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参考人(草島
和幸君) 私は、本
委員会で審議されている
国民年金法等一部
改正案及び
制度間の
費用負担の
調整法案に反対の
立場から
意見を述べたいと思います。
私は、つい最近できました
全国労働組合総連合、全労連と申しますけれども、そこの
国民運動局というところで仕事をしております。
全労連は、過日、議長の松本道廣の名前によって、審議されている「
年金法案に反対する要請」を文書にして、参議院の各会派にもお届けしたところであります。
その要点をここで申し述べたいと思いますけれども、要点は第一に、政府提出
法案は衆議院において一部修正されましたが、広範な労働者や
国民にとっては到底納得できる修正ではないというふうに考えているところです。第二は、こうした
立場から、参議院での審議を通じて、ぜひとも原案に含まれている改善
部分だけを切り離して成立させていただくようにお願いしたいという点であります。
これらの要請をいたしました理由について、以下簡単に申し述べたいと思います。
第一は、
支給開始年齢六十五歳に関することです。周知のとおり、政府は一九九五年までに日本の全
年金制度の統合
一元化を図るということで、この
法案もその一環であるわけですが、予定をしております。統合
一元化の最も重要なポイントとされているのが
支給開始年齢の
引き上げであるというふうに見られております。この政府の統合
一元化の方針は、もともとは一九八二年七月の第二臨調第三次答申、基本答申とも言っておりますけれども、それを
具体化したもので、八六年から実施をされている現行法、それが統合
一元化に向けての第一
段階、今回が第二
段階というふうに見られているものであります。
今国会に政府が提出した
法案における最大の
問題点は、
年金制度のこれは抜本
改悪というふうに私ども考える中身であるわけですが、その焦点に当たる
問題が、
支給開始年齢を六十五歳にするスケジュールを
具体化するというところに置かれていたことは明らかであります。既に、第一
段階における法
改正によって、本則に盛り込まれていたものを具体的に日時を明らかにしたという点にあったわけですが、この点から見るならば、衆議院修正でこのスケジュールが削除されたということによって、なおかつ附則がつけられて、次期財政再
計算の際に見直しというふうになったことについては、とりあえずはスケジュールが削除されて大いに結構ですけれども、
しかし政府の考えている、
年金統合
一元化の第三
段階に先送りしたにすぎないというふうに言わざるを得ないと思います。
第三
段階に当たるのが次期財政再
計算期、強いて言うならば、一九九五年からの統合
一元化に向けての法
改正ということになるんだろうと思います。したがって、削除されたスケジュールによる法
改正と具体的な移行の実施時期、その法
改正と実施時期の
期間が多少短くなったとはいえ、六十五歳後退への中身をいささかも変えるものではないというふうに私どもは受け取っております。したがって、私
たちがここで、
支給開始年齢六十五歳がとりあえずは計画としてなくなったというふうにとらえることはできず、政府の原案における最大の
問題点が残されているというふうに考えざるを得ない
問題であります。
多くの議論、ただいまの
参考人の中の議論にもありましたけれども、
年金支給開始年齢が六十五歳になるということについての議論は、ともすれば
定年制との関連で論議されております。私もその点は大変重要な議論だというふうに考えますけれども、それを
定年制における年齢のありようによってだけ
年金支給開始年齢を接続するという
考え方は必ずしも賛成ではございません。なぜかといえば、もともと
定年制というのは雇用における契約を年齢を理由にして法的に、一方的に
事業主が解除できるという
考え方からするならば、年齢を理由にする雇用差別という性格を持っているからです。
この議論は本日さておくといたしまして、仮に六十五歳まで何らかの形の雇用保障が行われるというふうになったならば、じゃ六十五歳
支給でいいのかということについて一言
意見を言わざるを得ないというふうに考えます。
日本の労働者の労働現場における実態は、これはすさまじいばかりの労働強化、長時間労働、さらには過密労働ということになっております。その上に、大都市の労働者の場合ですとますます住宅事情が悪化して、ラッシュの通勤距離が一時間半、二時間というふうに延びております。仮に六十歳まで働くという前提で考えましても、この労働
条件やあるいは通勤
条件を考えたら、肉体的に衰えてくる労働者にとっては大変な
負担であります。さらに六十五歳まで働けるようになったからといって、その状態が続けられるかといったら、日本の多くの労働者はそれは不可能だ、もういいかげんにしてくれというふうに考えるのが現状だろうと思います。単に
定年の
問題ではない根本的な
問題がここにあるのではなかろうかというふうに考えます。
まして、最近多数進出しております婦人労働者の場合を例にとって考えてみれば一層明らかだと思います。婦人が多く働いている看護婦さんとか保母さんという職種で、六十五まで働けるんだから働けというようなことは、事実上これは不可能に近いというふうに考えるからです。当
委員会審議を通じて、六十五歳
支給へと後退させる火種は完全に消し去っていただきたいということを強く
要望するものです。
第二は、
厚生年金保険料の
引き上げに関することです。これもまた、衆議院修正で若干少なくなったようでありますけれども、基本的には
負担の大きな増加という点は変わりません。消費税によって既に家計が大打撃を受けるという事態のもとで、来年一月以降、賃金の一%近くを給料袋から天引きされるというような事態は、到底許すことができないというふうに考えます。
この点では、
制度間
財政調整による
厚生年金等からの拠出額、これも
負担増の要因ではありますけれども、当面一人当たりに直せばそれほどの金額とならないかと思いますが、
しかしこれについ
ては別の側面からやはり考え直していただきたいというふうに考えます。
鉄道共済年金の財政危機の原因と責任がこのやり方によってはあいまいにされ、棚上げにされてしまうというふうに考えるからです。
鉄道共済年金の財政危機は、長年にわたる政府の公共交通運輸政策を
国鉄に押しつけてきたという
問題、さらにはそれが一層加速されたのは
国鉄の分割・民営化、大量の人減らしを含む
国鉄分割・民営化によって、今日の危機が加速されてきていることは明らかであります。他
制度の
保険料負担に転嫁するなどということではなくて、政府とJR各社の責任で
措置すべき事柄だろうというふうに考えます。
保険料負担のあり方で、最も深刻で重大な事態となっているのは
国民年金だろうと考えます。来年四月から月一人八千四百円、以後毎月四百円ずつ
引き上げていくという政府案について、これは衆議院でも全く修正もされずに衆議院に回ってきております。
国民年金被
保険者は種類が三号まであるわけですけれども、一号被
保険者について、政府、
厚生省は、あたかも自営業者、農林漁業の従事者あるいは自由業者だけで占められているように言っておりますが、これは実態を隠すことと言わざるを得ないと思います。対象がほとんど同一の
国民健康
保険の被
保険者の職業構成から類推しますと、約三〇%は零細企業に働く、
厚生年金の適用から除外されている労働者というふうに見られます。したがって、一号被
保険者の
問題というのは労働者の
問題でもあるというふうに私はとらえて、若干
意見を申し述べたいと思います。
もともと自営業者にも、農漁民の場合にもたくさんの低
所得層がおります。ましてや零細企業に働く労働者は、
厚生年金に適用されている労働者よりもはるかに低賃金、劣悪な労働
条件で働かされております。夫婦で月一万六千八百円、これが来年の四月からですが、それに加えて健康
保険も自前の国保に
しか入れない。国保の
保険料もほぼ同じぐらい、あるいはそれ以上になろうかと思いますが、この高い
二つの
保険料は低
所得、低収入の零細企業の労働者にとってみるならば、その比率は圧倒的に高いということになり、とても
負担に耐えられる
状況ではないというふうに考えます。
急激に
保険料が増加していくもとで、とりわけ先ほど言った
年金統合
一元化に向けての第一
段階を経過した一九八六年以降、
国民年金の
保険料の、未納者、滞納者、
厚生省の
言葉では検認率と言っておるようでありますが、結局は、未納、滞納の累積でありますが、大体一号被
保険者の一六%に及ぶと言われております。数に直すと三百万人前後ということで急増を続けてきております。これらの中に、零細企業の低
所得の労働者、自営業者、農民が含まれていることは予想するまでもない事態だと思います。
保険料が、未納、滞納という状態が続くならば、これは将来
年金受給資格を得られない、あるいは
年金がもらえない無
年金者をつくり上げていくということになるわけです。
無
年金者を急増させるということは、これらの低
所得層、最も公的な
所得保障が必要とされる低
所得層の
方々を
公的年金から排除していくということにほかならないというふうに考えます。こういうことが許されてならないことは明白だと思います。
国民年金の
保険料の
引き上げはやめていただきたい。それよりも、すべての低
所得者も含めて
公的年金の
所得保障を受けられる
措置をとることが今国政に問われる緊急の
問題ではないかというふうに考えます。
学生の強制
加入について一言触れておきますが、結局のところは親の
負担に返ってくるわけです。年間十万円を超える息子、娘の国年の
保険料負担、これは親にとってみるならば、それでなくてさえ高い学費を
負担しているその事態をさらに加速するものである、困難を加速するものであるというふうに思います。これは
年金制度の仕組みの
問題としてだけではなくて、すべての
国民が大学進学の機会が均等に保障される、就学の機会が保障されるか否かの
問題にもかかわる
問題だろうと思います。強制適用をするというのであるならば、特別な学生の
保険料免除
制度を法定していただいたらよいのではないだろうかというふうに考えます。
こうした政府の
年金制度改悪をやめさせ、
公的年金を改善するためにはどうすべきかという点について、若干
意見を申し述べたいと思います。
七月の参議院選挙の結果、参議院の議席構成は、自民党少数、野党多数、大変喜ばしい事態になったのが現実であります。こうした
国民の審判は専ら三点セット、リクルート、消費税、農業だとされていますが、もう
一つ、
国民の大きな
選択の基準があったというふうに私は考えます。
参議院選挙を前にして、マスコミ各社が選挙についての政策で、各党に何を望むかという項目で多くのマスコミが世論調査を行っておりますが、私の見る限りでは、その三点セットというのは、税制
問題、政治倫理
問題、
福祉問題、これで政党の
選択をするんだ、政策の
選択をするんだと言っております。農業
問題は、都市部の多いアンケートの対象者が設定されればちょっと落ちるのは当然でありますけれども、
福祉問題を含めて、三点セットで各党の政策が選ばれているという点をぜひとも御留意いただきたいというふうに考えます。こういう点からするならば、三点セットに加えて
福祉問題における自民党政治も、
国民によってノーと回答されたというふうに私は考えます。
私はここに七月十七日付の週刊
社会保障という雑誌を持ってまいりましたが、これは参議院選挙を前にして各党の
社会保障政策を一覧したものであります。丹念に調べていきますと、大変本日の
法案審議に当たって共通する興味ある中身が上がってまいります。各野党の
方々の公約の中には、現在の
基礎年金に対する国庫
負担を、現状三分の一ですけれども、当面は二分の一にせよ、さらには三分の二、将来は全額国と企業の
負担によって日本の
最低保障年金制度を確立せよということが公約されております。この政策
提言は、かねてから私
たちが主張してきたことと全く一致するものであり、全面的に賛成であります。また、これによってこそ
国民の老後保障確立の
基礎が本当に定まるのではなかろうかというふうに考えます。
公的年金への
国民の不信拡大にストップをかけて、一層の改善がこの
措置によって可能になると考えております。
議席多数の野党の
方々が、ぜひとも公約の実行を図っていただくことをお願いし、私の
意見を終わらせていただきます。