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1989-12-05 第116回国会 参議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十二月五日(火曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  十一月二十九日     辞任         補欠選任      後藤 正夫君     木暮 山人君  十一月三十日     辞任         補欠選任      小西 博行君     勝木 健司君  十二月一日     辞任         補欠選任      勝木 健司君     小西 博行君  十二月四日     辞任         補欠選任     日下部禧代子君     篠崎 年子君      沓脱タケ子君     林  紀子君      乾  晴美君     新坂 一雄君  十二月五日     辞任         補欠選任      田代由紀男君     前田 勲男君     篠崎 年子君     日下部禧代子君      林  紀子君     沓脱タケ子君      新坂 一雄君     乾  晴美君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         浜本 万三君     理 事                 小野 清子君                 佐々木 満君                 糸久八重子君                 高桑 栄松君     委 員                 尾辻 秀久君                 木暮 山人君                 清水嘉与子君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 西田 吉宏君                 前島英三郎君                 前田 勲男君                 菅野  壽君                日下部禧代子君                 篠崎 年子君                 深田  肇君                 堀  利和君                 木庭健太郎君                 沓脱タケ子君                 林  紀子君                 乾  晴美君                 新坂 一雄君                 小西 博行君                 西川  潔君        発  議  者  深田  肇君        発  議  者  高桑 栄松君        発  議  者  小西 博行君    委員以外の議員        発  議  者  山本 正和君        発  議  者  渕上 貞雄君        発  議  者  山田 健一君        発  議  者  塩出 啓典君        発  議  者  沓脱タケ子君        発  議  者  乾  晴美君        発  議  者  下村  泰君    衆議院議員        社会労働委員長        代理       粟山  明君    国務大臣        厚 生 大 臣  戸井田三郎君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     加藤 栄一君        厚生大臣官房審        議官        兼内閣審議官   森  仁美君        厚生大臣官房老        人保健福祉部長  岡光 序治君        厚生省保健医療        局長       長谷川慧重君        厚生省年金局長  水田  努君        厚生省援護局長  末次  彬君        社会保険庁運営        部長        兼内閣審議官   土井  豊君        労働省職業安定        局高齢障害者        対策部長     七瀬 時雄君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君    説明員        労働省婦人局婦        人福祉課長    堀内 光子君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国民年金法等の一部を改正する法律案(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付) ○被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件 ○原子爆弾被爆者等援護法案山本正和君外九名発議) ○社会保障制度等に関する調査  (へい獣処理場等に関する法律改正に関する件)     ─────────────
  2. 浜本万三

    委員長浜本万三君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十一月二十九日、後藤正夫君が委員辞任され、その補欠として木暮山人君が選任されました。  また、昨四日、乾晴美君、沓脱タケ子君及び日下部禧代子君が委員辞任され、その補欠として新坂一雄君、林紀子君及び篠崎年子君がそれぞれ選任されました。     ─────────────
  3. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 次に、国民年金法等の一部を改正する法律案及び被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。戸井田厚生大臣
  4. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案及び被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  まず、国民年金法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  我が国は、世界に例のない速度で高齢化が進んでおり、老後の問題は国民最大の関心事となるとともに、老後生活の主柱としての公的年金制度に寄せる国民期待は極めて大きなものとなっております。  こうした国民期待にこたえていくため、昭和六十年の年金制度改正においてすべての国民に共通する基礎年金導入が行われ、公的年金制度全体の長期的な安定と整合性ある発展を図る上での礎が築かれたところでありますが、高齢化のピークを迎える二十一世紀に向けて、さらに、年金制度全体を揺るぎないものとしていく努力を重 ねてまいることが必要であります。  このような考え方に基づき、今回提出いたしました改正案では、必要な年金額確保を図るとともに、後代負担を適正なものとするため、厚生年金支給開始年齢を十分な準備期間を設けて段階的に引き上げていくためのスケジュールを明示する等所要改正を行うこととしております。  以下、改正案内容につきまして、御説明申し上げます。  まず、国民年金法及び厚生年金保険法の一部改正について申し上げます。  第一に、年金額引き上げにつきましては、本年十月から、国民年金基礎年金の額を月額五万五千五百円に引き上げるとともに、厚生年金保険制度成熟時における加入期間四十年の場合の標準的な年金額月額十九万七千四百円に引き上げることとしております。旧法国民年金及び旧法厚生年金保険の額も、これに準じた引き上げを行うこととしております。そのほか、配偶者や子に係る加算・加給年金の額を引き上げることといたしております。  第二に、物価スライド制につきましては、平成二年四月から、物価変動に完全に対応して年金額改定を行う完全自動物価スライド制とすることとしております。  第三に、厚生年金保険在職老齢年金につきましては、本年十月から、その支給割合現行の三段階から五段階に改める等の改善を図ることとしております。  第四に、老齢厚生年金支給開始年齢につきましては、給付水準を維持しつつ、後代負担を適正なものとするため、十分な準備期間を設けて、平成十年度から平成二十二年度にかけて段階的に六十五歳に引き上げることとしております。また、これに伴い、老齢厚生年金の繰り上げ支給制度を創設することとしております。なお、これらの改正施行につきましては、別に法律で定める日からとしております。  第五に、厚生年金保険標準報酬につきましては、最近における賃金の実態に即して、本年十月から、八万円から五十三万円の三十等級に改めることとしております。  第六に、保険料につきましては、年金額引き上げ及び受給著増等に対応して年金財政健全性確保するため、国民年金については平成二年四月から月額八千四百円に改定し、以後段階的に引き上げることとしております。また、厚生年金保険については、本年十月から保険料率男子については千分の二十二引き上げ、女子については男子との格差を解消するため、千分の二十三・五引き上げ、その後男子の料率に達するまで毎年千分の一・五ずつ引き上げることとしております。  第七に、現在、国民年金任意加入となっている二十歳以上の大学、専修学校等の学生につきましては、年金を保障するため、平成二年四月から、国民年金の当然加入の被保険者とすることとしております。  第八に、基礎年金厚生年金等支払いにつきましては、本年十月から、年六回支払い改善することとしております。  第九に、自営業者等に対する基礎年金上乗せ年金制度を実現するため、現行業種単位の職能型の国民年金基金設立要件を緩和するとともに、一般自営業者等加入する都道府県の区域を単位とする地域型の国民年金基金を創設することとしております。  第十に、厚生年金基金につきましては、積立金運用の一層の効率化を図るため、運用方法を拡大するとともに、積立金管理及び運用に関する業務について、所要規定の整備を行うこととしております。  次に、平成元年度におきます年金額特例物価スライド等について申し上げます。  拠出制国民年金及び厚生年金保険年金額につきましては、最近における社会経済情勢にかんがみ、特例的に昭和六十三年の物価上昇率に応じて年金額引き上げを行う特例物価スライド実施することとしております。また、老齢福祉年金の額につきましても、拠出制年金の額の引き上げに準じて引き上げを行うこととしております。  最後に、児童扶養手当法及び特別児童扶養手当等支給に関する法律の一部改正について申し上げます。  児童扶養手当及び特別児童扶養手当等手当額につきましては、年金額引き上げに準じて引き上げを行うとともに、平成二年四月から、物価変動に完全に対応して手当額改定する完全自動物価スライド制導入することとしております。  以上が、国民年金法等の一部を改正する法律案提案理由及びその内容概要でありますが、衆議院において、年金額等引き上げを本年四月にさかのぼって実施すること、在職老齢年金支給割合を七段階改善すること、厚生年金保険料率政府案より引き下げること、老齢厚生年金支給開始年齢引き上げ等に関する規定を削除し、別に、老齢厚生年金特例支給については次期財政計算の際に見直すこととする旨の規定を置くこと等を内容とする修正が行われております。  次に、被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案について申し上げます。  我が国公的年金制度を今後の高齢化の一層の進展や産業構造就業構造の変化の中で、公平で安定した揺るぎないものとしていくためには、公的年金制度一元化を図る必要があります。  その第一段階として、昭和六十年の年金制度改正においては基礎年金制度導入を行い、公的年金制度の一階部分について給付負担の両面にわたる一元化を行うとともに、二階部分に相当する被用者年金制度についても、共済年金給付水準を将来に向けて厚生年金給付水準にそろえることにより給付面における公平化を図ったところでありますが、公的年金制度一元化を完了するためには、被用者年金制度負担面における不均衡を是正していくことが課題となっているところであります。  この法律案は、このような課題を踏まえ、被用者年金制度間の負担調整を進めるため、公的年金制度一元化が完了するまでの間の当面の措置として、厚生年金及び共済年金老齢退職年金給付のうちの共通の部分について費用負担調整するための制度間調整事業実施しようとするものであります。  以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。  第一は、調整交付金交付であります。制度間調整事業実施主体たる政府は、各被用者年金保険者が行う老齢退職年金給付のうち各制度に共通する部分費用に充てるため、各被用者年金保険者に対し調整交付金交付することとしております。  第二は、調整拠出金拠出であります。調整交付金の財源に充てるため、各被用者年金保険者は、その標準報酬総額に応じて、制度間調整事業実施主体たる政府に対し、調整拠出金拠出することとしております。  第三に、制度間調整事業事務の執行に要する費用は、国が負担することとしております。  第四に、制度間調整事業社会保険庁実施することとしておりますが、その円滑な実施のため、各共済組合からの社会保険庁長官への報告等について所要規定を設けております。  このほか、厚生保険特別会計法被用者年金法等について、制度間調整事業実施のための所要改正を行うこととしております。  なお、この法律施行期日は、平成二年四月一日としております。  以上が、被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案提案理由及びその内容概要でありますが、衆議院において、平成二年度から平成四年度までの間、日本鉄道共済年金への調整交付金減額措置を講ずることとし、当該減額相当額について厚生年金保険等保険者調整拠出金減額を行うこととすること、及び政府は、平成四年度までの間に、制度間調整事業について、公的年金制度一元化を展望しつつ、その運 営の状況等を勘案して見直しを行うものとすることを内容とする修正が行われております。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  5. 浜本万三

    委員長浜本万三君) この際、両案の衆議院における修正部分について、衆議院社会労働委員長代理理事粟山明君から説明を聴取いたします。粟山君。
  6. 粟山明

    衆議院議員粟山明君) まず、国民年金法等の一部を改正する法律案に対する衆議院修正部分について、その内容を御説明申し上げます。  修正要旨は、  第一に、国民年金厚生年金年金額実質改善について、改正案では本年十月から実施することとされていたものを本年四月にさかのぼって実施すること。なお、児童扶養手当等の額の引き上げについても、同様の措置を講ずること。  第二に、厚生年金在職老齢年金支給割合改正案の五段階から七段階に増加すること。  第三に、厚生年金保険料率改正案より引き下げることとし、平成二年一月分から十二月分までについては改正案より千分の三引き下げ、平成三年一月以降分については改正案より千分の一引き下げること。  第四に、老齢厚生年金支給開始年齢引き上げ及び繰り上げ支給制度創設等に関する規定を削除し、別に、老齢厚生年金特例支給については、次期財政計算の際に、財政の将来の見通し、高齢者就業機会確保等措置状況等を総合的に勘案して見直し、これに基づく所要措置は別に法律をもって定めるものとする旨の規定を置くこと。  第五に、国民年金基金及び国民年金基金連合会積立金資産運用等について契約する相手方として、改正案生命保険会社及び信託会社のほか、新たに全国共済農業協同組合連合会または全国共済水産業協同組合連合会を加えること。  第六に、改正案施行が、当初予定していた平成元年十月一日を経過したこと等に伴い、改正事項施行期日について所要の整理を行うこと等であります。  次に、被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案に対する衆議院修正部分について、その内容を御説明申し上げます。  修正要旨は、  第一に、日本鉄道共済年金財政対策に関して、日本国有鉄道清算事業団の特別負担追加等による自助努力の額の拡大が行われることを踏まえ、平成二年度から平成四年度までの間、日本鉄道共済年金への調整交付金減額措置を講ずることとし、当該減額相当額について厚生年金保険等調整拠出金減額を行うこととすること。  第二に、政府は、平成四年度までの間に、制度間調整事業について、その運営状況等を勘案して見直しを行うこととすること。  以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。
  7. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  両案に対する質疑は後刻に譲ります。     ─────────────
  8. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国民年金法等の一部を改正する法律案及び被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案の審査のため、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  11. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 次に、原子爆弾被爆者等援護法案議題といたします。  発議者山本正和君から趣旨説明を聴取いたします。山本君。
  12. 山本正和

    委員以外の議員山本正和君) 私は、ただいま議題となりました原子爆弾被爆者等援護法案につきまして、日本社会党護憲共同、公明党・国民会議日本共産党連合参議院、民社党・スポーツ・国民連合参院クラブを代表いたしまして、その提案理由を御説明申し上げます。  昭和二十年八月六日、続いて九日、広島、長崎に投下された人類史上初原子爆弾は、一瞬にして三十万人余の生命を奪い、両市を焦土と化したのであります。この原爆による被害は、普通の爆弾と異なり、放射能熱線爆風の複合的な効果により、大量無差別破壊、殺傷するものであるだけに、その非人道性ははかり知れないものがあります。たとえ一命を取りとめた人たちも、この世の出来事とは思われない焦熱地獄を身をもって体験し、生涯消えることのない傷痕と原爆後遺症に苦しみ、一層健康破壊が進む中で年老い、貧困や孤独に悩まされながら、今日までようやく生き延びてきていることは、一昨年の六月に発表された政府原爆被爆者実態調査等においても明らかであります。  しかし、国は、被爆から四十五周年を迎えようとしている今日に至るまで、原爆で亡くなられた方々やその遺族に対し全く弔意すらあらわさないばかりか、特段の生活援助もしておりません。ここに現行二法の最大の欠陥が指摘できるのであります。  国家補償に基づく援護法を求める国民の不満は、なぜ軍人軍属など軍関係者のみを援護し、原爆犠牲者差別して処遇するのか、戦時諸法制から見て全く納得がいかないという点にあります。本法案提出に当たり、私はこの際、まず国家補償法必要性について明らかにいたしたいと思います。  国家補償の原則に立つ援護法が必要な第一の理由は、アメリカの原爆投下国際法で禁止された毒ガス、生物化学兵器以上の非人道的兵器による無差別爆撃であって、国際法違反犯罪行為であるということです。したがって、サンフランシスコ講和条約日本が対米請求権を放棄したとすれば、その請求権を放棄した日本国政府に対し国家補償を要求する権利が当然存在するのであります。しかも、原爆投下を誘発したのは、日本国政府が起こした戦争なのであります。我々が、この史上初核爆発熱線爆風、そして放射能によるはかり知れない人命、健康の被害に目をつぶることは、被爆国としての日本が恒久平和を口にする資格なしと言わなければなりません。  第二の理由は、この人類史上未曾有の惨禍をもたらした太平洋戦争を開始し、また終結することの権限と責任が日本国政府にあったことが明白であるからであります。特に、サイパン、沖縄陥落後の本土空襲本土決戦段階では、旧国家総動員法は言うまでもなく、旧防空法国民義勇隊による動員体制の強化に見られるように、ほとんどすべての国民国家権力によってその任務につくことを強制されていたことは紛れもない事実であります。政府は、援護法の制定については、国を挙げての戦争による犠牲は、一般犠牲としてすべての国民が等しく受忍しなければならないという、原爆被爆者対策基本問題懇談会のいわゆる戦争被害受忍論を盾にこれを否定しておりますが、原爆被害が人として到底受忍できない被害であることは、何よりも被爆者が置かれている現状が雄弁に物語っているのであります。  また、一般戦災者とのバランス論についても、国民皆兵状態をつくり出した当時の戦時諸法制からすれば、戦争被害救済を国との間の身分関係によって差別する政府のやり方は全く根拠のないことであり、そのすべてを救済するというのが国としての正しい施策であるべきであります。同じ大戦の敗戦国である西ドイツは、いち早く幅広い救済を行っているのであります。  太平洋戦争を体験している年代も数少なくなり、ややもすれば戦争の悲惨さは忘れ去られよう としている現状にありますが、被爆者にとって援護法が制定されることにより初めて戦後が終わるのであります。  私たちは、以上のような理由から、全被爆者とその遺族に対し、戦争被害の中でも特に特別な犠牲である放射能被害特殊性を十分考慮しつつ、現行軍属、準軍属に対する援護法に準じて、原爆被爆者等援護法案提案することといたしたのであります。  以下、本法律案概要を御説明申し上げます。  まず第一は、健康管理及び医療給付であります。健康管理のため年間に定期二回、臨時二回の一般検査精密検査を行うとともに、被爆者の負傷または疾病について医療給付を行い、その医療費は、七十歳未満の被爆者については現行法どおりとするとともに、老人被爆者については、老人保健法規定にかかわらず、地方自治体負担を国の特例的負担といたしました。  第二は、医療手当及び介護手当支給であります。医療手当については、認定疾病医療を受けている者に対し月額八万円を支給することとし、また日常生活介護を必要とする者には月額十万円の範囲内で介護手当支給し、家族介護についても給付するよう措置したのであります。  第三は、被爆二世または三世に対する措置であります。被爆者の子または孫で希望者には健康診断機会を与え、原子爆弾傷害作用に起因する疾病として政令で定めるものにかかっている旨の認定を受けた者に対しては、健康診断医療給付及び医療手当介護手当支給を行うことにしたのであります。  第四は、被爆という特殊な被害に着眼した国家補償として、被爆者年金支給することであります。全被爆者に対して、政令で定める障害の程度に応じて年額最低三十四万八百円から最高七百六万六千八百円までの範囲内で年金支給し、年金額恩給法と同じいわゆる総合勘案方式による改定を行うものとしております。  第五は、特別給付金支給であります。本来ならば死没者遺族に対して弔意をあらわすため弔慰金及び遺族年金支給すべきでありますが、当面の措置として百二十万円の特別給付金とし、十年以内に償還すべき記名国債をもって交付することにいたしました。  第六は、被爆者が死亡した場合、二十万円の葬祭料をその葬祭を行う者に対して支給することにしたのであります。  第七は、被爆者健康診断や治療のため旅客会社を利用する場合には、本人及びその介護者の運賃は無料とすることにいたしました。  第八は、高年齢被爆者小頭症その他の保護を必要とする被爆者のため、国立原子爆弾被爆者保護施設を設置し、国の負担で保護すること、被爆者のための相談所を都道府県が設置し、国は施設の設置運営の補助をすることにいたしました。  第九は、厚生大臣の諮問機関として原爆被爆者等援護審議会を設け、その審議会に被爆者の代表を委員に加えることにしたのであります。  第十は、放射線影響研究所の法的な位置づけを明確にするとともに、必要な助成を行うことといたしました。  第十一は、日本に居住する外国人に対しても本法を適用することにしたのであります。  なお、この法律施行平成二年七月一日であります。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  被爆後既に四十五周年を迎えようとしている今日、老齢化する被爆者遺族にもう残された時間はありません。被爆者団体の調査によれば、再び原爆による犠牲者を出すなという原水爆禁止の全国民の熱き願いにこたえる形で、援護法賛同署名は参議院議員の三分の二を超え、衆議院でも三分の二に迫ろうとしております。  こうした事実を踏まえ、何とぞ慎重に御審議の上、速やかに可決されるようお願い申し上げます。
  13. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 篠崎年子

    篠崎年子君 私は、社会党を代表いたしまして、提案者の皆さん並びに大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  この被爆者援護法案が初めて国会に提出されましたのは一九七四年、昭和四十九年のことであります。その最初の原案が検討されるときから被爆者の方々が参加され、以来十五年間、その制定はすべての被爆者の悲願であります。本日、本院の過半数を超す議員の賛同を得て提案の運びとなったことにつきまして、被爆県広島選出の浜本委員長とともに、長崎選出の私は深い感銘を覚えるものでございます。初めに、共同提案者の六会派の皆さんに心からの敬意を表したいと思います。  さて、近年、戦争体験の風化現象などと言われるように、特に若い人たちの中に悲惨な戦争犠牲者に対する理解や認識が乏しくなってきていることは御承知のとおりであり、それは時として政府高官の言動にさえあらわれていることを憂えている者の一人でございます。しかし、一昨年六月に発表されました厚生省の被爆者実態調査は、被爆者手帳を持つ三十六万六千九百五十七人の多くが、病苦、貧困、孤独、高齢化の状態の中で今なお苦しんでいられる姿を浮き彫りにしております。  例えば、入院または通院中の方が四割を超え、一般の二、三倍の率であります。年収二百万円未満の世帯が四分の一もあるという状況、また生活保護受給者の割合やひとり暮らしの方々あるいは寝たきりの方の割合も非常に高くなっております。例えば、生活保護受給者の割合は、全国平均は一・六%ですが被爆者の皆さんは一・九%であります。また、寝たきりの方の割合も、千人に対しまして全国平均は二十三・八八ですが被爆者の皆さん方は三十・九人という大変高い率になっているわけです。  このような生存被爆者の実情からすれば、一九八〇年に政府原爆被爆者対策基本問題懇談会報告が強調したいわゆる戦争被害受忍論、すなわち、「およそ戦争という国の存亡をかけての非常事態のもとにおいては、国民がその生命・身体・財産等について、その戦争によって何らかの犠牲を余儀なくされたとしても、それは、国をあげての戦争による「一般犠牲」として、すべての国民がひとしく受忍しなければならない」という立場は、言語道断であると言わなければなりません。  政府・自民党の方針の基本とされているこの考え方についてどのような見解を持っておられるか、まず提案者にお尋ねいたしたいと思います。
  15. 山本正和

    委員以外の議員山本正和君) 現在、政府戦争被害についての基本的な考え方、これは国との間に一定の身分関係があった軍人軍属人たちに対しては国家補償、こういう立場をとっているわけでありますけれども、今御質問者おっしゃいましたとおり、いわゆる受忍論という立場に立って、原爆被爆者に対してはどちらかといえば社会保障的な意味合いを持ってこれに対応しているという大変な矛盾があるわけでございます。私どもは、我が国政府政府の責任において起こした戦争であり、しかもその戦争を終結する力があったにもかかわらずなお戦争を継続して、そのためにまさに人類まれに見る大変な惨禍をこの広島、長崎の被爆者たちに及ぼした、このことを断じて許すわけにはまいらないのでございまして、いわゆる受忍論で言う「国をあげての戦争による「一般犠牲」として、すべての国民がひとしく受忍しなければならない」、こういう立場には立ち得ないと考えるのでございます。  そういう意味から、何としてもこの戦争受忍論の過ちを政府みずからが正して、受忍論に立つその立場をなくす、そのことが我が日本国憲法に示された平和国家への道である、こういうふうに考えているところでございます。
  16. 篠崎年子

    篠崎年子君 政府は、この戦争受忍論の立場か ら、原爆被爆者を初め一般戦災者被害に対する国家補償を回避しております。そして原爆被爆者に対しては、国家補償的な配慮などと政府が位置づけている原爆医療法と原爆特別措置法といういわゆる原爆二法が通常の社会保障制度の上乗せ措置として実施されていることは御承知のとおりです。  しかし、私は原爆被爆者を含めた一般戦災犠牲者全般に対し国家補償の立場から何らかの対応が必要ではないかと思います。この一般戦災者原爆被爆者とのバランスをどう考えていられるかについて、提案者の方の御所見をお承りしたいと思います。
  17. 下村泰

    委員以外の議員(下村泰君) ただいまのお話でございますけれども、政府戦争被害者に対する補償というのは、軍人軍属などのような国との間に一定の身分関係のあった者とその遺家族に限定され、原爆被爆者に対しては原爆二法により特別な措置が講じられているにすぎないのは既に申し上げたとおりでございます。すなわち、一般国民に対しては、国との身分関係がないという理由で社会保障的な措置が講じられるにすぎないのであります。  しかし、戦時諸法制による強制的な動員体制からすれば、ほとんどすべての国民国家権力によってその任務につくことを強制されていたというのが実態であります。国との間に一定の身分関係がないという理由国家補償の対象にならないということは、国民感情からしても納得のいかないところなのであります。  我々はこのような立場から、原子爆弾被爆者援護法と並行して昭和四十八年の第七十一回国会以来毎通常国会に戦時災害援護法案を提出しているのであります。今後とも、一般の戦時災害についても国家補償に基づく援護法の成立を求めていくつもりでございます。
  18. 篠崎年子

    篠崎年子君 よくわかりました。  これと関連いたしまして、提案理由の御説明で触れられました、戦争犠牲者に対する西ドイツの事例だけでなく、主要諸国の対応はどのようなものか、この機会に御紹介いただければ幸いでございます。
  19. 小西博行

    小西博行君 今おっしゃいましたように、既に西ドイツでは、一九五〇年に戦争犠牲者援護法によりまして援護の手を一般市民にまで及ぼしているというのが実態であります。  また、お尋ねの西ドイツ以外の主要諸国での対応でございますが、同じ大戦の敗戦国でありますイタリアを初め、フランス、イギリスなどでも戦争犠牲に対して国によります援護がなされております。  まず、イタリアの一般戦争災害についての救済措置でありますが、戦争により傷害を受けた市民や死亡した者には軍人などと同じ戦争傷病者年金支給されておりますほか、財産補償までされているというのが実態であります。次にフランスでは、人的被害に対しては軍人廃疾年金及び戦争犠牲者に関する法典というところで、またあるいは物的な被害には戦争被害に関する一九四六年十月二十八日の法律第四六の二千三百八十九号での補償がそれぞれなされております。またイギリスでは、一九三九年人身傷害法によりまして、一九三九年九月以降の緊急事態の期間にこうむった戦争傷病や死亡に対して年金手当の支給が行われております。  もちろん、これらの国々は原子爆弾被害を受けたことがございません。日本だけが原子爆弾を受けた経験を持っております。このような国々でも原子爆弾による被害がもし起きたといたしますと、当然このような補償の法律がもうできている、そのように私は信じているわけであります。  以上であります。
  20. 篠崎年子

    篠崎年子君 ただいまの御説明によりまして、同じ大戦の敗戦国であるイタリア、西ドイツを初め、イギリスやフランスなどの諸国においても一般戦災者を含めた形での幅広い救済がなされていることが明らかになったわけですが、大臣、お聞きになっていてどのようにお感じになりましたでしょうか。  こうした事実からすれば、少なくともこれらの国には我が国の受忍論のような思想はなく、あまねく援護の手を一般市民にまで及ぼしていると理解できますが、それでもなお大臣は受忍論に固執されるのでしょうか。きょうは、被爆者の皆さん方もたくさんお見えのようでございます。政府としてこうした考えを再考するおつもりはないかどうか、またヨーロッパ諸国の戦争被害法制についてどのような所感をお持ちになりましたでしょうか、この際お答えいただきたいと思います。
  21. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) さきの大戦が日本国民の非常に悲惨ないろいろな意味での精神的、肉体的、そしてある者は命を失い、ある者は負傷をした体のままで現在ただいまでもその苦しい障害を持ちながら生き延びてきているというような現状は、まさにあの戦争の悲惨な結果もたらされたものであるということは私どもの認識の上でも全く一緒であります。  しかしながら、その中でそういった状態に置かれている方々に対しては、社会保障の分野でできるだけのことをしていかなければならない。その最も大きかった問題は原爆による被害者である、私どもはかように思っております。そういう中で、今までも政府としては原爆に対する医療の問題であるとか生活の問題であるとか、そういう意味でいろんな制度を御承知のとおり実施しているわけであります。  ただ、御承知のとおり戦傷病者戦没者遺族援護法は、軍人であるとか軍属であるとか、国と雇用関係にある者について行われているというのは今御指摘のとおりであります。でありますから、私どもといたしましては、やはり原爆というものの置かれている、また受けた方々の今なおその犠牲によって治療を受けている、そういったことについてはできるだけの手当てをしていかなければならないという認識に立って今日まで至っているわけであります。
  22. 篠崎年子

    篠崎年子君 続いて、また提案者の方にお尋ねいたしたいと思います。  ところで、政府国家補償的などと説明してきた現行原爆二法の内容は、生存被爆者に対する健康管理医療給付、それに認定患者に対する医療特別手当等の支給が柱となっております。つまり、原爆によって死没された方々とその遺族に対して国としては弔意すらあらわしていないし、また慰謝もしていないと言わざるを得ません。援護法案の御提案は、このような現行原爆二法の不備を改めようとする意図と理解してよろしいでしょうか、お尋ねをいたします。
  23. 沓脱タケ子

    委員以外の議員(沓脱タケ子君) お答えいたします。  現在の被爆者対策は、被爆者に対して健康管理医療給付を行う原爆医療法と、原子爆弾傷害作用による病気やけがのために特別な出費が必要となるということから、医療特別手当等の手当を支給する原爆特別措置法のいわゆる原爆二法によって行われているということは、先生も御承知のとおりでございます。  昭和五十三年の最高裁判決で、実質的に国家補償的配慮が制度の根幹にあるという指摘があり、これを受けた形で翌年の制度審答申が基本理念の明確化を、現行法の再検討を求めることとなり、原爆被爆者対策の基本理念を明らかにし施策の基本的あり方を検討するために、いわゆる原爆被爆者対策基本問題懇談会を発足させたのであります。しかし、五十五年十二月十一日、その意見報告は、アメリカの原爆投下国際法の違反性や日本政府戦争責任に切り込まないだけではなく、逆に、戦争被害受忍論という許すべからざる考え方を基調として援護法の制定を否定し、被爆者の心を裏切ってしまったのであります。  その結果、現行二法の枠組みは今後とも堅持していくというのが政府の基本的な態度のようでございますが、こうした対応の最大の問題点というのは、御指摘のように、原爆最大被害者であります亡くなった方とその遺族に対して弔意をあらわすこともしていないし、慰謝もしていないと いうところにあります。また、その施策の対応も生存被爆者のみに限られ、被爆者年金もなく、内容的にも極めて不十分な上に所得制限までつけられているのであります。こういった現行制度の不備を見るにつけましても、私どもは国家補償の精神に立ち、被爆者年金の創設と死没者遺族への弔意と慰謝、これが確立された被爆者援護法の制定こそその必要性を痛感しているところでございます。
  24. 篠崎年子

    篠崎年子君 今回の援護法案の提案が、現行被爆二法の不備を改めようとするものであることはよく理解できました。  そこで、この際、関連して政府にお伺いいたしたいと思いますが、原爆による最大被害者である死没者に対しましてどのような施策を考えておられるのかということであります。死没者の全容は、間もなく発表されるであろう原爆死没者実態調査結果により明らかにされるものと思われます。とするならば、ここでまず問題とされるべきことは、被爆者に対し国としてどのような弔意をあらわすのかということであります。  この問題について過去の本委員会でのやりとりを会議録で調べてみますと、原爆措置法案の審議の際、そこにいられる浜本委員長の質問に対しまして、六十一年の今井大臣は、「今回調べましたことによって、何か私どもの弔意をあらわす方法をひとつ皆様とともに考えてみたい」と答弁されております。そして六十三年、藤本大臣は、これは十分考えていかなければならない大きな問題であるという認識は持っているとし、政府・自民党がこの問題についてよりどころとしている原爆被害受忍論についてさえ、放射線による健康被害という特別な事情、特別な犠牲については受忍すべきものとは考えていないとまで答弁されております。また小泉前大臣は、本年六月の本委員会で、「死没者調査がまとまった段階で、どういう形で弔意をあらわすことができるか、それを検討してみたい」と答弁されております。  このことは戸井田大臣も当然御承知でこの立場を引き継いでおられることと思います。とするならば、死没者調査の結果を踏まえて、直ちに被爆者、戦没者の皆様のみたまと御遺族に対し、とりあえず弔意だけでもあらわすことの決断が必要な時期が差し迫っていると思いますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。  また、関係者が心待ちにしている調査結果の発表は一日延ばしとなり、いまだにその結果が出されていませんが、一体いつごろになるのかもあわせて明らかにしていただきたいと思います。
  25. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 先ほど御答弁申し上げましたように、原爆被爆者対策は放射線による健康被害という他の戦争犠牲者にない特別の犠牲に着目して実施しておるわけでありますが、その点につきまして前任者である大臣も、弔意の方法等について御答弁をしていることは私も存じております。そのために、死没者調査の、今いたしておりますけれども、その調査の結果がまとまった時点で一般戦災者との均衡の問題のない範囲でどういう弔意を表することができるのかということは検討申し上げるという趣旨、この趣旨も前任者と同様の考え方であります。  ただ、その調査実態が今どう進んでおるかということについては政府委員からお答えさせていただきます。
  26. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答えいたします。  昭和六十年に行いました原子爆弾被爆者実態調査のうちの生存者調査につきましては、お話ございましたように昭和六十二年六月に結果を取りまとめ、公表いたしたところでございます。残っております死没者調査の集計結果につきましては、去る十一月六日に原子爆弾被爆者実態調査委員会を開催いたしまして、内容の分析、検討をお願いいたしておるところでございます。委員の先生方の方から、この分類や集計の方法につきましていろいろな御意見をいただいておりまして、現在その委員の御意見をもとにさらに作業を行っておるところでございます。なお相当の時間を要するものというぐあいに考えております。できるだけ早く努力いたしまして結果を取りまとめまして、実態調査委員会でさらに審議をしていただきまして、できるだけ早く公表いたしたいというぐあいに考えております。  なお、この死没者調査につきましては、当初に死没者調査を行います目的といたしまして、原爆による被害実態を明らかにし、正確に後世に伝えることを目的として行うものでございまして、この結果をもとに何らかの新しい施策を行うことは予定していないというぐあいに申し上げているところでございます。なお、この新しい施策ということにつきましては、ただいま大臣から御答弁ございましたように、弔意をあらわすということと別に新しい特別な施策を考えているということはありません。ただ、弔意につきましては、大臣からお答えございましたように、その段階で検討してまいりたいというぐあいに考えております。
  27. 篠崎年子

    篠崎年子君 ただいまの御答弁で、弔意をあらわすことのほかには特別な新しい施策を考えていないというふうに聞き取りましたけれども、間違いございませんでしょうか。
  28. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 弔意をあらわすということにつきましては、先生からお話ございましたように、六十一年、六十二年と、この審議の場におきまして大臣御答弁してございますので、その方向に沿って検討してまいりたいというぐあいに考えております。  ただ、死亡者実態調査につきましては、当初申し上げましたように、史実を明らかにするということを目的として行った、この実態調査の結果を踏まえて何か新しい対策、新しい施策を行うということは予定していなかったものであるということを申し添えさせていただいております。
  29. 篠崎年子

    篠崎年子君 死没者調査につきましては、もう戦後既に四十四年、来年は四十五年になろうとしておりますので、時がたてばたつほど非常に調査が困難になっていくのではないだろうかと思います。それに伴いまして、また原爆被爆者の皆さん、また御遺族の皆さん方はそれぞれに年をとってこられまして、もうこれ以上待てないというのが皆さんのお気持ちではないでしょうか。そう考えますときに、やはり一日も早くその死没者調査を終えられまして、そして皆さん方に対する弔意を早くあらわしていただきたいと願うものでございます。  次に、提案者の方にまたお尋ねをいたしたいと思いますが、今のようなことでぜひとも一刻も早く調査結果を発表して、国としてまず弔意だけでもあらわしていただきたいと、こういうふうに考えますのは、被爆者だけでなく地元の関係者もひとしく強く要望しているところでございます。  現行の戦傷病者戦没者遺族援護法など軍人軍属であった方々を対象とした国家補償制度とこの被爆者援護法案との関係についてやはりいろいろ疑問点もあるかと思いますので、明確にしていただくようにお願いをいたします。
  30. 塩出啓典

    委員以外の議員(塩出啓典君) お答えいたします。  現在の戦争被害者に対する補償は、先ほどもお話がありましたように軍人軍属等のように国家との間に一定の身分関係のあったものに限定をされておるわけでございます。現在、被爆者に対しては被害特殊性から原爆二法により特別な措置がとられておりますが、これは社会保障的な措置によるものでございまして、国家補償によるものではないことは先ほど提案者からいろいろお話があったとおりでございます。政府は、いわゆる戦争受忍論に立脚して一般戦争被害者に対する国家補償を一貫して拒否し続けておりますが、このような考えが私たちの立場と相入れないものであることは既に申し上げたとおりであります。  私たちとしては、一般戦争被害者についても国家補償に基づく援護法案の成立を求めていく所存でありますが、まず、被爆後四十四年たった今もなお原爆後遺症に苦しみ続け、病苦、孤独、貧困の三重苦に悩まされ続けている原爆被爆者特殊性にかんがみ、国家補償の精神に基づいて、戦傷病者戦没者遺族援護法に準じて原子爆弾被爆者援護法をまず制定しようとするものでございます。
  31. 篠崎年子

    篠崎年子君 現行の戦傷病者等援護法と本案との関係、よくわかりました。  次にお尋ねいたしたいと思いますが、これら既存の援護法体系においては遺族年金制度の根幹をなしているようですが、被爆者援護法案におきましてはこれが入っていないのですが、どのような理由によるものか、お尋ねをしたいと思います。
  32. 山田健一

    委員以外の議員(山田健一君) 遺族年金がない理由、すなわち遺族年金弔慰金、これを特別給付金とした理由についてでございます。  まず、私たちの基本的な考え方を申し上げますと、先生先ほど来御指摘がございましたように、来年度は被爆を受けて四十五周年を迎える。しかし、今日に至るも国として、お話がありましたように弔意も示していないし慰謝もなされていない。こういう状況の中で、どうしてもそこに国家補償の精神に立った援護法をつくっていかなきゃいけない、こういった理由が存在をするわけでありまして、私たちは当然この遺族年金なりあるいは弔慰金、これは支給をすべきである、こういう基本的な立場は持っております。  しかし同時に、現実的にやはり何とか理解の得られる、あるいはまた常識的な線でひとつ国会でも合意形成が図れるように、あるいはまた援護法の成立に向けてぜひとも本来あるべき援護法にひとつ足がかりをつけていきたい、こういう立場から、今回は当面の措置として戦没者等の妻に対する特別給付金に倣いまして、百二十万、十年償還の無利子国債、こういう特別給付金として措置をしたわけでありまして、将来あるべき姿としては、御指摘のように遺族年金、そしてまた弔慰金、これは双方とも支給されるべきである、こういう立場でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  33. 篠崎年子

    篠崎年子君 ただいまの御答弁で、国会における合意が得られる可能性を優先させたということで、今御説明にありましたように、とりあえずの御提案は百二十万円、十年償還の無利子の国債となっているようでございます。こういうことも含めまして、ぜひ国会の中での合意をいただきますように強くお願いを申し上げたいと思います。  今回の援護法施行に要する経費は二千三百七十億円と言われておりますけれども、現行二法による施策の場合との差額は一体どのくらいになっているのでしょうか、明らかにしていただきたいと思いますし、またあわせまして費用概要をお知らせいただけましたら幸いでございます。
  34. 山田健一

    委員以外の議員(山田健一君) 所要経費の概要現行費用との差についてのお尋ねでございますが、ただいま提案を申し上げております援護法施行に要する経費として、元年度の平年度ベースで二千三百七十二億五千四百三十四万円を見込んでおりますが、本年度の政府被爆者対策予算が一千二百十九億三千六百万円でありますから、一千百五十億円が今度は増加する、こういう差になってくるということであります。  それから、所要経費の概要についてでございますが、主なものを御説明申し上げたいと思いますが、まず医療関係では、認定疾病医療あるいはまた一般疾病医療並びに健康診断、こういったところにかかる費用というのは現行制度と全く同じでありますが、このほか援護法では別途二世、三世に対する健康診断を一層充実する観点から倍額の二億円、また老人医療関係では老人保健法施行により新たに生じることになった県なり市町村、ここら辺の負担分を完全にカバーする額である四十一億円を見込んでおります。さらに、年金、手当その他福祉措置等では、被爆者年金が千六百七十四億、医療手当介護手当について約三十六億円、遺族支給する特別給付金が単年度で約二百億円弱であり、被爆者保護施設等に六十三億円、そしてJRの無賃乗車に四十億円弱を考えております。
  35. 篠崎年子

    篠崎年子君 では次に、原爆被害特殊性についてお尋ねをいたします。  さきに引用させていただきました戦争被害受忍論について、すべての戦争犠牲者がこれを拒否することを前提とした上で原爆被害特殊性を問題とするのがこの被爆者援護法案の御趣旨であろうかと思います。その特殊性には少なくとも二つの側面があるのではないでしょうか。その第一は核兵器による大量殺りくの違法性から生ずる国家責任論であり、第二は被害の量的、質的な内容に伴う特殊性であります。  この二つの視点から、提案者の御見解をもう少し詳しく御説明いただきたいと思います。
  36. 乾晴美

    委員以外の議員乾晴美君) お答えいたします。  おっしゃるとおりだと思います。政府は、いわゆる戦争被害受忍論を盾に、一貫して戦争被害者に対する補償を軍人軍属等のように国との間に一定の身分関係のあった者とその遺家族にのみ限定してきたのでありますが、こうした差別的取り扱いはすべての国民を強制的に動員した戦時諸法制から見ても納得がいかないものであります。すべての戦争犠牲者についてもその援護法の成立を求めるのが我々の基本的立場であることは、さきに申し上げたとおりでございます。  ただ、今回一般戦争犠牲者に先んじて原爆被害者の援護を講じようとするのは、原爆被害者は戦争災害の中でも特別な犠牲であるという特殊性を有するからであります。  その第一は、アメリカの原爆投下国際法で禁止された毒ガス、生物化学兵器以上の非人道的兵器による無差別殺りくであって、国際法違反犯罪行為であるということであります。したがって、たとえサンフランシスコ条約で日本が対米請求権を放棄したものであっても、被害者の立場からすれば請求権を放棄した日本国政府に対して補償を要求する当然の権利があると思うわけであります。  第二には、広島、長崎に投下されました原子爆弾一般爆弾とは異なり、放射能熱線爆風の複合的な効果により大量無差別かつ広範囲にわたり破壊、殺傷するもので、その非人道性はひときわ際立ったものであるということであります。また、たとえ一命を取りとめたといたしましても、この世のものとは思えない生き地獄を身をもって体験した上に、生涯いえることのない後遺症に苦しみ続け、病苦、貧困、孤独の現状にさらされていることは、六十年度の調査の結果にも明らかであります。また、この惨禍で死を免れた人も、被爆直後の急性原爆症に加え、今なお原爆に起因する放射線の作用により白血病、甲状腺がんといったような晩発障害にも悩まされているのが現状であります。  一般戦争被害と比較したときに際立った特殊性を持った被害であることは、基本懇の意見書にも指摘しているとおりであります。また、本人のみならず二世、三世も常に健康障害の不安といわれなき差別にさらされているというのも、この原爆被害の著しい特殊性であると考えております。
  37. 篠崎年子

    篠崎年子君 ただいまのお話のように、被爆するということにつきましては非常に際立った特殊性があるということがはっきりいたしました。  もし、被爆者援護法の原点に原爆投下の違法性があるならば、広島、長崎型の原爆よりもはるかに強力な破壊力を持つ現代核兵器に依存するいわゆる核抑止論の立場にも違法性を感じないわけにはまいりません。また、将来だれもが再び被爆の惨禍を受けないようにするためには、日本が非核三原則を守るとともに、核保有国に対し非核政策への転換を働きかける以外にないと思います。被爆者援護法案はそのような決意と一体のものでなければならないと思うのですが、提案者の皆さん、いかがでしょうか。
  38. 深田肇

    深田肇君 お答えいたします。  被爆者援護法の制定が実は我が国の非核政策と一体のものであるという御指摘は、そのとおりだと思います。私は、核兵器に依存する核抑止論というのがありますが、これには反対の考え方を持っているところであります。将来とも世界のすべての国の人々が再び核による惨禍を受けないよ うにするためには、何より核兵器自体の廃絶が優先されるべきだと考えておるところであります。  そのために、日本は何よりも非核三原則を堅持し、非核政策が世界の潮流となるようにあらゆる外交チャンネルなどを通じて平和外交に徹するべきだと思います。また、被爆者に対して国が償いをするということは、我が国の非核政策を全世界に宣言することになると思います。こうした選択をすることが、政府の行為によって再び戦争を起こさないという決意をいたしました日本国の憲法の精神に全く合致する考えだということを考えておりますことを申し上げておきたいと思います。  以上です。
  39. 篠崎年子

    篠崎年子君 今までの私の質問に対します提案者の皆さん方の御答弁によりましても、被爆者援護法の制定が単に被爆者が人として生きていくのに必要であるばかりでなく、日本国が平和国家であるということのあかしでもあり、また我が国戦争を本当に放棄し、反核国家として国際社会の中で生きていくということを内外に宣言する効果もあるのではないでしょうか。そして、国民の多くもこのことを強く望んでいると私も考えておりますが、国務大臣としての戸井田大臣の御認識はいかがでしょうか、お尋ねをいたします。
  40. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 政府といたしましては、御承知のとおり平和憲法の遵守と国是である非核三原則の堅持を政策の基本に、核兵器の究極的な廃絶と世界平和、恒久平和の確立のための不断の努力を重ねているところであります。また一方、被爆者対策といたしましては、他の犠牲者には見られない放射線による健康障害とか特別の犠牲というものに着目をいたしまして、現行原爆二法により被爆者に対してできる限りの措置を講じているところであります。  いずれにいたしましても、平和問題、いわゆる被爆者対策はいずれも大切な問題で関係があるわけでありますが、特に今日の平和というものは、日本が体験をしたあの悲惨な核戦争の最終的な終末の状況というものが今世界の中に大きな力となって、平和を維持しよう、推進していこうという大きな力になっているということは間違いのない事実だろうと私は思います。
  41. 篠崎年子

    篠崎年子君 最後に、私は被爆者の方々やまた二世の方々に長崎県でございますので日常接していることが多く、戦後四十四年間さまざまな苦しみを経て今日まで生きてこられました皆様の御様子をつとに拝見しているところでございます。来年はちょうど四十五年、その間の生活の苦しみは全身に残っておられます。あるときは無知な人々からいわれのない疎外を受け、またある人は息を潜めて生きていた方々もありました。さらにまた、息子や娘が生きていたら孫を抱くこともできたであろうに、今は年老いて身寄りもなく原爆老人ホームに身を寄せている、そういう方々もいらっしゃいます。  そして、その皆さん方の最大の望み、そして最後の望みは、一瞬にして消え去った我が子、我が娘、我が夫、そういう人々、また、もがき苦しみながら死んでいった人々に対して国が一日も早く弔意をあらわしてほしい、国家補償をしてほしいという願いでございます。皆さん大変年老いて後がない後がないと今悲痛な叫びを上げております。被爆者援護法案が成立できることは最低の皆様の望みではないでしょうか。そして、皆さん方のお気持ちをお酌み取りいただきましてこの法案が成立できますことをお願いを申し上げまして、質問を終わります。
  42. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、提案者の方々に若干の質問を行いたいと思います。  この被爆者援護法案については我が党としても長年取り組んできた課題でもあり、提案者の方々には本当に心から敬意を表します。  原爆被害の悲惨さについては何回も何回も述べられており、今さら改めて述べることもないと思います。ただ、今被爆者という言葉そのものが核兵器廃絶を願う世界の人々にとっては一つの共通語にもなっております。それはひとえに被爆者の方々が苦しみを乗り越えて、そしてまたみずからの傷をさらしていって四十数年間必死に闘い続けた結果ではないか、私にはそのように思えてなりません。それに対して国が一体何をしてきたのか、いつまでも国家補償を認めずにただ現行原爆二法だけで措置したにすぎず、世界で唯一の被爆国である私たちにとっては残念でならない、その一言でもございます。  今、被爆者は病苦そして生活苦を抱えながら高齢化が進んでおります。数年前長崎にありました原爆青年乙女の会というのがございました。この会が名称を変えました。そのとき、年老いた一人の被爆者の婦人の方がおっしゃいました。もう乙女という名前はつけられませんものねと。私は本当にそのとき言いようのないショックを受けました。今この援護法をやらなければ一体どうなってしまうのか。それが私の願いでもあり、ぜひとも援護法を今制定したい、その思いでいっぱいでもございます。  そこで、今回この被爆者援護法を出された提案者の皆さんに数点お尋ねをいたします。  まず第一点目は、本法律案の性格についてであります。本法律案は、国家補償の精神に基づき、被爆者を援護することを目的にしております。この国家補償を原則にした点について、その理由をもう一度明らかにしていただきたい、そう思います。
  43. 山本正和

    委員以外の議員山本正和君) 先生が今被爆者実態に触れて、本当に我々日本国民が共感している点に根拠といいましょうか一番の観点を置かれて御質問でございます。また、事実、私もかつて高等学校の教員をしておりまして、生徒を広島、長崎等に連れてまいります。また、小学校や中学校の子供もそちらへ参ります。そうすると、どの子供もひとしく言うのは、こんなことがあってはならない、だれがこんなことをしたんだ、もしも日本の国が国であるならばこの問題はほうってはいけないと、こういう気持ちを子供たちでも当然感じて涙を流しながら作文等も盛んに書いておる実態がございます。  私はそういう意味からいって、この原爆の惨禍というものに対して日本の国が国としてどう受けとめるか、そこがきちんと定まらない限りこの被爆者問題というのは解決しない、こういうふうに思うのでございます。特に、恐らくこれからもあってはならない人類史上類を見ない残虐行為、この原子爆弾というのは全く生きとし生けるものに対して無差別に襲いかかる大変な惨害でございます。本当にまたその中で被爆者の方々が今日に至るも大変なお苦しみを持っておられる、これは先生御指摘のとおりでございます。  しかしながら、我が国政府がなおかつ今も、戦争という国の存亡をかけての非常事態のもとにおいては国民は我慢しなさいと、こういうようなことを言っておるそのことに対して、私どもはこれはもうどんなことがあってもその主張は聞くわけにはいかないと、こういうことを思うのでございます。何としても国が明確に戦争の責任を国民の前に明らかにする、そして国自身がこの原爆に対する責任を明確にする、戦争に対する責任を明確にする、このことのためにも何としてもこの被爆者援護法国家補償という観点からこれはきちんと法制化されるべきである、こういうふうなことを思って立案をしておるところでございます。
  44. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 全く同感でございます。  また、提案者は趣旨説明の中で、原爆投下が非人道的兵器による無差別の殺傷であり、国際法違反犯罪行為であるというふうに述べられておるんですけれども、この開戦の責任及びその結果としての原爆被爆の責任は一体だれが負うべきかというふうに御認識されているかをお伺いいたします。
  45. 下村泰

    委員以外の議員(下村泰君) 趣旨説明でも申し上げましたとおりでありまして、太平洋戦争を開始して終結することの全責任が我が国政府にあったことは明らかであります。  ただ、私が一番心配するのは、その当時の為政者では今の為政者はないんだという観念、これが 私は一番恐ろしい。その当時日本という国があり、その国の責任者であった方たちの引き起こした戦争の責任は今でも引き継がなきゃいけない、私はそう感じています。  サンフランシスコ条約で対米請求権を放棄した日本国政府は、国際法違反の非人道的な原子爆弾を投下した米国にかわって原爆被爆者の方々に対して国家の責任において補償すべきことは当然でございます。それは、昭和三十八年十二月七日の東京地裁における原爆裁判の判決の中でも、国家は多くの人々を死に導き、傷害を負わせ、不安な生活に追い込んだのである、しかも、原爆被害が甚大なことは到底一般災害の比ではない、被告は、すなわち国でございますが、これにかんがみ十分な救済措置等をとるべきことは多言を要しないであろうと述べられております。  世界で類例のない唯一の被爆国であり、その原爆被爆者に対する国の責任をこの法案は強調しているのであります。  これは発議者を離れまして一言申し上げたいのですが、言いかえれば私も戦争犠牲者の一人です。東南アジアの各地を回ってまいりました。原爆の恐ろしさ、私には想像を絶します。空の上から鳥のふんのように降ってくる通常の破壊爆弾あるいは焼夷弾、これにさらされたときの恐怖、これはもうこの席にいる方には想像つかぬでしょう。中には一人二人この災害に遭った委員がこの中にいるかもわからぬ。これは考えられない。しかも頭上から落ちてくる投下爆弾の音が消えてくる。途中まで音はする、消える。その瞬間自分の周りのどこに落ちるかわからない。この音を聞いているだけで精神状態に異常を来す兵隊が何人おったか。戦地でさえこれだ、戦っているところで。ましてや非戦闘員がこういう恐ろしい目に遭う。その当時の恐怖はいまだに残っているでしょうけれども、しかしだんだんこれが風化される。風化されてしまいには一つの語りぐさだけになってしまう。この現状を私は一番憂えるものであります。  したがいまして、この法案をしっかりしたものにして、こういう方々の救済は当然すべきことだと私は思っております。
  46. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今体験談を聞かせていただきまして、私は戦後世代でございますし、そういった意味ではそういった方々の気持ちを本当に引き継ぎながらやっていく責務があるというふうに私たちとしても思っております。  今お話もありましたとおり、こういう戦争被害救済、これは原爆被害者だけに限らず、そういう一般の方たちも含めた被害救済について国としてどんなふうに対処していくべきなのか、これについて提案者の御認識をお伺いしたいと思います。
  47. 塩出啓典

    委員以外の議員(塩出啓典君) 現在の政府戦争被害者に対する施策は、皆さんもごらんのように軍人軍属などのような国との間に身分関係のあった者及びその遺家族に限定されてきたわけであります。原爆被爆者に対しては、現行原爆二法により措置が講じられておりますが、これは身分関係がないということで社会保障的な意味でなされているにすぎないわけでございます。このことは、国を挙げて戦場も銃後もなく各自の持ち場で戦わされた国民感情からしても納得のいかないところであります。  当時の強制的な動員体制を定めた戦時諸法制から見れば、戦争被害救済軍人軍属等に限定する合理的根拠は全く乏しいのでございます。すなわち、当時の旧国家総動員法や旧防空法、さらには国民義勇隊による動員体制の強化に見られるように、ほとんどすべての国民国家権力によってその任務につくことを強制されており、国との間に事実上何らかの身分関係があったと言わざるを得ないわけであります。  こういう立場から、私たち原子爆弾被爆者援護法と並行して戦時災害援護法案を昭和四十八年の七十一国会以来毎回国会に提出させていただいていることは皆さんも御存じのとおりであります。したがって、私たちとしては今後とも一般の戦災被害援護法についてもその成立を求めていく所存でございます。  ただ、原爆被害一般災害に比べ、一瞬にして幾多の人命を奪い、健康を破壊し、辛くも死を逃れた人も今日まで放射線障害に苦しまされるなど際立った特殊性を有しており、そのために現行法でも原爆二法により一般戦時災害よりも手厚い措置が講じられているのであります。  こうした点から、戦争災害の中でも特に特別な犠牲である原爆被爆者からまず援護措置を講じようとするものでありますが、一般戦時災害についてもなるべく早い機会援護法の成立を期したい、国民の合意は必ず得られるものと私たちは考えておるわけでございます。
  48. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 先ほども少し論議されましたけれども、確認でもう一回。  国家補償による援護法ならば、本来遺族に対して弔意をあらわすとともに、生活保障の手だてを講ずるというのが普通なんですけれども、今回の提案でなぜ特別給付金という形にしたのか、また将来どんなふうに対応しようとしているのかを教えてください。
  49. 塩出啓典

    委員以外の議員(塩出啓典君) 先ほども提案者から答弁したとおりでございますが、遺族年金弔慰金特別給付金とした理由、また将来的にどうなのかという点についてお答えをしたいと思います。  原爆投下からはや四十四年が過ぎておりますが、御承知のように、政府はこれまで遣族へ弔意をあらわし、何らかの遺族補償をしてほしいという原爆犠牲者遺族の願いを無視し続けてきたことは皆さんも御存じのとおりであります。原爆で亡くなった人々に心から弔意をあらわし、一家の支柱を失い途方に暮れる遣族にせめてもの償いとして遺族年金支給すべきであるというのが私たちの基本的な考え方であります。  ただ、今回の援護法では御案内のように百二十万円、十年償還の無利子国債の特別給付金としておりますが、これは戦没者等の妻に対する特別給付金に倣ったものでございます。これは常識的な線で国会での合意の形成を容易にし、一刻も早く本来の援護法への足がかりをつくりたいという、こういうことからとった措置でございまして、したがって、将来的には遺族年金弔慰金の双方が支給されるのが本来の姿であり、その方向に努力してまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  50. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それから、被爆二世、三世、いわば私と同世代の方たちですけれども、そういう対策についてお伺いいたします。  被爆による放射能の影響で、二世、三世の健康にまで及ぶという不安から、健康診断を希望する被爆者二世が多いということなんですけれども、本法律案ではこの点どんな対策を講じられているのか、御答弁をお願いいたします。
  51. 乾晴美

    委員以外の議員乾晴美君) お答えいたします。  原子爆弾被爆が他の戦争被害と際立って異なっておるその特色の一つが、やはり放射線による被害が子や孫に及ぶのではないかという、いわゆる健康不安にあることはだれも否定できない重大な事実であるというふうに思います。  二世に対する健康診断は、昭和五十四年以来、研究的医療ということで希望者に年一回一般検査精密検査を行っているところでありますけれども、我々の援護法では子や孫についての措置としては健康診断を行うことを法律の中にも盛り込んで、そしてさらに、原子爆弾傷害作用に起因する疾病として政令で定めるものにかかっている者については、医療手当介護手当支給を行うものであります。  診断の結果、直ちに認定疾病の者が出るとは現時点ではもう考えにくいということがあるかもしれませんけれども、放射能被害にはいまだに未解決というようなところが多く、やはり将来に備えて今から法制度を整備しておくというのが我々の基本的な考え方であります。
  52. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 最後に、今少しお話がありまし た、まだいわゆる放射能障害ということについては解明できていない部分が随分あると思います。  私も広島の日赤病院であるお医者さんから言われたのは、私はもう何千回何万回同じことを被爆者の方たちに言っている、被爆者の方たちがみんな聞く、いつになったらよくなるのか、そのたびに答えようがない。そんなことをおっしゃっていたのがいまだに頭に残っております。  そういった意味でも、医学的な見地からぜひ、きょうは高桑先生もいらっしゃいますので、その辺のいわゆる原爆被害特殊性について教えていただければと思います。
  53. 高桑栄松

    高桑栄松君 医学的見地ということでありますので、若干レクチャーめくかもしれませんが、我慢をして聞いていただきたいと思います。  原爆被害というのもこれはやっぱり放射線障害でございますから、放射線障害は体に対する影響と遺伝的な影響と二つあります。  体に対する方は急性の身体症状、早期効果というのがございます。これはまあおきまして、問題になっているのはやはり晩発障害、おくれて何年もたってから出てくるもの、これが大変問題になっているわけでありまして、例を挙げますと悪性腫瘍、がんですね。それから白内障、それから寿命短縮というのがあるんですね、抵抗力が弱ってくるということかと思います。それから発育成長障害、こういった大変厳しいものがいろいろと考えられているわけです。悪性腫瘍では白血病が非常に多く出ておるようであります。それから甲状腺がん、乳がん、肺がん、こういったある特殊な組織の感受性がありまして、その感受性の高い組織のところにがんができてくるということになりますが、潜伏期は大まかに言いますと十年から三十年ぐらい、あるいは三十年以上も続くということが物の本には書いてございます。  それで、次に遺伝的な影響ですが、これは遺伝子に突然変異を起こすというものと、染色体に突然変異が起きるということがありまして、いずれも先天性の奇形が起きてくるということがあるわけであります。  今の組織の放射線感受性でありますけれども、これは大変面倒になりますから簡単に申し上げますと、例えば細胞分裂がどんどん進んでいるような組織に対しては感受性が高い。それから、成長過程でどんどん分裂しておりますが、その期間が長いほど危険性が大きい。その長いものの中に大脳の発育過程があるわけであります。したがいまして、組織感受性の高いものというとリンパ球、血液、骨髄等ですね、それが白血病にかかわっていくわけであります。それからもう一つは、今申し上げましたが、脳だとかそれから生殖細胞、生殖器官、こういうものに対する影響が大きいんです。  そこで、いよいよレクチャーの大事なところでございますけれども、これはラッセルの実験というのがございまして、これは数百万匹のマウスを使って十余年の歳月を投じた大変な実験でございますが、この実験の結果を申し上げますと、どんな微量の放射線でも性細胞が被曝しますと子孫に突然変異がふえてくる、これは非常に重要な事実でございます。そして人間に危険を与えていく、これは国際的な合意に達した結論であります。  しかし、ここでまたもう一つ大事なことがございまして、雄のマウスの今の特別な性細胞、つまり精子をつくる細胞でありますけれども、これに放射線で何か刻印を押す、つまり障害を起こしますと、これは生涯残っていきまして、もうずっとその生物が子々孫々続く限り遺伝をしてまいります。これは非常に重要なことかと思います。もう一つ重要なことは、雌のマウスでございまして、これは卵胞細胞、つまり卵子をつくる細胞でありますが、これに小さな傷ができたといたしますと、これは完全治癒する能力がある、つまり修復能力がある。雌の方は修復能力がある、雄の方はないということでありまして、雌ではしたがいまして微量被曝の場合には遺伝的な影響は蓄積していかない、雄はどんな微量でも続いていくということであります。ここでやっぱり、種族保存ということでしょうけれども、今や女性は強いということでないかと思うわけです。  そこで、もう一つ重要なことは、今、放射線ということで両方を一緒に申し上げましたけれども、放射線取扱者、医療従事者等はそのことを十分に承知しておりまして、それでそのための防護ということに完全を期しているわけでございます。これは特定で少数であります。しかし、原爆となりますと不特定多数でありまして、しかも防護がかなわないということは、これは原爆は非常に大きな問題であろうかと思います。  それで、人間に対して起こってくるいろんな遺伝的な問題というのは、なかなか現場の調査では出てまいっておりませんが、動物実験の結果というものはやはり起こり得る可能性をちゃんと示しておりますから、私たちはこれを尊重しなければならないというふうにされております。  以上、少し難しかったかもしれませんが、お許しいただきたいと思います。
  54. 林紀子

    林紀子君 来年は原爆が投下されて四十五年目を迎えます。私は広島に住み、被爆者の心を国会に反映することを訴えてまいりましたが、被爆者の平均年齢が六十歳を超え、被爆者援護法の制定が急務になっている今、被爆者団体の期待にこたえて野党六会派が共同して本法案が提出されたことは大きな喜びです。発議者の皆様、本当に御苦労さまでございました。日本共産党も早期成立を目指して奮闘することをまず表明いたします。  ことし日本原水爆被害者団体協議会が出版した「あの日の証言」には、親、兄弟、親戚のすさまじい最期をみとり、十八歳で一人残されて病気と闘いながら痛苦の四十年を生きてきた女性、倒れて燃える家に助けを求める二人の姉を残し逃げたことを今も悔やんでいる当時九歳の男性のつらい体験など、被爆者の苦難がつづられ、胸が詰まる思いでいっぱいです。  そこで、第一にお尋ねしたいと思います。  本法案の目的には、国家補償の精神に基づき被爆者を援護することが高らかにうたわれております。これまで政府は、原爆被爆者対策基本問題懇談会の報告を盾に、国家補償による被爆者援護法の制定を拒んできました。しかし、一九八五年の朝日新聞の世論調査では、八七%の国民被爆者援護法の制定に賛成し、本院では同僚議員の皆さん三分の二以上が制定に賛同の署名をするなど、本法案は今日多くの国民が合意できるものです。  これらの悲惨な犠牲は、政府が行った侵略戦争の結果、国際法違反原爆投下によって生じたことは明らかです。また、サンフランシスコ条約によって日本政府がアメリカに対する請求権を一切放棄したことからいっても、国が被爆者に賠償する責任を負うべきであることは明白ではないでしょうか。御見解をお伺いいたします。
  55. 山本正和

    委員以外の議員山本正和君) 林先生も広島でございますし、また篠崎先生は長崎、それで本常任委員会の委員長浜本先生が広島でございまして、また浜本先生は国会に席を占められて以来この問題に取り組まれてこられたことも私どもよく承知をしておるところでございます。本当に現地におらなければわからない被爆者の苦しみ、本当にこれを何とかしなきゃいけないというのが本法案提出理由でございますが、ただいま先生御指摘の国の責任の問題が今までのこの種の問題についての国会論議でもなかなか明らかになってこなかった、そこに最大の原因があろうかと私は思うのでございます。  我が国政府がサンフランシスコ条約で対米請求権を放棄したそのことと、我が国政府戦争をとめ得る立場にあった、そしてまた戦争を開始する引き金を決めたのも我が国政府である。しかもそれによって、恐らく人類史上まれに見る惨禍を広島、長崎の地にもたらした。この三つの関係を何かごまかしてしまうような論理がまかり通るとしたら、これくらいけしからぬことはない、こう思うのでございます。  しかるに、我が国政府はこういう責任を放棄して、被爆四十四年目の今日に至るも国家補償という言葉を使わない、そして社会保障的な形でもってこの問題に対処しようとしていることはまこと に遺憾だと言わざるを得ないのでございます。そしてまた、この政府の隠れみのとなっているのが原爆被爆者対策基本問題懇談会の報告であります。この中でもいろんな議論があったかに聞いておるわけでありますけれども、最終的には他の戦争被害者に対する対策に比し著しい不均衡が生ずるようであってはその対策は容易に国民的合意を得がたいなどと称して、この問題に対する責任を回避しているのでございます。こういうことはまさにすべての日本国民が、また世界のすべての人々が広島、長崎の惨禍を見たときには断じて許容し得ない言葉であろうというふうに思うのでございます。  また、まさに今日被爆者援護法制定が今や国民的合意となっている、このことも明白でございます。したがって、二度とこういうことは起こしてはならない、そういうあかしとして国家補償の精神に基づく本法の制定が急務であると、こういうふうに考えておるところでございます。
  56. 林紀子

    林紀子君 第二にお尋ねしたいのは、被爆者年金の創設についてです。現行原爆二法による被爆者の援護は極めて不十分です。そのために、昭和六十年度の厚生省の調査によりましても、被爆者であることで苦労や心配があると答えた人は九割にも上っており、いかに被爆者が厳しい状況に置かれているかが示されています。原爆で家族も家も蓄えも失い、就職、結婚をめぐっての差別を受け、がんなどの発病の不安にさいなまれ、子供や孫への影響も心配しています。本法案は、こういう深刻な実情に基づいて被爆者年金支給し、健康障害だけにとどまらない深刻な被害を償おうとするもので、この年金創設の意義は極めて大きいものだと考えますが、発議者の御見解をお伺いしたいと思います。
  57. 塩出啓典

    委員以外の議員(塩出啓典君) ただいま林先生からお話がありましたように、被爆者の身体的あるいは精神的な苦痛、不安、社会生活上の困難などは大変私たちの想像を絶するものがあり、そうして現在の原爆二法による対策はそういうものを全面的に償うものとなっていない、そういう点はまことに残念に思うわけでございます。  そういう点から、本法案に基づく被爆者年金は、被爆者なるがゆえに置かれている深刻な状態、一つには原子爆弾傷害作用による後遺症のため稼得能力や生活能力が劣っている、二番目には原爆に起因する病苦から解放されないばかりか傷病に伴う出費を要するものが多い、三番目にはいつ発病するかもしれないというような生活不安、さらには被爆二世、三世に対する遺伝的な影響の不安、そういうものを常に持たざるを得ない状況にあることを考え、これに対する補償をしようとするものであります。  被爆者年金は、御案内のように年額三十四万八百円から百六十七万円の範囲内において政令で定める額が支給されます。なお、医療給付を受けるべく厚生大臣の認定を受けた被爆者に対しては、七十九万一千円から七百六万六千八百円の範囲内で政令で定めることとしております。また、被爆者年金支給には所得制限は設けず、すべての被爆者支給することとしておるわけでございます。
  58. 林紀子

    林紀子君 最後に、特別給付金そして核兵器の緊急廃絶についてお伺いしたいと思います。  原爆最大犠牲者である死没者は広島で十四万人、長崎で七万人と言われていますが、これらの人々に対しては今まで何の補償も行われてきませんでした。政府被爆者への健康診断とごく少数の重症者への国費による治療を始めたのは一九五七年、被爆十二年目のことでした。それまで何の手も差し伸べられずに死んでいった被爆者は多数に上ります。死没者への償いは余りにおそ過ぎました。無念のうちに死んでいった人々の命を取り返すすべはもはやありませんが、この給付金は、遺族の方々に弔意を示し死没者への償いを行うとともに二度と原爆を許さないという誓いのあかしとしても今こそ国会が実現すべき課題だと考えておりますが、いかがでしょうか。  また、これまで政府は、通常兵器がなくなるまでは核兵器もなくせないという究極廃絶論を唱えてきました。海部総理も同じ立場を改めて表明しています。しかし、世界で唯一の被爆国政府として今政府がしなければならないことは、人類の中心課題として核戦争阻止、核兵器の緊急廃絶を世界に提起することだと思いますが、あわせて発議者の御見解を伺いたいと思います。
  59. 沓脱タケ子

    委員以外の議員(沓脱タケ子君) お答えいたしましょう。  現行原爆二法の最大の問題点というのは、最大被害者であります死没者とその遺族に対して何の補償もしていない、そればかりか弔意すらあらわしていないところにあります。これに対して本法案は、死没者遺族の方々に弔意を示すとともに遺族に対して国家補償によって百二十万円の特別給付金を十年償還の国債で支給することにいたしております。なお、被爆四十五周年を目前にして援護法制定が急務であるとの観点から本法案では特別給付金といたしましたが、将来のあるべき姿としては当然遺族年金弔慰金の双方が支給されるべきであると考えておるのでございます。  また、原爆の生き証人であります被爆者が生きていてよかったと本当に言えるのは、この世の中から核兵器がなくなるときだと思うのであります。被爆国国民、とりわけ被爆者の悲願を代弁して、人類の中心課題として核兵器を緊急廃絶し核戦争を阻止することを世界に提起することこそが日本政府の責務であると考えておるところでございます。
  60. 新坂一雄

    ○新坂一雄君 先ほど来、いろいろと広島、長崎の関係者ということで御熱心に御討論いただいておりますけれども、私も中学校、高等学校は広島で学んだ関係でやはりクラスメートの中にも多数被爆者がおりまして、また先生にも当時広島文理大学で被爆されて三十年過ぎにお亡くなりになったというような方、恩師でもありますけれどもおります。そういうことを聞くにつけて、今奈良に住んでおりますけれども、非常に胸が痛むことを覚えまして、やはり戦後随分たっておりますけれども、平和論というのはいろいろと聞かれますけれども、やはり原爆被爆者への思いあるいは原爆被爆者の思い、そういうことが平和への誓いの原点になるんじゃないかなということを強く思っております。  先ほどの質疑にもありましたが、被爆者弔意すらあらわしていないということで御質問があったのに、何か厚生省関係の方は弔意に対して検討したいというようなことを御答弁いただいておるんですが、それは弔意をあらわすという意味なのか、弔意をあらわすかどうか検討してみたいという意味なのか、その辺が大変答弁があいまいでございまして、日本が世界第二位の経済大国になったということでこれから外国に経済援助をどうやってしていったらいいかということを検討する段階のレベルに達しているにもかかわらず、弔意すら検討したいというレベルは相当これはレベルが違うんじゃないかという思いを強くいたしておる次第でございます。  それで、今何が日本人として生きていてよかったというようなことがあるかということは、やっぱり社会生活、いろいろと経済的な面で恵まれない方も多いのでございますけれども、やはり健康で社会生活できるということが一番の幸せではないか。それが原点じゃないかと私思っております。そういう中でも、まだ被爆者の方の中で寝たきりであって、また家族の方が毎日二十四時間いっときも離れずに看護せざるを得ない、こういう方々の生活というのは一番国を挙げて援助していかなきゃいかぬということだろうと思います。  そういう立場に立ちまして若干質問させていただきたいんですが、原爆投下時点でお母さんの中に赤ちゃんがいまして、そういう胎内被爆者、この方々の中で小頭症といいますか、頭の小さい方が寝たきりで苦しんでおられるということを聞くのでございますが、一体どのくらいの方々がそういう状態であるのか、あるいは問題点はどこにあるか、こういうところをちょっと勉強させていただきたいと思っております。
  61. 高桑栄松

    高桑栄松君 原爆小頭症実態でございますけれども、手当の支給を受けておるお方は支給開始の昭和五十六年では二十三人でございましたけれども、今年度予算では二十五と計上されておりますが、昨日問い合わせてみましたら現在は二十六人支給されているということであります。  原爆小頭症については若干また医学的な説明をさせていただかなければならぬと思いますが、これは原爆の放射線によって発現したことが明らかな小頭症ということが原爆小頭症であるというわけでありまして、今もお話ございましたが、胎生の初期に放射線を受けて引き起こされたものであって、したがって小頭症だけではなくて、それには造血器や消化器や泌尿器等々の内臓のいろんな器官が正常発育を阻害されておりまして、疾病発現の頻度が高い、病気にかかりやすいというような状況であります。  小頭症というのは、読んで字のとおりでございまして、頭の大きさが異常に小さい。診断は、例えば十歳になっても頭の回りが四十八センチ以下というときに診断をするということでありまして、したがいまして脳の発育が抑えられておりますから、知能のおくれがある、運動障害、けいれんなどを伴っておるということであります。  原因でありますけれども、放射線被害だけではなくて、一般には妊娠中に感染をした場合、感染症、それから遣伝性の疾患、染色体異常、分娩異常などでも起こっております。特に遺伝性の疾患ではどれぐらいかというと、十万に対して二十ということであります。  ところが、広島、長崎の実態調査のデータがございますが、線量が多いほど障害が大きいわけで、線量をおおよそ二十ラドということで区切ってみますと、それ以上で被爆をしている場合に、妊娠十七週までの子供、生まれた子供は二五ないし五〇%という極めて高率の発生率であります。妊娠十八週以後になりますと、データではいろいろ書いてありますけれども、大体まとめると一〇ないし二〇%、したがいまして十八週以後でもやはり小頭症が起きているということが言われております。  今申し上げましたが、放射線量によってもいろんな障害が起こるわけでありますが、妊娠の時期による特異性というか感受性がございまして、妊娠の受精して二週間、着床二週間ぐらいですね、着床前期といいます。その次が主要器官形成期、体のいろんな器官がだんだん胎内でできていく。その後が発育期。主要器官形成期が三ないし十週間ということであります。それから発育期は十一週以後から出産まで。それで、大ざっぱに言いますと、着床前期で放射線を受けても被害が非常にわずかである、障害がわずかである。ところが、主要器官形成期が非常に多いんです。その間に受けますといろんな器官がやられてしまうわけでありますが、三ないし十週間と申し上げましたが、脳と生殖器官は成熟期間が長いのでその間危険性がまた加わっているということでありまして、人の場合、妊娠五ないし六カ月で大脳が形成される。したがいまして、十七週ぐらいから前が一番危ないということになっております。そして、大脳細胞は再生いたしませんので、生涯これは影響が残っていくということになっております。  そこで、問題点でございますけれども、本来なら立派な人間に成長し、そして社会的にも有用な人生を送ることができるはずであった方が、遺伝でも個人的な責任でもなくて、ただ原爆ということで健康も人間性もまともな生活も奪われてしまっている。そして、自分でそのことを訴えるような、そういう行動さえできないような状態に置かれている。ここに原爆が悪魔の兵器と言われる本質が端的にあらわれているということでありましょう。援護法を制定する、これを必要とする一つの根拠がここにもあると思うのであります。  以上であります。
  62. 新坂一雄

    ○新坂一雄君 今お話を伺いますと、やはり人間として生まれてきて一番日の当たらない方々でございまして、国家としてこれは最大限の手当を差し上げなくちゃいかぬというふうに思っております。  一体、原爆小頭症の方々の年金の位置づけ、これはどういうふうになっているかということをお聞きして、最後の質問にしたいと思います。
  63. 山田健一

    委員以外の議員(山田健一君) 先ほど来、被爆者の悲惨な状況についていろいろ御指摘をいただいております。私も実は発議者の一人として今回名前を連ねさしていただいておりますが、広島、長崎に次いで山口県は被爆者が多いということもありますが、同時に私の両親も実は被爆者でございまして、その悲惨さを身をもって体験をいたしております。  さらにまた、今お話しになっております小頭症の患者の方につきましても、実は地元で小頭症患者を抱えて大変苦労をなさっておられる家庭を目の当たりにしてまいりました。そういった経験を踏まえて御答弁をさしていただきたいというふうに思います。  被爆者年金の要するに上限と下限、これは法律で定められるわけでありますが、政令で定められることになっておる障害の程度と年金の額は戦傷病者等援護法に準拠して決定する方向で考えてまいります。そこで問題になるのは、どのような状態でどの程度の額の年金支給していくのか、言ってみれば政令の中身が実は問題になるわけでございます。ただ、この政令の制定、改廃、こういったものはこの法律でもって制定をされる原子爆弾被爆者等援護審議会の意見を聞いて行われるわけでありますが、一応提案者としては次のような方向で考えております。  現行小頭症手当の受給者は、先ほど高桑先生の方から御説明がありましたように、最重度の原子爆弾被爆者であり、法律が予定をしておる最高ランクの年金額であって七百六万六千八百円、月額にして五十八万八千九百円、これを支給することにいたしております。これは、今申し上げましたように、戦傷病者等援護法の特別項症、これは心身障害のため、身辺の日常生活が全く自分でできない、常時複雑なる介護を必要とするものという規定になっているわけですが、その特別項症に若干の調整を加えたもの、その額にいたしておるわけであります。  なお、小頭症の手当の受給者は、現在は医療特別手当、小頭症手当が併給をされております。百八十六万四千八百円、月額にして十五万五千四百円を受給されておるわけでありますので、その点からいいますと受給額は今度は三・八倍になる、また別に医療手当、これも併給できるわけでありますから、九十六万円、月額八万円を加えるとその額は四・三倍になる、こういうことになります。
  64. 西川潔

    ○西川潔君 私は昭和二十一年七月二日生まれでございまして、現在四十三歳になります。したがって戦争を知らない人間の一人でございますが、ことし九月、広島視察のときに身をもって皆さん方の苦しみを本当に思い知らされました。今ここに提出され、まさに審議されている被爆者援護法を一刻も早く成立させたいと思っております。  今までお話をお伺いしておりまして、本当に普通の人間が普通に判断すれば自然に成立するような法律が四十四年もたっていまだにこういう状態にあるということは、お話をお伺いしておりまして、何かこう国を愛するような、信じるような自分の気持ちに疑問を感じるようにきょうは思いました。  改めて本日ここに至るまで皆さん方関係者の方々、四十四年間待ち続けてこられた被爆者の皆さんの御努力に報いるためにも、今度私たちが本当に努力しなければいけないと強く感じております。  そこで、皆さん方に本日審議に至りますまでの感想、決意をもう一度改めてお伺いしたいと思います。
  65. 山本正和

    委員以外の議員山本正和君) 西川先生はまさに庶民政治家として、本当に広範な国民の皆さんから敬愛されている政治家だと私もかねがね思っているところでございます。その先生から本当に国民の声という形で御発言ございました。  確かに、先生御指摘のように、戦後四十四年間と一口に申しますけれども、大変長い厳しい月日だったというふうに思うのでございます。そして、原爆の持つ悲惨さ、そのすさまじい惨状の記憶、こういうものがもたらした数知れぬ多くの人々の精神的苦痛、また時とともに襲い来る病との闘い、また本当に根深く底知れぬ原爆症状に対する偏見、差別との闘い、大変なお苦しみがあったんだろうと私ども思うのでございます。  しかし、今ここで国会議員の、参議院においては特に三分の二という大変な数の同僚議員の御賛同が得られているという今日の状況に至りました。その御賛同の中で提案ができているということにつきまして、私も感無量でございます。一刻の猶予も許されぬ現実でございますので、何とか全国会議員の賛同を得まして早期に成立させていただけるよう努力してまいりたいと考えておるところでございます。
  66. 西川潔

    ○西川潔君 次に、私は援護法の究極の目標はやはり核兵器、核戦争の否定にあると理解しております。そのためには広島、長崎での苦しみを後世に我々が語り継ぎ、伝えることによってその目標を達成することが大切であると信じております。  そうした点についてどのように皆さん方がお考えになっておられるか、改めてお伺いします。
  67. 高桑栄松

    高桑栄松君 日本国憲法は、その前文で政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意しております。日本国憲法は、戦争の反省から生まれたものであります。この援護法が求めている精神というのは、まさにあの戦争に対する国の償いでありまして、そして核兵器否定の理念の確立であります。  ことしの八月九日、長崎の被爆者代表の吉山秀子さんは、平和の誓いを次のように述べておられます。   私たちは再び核兵器と核戦争犠牲になりたくはありません。地球上のだれであろうと被爆者になることに賛成できません。長崎を最後の被爆地にということは、この春制定された長崎市民平和憲章に盛り込まれた長崎市民の決意です。日本政府は、ためらうことなく全世界に向かって核兵器を拒否する姿勢を示してください。そして、その決意のあかしとして被爆者援護法の制定を今すぐ実現してください。私たち高齢化し病弱になりました。しかし、私たちはくじけません。あの日のことをしっかりと次の世代へ語り継ぐとともに、核兵器の廃絶を願う世界じゅうの人たちと手を取り合って、本当に再び被爆者をつくらない日を築くために生き抜くことをお約束し、私たちの平和への誓いといたします。 このように述べられております。  本当にそのとおりだと思います。被爆者の方々は高齢化しておられますし、そして毎年多くの方が亡くなっておられます。また、思い出したくない、語りたくないと言われる方も多いということも事実でありますけれども、平和は私たちの手で守らなければなりません。先ほど木庭委員の質問に下村議員が答えておられましたが、この悲惨な思い出が風化することを恐れるということを言っておられました。そのためにも、あの日のことを次の世代に語り継ぐ、こういう必要があると思います。  私たちは、政府に対してもそのための努力をさまざまな方法で求めていくつもりでございます。
  68. 西川潔

    ○西川潔君 私自身も諸先輩に語り継がれた一人でございまして、こういうお話をお伺いしまして本当に一生懸命真心を持ってやらなければいけないなと思っております。  最後に、参議院においては賛同者だけで過半数を超え、その可決は順調にいけば恐らく間違いないと本当に信じておりますが、衆議院で否決されたり廃案になるということもまた一年生議員として本当に心配をするんですが、そういうことになった場合は、今後はどのように対応されるのでしょうか。最後にこれをどうしてもお伺いしたいと思います。
  69. 山本正和

    委員以外の議員山本正和君) 参議院では、与党の立場ということがございましょうが、与党の先生方もほとんどは個人的には何とかしなきゃいけないというお気持ちでいっぱいだというふうに私は思っておるのでございます。したがいまして、参議院で可決されまして衆議院に送られたときには、参議院におけるこの審議の状況を十分に御説明を申し上げ、そして何とか御納得いただけるような形での取り組みに懸命に努めたいと思っておるところでございます。  衆議院議長の田村元さんは、私と同じ三重県でございますが、ちょうど長崎の原爆のときに現地におりまして、被爆者の一人でございます。また社会党の議員会長をしております角屋堅次郎さんも、これも長崎で終戦を迎えて数時間の違いで被爆をしなかったという方でございます。衆議院にもたくさんそういう原爆の惨禍を身近かに感じておられる方がたくさん多いと、そのことを確信いたしまして何とか懸命に衆議院の皆様に対しても働きかけをしたいと思っておるところでございます。  以上でございます。
  70. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございました。
  71. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時九分休憩      ─────・─────    午後一時十六分開会
  72. 浜本万三

    委員長浜本万三君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  本日、林紀子君、新坂一雄君及び篠崎年子君が委員辞任され、その補欠として沓脱タケ子君、乾晴美君及び日下部禧代子君がそれぞれ選任されました。     ─────────────
  73. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 国民年金法等の一部を改正する法律案及び被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案を便宜一括して議題といたします。  両案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  74. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは、まず最初に申し上げたいことは給付改善についてでございます。  先日、衆議院財政計算に基づく年金額改定を四月にさかのぼって実施するとの修正が行われました。年金給付改善は、生活の糧を年金に頼っている年金受給者二千五百万人のためにも一刻も早く実現すべきであり、私どもは従前から国民の生活に直結する年金額改善を抜本改正と切り離して早期に実現するべきだと主張してまいりました。しかしながら、給付改善は六十五歳支給開始や保険料引き上げ問題と切り離して考えることができないという政府の姿勢のために、給付改善は今日まで延び延びとされてきたことは大変残念に思うところでございます。  今回の改正法案は、一九九五年の年金制度一元化に向けての地ならしとして、また八五年改正の総仕上げとして、五年ごとの財政計算時期に合わせての制度改正ということのようですけれども、これまでの年金の改革は、制度の分立と拡充という方向から制度の縮小という方向に向かい、しかもその実態は統合という名の制度間の財政調整であり、縮小化は国庫負担の大幅な削減にほかなりません。このような国民生活にかかわる重要な法案は時間をかけてじっくりと審議すべきであろうと思っておるところでございます。  さて、衆議院で六十五歳条項を廃止するという修正がなされましたけれども、これだけでは単なる問題の先送りにすぎず、問題の本質的な解決にもなっておりません。また、財政調整法案についても将来の一元化の姿を方向づける重要な法案でありまして、こうした制度改革を責任政党の立場として拙速の審議で片づけるということは無責任と言わざるを得ません。一方では、給付改善を待 ち望む年金受給者の我慢も限度にきているわけであります。この際、保険料引き上げ等を人質にして年金給付改善をするのではなくて、冒頭申し上げましたとおり、一刻でも早く年金給付改善を実現すべきであるということを再度申し上げたいと思います。  そして、給付改善財政調整などの制度改正をどうしても一緒に審議しなければならないというその理由はどこにあるのか、それをまずお伺いさせていただきます。
  75. 水田努

    政府委員(水田努君) まず年金法について申し上げますと、厚生年金を例にとりますと、再計算期ごとに前回の再計算以降の生活水準や賃金の上昇に合わせた給付改善を行うとともに、その後における受給者の増大であるとか平均寿命の伸びによる支給期間の伸びに対応した保険料額の引き上げをさせていただく、こういうことに相なっているわけでございます。  仮に、今回給付改善のみを行って保険料引き上げを見送りますと、厚生年金平成五年度から赤字に転落する、こういう事態に立ち至るわけでございますので、制度の長期安定を期すために保険料引き上げをあわせて行うという措置をお願いいたしているところでございます。  次に、制度間の調整は、御案内のとおり政府の方針として一元化平成七年に完成させるという方針をとっているところでございますが、既に公的年金の一角において支払いの遅延あるいは支払い不能という事態が平成二年度から生ずる、こういう深刻な事態に立ち至っていることに配慮いたしまして、年金審議会におきましては、厚生年金なり国民年金に対する国民の信頼を得るためには、やはり平成七年に予定されている公的年金一元化と矛盾しない形において、顕著に生じておる負担の不均衡の面については早急に是正を図るべきである、こういう御答申をいただき、それに基づいて今回制度調整をやらさせていただいておるということでございます。  いずれにいたしましても、厚生年金は成熟度が低い、いわゆる七人で一人の受給者を支えておるのに対しまして、鉄道共済の方は被保険者一人でもって受給者一・六人を支えるという異常な事態になっているわけでございますので、この負担のアンバラの是正を緊急に私どもは制度間の一元化という視点で行う必要があるし、そのためには、いずれにいたしましても厚生年金財政の安定の基盤も確立しておかなければ他制度に対する支援ということも円滑に行えない。こういう観点から、年金改正制度調整をぜひとも同時に御審議を願い成立をさせていただきたい、このように願っておる次第でございます。
  76. 糸久八重子

    糸久八重子君 給付改善は早く行って、財政調整とか制度改正はじっくりと時間をかけて審議することが必要だと私は申し上げたのです。  世間では、年金制度を論ずる声は非常に多いわけですが、その理解の内容や頭に描く姿は必ずしも同じではありません。健康保険の場合ですと、お医者さんとか薬とか人命の価値などさまざまな要素が入りますが、年金は至極簡単で、要するにお金の振りかえなわけであります。時間をかけて十分に討議すれば相互の理解も方策の歩み寄りもできる、そう思うわけでございます。拙速に過ぎた消費税はいい例ですし、今回の制度改革の中身もたくさんの問題があります。以下、それらにつきましてお伺いをしてまいりたいと思います。  今申しました四月に導入された消費税は、高齢社会への対応をうたい文句にしていたにもかかわらず、何らその使途が明らかにされておりません。そればかりか、追い打ちをかけるように厚生年金の六十五歳支給開始とか保険料の大幅な引き上げ提案するという、その強引な政治的手法が国民の反感を呼んで今回の参議院選挙の結果となったことは明白でございます。  先ほども申しましたが、我が国年金制度は政治状況に強く影響されてきたと言えます。例えば、保革伯仲状況の一九七〇年代では、給付の大幅な改善保険料引き上げ幅の圧縮が行われました。ところが、自民党の勢力が回復し始めた八五年の改正では、給付の抑制と負担の拡大がなされたわけであります。公的年金制度がこのようにときどきの政治状況に左右され続けるならば、これに対する国民の信頼感の低下を招くでありましょうし、現に公的年金制度に対する国民の信頼感は大きく揺らいでおります。  そこで、大臣にお伺いいたしますけれども、公的年金制度の信頼を回復するためにどのような措置をおとりになろうとしておるのでしょうか。
  77. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 今御指摘のように、年金制度というものはいろんな変遷を経て今日の段階に来たわけでありますが、何といっても公的年金というものは、長い将来を見通して、そのときに受給者の立場に立ったOBの人たち、こういった人たちが安定した給付が受けられる、この保障が一番大事な問題ではないでしょうか。  そういう意味で考えてみますというと、昭和四十八年の年金法の改正というものは非常に大きな意義があったんだと思います。それは、今までは積立方式で来たわけでありますが、やはり経済情勢が非常に大きく変化をしてくる、経済成長してきている、そういうようなときにはその成長に見合った給付をしていかなければなりません。そうなってくるというと、どうしてもその保障をしていくのは世代間の合意でなければならない。ということは、ちょうどあのときの大幅な見直しの中で物価スライドという制度導入したわけでありますが、この物価スライドという導入があったればこそやはりあのオイルショックで狂乱物価の中にも年金制度が支えられた。  そういうことから考えてみるというと、やはり世代間で助け合うんだというこの方式というものを理解していくためには、給付を受ける人と負担をする人と、それからさらに給付を受ける人の層が今日のように高齢化社会が急速に進んでいく場合には、そういった人と支える人とのバランス、こういうようなところで将来に向かっての安定供給をしていこうとするならば、やはり年金一元化をしていくことがよかろうというような考え方に立って今政府は進めているわけで、この一元化に向かっていこうとすれば、やはり世代間の扶養という仕組みの合意の中にあって私たちは安定を求めていかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。  そういう観点に立って、今度の制度調整というものも、六十年の改正のときには給付の公平を図りましたけれども、今度は負担の公平というものを図る意味において制度調整というものも導入してきておるわけでありますから、一貫してその一番大事な年金の安定の方向へ向かって今努力をして今回の法案も提出されたものと御理解願いたいと思うのであります。
  78. 糸久八重子

    糸久八重子君 今の大臣の御答弁ですと、一元化をすれば信頼回復ができる、そして安定した年金財政になるのだというお話でしたけれども、一元化の問題はまた後へ譲るといたしましても、いずれにしましても公的年金の信頼を回復するためにはどうしても安定した年金財政が必要なわけであります。  先日、衆議院で六十五歳支給開始の先送りとか保険料率引き上げの圧縮が行われましたけれども、これが年金財政に与える影響はどう考えられますか。
  79. 水田努

    政府委員(水田努君) 今回の衆議院修正によりまして、保険料収入の減は平成元年度で五千八百四十億円、平成二年度から平成六年度までの累計で約七千億円程度と見込んでおります。  この保険料収入の減以外に、修正による給付費増も年金財政の上に影響を与えることになります。その結果、今回の財政計算のベースで次回以降二・二%ずつ五年ごと厚生年金保険料引き上げる予定であったものが、〇・〇九%上乗せされることになりまして、政府の再計算上、次回以降二・二と予定していたものが、二・二九%ずつ五年ごとに引き上げていかなければならないという影響が出ると見込んでおります。
  80. 糸久八重子

    糸久八重子君 六十五歳に引き上げない場合には、将来の厚生年金保険料率が三一・五%にな ると政府は申しておりましたが、こういう将来予測でショックを与える、そしてその政府案を受け入れさせるというやり方はもう既に一九八六年改正前に使った手法で、しかも前回推計のときに二八・九%だった将来の保険料率が三一・五%と二・六%も高くなっているわけです。この数字自体は本当なのか、本当に不信感がわいてくるのは私だけではないと思います。二〇二〇年代の厚生年金保険料率が三一・五%になる、その数字が動かしがたい数字であるかのように言われているわけです。  そこで、労働省にお伺いいたしますけれども、現在七〇・五%と言われている就業率、それが将来どうなるのか。殊に女性の就業率などはどう推移していくのだろうか。それから、現在七五%と言われております雇用者の比率が将来どうなっていくのだろうか、その辺のところをお聞かせいただけたらと思います。
  81. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 就業者の比率でございますけれども、男女雇用機会均等法もございますし、今後婦人の就業率というものは徐々に上がっていくのではなかろうかと、このように考えております。
  82. 糸久八重子

    糸久八重子君 雇用者の比率は。
  83. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 雇用者の比率は我が国の場合に徐々に高まっていくのではなかろうかと、このように考えております。
  84. 糸久八重子

    糸久八重子君 もう少しやはり数的なものを挙げてお答えいただきたいと思うのですが。将来大体五年なり十年なり先の見通しなどはないんですか、労働省は。
  85. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 手元に雇用者の将来推計を持ち合わせておりませんので、御容赦願いたいと思います。
  86. 糸久八重子

    糸久八重子君 通告はしておいたのですけれども、ひとつ後ほどで結構ですからお教えいただきたいと思います。  厚生省に伺いますが、雇用者のうち、社会保険加入者の比率は将来どのように推移していくとお考えですか。
  87. 水田努

    政府委員(水田努君) お答え申し上げます。  厚生年金の被保険者につきましては、現在、六十二年の実績で二千七百六十八万人と見込んでおります。平成十二年、西暦二〇〇〇年ではこれが三千七十一万人となり、その後若干減少いたしまして、二〇二〇年、平成三十二年には二千九百五十二万人になるものと推定をいたしております。
  88. 糸久八重子

    糸久八重子君 労働省にお答えが聞けなかったのは残念ですけれども、社会保険加入者の比率がやはり徐々にふえて、山があるわけですが、労働者の就業率などの場合、特に最近は女性の就業率が非常に高くなっておりますから、そういうことから考えたり、それから将来六十歳の定年が延びて高齢者の雇用がふえたりなどいたしますと、そういう状況によっては保険料率というのは何%かは違ってくるのではないかなというような気がいたしますし、また、年金積立金運用収益率と、それから積立金残高の対年金給付率の大きさによっても社会保険料率は違ってくるのではないかと思います。  そしてまた、こういう意見もあるんですね。一部では、飽食の時代に生まれ育ち、また基礎体力を十分につけてない人々は将来人生八十年を享受できないのだろうと、そう言われているわけです。その予想どおりになれば、二十一世紀には各種の状況もいろいろ変わってまいりますから、年金制度の状況も変わってくるのではないか。この辺はどうお考えになりますか。
  89. 水田努

    政府委員(水田努君) 今回、最終保険料率が前回二八・九%であったものが三一・五%、五年間で非常に上がったではないかという御批判をたくさんちょうだいいたしておるところでございますが、再計算で私どもが行います場合に大きな要素になるものは人口学的要素でございまして、私どもは厚生省の人口問題研究所の将来人口推計を用いて基本的にこの計算をいたしております。前回用いました将来人口推計と今回用いました将来人口推計の間に男女の平均寿命が三歳延びたと、これが最も大きな要因でございまして、その結果、平成三十二年で厚生年金老齢年金の受給者が二百五十三万人ふえる、これが最終保険料率を三一・五%まで押し上げた大きな要因になっております。  そのほか、今先生御指摘のように、平均寿命というものいかんによってはまた狂いがくるのではないか、こういう御指摘でございますが、男女とも平均寿命は世界のトップに行っておりますので、これは余り今後大きな延びを示すということは期待できないのではないかというのが人口問題の専門家のほぼ一致した意見でございます。  次に、積立金の利回りいかんによってはこれも大きく影響をしてくるのではないかという御指摘でございますが、私ども最終保険料率に到達する平成三十二年の段階においては、ほぼ完全に近い賦課方式に切りかえるという財政見通しを立てておりますので、やはり積立金は中期的にはこの運用利回りというものは確かに年金財政に影響を与えますが、賦課式にほぼ切りかわった最終保険料率をとる平成三十二年の段階になりますと余り影響を与えないと、こういうふうに私ども見ております。  それから、女子や高齢者雇用というものの進展、これは年金財政にとって私ども大変プラスの要因である、こう見ておりますが、一方、御案内のとおり、合計特殊出生率二・〇に回復するという前提で設計がなされておりますが、これについてはそこまで回復しないのではないかという非常に悲観的な見方が人口問題の専門家の間において強いので、この出生率の低下とそれから女子及び高齢者の職場進出というのは相殺関係に将来なるんではないか。そう見ますと、私どもは今回出しました三一・五%という最終保険料率が今後大幅に狂うような事態というのは余り考えることができないんではないか、こういうふうに見ております。
  90. 糸久八重子

    糸久八重子君 年金財政財政計算のたびに悪化しているという現実があります。五年後の財政計算時には年金財政はさらに厳しい局面を迎えるのではないか、今の御答弁もそうでしたけれども、そう考えられるわけです。とりわけ若い人々の多くは、将来自分の年金はどうなるのか、年金財政を盾に今後給付水準の引き下げとか保険料のさらなる引き上げが行われるのではないかと大変不安に思っておりまして、これが年金不信の大きな理由の一つになっています。  そして、さらに公的年金に対する不信感をあおるものに世代間の損得論の横行というのがあるわけです。公的年金の内部収益率と預金利率を比較することによって公的年金の損得を論議するこの損得論というのは、公的年金の持つ世代間の所得の再分配という発想が欠如しておりまして、専ら私的保険の論議を社会保険である公的年金に当てはめようとしているのではないかと思います。そして、そういうことを政府が巧みに利用して私的年金の奨励をしている向きがあるのではないかということも勘ぐってしまうのですけれども、この辺のことについてはどうお考えですか。
  91. 水田努

    政府委員(水田努君) 結論から申し上げますと、全く心外である、こういうことでございます。  私どもは、やはり公的年金は、いつも大臣が御答弁申し上げておりますように、給付負担、これは長期にわたってバランスをとっていく必要があると考えております。やはり給付水準というものを維持していきませんと、国民の皆さんはなかなか長期にわたる老後の生活設計が立てにくい。一方、この給付水準を維持していくということは、今後受給者が急激に増大をしてまいりますので、負担が非常に大きくなってくるということも事実でございます。  一方、後代になればなるほど賦課方式に近づいてまいりますので、後代の世代の方の負担が非常に重くなる、背負い切れなくなる危険性がある。そうしますと、先ほども申し上げておりますように、三一・五%という最終保険料率は、世界の例を見てもそんなに高い保険料負担している国は ないのでございまして、西ドイツがことし与野党一致して早期支給開始年齢を六十五歳まで西暦二〇〇〇年までに段階的に引き上げることによって最終保険料率を二六・四%に抑えるという措置をおとりになりました。そういうことから見ても、私どもは最終保険料率は二六%程度が妥当である。それで給付水準を維持する。それから、最終保険料率を二六%に抑える、この間の調整措置をどうとるか、これについても非常に私ども重要な課題であり、そのための方策の一つとして、現実的な解決策として、私どもは高齢者雇用の進展に見合って開始年齢を段階的に引き上げて六十五歳にするというスケジュールを今回の改正原案の中で国民の皆さんにお示しをさしていただいたところであるわけでございます。  いずれにしましても、この公的年金制度は安泰で維持していける、くどいようでございますが、給付水準を維持するということと、後代の人の負担が過重、過大なものにならない、この矛盾した関係をどう合理的に解決するか、これが最も重要な課題であろうかと、私どもはこのように考えております。
  92. 糸久八重子

    糸久八重子君 公的年金に対する国民の不信というのは募る一方でありますから、この信頼を回復するためには、何よりもまず年金財政再悪化を理由に再計算のたびに年金制度改革を行うということをこれは改めるべきではないかと思います。  保険料については、前回約束した保険料引き上げ幅を維持すべきであると、そう思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  93. 水田努

    政府委員(水田努君) 今回の改正に先立ちまして、年金審議会で約一年半程度慎重に御検討いただきまして、私ども役所が再計算するに必要な諸条件について御検討していただきまして、昨年の十一月に御提言をいただいて、それに基づいて再計算を完了させ、予算を編成し、法案を提出と、こういう過程をとりました。  その年金審議会の御意見の第一に出ている点は、やはり給付水準を維持する、前回の改正の際設定した給付水準を今回も維持する、これは何をおいても国民の信頼を確保するために必要だ、こういう御提言をいただきまして、私どもそれをきっちりと、厳しい財政当局との交渉でございましたが、それは私ども守り抜いたところでございます。  それから保険料率引き上げ幅、これはあくまでも将来の展望を示した予測でございまして、これは法律上一・八に上げます、こういうふうに確定したものじゃございませんで、厚生年金国民年金だけが将来展望を示して、おおよそ最終保険料はこういうことになり、そのプロセスとして段階的にこう上げていきますよということを国民の前に明確にお示しをしているわけでございます。それの計算基礎も法律が成立した後印刷をしまして国民の前に配付をいたしているところでございまして、これはあくまでも一・八というのは予定でございます。  先ほども御説明申し上げましたように、財政計算の結果、将来人口推計というものが平均寿命が男女とも三歳延びたということによって、最終保険料率段階に至る平成三十二年に老齢年金の受給者が何と二百五十三万人も前回よりも増加するという結果から、一・八と予定していたものを二・二に上げざるを得なかった、こういうことでございますので、極めて合理的な根拠に基づくものでございますので、どうかひとつその点は御理解をいただきたいと思っております。
  94. 糸久八重子

    糸久八重子君 厚生年金保険料率については、衆議院修正によって引き上げ幅が圧縮されましたが、国民年金保険料についても同様の措置をとるべきと考えますが、この点はいかがでしょうか。
  95. 水田努

    政府委員(水田努君) 御案内のとおり、基礎年金導入されまして基礎年金勘定というのはもう完全に賦課方式に入っているわけでございまして、制度として成熟をいたしているわけでございまして、私どもは、今回の八千円を四百円ずつ小幅に毎年引き上げをさせていただくということは最低のぎりぎりのお願いである、このように考えております。この国民年金財政方式が賦課方式になっているということと、ぎりぎりの引き上げ幅である、この両面を何としても御理解をお願いしたい、このように思う次第でございます。
  96. 糸久八重子

    糸久八重子君 基礎年金水準についてお伺いをさせていただきますが、政府は昨年福祉ビジョンを示しましたが、二十一世紀に向けてどのような我が国の福祉社会を構築していこうとしているのかが明らかにされていません。国民すべてに租税・保険料負担がふえる一方で、老後の生活を公的年金がどこまで保障してくれるのか、どこまで自助努力を迫られるのかととても不安に感じておるわけであります。我が国の貯蓄率の高さや昨今の私的年金ブームはこうした公的年金への不信のあらわれと言えるのではないかと思います。  海部首相は、先般、二十一世紀に向けての新たな福祉社会ビジョンとして新人生百年計画の策定を指示したようですが、政府は来るべき高齢化社会において国民にどれだけの負担を求め、国民生活のどこまでの部分を保障すべきと考えていらっしゃるのでしょうか。
  97. 水田努

    政府委員(水田努君) 私どもは、公的年金老後生活のベーシックな面を保障する、さらに多様なニーズにこたえるためにはそれを補完するものとして企業年金なり個人年金で補っていただく、こうあるべきではなかろうかと思っております。  それで、まずその公的年金、私どもの所管しております厚生年金で申し上げますと、男子の平均賃金の六九%程度の水準を今後とも維持していきたい、このように考えております。それから基礎年金の水準としましては、老後の基礎的消費支出をカバーできる程度のものを維持していきたいと思っております。負担といたしましては、厚生年金については私どもは最終保険料率が二六%、ピーク時において二六%程度が一つの限界ではないかとこのように考えており、そのように抑制をしていくべきではないかと思っております。  それから国民年金につきましては、私どもはやはり制度のピーク時における最終保険料は一万六千百円程度に抑えるべきものであると、このように考えておる次第でございます。
  98. 糸久八重子

    糸久八重子君 厚生省の国民生活基礎調査によりますと、高齢者世帯の半分以上が老後の所得の八割以上を公的年金制度に頼っており、老後の所得保障において公的年金が占める重要性は増しておるわけであります。こうした現状を考えますと、公的年金は当然それだけで暮らしていける年金と考えていかなければならないと思います。  基礎年金というのは老後の生活費の基礎的部分を保障するとしているわけですが、その基礎的部分とは一体何を指して言うのでしょうか。基礎年金と呼ぶ以上は、国民すべてにナショナルミニマムとしての最低生活を保障すべきであると考えますが、いかがでしょうか。
  99. 水田努

    政府委員(水田努君) 先生の御指摘の問題は、前回の年金改革で基礎年金導入した際からある考え方でございますが、確かに私どもは、基礎年金としては老後生活の衣、食、住、光熱費という基礎的な消費支出部分をカバーすると、こういう考え方に立っているわけでございます。  確かに、基礎年金年金額は生活保護と同等あるいはそれ以上であるべきであるという御意見も前回の改正のときもあったわけでございますが、諸外国の例を見ても必ずしもそういうことにはなっていないわけでございまして、私どもとしましては、やはりこの基礎年金のカバーする給付水準と、それからそれに対する将来の保険料負担、これとの兼ね合いから見て前回設定された考え方、これを今回も踏襲したわけですが、ここらあたりがやはり基礎年金の水準のあり方として、負担を考えますとおおむね妥当な線ではないかと考えさしていただいているわけでございます。
  100. 糸久八重子

    糸久八重子君 老後の生活の最低保障をするという意味ではどうしても今の御答弁では納得しかねるんですが、大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、さきの委員会の中で、高齢者障害者対 策については発想の転換が必要である、そう繰り返しお述べになっておられました。基礎年金の水準についても今こそ発想の転換が必要ではないかと思いますが、大臣の御見解はいかがですか。
  101. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 私が発想の転換ということを申し上げましたのは、御承知のとおり、公的年金、特に厚生年金等被用者年金ではやはり世代間扶養という観点に立ちますと、やはり給付を受ける者と同時にそれを支える者、同時に長寿社会が急速に進展していく過程の中で支えられる側の数が急速にふえてくる、同時に子供が生まれていない、そういう状況の中ではどうしてもその負担給付、それと支える者と支えられる者との人口バランス、こういったことをお互いがお互いの立場で守っていくという考え方を持たないと、負担をする者からすれば負担は軽ければ軽い方がいいに決まっているし、給付を受ける者からすればやはりある程度給与所得者が高い給与を受けるようになって経済の成長も大きく成長していくというようなときにはその成長に見合ったような給付がほしいということになると、やはりその三者の関係というものが、負担をする者と給付を受ける者、それから数、こういったバランスの上に立って自分の果たす役割というものをきちっと果たしていくという約束事がない限り、年金制度というものがそのときそのときで負担を削る、何するということになったら、山へ登るのに足を縛って山へ登れと、何だ登り方が遅いじゃないかと言って後ろから押されたら転んじゃったということにならないようにするためには、その世代間の合意というものが私は必要なんだと。その合意があって初めてそういういろんな改善のたびに負担すべきものは負担をしていこうということが可能になってくる、そういうことを私は申し上げたので、やはりいわゆる基礎年金部分については先ほど来局長が申し上げているとおりであります。
  102. 糸久八重子

    糸久八重子君 御答弁よくわからないのですが、まだ時間がありますから論議をしていきたいと思いますが、基礎年金の国庫負担についてそれではお伺いをしていきたいと思います。  社会保障制度審議会の一九七九年の建議、皆年金下の新年金体系では基礎年金の財源として所得型付加価値税による税方式を提唱しておるところです。しかし、前回基礎年金導入時にはこれがなぜ採用されなかったのか、その理由を御説明願いたいと思います。
  103. 水田努

    政府委員(水田努君) 社会保障制度審議会が提唱しておられますところの所得型付加価値税というのは、企業課税でございます。今日、税体系としては直間比率の見直しというものが言われているときに、法人税以外にさらにもう一つ新たな企業課税、しかも直接税でございますが、これを加えることはいかがなものかという問題点があったのが一つであろうかと思います。  それから、所得型付加価値税をとりました場合の税収というのは経済成長の伸びとほぼ同じ範囲にとどまるのではないか、こう言われているわけでございますが、今後の年金給付費は経済成長率をはるかに上回る大幅な伸びを示すわけでございますので、安定した財源にはなり得ないんではないか、おおよそここらあたりが論議として、また国民のコンセンサスも得にくい点として私どもは導入されなかったものと、このように考えている次第でございます。  なお、今回年金審議会におきましてもやはり国庫負担率を見直すべきではないかという論議が真剣に交わされたことも事実でございますが、やはり年金審議会においては間接税による以外に方法がないんではないか、しかし間接税による場合には今国論が二分しているので時期尚早であるというのが最終的な結論で、今回は国庫補助率を見直すということについては年金審議会では大方の多数の意思を形成することはできなかったことを付言させていただきたい、こう思います。
  104. 糸久八重子

    糸久八重子君 前回の改正時にも論議されましたように、定額保険料によります社会保険方式をとる限り、低額年金者、無年金者が出ることは避けられないわけであります。しかも、今回の大幅な保険料引き上げによりましてその数は今後増大することが予想されるわけでありますが、今後、無年金者や基礎年金が満額に満たない低額年金者がどのくらい出ると予想なされておるでしょうか。
  105. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 今後の予測につきましては現在私どもそのような予測を持ち合わせておりませんので、現状につきまして御説明を申し上げたいと思います。  無年金者の問題でございますけれども、正確な統計はございませんが、先ほどお話がありました国民生活基礎調査、これのデータによりまして推計をいたしますと七十数万人、七十万人台の数字であろうかというふうに推計をいたしております。  それから、一方、低額の年金者でございますけれども、現在、国民年金老齢年金の受給者七百二十五万人のうち、月額一万円以下の年金者でございますが、約一万人という状況に相なっております。
  106. 糸久八重子

    糸久八重子君 無年金者が将来七十万人も出るということはもう大変な問題でありまして、何とかその無年金者をなくさなければならないということで基礎年金等も導入をし、国民皆保険体制というのをつくっていかなければならないわけですが、そういう意味ではどう考えていかなければならないかがこれからの大きな課題であろうと思います。  前回の改正時においてさえ、政府は、自営業者の四分の一というのは低額年金となって、六十五歳人口の五、六%は無年金者になると、そうおっしゃっておられましたが、今後こういう方たちがどんどんふえるということは大変心配なわけですが、一九八五年改正時に衆参両院で、無年金者が生ずることのないよう、制度運用の両面において検討を加えるべきとの附帯決議がなされておりますが、これを受けて、こういう方たちが出ないようにどのような措置を講じられたのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  107. 水田努

    政府委員(水田努君) 私ども、無年金者をなくしていくということは、年金局、社会保険庁一体となって文字どおり真剣に取り組んでいる課題でございます。  制度面では、前回の改正で六十歳から六十五歳まで低年金を防ぐという意味での任意加入の道を開いていただきましたし、また三月ごとにまとめて納めていた保険料を毎月納付に、納めやすい形に改善をしていただいたところでございます。  私ども、いずれにしましても対象者の御理解と御協力がないと解決のつかない問題でございますので、国民年金制度に対する国民の理解、協力を得るためのPRをさらに徹底するということと、それから特に滞納の問題については大都市部の人口の移動の激しいところに大変多く発生をいたしておりますので、自動振込制度を奨励していく等の措置で極力無年金者が発生しないように最善の努力を今後とも続けさしていただきたい、このように思っておりますので、ひとつどうか御理解、御支援をお願いいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  108. 糸久八重子

    糸久八重子君 今後無年金者とか低額年金者の増大が確実視されるその背景には、何といっても過重な定額保険料があると思うのです。ピーク時には一万六千百円にも達するとされている国民年金保険料、これは低所得者の方たちにはもう払い切れるものではないと思います。社会保険である以上、所得の再分配機能のない逆進的な定額の負担それから定額給付というのは、やはりここで改めていかなければならないと思います。そして、国民年金でも保険料の応能負担制度を取り入れていくべきと私は考えるのですが、この点について政府はどういう御見解をお持ちでしょうか。
  109. 水田努

    政府委員(水田努君) 確かにごもっともな御指摘であろうかと思いますが、一号被保険者で所得税を納めておられる方を推計いたしますと一七%程度にすぎないというところから見まして、応能主義に切りかえて果たしてどの程度財政上寄与し 得るのかという問題点があることが一つと、それからやはり国民感情として、納めた保険料給付が比例関係にないというのは、社会保険方式をとっております場合に非常になかなか国民のコンセンサスが得にくい問題ではないか、このように私ども思っているわけでございます。  やはり、国民になじんでおります定額負担・定額給付、それで所得再配分は国庫補助三分の一において行っているとこういうことで、現状の形の中でどうしても一時的に経済的問題から納付できない方については免除を行い、経済力が回復したときに追納という制度もございますので、それによって低年金にならないように対応していただく。こういう現在の制度を的確に運用していくことによって問題は私ども解決し得るのではなかろうか、こう考えている次第でございます。  応能主義をとることについては、なお慎重に検討しなきゃならぬ問題が私ども多々あろうかと思いますので、今後の研究課題とさしていただきたい、こう思っている次第でございます。
  110. 糸久八重子

    糸久八重子君 年金は、文字どおり国民すべてに基礎年金を保障して、そしてなおかつ社会保険にふさわしい所得の再分配を図るという点から見ましても、基礎年金は税方式として全額国庫負担で賄うというのがやはり本来のあり方だと思います。それが直ちに難しければ、当面、国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げるべきと思います。  大臣は、就任後の記者会見の中で、基礎年金の国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げることの問題提起をしておられますが、この点につきまして御見解を賜りたいと思います。
  111. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 就任当時の記者会見で記者の方から消費税の福祉目的税化についての御質問がございまして、私は、福祉目的税にしていくためには、やはり将来の負担というものが大変な額にふくれていくだろう、そういうことから考えてまいりますと、現在でも御承知のとおり非常に高い社会保障費というもの、十一兆からのものが出ているわけでありますから、とてもそれだけでは賄い切れない。しかし考え方としては、御承知のとおり、老人医療であるとかあるいは基礎年金あるいは年金、そういった負担の中に取り入れるということは一つの考え方であるけれども、将来の負担ということを十分に考えていかないと安易にそれを取り入れることはできないだろうと。こういう考え方としては肯定しながら、そのためにはやはり福祉目的税的なもので給付が上がっていけばそれに従った税を収税するというような仕組みにいかざるを得ないんだろうという意味のことで申し上げたわけであります。
  112. 糸久八重子

    糸久八重子君 やはり冒頭申し上げましたとおり、こういう制度改正の問題はじっくりと時間をかけて審議をしていかなければいけないということを今の大臣のお話を聞いていてもしみじみ感じたわけですが、年金保険のみならず、さらに医療の面においても老人保健法医療費拠出金の加入者按分率は来年度九〇%から一〇〇%に引き上げられることになっておりますけれども、健保組合等被用者側からは過大な負担を招くものとして反対が非常に多いわけです。現に、当委員会における広島県での意見聴取では健保組合代表から、一〇〇%への改定を食いとめるとともに老人医療の公費負担率三割を五割に改めるべきであるという、そういう意見が出されておるわけであります。  加入者按分率を据え置いて老人医療費公費負担率を引き上げるべきだと考えますけれども、この点はいかがでしょうか。
  113. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) ただいま老人保健審議会において審議中でございますので、それらの結論を見て検討をしたいと思っておりますけれども、私どもはかつて党の段階では、もちろんこういった公費負担の面というものも医療基本問題調査会の中では提言をいたした問題の一つであります。しかし、現在私は政府の中にありまして、そういう意味では、この審議会において検討が行われているところであり、その結論を見て対応していくべきものであると思います。御指摘のような考え方が出ておることもよく存じております。
  114. 糸久八重子

    糸久八重子君 国庫負担の問題については、前回の改正時でも相当論議があったわけです。前回衆議院で、基礎年金の水準、費用負担のあり方等については、社会経済情勢の推移、世帯の類型等を考慮して今後検討が加えられるべきものとするという附帯決議もなされておるわけであります。そういう状況にありながら、今回の改正でこれらのことが何ら考慮されていないということは大変残念に思うわけであります。今後、基礎年金水準とか費用負担については真剣に検討して前向きの結論を出していただきたいと考えますが、お約束をしてくださるでしょうか。
  115. 水田努

    政府委員(水田努君) 今回の改正で、今御指摘の基礎年金給付水準、それから国庫負担のあり方、これに年金審議会の事前の一年半にわたる検討の大半を占めたわけでございます。  基礎年金につきましては、これを上げるべきであるという意見があったことも事実でございます。また、将来の負担を考えるともう少し抑制すべきであるという意見があったことも事実でございますが、全員一致して前回設定された給付水準を維持するという結論をいただき、それを私ども予算編成の際死守してまいったわけでございますので、その点の私ども努力をした点はお認めをぜひいただきたい、こう思っている次第でございます。  それから国庫負担率の変更につきましては、さっき申し上げましたように、直接税によるのか間接税によるのかという論議がありましたが、やはり間接税によるべきであろうというのが大勢の意見であったわけでございます。その間接税をもって対応する場合も、給付費の改善に充てるべきだという意見と保険料負担の軽減に充てるべきだという意見に真っ二つに分かれた、こういうことでございますが、最終的に国庫補助率の改善についての提言は国論が消費税については二分しているので時期尚早であるので今回は見送ろう、こういう結論であったので、私どもは残念ながら今回の改正については、基礎年金の国庫負担率については現状どおりで対応させていただいた、こういうことでございます。
  116. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは先に進みましょう。  厚生年金支給開始年齢引き上げ問題に関連いたしまして、大臣にお伺いをしたいと思います。  厚生年金支給開始年齢は、先般、衆議院次期財政計算の際に総合的に見直すとの修正がなされたわけであります。ここで最大の問題となったのは、言うまでもなく年金支給開始年齢と定年年齢、雇用との連携の問題でありました。  このような結果となったのは、政府の考え方に六十歳台前半層の所得保障という視点が全くなくて、六十一歳以上の定年制の企業というのはもうわずかに四・三%にすぎないという、そういう状況の中で、定年制の延長について確固たる展望もないままに年金財政論を振りかざす中で六十五歳という形を出したというので国民から大反対をされたと、私はそう理解いたしております。  こうした形になったことについて大臣はどのような認識をお持ちなのか、率直なところをお聞かせいただきたいわけですが、また、今回の事態をどう再計算時の教訓としていくつもりなのかもあわせてお伺いをさせていただきます。
  117. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 御承知のとおり、私たち政府は、国権の最高機関である国会に法案を提案してその御審議をいただいて、その結果修正をいただいたということでございますが、私どもはこの六十五歳支給開始年齢に対して考えている問題は、やはり雇用との問題が非常に関係が深いし、雇用が十分保障されれば当然そういった方向に固まってくるだろうということはよくわかります。  現実に現在でも、大体昭和六十二年水準で見ましても、やはり実際支給開始されている年齢の平均が六十二歳で、六十歳であるけれども六十二歳で支給が開始されているという数字も出ておるわけであります。でありますから、必ずしもこの私 どもが考えている方向が非常に突出して自分たちだけでやった、政府だけで考えてやったというわけではありません。そういった方向も出て、六十歳の前半の負担というものに対して照準を合わせて大体六十五歳に移行しようというふうな水準を定めたわけであります。  しかしながら、この六十五歳というものは現在の法律でも既に六十年のときにも六十五歳ということが本法にうたわれているわけでありますが、それをどういうスケジュールでやるかということになると、やはり今言った雇用との関係がありますので、その雇用を見ながら最終的に判断をしていこうというわけでありますから、次期再計算のときにやはり雇用との関係というものを十分見ながらこのたびの修正をいただいた精神にのっとって十分検討していきたい、かように思っておるわけであります。
  118. 糸久八重子

    糸久八重子君 今回の修正最大の教訓は、定年延長、雇用確保のないままに支給開始年齢引き上げをしたということ、そしてこれが国民に受け入れられなかったということでありますが、大臣もそのことをお認めになったようでございます。  とするならば、仮に年齢引き上げを行うのであれば、当然定年年齢の延長をまず先行させて雇用が確かに確保されたという国民の合意、納得が得られる、つまりそういうことを前提にして年齢の引き上げをすべきと考えます。今後は、雇用確保の確固たる見通しのないままに年齢の引き上げは決してしないということを大臣はお約束願えますか。
  119. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 常に支給開始年齢というものは、御承知のとおり将来の年金受給の安定的な方向、安定を求めていこうとするならば、負担の問題かあるいは支給開始年齢の問題か、これは常に考えていかなければならない重要な選択の一つであります。ただ、そういった雇用の保障が得られないままにそういった方向に進んでいくということは現在でも考えておりませんので、そういう意味ではスケジュールを今回も立てて、前回のときに六十五歳と法案の中にうたってありますけれども、当分の間六十歳で現在そのままいくということになっている中で、今度の再計算のときにはもう一度この問題についてスケジュールを立てて、さらに五年たったわけでありますからスケジュールを立てて、その段階でもう一度国会の御審議をいただいて、そしてよろしかったらばそのスケジュールどおりにやらしていただく、こういう考え方に立っておるわけでありますから、常に雇用関係を無視してやっていくというようなことは考えたことはありません。
  120. 糸久八重子

    糸久八重子君 大臣の御答弁を伺いましたが、この点についての確認がなければ、今回の修正というのは単なる問題の先送り、一時棚上げということにすぎないと思います。次の財政計算時には同じ問題を蒸し返すことにならないように、こうした愚を避けるためにも今回を教訓として国民の前に定年年齢と年金開始年齢との間にすき間をつくらないという、雇用確保のないままに定年引き上げは決してしないということをやはりお約束をしていただきたい、そう思うところでございます。  実は、まだ一元化の問題とか国民年金基金の問題とか、学生の強制加入の問題とか、もう問題は山積しているところでございますが、時間が来てしまいましたので、ひとつ厚生省に次の審議のときまでにお願いをしておきたいことがございます。  それは学生の強制加入についてのことなのですが、学生加入者から基礎年金部分を外して障害者になったときだけ障害者年金支給するということにすれば大体保険料はどのぐらいになるのか、数理計算をしておいていただけたらなと思うのです。現在、二十歳以上の学生の数が百六十万と伺っておりますが、障害発生率はどのぐらいになるのか、その辺のところを専門的なところで計算をしておいていただけたら、次にはそれらの問題について論議ができるかと思います。  労働省の方、済みませんでした。もう一つあったのですけれども、時間が足らなくなりましたので次回に回したいと思います。  終わります。
  121. 水田努

    政府委員(水田努君) 次回の審議までに可能な限り用意をさせていただくつもりでおりますが、学生だけの障害の発生率というものは残念ながら持っておりませんので、国民年金全体の障害の発生率で検討をさせていただきたいと思いますので、その点をお含みおきいただきたいと思います。
  122. 堀利和

    ○堀利和君 私は、障害者の問題について質問させていただきたいと思います。  質問が終わったときに、バランス論、保険方式という問題について、何やらむなしいものを感じてしまうように思えてならないわけですけれども、私としては年金における基本的な考え方をお聞きしたいと思います。  ただいまの糸久先生の審議あるいはこれまでの改正時における審議を私なりに調べましても、基本的な問題というのはいろいろ出されておりますけれども、改めて基本的な視点で伺ってみたいと思います。大臣は専門家でございますので、基本的なところでお考えを伺いたいと思います。  まず一つは、公的年金の性格についてでございます。民間の個人の年金は、いわゆる積立方式によりまして個人の老後の保障に備えるということになろうかと思います。これに対して公的年金は、賦課方式に向かいまして、現役世代が老齢世代を支えるという、世代間の扶養ということが大きな特徴であると思います。ついては、縦型の世代間扶養のみならず、現役世代における同世代の支え、連帯といいますか、ということからいいまして、無拠出障害者基礎年金の問題を見れば、当然広く社会連帯という視点があろうかと思いますけれども、その点、大臣どのようにお考えでございましょうか。
  123. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 今の公的年金は御承知のとおり世代間扶養で、そしてOBの人たちを現役の世代の人たちが、その現在の経済の水準あるいは国民生活の実態、こういったものを勘案して、その時代における現役世代の大方七〇%の水準の給付がされることを保障していくのが公的年金制度である、こういうふうに考える次第であります。  でありますから、そういう仕組みの中で、今回の改正給付負担改善、それから支給年齢の問題が六十五歳にスケジュールを立てて、そして将来的にはやはり公的年金は安定していなければいけない、安定するということが一番大切でありますから、そういう意味での安定を図っていく、こういう仕組みで御提案申し上げた次第であります。     ─────────────
  124. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 委員異動について御報告いたします。  本日、田代由紀男君が委員辞任され、その補欠として前田勲男君が選任されました。     ─────────────    〔委員長退席、理事糸久八重子君着席〕
  125. 堀利和

    ○堀利和君 もう一度その点についてお伺いしたいのですけれども、世代間扶養、つまり現役世代が老齢世代を支えるという視点で、障害者の無拠出年金含めて改正時では基礎年金導入されたわけですけれども、これについて社会連帯という視点をどうお考えか、もう一度お伺いしたいと思います。
  126. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) もちろん、社会的連帯でございますが、公的年金老齢障害、死亡という、事故に対する所得保障、こういったものが一つの目的になっております。老齢年金は長期加入を前提として給付水準が設定されておりますが、障害年金の場合にはこの老齢年金とのバランスをとりながら、加入直後の障害であっても、一級の場合であれば介護の面に配慮し老齢年金の二五%増しの額としておりますし、二級の場合でも老齢年金と同額の扱いをするようにいたしておりますから、当然社会連帯の考え方で障害者の方々 に対する考え方というものは十分盛り込まれていると考えております。
  127. 堀利和

    ○堀利和君 社会連帯ということをお聞きしましたが、その次に、当然公的年金というのは我が国における所得保障の重要な施策の大きな一つの柱であるというふうに見てよろしいわけですね。
  128. 水田努

    政府委員(水田努君) そのとおりでございます。
  129. 堀利和

    ○堀利和君 そうしますと、六十年改正におきまして障害者の無拠出基礎年金給付がこの同じ制度の枠の中に組み込まれたわけですけれども、同様に障害者の無拠出基礎年金は所得保障というふうに見てもよろしいわけですね。
  130. 水田努

    政府委員(水田努君) 前回の改正の際に、基礎年金というものにつきまして二十から六十歳まで全国民加入する、こういう仕掛けをつくったわけでございますが、二十未満の方には公的年金制度が準備されておりませんので、その二十前の時期において障害が発生し障害者となられた方については、二十になった時点で保険事故が発生したものと擬制してこの保険システムの中で社会連帯で支えていく、こういう構築をいたしたわけでございまして、私どもは従来の障害福祉年金該当者を基礎年金に取り込んだことによって社会保険方式は基本的に変わったというふうには理解をいたしていないところでございます。
  131. 堀利和

    ○堀利和君 障害者の無拠出基礎年金が六十年の改正時に創設されたということで、それまでの障害福祉年金の額からいえば大幅にアップしたわけでして、その点については非常に高く評価しております。  公的年金のやはりもう一つの重要な性格は、既にお話にもありましたけれども、何といっても保険原理、保険方式ということになろうかと思います。その意味では、すべての者が保険料を支払う、また支払わなければならないということに原理としては当然なると思います。  そういう観点からひとつお伺いしたいんですけれども、そうした制度の中におきまして保険料を支払うことのできない障害者をどのようにお考えなのか。つまり、無拠出という制度についてお聞きしているわけではなくて、保険料を支払うことのできない障害者についてどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
  132. 水田努

    政府委員(水田努君) 二つ態様があり得ようかと思いますが、二十前に障害者になられた方は、二十になった時点で保険事故が発生したと擬制しまして障害基礎年金一級または二級が支給される、こういうことでございますので、こういう方は老齢基礎年金と同等あるいはそれ以上の給付が保障されておりますので、それ以降における老齢基礎年金についての保険料拠出というのは法定免除をされているわけでございますが、障害者に二十過ぎてなられた場合においても障害基礎年金が保障されますので、この方々も同じく法定免除になる、こういう関係に相なる、このように理解をいたしております。
  133. 堀利和

    ○堀利和君 いや、免除とか無拠出制度のことについてお聞きしたつもりはなかったんですね。  といいますのは、保険原理ですから当然すべての者が保険料を納めなければならないわけです。しかし、現実には保険料を納めない無拠出障害基礎年金によりまして生活している障害者がいるという現実のその障害者についてどういうお考えかをお聞きしたかったわけです。ということは、本来でしたら働いて保険料を支払うということになろうかと思いますけれども、働く機会がない、権利がそういう意味では保障されていない障害者にとっては、本来働いて保険料を払いたいわけですね。言いかえれば保険料を払う権利すら奪われていると言ってもいいのではないかと思うんです。こういう状態についてどうお考えなのか。  つまり、片方では働いて保険料を払う保険方式が正当な一つの基本だということではございますけれども、働く機会が奪われて、したがって保険料を支払う権利すら奪われている、こういう状態をどういうふうにお考えか、もう一度お聞きしたいと思います。
  134. 水田努

    政府委員(水田努君) 私がただいま申し上げましたのは、ベーシックになる基礎年金について申し上げたわけでございまして、障害者の自立、雇用の促進というのは大きな国家的な課題でございまして、例えば民間企業等に雇用されますと厚生年金の適用があるわけでございますので、その場合は当然保険料拠出していただき、それに見合う給付が受けられる、こういう関係に相なるわけでございます。
  135. 堀利和

    ○堀利和君 いや、関係はわかるんですが、そもそも私たち障害者は働いて保険料を払いたいわけです。ところが、働く機会、権利が実際に実現できないというのは、私は障害者自身の責任だというふうには思いたくないわけです。それは国であり、社会の責任としてあるんではなかろうかと思うわけですね。つまり、個人の責任ではなくて働けない、したがって保険料を支払うことができない、こういう状態にある障害者に対して、保険方式をいわば中心に据えた考え方で私たちに提起されても、その点は非常に困ってしまうわけです。一方で働く権利を奪われ、片方では公的年金はやはり保険方式であるというような説明をされてもどうも納得いかないわけですけれども、くどいようですけれどももう一度お願いします。
  136. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 堀先生のお考えはよくわかるし、大変すばらしい考え方だと思います。そして障害者人たちがまさに働く場所、働く権利、こういったものを主張して、働くことによって本当に健常者と同じような保険制度でもってやっていきたいという考え方でありますから、大変すばらしい考え方でありますが、今障害者の方は法定で免除をされている。そういうすばらしい考え方を持たれている障害者の方々にむしろ今働く場所が十分に与えられていないし、制度はできているけれども、そういった状態の方々を雇用するという慣習が積極的にまだまだ経済界の中に十分にできているとは思えません。  私どもこの法案をつくったときにも、障害者の方々に十分な雇用の場を与えない者に対してペナルティーをとるようなことを考えてやりましたけれども、その後やはり大きな会社の中でもそのペナルティーを払うことによって働く場を与えようということの保障は一向に拡大されていないわけでありますから、そういうこともこれからひとつ労働省の方にもお願いをして、働く場を持ち、そして自分たちも本当に健常者と同じような義務を負いたいという御希望というものは本当にすばらしい考え方のように思います。お気持ちは私は十分わかるような気がいたします。
  137. 堀利和

    ○堀利和君 働けるものなら働いてみたい、働きたい、そうして保険料を払いたい、これが私たち障害者の望むところでもあろうかと思うんです。しかし、一方では今言いましたように働く機会も権利も事実上保障されていないという現実があると思います。そうしますと公的年金基礎年金に頼らざるを得ないわけです。基礎年金に頼ってもとにかく生きていかなければならないという現実があります。  そこで、もう一度雇用、労働との関係でお伺いしたいんですけれども、最低賃金法では、地域によって多少違いがありますけれども、たしか東京では一時間四百九十二円だったと思います、日額三千九百何百円だったかちょっと端数忘れましたけれども。そうしますと、大体月二十一日ないし二日ぐらい働きまして八万数千円、これが最低賃金として保障されなければならないわけですね。この視点から見ても、やはり基礎年金給付額というのは非常に低いように思います。バランス論、保険方式をまた持ち出されるかもしれませんけれども、この関係についてはまたくどいようですけれどもお聞きしたいと思います。
  138. 水田努

    政府委員(水田努君) 最賃法とかあるいは生活保護法とかあるいは基礎年金とかいろいろ制度がありますが、それぞれの制度がそれぞれの役割、目的を果たしているわけで、それぞれの制度、目的の違うものを同一に論ずることはなかなか困難かと思いますが、先ほど糸久先生の御質問にもお答え申し上げましたように、私どもは基礎年金に つきましては前回導入しましたときの考え方と同じく、まず給付の中心となります老齢給付についての水準を設定し、そのほかの障害遺族にも同じバランスの水準で保障し、障害については加入期間の長短を問わず障害が発生した場合には老齢基礎年金並みの金額を保障し、さらに介護を要する一級該当者には老齢年金の二割五分増しの水準を保障するということをとらさせていただいているわけでございまして、将来の保険料負担との関係から見て今回改正をお願い申し上げております水準は私ども率直に言って精いっぱい努力をしたつもりでございますので、あるいは低いという御指摘もあろうかと思いますが、やはり国民の基礎的な消費支出をカバーするという視点の性格の年金として何とぞ御理解を賜りたい、このように考えている次第でございます。
  139. 堀利和

    ○堀利和君 よくわからなかったんですが、たしか今答弁された中で私の聞き違いかどうか確かめたいのが一点ございます。  二割五分増しの話なんですけれども、つまり等級で言えば二級の基礎年金の今度五万五千五百円、これに対して一級の方は一・二五倍、二割五分増し、この増しているものは介護というように言われたようにお聞きしましたけれども、これは介護に対する一・二五ということなんですか。
  140. 水田努

    政府委員(水田努君) 介護費用という意味ではなくて、介護を要する人であることも考慮してそういう扱いを従来からいたしている、こういうことでございます。
  141. 堀利和

    ○堀利和君 それでは、もう一つの所得保障の重要な柱であります生活保護との関係でお伺いしたいと思います。  生活保護の支給については、基本的に単身の男性の場合東京ですと大体基礎が六万八千円、障害加算がついて、住宅費がついて大体十三万から十五万円ぐらいの幅だと思うんですけれども、これで一応間違いはございませんか。
  142. 水田努

    政府委員(水田努君) ちょっとその点について今調べさせますので、後刻回答させていただきたいと思います。
  143. 堀利和

    ○堀利和君 それではそのことは後でお伺いするとしまして、生活保護における障害加算の意味といいますか理念についてお伺いしたいんですけれども、五十一年以前は障害加算は福祉年金と同額であったわけです。その後、五十一年以降は切り離された形での基準というものが新たに設けられたと思います。昭和四十四年以来この障害加算は今日まであるわけですけれども、この障害加算の意味あるいは理念というのはどういうものでしょうか。
  144. 水田努

    政府委員(水田努君) 先ほど東京都についての御指摘のあった数字は、ほぼそのとおりであろうかと思います。  障害加算の生保における意味合いにつきましては、私、生活保護行政を担当したことはございませんので、的確な御答弁ができなくて大変申しわけないと思っております。
  145. 堀利和

    ○堀利和君 そうしますと、東京において単身の男性の場合十三万から十五万、この幅は住宅費の問題ですけれども、そういうような金額が保障されているわけです。言うまでもございませんけれども、生活保護というのは憲法二十五条に基づきまして、国民として健康で文化的な最低限度の生活の保障という意味があるわけですね。そういうことでは、また基礎年金給付額の話になりますけれども、最低限度の健康で文化的な生活を保障した憲法二十五条において東京では単身の男性が十三万から十五万、このことから見て基礎年金給付額をどのようにお考えでしょうか。
  146. 水田努

    政府委員(水田努君) 基礎年金額は全国の平均的なモデル的な支出に対応するということで、そういう地域間あるいは個別の世帯の事情に対応するという形のものでないわけでございまして、生活保護でございますと、もう御承知のとおりミーンズテストをやりまして、個人の収入であるとか扶養親族者の有無であるとか資産の有無とか、そういうものを厳格に調べた上でその個々人の生活の状況に応じた対応をするという形になりますが、年金につきましては権利としまして、そういうミーンズテストを課すことなく、全国平均的な水準で給付を設定しそれを支給する、こういう仕掛けになっておりますので、その点ひとつ御理解を賜りたい、こう思います。
  147. 堀利和

    ○堀利和君 確かに、生活保護から比べますれば年金の場合はミーンズテストなどありませんから、権利侵害、プライバシーの問題にはなりませんけれども、私、給付水準の額のことを今問題にしているわけですね。公的年金は所得保障であり、その公的年金の枠の中に障害基礎年金もある。これは私は高く評価いたします。  そうしますと、基礎年金給付額が五万五千五百円、一・二五倍増しもございます。これで果たして十分なといいますか、逆に言えば最低というんでしょうか、生活が果たしてできるかどうかということになるかと思うんですね。私はかなり難しいんではないんだろうかなと。現実には恐らく親がかりといいますか、親に頼るかあるいはもしくは施設に収容されてしまうか、そういうような事態が現実にはあるんじゃないかというふうに思っています。  したがいまして、政府でも自助努力ということを言われておりますけれども、この所得保障としての公的年金障害基礎給付額において、障害者自助努力障害者はどのように努力すればよろしいのかお伺いしたいと思います。
  148. 水田努

    政府委員(水田努君) これは先ほど糸久先生の御質問にもあったわけでございますが、基礎年金国民の最低生活を保障するのが本来のあるべき水準ではないかと、こういう御指摘もあったわけでございますが、私ども基礎年金については基礎的な消費支出をカバーするという形で水準を設定さしていただいているわけでございまして、先生御指摘のとおり、基礎年金をもって私どもは障害者の方の基礎的な生活はカバーできても、すべてをカバーすることは率直に申し上げましてできないんではないかと、こう思っております。  その自助努力はどうするんだと、こういう御指摘でございますが、先ほど大臣が申し上げましたように、就労、雇用の場を確保していくということが基本にあろうかと思いますが、そういうこともできない方の場合は、やはり先生が御指摘のように施設への収容ということもあろうかと思いますし、またどうしても足りない場合には生活保護法による補完という問題も生じ得ようかと思いますが、いずれにいたしましても私どもは、公的年金、あらゆる障害者、あらゆる高齢者、あらゆる遺族の方の給付費を賄うという大変国家財政にとって厳しい状況の中での年金制度運営でございますので、その点は何とぞ御理解を賜りたい、このように思っている次第でございます。
  149. 堀利和

    ○堀利和君 私はどうも理解できないんですが、基礎年金給付額で暮らせないのは施設の収容というお話もございましたけれども、実態としてそうなっているかもしれませんけれども、厚生省がそのようなお考えでは、ノーマライゼーションの理念、障害者も一人の市民として独立した人格を持った人間というこの崇高な理念というのはどこに果たして飛んで行ってしまうんでしょうか。私はこの点、今後厚生省の行政においてどのように推移するのか見守っていきたいと思いますし、この問題は大変重要なことだというように認識しております。  大臣、この点についてひとつ御答弁をお願いいたしたいと思います。
  150. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 日本年金制度というものは、社会保険方式を採用して今着々と整備をいたしているところでありますが、そういう中で、障害者の方々に対する取り扱いというものも今まで御答弁申し上げましたように考慮を払いながらきているわけでありますが、恐らくこれを税方式に改めて特殊な方々に対する年金制度というものを考えたらいいのか、あるいは一般の公的年金の範疇からどういう取り扱いをしたらいいのか、現在はそういう意味で障害者の方々に対する配慮をした障害年金というものが支給されているわけでありますが、そこのことになると、やはり 税方式にまで移行していかなければならないということになると、新たな国民的合意を得なければいけないのかなというふうに考えておるわけであります。
  151. 堀利和

    ○堀利和君 基本的な考え方等についてはここで一応終わって、少し具体的なところでお聞きしたいと思います。  まず第一には、子供の加算の問題でございます。  受給権取得後の要件ということでの法律上の問題がございますことは、十分承知しております。実際、二十以前の障害者は、二十になる前の日にいわゆる障害になったという想定で二十から基礎年金給付されるわけですね。そうしますと、この時点で子供がいるかないしは女性の場合は胎児、妊娠をしているか、そうでないと子供の加算がおりないわけです。二十以降に子供を生んでも子供の加算がおりないということであるわけですね。これは、障害者の子供を育てる、いわゆる大人になって子供を育てる喜びといいますか権利といいますか、そういうのが奪われているんではないんだろうか。当然これは障害者の問題から見るのみならず、一般健常者の方のライフサイクルから見ても二十以前に子供がいるというのは非常にまれなことだと思うんですね。この辺の実態をどうお考えでしょうか。
  152. 水田努

    政府委員(水田努君) これは障害年金だけの問題ではなく、老齢あるいは遺族年金あるいは健康保険あるいは労災、いろんな社会保険全般に共通する問題でございますが、いわゆる保険事故の発生したときの状態に着目して給付を行うというのが社会保険方式の原則でございまして、たまたま二十前に障害になられた方については、二十前には公的年金加入の道はございませんので、二十になって公的年金加入したときに保険事故が発生したものと擬制して、今先生が御指摘のとおり、二十のときに子供ないしは胎児がおれば権利発生時に加えるということで加算の対象にしているわけでございます。  なお、私どもは決して、先生が御指摘になっているように障害者の方は子供を持ってはならないなんて、そういう考えは全く持っていないのでございまして、これは社会保険システムをとっている制度すべてに共通する問題として、権利関係が発生した状態で、そのときの生計維持関係で対応するという一つの原則があると、これによって結果的に先生が御指摘のようなことが生ずるということでございますので、どうかその点についても御理解を賜りたい、このように思っておる次第でございます。
  153. 堀利和

    ○堀利和君 社会保険の原理原則というのはわかりますけれども、それをしゃくし定規に当てはめますと、今言いましたように、幼いころからの障害者は二十になる前に子供を一人なり二人なりつくっていかなきゃなりませんよね。それは二十以降になって子供を生むとそれだけ経済的な負担も当然かかります。しかし、子供の加算がつかないこの現状というのは非常におかしいというふうに私は思います。  次に、所得制限の問題についてお聞きしたいんですが、やはり無拠出障害基礎年金の場合には所得制限がございます。私は今撤廃してくれというようなことを言うつもりはございません。やはり所得制限をもう少し弾力的に考えていただきたい、またそうできないだろうかということなんです。在職老齢年金も三段階から今回は七段階にまできめ細かになるわけですけれども、当然そうなれば障害者の所得制限についても何段階かにやはりきめ細かにやっていいのではなかろうか。今ですと、所得制限において一円でも超えれば年間の収入が数十万円一挙にダウンしてしまうわけですね。やはりこういうことを避けるためにも在職老齢年金のような方式というのもあっていいんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  154. 水田努

    政府委員(水田努君) 障害年金に対します所得制限の問題でございますが、前回の改正の際に、いわゆる先生の御主張のように障害者の方の自立を促進するという意味から、従来ございました扶養義務者の所得制限は撤廃をいたしました。現在残っておりますのは、本人が自立しており働いておられまして一定の所得以上の方には支給停止をかける、こういう措置をとっておりますが、この所得制限の限度額は毎年実態調査をして改善をいたしております。  六十三年度は二人世帯で三百八十二万が限度額でございましたが、平成元年度はこれを三百九十六万四千円に改善をいたしております。これを月額に直しますと約三十三万になろうかと思いますが、このいわゆる所得制限が課せられる方は二十前障害の方のみでありまして、この方々の財源につきましては、障害年金なりほかの基礎年金というのは三分の一国庫補助でございますが、十分の六という高率の国庫補助を用いていること、あるいはその他の財源は他の被保険者拠出していただいているということ等もございますので、今申し上げましたように、一応一定の所得がある方についてはその間年金を御遠慮していただいているということで、私ども九九%の方には必ず支給ができるようにし、一%の方だけ毎年その自立しておられる方の所得の伸びに応じて改善を図っているところでございます。  今回、在職老齢年金上限二十万であるものが二十二万という政府原案が、二十四万まで改善されました。二十四万以上超える方は年金が一切支給されないということになっておりますが、この二十前障害の方の障害基礎年金についての所得制限についても毎年確実に改善を図っておるわけでございますので、何とぞその点についての御理解を賜りたい、このように思う次第でございます。
  155. 堀利和

    ○堀利和君 私は所得制限を撤廃してほしいと言っておるのではございませんで、弾力的に段階を設けることができないでしょうかということをお尋ねしたわけです。  私の知人に、病院に勤めているんですけれども、もう少し給料が上がると年金がもらえなくなるから院長にかけ合って何とか給料を上げないでもらうように言おうかなと、こういう半分冗談まで飛び出すわけですね。ですからそういう点では、所得制限をわずかでも超えたらそれによって年金がもらえない、年収数十万円の実質ダウンという、こういうことは避けていただきたいというふうに思います。  次に、無年金者の問題についてお伺いしたいと思います。  今度の改正で学生がいわば強制加入ということになるわけですけれども、そもそもこれまで学生のときに障害を負って、任意加入でありましたから加入してなかったということで今無年金の状態にある方がいらっしゃるわけですけれども、今度強制加入ということになるわけですけれども、これはやはりそういう視点から見れば、これまで学生のときに障害を負った方が今無年金状態にあるというのは、その方の責任ではなくて、むしろ制度上に不備があったというふうに言えるかと思うんですけれども、この点はどうでしょうか。
  156. 水田努

    政府委員(水田努君) 任意加入という道を開いていたわけでございますので制度の不備とは必ずしも思っていないわけでございまして、現実に任意加入制度をとっておりますとなかなか加入は進まない、それが結果的に御指摘のような無年金者を生ずる可能性が大きいことにかんがみまして、今回当然適用ということに踏み切らさせていただいたわけでございます。  やはり、これは本人と親の自覚の問題もあったのではないかという気もするわけでございますが、私ごとで恐縮でございますが、私なんかは自分の娘に成人式で服をつくってやるかわりに国民年金任意加入をして手帳を渡してやった、こういうことでございまして、これはやはり親なり社会なり、あるいは学校なりのやはりそこらに対する認識、PR、努力という、それからもちろん政府の広報の徹底の問題もあったろうかと思いますが、決して制度の欠陥であったとは言えないと私は思っております。
  157. 堀利和

    ○堀利和君 それでしたら制度を変える必要はな いんじゃないですか。制度に不備がないのであれば、今回改正する必要はないと思うんですね。親と本人の自覚、責任であると、また政府におけるPRも足りなかったというのであれば、親と本人に対して自覚、責任を促せばよろしいと思いますし、啓発、PRをもう少しやればいいというふうに思うんですね。しかし、実際にはいわゆる強制加入ということで制度を変えるわけですから、やはりそのように言いわけされても私は本音は違うのではないんでしょうかということを言いたいわけです。  次に、やはりこれも大きな問題なんですけれども、在日朝鮮・韓国人の障害者の方の無年金の状態のことなんですけれども、国民年金法では昭和五十六年まで国籍条項がありましたから、在日朝鮮・韓国人の方は国民年金には入れなかったわけです。難民条約等により五十七年からは国籍条項というのがなくなりましたけれども、そういうことからいえば、五十六年までに障害者であって、かつ二十以上の方がやはり無年金のままにいるわけですね。これはもう個人の責任とか自覚とか啓発、PRが足りなかったということと違いまして、法律年金に入れないということだったのですね。  日本は経済大国とも言われておりまして、大変な経済力を持っているわけです。そういうことから、国際的な役割、責任ということも言われております。そういった国際的な、厚生省も一つの大きな行政施策の中に国際ということも位置づけておりますけれども、そういう視点から見ても、しかも在日朝鮮・韓国人の方々はやはりこの繁栄した経済大国日本を少しでも支えてきた方々だ、その一翼を担った方々だというふうに私は認識しております。そういう方々が法律において国民年金に入れなかった、そのために今無年金であるということ、このことについてはどうお考えでしょうか。
  158. 水田努

    政府委員(水田努君) 外国人に年金をどのように適用していくかというのは国々によってそれぞれ違うわけでございますが、従来は基本的には二国間条約で最恵国待遇を与えるという締結がなされている国の外国人には適用をそれぞれしてまいったわけでございますが、先生御指摘のとおり、難民条約を批准することによって国籍のいかんを問わず五十七年の一月から国民年金加入できるという新たな道を開いたわけでございます。それ以前につきましては、二国間の最恵国待遇の条約による加入措置がなかった方については残念ながら保険料拠出がなかったわけでございますので、私ども、また先生のおしかりを受けるかもしれませんが、社会保険方式をとっている以上救済することは困難である、このように考えている次第でございます。
  159. 堀利和

    ○堀利和君 今回の改正の中にも沖縄の厚生年金の問題がございます。この関係からいいまして、今の在日朝鮮・韓国人の方がそれまでに国民年金に入れなかったという、こういう政治的な問題といいますかをどういうふうにお考えか、もう一度お伺いしたいと思います。
  160. 水田努

    政府委員(水田努君) 今回、沖縄の方の厚生年金を同じ日本人として、本土と沖縄との間にある厚生年金の格差につきまして、保険料を追納することによって格差の改善を図りたいという御要望がございまして、本土の方とのバランスを失しない範囲において追納の道を開いたものでございまして、本質的に制度が適用されなかった外国人の方のケースの場合と根本的に違う話ではないか、このように考えている次第でございます。
  161. 堀利和

    ○堀利和君 それでは最後に、制度間の矛盾におきまして無年金状態にある方についての問題についてお伺いしたいと思います。  旧法における厚生年金におきまして、六カ月以内ですか、あるいは共済年金が一年以内初診日ということになりますと結局受給の資格期間が足りないということで年金が受けられないわけでして、国民年金も他の年金加入していたという理由でまた対象外になってしまったということで、今無年金の状態にあるわけです。これは中卒、高卒の十代の方においてそういうような事態が起きているわけですね。こういうような無年金の状態をどういうふうにお考えなのか。  そして、同じく旧法なんですけれども、退職時の手当金というのですか一時金、これを受け取ったために在職中の初診があっても結局無年金状態になってしまったということがあるわけですけれども、年金の場合、五年間さかのぼっての遡及ができるわけですね、時効五年ということでございますから。六十年の改正に今でしたら戻ることができると思うんです。しかも五年間ということで言えば、ちょうど国際障害者年が最終段階に差しかかるときでもございます。そういう意味では、今私が言いました、障害を負って無年金状態にある、制度間矛盾において無年金状態にあるこうした方々のやはり救済というのが必要だと思うんです。国会でも既にこの問題は取り上げられておりますけれども、改めて国際障害者年の最終に向かって、かつ改正時から五年以内で何とか救済していただきたいと思いますので、この件について大臣の御決意をぜひお伺いしたいと思います。
  162. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) この無年金救済の問題は、さかのぼるということで大変いろいろな問題があると思いますが、よく一回検討してみたいと思います。
  163. 堀利和

    ○堀利和君 ありがとうございました。ぜひ、今申し上げました無年金の問題につきましては、改正の日から五年間、そして国際障害者年が終わるまでに何とか前向きにお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
  164. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは質問をさせていただきます。  まず最初に、公的年金の役割ということなんですが、これから質問をさせていただくのは何がしかもう前のお二人の質問の中に出てきておりますけれども、ダブるのを承知の上で質問をさせていただきたいと思います。  最初に、公的年金の役割について伺いたいと思いますが、公的年金は憲法第二十五条の基本的人権を受けてのものと思うのでございます。つまり、国民は健康にして文化的な最低生活を営む権利を有する、国はこれを保障しなければならないということでございます。その基本中の基本がこの年金だろうと思うんです。  まず最初に、引き上げ額のことで先ほど来お話がございましたけれども、六十三年度で基礎年金の五万二千二百六十七円を今年度五万五千五百円に上げるという案のようでございますが、これは四十年間完納した場合のいわゆる最高額ということであるわけで、これが最低生活保障の額に当たるのだろうかということを伺いたいと思います。
  165. 水田努

    政府委員(水田努君) この五万五千五百円という金額は、制度が成熟した時点で四十年完納で平成元年度価格で五万五千五百円、こういうことでございます。  それで、老齢基礎年金で申し上げますと、加入可能年数ということで制度が発足したときに、二十歳を超えた方については短縮措置がとられておりまして、最も短い方は二十五年で五万五千五百円というのを平成三年にその後の物価の上昇率を掛けた金額でもらえる、こういう形になっております。それからこの五万五千五百円という金額は、この法律が成立いたしますと、先ほどからお話に出ておりますように、障害基礎年金なり遺族年金には直ちにこの金額が適用される、こういう形になります。  それから、これによって最低生活が保障されるのか、こういうお尋ねでございますが、この点については、先ほどから申し上げておりますように、老後生活の基礎的な消費支出分をカバーするということで最低生活を保障するという考え方には立っていない、こういうことでございます。
  166. 高桑栄松

    高桑栄松君 老後生活の基礎的部分ということで本当に最低の衣食住ということかと思うんですが、今ひょっと思い出したんですけれども、老人保健施設への入院料というのは、はっきり私今覚えていないんですが、二十五万円ぐらい前後だったかなと思います。そうでしょう、たしか大体そ んなものだった。それで、これは通告していなかったんで、今ひょっと思い出してお話をしているんですけれども、そのうち普通は成人病ですかの治療に約二十万円で、五万円が食の方に当たっているというふうだったんですね。だから、五万円は入院をしたときの食の部分であって、住は入ってないわけでしょう。住分まで、アパートに入るように借り賃を払っているんじゃないと思うんで、やはり五万円というのは食費分だけに当たっているんじゃないのかなと思うので、そこをちょっと伺いたいと思います。
  167. 水田努

    政府委員(水田努君) 基礎年金の考え方は、前回導入されましたときに、全国の消費実態調査における基礎的消費支出としての食料費、住居費、光熱費、被服費の全国平均によって設定され、今回もその直近の総務庁の実施しました実態調査平成元年度価格にその後の伸び率でアップをして設定した、こういうことでございます。  なお、先生のお尋ねの、ちょっと通告がなかったので事前に調べておりませんが、中間施設のことであろうかと思いますが、中間施設に入れば収容されるわけでございますので、多分先生の御指摘の二十万は老人保健から医療費として払われ、そこに入居する生活費が五万円ということであろうかと思いますので、その点に関しては一応老齢基礎年金をもらっておられる方は対応できるのではないか、このように考える次第でございます。
  168. 高桑栄松

    高桑栄松君 やはり考えてみると、食費で大体五万円かかっているということなんだろうと思うんです。だから、私はやはり五万円というのは、これは最低保障にはまだ遠いのではないかと。しかも、満額もらう人はことしと来年はないわけです。その程度であろうかということに思いをいたしているわけであります。  ところで、先ほど大臣、消費税は福祉目的税とおっしゃったか福祉目的的税とおっしゃったかよくわからなかったんですけれども、消費税は福祉目的税として考えておられるわけなのか、福祉目的的税なのか、あるいは福祉目的的的税なのか、その辺ちょっと伺えればありがたいと思いますけれども。
  169. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 先ほど申し上げましたのは、私が大臣に就任したときに記者会見でそういう発言があったときのことに触れたわけでございまして、それはちょうどあの八月ごろというのは、消費税は福祉に充当するという話が盛んに出ていた時分で、大臣はどう思うかと言われたので、そのときに福祉に充当すると言えば、年金とか医療とか、こういったものは非常に重要な選択だろうと思うけれども、こういったものは相当将来にわたって負担が大きくふえていくからその取り扱いにはなかなか難しい面があるし、じゃ福祉全体に使うと言ったらば、厚生省全体の予算が十一兆もあるんだから消費税だけではとても間に合わないということになるというようなことを言ったわけで、そのときの例を引かれたので私はそういう話をしたわけであります。
  170. 高桑栄松

    高桑栄松君 去る二月十五日の参議院の本会議で私は代表質問でお話をいたしましたが、消費税は私は野党の側の人間として反対をしておったわけでありますが、しかし、もし消費税というものがあるんであればむしろ私は医療目的税にすべきだと、そういうものが欲しい、医療費が上がっていくから、という話をしました。そのときの村山大蔵大臣の答弁は、目的税といって税金に荷札をつけて行く場所を決めるのは甚だよくないことだというようなお話でございましたが、そうすると、大臣はやっぱり目的税に賛成側でお話をしておられたわけでしょうか。
  171. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) ただいま申し上げましたように、福祉目的税というものであればという前提に立って、将来もずっとそれで保障していかなきゃならないから、医療であるとか年金であるとかいう、これから長寿社会に向かって医療というのは、特に老人医療でございますとそういう面でずっと負担がふえていかざるを得ない。そのたびに改正をしていくというようなことになっていたら、国民の選択、国民の合意もなかなか得られないだろうし、そのまま固定してずっといったとすれば、いつかはぶつかって動きがとれないようなところに負担が多くなっていってしまう、こういうことを言ったわけです。
  172. 高桑栄松

    高桑栄松君 今のを伺いまして、厚生大臣のお考え、なかなか私はいいお話を承ったと思ったわけです。ということは、消費税のいかんにかかわらず方向をお話しになったんで、消費税が廃止になるかもしれませんけれども、廃止になってもこれはそういうお考えでお進みになるとすれば、やっぱり年金にとっては大変いいことだと、こういうふうに私は承りましたが、そこはそれでいいんです。  そして、今度は通告をいたしました質問に入らしていただきますけれども、どうも済みません、途中勝手なことを言いまして。  私が調べてみまして、満額の人はことしはいないけれども、もし満額の人がいて、一番高いところで六十三年度五万二千二百六十七円が五万五千五百円になる。この差額は三千二百三十三円であります。しかしその差額は、実は四月一日から消費税が施行されておりますので、消費税で支払わされている一人当たりの平均消費税負担額はどれくらいでしょうか、御存じでしたらお返事をいただきたい。
  173. 水田努

    政府委員(水田努君) 消費税の影響額は経企庁じゃないとちょっと予測がつきませんので、年金局の立場でお答え申し上げますと、消費税の影響を含めて平成元年一月から十二月までの物価の上昇率、これにすべて化体されているというふうに考えますと、十一月分まで物価の上昇率はわかっているわけで、十二月分が推計になるんですが、私ども平成元年一月から十二月で物価の上昇率はおおむね二・三%程度になるんではないか、こういうふうに推測をいたしております。したがいまして、二・三%もこれは消費税の影響だけじゃなくて、その他の物価の情勢全部含めたものとしての上昇率が二・三%程度であると見ているわけですが、この二・三%分はそれだけ現在もらっている年金が目減りをしている、それは言えるのではないか、このように思っております。  なお、今回の改正で四月にさかのぼって改善されますので、この二・三%をカバーして余りあることはもう御案内のとおりでございますし、さらにことしの物価の上昇率二・三%分は来年の四月から一年おくれでスライドしますので、その分も来年の四月から年金額としてオンされる、こういう関係に相なります。
  174. 高桑栄松

    高桑栄松君 カバーして余りないのですね。カバーして足りないというのが私のデータでございまして、これは十一月八日、ついこの間の新聞に載っておったのでございますが、生活協同組合連合会が調査をしたもので、四月以降ですから消費税が施行されてから半年間のデータを出しております。  世帯主の平均年齢四十六・八歳、平均家族数三・七人、四月以降半年間で平均消費税負担額は四万八千五百円、したがって、割ることの三・七人割る六カ月ということで、月額で出しますと二千百八十五円でございます。これで満額のところでかろうじてわずかに千円ばかり多く見えますけれども、これは満額でございまして、二十三年年金の次のランクにいきますと途端にプラスが千八百四十一円であります。したがって、これは見せかけ上、引き上げられたとは言いますけれども、消費税をカバーして余りない、足りないということになろうかと私は思います。これは数字でそうなったということでございます。  こういうことを見ますと、年金は、上がった部分だけを話で伺っていると、そうか少し上がったんだなというふうに思いますけれども、しかも最高額で論議をすると常にそういうふうになりますが、十年年金の場合、資料をいただいたのを見ますと三番目のところでプラス千二百三十四円でありますから、これはもう年金の引上額は問題にはならない。つまり消費税が直撃をしているということがここにも出ているわけであります。ここは税論議じゃございませんからこの辺でこれは終わ りにいたしますけれども、そういうことでございます。  そこで、公的年金の役割ということで、信頼性の問題は先ほども糸久委員が質問しておられて御答弁も承りましたが、私ももう一回質問さしていただきますが、つまり老後の不安をなくする、そして暮らせるというのが信頼性だろうと思うんです。ところが、最近の動きをずっと、私も年金というのを余り自分で勉強したことがなかったんですが、少し勉強さしてもらいますと、なるほどと思ったのは、普通民間の企業ですと約束したのは非常にかたく守っている、決して加入者に不利になるような契約上の変更は勝手にはしない。変更すればプラスになる。ところが、この公的年金の場合は改正するごとに加入者に不利になっていくんじゃないのか。例えば支給開始年齢引き上げる、これは六十歳でもらおうと思ったのが六十五歳になったのでは、五年間絶対に生きていかないとだめだとか何かいろいろあるわけであります。そして保険料率も五年ごとでしたか上がっていくということでございまして、そして給付レベルというのは今申し上げたように上がっているように見えて必ずしも上がっているとは思われない。それに物価上昇分というのが間違いなく入ってくるわけで、今のは消費税だけを申し上げたので。ですから、そういう意味で私は契約条件が加入者に不利になっていくことが信頼性を損なうことではないのか。つまり、公約に違反をするということが不信を招くのではないか、これは政治家も同じだと思いますけれども。そういうことで信頼性がやはり得られていないのではないかというふうに思うのでありますが、お考えをお伺いしたいと思います。
  175. 水田努

    政府委員(水田努君) 私ども決して私保険と張り合うつもりは毛頭ありませんが、御案内のとおりに個人年金なり私保険というのは一種の貯蓄でございまして、払い込んだ保険料に利息がついたものが給付として戻ってくるという約束事になっております。現在は非常に物価が安定しておりますので、一見大変魅力があるような感じでございますが、戦後のインフレーションで戦前掛けた生命保険がほとんど無価値になるということで大きな壊滅的打撃を受けたことは御案内のとおりであろうかと思います。  その点、公的年金は、大臣がいつも申し上げておりますように、四十八年に画期的な改正が行われた。それは物価スライドで必ず年金額の目減りを防ぎますということが一つと、再計算期ごとに過去の低かった賃金を現在の直近の賃金水準で再評価をして、賃金の上昇に見合った給付のレベルアップを図るということで、公的年金は現在、厚生年金について申し上げますと、男子の平均賃金の六九%の水準をお約束します、維持します、こういうことで制度運営を図っているわけです。そのためには、受給者が急増していきますので、これを後代の人が負担できなければ国鉄共済みたいに制度が崩壊する。これも国民の信頼を失う大きなゆえんになりますので、そういう破綻を来さないようにするために、今回の改正高齢者雇用の進展に見合って開始年齢を段階的に引き上げていくことによって後代負担を適正なものに抑え、そして国民の皆さんに、公的年金はサラリーマンであればおおよそ現役の男子の方の七割ぐらいがもらえるんだということで老後の生活設計が立てられるような形に持っていきたい、こういう形で私ども今回の改正を意図したわけでございます。  基本的に、制度の長期安定を図る、給付水準を約束する、それから財政の破綻を来さない、これが私は大原則であろうかと思いまして、そのような観点から今回の改正にも取り組んでいる、こういうことでございますので、どうか御理解を賜りたいと思います。
  176. 高桑栄松

    高桑栄松君 今の俸給の六九%ですか、これはもう一遍はっきりさせておきたいと思うんですが、これはいわゆる年俸との兼ね合いではなくて俸給ですね、本俸ですね、つまりプラスアルファのボーナスなしということですね。
  177. 水田努

    政府委員(水田努君) ボーナスを除いた標準報酬月額の平均の六九%、こういう意味でございます。
  178. 高桑栄松

    高桑栄松君 将来もこれは維持できるという確信を持っておられるわけでしょうか。
  179. 水田努

    政府委員(水田努君) 六九%を維持していきたいという強い希望を持っております。そのためには、やはり後代負担を適正なものにすることがどうしてもその水準を維持していくための大きな条件になってくるのではないか、このように考えておる次第でございます。
  180. 高桑栄松

    高桑栄松君 ちょっと言葉の定義でございますけれども、私、確信とか信ずるというのは余り好きじゃないんです。信ずるのは本人が信じられるのであって、実際は狂ったら確信が狂っただけの話になりますから、やっぱり私は未来予測ということは大事だと思うんです。だから、つまり科学的に未来予測をして、人口予測と同じだと思うんです、そして常に修正をしながら予測を間違いないものにしていく、そういう軌道修正は要るんだろうと思いますけれども、予測が必要だろうと思うんです。    〔理事糸久八重子君退席、委員長着席〕  予測のことはまた後で時間があったら触れますが、もう一つ信頼性に対して私はこう思うんです。思うと言うのは余りよくないとお話ししながら、私、思うことを今言うわけでありますが、貯蓄率は外国に比べて我が国は世界第一だ、こういうことを言われているわけで、みんなその気になっているんじゃないかと思うんです。しかしこれは、例えば土地が高くて買えないから仕方がないからためておいてレジャーで使おうかという人もいるでしょうけれども、一家の生計を支えている人たちはそうではなくて、やはりこれは老後に備えるというために貯蓄を一生懸命しているのではないか。  一方、私的年金がブームだと言われております。この私的年金ブームというものは、どうせ貯金をするなら年金にということかなと思います。これは政府が一生懸命言ってきた自助努力といいますか、自助民活型ということで政府の奨励にこたえているのかもしれませんが、それはやはり年金が安心して生活を保障してくれるということに対する不信感があるのではないか。やはり年金は公的施策として信頼性を持ってもらう必要があるということだと私は思いますけれども、いかがでしょうか。
  181. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 今お話がありました我が国の貯蓄率が世界で一番高い、先進国の中では一番高い部類に入るわけでございます。ほかにも高い国はございますけれども、アメリカ、イギリス、欧米諸国に比べましたら高いということでございます。ただし、どういう理由で高いか、こういう理由でございますが、これはもういろいろと御意見がございます。したがいまして、我が国国民性として、子女の教育のための貯蓄でありますとか住宅の取得のためというのは今かなり多いわけでございます。今先生がおっしゃいましたように、老後に備えた貯蓄という意識が高いという御意見もあります。それから一般的に質素倹約ということで、ボーナス制度などが我が国に特に発達しておりますので、そういうものを貯蓄しておくというような動向もあるわけでございまして、また全般に国民負担率が欧米諸国よりも低い、こういうことの要因、いろいろ言われております。したがいまして、こういう要因についていろいろ調べてみましても、決定的にこれが決め手だという要素は見きわめがたいわけでございます。  ただ、我が国年金給付水準、これは先進諸国におきましては各国とも相当程度の水準が確保されているにもかかわらず貯蓄率はそれぞればらばらでございますので、それが貯蓄率に影響を及ぼしているかどうかということ、これまた慎重に考えていかなければならないと思っておりまして、我が国の社会保障は年金医療保険とも各国に比べまして匹敵する高水準になっておりますので、これが影響しているというふうには必ずしも言えないのではないかというふうに思います。  また、私的年金につきましては、私どもの福祉ビジョンにもございますように、基本的な部分は公的年金、さらにゆとりの部分につきましては企業年金、個人年金、こういうものを組み合わせて将来の生活を確保していくという考え方でございますので、公的年金に対する不信ということをあらわしているということも、これまた一概に結論づけることは難しいのではないかというふうに考えられます。
  182. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは二番目の、何だかスピードが少しゆっくりになっちゃいまして申しわけありませんが、支給開始年齢引き上げに関する質問をさしていただきます。  まず第一番目に、労働省にお伺いしたいんですが、定年制の実情、将来の見通し、そのことをまず伺いたいと思います。
  183. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 定年制の現状でございますけれども、六十歳以上の定年を採用する企業の割合は平成元年度において六一・九%でございます。これに六十歳以上の定年を決定あるいは予定をするものまで含めると七九・三%に達しておりまして、私どもとしては、この六十歳定年に向けての各企業の努力をさらに推し進めるという観点から、高齢者雇用安定法に基づいて行政指導を進めているところでございます。
  184. 高桑栄松

    高桑栄松君 六十歳以上と言われると、その言葉の定義がございますが、六十歳がその中にほとんど大部分占めているんじゃございませんか。
  185. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 法律の仕組みといたしましては、六十歳を下回らないようにということが努力義務の内容でございますのでそう申し上げたわけでございますが、現実には六一・九%のほとんどは六十歳ということは御指摘のとおりだと思います。
  186. 高桑栄松

    高桑栄松君 それをお伺いしたかったんです。  数字で言うと、六十一歳以上となりますとわずかに四・三%。ほとんどそうではない、六十歳でとまっている。六十歳末満で言っても三八・一%ということであります。  私がそれをお伺いしたのは、年金と雇用が連動しなければ生活保障が得られないということからでありますけれども、それについての見通しはいかがでしょうか。これは厚生省になりますかね、労働省かな。
  187. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 先生の御質問は、六十歳定年の見通しということでございますか。
  188. 高桑栄松

    高桑栄松君 そうです。
  189. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 労働省でございます。  私どもといたしましては、高齢者雇用安定法に規定されておりますいろいろな措置、特に六十歳を下回る定年を定めている企業に対しまして、計画的に六十歳に向けて計画をつくっていただくそういう要請、あるいはその要請の次の段階としての計画の作成命令、そういった措置を講じまして、平成六年度までにこの六十歳定年を何とか定着させていこうということで行政措置を講じているところでございまして、当面は特に百人以上の企業を重点的に対象にいたしてやっておりますので、何とかこの六十歳定年をさらに定着化させる努力を続けてまいりたいと思っております。
  190. 高桑栄松

    高桑栄松君 六十五歳定年制について労働省で何か調査をされましたね、この見通しというか。それは六十五歳以上にできそうだという、あるいはできないという、どのような割合になっていますか。
  191. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 先生御指摘の調査は恐らく、私どもが昭和六十三年度に産業労働モニターという企業のモニターの方にいろいろ御意見を聞きまして、六十五歳までの雇用のあり方について実情をお聞きしたときに、六十五歳定年制については五六・七%の企業において実現が困難であるというふうに回答しておりますけれども、また同時に二七・一%の企業が何らかの形で六十一歳以上の高齢者の雇用を制度的に保障していると、こういうこともございますし、いろいろな企業におきまして六十歳台前半層の雇用は重要な検討課題である、こういう報告もいただいておるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては六十歳台前半層の雇用というものが社会的にも企業においても非常に重要な検討課題であるということで、人生八十年時代の雇用のあり方、あるいはまた将来若年労働力が不足基調に入っていく、そういう状況の中で、こういった六十歳台前半層の雇用を企業内あるいは社会的な課題として考えていただくために大いに努力しなければならないと思っております。  具体的なあり方については、現在雇用審議会で御検討をいただいている、こういう状況でございます。
  192. 高桑栄松

    高桑栄松君 そこで思うのでありますけれども、年金の問題は、六十五歳に限らず、やっぱり雇用とそれから定年制が非常に大きく影響するんだろうと思うんです。したがいまして、今五十五歳定年が少なくとも一つのラインになっているわけで、それが少しずつ引き上げられていると思いますけれども、少なくとも六十歳定年を勧奨するというのか、法律にできるのか知りませんが、そういうことは労働省はどう思いますか、六十歳定年を法制化またはそれに近い形に持っていけるかどうか。
  193. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 六十歳定年の問題につきましては、定年制を定める以上ともかく六十歳以上であるべきであるという、こういう意識を広く普及させることが重要ではなかろうかと思います。  これを担保する法的な制度といたしましては、現在高年齢者雇用安定法がございまして、先ほど申し上げましたような計画の作成の要請、あるいは計画の作成命令という制度を活用いたしまして、いわば企業をそういう形で段階的に誘導していくということが必要ではなかろうかと思っております。  定年を引き上げるにつきましては、やはり企業の労使関係制度その他もろもろのことも絡んでまいりますので、何とか企業が労使間の話し合いの中で、六十歳定年、これがあるべき姿である、少なくとも六十歳定年があるべき姿であるという形で努力していただく。それに対して行政がただいま申し上げました法律制度を活用していく、こういう形で六十歳定年の定着化を図っていきたいというのが私どもの行政の現状でございます。
  194. 高桑栄松

    高桑栄松君 今お話を伺いましたけれども、データによれば、ことしの一月一日現在で五十五歳定年が二〇・七%、まあ二一%ですね。六十歳末満を入れて三八・二%、約四割でございますか、まだ四割は少なくとも六十歳定年を採用していないということでございます。  そこで、大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、この年金と雇用の空白期間をどうするのかということをお伺いしたいと思うのです。二〇一〇年には果たして可能なのだろうか、そしてその可能とする未来予測はどういう根拠に立っておられるのか。そしてもう一つは、その空白期間をうまく埋めるという方法がないとき、うまくいかなかったら六十五歳支給開始年齢引き上げは凍結をすることになるのかどうか。こういったことについて大臣の御所見を承りたいと思います。
  195. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 定年と支給開始年齢との空白をどう埋めるのかということでございますが、定年とそして実際に稼働している年齢、こういったものはちょっと別であろうと。だから、五十五歳定年であるのにもかかわらず、今六十歳定年の定着が五十五歳で低いということを言われましたけれども、実際に年金を受給開始しているのは六十二歳なんです。支給開始年齢法律の上では六十歳なんです。しかし、実際に支給開始の平均年齢は六十二歳。こういう現状があるわけでありますが、先生御指摘のとおり、雇用が確保されていない状況の中で六十五歳に突入するということはむちゃなことで、まさにそれは空白をつくることになるんだろうと、こういうふうに思います。  ですから、その空白をつくらない方法も今回の法律では当然あるわけで、職を離れてしまったという場合には六十五歳でなくても支給を受けるこ とができるというふうにはしてあるんですけれども、しかしながら今回の法改正の場合には、これは既に現行法が六十五歳になっておるんですけれども、当分の間六十歳ということになっておりますから、この六十五歳に向かってのスケジュールを立てたわけであります。そして、そのスケジュールは平成二十二年に六十五歳に持っていくと。しかしながら、このスケジュールを立てた上にさらに国会の議決を得て、さあそれではこれでよかろうというときに初めてゴーのボタンを押すという三段階に分けてその実施をしようということになって提案したわけでありますが、御承知のとおり衆議院段階ではそれを次の財政計算期にもう一度検討するということで今回は修正をされたというわけであります。  また、国会は御承知のとおり国権の最高機関でありますから、そこに提案して法案がそう修正されたわけでありますから、私どもはその精神を十分に尊重いたしまして、次の再計算のときにまた皆さん方の国会の御意向を伺うということにいたしているわけであります。
  196. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは時間になりましたので、あと一題だけ質問させていただいて、きょうは私の質問は終わりたいと思います。  最近、生産年齢人口と老齢人口との比率のことがいろいろ問題になっておりまして、その考え方については私も考えがありますけれども、これはまた別に何か機会を得てお話をさせていただきたいと思っております。  生産年齢の人口減は確かに人口予測のとおり動いていると私は思います。しかし、だからといって、それがふえてきた老人を賄うんだから、今までは七人に一人だった、何年になれば三人に一人だと、それではもうとても食っていけないのではないかというお話がございますが、私は技術革新だとか合理化だとか、そういったことで生産性を向上させることによって扶養負担の増というものを吸収できるのではないかというふうに思います。  きょうは農水省に来てもらいませんでしたが、私はデータでもってお話をしようと思ったんです。例えばお米でございます。これは一九四〇年、昭和十五年で農業就業人口は千三百四十万ぐらいであります。そのときに米の生産量が九百十三万一千トンということでございまして、一人当たり〇・六八トンを生産していた。それが一九五五年、昭和三十年では農業人口は千四百万で、米の生産量は千二百三十八万五千トン、こうなっております。そして一九八七年で見ますと、農業人口は驚くなかれ四百三十三万に減っております。そして米の生産量は、昭和四十五年に減反政策をとられて減ってきてようやくそれでも一千万トンであります。それは昭和十五年よりも米の生産量は多いんです。つまり、農業人口一人当たり生産量で計算をいたしますと、一九八八年になりますと昭和十五年の三・四倍になっております。それで人口は三分の一であります。したがって、三分の一の人口で一人当たりの収穫量が三・四倍になっている。これは大変な技術革新でございまして、それでしかもさらに減反をしなければならないというふうなことを考えますと、米の需給を考えてもやはり技術革新によってその扶養負担増を吸収することができるのではないかと、こう思っておりますが、その扶養負担増の吸収はしたがいまして技術革新によって生産が向上した企業側の負担がふえるということも考えてもいいと思うし、もう一つは国の国庫負担の増を考えることもできるのではないかと、こういうふうに思うのですが、このお答えをいただいて私の質問を終わらせていただきます。
  197. 水田努

    政府委員(水田努君) 先生の御指摘で一番端的に出てくるのは、ロボット税を課したらどうだというような意見、あるいはそれはもう法人税という形で入っているではないか、国庫負担見直しということにしたらどうだ、あるいは事業主の負担の割合を変更したらどうだと、そういう問題に帰着していこうかと思いますが、これはいずれにいたしましても国の負担は、年金に限らず医療、それから後期高齢者の増大する社会福祉その他を考えますと大変な費用になるわけでございまして、私どもは、そういう面の増収効果はあるかもしれませんが、年金のジャンルという点では決して楽観できない、こういう認識を持っております。
  198. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、大変限られた時間ですので、きょうは総論的に大臣の御見解を中心にお伺いをいたしたいと思っております。  今までの論議を伺っておりましても、やはり年金に対する国民の信頼性の問題というのがいろんな角度から追求をされてきておるわけでございます。私は思いますのに、例えば消費税をめぐる情勢をひとつ考えてみましても、公約違反のものを国会では強行する。これをやっても、しかし選挙になれば大幅見直しをすると言わなければならなかった。それを言うても、参議院選挙の結果を見ますと与党自民党は大敗をするということになりました。私はこの参議院選挙の結果を見ておりまして、まさにそこには国民こそが政治の主人公だ、これを端的に示したものだなと思うわけでございます。そういう点で、本年金関連法案もまた民意に勝てなかったのではないかというふうに実は感じるわけでございます。  そのことは、まず第一に法案の提出がことしも予定より一カ月余りおくれたと思います。しかも、そのおくれた原因というのは、これでは選挙にはならないなどという与党の中での批判や異論が出た。あげくの果てには慎重に扱うようにという見解をつけてやっと国会に提出をする。その間には、橋本試案に基づいて六十五歳支給施行日は別の法律で定めるなどということをやって、やっと国会に提出をされたといういきさつがございます。その上にさらにすんなりといくのではなしに、衆議院で御承知のような修正がなされました。  私はこれらの年金をめぐる経過を見てまいりますと、やっぱり今回の年金の改悪に対する非常に強い国民の意向というものが反映されているというふうに見るべきではないかと思うんですが、大臣はどうでしょう。
  199. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 私たち日本は民主主義の世界で共産主義の世界ではもちろんありませんし、それで民主主義の世界ではやはり民意に勝てるものはないんです。それは先生のおっしゃるとおりです。民意に勝てるものはありません。でありますから、政府国民期待にこたえる、これが国民のためにいいんだと、国民のために忠実な政策なんだというものを求めて提出はいたします。  しかしながら、提出されたものに対して今度は民意を代表する国会の選択というものはあるので、当然政府の考え方というものは民意を代表する国会の意思に背くわけにはもちろんいかないんです。それが私たちの民主主義の社会の中で、ある独裁的な者が単独勝手に政治をするということはできない仕組みになっているすばらしい制度だと思いますから、今御指摘のとおり、衆議院修正されたじゃないかと言われました。それはその修正のとおりに我々は従って忠実にやっていこう。それから前に六十五歳というものを出したときに、これじゃ選挙できないぞと橋本さんがこれをこうしたという話もありました。やはり自由民主党というものは常に民意を考えて、すぱっと民意の動向を察知して、選挙に負けてはいけませんから、そういうふうに考えていることはもちろんそのとおりでございます。
  200. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大臣は民意には逆らえないんだと、民主主義の社会だからということをおっしゃいましたが、盛んに共産主義の社会と違うからとおっしゃるんだけれども、我が国は共産主義の社会ではございませんし、私ども日本共産党日本の政治を民主的に改革していこうという熱意を持っておりますので、基盤としては同じだと思うわけでございます。  私は、その問題が出たので一言言わざるを得ないのは、政治体制がどうあろうとやはり民意を尊重し民主主義が守られる。このことなしにはやは り政治というのはまともに進まないものだということは、私は今日の東ヨーロッパ諸国の実情を見ても明らかだと思うんです。そういう点で大臣とは同じ基盤で、日本の国政を国民の民意に合致するような政治をつくろうということで、立場は違っても努力をしているんだという、その観点でお話を進めていきたいということを申し上げておきます。いきなり大上段に言うたけれども。  そこで、私は同僚議員の論議を伺っておりましてもよくわかりますけれども、今回の年金の改悪に関して国民の意思として一番やはり反対の強かったというのは六十五歳支給、つまり支給開始年齢の五年間繰り延べということではなかったかと思うわけですね。限られた時間でございますから多くを申し上げませんけれども、そのことの一つの端的なあらわれだなと思いますことは、地方自治体の決議や意見書に反対のものが大変多いんですね。これは私、実は大阪のを見て驚いたんですが、大阪では三十二市あるうちで、一市を除いて三十一市が全部反対決議をやっている、四十四市町村のうちで三十九自治体が全部反対決議をやっているという結果を見て驚いたのです。こういう結果を見ますと、実は大阪府というのは八百七十万の人口でございますから、そのうちの八百五十万ぐらいを代表する議会の意思が示されている。全国の地方自治体を見ましても、これは総数九百十の自治体がことしの一月から十月までの間に議決をされていますけれども、いわゆる国民年金基金制度の創設を評価するということで賛成の御意見の五十七自治体を除いて、あとはほとんど全部反対ということで、大変自治体の議決などを見ましてもはっきりしていると思うわけでございます。  やっぱりこれが今日の日本国民の中の民意であったんだということを示していると思いますけれども、そういう民意のあらわれとして衆議院修正も行われたのであろうと思いますが、大臣やっぱりそうだったなというふうにお考えでございますか。
  201. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 私どもは、民意を代表している先生方を含む立法府において当然判断されるものと思います。  それで、特に制度改正年金であるとか医療保険の制度であるとか、そういうようなすべての国民に関係あるものに対してはいろんな形の民意というものが出てくるのは当然だと思います。それを抑えたりなんかすることはできません。地方議会でもってたくさんの意見が出てきたことも御承知のとおりでありますが、この統計を見ると大体二五%ぐらい、二五・六%がそういった意味で地方議会の中で意見の表明をしていただいた。修正されたものは、まさに国民の民意を代表して皆さん各党が寄って修正していただいたわけでありますが、地方議会の民意というものはまたそういう意味の民意とは違って、一つの意見として我々がその動向をどう察するか。これだけのものが出てきたということに対してはいろんな考慮をいたしますが、最終的にはこの立法府においてしていただくということになるんだろうと思います。
  202. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 論議の中でももう既に出ておりますけれども、六十五歳支給というのがいかに我が国の労働実態に合わないかということがいろいろ論議をされました。私も、次回の論議の中でこれはやりたいと思っております。国民はやはり非常にリアルに感じて見ていると思うんです、政府の姿勢というのを自分の生活実態からリアルに見ていると思うんです。大体、初めに六十五歳支給ありきで、その後で年金と雇用に関する閣僚懇談会ですか、これを設置してさあこれから雇用環境を検討しますと言われたら、国民にとっては幾ら十年先のことだからといっても、これは今日の自分の生活実態から考えどうしても不安になる、不満を持つ、あるいは不信につながるということになると思うんです。その辺がやはり国民が不信を持つという非常に大きな点だと思うんです。  もう一つずつ聞く時間ありませんけれども、こういう政府のやり方に国民が不信を持つという幾つかの問題がございます。  例えばもう一つの問題は、年金制度に対する国庫負担のあり方です。これについても、国民は詳しい数字はわからなくてもやはり大きな不安と不信を持っております。  例えば、六十年改正で大幅に国庫負担が減る仕組みができましたよね。これはもう一番簡単だと思って六十年改定のときの政府の推計数字を持ってまいりましたけれども、これを見ますと、六十年改定の以後、昭和六十一年から四十年間国庫負担の見通しという、これは政府推計の数字ですが、四十年間に六十年改正前の状況であれば国庫負担は五十四兆六千億、それが六十年改正で同じ四十年間に四十二兆八千億、つまり国庫負担は十一兆八千億減るんですね。十一兆八千億といったら莫大な金ですが、約十二兆と見て二二%の国庫負担が減る。これが六十年に延ばしたらその推計はどうなるかというと、六十年間で、これは六十年改正前だと八十六兆一千億が六十年改正後の国庫負担は六十一兆三千億、つまり六十年間で何と二十四兆八千億の国庫負担が減るという数字が推計をされています。これだと三〇%なんですね。  こういう仕組みがつくられたわけですから、高齢化社会だ高齢化社会だと言われながら国庫負担だけは確実に減らすというこういう仕組み、こういうことでは国民は信頼を持たないのは当たり前なんですね。私はこんなものはもとへ戻すべきだ、少なくとも。いや高齢者人口がふえて大変だと、いや掛金も上げなかったら財政がもたぬのだとかいろいろ言われています。しかし、ここら辺は少なくとももとへ戻すというふうなことを考えたらどうかと思うんですが、その点については大臣いかがでしょう。
  203. 水田努

    政府委員(水田努君) 国庫負担が減ったんではないかと、こういう点だけ私からお答えをさせていただきます。  前回の改正前は年金制度によって国庫補助率がばらばらであったわけですが、前回の改正で国庫負担国民にひとしくつける、こういうことで基礎年金の三分の一に集中したと、こういうことでございまして、今先生の御指摘のお話は安恒委員の提出資料を名目に直された金額で言われたものであろうかと思いますが、前回の改正では国庫負担を減らすことが目的であったのではなくて、国民にひとしく国庫負担をつけるということに改正のねらいがあったのと、それから厚生年金給付水準を放置しておくと現役労働者よりもなお給付水準が高くなるということで、給付の適正化を行った。その結果がいわゆる国庫負担が減ったということで、給付水準の適正化の結果国庫負担が減ったのでありまして、これは国庫負担を減らすためにやったのではないので、その点だけ御理解を願いたいと思います。
  204. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 前段に御指摘のありました、六十五歳支給を決めて、後から高齢者雇用対策を講ずるという政府のやり方は国民の不信を招くのじゃないかというお話でございますが、政府といたしましては、御承知のとおり、長寿社会対策大綱というものを六十一年六月に閣議決定をしておるわけでありますが、第六次雇用対策基本計画においても示しておりますとおり、六十歳定年制の定着と継続雇用の推進などにより六十歳台前半層の雇用の安定確保を図るという方針のもとに、年金制度としてもこの問題は避けて通れない課題であるという観点から、まず第一に給付改善と、そしてそれに伴う負担をお願いする点と同時に、高齢化社会に急速に進んでいく、支える人たちの肩の荷が非常に重くなり過ぎるというようなことから六十五歳という想定をして、平成二十二年には六十五歳に移行というスケジュールを立てたわけであります。  さらに、たびたび申し上げているように、雇用関係状況が整ったという段階において国会においてお諮りをし、ゴーのサインをいただいて初めて六十五歳というものが制度として運用される、こういうわけでありますが、今回の場合は、先ほど申しましたように衆議院において修正をいただいた。そういう中で、我々はその精神、御意思に従って、次期検討するときには再び雇用状況等勘案し てお諮りをしたい、こういうふうに考えているわけでありますから、国民の御意思を体して、そして国民が将来安定した、しかもお約束している給付水準、すなわちそのときの経済情勢において、そのときに働いている人たちがいただいている給与の七〇%を目途にしてそういう保障をしていく、そういうふうに私どもは考えているので、決して不信を招いたり国民の不利益になるようなことをやろうということは毛頭考えておりませんので、よろしくお願いいたします。
  205. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 余り時間がないんですが、先ほどもお話が出ておりましたが、戸井田厚生大臣は大臣就任のときに、消費税活用という前提はありましたけれども、ちょっと参考のために新聞をひっくり返してみましたら、基礎年金に対する国庫負担現行三分の一を二分の一にするとかというふうなことで、大変積極的な御発言をしていただいております。このお考えは変わっておらないんでしょうか。
  206. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) それは記者会見で言われたときに、福祉目的税とかいろいろな例が引かれておるけれども大臣はどう思いますかということでございましたので、そういう御意見はありますと。しかしながら福祉目的税というようなことになれば、あるいは福祉に重点的に使うということになれば、当然医療であるとか年金であるとかいうふうに、そのときの例に例えば年金に二分の一とか老人医療にはたしか三〇%をさらに幾らとか、そういうようなこともいろいろ出ておりますけれども、そうなってくるというと、確かに国民の方から見てはっきりするけれども、そうなったらそれはもうどんどん高齢化社会が進んでいくに従って大変大きなものに膨れ上がってしまうから、とてもこれは大変なことだ。もしそれでもやっていこうと言ったらば、消費税の税率がどんどん上がっていくということになってなかなか難しいんではないか。そういう意味で福祉関係者の中にも福祉目的税に不安を感ずる人たちもおるというような中の一節だったと思います。
  207. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大臣大変丁寧にお答えいただくもので随分時間がたっておりまして、私持ち時間がもう終わりなので、幾つかもう少しお聞きをしたいと思ったんですけれども、もう時間がありませんからまとめてお伺いをしておきたいと思うんです。  というのは、やっぱり保険料引き上げをやる、あるいは六十五歳に支給年齢を引き延ばす、あるいは制度調整だと言って厚生年金からもお金を持ち出す、そういうことをやっていくという点について、政府の責任が果たしてどれだけやられているのか。何だか知らないけれども、みんなもらう方が引き延ばされて金が減らされる、それで取り上げられる、掛金はどんどん引き上げられる、そしてその上によその、お隣の手助けにもまたお金を出さなくちゃならない。こういうことになると、それらのしりぬぐいというのは全部国民にしわ寄せされているじゃないかということに国民の意識がなりますと、これはなかなか納得できないと思うんですね。  やっぱり国庫負担の増も含め、いろいろなやり方を検討した上で年金のあり方を本当に問うという立場で国民の信を問うという形になれば、私は非常に平衡感覚のすぐれた日本国民は納得すると思うんですよ。つまり多様なことというのは、国庫負担をどうするのか、あるいは労使間の負担割合についてはどうするのか、あるいは今日世界第二位のいわゆる金満国日本の大企業から応分の負担を受けられはしないのか、そういったもろもろのことをぎりぎりやはり検討しまして、そうして本当に国民期待する年金というものをどうするべきかということが時間をかけて検討されなければならないと思うし、そういうぎりぎりの検討が国民の前に真摯に提起されて、そうして改善というものはやられていくべきだと思うんです。  したがって、我が党は衆議院で、改善部分を切り離してその他の残余の部分については一応撤回だということを申し上げたのはそういうことなんですね。そういう点で、やはり年金、特に国民年金と言われている日本国民全員に関する年金制度が、本当に国民の納得のできる、そして信頼のされる年金にしていくための対応というのを本当に国民の前に示していくべきではないのかというのを改めて感じますので、国民の民意に逆らったんでは話にならぬということを大臣おっしゃっていただいておりますから、そういう立場でそういうことをおやりになる必要があるのではないのかということを申し上げ、そして大臣の最後の一言を伺って、私時間ですので終わりたいと思います。
  208. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 政府は今国庫負担の増をやるのが当たり前じゃないか、そういうのが改善じゃないか、民意にこたえているんじゃないかというようなふうにもとれますけれども、金は保険料にしても税金にしても全部国民の懐から出るわけですから、金を出すということは国民の合意が当然必要でありますし、そして、それよりも政府がやることは、年金その他についてはどのような安定した給付と、国民が将来に至って安心して受給ができる環境を制度としてつくっていくか、これが一番大事なことだと私は思うんです。その中の負担とか年齢であるとかいうようなものは、バランスをとるために、安全にするためにそういったものが論ぜられるので、政府国民に対して、これが一番すばらしく保障できるゆえんであるというようなつもりで出しておるんです。それはまた同時に、国民の代表である皆さん方の立法府において御審議をいただいて、今回は衆議院で直されたと、こういうことでございます。
  209. 乾晴美

    乾晴美君 連合参議院はただいま十二人いますけれども、そのうちの十一人までこの七月に上がってきた者でございますけれども、この十一人とも何を高らかにうたってきたかといいますと、この年金改悪法案の中で厚生年金の六十五歳への支給開始年齢の繰り延べ、そして大幅な保険料引き上げというのはもう絶対反対だということを、県内各地そしてまたそれぞれのところで高らかにうたってきたわけです。今回こういうことだったんですけれども、厚生年金支給開始年齢が六十五歳への引き上げを撤回されたり、それから給付改善の四月前倒しというようなことが実施されるということで、そのことについては評価をしたいというふうに考えておりますけれども、しかし私たちはこの保険料引き上げにつきましては、非常に引き上げ幅は縮小されているとおっしゃっていますけれども、これは依然として大幅なものであるということに変わりはないというふうに認識しておるわけでございます。初年度が一・九%、そして二年度以降は二・一%の引き上げ幅というのは五年平均で見ていきましたら二・〇六、そういうことになるわけです。この二・〇六というのは本当に私たちとしては容認しがたいというふうに思っております。  政府財政計算によれば、高齢化のときのピーク、いわゆる二〇二〇年というときに、六十歳支給を前提にした場合は、先ほどもお話がありましたように保険料率は三一・五%になるとされております。支給開始年齢引き上げをするということを考え、そしてまた保険料率引き上げをするということでも政府提案はすべてこの計算の数字を前提に行われておると思うわけです。このことにつきましては先ほど水田年金局長も、これは変わらない、この三一・五%というのは自信があるというふうにお答えでございましたけれども、今までの政府審議会における議論の中でも、また衆議院における質疑の中でも二六・一%あるいは三一・五%といった計算の結果を示すだけで、その根拠となるような年金の数理の基礎的な資料は一切公開していないわけですね。  御存じだと思いますけれども、連合は、先ごろ発表しました総合福祉ビジョンの中ではこれよりもはるかに低い水準、二八%程度でも現在の年金制度の維持改善は十分に可能であるということを具体的に示していたと思うんです。ごらんになったと思うのですが、この福祉ビジョンの計算についてどのような御感想をお持ちでしょうか。
  210. 水田努

    政府委員(水田努君) 私どもの今回の再計算 は、年金審議会の中にもデータをお出しし、御説明し、御了解を得ながら進めたものでございまして、この再計算というのは数理課の限られた職員がほぼ一年半ぐらい徹夜に次ぐ徹夜、コンピューターを回しながらやる作業でございまして、本来なら今皆さんのお手元に配れると一番いいわけでございますが、国会質問その他で私どももまた徹夜に次ぐ徹夜でやっておるわけでございまして、厚生年金国民年金につきましては法案成立後必ず結果を公表するということで、これは五十九年の再計算の結果はこういうものに印刷して天下に公表さしていただいておりますし、(資料を示す)ここに持ってまいっておりますのは、五十五年の再計算の結果、すべてのデータを公開さしていただいているわけでございます。また、こうやって公表することが公的年金制度並びに私どもの作業に対する国民の信頼を得るゆえんだと思っておりますので、今回法案を成立さしていただきましたら公表に向けてまた作業をいたしたい、このように思っております。  また、私どものやっております計算の基礎については、いずれも自信を持っているつもりでございます。
  211. 乾晴美

    乾晴美君 先ほども大臣が強調されておりましたけれども、年金制度の長期的安定を図るということについてはもう極めて重要なことでありますので、私たちもこの点につきましては政府と立場を異にするものではありませんけれども、政府改正案の根拠となっている財政の再計算につきましては、今自信を持ってお答えのようですけれども、私たちは疑問があるというふうに思っているわけでございます。  将来の年金制度のあり方について広く国民的な論議を進めるという意味においても、私たち政府の行った財政の再計算に関する年金数理の基礎資料の公表をやはりしていただきたい、再計算のやり直しというのもやっていただきたいと思うわけであります。運用だとかまたスライドだとか、物価のときでも政府の方は五・五とか四・〇とか二・〇とかそれぞれ出していますけれども、その根拠について説明していただきたいと思います。
  212. 水田努

    政府委員(水田努君) 限られた時間の中で全部るる申し上げますと、先生の質問時間を全部使ってしまうことになるのじゃないかと思いますので、ポイント主義でやらしていただきたいと思いますが、まず指摘されているのは、最終保険料率が前回と今回で食い違っているではないか、二八・九が三一・五になったのはなぜか、これが一つであります。これは人口問題研究所の将来推計で、五年間で平均寿命が男女とも三歳伸びて、厚生年金のピーク時の受給者の数が二百五十三万人ふえる、その結果である、こういうことでございます。  それから、財政計算に当たりましては、運用利回りは五・五%と見込まさしていただいております。それから年金改定率は四%、物価の上昇率は二%と見込ませていただいておりますが、この運用利回りについては資金運用部資金の最近の運用利回りの傾向、それから長期プライムレート並びに国債のクーポンの金利、ほぼその中を推移する、こういうトレンドを示しておりますので、そういうことを総合勘案して五・五%を出させていただいたところでございます。  それから年金改定率は、厚生年金は御案内のように再評価のシステムをとっておりますので、賃金の過去の上昇率、それから一人当たりの雇用者の所得の上昇率、これらを総合勘案して四%と見込まさせていただきました。  消費者物価の上昇につきましては、過去の平均は一・四%となっておりますが、賃金の上昇と物価の上昇との間に相関関係がございますので、賃金の上昇率を四%と見たことに伴いまして、相関関係を考慮して二%と決めさせていただいた、こういうことでございます。  その他申し上げますと限りなくございますので、主要な点についてだけの説明にとどめさせていただきます。
  213. 乾晴美

    乾晴美君 数字のことは半分わかったようでわからないんですが、また後でゆっくり教えていただきたいというふうに思います。  先ほどもちょっと問題になっておりまして十分な答えがいただけませんでしたけれども、これからの女性の社会進出だとか、それから高齢者雇用の進み方を見込んでいらっしゃるんでしょうかどうでしょうか。
  214. 水田努

    政府委員(水田努君) 女性並びに高齢者雇用については、過去のトレンドに従いまして見込んでおります。  具体的に申し上げますと、女子の方の生産年齢人口、十五歳から六十四歳人口に対する厚生年金の女子の被保険者の割合は一九八七年で二一%程度、二〇一〇年で二二%程度、二〇二〇年で二四%程度と推計をいたしております。なお、これは女子の方のパート就労が多いという問題で、厚生年金は基本的に常雇を対象にしているということとの関連がございます。  それから高齢者雇用の拡大につきましても、具体的に申し上げますと六十歳から六十四歳の人口に対する同年齢階級区分における厚生年金保険者の割合は、一九八七年で一五%程度、二〇一〇年で二二%程度、二〇二〇年で二四%程度と見込んでおるわけでございまして、これらが拡大していけば大変私どもは将来の財政にプラスに寄与しますが、もう一つ心配な側面としては、合計特殊出生率が二%に回復する、こう見ているわけですが、これが果たして将来的に二%に回復できない場合には、女子なりあるいは高齢者雇用の社会進出と出生率の減少が相殺関係になる、結果的において私どもが今回計算した最終保険料率に大きな影響は与えないというようなことになるんではないか、そういう意味では中立型の試算をした、このように考えている次第でございます。
  215. 乾晴美

    乾晴美君 ちょっと心配しておることがございますのですが、今まで政府の方は二・二%で計算していたものを、この五年間二・〇六ということで一九九五年までいくというんですけれども、それでいった次のときにその足らなかった分を大幅にぱっと上げるというようなことは絶対にしないということをここでお約束していただけるんでしょうか。
  216. 水田努

    政府委員(水田努君) 年金が削減されますれば後代にツケが回るのは当然でございまして、糸久先生から冒頭そこはどういう影響があるかという御質問を受けまして、二・二ずつ上げるという予定したものが今回の衆議院修正で〇・九オンされて二・二九ずつ上げざるを得ない、こういうことに相なるとお答え申し上げましたが、それはそのとおりにならざるを得ないものと考えております。
  217. 乾晴美

    乾晴美君 その計算方法をよく考えて、福祉ビジョンを示したとおり、一度計算し直してもらいたいというふうに思うわけであります。あくまでも自分の計算なさったお答えが正しいと思わないで、一度見直してほしいというふうに考えております。  次に、制度財政調整による鉄道共済年金救済のことについてでありますけれども、この問題についても、かねてより国の責任を明らかにして国の責任において問題の処理に当たるべきだということを私たちは主張してきたわけですけれども、国の責任をあいまいにしたまま、民間労働者の年金制度である厚生年金から向こう三年間にわたって年間九百十億円の巨額に及ぶ拠出を求める内容となっておるということは、これはもう絶対に容認できないというふうに私たちは思っております。改めて、鉄道共済年金問題について国の責任を明らかにして、他の被用者年金制度からの安易な拠出に頼ることなく、国の責任において処理することを強く要求したいと思います。  また、制度調整というのは三年間ほど凍結して、一元化に向けて、国民的立場で論議する協議会を設けて幅広い討議を重ねる中で合意形成を図っていくべきであると主張してきたわけなんですけれども、今回、衆議院の附帯決議で、制度調整見直しのための三者構成による検討の場を設ける旨の決議がなされておりまして、総理も衆 議院の社会労働委員会での質疑の中でその方向で対処する旨を回答されておりました。  この検討の場としてはどのようなものが考えられているのか、また現段階では政府はどのようなものを考えておるかということをお答え願いたいと思います。
  218. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 制度調整は、御承知のとおり公的年金一元化の過程として、そしてその中間的な地ならしの一つとして、六十年には給付改善をやり給付公平化を図り、そして今回、負担の平均・公平化を図るという観点でその地ならし的な過程で鉄道共済に対する拠出をやったわけでありますが、衆議院段階で、先ほどもお話がありましたように、修正の一つとしてこの見直しをするということになり、その見直しの中に第三者構成による検討の場を設けろということでございます。それは当然第三者構成というものは、働く人たちと使用者の立場の人とそれから学識経験者、その三者構成で、御指摘の働く立場の人たちというものがその構成員の一人になることは当然だと思います。
  219. 乾晴美

    乾晴美君 ということで、厚生年金加入しておる人、いわゆる二千七百万人のうち八割ぐらいが働いているということで、ぜひ労働者ということを入れていただきたいということと同時に、先ほどの質問の中で大臣が世代間扶養だということをおっしゃっていましたけれども、受給者を支えていく人たちというのは、平成年度に生まれた人だとか、もう今既に現在二十になっている人たちも考えていかなきゃいけない、その人たちが負うわけなんですから。その人たちをどのようにその会議の中に入れられるかということはどうでしょうか。
  220. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 当然今後の問題として、具体的にそういういろんな階層からどういう選び方をするかということは今後の検討の問題であります。
  221. 乾晴美

    乾晴美君 私は女性の立場で申し上げれば、この年金通算制度国民年金制度もなかった、女性の早期退職制というのが一般的でありました昭和三十年代には、厚生年金加入していた勤労女性の多くは結婚退職などを機会に脱退手当金をもらって年金権を放棄してきたわけであります。そういうことで、現在厚生年金の成熟度が共済年金制度に比較して低い理由の一つは、この脱退手当金による女性の切り捨てにあるということは否定できないだろうと思うわけです。この脱退手当金制度それ自体をここで是非を問うつもりはありませんけれども、この制度調整を行う理由として、成熟度の差異による負担の不均衡是正ということを政府の方は説明していらっしゃいますけれども、みずからの加入者を脱退手当金制度で切り捨ててきた厚生年金が全く見も知らぬ赤の他人というべき鉄道共済年金のために巨額の拠出金を支払うという構図はどうしても私たちは納得できないというふうに思っておりますが、時間の関係で次に入りたいと思います。  最後に、働く女性の勤労者の切実な要求であります育児休業制度に関連して、育児休業期間中の社会保険料負担の問題について質問したいと思います。  育児休業制度それ自体についてはまた別の機会にお聞きしたいと思っておりますけれども、先週末に発表されました婦人労働白書によれば、働く女性の数は二千四百七十三万人、労働人口の四割が女性である。また有配偶者、つまり既婚の女性労働率も五一・六%に達しておる。これだけ多くの既婚女性が社会に進出する時代になっておるのに、我が国の育児休業制度は、教員だとか看護婦さんだとか、また保母といったような特定業種の、しかも公務員についてのみ法制化されておるということなんですね。  ここで労働省の方にお尋ねいたしますけれども、民間での普及率はどれぐらいなのでしょうか、そしてまたその間の賃金は有給か無給かということについてお答え願いたいと思います。
  222. 堀内光子

    説明員(堀内光子君) ただいま先生御質問の育児休業制度でございますけれども、労働省の調査によりますと、育児休業制度導入しています事業所は、わずかずつではございますけれども着実に増加しておりまして、昭和六十三年度の調査によりますと、労働者三十人以上規模の事業所での一九・二%が育児休業制度実施しているという実態にございます。  この間の賃金の問題でございますけれども、労働省の昭和六十二年度に調査いたしました育児休業制度実態調査によりますと、育児休業期間中に育児休業をしています女子労働者に何らかの賃金を支払う企業の割合は約四割でございます。そのうちの約半数の企業が社会保険料の労働者負担相当額を支給しているという実態にございます。
  223. 乾晴美

    乾晴美君 今御説明いただきますと非常に低いというふうに思うわけなんですけれども、こういった育児休業制度ができましても、保険料は自分で支払わなきゃならない、それからまた前年度分の所得に対する税金も払わなきゃいけない、子供ができたためにまた出費もかさむということで、せっかく制度ができても本当は仏つくって魂入れずというふうになっているのではないかと思うわけです。既に法制化されている公立学校教員等の育児休業制度の中では、社会保険料相当分は給与として支払うという取り扱いになっておると思います。育児休業制度の普及を図る観点からも、また働く女性労働者に対する医療年金保障を確保するためにも、この育児休業期間中の社会保険料負担についてはこれを免除するという措置を講ずる必要があると思いますけれども、いかがでございましょうか。
  224. 水田努

    政府委員(水田努君) 民間における育児休業の普及の状況はただいま労働省からお答えになったとおりでございますが、この育児休業を実施している企業の九五%が現実に厚生年金国民年金の適用の継続の扱いをしておられるわけでございまして、私は育児休業制度が拡大していけば当然ここらあたりは労使で話し合われた上で適用の関係については実態問題として解決がついていくんではなかろうかと、このように考えている次第でございます。
  225. 乾晴美

    乾晴美君 時間ですので、ありがとうございました。ぜひ免除というようなことでお願いしたいと思います。
  226. 小西博行

    小西博行君 午前中から大勢の同僚委員の方からいろんな質問がございまして、私の質問とダブっている面も相当ございますので、できるだけ簡潔に四点だけについて質問をさせていただきたいと思います。  確かに、年金の問題というのは、先ほど大臣もおっしゃいましたように、四十八年には物価スライド部分を入れるという大きな改革があり、しかも六十年にも年金制度が抜本的な改正をされたという、そういう意味では国民もある意味で満足できる部分もあるんではないかと、そのようには思いますけれども、しかし依然としてやっぱりなかなか不安な面がたくさんある。それは人生五十年と言っていた時代からもう八十年時代が来る、しかもそれが強烈な勢いでやってくるということになりますから、やっぱり将来に対する不安というのが私は年金問題の一つの大きな問題ではないだろうか。  そういうふうに考えましたときに、やっぱり政府としては、国民の皆さん方が八十歳になっても大丈夫だ、十分に生活をエンジョイできる、そういうような大きな一つの福祉ビジョンと申しましょうか、そういうものを十分に皆さんに理解してもらえるような形で提出をして、そしてしかもその中身がわかりやすい、しかもその点がはっきり約束される、こういう点が私は一番大事じゃないかというふうに思いますので、政府としてはあるいは大臣としては、どのような方法でその国民の不安の解消のためにこれから働いていかれるのか、まずその点をお尋ね申し上げたいと思います。
  227. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 今先生御指摘のとおり、昨年十月の福祉ビジョンは、六十一年六月に閣議決定された長寿社会対策大綱を踏まえて、年金医療、福祉、この分野について、さらに在宅 介護の問題も大変きめ細かく出しているわけでありますが、ただ、我々長寿社会に向かっていくに従って改革面で一つ一つ具体的にやっていかなければなりません。そういう意味で、今度はビジョンの一環として年金法の改正についてお願いをしたわけであり、また来年度予算におきましては、公党間でも約束をした上での在宅介護対策等も前倒しで積極的にやっていこうというふうに考えておるわけであります。でありますから、この福祉ビジョンを示すということも、国民の目の前にはどうしても現実の問題として一つ一つ形で示していかなければなりません。  そういう意味で、この年金法の改正というものは長寿社会の一番大切な所得保障の部分でありますから、この所得保障の部分に対する国民の理解を求めてぜひ成立をさせていただきたい、かように思っている次第であります。
  228. 小西博行

    小西博行君 やっぱり年をだんだんとってまいりますと、自分自身がぼけたらどうしよう、病気したらどうしよう、家族にいろいろ見てもらえるような方々は恵まれている方でありまして、そういう中間施設なんかへ私どももよく訪問していろいろお話を聞きますと、なかなか病院といいますか中間施設へ訪ねてきてくれる人が非常に少ない。亡くなったときには遺産相続ということで大変もめる、そういうようなことすら聞くような状態でありまして、この問題は私はもう大変大きな問題だと思いますので、今のこの年金問題だけではなくて、いろんな部分でこれからぜひとも労働省の辺でも研究していただきたいと、このようなことを申し上げたいわけであります。  では、次の質問に入らせていただきますが、これも先ほど同僚の方々から大分意見が出ておりますが、やっぱり現役の勤労者、この皆さん方が大変将来について心配する、つまり自分たちが掛けた保険で十分老後は大丈夫なんだろうかと、こういうような問題がありますので、やっぱりそういう不安を解決するためには、大臣の方から、いやそんなことはない、大丈夫だということの意思を明確にこの際示してもらったらいいんじゃないか、そういうふうに私は思います。いかがでしょうか。
  229. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 日本の現在の年金制度は、御承知のとおりに世代間扶養という形になっているわけでありますから、今支えている世代の人たちが住んでいる経済的な状況であるとか、そのときの国民所得であるとか、あるいは給与の水準であるとか、こういったものをすべて勘案をして、その世代のその時期の人の基準的な給与の七〇%を保障するということでありますから、これがとても当てにならないなんということになったら大変でございます。  これはまさに一番安定したもので、現在の時代の七〇%は保障するということを言っているわけで、そのためにまず第一にその現在の生活で所得を得ている人の負担のことも考えてやらなければいけない。そしてそれに対しては、今度は使用者も同時に保険を負担する。しかも国も負担をする。本人が出すほかに国も出すし、それから使用者も出すんですから、なくなるなんということはとてもとても、自分が出した金が戻ってこないなんということは絶対にありませんので、その点だけは十分御理解をいただきたいと思います。
  230. 小西博行

    小西博行君 これも先ほどございましたが、雇用と年金との連携ですね、今回の六十五歳というのはその点がかなり問題になっておるわけです。政府の出し方も非常に下手な出し方をするなという感じでもありましたけれども、しかし現実は私はそこに大きな問題があるんではないだろうか、そういうふうに思います。もちろんその基本は、老後の所得保障という大きな問題があるからであります。そういう意味で、これは労働省だけですべての解決というわけにはまいりません。当然予算の問題もあるし、各省庁との連携というものが非常に大切だと思いますので、その辺の一体感といいますか、政府全体でその問題に取り組む、その辺の姿勢についてお尋ね申し上げたいと思います。
  231. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 今後の老後所得保障を考える際には、どうしても雇用と年金の連携を十分に図っていくことが必要であると認識をいたしております。また政府は、既に長寿社会対策大綱や雇用対策基本計画において示されておるとおりに、六十歳定年制の定着と六十歳台前半の雇用の確保を図る方針を固めているところでありまして、また今回の改正案の提出により雇用と年金の連携の必要性がさらに強まってきたことにかんがみ、政府部内に厚生大臣、労働大臣そして総務庁長官、経済企画庁長官及び内閣官房長官から成る年金と雇用に関する閣僚懇談会を設置し、労働省を中心に関係省庁が一体になって高齢者雇用の確保に取り組んでいくことにいたしている次第であります。
  232. 小西博行

    小西博行君 それほど大勢の大臣が集まって検討されるんでしょうから、もう安心して我々が皆さんに大丈夫ですよと、こういうふうに声を大きくして言えるだけのやはり明確なビジョンを立てて進めていただきたいと、そのように思います。  最後になりますけれども、厚生年金保険料についてちょっとお尋ねいたしますが、現在は大体労使折半というようなことになっておりますけれども、諸外国は必ずしもそうではない。特にスウェーデンは全額事業主負担ということになっておる、イタリア、フランスでも事業主の負担の方が大きい、こういうような状態になっておりまして、何も全部これを日本がまねせないかぬということではないんですけれども、そういう年金財源を何とかして充実させたいという、そういうような気持ちあるいは方針から、こういう点についてはこれからいろいろ考えていかれるんでしょうかどうでしょうか、これを最後の質問にします。
  233. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 御指摘の点は大変重要な問題でありますが、労使折半ということになって今日まで日本の社会保険制度の一環として行ってきております。既に御指摘のように、スウェーデン等においては全部を使用者が負担をするということでありますが、日本の場合にはやはり中小企業あるいはさらに弱い立場の企業もありますし、一方においては非常に安定した企業もある、そういうような各層の経営状態の中にあって、これをどういうふうに検討していくかということは非常に大事な問題でありますが、中小企業の人たちも含めてそういった負担をさせるということは現時点においては困難ではないかと、かように思っております。
  234. 西川潔

    ○西川潔君 たくさんの方々が質問をなさいましたので重複するところがあると思いますが、おさらいのつもりでひとつよろしくお願いします。  今回の年金制度に関連して、政府は、年金は世代間の扶養であるとか、公的年金は五年ごとに給付改善をやってそのときどきに必要な給付水準確保するので個人年金よりも確実で信頼できるといった御説明を随分なさっておられます。確かに、年金は世代と世代の助け合いであります。社会的な親孝行であることはそのとおりだと私も思います。世代間扶養とか給付水準の維持とか言われております。しかし、一般国民、ましてやお年寄りの方々は何のことか潔さんようわからぬというおはがきをたくさんいただきます。  そこで、私に寄せられました一通のおはがきを御紹介させていただきますが、これはお年寄りの方でございません。大阪の西淀川区というところに住んでおられます四十三歳の主婦の方でございますが、はがきをコピーしてまいりました。   私はおかしい理屈やないかと思うことが潔さん、あります。それは、年金制度で一人の年寄りに対し働き手五・九人で現在支えている。三十年後は二・三人で支えなければというこの点です。行き当たりばったりで年金を支払っているのでしょうか。二十五年間私たち年金を納めて、果たして二十五年もらえる老人は一体何人いるでしょう。年金というものは、自分たちが過去支払った分と貨幣価値との差額に問題があるだけだと思うんです。年金は遠慮せずに堂々と受け取りたいものです。 というふうなおはがきをいただいております。  このお手紙は、年金制度についてのこの仕組みの内容国民の皆さんには十分理解されていない、そして自分が不安である、そして疑問が広がるという点では我々と同じような気持ちだと思います。いま一度ここで政府の方々に、この方に説明するような気持ちでひとつよろしくお願いしたいと思います。
  235. 水田努

    政府委員(水田努君) 結論から申し上げますと、堂々と胸を張って権利として年金をもらっていただきたいとこう思います。  それで、まず公的年金は、これから長寿社会で皆さん大変長生きをされていくわけで、それだけに老後にいろいろと不安が生活面であるわけですが、そのベースになるものが公的年金でございまして、開始年齢からどんなに長生きしても、八十歳であれ九十歳であれ百歳であれ、死ぬまでもらえるのが公的年金でございます。それで、その長生きするまでの期間すべて給付水準は、大臣から繰り返し繰り返し申し上げておりますように、生活水準や賃金の上昇に見合って改善もしますし、毎年毎年インフレによって、物価上昇によって目減りしないようにきちんとスライドすべきものはする、これが公的年金でございますので、どうか御安心して自分の国民の権利として請求をしていただきたいと思います。  もちろん、権利の裏には義務を伴いますので、この方二十五年間きっちりと保険料を納めていただいているようでございますが、今後ぜひとも保険料をきちっと納めていただきたい、このように思う次第でございます。保険料を納めていただくことによって年金制度は成り立つわけでございますので、その点もあわせてどうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
  236. 西川潔

    ○西川潔君 御丁寧にありがとうございます。  私的、公的、本当に両方掛けられたらこんな安心な幸せなことはないと思うんですけれども、そこはそううまくまいりません。それに、たくさん御相談いただきましても、この年金だけは個人差があるものですから、僕らでは本当に説明のしようがないんです。  次に、政府年金は世代間扶養ですと、こうおっしゃっているのに対して、この方は、年金は過去に自分が払った分が返ってくるだけで、貨幣価値の違いだけが問題なのではないですかと。年金は貯金とどこが違うかという点について御説明をお願いします。
  237. 水田努

    政府委員(水田努君) 公的年金は、貯金と基本的に違うわけでございます。  貯金というものは、お金を納めてそれに約束された利息が返ってくる、こういうのが貯金でございます。それから私的年金も同じでございます。納めた保険料に利息がついたものが約束された期間だけ、十年なら十年間給付として支払われる、こういうものでございます。  公的年金は、先ほども申し上げましたように、どんなに長生きをしても死ぬまで必ず年金をお支払いしますというのが公的年金でございます。しかも、それは単に物価の上昇だけではなく、生活水準や賃金の上昇に見合って五年に一回再計算するごとに実質改善を行うということでございますので、厚生年金で申し上げますと、再計算されるそのときどきの男子の方の平均賃金のおおよそ七割という水準を保障するという形で実質改善が行われる制度でございますので、老後のベーシックな生活の支えになる、こういうものでございます。
  238. 西川潔

    ○西川潔君 次に、今回の年金改革法案が成立した場合、全国二千五百万人の年金受給者への年金支払いは来年二月になるとお伺いしております。これから幾つか例を挙げて、素朴な疑問ではございますが、どうぞよろしくお答えいただきたいと思います。年金の中身でございますが、差額、合計額などについてひとつわかりやすく御説明いただきたいと思います。四つに区切りました。  その第一番目は、老齢福祉年金をもらっておられるお年寄りはこれからどうなるか。二つ目に、五年年金、十年年金をもらっておられる方。三つ目に、国民年金で例えば三万円程度の年金をもらっておられる方、こういう方が実に僕ら御相談受ける方が多いものですから。そして最後四番目に、厚生年金で例えば十三万円程度の年金をもらっておられる方、この四つについて御説明をお願いいたします。
  239. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 今国会で法律が成立した場合に、私ども二月の定時払いのときに差額を含めてお支払いするということで準備を始めさせていただいております。  そのお支払いする場合の具体的な金額でございますけれども、まず老齢福祉年金、これは新しい金額が二万八千四百円ということでございますので、月当たり九百円アップということに相なります。それで二月のお支払い額は差額のみに相なりまして、四月から十一月までの八カ月分、七千二百円ということに相なることになります。  次は五年年金でございますけれども、すべて月額で申し上げます。新年金額は二万八千七百円で、千五十円のアップということでございます。二月のお支払い額は新年金額二カ月分五万七千四百円と差額八カ月分八千四百円、合計六万五千八百円という金額でございます。次は十年年金でございますけれども、新年金額が三万三千七百十七円、差額が千二百三十四円、それで二月の支払い額は二カ月分の新年金額六万七千四百三十四円と八カ月分の差額九千八百七十二円、合計七万七千三百六円という金額に相なります。  それから、三点目の国民年金の三万円程度の方でございますけれども、新年金額は約三万一千円でございまして、月額千円程度のアップでございます。二月の支払い額は二カ月分の約六万二千円と差額八カ月分の八千円、合計七万一千円程度、四捨五入の関係で約七万一千円程度の額になろうかと思います。  それから、厚生年金の例えば十三万五千円程度の年金を受けていられる方の場合でございますが、新年金額月額は約十四万円でございまして、差額が約五千円でございます。二月の支払い額でございますが、新年金額は十一月から来年の一月までの三カ月分約四十二万円、それと差額は四月から十月までの七カ月分三万五千円、合計いたしまして約四十五万五千円程度をお支払いする、そのような状況でございます。
  240. 西川潔

    ○西川潔君 詳しくありがとうございました。  本当にこれだけのお金がことしじゅうであればと、いや本当に局長、いい年越しの金になるんですよね。みんなあれも買いたいこれも買いたいと言うて、老人ホーム回りますと、潔さん遅いな遅いな、本当にみんな国会におる人なんか金持ってはるからええけれども我々はというようなお話を聞くのですけれども、でも皆さん方の御苦労も本当によくわかります。二トン車に四十台でございますか、これだけのおはがきを二回にもわたって配送しなければいけないという皆さん方の御苦労にも本当に感謝いたします。どうぞひとつことしじゅうにお願いしたいんですが、これはもう無理な話でございますので、来年になるというようなPRも私たちもできるだけさせていただきますので、また次に改めまして、きょうはこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  241. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 両案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。     ─────────────
  242. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 次に、社会保障制度等に関する調査のうち、へい獣処理場等に関する法律改正に関する件を議題といたします。  本件につきましては、前田勲男君から委員長の手元にへい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案の草案が提出されております。内容は、お手元に配付しておるとおりでございます。  この際、まず提案者から草案の趣旨について説明を聴取いたします。前田勲男君。
  243. 前田勲男

    前田勲男君 ただいま議題となりましたへい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案の草案について、その趣旨及び内容を御説明申し上げます。  昨今、関係者から、へい獣処理場等に関する法律は太政官布告をもとに制定されたものであり、法律において用いられている「へい獣処理場」等の用語が現在の実情に即していないため、これらの用語を改めるべきであるという意見が出されているところであります。このため、法律上の「へい獣処理場」等の用語を改めることとし、法律案の草案を提出した次第であります。  改正内容は、「へい獣処理場等に関する法律」の題名を「化製場等に関する法律」と改めるとともに、「へい獣処理場」という用語を用いないこととし、「へい獣取扱場」という用語を「死亡獣畜取扱場」に改めるものであります。なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。  以上がこの法律案の草案の趣旨及び内容であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  244. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 本案に対し、質疑、御意見等がございましたら御発言を願います。――別に御発言もなければ、本草案をへい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案として、本委員会から提出することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  245. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、本会議における趣旨説明内容につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  246. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十七分散会