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北村哲男君 特に人権
擁護という点については、今後
日本が国際
社会において認知されるという意味でも大変大事なことであるし、また、
日本で被害をこうむって帰ったとか、
日本はひどいところだということで、せっかく来た
人たちを追い出すようなことにならないように厚く保護をされることを望みたいと思います。
次に、労働省に対してのお伺いなんですけれども、この
不法就労者の問題については、労働省の対応が悪いというか、労働省の対応のまずさによって多くの人権侵害が起こされており、働く者の権利が失われている点が多くあると思います。
私どもの大きな考えでは、労働省の
立場というのは労働者の保護を一つの大きな
目的としている省庁であろうと思います。労働省には、その所管の機関を通じて労働
条件あるいは賃金支払いの確保とか安全、健康の確保、労働災害に対する保護あるいは失業に対する補償、
職業紹介などの労働者保護、法制上労働者に与えられた保護を尽くす義務があるわけです。それは国籍を問わず、
日本国内で使用されているすべての労働者が対象とされます。当然、
不法と言われているいわゆる
資格外の労働者たちもその対象になっておるわけです。
外国人労働者が
入管法の違反で
不法就労とみなされる場合であっても、今言ったように当然その
適用対象であります。多くの労働者保護法の
適用が排除されるわけではないということは当然のことであります。
ところが、実際には十万人もいると言われている多くの
外国人労働者の中では、例えばパスポートあるいはチケットを取り上げられたり、暴行、監禁による強制労働が行われている。あるいは賃金未払い、あるいは芸者の前金のような形で借金を課せられたり、中間搾取をされたりということが行われています。そしてさらに、使用者側においては労働者名簿とか賃金台帳の
整備は全くなされていないという点とか、労働保険あるいは
社会保険に入っていないという事態、もちろん最低賃金法違反の事案とか労働安全衛生法違反の事例とか、当然職安法違反の事例もたくさんあります。さらに最近できた労働者派遣法違反の事例も多くあるわけです。
そして、これらの法違反に対して労働者保護行政機関の摘発とか取り締まり、監督指導はほとんどなされていないのではないかというふうに思われるような感じがするわけです。労働省が一九八八年十二月二十六日付で発表した「
外国人労働者の
就労実態について」という発表によると、地方労働
基準局は、
外国人労働者について悪質な法違反があり、多数の
外国人労働者が
就労している場合には労働省に報告を行うとされているけれども、本年四月以降十二月までの間に地方労働
基準局が労働省に報告した件数はわずか五十九件である。他方、同報告によれば、同年十月十六日から十一月十五日までの間の一カ月間、全国の労働
基準監督署が四十八事業場、
外国人労働者二百二名について監督を行った際に、短期滞在の
不法就労外国人労働者は百十一名、約五五%である。その中で労働保護法令違反の例だけでも三十六件もあったと言われています。この例から見ても、
外国人労働者からの申告あるいは労働者保護行政機関の摘発あるいは取り締まり、監督指導がどれだけ実効的になされているかということは極めて疑問であろうと思います。
外国人労働者に対して、このように実効のある労働者保護行政が実施されていない理由として、私どもは次のように考えている。
労働
基準監督署あるいは安定所の人員不足による監督
体制の不備というのはもちろん
指摘されています。さらに次に入管局への通報。法違反の被害を受ける
外国人労働者の大半が
入管法上、
不法就労状態であって、行政機関への被害申告は直ちに入管局への通報につながるという
状況がある。このため、被害を申告しても
外国人本人が強制送還されれば法違反の立件が困難になるし、
外国人自身が強制送還を恐れて被害を申告しなくなるという実態があるわけです。
外国人労働者の
受け入れについては、送り出し国での業者が介在することが多くて、国際協力なしには取り締まり、立件が困難であることも当然であります。
そのような事情がありますが、これについて監督
体制をより充実、強化して
外国人労働者に対する保護の実績を上げることは可能であろうと思うのですけれども、しかし、その労働省の姿勢自体が事態を悪化させているのじゃないかという
意見があります。
特に、一九八八年一月二十六日の基発五十号、これは通達の番号ですけれども、あるいは職発第三十一号、これは既に
衆議院の中でも詳しく御議論されているところでありますけれども、労働省は
外国人労働者に対する強制労働あるいは中間搾取などの重大悪質な法違反に対しては厳正に対処すると述べている。しかし他方、同通達は、これら違反事案について
資格外活動あるいは
不法残留等、
入管法違反に当たると思われる事案が認められた場合には入管局にその旨の情報を提供することというふうに述べ、
出入国管理局への情報提供を命じているわけです。これは法違反があった場合だけではなくて、業務遂行に当たって
不法就労あるいは
不法残留等の
入管法違反を承知した場合にも事業主などへの注意喚起、指導を行い、
出入国管理局への通報を行うべきだとしているわけです。さらに、
外国人の
不法就労を防止する観点から、事業主や事業主団体等の
関係団体に対して必要に応じて
資格外活動等の
入国管理法違反に当たる
外国人の雇い入れまたはこれに係る需給調整等を行わないよう協力を
要請することを求めているわけです。
そういうふうな経過があるわけですけれども、このような対応が
外国人労働者の人権を救済できない態勢に追いやっているように思えるわけですけれども、労働省のお考えを聞きたいと存じます。