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参考人(土井隆史君) 土井と申します。
本日は、
参考人として
意見を述べる機会をいただきましたことをお礼申し上げます。サラリーマンの
立場から
税制改革につきまして若干
意見を述べさせていただきます。
私ども連合は、今日まで一貫いたしまして不公平
税制を是正し、
国民に
税制改革の理念、方向を示す
税制の基本構想を策定し、これに基づき、
所得、
資産、消費の間の
課税のバランスのとれた
税制を確立するよう提唱してまいりました。しかし、
自民党は
消費税を
導入し、昨今
消費税の見直し案を明らかにしておるわけでありますが、そもそも今回の
政府・
自民党による
税制改革につきましては、新型
間接税導入が先にありきでありまして、
国民にとりまして
税制改革の理念でありますとか
税制の基本的な
考え方が、実は非常にわかりにくいものであったわけであります。
所得、
資産、消費の間の
課税のバランスのとれた税体系の確立ということを主張しながら、
課税ベースの最も大きい
資産にほとんど手をつけず、また
高齢化社会に備えるといいながら、
高齢化社会の受益と負担のあり方を初めとする福祉でありますとか財政のビジョンはほとんど示されていなかったわけであります。そればかりか、
消費税の
導入が決定するや否や、厚生年金の支給開始年齢の繰り延べでありますとか保険料の引き上げを打ち出すといった全くサラリーマンをないがしろにしたような政策さえまかり通ったわけでありまして、さらに、
国民が最も
税制改革で望んでおりました大前提であります不公平
税制の是正につきましても、ほとんど手がつけられなかったわけであります。
また、
消費税につきましても、生活者あるいは
消費者の
立場からの
議論がほとんどされなかったのみならず、業界の意向のみが配慮されて、したがって、多くの問題を抱える欠陥
税制として実施されたわけでありまして、これらに対する
国民の怒り、不満といったものがさらに
参議院選挙の結果になって出てきたのではないかと私ども思っているわけであります。
したがいまして、全体として公平な
税制にしないで
消費税のみを見直しましても、
国民全体が望む
税制改革には全く結びつかないのではないかと思うわけであります。さらに、
国民に新税として負担を求めるのであれば、やはり何のための負担か目的をもっと明確にすべきであったと思います。少なくとも高齢化時代の福祉、財政ビジョンを
国民に示し、ともに考える、こういったようなことが必要だったと思うわけであります。
今こそそういう意味で
国民合意の真の
税制改革、こういった実現を目指しまして、もう一度昨年の臨時
国会前の状態に戻って
税制改革の
議論を私は始めるべきではないかと考えております。この点、
消費税を
廃止し、昨年の臨時
国会前に戻って不公平の
税制の是正と
国民に
税制改革の方向、手順等を示した四党の
税制再
改革法案と
政府・
自民党のこの見直し案というものは、私ども全く次元の違うものであるというふうに受け取っております。私どもも八月の中央
委員会で、
消費税を
廃止し
税制改革のやり直しということの結論を出しておりまして、この意味で四党の今回の取り組みにつきましては敬意を表すとともに、全面的に支持をしておるわけでございます。
私どもの再三申し上げます不公平
税制につきまして少々述べさせていただきたいと思いますが、実は私どもの主張は極めて簡潔でございまして、源泉徴収納税者と申告納税者との間の
制度あるいは執行面の不公平の是正をぜひやっていただきたい、こういうことでございます。これは比較をすればもう全部出てくるわけでございまして、昨年の
税制改革ではこういった視点がほとんどなかったのではないか。むしろ
国会で全部挙げて、何でこういう
制度が生まれてきたのか、そして今後どうすべきなのか、できるのかできないのか、こういう
議論をどんどんやっていただきたい。そういう中から私は
国民の
判断が生まれてくるのではないかと思います。
さらに私ども、公平の原則はやはりそのための物差しを用意する必要があるということで、
プライバシーには十分配慮した
納税者番号制度をぜひ
導入していただきたい、こういうふうに思っております。私ども昨年来クリーンカード、
所得をやっぱりガラス張りにし、払うものは払おうじゃないか、こういうことを提案しておりまして、ぜひこの
導入は真剣に考えていただきたい。そして早急にやっていただきたいと思う次第であります。そして総合
課税の方向を明らかにして、極力みなしといったものを税の
制度から排除していっていただきたいと思うわけであります。そういう点では、
消費税はまさにみなしの塊なんじゃないのかというのが我々の見解でございます。
さらにもう
一つ、私どもは執行面の環境の整備が大変重要なんではないかと思います。総収入申告制、これは現行三千万の年収でございます。それから記帳義務、現行三百万でございますが、やはりこういうものをもっと引き下げ、強化して、きちんと申告すべきものは申告し、主張するものはしていく、こういうことをぜひやっていただきたい。それから推計
課税の
導入と立証責任の仕組みの改善ですね。欧米ではみんな立証責任は納税者にあると言われております。
日本のみが
税務署にあるということでございますが、やはりこの辺の見直しもぜひやっていただきたい。
そして、
最後に非常に重要なのは悪質、高額な脱税に対する罰則の強化、時効の延長でございます。現在、
法人税で実調率が約一〇%弱、
所得税で四%弱、すなわち
法人税で十年に一回、
所得税で二十五年に一回というのが
調査できる範囲だと言われておりますが、これに対して時効は悪質な脱税で七年でございます。こういうような結果、例えば検察庁へ告発されたものの金額が六十一年五百三十六億円、六十二年五百六十一億円、六十三年は八百三十五億円、こういうような結果になってきておりまして、一件当たり約五億円という脱税が発生をしているということでございまして、やはりこの
税制がきちんと機能する意味でも、こういったものに早急に手をつけていただきたいと思うわけであります。あわせまして、みなし
法人でありますとか事業税の非
課税等を含みます医師優遇
税制、こういった
制度上の不公平の是正を早急に行っていただきたいと我々は考えております。
続きまして、今回の
消費税の
導入につきまして、減税財源というような話がよく出てくるわけであります。六十二年度二兆二千億円、六十三年度以降三兆三千億円、計五兆五千億円の過去最高の減税を行った、その財源に
消費税が必要だというようなビラが昨年の
選挙時に多く見られたわけであります。しかしながら、六十一年以降の当初予算に比べる税収を見てみますと、六十一年度で一兆三千億円、六十二年度で五兆六千億円、六十三年度で五兆九千億円、地方税でも六十二年度で九千億円、六十三年度で一兆八千億円弱ですか、こういったように当初予算を大幅に上回っているわけでありまして、どこを探しても減税財源として
消費税を早急に
導入すべきというようなことは見当たらないわけであります。
また、
政府はこの五兆五千億円の減税を過去最高の減税と宣伝をしていますが、しかし例えば過去の昭和四十九年に行った一兆七千億円の減税は、今日の予算規模に直しますと約六兆円の減税、しかも単年で行ったというものでございます。さらに、私どもの試算でいきますと五十二年以降六十二年までほとんど満足な減税がなかったわけでありまして、この間サラリーマンにつきましては、収入が上がりますと実質増税になるような
制度になっておりまして、この間の物価上昇は三四・六%の累計でございますが、目減りしたサラリーマンの
所得は六十二年度の二兆二千億円の減税をもってしても埋められていないというのが実情でございます。
さらに、六十三年一兆三千億円の減税を行っておりますが、これはちなみに年収で大体どうなっているかと見ますと、年収五百万の方で年間一万九百円、四百万の方で四千七百円、それからサラリーマンの五割を占めます三百万以下の方では千二百円、月額百円、こういうような実態でございます。これは大蔵省が出された数字でございます。
しかも、この
税制改革で行います三兆三千億円の減税につきましては、この六十三年に実施されました一兆三千億円の減税が含まれております。したがいまして、
平成元年以降新たに実施される減税は、正しくは
所得税の一兆一千億円、住民税の九千億円の二兆円でございます。さらに、高額
所得者の最高
税率の一〇%引き下げ、共稼ぎ世帯にはほとんど恩恵が及ばない配偶者特別控除の引き上げ、いわゆる教育減税等を含めますと、この財源が一兆円。したがいまして、全世帯に及ぶ減税効果というのは一兆円なわけであります。したがいまして、共稼ぎで中学生以下のお子さんを持つ世帯につきましては、減税効果というのは正直言って及んでいないというのはこれは各機関でも出ているとおりでございます。年収五百万以下というのが民間に働くサラリーマンの約四分の三ということでございますから、こういったことからこの減税の効果がサラリーマンに対してどういう効果を及ぼしているかということは御推察いただけると思います。こういうようなことで、連合としましては中低
所得層に各種控除の引き上げによる追加減税を昨年は要求している次第でございます。
また、私どもサラリーマンは、先ほど申し上げましたように
所得控除が定額なため、名目賃金が上がりますと累進
税率によって実質的に増税になってまいります。今回
税率は簡素化されまして、これは私ども評価をしております。しかしながら、控除がそのままのため、実額で控除できます
事業者と比べますと、累進
税率がそのままかかってくるということで、やはり実質的な増税の基調というのは
制度的には変わっていないわけであります。したがいまして、一定の物価上昇に対応して控除額を引き上げるという物価調整減
税制度、私どもインデクセーションと言っておりますが、ぜひこれを
導入していただきたいと思うわけであります。
それから三点目は
資産課税でございますが、今回、
資産、とりわけ土地に対する
課税の強化が見送られましたことは、現在の土地所有を中心とした
資産格差の拡大に拍車をかけ、サラリーマンそれから自営
業者、高額
資産保有者の間の
社会的な不公平不公正というものをますます助長する結果となってきているわけであります。
ちなみに、これはもう釈迦に説法で恐縮でございますが、我が国の
国民総
資産は六十二年で五千三百三十八兆円に及びます。そのうち土地は一千六百三十八兆円で、一年間で三百七十六兆円、株式につきましては五百三兆円で、一年間で百二十八兆円、こういったように時価総額が上っているわけであります。しかし、土地に対する
課税はどうかといいますと、固定
資産税で大体時価に対する実効
税率が〇・一五%と言われております。都区部では〇・〇七%ということで、欧米と比べますと十分の一から五十分の一という低い
税率と言われております。これに加えまして、市街化区域内農地の優遇
税制でありますとか譲渡
所得に対する優遇措置など極めて軽くなっている。
また、これに反して一方、働いて得る雇用
所得、これは
平成元年度の予算のベースでいきますと約百七十四兆円でございますが、これに対して、
所得・住民税を合わせた
税率は一五から六五の累進
税率が適用されるわけでありまして、この結果、
税制改革後国税収入の構成比がどうなったかといいますと、
所得課税が五九%、
資産課税が一九%、消費
課税が二二%、この前が
所得課税が六二%、
資産課税が一九%、消費
課税が一九%ということですから、
所得で減ったものが消費に移っただけということで、いかに勤労
所得に過酷で、
資産・
資産所得に甘いかということが一目瞭然であると思うわけであります。
サラリーマンはこういった税金、
社会保険料を差し引いたもので住宅を買い、
資産形成をするわけでありますが、
事業者は経費で
資産の蓄積が可能なわけであります。また、高額
資産保有者につきましては、保有
資産への
課税が甘い上に、こういったものを担保として多額の融資によってさらに
資産を拡大できる。こういったことでますます
資産格差は拡大をしていくわけでありまして、サラリーマンにとって、一生懸命働いても家が持てない、しかし格差は拡大していく、まさに勤労意欲を減退させるような結果になっているわけであります。こういったような循環に歯どめをかけていただくという意味で、ぜひ土地
税制の強化というものを早急に行っていただきたい。
今般、衆議院で土地
基本法が成立いたしましたが、ぜひ超党派でこれを成立させまして、まさに緊急の課題として土地
税制に手をつけていただきたい。連合は大土地保有税を提案しておりますが、できれば超党派でぜひ御討議をいただきたいと思う次第でございます。
以上、私いろいろ申し上げてまいりましたが、
税制は国の屋台骨であると同時に、私ども
国民の懐にかかわる大変重要な問題でございます。
税制改革に当たっては、ぜひ将来のビジョンを明らかにして、そして
税制改革の方向を示して、政争の具ではなくて、超党派で十分
議論をしていただきたい。そういう意味では、今回四会派が提案されました再
改革基本法案に基づきましてぜひ十分な御審議を行っていただきまして、
国民の望む
税制改革を実現させていただきたいと思います。
以上、私の公述を終わらせていただきます。