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1989-12-06 第116回国会 参議院 税制問題等に関する特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十二月六日(水曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員の異動  十二月五日     辞任         補欠選任      庄司  中君     粕谷 照美君      谷畑  孝君     渕上 貞雄君      種田  誠君     穐山  篤君      野別 隆俊君     安恒 良一君      吉田 達男君     山口 哲夫君      吉岡 吉典君     橋本  敦君  十二月六日     辞任         補欠選任      秋山  肇君     横溝 克己君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         中村 太郎君     理 事                 井上 吉夫君                 沓掛 哲男君                 宮澤  弘君                 村上 正邦君                 稲村 稔夫君                 及川 一夫君                 本岡 昭次君                 矢原 秀男君                 近藤 忠孝君                 古川太三郎君                 寺崎 昭久君     委 員                 伊江 朝雄君                 大木  浩君                 鎌田 要人君                 北  修二君                 久世 公堯君                 佐々木 満君                 谷川 寛三君                 前島英三郎君                 松浦  功君                 松浦 孝治君                 守住 有信君                 山岡 賢次君                 穐山  篤君                 上野 雄文君                 大渕 絹子君                 粕谷 照美君                 渕上 貞雄君                 細谷 昭雄君                 前畑 幸子君                 村田 誠醇君                 安恒 良一君                 山口 哲夫君                 刈田 貞子君                 常松 克安君                 和田 教美君                 橋本  敦君                 高井 和伸君                 三治 重信君                 下村  泰君                 横溝 克己君    事務局側        常任委員会専門        員        竹村  晟君        常任委員会専門        員        保家 茂彰君    参考人        経済評論家    河野 光雄君        経済評論家    井上 隆司君        全国間税会総連        合会会長     古岡  勝君        主婦連合会副会        長        中村 紀伊君        ジャーナリスト  山口 令子君        税  理  士  関本 秀治君        税  理  士  大島 隆夫君        日本労働組合総        連合会社会政策        局次長      土井 隆史君        千葉県館山市長  半澤 良一君        武蔵大学教授   今井 勝人君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○消費税法廃止する法律案久保亘君外七名発議) ○消費譲与税法廃止する法律案久保亘君外七名発議) ○地方交付税法の一部を改正する法律案久保亘君外七名発議) ○税制改革基本法案久保亘君外七名発議) ○法人税法等の一部を改正する法律案久保亘君外七名発議) ○通行税法案久保亘君外七名発議) ○物品税法案久保亘君外七名発議) ○入場税法案久保亘君外七名発議) ○地方税法の一部を改正する法律案久保亘君外七名発議)     ─────────────
  2. 中村太郎

    委員長中村太郎君) ただいまから税制問題等に関する特別委員会を開会いたします。  消費税法廃止する法律案消費譲与税法廃止する法律案地方交付税法の一部を改正する法律案税制改革基本法案法人税法等の一部を改正する法律案通行税法案物品税法案入場税法案及び地方税法の一部を改正する法律案の九案を一括して議題といたします。  本日は、九案につきまして、お手元の名簿の十名の参考人方々から御意見を拝聴いたします。  まず、午前は四名の参考人方々お願いをいたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙のところ本委員会のために御出席をいただき、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして、心から厚く御礼を申し上げます。  本日は、皆様から忌憚のない御意見を拝聴しまして、今後の審査の参考にいたしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後で委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、これより順次御意見を承ります。  まず、河野参考人お願いいたします。
  3. 河野光雄

    参考人河野光雄君) 時間が十五分しかありませんので、私が考えているポイントだけを申し上げて、後で質問があればそのときにお答えしようと思うんです。  話す内容は二つありまして、一つ廃止論そのもの自体をどう考えるのかということと、あとはそれにかわる再改革法案並びに暫定措置法案について、その中でこれは問題だと思うことについて意見を述べさしていただきたいと思うんです。  廃止論議論するときに二つありまして、一つ政治論一つ税制論としての廃止論、二つあるんですね。大体政治論の方は避けて通るのが通常こういうところでは礼儀かもしれませんけれども、それを避けて通ると話にならないんですね。  何か話を聞いていると、最近は、七月二十三日の参議院選挙の結果、国民意思廃止論に決まったんだから、それに盾突くのは民主主義ルールを誤っておるというふうな話で、何やら水戸黄門の葵の御紋みたいな話になっていて、そこですべて判断中止ということを言われる方がかなり多いと思う。それは承服できないんです。  第二に、税制の理論からいって間接税をこの時期に外すなんということは全く荒唐無稽の議論だと思うのですよ。いずれにしても、私はここに出ている九法案反対なんです。  最初に、参議院選挙の結果国民意思は決定したという話は全然そうではないと。国民意思自民党の横暴その他について沸騰したことは事実ですけれども、何も争点が消費税だけにあったわけでもなく、日本国民投票をやったわけでもありませんから。国民投票をやったなら一票でも勝てば、それはそれですべて万事決着ですけれども、スイスと違って日本ではそういうシステムがありませんから。いろんな問題が討議されて、自民党が惨敗して社会党が勝ったということは事実ですけれども、しかしそれがイコール国民意思廃止であるからそれに盾突くのは民主主義ルールに反するという議論は全くいただけないと思う。  もう一つ税制論からだけいえば、これは日本税制というのは直接税偏重だろうというのはもう天下周知の事実なんですが、それに間接税を入れるということは、やっと日本経済並み税制も後進国的な段階から先進国的な段階に入っただけにすぎないと思う。遅かれ早かれいずれ来るんですね、これはどういう政党天下をとろうとも。それを自民党が少し早目にやったにすぎないと思うんです。それを頭から否定するということは税制論として筋が通らないと私は思うんです。  今度はもっと具体的な内容に入りますけれども、一番最初にちょっと議論をしたいのは再改革法案の方なんですね。二年後に本格的なこういう見直しを行うという法案について意見を述べたいんですが、言いたいことは二つあります。非常に理念としてきれいな言葉で書いてありますから、そのこと自体に反論する余地はほとんどないように実に見事に法案はできていると思うんですが、私が特に議論したいのは二つあって、一つはかなり抽象的ではあるけれども、具体性のあるものがあるんです。  一つは、納税者番号制度というものを導入する、検討するというふうに書いてありますね。私は、過去二年間、海外出張を含めてこの問題を随分、普通の人よりも若干の経験情報を集めた経験を持っていますけれども、この納税者番号制度導入するについて決定的に、それこそまさに国民的な合意が必要なことがあるんですよ。それは、事、税制に関してはプライバシーはゼロだという話なんです。事、税制に関して自分所得がどう発生しているか、それを税務署が、国税庁がどう把握するかということについてこれは全く白紙で、全部洗いざらい国税庁がわかる、そのことがプライバシー侵害にならないということについて女性男性も確認しないとこの話は一歩も進まないんですよ。  あの法案によれば、プライバシー問題があるからそれに気をつけてと書いてありますけれども、国税庁が知り得た情報をほかに流すということがあったらそれは大問題です。それこそプライバシー侵害です。それは厳重に制限されなきゃいけませんけれども、国税庁が、税務当局が我々国民資産、収入その他について正確に把握すること、それを拒否することはできないというのが大前提ですから、あの納税者番号制度の根本的な思想が。それが二年間の協議会の中でできるとは私は絶対に思わないのですよ。  私は、長い目で見れば、これは日本として導入するに値する制度だと今でも思っていますから。ただ、事をせいて二年間ぐらいで結論を出そうなんて思ったら絶対できません。消費税反対のアジを飛ばすことはブロであればだれでもできますけれども、納税者番号制度だって同じことですよ。反対しようと思えば幾らでも反対できますよ、反対を一番するのは女性ですから。  十月の初旬にNHKが三日三晩九時間にわたる大討論会をやったでしょう。あのとき、いろんな世論調査をやりましたけれども、一番決定的に票が分かれたのは納税者番号制度だったんですよ。細かい数字は忘れましたけれども、たしか八対二ぐらいの比率でノーという答えが男性女性を問わず出てきたんですよ。あれはまだ説明不足だからそうなったんで、本当はきっちり説明すればもうちょっと反対は少ないと思いますけれども。  しかし、総理府のかつての調査によっても、日本人が男性女性を問わず一番自分プライバシーで知られたくないことのナンバーワンは何だと思いますか。自分資産所得の話なんですよ。学歴がどうだとか子供が病気だとか女性の年がどうだとかというのはうんとランクが低いんですよ、プライバシーからいったって。そこが問題なんです。  三%の消費税でこれだけの大騒ぎが女性から起こったということを考えれば、納税者番号制度女性が簡単に乗るなんということは考えられませんよ。やらなきゃいけませんけれども、二年でできる話じゃ絶対ありません。あと合意ができてから膨大な予算を用意して付番ということをやらなきゃいけませんけれども、実はこれも大変なことです。簡単にできる話じゃありません。ですから、二年で暫定期間が終わって総合課税制度が確立する、そのための指標の決定的なものとしての番号制度導入するということは空論に近いんです。  二番目に、あの法案の中にもう一つサービス流通などについての課税を検討すると書いてありますね。私は今度の反対論というのは、九割は導入政治論であって、税制論としては実はわかっていると。わかっているけれども、民主主義ルールからいったら間違っているという議論を展開されたんだと思っていましたから、対案を出された野党先生方が、腹の中ではいずれこれは必要なんだ、手順を間違えなければいいんだというふうに考えられて、サービス流通を書かれたんだと了解したんですよね。そうであればそれも一つの選択だと思いましたけれども、国会答弁で、たしかあれは本会議代表質問だったと思いますが、共産党の方の、近藤さんと言われる方だったと思いますけれども、あれは大変すばらしい質問だった。あの質問で答えられたのは、大型間接税国民反対するからノーだと書かれた。しかし、日本語としてあの法案をまともに素直に読めばあれは明らかに、消費税という名前は違うかもしれませんけれども、多段階間接税導入ということもあの枠の中には入っていると考えるのが素直な読み方ですよ。ところがそれを否定されましたから、この話はもうそれで話にならないと思ったんです。  そろそろあと五分しか時間がありませんから、本当に困るんですが、もう一つだけあの基本法の中でこれだけは絶対に自民党のしりをたたいてもやってもらいたいことがあるんですよ。それは非常に前向きに自民党も考えざるを得ないから考えることになると思いますが、資産課税適正化論、きれいな言葉で言えば。今三%の消費税で国論が二つに割れて大騒動になっていますけれども、仮に日本社会の中で東欧並みの劇的な地殻変動が起こっているとするならば、それは資産の格差がこれほどここ三年の間に広がったということですよね。これは全部バックにありますよ、あらゆる政党に対する注文を一般庶民で考えれば。それに対して税制面からどう切り込んでいくかということについてはっきりしたビジョンがなければだめだと思いますね。いずれ消費税問題は次の選挙でおしまいですから。ポスト消費税を論議するんだったら、税制面で言えば資産課税だと思うんですよ、避けて通れない話ですから。それについてまじめにやりますよと書いてあることは大変高く評価すべきことだと思うんです。  最後に、代替法案のことについて若干触れたいんですが、個別のことについて触れる時間がありませんので、ちょっと私の言いたいことだけをピックアップしていきますけれども、まず第一に、物品税復活論、私はたくさんのジャーナリストの友達を持っていますから、現役で社説を書いている連中を全部知っていますけれども、どういう人でも、野党に対して極めて好意的な人でも、あの物品税の八十五品目を全く無修正で税率だけ変えて復活させたことについて賛成している者は一人もいません。あれは知的作業の怠慢ですね。  私が考えるに、仮にも物品税を言うんだったら、かつて数年前にワープロその他新しいのを物品税対象に加えようなんて話があって、あれは今課税対象としては膨大なものですよ。参議院選挙が終わった後時間があったんですから、せめてそのぐらいは入れて、ちっとは内容を変えました、新しいアップ・ツー・デートなものですというふうに並べるのならまだしも、八十五品目そっくりやって、あと税率の調整を野党間で、えらいそれぞれ支持母体との関係があって御苦労されたようですが、どんな信条的な革新主義者でもあれだけはどうしても乗れないと言っているんです。私はこれは頭から乗れません。ただ時間がなくて緊急避難的にということをおっしゃっていて、それが本音だと思いますから、武士の情けでそのことをこれ以上あげつらうことはやめますけれども、話にならないと思うんです。  それからもう一点だけ。自然増収論自然増収と税の増収論についての話ですけれども、今の日本経済の実態からすれば、今の好景気があと二年間棒に続くとするならば、その可能性は半分以上あると思いますが、相当の自然増収があることは皆わかっていらっしゃるんですね、だれでもどういう議論をする人でも。しかし今度は制度を変える話ですから、消費税六兆円の。それなら別の制度でこれを埋めるというのが作法だと思うんですね、税制議論をやるならば。自然増収が発生したらそれは百六十兆になんなんとする過去の蓄積された国債残高の減少にこそ向かうべきであって、今のような世の中であれば、景気がこういう状態であれば。  それを制度を変えた、特につじつまが合わないから入れてみたと。そうしたら宮澤さんだったですかな、質問されて、だんだんだんだんやってみたら計算が間違っておったと。僕は計算の間違いというのは今の野党人たちに言うのは酷だと思いますから、大したことはないと思いますよ。しかし考え方の問題ですから、そろばんをはじいた結果がどうこうという技術論ではなくて、それは大蔵省にかないませんからそんなことを言っても無理だと思いますが、考え方が間違っているんじゃないかという気がするんです。安易に過ぎる、そんなことは。  最後にもう一つ。この場での十一月から始まった野党の話をテレビや新聞で見ていた人たちが一体どういうことを感じているか。私個人のことは別にして、全般的に言えば余りそう深まった議論をやっていらっしゃるようには見えないんですよね。私自身はもっと本当は深い議論がここで行われると期待していましたから本当にいいチャンスだと思いました。国会ではここ数年来ほとんど真っ当な議論がなかったですよ。私の印象では、攻める自民党も攻め方が足らないし、本当に初めての経験だと思いますから無理もないと思いますが、しかし受ける方も政治論ばかり受けて切り返してそれで事足りるとしている。ゲームみたいな話ですよね。どうせできない法案、通らない法案だと思ってお互いに見ているところも新聞記者はある。いずれにしても真剣味が足らないし、突っ込みが足らなかったというふうな、私の総合的な印象なんですよ。  まだこれから若干の日取りは残っているかもしれませんので、参議院での採決までにはもっと深まった議論をぜひやっていただきたいということをお願いして十五分の陳述を終わります。ありがとうございました。
  4. 中村太郎

    委員長中村太郎君) どうもありがとうございました。  次に、井上参考人お願いいたします。
  5. 井上隆司

    参考人井上隆司君) 私は、消費税法廃止する法律案外八案に賛成の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。  その論拠として、まず一番目に公約違反を挙げさせていただきます。御承知のように政府・与党は六十一年の衆参同日選挙大型間接税導入しない旨の選挙公約を行ったわけでございます。しかしその後大型間接税そのもの売上税法案を出して、それが廃止になるやすかさず今回の消費税法を無理やりに成立させた。このことが非常に政治不信を招いた一因でもあるわけですね。先ごろの参議院選挙でも御承知のように与野党逆転ということで、消費税について一般国民ノー判断を下したと思います。そういうこともございますので、消費税法は来年の三月いっぱいで廃止して、その後二十一世紀の高齢化社会を迎えた税制改革、それを行っていただくのが民主主義ルールではないかと思う次第でございます。  第二点としては、中小企業向け簡易課税非課税事業者限界控除制度などの適用範囲が余りにも拡大した結果、消費税として国庫未納分四千八百億円が生じる可能性が出てきたということでございます。この四千八百億円たとえ出たとしても、およそその半分ぐらいは法人税法人事業税などとして国庫もしくは地方自治体に入るということは周知のとおりでございます。しかし、消費者として消費税を払ったにもかかわらずその一部が業者の懐へ残って、はたまた消費税という名目から国庫法人税とか、地方自治体法人事業税などとして転嫁して入るということは、これは一般庶民としては甚だやり切れないというか、納得のできない点ではないかと思うわけでございます。  私、ここにデータを持ってきまして、これは中小企業庁の原価指標、それに基づいて簡易課税でどれだけ業者にボーナスとして手元に入るかということを試算しましたら、御承知のように中小企業の場合は非常に人件費の絡みでマージン率が高うございます。それで、例えば不動産仲介業の場合は帳簿上のマージン率が五三・九〇一%、クリーニング業の場合は五五・九七五%、一般貨物運送業の場合は四八・七六二%、そばうどんの場合も四七・八九二%、家具小売業の場合は、これはぐっと下がりまして二二・五三九%、このように政府の機関のいわゆるデータでも消費税法のみなしマージン率よりも高うなっております。しかし実際問題として現在、中小企業資本金一億円以下の法人の約五割ぐらいは税務署の申告が赤字になっているわけですね。  そういうようなところを実際に計算してみますと、逆に消費税法のみなしマージン率よりも低いということで、簡易課税を選択すると余分に納められてしまうというか、そういう矛盾点もあるわけでございます。この簡易課税については、我が国以外、例えば西ドイツでも行っておりますが、全体の事業者の一%余り。ところが日本の場合は、御承知のように課税売上五億円以下の企業というのは、政府の統計でも九六・七%もある。こういうような点からも、非常に矛盾点として浮き彫りに出てきているわけですね。  今、この簡易課税とか非課税事業者限界控除制度で実際に矛盾が出ているということは、先般導入当時、会社設立ラッシュが続いたわけでございます。東京法務局渋谷出張所では、ことし三月の法人関係登記受け付け件数は二百十件で、昨年三月に比べ二〇%増となったわけです。同港出張所でも一五%もふえたわけです。この傾向は、東京に限らず関西地方でも同じ結果が出ているわけです。  なぜこのようなことが起こったかといいますと、二点ばかり考えられまして、一つは、会社を分割することによって簡易課税免税事業者に入ってしまう、そういう意図のもとでですね。二番目として、設立後二年間は免税措置が講じられるわけですね。御承知のように、課税事業者の認定は二年前の売上実績によるということでございますので、新設の会社はたとえ何十、何百億売り上げがあったとしても、二年間というのは一銭も納税義務がないという、こういうようなことは企業立場としてはよろしいんではないかと思うんですが、消費者立場としては甚だ容認できないんではないか、そういうことが考えられます。  三番目としては、逆進税の問題でございます。  私ごとで恐縮ですが、昨年関西のあるデパートで講演会を行いました。その席で、あるお年寄りから次のような語りかけがあったわけです。   私は定年直後で、まだ年金受給資格がないため、トラの子の貯金を取り崩して細々と生活している。六十五歳になっていないのでマル優もきかず、この四月から利子に税金をかけられている。政府所得税を大幅に減税してくれるといっているが、私には減税対象所得はないのだ。にもかかわらず消費税が実施されたら、生活費にモロに課税されるので、とても不安だ。私のような境遇の人は大勢いる。井上さん、あちらこちらで老人の叫びを伝えてもらいたい。 そういうことがきっかけになりまして、私が主宰する全日本健歩会、いわゆる歩く会のボランティア活動の一環として、中立な立場消費税オピニオンダイヤルを昨年開設したわけでございます。それで、多数マスコミの協力によって電話を受け付けたわけでございますが、その中で注目すべき点は、電話をかけた方のうち、当初予想していたとはいえ四十歳以上の中高年が九〇%を占めていたということで、非常に中高年の方がこの税に対して不安を持っていたということもうかがえるわけでございます。  逆進税についてはハーバード大学サリー教授が、一九七〇年にビジネスレビューで次のように述べています。付加価値税、これは我が国の消費税のもとになった税でございます。   付加価値税は消費財およびサービスに関する小売売上税であり、財およびサービスの生産者や販売者の税ではない。ビジネス部門にとって、付加価値税の中立性は、単に非納税者を意味するにすぎない。何故ならば、企業は最終消費者から税の徴収官としての役割を与えられているからである。われわれは、付加価値税消費者に対する中立的な税であるとみなすべきでない。付加価値税は、それがすべての消費財およびサービスに対して同一に課税される限り中立である。しかし、そのような税はヨーロッパにおいても実在していないし、またアメリカにも存在しないであろう。別々の税率、差別、除外および区別のリストは無限にある。 アメリカの消費税論議に対して反対論を述べていたわけでございます。  御承知のように、アメリカは連邦レベルで消費税導入を再度図っていたんですが、それが実現しなかったのは、やはりこの逆進性の問題、それを緩和する福祉プログラムがどうもあんばいが悪かったというか、そういうことのようでございます。  それで、この逆進性の問題については、中小企業の価格転嫁でございますね、政府等では今非常に消費税の転嫁はうまくスムーズにいっているというそういうデータが流れているわけでございますが、私が地方都市、特に商工会の依頼等で全国津々浦々回って、そこの商工会長などの意見を聞きますと、地方都市の場合は過疎化が進んでいて、とてもじゃないけれども価格に転嫁できる状況ではないというわけです。どこの商工会長さんも、大体転嫁率というのは五〇%以下というか、それが一般的でございました。  最後に、自民党の見直し案について意見を述べさせていただきたいと思います。  この見直し案を見た感じでは、現在、原則外税方式、それを内税化にして、いわゆる税隠しの一言に尽きる感じでございます。小売段階での食料品の非課税化ということは、小売業者が負担した税金を価格に転嫁するというと今まではちゃんと原則外税で三%ということが明示されたわけですが、その転嫁部分が内に隠れて、見えない税金にしてしまう。そのほかの課税物品についても、行政指導によって総額表示方式を取り入れるということをうたっているわけでございます。御承知のようにこの総額表示方式は、EC諸国の付加価値税をとる国はほとんど採用しているシステムでございます。これは言ってみれば内税そのもので、例えば西ドイツの場合は、御承知のように、値札の中に付加価値税が全部盛り込まれております。それで、レシートには虫眼鏡でしか見えないぐらい小さな字で、上の価格の中には一四%のメーベルシュトイエル、付加価値税が含まれているということが書いてございます。  したがって、そのようなシステムがEC諸国で行われておりますので、EC諸国の人々に私もいろいろインタビューしたんですが、付加価値税の納税意識というのはほとんどないわけですね。極端な例で、西ドイツの場合は、例えば標準税率が一四%ですが食料品などについては七%です。それで、相当数の方にインタビューしたんですが、一四%の税率はほとんどの方が御存じだったんですが、食料品についてはいわゆる内税になっていますから何%払ったという感覚がないんです。正しくは七%なんですが、六・五とか八だとか九%、そういうような状況でございます。  私は、今度の消費税法で一番評価できる点というのは原則外税になって、従来見えない税金が主だった物品税とか酒税等々、それが見える税金になったということで、非常に納税意識の高揚というか、評価していたんですが、それを今度の見直し案では、そっくりいわゆる見えない税金、税隠しとして内税に持っていってしまう、そういうことは非常に民主主義というか民主税制というかではないと思うんです。  それで、EC諸国で御承知のように税率が数回にわたって各国とも引き上げが行われたというのは、いわゆる内税になっていたから、そういうことでございます。したがって、今、消費税で一番危惧されるのは税率のアップですね。これは、内税になりますと消費者にとっては見えない税金になりますので、どんどん上がっていってしまう。一%の税率で二兆円の増税になる。EC諸国で付加価値税のことをレべニューマシン、税収増加装置と言っているわけですね。日本流に言うと打ち出の小づちと言うんで、そうならないためにも、絶対に自民党案の食料品非課税等を含めたいわゆる総額表示方式には私は反対でございます。  時間もございませんので、最後に結論を申しますと、自民党の見直し案は消費税廃止するよりも難しい、これが私の見解でございます。
  6. 中村太郎

    委員長中村太郎君) どうもありがとうございました。  次に、古岡参考人お願いいたします。
  7. 古岡勝

    参考人(古岡勝君) 私は、かつての物品税等個別間接税を納税しておった団体、それから現在の消費税を納税しておる団体の、全国間税会総連合会と申しております、全間連と申しておりますが、その会長の古岡勝でございます。きょう、こうしてこの機会を与えられましたことを感謝申し上げます。  さて私は、消費税廃止しまして、代替財源として廃止された物品税等の個別間接税を復活させようとする税制再改革関連法案には反対するものであります。先般の税制改革は、サラリーマンの長年にわたる重税感、すなわちクロヨンとかトーゴーサンとか言われておりますが、不公平感を解消するための所得減税や、これまでの個別間接税のひずみ、ゆがみの是正など、従来の税制が抱えておりました諸問題を解消し、所得、消費、資産の間で均衡がとれた安定的な税体系を構築し、さらには我が国の将来を展望しまして、高齢化が急速に進み、働き手が少なくなる、その中で豊かな長寿社会を築くために国民全体で広く公平に負担を分かち合うための改革でありまして、消費税制度はその中の重要な骨組みとして、今後全力を挙げて長期的に安定した税制として定着させるべきものであると存じております。  そこで、まず物品税について申し上げます。  代替財源として廃止されました物品税等の個別間接税を復活させようとする法案に対しまして、旧物品税の納税者としましての立場から、旧物品税の抱えておりました問題点を中心に申し述べたいと存じます。  第一に、個別に課税されるものと課税されないものとの間でアンバランスが生じておりました。旧物品税は、課税しようとする物品を一つ一つ法律に規定してその範囲を定めていく、いわゆる個別間接税となっていました。こうした個別間接税は、国民所得水準が一般的に低く、庶民が使うものとか金持ちが使うものとかというように、消費者所得階層と物品やサービスの消費との関係が明らかな時代におきましては、公平感のある税制として機能していたと言えると思います。  しかしながら、近年、私たち国民所得水準は上昇して大多数の者が中流意識を持つような社会になり、国民の消費動向が多様化し、個々人の趣味や生活信条によって、お金の使い道がさまざまに異なってきております。  こうした消費態様の変化とともに、世の中のあらゆる商品、サービスについてぜいたく品か否かを区分しようとしても、共通の基準を見出すことは極めて困難な時代となっています。例えば、白黒のテレビのように、今や一般家庭ではほとんど見られないものや、ほとんどすべての家庭にある電気冷蔵庫や電気洗濯機が課税されていた反面、新しい商品でございます、各家庭にもございますが、パソコンやワープロには課税されていませんでした。また、ゴルフ用品は課税なのにテニス用品は課税されないというのもしばしば取り上げられる例でございます。ゴルフはお金持ちのスポーツ、テニスは一般的なスポーツという考え方からこのようになったものと思われますが、これも今日ではアンバランスではないかという声が大きくなっております。  このように価値基準が不明確になっている状況のもとでは、課税される物品と課税されない物品との間のアンバランスが拡大し、特定の物品を選定して課税しようとする客観的、合理的基準を求めることは極めて困難でありますし、新しく開発されました物品に対して課税が追いつかないという問題も生じていました。  第二に、旧物品税が物に対する課税を中心としていたために、サービスに対する課税が十分にできていないという問題がありました。私たちの生活の多様化、サービス化への進展に対応できず、消費税導入以前はサービスに対する課税はわずか五税目、それは入場税、通行税、娯楽施設利用税、料理飲食等消費税、入湯税のみでございました。近年、消費支出に占めるサービス支出の割合は五〇%を超えると聞いておりますが、経済のソフト化、サービス化が急速に進んでいるにもかかわらず間接税課税されるものはわずかであり、物に対する課税サービスに対する課税との間で大きなアンバランスがありました。  第三に、もともと個別消費税は、昭和十二年、北支事変の戦費調達の税として誕生しまして、当分の間の施行ということが五十数年に及んだものでありまして、今日、社会主義国も含めまして、世界のどの主要国を見ても既に廃止されております。個別消費税制度をとっていたのは日本だけで、まさに日本は世界の歴史の流れに逆行していた孤児と言わざるを得ないと思います。  第四に、今日、国際化が経済の隅々にまで及んでいる我が国で特定の物品に高率の課税をしていたことに対しまして、関係国の批判、貿易摩擦の原因となっておりました。例えば例を挙げますと、普通の時計は一〇%でございますが、貴金属時計ということになりますと三〇%の税金がかかります。ですから、普通の時計にほんのちょっとの、例えばダイヤモンドでも一万円、二万円というのがありますから、仮に一万円のダイヤモンドを二つくっつけて見ばえをよくするというようなことにしますと、それはもう貴金属時計ということになって三〇%の税率になります。そのために、スイスから輸入する時計はそういうものがたくさんございますので、日本は一五%、我々はなぜ三〇%だというスイスからの批判がたくさん出ておりました。また金貨につきましても、これは純金ですから一五%ということになりますが、これはカナダのメープルリーフ金貨を申しておりますが、純金の金貨は一五%、しかし純金の地金は非課税、これもおかしいじゃないかというカナダからの批判を浴びておりました。旧物品税が復活しますと、これらの批判もまた復活するということになるわけでございます。  このように、消費税廃止して物品税などの個別消費税を復活させようとすることは、国際的な見地から見ても問題があると思います。  第五に、事業者から見た執行上の問題点でございます。  まず一つ、旧物品税課税対象物品を法律上で限定列挙しておりました。したがいまして、現実の物品が物品税法上の課税物品に該当するかどうかということの判定が必要であります。この課否判定は私ども事業者にとりましては大変重要な問題でありました。例えば、税法上、テレビは、ブラウン管を使用したテレビをテレビということに規定しておったわけでございます。液晶テレビが新製品として市場に近年出回っておりますが、しかしそれは課税されません。技術革新の時代に新製品を次々と開発しますと、それが課税物品に当たるか当たらないかの判定は大変難しい問題でございました。  さらに、課税物品として個別に掲名された物品でありましても、一定規格のものを非課税とする制度や、といいますと、例えば桐だんすでございますが、桐だんすは御存じのように課税しないということになっております。ところが、その桐だんすでありましても、例えば極端に言いますと、一ミリか二ミリの板に、キリをずっと薄く切りましてぺたっと張りつける。そうしてつくりますと、それは外見上は全く桐だんすになってしまいます。消費者はそれを見てもわかりません。しかし、そのキリが現実には五〇%以下しかなかったとした場合には課税になってしまう。五〇%以上のキリがあれば非課税、なければ課税消費者には全くわかりません。  そういうことを見ろといっても見ることはできない。それをまた、悪いことではございますけれども、製作者はそれをうまくごまかす。ごまかし通したらもうけものだというようなことで、悪い風習はだんだん広がっていく。消費者は買ってみたら、ちょっと傷が入ったらこれは桐じゃなかったということで泣きを見るというような問題もあったわけでございますが、これは大変大きな問題と思います。また、一定金額のものを非課税とする制度など複雑な課税関係となっておりました。  まだ例を挙げればたくさんございますが、時間がございませんのでこの程度で終わっておきますが、物品税の納税者の事務負担は大変なものがあったわけでございます。今回導入されました消費税は、こういう問題点につきまして明快に答えを出してくれたと思っております。原則として実額で三%ぽっと掛ければそれで済むということでございます。大変思い切ったいい制度だと思っております。  このように、旧物品税は前時代の遺物ということが申されようかと思います。長年、個別間接税の納税者として実態を見てきた私たちから見ますと、このように多くの問題点を有していた旧物品税を復活させようとすることには絶対反対せざるを得ません。消費税は、これまで申し上げたように、個別間接税制度の持つゆがみやひずみを是正するもので、長期的に安定した税制として定着させるべきものと考えております。  第六に、財源としての個別消費税を考えたときに、酒やたばこのような嗜好品はその消費の伸びに限界があります。また、物品税など個別間接税制度のもとでの特定の物品、サービスに対する課税では財源的に限界があります。事実、税収全体に占める間接税の比重が低下してきております。消費に対して広く薄く負担を求める消費税導入は、安定財源としても肯定されるものと言えます。  二番目、次に、消費税廃止についての反対意見を申し上げます。  第一に、二年間の暫定措置として旧物品税を復活し、二年後には国民合意に基づき新たな間接税導入するとされておりますが、具体的にどのような税制になるのか判断の手がかりがなく、特に私ども中小零細業者は不安感を抱いているのが事実であります。  第二に、さきの毎日新聞の記事によりますと、将来の物品、サービスを含めた合理的な税制の姿を挙げられており、また、間接税は基本的には残すとされておりますので、これらから推測しまして、二年後の税制改革は、結局、最終的には現行消費税に類似した税制になるのではないかという町の声も多く聞かれます。  さらに、読売新聞を見ますと、十一月十二日の社説によりますと、「再改革案は「サービス流通への適正な課税」を考えるとしているが、八日の答弁では「大型間接税は想定しない」としている。だが商品のほかにサービス流通へも課税すれば結局は消費税と同じタイプの間接税にならないか。一体、再改革では、どんな税体系を考えているのか。」、そういう記事が掲載されておりました。  もしそうだとするならば、消費税廃止するのではなく、それを見直して国民の納得が得られるような姿にしていくのが本筋ではなかろうかと願うものであります。  第三に、今回の消費税導入のために、私ども事業者は短い準備期間にかかわらず、膨大な設備投資と労力とを費やしました。その消費税廃止してもとに返せば、また新税制の創設と同じで、新たに投資と労力を費やすこととなるわけでございます。さらに二年後、新税制が施行されたとき、全国の事業者は三度目の投資と労力を強要されることになるわけでございます。  このように短期間で頻繁に税制が変更されて迷惑をこうむるのは我々国民であり、特に事業者は三度にわたる経理システムの変更、値札の書きかえなど、多大の投資と複雑煩瑣な事務量の増加により耐えがたい苦痛に見舞われることとなります。  最後に、まとめでございます。  所得、消費、資産課税の構成比から見て、日本の直接税への依存度は先進諸国の中で最も高く、間接税の比率が最も低くなっておりました。このことは、サラリーマンを初めとして、納税者の重税感、不公平感の高まりとなっていたわけであります。所得課税の負担を軽減し、消費に応分の負担を求めた先般の税制改革は十分に理解できます。また、廃止された物品税等の個別間接税については、先ほど申し上げましたように不合理、不公平などの諸問題を持っております。それらを解決するためには、特定の物品やサービスに対する課税でなく、原則として消費一般に広く薄く負担を求める間接税制度を採用することが必要であるとの考え方に基づき導入された消費税は妥当な選択であったと思います。  しかしながら、消費税に対する国民の見直しの要望が強いことも事実です。いかなる税制社会経済に適合するよう不断に見直しを行うことが必要であります。特に消費税については、我が国にとって初めての税であり、実施状況を十分に把握し、事業者消費者双方の意見に耳を傾け、消費税を取り巻くあらゆる事項について議論した上で慎重に検討されるべきものと考えます。  以上、私見を申し上げましたが、消費税廃止の代替財源として廃止された物品税等の個別間接税を復活させようとする税制再改革関連法案には反対するものであります。むしろ消費税については、二十一世紀に向かっての安定した税制として定着させるべきものであると存じます。  終わります。
  8. 中村太郎

    委員長中村太郎君) どうもありがとうございました。  次に、中村参考人お願いいたします。
  9. 中村紀伊

    参考人中村紀伊君) 主婦連の中村でございます。  初めに、公約を守って大変御苦労をなさいまして四野党方々消費税廃止法案をちゃんと提出してくださった、そして、国会で堂々と大臣席にお着きになって御説明をなさっている姿を見て私どもは非常にうれしく思いました。まずそれのお礼を申し上げたいと思います。  夏の参議院選挙消費税に対して国民ノーと言ったと思います。私たちは、公約された各党が、野党消費税廃止法案を、そして自民党は見直しをするとおっしゃったのですから見直し案をきちっと国会にお出しになって、そしてきょうのようなこの席、いろいろな税特の審議でその両方が国民の前で開かれた討論をされる、問題点についていろいろな討論をされて、そしてそれが解散総選挙によって国民がその開かれた討論を参考にして選挙をする、そこで国民判断を下すんだと、そういうことを求めて繰り返し私どもは要望してまいりました。でも、結局自民党はついこの一日にやっとその大綱を出してくださいました。  思い切った見直しをする、大幅なのをする、私たち国民は非常に幻想を抱いて、どんなすばらしい見直し案が出るのかということでさまざまな幻想を抱きました。ちょこちょこあれも非課税になる、ここも直す、ここもこうなると、いろいろな首脳部の方々の御発言がございまして、それを期待して、見直し案でうまくいくならばそれもいいんじゃないかと考えた国民もたくさんいたと思います。  しかし、現実に出てまいりました見直し案というのは、私どもが期待していたものとは非常に違っていた。そしてここで、この議論の中で初めて消費者の言い分をもっと聞くべきだった、消費者の意向を入れて見直し案をつくるというお言葉をたびたび伺いまして、遅きに失したとはいえ私どもにとってはこれは自民党が大変よくお考えくださったというふうに考えたわけでございますが、しかし最後に出てきた見直し案は、結局消費税全体の公平公正な立場国民の利益をどう守るかというような見直し案ではなかった。本質的なものではなくて、国民のさまざまな要望の一部をつまみ食いしていかに選挙にそれで勝てるか、どういうふうにしたら大幅に見えるかという、そういう議論に終始したのではないか。  二日間のさまざまな状況を新聞やテレビで国民はじっと見ておりまして、やっぱり自民党は変わっていないんじゃないかな、国民があの参議院選挙で本当に消費税について怒りをぶつけたということについてわかっていないんじゃないかというように思ったと思います。そして、それを期待していた国民は非常にがっかりしたというのが現実でございます。これを思い切った大幅なという公約からいえば、それはまた一つ公約違反ではないか。私どもは初めからこういう今の消費税の仕組みを残したままで大幅な思い切った見直しはできないんじゃないか、やればますます不透明なものになるんじゃないかというふうに考えて廃止を主張してまいりました。  しかし、やれるのかな、やればやれるのかなというふうにも思っておりましたけれども、そうでなかったということはこれは公約違反ではないか。私が公約違反という言葉を申し上げますと、またおまえはそれを言うのかというふうにお思いになるかもしれませんけれども、これは国民の頭にしっかり焼きついているんですけれども、中曽根内閣のときに大型間接税導入しませんと中曽根さんが同日選挙の前にテレビで何回もおっしゃった、それが出てきます。  それからもう一つは、昨年十月、この税制特別委員会自民党が単独で強行採決をしたあの情景でございます。大変な怒号と喚声の中で強行採決されました。そして、万歳をする方もいらっしゃいましたし、リクルート議員の方がにっこり笑っているところも大映しになりました。情報社会というのはそういう国会の動きがすべて茶の間で見られる。しかも、一回でなくて、この消費税問題が出てくると必ずその部分が何回も放映されるということは、国民の頭の中にそれがしっかり焼きついているんだ、それをお忘れになってはいけないと思います。ですから、見ていた人たちがこの国の議会制民主主義はこれではだめになるんじゃないか、特に主婦たち、女の人たちは非常に危機感を持ちました。そして、その女性パワーの爆発が参議院選挙で、男に選挙は任せておれないんだというような形でああいう選挙結果が出てきたというふうに私は考えております。  ここで申し上げることもないと思いますが、税制は国政の基本であって、何よりも国民の理解と信頼がなければ成り立たないものだと思います。 消費税は、そのスタートからそういう問題について全く手続を間違った、そして信頼を失ったということだと思います。ですから、私どもは消費税廃止して、そして国民意思を尊重した税制改革を一から築き上げるべきだというふうに思っております。  私たちの主張は、生活費課税、応能負担の原則に立った公平公正な税制の実現ということを求めております。土地や株で巨額な利益を上げているのを放置したり、法人にさまざまな優遇措置を残したり、さまざまな不公平税制をまず是正すべきだ。そして、それをしないのに弱者に負担を強いる消費税のみを導入するということ、まず消費税導入するということだけに狂奔するということは、私どもは全く許せないことだというふうに考えております。  それから、自民党消費税見直し案について意見を申し上げたいと思います。  いろいろ二転、三転しまして最後に、食料品非課税というのが国民の期待でございましたが、小売非課税流通段階は一・五%の軽減税率という妥協案で成立いたしました。政府は、この部分の減税の総額は一兆一千四百億円、そういう発表をいたしております。食料に関しては九千九百億減税になると。しかし、静岡大学の税制研究チームのシミュレーションによりますと、この消費税減収分は六千百八十四億円、食料は五千二百億円、その他に家賃とか出産費とか入学金などが一千億というふうになっております。この間のNHKの番組でも他の学者の方々も大体そうではないかというふうに肯定していらっしゃいましたが、そういうことになりますと、一世帯で平均しますと年間一万六千三百円、食料品のみですと一万三千七百円、一カ月で千百円の減税だ、これでは思い切った見直しとは言えないんじゃないかと思います。それで、もともとわかりにくかった消費税の仕組みがますますわかりにくくなって、不透明になって、小売段階の非課税というのが果たして消費者にとってプラスなのかどうかということを考えるわけでございます。  それからもう一つ、私たちはその何千万だかの減税分というものも、では消費者にとって本当に価格が下がるのだろうか、そこのところで静岡大学の先生方は一・四四%計算上は下がるという数字を出していらっしゃいます。しかし、そんなに下がらないんじゃないか。なぜかというと、末端非課税ですから、先ほどからもお話が出ていましたように内税になるわけです。ですから、一体我々の払った税金は幾らなのか、その流通段階でかかった税金をどうやってコスト転嫁するのかということははっきりしないわけです。そして、円高差益の還元というのは、なかなか時間をかけてもちっとも下がってこなかったわけですね。上がるときはすぐ上がるけれども、下がるときというのはなかなか下がらない。  消費税導入の四月に、政府や大蔵省は総力を挙げて三%の税率は転嫁しろ、物価は上がるんだと繰り返しおっしゃいましたから、転嫁の方は実にスムーズにいきました。しかし私は、これを下げるということは非常に難しい。こういう不透明なやり方では物価が思うように下がらないのではないか。また、逆に転嫁できない小売商の方々も出てくるんじゃないか。今でも非課税業者の方で転嫁しないで頑張っている方もありますから、その方々は値下げはする必要もないということだと思います。そういうことを考えますと、これは大幅ではないんじゃないか。  そしてもう一つは、小売非課税ということは内税ということでございます。ということは、大蔵省も政府もこれからは総額表示の問題で内税にしたいんだということをずっとおっしゃっていらっしゃいました。痛税感がなくなるということは税率アップにつながるのではないか。  また、もう一つ危機感を持ちますのは、広く薄く、だから三%なのだということを繰り返し私どもは聞かされておりました。これが食品といろいろなもので狭くなるわけです。その分の減収率を結局厚くしなければ将来の消費税は成り立たないのではないか。そうすると、税率アップということが非常に心配になってきて、三%はいつまで続くのだろうかという気がいたします。  それからもう一つ、複数税率が入ってきたわけでございます。食品を軽減するんだということですけれども、複数税率が入ってきた、しかもゼロ税率でなかったということは、ゼロは倍にしてもゼロですけれども、一・五は倍になり三倍になる可能性もあるわけでございます。ですから、ヨーロッパの諸国を見ておりますと、一六・五と一〇・三とか、一〇%と五%とか、さまざまな複数税率が入っておりますけれども、そういうところにもつながっていくんじゃないか。いろんな心配をしております。  もう一つ消費税の持つ基本的な欠陥ということで挙げられておりました簡易課税とか免税点とか帳簿方式とか、そういう問題については全く触れられなかった。学者の方のお話を伺うまでもなく、これでは本当に消費税を見直したとは言えないんじゃないか。もともと、これは売上税の反対のために、業界の方々に賛成を得るために簡素ということで、公平、公正は横に置いてちょっと簡素の方を広げたんだ、これは御説明を伺ったことがございますけれども、そういうところは手をつけなかったということも問題だと思います。自民党の見直し案は国民に幻想を与えて、そしていろんな期待を膨らませ、見直し案を支持するという統計の結果も出ておりました。しかし、最近になりまして、この見直し案が出てから、それからこの審議でなかなか見直し案が出てこないという時期にだんだんまた状況が変わってきたということも私は申し上げたいと思います。  経済企画庁の外郭団体である日本リサーチ総合研究所が十月上旬に二千人の方たちの調査をいたしました。消費税を一たん廃止税制改革をやり直すが四八・一%、見直し修正を行った上で存続が二九・五%、このままでいいと思わないがどうしたらよいかわからないが一五・五%、現状のまま続ける一・八%という結果が出ております。ほかの調査でもこういうような調査がまた出だしたということは、自民党の見直し案がなかなか出てこなかった時期に出たわけでございます。それから、この見直し案が出てから、私どもことしの初めに消費税一一〇番というのを設けまして、さまざまな声を皆様から受けました。それはもう終わったのでございますけれども、その一一〇番のつながりでいろんな方からお電話がございますが、やはり見直しを待っていたけれどもこれでは期待外れだった、これでは廃止しかないという声が、これで見直しができたという声よりも数倍多いということを申し上げたいと思います。  この消費税導入が四月でございましてちょうど七カ月、今日ほど消費者税制について関心を持っている時期はございません。みんな実感して、そしてみんな廃止論とか見直し論とか一人一人がはっきりした意見を持って行動するようになっております。こういうときにぜひ国会先生方、与党も野党も一緒になって二十一世紀に向けて一体税制はどうあるべきなのか、私は一応廃止してそれを検討していただきたい。そして、本当に消費者の声を聞くとおっしゃるならば、国民の声を聞いて、そして納得のいく、合意できる税制を改めてつくり上げる、そういう行動に出ていただきたいということをお願いいたしまして、私の意見陳述を終わります。
  10. 中村太郎

    委員長中村太郎君) どうもありがとうございました。  以上で参考人各位の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 宮澤弘

    宮澤弘君 まず、河野参考人に伺いたいと思います。  先ほど河野参考人は、消費税廃止する法律等九法案反対立場政治論税制論ということをまず最初にお述べになったわけでございますが、最近の国民世論の動向をマスコミ等が調査いたしました結果によりますと、廃止論よりも見直し論の方が次第に多くなってきております。その辺の国民の心理というものをどう分析なさるか、まずそれから承りたいと思います。
  12. 河野光雄

    参考人河野光雄君) 簡単にお話ししたいんですけれども、きのう日本経済新聞が、今、宮澤先生おっしゃったことに関連しますけれども、世論調査をやったならば見直し論対廃止論は二対一の比率になってどんどん開いているということがありました。政党支持率もどんどん変わっているということがありました。私は、業者の人とかいろんな方、何百人の方とここ二年間随分この議論をやりましたけれども、明らかに税制の中で間接税というのはやっぱり必要なのかもしれないなという判断が少しずつわかってきている。消費税天下の悪税だというのはひょっとすると間違っているかもしれない。もしそれが正しいならば、ヨーロッパ、アメリカの全国民はもっと高い税率の下で呻吟しなくちゃならぬはずなんですね。全然そんなことは起こっていないんですよ。だから、宣伝はいろいろあったかもしれないけれども、考えてみればこれは必要なのかもしれないということが少しずつ行き渡ったかもしれない。  それから現実に毎日毎日の、八百屋さんに行く、魚屋さんに行く、デパートに行く、スーパーに行く、いろんな行動を通しながら、一つは僕は明らかになれだと思いますけれども、三%を家計簿でいろんな調査されている御婦人方が随分いらっしゃって、しかし同時に、よくよく考えてみれば、今度の年末調整でよくわかりますけれども、減税もあるんですよ。それを全部棚上げで議論をやっているんですよ。それもおかしいじゃないかということが、家庭の中で、おやじさん、サラリーマン、主婦、パートの間でも少しは議論されるようになったのではないかという気がします。  やっぱり七月二十三日という時点は、今から考えてみれば異常な時点だったんですよ。あれが国民の最終審判なんだということは絶対ありません。もしそうだとすれば、今の世論調査の変化というのをどう考えるのか。次の衆議院選挙でどうなるか知りませんけれども、仮に自民党が勝ったら国民の総意は見直しにあったという判定でおしまいになるわけでしょう。本当はそうではなくて、その時点でいろんな感情的な起伏その他があるけれども、毎日毎日の生活の中で少しずつ理解が深まっていくプロセスが今進行中だと考えるのが、特定のイデオロギーに偏らないで広く税制を考えながらいけば、それが一番ごく普通の解釈なのではないかと私は思います。
  13. 宮澤弘

    宮澤弘君 もう一つ承りたいんですが、先ほど税制論という立場から現行の税制、これまでの税制というのは直接税偏重であった、こういうお話がありまして、私どももまことにそのとおり考えているものでありますが、そこで直間比率の問題について伺いたいんです。  この特別委員会におきましても、直間比率について幾つかの論議が行われました。発案者の方からのお話は、直間比率というのはあらかじめ何%と設定するものではなくて結果として出てくるものである、そういうお答えがあったと記憶いたしておりますし、またこれまでの歴代の政府の財政当局者の答弁も大体そういう答弁が多かったというふうに私も思っております。しかしながら、今伺いたいのは、そういうように余り先験的に何%ということを決めて税制をいじるのではなくして、税制をいじった結果こうなったということでも結構なのでありますけれども、大体どのぐらいが結果として出てくるものとして適当であるのか。外国の諸制度等も御研究になっておられると思いますので、そういうことも頭に置いた上で、我が国の直間比率としては結果として大体どのぐらいのものがいいのか、こういうことについて御所見を承りたいと思います。
  14. 河野光雄

    参考人河野光雄君) 私は六、四ぐらいがいいんじゃないかと思います。それはもう最終的なお答えみたいなものなんですけれども、一番私がこの議論で不思議に思うのは、間接税体系を入れないで直接税を中心にこれからもやっていくということになったときに、だれがその負担を背負うんですかという議論は、例えば労働組合の支持を受けている社会党も民社党もあり得るわけだけれども、そこに一番いくんです、だれがどう考えたって長い目で見れば。そこのところの議論を全部外してやっていることは不思議でしようがないですね。  実はサラリーマン諸君はわかっているんですよ。わかっているけれども女房を抑えることができないとかいろんなことがあるんです。家庭の中で今は亭主の権威は全く地に落ちていますよ、社会において、企業の中において、家庭において。だから、ますますこの議論が混迷しているわけですよ。よくよく考えてみれば、直接税中心で企業とサラリーマンから取るしか話はないんですよ。だって、労働組合の中でだってわかっている人は全部わかっているんですから。私はたくさん知っていますけれども、自動車労連を含めて。とすれば、長い目で見ればいろんないきさつがありますよ、政治手続論のことをちょっと別にすれば。だれが選択しようと、野党の改革の中で出ている協議会でだれがどういう先生を五十人集めて協議されようと、この議論を抜きにした議論はあり得ませんよ。それは大まかに言えば六、四ぐらいがいいんではないかというふうに感じとしては思っています。
  15. 宮澤弘

    宮澤弘君 もう一つ、きょうの公述をされました中で伺いたい点は、資産課税の適正化をやるべきである、こういう御趣旨の話があったと思いますが、それについて少し具体的に御所見を承りたいと思います。
  16. 河野光雄

    参考人河野光雄君) 二つあると思うんです。一つは、税収を増加するのに消費税をやめたってこちらで金は取れるよという発想が一つあるでしょう。これも一つ考え方だと思います。もう一つは、土地基本法案が間もなくここを通過すると思いますけれども、土地というものの利用をなるべく公的な枠の中で決めるんだという方向がはっきりするならば、その方向に向かって土地を動かすのに税制は側面からどれだけの援助ができるかという、これは増収論ではないんです。税制をてこにして土地政策を進める観点からの税制論は、今の議論は二つ混在していると思います。しかし、私はどちらの議論もそれぞれ理があって、それを全部勘案しながら、若干時間がかかるかもしれませんけれども、話をどんどん詰めるべきだと思うんです。ただ増収論だけで議論をやったならば、現実的には固定資産税の話をやったって、すぐに反対論だけがちまたにあふれるんです。相続税もそうです。それだけ簡単にはできないんです。企業から取れという議論はありますけれども、これをやるなら、税の理屈からきっちりと組み立てなければ僕はだめだと思いますよ。  いずれにしても、二つのアプローチの仕方があって、両方をあわせてやらなければ土地を中心にした資産課税論というのは正当性を欠くんではないか。どちらかに暴走すれば結果はよくないのではないかと思っております。
  17. 宮澤弘

    宮澤弘君 その点についてもう一度承りますけれども、土地政策としての課税という側面、それから税制自体としての側面、現在の議論は土地政策としての税制の方に少し偏り過ぎているのではないかと、そういうお気持ちでございましょうか、そこを承りたいと思います。
  18. 河野光雄

    参考人河野光雄君) 最近、建設省が十一月の末に案を公表して、これからどう扱うか問題だと思いますが、あれは土地政策論、住宅政策論、大都会における勤労者に対する住宅供給論にウエートを置いたものですね。それは建設省の役割がそうですからそれは構わないんですけれども、私はどちらかといえば国民の要請というのはやっぱり半々ぐらいじゃないかと思うんです。  土地政策を真っ当に進めるために、税制をてこにどれだけ有効に使えるかという観点と、それから、資産格差がこれだけ開いて、地方から志を抱いて東京に来て、役人になっても何になっても構いませんけれども、女房が都会人でなければ、社長になろうと今の状態では恐らく都会では生涯家一軒建てられませんよ。こんなばかばかしい世の中というのは考えられないんですね。数は少ないです、二割ぐらいの人ですけれども、あとはみんな相続でいずれ来るというふうに思っている人がたくさんいるわけです、持っている人にプラス。ですから、そういうことを考えてみれば、やはり所得再分配という観点も入ってこざるを得ない。やっぱり半々ぐらいだと思います。むしろ今の議論は、人によって随分立場があって違いますけれども、今猛然と沸き上がっているのは、後の方の議論の方がパワーを、マグマをどんどん国民の間に蓄えつつあるという気が私はしています。
  19. 宮澤弘

    宮澤弘君 次に、井上参考人に承ります。  ある新聞でございますが、これはちょっと三カ月ぐらい前でございますので、あるいはお考えがお違いになっておられればそう言っていただきたいのでありますけれども、ある新聞で、井上参考人の御発言ですが、「消費税廃止した場合の財源確保は可能か。」、こういう質問に対して「複雑に考えるのではなく、法人税減税と物品税等の間接税廃止をやめて、元に戻せばよい。」、こういう発言をしておいでになりますけれども、このお考えは今でもそのとおりでございましょうか。
  20. 井上隆司

    参考人井上隆司君) お答えいたします。  今でも変わりはございません。
  21. 宮澤弘

    宮澤弘君 そういたしますと、法人税の減税を戻せ、それから物品税等の間接税廃止もやめろ、こういう御意見でございますけれども、現在の法人税というものについて、諸外国に比べて高いというような議論がございますけれども、それについてどうお考えでございますか。
  22. 井上隆司

    参考人井上隆司君) お答えいたします。  確かに今先生のおっしゃったような意見もあることはあるわけですが、私はことしの三月まで長年税理士などをやってきたわけですが、私の今までやってきた経験からいいますと、実際問題、法人税が高過ぎたからといって倒産した会社は皆無だと思います。逆に所得税が高いからといって首つり自殺したというか、そういう人もいないはずでございます。いろいろな方に聞いてみますと、例えば所得税等については、むしろ自分はこれだけ払っているんだという自慢話ですね、ステータスシンボル的な方が非常に多かったというか、そういうことを考えているわけです。  物品税の復活については、先ほど古岡参考人からもお話がありましたように、昭和十二年から五十数年実施されていたわけです。これは、言ってみれば、政府・与党の傘の中で実施されたわけで、もしこの物品税がそんなに時代錯誤だというか、そういうことでしたら、むしろ糾弾されるべきは政府・与党ではないか、そう思っているわけです。それで、野党の方も、この物品税復活については、一応代替財源案の柱になっているわけですが、これも二年をめどにして抜本的に、自民党の見直し案じゃございませんけれども、全体のバランスをとってということでございますので、いわば緊急避難的なことだと私は理解しているわけでございます。  むしろ、現在自民党の方で見直し案、それに対しての減税案というのはまだ出てきませんが、どだい、この見直しか廃止かというか、論議する上においては、全部法案とか代替財源案とかが出た上で、どちらがいいか悪いかということになろうと思いますが、現時点では、自民党の方から法案も減税財源案も出ておりませんので、なかなか比較対照というのが難しいというか、そういう現状ではないかと思うわけでございます。
  23. 宮澤弘

    宮澤弘君 物品税の非常に不合理な点等は、先ほど古岡参考人がおっしゃって、今それを井上参考人も援用されたわけでございますね。こうなったのは、大体、自民党が今まで何十年とやってきたことではないかと。そういうお答えは、私どもずっとこの委員会室でやった場合に提案者の方から常にそういうお答えがございました。たまたま軌を一にしているのか、同じようなお答えがございました。  私どもは、先ほど古岡参考人もおっしゃいましたように、物品税体系に大変不合理な点が多いということも頭に置いた上で消費税というものを導入する考えをまとめたわけなんでございます。でありますから、そういうことから申しますと、経緯は経緯として、私どもはやはりいろいろ問題点があるからこそ新しい税体系に移るという決断をいたしたわけでありますが、先ほどの私が読みました井上参考人のお考えも、物品税をもとに戻すべきであるということであり、野党案も一応二年をめどでありますけれども、ということについては、これはもう非常に不合理なものをもとに戻すということについて、何らお気持ちの中に抵抗をお感じになりませんでしょうか。
  24. 井上隆司

    参考人井上隆司君) お答えいたします。  私自身の個人的な見解ですが、一応ことしの三月までは実施されたわけでございまして、本来今御指摘の不合理な点があったとしたら、政府・与党は責任政党でございますから、それに基づいて直すべきだったのではないかと思うわけですよ。それをそのまま放置しておいたということはいろいろ問題もあろうかと思います。  それで、実際問題、この消費税法廃止法案国会で通ったと仮定した場合、野党の方も、御承知のように物品税等についてはいろいろ問題点というのが山積しているというか、ある程度承知の上だと私は思うんですが、ただ、いわゆる来年の三月廃止ということで緊急避難的に仮に物品税を復活させるというか、その上で、先ほどもお話が出ましたように、二年後をめどに二十一世紀を目指した税制再改革ですか、それを行うというのは、私は何ら不合理な点はなかろうと私自身理解しているわけでございます。
  25. 宮澤弘

    宮澤弘君 もう一つだけ承りたいのでありますけれども、いろいろ野党のお話を承りますと、とにかくどういうものになるかは、国民税制改革協議会でございますか、そこで十分議論をしてもらって決めるんだ、こういうお答えなんでありますが、井上参考人はとりあえず法人税物品税をもとに戻すべきだと、こういうお考えをしておいてになりますが、そういたしますと、二年後か三年後かわかりませんが、どういう税制というものを頭に描いておいでになりましょうか、それを承りたいと思います。
  26. 井上隆司

    参考人井上隆司君) お答えいたします。  二年後、三年後には、これはあくまでも私の個人的な見解ですが、いわゆるEC諸国等と比べて、日本の場合は、御承知のように生産から販売までの流通機構が非常に複雑煩瑣でございます。それで、我が国のいわゆる商慣習もしくは流通機構などを当てはめた場合は、現行の消費税法というのはやはり実情に合わないというか、そう見ているわけです。  それで、私自身思いますには、いわゆる二年後以降の税制改革ということでございますが、行政改革とかそのほか法人関係の特別措置、そういうものを徹底的に整理統合して、もしも財源が足らないというか、そういう段階になりましたら、いわゆるアメリカの州税として実施されている単段階の小売売上税、あれが一番適切、適当なんではないかというので、個人的には十数年そう念じておる次第でございます。
  27. 宮澤弘

    宮澤弘君 次に古岡参考人に承りますが、先ほど来個別間接税の問題点をるるお挙げになって、今度、野党案がもし日の目を見るようなことになればこれは非常に問題であるという御趣旨のお話がありましたんですが、そこで、個別物品税から消費税になりました。そのときにも、いろいろ事務手続、事務負担、経費でございますね、大変いろいろ問題があったんだというお話がありました。そして、今度さらにまた野党案のようになればそういうことをもう一度重ねていかなければならない、そういうお話でありましたが、少し今の事務負担、経費負担ということについてもう少し具体的なお話が承れれば幸いだと思います。
  28. 古岡勝

    参考人(古岡勝君) お答え申し上げます。  一番身近な私の会社から、企業機密じゃないんですけれども、ひとつ申し上げさしていただきたいと思います。  私どもの会社ではコンピューターもIBMの一番超大型を使っておりますが、そうしてコンピューターの要員も二百名ほどおります。これを動員してかなり時間をかけまして、お金としては二億五千万かかりました。そして、もう一つ申し上げますと、私ども決算をやっと終わったばかりなんですが、三月決算じゃなくて途中決算をしておりますので、八月決算を終わったばかりでございますが、残念ながら、その決算が毎年の決算よりも三日おくれました。その三日間とは何かといいますと、この消費税のためにおくれた、こういうことでございます。  これは来年になりますと恐らくもうなれておりますから、もうだんだんそんなむちゃな、自分自身を苦しめることはなく、それを毎月毎月にならしていってうまくやるつもりでおりますが、今回は初めてでございましたので、要するに移り変わりだからそうなったということで、これからやっとなれようとしておるときに、またそれがもう一回やられますと、それがもとに返っちゃう。  私いろいろな民間団体の会長、役員をやっておりますが、その人たちの集まりでいろいろ話しておりますと、皆さん全部そうおっしゃっています。もしももう一回これをやられたら一体おれのところはどうなるのか、おれはもう知らないよ、早い話がもう税金を納めないよと。これは発言としては私が言っているんじゃありません。それほど皆さんがもうあきらめたというか、情けないというか、そんなもの一体おれたちに何でそんな負担をかけるのか。要するに、もうここまで安定してきた、皆さん安定している安定していると言っております。ここまで安定してきたのにこれをまたひっくり返して、そしてまた負担をかけるというのは、ちょっと野党先生方もおかしいんじゃなかろうかと、これは私じゃありませんが、皆さんがそうおっしゃっていますということを申し上げておきます。
  29. 宮澤弘

    宮澤弘君 次に中村参考人に承りたいと思いますが、これから高齢化社会を迎えまして社会福祉関係の費用が大変かかっていくということはもう御案内のとおりだろうと思いますが、そこで、そういう将来の福祉社会ということを考えまして、財源をどこに求めていったらいいのかということについてまずお考えを承りたいと思います。
  30. 中村紀伊

    参考人中村紀伊君) お答えいたします。  そういう議論はこの消費税論議の中でたくさん出ておりますけれども、私どもは、税金を納めないとか納めたくないとかというので女どもは騒いでいると先ほどお話がございましたけれども、そういうことではなくて、やはり納得してそして納めたい、そしてその納めた税金がちゃんと国庫に納まる、透明性が確保されている、そういうことも考えますし、いろいろな意味で高齢化社会が来ることは事実でございます。しかし今すぐに、これだけ自然増もありますし、いろいろな税収が豊かなときに、何かもう目の前に高齢化社会が来るから今消費税をやらなければという非常におどかしのような形で消費税導入を急がれたということは納得がいかない。やっぱりみんなに納得させて税制のあり方をやるべきじゃないか。それから、高齢化社会のために必要だと言いながら、一番弱いお年寄り、年金生活者、年金生活者といってもお金持ちの年金生活者もいらっしゃいますけれども、弱いお年寄りや母子世帯やそういう人たちを直撃する逆進性の強い消費税高齢化社会の税収の増加を図るというその考え方は、私どもは納得がいかないということを申し上げているわけです。
  31. 宮澤弘

    宮澤弘君 国民にもっと納得をさせてやるべきであるということをおっしゃいましたけれども、そういう前提で将来の高齢化社会ということを考えて、国民が広く浅く負担をする間接税的なものが必要だということについては承認をなさいますか。いかがでございましょうか。
  32. 中村紀伊

    参考人中村紀伊君) 間接税を絶対否定しているつもりもございません。しかし、大型間接税がいいかどうかということについては私どもは反対でございます。  この間からの状況を見ておりましても、食品をゼロ税率にするということは、自民党ではどうしても今の消費税体系の中でできなかった。きのう粕谷さんが物品税のことを御発言していらっしゃいまたけれども、私どもは生活費、基本的な生活必需品に税金をかけるというのはとるべきでない。それはやはり逆進性の問題もありますし、いろいろな意味でかけるべきでない。しかし、それは大型間接税の仕組みで、政府税調もゼロ税率はよくないんだというふうな中間答申をしていらっしゃいましたけれども、そういう仕組みでやれないんだと思います。無理にやれば非常に煩瑣なことが出てくるし、それから不透明さが出てくる。我々の納めた税金が国に入らないという問題も出てくる。  だとすれば私は、物品税を復活するとかその他の単段階間接税を復活する、そして基本的に何に税をかけて何に税をかけないかということは国民の中で広く会議を起こして決めていくべきだ。そうでないと、今高齢化社会のために広く薄くとおっしゃいますけれども、薄くなくなってくるんじゃないんですか。どうしても税率アップになる。今国民は三%の消費税を見直すか見直さないかで議論していますけれども、私は、将来の税率アップも踏まえた上で、見直すか見直さないかということを議論しないと問題が間違ってくるんじゃないかというふうに皆さんに申し上げております。
  33. 宮澤弘

    宮澤弘君 ちょっと私、今承りにくかったんですが、単段階の個別物品税を復活する、そうおっしゃったんですか。
  34. 中村紀伊

    参考人中村紀伊君) 個別物品税になるのか庫出税になるのかいろいろな御意見が出ておりますから、それにどういうふうな形が最もふさわしいのか、それは私は専門家ではございませんのでそこまでは詰めておりません。しかし、いわゆる大型間接税的な形でやらない方が日本はいいんじゃないかというふうに私は考えております。
  35. 宮澤弘

    宮澤弘君 時間もございませんので最後質問をさせていただきますが、先ほど生活必需品には課税をすべきでない、こういう御発言がありました。それは食料品だというふうに受け取ってよろしいのでございましょうか。
  36. 中村紀伊

    参考人中村紀伊君) 私は、生活必需品というのは食料だけではない、私どもの消費税一一〇番に寄せられておりますさまざまな声を聞きますと、電気とかガスとか水とかいろいろなものがございますし、交通費もあると思います。そういうきちっとした生活の中で基本的にどうしても必要なもの、この線引きをどこにするかということもまたこれからみんなで議論しなければいけないかもしれませんけれども、自民党の見直し案に求められたものもそういうことではなかったかというふうに考えております。
  37. 宮澤弘

    宮澤弘君 終わります。
  38. 細谷昭雄

    ○細谷昭雄君 参考人の皆さんの貴重な御意見ありがとうございました。  私は、河野参考人にはしかられるかもしれませんけれども、生活者という立場から本当に率直な、素直な御意見をお伺いしたい、こんなふうに思っております。  最初中村参考人お願いしたいと思います。  この消費税を提案しました当事者であります竹下総理が、消費税の九つの懸念というふうに申されておりました。したがって、その九つの懸念はいろいろな点で不合理な点がございますけれども、何といっても我慢できないというふうに言っておられますのは、消費者が納めた税金がそのまま全部は国庫に入らない、この不思議でございます。この点につきまして、中村参考人は主婦のお立場、そして消費者のお立場、しかも主婦連合会というお仕事をしておられるわけでございますので、その生活者の立場からこの消費税の不合理な問題についてどうお考えなのか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  39. 中村紀伊

    参考人中村紀伊君) お答えいたします。  先ほどから申し上げましたように、私ども消費税一一〇番というのを聞いておりまして、納めた税金が途中で一部消えてしまうのではないかという声は業者の方からも、それから消費者の方からもたくさん寄せられております。やはりそれは我慢できないという声でございます。  まず、私どものところに、家賃に税金がかかるのは非常に我慢できないという声がたくさん出ました。大蔵省は、家賃は非課税業者であっても三%かけてよろしい、コストアップ要因もあるのだからということで家賃にかけました。家賃といいうのは東京では非常に高いわけです。五万円、十万円。そうすると、十万円で月に三千円です。非課税業者の人がなぜ三%取っていいのか。建設省はコストアップ要因だけにしろという通達を出しましたけれども、やはり取っていいんだということで取られたわけです。それが非常に多うございました。  それから簡易課税の問題で今ここに数字を一つ持ってきております。私どものところへ寄せられた声でございますが、一年間で三億四千八百万円の年商のあるサービス業の方たちでございますが、この十一月までの決算で課税売上高が二億二千七百二十六万円。そして、その中で仮受消費税、預かり金が六百六十八万八千円ある。そして、それの中で仕入れにかかった税金を控除いたしますので、仮払い消費税が三百七万円。差し引きすると、そのまま税金を納めるとすれば三百六十一万円納める。ところが、簡易課税を選択いたしますと〇・六%でいいわけですから、百三十六万円納めればいい。もちろんそれは、二百二十四万というものは雑収入になるわけですから、半分法人税を取られたとしても半分は残る。ですから年間になると、約半分法人税を取られたとしても百六十四万円は残る。ですから、赤字だったらこれはそのまま入る。そういうような声が盛んに来ております。  もちろん今度は逆に転嫁できないという悩みの声も来ておりますけれども、そのほかにスーパーとか、この間の新聞にはNTTが半年間で五億円運用益が出たというのが出ていましたけれども、そういうものは一体どうなるのか、どうやって消費者に還元してもらえるのか、そういうことも非常に不満の一つでございます。
  40. 細谷昭雄

    ○細谷昭雄君 同じことを古岡参考人にお聞きしたいと思うんです。今のお話ですね、簡易課税非課税事業者が非常に多い、そして限界控除制度をとっておるということについて、中小企業立場から、中村参考人が今お話ししましたような実態について、どういうふうにお考えになるか。
  41. 古岡勝

    参考人(古岡勝君) 私この問題につきましては、いろいろな角度からこれを攻めていって、そして最後に結論を出すべきだということを思っておりますが、おっしゃるとおりに、簡易課税方々それから免税点以下の方々、幾らかのものが懐に入るであろうという疑念は確かに皆さんお持ちと思います。私もそう思います。ただこの制度を決める場合に、四角四面に何でもかんでもこうしろこうしろと言って攻めていく、これはもう正攻法で当然そうしなきゃいけないと思います。もう一つは、そうではあるけれども事業者立場を考えて、力のある事業者はなるほど事務もスムーズにいくでしょう、その規則を守れるでしょう。しかし、守れない事業者もあるはずでございます。その方が多いんです。そして、私先ほども何回も申し上げましたが、力のある者でも多額の金を投資しなきゃならぬ、そういう苦しみがある。また中小企業にしましても、五億でございますが、かなりのお金をかけてやられたはずです。そうしますと、やはり確かに二〇%の上下はありますが、どこかでこれを救ってあげないともう事務手数が大変なことですから。しかも、公認会計士、税理士さんを特別にまた雇わなきゃいけない。職員を雇わなきゃいけない。お金がかかる。そこで、前に前大蔵大臣も国会で答弁されていらっしゃいましたけれども、そのぐらいのものは、計理士分のお金ぐらいは見てあげてもいいじゃないかということも私は一つの大きな立派な理屈だと思います。  そこで、ちょうどその中間をとるというか、苦しみに苦しんで自民党先生方もこの辺で我慢すべきじゃなかろうか、国民の皆さん、消費者の皆さんも事業者の皆さんも、これだけひとつ譲ったんだから両方とも我慢してくれぬかというところがその簡易課税だと思います。  それからもう一つ、三千万以下の免税点につきまして、私、実は私の教え子でさえも、これはサラリーマンですが、免税業者が三%を取るとは何事だと言います。なぜかというと、これはPRが足りない、啓蒙が足りない。この三千万以下の方々でも仕入れに当然お金はかかっているはずですから。そして仕入れに払っておいてそれからなおかつ残ったならば、〇・六%というような計算も出ておりますが、残ったならばそれは所得税の方で取られるはずです。まあ仮に半分とします。それで残ったら一体幾ら残るか。もう本当に雀の涙。その雀の涙が今回のまたこの手数にやはりそれが消えていくとしたならば、私はそれほど目くじら立てる必要はなかろう。むしろそういうふうに、免税業者は三%余分に懐に入っているんだというように言われている、そういう宣伝をされる方が私は悪いと思います。  もう一つ、これは余計なことかもしれませんが、簡易課税の場合に、確かに二〇%というのはこれは一つの線引きであって、一五%の人もあるでしょう。三〇%の人もあると思います、付加価値の。そうしますと、それは将来来年五月以降に時間をかけて、あるいは一五%の業界もあるだろう、二〇%もあるだろう、三〇%もあるだろうというきめの細かい、余りきめ細かくしますと大変ですが、三段階なり四段階なりに分けることも一つの方法かもしれない。そういう見直しは、今まだやっと定着してきてこれからというんですから、もう少し時間をかけて見ていただきたいなと思います。
  42. 細谷昭雄

    ○細谷昭雄君 時間がなくなりましたけれども、井上先生に一言お願いしたいと思います。  といいますのは、十二月四日の当委員会の質疑の中で、橋本大蔵大臣が今回の自民党の見直し案について、これは食料品の値下がりは二%程度ないしはそれ以上を期待できるというふうにお話しになりましたが、食料品の値下がり、そして物価全体に対する影響、この自民党案によっての影響、先生の見通しをお伺いしたいと思います。
  43. 井上隆司

    参考人井上隆司君) お答えいたします。  食料品の非課税化によってどのくらい下がるかということですが、なかなかずばりこのくらいという数字は難しいと思いますが、私の自分自身の考え方ですと、生鮮食料品等については、御承知のように毎日のように上がったり下がったりしているわけで、結果的にどのくらい下がったかというのはなかなか算出は難しいと思いますね。ですからずばり申し上げますと、ほとんど生鮮食料品については私は内税の中で処理されて下がらないと思いますね。多少下がるのは加工食品ですか、ラーメンだとか缶詰等々ですね。それは何か一%程度ぐらい下がる程度で、御承知のように今度非課税化に伴って事務手続、それに伴うコンピューターの改変、ソフトの改変ですか、それとかスーパーなどでのレジのPOSシステム等の改変、場合によってはレジの取りかえというかそういうことが起こりますので、それをやはり価格に転嫁するというかそういうことでございますので、ずばり結論的に言いますとほとんど従来どおりで下がらないというか、全体的に見た場合ですね、そう私は思っております。
  44. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 参考人の諸先生には本当に御苦労さまでございます。  まず井上先生に御質問をいたしますけれども、私たち公明党もこの消費税は早く廃止をしなければいけない、これが民意であると受けとめております。そういう意味で、公約違反についての御見解を伺いたいのでございますけれども、これは六十一年、先ほど中村先生のお話もございましたけれども、特に私が印象深いのは中曽根総理が私たちの神戸の三宮の大丸前の駅頭で数千人の党員の方々、一般の方が集まっている中で、私の顔がうそを言う顔に見えますかとこう断言をしながら、国民が嫌がる大型間接税自民党の党員が嫌がるものは絶対にやりませんと、こういうあれで三百の議席を得られたことはこれはもう周知のとおりでございます。  私もヨーロッパへ選挙制度の研究に参りましたけれども、やはり感心を受けた一つは政策で選挙が闘われるということで、これは当然でございますが徹底をしております。先進諸国のヨーロッパでは、もし総理格の人が、もちろんその下の国会議員でもそうでございますけれども、選挙の公約を裏切るような形でこれを進めていくということになれば内閣は総辞職、その政党も厳しい批判を受ける、こういう厳しい現実を見て帰ったわけでございますけれども。大型間接税導入しない、この選挙公約というものは、やはり今回も見直しが出てまいりましたけれども、私はこの消費税を四月の一日から導入した問題、それから今回の見直しの問題、この自民党さんのあり方については国民の皆さんの総意を受けなければいけない、こういうふうに私思うわけでございます。  そういう意味で、この公約違反について井上先生はいかが見解をお持ちであるかをまず伺いたいと思います。
  45. 井上隆司

    参考人井上隆司君) お答えいたします。  今の御質問のとおり、今回の消費税というのは間違いなく公約違反と私は確信しているわけです。承りますれば、売上税の廃案になるときにですね、衆議院議長の議長裁定、将来直間比率の是正等を含めて審議する等、そういう議長裁定があったから自民党の首脳陣はそこで公約違反というのはクリアされたというか、そういう発言が多いわけでございますが、それはそう思うのは勝手であって、我々有権者の立場からすれば大型間接税導入しないということで一票を投じた、その人の公約違反というのは一向に解消されたわけではないわけです。議員同士で話し合ったから選挙公約の違反が解除されるというのは、一般国民いわゆる選挙民としては全く納得のできないところだと思います。  最近の世論調査等で廃止よりも見直しのパーセンテージが多くなったということでございますが、実際問題、先ほど私の意見を述べさせていただいたのですが、今の状態では見直しというのはできないと思うんです。それにもかかわらず、見直し見直しということをうたって今度の衆議院選挙をうまく乗り切ろうというか、そういうことは非常に国民を愚弄しているというかそういう感じがいたします。見直し論者の方々の御意見でどういう点を見直したらいいのかというか、その先もし見直しができなければあなたは現在の消費税は継続すべきかもしくは廃止すべきか、そういう世論調査のとり方は一つもしていないわけです。私の昨年開設した消費税オピニオンダイヤル、そのときに多数の方の御意見をいただいたのですが、あの当時消費税に賛成した方は二人だけ除いて条件つき賛成だったわけです。それが非常に印象に残っていたわけです。  ですから私は、きょうはマスコミの皆さん方もお見えになっているので、ぜひ世論調査していただきたいんですが、見直し賛成派の人に、あなたはどういう点を見直すべきか、もしそれができなかったら継続か廃止かというそれの世論調査をぜひマスコミの方に早急におやりいただきたいと思うんです。私は、大部分の方はもし自分の見直しができないということになったら廃止、そちらを支持するのではないかと思っているわけでございます。
  46. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私も井上先生の今のお話に同意見でございます。  それで、先ほども衆議院の議長裁定はこの委員会でもやりとりが非常にあったわけでございます。これは原元衆議院議長でございますけれども、選挙区ではテレビの討論会に出られても原さん自身が私は消費税には反対である、こういうふうに明言をされていらっしゃるので、僕たち見ておりながらいろいろびっくりしたりしているんです。  もう一問井上先生にお伺いしたいのでございますが、この税制も国情によって異なることは私は事実だと思います。日本国民性や国情から見て消費税等の付加価値税は果たしてなじむのかどうかという問題も議論の分かれるところでございますが、御見解を伺いたいと思います。
  47. 井上隆司

    参考人井上隆司君) お答えいたします。  先ほども意見陳述の中でお話ししたことと多少重複すると思いますが、日本のいわゆる流通機構というのは付加価値税の母国であるEC諸国と比べて非常に複雑でございます。そういう状況下で、前段階税額控除方式を基本としたこの消費税というのは、とてもじゃないけれどもなかなか定着しづらい側面を持っていると思います。特に問題なのは、流通機構が複雑多岐にわたっていますとやはり販売価格、そういうものが複雑であればあるほど各流通段階の諸経費を転嫁していくという問題になると価格が上昇していくわけです。そうなると、中抜き方式ということでいわゆる中間の中小企業等がどんどん排除されるというか、そういうようなことが含まれているわけです。そういう中小企業なんというのはどうでもいいと見殺しにするというか、そういう理論でしたらば、理屈でしたらば構わないわけですが、一応現在の経済機構を維持するというかそういう立場からいうと、この前段階税額控除方式というのは日本では絶対になじまない、定着しづらい問題だと思うわけです。  一方、それだけの流通段階において付加価値税、いわゆる消費税をずっと維持していくということになりますと、先ほどからもお話が出ていますように、非常に事務手続が国民全体から見た場合ウエートがアップになり、と同時に納税義務者もふえていわゆる役所の事務負担アップ、ひいては税務当局の定員増とかそういうものを招いてしまうと思います。これらの官民ともの事務手数料の全体の経費アップというのは、国民経済にとってこれらの費用というのはひとつも貢献しないわけです。ですからそういうむだはこれから、東西冷戦時代が解けた現在諸外国からは一層経済問題で日本たたきというのが目に見えている状況でございます。  そういうことも踏まえれば余計現在の消費税は、いわゆる国益にとって何らプラスしない、マイナス面が多いわけですから、即刻中止していただきたいというか、これが私の見解でございます。
  48. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 河野参考人質問いたします。  先ほど私とぴったり一致した意見とまた全く反する意見と両方開陳されましたけれども、日本共産党は消費税廃止を公約した党として、これは無条件廃止という立場であります。と同時に、財源案を四会派が出したこと、これが自民党からの格好の攻撃の的になって随分いろんな問題点が出てまいりましたし、また河野参考人が言われたように国民合意のできないもの、こいつを持ち込んだためにまさしく世論が分断されてそれが世論調査にもあらわれている、大変まずかったなということを言ってまいって、攻撃されるたびにだから言わぬこっちゃないということを言ってきたわけであります。しかし、河野参考人には、意見の違う点は別に置きまして、一致した点について若干深めてみたいと思うのです。  一つは、納税者番号問題です。御指摘のように、これは二年ぐらいでとても国民合意のできるものじゃありませんが、もしも納税者番号を導入したとして脱税を図る悪いやつ、これが本当にこれで捕捉され公正な課税ができるのかという問題なんです。脱税を図る連中というのは一番典型的な脱税方式は仮名、偽名方式です。よく言われているとおり、妻が、秘書が、その他戸籍は入ってないけれども特別に親しい関係の人とか、そういうようなことです。もし高額のこういった人々を本当に捕捉しそして課税するには、そういう問題までもコンピューターに入れたらこれは本当に大変なことになるのじゃないか、それこそ人権侵害がまさしく起きるしそれこそ税務署の専権が横行するのじゃないか、行政機構がこういったものを把握した場合は本当に大変なことじゃないかと思うのですが、その点についてはいかがな御意見でしょうか。
  49. 河野光雄

    参考人河野光雄君) 今のコンピューターシステムの能力とそれからこれを完璧にやるならば何兆円の税金をつぎ込んでも構わないということが与野党合意であるならば、今おっしゃったことを付番を完璧にして、それから証券業者、金融業者その他全般の協力を完全に受けるという前提があれば、よその国がやっている背番号制度は実はみんなしり抜けですから、ヨーロッパもアメリカも。  それに比べれば日本はどうせまた律儀なことを考えるから、やるとすれば完璧性を追求しようとするでしょう。そうすれば、今近藤さんが言われたような懸念を払拭するぐらいのことを日本は役人だったらやりますよ。やると思うんです、仮にそれが公平性を追求することだということを皆さんおっしゃるならば。そのことが皆さんの希望ならば、それはそれで私は実はできると思います。しかし、諸外国のケースを見れば、アメリカも背番号制度を入れて随分長いですけれども、それからヨーロッパの幾つかの国がやっていますけれども、これは完全しり抜け。特にヨーロッパについて言えば、キャピタルゲイン特に株式の実態をその背番号制度と称するものを実施している国がカバーしているかというと、ほとんどカバーしないのです。  キャピタルゲインを悪物だと言って騒いでいるのは日本だけなのです。向こうは株が下がって今そんなどころの話じゃない、政治家は。ということもありまして、答えは二つであって、やろうと思えば、本当に細かいところまで全部わかるシステムをつくろうと思えばつくれますよ。しかし、それを皆さんに了解してもらって、結構ですと日本の御婦人や男性が言うかといったら、絶対にそうは言わない。それで、何年も説得にかかりますよ。政治家はそれが正しいと思ったら説得すべきですよ、反対するんじゃなくて。反対するのは簡単ですから、こんな話は。  正しいと思ったら、しかも今度は野党が出していらっしゃるんだから、僕はいつも労働組合の諸君に言うんです、あなた方は今度説得できますかと。あなた方、消費税反対するのは簡単だけれども、この問題はあなた方の責任で出したんだから日本国民に説得できますかと言うと、そんなことはできないと言う。だれにやらせるかというと大蔵省にやらせると言うのね。冗談じゃありませんよ。自分で出しておいて自分が信念を持ってやるのなら、政治家は国民を説得すべきですよ。そこを逃げて回っておいて、あと協議会にお任せして時間がかかるでしょうがなんて言っているのは逃げですよ、それは。
  50. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 もう一点。  サービス流通への課税が、これがやっぱり新しい間接税につながり、ひいては大型間接税、現在の消費税と余り変わらないものになっていくんじゃないかという懸念を私が指摘し、それに対する発議者の答弁をお聞きいただいたようでありますが、これに対してお聞きのとおり答弁者の方は、発議者が大型間接税を考えていないから大丈夫なんだというこういう答弁なんですね。私、弁護士ですけれども、いかに発議者がそう言いましても、でき上がった法律国民税制改革協議会で審議すれば、その持つ意義の客観性、だからサービス流通への課税を検討すると。となりますと、検討した結果がやはり新しいかなり幅の広い間接税につながりかねないと思うんです。  そこで、お聞きしたいのは、もしも河野さんがこの国民税制改革協議会委員に任命された場合に、これをどう受けとめてどんな議論を展開されていくでしょうか。
  51. 河野光雄

    参考人河野光雄君) 任命されることは万々ありませんからその仮定の質問は別にして、いいですか、二年間この問題を討議することになるわけでしょう、政権が新しくできたら。今あらゆる新聞、マスコミを通じて政治論として導入に重大な問題ありと、今ちょっといろんな答弁があったけれども、それであるからもう一度見直しなさいよという議論はあるんですよね。しかし、そう言っている人たちが百人のうち九十九人までは大型間接税を入れなきゃもちませんよということをみんな考えているんですよ。だから、五十人どんなメンバーをリストアップされるか知らないけれども、国会の承認事項でしょう、あのメンバーは。それで一応まじめに議論をやってみなさいよ、二年間。これを除外するアイデアは絶対出てきっこありません。言論界は挙げて導入論をやりますよ、間違いなく。ただし、それはうそをついてやるとかそこのところは全部抜いてね。それはそこの結論は近藤さんと全く違うんですけれどもね。  しかし、二年間堂々の議論をやったら、外からの世論というのは、今度は公約違反は全くありませんから、白紙に書くんですから、そうなったら外の声は絶対に間接税必要。しかも多段階か、今井上さんおっしゃったみたいにそれはいろいろな議論はあり得ると思いますよ。しかし、それを大幅に入れなければもたないという議論の方が圧倒的に高いことはもう目に見えています。
  52. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 河野さんが任命されるかもしれませんが、しかしそういったことになりかねないので、だから私たちはこの法案には反対だということなんであります。  それから次に、古岡参考人であります。  私たちも、この物品税の復活につきまして、大衆課税の部分も含めて一律復活することには反対なんです。かといって、個別間接税全部を否定する立場じゃありません。やっぱり直接税の補完税としての個別間接税は必要だと思うんですね。ただ、先ほどの御意見を聞いていると、消費税導入するからそういったものは基本的には必要でなくなる。もっとも酒とかたばことかそういうものは別として、基本的になくなるというような御意見に拝聴したんですが、そういった観点からお聞きしますと、幾つかの例を出してみたいんですが、何百万円もするダイヤモンドと子供のおもちゃと同じ税率で果たしてこれが公平なのか。また、何百万もする毛皮と赤ちゃんのおしめ、これが果たして同率で公平なのか。また、キャデラック、ベンツなど、こういう高級自動車と三輪車が同じ税率で公平なのか。これは昨年の税制国会で竹下総理にも同じ質問をいたしましたけれども、間接税をずっと扱ってこられた立場からどうお考えでしょうか。
  53. 古岡勝

    参考人(古岡勝君) お答え申し上げます。  消費者の方から見ますと、例えばダイヤモンド一つを取り上げてみますと、御承知のように一万円からダイヤモンドを売っております。もちろん百万円のもあります。ですから、おっしゃるとおり百万円と一万円とを持ってきますと、これはなるほど一万円と百万円ではえらい違いだとこういうことになるわけですが、逆に今度は三十万か五十万を例に出しますと、恐らく新婚の皆さん方は三十万や五十万のものは当然出されるはずですね。そうしますと、どこをもって一体これはぜいたく品じゃないんだということの線引きをするのかということが出てくると思います。また、例えばメロンにしましてもそうですね。それこそ十円のメロンもあれば一万円のメロンもある。大変難しいので、そういうややこしいことはちょっとこれ難しいんじゃないでしょうかということでございます。
  54. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それは私への直接のお答えにならないんです。去年竹下さんもそういう冗長的な議論はしたくないというので逃げてしまったわけですが、私はこれはやっぱり本質の議論だと思うんですね。  最後中村参考人に一言お聞きしますが、自民党の見直し案、これは本当にわずかな減税にすぎません。総消費支出に比べれば私の計算では〇・二%、橋本大蔵大臣の答弁でも〇・三%にすぎないんですね。わずかな減税で、しかも大変複雑怪奇な混乱が余計起きる。これは私は本当に妥当でないと思うんですが、一言見解を伺って質問を終わります。
  55. 中村紀伊

    参考人中村紀伊君) お答えいたします。  先ほどから申し上げておりますように全く同じ意見でございまして、こういうはっきりしない見直し案ではなくて、一度廃止してやり直すべきだというのが私どもの意見でございます。
  56. 高井和伸

    ○高井和伸君 参考人の皆さん方の御意見を拝聴いたしまして、私、消費税廃止する、そして関連法案を提出していることに賛成する立場の者でございますが、まず井上先生にお尋ねしたいのでございますが、先ほど逆進税ということで消費税を把握しておられる、そして特に所得のない人で貯金で暮らしておられる方、年金で暮らしておられる方が消費の場面でしか関与しない、そういったところで消費税がかかってくることは非常に逆進性が強くなるということもおっしゃられましたし、また中小企業の世界で経済的な弱者と言うべきでしょうか、そういった方が転嫁し切れないというところでの逆進性を問題にしておられました。  地方の商工会、特に過疎の商工会におきまして私も選挙期間中消費税廃止を訴えますと、そういったところでは非常に商店主の方々が興味を示されまして私のつじ立ち演説に出てこられるということで、非常に実感して先ほどのお話を伺ったわけでございますけれども、自民党税調の見直しの前に、まず現行の消費税の逆進性の問題点を先ほどおっしゃられました消費税オピニオン一一〇番というようなところでいろんな声を聞かれているということを聞きました。また、関西のデパートでの御講演の折でのお話などありました。こういった各論的なお話を総論的に戻すとどのようなふうに私ども伺えばよろしいんでしょうか。その点をもう少し詳しく伺えたらと思っております。
  57. 井上隆司

    参考人井上隆司君) お答えいたします。  御質問内容にずばりお答えできるかどうか甚だ心もとないわけですが、今度の消費税、先ほどもお話ししましたように、所得のほとんどない方も毎年納税者番付のひな壇に並ぶ方も、例えばお米ならお米で同じ率で税を負担するというのはこれは非常に問題の多いところでございます。私の消費税オピニオンダイヤルでもこの点非常に異議というか、の方が多うございまして、いわゆる高級車とか毛皮でございますか、こういうものはごく一部の大金持ちしか買えないのに同じ税率課税するなんというのは本当にあこぎだというか、そういうようなこともありまして、結論から申しますと、先ほどアメリカの例を引きましたが、結果的にアメリカ連邦レベルで付加価値税導入ができなかったのは、相当期間議会でも審議したわけですが逆進性の緩和というのができなかったということで、導入が見送られている実情ですね。そういうことを国民の代表である国会議員の先生方が肝に銘じていただければ、おのずと答えが出てくるのではないかと思うわけでございます。
  58. 高井和伸

    ○高井和伸君 もう一点、このたびの自民党税調の見直し案、井上先生に引き続きお願いしたいんですが、見直し案におきましてやはり福祉に関して、他方では高齢化に対応した公共福祉サービスの充実というようなことで、税制の面じゃなくて政策の面で、福祉行政の面でてこ入れをしようという方向のプログラムを示されておられます。こういった自民党の見直しと、先ほどおっしゃられた逆進性を緩和する上では福祉プログラムがしっかりしなきゃいけない、こういう御意見でございました。そういった立場から、今度の自民党の見直し案の中の高齢化に対応した公共福祉サービスの充実という側面についての御意見、ちょっと伺えたらと思います。
  59. 井上隆司

    参考人井上隆司君) お答えいたします。  自民党の見直し案で福祉行政の充実化というか、そういうことをうたっているわけですが、例えば年金生活者に対してはいわゆる公的年金等控除の引き上げとかそういうものをうたっているわけでございます。しかし、国民全般から見た場合、例えば国民年金の受給者、これは平均値でも公的年金等控除を引くといわゆるマイナスになるというか、もともと所得税とか住民税がかかっていないわけですね。それらのいわゆる国民年金等受給者とか公的年金をいろいろな事情で非常に低く受け取っている方、そういう方は何らかの公的年金等控除の引き上げをしてももともとゼロはゼロなんですから影響がないわけでございますね。それ一つとってもなかなかすべての社会的弱者を救済するというのは難しいというか、そういうことでアメリカ等において福祉プログラムがパーフェクトにはいかないということでいわゆる連邦レベルの付加価値税導入を見送ったのが現実でございます。
  60. 高井和伸

    ○高井和伸君 中村先生にお尋ねしたいと思うんですが、消費者立場を一番色濃く御反映の参考人だと私は理解しておるわけでございますが、今度の消費税、文字通り消費者が最終的に税を負担すると。途中の納税業者の方、先ほどおっしゃられましたようにいろいろ手数がございますけれども、最終的には税を負担するのは消費者である。その消費者の声がいろんな場面で反映されたかどうかというのがこの消費税の一番大事なところだろう、このように考えるわけでございます。  先ほどのお言葉によれば、国民が理解した上で税制を信頼してそして消費税を払う、消費の場面で税金を払う、そういった税制でなきゃいけない、こういう御意見だったと伺ったわけでございますけれども、そういった消費者立場から、昨日の公聴会である公述人が税率が三%は余り大したことはないんだ、これでは大型間接税ではなくて小型間接税だ、このような意見を述べられたわけでございますけれども、消費者の代表あるいは主婦の代表といたしまして中村先生の御意見、いかがでございましょうか。
  61. 中村紀伊

    参考人中村紀伊君) お答えいたします。  私もきのう伺っていてあっと思ったんですけれども、パーセントで大型間接税かどうかが決まるんじゃなくて、これは中曽根さんが言われた縦横十文字に投網をかけるような制度の仕組みが大型の間接税だという問題じゃないかと思うんですね。  それと、またもう一つ私があっと思いましたのは、たった三%だからいいじゃないかと。それは今中流社会で相当豊かな暮らしをしていらっしゃる方がありますから、たった三%ならいいじゃないかという考え方はやはり弱い人の痛みを知らない言葉だと思うんですね。私どものところには、消費税一一〇番でいろんなお電話をいただきますと、消費税がスタートした日には大して買い物をしなかったからそう思わなかった。しかし二日、三日、四日とたってくると、ほんの三%だと言っていたけれどもやっぱりそれは積み重なると家計に随分大きい痛手をこうむるような値段なんだと。特に先ほどからお話が出ておりましたように、減税の恩恵に浴さない低所得の方たちとかそれこそもう本当にわずかの給料で働いているひとり暮らしの中高年女性の方とか、いろいろな方から切々とお電話が来ます。  ですから、三%だから大したことはないというのは、やっぱりそれは暮らしが楽な方たちがちょっとそこらで御飯を一回食べるのを倹約すれば五千円や六千円大したことはないじゃないか、政府の税調でもそういう大げさじゃないかということを言われましたけれども、私はそれでもすごい痛みになって、じゃ家賃の三千円を毎月出すためには何を詰めていくか、それとももう一つ夜の仕事をふやそうか、大げさじゃなくてそういうふうに考えている。もちろんほかにも消費税がかかってくるし、そういう人たちの痛みをやはり政治の場で考え、そういう逆進性をなくした税制を考えていただきたいというふうに申し上げたいと思います。
  62. 三治重信

    ○三治重信君 どうも御苦労さまでございます。  一つ中村参考人にいろいろ主婦連の立場として、消費税廃止でやるわけなんですが、税制改革基本法案の中に国民税制改革協議会を二年間で結論を出すようにやる、こういうふうにうたっているわけなんですが、参考人立場から見て税制改革はこれで民主的な国民合意の上の結論が出せると判断されるかどうかということで、主婦連の方としてこういうような改革法案についてどうお考えになっているか。  それから井上参考人の方に、これはちょっと技術的なことになるかと思うんですが、簡易課税、非課税、それから限界控除制度、まあいろいろこれは大体問題としてやって、消費税がある程度、一年以上たってからというふうに自民党は言っておるんですけれども、きょうのお話で会社分割によって簡易課税制度、免税業者になるやつと、それから設立後二年間免税になるんだというようなやつについては余り今まで議論がなかったような気がするんですが、こういうようなことを防ぐことは簡単じゃないかと思うんですが、どうしてこういうようなことが幾らでも行われるような消費税になったんだろうか。こういうふうなことについてどうお考えか。
  63. 中村紀伊

    参考人中村紀伊君) お答えいたします。  国民税制改革協議会という原案が出ておりまして、これが本当に機能するかどうかというのは、これからの議論の中でどういう方がメンバーに選ばれどういう形で運営されていくかということだと思います。しかし、政府の税調と自民党の税調が全く非公開のままで要するに消費税なり売上税なり税制改革が決まっていく、そして消費者立場はほとんど無視されていた、それは海部総理もおっしゃったわけですから、そういう形で決まるよりは開かれたこういう協議会ができるということは一応賛成でございます。それでどういうふうに運営されるかということで、中身を公開して国民の前でわかりやすい議論をしていただきたい。何かさっぱりわからないところで決まるということが、やはり今度の税制改革全般に国民の信頼性がないということだと思います。  それともう一つは、私の経験を申し上げたいのでございますけれども、昨年政府税調が消費税導入を決めた答申をなさいまして、全国で公聴会を開くということがございました。いかにも公聴会というと民意を反映して各界各層の意見を聞くんだという形はとられたと思います。しかし、いわゆる消費税反対運動をしているような私どもの団体、私たちだけでなくていろいろな団体にはほとんど声はかかっておりません。そして私は、東京で唯一荒川区の公会堂でされましたので、どうやって参加したか。傍聴人としてはがきを出して、そしてやっと選んでいただいてそこに入って、そして発言者として通告の紙を出して、そして選んでいただいて発言がやっとできました。後で伺うと、それでもあれはうるさいからさせておかないとまたどこかで何か言うだろうということで、大蔵省の担当の方がお選びになったそうでございます。  そのときに伺ったのは、一体この公聴会というのは国民が公募されて、こういうことを言いたいという中で公募して選ぶのがあるべきではないか、公聴会というのはそういう形だと私たちは考えているのにどういう人選ですかと伺ったら、これは要するに大蔵省の財務局で選んだんだと。唯一東京で開かれた公聴会で発言なさった女性代表は、ほとんど私は税金のことはわかりませんという前提条件のもとで非常に簡単な発言をなさいました。そして会場にいっぱい集まった人たち、みんな一生懸命消費税について学習し、税制について意見を言いたいと思って来た人たちが、ペーパーを出しても入れてもらえなくて声を出せなかった。  そういう形で、政府税調にもこの間私ども参りましたけれども、本当に形だけの意見を聞かれた。それがどういう形で反映したかということもわからない。答えも返ってこない。ああいう形骸化した審議会ではなくて、本当の意味で国民の各層各界が税制について参加できる協議会になるのであれば、私どもはぜひ二年間かけてやっていただきたい。ただし、これは公開でやっていただきたいということをお願いいたします。
  64. 井上隆司

    参考人井上隆司君) お答えいたします。  先ほども簡易課税のところで中小企業庁の原価表ですね、それに基づく平均値のマージン率というか、業種別にお話ししたわけでございますが、実際問題それらは時間をかけて慎重審議すればある程度クリアできた問題ではないかと思いますが、導入時に国会の場において余り審議されなかったとか、もしくは実施までの期間が余りにも短かったということで、是正すべき点というのがほとんど手つかずで四月から導入されてしまったのが今いろいろな問題の起こっている原点ではないかと思います。  私ごとで恐縮ですが、ことしの三月上旬ある放送局で大蔵省の主税局の立法担当者とお会いしていろいろ意見交換したんですが、そのときに先方の方から、井上さん今回消費税の本をなぜ出さなかったんだという意見を求められたんですね。私が売上税のときにはいわゆる問題が起こった当初売上税の本を出してベストセラーになったというので、大蔵省の立法担当者も知っていたんですね。私はそのときに、いや実はこんなに早く通ると思わないから本を書いても廃案になったりなんかしたら何にもならないから書かなかったと言ったら、いみじくも大蔵省の担当者も、私たちも書き損なったと言うんですね。まさかこんなに早く無修正で法律ができると思っていなかったと言うんです。  それじゃ、あなた方はいつの時点でこの消費税法が通るということを認識したかと言ったら、昨年の十二月ですか、衆議院の本会議自民党が強行採決しましたね、あの時点で、参議院に回ってひょっとしたら通るのではないかと思ったと言うんですね、立法担当者が。結局、結果的に御承知のように十二月二十四日消費税関連法案が通ってことしの四月から導入されたということで、今お話ししたように審議は尽くされないしまた余りにも時間がなかったというか、そういうことが実情ではないかと思うわけでございます。
  65. 三治重信

    ○三治重信君 古岡参考人にお尋ねしますが、そういう物品税の問題で非常に苦労されたことはわかるんですが、今度の消費税で内税、外税という問題で、修正して外税から内税にやろうというふうに言っている。これに対してどういうふうに、全間連として内税の方がいいんだというふうに御判断になっているのか。その理由。  それから河野参考人に、総合課税をやるには番号制が必要だということを出しておるんですけれども、それは時間をかけてもなかなか不可能だとこういうことなんですが、しかしそういうふうなことをやるのは不可能だといえば、キャピタルゲインというものはやはり今回強化されたような個別源泉徴収でやるよりほかに手はないのかどうか、もう少し何かいい手はないのか、こういうことについてお願いしたいと思います。
  66. 古岡勝

    参考人(古岡勝君) お答え申し上げます。  内税、外税につきましては、全間連としては統一した見解は出しておりません。出せません。あえて申し上げますならば、事業者方々は外税の方がいい、これはもう経歴書はございませんが商品の流れがきちんとしている、値段もはっきりしている、転嫁もできる、ぜひこれで進めてほしいというのが事業者考え方でございます。  ただし、小売店とかそういうことになってきますと、今度は内税の方にしてほしいということを申しております。内税の方がお客さん、消費者が一番わかりやすいんだし、一番手っ取り早いし、これにしてほしいと。  そこで、全間連としては全く答えが出せないわけでございますが、ただ、私に個人的にどちらがいいのかということを仮に御質問があったとしたならば、例えば内税の場合の利点といいますと、もう既に御承知のように物品税は税法上は外税であったにもかかわらず、外税といいますか税額表示であるにかかわらず、長年内税方式といいますか内税と同じようなことでやってまいりまして、それが国民の間に浸透したというよりむしろ国民方々は全然わからずにそのままやっていらっしゃったわけです。いわゆる内税というような感じで。ということは、なれの問題だと私は思います。ですから、内税、外税は本当になれの問題。  それからどうしても答えを出せとおっしゃるのだったら、私はこの前十月の税制調査会でも申し上げましたけれども、個人的には、これはもうヨーロッパもそうですけれども、税額表示方式が一番いいのじゃなかろうかということを個人的には思っておりますが、全間連としての答えはそういうことでございます。
  67. 河野光雄

    参考人河野光雄君) 今おっしゃったことの意味は、総背番号制導入というのは時間的にも合意を得るのにも時間がかかり過ぎるから、資金的にもそうですね、だから次善の策として証券カードみたいなお話でしょう。それはもう前からいろんな角度で随分検討済みの話なんですよ。もし仮に証券だけをターゲットにして、証券会社と連絡をきちっとやって背番号を打って、名寄せがそれなりにはできるというふうなことを導入しようと思えばできると思いますね、僕は。しかし、このことの持っている経済的なマイナスは民社党の国会議員の方だったら絶対にわかると思うんですな、ほかの方はどうかわからないけれども。  証券業界、今東京で株式市場、時価総額五百兆ですよ。いいですか。世界最大の株式市場でこれを導入して、仮にそれが引き金になって株の暴落、景気の転換、企業収益の低下、失業者の増大が起こったときにだれが責任を負うんですか。そんな経済のシステムに中立的でないような導入をすることは極めて危険な発想ですよ。技術的にはできますよ。できるけれども、それが下がったときにどこから税金が入ってくるんですか。第二に、株が下がったときに世界の景気を含めてどこに持っていくつもりなんですか。そこまで配慮がなかったら、そんな議論はできないと思いますね。
  68. 横溝克己

    横溝克己君 河野参考人の方にお願いいたします。  私も今同じような質問をしようと思ったんですけれどもそれはやめまして、いずれにしましても日本消費税導入せざるを得ないんだという御意見でございましたけれども、言いますとヨーロッパタイプのようなものとアメリカタイプのようなものがあるのではないか。その中間というか何というか日本的なタイプというのも一つあるかもしれないんですが、河野先生はどのようにお考えになっておられますか。
  69. 河野光雄

    参考人河野光雄君) アメリカタイプというのは、小売段階井上さんもおっしゃったようなことですよね。これは完全に定着しているわけですよ。ヨーロッパはヨーロッパで定着しているわけですよね。先ほど日本にはなじまないという発言が幾つかあったと思うんですけれども、それは日本特殊国家論ですよね。今、日米関係で問題になっているのはその一点ですよ、まさに。日本は、おれたちは特殊な国なんだから特殊な仕組みでやっているんだから、世界的に普遍性のあるような税制も入らないよという議論なんですね。腸の長さが長いから牛肉が買えないという議論と実によく似た暴論だと思うんですよ。そういう意味では、日本はなじまないのを入れるんですから抵抗があるのは当たり前なんですよ。カルチャーショックですよね。今それが起こったわけです。  しかし、整然と転嫁はされているけれども心理的な不満感は山ほど残ったんですよ、今。それをこれからどう解消するかが定着論としては一番必要なことであって、日本として特殊性があるからヨーロッパ的なものはだめ、むしろアメリカの州がやっているようなものがいいというふうなことではなくて、どれをやったって抵抗は起こるんですよね、と思いますよ。ですから、日本は特殊だから、特殊な経済風土だからアメリカ、ヨーロッパ的なものは入らないというふうに考えることは万般に及ぶ議論にこれはなるんですけれども、それはそうではないんじゃないですか。合理的に考えて説得する時間さえあれば必ず定着する話だと思うんですよ。ですから、日本は特殊性があるからどれが適当かという議論は私は余り乗りたくないんですね、特殊日本国家論という話は。  お答えです。
  70. 横溝克己

    横溝克己君 ありがとうございました。  もう一つ河野参考人お願いしたいんですが、今こういう消費税に対しては逆進性といいますか、それが非常に問題になっているんですが、そういうことに対してどのような対策、あるいはどのようにお考えでございましょうか。
  71. 河野光雄

    参考人河野光雄君) 逆進性のことを言えば消費税がつぶれるという鬼の首でもとったような議論がありますけれども、どこの国だって間接税はみんな逆進性を持っているんですよね、大なり小なり。それでも入れているのは何かと言ったら、それはそれなりにプラスがあるからですよね。  税制全体で所得再分配、逆進性の是正ということを考えるならば、今だって日本の、この間改正されましたけれども、所得税は随分高い税率ですよ。まだサラリーマンはこれに全然釈然としていませんよ、こんなことは労働組合諸君も全部。つまり、税制全体として、まず第一に考えてみれば累進的な税制は現にまだ厳然と残っているんですよ。だから、消費税が部分的にそういうものを持っているということはありますけれども、だから間接税がだめだという議論をやったらこれはすべての議論が御破算になってしまいますね。  第二に、これはみんなが言うことですけれども、仮に税制に逆進性という若干のきずがあって、しかしそれを入れにゃならぬとするならばそれは歳出で面倒を見るべきですよ。年金の話もそうだし万般のことが今度自民党の改正案の中にもいろいろ並んでいます。あれを読んでみるとあっけにとられるほど余計並んでいますよ、よくもこんなに考えたもんだと思うほど。しかし、それは今の状況の中で大きな国民の将来のことを考えて入れて定着させるためには、その逆進性のきずをカバーするならやっぱり歳出面でカバーすべきですよ。これは僕は原則論だと思うんですよ。それさえうまくいけばだんだんにわかってくる話ですよ、この話は。と、私はその点では楽観しているんですよ。
  72. 横溝克己

    横溝克己君 これで質問を終わります。どうもありがとうございました。
  73. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  この際、参考人方々に一言御礼を申し上げます。  皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分から委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ─────・─────    午後一時三十一分開会
  74. 中村太郎

    委員長中村太郎君) ただいまから税制問題等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、消費税法廃止する法律案外八案を一括して議題とし、午後は六名の参考人方々から御意見を拝聴いたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙のところ本委員会のために御出席をいただき、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして、心から厚く御礼を申し上げます。  本日は皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後で委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、これより順次御意見を承ります。  まず、山口参考人お願いいたします。
  75. 山口令子

    参考人山口令子君) 山口令子でございます。  税制国民生活及び国家の基盤でございますし、また一たん決められた基本線というものは数十年間変わらないという現実を考えてみますと、大きな改革を行う場合は百年単位での長期的な展望と、また国際情勢も踏まえた広い視野が必要であることは御承知のとおりでございます。今後の社会予測に基づけば、現行の消費税であるとないとにかかわらず、大型間接税がいずれ必要となることは明らかでございます。所得税がいわば入りの段階での公平化であるならば、間接税は出の段階での公平化でございますから、二段階の公平化があった方が庶民にとっても生活は守りやすくなるかと思います。税制改革基本法案でも間接税を決して全面的に否定するという方向ではなくて、むしろそのあり方と申しましょうか、間接税をどのような形にするかということで消費税とは異なる論が出されていると私は解釈しております。  しかし、現行の消費税廃止して新たな税制を提示するということは、現行の税制よりもはるかにすぐれたものを出さなければ説得力がないわけですから、その意味ではむしろ野党の方が課題が大きいと言えるかと思います。私はどこの党から出されたということには全くこだわっておりませんけれども、国民の一人としてよりよい税制を考える上で、税制改革基本法案について考えられる問題点を幾つか述べたいと存じます。  まず第一に、再改革基本法案の最も弱い点なのでございますが、これは具体性を欠くということです。  私どもがこの法案を見てみまして具体像がイメージとして浮かびにくく、現行の消費税と比べて一体どこがすぐれているのか、あるいは劣っているのか、それを論じるための手がかりが十分にあるとは思えないわけです。基本法案では理念が示されているかと思いますが、抽象的な言葉が多いために、非常にイメージという点では各人が考えるものが違ってくるのではないかという点もあるかと思います。  例えば第三章第五条の一のところでございますけれども、①から④まですべて何々の抜本的な整理合理化という言葉が使われておりますけれども、例えばこの①について言えば、昨年十二月の税制改革で行われた若干の手直し、私個人としては余り納得がいかないんですけれども、この手直しとどう違うのか、具体的にもう少し示す必要があるのではないでしょうか。  また、第二章第三条に納税環境の整備がなされなければならないというふうにうたわれております。私も大変共鳴いたすところでございます。しかし、実現化へのプロセスが示されておりません。  さらに、一項二の最後に「社会保障と国民の負担との在り方についての国民合意の形成が図られること。」とございます。この「国民合意」という言葉がほかの箇所にも見られますけれども、どういう形で合意を図るのかという点について示されているのは国民税制改革協議会だけであると私は受け取りました。これは学識経験者と国民各層を代表する者五十名で話し合えば国民合意を得られたとする図式が浮かび上がることになるわけですが、一体この五十人の人たちをどのようにして選ぶのでしょうか。選挙をするとは書いてありませんので、推察いたしますと、恐らく推薦ですとか何らかの民間団体の代表者の方など、つまり何らかの力関係が働いて選出されるというところに落ちつくことは簡単に想像がつくことでございます。そのような形で選ばれた人たち、しかもたった五十人で決められたことに国民意見が反映するのかどうか、また国民の一人一人も自分意見が反映したと納得するかどうか、私は疑問に思います。  これは突き詰めていきますと、議会制民主主義を否定することにもつながっていきますし、議員みずからが自分の職務を放棄することだという批判もなされているとおりでございます。私たちは国会で決められたことに批判は大いにいたします。特に私どもジャーナリストというのは批判を大いにいたしますけれども、結果的に我々が大筋として受け入れていくのは、代表者を自分たちで選挙で選んだという事実があるからですし、政治を批判する議論、討論の中でも、結局そういう政治家を選んだのは国民の責任だという意見が必ず出てきます。そして大体そこに落ちつくものでございます。  それだけでなく、先ほど行われた参議院選挙の結果を、例えば社会党の方は、この選挙国民意思があらわれた、その意思消費税廃止だというふうにおっしゃっておりました。国民意思選挙にあらわれるものだとするならば、国民税制改革協議会をつくらなければならないという必然性がいま一つ明確に伝わってこないのであります。もしも直接民主主義にしたいということであるならば、国民投票といった形になるかと思います。少なくとも国民税制改革協議会は、理念としてもまた現実問題としても若干中途半端な形で出されていると思われます。恐らく国民税制改革協議会をつくるということは、本音を言ってしまえば、これで国民合意を得ましたよというアピールのためになされているのではないかと思います。  五十人の中に主婦や例えば農業に従事している方が入っていれば、それで主婦の声や農民の意思が反映したという錯覚に陥る人は確かにいるかもしれませんけれども、しかし国民全体の意見が反映していないというだけでなく、ある意味で大きな可能性をはらんでいると思います。その証拠に消費税をめぐってテレビや新聞などで討論や論争が随分となされました。  全体に目を通したわけではございませんので印象だけを申し上げますと、現在多くの国民の意識の根底にあるのが、自分だけが得をすればいいというような、極端な言い方をすると、そういう損得勘定ではないかと思います。国を自分たちが支えるという意識やあるいは広く天下国家を考えるという意識は大変希薄です。もっと極端に言ってしまいますと、金もうけをしている人間は悪人だというような意識すら見え隠れする感もあります。  冒頭にも申し上げましたが、税制は国の基盤で、国民一人一人の福祉を考える上でも、個々人の損得勘定を超えたところで国全体として考える必要があります。ですから、そういうことをするのが政治家の役割ということでありまして、その意味では現在、例えば自民党消費税のどういった見直し案ならば選挙が戦えるのかといったところに議論が収れんしているところにも大きな問題があると思います。党利党略などに税制を利用されるということは非常に国民としても迷惑なことでございまして、このことは自民党も一刻も早く改めてほしいと願います。  一方、先ほどから申し上げておりますように、国民税制改革協議会といったものにウエートを置き過ぎているということは個々人の損得勘定にむしろ埋没していくということにほかならないと思います。  実は、一つちょっと懸念がございまして、第三章第五条二の後半でございますが、ここには「低所得者及び中堅所得者の勤労意欲及び貯蓄意欲を損なわないための措置を」「講ずる」というふうに明記されております。ほかの部分では「国民合意」というふうに言ってあるのですが、一方で低所得者及び中堅所得者の勤労意欲は損なわないようにしようということは、高額所得者は勤労意欲、貯蓄意欲を損なってもいいというふうに読めてしまいます。国民各層の勤労意欲、貯蓄意欲と言わなければ公平さを欠くと思うのですが、こうしたことが法案の中で若干矛盾があるかと思います。  念のために申し上げておきますと、私自身は同世代のサラリーマンの平均所得よりも低いぐらいでございますから、自分のためにこれを言っているわけではございません。私が懸念しておりますのは、この法案も結局大衆に迎合していくというような感じがつきまとっているということです。現在は大衆文化の時代とも言えるくらい大衆の意見が全面的に押し出されるようになりました。そのこと自体はよいのですが、問題は国の行き先というものを決める上にはそれ相応の意識が必要であるということです。生活者としてのプロということを打ち出して国会議員になった方もおられますけれども、生活者がすべて政治家としての手腕があるわけではありません。例えば母親は皆子育てをしておりますが、だからといって皆教師になれるとは限らないことと同じです。  ところで、税制を考える上で当然行政改革も問題になってくるわけですが、第二章第三条にもそのことがうたわれております。しかし、行政改革では野党の足並みがそろっていないことが私たちに具体像を描きにくくさせている原因でもあります。税制及び行政改革について具体像が描けないということは、そのよしあしが議論できないというだけではなく、やはり社会の予測というか、社会の将来を考えたときには不安が広がるという原因にもなるかと思います。  また、代替財源案でございますが、見込まれている自然増収というものにつきまして、専門家によっては自然増収が見込まれるという説と見込めないという説に分かれておりまして、こうした多額の税収をこの項目に頼れるものかどうか、大いに疑問を抱いております。  細かい点も幾つかあるのですが、一つだけちょっと基本点について納得がいかないことを述べさせていただきます。  再改革法案では消費税廃止する、つまり白紙に戻すということが眼目にあるわけですから、それならば物品税のみならずやはり所得税ももとに戻すということが筋であろうかと思われます。さきの参院選の結果が消費税廃止という意思であると仮にするならば、当然所得税ももとに戻すというのがその意思に含まれているのではないかと思います。なぜ、所得税の減税だけは据え置きにしなければならなかったのか、この二年間だけをとりましても据え置きにしなければならなかったのかを考えてみますと、やはり個々人の損得勘定に迎合し始めると国の財政としては破綻しかねないということになるかと思います。  もちろん、個々人の福祉あるいは公平さということを考えるのは重要なことでございますけれども、視点がどこにあるのかということが問題でございます。といいましても、私個人といたしましては、現行の消費税が全く問題がないと考えているわけではございませんで、例えば簡易課税、簡易税率などで国民が納めた消費税の一部が国家に届かないで事業主の収入になってしまうなどということにつきましては、もっと大幅な見直しを願うところでございます。  最後になりますが、税金がきちんと使われていれば税金を納めることはやぶさかではないという意見を多くの方から伺っております。税金の使い道を問いますと、例えば道路をつくるのに何億とか学校教育に何億といった説明の仕方しかなされておりませんが、実際、省庁などでも、ちょっと知るだけでも、もし同じことを企業がやったならば必ずつぶれるであろうと思われるくらいのむだ金がかなり使われております。そういったことも含めまして、税金の使い道についてもっと細かい情報公開をした上でこうした税制議論をしたいと望みます。  以上でございます。
  76. 中村太郎

    委員長中村太郎君) どうもありがとうございました。  次に、関本参考人お願いいたします。
  77. 関本秀治

    参考人(関本秀治君) 税理士の関本でございます。  現在、本委員会において審議中の消費税廃止関連三法案税制改革基本法案及び代替財源関連五法案につきまして意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして、まことに感謝しております。  まず最初に、消費税廃止関連三法案についてでございますが、去る七月二十三日に行われました参院選において下されました国民の審判は極めて明確でございます。主権者のこの明確な意思に沿って消費税は直ちに廃止されるべきものであると思います。そもそも消費税法は、大型間接税導入しないという中曽根元総理の三年前の選挙公約によって得られました三百余議席を背景としまして、強行採決に次ぐ強行採決によって成立させたものであって、国民の一人として到底このようなことは認容するわけにはまいらないわけでございます。これは余りにも乱暴な議会制民主主義ルールに違反したものでありまして、さきの参院選によって消費税ノーという国民の審判が下されました以上、むしろ政権党や政府の側から進んで廃止法案を提出されるべきではなかったかというふうに考えるわけでございます。  また、消費税廃止せよという主張に対しましては、それにかわる財源を示さないのは無責任である、こういういわゆる財源セット論が強く主張されております。現在本委員会で審議されております野党四会派の皆さんによって提案されました代替財源関連五法案、これも代替財源の調整は政府の責任である、こういう前提のもとに提示されているわけではありますが、趣旨説明にもございますように、予算編成権は内閣にあるわけでありまして、憲法七十三条及び八十六条によりまして、政府は与えられた財源に基づいて予算を編成し、これを国会に提出してその承認を得なければならないことになっております。これは内閣の権限であるとともに義務でもあるわけでございますから、財源セット論は主客転倒の議論であるというふうに考えます。ですから、国民の切実な願いであります消費税廃止、これは国民の圧倒的多数の要望でございますから、他の問題とは切り離して即時廃止するのが筋であると考えるものでございます。  こういう点から見ますと「国民に対して政策責任を明らかにするため」と述べられてはおりますけれども、代替財源案は、自民党の皆さんの審議引き延ばしの道具に使われてきたという現実から見ましても、消費税廃止関連法案から切り離すことが賢明な方策ではなかろうかと考える次第でございます。  次に、今月一日に発表されました自民党消費税の見直しに関する基本方針につきまして一言意見を申し上げたいと思います。  既に本委員会におきましても、あるいはマスコミなど各界からも厳しい批判がなされているところでございますが、思い切った見直しという総理の公約に照らしてみましてもいささか羊頭狗肉の感をぬぐい切れない次第でございます。総理の十一月中に発表するという約束が守られないで、議論百出で十二月一日にずれ込んでしまいました。これも結局、幾ら手直しをしてみても消費税の根本的欠陥を取り除くことはできないということが原因でございます。消費税の欠陥をなくするためには、消費税そのものを廃止する以外には方法はございません。  食料品については、生産から卸売までの過程を一・五%の軽減税率としまして、小売段階だけを非課税とするということでありますが、食料品の消費支出に占める割合は二割程度でありまして、その減税効果はまことに微々たるものであります。そのほか、出産、埋葬・火葬、入学金などの学校納付金、検定済み教科書、身障者の用具、それから老人福祉センターなど第二種社会福祉事業、家賃、これらを非課税として追加することとしておられますが、これらの事業を行う者の購入する資材、経費等にはすべて課税されているわけでありますから、これら非課税品目の価格、料金等への影響もまた微々たるものでありまして、消費税の根本的欠陥の一つでございます逆進性を緩和するためにはほとんど役立たないものでございます。  フランスでは、逆進性を緩和するために、二・一%、四%、五・五%、七%という軽減税率、標準税率は一八・六%でございます。さらに二八%、三十三カ三分の一%という割り増し税率、こういう実に八段階税率を用いております。それでもなおかつ付加価値税の逆進性は余り緩和されていないという報告がなされております。  消費税は老人や子供、体の不自由な方々からも一律に徴収するという意味で最悪の大衆課税であるという批判をかわすために考えられたと思われます公的年金控除のわずかな引き上げも、所得税課税最低限以下の世帯にとっては何の役にも立たないものでございます。これも選挙を意識した宣伝効果をねらった小手先の手直しであると批判されてもやむを得ないのではないかと考えるわけでございます。消費税の表示方式について、税額が消費者に見えにくくするようにする総額表示方式、いわゆる内税方式の導入、普及ということも掲げられておりますが、毎日が納税日であるという消費者の不満をそらすための消費税隠し以外の何物でもございません。アメリカの州税として実施されております小売売上税は、法律によって税額を消費者に明示しなければならないということになっておりまして、これが税率を引き上げられない最大の歯どめとなっているということを見ましても、いわゆる内税方式、見直し案の言う総額表示方式の指導、普及ということは到底許されるものではないというふうに考えます。  さらに、消費税の使途を優先して国民福祉のための経費に充てるという旨の規定を定めようということが述べられておりますが、これはいわゆる福祉目的税論にほかならないと思います。消費税を福祉財源に充てますと、自動的に一般財源がその分だけ浮いてまいります。これが毎年突出増を続けております軍事費やアメリカの世界戦略の一翼を担う政府開発援助、いわゆるODA財源にならないという保証はどこにもないわけでございます。このように福祉財源論は、ところてん式に消費税を軍拡財源に充てることであると同時に、福祉のための支出が増大すると税率の引き上げはやむを得ないとか、増税が嫌なら福祉を切り捨てるという議論につながってくる危険性があるわけでございます。高齢化社会を迎えるに当たりまして、私はこの点につきまして特に危惧しているわけでございます。  最後に、税制改革基本法案並びに代替財源関連法案について意見を述べさせていただきたいと思います。  消費税廃止は現在の国民的な要望でございますから、これは他と切り離して直ちに行うべきことは最初に申し上げたとおりでございますけれども、消費税廃止後の税制のあり方についてはまだ国民的なコンセンサスは形成されておりません。したがいまして、消費税廃止に伴う代替財源について性急な結論を求めようとすることはいかがなものかというふうに考えるものであります。  幸いにしてこの数年間多額の自然増収が続いております。八七年度、八八年度とも当初予算比で七兆円に上る自然増収が記録されております。本年度につきましても、自然増収は三兆円とも五兆円とも言われておりますが、今月一日に大蔵省が発表されました十月税収も、前年同月比七・四%増ということが報じられております。十月三日の日本経済新聞によりますと、国民経済研究協会の発表した中期経済予測では、九二年度まで平均五%近い経済成長が見込まれまして、九二年度の歳入歳出では七兆五千億円以上の歳入超過があるので、財源措置としての消費税ならやらなくてもやっていける、こういう見方を示しているとのことであります。  税制改革基本法案では、応能負担原則、直接税主体と述べながら、「所得資産、消費等に対する課税についての均衡ある税体系の構築」が基本原則の一つとして掲げられておりまして、基本方針としては「社会保険診療報酬課税の特例、みなし法人課税、公益法人課税の特例」、それから「納税者番号制度導入」、「サービス流通等に対する適正な課税」など、これまで政府税制調査会等が答申で述べているところと同一の思想、つまりクロヨン論だとか、あるいは直間比率見直し論など、納税者運動を分断させたり、あるいは大型間接税導入に道を開いてきたそういう考え方が根底にあると解されかねない部分が散見されます。これで国民的なコンセンサスを得ることはかなり困難ではないかと考えるものであります。むしろ再び、先ほど申し上げましたような点から、大型間接税導入に口実を与えることになるのではないかという懸念を抱いております。  将来のあるべき民主的な税制につきましては、このような一定の枠をあらかじめはめることなく十分な検討を行い、特に大企業、大金持ちに対する優遇措置をなくし、本当に公平な税制を考えていけば、そこから財源はおのずと生まれてくるはずでございます。  不公平な税制をただす会の試算によりますと、不公平税制の是正により国税で十兆円、地方税で七兆円の財源が確保されると言われておりますけれども、そこまでいかないといたしましても、年間七、八兆円程度の規模の財源を確保することは十分可能でございます。  こういうことを税制に関する専門家の立場から申し上げまして、私の意見陳述を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  78. 中村太郎

    委員長中村太郎君) どうもありがとうございました。  次に、大島参考人お願いいたします。
  79. 大島隆夫

    参考人(大島隆夫君) 税理士の大島隆夫でございます。  私は、消費税は税の公平のためにも、あるいは財源的に見ましても、欠かすことのできない税であるというように考えておりますので、これを廃止することには反対でございます。  私がまず申し上げたいのは、恒久安定税制として導入された消費税廃止しようというのに、野党から提案されましたところでは、これにかわるべき恒久税制の具体像が全く提示されていないということでございます。二年先の税制が一体どうなるのか、お先真っ暗でございます。  税制再改革基本法間接税の必要性は認めているようでありますけれども、今日の社会では新製品が際限もなくあらわれて、物の価値に対する評価が十人十色、しかも時とともに目まぐるしく動いております。こういうような状態の中で、万人が納得するような課税物品を特定してこれに等級をつけるということは、これは口で言うのは簡単でございますけれども、実行としては全く不可能と言うしかございません。  そこで、二年間の審議も結構ですけれども、その結果、やっぱり消費税の方がよかったとか、あるいはその類似税制しかないんだというようなことになったとしたら一体どうなるのか。物品税消費税との間を行ったり来たりさせられる混乱とロスとはまことに莫大なものがあろうかと思います。また、財源的に見ましても、将来に確たる見通しもないまま六兆円からの税収をもたらす税をやめてしまえというのはいかにも乱暴な話であります。  なお、今提出されております暫定財源案につきましても、いろいろ申し上げたいことはございますが、時間の関係でこれは省略いたします。  もっとも、そのように申しましても、消費税国民生活に混乱と窮乏を与えているといたしますと、これは緊急措置として廃止しなければならないということもやむを得ないことかと思いますけれども、しかし、今日そんな緊急の事態はどこにも見られません。インフレも起こっておりません。消費不況もございません。むしろ好況を謳歌しております。転嫁もほぼ順調に進んでおります。消費税導入前、反対論者がいろいろ警告をしておられましたけれども、消費税はその予想に反しまして極めて順調に定着しつつあるのでありまして、今すぐにこれを廃止しなければならないという必然性は全く見当たらない。今これを廃止して、当てもなしに国民税制改革協議会の審議にゆだねようというのは、財源上のリスクを冒して税制をもてあそぶものだ、こう言われても仕方がないのではないかと思います。  仮に一歩譲って、税制協の審議にかけるにいたしましても、内容的にも財源的にも消費税にかわり得るしっかりした案が固まって、その段階消費税を存続するか修正するか、あるいはやっぱり廃止するかということを決めるということ、これが健全で常識的な政治というものであろうかと思います。  消費税を即時廃止せよという主張の唯一の根拠は、それが参議院選挙で示された民意であるということのようでありますけれども、個々の法律の存否を選挙で決めていたら一体どうなるのか。来るべき総選挙で今度は自民党が勝ったら、それが民意だというんでまた消費税を復活するのか。そんなことになってはこれはとても政治というものではあり得ないわけでございます。  さらに、もう一つさかのぼって申しますと、参議院選で示された民意とは一体何だったのか。投票者に財政や税制について専門的な知識を求めることはこれは無理でございます。いわゆる台所感覚は、高齢化社会とか財政収支とかには一切お構いなく、目の前の物価が安いことを求めます。だからといって、それを民意としてストレートに現実の税制に結びつけていたら財政はどうなるか、国の前途はどうなるか、これはもう考えただけでも背筋が寒くなるような話でございます。このように消費税を即座に廃止する根拠は全くないのでありますけれども、長い目で見て消費税は一体そんなに悪い税なのか、一部に言われているように、そんなに欠陥だらけの税制なのか、以下、消費税に対する批判の主なものについて意見を申し上げます。  第一が消費税逆進説でございます。しかし、消費税率、これはもともと三%ですから上下どんなに開いても負担率の違いはせいぜい一%と思います。一方、所得税、住民税の方は片稼ぎの標準勤労世帯で、丸い数字で言いますと、収入三百万では〇・三%、八百万では一〇%三千万になりますとこれが四〇%にはね上がるきつい累進になっておりまして、消費税のたかだか一%の逆進がこれを若干打ち消すといたしましても、その影響は取るに足りないことは数字的に明らかであります。  それから消費税が生活困窮者や年金生活の老人いじめだとよく言われるわけでありますけれども、この問題は歳出措置によって実は完全に解決されて、おつりが来ることになっております。消費税逆進論あるいは弱い者いじめ論というのは現実的な基礎を欠いた印象論にすぎないというように私は考えております。  消費税に対する第二の批判は、免税点、簡易課税制度によって消費税が、払った税が必ずしも国庫に届かないという点であります。そうした面があることも事実でございますけれども、また別の観点から申しますと、この制度のおかげで、本来なら三%上がるはずだった物価がそこまでは上がらないで、消費者にとってその点から利益になっている一面があることを忘れてはならないと思います。逆に申しますと、免税点をなくせば、あるいは免税点を下げますと国は増収になって利益を得ますけれども、その受益者は国でございまして、消費者は何の利益もない、いや、むしろ物価が上がるという損失をこうむるわけでございます。この制度が非難されるときに、こうした制度の本質が必ずしも理解されていないのではないかというように思います。  なお、この制度は、業者税務署の手間を省いて、その面からも物価と行政コストを引き下げる、こういう機能を持っていることも見逃してはならないと思います。  簡易課税制度も、事の本質は全く同様なんですが、免税点制度と違いまして、こちらの方は金額も大きいので、やはり将来データがそろうのを待って見直すかどうかは検討すべきだと思います。ただ、だからといって消費税をやめてしまえと言うのはこれは論理の飛躍でございまして、角を矯めて牛を殺すものだと言わざるを得ません。  消費税に対する批判の第三は、税率の歯どめがないということでございます。私も率直に申しまして、税率引き上げの可能性は否定いたしません。将来、社会の高齢化が進んで財政需要が増大してきますと、対応は福祉のカットか直接税あるいは消費税の増税しかないわけでありまして、そのとき国民消費税増税を選択すれば税率はこれは上がってまいりますが、何もでたらめに税率が上がるわけではございません。もし今、消費税導入せず、消費税とセットで行われた所得税の減税もなかったといたしますと、将来財政需要が起こったときには、福祉をカットするかあるいは今度の減税前の所得税をさらに増税してサラリーマンに一層の負担を強いることになるか、道は二つしかないわけでございます。こういう意味から申しまして、今度の税制改革は将来の福祉と税制について選択の幅を広げたものだと、そこに大きな意義があると思うのであります。  所得税は縦の公平のために不可欠な税制であります。しかし、残念なことにクロヨンという宿命を背負っております。これに対して消費税は横の公平に強い税でありまして、所得税を免れた税を消費の段階でつかまえる、こういう機能を持っております。  もう一つさかのぼって申しますと、我々の生活というのは、朝から晩まで社会の生産物を消費することによって成り立っているわけでございます。つまり、それだけ社会のお世話になっている、社会から利益を受けているわけでございまして、その受ける利益の割合、つまり消費の度合いに応じて社会を維持する費用の一部分を社会生活をする者の会費として納める、これが消費税の基本的な哲学であろうかと思います。  よく言われますとおり、消費税は縦の公平には弱い税であります。だが、何もすべての税が全部縦の公平に奉仕しなければならないということはちっともないわけでございます。消費税は、受益課税として横の公平を保つことによりまして、縦の公平に強い応能負担の所得税資産税とともにお互いに補い合いながらバランスある税制を構成するものであります。こんな意味で、消費税は公正税制のための不可欠な柱の一つなのであります。どの点から見ましても、消費税は維持されなければならないというのが私の結論でございます。  どうもありがとうございました。
  80. 中村太郎

    委員長中村太郎君) どうもありがとうございました。  次に、土井参考人お願いいたします。
  81. 土井隆史

    参考人(土井隆史君) 土井と申します。  本日は、参考人として意見を述べる機会をいただきましたことをお礼申し上げます。サラリーマンの立場から税制改革につきまして若干意見を述べさせていただきます。  私ども連合は、今日まで一貫いたしまして不公平税制を是正し、国民税制改革の理念、方向を示す税制の基本構想を策定し、これに基づき、所得資産、消費の間の課税のバランスのとれた税制を確立するよう提唱してまいりました。しかし、自民党消費税導入し、昨今消費税の見直し案を明らかにしておるわけでありますが、そもそも今回の政府自民党による税制改革につきましては、新型間接税導入が先にありきでありまして、国民にとりまして税制改革の理念でありますとか税制の基本的な考え方が、実は非常にわかりにくいものであったわけであります。  所得資産、消費の間の課税のバランスのとれた税体系の確立ということを主張しながら、課税ベースの最も大きい資産にほとんど手をつけず、また高齢化社会に備えるといいながら、高齢化社会の受益と負担のあり方を初めとする福祉でありますとか財政のビジョンはほとんど示されていなかったわけであります。そればかりか、消費税導入が決定するや否や、厚生年金の支給開始年齢の繰り延べでありますとか保険料の引き上げを打ち出すといった全くサラリーマンをないがしろにしたような政策さえまかり通ったわけでありまして、さらに、国民が最も税制改革で望んでおりました大前提であります不公平税制の是正につきましても、ほとんど手がつけられなかったわけであります。  また、消費税につきましても、生活者あるいは消費者立場からの議論がほとんどされなかったのみならず、業界の意向のみが配慮されて、したがって、多くの問題を抱える欠陥税制として実施されたわけでありまして、これらに対する国民の怒り、不満といったものがさらに参議院選挙の結果になって出てきたのではないかと私ども思っているわけであります。  したがいまして、全体として公平な税制にしないで消費税のみを見直しましても、国民全体が望む税制改革には全く結びつかないのではないかと思うわけであります。さらに、国民に新税として負担を求めるのであれば、やはり何のための負担か目的をもっと明確にすべきであったと思います。少なくとも高齢化時代の福祉、財政ビジョンを国民に示し、ともに考える、こういったようなことが必要だったと思うわけであります。  今こそそういう意味で国民合意の真の税制改革、こういった実現を目指しまして、もう一度昨年の臨時国会前の状態に戻って税制改革議論を私は始めるべきではないかと考えております。この点、消費税廃止し、昨年の臨時国会前に戻って不公平の税制の是正と国民税制改革の方向、手順等を示した四党の税制改革法案政府自民党のこの見直し案というものは、私ども全く次元の違うものであるというふうに受け取っております。私どもも八月の中央委員会で、消費税廃止税制改革のやり直しということの結論を出しておりまして、この意味で四党の今回の取り組みにつきましては敬意を表すとともに、全面的に支持をしておるわけでございます。  私どもの再三申し上げます不公平税制につきまして少々述べさせていただきたいと思いますが、実は私どもの主張は極めて簡潔でございまして、源泉徴収納税者と申告納税者との間の制度あるいは執行面の不公平の是正をぜひやっていただきたい、こういうことでございます。これは比較をすればもう全部出てくるわけでございまして、昨年の税制改革ではこういった視点がほとんどなかったのではないか。むしろ国会で全部挙げて、何でこういう制度が生まれてきたのか、そして今後どうすべきなのか、できるのかできないのか、こういう議論をどんどんやっていただきたい。そういう中から私は国民判断が生まれてくるのではないかと思います。  さらに私ども、公平の原則はやはりそのための物差しを用意する必要があるということで、プライバシーには十分配慮した納税者番号制度をぜひ導入していただきたい、こういうふうに思っております。私ども昨年来クリーンカード、所得をやっぱりガラス張りにし、払うものは払おうじゃないか、こういうことを提案しておりまして、ぜひこの導入は真剣に考えていただきたい。そして早急にやっていただきたいと思う次第であります。そして総合課税の方向を明らかにして、極力みなしといったものを税の制度から排除していっていただきたいと思うわけであります。そういう点では、消費税はまさにみなしの塊なんじゃないのかというのが我々の見解でございます。  さらにもう一つ、私どもは執行面の環境の整備が大変重要なんではないかと思います。総収入申告制、これは現行三千万の年収でございます。それから記帳義務、現行三百万でございますが、やはりこういうものをもっと引き下げ、強化して、きちんと申告すべきものは申告し、主張するものはしていく、こういうことをぜひやっていただきたい。それから推計課税導入と立証責任の仕組みの改善ですね。欧米ではみんな立証責任は納税者にあると言われております。日本のみが税務署にあるということでございますが、やはりこの辺の見直しもぜひやっていただきたい。  そして、最後に非常に重要なのは悪質、高額な脱税に対する罰則の強化、時効の延長でございます。現在、法人税で実調率が約一〇%弱、所得税で四%弱、すなわち法人税で十年に一回、所得税で二十五年に一回というのが調査できる範囲だと言われておりますが、これに対して時効は悪質な脱税で七年でございます。こういうような結果、例えば検察庁へ告発されたものの金額が六十一年五百三十六億円、六十二年五百六十一億円、六十三年は八百三十五億円、こういうような結果になってきておりまして、一件当たり約五億円という脱税が発生をしているということでございまして、やはりこの税制がきちんと機能する意味でも、こういったものに早急に手をつけていただきたいと思うわけであります。あわせまして、みなし法人でありますとか事業税の非課税等を含みます医師優遇税制、こういった制度上の不公平の是正を早急に行っていただきたいと我々は考えております。  続きまして、今回の消費税導入につきまして、減税財源というような話がよく出てくるわけであります。六十二年度二兆二千億円、六十三年度以降三兆三千億円、計五兆五千億円の過去最高の減税を行った、その財源に消費税が必要だというようなビラが昨年の選挙時に多く見られたわけであります。しかしながら、六十一年以降の当初予算に比べる税収を見てみますと、六十一年度で一兆三千億円、六十二年度で五兆六千億円、六十三年度で五兆九千億円、地方税でも六十二年度で九千億円、六十三年度で一兆八千億円弱ですか、こういったように当初予算を大幅に上回っているわけでありまして、どこを探しても減税財源として消費税を早急に導入すべきというようなことは見当たらないわけであります。  また、政府はこの五兆五千億円の減税を過去最高の減税と宣伝をしていますが、しかし例えば過去の昭和四十九年に行った一兆七千億円の減税は、今日の予算規模に直しますと約六兆円の減税、しかも単年で行ったというものでございます。さらに、私どもの試算でいきますと五十二年以降六十二年までほとんど満足な減税がなかったわけでありまして、この間サラリーマンにつきましては、収入が上がりますと実質増税になるような制度になっておりまして、この間の物価上昇は三四・六%の累計でございますが、目減りしたサラリーマンの所得は六十二年度の二兆二千億円の減税をもってしても埋められていないというのが実情でございます。  さらに、六十三年一兆三千億円の減税を行っておりますが、これはちなみに年収で大体どうなっているかと見ますと、年収五百万の方で年間一万九百円、四百万の方で四千七百円、それからサラリーマンの五割を占めます三百万以下の方では千二百円、月額百円、こういうような実態でございます。これは大蔵省が出された数字でございます。  しかも、この税制改革で行います三兆三千億円の減税につきましては、この六十三年に実施されました一兆三千億円の減税が含まれております。したがいまして、平成元年以降新たに実施される減税は、正しくは所得税の一兆一千億円、住民税の九千億円の二兆円でございます。さらに、高額所得者の最高税率の一〇%引き下げ、共稼ぎ世帯にはほとんど恩恵が及ばない配偶者特別控除の引き上げ、いわゆる教育減税等を含めますと、この財源が一兆円。したがいまして、全世帯に及ぶ減税効果というのは一兆円なわけであります。したがいまして、共稼ぎで中学生以下のお子さんを持つ世帯につきましては、減税効果というのは正直言って及んでいないというのはこれは各機関でも出ているとおりでございます。年収五百万以下というのが民間に働くサラリーマンの約四分の三ということでございますから、こういったことからこの減税の効果がサラリーマンに対してどういう効果を及ぼしているかということは御推察いただけると思います。こういうようなことで、連合としましては中低所得層に各種控除の引き上げによる追加減税を昨年は要求している次第でございます。  また、私どもサラリーマンは、先ほど申し上げましたように所得控除が定額なため、名目賃金が上がりますと累進税率によって実質的に増税になってまいります。今回税率は簡素化されまして、これは私ども評価をしております。しかしながら、控除がそのままのため、実額で控除できます事業者と比べますと、累進税率がそのままかかってくるということで、やはり実質的な増税の基調というのは制度的には変わっていないわけであります。したがいまして、一定の物価上昇に対応して控除額を引き上げるという物価調整減税制度、私どもインデクセーションと言っておりますが、ぜひこれを導入していただきたいと思うわけであります。  それから三点目は資産課税でございますが、今回、資産、とりわけ土地に対する課税の強化が見送られましたことは、現在の土地所有を中心とした資産格差の拡大に拍車をかけ、サラリーマンそれから自営業者、高額資産保有者の間の社会的な不公平不公正というものをますます助長する結果となってきているわけであります。  ちなみに、これはもう釈迦に説法で恐縮でございますが、我が国の国民資産は六十二年で五千三百三十八兆円に及びます。そのうち土地は一千六百三十八兆円で、一年間で三百七十六兆円、株式につきましては五百三兆円で、一年間で百二十八兆円、こういったように時価総額が上っているわけであります。しかし、土地に対する課税はどうかといいますと、固定資産税で大体時価に対する実効税率が〇・一五%と言われております。都区部では〇・〇七%ということで、欧米と比べますと十分の一から五十分の一という低い税率と言われております。これに加えまして、市街化区域内農地の優遇税制でありますとか譲渡所得に対する優遇措置など極めて軽くなっている。  また、これに反して一方、働いて得る雇用所得、これは平成元年度の予算のベースでいきますと約百七十四兆円でございますが、これに対して、所得・住民税を合わせた税率は一五から六五の累進税率が適用されるわけでありまして、この結果、税制改革後国税収入の構成比がどうなったかといいますと、所得課税が五九%、資産課税が一九%、消費課税が二二%、この前が所得課税が六二%、資産課税が一九%、消費課税が一九%ということですから、所得で減ったものが消費に移っただけということで、いかに勤労所得に過酷で、資産資産所得に甘いかということが一目瞭然であると思うわけであります。  サラリーマンはこういった税金、社会保険料を差し引いたもので住宅を買い、資産形成をするわけでありますが、事業者は経費で資産の蓄積が可能なわけであります。また、高額資産保有者につきましては、保有資産への課税が甘い上に、こういったものを担保として多額の融資によってさらに資産を拡大できる。こういったことでますます資産格差は拡大をしていくわけでありまして、サラリーマンにとって、一生懸命働いても家が持てない、しかし格差は拡大していく、まさに勤労意欲を減退させるような結果になっているわけであります。こういったような循環に歯どめをかけていただくという意味で、ぜひ土地税制の強化というものを早急に行っていただきたい。  今般、衆議院で土地基本法が成立いたしましたが、ぜひ超党派でこれを成立させまして、まさに緊急の課題として土地税制に手をつけていただきたい。連合は大土地保有税を提案しておりますが、できれば超党派でぜひ御討議をいただきたいと思う次第でございます。  以上、私いろいろ申し上げてまいりましたが、税制は国の屋台骨であると同時に、私ども国民の懐にかかわる大変重要な問題でございます。税制改革に当たっては、ぜひ将来のビジョンを明らかにして、そして税制改革の方向を示して、政争の具ではなくて、超党派で十分議論をしていただきたい。そういう意味では、今回四会派が提案されました再改革基本法案に基づきましてぜひ十分な御審議を行っていただきまして、国民の望む税制改革を実現させていただきたいと思います。  以上、私の公述を終わらせていただきます。
  82. 中村太郎

    委員長中村太郎君) どうもありがとうございました。  次に、半澤参考人お願いいたします。
  83. 半澤良一

    参考人(半澤良一君) 館山市長の半澤でございます。  参議院税制問題等に関する特別委員会の諸先生方におかれましては、日ごろから地方自治行政につきまして格別の御高配を賜り、感謝申し上げる次第でございます。本日は、消費税法廃止関連法案につきましてせっかく発言の機会をお与えいただきましたので、都市行政を預かる市長の立場から意見を申し述べさせていただきます。  なお、消費税につきましては、それぞれの立場からいろいろな意見や主張がございまして、私ども市長をもって組織いたしております全国市長会において特に意見の集約はしておりませんので、以下私が申し述べますことはあくまでも私個人の意見としてお聞き取りいただきますようあらかじめお断り申し上げておきたいと存じます。  まず、当委員会におきまして御審議いただいております消費税法廃止関連九法案につきまして直接御意見なり御要望を申し上げる前に、さきに行われました税制改革及び税制改革の柱の一つであります消費税につきまして私なりに感じておりますことを若干申し上げておきたいと存じます。  御承知のとおり、税制改革が行われる前の我が国の税制は、昭和二十五年のシャウプ勧告をもとにしておりましたが、約四十年の経過とともにさまざまなゆがみやひずみが目立ち、国民の中に税に対する不公平感や重税感が高まっていたところでございます。このようなことから国民からは、我が国税制のゆがみやひずみを是正するとともに、今後における本格的な高齢化社会の到来や経済社会の将来を展望した整合性のある税体系を整備することが強く期待されておりましたことは周知のとおりでございます。この点につきましては、全国市長会におきましてもかねてより要望してきたところでございます。  さきの税制改革は、このようなことを背景として、所得資産、消費の間で均衡のとれた望ましい税体系の構築を図ることを目的として行われたものと認識をいたしております。全国市長会におきましては、このようなことを踏まえ、また現行制度において消費税の約四割が地方の一般財源として配分されており、地方公共団体における今後の行財政運営にとって極めて重要な財源となることから、八月に開催いたしました全国市長会議におきまして消費税の見直しに関する決議を決定し、消費者立場に立っての必要な見直しを要望したところでございます。  御承知のように、現下の地方財政は、懸案の国庫補助負担率復元問題が一応決着したとはいえ、六十七兆円にも上る多額の借入金残高を抱えるなど依然として厳しい状況にございます。しかしながら、住民に最も身近な行政主体であります地方公共団体には、二十一世紀を間近に控え、急速に進展する高齢化社会への対応、社会経済情勢の変化に伴い多様化し増加の一途をたどる行政需要に的確に対応していくことが強く求められているところでございます。地方自治体がこうした市民、住民の期待にこたえ、積極的にその役割を果たしていくためには、行財政運営の簡素効率化と一層の行政改革をみずからがさらに推進しなければならないことは当然でありますが、地方税財源を充実することにより財政構造の健全化を図ることがぜひとも必要なのでございます。こうした意味からいたしまして、消費譲与税、地方交付税という安定した地方の一般財源として消費税収が地方に配分されることは極めて意義あることと存ずるところでございます。  そこで、今回当委員会におきまして御審議いただいております消費税法廃止関連九法案についてでありますが、都市行政を預かる一市長といたしましては心配しております若干の事柄につきまして御説明なりお願いを申し上げ、私の意見とさせていただきたいと存じます。  今回の消費税法廃止関連法案の中で私ども地方自治体が最も関心を持っております第一の点は、消費税廃止された場合において地方税財源の減収額が果たして完全に補てんされるのかどうかであります。  御承知のとおり、さきの税制改革におきましては、消費税の創設に伴う地方間接税の改廃による地方税の減収及び国税三税の減税に伴う地方交付税の減収は、消費譲与税の創設並びに消費税を地方交付税の対象税目とすることにより完全に補てんされております。したがいまして、消費税廃止することとするならば、それに伴う地方税財源の減収につきましては、自然増収によることなく制度内的に完全に補てんすべきものであります。しかしながら、今回の代替財源案を見る限りにおきましては完全に補てんすることにはなっていないのでございます。その上、初年度である平成二年度についてはさらに数千億円もの財源不足が生ずるやに聞いておりますが、何としてもこれが完全補てんをお願いいたしたいものでございます。  また、当委員会において、過日、自治省当局から示されました今回の代替財源案による国と地方のいわゆる消費税廃止に対する補てん割合を見ますと、国が七四%であるのに対し地方は六七%と国を大きく下回るという結果になるとのことでございます。これは地方自治体といたしましてはまことに遺憾に存ずる次第でございます。このように、地方財政に十分な補てん措置がなされないこと自体大きな問題でありますが、このことはそれだけではないのでございます。  全国市長会におきましては、かねてより都市政策に関し行っております提言の中で、国、地方自治体間を通ずる税源の再配分を行い、地方への配分強化を訴えてきたところでございます。このことは、地方自治体が地方分権のもとで自主性、自律性に基づいてその責務を果たし、あわせて市民に対しても受益と負担の関係を明確にするためには、地方自治体の自主財源の一層の拡充強化を進めることが極めて重要であるとの観点に立つものでございます。国民皆様からお納めいただいた大変貴重な税金が国と地方でどう配分され、これがいかに活用されるか、今最も注目されているところでありますので、この点につきまして委員先生方の特段の御高配を賜りたいと存じます。  次に、第二点目の問題点でありますが、いわゆる二年間の暫定期間が終了した後、我が国の税制はどうなるのか、そしてまた地方税財政への影響は一体どうなるのかということでございます。  今回の税制改革基本法案では、国民税制改革協議会における審議の結果をもってこれに当たるとされておりますが、率直に申し上げますならば漠としてよくわからないというのが本音でございます。私ども地方自治体は、こうしたことにつきまして大変不安に思っておりますことをこの際申し添えさせていただきたいと存じます。  以上、思いつくままにまことに雑駁ながら消費税法廃止関連九法案につきまして忌憚なく意見を申し述べさせていただきましたが、いずれにいたしましても、本法律案の推移いかんによりまして、私ども地方自治体の財政運営のみならず国民生活に重大な影響を及ぼすものでございますので、何とぞよろしく御審議賜りますよう心からお願い申し上げる次第でございます。  大変貴重な時間をちょうだいいたしましてまことにありがとうございました。
  84. 中村太郎

    委員長中村太郎君) どうもありがとうございました。  次に、今井参考人お願いいたします。
  85. 今井勝人

    参考人(今井勝人君) 今井でございます。  私は、消費税廃止することに賛成する立場から、一言意見を申し上げたいと思っております。  その場合、ただいまこの委員会で御審議中の消費税法廃止する法律案等それ自身について申し上げるよりも、消費税導入の前提となった考え方に対する私の意見を申し上げた方が、消費税廃止することに賛成する私の立場をよりはっきりさせることができると考えますので、その点あらかじめ御了解をいただければと思います。  さて、消費税導入に当たりましては幾つかキーワードがあったかと思われます。その中でも特に私が注目したいと思っておりますキーワードは、広く薄い負担を国民に求めるということと、高齢化社会の財源にするということであります。  まず、後者の高齢化社会の財源論について申し上げますと、私はぜひ次の二点を指摘しておく必要があるのではないかと考えております。  第一は、もし高齢化社会の財源ということを考えるのであるならば、特に高齢化社会が到来したときに問題になるであろう年金あるいは医療ですとか、そういった問題に対する総合的な将来計画とセットで財源も考える必要があるのではないかということであります。  それからさらに第二番目の論点は、高齢化社会の到来に備えるということであるといたしますと、今次消費税導入を含みました税制改革が全体として純減税になっている、しかも総額約二兆六千億円にも上る純減税をしているということは、私はかなり問題があったのではなかろうかというふうに考えております。もし高齢化社会の到来に備えるということを念頭に置きました税制改革を行うのであるならば、私はいわゆる税収中立型の税制改革を行うべきではなかったかと、そういうふうに考えております。  この二点を指摘いたしまして、これから私は主に広く薄い負担を求めるという点に関連いたします私の意見を申し上げたいと考えております。  広く薄い負担を求めるということにつきましては、そういう考え方の背景に一つの基本的な認識があったのではないか。一つの基本的な認識と申しますのは、日本社会につきましての一つの基本的認識でありますが、そういう認識があったのではないかと思われます。それはどういうことかと申しますと、国民の間の所得格差は縮小している、あるいは日本社会は非常に所得水準が平準化している社会だと、そういう認識ではなかろうかと思われます。しかしながら、このような認識は私自身かなり問題のある認識ではなかろうかと考えております。特にここ数年間の動向、あるいはその延長といたしましてここしばらくの間将来を考えたときに、このような認識のもとでいろいろなことを進めていくということにつきましては、大きな問題が生じてくるのではなかろうか、そんなふうに考えておるわけであります。  と申しますのは、御承知のとおりここ数年間のいわゆる財テクブームですとかあるいは地価高騰などによりまして、私の見るところ国民の間の保有資産の分布、保有資産の格差は相当大きくなっていると考えられるわけであります。したがいまして、そういう格差が拡大しております資産を前提といたしましたときに、そうした資産から生じますところのいわゆる資産所得の格差もまた拡大しているのではないだろうかというふうに私は考えておりますし、そういうふうに考えることが自然なことではなかろうかと思っております。  ところが、資産所得とその他の所得を合算いたしました所得分布に関するデータというものは、これは皆様承知のとおりなかなか推計等が困難であります。したがいまして、普通我々が所得格差ということを問題にする場合には税務統計を用いたり、あるいは家計調査等を用いたりするわけでありますが、そのときに主に使われますのは給与所得が中心でございます。給与所得を中心にして日本所得分布はどうかということを考えるわけであります。そのときには、先ほど申し上げましたような資産から生ずる所得というものはほとんど念頭にないと言っていいのではないかと考えられます。  そうしまして、先ほど申し上げましたそういう資産分布の格差が非常に大きくなっている、そして今後もそれが予想されるときに、単純に所得格差は減少したとか、あるいは日本所得水準は平準化しているといったようなことに対しましては大きな疑問が生じてくるわけでありまして、しかもそのような問題のある認識を前提にいたしまして、広く薄い負担を国民に求めるという税制改革にもまた大きな問題があったのではなかろうか、そのように私は考えております。  その問題をもう少し具体的に述べますと、次のようになろうかと思っております。  所得水準が平準化している、あるいは所得格差は縮小している、そういう認識のもとでは、税の公平といった場合に垂直的公平よりも水平的公平を重視した方がよいということになるわけであります。あるいは水平的公平を重視した税制がよいということになりますが、しかし資産所得まで含めて考えるとむしろ所得格差は大きくなっている、今後も大きくなりそうだということが予想される場合には、私は水平的公平よりも垂直的公平の方が重視されてしかるべきだというふうに考えております。  消費税導入というのは、この水平的公平を重視した考え方になるわけでありますが、私のように垂直的公平を重視した考え方税制改革を考えるとした場合には、所得税の改革が当然その中心になってこようかと思われます。といいますのは、御承知のとおり垂直的公平を実現するためには累進課税というものが必要でありますが、そういった累進課税が可能な具体的な税目は所得税しかないのでありまして、所得税の改革こそが垂直的公平を重視したときの税制改革の中心になるべきだということになろうかと思います。  ただ、その場合、所得税が垂直的公平を実現できる税金だといたしましても、どんな所得税でも所得にさえ課税すればいいのかといえば決してそういうことではございませんで、所得税が垂直的公平を実現できるためには幾つかの重要な条件が必要でございます。中でもとりわけ重要な条件は所得の総合化ということでございまして、いわゆる総合所得税考え方であります。そういう総合所得税考え方からまいりますと、現行の所得税にも大きな問題があるわけでありまして、それは言うまでもなく利子所得ですとか配当所得ですとか、あるいはキャピタルゲインといったような資産所得が分離課税になっているということでございます。これらの所得はいずれも金融資産から生じる代表的な資産所得でありまして、資産分布の格差が大きくなっていくと予想されておるときには、これらの金融資産から生ずる所得を総合課税の中に取り入れていくことが必要不可欠でありますし、また急務であると考えております。  ところで、ただいままで申し上げてまいりましたような所得税につきましては、今回の税制改革の中で、サラリーマンの重税感を緩和するということからも、広く薄い負担を求めるという方針が出てきたと思われます。このサラリーマンの重税感につきましては、それ自身の問題も当然あるわけでありますが、そこにはもう一つ別の問題もあろうかと思います。いわゆるクロヨンとかトーゴーサンとかと言われている問題でありまして、これも早急に改善されてしかるべき問題だろうというふうに思われます。  先ほど所得の総合化ということが垂直的公平を実現していく重要な必要条件だということを申し上げましたけれども、そもそも所得税が意味があるためには、所得が正確に捕捉されるということもその前提として当然必要なことでございます。そのような点からいたしましても、クロヨンとかトーゴーサンとか言われる問題につきましては、早急に改善の措置が工夫されてしかるべきだというふうに考えておるわけであります。  さて、もう一つ消費税導入と同時に行われました問題、あるいは昨年度から引き続いてでございますが、所得税税率のフラット化ということが行われたわけであります。しかし私は、この所得税のフラット化にはかなり問題があったというふうに考えております。むしろ税率のフラット化をするならば、先ほど来申し上げておりますような所得の総合課税ですとかあるいは所得捕捉率格差の是正等、そういった問題ができ上がった後でやるべきことであって、順序が逆転していたのではないかというふうに考えております。  以上、申し上げてまいりましたように、私は所得税改革こそが今我々の考えるべき税制改革の第一の課題である、そういうふうに考えておりますので、それを抜きにして、あるいはそういった問題を余り検討されずに消費税導入された、そういう消費税は現時点では廃止されてしかるべきであろうというふうに考えております。  もちろん、私も税体系全体の中におきます補完税としての間接税の地位というものまでは否定するわけではございません。補完税としての間接税の必要性は私自身もあろうかと思っておりますが、補完税ならば補完税にふさわしい間接税のあり方というのもあるのではないかというのが私の考えであります。その補完税にふさわしい補完税のあり方を考えるといった場合には、具体的には、現在この委員会で審議をされておりますような、消費税廃止物品税を復活するという問題に関連いたしまして、物品税のような個別消費税がいいのか、あるいは消費税のような一般消費税がいいのかという、そういう個別消費税と一般消費税の比較ということが必要になってこようかと思いますが、その比較の判断基準につきましても、私の考えは先ほど来述べてまいりましたような垂直的公平ということであります。  間接税というものは、一般的に申し上げますと垂直的公平を損なうものでございますので、物品税がいいか一般消費税がいいかといったようなことを考えます場合には、垂直的公平をどれだけ損なうか、その損ない方が小さい方がいいのではないかということになってまいります。その点から考えてまいりますと、あらゆる財貨サービス課税する消費税よりも、そういう消費の背後にある所得の大きさをある程度類推することが可能なような物品税、あるいはそういう所得の大きさを類推することがある程度可能な特定の財貨サービスの消費、それに課税することが垂直的公平の損ない方も少ないのではないだろうか。したがいまして、消費税物品税を比べてみれば、物品税の方がより好ましいのではないかというふうに考えております。  もちろん、他方で、所得税の方で十分に垂直的公平が確保され、間接税がそれを補完するということになった場合には消費税を検討する余地も出てこようかと思いますけれども、現在のように所得税がさまざまな問題を抱えているときに、消費税物品税を比較すれば物品税の方がよいのではないかというのが私の認識でございます。  最後に、外国との比較について一点だけ申し上げたいと思っております。  それは消費税導入に当たりまして、EC諸国を初めとして多くの国々で付加価値税課税されている、そしてその付加価値税の税収入が税収全体に占める比重もかなり大きいということが言われていたことに関連いたします。確かに、日本税制におきましては間接税のウエートは相当低く、逆に直接税のウエートが相当高いというのはそのとおりでありますが、その直接税の中で個人に対する所得税、個人所得税だけをとってみた場合には、先進諸国とそう大きな差はないということが言えます。  OECDの資料によりまして、若干その点数字を述べてみますと、国税と地方税と社会保障負担、いわゆる我々の支払っている税金全体でございますが、その全体に占めまする個人所得税のウエートは、アメリカが三五・四%、西ドイツが二八・六%、イギリスが二七・九%、日本が二五・一%、フランスが一三%でありまして、フランスはやや例外的に低くなっておりますけれども、そのほかの四カ国の中では、個人所得税の税収全体に占める比重は日本が最低であります。  そうしますと、日本の直接税のウエートが高いのはなぜかという問題が当然出てまいるわけでありますが、その理由は日本では法人所得税のウエートが非常に高いということでございます。  法人税の理解につきましてはいろいろ議論のあるところではございますが、我々が注目すべき一つ考え方といたしまして、法人税もこれは価格を通じて転嫁されているのではないか、少なくとも法人税の一部分は転嫁されていると考えた方がよいのではないかというのがかなり通説になっておろうかと思います。そういうふうに考えた場合には、日本間接税のウエートというのは見た目以上に高くなっているのではないかというふうに私には思われるわけであります。  以上、消費税廃止に賛成する私の基本的な立場考え方を申し上げましたが、御清聴ありがとうございました。
  86. 中村太郎

    委員長中村太郎君) どうもありがとうございました。  以上で参考人各位の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  87. 久世公堯

    ○久世公堯君 六名の参考人皆様方には、本日は公私いろいろと大変お忙しいところをこのように皆様方の御意見を賜りましてありがとうございました。私はできるだけ多くの方に御意見を拝聴いたしたいと思いますので、できるだけ簡潔にお答えをいただければありがたいと思う次第でございます。  まず、山口参考人にお尋ねをしたいわけでございますが、山口参考人野党の四会派の改革案について具体性がないということを御指摘になり、国民から見た場合、このような具体性に欠けて大変不安定な案にはなかなかついていけないというような趣旨のことをお話しになりました。また、議会制民主主義をとっているにもかかわらず、国民税制改革協議会というような五十名の委員によって形成されるところがそれについて二年間で具体案を出すというのも大変奇異なる感じがするという御指摘があったわけでございます。まず、これについても相当詳しくお述べになりましたけ れども、私は、国民立場に立ったならば、そして民主制の今日の日本における国民から見た場合においては、山口参考人の御指摘というのは非常に適切ではなかろうかと思いますので、そういう国民立場からさらにどのようにお考えになるか、これは全く絵にかいたもちに等しいのかどうか、そのあたりのお考えをまず承りたいと思うわけでございます。  次いでもう一点お伺いいたしたいのは、この委員会におきましてもいろいろの論議がございましたが、山口参考人は行政改革についてちょっとだけ触れられまして、行政改革についても野党間に足並みがそろっていないというところを御指摘されました。山口参考人は国内問題のみならず国際的にもいろいろと御活躍と承っております。このような行政改革においてすら四党間にかなりの開きがある、まして、この委員会でも議論になったわけでございますが、西側の一員といった外交問題やあるいは安保、あるいはまたエネルギー、特に原発問題、そういう点につきましては社会党と公明、民社の間にはかなりの開きがあるわけでございます。こういう全く足並みのそろっていないところが一体税制改革についてこのような一つの案が進められるものであるかどうか。山口参考人税制は国の基盤であるとおっしゃいましたけれども、四党は連合政権ということも考えているようでございますが、そういう点も含めて一体この四党でこういうことができるのかどうか、それを二点目にお伺いいたしたいと思います。
  88. 山口令子

    参考人山口令子君) 御質問いただきましたまず第一点目についてでございますけれども、先ほど私が述べましたように、国民の一人として考えた場合に、これをとるかあれをとるかという、要するに二者択一ということになった場合に、結局その二者について十分に比較検討ができるだけの情報なりあるいは準備なりが必要だと思います。その上で、私が先ほど申し上げたことは、つまり消費税についてもずっと言われておりますように長所もあれば欠点もあるわけでございますけれども、それに取ってかわる再改革法案として比べる上において、もっと具体性がないと比較するだけのところまでいかないということになるわけです。  ということはどういうことかといいますと、国民税制改革協議会というもののウエートが大きいということもあるわけですけれども、しかし現実問題としては、例えばこの再改革基本法案が通れば結果的に具体的なものはお任せするという形になってしまうわけです。お任せできるのかどうかという点においてはもう本当に同じことに、トートロジーになってしまうわけですけれども、具体性がない上においてはお任せするということについて非常に不安が大きいわけです。同じようにまた長所も出れば欠点も出る、あるいはさまざまな議論も呼ぶと思いますけれども、その議論のための手がかりをもう少し示していただきたいと思うわけです。ですから、ちょっと一点目の結論から言いますと、具体性がない上においては現行の消費税を採用するしかないという道になってくるのでありまして、もっと具体性があるものが示されて、果たしてどちらをするかということを国民としては選んでいけるのではないかと思います。  次に第二点についてでございますけれども、最後に私がほんのちょっと申し上げた、つまりいろんな方々に取材などをしておりますと、国全体ということを考えてみると、やはり税金の使われ方というものが納得がいけば税金を払うことはやぶさかではない、あるいは中には喜んで払うという方もいらっしゃるわけです。その上において行政改革、つまり今後の日本について外交問題がどうなっていくのか。例えば安保一つとってみましても、これが変わるということになりますと日米問題、貿易摩擦なども非常に大きな問題になっているわけですけれども、そういった経済活動においても非常に大きな影響を及ぼすものでありますし、それが一体どういうことになるのか。率直なところを申しますと、この税制改革についてはとりあえず表面的には意見の一致を見ているわけですけれども、逆に言いますと、仮にこれが通った場合、今度はまた行政改革のように各党がそれぞれ言うことが違ってきて、結局その収拾がつかなくなるのではないかというような懸念もあちこちで聞かれるわけでございます。ですから、そういった各党の足並みのそろわなさというのがこの税制改革においても一つの大きな影響を及ぼしているものと思います。  以上でよろしいでしょうか。
  89. 久世公堯

    ○久世公堯君 ありがとうございました。  また山口参考人には後ほど承ることにいたしまして、次に、大島参考人にちょっとお話を承りたいと思います。  大島参考人は非常に理論的にこの消費税の特性、それから間接税がいかにこれから必要かということをお述べになりまして、特に私が大島参考人にむしろお聞きをしたかった消費税のいろいろと論議をされております逆進性の問題で、逆進性ということが本当にそうなのかどうか、あるいは免税点や簡易課税の問題、さらには消費税税率の歯どめの問題、こういう問題につきまして、もうお尋ねするまでもなく理論的にかつ実際に即してお述べになったわけでございます。  私は少し方向を変えまして、自民党が今回見直し案を出したわけでございます、その見直し案と申しますのは参考人も十分御承知の点だろうと思いますが、特に私がお尋ねをいたしたいのは、食料品につきまして全段階課税にするよりも、むしろ小売段階の非課税、そしてその前の段階の一・五%の課税、これによって一体国民生活にどういう影響があるか、物価は下がるだろうか、こういうことが新聞等でいろいろ問題にされておるわけでございます。そのあたりのところをひとつ御専門の立場から解明いただきたいのが一点目でございます。  もう一つは、この消費税が実施されましてから消費税について国民という立場からいろいろの注文もあったわけでございます。また、先ほどからお話がありますように、本当に国庫に納入されているかどうかというような疑問も寄せられたわけでございます。さらにまた、消費者立場から見た場合にいろいろと利便の点において問題はなかったか、こんなことが指摘をされていたわけでございますが、今回の自由民主党の見直し案についてこういう点がどのように解決されているのかされていないのか、ひとつ御専門の立場からお教えいただければありがたいと思う次第でございます。
  90. 大島隆夫

    参考人(大島隆夫君) お答えいたします。  今回の自民党の見直しは、消費者重視という観点から進められたわけでございます。しかし、非常に重要な観点でございますけれども、また片方から申しますと、見直しによって業者の方にむやみに手数をかけて実行が難しくなるということになってはまたこれは困るわけでございまして、その両者のぎりぎりの妥協点を探ったということで大変御苦労があったと思うわけでございますが、私も今回の結論はいわゆるぎりぎりのところで消費者の利益に資する案であるというように評価をしているわけでございます。  その理由について申しますと、まず第一に、全段階課税ではなくて小売段階のみ非課税、こういう案をおとりになったわけであります。両方比較いたしますには、ちょっと言葉はかたいですけれども、定性的な側面と定量的な側面とがあろうかと思います。  お尋ねの定量的側面から申しますと、全段階課税とそれから小売段階のみ非課税というので物価がどちらの場合にどうなるかということでございますが、これはかなり難しい問題でございます。全段階課税にいたしますと、例えば農家が農機具だとか肥料だとかを購入する、これが控除されません。税制上の控除はございませんので、価格に上乗せされて売られることになります。それが卸売業者、市場などを通るわけでございます。わかりやすく卸と申しておきますが、卸業者がその上乗せされた商品を買い入れまして、さらにそこで運送費であるとか水道光熱費であるとか使いましたもの、これももしその業者が非課税であれば控除されないことになります。控除されませんから同じくそれが値段に上乗せされる。さらに、それが小売に参りますと、小売はその上乗せされたものに対してもう一回自分のところでかかった諸経費の三%を上乗せすることになります。したがいまして、全段階が非課税であった場合の値段のアップというのは、消費税がない場合に比べてのアップは、農家の肥料とか農機具とかを含めましてあらゆる流通経費の三%が累積して上乗せされる、こういうことになるわけでございます。  それから、今度の与党案によりますと、一・五%の軽減税率でありまして前段階控除が働きますから、小売の業者が卸業者から仕入れる値段はこれは確実に一・五%上がります。しかし、小売業者は非課税でございますから、これは控除されないで、この場合に、消費税がない場合に比べて価格に上乗せされるのは、その小売者の仕入れ値段の一・五%とそれから小売者の段階でかかった運送費、水道光熱費の三%、これが上乗せになるわけでございます。  ですから両方、どっちが有利かということを比較いたしますには、結局全段階にかかった経費の三%とそれから小売者の仕入れ価格プラス小売者の所要経費の三%、これのどちらが大きいか、こういうことの比較になるわけでございます。どちらが大きいかということは、これはいろんな条件に左右されるわけでございまして、一概に結論を出すのは難しいかとは思いますけれども、私、確たる資料をまだそろえるところまでは参っておりませんけれども、常識的に考えまして、これは全段階にかかった三%の方が大きいんじゃないか。つまり、全段階課税よりも小売段階のみ非課税ということの方が結果として現在に比べる値下げは多いんじゃないかというように考えておりまして、現に一つの試算といたしましては、全段階課税の場合にはざっと九千億、それから今回の見直し案による場合には一兆円、このような試算もあるようでございます。  定量的な点は、以上申しましたように非常に難しいけれども、どちらかといえば見直し案の方が消費者にとって有利ではないかというのが第一点でございます。  それから定性的な側面を申し上げますと、今の説明からも出てまいりますように、小売価格の値上がりというのは、全段階課税の場合にはこれは税額として乗っかるんじゃなくて各段階における経費の三%の累積が乗っかるという、いわば隠れた消費税ということになるわけでございます。小売段階のみ非課税の場合にも税額として乗っかるわけではないという点は同様でございますけれども、この場合には小売者の仕入れ値段はこれは一・五%のアップということで非常にはっきりしております。あとは小売者の経費、これが三%上がる。この部分はいわゆる隠れた税金ということになるわけでございますけれども、隠れた税金の部分が全段階課税に比べて非常に小さいという点が消費者にとっても大きな利点ではなかろうかというように考えます。  この案に対しまして、はっきりした数字は難しゅうございますけれども、例えば一・五%ぐらい下がってもそんなのは実感がないじゃないかというような批判もございますけれども、どうも私わかりませんのは、三%値上がりになるとこれは生活が圧迫されてもうどうにもならぬという声、同じような方が一・五%じゃ実感がないと言うのはどうもつながりが悪い議論じゃないだろうかというように考えております。  それからもう一つ、けさの新聞ですけれども、婦人団体の方から、問題はどっちが有利なのかというようなことじゃないんだ、消費税は食料品は非課税だという理念が大事なんだ、こういうことを婦人団体の方がおっしゃっておりましたけれども、そういうことになりますと、婦人団体も一般の主婦の感覚からはこれは大分ずれているんじゃないかなというような感じがいたしております。  それから二番目に御質問の食料品以外の点でございますけれども、これは非常に大幅な見直しがございまして、私どもが考えていたのよりもずっと大きい見直しでございまして、非常にびっくりしたり評価したりしておりまして、率直に申しまして、私、少しオーバーなんじゃないかなというような感じさえするわけでございます。一々は申し上げませんけれども、非課税範囲、これが非常に広がっている。住宅家賃、出産費、学校教育、その他の分ですね。  それから二番目に、年金生活者に対する減税。これは先ほど申し上げましたように、ことしの予算措置で完全に消費税分をカバーすることになっているんですが、さらにそれに上積みをして優遇されるということでございまして、やはり高く評価すべきであろうかと思います。  それから簡易課税あるいは免税点でございますけれども、これは消費税が一巡もしない前から直せ直せと言う方がどだい無理な注文でございまして、ワンラウンドしてから見直すというのが当然の話だと私思っていたんですが、今回の与党案もそのような立場に立っておられ、見直すということをはっきり申された。これだけで私十分に評価すべきかと思います。  それから、よく非難がありましたいわゆる大企業が運用益を得るという点でございますが、この点も中間納付が三回になりまして完全に解決いたしました。ただ、これは売上税と同じになったわけでございますけれども、売上税のときに社会党がお出しになった「究極の大増税」という本がございますが、それには年四回も納税するんじゃ業者の資金繰りが大変だよというようなことで大変な非難があったわけでございまして、はしなくもそれを思い合わせたりしたわけでございます。  それから事業者の仕入れ税額控除の制限でございますが、交際費、一定の自動車、これも消費者事業者のアンバランスを是正するために非常に有効な措置であったと思います。  カルテルの廃止、これは片方で転嫁ができないということが大きな問題になっていたくらいでありますから、設定されたのもやむを得ないと思います。転嫁が順調に進んでいる限りは、これを廃止したのは今の時点としては妥当なことであったかと思います。
  91. 久世公堯

    ○久世公堯君 大体わかりましたので、ちょっとほかの先生にもお尋ねしたいと思います。
  92. 大島隆夫

    参考人(大島隆夫君) 失礼いたしました。
  93. 久世公堯

    ○久世公堯君 ありがとうございました。  それでは次に、土井参考人にお尋ねしたいと思います。  二点あるんですが、まず一点目は、簡潔にお答えいただければありがたいと思いますが、今四党で出されております再改革基本法案には、例えば二条に「現在及び将来の経済社会に対応する税制」と書かれております。また、四条には「福祉社会を支える基盤となる」税制と書かれております。また、特に五条には「サービス流通等に対する適正な課税」と書いてございますが、私どもはこのようなことを見ますとこれは現在の消費税とほとんど同じものじゃないかと思いますけれども、先ほどから伺いました観点からこれはどのように御判断いただけますでしょうか。
  94. 土井隆史

    参考人(土井隆史君) 私どもも、経済社会の変化に合わせまして税制を見直していかなければいけない、これは同じ視点でございます。そういう観点から見ますと、今はまさにストック経済社会でございまして、このストックを飛び越してなぜ一気に消費に行ってしまうのかというのが私どもの率直な疑問でございます。先ほど言いましたように、五千三百三十六兆円という日本の総資産が示しますようなこういうものが国税の中で一九%しか課税されないということに対して、我々サラリーマンは怒りを通り越してあきれているというような状況じゃないかと思います。
  95. 久世公堯

    ○久世公堯君 サービス流通に対する課税はどのようにお感じでございますか。
  96. 土井隆史

    参考人(土井隆史君) 私どもも旧来から間接税の改革ということは言っております。したがいまして、これは今後の課題としてやっていかなければいけないということも、私ども九月二十六日の三役会議で出しております。しかしながら、サービス課税等は究極的にはやはり消費者税なんですね。したがいまして、消費者のいろいろな多様化の中でこれを見ていかなければならないということは、やはり非常に時間がかかることだと思います。自民党も今回の見直しの中で大変御苦労されているようでございますが、まさにこれはもっと前の段階からやっていけばこういうことは数年かけてかなりいい方向へいっていたということがあると思いますが、かなり拙速にやったためにこういうことが出たのではないかということが我々の見解でございます。
  97. 久世公堯

    ○久世公堯君 ありがとうございました。  納税者番号についてもう一点お聞きしたいんですが、これは後ほどにいたしまして、半澤参考人にお尋ねをいたしたいと思います。  半澤参考人には市長さんとして地方自治体を預かるという見地から地方財政の点についてお話をいただきましたのと、もう一つは住民という立場からお考えになっていろいろと詳しくお話を承ったわけでございます。御指摘がありましたように、野党の案というのは法案では地方自治を大変高々と掲げているわけでございますけれども、暫定財源とはいっても、先ほど数字もお挙げになりましたように、国の方には七四%も措置をされているのに地方財政の方では六七%しか措置をされていない。さらには、暫定財源としては電気税とかガス税とか旧税の復活というものが提案されておるわけでございますが、一たん廃止になりましたところの旧税というものを復活いたしますと大変な苦労がかかることはもう御承知のとおりでございます。ひとつ、市の責任者としての率直な感想、財源が十分に措置をされていない点、また旧税等を復活してなかなか手間も大変であろうと私は思うわけでございますが、そのあたりの御感想を承れればありがたいと思います。
  98. 半澤良一

    参考人(半澤良一君) 御指摘のように、消費税はその四割が地方団体に配分されているわけでございまして、地方団体にとりましては大変貴重な財源、重要な財源でございますので、もしこれを廃止するということになりましたら完全に補てんしていただかなければ地方団体の運営が非常に困難になるわけでございます。制度として確保された財源でございますので、それを廃止するならばやはり制度としてその財源を確保していただきたい。自然増というような不確定な要素が多分にあるわけでございますので、そういう財源では我々は非常に不安で地方行政の運営が大変難しいというふうに考えております。  それからまた、一遍廃止した税をもう一度復活する、朝令暮改ということになるわけでございまして、必要があって、現在国の税制制度にゆがみがあり、ひずみがあるんだ、それを直すんだという大義名分で税制改革を行ったわけでございますが、それを復活するにはやはりゆがみやひずみが直っているんだという、また国民に納得いただかなければ復活税金をいただくわけにはなかなかいかないと思うわけでございます。  それでまた、税金というのはやはり国民的な合意があって納税者の納得が得られなければ徴収が大変難しいものでございますので、そういう意味で合意を得ることが大変難しいのじゃないかと思うわけでございます。また、現実に徴収する場合にも、一遍組織を壊してといいますか、解散してしまったわけでございますから、もう一度その組織をつくり上げて、それで徴収に当たらなければいけないということでございまして、大変またいろんなトラブルが起こるのではないかと思っております。
  99. 久世公堯

    ○久世公堯君 ありがとうございました。  もう一点、市長さんにお尋ねをしたいわけでございます。  消費税導入されて八カ月ぐらい経過したわけでございますが、私どもの日常生活にはかなり定着をしていると私は思うわけでございます。館山市ではいかがでございましょうか。それで、かつ自由民主党では見直し案というものもこれで固まったわけでございまして、いよいよ国民あるいは館山市の住民の方にも理解が深まっていっているのではなかろうかと思います。これについて、住民というものと絶えず会い、対話をしておられる市長さんのお立場というものをお伺いしたいのが一つと、もう一つは、それに関連することでございますけれども、今の野党の提案しておりますところの代替財源案あるいは税制改革法案というのは非常に将来の具体的な展望がなく、先ほど山口参考人がおっしゃったとおりで、具体性がない全く絵にかいたもちのような気がしてならないわけでございます。そういう点も含めて、住民という立場から市長さんのお考えを承れればありがたいと思います。
  100. 半澤良一

    参考人(半澤良一君) 消費税導入は、導入直後にはいろんな多少の混乱がございましたけれども、現在では定着しつつあるというふうに考えております。  館山市の場合、実は本年の三月定例議会におきまして、水道とかごみとか、し尿収集あるいは国民宿舎の料金等を外税の形で転嫁することにいたしまして、議会に市条例の改正を提案いたしたわけでございますが、そのときには継続審議になったわけでございますが、理由は、いろいろ市民に影響を与えることでもあるし、また議員自身がまだ消費税について十分の理解ができていない、したがってこれはひとつ慎重審議をする必要があるということで継続審議になりました。さらに、六月の定例会でも継続審議でございました。その後に参議院選がございまして、大変消費税の問題が論議の中心になったわけでございますが、参議院選の終わった後の九月の定例会におきまして可決をしていただきました。  ということは、この六カ月間に議員はもちろん十分消費税についての理解ができ、さらにはまた六カ月間に、議員さんでございますから後援する市民の方がたくさんいるわけでございます、その市民の方々意見を十分聞いた上で可決という結論になったものだというふうに理解をいたしております。  また、九月定例会の前に、婦人団体が二十六ほどの主婦クラブというのがございまして、税務課の職員と財政課の職員にそれぞれの会長さんにお目にかかっていろいろ意見を聞くようにさせました。私自身も何人かの会長さんにお会いして御意見を聞きました。やはりいろいろな御意見がありましたけれども、最終的にはやむを得ないという結論が大部分でございました。やむを得ないということは果たして積極的に認めているのかどうかこれはいろいろ問題のあるところでございますけれども、しかしそういう意味で大方の了解はついた、そういうふうに考えております。
  101. 久世公堯

    ○久世公堯君 ありがとうございました。  実は、時間がなくなってしまいましたもので、関本参考人と今井参考人の御意見を承れないのが残念でございますが、関本参考人は、この財源セット論というのは不要なんだと、それじゃ、一体消費税廃止の後の税制のあり方はどうしたらいいのだ、それは新たに国民のコンセンサスを形成させればいいのだ、しかも八七年、八八年そうして八九年も自然増収というもので何とかなるじゃないかと。将来の税制としては、実は関本参考人のお書きになったものも私も読ましていただきましたけれども、大金持ちとか大企業とかそういうところから取ればいいじゃないかと、自分計算によりますと国税で十兆、それから地方税で七兆と。私もこんなに税源がどこかから出てくるならありがたいなと思うわけでございますけれども、大変私は疑問に思うわけでございます。  また、今井参考人の御説も拝聴いたしたわけでございますが、公平論、私どもも水平的公平、垂直的公平、そのどちらにウエートをかけていくかということについてもいろいろと今までに当委員会でも議論のあったところでございますけれども、この四党の案も、実は物品税というものを積極的に礼賛しているわけではなくて、二年間の代替財源として一応物品税を復活するというふうに私はおっしゃっておられるんだろうと思います。そして、将来の課税としては、先ほども申し上げまし たように流通サービスも含めた、私どもの感じからいいますと非常に消費税に近いものというものに期待をしておられると思うわけでございますが、今井参考人の御説は随分違いまして、間接税というものを補完税としては否定しないけれども、具体的にはその背後に所得の大きさが考えられるように、かつ垂直的公平というものを損なわない方法によってと、大変新しい説でございまして、私も短時間で理解するには大変苦しんでいるところでございます。また機会を見てお尋ねをしたいと思うわけでございます。  最後に、土井参考人に。土井参考人は総合課税の必要性というものを強調されまして、そのためには納税者番号というものはぜひ必要だという積極論を展開されたわけでございます。実は当委員会におきましてもこの納税者番号問題というのは随分議論になりまして、ただ四党の間でも、また個人によってもいろいろお考えが違うようでございます。私はぜひともこの納税者番号制度について四党、少なくともこういう納税者番号というものを前提にして総合課税というものをお考え――これは一つ考え方でございますので、ぜひ統一見解というものを示していただきたい。また、この法案によりますと、「納税者番号制度導入等を検討する」ということを言っておりますけれども、検討だけで実現しなくてもいいのかどうか、これも問題でございます。また御承知のとおり、北欧型と米国型、大きく分けますと二つあるわけでございますが、土井参考人はどっちを考えておられるのか。また、二年間でこれが一体できるものだろうかどうだろうか、準備期間として足りないんじゃないかどうか。その点だけ、この納税者番号についてお答えいただければありがたいと思います。
  102. 土井隆史

    参考人(土井隆史君) 私は、合意の方向が得られるのではないかと思います。ただ、私も現在サラリーマンの中にも納税者番号制度に対する正しい理解は必ずしも行き渡っていないということは自覚をしております。しかしながら、望ましい税体系をきちんとつくっていく上に絶対避けては通れない課題であるというふうに思っております。したがいまして、私ども自身も努力してまいりますが、まさに四党には、これは私は統一見解をお持ちだと思っておりますし、今後とも鋭意それに努めていただきたいと思っている次第でございます。
  103. 久世公堯

    ○久世公堯君 ありがとうございました。以上で終わります。
  104. 渕上貞雄

    渕上貞雄君 私は、今井参考人に御質問申し上げたいと思いますが、高齢化社会、経済社会に対する認識というものは、ここにおられる方々についても現在までの議論を聞いていても認識においてそう違いはないわけでありますし、とりわけ消費税、言うところの税制という問題について、午前中も議論がございましたけれども、税制問題を議論するに当たっては、やはり政治的な側面と税制の持つ制度的な側面がありますけれども、税制そのものが国民合意を得なければならないということが前提になるとすれば、すぐれて税制問題というのは政治論でもあると私は思うわけであります。  しかし、大きく政治論であるとすれば、社会の状況や経済の状況などを背景として考えていく場合に、今日まで持っておりました税に対する公正の理念、公平の原則といいましょうか、そういうものがやはり時代とともに変化はしていくものだろうというふうに考えてます。したがいまして、現在時点における税に対する理念とか原則とかというものについて、今さっき御質問のありましたように、公平問題についてでもそのとらえ方によってはいろいろ違ったものが出てくるわけでありますから、どうかその税制に対する、公正、公平に対する理念や原則みたいなものをいま一度先生の立場から明らかにしていただきたいと思うのであります。  したがいまして、今回導入されました消費税のことを考えますと、簡素、公平、中立をうたい文句に導入をされましたけれども、いわゆる消費税は、実際に不公平税制というものが先送りにされまして、逆に不公平税制である消費税導入をされるという結果になりましたし、公平税制とは一体何かというものも含めて御答弁を願いたいと思います。
  105. 今井勝人

    参考人(今井勝人君) お答えいたします。  私は、先ほど申し上げました意見陳述の中におきまして、垂直的公平ということと水平的公平ということを軸にお話し申し上げたわけでありますが、その前提として、やはり税の公平とは何かということについて若干御説明が足らなかったかな、そういうことでただいまのような御質問があるかなというふうにも存じますので、一言私の意見を申し上げたいと思います。  御質問の中にございましたように、税制のあり方を考える場合には幾つかの観点があるかと思います。よく言われておりますのは、簡素、公平、効率というようなことが言われるわけでございますが、私は、こういった中でもとりわけ公平というものが国民合意を得ていくためには必要な基準であろうというふうに考えております。    〔委員長退席、理事井上吉夫君着席〕  したがいまして、問題は税制における公平とは何かということでございますが、税制における公平は二つの点から考えてみる必要がある。一つは、垂直的公平あるいは水平的公平という問題であります。それからもう一つは、何を基準にして公平ということを考えるのかということであります。  前者の垂直的公平あるいは水平的公平ということは、もう先生方承知のとおり、垂直的公平というのは、普通経済的状況が異なったならば異なった課税を行うのが公平である。それから水平的公平というのは、経済的状況が同じであるならば同じように課税をするのが水平的公平である。これはどなたでもこういうことをおっしゃるわけであります。  第二番目、公平を考える場合の基準は何かというのは、したがいまして、垂直的公平、水平的公平というのをそういうふうに理解した場合には、異なった経済状況あるいは同じ経済状況といった場合のその経済状況というのは、一体何でとらえたらいいのかということだろうと思いますが、これも多くの方が指摘されておりますけれども、三つの基準があり得るというふうに考えております。所得が第一であります。それから第二は資産でございます。それから第三が消費でございます。したがいまして、組み合わせからいたしますと、税の公平ということを考える場合には所得を基準にして垂直的公平と水平的公平を考えていく。それから、資産を基準にして水平的公平と垂直的公平を考えていく。それから、消費を基準にして垂直的公平と水平的公平を考えていくという、そういう組み合わせが必要になろうかと思うわけであります。  その中で非常に大きな問題になってまいりますのは、実は消費を基準にした場合には普通の間接税では垂直的公平は実現できないということであります。一時、多くの財政学者が研究されておりまして、いろいろ研究も進んでおりますけれども、支出税という税金がさまざまな角度から検討されたことがございます。あるいは検討されただけでなくて、ある国においてはごく短期間実施されたこともございます、先生方も多分御承知かと思いますが。その支出税という税金を考えると、消費で垂直的公平ということを考えることも可能になってまいりますけれども、実際のところ、支出税という税金を今例えば日本で考えるということは私自身事実上不可能だろうというふうに思っております。したがいまして、間接消費税で垂直的公平ということを考えることは事実上できないということになろうかと思います。  そういう状況のもとで、先ほど私が申し上げましたように、垂直的公平と水平的公平をどちらを重視するかということが次に問題になってくるわけであります。私は垂直的公平という方を今後とも重視していった方がいいんだ、あるいは間接税を考える場合にもその垂直的公平を損なう損ない方が小さい方がいいのではないか、そういうことを考えているわけであります。そういうわけで、私自身はやはり先ほど申し上げました幾つかの組み合わせの中で、公平の税制を実現していくというのは所得に対する税を中心にして考えていくべきだろうというふうに思っているわけです。  随分昔でございますけれども、ある方が「個人所得税」という本をお書きになりましてこれに「最良の税」という副題がつけられていたことがございます。財政学の世界では割に長いこと所得税というのは最良の税だと言われてまいりました。私は現在でも、所得税というのはその仕組みをきちんとやっていけば最良の税になり得るというふうに考えております。ただ、今の日本所得税ではそれが残念ながら実現されていない。我々はそれを実現する努力をする必要があるだろうということが私の意見でございます。  それから、所得と消費についてはそういうような観点で私の意見を申し上げたわけでございますが、残りました資産を基準にしたときにどうなるかという問題がもう一点ございます。  先ほど私が意見陳述の中で申し上げましたのは資産から生ずる所得でございまして、それはあくまで所得を基準にして課税の公平を考えるということでございます。所得を基準にするか、資産を基準にするか、消費を基準にするかといった場合の資産というのは、資産をどれだけ保有しているかという観点から税の公平を考えようとする問題でございます。  御承知のとおり、資産保有から出てくる大きな税収の一つには相続税という問題がございます。相続税は御承知のとおり累進課税が行われております。したがいまして、資産を基準にして税の公平を考える場合にも、水平的公平と垂直的公平という条件を満たすことは可能なわけであります。ところが、資産の場合に垂直的公平ということを実現しようとしたときには幾つかの問題が出てまいります。それは、最近特に都市部あるいは都市近郊地域での相続税の負担の問題で取り上げられておりますように、保有している資産を売却しないと相続税も支払えないというような状況も出ているわけでありまして、その点は資産を基準にして垂直的公平を考えるというときには非常に大きな問題が出てまいります。  もう少し申し上げますと、要するに、資産に対する課税で垂直的公平をどのように実現するかということにつきましては、資産配分そのものを変えてしまうような資産課税をやるのがいいのかどうかということでございます。私は、現在のところでは資産配分そのものを大きく変えてしまうような資産課税で税の公平をやっていくのは少し今の日本では無理があるだろうというふうに考えております。  それからもう一点、先ほど私が申し上げたことでいきますと、金融資産の保有というのは相当格差が出てまいります。したがいまして、私は、何年か前でございますけれども、ある本に「金融資産税の構想」という論文を書いたことがございます。余り話題にもならなかったんですけれども、私自身は今でも金融資産税の構想というのはそれなりに意味があるのではないかというふうに考えております。  そういうわけで、資産課税につきましては、所得課税と同じようなウエートで垂直的公平ということを考えるのは非常に難しい問題が出てまいりますけれども、所得課税の補完税として資産課税資産保有に対する課税の垂直的公平ということを考えていくことは十分あり得るし、大切なことではなかろうか、そんなふうに考えております。  やや長くなりましたけれども、私が考えております税の公平というような問題につきましては、以上のように答えさしていただきます。
  106. 渕上貞雄

    渕上貞雄君 次に、館山市長さんにお伺いしたいのでありますけれども、四月一日以降消費税が実施されて、各市町村における消費税が具体的に転嫁できてない。してない。東京都を初めとして現実的に具体的にできてない。こういうところの認識につきまして地方自治を預かる責任者としてどう御認識になっておられましょうか、そのお考えについて御質問いたします。
  107. 半澤良一

    参考人(半澤良一君) 私どもは実施をいたしましたしまた私どもの周りの市町村はほとんど実施をいたしておりますが、やはり東京とか横浜とか大きな都会ではなかなか市民の合意を得られるのが難しいのかなと考えております。
  108. 渕上貞雄

    渕上貞雄君 時間がありませんけれども土井参考人にお伺いしたいのでありますが、今回の見直しによって、本来税制というのは非常に簡素でなければならないと思いますけれども、消費者立場からすると非常に複雑でわかりにくい。税制そのものというのは非常に簡素化が重要であると思いますけれども、その点の認識について見直し論についてどうでしょうか。
  109. 土井隆史

    参考人(土井隆史君) 私、先ほど申し上げましたように消費税廃止すべきというスタンスでございますので、見直し等我々連合内部で議論したこともございませんのでその辺については何とも申し上げられませんが、大変複雑になったというような御指摘は、多分そうなんだろうなというふうに思います。
  110. 渕上貞雄

    渕上貞雄君 終わります。
  111. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 参考人皆様には本当に御苦労さまでございます。時間の関係もございますので、絞ってお伺いしたいと思います。  当委員会でも、いわゆる租税に対しましての民主主義の原則、公平、中立、簡素、この三原則を中心にして与野党が真剣に討議を交わしているところでございますが、まず今井先生に二点ほど質問申し上げたいのでございますが、一つ所得税制のあり方について、特に税率のフラット化や課税ベースなどについていろいろの御見解も先ほどお伺いをさしていただいておりますけれども、もう一度御見解を伺いたいと思います。それが一点。  もう一点は、先ほども自民党消費税の見直し案というものが報道されているわけでございますが、これは一つは食料品の軽減税率の問題も事業者のコスト転嫁を優先にしている。消費者は無視をされているんではないか。また、将来の税率の引き上げの問題点の火種を残している問題も、これもヨーロッパや先進諸国を見ても恐れているところでございます。こういうふうな問題、また簡易課税制度の見直し、免税業者の問題、税額票方式への移行も皆今回明確な答えを出していない。先送り。こういうことは消費者立場から見た場合に一番心配でございますけれども、消費税の最大の問題点である逆進性に触れてくるわけでございます。  今井先生は大学でいろいろと広く研究されていらっしゃいますけれども、昭和六十二年で生活保護世帯が七十二万世帯日本の国にございます。年金の受給者にはいろいろの種類がございますが、千七百万人いらっしゃるわけでございます。これらを含めて年収六百五十万以下のサラリーマンの方々、これはやはり消費税、大きな厳しい生活問題で受けていらっしゃるわけでございますが、特に今私がその中で絞りました逆進性、こういう本当に社会的に弱い方々の救済はどうしたらいいのか、こういう問題で私も悩んでおりますけれども、この二点をまず先生に伺いたいと思います。
  112. 今井勝人

    参考人(今井勝人君) 御質問の第一点の所得税率のフラット化につきましては、先ほど意見陳述の中でもごく簡単に触れましたけれども若干御説明さしていただきますと、所得税率のフラット化と言ったときに、我々、例えば最高限界税率が七〇%に下がり六〇%に下がり、さらに現在五〇%になっているわけでありますけれども、そういう最高限界税率が適用されるような高額所得者のところをまず第一に問題にすべきではありますが、それと同時に、中堅あるいは中堅よりも少し上というところでもやはりフラット化の影響というのを考える必要があるというふうに考えております。もう少し具体的に申し上げますと、御承知のとおり所得を区分して税率を適用していくわけでございますので、下のところの税率が下がったことがもろに上の方の所得の部分にも響いてくるわけでございます。そういう意味で、私はまだ詳細な数値を検討しているわけではございませんが、見た目以上に税率のフラット化というのは効果が大きいかなというふうに考えております。  それから、税率のフラット化ということはイギリスあるいはアメリカ等でも行われているわけでありますけれども、特にアメリカにおきましては先ほど私が申し上げましたようなある種の所得の総合化ということが図られると同時にやられているわけでありまして、私自身も所得の総合化を図った上で税率のフラット化を進めるべきであろう、あるいは税率のフラット化をやるということであるならばそれと同時に総合化を実施するめどをきちっとつけてから行うべきであっただろうというふうに考えております。  それから御質問の第二点目でございますが、特に生活保護世帯ですとか年金生活者に対して消費税がどういう影響を与えているのか、あるいはそういう層についてどうしたらいいのかという御質問かと思いますが、大変難しい問題と思っておりますが、少なくとも消費税でなくて物品税のような形で間接消費税を考えるならば、生活保護世帯あるいは年金生活者にこれほどの影響は与えなかったのではないかというふうに私は考えております。そういう点からいたしましても、消費税よりは物品税の方がよかったかなというふうに思っておる次第でございます。  よろしゅうございましょうか。
  113. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 はい、ありがとうございました。本当に同感でございます。  土井先生に二点質問申し上げたいのでございますが、一つは地価の高騰、資産格差の拡大、こういう中で国民生活に大きな影響を及ぼしております。さきの税制改革では全く手のつけられていない資産課税について、土井先生のお立場で御見解を伺いたいのがまず一点でございます。  それから、先ほども御意見伺いましたけれども、所得減税でございますけれども、減税の恩恵がいろいろと言われておりますけれども、私は一部の高額の所得者に偏っている大きな懸念性も持っておりますし、また、働いていらっしゃるサラリーマンの立場から見て、さきの所得税減税というものをどう皆様は評価をされていらっしゃるのか、そういう分析等もございましたら伺いたいと思います。
  114. 土井隆史

    参考人(土井隆史君) まず土地の方からお話しさせていただきたいと思いますが、さきの税制改革でも譲渡益課税の見直しはあったわけでありますが、今やはり私ども問題にしなければならないのは、投資あるいは投機的な資産として非常に土地に魅力がついてきてしまったその背景だと思います。したがいまして、これはどういうことかといいますと、やはり持っていれば値上がりする、しかも持っていることに対してほとんどコストがかからない、したがってお金がそちらへ流れていくということだと私ども思います。  私ども、土地は有限で公共の資源だと思います。したがいまして、こういう公共で有限な資源を保有するに当たっては、当然社会に何らかの還元をしなければいけない。一つは、それは有効利用をして居住に供するとかあるいは生産に利用するとかあるいは環境を保全するということかと思いますが、もう一つは、持っていると、持ちたいという人にはそれなりのコストを払って持っていただくということだと思うんですね。そういう意味で、私どもはやはり保有に一定のコストをかけなければいけない。  そういう意味で、私は固定資産税が今余り機能していないんじゃないか。これはどういうことかといいますと、先ほど申し上げましたように、実勢価格とその評価額が余りにも差が出てきてしまっている。それが都区部で実効税率が〇・〇七%というような現状になっているのではないかと思います。この土地については、例えば企業なりなんなりで働いている人間も、企業のためと思って自分の首を絞めているような部分もなきにしもあらずでありまして、やはりこういうものには制度的な枠をはめませんと、このままいってしまうということが我々最大の懸念でございます。  これは単に資産の格差だけじゃなくて、先ほど私申し上げましたように、社会的な公平とか公正とか、それから我が国がこれだけ発展をしてきました勤勉さまでも、一生懸命勉強して、こういう言い方はよくありませんけれども、それなりの企業に入って頑張っても土地が持てないというような、家が持てないというようなことになれば努力のしがいというものがありませんから、当然やはり社会的に大きな問題になってくるのではないかと。そういう意味で、この問題にやはり早急に私ども手をつけなければいけないと思います。  先般建設省が市街化区域内農地の宅地並み課税を打ち出しておりますが、これは今後主管官庁の大蔵省がどう判断をするかという問題にもかかっておりますが、やっとこれができたとしても課税されるとさっき言いましたようにこれも都区部でありましたら〇・〇七%なんですね。したがいまして、本当に地価に影響が与えらるかどうかということを私はちょっと疑問に思っております。  したがいまして、やはり私さっき申し上げましたように、生産なりなんなり還元をきちんとできるような制度としての保有税の強化をこれは図っていかなければならないんじゃないかと。私ども、二千平米以上地価五億円の土地の実勢価格に〇・七%から一%ぐらいの保有税をかけて、これを国税として取って逆に地域の活性化のために再配付したらどうか、こういうことが供給を促進し、利用を促進するのではないかということを提案しているわけでありまして、先ほど陳述のときに述べさせていただきましたが、ぜひこれは本当に超党派でやっていただきたいというのが、しかも早急にやっていただきたいというのが私どもの切実な願いでございます。  それから二番目の減税でございますが、先ほど今井先生もお話しになっていたと思いますが、今回減税がいろいろありまして、私先ほど述べたとおりでございますが、やはり最高税率が二年間で二〇%下がったこと、それからマル優廃止に伴いまして利子配当の源泉分離課税が三五%から二〇%へ下がったこと、それから土地でありますとか株式はキャピタルゲインに原則課税となりましたけれども、やはり高額の資産をお持ちの方、高額の所得の方と我々サラリーマンとではちょっと差のある減税だなというところが正直なところでございます。やはり最高税率を適用の方のところは比較的実額の控除ができるところでありまして、ある意味ではかなり課税ベースも狭くなっているんじゃないかと我々は思います。  しかし、我々サラリーマンはほとんど源泉徴収で、給与所得控除も三百万の三割を筆頭に一割まで逓減をしていくわけでありますから、課税ベースはそのままでございますから、このフラット化の影響というのはやはり高額所得者でございまして、今年度実施されております減税総額のうちの五百億円は、実は一〇%の最高税率の逓減の財源ということだそうでございます。  そういう面からいきますと、私は最高税率を下げることは決して悪いことではないと思いますが、先ほど今井先生がおっしゃいましたように、やはり課税ベースをもっと広げる中で全体として公平な税制にしていくと。したがって当然五〇%に下げるのであれば、そういう勤労性の所得にプラスして資産性の所得をきちんと足して総合課税にしていただくと、あるいはシャウプ勧告のもとに戻ってやはり富裕税的な意味での保有税を強化すると、こういう双方向があって初めて全体の減税のバランスがとれるのではないかと思います。  以上でございます。
  115. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 時間がございませんので簡単に質問いたしますけれども、山口先生が先ほどお話しされていましたときに、ちょっと私メモの取り違えかどうか、納めた消費者の税金が国庫へは入らない懸念性の御心配もちょっと御披露されていたと思うんですけれども、これが四千五、六百億とも、私自身も今この試算の明確な数字は確実に目の前にしておりませんので定かでないんですけれども、こういう懸念性に対しての解決はどうしたらいいのか。同じ質問でございますが、関本先生はまた専門家でございますけれども、端的にどうしたら解決ができると、こういうことを一言ずつお願いしたいと思います。
  116. 山口令子

    参考人山口令子君) 納めた消費税国庫に入らないというのは、いろいろ御指摘されているように、例えば免税点の問題ですとか簡易税率の問題ですとかがあると思うんですけれども、実を言いますと、これに対しては二つの見方ができると思うんです。  一つの見方といいますのは、例えば青色申告者も含めて帳面をつけなければいけないということになっているわけです。帳面をつけなければならない、実際帳面をつけているということになっているのであるならば、三千万以下の免税点は計算が面倒であるから、消費税を納めるというようなことに対して免除するという必要はないかと私は思うんです。  ただもう一方で、結果的に言えば売り上げがふえるわけですから、それを例えば事業者で言えば法人税なりなんなりで納めるということになれば、結果的には何らかの形では国庫に入るのかもしれない。ただ、その辺が若干複雑になりますし不透明になりますので、私は専門家ではありませんけれども、その辺のところをもう少しクリアに試算なりなんなりして示してもらいたいなと思っている次第でございます。
  117. 井上吉夫

    ○理事(井上吉夫君) 恐縮ですが、時間が参っておりますのでごく手短に。
  118. 関本秀治

    参考人(関本秀治君) 関本でございます。  一言だけで申し上げたいと思います。消費税廃止すればこういう矛盾は一切なくなります。
  119. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 関本参考人にお聞きします。  この四会派の出しております税制改革基本法案流通サービスへの課税を検討するという規定であります。この点は午前中も問題になったわけでありますけれども、やはり流通サービスへの課税を検討すればおのずと新しい分野の課税、この点については社会党の伊藤政審会長も中型間接税ということを別のところで述べておりますので、そういったところに限りなく大型間接税に近づくんじゃないのか、だから検討してみた結果は消費税と余り変わらないものになるんじゃないかという問題が午前中も指摘されました。この法文上、これに対する歯どめが私はないんだと思うんですが、この点いかがでしょうか。
  120. 関本秀治

    参考人(関本秀治君) この点につきましては、近藤先生御指摘のとおりだろうと思います。まさに所得資産、消費に対して均衡のとれた税制の構築というようなことが言われておりますけれども、こういう言葉は、実は売上税あるいは消費税導入の基礎になりました政府税調等の答申の中にも随所にあらわれている考え方でありまして、これを突き詰めて発展させてまいりますとどうしても一般的な消費税、つまり大型間接税に行き着かざるを得ない、こういうことになると思いますので、そういう点でなかなか国民的なコンセンサスが得にくいのではないか、このように考える次第でございます。
  121. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 もう一点は、納税者番号制度についてであります。  総合課税を本当にやる気になれば、番号制度を設けなくても公正な課税が私は可能だと思うんです。この四会派も納税者番号の対象とするのは資産所得、ですから預金とかあるいは株の売買益などだと言っておるんですね。そういうぐあいに限定されるのであれば、現在の制度を前提にしましても、仮名取引の禁止、それから証券会社に取引の報告義務を設けますと、これは基本的には脱税は極めて困難になってくる。だからそういう制度。また預金に関しましては、ADPシステムというのが、これはマル優廃止のときに私も議論して、国税庁の答弁に出ておりますけれども、住所、氏名、生年月日、こいつをインプットしますと九九%捕捉可能だ。となりますと、現行制度で可能なんではないか。にもかかわらず、これをもし導入しますと、これはプライバシー侵害が大変大きいんだと思うんですが、その侵害が一体どんなことになるんだろうか。そして、この点について国民合意が果たして得られるものかどうか。しかも、二年間というそういうめどで得られるものかどうか。この点についての御見解があればお聞きしたいと思います。
  122. 関本秀治

    参考人(関本秀治君) お答えいたします。  納税者番号制度につきましては、アメリカでは社会保険制度を基礎として発展してきたわけでありますけれども、これが納税者番号として課税のために使われるようになるまでにはかなりの検討が進められておりますし、何よりも情報の公開、それからプライバシー権の保護、こういうことと並行してなされませんと、これは国民生活上重大な問題になる危険性があるということを申し上げたいと思います。  特に、我が国の税務行政におきましては、寝室まで令状もなしに踏み込んで調査をするというような大変権力主義的な税務調査が横行しておりますし、それから、何よりも自分についての情報が一体正しく課税当局に把握されているのかどうか、あるいは何が把握されているのかということを知る権利は全くないわけであります。そういうものを整備しないままこの背番号制のようなものを課税のために一挙に導入するということになりますと、これは徴税機構を通じての国民の統制というような大変な危険性が生まれてくるということが大きな懸念として考えられるわけであります。  そういう点からいいましても、この番号制につきましては、実はさきのマル優廃止、これでいわゆる金融資産に対する課税がほとんど二〇%の分離課税だけで野放しになったということがございますし、今回のキャピタルゲイン課税の問題につきましても一%の分離課税だけで、あとはすべて何千万もうけようが何億もうけようが課税の範囲から外されてしまうということでございまして、そういう意味では現行の税制がやればできる、今まさに先生御指摘のとおりでございます。制度としては、現在税務署にきちんと名寄せをすることさえすればできる制度があったにもかかわらず、それをやらないで野放しにしてしまった、こういうことで、恐らく相続税の課税でも今後金融資産についての課税漏れが相当出てくるのではないかということが、さきの税制改革によりますマル優廃止、あるいはキャピタルゲイン原則一%の源泉分離課税というような制度によってもたらされたというふうに考えざるを得ない、このように思います。
  123. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 次に、自民党の見直し案について先ほど指摘がありましたけれども、これが実務的に実際はどうなのか。帳簿制度ですから、この帳簿制度を前提として課税、非課税、軽減税率、これは実際の実務の中で本当に大変だと思います。しかも、食品かどうか、小売かどうかというこの区別等々ですね。これは現場では実際どんなことになるんでしょうか。
  124. 関本秀治

    参考人(関本秀治君) お答えいたします。  私、税理士として毎日実務をやっておりますけれども、この九月末から法人の四、五、六、七月の申告、それから十月は八月決算申告、十一月は九月決算申告ということで、三回にわたって法人消費税申告をしてまいりましたけれども、現在のこの三%の単一税率で非課税品目品目という非常に限られた税制のもとでも、課税課税の案分、それから控除すべき税額を、課税売上割合あるいは課税売上割合に準ずる割合を税務署長の承認を得て計算するというようなことですとか、あるいは収入の中で課税売り上げと非課税売り上げ、さらには不課税課税されない、全く資産の譲渡の対価でないものでありますけれども、不課税というようなものを別個に区分して経理して、なおかつ法人の決算をする前にこれは消費税の決算をした上でなければ法人税の申告はできない、もちろん決算も組めない、こういう大変なことになっております。  現行のこの消費税であってもそのような大変な苦労が要るわけでありまして、これを一般事業者の方にやりなさいと言われても、恐らく現行であってもほとんど完全にできる人はいないのではないかというように思いますけれども、今回の見直し案によりますとさらに食料品については生産から卸売まで一・五%の軽減税率ということになりまして、現行でも六%と三%の、一部は時限立法でありますけれども、複数税率があるところに、さらに一・五%の三段階税率が入ってくるということになりますと、これはもう私ども専門家でありましても決算はお手上げという状態でございます。  さらに、先ほど申し上げました課税売り上げに対応する仕入れ税額、控除すべき仕入れ税額、あるいは非課税売り上げに対応する仕入れ税額等の計算につきましても、税務署課税売上割合でなくて特別な合理的な方法で仕入れ控除の計算をしたいというような申請をいたしましても、これは取り下げてほしいというようなことが言われているようであります。法律上そういうことはないわけでありますけれども、全国で認められているのはわずか二百法人程度しかないというような話がございます。そういう実情でございまして、もうこれは見直し案がもし実施されたならば、私はまずそのとおり成立する見込みはないんではないかというふうに予測しておりますけれども、本当に実務上これはもう税理士でさえお手上げでありますから、中小零細の事業者の方がこれに対応できないのではないかという危惧を実務上非常に強く持っているわであります。
  125. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私も既に橋本大蔵大臣に、こんなものを執行できるのかということを指摘したところであります。  次に、今井参考人でありますが、先ほどの所得格差に関する御意見、私も全く同意見で、私自身もここ三、四年来予算委員会あるいは大蔵委員会においてこの問題の指摘をしてまいりました。政府自身も、実際上の資料を示せば、最近は所得の格差は拡大しているという事実は認めざるを得ないんです、事実は。ただ、シャウプ税制時代に比べて拡大しているとか、あるいは外国に比べれば日本は格差は小さい方だと。  しかしこの数字は、御承知だと思いますけれども、間違った数字で、本当の数字を出せばアメリカと並んでほぼ世界最高の格差がある国であります。こういったことが明らかになったにもかかわらず、なおかつ平準化している、だから広く薄い負担を国民に求めるという論拠に使っておるんです。だから、そういう意味ではますますこの面の御研究を進めていただきまして、政府がもう全く反論できないような状況をひとつおつくりいただきたいということを、これは要望でありますけれども。私、さらに今後はもっとこれ広がるんじゃないかと思うんですよ。一つは土地の問題、金、資産所得の急増、この拡大のカーブはもっと急激に強まっていくんじゃないかと思いますが、端的にお答えいただきたいと思うんです。
  126. 今井勝人

    参考人(今井勝人君) お答えいたします。  陳述の中で申し上げたとおり、私もそういう格差は今後拡大していくだろうというふうに考えておりますが、ただこれがどういうスピードでどのくらいというところまで考える能力は現在の私にはございませんので、勘弁してください。
  127. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 今後の研究の成果をひとつ期待したいと思います。いいのが出てきたら、私この国会でひとつ利用させてもらいたいと思っております。  山口参考人でありますが、先ほど大型間接税がいずれ必要になるとおっしゃいましたが、その根拠、特に今、今井参考人も述べられた、今も明確になったようなこういう平準化とは逆の状況が起きている中で、今後またそれが拡大していくということが明確に予測される中で、なぜ大型間接税がいずれ必要になるんだろうかというこういう点であります。  またもう一点は、先ほど間接税は出の段階で公平だ、これは恐らく同じ支出に同じ課税がされるから公平だというんでしょうが、私は同じ支出であってもやはり実態は相当支出する人の立場で違うと思うんです。例えば年金生活者、大体月十万円前後、これが普通だと思いますね。    〔理事井上吉夫君退席、委員長着席〕 こういった方々消費税は月に大体二千数百円です。この人々の生活にとっては大体三日から四日分の食費代。ということは、年四十日食べられない。食べないわけにいきませんから、ほかの面でずっとこれは生活を圧縮していくというそういう人々。例えばこれも年金生活者ですが、どうも赤字だ、赤字だと詰める部分はこの方は男性だから酒を詰めると。しかし、もう年をとって酒が飲めなくなったら生きがいがなくなってしまう、こういう人は月大体一万円です。支出の一割だと多いんじゃないかと思うけれども、しかしこれは一日ビール一本ぐらいですね。こういう支出ともっとゆとりのある支出、私は出の段階で同じ課税だからこれは公平だという、どうしてそういう根拠が出てくるのか、この二点について端的にお答えいただきたいと思います。
  128. 山口令子

    参考人山口令子君) まず第一の点でございますけれども、大型間接税がいずれ必要になるであろうということは、高齢化社会において若い人たちが高齢者に比べますと数が少なくなっていくという中で、直接税だけに頼っていますと非常にその負担が大きくなるということもありますし、それから最初に申し上げたんですけれども、あるいは先ほどから今井参考人がおっしゃっているように、間接税そのものが悪いということではなくて、むしろ間接税のあり方という点において消費税の現在のようなあり方ではないという方向も考えているのではないかというふうに私はこの基本法案というものを読む上で受け取ったということでございます。  それからもう一つなんでございますけれども、例えば間接税が出の面においての公平というものに受け取れると申し上げましたのは、例えば同じ所得の場合にそれだけで公平と見るのか、あるいは個々人がどういうライフスタイルをとるかということも含めて公平というふうに見るのかということがあると思うんです。同じ所得であるとしても、人によっては余り物を買わないで暮らしたいという人もあるでしょうし、あるいは先ほどおっしゃったようにお酒を飲みたいという人もいるでしょうし、そういったライフスタイルも含めた上での公平というものを制度的に見ていく上においては、間接税というものが必要になると思います。ただ、一律に三%なら三%にするということにするのか、あるいはある特定のものだけについては大幅にもっと課税するのかということに関しては、まだ議論の余地はあると思います。ただ、私が申し上げた出の面においての公平ということは、つまりライフスタイルも含めた上での公平ということを申し上げたわけです。
  129. 古川太三郎

    古川太三郎君 連合参議院の古川でございます。  参考人の皆さん、御苦労さまでございます。  まず初めに、今井参考人からお聞きしたいと思います。  消費税導入の前提として国民所得の平準化、あるいはまた格差の減少、こういったものが基本でなければならない。そういったものについては今近藤さんも質問されましたけれども、資産所得については、現在はむしろその平準化じゃなくてその格差の増大が大きく叫ばれております。こういう利子配当あるいはキャピタルゲイン、土地税制、こういったものをなおざりにして消費税導入したところに国民の大きな怒りがあったと、こう考えております。それなのに、竹下税制では今までは利子配当課税は原則としては総合課税でございました。それをさきの税制改革では分離課税を徹底しております。そのために、本来ならばこういう資産をお持ちの方は大体が七五%ぐらいの税率所得税をかけられていた方々が、あるいはまあ五〇%以上でもいいですが、その方々がむしろ五〇%に逆に非常に低率になっている。本来ならばこういう方々税率を非常に上げなきゃならぬ、あるいはこういう方々所得を捕捉しなきゃならぬというところから見れば、まさに反対の方向に行っているように思えてならないのでございます。  そういうことでありますと、働かなくてもいい方、資産をお持ちの方がそのままどんどんと大きくなっていく。働いても働いてもそういう方々に重税感が多い、こういう制度であっては税の信頼をかち取ることができない。そういう意味から考えますと、さきの税制改革は非常に方向としては間違っている方向に行っている。完全分離課税として利子も配当も二〇%というようになり、これが総合課税からは非常に遠のいてしまった。本来ならば現在五〇%以上の税率でかかってくる所得税が二〇%だけで済んでしまう、こういう税制があるんだと思いますけれども、今そういう状況での消費税導入について今井参考人はどのようにお考えになっておりますか、お聞きしたいと思います。
  130. 今井勝人

    参考人(今井勝人君) お答えいたします。  私も、御指摘のとおり、利子や配当といったような資産所得を分離課税にして、しかも二〇%という従来よりもさらに下げた税率課税するというのは非常に大きなマイナスであったろうというふうに考えております。言うまでもなく、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、所得税がいい税であるための条件の一つには所得の総合化ということが必要なわけでありまして、それに逆らうものだと言わざるを得ないと考えております。  一つ問題は、先ほど来若干御議論のありました所得の総合化をどういうふうにやるのかということが多分現実問題としてはかなり大きな問題になろうかと思いますが、私はこれはいろいろなやり方があり得るだろうというふうに考えております。要は、例えば利子所得であれば名寄せをどういうふうにするかということでございます。その名寄せをするやり方は多分いろいろなやり方があり得て、その中で国民合意が得られるような道を、方法を考えていっていただくことが必要かと、そんなふうに考えております。  以上でございます。
  131. 古川太三郎

    古川太三郎君 いま一点お伺いします。  先ほど、日本は直間比率において法人税のウエートが高いと、このようにおっしゃいました。また、それは法人税間接税化が行われているということについて少しお話しされたように思いますけれども、いま一つ詳しくお話しいただけませんか。
  132. 今井勝人

    参考人(今井勝人君) 法人税のウエートが高いから法人税間接税化が行われているということではございませんで、もともと法人税というものの理解の仕方に間接税としての性格もあるんではないだろうかというそういう研究もございますと、そういうことを申し上げたわけでございます。  この点は非常に難しい問題でございます。法人税が本当に法人あるいは株主の負担している税なのか、あるいは製品価格等を通じて消費者に転嫁されている税なのかということを判断する決め手は実際問題としてはないんではないかというふうに考えられます。しかも、実際いろいろ財政学者の方がアメリカや日本を例にとりましていろいろな推計をされておりますけれども、その推計の幅も相当幅がございまして、まだ定説といったようなところまではいってないんではないかと考えられます。  ただ言えることは、非常に抽象的な理論のレベルで考えますと、法人税も転嫁している、少なくともその一部は転嫁していると考えた方がいいのではないかという研究が進んでいるということでございまして、割にこの考え方は多くの先生方がお持ちではないかと思っております。そうしたときに、もし法人税がそういうぐあいに転嫁をしているというふうに考えますと、日本間接税のウエートというのは見た目よりももう少し高くなるだろうという指摘を先ほどしたわけでございます。よろしゅうございましょうか。
  133. 古川太三郎

    古川太三郎君 それは法人配当益金不算入制度とか、あるいは物品税の庫出税とか、そういったものにもかかわってくる問題でございましょうか。
  134. 今井勝人

    参考人(今井勝人君) お答えいたします。  いろいろな側面に絡んでくるかと思います。特に法人税のあり方をどういうふうにするかということについてはそこのところはポイントになろうかと思いますが、しかしながら先ほど申し上げましたように、どれだけ転嫁しているかということを決めることが事実上不可能でございますから、なかなかそれを根拠にして逆に法人税のあり方を考えていくということは相当しんどいだろうというふうに私は正直申し上げて考えております。  ただ、法人税のあり方に関連して一言申し上げておきますれば、法人税がもしそういう性格を持っているといたしましても、私は法人税課税ベースの拡大というようなことはぜひやっておく必要があるというふうに思っております。それは法人税が転嫁しているかどうかということと絡みますけれども、一回それをやった上でもう一度法人税の仕組みを考え直すというふうに手順としてはいくべきではなかろうかと思っております。
  135. 古川太三郎

    古川太三郎君 土井参考人にお聞きします。  大土地保有税というのは連合さんの発案だと聞いておりますけれども、この税制は税体系そのものについて考えていらっしゃるのか、あるいはまた、土地政策という意味からの税制税制からの土地政策というような考え方でいらっしゃるのか、そのあたりを少しお聞かせいただきたいと思います。
  136. 土井隆史

    参考人(土井隆史君) お答えいたします。  私は両面あると思います。先ほど申し上げましたように、税というものはやはり経済社会の動きにこれは合わせていかざるを得ないわけでありまして、四十年、五十年前は所得税もほとんどなかったというふうに聞いております。  私どもは、昨今の問題というのは資産格差の問題というのが社会的に非常に大きな問題になってきている、そういう中でこの土地に対して税というものが土地政策の中で極めて大きな位置を占めるのではないか。そういう意味で、この双方をもって大土地保有税を掲げているということでございます。これは先ほど申し上げましたように、社会的な有限な資源について一定の還元をしていこうという意味で、やっぱり保有に対してそれなりのコストをかける、そしてそのコストが税でなければ、今度は逆に言えば生産活動でありあるいはそこから利潤を得てまた別の税を払う、こういうようなことだと思います。  しかしながら、ちょっとお断りしておきたいのは、私どもはこれはすべての土地ということじゃなくて、やはり居住する土地でありますとか、先ほど申し上げましたように有効に利用しているもの、こういったものには思い切った減免をしていくべきではないか。反対に未利用でしかも大規模な土地が遊休で寝ている、こういうものに思い切って課税をしていくべきではないかという観点に立ちまして、大土地保有税を提案しているわけであります。  以上であります。
  137. 古川太三郎

    古川太三郎君 それでは、税理士さんでいらっしゃる大島参考人にお聞きしたいと思いますが、またこの消費税が必要だというお立場であるためになおお聞きしたいと思うんですが、自民党では大きな見直しをするということで、我々は生活必需品だとかあるいはそういった衣料品というものに大きな期待をしておりましたけれども、食料品についての少々の手直しだけに終わりました。この点については非常に残念でございますが、一番国民の多くの方々が手直ししてほしいと、またこの消費税では絶対手直ししなければいけないんだというような免税業者、あるいは簡易課税制度、あるいは限界控除制度の問題について投書がございますので、ちょっとこのことが本当にあり得るのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。  朝日新聞のこれは十月二十七日の投書でございますが、四月から八月までの五カ月間にいただいた消費税は四十七万円余りでありますが、実際に納税するのは売り上げ総額の〇・六%なのであります。九万七千円でよいそうです。余りに差があり過ぎるので税理士に相談したら、税法の条文をいろいろと調べられながら、もっと安くなりますよと言います。二万八千五百円でよいということです。限界控除というのがあるのです。不安に思いながらも、言われるまま用紙に記入して税務署に持参しましたが、これでよいと言われ、しかも経費として落としてよいと言われました。消費者皆様から四十七万円の消費税をいただきながら、実際の納税額は二万八千円。その差の四十四万円は今さら皆様にお返しする方法もなく、結局私のもうけとなったわけです。五カ月間のもうけですから、一年間では百万円以上の収入増となります。長年自民党を支持してきた私としては、自民党が我々零細業者に不利なことをするはずはないと信じてきましたが、やはり裏道をつくってくれていました。反面、こんな不合理なことでよいのでしょうか。社会の不公平がますます増大するばかりではないかといささか良心の苛責に責められている納税日でした。  このようになっておりますけれども、制度としては、やはりこういう限界控除制度がある以上は、本来なら四十七万円をそっくり納税しなければならないものが二万八千円、あるいはそれも経費で落としてもいいというような状態にあるというのでございますけれども、本当にあるのでしょうか。
  138. 大島隆夫

    参考人(大島隆夫君) 限界控除なり簡易課税、免税点、先ほども申し上げましたように、業者の利益になる面があることは否定いたしません。それがどのくらいの大きさになるかということは、これはその人の具体的な数字を見ませんと何とも判断いたしかねますので、具体的な話についてはお答えは控えさせていただきますけれども、ただやや疑問に思いますのは、限界控除というのはその年の所得を基準にして決めるわけでございますから、まだ限界控除を適用してどうなるというようなことにはこれはならないんじゃないか、どこか間違っているんじゃないかとそこはそう思います。  それから、免税点制度は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、消費者の利益になっている面もあるということを忘れないでいただきたい……
  139. 古川太三郎

    古川太三郎君 そんなことは聞いていません。
  140. 三治重信

    ○三治重信君 参者人の皆さん方には大変御苦労さまで大分お疲れのことと思うんですが、簡潔にお尋ねを申し上げます。  まず最初に、土井参考人さんですが、源泉と申告の不公平の是正でいろいろおっしゃったんですけれども、番号制、それから執行面での何というんですか是正という中で、そういうことでもなお源泉と申告の不公平というものはなかなか直らぬだろうと思うんですが、その根本的な原因は何だとお考えになるか。  それと、それから消費税高齢化社会のためにやるんだやるんだとこう言っていながら、消費税をやってすぐ年金の保険料を上げる医療費も上げる、こういうことをやっていると何のために高齢化社会に対する対応を政府は言ったのかということで労働組合の幹部の皆さん方は非常に反対をされているだろうと思うんですが、やはりこういうふうな高齢化社会なり社会保障にやると言って掲げた税金を本当に社会保険の方との関連を考えずして、全然もう厚生省は考えてないですよね、五年たつから料金改定だ、三年たつから医療費の改定だとこういうことをやっているんですが、こういうことについてどうしたらそこの間の調整というんですか、できるとお思いになりますか。
  141. 土井隆史

    参考人(土井隆史君) お答えいたします。  源泉徴収納税とそれから申告納税の差というのは、やはり一つは申告納税制度というのがシャウプ税制の基本でございますから、まずこれをきちんとやれる体制というのが何にも増して私は重要なんではないかと思います。そして、私どももう一つは、この税制というのがシャウプ税制導入以降政治の力学の中で、ある部分に偏って、さまざまな優遇措置といいうものが課税ベースを浸食してきたということに非常に大きな問題があるんではないかと。そういう意味で、やはり税制を決める一定のルールというものをぜひ国会につくっていただきたい。そういう意味で、私どもは税制の基本構想あるいは税制基本法を制定していただきたい。  私どもは、どうも税制に対して労働組合もそれなりに減税の要求を出しますが、反面にはある意味で矛盾も実は感じているわけであります。というのは、ある部分で有利な税制というのは、他から見ますとこれは不公平になってくるわけであります。今までの税制改正というのはその繰り返しで、これは東大の宮島先生がおっしゃっていたんですが、大変スパイラル化してくると。そういうような形なんですね。これはどういうことかといいますと、税というのが必ずしも一定のルールの中の改正ではなくて、これは国会が機能していないとかそういうことじゃないんですけれども、やはり税というのが常に個別税目を少しずつ少しずつ直していった歴史なんじゃないかと私は思います。  したがって、税というのは先ほど皆さんもこれはおっしゃっていたんですが国の屋台骨ですので、やはり思い切って見直すときにはその方向、骨太い基本路線みたいなものを掲げていただくと。そういう意味では、やっていただけば国民というのはある程度細かい部分には納得をしていけるんではないかと思います。そうでないと、やはり自分の主張を通していかないとほかの方で曲げられるのではないかという危機感といいますかそういうものがあって、ついつい業界でありますとかが圧力団体化して、個々に個別の優遇措置を望んでしまうということが私は多々あると思います。そういう意味で、私ども基本構想というものをつくって骨太くやっていただきたい、そういうことを思っているわけであります。  それから、二つ目の高齢者の問題でございますが、私どもは常に福祉社会というものが、これは当然裏に財源があることは百も承知しておりまして、まさにそれがなければできないわけでありますが、常に財政優先といいますか、そういうことが強過ぎるんではないかと。これはもうどのサラリーマンだろうが事業者だろうが、皆さん本当に一生懸命働いて日本の経済をこれだけ豊かにしているわけでありまして、リタイアとまではいきませんけれども、ある程度年をとってそれなりになったら少しゆっくりして楽しい余生をと思うわけでありますが、これだけ経済が大きくなっているにもかかわらず、そういう展望が見えてこない。出てくるのは常に財政が逼迫をする、こういう繰り返しなわけですね。しかし、片やその資産というのはアメリカが四つ買えるぐらいになってきている。こういうアンバランスがあるわけでありまして、そういう中で、じゃ料率を上げよう、税制を直そうと言われましても、我々は単にそこで信用ができない。大変これは不幸なことだと思います。  ですから、やはりそういう面では私どもは、経済をこれだけ大きくしてきたこういった努力が老後できちんと報われるような、そういう明るいビジョンを出していただいて、こういう負担をどうするんだとそういうビジョンをもっと広く国民にわたって出していただきたいと思うんです。ややもすると財源ばかりが出てくる。そして、じゃ税制をどうするんだ、もう消費税しかない、この消費税がいいか悪いかとこういう議論になってきますから、そこに高齢化の展望も何も見出せないわけであります。そういう意味で、私は高齢化社会というものを論ずるのであれば、まず高齢化社会のビジョンをきちんと示していただいて、そしてその負担のあり方についてこれはけんけんがくがくの意見を交わすんだと、こういうことがあればかなり国民税制に注目し、細かい部分については代議士の先生の諸氏にかなり全幅の信頼を持ってお任せできるのではないか、こういうように思います。
  142. 三治重信

    ○三治重信君 ちょっとくどいようなんですが、高齢化社会に対しての負担が今のところ、おっしゃったのは税の関係なんですが、税と社会保険料の、負担においては同じだけれども、税のほかの社会保険料なり医療費の負担との関係をちょっと御意見を伺いたいと思います。
  143. 井上隆司

    参考人井上隆司君) 私は余りその分野は専門でないんでお答えになるかどうか実はわかりませんけれども、ここで私ども一つ考えなければいけません。私はサラリーマンの代表として出てきておるわけでありますが、サラリーマンもさまざまな階層が実はあるわけでして、先ほど申し上げましたように、国税庁の民間給与の実態というものの六十三年分が十月初めに出ておりますけれども、そこで見ていただくとわかりますように、年収五百万以下、これは給料、ボーナス、それから時間外手当、さまざま入れて五百万円以下の方が七五%なわけですね。そういうのが実態だと思います。  おのおの高齢化に対して、例えば東京の一部上場の丸の内の会社の方でしたらそれは企業の年金もあるでしょうし、個人でもかなり蓄えがおありになる。しかし、各地方の中小企業で働かれる方というのはなかなかそういうものができない。そういうものを広い形でどう整合性を求めていくかということが、私ども非常に大切なんではないかと思います。そういう意味で、サラリーマン内での負担のし合いも必要かもしれませんが、まずやはり国庫というものがある一定部分を負担していく。その上にいわゆる社会保険料がくるのではないか、そういうふうに思うわけであります。  現在国民負担率が三八%、税と社会保険料を足した分が三八%ということでございますが、税収のうちの十一兆が社会保険料関係でございます。したがいまして、歳入のあるいは歳出の内訳をもっと見直せば、逆に社会保障関係がもう少し拡充できる可能性もなきにしもあらずだと私どもも思っております。  そういうようなさまざまな複合を考えながら、やはり基本は国庫負担で老後保障の方も基本部分はやっていくべきだと。その上に保険料、そして次に自律的ないわゆる自助努力というものが必要なんではないかと考えております。
  144. 三治重信

    ○三治重信君 次に、大島参考人山口参考人と同じ質問なんですが、お二人のきょうの陳述を聞いていると、どうもお二人の関連からいくというと感じとして現行の消費税でちっとも悪くないじゃないかというふうな感じなんです。そうすると、自民党が今度消費税の見直しをやったのはこれは完全な選挙対策だ、こういうふうにお感じになるのかどうか。
  145. 大島隆夫

    参考人(大島隆夫君) 私は、現在の消費税はいろいろ問題があるかもしれないけれども、それは一つの整合性を持った体系だと思っております。  ただ、物事にはすべて長所と短所があるわけでありまして、整合性があるからといっても、これを欠点の方から見ればこれは問題点がないというわけではない、これはもう当然のことでございます。物事はすべて長所と短所がございます。ですから、その短所の方につきまして、短所の方の面から物を配慮する。それから、あるいは先ほど申し上げましたように、弱者の保護としては既に十分なことになっているわけなんですけれども、さらにそれに上積みをしてやるんだということ、これは私、少しも選挙対策というようなことではないと思います。  それからもう一つ、先ほどお答えがいかなかったんですが、簡易課税制度については、私も申し上げましたように、これは多少金額も大きいので見直す余地があるということ、これははっきり見直し案でも言っておりますけれども、これの一つの布石といたしまして税率税率というか仕入れ率ですね、九〇%と八〇%、あれは政令でやるんだという条項を一つ入れたということ、これは非常に大きな意味があると思います。  以上でございますが、なお一つ、大変申しわけありませんが、先ほどの消費税が経費に落ちるというのは、これはもうはっきりした間違いでございますので、恐縮ですが補足さしていただきます。
  146. 山口令子

    参考人山口令子君) 断定するわけではございませんけれども、消費税の見直しというのがかなり今度の選挙を意識したものであるという感じを私自身は受けております。  ただ、逆に言いますと、この野党の代替案もこれがうまくいかなければ今度の選挙にかなり大きく響くのではないかという面でも同じような気がいたしまして、その意味で選挙税制というものがかなり絡んできたと、まあずっと過去ですね。ということが構造的に言って大きな問題ではないかと思います。  それから、私が結果的に消費税の方をどちらかというと賛成だと言うのは、消費税が必ずしも一〇〇%パーフェクトだと言うつもりは全然なくて、ただ、トータルに相対的に見ますと、この再改革基本法案の方が具体性を欠くという点において比較をする上でマイナスにならざるを得ないということがございます。ですから、ぜひともその具体性をもっとはっきり出していただいて、私たちもよくよく検討できるような形にしていただきたいと思います。
  147. 三治重信

    ○三治重信君 どうもありがとうございました。  最後に、今井参考人にごく簡単にお答え願いたいと思うんですけれども、先生の理論からいくと消費税と地方税との関係、殊に地方財政の安定との関係はどういうふうになるんでしょうか。
  148. 今井勝人

    参考人(今井勝人君) お答えいたします。  地方財政特に地方税ですが、地方税と消費税との関係については考えるべき点が私は二点あるかというふうに思っております。一つは、先ほど来問題になりました消費税に伴い地方財政がどういう影響を受けるのか、それの財源措置が一体どうなっていくんだろうかという問題が一点でございます。それからもう一点は、消費税と個々の地方税の中で、特に私は事業税との関係をやはり議論しておく必要があろうかというふうに考えております。  前者の問題につきましてはなお詳細な検討が必要かというふうに私自身思っておりますが、後者の点につきまして一言申し上げますと、長年地方団体は事業税の外形標準化ということを要求してきたわけでございます。地方団体といいましても、これは都道府県の税でございますから都道府県ですが、外形標準化ということを検討し、なおかつそれをいろいろなところで要求していたかというふうに私は理解しております。私自身も事業税の外形標準化ということは基本的な方向として賛成しておりまして、そういう立場からいたしますと、今回導入されました消費税というのは事実上事業税の外形標準化という道をふさぐことになってしまうのではないかというふうに考えております。  で、それはなぜ問題かといいますと、私自身はやはり地方税のウエートをもっと高める、都道府県、市町村のいわゆる自主財源のウエートをもっと高める必要があるというふうに考えておりますが、その一つの手段として事業税の外形標準課税ということを考えたときには、その地方税のウエートを高めていく、自主財源のウエートを高めていくという道が閉ざされてしまうのではないかということを考えているわけでございます。  以上でございます。
  149. 横溝克己

    横溝克己君 私が最後質問ということになりますが、時間が五分間なのでひとつよろしくお願い申し上げます。  最初山口参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほどのお話の中に、消費税導入に関してなのかあるいは四野党のお話に関してなのかわかりませんけれども、税金の使い方がはっきりしていないというお話がありましたのですけれども、まあこれは税額にもよると思うんですが、具体的にはどのようなことをお考えになっているのでございましょうか。
  150. 山口令子

    参考人山口令子君) これはもう本当に私の体験なのでございますけれども、例えば各省庁でなされている仕事をかいま見る機会がございます、あるいは各種研究会などに出席さしていただくこともあるんですけれども、例えばそういう研究会で出されたような結果が果たしてどういう形で利用されているのかというものを考えますと、何かほとんど利用されていないような状況の研究会もたくさんあるように見受けられます。これは本当に小さな例でございますけれども、普通の企業ですとそういうことをやっていては、大きなところは別として小さいところですと本当につぶれていってしまうような税金のむだ遣いというのが私がちょっと見ただけでもある。あるいは地方でもあるのではないかと思うんですね。  そういったことも含めて、恐らく小さなところで税金の使われ方を見ていると、ひょっとするとむだ遣いが多いのではないかと思う人も多いんですけれども、現実に税金がどのような形で使われているかということの情報公開というものが余りなされていないという感じがすることを申し上げました。
  151. 横溝克己

    横溝克己君 ありがとうございました。  それでは土井参考人お願いしたいんですが、先ほどからありますように、いろんな所得の捕捉のためには納税者番号制度導入が必要であるということを言っておられるんですが、ちょっとこう考えますと、少し所得の捕捉に重点が置かれ過ぎているのではないか。もう一つ、デメリットも非常にあると思うんですけれども、どうやってそういう人たちに対して説得していくかとか、何かそういうようなお考えはございますでしょうか。
  152. 土井隆史

    参考人(土井隆史君) 現在、例えば我々サラリーマンは源泉徴収でもう所得は捕捉されているわけでありますし、例えばクレジットカードで買い物をすればその買い物のすべてが捕捉をされている。私ども、納税者番号制度、確かに自分の財布の中身をのぞかれるというのは皆さん大変気分は悪いことかもしれませんが、ある意味ではもうそういう時代に入っていると。そして、これから例えば年金なんかでも拠出と給付ということを考えますと、その管理には何らかの、やはり管理の手法だと私ども思っているわけであります。  したがいまして、そういうものが現在いろいろ使われて管理されているものを統一してそれを行っていく。私ども、納税者番号制度には当然のことながらそういう社会給付のようなものをセットしていく、アメリカのいわゆるソーシャル・セキュリティー・ナンバーのような機能を求めているわけであります。  昨年、政府税制調査会の調査団がアメリカ、ョーロッパへ行ったわけでありますが、その中で私どもからもアメリカに調査に行きましたところ、いわゆるプライバシーという意味ではむしろ戸籍だとかそういう方がよほどプライバシー侵害じゃないかというのがアメリカの方の感覚だったというふうに私聞いておりますが、私ども先ほど申し上げましたように、サラリーマンの中でもかなり誤解のある部分はあると思いますが、現実私どもいろいろな社会の資源といいますか、そういうものを受けて経済活動をしてそれなりの収入を得ている、それから拠出してまた給付を受ける、こういった一連の循環というものはもはやある程度きちんと管理をしてそれなりの責任を果たしていくという時代に私は来ていると思います。  そういう意味で、我々は労働組合というものを通じながら、地道にといってもそう時間をかけていられないと思いますが、きちんと説得をしていきたい。ある意味では、もうサラリーマンの場合には納税者番号制度が現実にはついているようなものであります。そういうようなことを一つ一つ自分の身の回りに置きかえて理解を求めるような運動をしていきたい、そういうふうに考えております。
  153. 横溝克己

    横溝克己君 もう一間質問したいんですけれども、関本参考人お願いしますが、先ほどちょっと聞き漏らしたかもしれないんですけれども、消費税廃止しても財政的には減少をカバーできるというようなお話をちょっと聞いたんですが、その点はどのようになっておりますでしょうか。
  154. 関本秀治

    参考人(関本秀治君) お答えいたします。  先ほど申し上げましたのは、現時点では自然増収が昨年度も一昨年度もいずれも当初予算に比べますと七兆円を超える額であったというふうに記憶しております。したがいまして、消費税廃止いたしましても今すぐ財源に困るというものではない、こういう趣旨で申し上げたわけです。  なお、これはあわせて他の支出項目あるいは不公平等の是正をすればもちろんこれを補てんしてなお余りある財源があるということでございますけれども、合意を得られない場合、その間は自然増収をそれに充てることは十分可能でありますし、過去におきましても、減税が自然増収で賄われたという例は何回もあるわけでございますから、あえてそれを否定することはないであろう、このように考えます。
  155. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  この際、参考人方々に一言御礼を申し上げます。  皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。  九案に対する本日の審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明七日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四分散会