、研修についてはいろいろな形式がございますので、今ここで具体的なプロジェクトの名前を申し上げる材料を持っておりませんが、研修の中身から申しますと、非常に関係の深い国としましては日本の近隣のアジア諸国になりますので、近隣のアジア諸国との間の研修事業というものが十分に効果的に行われていくように、引き続き日本国内及び海外における関係方面との連絡をとりながら実態把握を行っていくというふうに望んでおります。
  196. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 法務省に、続いてお伺いいたします。  前回の委員会で御質問申し上げた点の確認でございますけれども、企業内転勤の制度でございます。これは技術、人文知識・国際業務、すなわち改正法案の別表の第一の二にそれぞれ挙げられてございますそれぞれの在留資格について行われるのだから悪用の心配はないというふうにたしかお答えになったと思いますけれども、現在行われている研修制度ですら今までの御答弁でさまざまな不法就労もあるということでございました。在留資格という歯どめはあるけれども、書類上の悪用ということもあるのではないかという心配をいたします。いま一度これをお確かめしたいと思います。
  197. 股野景親

    政府委員股野景親君) 委員がこの点について先般御質問ございました。その際に私の方で御答弁申し上げました内容は、委員が既に御承知のとおりでございますが、在留資格のまず規定の仕方におきまして一定の水準に当たるものをこの新しい企業内転勤という在留資格で受け入れるということにいたしております。  すなわち、我が国に事業所のある公私の機関の外国の事業所から転勤してくるということがこの場合に当たりますが、その職種については、これは当然限定をするわけでございまして、その限定される範囲が委員も御指摘の技術または人文知識・国際業務に当たる活動を行う者に限定するわけでございまして、この水準につきましては、これも先ほど御審議の中で説明を申し上げましたが学術上の素養を背景とした一定水準以上の技術または知識を必要とする業務に従事する者というこ とに限定をいたしております。  また、もう一つ、御懸念のようなことがあってはいけませんので、実際に今度はこの在留資格についての所要の審査基準を定めていく中ではっきりとこの点も明示し、例えば低賃金労働者がこの在留資格で入ってくることはないように、十分にその審査基準を決める中でも明らかにし、また、それの運用についても当然この点を明確にしてまいりたいと考えております。
  198. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 最後に、まとめとして法務大臣にお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。  この本法改正案でございますけれども、提案理由には、最近における外国人の出入国に関する状況にかんがみ、在留資格制度の整備並びに在留活動の規制及び法的保障の明確化を図る。それとともに外国人不法就労に対処するための関係規定を整備するなどの必要がある。簡単に言えばこれが提案理由だというふうに記されております。また、午前中の御審議の中で、清水同僚議員の御質問に対しまして、米澤議官お答えで、入国管理行政の要諦は日本社会の健全な発展に寄与するということである、したがってこれ以上不法労働者がふえるということは日本にとって不利であろうと考える。これはお言葉どおり速記したわけではございませんのでここに何か欠けているかもしれませんが、というような御答弁をいただいたと思います。  確かに、この出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案は提案理由に沿って有益な部分も多くあるというふうには私も認めたいと思います。けれども、前々回それからきょうの質疑、それから五日の参考人の御意見をお聞きする中から、入国管理行政で大事なことは、提案理由それから前述審議官の御答弁の範囲で果たしてよいだろうかということをやはり考えざるを得ないというふうに思います。現在の国際化の中で出入国管理行政は、労働、外交そして福祉、人権、あらゆる問題を含めた総合的な政治そのものであるというふうに考えます。それに、出入国管理のあり方というものは、外国人にとっての直接の窓口ですから世界からも注目されている大きな問題だと思います。  これまでの審議の中から、一番目には、日本に移住または職を求めて外国人が続々と移動をしてくるという現在、本当にこれはもうだれも認めざるを得ない現実でございます、阻止するということがなかなか難しい状況でございます。この間、難民の上陸問題でこれは既に証明をされておりますし、今後の心配も多くあるわけでございます。  二番目には、日本人の労働意識の変化というものもあって、単純な労働の手不足状態というものが積み残しになっております。中小企業庁の中小企業白書によりますと、昭和六十三年十二月のアンケート一定条件つき外国人労働者を受け入れてほしいとするものが五一%もあります。無制限でそうしてもらいたいとするものが七%、約六〇%近い中小企業の経営者たちがこれに答えているわけでございます。  三番目に、一番大事なのは、経済先進国また債権大国であると言われる日本が憲法の要請する基本的人権尊重や国際協調主義、平和主義の諸原則を踏まえるという大前提が必要ではないかと思うわけです。たとえ一億という移民予備軍、これは私がつくった言葉ではないのですけれども、というものがあったとしても、一定の範囲内で一定の規範のもとに門戸を開いて、単純な労働に従事する外国人に人道的な配慮、これを法的になされるべきときではないでしょうか。「ルールを守って国際化」というお言葉、先ほどございまして、とてもいいお言葉だと思います。ルールを守って国際化をする視点を少し変えていただきたいというふうにお願いをしたいと思います。  再三同質の質問をいたしまして御迷惑だと思いますが、大臣には人権を守る行政の最高責任者でいらっしゃいますので、私の申し上げましたことにつきましての御見解伺いたいと思います。  さらに、六十一条の九の二項の二「外国人入国及び在留の管理の指針となるべき事項」、その指針のビジョンというものがもし大臣のお胸の中にありましたら、これはできるだけ具体的にお答えいただきたいと思います。これも前回、これに似たことをお伺いしましたが御答弁が短かったので、いま一回しっかりお聞きしたいと思います。  以上でございます。
  199. 後藤正夫

    ○国務大臣(後藤正夫君) ただいま紀平委員からいろいろの問題についてまとめての御質問でございました。  外国人労働者の問題につきましては、我々といたしまして、特に法務省といたしまして、問題が非常に多岐にわたる行政分野にわたっておりますので、それを超えるものがございますので、法務省だけの一存ではなかなか取り組むことのできない大きな問題であると思います。したがいまして、この問題につきましては政府部内と十分な連絡を保ちながら、多様な角度からこれを検討していく必要があるだろうと思います。  先ほど基本的人権の問題を御指摘でございましたが、これは先ほど櫻井委員の御質問の中にもございましたように、国際的な視野に立って日本もこれからいろいろな問題に対処していなかければならないということを私どもも忘れてはならないと思います。また、先ほど米澤議官からお答え申し上げましたように、日本社会発展という問題、国際的にも寄与するような発展をしていくということが非常に重要な問題であると思います。日本は御承知のとおり世界経済の一二%を占める経済的な発展を遂げている国であって、ここの日本に人が集まってこようとするのはこれは当然のことであるかもしれないと思いますけれども、しかし、世界全体の国土の〇・三%の土地に現在二・五%の人がいるという非常に人口密度稠密な国であるということから、そういう面からもおのずから限界があるだろうというように思います。  これは少しお話から外れるかもしれませんが、私は科学技術の世界を歩いてまいりましたけれども、宇宙船地球号というのは既に定員オーバーの状態にある、日本も現在定員をオーバーするような状態になりつつあるということを考えますときに、日本外国人労働者を受け入れるということにはおのずから限界があるだろうというように考えるわけでございます。  したがって私どもは、今御指摘のように、日本人の労働意識というものについて今までとは違った考え方で、国際的な視野に立って物事を考えていかなければならないということは当然のことでございますけれども、これを実行するに当たりましてはおのずから限界があるということで、私どもはその限界とぶつかっていかなければならないという問題があると思います。そういうことも考慮しながら、国際的に広い視野に立って我々として可能な限りの外国人労働者の受け入れをやっていかなければならないということは、今回のこの法改正におきましても我々として慎重に考え、また努力しなければならない問題点である、そのように考えている次第でございます。  御質問の点、お答えを落としたことがあるかもしれませんが、私の考え方をも含めてお答えさせていただきました。
  200. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 終わります。     ─────────────
  201. 黒柳明

    委員長黒柳明君) この際、委員異動について御報告いたします。  先ほど、斎藤十朗君が委員辞任され、その補欠として鹿熊安正君が選任されました。     ─────────────
  202. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  203. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  204. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、出入国管理及び難民認定法改正案に対する反対討論を 行います。  本法案は、外国人在留資格の明確化や審査手続の迅速透明化など改善の面があります。一方、本法案の根本問題である外国人労働者の受け入れについて、単純労働者は受け入れないという従来の方針を一層強化する方向を明確にしています。しかし、国民世論の動向は、朝日新聞の世論調査を見ても、受け入れに賛成が五六%、反対が三三%となっているように、何らかの条件をつけて受け入れるべきであるとしており、政府のこういうやり方では急増が予想される外国人労働者問題を正しく解決できるものではないと考えます。  今我が国に求められていることは、外国人労働者の急増を必然的にもたらしている内外の状況や、外国人労働者の地位に関する国連の宣言、条約、諸国民の海外移住の自由など国際的にも承認されている原則を重視し、いわゆる単純労働者についても適正な条件のもとで原則として受け入れる立場に立って対応することであります。  第一の反対理由は、不法就労に対する罰則の新設、強化であります。しかし、こうした罰則強化では、現代の労働事情入管行政の人員不足の現状を考えても、根本的な解決にならないことは明白であります。  また、不法就労助長罪の新設も問題であります。悪質な不法就労の強制や助長に対しては、これを取り締まることは当然であり、また徹底的に行う必要もありますが、それらは労働基準法や職安法、労働者派遣事業法など現行法のもとでも十分できるものであります。それを、今回の改正のように単純労働者を受け入れないという方針を強化するために新たな刑罰を加えることは、外国人労働者を雇っている中小業者の人にとっても極めて脅威ともなるものであります。  しかも、資格を欠く労働であっても労働それ自体外国人であれ憲法、労働法の適用はあるのであり、何らの事前の行政手続もなしに事業活動に関するすべての不法就労雇用を、たとえ一日であれ構成要件的には全部処罰対象とするということは明らかに行き過ぎであります。  第二の理由は、現在十万人とも言われる不法就労者問題そのものであります。政府はこれらの人々に対して処罰強化し、また退去強制も考えておるわけでありますが、これでは問題は根本的に解決しません。かえって、今でも深刻な外国人の生活と人権問題を一層深刻にさせるおそれさえあります。現状においても、暴力団や悪質なブローカーが存在しており、外国人労働者労働条件や人権、あるいは十分な医療も受けられないなど、こうした無権利状態があることもこれは言うまでもないところであります。そしてまた、こうした状態が日本労働者労働条件国民生活にまで悪影響を及ぼす可能性もあります。  政府は、これらの人々の人権を擁護する立場から、処罰強化や退去強制で事足れりとするのではなく、現状の抜本的解決対策をとることが求められています。具体的には、国籍による労働条件の差別を禁止している労働基準法の第三条の遵守はもちろんでありますが、ILO百四十三号条約の批准、二国間協定の締結と単純労働者の受け入れ枠の合理的な設定、滞在期間の限定など、こういった施策を緊急に実施して、秩序ある受け入れに向けて方向を決めることが正しい解決につながるものであると考えます。  政府がこのような方向を政策的に明らかにして、今日の国際社会の動向に正しく対応するための条件を早急に整備することを強く要望して、反対討論を終わります。
  205. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  207. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  安永英雄君から発言を求められておりますので、これを許します。安永君。
  208. 安永英雄

    ○安永英雄君 私は、ただいま可決されました出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、連合参議院、税金党平和の会の各会派並びに各派に属しない議員紀平悌子君及び櫻井規順君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読します。     出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の諸点について格段の努力をすべきである。  一 出入国管理基本計画の策定に当たっては、最近の出入国管理行政我が国社会の各般に影響を及ぼすようになっていることにかんがみ、あらかじめ広く国民各般の意見をも採り入れることができるよう適切な方策を講ずること。  二 不法就労外国人についても、労働関係法令等が遵守されるべきものであることにかんがみ、未払い賃金就労中の労働条件に係る問題につき人道的配慮をするとともに、外国人労働者の人権問題等に係る相談制度及び法律扶助制度の拡充を図るよう努めること。  三 留学生、就学生及び研修生の受入れについては、我が国の国際社会に対する貢献の在り方等を踏まえ、本来の目的が十分に発揮できるよう適切な受入れの在り方について検討すること。  四 今般の法改正により、戦前から我が国に在留している在日韓国・朝鮮人及びその子孫等の長期在留外国人の就業を含む社会生活に不都合が生じないよう、また、不利益が及ばないよう十分配慮すること。  五 雇用主等に対する処罰規定の運用については、この規定が悪質な雇用主等の取締りの必要性から設けられた経緯に十分配慮するとともに、末端で現実に不法就労外国人雇用等する者を取り締まることにとどまらず、その背後にあってこの規定違反することにより大きな利益を受けている者の存在を見逃すことのないよう、その公正な運用に努めること。  六 退去強制手続きに当たっては、弁護士の選任手続き、通訳の確保等に配慮し、人道的な観点からの配慮について留意すること。   右決議する。  以上でございます。
  209. 黒柳明

    委員長黒柳明君) ただいま安永英雄君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  210. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 全会一致と認めます。よって、安永英雄君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、後藤法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。後藤法務大臣
  211. 後藤正夫

    ○国務大臣(後藤正夫君) 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案につきましては、委員の皆様方の熱心な御審議をいただき、ただいま御可決いただきましたことに対し、心からお礼を申し上げます。  なお、ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして、努力してまいる所存でございます。
  212. 黒柳明

    委員長黒柳明君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  213. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  214. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 次に、民事保全法案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。後藤法務大臣
  215. 後藤正夫

    ○国務大臣(後藤正夫君) 民事保全法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  現行法におきましては、仮差押え及び仮処分、すなわち民事保全の命令手続については民事訴訟法第六編に、その執行手続については民事執行法第三章にそれぞれ規定されております。民事訴訟法第六編は、明治時代に制定されたものでありますが、規定が簡素に過ぎるため実務の取り扱い上各種の不便を生じておりますとともに、判決手続によって審理がされる場合におきましては、裁判に至るまで相当の長期間を要し、特に迅速な処理が要請される民事保全の制度の趣旨に十分にかなっているとは言えない実情にあります。また、現行法では、仮処分の執行方法及び効力についての規定が十分でないことから、実務の取り扱い上各種の不便を生じているのみならず、適切な仮処分の効力が必ずしも確保されない場合があります。  そこで、この法律案は、民事訴訟法第六編と民事執行法第三章とを統合した民事保全の手続法としての単行法を制定し、当事者の手続上の地位を実質的に保障しつつ、命令手続の審理の適正迅速化並びに仮処分の執行方法及び効力の確立を図る等、民事保全の制度の改善を図ろうとするものであります。  以下にこの法律案の要点を申し上げますと、第一は、命令手続の審理の適正迅速化を図ることであります。すなわち、現行法では、保全命令の申し立てについての審理については、一定の場合に決定手続によることが許容されているものの、判決手続によることを原則としており、殊に、保全命令に対する不服申し立てについての審理は、すべて判決手続によるものとされておりますが、審理の迅速化を図り、もって民事保全の制度に対する国民の信頼を確保するため、これを改め、すべての手続を決定手続とするものとしております。決定手続においては、口頭弁論による審理、審尋による審理、書面による審理のうち、事案の性質に応じて適切な審理方式を選択することができることとなり、審理の充実を損なうことなくその迅速化を図ることが可能となるのであります。しかし、保全命令に対する不服申し立ての手続におきましては、当事者双方の主張及び立証の機会を確保する必要がありますので、口頭弁論または当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を開かなければならないものとし、審理の終了に当たってはその終結を当事者に告知しなければならないものとしております。また、審理の充実及び迅速化のため、当事者の事務の補助等をする者に事実関係につき陳述させることができる制度、受命裁判官に審尋を行わせることができる制度、証人等の尋問につき交互尋問の順序を変更することができる制度、保全命令に対する不服申し立ての事件において参考人等の審尋を行うことができる制度等を設けるものとしております。  第二は、利用頻度の高い仮処分につき、その執行方法及び効力を明確化するとともに、その改善を図っていることであります。まず、不動産に関する権利についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分については、その執行として処分禁止の登記をするものとし、債権者は、その被保全権利に係る登記をする場合には、原則として、処分禁止の登記におくれる第三者の登記を抹消することができるものとするとともに、これにより本来抹消されるべきでない登記を抹消された第三者が速やかに救済手段を講ずることができるようにするため、債権者は、第三者の登記を抹消する場合には、事前にその第三者にその旨の通知をしなければならないものとしております。また、不動産に関する所有権以外の権利の設定登記請求権等を保全するための処分禁止の仮処分については、その執行として処分禁止の登記とともに保全仮登記をもするものとし、債権者は、保全仮登記の本登記をすることにより、処分禁止の登記におくれる第三者の登記を抹消することなく仮処分の目的を達することができることとしております。次に、物の引き渡しまたは明け渡しの請求権を保全するための占有移転禁止の仮処分につきましては、公示を伴うその執行が行われた場合には、債権者は、債務者に対する本案の債務名義に基づき、仮処分の執行後に占有を取得した第三者に対して、原則としてその物の引き渡し等の執行をすることができるものとするとともに、これにより本来その執行を受けるべきでない者に対して執行が開始された場合には、その者が速やかに救済を受けることができるようにするため、決定手続による簡易な救済方法を設けることとして、当事者間の利害の調整を図りつつ、この仮処分の効力の充実を図ることとしております。  第三は、保全命令の発令手続及び執行手続につき、解釈を統一し、新たな制度を設ける等の規定の整備をしていることであります。すなわち、一定の要件のもとに仮処分命令において解放金を定めることができること、不服申し立てに伴う執行停止等の裁判をすることができること及びいわゆる断行の仮処分が執行された後に不服申し立てに基づき仮処分命令が取り消される場合には、その決定において原状回復の裁判をすることができること等としております。  なお、この法律の制定に伴い、最高裁判所規則の制定及び関係政省令の整理等所要の手続を必要といたしますので、その期間を考慮いたしまして、この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、また、民事訴訟法及び民事執行法等の関係法律の所要の整理をし、必要な経過措置を定めております。  以上がこの法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  216. 黒柳明

    委員長黒柳明君) この際、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員井出正一君から説明を聴取いたします。井出正一君。
  217. 井出正一

    衆議院議員(井出正一君) 民事保全法案に対する衆議院における修正について、その趣旨を御説明いたします。  修正の第一点は、仮処分命令の発令手続についてであります。  政府提出案は、仮の地位を定める仮処分命令の発令手続において、債務者の意見を聴取するか否かは裁判所の裁量にゆだねることとしております。しかし、この種仮処分においては、一般に、いわゆる密行性の要請がなく、かつ、債務者に与える影響が大きいことにかんがみ、その仮処分命令を発するには、原則として、債務者に意見陳述の機会を与えることとしようとするものであります。  第二点は、保全執行の停止の裁判等についてであります。  政府提出案の第二十七条及び第四十二条における保全異議の申し立て等に伴う保全執行停止の裁判等については、原決定が取り消される蓋然性が高い場合に限ってされるべきものであることを、一層明確にしようとするものであります。  第三点は、仮処分命令の取り消しによる原状回復の制度についてであります。  政府提出案においては、仮処分命令を取り消す決定において、仮処分命令に基づいて給付した物または金銭及びその利息について返還を命ずる原状回復の制度を設けることとしております。しかし、この制度は、仮処分命令が取り消された場合に、当事者の公平を期するため必要最小限の原状回復を図ることを目的とするものであること及び保全すべき権利の存否が必ずしも確定していない状態で行われるものであることにかんがみ、支払われた金銭の返還を命ずる場合においても返還の対象から利息を除くこととするとともに、裁判所が返還を命ずることの相当性を判断することとしようとするものであります。  以上が修正の趣旨であります。  何とぞ、御賛同くださるようお願いいたします。
  218. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 以上で趣旨説明並びに修正部分の説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     ─────────────
  219. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  民事保全法案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  220. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  221. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五分散会