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1989-11-30 第116回国会 参議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月三十日(木曜日)    午前十時二分開会     ─────────────   委員氏名     委員長         黒柳  明君     理 事         鈴木 省吾君     理 事         福田 宏一君     理 事         安永 英雄君     理 事         矢原 秀男君                 斎藤 十朗君                 下稲葉耕吉君                 中西 一郎君                 林田悠紀夫君                 山本 富雄君                 北村 哲男君                 清水 澄子君                 千葉 景子君                 橋本  敦君                 山田耕三郎君                 宇都宮徳馬君                 小野  明君                 紀平 悌子君                 櫻井 規順君                 土屋 義彦君     ─────────────    委員異動  十一月二十九日     辞任         補欠選任      矢原 秀男君     白浜 一良君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         黒柳  明君     理 事                 鈴木 省吾君                 福田 宏一君                 安永 英雄君     委 員                 下稲葉耕吉君                 中西 一郎君                 林田悠紀夫君                 北村 哲男君                 清水 澄子君                 千葉 景子君                 白浜 一良君                 橋本  敦君                 山田耕三郎君                 紀平 悌子君                 櫻井 規順君    衆議院議員        修正案提出者   坂上 富男君    国務大臣        法 務 大 臣  後藤 正夫君    政府委員        内閣審議官    菊地 康典君        法務政務次官   田辺 哲夫君        法務大臣官房長  井嶋 一友君        法務大臣官房審        議官       米澤 慶治君        法務省民事局長  藤井 正雄君        法務省人権擁護        局長       高橋 欣一君        法務省入国管理        局長       股野 景親君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       川嵜 義徳君    事務局側        常任委員会専門        員        播磨 益夫君    説明員        警察庁長官官房        審議官      鈴木 邦芳君        警察庁刑事局捜        査第一課長    山本 博一君        外務大臣官房領        事移住部外国人        課長       武藤 正敏君        外務省国際連合        局人権難民課長  角崎 利夫君        文部省学術国際        局留学生課長   中西 釦治君        労働省労働基準        局監督課長    氣賀澤克己君        労働省職業安定        局外国人雇用対        策室長      吉免 光顕君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国政調査に関する件 ○出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 黒柳明

    委員長黒柳明君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、矢原秀男君が委員を辞任され、その補欠として白浜一良君が選任されました。     ─────────────
  3. 黒柳明

    委員長黒柳明君) この際、川嵜最高裁判所事務総長より発言を求められておりますので、これを許します。川嵜最高裁判所事務総長
  4. 川嵜義徳

    最高裁判所長官代理者川嵜義徳君) 東京高等裁判所長官に転出いたしました大西前事務総長の後を受けまして、最高裁判所事務総長に就任いたしました川嵜でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。  改めて申し上げるまでもないところでありますが、裁判所は個々の具体的な事件裁判を通しまして基本的人権擁護法秩序の維持を図るという重要な使命を帯びておるわけであります。この使命を果たすために、微力ではありますが司法行政の面で努力をしていきたいというふうに考えております。  幸い、今まで当委員会委員長を初め委員皆様方の深い御理解と力強い御支援によりまして、裁判所運営は逐次充実してまいっております。これからも一層の御支援を賜りますようお願い申し上げまして、簡単でありますが就任のごあいさつとさせていただきます。     ─────────────
  5. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、検察及び裁判運営等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。後藤法務大臣
  8. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  近年における国際交流活発化我が国経済社会国際化進展等に伴い、我が国を訪れる外国人年ごとに増加するとともに、その入国在留目的多様化しております。また、各種事業者側からは、すぐれた外国人を職員として雇用したいとの要請が増す一方、我が国近隣アジア諸国 との間の経済格差などを背景として、観光等を装い入国の上、不法就労する外国人の増加も顕著になっております。  外国人労働者を含む外国人受け入れは、我が国社会経済治安等国家基本に多大の影響を与えるものでありますので、外国人出入国及び在留について右のような現下の諸情勢を踏まえて適正な管理を実施するため出入国管理のあり方を速やかに見直す必要があります。  この法律案は、このような観点から外国人出入国及び在留管理に関する基本法たる出入国管理及び難民認定法、以下入管法と省略いたします、の一部を改正し、今日の諸情勢に的確に対処し得る出入国管理体制を確立しようとするものであります。  次に、この法律案による改正主要点について、御説明申し上げます。  第一は、在留資格整備であります。現行入管法我が国入国在留を認める外国人の類型を示している在留資格は、昭和二十六年の同法制定以来、同五十六年に若干の手直しが行われただけでありまして、外国人入国者数及び形態が当時とは大幅に異なる今日の要請に必ずしも的確に対応し得ない面が見受けられます。これまでは、法務大臣が特に在留を認める者としての在留資格を弾力的に運用することにより状況の変化に対処してきたところでありますが、この在留資格の付与は裁量のもとにありますため、どのような範疇外国人入国在留を認められるかにつき対外的に不明確な面があったと考えられます。よって、我が国入国する外国人入国在留目的多様化している状況に対応し得るよう、既存の在留資格について、その種類や範囲を全般的に見直すとともに、新たにできる限り個別具体的に在留資格を設けることにより、在留資格制度整備し、もって我が国入国在留できる外国人範疇を明確にするものであります。  第二は、審査基準明確化入国審査手続簡易迅速化を図ることであります。その第一点は、外国人入国を認められるために必要とされる要件が明らかになるよう在留資格に関する審査基準省令で定めてこれを公布することとし、出入国管理行政のより一層の透明性及び公平性を確保するとともに、この基準に関する省令を通じて、量的、質的な面からの入国管理を行い得るようにするものであります。第二点は、我が国入国しようとする外国人のうち、あらかじめ法務大臣から在留資格に係る上陸のための条件に適合していることの認定を受けようとする者につきましては、その者の申請を受けて審査を行い、右の条件に適合していると認められる場合には、その旨の証明書を交付することができるようにし、もって外国人入国上陸手続簡易・迅速に行い得るようにするものであります。  第三は、いわゆる不法就労問題に対処するための関係規定整備であります。近年における不法就労外国人の急増が我が国社会のさまざまな面で問題となっておりますところ、このような不法就労外国人問題への対策として、雇用主外国人を雇用しようとする場合に、合法的に就労できる外国人かどうかを容易に識別することができるよう在留資格の表示を改め、しかも合法的に就労できる外国人に対しては、その者が希望するときには就労が可能である旨の証明書を交付し、もって善意の雇用主が誤って就労できない外国人を雇用することがないようにしようとするものであります。また、不法就労外国人に対する退去強制または罰則の適用をより実効的に行い得るようにするため、外国人資格外活動に関する規定整備するとともに、不法就労外国人雇用主ブローカー等に対する新たな処罰規定を設け、もって不法就労活動を防止しようとするものであります。  なお、この改正案は、各界各層の御意見提言等を踏まえて成案を得たものでありますが、特別な技術、技能または知識を必要としないいわゆる単純労働に従事しようとする外国人入国を認めるための在留資格は設けておりません。これは、単純労働者受け入れに関する議論が多岐に分かれているほか、受け入れた場合における我が国社会への影響が大きいと考えられますので、その問題点について引き続き十分な討議を重ね、広く国内関係方面意見を見きわめつつ、長期的視野に立って所要対策を考えるべきであり、そのためにはなお相当の日時を要すると考えるからであります。  以上がこの法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  9. 黒柳明

    委員長黒柳明君) この際、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員坂上富男君から説明を聴取いたします。坂上富男君。
  10. 坂上富男

    衆議院議員坂上富男君) 坂上富男でございます。  出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に対する衆議院における修正部分趣旨について御説明を申し上げます。  政府提出改正案においては、外国人就労に関して就労資格証明書制度を設けることといたしております。しかし、この制度の導入に伴い、本来就労上の制限がなく就労資格証明の必要のない者、例えば、多年本邦在留している永住者等についても、就職等に際して就労資格証明書提示等を求められることとなり、不利益を受けるおそれがあると思われるのであります。  そこで、衆議院においては、就労資格証明書制度が、これらの者に対し不利益をもたらすことがないよう訓示的規定を設けることにより、その趣旨の徹底を図ろうとする修正を行ったものであります。  以上が本改正案に対する衆議院における修正部分趣旨であります。  何とぞ、本修正に御賛同くださいますようお願いいたします。
  11. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 以上で趣旨説明並びに修正部分説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 北村哲男

    北村哲男君 私は冒頭、本題に入る前に警察庁に対して御質問したいと思います。  と申しますのは、今月四日に横浜弁護士坂本さんという方が奥さんと一歳四カ月の子供とともに突然姿を消して既に約一カ月も過ぎようとしております。同僚弁護士を初め、横浜弁護士会などが総力を挙げてその行方とそして救出のために努力をしておるのですが、今日まで何も全くわからないという状態が続いております。私どもは、私自身も弁護士でありますけれども、同僚、同じ職業を持つ者としまして、弁護士という仕事は社会的に弱い者の立場に立って基本的人権擁護のために危険な立場に立たざるを得ない場合もあるわけです。そういうところで、その後の坂本弁護士捜査に対する体制と今後の見通し、現状についてお伺いしたいと思います。
  13. 鈴木邦芳

    説明員鈴木邦芳君) お答えをいたします。  お尋ねの弁護士坂本堤さん一家失踪事案につきましては、本年の十一月七日に所在不明となっている旨の届け出を受けたことによりまして認知をしたものであります。直ちに所要捜査秘匿裏に行いましたところ、失踪者犯罪に遭遇したと直接認められる状況については判明をしないものの、何らかの犯罪に巻き込まれた可能性も考えられるということから同月の十五日に本失踪事案公開捜査に付したものであります。  さらに、同月の十七日には百十名の体制によります捜査本部を設置いたしまして、現在も引き続き現場付近不審人物不審行動等の聞き込みの捜査失踪者坂本弁護士取り扱い事件をめぐる紛争等捜査公開捜査による情報収集等裏づけ捜査、さらには全国に約十万枚のチラシを配布するなどの所要捜査を強力に今推進をしているところであります。  残念ながら、いまだ弁護士一家三名の行方判明をしておりませんが、公開捜査に付した後、これまでに約六十件に上る関連情報が寄せられておりますので、これらをも参考にしながら必要な裏 づけ捜査を行っているところであります。今後においても、あらゆる事情を考慮した上で、神奈川県警察はもちろんでありますが、全国的な捜査を強力に推進いたしまして本失踪事案早期解決に努めてまいる所存であります。
  14. 北村哲男

    北村哲男君 一日も早い救出を望むものであります。  ところで、本題すなわち入管法改正問題についての質問に入りたいと思います。直接、条文の方に入ってまいります。  まず、在留資格整備についての質問を行いたいと思います。  在留資格については今回、別表第一と第二に分け、別表第一についてはこれをさらに五つに分けておりますけれども、この分類の趣旨と仕組みについての説明をお願いしたいということと、今回従来の十八項目から二十八項目在留資格をふやしておられますが、それがどれであるかということ、さらに、この新設された十の在留資格は従来四—一—一六—三というふうな形で法務大臣が特に認めるものとして扱っていたものを類型化したものであると思われますけれども、それで新設というふうに果たして言えるのだろうか、単にわかりやすく確認したものにすぎないのか、あるいは全く新設というものがあるかどうか、こういうことを含めて御説明をいただきたいと思います。
  15. 股野景親

    政府委員股野景親君) まず、今般の改正案におきます在留資格整備の点でございます。  ただいま委員指摘のとおり、在留資格について新しい在留資格を設けておりますが、まずその趣旨は、我が国社会国際化及び外国人入国在留目的多様化というものに的確に対応し得るように在留資格というものの見直しを全面的に行ったという基礎がございます。その結果としまして、新しくつくりました在留資格は、法律会計業務、医療、研究、教育、人文知識国際業務企業内転勤文化活動、就学、永住者配偶者等及び定住者の十種類でございまして、これが新しい在留資格としてつくったものでございます。  別表第一につきましては、ただいまの中で、本邦において行うことができる活動について、その在留資格をもって活動するということについての内容を明示するものが別表の第一でございます。他方、別表の第二につきましては、法文の中にも示してございますように、本邦において有する身分または地位というものに着目いたしまして、この在留資格を定める。これは、永住者あるいは日本人配偶者等について、日本において有する身分というものに基づく活動が特段の制約というものを伴うことのない人たちであるということにかんがみまして、別表第二で別表第一とは別の定め方をした経緯がございます。  それから、ただいま御指摘の、従来ございました法の四条の一項十六号に基づくところの法務大臣が特に在留を認める者についての内容としてかなり多岐にわたっての在留を認めてきたという経緯がございまして、それについて、今度の法改正で、その中に含まれていたものを新しく在留資格として独立させたという面があることは、これは先生も御指摘のとおり事実でございます。しかし、この法改正につきましては、全体としてまず冒頭申し上げましたように、外国人活動多様化しておるということに着目いたしまして、それに適切に対応し得るように、全般として在留資格というものを拡充をいたしております。したがって、四—一—一六—三という従来の資格に見合ったものを拡充した面もございますが、全般としてその在留資格拡充しておるということが重点でございます。  また、なおそういう拡充をいたしましたが、しかし外国人活動というものも非常に多種多様になっておるということも事実でございますので、そのすべてを類型化して掲げるということについては立法技術上の困難もございますので、これに対応するため「特定活動」、こういう在留資格を設けまして、この運用によってそういう多様な在留活動に対応するということを考えている、こういうことでございます。
  16. 北村哲男

    北村哲男君 拡充というお言葉を使われたんですけれども、その拡という意味が余り出ていないような気がするんです。それで私はお伺いしたんですけれども、今までの四条一の十六の三で認められたものの確認にすぎないような感じがするので、その辺、特に新しく今回出されたもの、新設されたもの、あるいは今後またそういう拡充、すなわち広げることの方向性を示しておるというものがあれば、簡単に御説明願いたいと思うのですが。
  17. 股野景親

    政府委員股野景親君) まず、「企業内転勤」という新しい在留資格を設けておりますが、これは必ずしも従来の四—一—一六—三というカテゴリーの中で考えられたものではなくて、新しくこういう発想法をもって、本邦とそれから外国との間の転勤ということについての在留資格というものを設けたという点が新しい着想でございます。  それから、例えば「人文知識国際業務」というカテゴリーもございまして、これもある程度は従来四—一—十六—三というカテゴリーにも対応するものでございますが、特に今後において外国人で主として社会科学等の面あるいは文化等の面における専門知識や専門的な経験というもの、感性というもの、こういうものを生かしてもらう、そういう活動が非常にふえてきておるという状況がありますので、この辺も新しい発想に基づいたものであります。
  18. 北村哲男

    北村哲男君 今まではその四—一—一六—三でかなり裁量をもっていろんなものに対応してきたということがあるんですが、今回整備することによって、その裁量の幅を狭めたのではないかという声もあるんですけれども、それはこの別表一の五の「特定活動」ということで柔軟に対応できる、あるいはする方向であるというふうにお伺いしてよろしゅうございますか。
  19. 股野景親

    政府委員股野景親君) まさに、「特定活動」というところは、先ほど申し上げました在留資格が非常に多様化しているというところに柔軟に対応するという必要があることにかんがみて設けた規定でございます。
  20. 北村哲男

    北村哲男君 次の質問に移りますが、今回の改正では現行法四条の五項と六項を削除して、改正法七条一項二号によって、上陸の際の滞在資格から永住ということを認めないようにしておりますが、その改正趣旨説明していただきたいと存じます。
  21. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま委員指摘上陸にかかわる永住許可規定というものを削除いたしておるわけでございますが、それは以下のような考え方に立っております。  まず第一は、委員御存じのとおり、我が国移民というものを受け入れておりません。そして、その移民受け入れないというこの政策は今後とも続くものと考えられますところ、御指摘現行法四条の一項の十四号、それから同条の第五項及び第六項というものは、永住者としての外国人入国を認めるという規定になっておるのでございますが、これが今までにこの規定として適用されたということがございません。また、こういう規定が法の中にございますと、対外的にあたかも我が国移民受け入れる国であるというような誤った印象を与えることにもなりかねないので、今回の改正を機にこれを削除するものとしたわけでございます。  また、今度の改正案において「日本人配偶者等」というところがあり、また「永住者配偶者等」という、そういう在留資格のほかに「定住者」という在留資格を設けておりますが、もし永住を希望する外国人というものがあれば、こういう今申し上げましたような在留資格等を一たん持って、そして上陸をし、その在留状況を今度は当局の方で見て、永住許可の可否が相当であるかどうかということについて検討をしていくということの考えで臨んでいるということでございますので、あわせて御指摘規定を削除することが適当であると考えたわけでございます。
  22. 北村哲男

    北村哲男君 次の質問に移りますが、現行法では、施行規則の第二条第一号で日本人配偶者と子の在留資格を定めております。しかし、今回の 改正案では別表第二で、そのほかに特別養子を認めております。こういう新設条項があるんですが、特別養子だけでなくて一般養子をなぜ入れてないのかと、大体わかるんですけれども、一般養子であっても普通の子と同じように育て扱っている場合が普通でありますので、あえて外された理由を聞きたいと存じます。
  23. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま委員指摘別表第二のところの中で、御指摘のとおり特別養子ということを書いてあるわけでございますが、この別表第二の在留資格というものをもって在留する者については、これは別途、その入管法の第七条一項二号の中に入国管理を規制するための審査基準というものを設けておりますが、これがこの別表第二の「在留資格をもつて在留する者」について、その審査基準適用がない。したがって、そういう身分または地位を持っているという事実をもとに入国を認める、こういう状況になっております。  そうしますと、そういうことの点に着目して入国のための手段として日本人養子縁組というものを利用する者が出てくるんではないかということが懸念されるわけでございます。そこで、日本人配偶者等としての身分に基づいて入国を認める在留資格には普通養子は含めないが、民法第八百十七条の二に定める特別養子というものについては家庭裁判所の審判によって養父母との間に実の子とほぼ同様の関係が成立しているということにかんがみまして、これを在留資格に含めるということにしたものでございます。
  24. 北村哲男

    北村哲男君 次の質問に移りますが、第六条のビザ取り扱いについて、現行法の変更を規定しております。すなわち、従来はビザについては相互免除主義をとっておったんですけれども、これを廃止して、一方的に通告によって、日本政府通告によってよいという規定になっておりますけれども、これはどのような考え方あるいは思想に基づいて変更されたのか、御説明願いたいと思います。
  25. 股野景親

    政府委員股野景親君) 現行法の書き方でございますと、上陸申請に査証が不要とされる場合の一つとして「日本人の旅券に当該国官憲の査証を必要としない国の国籍若しくは市民権を有する外国人の旅券」、こういうことを定めて相互主義を掲げているわけでございますが、これはある国が一方的に日本人に対して査証を免除している場合でも、これに応じて我が国も当該国民に対して同様の措置を講じなければならぬという解釈を生むおそれもございます。よって、相手の一方的な判断だけで我が国が査証免除の実施を強いられるというようなこと、あるいは相手国による査証免除の範囲や条件が不明確なまま査証免除を実施して混乱が生ずるということ、こういうことを避けるために、従来から査証免除を実施するときには必ず相手国とその範囲及び条件等について取り決めを行ってきております。  今度はまた、相手国が日本人に対して査証を求めている場合であっても、例えば国内で開催されるオリンピックとか万国博覧会等への観光客、あるいは査証を有しなくても特に問題のない国の観光客、査証の免除取り決めがある国が専らその国の事情から日本人に対する査証免除措置を停止した場合における当該国の観光客などについては、これは我が国として一方的に査証を免除することが適当だと考えられるときもございます。  そういうような観点から、今度の改正案は第六条のただし書きの表現について実務上支障の生じないような改め方をいたしまして、査証免除は相手国との相互の取り決めなどの国際約束または日本政府外国政府に対して行った通告によって行い得るということとしたものでございます。
  26. 北村哲男

    北村哲男君 わかりました。  次に七条の問題に移っていきますが、審査基準明確化という点についてお伺いしたいと思います。  今回の改正案の主要な柱の一つとして審査基準明確化ということが挙げられておりますが、別表第一の二と四についてだけは「法務省令で定める基準」を挙げておられます。しかし明確化という観点からしますと、第一の二と四以外の一と三と五についても同じようにされたらどうかと、つまらないことかもしれませんけれどもそういう気がします、またそれはそれでよろしいんですけれども。  それでは、その省令という点について、例えば問題になっております就学の省令基準について、これは一体省令でどのようなことを決めるのであろうか。例えば保証人は必要とするかどうかとか、あるいは日本語学校が一定の基準に合致するかということをその省令内容として予定されるのであるかどうか。その点についてのイメージといいますか、大体どういうことを私どもは想定すればいいのかという点についての説明をいただきたいと思います。
  27. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま御指摘の第七条の中にございます審査省令の観点でございます。  これはまず、外国人日本に入ってまいります場合に、その入国我が国の産業とか国民生活というものに与える影響というものが少なくございません。そこで、ある一定のカテゴリー外国人入国者について質的及び量的な面から適正な入国管理が行えるように、そういう観点から上陸審査基準というものを定めることにいたしたわけでございます。  そこで、そういうものを省令でなお定めるといたしておりますが、これは関係者があらかじめその審査基準というものを知り得るように、行政の透明性という観点で省令で定めることにしたわけでございますが、そういう基準省令というものについて、先ほど申し上げましたような観点からの質的及び量的な面からの管理、調整という観点で見ますと、これはただいまこの法でお示ししております別表第一の二の表とそれから四の表、こういうことでございますが、これについての在留資格は、そういうものが調整を行う対象として必要と考えられるということで設けた次第でございます。  そこで今、先生は就学という観点からの御指摘がございました。この就学についてのまさに省令基準というものを設ける必要があるわけでございますが、これは具体的にはこの法を御審議いただき、法を成立させていただきました後に関係各省庁と今度はその省令についての協議を行いまして、具体的に一般の方にもわかりやすい形で決めてまいります。  今先生のおっしゃったイメージという点で私どもが念頭に置いておりますところのものといたしましては、就学というようなことについても、まず外国人側の学歴、経験あるいはその他の資格というようなものについて定める。それから今度は受け入れる側の機関の規模とか実績というものについても定める。こういうものをできる限り具体的、客観的に定めたいと思っております。私どもも就学という問題につきましては、これまで就学という名目で不法就労するというような者があるという御指摘があるということも踏まえまして、そういうことは排除されるように受け入れ先すなわち就学先の適格性等についても厳正な基準というものを設けて的確に対応してまいりたい、こういうふうに考えております。
  28. 北村哲男

    北村哲男君 七条の問題でもう一点ですが、七条三項では「法務省令を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長と協議するものとする。」というふうにあります。しかし、これは法務省令改正する、あるいは変更するときは関係機関と協議をする必要があるかどうかについては規定がないようです。と申しますのは、六十一条の九の第五項を見ますと、この変更の場合は関係機関と協議を必要とするというふうに、そちらの方では規定してあります。この二つの条文は、どういう意味で違えてあるのか、変更の場合は特に協議の必要がないという御趣旨なのか、その点についての御説明をお聞きしておきたいと存じます。
  29. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) お答えいたします。  変更の場合も、当然のことながら、新しい審査基準を定めることになるわけでございますので、関係省庁と協議をすることとしております。
  30. 北村哲男

    北村哲男君 それでは、どうして六十一条の九とこちらと条文が変えてあるのか、その点は特に意味があるんでしょうか。
  31. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 特段、六十一条のそちらの規定を平仄を合わすという意識は少しなかったかもしれませんが、変更とわざわざ書きます場合は、しばしばこの変更が行われることが予定されているものが多かろうと思います。それから、変更が余り行われないであろう、ある程度数年間固定していくだろうと思われるものにつきましては、「定める」ということで変更の場合も読み込もうというのが普通だと考えております。
  32. 北村哲男

    北村哲男君 わかりましたけれども、私も今税特委の傍聴をしておりますと、こういう点を相当指摘されて欠陥法案だとか言われておりますので、私もあえて聞いてみたわけですが、次にもう一点、七条の二についてですが、在留資格認定証明書の交付を受けようとする場合の手続というものが特にこの条文からははっきりしません。すなわち、外国にいる人から申請があった場合に法務大臣が付与するというふうになっておりますけれども、それ自体は現実性がないと思いますが、例えば在外公館に直接交付申請をするということができるのかどうか、手続の概要を簡単に御説明願いたいと存じます。
  33. 股野景親

    政府委員股野景親君) 在留資格認定証明書の交付の実際の手続については、詳細を省令で定めることになりますが、私ども今考えておりますところでは、まず地方入国管理官署におきまして、外国人本人あるいはその代理人が本邦において行おうとする活動を立証する書類等を提出して、そしてその手続をとるということになると思います。  今御指摘の、外国人が在外公館で証明書の申請等をするということについては、我々の考え方としては、今そういう在外公館での申請あるいは交付ということは考えておりません。もともと、こういう制度をつくりますのは現行の複雑な入国審査手続簡易合理化するということを主目的といたしておりますが、今の在外公館に外国人が申請するという場合には、そうなりますとその後の外務本省への経伺、それから外務省から法務省への協議、こういうことでこれは査証申請と変わらないだけの複雑な手続が行われることになりますので、その意味でのメリットがほとんど期待できないということから、在外公館についての申請というものは考えておらないわけでございます。
  34. 北村哲男

    北村哲男君 結構です。  逐条的になりますが、十九条の在留資格就労の禁止の問題についてお伺いしたいと思います。  改正案十九条では在留資格就労についての関係規定しております。その立法趣旨とその概要、そして現行法と比べて何か厳しくなったような感じがしますけれども、その点の比較という意味で簡単な説明をお願いしたいということと、それから十九条二項では収入を伴う就労活動を許可制にしておりますが、これに対しては異議の申し立てはできる仕組みになっているのかどうかという点について一言お願いしたいと存じます。
  35. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) まず、十九条の規定の変更の趣旨あるいはその法律効果といいますか、その後どうなるかということについてお答えいたしますが、粗っぽく申し上げますと、従来は資格外活動につきまして、当該外国人が与えられた在留資格に見合う活動以外の活動をすれば即資格外活動ということで規制の対象にしていたわけであります。規制の対象といいますのは、簡単に申しますと退去強制の対象者になったり、あるいは罰則の対象にしていたわけでございます。  ところで、資格外活動が非常に反社会活動として意味合いを持ちますゆえんのものは、恐らくは、就労することができない資格で入っておきながら金稼ぎをするために資格外活動をするということだけを考慮すればよかろうと思われますので、その意味におきましてこの十九条の規定をそういった方向資格外活動の範囲を厳格に絞り込むという改正をしておるわけであります。  それから、その資格外活動の許可を受けるということで、受ける制度をつくることによって就労活動範囲を規制するといいますか、厳格な方向でいくんじゃないかというふうにおっしゃるわけでございますが、むしろ、今申しましたように資格外活動の範囲を非常に絞り込んでおりますから、それとの見合いにおきましては、規制の観点からいえば、規制面からいえば緩やかになっている。非常に逆説的な言い方かもしれませんが、要するに普通一般の資格外活動規定ぶりを言うなれば広範囲に規定しておきますと、その規定に違反しないためにはあらゆる場合を想定して資格外活動の許可申請をする必要性が出てくるわけでございます。つまり簡単に申しますと、留学生が夏休み中に京都へ旅行いたしまして観光して回るといった場合、ひょっとすると資格外活動になるかもしれないからという危惧、懸念から資格外活動の許可をわざわざ取りにいかなければならないかもしれない。しかしながら今回のような十九条でありますと、そういう場合は当然資格外活動に当てられませんから、一々資格外活動の許可申請を入管局へ行ってやる、まあ懸念からではございますが、そういうことをやる必要もなくなるわけでございます。
  36. 北村哲男

    北村哲男君 ちょっと私、今聞きそびれたんですが、異議の申し立てができるかどうかお答えされましたか。一言ちょっと……。
  37. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 直接的にそれ自体に対する異議の申し立てはありませんけれども、委員御承知のように、仮に資格外活動をやりまして、そして退去強制手続に結局は移るわけでございますが、その際に退去強制手続の中で本人が不服を申し立てる制度が保障されておるわけでございます。
  38. 北村哲男

    北村哲男君 別表第一の四の点について質問いたします。この中で留学、就学、研修と、もう一つ家族滞在がありますが、前の三つのうちの留学、就学についてお伺いしたいと存じますが、内容的には従来とは変わっておらないと思います。  そこで、留学生、就学生の滞在者数のデータ等はこの合本の中にある程度の資料は出ておりますけれども、就学生、留学生あるいは研修生等の最近の入国状況、それからここ二、三年の人数あるいは国別等の概況について、まずお伺いしておきたいと存じます。
  39. 股野景親

    政府委員股野景親君) 留学生につきまして過去三年間の新規の入国者数を申し上げますと、留学生、昭和六十一年において五千四百十九名、それから六十二年において五千八百十二名、そして昭和六十三年において六千四百三十五名と、こうなっております。  それから就学生につきましては、昭和六十一年、一万二千六百三十七名が新規入国者でございます。昭和六十二年については一万三千九百十五名、そして昭和六十三年においては三万五千百七名となっております。とりあえず留学生と就学生についてだけ申し上げます。  研修生については後ほど御報告申し上げます。
  40. 北村哲男

    北村哲男君 この中で、まず就学生についてですけれども、この就学生というのは、これはかつて中曽根元首相が提唱した留学生十万人計画ということに基づきまして、日本語学校がビザの取得ができるようにするなど手続を簡易化されたという経緯がありました。ところが、ビザの発給を簡易化するまではよかったんですけれども、その就学生が入国してから後の受け入れ体制が全くなっていなかったために、文部省が日本語学校の審査基準を打ち出したのは悪徳日本語学校というものがはびこり出してからだというふうに言われております。また、日本語学校の生徒に対する奨学金などの整備がなきに等しいという状態であり、かつアルバイトに対しても厳しく規制したために、日本語を学ぼうとする、そういう意欲を持って来日した若い人たちの希望が裏切られて、犠牲を強いられる学生が多数に上ったというふうに言われております。  こうした事態に対して法務省は、まず就学ビザの発給を締めつけるという対応にかつて出ております。昨年以来、就学ビザ更新に必要な書類が次々とふえていったということもそのあらわれであります。すなわち、以前は必要なかった保証人の印鑑証明が必要になったり、保証人の年収の条件を引き上げたりして、まじめな学生が就学ビザを取りにくくしている結果を生んでいるというふうに思います。  このような事態を背景として、法務省はこの留学生の十万人計画の実施について文部省との間に協議を行っているかどうか、行っているとすればその内容とか、あるいはそうでないとするとその理由は何かということについての概要をまず御説明願いたいと思います。
  41. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいまの御質問にお答え申し上げます前に、先ほどの研修の数でございますが、昭和六十年の数がございまして、これが六十年に一万三千九百八十七名の新規入国者がございました。昭和六十二年において一万七千八十一名、そして昭和六十三年は二万三千四百三十二名という数の研修生が新規入国をいたしております。  ただいまの先生御指摘の留学生十万人計画との関連の問題でございます。これは留学生及び就学生全般について、その本来の目的を持って日本入国し、そして勉学を行う、こういうことを確保するということが必要であるということを最近の状況にかんがみまして政府当局としても強く感じておりまして、現在法務省と文部省の間ではいろいろな形で今後の留学生及び就学生の適正な受け入れの仕方について協議を行っております。  十万人計画そのものについての具体的な話し合いということの形を必ずしもとってはおりませんが、まず留学生あるいは就学生としての入国を認めるための基準というもの、これについて十分に相互の間で意思疎通を行った上で適正な基準を設けるということについて、これは文部省側と十分にお話し合いをしているところでございます。  もう一つ、特に就学について問題が多いわけでございますが、留学生及び就学生についての受け入れ機関側の適格性ということについても、あわせて文部省側と十分に協議を行いながら、その適格な受け入れ機関が確保されるということに現在努力をしておりまして、特に昨年、日本語教育施設の運営に関する一つの基準を文部省側が中心となって、法務省側もこれに協力し、ほかの関係者との間の協議も経て、そういう基準というものが策定される。さらにはまた、新しい日本語教育振興のための組織をつくりまして、受け入れ側の機関の適格性というものについても十分適格性を確保するための配慮と努力を現在行っているところでございます。
  42. 北村哲男

    北村哲男君 ただいまの受け入れ側の適格性という問題なんですが、ことし一月に法務省は二十三の日本語学校を不適格校として指定しておられます。これはどういう理由であったのか。しかし、その措置が結果的に、一たん受け入れられた就学生を追い出すといういわば国際問題になったのか、なりそうになったのかということで、たしか後に撤回されたというふうに聞いております。これはどういう理由でそういうふうになったのか。あるいはその後、それに対してどのような善後策をとられたのか。特に国際的な汚名を浴びたか、浴びそうになったのか、そのことの名誉回復という点についてはどのような措置をとられておるのかという点を伺いたいと思います。
  43. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいまの御指摘の、不適格として考えられるために新規の就学生の受け入れについてこれを認めないという扱いを行った学校が昨年末から本年の初めにかけてあったわけでございます。これは基本は、学校というものはすべて定員というものを適正に運営していくということが学校の運営基本でございますから、これらの学校につきましてはいずれも定員というものを大幅に超過して入学許可書というものを発行しておる、こういう事実がございまして、これはもう学校教育の基本というところを踏まえていない。またそういうような状況外国からの就学生が日本に来ても、とても満足のいく就学はできない、こういう観点から法務当局としてそういう学校について、受け入れ学校としては不適格である、こういう判定をいたしたわけでございます。  これについて、ただこれらの学校の側から、自分たちについても確かにそういう定員超過で入学許可書を、定員を大幅に上回った入学許可書を発行したということの過ちを認めまして是正を行う、こういう申し出がございました。そこで、実際に既にこういう学校に在学している学生の立場のことも考えて、入管当局としてはそういう意味での一定の定員是正のための猶予期間を設けるということをことしの一月に行ったわけでございます。その猶予期間の間に定員について是正を行う努力を行い、それによって定員の是正を図った学校については、ことしの夏ごろまでに適格性というものを再び新たに認めて、そして就学生の受け入れを再開することを認めた学校がございます。  そういう意味で、私どものとりました措置は学校運営ということに関連する最も基本である定員という点に着目した措置であり、これは妥当なものであったと思いますし、またそれを行ったことによって各日本語学校における定員というものがきちんと守られるべきであるという趣旨が徹底したという意味でも非常に効果があったと思いますし、他方、実際にそういうことについての是正措置をとった学校については、これはまたそういう新しい体制のもとでの運用ができるという配慮も施したということでございます。
  44. 北村哲男

    北村哲男君 留学生、就学生についてさらにお伺いしていきたいと思いますが、留学生あるいは就学生は、国際的な所得格差の問題もありまして、日本に来た人たちはそのほとんどすべてが生活のためにアルバイトなどをしておるという事実があるし、それは今や常識だと思います。その留学生、就学生のアルバイトについてですけれども、法務省の考え方は留学生、就学生は原則として就労資格は認めない。留学生については入管当局の許可した時間すなわち一週二十時間以内、就学生についても同様の扱いというふうに聞いております。確認しておきたいのは、留学生について原則として週二十時間のアルバイトということ、これが今回の改正でさらに厳しく、今までよりもさらに厳しくなるのではないかというおそれあるいは危惧があるんですけれども、その点についてはいかがなものでしょうか。
  45. 股野景親

    政府委員股野景親君) 現行制度において、留学生について週二十時間の範囲内であれば、これは学業に支障を来さないという判断に立っての扱いをいたしていることは先生御指摘のとおりでございます。  そこで、今度の新しい法改正後にアルバイトの適正な範囲が週二十時間ということでいいのかどうかという点については、これはまた新しい事態のもとで、まさに現状を十分にもう一遍よく分析してみる必要があると思います。本来、アルバイトはあくまで学業を行う上での必要な生活費等についての補てんを行うという補助的な役割を果たすべきものでございますので、そういう観点で二十時間ということについての妥当性ということも含めまして関係省庁とも十分協議をし、また実態を十分踏まえて考えていく、こういう扱いで現在臨んでおるところでございます。
  46. 北村哲男

    北村哲男君 抽象的なお話なんですけれども、実際に週二十時間であると、大体今の留学生、就学生の人たちのアルバイトというのは時間給七百円から八百円ぐらいらしいんですが、それで週二十時間だとすると一月にどのくらいになるんですか。全部合わせても一月働いても数万円にしかならない。そうすると、とてもそれでは生活できないという実態があるわけで、それを余り厳しくしていますと、脱法の勧めといいますか、それを強いている。来ている人たちは非常にまじめに勉強する。かつて私どもがまだ余り豊かじゃないころに、夜学に通い、八時間の労働をして夜四時間学ぶ、それがかつての日本の姿であったと思うんですけれども、今の留学生、就学生に対する態度は その反対みたいな感じなんですね。ほとんどの時間を勉強して、しかし四時間しか働いちゃいけない。そうすると本当に勉強したい人、苦労しても勉強したい人たちについては脱法でもいいから働きなさいというふうな形になってしまう、そういう矛盾があらわれておるのですね。  それについてはもう一言、今後二十時間についてはもっと多く働けるような、そして若い人たちに希望を持たせるような御発言というか、そういう御意思を伺いたいと思うんです。
  47. 股野景親

    政府委員股野景親君) 日本の国内における物価の状況等について、あるいは円高というような状況について十分我々として留意をした上での検討ということは必要であると考えておりますが、他方、先ほど申し上げましたように、留学生、就学生のアルバイトというものはあくまで必要経費の一部を補てんするという考えに立っておるもので、この必要経費の一切を賄うというような観点でありますと、これはそもそも就学ないし留学をすることの基礎が問題になりますので、その点についておのずとそこには適当な形態というものが出てくると考えられます。そういう意味で、本来の勉強をしようという学生が、その勉強ができるということについて補てん的な意味で効果があるようなアルバイト、これは考えていきたいと思いますが、その点とただいまのあくまで一部の補てんであるという考え方、さらには本末が転倒して就労が主になるという形になることは避けたいというようなこと、こういう考慮をいろいろ尽くす必要がございますので、そういう総合的な点で今関係省庁との間でいろいろ考えていこうと、こういうことでございます。
  48. 北村哲男

    北村哲男君 今の点ですけれども、もう一点問題なのは、今回の法改正でいわゆる不法就労というものが非常に厳しくなってくるわけなんですけれども、そうすることによって結局、実際に本当にやりたいという、まじめに遵法精神を持った人たち日本に来れなくなるという事態、日本からいわゆる排除してしまうというおそれがあるわけです。その点については相当慎重にというか、立場を考えて対処しなければならないと思います。  それと同時に、さらにもう一つの問題として、まじめに来ようとしている人たちに対して、まじめではなくて、働いて日本で一旗上げてやろう、もうけてやろうという人たちも中には多くいるわけです。そういう人たちはもう最初から脱法することを覚悟の上で来ているわけですから、どんどんそういう人たちがはびこっていく。しかし、その中でまじめな人たちが今度は駆逐される、悪貨に良貨が駆逐されるような形で悪い結果が及んでくるんじゃないかというのが私どもが今回の法改正で一番心配している点なんですけれども、その点についてももう一言お願いしたいと思います。
  49. 股野景親

    政府委員股野景親君) まさに問題の両面を委員指摘になったわけでございますが、まず本来のまじめな学生さんで日本において勉学をしようという人たち、これは入国審査の段階において十分の審査を行うことによってそういう方たちの入国が円滑にいくように十分配慮していくべきものと考えております。他方、もう一つの面で、特に最近において問題の指摘されている就学あるいは留学というものを名目に、実際は就労を専らしようと思って入国しようとする人たちについても、これも十分入国審査の段階でまず厳正な審査を行うことによってそういう者が入国することを防止するということが大事だろうと思いますので、そういう観点から入国審査については、ただいまの先生の御指摘の問題の両面というものを十分に踏まえたまず扱いをいたしたいと思います。  それから、こちらに来ました後でございますが、これはまた、まじめな学生さんについてはその実態を十分に踏まえた配慮というものをその方たちの在留活動については考えていく必要があると思います。他方、今度の法改正におきまして明確に資格外活動規定を設けましたことによりまして、資格外活動として行うアルバイトの活動についてもはっきり規制の対象にすることになっておりますので、その意味でこれを乱用しようというようなことは今度の法改正ではしっかり規制ができる、こういうふうに考えております。
  50. 北村哲男

    北村哲男君 留学生、就学生と、それから入管法を潜脱の目的で働きに来る人たち、なかなか一見明白にはわからないと思うんですけれども、その点について、入国の際についてはかなり今御説明がありましたけれども、滞在期間更新なんかの際にそれをはっきり区別をして、まじめに働こうとする人たちを保護育成していこうという必要性があると思うんですけれども、その点については特に御配慮というか具体的な御配慮はあるわけですか、あるいはどういうふうにお考えなんでしょうか。
  51. 股野景親

    政府委員股野景親君) 御指摘のとおり、入国審査に当たりまして、あらかじめその人たち日本での留学あるいは就学というものを行うのにふさわしいだけの学歴あるいは経験というものを持っているかという点を、まず審査する段階でそういう点についての配慮ができると思いますが、今度は日本入国しました後につきましても、学校における出席の状況あるいは勉学の状況というものを十分に判断をし、それについて検討をした上で、例えば在留期間の更新等の際の判断基準に、まさに学校できちんと勉強しておるのかどうかという点を十分考えた上での取り扱いをする。国内に来てからも、そういう観点からの入国管理局としての対応というものができるものと考えております。
  52. 北村哲男

    北村哲男君 次に、研修の関係についてお伺いします。  先ほどの統計ですが、この数年、特に去年、六十三年度ですが、かなり研修生については飛躍的に数が伸びているように思います。この拡大傾向というのは、関係各省庁の協議の上の政府の一つの方針というふうに理解してよろしゅうございますか。
  53. 股野景親

    政府委員股野景親君) 御指摘のとおり、研修生の受け入れがふえてきておりますが、これは我が国が開発途上国等に対する国際協力の一つの重要な側面として研修活動というものを重視していることの反映でもございます。したがって、研修活動関係する省庁もいろいろございますので、関係省庁との十分な協議を行いながら臨んでおるところでございますし、特に研修生の受け入れ基準というものについては、従来必ずしも十分関係省庁の間で明確に了解されていなかった事項について、改めて各省庁間で協議を行いまして、そして関係省庁の合意のもとでの新しい研修についての基準を設けるということもことしにおいて行ったという経緯がございますので、そういう意味で入管局としては関係省庁と十分な協議を行いつつ研修について臨んでおるということでございます。
  54. 北村哲男

    北村哲男君 一つの方針かということをお聞きしたのは、確かに研修についてはしっかりとした受け入れ体制なり機構をつくることが必要と思いますが、一方で各省が別々の動きで受け入れ機構を検討しているという動きが過去報道されておるわけです。すなわち、労働省が受け入れを弾力的にする、積極的にしようとすると、すぐそばから法務省が猛反発をしたという報道が確かにありました。他方、ことし九月七日付の新聞報道によりますと、法務省主導で受け入れを一元的に管理するような外国人研修生受け入れ機構を設置することを決めたという報道があります。  ばらばらではないかということで、各省で協議しながら進めますというお話はわかるんですけれども、数が飛躍的に伸びている、あるいは需要もあるというところから、一体その辺はどこでどういうふうに調整がされ、どういうふうな方向になっていくんだろうかという点についてさらにお伺いしたいと思います。
  55. 股野景親

    政府委員股野景親君) 研修事業は、先ほど申し上げましたように関係各省庁としてこれに関与する省庁も多うございます。また、関係する分野も多数ございます。したがって、関係各省庁で国際協力という観点から研修の意義を認めて、これについてのいろいろな考え方ないしは計画という ものを持たれるということは現にあるわけでございますが、法務省としてはこれがすべて外国人にかかわることであるという観点から、いずれの省庁とも十分御相談をしながら進めていくという態度で臨んでおります。  それぞれの各省が持っておられる計画がある限りにおいては、その各省がお考えの計画なるものが外部に発表されるということもあるわけでございますが、そういう個々の計画全体を通じての一つの統一的な考え方というものがぜひ必要であると私ども法務省としては考えておりますので、その意味で各計画について全部共通する基本的な考え方というものをしっかり打ち立てていく、そういう努力をいたしておるわけでございます。  また、受け入れ方について、これも今後の課題でございますが、ただいま申し上げましたような各省それぞれの計画があることは一つの現実として、そういうものを共通して流れる基本的な受け入れ方というもの、こういうものでこれがきちんと確保されるための体制づくりというものも大事だと思っておりますので、そういう観点からの整合性のある受け入れ体制というものをつくっていくことは法務省側としても必要であると考えておりますので、これを今関係省庁側と御相談しながら検討をしていくという状況でございます。
  56. 北村哲男

    北村哲男君 ところで、研修については不法就労の隠れみのとして悪用されているという指摘が多くあります。また、そのような事例も多く新聞などで報道されておりますし、法務省入管局も立入検査などをしてそれを挙げておられます。法務省としてはこの点についてどのように把握し、これをどのように認識しておられるのかという点、そしてあわせて研修と就労の区別、その基準についての説明をしていただきたいと思います。
  57. 股野景親

    政府委員股野景親君) まず研修でございますが、これは当該外国人我が国において産業上の技術または技能というものを習得した後、帰国をしまして、その技術または技能を生かして本国の経済社会の発展に寄与するというものであって、そういうことを前提にした我が国における活動ということが研修である、こういうふうに私どもとしては認識をいたしております。  他方、就労は、これはまさに収入ないしは報酬を得るということがその基本であって、そういう意味で今度の新しい改正法案におきましても、「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」という活動としての取り扱いを行うということにいたしております。そういう意味でこの研修と就労ということは本質的に異なる、こういう扱いでございます。  そこで、我々入管局としまして、最近において、研修という名目のもとに入国している外国人が研修という実態を離れた就労活動を行っているのではないかという御指摘を受けることもございましたので、実地について入管当局で調査をいたしました。そして不適切と認められるものが確かに判明したという事例がございますので、こういうものについては事態を是正するよう指導をする、こういうことを行っているわけでございます。したがって今後については、この新しい法改正をいただきます場合に非常に研修と就労というものの区分を法文上でも明確化されるということがございますので、両者をはっきり区分した取り扱いということで臨む考えでございます。
  58. 北村哲男

    北村哲男君 研修名目で不法就労をしているという実態がかなり多く明らかにされておるんですけれども、これは多くは企業側、受け入れ側の責任が多いのか、あるいは日本に来てうまくひとつ一旗上げよう、稼いで帰ろうというふうな人たちの責任、あるいは現地のブローカーみたいな人たちですか、そういう人たちの責任が多いのか。私は、よその国の場合はある程度仕方がないかなという気がするんですけれども、日本の側の企業、特に責任ある大きな企業が研修名目でたくさん入れて、しかも脱法的なことをしておるということであれば、これはゆゆしい事態だと思うんですけれども、その辺は大体どのようにとらえておられるんでしょうか。
  59. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま委員指摘の両面が現実にあると思います。私どもで実地に調査をいたしました場合に、研修という入国目的に合致しない形での活動が行われているという事態が判明した事例があるわけでございますが、こういう状況については、これは受け入れ側の企業の方で十分その点についての認識が徹底していなかったということがありますので、その意味では受け入れ側についての問題というものが確かにありますので、この点については入管当局としても十分関係の企業、組織等に対して研修の本来のあり方というものを十分理解、認識してもらうことが必要であると考えております。  他方、来る外国人の側についてもいろいろな実態がございますが、研修ということを真に求めて来る、これは本来の姿であるわけでございますが、一部に、研修ということの目的が必ずしも明瞭に本人にも自覚がなく、日本就労活動をするということについての期待を持って来るというような外国人の側の事情も確かにあると考えられますので、これも、その意味での入国審査において、今後研修と就労ということを明確に区分するということを外国の側に対しても十分徹底していく必要があろうかと考えております。
  60. 北村哲男

    北村哲男君 それに関連してなんですが、ことしの五月四日付の新聞ですが、法務省が研修に関して入国事前審査基準案をつくると。それを五月じゅうに正式決定した上で全国に通達するという報道がなされておりますが、これはもう実現したんでしょうか。また、その内容は要求をすれば明らかになるものかどうかという点について御質問したいと思います。
  61. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいまの御指摘の研修に関する基準というものを五月の時点において関係各省庁の間で協議をしておりましたことは事実でございますが、その検討を慎重に行いまして、その後、本年の夏に関係省庁の間でそういう基準を作成いたしました。その概要については外部の関係者に対しても明らかにさせていただいた経緯がございます。その基準については、研修生の適格性についての要件、それからもう一つは研修を実施する側についての要件というもの等をその基準の中で定めたという経緯がございます。
  62. 北村哲男

    北村哲男君 わかりました。  しかし、どのような審査基準をつくっても、基準に合致しているかの確認とその後のフォローアップがきちんとできていないと、幾ら立派な基準をつくってもつくりっ放しということになると思うんですけれども、今後これらのことをどのようにやっていくのか。そして、それをやるための法務省の体制、それから関係省庁の協力体制、あるいは自信のほどというか、どのように具体化していくかということについても御意見を伺いたいと思います。
  63. 股野景親

    政府委員股野景親君) 先ほど申し上げました研修生にかかわる入国事前審査基準というものが本年夏、決定されたわけでございます。こういうものを踏まえまして審査を適正に行うということについて関係各省庁間の合意もございますので、これを踏まえて、まず入国審査についてこれを十分に行う。  同時に、既に日本入国している研修目的外国人についての実態調査、これはかねて入管局としては行ってきたところでございます。したがって、そういう実態調査というものは今後も随時これを行う。そして実態がまさにこの基準に合致しているということを確保するように、これは関係省庁側とも十分協力をいたしまして、そしてそういう指導を関係の組織、企業側に対して行っていく、そういう努力を今後も続けていきたいと考えております。
  64. 北村哲男

    北村哲男君 不法就労の問題について、さらにお伺いしたいと思うんですけれども、確かに我が国においては不法就労外国人の問題がかなり増加しておると思いますけれども、それが今、私どもの国民生活にいかなる影響を与えているのかという点について政府基本的な考え方をまず聞きたいと思います。  さらに、一部職域では単純労働に従事する労働者の不足が顕著である、そしてこれに従事しようとする外国人受け入れないとの原則を変更しないままにこの入管法改正しようとするのは片手落ちではないかというふうな意見も聞かれておるわけですけれども、この辺についての基本的な考え方と入管法関係について、総論的な御説明をお願いしたいと思います。
  65. 股野景親

    政府委員股野景親君) まず、不法就労についての一般的な考え方でございますが、最近において不法就労外国人の数がふえておるという事実がございまして、入管当局としては、これはまことに憂慮すべき事態と考えております。不法就労する者については、我が国の労働関係に対する影響ということがまずある上に、今度はそれに従事する外国人の存在が我が国社会に与えるもろもろの影響というものもございますし、地域社会との間でそういうものの存在がまた摩擦の原因になるということも我々として重視をいたしております。  また他方、不法就労であるということを機に労働搾取等の人権侵害の問題も起こる、こういうこともございますので、これらの点を考えますと不法就労には厳しく対処してそういうものを取り締まり、防止する、こういうことが入管当局として基本的に重要であると考えております。  このたびの入管法改正案につきまして、不法就労との関連で申し上げますと、不法就労について一番かかわり合いのあるものがいわゆる単純労働ということでございますが、今度の入管法改正案は専門的な知識あるいは技術、技能を有する外国人についての受け入れを拡大していく、こういう考え方に立っておりますが、単純労働につきましては、これを受け入れないという現行政府の方針に基づいてつくられております。  したがって、単純労働についてはこの改正法案においては現行の政策を堅持する考え方に立っておるものでございますが、それではこの単純労働の問題について今後どう政府として取り組んでいくかという点は、これは非常にこの問題が国内において多岐にわたる議論を呼ぶ性質のものであり、またそれを受け入れることにした場合の日本社会や国民生活に与える影響も大きいということもございますので、そういうことにかんがみて、これは多様な見地から慎重に検討していくべきものと考えておりますので、この入管法改正が成立させていただきました後においても、引き続きそういう観点での多様な見地からの慎重な検討を単純労働者の問題については続けていく、こういうことで臨んでおります。
  66. 北村哲男

    北村哲男君 ただいまのお話、御説明は、憂慮すべき事態であると、あるいは厳しく対処すると、消極的な面、マイナスの面からのとらえ方のようにも思うんですが、そもそも不法就労というふうにひっくるめて、あたかも不法な人間、悪い人間というふうなとらえ方は問題であろうということもあるんですが、今言葉としてやむを得ず使わしてもらっている点もあります。  ところで、実際に働いている人たち立場から見ますと、ひとつ考えてみたいと思うんですが、特に人権問題という点から考えてみたいと思うんですけれども、現在国内には何の資格も持たないまま働く外国人労働者が大体推定で十万人はいるというふうに言われております。で、彼らは資格がないために、無権利状態の中で劣悪な労働条件を強いられて、時には賃金の未払いあるいは労災の不適用とか、あるいは強制売春などさまざまな人権侵害にさらされている事実があります。  しかし、この日本社会で家族を養うためにまじめに必死に働いている外国人外国の労働者に対しては、日本の当局は敵意を持って、まるで侵入者のような目で見るのではなくて、人間としてあるべき権利が保障され、対等な関係が築かれるような社会をつくる必要があるということは、我々の共通の考え方だと思います。しかるに、逆に日本人労働者に対する敵意と差別をあおり、日本社会による外国人労働者の駆り出しを促進して、その結果、多くの外国人労働者をより一層の無権利状態や今以上の人権侵害の状況に追いやろうという考え方が非常に強くあるということを御承知願いたいと思います。  そこで、まず警察庁に、長らくお待たせしておりますけれども、お伺いしたいんですが、つい先ごろ、十一月二十五日付の中日新聞でありますけれども、パキスタン人に対する差別捜査の実態が明らかにされております。これは「警察庁が内部資料で指導 パキスタン人差別捜査 「皮膚病多く汚い 神の名にかけウソつく」」ということを、全国の警察に資料を配付しているということが明らかにされました。  これについて、日本弁護士連合会の高木健一人権擁護委員会委員長も、これこそまさに人種差別に基づく人権侵害であるというふうに指弾しております。また、パキスタンの大使館も問題視しております。  そこで質問したいのは、まずこの新聞報道なるものはそのまま事実として受け取ってよいのかどうかという問題。それから、パキスタンだけではなくて他の外国人についても同様のものがあるのかどうか。もしあれば、それを資料提出していただけるのかどうか。そしてまた、こういうことに対する今後改善の用意があるかどうか、あるいはこのままこういった態度を堅持されていくのか、こういう問題についてお聞きしたいと思います。
  67. 鈴木邦芳

    説明員鈴木邦芳君) 御質問が大変多岐にわたりますが、お答えを申し上げます。  まず、御指摘の資料でありますが、国際捜査研修所におきまして作成をいたしました内部的な参考資料として、御指摘のようなものがございます。その資料の末尾に、ある事件捜査において被疑者が述べたこと及び捜査官が経験したことを参考までに添付をいたしておりますが、その中に報道されたような記述があることは事実であります。ただ、新聞報道にございます「汚い」というような表現はございませんので、この点は誤りであるということで御理解を賜りたいと思います。  この記述は、あくまでも個別の事件捜査の過程で生じましたことを記載をしたものでありまして、一般論を述べたというものではなく、また何らその国の国民を差別する意図によるものではありませんけれども、その部分だけを見ますと誤解を招きかねないという面もございますので、在日パキスタン大使館に対しまして警察からこれらの状況説明をいたしまして御理解を求めたところであります。なお、今後とも誤解を生ずることのないように指導を徹底してまいりたいというふうに考えておるところであります。  それから、他の内部文書でこの種のものがないのかということでありますが、外国の被疑者につきましては、言葉の問題を初め、その国と法律制度が異なることや、その宗教、生活習慣が異なることから特別の配慮が必要であるということで、常に適正な捜査あるいは取り扱いを行うように指導しているところでありまして、幾つかの内部資料はございますけれども、外国人を差別するような内部資料はございません。いずれにいたしましても、記載の方法とか表現が誤解を生じかねないというようなことがあっては問題でございますので、今後とも十分注意をしてまいりたいというふうに思います。  それから、この資料の提出の問題でありますが、ただいま申し上げましたように、内部として捜査官が参考にするという意味で、ただいま申し上げました過去の捜査の経験等から得られたものを記録をしてございますので、内部の資料ということで提出については御了解をいただきたいと思います。  それから、この問題を将来どうするのかという問題でございますが、パキスタン大使館に対して御説明をしたことは先ほど申し上げましたが、文書の表現等について誤解を招く面もございますので、将来この文書につきましては機会を見て訂正をいたしたいというふうに考えておるところであります。
  68. 北村哲男

    北村哲男君 私の立場というか、特に人権を守るために働いておるという弁護士たちの考え方か らすると、これは極めてゆゆしき事態、まさに人権侵害に当たるように思われますので、直ちに早い機会にしかるべき措置をとって、こういうことのないようにしていただきたいと希望します。  さらに次の、今度は法務省の関係なんですが、外国人関係犯罪、治安上の問題がしばしば問題にされております。特にこれは統計上飛躍的に伸びておるということですが、たくさん人が入ってくれば事件数がふえるのは当たり前なんでして、詳しく調べたわけじゃないんですけれども、ともかく事実としてふえていることが指摘されておりますし、特に本年三月七日に、パキスタン人二十数名が同国人の反目するグループを襲って三人を死傷させた事件が非常に大きく問題にされました。しかし、この判決は、私どもの友人が弁護人に立ち、つい最近判決があったんですけれども、裁判の中でも、これは必ずしも彼らだけの責任ではないんだと、日本受け入れ態勢、特に、多くの人たちがもう働くためにやむを得ずやってきたのに対して日本の当局とか警察が何の保護もしない、あるいは労働基準局も保護しない、法務省も敵視しているというふうなところから起こってきた、やむを得ざる犯罪なんだという立場から判決がありますので、ちょっと御紹介しておきたいと思います。  本件犯行が行われた背景についても、すべての責任を被告人ら在留外国人の行動のみに帰着させることに躊躇を感じさせる複雑な事情があるのも事実である。すなわち、日本不法残留、不法就労している外国人労働者の多くは、自分自身が犯罪の被害にあっても、不法残留が発覚して本国に強制送還されることを恐れるあまり、警察に助力を求めることができず、自衛のためにグループを組織し、あるいはこれに属することにより、集団で自己の生命、身体、財産の安全を守ろうとするようになり、その結果としてグループ間の抗争が行われるようになったものであって、本件事件も右抗争の一環として、そしてその必然的な成り行きとして発生したものである。   もとより不法残留、不法就労の本来的責任が被告人ら外団人労働者自身にあることは当然であるが、反面外国人労働者我が国への流入が今や不可避的な情勢となっている現実に直面して、我が国の施策がこの急激な流入に対して十分な対応ができなかったことが、本件事件の遠因となったことは否定できない。しかも、外国人犯罪については、捜査の困難性から犯罪の予防、検挙に十分な成果が挙がっていないのが実情であって、このため被告人ら被害を受けた在留外国人労働者の間に我が国捜査当局への不信感が増大し、それが本件のような犯罪を助長した面があることもまた看過できないところである。 というふうに判示しております。  裁判所立場からもこのようなことを指摘されておりますので、在留外国人に対する対処は今後大きく整備されていかなくてはならない、拡充されていかなくてはならないと思います。  ところで、今のは私の意見でありましたけれども、質問ですが、不法就労外国人を摘発した場合に、賃金未払いとか労災などがある場合に入国管理局ではどのような対応をしているかという点について御質問をしたいと思います。
  69. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 今委員指摘のような、賃金不払いとかあるいはその他、当該不法就労外国人として我が方が摘発した外国人につきまして人権侵害のような事実等がございました場合には、退去強制手続中におきまして関係当局へ情報を提供し、あるいは直接雇い主等から賃金の支払いを受けるべく、ある程度のあっせん行為をやることによりまして人権の侵害が修復されるようにといいますか、人権が守られるような方向で仕事を進めさせていただいておるところであります。
  70. 北村哲男

    北村哲男君 不法就労外国人に対する人権侵害とか賃金未払いということは今も言われておるんですけれども、法務省及び労働省では具体的にどのような方策を講じているか。特に、相談に来た者を入管に通報することの有無と法的根拠ということについて一言、後でまた続きますけれども御説明いただきたいと思います。
  71. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) まず私からお答えいたします。  法務省の人権擁護機関の方に外国人から人権に関する相談が参りまして、相談を受けておる過程で不法残留あるいは不法就労者であるということがわかる場合がございますが、しかしそういう場合でも、人権擁護という立場から相談を受けるという関係におきましては、人権擁護行政を優先させるべきであるという考え方に立ちまして、いわゆる入管法にはそういう状態を知った場合には通報しなければならないという規定がございますけれども、それよりも人権擁護行政の立場からの守秘義務の方が優先すべきものであるという解釈をいたしまして、この点につきましては入国管理局とも協議の上了解を得まして、通報はしないという取り扱いをしておるところでございます。
  72. 北村哲男

    北村哲男君 ただいま人権擁護局のお話が出ましたが、人権擁護局では人権相談所を開いたということを聞いております。今、全国でどのくらい開設してあるのかという点についてお答え願いたいと思います。
  73. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) 各地の法務局あるいはその支局等の法務省の出先機関におきましては常時人権相談の窓口は開いておるわけでございまして、だれからの相談も受けておるわけでございますが、特にその中でも、外国人のための特設人権相談という窓口を掲げまして相談業務を開始したというのは、昨年八月に東京法務局で週二回開設したのが最初でございます。  これは、最近我が国が非常に国際化が進展いたしまして、外国人の方の居住者あるいは在留者が急激にふえてきたという背景を踏まえまして、また昨年はちょうど世界人権宣言採択四十周年という記念の年でありましたので、それを記念する趣旨も込めまして東京法務局で開設したのが最初でございます。その後幾つかの局で、例えば岐阜とか広島とかあるいは福島といったような法務局、地方法務局におきまして、ある一定期間あるいはある特定の日を定めて外国人のための人権相談という窓口を開いてきておりまして、あわせてこれまでにそういう行事を行った局が六局ございます。  なお、来週は恒例の人権週間でございますので、その期間中の行事として、外国人のための人権相談窓口を設けようと計画している局が大阪とか福岡など四局ございます。  以上のような状況でございます。
  74. 北村哲男

    北村哲男君 その効果のほどといいますか、どのような効果が出ておるか、あるいは実際に多くの人が来ておられるかどうかということはどうですか。
  75. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) 東京法務局で週二回指定して開設いたしまして継続しております窓口に関しましては、大変効果があったと認識しております。  その当該の指定された日に数件ずつの相談がございまして、相談の内容も非常に多岐にわたっております。例えば、労働条件が自分が最初約束したときと違うというような訴えとかこういうのなんかは、言葉の不便から最初の段階で雇用側と雇われる側との意思の疎通が十分でなかったような事案も多々ございますが、そのほか、いわゆる一般の法律相談的な、婚姻だとか離婚の関係にあるようなもの、あるいは夫婦仲が悪くなったがどうしたらいいかというようなことで、それは家庭裁判所へ行ってくださいというような相談など非常に多岐にわたっておりまして、大変効果があったと思います。  ただし、他の局、先ほど申しました既に試みました局、他の局におきましては必ずしも有効であったとは言いにくいようなところもございます。これは、やはりその地域で居住あるいは滞在しておられる外国人の方の数なども影響しておるかと思いますが、そういう意味で、こういう窓口を開きました場合の効果につきましては、地域性 がかなりあるように受けとめております。
  76. 北村哲男

    北村哲男君 この相談については、私ども弁護士会なんかでやっておりますと大変たくさん見えるんです。あるいは民間のボランティアの場合や駆け込み寺と言われるようなところは大変多く見えるんですが、どうもお役所がやられると信用されないのかどうか、余り見えないと。それは私が先ほどから言っているように、大体もう悪者のような扱いをされるから、あるいは行ってしまうとどこかへ通報されるんじゃないかということがあるから本来の人権擁護局のようなところが信用されないようなことになってしまうんじゃないかと思うんです。  そこで大臣にお伺いしたいんですけれども、特に法務省というのは、入管局はもう排除、人権擁護局はどうぞというふうな矛盾した省庁であることも当然なんですけれども、この人権相談についての窓口をさらに拡充することが日本に来ておられる外国人たちに対するお役所の信用回復という面では大事だと思うんですが、今後その点についてはどのように発展をされるのか、お伺いをしたいと存じます。
  77. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) お答えいたします。  入管行政につきましては、我が国出入国する人たちについて公正な管理を図りますために法務当局としても非常に努力をいたしているところでございます。しかし、不法入国をし、または在留する外国人でありましても、人権が侵害されるようなことがあります場合には、人権を尊重するために法務省としては人権擁護行政を所管する立場からこれは厳正にやらなければならないという職責があることは申すまでもございません。したがって、ただいま御指摘のございましたような問題につきましては、法務省といたしましては今後も十分留意をしながら運用をするように努力をいたさなければならないと思っております。
  78. 北村哲男

    北村哲男君 特に人権擁護という点については、今後日本が国際社会において認知されるという意味でも大変大事なことであるし、また、日本で被害をこうむって帰ったとか、日本はひどいところだということで、せっかく来た人たちを追い出すようなことにならないように厚く保護をされることを望みたいと思います。  次に、労働省に対してのお伺いなんですけれども、この不法就労者の問題については、労働省の対応が悪いというか、労働省の対応のまずさによって多くの人権侵害が起こされており、働く者の権利が失われている点が多くあると思います。  私どもの大きな考えでは、労働省の立場というのは労働者の保護を一つの大きな目的としている省庁であろうと思います。労働省には、その所管の機関を通じて労働条件あるいは賃金支払いの確保とか安全、健康の確保、労働災害に対する保護あるいは失業に対する補償、職業紹介などの労働者保護、法制上労働者に与えられた保護を尽くす義務があるわけです。それは国籍を問わず、日本国内で使用されているすべての労働者が対象とされます。当然、不法と言われているいわゆる資格外の労働者たちもその対象になっておるわけです。外国人労働者入管法の違反で不法就労とみなされる場合であっても、今言ったように当然その適用対象であります。多くの労働者保護法の適用が排除されるわけではないということは当然のことであります。  ところが、実際には十万人もいると言われている多くの外国人労働者の中では、例えばパスポートあるいはチケットを取り上げられたり、暴行、監禁による強制労働が行われている。あるいは賃金未払い、あるいは芸者の前金のような形で借金を課せられたり、中間搾取をされたりということが行われています。そしてさらに、使用者側においては労働者名簿とか賃金台帳の整備は全くなされていないという点とか、労働保険あるいは社会保険に入っていないという事態、もちろん最低賃金法違反の事案とか労働安全衛生法違反の事例とか、当然職安法違反の事例もたくさんあります。さらに最近できた労働者派遣法違反の事例も多くあるわけです。  そして、これらの法違反に対して労働者保護行政機関の摘発とか取り締まり、監督指導はほとんどなされていないのではないかというふうに思われるような感じがするわけです。労働省が一九八八年十二月二十六日付で発表した「外国人労働者就労実態について」という発表によると、地方労働基準局は、外国人労働者について悪質な法違反があり、多数の外国人労働者就労している場合には労働省に報告を行うとされているけれども、本年四月以降十二月までの間に地方労働基準局が労働省に報告した件数はわずか五十九件である。他方、同報告によれば、同年十月十六日から十一月十五日までの間の一カ月間、全国の労働基準監督署が四十八事業場、外国人労働者二百二名について監督を行った際に、短期滞在の不法就労外国人労働者は百十一名、約五五%である。その中で労働保護法令違反の例だけでも三十六件もあったと言われています。この例から見ても、外国人労働者からの申告あるいは労働者保護行政機関の摘発あるいは取り締まり、監督指導がどれだけ実効的になされているかということは極めて疑問であろうと思います。  外国人労働者に対して、このように実効のある労働者保護行政が実施されていない理由として、私どもは次のように考えている。  労働基準監督署あるいは安定所の人員不足による監督体制の不備というのはもちろん指摘されています。さらに次に入管局への通報。法違反の被害を受ける外国人労働者の大半が入管法上、不法就労状態であって、行政機関への被害申告は直ちに入管局への通報につながるという状況がある。このため、被害を申告しても外国人本人が強制送還されれば法違反の立件が困難になるし、外国人自身が強制送還を恐れて被害を申告しなくなるという実態があるわけです。外国人労働者受け入れについては、送り出し国での業者が介在することが多くて、国際協力なしには取り締まり、立件が困難であることも当然であります。  そのような事情がありますが、これについて監督体制をより充実、強化して外国人労働者に対する保護の実績を上げることは可能であろうと思うのですけれども、しかし、その労働省の姿勢自体が事態を悪化させているのじゃないかという意見があります。  特に、一九八八年一月二十六日の基発五十号、これは通達の番号ですけれども、あるいは職発第三十一号、これは既に衆議院の中でも詳しく御議論されているところでありますけれども、労働省は外国人労働者に対する強制労働あるいは中間搾取などの重大悪質な法違反に対しては厳正に対処すると述べている。しかし他方、同通達は、これら違反事案について資格外活動あるいは不法残留等、入管法違反に当たると思われる事案が認められた場合には入管局にその旨の情報を提供することというふうに述べ、出入国管理局への情報提供を命じているわけです。これは法違反があった場合だけではなくて、業務遂行に当たって不法就労あるいは不法残留等の入管法違反を承知した場合にも事業主などへの注意喚起、指導を行い、出入国管理局への通報を行うべきだとしているわけです。さらに、外国人不法就労を防止する観点から、事業主や事業主団体等の関係団体に対して必要に応じて資格外活動等の入国管理法違反に当たる外国人の雇い入れまたはこれに係る需給調整等を行わないよう協力を要請することを求めているわけです。  そういうふうな経過があるわけですけれども、このような対応が外国人労働者の人権を救済できない態勢に追いやっているように思えるわけですけれども、労働省のお考えを聞きたいと存じます。
  79. 氣賀澤克己

    説明員氣賀澤克己君) お答えいたします。  私どもの労働行政の中におきまして、特に労働基準法等の労働基準関係法令につきましては、先生御指摘のように、日本の国内の事業所において使用されます者でありましたら、不法就労者につきましても適用されるということになっているわけでございます。私ども、外国人労働者の増加に伴いましてこういう方々の労働条件が適正に確保 されているかどうかという点につきまして強い関心を持っておりまして、今まで必要な対応を行ってきたところでございます。特に労働安全衛生法への違反、安全衛生法上の問題、あるいは賃金の支払い、あるいは解雇というような問題について適正に労働条件が確保されているかどうかという点について関心を持っておりまして、申告、相談があった場合への対応あるいは事業主に対する監督指導というような機会を通じまして努力をしてきているところでございます。  それから、御指摘のございました外国人労働者不法就労についての対応の仕方につきましては、御指摘ございましたように、昨年の一月二十六日付の私どもの通達によりまして労働行政におきます対応の仕方について指示をいたしておりますけれども、私どもといたしましては、外国人就労に関して強制労働とか中間搾取というような重大悪質な労働関係法令の違反があった場合につきましては、そういう事態を早期に解消していく心要があるという観点で、その中で不法就労が認められた場合には入管当局の方にも情報提供をしていくという考え方を持っているところでございます。また、業務遂行の過程におきましてやはり不法就労を把握した場合に、本来の行政目的に十分留意をしながら必要に応じて情報提供をしていくというような考え方をとっているところでございます。  そういう考え方でございますけれども、労働基準行政の中で特に外国人労働者の方々、これは不法就労者を含めてでございますが、申告、相談等に労働基準監督機関にお見えになる場合があるわけでございます。そういう過程におきまして入管法違反というような事案を仮に把握した場合におきまして、これを入管当局の方に情報提供をするということをいたしますと、事実上不法就労者からの申告等の道を閉ざしてしまう、それは労働基準行政の本来の目的を損なうことにもなるんではないかというふうに考えておりまして、従来からこういう場合につきましては原則として情報提供はしない、それを通じましてこれらの方々の労働条件の保護を図っていこうというふうに考えて対処してきているところでございます。
  80. 北村哲男

    北村哲男君 労働省は、先ほどから出ております基発五十号、昨年の一月二十六日の通達では、必要に応じて入管局に通報せよということを言っておられますね。さらに七月二十五日付の労働省職安局長の通達、すなわち職発三百八十九号で同じように通報せよと言っておられます。しかし、ことしの十月三十一日、労働省の労働基準監督課長から各都道府県の基準局長あての基発四十一号通達、「入管法不法就労である外国人労働者の入管当局への情報提供について」という通達があるんですけれども、その中では、情報提供については一部において疑義が生じている面があるから原則として入管当局に通報は行わないことにしているということで、最近になって変更しておられますけれども、これは労働省の態度の変更と見てよろしいんでしょうか、あるいはそれが変更となったのであれば何ゆえかということについて簡単に御説明願いたいと思います。
  81. 氣賀澤克己

    説明員氣賀澤克己君) 先ほどもお答え申し上げましたように、私ども労働行政、特に労働基準監督行政といたしましては、入管当局の方に情報提供をする場合といたしましては、重大悪質な法令違反がある場合あるいは行政目的に照らして必要性がある場合というふうに考えているわけでございます。  御指摘の申告、相談等の場合には、先ほども申し上げましたように、これを入管当局に情報提供するということになりますと、事実上申告等の道を閉ざしてしまう。監督署に申告、相談にお見えになれないという事態が生じまして、労働者保護にもとるということにもなりかねませんので、こういう場合には従来から情報提供は行わないという方針をもって対応してきたところでございます。  御指摘の、この十一月から私ども、主要な都道府県労働基準局に外国人労働者相談コーナーというものを設置をいたしましたけれども、その機会に、そのあたりの取り扱いについて内部的にもう少し明確にする必要があるということで、今の申告、相談の場合の取り扱いについて改めて指示をいたしておりますけれども、これは私ども従来の考え方を特に変更したということではございませんで、より明確にいたしたというふうに考えているところでございます。
  82. 北村哲男

    北村哲男君 疑義が生じたというふうに出ていますね。この疑義というのはどういうことなんですか。どういう疑義が生じたんですか。簡単で結構ですから。
  83. 氣賀澤克己

    説明員氣賀澤克己君) 私ども、基本的には昨年の一月二十六日付の通達で全国で対応いたしているわけですけれども、その書き方が必ずしも明確になっていないということがございまして、実際の実務処理の中で疑義が生じているところもございましたものですから、よりはっきりさせたいということで指示をいたしたところでございます。
  84. 北村哲男

    北村哲男君 要するに、今までの通達だと徹底的に取り締まれというふうに読めるんだと。それがまずいから変えられたということに理解してよろしいんですか。
  85. 氣賀澤克己

    説明員氣賀澤克己君) 昨年の一月二十六日の通達の中で、「本来の行政目的に十分留意しつつ、」必要に応じて情報提供を行うというふうに書いてあるわけですけれども、本来の行政目的に留意する、その留意の仕方についての理解が私どもの全機関に十分徹底していない面もございましたものですから、改めて指示をいたしたところでございます。
  86. 北村哲男

    北村哲男君 さて、次の質問に移らしてもらいます。  いろいろと論点は、特に処罰等肝心な論点がまだ残っておるんですけれども、一点、改正案の附則十一項の問題について確かめておきたいと思います。  まず、この附則十一項をつくった趣旨目的について御説明ください。
  87. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 附則十一項でございますが、この条文をごらんいただきますとおわかりのとおり、不法就労者を仮に雇っている人が現にあるといたしますと、その当該不法就労者が、これは法改正が成立したと仮定いたしましてお話し申し上げますが、法改正が成立するより前から日本在留している方であるとすれば、そして、かつ引き続いて日本在留される方であるとすれば、それを雇っていることをもって今度新設いたします雇用主等の処罰規定適用して罰することはしませんという趣旨のことを書いたわけでございます。  その趣旨は、御承知のように、今回の法改正は、主として新しくこれから日本にやってこられる外国人について、例えば在留資格の範囲を広げることによって我が国に大いに受け入れるべき人たちの幅といいますか、量といいますか、質といいますか、そういうものを拡充しつつ、かつ逆に、現に推計計算で約十万人ぐらいおられると思われる不法就労者がこれ以上ふえることによって、委員先ほど来御指摘のような人権侵害ケースがもっとふえたり、あるいはいろんな日本社会への弊害がさらに大きくなってくるおそれがございますので、新規に不法就労者を引っ張り込むような行為について、これを処罰することによって不法就労者をこれ以上ふやさないようにという発想から罰則を設けた。  そういうふうな観点から言いますと、さきに言いましたように、附則十一項で書きましたようなケースは、殊さらこれを新法の罰則で処罰するというようなことをせずに、やはり当該外国人あるいは雇い主の人たちの既得権益というとおかしゅうございますが、生活上の安定といいますか、そういうものを図るために殊さらこれを罰しないことにするとここに書いたわけでございます。
  88. 北村哲男

    北村哲男君 この条項の解釈についてですけれども、これは罰しないという、すなわち不処罰とするという規定になっていますけれども、これは 犯罪そのものは成立するという解釈も成り立つような気がするんですけれども、すなわち捜査権の発動には支障がないとされかねないので、その点についての解釈の限定をお願いしたいと思います。
  89. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 委員指摘の点でございますが、罰しないとしております趣旨は、例えば仮に起訴いたしました場合には無罪という判決主文になるという趣旨でございまして、平たく申し上げますと犯罪構成要件に該当しないという理解をしております。
  90. 北村哲男

    北村哲男君 それからこの規定、附則十一項によりますと、これは確かに雇い主の問題だけでございますね。そうすると、就労者についてはどういうふうになるんでしょうか。
  91. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 委員御承知のとおり、資格外活動の形あるいはオーバーステイの形、不法残留と日本語で言っておりますが、そういった形で不法就労されている外国人につきましては、現行法のもとでも退去強制あるいは刑罰の対象になってございますので、法の改正の前後において取り扱いに区別はないと御理解いただきたいと思います。
  92. 北村哲男

    北村哲男君 この附則十一項の関係ですけれども、対象になる人たちのほとんどは在日韓国あるいは朝鮮人の人たちであって、これらの人たちはかつて密入国者であったりして、パスポートとか公の証明書を持っていない人たちが少なくないわけです。  これらの人たちは、この附則十一項によって確かに法文上は除外されたにしても、そもそも改正法施行前からいたことを証明することが容易でなくて、事実上改正法施行前から在留しているか否かは不明として就職差別をされる恐れがあるという危惧が言われておるわけです。そうなると、改正法施行前から在留している事実上の不法労働者に対して在留資格を合法化して、資格証明書の付与を受けられるような道を開かない限り、改正前の人たちを差別することになってしまう。  その意味では、附則十一項は大変注意深くつくられた規定であるとは思いますけれども、なお問題があると思われるわけです。その点についての御意見と、さらにこの条項は非常にわかりやすく書いたおつもりでしょうけれども、見てもよくわからないという点もあるので、どういうふうな方法でこれを周知徹底されるのかという点についてお伺いしたいと思います。
  93. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) この附則十一項を設けました趣旨は、委員も十分御理解いただいたようにお見受けいたしますが、特に私どもが心配いたしましたのは、既に日本におられる在日韓国・朝鮮人の方、これは密入国者も含めてでございますが、そういった方々にこの罰則の新設によって不必要なダメージを与えたくないということもこの附則十一項をつくった大きな理由の一つになっておるわけでございます。  したがいまして、法改正が仮に幸いにも成立させていただきました場合には、法施行までの間約六カ月ぐらいをまずは想定いたしておりますが、公布後約六カ月の間にいろいろな立場の方々に対して、この法附則十一項の精神とかあるいは今度の改正法目的というものを広報活動を通じ、あるいはいろいろな行政指導の場を通じまして周知徹底を図っていきたい。これは雇用主だけじゃございませんで、一般国民の方にもよく知ってもらうような方向で周知徹底を図りたいと思っております。  それからもう一つは、今委員が御指摘なさいました、既に入っている不法入国者も合法化しないとその救済の徹底を図れないという御指摘でございますが、入管法の根幹をなしています不法入国とかあるいは密入国といいますが、それについては断じて許してはならぬという基本方針がございますために、不法入国で長年日本におられて実生活を日本でやっておられる方につきましては、別途、例えばある程度の期間を経過された方について、実務上、特別在留許可の形で合法化していっている方々が相当数おられることは御承知と思います。そういった方向でのある程度の救済ということを考えていくのが至当かと考えております。
  94. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時十五分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時十六分休憩      ─────・─────    午後一時十七分開会
  95. 黒柳明

    委員長黒柳明君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  96. 白浜一良

    白浜一良君 まず初めに、入管法改正の法案が現在審議されているわけでございますが、この入管法改正に至る経過を伺いたいと思います。  特に近年、外国人居住者に関する諸問題がさまざまな形で出ているわけでございますが、これを改正される段階でこれらの問題をどのようにとらえてこられたのか、伺いたいと思います。
  97. 股野景親

    政府委員股野景親君) 今度の入管法改正に当たりまして、法務省当局としまして臨んでおりますところの基本的な考え方というものは、以下のとおりでございます。  まず第一点でございますが、これは最近における外国人入国者の増加あるいは入国在留目的多様化、こういう状況に的確に対応する、そのための入国及び在留管理制度整備する、こういうことが第一点でございます。  それから第二点といたしまして、我が国経済社会の活性化あるいは国際化、さらに我が国の国際協力あるいは諸国との相互理解の促進、こういうことなどに資するために一定の要件を備えた外国人受け入れ範囲の拡大、さらにその受け入れの円滑化を図るということでございます。  第三の点は、不法就労外国人の増加という問題についてでございますが、こういう不法就労外国人の増加ということが出入国管理制度の根幹を乱すというものであるのみならず、労働面への影響、あるいは犯罪とか住民との摩擦等の社会問題、さらには人権問題というようなことをもたらすことになりますので、不法就労問題の解決に向けて法改正というものを含めまして所要の措置をとっていく、こういう考え方でございます。  第四点は、いわゆる単純労働者受け入れの可否の問題についてでございますが、この問題は労働力の需給調整という面への影響がありますほかに、我が国の産業全般に与える影響あるいは国民生活へのさまざまな影響というものがありますので、これらについて多様な角度から慎重に検討をなすべきものと考えておりますので、この法改正につきましては当面は単純労働者受け入れないとする現在の政府の方針を維持する、こういう立場に立っております。  以上のような四つの点を基本に踏まえまして今度の法改正案を作成し御審議をお願いしておるところでございます。
  98. 白浜一良

    白浜一良君 御趣旨はよくわかりました。  それで、現在この入国管理関係しましてさまざまな問題が起こっているわけでございますが、今回の法改正でそれらがすべて解決されるのか、どういった問題が残るとお考えになっているのか、この点をお伺いしたいと思います。
  99. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま四つの点を基本に申し上げましたわけでございますが、その中で一つ取り上げました単純労働者の問題につきましては、当面これを受け入れないとする現在の政府の方針を踏まえまして、この入管法改正案の中でも単純労働者受け入れのための在留資格というものは設けておりません。この問題については先ほども申し上げましたように、国内各方面でいろいろ御意見もあるということを踏まえまして、今後さらに関係省庁とも密接な連絡をとりながら慎重に検討していく、こういう立場で臨んでおります。  また、このいわゆる単純労働者の問題のほかに も、入管行政に関連することとして留学生あるいは研修生の受け入れの問題等、ほかの省庁に関連する各種の事項がございますので、関係する省庁とも今後さらに密接な連携、協力ということを行いまして、これらに関連する問題についても適正な対処ができるよう取り計らっていくという考えで臨んでおります。
  100. 白浜一良

    白浜一良君 それでは、文部省の方に来ていただいていると思いますので若干お伺いいたしますが、特に留学生十万人計画が打ち出されてから、中曽根総理の当時でございますが、在日外国人と申しますか、就学生を含めまして非常に急増したわけでございますが、その段階で国内に受け入れ体制が本当にあったのか、現状を見ましたらすべて後追い行政じゃないか、こう思わざるを得ない面もあると思いますが、この点御見解を伺いたいと思います。
  101. 中西釦治

    説明員中西釦治君) お尋ねの二十一世紀初頭までに十万人の留学生を受け入れるという計画でございますが、これは五十八年、五十九年の二度にわたりまして各界の有識者の方にお集まりいただき、その提言をもとに現在施策を進めているところでございます。この提言が出された当時、我が国においては留学生の数というのはわずかに一万人程度でございまして、その提言におきましては、この十万人を受け入れるという実現のためには留学生の学習上、生活上、そして日本に来る前、あるいは帰った後、これらの諸方面にわたりまして種々の施策の充実が必要であるということで、その具体的な施策の展開についても提言をいただいているところでございます。  私どもとしては、これらの提言に基づきまして種々の面にわたる施策を計画的に充実し、二十一世紀の初頭までには十万人を受け入れるという体制をつくるということで現在施策を進めております。
  102. 白浜一良

    白浜一良君 それが機になりまして、日本語学校を初めさまざまなトラブルが起こっているわけでございますが、文部省といたしましても二十一世紀への留学生政策懇談会とか留学生問題調査・研究協力者会議、また日本語教育施設の運営に関する基準、さまざまな対応をされていると伺っておりますが、現在この入管法改正審議されておりまして、多分改正されると思いますが、その段階でさらに具体的な対策、対応を考えていらっしゃるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  103. 中西釦治

    説明員中西釦治君) 今回の入管法改正法案の中には在留資格整備でございますとか、あるいは審査基準明確化、公表という形で、今まで来ております留学生あるいは就学生にかかわる重要な問題も含んでおります。このような改正が行われることにより、私どもとしては留学生、就学生が本来の目的を達成するような形で円滑に入国できるのではないかという期待を持っております。  私どもとしては、これらの留学生が入国した場合におきまして、その滞在中の生活面、学習面の施策の充実ということを中心に、日本に来た留学生が所期の目的を達成し勉学の成果を上げて帰国できるような施策を充実したい、こういうように考えております。
  104. 白浜一良

    白浜一良君 非常に重要な問題でございますので、前向きに具体的に対応をよろしくお願い申し上げたいと思います。  それで、二十一世紀十万人の計画でございますが、全体像といたしまして大学院生はこのぐらい、学部生はこのぐらい、専門学校生はこのぐらいという、そういうめどをお持ちでいらっしゃるのかどうか。また、その段階で施設の問題や学生のいわゆる厚生面の問題など、さまざまあるわけでございますが、その点をどのようにお考えになっているかお伺いしたいと思います。  また、十万人体制というのは今後変わるのかどうか、こういうことも含めてお伺いしたいと思います。
  105. 中西釦治

    説明員中西釦治君) 有識者にお集まりいただいて開催いたしました留学生問題調査・研究協力者会議におきましては、次のような提言をいたしております。  それは西歴二〇〇〇年でございますけれども、そこにおける在学段階別の留学生については大学院レベルについては三万人、学部レベルを六万人、そして高等専門学校あるいは専修学校というのがございますけれども、これを一万人という形に想定しております。これはどういう形でそういうふうなことをしたかということでございますが、大体アメリカ、イギリスなどの先進国における留学生の状況を見ますとこのような形になっておりますので、そういうことを考えているということと、あと高等専門学校、専修学校につきましては、これは海外にはなかなかない制度でございますが、現在海外の諸国からのこれらの学校に対する要望はかなり高まっているということもございまして、全体の十万人の中を先ほど申し上げましたように三万人、六万人、一万人という形で想定いたしております。  それから、十万人計画の実施状況でございますけれども、これは先ほど申し上げましたように、一番大きな問題といたしましては、生活上におきましてはやはり宿舎の問題であるとか、それから私費留学生の中におきましては学習を行っていくために最低限必要な学習奨励費でありますとかあるいは授業料の減免制度でございますとか、こういうような制度がございますので、これらの制度を充実することによってぜひ十万人体制を達成したいと思っております。  なお、見直しの考えはあるかということでございますが、二〇〇〇年までに達成するということで、まだ始まって間もないものでございますから現在はその達成に向けて努力をしているというところでございます。
  106. 白浜一良

    白浜一良君 そこで法務大臣にお伺いしたいわけでございますが、一つは、具体的な最近の在日外国人のさまざまな諸問題というのは、結局この十万人計画が発表された、中曽根総理の当時でございますが、これが非常な引き金になって起こっているという事実、私はそのように思うわけでございますが、そのように思われるかどうかということが一つ。  もう一つは、そういう大きな構想を発表される段階で各省庁の連携がもっととれておりまして、受け入れ体制がしっかりできておれば具体的な現在のさまざまな問題は起こらなかったのではないか、そういうふうに思うわけでございますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  107. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) お答えいたします。  ただいまの第一の中曽根総理の方針、それとの影響、それはもちろんあったとは思いますけれども、日本の国際的環境の変化というものが留学生問題あるいは就学生問題に非常な大きな影響があったというふうに私は考えております。  それから、就学生の適正な受け入れを行うために、法務省として就学を希望する外国人入国審査について十分注意を払いますとともに、外国人受け入れる教育施設の適格性というものを確保するために文部省ともよく協力いたしまして、外国人の就学生を受け入れる教育機関、日本語学校ですね、そういうものについて日本語教育振興協会による審査が適切に行われますよう指導していかなければならないと思っております。  今後とも、各省庁と緊密な連絡を図りながら対応いたしまして、遺漏なきを期するように努力をいたす考えでございます。
  108. 白浜一良

    白浜一良君 実際、就学生の問題に関して言いましたら、マスコミ等でも大きく報道されましたけれども、物すごい希望が来て、当初はビザを上海等でも交付されたわけでございますが、余り大きな問題になってビザを停止したという、私らから見ていても非常に後手を踏んでいるという現実が本当にあるわけでございます。国際化時代と言われるほどに、今後とも各省庁連携をとっていただいて、そういう国際化時代の日本にふさわしい体制をどうかよろしくお願い申し上げたいと思います。  それで、法案審議でございますが、非常に具体 的な問題で申しわけないんですけれども、私は大阪選出でございまして、大阪で非常に大きな問題が起こっております。その件に関しまして、法案審議の最中で申しわけございませんが、少し具体的にお伺いをしたいと思います。  既に法務省でも御存じだと思いますが、ある民間人、大手広告代理店のディレクターでございますが、その方が個人の裁量で中国の政府関係機関と連携をとられて、大量の中国人労働者、まあ単純労働者と言ってもいいと思いますが、その受け入れ計画が本当にもう具体的なところまで進んでいた、そういう事実があるわけでございまして、既にお聞き及びと思います。  これが毎日新聞の報道で明らかになったわけでございますが、私が伺っている範囲でも法務省また大阪入管で懸命な処置をされまして、これはもう本当に水際でとまったわけでございますが、もしこれが進んでいたら、本当に何の悪気もない、意図もない中国の方が日本に来て嫌な思いをされたり、またさまざまな問題を引き起こしたであろうということに実際なるわけでございまして、非常に大きな問題でございますので、この事実をどのようにとらえていらっしゃるか。外務省の方にも来ていただいておりますし、労働省の方にも来ていただいておりますが、それぞれの立場から御見解を伺いたいし、また法務省の方に関しましてはこの経過も含めまして少し御説明をいただきたいと思います。
  109. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま委員指摘の報道されました事柄と申しますのは、大手の広告代理店の職員が仲介をしまして、研修生の名目で中国人を労働させるという目的入国する一つの枠組みをつくるという計画があったとされている出来事でございます。  法務省の大阪入国管理局におきまして、報道関係者の側からこういう動きがあるということについての通報が本年の十月にございました。その際に、研修生の入国に関する法務省当局の方針というものについての問い合わせもあわせて受けたわけでございますので、大阪入国管理局におきまして研修生の取り扱いに関する一般的な説明をその際報道関係者側に行った経緯がございます。  その後、この報道されました広告代理店のディレクターが判明をいたしましたので、大阪入国管理局としてこのディレクターの方と直接話をし、その事情を聴取したということがございました。その際に、あわせて、実質的な労働者を研修生として申請を行うという場合には、そういう申請に対する許可はしない、こういう当局の方針を伝えたという経緯がございます。  これは、このディレクター側の説明によりますと、そのような研修生の受け入れ計画についてディレクター側の方に一つの思い込みがあって、そのようなことが可能であるというふうに考えたと思われる節もございますが、さようなことは法の規定のもとでは可能ではないということを明確にいたし、その内容をこの関係者に明らかにしたということでございます。これに基づきましてその後、このディレクターの方からの当局に対する説明では、この計画を進めるということについては断念をしておるというふうに聞いております。  基本的に、先ほど来の御審議の中でもございましたように、当局としては研修と就労ということは明確に区分するという扱いをいたしております。したがって、あくまで研修生としての実体を有する者に限って入国を認める、こういうことにいたしておりますので、今後ともかような政府の方針、そしてまたそういう法規の体制というものを関係者側にも十分周知徹底することに努めてまいるという立場で臨んでおります。
  110. 武藤正敏

    説明員(武藤正敏君) お答え申し上げます。  外務省といたしましても、我が国が研修生として入国を認めるに当たりましては研修成果が期待できるしっかりした内容の研修となっていることが重要と考えておりますし、これによりまして開発途上国の人づくりに貢献すべきものと考えております。したがいまして、しっかりした内容の研修生を受け入れることは好ましいことでございますが、単なる労働者を研修の名目で入国させることは適当ではないと考えております。  さらに、研修名目で入国させて低賃金労働とかあるいは悪い条件下での労働にのみ従事させるということは、外国人本人の期待に背く結果ともなりかねませんし、また国際的な非難を受ける結果ともなりかねないのではないか、こういった問題もあるのではないかと考えております。
  111. 吉免光顕

    説明員吉免光顕君) 労働省の考え方ですけれども、研修生につきましては具体的な入国審査等は外務省とか法務省でおやりになっておられまして、私どもの方には研修期間が一年を超える者、そういった者等についてだけ協議がございますので、研修の個々の事案について、その具体的な全容を知ることは困難でございます。  ただ、私どもの考え方としまして、研修について先ほど来お話がございますように、就労まがいといいますか、実質的に労働させるということの指摘がたくさんございますし、研修という在留資格をそういうことで使うということでございましたらこれは問題であるというふうに考えておりまして、労働省自体はそういった誤解等が生じないようにむしろそういう関係者あるいは事業主によく理解をしていただくことが大事だというふうに考えておりますので、そういう指導を集中的にやっていくなど対応していきたいというふうに思っております。  研修自体は、適正に行われる限り、アジア諸国等に対して技術移転を生じさせるという意味で大事でございますので、そういう意味合いから適正な研修の確保という面では私どもも法務省等関係省庁と十分に連絡をとってまいりたいというふうに思っております。
  112. 白浜一良

    白浜一良君 そういう一般論はもういいわけでございまして、私は極めて具体的な話をしているわけでございますが、労働省の方も含めまして御存じかどうか知りませんが、この大阪で起きた研修名目の中国からの労働者受け入れという問題は、非常に具体的に進んでおりまして、こういう意向書というものが発行されておりまして、この意向書によりまして大阪の個々の会社と具体的に話が進んでいたわけです。こういう実態を知っていただかないといかぬと思うんですね。私これちょっと言いませんけれども、もう具体的な会社が中国人労働者をこのディレクターを通して受け入れますという、契約書まではいってないんですけれども、そのときは一カ月十万円以上支給するとか非常に細かな規定も含めておりまして、この内容は要するに研修に当たらない、実際もう就労だということなんですけれども、しかし研修という名目でここまで具体的に話が進んでいるという事実なんです、これは。  そのことを私伺いたいわけでございまして、その前提といたしまして、今回のこの話は建設業界を初めさまざまな労働需要が日本にある。一方、出したいという中国側の意向もあるでしょうし、そういう面で将来必ず日本政府はこの単純労働者の問題も含めて門戸を開放する可能性が強いんだ、こういう前提でこの話が非常に具体的に進んでいたわけでございます。そういうことで中国側も動いたと思うわけでございますし、日本の企業も動いたと思うわけでございますが、実際にそのような見通し、これは勝手に言うているのかどうか知りませんけれども、このことに関しまして御所見をそれぞれまた法務省、外務省、労働省の方から伺いたいと思います。
  113. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま委員指摘のような意向書なるものが企業との間で取り交わされるというような状況もあったというふうに承知しております。私どもとしてもこれは甚だ残念な事態でございまして、なかなかこの研修の実態について十分な認識を関係の方々に持っていただくということについて今後さらに努力をする必要があることを痛感したという出来事でございました。  そこで、これはまさに研修ということの内容にかんがみまして関係省庁側との十分のお話し合いも必要であると考えておりまして、今後こういう ケースについての出来事を十分我々としても念頭に置いて再発を防ぐということ、さらには今度の入管法改正をいただきました暁には、この新しい入管法に基づく体制というものはより物事が明確にされるわけでございますので、それについての周知徹底を図るという努力をいたすことによって、御指摘のような研修を単に名目にして実際に就労を図るというような動きが防止されるよう努力してまいりたいと思っております。
  114. 武藤正敏

    説明員(武藤正敏君) 外国人労働者の問題でございますけれども、これは近年我が国の国際的な地位が急速に向上いたしまして、内外のこういった構造的な諸要因に起因いたします新しい問題である、また対外的にも無視し得ない大きな問題である、こういうふうに考えております。したがいまして、この問題につきましては複雑かつ多面にわたる諸影響というものを十分考えながら、多様な角度から検討が必要であると考えておりますし、今後とも関係省庁の方々と密接に協議していきたいと思っております。  具体的に、単純労働者受け入れに研修が利用されるという可能性でございますけれども、私どもといたしましてもこのようなことがあってはいけないと考えておりますし、具体的に査証の申請等がありますと、各省庁にこれを諮りまして慎重に審査をしているところでございます。
  115. 吉免光顕

    説明員吉免光顕君) 先ほどもお答えしましたように、関係者の理解といいますか、そういう誤った形で事案が起きるというのは大変心配をいたしますので、十分指導、周知をしていきたいというふうに思っておりますし、ことし七月からそういう意味で各都道府県知事に対しましても私ども指示を出しておりますので、さらに徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
  116. 白浜一良

    白浜一良君 こういうことは、もうこれ以上言いませんが、実は京都にも事例がございまして、京都のある一民間人が今度は五万人受け入れるという、こういうことを勝手に話を進めていた、そういう事例もございます。本当にこれは国家間の問題にも波及する大事な問題でもございますし、それぞれの省庁、力を合わして今後こういうことが起こらないような対応をよろしくお願い申し上げたいと思います。  そこで結局、こういう問題の起こる背景というのは、いわゆる研修と就労、先ほどおっしゃいましたが、それなりに規定されているわけでございますが、どうしても研修というものと就労というものとの間にグレーゾーンがあって、そこをうまく運用されているわけでございますが、今回の入管法改正によりましてこのグレーゾーンが本当になくなるのかどうかという、この点の御所見をお伺いしたいと思います。
  117. 股野景親

    政府委員股野景親君) 委員ただいま御指摘のとおり、この研修と就労というものについての違いを法務省側としては十分明確にしていくという立場で臨んでおります。本質的に、就労と申しますとこれはもう報酬を得るということが目的で、それに対する役務を提供するということでございますが、研修というのはこれは知識技術、技能というものの修得を目的とするということでございますので、そういう意味でこの両者の違いというものは本質的なものがあると考えております。  現行法のもとでも研修の在留資格在留をする者が就労を行います場合には、これは資格外活動ということになりますので、退去強制手続あるいは罰則というものの対象になり得るわけでございます。  今度の改正案におきましては、研修という在留資格在留する者は報酬を受ける活動に従事することができない、こういうことを明確に打ち出しております。そこで、研修という名目で専ら報酬を得る活動に従事しようという者についての処罰とかあるいは退去強制というものが行われ得るということが一層明らかにされていると思います。そういう改正によって、御指摘のような研修に名をかりた就労を効果的に防止するということはこの法改正においてもできるというふうに考えておるところでございます。
  118. 白浜一良

    白浜一良君 そういうことでよろしくお願いしたいと思いますが、今回の計画は幸いにも、毎日新聞によってでございますが、地元大阪では非常に大きく報道され、それでこの件は未然に防がれたわけでございます。  大阪入国管理局も非常に懸命に対応されたというふうに私ども伺っておりますが、もしこれがわからなかったら、善良な中国人の方が日本に来た途端に違法として取り締まられるという本当に不幸な出来事になったわけでございまして、そんな大きな問題が一民間人の動きによって引き起こされてしまう。中国は天津のいわゆる公的な機関が実際動いたわけでございますし、非常にこれは外交上の問題にも発展する可能性のあった問題だ、このように私も思うわけでございますが、外務省の御見解を伺いたいと思います。
  119. 武藤正敏

    説明員(武藤正敏君) お答え申し上げます。  先生、あるいは先般の上海の就学生問題との関係もありましてそのようにおっしゃっていらっしゃるのかとも思いますけれども、就学生の問題とこの問題とでは基本的に、上海就学生の場合には入学金ですとか授業料ですとかで多額のお金を納めていたという点はあるかと思います。しかし、研修という名目で単なる労働者が入ってくることにはさまざまな問題がございますので、こういった点はよく考えていかなきゃいけないなと考えております。
  120. 白浜一良

    白浜一良君 もう一つ、地元の問題で申しわけないんですけれども、こういうケースがあったわけです。  具体的な事例といたしまして法務省の御見解を伺いたいわけでございますが、既に御存じのように悪質なあっせん業というかブローカーというか、そういう日本人の方もいらっしゃいます。外国人の方もいらっしゃいます。そういう方が余計こういう問題を複雑にしているという事実があるわけでございますが、具体的な事例といたしまして、これはある中国の方でございますが、正式な留学生として日本に来ておられた、大学に学んでいらっしゃったわけです。ところが、いろいろ交際範囲も広くて、留学生という資格のまま、ある会社法人が設立されたわけでございますが、そこの役員になったわけです、留学生のままで。それはもう登記上そうなっております。それでは違法になるということで、この中国人御夫妻、もう結婚されている御夫妻でございますが、それはまずいということで、ある日本の方、七十七歳といいますから相当高齢の方でございますが、その御婦人はひとり暮らしでしたが、養子縁組された、そういうケースがあるわけです。そういう問題がまず一つ。この事実経過をどう判断されるかということ。  もう一つは、この方が実際中国の方を日本語学校にあっせんした。その紹介した日本語学校はもう自動的にいわゆる単純労働者としてそれぞれの事業と結びついている。直接に不法就労を勧めているわけじゃないわけです、その方は。ところが日本語学校に勧めているという事実で即不法就労の流れが具体的にできてしまっている。この方は中国の方でございますが、二つのこういう問題があるわけでございますが、少し法務省の御見解を伺いたいと思います。
  121. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) お答えいたします。  今、委員指摘の事実関係が非常に複雑なように承りますので、果たして的確なお答えになるかどうかわかりませんけれども、正規に留学生として中国人夫婦が大阪なら大阪におる。しかし何か縁あって会社の役員になる必要があった。しかしそれでは違法といいますか、許可を受けていませんから資格外活動になるおそれがある。そうだとすれば、七十歳余りの御婦人、日本の女性の養子という形にして、そして役員になっておる。これはどういう問題があるかという御質問かと思いますが、仮に日本人の養子になっていましても日本国籍を取っておられるわけじゃございませんから、在留資格が果たしてその当時その時点でどういうふうになっているかによりまして資格外活動になるのかならないのか判断せざるを得ません。 ですから、その辺の事実関係をお教えいただければ答えが出ると思います。  つまり、留学生のままで七十歳余りの日本婦人の一般養子になっておられる、しかし国籍は変わってない、在留資格もないということになれば事業活動を営むことはまずできないわけでございますから、これは資格外活動ということに当たろうかと思います。ちょっと事実が定かでございませんので、そのケースはその程度しかお答えできません。  それから、今申されました、ちょっと私も聞き漏らしたところがあるかもしれませんが、仮にその留学生なりあるいはその七十歳余りの日本婦人なりが、日本語学校へ中国人なりだれかをあっせんしたといいますか、紹介した。ところで、その日本語学校は専ら受け入れた就学生に仮面を着せておいてすぐに労働に従事させる、そういうふうな悪質な学校だったということを前提にお聞きかと思いますが、当該中国人なりが留学を希望する者、就学を希望する者をあっせんする場合に、その悪質な学校の実態を十分知っておれば法律的には、非常に形式的な意見を申し上げて恐縮ですが、資格外活動の教唆なり幇助になる可能性は十分あろうかと思われます。しかし、全く善意から日本語学校へあっせんするだけのことで御紹介をなさったことであれば、私は何も問題はないんじゃなかろうかと思います。
  122. 白浜一良

    白浜一良君 善意であれば私は申し上げないわけでございまして、当然悪意であるわけでございまして、そういう事実があるということだけ、いろんな形でそういう悪質な方がいらっしゃって善良な留学生を初めさまざまな方が苦しんでいらっしゃるという事実を知っていただいたらいいと思います。  それで、いわゆる入管法改正された後の問題として少し伺いたいわけでございますが、非常に現在でも、きょう午前中もお話がございましたがさまざまな形で、労働条件の面とか劣悪な中で働いていらっしゃるわけですね。これが法的な罰則規定ができるということによって、もっと陰湿なやみブローカーのもとで働かされるおそれはないのかどうかという、もっと深刻な人権問題に発展するんじゃないかという、この点の御所見を伺いたいと思います。
  123. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 私どもは、この新しい罰則をも含めて不法就労対策をしっかりやろうという方向での法改正をお願いしているわけでございますが、もとより不法就労者をやみからやみへといいますか、さらに劣悪な条件下に置こうという目的は持っておりません。しかし、結果的に罰則等をつくることによってそういう事態が生ずるおそれはなかろうかという御指摘だと思いますが、そういう危険性を生じないように、先ほど来申し上げておりますように、罰則の趣旨あるいは不法就労者の雇用がいかに反社会的なことであるか等を含めて一般国民にも十分広報宣伝をし、そういうやみブローカーがさらに地下に潜ってしまうとか、あるいは不法就労者がさらなる劣悪な労働条件のもとに置かれるとかいうことがないように関係省庁とも協力してやっていきたいと考えております。
  124. 白浜一良

    白浜一良君 よろしくお願い申し上げたいと思います。  そこで、この改正法が施行された段階でございますが、実際既に十万人に及ぶ不法就労者がいるというふうに今言われているわけでございます。摘発というか発覚された段階でいわゆる退去強制されるわけでございますが、いろんな経過でやはり今、日本にいらっしゃるわけでございます。ですから、むげに一方的に強制的に退去を命ずる、そういうことではなしに、やはりこれだけの国際国家日本になっているわけでございまして、どうかそういう人権というものをベースに置いて適切な対応をしていただきたいと私も望んでいるわけでございますが、この点に関しましてお考えがございましたらお伺いをしたいと思います。
  125. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 委員指摘のとおり、いろいろな経緯日本にやってこられまして、やむなくといいますか、背に腹はかえられず就労しておられる方もおられますし、あるいはまた不法就労中にいろんな日本の方との人的関係なり地域的関係をお持ちになって、そういう生活実態を背負って生活しておられる方もございますから、すべてがすべて退去強制を絶対にやるということではもちろんございません。例えばケースによりましては、人道的見地から特別在留許可という形で日本にとどまってもらう人たちも相当数あるわけでございます。  ただ、御承知のように、不法就労者がどんどんふえてまいりますと、ますます委員が御指摘のような人権侵害ケースがふえてまいります。殊に私どもが心配いたしておりますのは、同国人同士の搾取という実態が相当程度存在しております。これは非常に悲しいことでございますが、日本という社会を利用して同国人が搾取をする、つまりブローカー的行為をして賃金のピンはねをするという実態もございますので、そういう場を提供すること自体が我が国の国際社会における非難の的になりはしないだろうか。したがいまして、不法就労者の存在自体はできる限りこれを少なくする方向でいきたい。  それからさらに、どうしても労働せざるを得ないような人たちについて、特に外国人についてどういう施策をやっていくのが日本社会にとって好ましいのかということは、これは労働省や関係省庁たくさんございますし、あるいは一般市民の方の御意見もございますから、十分に御意見を承って、そして合法的に入れる方法で、しかも適正な方法でお入りになるということで対処していきたいと考えております。
  126. 白浜一良

    白浜一良君 もう時間がございませんので、最後に二点だけお伺いいたします。  いろいろ単純労働者受け入れの問題を初めとしまして、私は二つの大きな問題があるというふうに思うわけでございます。  その一つは、現在法務省入国管理局で海外から受け入れをされておるわけでございますが、そういう一省また一局、そういう問題ではないというふうに私は思うわけでございます。実際、海外からの受け入れが多い、難民も多いということで、入国管理事務所の方には非常に労働的にも負担がかかっている。九州の方が御不幸にも過労で亡くなられたという、そういうことも私伺っておりますが、もう人員そのものも非常に厳しい体制である。ですから何としても、入国管理局としても、私は個人的にも当然拡充すべきじゃないか、そういうふうに思っているわけでございますが、しかしそれだけではなしに、もっといわゆる外国人受け入れ問題、これだけの国際化時代でございますから、一省庁だけではなしに各省庁連携をとって、大きな受け皿を政府として私はつくるべきじゃないかと思うわけでございますが、この点につきまして法務大臣の御所見をまず伺いたいと思います。
  127. 股野景親

    政府委員股野景親君) 委員指摘のとおり、出入国管理の問題は一入国管理局の問題にとどまるものではなく、政府全体として考えていくべき内容のものであると考えておりまして、入国管理局としてもそういう見地から関係の省庁側との連携ということを十分に今までもとることに努力をしてまいりましたが、今後についてもまさにそういう観点で臨んでおりますし、また、そういう観点から今度のお願いしております改正の中でも、例えば入国審査についての基準省令をつくる際には関係省庁との協議を十分経て、関係省庁側の考え方、そしてそれに関連するところの諸行政の見地を十分に取り入れた審査を行うということを考えております。  また別途、改正案の中でお願いをしておりますところの考え方として、新しく出入国管理基本計画というものを策定して、これを基本指針とする出入国管理行政というものを行うことにいたしておるわけでございますが、この計画の策定に当たっても十分関係の行政機関側との協議を経て策定していくということでございますので、そういう意味での幅広い見地からの取り組みというもの は改正案の中においても具体的に記してあるわけでございますし、また我々の現在のこの問題に対する取り組み方もこれと同じ考え方で臨んでいるところでございます。
  128. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) ただいま白浜委員からいろいろ質問を通じまして、また御意見もお伺いいたしました。今回の法改正は、まさにその受け皿を整備するということが大きなねらいでございまして、日本との技術格差の大きい分野、特に日本技術のすぐれている分野については、これにできるだけ多くの人たち受け入れて、日本のすぐれた技術を身につけてそれぞれの国々の産業の発展のために役立たせようとするところにあるというふうに私どもは確信をいたしておりますが、同時に、今後日本受け入れたそれらの人たちが安心して働くことができるように、また安心してそれらの人々を受け入れることができるように、企業等においてもそういう受け入れ体制をつくるのに役立つためのよい法律法改正であるというように確信をいたしております。  なお、先ほど白浜委員の御指摘のありました大阪の問題を初めとする問題は、これがもしそのような形で今後あちこちで行われるようになりました場合には、全くけじめがつかなくなってしまいまして、将来の日本の産業の発展のためにも、また国際的にも非常に迷惑のかかることになりますので、これは絶対にそういうことがないようにしなければならないということで、今度の法律改正によりまして十分な配慮をしなきゃならないと思っております。
  129. 白浜一良

    白浜一良君 もう一つの問題点、もう時間がなくて申しわけございませんが、要するに、いろいろ取り締まりといいましても、その温床があるわけでございまして、それは一つにはやはり日本の企業が労働者を雇いたいという、そういう根強いものがあるわけですね。  これも大阪版の新聞の記事でございますが、毎日新聞が調査をいたしまして、近畿の六十社を調査いたしましたが、その三分の二が要するに外国人単純労働者受け入れをしたい、このように言っているわけです。そのぐらい企業側にとりましては労働力の不足という現状があるわけでございまして、こういうことが一方である。アジアの近隣国の人もやはり日本に来て働きたいという願望が強い。政府間のきちっとした取り決めがないから悪質な民間ブローカーがそういう仲介をするという、ここが一番温床になっているわけでございまして、私はできましたら将来、国際化時代の日本という意味からも、どこか関係国と少なくとも二国間できちっと協定を結んでいただいて、政府間の交渉としてこれだけの枠を受け入れする、そういうことで年限的にも内容的にもきちっとしていただきたい。  そういうふうにしなければ、日本の国内企業の実情と海外の実情がある限り、取り締まろうとしてもいわゆる悪質なブローカーが必ず介在してしまう。そういうことを非常に危惧しているわけでございまして、政府間でそういう協定をきちっと結んで受け入れをしていただきたい、これが私の要望であるわけでございますが、それぞれ御所見を伺いたいと思います。
  130. 股野景親

    政府委員股野景親君) この単純労働受け入れの問題につきましては、先ほど申し上げましたように、外国人単純労働者受け入れることとした場合の我が国社会及び国民生活に与える諸影響というものをいろいろ考える必要があるということでございます。その意味で、ただいまの先生の御指摘になられました労働需給の観点という点も検討する必要がございますが、あわせて単純労働者外国から日本入国してくるという場合の日本社会及び日本の国民生活というものに与える影響というものもやはり多様な角度から検討する必要があると思いますので、その意味でこの問題については慎重に検討していくべきだと思っております。  その関連で、これは当然外国関係してくることでございますので、我が国政府のこの問題に関する考え方というものは関係外国側にも十分に明らかにする必要があり、特に不法就労という問題についての対応については、これは関係国側の理解も十分得るということがその効果ある対応ということにとって必要であろうと思います。  そこで、関係国側との間で我が国の政策を十分明らかにするという観点からの話し合いというのは、今までについても配慮をしてまいりましたが、今後もさらにその点は努力をしていく必要があると思います。その単純労働者受け入れる場合の具体的な取り決めというようなことが一つの理論的な可能性として御論議があるということも我々は承知しておりますが、こういう問題はそれはまた一つの方法論としての御論議でもあろうかと思い、またそれについての効果がどうであるかということについての議論もいろいろ分かれているようでございます。そういう状況でございますので、御指摘のような関係国側との間柄においてこの問題をどう取り上げていくかということも含めた多様な角度からの検討を行っていくということで臨んでまいりたいと思っております。
  131. 武藤正敏

    説明員(武藤正敏君) 先ほどからもたびたび御議論がございますけれども、外国人労働者、いわゆる単純労働者受け入れるかどうかという点につきましてはいろいろな要素がございまして、慎重に考えていかなきゃいけない問題であるというふうに認識しております。仮に受け入れるといたしますと、先ほど白浜委員もおっしゃったとおり、受け入れ体制をどうしていくかということは非常に重要な問題となってまいりますし、その場合には日本国内でも、また外国ともよく相談していかなきゃいけない問題だろうと思っております。  それから、二国間協定の問題につきましては、先ほど股野政府委員からも御答弁がございましたように、一つの理論的可能性としてございますけれども、また問題点指摘されているのも事実だろうと思います。したがいまして、こういった受け入れ体制の問題というのは今後よく考えていかなきゃいけない問題であろうというふうに考えております。
  132. 吉免光顕

    説明員吉免光顕君) 労働力不足との関係での御指摘でございますが、確かに最近の労働力需給状況というのはかなりの景気拡大の中で伸びてきておりますが、有効求人倍率で見ますと一倍を超えている状況でございます。そういう中で、中小企業を中心にして人手不足感というのは出てきておりますけれども、一方で特定の地域でありますとか、年齢別に見たときに高齢者層でありますとか、そういった点ではなお余り改善をしていないという状況がございます。例えば五十五歳以上の求人求職を見ますと、十人の方が職を求めている中では求人としては三人分しかない、こういうようなこともございますし、六十歳を超えますと十人の求職者に対して一・五人分ぐらいしか現在ございません。  そんなようなことも考え合わせますと、一面で不足ということもございますけれども、国内でそういったミスマッチが起きている部分を十分に調整をしてまいりますとか、不足には不足の対策を講じていく、こういう考え方を基本に労働力確保に努めるべきではないかというふうに思っております。そういう意味で、そういった努力をしないで安易に単純労働者受け入れるということになりますと、これは国内労働者の労働市場の問題でありますとか労働条件の向上という面でも問題を生じますために、私どもの方も現在は慎重に考えているという状況でございます。
  133. 橋本敦

    橋本敦君 法案に入る前に、坂本弁護士事件についてお伺いをしておきたいと思います。  午前の質疑でも問題にされましたが、坂本弁護士の一家が突如姿を消して今に至るも所在がわからないという重大な問題であります。この問題については、単なる失踪事件というそういうものじゃなくて、本人自身が失踪しなきゃならぬというそういう状況は一切ないという状況も明らかなもとで起こった事件ですから、何らかの事件関係をして、その意に反して拉致されたという意味での重大な事件だというようにとらえて、まさにそういう観点から厳重な捜査を遂げるのが今大事 であり、また広域に捜査の網を広げてあらゆる情報を集めて、一刻も早く人命にかかわる救出をするというのが基本だと思いますが、警察の対応はいかがですか。
  134. 山本博一

    説明員山本博一君) お答えいたします。  本事案、先生御指摘のとおりでございまして、弁護士という職業の方が、しかも一家そろっていなくなっておるということであります。しかも、犯罪に巻き込まれた可能性があるということでございまして、私ども極めて特異な重要な事件と見まして、全力を挙げてその無事救出と事案の解明に現在努めておるところでございます。全国の警察を動員いたしまして全国的規模において現在捜査いたしておるところでございます。
  135. 橋本敦

    橋本敦君 伝えられるところによれば、ある宗教団体との関係の問題も重要な参考事情として取りざたされておるんですが、その関係者に対する事情聴取を行うという状況で、速やかに行っておればよいのに海外へ出国をされたという、こういった情報もあるんですが、この点で警察の対応が遅かったか、あるいは警察の対応としてなまぬるいのではないかという批判も一部にあるようですが、どうお考えですか。
  136. 山本博一

    説明員山本博一君) 御指摘の宗教団体の幹部の一部の者が出国したということにつきましては、私どもにおきましてもその事実を確認しておるところでございます。また、失踪者坂本弁護士が御指摘の宗教団体の関係者と交渉するなどの弁護活動を行っていたということも承知しておるところでございまして、これらをも含めまして坂本弁護士が取り扱っていた事件すべてにつきまして、本件失踪事案との関連性につきまして広く関係者から必要な事情聴取を進めておるところでございます。御指摘のことにつきましても、現状におきまして可能な限りの措置をとった、かように思っておるところでございます。
  137. 橋本敦

    橋本敦君 これは組織的な誘拐という犯行であり、また三人、赤ん坊も含めて突如連れていくということになりますと、かなり組織的プラスそういった面での犯行について計画的であったというように見られるんですが、そういう組織的、計画的な犯行であるという見方はされておりますか。
  138. 山本博一

    説明員山本博一君) あらゆる可能性を考えて、現在鋭意捜査をしておるということでございます。
  139. 橋本敦

    橋本敦君 私の言う意味の犯罪可能性もあるという意味ですね。
  140. 山本博一

    説明員山本博一君) そのとおりでございます。
  141. 橋本敦

    橋本敦君 法務大臣法秩序を預かる大臣としてこの件についても重大な関心をお寄せいただいていると思うんですが、一刻も早い救出と同時に、こういったテロに近いような犯行が行われるとすれば、我が国の民主社会にとっても重大な問題でございます。したがって、人権を尊重し、また法秩序を預かる法務大臣としていかがお考えか。また、私の希望としては、政府としても全力を挙げてこの事件の解明のために御尽力をいただきたい、そのことについて大臣の御尽力をお願いするのでございますが、御所見はいかがでしょうか。
  142. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) お答えいたします。  ただいまの問題につきましては、私も大変深く憂慮をいたしております。もしこれが犯罪に起因するものであるといたしますならば、これは本当にゆゆしいことであると思いますので、現在捜査当局もあらゆる可能性についての捜査を進めているというところでございますので、それを見守りながら今後適切に対応をしていくようにしなければならないと思いますし、また関係各省とも緊密な連絡をとりながらその対策をとっていかなければならない、そのように思っております。
  143. 橋本敦

    橋本敦君 それじゃそのようにお願いして、次の質問に移ります。  警察庁ありがとうございました。  法案に関連をする質問に入らせていただきますが、今我が国は、企業を中心にして海外への進出がかなり行われている。そしてまた、それに伴って海外で働く日本の国民の数も非常にふえております。そしてまた国際的にもそれぞれの国が自国の国民に対して海外旅行の自由、移住の自由も含めて民主的な体制を進めるのが今日国際社会の進む方向になっております。  そういう諸般の事情を考えたときに、我が国単純労働者受け入れないという、こういう態度をとることが果たして今日の国際社会状況から見て妥当であろうか。私は一定の条件、無条件ではいけませんけれども、一定の条件も考慮しながら単純労働受け入れ方向に進むのが今日の趨勢ではないか、こう見ておるんですが、簡単にその点について御見解を伺いたいと思います。
  144. 股野景親

    政府委員股野景親君) 単純労働者受け入れの問題について先ほど来、基本的な考え方を申し上げてきているわけでございまして、繰り返しになって恐縮でございますが、確かに日本の国際社会の中における立場について十分考慮を払った出入国管理行政というものを展開していく必要があるという認識に立って、この問題を考えているわけでございます。  その際に、それではこの単純労働者というものを外国から我が国受け入れた場合に、それが我が国の労働需給の面を初めとして産業あるいは経済社会、それに国民生活というものにもどういう影響を与えていくかということについて十分の考慮がなされるべきであり、この点については国内でもいろいろ御議論があるという状況が現実にございますので、この問題については引き続き十分に時間をかけて、多様な角度から慎重に検討していくことが現時点では一番適当である、こういう考え方に現在の政府としては立っているわけでございます。  したがって、そういう観点において、この入管法改正案については現行のいわゆる単純労働者受け入れないとする政策に基づいた規定の仕方をいたしておるわけでございまして、この問題については今後、ただいま申し上げましたような観点から引き続き慎重に検討をしていく、こういう立場に立っております。
  145. 橋本敦

    橋本敦君 今後、引き続いて慎重に検討していくという、そのことを本当におっしゃるなら、引き続いて検討するということに先立って、単純労働全般的な禁止という方向に向かうような罰則強化も含めた本法案というのはいかがであろうかというふうに一つは思うんです。  それからもう一つの問題として、今日法務省が不法就労とおっしゃる事態は、我が国に約十万人前後だろうという、こういう状況になっておるし、今の我が国を取り巻く経済情勢や世界の経済動向を考えて、これが減るという状況はない。こういうことで、罰則強化を含む今回の措置によっていわゆる単純労働を含む外国人就労問題が基本的、合理的に解決できるということに実際になるのかといえば、それはそう簡単なものではないというのは当局も御認識されているのではありませんか。
  146. 股野景親

    政府委員股野景親君) 不法就労の問題につきまして、まず、今日外国人日本における不法就労ということが増加しておるという事態がございまして、この事態は現行法秩序のもとで放置できない事態でございます。現行法において不法就労ということは、当然これについて厳しく対応していくということが現行法のもとでも求められておるわけでございまして、そういう中にあって法的な整備として、不法就労についての我が国における一種の吸引力あるいは我が国での不法就労の一種の推進力、こういうことになるようなものを排除するという形での新しい法体制をつくるということが不法就労対策としてさらに効果があるという前提で新しい罰則の規定も設けておるわけでございます。  この不法就労の問題というのは大変複雑な問題がございまして、先ほど委員が御指摘のとおり、単純労働を仮に何らかの規制を加えた上で入れるとしても、それで不法就労という問題がなくなるのかというと、これはなかなか難しい問題ではないかというのが私どもの考え方でございますので、その意味で法的な体制として、不法就労というものに対してきちんと対応できるという体制を 一方において整えておくことが必要であり、他方、単純労働についての政策的な取り組みについては、これは今後の課題としていくということでの検討をする。両面が必要であろうと考えております。
  147. 橋本敦

    橋本敦君 長い答弁でしたが、基本的にこの改正によって改善される部分が私はないとは言いません、手続、資格要件その他。しかし、いわゆる単純労働を含む不法就労問題という今日の最大の問題について、これで抜本的に解決が見通せるとか可能になるとか、そういったものというわけにはいかぬということは事実じゃありませんか。
  148. 股野景親

    政府委員股野景親君) 不法就労問題についての対策というものは、法的な体制というものを整備するということと同時に、関係省庁の提携による対応、また入管局自体の体制整備強化と、いろいろな総合的なことが法の整備とあわせて必要であろうと思っております。そういうことを総合的に進めながらこれに対応していくということについては、やはりそれだけの今後の実質的な効果というものは十分期待をしていい。また、それを実施、実現することが必要である、こういうふうに考えておるところでございます。
  149. 橋本敦

    橋本敦君 それは、この改正法を提案される立場ですから当然そういう答弁でしょう。  そこで、実態はそうならないというのは、これはもう実際上大変なことですから客観的にも明らかなんですけれども、具体的に聞いていきますけれども、おっしゃる不法就労ということですね。一体、不法就労というのはどういうことかということになりますと、この中で不法就労という概念を規定されています。ちょっと説明してください。
  150. 股野景親

    政府委員股野景親君) 不法就労活動について、新しい入管法の中で七十三条の二という規定がございますが、その第四項の中で不法就労活動というものを定義してございまして、この条項を申し上げますと、「不法就労活動とは、第十九条第一項の規定に違反する活動」、これはいわゆる資格外活動でございます。それからまた「七十条第一号から第三号まで、第五号、第七号若しくは第七号の二に掲げる者が行う活動であつて報酬その他の収入を伴うものをいう。」。七十条の一号云々というくだりは、これは不法入国不法上陸不法残留にかかわるものでございますが、こういう者が行う活動であって、報酬その他の収入を伴うものを不法就労活動という形で定義をいたしております。
  151. 橋本敦

    橋本敦君 わかりやすく言いますと、これはいわゆる密入国に関する問題じゃありませんので、在留資格ということが基本になっていく外国人なんですが、その在留資格外の活動で収入を得るということについてそれを不法就労ということで、その不法就労を行った当の外国人自体は、これは処罰関係はどうなるんですか。
  152. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 今、委員指摘外国人就労行為自体が資格外活動ということになりますと、それ自体が罰則の対象になりますし、あるいは行政処分でありますところの退去強制手続の対象になるということでございます。
  153. 橋本敦

    橋本敦君 退去強制手続の場合に、二十四条規定を読みますと「報酬を受ける活動を専ら行つていると明らかに認められる者」、こうありますね。ところが、不法就労自体が処罰される対象になりますと、「専ら行つている」とか「明らかに認められる者」という要件は、これは外れて規定されておりますね。この違いはどういうようなところからくるんですか。
  154. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 今御質問の条項は、この資料の新旧対照表の三十四ページにございます七十三条のことを御指摘と理解します。つまり、この七十三条は、専ら報酬を得るために労働に従事したというのは別項にございまして、これは軽微なものを掲げて単に罰則の対象にだけしようということにしたものであります。つまり、重い方は七十条の四号にございまして、法定刑がさらに重くされてございます。そういう違いがあるだけでございます。
  155. 橋本敦

    橋本敦君 もう一つ、その法定刑が重いものとそうでないものとを七十三条の二と七十条で分けたという御説明ですが、重いものとそうでないもの、単なる不法就労活動というのと「専ら」とか「明らかに認められる」というのは、実際、客観的に構成要件としてどう違うんですか。私はこれがよくわからない。
  156. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) まず「専ら」の意味でございますが、自分の生活状態の中で主として就労をすることが主たる活動になっているというふうな状態、事実関係があれば「専ら」であろうと思われます。しかしながら、七十三条の方はそうではございませんで、たまたまある日だけアルバイトをしたとか、あるいは二、三日やむにやまれず人に頼まれて働いて報酬を得たというようなものはこちらへくるだろう、そういうふうに思います。
  157. 橋本敦

    橋本敦君 それで、たまたま二、三日だけというのも三年以下の懲役、これは重いんですよ。それで今おっしゃった「専ら」「明らかに」という十九条の関係での七十条の処罰も三年以下なんですよね。そうでしょう。同じなんですよ。だから、さっきおっしゃった説明は合理性がない。
  158. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 委員の御意見でございますが、七十三条の罰則は「一年以下の懲役若しくは禁錮又は二十万円以下の罰金」といたしまして、七十条の方の重い方は「三年以下の懲役若しくは禁錮又は三十万円以下の罰金」、こういうふうになっております。さらに加えまして、先ほど申しましたように、重い方については行政処分であります退去強制処分の対象にする。そういうふうに重いのと軽いのとを法的処分において区別いたしております。
  159. 橋本敦

    橋本敦君 七十三条の二は「次の各号の一に該当する者は、三年以下」、こうなっているんじゃないんですか。
  160. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 今の委員の御質問は、私の取り違いかも存じませんけれども、不法就労している外国人本人のということを前提におっしゃいましたので、それは七十三条の方にまいります。
  161. 橋本敦

    橋本敦君 わかりました。それは私の方もちょっと間違えました。  それでいいとして、要するに不法就労というそのこと自体、不法就労という概念とともに、客観的な構成要件としては「専ら」とか「明らかに」とかということで、その点において私は明確性の問題で一つ疑問があるということを指摘したいんですよね、いやしくもこの場合は三年以下の懲役にかかわることですから。  不法就労で「報酬を受ける活動を専ら行っている」、「専ら」というのは主としてとおっしゃいましたが、それはどの程度なのか、これは客観的に決められませんね。それから「明らかに認められる」、これも難しい。片方で、七十三条の二の関係で今度は事業主の罰則の点にいきますと、ここでは「明らかに」とか「専ら」はありませんので、さっきおっしゃったように、それは単純に、たまたまであっても二、三日であっても雇用した場合は法的には処罰の対象になる、こうでしょう。それはたまたま二、三日雇った、たまたま雇ったということでそこまで処罰するというのは、私はこれは処罰形態としても重過ぎるんじゃないかという気がするんです。  そこで審議官、よく御勉強ですからちょっと教えてもらいたいんですが、ジュリストで川原弁護士がシンプソン・ロディノ・マゾリ移民修正管理法についてコメントされておりますね。アメリカの雇用主の処罰のところを見ますと、これの四十六ページなんですが、雇用主の処罰については、その雇用主の違反が反復的及び故意の場合、そういう行為に対して適用がある。英語の法文では、私、オリジナルには当たっておりませんが、パターン・オア・プラクティス・オブ・バイオレーションということで、一定の類型的行為になっているそういう故意的な、継続的な、反復的行為について雇用主を処罰するという規定を設けているということで、これは一定の合理性がある。ところが、今度の七十三条の二はそういう要件も前提もなしに、とにかく半日であれ一日であれ、これ は起訴猶予処分にするとかなんとか処分は別ですよ、法の構成要件としては処罰されるということになりますから、これは処罰の要件としては余りにもきついのではないかというように私は思わざるを得ないんですね。こういうアメリカの法との対比の関係で、どう見られますか。ちょっと御意見があれば御説明いただきたい。
  162. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) アメリカの法律を御指摘でございますが、御承知のようにアメリカ法と日本法の罰則の立て方をどういうふうに比較するか、非常に難しゅうございます。  と申しますのは、アメリカの法律は、今の雇用主処罰規定に絡みましても三重の規制といいますか、手段を規定いたしておりまして、簡単に申し上げますが、雇い主が人を雇うときには必ず、セキュリティー・ドキュメントといっておりますが、ソーシャルセキュリティーを証明する身分証明書といいますか、社会保険がもらえるという証明書のような紙を持っているかどうかまず確認しなさい、これは内外人を問わず確認しなさい、こうなっているんです。そこで、それを確認せずに雇った場合には、例えば行政処分の対象にする、あるいは民事罰的なものにするということが第一段階的にございますし、まず確認義務を課しております。それから、悪質なもの、今委員のおっしゃいましたような繰り返しそして故意にというような要件があれば、さらに一段上の罰則の対象とする、こういう構え方をしております。  それに対しまして、我が国現行法も含めました考え方は、資格外活動なりあるいはオーバーステイをした人間が就労活動をしている場合には、当該外国人を、不法就労というのかどうかわかりませんが、要するに資格外活動者あるいはオーバーステイ者として刑罰の対象にし、また要すれば退去強制ができるようにするのを基本にしております。  そこで、刑法の総則を使いますと、故意にその人を雇えば、一回限りであってもあるいはたまたまであっても、これは観念的には、理論的には刑法総則を通しまして資格外活動または不法残留という行為の教唆または幇助で処罰の対象になるわけでございます。委員指摘のように、犯情軽微であればもちろん起訴猶予になりますし、捜査の対象にすらしないことももちろんございますが、しかしながら観念的には刑罰対象になっている。その現行法を前提にいたしました上で、現在の不法就労活動を助長するような行為を今は黙認できないからさらに独立した罰則をつくってみようということになりますと、これは立法動機を簡単に申し上げているわけですが、その場合には、現行法でも罰せられる範囲というのは当然捕捉したまま、引きずって構成要件を書くんだろうと思われます、立法技術の話で恐縮ですが。  その上で七十三条の二をごらんいただきたいんですが、雇用主に関しましては、事業活動に関して雇った場合、この処罰の対象とするということでございます。つまり、アメリカ法で言えば繰り返し雇ったというのは確かに就労者側から見て何遍も働いたというふうに見て捕捉していますが、こちらの方は自分の事業活動に関して雇う、こういうふうな制限といいますか、構成要件上の枠はめといいますか、それを立てまして、自分の事業活動に関して不法就労外国人を雇ったらやっぱり最高は三年ぐらい、もちろん軽いものもございますが、そういう法定刑をすると。そして、これはもちろんのことながら繰り返し何年もたくさんの人を雇っている人もここに当たるわけでございますから、そういう行為も予想しての法定刑でありますから、一番上は三年以下というふうにさせていただこうかというのが提案の趣旨であります。  この「事業活動に関し、」をはめましたのは、例えばたまたま自分がパーティーへ行くときにベビーシッターが要る。つい知っている就学生かだれかがいたのでちょっと子供の面倒を見てくれぬか、そのかわり少しお礼するからというようなことをやった者までここでやるというのはとてもいけないだろうというようなことがあって、一応は理論的にこの構成要件を厳格に書いてみたのがこれでございます。
  163. 橋本敦

    橋本敦君 もう時間がなくなりましたので、私はこの罰則と構成要件の問題についてまだまだお聞きしたい問題がございますから、この次もまた聞かしていただくことにいたしまして、一間だけ今聞いておきますが、これは故意犯ということでおっしゃいましたが、では過失はどうなるのか。雇っているうちに資格を持たない人だということがわかったという場合に、即時解雇しなければ直ちにこれは既遂になるのか、そこらはどうお考えですか。それを伺って、またこの次にいたします。
  164. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 委員御案内のとおり、これはもう確実に故意犯でございますので、過失犯を罰するときには、過失により云々という罰則規定をさらにつくらない限りは過失の人は罰せられないということでございます。それから、雇用を継続中に例えばオーバーステイになったとか、あるいは資格を変更されてしまいまして就労できない資格の方、そういう人がいるかいないかわかりませんが、資格変更をしておきながらそのまま働き続ける、これは当然のことながら資格外活動であり、あるいは不法残留でございます。したがって、そういう人が働いているのを自分が知って雇うということになりますと、形の上では、ほかに構成要件が全部そろっていれば、これに当たることになろうと思います。
  165. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 まず、最初に外務省にお尋ねをいたします。  本年の六月、ジュネーブで開かれました国連難民高等弁務官事務所主催によるインドシナ難民国際会議の席上で、イギリスのハウ外務大臣は、香港が現在受け入れているベトナム難民を今後も保護し続けることは経済的にも不可能だと言明をし、十月末日までに場合によっては強制送還すべきだと主張をし、さらに最近の難民の九〇%以上は政治的に迫害された人々でなく、収入が目的経済難民だと主張、ベトナムは過剰人口を輸出していると非難したそうです。  これに対し、この会議に参加をした五十八カ国代表の大部分はハウ発言に強く反発をし、強制送還はアメリカが宿敵ベトナムと一緒になってまで反対したということを聞いております。本国送還は難民本人の意思によるべきで、収容キャンプでの生活に耐えかねたためであってはならないとアメリカ代表が発言、ベトナム代表はボートピープル全員の帰還を受け入れるつもりはないと述べているとのことであります。また、難民の流入を抑えようとして香港は昨年来、本当の難民と単なる移民を厳しく選別する手続を導入をしましたが、ほとんど効果を上げることがなかったようであります。以上が難民に対する世界の大方の考え方であり、実情のようでもあります。  このジュネーブ会議は、真の難民と移民とを選別する手続の確立を呼びかけ、ベトナム側の出国管理の強化を求める包括的行動計画を採択をいたしました。しかしながら強制送還については極めてあいまいな表現にとどめられ、作業部会が細部を詰めることになったとのことでありますが、その後作業部会はどのようにこの強制送還を詰められましたのか、詰まっておりましたらその結果を御発表いただきたいと思います。
  166. 角崎利夫

    説明員(角崎利夫君) 御指摘のとおり、インドシナ難民国際会議におきまして包括的行動計画が採択されましたが、その中で、難民不認定とされた者については自主帰還が促進されるよう努力する。右が十分に進捗しない場合には、国際的慣行のもとで受け入れられると認められる代替策が検討されるというふうになっております。その後、この行動計画に基づきまして設置されましたインドシナ難民国際会議の運営委員会の場におきまして、この帰還問題についても検討をされてきております。ただし、御指摘のとおり、みずから帰還を希望しない者の帰還問題につきましては意見が分かれておりまして、今後とも引き続き運営委員会において検討されることになっておりまして、まだ結論は出ておりません。
  167. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 外務省、ありがとうございました。もう結構でございます。  本年の五月以降、日本に漂着する難民は急増をいたしまして、ほぼ単一民族ゆえに集団意識と調和を重んじる風土で育ってきた日本人には前代未聞の体験でございました。しかも、この状況は来年もさらに規模を大きくして続くかもしれません。それどころか、一方では合法的に入国をしながら資格外に就労をしている外国人もふえています。経済大国となった日本職業を求めて人が殺到するのは、むしろ当然かもしれません。日本への出稼ぎ労働者からの送金は最貧国の命綱でもあり、個人を超えた問題でもあります。しかし、不法な存在ゆえにまかり通る人権無視や労働差別、搾取の問題にもつながりかねませんどころか、現に労働の現場では当たり前のようになっているのではないかとさえ思われる事例がたくさんございます。  急増する外国人労働者の存在は、経済力に見合った地球規模の政治的責任をどう担うのかを真剣に考えるよう日本に突きつけられた世界的な要求だとさえ思われます。不法入国労働者の強制送還でさえが、ただいま外務省の方から答弁がありましたように世界の世論の共感は得られない現状において、今回提案の改正案のように、例えば在留資格制度整備審査基準明確化、あるいは審査手続の簡素迅速化及び不法就労対処規定整備だけでは到底対応し切れないのではございませんか。無法に押し寄せてくる外国人労働者問題の解決に法規制強化だけでは不可能などころか、全く無力であるかもしれません。  単に鎖国が無理とすれば、受け入れていくしかありませんが、国内事情への影響はまた重要であります。わけても、国民の側に受け入れる風潮が醸成されてくることが何よりも肝心だと私は思います。本問題の解決は非常に困難であり、国民全体の問題であることも承知しながらも、あえてこの法改正経済大国日本が世界の要請にこたえられる外国人労働者対策をどのようにして実現をしていこうとされますのか、法務省入管当局の考え方を承りたいと思います。
  168. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま委員指摘のように、この外国人労働者問題というのは広く国際的な背景というものがある問題でございます。同時に、我が国法秩序の維持という非常に重要な問題がそこにあるわけでございます。そこで、我が国としては現在の日本国際化の進展という状況を踏まえまして、現時点で考え得る最善の方策として、専門的な技術、技能あるいは知識を有する外国人については可能な限り受け入れの拡大を図っていくという政府の方針が立てられており、それに基づいての入管法整備ということを考えておるわけでございます。  他方、いわゆる単純労働者の問題につきましては、これは先ほど来申し上げておりますような観点からの慎重な取り組みが必要であると考えており、したがって今度の入管法改正案もさような立て方となっております。  そこで、そういう法体制のもとで、それではただいま委員指摘のような国際的な関係というものを見た上での我が国の対処の仕方ということを考えてみますと、これはまず諸外国から日本にいろいろの形で来る外国人のその背景というものをよく分析をしてみる必要があろうかと思います。我が国としても十分今後効果的に運用できる法体制を一方において確保すると同時に、またそれが国際環境のもとでも実効的な我が国体制として運用できるものである必要があると思いますが、同時にそういうものとの関連において、海外的な施策というものも考えていくことが政府全体としては必要であろうかと考えております。  そこで、そういう面からいきますとこれは入管当局の所掌しておる分野を超える問題もいろいろ出てまいりますので、政府全体として取り組む必要があろうかと思いますが、一方においては、その外国人が本国で就労して、そしてそこで有効な雇用がなされる、こういう機会がつくり出されるということがこの問題について重要であろうと思いますので、そういう点からの諸外国に対する各種の協力ということが一方において政府としては必要であろうと思います。同時に、そういうことを可能にするためにはこれらの国の経済社会の開発ということが必要でございますので、そのための技術移転あるいは人材の育成ということに資する協力ということも必要であり、その面ではこの入管行政にも大いに関係のあるところでございますが、技術移転あるいは人材の育成というものに資する外国人受け入れというものを幅広く行っていくということが有効であろうと思っておりますので、そういう点についての取り組みを今後十分に行ってまいりたいと考えておるとこでございます。
  169. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 ことしになりましてからのベトナム、中国から大挙押し寄せました難民という急変の事情はありましたけれども、法務省の入国管理局の体制の立ちおくれはやっぱり覆い得ないものがございました。人と物と金の流動が国際化の三要素と言われております。そのうち、人の出入りを扱っておいでになるのは法務省入国管理局で、来日する外国人が急増、しかも目的就労のいわゆる不法就労と言われる出稼ぎ労働者も後を絶たない。もともと超多忙なところへ、ことしのベトナム、中国からの難民の大挙入港で大変混乱をしたのはもう御承知のとおりであります。  半年経過いたしました今日でも、職員の皆さんの休日の返上や残業の継続は恒常的になってしまっておりますし、特に沖縄を含む九州全域を担当しておる福岡入管では、応援組の職員は今でも職員住宅での合宿生活が続いておるようであり、また首都圏を管轄する東京入管は、一たん入ってみましたらすぐわかりますくらい人いきれで空調もきかない。廊下にまで人があふれ、日本の行政官庁の大げさに言えば恥部の一カ所になっていると言っても過言ではございません。  在留資格の変更や各種の申請をする目的で来庁の外国人労働者が長時間待たなければならない迷惑や、さらには職員の超過労働等の解消はやっぱり急務な仕事の一つであります。そのためには施設の増強と設備の改善にあわせ人員の増加、わけても語学力の強化でありますけれども、人員不足の中で計画的な語学の研修もままならないというのが現状でございます。豊かな日本の貧しい入管との厳しい批判があります。  頼みの綱は改正入管法だとのことでありますけれども、今審議中の入管案がそれだけ役立つとも思われません。やっぱりお金が必要になってくると思いますし、人の充実というのは大変難しい問題だと思いますけれども、これらをどのようにして解消をしていこうとされておりますのか、御所見を承りたいと存じます。
  170. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま委員から入管当局が直面をいたしております大変困難な状況についての御指摘をいただきました。こういう状況というものは、近年の我が国国際交流活発化ということに伴います入管当局の業務量の急増ということが一方においてあり、さらにまた業務の質の面でも不法就労外国人の増加といったような困難な問題が加わっているということによって、入管当局の負担が一層増しておるということが現実にございます。  また、ただいま同じく委員の御指摘のございました、ことしのボートピープルの急増という事態において入管当局が大変困難な仕事を果たすという立場に立っていることも事実でございます。  そこで、こういう事態に有効に対処するためには、いろいろな方策というものを総合的に組み合わせながら展開していく必要があろうと考えております。現在御審議をお願いしておりますこの入管法改正案もその意味において入国審査手続の効率化ということを一つ重要な柱として掲げているものでございまして、こういう面での法的な整備ができますことが審査手続等における事態の改善ということに効果があるという考えでございます。  同時に、この入管法改正でお願いをしておりますような法体制整備とあわせまして、委員指摘のとおり、人員あるいは施設というものについての努力も必要であろうと思っておりまして、 入管当局といたしまして関係省庁の御理解をいただきながら、現行の人員、施設等についてこれを最大限活用するということにこれまでも努力してまいりましたところでございますが、なお今後について所要の人員の確保、施設の拡充ということ等につきまして鋭意努力をしてまいる所存でございます。
  171. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 今回の入管法改正に関しまして、在日韓国・朝鮮人の間で非常に大きな不安が醸し出されております。私も入管法改正により外国人労働者に関する今日的問題の解決については余り大きな期待は持てないと思っております。それに反し、在日韓国・朝鮮人及び中国人等の法的地位がだんだんと不安定になっていくのではないかということを一番恐れております者です。  例えば、朝鮮半島にかかわる事件が起これば、何の罪もない朝鮮人の子供たちが日本人からいじめられるという現実が示すように、在日韓国・朝鮮人に対する歴史的認識の欠如にあると私は思います。その認識の欠如を示すのは、何かといえばすぐに日本人が口にする朝鮮人は帰れという言葉だと指摘する人もあります。  この人たちがなぜ日本に在住するのか。植民地支配で土地を奪われたり強制的に日本に連行された人々とその子孫であり、戦後日本が独立するとき一時的に国籍を剥奪された等、苦労の中で歴史を刻んできた外国人でありますことを忘れてはならないと思います。日本で生まれ日本で育った第三世代の法的地位も、いまだ不安定なままであるどころか、就職、教育の面の差別も現に存在をいたしております。しかも、この世代はもちろん本国にも生活の基盤はありません。言葉の点でも日本以外に帰るべき故郷はないのであります。この改正案により在日四世代以下はさらに不安定になるのではないかとの心配も十分ありますことをよく理解ができます。私たち日本人はこのことを、すなわち在日韓国・朝鮮人の日本在住のルーツを忘れて政治をやってはならないと思います立場から、次の二点について当局の所信をお尋ねをいたします。  今回の法改正では特に在留資格新設、細分化がなされました。在留期間は三年を上限に法務省令で定める等、省令や告示にゆだねられる部分が多く、その運営実態の把握は困難であり、極めて重要な事項までが法務省の恣意的に行えるようになっていることは不適切だと考えます。  別表第二で、在日韓国・朝鮮人や中国人に関する在留資格永住者永住者配偶者、平和条約関連国籍離脱者の子、定住者として、それぞれ法務省令によって定められることになっておりますが、協定永住第三世代以降の法的地位が明確でない現状のもとで在留資格改正することは、在日韓国・朝鮮人、中国人を一般外国人と同列の資格に置き、さきにも申し上げましたとおりのこの人たち日本に在住する特別な歴史性を抹消する内容を含んでいることに対するこの人たちの不満、さらに無条件永住権を付与されても当然とさえ考えられるのにもかかわりませず、過去の歴史性を忘却、その在留資格を親の婚姻状況を中心に細区分をして、結果的には特別な取り扱いをなくし、すべて改正入管法適用できるようにしたいというのが法務省の本心のように思われます。  当事者にとっては、世代が先になればなるほど在留資格が不安定になることが予想される不安まことに大きいものがあります。これらの当事者の不満や不安は杞憂にすぎませんのか、これらの不満や不安を解消をするとすればどうしたらよろしいのか、法務省当局の本心をお尋ねをいたします。  次に、法改正新設された就労資格証明制度についてです。これは外国人雇用主の罰則、すなわち三年以下の懲役または二百万円以下の罰金の新設と一対になったもので、善意の外国人労働者雇用主の保護が目的と言っておられますけれども、実際に運用されるとすべての在日外国人労働者にこの証明書の提出を要求されることになるかもしれませんし、結果的にはにせ証明書等の横行を許し、零細な労働者からの収奪はもちろん、労働現場の混乱を招くことになるのではないか。  さらには、以前法務省が指紋押捺拒否者に対して登録証明書の交付の制限を指示されたように記憶しておりますが、法務省に好ましくない外国人労働者と思われたりあるいは法務省に盾突くと就労証明書の交付が受けられず、労働権を奪われる可能性すら否定することができませんが、当局が意図されるとおり就労資格証明書が運用されるよりも、意図とは裏腹に就労差別や零細企業者の経営基盤を脅かす結果にならないのかどうかを案じますけれども、所信を承りたいと存じます。もちろん、このことについては衆議院でも一部修正をされておりますけれども、実効が期せられるのかどうか、私はやっぱり危惧の念を持ちますものでございますので、以上をお尋ねいたします。
  172. 股野景親

    政府委員股野景親君) 在日韓国・朝鮮人の方々あるいは旧日本籍の在日台湾出身者の方々等についての問題については、今回の入管法改正案をつくるに当たりまして当局として最大限に配慮を払ったところでございまして、まずこれらの方々が日本社会の中で安定した生活を営めるということが基本的に重要であるという観点に立った法改正案でございます。したがって、そういう意味で今度の改正につきましては十分にそういう配慮を尽くしてございますので、御懸念のような事態、すなわちこの法改正によって在日韓国・朝鮮人等の方々の法的な地位が不安定になるということは全くございません。従前どおりの法的な地位がこれについて確保されるように、今度の法改正においてもその法的な手当てをしてございます。  また、いわゆる在日韓国・朝鮮人の方々の参政問題等につきましては、これは今後の検討課題として政府全体として取り組んでいるところでございますが、ただいま申し上げましたような日本社会における安定した生活ということが確保できるよう、十分の配慮を尽くしてまいる考えでございます。  あわせて、就労資格証明書についてのお尋ねもございました。これも先ほど来の御審議の中における答弁においても私どもとして考え方を申し上げてきているところでございますが、これらの在日韓国・朝鮮人等の方々について、この新しい就労資格証明書というものはその便を図るという観点からの制度でございまして、決してこれが負担になったり、あるいは何かこれが生活上の一つの問題になるというふうな事態をぜひ避けたいと思っております。その意味で関係者、特に雇用主側についてこの制度趣旨を十分に理解願うよう、当方としても広報あるいは関係方面への説明等に遺漏なきを期して臨んでまいる所存でございます。
  173. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 私は朝以来、いろいろお触れになりました事項につきまして、できるだけ重複を避けて御質問いたしたいと思います。  まず、法律そのものに入りますけれども、第六十一条の九、出入国管理基本計画についてお伺いいたしたいと思います。  この出入国管理基本計画の条文が入りましたのは、これは新設でございまして、「法務大臣は、出入国の公正な管理を図るため、外国人入国及び在留管理に関する施策の基本となるべき計画を定めるものとする。」、こういうふうになっているわけでございますが、この条文が新しく入りました趣旨といいますか背景といいますか、その辺についてまずお伺いいたしたいと思います。
  174. 田辺哲夫

    政府委員(田辺哲夫君) ただいま御指摘の法六十一条の九以下でございますが、御指摘のように新設の条文でございます。そして、私はこのたびの本法律案の一部改正におきまして、極めて重要な事項であると認識しておるのでございます。  その構想でございますが、出入国管理基本計画、これは外国人入国在留状況と、これが我が国社会経済及び国民生活、または治安等に及ぼす影響などを総合的に分析して、かつ適正なる関係行政機関との調整を十分に行って、外国人入国在留管理に係る指針や施策の基本となるべき考え方等を定め、これに基づいて適正な外国人入国在留管理を図ろうとするものがこの構想であると思います。
  175. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 条文の内容に入ってお伺いしたいと思いますが、「基本計画に定める事項は、次のとおりとする。」ということで具体的に書いてございます。「本邦入国し、在留する外国人状況に関する事項」、「状況に関する事項」というのは具体的にはどういうことでございますか。
  176. 股野景親

    政府委員股野景親君) これは具体的に、まずその数的な面での入国あるいは在留の実態、さらには今度は質的な面で入国在留目的に応じたそれぞれの外国人の動向というものをとらえる、すなわち数的、質的にこの外国人入国在留状況をとらえるということを意味しております。
  177. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 質的、量的というようなお話がございましたが、それは、例えば昨年はこういうふうな状況内容がこうでございました、あるいはそういう人たちの問題で質的にこういうふうなものでございましたというふうな事項になるんでしょうか。それとも今後の政策的な問題として、入管行政の基本的な方針といいますか、そういうことで質なり量なりそういうふうな問題に触れるということでございましょうか。
  178. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいまのこの第二項の一にございます「状況」という点では、これはむしろその実態的な面を念頭に置いておりまして、ただいま申し上げましたような量的、質的な面での実態ということ、さらにその実態に関連するところの問題と考えられるようなところ、あるいは特徴と考えられるようなこと、さらにはこれに関連する関係各方面のいろいろな意見といったようなもの、あるいはそれの動きといったようなもの、こういう事実的なものを念頭に置いております。
  179. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 わかりました。  それでは次に移りますが、「外国人入国及び在留管理の指針となるべき事項」、これは具体的にどういうことをお考えでございましょうか。
  180. 股野景親

    政府委員股野景親君) こちらの方は第一の事実的関係を踏まえました、まさに政策、施策といった観点からの事項を取り上げることにいたしておりまして、第一の事実関係を踏まえて、そこから考えられるところの我が国政府として対応すべき今後のあり方、施策、こういう政策的な面をここで考えるということでございます。
  181. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 それでは次に移ります。  「前二号に掲げるもののほか、外国人入国及び在留管理に関する施策に関し必要な事項」、これはどういうふうな内容でございましょうか。
  182. 股野景親

    政府委員股野景親君) これは、今度は具体的な施策になりますので、以上のような基本的な指針というものを踏まえて具体的にどういうことが必要になってくるかということについて、まず入管当局側の取り組み方の特に基本的なと思われるような事項について、より具体的な考え方を示そうということでございます。
  183. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 そうしますと、出入国管理基本計画は大臣がお決めになるわけですけれども、政令だとか省令だとか法律だとかいろいろ法体系があるわけでございますけれども、そういうものとの関連においてこの基本計画はどういうふうに位置づけておられるわけでございますか。
  184. 股野景親

    政府委員股野景親君) これは法務大臣関係各省庁の長と協議を行うという意味において政府全体の政策を十分踏まえた内容のものといたしますが、ただ、形式といたしましてはこういう計画という形でありまして、そういう計画という形での公表ということ、これを考えておりまして、各省庁との協議ということを経まして、政策としてあるいは物の考え方として一つの基本的な文章をつくり上げるということでございますが、省令、政令というものそのものについて今考えているわけではございません。
  185. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 要するに、出入国管理についての基本になる考え方だというふうに理解いたしたいと思うんです。  そうしますと、そういう考え方から発して省令だとかあるいはその他の規則だとかというふうなものがつくられる、こう理解してよろしゅうございますか。
  186. 股野景親

    政府委員股野景親君) この基本計画に基づきます次の措置といたしましては、これは具体的には入管局で地方の入管局に対して行います通達という形が一番具体的な姿になってまいると思いす。また、先ほど来の御議論の中にもございましたような、その通達を決める中に例えば入国審査についての基準づくりというようなこともございますが、これもその意味で関係各省庁の協議を経ておりますが、最終的にそれが実施される段階では入管局における通達という形がその実施の姿となるということであろうと思います。
  187. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 今のお話を聞きますと、後でまたちょっと触れたいと思いますが、今度は新しく基準省令をつくられるということになりますね、入国管理の。そうしますと、省令の方が通達より上ですね。ちょっと矛盾いたしませんか。
  188. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 今、審査基準省令とこの計画との関係をお聞きだと思いますが、基準省令は申しますまでもなく、この在留資格の該当性を判断いたします際に、さらに何らかの物差しを設けることによりまして外国人受け入れが適正に行われるような、そういう物差しとしてつくるわけでございますが、こちらの計画は今局長も申しましたけれども、中長期的に我が国出入国管理行政がどうあるべきであるかというようなことをこの内容に盛り込むつもりでございます。  それはどういうことかといいますと、現に存します関係法律、政令、省令等を実施するに当たっての行政上の指針だけではなくて、これは仮の話でございますが、例えば単純労働者受け入れの是非をめぐって近々結論を出していく必要があるという事情が仮にあったといたしますと、それについて当面両三年内ぐらいに結論を出そう、その点で吟味することはかくかくしかじかである、そして結論が出た場合にはこれを公表して世論の批判を仰ぐというようなこともその計画に盛り込むことになろうかと思いますから、そういうふうに行政を変更させていくといいますか、方針を変更させていく過程にあって立法を必要とする計画も入ってくるだろうと思います。  非常に抽象的な言い方で恐縮ですが、例えば政省令を変えていく必要があるような施策が将来像としては盛り込まれることもあり得る、そういうふうにお聞きいただきたいと思います。
  189. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 そうしますと、念を押しますけれども、例えば入国審査基準を変更するということも将来の問題としてあると思いますね。そういうふうなことですと、どっちが先なんですか。基準省令を変えるのが先なんですか、それとも基本計画の改定というか、それが先なんですか。
  190. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 後先の点につきましては、必ずしもそのどちらが先と固定するものではなかろうかと私は思うわけでございます。  例えば、現につくりました基準省令適用している中にあって、いろいろな問題が出てくるであろうと思われます。世論においてもいろんな御指摘が出てくるだろうと思います。もしそうとすれば、その世論あるいはその他の諸事情を踏まえて、将来にわたってこの基準省令の見直しといいますか、見直す方向性といいますか、そういうものも計画の中に大きなものは入ってくるだろうと思います。非常に枝葉末節にわたる基準まではそこに書きませんけれども、入国管理行政の指針となるべき事項だと認められる程度に大きな問題点になれば、その基本計画の中で検討吟味方あるいは問題点指摘等を行って、そしてこれを公表いたしまして一般の国民の皆様あるいは公私の団体からいろんな御意見をちょうだいし、そして最終的にさらに数年後に判断をして方針を決め、その方針で要すれば審査基準を変えたりあるいは法改正にまで持っていくことになろうかと思います。
  191. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 次にちょっと移りまして、「関係行政機関の長と協議する」とありますが、ここで言う「関係行政機関」というのはどういうふうな省庁を予定されておられますか。
  192. 股野景親

    政府委員股野景親君) 入管行政の内容から見まして、外国人入国在留活動という観点で、それがほかの省庁に関係するというところが非常に多いということが基本的にございます。そこでこ の際、ここで述べております関係省庁というものは、それらの省庁の諸政策との整合性を保つ必要がある省庁ということの考え方に立っております。具体的に申しますと、今日入管行政がもう非常に多くの分野において各省庁の所掌する行政と関連するようになってきておりますので、この出入国管理基本計画全体としてはまずほとんどの省庁が関係省庁として含まれてくることになると考えております。
  193. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 もうほとんどの役所が入るんじゃないだろうかというお話でございましたが、その次に、計画を定めたときは概要を公表するものとする、これは当然のことでいいことだと思うんです。変更についても関係行政機関の長と協議するというふうになっております。必ずしも直ちに予測ができないかもしれませんけれども、大体何年に一遍ぐらい計画を修正するとか、あるいは具体的にこういうふうな事件が、ケースが起きた場合に基本計画を修正しますとか、その辺のお考えはいかがでございますか。
  194. 股野景親

    政府委員股野景親君) これは、実はここの第六十一条の九の中の二項の一にございました先ほどの事実関係のところとも関係をしてくるわけでございますが、まさに「入国し、在留する外国人状況」を含めました入管行政をめぐる諸情勢の変化ということとのにらみ合いでこの計画をどのぐらいの頻度でつくっていくかということを考えていくべきものと思っておりまして、今の時点で申し上げますと、およそ三、四年ごとをめどにつくっていくということでございますし、もしその間に何か非常に大きな影響を与えるような新しい事態というものが生じましたらば、そういうときにはその計画の一部を変更するというような形での対応をしていくということでございます。  また、その変更について関係省庁と協議をするということは、ただいま委員が御指摘のとおりでございます。
  195. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 出入国管理基本計画の問題と関連いたしまして、今度は七条の関係で聞いてみたいと思いますが、「入国審査官の審査」ということになっております。  午前中、北村委員から質問があったことにも関連いたしますけれども、法務省令審査基準を決めるということで、それが公表されるわけでございますから、そういう意味で私は前進であると思うのでございます。  そこで、ここで言う審査基準、これは「我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して」云々ということになっておりますけれども、先ほどの政務次官の御説明によります基本計画をつくる場合の説明とダブっていますね。一緒ですね。その辺のところはどういうふうに理解すればいいんでしょうか。審査基準の中にも同じようなことが書いてある、基本計画の中にもそういうようなことが書いてある。ですから私の質問は、基本計画でそういうような考え方を受けて審査基準ができるのかという質問をさっきちょっといたしましたけれども、どういうふうに理解すればいいわけですか。
  196. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) まず審査基準の方でございますが、これは御承知の今度一覧表の形式にいたしました在留資格一覧表の中の別表第一の二と四について定めるわけでございますが、これはその在留資格の該当性その他上陸を認めるかどうかを判断するに当たりまして、第一線の審査官が簡単に判断ができるようなスケールといいますか、定規を与えてあげようということでございます。しかしながら、この定規をつくります場合に、先ほど来も御議論ございましたように外国人日本国内における在留活動多岐にわたり、かつ日本人並みに非常に意味深い、社会的な意味のある活動をされることが多くなりましたので、その物差しをつくります場合にも、当然のことながら外国人受け入れた場合における日本社会への影響、どういうふうな影響があるんだろうか、あるいは悪い影響を避けるために物差しをどの辺に設定すべきであるかというような観点から関係省庁と協議をして決めるわけであります。したがいまして、この在留資格の活用といいますか、適用に当たっての物差し的なものだと御理解いただきたいわけです。  それに対しまして基本計画は、入国管理行政の中長期的な視点に立っての指針的なものを求めて、そして中長期的に指針を出しておきまして、公表し、国民の皆様からの御批判を受けて入国管理行政の適正な方向性を求めておき、かつ具体的な個別案件ごとの審査についてはその精神を生かして遺憾のない行政をしたい、こういうふうな考えでつくったものであります。
  197. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 私はそうだろうと思うんですが、そうしますと午前中の北村先生の質問に返るわけですけれども、基本計画については六十一条の九の五項で「計画の変更について準用する。」、こういうふうにされている。あのときの御説明ですと、しばしばある場合にああいうふうなことで読み込んだのだというふうなお話でございましたが、それを受けて基準省令をつくるんだ、それは書いてないんですね。御説明が矛盾しませんか。
  198. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 例えば法令を定める場合に関係省庁と協議するという場合、そういう実態をとらまえて立法化いたします場合に、その法令の制定、改廃すべてを含めて、まあ廃止はないかもしれませんけれども、改正について関係省庁と協議するという書き方もございますし、それから法令を制定するに当たってといいますか、定めるに当たっては関係省庁と協議するという表現ぶりもございまして、審査基準はおおむね一度決めますと相当程度の政策の変更がない限りにおいては余り変更はなかろうかと考えておるわけでございます。したがいまして、その定めるといいますのは改正を含めて、要するに改廃といいますか、旧基準を廃止して新基準をつくる場合も当然それで読み込めるだろうと考えております。ところが今度は変更と書きました場合には、これはわざわざそう書いたのは、その内容が非常に中長期的なものであって重みがあるといいますか、要するに実務において使う物差しというものではございませんで、全くの基本的な指針等でございますので、変更も念のために書いておるということであります。したがいまして、事柄の性質が若干違いますので、いずれも改正のときには関係省庁と協議することになろうかと思います。
  199. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 「入管法改正について」ということで法務省の入国管理局からいただいた書類を読んでみたんですけれども、「「出入国管理基本計画」の策定」の説明の中で、いろいろ書いてございますが「総合的に分析し、外国人の主要カテゴリー別に、出入国及び在留管理にかかわる指針や施策について明確な基本的考えの下に」云々と、こう書いてある。そうしますと、こういうようなことはないだろうと思いますが、非常に管理国家みたいな形になりますと、自由な国際交流というものがそういうふうな一つの国の計画に左右される。計画自身が非常に視野の狭いかたくななものになれば、ある特定の国からはもう入国させないとか、いろいろなことが考えられるわけですけれども、そういうふうなきつい方針なり何なりというのが出て、それで基準省令とか出ますと、実際には国際的に孤立するということにもなりかねないような懸念がないわけでもないんです。まあ、そういうふうなことはないと思いますけれども、その辺のことについてひとつ基本的なお考えを承りたいと思います。
  200. 股野景親

    政府委員股野景親君) これは先ほど来、米澤審議官からも御説明申し上げておりますように、中長期的な観点で大どころをとらえるというのがこの基本計画でございますので、決して隅々に至るまで細かい規制を課するということをこの基本計画をもって考えているわけではございません。したがって、ただいまの御指摘のような事態というものは私どもも想定しておりませんし、またそういうことにはならないと考えております。
  201. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 それでは、次のテーマに移ります。  いわゆる入管法違反の摘発なりあるいは検挙に関連いたしまして、罰則の問題に入りたいと思い ますが、過去二年ぐらいで結構でございますから入管法違反として摘発された件数を教えていただきたい。
  202. 股野景親

    政府委員股野景親君) 入管法違反として摘発をした件数でございますが、過去二年となりますと、昭和六十二年の入管法違反の件数が一万四千百二十九件、それから昭和六十三年で一万七千八百五十四件となっております。
  203. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 そのうち資格外活動、それから資格外活動絡みの不法残留の数がおわかりでしたらお示しいただきたいと思います。
  204. 股野景親

    政府委員股野景親君) これは二つ、別に統計をとっております関係で申し上げますと、資格外活動そのものとして摘発をしましたのは、昭和六十二年で三百七十二件、昭和六十三年で八百三十九件と、こうなっております。他方、不法残留という形で摘発をいたしました件数は昭和六十二年で一万二千七百九十二件、昭和六十三年で一万五千九百七十件となっております。
  205. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 それから、今度は犯罪白書、平成元年版によりますと、特別法犯の検察庁新規受理人員ということで、出入国管理及び難民認定法違反というのが昭和六十二年に九百三十八件、六十三年に六百十四件、こういうふうに出ているわけでございますが、この数字は間違いございませんですね。
  206. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 手元に犯罪白書を持ってまいりませんでしたが、数字は当然のことながら関係当局とすり合わせをしておりますので、間違いないと思います。
  207. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 そこで伺いますけれども、入管法違反ということで摘発という言葉がよく出ているわけでございますけれども、摘発という言葉の実態をひとつ御説明いただきたいと思います。
  208. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 私どもが法違反者の実態を探知いたしますとか、あるいは情報を得ますと、その実態を調べるために警備官を派遣するわけでございますが、その際、その違反事実を発見いたしまして、違反者を特定して、そして入管法違反者としてしかるべき法的措置をとるという行為全体を我々は摘発と申しております。言うなれば、刑事捜査で言えば検挙というような感じで使わせていただいておるものであります。
  209. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 そうしますと、その摘発という言葉の実態は、一つは退去強制、一つは仮放免というふうに理解してよろしゅうございますか。
  210. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 一つは退去強制というのではなくて、仮にオーバーステイなり資格外活動なりの違反を摘発いたしました場合には、委員御承知のとおり退去強制手続が進行させられます。その中にあって身柄を拘束しておく必要がない人たちを、刑事手続で言えば保釈みたいなものでございますが、仮に放免をして在宅のまま手続を進めるということになりますので、一方において仮放免があり、一方において退去強制対象者があるという数字の振り分けはなかろうかと思うわけでございます。
  211. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 そこで、今回の罰則についてちょっと御質問いたしたいと思うんですけれども、その前に最近の退去強制の実績、二年ぐらいございましたらお伺いいたします。
  212. 股野景親

    政府委員股野景親君) 過去の二年間、また昭和六十二年でございますが、送還しました件数が一万三千七百七十一件、それから昭和六十三年は一万七千百五十七件となっております。
  213. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 入管法違反で検察庁の受理件数というのが、昭和六十二年が九百三十八件、昭和六十三年が六百十四件ということで若干減っておりますが、大体三けたですね。退去強制が一万三千から一万七千、五けたという実態の御説明があったわけでございますが、先ほど橋本先生の御質問とちょっと私は違うんですけれども、いわゆる専ら明らかに不法労働行為だとこれは三年以下ということで退去強制の対象になっている。そして専ら明らかでないものが一年以下というふうなことになっています。それから、そういうふうな者を雇った、もちろん事業に関して雇ったりあっせんしたり何だかんだというのが三年以下で、罰則は非常に高いですね、二百万円以下という形になっている。そういうふうな体系ですね。  今、退去強制された件数が一万七千とか一万三千とかいう数字、それから退去強制以前の、入国を認めなかった者もやはり五けただと思います。一万数千人ぐらいずついるはずです。そうしますと、本法で罰則の適用を受けるような行為を行った者、本法で、今この審議している法律でですよ、罰則の適用を受けた者が退去強制の対象にならないというのはどうも私は理解できない。一年以下のものですね、そういうふうな刑罰の適用を受けなかった人たちで、もちろんオーバーステイなり何なりというのは三年以下になっていますからどんどん退去強制の対象になっているんだけれども、この入管法違反で検挙された者が退去強制の対象にならないというのがちょっと理解できないんですが、その辺のところはいかがなものでございましょうか。
  214. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 今委員の御指摘の、七十三条で処罰された仮に不法就労外国人がいたといたしますと、退去強制規定の二十四条では対象者にならないことになっております。それは一年を超える刑を受けない限りは退去強制手続の対象にならないからであります。  これはどういうことかと申しますと、我が国に正規に入ってまいりまして、たまさかこの七十三条違反をして検挙され、そして刑事処罰の対象になったとしても、その方が日本国で活動するという権利までも完全に奪ってしまうのはいかがかというような事案がございますために、現行法におきましても七十三条、これは法定刑を今回上げますけれども、現行法では六月以下の懲役でございますが、同じような違反をした場合でもやはり退去強制の対象にはしていないわけでございますから、現行法の考え方をなお踏襲したいというのが当局の考え方でございます。もちろん、委員指摘のようなお考えも一つのお考えかと考えます。
  215. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 この辺はなかなか議論の存するところでございますが、この程度にいたしておきたいと思います。  若干まだ時間がございますので、それでは在留資格の問題に入りたいと思います。  第二条の二によりますと、在留資格について、原則として三年を超えない範囲内で、法務省令で定めるということになっております。「各在留資格について、法務省令で定める。」。この場合、これは別表の第一の在留資格によって上限が決まるんでしょうか、決まらないんでしょうか。あるいはまた、本人の申請によってあなたは何年ということが決まるのでしょうか。
  216. 股野景親

    政府委員股野景親君) まず、各在留資格についての基本的な考え方としては第二条の二の第三項で書いてあるわけでございますが、そこで今度は各在留資格ごとのものについては、これは各在留資格ごとにその在留資格趣旨あるいは活動内容等を踏まえまして、それぞれ上限を定めました上で、その範囲内で今度は具体的に申請者の申請内容等を考えた上で期間を決定する、こういう考え方で臨んでおります。
  217. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 細かい話ですが、第四条を削除して、そして第二条の二を設けられたんですね。前の第四条は「在留資格」になっているわけですが、第四条を削除して第二条の二を新たに設けられたのは何か特別に理由があるわけですか。
  218. 股野景親

    政府委員股野景親君) 今の四条の点につきましては、これは上陸審査という観点で四条規定がございまして、いわゆる「外国人上陸」というところでこの四条現行法においては設けられているわけでございます。しかし本来、在留資格というものは、入国在留についての基本的な枠組みということがございまして、そういう意味で総則規定として定めることが適当である、こういう考え方がございましたので、そこでそういう基本原則ということに関連してきますところの現行法四条の「在留資格」の方、それから十九条に今度は「在留」という形で設けてあります内容がございますので、この辺をまとめまして、新しく総則規定として二条の二という格好で独立させたと いうことがございます。
  219. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 在留資格の表示が、従来よりわかりやすいようにパスポートに記入されるようになるというふうに伺っておるわけでございまして、それは非常にいいことだと思います。そして、従来より細分化して別表でいろいろ決められたわけでございますが、なおかつ特定活動として法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動というふうになっているわけでございますが、具体的にはどういう、非常に狭くなったということは逆に言うといいことだと思いますけれども、なおかつ、まだどういうふうなことが予定されるといいますか、考えられるか、お伺いいたしたいと思います。
  220. 股野景親

    政府委員股野景親君) これは先ほど来の御審議の中でも御説明申し上げましたが、外国人在留活動というものが非常に多様化しているという状況のもとで、それに柔軟に対応するということから、一つこういう規定を設けまして今後の事態に対応しようとしておるわけでございます。それで、全部の類型を掲げるということが難しいという点が一つあるわけで、そうすると、それじゃ今の新しい特定活動というもので何が考えられるかということになりますと、当面念頭にございますのは、例えばいわゆるワーキングホリデーというような目的在留する人たち等が考えられると思います。
  221. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 それでは次に移ります。  七条の二です。「在留資格認定証明書」、これは先ほども質問があって、説明を聞いていたんですが、この条文を素直に読みすと、「法務大臣は、法務省令で定めるところにより、本邦上陸しようとする外国人から、あらかじめ申請があったときは、当該外国人が前条第一項第二号に掲げる条件に適合している旨の証明書を交付することができる。」となっております。この条文によりますと、「本邦上陸しようとする外国人」ですから、外国にいる、日本にいる人じゃないということが予定されるわけでございますが、そうしますと外国公館で受け付けないということになるわけですが、その辺のところはどういうふうに理解したらいいんでしょう。
  222. 股野景親

    政府委員股野景親君) この点、ただいま委員指摘のように、「上陸しようとする外国人」で、将来のことを考えておるわけでございますが、本人が申請するということになりますと、例えば考えられます事態としては、自分がこちらである就労活動をしようという場合に、実際にその就労活動が自分にとって十分意味のあることかどうかということを本人自身がまた確認したいという気持ちもあろうかと思いますので、そういう場合に一たん短期滞在という形で日本へ来て、自分が次の機会に日本に来るときの就労活動をあらかじめ十分に見きわめた上で、そして出直すということが考えられると思いますので、そういう状況のもとで、本人があらかじめそういう手続を日本の国内で短期滞在をしている間に行っておけば、その次に来るときの手続きが簡易化される、こういう考え方に立っております。
  223. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 今の答弁はなかなか苦しい御答弁だと思いますがね。実際は、二項の「前項の申請は、当該外国人受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める者を代理人としてこれをすることができる」、ほとんどがこういう形になるんじゃないかと思うんですが、いかがでございますか。
  224. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 委員指摘のとおりでございまして、観光等の短期滞在を除きまして日本にいろんな在留資格でおいでになる外国人の方は、おおむねというと非常に粗っぽい話ですが、おおむね本邦のつてを求めておいでになります。例えば雇い主があらかじめ決まっているとか、あるいは留学先が決まっているとか、そういうことでこちらに当てのある代理人が必ずいてくれますので、それで事前審査が機能しておると。現在の事前審査制度もそれでやっております。そうしませんと、午前中に局長が申しましたように現在のビザ申請と同じような手順を手数をかけてやらざるを得ない。それでは何にもならないということでございますので、本邦におる代理人を期待しておるというのが実態でございます。
  225. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 それでは次に移ります。  乗員の上陸許可制度でございますが、数次の乗員上陸許可制度適用ということについて、これは双務主義の原則は適用なさらないのか。なさらないとするならば、その理由をお伺いいたしたいと思います。
  226. 股野景親

    政府委員股野景親君) 乗員の上陸許可制度というものは、各国、国によっていろいろ違っておるという状況がございまして、必ずしも日本制度と同じ制度を採用していない国もあるということがございますので、今度の数次乗員上陸については、相互主義ということはそういう意味で適用をしないという考えをとっております。
  227. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 次に十九条の在留の問題に入りますが、十九条二項です。「法務大臣は、別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者から、法務省令で定める手続により、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動の遂行を阻害しない範囲内で当該活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことを希望する旨の申請があった場合において、相当と認めるときは、これを許可することができる。」。そこで、「法務省令で定める手続により」というのはどういうふうなことを予定しておられますか。
  228. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 原則といたしましては、どういう書式でどういうふうな申請をするかということをここに書くわけでございまして、例えば地方管理官署において所定の様式に従った申請書を提出し、そして審査を受けて、許可をとるというような手続を書くつもりでございます。
  229. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 次に、「相当と認めるとき」、これが大変問題だろうと思います。先ほどもいわゆるアルバイトの時間数なんかが問題になりましたけれども、「相当と認めるとき」は、これは法務大臣が認めるわけでございますけれども、これは法務大臣の自由裁量でございますか。
  230. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 自由裁量ということになりますが、この「相当と認める」という文言、法令にはよく使われますが、これだけでは意味が非常におわかりにくいかと思います。つまり外国人在留資格制度に従って日本在留しておりますので、与えられました在留資格本来の在留活動、それが阻害されない範囲内においての資格外活動の許可が原則になりますし、それから留学生や就学生について申し上げますと、学業を続けている人にとってふさわしくないような業種でアルバイトするというようなことは、これは相当でないというふうな、そういういろんな基準を部内的にはつくりまして、許可したり許可しなかったりしていくことになろうかと思います。
  231. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 そこで、手続の問題に戻るわけでございますけれども、これは本人からの申し出に限るわけですか。あるいは例えば日本語学校だとか、あるいはまた事業所ですとか、そういうふうなものからの申請も認めるということでございましょうか。
  232. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 原則は本人申請を予定いたしておりますが、例えば行政書士の方で取り次ぎの仕事をなさるような専門的な仕事を持っておられる方が取次申請においでになれば、それは当然できるだろうと思います。  それからもう一つ、余分なことを申し上げて恐縮なんですが、留学生、就学生につきまして、アルバイトしたい、そのための在留資格外活動の許可申請の場合に、何らかの便宜な方法も考慮して学業に影響しないような方法も考えたいと思っております。
  233. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 それでは十九条の二、就労資格証明書、これにつきましては衆議院の方で二項が修正で入っておりますけれども、これは新設ですが、この条項を新設した趣旨といいますか、その辺を御説明いただきたいと思います。
  234. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 地球がますます小さくなりまして、我が国へおいでになる外国人の方が、地球の隅々からおいでになります。つまり日本社 会においでになっても日本語が十分お話しになれないというようなこともございまして、例えば就労できる在留資格を持って日本においでになっても、就職先等における説明が十分にできない、そういうことではその方の就労活動といいますか、仕事がうまくいかないこともあるだろう。あるいは雇い主において当該外国人が果たして就労できるかどうかということを知りたいと思われる方もあるでありましょう。もしそうとすれば、在留資格の中で働くことが認められている在留資格を持っている人が入管局においでになりまして、何か説明資料をつくっていただけないかというようなことをおっしゃることもあるだろう。つまり、電話でよくお聞きになられますが、それでは十分でございませんでしょうから、行政サービスの一環としてさようなものをつくってあげてはどうだろうかというのが立法の動機でございます。  しかしながら、御承知のように、この就労資格証明書の利用の仕方いかんによっては、外国人の就職差別とかあるいはいろんなことでマイナス点が多いというような御意見もございますので、衆議院法務委員会で二項が修正としてつけ加えられた次第でございます。
  235. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 就労資格証明書という新しい制度が採用されようとしているわけでございますし、衆議院の方でもいろいろ懸念があってこのような修正が入ったことだと思うのでございますが、今お話しのとおりに、こういうふうな証明書がいい方向に働けばいいわけでございますが、それが差別なり何なりに作用するというふうなことになったら立法の趣旨も逆さまだろうということでございます。その辺につきましては、十分ひとつ法務省としても関心を持って、方法なり指導なりをやってほしいと思うのでございます。  最後に、大臣もお見えになりましたので、大臣の所見をお伺いいたしたいと思いますが、当委員会でもいろいろ議論がございました。そして、先ほども同僚議員から質問もございましたが、難民問題等を初めといたしまして出入国管理行政というものが今や国際的にも大変関心を持たれているわけでございます。そして、入国管理体制が国際的に見て大変弱いんじゃないかということが指摘されておりますし、先般の予算委員会におきましても、私から大蔵大臣あるいは総務庁長官等にもお願いをしたいきさつがあるわけでございますけれども、ぼつぼつ予算の時期にもなるわけでございますから、増員その他について格段の御努力をしていただきたいということ。  第二点目には、今議題になっております入管法改正の問題でございますが、新しい内容がたくさん入っているわけでございます。そして、それだけに新しく仕事を始めようとする法務省を初めとする関係行政機関の責任も非常に重いと思うわけでございます。最初にお伺いいたしましたように、基本計画なり何なりというふうなものも策定されまして、そして日本の行政を統一的に総合的に運営していこうという姿勢はすばらしいわけでございますが、しょせんはやはり、それを運営する人の問題でございます。人の問題というのは、とりもなおさず現場の人たちの問題になると思うのでございます。どうかひとつ、この法律案が成立いたしましたならば、その辺の趣旨を末端まで徹底していただきまして、さなきだに難しい法務行政、入管行政でございますが、そういうところを克服されまして、国際的に何といいますか、大げさな表現をいたしますと一つの岐路に立っておるんじゃないかと思われるぐらいな大事な仕事でございますので、その辺についての大臣の決意をお伺いいたしたい、このように思います。
  236. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) お答えいたします。  ただいま下稲葉委員から御指摘のございましたように、出入国管理行政の今後のあり方というものは、単に日本国にとって非常に重要な問題であるばかりでなく、諸外国からも非常に注目をされております。したがいまして、出入国管理行政の今後のあり方というものにつきまして、今一つのやはり岐路に立っていると、まさにそのように思っております。私どもはできるだけこの行政を強化いたしまして、国際的にもより一層信頼を得ることのできるような体制をつくりますために鋭意努力をする決意でございます。  なお、出入国管理基本計画は、外国人入国在留状況と、これが我が国経済や国民生活に及ぼす影響などを総合的に分析し、また関係行政機関との調整も十分に図りまして、外国人入国在留管理にかかる指針や施策の基本となるべき考え方等を定めまして、これに基づいて適正な外国人入国在留管理を図ろうといたすものでございます。何とぞ、この法律趣旨を御理解いただきまして、この法案の成立いたしますように皆さんの御努力をお願いを申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
  237. 紀平悌子

    紀平悌子君 初めに、大変お疲れのところを申しわけございませんけれども、ただいま法務大臣の所信はお伺いしたところでございますが、私なりにいま一回お伺いしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。  御案内のように、現在の日本経済的な交流、そしてアジア諸国の発展の経済的な立ちおくれと政治的な不安定性、それらのために日本に移住あるいは職を求めて移動してくるという現実がここにございます。国際的、人道的な見地からこうした方たちに、無制限とは言えませんが、現在の存在する場所を提供していくということが、文明国であり、先進国であり、そして債権大国と言われている日本の責務ではないかと思います。また、それが憲法の要請である基本的人権尊重、国際協調主義、平和主義等の諸原則にもかなうものではないでしょうか。  以上のような点を踏まえて、いわゆる経済移民に対して何らかの人道的な配慮をなすべきときにきております。遅過ぎると思います。まさに、法務省こそがそのリードの役を果たすべきと考えておりますが、法の守り手の法務大臣として、この視点に立っての御見解をまず伺わせていただきたいと思います。
  238. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) ただいまの紀平委員の御意見のとおり、諸外国から今我が国に多数の人たちが入りつつございます。このことは、日本経済の繁栄というものが諸外国の注目を浴びている、そういうことの影響もあろうと思いますので、そういう人たちのお気持ちについては私どもも深く理解をいたしているつもりでございます。しかしながら、やはり法治国でございますので、法律に照らしてこの問題の処理をしなければならない。また、入国してくる人たちが違法的な出国をしてきているような場合におきましては、その国の法律にも触れるわけでございますから、この点につきましてはやはりけじめをつけておきませんと、今後この問題をいつまでも後に残してしまうということになりますので、こういうけじめはつけながら、しかし日本入国をさせることが適当だと思う者については、今まで以上に積極的に入国を認めるような配慮をしなければならないというのが今回のこの法律改正趣旨でもございますので、ただいまの御意見は十分頭に置きましてこの法案成立後にはその運用に当たりたいと思っております。
  239. 紀平悌子

    紀平悌子君 建前というものが当然政治になくてはならないということは存じております。また、法治国であればそれに従わなければならないということも十分承知した上で申し上げますと、やはり法と現実との間にあるものがございます。その一つが、先ごろの委員会でも話題になりました難民の問題だと思います。  山田先生が既にお述べになりましたので具体的な部分だけ御質問申し上げたいと思いますけれども、難民問題につきまして、偽装難民という名で漂着した本年十一月二十九日までの漂着総数、その処理費用の総計、あるいは送還状況等はどういう状況になっておりますか。具体的にお聞かせいただきたいと思います。
  240. 股野景親

    政府委員股野景親君) ボートピープルとして本年我が国に到着しました者、これは本年十一月二十九日現在までで三十八件、三千四百九十八名、こうなっておりますが、その中で偽装難民の中国 人と判明をいたしまして入管法に定める不法入国者として収容を行った者は千六百六十四名になっております。この中で退去強制令書というものを発付した者につきましては、これは順次中国側に引き取り要請というものを行っているところでございます。  この中国に対する送還ということにつきましては、現在中国側と協議中でございまして、まだ最終的な合意というものは得られていない状況でございますが、我が方といたしましては本年十二月中には第一回送還を行う、こういう方向で現在、具体的な送還の時期、送還の方法というものについて中国側と折衝中でございます。  その処理の経費という点でございますが、これはこの問題に関連しまして本年十月三日閣議決定をいただきました予備費の使用につきまして、約十二億円というものが認められております。
  241. 紀平悌子

    紀平悌子君 偽装難民と言われる方々の漂着をされました地方自治体が負担した実費がございます。前回も質問申し上げましたけれども時間の関係で詳しくはお答えいただけませんでしたし、まだ途中でございましたので確認がございませんでした。例えば船の焼却費ですとか処分費ですとか食費、人件費、テント代、医療費までございます。これは前回のお答えでは、それが難民であればの話ですが、難民高等弁務官事務所でその衝に当たるということでございましたが、今のお話でございますと日本政府による支弁ということでございますが、年内までに、今十二億という予備費を伺いましたけれども、具体的にどの程度進められますでしょうか。私がたまたま、ほかのもちょっと存じ上げておりますけれども、熊本県牛深市のその当時請求されました費用でございますが、約一千万円、九百十三万六千二百三十二円。これにつきましては、まだけさほどのニュースでは返還というか償還されてないというふうな市長さんのお話でもございましたので、ちょっと心配をいたしております。
  242. 股野景親

    政府委員股野景親君) まず、経費の点でございますが、いわゆる難民としての可能性を持って日本に到着をするボートピープルの扱いについて、先般、国連難民高等弁務官事務所側との話し合いを行った結果、ただいま委員指摘のような食糧費、医療費あるいは難民船の焼却経費等、こういうものについて原則として国連難民高等弁務官事務所側が負担をしていくということで了解を得ておるわけでございます。  他方、先ほど申し上げました本年の十月三日の閣議決定における予備費の支出というものは、これは不法入国者として扱うべき偽装難民についての収容に要する費用。これは従来、こういう者についての収容施設として法務省が有しております大村の入国者収容所の施設が非常に限られているという状況がございますので、そういう施設の拡充等に要する経費がこの中に考えられているわけでございます。したがって、ただいまの牛深市等の経費の補てん手続というものについては、これは別途内閣の中に設けられておりますインドシナ難民対策連絡調整会議の事務局が窓口となって対応をするということになっておりますので、先ほどの閣議の決定をいただきました十二億円の予備費というものは、既に偽装難民として不法入国者としての取り扱いを行うべき者についての収容等に要する経費という内容でございます。    〔委員長退席、理事白浜一良君着席〕
  243. 紀平悌子

    紀平悌子君 年末でもございますし、できるだけ早く、また小さな市町村にとりましては一千万、たかが一千万ではなくてされど一千万でございますので、よろしくお願いをしたいと思います。もちろん他県の場合、他の町村の場合も同じでございます。  そこで、あれからも難民の漂着がございました。今後、例えば暮れから来年新年にかけまして難民の漂着というのが後を絶たないというような場合も考えられますが、平成二年度の予算要求上どのような例えば収容施設増設についての費用をお見込みでございましょうか。
  244. 股野景親

    政府委員股野景親君) この点、ただいま委員指摘のとおり、今後について今考えるべき時期にあるわけでございますが、なかなか今後のボートピープルの漂着状況についての予測を立てることには難しい面がございます。先般の九月十二日の閣議了解に基づきまして、日本としてボートピープルに新しい審査方式を適用するということを内外に明らかにしております。こういうことが一つ、今後に対する効果というものもあろうと思います。他方、中国から来た偽装難民についてはこれを送還するということが近々にも実現できるという状況でございますので、そういうことの効果が今後出てまいると思います。したがって、我々としては確たる予測を立てるということはまだ十分できない状況でございますが、また今後についてなお予断を許さないという気持ちで対応をいたしておりますが、来年の具体的な予算の準備については目下そういういろいろなことを考えながら検討をしているという状況でございます。
  245. 紀平悌子

    紀平悌子君 新たな仮収容施設候補地を設定なさいましたところ、一部の地元の方々とトラブルがあったというふうなことも伺いましたけれども、そのようなことがないように、また住民の方々に対するいわゆるインフォメーションというか、そういうのを十分に図っていっていただきたいというふうにお願いをいたします。  続いて、きょうの審査本題に入らせていただきたいと思います。  まず、経済地位あるいはさまざまの条件がまだまだ男性に劣っております女性の人権保護、人権を守る立場から、日本不法入国した者のうちの婦人の占める割合、人数、そしてその実態はどういう状況でしょうか。把握していらっしゃる限りで簡単で結構でございますので、よろしくお願いいたします。
  246. 股野景親

    政府委員股野景親君) 不法入国をしている外国人の女性の方たちについての御質問にお答えする前に、一言先ほどの、今後のボートピープルに対する問題として新たな収容所候補地の設定という点の御指摘がございましたが、現在入管当局としては新たな収容所の候補地を設定したと、こういうことはございません。    〔理事白浜一良君退席、委員長着席〕 したがって、そういう意味で地元側に何かトラブルがあったというようなことはなくて、一つそれに関連して、あるいは委員が御念頭に置いておられるのは、たまたま法務省の職員が大村センターの状況を視察した際に近くの炭住の跡地を見学させていただいたということがありましたけれども、これは決してその候補地としてそういう訪問をさせていただいたことでは毛頭ございませんので、したがってそういう候補地を設定したということはないということを一言まず申し述べさせていただきます。  それから、御指摘の点でございます。  これは女性の不法就労という問題からお答えさせていただきたいと思いますが、昭和六十三年中に摘発を行いました女性の不法就労者という人たちの数は五千三百八十五名という状況になっておりますが、この人たちのほとんどが近隣のアジア諸国の出身ということになっておりますし、またその稼働内容を見ますと、大部分がいわゆる風俗関連業種ということになっております。そしてこういう人たちに関連して、悪質なブローカーとかリクルーターというようなものが関与するというケースが多いので、こういうものについてぜひこれは防止をしなければいけないという観点から取り組んでいるところでございます。
  247. 紀平悌子

    紀平悌子君 いわゆる三キ労働、例えばその中の例で中小零細企業で人手が不足ということがございます。先ほども同僚委員から既に御質問がございましたけれども、日本人の若年、壮年の労働者がなかなか就労しなくて、さりとて高齢者では勤まらないという職種がいろいろございます。例えば埼玉県の川口市のように、外国人のいわゆる単純労務の提供なしにはとても成り立たないという例もございます。  新設の七十三条の二の罰則規定がございますが、これについての質問は後に回しますけれども、 この七十三条の二で一刀両断をされてしまいますと、この雇用者処罰そのものでその事業が成り立たないということにもなりますし、また、例えばその川口の例でいきますと、そこの地場産業というものが非常に衰えるということにもつながります。倒産ということにもつながるかもしれませんので、この辺、労働法的なアプローチがやはり要るのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  248. 股野景親

    政府委員股野景親君) まず、この不法就労者を雇用などをするということは、現行法のもとにおいても基本的には許容されないということでございますので、そういう点で従来から適正な活動を行っておられる方々、これは中小企業の方々も含めまして、そういう方々については今度の法改正というものは特段の不都合をもたらすということはないと考えております。  また、労働法規の点の御指摘がございましたんですが、労働法規というものは主として労働者の保護や雇用関係の調整ということを主たる目的としておるという観点から、そういう観点での目的を実現するために必要な限度で罰則をその中で設けているということでございますので、この入管法上の目的を達成するというための手段としては、これらには不備や限界というものもございまして、そういう意味で労働法規をもって現状に対処するというのにはやはり困難があると考えておる次第でございます。したがって、こういう新しい規定入管法の中に設けるということにいたした次第でございます。
  249. 紀平悌子

    紀平悌子君 労働法現をと申し上げたのではなくて労働法規的と申し上げましたので、ちょっとお改めいただきたいと思います。  罰則についてでございますけれども、新設七十三条の二につきましては、先ほど法律の御専門の北村委員橋本委員から種々御質問がございましたので、ほぼ了解したように思えたのですが、まだ素人の私にはこの七十三条の二について何か納得できないところがございます。  それは、やはり懲役最長期三年、罰金最多額二百万円というその言葉が与える重みというか影響なんですけれども、これは先ほどのお答えでは、まともなところにはこの罪は適用をされないから実際は大丈夫なんだというふうな局長のお答えがあったかと思いますが、それではこういうふうな罰則をなぜここに特にお設けになったか。先ほど法律的ないろいろ経緯とかそれから整合性の問題は十分に伺ったように思いますので、これでどういう利益が生じるか、これは社会的あるいは法的といいますか、利益を生ずるとお思いになったか、端的に一言で結構でございます。
  250. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) お答えいたします。  この七十三条の二と申しますのは、新たに外国から不法就労をしたいとする外国人を引っ張り込んでくるような、簡単に言えば不法就労外国人の増加を助長するような行為をとにもかくにも阻止しようという目的でできております。したがいまして、ブローカーとか雇用主の中には非常に犯情悪質なものもございますためにこの三年以下という法定刑を決めたわけでございますが、専ら不法就労をやっている外国人自身に対する罰則ですら現行法上三年以下になっているわけでございますから、当該本人がやむにやまれず働いている、それを利用して金もうけをたくらむという方がより犯情が悪かろうと思います。したがいまして、行為者本人よりはさらに雇用主の方に法定刑を横並びにしたということでございまして、不必要に重いとは私考えておりません。  それから、じゃ何が法的に利益が上がるかとおっしゃいましたが、けさ来ずっと問題になっております不法就労を取り巻くいろんな人権侵害事犯とか陰湿な労働搾取とかを含めまして、不法就労にまつわりついておりますいろんな反社会的行為がこの罰則によってある程度抑えられるのではないかということを期待しております。
  251. 紀平悌子

    紀平悌子君 悪質ブローカーあるいは悪質雇用者というものと、単純にというとあれですけれども、先ほどもお話に出ました、知らないでしてしまったとか、あるいは単純にお願いしますということでしてしまったというのが一律に、私の読み方が違うかもしれませんが一律にこの量刑になっているように思われますが、その点を含めていかがでしょうか。
  252. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 御承知と思いますが、罰則、いわゆる法定刑と言われております、ある一定の反社会的行為に対して法律上刑を定めます場合は最上限を定めておりまして、具体的事例によりまして、この一番上限が三年でございますから、物によりましては二百万円以下の罰金の方を使いまして、例えば五万円の罰金もあり得るわけでございます。つまり、犯情に応じまして法定刑を使う、一番重いのがこれだということを示しております。  そのほかに、先ほどどなたか委員の方がおっしゃっていましたが、犯情の軽いものは不起訴処分、起訴猶予処分ということでも処理できますし、それから単なる行政指導にとどめまして犯罪捜査の対象にしないということもできるわけでございますので、その点については過酷にわたることはないと思っております。
  253. 紀平悌子

    紀平悌子君 海外悪質ブローカーの実態について、後ほど資料でちょうだいをしたいと思います。  それから、国内の組織暴力との結びつき、特にじゃぱゆきさんと言われる、諸外国から日本人などとのいわゆる芸娼妓契約によって来日されて、特別のいわゆる性的サービスを強いられている、そういう女性たちについての資料を後ほどで結構ですからちょうだいしたいと思います。  もう最後の方になって、時間があと二分なんですけれども、一つ飛ばしまして、いわゆる新設企業内転勤という制度がございます。  この企業内転勤という制度は、うっかりすると読み飛ばしてしまうのですけれども、これは大企業しかできない制度ではないかというふうに思います。そして、研修制度にも増して企業が単純労働外国人就労させるための手法、仮に海外ペーパーカンパニーなどの設立というようなことも考え合わせますと、これが非常に悪質な方向に使われるのではないかというふうな感じがいたします。一方でいわゆる単純な作業に従事する労働者、私は単純労働者というカテゴリーがわかりませんので、単純な作業に従事する労働者の方々の面が非常に厳しい一方で、この面が少し何か手落ちというか、しり抜けではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  254. 股野景親

    政府委員股野景親君) これは、この別表の中の規定の仕方をよくごらんいただきますと、企業内転勤というものの在留資格は、その直前にございますところの技術、または人文知識国際業務の項の活動ということと同じ内容のものとされております。そうしますと、これはすなわち、その人の技術ないし知識の程度というものがもう一定水準以上のものであるということが要件として求められているということがございますので、そこでただいま御指摘のような単純作業に属するような方たちというものはここには該当してこない。したがって、そういう点でのこの企業内転勤という制度の乱用という心配はないというふうに考えております。
  255. 紀平悌子

    紀平悌子君 もう時間がございませんので、最後に一言だけ。当初法務大臣に御要請、また御意見を承りました件に戻ります。  要は、やはり時代の流れというものの中で、国際化そして人権問題として出入国管理法というものに向かっていきたいというふうに私は思っております。どうぞ法務省その他の省におかれましても、御検討ある場合はぜひ変えていただきたいところもあるというふうにお願いをしておきます。  以上です。
  256. 櫻井規順

    櫻井規順君 最後になりましたが、法務省そして労働省、外務省関係者に質問をさせていただきます。  国際化の進展が日進月歩といいますか、秒進分歩といいますか、大変進んでおります。国内における新しい国際社会のあり方が問われていると思います。関連して、新しい出入国管理行政のあり 方が問われていると思うのであります。  私は以下、若干の点について御質問をさせていただきます。  最初に、外国人労働者の今問題になっております日本への出稼ぎ圧力といいますか、送り出し圧力ということで当局の方は表現されておりましたが、今はこれが規制されているわけでございますが、こういう日本を取り囲む単純労働者の出稼ぎ圧力というのは、日本の近隣諸国の場合にどのくらいあると想定されていますでしょうか。もしわかればお話しいただきたいと思います。
  257. 股野景親

    政府委員股野景親君) 近隣諸国と我が国との関係にかかわる点でございますが、これらの諸国と日本とのまず所得の格差ということ、あるいはこれらの諸国における限られた就労機会というような問題等があり、また、その経済一般の状況ということを考えてみますと、今先生の御指摘になりましたいわゆる単純労働者についての潜在的な供給圧力というものは、これは相当高いものがあると考えざるを得ないと思います。なかなか具体的に数字としてこれを把握することは難しいかと思いますが、しかし現在の近隣諸国の状況を見るに、いわゆる潜在的な供給圧力は高いと考えざるを得ない状況でございます。
  258. 櫻井規順

    櫻井規順君 関連するわけですが、先進例とは言えませんが、ヨーロッパの場合に、そういう外国人労働者受け入れという問題でフランスとドイツを例にとってどうだったのかということをお伺いしたいと思うんですが、法務省、労働省、もしそれぞれ分析があればお聞かせいただきたいと思います。
  259. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま御指摘の西ヨーロッパの諸国の中で、特に西ドイツとフランスの例は我々としてもこれまで我々の政策を考えていく上での十分参考にすべき事例として注目をいたしているところでございます。  一般に、最近の西ヨーロッパ諸国の外国人労働者にかかわる入国在留管理というものは非常に制限的になっておりまして、御指摘の西ドイツあるいはフランスという国においては外国人労働者についての帰国奨励金を出すというようなこともいたしまして、現に在留中の外国人労働者というものの帰国を促すという状況等もございます。こういう点を考えますと、非常にこれらの外国人労働者をこれまで大幅に受け入れてきた諸国にとって、外国人労働者の存在というものが大きな負担になり、また、現在いろいろな意味でこれについて対処すべき問題となっているという状況があると考えております。
  260. 吉免光顕

    説明員吉免光顕君) 欧州等の経験についてでございますが、私どもが承知しておりますのは、例えばドイツを例にして少し申し上げますと、一九五〇年代の後半は確かに労働力不足を補うということで一時的な労働力を導入しておりますけれども、当時は西ドイツの完全失業率は〇・七ないし〇・八%程度でございまして、非常に厳しい状況であったというふうに承知しております。しかし、今も御説明がありましたようにオイルショック以降労働市場が急変いたしまして、むしろそういう方の失業も多発いたしましたし、帰国奨励策も必ずしも功を奏していないということからいろんな問題が生じているというふうに承知しているわけでございます。  ちなみに西ドイツの最近のそういう失業状況を申し上げますと、西ドイツにおける全体の失業率は九%ぐらいでございますが、西ドイツの外国人だけを見ました失業率は一三・七%という非常に高い比率になっているわけでございまして、そういう面からしますと、一時的に好況期を迎えまして人手不足だということで外国人労働力を導入いたしましても、こういった景気の波によっていろんな面で後々影響が出てくるというふうに考えておりまして、そういう点は十分踏まえて私どもも議論を進めていかなければならないと考えております。
  261. 櫻井規順

    櫻井規順君 労働省に関連をして御質問しますが、ちょっと出入国管理法に関連しますが、結局、単純労働者につきましてはやはり規制をしていくことが大事だというふうに思うわけであります。問題は、これは日本の労働力構成の問題と大変な拮抗関係に国際関係としてなってくると思うわけであります。特に高年齢者の雇用率というのは低いわけですし、それから今三キ労働と言われております、危険、きつい、汚ないというカテゴリーこ属する仕事もまた大変なことになっております。  問題は、これは労働省の方にお伺いするわけですが、高年齢者の就職問題、それから三キ労働への就職を促進するということが非常に重要になってくるわけで、そのためにいろんな制度改善が必要になってくると思います。それが手おくれになったならば、これは必ずやいろんな形でもって単純労働者外国人労働者が入ってくることは必定であるわけでありまして、その辺の外国人労働者の規制、単純労働者の規制という問題とあわせて我が国の雇用構造の転換について意を注いでいかなければならないと思いますが、ごく簡単でいいです、エッセンスだけお話しください。
  262. 吉免光顕

    説明員吉免光顕君) お答え申し上げます。  確かに高齢者の職場は現状でも厳しい問題がございます。五十五歳から五十九歳の年齢層を見ますと、求人倍率は〇・三一倍でございますし、六十歳から六十四歳ですと〇・一六倍でございます。十人のうち八・五人は職場がないということでございますし、先生御指摘のように三キ労働のような言われ方の職場もございますので、まずはそういったところでの職場改善といいますか労働条件等も改善しながら魅力ある職場にしていく、そういうところに対して手を打っていくということが重要だというふうに私どもも考えております。また、不足しているそういった層についての養成を体系的にするというようなこともやっていく必要があると思いますし、そういう意味での不足について、不足対策を十分にしてまいりたいと考えております。
  263. 櫻井規順

    櫻井規順君 次に、これは法務省になりますか、ちょっと質問させていただきます。  建設業の場合に、非常に親会社、下請、孫請というふうに事業所が構造的になっております。雇用の関係も、親会社から賃金部分あるいは労災の部分まで払われまして孫請までおりてくるわけであります。そこで外国人労働者との関係ですが、アルバイトという形にしても、そういうところで就労している人が今後ペナルティーを受けるというような場合もあるわけでありますが、こうした場合の建設業関係外国人労働者というか、アルバイトにせよ加わって、労災事件が起きたりあるいは出入国管理上のペナルティーを受ける場合が考えられるわけですが、今の建設業の関係のそういう雇用構造といいますか、そういうものの関係でお考えになったことはございますか。
  264. 米澤慶治

    政府委員(米澤慶治君) 罰則との関係がございますので、とりあえず私からお答えさせていただきます。  確かに委員指摘のように、建設業界は重層構造をとっておりますが、改正法案の罰則の七十三条の二の第一項第一号をごらんいただくとおわかりのとおり、事業活動に関しまして外国人不法就労活動をさせた者という構成要件に私どもしております。これはどういうことかといいますと、直接の雇用主に限りませんで、当該不法就労活動をさせたと認められる限りにおいては、上の方の元請といいますか、そこにも責任が事実関係次第によっては及ぶような構成要件にしておる。その点で、考慮したかとおっしゃれば考慮しておるとお答えできるかと思います。
  265. 櫻井規順

    櫻井規順君 話が飛んで恐縮でございますが、人種差別撤廃条約というのがまだ日本の場合は未批准でございます。これについて批准できない事情があるのかどうなのか。要するに社会権規約なり自由権規約というものは既に批准してあるわけですが、一番先にできた人種差別撤廃条約の批准がなされていないということはどういう事情によるんですか。
  266. 角崎利夫

    説明員(角崎利夫君) お答え申し上げます。  この人種差別撤廃条約につきましては、政府といたしましては条約の趣旨にかんがみましてでき るだけ早期に締結すべく作業はしてございますが、この条約に規定しております処罰立法義務と表現の自由等、我が国憲法の保障する基本的人権との関係の調整が難しいということで、現在この点について鋭意検討を進めております。
  267. 櫻井規順

    櫻井規順君 次に、在日韓国・朝鮮人の皆さんとの関係の問題についてお伺いをしたいと思います。  御案内のように、明治末年に日韓併合条約が結ばれまして、朝鮮国籍の皆さんを強制的に日本国籍にした歴史があり、一九五二年の講和条約で条約上は韓国籍に回復したわけでございます。そして日韓条約が結ばれまして、正式には韓国と日本との間では法的な正常な関係が結ばれたのは御案内のとおりでございます。  そこで、在日の韓国の皆さんの関係になるわけでございます。これは当然朝鮮民主主義人民共和国の皆さんも同じになるわけですが、国交上ここでは韓国の名前だけ呼ばせていただきますが、一般外国人として扱うわけにはいかない歴史があって、今回もこういう形で出入国管理法上も第二表で扱われているというふうに思うわけであります。  そこで質問なんですが、一つは在日韓国人あるいは朝鮮人の皆さんの地位の問題、あるいは日本での生活上のさまざまな権利の問題で、ちょっと私がここで聞くのはなにかもしれませんが、在日韓国人の大使館とはいかないでしょうけれども、関係者の皆さんにこの出入国管理法の改定に当たって意見を聞くような機会を持ったのかどうなのか、これが一つ。  それから二番目は、これは日韓法的地位協定の中で、一九九一年までに韓国政府から要請があれば、在日韓国人の次の世代についての法的地位について協議するという約束があるわけですが、既に一回、二回とその関係の会議が開催されているというふうに聞くわけでありますが、その進展ぐあいはどうかという問題でございます。そこのところをお聞かせいただきたいと思います。
  268. 股野景親

    政府委員股野景親君) 在日韓国人の方々について、入管法改正に当たりまして十分配慮を行ったということは先ほど来御説明を申し上げたとおりでございます。そして、この入管法改正案内容につきましても、当局の意図するところが十分在日韓国人の方々にも御理解願えるよういろいろ努力をしてきておるところでございまして、これまでも在日韓国居留民団の方々からのいろいろなお問い合わせ等もございましたので、これについて十分な御説明をするということで御懸念のないように取り計らっておるということでございまして、今後についてもなお、この法案の趣旨について在日韓国人の方々が十分御理解願えるように、引き続き一層のそういう御説明努力をいたすとともに、当局側のこの法の運用についての真意というものも御理解願えるようにいたしてまいる所存でございます。  別途御質問のございました韓国側との法的地位の協議の問題でございますが、これは昭和六十年から六十二年にかけまして二度の日韓両国政府間の予備的会議がございましたところ、その後、昭和六十三年の十二月、それから本年の七月に両国政府間の局長級の正式の協議が開催をされました。次の第三度目の局長級の協議というものを本年内にも開催するという予定で現在検討を行っておるところでございます。
  269. 櫻井規順

    櫻井規順君 その法的地位の問題についての日韓の会議の中では、そこで対象になっておりますいわば第三世代の皆さんの問題だけでなくて、現在の在日韓国人の地位の問題についてそこでは議論する余地はないんですか。出ているんですか。
  270. 股野景親

    政府委員股野景親君) これは、両国間の話し合いの具体的な内容になりますと先方の立場もございますので、具体的な詳細にわたることは差し控えさしていただきたいと思いますが、基本は、この協議はいわゆる第三世代の問題についての協議が正式な対象となっております。ただ、それとの関連において、この日韓の法的地位協定の中にございますところの前文の精神というものを踏まえて、これらの在日韓国人の方々が日本国で安定した生活を営めるようにするということを念頭に置いた、そういうことについての話というものは話題の中には出ておる状況でございます。
  271. 櫻井規順

    櫻井規順君 時間がないので在日韓国人、朝鮮人もそうですが、在日韓国人の権利の問題で、今度ベトナムの難民の皆さんが定住されるわけですが、定住されるベトナム難民の皆さんよりも在日韓国人の方が権利制限されていて、慌ててベトナム難民の水準にそろえるというふうな事例も最近あったようですが、今度の法改正に伴っていろいろと在日韓国人、朝鮮人の権利の問題で心配な向きがあるわけであります。ぜひ、その法的地位という問題は、内国民的待遇といいますか、最恵国民待遇といいますか、安定したとにかく生活が営めるような保障を、歴史的な事情からしても保障すべきものだというふうに思うわけであります。子細に討論できないのが残念でございますが、その辺のことをひとつ法務大臣から最後に一言聞かしていただければと思うものであります。
  272. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) ただいまの櫻井委員の最後のお尋ねでございますが、この問題につきましては、日本もアジアにおける最も繁栄している国の一つといたしまして、各国から日本の今後のあり方に注目を集めておりますので、今御指摘の問題の解決につきましても世界各国の人たちの納得のいくような方法で解決ができますように努力をいたしたいと思います。
  273. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 本案に対する審査は、本日はこの程度にいたしたいと思います。     ─────────────
  274. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  275. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  276. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十七分散会