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1989-12-13 第116回国会 参議院 産業・資源エネルギーに関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十二月十三日(水曜日)    午後二時十五分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         小山 一平君     理 事                 大木  浩君                 中曽根弘文君                 白浜 一良君                 高崎 裕子君                 古川太三郎君                 足立 良平君     委 員                 合馬  敬君                 狩野 明男君                 川原新次郎君                 田辺 哲夫君                 永田 良雄君                 向山 一人君                 本村 和喜君                 対馬 孝且君                 角田 義一君                 西岡瑠璃子君                 西野 康雄君                 浜本 万三君                 中野 鉄造君                 神谷信之助君                 横溝 克己君    国務大臣        通商産業大臣   松永  光君        労 働 大 臣  福島 譲二君    政府委員        資源エネルギー        庁長官      山本 雅司君        資源エネルギー        庁石炭部長    長田 英機君    事務局側        第三特別調査室        長        大平 芳弘君    参考人        在日米国商工会     議所会頭 アルバート・L・シーグ君            (通訳 佐藤 雅子君)        経済企画庁経済        研究所所長    吉冨  勝君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○産業資源エネルギーに関する調査  (我が国経済構造問題点と将来展望に関する件)  (当面の石炭対策に関する決議) ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣に関する件     ─────────────
  2. 小山一平

    会長小山一平君) ただいまから産業資源エネルギーに関する調査会を開会いたします。  産業資源エネルギーに関する調査を議題とし、我が国経済構造問題点と将来展望に関する件のうち、日米構造協議について、参考人から御意見を聴取いたします。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、在日米国商工会議所会頭アルバート・L・シーグ君並びに経済企画庁経済研究所所長吉冨勝君に御出席をいただいております。  なお、シーグ参考人同行者として、在日米国商工会議所会頭ジョセフ・A・グライムズ君に出席をいただいておりますので御紹介をいたします。  また、本日の通訳佐藤雅子さんにお願いをしております。  この際、参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本調査会に御出席いたださまして、まことにありがとうございます。  両参考人から、日米構造協議について忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  議事の進め方といたしましては、シーグ参考人から通訳時間を含め四十分程度意見をお述べいただきまして、その後吉冨参考人から二十分程度意見をお述べいただいた後、委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。  なお、発言される方は、会長の指名を受けた後、御着席のままでお願いいたします。両参考人よろしくお願いを申し上げます。  まず、シーグ参考人からお願いいたします。シーグ参考人
  3. アルバート・L・シーグ

    参考人アルバート・L・シーグ君)(佐藤雅子通訳) 会長並びに参議院の議員の皆様、私は在日米国商工会議所の副会頭であり、またイーストマン・コダック・ジャパンの社長でもありますアルバートシーグと申します。  本日、私とともに在日米国商工会議所の前会頭であり、またヒル・アンド・ノウルトン・ジャパンの社長でありますジョセフグライムズが同行させていただいております。  本日、この調査会におきまして、日米貿易問題とそれに関連している諸問題につきまして、在日米国商工会議所意見を申し述べさせていただく機会をいただいたことを大変うれしく思います。  在日米国商工会議所会頭であり、また、ワイエーハウザー・ファーイーストの社長でありますウィリアムフランクリン氏が本日こちらに出席できないことを大変残念に思っております。国際的な事業を行っておりますアメリカ日本経営者はいつでもそうですが、よくありますように、現在彼も日本国外に出張しておりまして、現在アメリカにおります。そのために、本日私は彼の代理としてこちらに出席しております。  この一年は、日米貿易関係にとって大変重要な一年でした。一九八九年を始めるに当たりまして、私どもが直面しておりました諸問題や環境を認識してこの年を迎えました。すなわち、日本は疑いもなく正式な貿易障壁を除去する上で大きな進歩を遂げたことが認識されておりました。また、これから何をやらなければいけないかということが、やるべきことがまだ始まったばかりだということも認識しておりましたし、さらに重要なのは、日本事業をやるアメリカ企業にとって、よりよい全体的な環境をつくるためにさらに時間がかかり、またさらに努力が必要だということも認識しておりました。  日米両国貿易商業を促進することを長期的な目標としております在日米国商工会議所といたしましては、このような目標に加えまして、私ども理事会は、一九八九年の初頭に当たりまして特定優先順位を決めておりました。  まず、日米両国政府及び経済界指導者と協力し合う関係を続けるということ。そうすることで両国貿易問題を幅広い範囲解決しようとしております。  第二は、日米自由貿易協定可能性とその利益を評価することです。  第三に、一九八八年の包括通商法の実施に関する事柄を監視し、そして在日米国商工会議所会員にとって長期的な利益となる行動を支持することです。  第四に、日本及び米国におきます対外投資についての事実の理解を促進することです。そうすることで両国指導者が誤解に基づいて判断をしないようにすることです。  第五に、日本及び米国研究会に参加することです。そして日本流通制度を独自に評価することです。そうすることで、これが事実上もまた観念的にも貿易障壁ではないことを確認すること です。  在日米国商工会議所といたしましては、私ども努力から得られる成果というのは毎日少しずつ起こっていくものだと確信しております。しかし、それが蓄積した効果は非常に大きなものになると考えております。  毎日ケース・バイ・ケースで、作業レベルであるいは実務レベル努力をしていくこと、しかも民間及び公的部門双方での実務レベルでの努力をしていくことは、我々が望んでいるよりはそれほど劇的な成果が生まれないかもしれません。しかし、このようなアプローチをとることで、より持続的な成果が得られるものと確信しております。  私どもは、問題の分野につきまして双方にとって利益のある解決を求めてまいりました。そして、これからもそれを求めていくつもりでおります。私ども日本及び米国双方のためになる変化を望んでおります。そして両国生活の質を改善する変化を望んでおります。  通産省が受動的な受け身の姿勢からもっと積極的な輸入を支援する措置をとるようになりましたことは、私どもは大変心強く思っております。実際に通産省は、この数カ月そのような対策をたくさん発表しております。例えば日本流通制度に関する規制の改正を計画しているということもその一つであります。そうすることで競争を促進し、また新しい企業市場に参入すること、特に外国企業が新規に参入をすることを奨励しようとしております。  また、一九九〇年四月に通産省は三通りのプログラムを発足させると理解しております。まず製造品輸入業者に税制の優遇策を提供するということ、そして低率の輸入ローンを提供するということ、そして日本消費者により多くの外国製品を導入するための国際的な電気通信ネットワークを確立するということです。通産省の推計によりますと、この新しい制度により、初年度で輸入が三十億ドル増加し、向こう五年間で輸入が二百億ドル増加するということです。もちろん、このような善意の意図がありましても、それを導入するための手段がなければ意味がありません。このような意図を持った考えが現実になるためには、一九六〇年代に日本輸出の促進のために費やしたのと同じ規模の予算を大蔵省は計上しなければなりません。このような支援があれば、日本は過去二十年間輸出大国であったのと同じように、これからは輸入大国になることができます。  では次に、最近ますます注目を浴びております題材についてお話ししたいと思います。すなわち日本の対米投資です。  マスコミではこれについて否定的な記事がたくさん見られますけれども、全体的には多くのアメリカ人は、このような投資アメリカにとっていいものだと見ております。といいますのは、対米直接投資雇用が創出されたり、あるいは雇用が維持されるような産業に傾いているからです。そして、通常これは長期的な投資であり、責任ある経営者によって経営されております。したがいまして、日本による対米直接投資は、それ自体は必ずしも問題ではありません。在日米国商工会議所もそのような投資を好ましく思っております。しかしまた、このような投資の結果、持ち上がっております問題も認識しております。  先ほど申し上げましたように、このような投資に関しての誤った情報がたくさんあります。そしてまた、貿易赤字の削減がうまくいかないということに対する感情がこの状況をさらに悪化させております。また、アメリカでは、日本企業アメリカでやっているのと同じように、日本においてアメリカ企業が同じ投資機会を与えられていないという感情があります。このような要因のために一般世論も、また議会でのムードも劇的に変わってきているようでありまして、日本投資に対しましてもっと厳しい姿勢をとるように反映されてきております。  アメリカにおきますこのような否定的な世論感情に対して日本は非常に敏感になる必要があると思います。そして、このような投資をする際に、それに応じた行動をとる必要があります。 また、日本におけるアメリカ投資に対してもそれなりの反応を示す必要があると思います。もし日本がこの面で注意をしなければ、このような否定的な世論によりまして政策の変更が促される可能性があります。そして、アメリカに対する日本及びほかの外国からの投資規制が設けられる可能性が出てまいります。  最近の日本によるコロンビア映画買収、またロックフェラーセンター買収、そしてテキサスのヒューストンにおきます大きな商業不動産買収は、すべて比較的短期間に起こりました。これによりまして多くのアメリカ人は、こういった投資が予定しております利益についての誤った印象を受けております。また日本企業は、ほかの要因をも考慮しなければなりません。例えば部品の現地調達、あるいはサービスと労働、そしていい企業市民であるということなどです。こういうことは、この投資アメリカにとって、いいものなのか悪いものなのかといったアメリカ側の受けとめ方に影響を与えます。  しかし、それでも全体的な日米関係に関しての世論で圧倒的に考慮されておりますのが貿易均衡です。貿易赤字を是正するためにすぐに行動をとるようなことをしなければ、全体の日米関係にこの貿易問題は害を及ぼす可能性があります。 これは、非常に否定的な形で両国市民生活水準にも影響を及ぼすことになります。  では、日米貿易問題の現状について少しお話ししたいと思います。  この一年、日米両国貿易問題についてお互いに何を期待しているかということについての詳細が検討されてきております。その中で主な分野が二つあります。いわゆるスーパー三〇一条と構造協議であります。この五月二十五日に、一九八八年の包括通商法によりまして、アメリカ通商代表部は、現政権のスーパー三〇一条のイニシアチブを発表いたしました。アメリカの対日貿易赤字が年間で五百億ドルに上る現状では、日本がインドやブラジルとともに貿易に対して障壁を設けていると指摘されても、だれも驚くことではないと思います。日本の場合には、優先項目として三つ特定製品分野が指摘されております。通信衛星、スーパーコンピューターと林産物です。  現在、スーパー三〇一条のメリット、デメリットが何であれ、これはもう議会で承認された法律です。大統領通商代表部はこれを実施するしかありません。この線に沿って、議会としては、日本スーパー三〇一条のもとで指名する明らかな意図を持っているということが明確だと思います。日本の場合は、市場開放政策日本経済にそれほど顕著な影響を及ぼさないような三つ製品分野についてのみ障壁が指摘されております。日本政府は、現在では来年の初頭に起こると推測されております衆議院の選挙までは何かをすることは困難だと言っております。しかし、アメリカの方では、アメリカの政治的な圧力によりまして、アメリカ交渉担当者は、来年の春あるいは初夏には成果が必要であると感じております。これはさらに一つの複雑な要因でありますが、いずれにしても深刻な要因です。  過去におきまして、日本行動をとる前に土壇場まで待つということで、その市場開放政策のいい利益をたくさん失ってきております。日本がこの三つの問題につきまして合意に達する能力を現在持っておりますので、現在のようなこの問題に対するアメリカの機運を考えましても、最後の土壇場まで待つよりも、むしろ早く変化を導入し、必要な変化をすることに早く合意をすることで日本は点数を稼ぐことができると思います。  スーパー三〇一条のイニシアチブが発表されたのと同時に、ブッシュ大統領日本に対して別の構想も発表しております。これがいわゆる構造障壁協議、あるいは英語ではSIIと略しておりますが、構造協議のことであります。これは本質的には構造協議のもとでは、スーパー三〇一条の枠組みの外の構造調整問題を二国間で協議することを目的としたものです。この協議に関するプロ ジェクトレポートは、一九九〇年の上半期に発表される予定です。  構造協議目標は、国際収支のバランス、また貿易収支の調整の障害となっております日米両国の構造的な問題を把握し、その問題を解決することにあります。そして、アメリカ日本に対して持っております膨大な貿易赤字をなくすことを目的としております。  構造協議は、今までの貿易障壁貿易均衡を是正しようとする試みとは戦略的に違います。構造協議は、今までのMOSS協議のように、幾つかの特定の選ばれた分野について協議をするのではなく、すべての分野全体にわたる構造的な問題を協議することを目的としております。また、単なる情報交換範囲を超えて、実際に両国利益につながる変化を実施することを目的としております。また構造協議は、特定貿易規制をただし、また貿易の不均衡、そして経常収支の不均衡を是正するためのそのほかの二国間レベル、あるいは多国的なレベルにかわるものではなくて、ほかの努力を補完するものであります。  構造協議の主な利益は、両国指導者お互いに指摘した問題についての知識を深めることができるということにあります。明らかに日米両国は、先ほど私が冒頭に申し上げました双方利益につながる解決策をつくるためにこの構造協議がつくられたのだということを完全に理解しておく必要があります。一見お互い競争相手として交渉しているように見えるかもしれませんが、実際にはパートナーとして交渉しているのであります。そして問題を把握し、双方のためになる変化を実施しようとしております。  日米両国は、いずれお互いにやらなければいけないことをやるようになるという意味で、このような外的な刺激から多くのことを得ることができると思います。在日米国商工会議所といたしましては、一九九〇年の上半期に具体的にお互いにこの問題にどうアプローチするべきかということに関しての行動青図について合意に達することができるものと希望しております。また同時に、お互いの誠意を示すために、米国通商代表部カーラ・ヒルズ女史がいわゆる頭金と呼んだ何らかの具体的な、また即座にとれる何らかの行動両国合意をする必要があると思います。  もちろん、ここで危険なのは、アメリカ側が多くのことを余りにも早く期待し過ぎるということにあります。双方とも両国貿易均衡即座影響を及ぼすような劇的な突破口がないということを理解しておく必要があります。  これはなぜかと申しますと、日米が非常に基本的な変化をすることにコミットメントをしなければいけないからであります。アメリカにとってはマクロ経済的な件を検討する必要があります。例えば直接アメリカ競争力影響を及ぼします貯蓄率投資の問題です。また、アメリカの方でも、製造品の品質、研究開発、教育の質、またアメリカ企業が短期的な志向をしているというような問題も考える必要があります。また一方、日本にとっては状況は全くその逆です。日本の場合は、製造業者ニーズに焦点を合わせるよりも、むしろ消費者ニーズに注目しなければなりません。輸入というのはこういった大きな問題に付随的に起こるものです。  このような変化は、両国にとって苦痛を伴う困難なものでありましょう。また両国経済界、また政府にとってもいいリーダーシップが必要です。特にこれがお互いに後悔することになるような、相互に破壊的な行動をとらざるを得なくなるような政治的な圧力を防止するためにもこういうことが重要です。したがいまして、何らかの目標合意し、すぐに行動を開始することが重要です。在日米国商工会議所は、あらゆる形で力をおかしする準備をしております。両国にとって、これだけ利益の合った商業的なきずなを拡大することに献身しております組織としての私どもの今までの経験やノーハウを使って、両国リーダーシップにそのようなお力をかしていきたいと思っております。  ウィリアムフランクリン在日米国商工会議所会頭並びに会議所理事会、そして会議所の全会員代表いたしまして、本日このような重要な問題につきまして当会議所意見を発表させていただく機会をいただけたことを大変うれしく思っております。  当会議所は、日米両国政府とともに協力し合い、きょう申し上げましたような問題点につきましての公正かつ持続的な解決策を模索していくつもりでおります。何か質問がございましたら喜んでお答えしたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  4. 小山一平

    会長小山一平君) 次に、吉冨参考人お願いいたします。吉冨参考人
  5. 吉冨勝

    参考人吉冨勝君) お手元にレジュメとして「SII日本市場特異性」というのを、それと英語で書かれてありますけれども幾つかの表をお配りしてありますので、それを参考にしながらお話し申し上げたいと思います。  まず第一に、SII経済学的根拠という点についてであります。  通常経済学では対外均衡、つまり貿易収支黒字とか赤字、あるいは経常収支赤字とか黒字というのは、必ずその裏側で、国内貯蓄投資の間が見合ったものであるというふうに考えています。つまり、アメリカのように貿易赤字が多い国というのは、国内貯蓄国内投資に比べて不足していることのあらわれであるというのが経済学の基本的な認識であります。黒字の場合には同様に、日本の場合ですけれども日本貯蓄国内投資に比べて多い場合に黒字となってあらわれているということであります。その貯蓄の中には、当然政府貯蓄家計貯蓄民間企業貯蓄という三つ経済部門貯蓄を含んでおり、それから投資の場合にも政府による投資、つまり公共投資、それから家計による投資、つまり住宅投資、それから企業による投資、つまり設備投資というものを含んでおります。こういった総合的な国内貯蓄国内投資関係が必ず貿易収支になってあらわれてくるし、それのまた反対反対であるということであります。  したがって、そのように考えますと、このSII、つまり構造問題についての対話というのは、そういった貿易収支を動かす貯蓄投資影響を及ぼすのかという根本的な疑問が出てまいります。そして結論は、余り影響は及ぼさないということであります。この点は、USTRの代表カーラ・ヒルズ女史そのものが、今日の対外均衡の八割はマクロ経済的な現象であると。そのときのマクロ経済的な現象という意味は、アメリカにおいては貯蓄が少な過ぎること、日本においては投資が不足していることにあるということを指しているわけです。となると、このSIIというのは、残りの二割について対外均衡を是正する方向で働けばという希望のもとに行われているということになります。  となりますと、SIIというのは、対外均衡是正そのものが主たる目的ではなくて、主たる目的というのは別のところにある。その別のところにあるとは何かというと、資源配分をよくすることと、その結果として両国のそれぞれの国民の生活水準を向上させることであります。資源配分をよくすることはどういうことかといいますと、ある産業国際競争力に負けている場合には、それにその国の発展の事情からかんがみて当然である場合には、その衰退産業を無理やりに保護するのではなくて、新しく伸びつつある産業の方へその衰退産業から労働や資本の資源を移動させるということが望ましい。そういうのを資源配分を効率的にすると申し上げますけれども、それがまさにSII一つ目的であります。  それからまた、輸入自由化ということが可能であるならば、それを通して安い外国製品が、あるいは農産物が入ってくるということは生活水準を向上させるということで、SIIというのがこういう保護貿易主義をなくしていく方向に働くとすれば、これは生活水準の向上につながるということです。したがって、ここから非常に大きなこ とが言えるわけで、通常貿易黒字を持っている国は、この保護主義が強い国であり、貿易赤字を出している国は自由貿易の国であるというふうな考えがありますけれども、この保護主義水準というのは貿易上の黒字赤字には全く関係ないということが非常に重要な結論であります。貿易赤字黒字というのは保護主義関係はなく、何に関係があるかというと、先ほどから申し上げた国内における貯蓄国内における投資との関係で決まるということであります。  一つの例を挙げますと、西ドイツという国は、あらゆる国から見て非常に自由貿易の国というふうに認められておりますけれども、今世界で最大の黒字を出しているのは西ドイツであり、この西ドイツ黒字を見て、西ドイツは最も保護主義的な国であるということを言う人が一人もいないということからもわかりますように、対外均衡保護主義の高い低い、強い弱いとの関係はないというのが経済学における根本的な理解であります。この点が多くのジャーナリズムの論評などでは間違って考えられている点であります。  次に、対外均衡は一体今どのような局面に立っているのかということ、この対外均衡を前提にしてSIIが行われているので、これを展望しておく必要があります。  まず、IIの(1)の一九八〇年代前半の不均衡拡大の原因というのは、一体経済学分野ではどのように理解されているかということを紹介いたします。そのためにお配りしました表の①というのを見ていただきたいと思います。この①の一番下の欄にトータルとありまして、括弧の中にビリオンズ・オブ・ダラーズというのがあります。一番上の方にエクスポートとインポートがありますが、これはすべてアメリカ側から見たところの製品についての輸出輸入であります。一九八一年と一九八六年について、一番下にありますトータルの輸出を見ていただきますと、この五年の間に輸出はほとんどふえていないということがよくわかります。つまり一千六百六十八億ドルから一千六百九十八億ドルというわけですから、この五年間事実上横ばいであった。ところが輸入につきましては、この同じ期間に一千五百六十四億ドルから三千八十九億ドルへとざっと二倍になっている、こういうことが実は一九八〇年代の前半に起こったわけです。その結果として赤字が全体千四百九十六億ドル、ざっと千五百億ドルふえたわけですけれども、一九八一年というのは、アメリカ貿易収支がほとんど均衡していた年でありますから、この数年の間に大変大きなことが起きたということをこの表は示しております。  じゃ一体、どういう地域に対してアメリカ貿易収支が悪化したのか。先ほどのように輸出はほとんど変わらず輸入は倍増いたしましたので、輸入が一体どういうところでふえたのかというのを見たのが、この輸入の欄における各地域の八一年と八六年の数字を比較していただければわかります。これは輸入全体を一〇〇としたときの各地域における割合であります。リージョンを見てみますと、地域を見てみますと、カナダの輸入ウエートは八一年から八六年にかけて少し下がっておりますけれども日本からの輸入ウエートは若干上昇、ヨーロッパからの輸入ウエートはほとんど変わらず、それからLDCからの輸入は若干の上昇、アジアNICSからは二ポイント弱ほど上昇というわけで、八六年におけるアメリカの各地域からの輸入の割合というのは、八一年と余り大きく変わっていない。ということは、この五年の間にアメリカはあらゆる地域から一様に輸入を増大させたということです。一体どういう商品について輸入を増大させたかというのを見たのがこの上でありまして、それは三つの分類、資本財、自動車関係、消費財に分けてありますけれども、これも八一年と八六年のプロポーションが大きく変わっていないところを見ますと、資本財、自動車関係、消費財の三つについてほぼ一様にアメリカ輸入をふやした。  こういったアメリカ貿易赤字の拡大、千五百億ドル近くの拡大が特定の、アメリカ貿易相手国の特定の国の貿易障壁が高まったことにあるという論評は世界のどこにもないわけでありまして、アメリカがこのように輸入をふやしたのは、その当時発生したアメリカの大きな財政赤字、ドル高、それからその裏側では、日本における財政再建、西ドイツにおける財政再建といったようなことが主たる原因であったというのが経済学界のほぼ統一された見解であります。別の言葉で言いますと、まさにここに示されているように、この貿易均衡の拡大は、大きな国における貯蓄投資のバランスが崩れたことから来ている。アメリカの場合には財政赤字が大きくなり、民間貯蓄が減少することによって、貯蓄が不足してきたことがこのような現象となってあらわれ、また日本とドイツの場合にはその反対のことが発生したということを意味するわけです。  しかし、問題は、その後こういった事情を前にしまして、一九八五年の九月にプラザ合意が行われ、その後の均衡過程はどのように進んでいるかと、非常に重要な点であります。多くの論評は、あたかもこのようにして膨らんだ対外均衡は、八五年から今日にかけてもほとんど改善していないという認識に立っておりますけれども、それはとんでもない間違いであります。ここには数字がありませんけれども、まずアメリカ貿易収支は、一九八七年が一千六百億ドルという最も悪い大きな赤字を出した年であります。ことしは、OECDの予測によっても、あるいはほかの予測によりましても一千百億ドルに落ちます。したがって、この膨大な赤字のざっと三分の一が二年間で縮小するというわけですから、アメリカ貿易赤字は大変に改善しつつあるということは非常に重要な認識であります。そこが必要であります。  では日本貿易収支はどうかというと、余り金額としては改善していないということであります。この金額として改善していないということをどのように理解するか。ちなみに、この金額ベースで議論する前に、大きな経済の流れを見るときには、必ずこの貿易の不均衡、あるいは経常収支の不均衡をその国の経済の規模、つまりGNPとの関係で見ていくのが最も合理的であります。  それでは次に、②の表を見ていただきますと、この②の表はOECDからとったものですけれども、これはアメリカ経常収支赤字をGNPで割ったものでございますが、アメリカは八七年に三・二%あったのが、ことし八九年には二・二%に落ちるというのが予測であります。それから、日本の最も大きな黒字の比率は、ここには出ておりませんが、八六年の四・五%ですけれども、それが八九年のことしには二・二%になるというのが多くの予測であります。OECDはこの予測をとっております。  つまり、GNPに対する対外均衡の比率で見ると、アメリカ日本もかなりそれなりに改善しているということが言えるということであります。にもかかわらず、日本の場合には、貿易金額だけを取り出すと、八百億ドルから九百億ドルという大台がこの三、四年変わっていないというところが問題になります。といいますのは、多くの人々はこういうGNP比率などを見るのではなくて金額を見るからであります。しかし、金額というのは、数量掛ける価格からできておりますので、一体数量と価格がどのように動いたかを次に見る必要があります。それが次の③と④であります。  ③は、日本輸出を示しております。一番左の欄が年次をあらわし、これは若干データが古いんですけれども、傾向としては今日まで続いております。次の欄が輸出の数量、次の欄が平均価格、一番最後が金額そのものであります。輸出を見ますと、輸出の数量というのは一九八五年を一〇〇とした場合、八九年一一〇・八であります。したがって、三年余で一〇・八%しかふえていなかったということで、それ以前の円安の時代に輸出が数量で毎年一二、三%以上ふえていたのとはさま変わりの状況になっているということであります。  ところが注意しなくてはいけませんのは、次に あります日本輸出価格であります。輸出価格は八五年を一〇〇とすると、今日一五一・三、つまり五一・三%輸出価格は上昇している。したがって、それを金額で見ますと、輸出の数量の伸びが一〇%強、価格の上昇が五〇%強でありますから、それで六〇%はふえているということを意味します。  次に、輸入の数量を示した④の表を見ていただきますと、輸入の数量はこの同じ期間に、同じく八五年を一〇〇として八九年には五一・三%ふえております。ところが、その間、次にあります輸入価格というのは、わずか六・〇%しかドル建てで上昇しておりません。ということはどういうことを意味するかといいますと、数量で見る限りは、日本輸出の伸びは三年余で一〇%強しかふえないのに対して、輸入は五〇%以上ふえたということですから、これがいうところの内需志向型の経済成長に転換したという意味合いであります。  一方で、内需志向型の経済に転換したと言われながら、どうして貿易黒字金額そのものは減らないのかという非常に矛盾した現象が出ているわけですけれども、その矛盾した現象は、③にあった日本輸出価格が五〇%以上もドル建てで上昇したということにあるわけです。つまり輸出価格が五〇%以上も上昇したために、輸入数量の五〇%以上上昇を相殺して、金額としてはほぼ変わらない姿になってしまったということです。そしてちなみに、この④にあります輸入の方の製品を見ていただきますと、輸入の数量は二〇六・〇でありますから、一〇六%上昇したということで、いかに日本製品輸入がこの三年余の間に伸びているかと、これはまさに、内需志向型の経済成長に転換したということは、こういう数字で言っているわけであります。  それと問題は、数量で見る限りは大変大きな対外黒字の調整が進んでいる。しかし金額で見ると、輸出価格が上昇していることで余り貿易黒字金額は変わらない。そういう現象はすべて八五年以降の特徴でありますけれども保護貿易主義、とりわけアメリカにおける保護貿易主義と一体どういう関係があるのかということになります。そして、それはほとんど関係がないというのが結論です。といいますのは、日本輸出価格が五〇%以上上がるということは、アメリカ企業競争力を強めているということでありますから、アメリカ企業環境というのは大変好転しているということであります。したがって、このこと自体から、つまりこのことが、輸出金額を変えなかった、貿易黒字金額を変えなかったということのために保護貿易主義が出てくるということは全く意味のない議論でありまして、それは今申し上げたように、輸出価格が上昇したことが、アメリカのビジネスのセンチメントを悪化する理由には全くならないという一事をもってわかるわけであります。  次に、よく言われますのは、二国間の貿易収支は、ECとでは改善しているけれども日本とでは改善していないのは、日本に対してアメリカから余り輸出がふえていない結果ではないかという議論がよくありますけれども、これも全くの間違いであります。これは一番最後にあります⑦を見ていただきます。  ⑦を見ていただきますと、真ん中からちょっと下のところに、アメリカ自身の貿易収支が対ECと対日本で出ております。八七年と八八年を比較してみますと、対ECではほぼ半分、二百十九億ドルから百十億ドルへほぼ半減しております。ところが、対日本については五百六十九億ドル、五百二十六億ドルというようにほとんど変化しておりません。これをもって多くの人々は、アメリカ輸出はECには伸びているけれども日本には伸びていないかのような印象を受けるんですけれども、これは全く数字上の魔術であります。というのは、その上にアメリカ輸出アメリカ輸入というのを列記してありますけれども、この八七年から八八年にかけての伸び率、一番右の欄ですけれどもアメリカの対ECの輸出の伸びは二五・五%、対日本の伸びは三四・九%、一〇%ポイント近くも高い。じゃ輸入はどうかというと、ECも日本も余り変わらない。アメリカ日本向けの輸出がECよりも一〇%ポイントも高く伸びていながら、どうしてEC向けの赤字は減り、日本に対する赤字は減らないのかというのは、当初の出発点で日本輸出入の比率が非常に違っていると、こういうのが算術の結果として出てきます。  どういうことかといいますと、この表の一番下にありますUSエクスポート・インポートレシオというのがあります。このレシオが対ECに対しては七〇%以上ある、日本に対してはわずか三十数%しかないわけで、このことは同じ率で対EC、対日本で伸びたとしても最初のギャップを埋めることにはならない。最初のギャップを埋めるためには対日本はもっと伸びなくてはいけないということを意味します。しかし、いずれにしましても、この対ECと対日本でバランスが余り変わらなかったと。大きく対ECは減ったけれども、対日本では変わらなかったということをもって対日輸出がふえなかったというふうに考えるのは全く間違いだということになるわけです。  時間がございませんので、あと簡単に申し上げますけれども、IIIのしたがってSIIというのは、資源配分改善政策であるということに尽きます。したがって、これはちょうどプラザ合意でマクロ経済政策双方の責任においてとられる必要があるというふうに認識されたように、この改善も日本の改善と米国における改善を必要とするということであります。しかし、既に前回のここの調査会の会合で、この構造改善の要求点というのはそれぞれの立場から説明があったようでありますので、一体本当にねらっている問題点は何なのかというところに私のお話を絞っていきたいと思います。  そして、その本当にねらっていきたいところというのは、米国が今日及び近い将来に持つであろう比較優位の強いハイテク産業の発展をねらっているということであります。そのためには、このハイテク産業をめぐるアメリカ自身における供給面と、それから需要面を考えているということであります。供給面は既にいろいろ言われているように、アメリカにおける貯蓄の増大、教育の普及、SアンドRの改善、短期的な企業考え方の改善といったことにあらわれております。そういったことはすべてMITの特別調査団が出しました「メイド・イン・アメリカ」という書物の中に詳しく書かれております。これはことしの五月にMITというアメリカの大学で発表された書物であります。  で、アメリカが今望んでおりますことは、日本のハイテク製品アメリカ市場にどんどんと輸出されてくるのは一向に構わない。しかし、それに見合った形でアメリカのハイテクもまた日本市場に入りたいと、そういう意味日本の構造改善を通した需要の増大というのを望んでいるということです。じゃ一体、どこにその需要を阻んでいるものがあるというふうに見ているか。これは事実でそうなっているかどうかは別として、見ているかということですけれども、ここにありますように、生産系列と流通系列であります。米国が全体として輸出をふやしたいのは、細々した消費財ではなくて、資本財それから中間財であります。日本における資本財、中間財の調達の方式を見ますと、いろいろなビジネスグループの中で調達し合う傾向というものを持っております。これは私は流通系列あるいは生産系列というふうに呼んでおります。  で、この流通系列、生産系列というのは三つのメリットを持っております。これは産業組織関係経済学者がすべて合意する点でありますけれども、長期継続的な関係に基づいて三つのメリットを持っている。一つは品質の確保、第二がデリバリー、つまり実際に物をつくって配達するときのそのデリバリーが正確であるということ、それから第三に、アフター・セールス・サービスがきちんとできるということであります。こういうメリットを持っている流通、生産系列は、しかし同時 に、それがグループ内の取引であるために、あるときには価格面でカルテル行為が行われる可能性がなきにしもあらずということであります。もしそういったカルテル行為が見られるならば、あるいはまた長期継続的な関係があるならば、新しいエントリーを試みる日本国内及び海外の業者というのは日本輸出しにくいのではないかという考えであります。したがって、恐らくこの構造協議というのは、流通系列と生産系列が今後さらに重要な問題として絞られていくかと思います。  あと最後に、SIIの政治的側面でありますけれども、これは先ほどからのお話のように、スーパー三〇一と一応切れて政府間では協議することになっておりますけれども、本当の問題というのは、アメリカ議会の議員の頭の中で、この構造協議というのがスーパー三〇一と切り離されて理解されているかどうかという点であります。つまり構造協議がうまくいかなければ、スーパー三〇一を発動するといったような発言があるということであります。  第二の問題点は、先ほどから申し上げているように、米国日本双方に構造改善の義務があるということでありますけれども、果たしてアメリカ議会の中で、この双方責任の原則が確立されているかどうかということであります。貿易の不均衡が悪化すると、その原因はすべて日本にあるという傾向がもしアメリカ議会にまだあるとするならば、この双方責任論が十分に理解されていないということであります。したがって、こういう双方責任論を十分わきまえたときに日本アメリカとの共同作業というのができるというのが、三番目のUS・ジャパン・コリーダーシップという意味合いであります。  すごく長くなりましたけれども、以上であります。
  6. 小山一平

    会長小山一平君) 有意義なお話ありがとうございました。  以上で両参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 西野康雄

    ○西野康雄君 きょうはお忙しい中、皆様方貴重な御意見を寄せていただきまして、ありがとうございます。私は日本社会党の西野康雄と申します。  先ほどの御意見の中にもロックフェラービルだとかコロンビア映画買収だとか、非常にアメリカの方々はとっては不愉快だと思う事象が出てまいりました。しかし、なぜ日本がこういったビルだとか企業投資をしなければならないのか。その原因は、私はプラザ合意の中で円高ドル安という、こういう傾向をつくられてしまった。そのときに、日本アメリカに国債だとか随分と多額の投資をしておりましたが、大きな損を金融機関は受けました。そうすると、当然のことながら、国債だとかそういうものに投資が向かわずに、アメリカのビルだとか企業だとかを買う、こういうふうな方に向かうかと思います。ドルは基軸通貨ですから、日本が幾ら自動車の貿易でもうけても、日本でドルは使えません。そうなると、当然アメリカの方に返っていくわけです。そうしたときに、やはりプラザ合意の中での円高ドル安というものが、私は企業買収したりあるいはビルを買収する、土地を買う、こういうふうなところに傾向を走らせたのではないかな、こんな気がしてなりません。  また、貿易赤字とかそういう面におきましても、非常に不思議に思うのは、どうも日本アメリカも、物の流通だけで赤字だとかをとらえておりますけれども、例えば日本アメリカの間の経常収支はどうなのか、あるいはサービス収支はどうなのか。先進国は既に産業の中心が三分の二はサービス産業です。例えば巨大な金融投資だとかを含めてです。そして知的所有権だとかも含めて、金銭だけのやりとりを見たときに、果たして日米間に赤字というものがあるのか。貿易黒字赤字と言いますが、例えばアメリカは一九八六年度に二百三十億ドルの対カナダ貿易赤字を出しました。同じ年にアメリカの多国籍企業は、カナダに子会社を持って、そこから三百十億ドルの製品アメリカ輸入しております。かつて台湾で、台湾からたくさんの物がアメリカ輸入される、関税をかけなければならない。そこで子会社を調べたら、ベストテンの中の六位までがアメリカの子会社であった。我々は、この貿易赤字だとか黒字だとかというのをもう一度統計的に日米双方の中で考え直す必要があるんではないかと思いますが、ミスター・シーグはどうお考えでしょうか。
  8. アルバート・L・シーグ

    参考人アルバート・L・シーグ君)(佐藤雅子通訳) この問題は、多くの場合には、厳密な意味での統計的な方法とか分析手法だけで解決できる問題ではないと思います。アメリカ赤字の問題は、今や単なる経済学的な概念を超えまして政治的な領域に入ってきております。もう既に政治的な問題となってきておりますので、政治的な問題というのは分析手法などを使って解決することができなくなってきているのだと思います。もちろん、いろいろな統計的な手法とか、いろいろな情報を使ってこの認識に反論をすることはできますけれども、もうこの問題はアメリカの政治の中に織り込まれてしまっております。単なるいわゆる大学レベルの討議という段階を超えてしまっておりまして、政治的に織り込まれてしまっておりますので、この問題を解決するためには政治的な行動をとる必要があると多くの人が感じるようになってきております。  現実には先ほども申し上げましたように、対米投資はマスコミで言われていることを超えて、多くのアメリカ人は、むしろ対米投資は好ましいと感じております。実際に先月、アメリカの二つの州の事務所が日本で開設されております。現在、対米投資を奨励するための州の事務所が、日本ではもう既に三十八の州でつくられていると思います。実際にウエストバージニア州の知事と上院議員ロックフェラーという、皆さんもよく御存じの名前の人ですが、そういった方たちも最近日本に参りまして、自分たちの州への貿易投資を推進するようにと働きかけております。  ですから、投資の問題につきましては、それほど激しい反応はないと思います。むしろ日本と同じにマスコミの方が過剰反応していると言えると思います。ですから、新聞に出ていることを読む際には注意して読む必要があると思います。コロンビア映画とかロックフェラーの問題につきましても、むしろマスコミが火をつけた問題でして、ビジネスで使う用語よりも、戦争用語を使ってマスコミが報道していることに問題があると思いますので、皆様のようにこの問題を研究されている方々が、本当にこの問題を理解して現実を把握していただきたいと思います。
  9. 西野康雄

    ○西野康雄君 私は、貿易問題が、摩擦問題が政治にかかわって政治問題に発展しているんだということもよく理解をしております。しかし根本において、統計のとり方、そういったものが日米両国の中でイコールべースではない。例えば貯蓄率日本貯蓄率理解アメリカ貯蓄率理解企業年金だとか生命保険の掛金を消費と見るか、そういうふうなことで随分と違ってまいります。  そして、日本人は随分と貯金をし過ぎだ、こういうことですけれども、金融商品もひっくるめて考えると、アメリカは一家族当たり現在三万三千ドル、日本は一万八千ドル、アメリカの御家庭の方が随分とお金持ちでございます。そうすると、日本に貯金をするな、使えという論理がどこにも成り立たなくなってくる。もう一度日米間で今問題になっている部分を同様の価値観できっちりと考えていく作業が政治的にも必要ではないか、このように思うわけです。
  10. アルバート・L・シーグ

    参考人アルバート・L・シーグ君)(佐藤雅子通訳) 確かに国によって貯蓄率とか投資率の理解の仕方が違うという意味では、それに基づいて推計や推測をするのが難しいと思います。しかし、どのような定義を使おうと、事実としてはやはり日本アメリカに対して貿易黒字、つまり不 均衡があるわけですし、またどの定義であろうと、やはりアメリカ貯蓄率は少ないと思います。  ですから、貯蓄とか投資ということになりますと、先ほどもう一人の方もおっしゃいましたように、貯蓄投資というのが一つの主な不均衡の原因になっていると言えると思います。
  11. 西野康雄

    ○西野康雄君 イコールベースでとると、貯蓄率日本が一九・六、アメリカが一八・三という数字が出ておりますが、そういうことはまたの機会お互いが、日米がきっちりとやらなければならないことですが、私は、市場参入が困難であるというその部分について、構造協議の中で流通機構だとか、今も吉冨先生の方から生産系列と流通系列の話がございました。特定の大企業同士で生産財等を融通し合って仕事をお互いに賄い合うという、そういう中でアメリカはなかなか参入できないんだということで、いろいろな企業グループの内容を精査せよというふうな要求があったかと思いますが、大事なポイントは、日本では政界と財界と官界、この三つが一緒になって大型プロジェクトを推進しているという点です。企業群だけで考えてはならない問題です。  私も、今TVA、テネシー溪谷のあの開発の中で、ダムをつくる、そしてそこに小さな魚が絶滅しかけて、それでダムの建設をとめたというお話をアメリカから聞いたときに、今日本で唯一の天然の川の長良川の河口ぜきの問題を私自身やっておりますが、その中でも、千五百億円のプロジェクトに二十年も前から政界と財界と官界が一緒になって、他の者の参入を妨げながらやっている。だから、ある種のアドバイスをいたしますならば、日本社会党は政界と財界と官界のこの癒着を断ち切るために一生懸命頑張っておりまして、自民党に肩入れをするよりはむしろ日本社会党に肩入れをなさった方が、アメリカ企業市場に参入しやすいんではないか。日本の政治構造をお考えいただいた方が、日本のいろいろなビッグプロジェクトに参加しやすいのではないかと思いますが、どうでしょうか。
  12. アルバート・L・シーグ

    参考人アルバート・L・シーグ君)(佐藤雅子通訳) 商工会議所がいろいろな企業について調査を行いまして、また通産省とこの夏、ある研究に参加いたしましたけれども、その機会に私どもの、日本流通制度の複雑性や問題点についての意見感情を申し上げることがございました。それに関する意見ですが、日本で成功している外国企業というのは、日本のそういった流通制度に何とか参入する方法が見つかって成功しております。また成功していない企業は、日本制度に参加する方法が見つからなくて成功しておりません。また、ある程度成功をおさめていながらもいろいろな困難に直面している事例もありますけれども、その困難というのは、最初から簡単に参入できると思っていたので難しく感じたという意味ではなく、日本企業アメリカで享受しているのと同じ機会を全く平等の、イコールオポチュニティーを求めていたという意味で困難があったということです。  日本流通制度はこれから進歩することができると思いますけれども、また日本流通制度の中に外国企業が参入していくこともできますけれども、ただ、全く同じ機会を得ることが難しいという点が指摘されております。  詳しいことは申し上げませんが、一番顕著な例が、日本アメリカの自動車メーカーが一番難しいと感じるのは、日本での流通業者を見つけることだと言われております。逆に日本の自動車メーカーがアメリカで成功したのは、アメリカ各地での流通業者を簡単に見つけることができたことが成功の要因だと言われております。  それに追加して申し上げますと、自動車の流通制度に関してでありますが、日本の自動車メーカーにとって、アメリカ流通制度に参入するコスト、基本的なコストというのは大変低いコストです。逆に、アメリカの自動車メーカーが日本流通制度に参入する際にかかるコストというのは非常に高いコストになっております。
  13. 西野康雄

    ○西野康雄君 日本人は随分と働いていると、よく勤勉だと言われておりますが、日本人の生産性を見ますというと、日本を一〇〇としたら西ドイツは一四〇、アメリカが一二四、随分とアメリカ人西ドイツの人の方が働き者であるということがわかります。日本人が必死になって働いている、そして労働時間が長い、ここには大変な誤解があるんではないか。残業をしなければ食べていくだけの給与が与えられないという給与システム、この部分が改良されない限りは労働時間はやはりいつまでたっても長い。この点もやはりアメリカ経済人の皆様方に御理解をしていただきたいなと思う点でございます。
  14. アルバート・L・シーグ

    参考人アルバート・L・シーグ君)(佐藤雅子通訳) まだ日本に滞在してそれほどたっていません。日本に住んで六年にしかなりませんけれども、その間、日本人は非常に勤勉でよく働くと感じております。  また、生産性の数字につきましては、国によっての生産性の定義を決めておく必要があると思います。生産性の定義は、産業によっても違いますので、産業別に見ておく必要があると思います。  また、日本の給与体系についてでありますが、国同士でこの点も話し合い、そして、こういった給与体系の違いも十分理解しておくことが大変有益なことだと思います。
  15. 西野康雄

    ○西野康雄君 吉冨先生にお伺いする時間が、もう予定していた時間がなくなってしまいましたが、市場参入をしにくくしている一つに、官界の許認可権が一万三百ほどあるという。例えば、フランスからミネラルウオーターを輸入しても、それをもう一度煮沸して瓶詰めをしなければ販売しないとか、こういったことは、外国ではそういうふうな許可認可権の異常な発達の仕方というのはあるんでしょうか、長い御経験の中から。
  16. 吉冨勝

    参考人吉冨勝君) ミネラルウオーターの件は特に知りませんけれども、こういう医療関係とか食品関係については、各国に相当厳しいそれぞれの衛生基準というのがあるということは事実だというふうに思います。ただ、日本の場合に一般的に言って、これまでの発展の仕方から、いろいろなレギュレーションが他の国に比べて多いんじゃないかということは一般的に言えるんじゃないでしょうか。
  17. 西野康雄

    ○西野康雄君 ありがとうございました。  私は、昔子供のころに、カメラマンコダックという、アメリカでできたテレビ映画のファンでございまして、実にうまく日本に進出をなさるときにコダックのイメージをおつくりになったなと、こう思います。日本もそういうふうに用意周到な形でアメリカと仲よくしながら進出していければ、本当に日本アメリカの間が良好な関係を保てるんじゃないかなと思います。今後とも、私ども日本社会党も日米両国発展のために頑張ってまいりますので、よろしくお願いをいたします。どうもありがとうございました。
  18. 大木浩

    ○大木浩君 自由民主党の大木浩でございます。  本日は、シーグさん、それから吉冨先生から大変有益なお話を伺いまして、大変にありがとうございました。  私、自分自身のことを申し上げて恐縮なんですけれども、十年ほど前までは立法府ではなくて行政府の方で働いておりまして、日米貿易経済交渉にも何回も参画いたしましたので、今依然として日米経済摩擦が続いておるということについては、年々歳々人かわれども依然として問題があるなあという感を非常に深くしておるわけでございます。特に先ほどからお話がございますように、これが純粋に経済問題というよりは、政治的な要素も非常にたくさん入ってきて、その辺に問題の難しさがあると思います。  しかしながら、政治的な要素が入ってきておるというのもこれは現実でございますから、それを避けて通ることはできないし、また私どもはそういった現実も踏まえながら、どうやってこの現在のいろいろな摩擦問題を解消していこうかということで、そういった解消しようという気持ちからいろいろと御質問を申し上げたいと思います。  本日は、いわゆるSII協議との関連でいろいろとお話を伺っておりますので、吉冨先生には大変恐縮なんですが、先ほどから大変有益なお話を伺いましたので、感謝だけ申し上げまして、主として御質問をシーグさんの方に向けさせていただきますので、御了承を得たいと思います。  SII交渉でございますけれども、先ほど例のスーパー三〇一条と関連してか、今のところは切り離して交渉が行われておるわけですけれども、将来どうなるかということについてはいろいろな考え方があると思います。ただ、いずれにいたしましても、先ほどの話にも出てきましたけれども、ヒルズ女史が一九九〇年の前半までにとにかく何らかの青写真をつくらないといけないとおっしゃったというふうにお話がありました。あるいはダウンペイメントをやっぱり払わないと、その後の話が動かないというお話もありました。私の率直な感じでは、青写真をつくることはできると思いますけれども、ダウンペイメントというふうな話になりますと、ダウンペイメントということが何を意味するかによって非常にその可能性があるかないかという問題が起こってくると思います。SIIというのは、まさしく構造問題を議論しておりますから、構造に関する具体的なアクションをとろうとすれば非常に時間がかかるというのが通常であります。したがいまして、今のダウンペイメント云々につきまして、シーグさんとしてはどういうことが可能か、あるいはどういうことを、これはアメリカ政府にかわってお答えいただくわけにはいきませんけれども、どういったような日本側として例えばアプローチが可能であるかということをまず教えていただきたいと思います。
  19. アルバート・L・シーグ

    参考人アルバート・L・シーグ君)(佐藤雅子通訳) SIIの交渉につきましては、現在はスーパー三〇一条と切り離されております。また私の個人の意見ですが、これはアメリカ政府代表者と話し合って私が感じております個人的な意見ですが、これからも切り離されていくと思います。それはアメリカ側も、このSIIというのは長期的に解決しなければいけない問題だと認識していまして、日米貿易均衡といった政治的な緊張を解決するのに時間がかかるということを認識しているからです。  また、御指摘されましたように、ダウンペイメントの意味を決めるのはヒルズ女史御本人ですが、私は、個人的な意見といたしましては、この意味は、解決をするには長期的な解決でなければいけないということを認識した上で何らかの行動をとることを合意する意味だと個人的に私は思っております。この問題が今から来年の半ばぐらいまでの間にすぐに解決できるものとはだれも本当に期待はしていないと思います。時間が必要だとみんな認識していると思います。  ただ、十分に調査をする必要があると思います。例えば、大店法をどう実施するかなどといったことを十分に調べるということ、これは日本競争の激しい市場の中で流通をするための、外国企業を含めたさまざまな企業に大きな影響を及ぼす問題です。ですから、こういうことをどう実施するかということを十分に調査するということだけでも、この構造の問題に真剣に取り組もうという意思を示すことになると思います。
  20. 大木浩

    ○大木浩君 今お話がございましたダウンペイメントにつきましては、御説明ありがとうございましたが、先ほどから一番問題になっているのは、通常アメリカ人あるいは通常日本人が、いわゆる日米間の経済摩擦を言うときには、その五百億ドルの貿易均衡というのが非常に大きな問題になっているわけでありまして、それについて、すぐに五十億とか百億といった縮小が出なければ、ダウンペイメントにならないんだと言われますと、これは非常に難しいんじゃないかということを私のコメントとして申し上げておきたいと思います。  それから、明年の前半というようなお話がございましたけれども、そういった時間を限ってではなくて、今後何年もかけて、要するに中長期的に問題を考えるとすれば、私は日本国内でも消費者ニーズ消費者のインタレストといった観点からのいろいろな努力というのは行われ得ると思いますし、そういった消費者に対する考慮、それから外からのいろいろな要請というものが結び合って、私はいろいろな改革は徐々に進んでいくというふうに思います。  しかしながら、日本側でいろいろな努力をする場合に、私は二、三、それの障害になると申しますか、アメリカ側でもそういった障害を除いていただかないと、なかなか進まないのじゃないかというような要素があると思います。  一つは、日本側でいろいろな努力をしておることについての情報と申しますか、あるいは現在日米がそれぞれ置かれておる経済の実態、先ほど吉冨先生のお話にもありましたけれども、そういった問題についてのインフォメーションが十分に相互に行き渡っておるかどうかということ、あるいは日本側の、これは政府なりあるいは日本のインダストリー全体に対してですけれども、その意図についての一種のパーセプションギャップといったようなものが存在するのではないかなという感じがしております。  最近、米国におきまして、日本のことについていわゆるリビジョニスト、修正主義者と言われるファローズさんとか、プレストウィッツさんとか、オランダ人のフォン・ウォルフレンさんとか、いろいろな名前が出ていますけれども、いわゆる日本のことについて相当知識を持った知日派の中での御発言が必ずしも日本意図日本努力というものについて正確に御説明しておられないのではないかという危惧を私は持っております。  第二は、これは非常に一般的な問題になりますけれども、先ほどからお話がございますように、日米貿易インバランスの問題は、基本的にはマクロ経済の問題である。そして、その点につきましての米側の並行的な努力、つまり日本側の努力アメリカ側努力とが並行して行われているという認識がありませんと、なかなか日本側も行動がしにくい。  それから三つ目ですが、これはアメリカから日本投資をされる方について。私はアメリカの会社でサクセスストーリー、成功された方もあるし、成功しておられない方もあると思いますが、これは基本的には日本投資をし、日本で商品を売ろうとするならば、それはやはり安定した供給者としての信頼を得ないとなかなか成功をしないというふうに思います。そういった今三つ申し上げたような、いろいろなアメリカ側努力をしていただきたいということについて何かコメントがございましたらお聞きしたいと思います。
  21. アルバート・L・シーグ

    参考人アルバート・L・シーグ君)(佐藤雅子通訳) まず最初の点につきましてでありますけれども米国商工会議所といたしましても、そういった主な問題点につきましては同じ意見を持っていると思います。すなわち、アメリカまた日本双方努力を一般の人々に知らせるために、コミュニケーションをするために両側での努力が必要だと思います。  また、リビジョニストについてでありますけれども、いわゆるリビジョニストと言われている人たちは、政府ではなくてあくまでも個人であります。それぞれの個人が自分たちの意見に基づいてそういう発言をしているわけであります。また、自由な社会では、異なる意見を自由に討議するのが自由な社会の象徴だと思いますので、自由に討議する可能性を阻止することはできないと思います。  ただ、ここで注意を払わなければいけないことがあります。それは、特に外国から見ますと、新聞にある人がこういう発言をしたと書かれていますと、たとえ政府関係者がその発言を支持したものであっても、それを公式の発言と解釈してはいけないという点は十分に注意しておく必要があると思います。  また、マクロ的な問題、両国の不均衡の問題についてでありますけれどもSIIというのがま さに、この不均衡を両方で検討しようという概念であります。つまりSIIという概念そのものが、両方に構造の問題があるということを認めている概念です。ですから、アメリカ側日本側から指摘された問題の解決努力をしなければ進歩することはできないと思います。また、アメリカ政府の人々の多くは、このことを認識しておりますし、そういった考え方でこの問題を解決しようとしていると思います。  また、投資についてでありますが、日本投資をしようと望んでいるアメリカ人はたくさんおります。日本は大きな市場であり、日本人にその製品を提供することは大変魅力的なことだと思われるからです。しかし確かにおっしゃるとおり、日本市場に進出するためには日本人に信頼され、また安定した企業でなければいけないと思いますけれども、たとえ信頼性があり、安定した企業であっても、そうなる前にまず日本に来なければなりません。その第一歩が難しいという問題がよく起こっております。日本に進出して長い間たっている人にとりましては、日本消費者の信頼をかち取って、安定した供給者になることができるということを示すことができております。したがいまして、アメリカ企業でも安定した信頼のおけるものであり、取引をしても何の危険もないということをぜひ日本人に知らせていただきたいと思います。
  22. 大木浩

    ○大木浩君 いろいろな現在構造協議をしておりまして、ややもすれば、日米間に制度の差がある場合に、アメリカではこうなっているんだから日本もそれにしろと、そういった感じを日本側では受けている場合があります。例えば、これは構造協議に入っていたかどうか記憶ありませんが、知的所有権の問題をめぐって両方の特許制度、いろいろ議論しておりますけれども、必ずしも違っておるから日本が直すべきだという議論はすぐには出てこない。お互いを比較してどちらがいいか、あるいは国際的にどちらがより受け入れやすいかといったような議論はなされるべきだと思います。  それから、流通に関しましていろいろと日本アメリカで違った制度があります。しかし、その差の多くは別に対外的な差別をしようとしておるものではありません。それはやはり日本の社会とか経済とかいろいろな現実があって、それを反映して日本独自の制度が行われているということが多いと思います。少なくとも現在あるいは最近までの日本では、日本のシステムの方がよかった、あるいは便利であった、消費者に対する便利を含めて便利であったというようなこともあります。テキサスの町でしたらどこかへ買い物へ行くのに恐らく自動車で二、三キロ走るということが普通でしょうが、日本の小さな町では自動車ではなくて、げたを履いてすぐ隣の店に物を買いに行くということもあるわけです。先ほど大店舗法のお話がございましたけれども、これも日本の中でいろいろな意見があるわけです。  そういうことで、やはりいろいろなものを改めていくためにはかなり時間がかかる。しかし、先ほど申し上げましたように、基本的には日本消費者に対する関心というのは今まで以上に大きくなっておりますし、それから日本生活様式もだんだん変わっていくわけで、日本人も買い物に行くのに自動車を使うということが非常に多くなっております。そういう意味では、だんだん店舗の規模とか仕事のやり方も変わってくるだろうと思います。そういう意味で、私は中長期的にはアメリカとの交渉でいろいろと合意できることが多いと思いますけれども、今すぐにやれと言われるとなかなか難しくて、むしろこれは非常に感情的に無理なことを言われたということになりますので、まあ私のコメントを今申し上げましたけれども、何かそちらからのお答えがあれば伺いたいと思います。
  23. アルバート・L・シーグ

    参考人アルバート・L・シーグ君)(佐藤雅子通訳) まず特許の問題につきまして簡単にコメント申し上げますと、御存じのように、特許制度の問題は、SIIの対象とはなっておりませんが、これは日米間の問題ではなく、むしろ国際的な問題となっております。といいますのも技術が世界化し国際化しておりますので、それぞれの国にそれぞれ違う制度があるということはだれもが認識していることですが、その間での調和を図る必要があるわけです。技術の国際化に伴って調和を図っていかなければいけないと思います。また、流通制度に対しましての御意見には私も合意いたします。人々の認識というのはだんだん変わってくるものですし、また好むと好まざるとにかかわらず、これからも物事はどんどん変わっていくと思いますが、変わるには時間が必要だと思います。現在討議されているいろいろな点も、これから時間をかけてたくさん変えていく必要があると思います。しかし、もっと自由に、こういった分野で変える意思があるということを表明できれば、それが大変歓迎されることになると思います。
  24. 大木浩

    ○大木浩君 最後に一つ。  今SII協議は主として政府間で行われておりますが、商工会議所もいろいろな意味日本側の業界ともお話をしておられると思いますが、SIIに関連して、関連業界が話し合うことの有用性についてはどう思われますか。
  25. アルバート・L・シーグ

    参考人アルバート・L・シーグ君)(佐藤雅子通訳) こういった討議の機会というのは、どのような問題についてでもお互いに勉強する大変いい機会だと思います。アメリカのビジネスマンにとっては、日本のビジネスマンがどう思っているか、また日本のビジネスマンの知識を吸収する必要があると思いますし、また日本のビジネスマンにとりましては、この問題について、またいろいろな困難性についてアメリカ側がどう見ているかということを直接聞くことは大変いいことだと思いますので、こういう討議の機会があることは私も支持いたします。  また、現在既にそういった討議の場も存在しております。例えば日本及びアメリカ双方の商工会議所の集まりでありますとか、また日米財界人会議どもあります。こういった会議は、このような問題点につきましてのいろいろな研究結果や討議結果を発表しております。
  26. 大木浩

    ○大木浩君 ありがとうございました。
  27. 白浜一良

    ○白浜一良君 公明党の白浜でございます。きょうはお忙しいところ貴重な御意見を賜りまして、心から感謝を申し上げております。  時間もございませんので、概括的な問題を少しお伺いしたいと思いますが、まずシーグさんにお伺いしたいわけでございますが、最近アメリカでは、管理貿易論とか日本特殊社会論というような主張が出ているということを報道で知っているわけでございますが、要するに、日本はもう特殊な社会であると。だから、いわゆる平等な意味での自由貿易の対象国にはならない、だから結局管理貿易しかないのであると。そういうお考えだと伺っておりますが、なぜそのような主張が出てくるのか、その根本原因はどのようなものであるのか、御意見を伺いたいと思います。
  28. アルバート・L・シーグ

    参考人アルバート・L・シーグ君)(佐藤雅子通訳) もちろんリビジョニストにかわって意見を申し上げることはできませんけれども、私の考えでは、私は長い間日本におりますが、この間多くの日本人とお会いいたしまして、多くの日本人の方が、自分たちがユニークなので、あなたは私のことを決して理解できないだろうとよく言われております。そして、こういった意見を何回も日本人に言われているので、そう信じるようになったアメリカ人もいると思います。これは大変残念なことだと思います。人間は皆同じで、心の中は皆同じだと思います。しかし、このリビジョニストという人たちが長い間日本と交渉をしたにもかかわらず、自分たちの目から見ると何の成果もないように見えるので、こういう考え方をするようになったのではないかと思います。  問題は、ニューヨークの人はテキサスの人と違い、テキサスの人はカリフォルニアの人と違う、またアメリカ人日本人と違うということだと思います。しかし、これはもうそういうふうになっ ているわけですから、こういった事実に邪魔をされてはいけないと思います。そういった状況の中で共通の理解を模索する必要があると思います。
  29. 白浜一良

    ○白浜一良君 私もそれを心配しているわけでございまして、まあ新日本主義論なんていうのは日本でも言われておりますが、変な形のいわゆるナショナリズムが起これば健全な世界の発展というのはないわけでございまして、私もそういうゆがみのないことを心から願っているわけでございます。  もう一点お伺いしたいわけでございますが、まあ貿易インバランスにつきましては日本市場開放、例えば牛肉またオレンジ、そういうもの、それなりに努力をしてきているわけでございまして、先ほど吉冨先生もおっしゃっておりましたが、経常収支のGNP比で見ましたら、確実にこの比率が下がっているわけでございます。六十一年が四・五、六十二年が三・三、六十三年が二・七、ことしのを見ましても大体二・一。確実に減少しているわけでございます。そういった面で貿易摩擦の問題を考えましたら、単にこの市場開放という、そういうものだけではない、まあ構造問題今協議されておりますが、より根本的な問題というのは、アメリカにおきまして非常に過剰消費の実態がある、それをどう改善していくかということが大きな問題ではないかと、このように思うわけでございますが、どのようにお考えになっているか、お伺いをしたいと思います。
  30. アルバート・L・シーグ

    参考人アルバート・L・シーグ君)(佐藤雅子通訳) 確かにおっしゃるとおり、まあ進歩が見られていると思います。また、先ほど私も申し上げましたし、今御指摘されましたこの比率の数字も進歩があったことを示していると思います。またそのほかに、余り報道はされていないのですが、もう一つの統計の情報によりますと、ここ二、三年、アメリカ貯蓄投資率は低いレベルから高くなってきているという統計があります。ですから、過剰消費の問題、またこれが貿易摩擦や貿易均衡の一因と言われておりますが、この過剰消費もある程度は軽減されてきております。  もう一度確認のために申し上げますと、近年アメリカ貯蓄率が改善してきております。
  31. 白浜一良

    ○白浜一良君 どうもありがとうございました。  吉冨先生に少しお伺いしたいのですが、今本当に好景気が続いているということで、もうイザナギ景気を超えるんじゃないかと言われているわけでございますが、当然円高デフレの構造不況ということをある意味で乗り越えたわけでございまして、いろいろな分野において、まあ構造不況業種と言われていた分野におきましても、今盛んに設備投資をされている、そういう実態を伺っております。いろんな原因はあると思うのですけれども、円高メリットがあるとか、低金利であるとか、三高二安ですか、そういうふうに言われていることがあるわけでございますが、より根本的な原因は、なぜそのような景気の上昇になったのか、お考えをお聞かせください。
  32. 吉冨勝

    参考人吉冨勝君) 設備投資は現在一八%ぐらいで年率ふえているわけですけれども、二つの大きな要因を指摘できると思います。  一つは、このインフォメーションテクノロジーの時代、情報技術社会でマイクロエレクトロニクスに根差した技術革新があらゆる産業分野に浸透しているということです。実際我々の消費財の中にもそういう商品が新しく毎日のように浸透しているということはそれを示しておりますけれども、生産過程でもそれが実際に起こっております。もう一つは、実際に賃金が大きく上昇する前に、労働不足を設備投資によって解消していく労働代替設備投資というのがこの一年ほど非常に盛んであります。したがって、技術革新と労働不足に対応した設備投資というのが非常に大きな原因で、これが先ほど申し上げましたように、伸びているために全体の内需が強いということだと思います。
  33. 白浜一良

    ○白浜一良君 そういう日本の現況があるわけでございますが、そういう日本経済の景気動向というものが、要するにこれから世界の貿易、特にアメリカとの関係におきまして、現在の日本経済成長というものがどのように関係していくのか、どのような影響を与えていくのかということをお伺いしたいのです。
  34. 吉冨勝

    参考人吉冨勝君) 非常に良好な関係を与えると考えてよろしいかと思います。といいますのは、今申し上げたような理由で伸びております我が国設備投資というのは、新しい技術社会における新しい商品を高い品質で供給しているということでありますから、日本が技術国家として世界の供給基地に、資本財や中間財や消費財の面で一層発展するという意味で非常に重要なことだと思います。ちなみに、その観点で、日本設備投資が強過ぎるために、それが余剰能力となって、将来また輸出圧力がかかるのではないかという懸念が一部に、またSII協議の場でもあったわけですけれども、それは全くの誤解に基づくもので、本当に必要なのはアメリカにおけるより一層の設備投資、それによってアメリカが、先ほどから申し上げている供給面を強化して輸出を伸ばすということにあるわけで、日本設備投資を抑えることにはないということであります。
  35. 白浜一良

    ○白浜一良君 以上であります。ありがとうございました。
  36. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 日本共産党の高崎と申します。よろしくお願いいたします。  私に与えられた時間は十五分ということですので、大変恐縮ですけれども簡潔にお答えいただきたいと思います。  まず、吉冨参考人に三点お尋ねしたいと思います。  一点目は、アメリカ貿易赤字は一九八七年の一千六百億ドル台をピークとして、八九年には一千百億ドルということで、このわずか二年間で五百億ドルの改善が見られつつあると御指摘されておられますが、その中で対日赤字の削減というのが四十三億ドルということで、そのために二国間協議をするというわけですけれども、果たして二国間の貿易均衡の是正にのみその有効な貿易政策とか構造改善策というものがあるものなのでしょうかというのが第一点目でございます。  それから第二点目ですが、続けて言わせていただきます。先ほども出ましたが、一九八五年のプラザ合意、この後に約束された三つ政策一つはドル安、それから二つ目が黒字国の内需喚起、それから三点目が米国の財政赤字削減ないし貯蓄、あるいは投資バランスの改善、この三つだったと思いますが、このうちのアメリカの財政赤字の削減というのは一体どこまで達成できたのでしょうかということです。  それからもう一つは、赤字削減というのであれば、吉冨さんもたしか週刊東洋経済の中で少し書かれていましたが、「世界の総軍事支出に占める米国の軍事支出のウエイトは、三〇%強もある。」というふうに言われておりますが、この軍事支出を大幅削減するべきではないかと思うわけです。私は、レーガン政権が進めてきた軍事支出の大幅増大とか高度消費社会というアメリカ特有の問題、あるいはアメリカ輸出増加率が著しく低下しているという現象が一体のものではないかというふうに思うわけです。したがって、アメリカ自身が解決していかなければならない課題も大きいのではないかと思うわけですが、それにもかかわらず一方的に黒字国の責任を追及するとか、あるいは市場開放しなければ制裁を加えるというようなことは許されないのではないかと思うのですけれども、この点のお考えをお聞かせいただきたいということです。  それから第三点目ですけれども貿易均衡要因として、アメリカ側の指摘の一つに、日本市場特異性というものがあると思うのです。これが果たして要因なのかどうかということをお聞きしたいのですけれども、例えば日本国内状況を見てみますと、労働者が極めて低賃金であるとか、例えばジャパニーズ過労死と言われる、このまま国際語として通用するほど日本の長時間超過密労働というものが有名になっておりますが、この問題とか、下請中小企業への不断の締めつけと いうものが絡み合わさって実現した結果、大企業が異常とも言ってよい強い競争力を持った。それがいわば黒字を拡大させている原因になっていると思うわけです。これは輸出製品の内容を見てみると端的にわかると思うのですけれども、例えば一般機械とか電気機械、輸送機械、精密機械というようなものが輸出製品の内容になっているわけで、ここにこそメスを入れなければならないのではないかと考えるのですけれども、この点いかがでございましょうか。この大きく分けて三つについてお願いいたします。
  37. 吉冨勝

    参考人吉冨勝君) まず、二国間の貿易均衡だけを解消するような手だてというのはどこにもありません。そういう意味で、SIIというのは出発点が少し狂っていることは事実なんです。しかし、それは先ほどのシーグさんの説明でも、既に政治的なレベルにまでなってしまっているから仕方がないという議論であれば、それはそれでもう仕方がないわけですけれども、しかし正しい情報は正しい情報として、出発点で狂っているということははっきりさせておかないと、結果として、先ほど問題になっているポリティカルリスクを高めるわけです。そのような手段があるかのように、もしアメリカ議会理解していれば、一層このポリティカルな問題を激化させるわけですから、エコノミックスを超えてポリティカルな問題になっているということは、エコノミックスが不必要になっていったということを一つ意味するわけじゃなくて、かえって必要にしているということを意味するというふうに理解すべきだと思います。ついでながら申し上げました。  それから二番目の、プラザの三つ政策のうち、アメリカの財政赤字は、連邦財政に着目しますと、これは八七年が一番高い二千百億ドル近くありましたのが、今日千五百五十億ドルとか千六百億ドルぐらいに下がっておりますから、それなりの努力は行われていると言ってよろしいかと思います。ただ、その財政赤字を削減すると大変な世界不況になるので、そう簡単にはできないのではないかという議論がよくあったわけですけれども、この一、二年というのは世界がインフレになるほどの好況でありますから、この機をつかまえて一層財政赤字の削減に取り組むべきであったというのが多くの国際機関の認識であります。  その次に、軍事支出の点。これはいわゆるレーカノミックスが赤字を出した理由というのは、所得税減税、法人税減税などの減税が全体の六割強を説明し、軍事支出の拡大がその残りを説明するということであります。しかし、この軍事支出の拡大そのものの影響については、世界政治のレベルでの影響の分析は難しくて、例えばある評者によると、ペレストロイカが出てきた一つの理由は、このアメリカの軍事支出の強大化にあったというふうな説もあり得るわけですから、政治的な側面では別途の解釈が必要ですけれども経済面では今後軍事支出は削減の方向に向かっていくという大きな流れは変わらないかと思います。しかし、もちろん、ソビエトの軍事力の配置が、ヨーロッパから一時的には極東に移るという局面が必ずこの一、二年の間にあり得るというのが多くの軍事専門家の意見でございますから、そういう過渡期にどう対応するかという問題は依然として残るかと思います。  それから、日本市場特異性というときに、働き過ぎて過労で亡くなってしまうといったようなことが市場参入の難しさとして数えられているわけではありません。したがって、御質問は、むしろその輸出が、出ていく理由の中に問題があるのではないかということですけれども、この日米間で今、リビジョニストと非常に違って、米国政府が健全な面を残している点があるとすれば、それは先ほども申し上げましたけれども日本からの輸出は構わないと言っているんです。日本へもっと輸出をしたいと言っているわけです。したがって、日本特異性というのは、入っていきにくいという面での特異性に絞られているということでございます。したがって、日本の価格競争力が先端産業で非常に強いということ自体が、今摩擦の原因に直接SIIなどでなっているわけではないということでございます。
  38. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 どうもありがとうございました。  それでは、シーグ参考人にお尋ねしたいと思います。二点お尋ねしたいんですが、まず第一点目ですけれどもアメリカ大統領経済諮問委員会にジョン・B・テイラーさんという方がおられるんですけれども、この方が雑誌の「政界往来」、八九年十二月号の対談の中で、このようなことを言われているんです。 一九八九年の十月二十五日からジュネーブで農業交渉が行われた、これに関連して、かねてから日本が主張してきた米の国内自給という食糧安保論が特に厳しくバッシングされましたね、という質問に対して、こう答えられています。それは当然のことだ。ありとあらゆる面で自由貿易の大原則が貫かれなければならない、ブッシュ政権は米の自由化に対し不退転の決意である、こう答えておられます。  で、先ほどシーグ参考人も、日本市場開放の要求に対し、最後の土壇場になって譲歩するというような表現もありましたけれども、この米の問題に対しての米国の基本的な考え方について、どのように認識されておられるかをお尋ねしたいと思います。  それから二点目でございますが、日本の対米投資に関して、在日米国商工会議所の立場としては、これは両国にとって大変有益と考えておられるというお話でした。基本的には賛成ということでしたが、しかし、日本の対米投資に対し否定的な意見米国世論があるというふうに言われましたが、この否定的な世論というのは一体どのような観点からのものなのでしょうか。それから、米国の対日投資機会が不足しているとは、具体的にどんなことが問題になっているんでしょうか。 アメリカの高度消費社会という事実、供給余力の不足、財政赤字という問題について今後どのような対応をされようとしているのかをお伺いいたします。    〔会長退席、理事大木浩君着席〕
  39. アルバート・L・シーグ

    参考人アルバート・L・シーグ君)(佐藤雅子通訳) まず最初の御質問の米の問題ですけれども、今引用されましたテイラー氏の記事につきましては読んでおりませんので、あくまでも私個人のこの問題に関する知識に基づいてお答えさせていただきます。  ACCJ、商工会議所といたしましては、あらゆる部門についてあらゆる国で自由化するべきだということを基本的に思っております。しかし、米というのは日本では特別な問題であるということも十分認識しております。したがいまして、これからガットの交渉の場を通して、双方に受け入れられるような結果を模索していく必要があると思います。  また、自給の問題と食糧の安保という問題は基本的には違う問題だと思っております。    〔理事大木浩君退席、会長着席〕 安全保障というのは、毎年その食糧を生産する能力がなくても貯蔵能力があればカバーできるわけですし、したがいまして、自給はできなくても基本的な食糧の安保を図ることはできると思います。いずれにしましても、これは基本的な方法でこの安全保障は図ることができると思っております。  また二つ目の御質問ですが、御質問の中にいろいろな側面が入っておりましたけれども、基本的には、商工会議所といたしましては日本企業の対米投資を支持しております。また、投資する際に日本企業には、できる限り現地の部品や現地の労働力を使って、また現地の経営者をできるだけ使っていただきたいと思っております。そして、いい現地の社会の一員になっていただきたいと思います。現地のコミュニティーの一員という考え方は日本とは多少違うかもしれませんけれども、現実に多くの日本企業がすぐれたアメリカ市民とみなされているケースもありますし、また同じように多くのアメリカ企業がいい日本市民になっていると思います。  アメリカ企業日本投資する機会につきま しては幾つかの問題がありますが、その主なものは日本の土地の価格です。日本市場投資する際には、土地の価格がほかの国に比べまして非常に高いということで、日本投資する際には、その土地に投資した分を回収することも考えまして、非常に長期的な投資でなければいけないという点が問題だと思います。
  40. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 終わります。
  41. 古川太三郎

    古川太三郎君 連合の古川でございます。  この貿易均衡の問題は、貯蓄投資均衡の問題だ、それが八割を占めているんだというような形で御提言もありました。そこで二割のSIIの問題ですが、これは確かに二割とおっしゃいますけれども、この日本の国民の中では構造協議は非常に興味を持って見ているというところがございます。今までは確かに商品の価格が下がりにくい、まあ大変な流通の問題がございました。また独禁法なんかも日本は世界に比べて非常に緩やかである、それだけにその適用が軽んじられたというような経過もあろうかと思います。  そういうことで先にミスター・シーグさんにお尋ねしますが、通産省といろいろと交渉なさっておるようで、輸入促進プログラムができそうだということを先ほど歓迎されるという意味のことをおっしゃいましたけれども、この中の輸入促進税制というようなものが今日本で問題になっておるんです。これは、そういう意味からすれば政治の問題かもしれませんけれども、国民の目から見れば、非常にこれは我々としては大変な問題だ。単に税制面で優遇されたとしても、商品そのものは物価が安くならない、輸入を多くしても物価が安くなるその保証は一つもない。むしろ先ほどから問題になっています流通段階でのそういう規制を排除する、また系列化あるいはそういう独禁法に触れるようなものを排除していくということの方が一番大切じゃないかと思うのです。消費者にとっては一つもメリットもございませんし、そのような方向での対応は、むしろアメリカからの要求とすれば、それは非常に効果の薄いものであり、また日本の国民を何といいますか、不愉快な思いをさせるような形にもなろうかと思うので、できればこういった問題は、野党との御相談をしていただければ、もっともっとスムーズに輸入の何といいますか、エントリーができるようになるんじゃないかと。先ほど社会党の西野委員もおっしゃったように、通産省の窓口だけじゃなくて、野党との窓口も大きくなさる方が効果的だ、このように思っております。  そういうことで、独禁法についての日本に対する御要求はどういったところにあるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  42. アルバート・L・シーグ

    参考人アルバート・L・シーグ君)(佐藤雅子通訳) まず、ここで公式に申し上げたいのですが、アメリカのビジネスマンとしては、私ども製品日本に売ることを助けてくださる方は、どのようなソースであろうと、その力を歓迎いたします。  また、そのほかの問題についてでありますが、何回ももう申し上げておりますが、アメリカ企業日本に進出する際に直面する問題につきましては、たとえそれは現実の問題ではなく、そのように受けとめられていると認識されているというだけの問題であっても、そのようないろいろな困難な問題は解決されてきております。それぞれの部門別の交渉、あるいは特定の品目別の交渉である程度解決されております。例えば牛肉とかオレンジ、半導体などがその例です。また、そのほかの問題は、ある部門、特定の問題でない場合には、構造障壁協議という形で話し合われております。構造協議では、アメリカ日本の六つの分野の改善を求めておりますし、そういった話題はもう何回も出ておりますが、例えば日本の価格形成の問題、また貯蓄投資流通制度、土地、排他的な取引慣行、系列制度などといった問題です。また逆に、日本側もアメリカ側に七つの分野での改善を求めております。こういったことで貿易の不均衡を是正しようとしているわけです。  在日米国商工会議所は、このような活動を支持しておりますし、SIIがこの問題を解決することのできる一つの方法だと考えております。これはもちろん両方向でやるべき努力でありまして、これが全体の問題の何%であるといったような問題ではなく、双方で、両国努力をして解決していかなければいけない問題だと思います。
  43. 横溝克己

    ○横溝克己君 税金党の横溝ですが、時間が十分なので簡単に質問します。  まずシーグさんに質問したいのですけれども、先ほどからのACCJですか、この立場を聞きまして、大変ドラマチックな対策よりも、ビット・バイ・ビットでいくんだということを聞きまして、大変尊敬をしております。  それで、SIIで問題になっていることを見ますと、一つスーパー三〇一条の対象になっているような、比較的解決がどちらかといえば技術的な問題である、そういったものと、もう一つは対日投資ですか、これをアメリカと同じように、MアンドAとかLBOができるようにしようというストラクチャーの問題。これはなかなか大変なんではないかと思います。それからもう一つは、流通機構の改革のような問題でして、私もこれは賛成なんですけれども、多少は時間がかかるということがあります。それから、系列の問題などでも似たようなのが、多少内容違いますけれどもアメリカでもコングロマリットの問題なんかがあるんではないかと思います。  そこで質問をしたいのは、アメリカの要求を見てみますと、一つ経済構造を改めるべきである。特にヒルズさんたちが何か言っているのは、それを強調しているように思うんですね。もう一つ、いろんな雑誌なんかに出ているんですが、特にアメリカ本国の方で言っているのが多いんじゃないかと思うのですけれども経済貿易の額のバランスをとれ、あるいは管理貿易をしろということが掲載されています。例えば「日経ビジネス」の十一月二十日号の中に出ていますが、クライド・プレストウイッツさん、この方はかつて商務省で日本担当だったそうですけれども日本の航空会社とアメリカの航空会社は同じ数のフライトを出せということを言っております。現実にはアメリカの方が今フライト数は多いんじゃないかと思うのですが、ここら辺の誤解があると思いますけれども、そういうような同じストラクチャーで、MアンドAとかLBOもできるようにしろというようなことを言っております。  一体今、アメリカの要求しているのはどちらの方に重点を置いているんでしょうか。ストラクチャーを改めると言っているのか、貿易額をバランスをとれと言っているのか、どちらなんでしょうか。
  44. アルバート・L・シーグ

    参考人アルバート・L・シーグ君)(佐藤雅子通訳) 基本的な問題としてアメリカで懸念が抱かれ、また大きなフラストレーションの原因となっておりますのは、やはり貿易均衡の問題だと思います。アメリカは、今までもこの問題を解決しようと多くの努力をしてまいりましたし、先ほど私が申し上げましたように、実際にいろいろな面での進歩も現実に見られております。しかし、日本との貿易額を見ますと、やはり日本との貿易では不均衡があるわけで、それが今や政治問題化してきているわけです。基本的にはこれは経済問題なんですけれども、今やそれに政治的な色合いが加わっているわけです。  SII努力でありますけれども、これは長期的に日本及びアメリカ変化をする必要があるという意味努力だと思います。そして、両国ともその変化を享受できるような方法で、お互いに一緒に生活していけるような方法で変化をしていこうというものだと思います。ですから、何も日本アメリカ制度に変わらなければいけないとか、あるいは日本の目から見て、アメリカの方が日本制度に変わらなければいけないといったようなものではありません。SIIというのは全体の分化のほんの一部でしかありません。これはお互いに相手の国でもっとスムーズにやっていけるように、少しずつお互いに調整しようとしている努力だと思います。そして、そうすることで貿易 の不均衡を軽減しようとしているのだと思います。  また、SII努力の結果、貿易の不均衡が改善されることにもつながると思います。もし日本が指摘しているような問題で、アメリカが何らかのことを達成することができれば、これはアメリカ貯蓄率が改善され、いずれ消費が少なくなると思います。また、日本消費者の消費がふえれば、その消費の増加分の一部は輸入で賄われることになると思います。ですから、これがSII努力の波及効果と言えると思います。  また日本は、今まで国際的な仕組みの恩恵をたくさん受けてきております。そして、今や日本はそのような国際的な経済の主要な一員となっておりますので、今や日本がその中での指導的な役割をとる必要があると思います。
  45. 横溝克己

    ○横溝克己君 それで、私かつてアメリカに行ったこともあるんですけれども、飛行機の中で一緒にいた大学生ですが、それがロサンゼルスの空港に着きましたら、あっ、アメリカにもマクドナルドがあるということを言ったわけです。私もびっくりしたんですけれども、彼らにしてみれば、英語名をつけた外食産業はたくさんドライブインにもありまして、外資系かどうかということは区別がないわけです。そういうことで、日本ではたくさん成功した会社があると思うのです。それについてのノーハウをACCJはたくさん持っていると思うのです。恐らく松下幸之助さんや盛田昭夫さんがアメリカ人だったら、松下やソニーの会社を売ったと思うのですけれども企業に対する哲学が違う日本人はそういうふうに売らないと思うのです。ですから、日本でやはり成功するノーハウというのはちょっとアメリカとは違うのではないか。そういうのを、ただし結果として成功すればいいんですから、特にアメリカ人であるACCJは、今政治問題になっている問題、SIIの問題について、特にアメリカに対してもっとPRをしてほしいということをお願いして、質問の時間はもうないので要望だけにとどめておきます。  それから吉冨先生にもまだいろいろ質問したいのですが、私の持ち時間が十分でございますので割愛させていただきます。どうもありがとうございました。
  46. 小山一平

    会長小山一平君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  シーグ参考人並びに吉冨参考人に一言お礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にいたしたいと存じます。本調査会代表して厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)     ─────────────
  47. 小山一平

    会長小山一平君) 産業資源エネルギーに関する調査のうち、石炭問題に関する件を議題といたします。  この際、中曽根君から発言を求められておりますので、これを許します。中曽根弘文君。
  48. 中曽根弘文

    中曽根弘文君 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、連合参議院、民社党・スポーツ・国民連合、税金党平和の会の各派共同提案による当面の石炭対策に関する決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     当面の石炭対策に関する決議(案)   現在、総合エネルギー対策の観点から第八次石炭政策に基づき各般の対策政府によって実施されているところである。   しかしながら、石炭鉱業の経営環境は依然として厳しく、昭和六十二年度三井砂川、北炭真谷地両炭鉱の閉山が行われ最近においても北炭幌内炭鉱が閉山するなど、石炭鉱業は大きな試練に直面している。   雇用問題並びに地域社会への影響が一段と厳しくなっており、従って、政府は、閉山の集中等の事態を回避するため当面次の諸点について適切な措置を早急に講ずべきである。  一、石炭鉱業の経営の現状に即応した総合的な施策を積極的に講ずることにより集中閉山を回避するよう努めること。  二、石炭鉱業における過剰貯炭を速やかに解消するよう積極的な努力を行うこと。  三、国内炭(一般炭、原料炭)の需要確保に努め、第八次石炭政策目標である概ね一千万トンの供給規模への円滑な移行を図るとともに、輸入割当制度の適切な運用を行うこと。  四、経営環境変化などにより閉山等に至る炭鉱については、その影響をできる限り緩和するよう閉山に伴う制度の積極的な活用を行うとともに、炭鉱離職者対策の実施に当たっては再就職対策の充実等雇用の安定対策の確保に万全を期すること。  五、石炭鉱害復旧について着実に推進すること。  六、産炭地域における活性化のための諸政策については、第三セクター並びに企業の立地誘致の促進を図るため、総合的な産業分野の開発に努め、そのための幅広い基盤整備を拡充強化すること。  七、石炭政策の確立と着実な実行を図るため、所要の石炭財源確保について万全を期すること。    右決議する。  以上でございます。
  49. 小山一平

    会長小山一平君) ただいまの中曽根君提出の決議案に賛成の方の挙手をお願いいたします。    〔賛成者挙手〕
  50. 小山一平

    会長小山一平君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は全会一致をもって本調査会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、松永通商産業大臣及び福島労働大臣からそれぞれ発言を求められておりますので、これを許します。松永通商産業大臣
  51. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) ただいまの決議の趣旨を体しまして、今後とも石炭政策に全力を尽くしてまいる所存でございます。
  52. 小山一平

    会長小山一平君) 福島労働大臣。
  53. 福島譲二

    ○国務大臣(福島譲二君) ただいまの御決議につきましては、労働省といたしましてもその御趣旨を体し、炭鉱離職者に対する施策の充実に取り組んでまいる所存でございます。     ─────────────
  54. 小山一平

    会長小山一平君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  産業資源エネルギーに関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 小山一平

    会長小山一平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 小山一平

    会長小山一平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  57. 小山一平

    会長小山一平君) 次に、委員派遣に関する件についてお諮りいたします。  閉会中の委員派遣につきましては、その取り扱いを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 小山一平

    会長小山一平君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十八分散会