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参考人(
内田公三君)
経団連の
常務理事の
内田でございます。先ほどは
会長から御丁重な
あいさつをいただきまして、ありがとうございました。
最初の
説明は、私から二十分
程度やらせていただきます。
質疑応答のときに
太田部長の方もお答えする、こういうふうに進めさせていただきます。じゃ、座って報告させていただきます。
日米構造協議の問題につきましては、
経団連としての正式のといいますか、公式の
見解というものはまだできておりません。したがいまして、本日は非公式な、若干私見も含めて御
説明するということになりますので、その点あらかじめ御了承いただきたいと思います。
公式の
見解につきましては、実はやっと今月の初めに
日米構造問題協議に関する臨時の
懇談会というものを
経団連の中に発足させまして、これは
経団連の副
会長の
松沢、富士銀行の相談役でございますが、
松沢副
会長が
委員長になって、そして
経団連の中には
流通とか
土地利用とか、そういう
問題別に
常設の
委員会が既にございます。そういう
委員会の
委員長とか
部会の
部会長をメンバーにして、この
日米構造問題協議に関する
懇談会というものを発足させることにしたわけであります。まだ実は
最初の
会合も開かれておらないという
状況でございます。しかし、
問題別の
常設委員会におきまして従来いろいろ
検討はしておりますので、その限りでの
意見は申し上げられるということでございます。
それで、話の順序としまして、まず
日米経済関係と
経団連の
活動ということを
最初にちょっと
お話ししたいわけでございます。
経団連としては、これは戦後
経団連が発足してからと言ってもよろしいかと思いますが、特に
日米の
関係というものが
日本にとってやはり非常に重要なものであるだけではなく、また
世界経済の
安定発展のためにも、この
日米経済関係というものは非常に大事だという
認識のもとに
経済交流を活発に行ってまいっております。
日米財界人会議というのがございまして、これは毎年定期的に開かれておりますが、この
日米財界人会議には
経団連の
会長初め首脳部が参加して、ある年は
アメリカで次の年は
日本でというふうに、そして率直な
意見交換を重ねてきております。また、こういう年一、二回の定期的な会議だけではなくて、
日米財界人会議のもとに専門家のワーキンググループなども設けまして、問題の具体的な解決、相互理解の促進を図ってきております。最近ではまた、通信衛星を使って
アメリカのビジネスマンとテレビ会議をやるとか、いろんなメディアで
双方の意思疎通を十分に図るように努めておるということでございます。
それで次に、当面の、最近の
日米経済関係について、じゃ
経団連がどういうふうに今考えているかということでございますが、これにつきましては、
参考資料としてお
手元に「当面の
日米経済関係についての
見解」、ことしの七月二十五日付ですが、これは
経団連の正式の
理事会で決議した
意見書でございますが、これをお配りしてあると思いますので、これをごらんいただければおわかりいただけると思いますが、最近、私どもまず第一に一番懸念しておりますのは、
日米間の経済摩擦がなかなか
改善されませんで、むしろ深刻化してきておりまして、これが経済にとどまらず
日米関係全般に悪
影響をどうも及ぼしつつある。この点を非常に憂慮しておるわけであります。
貿易不
均衡から、さらに最近では
日本の
企業が
アメリカに直接
投資、工場をつくるとか対米
投資も急増しておりますが、対米
投資にまた絡んで
投資摩擦というか、文化的、社会的な摩擦も出てくる、
日米間の摩擦が非常に多面的に複雑になってきているということで、これは一面では非常に
日本と
アメリカが密接に結ばれて補完
協力関係にあるということではあるわけですが、しかし、他面においてはいろんなフリクションが起きているということで、御承知のように最近では、
日本経済を封じ込めなくちゃいけない、コンテーンメントしなくちゃいけないというような
議論が
アメリカの学者から出るとか、そういう対日圧力の増大というものが
アメリカの議会の中に非常に高まってきているわけであります。そういう点を私ども民間のビジネスマンの集まりである
経団連としては非常に憂慮しておるわけであります。これは
日米経済関係だけじゃなくて、
世界経済全体に深刻な悪
影響を与えるんじゃないかということを懸念しているわけであります。
特に、最近
アメリカは相互主義ということを言っておりまして、従来のガット・IMF体制、多角的に交渉して話し合いで解決していくということとまた別に、二国間でやろうという相互主義的な傾向を強めてきております。これは、
日本としてはやはり世界の自由
貿易体制の堅持ということを願っておるわけでありまして、こういう
アメリカの相互主義的な傾向も実に困ったものだということでございます。
それから第二点は、
アメリカといっても、連邦レベルとそれから州レベルとでちょっとまた感触が違うということでございます。連邦議会あるいは連邦
政府の対日批判というものは、ますます激化してきているというような印象でございます。特に議会の方が非常に強いものがあるわけでありますが、地方に行きますと若干意識の違いが、若干というかかなりありまして、
経団連でも時々
アメリカの
投資環境の
調査団などを出しますが、どこに行っても非常に歓迎されて、来てくれ来てくれということなわけでございます。州のレベルでは非常に
日本企業の誘致あるいは
取引の拡大に積極的でございます。
御承知かと思いますが、
アメリカ五十州のうちの四十州が
日本に事務所を開設しておりまして、
日本企業の誘致に州の知事みずからが先頭に立って働きかけているというのが実情であります。ところが、連邦議会においては険悪な空気が流れているというので、一体
アメリカというのはどうなっているんだろうかというような疑問もわいてくるところでございます。
以上が最近の
日米経済関係についての私どもの持っている率直な印象でございますが、次に本日の問題であります構造問題
協議については、一体
経団連としては、現段階でどういうふうにこれを受けとめているかということを申し上げたいと思います。
まず、この
構造協議の問題は既に
外務省、
通商産業省からも
お話がございましたが、これはとりあえずは
両国の
政府間の、
政府と
政府との間での話し合いでございまして、
両国の
政府の権限の及ぶ範囲内での話し合い、権限の及ぶ範囲内の問題を取り上げるというふうに私ども伺っております。そういうふうに理解しております。
ところが、それにもかかわらず、この間もカーラ・ヒルズUSTR代表が
経団連にも来ましたが、ヒルズさんとか、あるいはその他
米国政府の高官の話などを聞いておりますと、必ずしも
マクロ的な経済政策の問題にとどまらずにミクロの分野にまで、商慣行とかそういうミクロの分野にまで入り込んできておりますので、その点を私ども非常に心配しておるわけであります。この
協議がどういうふうに収拾されるのか。もしこの
協議がうまくいかなくて、目下の経済摩擦をかえって激化させたり、
日米間の感情の対立がさらに増大したりするようなことになっては大変なことになると非常に心配しているところでございます。
この構造問題
協議が始まった背景は、先ほども
政府の方から御
説明もございましたが、大幅な
為替調整にもかかわらず、
アメリカの対日赤字が依然として高水準にあるというところにあることは申すまでもありませんが、
日本の方では昭和六十年、一九八五年のいわゆるプラザ合意以降、急激な
為替調整があったわけでありますが、当時は本当に
日本の
産業はやっていけるのか、つぶれちゃうんじゃないかというような危機感さえあったのでありますが、必死の
努力で乗り切ってきたわけであります。最近では人手が足りないというよう
な、好景気を謳歌するようなちょっと当時では信じられないようなところにきているわけでありますが、他方
アメリカの方はどうかというと、このドル高の間に
アメリカでは
産業の空洞化が進んで、現在に至っても
アメリカ産業の
競争力の回復、強化というそういう動きが見られないわけであります。
ですから、
経団連でも民間レベルでしばしば申し上げているわけでありますが、
米国が
生産性の向上、
生産力の増強をしなければ
貿易の不
均衡は基本的には是正されないのじゃないかと。
米国側の問題を適当な手段で解消しない限り、
日本の個別問題を取り上げて
輸入障壁の除去、市場の開放に努めてみても限界がある、
米国からの
輸入拡大には限界があるというふうに考えて、常々そういうふうに
アメリカ側にも言っているわけであります。
米国自身もこの財政赤字の削減とか
生産能力の拡大、合理化のための設備
投資、そういった
構造調整をもっと真剣にやるべきじゃないかというふうに考えているわけでございます。
経団連の会員
企業も、例えば通産大臣からの要請もあったりして、
アメリカから
輸入をふやそうということで、できる限りの
努力もしておりますが、その割になかなか実績が上がらないというのは、
一つにはやはり
アメリカの
企業の
輸出拡大
努力、意欲の不足、
日本市場への
参入、定着の
努力不足というものが、これはもう前からそうでありますが、
指摘されております。こういうことを申し上げると、またそんなことを言って、同じことを言っているのかとおしかりを受けるかもしれませんが、やはりそういう印象は否めないのでございます。
それから、今回の
アメリカ側の
指摘の一部には、単に大
規模小売店舗法とか
土地保有の税制とかいうようなことだけじゃなくて、
日本の習慣とか文化に触れてくるような問題もあるように見受けられるのでありますが、もしこの
日本の習慣とか文化で、それなりの経済合理性もあるというものであるとするならば、それを何というか、けしからぬとか変えるとかいうようなことを
アメリカ側が言ってくるのであれば、これはちょっと賛成できないと思っております。ただ、
日本側の習慣とか、商習慣とか、文化とかいうようなものが
アメリカ側から見て不可解である、不透明であって理解できないというようなことであるならば、それは経済大国としての、特に国際的な責任ということからいけば、そういう点を理解してもらうように
努力を払う責任はあるだろうと、そういうふうに考えておるわけであります。
あと残された時間、具体的な項目について若干、二、三コメントさせていただきます。
まず、
流通の分野における大
規模小売店舗法の
運用、それから
土地の
有効利用の問題につきましては、
アメリカ側の
指摘が全部というわけではありませんが、その中にはかなり
経団連自身が長年にわたって
日本の国内で問題提起をして、
政府にあるいは立法府にお願いしてきた問題がございます。つまり、
経団連が
主張しているのと同じようなことを
アメリカ側が言っているという問題もございます。そういった点は今回の
構造協議があるないにかかわらず、ひとつぜひ
日本をよくするために早く取り上げて
改善していただきたいというふうに考えておるわけでございます。
それから次に、
貯蓄、
投資の問題、これもちょっと漠たる問題でございますが、これは先ほど申し上げましたように、まずは
米国側の財政赤字の削減が必要であると思います。これは
アメリカの
政府なり
アメリカの議会がそうしようという断固たる意思を固めればできるはずなわけでありまして、
アメリカの国民の
貯蓄率を上げるとか、そういうような国民の生活慣習にかかわるものはちょっとそれは話が違うんじゃないかというふうに考えております。それから
日本の側としては、
貯蓄の問題については、
高齢化社会に漸次移行していく過程において次第に
貯蓄率も下がっていくんじゃないかというふうに考えられますし、またいわゆる
公共投資、公園とか下水道、これは
日本ではやっぱりまだまだ非常に不十分なわけでありまして、こういうものへの
公共投資は既にいろいろ
指摘されているように、もっともっとやっていただきたい。この点については、
経団連としても今後引き続き
政府にも働きかけていきたいと考えております。
また、民間の豊富な資金を住宅環境の
改善とか、そういう問題に振り向けることも重要だと考えておりますが、それには
土地の利用、開発、あるいは住宅建設なんかにかかわるいろんなレギュレーションを思い切って緩和していただいて、民間が
投資して採算がとれるようにしていただければ、まさに民活ということもできるわけなので、そういう
意味からも
規制緩和ということをお願いしてきているわけでございます。
いずれにしても、
アメリカが
指摘している問題の中には、
日本の国民生活を豊かにするためにも役に立つという問題もあると考えられますので、そういった問題については、ぜひ国会なり
政府が率先してひとつ進めていただきたいと考えるわけであります。
次に、
排他的取引慣行とか
系列の問題でありますが、これは
アメリカと
日本の歴史的な社会形成の相違から考えると非常に厄介な問題でありますが、現段階では一体、
アメリカ側が何を具体的に問題にしているのか、
日本のどういう法律の、あるいはどういう
規制が問題だと言っているのか、ちょっとまだはっきりわかりません。
日本の下請
関係とか販売
系列とか、いわゆる株式の持ち合いとか、そういうようなことを問題にしているようでありますが、それがどういう
意味でよくないとかいうのであるのか、ちょっとよくわかりません。もしそういうものが、それ自体が閉鎖的な制度であるとかいうことになりますと、これはやはり戦後ゼロから再出発して今日の経済を築き上げてきた
日本の
企業経営者、あるいは
日本の勤労者階級にとっても納得できるものではないと考えるわけであります。
それから、
アメリカの
主張は、
日本の国内ではどうも
競争というものが余り行われていない、カルテル的体質があるとかいうようなことを言っているようでありますが、これは先ほど
通産省からも御
指摘がありましたけれども、むしろ
日本の市場は余りにも
競争が激し過ぎて過当
競争体質だということが、よくそういうことこそが言われているわけでありまして、
アメリカの批判もちょっと心外なわけであります。むしろ
競争制限があるとすれば、それはいろんな業法とか、そういう
政府の
規制によって
価格とか
参入や体質、あるいは販売方式などが統制されているような場合、こういう場合にはまさに
競争が行われない。したがって、またいわゆる
円高差益の還元も進まない。そういった点は既に
政府の、いろんな物価レポート等でも
政府みずからが認めておるところでございます。
したがって、
経団連としては、各種の
規制を緩和し、合理化していくことがやはり先決であると。
アメリカ側は、
日本の
独禁法を強化しなくちゃいけないとか、予算とか人員をふやせとかいうようなことを言っているようでありますが、私どもの経験からいえば、むしろ
日本の
独禁法はそれなりに非常に立派な、あるいは
産業界から見ると厳し過ぎるくらいの既に法律であって、むしろ問題があるとすれば、
独禁法が適用途外になっている分野が多い、そこに問題があるんじゃないか。適用除外になっているところを見直して、なるべく
独禁法が適用できる分野を経済の分野に広げていく、
競争原理がなるべく広い分野に貫徹するように持っていくということが必要なんじゃないかと考えております。
それから、いわゆる
価格メカニズムの問題でありますが、これについてもなかなか難しい問題だと思っております。これは
外国の会社の経営方針にかかわるような問題もあります。ブランド
商品などでは大体
外国の会社自身が値を下げないというようなこともございます。あるいは
日本の
企業の
企業ビヘービアにかかわるものもございます。あるいは
土地などの自然的な条件からの制約からくる問題いろいろあるわけであります。
日本の国
内では高くて、
アメリカでは非常に安く売っていて一体どうなのかというような問題が
指摘されているようでありますが、その種の問題については、
経団連としても関連の会員
企業にどういうわけで、そういうことがもしあるとすればどういうわけなのかということを問い合わせておりますが、今のところ
競争制限からくるようなそういう事実はないという返答を受けております。この問題は、
アメリカと
日本の
政府が一緒になってウォッチして、これから調べていこうということになっておるようでありますので、その結果を私どもとしては見守っていきたいと考えておるわけであります。
以上で一応私の
説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。