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1989-11-07 第116回国会 参議院 大蔵委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月七日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────   委員氏名     委員長         藤井 孝男君     理 事         梶原  清君     理 事         山岡 賢次君     理 事         久保  亘君     理 事         本岡 昭次君     理 事         峯山 昭範君                 石川  弘君                大河原太一郎君                 斎藤 文夫君                 田辺 哲夫君                 中村 太郎君                 藤田 雄山君                 宮崎 秀樹君                 吉川 芳男君                 赤桐  操君                 稲村 稔夫君                 鈴木 和美君                 前畑 幸子君                 村田 誠醇君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 古川太三郎君                 三治 重信君                 下村  泰君                 野末 陳平君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         藤井 孝男君     理 事                 梶原  清君                 山岡 賢次君                 久保  亘君                 本岡 昭次君                 峯山 昭範君     委 員                 石川  弘君                大河原太一郎君                 斎藤 文夫君                 田辺 哲夫君                 中村 太郎君                 藤田 雄山君                 宮崎 秀樹君                 吉川 芳男君                 赤桐  操君                 稲村 稔夫君                 鈴木 和美君                 前畑 幸子君                 村田 誠醇君                 和田 教実君                 近藤 忠孝君                 古川太三郎君                 三治 重信君                 下村  泰君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  橋本龍太郎君    政府委員        大蔵政務次官   高村 正彦君        大蔵政務次官   高木 正明君        大蔵省主計局次        長        寺村 信行君        大蔵省主税局長  尾崎  護君        大蔵省理財局次        長        松田 篤之君        大蔵省証券局長  角谷 正彦君        大蔵省銀行局長  土田 正顕君        大蔵省国際金融        局次長      江沢 雄一君        国税庁直税部長  福井 博夫君    事務局側        常任委員会専門        員        保家 茂彰君    説明員        労働省労働基準        局賃金時間部賃        金課長      鹿毛  明君        労働省婦人局婦        人労働課長    鈴木 佑治君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国政調査に関する件 ○所得税法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○租税及び金融等に関する調査  (派遣委員の報告)     ─────────────
  2. 藤井孝男

    委員長藤井孝男君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、租税及び金融等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 藤井孝男

    委員長藤井孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 藤井孝男

    委員長藤井孝男君) この際、橋本大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。橋本大蔵大臣
  5. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先般、大蔵大臣を拝命いたしました橋本でございます。  幸いにも我が国経済は、現在物価が安定する中、極めて息の長い景気拡大を続けるなど、まことに良好な状態にあります。しかしながら、来るべき高齢化社会に備え、国際社会における責任にこたえていくための解決すべき課題は多く、その責務の重大さを痛感しております。  私といたしましては、まず新税制、とりわけ消費税の円滑な実施に努めるとともに、平成二年度予算においては財政改革の第一段階である特例公債依存体質脱却の実現を図るなど、今後の財政金融政策の運営に遺漏なきよう全力を尽くす所存であります。  委員各位の御指導、御鞭撻のほどを切にお願い申し上げます。(拍手
  6. 藤井孝男

    委員長藤井孝男君) 次に、大蔵政務次官からそれぞれ発言を求められております。順次これを許します。高木大蔵政務次官
  7. 高木正明

    政府委員高木正明君) 先般、図らずも大蔵政務次官を拝命いたしました高木でございます。  職責の重大さを痛感いたしておるところでございます。微力ではありますが、全力を傾けて職務遂行に邁進したいと考えておりますので、委員各位の御指導と御叱正を心からお願い申し上げます。(拍手
  8. 藤井孝男

  9. 高村正彦

    政府委員高村正彦君) 先般、再び大蔵政務次官を拝命いたしました。  厳しい財政情勢の折から、その職責の重大さを自覚し、誠心誠意職務遂行に当たる所存でございます。  よろしく御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げます。(拍手)     ─────────────
  10. 藤井孝男

    委員長藤井孝男君) 次に、所得税法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。橋本大蔵大臣
  11. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ただいま議題となりました所得税法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内 容を御説明申し上げます。  政府は、最近における社会経済情勢にかんがみ、給与所得控除最低控除額を引き上げるなど所要の改正を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  まず、主としてパート所得者税負担軽減の見地から、パート所得者所得税課税されない給与収入限度額を八万円引き上げ百万円とすることとし、給与所得控除最低控除額を五十七万円から六十五万円に引き上げる改正を行うことといたしております。  次に、内職所得者について、パート所得者との均衡を考慮して、必要経費最低保障額を五十七万円から六十五万円に引き上げる改正を行うことといたしております。  これらの改正につきましては、平成元年分以後の所得税について適用することといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  12. 藤井孝男

    委員長藤井孝男君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ただいま議題となりました所得税法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、いろいろと御見解を伺いたいと思うわけでありますが、それに先立ちまして、若干税というものについての基本的な政府考え方を伺っておきたい、このように思うところであります。  私は、本委員会に所属をいたしますのは初めてでありますし、質問も素人の立場で、極めて幼稚であったりあるいは素朴であったりというようなものがあるかもしれませんが、これは税を国民に知ってもらうという意味でも、そうした素人の疑問にわかりやすく答えていただくということも非常に大事だと思いますので、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと存じます。  そこで、最初に税というものについて、特に課税に対する基本的な考え方について伺いたいと思います。  どうも私よくわかりませんのは、よくシャウプ税制以来の大改革というふうに言われるわけであります。今度の消費税のときにもそういう提起をされているわけでありますけれどもシャウプ税制と言われるもの自身が持っておりましたその理念というようなものは、総合課税の方式をとっておられたわけでありまして、それなり一つ理念ということで、体系的なものができていたと思うわけであります。しかしそれを結局、キャピタルゲイン課税あるいは富裕税等の廃止、あるいは利子分離課税、その他各種特別措置拡大というような形で、このシャウプ税制の持っている、理想とするものをずっと歴代のいわば自民党政府が崩してきたということになると思うのでありまして、私は、もう既にシャウプ税制理念というものはすっかりどこかへ行ってしまっているのじゃないだろうか、こんなふうにも思うわけであります。  現在の税制というものについて、そうすると基本的な考え方はどのようにしておられるのかということ、これを大臣に伺っておきたいと思います。
  14. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員から御指摘がございました点、政府税制調査会言葉をそのままかりますと、昭和六十一年十月の抜本答申の中に公平、公正、簡素、選択、活力という五つがその基本理念として挙げられているところであります。私は、ここに言われる公正と公平という言葉につきまして、その区別が必ずしも明確ではございませんけれども、公正というものは、いわば公平を前提としながら、執行面の適正さをも含めた、税制が全体として社会経済に対し適正な役割を果たすことを意味しているのではないかと理解をいたしております。  そうした前提に立ちまして、税制基本理念ということにつきましては、古くからいろいろな言い方がされておりますけれども、先般の税制改革に当たりましては負担の公平、経済への中立性制度の簡素さ、公平、中立性、簡素というものを基本理念としてとらえたわけでございます。こうした基本理念と申しますものは、どの時代におきましても基本的に税制一般に対する要請として当てはまるものではなかろうか、そのように理解をいたしております。  この基本理念が満たされているかどうかということになりますと、その判断税制全体を見て総合的に判断されるべきものでありますから、判断基準を設けることはなかなか一義的には困難な話でありますけれども、私どもとしては、国民の声に耳を傾けながら、基本理念に沿ったものとして税制が運営されますように努力をしてまいったつもりでございます。
  15. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 簡素という言葉は、これは比較的率直にすぐわかるような気がいたします。ただ、大臣も言われましたように、公正あるいは公平、この辺のところになりますと、あるいは経済に対する中立という場合も、よって立つスタンスによっていろいろ評価が違ってくるということが起こるわけであります。ということになってまいりますと、一体この公正あるいは公平、中立というその物差しは何を基準にしてだれが判断するのかというのがやっぱり問題なんだと思います。その辺どのように考えておられますか。
  16. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに委員が御指摘のように客観的な物差しといって当てはまるものが必ずしも第一義的にあるわけではありませんが、今の御意見も私はそれなりに素直に伺わなければならぬと思います。  ただ、例えば、近年本格的な税制改革が行われてこなかった間に、税体系の中で負担給与所得を初めとする個人稼得所得に偏る一方で、その裏腹に個別消費税制度に依存する消費課税ウエートというものが著しく低下をしておりました。その結果、税に対する不公平感あるいは重税感というものが高まっておったことは委員承知のとおりであります。また、経済国際化が進展する中におきまして、従来の法人課税あるいは消費課税制度を放置しておきますと、経済空洞化を生じたり、あるいは対外的な摩擦が深刻化するおそれがございました。  こうした状況の中で、税の負担の公平を確保して税制経済に対する中立性を保持し、また簡素化というものを図る基本理念から、所得課税の大幅な軽減消費税の導入、資産課税適正化などによりまして、均衡のとれた税体系の構築を図ってきたつもりでございます。  その税負担の公平と申しますのは確かにいろいろな見方がございます。しかし、税体系全体としてごらんをいただきますと、個人所得、特に給与所得並びに法人所得に偏りました税負担構造を改めながら、消費に対する負担に従来以上のウエートを持たせるような構造に改めましたこと。また、個人所得課税におきまして、人的控除の引き上げなどを行いましたほかに、税率構造を抜本的に見直して、全体的に累進構造の緩和を図りましたこと。あるいは、法人所得課税につきまして、諸外国における税率引き下げの動向に留意をしながら我が国においても税率引き下げを図ってまいったこと。また、消費の半分近くのウエートを占めておりましたサービス支出というものにほとんど負担を求めることがなく、かつ物品に対する支出にのみ、しかもそれを限られた特定の物品についてのみ重い負担を求めてまいりました個別間接税制度を抜本的に改めて、消費一般に広く薄い負担を求める消費税を導入した、創設をした。  また、租税特別措置に代表されますいわゆる不公平税制と言われるものにつきましても、これらは実は各種政策を推進するなどの観点から課税の公平をある程度犠牲にすることをいわば承知の 上でとってきたものでございますけれども、そのあり方について見直しを行う努力の中で、昨年十二月の税制改正におきましても、社会保険診療報酬課税特例見直しを行い、また従来原則として非課税となっておりました有価証券譲渡益に対しても原則課税とした。  こうしたことは、まさに今申し上げたような努力のあらわれと御理解をいただきたいと思うのであります。
  17. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今の御答弁について、やはり私は抽象的には今大臣が言われたいろいろなこと、それなりにわかるような気がいたします。しかし、具体的なものは、課税をされる国民そのものがどう判断をするかということに結局は落ちつくのではないかと思う。  その国民全体がどう判断をするかという問題になってまいりますと、そこの辺のところは、いろいろ考え方によって違いがあるのかもしれません。しかし、少なくとも国民の大多数を基準にして、そしてその国民判断に結局まつという形で、公正、公平、中立あるいは簡素というものが具現化するのではないか、そんなふうに私は思っております。この辺は、まだいろいろと議論をしなければならない問題なのではないかというふうに思います。  このところばかりで時間をとるわけにまいりませんから次に移らせていただきますが、今の公平――公平と言ってみ、公正と言ってみ、そのかかわりの中で所得税についてもいろいろと問題点があるわけでありまして、これも私は改めて議論をしなきゃならないというふうに思っておりますが、特にきょうは法人税について若干伺っておきたいと思うのであります。  これはちょっと私もいつも不思議に思っているのでありますが、毎年高額納税者ランキングなどというのが公表されますね。個人高額納税者納税額公表される、こういう形になっておりますけれども法人の場合は、ランキングが発表されますと、これは所得の方で発表されておりまして、そして納税額公表されていない。この辺のところはどういう理由でこんな取り扱いになるんでしょうか。
  18. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 所得税の方でございますが、税額公示という形になりましたのは昭和五十九年度からでございまして、それまではやはり所得公示をしていたわけでございます。  なぜ税額で示すようになったかと申しますと、高額所得者税額を具体的に明らかにいたしますと、国民が自分の負担している税、それが一体どのぐらいの水準かということを知る一つのめどになるのではないか、それが税負担というものに対する国民の正しい認識というものを助けることになるのではないかということが一つ。それから、高額所得者はやはりたくさん税を払っていただきまして国に対して貢献をしているということなのでございますが、それが明らかになりまして納税者納税意識というものに対しましてよい影響があるのではないか。そういうようなことを勘案いたしまして、所得税につきましては税額を示すということになっているわけでございます。  ところが法人の方は、御承知のように年所得四千万円を超える法人所得額公示しているわけでございますけれども所得税の場合と違いまして法人税というのは累進税率ではございません。原則といたしましてフラット――若干中小等につきまして特例はございますけれども税率フラットでございますから、所得で示しますと大体税額もそれでわかるわけでございまして、こちらの方は所得で示すということで現在に至っているわけでございます。
  19. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうも私それではよくわからぬのですがね。そうすると、学者の中にはよく法人税については、例えばシャウプのように法人株主の全部の集合体だという考え方で、それでいわゆる擬制説という表現を使う人もいますけれども、そういう形で二重課税を防止するという、そういう考え方法人税はいろいろと取り扱われているという学者もいます。それからもう一方では、法人自体課税主体であるという、言ってみれば実在説といいますか、というふうな形での物の見方をしている学者もいる。そういうふうに分類している学者もいるわけでありますが、そうすると我が国の場合は、今のお話だと法人税というのは擬制説によると、今の学者の分類をかりれば擬制説による、こういうことになっているわけですか。
  20. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 法人につきまして擬制説実在説という長い論争があるわけでございますが、最近、学者の方は割合にそういう議論をなさいませんで、それはもうその法人という存在をあるがままに、そのまんまに認めまして、何といいますか、哲学的な存在理由あるいは認識議論するよりかは、例えば配当の調整をどうするかとか、あるいは税負担をどのように求めるのかというようなもっと個別具体的に議論をするような風潮に変わってきているように思います。  税負担水準等につきましても、むしろこれまでになかった極めて流動化している国際的な経済というようなものを考えまして、海外との比較をより重視するというようなことで決めていきますとか、いろいろと議論内容が変わってきておりまして、余り擬制説実在説ということで論争を――ややあの論争は神学的なところもあるものですから、そういう論争をするよりかはもっとプラグマティックに個々具体的に議論をするというのが最近の風潮のように私どもは見ております。
  21. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そういう見方もあるのかもしれませんが、私は、六十三年版の財政学などの本ではまだその辺は何冊にも書かれているのを読んでおりますので、そういう意味でいったらそう簡単に乾いているものじゃないというふうに思います。  それから、私がこんなことを伺いましたのは、やはり個人の場合は、一方ではプライバシーの問題だとかなんとかということになると非常に大事にされなければならない個人とのかかわりの問題がある。だが、法人というのはむしろもっとすっきりとガラス張りにならなければならないという極めて素朴な常識的な見方があるわけであります。  そういたしますと、法人一つ課税主体として見ていくという場合と、今の株主という個人の集団として見ていく場合とではやっぱり法人税あり方そのものについての物の基本がかなり変わってくるということになるわけで、今のお話のように、その辺は具体的ないろいろな現象に対する対応ということが議論になっているとおっしゃるけれども、その具体的な対応をしていくにもやはり根本的なあり方が、考え方が違ってくればそこは違ってくる、こんなふうにも思うわけなのでありまして、それだけに大変気になるところであります。  ということで、この辺もまた学者の中でも論争があるところだという話でありますから、ここで論争をしているわけにもいきませんが、要は、むしろ率直な素朴な気持ち法人の方も税額を明確に公表されたらどうですかということについては、これは今後される気持ちはありますか。
  22. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) どうも主税局長答弁をしますと大変学者みたいな話をしますので、素人感じでお答えを申し上げたいと思うんです。  実は私は、今の法人については所得金額公表で、その方がむしろ我々からするとわかりやすいという感じがあります。なぜなら、実は外国税額控除というものがございます。これは、シャウプさんが日本税制をお立てになったころの日本企業からいきますと、ほとんど考えられないことでありました。しかし、今これだけ多国籍化しつつある、あるいは国際的に動きつつある経済の中で、我が国企業外国における納税者となっておるものは多々あるわけであります。そうなりますと、仮に正確を期して日本国内外国税額控除の後の日本国に納める税額公示するということになりますと、これは実は必ずしも企業実態を示すものとはならないのじゃないでしょうか。むしろ法人企業所得というものを適正にあらわすとすれば、やはり企業全体の姿が公示をされる形 の方が私は実は正しい、正しいというか、国民から見てその企業の力というものがわかりやすい、こう思うんです。  所得税税額公示も実は外国税額控除前のものであるということでありますけれども、仮に外国税額を控除しました後の税額公示ということをいたしました場合に、必ずしも私はそれぞれの企業実態国民の前に示すものとはかえってならないという感じがするのですが、いかがでしょう。
  23. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 その辺は、私は公表をする方法によっては企業実態国民の皆さんにもわかりやすくすることというのは可能だろうと思うんです。例えば、今大臣がいろいろと指摘をされましたそういう点も、所得納付税額も、そして外国税額控除も、大臣指摘されたようなことがそれぞれ明らかにされていけばそれなりに納得できるという公表方法もあろうかと思うんです。  私は、先ほど申し上げましたように、個人の場合というよりも法人の場合というのはむしろガラス張りになってだれでもがわかりやすいということが大事だというふうに考えますので、そういう公表方法というのは個人と同じだっていいんではないか、みんなわかりやすいようなやり方でいいんではないか、こんなふうに思うわけであります。  これは意見でありますから、次に進ませていただきましょう。ちょっと事務的なことを伺います。  そうすると、租税特別措置法による減収額というのがありますね、現在の減収額。そして、その中で、いわゆる大企業と言われる法人の占める割合と、それから、租税特別措置法そのものの適用ではないけれども同じような考え方によって法人税法の中で損金算入が認められているものというのがあるわけでありますが、この措置がされていなければということで、減収額とその中で大きな法人の占める割合というようなことが統計としてありましたらお知らせいただきたい。
  24. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 法人税関係の租税特別措置によります減収は、平成元年度、平年度ベースにいたしまして五千七十億円というように見積もっております。租税特別措置所得税等を含めまして全体で一兆八千三百六十億円でございますから、それの二七・六%ということになるわけでございます。この法人関係の減収見込み額五千七十億円のうち資本金一億円超の大法人に係る減収額でございますが、それは三千五十億円というように見込んでおりまして、全体に占めます割合が六〇%程度と見ております。  なお、御参考までに申し上げますと、法人税のうち資本金一億円超の大法人が納めておりますのがやはり六〇%をちょっと超えた六三%程度と言われておりますから、大体見合った数字になっているわけでございます。  もう一つ、その法人税につきまして損金算入が認められているもので租特ではないけれどもというお話でございますが、いわゆる引当金というものがございます。その特に大きなものといたしまして一般に言われますのが貸倒引当金と賞与引当金と退職給与引当金でございますけれども、やや御質問に的確にお答えしていないかもしれませんが、現在どの程度その引当額があるかということを申し上げますと、六十二年度の数字でございますが、貸倒引当金の残高が三兆二千億、それから退職給与引当金の残高が約十兆円、賞与引当金の残高が五兆五千億というところでございます。
  25. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、こうした租税特別措置法によるもの、あるいはそれと同じような考え方で法律的な措置によって対応をされているものというものにつきましては、これは諸外国と比較するとき、いつもここのところで非常に難しい問題が出てくるところなわけであります。この辺のところはむしろ私は今後すっきりとする必要があるんではないかというふうに思っております。これがなければやっていけないというんであれば、ほかの国もみんな困るということになるわけでありますから、そういう意味では私は、ここのところからまさに大幅に見直していかなければならない問題ではないかというふうに思っております。  これも時間の関係もありまして、法案の内容の審議もありますから、先に急いでまことに恐縮でありますけれども、ここのところは大いにまたさらに議論を深めなければならない問題ではないかというふうに思っております。  次に、キャピタルゲインの課税について伺いたいと思います。  キャピタルゲイン課税というのは、先ほども大臣がちょっと言われましたが、この四月から有価証券譲渡益についてはみなし譲渡益という形で五%見て、そしてその分離課税方式でこれに一%課税をされる、こういうことになったわけであります。  ここのところが私もよくわからぬのでありますけれども、分離課税とか総合課税とかといろいろ言われるわけでありますが、時には、物によっては総合課税で物を見ていき、時には分離課税でというのがこれはどうも基準がよくわからぬですね。どういうときに分離にして、どういうときに総合にしてみるのかというようなこともありますけれども、しかしここは今、キャピタルゲインの問題についてだけ集約をして伺いましょう。 なぜ総合課税にしないで分離課税ということにしたのか、その理由をお聞かせください。
  26. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは御指摘をしばしば今までも受けてまいりましたところでありますけれども有価証券の取引及びこれにかかる譲渡益を把握する仕組みが十分整備されないままに総合課税制度に移行いたしました場合には、かえって実質的な公平確保の面で問題が出てくる。また譲渡損失を他の所得から控除することは、譲渡損失ばかり申告されるといった譲渡損失の取り扱いの問題がある。こういったことから、当面の措置として申告分離課税並びに源泉分離課税の選択制を選んだというふうに私は報告を受けております。
  27. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、一口で言ってしまえば、どれだけの取引をされたかという実際にその掌握が困難である、だからアバウトでもって利益は一定のパーセンテージを掛けてみましょうと、こういうことしか方法がない、こういうことなんでしょうか。もしそうだとすれば、譲渡益を確実に捕捉する方法というのは何か追求しておられるんですか。あるいはそういう方法を何とかしてつくって、将来は総合課税方式に持っていけるようにという御努力なり御検討なりというのをしておられるんでしょうか。
  28. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 総合課税というのは我が国所得税制でとっている基本的な建前でございまして、確かにその総合課税制度というのは大変合理性を持っているものでございますから、それがそのまま実現できれば結構なんでございますが、現実の問題として、委員指摘になりましたように把握の非常に難しいものがございまして、典型的にはこのキャピタルゲイン課税お話になるわけでございます。  総合課税ということにいたしますと、大臣が先ほど申しましたように、なかなかつかまえにくいというところを利用して、自分が損失が出たときに限りそれを申告して、ほかの所得と相殺して減らしてしまうというようなことをやられますと、それは本来税務署がそういうものを発見しなくてはいけないのでございますが、事実上なかなか難しい点がある。したがいまして、シャウプ税制総合課税有価証券譲渡益が実は入っていたんですが、途中でこれは実施が難しいということで外れていった、そこに理由があるわけでございます。  それじゃどうしたらいいのかということでございますが、諸外国の例などを見ますと、例えばアメリカなどで行われておりますような納税者番号制度のようなもの、そういうもので取引が一々税務当局に把握できる体制というものがもし打ち立てられますと、総合課税が可能になってくるわけでございます。  税制調査会からも私ども答申をいただいておりまして、そういう番号制度について勉強を進めるべきであるということが言われておりまして、政 府の内部で、ただいま十三省庁であったと思いますが、集まりまして行政番号制度についての勉強会を続けているところでございます。こういうようなものができませんと、実際上、建前は非常に立派な制度をつくりましても、現実には運の悪い人だけが捕まるとか、あるいはまじめな人だけが申告するとか、そういう思いもかけぬ実際上の不公平を生じてしまうものですから、そういうシステムとしてのバックアップがどうしても要るという気がいたします。  ただ、番号制度というのはプライバシーの問題、それから一々取引に番号を入れていただくというような国民の手間暇の問題、いろんなことがあるわけでございます。  それからもう一つは、キャピタルゲイン課税の場合に忘れてならないことは、実は親から遺産で譲り受けたとか、自分で買った株だけれども、もうずっと前に買ったもので幾らで買ったのかわからなくなってしまったとか、そういう取得価格の面がつかまえにくい。それで非常に株の管理やなんかが進んで十年、二十年とたってくればそういう問題も解決できるのかもしれませんが、現実には納税者番号制度ができても、売った価格から取得価格を引くその取得価格の把握の点でまだ解決できない問題があるというようなこともございまして、これはなかなか難しい要素があるわけでございます。  そこで、いろいろな過去の計数等をもとにいたしまして一種のみなし所得を決めて分離で計算した方が、御指摘のようにアバウトかもしれませんけれども、次善の公平策ではないかということで現在のような制度に踏み切ったわけでございます。
  29. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は難しいことはよくわかりますけれども、しかし株価というものが今のようにいろいろな要素があってずっと上がり続けていることだけが想定されているときだったら、それはキャピタルゲインだけのことで物を考えていけばいいことでありますが、これからキャピタルロスのかかわりも一緒に考えていかなきゃならないということになってくると、やはり総合課税の方式というのが最終的にはうまくできてこないと困ることができてくるんではないか、こんなふうにも考えておりますので、その辺はぜひ鋭意御検討いただきたい、こんなふうにも思うんです。  ただ、そうするとアバウトだということだけれども、五%とした理由は何ですか。根拠というのはどういうことでしょうか。これは多分株売買のあれで上昇率だとか、それから売買の回転率というんでしょうか、そういうようなものなども勘案をしておられるんだと思いますけれども、その辺どういうふうに見ておられるんでしょうか。
  30. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 御指摘のとおりでございまして、過去十年間、五十三年から六十二年の加重株価平均の一年当たり伸び率というものを計算してみますと一五・三%になるわけでございます。個人投資家の平均的な年間の売買回転率というのは二、三回と言われておりますので、それを勘案いたしまして平均的な売買差益率を出しますと五・一から七・七%ぐらいであろうかということでございます。そこから手数料が取引のためにかかりますので、その取引コスト分、大体二%でございますが、それを差し引きまして平均的な所得率を計算して、それを五%としているわけでございます。  分離課税に二種類ございまして、この五%に二〇%を掛けて、結局売買額の一%という分離課税をする方法と、それからもう一つは申告分離課税といいまして、株の取引全体について自分の一年間の損得を計算いたしまして、利益が出た場合には申告をするというやり方、これはあくまで分離課税でございますから損が出てもほかの所得から引けないわけでございますが、株の譲渡益、譲渡損との調整はできるわけでございます。それで、申告分離したとき、そのときの税率が二〇%でございまして、そこは両方がバランスがとれているわけでございます。
  31. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今の、どうも数字のとり方というのはいろいろなことがあるんで私どもよくわからぬのですよね。  一番新しいあれによると、さっき局長の言われた一五%というのは大体一九%ぐらいになっているという計算もあるようでありますし、これはそうすると、その辺はまた見方一つあるのかもしれませんが、回転率はどのくらい見ておりますか。
  32. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 個人の場合、二ないし三であろうというように言われております。
  33. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今、あろうというお答えでしたけれども、あろうというのはわからないということですか。
  34. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) いえ、そういうわけではございませんで、いろいろな計算方法があるわけでございますが、何回というふうにぴしっと割り切った数字というのは必ずしもよくわからない、その年によって株の情勢によって変わるわけでございますから。でも、大体証券取引の資料を見ますと、個人株主の場合には平均して年に二回ぐらい取引をしている、あるいは三回ぐらい取引をしている、その辺のところではないかということでございます。(「二と三、大分違うじゃないか」と呼ぶ者あり)
  35. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ちょっと今ここでもそういうささやきが出ていますけれども、非常に大きい金額のものが動くんですからね。二と三では相当な違いが出てくるわけですし、それははっきりした根拠をやっぱりあれしなければ、それこそそんなにいいかげんなことでやっているということになると、これは非常に問題だと思うんです。
  36. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 先ほど申し上げましたように、過去十年、これは五十三年から六十二年で計算をいたしましたが、一年当たりの伸び率が一五・三%でございます。二回で計算しますと一回当たり七・七%、三回で計算しますと五・一%ということになるわけでございます。それから、手数料というのが取引のたびにかかります。これが二%近いというように言われておりますが、それを差し引きいたしまして、仮に二%として計算してみますと三・一から五・七ということになるわけでございまして、大体その辺のところを勘案いたしまして五%の所得率というように決めたわけでございます。
  37. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうしても素人の私にはわからないんですが、そして加重平均をされる、じゃ加重平均というのはどういうやり方でやっておられるのかというようなことなどもまたずっと疑問になってくるわけで、ここのところ疑問ばかりずっとあれしていると切りがないんでありますが、大変恐縮でありますけれども、そうすると今の回転率を、であろうというのはどうも納得したというわけにはいかないんですけれども、じゃ回転率を算出をした根拠をわかりやすく方程式かなんかにして、そして具体的なバックデータというものをつけて私の方に後でいただけませんか。
  38. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) そのようにいたします。
  39. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 お願いいたします。  次に、株式所有の大衆化と大口投資家への株式の集中ということがやはり大きな問題になっていると思うんであります。そこで、確かめておきたいんでありますけれども、株式の個人所有と法人等の所有の割合、特にその中で最近は銀行等の金融機関の保有というのがかなり問題になってきているわけでありますが、その占める比率というのはどうなっておりますでしょうか。
  40. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 御指摘の点につきましては、全国証券取引所協議会におきます国内の上場会社につきましての上場普通株式を対象にいたしました昭和六十三年度の株式分布状況調査というのがございます。これは平成元年三月末を基準としてやっているわけでございます。  これによりますと、株主数は全体として延べで二千二百六十九万人でございますが、そのうち個人が二千百六十四万人ということで九五%でございます。ただ、株式数あるいは金額で見ますと、かなり法人ウエートが高いということでございます。具体的に申しますと、個人が、大体株数のベースで二二・四%、金額ベースで一九・九%の 保有になっております。それに対しまして、法人が、株数ベースで七三%、金額ベースで七五・四%の保有になっております。なお、若干差額がございますが、一〇〇との間の差額でございますが、そこの差額につきましては政府でございますとか外国人が保有しているということでございます。  それから、法人のうち銀行等の金融機関につきましては、株数ベースで四五・六%、金額ベースで四四・一%を保有している、こういう状況でございます。
  41. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今の金融機関の分は、これは全株数に対してですか、それとも今の法人所有の中でですか。
  42. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) これは全体についてでございます。
  43. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 わかりました。  それから、それでは個人所有の株式のうち、私は通告の方は百万株以上というふうにしてありますけれども、要するに大口投資家という者の占める比率、これはどんなふうになりますか。
  44. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 実はそれについての調査はございません。と申しますのは、この株式分布状況調査というのは、それぞれの上場会社ごとに例えば個人が幾ら、金融機関が幾らといった株式の保有数をアンケート調査したものでございまして、そういう意味で上場会社全体にわたるいわゆる名寄せといいますか、そういうものは行っていないわけでございます。したがって、個人の大口投資家が幾らになるかということについての調査というのは具体的にはないわけでございます。
  45. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、株式の保有というのは全体の中でどういう分布になってどうなっているかということを見る資料というのは、今のところは大蔵省にはないということになるんですか。
  46. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) さようでございます。例えば、日立を幾ら、新日鉄幾らというふうに両方を足しました大口というケースもありますでしょうが、そういったものについては個人個人でいわゆる名寄せというものをこの調査は行っておりません。したがいまして、そういった調査はございません。
  47. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 大蔵省は、これは調査が必要だというふうにはお考えにならないんですか。
  48. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) これは実は取引所におきまして、会社の株主名簿を参考にいたしまして会社に関しましてアンケート調査という形でやっているわけでございます。  したがいまして、今御指摘のような調査をするためには、上場会社の株主名簿というものを全部取り寄せまして、これを一つ一つ名寄せしなきゃいかぬわけでございますけれども、会社の株主名簿の閲覧請求権というのは、御承知のように、商法によりまして株主とそれから会社の債権者にだけ与えられた権能でございまして、それを大蔵省が全部の上場会社について株主名簿を出して名寄せするということは事実上できない、法律的にできない、こういうことになっております。したがいまして、こういった調査は実際上困難であるということでございます。
  49. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 法案の内容に入る時間がもうなくなってまいりますので、これはまた別の場所で議論をすることにいたしましょう。  それにいたしましても、私がこんなことをずっと取り上げてまいりましたのは、やはり税の公平、公正あるいは経済的な中立性ということを考えていったときに、今の論議をしていった中だけでもいろいろと問題点があるではないか、そんなふうに思うんですよね。  ですから、そういう意味では私はもっとしっかりとした調査、多少先ほど大蔵省としての調査はそれはできませんというお話も、株全体の中で個人の所有のやつを見る、調査することはできません、こういうお話でありましたけれども、この辺のところになると、一方ではアバウトな、極めて極めてアバウトな話であったり、それから調査がなかったり、右のことでいきますと、経済の流れ全体というものが私はこれでは掌握できないんじゃないだろうか、掌握できない中で税制がいいとか悪いとかというのは、議論をすること自身が非常に問題になるんじゃないかというふうな気もいたすわけでありますということを意見として申し上げ、そしてそれに対して大臣が今どうお考えになっているかちょっと伺っておきたいと思います。そして法案の内容に入りたいと思います。
  50. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今証券局長から御答弁を申し上げましたけれども、これは証券行政の立場から考えてみますと、どなたがどういう株式を何株御所有になるかということは、これは基本的に自由な話でありまして、大口投資家というものを大蔵省が規制する立場にないということは、これは御理解をいただきたいと思うわけであります。ただ、個人投資家などが証券市場に幅広く参加されるということは、一般的に言えば市場の厚みを増すということでありますから、また、円滑な価格形成に資するという視点から見ましても結構なことだと思います。  ですから、むしろ逆に言えば、これまでもインサイダー取引の規制でありますとかあるいは株式公開制度の改善などを措置してきたわけでありますけれども、例えば株の大量保有につきましてそれが乱高下の原因をつくることのないように、またこれが一般の投資家がそれほどの情報をお持ちでない結果として不測の損害を受けたりしないようにということから、証券取引審議会におきまして本年の五月にいわゆる五%情報開示ルールというものの創設が提言をされております。大蔵省としてもこれの具体化を今鋭意進めているところでありまして、そうした対応で今委員の御指摘になりますような問題点については対処していきたいと考えております。
  51. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 この税制の問題については、私はきょうは伺えば伺うほど何か素人はますますわからなくなるという感じであります。これがわかるように早くなりたいと思いますけれども、これからもまたひとついろいろとデータ等欲しいものはいただいて納得ができるようにさせていただきたい、こんなことをお願いをしたいと思います。  次に、審議に供されております所得税法及び租税特別措置法の一部改正に入らせていただきたいと思います。  これは言ってみれば低額給与所得者の非課税分野を広げるという意味で大変評価できるものであります。そして、それがまた家内労働の方にも並行して行われるということで、その面では評価をされる、こういうふうに思います。しかし、いろいろとこれもかなり細かくなってまいりますけれども、わからない点が幾つもございますので、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。  もう時間もなくなりましたから、急いで全部問題点を並べましてそれぞれ見解を伺いたいというふうに思いますが、一つは、別表第二と別表第三というのがあります。この別表第二と第三を見てまいりますと、第二の方は月給ですね。これは八万四千円未満、これが甲欄でいくと全部ゼロ、課税はゼロ、こういうことになります。ところが別表第三でいきますと、これは日給になるわけですから二千八百円未満と、こういうことになります。これが対応している形になるんですけれども、二千八百円といいますと三十掛けるとちょうど八万四千円になるんですけれども、そうすると三十日稼がないと別表第二にはならぬ、こういうことになるんですね。すると、労働基準法でいけば四日以上は労働者には休暇を与えなきゃならないことになりますと、三十日の計算というのはこれちょっとどうなるのだろう、整合性がないんじゃないだろうか、こんなふうにも思います。  それから、ことしの最低賃金法による最低賃金の額は一体幾らなんでありましょうか。これは労働省の方では特にパートについては指針などを出されて労働基準法の遵守、最低賃金法等々の労働関係の法律を守るようにという指導もしておられるようでありますけれども、これがどの程度守られているのでありましょうか。そしてまたその最低賃金法ということでいったら二千八百円という のはちょっとまた問題があるのではないだろうか、こんなふうにも思うのであります。他の法律で決められていることが、税法上ということだけで全然無関係というのも、これは同じ政府がやっている仕事の中でおかしいのではないかというふうに思いますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  52. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これ、事務方の諸君が用意してくれました答弁用紙はひどく長くたくさん書いてあるんですけれども、私はこれ簡単に考えてみますと、いわば仮払いと理解をしていただければ一番納得しやすい形だと思うんです。そして最終的に年末調整で精算をされるわけでありますから、計算上の簡素という点からの仮払いと御理解をいただくわけにはいかないでしょうか。と申しますのは、仮に休日分を除いた日数によって表を作成するといたしましても、これは実は日々の源泉徴収額はなるほど多少少なくなるわけです。しかし、最終的に年末調整において精算されるという点においては同じことになるわけでありまして、むしろ私自身はこれは仮払いと理解をいたしました。  以上です。
  53. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 労働省は調査をしておられますか。
  54. 鹿毛明

    説明員(鹿毛明君) 最低賃金の関係についてお尋ねでございましたので、その関係についてお答えいたします。  地域別の最低賃金は各都道府県別に決まっておりますので、各都道府県別で金額の数字に違いがございます。それで全国を平均した数字で申し上げますと、平成元年度の全国の平均の最低賃金額は日額で三千九百二十八円、時間額で四百九十二円、このような数字になっております。
  55. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 仮払いで年末調整があるからと、こうおっしゃるんですけれども、私は労働日の最低の基準が決められている、そういう法律があればそれなり対応というのはやはりきちっとしておかなきゃならない問題だと思いますし、それから今もありましたように最低賃金法というのがわざわざつくられて、そしてそれが守られているかどうかということが随分議論になって調査もしておられるというような状況の中で、最低賃金とはかなりかけ離れた金額の一覧表ができているということについては、これはやはり今後検討をすべき問題点ではないだろうか。いかに年末調整があるからと言われても、その辺のところはどうもすっきりいたしませんが、まあ次に行きましょう。  非課税限度額を今度は百万円に引き上げたということであります。引き上げたということは結構なことでありますが、これを百万円とした理由はどういうところにありましょう。
  56. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 百万円の計算根拠になるわけでございますが、基礎控除が三十五万円でございますけれども、そのようなものが一つ頭に置かれておりまして、百万円から三十五万円引きますと六十五万円ということになるわけでございます。今回の改正は実はこの六十五万円のところにありまして、給与所得控除制度の中にその四〇%という給与所得控除が、一番最初率が適用されるわけでございますが、最低保障額というのがございまして、それが従来五十七万円であったわけでございます。これに三十五万円を足しますと九十二万円、今度はこれを八万円引き上げまして……
  57. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それはもう説明に書いてあるからわかる。
  58. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) はい、それでその百万円ということになるわけでございます。  その給与所得控除でございますが、四〇%という率の適用をされますところが収入で百六十五万円というところまででございまして、そうしますと、ぎりぎりいきまして六十六万円というのが四〇%の適用される最高のところなんでございます。六十五万円というのは実はほとんど四〇%の適用されるところが最低保障の中に入ってしまっているということでございまして、四〇%から始まってだんだん逓減していきます給与所得控除の率をそのままにしておきますと、その辺が限界であるということが一つ。  それからもう一つは、このような百万円に引き上げることによりまして、夫婦共働きで妻に百万円のパート収入がある世帯そして子供が二人というのを考えますと、課税最低限が三百六十四万二千円になります。これは片働きの夫婦子二人の標準世帯、これはいわゆる課税最低限として言われております三百十九万八千円でございますから、それとのバランスということも考えまして、この百万円というところが最大限引き上げ得るところではないかという判断をいたしたわけでございます。
  59. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうも私の聞きたいことにお答えをいただいていないんですけれども、時間ばかり経過しておりますので少し角度を変えましょう。  そうすると、四〇%の最高限度額百六十五万円ということ、そしてそれから今度は三〇%が三百三十万でしたか、というぐあいに、この枠組みが昭和五十九年に決められたまま今回は変えないで提案されていますね。これはどうしてですか。
  60. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 給与所得控除の率をマクロで観察いたしますと、大体収入の三割ぐらいに給与所得控除が当たっているわけでございます。そういう全体的な情勢から見まして、収入の三割給与所得控除で認められていれば、それに現状余り問題があろうとはちょっと考えられない。したがいまして、現在までのところこの給与所得控除制度改正する必要がないのではないかというように考えております。
  61. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 だけれども給与所得控除というものをなぜ設けられたかということについてはいろいろなあれがあるんでしょうが、その大きな要素の一つに、仕事に伴い必要となる経費の概算的な控除だということは、これは政府の方もお認めになっているわけでしょう。だから、そうすると仕事に伴い必要となる経費というのはこれは年とともにいろいろと変わってくるんじゃないですか。五年間も経過をしている、五十九年に決めたんですから。ということになりますから、その間にかなり動いています。  例えば賃金にもそういうものが含まれて考えられていると見ていいわけですけれども、賃金でいけば大体九%から一〇%ぐらい上がっているんですょね、この間に、毎勤統計でいきましても。ということになりますと、仕事に伴って経費が変化していくんですから、当然それに伴って、要するに少なくとも年々物価の上昇にスライドさせてこの枠組みというのは変更をするようなそんな仕組みになっていないと、私は本当の意味で概算的控除というふうにはいかぬのじゃないかというふうに思いますけれども、その辺はいかがでしょうか。
  62. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 毎年の税制改正所得税負担についての議論があるわけでございますけれども、どのようにその税負担を調整していくかということは、必ずしも給与所得控除に限らず、税率でありますとか、あるいは諸控除でありますとか、いろいろあるわけでございます。そういう検討をいたしました場合、この抜本的税制改革では何よりも急激に累進が高まっていくような税率構造、それがちょうど四十歳から五十歳ぐらいのサラリーマンに非常に重い負担になっているということ、それから諸控除の額、そういうようなところから手をつけていくのが適当である、そういう形で税負担軽減を図っていくことが適当であるというような判断に基づいて税制改正をいたしまして所得税を大幅に減税した。  それはサラリーマン中心の減税をしているわけでございますが、それは概算、なべて三割ぐらいの既に控除をしている給与所得控除の引き上げという形で行わずに、税率とか諸控除でやった方が適切であるという判断で、そういう形で税負担を下げているわけでございますから、サラリーマンの税負担が決して上がっているわけではないわけでございます。
  63. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は給与所得が一定水準よりも高いものについての話、高くなっていくものについ ての判断については局長の見方一つ見方としてあると思うんですよ。だけれども、まさにこれは給与所得の中の最低のレベルのものとして、そのものを考えていっているんではないかと思うんですよ。そうしたときに、結局その仕事に伴い必要となる経費というもの、これが実は労働者の方がそういう労働をするときの判断にもなってくる、こんなことになるのではないかと思うんです。  現に学者のいろんな研究の中でも、特にパートあるいは低額所得者の場合ですね、非課税の限度額が労働をこれからしていくかいかないかという、そこに就労するかしないかというその判断になるというようなことをこんなグラフなどに書いていろいろと分析しているのがあります、私は少し難しくてわからないところも随分ありますけれども。  要は、こんな研究がありますのも、私は最低限度額、最低のところというのを押さえての話だというふうに思うんであります。だから、社会的に一般的に仕事に伴い必要となる経費、これはそのときの社会的事情でもって変化をする、この原則は認められるんでしょうo
  64. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 所得税負担がどの程度であるべきかというのはその時代時代の情勢に合わせて考えられるべき問題であろうかと思いますが、先ほど申し上げましたように、それは税率の形で考えていくのか、諸控除の形で考えていくのか、それとも御指摘のような給与所得控除のようなもので考えていくのか、その情勢によって判断されるべき問題であろうと思います。  いろいろ検討されましたが、今回の抜本的税制改革におきましては税率で大幅に減税を行って、それに加えまして諸控除の引き上げ、しかも例えば中年のサラリーマンが一番学費の面などで負担が多いというようなことも考えまして、例えば扶養控除の中に特定扶養控除といたしまして十六歳から二十二歳までの子供について割り増しをするとか、いろいろそういう面で実情に合わせた工夫をしているわけでございまして、給与所得控除という形でそれを行う必要性というのは税率や諸控除と比べますと低いのではないか。それは現在大体三割引かれておりますから、三割、サラリーマンの場合その概算経費控除に当たるようなものがあればそれは実情からかけ離れたものとは考えられませんので、そちらには手をつけないということで行われたわけであります。
  65. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうも私の聞き方が悪いのかもしれません。私の聞いていることにちゃんと答えていただいていないような気がしてまことに残念なんでありますけれども、少し角度を変えましょう。  労働省おいでになっていますね――それで、このごろというか最近のパート労働ではよく気配り勤務などということが言われるということを私も聞いているわけであります。気配り勤務というのは、要するにこれ以上働くと今度は、例えば夫がパートに出ていて奥さんが主力になっている場合もあるでしょう、いずれにいたしましてもこれ以上ということになると、結局差し引き収入で計算をしていくと働くことがかえってマイナスになるというようなことで、年末に働くのをやめるとか、一日七時間働いていたものを六時間にするとかというような状況があるというふうに聞いておりますけれども、その辺は掌握をしておられますでしょうか。
  66. 鈴木佑治

    説明員鈴木佑治君) ただいま気配り勤務ということでございましたが、課税最低限度額を妻の収入が超えそうになった場合に、いわゆる逆転現象と申しますか、これにつきましては税法上は配偶者特別控除が設けられまして逆転現象がなくなったわけでございます。  ただ、民間企業の多くにおきまして、課税最低限度額を超えて妻が働いた場合には配偶者手当をカットするという制度を設けているところが多うございます。したがいまして、そういう意味では先生おっしゃられた気配り勤務という実態があるというふうに考えております。
  67. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そのほかに健康保険の保険料の問題などもあるようであります。いずれにいたしましても、私はそうした気配り勤務などというものが起こってくる現象というものは、これは何としても防がなければならない、こんなふうにも思うわけです。  それは、今何か税法上は解消されているようなことを言われたけれども、私はやはりこの非課税限度額というのをもう少し引き上げられて、社会的、一般的に必要な経費として認められるものというのは、先ほど言ったように、九%も賃金も上がっているんですし、物価の方も大体似たような形で上がっているんですから、そうすると、それを最低限の基準にして物を考える。減税というのは、これまた政策的なものとして、別のものとしてまた考えていかなければならない課題ではないだろうかというふうに思っているわけです。  そして、しかもそういう中で、先ほどのように枠組みを変えていくということが実際にやられていけば、そうした気配り勤務ということについてのかなりの精神的ブレーキになっていたものが、これが外れるんではないだろうか、そんなふうに思っております。  最後になって恐縮でありますけれども、こうした気配り勤務の解消について労働政策の面でほどのようにこれから対応をしていかれようとしておりますか。  それから、今の税制の関係でいけば、私どもの党はむしろ百万と言わないで百二十万くらいをひとつ課税最低限にしたらどうかという主張なども持っていたわけでありますが、ここのところをもっと引き上げ、さらに枠組みを物価の値上がり等にスライドさせて考えていくというような方法を検討してみるお気持ちはありませんか。このことを伺います。
  68. 鈴木佑治

    説明員鈴木佑治君) 気配り勤務の解消ということでございますが、労働政策の面ではパートタイム労働を希望する方々に対しましてその能力に応じて雇用の場を確保するということが主要課題でございまして、そのためにパートバンクの設置等を行ってまいりたいというふうに考えております。
  69. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は今委員が最後に提起をされました問題は大切な問題だと思います。  ただ、それは税の体系から対応すべき問題だとは私は必ずしも思いません。なぜならパート労働、あるいはこれは内職にもある程度共通する部分でありますけれども、私はやっぱり雇用政策、労働政策の中でパート労働というものの法的な地位、位置づけ、こうしたものについてやはりもっと基本的な論議を深めた上で対応すべき課題だと、そのように理解をいたします。
  70. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、私は非常に短かい時間でございますので法案に関しまして二点ほどお伺いをいたします。  もともとパート減税法案につきましては私ども日ごろから何回も要求をしてまいりましたし、お願いをしてまいったわけでございます。今回ようやく百万円というところまできたわけでありますが、昭和六十二年に九十万円になりまして平成元年に九十二万になりまして今回が百万円というところまできたわけでございます。しかしながら、現実の問題としていろいろと問題があると私は思っております。  大臣、実は例えばパート労働者が一カ月二十五日間働いたといたしますと、時間給は最近、大体最低五百円ぐらいですね、五百円、そして一日八時間働きますと五、八、四十ですから一日四千円、四千円で二十五日間働きますとちょうど十万円になるわけであります。一年間働きますと百二十万円になるわけでございまして、これはやっぱり百万円をオーバーするわけですね。そうしますと、そこにまたいろんな問題が出てくるわけでございます。  先ほど同僚議員の方から気配りという話がありましたが、やっぱり百万円をオーバーして、えら いこっちゃ、本当に月給を上げてもらわない方がいいなということになってくる可能性もあるわけでございまして、そういうふうな意味ではやはりいろんな、大臣、労働政策の問題ということもおっしゃいましたが、確かにそういうふうな問題もあろうと思います。  そういうような意味で、まず労働省としてはこの問題について、現在の平均的ないわゆるパートタイマーというのはどういうふうな実態になっているのか。例えば実態としては労働時間が八時間ではなくてもっと短いのか、あるいは時間給が五百円よりもっと少ないのか、そこら辺の実態はどういうふうになっているのかということを教えていただきたいのと、先ほど大蔵省の方から百万円の根拠についてもいろいろ説明がございましたが、そういうような観点から考えると多少はやっぱり問題が残っているんじゃないか。それはつじつまを合わせるためにはいろんな問題がありますが、実態とのかかわりが出てくると私は思うんですが、その両方の点からお答えいただきたいと思います。
  71. 鈴木佑治

    説明員鈴木佑治君) 現在のパートタイマーの実態ということでございますが、パートタイマーの定義はいろいろございます。労働省でとっております調査で賃金構造基本統計調査というものがございまして、これは週間の労働時間が三十五時間未満の者ということをパートタイマーとして統計をとっております。  六十三年の賃金構造基本統計調査によりますと、パートタイマーの一時間当たりの賃金額、これは六百四十二円になっております。一日当たりの労働時間約六時間ということになっております。それから月間の労働日数、これは二十二日ということになっております。
  72. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、実態につきまして労働省の方から御答弁がありましたが、私ども少なくともいわゆる逆転現象と言われるものにつきましては配偶者特別控除の創設によりまして、実態は大きく変わったと考えております。その上で、これから先そのパート労働というものに対してどう対処していくかということになりますと、先ほども答弁を申し上げましたけれども、雇用政策、労働政策の中におきましてパート労働というものの位置づけをどうされるのか、そうした点も十分掘り下げた上でまた次の論議に移らなければならないのではなかろうか、そのように理解をいたしているところであります。
  73. 峯山昭範

    峯山昭範君 ぜひそこら辺のところ、しっかり取り組んでいただきたいと思うのでありますが、ただいまの労働省の計算からいさましても、いわゆる時間当たりの賃金、平均でこれは働いているわけじゃないですからね、一般の人たちは。全体の平均のことを考えて働いているわけじゃないんで、この賃金の平均の数字を申し上げますと、六百四十二円で六時間ということで計算してもやっぱり百万円をオーバーするということになると私は思うんですよね。そういうふうな意味で、これはやっぱりそこら辺のところを十分お考えいただいて、何とかどこかの時点で百二十万円という線を出していただかないといけないんじゃないか、そういうふうに私は思います。  それから、実は私の手元に労働省のパート雇用ハンドブックという本がありまして、これの資料によりますと、これは九十万円の時点の資料ですから多少、まあ昭和六十二年の資料ですから多少古いんですが、いわゆる九十万円の非課税の限度額をオーバーしそうになったらどないするかという調査がありまして、仕事を休むというのが一六・四%、オーバーしても働くというのが三五・九%。だから、一〇〇%からいきますと休むというのはえらい少ないじゃないかと、こういう答弁を先般いただいたことがあるわけですけれども、実は後で帰ってよう考えみたら、その次に、現状ではパートで働いても九十万円にならないという人が三四・二%ありまして、ですから、この人たちは要するに九十万円を超えそうにならないわけでありますから、いわゆるパーセントとしては九十万円にならない人たちも休むうちに入れますとこれはもう大変な、五〇%をオーバーするわけでございまして、やはりそういうふうないろんな問題点というのが多々出てきているわけであります。  こういう点から考えてみましても、やはり労働を休むという理由、そこら辺のところを考えてみますと、いろんな控除の問題等あわせまして、我々としてはこれからのパート労働というのが日本の産業界に占めるいろんな割合問題点あるいは労働力不足、そういうふうな問題から考えて、これはいろいろと問題が私はあると思うんですね。その観点から労働省と大蔵省の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  74. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先ほど労働省の述べられた数字を計算してみますと、確かに百万円を一万ちょっとオーバーするという事実があります。ただそれは、確かにそういう数字が今述べられたわけでありますけれども、まあこうした問題については配偶者特別控除制度というものを導入したことによって解答が出たわけでありまして、その問題は一つ消えたと、こう存じます。  問題はむしろ、今委員が御指摘になりましたように、パート労働の実態というものが非常に労働環境として問題の多い、あるいは給与水準として非常に問題の多いものが現実に残されており、その辺について労働政策、雇用政策としての位置づけがきちんとなされていないというところに私は問題があろうかと思っております。こうしたことにつきましては財政当局の立場だけで云々できることではございません。むしろ、労働政策全体の中で御検討いただくべき点ではありますけれども政府としても、政府全体としてやはり考えていくべき問題であろうと、そのように理解をいたしております。
  75. 峯山昭範

    峯山昭範君 法案の問題につきましては以上で終わっておきたいと思います。  あと、これは大臣に二、三お伺いしておきたいのでありますが、いよいよあしたから消費税の本会議が始まるわけであります。いろいろとお世話になります。  これは私は日ごろから――非常に短い時間ですから、本音の辺で話をしていただきたいのでありますが、要するに大蔵省としては先般の参議院の選挙を一体どういうふうに受けとめていたのかということ。本当は、主税局長、あなたはどういうふうに受けとめていらっしゃいますか。
  76. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) どうも我々、選挙の話をされるのが一番お答えしにくいのでございますけれども……
  77. 峯山昭範

    峯山昭範君 選挙の話じゃない。何を言っているんだ。国民の審判をどう受けとめておるかという問題だ。
  78. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 確かに幾つかの選挙の争点がございました。その中の一つの大きな争点といたしまして消費税の問題がございました。この消費税制度の立案に関係した者の一人といたしまして、大変な関心を持って見守っていたわけでございます。特に、政府に、内閣総理大臣を長といたしまして実施円滑化の推進本部をつくっていただき、その円滑化のために努力していたところでございますから、非常な関心を持っていたわけでございますが、その結果を拝見いたしまして、やはり私どもにとっては大変一つのショックであったことは事実でございます。  しかしこれは、私どもの、消費税に対する国民理解を求める、その、消費税というものに対して国民理解を求める努力が不足していたのではないかという点を反省いたしまして、その後もいろいろ工夫を凝らしながら、消費税についての御理解が行き届きますように、ただいま努力を続けているところでございます。
  79. 峯山昭範

    峯山昭範君 私あと十分ぐらいしか時間がありませんから簡単に言う以外にないんですけれども、局長いろいろごちゃごちゃおっしゃっていますけれども、今あなたの答弁の中には、ショックという言葉と反省という言葉が二つありました。ですから、その二つをつなぎ合わせると、それなりに反省はしているんだなというふうに私は思いますけれども、お隣にお座りになっていらっしゃ る橋本大蔵大臣に対しましても、自民党に大変迷惑をかけたなと、そういうふうに思っていらっしゃるかどうかはわかりませんが、そこら辺のことは別です。  大臣、いずれにしましても、私は、大蔵省が、あなたが新聞にいっぱい広告を出していらっしゃいますように、いわゆる二十一世紀に高齢化社会がやってくるのは事実です。しかしながら、その二〇二〇年というまでは現実の問題として三十年あるわけですね。そういうふうな意味で私はこれからの十年が非常に大事な十年になると判断をいたしております。  そこで大臣、我々がどうしてもこれからの問題を考えるときに考えなきゃいけない問題として、昭和五十四年の大平内閣の一般消費税の問題の国会決議というのがあるわけですね。これはどうしても頭にひっかかる。それから六十一年の中曽根内閣の売上税の問題がやっぱり頭にひっかかる。そして、この間の参議院選挙における消費税の問題が頭にひっかかる。こういうふうな問題をどうクリアするかということは、これは与野党問わずやっぱり気になる問題であります。  しかしながら、現実の問題として、要するに参議院の与野党逆転の状態というのは、これから僕は少なくとも十年間は変わらないであろうと思っております。三年後の選挙で多少勝ったにいたしましても変わらないわけです。ですから、よほど自民党さんが大勝利する以外に変わらないわけですから、十年変わらないですね、大体。これは一般の常識であります。衆議院さんが何ぼ勝ったにいたしましても変わらないと私は思いますね。  そうしますと、これから十年間というのは、これは自民党さんが衆議院で大分勝ったにいたしましても、国会運営やいろんな法案の問題というのは非常に大きな問題を抱えている。というのは、そういうふうな時代がやってまいりますと、私どもは、これは確かに代替財源案とかいろいろなものをつくって今廃止法出しておりますが、実はそれが完璧なものなんて私は思っておりませんよ。硬直した姿勢はとりたくありません、私は。間違っている点は指摘していただいて結構ですし、直したいとも思っております。そういうふうな柔軟な姿勢でいかないといけないと私は思っているわけです。  そんな中で、私はこの十年間のいろんなことを考えた場合に、与野党がやはり、大蔵大臣としてこんなことは言えないと私は思いますけれども消費税はここで一たん廃止をして、こんなことは絶対言えないことでありましょうけれども、廃止をして、そしてもう一回よく話し合いをするというパターンが、私は一番早道じゃないか。そのことを私は日ごろ考えておりますし、しみじみとそう思うわけです。  そうでないと、これは硬直した姿勢が続きますと、与野党が対決した姿勢が続くわけでしょう。そして、衆議院で通った法案が参議院で全部通らない。予算案と条約だけは通っても、あとは予算関連法案も参議院で通らないという事態が続くわけです。そうなったら、日本の国会あるいは日本の国はむちゃくちゃになりますよ。  ですから、そういうふうな意味では、いまひとつ、一発考えるべきときじゃないのかということを私しみじみ思っておりまして、本当はじっくり懇談をしたい問題であります。そういうことも十分踏まえて、与党が野党をやっつければいい、そういう時代はもう過ぎている、私はそういうふうに思うのですけれども、そういうふうな意味で、本当に大所高所から、この日本の行方というものをしっかり考える時代が来ておる、私はこう思いますけれどもいかがでしょう。
  80. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ここまで参ります過程を振り返り、個人として物を申すなら、私も申したいことはいろいろございます。しかし、少なくとも今政府の責任者の一人として、税制改革というものをここまで運んでまいりました中で、私どもとしてはやはり国民消費税の御理解をいただきたいということで全力を尽くすのが、私の役割であろうとそのように思います。  ただ、今委員が御指摘になりました基本線について、私は全く異論がありません。委員承知のように、私ども社会労働委員会の当時、むしろ与野党の社会労働委員会委員同士の話し合いというのは、野党の皆さんは理想論が言える、与党の我々は現実の財政の限界でしか物が言えないという差はありながら、対話というものがよく続いておりました。それぞれが、自分の党を説得するのに苦労しておった時期がありましたことは委員も御承知のとおりであります。  今、確かに自由民主党が参議院において少数になっておる事実、私は十年とかからずに何とかこの状態を回復したいとは思いますけれども、それが容易なことでないことも十分理解をしておるつもりであります。そして、それが対決に終始するのではなく、その間におきましても私は対話の成立する状態であっていただきたい。かつて私どもが所属をいたしました委員会の衆参の状況を思い起こしましても、対話の成立する国会であっていただきたいと、心からそう願っております。
  81. 峯山昭範

    峯山昭範君 もう時間が参りましたから終わりますけれども、大蔵省の姿勢もそうです。今一生懸命消費者に向かって、いわゆる消費者の皆さんの御意見を聞きたいということでいろんなことをやっていらっしゃいます。それはもう私当然大事なことであろうと思います。しかしながら、やはりこの消費税を導入する前に、やはり消費者に対する意見を十分聞くと。その前段がなくて、後段でやったんでは、やはり本末転倒しているという考えが先に立つわけであります。  そういうふうな意味で、私ども残念でならないわけでございまして、いずれにしましても、さきの参議院の選挙におきまして国民からああいう審判をいただいているわけでございますから、私どもといたしましては廃止を目指して、総力を挙げてあしたから取り組みたい、このことだけ申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  82. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 最初に、大蔵行政に関して二点質問いたします。その後、法案について質問をする予定ですが、答弁次第によっては勢い余って時間超過ということにならないように御協力をお願いしたいと思います。  最初に、十月三十一日のこれは新聞報道ですが、税務署に対する異議申し立てに対して九・八%、それから不服審判所に審査請求したうちの一一・四%、全体で二〇%が、一部取り消しも含めて取り消されておるということは、不服審判所はかつて三〇%ということもありましたから、これは余り驚かないんですが、税務署が約一割近く課税処分を変えている。私も大分税務署とつき合いが長いんですが、大体余り自分がやったことを変えたがらないところが本当なんです。それが一割も変わっているのは、これはやっぱり相当現場では納税者の意思を無視した、私に言わせれば強権的税務行政が行われているんじゃないかと思うんですが、これについての所見を端的にお伺いしたいと思います。
  83. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、国税当局は適正、公平な課税を実現するという観点から、税務調査を適正に執行しておると信じております。  今委員が御指摘になりました数字、九・八%という数字はそのとおりでありますけれども、同時に、この取り消し割合が年々低下傾向にあることも委員承知のとおりであります。私は、これが、課税処分が適正に行われてきていることの反映と理解をいたしておりますし、今後とも適正、公平な課税の実現というものに向けて国税当局は努力をしていくと、そう信じております。
  84. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 不服審判全体も含めて率が減っていることはそのとおりなんですけれどもね。ただ、端的に現場の税務署で、しかもその税務署が自分のやった処分を取り消したというのは、これは大変なことだと思うんですが、まあ時間もないんで、そのことについては大いに現場について監督を強化してほしいと思いますし、私のところにも随分いろんな苦情が来ておりますので、私もこれから、消費税廃止法案を採決した後、現場へ行ってみたいと思っておりますので、よろしくお願 いしたいと思います。  次は、金融問題です。ここに起訴状がありますが、石川県の興能信用金庫の理事長で、石川県公安委員会委員長をやっていた数馬嘉平という人が右翼からおどされて六千五百万円払ったんです、六千五百万円。おどしの材料は担保をめぐる、それは大したミスではないんですよ、よくあると思うようなミスです。それがおどしの材料になって六千五百万払った。前公安委員長が警察からも守ってもらえなかった。これは地元としては大変な騒ぎです。もう大変な報道があって、私が調査に行ったものまで記事に出ているというくらいの大騒動になっておるんです。  この数馬という人は刑事事件から見れば被害者です。しかし、私はここで大臣に所見を伺いたいのは、公共性を持ち、社会的な地位のある金融機関が右翼らのおどしによってこんな金をいとも簡単に出してしまうということは、私はこの金融機関の信用性また預金者の保護という点から問題がありはしないか。また、こんなに簡単に出るのなら、全国の右翼が全部片っ端から金融機関をおどして回ったりするというふうなことも考えますと、ゆゆしき事態だと思うんです。  そこで、まず大臣の所見としては、この事件自身をどう見るのか、扱いについてはまたこの次に質問しますけれども、財務局のとった態度は後で質問しますけれども、事件自身についての大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  85. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 御質問をいただくということで、初めて私はこの事件を知りました。そして、いずれにもせよ恐喝のために多額のお金が支払われたということ自体が大変遺憾であり、残念なことであると思っております。
  86. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 問題は、私は北陸財務局の対応だと思います。私が調査に行って要請した後、関係金融機関を集めていろいろ恐喝防止対策、一般論として対処をしたようですね。ところが、私が調査に行って大変不満に思ったのは、この当該金融機関に対して直接事情聴取をするということをやっていないんですよ。それは自分の権限外だと。また、この金が当該金融機関から支出されたのか、あるいはほかから都合をつけたのか、問題になっておりました。そのことも調査していない。  大体北陸財務局というのは廃止が問題になったときに、我々も含めてそれは存続せよと、せっかく存続したのに役に立たぬじゃないかというようなこともあるわけでありまして、こういう点では本当に適切な対応がされていないと思うんですが、これはどうですか。
  87. 土田正顕

    政府委員(土田正顕君) 御指摘の事件につきまして詳細を申し上げることは省略をいたしますが、私どもこの公共的な性格が強いそういう信用金庫の理事長である人が右翼団体の恐喝に遭いまして、その結果、個人的にせよ多額の解決金を支払ったという点については残念なことであると受けとめておるものでございます。  それから、その際に北陸財務局のとった態度でございますが、これはもちろん御指摘のありましたように、管内一般に対しまして注意を喚起いたしましたのみならず、興能信用金庫に対しましても本件の端緒となった事務処理上のミスにつきまして再発防止の是正措置を講じるよう指導を行ったところでございます。
  88. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 なぜこういう事態が起きたかということは、再発防止のためには大変大事なことだと思うんです。私が行って財務局に聞いたところによりますと、電話で聞いている程度ですよ。これほどの事件が起きておれば、まあこの理事長は姿をくらましているから無理にしましても、次のしかるべき責任者もおるんだから、じかに呼び出して、なぜこういうことが起きたのか、そして防止対策も含めて事情聴取していい。私が行った段階では、果たしてその金融機関から金が出たのか、それとも理事長が個人的に都合をつけたのか、そのことについてもしっかりした調査はされていません。電話で聞いたらば、金融機関は出していないと言う。もし金融機関がこんな金を出したらまた大変な話になるわけですが、こういった点で私はもっと財務局として具体的事案に即した対応があってよかったんじゃないかと思うんですが、どうですか。
  89. 土田正顕

    政府委員(土田正顕君) 先生がおいでになりましたときからさらにいろいろ事態が進みまして、それで、具体的には本年の十月四日にこの右翼グループら八人は起訴されるに至っておるわけでございます。  そこで本件につきましてでございますが、私どもは、この金は興能信金として右翼に対して支払ったものではなくて、数馬氏個人の問題であると受けとめております。その点につきまして金融機関はどのような関与をしたかという点に御懸念はあろうかと思いますが、この点は個々の金融機関の具体的な融資内容その他についてコメントできる立場ではございませんけれども、一般論として申しますならば、やはりこの融資内容につきましては当局として必要な調査を行い、それからその資金の使途、審査など問題のあるものについて適切な指導を行っていくということは当然であると考えております。
  90. 近藤忠孝

    ○近勝忠孝君 その後の調査によると、これは子会社から金の都合をつけたということのようです。  もう時間ですから法案に入ります。  百万まで非課税限度、大変結構だと思います。ただ、労働省はこれ百二十万という見解を持っておりますね。その根拠は月大体十万というので、それなりにやっぱり根拠があることだと思います。それから自民党のパートタイム労働問題検討小委員会の提言によりますと百五十万です。社会党百二十万のようでしたけれども百五十方ということで、これはなかなかやるなと思いました。参議院選挙の結果はこういったところにも響いているなと思った次第でありますが、なぜ大蔵省として、労働省は百二十万と言い、自民党にも百五十万という提言があるのに百万にとどめたのか。理屈はわかりました、さっきのね。大臣としてはこれもうちょっと奮発してもよかったんじゃないのかと思うんですが、どうですか。
  91. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先ほど労働省が現実の数字を挙げて御説明いたしましたとおり、先ほどの数字をそのまま試算いたしますと確かに百一万何千円かになりました。しかし、配偶者特別控除を設けたことによりまして御承知のようにいわば状況は大きく変わったわけであります。現在の時点におきまして、給与所得控除等々から考えまして妥当な線と考えて対応いたしております。
  92. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 数字上はそうなるかもしれませんが、しかし百五十万となると、これはやっぱりさっきの計算ももうちょっと違ってくるんだと思います。  最後にもう一問。今後の問題として、これはいろんな民間団体からも百五十万にしてほしいという大変切実な要求もあるし、自民党でもそういう提言もあるとなりますと、今はいいです、しようがない、賛成しますが、今後の問題としてこれは大臣、検討対象じゃないんでしょうか。
  93. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、税制というものは現実の所得あり方対応しながら常に議論されるべきものだと思います。そしてまた、その内容もパート減税という立場からだけ論議がされることが至当だとは考えておりません。税制全体、ふだんの見直しの中で今後所得あり方等々と勘案しながらいずれまた御論議をする日はあるのかなとも思います。
  94. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 終わります。
  95. 古川太三郎

    古川太三郎君 この法案に関しては基本的には賛成でありますのでパスしようかなと思っておったところですけれども、先ほどの御議論を聞いておりますと、まず一つは、個人税額公示する、法人では所得額のみしか公示しない、公表しないということでございました。それは、個人は累進であるということの説明がありましたけれども、なぜ累進ならば公表して累進でなければ公表しなくてもいいのか、そのあたりが明確にわからなかった点でございます。いま一つはっきりとお答えいただきたい。  私の考えでは、法人については税額公表しないという意味は、先ほども少し出ましたけれども外国税額控除制度というものがございます。そういう意味で、四、五年前の話になるだろうと思いますけれども、三菱商事が六十年ごろ六百億ぐらいの所得額を、益金を算定しておりましたけれども日本で払った税金がゼロだったというのを新聞で見たような記憶があります。本来ならば、算定しますと約二百五十億ぐらい払わなければならない。そういうことがあるためにわざわざ公表されなかったんではないか、こう勘ぐらざるを得ないのであります。その証拠に、この前の税制改革ではこの外国税額控除というものをわざわざ一〇%ですか、今ちょっと記憶はないですけれども、一〇%ぐらいにはとにかくみなし課税しようというような安易な課税方法をとられたように記憶しておりますけれども、その点はいかがでございますか。
  96. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 先ほど大臣からもお答え申し上げましたが、個人税額によりまして公示されておりますけれども、これも外国税額控除前の税額公示をしているわけでございます。委員が御指摘になりましたように、所得税の場合累進でございますから、所得が示されましてもその方の納めておられる税がどのぐらいになるのかちょっとわからないわけでございますけれども法人の場合には比例税率でございますから、所得額が発表されておりますと大体それに比例して税額も見当がつくという点がございます。そういうことで、個人につきましては税額公示、それによりまして自分が払っております税と多額納税者の方が払っております税との比較がしやすくなるということでございます。  それから、外国税額控除に関連いたしましての御質問でございますが、外国で払った法人税を自分の国で払うべき法人税から控除するというのはどこの国でもやっているやり方でございまして、日本で活躍しておられます外国法人日本に税金を払っているわけでございますけれども、それぞれその分を本国で引いてもらっているということに、お互いにそうなっているわけでございます。したがいまして、海外で大きく所得を上げていて外国で税金を払っているという企業につきましては、ほとんど国内で納税が生じないという事例も出てくるわけでございますけれども、これはそういう国際的な二重課税の防止という意味から調整が行われていることでございまして、その結果であるということでございます。
  97. 古川太三郎

    古川太三郎君 それは理屈はわかりますけれども、しかし、日本に本社があり、日本で育ち、日本で大きくなった会社が日本で一銭も税金を払わない、こういうことを国民の前に知らすという意味でも税額公表すべきであると私は考えておりますけれども、その点についての善処をお願いしたいと思います。  なお、先ほど法人実在説とか擬制説の問題がございましたけれども、配当益金不算入ということは、法人実在説をとれば税金はそっくりかかってくる、しかし擬制説をとりながら――これも国民の批判が多かったということから、恐らく平成元年は一〇%、二年度は二〇%というように税率をかけられたと思うんでありますけれども、もし配当の益金不算入をそういうように指定するならば、これは課税ベースとして本来ならば一〇〇%にかけなければおかしな問題ではないでしょうか。そのあたりを篤とお聞きしたいと思います。  なお、時間がないので続けて申し上げますけれども、この法案には賛成でございますが、二、三日前の高原経済企画庁長官のテレビでのお話ですが、日本では三百十九万八千円というのが課税最低限になっている、イギリスでは日本円に直して九十四万三千円だというようなお話をされていたように思います。これは、イギリスでは基礎控除だけのことを考えている。日本では給与所得控除とかあるいは社会保険料の控除まで含めて課税最低限を考えていられる。この給与所得控除というのは、本来ならばその他の事業所得であればこれは経費として見られるべき性質のものだと思うわけです。そういう意味からすれば、これを入れて課税最低限だということで説明されるのは国民にとって大きな誤解を招くことにもなるかと思いますし、そこら辺も篤とそのあたりの御答弁をお願いします。
  98. 尾崎護

    政府委員尾崎護君) 先ほども実在説、それから擬制説の話が出たわけでございますけれども、現在の法人実態を考えてみますと、一つは、要するに親子会社のような関係にありまして、何といいますか、支店のようなことで仕事をやってもできるのに、何らかの理由によって親子会社のようなことで経営をしている。その間に配当ということが行われますと、子会社、親会社両方とも課税されるということになりますと、経営形態の相違によって税負担が変わってきてしまう。そこで、シャウプ勧告に基づきまして受取配当益金不算入制度というのができたわけでございます。  他方、最近の社会におきましては、法人がいわゆる財テクというような形で、そういう経営形態の問題じゃなくて、全く収益目的のために株を持つという実態もあるわけでございますから、そういうようなことを考えまして、八〇%に限って益金不算入を認めるという制度に改めた次第でございます。  それから、国際比較でございますけれども、国際比較はこの課税最低限に限らず、いずれも大変難かしい点がございます。それぞれ基本となる制度が違いますので、どのようにとるかということは、一番よく議論されましたのは法人の実質の税の負担率ということで、それぞれの国の租税特別措置その他をどのように取り込むかというような議論もよくございました。個人課税最低限につきましても、税法上認められている措置で、私どもの方で日本制度を中心といたしまして、それとの比較できるものを拾い上げて比較をしていくということでございます。一般的に言いまして、しかし我が国課税最低限が非常に高いということは、これは国際的に見て疑えない事実であろうというように考えます。
  99. 三治重信

    三治重信君 民社党も今回のこの所得税法及び租税特別措置法の一部改正については賛成をさしていただきますが、ただ、毎年こういうふうにして変えていかないとパートの所得と税との関係が非常にぎくしゃくするということだろうと思うんですけれども、どうもこの特別控除制度ができて、そしてこのパートとの関係というか、これは参議院の大蔵委員会調査室の参考資料によると、配偶者控除は九十二万円超百二十七万円未満ではゼロになるけれども、配偶者特別控除の方は残る。百二十七万円以上になると両方がゼロと、こういうふうな説明になっているわけですね。それが今度改正案で上がる。しかし、これはどうもパート収入と配偶者控除のやつが受けられないようになるのはむしろパート収入がふえたらば、配偶者特別控除が先にだめになって、そして配偶者控除の方が後だめになるというふうなのが考え方としては正しいんじゃないかというのが一つ。  それから何と申しますか、せっかくパート収入というもので女のいわゆる未利用労働力を労働力化していく中で、こういうような税法であるために年末になるとそれが一番問題なのは税金がかかるとかかからぬとかよりか主人の配偶者控除というものが会社で抹殺される、これが一番問題だということです。会社で配偶者控除が抹殺されると、これはまた健康保険組合の方の被扶養者でなくなっちゃう。これの方が問題なんですよ。  だから、労働政策とか何とかいうふうに大臣はおっしゃっているけれども、僕は労働政策とこの税法との関係は別に何もないんで、むしろ税法の方がそういうような労働の実際のパートの出現や運行を妨げるんじゃないかというふうな認識を持っているわけなんです。だから、こういうようなパートの配偶者控除の限度額というものを税法上特別設けているのは、むしろいえば大した金じゃないんだからやめて、一般の個人所得税の何というんですか、課税最低限度額までは扶養控除を認めていくと。その前に、特別控除は、働いておれば収入が出てきたんだから、専業主婦のために特 別控除制度をつくったんだから、だからこれはある一定の限度の所得税がゼロの範囲でも扶養控除の特別控除をやるという新設をした理由は、奥さんが働けばなくなってくるからそちらの方は削ってもいいんだけれども、配偶者扶養控除は我が国の何というんですか給与の体系、それから社会保障の体系の基本をなしているわけなんですよね。だから、税法の方で扶養控除をなくすということは、すなわちまたこれは健康保険の方にも全部、社会保障の方へ全部響いてしまうわけです。  この点をひとつぜひ考えて、だからちょびちょび上げるんじゃなくて、もう税法の関係は労働関係とは別にむしろ税法として、学校を卒業して働くようになってくると一定の所得があれば当然かかってくるわけですよね、税金がかかってくる。なるほど一般のだれでも所得がふえて税金がかかるようになればこれは奥さんも扶養控除から外れるのは当然というふうな認識になるわけだと思うんですよね。高校卒業生でも中学卒業生でも、働いて所得が多くなれば当然非課税から課税になってくる。奥さんもそういうように働いていてそれぐらいになれば扶養控除から外されるのは当然だろうと思うんだけれども、まだ免税点にいかない所得についてはどうもやはり奥さんが扶養控除を外される、それから健康保険でも扶養控除を外されるということが会社の中の体面からいって、課長なり係長なり、そういうような体面上、奥さんが働きに出たとかいうふうな社会的なステータスも関係する、こういうふうに聞いているわけです。  会社の方で一番困るのは、年末になって忙しくなってから従来働いていた人たちがぱあっとみんなやめて出てこないようになる、何だといって聞くと、いやもう非課税限度いっぱいになったからこれ以上になるというと扶養控除を外されるからだめだと、こういう切実な、会社の方ではどうしようもないんですよね。こういうことなんです。それに対して……。
  100. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今の委員お話の中で、会社における体面というものはこれはちょっと私は外させていただいて考えなければならぬと思うのでありますが、今、暮れになってやめるというお話に対しましては、先ほど来の御論議にもありましたけれども、まさに配偶者特別控除を設けてそうしたことにならない工夫をしたわけでありますから状況は全く変わってきているわけであります。と同時に、これはむしろ委員の御専門の分野の御論議といわば多少食い違う論議になるわけであります。今まで日本の社会保障というものがいわば世帯単位で組み立てられてまいりましたものが、この十年余りの間、婦人の地位向上、社会進出といった中からだんだん個々人に対するものに切りかわってきている、その状況があることは御承知のとおりであります。  いわば家庭ではなくてそれぞれ一人ずつの人格を認めた体系になってきている、そうした流れと今の御論議、これは大変失礼でありますが、その議論とは全く逆行して、これは必ずしも妻ではなくて夫がパートになる場合もあるかもしれません。しかし、主たる論議というものは、今まで奥様方が外へ出ていかれる、そして収入を得てこられるということに対しての対応として論議をされてき、いわば働く婦人の独立の人権、権利というものを頭に置きながら議論をしてまいりました方向と逆行をして、むしろ今の御論議でいくと御婦人を家庭の中に押し込める話になってしまうんじゃないでしょうか。  これは決して議論をするつもりはありませんけれども、例えば現在でもいろいろな御家庭の事情の中で、中学を卒業したまますぐに実社会に巣立っていかれる子供さんが少しではありますけれど存在をいたします。そのお子さんたちの収入は決して高いものではございません。ある場合、この限度額の中でパートタイム労働の中からその奥様方が得てこられる収入より低い場合もございます。しかし、これは独立の生計として考えられるわけでありまして、そういうことを考えました場合に、ちょっと今の委員の御意見は私には理解いたしかねる部分がございます。これは率直にそういう感じがいたします。
  101. 下村泰

    下村泰君 私は、福祉の方でちょっと質問させていただきたいと思います。  今後ますます進むでありましょう在宅福祉、それから地域福祉を考えますと、今回のパート減税は、これは側面的に支援する効果があるので大変結構なことだと思います。この辺のことは厚生行政に詳しい大臣には十分御理解いただけることだと思います。  一言この場をかりてお礼を申し上げますが、厚生大臣の折に口唇口蓋裂の患者の皆様方に健康保険の適用をした方がいいのではないかという発言が得られまして、あれから何年かたちまして完全にこれが健康保険の適用が行われるようになりました。これは本当にお礼を申し上げておきます。  現在の、厚生省が進めております在宅ケアも多くの人手、特にヘルパーさん、看護婦さん、あるいは保健婦さんが必要になります。しかし、その数はもうほとんど足りません。それをカバーするために自治体ではそれぞれいろいろな形態で委託したり、あるいはパート契約を結んでいます。ところが、ある保健婦さんの話ですと、一件あるいは一日幾らで契約しますと、御主人の収入より、まあ御主人の収入にもよりますけれども、ある程度のところでそれ以上するとかえって税負担が増すと、こういうことになります。要するに、御主人の累進が上がるということなんですけれども、そういう話を聞きまして、これは在宅福祉を進める上でパート減税を拡大したり、あるいはほかに何らかの方策があればそれをあるいは推し進めませんと一つのこれは障害になる、そんなような感じがしてきたんです。  この辺を大臣はどういうふうに御認識なさっていらっしゃいますか。
  102. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに委員が御指摘のように、現実を眺めました場合にそういう問題点があることを私も否定いたしません。私自身が今実は母親を約一年余り介護いたしておりまして、まさに介護の方がそういう事情でお休みになり私どもがかわって泊まる晩もございますから、その事実を否定はいたしません。ただ、私はそれをパート税制から考えるという以前に、私はこれから先の高齢化社会を考えた場合に、一体どの分野にどれだけの人員が必要になるのか、その養成はどうするのか、その社会的地位はどの程度であるべきなのか、支払われるべき報酬はというものについてもう少し私は、政府部内でもそうですけれども世間的にも御論議をいただく必要があると思うんです。  さらに、果たして今そうした不足の部分をパートで補っている形態がいいのか。むしろ、在宅福祉を進めれば進めるほど実はより高度な専門的知識を持った介護者が必要になるケースがふえていくわけでありますから、むしろ専門職としての対応について工夫をすべき時期に既に至っているのではなかろうかと、私はそんな感じがいたします。
  103. 下村泰

    下村泰君 もう一点お伺いします。  しかし、今の大臣のお考え、これは大変結構だと思います。ただ、それにしてもまだまだ足りません。今厚生省の出している案でも本当に計算してみますと全然足りません、高齢化社会に向かっては。  次に、税体系全体の中の問題、財政全体の中の問題ではあるんですが、いわゆる寄附金控除の問題なんですけれども政府は民活や在宅・地域福祉を進めょうとしていらっしゃいますけれども、民間にある財が本当に有効に使われるならば民間活力も結構だと思います。また、先ほど申し上げましたように、在宅福祉、地域福祉を推し進めるのも必然性のあることだと思います。しかし、こうした流れが全体でうまくドッキングしていなかったり、あるいはつながっていない場合が多いように感じます。  その一つが、税制における寄附金控除の考え方、システムのあり方なんですね。消費税に関しても言われているように、福祉に対しては歳出面での対応を考えているようですけれども、いわば これは官活でございますね、大蔵省を通ってきたお金です。民活は大蔵省を通らないお金。こうしたお金、財をうまく高齢化社会に還流させるようなシステムづくり、環境づくりが必要だと思います。何でもかんでも寄附金扱いにしろと言っているわけじゃございません。  具体的な問題はいずれ場を改めて考えることといたしまして、今私は寄附金控除という言葉を出しましたが、この点を含めた地域福祉、民活、高齢社会に対する税体系あり方を考えてみる必要があると思います。その結果が消費税だということではなく、もっといろいろな視点、角度からこの見通しが必要だと思います。今からやっておくべきことだと思いますが、そして、ましてや現大蔵大臣はやがて総理になる、もう目先に見えております。それだけに、よけいひとつ考えていただきたいと思います。  これで終わります。
  104. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今の御指摘の中で私もそれなりに御議論理解いたします。そして、特に今厚生省の方で、公的在宅福祉サービスを新たに社会福祉事業として位置づけて、それに当たる事業が特定公益増進法人となるようなことをいろいろ工夫しておられるようです。まだそのお考えが私どものところに届いておりませんけれども、厚生省の方からそういった点についての御意見が到着をいたしましたら、税制上の取り扱いについて十分御相談をしてみたいと思っております。  事務方の諸君は、その検討結果を踏まえ税負担の公平等に配慮しつつ検討してまいりたいと書いておりますけれども、この顔を見れば、そう悪い結論を出すような顔はしておりません。
  105. 藤井孝男

    委員長藤井孝男君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  所得税法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  106. 藤井孝男

    委員長藤井孝男君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 藤井孝男

    委員長藤井孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  108. 藤井孝男

    委員長藤井孝男君) 次に、租税及び金融等に関する調査議題とし、先般、本委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。梶原清君。
  109. 梶原清

    梶原清君 北海道への委員派遣について、その概要を申し上げます。  去る九月五日から七日までの三日間にわたり、藤井委員長久保理事、本岡理事、峯山理事、石川委員藤田委員村田委員近藤委員、古川委員及び私梶原の十名は、北海道財務局、札幌国税局、札幌国税不服審判所、函館税関、函館税務署及び日本たばこ産業株式会社札幌支店から、それぞれ管内の概況説明を聴取するとともに、民間金融機関及び納税協力団体との意見交換を行ったほか、日本たばこ産業株式会社函館工場等を視察してまいりました。  以下、調査の概要について申し上げます。  北海道は面積が全国の約二二%と広大であるのに対し、人口は全国の五%足らずと人口密度は低く、その中にあって全道の人口の二八%強が札幌市に一極集中しており、その影響は北海道経済全体に及んでおります。  産業構造面では、総生産額は全国の四%弱とシェアは低く、構成比では第一次産業、第三次産業の割合が高いのに対し、第二次産業の割合は低く、特に製造業のシェアは全国水準の半分以下となっております。また、総資本形成のうち、公的資本形成は全国水準の二倍弱と公共事業への依存度がかなり高いと言えるほか、貿易面では輸入額が輸出額の約六倍弱と大幅な輸入超過となっております。  最近の北海道経済を見ますと、物価安定のもとで、盛り上がりを見せる個人消費、設備投資等による景気押し上げ効果により、昨年度に引き続き拡大基調にあり、企業の経営判断も明るい見通しとなっております。  景気拡大の支え役である住宅投資や公共投資は好調で、住宅投資は高水準を維持し、公出投資もゼロ国債等により発注はスムーズに進んでおります。さらに、景気のリード役として、個人消費は大型小売店売り上げが好調で、設備投資も製造業、非製造業とも前年度を上回る見通しとなっており、観光も引き続き好調を維持しているほか、雇用面も一段と改善が進んでおります。  次に、金融面についてであります。  北海道では、信用金庫、漁協、郵便局など中小金融機関の店舗が多く、預貯金のウエートも高くなっており、特に、信用金庫は一五%と全国水準を五%ポイント上回っております。また、公共事業が多いこともあり、貸出金残高に占める公的資金のウエートはかなり高くなっております。  預貸金の全国シェアでは、預貯金が三%、貸出金が三・二%と低く、伸び率も全国平均を下回っており、これを道内について見た場合、札幌市とそれ以外の貸し出しに格差が目立っております。  金融機関との意見交換においては、各金融機関は金融ニーズの多様化・高度化が進む中で、地域経済の活性化、本州との域際収支のアンバランスの補完などに努めており、資金調達、リスク管理などに対応するための制度面からの配慮を求める意見が多く出されました。  次に、税務行政についてであります。  札幌国税局管内の昭和六十三年度の徴収決定済み額は、一兆一千九百六億円と全国に占める割合は二・三%であり、六十二年度に比べ五・三%の伸び率となっております。これを税目別に見ますと、好調な景気を反映して申告所得税法人税の増加が大きく寄与しております。また、税目別構成比では、全国に比べて源泉所得税ウエートが高く、法人税割合が低いのが特色と言えます。  税務行政の高度化・複雑化が進む中で、過去十年間の徴収決定済み額、申告納税者数、法人数などがそれぞれ増加する一方、定員はほぼ横ばいであり、税務当局としては業務の合理化・機械化に力を注いでいるとのことでありました。  また、昭和六十三年度の国税不服審査の要処理件数は百四十八件で、そのうち九十五件が処理されており、その他、給与所得事案に係る審査請求も多く出されております。  納税協力団体との意見交換では、日ごろ、税に関する知識の普及拡大納税者意識の高揚などに努めている各団体が、新たに導入された消費税理解・研修などに当たっており、今後とも小規模事業者に対する配慮を求める意見などが出されました。  なお、函館税務署において、概況説明を聴取した後、署内の業務状況の視察を行っております。  次に、税関行政についてであります。  函館税関の管轄面積は全国の三〇%であり、海岸線距離では二五%と、非常に広い区域を管轄し、また、昨年七月の新千歳空港の供用開始により航空貨物が増加するとともに、北海道を中心として輸出貨物の需要創出に努めていることから、適正かつ迅速な業務処理が求められております。  管内の貿易構造は、輸出額が九百七十一億円であるのに対し、輸入額は五千七百五十億円と輸入主導型となっております。これを対前年比で見ますと、輸出貿易額は横ばい、輸入貿易額は非鉄金属やトウモロコシの伸びが大きく、七%の増加と過去最高となっております。  なお、函館税関では、税関監視艇により函館港を視察いたしております。  次に、たばこ事業についてでありますが、昭和六十三年度の販売数量は約百四十一億本、販売代 金は千五百億円と、全国に占める割合は約五%と低く、販売数量を前年比で見ますと、関税無税化、外国たばこの価格引き下げ等により約八%減少しております。また、特徴としては、喫煙率が全国に比べて高く、輸入たばこシェアが北海道は全国で最も高くなっております。  最後に、視察先について簡単に紹介しますと、まず、日本たばこ産業の函館工場は、昭和四十七年に現在地に新築移転したもので、セブンスター、マイルドセブン及びマイルドライトを主力銘柄として、年間約七十八億本を生産し、ほとんどが道内で消費されております。  雪印乳業は、北海道に酪農を定着させ、牛乳、乳製品によって国民の食生活と健康に資するため、大正十四年に北海道製酪販売組合として出発したもので、食と健康に関連する分野に事業展開しております。  さらに、サッポロビールは、明治九年の開拓使麦酒醸造所を原点とし、百十年に及ぶ歴史を誇る企業で、最近では近代的な北海道工場を新設するなど、健康で文化的な国民生活に貢献しております。  以上、概略を申し述べましたが、今回の派遣におきまして調査に御協力いただきました関係行政機関、団体、事業場の方々に対し、この席をかりまして厚く御礼を申し上げ、派遣報告を終わります。
  110. 藤井孝男

    委員長藤井孝男君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十三分散会