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1989-12-05 第116回国会 参議院 文教委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十二月五日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────   委員氏名     委員長         柳川 覺治君     理 事         木宮 和彦君     理 事         田沢 智治君     理 事         粕谷 照美君     理 事         山本 正和君                 井上  裕君                 石井 道子君                 大浜 方栄君                 狩野 明男君                 世耕 政隆君                 森山 眞弓君                 会田 長栄君                 小林  正君                 西岡瑠璃子君                 森  暢子君                 塩出 啓典君                 高木健太郎君                 高崎 裕子君                 笹野 貞子君                 小西 博行君     ─────────────    委員異動  十一月八日     辞任         補欠選任      小西 博行君     勝木 健司君  十一月二十一日     辞任         補欠選任      高木健太郎君     中川 嘉美君  十一月二十二日     辞任         補欠選任      中川 嘉美君     高木健太郎君  十一月二十八日     辞任         補欠選任      会田 長栄君     細谷 昭雄君      高木健太郎君     中川 嘉美君  十一月二十九日     辞任         補欠選任      細谷 昭雄君     会田 長栄君      中川 嘉美君     高木健太郎君      笹野 貞子君     井上 哲夫君  十一月三十日     辞任         補欠選任      井上 哲夫君     笹野 貞子君      勝木 健司君     小西 博行君  十二月一日     辞任         補欠選任      小西 博行君     勝木 健司君  十二月四日     辞任         補欠選任      笹野 貞子君     池田  治君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         柳川 覺治君     理 事                 木宮 和彦君                 田沢 智治君                 粕谷 照美君                 山本 正和君     委 員                 井上  裕君                 石井 道子君                 世耕 政隆君                 会田 長栄君                 小林  正君                 西岡瑠璃子君                 森  暢子君                 塩出 啓典君                 高木健太郎君                 高崎 裕子君                 池田  治君    衆議院議員        修正案提出者   臼井日出男君    国務大臣        文 部 大 臣  石橋 一弥君    政府委員        文部政務次官   町村 信孝君        文部大臣官房長  國分 正明君        文部大臣官房総        務審議官     佐藤 次郎君        文部省生涯学習        局長       横瀬 庄次君        文部省初等中等        教育局長     菱村 幸彦君        文部省教育助成        局長       倉地 克次君        文部省高等教育        局長       坂元 弘直君        文部省高等教育        局私学部長    野崎  弘君        文部省学術国際        局長       川村 恒明君        文部省体育局長  前畑 安宏君        文化庁次長    遠山 敦子君    事務局側        常任委員会専門        員        菊池  守君    説明員        外務省国際連合        局人権難民課長  角崎 利夫君        厚生省健康政策        局総務課長    小沢 壮六君        厚生省保健医療        局精神保健課長  篠崎 英夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国政調査に関する件 ○教育文化及び学術に関する調査  (派遣委員報告)  (文教行政に対する文相の所感に関する件)  (登校拒否児及び高校中退者に対する対策に関する件)  (生涯学習振興に関する件)  (子どもの権利に関する条約に関する件)  (在日朝鮮人児童への差別的発言に関する件)  (学校五日制導入への取組みに関する件)  (大学入試センター試験に関する件)  (国立生命倫理研究所設立に関する件)  (教員勤務評定に関する件) ○私立学校教職員共済組合法及び昭和六十二年度及び昭和六十三年度における私立学校教職員共済組合法の年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付) ○教育職員免許法の一部を改正する法律案(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十二月一日、小西博行君が委員辞任され、その補欠として勝木健司君が選任されました。  また、昨四日、笹野貞子君が委員辞任され、その補欠として池田治君が選任されました。     ─────────────
  3. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、教育文化及び学術に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) この際、石橋文部大臣及び町村文部政務次官から発言を求められておりますので、順次これを許します。石橋文部大臣
  6. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) このたび、文部大臣を拝命いたしました石橋一弥でございます。  教育は、我が国が二十一世紀に向かって発展し、世界に貢献していく基礎を築くものであり、我が国の将来は、究極のところ、教育成果に帰すると言っても過言ではないと存じます。  このためには、今日の教育現状における諸問題を見据えつつ、社会の変化や文化発展を踏まえ、日本人としての自覚に立って、国際社会の中でたくましく活動できる豊かな心を持ち創造性に富んだ青少年を育成するとともに、創造的で活力ある心豊かな社会の形成を目指して教育改革推進していかねばなりません。  私は、課せられた役割と責務を十分認識し、今後一層、教育学術文化スポーツ充実発展に寄せる国民の期待に的確にこたえる行政推進全力を傾注する決意でありますので、委員長初め委員各位の御指導、御協力をお願い申し上げます。  おくればせでございますが、以上、就任に際してのごあいさつにさせていただきます。  ありがとうございました。
  7. 柳川覺治

  8. 町村信孝

    政府委員町村信孝君) このたび、引き続き文部政務次官を拝命いたしました町村信孝でございます。  微力ではありますが、大臣を補佐し、全力を尽くして、教育改革を初めとして我が国教育学術文化スポーツ振興に努力してまいる所存でございます。  何とぞ委員長並びに各委員皆様方の御指導、御鞭撻を心よりよろしくお願い申し上げます。  ありがとうございました。     ─────────────
  9. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 教育文化及び学術に関する調査を議題といたします。  まず、派遣委員報告を聴取いたします。  木宮理事より御報告を願います。木宮君。
  10. 木宮和彦

    木宮和彦君 去る九月十二日から十四日までの三日間、奈良県及び三重県に委員派遣が行われましたので、その調査結果の概要を御報告申し上げます。  派遣委員は、柳川覺治委員長山本正和理事世耕政隆委員会田長栄委員小林正委員西岡瑠璃子委員森暢子委員高崎裕子委員笹野貞子委員、そして私、木宮和彦でございます。  初日は、まず奈良県庁に赴き、県勢県教育概況について説明を受けました。  同県は、貴重な文化財が数多く現存するところであり、さらにまた高等教育機関への進学率が全国一であるなど、文化教育の薫り高いところであります。しかしながら、一方で、都市部における急激な人口増加山間部における過疎化現象など、複雑な社会問題にも直面しております。  県側からは、こういった社会問題が教育に及ぼす影響や、保護すべき文化財が多いことで県の財政が圧迫されていることなどについて私たちに真剣な訴えがありました。  派遣委員からも、過疎地における進学率の問題、遺跡発掘に際しての国の負担率、同県に設立予定先端科学技術大学院大学の抱えている問題点等について質疑がありました。  次いで、東大寺南大門国宝金剛力士像平成修理現場を訪れました。  南大門の二体の仁王像は、鎌倉時代初期につくられたものでありますが、七百八十年の歳月を経て傷みが激しく、五億円の費用をかけてこのたび修理をすることとなったものです。私どもが訪れたときは、既に仁王像は解体され、ばらばらの状態で保管されておりましたが、一万個を超す部分より成り立つ巨大な彫刻芸術を前にして、派遣委員一同、その迫力に圧倒されたのであります。  私たちを案内いただいた東大寺の狭川住職は、仁王像の解体について、「仁王さんがまるで手術されるようで、仁王さんとしては、自分の経験を文化財保護に役立てるようにと言われているのではないか」と語られております。感銘を受ける一言であります。  続いて私どもは、宮内庁の御協力をいただき、正倉院を訪れ、宝物修理現場を見学させていただきました。  言うまでもなく、正倉院は、その由来、年代とも明確な宝物が多種多様に保管され、千二百年余にわたって後世に伝えられたものとして世界にも類を見ないものであります。奈良時代文化とシルクロードを経路とする東西文化交流を跡づけるこれらの資料が、現代技術により後世に大切に伝えられることを祈らずにはいられません。  次に奈良国立文化財研究所を訪れ、平城宮史跡と、そこから出土した木簡等の遺物を視察させていただきました。  平城宮跡史跡指定地の面積は百三十一万平方メートルにも及び、そのうち九五%まで国有化が進められております。発掘調査も三十年以上にわたって続けられており、文字どおり世界に誇る大事業でありますが、最近では、奈良時代の閣僚の最高位をきわめた長屋王邸宅跡が発見されております。  私どもは、長屋王邸宅跡から出土した木簡生活資材も見学させていただきましたが、手にとると崩れ落ちそうな小さな木簡の中にいにしえの営みをうかがい知ることができ、深く感動した次第であります。  奈良県の視察は以上でありますが、世界に誇り得る文化遺産を保護し次世代の心の糧となるよう保存していくことがどれほど大切な仕事であるか、改めて痛感いたしたわけであります。  二日目は、お隣の三重県に移動し、最初に三重大学視察いたしました。  三重大学では、各学部の一般的な概況のほか、二年前に開設した生物資源学部の取り組んでいる研究課題学生就職状況国際交流現状付属研究機関活動等について説明を受けました。  説明の後、構内の施設を視察させていただきましたが、特に工学部資源分析化学講座実験研究の模様を担当の先生方の御案内で見学いたしました。実験室において、超伝導や新型電池研究開発に取り組んでいる学生我が国トップレベルにある教官の方々にじかに接し、この分野の研究世界的な水準にまで高めた三重大学研究成果に深く感銘した次第です。  次に派遣団三重県庁に赴き、県勢県教育概況について説明を受けました。  冒頭、県知事のごあいさつでは、文化教育、健康・福祉、リゾート地整備といった課題について積極的に取り組んでいきたいという意向を伺ったのですが、反面、地方財政を取り巻く厳しい情勢についても指摘がありました。  また、県教育概況については、学級編制計画実施状況初任者研修充実策生徒減少期高校入学者選抜制度県内非行児童生徒実態とその対策等について詳しい説明がありました。  これに対して派遣委員からは、女子教員管理職登用実態退職の主な理由県内非行が減少している理由障害児高校進学率受け入れ高校実態児童減少の中での私学振興策といった点について質問があり、県側と活発な意見交換がなされました。  次の訪問先は、同県が教育国際化情報化に対応できるように設けた総合教育センターです。同センターは、昭和五十二年よりさまざまな教育課題をとらえて調査研究を行うとともに、教職員児童生徒研修教育、相談といったこともあわせ行っているところです。  私どもが訪れた際は、センター事業のうち、コンピューターを利用した情報処理教育を扱っている部門にお願いして、プログラミング室自動製図室ロボット実習室等視察させていただきました。  伺えば、研修講座の数も充実させ、さらに社会人に対しても研修を行うなど、積極的に情報化教育の進展に尽くされている様子でありました。  次に派遣団県立美術館を訪れました。この美術館は、昭和五十七年に開館したまだ新しい美術館でありますが、当初から社会教育機関としての性格を明確にして、美術資料収集展示といった事業のほか、美術講演会公開講座移動美術館といった普及活動を通じて社会に積極的に働きかけているところに興味を引かれました。  美術館を後にして、私どもは松阪港に停泊中の三重大学生物資源学部練習船勢水丸」に乗船させていただきました。  「勢水丸」は、昭和五十五年に竣工して以来、数多くの学生を海に送り出してきた船でありますが、ちなみに、平成元年度においては二十一回もの航海が予定されているそうであります。学生を二十名余も乗せて、ほとんど一年じゅう航海に出ている船長以下乗組員方々の御苦労に頭が下がる思いでありました。  さて、三日目最終日は、英虞湾を臨む県立水産高校視察いたしました。同校は、明治三十五年に当地の水産補習学校として設立された歴史のある学校であります。水産高校と申しましても、近郷の商業地域の子弟を対象にして普通科も三学級設けられており、この地域高校教育の中核をなしている学校であります。  同校では、校長先生から、学校の沿革、教員の構成、教育方針カリキュラム等について詳しく説明を受けましたが、特に生徒の進路については今日の我が国漁業を取り巻く情勢を背景に説明され、後継者難就職先の限定などの問題、またそれが学習意欲に与える影響等現場ならではの御意見を伺うことができました。  また同校では、御自慢の漁業実習船「しろちどり」に乗船させていただきましたが、同実習船が、漁業実習海洋観測等のほか、県内児童生徒体験乗船など多目的な活用を図って、地元の子供たち教育にも貢献している実情が注目されました。  以上が今回の派遣概要でありますが、この報告で詳細に触れることのできなかった奈良県及び三重県の要望につきましては、本日の会議録末尾に掲載していただくようお願い申し上げます。  最後に、この場をかりまして、視察先関係者方々に改めて御礼申し上げます。  以上で報告を終わらせていただきます。
  11. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) これをもちまして派遣委員報告は終了いたしました。  なお、ただいまの派遣報告につきましては、別途派遣地での要望等をまとめた報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  13. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  14. 粕谷照美

    粕谷照美君 大臣が参議院の文教委員会に御出席されるのはきょうが初めてでございます。先ほど、短いながら、教育学術文化そしてスポーツに対して全力で頑張られるという力強いごあいさつがございました。私はきょうは約五十五分間にわたって質問をするわけでございますが、大臣がどういうお考え方を持っていらっしゃるのかということは、本来的であれば、臨時国会でなければ所信表明ということになろうかと思いますので、もう少し大臣の基本的なお考えについて二、三伺いたいと思っております。  ちょっと古い話になりますけれども、一九八五年の七月と八月の「月刊自由民主」という本に大臣が「教育改革への提言」という文章を載せていらっしゃいます。その肩書は、教育改革に関する特別調査会長代理石橋一弥でございます。副題のようなものは大臣がお書きになったのかその本を編集した人がつけたのかよくわかりませんけれども冒頭に「不易の伝統的美風に根ざした教育上位概念として「教育憲章」の制定が必要である。近代教育歩みを概観し、学校教育のあり方を提起する。」こう載っておりまして、一つが「わが国教育歩み」でずっと歴史が書いてあって、二番目に「教育改革に関する私の提言」、こうなっております。  「教育歩み」については、歴史でございますからある程度、そういろいろと言うこともないなと思いながらも、しかし「教育改革に関する私の提言」の部分で、「教育における不易なものを強くすすめること教育憲章制定を」という見出しのもとに、   私は国民合意の上で格調高き「教育憲章」の制定を心から望みます。今回の教育改革論議はその結果として極端に言えばこれ一つが出来上がればよいと思います。しかもこれは教育基本法の上に位置されるべきです。過去に日本民族が持った教育勅語に匹敵すべきものでなくてはなりません。日本人の心を、生きざまの規範をぜひ制定せねばなりません。 こう明確におっしゃっているわけでありますね。時あたかも臨時教育審議会の第一次答申が六月の二十六日に出された、そういう時期のすぐ後に出された本として、私は非常に注目をしているわけであります。  「臨教審だより」が当時出されておりますけれども、これを見ますと、第一部会審議要旨には「教育の目標」として、「教育の目的と諸原則は教育基本法に明示されている。二十一世紀を担う国民の育成に向けて、1に指摘した時代の要請にこたえていくためには、この基本法精神現代教育の中に活力あるものとして生かさなければならない。」こういうふうに臨教審の第一部会は明確に言っているわけであります。その教育基本法上位に該当する教育憲章をつくるという自民党の教育改革に関する特別調査会長代理の文言というのは、私は大変気になるわけであります。  そこで、教育憲章というのは一体その当時どういうことをお考えになっていらっしゃったのですか。
  15. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) お答えいたします。  ただいま委員のおっしゃいました本でありますが、たしか今から三、四年前くらいに書いた本、パンフレットですね、だと存じております。そして教育憲章制定したいということは、あの当時私といたしますと、日常生活規範となるべき道徳の問題、こうしたような問題をぜひ取り上げてみたいなという考え方が非常に強かったわけでございます。そこでそのような文章をつくったわけでございますが、現在の私の心境といたしますと、教育憲章を今つくりたいという考え方は既になくなっております。  その理由は、この三月にでき上がった学習指導要領改定に私の気持ちが大きく左右されたなと、こう思っておりますが、あの学習指導要領改定趣旨の徹底を図ってまいりますならば、教育憲章をつくりたいという趣旨考え方、これが十分達成できるであろう、このような考え方で、今は教育憲章をつくりたいという考えはございません。お答えいたします。
  16. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、その学習指導要領というものが大変問題になってくるのだと思うんです。あの学習指導要領について私はやらなきゃいけないと思いましたけれども、いずれ教免法が出てきますから、そこのところで十分に論議をさせていただこうと思って本日はわきに乗せているわけですが、教育憲章をつくりたいとおっしゃったその大臣のお考え学習指導要領にもう明確に入っているということになりますと、この学習指導要領というのは私は簡単に認めるわけにはいかない、こういう考え方を持っております。  なぜかなれば、その当時お考えになっていらっしゃった教育憲章というものの具体的な内容、学習指導要領に入っているというそのときお考えになっていた教育憲章の根本的なもの、これは一体どういうことでございますか。
  17. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) お答えいたします。  ただいまも説明的に申し上げたわけでありますが、私はいろいろな点から考えてみて、まさに我が国初等中等教育は、言葉が過ぎるかもわかりませんが、世界に冠たるものがあるな、こういう考え方であります。ただ、残念ながら、国民皆様方から一体どうなんだということでいろいろ御批判を賜っております。これは、一億総教育家ということもありますけれども世界でそれだけ認められていながら日本国民が非常に批判をするというのは、私は基本的にいってやはり道徳教育にあるなと、こんな考え方であります。そこで、そうしたものをやってみたいなという考え方が当時の考え方であります。
  18. 粕谷照美

    粕谷照美君 私も道徳教育を否定しているわけではありません。道徳教育というのは非常に大事だと思います。しかし、その道徳教育をどういう形で実施するのかというそこのところが今いろいろと問題点になっているところだというふうに思います。そういう意味も込めて先ほどからお伺いをしているわけであります。  当時、教育憲章をつくりなさいということを一生懸命に主張していた団体の文書があるわけですけれども、季刊「教育法」に高崎経済大学名誉教授三潴信吾さんという方が「教育維新提言」ということでいろいろなことを書いていらっしゃいます。その一番最後に「日本教育憲章提唱」ということを出していらっしやるわけであります。「退職校長有志を以て構成する日本教育推新連盟提唱起草委員会が生れ、小生が委員長に推され、四ケ年の審議を重ねて昭和五十六年夏、成案が全国の代表三百名の大会で可決され、即日、日本教育憲章推進協議会が結成されて一般に提案し、普及啓蒙を図ることとなった。」  ずっとあるわけですけれども、その教育憲章というのは、私どもが読んでみると非常に不思議なものなんですね。大臣がこういうことを考えていらっしゃったのかな、この出された教育憲章教育基本法の上に置きたいというふうに考えていらっしゃったのかなと思うんですけれども、どうもそれとは違うような感じがいたしますが、いかがですか。
  19. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) ただいまの委員の御指摘の件につきましては、私はよく存じ上げておりません。  ただ、まあ上とか下とかということで書いたわけでありますが、道徳というものについて私の考え方は、法律ですとか制度ですとか、そんなものでやるべきではないなと。人間、自然に生まれ自然の中で生活し、また自然に帰っていく、そんなような考え方のものとすると、国民合意の生き方、毎日毎日の日常生活規範となるべきようなもの、そのようなものは、話し合いでやっているとするならば、これは制度のほか、制度の上に位した方がいいではないかなという個人的な見解であります。
  20. 粕谷照美

    粕谷照美君 しかしここに書いてありますのは、「過去に日本民族が持った教育勅語に匹敵すべきものでなくてはなりません。」――「朕惟フニ」から始まるあの教育勅語に匹敵するものでなくてはなりません、「日本人の心を、生きざまの規範をぜひ制定せねばなりません。」こう書いていらっしゃるんですから私は非常に気にしているわけですよ。そういう意味で大臣が今、この考え方をとらない、やめた、こうおっしゃることはよくわかりました。  それでは、その教育基本法についての大臣の基本的なお考えはいかがですか。教育基本法日本国憲法と深く結びついております。前文の中にもありますように、憲法理念の実現を「教育の力にまつべきもの」、こう言って教育に非常に期待をしているわけです。私は、そういう意味で、教育基本法が宣言的な性質を持ちながら法律として、特に根本法規として制定をされたということを極めて重要に考えている者の一人として、大臣教育基本法に対するお考えをお伺いいたします。
  21. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) 私も、教育基本法に対する理念、考え方、全く委員と同じものでございます。憲法、そして教育基本法、これは我が国教育の理念と基本原則を定めてあるもので極めて重要なものである、こう考えております。その精神にのっとって教育行政に取り組んでいきたい覚悟でございます。
  22. 粕谷照美

    粕谷照美君 教育基本法精神にのっとってと、こうおっしゃった大臣のお答えを私は高く評価して次の問題に入ります。  今、各地で在日朝鮮人児童生徒への暴行、いじめが相次いでおります。文部省としては具体的な暴行、いじめがあったということを認識していらっしゃいますか、どうですか。
  23. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 先般、在日朝鮮人の連合会から総理大臣あての要請がございまして、その中にいろいろ暴行事件の具体例が指摘されているわけでございます。そこで、私どもとしましてはその実態につきましてそれぞれ該当の教育委員会等に照会をいたしておりますが、学校の外で行われていることでございますので、現時点では教育委員会もこれを的確に把握しておりませんけれども、ただこうした事例があるということは、この要請書ないしは新聞各紙ないしは週刊誌の伝えるところに限りましては承知いたしております。
  24. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、今の御返事は、各教育委員会調査の通知を出した、こういうことですか。照会をした、こういうことですか。
  25. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 先ほど申し上げましたように、在日朝鮮人連合会からの総理大臣あての要請がございまして総理より文部大臣等に御指示がありましたので、私の方ではその指示を受けまして、事件発生が報道されております都道府県の教育委員会に対しまして早速電話で照会をし、そして、もしかかる事実があるならば以後そういうことのないように注意を促しているところでございます。
  26. 粕谷照美

    粕谷照美君 私はきのう文部省に対して資料をお渡ししておきました。具体的に七十二件、何県でどのようなことが起きたかという具体例について文書を出しております。非常に特徴的な言葉がいろいろ目立つわけですけれども、初中局長、どうですか、こんな言葉を自分に浴びせかけられたらとてもたまらないなというような言葉はございませんか。
  27. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) この資料を拝見させていただきましたが、加害者の内訳でいいますと、成人が二十九件で一番多いわけでございますが、そのほか高校生、中学生、小学生等もこれにかかわっているという報告がこれにはなされております。その内容等につきまして、もしそれが事実であるならば大変遺憾な事例であるというふうに考えております。
  28. 粕谷照美

    粕谷照美君 この調査では、十月の十八日からずっとこういう事件が連続して起きているわけですね。この起きていることが大変問題になったという背景については、文部省としてはどういうふうに考えておりますか。
  29. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) これは大変難しい問題があろうと思います。今、学校自体で、かつて大変いじめの問題がございまして、学校としてはそういうことのないようにというので全校挙げていじめの対応に取り組んでまいりました。その結果、ひところの数年前に比べますといじめの発生事例は半分程度に下がってきておりますが、ただ学校の中でもそうした事例がございます。  いずれにいたしましても、こうしたいじめというようなことはあってはならないことであります。まして他の民族の方々に対していわれなき差別をするということは、これはやはり人権教育の面からも問題がある。したがいまして、広く一般的ないじめの問題と同時に、こうした他の民族に対する差別というようなことがないように、今後一層人権教育を充実してまいらなければならないというふうに考えております。
  30. 粕谷照美

    粕谷照美君 今の初中局長の御答弁、ちょっと言葉が足りなかったのかと思いながら伺っておりましたけれども、十一月二十一日、海部総理に対してこの事件について記者がいろいろ質問をしている。その質問に対して総理が、僕がいじめたわけじゃない、僕が出ていって捜し出すわけにいかない、こう言ったと報道されておりますね。もし校長や教頭が自分の学校のいじめに対してこんなことを言ったら一体どんなことになると思いますか。私は、総理として、しかも文部大臣を経験された総理の言葉とはもう絶対に思われない。  今、初中局長が、いじめがたくさんあったが半減したというそのいじめは、朝鮮人とか部落差別とか、そういう人権に関するいじめのことをおっしゃっていたのか一般的ないじめのことをおっしゃっていたのかちょっとわかりませんでしたので、そのことともあわせて、総理がさらに、いじめは在日朝鮮人だけではなくて日本の小中学校全体の問題だ、こう言われたと報道されております。この人権感覚というのは私は非常に不思議でしようがないんですけれども文部省はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  31. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 御指摘の総理の発言については、私は直接聞いておりませんので詳しくは承知しておりませんけれども、その後総理は記者懇談会において御発言になっていらっしゃいますが、その内容は、最近在日朝鮮人の方々に対するいじめの問題が取り上げられているが、在日朝鮮人等に対するいじめ、嫌がらせ等卑劣な行為が行われることは断じて容認されるべきではなく、このような行為に対して政府としては厳しい態度で臨むべきであると考えているというふうに総理は正式に発言されていらっしゃるわけでございます。  したがいまして、私どももこの総理の考えと同様、こうしたことがないように学校教育においても十分指導してまいらなければならないというふうに考えております。
  32. 粕谷照美

    粕谷照美君 総理のその正式の御発言というのは私はもう当然の話だと思いますけれども、総理がそこまでいく間に、韓国の朝鮮日報だとか東亜日報などは厳しく総理の発言について糾弾をしているわけですね。また欧米諸国でも、人権感覚が全くないではないかという指摘をしている。国内でもこれに対する反論が上がってきた。私は、そういうものをバックにしてもう総理はそういう回答をせざるを得ないところに来たんだなという感じがするわけでして、その辺の総理の考え方というものに大変な不満を持っております。逆に言えば憤りを持っております。  さて、そういうような事件になったという背景には、国会でテレビ報道までされましたいわゆるパチンコ疑惑集中審議、あれ以来相次いで起きている、こういうふうに思います。そしてまたあの討議の中で、朝鮮総連は危険な団体である、こう認定をされている。そういうところから起きてきているわけでしょう。  このいじめの具体的な言葉としても、朝鮮人だとか、朝鮮人帰れだとか、こう言っているんですね。まあ、ばか、あほうなんて言うことは普通の言葉の中でもありますけれども、朝鮮人だとか、チョンだとか、こういう侮べつ的な言葉を大人が浴びせかける。ここのところに私は、あのいわゆるパチンコ疑惑事件なるもののテレビを意識しての集中審議というものが大きな影響を与えたというふうに思わざるを得ませんが、文部大臣、そういう影響があったというふうにはお考えになりませんか。
  33. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) 当時、朝鮮人問題について予算委員会で確かに質問がありました。結果的に見て、その日以降にそういうまことに恥ずかしい差別的な言葉が出たのであればあるいは関連があったかな、こうも思いますけれども、議会における議員の発言、これはそれぞれの自由であるわけでありますから、何よりも増して教育に携わる我々が、人種的差別、そんなことはしてはいけないよという教育をきちっとしておかなかった、しておってもそれが徹底されていなかったというところから出たであろうなということで、本当に責任を痛感いたしております。
  34. 粕谷照美

    粕谷照美君 今、文部大臣が、今までそういう教育がしっかりできなかったことを大変反省された言葉を出されましたけれども、私はあの教科書問題を見ましても、文部省自体がきちんとした態度が今までなかった、逆に言えばこういうものを引き起こすという要因すらつくっていたのではないか、こんな感じをずっと持ってきているわけであります。  きょうはそのことではなくて別の角度から質問いたしますけれども、私も実はことし三月の末とそれから九月の終わりごろ、二回にわたって北朝鮮へ行っているんです。初めて行くのに一年間に二度も同じところに行くというのは私自身にとっても大変珍しいことなんですけれども、ここに行きますのにまず旅券の問題から大騒ぎしなきゃなりませんね。自由な国なんといっても、なかなかあそこに行くには自由でないんだなということをしみじみ思いました。法務省入管局、それから外務省、大変面倒な手続をとります。そういうことを経ながらあそこに行ってみて、やはり百聞は一見にしかずといいますが、行ってみなければわからないということもたくさんあります。  そういう意味で、せっかく竹下前総理が、朝鮮との関係をなるべく正常なものに戻していきたい、こういう答弁を国会の中でやっていらっしゃるわけですからそういう方向に従って国は進むものだと私は思っておりましたのに、議員の質問は自由だと言われればそれはそうです。質問なさった方のいろいろなことを私ども考えてみれば、質問されるのは自由でございますけれども、それに対する政府側の答弁というのは、私はやはり前総理の竹下さんのあの国会答弁というものをきちんと踏まえた形の答弁にしていただきたかった、そういうことをしみじみ思っているわけであります。  このことを心配しまして、前書記長の田邊誠さんが海部総理大臣に十一月二十四日にお会いしました。そして釈明がございましたけれども、田邊に釈明してもらってもだめなんだ、直接当事者に言いなさい、こういうことで、総理からお話はありませんでしたけれども、その五日後、朝鮮総連の朴副議長と南国際局第一部長、それと我が党の衆議院議員、参議院議員が一緒になりまして藤本官房副長官にお会いいたしました。さらにその翌日、山口書記長、そして私、堂本議員一緒になりまして森山官房長官に申し入れをいたしました。そのときに、私どもの申し入れに対してもうそれは各省庁にちゃんと指示をしたからそういうようになっている、こういうふうにおっしゃったんですけれども、どうもその指示が弱いのではないか、こういうふうに思います。  電話で該当したところに調査をしただけじゃだめなんです。官房長官がそうおっしゃったんですから、どのようなことを具体的にやられたかということを文部省にお伺いいたします。
  35. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 先ほど申し上げましたように、私どもとしましては、この在日朝鮮人の連合会で指摘されました事例につきまして電話等で早速事実を確認し、そして、事実の把握はなかなか教育委員会では難しいわけでございますけれども、このような事件が発生することのないように適切な措置をとるよう指導しております。  しかし、この問題はそれで済みというわけには考えておりませんので、私どもは今後その趣旨をいろいろな機会をとらえまして各都道府県に指導していきたいと思っております。とりあえずは、十二月中に都道府県教育委員会教育長協議会の会合が予定されております。幹事会でございますが、重立った教育長さん等がお集まりになりますので、そういう席でもこの趣旨は徹底してまいりたい。そのほか、今後いろいろ指導部課長会議とか指導主事の会合とかございます。そういう機会をとらえまして趣旨の一層の徹底を図っていきたいというふうに考えております。
  36. 粕谷照美

    粕谷照美君 ぜひそれを徹底していただきたいと思います。  先日も、世田谷のある小学校の女性の先生ですけれども、自分のクラスに五人の朝鮮籍の子供が入っている。この問題が起きる前のことでありますけれども、この夏休みに朝鮮籍の子がピョンヤンへ行きたい、こういう相談を先生にしているわけですね。先生は、自分の祖国なんだからそれはもうぜひ行ってきなさい、こういうふうにお話をしたというんですが、その子が、クラス委員長をしているんですが、あとの四人を呼び集めまして、いろんなことがあったらすぐ自分に言ってきなさい、自分がその問題を先生にお話しするからということを話し合っているわけですね。先生もそのことにあわせて、帰りは気をつけて一緒に帰りなさいとか、具体的な指示をしているわけですよ。  こういうきちんとした対応がとれるような教師というものを私はつくっていかなきゃならない。だからクラスの子供たちがその五人に対してどのような差別をやるかといえば、ないんですね、そのクラスでは。いるのが当たり前なんですから。もっともそのクラス委員長というのは空手もやっていて明るくてスポーツ万能、頭も非常に切れるというので尊敬を集めているのだそうですけれども、みんながみんなそういうことではないと思いますが、私は文部省指導というのは非常に大事だというふうに思います。  在日朝鮮人に対する公然たる民族差別が民主主義の名のもとに国家において横行することは私は許されない、人々の心の中に潜在しているこの差別意識というものをなくする努力を文部省としてはきちんとやってもらいたい、こういうことを要望しておきます。  あわせまして、その事件が起きたときに朝鮮人学校先生方の朝教同という組合から、そのことについて文部大臣と話をしたい、こういう申し入れが私の方にありました。文部大臣は我々が行ってもなかなかお会いできないんですね。まして国会の中でこのようなことがあって震え上がらせられているときに文部省がどうかなという気はしましたけれども、申し入れたわけですよ。きょうは会えませんという話でした。きょうは会えません、それはありますね、忙しいんですから。私も税特にびっしりですからなかなか出かけられませんでしたけれども、きょうは会えません、それじゃいつ会えるというふうに言ってくるのかなと思ったら、その後御返事がありません。拒否をされるということはないでしょうね。御都合がついたらお会いいただけますか、どうでしょう。
  37. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 先生から先般窓口を通じましてそのようなお申し出がございました。その日のことでございましたので私ども都合がつかずに、当日はぐあいが悪いのでと、こういうふうに申し上げた次第でございますので、その後お申し出があればまた御相談申し上げたい、こういうふうに考えております。
  38. 粕谷照美

    粕谷照美君 では、この問題はこれで終わります。的確な対応を心から要望しておきます。  それでは予算に関連いたしまして二、三お伺いをいたします。  大臣文化スポーツに大変心を入れられているというお話が先ほどありましたので伺うわけですが、文化庁、来ておりますか。――今、国民の中に文化とかスポーツに対する関心が非常に大きくなっております。そして、もう少し文化スポーツに予算を回してほしいという運動もいろんなところで大きくなっております。  文化庁が去年出しましたこれは白書とも言える「我が国文化文化行政」、非常によく調査もし、まとまっていると思います。私は文化庁の久方ぶりのヒットじゃないだろうか、こんなような感じがしているわけですが、この中に先進諸国の文化行政、芸術行政というようなものが非常に詳しく紹介をされております。我が国文化行政行政というよりも端的に予算と言ったらよろしいでしょう。この予算は先進諸国と比較をしまして、金額ではなくて何か特徴的なものがあると思いますけれども、それをどういうふうに分析していらっしゃいますか。
  39. 遠山敦子

    政府委員(遠山敦子君) 先生御指摘のように、日本文化に関する予算といいますのはまだまだ不十分であるということは確かでございます。今、先生の御質問は、額ではなくて諸外国との関連で何か特色があるかという御質問でございますが、その御質問でございますと幾つか言えるかと思います。  例えば日本文化庁予算といいますか文化に関する予算の中では、全体に総額の四分の三程度が文化財保護に充てられておりまして、芸術、文化に関する予算というのは比較的少ないというふうなことは一点挙げられると思います。文化財保護に関しましては、保護の対象もかなり広い範囲にわたっておりましていろいろな方法で措置がとられているわけでございますが、しかしながら、四分の三とはいってもこれ自身も十分ではございません。  一方、芸術、文化関係につきましては、これは民間芸術団体の主体的な活動を援助するというふうな立脚点に立っておりますので予算自体もなかなか伸びないという点もあるわけでございますけれども、その点では不十分である。ただ、最近では芸術活動の特別推進事業の実施などいろいろな工夫をいたしまして、それなりに予算の伸びについて努力をしているわけでございますけれども、今申しましたようなことがある意味では特色かと言えるかと存じます。  さらに言えば、日本の場合には、文化振興につきましての公的な予算措置に関して注目いたしますと地方公共団体の果たす役割が極めて大きくなっておりまして、国の措置というものはまだ十分ではないというふうなことが特色として挙げられるかと思います。
  40. 粕谷照美

    粕谷照美君 国内の分析はそれでよくわかりました。文化部門のものとそれから文化財保護の関連もよくわかりましたけれども、諸外国に比べまして予算の額というのは一体どのような状況ですか。
  41. 遠山敦子

    政府委員(遠山敦子君) それぞれの国におきます文化関係予算といいますのは、それぞれの国で行政組織とか制度あるいは慣行を異にいたしておりますので単純な比較はできないわけでございますけれども、入手できた範囲内で各国の資料を参考として見た場合に次のようなことが言えるかと存じます。  これは一言で申しますと、欧米諸国に比べまして日本文化関係予算は十分でないわけでございますけれども、例えば日本文化庁予算は本年度四百九億円であるのに対しまして、イギリスは九百八十五億円、あるいはフランスは千九百四十一億円、イタリアは千八百八十億円というふうな形で、私どもの入手した範囲では、これらの国々に比べますと日本の予算額というのはそのような比率になっているということでございます。
  42. 粕谷照美

    粕谷照美君 また、予算ばかりじゃなくて民間資金の活用とかあるいは芸術振興基金だとか、日本とはもう全然違った感じで文化というものに対して非常に力を入れているということがわかりまして、そういう意味で文化庁は本当に歯がゆい思いをしているのではないかと私は思うのであります。  しかし、文化財保護に七三・四%も出ていますよなんと言ったって、決算委員会でも指摘されていますように、掘り出されはしたけれどももうそれがほうったらかしになっているなんというようなこともいろいろありましたりして、これだって十分ではない。芸術関係の人から見れば、どうも文化財保護の方に金が行き過ぎている、こうおっしゃるけれども、しかしその文化財保護の方だって十分ではない。今回の予算要求で文化庁は吉野ケ里に三億円要求している。まだ決まらないんですけれども、地元へいらっしゃって海部総理が三億円出しますと言ったという報告がある。これは満杯認めていただけるものと私は思いますが、地元の要求はその三億円じゃ足りないわけで、もっと広く全面的に保護してもらいたい、こういう要望なんかもあったりする。  そういうことをいろいろ考えますと、やはり文化日本の国が力を入れているんだというためには、音楽議員連盟が芸術振興基金設立に関する報告書というものを出して、ぜひこれをつくってほしいというような考え方を出している。そして私ども文部大臣にお会いして芸術振興基金をつくってほしいという予算要求に対して、大臣は力強くこれは大賛成だとおっしゃった。大臣が大賛成だとおっしゃったってなかなかそういうわけにいかないというのが今までの文教予算の問題だと思いますが、十月二十七日の読売新聞に芸術文化振興基金ができるというような報道がなされている。海部さんも文部大臣に対して、そのことで十分考えておきなさいということを言ったなどという記事があるわけですね。一千億円の基金だというんですけれども、「政府予算化へ 団体など育成」という大きな見出しになっておりますが、これは事実ですか、どうですか。  ということと同時に、十月十一日衆議院の予算委員会で元文部大臣の塩川さんが、内閣全体の問題としてこのことを扱ってほしいという質問をしていらっしゃいますね。海部総理もそれから橋本大蔵大臣も、関係省庁と協議をしてと、こうなっております。そうしますと、このことは、文化庁、文部省だけではなしに、全省庁にわたって考えられるということになりますか。今その感触を文部大臣はどのように受けとめていらっしゃいますか。
  43. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) お答えいたします。  委員指摘のとおり、我が国文化問題、いわゆる経済大国だ経済大国だと言われながら、先ほど政府委員が御答弁申し上げたとおり、全くこの種に関する予算は極めて貧弱であります。文化庁も私も、本当のことを言って、こんなことで一体どうするんだという気持ちでいっぱいであります。そこで、御指摘のとおり、予算委員会における総理、大蔵大臣、そしてまた私の答弁、一つのものをつくり上げるには当然機構の改革が要されますので、総務庁長官でありますが、いろんな各省と関係があります。でも、これだけはどうしてもやりたいという考え方。  そこで、今、感触はいかがかということでありますが、総理、大蔵等の各大臣皆様方考え方は、つくってもよろしいということについての認識は決まったと考えております。ただ、今から詰めねばならないものは金目のことであります。一体幾ら基金に政府が出してくれるかというその一点に集中したな、こう考えております。そこで、私ども文部省といたしますと、少なくともゼロが三つつく億円は欲しいよと、こういうことを言っておりますが、なかなかまだその点は決着がつかないで悩んでいる次第でありますので、委員長を初め皆様方の御協力をこの際お願い申し上げます。
  44. 粕谷照美

    粕谷照美君 私どももその点については一緒になってぜひ努力をしていきたいというふうに思っておりますが、ゼロが三つになるといいましても、一千億円であるか二千億円であるかというこの辺のところは非常に問題になるのでして、政府が一千億円出したら民間が一千億円、それで考えられるわけでしょう。とても二千億円程度のことでは、私はこれだけの経済大国の我が日本において、芸術に対する十分な手当てというものはでき上がらないだろうというふうに思います。  ちょっとあわせまして、文部省の概算要求の中に文化振興財政基盤整備のための調査研究というのがありますね。これはこのことと関係がございますですか。
  45. 遠山敦子

    政府委員(遠山敦子君) これまで昭和五十二年ごろから、文化庁といたしましても芸術、文化を初めといたしまして文化関連の財政措置の重要性につきましていろいろ考えてまいりました。特に六十年代に入りまして、民間資金の導入も含めて、文化関係の財政措置、予算措置等の充実のためにいろいろ工夫しなくてはならないというふうな考え方をはっきり持っていたわけでございます。そのようなことから、民間資金の導入のことも含めまして、これからの文化予算の充実についての研究をしようということで予算要求をした次第でございます。
  46. 粕谷照美

    粕谷照美君 ぜひこのことについては文部大臣全力投入、各省庁となんていいましても、やはり文部省文化庁というのがもう先頭で頑張らなければできない問題でありますから、本当に頑張って大きな成果を上げるように心から期待をいたします。  それでは、文化をやりましたのでスポーツについてちょっとお伺いいたしたいと思いますけれどもスポーツの方は文化に比べて割と予算的にはきちんとしたものがあるんですね。それで、スポーツ振興基金創設のための調査研究費、これが七百万円挙がっていますけれども、これの将来構想というのはどんなものなんですか。
  47. 前畑安宏

    政府委員(前畑安宏君) お答えいたします。  今、御指摘ございましたように、スポーツ振興基金につきましてはこの平成元年度の予算で既に約七百万円の調査費を計上いたしておりまして、現在、主としてスポーツ振興のためにどれだけの基金が必要であるかということについて調査を進めておるところでございます。引き続き平成二年度におきましても同額程度の概算要求をいたしておりまして、予算化されました場合には、それに基づきまして具体にどういう方法で基金を造成するかということについて検討を進めていきたいと考えておるところであります。
  48. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、文化の部では先ほどの芸術振興基金、スポーツの部ではスポーツ振興基金、これは同じようなものとして理解をしてよろしゅうございますか。
  49. 前畑安宏

    政府委員(前畑安宏君) 同じようなということのお尋ねの御趣旨が必ずしも的確に把握できないところをお許しいただきたいと思いますが、基本的に、基金という構想をもちまして、そこに何がしかのお金が入って、その果実でもって芸術、文化あるいはスポーツ振興のために必要な財政措置を行うということの考え方としては同様であろうかと理解をいたしております。
  50. 粕谷照美

    粕谷照美君 日本体育協会に二十三億四百万円補助していますね。ことしは五億七千万円ほど余分の予算要求をしているようですけれども、この体育協会の内部の問題について、私は前の委員会でも質問をしたことがあるんですが、この体育協会を掌握している役員の構成、一体どのくらいいるものか、そしてその役員の中に女性の役員というのはどのくらい入っているか、理事の中に女性はどのくらい入っているか、そのことをお伺いいたします。
  51. 前畑安宏

    政府委員(前畑安宏君) 現在、日本体育協会の役員は、寄附行為上は理事三十五人、監事若干名、こういうことになっておりますが、現実には理事が三十四名、監事二名、こういうことでございます。その中に女性の理事、監事というものは一人もおいでではございません。
  52. 粕谷照美

    粕谷照美君 日本オリンピック委員会が体協から独立したといいますか、分かれてできましたね。ここの役員の中に女性は一体どのくらい入っておりますでしょうか。
  53. 前畑安宏

    政府委員(前畑安宏君) 日本オリンピック委員会の役員は、理事二十名、監事二名、こういう構成になっておりますが、その中にも女性の方は含まれておりません。
  54. 粕谷照美

    粕谷照美君 体育局長、今、国民の中に女性スポーツというのが物すごく広がっておりますね。オーストラリアからサッカーの選手を呼んで女性同士で試合をするとか、本当に今まででは考えられなかったようなところに我が国の女性たちもどんどん進出をしている。そしてオリンピックでも、男性も活躍しているけれども、女性の方が逆に言うと目立ち過ぎる。こういうときに、体育協会の中に一人も女性の役員がいない。あるいはなぎなたの方が一人いらっしゃるというのはあるかもしれませんが、オリンピック委員会にも一人も女性の役員がいないなんて、こういうことを文部省はどう考えますか。  団体のことでありますから文部省は指図しませんということでしょうけれども、お金を出しているんです、私たちの納めている税金から。国民の半分以上は女性なんですよ。その人たちがこうやってスポーツやレクリエーションなんかを一生懸命やってくれている。そしてそのお金が財政補助として多額に行っているにもかかわらず、一人の女性の代表も出さぬなんということについては物すごく怒っているわけです。そのことについて大臣はどういうふうにお考えですか。体育局長はどうですか。
  55. 前畑安宏

    政府委員(前畑安宏君) 今、先生御指摘ございました件は、私どもも女性スポーツ財団の日本支部というところからこの七月に、そういう御趣旨日本オリンピック委員会が法人化された場合、そしてまたそれに伴う日本体育協会の寄附行為の改正に際してぜひ女性の役員を入れてもらいたいという要望書をちょうだいいたしました。このことは、当時寄附行為の改正あるいは寄附行為作成について検討しておりました関係者にも十分伝達をいたしたところであります。  ただ、先生も御指摘ございましたが、何分それぞれの競技団体あるいは地方の体育協会が推薦をしてその中から理事が選ばれるという構成でもございますので、なかなか実現についてはいろいろな困難な点があるわけでございます。  ただ、御指摘ございましたように、最近における女性のスポーツ参加、オリンピック等の国際的な競技スポーツもさることではございますが、いわゆる生涯スポーツと申しますか、幅広い女性、家庭婦人の方々の活動があるわけでございますので、私どももできればそういった幅広い家庭婦人のスポーツ活動につきまして何らかの組織化というようなものも図ってまいりまして、その中から、その組織を通じていろいろな団体に役員を推薦するというような仕組みも研究してみたいと考えておるところであります。  また、先般私どもの保健体育審議会から答申をいただきましたが、その中でも、特に女性スポーツにつきましては「近年における女性の競技スポーツ選手の増大にかんがみ、女性の心身の特質に応じた練習方法等の調査研究や必要な指導者の養成などを進める。」ということを特記していただいたところでございます。今後とも、御趣旨を関係団体にも伝達し、また私どもでどのような方法がとれるか研究してみたいと考えております。
  56. 粕谷照美

    粕谷照美君 私、大臣も指名したのですけれども、いいです。  体協の役員には柳川覺治という方も入っていらっしゃいますし、それから戸村敏雄さんという文部省の方から出向していらっしゃる人もいますね。今の言葉はきちんと伝えておいていただきたいと思います。具体的に顔が出たか、名前が出たかというのはわかるんですから、もういいかげんな答弁なんかはしておれないと、このくらいの覚悟できちんとやっていただきたいと思います。  女性スポーツ財団日本支部、WSF・JAPANというんですけれども、年間五千円で私も会員になっているんですが、世界に行って恥ずかしいと言うんですね、日本は男ばかりで。やっぱり女性の顔が見えるような状況をつくっていただきたいということを要望いたします。  もうあと二分ぐらいになりましたから最後にちょっとお伺いしますけれども教職員定数の第五次計画、あれは法律と同じだと思いますからどうしても二年間で終わらせなきゃなりませんね。その見通しはどんなになっておりますでしょう。
  57. 倉地克次

    政府委員(倉地克次君) 今、御指摘いただきました教職員定数の改善計画でございますけれども、これは今後二年間で残りの四四・六%の改善を図らなければならないという状況でございます。私ども、極めて厳しい状況にあると認識している次第でございますけれども、なお目標に向けて努力してまいりたい、そのように考えておるわけでございます。
  58. 粕谷照美

    粕谷照美君 厳しいのはわかるんですよ。四十人学級は二年間で確実に終わりますと、こういうお答えをいただけますか。  もう一つは配置改善ですね。これはことし要求している人数と来年との関連で、ちゃんと二年間にできるという見通しが立ちますか。厳しいという言葉は何かちょっとあいまいさを残しますので、お伺いしておきます。
  59. 倉地克次

    政府委員(倉地克次君) 四十人学級でございますけれども、これは平成二年度の概算要求におきまして、その他の市町村内の小学校は五年生まで、中学校は二年生までということを要求している次第でございます。これが要求どおりになればそのとおりになるわけでございますけれども、この予定に従ってまいりますと、平成三年度でさらにその次のことを考えていかなければならない状況ではないかというふうに考えるわけでございます。  それから教職員定数の配置率の改善でございますが、これは平成元年度の状況で進捗率が五〇%でございます。あと二年間で残りの五〇%を行うということでございますから、極めて厳しい状況にあるというふうに考えるわけでございます。目標に向けて最大限努力してまいりたい、そのように考えております。
  60. 粕谷照美

    粕谷照美君 終わります。
  61. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 文部大臣の御出席をいただきまして、私、国会議員として初質問でございますけれども、まるで就職試験の面接を受けるような気分で大変緊張しております。よろしくお願いしたいと思います。  先ほど短いごあいさつを承りました。私は、参議院が大変変わりましたので、参議院では文部大臣所信表明をお聞きできるかと期待しておりました。  私は教育畑の出身ではございませんが、二人の男の子を育てた母親としての立場を踏まえまして、最初に登校拒否の問題についてお伺いしたいと思います。  まず登校拒否の実態でございますけれども文部省におかれては去る十月三十日、六十三年度の問題行動白書、児童生徒の問題行動等の実態というものを発表しておられます。その中で、今春の大学生数が二百万人を突破して高学歴志向を反映している一方で小中学生登校拒否児の数が何と四万人にも上ったということで、マスコミでも大きく報道されたわけですけれども、これは十年前と比べまして急激な増加ではないかと思うわけでございます。このままで放置するわけにはいかない、教師にとっても親にとっても早急に解決をしなければならない深刻でかつ重大な問題だと受けとめております。  ところで、文部省の統計では、学業不振、学校嫌い、長期欠席五十日以上を挙げているのに対しまして、大阪市立大学文学部社会学の森田研究室の調査によりますと、長期欠席はしないけれども学校嫌いが多数に上っており、この登校拒否の実態についてはいま一つ奥行きの深いとらえ方をしなければならないように思うわけでございます。つまり、きょう登校していてもあすは来ないかもしれない、登校拒否予備軍と言ったら言葉が適切でないかもわかりませんけれども、そういった潜在的な登校拒否の傾向も見逃せないのではないかということでございます。  そこで、まず文部省に、こうした実態をどのように認識されていらっしゃるか、お尋ねしたいと存じます。
  62. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) ただいま御指摘のありましたように、登校拒否の子供はふえております。例えば十年前、中学では一万二千人程度でございましたが、それが今日では三万六千人程度になっているということで、直近の資料によりますと、小中学校合わせまして四万二千人を超える登校拒否の子供たちがいるわけであります。生徒全体の比率から見ますと零コンマ以下の比率でございますけれども、しかしその子供たち一人一人にとってはかけがえのない学校生活でございます。私どもはそうした子供たちに対しては、やはり教育的に十分バックアップといいますか、指導していかなければならないというふうに考えております。  現在、登校拒否と一口に申しますけれども、さまざまな形態と申しますかケースがございます。例えば学校という集団生活の場になじめなくて登校できないケースとか、学校へ行きたいんだけれども不安などの情緒的な混乱がございまして登校できないとか、さらには非行グループに入っていて登校しないなんというケースもございます。そしてその理由等につきましてもまたさまざまでございまして、友人関係とか教師との関係、人間関係が原因になって学校に適応できない子供たちとか、さらには親子関係などの家庭生活をめぐる問題が絡み合っている場合とか、しかもそれらが複合的に出ていることもございますので、明確にその理由等は特定できないわけでございます。  しかし、この問題の解決のためには、やはり学校教育の専門機関でございますので、学校が中心になりまして、そして家庭と地域社会、そういうものが連携いたしましてこの問題に取り組まなければならないというふうに考えております。
  63. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 今、実態から原因のところまで少しお触れになられたわけですけれども、こうした児童の登校拒否の原因につきまして、法務省の人権擁護局におかれましても初の実態調査をされたようでございます。  法務省の方からは文部省にこの実態調査の御連絡はあっておりますでしょうか。法務省の実態調査文部省実態調査との間でどのようなことが浮き彫りになってきたか、そういったことを点検なさっていらっしゃるかどうか、そこをちょっとお聞きしたいと思うわけでございます。
  64. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 法務省の人権擁護局でなさいました不登校児人権実態把握のためのアンケート調査結果報告は私どもも受けております。この調査はサンプリング調査でございます。私どもは全学校を対象に調査をいたしておりますが、これはサンプリング調査でございますし、調査の視点といいますか項目も私どもと若干違いますので、必ずしも全く一致というわけではございませんが、傾向としてはほぼ私どもの把握している傾向と類似しているというふうに認識しております。
  65. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 私がなぜこのような問いかけをさせていただくかと申しますと、私、ある中央紙に掲載された登校拒否の子供たち自身のアンケートの結果をちょっと皆様にお知らせしたいと思うわけですけれども、その中で、登校拒否というのは怠けとは違うと子供たち自身がその原因を分析し、苦しみをわかってというふうに訴えていることに注目をさせられるからでございます。  東京シューレ、御存じでしょうか、いわゆる登校拒否の子供たちが学ぶフリースクールによりますと、登校拒否の原因は、一番目に友人関係四〇%、二番目に学校の雰囲気三九%、三番目にいじめ三二%、四番目に勉強二八%、そして五番目に先生二六%の順で訴えているわけでございます。  文部省に伺いますけれども、東京シューレは御存じでございましょうか。
  66. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 私どもで今、登校拒否に関します研究調査会議を設けて外部の方に入っていただいて検討を進めておりますが、その席に東京シューレの代表の方に来ていただきまして、実態は聞いております。
  67. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 私はこの東京シューレについてもう少し御説明したいと思うのですけれども、この学校は、子供の視点、子供の立場に返って登校拒否の問題を考え教育の主体はどこにあるかという問いかけにこたえた自由学園でございます。元教師の方が四年前に東京都の北区で開校しておりまして、現在こういったような学校といいますか、学園が全国で四十に近いというふうに伺っております。親子で集まる合宿研究会も既に五回も開かれているというふうに伺っておりますけれども、このことはつい先日、十一月七日の中央紙にも紹介されておりますからお読みいただいたと思います。  これは大体、行政がなすべきことを肩がわりしてこういうふうにやっていらっしゃるわけでございますから、こういった施設といいますか学園に対して適当な評価をし、そして援助の手を差し伸べてやってはいかがかと私は思うわけでございます。
  68. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 登校拒否で学校へ行けない子供たちの中には、登校の意思はあるのだけれどもいろいろ情緒的な混乱がございまして登校できない子供たちもいます。そういう子供たちは、学校には行けないけれども学校以外の施設、例えば東京シューレのようなものでありますと通うという例もございます。  今のはこれは民間の一種の塾のようなものでございますが、そのほかに公立でも、例えば東京都、名古屋など、そのほかにもございますけれども学校以外の施設を借りましてそこでこうした子供たちを預かって、そして教育相談に応じたり、ないしは勉強の面倒を見たりという形で子供たち教育指導、相談指導に当たっている施設がございます。  私どもは、こうしたことは子供たち実態から見ますと意味のあることであるというふうに考えておりまして、実は来年度予算におきまして、文部省もこうしたものをモデル的に何カ所かお金を出して指定しまして、そこの登校拒否の指導成果といいますか、評価をいたしまして、もしそれが効果があるならばもう少し全国的に進めていったらどうかなというようなことで、現在予算要求中でございます。
  69. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 私は行政の対応ということで伺っているわけですけれども、一般的に親の立場から見ますと、子供が学校の授業についていけない、そして、先ほど文部省調査では学業不振というのが一番大きい理由のように挙げられているわけですけれども、こういう言葉は不適切かもわかりませんが、子供の側に立って見るといわゆる落ちこぼしにさせられているのではないかという心配が親の方にはあるわけでございます。  また、服装その他の規律が厳し過ぎる、いわゆる管理主義的教育に対する拒否反応としての登校拒否が出ているのではないかという見方の反面、学校の側から見ますと、家庭が過保護過ぎる、あるいは逆に放任過ぎるというとらえ方があって、子供たちにとってみますと、家庭と学校との落差の激しさに子供自身が心理的に非常にプレッシャーがかかる、心理的に精神的に不安定になっていると思うわけでございます。  そこで、学校と家庭との対話を進めるということが必要だと思いますし、また父母と教師を含めた対策が必要だと思うわけでございますが、先ほどお伺いいたしました文部省の専門家会議でございますか、そこでそういうふうな取り組みをなさる。そして、文部省登校拒否児対策の一環として、学識経験者らで構成する学校不適応対策のための調査研究協力会議、それにあわせて、登校拒否問題を地域ぐるみの対策とする地域会議の設置をただいま伺ったわけでございます。  これは既に新聞でも承知をしておりますけれども、それともう一つ、首相の諮問機関であります青少年問題審議会の意見書に基づく総理府の青少年対策推進連絡会議との関係はどのように調整していかれるおつもりでございましょうか。この地域専門家会議でモデル市とか町村をつくって八地区の組織づくりを進められるというふうに伺っているわけですけれども、こういった組織とか総理府の首相の諮問機関などの組織を有機的に結びつけて運営をしていかないと、それぞれがばらばらの機能を果たしているのでは親たちにとっても非常にわかりにくいし、効果が期待されにくいのではないかと思うわけでございます。その点はいかがでしょうか、お尋ねいたします。
  70. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) ただいま御指摘がございましたように、私どもでは文部省の施策として、この登校拒否の問題につきましては例えば、まず冒頭に御紹介いただきました実態調査をする、そして全体的な状況を把握するということをやっております。  それから、この問題は何よりも学校教育で取り扱うことが重要でございますので、先生方にそうした問題にしっかり対応していただく必要があるということで、先生方指導資料をつくりまして全国的に配付いたしております。それからまた、こういう問題を御担当になります先生方はカウンセリングマインドといいますか、要するに子供たち教育相談をしてやれる、そういうカウンセリングマインドということが重要になりますので、私どもの各種の講座でカウンセリング技術等の授業といいますか、講座を設けまして教員研修に努めております。  さらに、各市町村、都道府県におきましてもこうした問題には教育委員会で取り組んでいただく必要があるということで、教育相談活動の推進事業をするとか、各市町村、県で教育相談の体制をつくっていただくとか、それからまた、こうした登校拒否児を抱えております生徒指導の困難な学校に対しましては教員を加配するとか、文部省としてはいろいろ施策をしておりますし、先ほど来申し上げております外部の専門家を入れた検討会議も設けて、どうしようかという、今、御相談をしている最中でございます。  ただ、これは御案内のように文部省だけではなくて、先ほど法務省もございました。それからそのほか厚生省もございます。各省いろんなところでやっておりますので、それを政府全体で統一的に考えていくのが先ほどの総理府の青少年対策本部にございます各省の集まります会議でございますが、そこで各省それぞれやっております仕事を統一的に連絡調整していくという機能を総理府は持っている、こういうことでございます。
  71. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 子供たちは勉強そのものが嫌いなのではないんです。けれども、もとの学級ないしは学校にはちょっと抵抗があって登校拒否という現象を起こしている。ですから私は、文部省がどういうふうにとらえていらっしゃるか、認識されていらっしゃるかちょっとわかりませんが、これは問題行動というふうにはとらえない方がよろしいかと思うわけでございます。  登校拒否の子供たち学校から離れたところで見えてくる世界があるということがございます。つまり登校拒否児にとって適応できる場所、そういうところもあるという実例がございます。私の身近なある高校教員ですけれども、クラス担任で登校拒否の生徒を抱えていて、何とか学校へ復帰させようとしているわけでございます。それで放課後、自分の車に天体望遠鏡を積んで、その子を星の観測に連れていくわけです。もちろん両親の承諾を得て行くわけですけれども、天体の観測を通じて生徒の心の扉を少しずつ開いていく。今、報告によるととてもいい状況が生まれてきているようでございます。  それからもう一つの例ですけれども、登校拒否の子供を抱えた父母が地域教育相談所に飛び込みましてカウンセリングを受けて、そこでNHK学園、日本放送協会学園高等学校へ行ったらどうかという勧めを受けて行かせているわけです。登校拒否の子供にも親にもある一定のプライドというものがありまして、ある意味ではこのNHK学園という受け皿は彼らにとって適応性を持ったところとなっているわけでございますから喜ぶべきであるかもしれません。ただ、NHK学園というのは、申し上げるまでもなく、本来働きながら学ぶ青少年の教育機関として発足をしたところでございますから、登校拒否児の受け皿になることによって全体に与える影響が少なからずあるというふうに私はお聞きをしておりますが、そういった状況が出てきているということを伺っております。  ともあれ、登校拒否四万人という数字は大きな社会問題としてクローズアップされております。原因も、解決の方法も、本当に一様のものではないということもまた真実かと思います。この問題につきましては、学者、評論家の間におきましても、思春期挫折症候群として社会不適応者への対症療法をしなければならない、そういう考え方、タイプと、それから登校拒否という対社会態度表明者への人間としての教育学校現場に取り戻さなければならない、そういう考え方、タイプと相対立する見解があるようでございますけれども文教行政の最高責任者として石橋文部大臣はこの二つの見解に対してどのようにお考えか、承りたいと思います。
  72. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) 委員指摘のとおり、登校拒否問題は、全くその原因、背景、学校でありますとか、あるいは家庭でありますとか、あるいは地域社会でありますとか、もちろん本人のこともあるわけですが、大変複雑に絡み合っている、こう考えております。そのような中においてどのようなことをやっていったらいいかということ、全くたくさんの問題を抱えているだけに大変なことであると存じますが、とにかく、教育上からとってみますとまさに重大な問題である、こう認識をいたしております。  今後とも、将来の我が国を担う心豊かでたくましい青少年の健全育成を図るという観点に立って、この問題、まことに難しゅう存じますが、解決に努力を尽くす覚悟でございます。
  73. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 私がお尋ねしたのは、この登校拒否児のことを、病気だから治療が必要だ、そういう位置づけをしている学者ないしは評論家と、それからまた一方では、学校を人間教育の場にしなければこの問題は解決しないであろうというそういう考え方と、こういう両者があるようでございます。それで今、文部大臣のお考えを伺いまして、私はぜひとも子供たちの人間教育といいますか、人間性を取り戻す場としての学園づくり、学校というところは本当に魅力ある楽しいところでなければならない、そういう立場に立って行政を進めていっていただきたいと思います。  では続いて、この登校拒否児の問題と関連いたしまして、高校中退問題について文部省にお伺いしたいと存じます。  全国の公私立を中退した生徒が十一万三千三百五十七人、三年連続して何と十一万台に上っている、そういう結果が文部省調査で明らかにされております。私の県、高知県でも六十三年度の全日制県立高校の中退者状況を去る八月発表しておりますけれども、お恥ずかしいことに、全国的に見ましてワースト上位に位置しております。この高校中退の背景、原因ですね、そうした中身についてどのような御認識をお持ちでしょうか、文部省にお伺いしたいと存じます。
  74. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) ただいま御指摘ありましたように、高校の中退者数は十一万人を超えております。在籍者数に占める割合で見ますと二・一%でございますが、これは小中学校の登校拒否と若干違うのは、ごくわずかでございますが、ここ四年間連続してこの中退率が減少していることでございます。しかし、この十一万人という数は相当な数でございます。この多数の中途退学者を生じていることは私どもは大変遺憾なことである、高等学校にせっかく入った以上は、とにかくすべての生徒がその課程を終えて卒業してほしいというふうに考えております。  調査によりますと、生徒の中退の事由としましては進路変更による者が三割で最も多いわけでございますが、それに次ぎまして、学校生活それから学業に不適応でやめております者が二六・八%、それから学業不振でやめております生徒が一二・四%等で、私どもとしてはこうした問題に学校として適切な対応をとっていくように指導していかなければならない。これまでも指導してきておりますけれども、一層学校教育の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
  75. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 東京都の調査によりましても、六十三年度で高校中退が過去最高を記録しているようでございます。  全体としてはわずかに下がっているわけですけれども、ここにちょっと困った特徴といいましょうか現象があらわれていることにお気づきでしょうか。この高校中退十一万人という数の中で特徴的にあらわれていることがあるわけですけれども、何かお気づきになっていらっしゃいますか。
  76. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 特徴といたしましては、まず、全日制課程よりもいわば当然でございますが定時制課程の中退率が大変高いということが一つでございます。  それからもう一つは、その中退の理由といたしまして、先ほどもちょっと触れましたけれども子供たちが途中で進路を変更したい、せっかく入ったのだけれども、不本意入学等がございましょう、進路変更を求めている者が三割に達しているということと、学校生活になじめなくて不適応を起こしてやめた者がやはり二六%いる。これは進路変更もいわば結局はその学校の生活になじめなかったことが理由でありましょうから、これらを合わせますと、五割以上が学校生活に不適応 といいますか、なじめずにやめていくということが特徴的でございます。
  77. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 今言われましたけれども普通科生徒が進路変更を理由に一学年のうちに中退をするというケースが目立っているのでございます。高知を初めといたしまして全国的に、普通科や女子の中退者が増加している傾向にあることが明らかになっております。  このことにつきまして、高知県の高校教育課長はこのように申しております。大学進学希望者を除くと全体に職業科の生徒と比べ目的意識が希薄なまま入学してくる傾向にあり、今後一人一人の進路指導に一層力を入れる必要がある、女子の中退者については、女先生を中心に、生徒指導研修会の機会をふやしていきたい、こういうことでございますけれども、私は、そのことは大変結構なことではございますが、問題はそれだけでは解決しないのではないか、もっと深いところに原因があるように思うわけでございます。  それはどういうことかと申しますと、偏差値教育問題点、弊害が出てきているのではないでしょうか。大学進学志向の普通科崇拝の中で普通科志望が非常に多いために、中学における進路指導が適切に行われていないところにも問題が出てきているということは考えられないでしょうか。いずれにいたしましても、高校生の四人に一人が自分の通っている学校に誇りが持てない、四割近くが中退を考えたことがあるというこの数字は非常にショックでございます。  こうしたいわゆる不本意入学がふえた結果として毎年十一万人もの高校中退者を生み出している、そういう背景があると思うわけですけれども、このことに対して文部省ではどのように認識されていらっしゃるでしょうか、お伺いしたいと存じます。
  78. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 御指摘のように、高校進学の選択に当たりまして生徒も親もいろいろ悩まれると思うわけでございますが、進路決定に当たりまして御案内のように偏差値というものがかなり威力を発揮していることは事実だろうと思います。したがいまして、本来の子供たちの希望ではなくて、偏差値によりまして進路決定が左右されるというようなこともございましょう。  それから、これも御指摘がありましたように、近年大学進学を考え普通科希望が多いわけでございますけれども、実際に普通科に入ってみてもその学校生活になじめない。むしろ職業科に行った方が、いろいろ実験、実習等もございますし、先生方の大変御熱心な指導等もありまして学校がおもしろくなっていくというような報告も私どもも聞くわけでございます。したがいまして、不本意で高等学校に入った、そして実際に授業を受けてみると、実験、実習というような体を動かす、手を動かすというような教育もなくて、学校生活になじめなくなっていくということでやめていくという問題が多いと思います。  したがいまして、私どもとしましては、まず中学校における進路指導のあり方というものを十分充実して、子供たちの本当に多様な興味とか関心とか能力とか適性に応じた進路決定がなされなければならない、そのための指導を十分やっていただきたいということを考えておりますし、また学校に入りましたら、これも御指摘がありましたように一年でやめていく生徒が多いわけでございますので、まず最初の適応指導というものを各高等学校ではしっかり充実していただきたいというふうに考えております。
  79. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 高校普通科と職業科の比率ですけれども生徒の能力、適性に見合ったコースの編成が必要ではないかと思いますが、今どのような割合になっているのでしょうか、お伺いしたいと存じます。
  80. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 全国的に見ますと、職業科が二五%で普通科が七五%前後だったと思います。ただ、県によりましてその比率はさまざまでございまして、例えば九州の方とか山陰の方では職業科の比率が大変高い県もございます。高い県では五割近くが職業科であるという県もございます。
  81. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 十一万人の高校中退者、この数字は千人規模の高校が百十校丸ごと消えてなくなるという計算になります。高校生が学校生活に適応できない原因はこのほかにもあると思いますけれども、どういうことが考えられるでしょうか。
  82. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 学校生活に不適応を起こす場合はいろいろな理由がございますが、例えば、先ほど来申し上げていますように本意でない進路を選んだという場合、これは、自分の進路が、入ってみたらやはりこういう道に進むべきでなかったということで変わることがございましょう。それから学校の授業がおもしろくなくてそれに不適応を起こしていくという場合もございます。さらには学校内の人間関係、例えば友人関係がうまくいかないとか、先生との人間関係がうまくいかないということでやめていく場合もございます。そのほか、これはそんなに数は多くはございませんけれども、問題行動を起こしてやめていく場合とか、ないしは家庭の事情でやめていく。細かく見ていけばさまざまな理由がございます。
  83. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 ここに全国高等学校研究会の調査結果が出ております。これは全国の六十一校、高校生五千八百九十二人を対象に一九八七年十一月から一年間かけて行っておりますけれども、クラブ活動もしないで友達が少ないこと、希望校に進学できなかったことが高校生の学校不適応の数字となってあらわれているという調査結果が出ておりまして、この全国高等学校研究会では、学校不適応の高校生に対して生徒実態に即した学習指導が求められていることをこの調査が示しているというふうに指摘しております。  高校生が生き生きと学べる学園をつくるにはどうすればいいでしょうか。どの子もそれぞれに持っている豊かな個性を伸ばせる教育の場、二十一世紀を担うにふさわしい人間形成の場として魅力ある学校をもっとふやしていくことこそ文教行政に携わる文部省の責任であろうと存じます。そのような高校教育の改善、改革に対する取り組みにつきまして、私は文部大臣の決意をお聞かせいただきたいと存じます。
  84. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) 私は基本的には、いわゆる義務教育と高等学校の問題はやや異なるなと、こう考えております。  ただ、だからといって、せっかく九四%以上もの子供たち高校へ入学した、それがただいま委員指摘のようないろんな問題の中において残念ながら去っていく、これはやはり何とかして、教育行政の責任としてそのようなことがないように、政府委員から答弁のありました中学から高校に行く場合の考え方でありますとか、進路の問題でありますとか、いろいろな原因があると思いますが、基本的にはやはりこれをなくするように、もちろん家庭の問題も幾らか原因の中にあります。そうしたことをきちっと対応策をつくって、今までもやっておりますけれども、やはりこれはゆゆしき問題であるという基本的な態度に立ってこれを見直していきたい、こう考えております。
  85. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 私はきょうは時間の都合でそこのところまで言及できないということで余り質問の内容を用意しておりませんでしたけれども、やはり一人一人の人間をつくっていく人間形成の場として魅力ある学校にするためには、例えば、政府が今やっております初任者研修などといったような形で教職員研修させていくような制度にお金を使うよりも、そういう予算で四十人学級と今言われておりますものを三十五人とかあるいは三十人にするようにして、教職員方々がもっと一人一人の子供たちに触れ合える場所というものをつくっていかれるようにしていただかなければならないのではないかと思います。  先ほど私はNHK学園のことでちょっとお話をいたしました。このNHK学園が登校拒否児の受け皿になっている、そういうことを関係者からも聞いておりますのですけれども、このことは文部省におかれてはNHK学園の設置目的にかなっているというふうに受けとめられますか。それともそれではだめだということか、何かお考えがございましたらお聞かせください。
  86. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) NHK学園は昭和三十八年に設立されておりますが、当初は御指摘のように勤労青少年を対象にしまして、全国広域で放送を使いまして高等学校の課程を設けて、働く人ないしは家庭の主婦などを対象に始めた広域の通信制高校でございます。  しかし、その後高校進学率がどんどん高まりまして、今、百人のうち九十四人まで高等学校に行っているわけでございますから、現時点でのいわゆる昔ながらの勤労青少年の数は大変少なくなっております。ただ、過去に高校に行けなかった人たちが今かなり入ってきておりますけれども、NHK学園というのは高等学校教育機会に恵まれなかった人ないしは過去に行けなかった人たちを対象にして高校教育をやっているわけでございますので、そこは特に現時点で勤労青少年でなければ趣旨に合わないとかということはないと思います。  とりわけ定時制ないしは通信制教育、これは全国的にそうでございますが、今日では生涯学習機関としてすべての人にいつでもどこでも学べる高等学校ということでなっておりますので、今、問題になっております集団生活としての高等学校にはなじめなかったけれども、通信教育という方法によって、個別の通信による方法でなら高等学校になじめるという人たちがそこに行くことは、それはそれで結構なことではないだろうかというふうに考えております。  これから生涯学習社会を目指すということが教育改革の大きな課題になっておりますが、そうした中でNHK学園とかそのほかの、新しく単位制高校どもつくっておりますが、そうしたものが機能を持って、こうした子供たちもその中で吸収して高等学校教育をやっていくということにつきましては、私どもは問題はないし、いいことだというふうに考えております。
  87. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 受け皿として是認をされていらっしゃるというふうに受けとめました。NHK学園が受け皿として、問題児、登校拒否児たちにとって適応できる場所であればよろしいというふうに文部省は受けとめていらっしゃる、こういうふうに私は確認をさせていただいておきます。  時間がございませんので、次に生涯学習についてお伺いしたいと存じます。  人生八十年時代を迎えております。高齢化社会であります。国際化情報化が進む中で、激しく変化し複雑化する社会において、あらゆる年齢層を通じ国民の生活課題が多様化し、あわせて文化的欲求が増大しつつあります。社会学習、成人学習システムを求められている時代だと思います。  文部省におかれましても、つい先月、教育白書「我が国の文教施策」を発表され、その中で生涯学習振興について記述をされているわけですけれども国民要望に沿った生涯学習体制づくりという観点で、文部省の基本姿勢をお尋ねいたします。
  88. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 社会の変化、時代の進展に伴いまして我が国国民学習需要というものは非常に多様化し、かつ高度化しているというような御指摘がございまして、そのような認識に基づいて臨教審で、生涯学習体系への移行ということが一つの大きな教育改革の目玉として御提言があったわけでございます。  文部省といたしましては、昨年の七月に従来の社会教育局を生涯学習局に拡充いたしまして、生涯学習に取り組む本格的な行政体制を確立いたしまして、本年度、平成元年度予算で初めてその生涯学習局の予算としていろいろな、生涯学習フェスティバルでありますとか、あるいは生涯学習センターの補助制度でありますとか、あるいは学習情報システムの促進でありますとか、新しい角度の予算を実現いたしました。  同時に、御存じのように、ことしの四月に第十四期の中教審が再開いたしましたときに生涯学習の基盤整備につきまして諮問をいたしました。それが十月の末日に、一応、生涯学習委員会の経過報告として、中間報告的な意味合いを持つものでありますが公表されました。これをこれから最終答申に向けて中教審はさらに検討を進めると思いますけれども、こうしたことを踏まえまして、さらに私ども、生涯学習はまだ何といっても我が国においては始まったばかりでございますので、そういうことについての体制づくりということをまず腹に置いて、全力を挙げていきたいというふうに考えておるところでございます。
  89. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 だんだん時間が足りなくなってまいりましたけれども、中央生涯学習協議会の来年度発足に向けた生涯学習振興法案についてお伺いしたいと思います。  この法案を提出される目的と背景を具体的に説明してください。
  90. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 今の御指摘は、ただいま私が述べました、ことしの四月に文部大臣が諮問いたしました中央教育審議会への諮問のことだというふうに考えております。  先ほどお話し申し上げましたように、十月三十一日に、まだ中央教育審議会の中に置かれた小委員会審議経過報告という形でございまして最終答申に至っておりませんけれども、そういう形で公表がされました。中教審としては、その公表後に各関係の団体等からも意見をこれからヒアリングをされまして、その意見に基づいてさらに審議を進めてできるだけ早く最終答申にまとめるという方向をとっておりますけれども、まだそういった中のことでございますので、先ほど御指摘のございました振興法案というような具体的な形での検討は、私どもとしてはまだいたしておりません。
  91. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 時間がございませんのでもう走り走りですけれども、とりわけ女性の立場として生涯学習で気にかかりますのは、働く女性に対する生涯学習の機会をどのように保障するかということでございます。  経済的にゆとりのある恵まれた家庭婦人の場合は昼間の時間帯を活用できるわけですけれども、昼間働いて夜は家事、育児に追われる共働き女性の場合は、生涯学習に対する関心や意欲がございましても、これらの制度を享受することがなかなか困難だと思います。労働時間の短縮とかあるいは週休二日制の完全実施、育児休業法の制定も含めて、労働条件の改善も一緒にやっていかなければならないことだと思っております。  このことについて私は文部省の積極的な取り組みを期待しておりますけれども、きょうは時間がございませんのでまた次の機会にこういったことについてお聞きをすることにいたしまして、最後に、我が国の生涯学習機関として放送大学など放送メディアを生かした新しい教育システムが推進されているわけですけれども、機会均等という点に立って、具体的な将来計画をお尋ねしたいと思います。  放送大学が開校されて五年になるわけですけれども、生涯学習の中枢メディアとも言うべき放送大学のサービスエリアの拡大につきまして、昨年三月の文教委員会において私どもの先輩の安永英雄委員から質問をしておりますが、その後の進捗状況はいかがでございましょうか。そのときは、放送衛星、有線放送、ビデオテープを活用しての充実、拡大について総合的に検討しているという答弁であったかと思いますけれども、その後の進捗状況はいかがでございましょうか。  それともう一点は、平成元年三月に初めて卒業生を送り出したわけでございますけれども、入学者数に対してどれぐらいの割合の卒業生を出されたのか、教養学士号を授与される学生の数がどのくらいであったのか、そういった点についてお尋ねしたいと思います。
  92. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) ただいま御指摘の放送大学の課題、これは全国化というふうによく言っておりますけれども、その課題についてでございます。  全国化に当たって、これは放送大学の最大の課題でございますけれども、大きな問題が二つございまして、一つが放送網の整備でございます。もう一つが面接授業あるいは単位の認定試験などを実施いたします各地区の学習センターの整備で、この二つの問題が同時に行われませんと全国的な体制づくりということができないわけでございます。  まず放送網の方でございますが、これは先ほど御指摘がございましたように、昭和六十二年度でございますか、放送大学調査研究会というのを文部省の中に設けまして、そして専門家の御検討をいただきました結果といたしまして放送衛星を利用するということが有効だということで、その方針に従いまして平成元年度から放送衛星を利用するに必要な放送計画調査というものを実施しておりまして、これを早く成果がまとまるように努力しているところでございます。  それからもう一つ学習センターの方の整備でございますが、これは各地域、少なくとも都道府県単位ぐらいには整備をしていかなきゃならないものでございます。そのことと、それから、現在、放送地域外におきましてもせっかく持っております放送大学の放送教材などがもっと活用されるように、ビデオ学習センターというものを原則として国立大学にできるだけ置いていこうという方向で努力をしております。平成元年度は広島大学に一校まずやってみようということで、現在その検討を具体的に進めているところでございますが、これを平成二年度の概算要求におきましては六カ所にふやすということで要求してございまして、ぜひこれを実現したいというふうに考えているところでございます。  それから二番目の御質問のいわば卒業率の問題でございますが、本年四月に初めて卒業生を、これは五百四十四人でございましたが、当初入学された人数は八千百人程度でございましたので、これをパーセントに直せば六%ということになります。これは形態としては通信教育と比較的似ているわけでございますが、通信教育の大学の卒業率に比べると非常に高いということは言われておりまして、学生の非常な熱意というものがここにあらわれているというふうには考えております。
  93. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 私は余りにも低いのではないかと思いますけれども、どこに問題があるとお考えでしょうか。生涯学習全般の私の質問も含めて、最後大臣のお考えを承りたいと存じます。
  94. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) いずれにいたしましても、放送大学というものは、現在、特に生涯学習という観点に立ちますとこれを拡充していくということは大変大切なものである、こう考えております。  それをやっていきますには、話が横道に入りますが、私の住んでおりますところもまだ電波がとれません。そのように、全国的に見ますとどうしてもこの恩典に浴せないところがたくさんあります。そこで、政府委員がお答えを申し上げましたとおり、放送衛星を打ち上げてやるということ、片方もう一つは、これも金がかかりますが、ビデオ学習センターの設置、これを、言葉が悪いですがてんびんにかけながらどんどん進めていって、全国どこでもやれるようにしたいなと、こう考えております。特に私の場合はこの放送大学をつくるときに与野党みんなでつくりました委員の一人としてどのようにこれをやっていったらいいかということで大変悩んだ一人でありますので、とにかく拡充をしてみんながこれを使えるようにしたい、こういう考え方です。
  95. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 ありがとうございました。これで終わらせていただきます。
  96. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時六分休憩      ─────・─────    午後一時三分開会
  97. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、教育文化及び学術に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  98. 森暢子

    ○森暢子君 それでは、私はきょう大きな柱を三つほど用意しておりますけれども、まず子供の権利に関する条約について少し御質問したいと思います。  本年の十一月二十日に国連総会で全会一致で採択されたということで、これは世界史上大変画期的な、意義のあるものというふうに思います。日本政府も本条約の草案については審議の段階から参加して採択に加わったということで、そういう姿勢に対しまして大変敬意を表するものでございます。  ここで文部大臣にお聞きいたしたいのですけれども、この条約の特色というものと、あわせて、大分前ですが、一九五九年に第十四回国連総会で採択された児童の権利に関する宣言というのがあるわけですが、この宣言と今回の条約との比較でどういうところが違うかというあたりをお答えいただきたいと思います。
  99. 川村恒明

    政府委員(川村恒明君) ただいま御指摘のございました子供の権利条約でございますけれども、十一月二十日に国連総会で採択をされたわけでございます。この条約の特色はどういうことかということでございますが、御案内のとおりに、子供たちの心身ともに健全な発達を図る、そのために、これは教育だけではございません、ほかのいろいろなことがございますけれども教育を含むいろいろな場面で特別の保護ないし援助をしようということがこの条約の基本的な考え方であろうというふうに承っております。  それからもう一つ、児童の権利宣言のお話がございました。これは一九五九年に同じく国連総会で採択をされているわけでございます。その宣言とこの条約とは内容的には、少なくとも教育の部門で申し上げれば、基本的な考え方はそれほど違っているものではないというふうに承知いたしております。ただ、五九年の宣言というのが宣言という形をとって、これは各国を拘束するというものではございませんし、その基本的な考え方を述べるということであったのに対し、今回は条約でございますから、それはそれぞれの手続を経た時点で各国を拘束するということもございます。しかも、それから長い年月が経ておりますので、内容的にもやや具体のものとし、それぞれ現在の時代に応じたようなきめの細かい規定の仕方がされているというふうに承知をいたしております。
  100. 森暢子

    ○森暢子君 私どもがいろいろと読みました中で、宣言というのは内容的には子供は弱い立場の者であるから大人が保護しなければいけないというふうな保護救済という立場であったけれども、今回の条約では子供の権利の対象をたくさん拡大いたしまして、そして子供が権利の主体者であるというふうなとり方をしているのですが、その辺のところはどうでしょうか。
  101. 角崎利夫

    説明員(角崎利夫君) 児童の権利条約は、委員指摘のとおり、児童の自己決定権あるいは思想、表現の自由等、諸権利を規定しておりまして、児童の権利宣言より広く児童の権利と保護を認めているということで違いがあろうかと思います。
  102. 森暢子

    ○森暢子君 それじゃ、そのあたりは確認してくださっていらっしゃるわけですね。  次に、この条約についてはもういろいろなところでお話が出ていると思うんですけれども、先日、採択前の十月二十六日の予算委員会で同僚の堂本暁子議員がこのことについて質問いたしましたところ、外務省の方からやはり今おっしゃったように、児童の自己決定権とか思想、表現の自由とかそういうことで、その趣旨は大変立派だ、大変評価している、こういうふうなお答えがあったわけです。  それでは文部省はこの採択された条約というものをどのように評価なさっているか、お聞きしたいと思います。
  103. 川村恒明

    政府委員(川村恒明君) 先ほど申し上げましたように、この条約の趣旨というのは、子供たちについてその健全な発達を図ろう、そのためにできる限りの保護ないし援助を与えようということでございますので、私どもとしてもこの条約の審議が国連で始まりましてから、もちろん外務省さんとも十分御相談をしながら対応してきたという経過がございます。でございますので、そこに書かれている事柄として、これについて絶対反対だとかどうしても困るというようなことではございませんで、趣旨自体は大変結構なことであろうというふうには思っております。  ただ、これは先生御案内のように条約というものでございますから、世界に現在百六十カ国を超える国があって、それぞれの国にともかく一応妥当性のあるような条文をつくろうとするとなかなか難しいところがある。それぞれの国はそれぞれの教育制度を持っておりますから、やはりそれぞれの国の制度に準じた取り扱いということが必要になるので、基本的な考え方自体には私どもは異存はございませんが、個々具体の問題についてはこれから十分また国内で、外務省さんともよく相談をしながら対応していきたいというふうに思っております。
  104. 森暢子

    ○森暢子君 基本的な内容については異論はない、立派なことだけれども、今後いろいろな問題があるというふうなことでございました。あとはやはり各国の批准の問題になろうかと思うのですけれども、批准をするとなれば、国内の法律の改正や、行政上とか財政上とかいろいろとやらなきゃいけないことがたくさんあると思います。  それと、私が考えますのにこの中にはもう一つ、子供の自己表現権であるとか自由に発言する権利を大人たちが本当に認めなければいけない。これから考えていきますと、学校現場とか親とか、それから教育者とか政治家とか役人とか、そういう人たちが子供の権利というものをもう一度認識し直さなきゃいけないという大変な問題があると思います。つまり我々大人の意識変革というのですか、これが大変だと思うわけですね。  そういう意味で、やはり早く日本国民の人たちにこの条約の内容というものを知らせる必要があると思います。ところが本条約の公式の翻訳というのが出ていないと思うんです。民間のものは私も目にいたしましたけれども、政府として公式に翻訳ということの御計画があるのか、外務省はそれをいつごろ翻訳なさるか、そういうふうなあたりをお聞きしたいと思います。
  105. 角崎利夫

    説明員(角崎利夫君) 一般的に申しますと、確定した日本語訳がまだできていない段階におきまして条約の翻訳文を公表することは今までも差し控えさせていただいておるところでございます。  この条約につきましても、今後どのように翻訳するのが一番適当かということも含めまして検討していくものでございますので、現段階におきまして訳文をいつ出せるか等につきましてまだ申し上げる状況には至っていないというところが本当のところでございます。
  106. 森暢子

    ○森暢子君 大体お役所の仕事というのはだんだんだんだん遅くなりますので、ひとつ国民の中でイニシアチブをとって、少しでも早くやっていただきたいというふうに思います。今の段階でまだ翻訳がいつ完成できるのかわからないというのは大変残念に思います。  その翻訳する場合に問題になると思いますのが、チャイルド、子供ということの定義なんですけれども、第一条で「十八歳未満のすべての者」、こういうふうに書いてあります。もしこれを日本語で児童というふうに翻訳いたしますと、日本の法制度の実態からいろいろと問題が出てくると思うわけですね。まだ公表する段階でない、こうおっしゃるのですけれども、このチャイルドをどのようにとっていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
  107. 角崎利夫

    説明員(角崎利夫君) 今申しましたとおり訳文は今後作成するものでございますので、チャイルドの訳語につきましてまだ確定はしておりません。今後、条約全体を検討していく過程におきましてチャイルドの訳語につきましても検討してまいりたいということでございます。  それからちなみに、日本の実定法上、児童というものの意義につきましてはいろいろな用語がございまして、例えば児童福祉法におきましては、児童とは満十八歳に満たない者をいう、あるいは児童手当法におきましては、児童とは十八歳に満たない者をいう等々、いろいろ法律によっても児童というものの意義が違っておるようでございます。
  108. 森暢子

    ○森暢子君 私もちょっと調べてみますと、今おっしゃったように、まず児童福祉法では十八歳未満ということですし、それから母子及び寡婦福祉法では二十歳未満を児童と定めておりますし、それから学校教育法では十八歳までを学校の段階に応じて幼児、児童、生徒というふうに呼んでいて、満六歳から十二歳の小学生を児童と呼んでいるわけで、この子供の権利条約で児童と訳した場合いろいろな問題点がたくさん出てくると思うわけです。  今、三つ言いましたのですけれども、そこでも全部解釈が違うわけですね。そういうふうなことで混乱を招くおそれがあると思うんですけれども文部大臣と外務省の方から見解をお聞きしたいと思います。
  109. 川村恒明

    政府委員(川村恒明君) 先ほど外務省からお答えがあったとおり、法律によっていろいろ違っているわけでございまして、ちなみに申し上げますと、私ども学校教育法でございますと、小学校段階の子供は学齢児童、それから中学校段階の子供はこれを学齢生徒というふうな使い分けをしております。  それから先ほどの児童福祉法では「児童とは、満十八歳に満たない者をいい、」ということでございまして、これはそういう法律をつくる際にその法律趣旨に即した定義の仕方、これが定義を必要としない極めて一般的な概念として通用している場合にはそういうことは要らないと思いますが、こういう対象の範囲の決め方によっていろいろな権利関係が違ってくる場合には当然定義規定をつけるということが通常でございますから、今回のこの条約につきましても、正文ではございませんがその第一条を見ると、児童とは十八歳未満のすべての者をいうというたぐいの英語のことが書いてございますから、それぞれそういう条約なり法律なりの趣旨、性格に従って定義をつければ、言葉の使い方としても、あながちそれを児童と訳すということについてはおかしいことではないのではなかろうかというふうに思っております。
  110. 森暢子

    ○森暢子君 法の整備が必要だと思いますけれども、これは今後いろいろと問題があると思うんです。それで前向きにそういうことをよく考えて、積極的に早く検討していただきたいというふうに思います。  例えば昭和五十一年五月二十一日の最高裁の学テの判決では、「特に、」として、「子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有する」云々というふうなことで、子供ということを使っているわけですね。この条約では親と子、それから大人と子供の関係の中での権利の保障ということを軸にしていると思いますので、児童よりも子供の方が適切ではないかというふうに私どもは思っているわけであります。そういう意味で、ひとつ日本行政の管轄内で子供ということの考え方をぜひ前向きにお願いしたいというふうに要望いたします。  それから次に、子供の権利条約の批准についてなんですけれども、これも採択前の十一月十七日の衆議院文教委員会で江田五月議員が質問をしております。そのときに外務省の国連局人権難民課長が、採択された後、国内法との関係を勘案して協議をしていくというふうにお答えになっているわけですが、この条約の批准の可能性について外務省の方からお願いいたします。
  111. 角崎利夫

    説明員(角崎利夫君) 繰り返しになるかもしれませんが、基本的に我が国はこの条約の趣旨には賛成しておりまして、そういう立場から国連総会での採択に際しましてコンセンサスにも参加したわけでございます。  その締結につきましては、我が国国内法との整合性も勘案して、今後、関係省庁とも協議の上検討を行っていくという立場でございます。したがいまして、現在締結の具体的見通し等について申し上げるような状況にはございません。
  112. 森暢子

    ○森暢子君 これは文部省が大変関係があると思いますので、ひとつ文部省の方も、例えば批准に向けてどのような手順を踏んでやるおつもりなのか、お聞きしたいと思います。
  113. 川村恒明

    政府委員(川村恒明君) ただいま外務省からお答えがございましたとおり、国内法との関係につきまして、これからこれの正文が日本語としてテキストが確定した時点で十分御相談をしていかなくてはならないというふうに思っております。  私ども、先ほど申し上げましたように、趣旨自体については異存はない、賛成であるというふうに申し上げておりますが、個々具体の書き方について、例えば教育関係の規定で申しますと、第二十八条で初等教育は無償にするというような趣旨のことが書いてあるわけでございます。その初等教育が無償といったときに、初等教育の範囲というのはそれぞれ各国が決めるわけでございますから、我が国の場合それは多分幼稚園は入らないのであろうというふうに理解をするとか、あるいは、中等教育についても無償措置を導入する、した方がいいという規定があるわけでございます。  それが中等教育についてこれを完全に無償にせよということであるとすれば、日本の後期中等教育である高等学校をどうするかという問題になるし、しかし私どもがこの案文を理解できる範囲では、これはそのような、例えば無償の措置など例示としてそういうことを挙げて、そういうことなどを各国が判断し適切な措置をとることによって中等教育ができるだけ多くの人に開放されるようにするという趣旨かというようなことで、その辺のところでやはり国内法の整備の問題ということも出てまいります。  批准ということはやはりこれは大前提になるわけでございますが、その際、国内法を整備するのか、あるいは特定の条項について留保をつけるのかというようなことでございます。基本的には批准に向けての努力でございますけれども、今そういう若干の例を申し上げましたが、そういうことについてこれから十分関係省庁とも相談をしてまいりたい、こういうことでございます。
  114. 森暢子

    ○森暢子君 国内法との整合性の問題やいろいろ山積していると思うのですけれども、大体こういうふうなものが国連で採択されて批准に至るまで、日本は大変長い間かかるわけでございます。  その間、検討するとか相談するとかいろいろ言いながらなかなか前に進まないということを私ども何回か経験しておりますので、できましたらきょう、例えば二年後とか三年後とか何年後にはやろうというふうな前向きのお答えがいただけたらと思うんですけれども、いかがなものでしょうか。子供もどんどん大きくなりますので、ひとつ早目にお願いします。
  115. 川村恒明

    政府委員(川村恒明君) 先ほど申し上げましたようなことで、これから鋭意その辺、この条約につきまして内容的な御相談ということを関係省とできるだけ早く進めてまいりたいというふうに思っております。
  116. 森暢子

    ○森暢子君 できるだけ早くというところをひとつきちっと記録しておいていただきたいと思います。そういうお言葉がありましたので、本当に早くやっていただけるものというふうに思います。  子供は大人の小型ではない、それ自身が独立した存在であっていろんな権利を持っている、こういうふうな考え方でのこの中身であろうと思うんですけれども、今、日本子供たちの現実を見たときに、人権侵害の状況というものは大変深刻だと思うんです。そのあたりを文部省はどのようにとらえていらっしゃるでしょうか。
  117. 川村恒明

    政府委員(川村恒明君) この条約を拝見いたしますと、かなり世界の各国で子供たちの人権が侵害されているという状況がよく反映されているように思います。条約の規定で見ると、子供たちが不当に労働による搾取を受けないとか、あるいは性的な虐待を受けてはならないとか、あるいは親とできるだけ一緒にいなければならないというような、こういう条文を逆に読むと、世界の各国では子供たちの人権というものがまだ十分に守られていないのかなということがうかがえるような規定が随所にあるわけでございます。  そういう観点から我が国の状況をこの条約と照らし合わせて読んでみると、先ほど申しましたような若干の、教育の無償の問題とか義務化の問題というのがございますけれども我が国の場合は、この条約に反映されているような世界の状況に照らしてみれば、子供たちの人権というのは十分とは申しませんがかなりの程度においてそれは保護されているであろう。ただ、最近一連のいろいろな事件がございまして、そういう点で、やはり子供たちの人権というのはいつでもこの条約の精神に沿ったできるだけの保護が与えられ援助が与えられなければならないものだというふうに思っておるわけでございます。
  118. 森暢子

    ○森暢子君 世界子供たちに比べれば、我が国では十分とは言えないけれども人権は守られているのではないか、こういうふうなお答えでございました。しかし現実にはたくさんあるわけですね。これはもうみんな知っていらっしゃると思うんですけれども、まず、受験戦争の中で子供たちがどんなに悩んでいるか、十五の春を泣き泣き暮らしている子供たちもいるわけです。  私、三十一年間、中学校の教師をして三年生も担任いたしまして、そのあたりの進路指導の難しさとか、もういろいろと体験してまいりました。いっぱいあります。それから家庭内の問題もありますし、最近は大変な性的情報化における子供の不安定な状況とか、本当に人間として正しく生きていくための彼らの環境ができているかどうかという問題があるわけです。  午前中にも出ましたけれども、いじめ、体罰、私も担任していた中でたくさんないじめと体罰の事例がありましたが、これが起こらないように先生をしっかり指導するというだけでは到底だめなんです。もう根が深いわけです。  それともう一つは、先週のアエラという雑誌の中に出ていましたが、幼児の肉体的な虐待ですね、日本でもそういう事例が大変多いんです。小さい子供が母親とかいろんな人たちに虐待をされている。数え上げれば日本子供たちの中にも人権を侵害されている状況はたくさんあるということです。  そういう意味で、ぜひ文部省も外務省も、お役所の中にいてお仕事をなさるだけでなく、ひとつ実際外に出てそういう実態をごらんになって、そして早急にこの批准に向けて努力なさるように強く要望しておきます。  続きまして、学校五日制の問題について御質問したいと思います。  これはいろいろな委員会でいろいろな方が討論なさっていると思うのですけれども、現在、週休二日制の普及状況というのは、労働省の調査によりますと、何らかの週休二日制をとっているという人が七九・九%ある。それから自治省の方から地方公共団体の二日制とか土曜閉庁の資料をいただきましたが、それによりますと、平成元年十一月一日現在で四週六休制実施が五八・三%、試行が三六・七%、合計いたしまして九五・一%が何らかの形で週休二日制になっているという調査が出ております。  そういう中で学校五日制の議論が深まっている、つまり学校だけが取り残されているわけですが、これに対して文部省も前向きでお取り組みになっていることと思いますけれども、その辺のところは本格実施に向けてどのようなお考え、どのような手順でなさろうとしていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
  119. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 学校五日制につきましては臨教審の答申でも、学校五日制への移行について検討するようにという答申がございます。それから、それを受けまして教育課程審議会でもこの問題は議論をいただいたわけでございますが、去る昭和六十二年十二月に出ました教育課程審議会の答申におきましては、「漸進的に導入する方向で検討するのが適当である。」という答申でございました。私どもはこうした一連の答申を受けまして、現在のところこの五日制につきましての調査研究に取り組んでいるところでございます。  具体的には、平成元年度から、社会の変化に対応した新しい学校運営等に関する調査研究という、長たらしい名前で恐縮でございますが、その調査研究協力会議を発足させまして、ここで具体的に学校五日制についてどのような問題点があるのかということを御検討いただいております。そして近く学校週五日制を試行する調査研究協力校を指定いたしまして、実践の場におきましてこの問題について研究を深めてまいりたい、このように考えております。
  120. 森暢子

    ○森暢子君 文部大臣にお聞きしたいのですけれども、この学校五日制の導入について文部大臣は基本的にどのようになさろうとしていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
  121. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) 私はかねてから、ここまで日本の労働問題がいろんな意味で解決している中においてなぜ学校だけが五日制にならないのだろうかということで、野にあったときにも、いろいろ会って話をしたりというようなことを重ねてきております。  そこで、やはり私の考え方は、外国との比較を見てみても、日本国内の各勤務先等の問題を見てみても、この問題はいずれ私はやらねばならないことであるという認識です、一言で言いますと。  ただ、そうした場合、やらねばならないという認識でありますけれども、問題は児童生徒教育水準です。これが落ちてはならない、向上していく中において五日制をとらねばならない。ここで私はいろいろ問題点があるなと。その問題点がなかなかまだ今のところ具体的に解決していないから、総理府が調査をしたり、あるいは朝日でしたかどこかが調査いたしますと、まだ父兄の間では六割も時期尚早という意見が出ていますね。でも、いずれ私はやらねばならないという考え方です。  それで、今、政府委員が答弁をいたしましたが、実験校を指定してやる、これは初めての試みですから、そんなことを重ねていきながら、教育水準の維持をしながらこれをどうやったらできるか、こんな考え方を持っております。
  122. 森暢子

    ○森暢子君 いずれはやらねばならない、こういうふうに強く思っていらっしゃるということなので、そのいずれの間をなるたけ短くしていただきたい。というのは、世の中は本当にもうどんどん変わっておりまして、五年一昔かもっと早いのではないか、こういう社会情勢の中で、いずれということで二年、三年、五年とやっている間に、本当に今度は学校だけが特別な存在になる。親たちは休みながら子供だけが学校に行くというふうなことで、文部省は何をしているのだということになりかねないと思いますので、ひとつ文部大臣の大きなお仕事として進めていただけたらというふうに思います。  そこで、具体的に六十四校の試行の学校をお決めになってなさるということなんですが、その試行の学校、みんな自分のところもやってみたい、やってみたいということでいろいろ全国から手が挙がっていると思うので、それがいつ決まるのか、どの地域か、そのあたりをみんな聞きたいわけです。それをお聞かせ願えたらと思いますが。
  123. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 学校五日制につきましての調査研究協力校は近く決めたいと思っております。その場合には、全国的なバランスを特に考えなければなりませんし、都市部だけではなくて農村部とか漁村部などの地域条件も考慮して選ばなければならないというふうに考えております。  そこで、まず研究を希望される都道府県を、今、募っておりまして、もう大体出ているわけでございますが、その中から地域のバランスを考慮して選定するつもりでございます。そして希望する都道府県の中の都市部と農山漁村部の二地域を設置しまして、それぞれ原則として同一地域内にある学校を指定したい。その指定する学校でございますけれども都市部では幼稚園、小学校、中学校、高等学校、そのほか特殊教育学校も入れたいと思っております。それから農山漁村部では幼稚園、小学校、中学校を入れて、全体で現在のところ六十八校を考えております。  そこで、実は全国的なバランスも私どもとしましては考えまして、例えば東北・北海道とか関東・甲信越とか東海・北陸・近畿とか中国・四国・九州というような地区のブロックを分けてなるべく平均的にやりたいと思っているのですが、ただ手を挙げられる地区と挙げられない地区がございまして、必ずしも当初私ども考えていたように全国均等にブロックを選べないという状況がちょっとございますが、しかしその中でもなるべく全国的な情勢がわかりますような形で調査研究を進めていきたいというふうに思っております。
  124. 森暢子

    ○森暢子君 それで、調査研究を試行いたしましてその結果を出していつから実施できるかというあたりまで、御計画がございましたらお聞きしたいんです。
  125. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) これは初めての研究でございますので、今年度いっぱいは、学校を指定しましたら各学校と御相談をして、それぞれどういう形でこの実験といいますか研究を進めていくかということを打ち合わせしたいと思っております。いろいろ地域実態もございますし学校実態もございますので、いろいろな形で行われることになろうと思っております。  そこで、来年の四月からいよいよその研究に入るわけでございますが、そのときには、例えば月に一回土曜日を授業をしないとか、ないしは二回しないとかという形で具体的に動かしてみまして、その場合に子供たち学習状況がどうなるのか、カリキュラム編成はどうなるのか、教師の勤務形態はどうなるのかというようなことを具体的に研究を深めていく。  そして仮に土曜日授業をしなくても子供たちをどういう形で受けとめていくのかということが重要でございますので、またこれはこれで地域社会でどのような形でこれを受けとめていくのか。ないしは学校をその間開いて、要するに先生は授業はしないけれども学校を開いて、子供たちをそこに来たい人は来させることもありましょう。その場合に先生がそれを面倒を見るのか、そうではなくて地域のボランティアの人が面倒を見るのか、いろいろなやり方があろうと思いますので、さまざまな研究を進めてまいりたいと思います。  これを今のところ大体三年程度調査を行いまして、その間、先ほど申し上げました文部省内に調査研究協力会議を開いております。これは外部の専門家とか学校先生方にも入っていただいておりますので、そこにそのデータをフィードバックしましてそこで検討し、またそれを学校現場学校の実践の場にフィードバックしてそこで研究を深めていくという形で、向こう三年ぐらい研究をさせて結論を得たいというふうに考えております。
  126. 森暢子

    ○森暢子君 それでは三年間はかかるということでございますね。  それで、今、六十八校ということなんですが、これは十二月の初めごろに発表があるとお聞きしていたのですけれども、その点はいかがですか。
  127. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) あした各県に御通知するつもりでおります。
  128. 森暢子

    ○森暢子君 発表できませんか。
  129. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) まだちょっと文書決裁が最後まで済んでおりませんので、あしたないしあさってには発表いたしますのでもうしばらくお待ちいただきたいと思います。
  130. 森暢子

    ○森暢子君 こういうことはみんな大変関心を持っておりますので早く知らせてほしいと思うんです。  と申しますのは、例えば希望したけれどもこの六十八校に漏れた学校とか、ほかにもたくさん試行したい学校があるわけです。事実、いろいろと工夫しながら、学校五日制がもし本格実施されたらどうだろうかということで考えている地域学校があるわけですね。ところがこの六十八校だけに限られるということなんですけれども、もう少し許容範囲を広げて、予算なんて全然求めていないのですから、ひとつ自主的にその地域に応じていろいろと実験してみたらいいというふうなちょっと度量のあるお考えはございませんでしょうか。
  131. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 予算的には実は八県六十四校なのでございますが、実際に希望をとりましたら希望が多うございましたので、一県ふやして九県、学校数も六十八校ということでふやしているわけでございます。
  132. 森暢子

    ○森暢子君 では、その六十八校以外の学校はそういう実験はしてはならないということでございますか。
  133. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) この問題は大変重要な問題でございますし、いろいろ検討すべき観点が多うございます。したがいまして、私どもとしましては、今回お願いします研究協力校におきまして十分問題点を詰めてそしてその後の対応を考えてまいりたいと思っておりますので、現在のところは私どもの今回お願いします学校においてやっていただくということを前提にいたしております。
  134. 森暢子

    ○森暢子君 文部省の気持ちはそうでありましょうけれども、できましたら、いろいろな学校がその地域に応じて自主的に学校五日制を試みてみるということは大事なことだと思うわけで、そういう意味でひとつこれは要望しておきます。  それからもう一つは、なかなか学校五日制に踏み切れない理由として、教育水準を落とさないように持っていくにはどうするかとか地域の受け皿がどうとかいろいろございましたけれども、それは大分前、六十一年ぐらいに調査をなさってなかなか受け入れられないというふうなことだったと思うのです。けれども、今申しましたように時代はどんどん変わっておりますので、もう一度、この学校五日制について国民はどう思っているかということを調査をお願いしたいというふうに思います。  それと、これは大分前の小学校校長会の導入についての調査の中では、「条件が整えば賛成」、条件が整えばというのがちょっとあれなんですけれども、それと「全面的に賛成」というのが校長の間で九六%ある、こういうことでございます。ですからそのあたりをよく考えられましてもう一度調査をお願いしたいというふうに思います。  もう一つお願いしたいことは、子供に対して学校五日制はどうかという調査をお願いしたいのです。塾経営者が学校五日制について調査をしている記録がここにありますけれども、大体七割が賛成です。それは子供は賛成するだろう、学校がお休みになるのはいいんだからというふうに言ってしまえばそうですけれども、ところがこの中で、学校五日制になったら子供たちは何をしたいかということがあるんです。それを見ると、友達と話したいというのが一番多いんですね。それから二番目に、ぼんやり自由に過ごしたいというのがあるんです。  今、御存じのように子供たち学校で管理され、勉強して帰ったら、はい塾へ行きなさい、はい早く食べて、早く勉強して、早く寝なさいと、こういうふうにずっと管理の中で過ごしているわけですから、本当に友達とゆっくり自由に話したいんですね。大人でも一日の仕事が終わったら飲みに行ったり自由にやっているわけです。それが子供たちにないわけですね。それと、一人で自由にぼんやりする、こういう時間もない。そういう意味で子供たちはすごくこの学校五日制というのを望んでいるわけです。  何か面倒なことはすべて学校へお任せして、自分ら親たちは土曜日はお休みで子供はどうぞ学校へと、こういう親の意識ももちろん問題でありますけれども学校は特別、子供は例外、こういう意識もたくさんあるわけです。そういう意味で、学校五日制導入に対する世論の形成というものをやっていくためには文部省にもう一度調査をお願いしたい。それと、今の子供の権利条約を批准するためにもやはり子供の自己表明権というものを尊重しなければいけない今の時期ですから、ぜひ子供の意見も聞いていただきたいというふうに思いますが、お考えをちょっとお聞きしたいと思います。
  135. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 私の方でこの学校五日制につきましては従来から、机上の検討といいますか、いろいろ検討はしてまいりましたが、今回初めてこの実践的な研究に入るというわけでございます。  そこで、調査の関係は、従来、世論調査等は総理府の仕事になっておりますので総理府にお願いすることになると思いますが、これまでの調査ではまだ六割が反対で賛成が二割ちょっと、この平成元年に朝日新聞が行いました調査でも、やはり賛成は三割で反対が六割という状況がございます。したがいまして、この問題はやはり国民世論と申しますか、その動向を見据えながら十分検討しなければならない問題だと思います。  特に、この問題につきましては世論調査の結果などを見ますと、要するに学校週五日制を導入すると授業日数が少なくなる、ですから今程度の授業日数の確保が難しくなるのじゃないか。そこで、先ほど大臣からもお答えがありましたように、教育水準の低下をもたらすのじゃないかという親の不安の問題もございます。  それから、今、先生御指摘になりましたように、塾通いというものが現在いろいろ問題になっているわけでございますが、学校五日制を導入することによりかえって塾通いに拍車をかけることになるのではないか。だから、そうしないためにはその受け皿、子供たち学校の授業のない日に伸び伸びと活動できるような受け皿をどうするかという問題が重要になってくるわけでございます。したがいまして、その受け皿、受け皿といいますか子供たちの自由な時間を生き生きと活動させる場というものをどうして整備していくかという問題もこれから考えなければならない。  それから第三は、核家族や共働きの家庭が多くなっておりますので、学校五日制を導入した場合に子供たち教育とか生活上の配慮が十分行き届かないおそれのある場合が出てくるだろう。その場合にどうするか。  いろいろ検討すべき課題がございますので、私どもは世論の動向も見ながらこの実践的な研究を深めていきたい、このように考えているわけであります。
  136. 森暢子

    ○森暢子君 いつも世論の動向を見据えながら慎重に対処したい、こういうお返事が多いのですけれども、やはり文部省として学校五日制に対してどういう姿勢でいくか、絶対やりたいとおっしゃったわけですから、そのためには見据えるのではなくて世論を形成しなきゃいけないと思うんです。だから、やはり積極的に世論を形成し、理解を得ながら早く実現なさるように考えていただきたいというふうに思います。  ちょっと時間がなくなりましたので次に移りますが、もう一つ最後の問題は初任者研修制度の中の、もう絞ってやりますが、条件つき採用期間が六カ月から一年に延長されました。その理由と、それから延長したことによる問題点はあるかないか、ここらあたりを聞きたいと思います。
  137. 倉地克次

    政府委員(倉地克次君) 初任者研修制度の関連で条件つき採用期間が一年となりましたけれども、これは初任者研修の期間が一年であるということと関連いたしましてそのように延ばした次第でございます。  ただ、この採用期間を一年としたことについて特に問題があるかというお尋ねでございますが、私ども、現在のところは特段問題があるというふうには考えていない次第でございます。
  138. 森暢子

    ○森暢子君 問題はないというお答えでございましたが、現実には問題があるわけですね。たくさんあるんですけれども、その中の一つとして育休の問題なんです。  実は女の先生で条件つき採用期間中に妊娠、出産をして、そして産前産後の休暇は労働基準法によって守られているわけです。「女子が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。」ということで産前産後はとれるのですけれども、育児休業がとれないわけですね。それは、育児休業の法律の中に「条件付採用期間中の者を除く。」という一項があって、だからこれでとれません、こういうお返事が返ってくるのだと思うんですけれども考えてみてください、女子差別撤廃条約を採択して日本が批准するときに男女 雇用機会均等法ができまして、その中に育休をたくさん採用しなさいとそういうふうに導入を呼びかけ、そしてそれには助成金をつけるというふうなものもあるわけです。  今、私ども社会労働委員会に、全労働者、そして男女がともにとれる育児休業法案というものを提案しているわけですが、今、世の中では、働く女性のために育児休業というものを雇用主が守るということはもう常識になっているわけです。そういう中で文部省が、「条件付採用期間中の者を除く。」と、こういうふうに育休制度を法律で書いていることに対しまして、現場ではそういう例が出まして女の先生方は大変悩んでおりますので、お考えをちょっとお聞きしたいと思うんです。
  139. 倉地克次

    政府委員(倉地克次君) いわゆる育児休業法でございますが、この第三条によりまして、条件つき採用期間の方は育児休業の対象にならないということになっている次第でございます。この法律は、そんなことを申しては大変恐縮でございますけれども、いわゆる議員立法で国会においてお定めになった法律でございますので、私どもは忠実にこれを守ってまいりたいというふうに考えております。  ただ、実質的な理由といたしましては、これはやはり女子教職員で職務に慣熟した時期に中途退職などされることのないように、退職することなくて育児に専念することができるようにということでこの法律制定されたということでございます。そうした意味で、職務に慣熟した方の継続的勤務を促進するという趣旨でございますので、条件つき採用期間の方が除かれるのもやむを得ないのではないかというふうに考えておるところでございます。
  140. 森暢子

    ○森暢子君 終わります。
  141. 田沢智治

    田沢智治君 このたび文部大臣に御就任されました石橋大臣に、我が国文教政策のあり方と我が国が直面している教育の諸問題について所信をお伺いしたいと思うのでございます。  第一に、激動する時代の変化を受けて、これからの教育は生涯教育を基軸として進められなければならないと私は考えております。文部省は生涯学習局の新設をいち早く行い国民のニーズに対応する体制を整えたということは我々も非常に高く評価できるのではないか、こう思います。  ただ、生涯学習のための条件整備は、文部省独自の力だけではなく、関係各省庁との連携、連帯というものの取り組みがまずもって必要ではないかと私は思うのでございますので、今後の生涯学習推進計画等について大臣の決意と所見を伺いたいと思うのでございます。
  142. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) お答えいたします。  文部省としましても、従来から生涯学習推進に関する施策の充実を図り、その推進に努めてきているところでございます。現在、中央教育審議会において生涯学習の基盤整備について御検討をお願いしておりますが、去る十月三十一日に生涯学習委員会審議経過報告をおまとめいただいて公表をしたばかりでございます。その内容はいずれも人々の生涯学習を支援していく上で重要な施策であり、我が国が生涯学習社会を築いていく上で基礎となる大変重要なものと考えております。  今回の審議経過報告趣旨を十分に踏まえながら検討を進め、速やかに対応をいたしてまいりたいと存じております。
  143. 田沢智治

    田沢智治君 生涯学習推進のスタートとしてその第一歩が、文部省が今回、幕張メッセで開催いたしました「まなびピア89」であると思います。この開会式には六千人ほどが参加し、盛大に行われ大成功であったと新聞紙上では報道されております。これからもこのような催しを積極的に進め、各都道府県、市町村で生涯学習の体系づくりに努力している方々に有益な指針を提供する、そういうモデルケースになったのではないだろうか、こういう考えを私は持っております。  幕張メッセの生涯学習フェアへの入場者は十万有余名を予測していたと聞いておりますが、その状況と入場者の評判、そして主催者側である文部省の評価、また今後に残された課題等、整理ができておるとするならば要領よくお聞かせをいただきたいと存じます。
  144. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) ただいまお尋ねの生涯学習フェスティバル、ことしは「まなびピア89inCHIBA」というものでございますが、本年度の新しい事業といたしまして、ことしを第一回として今後各県持ち回りの方式で開催するということで企画したものでございます。  それで、第一回の本年、文部省とそれから千葉県、千葉市等の共催でございまして、十一月二十三日から二十七日までの五日間、千葉市の幕張メッセで開催いたしまして、シンポジウムとかあるいは映画祭とか展示とか、そういう生涯学習に関します多様な情報あるいは情報の素材を提供いたしまして、多くの方々に生涯学習に親しんでいただいたという効果があったというふうに思います。  ただいまお話しの参加者数でございますけれども、子供から高齢者にわたりまして、予想は十万人というふうに考えていたわけでございますが、これを大幅に上回ります二十四万人以上の方々においでをいただきまして、それぞれ自分と生涯学習のかかわりについて考える契機として積極的に評価をしていただいたというふうに思います。  それから、教育関係者だけではなくて、四百以上に及びます企業などが生涯学習の見本市に出展するというような、各、非常に幅広い分野から積極的な参加があったというのも、生涯学習に対する関心の高さを反映したものだというふうに私どもとしては考えております。  ただ、これは第一回でございますのでいろいろ反省する点もございますが、今後の課題といたしましては、生涯学習に対するもっと幅広い層の各多様な要求に柔軟にこたえることができるような方法を考えるということ、それから、手軽に楽しめるものから高度な質のあるものにわたりまして、内容についても多様なものをもっとバラエティーを持って考えていくということ、それから開催地の特色を十分生かしたものにするというようなこと、これらに重点を置いて今後反省をし改善していきたいというふうに思います。  来年度は京都府において開催する予定でございまして、先ほど先生お話しのとおり、それぞれの開催地、あるいはそれに参加することによって各地が生涯学習に対して積極的な姿勢を固めていくような機縁になっていただければというふうに思っている次第でございます。
  145. 田沢智治

    田沢智治君 二十四万人も参加したというのはこれは大変なことでございます。私は、日本教育というものは民衆とともにある。子供とともに大人が学び、大人の中で子供が学んでいく、相互の交流の中で人間的なぬくもりというものを実際に学び教え、学び教えながらお互いに向上していくというのが教育の原点だと思うのです。  ですから、国民体育大会みたいに毎年それぞれの県で回り持ちするということも一つ考えとして定着させていく努力をしていく、そういうものに助成してあげるというような体制づくりをしながら、もっともっと国民が親しみを持てるような生涯教育の俗に言うといい企画、いい内容、参加しやすい環境づくり、こういうものをつくって、底辺から国民の中に定着していくような努力を進めていくことが新たなる時代に対応していくための大きな力になるのではないだろうか、こう思うのです。  日本は今日経済大国になりました。そして世界の多くの国々が、なぜ日本は経済大国になったのだ、あれはやはり教育力にあるから日本教育に学ばなきゃならないといって、かつて欧米先進国から教育制度などを学んだ日本が、逆に今日欧米先進国から高く評価されている。これは私は歓迎すべきものであろうと思うのでございますが、我が国教育についての諸外国の評価、例えばユネスコへ行かれたりOECD等の国際会議などでその評価を聞かれたとするならば、一体各国がどんなような評価を具体的になさっておるかお聞かせいただきたい、こう思うのでございます。
  146. 川村恒明

    政府委員(川村恒明君) 我が国教育についてのお尋ねでございます。  例えばユネスコで申しますと、ことしは二年に一遍の総会の年でございまして、この秋一カ月間ほど総会が開かれたわけでございますけれども、ユネスコには百六十カ国以上の国が入って、発展途上国が非常に多いわけでございますが、そういうところにおきましては日本教育というものに対する評価が非常に高い。特に初等教育における普及の度合いと、それから教育内容の質の高さという点については非常に高い評価を受けているわけでございます。  そういう総会などに私なども若干出席をさせていただきまして聞きますと、ともかく日本教育というものについて、特にこれからの国づくりの基礎として日本教育に学びたいという国が大変多いわけでございます。特にアジアの諸国にはそういう風潮が強うございまして、私どももユネスコのいろいろなプログラムにできるだけアジア地域を中心にして参加をする、そういったところへ協力をしていきたいというようなことで進めているわけでございます。  また、OECDの方でございますけれども、OECDは御案内のとおりに主として世界のいわゆる先進国、二十四カ国がメンバーでございます。これは五、六年に一遍ぐらい大臣会議というのをやりまして、ちょうど来年教育大臣会議がパリで開かれるというようなことでございます。OECDはそういう比較的先進国が中心でございますからお互いに似たような条件の中で教育の問題も論議をしているわけでございますが、その一環で、世界の各国、加盟国お互いに教育政策について評価してみようというふうなこともやっているわけでございます。  我が国については、ちょっとこれは大分古くなりましたけれども、一九七〇年でございますから二十年ぐらい前でございましょうか、昭和四十五年にOECDの調査団が日本にやってきたときに、既にその時点で、日本教育政策、殊に初等中等教育についてはこれは調査団自体が学ぶべき立場にあるのだというようなことを言っていったようなことがございます。  最近で申しますと、一九八七年でございますか、当時の中曽根総理が提唱されてハイレベルの教育専門家会議というものをOECDの加盟諸国でやりました。これは京都で開催されたわけでございますが、そのときにも、我が国教育の取り組み、特に臨教審を中心として教育改革に取り組んでいる状況について報告をしたわけでございますけれども、非常に高い興味、関心を引いたわけでございます。当時アメリカなんかも、危機に立つ国家というようなことでそういうレポートが出たりしておりましたが、イギリスなどが教育改革を具体に進めたのはこのハイレベルの会議の後のようなこともございます。  そんなことで、我が国教育政策というものが非常に高い評価を受けているというふうに我々承知をしているわけでございます。
  147. 田沢智治

    田沢智治君 私は、国運の隆昌を図るは一、二の英雄にあらず、その国を組織する教育力、知識力、そして道義心にあると思うのです。ですから、国際的に高く評価されているという日本教育の全体像というものはやはりすばらしいと思う。これは先輩諸兄らが一生懸命日本教育を支えてきたその大きな遺産が今日開花していると思うのです。  そして、国際的に高く評価されるすばらしい部分と、そうではない、光の部分に対する陰の部分というものを我々は正確に認識して、もっと世界から評価され、もっと世界から日本教育に学びたいと言われるに値するものにしなければならない。そのためには、そういう欠点というものを補いながら、将来のすばらしい日本世界の平和に貢献する日本を私たち国民が力を合わせて築いていくための心の支柱をつくる、そういうことが私は文部省の大きな仕事ではないだろうか、こういうふうに思うのです。  そういう意味において、文部省が毎年、教育白書を出されている。私は今回の教育白書も、従来よりもわかりやすく項目を整理されて、文章もそうかた苦しくなく、私たちにも十分理解できる内容であるということはこれは掛け値なしにいいものであるとはっきり認めるべきであろうかと思うのです。今後ともこのような教育情報というものを一つのサービス的次元のものとして、日本教育はこうですよということを世界に出していく、これは大事な仕事であろうかと思うのですが、文部省の所見はいかがか、お聞きいたしたいと思います。
  148. 佐藤次郎

    政府委員(佐藤次郎君) 教育白書でございますが、従来は「我が国教育水準」等といたしまして、大体五年に一度程度発行いたしていたわけでございますが、昭和六十三年からは、臨時教育審議会の答申等を受けまして、文部省教育改革の取り組みを初めといたしまして、教育学術文化スポーツの全般にわたりまして文部行政現状及び教育のいろいろな実態国民方々に理解していただく、またその上で御協力をいただかなきゃいけない、こういうことで毎年発行するという方針で取り組んでおるわけでございます。昭和六十三年度は生涯学習を特集のテーマにいたしたわけでございますが、本年度は初等中等教育をそれぞれ特集いたしたわけでございます。  先生御指摘のように教育白書は大変重要なものでございますので、来年度以降も毎年発行するという方針で取り組んでまいりたいと考えております。
  149. 田沢智治

    田沢智治君 ぜひそういう考え方で継続して出してもらいたい、こう思います。  また、将来、外国の人たちにもわかりやすく訳した教育白書、そういうものを用意なされるということも私は大事ではないかと思うのですが、そういう考えはございませんか。
  150. 佐藤次郎

    政府委員(佐藤次郎君) 外国の方々には、日本教育現状を紹介するということで、現在エデュケーション・イン・ジャパンとかあるいは簡単な冊子をつくっておるわけでございますが、ただいま先生から御指摘いただきましたように、こういった白書をせっかく出すならそれを訳して出したらどうかという御意見は、実はほかの方々からもそういう御意見をお伺いしましたので、今後いろいろ工夫をしてみたいと思っております。
  151. 田沢智治

    田沢智治君 それはぜひやってください。  ところで、その中には陰の部分というものも出ています。児童生徒の問題行動調査の結果として、先ほどのお話のように登校拒否児童が四万三千人、生徒数が六十二年度より五十四万も減っているのに登校拒否が逆に四千二百人増加しているという実態は私は深刻に受けとめておかなければならないのじゃないだろうか。一方では高学歴化、生涯学習時代の到来を叫びながら、一番その基礎となる小中学校で年々学校アレルギーがふえている、この現実は我々として真剣に取り組まなきゃならない問題点であろうと私は思うのですが、文部大臣、この実態をどうとらえ、どうしようとするのか、お考えがあればお聞かせいただきたいと存じます。
  152. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) 委員指摘のとおり、確かに生徒数で約四万二千人になっている、ふえてきているんですね。そこで、先ほどもほかの委員との話の中で話し合ってまいりましたが、このような問題については、やはり背景、学校、家庭、そして地域社会、もちろん本人も含めてでございますが、いろいろな要因が絡み合っていると思っております。登校拒否の問題は教育上大変重大な問題である、こう認識をいたしております。  そこで、青少年の健全な育成を図っていくという観点に立ちますと、これはどうしても立派に乗り越えていかねばならないなと、こんなふうに考えております。
  153. 田沢智治

    田沢智治君 文部省が五十日以上の欠席者を登校拒否児とした理由は何であるのか。また、五十日以下でも、例えば四十日、三十日、二十日というような欠席日数の区分でもし調査されているとするならば、その実態についてお話しいただきたいと思うのですが。
  154. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 文部省では、今お話がありましたように、学校基本調査で五十日以上の欠席者を登校拒否の子供たちとして調査をしております。これは実は昭和四十一年からずっとやっておりまして、最近は調査内容もかなり詳しくなっておりますが、とにかく四十年代から五十日以上の欠席者がどれくらいあるのかという調査をしているわけでございます。  五十日の根拠につきましては、特別の何といいますか根拠というものもないのでございますけれども、要するに、小中学校の各教科等の年間の最低授業日数というのが大体二百十日でございます。ですから、大体その四分の一程度休む者はやはり教育上その課程の修了という観点からいろいろ問題があるということで、四十年代の初めから五十日以上を基準にしまして、一つの目安として調査をしてきたわけでございます。  ただ、登校拒否の実態をいろいろ調べてみますと、午前中にも御指摘がありましたように、五十日なんというのにはいかなくともいろいろ潜在的にこうした傾向を持つ子供たちがいるのではないかという御指摘がございました。事実、私どももそれを強く感じております。したがいまして、登校拒否児の問題は五十日以下であれば安心であるとか五十日以上が問題であるとかというふうには考えておりません。これは一つ調査の目安にすぎないということでございます。  私どもとしましては、五十日以下のケースについては調査をしておりませんけれども、この五十日以下の子供たちの対応につきましても登校拒否対応の一環として十分考えてまいりたいと思っております。
  155. 田沢智治

    田沢智治君 この実態を見ると、小学校では親子関係など家庭生活の影響が三七・八%、中学では学業不振などの学校影響が四二・二%、これが上位の原因になっている。ですから、登校拒否の子供の八割以上が中学生であることを考えたとき、やはり進路指導というものの問題点、進学したけれどもどうも進学した学校と自分の行き方が合わないというような悩み、そういうような問題点が中学の場合は数多くあるのではないだろうか。  また、家庭問題については、これは総理府に青少年問題のいろいろな団体があり機関があるでしょうし、法務省にも非行青少年の問題を調査をし整理するところがあるでしょうし、そういう意味では、文部省としてはそういう関係諸官庁との協議体というようなものを設置して効果ある対策を進めていくという考えは持っているのか、また現にそういうようなものとのかかわり合いの中で対処しておるのか、その実態を聞かせていただきたいと存じます。
  156. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) この登校拒否の問題につきましては、もちろん学校の役割というのは大変大きいと思います。ですからまず学校教育の中でいろいろ施策に取り組まなければいけないということで、午前中もお話がございましたように、私どもとしましては、実態の把握とか教師の指導書の配付とか、それからカウンセリングマインドの養成のための研修であるとか、そのほか地域ぐるみでこれに対応する体制をとるとか、ないしは教育相談を充実するとか、いろいろやっております。そして現実に、今、私どもでは特にこの問題のための調査研究会を設けまして、いろいろ専門家に入っていただきまして、実はきょうもやっているわけでございますが、その検討を続けております。  そういうことで文部省としてはいろいろ取り組んでおりますが、これは御指摘のように学校だけの問題ではなくて家庭の問題もございます。それから地域社会とどう連携をとって取り組んでいくかということも重要であろうと思います。したがいまして、単に文部省だけではなくていろいろな関係各省ございますので、これにつきましては青少年問題対策本部に置かれております青少年問題審議会というのがありまして、そこで関係各省が集まりましてこの問題について協力し連携して取り組もうということになっているわけでございます。
  157. 田沢智治

    田沢智治君 ぜひそういうところに力を入れて、これはだれかがリーダーシップをとって引っ張って真剣に取り組んでいかないと、現実に問題はあるけれども解決のめどがつかないというような状況の中でふえるだけであるということは、これは行政面における無責任な姿勢であると言わざるを得ませんので、ひとつしっかりやってもらいたいということをお願い申し上げます。  もう一つの陰の部分は何かというと、先ほども話があったように、高校中途退学者が十一万三千名になっている。これも現実には年々ふえる一方であるのに問題解決のめどがなかなか出てきていないということに対して我々もいら立ちを持っておるのでございますが、この実態の把握と対応策について、今までどういうような対応をしてきたのか御報告いただきたいと思います。
  158. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 中途退学につきましては大変大きな問題でございます。現在、十一万人を超える子供たちが高等学校に入りながら途中でやめていくという実態もございます。率にいたしますと、徐々にではございますが四年連続して減少しているのでありますけれども、やはりこれだけ多くの中途退学者を出すということは大変問題でございます。私どもとしては、高等学校に一たん入学した子供たちはすべて高校を卒業してほしいと考えております。  そこで、この中途退学の理由等を見ますと、一たん高校に入ったけれども、自分の進路選択が正しくなかったといいますか本意でなかったということで進路変更をする者が三割を超えておりますし、また、学校に入ったけれども学校生活とか学業に適応できなくてやめている子供が二六%を超えておりますので、学校の問題が大きいわけであります。したがいまして、例えば中学校でまず進路指導をしっかりしていただくということ、進路決定に当たっては中学側の進路指導の充実ということがまず第一になければならない点であろうと思います。  それから、高等学校に入りましても一年のときにやめていく子供が多いわけでありますので、入学時の適応指導ということもしっかりやらなければならない。それから、何よりも学校教育が充実している、学校生活が楽しい、充実感がある、成就感があるということが大事でございますので、そのためには高等学校のカリキュラムが、子供たちの能力とか適性とか進路とか、さらにはその子供たちの興味とか関心に応じた多様なカリキュラムを実施する、そして子供たち学校生活の中で成就感や充実感を得るような授業を展開していただくことが大事であるというふうに考えているわけでございます。  そういう観点から、今回の学習指導要領の改訂におきましても、それぞれの学校生徒実態に応じて柔軟な対応がとれるように弾力化を進めているということでございます。
  159. 田沢智治

    田沢智治君 今まで私が述べた中学校における登校拒否の増加、高等学校における中途退学者の急増、これらを見ると、今日の中等教育における偏差値偏重の進路指導、その結果としての不本意入学、学力テストの結果のみによる画一評価と管理主義の強化、こういうようなものが大きな要因になっているのではないかと思うのであります。そこで、私は、この中等教育を画一化から解放し、個々の子供たちの能力、個性、趣味、興味、関心に即したゆとりのある制度と内容のものに側面から改革していく必要性があるのではないか、こう思うのです。  既に現在多くの私立学校は、急増期対策を含めて中高一貫教育に重点を置いておるのでございまして、ゆとりのある学校生活をさせながら生徒の個性を伸ばし、精神的な充実を図りながら教育計画を推進しているという実態がございます。文部省としては、私立学校のそういうようなさまざまな多様化している実態、有名進学校だけではなく、芸術、体育、外国語など、一能一芸に秀ずる多様な人材を発掘する面での特色ある教育推進されている実態をよく調べておられるかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  160. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 私立中学校ではいわゆる中高一貫教育が行われております。これは現行の制度の枠内で中学校と高等学校を併設して、そしてその中で教育の一貫性を保って、子供たち実態に応じて、しかもゆとりのある充実した教育をしようという理念から行われていると思うわけでございます。  私立中学校の連合会の資料によりますと、現在私立中学校が六百十三校、私立高校が約その倍の千三百二十一校ございます。そこで、同一学校法人内で中学と高校が併置されているものは五百九十ございます。  この五百九十の中学と高校を一貫した学校の中は、主として普通科が多いわけでございますけれども、先生が今、御指摘になりましたように、音楽科であるとか英語科であるとか体育科であるとか、さまざまな学科が行われておりまして、それぞれいろいろユニークな教育が実施されているというふうに理解しております。
  161. 田沢智治

    田沢智治君 そういう学校は割合と伸び伸びして、成績も全体的に上げてきているんですね。ですから私は、やはり管理的教育体系とかあるいは偏差値とかというだけじゃなくて、基礎的学力を上げることは大事だと思うけれども、それに加えて、多様な個性と能力を開発していく分野での教育をやっていくような努力、こういうことが、私立学校ではやっているけれども公立学校で何でできないのか。  実は臨教審の第一次答申の提案事項の中で六年制中等学校というものがあるわけですね。これは中高一貫教育一つの形の変わったものではないかと思うのでございますが、このような問題も、中等教育改革推進に関する調査研究協力会議を設けて検討させ六十三年四月に審議結果の報告書を出させておきながら、一体それがどういうふうになってしまったのか私にはちょっとわからない。そういう実態についてお聞かせいただけますか。
  162. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 六年制中等学校につきましては、昭和六十年の臨教審の第一次答申におきまして御指摘がございました。そこで、私どもはその答申を受けまして文部省として検討を始めたわけでございます。それは中等教育改革推進に関する調査研究協力会議という会議でございますが、そこで六年制中等学校のあり方についての検討をいたしました。そして、御指摘のように六十三年三月には審議の取りまとめが報告されているのであります。  そこで、その報告では、まず六年制中等学校の意義と課題につきましてかなり詳細に分析をいたしております。そして、六年制中等学校考える場合に今後の課題として次のような点を指摘して、これらの点はさらに検討をするようにという御指摘がございました。  その検討点というのは、たくさんあるわけでございますが例えば例示として申し上げますと、一つは、公立で六年制をつくった場合、大学受験の準備教育に偏するおそれがないだろうか。特に普通科の六年制の中等学校をつくった場合に今以上の大学受験の準備教育というおそれがないだろうか。それから、この六年制に入る場合には小学校卒業の段階で選抜ということがございます。そうしますと、小学校卒業の段階で、低年齢の段階で受験戦争が激化するおそれがないだろうか。  それからさらには、普通科でなくても、専門教育、例えば音楽とか体育とか美術とか、そういう専門教育の六年制の中等学校であっても、小学校卒業の段階で自分の進路を決定しなきゃいけない、進路を早期に決めなきゃいけないし、それが比較的早期に固定化しなきゃいけないという問題があるが、これはどう考えるか。  それからもう一つは、これはいろいろ工夫ができると思いますけれども、六年間という中等学校はやはり非常に長期間でございますから、そこにおける指導というものが、非常に安定的な指導ができるというメリットはございますが、反面、惰性に流れるという問題もある、その六年間の指導というものをどう考えたらいいだろうか。いろいろこうした問題点指摘されまして、なお文部省においてよく検討しなさいという報告になっているわけでございます。  そこで、文部省としましては、この研究協力会議指摘を受けましてずっと検討を進めていたわけでございますが、ちょうど中央教育審議会がこの四月に発足いたしまして、中教審におきましては後期中等教育の改革方策について審議、検討するということで、今、鋭意御審議をいただいているところでございます。したがいまして、中教審の後期中等教育審議を踏まえましてこの六年制中等学校につきましては対応してまいりたいと考えているのであります。  したがいまして、具体的に申し上げますと、中教審の答申の全体像が出ましてから、私どもはこれをあわせてどう実施していくのか対応していきたい、こう考えております。
  163. 田沢智治

    田沢智治君 僕はわからないのは、四年制中等学校の問題も中途半端になっている。要するに懸念なるものがかなりある、そう言っている間に、中教審に西岡前文部大臣が四年制高等学校案を諮問している。六年制中等学校を出してまた四年制高等学校を検討するというように、何が何だかさっぱり整合性がないんだね。これは誤りなんです、現場も混乱するし。  私学は現に中高一貫教育成果を上げ、これはカリキュラム等を見ても非常によくできています。懸念する問題は懸念する問題として、現に対応をしていかなきゃ生き残れないから一生懸命対応するんです。懸念事項は懸念事項でいいけれども、懸念事項だからといってほうっておかないで、継続してそういう問題をどうするかを行政の中で一貫して取り組んでもらわなければ信頼関係というものが私は失われるのじゃないだろうかと思う。  四年制高等学校なんてそんな突拍子もないことをここで諮問して、また懸念事項としていろいろな問題が出て、そしてこれはこれでまた研究しなければならないということになると、登校拒否の問題も解決しないし、中途退学者が激増する高校生への対応も中途半端になるし、結局文部省というのは一体何をするところなんだという批判が出ないでもない。  一生懸命現場で努力し、一生懸命行政で努力している文部省の労は多としますけれども、もう少しその辺ところを整理整とんして、一つの諮問に対して完成していく努力、問題点があるならその問題点をクリアするような一つ一つの詰めを行政の中できちっとやってもらいたいと思うのでございますが、文部大臣、いかがでございますか。
  164. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) ただいま中教審におきます四年制高等学校の諮問の御指摘がございましたので、その点についてまず申し上げたいと思います。  実はこれは突如、今、出された問題ではなくて、既に昭和六十年、理科教育及び産業教育審議会におきまして高等学校における今後の職業教育のあり方を御検討いただきましてその答申が出ているわけでございますが、その中で、高等学校における専門教育、主として職業教育でございますが、それを深めるには修業年限が三年の高等学校だけでは必ずしも十分ではない、三年を超える職業学校があってもいいのではないか、そういうことで、修業年限を弾力化することを検討しなさいという御指摘を得ているわけであります。  特に、工業系の職業教育におきましては修業年限が三年では十分な資格が取れないという問題もございますし、それから水産とか看護におきましても、専攻科を設けて今の三年の上にプラスして授業を充実しているわけでございます。  それともう一つは、臨時教育審議会の第二次答申におきましても、高等学校の修業年限については三年以上とする方向で弾力化することを検討するようにという御指摘がございます。この場合も、主として職業教育を深めるため、ないしは公的職業資格の取得との関連においてこうした御指摘をいただいていると理解しているのでありますが、このような産業教育審議会や臨時教育審議会の答申におきまして、この専門教育をより深めるための高等学校、三年制のほかにもそういう学校を認めてもいいではないかという御指摘でございます。  そこで、今回の中央教育審議会におきましては、そうした従来からの提言を踏まえまして四年制の高等学校の設置についても御検討いただいているわけであります。ですから、基本的には、まずメインとしては職業教育をより深めるためにそういう高校を認めるかどうか。これは全部そうするというわけじゃございませんので、三年制の高等学校、職業高校のほかに部分的に四年制があってもいいではないかという観点でございますが、職業教育についてそれを検討するならば、同時に普通科についてもそういう必要がないかどうか、その意義があるのかないのかの御検討をついでにいただくということでございます。  それから、先ほど来御指摘のございます六年制中等学校は、これは高等学校を延ばすというよりは、現在の義務教育であります中学とあわせて中等教育を一貫して考えたらどうかという学校制度でございますので、四年制の高校とはちょっと視点が違うかと存じます。したがいまして、私どもはこのいずれにつきましても、今後中教審におきましていろいろ後期中等教育の改革の御審議をいただきまして、その答申が出ましたら具体的な対応をしていきたい、このように考えておるわけであります。
  165. 田沢智治

    田沢智治君 説明を聞くとわからないでもないけれども、すっきりしない。しかし、それはそれで皆さん方が苦労していることは十分わかりますので、もしつくるとするならば、わかりやすく効果のある制度を研究して早急に手当てしてもらいたいということを要望いたします。  次に、大学入試の問題について二、三触れさせていただきたいと思います。  昭和五十四年度から続いてきた国公立大学の共通一次試験制度がことしで終了し、新たなる次元で大学入試センター試験が登場するわけですが、私は大学の入学者選抜も、大学教育の入り口部分では大切な教育一つと思うのです。ですから、大学入試というものは大学教育にとって大切な要素なのだという認識に立ってこの問題に取り組まなければならないのじゃないだろうか。  特に来年度から実施される大学入試センター試験については、志願者が四十三万人を超えて、まことにこれは期待感あふれる高まりを持っているという意味での評価が一応できるのではないかと思うのですが、共通一次試験の反省の上に立って、今度の入試センター試験についての特色をひとつ具体的にお話しいただきたいと思います。
  166. 坂元弘直

    政府委員(坂元弘直君) 先生も御承知のとおりに、共通第一次学力試験は国公立大学の入学者選抜の第一次試験として実施されまして、利用方法も五教科を原則とする、そういう形で実施されてきたところでございます。  この共通一次試験につきまして高校関係者等の積極的な評価は、難問奇問を排したいい問題によって高等学校教育の基礎的な到達度を判定することが可能になった。さらに、この試験を利用する各大学における二次試験についても、学力検査以外に面接、小論文、あるいは推薦入学、帰国子女、社会人等の特別選抜の導入が増加するなど選抜方法の特色ある多様化が図られてきたというようなことが共通一次試験の積極的な評価でございました。  ところが、反面、消極的な評価といたしまして、共通一次学力試験が五教科利用を原則としたことに伴いまして、いわゆる国公立大学の序列化と申しますか、共通一次試験の成績が何点以上の者がどこの大学の何々学部に入れるということが計量的に出てきたというようなこともございまして、大学の序列化が顕在化したのじゃないかという御指摘と、それから、この改革は国公立大学だけを視点に置いた改革じゃなかったかというようなことが指摘されているわけでございます。  さらに、国立大学につきましては共通一次試験を導入する前には一期校、二期校という形でチャレンジするチャンスが二回あったわけでありますが、共通一次試験を導入したときに一期校、二期校を廃止した結果、せっかく五教科という勉強をしていながら国立大学を一校だけしか受けられないというのはどう見ても受験生には気の毒だというような指摘も高等学校関係者からあったところでございますこの複数化の問題につきましては、国立大学協会、公立大学協会がいろいろ話し合いまして、昭和六十二年度から複数受験の道を開いてきたわけでございます。  先生が御指摘の来年度から導入いたします大学入試センター試験でございますが、これは国公立大学だけではなくて私立大学も利用できるというような仕組みにしたわけでございます。ただ、なかなかこの辺の大学入試センター試験についての趣旨、それから、従来、各私立大学が個々に入学試験を行ってきたというような経緯、あるいは入学試験料が私立大学の学納金納入においてかなりのウエートを占めるというようないろいろな問題もございまして、私立大学につきましては来年度の入試センター試験を利用するのは、現在のところ、十六大学、十九学部にとどまっているわけでございます。  それから二番目は、共通一次試験は五教科が原則でありましたが、各大学の判断と創意工夫によって利用教科・科目数などについては自由に各大学が判断していいというふうになっておりまして、それだけに特色のある各大学の利用方法が期待できるのではないかというように考えているところでございます。以上、私立まで含めたものであるということと、各大学の判断と創意工夫で利用教科・科目数などが自由に利用できるということでございます。
  167. 田沢智治

    田沢智治君 かなり改善してきたと私も思いますし、期待もいたしたいと存じますが、私学の参加というものは多少時間をかけながらなじませるという努力を続けていくならば私はいいものになるだろうと思うのです。  ただ、一つ、足切り問題について問題点がちっとも解決されていない。これは昭和五十四年度より問題点として残っておったのでございますが、昨年は生物と物理が平均よりも点数が低いということでかさ上げをやって調整したという中で、文部省として足切り等についてはひとつ再検討しようという局長通知を出している。これは平成元年二月六日に國分高等教育局長が「二段階選抜について」の通知ということで、可能な限り当該倍率の緩和に努力するよう努めろということを出しております。  これは新テストを実行する前の通知といたしまして、足切り等については例外を除いて、例えば受験者の収容施設がないとか職員が足らぬとかというような場合はやむを得ぬが、原則としては足切りはしないように努めるという通知であるように聞いておりますが、現実にこの五十四年の実数から平成元年実態を見ると、足切りする学部が倍になっているんですね。  足切り予告をしているのは、五十四年は大学が五十二大学、学部にして百三十八。六十一年はこれは割合と少なくて大学数が三十七、学部が百ですが、六十一年から六十二年、六十三年、平成元年においては倍々になっているわけです。足切り予告しているのは大学数にして七十三、学部にして二百三十六学部ということで、だんだんだんだん生徒が減ってきているにもかかわらず、足切りがどんどんどんどん進んでいくということになると、一体この足切り状況というものをどこの時点でどのように克服するか。  これはそれこそ教育の機会均等、あるいは、能力のみならずその個性と努力というものにかけて活力ある青少年を生み出すという教育上の大きな効果というものを阻害する実態がふえている。おれはこの程度の実力だからこの学校に入ればまあまあいいんだというようなことになったら、日本の若者から気力が失われていきますよ。  おれはここで努力すればこの学校へ入れそうだから受けるんだと、そういう脈々とした活力を出させる制度というものが青少年を育成する制度であり、それが日本文化的な力を支えていく青少年を育成する制度になると思うんです。おまえはこの学校は受けてもだめだからあっちへ行けというように安易な形で追いやっていくから、おれは合わないといって中途退学者が出ていっちゃうんですよ。  だから、せっかくこういういいテストをつくるとするならば、おれは努力すればひょっとしたらここへ入れそうだと言える可能性というものを生徒の中に残しておく。そして足切りはやめなさいと文部省は言っているんだから、平成三年次においては足切りはしてはならぬという通知を出しているんだから、今言うように、収容能力がなかったり円満なる受験が遂行できない場合は例外にしますよと言って原則を廃止するのでなく、新しい入試センターによる衣がえをするのならば、活力ある青少年を可能性というものにチャレンジさせるような制度に変革する時期が私は来ていると思うんです。  ひとつこの決意、これは文部大臣にお願いしたいと思う。
  168. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) この大学入試問題、大変今までも論議をされたところであります。そして私は基本的に言って、そう毎年のように変えていくのはいかがなものか。高等学校あるいは受験生の立場になって考えてみますと、そう毎年のように変えていくものはいかがなものかなと、これを基本に考えております。  でも、来年の三月に行ういわゆる大学入試センター試験、これは既に決定をして高校、受験生に周知をしたわけであります。ですからこの決定線に沿ってきちっとやっていかねばならないな、こう考えているのが基本的な立場でありますが、円滑な実施、その定着、そして各大学が受験生の能力、適性等を多面的に判定する方向で、今の考え方に即して改善をしていくことを期待いたしております。
  169. 田沢智治

    田沢智治君 来年の平成二年の通知はもう既に出してしまって、足切りも予告しているから、これを私は変更せよと言っているわけじゃないわけですね。平成三年度の足切りはこれは原則としてやらぬと、やらないように指導しているのだから、それを私は徹底してくれということなんですよ。  文部省指導も何もしないでそういう問題を甘やかして認めているというんなら、やれということは言いませんよ。やってはならないと言って通知も毎年出しているんです。毎年出して、毎年やらしておいて、しかもそれがどんどんどんどんふえているような実態というものはこれはよくないと思うんです。やっぱり通知を出すということは、その通知の精神にのっとってどんどん緩和をしていかなきゃそれはおかしいですよ。  昭和六十二年には九万九千六百二十一名が足切り、六十三年にはこれがうんと減って一万五千四百十五名、平成元年には一万三千六百八十五人になっている。公立と国立大学合わせると百三十二校あるわけだから、各大学が百名ずつ足切りをやめてしまえば全部足切りせずに済んじまうわけですよ。大した人数じゃないでしょう。  おれはひょっとしたら行けるなというような若者の活力をそういう制度の中でちょん切らないでやはり生かしていくというのが教育じゃないですか。文部省はそういうことをやらにゃだめですよ。そういうことをやれば文部省はいい文部省だと言われるんですよ。やらないから文句を言われるわけでしょう。だからひとつ局長、腹を決めてぴしゃっとその辺のところをやってください、あなたの方で通知を出しているんだから。
  170. 坂元弘直

    政府委員(坂元弘直君) ちょっと数字だけ簡単に申し上げますと、先生御指摘のとおりに、五十四年から六十一年までは非常に安定的と申しますか数は大変少なかったという経緯がございます。  ただ、昭和六十二年に一挙に足切りの学校がふえたということがございまして、その年は足切りされた人数が九万九千人ということで、本委員会でも十万人に及ぶ人間を足切りするとは何事かといって強くおしかりをいただいたことを記憶いたしております。これは先ほど申し上げましたとおり、昭和六十二年度から、高等学校側からのいろいろな御要望もあって、国立大学の受験できる数を複数受験できる体制にしたということと、共通一次試験の実施前に各大学の二次試験への出願を行うように変更したために、ある限られた大学、学部に急激に学生数の応募が集中したというような経緯がございます。  そこで、昭和六十三年度以降におきましては、二次試験の出願を共通一次試験の実施後に変更するということ、二次試験への出願期間を延長したということ、各時点に応じた情報について各大学がテレホンサービスを行って倍率の情報を提供するということ、それから各大学に対して二段階選抜の実施倍率の緩和等の要請を行って今日に来ているわけでございます。  ちなみに、先ほど先生が平成元年の数字について一万三千六百八十五人という御指摘でございましたが、昭和六十二年前から比べますとそういうような指導の結果かなり数字が落ちてまいりまして、一万三千六百八十五人のうち、二つあるいは三つの国立、公立大学に願書を出しまして全部足切られて二次試験のチャンスがなかったという人は四千二百三十四人でございまして、九千人余の方は、一つの大学では足切られたけれどもほかの大学は受験が可能だった、そういう数字でございます。  それで、全部やめたらどうかという御指摘でございますが、私どもは、大学入試センター試験でまず統一的に高校生としての学力到達度を一般的に見て、二次試験は非常に多様なやり方を導入したらどうか。言いかえれば、面接をやったりあるいは小論文を実施したりというような形、あるいは教員養成学部では実技を取り入れたりというような指導をしているわけでして、その方向で各大学も二次試験に多様な方法を取り入れることを考えているわけでございます。  そういたしますと、仮にかなり倍率が高く参りますと、当該大学の学部教職員の数だけで申しますと、答案の採点あるいは試験監督の要員、試験場の確保等の状況によりましてはその二次試験の志願者について丁寧な試験を、十倍も二十倍も来たらなかなかできないというような現実もあるわけでございます。したがって、特色ある多様な入学選抜方法を導入しようとすればするほどこういう問題を解決しなければならないということでして、絶対に足切りはだめだという指導は現実問題としてなかなか難しいのではないか。  ただ、私どもは、極力教職員全体を入試に動員して今言ったような問題を克服いたしまして、極力足切りを行わないように、仮に行う場合としても足切りの倍率は高く緩和するようにというようなことを指導しているところでございます。今後ともそういう指導を徹底してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  171. 田沢智治

    田沢智治君 最後に。  今の局長考えは私はあえて反対はしません。しかし、もう足切りは原則としてしないと。そのためにはいろいろ情報を流したり環境整備を一生懸命やるという努力をしながら、さっきの話のように受験生が多くてどうにもならぬというような例外が生ずる場合はこれは放置するわけにいかないから当然そういう行政措置が出たっていいと思うのですが、原則はやはり原則として貫いていく。文部省の通達の精神はそういう精神なんだから、それを守ってやりますということぐらいは言ったらいかがですか。  通達の精神にのっとって足切りというものはできる限りせずに済むように努力したいということを言ってもいいのじゃないですか。
  172. 坂元弘直

    政府委員(坂元弘直君) まさに私も、先生が今、御指摘趣旨でお答えしたつもりでございますけれども、確かに私どもが通達を出している線に沿いまして極力足切りは行わない、緩和するという方向でさらに指導を徹底したいと思います。
  173. 田沢智治

    田沢智治君 終わります。
  174. 高木健太郎

    高木健太郎君 石橋文部大臣には自民党の文教部会部会長をしておられるときにいわゆる献体法というものについていろいろお骨折りを願って、それが法律になりました。この献体法は御存じのように自分の遺体を教育研究の用に立てるというようなことでありまして、死体に傷をつけるということを非常に忌避する日本人が、教育研究のためには人のお役に立つなら自分の体をささげようと、こういう心のこもった行為を法律的に保障しよう、こういう法律であったわけでございます。  最近、京都の梅原猛君が、こういうことはいわゆる一種の菩薩行である、自分が死んだならば臓器を移植しても人のお役に立ちたいということは菩薩行であるということを言っておりました。彼は菩薩行協会というものをつくったらどうだというようなことを言っているわけですが、こういうことになってきた最初のいわゆる献体法というものについて石橋文部大臣がいろいろお骨折りになったということで、私は大臣のいわゆる心の教育というものに非常に期待を持っているわけでございますし、今後の大臣のいろいろの計画に対して非常に注目をし期待をしているものであります。  今まで午前中から聞いておりまして、いわゆる登校拒否であるとか高校の中途退学であるとか、その数の多さに驚いたわけでございます。これはどうかしなければならないというふうに思いますが、文部省のいろいろの御返事を聞きますと、何かちょっと抜けているのじゃないかなという気がするわけです。それは、高齢化対策についてもそうでございますが、ここにおいでの文部省や厚生省のお役人の方々はいわばエリートの方ばかりで、頭のいい方ばかりであります。こういう方が、今の若い人たちの、いわゆるはぐれ者になった人の心の内が少しわからないところがあるのじゃないか。  何か枠をはめればいい、お金を出してそういう施設をつくりさえすれば問題が片づいていく。話を聞いていますと、何万人だとか何千人だとか、あるいは何%であるというような話ばかりが耳に入ってくるわけです。これは昔の田中総理が大変数字に明るくて、本会議の答弁でも数字を並べて議員連中を煙に巻いたという話を聞いておるわけでございますが、こういう考え方、思考の方法は、西洋人といいますか、欧米の人たちのいわゆるディジタルな考え方で、最近の精密科学といいますか科学的な物の考え方のときにはいわゆるディジタルでなくてはいけないということが優先している、こう思うんですね。  しかし、御存じのように我々の大脳というものはディジタルな思考をやると同時にアナログ的な考え方を、あるいは思考過程をやり得るものでありまして、現在の西洋医学であるとか科学、あるいはその政策等におきまして余りにディジタル過ぎるということに現在かなり多くの人が、学者の方々も反省の傾向にあります。少し人間本来の自然な思考方法であるアナログ的な考え方を同時に入れるべきじゃないかということを言っているわけです。いわゆる普通の言葉で言えばアバウトな考え方を持てということなんです。  しかし、入学試験であるとか、その入学試験のための学校教育というものが余りにディジタルにすぎまして、一を間違えばもうそれはだめ、普通の世の中では一円や二円間違えても何とかなるところを、入学試験では一を間違えてももういけない、こういうディジタルなものが世の中を支配している。しかし、いわゆる東洋医学、東洋思想から来たものには非常にアバウトな、アナログ的な物の考え方があるわけですね。こういうディジタルとアナログとの思考が一緒になってこそ初めて人間らしい物の考え方になるのだということを、現在非常に識者がそれを主張しているというふうに私は思うわけです。  現在、東洋医学というものをかなりの方々が信仰しているということのバックグラウンドには、西洋医学ではどうもぐあいが悪い、やはり何か東洋医学的なものがこれに加わらなくては本当の医学ではないのだと、そういうことを国民がじわじわと、いわゆるアナログ的にそれを感じ取っているのじゃないか、こういうふうに思うわけです。  そこで、それが高等学校教育あるいは中学校教育において、大学の入学試験というのはディジタルですから、それに向かってもう小学校のときからそういうことをやっている。そうするとアバウトに物を考えるような人々はそこから外れていく。しかし、アバウトに物を考えるという人がおってこそディジタルは生きるので、ディジタルとアナログが両方並行して進んでいくことが、将来の日本、あるいは世界の幸福とか平和とか、そういうものに私はつながっていくものであろうと考えているわけです。  そういう意味では、単に学級数を幾らふやすとか、あるいは生徒の数を幾らにするとか、そういうディジタルな数の勘定ばかりしていないで、もう少し高等学校あるいは中学校教育においてそういうアナログ的なものも取り入れる。試験の中にもそういうアナログ的なものをもう少し入れて、そういうものもやれると。例えば音楽を聞いて、ああ、これはいい音楽だというのに十点だ九点だとつけられないわけですね。そういうことがあるわけなんです。  そういうものがどこか今の入学試験に欠けている。そのためにその以下の教育に全部それが響いてきている。初中教育の改革といいますか、そういうことについて今まで午前中にたくさんお話がありましたが、こういうことも将来ひとつお考えになっていただきたい、また入試にもそういうものを反映していただきたい、そういうふうに午前中から今までのお話を聞いておって感じましたので、質問要項にはございませんが私の感想を申し上げておきます。  もう一つは、私はもう八十になりますけれども、我々のときには高等学校というとエリートでありまして、入ると先が保証されておりました。だからその高等学校の三年間というのはいわゆるデカンショ、デカンショで酒を飲んで歌って暮らした、しかも勉強もしたというようなことですが、現在の日本ではもうその人たちは我々も含めてだめなんですけれども、そういう人たち日本の再生に努めてきた、こういうことなんですね。  しかし、それが戦後も残っておりまして、それでやはりこういう政策をつくるというところでは何か出世主義というようなものがしんにあるのじゃないか。だから、人間というものは学校へ行って、もっと上の学校へ行って、大学へ行って、大学院に行って博士号を取って、そういうふうにするのが一番人間としての立派な道筋であって、こういうふうにいかなきゃだめだぞということを親が一生懸命考えているのじゃないか。  ところが子供はもうそういう考え方は少しなくなってきて、出世主義じゃないんだ、人生をエンジョイすればよろしい、あるいは人のお役に立てばよい、あるいは自分の思うことをやりたい、こういうことがあるところに、学校へ入ってみるというといきなり大学に入らなきゃいかぬ、これの準備をしなきゃいかぬ、何か学校本来の目的がいわゆる受験のためにある、偏差値のためにあるということに一本化されているために子供がそれに対して反発をしている。こういう気持ちも、登校拒否であるとかあるいは中途退学であるとか、そういうところにあるのじゃないか。学校の中に何にもない、いわゆる偏差値と入学以外には何にもない学校である、こういうところに学校が嫌われているのじゃないか。  だから、いや何人の足切りをしたとか、枠をどうしたとかということの問題では私はないように思いますので、今後お考えのときにこういうことも頭に十分入れて、このごろの子供の考え方は少し変わっているんだぞというようなことをひとつお考えに入れておいていただきたい。  それからもう一つは、中曽根政治というのは私は余り好きじゃありません。ありませんが、あの人の言われた言葉の中に、本会議での所信表明のときだと思いますけれども、これまでは経済優先主義であった、しかしこれからは心の時代になるんだ、心を大事にしなきゃいかぬ。これは竹下総理も言われたのじゃないかと思いますが、どうも心が足りないのじゃないかと。  これは厚生省のお役人も今来ておられるんですけれども、何か中間病院をつくるとか老人ホームをつくるとか、それはこれから老人がどれぐらいふえて、その中の何人かは痴呆老人になる、あるいは寝たきりになるからどれくらいの病院がなきゃいかぬ、それに対する看護婦は幾ら、医者は幾ら、こういう計算をされる。これはコンピューターがはじいてくれるわけですね。しかし実際に老人あるいは身障者をお世話する人というのは人間なんですね。  きのうもロボットをつくっている技師だとかあるいはそういうものをやっている工学部の先生にお会いしましたけれども、ハードウエアとソフトウエアという言葉が最近言われるわけですが、そのハードとかソフトという言葉のほかにもう一つハートウエアというもの、いわゆる心のこもったウエアをつくるんだ、こういうことを言っておられましたが、私はその人に、いかにハートウエアをつくっても、やはり人間そのもののいわゆるスキンシップであるとか言葉をかけるとか、こういうことには及ばないところがあるのじゃないですか、そこまで機械がいけますか、こういうことを申し上げたわけです。  私は、学校教育におきましても、またこれから先の老人対策におきましても、やはりマンパワーというもの、しかも心を持ったマンパワー、こういうものが必要になる、それは学校教育の中でこれを養っていかなければ、大人になってしまってはもう間に合わない。だから家庭教育の中でも学校教育の中でも、アバウトな心、余り入学試験はできないけれどもアバウトでしかも心の豊かな優しい人間を育てていかないと、老人対策も、勘定は合っても何とかは足らぬというのがありますが、ああいうことになるのじゃないかなと私は思っておりますので、献体法について御尽力をいただいた心ある文部大臣石橋大臣に対してこのことを最初に申し上げたい、こう思ったわけでございます。  そこで、本質問に入りたいと思いますが、こういうことから私は生命倫理のことについて最初にちょっとお話をし、御質問も申し上げたい。  厚生省の方、お見えになっておられますか。――去る十二月一日、脳死臨調というものが設置されることが本決まりになりまして、二年後には恐らく何らかの結論が出てくると思います。あるいは脳死は死と認めない、移植はだめだとは出てこないと思っておりますけれども、まだまだ二年間はこの状態は続いていくと思うのです。  しかし、実際の社会の動きは、そうじっとしているようには思えないことがあります。例えば岡山大学が、脳死を死と認める、脳死は人の死で、脳死状態での臓器移植を倫理委員会の全員が容認した、こういう記事が載っております。これは四月に大阪大学でもこういう結論を出し、七月には日本大学においてもこういう結論を出しておりまして、三校目でございます。そのほかにもどこか出たということを聞いておりますので、四校か五校かがもう倫理委員会でこういう結論を出しているわけでございます。  それからまた神戸大学は、今、非常に心臓の悪い患者がおるから、脳死状態で心臓を摘出して移植してもいいかどうか緊急に二カ月以内に返事をしてくれ、こういうことを倫理委員会に出しているわけです。こういうせっぱ詰まった状態が今、目の前にある。そして一方の臨調というのは二年先でなければ決まってこない。こういう状況にあるということをまず御承知願いたいと思います。  こういう大学の倫理委員会、このことはまた後で文部省の方にもお聞きしますが、これが今ほとんど各大学に設置されておると思いますけれども、その結論というものは、どれくらいの法的の根拠といいますか、あるいは権限があるか。もしも倫理委員会がイエスと出して、そういう患者が出て、そして御家族も本人もオーケーということであって、そして臓器を取り出して移植をしたとします。その場合にはこれはどうなりますかということですね。それと、各大学の倫理委員会の脳死判定の基準というのは必ずしも一致はしていないわけですが、そういう状態の中で今のような状況が起こった場合に、これはいわゆる有罪性が阻却されますか、そういうことをひとつお聞きしておきたいと思います。
  175. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  176. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 速記を起こしてください。
  177. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) まさに権威者であります高木先生の御識見をありがたく拝聴をいたしたわけであります。  特に私は、最初先生が申されました、アバウトということでお話があったわけでありますが、東洋文化そして西洋文明と申しますか、土と木そしてコンクリートと鉄といいますか、あるいはまた農耕民族と狩猟民族といいますか、そのような考え方にもう少し立って、そして三割る三は幾つだよ、五足す十は幾つだよということだけでなく、全く人間性というものをそこに取り入れて、心の問題でありますとかそうしたものをもっともっと取り入れての教育というのをここら辺のところですべきだという御所論、私といたしますと極めて関心を持っていた部門でありますので、共鳴をいたすわけでございます。
  178. 小沢壮六

    説明員(小沢壮六君) 倫理委員会で出しました結論が法的な評価としてどのようなことになるかというお尋ねでございます。  お尋ねの趣旨が、刑法上どういうような形でとらえられるかというようなことになりますと、ちょっと私ども正確な形での御答弁を申し上げられる立場ではございませんが、倫理委員会というのは各大学におきまして自主的に設置されているものである、何らかの法律に基づいて設置されているというような性格のものではない。したがいまして、そこにおきます結論というのは言うならば学内の約束事として関係者方々を拘束するというのが基本的な考え方ではなかろうかと思います。  ただ、それが刑法上でございますとか、あるいは民事上の問題もあろうかと思いますけれども、そこでどのように評価されるかというのは、私ども正確には御答弁する立場にないわけでございますが、いずれにしてもそれは医学の常識という規範に照らしてどうであったかというような判断要素の、参酌される要素の一つになるのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
  179. 高木健太郎

    高木健太郎君 各大学で脳死なら脳死に対する意見が必ずしも一致していない、こういうことについてはどのようにお考えですか。何とかしてこれは一致させようというふうな努力をされますか。あるいはこれは文部省のお仕事かもしれませんが、文部省としては何かお考えでございますか。
  180. 坂元弘直

    政府委員(坂元弘直君) 各大学の倫理委員会におきましては、その自主的な判断でそれぞれ審議が行われているわけでございます。その場合に各大学の倫理委員会としては、各大学限りの倫理委員会の判断というよりも、関係学会の意見も踏まえ、また他の大学における審議の状況等についてもこれを参考とした上で審議を行うというふうに私ども聞いております。  そんなようなこともございまして、各大学の倫理委員会の相互の情報交換あるいは意見交換の場としまして、本年の二月に、大学医学部、医科大学倫理委員会連絡懇談会というものを設立しておりまして、十月には倫理委員会のあり方等についての意見交換が行われ、来年二月には脳死と臓器移植の問題についても検討を行うというふうに聞いているところでございます。  このような形で個々の具体的な事例に基づいて各大学の倫理委員会が結論を出すわけでありますけれども、基本的な線においてはなるたけ一致するような方向で御努力をいただきたいというふうに期待をしているところでございます。
  181. 高木健太郎

    高木健太郎君 厚生省への質問が少しおくれますけれども、倫理委員会といいましても、医科系の単科大学におきましては医学者だけしかいないんですね。総合大学では、法学部その他、あるいは文学系のメンバーも大学の中で入れている、あるいは外部の有識者を入れているという倫理委員会もありまして、倫理委員会そのものの構成が必ずしも同じではないわけです。そのようなところで懇談会を開いても何か私はちぐはぐな結論しか出てこないのじゃないかなと思うわけですね。特に死の問題を取り扱うような場合には全倫理委員会の一致がなければどの大学もかえって動けなくなってしまうということになりますので、これは文部省が口出すべきものではない自主的な組織ではございますけれども、ある程度そういう注文をつけておくべきではないかというふうに思います。  それからもう一つは、そういう倫理委員会に外部の人を入れるとかいうことになりますと、大学の中の経費ではそういう科目がないということから運営に非常に支障もあるのではないか。これに対しては文部省は何か補助というものをされていますか、あるいは今後されるおつもりですか、その点もお聞きしておきたいと思います。
  182. 坂元弘直

    政府委員(坂元弘直君) 最初の外部の委員を入れたらどうかという問題でございますが、確かに単科の医科大学、国公私立大学で三十一大学ございますが、このうち二十九校で倫理委員会が置かれておりまして、そのうち学外者が構成員に含まれておるというのは十九大学でございます。そういう意味で私どもは、単に学内で議論するだけではなくて医学以外の観点を含めて多角的に検討すべきであるという考え方を基本的に先生と同じように持っておりまして、大学関係者にはそういう方向で意見を申し上げているところでございます。  それから後段の、倫理委員会に外部の先生を入れた場合の費用の問題でございますが、現在では各大学とも謝金ということで積算されております予算の範囲内で措置しておりまして、一応、今の段階では、学外の委員を入れておる倫理委員会でも円滑に運営されておるというふうに私ども承知しております。現在、医学部あるいは医科大学等の関係者から、先生が今、御指摘になったような御要望は出てきておりませんので、今の段階ではこの問題で特に財政的に何らかの措置を講ずるということは考えておりませんが、仮に今後大学の方からそういうことで経費が非常にかかるというような御要望が出てまいりましたら、私ども前向きに検討はいたしたいというふうに考えております。
  183. 高木健太郎

    高木健太郎君 何かどこからかひねり出しているんだと思うのです。だからそんなことをしていると何か妙なことになるから、もう少し積極的に、これこれこういうものであればこういう補助はできるということをきちっと通知されるなり話されるという方がいいと私は思うんです。そうでないと、臨床の先生が入ってきていろんな金を集めてきてそれでやるというような倫理委員会になりますから、倫理委員会そのものの運営が曲げられるというおそれも私はある。そういうことのないような方策を講じていただきたい、こういうように思います。  それから、厚生省の方お待たせしていますのでお聞きしますが、まず、今、我々脳死と臓器移植なんということを言っておりますけれども、実はアメリカではいわゆる妊娠中絶の是非をめぐって極めて大きな論議が起こっていることは、ニューズウイークだとかタイムその他でごらんになっていると思います。日本でも前に問題になりましたように、胎児の権利と女性の権利がどちらが優越するのかというようなことから外国で議論が重ねられているわけです。  日本は戦前は堕胎は禁止されておりましたが、戦後、昭和二十三年だと思いますが、議員立法で現在の優生保護法が通って、その第十四条かにいわゆる経済条項というものがあって、そういう経済条項に従って日本では妊娠中絶が行われているということなんです。しかしこれだけ豊かになってきますとまたそういう問題が起こってくる可能性もある。特にアメリカでもそういう問題が起こっておりますので、日本でもそういう議論が起こってくるように思うんですが、厚生省としてはこれについて何かお考えがあるでしょうか。  もう一つお聞きしますけれども、凍結受精卵というものが新聞を一時にぎわせたことがございます。あるいは二重盲検、ダブル・ブラインド・テストというものがありまして、ある新しい薬が出たときには、片一方のグループの患者には全く効かないものをやる、無効なものをやる。一方にはその薬を入れる。それは薬をやるお医者さんも知らなければ処方する人もよくわからない。要するにダブルブラインドになっている。こういうことをやる場合に、無効の薬を飲ませられて効くかもしれぬと思っている患者は何かだまされているわけなんですけれども、こういうものにいわゆる倫理的な問題が起こってくるわけです。  この二つの問題について厚生省の御意見を承りたいと思います。
  184. 篠崎英夫

    説明員(篠崎英夫君) ただいま先生からお話がありましたように、人工妊娠中絶の要件につきましては、胎児を保護する観点から厳格にすべきだという御意見や、あるいは女性の一部からはもっと規制を緩和すべきだという考え等、国民の各層にさまざまな意見があることは事実でございます。この問題は個々人の倫理観や宗教観などにも密接に関係しておりまして、国民の幅広い合意の形が得られるように今後とも慎重に検討してまいりたい、このように考えております。
  185. 小沢壮六

    説明員(小沢壮六君) 後段の凍結受精卵とそれからダブル・ブラインド・チェックの関係でございますが、まず凍結受精卵の関係につきましては、先生御案内のとおり、日本産婦人科学会におきまして昭和六十三年四月に「ヒト胚及び卵の凍結保存と移植に関する見解」というものが取りまとめられております。この中で問題となり得る種々の問題点に配慮して学会がまとめたということでございます。こういうような見解につきましては、私どもとしましては大変貴重な御意見と理解しておるわけでございまして、今後、凍結受精卵を用いての治療につきましては、この学会の見解に基づいて十分検討された上で慎重かつ適切に実施されることが望ましいというふうに考えておるわけでございます。  それから医薬品の関係でございますけれども、医薬品の製造承認申請の際に提出すべき資料の収集ということで行われるいわゆる二重盲検試験等の治験でございますが、これは被験者への説明と同意、それから医療機関における治験審査委員会の設置等、治験が倫理的な配慮のもとに科学的に適正に実施されるようにということで、ことしの十月、医薬品の臨床試験の実施に関する基準というものを定めまして、薬務局長通知によりまして、各都道府県それから関係団体あてに通知したところでございます。厚生省としましては、このような生命倫理にかかわる医療上の問題につきまして個々の問題の性質に応じまして適切に対応してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  186. 高木健太郎

    高木健太郎君 アメリカで例の凍結受精卵で夫婦別れをしたときに、奥さんの方はそれを残しておいてくれ、だんなさんの方はもうそれは捨ててくれ、それがまた裁判になったということもありました。日本では夫婦が別れた場合にはもうそれは捨ててしまうということで、凍結受精卵、いわゆる体外受精をやるわけですけれども、やっぱり何か起こってくるのじゃないかなという気もするわけです。だから結局こういうことを国会で法律できちっと決めておかないと、単に産婦人科学会のガイドラインに従うということだけでは済まなくなるのじゃないかと思います。  また、最近はたくさんの電気治療機器というものができているわけです。私が見ましてもこれで効くのかなと思うのがかなりあるわけなんですが、厚生省の方ではそういう電気治療器というものの専門家というものはおられないように思うんですね。だからこれも、生命倫理とまで、そこまでやかましくありませんけれども、薬の方に比べて機器の方は少し手薄ではないか。将来こういうことも、厚生省の中で強力な審査機構なりをおつくりになっておく必要があろうか、そういうふうに思います。審議会ぐらいは持っておられるかもしれませんけれども、機構そのものが強力になっていなきゃいかぬのじゃないかというふうに思います。  今、幾つか申し上げましたように、生命倫理という問題に関しましては、科学が進歩しまして人間の体を直接扱うというときに、たとえそれが医療的にはある程度承認されておりましても、倫理的といいますか、宗教的あるいは社会通念的にいろいろな問題がこれから私は起こってくる。これは何も文部省あるいは厚生省だけの問題ではなくて、多岐にわたる問題が起こってくるだろうと思うんです。そういう意味では、個々の施設で倫理委員会なんかをつくって不適切な結論を出してそれで間違いを犯す前に、こういう生命倫理に関する指導的な機関として、何か今、置いておく必要があるのではないか、こう思うのです。  例えば国立の生命倫理研究所というようなものを置いてはどうかと私は思うんですが、この間ちょっと話しましたら、文部省にはお金がありません、こういうお返事を聞きましたのですけれども、お金がないということは今の日本では通らないんですね。私、外国人と何回も会って話すと、お金はあるじゃないか、こう言うわけですが、私のポケットにも余りありませんし、文部省の金庫にも余り入ってない。これはどうもおかしな話でして、外国からは、お金はあるから君のところだったらこんなことはできるよ、こう言われましても、自分のところは何もできぬわけなんです。そういう意味で、お金がないと言われれば、私、一言もないんですけれども、これは対外的に、まことに奇妙な国だなと思われるだろうと思うんですね。  しかし、七十何億円でピカソの絵を買ったとか、どこか大きな会社を買い取ってしまったとか、あるいはどこかにリゾートをつくったとか、そういうことがたくさんあるわけです。もちろんそれはドルだとか何かで米国の国債を買っておりましたり、あるいは日本銀行にドルとして眠っておったりというようなことでもあるでしょうが、諸外国から疑惑とは言いませんがけげんな顔をして見られている。ここを何とか突破して、そして将来起こってくるであろう、あるいは近々起こってくるであろうそういう問題について国立生命倫理研究所をつくって解決していくというようなお気持ちはないかどうか。  これについてはお互いに、いや、わしの方は金がないからと逃げないで、文部省と厚生省でひとつ手を握り合ってつくっていくような御決意はありませんか。これは文部省と厚生省両方にお聞きしたいと思います。    〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕
  187. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) お答えいたします。  要は、新しい医療技術だとかバイオサイエンス、いろんなものが出てきたわけであります。そのために、人間あるいは動物、この場合人間でありますが、産まれることを調節したり死ぬことを調節するというふうになってきてしまったわけですね。これが今までの倫理、技術の進歩に追いつけない倫理というふうになってきたなというように私は認識をいたしております。  それが、今、問題になっております脳死ですとかの解釈の問題、臓器移植の問題、あるいは人工受精、体外受精のような問題、神がそうしてくれたのだというものが人の技術によって変えることができるということになってしまったのです。これが大変な、生命倫理というものをきちっとしておかねばならなくなったのじゃないか、こんなふうに考えております。一方どんどん技術は進歩する。親の立場、お子さんのとうとい生命、これをどうしたらいいかということを考えますと、やはりきちっとしたものを持っておらねばならないんだな、こう思います。  そんなことで、臨時脳死及び臓器移植調査会設置法ですか、これが極めて長い間、今まで私も野にあったときに入っていろいろやっておりましたですが、極めて短時間の間にこの設置法が、たしか竹内さん外何名の提出であったと思いますが採決されておる原因であろう、こう考えております。  ただ、さてそれをやる場合に、文部省、厚生省――厚生省はともかくとして、文部省として国立の機関としてそれを設けるべきか。  キリスト教の皆さんのお考え方も私も聞いたことがあります。あるいは神道の皆さんのお考え方、仏教の皆さんのお考え方、それぞれみんな違うんですね。どっちかというと神道なんというのは、なんとと言うとしかられちゃいますが、明かき素直な心と言われていますので割合に受け入れ幅が大きい。でも仏教ということになりますと大変いろんな制約がある。キリスト教の場合はもうどんどん進めている。  こういうことで非常に幅が広うございますから、さて、学術会議あるいはその他の会議がありますが、あのような中にきちっとしたものを置いた方がいいではないかな、国立でやった方がいいのかな、本当のところ、ざっくばらんなことを申し上げて、まだ私といたしますといずれの方か、とにかく結論を出さなくてはいけないということはもうわかっているわけですから、どうしたらいいかなというのをまだ結論がつけられないでいる状態ですので、また委員の御意見等も承りたいなと、こう考えております。
  188. 小沢壮六

    説明員(小沢壮六君) 科学技術、医学の進歩に伴いまして生命倫理の問題というのが現在も大変問題になっておりますし、これからますます重要な問題になってくるという御指摘はまさにそのとおりだと思っております。これは御指摘のとおり、人間の誕生とか病気の治療、死についての考え方等、大変、価値観でございますとか人間観に関係する議論にならざるを得ない問題ではないかと思うわけでございます。  そういう意味では、私ども、先ほどの文部大臣のお答えに尽きているのではないかとは思うわけでございますが、それの中で、行政がまず旗を振ってやるべきなのか、やはりもう少し国民全体で御議論をいただいた方がいいのではないかという、そういうような問題もあるのではないか、そういうふうな考え方を持っております。そういう意味では、直ちに国立の機関ということではなくて、今後どう進めていけばいいかというようなことをさらに幅広い観点からいろいろ御議論をさせていただいて、私どもはそういう御議論を参考にさせていただくということではないのかなというふうに考えておるところでございます。
  189. 高木健太郎

    高木健太郎君 私、先ほどの石橋文部大臣のお話、大変心にとめて聞いておりました。  生命倫理といいますと脳死とか臓器移植ばかり考えておりますが、仰せのように遺伝子操作というものも今後出てくるわけでございますね。これは日本学術会議でもやっておりますし、アメリカではNIHがそういうガイドラインを割としっかりしたものを出しておる。日本におきましても科学技術庁その他が力を合わせて遺伝子操作のあり方をやっているというので、ある程度進んではいるわけです。  これは生命倫理といいますけれども、本当は環境にも関係が出てくる。例えば、ばい菌をつくったとか、始末に困るウイルスができてきたとか、そういうことにも関係がございますし、それから科学の進歩と人間といえば、現在の環境問題というのは本当にもう全部そうであるわけです。ジェット機の非常に速いのは炭酸ガスをたくさん出すとか、あるいは原子力発電は非常にアイソトープが出て危ないとか、そういうこともある。  そういうことで、科学の進歩が光としますと、田沢先生のお話じゃないけれども、必ず科学の進歩には陰というものが付き添っている。その陰の部分も光と同時に進めていくようにしておかないと、それの改良を進めておかないと取り返しのつかないことになる。だから、これは生命倫理だけとは限らない、科学技術の陰の部分を絶えず政治がチェックしていくということが私は大事で、その意味で、生命倫理研究所というと小さいですけれども、光の陰の部分を何とか絶えずディスカスをして対応に備えておくという意味で私は申し上げたわけでございます。いろいろお話を聞かせていただいて大変ありがとうございました。  厚生省の方に最後にお聞きいたしますけれども、人工臓器というものが盛んにやられて、人工心臓を埋めたとなんという話もこのごろ聞きます。心臓を移植しましても、それがうまくいかないときにはしばらくの間人工臓器に頼らないと、次の新しい心臓をもらうまでに人間は死んでしまうわけですね。腎臓の場合は、腎臓を埋めてうまくいかなければ人工血液透析でしばらくしのいでいくということはできるわけです。ところが心臓の場合にはまだそれほどいい器械はできない。  特に肝臓になりますともうほとんど人工臓器としては現在できていないというような状況にありますので、肝臓移植というものは今後なかなか問題になるところが多いだろうと思うんですが、こういう臓器移植ですね、生命倫理をやると同時に、私は人工臓器の研究ということも並行してやっていかなければならぬ問題であろう。    〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕  そこで、北海道と聞いておりますけれども、割合と大きなそういう人工臓器の都市といいますか研究所構想、HIMEXという名前のものがあるということを聞いておりますが、これはどんなものでしょうか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  190. 小沢壮六

    説明員(小沢壮六君) いわゆるHIMEX構想というのは、代用臓器開発など世界の最先端の医療・治療施設と医療関連の教育・情報提供施設等を中心に、北海道の一定の地域におきまして、それに住宅とか交通、ホテル等の建設とあわせましてそういう代用臓器開発等の先端医療技術を中心施設とした地域開発をしていこう、そういう計画と承知しております。
  191. 高木健太郎

    高木健太郎君 厚生省の方、ありがとうございました。  今のようなそういう北海道のところに、代用臓器だけじゃなしに同時に生命倫理の研究所をくっつけたらどうかなという気もするんです。生命倫理研究所だけを置いてもそこからは何も生まれてこない。人工臓器であればいろいろな分野の人がそこにいる。そういう意味でいいのではないかと思いまして、将来何かつくろうとお思いになるならそういう構想と一緒にしてお考えいただいたらどうかなと、そういう意味で質問をしたわけでございます。  実はきょうの本題は倫理問題ではなくて、川村局長もお待ちかねでございますけれども、いわゆる国際化に伴う教育研究というものを主体としてお話しして文部省のお考えをお聞きしたかったわけでございますが、もうお聞きする時間もほとんどなくなりましたので、一つだけ御注文を申し上げたいと思うんです。  先般、私は、田沢理事を団長にオーストラリアの方に海外視察に参りまして、シドニーの日本人学校視察してまいりました。そのときに向こうの校長先生と、二、三のあれは教頭先生でしょうかお会いしまして注文を受けてまいりましたので、それをここで申し上げてお考えをお聞きしたいと思うのですが、これはシドニーからちょっと離れた、シドニーの町まで車で一時間ぐらいかかるところなんですけれども、そこに向こうの日本文化センター、あるいは日本の商工会議所というようなものがありまして、その方々のお世話でそこに土地を買い校舎をつくっている学校でございます。小中の学校がありまして、六学級、生徒が約五百余名ということです。  そこでの注文なのですが、これは建てるのは文部省は建てないそうですね、全部そこの地元で建ててくれということで、私立でもない、何でもない、とにかく寄附してもらってやっているということですが、教員の方は文部省の方で派遣されている。その教員なんですが、シドニーならば英語圏ですけれども、全く英語のできない人が来ても困ると、少しは英語のできる人をよこしてくれませんかと、そういう御注文なんです。  それからもう一つは、三年が任期でございますけれども、中学、高校おのおの三年でございまして三年あればいいとお考えかもしれませんが、やはりそこの場所になれる、最後の詰めをするというためには五年ほしい、だから任期を五年にしてもらいたいと。ただ、先生の方からいえば三年ぐらいで向こうを見物して帰ってくるというお気持ちもあるかもしれませんが、しかし来ていただく以上は五年にしていただくとまことにいい。しかし三年で帰りたいというときにはお帰りになってもよろしいと。自分はもう少しおりたいという方も先生の中には大勢おいででございますので、そういうふうなことができないでしょうかと。  それから、養護教員といいますか、そういう方が全然いない。だからいろいろなサービス、カウンセラー、こういうことが全然できないので、そういうカウンセラーあるいは養護教員等の定員もお考えいただけませんかということなんです。  それから、教科書は送っておられる。一種類の教科書を送っておられるわけですが、それは日本でできるだけたくさん使われている教科書を文部省が見繕って向こうへ無料で送っておられる。その費用だけは文部省がお出しになっておりますが、あとの教材はほとんど何もやっておられない。  それから、私立学校であれば幾らか補助をもらえるのでしょうけれども、ここは全く補助はない。いわゆる財政的な援助は何もなくて、図書費もないというような状態でございますので、そこら辺をひとつお考え願えないかということなんです。  それからもう一つは、先生方が塾のかわりをしている。というのは、海外に行っている親御さんたち日本の偏差値というのが一番気になるんですね。ところが偏差値というのは向こうにおっては全然わからない。そうするとその辺の事情は日本から赴任した学校の先生にいろいろ聞かなきゃならない。それだから先生が塾がわりにやっておられるというわけですね。そういうものに超過勤務というものがいただけないだろうか、あるいは指導料としていただけないだろうか。  会社の方はみんな、新聞でもごらんになりますように、女性の社員が向こうへ行っていろいろ事情を聞いたりして事細かに相談に乗ってやっている。ところが文部省の方はやったきりあと何もせぬ。そう言っては失礼ですけれども、相当やっておられるのでしょうが、向こうにはそういう要望がある。こういうことについてひとつぜひお願いしたい。  もう一つ、これは私が考えるわけですが、よく帰国子女という字が使われているわけです。さっき児童の話がございまして、チャイルドは何と訳すかということでいろいろございましたが、この子女というのはどこから訳されたのでしょうか。どうして子供と女になったのか。女子と小人は養いがたしとか、そういう余りいい言葉ではないと思うのですが、これはどこから訳されてこの子女というのが出たのか。子供と女か子供の女か、これはどういう意味かよくわからぬですが、女子と小人は養いがたしと、そこからきたのかなというような誤解を招きますので、ひとつこの点も御説明をお聞きして、私の質問は終わりたいと思います。
  192. 倉地克次

    政府委員(倉地克次君) 先生から七点、御指摘があったわけでございますけれども、まず第一に施設の整備の問題でございますが、これは外務省所管となっておりまして、校舎の建設費等についてその一部を負担しているというのが実情でございます。私ども、外務省の所管のことではございますけれども、いろいろ気がついた点につきましては今後とも外務省の方に十分御要望なり申し上げていきたい、このように考えておるわけでございます。  それから教員について英語のできる方ということでございますけれども、相当数の教員を海外に派遣するわけでございますのでなかなか御要望にこたえることができないわけでございますが、今後、研修の段階で、地元の語学につきましてもできるだけ研修の方途を講じてまいりたい、そのように考えておるわけでございます。  それから任期を五年にしたらどうかということでございますが、最近、海外へおいでになっている会社の方々の任期が大分延びているというのが実態でございまして、そういうところからきているものではないかと思うわけでございますけれども教員の人事を国内の一環として考えますと、やはり三年程度でも若干長いかなという感じがするわけでございまして、その辺の調節を考えますとなかなかこれを延ばすのは難しいのではないかと思うわけでございます。ただ、特別な事情がある場合におきましては、これを随時延期したりまた短縮したりという措置は講じている次第でございます。  それから養護教員の問題でございますが、これは昨年五月から私どもが行いました有識者による海外子女教育推進に関する研究協議会の御報告におきましても御指摘をいただいているところでございます。ただ、なかなか難しい問題でございますので今後の研究課題とさせていただきたいと思うわけでございます。  それから、教科書だけでそのほかの図書、教材についてはなかなか援助がないということでございますが、この点につきましては、現在、国内の学校におきましてもそうしたものはやはり設置者の方でいろいろ御工夫いただくことになっておりますので、そうした点からなかなか難しい問題ではないかと思うわけでございます。  それから塾がわりに先生がいろいろ指導された場合の報酬の問題でございますが、そういう勤務をされたときに報酬が出せるかどうかということはやはり国内でも大変難しい話でございますので、なかなか困難ではないかということでございます。  それから帰国子女の問題でございますが、大変恐縮でございますが、私もこれはどこからそういう言葉ができたかということは明らかにしていない次第でございます。いずれこういうところでいろいろ御質問もあるかと思った次第でございますけれども、現在におきましては子女という言葉は、教育基本法、憲法にも使われている言葉でございますので、ひとつその辺をお含みおきいただきたいと思います。
  193. 高木健太郎

    高木健太郎君 時間がなくなりましたが、余り何もかも今後考えるじゃなくて、一つずつでも改革していただくように、田沢先生も見られたわけですけれども、実際に海外に行っている人は大変困っているということでございますからできるだけ、今ほとんど全部だめだったわけです、何にも通らなかったわけですが、そういう意味でもう少し親身になって考えていただきたい。  現在五万人以上の子供たちが海外にいるわけです。日本の企業は外へ出ていかざるを得ぬような円高の状況にもあるわけで、そういう意味で、いわゆる戦士として海外に出ている人たちの子供さんなんですね。日本はいろいろと向こうからよく思われない。先般からありますように、「NOと言える日本」ですか、ああいう問題でも今いろいろ問題を起こしているわけですね。そういうところへ行っている日本人の方のお子さんですから、国内にいる方よりももっともっと苦労されている。そういう意味で目をかけて、心をそこへ入れてやっていただきたい、私こういう注文でございます。どうぞ文部大臣にもその点よろしくお願いを申し上げます。  これで終わります。
  194. 高崎裕子

    高崎裕子君 十一月二十日の国連本会議で子供の権利条約が採択されました。日本政府としても賛成されたということで、これは大変結構なことだと思います。  先ほど森委員質問に対して、批准については国内法との詳細な検討をということで、なるべく早くという御答弁がございましたが、法的に見まして、国内法が整備されなければ批准できないというものではありません。とりわけ第三委員会のコンセンサスに加わるときに既に国内法との関連についてはおおよその検討が終わっているわけで、あらゆる場合において子供の利益は至上であるという児童の権利宣言からしても、あるいは既に批准している女子差別撤廃条約の理念や目的から見ましても、積極的に受けとめるべきものと思うわけです。  そこで、なるべく早くではなく一日も早い批准が求められているということで、大臣にまず批准のためのリーダーシップをとっていただきたいと思うわけですが、大臣の決意のほどを伺わせていただきたいと思います。
  195. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) この問題、先ほども大変な議論があったわけでありますが、何度も申し上げますが、条約の趣旨、それには基本的に賛成をいたして今までもやってまいったものでございます。  ただ、御指摘のことに相なりますと、教育的な観点にだけ立って見ても、各国の教育制度、これはそれぞれ自分の国の持っている歴史的あるいは社会的背景、そのもとで成り立っているのがそれぞれの国々の教育制度であるな、こう思います。そこで、どうしても国内関係法規とのすり合わせと申しますか関連と申しますか、それをやっていかねばならない。そこで、どうしても検討、調整を必要としなければならない部分もある、こう思います。  関係省庁と十分相談してやりたいと思いますが、いずれにいたしましても、子供の権利条約、かぶさっている冠が「子供の」いうことに相なっているわけですから、やはり文部省ができ得る限り各省庁と十分検討していって、まあ主体的と言うとまたほかの省にしかられますが、できるだけやっていきたいなと、こう考えます。
  196. 高崎裕子

    高崎裕子君 先ほども出ましたが、国内的には児童生徒の売春問題、あるいは幼児の虐待、体罰、いじめ、それから、これから質問したいと思いますが登校拒否の問題など、日本子供たちの人権が著しく侵害されているという大変深刻な状況にあることを見据えて、今、文部大臣は主体的にということで批准のための積極性を示されたわけですが、その積極的な役割が注目もされ期待もされている、そのことを重ねて申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  登校拒否、高校中退問題が大変深刻な社会問題であることは午前中から各委員が御指摘もされているところです。統計上に表現されている小中学校のいわゆる学校嫌いによる五十日以上の長期欠席者はこの十年間に約四倍の四万二千二百六十三人になり、高校中退者も毎年十一万以上になっている。しかし、校門をくぐっただけであとはどうなっても登校とみなすというのが北海道の教員から私が伺った実態ですから、この文部省の統計に載らない予備軍は膨大な数に上ると言わざるを得ないと思います。  北海道では、この五年間を見ましても、長欠者の数に占める学校嫌いの比率は特に中学校で大きく伸びております。昭和五十九年度の五四・四%から、昭和六十三年度で六〇・〇%、千二百三十七人へと増加しているわけです。高校中退も六十二年度で三千九百六十九人になっております。これらの原因についてはいろいろ挙げられているわけですけれども、私が特に注目したいのは、登校拒否、高校中退と基礎学力の問題でございます。  この問題について十一月十七日の衆議院文教委員会石井議員が質問した際に、法務省の人権擁護局の不登校児の人権実態調査の結果について、落ちこぼれ、学業成績が不振であると見られる生徒が多いことは否めない、そう答えておられます。また同議員から、東京都内にある八校の夜間中学ですが、過去六年間の調査で、登校拒否児の小中学校での勉強のつまずきがその不登校の要因となっている、このこともまた示されているわけです。  さらに北海道の道議会では、去る十月十七日、日本共産党の本間喜代人議員の高校中退者問題に対する質問に澤教育長が答えておられますが、中退者が五%を超えた高校が北海道で三十一校、これは公立の全日制高校の一一%に達していること、特に一年生の中退者が多くなっていることを示し、この背景に基礎的、基本的な学習内容の修得が十分でなかったことを指摘されております。  そこで、文部大臣にお尋ねいたしますが、この登校拒否、高校中退問題の対策に当たりまして小中学校での基礎学力の落ちこぼれを出さないことが極めて重要な課題になると思うわけですが、それを重要な課題にすべきとお考えかどうか、そのお考えをお聞きしたいと思います。
  197. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 御指摘のように、登校拒否、高校中退におきましてはいろいろな要因があるといいますけれども、学業の問題もございます。私ども調査、これは学校側に聞いておりますので親とか子供側に聞いておりませんから、またお子さんやその親御さんの方で聞きますと見方が違うかもしれませんが、学校に聞きました限りでも、学業の不振、要するに学校についていけないということが登校拒否のきっかけになった子供が一七%ほどおりますし、また高校中退におきましては、先ほど来のお話にもございますように、学校の授業に不適応を起こす、ないしは学校内でのいろいろな人間関係で不適応を起こすということで、学校に原因があるというのが相当な数になっております。  したがいまして、登校拒否、高校中退の対応といたしましては、やはり学校における授業をしっかりする、そして基礎、基本をしっかり身につけさせて、学校生活が充実感のあるものになるようにすることが大事だというふうに考えております。
  198. 高崎裕子

    高崎裕子君 積極的に重要な課題にされるということで、大変心強く思うわけです。  次に、小中学校で基礎学力での落ちこぼしを出さないためにはその原因を取り除くということが極めて大切です。その原因はいろいろあると思うのですけれども、私は大きな原因として三点取り上げたいと思います。  まず第一点目は学習指導要領の詰め込みという問題です。小学校では一九六八年の改訂、七一年度実施、中学校では六九年改訂、七二年実施で、この中身は、現代化により、小学校からは集合、関数が導入されております。それから九九は小学校三年から小学校二年生に、それから不等号が中一から実に小学校二年生に移っている。漢字も一年生で四十六字であったものが七十六字にと三十字もふやされている。私の下の息子は今、一年生なので、大変な思いは実感としてわかるのですが、この結果、授業が理解できない子供の大量発生が現に社会問題になっております。  この間、この傾向と登校拒否とを数の上で見てみますと、小中学校で一九七一年に一万八百十四人の登校拒否児だったものが、一九八八年には先ほど指摘しました四万二千二百六十三人と四倍以上にもふえている。こういう傾向の中で、これまででさえ詰め込みによって授業がわからない生徒がいたのに、一年、二年の早い段階で算数は嫌いだというふうに答える生徒が、例えば八七年三月の日本数学教育学会の調査でも、一年で二四%、二年で三一%いるということで、現場先生方は大変な御苦労をなさっていると思います。  こういう現状にもかかわらず、例えば算数で教師が困る「分」を一年生に持ってきたのはなぜなのか。現場先生方から、今が易し過ぎるから難しくしてほしい、そんな声が上がったのでしょうか。そして、これは講習会が行われましたが、その講習会でどのように説明をされたのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  199. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) ただいま御指摘がございました学習指導要領が詰め込みになっているのではないかということでございますけれども、先ほどお話のありました集合等は、昭和四十年代の改訂のときに、世界的な現代化、理科教育と数学教育現代化の大きな流れがございまして、我が国もそうした流れの中で新しいカリキュラムの開発ということで、集合とか、それから理科の現代化を進めたわけでございます。  その後いろいろな経験にかんがみまして、昭和五十年代の改訂では、やはりもう少し学校教育にゆとりを持たせようということで大幅な内容の精選をいたしております。したがいまして、現行の学習指導要領ではそうしたいわゆる詰め込み的な内容は一応対応をとったということだろうと思います。今回の新しい改訂ではその精選を一層進めておりますし、子供たち学校教育でいたずらに知識が詰め込みにならないような配慮は十分しているつもりでございます。  なお、漢字につきましては、これは昭和四十年代の改訂だったと思いますが、確かに一年で四十六字から七十六字にふやしております。これは実際にいろいろやってみますと、漢字の習得というのは早い時期に提出してそれを時間をかけて繰り返すことによって定着を図るということが一番効果があるということで、小学校の低学年でまず提出をふやしたわけでございます。その後、今回の改訂では漢字につきましてももう一度見直しをしまして、専門家が集まりまして、各種の調査等、新聞社の調査、国語研究所の調査、それから学者の調査等も踏まえまして、子供たちにとってどういう配分をしたら一番いいかということで今回の漢字の見直しをやっております。  これは目安でございますので、配当に従いまして各学校で適宜御指導いただくということになろうかと思います。  そこで、今回の新しい指導要領の改訂につきましては、十分そうした趣旨が定着しますように私どもで全国ブロックに分けまして中央講習会を開催いたしました。それを受けられました方が各都道府県にお持ち帰りになりまして各都道府県でも講習会を開くという形で、目下鋭意新しい指導要領の周知徹底を図っている段階でございます。
  200. 高崎裕子

    高崎裕子君 一年生になぜ「分」を持ってきたのか、講習会でどのように御説明されたのか、ちょっと簡潔にお答えいただけますか。
  201. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 第一学年で時計の「分」の指導をすることにしておりますが、これは従来から第一学年で時計を読むことの指導をしておりました。そして、何時、何時半というような大まかなとらえ方をしていたわけでございますけれども、ただ子供たち日常生活において時計にどう接しているかということを見ますと、時計は分刻みで動いておりますし、ディジタルの時計でももちろん「分」で出てくるわけでございます。  したがいまして、子供たち日常生活との関連を図れば、生活上必要な時刻を刻むということにつきまして教えるのは子供たちにとって無理ではないということを、専門家や各学校先生方がお集まりになりました協力会議で御検討いただいて、これを小学校でも一年生で教えようということで今回入ったわけでございます。  こうした内容の改訂につきましては、先ほど申し上げました全国ブロックの講習会及び都道府県の講習会の算数の部会等でその内容を説明しているわけでございます。
  202. 高崎裕子

    高崎裕子君 この講習会では答えられないというような説明をされているというふうに伺っているのですが、この点についてはさらにお聞きしますと時間がありませんので後にいたします。  今、専門家の御意見を聞いて「分」を一年生にというお話でしたけれども、専門家と言われるのであれば、現場子供たちを教えている先生方、教師こそ専門家で、その方々の声を聞かなければならないと思うわけです。  私はこの新指導要領に対して、長く小学校の低学年を教えてこられた北海道の教師に集まっていただいてお話を伺いましたが、これまででも九九をやる前の二年の初めに時計の「分」を教えなければならないので本当に困っていた、それを今度は一年生で教えることになる、長い針が五に来るならば、五掛ける五の二十五で二十五分、しかし一年生は九九は教えられないわけですからわからない子がふえるのはもう目に見えている、むちゃですよというのが現場の先生の実感なんです。  さらにつけ加えますと、小学校二年で、これまでも教えることが難しいデシリットル、リットルというのがあります。これも先生方のお話では、担任の子供が家に帰って母親に先生は英語を使うので困ると言うので、よくよく聞いてみるとそれはデシリットルとリットルのことであったという笑えない話があるわけです。これにミリリットルが加わるとさらに低学年の落ちこぼれはまず当然出てくるだろうということがもう危惧されるわけで、これらの点からもこの新学習指導要領の撤回ということは強く求められるということを指摘し て、次に移りたいと思います。
  203. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) ちょっと、答弁は。
  204. 高崎裕子

    高崎裕子君 いえ、結構です、時間の関係がありますから。――では一言で。
  205. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 誤解があるといけませんので申し上げますが、こういう学習指導要領をつくりますときの協力会議というのは、各学校段階別に、各教科別に六百人を超える人たちに参加してやっていただきますが、これはもちろん実際に学校で教えていらっしゃる先生が一番たくさん入っていらっしゃいます。  それからミリリットルの件でございますが、これは既に第二学年でミリメートルの指導をしております。そして日常の、牛乳を買いましてもそれからジュースを買いましても、缶には皆ミリリットルで表示されておりまして、子供にも日常生活でかなり密接な言葉になっておりますので、これもいろいろ専門家がお集まりになりました結果、二年生で無理がないということで今回入ったわけでございます。
  206. 高崎裕子

    高崎裕子君 今の御説明ではとても現場先生方を納得させるだけのお答えにはなっていないと思います。  そして先ほども示しましたように、一九八七年三月、日本数学教育学会で児童の算数に対する意識調査、中間報告が発表されたわけですが、学年が進むにつれて算数がわからない児童がふえている、特に思考力が問われる文章題が嫌いだという児童がふえていることが報告されています。これは、登校拒否や高校中退をもたらす学力低下とか落ちこぼれの最大の原因が、この非系統的、非科学的な詰め込み教育子供たちに強制したことにある、その結果だと言わなければならないと思うんです。この新指導要領はそれに拍車をかけるもので、算数嫌い、国語嫌い、そしてひいては登校拒否の原因をますますつくるものではないかという危惧を私は感じてなりません。  そこで、次に、登校拒否、高校中退を生み出し解決を妨げている原因の第二として、学級定数改善がおくれているという点について質問いたしたいと思います。  この点は衆議院で石井議員が指摘、改善を求めたところでもございますが、登校拒否というのは欧米諸国には認められない我が国独得の現象だ、こう言われています。この点欧米諸国は、周知のとおり、我が国の詰め込み学級とは違い二十人から二十五人学級であります。  臨教審教育荒廃の克服をうたい教育改革をうたっているわけですが、この臨教審に対して中学校校長会は、中学教育の改革のために二十人から三十人学級が必要だと提案をされました。しかし審議会の答申では、個性重視の原則を打ち出しながら、本当の意味で子供の個性を開く教育条件を整備するための不可欠の条件としての学級定数の改善については具体的な案を示されなかったわけです。  この点をお尋ねしますといつも文部省は、財政事情で定数改善ができないということを繰り返し理由とされていますけれども、ここであえて強調したいのは、三十五人以下の学級定数改善計画を立てるとともに、適正規模がどれぐらいであるかということについて現場の教師の声も反映できるような内容も含めて調査研究すべきと考えますが、この点について大臣のお考えをお聞かせください。
  207. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) 四十人学級の早期実現を図るということで、あと二年間になったわけですが、これは第五次教職員定数改善計画の中においてきちっと処理しなければならない、まずそのような考え方を持っております。  そして次に、今、委員指摘の問題であるわけですが、言いたいことはやまやまあるわけですが、とにかく今の段階といたしますと、第五次計画ですね、これをやることが私どもに与えられた一番の責任である、こう考えております。もちろん三十五人学級、頭の中にはたくさんあるわけですが、今はとにかく第五次計画をきちっとやっていきたい、このような考えです。
  208. 高崎裕子

    高崎裕子君 これはやはり実態調査してこそ適切な方向が生み出されるということで、その調査研究について適切な措置をとっていただきたいし、財政が足りないということであれば、文部省としても予算的な要求も含めて積極的に対応していただきたいという要望を述べまして、次の質問に移りたいと思います。  登校拒否、高校中退をもたらしている原因の第三でございますが、これはより根本的な、したがって議論もしなければならない問題にもなるわけですけれども、能力が遺伝で決定されているという能力遺伝決定説に基づいて差別、選別の能力主義の教育政策が行われているということで、これは特に大臣にお聞きしたいのです。  既に昭和五十年の十二月八日に自民党の文教部会で、よくできる子供とできない子供は遺伝によってある程度までは決まっている、このような指摘がされているわけですが、この遺伝決定説ということについて大臣はどうお考えでございましょうか。
  209. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) 私は、遺伝によるのか、教育力といいますか、によるのか、いろいろな学説あるいは議論があることも承知しております。ただ、大臣という立場に立って、私も教育の責任者として、これはやはり教育によって児童生徒の能力を伸ばすことができる、このように承知をいたしております。
  210. 高崎裕子

    高崎裕子君 そうすると、遺伝で決まるということではなく、環境、教育によって子供の能力というのは引き上がるものだというお考えである、こういうふうに伺ってよろしいわけですね。
  211. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) そのとおりです。
  212. 高崎裕子

    高崎裕子君 大変結構な話で、実はこの点については国立遺伝学研究所の元所長である田島弥太郎さんが、環境は遺伝にどう影響するかという中で、遺伝に大きく支配されるけれども知能というのは環境の影響もまた大きく受ける、最終的な知能の高さは遺伝と環境両者の相互作用によって決まるわけである、このような御指摘をされています。  実際、北海道の教員との懇談会でもこんな話を伺ってきました。二年生のときに平仮名もなかなか覚えない子供がいた、当時は特殊学級に入れるべきではないかという議論さえされたその子が、ちょうど四年生の今、小数の割り算も簡単にできるようになったということで、絶対に子供を早く見限ってはならない、こういうようなお話を伺って、本当にそのとおりだというふうに私も思いました。  心理学者の波多野完治さんのお言葉を挙げるまでもありませんけれども、いわゆる低能と言われる大部分が、スローラーナー、覚えの遅い子というだけで、ゆっくり時間をかけて指導すれば大抵のことは物になるのである、こういうことを岩波新書の著書の中で述べておられます。ぜひそういうことを前提にこれからの教育を進めていただきたいと思います。  時間になりましたので最後に私は、学校が嫌いだ、字を教えるから嫌いだ、先生が怖いから嫌いだ、これが小学校一年生の言葉です。ベテランの小学校の教師は、三年生の一学期から算数嫌いの子供がいっぱいできました、こうも言われました。母親は、うちの子はなかなか勉強もしてくれません、テストを見ても点がよくないし、塾へ通わせた方がいいのでしょうかと。中学生は、何をやってもおれはだめなんだと。本当に血を吐くようなこういう言葉が一九七一年以来全国どこに行っても聞かれるようになって、私は母親としても本当に胸が痛んでおります。  もともと子供にとっては、学校に入って文字を覚えるということは喜びだと思うのです。そのことは人間をより人間らしくしていくことだと思うのです。ビフテキが栄養があるからといって赤ちゃんに与えられないように、子供の発達段階を無視した詰め込みをやれば消化できないのは当然だと思います。  人間のとうとさを打ち立てる教育の原点を大切にしたいという私自身の教育への思いがあって、そのことでいつも思い出すのが吉野源三郎さんの詩なのです。「だれもかれもが 力いっぱいに のびのびと生きてゆける世の中 だれもかれも「生まれてきてよかった」と思えるような世の中 自分を大切にすることが 同時にひとを大切にすることになる世の中 そういう世の中を来させる仕事が きみたちの行くてにまっている大きな大きな仕事 生きがいのある仕事」、私はこういうことが教育の場で語られるような、そういう教育を切望しております。  国連の児童の権利宣言、そして今度採択された子供の権利条約でも、人類は児童に対し最善のものを与える義務を負うものである、こう高らかに述べております。したがって、義務教育の最初の段階から詰め込み教育や詰め込み学級で、できる子、できない子を差別、選別する教育はすべきではないと私は強く思い、新学習指導要領の撤回を強く求めて、質問を終わります。
  213. 池田治

    池田治君 大分時間も遅くなりまして、外は暗くなりましたし、大臣もお疲れさまですが、もうしばらく、最後の一人でございますのでよろしくお願いします。  日本文化国家を目指す憲法を定めまして、文部省教育を重要視しておられることはけさの文部大臣のごあいさつでよくわかりましたけれども教育の中立、公正、平等ということもまた憲法上、教育基本法上の重要な課題であることは自明でございます。思想、信条による差別はもちろんのこと、貧富の差や身分による差別をも禁じていることも明白でございます。  文部大臣大臣就任の第一番目のごあいさつで、心を育てることが一番の基本とごあいさつされたと伺っております。その心の中にはこういった差別廃止の心も入っておるのでございましょうか、まずお尋ねいたします。
  214. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) 基本的な問題でありますが、私といたしますと、憲法の命ずるところ、そしてまた教育基本法にきちっと述べられていること、こうしたことは国民全体のために行われるべきものであるという考え方で、これからも中立性を維持して教育問題に取り組んでいきたいと思います。  したがって、今、御指摘委員のお言葉は、私の心の教育というものの中の一つの大きな柱として考えております。
  215. 池田治

    池田治君 差別をなくし教育の中立性を守るというお言葉で、本当にありがとうございました。しかし、現在の同和教育を見てみますと、なかなかそう差別というのは廃止されていないような事実もあるようでございます。  ここにある部落解放基本法制定要求国民運動中央実行委員会の発行しました「全国のあいつぐ差別事件」という本によりますと、高知県では一九八八年の四月から十二月までに小中高で二十四件の差別事件、静岡県では一九八七年の一年間に百件の差別があったといいます。  神奈川県のある中学校では学校の教室で、将軍、副将軍、武士、農民、商人、えた、非人という身分的差別でクラスの班の生徒名簿が作成されて掲示されていた、この掲示物を担任の教員も黙って見過ごしていた、こういう事実があるようでございます。また、福岡県では高校の教師が、昔は部落同士の結婚があって、近親婚になることがあるので障害者がたくさん生まれた、私の教え子で部落出身の生徒がいたが、顔もきれいで成績も非常によかったが指が四本しかなかったと言って差別教育をしていた事実もございます。  この本ではこういうことが言われておりますが、文部省自身もこういう事実の調査をなされておりますか、お答えをお願いします。
  216. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 学校教育の場におきましていまだに差別事件が起こっていることはまことに遺憾なことだと存じます。このような差別事象については十分な教育的配慮のもとに適切に対応することが必要でございます。今後とも一層この面の教育に力を尽くさねばならないと思いますが、私どもで都道府県教育委員会を通じまして調べましたところでは、昭和六十三年度におきまして小中高合わせまして百八十一件の差別事件があったという報告を受けております。
  217. 池田治

    池田治君 若干数字は違うようですが、文部省調査をされておるのには敬意を表しております。  そこで、十分な配慮をして教育していくということですが、これは都道府県の教育委員会を通じて指導なさるわけですか。
  218. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) こうした問題を克服するためには総合的な対策を講じていくことが大切でございます。地域におきます学校間の連携の強化とか校内における教職員の共通理解の徹底などを通じまして、同和教育の一層の充実に努めたいというふうに考えております。  私どもは都道府県教育委員会を通じましてこうした指導を徹底しているわけでございますが、今後ともさらに一層その指導を充実していきたいと思います。
  219. 池田治

    池田治君 現場教育ではどういう形式、方法で差別をなくする教育をなさっておるのでしょうか。簡単で結構です。
  220. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 学校におきます同和教育につきましては、対象地域があるなしにかかわらず全国すべての学校において、憲法、教育基本法に基づきます基本的人権の尊重を基本とするということでやっております。これには当然、児童生徒の発達段階というのがございますから、その発達段階を考慮しながら、各教科、特にこの場合は社会科が中心になるかと思いますが、社会科だけに限らずあらゆる教科の中で、特にまた道徳とか、それから特別活動とか教科以外の教育活動におきましてもそれぞれその活動の特質に応じまして適切に行うことにしております。  また、同和教育の具体的な実施に当たりましては、学校の置かれております地域の状況に応じて適切に行う必要がございます。対象地域を有する学校、それから対象地域を有しないけれどもこうした教育が必要でございますので、それぞれの特質に応じてやってまいるわけでございます。特に対象地域を有する学校におきましては、子供たちの学力の向上とか進路指導の充実とか、そういうことに特に留意して同和教育を行っております。  また、文部省でも同和教育の改善充実に資するために研究指定校とかそれから教育推進地域を指定していろいろ教育実践をお願いいたしまして、そこで研究をしていただいております。その研究成果は全国の教育関係者の参加を得ました研究協議会等を開催することによって全国の学校にそうしたものがフィードバックしていくようなこともいろいろやっているところでございます。
  221. 池田治

    池田治君 御苦労はわかりますけれども、それは今初めておやりになっているわけでなしに、もうずっと以前からそういう教育方法をやっておられるわけですね。  そうしますと、何年間もそういう同和差別教育を廃止しようとしてやりながらなおかつまだ現在残っておるということについてはどうお考えになりますか。これは心の問題に関係しますので、文部大臣にお聞きした方がよいと思います。
  222. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) いずれにいたしましても、同和教育、一番基本的になぜそんなことが日本の国の中に起きたのだろうか。私は千葉県でありますのでこの問題についての深刻なことは余り多く存じ上げておりません。でも、伺えば伺うほど、なぜこんな問題が起きたのだろうかという非常な疑問とまた憤りを感じている次第です。  そうした中において、この重要性にかんがみて従来から学校教育あるいは社会教育を通じて広く国民の基本的人権尊重の精神を高め、対象地域教育文化水準の向上に努めてきた、今後とも同和教育の充実に努めねばならないなと本当に思っておる次第であります。
  223. 池田治

    池田治君 文部大臣がおっしゃる心の教育が足りなくて知識を与えるのみの同和教育、今いろいろな先生方も御質問なさいましたが、偏差値中心の学力を上げようという教育のみであって、その中の知識の一環として同和差別教育を廃止しよう、こういう教育方針がどうもまだ残っておるよ うに感じるのですが、文部省はいかにお考えでしょうか。
  224. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 昔から教育は知育、徳育、体育と申します。もちろん知育も重要でございますけれども、現下の教育の状況を見ますと、先生御指摘のように心の教育と申しますか徳育と申しますか、そうした面に十分力を尽くさなければならないというふうに考えているわけでございます。  したがいまして、今回の新しい学習指導要領ではとりわけこの豊かな人間性を育成する教育ということを第一のねらいに掲げまして、その趣旨から改訂を行っているとろでございます。これは全教科を通じてということでございますが、とりわけ道徳教育につきましては今回全面的に改訂をいたしまして、道徳教育が各学校におきまして充実した形で行われますように対応しているところでございます。
  225. 池田治

    池田治君 そういう立派な指導要領ならいいんですが、ある雑誌によりますと、教育勅語がだめなら教育憲章をつくろう、教育基本法の上に置く教育憲章をつくろう、こういうように石橋文部大臣が言われたと書いてありましたが、大臣、いかがですか。
  226. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) 先ほども御議論をいただいたわけでありますが、今はそのような考え方は持ち合わせてはございません。
  227. 池田治

    池田治君 しかし「世界」の十一月号によりますと、ついこの間言われて、最近、文部大臣になってからそれは撤回した、こういうことでございますが、まだ大臣の心の中には、教育勅語的に国家統制の教育をやろうというお考えがあるのじゃございませんでしょうか。失礼ですが、お尋ねいたします。
  228. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) そのような考えは持っておりません。
  229. 池田治

    池田治君 ありがとうございました。ひとつ自由と民主主義を基調として、人権尊重の教育をお願いいたします。  それからその次は、逆差別のような学校もあると聞いております。余りにも差別廃止のために心を使い過ぎて、普通の一般の学生よりも特殊な教育をしている学校もあるやに聞いておりますが、こういう事実はございませんか。
  230. 菱村幸彦

    政府委員(菱村幸彦君) 私ども学校教育におきます同和教育の基本方針につきましては、先ほども申し上げましたけれども日本国憲法と教育基本法精神にのっとって、基本的人権教育、基本的人権の尊重の教育が全国的に正しく行われるということを一番の中心に据えております。したがいまして、いかなる形でも差別というものがないように、ですから逆差別も含めましてそうしたことのないように十分な教育が行われることを期待し、そのような指導をしております。  なお、同和教育につきましては、地域改善対策協議会の意見具申が昭和六十一年十二月に出されております。私どももここにございます方針に従いまして今後とも広く国民の人権尊重の精神を高めていく、そのための啓発活動の重要な一翼として学校教育の果たすべき役割は大きいというふうに御指摘をいただいておりますので、この方針に従いまして十分な指導をしていきたいと思っております。
  231. 池田治

    池田治君 次は勤務評定の問題についてお尋ねします。  地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四十六条には勤務評定のことが記載されております。これは人事管理を適切にするとか、偏向教育を防止するとか、教員の士気を向上するとかという理由で正当化されてきたわけでございますが、京都府では最初から実施せず、長野県では途中で廃止、東京都では人事・給与の決定の資料には用いてはならない、こういうところもあって全国一律に評定の実施は行われておりません。  そこで、文部省にお尋ねしますが、長野県のように途中で改廃してしまった県には廃止後大きな人事管理上の問題が生じたか、偏向教育教育の向上が特に見られなかったり、教員の士気向上がなかったり、こういう事例があるかどうかをお尋ねします。
  232. 倉地克次

    政府委員(倉地克次君) 長野県についてのお尋ねでございますが、突然のことで、私ども今、詳細な情報を得ていないわけでございますが、常日ごろからの私どもが承知しているところでは、特段の障害があったというふうには聞いていない次第でございます。
  233. 池田治

    池田治君 そこで、大臣にお尋ねしますが、偏向教育のおそれもない、教員の士気向上にも関係ない、また人事管理上の問題も余りない、こういうものならあっても無価値なようなもので余り意味はないのじゃないかと思うんですが、大臣はいかがお考えでしょうか。
  234. 倉地克次

    政府委員(倉地克次君) お尋ねの勤務成績の評定の問題でございますが、これは地公法上は任命権者が行うということになっておりまして、県費負担教職員については都道府県教育委員会のもとに市町村教育委員会が行うというふうになっている次第でございます。  今、先生御指摘がございましたけれども、私どもといたしましてはこの勤務成績の評価を人事評定などに活用するというふうに考えているわけでございまして、一般的な指導、助言の際にはそうしたことを指導している次第でございます。
  235. 池田治

    池田治君 確かに都道府県の教育委員会が計画して市町村委員会が評定するという形になっておりますが、先ほど来私が同和教育で尋ねたのは、文部省がいかに地方教育委員会指導、助言、援助していくことができるかというために聞いたわけでございます。その際には、同和教育には指導もできれば援助、助言もできるということでございますので、無価値なものならば助言、指導をされてもよいのじゃございませんか。
  236. 倉地克次

    政府委員(倉地克次君) 私ども教員の勤務成績の評定につきましては、先ほど来御説明申し上げておりますように一般的な指導、助言を行い、適正にこれが実施されるべきだというふうに考えている次第でございます。これはそうした意味で各種の人事評定の基礎になるものでございますので、私どもの方といたしましては大変貴重なものだというふうに考えている次第でございます。
  237. 池田治

    池田治君 しかし、東京都は全然やっていない、京都は初めからやらなかった。重要なものだと考えておるということなら、東京都や京都に対して勤務評定をやれという一般的指導をしたことがございますか。
  238. 倉地克次

    政府委員(倉地克次君) 個別に特段この問題についてだけ、近年、指導したことはないわけでございますが、毎年、人事主管課長会議などにおきましては、こうしたことも含めまして人事管理などについて適正に行うよう指導しているところでございます。
  239. 池田治

    池田治君 そこで、愛媛県では三十三年に勤務評定が施行されてから、日教組に加盟している者は校長や教頭の管理職にはしないという事実が三十数年間続いております。組合員は成績が悪くて人格識見とも教育者にふさわしくなく管理能力も劣っているならともかくとして、組合に加盟しない教員よりももっとすぐれた人が幾らでもあるわけですが、それでも管理職に登用しないという事実があります。  この点について、大臣はお知りにならぬでしょう、ただし文部省は知っているはずですから答えてください。
  240. 倉地克次

    政府委員(倉地克次君) 管理職への登用の問題でございますけれども、これは管理職試験による選考を得て厳正公平な立場に立って行うよう指導しているわけでございまして、組合員であるからといって差別的な取り扱いを行うことはないというふうに心得ている次第でございます。そういうことでございますので、今後ともそういう点については指導をしてまいりたいと考えております。
  241. 池田治

    池田治君 そのような模範解答であれば私は質問するわけはないのでございますが、私も今から三十年前には日教組の組合員でございまして、いまだに教員をしておれば、今、平教員の身分でございます。  東京都の場合には、幾ら日教組の活動をしていても、管理職になれば一応組合の活動から手を引いて管理職を全うしております。ところが愛媛県においてはそういうこともできない。日教組におったら試験を受ける資格も求められない、こういう事実がございますのですが、これをどう指導していただけるか、もう一度、指導の方法をお願いします。
  242. 倉地克次

    政府委員(倉地克次君) 私どもといたしましては、管理職登用試験については選考を得て行うわけでございますけれども、これは厳正公正な立場で行うよう従来から指導しているところでございまして、今後ともこうした指導は行ってまいりたい、このように考えております。
  243. 池田治

    池田治君 厳正中立の指導をしていただければもう結構でございますが、しかし評定そのものが曲がった評定になれば厳正中立という言葉はこれはなくなってしまうわけでございますので、仮にそういう事実というより私の発言が真実だとすれば、今後これについては是正するよう指導していただけるかどうか、お尋ねします。
  244. 倉地克次

    政府委員(倉地克次君) 先生の御発言がどうというお話ではございますが、私ども現在承知している段階におきましては、管理職の登用は厳正公平な立場で行われているというふうに承知している次第でございますので、今後ともそういう立場に立って十分指導を徹底してまいりたい、このように考える次第でございます。
  245. 池田治

    池田治君 国公法第百八条の七には、組合に加盟しても人事、給与に影響を与えてはならないということになっておりますので、どうか文部省当局においては中立、平等、公正の文教行政をやっていただくようお願いしまして、時間がありませんので私の質問を終わります。
  246. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 本日の調査はこの程度といたします。     ─────────────
  247. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 次に、私立学校教職員共済組合法及び昭和六十二年度及び昭和六十三年度における私立学校教職員共済組合法の年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。石橋文部大臣
  248. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) このたび、政府から提出いたしました私立学校教職員共済組合法及び昭和六十二年度及び昭和六十三年度における私立学校教職員共済組合法の年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。  私立学校教職員共済組合の給付については、共済組合設立以来、国公立学校教職員に対する給付の水準との均衡を保つことを本旨とし、逐次改善が進められ、現在に至っております。  今回は、最近における社会経済情勢にかんがみ、厚生年金保険及び国家公務員等共済組合における措置に倣い、標準給与の等級の上限の引き上げを行うとともに、年金額の算定の基礎となる標準給与の月額の再評価等の給付の改善を図り、また、平成元年度における特例としての年金額の改定措置を講じる等所要の改正を行うため、この法律案を提出することといたしたのであります。  次に、この法律案概要について申し上げます。  第一に、私立学校教職員共済組合の役員の任命について、行政改革の趣旨に沿い、理事は、理事長が文部大臣の認可を受けて任命することといたしております。  第二に、掛金及び給付の基礎となる標準給与の等級の上限を四十七万円から五十三万円に引き上げるとともに、その等級の区分についても改正することといたしております。  また、短期給付に係る標準給与の等級については、政令で定めるところにより、さらに上位の等級を加えることができることといたしております。  第三に、退職共済年金等の額の算定の基礎となる標準給与の月額について、社会経済情勢の変動を勘案したいわゆる再評価を行うことにより給付水準の改善を図ることといたしております。  第四に、私立学校教職員の雇用の実態及び厚生年金保険における取り扱いとの均衡を考慮し、私立学校に在職する教職員に対し、六十五歳に達した日の前日に退職したものとみなして、年金を支給することといたしております。  なお、この年金の支給を行うに当たっては、一定以上の高額の給与を受ける者については、政令で定めるところにより、その給与の額に応じ、年金額の一部の支給を停止することといたしております。  第五に、平成元年度における年金の額の特例改定措置でありますが、厚生年金や国民年金の改定措置に倣い、昭和六十三年の消費者物価上昇率を基準として平成元年四月から引き上げを行うことといたしております。  その他所要の規定の整備を行うことといたしております。  最後に、この法律の施行日につきましては、標準給与の等級の上限等の改正及び標準給与の月額の再評価については、平成元年十月一日、六十五歳以上の組合員に対する年金の支給については、平成二年四月一日とし、その他の改正については、公布の日といたしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び内容の概要でありますが、衆議院において、標準給与の月額の再評価の実施時期を繰り上げること、これに伴い平成元年度における年金の額の特例改定措置に関する規定を削除すること、及び施行期日等に関する附則の規定等の修正が行われております。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  249. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) この際、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員臼井日出男君から説明を聴取いたします。臼井日出男君。
  250. 臼井日出男

    衆議院議員臼井日出男君) ただいま議題となりました私立学校教職員共済組合法及び昭和六十二年度及び昭和六十三年度における私立学校教職員共済組合法の年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する衆議院修正につきまして御説明申し上げます。  本修正は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の提案に係るもので、厚生年金保険及び国家公務員等共済組合と同様に標準給与月額の再評価による給付改善の実施期日を繰り上げようとするものであります。  次に、修正の内容を御説明いたします。  第一は、年金額の算定基礎となる標準給与月額の再評価に関する規定の実施期日を平成元年十月一日から同年四月一日に繰り上げることといたしております。  第二は、第一の措置に伴い、平成元年四月からの特例物価スライドが不要となるため、当該特例物価スライド措置に関する規定を削るとともに、本法律案の題名を改めることとしております。  第三は、この法律は、公布の日から施行することとし、これに伴う所要の経過措置を講ずることとしております。  以上をもちまして、修正案の趣旨説明を終わります。
  251. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 以上で趣旨説明並びに修正部分説明の聴取を終わりました。  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  252. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  253. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 次に、教育職員免許法の一部を改正する法律案を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。石橋文部大臣
  254. 石橋一弥

    国務大臣石橋一弥君) このたび、改府から提出いたしました教育職員免許法の一部を改正する法律案について、その提案理由及びその内容の概要について御説明申し上げます。  本年三月の高等学校教育課程の基準の改正により、平成六年度から、教科「社会」が「地理歴史」及び「公民」に再編成されることとなっておりますが、これを受けて、高等学校の免許教科「社会」を「地理歴史」及び「公民」に改める等の措置を講じることといたしております。  この法律案概要は次のとおりであります。  第一は、平成二年度から高等学校教員の免許状に係る教科について「社会」を「地理歴史」及び「公民」に改め、同年度の大学入学者から、「地理歴史」または「公民」で養成教育を行うこととしております。それ以外の者については、平成六年三月三十一日まではなお従前の例によることとし、「社会」の免許状を援与することとしております。  また、「社会」の教科についての免許状については、高等学校の教科が改正される平成六年四月一日に、「地理歴史」及び「公民」の各教科についての免許状とみなすこととしております。その他所要の経過措置を講じるものであります。  第二は、免許状の授与、教育職員検定等に係る手数料について、適切な費用負担を図るため、その額を実費を勘案し政令で定める金額とすることとしております。  以上がこの法律案の提案理由及び内容の概要であります。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
  255. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。     ─────────────
  256. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  教育職員免許法の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  258. 柳川覺治

    委員長柳川覺治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時一分散会