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1989-10-31 第116回国会 参議院 産業・資源エネルギーに関する調査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十月三十一日(火曜日)    午後二時三十分開会     ─────────────   委員氏名     会 長         小山 一平君     理 事         大木  浩君     理 事         中曽根弘文君     理 事         及川 一夫君     理 事         白浜 一良君     理 事         高崎 裕子君     理 事         古川太三郎君     理 事         足立 良平君                 合馬  敬君                 狩野 明男君                 川原新次郎君                 鈴木 省吾君                 田辺 哲夫君                 永田 良雄君                 藤井 孝男君                 向山 一人君                 本村 和喜君                 対馬 孝且君                 角田 義一君                 西岡瑠璃子君                 西野 康雄君                 浜本 万三君                 中野 鉄造君                 神谷信之助君                 横溝 克己君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         小山 一平君     理 事                 大木  浩君                 中曽根弘文君                 及川 一夫君                 白浜 一良君                 高崎 裕子君                 古川太三郎君                 足立 良平君     委 員                 合馬  敬君                 狩野 明男君                 川原新次郎君                 田辺 哲夫君                 永田 良雄君                 藤井 孝男君                 向山 一人君                 本村 和喜君                 対馬 孝且君                 角田 義一君                 西野 康雄君                 浜本 万三君                 中野 鉄造君                 神谷信之助君                 横溝 克己君    政府委員        通商産業大臣官        房総務審議官   関   収君        通商産業大臣官        房審議官     横田 捷宏君        通商産業省通商        政策局次長    堤  富男君        特許庁総務部長  渡辺 光夫君        中小企業庁小規        模企業部長    川田 洋輝君    事務局側        第三特別調査室        長        大平 芳弘君    説明員        外務省経済局外        務参事官     原口 幸市君    参考人        社団法人経済団        体連合会常務理        事        内田 公三君        社団法人経済団        体連合会国際経        済部長      太田  元君     ─────────────   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○産業資源エネルギーに関する調査  (我が国経済構造問題点と将来展望に関する件)     ─────────────
  2. 小山一平

    会長小山一平君) ただいまから産業資源エネルギーに関する調査会を開会いたします。  委員の異動について御報告いたします。  去る九月二十七日、堀利和君が委員を辞任され、その補欠として西岡瑠璃子君が選任されました。     ─────────────
  3. 小山一平

    会長小山一平君) この際、一言御報告いたします。  理事会におきまして、本調査会テーマについて協議いたしましたところ、産業問題と資源エネルギー問題それぞれについて、今後三年間のテーマを設定し、所要の調査を行うことに決定いたしました。  まず、産業問題につきましては、「我が国経済構造問題点と将来展望」というテーマで、産業構造など供給面から見た経済構造に加え、我が国消費構造など需要面から見た経済構造についても調査を行い、それぞれの側面から我が国経済構造あり方について検討を加えることになりました。  次に、資源エネルギー問題につきましては、「エネルギー需給構造問題点と今後のあり方」というテーマで、資源エネルギーの継続的かつ安定的な供給確保対策エネルギー需給あり方などについて、環境問題なども含めて国際的な観点から検討をすることに決定いたしました。  このうち、本年度におきましては、「我が国経済構造問題点と将来展望」について調査を行うことに決定いたしました。  調査の具体的な進め方といたしましては、我が国経済構造について問題点を見つけ出し整理することとして、まず、現在行われている日米構造協議内容について政府側から説明を聞くとともに、経済団体などから意見聴取した後、さらに米国などの参考人からも意見聴取を行いたいと存じます。  次に、整理した問題のうち、一層の検討を必要とする案件、例えば流通機構問題、農業問題などについて参考人から意見聴取を行い、現状認識を深めるとともに、情報化高齢化の進展が将来の経済構造に及ぼす影響についても調査を行う必要があろうかと存じます。  なお、産業資源エネルギー関係で、当面する問題についても理事会などで協議し、適宜調査の対象といたします。  以上、簡単ではございますが、理事会協議の決定について御報告させていただきました。委員各位の御協力をお願いいたします。     ─────────────
  4. 小山一平

    会長小山一平君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  産業資源エネルギーに関する調査のため、今期国会中必要に応じ参考人出席を求め、その意見聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小山一平

    会長小山一平君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選などにつきましては、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 小山一平

    会長小山一平君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  7. 小山一平

    会長小山一平君) 産業資源エネルギーに関する調査を議題とし、我が国経済構造問題点と将来展望に関する件のうち、日米構造協議について、外務省及び通商産業省から説明聴取した後、本日の参考人社団法人経済団体連合会常務理事内田公三君並びに国際経済部長太田元君から意見聴取いたします。  この際、参考人一言あいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  両参考人から、日米構造協議について忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  まず、政府側から説明聴取いたします。外務省経済局原口外務参事官
  8. 原口幸市

    説明員原口幸市君) 外務省原口でございます。  本日は通産省からも御出席いただいておりますので、重複してもなんでございますので、私の方からは日米構造協議の大枠につきまして、まずお話しさせていただきたいと思います。  お手元に二枚紙が配ってございますが、それをもとにお話しさせていただきます。  まず、日米構造問題協議の経緯でございますけれども、これは、ことしの五月二十六日にブッシュ大統領が声明を発出いたしまして、スーパー三〇一条とは全く別の枠組みとして日本と構造問題に関し協議を行うことを提案したわけでございます。その後、七月十四日、アルシュ・サミットの際に、宇野元総理とブッシュ大統領が会談いたしまして、その際、今後本件協議を行っていく旨合意し、共同発表を行ったわけでございます。  次に、協議目的問題意識でございますけれども、本件協議は、経済政策調整枠組みのもとで払われている努力を補完し、日米両国貿易国際収支調整の上で障害となっている日米双方の構造問題を識別し、解決していくことを目的とするものでございます。  米側問題意識は、これまで為替調整マクロ経済政策調整を行ってきたにもかかわらず、日米間の貿易均衡が依然思うように是正されないことから、両国における構造問題を取り除いていこうというもので、行動に結びつく協議ということを主張しております。  他方、我が国は、これまでも前川レポート以来自主的に構造調整努力してまいっており、本件協議につきましても、我が国経済構造調整構造改善の一環として対応するとともに、米国の構造問題についても積極的に取り上げていく考えでございます。  この取り進めぶりでございますけれども、九月より本件協議を開始し、以後二ヵ月に一度の頻度で協議を行っていくこととして、来春には中間評価を行い、一年以内に共同報告を取りまとめる予定でございます。  協議は、日本側外務省大蔵省通産省三省米国側が国務省、財務省、USTRの三省庁が共同議長となっておりまして、そのもとでその他の関係省庁も参加し、レベルは次官級で行っております。ちなみに日本側では、先ほど申しました三省に加えまして、経企庁、農水省、公正取引委員会、国土庁、建設省、自治省、法務省、厚生省、郵政省、労働省等の役所が協力しておりますし、米側商務省、CEA、司法省、労働省等が参加しております。  第一回の会合は九月の四、五の二日間にわたりまして東京で行われました。日米双方の構造問題につき、率直かつ突っ込んだ意見交換を行った次第でございます。  お手元にありますように、米側より取り上げられた、米側から見た我が国の構造問題は次の六点でございます。このうち貯蓄投資パターン大蔵省土地利用外務省流通機構価格メカニズム、これは通産省、それから系列関係大蔵省通産省排他的取引慣行通産省外務省というところが一応の取りまとめの責任ということになっております。  日本側からは、次のページに書いてございますが、日本側から見た米国の構造問題を七項目指摘しております。最初貯蓄投資パターン、これは大蔵省企業投資活動生産力、それから企業ビヘービア、これは通産省政府規制関連外務省RアンドD関連通産省輸出振興通産省労働力訓練教育外務省という役割分担になっております。  本日は共同議長一つである大蔵省出席しておりませんので、この機会日米双方で取り上げた問題のうち、外務省大蔵省に関する部分、すなわち(2)の(イ)(ロ)、それから(3)の(イ)、(ニ)、(ト)につきまして私の方から概略米側主張を、あるいは日本側主張を御説明いたしたいと思います。  まず、米側指摘いたしました貯蓄投資パターンでございますけれども、米側主張は、日本対外均衡改善のためには豊かな貯蓄とそれに見合っていない国内投資消費の間のギャップを埋めていくことが必要なのではないか。投資については、インフラ整備のための中長期的な公共投資増が必要なのではないか。消費については消費者信用制度改善消費拡大のための余暇機会の増加が必要ではないかというような主張がなされました。  第二の土地利用問題につきましては、米側は、日本土地、住宅の価格が高いことは高い貯蓄率消費抑制をもたらし、公共投資に対してもマイナス影響を与えているのではないか。また、日本に進出を希望する外国企業にとっても重い負担となっている。具体的には土地に関する税制が、土地の売却より保有を奨励しているのではないか、また土地有効利用が図られていないのではないかというような指摘がございました。  若干飛んで恐縮でございますけれども、日本側より指摘した米側問題点ということで(3)の(イ)、貯蓄投資パターンにつきましては、日本側の方から、米国対外均衡改善のためには政府部門での財政赤字削減民間部門での貯蓄不足是正過剰消費抑制が必要ではないかという点を指摘いたしました。  また、(ニ)の政府規制関連では、米国には企業輸出活動を妨げるような政府規制、例えばシップアメリカン等が存在しているのではないか、これが結果として米国企業競争力を強化する機会を与えない、温室の中で育てているということになっていないかというような指摘をいたしております。  それから、最後の(ト)、労働力訓練教育につきましては、我が方から、米国では労働力訓練が十分に行われていないのではないか、また教育課程において、生産輸出に関連する能力が十分に重視されていないのではないかという点を指摘した次第でございます。  第二回の会合は来週十一月の六、七日、ワシントンにおいて行う予定でございます。  簡単でございますが、私の方からはとりあえずこれだけ説明させていただきまして、あと通産省の方から残りの項目につきましてより詳しい御説明をしていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  9. 小山一平

  10. 堤富男

    政府委員堤富男君) 堤でございます。よろしくお願いいたします。  それでは、今のお話にフォローいたしまして、第一回会合議論がされました幾つかの問題、通産省議長をやっておる問題を中心お話しさせていただきたいと思います。  まず第一に、最初ページの方の流通機構という問題でございますが、先ほど外務省の方からお話がございましたように、本来、日米貿易収支というのはそれぞれの国のマクロ経済政策景気対策ですとかあるいは為替レートとか、そういうものが中心になるべきであるけれども、そのせっかくのマクロ経済調整がうまくいかない一つの理由が複雑な流通機構にあるのではないか。その複雑な流通機構が、外国企業日本に入ってくること、あるいは外国輸入製品日本に入ってくることというのを妨げているのではないだろうかということで幾つかの指摘があったわけでございます。  その一つは、この場合の流通というのは物流も含んでおりますが、一つは、運送業規制が高い輸送コストになっていないだろうか、あるいは通関手続が複雑になっていないだろうか。大店法規制、これが非常に大きな要素を占めていると向こうは考えているようでございますが、大店法規制があるために、スーパーマーケット等の大規模小売店舗日本になかなかつくりにくい。その結果、輸入のシンプルな形での流通がなかなかできないために参入が妨げられているのではないか。同様な趣旨でございましょうけれども、酒類販売業免許制度、あるいは薬事法規制というようなものも指摘をされているわけでございます。これに対して、第一回の九月四、五日のときには流通現状規制緩和動き等につきまして、各省から関係のある部分についての現状説明したというのが第一回の会合でございます。  次に、価格メカニズムでございますが、これは流通機構が制度的な問題だといたしますと、その結果としての価格内外格差が存在するのではないだろうか。これは二つの意味があろうかと思いますが、アメリカから日本輸出した結果、せっかく安い価格輸出しても、日本流通機構が複雑でコストがかかるために、結果として日本国内で高い価格で売られることになっているのではないかという疑問が一つございますし、もう一つは、その反対になるわけでございますが、日本側から輸出しているものが十分為替差益、これは円高になった場合には、ある程度円高に相当した分の値上げが行われるのが論理的ではないかという考え方でございますが、輸出価格が十分上がっているのかどうかというようなことがあったわけでございます。これに対して、差益還元等についてはそれなりに行われていること、それから内外価格差自身が存在するのかどうかというようなことにつきまして議論をしたわけでございますが、内外価格差につきましてはアメリカ側調査日本側調査に若干そごがあったこともございまして、いずれにしても真実を追求するという意味では共同価格調査をするべきではないかという結論になりまして、先週及び先々週を含めまして、日本、これは東京と大阪、アメリカでは主としてニューヨークとシカゴというところで、同一品目について価格調査しようということで日米、特に通産省商務省中心になりまして、共同調査を行った結果を今取りまとめているところでございまして、その内容が次回の、お話がございました十一月の六、七日の構造協議の場で議論をされる可能性があるという状況になっております。  それから、系列の問題でございますが、系列関係がやはり流通機構のもう一つ側面ということでございまして、外国輸入品日本企業が買う場合に、どうしても系列あるいは顔見知りというようなことから買っているのではないだろうか、その結果、系列というものが参入障壁になっているおそれはないかというような話がございましたが、これは系列というのを調べますと、実は系列内の取引というのは一割程度でございまして、それほど大きなウエートを占めていないこと等の事実を含めまして、アメリカ側問題点について指摘をしたわけでございます。  排他的取引慣行というのも実は若干似た点があるわけでございますが、系列という形ではなくて長期的取引が優先されているのではないか、あるいは新聞等で二、三出ておりました談合ということがあって、結局、輸入品参入を妨げているのではないかというようなお話、あるいは独禁法運用がややアメリカと比べて十分でないのではないかというような話がございました。これに対して、日本競争というのは大変激しいこと、独禁法運用も適正であること等をお話ししたのが第一回でございました。  以上がアメリカ側からの指摘事項と、こちらからそれに対するお話をしたということでございます。  それから、次のページになりますが、これは日本側からアメリカ側の構造的問題を指摘したという形でございます。  (ロ)に書いてあります企業投資活動生産力ということでございますが、非常に単純化して申し上げますと、アメリカの現在の設備の稼働率といいますのは、八三、四%ということで近来になく高くなっているわけでございます。せっかく為替レートが変動してアメリカ輸出しやすくなったというマクロ状況があるにもかかわらず、結局、輸出余力がないために輸入する結果になっているのではないかという指摘をしたわけでございます。これに対してアメリカ側は、必ずしもそういうことではなくて、アメリカ側の内需が弱まったことが余力を生み、それが輸出の方に回っているんだというような話がありました。これは長期的に見てそういうことで済むのかどうかということが、まだ今後の議論としては残っているんだろうと思っております。  それから、企業ビヘービアということでございますが、これはアメリカ企業短期的業績を重視する、典型的に申し上げますと、四半期ごと収支状況収益状況を発表するということになっておるわけでございますが、その短期的な業績を重んずるために、どうしても短期間で利益の上がることに目が行きがちであって、長期的にお金をかけて長く投資をするというようなことになりますと、短期的にはかえってマイナスになるケースもあるわけですが、その結果、企業の本当の力である競争力というところが軽視されているのではないかというようなことでございます。アメリカの反応は、ある意味でそういう点も見られるけれども、そればかりではなくて、長期的な視野も十分入っているというようなお話だったろうと思っております。  それから、(ホ)に関連いたしますが、RアンドD関連、これはアメリカ側研究開発というものが商品化につながる分野についてのRアンドD努力が不足しているのではないか。これはどちらかといいますと基礎的な研究協力、これは我々も学ばなければいけないような、非常に十分やっているという面もあるわけでございますけれども、一方でせっかくつくった新しい技術を商品につなげるような商品化への努力、あるいは商品化した後のそれを製品として市場に売り出すような努力、そういうところに欠けている点はないだろうかというようなことも指摘させていただきました。  輸出振興ということでございますが、これは一方で日本側といたしましては、いろんな意味の今まで輸入振興等ジェトロ等を通じましてやっていたわけでございますが、一方でアメリカ側輸出振興努力というのが十分なされているんだろうか。その双方努力がないと、これは一方的な努力だけでは実らない面もあるということを申し上げたわけでございます。  以上、日本側指摘を受けた点、日本側からアメリカ側指摘した点、通産省関係の分を御説明させていただきました。  以上でございます。
  11. 小山一平

    会長小山一平君) ありがとうございました。  以上で政府からの説明は終わりました。  次に、参考人から意見聴取をいたします。  議事の進め方といたしましては、両参考人から二十分程度意見をお述べいただきまして、その 後委員質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。  それでは、両参考人よろしくお願いいたします。内田参考人
  12. 内田公三

    参考人内田公三君) 経団連常務理事内田でございます。先ほどは会長から御丁重なあいさつをいただきまして、ありがとうございました。  最初説明は、私から二十分程度やらせていただきます。質疑応答のときに太田部長の方もお答えする、こういうふうに進めさせていただきます。じゃ、座って報告させていただきます。  日米構造協議の問題につきましては、経団連としての正式のといいますか、公式の見解というものはまだできておりません。したがいまして、本日は非公式な、若干私見も含めて御説明するということになりますので、その点あらかじめ御了承いただきたいと思います。  公式の見解につきましては、実はやっと今月の初めに日米構造問題協議に関する臨時の懇談会というものを経団連の中に発足させまして、これは経団連の副会長松沢、富士銀行の相談役でございますが、松沢会長委員長になって、そして経団連の中には流通とか土地利用とか、そういう問題別常設委員会が既にございます。そういう委員会委員長とか部会部会長をメンバーにして、この日米構造問題協議に関する懇談会というものを発足させることにしたわけであります。まだ実は最初会合も開かれておらないという状況でございます。しかし、問題別常設委員会におきまして従来いろいろ検討はしておりますので、その限りでの意見は申し上げられるということでございます。  それで、話の順序としまして、まず日米経済関係経団連活動ということを最初にちょっとお話ししたいわけでございます。  経団連としては、これは戦後経団連が発足してからと言ってもよろしいかと思いますが、特に日米関係というものが日本にとってやはり非常に重要なものであるだけではなく、また世界経済安定発展のためにも、この日米経済関係というものは非常に大事だという認識のもとに経済交流を活発に行ってまいっております。日米財界人会議というのがございまして、これは毎年定期的に開かれておりますが、この日米財界人会議には経団連会長初め首脳部が参加して、ある年はアメリカで次の年は日本でというふうに、そして率直な意見交換を重ねてきております。また、こういう年一、二回の定期的な会議だけではなくて、日米財界人会議のもとに専門家のワーキンググループなども設けまして、問題の具体的な解決、相互理解の促進を図ってきております。最近ではまた、通信衛星を使ってアメリカのビジネスマンとテレビ会議をやるとか、いろんなメディアで双方の意思疎通を十分に図るように努めておるということでございます。  それで次に、当面の、最近の日米経済関係について、じゃ経団連がどういうふうに今考えているかということでございますが、これにつきましては、参考資料としてお手元に「当面の日米経済関係についての見解」、ことしの七月二十五日付ですが、これは経団連の正式の理事会で決議した意見書でございますが、これをお配りしてあると思いますので、これをごらんいただければおわかりいただけると思いますが、最近、私どもまず第一に一番懸念しておりますのは、日米間の経済摩擦がなかなか改善されませんで、むしろ深刻化してきておりまして、これが経済にとどまらず日米関係全般に悪影響をどうも及ぼしつつある。この点を非常に憂慮しておるわけであります。  貿易均衡から、さらに最近では日本企業アメリカに直接投資、工場をつくるとか対米投資も急増しておりますが、対米投資にまた絡んで投資摩擦というか、文化的、社会的な摩擦も出てくる、日米間の摩擦が非常に多面的に複雑になってきているということで、これは一面では非常に日本アメリカが密接に結ばれて補完協力関係にあるということではあるわけですが、しかし、他面においてはいろんなフリクションが起きているということで、御承知のように最近では、日本経済を封じ込めなくちゃいけない、コンテーンメントしなくちゃいけないというような議論アメリカの学者から出るとか、そういう対日圧力の増大というものがアメリカの議会の中に非常に高まってきているわけであります。そういう点を私ども民間のビジネスマンの集まりである経団連としては非常に憂慮しておるわけであります。これは日米経済関係だけじゃなくて、世界経済全体に深刻な悪影響を与えるんじゃないかということを懸念しているわけであります。  特に、最近アメリカは相互主義ということを言っておりまして、従来のガット・IMF体制、多角的に交渉して話し合いで解決していくということとまた別に、二国間でやろうという相互主義的な傾向を強めてきております。これは、日本としてはやはり世界の自由貿易体制の堅持ということを願っておるわけでありまして、こういうアメリカの相互主義的な傾向も実に困ったものだということでございます。  それから第二点は、アメリカといっても、連邦レベルとそれから州レベルとでちょっとまた感触が違うということでございます。連邦議会あるいは連邦政府の対日批判というものは、ますます激化してきているというような印象でございます。特に議会の方が非常に強いものがあるわけでありますが、地方に行きますと若干意識の違いが、若干というかかなりありまして、経団連でも時々アメリカ投資環境の調査団などを出しますが、どこに行っても非常に歓迎されて、来てくれ来てくれということなわけでございます。州のレベルでは非常に日本企業の誘致あるいは取引の拡大に積極的でございます。  御承知かと思いますが、アメリカ五十州のうちの四十州が日本に事務所を開設しておりまして、日本企業の誘致に州の知事みずからが先頭に立って働きかけているというのが実情であります。ところが、連邦議会においては険悪な空気が流れているというので、一体アメリカというのはどうなっているんだろうかというような疑問もわいてくるところでございます。  以上が最近の日米経済関係についての私どもの持っている率直な印象でございますが、次に本日の問題であります構造問題協議については、一体経団連としては、現段階でどういうふうにこれを受けとめているかということを申し上げたいと思います。  まず、この構造協議の問題は既に外務省通商産業省からもお話がございましたが、これはとりあえずは両国政府間の、政府政府との間での話し合いでございまして、両国政府の権限の及ぶ範囲内での話し合い、権限の及ぶ範囲内の問題を取り上げるというふうに私ども伺っております。そういうふうに理解しております。  ところが、それにもかかわらず、この間もカーラ・ヒルズUSTR代表が経団連にも来ましたが、ヒルズさんとか、あるいはその他米国政府の高官の話などを聞いておりますと、必ずしもマクロ的な経済政策の問題にとどまらずにミクロの分野にまで、商慣行とかそういうミクロの分野にまで入り込んできておりますので、その点を私ども非常に心配しておるわけであります。この協議がどういうふうに収拾されるのか。もしこの協議がうまくいかなくて、目下の経済摩擦をかえって激化させたり、日米間の感情の対立がさらに増大したりするようなことになっては大変なことになると非常に心配しているところでございます。  この構造問題協議が始まった背景は、先ほども政府の方から御説明もございましたが、大幅な為替調整にもかかわらず、アメリカの対日赤字が依然として高水準にあるというところにあることは申すまでもありませんが、日本の方では昭和六十年、一九八五年のいわゆるプラザ合意以降、急激な為替調整があったわけでありますが、当時は本当に日本産業はやっていけるのか、つぶれちゃうんじゃないかというような危機感さえあったのでありますが、必死の努力で乗り切ってきたわけであります。最近では人手が足りないというよう な、好景気を謳歌するようなちょっと当時では信じられないようなところにきているわけでありますが、他方アメリカの方はどうかというと、このドル高の間にアメリカでは産業の空洞化が進んで、現在に至ってもアメリカ産業競争力の回復、強化というそういう動きが見られないわけであります。  ですから、経団連でも民間レベルでしばしば申し上げているわけでありますが、米国生産性の向上、生産力の増強をしなければ貿易の不均衡は基本的には是正されないのじゃないかと。米国側の問題を適当な手段で解消しない限り、日本の個別問題を取り上げて輸入障壁の除去、市場の開放に努めてみても限界がある、米国からの輸入拡大には限界があるというふうに考えて、常々そういうふうにアメリカ側にも言っているわけであります。米国自身もこの財政赤字の削減とか生産能力の拡大、合理化のための設備投資、そういった構造調整をもっと真剣にやるべきじゃないかというふうに考えているわけでございます。  経団連の会員企業も、例えば通産大臣からの要請もあったりして、アメリカから輸入をふやそうということで、できる限りの努力もしておりますが、その割になかなか実績が上がらないというのは、一つにはやはりアメリカ企業輸出拡大努力、意欲の不足、日本市場への参入、定着の努力不足というものが、これはもう前からそうでありますが、指摘されております。こういうことを申し上げると、またそんなことを言って、同じことを言っているのかとおしかりを受けるかもしれませんが、やはりそういう印象は否めないのでございます。  それから、今回のアメリカ側指摘の一部には、単に大規模小売店舗法とか土地保有の税制とかいうようなことだけじゃなくて、日本の習慣とか文化に触れてくるような問題もあるように見受けられるのでありますが、もしこの日本の習慣とか文化で、それなりの経済合理性もあるというものであるとするならば、それを何というか、けしからぬとか変えるとかいうようなことをアメリカ側が言ってくるのであれば、これはちょっと賛成できないと思っております。ただ、日本側の習慣とか、商習慣とか、文化とかいうようなものがアメリカ側から見て不可解である、不透明であって理解できないというようなことであるならば、それは経済大国としての、特に国際的な責任ということからいけば、そういう点を理解してもらうように努力を払う責任はあるだろうと、そういうふうに考えておるわけであります。  あと残された時間、具体的な項目について若干、二、三コメントさせていただきます。  まず、流通の分野における大規模小売店舗法の運用、それから土地有効利用の問題につきましては、アメリカ側指摘が全部というわけではありませんが、その中にはかなり経団連自身が長年にわたって日本の国内で問題提起をして、政府にあるいは立法府にお願いしてきた問題がございます。つまり、経団連主張しているのと同じようなことをアメリカ側が言っているという問題もございます。そういった点は今回の構造協議があるないにかかわらず、ひとつぜひ日本をよくするために早く取り上げて改善していただきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから次に、貯蓄投資の問題、これもちょっと漠たる問題でございますが、これは先ほど申し上げましたように、まずは米国側の財政赤字の削減が必要であると思います。これはアメリカ政府なりアメリカの議会がそうしようという断固たる意思を固めればできるはずなわけでありまして、アメリカの国民の貯蓄率を上げるとか、そういうような国民の生活慣習にかかわるものはちょっとそれは話が違うんじゃないかというふうに考えております。それから日本の側としては、貯蓄の問題については、高齢化社会に漸次移行していく過程において次第に貯蓄率も下がっていくんじゃないかというふうに考えられますし、またいわゆる公共投資、公園とか下水道、これは日本ではやっぱりまだまだ非常に不十分なわけでありまして、こういうものへの公共投資は既にいろいろ指摘されているように、もっともっとやっていただきたい。この点については、経団連としても今後引き続き政府にも働きかけていきたいと考えております。  また、民間の豊富な資金を住宅環境の改善とか、そういう問題に振り向けることも重要だと考えておりますが、それには土地の利用、開発、あるいは住宅建設なんかにかかわるいろんなレギュレーションを思い切って緩和していただいて、民間が投資して採算がとれるようにしていただければ、まさに民活ということもできるわけなので、そういう意味からも規制緩和ということをお願いしてきているわけでございます。  いずれにしても、アメリカ指摘している問題の中には、日本の国民生活を豊かにするためにも役に立つという問題もあると考えられますので、そういった問題については、ぜひ国会なり政府が率先してひとつ進めていただきたいと考えるわけであります。  次に、排他的取引慣行とか系列の問題でありますが、これはアメリカ日本の歴史的な社会形成の相違から考えると非常に厄介な問題でありますが、現段階では一体、アメリカ側が何を具体的に問題にしているのか、日本のどういう法律の、あるいはどういう規制が問題だと言っているのか、ちょっとまだはっきりわかりません。日本の下請関係とか販売系列とか、いわゆる株式の持ち合いとか、そういうようなことを問題にしているようでありますが、それがどういう意味でよくないとかいうのであるのか、ちょっとよくわかりません。もしそういうものが、それ自体が閉鎖的な制度であるとかいうことになりますと、これはやはり戦後ゼロから再出発して今日の経済を築き上げてきた日本企業経営者、あるいは日本の勤労者階級にとっても納得できるものではないと考えるわけであります。  それから、アメリカ主張は、日本の国内ではどうも競争というものが余り行われていない、カルテル的体質があるとかいうようなことを言っているようでありますが、これは先ほど通産省からも御指摘がありましたけれども、むしろ日本の市場は余りにも競争が激し過ぎて過当競争体質だということが、よくそういうことこそが言われているわけでありまして、アメリカの批判もちょっと心外なわけであります。むしろ競争制限があるとすれば、それはいろんな業法とか、そういう政府規制によって価格とか参入や体質、あるいは販売方式などが統制されているような場合、こういう場合にはまさに競争が行われない。したがって、またいわゆる円高差益の還元も進まない。そういった点は既に政府の、いろんな物価レポート等でも政府みずからが認めておるところでございます。  したがって、経団連としては、各種の規制を緩和し、合理化していくことがやはり先決であると。アメリカ側は、日本独禁法を強化しなくちゃいけないとか、予算とか人員をふやせとかいうようなことを言っているようでありますが、私どもの経験からいえば、むしろ日本独禁法はそれなりに非常に立派な、あるいは産業界から見ると厳し過ぎるくらいの既に法律であって、むしろ問題があるとすれば、独禁法が適用途外になっている分野が多い、そこに問題があるんじゃないか。適用除外になっているところを見直して、なるべく独禁法が適用できる分野を経済の分野に広げていく、競争原理がなるべく広い分野に貫徹するように持っていくということが必要なんじゃないかと考えております。  それから、いわゆる価格メカニズムの問題でありますが、これについてもなかなか難しい問題だと思っております。これは外国の会社の経営方針にかかわるような問題もあります。ブランド商品などでは大体外国の会社自身が値を下げないというようなこともございます。あるいは日本企業企業ビヘービアにかかわるものもございます。あるいは土地などの自然的な条件からの制約からくる問題いろいろあるわけであります。日本の国 内では高くて、アメリカでは非常に安く売っていて一体どうなのかというような問題が指摘されているようでありますが、その種の問題については、経団連としても関連の会員企業にどういうわけで、そういうことがもしあるとすればどういうわけなのかということを問い合わせておりますが、今のところ競争制限からくるようなそういう事実はないという返答を受けております。この問題は、アメリカ日本政府が一緒になってウォッチして、これから調べていこうということになっておるようでありますので、その結果を私どもとしては見守っていきたいと考えておるわけであります。  以上で一応私の説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  13. 小山一平

    会長小山一平君) 有意義なお話ありがとうございました。  以上で参考人意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  14. 及川一夫

    及川一夫君 経済界の代表の方に絞ってとりあえず質疑をすることになっておりますので、そこで私の方からも絞ってお話をお聞きしたいと思うのですが、まず第一に、経済界としては非常に危機的立場で今日の事態を受けとめておられる。我我国内におる者もそういう気持ちが一段とするんですけれども、この前アメリカに派遣をされて、とりわけ現地におる在留邦人、さらにはアメリカにおける日本企業、それを代表する財界人といいますか、こういう方々とお話をしますと、どうも我々が国内で受けている緊張感と大分違ったものを感じて帰ってまいったのであります。  つまり、アメリカにおられてどうなんですかと、今日の日米経済摩擦というものを考えると皆さんも大変でしょうねというふうにお伺いしますと、いや、そう問われると非常に答えに窮すると。いわば企業活動をしている面からいえば、アメリカの国内にあっては、別に日本企業がどうのこうのということで活動がしにくくなっておるという状況では実はない。しかも長いことアメリカ企業活動をやっていますと、アメリカが果たして貿易とか貿易収支摩擦を論ずるそういう歴史的背景とか体質というものを持っているのかどうかということに対する問題がむしろ逆に投げかけられるんですね。アメリカ日本の二十五倍である、州は五十州ある、多民族国家である。その五十州に、ここはイギリス人、ここはドイツ人というふうに固まっているわけじゃないけれども、そういう状況があるだけに、州と州の取引自体がそれこそ輸出入といいますか、そういう感覚でとらえられているし、需要も非常に激しいものだから、別に他国からの輸出入で財政を、経済を動かすということなしでもできている。輸出入というのは、余ったものを他国に売るという、そういう感覚が非常に強い。だから、アメリカ自体が、輸出品というのは武器であって先端技術であって農産物だと、こういう状況にあるというふうに思っているわけだから、今この摩擦をどうするこうするといういろいろなことがあるけれども、果たしてそれにいろいろな手だてをしても解決になるんだろうかという逆の疑問が実は出されてまいった。その辺のことについて、皆さんの中でもしこれに類するようなお話経団連や日経連の中であるかないか、そういったことをひとつお聞きしたいというふうに思います。  それからもう一つは、今五百億ドルの収支不均衡がある。これも、これまでの状況の中でいろんな手だてをしてもなかなか縮小しないだろうというのですね。しかし必ず、黙っていてもとは言いませんけれども、縮小するはずだと。それは、日本企業アメリカの現地にどんどん入っていって、それで企業活動をやっている、生産物ができる、それがアメリカの国内から売り出されていく、日本にも入っていくだろう、これが本物になるのは三年後と、こういうふうに言われているんです。二、三年と言ったんですが、まあ三年ということでしょう。それが具体的になっていけば、自然に五百億ドルの収支赤字というやつは縮小していくんだと。だからそこまでひとついろんなことをやらなきゃいかぬだろうけれども、必ず解決されるんだから慌てることはない、逆に政府の対応姿勢の方が問題だと。何かどんどんどんどん譲ってしまうというような、そんな印象ばっかり与えているということをずばり言われまして、別に激論になったわけでも何でもないんですが、現地では企業人がそういう見方をしているということについて経団連としてはどんなふうに感じられるか、その二点についてお伺いしておきたいと思います。
  15. 内田公三

    参考人内田公三君) 今の問題はなかなか重大な、また広範な問題でございまして、本当はソニーの盛田さんとか、そういったような人がここに来ていれば的確なお答えができるんじゃないかと思いますが、私自身余りアメリカでそういう事業経験をしたこともないので、十分なお答えはできませんが、後で太田国際経済部長から補足してもらうことにして、若干先生のお話を伺っていて感じたことを申し上げますと、一つはミクロとマクロの違いというか、やはりアメリカに行って、アメリカのビジネスマンとか個人個人の人に会って話をしている限りでは、これは概して日本人びいきというか、アメリカ人はみんな人がよくてフランクであるし、非常に楽しくやっていけるわけであります。しかしながら、そういうミクロのいろんな好意の集まりが結局膨大なる貿易インバランスということになって、それを今度国会の先生方が問題にして取り上げる。ああいうことで、それが非常に冷たい、厳しい風になって日本にはね返ってくるという、そういうことだろうと思うんです。  たまたま実は私もこの間、別の用件でアメリカに行って帰るときに、飛行機の中でアメリカのビジネスマンの隣の席に座って、とにかく十数時間あったものですから、いろいろ話しながら来たんですが、そのアメリカ人は、神戸製鋼から冷延鋼板を買って、アメリカでそれを裁断してアメリカでそれを売っているという、いわゆるシェアリング業者というんでしょうか、大分そういう歴史は古いらしいんですけれども、その人に私は聞いてみたわけです。何であなたは日本の鉄鋼会社から買うのか、アメリカにもあるじゃないかと、鉄鋼会社が。アメリカから買ってくれればそれだけ我我は救われるんだということを申し上げたら、いや、自分が必要としている鋼板はアメリカではつくられてないんだというわけなんです。じゃアメリカのその鉄鋼会社にそれをつくってもらうように頼んだらどうだ、一緒になって技術開発でも何でもしたらどうだと言ったら、いや、今のアメリカの鉄鋼会社は、今の状況で彼らは十分商売して満足しているんだ。それ以上のことをするインセンティブもないし、そういう気はないんだと。だから自分は日本の会社から買っているんだと、こういうわけなんですね。  これは単なる全くの偶然の一例報告でありますけれども、恐らく個々のアメリカ企業なりに聞いていけば、みんなそういうことだろうと思うんですね。しかし、それが結果としてこういうことになっているということで、どうしたらいいのかというので非常に困ってくるわけであります。
  16. 太田元

    参考人太田元君) ただいまの先生の御指摘は非常に広範にわたっておりまして、私の方で一部でもお答えできればと思うんですが、基本的にはやはりアメリカの対日貿易のインバランスが非常に大きくてなかなか縮小しない。それから投資ですね、対日投資が極めて急速に目立つ形で行われているというようなこともありまして、アメリカ全体としてフラストレーションに陥っている。それから一方で、日本の技術がアメリカの先端技術を脅かすとか、あるいはひいては安全保障にかかわる問題であるという認識が非常に強くなっているために、言うに言われない恐れとフラストレーションが高まっているという、こういうことでございますので、ある程度やむを得ないものではないか。私どもは、アメリカの立場に立ちますと、ある程度その辺はわかるんじゃないか。  もちろんこれに対して、誤解に基づくものであ るとか、アメリカ側の問題、先ほどから内田が申し上げましたアメリカ側努力不足であるとかマクロ経済政策であるとか、こういった問題については十分指摘していかなければならないわけですが、基本的には非常にフラストレーションがたまっているので、ある程度は批判を甘んじて受けなければならない、こういうことは事実だろうと思うのです。  五百億ドルがどういうふうになるか。将来にわたってどうなるか。先生おっしゃったように、対米投資我が国輸出に取ってかわるということも次第に起こってまいりましょうし、それから日本の内需がこのまま拡大し続けるとか、円レートであるとか、それからアメリカ側の政策の対応その他を考えますと、必ずしも悲観する必要はないと思います。しかし、傾向としては、日本対外経常バランスというのがGNP比で早くも二%ぐらいに黒字幅が落ちておりますし、これが五年、六年といったところで恐らく下がり続けるんだろうと思いますので、マクロで見た日本対外バランスというのはかなり好転する。そうした中でアメリカとの貿易のインバランスというものがある程度残っても、それはアメリカ側の理解を求めていくということが一つの方法として残されているのではないかというふうに考えます。
  17. 合馬敬

    合馬敬君 内田参考人の簡にして要を得た御説明、本当にありがとうございました。  私、今やはり世界の経済問題で一番重要なのは日米の経済摩擦の解消であると思っておりますが、為替調整をやり、マクロ経済調整をやり、二国間の厳しい貿易交渉をやって、さらに今度は構造協議までやらないといけない、そういう厳しい事態にある。国民も非常に懸念をしておる次第でございます。  この日米構造協議米国の対日要求、六分野にわたっておるわけでございますが、特にお聞きいたしたいのは、その中の系列化、この中では株式の持ち合いだとか長期継続取引慣行、これが企業間の固定的なネットワークをつくっておる。私は、これはなかなか日本企業として非常にすぐれた一つの立派な制度であるとも思っておるわけでございますけれども、そういった系列化、それから排他的取引慣行、これも米国側は、日本企業は、外国企業のものの方が価格、品質、信頼性などの点ですぐれている場合であっても日本企業から購入する、資本財の八〇%が長年取引のある企業間でやりとりをしておると、こういったようなことについて非難をしておるわけでございますけれども、こういった制度というものは、お聞きいたしたいのは、一つ日本企業独自のものであるのかどうか、先進諸国にはないシステムであるのか。それから、こういった制度につきまして、アメリカが要求するように変更するということが可能なのかどうか。  それから、これを変更いたしますと、アメリカの対日輸出企業、あるいは資本進出の大幅な増加を可能にする、そういった見通しがあるのかどうか。また、これは日本企業が長い経済的風土の中で生み出した制度でございますから、これは根本的に日本企業経営システムを変えるといったようなところまで及ぶ場合もあると思うんでございますけれども、その場合日本企業に深刻な影響を与えるんじゃないか、そういったことを心配するわけでございます。これにつきましても、アメリカの要請の内容をまだ、先ほども内田参考人が申されましたように、はっきりしないということもあるようでございますけれども、わかっておる範囲で結構でございますので、事実を御説明願えればありがたいと思います。
  18. 内田公三

    参考人内田公三君) 今の御質問に逐一完全に答えられれば、日米構造協議は終わっちゃうような問題だと思うんで、非常に一つ一つ難問なわけでありますが、まず大ざっぱなお答えを申し上げますと、系列とか排他的取引慣行といっても、これがもし継続的な取引関係、継続的な人的な関係というものに基づく取引ということを意味しているんだとすれば、これは日本だけじゃなくてどこの国でも行われていることだと思いますし、ただしかし程度問題でありますが、先進工業国を見渡した場合に、アメリカあるいはヨーロッパと比べて日本の方が長期的な取引関係、人的な関係というものを重視する傾向にあるということは、これは否定できないところだと思うのであります。  アメリカ主張は、具体的に何を一体要求しているのかもはっきりしませんので、非常に今のところ私どもも対応に苦慮しているわけでありますが、恐らくアメリカは、要するに先生御指摘のように、結果として日本がもっとアメリカから輸入をふやす、あるいはアメリカ企業なりの日本市場進出を促進するということになれば喜ぶのだろうと思うんでありますけれども、その点になりますと、私どもの理解では、日本の市場は既に相当もう開放されているというふうに考えているわけであります。それから、既に日本に進出した欧米の企業で非常に日本でうまくやっている、成功をおさめている、もうかっている会社もたくさんあるわけであります。  したがって、アメリカが言うように、系列とかいわゆる排他的取引慣行とか、そういうものを日本がこれから仮にアメリカの気に入るように直してみたところで、日本へのアメリカ輸出なり、外国企業日本への直接投資なりがそれによって急にふえるというようなことは、これはちょっと考えられないというふうに思っております。ただ、そういうふうに言っただけではちょっと余りにも防衛的な、言いわけ的な印象を与えるかと思うんでありますが、系列とか株式持ち合いとか排他的取引慣行とか言われているものの中で、もしそれが独禁法から見て違法なものがあれば、それは今でもアメリカから指摘されるまでもなく日本独禁法を厳正に運用して取り締まっていけばいいと思うんですね。また今までも取り締まってきているはずなんで、今まで余りそういう審判例がないということは、審決例がないということは独禁法から見ても特別に違法になるような商慣行ではないというふうに私どもは理解しているわけで、そうなってくると、独禁法上も違法でないものをアメリカがただ気に入らないからどうしろこうしろと言ってくるのは、それはちょっと私どもは理解しかねる、こういうことになろうかと思います。  以上でございます。
  19. 中野鉄造

    中野鉄造君 きょうは御両名の参考人の方々本当に御苦労さまでございます。  私、二点だけお尋ねしたいと思いますが、先ほどからいろいろお話を聞いておりましてもわかるんですけれども、要するに日米の国民性は、これはもう当然違いますし、また商慣行というものも違う、文化も違う。そういったような中で、最近のアメリカ我が国に対するいろいろなそういう主張というか、要望というか、何か焦りにも似た感情的であるとも言えるような気がしてならないわけですが、ここにも書いてありますように、アメリカ日本に対する制裁を基調とした、あるいは背景としたそういう言いがかりか、ないしは理不尽とも言えるようなことではないかという、そういう気が私はするわけですけれども、しかも言われていることが、先ほどお話の中にもありましたように、連邦政府なり議会の言っていることと、あるいはまた各州の人たちが言っていること、あるいはまた各企業経営者の方々が言われていること、全部違う。しかも今、日米協議の対象としている、それはもういわゆる連邦政府の代表である。ところが連邦政府の言い分は、アメリカ国民の声を代表しているものとはちょっと違う。こういう現実を知っていながら、わかっていながら今後これをどういうふうにやっていこうとお考えになっているのか、その点が一つ。  それから、複雑な日本流通機構と、こう言われておりますけれども、日本側としてはそのメリット、デメリットをどのように評価、改善しようとされるのか、この二点をお尋ねします。
  20. 内田公三

    参考人内田公三君) まず第一点の問題でありますが、まさにそれは今経団連として苦慮しているところでございます。つまり、緊迫した、ますます深刻化する日米の経済摩擦あるいは政府間の 構造協議、一体どういうふうにこれに立ち向かっていけば平和的にというか、ハッピーな結果になるのか、非常にこれは難しい問題で、政府にも頑張ってもらわなくちゃいかぬと思いますが、この場で私がちょっと考えついたことだけ申し上げますと、冒頭、非常に日米関係というものは、やっぱりいろんな意味で大変大事な関係なのでということを申し上げましたが、やはりアメリカも言っていることは、理不尽なことも中にはあるように思いますけれども、やはり余り感情的対立というか、けんかになって物別れということになってはこれはまずいわけで、それは徹底的に話し合って、やはり誤解を解いていくという努力をするというのが基本だろうと思うわけであります。  また、その際、これは全くの私見ですけれども、アメリカの社会では、こんなことを言うとちょっと釈迦に説法ですが、隣同士の家で仲よくつき合っているけれども、何かちょっと子供がけんかして、けがでもするとすぐ裁判を起こすという、そういう訴訟社会だというわけなんですね。しかし、そうやって相手の家の人を訴訟で訴えながら、日常生活は非常に仲よくつき合っているという、そういうのがアメリカの社会のようでありますので、日本アメリカからいろいろけちをつけられたからといって、余りそう気にしないで言うべきことは言うと。しかし、冷静に仲よくつき合っていくという態度が必要なのかなと。日本人同士がけんかしている場合に、今アメリカが言ったようなことを相手が言えば、それこそこれはもう大げんかになって物別れになっちゃうかもしれませんが、相手はアメリカという国ですから、ちょっとそこは対応の仕方を一ひねりする必要があるんじゃないか、これは全くの私見でございます。  それから、そういう意味でいろんな貿易摩擦の問題にしても、アメリカの業界と日本の業界の間でもっと話し合いができないかということを常々経団連では言っているわけであります。ところが、これがアメリカ独禁法が、反トラスト法が非常に歴史的に厳しいということで、ちょっとでも同じ業界の人が集まったりするとカルテルじゃないかというので、そういうことはできないというわけですけれども、エレクトロニクスにしても何にしても、その当該の日米の両業界の人が一緒に話し合って、そしてどうしたらいいか、両方がうまくいくように、両方が繁栄するようにやっていくと。これは何もカルテルという悪い意味じゃなくて、そういうことができれば非常にいいと思うわけでありますが、これが反トラスト法なりアメリカの社会の特質でなかなかできない、この点を私どもは今度の日米構造協議の場でもぜひ、これは日本政府にお願いしなくちゃいけない問題でありますが、そういう二国間の業界間の話し合いが安心してできるようにしてもらいたい。それは何かアメリカの反トラスト法のエグゼンプションということになるんでしょうか、あるいは政府がそこに一緒に同席していればいいということになるんでしょうか、いろんな方法はあると思うんですが、そういうことをぜひお願いして、そうしてやはりあくまでも話し合って、相互理解をとにかく求めていく、そういう態度がやっぱり一番最後まで大事じゃないかと。これをしびれを切らして、もうこれじゃけんかだとか戦争だというようなことになると、これはもう第二次大戦の二の舞になりますので、そういうことには絶対にならないように、これは我慢に我慢を重ねてやはり話し合っていくことが必要じゃないだろうか。  それからもう一つは、既に出されておりますように、アメリカへの直接投資ですね。これは先ほど先生からお話がありましたように、実際にアメリカに工場をつくってやっている日本人は非常にアメリカで楽しくうまくやっているということなので、そういう直接投資をやっぱりどんどんふやしていく。それもなるべくならば、ビルを買ったとかいうようなことじゃなくて、本当にアメリカで雇用機会がふえるような、あるいはその製品アメリカ輸出になって生きるような、そういう直接投資日本としても努力していく。そういうようなもろもろの努力をして、何とか日米の間というものが破滅しないように、破綻に陥らないようにつないでいく。これをやはりぜひ政府にあるいは国会の先生方にもお願いしたいし、民間としてもそういうふうに努力していきたいと、こう思っているわけでございます。
  21. 太田元

    参考人太田元君) 一、二点ちょっと補足をさせていただきたいと思います。  まず、今投資の問題が出ましたのですが、経団連の中に対米投資をしている経団連の会員企業中心に会員外の企業にもお集まりいただいて、進出先のコミュニティー、地域社会との融合、融和というものにできるだけ腐心をしてビジネスをやるべきだ。こういう観点から、例えば黒人その他の非白人に対する雇用の問題であるとか、非白人の活動にいろいろな形で参加をする、いわゆるマイノリティー問題に対して、アメリカ企業同様に日本企業も活発にアメリカ企業の一員として加わっていく。あるいは寄附行為。私どもの企業は必ずしも国内で、風土の違いもあって、なれないことはたくさんあるわけです。したがいまして、地域社会との融和というものを図ることによって、アメリカの社会に日本企業が貢献をしている、アメリカ企業として、その地域の発展にプラスになっているというようなことが理解されるような地道な努力を進めるべきだという観点からいろいろな活動を行っております。例えば、こういうものも一つのささやかながらやり方ではないか。  それから、先ほど先生の方から、国民の文化であるとか商習慣とか、国民性の違いからくるもので、これをどういうふうに受けとめたらいいかというようなお話がございましたけれども、これについては習慣、風俗等の違いを超えた何か共通のルールというものを改めてアメリカとの間に求めていく。例えば自動車の交通規則というのがあります。これは右側通行がいいのか左側通行がいいのか、アメリカ日本とは違うわけです。これが仮にもアメリカが、アメリカのルール、交通規則に日本も従えということでありますと、これは徹底的に議論をするといいますか、必ずしもこちらのルールをアメリカのルールに合わせなきゃいけないということではないと思うんです。  もっとも日本のビジネスが外で商売をしていく、これが異常に活発に行われるようになると、日本の国内だけ違ったルールを持っていくのが得策でないということであれば、あるいは私ども国民の生活が、やはり世界の中の一員として同じルールでやった方が得であるということになれば、そのルールを変えていくということではないかと思うんです。その辺は同じルールで、同じ土俵の上で仕事をしていくということがアメリカにもよくわかってもらえるということが大事だと思いますから、この日米構造協議でも、日本の持っている習慣なり文化で、アメリカもまねてもらった方が経済合理性との関係でいいものは大いに勉強をしていただこうではないかという態度で、例えば、日米財界人会議等財界人のレベルではいろいろな話を続けているというのが実情でありますが、必ずしも理解は得られていないというところかと思います。
  22. 内田公三

    参考人内田公三君) 先ほどの先生の御質問の第二点をちょっとお答えしてなかったので、簡単にお答えさせていただきます。  たしか流通規制緩和というか、変革についてどういうふうに考えるかというような御趣旨の御質問だったかと思いますが、冒頭申し上げましたように、今回アメリカ指摘している大規模小売店舗法の問題につきましては、経団連では既にもう昨年の春ぐらいから臨時行政改革推進審議会、行革審の方に規制緩和意見を提出しております。その内容は、大店法を廃止しろというふうなラジカルなものではございませんで、大店法運用を法律どおりにやってもらいたい。つまり、法律では届け出制になっているわけでありまして、届け出れば受けつけてもらってもう商売ができる、出店ができるというふうに法律の趣旨どおりにやってもらいたい。それが従来は届け出制といいながら事前調整、事前協議でもって何年もかか って実際上なかなか出店できないということだったわけでありますが、法律どおりやってもらいたいという運用改善を要望しているわけでございます。  それで、流通問題については、経団連としても関連の業界にも会員がたくさんおりますし、従来いろいろ勉強しておりますが、一概に日本流通が前近代的だとか、あるいは多段階で複雑で効率が悪いとかいう批判は当たらないと思っております。つまり、いろんな流通ルートがある、大規模小売店舗もあるし、スーパーも百貨店もあるし、専門店もあるし、あるいはパパママストアもある。いろんな流通形態があって、流通経路があって、かえってそれで消費者の利便になっているということも言えるわけです。  それから、よく流通コストが高いと言われますが、例えば日本人は当用買いといいますか、毎日毎日近所の八百屋さんなり魚屋さんに行って、魚屋さんなんかに行けばお刺身にまでして、器にまで盛ってもらって買うというようなことで、そういう手間暇というものを考えれば、決して必ずしも流通コストというものがそんなに非合理的なものでもないというようなことは我々も勉強して承知しております。  しかしながら、やはり何といっても流通の分野では市場原理というか、競争原理というものがいま一つ徹底していないというか、浸透していないということもまた否定できないところじゃないかということで、私どもは現段階では大店法の法律どおりの運用をしてもらいたい。あるいは酒税法なんかでも、もう少し消費者の利益になるようにやってもらいたい。若干酒税法の方もこの間改善が行われたんですが、行われた改善を見ても、スーパーではビールや日本酒はたしか売っていけないという、しばらくはまだ売っていけないという程度改善であります。まだまだ規制緩和というものは不徹底であります。  そういう意味で、私どもは流通規制緩和主張しているわけでありますが、今度流通についてはだんだん人手がいなくなるという形で、農業と同じですけれども後継者がいなくなるという形で、必然的に流通の変革というものが今迫られているというふうにも考えておりまして、この辺は経団連にも流通委員会というのがありますので、さらに検討してまいりたいと思っております。以上です。
  23. 高崎裕子

    高崎裕子君 大変大きな問題について短時間でお話を伺うということですので、きょうは基本的な立場についてお聞かせいただきたいと思うんですけれども、日米間の貿易摩擦がこの二十年来断続的に続いてきたわけですけれども、従来はこれを解決するために個別の通商交渉で行われてまいりましたが、これとは別枠に日米経済構造について協議をするという方式が持ち出されたという点で、これは新しい変化として指摘しなければならないと思うわけです。この九月四、五の両日、東京で第一回の日米構造問題協議が行われたわけですけれども、不均衡の是正を真に目的とする、そうであれば私は日本の市場の閉鎖性、それから輸出依存型経済構造という誤った認識を基礎にすべきではないと考えるわけです。この点では大来委員会も前川委員会も、貿易収支の不均衡の原因がいずれもこの市場の閉鎖性あるいは輸出依存型の経済構造にあるとするアメリカの批判を受け入れており、これはやはり問題だと言わなければならないと思います。  第一に、市場の閉鎖性についてですけれども、これは九月二十二日付の日経新聞で、「世界経営者アンケート」の結果が掲載されておりますけれども、これによりますと、アメリカも含めた「世界の主要企業経営者は日本企業活動にとって制度面などの政策的障害が少ないうえ、最も収益性の高い市場とみている。」さらに「総合して日本市場の自由度は米国並みの評価となった。」と伝えておりますけれども、このように日本市場は既に最も開放された市場となっているということが指摘できると思います。  それから第二に、輸出依存型の経済構造についてですけれども、これも日銀の一九八九年版の国際比較統計の貿易依存度によってもはっきりいたしますが、輸出依存度というのは、既に一九八八年現在でヨーロッパ諸国が二〇%前後であるのに対して、日本アメリカに次いで低い九・三%となっているわけです。  また、通商白書の各年版を比較してみると、これが一層明らかになるわけですが、対米貿易収支は一九八〇年以来、一般機械、電気機械、輸送機械、精密機械など、いずれも大企業製の製品の四品目によって黒字が拡大されているということが数字上はっきりしております。逆に食料品などは大幅に赤字拡大をしている。つまり、四品目の黒字拡大をこれが抑えているということになります。しかも重大なのは、大企業のわずか三十社で、八七年度で見ても全輸出額の五三%を占めているわけです。これは八〇年度では四三%であったことから見ますと、我が国輸出急増が言ってみればわずか一握りと言っていい大企業によってもたらされたものであるということが統計上もはっきりしてくると思うわけです。  この一方で、事実として、競争力の弱い中小企業や農業、石炭などが犠牲にされていると言わざるを得ません。私は、貿易収支の不均衡の原因が、既に述べましたように、市場の閉鎖性や輸出依存型の経済構造に問題ありとする考えはやっぱりやめるべきであると考えるわけですけれども、この点いかがでございましょうか。
  24. 内田公三

    参考人内田公三君) ただいまのお話は、前半の方は非常に心強いお話で、市場はもう開放しておる、必ずしも輸出依存でない、本当何か経団連をバックアップしてくださるのかと思っておりましたら、その後がちょっと、一握りの大企業輸出しているために農業や中小企業が犠牲になっているとはおっしゃらなかったんですが、そんなような趣旨のお話であります。  この点については、本当に日本の市場は開放されているのかどうかという点は、やっぱり確かにいろいろな意見があって、例えば米はどうだというと、米は確かに自由化されてないわけで、完全に開放されているかといえば、やっぱりそうは言えない。米を自由化するかしないかの是非はまた別でございますけれども、日本の市場が完全にオープンであるか、胸を張ってどこに行っても威張れるかというと、必ずしもそうもいかぬだろうというのが実は私どもの感じでございます。  それから、輸出依存型云々の話は確かに先生おっしゃるように、これは調べてみると、あれっと思うわけでありますけれども、日本輸出はヨーロッパの国なんかに比べると意外に低いわけですね。それはやっぱり、日本は国内の市場が一億二千万の人口がおりますから、内需が非常に大きいわけでございますので意外に少ないというということです。ですから、そういう意味で言うと、突き詰めていくと、幾つかの業種における異常な競争力というのが問題になってくるといえば確かにそうかもしれないわけであります。しかしながら、またそれが一つ日本の今日の経済大国というか、少なくとも経済に関する限りの繁栄の一つのファクターにもなっているわけなのでありまして、今さらそれが悪いとか改めろとか言われてもなかなかそうもいかぬだろうというふうに思うわけであります。  これはお答えになるかどうかわかりませんが、経団連でもやっと最近考えておりますのは、ここまで育ってきた日本の経済力というか、国力というものを、何かいたずらに外国から批判されるような形で発揮するのではなくて、本当にやっぱり国民生活の質的な向上というか、そういうものにそれが生かされるように持っていけないか、そういう国民の生活の質的な向上というものに国力が十分に使われるようになれば、同時にそれは、恐らくいろいろな対外的な摩擦も減ってくるんじゃないかというふうに考えられるわけでありますが、それには一体どういう政策が必要なのか、これはひとつ国会の先生方に考えてもらいたいと思うわけでございます。
  25. 高崎裕子

    高崎裕子君 それでは次に、日米貿易収支不均 衡を真に正そうとする場合に、一つアメリカ側の要因と、それからもう一方で日本側の要因と、日米双方の要因についてやはりメスを入れなければならないと思うんですけれども、アメリカ側の要因については、一点目としては、やはり何と言っても巨大な軍事費の拡大によって財政赤字が増大しているということ。それから二点目には、多国籍企業の侵攻が招いた産業の空洞化、企業の国際競争力の弱化が指摘できるわけです。  それから、日本側の要因としては労働者への低賃金、あるいはジャパニーズ過労死と、国際的にも注目されるようになるほど世界に例を見ない長時間、超過密労働が押しつけられているという問題。それから第二には、下請中小企業に対しての不断の締めつけによってもたらされた大企業の異常に強いというべき競争力、これらがやっぱり挙げられると思います。  いわゆるアクションプログラムが実施されてもう既に四年半、それから前川リポートが発表されて三年半になるわけですけれども、これらが本来目的とした日米貿易収支均衡是正がされないのも、結局のところは今私が申し上げたこれらの根本原因についてメスが入れられないためではなかろうかと思うわけです。ここを抜きにしながら、いわばアメリカの圧力を利用する形で、結局事実として労働者や農民、それから炭鉱労働者、中小企業に犠牲を負わせながら、かえって大企業が資本力を強化しているという、さっき述べたようにわずか三十社です、三十社の大企業が全輸出額の五三%を占めるまでに急増しているということで、やはりアメリカの圧力を大企業競争力強化に利用すべきではないと考えるわけですけれども、いかがでしょうか。
  26. 内田公三

    参考人内田公三君) 大変厳しい御指摘で、これはまた経団連に戻っていろいろ考えてみなくちゃなりませんが、ちょっととりあえず考えたことを申し上げますと、今の御発言の御趣旨は、アメリカの圧力を利用して日本の独占資本は農業、中小企業を収奪している、こういうお話かと思いますが、その非常に輸出競争力のある一握りの三十社と申しましても、その三十社というのはみんなすぐれた下請企業群の上に成り立っている。自動車産業なんかでもやっぱりそういうすぐれた下請中小企業というものがあるからこそ、その三十社の競争力というものが出てくるというふうに考えております。  それで、よく下請いじめとか何とか言われるんですけれども、そういう面が全くないのかどうかあれですけれども、ちゃんと日本には下請代金支払遅延等防止法とかそういった制度もあって、不当ないじめをやれば、それは法律違反で公取からしょっ引かれるというふうにもなっているわけでありまして、そういう前近代的な下請いじめというようなものはない、むしろそういう中小企業の力というものが背後にあって今日のやはり日本経済の力というものが出てきたんだというふうに考えております。  それから、アメリカの財政赤字。これは全くおっしゃるとおり、私どもも、アメリカの方こそまず双子の赤字をなくさないといつまでたったって経済摩擦は解決しないというふうに言っているわけでありますが、その赤字の原因は何かということは、これまた少し綿密な学者の分析も必要かと思いますけれども、先生は今、膨大な軍事費とそれから多国籍企業が、要するに家を空っぽにして外へ行っちゃったというようなことをおっしゃられました。もちろんそういう点もないではないと思いますが、私ども一つ思っておりますのは、アメリカでは今非常に教育が荒廃しているというとちょっと後で物議を醸すかもしれませんが、アメリカにおける基礎的な教育というものが非常に今問題になっているということをよく言われておるわけであります。それがやはりアメリカ産業競争力がなかなか出てこないという奥深い理由としてどうもあるような感じがしております。これはアメリカの国内からもそういうことを指摘する意見も出ておりまして、そうなってくると、これはなかなか経済摩擦の解決も大変だなと。本当にこれ、五十年単位ぐらいでないとこの教育の効果というのも出てこないかもしれませんので、大変だなと思っているわけでございます。  余りお答えになりませんでしたが、以上でございます。
  27. 古川太三郎

    古川太三郎君 日本では独禁法があるから、下請いじめがないとか系列化の締めつけがないとかいうようなお話が今ございましたけれども、法律というのは、存在してもそれが実際に実行あるいは運用する面においてなかなか思うようにならないという部分がたくさんあろうかと思うんです、それは選挙法一つとってみてももうおわかりのことだと思いますけれども。いま少し日本の公取委員会消費者あるいは生活者といいますか、そういった方々の面に目を向けて下請企業なんかの保護を厚くするようなことを、経団連でももっと弱い者に対して目を向けるという謙虚な気持ちがあってほしい、こう希望するものでございます。  そう申し上げるのは、この系列化にしても、価格の誘導とかあるいは出荷を停止するとか、また親会社で何かと催し物をする場合にその協賛金を取るとかいうようなことが多く行われていることも事実であります。そういったものの、これはなかなかそれを公取委員会に申し出るということにも日本人としては相当の勇気が要ることだと。それができればそれは確かにいいことなんでしょうけれども、それができない状況に置かれているということについても真剣な目を向けていただきたい、このように希望するものでございますけれども、経団連ではそういうような方向で物をお考えになっていただいたことはあるかどうか、そのことをお聞きしたいと思います。
  28. 内田公三

    参考人内田公三君) ただいまのお話はまことにごもっともなお話でございまして、そういう御意見は貴重な御意見として承って、持ち帰って会長にも、今ちょっとASEANに行っておりますが、報告したいと思います。  そういう気持ちでやったことはあるかというお話でございますが、私の記憶しておるところでは、例えば、かつて中小企業分野調整法というものをつくるという話がございました。この法律は結局成立したわけであります。私どもは大企業から中小企業活動を守るというか、中小企業にもその活躍の舞台を確保するという趣旨には反対はしませんでした。ただ、そのときに経団連が申し上げた意見は、例えば魔法瓶をつくる業界は中小企業の分野で、大企業は進出しちゃいけないとか、そういう法律でもって事業分野を区分けして決めちゃうということは、これはいろいろ弊害があって自由経済に反するので、そういうことは反対だけれども、しかしながら中小企業活動というものをやはり尊重して、成り立っていくように大企業協力して相補完してやっていくということはぜひ必要である、大企業と中小企業というものは対立するわけじゃなくて、むしろ相互補完関係にあるんだということで、そういう意見を当時述べたこともあります。  これは一例でございますけれども、私どもは決して大企業の立場を一方的に代弁して、中小企業はどうなってもいいとか、そういうようなことを考えているわけでは全くございませんので、ひとつ誤解がないようにお願いしたいと思います。
  29. 足立良平

    足立良平君 きょうは大変忙しいところ、大変参考になるお話を聞かしていただいたわけでありますが、ちょうど先ほどいただきましたこの経団連の七月二十五日の見解をずっと拝見をいたしておりまして、ちょうど二ページにも触れているわけでございますが、日米貿易均衡の主因が、先ほども説明がございましたように、マクロ経済的要因であるというふうな分析をされているわけでございまして、私もまさにそのとおりだろう、このように思っているわけでございます。  しかし、先ほど御説明の中にもございましたが、貿易摩擦が投資摩擦に発展をし、そして今日、文化的な摩擦にまでさらにそれが昇華してきている。こういう状況を考えてみましたときに、実際的に先ほどちょっとお話をお聞きいたしておりまして、誤解を解いていかなければならない、 あるいはまた、米国に対して理解を日本側としてもあるいはまた財界としても求めていかなくてはならない、こういうお話でございましたけれども、新聞等でずっと拝見をいたしておりますと、この構造協議というのは、何かしら成果を具体的に求めるがごとき状況にあるのではないか、このように実は私は受けとめているわけでございまして、先ほど来お話を伺っているのと、実際の貿易摩擦なりこの種の構造協議の実態なりアメリカ側が求めてきているものと若干ずれと言ったら言葉はなんでしょうけれども、これは政府間の問題と財界の問題と若干違うんでしょうけれども、そういう感じをちょっと受けるんです。その点につきましていま少し考え方をひとつ述べていただきたい、このように思うわけでございます。  それから、第二点目といたしまして、それぞれもう既に問題点が各委員の皆さん方から提起をされているわけでございますが、経団連のこの説明資料の中にも、構造障壁問題に積極的に対応すべきと、こういう項目の中で、これは三ページでございますけれども、土地政策等につきまして積極的に取り組んでいかなければならない、これは経団連としても問題の提起をされているわけであります。  これは一般的に、ちょっと私のような立場で今ふっと思いますと、土地価格のような問題というのはまさに国内の問題であって、構造問題とどんなふうに結びつくのだろうかという率直な感じを受けるわけでありますけれども、実際突き詰めていくと、そういう問題にも発展するのかなというふうに思ったりいたしておりますが、実際的にこの土地騰貴のいろんな原因がございます。税制問題とかいろんな問題がございますけれども、実際的に土地の高騰に関しまして、例えば銀行の融資であるとか、あるいはまたバンク外のいろんな融資の問題であるとか、企業の行動というものが社会性あるいはまた倫理的に若干、すべての企業とは申し上げませんけれども、若干問題なきにしもあらず、こういう状況でございまして、そういう面では、かつて企業は悪なりという風潮が一時謳歌したことがございましたけれども、本当に企業がこれから社会の一成員として国民生活を向上させるためにそれなりの役割を果たしていくとするなら、企業そのものも社会性、倫理性というものをきちんと持っていかないと、私は我が国のこれからの経済活動に決してプラスにならないのではないか、こういう観点から、経団連といたしましても一体この種の問題にどのようにこれから対応をされようとしているのか、この点を二つ目にお聞きをいたしたいと思うのであります。  それから、これは大変次元の低い問題でまことに恐縮でございますけれども、日本の文化摩擦とかがよく言われるような状況になっておりますその前提で、かつて我が国が石油ショック以降、その他世界的に大変に不況の状況の中で、日本の労使関係というものは世界に冠たるものだ、そういう観点から、日本のその特殊的な事情ということで、労使関係中心にして日本のその種の問題に特殊性ということを相当、いささか言い過ぎた嫌いが私はあったのではないかという感じがいたしているわけでございますけれども、そういう面で、石油ショック、あるいはまた円高不況等々で、それぞれ企業というのは生き残るためには大変な苦労をした。そして二、三年たって、はっと気がついてみますと、今度は労働力不足だと。かつて一時帰休した労働者、勤労者、あるいはまた解雇した労働者を急遽戻してこなければならないというふうな、ある面におきましては日本的な、長期的に言う労使関係というものが、ちょっとこれはいかがなものかというふうな行動が今出てきている。  そういう面からいたしますと、企業といたしましても確かに利潤という問題はございますけれども、アメリカと違って長期的な視点で企業経営を考えるとするなら、その長期的視点でもう少し雇用の問題、あるいはまたその中に働いている人たちの観点というものを考えてみる、こういうことが必要なのではなかろうか。むしろ、なだらかな構造変化といいますか、構造調整というものを図るその指針といいますか、行動が企業の側としても今求められているのではなかろうか、こんな感じを実は受けているわけでありまして、そういう面で経団連といたしましても今後どういうふうな考え方で対応をされようとしているのか、この点ちょっとお聞きをいたしたいと思います。  以上です。
  30. 内田公三

    参考人内田公三君) お答えします。  まず、第一の構造協議をめぐる問題ですが、構造協議の問題は、アメリカ側もこれは交渉ではないというふうに言っているんだそうであります。いわゆる交渉の方は三〇一条の方で、三品目ばかりやり玉に上げて、これは本当にちょっと深刻な話し合い、交渉になるわけでありましょうが、構造協議の方は一応承っているところでは、これはお互いにアメリカもよくし、日本もよくなるためにお互いの問題点指摘し合って、ひとつ話し合いでやっていこうじゃないかということのようでありますので、私どもは、むしろ構造協議というものを日本側ももう少し積極的に活用して、そしてアメリカ側に言いたいことも積極的に言って、またアメリカ指摘している問題も、痛いところをついている問題もないじゃないと思いますので、日本も改めていくと。そういうことで、お互いの国が構造協議を通してよりよい国になればこんなにいいことはないんじゃないか。実際はそんなに甘くないかもしれませんが、そういうふうに考えております。したがいまして、構造協議については、あくまでもこれは交渉ではなくて話し合いなんだと、相互理解のもとにお互いの政策の改善参考にするんだという理解で私どもは取り組んでいただきたいし、私どももそういうつもりで参加していきたいと思っております。  それから、第二の土地の問題でありますが、これは全く日本土地は高過ぎるなんということを外国から非難されるのも何か本当にちょっとおかしな気もするのでありますが、開き直っていえば日本の経済力というか、日本のやっぱり土地生産性が高いからそれだけ値段が高くなって、高い家賃なり土地代を払っても商売が成り立つというのは、それだけのことがあるから成り立っているわけであって、その限りでは土地価格にもそれなりの合理性があるというふうに考えております。  ちょっと余談になりますけれども、これはミサワホームの社長の三澤さんがおっしゃっていたんですけれども、昔、十年前、二十年前と比べても日本土地は高くなっていないと言うんですね。高くなっていないという意味は、都心から一時間で行けるところ、二時間で行けるところ、それはもう十年前も二十年前も同じだと言うんです。しかし、一時間で行けるところがどんどん遠くなっておりますから、地点はどんどん遠くになっております。しかし、時間距離では変わらない。そういう遠いところが時間的に近くなってくれば、反射的に都心の地価はますます高くなる、これは単純なことでありますが、そういう議論もあります。  そういうことは、ですから土地の値段が高いということは最近よく言われて、これは社会問題だと。サラリーマンが働く意欲がなくなるからということを言われる。確かにそういう面もありますが、しかし他面、やっぱりそういう土地価格にも一種の市場原理が作用していて、それなりの必然性があるのだということも冷静に考える必要があるんじゃないかと思います。  それから、もう一つ大事な点は、しかしながら、そうはいっても投機的な要素もあるじゃないかと。それはまさにおっしゃるところはあると思います。したがって、いろいろ大蔵省なりあるいは最近は日銀の総裁から、余り土地の投機をあおるような融資をしないようにという御注意もあるわけでありまして、そういう点はやはり先生おっしゃるような企業の社会的責任ということから自粛しなければいけないと思っております。  そういう意味で、経団連でも先般企業の、これはリクルート事件が一つのきっかけになったわけでありますが、企業倫理の懇談会を特別につくり まして、そこで先般、報告書というか意見書をまとめました。そして会員企業にも、そういう企業の社会性というものをよく考えて反社会的な行為をしないように、企業の倫理というものを確立するように呼びかけたところでございます。そういうことをしたからといって土地価格が下がるかというと、私はそれはちょっと話がまた違ってくるかなと思います。それで、その土地の問題については別途経団連でまた意見を出していまして、それは一つは、やっぱり何とかしてもっと地方分散をするということですね。それには地方にもっと中央省庁の権限を移すということが必要だということを言っております。それからもっと都心部、首都圏でももう少し住宅とかオフィスがつくりやすいようにいろんな規制緩和を、容積率の緩和とかそういうことをしてもらいたいというような意見も出しております。そういうことで結局、需給を緩和しない限り土地価格というものは鎮静化しないだろうというふうに思っております。しかしながら、同時に企業の倫理ということも重要な点であることは承知しております。  それから、最後の第三の労使関係の問題でありますが、労使関係の問題になると、これは経団連というよりも日経連の方が専門に扱っている問題でありますが、確かにこれは、二度にわたる石油ショックとか、あるいは円高不況とか、そういうようなものを乗り越えて何とかここまで来たについては、日本のやっぱり労使関係というものが、労使がお互いに協調して、協力し合ってやっていくという、そういう慣行が大いな貢献をしたということは否定できないと思います。  その点で、ちょっと不況だからといって人員整理をして、今度はちょっと景気がよくなって人手不足で困っているとは何事だ、もう少し長期的な視野を持って余り首切らぬでやったらどうかというお話だと思いますが、それは将来景気がよくなるということが企業がわかっていれば、そんなにたくさん首は切ったりはしないと思うのであります。企業もこんなによくなるとは、円高不況なりのときに思っていなかったんじゃないかと。ですから、今になってみれば、確かに先生がおっしゃるように、それほど余り思い切ってあそこまで人員整理をしなくてもというか、新卒者の採用手控えもしなくても、ちょっと我慢して、もうちょっと持ちこたえた方が人事政策としてはよかったかなとひそかに思っている企業もあるいはあるんじゃないかと思います。しかし、それは今だからそう言えるのであって、先のことがわからないというところがこの問題のどうも原因じゃないかというふうに思っております。  以上です。
  31. 横溝克己

    横溝克己君 それでは質問したいんですけれども、今、経団連としては日米経済構造の問題で大変火の粉を払うのに一生懸命だと思うんですけれども、しかし、大局的に見ますと、日本は一千億ドルですか稼いで、五百億ドル買って毎年五百億ドル残るという、こういうことがずっと続くんではないかということがいろいろ言われております。それから、こういう構造問題を改善したところで二割ぐらいしか効果は出ないんではないか、そういうようなことがあります。  アメリカの事情を見ますと、もう私は十数年前から考えていたことですけれども、やっぱり二次産業が弱くなって、三次産業化している。それから企業が多国籍化をしてしまって、企業としてはバランスがとれているんですけれども、アメリカという断面から見れば非常に弱くなってしまう。こういうことでして、五年か十年先、あるいはもっと先かもしれませんけれども、日本が逆の立場になる可能性もある。どんどん日本企業が多国籍化して、今度攻めるのは韓国や台湾であるというような感じもするわけですけれども、この力の弱くなったアメリカに対して、直接投資その他で何とか五百億ドルのバランスをとろうとしているわけでしょうけれども、いつまでも日本としても五百億ドルの黒字が続くということはちょっと国際的にも問題なんだろうと思う。逆に言えば、立場をかえて日本のビジネスとして、アメリカの赤字を何とかしてやらなきゃいけないんじゃないか。日本の立場は立場として、何かそういうことでお考えがあるかということです。  それから、もう一つは細かいことなんですが、アメリカがいろいろ言ってきている中に、まあ日本としても考えなきゃいけないことが幾つかあると思うんです。例えば談合の問題なんかでも、これは一面においては社会風土の問題だったり、あるいは考えの上で思いやりとか義理人情がベースになっていたり、そう急にできないんですけれども、しかし、まあこういう点でいろいろ考えなきゃいけない。これは業界によって随分違うのだろうと思うんですけれども、経団連としてはどういう指導をされていかれる、あるいはどういう対応をされていかれるのかなという、ちょっと二つだけ何か御意向でもございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  32. 内田公三

    参考人内田公三君) お答えします。  アメリカについての御指摘で、米国の赤字というのはなかなかそう簡単には直らないだろうと。したがって、まあ何かそれを日本として助けてやるというか、そういうことも考える必要があるんじゃないかという御指摘だったと思いますが、これについては、既に今までいろいろお話ししてまいりましたけれども、直接投資とかそういうようなこともあれですが、御承知のように、もう日本のお金がかなりアメリカに流れて、アメリカの債券を買うとか、そういうことで何とかアメリカはつじつまを合わしているというのが現状というふうに理解しております。  ですから、何かある新聞で読んだのですけれども、日本のある学者の説だというんですが、アメリカが余り構造協議で理不尽なことを言うんだったら、日本アメリカの国債を買うのをストップするぞと言っておどかしたらどうだというような意見もあるようでありますが、そういう意見が出るほどまでに資本収支の面でも日米というものは非常に密接に結ばれてきてしまっているということでございます。そういった点で既に何というか、日本として結果的にはアメリカを助ける形には今なっているというふうに考えております。ただ問題は、むしろそっちの貿易インバランスなりの方が問題でありまして、これについてはもうなかなか簡単にはいかないというのが現状なわけでございます。  それから第二点は、アメリカの言っているところにももっともなところがあって、日本としても反省しなくちゃいけないような前近代的なというか、そういう世界もあるじゃないかという御指摘でありますが、確かにそういう点はあるかと思います。これについて経団連としてどうするのだということでありますが、余り具体的にこういうことをしたとかというようなことは直ちには申し上げられませんが、一つ思いをいたしますのは建設業の談合なんかの問題であります。これはやや私見が入りますけれども、建設業の場合には大手のゼネコンが、いわば系列のそれこそいろいろ下請中小企業というか、そういうものの面倒を見るというようなそういうどうも実績、慣行があったんじゃないか。ですから、大企業に中小企業政策というか、社会政策みたいなものの役割を結果として担わせるような関係がどうもあったんじゃないか。それは結局、談合というようなこと等がその背景にあって、そういうことが行われたんじゃないか。そういう点でむしろ談合問題というものを是正していく場合には、並行してやっぱり建設業に対する業政策というんでしょうか、そういうものが非常に必要だと思うんですが、その点では若干日本の建設業の、建設省の業行政というものが若干どうも不十分な点が少なくとも過去においてあったんじゃないか、そういった点とのバランスをもってやっていかないと、談合という前近代的な問題の解決もうまくいかないんじゃないかというような気はしております。  いずれにしても、いろんな問題について経団連がもっとしっかりしろというようなことをよく御指摘なりおしかりを受けるわけでありますけれども、経団連の場合には、会員企業に対する命令権 とか、そういうものはないわけでありまして、むしろ会員企業の会費をもらって仕事をしているので、会員企業の利益を代弁するのが私どもの仕事なので、逆に会員企業にこうしろ、ああしろとなかなか言いにくいわけでありますが、しかしながら、そこはやはり企業の社会的責任ということがございますから、そういう見地から、やっぱり自粛しなくちゃいけないものは自粛していくように求めていくということだろうと考えております。余りお答えにならなかったかもしれませんが、以上でございます。
  33. 小山一平

    会長小山一平君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  内田参考人並びに太田参考人一言御礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にいたしたいと存じます。本調査会を代表して厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)  次に、外務省及び通商産業省に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  34. 及川一夫

    及川一夫君 私に残っている時間は十八分だそうですから、この問題はどちらにしても外務省通産省の皆さんともいろいろと御意見を交わしながら、調査会としても問題を詰めていくべきことだろうというふうに思いますので、きょうは現状に対して御報告がございましたので、それに対してちょっと三点ほどお伺いしておきたいと思います。  一つは、協議の性格の問題なんです。確かに「スーパー三〇一条とは全く別の枠組として」と、こうなっているんですが、これはお互い話し合うのに、あいくちを突きつけて話し合うなんということは、これはそれだけでもつぶれてしまうわけですから、とりあえずアメリカとしては、それは別枠だと言うのは当たり前だと思いますね。しかし、やっぱり気持ちの上では、どうしても日米の経済の収支が合わない、依然何をやっても解決できない、だから相手の懐に飛び込んで少し話をしないと、また、いじくらしてもらわないと問題の解決にならないんじゃないか、こういう観点は依然としてあるわけですから、果たして外務省の方がおっしゃられるような意味で、要するに協議でございまして、話し合うことに意味があるのでありまして、話し合ったことを要するに報告として取りまとめるということで本当に終わるのかどうか。もちろん、この構造協議と位置づけた中で、そういう争いが短絡的に出てくるとは思いませんけれども、必ず次の段階があるんじゃないか。  こう考えてまいりますと、やわらかくとらえておくのはどうかな、危機感とまでは言いませんけれども、むしろ厳しくとらえておく必要があるんじゃないかというふうに私は受けとめたんですけれども、お話内容はそういうものでないということを強調されておりますので、この点についてひとつお伺いしたいというのが一つであります。  まとめてやりますから、ひとつお願いします。  それから二つ目には、要するに閉鎖的だということが前提にあって、品目というのがいろいろ言われますね。今回もヒルズ代表が来て、どうも日本でばさばさばさばさと出したやつが、新聞の報道によりますと、私なりに整理をすると、スーパーコンピューターの問題とか、衛星の問題とか、木材製品の従来三点と、こう言われたんですが、これは当然のこととして出ていますね。そのほかに弁護士の問題が出てみたり、それから大規模小売店、小売店と、こうアメリカでは言うんですか、スーパーやその他の店舗の開放の問題とか、それからウオークマンという電気製品の一部が出てきたり、あるいはプラスチックの哺乳瓶ですか、この話が出てきたりしているんですけれども、我が国が能動的な意味で他国に対して閉鎖をしているという品目、これは本当にあるのかないのか。  先ほどの経団連の皆さんからいえば、かなり開放していると、こういうふうにおっしゃられているんですが、アメリカから見ると、いやいやたくさん閉鎖品目があると、こう言われているわけです。この辺は我々自体がもう正直に、これは閉鎖をしているか、していないかという判断を含めて物を見るというのが非常に我々にとっては大事だというふうに思うのであります。  したがって、これは通産省ということになるでしょうが、通産省の立場から見て公平な意味で、あるいは関税の問題なんかも含めて考えたときに、他国はこれは閉鎖品目として考えるであろうなというものについて、今申し上げた以外にあるのかないのか。もしあるとすれば、口頭で項目をばっと出されてみたって、それはなかなかこんな時間でできっこないので、改めてひとつ調査会あたりに出して我々に議論させてもらえないか、こういう気持ちがいたすわけであります。これに対しての受けとめ方をお願いしたいというふうに思います。  それから、三つ目なんですけれども、流通機構という問題が一つの課題になっています。この辺は我々も正直言って、我々といったって、私は正直言って余りよくわからないわけです。どれだけの段階を経て消費者の手に渡るのか。かつて私も一回灯油の問題で、国内で大恐慌みたいなものが起きたときがありましたですね。あのときに灯油の線をずっとたどってみましたが、最高で八段階ありました。それから六段階と四段階。何でこうなるのかようわからぬのですけれども、そういう段階を経て消費者のところにきたということがあるんですね。したがって、八段階のところでは、まさにこの小売値というものに対して弾力がありません。四段階のところは大変な弾力があると、だから安くできると、こういうことになるんですが、これを産業別というか、あるいは職域別といいますか、この流通というものをこの際オープンにすべきではないか。そして、我々にも判断をさせてもらう。もちろん段階段階で、その仕事をしながら飯を食べている人がいるわけですから、飯を食わさないというわけにいかないんで、したがって、仮に流通機構を整備をしようじゃないかといっても、それはもうソフトランディングでもするような発想がなかったら私はでき得ないというふうに思ってはいるんですが、いずれにしてもその実態がわからないというのが非常に我々にとっては苦労の種なんですね。  アメリカの人たちは、アメリカは一体それ全部つかんだ上で言うているのかどうか私はわからないんですが、まあ通産省としてもそういったものをアメリカに対して示して、そうなってないということを証明することになるんでしょうが、また証明した段階で、これは違うぞということになれば、それを改めるという話になるんでしょうが、我々に対してもそういうような作業といいますか、要請をしたときに通産省として応じていただくということが非常に大事な問題になりそうなんで、この点いかがかということで、質問を終わらしていただきたいと思います。
  35. 原口幸市

    説明員原口幸市君) 今先生から三点御質問がございましたが、最初の一点、外務省の方からお答えさせていただきたいと思います。  確かに私申しましたように、本件協議は交渉、ネゴシエーションではなく話し合い、トークスであるということで、国際合意をつくるものでないという日米双方の合意がございます。しかし、さはさりながら、アメリカ側が成果を期待してないかと問われれば、そういうことはないと。例えばヒルズ通商代表が先日日本に参りまして、日本記者クラブで講演をしておりますけれども、そのときの質疑応答におきまして、こういうことを答えているわけです。SII、これは構造協議でございますけれども、SIIは極めて重要であると、取り扱っている問題には時間を要するものもあるとは承知していると、しかし、計画を策定する旨のコミットメントを早期に行い、来春には計画の方向性を示し、夏には計画が策定されることは可能であろうという、これはまあ率直なアメリカ側の希望なんだろうと思います。これはあくまで希 望でございまして、成果とは何かというと、いろいろな考え方があるわけですね。一番その厳しい立場に立つ人は、日本側が何らかの措置を早急にとって、その結果日米貿易インバランスが改善する、そういうものを成果と見るわけだろうと思いますが、少なくとも米側の行政府はそういうことは考えてない、ただ、その指摘した中で、何がしかのものについて具体的に日本側改善措置をとってくれればありがたいということでございます。  先ほども申しましたように、日本側の考え方からすれば、これは既に前川リポートもございますし、米側指摘したからということではなくて、振り返ってみて、日本側の今後の国民生活の向上のために指摘されたものの中で、なるほどもっともだと思うものがあれば積極的にやっていくということは日本のためにもなるわけでございまして、ともかく虚心坦懐にアメリカ主張を聞いて、その中で妥当なものについてはできるだけ早くやっていくということが、現実的な意味日米双方にとって望ましいのではないかというふうに考えている次第でございます。
  36. 堤富男

    政府委員堤富男君) お尋ねいただきました日本市場の閉鎖性ということでございますが、基本的には日本の市場というのは開かれているという、先ほども御指摘ございましたけれども、いろいろ問題点がないかと言われれば、ないとは私ども思いませんけれども、相対的に考えますと、関税につきましても、いわば日本は平均しますと三%程度アメリカ、ECは四、五%ということで、日本の方が関税制度は低くなっておりますし、一方、最近の日本輸入状況を見ますと、八八年では、最近大変有名になってきましたけれども、三百八十億ドルという多額の輸入が増加しているわけでございます。この量というのは、何とスウェーデンの一年間の輸入量と増加分が同じでございまして、もっと申し上げれば、フィリピンと同じぐらいのGNPのものが日本の新しい市場として出てきておるということでございます。こういうことを考えますと、かなり輸入については、とうとうと入ってきているという状況があるわけでございます。  それでは、一点の曇りがないかと言われますと、これはガット上、関税につきましては、当然のことながら関税を課すことは合法だということになっておりますが、現在日本の持っております輸入制限品目、これは二十一品目ございますが、農産物が二十、鉱業品、石炭でございますが、一品目あります。これはガットの今までの経緯からいきますと、ガット上やはり問題がある、違反であるということでございますので、これはある時期にこれをやめるという、まあやめるということを既に宣言しているのもかなりございますし、今後はこういう品目については、日本として問題なしと言い切れない部分があるということがございます。  ただ、そのほかの部分でございますと、これは今度の構造協議の対象になっているような分野と同じでございまして、本当に問題があるのかどうかというところから始まらないと、一括してリストアップというわけにはいかないわけでございます。  この間、ヒルズ代表が参りまして、自分としては、哺乳瓶にポンドで標示してあろうが、メートル法で標示してあろうがどっちでも構わないというようなお話がありまして、日本で売ってないようなお話がございましたけれども、早速通産省職員を走らせまして、その瓶を買ってきてヒルズ代表に見ていただいたというような、誤解に基づくものもあるわけでございまして、そういう誤解に基づくものが本当にあるのかどうか。  先ほど御指摘がありました、ウオークマンという話でございますが、ウオークマンはアメリカの方が安くて日本が高いということを言われます。これも本当に、ブランドの同一機能のものを本当に比べているかどうかというところがございまして、これもにわかに、調べておったものをひもときますと、これもどうもヒルズ代表がおっしゃっているほど違いがないんじゃないか、同じブランドでないものを比較すると差があるけれども、同じブランドのものを比較すれば差がないんじゃないかというふうな結果も出ておるわけでございます。  そういうわけでございますので、必ずしもアメリカ側指摘しておるものすべて正しいというわけではございませんので、この協議は、今、原口参事官の方からも御指摘ございましたように、交渉ということではなくて話し合いという中で誤解を解いていくという部分もあろうかと思いますし、一方で、アメリカ側指摘した事項の中に、外国に言われたということではなくて、日本の立場から取り入れていくことが必要であるというものがあれば、これは日本のことを同盟国として十分考えてもらい、友人として十分考えている、しかも日本人の持っていない感覚で指摘した事項については、それなりに我々としても尊重はしていきたいというところがございますけれども、やはり誤解を解いていくということはしなければならない事項だと思っております。
  37. 横田捷宏

    政府委員(横田捷宏君) それでは流通機構の問題につきまして御説明申し上げますが、まず、通産省におきます流通業に対する実態把握の問題でございますが、この点につきましては、例えば商業統計という格好での相当詳しい調査、あるいは毎年の流通近代化調査、さらには資源エネルギー庁の石油関係も含めました物資別のもろもろの調査を積み重ねてございまして、分野別、業種別にも相当のデータはそろっておると思っております。この点のPR等々をさらに徹底する必要があると思いますけれども、こういったデータをもとにいたしまして、例えば産業構造審議会、あるいは中小企業政策審議会等々で流通問題の検討もいただいておるわけです。  そこで、アメリカ側もいろいろ日本流通制度、あるいは実態についての批判を言っておるわけでございますけれども、ごく簡単に、私どもが考えております日本流通の実態でございますけれども、確かに従来、非常に中小零細の店が多くて非効率ではないかという議論がなされてまいったわけでございますが、現在は中小零細商店数も減少傾向になっておるという実態、あるいはいろいろな新しい業態の流通が、例えばコンビニエンスストアでございますとかいろいろな量販店、さらには通信販売等々、こういったものも一緒に競争に参加する形で大変ダイナミックな展開が行われておる。その中に例えばPOSシステムといいますような新しい情報手段も入りまして、先進国の中でも効率性の面では必ずしも劣るものではない、こういう実態ではないかと思っておるわけでございます。確かにまだ多段階等々の問題が残っている分野もございますけれども、全体としてはそのようなデータが国際機関の場等でも公表されておるわけでございまして、アメリカ側に対してもその点の誤解を解くように主張をいたしております。  もとより今後の課題といたしまして、商慣行の一部をさらに競争促進的な観点から見直す問題、あるいは大店法お話がございました。大店法と申しますと、大規模小売店舗における小売業の事業活動調整に関する法律、非常に長い法律名でございますけれども、この運用の適正化の問題等等も指摘されておるわけでございまして、実はここに九〇年代の流通ビジョン、この六月に産業構造審議会、中小企業政策審議会から答申をいただきました。現在、役所の刊行物では珍しくベストセラーの一角を占めておるわけでございますが、この提言に沿いまして、流通システムの合理化、あるいは商店街活性化等の中小流通業対策、あるいは製品輸入の拡充、さらには大店法運用適正化ということで積極的に取り組んでまいる所存でございます。
  38. 合馬敬

    合馬敬君 最初外務省にお聞きいたしますが、先ほどから構造協議の本当のねらいは交渉ではなくて話し合いということであるということで一部納得したわけでございますが、そういう意味で、構造協議日米貿易均衡是正の補完措置と いいますか、周辺環境の整備といいますか、そういうようなものであるというように考えてよろしいのでしょうか。  なお、一部には貿易均衡是正の本命と位置づけて、満足な成果が得られなけれは米国包括通商法スーパー三〇一条を適用すると、こういう新聞報道も見たことがあるわけでございますけれども、そもそもスーパー三〇一条というのは不公正な貿易慣行ですか、これを指定すると言いますけれども、そういう意味で、構造協議で対象とする事項がスーパー三〇一条に該当するのかどうかも私はちょっと疑問に思ったわけでございますけれども、いずれにしろそういうことではないだろうと思っておりますが、よろしゅうございますか。  それから、この構造協議の対象ですね、これが六分野に限られておるわけでございますが、これは、これからこの六分野に限って検討が行われていくのか。追加だとかなんとかそういったようなことがあるのかどうか。そもそも六分野にするというのは、これはだれかこういうぐあいに決めたのか。そこら辺につきましても御説明が願えればありがたいと思います。  それから、この中で先ほどからもお話が出ましたけれども、そもそも土地政策などある意味では内政干渉に及ぶような問題もあろうかと思いますが、土地政策ですね、規制緩和だとか、住宅金融の促進だとか、住宅建設などの税制優遇措置とかいろいろ挙げられておるようでございますが、これはすぐれて内政の事項でございまして、そもそもこういうものを協議する意味があるのかどうかですね。これは日本の国がやればいい話なんで、そういう意味でこの点についても御見解をお聞きしたいと思います。  それから、繰り返しになるかもわかりませんけれども、構造協議でそもそもアメリカが期待する成果というものを何によって判断するのかですね。最終目的である貿易均衡の是正が具体的な数字であらわされない限り協議が成立しない、こういったようなことになるんじゃないかというおそれも持っておりますけれども、そこら辺につきましてお伺いします。
  39. 原口幸市

    説明員原口幸市君) お答え申し上げます。  まず第一に、構造協議日米貿易均衡是正の補完措置と考えてよろしいかという御質問だったと思いますが、先ほども御説明いたしましたとおり、ブッシュ大統領と宇野元総理との間でパリで発出した共同発表の中でまさにそのようなものとして性格づけておりますので、我々としてもその理解でよろしいとは思っております。  もちろん米側から指摘された事項、それから日本側指摘した事項、それぞれそれを実施した場合に直ちに貿易均衡を是正する効果があるもの、あるいはないもの、中長期的には徐々に出てくるものといろいろあると思います。しかし、その問題は別として、やはり発生的には、今まで日米の間で徐々に徐々に貿易の不均衡がふえてまいりまして、その過程で日本の市場アクセスの改善とか、それから為替レート調整とか随分いろんなことをやってきて、しかもなおかつふえてきているということで、これは日米の間で、それではあと何があるかという問題から構造調整という問題が出てきたわけですけれども、これは何も日米だけじゃございませんで、少し前にはもう既にOECDの場でも国際的な不均衡の是正という兼ね合いで構造調整問題というのは取り上げられております。そういう意味では、まさに王道としてはマクロ政策の調整ということになると思いますけれども、それを補完するものとして構造調整をやっていくということは正しい理解なのであろうと思っております。  それから、満足な成果が得られない場合に、例えば通商法のスーパー三〇一条を適用するというような報道も実は一部になされておるわけでございますけれども、これは米国の議会の中にそういうような考え方を持っている人もいるということでございまして、これ自身は事実でございますが、行政府はそういう考え方は持っていない。ただ、いずれにいたしましてもそういう動きがあることは事実でございますから、そういう動きにいわば火に油を注ぐというか、アメリカ指摘した問題点についても一切何も応じないというようなことであれば、あるいはそういう議員の主張というものを強める結果にもなりかねないので、ともかく我々としては、米側から指摘された問題について、果たしてそれが日本のために本当になるのかならないのか、そういう観点から虚心坦懐に検討して、なるということであれば、種々困難はあると思いますけれども、できるだけやっていく。それがとりもなおさず成果なんだろうと思いますし、そういう態度を示せば米行政府も十分にわかっていただけるし、その種の保護主義的な考え方を持っている議員の立法化の動きも阻止できるであろうと思っております。  それから、第二番目の御質問でございますけれども、果たして六分野に限られるのか、一体だれが六分野を決めたのだ、こういうことでございますけれども、これは基本的には日米双方がつらつら考えて、アメリカ側からすれば日本の構造問題は何だろうか、それから日本側からすればアメリカ側構造調整を要する問題は何だろうかということをそれぞれ相手に相談しないで考えた結果、アメリカ側からは六分野が出てきて、それから日本側からは七分野を出した。お互いに相談しないで出し合ってみたら六と七で数字がほぼ均衡した、こういうことでございます。  今後、じゃ六分野だけに限られるのかということになりますと、もともと米国日本との間で六分野だけにするという合意はございません。しかし、第二回目の会合が来週に迫っているわけでございますが、第二回目においてもアメリカ側はこの六分野についてさらに詳しい議論を進めていきたいと言っておりますし、日本側も当面七分野に限定して問題を詰めていきたいと考えておりますので、もう一度申しますと、六分野あるいは七分野に限られるという合意はございませんけれども、実質においてはそういうところで物事が進んでいくであろうというふうに考えております。  それから、成果は何によって判断されるのかということでございますけれども、これは先ほども既にお答えしたラインだろうと思います。日本側としてアメリカ側から指摘された、されないは別問題といたしまして、虚心坦懐にアメリカ側指摘事項検討し、日本側のためになると思うものであればできるだけ早期に、種々困難はあってもこれを実施していく、そういう態度を示すことがまさに成果なんだろうと思います。何もしなければ、ある意味では痛くない腹も探られて――というのは、貿易のインバランスというのは、先ほども皆さんも御承知のとおり、五百億ドルという大きなものがあるわけでございますから、一生懸命原因は何かということを探っているわけでございまして、いろいろやった結果、構造問題ということが浮上してきたわけでございますので、これに一切手を触れないということであれば、今後ますますこの問題が大きくなってくる、そういう意味では、米国から指摘されたということではなくて、まさに日本のため、日本の国民生活を豊かにするためにもそういう観点から問題を検討して、その中でただすべきものはただしていく、そういう結論に達すれば、その部分についてできるだけ早く実施していくということがまさに成果であり、それが米側政府もこれを成果として認めてくれるものだと、そのように私どもは考えております。
  40. 合馬敬

    合馬敬君 ありがとうございました。  次に、通産省にお尋ねいたします。  一つは、構造協議がこの日米貿易の不均衡の是正に貢献する割合でございますが、ある報道によりますと、マクロ政策、いわゆる財政金融政策、そういったようなものの五―一〇%、こう言われておりますけれども、アメリカ側は何か八〇%は自分の方に責任があると言っているあれもありますが、そこら辺についてどうお考えでしょうか。  それから、一方ではいろんな二国間の通商交渉、MOSS協議とかいろいろ個別協議が行われておるわけですが、それと成果との関係をどうお 考えになっているのか。先ほどから話も出ておりますけれども、そもそも不均衡是正の原因は、アメリカ供給力不足だとか過剰消費だとか、そういった米側の構造改革を促進するのが最初の基本ではないかと言われておりますが。  それから二番目に、六分野のうちの特に流通制度について、アメリカが要求する内容についてどう取り組んでおるのか。アメリカから言われるまでもなく、先ほどお話が出ましたが、通産省は九〇年代の流通に関するビジョンですか、これに基づいていろいろと検討を進めておるようでございますけれども、特に流通制度の中で大規模小売店の規制に関する法律、これについて規制緩和米国に言われてやるというのではなくて、消費者のために見直すべきものは見直すということで努力をしておられるということでございますが、これについて御説明をお願いします。  それから、特にこれについては零細小売店への影響というのが非常に大きく心配されているわけでございますが、その点についてどういう対策を考えておられるのか。この中では特にアメリカは、日本では量販店、百貨店、スーパー、ディスカウントストアが米国等の製品にとって基本的な販路となっておる。しかし、同法は、零細小売業者にこうした大規模の開設に対する拒否権を与えている。そういうように主張しておるようでございますけれども、そういった点に関連して、以上の点についての考え方をお願いいたしたいと思います。特に運用見直しをした場合に、これによって日本への輸出が増加する見通しがあるのかどうか、これについてお願いいたしたいと思います。  それから最後になりますが、排他的取引慣行の分野のうちの特許についてでございますけれども、ここではアメリカは、外国企業の特許の認可が非常におくれておると、それから特許洪水と言われる慣習について、二つ非難しておるわけでございますが、特にこれにつきましては外国企業の特許の認可、外国企業の場合、特許の認定が非常におくれておると。こうしたおくれは特許の認定が厳しいことによる。ゼネラル・モーターズ、シンガーといった大手企業も十年あるいはそれ以上のおくれを経験しておる。それから特許洪水と言われる慣習、日本企業は、基本特許を少し変えた大量の特許を保有している。このため、基本特許を特っているところはクロスライセンスを取るか、費用と時間をかけて訴訟を起こすしかない。こういったような指摘がされておるわけでございますが、これについて日本側はどういうような考えを持っているか。  以上、お答えをお願いします。
  41. 堤富男

    政府委員堤富男君) 最初に、この構造協議貿易収支均衡にどれくらい役に立つかというお話で、これについては双方に数字の合意というのがあるわけではございませんけれども、アメリカの学者あるいはヒルズ代表等が議会で証言しているのを聞きますと、今、先生もおっしゃいましたような八割ですとか、そういう部分マクロ政策による部分である。景気対策ですとか、為替レート調整という部分でかなりの、大部分というのができるんだという考え方でございます。ただ、それが十分ワークするためには、この構造協議の対象となっているような分野についてやることがそれなりに役に立つということがあって、したがいまして、これで全部の貿易収支改善しようというわけではございませんけれども、かなりの成果を上げることにより、全体として潤滑油のような役割をする部分があるんじゃないだろうかという気がしております。  ただ、若干個人的にではございますけれども、アメリカの財政赤字というのは、かなりこれは大きな役割をするということがありますから、この構造協議の中でも若干マクロ経済政策部分とそうでない部分が混在しているような気はしておりますが、今後、ただこれがすべてではない、しかし、かなりの役に立つというものであるというふうに考えておるわけでございます。  それから、今までアメリカ等の協議では、MOSS協議というような話もございました。これとの関係ということでございますが、簡単に申し上げますと、MOSS協議というのは四分野、個別品目を選びまして、それについての市場開放的な観点から具体的にどうするかということがあったわけでございますが、今回のお話はそういう個別品目というよりは、むしろあえて申し上げれば、横割りの一般的な事項につきましてこれを議論するということでございます。MOSS協議につきましては、三品目、四品目、すべて一応協議自身は終了して、今はフォローアップという格好になっておりますので、これとのダブリというのは基本的には余り考えられないと思っておりますし、縦割り個別品目、それから横割りの一般論ということで区別がつくのではないかと思っております。  それから、特許の問題につきましては、確かにアメリカ側から二点指摘されておるわけでございます。  一つは、特許の申請をしてから特許が出るまでの期間が、アメリカの場合には二十カ月ぐらい、日本の場合には三十七カ月というような期間がかかっているというような指摘を受けております。これにつきましては、特許庁のこれは大変重要な対策の一つ、施策の一つということでございまして、お聞き及びかとも思いますが、紙を使っての申請ということじゃなくて、これをペーパーレスという最近の技術をなるべく導入して、これの処理期間を短くするということをやっておりますし、一方で機械ではなかなか補えない部分の人手に頼る部分というのもどうしてもあるわけでございますが、審査官の定員を増加するというような形でやっておりますが、予算定員等の枠もございまして、現在のところこの改善について最大限の努力をしていながら、必ずしも現在までのところでは成果を得ているわけではございません。今後ともこの点についてはぜひ努力を重ねていきたいところでございます。  それから、もう一つの特許フラッドという話でございますが、これは確かに技術に対する考え方の問題だと思いますが、基本特許さえとってあればいいという考え方も一つの考え方でございますし、基本特許だけではなかなか特許による技術の防衛というのは不十分であるという場合には、その周辺技術についてもある程度取っておくという考え方があるわけでございまして、日本企業の中にも若干両方の差があるようでございますが、私どもといたしましては、特許行政という観点から見ますと、なるべく的確な申請をしていただいて、申請の書類が山となりますと、またこれ処理に時間がかかるということでございますので、一方で申請につきましてはなるべく適切な、非常に合理的なものを出していただきたいということを関係業界には要請する一方、これを全部また否定するというわけにもいかない点があるわけでございまして、今後ともこの点はまたアメリカと誤解も解きつつ、一方で我々も努力をしていきながら解決をしていく部分があろうかと思っております。
  42. 横田捷宏

    政府委員(横田捷宏君) 流通の点につきまして、零細小売店への影響につきましては中小企業庁の方からお答えいたしますが、その他の点につきまして申し上げます。  まず、流通制度に対する米国側の要求でございますが、九月の第一回の構造協議におきましては、日本にあります種々の政府規制、手続、例えば先ほどの大店法、あるいは私どもの所管ではございませんが、酒の免許でございますとか薬事法等々の議論もございました。あるいは反競争的商慣行、これはアメリカ的な言い方でございますが、返品制がけしからぬとか、リベートがけしからぬとか、そもそも日本で継続的取引をしているというのが仲よしグループ養成のようなもので、新規参入を排除する、けしからぬとか、いろいろなそういう商慣行の議論等々を含めまして、日本のマーケットが新規参入を阻害しているのではないか、こういう指摘でございます。これらに対しまして、おおよその部分はやはり誤解、決めつけに基づくものである、こういうことを私どもは詳 しく説明いたしてございます。失敗の例をあげつらうよりは、むしろアメリカ企業、ヨーロッパの企業日本のマーケットで大成功をおさめている、そういうことをアメリカ政府に対して証言する人たちもいるわけでございまして、そういう成功の例等もむしろ私どもが説明をいたしながら正しい理解を求めております。  ただ他方、先ほどお答え申したこととも関連するのでございますが、流通のより一層の効率化といいますものは、日本の経済発展の成果を国民生活にどう十全に還元していくかということと密接に絡むわけでございまして、みずからの問題としてもろもろの流通近代化、効率化施策に取り組んでまいるということで、来年度の対策といたしましても予算だけでなくて税制、金融等々含めまして総合的に取り組んでまいっております。  その中で大店法の見直しの問題でございます。これは御指摘のとおり、アメリカがどうこう、外国がどうこうということでやるわけでないのは当然でございまして、これまでの大店法運用の実態が若干問題があり、出てまいった、あるいは経済の実態の変化の中で、新たな対応が要るという中で取り組むわけでございまして、先ほど申し上げました九〇年代流通ビジョンに基づきまして、例えば出店に際します事前説明の趣旨を明確にする、あるいは事前説明とか事前商調協、商業調整協議会で調整いたしますが、そういった場合の標準処理期間を設けまして、これの進行管理を通産局等が適切にやってまいるとか、あるいは軽微な変更等は、より容易な手続でやるといったようなことを実施してはいかがかということで現在調整中でございます。  この運用の適正化をいたしました際に果たしてアメリカの対日輸出が増加するかどうか、そういう角度からのアプローチは私どもはいかがなものかなと思っております。昨今の日本の急激な製品輸入等の拡大、まさにこれは為替レート等も含めたマクロの変更の中で起こっているものであると思っておるわけでございまして、この規制運用緩和等々がどう影響するかということを判断するというのはむしろ適切ではないのではないか、こう考えております。
  43. 川田洋輝

    政府委員(川田洋輝君) 零細小売店への影響に関してお答え申し上げます。  大店法の取り扱い、先ほど御紹介ございましたが、あれは産業構造審議会と中小企業政策審議会が合同の場で論議を進めたものでございまして、すなわち、中小小売業者の代表者も参加をして論議をした結果でございます。その大筋のところは、大型店の出店調整を行う法の枠組みはこれを維持するんだ、またその運用面について適正化を図るということで報告、結論が出されているというふうに私ども承知をいたしておるところでございます。  大型店の出店が中小小売業者に与える影響というものを一般論として申し上げるのは困難でございまして、個々の大型店の規模とか事業内容、立地点、周辺小売商業者の経営活動状況、こういったものがいろいろ絡み合いまして影響が論じられるのでございます。場合によりますと、大型店の出店によって、かえって商店街全体の魅力が高まって顧客が増加するという可能性もあるわけでございますが、懸念されるのは、周辺小売業者の経営に厳しい影響が生ずるということが懸念されるわけでございます。  いずれにいたしましても、私どもとしては先ほど申し上げました大店法運用、適正化ということは必要でございますが、その運用とともに中小小売商業者の体質強化、それから商店街の活性化のためのいろんな施策をもっともっとこれから充実強化していく必要があるのではないかというように考えております。
  44. 渡辺光夫

    政府委員(渡辺光夫君) 先ほどお尋ねございました特許の問題のうちのやや専門技術的な分野につきましてちょっと補足させていただきたいと思いますけれども、日本の特許制度が非常に厳しいのではないかというようなお話がございましたが、私どもは決してそうは思っておりませんで、先進工業国の中で日本の制度を全般的に申しますと、非常にハーモナイズされた制度になっておりますので、特に日本が厳しいということはございません。ただ、今国際的に問題になっておりますのは、これだけ経済実態が国際化する中で、各国の特許制度、あるいはその運用が少しばらばらになり過ぎてもいかぬから、少しハーモナイゼーションしようではないかという議論が行われております。ガットのウルグアイ・ラウンドの中でも重要な項目になっておりますし、それから特許制度の中では、WIPOという専門機関でも今大きな課題になっております。  そういうところで議論しておるわけでございますけれども、そういう観点から申しますと、実はアメリカの特許制度も世界的に見ますとかなりユニークなといいますか、例えば先発明制度というような制度がございまして、これは世界で今アメリカ一国しかやっていないというような制度でございますけれども、そういった制度があるというような意味で、いろんな意味アメリカ側にもハーモナイズしていかなきゃいかぬ、そういう要素があるということを指摘しておるわけでございます。  それから、もう一点御指摘の中で、外国企業が特におくれているのではないかというような御趣旨のお話もございましたけれども、そのようなことは全くございません。日本の制度の中では、特に国内、国外の取り扱いを異にするというような制度はもちろんでございますし、運用も一切ございません。ただ、幾つか例が挙がっておりましたケースにつきましては、実はちょっと専門的になりますが、異議の申し立てでございますとか、あるいは裁判に係属中でございますとか、そういった今制度的にございますいろいろな関係当事者の利害調整を要するようなケースが長引いているというようなことを指摘しているのはございますけれども、これは必ずしも特許の審査というよりは、そういう利害関係人の調整をどうしていくかという、制度が持っておる一つ枠組みの中で起こった幾つかの例ということでございますので、制度全体の問題ではないというふうに考えておるところでございます。
  45. 小山一平

    会長小山一平君) あと残り時間、それぞれ大変短うございますので、要領よく御質問をお願いいたしたいと思います。
  46. 高崎裕子

    高崎裕子君 貿易収支の不均衡を是正するというなら、既に述べましたけれども、日米双方の要因にメスを入れなければならないと思うわけですが、外務省通産省にそれぞれ質問いたしますが、日本側の挙げた七項目は、基本的にはその方向に沿っていると思われるんですが、その原因にまで立ち入っての指摘がないように思われます。この原因にさかのぼって論議をすべきで、日本政府としてはきちっとそこを指摘していただきたいと思いますが、この点いかがでしょうか。  それからもう一つアメリカ側が示した六項目は、独占価格指摘など的を射たものもありますけれども、我が国の法律や制度の改定を提示するなど極めて内政干渉的なものになっているわけで、アメリカの圧力を容認すべきではないと考えるわけで、経済構造調整の政策を政府としても転換しない限りは、スーパー三〇一条のおどしによる協議が提案されたり押しつけられたりもしていくと考えるわけですが、この点いかがでしょうか。時間がありませんので恐縮ですが、それぞれ一言ずつよろしくお願いします。
  47. 原口幸市

    説明員原口幸市君) じゃ簡単に。  一つは不均衡是正の問題で、原因にさかのぼってということでございますが、まことに賛成でございまして、ここには簡単にしか書いてございませんけれども、一回、二回、さらに今後の協議を続けまして、これらの問題がどういう形で不均衡に関連しているかということを指摘しつつ、構造改善の重要性を米側に悟らして、米側構造改善米側がみずからの問題として積極的に取り組むようにしてもらいたいと思っております。  それから、内政干渉かということでございますけれども、先ほどもお答えいたしましたように、 これは米側が何を言ったかということよりも、米側が言ったことをみずからの問題として考えてみて、何でもアメリカの言ったことをすべてアクセプトするということではございませんので、考えてみて、なるほど日本のためになるということであればこれをやろうという立場でございますから、そういう意味では決して内政干渉とは私どもは考えておりません。
  48. 堤富男

    政府委員堤富男君) 通産省といたしましても基本的には同じ考え方でございます。ただ、米側指摘事項について深く、日本側で浅くというわけにはなかなかいかないと思いますし、これはそれぞれ話し合いでございますので、先方の指摘、当方の指摘はそれぞれ思う存分やるということだろうと思っています。
  49. 横溝克己

    横溝克己君 私も残り時間が少ないので、一つだけ質問さしていただきます。  外務省からいただいた資料の中に、日本側からアメリカ指摘したということがございますが、その中で、企業輸出活動を妨げるようなアメリカ政府規制がある。これは多分シップアメリカンとか防衛関係とかそういうものがあるのだろうと思うのですが、具体的にどんなものがあるのか、あるいはその指摘に対してアメリカ側の反応はどうであるかという、その点をちょっとお伺いいたします。
  50. 原口幸市

    説明員原口幸市君) この問題は二つに分けてお答えできると思うのですが、一つは、直接企業輸出活動を制限するものといたしましては、アメリカ輸出管理法というのがございまして、七〇年代の初めに大豆の輸出禁止がございましたけれども、あれは米国内で供給不足が生じたときにその製品について輸出規制することができるという輸出管理法に基づいて行われた措置でございます。それ以外に間接的に米国企業輸出活動を妨げるものとしては、今先生御指摘のとおり、バイ・アメリカンとか、それからシップアメリカン、あるいは独禁法の三倍賠償制度とか、あるいはさらに言えば輸出自主規制なんというものも入ってくるのだろうと思います。  なぜ私どもがこういう点を指摘したかと申しますと、それは政府がこういうバイ・アメリカンとか、シップアメリカンというもので米国企業をいわば温室の中に置きますと、その結果アメリカ競争力米国産業競争力が十分に育たないで、それが中長期的には米国輸出の減につながるのではないか、そういう観点から指摘したものでございます。  それから、米国の反応でございますけれども、いろいろな問題点を我々の方で指摘したものでございますから、基本的には検討させてほしいということでございますので、その中には、例えば独禁法の三倍賠償の基準なんかは厳し過ぎるので、少し改定ができるかできないか検討してみたいというふうな返事もございましたし、それからシップアメリカンのうちのジョーンズ法についても、競争力の観点から可能であれば終了させていきたいというふうな返事もございましたが、これも日本と同様で、それぞれ米国の国内法等がございますので、そういう兼ね合いで今後二回、三回と協議を続ける中でどういうことになっていくか、さらに検討していきたいと考えております。
  51. 小山一平

    会長小山一平君) 以上で外務省及び通商産業省に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十五分散会