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1989-11-28 第116回国会 参議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月二十八日(火曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  十一月十七日     辞任         補欠選任      尾辻 秀久君     高橋 清孝君      清水嘉与子君     本村 和喜君  十一月十八日     辞任         補欠選任      高橋 清孝君     尾辻 秀久君      本村 和喜君     清水嘉与子君  十一月二十七日     辞任         補欠選任      木暮 山人君     後藤 正夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         浜本 万三君     理 事                 小野 清子君                 佐々木 満君                 糸久八重子君                 高桑 栄松君     委 員                 尾辻 秀久君                 清水嘉与子君                 田中 正巳君                 菅野  壽君                日下部禧代子君                 深田  肇君                 堀  利和君                 木庭健太郎君                 沓脱タケ子君                 乾  晴美君                 小西 博行君                 西川  潔君    国務大臣        厚 生 大 臣  戸井田三郎君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     加藤 栄一君        厚生大臣官房老        人保健福祉部長  岡光 序治君        厚生省健康政策        局長       仲村 英一君        厚生省保健医療        局長       長谷川慧重君        厚生省生活衛生        局長       目黒 克己君        厚生省保険局長  坂本 龍彦君        厚生省年金局長  水田  努君        社会保険庁運営        部長        兼内閣審議官   土井  豊君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君    説明員        環境庁大気保全        局大気規制課長  濱中 裕徳君        文部省初等中等        教育局特殊教育        課長       鈴木  宏君        建設省住宅局民        間住宅課長    荒田  建君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度等に関する調査  (老人医療費費用負担に関する件)  (医療法改正に関する件)  (診療報酬改定に関する件)  (老人福祉対策に関する件)  (障害者(児)問題に関する件)  (医療廃棄物対策に関する件)  (アスベスト対策に関する件)  (輸入食品安全対策に関する件)  (高齢者等の住宅問題に関する件)  (年金額の改善に関する件)  (原爆被爆者対策に関する件)     ─────────────
  2. 浜本万三

    委員長浜本万三君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十七日、木暮山人君が委員辞任され、その補欠として後藤正夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 社会保障制度等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 菅野壽

    菅野壽君 御承知のとおり、高齢化社会を迎えまして、医療制度充実が叫ばれております。来年度の課題として、第二次医療法改正が既定の事実のように思われておりますが、大臣にお伺いいたしたいのでございます。  小泉前大臣は、次期通常国会に法案を提出する方向で準備しており、その改正内容は秋から年末までに結論を出したいと言われました。また、戸井田大臣は就任のごあいさつで、来年提出する方向で準備を進めているとおっしゃいましたが、その方向に変わりはないでしょうかどうか、お伺いいたします。    〔委員長退席理事糸久八重子君着席〕
  5. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 先生質問のとおり、今高齢化社会を迎えて医療を取り巻く環境というものが非常な変化を来していることは御承知のとおりであります。そしてさらに、医学の進歩あるいは技術向上、そして国民の健康に対するいろんなニーズというものも多様化をしてきておるわけであります。  そういう中で、御指摘のとおり、厚生省といたしましては来年度医療法改正に向かって今作業を進めているところであります。結論を得ましたら、来年度の通常国会に提出をさしていただきたい、かように思っているところであります。
  6. 菅野壽

    菅野壽君 次に、事務当局にお伺いしたいのでございますが、仲村局長は本年六月、当委員会におきまして、平成二年の改正めど作業を進めているとおっしゃいましたけれども、その内容として、医療施設類型中間施設職員配置の標準、広告規制診療科名表示を挙げましたが、作業進行状況はどうでございましょうか、お伺いいたします。
  7. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 医療法改正作業進捗状況ということでございますが、ただいま大臣からもお答えいただきましたように、医療施設類型見直し、これは患者さんの態様が非常に変わってきたということもございますし、医療法昭和二十三年に決められて以来大宗は変わっておらないということもございますので、そういう類型見直しでございますとか、その後発生いたしましたことといたしましては、老人保健施設をどのように扱うかという問題、あるいは医療機関職員配置あり方、今おっしゃいました広告規制等医業にかかわる規制をどのように見直していくべきか、それから患者さんに適正な情報を提供するという意味から、診療科名を含めました表示と申しますか情報提供あり方等についていろいろの問題が残されておるわけでございます。  私ども、来年度をめどに現在作業を進めておりますが、まだ事務的な段階でございまして、内容が固まったという状況にはないわけでございます。
  8. 菅野壽

    菅野壽君 いろいろと検討をしているというお話でございますが、老人保健法改正国保法改正について老人保健審議会または社会保障制度審議会国保基本問題特別委員会審議をなさっておるものと思いますが、まだ結論を出すには容易なことじゃないと思いますけれども医療法改正は どんな内容を持っていますか。スケジュールにしろ漠然としておるものでございますが、もう少し詳しく御説明願うことはできませんでしょうか、お願いします。
  9. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 医療法改正手順といたしましては、もちろん関係団体、各方面の御意見も拝聴しなくてはいけませんし、そういうものを取りまとめて、手順といたしましては関係審議会にお諮りをして御審議をいただいて、その上で政府としての改正案国会に提出したいということで考えております。  先ほど申し上げました検討項目でございますが、非常に時間のかかるものもあるし、利害関係が複雑で成案を得るに至るかどうか、なかなか難しい問題もあるわけでございまして、現在、いつごろというふうに時期を明確にお答えするまでには至っておらないということで御了解をいただきたいと思います。
  10. 菅野壽

    菅野壽君 わかりました。  若干具体的な問題で御質問を申し上げますけれども医療施設類型化についてでありますが、病院類型化に関して、委員会における御答弁で局長は「急性疾患中心であった時代類型でよいだろうか」と述べ、急性慢性を区別する類型化を示唆しておられるように見受けられますが、そういう方向で考えておられるのでございましょうか。また、関係病院、諸団体意見はどういうふうになっておりますでしょうか、お伺いします。
  11. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 現在、我が国病院というのは二十床以上ということに決められていることは御承知のとおりだと思いますが、その二十床以上にいたしましても、主に急性患者をお扱いのところと、結核療養所のように慢性患者さんを取り扱うところでは恐らく機能的にはかなり態様も違うのではないか。人員配置、設備、構造基準その他いろいろ関係するところがあろうかと思います。  特に、今入院患者の四割ぐらいがお年寄りという実態になってきておりますし、医療に対する考え方末期医療に関する検討会等でいろいろ検討いただいた例から考えましても、末期医療一つとりましても、例えばホスピスのような形の療養体系というのを考えたらどうだという御意見もちょうだいしておるわけでございます。これはまた、医療施設とするかどうかは別といたしまして、長期慢性疾患の方が安んじて療養できるような施設と、急性の、あるいは手術をしてICUのような形で病棟が編成されておるものとではかなり機能としては違った部分があり得るのではないかということから、前々から申し上げておりますように、病院類型化というのをここで見直してみたらどうかというふうなことで検討しておるという段階でございます。  まだ結論を出したということではございませんけれども方向といたしましてはやはりそのようなことを考えるべきではないか。ただし、それを病院全体で考えるか病棟単位で考えるかとか、いろいろの御意見はちょうだいしつつあるところでございます。
  12. 菅野壽

    菅野壽君 次に、診療科名の問題でございますが、厚生省検討委員会で一応の結論が出ておるようでございますが、その検討委員会報告によりますと、診療科名表示は各学会認定医専門医の資格を前提としているように見受けられますが、学会認定基準では大学病院の実績が大きくウエートを占めております。医学生、研修生の大学医局集中を加速する等の問題を生ずるのではないかというふうに見受けられます。地域医療の現場からは、我が国認定医専門医制度は医師の臨床的な能力をそれほど反映していないというふうな意見が出されておりますが、当局の御意見はいかがでございましょうか、お伺いします。
  13. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 御指摘専門医認定医位置づけでございますが、御指摘のように法律上の位置づけ日本としてはまだないわけでございます。  しかし、診療科名等表示に関する検討会という検討会で鋭意御検討いただいたことといたしまして、認定医専門医表示あり方については、いろいろの御意見の中で、今御指摘のように各学会認定条件が必ずしも統一されてない問題でございますとか、表示を認めることによって乱立するというおそれがある、あるいは誇大広告につながるというふうな弊害も起こる危険性があるのではないかという消極的意見もございましたけれども、先ほど申し上げましたように、患者さんに適正な情報を提供するという意味からも、認定医専門医制度を何らかの形で仕組むということはいいのではないかという結論的な御意見をちょうだいしたと私ども理解をしております。  しかしながら、その認定の方法でございますとか、レベルがいろいろ違うとか、そういうふうな制度化の問題につきましては御指摘のとおりいろいろ問題があり得るわけでございますし、現在第一線で家庭医的な機能十分活躍をいただいている先生方等既得権問題等もございますので、そこら辺は御意見賛成反対いろいろあるようでございますけれども医療の質の向上あるいは患者さんの便宜と申しますか、そういう観点からやはり時代の趨勢としては何らかの見直しが必要ではないかということで検討しておりますが、繰り返しになりますけれども、まだ結論を得るに至ってないという段階だと御了解いただきたいと思います。
  14. 菅野壽

    菅野壽君 高齢化社会への移行によりまして老人医療の問題が大きくクローズアップされていることは御承知おきのとおりでありますが、国民医療費平成元年で二十兆円に達し、その三割弱が老人医療費であります。平成二十二年には老人医療費国民医療費の約四割となるものと見込まれております。  現在、老人保健法において老人医療費は、一部負担のほか、国と地方による公費負担並びに各保険者からの拠出金により賄われております。  この拠出金についてですが、健保組合などからは、被用者に過大な負担を課するものとして加入者按分率引き上げに強く反対しております。先般、委員派遣で広島県に参りまして、保険組合の代表から按分率引き上げ反対公費負担率引き上げ意見開陳がありましたが、この件につきまして厚生省の御意見を承りたいと思います。
  15. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 今お話がありましたように、老人保健制度見直しにつきまして現在老人保健審議会で御検討をいただいているところでございます。  審議会における今先生指摘なさいました按分率、それから公費負担をめぐる意見状況について若干お話を申し上げますと、按分率につきましては、健康保険組合関係委員の方からは一〇〇%への引き上げ反対である、九〇%程度にとどめおけという意見が開陳されております。それから国民健康保険関係委員あるいは医療担当委員からは、一〇〇%への引き上げについて賛成である、こういうふうな御意見が出されております。それから公費負担につきましては総じて増額をすべきではないかというふうな雰囲気にあるというふうに私は承知をしておりますが、増額の仕方とかあるいはその程度につきましては必ずしも意見が一致しているわけではございません。  そんなふうな状況でございまして、現在審議会としての御意見を取りまとめていただいておるところでございまして、その御意見のまとまりぐあいを見ながら、私どもとしましては適切に対応していきたいというふうに考えております。
  16. 菅野壽

    菅野壽君 次に、精神科関係その他、診療報酬改定について承りたいのでございますが、まず最近の診療報酬改定において精神科関係はどのように改善されましたか、お伺いいたします。
  17. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 六十三年四月に診療報酬改定が行われましたが、精神科関係について申し上げますと、まず入院患者精神療法料を六十点から七十点に引き上げております。  また、全体を通じまして外来診療を重視するという観点に立ちまして、第一に、通院カウンセリングにつきましては、病院について二百二十点を 二百三十点に、診療所については二百二十点を二百四十点に引き上げております。第二に、精神科デイケアにつきまして、大規模の施設につきましては三百点を三百三十点に引き上げるとともに、小規模施設については三百点の診療報酬を新たに設定をいたしております。また第三に、訪問看護指導料につきまして二百点を二百五十点に引き上げ改定を行っております。  そのほかに、精神保健法の新しい改正ということで応急入院の規定が設けられましたので、この応急入院に係かる新たな点数といたしまして二千五百点を新設しております。  以上が前回診療報酬改定における精神科関係の主な内容でございます。
  18. 菅野壽

    菅野壽君 この十一月、日本精神神経学会理事長その他の精神医療関係者から、精神科診療報酬について要望書が出されております。これは昭和六十三年七月より精神保健法が施行されましたが、新法の法意を実現するために精神医療技術料を適正に評価すること等を要望するものであります。この趣旨等を踏まえて、次の点について御見解を承りたいと思います。  一つは、精神科精神療法等技術料を適正評価すべきではないか。第二点は、社会復帰充実を図るため精神科生活適応療法等点数を設けるべきではないか。第三に、精神科通院カウンセリング点数算定における制限を緩和すべきではないかという点でございます。承りたいと思います。
  19. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 精神医療に係る診療報酬につきましては、技術料の重視、また社会復帰促進という観点に立って考えるべきことは御指摘のとおりであると考えております。  昭和六十三年四月に行われました診療報酬改定の際におきましても、このような考え方に基づきまして各般にわたりまして充実を図ったところでございます。  ただいま御指摘のありました事項につきましては今後検討をすべき内容ということでございますけれども、今後とも基本的に社会復帰促進という新しい精神医療方向に沿った診療報酬合理化を行うことが必要であると考えておる次第でございまして、御指摘趣旨を踏まえながら、現在、中央社会保険医療協議会においても診療報酬合理化についての御議論が行われているところでございますので、中央社会保険医療協議会の御意見を伺いながら十分に検討を進めてまいりたいと考えております。
  20. 菅野壽

    菅野壽君 中医協があることでございますが、しかし厚生省としても御努力を願いたいと思います。  最近、物価人件費等上昇その他の事情をバックに、医療団体から中医協診療報酬引き上げ要望が出されております。来年になれば前回診療報酬改定から二年経過することになりますが、厚生省医療費改定必要性についてどのようにお考えでございますか、お伺いしたいと思います。
  21. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 診療報酬につきましては、従来から国民医療費動向保険財政状況賃金消費者物価動向医業経営実態等医療を取り巻く状況を総合的に勘案して改定を行ってきているところでございます。現在、中央社会保険医療協議会におきまして診療報酬合理化の問題について御審議をいただいておるわけでありますし、また医療関係団体からの診療報酬改定についての要望もその席上示されておるわけでございます。  今後とも、私どもといたしましてはこういった各方面の御意見も伺い、中央社会保険医療協議会におきます御議論を踏まえまして適正に対処していきたいと考えておる次第でございます。
  22. 菅野壽

    菅野壽君 昨年の診療報酬改定以来、一年半経過いたしました。昨年七月の公私病院連盟発表によりますと、入院マイナス〇・八%、入院外で二・四%、全体で増減なしとされております。また、日本病院会の昨年六月の研究会における説明では、甲表病院入院プラス〇・七%、入院外マイナス〇・四%となっております。また、全国自治体病院協議会の昨年八月の発表によりますれば、入院入院外ともマイナス結論が出ております。これらの改定影響調査では余りプラスの結果が出ておりません。さらに、六十三年度のGNPの伸びは五・七%であるのに対し、同年度の保険医療費伸びは六十二年度の六・六%に比し落ち込んで四・二%となりました。  このような状況を背景に、物価人件費上昇を考慮し、医療団体から診療報酬改定要望が出されております。  また、今月二十二日の読売新聞の夕刊によりますと、薬価基準は一〇%引き下げ、医療費全体で一%弱の引き上げを考えていると書いてありますが、厚生省の御見解を承りたいと思います。
  23. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) ただいま御指摘がございましたように、診療担当関係団体からいろいろな調査を行われました結果を発表なさっていることにつきまして私ども承知をいたしております。  ただいまお答えいたしましたように、診療報酬につきまして、従来から賃金消費者物価動向のほかに、国民医療費動向でありますとか保険財政状況医業経営実態等医療を取り巻く状況を総合的に勘案して改定を行ってきておるところでございます。私どもも、こういういろいろな指標というものを考えながら、今後の診療報酬についてどのような取り扱いをするかということを検討しなければならないと考えておる次第でございます。いずれにいたしましても、現在、中央社会保険医療協議会において議論が進められているところでございますので、その推移を見守りながら適切に対処をしていきたいと考えておる次第でございます。  また、今月二十二日に薬価基準あるいは診療報酬改定についての具体的な率を示した新聞報道がございましたが、私どもではまだいろいろな調査の結果についての集計等を進めておる段階でございまして、現在、厚生省として具体的な数字を持つという段階には至っておりません。
  24. 菅野壽

    菅野壽君 次に、大臣にお伺いしたいのでございますが、自民党医療基本問題調査会の前会長であられました大臣は、本年同調査会中間報告がまとめられた際の会長でもおありでありました。中間報告は、既に報道されましたように、老人医療費について公費負担増額を提案しております。中間報告では、「老人医療費等増加は避けられないが、その負担が公平であると国民が感じられるようにする必要がある。」とし、「老人福祉の確保は、長寿社会における最重要課題であるので、保険者患者本人だけではなく、国や地方も応分の負担増を惜しんではならない。」と明記されています。  したがって、戸井田厚生大臣がおられる限り、今年度公費負担充実は実現するものと考えてよいのでございましょうか。御期待しておりますが、いかがでございましょうか。
  25. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 自民党医療基本問題調査会の中間的な報告の中で私たち結論を出したわけでありますが、御承知のとおり、今老人医療を取り巻く環境というものは非常に厳しい状態にあります。将来の医療の推計を見てみましても、その中に占める割合というものはだんだんお年寄り医療費が大きく膨らんできている状況であります。  一方、お年寄りという立場人たちは、いわゆる現役世代には働いて社会の中に貢献をしてきた層であります。しかし、その保険の中に位置するところは、いわゆる被用者保険の中ではなくして、ほとんどの方々国民健康保険の中へ入っている状況の中において、これからのお年寄り医療を賄う点においては、やはり各それぞれの保険者が公平に負担をして世代間でお年寄りを支えていこう、年金を支えているのと同じようにお年寄り医療というものを世代間の扶養で助けていこうということで、各保険者から公平に負担をしていただこうということになったのが昭和五十八年でございます。  それからの経過をたどってみても、やはり同じ ように医療費の中に占めるお年寄り医療費増加の傾向をたどってきておるわけであります。そこで、保険者方々負担の公平というものをさらに進めるということが実施されたのが六十年の改正であります。  そういう中にあって、同じようにその後の経過も進んできておりますが、現在はその負担按分率は九〇%になり、来年からは一〇〇%、すなわち公平に平均七二ぐらいの負担という方向に今進んできておるわけであります。  そこで、御指摘の問題でありますが、これをいわゆる今言った社会的なお年寄り立場から考えて、やはり公費負担すべきであるというので、スタート時点では国が二〇%、地方がそれぞれ五%、五%で、トータルとして三〇%の負担をするようになった。その負担が、それぞれの健保組合であるとか、あるいはそれぞれの団体に非常に重くのしかかってきているという重圧感というものを感じておられるのは事実であります。  そういう中で、どういうふうな将来的な負担をして、その中に公費がどの程度に組み込まれるべきであるかということに対し、自民党医療基本問題調査会段階では御指摘のように結論をつけたわけでありますけれども、これを実際に我々政府として取り扱っていく上においては、やはり審議会諮問をいたしましてその結論をいただいて、そしてその結論に基づいて政府としては努力をしていこうということでありますけれども、今ちょうど諮問中でありますので、私どもの方からどうこうということは申し上げる段階ではありませんけれども、そういう経過の中で十分に検討してまいりたい、かように思っておる次第であります。
  26. 菅野壽

    菅野壽君 これで質問を終わります。ありがとうございました。
  27. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 新人でございますので大変不手際がございますか、あるいはまた失礼がございますかもわかりませんが、どうぞ御容赦くださいますようにまず最初にお願い申し上げておきます。  さて、きょう私は老人の寝たきり状態を防止するための対策について御質問をさせていただくつもりでございますが、その前にどうしても一つお尋ねしたいことがございます。それは身体障害者家庭奉仕員派遣制度の中で、特に身体障害者の外出時の付き添いを行うガイドヘルパーについてでございます。  この事業は昭和六十三年、一九八八年度から本格化し、現在約七千人のガイドヘルパーがいるというふうにお聞きしております。その対象となるのは重度の視覚障害者及び脳性麻痺等全身性障害者であるというふうにとらえておりますが、それでよろしゅうございますでしょうか。
  28. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 対象につきましては、重度の視覚障害者の方、それから脳性麻痺などの全身性障害者方々を対象といたしまして外出の付き添いをしていただくわけでございます。    〔理事糸久八重子君退席、委員長着席〕  人数は、厳密に言いますと昭和六十二年度で約六千二百人でございます。
  29. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 どうもありがとうございました。  さて、ガイドヘルパーが派遣される場合は、市町村福祉事務所等公的機関、医療機関等、社会生活上外出が必要なとき及び社会参加促進観点から実施主体が特に認める外出をするときであると。  また、派遣事業運営要綱を補うための一九八八年六月九日の社会局更生課長通知によりますと、「「社会参加促進観点から実施主体が特に認める外出」とは、次のような事例をいうものである」といたしまして、「(1)市民大会等各種行事出席のための外出 (2)学校行事への参加のための外出 (3)公的施策によって行われる研修、講座等出席のための外出 (4)冠婚葬祭のための外出 (5)奉仕的活動のための外出 (6)その他上記に準ずる外出」というふうになっております。さらに「派遣を希望する者は、原則として書面をもって実施主体に申し出る」ことになっております。その「申出書」は皆様方のお手元にございますでしょうか。    〔資料配付〕  それをごらんいただきますと、申し出をなさいます方の身体の状況、それからまたどこに行くかという案内図、外出先とその用務、さらに家族全員の性別、生年月日、職業に至るまで、細かく記入する欄がございますのがおわかりになるというふうに思います。  外出の内容を限定するばかりではなく、どのような理由でどこに行くのか、また家族についてまで届け出をしなければならない。そしてまた、この対象者が重度の視覚障害を持った方、そしてまた脳性麻痺などの全身性の障害を持たれた方だということが対象になっているにもかかわらず、その身体状況を記入しなければならないというふうなことなど、もし私自身がそのような立場になりましたときを想像いたしますと、プライバシーの侵害はもとより人権問題というふうなことにまで思いをいたすのではないか。さらに屈辱感、惨めさ、悔しさといったことに耐えられないのではないかというふうな思いがいたすわけでございますが、このようなガイドヘルパー派遣事業の運営に当たっての基本的な姿勢、あるいはまた具体的な項目に関して見直しをなさるお考えがおありでございましょうか。  もしできますれば厚生大臣に、もし御自身がこの立場になられたときにどのようにお思いになるかということも含めて御答弁いただければというふうに思います。
  30. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) ちょっと経緯等を大臣の御答弁に先立ちまして御説明いたします。  ガイドヘルパーは、こういう対象の方々社会参加を促進していくということで設けられた制度でございまして、それに適するような運営をしていくということで私ども努力を続けているわけでございますが、ことし平成元年の八月からガイドヘルパーの派遣の要件につきましても拡大をいたしまして、従来は適切な付き添いが得られないときという基本的な要件でございましたが、今般これを適切な付き添いを必要とする場合というふうに改めたわけでございます。申請書の様式につきましてもこれに対応いたしまして利用者の立場に立って必要な見直しをしていこうということで、現在検討中でございます。御指摘の点も念頭に入れて検討してまいりたいと思っております。  ただ、先ほど課長通知について事例ということで挙げられたわけでございますが、これはそういう必要性といいますか、そういうものを認める場合の原則と、さらに社会参加の促進観点から実施主体が特に認める場合の例示ということでございますので、これに限るものではございませんで、その他これに準ずるものであれば認めますし、また事前に申請書を出していただくというのが原則でございますけれども、非常に緊急の場合には電話等で御連絡をしていただいて事後にそういう申請書を出していただく。そういうような臨機応変の措置をとるという余地もありまして、そういうふうに指導しておりますので御了承いただきたいと思います。
  31. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 先生はイギリスで長い御経験を積んでおられるということを聞いておりますが、私ども日本の国にとっても障害者に対する対応というものについては非常にこれから努力をしていかなければならない方向だろうと私は思います。特に障害者の場合には、私たち健常の者から想像できないほどいろいろな神経を使っておられることはよくわかります。そして、家庭の中でも社会の中でも、そういった意味からすればすべての国民障害者に対して思いやりのある気持ちといいますか、ある意味では制度の上でいろいろ救済するあるいはお手伝いすることも大事なことでありますけれども国民すべての人たちの中に障害者に対する思いやりというような考え方があるとないとでは、金には計算のできない大きな問題があると思います。  特に、私はずっと社会労働委員会なんかをやっていた関係で、私のところの事務所にも聾唖者の 人やなんかたくさん来ます。そうすると、その家庭の中で子供が元気でしゃべっているけれどもその親との対話ができない、そういうような状態の中で親は子供のことを心配している、そういうような状態を私は見たことがあります。  そういうようなことを考えて、これからの社会の中でそういった方々社会復帰をし社会参加をしていく環境づくりのためにはできるだけのことをやるべきであろうというふうな考え方を持っていることは事実であります。  特に、私はそういう障害者方々に対する今の面を見て、政府からお答えしたような、そういった方々の力をかりようと思ったときにいろいろな報告を書かなきゃいけないというようなことも、恐らくその方々が御不自由な方であるということによってさらにそういったことに対する事前の注意というような知っておかなきゃいけないもの、そういったものを知りたいという問題もあるのかもしれないけれども、場合によってはそういったものが人権問題にも触れるだろうということもよくわかります。そういうようなことも、やはり問題は社会の中における障害者に対する目の向け方、こういったものの一つの延長線上にどうしてもそういったものが出てくるような感じがいたします。  そういう意味から、これからの障害者方々に対するいろいろなサービスというものを厚生省といたしましても十分に考えて、サービスが受けられやすいような環境づくりの方向努力をしていきたいと思います。
  32. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ありがとうございました。  さて、今日、日本ではいわゆる寝たきりと言われるお年寄りが六十万人いらっしゃるというふうに聞いております。私、このたび参議院選挙では比例区でございましたので、北は北海道、南は沖縄まで全国を回らせていただきました。これまで講演などで地方に伺ったことはございましたけれども立場が変わりますと本当に今まで見えなかったものが見えてまいります。全く違った風景が見えてまいりました。つろうございましたが、大変勉強になりました。そうした経験の中で、どうしても忘れられないお話がございます。  これはある特別養護老人ホームを訪れたとき、そこでお会いした七十六歳の男の方のことでございます。その方は全身麻痺でいらっしゃいまして、在宅でずっと奥様が介護なさっていたわけでございますが、奥様が介護の疲れでへとへとになってしまわれて病気になってしまわれました。そこで特別養護老人ホームに入所なさったわけでございますが、そのときの御様子を寮母さんから伺いました。全身にちょうどコケのような、あるいは松かさのようなあかがこびりついていて、私たちと同じような普通の皮膚に戻すためには約二年間かかったそうでございます。一遍に取ってしまうと皮膚が一緒にはがれてくるということでございまして、毎日おふろに入れて二年間かかって取ったというお話を伺いました。  そのとき私思いましたことには、やはりここでもっと在宅サービス、特にホームヘルパーさんがもっとたくさんいらしたら、あるいはまた訪問看護が、あるいは機能訓練の場所が、あるいはリハビリテーションの制度がもっと充実していたら、こんな事実を目にすることはなかったのではないかというふうな思いがいたしました。  さらにもう一つ申し上げてみたいことがございます。それは日本の平均寿命は御存じのように世界のトップでございますが、もう一つありがたくない先進国のトップがございます。それは高齢者の自殺率でございます。これは日本国内でも六十五歳以上の方の自殺率はどの世代よりも高いわけでございますが、先進国で比べますと男女合わせますと自殺率が日本が一番高うございます。その高齢者の自殺の原因、動機は病苦、つまり病を苦にして自殺なさるというのが七割を超えております。もう既に老い先がわかっていらっしゃるのにあえて自分で自分の命を絶つ、その思いを想像いたしますと何か胸が痛くなるのでございます。  今、日本では平均世帯人員の縮小化が進みます。また高齢者世帯の増加、あるいはまた老夫婦のみ、おひとり暮らし老人世帯の増加、そういった家族の変容に伴いまして日本の家族は社会的な支えなしにはいつ家族共倒れ、家族崩壊という悲劇が訪れるかもしれない状態に置かれております。社会的な支えの仕組みの不備を妻、嫁、娘という女性が肩がわりしているというのが現状ではないかというふうに思っております。  経済大国とは言われておりますが、長生きしてよかったと安心して老後を暮らせるようになるには、まだまだ解決すべき課題が山積しているように思います。その大きな課題の一つがいわゆる寝たきり老人の問題でございます。ことし八月十五日に、「昭和六十三年度厚生科学研究特別研究事業「寝たきり老人の現状分析並びに諸外国との比較に関する研究」」が発表されました。その報告によりますと、厳密な意味での寝たきりは、在宅、施設において日本がいかに多いかということが明らかになっております。寝たきり老人は地域ケア体制、マンパワーの充実、それを支える医療福祉充実があって初めて減少させることが可能になるということも述べられております。  これまで常々、寝たきり老人はつくられているのだと、やるべきことをやれば寝たきり老人はそんなにどんどんふえていくものではないというふうなことを私申しておりました。そういう私といたしましては、大変に心強い報告書でございました。  さて、老人の寝たきり化を予防する方策として、まず報告書では、寝たきりに導く原因疾患としての脳卒中の発生の予防ということが挙げられております。厚生省の保健事業第二次五カ年計画によりますと、一九八二年、昭和五十七年を初年度として平成三年度を目標に脳卒中の発生率を五〇%減らすというふうに述べられておりますが、現在その目標達成の見通しはいかがでございましょうか。
  33. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 先生指摘のように、五十七年度以降おおむね十年間で脳卒中の発生率を半減させようということを目標にしております。  発生率というものを示す時系列的な統計データがないものですから、私どもは脳卒中の死亡率をもってその評価をしているわけでございます。死亡率で申し上げますと、昭和五十七年から昭和六十二年まででおおよそ三三%減少しております。したがいまして、こういったことを勘案いたしますと、今後第二次の五カ年計画を計画的に進めることによりまして、目標年次である平成三年度までにはおおむね五〇%減というその目標を達成できるのではないだろうかと考えております。
  34. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 次に、いわゆる原因疾患の発生後、その障害予防ということで、入院後のできる限り超早期からのリハビリテーションが重要であるということもこの報告書に述べられておりますが、超早期のリハビリテーションが可能となる、つまりリハビリテーションの専門医、PT、OTを保有するリハビリ科を持つ我が国における病院の数、あるいはまたその病院の数は病院全体の数のどのくらいの割合を占めているかという数字はおわかりでございましょうか。
  35. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) リハビリテーションという診療科名はまだございませんので、理学診療科がこれに大体匹敵するだろうということで数字を申し上げますと、昭和六十三年に約九千の病院がございますけれども、そのうち理学診療科を設けている病院が三千三百七十五、全体の三七・八%でございまして、そういう今お尋ねの趣旨からいいますと、まだまだ普及が足りないという現状にあろうかと思います。  それから、リハビリテーションの専門医というのもまだ制度としてございませんので、数字は現在手元にはございません。  ただし、PT、OTでございますけれども、現在病院に勤務しておるPT、理学療法士が七千二十四名、昭和六十三年の数字でございます、作業療法士、OTが二千六百四十八名ということで、年々リハビリテーション、脳卒中に限りませんけれども、各種のリハビリテーションに対する対応 は向上してきているとは思いますけれども、なおなお一層努力を要する部分だと考えております。
  36. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 どうもありがとうございました。  やはり諸外国との対比というのも大変難しいとは思いますが、私の持っております統計によりますと、人口当たりのPT、OTの保有率というのはスウェーデンなどでは人口十万当たり七十・五ということになっておりますが、我が国の場合は理学療法士で五・八、作業療法士で二・五というふうになっております。今お答えいただきました数をお聞きいたしましても、非常にまだリハビリテーション体制、特に専門スタッフを擁したリハビリテーションの体制というのはまだまだ不十分であるというふうに認めざるを得ないというふうに思います。この数をもう少し聞きたいところでございますが、時間がございませんので先に進ませていただきます。  さらに、障害固定後の悪化を予防するために、退院後の生活というものが非常に重要になってまいります。退院後の生活そのものがある意味ではリハビリテーションと言うこともできるかとも思いますが、機能低下を来さないためには、できるだけ身近な地域でリハビリテーションを受けられる場と機会ということが必要になってまいると思います。  よく私はホームヘルパーさんの集いなんかに伺いまして、ホームヘルパーさんが非常に悲しそうにおっしゃるこういう言葉をよく聞くのでございます。退院なさって、自分たちが家庭にお伺いして、そのときにはちゃんとおはしを持っていられたお年寄りが、もう自分たちが一カ月通っている間にそのおはしを満足に持てなくなり、さらにもう少し進むと今度はスプーンになってしまって、そのまたもう少しするとスプーンも持てなくなってしまうと。自分はそういう訓練をしてあげる資格はないし、自分が病院に連れていくには余りにも病院は遠過ぎる、本当につらいのよというふうなお話を承ります。  そういう現状があるわけでございますが、今病院リハのことを伺いましたけれども、地域リハビリテーションの普及率というのは病院リハビリテーションよりはもう少し高くないのではないかというふうなことが推察されるわけでございます。  と申しますのも、これは関西のある自治体、これは名前を言った方がよろしいのでございましょうか、大阪府の福祉部の保健福祉政策室が平成元年、ことし二月十五日から三月十日までになさいました調査結果がございます。それによりますと、その地域におけるリハビリテーションを実施している施設というのは百四十三施設中わずか四十九施設、三四%にすぎない。さらに一カ月当たりの実施日数というのは、わずか五日以下というのが一番多くて三四%、それから十六日から二十日というのが二九%、二十日以上というのはわずかに一四%にすぎない。さらに在宅訪問を実施している施設というのは一四%でしかない。さらに、PT、OTが同行している訪問訓練を実施している市町村は二一%でしかなかったというふうな結果が出ております。  さて、第一次保健事業計画におきましては、昭和五十七年から五年間に保健所におけるPT、OTの配置数を四十九人というふうに記載していらっしゃいます。さらに第二次保健事業計画におきましては、平成三年度までに百二十人のPT、OTを保健所に配置するというふうに書かれておりますけれども、私の持っております資料によりますと、一九八七年、昭和六十二年三月末におきまして保健所にいらっしゃいますPTは十三名、OTが四名、合計十七名、充足率は三五%ということになっておりますが、現在どのようになっておりますでしょうか。
  37. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 六十一年に四十九名の整備目標で十七名というのは御指摘のとおりでございまして、六十三年度末で七十七名に対しまして二十二名ということで、非常に達成率が悪いというのが現状でございます。
  38. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 さて、病院などの施設、さらに地域におきましても専門スタッフというのは非常に少ないということを申し上げてもいいのではないかと思いますが、医療関係者審議会理学療法士作業療法士部会におきましてこれからの需給計画というものが出されておりますが、平成元年度を目途にしてPT、OTの養成力を百人増加させる必要があるという意見具申がなされておりますが、この進捗状況はいかがでございましょうか。
  39. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 御指摘のように、百人程度ずつPTもOTもふやして、平成七年に理学療法士を一万三千人、作業療法士を七千五百人ということで目標をおつくりいただいたわけでございますが、それに基づいて私ども現在養成学校の定員の増を図ってまいっておりますが、六十三年の増は実は理学療法士で二十五人、作業療法士で五人ということで、まだわずかでございます。平成二年には、今書類も来ておりますので、この目標は達成できると思いますが、全体的にこの数字でいいかどうかということももう一遍私どももそろそろ見直さなくてはいけないのではないかということも考えております。非常になかなか現実に足りない部分もありまして、先ほどお話にございました地域リハビリテーションと申しますか、保健所にも残念ながら二十二名程度しかおらないということでございますし、それも地域的には非常に少ない、一県で一名とかそういう程度でございますから非常に足りない状況でございます。  寝たきりをなくそうという観点からすれば、こういうことではなかなか対応し切れない部分もあろうかと思いますが、保健所に直接雇うというのはなかなか定員の問題とか実際上難しいようなこともございます。病院のPT、OTを非常勤の形で兼務していただくなりいろいろ工夫をしてもらわなくちゃいけないということで、先ごろ各県の衛生部長に来ていただきまして、このことだけではなかったわけですけれども、FT、OTの増員についてもっと力を入れてほしいということでお願いをしたところでございます。
  40. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 どうもありがとうございました。  確かに、機能訓練というのはただ単にPT、OTだけが必要というわけではございませんが、非常に重要な役割を果たすスタッフでございます。したがいまして、病院から出向ということも今おっしゃいましたようにとても重要かとも思いますが、やはり病院にいらっしゃいます専門スタッフというのは、その病院入院あるいは通院の患者のためのスタッフでございます。そういたしますと、地域の方に出向をなさいますとその分だけ病院での業務ということに対するいろいろな弊害も出てくるかと思います。ぜひとも今の言葉のように、早急にPT、OTなどのスタッフを充足させるという方向でお取り組みいただければというふうに存じます。  次に御質問続けさせていただきたいと思います。  先ほどから申し上げております保健事業第二次五カ年計画によりますと、機能訓練の場所を昭和六十二年度で約二千九百カ所、昭和六十六年度、これはもう昭和じゃなくて一九九一年、平成三年でございますが、約五千カ所というふうに記されているわけでございますが、場所をふやすということはもちろん言うまでもなく必要でございます。しかしながら、通所のための移送手段というものが確保されるということはさらに重要なことではないかというふうに思います。  私、先ほど大臣もおっしゃってくださいましたが、イギリスに住んでおりましたときには、老人センターあるいは老人の通院専門のデイホスピタル、あるいは老人ホーム、老人病院などでボランティア活動を大分しておりました。そのときに感じたことでございますが、特にデイセンターあるいは通院専門のデイホスピタルの場合では、どの施設もすべて送迎のためのアンビュランス、これは日本語で言いますと移送車と言っていいのでしょうか、日本語は何と言うんでしょうか、移送のためのミニバスといいましょうか、そういうもの を必ず施設は保有しておりました。私はそのミニバスに乗りましてお年寄りのお宅まで伺って、そしてそのバスにはちゃんとポータブルなトイレからあらゆるものが備えつけられております。わずか十分か二十分間の距離ではございましても、そういう設備が整った移送の手段というものがきちんと整えられています。これが私にとりましては当たり前の風景でございました。  私は日本老人問題を知ったわけではなく、イギリスに行ってしまったものですから、私にとっての当たり前の風景というのはどうしてもイギリスや北欧の風景でございましたので、日本に帰ってまいりまして、やはりボランティア活動をやっておりましてこの適所のためにほとんど手段がないということを知りまして、本当にショックを受けたわけでございます。お体の不自由な方がどうやって御自分でいらっしゃれるのかなと。そして御家族もへとへとになっていらっしゃる。寝たきりに近い方でございますと、どんなに体重の軽い女性の場合でも、その方を背負うというふうなこともこれは大変でございます。男性はもう出勤して会社に出てしまっていらっしゃいます。残っているのは女性でございます。女性がその寝たきりの方をおんぶして通所するというのは、これは大変な至難なわざでございます。  そういう移送手段につきましてどのような御対策を今考えていらっしゃるのか、その点をお伺いさせていただきたいと思います。
  41. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 御指摘のように、送り迎えというのが大切であるというふうに認識をしております。しかし、今までそういう体制は整っておりませんでした。平成二年度から私ども寝たきり老人ゼロ作戦と称しまして総合的な対策を講じたいと思っておりますが、その中でそういった送迎サービスも計画的に整備をして実施してまいりたいというふうに考えております。
  42. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 どのくらいの予算をお考えでいらっしゃいますか。
  43. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) とりあえずその送迎サービスにつきましては、平成二年度予算要求のものでございますが十五億四千万円ほどでございまして、五カ年計画で計画的な整備を進めたいと思っております。
  44. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 どうもありがとうございました。  とにかく第一歩がスタートされたということでございますので、さらにそれを充実させていただくことを心からお願いしておきます。  さて、次の質問に移りたいと思います。  先ほど引用させていただきました厚生科学研究特別研究事業の報告によりましても、我が国におきましては、在宅だけではなく、病院あるいは特別養護老人ホームなど施設においても寝たきりの御老人が非常に多いということが記されているわけでございます。これも私、日本に帰ってまいりまして非常に驚いたことの一つでございました。  私にとって当たり前の風景というのは、いわゆる日本の特別養護老人ホームに当たりますナーシングホームにおきましても、昼間はお年寄りはベッドにはいらっしゃらないわけでございます。車いす、あるいは時には寝台車で――寝台車というのは列車ではございません、何といいましょうか、車のついたベッドでございます。それで寝たまま公園などを散歩なさっているという、これはイギリスだけではございません、北欧、それからアムステルダムなんかでも日常的に見る風景でございました。  したがいまして、昼間からお寝巻きを着たままベッドに横たわっていらっしゃる施設というのにある婦人雑誌のインタビューで初めて伺いまして、本当にびっくりした記憶がございます。  今回のこの厚生省報告を拝見いたしましても、ベッドで体を起こすことはできるけれどもベッドを離れることのできない方と常に寝たままという方、つまり一日じゅうベッドにいる方の割合というのが、この報告書によりますと、スウェーデンでは四・二%、アメリカが六・五%に対しまして日本の特養では四七・七%、老人病院では六四・七%というふうに数字が挙げられております。これは看護あるいは介護のマンパワーの決定的な不足ということに大きな原因があるのではないかなというふうな気がするわけでございます。一々お起こしして、そしてあるいはちょっとびろうなお話でございますが、おむつではなくポータブルトイレであれあるいはまたトイレに、御老人というのは状況が一日のうちでもさまざまに変わってまいります。そのさまざまに変わる状況に応じてそういうさまざまな対応をするということは、やはりこれは基本的には十分なマンパワーがなければできないことではないかというふうにどなたでもお考えになると思います。  ところで、我が国の場合は特別養護老人ホームで、例えば定員百名の場合には寮母さん、看護婦さんを合わせた配置というのは二十五人というふうにとらえておりますが、それでよろしゅうございますか。
  45. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 特別養護老人ホームで百人定員の場合に、お医者さんが一名、それから看護婦さんが三名、それから介護職員が二十二名ということでございまして、それらを合わせますと二十六名、そのほかに生活指導員であるとか機能回復訓練指導員であるとかを置くようになっております。
  46. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 では寮母さんとそれから看護婦さんで二十五名というのはそれでよろしゅうございますね。  この百人をわずか二十五人、この場合には多分夜勤明けの方もいらっしゃると思いますから、実際に百人の方を介護なさるのはどこの老人ホームに伺いましても十二、三人であるというふうに承っております。特に夜の場合ですと二人から三人というふうなマンパワーだというふうに伺っておりますが、こういう国際的に見ましても非常にまだマンパワーの割合が低いということは、これはどなたも認めていらっしゃることだと思います。  こういうふうな介護、看護という人の労働に対する日本における評価の低さということは、診療報酬の算定方式にもあらわれているような発想ではないかと思います。つまり、お薬とか検査というものに高い点数が与えられまして、診断、これはお医者さんの方でございますが、看護、介護といった技術に対する報酬が非常に低く抑えられています。特にリハビリというのは、これはお薬を使ったりするということではございません。専らこれは人の労力、つまり技術ということに負わなければならない部門でございます。そのリハビリテーションが不採算部門であるというふうによく言われているというのもこういう発想から出ていることではないかというふうに思うわけでございますが、寝たきり老人を減らすためにはこうした発想の転換、さらにシステムの転換ということが必要かというふうに私は思います。  いわゆる寝たきりゼロ作戦というふうな作戦を実施し実効あるものにするためにも、マンパワーの確保の基準、目標というものを、先ほどお答えの中にもございましたけれども、大幅に変える必要があるかと思いますし、また診療報酬の算定方式というものを変えていくという具体的な方策が今必要かと思いますが、その点に関していかがでございましょうか。
  47. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 御指摘のように、看護体制とか介護体制につきましてはより充実をしていくということが必要だと思っております。したがいまして、まず寝たきりにしないとかさせないというふうに考えてもらう、御指摘がありましたように発想をまずそのようにしてもらうということが必要だと思っておりますし、それを支えるような在宅から施設全体にわたってのシステムづくりが必要だと思っております。そしてまた、そういった現場で働く人たちが十分に処遇されるように、そういう対応が必要だと思っておりますので、私どももこれから引き続いてその辺の充実に努めていきたいと思っております。
  48. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 大変に希望が感じられるようなお答えでございますが、なるべく速やかに具体的な方策に着手していただきたいということをお願いしておきます。  次に、これはちょっとだけ触れさせていただきたいのでございますが、老人ケア、寝たきりの御老人を再生産しないためにはどうしても住宅というものが非常に大切でございます。他のいわゆる福祉先進国におきましては、老人ケアの中心というものに住宅政策ということが据えられております。例えば我が国におきましても、ちょっとした段差、日本の家屋というのはお部屋を非常に小さく切っておりまして、段差がいっぱいございます。二センチぐらいの段差でも、お年寄りがつまずいて転んだ場合には骨折とか、それも非常に大きな骨折になりやすいわけで、それから寝たきり、さらに寝たきりが続きますと、ぼけというふうな、さまざまな社会的な経費のかかる状態にだんだん陥っていくわけでございます。日本の住宅の問題というのは、これは狭さというだけではなくさまざまな問題をはらんでいると思います。  スウェーデンにおきましては、御承知のように一九七五年に建築法を改正いたしまして、いわゆるバリアフリー条項というものを入れております。ということは、一九七七年七月一日以降家を建築する場合には、高齢者、障害者が安心して暮らせるようなそういうさまざまな具体的な規定というものを設けたわけでございます。  寝たきりゼロ作戦というものを絵にかいたもちということにしないためにも、やはりこれは厚生省のみではなく、建設省、さらには文部省その他、各省庁がやはりどうしても協力体制を組まねばならないというふうなことは、もうこれはどなたもがお考えになることだと思います。さらに、医療福祉におけるマンパワー、あるいはまた在宅サービスと施設サービスなどの密接な連携がどうしても不可欠であろうかというふうに思います。特にリハビリテーションというのは、御承知のように専門医やPT、OT、これはまた日本でもっともっと少ないのにST、スピーチセラピストでございますが、そういったさまざまな職員がチームになって初めて効果が上がるリハビリテーションというものを考えますと、どうしてもいわゆる連係プレーということをこれから重視していかなければならないと思います。  そこで、寝たきり老人ゼロ作戦を実効あるものにするために、例えば寝たきり老人ゼロ作戦推進本部ともいうべきものを他省庁の協力を厚生省がお求めになっておつくりになるようなことはいかがでございましょうか。そしてまた、それを地方自治体版というふうなものをつくるための奨励、助成、支援というふうなことはお考えになることはできないでございましょうか。  いわゆる縦割り行政の弊害というものが叫ばれてから非常に久しいわけでございますが、ばらばらな対応をしていく、あるいはばらばらに対症療法をやっていくということは、かえって社会的経費の増大につながることではないかというふうに思います。どこにどのようにどのくらいお金を使うのか、そのことはまさに文化のバロメーターである。日本は経済大国とは言われておりますが、いわゆる国としての品性、風格ということについては余り評判はよくないように見受けております。そういったことも考えまして、最後に大臣の御所感をお伺いさせていただきたいと思います。
  49. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 御指摘のとおり、特に先生はイギリスでの御体験等を交えてのお話で、私たち日本が今長寿社会に向かって取り組まなければならない大きな方向性がある程度その中に含まれているような感じがいたします。  先ほど来お話がありましたようないわゆるマンパワーを整備するということは、まず人がやるのですから必要なことであります。しかし、そういったものをそれを利用する人たちが知らないでいるというと宝の持ちぐされになるわけでありますから、やはり国民挙げてがこういったものに関心を持って、新たにつくられた制度というものが十分に利用されるようにしていかなければならない、かように思います。  先ほど私も聞いてそうだなと思ったことの一つは、日本は平均寿命が非常に長くなったけれども、自殺率も世界一だというお話がありました。これはやはりお年寄りというものがいかに孤独であるかということが大きな問題だと思います。特に、病を得て床について寝たきりでいる、しかもそれが家族と離れてひとりでいるような環境の中で生活している人はどうしても思い詰めてしまいます。でありますから、そういったときにホームヘルパーなりなんなりがちょいちょい行って激励をしてあげる、あるいは頼まれたことをしてあげる。そういうようなことによって、自分は社会から孤立していないんだという意識を持つようになるんだろうと私は思うんですね。  そういうようなことで、これからの日本の中では大きな意味でマンパワーが整うということも非常に大事なことだけれども、それを利用する制度を孤立していて知らないというようなことでなく、みんなに知ってもらうということが大事だ。  そこで、今御提言のありましたように、私どもはやはり総合調整推進会議というような中心があって、そこに県には県の窓口として高齢者総合相談センターとか、さらに県から町村という一番身近なところに高齢者サービス調整チームというようなものをつくって、そこに常に連絡をとりながら、お年寄りが孤立をしない、あるいは病弱である人たちが孤立をしない環境づくりをしていく。その環境づくりの中にあっても、知らなければそういったものを利用することができませんから、そういった人たちにすぐわかるような、連絡もとれるような方法を考えていくというようなことが私は必要だと思っておりますので、そういうよな方向でこれから着実に一歩一歩前進をしていたい。  もう一つ私は大事だと思うのは、発想の転換と言いましたね、その発想の転換というものがまに必要だと。その発想の転換は、やはりそういった設備をするところだけが発想の転換をするんではなくして、やはり国民総ぐるみでそういったことに対する理解度を高めていく。また病弱なお寄りに対する目も、国民一人一人がそういったものに常に関心を持っていく。何かのときには、毎日考えているわけじゃないけれども、何かのときにはお年寄り障害者人たちに会ったときにぱっと自然に動いていく方向、そういった方向国民一人一人がみんな持つべきだというような意味で発想の転換も私は必要だ、こういうふうに考えており、御指摘のことは大変参考になりました。
  50. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 どうもありがとうございました。御協力、本当にありがとうございました。
  51. 堀利和

    ○堀利和君 きょうは二度目でございます。障害者問題についていろいろお伺いしたいと思っております。  大臣は厚生行政の大変なエキスパートでございまして、そういう意味では私は素人でございますので、本格的な論戦になりますと全く太刀打ちはできませんけれども、当事者である障害者として頑張りたいと思いますので、よろしく申し上げたいと思います。  きょうは手話の問題と障害児の就学先の問題について取り上げたいと思っております。  その前に、大臣に基本的な考え方をぜひお伺いしたいと思います。  隣の芝生はよく見える、美しいと昔から言われますけれども、どうも私たち自身、障害者立場からいいましても、諸外国、先進諸国の福祉といいますか、そういう対策が何やら我が国よりもいいもののようにどうしても見えてしまうわけですけれども、本当に私たち日本障害者は果たして幸せなのか不幸せなのか、そんなふうなことを考えさせられてしまうわけです。  国連の方でもいろいろ人権に関する宣言、権利に関してのいろいろな宣言が採択されたりしております。十一月二十日、つい先日ですけれども、新聞にも報道されておりましたけれども、子供の人権条約が採択された。今後は、各国がそれを批准するかどうか、我が国政府がそれを批准するかどうかということで国会でまた問題になりますけれども。そういうことで、とにかく子供はこれ まで保護される対象と見られてきましたけれども、そうではなくて、主張を持ち権利を有するものだという認識に立ち至ったと思うわけでございます。特に、表明する権利ということも中にたしかあったと思います。そういうことでは、本当に子供自身の主張、権利というものを私たち大人が尊重しなければいけない時代になったと思うわけです。  また、一九八〇年にはユニセフが、家族及び地域社会の資源を積極的に提供して、障害児も自然な環境の中で育つように援助しなければならないというような採択もしているわけです。そういう点を考えましても、やはり子供自身には当然権利があり、かつ、家族が住んでおります地域社会で自然な環境の中で育つのが望ましいということもまた言えるかと思うわけです。  そして、日下部先生お話、そして大臣の御指摘もありましたように、高齢者の問題を見た場合、やはり先進諸国の中で一番の長寿国にはなったけれども、六十五歳以上のお年寄りの自殺率が一番高いということもあり、そういうことではやはり高齢者あるいは障害者が安心して地域で暮らせる対策というものが重要だと思うんです。  しばしば例にも出されますけれども、北欧、特にスウェーデンでは人口十万人に対してホームヘルパーは千人ほどいるということで、我が国でも厚生省がホームヘルパー五万人体制を目指して現在努力されているところですけれども、人口十万人に対して、はっきり数字はわかりませんけれども、二十人ぐらいでしょうかと思うんですけれども、そういう点で、数の上から、マンパワーの問題からいってもまだまだというふうにも思います。そういう点で、高齢者の問題を見ても先進諸国に比べて我が国は一歩も二歩もおくれているかに思っているわけでございます。  また、最近、アメリカからの紹介で私も知ることができたんですけれども、重度の知恵おくれの方、精神薄弱者の方が施設で生活するのではなくて地域社会で生きるべきである、つまり箱型福祉からニーズ型福祉へ向かうということなんですね。十人いれば十人一人一人が違うわけですから、そういった個性も踏まえて、きめ細かなニーズを充足するような対策が組まれているということなんです。そういうことで、重度の知恵おくれ、精薄者の方がグループホームを中心にしてコミュニティー、地域の中で暮らしている。施設の中で訓練をするんではなくて、まさにコミュニティー、地域の中で訓練、そして実際にもうそこで生活しているということが行われているというようなことを最近ある書物で知ることができたんですけれども、そういうことを考えまして、非常にうらやましいというように感ずるわけです。  そういうことから、日本障害者あるいは高齢者は本当にどうなんだろうかというふうに考えさせられてしまうわけですけれども、例えば障害者の問題について言いますれば、厚生省の方でもここ最近、地域で障害者を何とか生活できるような対策を組もうということで、来年の概算要求の中を見ましても、例えば授産所のいわゆる分譲方式を取り入れたり、身体障害者福祉ホームの基準を五人程度にしたり、あるいはことしスタートして百カ所になったグループホームを来年度は二百カ所にふやすということで、確かに地域社会障害者が生きられるようにという対策が見られるわけではありますけれども、どうしてもやはり隣の芝生ばかり気になってしまいまして、そういった先進諸外国の福祉を見た場合に、あるいはその方向を見た場合に、果たして我が国障害者対策高齢者対策においていわゆるノーマライゼーションの理念が具体化されているのか。地域の中でお年寄りも子供も障害者もみんな一緒に生きていく、そういうような対策、そういう方向に果たして政府が、厚生省が踏み切ったのかどうか、この点についてぜひ大臣のお考え、御意見をお伺いしたいと思います。
  52. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 先生の御指摘、隣の芝生はよく見える、私は、日本の芝生は非常にいい芝生であるけれども、先ほど御指摘がありましたように、いわゆる発想の転換というものが必要である、そういうふうに考えて、決して劣っていない。例えば医療の面をとっても非常に進んでいる。  ただ一つ私どもが考えてみなきゃいけないのは、入院したら寝ていればいいんじゃなくて、先ほどのお話のように保健という、とにかく病気そのものを治すと同時に、今度はリハビリを含めた寝たきりにならない状況をつくっていくというような発想の転換というものが必要であると同じように、やはり障害者に対する問題についても私は日本国民の中に発想の転換が一つは必要だろう。幾ら設備を整えていい状況をつくっていても、やはり皆それぞれ周りにいる人たち障害者方々に対する見方がもしもそういった十分な思いやりの気持ちがなかった場合には、やはり制度だけでは、物だけでは解決がつかない大きな問題があります。  この問題をどうやって我々は展開していったらいいのだろうか。日本の国は経済的に非常に成功した。そのためにかえって、むしろそういった人間が本来的に持っていなければならないものがどうも失われているんじゃないか、こういうようなことも私は考えざるを得ないわけであります。  でありますから、確かに日本のそういった意味ではおくれている面を早く取り戻すために、まず一つは、マンパワーの問題等に対する充足もすると同時に、そういったものの利用設備、またその環境の中で生活していく障害者自身の気持ち、こういったものを十分に捕捉していけるような体制をとっていかなければいけないのじゃないか。そうでないと、やはり物だけが栄えて心が沈んでいってしまう。したがって、そういう中で物だけをまた求めていくということのあり方も、私はそれだけでは解決しないんだと。  そういう意味で、先生御自身がそういう障害を持っておられる、そういう体験に基づいていろいろな御提言をいただくことは本当にありがたく思っております。日本の政界の中にもかつては高木正年という目の全く見えなかった人が大正時代におられたことを私は知っております。そういった方々が残してきた歴史というものも貴重であるし、今回堀先生がこういう障害を持たれて参加をされたということは、そういう意味では大きな役割を果たしていただくことを心から願います。
  53. 堀利和

    ○堀利和君 ありがとうございます。  それでは、具体的な質問に入らせていただきます。  手話の問題なんですが、二日前の二十六日に厚生大臣公認の手話通訳士試験が実施されました。第一次としてペーパー試験が行われて、さらに合格者は来年になりましてから第二次の実技試験が行われる、それによりまして手話通訳士がこの世の中に初めて登場するということになろうかと思うんです。  それで、今の現状を見て、手話通訳士あるいは手話通訳者といいますかがどんなふうになっているのかについてお伺いしたいわけですけれども、これまでにも社会参加促進事業として手話奉仕員養成派遣事業などが各自治体で行われてきているわけです。こうした現状と、今後、手話通訳士試験を合格された資格を持った通訳士がふえてくるわけですけれども、ただいまの現状、そしてそれによる今後の見通しについて、ごく簡単でよろしいですけれどもお伺いしたいと思います。
  54. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 今、手話の御質問がございました。聴覚障害者の方の福祉増進の観点から、厚生省として種々の施策を推進しているわけでございます。  まず、昭和五十四年から標準手話研究事業というのを財団法人の全日本聾唖連盟に委託いたしまして、標準手話の開発といいますか、研究と普及を図ってまいっておるわけでございます。また、それらについての成果につきましては、社会福祉法人の聴力障害者情報文化センターに対しまして普及教材の貸出事業の委託実施というものも開始しております。これはビデオなどでございます。  それで、こういう手話通訳の方でございますけれども、現在手話ができます方は約三万人おられるわけでございます。これらにつきましては、ある程度手話通訳のできます方が二千人おられまして、非常に程度の高い方は現在三百人程度おられるわけでございます。こういう聴力障害者情報文化センター等を中心にいたしまして、今後ともそういう手話通訳のできる方をふやしてまいりたい、かように考えております。
  55. 堀利和

    ○堀利和君 確かに、聴覚障害者にとっては手話通訳の問題は大変大きな問題であるわけです。ただ私が問題にしたいのは、資格試験がこういう形で実施されまして、技量、技術の高い手話通訳士がせっかく生まれても、その手話の事情からいいまして、全国各地まだまだ地域的にばらつきがあるというふうに思っております。そういう意味では、標準手話を基準とした試験に基づいた手話通訳士が世の中にたくさん出てこられても、当の聴覚障害者自身が果たしてそういった標準手話を習得する機会があるのかどうか、今聴覚障害者自身でも非常にそこに戸惑いがあるわけですね。その点が大きな問題だろうと思うわけです。  そして、聴覚障害者社会人としては、トータルコミュニケーションとしていろいろなコミュニケーションの方法を活用しているわけですけれども、筆記通訳もそうでしょうし、口話もそうでしょうし、そういった中でやはり手話というのは非常に大切なものだろうと思うんですね。コミュニケーションの手段として社会生活をするに当たり私は非常に重要なものだと思いますけれども、その点、手話のコミュニケーションの手段としての重要性をどうお考えでしょうか。
  56. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 一人の人間として聾唖者の人が社会で生活しようとした場合に、自分の意思をどうやって伝達するか、相手の意思に自分がどういうふうに反応することができるのか、人間として一番大切な最も原点の中に障害を持たれているということは大変お気の毒であります。  そういった意味で、できればみんなが、例えば小学校、義務教育の段階ぐらいで、イロハニホヘトとかアイウエオとかいう言葉の一つ一つがもし手話でもってつくり上げられれば、そういったことだけ覚えていれば話ができるというようなことも私は前に考えたこともあるんです。しかし、現実にはこの手話というものがそういう仕組みになっていないで、いろいろな漢字をそのまま対応したところもあるし、いろいろな情報で人々の中では違った部面もあります。  したがって、そういった十分に話のできる人たちを少しでも早く余計つくって、その地域の中で障害者が行動する上においていろんな意味情報が十分に伝わるようにするという意味で、非常に大事な基本的に必要なことだろうと私は思っております。  先ほどもお話ししましたように、私どものところへたくさんのそういった聴覚障害の方々が来ます。結婚して子供もいます。その子供との意思というものがあうんの呼吸といいますか態度でもってわかるものもあるけれども、やはりいろんな意思の伝達がなかなか困難だという状況を見ているというと、その障害のある人以上に子供が気の毒に思えたことを何回も私は体験をしておりますから、この問題が非常に重要な、しかも社会の中で十分に手話というものが適用されていかれることを心から願っているし、そういう方向努力もしていこうというふうに思っております。
  57. 堀利和

    ○堀利和君 私がお尋ねし、また言いたかったのは、まず聴覚障害者の成人、社会人になった方々にとって、生活する際にコミュニケーションの手段として手話が大変重要なもので不可欠なものだということがまず一点あると思うんですね。  さらに重要なことは、聴覚障害者としてのアイデンティティーの問題としても大変重要なことだと思うわけです。それは単なるコミュニケーションの手段としての手話ではなくて、聴覚障害者としての自信、プライド、そういった意味で精神的な側面においてもやはり手話というのは非常な重みを持っているというふうに私は思うわけです。  障害者の文化というものがあるのかどうか、これは大変大きなテーマではありますけれども、ある意味では手話というのは聴覚障害者にとっての一つの文化といってもいいのではないかというふうに思うわけです。そういう意味では、単なるコミュニケーションの道具としての、あるいは手段としてのものではなくて、そういった聴覚障害者の人間形成といいますか、障害者としての生き方の根幹にもかかわる問題だろうというふうに思っています。  私の経験からいえば、例えば飲んだときに仲間ともときどき議論をする中での一つの話なんですけれども、全盲がアパートでひとり暮らしているときに、果たして夜電気をつけるべきかつけないでいいのかということなんですね。全く見えない全盲にとっては電気をつけることは意味ないし必要ないわけで、むしろ電気代だけがかさむということではよからぬことなんですけれども、そういう意味では全盲は全盲、目の見えない者のひとつの暮らしというものがやはりあると思うんです。目の見える人とは違った暮らし方、広く言えば文化というものがあると思うんですね。しかし同時に一方では、一人の生活者、暮らしている人という観点から見れば、電気をつけて、このアパートのこの部屋で私がひとり暮らしていますという、いわゆる人としての一つのあかしといいますか暮らし方というのもまたあると思うんですね。ですから、果たして電気をつけなくてもいいのかどうか、この辺もそういう意味では私たち障害者自身にとっても大変難しい問題ではあるわけで、障害者として、あるいは一人の市民といいますか人間としてこういう二重の自覚というのがあるというふうに私は思うんです。  そういう点でのことからいいますと、やはり手話というのも聴覚障害者にとってのアイデンティティーという側面も強くあるんじゃないかというふうに思うわけです。  そういう重要な手話でもあるという認識の上に立ちつつ、同時に資格試験が実施されていくわけですけれども、その場合の標準手話というものを聴覚障害者がどんなふうに習得しているのかということがやはり大きな問題になろうかと思うんです。厚生省の方でも社会参加事業として各自治体に対して手話等を学べるような聾唖者の日曜教室開催事業というのもメニューの中に入れておりまして、頑張っていらっしゃるんですけれども、私としては、基本的には全国各地の聴覚障害者が標準手話を学ぶためには何といっても教育の場で、聾教育の場で手話を習得するのが最もベターなことだというふうに思うわけです。それは、東北の方の手話と九州の方の手話とはまだまだ違いが若干あります。これをやはり統一、標準化した手話を、北海道の人も東北の人も九州の人も聴覚障害者がそれを習得するということは、やはり何といっても教育の場だというふうに思うんですね。  もちろん、ことしのように新しい言葉として例えば平成というものが出てきたときには、これはもう社会人、成人としての聴覚障害者は学校教育の場ではありませんから、そこでは厚生省がそういう新しい手話をすべての方々に習得できるような機会というものをまた保障していかなければいけないと思うんですね。こういう保障のあり方について、私はあくまでもそれは公的な機会、公的な場でやるべきだと思うんですけれども、まず厚生省としてどういうふうにお考えか、お聞きしたいんです。
  58. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 厚生省といたしましては、先ほども説明いたしましたように、まず標準手話の確立ということにつきまして、関係の財団法人ないしは社会福祉法人等の御協力を得ましてそれを進めてまいりたい。さらにそれを普及するというのも、これを地方公共団体を通しまして全国に進めてまいりたいということでございます。その普及につきまして、聴覚障害の方々ができるだけその機会に接しられるというために現在やっておりますことは、今先生もおっしゃいました聾唖者日曜教室の開催事業、これは障害者の社 会参加のメニューの中に入っているわけでございますけれども、これを中心にして実施してまいりたいというのが現在の方向でございます。
  59. 堀利和

    ○堀利和君 そこで、文部省の方がいらっしゃっていると思いますけれども、聾学校、聾教育の場で手話が認められていないというふうに認識しているんですけれども、現状がどうなっているのか。全国の聾学校において手話を認めているところ、いわば授業として取り入れているところがあるかどうか、その点ちょっとお伺いしたいんです。
  60. 鈴木宏

    説明員(鈴木宏君) 聾学校におきましては、言葉が耳から十分に入らないで言葉を身につけていない児童生徒に対しまして、日本語としての言葉を身につけさせることを主眼とする教育を行うことが必要であるということで、聾学校におきます言語の指導につきましては、残存する聴力の活用を目指した聴能訓練とか、あるいは音声言語による口話法による指導を中核として行われております。  御指摘の手話の件につきましては、コミュニケーションを円滑に行うという上では大変有益な方法でございますので、そういったことでございますけれども、それをより有効に使用するためには、まず言葉を豊かにしなければならないということがあるわけでございます。  したがいまして、現状を申し上げますと、言語の習得期におきましては、言葉の習得及び言語概念の形成になじむような口話法などの方法を用いる、そういったことで教育をいたしておりますけれども、中学部及び高等部の段階におきましては、コミュニケーションの活動に関する指導の一層の充実を図ることが必要であるというふうな観点から、手話の指導の推進に努める必要があるというふうに考えているところでございます。  今御指摘のありました、具体的に手話を授業でどう取り入れているかということにつきましては、正式の授業の方法として先ほどお話しのありました手話を取り入れてやっているという例は今のところは聞いておりません。
  61. 堀利和

    ○堀利和君 私は、先ほど言いましたように、標準手話というものは全国各地のすべての聴覚障害者が習得しなければならないと思うんですね。手話というのは話し言葉であるわけです。つまり、聴覚障害者にとっての話し言葉の手話を教育の場で学ぶことができないというのは、私は視覚障害者ではありますけれども、聴覚障害者にとって大変不幸なことのように思うわけですね。  そこで、また厚生省の方にお伺いしたいんですけれども、教育の場でこういう形で手話が学べないということになりますと、つまり聾学校なりを卒業した聴覚障害者の手話、標準手話なりを習得するための授業は行われているということなんですけれども、教育の場でなされていないことについて、厚生省として、それに基づく困難さというものをどういうふうにお感じになりますでしょうか。
  62. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) ただいま文部省の方からもお答えがありましたように、文部省の方でも手話の必要性というものを認めておられまして、中学それから高等部におきましては手話の指導の推進に努める必要があるという御説明でございました。そういう意味では、確かに問題意識としては厚生省と文部省共通しておると思います。  私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、聴力障害者情報文化センターを中心にいたしまして、ビデオなどの教材の貸し出し等をさらに進めてまいりますとともに、地方公共団体が主催いたしますそういう研修授業と申しますか、そういうものを普及してまいるということで努力を続けてまいりたい、かように考えております。
  63. 堀利和

    ○堀利和君 私は、教育というのは二つの意味があるかと思うんですね。一つは、学校を卒業して社会に出ていく、社会人として生きていく力を身につける、これが一つのやはり目的だと思うんです。そしてもう一つは、言うまでもなく、いやそれ以上に、地域の子供として生活し生きる、決して大人になるための準備段階だということにとどまらない、今子供としてどう生きているのかということが二つ目の大きなやはり意味を持っていると思うんです。そういう点では、社会人として生活していく上で手話というのが絶対に必要なことだと思うんですけれども、教育の場で手話を取り入れないということは、やはり社会人として育てていく教育の場で何かそこにゆがみがあるように私は思っておるわけです。  確かに、日本語、言語を習得するという問題も大きなところとは思いますけれども、少なくとも中学の高学年あるいは高等部において、社会人として社会に巣立っていく聴覚障害児に対しては、やはり公式に手話というものを取り入れるべきではないだろうかというふうに思います。そうしないと、せっかく手話通訳士という資格を持った方が標準手話をするといっても、当の聴覚障害者の方がそれを十分読み取れないというのでは本当に宝の持ちぐされになってしまうわけですから、大臣がまさに言われたとおりだと思うんですね。せっかくのマンパワーが宝の持ちぐされになってしまう。そこにやはり大きな責任というものを文部省として感じていただきたいなというふうに思います。  時間がございませんので、次の問題に移らせてもらいますが、障害児の就学先の問題についてです。  具体的には、愛知県岩倉市に住んでおります池田円君、今中学二年生なんですけれども、障害児、障害を持った子なんですけれども、今学校の方に通っていないという状況なんです、未就学の状況なんです。といいますのも、昭和六十三年から地元の岩倉市立南部中学に両親は円ちやんを通わせたいと思っていたのですけれども、六十三年の二月二十九日だったと思いますけれども、県の教育委員会の方から養護学校へ行きなさいと、そういう指定があったわけです。両親としては県教委と話しながら何とかして地元の中学に行かせたい、当初は地元の中学校の普通学級に籍を持ちたいと希望を持っていたのですけれども、なかなかそれも難しいということで、南部中学の特殊学級でも構いませんと、とにかく地元の学校に行きたいんですということで、さらに県教委、市教委交えての話し合いに入ったわけですね。  その後の経過をごく簡潔にお話ししたいと思いまして、私もつい先ごろ愛知県、現地の方に行きましてお話を聞きましたので、こちらの経過の認識に間違いがないか、その点をまずお伺いしたいと思うんです。  六十三年の四月になりまして、県教委、市教委、保護者の三者による確認書案というのがつくられたわけです。しかし実際には確認書が合意されなかったということが起きてきてしまって、その後のいろいろな合意書案が出されたり等という中で、だんだん事態が進むにつれてむしろ悪くなってきている。現在は円君は学校に通っていない、未就学の状態にあるわけです。この未就学の状態にあるということについて、まず文部省の御見解を伺いたいと思います。
  64. 鈴木宏

    説明員(鈴木宏君) 池田円君のことにつきましては、現在未就学の状態にあるということについては承知いたしております。  経過につきましては、私ども承知している範囲では、ことしの五月から就学指定を受けております養護学校に対して通学をしていないということで、現在までも続いているというふうに承っております。
  65. 堀利和

    ○堀利和君 経過の方をごく簡単に言わせていただきますと、六十三年の四月、確認書案というのがつくられたのですけれども、それが合意に至らなかったわけです。その確認書案では就学先は養護学校へということにはなってしまっていたのですけれども、そういうことから転学先を学校教育法七十五条に基づいて南部中学の特殊学級とするというのが第一点なんですね。第二点目は、他の殊学級の生徒と同じ扱いをします。三点目は、普通学級への全面的な交流あるいは転籍は行わない。四点目は、制服制帽等、学校の決まりに従 う。五つ目は、両親との話し合いは、通常の学校と親御さんとの話し合い以外、一学期に一回にする。六点目は、転学時期は六十四年の四月一日を目途にするというような、いろいろとそういうようなことで、四月の確認書案が合意に至らなかったということ。そして今言いましたように、七月の上旬にも同じような内容の合意書案として岩倉市の方から出されているわけですね。  つまり、既にその時点では、岩倉市として円君の転学、地元の南部中学校の特殊学級に転籍することをもうよろしいですというふうに言っておったわけですね。にもかかわらず、若干の交流教育等含めての保護者とのすれ違いがあってなかなか合意には至っておらないわけですけれども、基本的にはもう既に特殊学級への転籍を認めていたわけですね。ところが、なかなかそれが解決つかなくて何回も話し合いを持たれたようなんですけれども、六十三年の十二月三日、県教委と岩倉市とが確認をしたというふうに聞いております。  その確認の事項は、池田円君は一定期間養護学校に通学する。二点目は、週二回南部中と交流する。これは六十四年の四月からということです。三点目は、南部中、特殊学級ですけれども、へ転籍する。これは六十四年の九月から。四点目は、普通学級との交流を行うこと。この四項目を県教育委員会と岩倉市とが確認したというふうに聞いているわけです。これは確かでしょうか。
  66. 鈴木宏

    説明員(鈴木宏君) 池田円君の就学問題をめぐりまして愛知県教委と岩倉市教委との間で話し合いが続けられているということは十分承知をいたしておりますが、確認書のような形で取り交わしがなされているということについては私どもお聞きをいたしておりません。  ただ、これまで関係者の間での話し合いを続ける中で、そういった案といいますか条件といいますか、そういったものが出されているということにつきましては承知をいたしております。
  67. 堀利和

    ○堀利和君 十二月三日、県教委と岩倉市とが確認したというふうに私の方は伺っているわけですけれども、これは調査お願いできますでしょうか。
  68. 鈴木宏

    説明員(鈴木宏君) 先生の御質問をいただきまして県教委の方に確認いたしましたところ、確認書が取り交わされているということはないというふうなことで返事をいただいております。  ただ、今先生お話が確認をしているかどうかということで、確認書というふうな公式な形じゃなくて、何かそういった話し合いが行われたかどうかということでありますと、その点は確認しておりませんので、また改めて確認をしてみたいと思っています。
  69. 堀利和

    ○堀利和君 それでは、県教委と岩倉市の間、あるいは保護者を交えてということでも構いませんけれども、岩倉市立南部中学校の特殊学級に転籍をするという基本的な合意といいますか、そういう認識に立ってもよろしいわけですね。
  70. 鈴木宏

    説明員(鈴木宏君) 基本的な合意に立っているかどうかということについて調べさせていただきたいということでございます。  と申しますのは、そういったことについていろいろ話し合いが行われて、当事者の間でいろいろ話が進んできているということについては承知をいたしておりますけれども、そこで確認がされて、あるいは確認書が交換されたかということについては、これはまた改めて県の方に確認をさせていただきたいというふうに思っております。
  71. 堀利和

    ○堀利和君 昨年の十二月三日の確認書があるかないかということなんですけれども、この時期に下村泰先生が現地に行きまして大変御尽力をいただいたわけです。岩倉市の教育委員長と会い、あるいはお母さんと会い、とにかくよい方向で解決しようということで大変御尽力いただきました。  それで、十二月三日の確認によれば、しばらくの間は養護学校に通学するということが確認されたということで、下村先生もお母さんの方にもそれで説得しまして、それで十二月の九日から三月いっぱい養護学校に通学したわけです。ここにその通ったという証拠の通知表というんですかがあります。つまり、円君を一定期間養護学校に通わせて、その後南部中学と交流し、さらには転籍をしますよというところまで、いわば社会的な関係の中でといいますか信頼関係の中でそういう形に踏み切っておりまして、そういうことで円君を養護学校に通わせたわけです。  円君は、養護学校に行くのは嫌だということで泣きながら自分の帽子や制服を隠して行きたがらないという事態もありまして、親としても三月いっぱいで養護学校に通わせるのはやめてしまったんです。お母さんが言うには、本当は普通中学の普通学級に籍を置きたいんだけれども、しかしそれが無理であれば、とにかく特殊学級に置いて地元の学校に通わせたい。もう私たちはこれ以上譲るものはありません。いわば妥協に妥協を重ねてきました。県教委あるいは市教委の言うような形でとにかく何でも受け入れてきました。そういう努力をしたにもかかわらず、いまだに市教委が円君の転籍を認めていないということですね。  これはやはり大変重大な問題だというふうに思います。ぜひ文部省としてもよりよい方向に解決できるように御尽力、御努力をお願いしたいというふうに思います。  以上をもちまして終わりたいと思います。ありがとうございました。
  72. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時六分休憩      ─────・─────    午後一時六分開会
  73. 浜本万三

    委員長浜本万三君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、社会保障制度等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  74. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは質疑をさせていただきますが、まず医療廃棄物について伺いたいと思います。    〔委員長退席理事糸久八重子君着席〕  医療廃棄物は新聞紙上等でいろいろと事故が報道されておりますが、特にドクターサイドとしましては、三重大学の事故が大変強烈な印象で残っております。三重大学で、一昨年になりますか、小児科のお医者さん二人と看護婦さん合わせて三人がちょうど同じころに肝炎を発症して、うち二人のお医者さんは劇症肝炎で亡くなったという事故がございました。  こういう事故は、院内感染ということというよりは、やっぱり注射針の事故ではないかという、その発生の確率等々から考えますと多分そういうことになるのではないかということが考えられるわけでありますが、そういうことを受けて厚生省はどのような事後措置をされたか承りたいと思います。
  75. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答えいたします。  先生お話にございましたように、六十二年の七月に三重大学医学部附属病院で医師二名がB型肝炎により亡くなったという事件を私ども承知いたしております。  厚生省といたしましては、この事件の発生の前から、各医療機関での感染対策を含むB型肝炎予防対策につきまして各部道府県を通じて周知徹底を図ってまいったところでございます。また、この事件後におきましては、厚生省といたしましては、さらにこのB型肝炎感染防止の一層の徹底を期するために、肝炎対策推進協議会が取りまとめました医療機関内感染防止対策といいますものを中心といたしましたB型肝炎感染防止のための文書を各都道府県に出しまして、さらに指導を図ってまいったところでございます。
  76. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 これは新聞報道だったと思いますけれども、この劇症肝炎にかかった三人はワクチン接種を受けていなかったということがあったと書いてありますけれども医療機関に従事する人たちは注射針事故だけではなくても感染の確率が高いと思われますが、これに対しては厚生省は何か措置をとられたんじゃなかったかと。国立病院 とか大学病院、要するに公務員かな、そういう人たちにはワクチン接種を強制的にされているかと僕は思っているんですけれども、実情はどうでしょうか。
  77. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 国立病院におきます、あるいは国立療養所におきますこのB型肝炎の感染防止対策につきましては、従来からも関係職員に対しましてこのB型肝炎につきましての知識の普及等を図ってまいっているわけでございますけれども、六十二年度からこのB型肝炎の感染の危険性の高い職場に勤務する医師、看護婦等を対象にいたしましてワクチン接種を実施いたしております。そういう面で感染防止対策の充実を図ってまいっているところでございます。
  78. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 その実施率というのはどうなっていますか。対象者に対してほとんど全員か、それとも実際はどれくらいか。それから、国立以外に地方自治体病院等、あるいは一般の私立の病院等々についてはどのような勧告をしておられるでしょうか。
  79. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) まず国立の病院、療養所の関係でございますけれども、医師、臨床検査技士、それから看護婦、研究員、総数三万八千九百九十四人おられるわけでございますが、この方々に対しましてB型肝炎のワクチンの接種をほぼ一〇〇%実施いたしております。  それからもう一点の各都道府県への通知につきましては、六十二年の八月六日の局長通達によりまして、B型肝炎防止対策の推進ということで文書を出しているわけでございますが、この中におきましても、感染経路の遮断あるいは予防措置の徹底、ワクチン接種の三つが重要であるということで、各都道府県の方にガイドラインという文書もつけながら指導の徹底を図ってまいっているところでございます。
  80. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは、今月の初めごろに厚生省からは医療廃棄物処理ガイドラインというものが発表されて自治体に通知をされておりますけれども、まず医療廃棄物に限りますけれども医療廃棄物がどれくらいの排出量があるのか、病院診療所等、何か統計があったようでありますが、教えてください。
  81. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) 医療関係機関からの廃棄物全体の総量は、一日当たり全国で三千六百トン余りでございます、医療機関からはいろいろなごみが出ますので。そのうち医療廃棄物というものが約一千八百トン、それから今回ガイドライン等である程度定めました感染性の廃棄物が三百五十トン、このような総量の状況でございます。
  82. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは、今のガイドラインの主な点だけをピックアップして教えてください。
  83. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) このガイドラインの主な点は、まず第一は感染性の廃棄物の範囲を決めております。これは、血液等が付着した廃棄物を感染性廃棄物として取り扱うということを決めておりまして、例えば注射針とか透析の器具とか、あるいは血のついたガーゼ等といったものの範囲を一つ決めております。    〔理事糸久八重子君退席、委員長着席〕  それからもう一つは、医療関係機関の管理の方法について定めておるのでございまして、管理責任者の設置とか、あるいは廃棄物の処理計画を策定するとか、あるいはほかの廃棄物との分別を行うとか、あるいはこん包をきちんとするといった方法など、いわゆる医療機関内の管理について定めておるのでございます。  また、処理業者への委託ということにつきましては、廃棄物の流れを的確に把握するためのマニフェスト、いわゆる積み荷目録といったようなものを使用すること、あるいは運搬の再委託を禁止するといったようなことを委託ということでは定めておるのでございます。  また、四番目に処理の方法でございますが、運搬に当たっては他の廃棄物と混載しない、まぜて積まないということ、それから焼却等によって滅菌処理をした後埋立処分をする、このようなことを主なものを申し上げますと定めているのでございます。
  84. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 ガイドラインの中で私ちょっと自分として気になったのは、滅菌処理のところで焼却処理またはオートクレブプ等による滅菌処理というのがありましたが、例えば委託業者等でオートクレーブまで使ってやるということがあるのかなと思ったんですが、あれはどの辺のところを言っているのか。それから焼却処理、オートクレーブ処理等は実際にどれくらい行われているんだろうかなと思うんですが、いかがでしょう。
  85. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) これは主として、今先生の御指摘のオートクレーブとかあるいは焼却等につきましては、医療機関の中で原則として処理をする場合の滅菌処理としてそういうものを挙げておるのでございます。また、いわゆる市町村等がやっておりますものとか、あるいは委託業者等が行いますそれ以外の、医療機関から出た後の処理につきましては焼却といったようなことで行うようにと、こういうことでございまして、御指摘の点は医療機関内のものに限定しておるのでございます。
  86. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 特に医療廃棄物の不法処理なんかで一番問題になっているのが注射針の処理だろうと思うんです。うっかりつつきますとウイルス性疾患ですともう間違いなく――間違いなくといったら科学的でないかな、高い確率で感染するわけでございますから、注射針の処理というのは非常に重要なことだと思っているんです。  それで、注射針処理状況について御説明を願いたい。
  87. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) 注射針は、医療関係の機関が処理する場合、病院の中あるいは診療所の中で処理する場合と、それから医療機関から委託を受けた処理業者や市町村が処理する場合とあるわけでございますが、医療機関の中におきましては、医療関係機関の規模によって程度の差はあるようでございますが、滅菌するとか、あるいは他のものと分別してこん包をきちんとするとか、あるいは取扱注意の表示を行うといったようなことが現在までに行われているのでございます。また一方、医療機関から委託を受けました処理業者や市町村は、焼却や埋立処分を行ってきているわけでございます。  こういう状況にありますものですから、今後この医療廃棄物の処理のガイドラインに従いまして滅菌処理等の適正な処理を行うようにということでこのガイドラインを出して、それの指導を行っているところでございます。
  88. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 今御説明いただいたのを、私も厚生省昭和六十三年の生活局の調査のデータをちょっと拝見いたしますと、注射針処理方法では未処理のところが多い。例えば病院で六三%というふうになっていましたね。これは感染性をどう判断したかということがあるのかもしれませんが、未処理が非常に多いのではないかなと。それから委託業者のところでもやはり不明というのが三六%かな、だからかなりわけのわからない状態で処理をされていることが多いのではないかと思うんです。ですからこの辺、例えば針ですとポリエチレンの袋では相当厚くても通すかもしれないとかいうことがあるわけで、今のマニフェスト方式ではいろいろなことを考えられているだろうと思います。  そこで、注射針で起きた事故のことですけれども、これも新聞でありますが、広島県の薬品卸会社員が診療所から回収した使用済みの注射針を、三千本と書いてありましたが、これを山口県の海水浴場のあたりに捨ててしまった。回収されるまで水泳を禁止したと書いてありますが、同じような事故が米国北東部の海岸ですか、やはりあったですね。だから、よほど医療廃棄物については厳重な監視というか、指導というよりやはり監視でしょうかね、が要るんじゃないかと思うんです。  東京都の清掃作業員の注射事故の事例があるんですが、お持ちだったらデーターを説明していただければと思います。
  89. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) 今の東京都のことですが、今ちょっと手元にないので、大変恐縮でございますが、後ほど手に入れましてお届けしたいと 思います。
  90. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 いや、後ほどでなくても、私からかわって説明をさせていただきます。  清掃作業員の注射針による事故が、六十二年度三十件、六十三年度二十八件、ことしもこれまでに十二件と書いてありました。二次感染については報告されていない。だから、実際なかったのかそのままになっていたのか知りませんが、そういうことで東京都は人口の対象が大きいわけですが、それで年間三十件ぐらい出ているということは、やっぱり注射針に対する処理監視というのは非常に重要なテーマではないだろうかと、こんなふうに私は思っております。  ところで、このガイドラインでありますけれども、これに違反したときにはどのような措置がとられるのか。どうも特別な法規制をしなかったように思うんですけれども、その理由はどういうことなのか教えていただきたいと思います。
  91. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) 医療廃棄物の処理のガイドラインに適合しないということ、違反したと申しましょうか、指導に従わない場合には直ちに罰則が適用されるということは、御指摘のとおりないわけでございます。しかしながら、一般的に不法にそういう投棄する、不法投棄といったような廃棄物処理法自体に違反した行為を行った場合には廃棄物処理法に従って罰則が適用される、こういう仕組みになっているのでございます。  したがいまして、ガイドラインのみではまだ罰則ということについては現在の時点では考えていないというところでございまして、今後この指導を徹底しながら十分安全が保てるのではなかろうかと、このように私ども考えているところでございます。
  92. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それから、先ほど来御説明にありましたけれども、感染性の判断をだれがするんだろうかと思うんですが、何かこういうものはという物で規制しておられるのか、あるいは同じ物でも何かの観点で判断をするのか、その判断というのはだれがすることになるのだろうかということについて御説明ください。
  93. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) 廃棄物のガイドラインで示しております感染性の廃棄物の範囲、これは先ほどちょっと申し上げたような範囲であるわけでございますが、その範囲に従いまして各医療機関におきましてそれぞれ感染性であるかどうかという判断を専門的立場から行うということになるのでございます。実質、恐らく病院長さんが適切な管理者を置いて関係の内部の医師等と相談をしながらきちっと決めていく、ある程度のラインをつくって決めていく。このように最終判断は医療機関で行っていただく、このようになるのではなかろうかと思っているわけでございます。  また、先ほど申し上げましたように、医療機関の中で処理計画を策定していただくことになっておりますので、その中に当然その判断のことも含めて、こういう場合にはこういうふうにする、こういうふうな分別をするといったように恐らくなるというふうに私ども考えておるのでございます。
  94. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 そのときに、その結果として何か事故が、事故というのは感染症ということですが、感染症というのはやっぱり非常に因果関係も難しい場合もあるわけですけれども、仮にその感染性の判断の間違いで何か感染性の事故が起きたということがあったときの責任というのはどこへ行くんでしょうかね。
  95. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) 大変難しい御質問でございますが、大きく分けまして、医療機関の中でそのようなことが起こった場合には、恐らくは他の事故やなにかと同じようにやはり医療機関において責任を持つ、このようになろうかと思うわけでございます。それから医療機関外のものについては、これは先生がおっしゃったようにいろいろな例が予想されますので、先ほど申し上げましたように、明らかに廃棄物処理法違反といったようなものがはっきりした場合にはこれは廃棄物処理法によって罰則等がございますけれども、いろんな例があろうかと、このように思っているところでございます。
  96. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 私も医者の立場といたしまして、療機関から出される医療廃棄物については医師は専門的な立場で一般市民に感染を及ぼすことがあってはならないという、もう当然の、通達があろうがなかろうが当然の義務というか、そういうことでありますから、通達があればあるほど間違いなく処理をするだろう、しなければいかぬ、これは私もそう思っておりますので、今の御答弁はそのとおりじゃないのかと思います。  ただ、今度ガイドラインに戻りますと、ガイドラインという言葉が示すように、これはやっぱりつまるところは自主的な運営ということにゆだねれるわけで、世の中の人がそう良心的に動くとばかりは期待できませんので、できるだけ潜りたいところを潜ろうという精神がないわけではないということで、このガイドライン方式がどれくらい徹底できるんだろうかということについての何かお考えがございましょうか。
  97. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) どのくらい徹底するかという問題でございますが、先ほど医療廃棄物関、のことで、例えば注射針の処理について不明というようなものがあったといったようなものは恐らく是正されるであろう、こういうようなこと、それから、現在、大きな病院を含めてほとんどの医療機関はかなりそれぞれ独自の方法で処理をして事故が起こらないようにやっておられるというふうに私聞いております。したがいまして、恐らくよほどの不心得な方以外は私どもはこれは遵守されていくのではなかろうかと、このように考えているのでございます。
  98. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 そこで、処理業者がやっぱり私としては手抜かりがある場所じゃないのかなと思うんですけれども医療廃棄物を取り扱う場合には一般産業廃棄物よりも多分手数料は高いんでしょうね。多分そうじゃないかと私は思うんですが、そういうこととも考えあわせて、処理業者にやっぱり感染予防の基礎的な知識を与えていくという教育が要るのではないか。例えば、委託できると認定する資格みたいなもの、そういうものを一つの条件にする必要はないのかなというようなことを私は考えるんですけれども、いかがでしょうか。
  99. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) 処理業者の問題でございますけれども、この処理業者は廃棄物処理法に従って一定の基準で認定をした業者が行うということになっておりまして、これらの処理業者が全国産業廃棄物処理連合会といったようなものをつくっておるわけでございますが、このようなガイドラインの内容をこの会を通じてそれぞれ徹底をさせていくという周知徹底、それからさらにもう少し具体的な処理の方法、知識、技術等々といったような基礎的な知識、これを修得することは確かに御指摘のとおり重要なことでございますので、日本産業廃棄物処理振興センター、財団法人でございますが、ここにおいて説明会を実施するということにいたしております。またそのほか、処理業の許可の取得とか更新時の講習会等、機会あるごとにこの周知徹底を図ってまいりたい、このように思っているところでございます。
  100. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 先ほど東京都の事例を申し上げましたけれども、結局処理をする、それが一般大衆に影響を与える場所でない処理場でやっているかもしれませんが、個人的な事件が三十件ぐらい起きている。それから個人の感染ということがあるわけで、これはやはり処理そのものだけではなくて取扱者の予防教育が要るんじゃないかと私そう思ったわけです。  ところで、医療機関医療廃棄物ですから一番ともかく何といっても発生源であるそこから出るわけですから、医療機関に対する指導ということが非常に重要だと思うんですが、どうも通達のところを見まして、生活衛生局水道環境部というところから出るというと、何だか水の消毒をやっているところがごみを消毒するのかなどという、どうも言葉からくる違和感というものがあるんですね。何だか不安な気がするんですが、これは健康政策局は関係ないんですか。健康政策局長さん、 ひとつ御意見を承りたいと思うんですが。
  101. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 病院に対する指導は私どもの所管でございますので、十一月十四日に、私どもの局の指導課というところがございますが、そこから都道府県の衛生所管部局長あてに医療廃棄物の適正処理についてということで、今お触れになりました水道環境部長からの通知をつけて周知徹底を図るように文書を出したところでございます。  それからもう一方、関係団体がたくさんございます。医師会を初めといたしまして、病院関係団体あるいは日赤済生会のような公的病院、そういうところへもこの文書をお配りいたしまして、院内管理の徹底を図るように文書を同時に出しております。
  102. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 しかし、指導権を、指導権という言い方は悪いけれども、指導権的な立場ではないわけで、やはり生活局なんですね、医療機関に対しても。
  103. 仲村英一

    政府委員仲村英一君) 指導権という意味がちょっとわかりかねますが、病院の中は病院、それから先は先ほど生活衛生局長がおっしゃっているように廃棄物処理業者というふうな区分けになりますから、院内についてはもちろん私どもが指導するなり監視するなりという責任はあると思うわけでございます。  医療監視というのは先生承知のように毎年やっておるわけでございまして、その際にいろいろ重点事項等がございまして、それについて立入権限を持っておる吏員がいるわけでございまして、必要ならばそういう権限の行使も不可能ではございませんが、基本的には先ほど先生もおっしゃいましたようにプロフェッションとして当然守るべきことを守っていただくような院内の管理と申しますか、それを徹底するということで私ども考えたいということで通知もお出ししてあるわけでございます。
  104. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 先ほどお話がありましたマニフェスト方式ですけれども、マニフェストで何か伝票を四枚だか持つんですか、それを一々渡すわけでしょうが、これは責任の所在をその段階段階で、自分がそこは持つんだということかなと思いますけれども、最終責任というのはどこへ行くんでしょうか。
  105. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) 一般的に廃棄物処理法に基づく規制ということになるわけでございますが、処理の責任というのは排出者である医療機関がまず持っている。それから医療機関が委託をする場合、業者に委託をする場合には一定の委託の基準に従って指定した業者にとにかく委託をするということになっております。この場合に、委託基準に従って適正に委託をされているという状況でありますと、その後は廃棄物処理業者が適正処理の責任を負う、こういう仕組みになっているのでございます。  また、委託基準に違反して委託が行われて、委託を受けた者が不法投棄等の不適正処理を行うといったために生活環境の保全上重大な支障が生じる、あるいはまた生じるおそれがあるといったような場合には、これは一般的な産業廃棄物の方でございますが、その支障の除去または発生の防止のために必要な措置を講ずべきことを都道府県知事は排出事業者に対して命令することができると、こういう一般的な決まりになっておりますので、廃棄物処理法に基づきまして出た医療廃棄物についても適用されると、このように考えております。
  106. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 最後に、質問通告しておりませんでしたが、大臣、今の話の中でまとめてお考えを聞きたいと思います。
  107. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 今先生指摘の問題を聞いておりまして、いわゆる世間で言う産業廃棄物とかそういう中にも有害なものはたくさんあるわけでありますが、そういうものと違って、そしてしかもこの廃棄物が人体の生命に影響ある感染症を起こす可能性があるという問題が含まれていることを考え、しかし一方、現在のその処理に関する規制なり取り締まりなりというものは廃棄物の処理及び清掃に関する法律で処理するということになっているのです。ここに一つはこれから考えていかなければならない問題があるんでしょうけれども、処理の段階と、それから病院内にあるところの感染症の危険性のある注射針であるとかガーゼであるとか、いろいろな手術等その他に使った場合の廃棄物、こういったものの処理の問題についてはおのずから違った問題があるように考えます。  それで、勢い出てくるところが医療機関内から出てくるわけでありますから、当然その管理体制あるいは処理の方法、あるいは同時に今度は医療機関の手から離れて処理業者の方に渡るその場合の処理業者の知識、あるいはそれに対するものをだれがやるんだろうか、当然それに対する情報整備等もいろいろ指導をしていかなければならない。委託するときにも、そのことに対しては注意深く委託していかなきゃならない。そういう意味で、この問題としてはやはり十分双方とも気をつけてやらなければいけないわけでありますが、それ以上に社会的な責任が私はどうもあるように思います。  そこで、今後こういったもののガイドラインといいますか、そういったものを徹底的に周知をしていただいて、そして事故の発生がないように努力をしていかなければならない、かように思います。
  108. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 大臣、どうもありがとうございました。  それではその次にアスベストの問題、これも産業廃棄物にやや関係がないわけではないんで、このアスベストの問題についてお話を承りたいと思います。  第一番目に、アスベストの人体に及ぼす影響、これは健康問題ですので、大まかな項目でこんなものということで結構ですけれども厚生省に御説明をお願いしたいと思います。
  109. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) アスベストの人体に及ぼす影響でございますが、職業性暴露によりますアスベストの健康影響といたしましては、高濃度の石綿の粉じんを長期間吸入することによって肺に進行性及びびまん性の変化をもたらすいわゆる石綿肺、そういうものが知られているのでございます。また、悪性な腫瘍が知られておるのでございます。また肺がんの危険性につきましても、これを高める最も重要なものは喫煙ではあるけれども、アスベストの高濃度の暴露によってもその危険性が高まっていると言われているのでございます。  また、大気中や建築物内の空気中に浮遊しておりますアスベストの繊維は労働環境と比べますと大変少ないのでございますが、その健康影響も定量できないほど小さいというふうに言われておるのでございますが、やはり暴露量はできるだけ低くすべきだという考え方から種々の対策が講じられているといったようなことで、健康影響は大体今のような大ざっぱな考え方と申しましょうか認識を持っているのでございます。
  110. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 アスベストに関しては、私がまだ助教授時代に研究員が石綿肺ということをやったことがあるので非常に関心が深いんですけれども、当時はやっぱりがんまでは考えていなかった、そんな文献もなかったと思っておりますけれども、その後次第に慢性影響としてのがん、肺がんということが大きくクローズアップされてまいりまして、これは大変重要な問題であろうと思うんです。  それで、現在の対策でありますけれども、アスベスト自身は、言うならば天然の存在であるということもありまして、至るところの大気中にごくわずかでもあるようであります。  これに対して、健康障害予防の立場厚生省は現在どういうことを考えておられるのか伺いたいと思います。
  111. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) いろいろ広範な分野でこのアスベストの対策が行われているのでございますが、労働衛生の分野については今お話がございましたように規制が強化されているということ でございます。  また、一般環境におきますアスベストの繊維濃度は労働環境と比べて少ないけれども、暴露の量をとにかく減らすんだということから、建築物の衛生とか廃棄物の管理とか、あるいは大気保全等の分野において種々の対策が講じられておるのでございまして、それぞれ環境庁あるいは私ども等といったようなところで所管の官庁が行っているところでございます。
  112. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは環境庁の方に伺いたいと思いますけれども、第百十四国会の六月二十一日の環境特別委員会での附帯決議の中に代替品の開発を促進すると出ておりますが、代替品開発の現状について環境庁に御説明をお願いします。
  113. 濱中裕徳

    説明員(濱中裕徳君) お答えいたします。  先生指摘のアスベストの代替品でございますが、このようなものといたしましては、現在ガラス繊維あるいは炭素繊維などの利用が検討され、一部実用化されているというふうに聞いておりますが、環境庁といたしましては、現在までのところ、単一の材料でアスベストが使用されているすべての用途にかわり得るものは見出されていない、このように認識をしております。このように認識しておるわけでございますけれども、一方で今後アスベストの代替品の利用が進んでいくということも考えられるわけでございまして、今後、環境庁といたしましては、そうしたアスベストの代替品の普及に当たりましてその安全性が確立されることが重要であるというふうに考えております。  したがいまして、従来から代替品の生体影響について国内外の文献のレビューを行っておりまして、あわせましてアスベスト代替材料及びアスベスト代替製品の開発普及状況に関する情報収集にも努めているところでございます。
  114. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 代替品というと、大体大丈夫かとよく思うわけでありますけれども、労働省の産業医学総合研究所の研究員の発表によりますと、代替品でもやはり同じような肺に対する胸膜肥厚等々が起きてくる、線維症が起きてくるというふうなことを言っておられるようでありますし、やはり同じような例えばガラス繊維でも起きるというようなことでありますから、石綿そのものの化学成分なのか、あるいはガラス繊維でも同じように突き刺さるというようなことで障害を起こしてくるのか、どうもその辺がまだ未解決の分野があるようでありますので、代替品といってもよく監視をしていただきたい、こう思います。  それから、時間がなくなってしまいましたのでまとめて伺いたいと思うんですけれども、学校の校舎を壊すときには、そこに断熱材で使われていたアスベストの処理等については文部省だ、作業環境であれば労働省、それから産業廃棄物、病院等になると厚生省、それから大気中に飛散というと環境庁、建物を解体すると建設省、あとどこかないかと探したくなるぐらい各省に分かれておりまして、横並びなんですね、いわゆる縦割り行政で困るんじゃないか。  きょうは環境庁に来ていただきましたけれども環境庁はそういうときに全体のやっぱり行司役のような役目があるのではないか。目黒さんにそれを言ってもらえば一番いいのかもしらぬけれども、きょうは厚生省の方でございますから。もっとも長谷川さんも、みんなそっち側でございますから、どっちでもいいのかもしらぬが。環境庁としてこの縦割り行政に対する立場、私は環境庁がある意味でのその行司役、リーダーシップと思っております。  それから、質問の時間がもうないので一挙に全部言わせていただきますと、解体技術というようなのは幾つかの項目があるんです。飛散をさせない項目、本人が吸わない項目、それからその後どうなるのかというようなことがありまして、相当なテクニックを要する。そうすると、その技術者を養成するのか、単にただ取り締まれと口だけで言うのか、この辺がやはり問題なんじゃないだろうか。  それから最後に、米国では十年後くらいをめどにして、その製造、輸入を禁止すると。日本にはこれに対する考え方が一つもないということがございます。大変恐縮ですが、この辺について大臣にひとつお考えを伺って私の質問を終わりたいと思います。
  115. 濱中裕徳

    説明員(濱中裕徳君) お答えいたします。  先生指摘の各省庁間の連携という問題でございますけれども、アスベストにつきましては、先生御案内のとおり多方面で使用されております関係上、関係業界、関係省庁が多岐にわたっておりまして、私ども環境庁といたしましても、こうした関係業界、関係省庁が一体となって対策に取り組むことが肝要であるというふうに認識しております。  環境庁におきましては、これまで関係業界、関係省庁に対しまして各種調査結果に基づきアスベストの排出抑制について要請を重ねてまいりますとともに、関係省庁で連絡会議を設けまして情報交換を行うなど、関係省庁が連携をしアスベスト対策が全体として適切に推進されるよう努めてきておるところでございます。環境庁といたしましては、先生指摘趣旨も踏まえまして、今後ともアスベスト対策関係業界、関係省庁一体となって推進されるように一層努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  116. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 先生指摘のように、各省庁に非常にそれぞれ関連しているというお話を聞きまして、私もそのとおりに感じました。  ただ、この問題については、やはり一つの推測のような形で処理するのではなくして、科学の問題でありますから科学的に究明をしながら各省庁間でお互いに、その結果及ぼす影響がそれぞれ人体に及ぶものでありますから、十分に検討をしていきたい、かように思っております。
  117. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、短時間でございますが、輸入食品安全対策についてお伺いをしたいと思います。  ことしの九月に名古屋市でコレラが集団発生をいたしましたし、また、日ならずして滋賀県で三人のお年寄りがコレラにかかるなどという事件が起こりました。そういう中で、輸入食品安全対策は本当に大丈夫なのかなという国民の皆さん方の関心が急速に高まってまいっております。  ことしの九月末、成田の検疫所では、インドネシアから来た冷蔵マグロ、それからフィリピンから来たェビ、それからタイから来たカニ、インドネシアから来たフエフキダイ、これにコレラ菌がおったというようなことが明らかにされております。  これは多くを申し上げる必要はないと思いますけれども、そういうことで、私ごく最近報道されたこの危険な輸入農水産物、食品というふうなことをちょっと見ただけでも随分怖いなと思いましたね。  というのは、ことしの八月にはインド向けの米国産トウモロコシには発がん性カビ毒アフラトキシンを検出した。それから同じく八月には米国製のチョコレートミルクフレーバー、それから英国製オレンジレモンスライス、これでは日本で使用不許可の着色剤を検出している。それから八九年、ことしの八月二日には米国産の冷凍ポテトから基準値の九十倍の除草剤が検出されている。それからメキシコのカボチャからは国内で製造禁止の殺虫剤が検出されている。それから台湾産のクルマエビ、これは残留禁止の抗生物質が検出されている。中国産のウナギも同様と、言い出したら切りがないほどありますね。こんなのを見て私もこれは大変だな、いよいよ対策を強める必要があるのではないかということを改めて痛感しているわけです。  まず、国民が今食べている食べ物の五〇%というのが輸入食品になっている、こういう状況の中で、急速な食料品の自由化、国際化、こういう中で、残念ながら本当に自由化、国際化の波でラッシュになって輸入食品がふえている中で安全対策は立ちおくれていはしないかということを、これは私ごくわずかに調査をした中でも痛感いたしま した。この点について、まず大臣の御認識をお伺いいたしたいと思うんです。
  118. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 御指摘のとおり、輸入食品の衛生、安全というものについては今非常に重要な問題の一つだろうと私も思います。特に、今世界じゅうからいろいろな経路を経て日本に輸入されてきておるわけでありますが、それは暖かいところもあるし寒いところもあるし、あるいはまだまだ十分なそういった衛生というものが普及していないところもあるでしょうし、また物によっては日本へ到着するまでいろんな形で鮮度を保っていかなきゃいけないとか、あるいは植物のようにその間でも成長していくというような問題等に対して、やはりそういう意味でのいろんな加工といいますか、あるいはポストハーベストのような形でいろいろ対応してくる。  そういう中にあって、我々といたしましては、そのこと自体によって起こる問題もあるだろうし、また同時に検疫その他についてのいろんな問題を処理しなければいけないということになってくると、やはりこれからもさらに一層そういう検査体制を十分にしていかなければいけないという御認識は同様であります。
  119. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 余り時間がないですから次へ参りますが、これはデータをいただいております。輸入食品の届け出の必要なものの届け出件数というのをずっと見てまいりますと、これは五十八年のときは三十三万四千八百二十九件だったのが六十三年には六十五万五千八百六件ということになって、約二倍ですね。    〔委員長退席理事糸久八重子君着席〕  その中での輸入重量の点では余り変わってないんですね。そういうどかどか入ってきている中での検査の率を見てまいりますと、行政検査というのが大体十年前は全体の五〇・九%、半分ぐらい行政検査でやっていたのが六十三年度は一八・五%に減っておる。そして指定検査機関検査というのがやられて、これは量としては大分ふえておりますね、大体ここ四、五年で二倍ぐらいになっておるわけですが、全体の量との関係で率としては四四%。それからちょっと気になるのは、外国公的検査機関の検査というのがこれまた率として五十八年には一・一%だったのが一八・二%というふうになっているんですね。ちょっと目に触れるだけでも大変危ないという状況の中で、こういう状況というのは、特に行政検査率が年々低くなってきている、五〇%だったのが一八%になっているという点で大丈夫かなということを改めて感じます。  今度の安全対策も伺いたいわけですが、特に指定検査機関の検査というのは心配ないんだろうかと思いますけれども、これは私ども実態がよくわからないものですからあれなんですが、たまたま大阪には一カ所あるんですね、指定検査機関というのが。これは社団法人大阪食品衛生協会というんですが、ここではほぼ一年間に三百件ぐらいしかやっていないというんですね。それならほかのものは一体千数百件の中でどこでやっているのかなというふうなことをやっぱり疑問に感じるわけです。  それから、たまたまちょっとこれおかしいなと思うんだけれども、大阪食品衛生協会という大阪の指定機関はその会長が佐治敬三さんです、サントリーの。だからワインが主としてここは検査されているそうですけれども、ワインが問題になったりするようなときに佐治さんが会長のところでなあという、ちょっと妙な感じも受けるわけですが、きょうはここが中心じゃないけれども、ちょっと調べてもいろいろ気になることが出てまいります。  したがって、今の状況で大丈夫なのかなと、私は極めて不安が大きいなという気がするんですが、その点はどうですか。
  120. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) 御指摘の行政検査の率がある程度減少しているということもあるわけでございますが、私ども、御指摘のように検査件数の増加等を踏まえまして、従来から検疫所における食品衛生監視員の増員とかあるいは機器の整備といったようなもの、あるいは検査体制の充実というのを図ってまいったのでございます。今後も引き続きこの面で検査体制を強化し、あるいは機器を整備するといったようなことを続けてまいりたい、このように思っているところでございます。
  121. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 東京弁護士会がことしの三月に輸入食品に関する意見書というのを提出しておられます。これは非常に簡潔に実態を踏まえてよくまとめておられるわけです。私もその点では思うのですが、小麦が九〇%が輸入に頼り、大豆が九五%、しかもえさというのは一〇〇%輸入に頼っておると。こういう状況の中で、しかも国民の食品の約半分が輸入食品だという状況になってきていて、一番心配だなと思うのは、輸出国の農薬の使用の状況がどうなっているか、それから輸出されるときに添加物がどうなっているのか、あるいは何かジャガイモの発芽をとめるのに放射線を照射するというようなことまで考えられているとか、特に今まで聞いたことのないポストハーベストなんて日本には縁のなかったことですね。言葉さえ知らなかった。しかし、輸入食料の中で、外国では日本ではやらないようないわゆる物を収穫してから農薬をどんとまいて、まともな格好で長距離かかっても輸送ができ、虫がつかぬように、そういうことで薬がどんどんばらまかれるというふうな状況が出てきております。  この点で一番気になりますのは、やっぱり全体像を、いわゆる輸出国のそれらの添加物だとか農薬だとかポストハーベストだとか、その他もろもろの状況をちゃんとつかんでおられるのかどうか、これが国民にとってはわからぬ。だから時折出てきますと、これはえらいことだということで不安が起こるわけで、私はやはり食品の安全を担当する厚生省として、これは全体像をまずつかんで国民の前に明らかにするということが今何よりも大事だなと思うのですが、これはいかがですか。
  122. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) 御指摘のとおり、このいろんな状況について把握するということは私ども大変重要なことであると思っております。  このために厚生省では、国際機関でございますFAO、WHOとか、あるいは米国等の主要な輸出国において定めております食品添加物の使用基準とか、あるいは今御指摘の農薬の残留基準等について従来からも情報は集めているわけでございます。特に、収穫後に使用のポストハーベストの農薬等につきましては、今年度から予算を計上いたしまして、その残留実態についても調査をしているというのが今の現状でございます。  御指摘のとおり、私どもも諸外国からの情報等を積極的に今集めているところでございます。
  123. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私、大阪空港をちょっと調査をしてみていろいろ思うところがあるんですが、大阪空港だけでも一番新しいのは一年間に九十四件もの違反が出ているわけですよ。その中身などを拝見すると、ぞっとします。食卓に出るもの一つずつ皆大丈夫かなと思って見なきゃならないというのが率直に言うて今日の状況ですね。  そのことを申し上げる時間がありませんので申し上げませんけれども、私はやっぱり厚生省が輸出国のそれをつくっているやり方の状況、あるいはその土壌の状況、あるいはさっき局長言われたそこでの衛生の水準の問題とか添加物の問題、これはあらゆる問題で今心配になっているところは全部やはり把握するということが何よりも大事だし、それを国民に公開する、これが一番大事だと思います。  例えば、食品の表示の問題も大問題なんですが、これはまあ厚生省の直接の仕事でもなさそうなので、きょうは時間がないから他の省庁をお呼びしませんでしたけれども、消費者の安全を確保するという点では表示というのは非常に大事ですね。  この間も問題になっておりましたけれども、長野県で山菜の漬物買うて帰って楽しんでいたら、それはあに図らんや中国から輸入されていたというようなことが、これ大分一般化していますね。うかうか田舎へ行って、これは間違いないやろう と思って山菜の漬物買うたって、どこのかわからぬ。それは、それをつくった原産国を書いてないんです。加工したところが長野県だから長野県産と、こうなっているわけです。その辺は国民は何となくごまかされているという感じがしますからね。これは直接厚生省の責任ではないと思いますが、しかし考えてもらわぬといかぬという側面がある。  私の時間が余りないようですので、あと具体的なことを要請しておきたいと思いますのは、おっしゃったように施設、人員の増強というのが一番大事だと思います。  私も大阪空港へ行ってつぶさにいろいろと状況も見せていただき、お話も聞きましたが、六十三年末現在で今二十一カ所になったらしいですね、空港とか港に食品衛生監視員を置いているところは。総計で七十九人になったんですね、今食品衛生監視員が。七十八人だったんだけれども、二十一カ所、七十九人になったときのうちょっと聞きました。それが大阪空港でいうと現在七名です。物すごく七名の方は苦労しておられますよ。実際に検査をしているところも拝見をいたしました。  大阪空港なんというのは生鮮食料品がどかどか入ってくるところですが、大部分がやっぱり感応検査ですね、主なものは。感応検査というのは何や思ったら、においやらさわって腐ってないか、腐ったにおいがしてないかという、この人間の五感で判断できる感応検査が中心になっている。よほどこれは資格を持った方で経験の深い方だからそれがやりこなせていると思いますけれども、あれだけの大量で複雑な、薬品あり農薬あり、あるいは抗生物質ありホルモンありというふうな状況の中では、科学的な検査機能を強化するということが非常に重要だなということを改めて痛感をしています。  その点は強化しますと。確かに強化をぼつぼつしておられる。私、監視員の数を聞いてちょっと驚いたんですよ。国民全体の食事の半分を賄っている水際というのは港と空港ですね。そこが二十一カ所で合わせて七十九名だというんだけれども日本国内のいわゆる食品衛生監視員というのは約六千名内外おりますね。本当は、半分も輸入しているということになったら同数が配置されてもおかしくないんだと、素人でもちょっと考えたらそう思うんです。しかし、その中で七十八人や九人というのはいかにも少ない、せめて百人や二百人に早くしなければということを痛切に感じました。  だって、七人の人が朝飛行機が着陸するという時間からもう着陸しないという時間になるまで全部一貫してやっていなきゃいかぬわけでしょう。だから、休暇をとるんだって四十日とかのサイクルをつくってないと休みもとれないんだという御苦労をしておられます。ですから、少ない人数で大変な苦労をしているんだから、この辺はせめて安心できるだけの人数を、こんなところは幾ら行革やなんや言うたってふやさないかぬのではないかと思いますし、科学的な検査機能も、これは今日の科学水準ですからそういう機械をきちんと据えてあげればもっと成果は上がるんではないかと思うので、抜本的に強化するべきだと思うんです。  最後に、大臣にお伺いをいたしたいと思いますのは、まあ考えてみましたら、農水省が農産物自由化と、政府の方針でどかどか輸入しているわけですよ。輸入はするけれども、そこの品物はどういうことになっているんやいうことを、農水省もポストハーベストは全くわからぬと言うんですからね。そういう状況になっておる。それから農薬に至っては基準だって日本と諸外国、アメリカとでも比べたら向こうの方がずっと緩いとか、あるいはこっちではもう規制の対象にもならぬ、禁止だというものが使われているという、そういう状況になっているんですね。それをお構いなしに農水省はどかどか輸入をしてくる。しかも円高でますますそういうことになり、そしてまた一方では国民のグルメ志向などということもありまして急速にふえていると思いますが、いわばその安全性チェックというのは、厚生省が後始末をやっているようなものなんですね。  政府の基本政策でどんどん入ってくる、これは危ないということに気がついたんで、それっということになって今水際を走っているというところなんですよね。だから、そういう国の基本施策に該当する、あるいはそれに対応するような重大な問題を国民の安全のためにやるという場合には、これは人も予算もそれに見合ったように御要望なさって、これは内閣として当然認めてもらって当たり前ではないかと思うんですね。  そういう点で、大臣が御苦労なさっておられるのはよくよく承知しておりますけれども、そういった国の施策とのかかわりから考えましても、ひとつ十分に強化していただけるように抜本的な対策にぜひ力を振るっていただきたいと心から御要望申し上げて終わりたいと思いますが、大臣の御決意のほどを伺っておきたい。
  124. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 大変重要な御指摘だと思います。  それで、今先生とのやりとりの中で、日本の食品の半分に近いものが、これだけいろいろなサービスをしていくとか検査をするとか、いろんな人手をかけてようやっと国民一人一人の口の中に入るんだなということを考えまして、これは重要なことだけれども、やはり食品衛生というものは、先ほど申し上げましたように、国民の健康、そういったものにも直接影響があるわけでありますから、できるだけそういった意味での先生の御指摘についての検討をしていくべきだと、私はかように思います。同時に、我々の食品というものも単に自然にとられて自然に町で買って、そして自分の口に自然に入るというものではない、非常に多くの人の手を経て、しかもいろんなチェックをして入るんだということも改めてよく認識をしなけりゃいけないんじゃないかと、かように思います。
  125. 乾晴美

    ○乾晴美君 私は老人介護についてお伺いしたいと思うわけです。  ちょっと私的なことで恐縮なんですけれども、私は生後九カ月で父と死に別れたわけでございます。その後、兄とともに母の手一つで育てられたわけなんですけれども、その母がある日突然に脳卒中で倒れたわけでございます。四年間、兄夫婦と私たち夫婦で母の看病をしたわけなんですけれども、こういった看病を通じて私は、もう高齢者の方を家庭の中で看護していくということは非常に困難なことだということと、それから家族の人たちの頑張りに対して、在宅福祉ということの充実というのをもう本当に痛感させられました。  こういった看護ということが家庭の中で行われていくという、そういうものを可能にするものは、やっぱり家庭の中で働いている人が余りにも負担にならないように軽減されていくというようなことが大事なんだろうと思うんですね。そのためには、やっぱり介護といいましょうかマンパワーといいましょうか、そうした人たちの確保というのが大事だと思います。ホームヘルパーさんにしても非常に数が少のうございますので、働きながら、家族を見ながらということになりますと、どうしても家政婦さんにお願いしなきゃいけないということになるわけです。  私たちきょうだいもそうでして、家政婦さんをお願いしたわけなんですけれども、そのとき正直に思いましたのは、できることならば専門的な知識と技術といいましょうか、そういうものを身につけた家政婦さんが欲しいなというのが本当の心でございました。  そこで、六十三年度から国の方が初めて福祉の分野で介護福祉士というんですか、そういうものを制定されたということなんですけれども、これは厚生省の方が指定校を決めて、そこの指定された学校を出られるか、またはホームヘルパーさんのような方で実体験をなされた方が経験を踏まえて国家試験を受けたら行けるという、いわゆる国家資格を持った者をつくっていくというふうなことをお聞きしまして、非常にうれしいなというふうに思ったわけでございます。  それで、まずお聞きしたいんですけれども、養成校の指定校といいましょうか、それはどれぐらいになっていらっしゃるか、それからまた卒業生はどれぐらいいらっしゃるかということをお聞きしてみたいと思います。
  126. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 介護福祉士は、今お話がございましたように、昭和六十三年度から発足したわけでございますが、介護福祉士の養成施設昭和六十三年に二十五校、それから平成元年に五十一校で、現在七十六校指定されております。卒業生は、平成二年の三月末、本年度末でございますが、定員で千五百八十八人卒業の見込みでございます。
  127. 乾晴美

    ○乾晴美君 それでは、ホームヘルパーさんの方でしょうか実務経験者は試験があるということなんですけれども、どの程度の方が志望されて、そして合格率といいましょうか、どれぐらい合格されているか。二年度ということなんですが、もう既に志望者がいらっしゃるかということをお聞きしてみたいと思います。
  128. 加藤栄一

    政府委員(加藤栄一君) 第一回の介護福祉士の試験でございますが、ことしの一月から三月にかけて行われまして、受験者数が一万一千九百七十三名でございまして、合格者が二千七百八十二名でございますので、合格率が二三・二%であったわけでございます。  第二回目の試験は、この十二月三日から始まるわけでございますが、現在受験予定者数が一万五百六十三名になります。
  129. 乾晴美

    ○乾晴美君 ということで、非常に人気もある、高く評価されているということで、これは喜ばしいことだと思うんです。今後、もっともっとこういうものを充実していって、我が国のこういうふうに介護をやるのだというあり方のリードをしていけるような人材を養成していただきたいというように思います。厚生省にお願いするわけではございませんけれども、一般の短期大学、そしてまた大学の中にも福祉科というのがあると思うんですが、そういうところも増員、増設していって、若い人たちがどんどんと養成されていくということを望みたいと思います。  その次に私が困りましたのは、経費の問題なんですね。いわゆる公的な家庭奉仕員という方にお願いできませんでしたものですから、民間の家政婦さんにお願いしました。私の家の場合は一日一万円でございました。ですから、一カ月三十万円から三十一万円でございます。アンケートとか調査によりますと十四万一千円が平均だということで、非常にこれは私たちサラリーマンにとっては家計を直撃するお金でございまして、大変でございます。  それで、家族とか親族の介護をなさっている方に、名前は何でもいいんですけれども、家族介護手当というような制度はできないものでしょう
  130. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 乾先生、御家庭でお母さんの介護をして、非常に困難な状況下でいろいろと御苦労されたことを聞いて大変感激をいたしておりますが、実は私も家内の両親がほとんど寝たきりで、体はむしろまだおじいさんの方がいいものですから、おじいさんがおばあさんの世話をしている。こういうことを見て、今毎日毎日家内は夜になると鳥取県へですが電話をしているんですね。  そういうようなやはり心の支えというものも非常に大事なんで、今言われた手当の問題等については、私は確かに家庭でもってやるためにたくさんのお金がかかるし、あるいは働きに出ている時間がつぶれて、そのために所得が減るというような問題とか、いろんなそのための影響はあると思います。しかし、日本のように家族社会でというような伝統的なものが深く根をおろしているところでは、やはりそういった意味でのお年寄りを抱えている家というものが非常に欧米のようなところと比較したら多い状況にあります。  そういうようなところでどういうふうに介護をしていくかというためには、決してお金ばかりではなくして、むしろそういったところに手の行き届いたような、今計画をしている在宅介護の三本柱のようなものを手厚く充実をしていく。そして、しかもそのサービスというものがどういうふうに得られるかという情報を次々に提供していく。そういうような、現実に寝たきりにならないようなリハビリその他のことをお世話していけるような体制をつくることも重要だという考え方に立って、今我々厚生省といたしましては、そういった制度充実、そしてマンパワーのさらに充実というような意味で重点的に、しかも五カ年計画というものを前倒しまで実施してでも早く行き届けさせたいという努力をいたしております。  そこで、いわゆる福祉手当のようなものになるというと、その段階がどこで、だれにどういうふうにして決めたらいいのかという問題等が全く難しい問題で、しかも他のいろんな手当との整合性の問題、この前にも一回そういった手当を出した、臨時にことしやったわけでありますが、そんな中でも後になって、おれもこれもらえる資格があったんじゃないかとか、いろいろな方々が次々に出てきたことも私どもは体験をしております。  でありますから、やはりまず制度を通じてそういった家庭に対する援助を具体的にしていく努力をしていくことが大切である。そして手当というのは、さらにもっと検討していかないと、どういうふうに実施をしていったらいいのかということの整合性についても検討していかなければならないのではないか、かように思っております。
  131. 乾晴美

    ○乾晴美君 大変難しいだろうと思うんですけれども、現実には被爆者援護法といいましょうか、そういう介護が必要な方には介護手当というのがありますので、そういうことに見習ってやはり手当を出していただけると随分助かるのではないかというふうに思うわけでございます。時間がございませんので次に移らせていただきたいと思いますけれども、在宅介護をするとい、そういうことを可能にさせるのは何かという前提はやっぱり住宅問題であると思うわけで。日本の場合、高齢者と一緒に生活しているというのは、六割の方が同居されているわけなんですね。これからも可能な限り、環境とかいろんなものが許せば一緒に住みたいと思っていらっしゃるというのが日本社会なわけなんですね。しかし、年を寄ってきますと心身ともに衰えてきますし、いろんなことで大変なわけでございます。そこへもってきて住宅がどちらかといえば若い人向けの住宅になっている。そういう中で、お年寄りの方は子供夫婦に気兼ねしながら隅っこの方で生活をしていくということを余儀なくされるわけです。  そういうときに、けがとか病気をして一たん病院へ入られる。病院へ入られて治療されて、リハビリもちゃんと終わって、今度家庭へ帰るときに帰ってくる場所がないということにもなるわけです。    〔理事糸久八重子君退席、委員長着席〕 そういうことになりましたときに、本人も望まないし家族も望まないだろうけれども、寝かしつけておくというような感じでだんだんと寝たきり老人になっていくのではないか。やっぱり高齢者の介護というのは、本人ができるだけ自然な形で生活できていくような、そういう心身ともに明るい希望が持っていけるような、いわゆる自立援護といいましょうか、そういうことでなさるべきだろうと思うわけです。  そういう意味で、高齢者の福祉の確保を推進しております厚生省は、高齢者が住みやすくて、そしていわゆる喜んで暮らせるような住宅の確保や改善の推進のためにはどのような対策を講じておいでか、お聞かせ願いたいと思います。
  132. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) おっしゃいますように、お年寄りのことを考えまして、家族と一緒に安心して暮らしていけるようにということでいろんな施策を考えております。  一つは、高齢者の居室というんでしょうか、専用の居室を増改築するというために低利融資をしておるというのが一つでございます。  それから、お年寄りと若い者とが一緒に同居で きるようにということで、同居の場合の住宅の規模につきまして特例を設けまして、年金福祉事業団による住宅資金の貸し付けで割り増しの貨し付けをしておるとかという、金融制度をまず一つ考えております。  それから、確かに障害を持ちますと今までの生活とは違ってまいりますので、それにふさわしいように住宅の改造をしなければなりませんが、どういったような改造をしたらいいのかというその具体的な方法を御存じない方がいらっしゃるわけでありまして、その辺につきまして市町村の職員とかあるいはそういう工事をやる工務店の人にも、個々のケースに応じてどういうふうに住宅を改造したらいいかという、そういったことの相談がちゃんと受けられるような、そういう知識をちゃんと持ってもらって相談にあずかれるような仕組みをこしらえたい、そういうふうなことを考えております。  それからまた、建設省と一緒になりまして、高齢者向けの公共住宅を確保して、そこに必要な福祉サービスを行えるように、例えば緊急時のときに飛んでいけるとか、あるいは必要な施設との連携を図るとか、そういう福祉的なサービスを担う人を張りつけたような公共住宅を整備したい。  それからまた、軽費老人ホームという老人ホームの体系がございますが、そこにケアをつけて、もちろん自分で食事とか入浴ができるようにする、そして車いすも使えるというふうな、そういうふうなケアつきの住宅をつくっていきたい。  それから、自分の家でそういう障害を持ちながら生活をする場合に、車いすであるとか歩行器なんかも必要になってまいると思いますので、これにつきましては来年度の予算でぜひとも貸し付けの対象にできるようにということで現在要求をしているところでございます。
  133. 乾晴美

    ○乾晴美君 ありがとうございます。ぜひお願いしたいというふうに思います。  住宅といえば何といいましても住宅行政を預かっておる建設省だと思います。建設省の方に、民間の人がなさるいわゆる賃貸住宅とか賃貸マンションの一般的な条件をお聞きしたかったのですけれども、時間がございませんので、そういういろんなお金を民間の方に貸すときに、高齢者とか身体障害者の方が居住しやすいようなマンションをオーナーとして建設する場合には融資条件の面で何か優遇されているような面がございますでしょうか。
  134. 荒田建

    説明員(荒田建君) 住宅の建設につきまして、建設省といたしましては、公的な直接供給で公営住宅とか公団住宅がございまして、そういったところでは高齢者向けの仕様の部屋をふやすとかあるいはいろんな浴室、階段等々につきまして、高齢者が住みやすいような形での仕様にいたしまして供給するということもやっております。  今御指摘の民間の方のお話でございますが、マンションであれあるいは戸建てであれ、持ち家の場合ですと高齢者割り増し貸し付けということをやっておりまして、これの活用がかなり進んでございます。  ただ、民間の賃貸住宅のレベルになりますと、これは賃貸住宅になりますとどうしても土地所有者が大体経営者になりますが、その経営者が果たしてそういう高齢者向けの賃貸住宅をつくるインセンティブがあるのかどうか。それからまた、仮に高齢者入居用ということの仕様でつくりまして入りましても、賃貸住宅の場合ですとすぐ入居者が変わってしまうというようなことが往々にしてございますから、融資してせっかく高齢者仕様の賃貸をつくって、それが五年、十年、十五年と本当に高齢者のために継続して住まわれるかということについてなかなか保証もないというようなこともございます。そういったことで、民間賃貸の方にはまだ施策が及んでおりません。  もちろん、今後の高齢社会を展望しますと、民間の賃貸住宅でも高齢者仕様の賃貸住宅がたくさん出てくるということは望ましいことでございますし、先生のおっしゃることももっともではございますので、今後いろいろな形で施策の積み重ねに努力していきたいというふうに考えております。
  135. 乾晴美

    ○乾晴美君 徳島県の場合に、オーナーさんが四十戸建てのマンションを建てるときに、一階、二階を高齢者向けにやりたい、身障者でも入れるようにおふろとかいろんなところをやりたいというんですけれども、非常に規格が大変でなかなか自由に使わしていただけなかった。それを無理してやりますとコストが高くなるというようなことで、非常に不利益をこうむるのでできない。それを高齢化社会に向けて早くちゃんとできるようにしたらいいのにというようなことで、徳島県のオーナーさんで絶対やりたいという方も出てきておりますので、御認識いただきたいと思います。  その次は、地方住宅供給公社とか公営住宅というようなところでは、高齢者やそれから身障者向けの住居というのはどれぐらいつくられておるか、また今後それをどうなさるおつもりか、お聞かせ願いたいと思います。
  136. 荒田建

    説明員(荒田建君) 高齢者、身障者に対する住宅対策、先ほど申し上げましたようにこれからの大きな住宅政策の柱かと思います。  そこで、現在高齢者向けの住宅として、例えば部屋数をふやすとか、あるいは先ほど申しましたように浴室それからトイレ、そういった関係で手すりをつけたり段差をなくしたりというふうなそういった仕様のある住宅、これを建設省でも推進しておりまして、公営住宅、公共団体がつくる住宅、これでは高齢者世帯向けでこれまでに約一万六千戸ほど供給しております。また、心身障害者向けでも約一万九千戸ということでやっておりますし、公団住宅、住都公団の方でも高齢者障害者対策住宅ということで二百六十四万戸、これまで管理している戸数ですが、建設戸数では五百七十三万戸ということでやっております。  それから、今先生お話しありました地方住宅供給公社でございますが、この公社の住宅につきましても、いわゆるケアつきの高齢者住宅というものを去年から神奈川で始めておりまして、供給実積で三百数十戸というようなことでございます。  まだまだ十分であるとは我々も考えてはおりません。これからもこういった高齢者が安んじて家族と一緒に住めるような仕様の住宅をたくさんつくっていくということで、引き続き努力していきたいと思います。
  137. 乾晴美

    ○乾晴美君 よくわかりましたけれども、まだまだ足りないということが実態だろうと思います。これからは住居ということもあわせて考えていかないと、高齢化社会に向けては大変だと思います。  全日本民間労働組合連合会というところがアンケートをとっておるんですけれども、二十一世紀に向けてどんな展望が開かれるかということなんですが、ほとんどが暗いイメージでしか答えられていないわけなんです。これはどういうことかといいますと、消費税にいたしましても、高齢化社会に向けては消費税が必要なんだというようなことを言われたり、それから高齢化社会に向けては自助努力が必要なんだ、大変なんだ大変なんだということばかりが先に言われたもんですから、今の若い人たちは子供をたくさん産んで子供に出費するよりも、自分の老後のためにお金をためておこうじゃないかということになったり、それからまた働き過ぎだと世界の人たちから言われても、老後が安定しているという先への明るい見通しが見えなければ、どうしてもそういう状態はなくならないだろうというふうに思うわけでございます。  ですから、今後二十一世紀に向けて、厚生省や政治をなさっている皆さん方が、それこそ二〇二〇年がピークであるならば、そこが明るい、こんな展望が開かれた世界になるんですよというビジョンも早く示さなければいけないし、高齢化社会に対するそういった福祉充実をしていかなければいけないというふうに思うわけです。  そこで、こういうことに関しまして厚生大臣の御見解なり御決意のほどをお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  138. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 大変暗いイメージが先行しているように言われますけれども、私は暗く見ないで明るく見ていかなければいけないんじゃないか。例えば医療費の問題一つとっても、一軒にお年寄りを抱えて、ちょっと病気が重くなってくるというと何百万円というお金がかかっているような状態もあります。恐らく昔のような家族社会の中でもしそれをやるとしたら、まず一家心中するようなことが起こりかねないような多額の金がかかっている。そういったものが、今自由に治療を受けていただいて元気になってくるということを考えてみるというと、やはりその制度というものは非常に世の中のために明るいイメージを与えているんだ、明るい希望を与えているんだというふうに見ていかないと、医療にしても年金にしても大変多額なお金が給付されているわけでありますけれども、全部それが暗いイメージになってしまう。我々の中で高齢化社会高齢化社会と言うこと自体も、何かいかにもお年寄り人たち負担がかかってくるような時代に思われて、お年寄りの人が非常に肩の荷が重い、そういった意味で心が重いというような状態も生まれてきております。  でありますから、私たちは、長寿社会に向かってお年寄りに対する期待の持てる、先ほど来言っている在宅福祉その他についても十分にやっていくことによって、そして現在のお年寄りの姿を見て若い世代人たちが将来に希望を持つ、こういうふうな考え方を基礎にしてこれからも取り組んでいきたい、かように思っております。
  139. 小西博行

    ○小西博行君 もう既に高齢化社会の問題がいろいろと同僚議員の方からも出されておりまして、私も日本の二十一世紀ということを考えますと、単なる高齢化社会というよりも、もう超高齢化社会。先日も労働大臣にもお伺いしたんですけれども、欧米の先進諸国というものへ実際に参りまして肌で感じますと、やっぱり日本とは相当違うなという感じでありますね。お年寄りの人の雰囲気もそうでありますし、国民全体でも老後に対してさほど心配していない。したがいまして、自分たちの生活を本当にエンジョイする、そういう社会的な基盤というものが醸成されているという実感を持って国を見てまいりました。  日本の場合はどうやらそれが、今大臣がおっしゃったように、いろんな計画はされて具体的にやっているんだというんだけれども、将来に向けて、例えば十年、二十年、五十年という将来に向けての一つの形というのが明確に示されにくいといいますか、そこに大変いろんな意味での不安が出てきているんじゃないか。  そうは言いましても、やっぱり私はこの老後の問題ということになりますと、みずから経済的に自立できるようなそういう公的年金というものに対する期待が非常に大きい。年金の問題というのは、恐らく今月いっぱい衆議院でやって参議院へ上がってきまして、またこの場で相当審議されると思うんですけれども、ころいう公的年金というのが非常に私は大きな意味をなしてくるんじゃないかというような考え方を持っておるんですが、大臣の御認識をまずお伺いしたいと思います。
  140. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 御指摘のとおり、急速に進んできておりますこの高齢化社会に向かって、まず私は、世代間の扶養という意味国民的な合意がなされているわけでありますが、まだ十分にその国民的合意というものが一人一人の国民の中に十分行き渡っていないんではないか。  と申しますのは、年金をいただくというと、自分が掛金を掛けて、それが将来何ぼかになってもらえるんだという考え方があるわけであります。そういうことにどうしても考えがちでありますけれども、現在の日本年金制度というものは、御承知のとおり昭和四十八年の改正以来物価にスライドをして、そしてそのときの生活条件というものを満たす水準の平均的な給与に対する厚生年金で言えば七〇%の保障をしていくという、将来の二十一世紀に向かって、長寿社会に向かっての保障を確実にしていくんだというそういう仕組みをお互いが知り合えば、年金でもらった分でも十分にその年金の範囲内で計画が立てられるわけであります。  今まででしたら、定年退職してしばらくしたらこの世の中にいなくなっちゃうという時代から、今は定年退職してから二十年あるいは三十年にわたって自由な時間を享受して、そして人生計画を立ててやっていけるのでありますから、そういう意味で、年金制度というものの所得保障というものがお互いの約束で行われるんだということを十分に徹底していくと同時に、行政はそれに向かって努力をしていく、こういったことが大切であると私は思います。
  141. 小西博行

    ○小西博行君 私もそのとおりだと思いますし、この問題は、我々自身ももうあすは老齢化の方へ入るわけでありますから、長いそういう歴史の一環としてやっぱりきちっと整理していく必要がある、私はそのように思います。  さて、今回の年金改正点でいろいろな問題があるわけでありますが、例えば基礎年金については五万五千五百円に、厚生年金についてはモデル年金で十九万五千四百九十二円に引き上げる、こういうことが出されております。こういうような年金額の設定、その具体的な根拠というのは一体どこから来ているか、これを説明していただきたいと思います。
  142. 水田努

    政府委員(水田努君) お答え申し上げます。  前回年金改革で基礎年金が導入されましたが、前回の導入されたときの考え方に従いまして、その後の基礎的な消費支出の増大に即して今回改正を図ったものでございます。  具体的に申し上げますと、五十九年の総務庁の全国消費実態調査における六十五歳以上単身無業の高齢者の方の月々の基礎的な消費支出、食料費、住居費、被服費、光熱費、これが五万七百二十六円と出ております。その後における基礎的な消費支出の上昇率、これは年率一・二%でございますが、それで延ばしてまいりますと、平成元年度価格で申し上げますと五万三千百円になるわけでございますが、これに前回と同様の諸雑費の一部二千四百円を上乗せして五万五千五百円として設定をいたしたものでございます。  次に、お尋ねの厚生年金のモデル年金は、六十歳から六十四歳までの間に支給されますところの特別支給の年金額のモデルケースでございますが、これは新規裁定される方の厚生年金の標準的な年金額をお示ししたものでございまして、過去の標準報酬を直近の標準報酬で再評価をいたしまして、今お尋ねの十九万五千四百九十二円というものを設定したわけでございまして、前回改正の場合と同様、現役男子の平均標準報酬月額の六八%に相当する水準を確保した、こういうことでございます。
  143. 小西博行

    ○小西博行君 経過年金という言われ方をしております五年年金とかあるいは十年年金というのがありますね、あるいは老齢福祉年金。こういう額というのはできるだけ基礎年金の額に近づけるべきじゃないかというふうに私は思うわけですが、その点はいかがですか。
  144. 水田努

    政府委員(水田努君) 御指摘方向でこれまでも努力をしてまいりました。その結果、十年年金につきましては本来二十五年加入すべきところを十年しか保険料を納めないわけでございますが、本来の額でございますと十年分に相当いたしますところの年金額は月額で申し上げますと二万一千三百三十三円でございますが、残りの加入しなかった、できなかった十五年部分についても一定の加算をするという形で、今申し上げました金額の六〇%増しの三万三千七百十七円という形で、基礎年金のおおよそ六割の水準を確保いたしております。  次に、五年年金は本来十年年金の半額ということで制度をスタートしたわけでございますが、今日では十年年金の八五%に当たりますところの二万八千七百円に設定をいたしております。  それから、五年年金と老齢福祉年金、これは一方は保険料を納め、一方は全額国庫負担という関係がございますので、若干の車間距離を置かざるを得ないわけですが、今回の改正ではその車間距 離三百円ということで、五年年金と三百円差の二万八千四百円という水準にまで故善さしていただいているわけでございまして、これ以上経過年金の水準を引き上げますと、例えば十年年金の倍保険料を納めました二十年年金その他とのバランスからいって全体的に水準のかさ上げをせざるを得なくなる。ということは、それは将来の保険負担に大きく響いてまいるわけでございますので、私どもは、今日置かれている基礎年金の厳しい財政事情を考えますと、今回設定された水準が精いっぱいのところではなかろうか、このように考えている次第でございます。
  145. 小西博行

    ○小西博行君 時間が本当に少ないんで議論ができないわけですが、財源の問題もいろんな問題を含んでおりますので、またの機会にその問題について触れさしていただきたいというふうに思います。  もう一つですが、被爆者援護法、これにひとつちょっとだけ触れておきたいと思います。  私自身も今度はこの原子爆弾被爆者等援護‐法案、これの提出者の一人に名を連ねているわけでございますけれども、現行の原爆二法を中心として被爆者対策を充実したい、政府の方はそのようにずっと言っておりますが、来年は被爆四十五周年を迎えるわけでありまして、国の死没者調査も大体まとまるということも聞いておるわけであります。この際、この被爆者援護法を制定する必要があると我々は判断をしておるわけでありますが、政府の方はこの法制化に対してどのような御見解を持っているのか、まずお伺いしておきたいと思います。
  146. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 御指摘のとおり、来年は四十五周年を迎えることになります。この原爆被爆者対策につきましては、御承知のとおり、政府としては今日まで一貫して他の戦争犠牲者との関連において措置されてきたところでありますけれども、また一方、原爆被災者は他の一般戦災者とは異なった犠牲になっているんじゃないかという見方もいろいろとあることも存じております。  しかしながら、今言ったように、例えば東京都あたりで空爆で死んだとか、そういうようなものとのまたいろんな相互の関係等、いろんなやはり見方も出てくる。そういうような観点から、今日まで可能な限り被爆者に対する援護の方法を講じてきたわけでありますが、ただ最後のぎりぎりの一点において、今まで何回も社会労働委員会等でも議論されましたけれども、その一点の枠を超えて踏み切るところまで至っていないという現状であります。  今回も野党の皆さん方から御提案されていることはよく存じておりますけれども、先ほど申しましたように、一般戦災者との均衡上の問題という問題をどう乗り越えていくのかという大きな問題がどうしても残るというふうに私は感じます。
  147. 小西博行

    ○小西博行君 それは見解の相違だろうと思うんですね。何も原爆だけを手厚くしろということでは私はないような気がします。広島県なんかは虫母ガスの問題も実はありまして、同じように苦しんでおられる方が相当いらっしゃるので、そういう問題もあわせて将来やっぱり考えていく必要があるんじゃないか、そのように認識をしておるわけです。当然、これが本委員会に付託されますと議論をいろいろする場があると思いますので、ぜひともそのときには十分なる審議をしていきたい、このように私も思います。  ただ、私なんかは広島、委員長も広島でありますが、総理も八月に来られますとよく原爆病院をお見舞いしていただきますが、何さまもう高齢化でして、患者さんも。そういう意味で、もう早く何かこういう手を打っていかないと遅きに失するんじゃないかという、地元の皆さん方もそういう考え方が相当強うございまして、何としてもこの際福祉対策というような面からも充実を急いでいただきたい、こういうような気持ちが強いんですが、その点はいかがでしょうか。
  148. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 被爆者対策につきましては、大臣から御説明も申し上げましたように、私ども放射線による健康障害という特別な犠牲に着目いたしまして、被害の実態に即した措置をいろいろ講じているところでございます。  その中で、高齢化に対応しまして福祉対策はどうなっているかという先生のお尋ねでございますが、これまでも、被爆者の高齢化に対応いたしまして原爆養護ホームの整備なりあるいはホームヘルパーの派遣、あるいは各種の手当の引き上げ、健康診断の実施、相談事業の充実等の施策を進めてまいっているところでございます。また、平成元年度におきましては、広島市、長崎市の原爆被爆者健康管理施設施設整備にも助成を行っているところでございまして、こういう面で、被爆者の実態に即しまして福祉対策の充実に今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。
  149. 小西博行

    ○小西博行君 国内の問題はそういうことだと思うんですが、在韓被爆者、この問題が必ずいつも出てまいります。御存じだと思いますが、八月六日の原爆記念ということで催しをやりますけれども、その前日に、韓国の皆さん方が亡くなったその慰霊祭というのも必ず、あの区域からちょっと外れておるんです、川の向こう側にあるんですけれども、そこでやっておられまして、毎年私はそこへお参りに行くわけでありますけれども、そういうことから考えてみましても、在韓被爆者、この方々をこれから先もやっぱり治療をしていくべきじゃないか。これは六十一年からは中断しているんですね。向こうの方が日本へ来て治療するというこの制度がずっと中断している。韓国の政府でも韓国の内部でいろいろ治療をするということもやっているようですけれども、この問題は非常に大切な一つの国際的な問題だと思うので、これはどうしてストップしているのか。これから先一体どういう方向でいくのか。在韓、いわゆる向こうにおられる韓国人の被爆者の方ですね、これを日本で治療するというこの制度、この実態についてちょっとお伺いしたいと思います。
  150. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 在韓被爆者の方々日本に渡ってこられまして治療を受けたというケースは、五十六年から五年間実施いたしまして、総数で三百四十九人の方々日本に来られて治療したわけでございます。先生お話しございましたように、昭和六十一年以降、韓国側から、韓国内の治療体制の整備によりまして韓国内で治療が可能であるというような理由から継続しない旨申し出がございまして、現在は中断いたしているところでございます。  この渡日治療の再開につきましては、外交ルートを通じまして話し合いを行っているわけでございますが、韓国政府におきましては、現在のところ、渡日治療の再開よりも国内の治療体制の充実に努めていく方針ということでございます。そういうことで、仮に渡日治療の再開の要請がありますれば、私どもといたしましては誠意をもって対応いたしまして、被爆者手帳の交付、あるいは治療のための医療機関の受け入れ体制の整備等円滑な実施のためにできる限り努力してまいりたいというぐあいに考えております。
  151. 小西博行

    ○小西博行君 ですから、韓国政府からそういう要請があれば日本で十分に対応するということでございますね。  はい、では以上で終わります。ありがとうございました。
  152. 西川潔

    ○西川潔君 私は、先般の予算委員会におきまして、老人福祉問題についていろいろと質問をさせていただきました。老人福祉対策は極めて重要な課題であります。  一昨日、大阪で障害者の皆さん方とお年寄りの皆さん方の集いがございまして、いろいろとまた現場でのお話を伺ってまいりました。生の声を国政に反映できるようにきょうも頑張りますので、ひとつよろしくお願いいたします。  まず、先般質問いたしましたシルバー一一〇番の電話番号全国統一について最初にお伺いしたいと思います。  お年寄りやその家族のいろんな悩みに気軽に応じられる総合的な相談体制が必要であると考えまして、厚生省そしてまた郵政省に質問をさせてい ただいたんですが、厚生省が全都道府県に設置を進めてこられました高齢者総合相談センター、いわゆるシルバー一一〇番についてもっとたくさんの方々に知っていただきたく、そしてまた有効に利用していただくために全国どの地域からかけましても同じ電話番号で利用できるようにならないものか、そういうことをお願いさしていただきましたところ、厚生大臣、郵政大臣からも大変前向きなお答えをいただきまして、ありがとうございました。そして、最近の新聞の報道なんかによりますと、全国の統一の番号がやっと決まったという報道を見せていただきまして、本当にうれしさで胸がいっぱいです。  本日、改めてお伺いしたいのですが、シルバー一一〇番に電話をいたしますと、どういうことをいろいろとお教えしていただけるかということをお伺いしたいと思います。
  153. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) いろいろな相談事をまずお受けをするようにということでこの一一〇番体制を整えております。それからまた、いろんな機器を使うということも必要になってまいりますので、特に介護に有益な福祉機器なんかも展示をしまして、そしてそれを使う場合にはどんなふうにしたらいいですよというふうな、そういう必要な情報もあわせて御相談に応じるというふうなことを考えています。  それから、悩み事全般にも相談できるようにということで、お医者さんであるとか弁護士さんであるとか、そういう専門の方にも応援をいただきまして相談をするような体制も整えています。  それから、必要なサービスがこんなものがありますよということで、そういうサービスについての情報を提供するであるとか、あるいは職員関係の皆さん方の研修を行うとか、そんなふうなことをこの高齢者総合相談センター、いわゆるシルバー一一〇番では担当しているわけでございます。
  154. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) ちょっと補足します。  この前、参議院の予算委員会段階で、西川議員から、今お話がありましたようにシルバー一一〇番の電話番号が地域によってみんな違う、何か一本に、全国統一したものにならないのかという御質問がありまして、そのときに、近くNTTの着信短縮ダイヤルサービスというのがあるから、それに申し込んで、できればわかりやすい番号にしたいと。しかし、なかなか抽せんでやるために必ずしもこちらが求めるような番号がとれるかとれないかわかりませんというお答えをしたところが、西川議員から、それはこういうものは優先的にやったらどうなんだといって郵政大臣にも質問をしていただきましたが、結局そのときに厚生省から八〇八〇、晴れ晴れという番号にしたらということで八〇八〇を申し込んでいたわけでありますが、この晴れ晴れというのがよそに一応当たったんですけれども、事情を話したら、じゃそれだったら厚生省の方へ渡しましょうというので井けたの八〇八〇で全国共通に電話がかかるようになり、十二月中にはこれが利用開始になるだろうと思います。  そのときはいろいろと御支援をいただいてありがとうございました。
  155. 西川潔

    ○西川潔君 本当に私も大変わかりやすい番号で喜んでおります。いろんなところに講演に参りましたり、またテレビに出演さしていただいたり新聞で取材を受けましたときには大PRをさしていただいております。八〇八〇、晴れ晴れで本当によかったなと、これが五九六〇であれば御苦労ばっかりしなければいけないということでございますので、本当にうれしく思います。  そこで、お願いはしたものの大変気になることが一つあるんですが、長年現場をいろいろ回らしていただきまして、おじいちゃんとかおばあちゃんにお話をお伺いするんですが、今老人の日常の生活用具をいろいろなところでお借りすることができるんですが、これは本当に三千とも四千とも言われております、いろんな器具がございます。実はこの電話番号をつくっていただいたのですが、六十五歳、七十歳と言われるお年寄り方々が毎日の暮らしの中で本当に困ったときにいろんな道具をお借りできるんですけれども、実は老人用の専用の電話機ですね、これがお借りする電話は全部プッシュホンになっておるのでございましょうか。それをお伺いしたいと思います。
  156. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 残念ながらどうもダイヤル式の方が多いという状況のようでございます。全国的にすべての電話も大体プッシュホンは二割ぐらいしか占めていないということでございますので、お年寄り用に貸与をしておる電話につきましてもプッシュホンの数は少ないんじゃないだろうかと見ております。
  157. 戸井田三郎

    国務大臣戸井田三郎君) 今私も聞きまして、これはせっかくお年寄りのサービスのために全国短縮電話が初めてNTTで利用されるようになったわけでありますから、お年寄りの電話というものはそういうサービスの意味で十分各家に備えつけられているわけでありますから、できるだけそういったものがこの普及と同時にそれぞれの人たちに利用ができるような方法を考えていきたいと思います。
  158. 西川潔

    ○西川潔君 いわゆる一刻を争うというようなときももちろんございます。そういうときには、ダイヤルの方は表に出まして最寄りの公衆電話から八〇八〇でこれは通話ができるんでございましょうか。
  159. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) もちろんそうでございます。  それで私どもは、大臣お話を申し上げましたように、プッシュホンの普及をしていきたいと思っておりますが、あわせまして既存の電話もありますので、それは従来の電話でもちろんかかりますから、その従来の電話番号もあわせてPRをさしていただきたい。大阪の場合ですと八七五―〇一一〇でございますので、こういう大阪のシルバー一一〇番はまさに一一〇番になっておりますが、こういうふうな電話番号をあわせて皆さん方にお知らせするような努力をさしていただきたいと思っております。
  160. 西川潔

    ○西川潔君 細かいことを根掘り葉掘り聞くようですが、例えば表に出ます。八〇八〇へ電話をしたいときにこの公衆電話は十円は要るのでしょうか。――これ厚生省でいいんでしょうか。
  161. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) これには十円は要ると思います。特別に料金負けてくれるような公衆電話の仕組みはないんじゃなかろうかなと思っておりますが。
  162. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございました。うちの親も三人いるんですが、何でも公のものは無料でやってくれるのかなというふうに、だんだんがめつくなってきている部分もございますので、お金が要るのか要らないのかということもお伺いしたかったわけですが、もちろんこれはおうちでかけるときも基本料金は要るということでございますね。わかりました。  次に移らしていただきます。  先日、大阪のラジオの番組で毎週国会報告をさしていただいておりますが、ある主婦の方からおはがきをいただきました。ちょっと読ましていただきます。   西川潔さん、ちょっと聞いてくださいますか。実は私の主人の母のことなんですが、特別養護老人ホームでお世話になっておりましたが、先日病気になり老人ホームから病院入院いたしました。病院入院している期間は、ある程度まで母のベッドをそのまま確保してくださるそうです。しかし、入院している期間も今までどおり毎月一万三千円を支払っております。当然病院代もお金がかかります。つまり、二重払いは私たちの収入では大変苦しいのです。かといって老人ホームを断われば、せっかく長い間待ってやっと入れたのにまた一からになります。なかなか入れないと聞いております。せめて入院をしている期間だけでも老人ホームの費用を少しでも安くしてもらうとか払わないでいい方法はないでしょうか。 というお手紙を実はいただいたんです。  そこでお伺いしたいんですけれども、特別養護老人ホームに入所された方々はいわゆる費用が徴収されるということなんですけれども、これはどういうふうに例えばこの方にお答えをしてあげればいいのでしょうか。
  163. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 入院をなさった場合もお入りになっていた特別養護老人ホームに帰られるということで、その入院中の期間も特別養護老人ホームのそのベッドをあけて特別養護老人ホームの方に帰っておいでになるのを待っているわけでございます。したがいまして、特養の中の一ベッドを確保するという意味で、施設職員の経費であるとかそのほかの経費がどうしても必要になってくるわけでございます。病院で言えば空床を確保するというのと同じ意味でございまして、したがって施設職員の経費等につきまして、それを念頭に置きまして負担能力に応じて費用を負担してもらう、こういう仕組みになっているわけでございまして、いわば空床確保の経費としてそういう負担を引き続きお願いをする、そういう仕組みになっているわけでございます。
  164. 西川潔

    ○西川潔君 特別養護老人ホームに入所される方々は、もちろんお年寄りの方ですから心身ともに弱って入ってくるわけですけれども、入所中に体を壊して一時的に入院をします。三カ月間で体を治さないと老人ホームに帰ってきてもベッドはもう次の人が入っているということで帰ってこれない、おうちにも帰れないということで、大変いわゆる社会入院が多いというふうに現在はなっておるわけですけれども、その場合に入所者の費用徴収、普通に老人ホームに暮らしておられる場合と全く同じではと思うんです。  施設での費用の徴収、病院での医療費の自己負担というのが重なると、この奥さんのように本当に大変だと思うんです。ですから、せめて入院期間中だけでもというようなことは考えられないのでしょうか。
  165. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 少し詳しく御説明さしていただきますと、通常、特別養護老人ホームに入られますと、本人あるいは本人とそれまで同居をされていた配偶者あるいは子供の方々からその負担能力に応じて費用を持ってもらう、こういう仕組みになっているわけでございます。入院をされた場合にはその全額を持ってもらうというわけにはまいりません。  つまり、特別養護老人ホームの費用のうち、そういう御本人の処遇をするための食費であるとかそのほかの生活費の部分と、それから入所の人々をお世話をする人たち、いわゆる施設職員等の経費と二つから構成されているわけでございます。ですから、入院をなさったときにはもちろん生活費の部分は病院の方で手当されますからそれはノーカウントになりまして、そして職員等のそういう維持をしなきゃいけない経費の部分についてそれを念頭に置いた上で費用負担をしてもらう、そういう発想にしているわけでございます。  なお、病院で例えば差額ベッドであるとか付き添いの費用であるとか、そういう費用がかかるといたしますと、それは再び特別養護老人ホームにお帰りになって費用負担をするときに必要経費をもちろん引きますが、必要経費を引くその対象の経費の中にはそういう差額ベッドであるとか付き添い費用というのは対象に入れますので、したがってその部分は何というんでしょうか、次なる時点における、要するに特別養護老人ホームでの費用徴収のときにはその部分は軽減される、こういう仕組みにしておるわけでございます。
  166. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございます。  質問させていただいて細かいことをお伺いいたしますと、本当にいろいろなことを考えていただいてありがたいとは思うんですが、こういう方々もいらっしゃるということで、よろしくお願いいたします。  次に、またこれも現場を回りましてですが、老人ホームの嘱託医の方と大変親しくさせていただいておりますが、診断書の様式が何とも旧式なもので、潔さん、一遍国会で聞いてみてくれないか、こういうことでございます。  梅毒の検査とかトラコーマ、腸チフス、パラチフス、現代社会ではちょっとまれな疾患ですね、こういう必要ではないと思われるような検査もしなければいけない。これは労力の負担もある。むしろ現場の人々にとっては今関心のあるのはB型肝炎ですと。しかもこのウイルス抗原検査は比較的簡単で、できれば加えてもらいたい項目ですがと。また、胸のレントゲン検査にしても、家で寝たきりでレントゲンなんか撮られるような状態ではないお年寄り方々もたくさんいらっしゃいます。こういう場合は、たんの検査で結核菌が見つからなければまず結核の感染の危険はなく、どうしてもレントゲンの撮れないときにはたんの検査で代用できそうですということでございますが、こういうことを一度国会質問してみてくれないかと。市の行政の方とは時々話し合いをしますが、我々レベルでは先生あきません、国、厚生省が定めた診断書の様式を変えることはちょっと我々では不可能です、もっと現実的な診断書の様式にちょっと改めてもらったら我々も楽なんですがということなんです。  これは本当に介護の方々なんかを見ていると、とてもじゃないですけれども本当にお年寄り方々、寝たきりの方というのは重いんです。もう若い介護の方々が最近はたくさん腰を痛めていらっしゃるというような現実が現場を回りますと多々ございますが、こういうことを何とか改善していただけないものでしょうか。
  167. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) まず、施設にお入りになるときに健康状態をチェックするという意味でございますが、要するに集団生活をする場でございますので、しかも老人ホームはそこでいわゆる病気を治すところではないものですから、したがって入院加療を要するような状態でないというまず確認をさせていただいているわけです。それから、集団生活をするものですから、伝染性の疾患を持っていて他の人にうつすようなそういうおそれがないかどうかということをチェックさせていただいているわけです。  そういう意味で、私ども健康診査の様式、考え方を決めているわけでございまして、今おっしゃいますような必ずレントゲンを撮れというふうなことは実は指導をしていないのでございます。  要するに、老人保健法に基づきましてふだんからお年寄りの方も含めまして健康診査をしておりますが、そういう健康診査の記録票の写しを添えていただければ十分である、わざわざそういうレントゲン検査までしてもらうことはない、こういう指導をしておりまして、現在その健康診査の写しをまず添付してもらうようにということを基本に考えているわけでございます。  どうもあっちこっちの福祉事務所における入所判定の実態を私どもなりに調べてみますと、昔の古い様式に基づいて非常に画一的な運用をしている等のケースがあるようでございまして、その辺は違いますよ、もう少し実態に即したやり方にしていただきたいですねということで御指導しているところでございます。  それから、B型肝炎についてお話をなさいましたが、これはそういう必要性があるということであれば特別におやりいただいても結構でございますけれども、それは今申し上げましたようにそれで負担をかけては大変でございますから、私どもは通常行われておる健康診査の記録票の写しを添えていただくということでまず初めの資料にしていただいたらどうだろうかな、こういうふうに考えております。
  168. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございました。  今御答弁いただきましたとおり、現実に現場を回りますと、そういうふうにまだおかたいことをおっしゃる方が、そしてまた古い様式でなさっている方々がたくさんいらっしゃいますので、そこでこの先生のような方が、もし今お答えいただきましたようなことを独創的にやるようなことであればまた非難を受けたりもいたしますので、そういうときにはまたひとつ御相談申し上げますので、よろしくお願いいたします。  本日はこれで終わります。ありがとうございま した。
  169. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  170. 浜本万三

    委員長浜本万三君) この際、お諮りいたします。  育児休業法案につきましては、去る十六日の委員会趣旨説明を聴取いたしましたが、育児休業問題に関する小委員会が設置されておりますので、小委員会において育児休業問題の全般的な調査検討とともに、便宜本法案の審議もしていただくことといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 浜本万三

    委員長浜本万三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十七分散会