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1989-11-29 第116回国会 参議院 決算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月二十九日(水曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員異動  十一月二十七日     辞任         補欠選任      粟森  喬君     高井 和伸君      下村  泰君     喜屋武眞榮君  十一月二十九日     辞任         補欠選任      尾辻 秀久君     野村 五男君      福間 知之君     三上 隆雄君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         千葉 景子君     理 事                 大島 友治君                 鈴木 貞敏君                 守住 有信君                 一井 淳治君                 及川 一夫君                 刈田 貞子君     委 員                 尾辻 秀久君                 岡野  裕君                 狩野 明男君                 鎌田 要人君                 沓掛 哲男君                 木暮 山人君                 清水嘉与子君                 陣内 孝雄君                 鈴木 省吾君                 西田 吉宏君                 野村 五男君                 福田 宏一君                 会田 長栄君                 大渕 絹子君                 菅野  壽君                 喜岡  淳君                 種田  誠君                 三上 隆雄君                 木庭健太郎君                 諫山  博君                 沓脱タケ子君                 高井 和伸君                 山田  勇君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        法 務 大 臣  後藤 正夫君        大 蔵 大 臣  橋本龍太郎君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 森山 眞弓君         ─────        会計検査院長   中村  清君         ─────    政府委員        内閣参事官        兼内閣総理大臣        官房会計課長   内藤  勲君        内閣審議官    菊地 康典君        宮内庁次長    宮尾  盤君        法務大臣官房長  井嶋 一友君        法務省民事局長  藤井 正雄君        法務省刑事局長  根來 泰周君        法務省人権擁護        局長       高橋 欣一君        法務省入国管理        局長       股野 景親君        大蔵大臣官房総        務審議官     篠沢 恭助君        大蔵大臣官房審        議官       濱本 英輔君        大蔵省主計局次        長        藤井  威君        大蔵省理財局次        長        松田 篤之君        大蔵省証券局長  角谷 正彦君        大蔵省銀行局長  土田 正顕君        国税庁次長    岡本 吉司君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       川嵜 義徳君        最高裁判所事務        総局総務局長   金谷 利廣君        最高裁判所事務        総局人事局長   櫻井 文夫君        最高裁判所事務        総局経理局長   町田  顯君        最高裁判所事務        総局総務局第一        課長       秋山 壽延君    事務局側        事 務 総 長  加藤木理勝君        常任委員会専門        員        吉田 堯躬君    裁判官弾劾裁判所事務局側        事 務 局 長  新川 行雄君    裁判官訴追委員会事務局側        事 務 局 長  澁川  滿君    国立国会図書館側        館     長  指宿 清秀君    説明員        警察庁長官官房        審議官      鈴木 邦芳君        警察庁刑事局捜        査第一課長    山本 博一君        総務庁行政管理        局管理官     川邊  新君        総務庁行政監察        局監察官     山岸 親雄君        外務省経済協力        局政策課長    大島 賢三君        郵政省電気通信        局電気通信事業        部事業政策課長  有村 正意君        会計検査院事務        総局次長     三原 英孝君        会計検査院事務        総局第一局長   疋田 周朗君        会計検査院事務        総局第二局長   澤井  泰君        会計検査院事務        総局第五局長   安部  彪君    参考人        国民金融公庫総        裁        吉本  宏君        日本開発銀行総        裁        高橋  元君        日本輸出入銀行        総裁       田中  敬君     ─────────────   本日の会議に付した案件昭和六十一年度一般会計歳入歳出決算昭和六十一年度特別会計歳入歳出決算昭和六十一年度国税収納金整理資金受払計算書昭和六十一年度政府関係機関決算書(第百十二回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和六十一年度国有財産増減及び現在額総計算書(第百十二回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和六十一年度国有財産無償貸付状況計算書(第百十二回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和六十二年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付) ○昭和六十二年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付) ○昭和六十二年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その2)(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付) ○昭和六十三年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付) ○昭和六十三年度特別会計予備費使用調書及び 各省庁所管使用調書(その1)(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付) ○昭和六十三年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その1)(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 千葉景子

    委員長千葉景子君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  この際、後藤法務大臣及び橋本大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。後藤法務大臣
  3. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 法務大臣後藤正夫でございます。  一言ごあいさつを申し上げます。  内外にわたり極めて困難な問題が山積しておりますこの時期に法務行政を担当することになり、その職責の重大であることを痛感いたしております。  私は、法務行政に課せられた使命は、法秩序の維持と国民権利の保全にあると考えております。国民生活の安定を確保し、国家、社会の平和と繁栄を図りますためには、その基盤とも言うべき法秩序が揺るぎなく確立され、国民権利がよく保全されていることが極めて肝要であると存じます。  私は、こうした認識のもとに、法務行政の各分野にわたり一層充実を図り、時代の要請に応じた適切な施策を講じ、真に国民の期待する法務行政に万全を期してまいりたいと存じております。  もとより、これらのことは委員長初め委員皆様の御理解、御協力なくしては到底果たし得ないことでございますから、どうかよろしく御支援、御鞭撻を賜りますようお願いを申し上げてごあいさつの言葉といたします。  ありがとうございました。(拍手
  4. 千葉景子

  5. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先般、大蔵大臣を拝命いたしました橋本でございます。  内外ともに解決すべき課題が多い中、財政金融政策運営の任に当たることとなり、その責任の重大さを痛感いたしております。  今後とも政策運営に遺漏なきよう全力を尽くしてまいる所存でありますので、よろしく御指導をお願いいたします。(拍手)     ─────────────
  6. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 委員異動について御報告いたします。  去る二十七日、粟森喬君及び下村泰君が委員辞任され、その補欠として高井和伸君及び喜屋武眞榮君が選任されました。     ─────────────
  7. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 昭和六十一年度決算外二件、及び昭和六十二年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)、昭和六十二年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書昭和六十二年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その2)、昭和六十三年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)、昭和六十三年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)、昭和六十三年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その1)を議題といたします。  まず、予備費関係六件の説明を聴取いたします。橋本大蔵大臣
  8. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ただいま議題となりました昭和六十二年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)外二件並びに昭和六十三年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)外二件の事後承諾を求める件につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和六十二年度一般会計予備費予算額二千億円のうち、昭和六十三年一月八日から同年三月三十一日までの間において使用を決定いたしました金額は、三百六十四億六千五十万円余であり、その内訳は、災害対策費として、河川等災害復旧事業等に必要な経費等の六件、その他の経費として、療養給付費等負担金等不足を補うために必要な経費等の十件であります。  また、昭和六十二年度各特別会計予備費予算総額一兆四千八十三億四千三百二十八万円余のうち、昭和六十三年三月三十日に使用を決定いたしました金額は百二十五億円であり、これは郵便貯金特別会計一般勘定における支払い利子に必要な経費であります。  なお、昭和六十二年度特別会計予算総則第十三条の規定により、昭和六十三年二月二十六日から同年三月二十九日までの間において経費増額を決定いたしました金額は四百七十五億四千六百四十一万円余であり、その内訳は、交付税及び譲与税配付金特別会計交付税及び譲与税配付金勘定における地方譲与税譲与金に必要な経費増額等特別会計の三件であります。  次に、昭和六十三年度一般会計予備費の当初予算額は三千五百億円でありましたが、本件提出後の平成元年三月七日に成立いたしました昭和六十三年度一般会計補正予算(第一号)により一千五百億円を修正減少いたしましたので、故予算額は二千億円となっております。  このうち、昭和六十三年四月八日から同年十二月二十七日までの間において使用を決定いたしました金額は六百十九億三千八百六十二万円余であり、その内訳は、災害対策費として、河川等災害復旧事業等に必要な経費等の八件、その他の経費として、大韓民国ソウル市等において開催される第二十四回オリンピック競技大会に関連して日本国内における警備活動等に必要な経費等の十二件であります。  また、昭和六十三年度各特別会計予備費の当初予算総額は二兆一千九百六十億七千五百万円でありましたが、本件提出後の平成元年三月七日に成立いたしました昭和六十三年度特別会計補正予算(特第一号)により二百九十億円を修正減少いたしましたので、故予算総額は二兆一千六百七十億七千五百万円となっております。  このうち、昭和六十三年十二月九日から同年十二月二十三日までの間において使用を決定いたしました金額は三億九千九百四十一万円余であり、その内訳は、農業共済保険特別会計農業勘定における再保険金不足を補うために必要な経費等特別会計の三件であります。  なお、昭和六十三年度特別会計予算総則第十三条の規定により、昭和六十三年八月五日から同年十二月十六日までの間において経費増額を決定いたしました金額は百二十五億六千四百七十三万円余であり、その内訳は、治水特別会計治水勘定における河川事業及び砂防事業の調整に必要な経費増額等特別会計の九件であります。  以上が、予備費使用調書等についての概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御承諾くださいますようお願い申し上げます。
  9. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 以上をもちまして説明の聴取は終わりました。  それでは、これより昭和六十一年度決算外二件の審査のうち、法務省大蔵省裁判所皇室費国会会計検査院国民金融公庫日本開発銀行日本輸出入銀行決算及びただいま説明を聴取いたしました予備費関係六件について、便宜一括して審査を行います。     ─────────────
  10. 千葉景子

    委員長千葉景子君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  12. 千葉景子

    委員長千葉景子君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 喜岡淳

    喜岡淳君 おはようございます。  六十一年度の決算の大きな特徴として、当時の投機ブームということがよく議論されております。株の問題につきましては、ここ十年間異常なと名前のつくようなブームが起こっております。昭和五十年の株の取引高は六百二十九億株、これが全国証券取引所での株式売買高でありました。昭和六十三年は三千二百八十三億株、実に株の数はこの十三年間で約五倍に膨れ上がっております。売買金額は、昭和五十年十九兆円、昭和六十三年は三百三十三兆円。売買金額は約十五倍近くに膨れ上がっております。  この株の背景につきましては、やはり大衆的な株のブームが起きておるというふうに見なければならないと思いますが、御承知のとおり大和証券損失保証という問題が報道されておりますし、しかも新聞報道では関係者が認めたということも報道されております。  この大和証券の株の問題が起きまして、私も電話を受けたり、あるいは御意見を賜りに参りましたけれども一般投資家怒りというのは予想以上に大きいものがあると思いました。退職金を切り詰めて株に手を出したとか、あるいはだんなさんには隠して子供の進学資金をつくるためにと思って株に手を出したとか、そういった一般投資家皆さん方は、そこまでやったとしても株だから損することは当然だろう、しかし、とりわけ大和証券のような、大和証券だけとは言いませんが、大手の証券会社であれば間違いかない、こういう信頼をして株に参加をしたところが、ふたをあけてみれば損するのは自分たちばかりではないか、こういった非常に大きな憤りが見られます。また、きのうも中小証券会社の方に御意見を聞きましたけれども、我々中小はまじめに大蔵省指導に基づいてやっておる、大きいところは何をしてもいいのか、こういう御意見でございました。  しかも、日本経済力が国際的に高まれば高まるほど、今度の国際的な影響、もちろん国内的な信用制度そのものが、史上空前の危機に見舞われておるわけでありますが、社会的な影響も大きいでしょう。そういう意味で、今度の大和証券事件につきまして大蔵省としてはどのような事実を把握されておるのか教えていただきたいと思います。
  14. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 今委員指摘になりました大和証券の問題につきましては、私ども現在詳細に事情を調査中でございまして、まだ全体についてお話し申し上げるような段階ではございませんが、現時点におきまして報告を受けました概要についてごく簡単に申し上げたいと思います。  まず、大和証券からの報告によりますと、昭和五十年代前半におきまして、大和証券の本店の事業法人部の一部におきまして、法人営業関係におきまして損失を生じた、その事業法人の方に損失が生じた。その事業法人において生じた損失をいわば引き取るような形で、これを三協エンジニアリングという会社に対しまして損失をつけかえるという形での処理を行った、いわば簿外でこれを行ったわけでございます。その結果その全体の金額が約百億円といったふうな金額になったわけでございますけれども、これにつきまして昭和五十九年末に、いわば大和証券におきまして保有株式益出しによりましてこの簿外損を処理した、こういったことでございます。  こういった問題につきましては、私ども証券取引法上どういう問題があるか、現在その事実関係を含めて詳細に調査しているわけでございまして、そういった証券取引法上問題のある行為がありました場合には法令に従いまして厳正に対処いたしたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  15. 喜岡淳

    喜岡淳君 今詳しいことについては調査中だということでございましたが、この社会的反響といいますのは予想外に広がっております。  そこで、証券関係責任者として大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  16. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まだ事実関係が完全に明らかになっておりません状況の中でありますので、一般論としてのお答えをお許しいただきたいと思います。  証券会社というものが今や金融資本市場における大きな担い手として成長し、また国民経済の中で株式など有価証券投資というものが個人の資産形成の上で大変重要な手段として一般化しつつある時期でありますだけに、証券会社においてはその役割と責任というものを踏まえて、投資者本位営業姿勢という原点に返って、モラルの一層の向上に努めていく必要があると考えております。  大蔵省としては、これまでも機会あるごとに証券会社に対し適正な営業姿勢の確保というものを求めてきておるところでありますけれども、今回こうした事件が報道されるに及び、委員も御指摘になりましたように、非常に強いこうした事態に対する怒りの声というものは私どものところにも届けられております。やはりこうした事件が事実であるとするならば、私どもとしては非常に真剣にこの事態をとらえなければなりません。今回のような事件が起こりましたことを反省すると同時に、今後こうした問題が繰り返されることのないように証券会社に対する厳正な指導再発防止というものに努めていく責任が私どもにあると感じております。
  17. 喜岡淳

    喜岡淳君 私は、今の大蔵省の御答弁、あるいは大臣からも御答弁をいただいたわけでありますけれども、非常に単純な疑問があります。  大和証券につきましては、業界四社の中では下位の方におったわけでありますけれども昭和五十七年、一九八二年には業界の第二位に急成長しております。経常利益で言いますと、昭和五十二年、一九七七年ですが、経常利益は二百七十七億円、九年後の昭和六十一年、一九八六年には二千三百二十五億円。昭和五十二年から昭和六十一年までのわずか九年の間に経常利益は八倍以上に膨れ上がっておりますから、非常に大和証券が急速に拡大していったという事実があるわけですから、十分これらの動きにも注意しながら指導に当たられたのではないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
  18. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 最近、特にこの十年ぐらいは証券市場は非常に急拡大いたしております。その背景はいろいろあるわけでございますが、金融証券化とか株式投資大衆化あるいは金融の緩和とか、いろんな背景のもとに証券市場全体が急拡大しておりまして、そういった中で証券会社の業績も全般として非常によくなっているということは事実でございます。  その中で、委員指摘のように、大和証券のいわば業務利益というものもほかの証券会社以上に伸びているということも事実でございます、これはいろいろな営業努力の問題もあろうかと思いますが。その中におきまして、今回問題になりましたような一部の行き過ぎた営業といいますか、そういったものもあったといたしますと、私どもはかなりそういった問題については今後厳正に対応して、きちんとした営業態度をもって営業していただくように指導していく必要があるというふうに考えているわけでございます。
  19. 喜岡淳

    喜岡淳君 この大和証券につきましては、大蔵省として札つきであるということは御存じだったと思うんです。リクルートコスモス社の五千株譲渡の問題、これは大和証券の越田さんが絡んでおったことだろうと思いますし、また撚糸工連の問題でも大和証券名古屋支店が関与しておったのは既に新聞でも報道された事実であります。また、明電工事件においても株価操作主犯格と見られておったのも新聞では報道されております。  そういう意味では、大和証券はこれらの問題でとかくうわさに上っておりながらも、どうして大和証券に対して強力な指導をされなかったのでしょうか。一般的な指導としてはわかりますけれども、こういうよく物議を醸すところについてはそれなりの集中した重点的な指導が必要ではなかったかと思いますが、その点はどうでしょうか。
  20. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 特定の会社にどういう形で指導しているかということをここでいろいろ申し上げる立場にはございませんけれども、いずれにいたしましても、今御指摘のあった問題につきまして法令等に違背するような行為があった場合には、これは例えば外務員の登録の処分、そういった問題等含めまして厳正に対応してきているところでございます。  なお、今のお話の中で大和証券の某常務につきましてリクルートコスモス株譲渡があったというふうなお話がございましたが、この問題につきましては、私ども調査いたしました結果におきましてはそういう事実はございません。
  21. 喜岡淳

    喜岡淳君 大蔵省の方では、証券の公平公正、その責任監督者として検査をされておるということでございますが、二年置きの検査というのはどのような検査が行われておるのでしょうか。
  22. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 証券会社に対しましては、これは規模にもよりますけれども国内本省管理会社の場合におきましては大体二年ないし二年半に一度程度定期的に検査をいたしております。その検査は、証券会社業務運営及び財産経営状況法令遵守状況等を総合的に把握するという目的のために行っているわけでございまして、大和証券について申し上げますと、最近におきましては昭和六十三年、六十一年、五十九年と大体二年に一度ずつ検査を行っているわけでございます。
  23. 喜岡淳

    喜岡淳君 二年ごとの検査をされておるということでありますけれども、どうしてこれまでわからなかったのでしょうか。
  24. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 一般論として申し上げさせていただきますと、証券会社取引というのは非常に最近急拡大しておりまして、取引件数も多岐にわたっております。そういった意味で、今申しましたように、証券会社検査対象というのは経営全般にわたって検査をしているわけでございますが、率直に申しまして検査に従事する人数が限られているといった事情等もございまして、検査を通じまして事案を明らかにできるものも相当ございます。他方、完全には解明できないものもございますし、あるいは次回の検査までの留意事項にとどめて次の検査のときにきちんとしてやろうといったふうな形で対応せざるを得ないというものもあることも事実でございます。この辺の事情を御理解いただきたいと思います。
  25. 喜岡淳

    喜岡淳君 今のお答えの中では、人数が限られておるということが言われております。確かに経済の国際化とか企業がどんどんふえていくとか、事業の内容が拡大をするとか業務量が拡大する。定員数が決まっておるために内部の体制がとれにくいということでありましょうけれども、冒頭に言いましたように、株の取引高はこの十数年間異常なほどのふえ方をいたしております。この十三年間で約五倍の取引高あるいは売買金額は十五倍というふうに膨れ上がっておりますから、それにタイムリーに対応するそういった柔軟な機動性のある対応が求められておったのではないでしょうか。
  26. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 確かに、率直に申しまして、現在は本省におきます検査課の実員というのは三十名程度でございます。それを手分けしながらなるたけ効率的かつ実効のある検査を行うようにいろいろ努力しているわけでございます。最近におきましてもそういう意味で若干ではございますが人員も増強いたしました。それから、中で企画官というポストを設けまして、もっと責任ある体制で検査できるような体制もつくりました。あるいは機動班といったものも設置いたしまして、最近のいろいろな諸情勢に機動的に対応できるような形での体制整備も図ってきております。限られた定員ではございますけれども、私どもといたしましては今後ともそういった意味でいろんな努力を積み重ねることによりまして与信度のある、実効性のある検査に努力してまいりたいと思います。  なおかつ、いろいろ不十分な点もあろうかと思いますけれども、我々として精いっぱい努力しているといった事情につきましては御理解いただきたいというふうに考える次第でございます。
  27. 喜岡淳

    喜岡淳君 努力をされていることには心から敬意を表したいと思いますし、難しい仕事でありますからそれは御苦労さまであると思います。  しかし、繰り返しては言いませんけれども、株の取引高がこれだけふえれば、二倍、三倍というふえ方ではございません。しかも、取引高がそれだけふえればふえるほど株に対する公平公正さ、その確保も必要なのに、どうしてそれに対応する積極的な体制をとらなかったのか。私は何かそこに作為を感じないわけでもないわけであります。また、そういった体制の弱さがあるからといって、本来公平公正であるべき株の取引でこのようなでたらめなことが起こったことについての責任は私は大きいものがあるだろうと思いますが、今度の事件に対する責任はどういうふうにお考えでしょうか。
  28. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) この問題につきまして考えてみます場合に、私どもとして十分な監督あるいは検査を行う必要があるといったことはもちろんでございます。ただ、この背景にございますのは、やはり基本的には私は証券会社自身の営業姿勢営業態度の問題があろうかと思います。  委員指摘のように、大衆化した社会でございますから、特定の者には損失保証をする、あるいはある者にはしないといった不公平というものがあってはいけないということは当然のことでございます。そういった意味では、証券取引法におきましても、損失保証をすることを約して取引を勧誘するという行為はいわば証取法上の禁止行為としてこれを禁止しているところでございます。本件の事案がそれに該当するかどうかといったことはなお事情を調査する必要がございますけれども、考え方といたしまして、本来自由に自分の責任において行われるべき株式取引についてそういった行き過ぎた営業活動を行うといったこと自身は、これは証券会社としては厳に慎むべきことであろうというふうに思っているわけでございます。  そういった意味では、私ども大和証券を含めまして全体として証券会社に対しましてこういった面での指導をさらに徹底していく必要があるというふうに考えているわけでございます。と同時に、その背景といいますか、その裏側におきましては、投資家のサイドにおきましても、やはりそういった自己責任において投資をしていただく必要があるので、損が出たらこれは当然証券会社なりなんなりに補てんしてもらうべきである、こういった観念があり、それがまた証券会社の過当競争を勧誘しているという実態があるとすると、そういった点も私どもは是正していかなきゃいかぬだろうというふうに思うわけでございます。  と同時に、私ども自身が、最初に申しましたように、そういった面での証券会社に対する監督あるいは検査といったものをさらに充実させることによりましてこういった行為が再発されることがないように、さらに一層私どもとしては業界指導してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  29. 喜岡淳

    喜岡淳君 ただいまのお答えを聞いておりますと、何か最終的な責任証券会社あるいは投資家の方にあるんだ、もちろん会社とか投資家個人の問題もあるでしょうけれども、その公平がゆがまされる可能性が強いだけに、そういうことが多いだけに監督官庁の責任の方が強いんじゃないかと思うんですが、どこが最後に面倒を見るんですか。私はやっぱり監督官庁の責任が基本だと思いますが。
  30. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) お言葉ではございますけれども、やはりこういった一種の簿外経理処理というのは、企業経営全般、特に証券会社のような信用行為を行っている会社につきましてあってはならないことでございます。と同時に、こういったことについて損失を補てんするようなことを行うといったこと自身は、むしろ証取法上もこれをはっきりとやってはいけないような形のものとして規定しているわけでございまして、そういったことについての基本的な形のものは、法律上におきましてもこれはむしろ証券会社において守られるべきものが一番基本であるというふうに考えておるわけでございます。そういったことが行われることのないように指導する、これは当然行政当局としてやらなければならぬことでございます。  そういった意味におきまして、私ども証券会社の今回の行為は極めて遺憾であると考えると同時に、私どもといたしましてもそういった面についてなお一層指導、監督する必要があるといったことを痛感しているわけでございますし、そういった面でさらに努力していきたいというふうに考えているわけでございます。
  31. 喜岡淳

    喜岡淳君 信用、信頼ということでありますけれども、それが根本的に崩されたというのが今度の事件だろうと思います。そういう意味では絶対にあり得ない事件ではないかと思うんです。  今もお答えの中にありましたように、株なんだから、投機なんだから損することも当たり前だ、それは承知の上でやっておる、これが一般投資家であります。ところが、大口の特定のお客さんであれば、心配せぬでも損は穴埋めをしてあげますから、こういった取引が行われていたんですから、もうこれは信用制度の根本的な、絶対にあってはならない、許されない事件であります。  したがって、今度の大和証券、これはもちろん大和証券だけではないでしょうけれども、明らかに事件として表に出てしまったわけですから、これに対する厳しい処分、証券業界そのものに対する信頼回復の措置が各地で求められておりますけれども営業停止を指導することはお考えでしょうか。
  32. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) ただいま委員指摘のように、非常に株式投資大衆化しております。現に延べで二千百万人を超える一般株主がいるわけでございまして、その多くが個人であるといったことを考えますと、御指摘のように株主間の公平といいますか、やはり取引が公平に行われるといったことが極めて重要であるということは御指摘のとおりでございます。この事案というのは昭和五十年代前半に事柄が発生したことでございまして、その後私どもといたしましては証券業界の体質も営業姿勢も次第によくなっているというふうに考えるわけでございますし、古い事件であるというふうな感じも持っておりますけれども、なおそういった問題が証券業界の中に残っているとすると、こういうことはやはりやめてもらう必要があるというふうに考えているわけでございます。  今回の事案につきまして具体的にどういう処分をするかというお尋ねでございますけれども、この点につきましては、事実関係調査した上で、どういう形での法令違反が具体的にあるかといったことが明らかになった段階に先ほど申しましたように厳正に対応したいというふうに考えているわけでございまして、現時点におきましてどういう処分をするかということを決めているわけではございません。
  33. 喜岡淳

    喜岡淳君 結局よくわからなくなったんですが、古い事件で、もうなくなっておると思っておるというような今御認識が示されました。だから、今までどういう指導をしてこられたのかと聞いているんですよ。
  34. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) ちょっと私の言葉が足りなかったのであるいは誤解を招いたかもしれませんけれども証券会社につきましては、昔はいわゆる株屋ということでかなりそういった行き過ぎた営業活動があったことも事実でございます。それが最近におきましてこれだけ証券業界の全体の資本市場に占める地位が大きくなっているといったことから、次第にそういった営業態度は改善されてきているということは言えると思います。  この事案というのは五十年代前半に起こったわけでございまして、そういった体質がなお残っていたということは極めて遺憾であると思います。しかし、そういったことで徐々にはよくなってきておりますけれども、そういった面につきましてさらに指導を徹底いたしまして、こういったことがかりそめにも起こることのないようにいろいろ私どもとしては万全の努力をしてまいりたいということを申し上げているわけでございます。
  35. 喜岡淳

    喜岡淳君 事実を調査してからということではありましょうけれども、こういういわゆるニギリといいますか、不正をやったということについては関係者があっちこっちの新聞の記者会見でも認めておりますし、やったと言っておるわけですから、もう既に処分の検討は始まっておるのだろうと思いますけれども、この処分は非常に慎重にやりつつも、いたずらに遅くしてはいけないだろうと思います。  そういう意味でぜひお聞きしたいんですが、処分についてはどういうような方向が考えられるんでしょうか。一般的な意見でいいです。
  36. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 鋭意事情聴取を急いでおります。  ただ、言いわけになるわけではございませんけれども、かなり古い事案でございますので、当時の関係者等が必ずしも現に会社に残っているわけでもないという事情もございます。また、いろいろな面におきまして調査する必要がありますので、鋭意努力はいたしたいと思いますけれども、その処分の時期、内容等について現在どういうふうなことができるかといったことについて申し上げるのはやや時期尚早ではないかということで、これにつきましては私どもとしても法令に照らして厳正に対応するということで現時点におきましては御理解いただきたいというふうに考えているわけでございます。
  37. 喜岡淳

    喜岡淳君 これだけの事件が起きたわけですから、今大臣のお答えの中にも、再発防止のために全力を尽くすという決意が述べられたところであります。この再発防止の問題に関係して率直に思いますけれども、この手の株にまつわる疑惑のたびにいつも慎重に対処するとか厳正に対処するとかいうことが言われておりますけれども、どうも結末はうやむやになっておるような気がする、これが国民の素朴な声であります。  この再発防止に関して言いますと、今度の大和証券事件は単に大和だけの問題ではなくて大手はどこでもやっているではないか、営業マンの皆さんは口をそろえてそういうふうにおっしゃっておりました。ですから、一般投資家の中には大きな怒りの声がある反面、専門家といいますか、業界の皆さんの中には、どこでもやっておるんだ、氷山の一角なんだと、そういう声が広がっております。大和証券の幹部も、この手口が完全にはなくなっていないんだ、まだ大和証券の中でだって業界の中でだってこんなものはあるんだという旨の記者会見をされておりますけれども、この再発防止に一体どのような方法を今検討されておるのでしょうか。
  38. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 本件に関しましては、いずれにいたしましても、事実関係調査した上で、法令に違反する行為があった場合におきましてはその法令に照らしましてきちんとした対応をするということでございます。  再発防止といいましても、これはいろんな面で、法令違反、営業モラルにかかわる問題でございます。証券会社に対しまして、そういった営業モラルの徹底といった問題、そういった問題として何が可能かということにつきましては内々私ども考えておりますけれども、どういう方向でやるかということについては今申し上げるのは現時点におきましてはちょっと時期尚早ではないかというふうに考えているわけでございます。
  39. 喜岡淳

    喜岡淳君 別にこだわるわけではないんですけれども、私は大蔵省検査の問題を質問させていただきたいと思うんです。  先ほどの御意見を聞いておりましても、古い事件なんだ、言葉が足らなかったとおっしゃいましたけれども、やはり認識が甘いんではないか。二年置きに調査をしておきながらもわからなかった。しかも、こういうことは昔の問題なんだと。一体二年置きの調査検査というのは果たして有効適切に行われていたんだろうか、こういう疑問を持っております。  そこで、これは一つの再発防止につながるのかどうか検討をする私自身の課題として、検査をされておると言いますけれども、その検査報告国会へ提出されることについてはどのようにお考えでしょうか。
  40. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 証券会社検査というのは、これは国税の調査も同様でございましょうし、あるいは金融機関の検査も同様でございますけれども、いずれもその相手方との関係におきまして、その信頼関係に基づきましていわば任意という形で行われる。任意という意味は、例えば強制捜査令状を持って強制的にやるということではなくて、いろいろと相手方の協力を前提としつつ、それにつきまして全般的に営業状況調査し、必要があればこれを是正するように指導するという目的のために行うわけでございます。そういった意味では、私どもといたしましては、法律的な意味におきましてはそういった検査結果の内容につきましては守秘義務がかかっている。同時に、そういったことにつきましてこれを一般に公表する場合におきましては、今後の検査のやり方といった問題につきまして相手方の協力を得られなくなる、こういった問題も出てくるわけでございます。  そういった意味におきまして、せっかくの御質問ではございますけれども、そういった検査結果を一般に公表する、あるいは国会に提出するということはできないということを御理解いただきたいというふうに思います。
  41. 喜岡淳

    喜岡淳君 いつもこの手の問題になってきますと守秘義務という壁に阻まれるわけであります。もちろん、守秘義務といいますか、お客さんの問題もありましょう。しかし、今度の問題は明らかに絶対にやってはならない、信用行為そのものをつぶしてしまった行為であります。信用制度を守るためにやるのがよいのか、信用制度をつぶすことがいいのか、そこが私は大きなポイントではないかと思うわけです。  ぜひこの際思い切った再発防止の措置について検討いただきたいと思いますが、その御決意のほどをお伺いしたいと思います。
  42. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先ほどからの御論議を聞いておりまして、私は委員の御指摘にも無理からぬところがあると思います。ただし、同時に、国家公務員にとりまして、法によって守らなければならないとされております守秘義務といったものがこれまた非常に大事なものであることも御理解をいただきたいと思うのであります。本件自体につきましては、現在事実の解明中ということでありますから、これが明らかになりました時点において、法に照らして処分すべきはきちんと処分をしていかなければなりません。  と同時に、私はもう一つ問題があると思いますのは、検査体制そのものの問題でありまして、果たして証券局の検査体制それ自体が十分に数的にも体制的にも整備ができているかというこの視点は、大蔵省自身がみずからの反省の上に立って検討すべきことであろうと思います。  この十数年の間、行政改革によってスリムな政府をつくれ、簡素な政府をつくれということで国家公務員の定数を大幅に縮減してまいりましたことは委員も御承知のとおりであります。そしてその中で大蔵省の定員もまた、殊に査定官庁としての立場もありますだけに相当な縮減を図ってまいりました。しかし、その中において、例えば国税定員でありますとか幾つかの部署については全体の縮減は図りながらも必要に応じて増員を図ってまいりましたが、この証券局また検査官といった部分につきましては、それなりに今までも定員の充足は図ってきたつもりでありますし、多少とも要員数はふえておるわけでありますけれども、業務量の増大に比して果たしてそれで十分対応ができているかという御指摘を受ければ、我々として考えなければならない点はあろうかと思います。  この事件について大蔵省として考えなければならないことは、まさに委員が御指摘になりましたように、信用を大きく傷つけた事態に対して、その再発の防止をするために大蔵省自身ができることとすれば、その検査体制というものを見直し、足らざる点があればそれを充足すべく努力する、こうした点がまず反省の上に立った努力の第一段階と私はそのように考えておりまして、委員にも御理解をいただきたいと思うのであります。
  43. 喜岡淳

    喜岡淳君 再発防止につきましては、もちろん証券会社あるいは投資家のモラル、信頼感の問題ということが前提ではあります。しかし、そこの指導責任はやはり大蔵省に監督官庁としての責任があるわけですから、ぜひ大蔵省の主体性を持った積極的な再発防止策を一日も早く発表していただきたいというふうに思います。  この問題で最後に質問をさせていただきますが、金融事件にかかわる不正事件が時々問題になっておりますけれども、最近はその度合いが多いのではないかというふうに思います。リクルートの問題に始まり、もちろんその前には平和相互銀行の問題もありました。そして亀井静香さんの事件もありました。  私は最後に御質問をいたしますけれども、今度の大和証券の問題に関連して政治家の関与というものがあるのでしょうか、あるいはないというふうに見ておられるのでしょうか。
  44. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 私ども現時点において調査した限りにおきましては、政治家の関与というものは全くございません。  それからなお、最後になりますけれども、今委員がおっしゃいましたように、証券市場がこれだけ大衆化し国際化しておる中におきまして、投資家の信頼ということがやはり資本市場証券市場の基本でございます。そういった意味では、その信頼の基礎になるのは取引自体が公平であり公正であり透明であるということだと思います。そういった意味での努力は、私どもといたしましては、インサイダー取引規制でございますとか、先般の株式公開制度の改善でございますとか、いろんな面でやってまいりました。なおしかしながら、今御指摘のようにいろいろ我々としての努力が足りない点があることも事実でございます。そういった面については私ども今後とも全力を挙げて努力してまいりたいというふうに考えております。
  45. 喜岡淳

    喜岡淳君 今のところは政治家の関与はないというお答えでございましたが、この損失保証を受けた取引先のリストというのは公表されるおつもりはあるでしょうか。
  46. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) その点は、先ほど申しましたように、今私ども調べておりますもの自身がいわゆる任意の形で調べております。そういった意味で、いろいろな先ほど申しました検査と同様な問題もございますので、そういった取引先のリストといったものについて公表することは現在考えておりません。
  47. 喜岡淳

    喜岡淳君 それでは次の質問に移らせていただきます。  六十一年度の財政運営でありますけれども、この年の予算の特徴はいわゆるマイナスシーリングであっただろうというふうに思います。マイナスシーリングを生んだために六十一年度の社会保障制度の改悪というのが行われました。  老人医療費の自己負担の問題で言いますと、外来の人は一カ月四百円だったのが八百円にこの年に負担が増大をいたしておりますし、入院につきましては、二カ月間だけ一日三百円でありましたけれども、退院するまでずっと毎日四百円払ってくれと。このほかにも社会福祉予算が五・二%マイナス、中小企業対策予算はマイナス五・一%、教育関係はマイナス九・一%。私たちの一番大事な食べ物、食糧管理費などは実に一四・三%も減らされたわけであります。反対に、防衛費は六・五八%の増、海外協力の経済協力費も六・三%の大幅増となっておりますが、これはマイナスシーリソグを生んだ結果こういうふうな予算編成になったんではないかと思います。  そういう意味で、六十一年度の税収見込みが正確に行われておったならばもっと違った形の財政配分といいますか、予算配分ができたのではないかというふうに思いますけれども、その点はどうでしょうか。
  48. 藤井威

    政府委員藤井威君) 六十一年度の予算の中身についてのお話がございました。  当時は、非常に厳しい、相当額の赤字特例公債を発行するというようなことを余儀なくされるような財政運営の中で、概算要求の段階からいわゆるマイナスシーリングと呼ばれております概算要求基準を設定いたしまして、各省庁の要求の段階でできる限り重点的、効率的な要求をしていただくように各省庁にお願いいたしました。それに基づきましてできる限りの予算の重点化、効率化を図ってそういう予算をつくったわけでございます。いずれにいたしましても、当時の段階におきましては、あの厳しい財政状況の中でああいうふうな厳しい予算を編成したということは我々としても正しかったというふうに考えております。
  49. 喜岡淳

    喜岡淳君 税収の見積もりが正確に行われているのが予算の大前提になってくるわけでありますけれども昭和六十一年度の租税印紙収入について御質問をいたします。  当初予算から比べますと、決算として最終的に入ってきた租税印紙の収入は開きが非常に大きいだろうと思うんです。当初の見積もりとしては四十兆五千六百億円でしょうか、決算してみますと実際は四十一兆八千七百六十八億円入ってきておるわけで、その開きは一兆三千百六十八億円であります。つまり当初の予算と比べますと三・二%余計に入ってきたという結果になっております。  予算と決算というのは非常に難しいだろうと思います。一〇〇%正確な予測は難しいだろうと思いますが、この三・二%の違い、あるいは補正予算と比べますとさらに六・四%も開いていくわけでありますが、こういうふうに大きく開いたことについてどういうふうにお考えでしょうか。つまり、正確な見積もりは、一〇〇%全く誤差のない見積もりは難しいけれども、この程度という誤差の認識なのか、これは非常に大きい誤差だというふうに認識をされているのでしょうか。
  50. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは結果的に今委員が御指摘になるような御疑念が出ることは当然であろうと存じます。ただ、その時点、私は政府の一員ではございませんでしたが、私どもが当時認識をしておりましたのは、為替レートの動向が全く読めないという中で六十一年度というものはスタートをし、そしてその中で補正の時点で相当程度の減額補正を行った年であったと記憶いたします。そして、その時点において本院または衆議院におきまして、その補正予算についての論議の時点では、政府の認識はなお甘いのではないか、もっと税収は落ち込むのではないかという大変厳しい御指摘が相次いだ年であったと記憶をいたしております。そして、私どもも実はそういう感覚をある程度持ちながら補正予算の審議に加わった記憶を持っておりますが、結果としては日本経済が非常に足腰がしっかりしておりましたこと、むしろ為替の状況は上向きに転じたといったことから、最終的に大きな税収の見積もりのプラスの誤差を生じたという結果に相なりました。  こういう点を考えまして、その予測が正確であったかどうかと言われれば、これは御指摘のとおりであります。ただ、人間の行うことの中で、私は必ずしも当時の財政当局の責任を追及できる状況ではなかった、参画した一人としてはそのような記憶を持っております。
  51. 喜岡淳

    喜岡淳君 六十一年度の当初予算と比べますと、今も言いましたように三・二%決算でいわゆる年度内の自然増収という形になっておりますが、三・二%というのをどういうふうに評価するべきなのか。  議事録も読ましていただきましたけれども、かつて、大蔵大臣を竹下大蔵大臣が務められた折に、予算と決算の誤差が一%ぐらいであれば、これは誤差のうちに入るだろう、つまり一%というのを一つの誤差としての認識を示されたと思います。そういうことで言いますと、今度は三・二%、非常に大きいだろうと思うんです。昭和六十二年度はさらに広がって一三・六%、昭和六十三年も一二・七%、またどうも最近もこのような傾向になるようであります。こういうふうに毎年毎年大幅ないわゆる年度内の自然増収といいますか、これが出てまいりますと、果たして当初予算そのものが正確度において、信頼度においてどうなのかという予算編成、税収見積もりについての責任問題も問われるのではないかと思いますが、その点についてはどうでしょうか。
  52. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 責任問題と言われますと私ども大変つろうございますけれども、たまたま竹下大蔵大臣の当時の答弁を今引用されましたが、当時、社会党の現在の政審会長でおられる伊藤先生はもっと厳しいというおしかりをされたことも事実でありまして、それが当時の認識であったことも御理解をいただきたいと思います。  ただ、そのために発射台が狂い、その後の税収見積もりにおいて大きな乖離を生じております点については、これは御指摘をいただいてもその批判は甘んじて受けなければなりません。そして、できる限り正確な税収見積もりの上に立って予算編成をいたす責任が私どもにあるということは御指摘のとおりであります。
  53. 喜岡淳

    喜岡淳君 正確な税収見積もりのためには発射台をきちんと整える必要があるということだろうと思いますが、私はその発射台を整える条件として幾つかの条件があるだろうと思います。例えば景気変動、経済成長の見積もりをどう正確にするのか、あるいは租税弾性値を一体どのように適切な水準で設定をするのか、見積もっていくのか。あるいは経済構造の変化に対応した、いわゆる非製造業が非常に大きなウエートを占めておりますから、そういう意味での経済見通しのシステムの見直しとかそういうこともあるだろうと思いますが、やはり最も多く指摘されるのは例の年度区分の問題だろうというふうに思います。  この税の年度区分、私ども素人が考えても大変難しいだろうと思うんです。今来年度予算の編成をされておるだろうと思いますが、一九九〇年の四月から一九九一年の三月までの予算編成を今されておると思いますが、一九九〇年四月から九一年三月までの予算に対応する税収年度は一九九〇年六月からですね。六月から次の年を越えたところの五月までであると思うんですが、そういう認識でいいですね。
  54. 藤井威

    政府委員藤井威君) 法人税のことでございますね。一応基本的に申しますと、平成二年度に所属する法人税の税収は、平成二年度の四月決算から平成三年三月に決算が行われるいわゆる三月決算法人までの税収、これが基本でございますけれども、それをベースに考える。いわばその年度中に納税義務が発生するそれをその年度に所属させるということでございます。
  55. 喜岡淳

    喜岡淳君 その年度区分の問題で皆さんが指摘をされておるように、一年半近く将来の法人税の税収を正確に見積もらなければ税収見積もりができない、この仕組みが予測を困難にする一番大きい理由ではないかという指摘が非常に多いわけです。そういう意味で年度区分の問題について、やはりどこかでもとに戻すということを考える必要があるのではないかと思うわけでありますけれども、その点どうでしょうか。
  56. 藤井威

    政府委員藤井威君) ただいまお答え申し上げましたように、現在の税収の年度所属区分は、当該年度中に納税義務が成立している税収、これはその当該年度に所属させるべきだという基本的な物の考え方からできております。したがって、例えば平成二年三月に終了するいわゆる会計年度の法人税は平成初年度に帰属させる。ただし、出納整理期間というものがございますので、受け入れ期限は翌年度の五月三十一日まででございますので、それまでに入ってきた分でございますが、そういう処理をしておるということでございます。  この発生主義的な物の考え方に立った処理というのは理論的には一つの一貫した処理の仕方でございまして、この方式は、先生御指摘のとおり五十三年度の改正以降こういう方法をとっておるわけでございますが、我々としては理論的にも一貫した処理の仕方であるし、十年を経て定着しているとも考えられます。また、仮に五十三年度に変更された受け入れ期限をもとに戻すというふうにいたしますと、これはもう相当多額の財源手当てが必要でございます。いろんなことを考えますと、現下の財政状況もございますし、この年度区分を五十三年度以前の状況に戻すというのは極めて困難であろうというふうに考えております。
  57. 喜岡淳

    喜岡淳君 時間の関係がありますので最後にさせていただきますが、法人税の年度区分の問題につきましては発生主義ということで御説明をされましたけれども、最初に切りかえたのは実はそういうことではなかったというふうに思います。税収の不足を前倒しをすることによって補うという要因が主要な要因だったと思うわけですから、発生主義でスタートしたのではないように私は理解をいたしております。  十年かかって定着をしておるとおっしゃいますけれども、十年間の中で誤差が非常に大きくなっておるというのも事実であります。やはり健全な財政運営をするためには正確な税収見積もりというのが前提になると思いますから、景気のよい非常に自然増収のたくさん出るこの時期にひとつ大胆に年度区分をもとに戻すことについての検討をぜひお願いをいたしまして、質問の時間が参りましたので終わります。  ありがとうございました。
  58. 種田誠

    ○種田誠君 私は、決算の持つ役割と今日的な課題についてお伺いしたいと思います。  官房長官、大変お忙しい中を時間を割いていただきましてありがとうございます。  海部総理は本会議におきまして、決算審議を次の予算編成に反映させるよう努力する、この旨約束をしておりますが、今日限られた財政事情のもとで有効適切な予算執行をする必要性が強く求められておる折から、極めて有意義な発言と承りました。そこで、総理は今日決算及び決算審議についてどのような御所見を持っておるか。すなわち、ただいま喜岡委員の質問にもありましたが、いわゆる税収の見積もりの積算の違いなど、そしてまた区分の変更問題などについても今質問がされたわけでありますが、そのような問題も踏まえまして具体的にどのような視点に立ってこれからの予算編成に決算を反映させようとしているのか、お考えなどを示していただければ幸いだと思います。
  59. 森山眞弓

    国務大臣(森山眞弓君) 決算は予算の執行の実績でございまして、決算委員会におきます審査は、予算の執行が所期の政策目的を果たしているかどうかなどについて審査、検討するものでありまして、極めて重要なものであるということは総理が本会議の席上でお答え申し上げたとおりでございます。政府といたしましても、従来から予算の適正かつ効率的な執行に留意してまいっておりまして、予算編成に当たりましても決算の成果を十分反映させるように努めているところでございます。  今後とも、決算審査の重要性を十分認識いたしまして、その審査についてはできるだけ御協力を申し上げるという基本姿勢で対処してまいったところでございまして、なお一層の努力をしてまいる考えでございます。
  60. 種田誠

    ○種田誠君 日本国憲法の八十三条、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」、このように定めております。決算についても、まさに国民の意思を呈しております国会の議決を要することを求められているわけであります。  そういう中で、決算及び決算審議の政治的効果は、今官房長官が述べられましたように、過去の予算編成そして執行に対する責任を問うことである、このようにも思うわけでありますが、同時に行政執行の一体性の原則というのがございます。そういう意味から、予算編成時と決算時に仮に内閣が異なっていたとしても、決算において重大な予算執行上の問題が指摘された場合、さらには議決により決算が承認されなかった場合、このようなときに政治的責任が問われる、このように学界においては通説的見解とされているわけでありますが、ここの意味での政治的責任ということに関して官房長官はどのように御見解をお持ちでしょうか。
  61. 森山眞弓

    国務大臣(森山眞弓君) 政府は従来から、決算に関する国会審議、議決、会計検査院の御指摘等にかんがみまして、国費の効率的な使用、事務事業の運営の適正化、不当経理の発生の防止などについて特別に留意してきたところでございまして、今回提出している昭和六十一年度にかかわる決算につきましても院の御理解を得ることができるものと考えております。現段階では、政府といたしましては、決算について院の御理解が得られるように十分説明の努力を続けてまいりたいと考えております。
  62. 種田誠

    ○種田誠君 官房長官の御見解のように私どもも努力をしてまいりたいと思うのですが、先ほど来の喜岡委員の御質問にもありましたように、今回の決算の中にも、多々予算上大きくこれから反映させなければならない重要問題が指摘されているわけであります。そういうことを考えますと、決算が不幸にして御承認を得られなかった、このような事情もあるかと思われます。  そのようなことを考えた場合、過去の国会における質疑の経過などを顧みた場合に、古くは昭和二十一年七月五日の国会で、時の国務大臣金森徳次郎氏が答えております。国会決算を不承認と決議した場合、その程度に応じて責任をとらなければならないが、究極には総辞職ということを考えなければならない。さらには、第六十一回の昭和四十四年の国会でございますが、この国会におきまして佐藤榮作元総理は、決算の不承認が万一発生した場合、総辞職だけではなく国会の解散ということも当然あり得るとその覚悟のほどを明確に表明しているわけでありますが、このような過去の先輩議員の方々、また総理の御声明、そのようなことに関して今日官房長官としてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  63. 森山眞弓

    国務大臣(森山眞弓君) 昭和四十四年の佐藤榮作総理大臣の御答弁の内容につきましては、私も記録をたどってみたわけでございますが、佐藤総理は「国会の御承認を得られないようなずさんな決算や行政は行なっておりませんので、そのような心配は御無用かと存じます。」とまずおっしゃっているわけでございます。そのことは現在の内閣につきましても同じでございまして、必要でございますれば、御説明を十分尽くして御理解をいただきたいというふうに考えております。
  64. 種田誠

    ○種田誠君 私が申し上げておるのは、私どもも官房長官の、また政府の懇切丁寧な説明を賜りたいと思います。しかしながら、不幸にして本院で不承認になってしまった場合にはどういたしますかということに関してのお考えを伺いたいわけでございます。
  65. 森山眞弓

    国務大臣(森山眞弓君) 現在まさに御審議をいただいている最中でございますので、万が一不承認になった場合ということを想定して政府の対応について申し上げるということは控えさせていただきたいと存じます。
  66. 種田誠

    ○種田誠君 それじゃそのように賜っておきます。  次にもう一点だけ、官房長官お忙しい中を申しわけございませんが、お伺いしたいと思います。  憲法九十条の、立法趣旨並びに決算審査の複雑多様化、このようなことが今言われております中で、決算の充実を図る上で避けられないのは私は会計検査院の組織、権限の充実、こういうことにあるかと思います。  そういう立場から、今日会計検査院においてもコンピューターを導入したり、さらには最近においてはODA関係予算の増加に対して外務検査課を設置して、そしてこれまた厳しい事情下で検査院の補強などを努力しながら図っているわけであります。しかしながら、これだけでは私は検査院の充実強化にはまだまだ足りないのではないかと思うわけであります。と申すのも、先ほど申し上げましたように、予算執行及びその予算執行に対する国民のニーズが多方面にわたり複雑化している。そうしますと、会計検査院の役割もこれまたかなり難しくなってくることも間違いないと思います。  とりわけ、そういう中で、従前来問題になっております政府関係金融機関の財政援助、これに対して今日不自然なと言われるような肩越し検査ということがなされていることは官房長官も御存じだと思います。私は、憲法上その独立性が保障されている会計検査院が、何か似つかわぬ方法で肩身の狭い思いをして検査をしているのではないだろうかなと、そのように危惧するわけでありますし、会計検査院の強化を図りたいという政治理念からいいますと、これはそろそろ解決してやらなければならない問題ではないかと思うわけでありますが、官房長官の御所見などをいただければ幸いだと思います。
  67. 森山眞弓

    国務大臣(森山眞弓君) いわゆる会計検査院法の改正問題につきましては、前にも話題になったことを私も承知いたしておりますが、いろいろな問題点がなおあるようでございます。  第一に、自由な企業活動に対する公権力の過剰介入となるおそれがあるということ、また第二には、融資先に対しまして畏怖心を与えまして、政策金融が有効に機能しなくなるおそれがあるということなどの問題があるわけでございまして、これらのことから法改正というところまでは困難であるというふうに考えられるわけでございます。  しかし、政策金融に著しい支障を生じないで会計検査の充実強化を図るということは当然のことでございますので、会計検査院、内閣、大蔵省の三者で十分協議を行いまして、その結果を踏まえた上で、昭和六十年の二月、いわゆる肩越し検査の充実を内容といたしました内閣官房副長官通達というものが出されたわけでございます。大蔵省など関係省庁におきましては、この通達の趣旨に沿いまして、会計検査院に対して一層の協力を行いますよう政府関係金融機関を指導しているところでございます。その結果、従来いわゆる肩越し検査の実施されていなかった政府関係金融機関におきましてもいわゆる肩越し検査が実施されるようになりましたり、会計検査院検査機能は一層充実したものと認識しているところでございます。
  68. 種田誠

    ○種田誠君 ただいまの官房長官の答弁を伺いまして、昭和五十四年当時と全く変わってないのかな、このようにも思いまして、ちょっと残念だったんですが、問題は肩越し検査、あくまでもいわゆる任意の協力を得られた上での検査調査システムであります。  ということは、やはり検査官にとってみればまさに自分の権限が裏打ちされていない中での心理的な負担を受けての調査であるかとも思われるわけであります。特に何もなければ問題はないわけでありますが、会計検査というのはまさに何か問題があろうとされるところにこそ大きな意味合いがあるわけであります。そういう場合、何らかの政治的な理由やその他の事由によって断られた場合、そこに至って会計検査検査ができないんだということでは、冒頭申し述べましたように、決算が極めて重要視される今日さらに積極的に取り組みたいというお考えからしますと、何かもう一歩前向きの姿勢があってもよいのではなかろうか、このように思うわけであります。会計検査院の皆様方のこれからの努力、充実にこたえるためにもさらに一層の御検討をお願いしたいと思います。  官房長官、お忙しそうでございますので、大変ありがとうございました。  次に、会計検査院法の改正に関しまして、官房長官御退席でありますが、会計検査院の方に伺いたいと思います。  先ほどの官房長官の答弁にもありましたように、政府としても決算の充実を図る、このような視点に立ってこれからの行政を進めるということでありますが、先ほどの会計検査院法の改正、とりわけ肩越し検査を法体系上整備を図るということに関して、昭和五十九年七月九日の中曽根元総理大臣国会における、改正法案は今日提案することは困難である、このような言明によってどうも日の目を見なかったようであります。それまでの間に会計検査院においてもその改正の必要性を訴えられてそれに対応する法案の整備などもしたと思われるんですが、なぜ会計検査院はその後この改正を断念しているのでしょうか。その点についてのお考えを伺いたいと思います。
  69. 中村清

    会計検査院長(中村清君) 会計検査院といたしましては、今おっしゃいましたように、五十四年の五月に会計検査院法の法案の改正要綱というものをお出しいたしまして、そのときに会計検査院としての考え方は十分にお示ししたところでございます。ただ、事柄が何分にも重要な立法政策の問題である、さらに政策論議に関する問題である、こういう点からいたしまして、私どもといたしましては国会及び内閣においてさらに高度な御判断をいただきたい、こういうことで今日までまいったわけでございます。
  70. 種田誠

    ○種田誠君 そうしますと、もう少し具体的に述べてほしいんですが、今日においても会計検査院においてはこの肩越し検査と言われる検査に対して法を改正する意思というのはあるというふうに言ってよろしいんでしょうか、それとももうそのことは不必要になったんだというふうに考えておるのでしょうか。どちらでしょうか。
  71. 中村清

    会計検査院長(中村清君) 確かに肩越し検査というのは融資機関の協力が必要であるという意味におきましては法律上の権限に基づく検査とは異なっているわけでございます。しかし、協力が得られるという限りにおいてはその検査の実態というものは何ら内容的に変わるものではない、こういうふうに考えているところでございます。しかも、私どもとしましては、融資先の検査というものは一年でも休むわけにまいりません。  そういう形で現在御協力が得られている肩越し検査の方法をもってやってきたわけでございますし、ただいま官房長官もおっしゃいましたように、肩越し検査ということで今後とも協力してまいりたい、こういうお話は従来でもたびたびお話がございましたので、私どもとしましてはこの肩越し検査を行う限りにおいては公権力の過剰介入ではない、さらに政策金融の障害にもならない、こういうふうな考え方でございますので、その御協力というのは今後とも十分やっていただけるというふうに考えて検査を進めているところでございます。
  72. 種田誠

    ○種田誠君 そうしますと、事実上六十年のいわゆる藤森官房副長官の通達以降今日まで、いわゆるこの肩越し検査に関しては、検査院としては問題ある対応に遭遇したことはないので、このような状態のまま検査をしていっても差しさわりはないと思うと、このように承りたいと思うんです。ただ問題は、そうであるならば会計検査院がみずからこの院法改正をしてさらに検査充実を図ろうとして、先ほど官房長官が、また今会計院の方でも述べられました理由、それに対してかつては、いわゆる現行法においても純粋の私契約であっても検査対象となっておって、高い公益性の理由があれば当然認められるんだとか、それから二分の一以上の出資法人に対する検査検査院の法律上職責とされている立場からいって最小限度の調査権が及ぶのだとか、幾つかの理由を述べてその立法の必要性を述べてきたと思うんです。その必要性は今日も変わらないと思うんです。  したがいまして、むしろ私は、会計検査院そのものとしては今おっしゃられたような形で当面の対処ができるかと思いますが、現実に肩越し検査というまさに肩身の狭い思いで心理的な不安を覚えながら検査業務に携わる検査員にとっては大変な御苦労だろうと思うわけです。そういう意味で、これを法文化できる余地があるものならばやはり法の改正を行いまして正々堂々と会計検査業務が行えるようにしてあげるのが今日的課題ではないだろうかと思うわけでありますが、もう一度この点に関する会計検査院の御見解を賜りたいと思います。
  73. 中村清

    会計検査院長(中村清君) 先ほどもお話ございましたけれども、五十六年の七月に翁通達というのが出まして政府としての協力方針が打ち出されたわけでございますが、さらに六十年の二月に至りましていわゆる藤森通達が出されまして、その内容につきましては、一定の条件のもとではありますけれども会計検査院が融資先について協力を要請した場合にはこれに応ずるものとするというふうな形で言っておりまして、私どもは、この通達の内容はもちろんでございますが、政府全体の御協力ということもございまして、現在は支障なくやっております。当面この肩越し検査の方法で、私どもとしては一日も検査を休むわけにまいりませんので、その点に沿って検査を続けていきたい、こう考えております。
  74. 種田誠

    ○種田誠君 一日も早く法改正に向けての御努力をお願いしたいと思うわけでありますが、先ほど来の官房長官の御発言、そしてまた総理の本会議における表明におきましても、決算の重要性を指摘されているわけであります。国民会計検査院に対して大きな期待を今抱いている。それがいわゆるODAなどに関する外務検査に対しての国民の声にもあらわれていると思うわけであります。  そういう意味で、今この時期に会計検査院は大変な国民の期待にこたえなければならないわけでありますが、これからその声にこたえるためにどのような創意工夫をなされて尽力していかれるか、御所見を賜りたいと思います。
  75. 中村清

    会計検査院長(中村清君) 私どもとしましては、今もお話ございましたような形で決算の重視ということが強く言われておりますので、今の院法改正問題も含めまして、全般的に私どもとしては検査の充実を図っていかなきゃならない、こう考えておりますけれども、そのためにはやはり私どもが予算の執行あるいは会計処理、その実績、さらにその決算の内容というものについてどう検査していくかというその体制をしっかりとつくっていかなきゃならない。また、従来からもその点の努力はしてきたところでございます。  今後とも、財政全般に対して常に見守っている、監視している、そういう姿勢を体制の上で強く打ち出していきたいと思いますし、さらに、現在の社会経済情勢というものは大きく変化しておりますので、そうした情勢の変化に応じたような体制というものも十分整備していきたい。それから、先ほど委員おっしゃいましたように、そのための検査効率といいますか、コンピューターその他の導入、さらには研修の問題も含めまして、私どもとしては今後とも検査の充実を図って国民の皆様の負託にこたえていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  76. 種田誠

    ○種田誠君 それでは次の質問に移らせていただきたいと思います。  国有財産、とりわけ土地の貸し付けについて伺いたいと思います。  貸付財産の対象とされている普通財産に関しては、いわゆる民法、借地借家法などの適用があるわけでありますが、類型別にはこれらの貸し付けに関しては有償貸し付け、それから無償貸し付け、さらにこの有償貸し付けの場合にはいわゆる時価貸し付け、さらに法律の規定に基づいての減額貸し付け、このような形態があるようであります。そういう中で、まず最初にこの有償貸し付けにおける時価貸し付けの件についてお伺いをしたいと思います。  私の調査によります幾つかの例を申し上げますと、この近くでは例えば帝国ホテルの一カ月の借地料は本年度は一万三千六十三円、そして後楽園の遊園地一カ月一坪当たり三千四百八十二円、目黒の雅叙園一カ月当たり千四十円、昭和電工六百二十一円、帝蚕倉庫二千二円、イワオ工業七百十一円、このような東京周辺の借地料であります。これらの借地料に関する算定基準に関して最初に伺いたいと思いますが、どのような基準に基づいて算定がなされているのでしょうか。
  77. 松田篤之

    政府委員(松田篤之君) 国有財産の貸し付けの場合の貸付料の決定の基準でございますが、私どもでは一般的に申し上げますと三年に一度貸付料の実態調査をいたします。およそ七千件程度のサンプルをとりまして、日本じゅうで貸し付けがどういうことで行われているかを決めまして、基準となる貸付料が相続税価額のどのぐらいの割合になっているのが実態であるかということを決めまして、これを営利法人、非営利法人の二つに分けて、また貸し付け開始時ごとに一応の基準を決めまして、それを一定の基準にいたします。しかしながら、最近におきます地価高騰等によってこの基準が必ずしも適用できない地域も出ておりますので、その場合には周辺におきます貸し付けの実例も参考にいたします。あるいは、かなり広大な敷地であり、なおかつ貸借料が相当の金額に上ると見込まれる場合には、民間精通者の意見も徴しまして、それぞれ適正な額を決定しているわけでございます。  今先生御指摘の数字でございますが、帝国ホテルの数字につきましては坪当たりが一万五千六百七十五円ということで、先生のお手持ちの資料時点よりもその後改定をいたしておりますが、そのような価格は今申し上げたような方法に従いましてそれぞれ適正に算定されているものでございます。
  78. 種田誠

    ○種田誠君 私、東京の内幸町の帝国ホテルのあたりの土地の時価、また後楽園や雅叙園の付近の土地の時価、よくわかりませんが、何か私たちの庶民感情からいいますと、営利を上げている事業体の一カ月の借地料、坪当たりとしては極めて安いのではないだろうか。私は茨城県の水戸市に住んでおるんですが、水戸の繁華街でも一般の借地料となりますとこんなものじゃないわけなんです。ですから、その辺どうもその算定基準に甘さがあるんではないだろうかと、このようにいわゆる国民一般的感情として思わざるを得ないわけなんですが、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  79. 松田篤之

    政府委員(松田篤之君) 財政法の九条には、国の財産というのは、法律に基づく場合を除くほかは適正な対価によれと書いてございまして、その適正な対価が何かということで、先ほど申し上げましたような方法によってその適正な対価としているわけでございます。  今おっしゃいました営利法人と非営利法人の関係でございますが、私どもの実態調査によりますと、貸し付け開始時にもよりますけれども、およそ五割から七割程度――非営利法人の場合、国の貸し付けの多くは地方公共団体等でございまして、これが非営利法人の代表的な例でございますけれども、そういったケースに比べて、営利法人の場合にはその基準となるものは五ないし七割高い算定基準になっておりますし、今の私ども調査方法、民間の実例を調査し、そして民間精通者の意見を徴するということによって適正な修正がなされており、決して民間の実例に比べて国が安い値段で貸しているということはないものと信じております。
  80. 種田誠

    ○種田誠君 私もちょっと古い国会における質疑を調べてみたんですが、昭和四十四年の五月十六日、これは衆議院でありますが、建設委員会での質疑の中にこのようなものがありました。契約更新時には権利金をいただいておる、このような答弁なんです。  私もどうもその辺がはっきりしないんですけれども、時価貸し付け、すなわち営利事業者などに対する貸し付けだと思いますが、この時価貸し付けを行う場合、契約更新をするときなどにおける権利金や、その他民間でよくありますように、建物を新築するという場合のときの新築承諾料、そういうものについてはどのように対応しておるんでしょうか。
  81. 松田篤之

    政府委員(松田篤之君) 契約の更新にもいろいろございますが、いわゆる名義書きかえであるとかあるいは増改築等、建物に変更があるとかいう場合に、民間において更新料を取る、権利金を取るという慣習が確立している場合には当然国もそれを徴取するということで行っております。  ただ、単なる契約更改のときに取るかということにつきましては、判例におきましても民間の実例におきましても、むしろそういう実例のある地域というのは東京、大阪等の都会に限られているのが実態でございまして、国の場合にはそういう場合には徴しておりません。したがいまして、建物の増改築等変更がある場合、名義書きかえがある場合には徴取しているということでございます。
  82. 種田誠

    ○種田誠君 これも過去の国会質疑の中にありました答弁の一つなんですが、政府関係者答弁によりますと、帝国ホテルあたりは借地権が約九割であるだろう、このようなことが述べられておりました。といいますと、結局もう九割方は帝国ホテルの所有に帰しておって、国の財産は一割程度であるということにならざるを得ないわけなんです。いろんな経過から国有財産を貸し付けているという経過があるかと思うんですが、やはり私、もう少しこの辺のところ、土地に対する新しい物の見方が生じている時期でありますから、関係省庁において十二分な見直しとか検討をしていただきたいと思うわけであります。  また、私は先ほど述べました幾つかの点について少ない情報源から資料を得たわけでありますが、やはりこのようなものに関しては私たちの審議に付されるような将来の努力をしていただきたいと思うわけであります。そういうことを申し添えまして、この点に関する質問は終わらせていただきたいと思います。  次に、政府開発援助関係についてお伺いしたいと思います。  御存じのように、我が国の援助は本年度百億ドルを越えて世界第一の規模となっているわけであります。さらに、これから向こう五年間ぐらいに五百億ドル以上の援助を供与していく、このような政府の位置づけになっているようであります。  私残念に思いますのは、最近とみに国民の中からさまざまな批判や疑念が表明されていることであります。朝日新聞などの報道によりましても、国内には貧しい人もいる、福祉も十分ではない、税金を使ってこれ以上外国に援助する必要があるのだろうか、援助で潤っているのは日本の企業ではないのか、援助は相手国の人々に本当に役立っているのか、援助を出すことによってその国の政権の腐敗や不正を助長している面はないだろうか、このような点からの国民の批判また疑問が今あるわけであります。その結果、昨年の総理府の世論調査でも、三九%の方々は経済協力をもっと積極的に進めるべきだ、このように表明しているのに対して、四四%の方が現在程度でいいだろうと、このようにも述べ、さらには毎日新聞などの世論調査によっても、日本国内においても経済的には困っている人がたくさんいるのだからこれ以上援助をふやすのは反対だ、こういう方が五二%もおる。先ほどの政府世論調査でも、倍増することには六〇%以上の方が反対をしている、こういうふうな実情が今生まれているわけであります。  私は、政府が向こう五年間で五百億ドルを援助するんだという、そのような方針と国民の援助意識との間に大きなずれが今生じつつあるのではないだろうか、このように思うわけであります。問題は、日本がなぜ援助すべきなのかというこの基本理念について国民が今納得をし得ないような状態にあるのではないだろうかと思うわけであります。さらに、この援助に関する手続が、省庁が多岐に分かれておる、そしてその手続も複雑である、そのようなところから国民には極めて不透明な状態になっている、こういうところからも先ほどのような疑念が生まれているのだろうと思うわけであります。  その意味で、このODAのあり方についてのまず総論的な御意見を外務省の方に伺いたいと思います。
  83. 大島賢三

    説明員大島賢三君) ただいま、なぜ我が国が開発途上国に対して援助をするのか、手続が複雑でありいろいろ問題があるという御指摘でございました。  私どもといたしましては、開発途上地域に対します日本の経済協力というものは、我が国が今日持っております経済的な力、国際社会における地位といったようなことを総合的に考えますと、やはりこの分野で日本として適切な貢献をすべきであろう、そういう中に日本の発展と繁栄の源泉もあるという考え方に基づいてやっておるわけでございます。同時に、この開発援助の仕事は、もちろん丸抱えでやっておるわけではございませんで、援助を受けます相手国の自助努力を支援していくという基本的な考え方に基づいてやっております。いろいろな制約を同時に伴うわけでございますが、いろいろな条件の中でできるだけ我が国の援助が効果を上げるように工夫を凝らし、また努力をしているわけでございます。  いろいろな批判がなされているということでございます。確かに援助量がふえてまいりますと案件の数も非常に多くなっております。それを処理する実施体制というものもややそういった援助量の増額に対して必ずしも十分でないという側面もありますけれども、全体として見ますと、私どもとしては、現地で努力しておられる関係者の皆様方のいろいろな御尽力もあって、全体としては大変に効果を上げ、かつ受け入れ国から高い評価を得ていると思っておりますが、一部分についていろいろ改善をいたすべき事項もあると思います。そういった事項につきましては、政府、関係実施機関挙げまして改善の努力をして、よりよい援助が行えるようにということで努力をいたしているところでございます。
  84. 種田誠

    ○種田誠君 冒頭申し上げましたように、日本は量においては世界一の援助国になったわけでありますが、私は、そのような日本であれば、この国際援助のあり方に関してもう少し大胆な発想のもとに世界のリーダーとしての位置づけを持つ必要があるのではないだろうかと思うわけであります。とりわけ、昨年からことしにかけまして私たちのこの地球そのものに関するさまざまな問題が提起されております。そして資源も限られているわけであります。私たちの財政も決して豊かではないわけであります。そういう中でいわゆる援助体制を確立していかなければならない。私は、日本一国が何か援助をすることによっていい思いをする、そういうものではなくて、やはり人道上の配慮、さらには最も大切なことは、発展途上国の自立体制を確立するのに寄与するということだと思うわけであります。  そういう意味で、今日においては地球的規模で援助がどうあるべきかということの協議の上に国際的な多国間援助というのをそろそろ実現する時期ではないだろうかな、そうでないとこの南北問題の解決というのは何か複雑な方向に動いてしまうおそれもあるのではないだろうかなと危惧をしているわけでありますが、ぜひともそろそろ日本の外務省が先頭に立って国際社会における新しい援助の理念をつくっていただきたい、このように思うわけであります。そういう中で、当面私はやはり日本の援助の基本理念というのを国民にはっきり示す必要があろうかと思います。  そしてさらには、先ほど外務省の方も述べられましたが、援助の量が多くなり複雑多岐に及んでいる。となれば、援助の整備一元化を図っていくために日本にそろそろもう、これだけの量を援助するのであるならば、例えば国際海外協力庁とか援助庁とか、そういうものを考える時期ではないだろうかなとも思うわけであります。さらには、今援助に関しての事前の調査、事後の評価にしても個々ばらばらの機関が行っているわけでありますが、これについてもより効率的な事前調査、事後評価などを行うためにも省庁の一元化によって行うのが急務ではないだろうかと思うわけでありますが、その辺に関する御意見をいただきたいと思います。
  85. 大島賢三

    説明員大島賢三君) 委員指摘になりました、我が国として高い志を持って臨むべきであるというところについては全く同感を禁じ得ないところでございまして、まことに我が国に対しまして、開発途上国だけではなくて先進諸国からもそうでございますけれども日本の貢献に対する期待というのが日増しに強くなっている。そういう中で、いわゆるお金だけではなくて人による貢献、さらに知恵による貢献、こういったことも含めまして大変に大きな努力をしていかなければいけない、こういう御指摘であろうと思いますが、全く同感でございます。  そういった中で、特に地球的な規模の問題、地球環境の問題であるとかあるいは開発の促進そのものでございますとか、非常に大きな挑戦があるわけでございます。国際的な多国間援助の試み、こういったことも部分的にではございますけれども、各国の援助制度、考え方、重点の置き方、いろいろ異なりますので、なかなか理想どおりにはいかない面はございますけれども、援助国が少しでも少ない資源をより有効に使って効果を上げていくように努力もなされておりますし、日本もそういった国際的な努力の中にはあとう限りにおいて参加をしているということでございます。事前調査をきちっとやるといったようなことも含めまして、それから実施をいたします案件の評価、こういったあらゆる面におきまして努力をいたしております。  その中で、日本の政府の実施体制につきましてはいろいろ改善をなすべきところはございますし、先般も行政監察の報告も得まして、有償資金協力それから無償資金協力、技術協力、各般にわたります我が国の援助実施体制につきまして相当な時間をかけまして監察を受けまして、その報告も出ているわけでございますので、そういった報告を着実に実現に移して改善に努めたいと思って現在努力をしているところでございます。
  86. 種田誠

    ○種田誠君 私がただいま述べましたことはなかなか実際の政治の中では実現していくことが不可能かとも思われますが、そういう中で最大の努力をしていただきたい。と同時に、私、来年度予算に一つだけでも具体的に実績を上げていただきたいことがあるので、この件についてお伺いしたいと思うんです。  私も実は国会に来る前、弁護士をする傍らユネスコ協会の水戸の副会長をやっておりまして、バングラデシュなどに対するいわゆる民間援助の活動をしてまいったわけであります。そういう中で、本年度、外務省の方におきましていろいろな御配慮があったことだと思いますけれども、いわゆるNGOに対する事業補助金制度や小規模無償資金協力制度、こういうことが導入されておるわけであります。私、この民間支援団体に対する援助がふえることによっていわゆる民間関係における援助に対する理解が深まる、それがひいては国民全体のコンセンサスを得るようなことにも大きく広がっていくのではないだろうかとも思うわけであります。そういう意味で、ぜひとも来年度の予算においてはこのNGOに対する小規模無償資金協力制度の充実をさらに図っていただきたいと思うわけでありますが、この件に関するお考えをいただければ幸いだと思います。
  87. 大島賢三

    説明員大島賢三君) NGO、民間援助団体の参加につきましては、もっと広い見地から現在国際的な場、例えばOECDにおきます開発援助委員会でも議論になっておるところでございまして、国民参加の援助の促進というテーマのもとに議論が進んでおるわけでございますが、その中で今御指摘のございましたNGOの果たす役割というものが非常に大きなものがあるということは既に十分認識されておるところでございます。我が国におきましても、NGOの活動というものが非常に盛んになってきており、私どももODAの立場から適切な形で支援し得るところがあれば、NGOの自主性というものは十分尊重しながら支援をしていくという考え方に立っております。そういう配慮のもとに、今年度、平成元年度からNGOの事業に対しまして、一億一千万円でございますけれども補助金の制度が導入されまして、現在実施されつつあります。  それからいま一つは、三億円の規模でございますけれども、小規模な無償資金協力の制度、これも行政監察の勧告を受けた形でございますけれども導入されまして実施されつつあるところでございまして、この小規模制度も海外におきますNGOの活動に対する支援の一環を果たしております。  そういうことで、民間援助の役割というものは私どもも十分認識いたしておりまして、この支援規模をできればさらに少しでもふやしたいということで、来年度の予算要求に向けましてもその増額を要求いたしておるところでございます。
  88. 種田誠

    ○種田誠君 NGOの援助に関しては、カナダなどにおいてはもうかなり十分な形で反省を重ねながらやられておりますので、ぜひとも協力体制をとりながら御尽力願いたいと思います。  問題は、先ほど来のお答えの中にもありましたが、昨年、ことしと行政監察によって厳しい指摘がなされたり、さらには本年の六月には国際協力事業団からも援助のあり方に関して厳しい指摘があるわけであります。六月十一日の新聞によりますと、「対ビルマODAは失敗 工業化に貢献せず」、一千四百億円は結局むだに帰してしまったのか、外務省は今後援助の形で続けるのは難しいと思うと。このような報道を見ますと、多分これは全体の援助の中ではごくごくわずかなところだと思うわけでありますけれども、一千四百億円というのはやはり無視できない金額だとも思うわけであります。そういう意味で、この間の行政監察の指摘、国際協力事業団などの指摘、とりわけ国際協力事業団の指摘は商品借款に対する指摘であります。このことに関しての外務省における改善策、どのようなお考えを持っておられるか伺いたいと思います。
  89. 大島賢三

    説明員大島賢三君) ただいま新聞報道を引用の上ビルマの案件について御指摘がございました。たくさんあります援助関係のプロジェクトの中には、これは主として相手国側のいろいろな事情、すなわち経済情勢がいろいろ変わっていく、予定されておった手当てが途中で変更になるといったようなことは、残念ながら事前の調査あるいは十分な計画にもかかわらずやはり起き得ることでございまして、そういう意味で常に非常に難しい問題を抱えながら事業をせざるを得ないという側面がございます。  その中で、ビルマにつきましては今御案内のとおりの非常に難しい状況にございます。 いろいろな案件がさらに追加的な事情によって難しい状況にありますが、今の御指摘になりました一千四百億円云々のプロジェクト、これはビルマに対します商品借款ということで、機械のスペアパーツをつくるとか乗用車をつくるとかあるいは電球をつくるとか、こういったプロジェクトに対します援助でございますけれども、これはこれなりに長い間にわたりましてビルマ国民が必要としている生活必需物資の生産にずっと役立ってきておるわけでございまして、私どもはこれが全面的に失敗しておって一千四百億円がむだになっているというふうには全く考えておりません。  ただ、この案件の実施につきましては、ただいま申し上げましたように、ビルマ情勢の混迷を一部反映いたしまして案件の実施に困難が一部見られますけれども、こういうビルマ国民の生活必需物資の生産に役立っておるというところは、私どもとしてもぜひこれは育てて国民の役に立つような形で推進をしてまいりたいと思っております。
  90. 種田誠

    ○種田誠君 会計検査院の方に伺いたいと思います。  先ほど述べましたように、今国民会計検査院に対する期待が大きいということであります。そういう中で、会計検査院においてもこれにこたえるべく一つの手段として六十二年の十二月には外務検査課を設置されて、そしてODA関係、当時問題になっておりましたマルコス疑惑なども含めましてODAに対する真相の解明、そして国民の疑惑にこたえる、このような意気込みのもとにこれまで外務検査がなされてきたんだろうと思います。そういう中で、私が知り得たのは、六十二年度の決算の中では国際航空運賃の支払い方法が問題があったという指摘が一つあるわけでありますが、これまでの間に、この外務検査の実施状況、それから効果そのものをどのように理解をされておるのでしょうか。
  91. 疋田周朗

    説明員(疋田周朗君) お答えいたします。  私ども、政府開発援助の検査に当たりましては、外務省等から提出されました計算書あるいは証拠書類などに基づきまして書面検査を行いますとともに、外務省、国際協力事業団、海外経済協力基金に対します実地検査も行うことによりまして各種の援助案件に対する調査検討を行ってきているところでございます。  これらの検査活動の一環といたしまして、現地の実態を正確に把握するということで、必要に応じまして相手国に赴きまして、我が国援助実施機関職員立ち会いのもとに、相手国の協力が得られた範囲内で現場の状況を確認したり、あるいは相手国の現場責任者から説明を受けたりなどしているところでございます。これらの検査あるいは現地の調査におきましては、我が国の援助で建設されました施設あるいは購入された機材が有効に活用されているかどうか、あるいは技術協力の成果は上がっているか、こういった援助効果の側面を重視して実施しているところでございます。本年は五カ国に赴きまして、在外公館、国際協力事業団の事務所あるいは海外経済協力基金の事務所の会計実地検査を行いますとともに、事業の現場にも赴きまして実地にその状況を確認しているところでございます。  なお、検査の結果につきましては現在検討中の段階でございます。
  92. 種田誠

    ○種田誠君 会計検査院の御努力に関しては敬意を表するところでありますが、六十二年十二月十一日の朝日新聞によりますと、会計検査院ではある程度援助実績の中に問題があるような点を把握したが、新聞記事でありますが、結果的には外務省の抵抗によって表に出なかったとか、それから、さきおとといの読売新聞でありますが、「非効率援助四百億円「ODA」会計検査院指摘」として提起されておるようであります。  こういう経過から見ますと、大変な御努力をしているのではないだろうかなと思うんですが、これが会計検査の結果として表に出ないというのは、どこか会計検査システムの中に問題があるんでしょうか。その辺のことについてお伺いしたいと思います。
  93. 中村清

    会計検査院長(中村清君) 委員指摘のように、六十一年の十二月に、それまで分かれていたODA関係の機関を一つの課に統一いたしまして、さらに六十二年の十二月には外務検査課という課をつくりまして、ODAを専門に行う、こういう形で体制を整えてきたわけでございます。そして、ただいま局長からもお話がございましたように、私どもとしましては、毎年数カ国の現地にも赴きましてその実態の把握に努めてきたわけでございますが、会計検査院として検査報告に掲記するという場合には、相手国の実態はもとよりでございますが、こちらの実施機関側の状況、そういったものを総体的に把握しまして、そしてその内容を十分検討した上で検査報告に掲記するに値するかどうか、その点の検討を経た結果、昨年までは特に掲記するに至らなかった、こういう事情でございます。  しかし、会計検査院検査というのは決して一過性のものではございませんので、本年も引き続きその点の検討を進めている、こういう状況でございます。
  94. 種田誠

    ○種田誠君 時間が参りましたので質問をやめさせていただきたいと思いますが、いずれにしろ、先ほどのお話にありましたように、外務省の協力を得ながら検査をしなきゃならないという非常に難しい検査だと思うんです。そういう意味で、この外務検査に関しては大きな壁がつきまとっているのだと思います。  私は、先ほど述べましたように、日本の援助のあり方を抜本的に考える必要があるだろう。そういう中で、できるならば、援助を受ける国との二国間協定を結ぶ場合に、この援助に関しては援助後において日本会計検査院検査を受ける場合があり得る、そのことをあらかじめ了解するとか、そういう形で何らかの対応をする中で会計検査院が十二分に機能できるようにこれからの御努力などもお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  95. 一井淳治

    ○一井淳治君 我が国の国政は三権分立の基本構造の上に立ちまして、国会国民に一番近い存在で国権の最高機関として立法活動を行うわけでございますけれども、参議院の法制局も内閣の立法能力に劣ることがないように十分な体制を組まねばならない、このように思うのは当然であるというふうに思います。特に、今回の選挙で野党の議員がふえまして、議員立法はこれからふえるということが予想されるわけでございます。  そういったことで、参議院の法制局の拡充ということについて質問したいわけでございますけれども、その前に法制局の現状について簡単な御説明をいただきたいと思います。
  96. 加藤木理勝

    ○事務総長(加藤木理勝君) 参議院法制局は、国会法の規定によりまして、議員の法制に関する立案に資するという目的を持って設立されているものでございます。その規模は定員で七十二人ございます。これは衆議院法制局も同じであると承知しております。  なお、参議院法制局の立案関係の職員は、局長を含めまして四十一人ということになっております。  以上が参議院法制局の規模に関する現状でございます。  この職員の資質を向上いたしますために、これは参議院法制局長の御所管でございますが、衆議院あるいは各省庁との人事交流を従来から進めておられるところでございます。  以上が現状でございます。
  97. 一井淳治

    ○一井淳治君 これは今後いろいろと各政党の間で協議も行わるべき問題でございますけれども、今後の法制局の拡充についてどのようなお考えなのかお聞かせをいただきたいと思います。
  98. 加藤木理勝

    ○事務総長(加藤木理勝君) これは先ほども申し上げましたように法制局長の御所管でございますが、当然法制局長におかれましても法制局の充実を図って議員立法の円滑な進展に資するように努めておられることと存じますが、さらにただいまのお話の趣旨をお伝えいたしまして、相ともに協力いたして趣旨の実現に努めてまいりたいと存じます。  なお、参議院改革協議会のような機関が再び設置されまするならば、そのような機関におきましても法制局の拡充、議員立法の立案能力を向上するために何らかの役に立つような方策の御検討をお願いしたいと存じております。
  99. 一井淳治

    ○一井淳治君 一層の充実を重ねて要望させていただきます。  次に、列国議会同盟に関連してお尋ねをいたしますけれども、年二回開催されております。議員外交の場面として非常に重要な舞台であるというふうに思いますけれども、過去は別といたしまして、最近では毎回異なった人が出席するというふうになってきております。  他国の例を見ますと、同じ議員の方が継続して参加するということで、この議会同盟の場が議員外交の場として非常にリードして外交の実を上げている国もあるというふうに思いますけれども、残念ながら日本は大国であるのに余り熱心にやっていないじゃないかという御批判も実はあるというふうに聞いております。  これもまた各党のいろんな考え方があるわけで、事務総長さんのお考えだけでは参らないことはよくわかっておりますけれども、参議院から議員の継続出席が確保できた方がいいということはこれはもう各党とも異存がないというふうに思います。そのために、しかるべき機関で申し合わせをするとか、あるいは議決をするとか、そういったことをお諮りいただきたいというふうに思うわけでございますけれども、いかがでしょうか。
  100. 加藤木理勝

    ○事務総長(加藤木理勝君) これはもう既に御案内のとおりでございますが、現在議員の海外派遣につきましては、外国議会との交流、国際会議への出席、特定事項の調査、それぞれの項目につきまして、毎年人数を定めまして、そうして各党の御推薦をお願いしているところでございます。その際に、各議員の方が任期中に一度は海外派遣に参加していただくようにという含みを持って御推薦いただいているという経緯がございます。そういうようなことから、国際会議に継続して御出席がなりがたいというような結果が出ているのであろうと存じます。  ただ、ただいまのお話のように継続して、特にIPUのようなものには継続して参加すべきであるという御意見もまた十分にお聞きしておりますし、またごもっともな御意見だろうと存じます。したがいまして、この点は議院運営委員長に御報告いたしまして、御検討をお願いしたいと思っております。
  101. 一井淳治

    ○一井淳治君 この点につきましては、与党の方からもあるいは野党の方からも個別に書面で要望が重なっておるわけですけれども、なかなか前進しないわけでこの場に出したわけですので、御配慮をお願いしたいというふうに思います。  次に、NTTの株価が非常に低迷しておる。非常に心配なわけでございますけれども、この株価の低迷の原因につきまして、分割問題が起こっている、これが大きな原因ではなかろうかということで危惧しているわけでございますけれども、その点についてはどのようにお考えでございましょうか。大蔵大臣の方からお聞きしたいと思います。
  102. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 電気通信審議会の中間答申が出されました後、それまでも多少低迷傾向をたどっておりましたNTTの株価が下落をいたしておるということは事実であります。株価というものはさまざまな要因に基づいて形成されているものではありますけれども、市場関係者の中には分割問題の報道がこの株価の動きに影響を与えているという見方があることも、委員が御指摘のとおりであります。  NTTは、何といいましても日本を代表する企業の一つでありますから、今後NTTのあり方をめぐる議論などから生じてくる市場の不透明感が払拭されまして、株式に対する投資家の適正な評価が得られることを株主の立場としても私は期待いたしているところであります。
  103. 一井淳治

    ○一井淳治君 株価というものは市場で形成されるわけでございまして、市場の評判というものは新聞を見れば一番よくわかるんじゃないか。新聞を見ますと、分割問題がもっとも大きな原因であるということで指摘されておるわけでございます。考えてみますと、現在百五十数万人という株主の方がいらっしゃるというふうに聞いておりますけれども、この方々が、今まで三次にわたる放出に当たりまして、分割されるということは知らないまま、そんなことは考えないで株式を買っていたということがあるわけでございます。  いずれにせよ、国民一人一人を大切にしなければいかぬという政治の立場もございますし、また国といたしましても、株主という立場で株価が下がると非常にぐあいがよくないんじゃないかというふうに思います。特に個人株主の保護ということは大切であると思いますので、個人株主の保護を真剣に考えるべきでないかと思いますが、郵政省のお考えはいかがでございましょうか。
  104. 有村正意

    説明員(有村正意君) お答えいたします。  NTTのあり方につきましては、六十年四月施行されました日本電信電話株式会社法の附則の第二条におきまして、会社成立の日から五年以内にそのあり方を検討するということで政府の宿題になっておりまして、現在電気通信審議会で審議をいただいているところでございます。  分割という問題が言われておりますけれども、分割されるかどうかということを含めまして、これらにつきましては今後検討される問題でございまして、現時点においてその方向が決まっているものではないのでございます。ただ、さきの十月二日の電気通信審議会の中間答申におきましては、この組織再編成に際しては「影響を受ける株主、債権者の数も極めて多数にのぼることなどもあり、」というふうに言及をされておりまして、多数の株主の存在というものについて配意する必要があるということが言われているわけでございます。  郵政省といたしましては従来、昭和六十年の制度改革の趣旨を踏まえまして、低廉で良質なサービスが提供されるということを通じまして国民利用者の福祉の増進を図るべく行政を行っているわけでございますけれども、NTTの株が個人株主等広く保有をされておりますことは、NTTの経営の安定性あるいは中立性といったような面で重要なことであるというふうに考えているところでございます。
  105. 一井淳治

    ○一井淳治君 郵政省に申し上げたいことは、NTTの分割とかあるいはNTTの料金を下げるとか、いろいろ御配慮をいただいていることはわかるんですけれども、株主の保護、これを忘れてしまったら困ると思うんです。何しろ国民の中で百五十数万人の人が株主であって、この多くの人たちは年金生活者であったり、あるいは中には給料を出し合って何人かで一株買っているというふうな、仮に今五千円下がっても同情してあげなくちゃいけないような人たちも非常にこの中には多いというふうに思うわけです。ですから、郵政省においても個人株主の保護をもっと真剣に考える必要があるんじゃないかということを質問したわけなんですけれども、そこはいかがでしょうか。
  106. 有村正意

    説明員(有村正意君) 組織再編成の問題が一つの現在の話題ということで御指摘のような問題があるということでございますけれども、仮定の問題として考えてみましても、一般に株価というのはさまざまな要因で決まるわけでございますので、組織の再編成の要因だけを取り出して株価にどのような影響があるかということを分析、予測するのはなかなか難しいのではないかと考えております。  この問題に関しまして、先ほど申し上げました十月二日の中間答申では、株価を決定する要因には当該会社の事業の展開力等種々のものがあること、あるいは組織再編成はNTT各社のパワーアップ、すなわち体質改善を図ろうとするものでありまして、株価に必ずしもマイナスの影響があるとは言えないこと、外国の通信事業者において再編成後株価が上昇した事例があること等を御指摘をいただいているわけでございます。なお、その中間答申におきまして、御指摘ございましたような、組織再編成に当たっては株主の権利の保護というものについても配意すべきであるということでございます。  いずれにいたしましても、その組織再編成の方向が決まっているわけではございませんけれども、株主の対策ということにつきましては、郵政省といたしましてはただいま申し上げたように認識しておりますし、具体的に株主対策ということになりますと、NTTの経営の責任において一義的にはお考えになることではないかというふうに思っております。  そういったことで、NTTにおいて具体的な検討が進みまして相談をいただきましたときには、NTTの事業の公益性とか他の公益事業の例等も参考にいたしまして、適切に取り組んでいきたいというふうに考えております。
  107. 一井淳治

    ○一井淳治君 非常に長い答弁をいただいてあれなんですが、端的に、郵政省は個人株主の保護について真剣に考えるのかどうか、これに答えてもらえませんか、簡単に。
  108. 有村正意

    説明員(有村正意君) 御指摘のように、百五十数万人の五株未満の株主の方がおいでになるわけでございまして、現在NTTのあり方を検討しております中でもその株主の権利保護というものについても指摘をされておるわけでございますので、郵政省といたしましても、こういった問題を議論する際にはそういうことを十分念頭におきまして検討してまいりたいというふうに考えております。
  109. 一井淳治

    ○一井淳治君 そうしたら、個人株主の保護についても真剣に今後考えていただけるわけですね。
  110. 有村正意

    説明員(有村正意君) お答えいたします。  端的に株主を区別いたしまして保護をするという方法というものについては、なかなか私ども考えにくいわけでございます。そういった意味で、NTTが株式会社として存在しておりますので、株主の権利というものについてNTTのあり方の検討の中では配意をしていかなければいけないというふうに考えておるところでございます。
  111. 一井淳治

    ○一井淳治君 それで、分割についてはNTT株を購入する時点では実は何も知らされていなかった、だまし討ちじゃないかという声が非常に今国民の間から出ておるわけでございますね。  もう一つは、証券会社営業マンといった人たちが一生懸命売り込みをやって売り込んだわけですけれども、現在大変な赤字になっている、購入した金額を割って赤字になっている、この赤字が埋められない限り次の株を持っていけないということで、営業マンの人たちもNTT株を売った先にはどうも行きにくいというふうな状況になっているわけですね。そういったことで、分割の問題については郵政省としても慎重に対処してもらわなくちゃいけないというふうに思うわけですけれども、どうでしょうか。
  112. 有村正意

    説明員(有村正意君) NTTのあり方につきましては、昨年三月、「今後の電気通信産業の在り方」ということで、電気通信審議会に諮問いたしまして中間答申をいただいております。さらに同日付で、NTT附則二条に基づきまして、とるべき方策につきまして諮問をいたしまして御審議をいただいているところでございますけれども、中間答申では、幾つかの観点から問題点を分析をいたしまして、その解決の方策について指摘をしていただいております。先ほど申し上げましたように、その中間答申も分割の一定の方向というものを示しておるものではございませんで、いろんな方策を並列に並べておるものでございます。  そういったことで、この中間答申を十分な素材といたしまして、現在審議会で審議していただいておりますものを見守っていきたいというふうに考えておりますけれども、先生の最初のお話につきましては、このNTTが発足いたしましたとき、つまり日本電信電話株式会社法の附則二条で、会社の成立の日から五年以内にNTTのあり方について検討をすることが政府の課題となっているということを御理解をいただきたいと存じます。
  113. 一井淳治

    ○一井淳治君 そういうふうに言われるんだったら、これから株を売るときには、将来分割しますよということをはっきり言うて公正に売っていただきたいと思いますね、国民が困りますから。それは今さら言うてもしようがありませんので、現時点ではやはり株価が上昇するような努力をしていただきたいという希望があるわけでございますけれども大蔵省の方では、例えば安定株主工作をしていただくとか、何か対応がいただけないでしょうか。
  114. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) NTTにつきまして、無償増資などの株主優遇策が行われるべきではないかという声があることは承知をいたしております。株主優遇策につきましては、私自身が政府保有株式の売却を進めていく立場でありますから関心を有しているところでありますけれども、基本的には、これは民営化されたNTTがその経営状況などにかんがみて判断をされるべきことである、そのように考えております。
  115. 一井淳治

    ○一井淳治君 現在NTT株が下がる傾向が強いということとして市場で言われておりますのは、NTT株には夢がないと。要するに株価というものは将来を買うものですから、夢がないととても買えない。例えば無償割り当てとか配当対策とか株主優遇対策とか、そういったものが現在の法制度の関係でできないということがあると思うわけです。もう少し郵政省の監督権を緩めてNTTが動きやすいようにして、NTTに対する人気が沸くようにする、これが必要じゃないかと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。簡単にお願いしますね。
  116. 有村正意

    説明員(有村正意君) 先生がただいま御指摘になりましたような、株主への利益還元あるいは優遇策といったことで行われますような無償割り当てとかといったようなことにつきましては、現在制度的にも認められておるわけでございます。そういったことでこれまで一〇%の配当をしておるわけでございまして、こういう制度のもとで具体的な株主への還元策を行うかどうかということにつきましては、まず第一にはNTTの経営の責任であるというふうに考えております。  そういったお話が具体的に進みましたところで私どもお話が参りましたら、NTTが公益事業としてどういうふうに取り組むか、ほかの公益事業の例というのも参考にしながら適切に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  117. 一井淳治

    ○一井淳治君 そうしたら、郵政省としてもNTTの自発的な株価上昇の努力があった場合にはこれを助ける方向で監督権を行使していくというふうにお聞きさしていただきたいというふうに思います。  次に、もう一つ市場でよく言われておりますのは、NTT株が外国投資家に開放されていないという問題です。これは確かにいろんな問題点があると思います。ですから、全面的というわけにはいかないと思いますけれども、一定の要件のもとに外国投資家に開放すべきではないかというふうに思いますが、どうでしょうか。
  118. 有村正意

    説明員(有村正意君) お答えいたします。  NTTを含みます第一種電気通信事業につきましては外資につきまして一定の考え方を持っておるわけでございまして、新しく参入いたしました第一種電気通信事業者につきましては三分の一まで認めております。ただ、NTTは我が国の基幹的な電気通信事業者として社会経済活動に不可欠な通信手段を全国において提供するという極めて強い公共性等を持っておりまして、そういった観点から、ほかの第一種事業と異なりまして外国人とか外国法人等による株式の所有を禁じているわけでございます。  現在のところ、立法当時の事情を変更するような事情が生じたというふうには考えておらないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、本件は極めて重要な問題でございまして、我が国の今後の通信政策のあり方あるいはNTTのあり方といったことを踏まえまして総合的かつ慎重に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  119. 一井淳治

    ○一井淳治君 慎重でなくて前向きに、あなたは決定権限がないわけですからこれを言うてもあれですけれども、前向きな取り組みを要望しておきたいと思います。  次に、NTT株の第四次放出を見送るということになったわけでございますけれども、これについての平成二年度の予算をどのように措置されるのか。特に私どもは、一兆三千億円のNTT株売り払い収入を予定しております公共事業の確保ということを念願としておるわけでございますけれども、そのあたりのことについて大蔵省の方からお伺いしたいと思います。
  120. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先ほどからの御論議のような状況の中で、NTT株の売却中止の決断をいたしました結果として、現在のNTTの無利子貸付制度を単純に維持することは容易ではなくなりました。しかし、本制度が目指しました地域の発展、開発などの目的が図られるように留意していくことは当然必要なことでありますし、二年度の事業の取り扱いにつきましては、その財源問題を含めまして予算編成の過程で検討してまいりたいと考えております。
  121. 一井淳治

    ○一井淳治君 現在具体的にこういうふうにして確保したいというふうな御方針がありましたら、お教えいただきたいと思います。
  122. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) それこそ先ほどの御質問でも税収見積もりを確定させてきちんとやれというおしかりをいただいたばかりでありますが、まだそこまでも到達しておらない段階でありますし、まさに予算編成の過程において十分に努力をしてまいりたいと思います。
  123. 一井淳治

    ○一井淳治君 特段の御配慮を要望いたしたいと思います。  次に、ことしの一月一日から受け取る通勤手当ですが、従来二万六千円が限度であったものが五万円になったわけでございますけれども、これが決まった後定期券の払い戻しという現象が起こっておるように聞くわけです。大蔵省あるいは税務関係の方で何かこの点について事実関係を把握しておられるでしょうか。
  124. 濱本英輔

    政府委員(濱本英輔君) 先ほど御指摘がございましたように、通勤手当の非課税限度につきまして見直しが行われまして新しい水準が決まったわけでございますけれども、それ以後におきまして一井先生御指摘のような状況が生じたということは、私どもは特に耳にいたしておりません。
  125. 一井淳治

    ○一井淳治君 私の耳にしたうわさでは、余り広範なおそれはないということがわかったわけですけれども、五万円に上がったために、企業の方が定期券を購入しておいて、実際には定期券を購入された従業員の方はマイカー通勤をしているということで、定期券を払い戻しをしているということなんです。そういったことが出てきた根拠は、結局これは五万円になったので、これまでも通勤者の通勤方法がどうもバスや鉄道などの公共交通機関からマイカーの方へ移っていくという状況があったわけですけれども、これが一層促進されているというふうな現象が出ておるということなんです。その辺はどうでしょうか、何かお聞きになったことがないでしょうか。
  126. 濱本英輔

    政府委員(濱本英輔君) お答え申し上げます。  給与所得を取得しますときに必要な経費としまして通勤費を要するわけでございますが、これを手当てしますために、企業が支給します通勤手当を非課税にいたしておるわけでございます。交通機関を利用します場合には、その所要料金というのは明確でございまして、これを企業が負担します場合の通勤手当というものを確定しやすいと思いますけれども、今おっしゃいましたように自動車によって通勤する人たちの場合を考えてみますとちょっと難しい問題がございます。と申しますのは、それぞれ通勤をします人たちがどういう種類の自動車を使うのか、あるいはどういう道を通って通勤してくるかということはそれぞれの個人に任された部分がございまして、これを非課税対象にいたします場合に、どこかにめどを設定する必要がございます。  そのめどとしまして現在やっておりますのは、民間の実態を調査いたしまして、たまたま人事院勧告においてその調査結果が明らかになるものでございますから、これを用いましてめどとするということにしておりますが、すべてのキロ数につきましてめどを設定することは困難でございますので、非常に遠距離のようなものにつきましては、先生御承知かと存じますけれども、一括してめどを決めております。一定の額を決めております。したがって、さらにそれより遠距離から通勤しますような人たちの場合には、確かにその定額ではやや気の毒なケースが生ずるということは御想像いただけようかと存じます。そういう場合につきましてプラスアルファの非課税枠を設ける必要があろうかと考えるわけでございますが、それを認めますためにはまたもう一つその上限となるめどが必要になってくる。そのめどとしまして今考えられるものは、やっぱりその方が自動車によらないで最寄りの合理的、経済的な交通経路を利用して通勤したとした場合に幾らかかるであろうか、この額をもってめどとせざるを得ないと考えておりまして、そういうルールをしいておるわけでございます。  その場合に、先生がおっしゃいましたような御指摘、今回改正後にそういう動きが生じておるということを私どもは今日までのところ耳にいたしておりません。しかし、個々のケースによりましては、多少先生がおっしゃったような実際にかかった費用との食い違いというのが出てくるということは考えられるわけでございますけれども、制度全体として見ました場合に、下限として引いておりますめどというのは民間全体の実態調査によった数字でございますし、いわば上限となります部分、これは合理的、経済的経路を通じて通勤をした場合の交通機関の通勤に要する実際の経費でございますので、その結果としてそれほど大きな不合理が生じているというふうには私は思いません。
  127. 一井淳治

    ○一井淳治君 通勤費の問題は、都市の渋滞というふうな問題あるいはバスや鉄道の赤字の問題にも絡まってくるということを御記憶いただいておきまして、次の税制改革の際にはそういったことも考えながら妥当な方向でお進みいただきたいということを要望しておきます。  次に、大臣のいらっしゃる間に、一言質問といいますか、御指導いただきたいわけでございますけれども、本州四国連絡橋公団の関係でございます。  難工事が続くこと、そして瀬戸大橋の車両通行が予想外に少ないという事態となったために、経営基盤の強化を図って、国に対して出資の増大を求めることとなっておるわけでございます。この事業の重要性にかんがみまして特別の御配慮をいただきたい、この事業を守っていただきたいと要望を申し上げますとともに、私どもの大先輩であり、かつJR四国の児島駅通過の問題等々でこの瀬戸大橋に関して大変御手腕を発揮してくださいました大蔵大臣の方から、瀬戸大橋通行料金の問題につきまして御感想なり御指導なりを賜ればと、厚かましい質問でございますが、お願いしたいわけでございます。といいますのは、地元では何とかあの橋を地域の開発、発展に使いたいという希望があるのですけれども、どうも料金が高くて十分に活用できないということがございまして、この際ですから一言お聞きいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  128. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は大蔵大臣に就任いたしますまでは、道路の方がすいておりましてJRが非常に過密状態でありますことを大変喜んでおりまして、これでJR四国は予想以上に成績が上がるなと、実は運輸大臣当時を振り返って本当に喜んでおりました。ただし今の立場になりますと、確かに委員が御指摘のとおり大変頭の痛い問題となっております。  今平成二年度の概算要求の中で、所管省としての建設省から、経営基盤強化という視点から本四公団に対しまして国及び地方の出資増についての要求が出てきております。現在予算編成作業中でもありますので、具体的に言及することは差し控えさせていただきたいと思いますが、委員指摘状況についての心配というものは恐らく同じ心であろうと思っております。
  129. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は持ち時間が少のうございますので、言葉を選んで、一秒も大事にしたい、こういう気持ちでお尋ねしますので、よろしくお願いします。  まず法務大臣にお尋ねしますが、私は、最近沖縄県内で続発しておる米軍関係者による犯罪に対して、県民の人権擁護の観点から質問します。  県内の米軍関係者の犯罪は、先月に表面化しただけでも、十月十五日に北谷町の瑞慶覧基地で民間地域を歩行中の少年に短銃が向けられた事件。十月二十九日未明に金武町で新聞配達中の婦人が米兵に殴られる事件。さらに、十月三十一日に嘉手納基地周辺でエアガンによる発射事件が数件起こり、撃たれた人が手術する事態にまでなった事件。また、今月に入っても、一日に北中城村の瑞慶覧基地近くで、米人少年らによると見られる投石で走行中の自動車のフロントガラスが割られた事件などなど発生し、およそ沖縄県以外では到底考えることのできない事件が続発しております。  そこで、こうした一連の事件について法務大臣はどのように考えておられるか、まず大臣の見解を明らかにしてもらいたい。
  130. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) お答えいたします。  沖縄における米軍関係者の犯罪は統計的に見ますと全般的には減少の傾向にあるように思われますが、最近、ただいま御指摘のありましたような米軍軍人の子供らによるエアガン、空気銃を用いました傷害事件などが新聞にも報道されております。このような事件が発生しているということは私どもも承知をいたしております。  検察当局といたしましては、米軍関係者の犯罪につきましても一般の刑事事件と同様に厳正、公平な立場をもって真相の解明に努めますとともに、事案に応じまして適正な処理を行うべきものと、そのように考えております。
  131. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 さっき申し上げた事件の中で、金武町で発生した新聞配達中の婦人が米兵に殴られる事件では、同町の議会では直ちに臨時議会を招集して全会一致で抗議決議を採択しています。この決議は、同町でたびたびこのような事件が発生しているからで、町民の怒りはもう忍従の範囲を超えておるからであります。これは金武町に限った問題ではなく、沖縄本島各地域でこの種の犯罪が発生しておるのであります。であればこそ、沖縄は戦場ではない、県民は標的ではない、直ちに演習をやめてそして基地をなくしてほしい、こういう声が世論として起こりつつあることは御承知だと思います。  そこで、法務省は人権擁護の立場から、米軍関係者による県民への暴行、傷害、殺人の犯罪についてどの程度把握しておられるか述べていただいて、そして説明するとともに、資料として提出することを私は要求いたします。
  132. 高橋欣一

    政府委員高橋欣一君) 人権擁護機関の立場から、沖縄県内で発生いたしました、発生といいますか、沖縄の人権擁護機関である地方法務局で人権侵害事件として申し出を受けました事件としては、私どもの承知している限りではございませんが、今御質問のようないわゆる刑事事件になるような事件につきましては、その刑事事件としての専掌機関の調査、処理に、私どもはまずそちらにお任せするという姿勢をとってきておりまして、そういう意味で、私ども人権擁護機関として取り上げて処理したという事件を件数としてお答えすることは、現在把握しておりませんのでできない現状でございます。
  133. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 資料として要求いたします。後で出してください、私に。  次に、私はこれまで国会において機会あるごとに、基地は諸悪の根源であるということを力説してまいりました。今回のたび重なる米軍関係者の犯罪行為は、残念ながらそれを裏づける結果となっております。  いま一つ、最近の犯罪で目立った動きを明らかにしたいが、その前に、どうして沖縄県において米軍関係者の犯罪がこのように多発するのか、その原因について法務大臣、警察庁、それぞれ明らかにしてもらいたい。
  134. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 先ほど大臣がお答えいたしましたように、数の問題といたしまして沖縄県で発生した米国軍人関係事件というのは非常に減っておるわけでございます。しかしながら、先生が御指摘のように、いろいろ地域住民の感情を刺激するような悪質な事件といいますか、そういう問題が生じているわけでございます。  検察といたしましては、個々の事件についてその犯罪の動機あるいは原因を探求する立場にあるわけでございまして、全般的にどういうわけで米軍人の犯罪が多いか、あるいは悪質な事件が多いかという一般的なことを評論する立場ではないわけでございまして、個々の事件を通じてその原因を追求し、また原因に応じた適正な処理をするものと考えております。
  135. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) ただいま刑事局長からお答え申し上げましたように、法務省といたしましては、米軍によるいろいろな事故が多発することにつきましての原因その他についてはお答えする立場にございませんけれども、起きておりますいろいろな問題につきましては、それぞれ法務省として必要な対処をしているということでございます。
  136. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この米軍関係者の犯罪で最近の特徴を挙げますと、基地内に住む青少年の犯罪があることです。さきにも触れたエアガン発射事件である。この事件概要は、沖縄、具志川両市と嘉手納、北谷両町にまたがり、自動車からエアガンが住民に向けられ、六人が被害に遭うという連続発砲事件であり、負傷した県民の中には、弾が体内に入って手術で取り出したが生命の危険さえあったというのであります。この事件は、アメリカ人少年によるハロウィン祭のいたずらだと逮捕された三人の少年が自供しておりますが、いたずらにしてはさらさら許せない。アメリカでもハロウィン祭には多少のいたずらは許される風潮があるやに聞いておりますが、最近それがエスカレートし、凶悪犯罪が多発する恐怖の日となっておると聞いておりますが、そうだとすると、この犯罪は犯罪のアメリカ化と言っても過言ではないでしょう。  そこで、嘉手納警察署はこの事件を殺人未遂で捜査しようとしておると聞いておりますが、その後の事件処理の経過はどうなっておるか伺いたい。
  137. 鈴木邦芳

    説明員鈴木邦芳君) お答えいたします。  十月三十一日に発生をいたしました少年によるエアガン使用の傷害事件につきましては、沖縄県警察におきまして事件の認知後直ちに所要の初動捜査を開始いたしまして、被害者からの事情聴取、現場の実況見分等を行うとともに、米軍当局に対しまして協力要請を行った結果、被疑者を特定いたしまして、十一月四日、少年三名を緊急逮捕しまして、十一月六日に那覇地方検察庁に送致し、さらに十一月六日に少年三名を通常逮捕いたしまして、十一月八日に那覇地方検察庁に送致をしているほかに、少年二名を任意で取り調べ、これも送致をしておるところであります。
  138. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 とことんまでとにかく納得のいかぬことは追求してもらうよう重ねて要望いたします。  次に、法務大臣にお尋ねします。  法務省設置法第二条で法務省の任務が規定され、その第六号には「人権の擁護に関する事項」が明記されております。この規定から明らかに言えることは、法務省としては、沖縄県の米軍関係者による県民に対する犯罪とそれによる人権侵害が多発している状況を放置できないところであると理解されます。そこで、県民の人権擁護の立場から法務省として、この種の米軍関係者の犯罪による県民の人権侵害の実情を調査し、その結果を国民の前に明らかにしてもらいたいことを提案します。この私の提案に対して法務大臣から御答弁願います。
  139. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 先ほど人権擁護局長から申し上げましたように、具体的な事例として申し上げることはございませんけれども、人権侵害の疑いのある事件がありました場合には、法務省といたしましては、情報収集に努めましてそれに対して適切に対処するということでございます。
  140. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、残り時間どうしても大蔵大臣中心にお尋ねしたいことは、沖縄県の厚生年金の加入者についてであります。  本土の加入者と比較して、同じ制度でありながら非常に不利益をこうむっている。その理由は戦後の混乱期に施政権が分断されたためで、その結果、厚生年金の制度が本土よりはるかにおくれて発足し、加入年数が短くなることを余儀なくされたからである。もっと具体的に言うと、本土では勤続年数と年金加入期間が同じであるのに対して、沖縄県では本土の人と同じ勤続年数であるにもかかわらず大変な不利益を受けておる。例えば月収二十七万円、勤続年数三十五年、満六十歳になる受給者の年金額を本土の人と比較すると、沖縄県の受給者は年金額が年額百万円以上も減額となっております。このことは、戦後沖縄県が住民の意思に関係なく置かれた経過からして、保険の原理である加入期間、掛金に見合った年金額ということでは済まされない切実な問題であります。この実態について大蔵大臣は、厚生大臣も経験しておられる年金の専門家であると私もお察ししておりますが、どのように思っておられるか、まず承りたい。
  141. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員が御指摘なさいましたように、確かに戦後米国の施政権下に置かれました沖縄において、厚生年金制度の本土からの発足のおくれというものはそのとおりであります。そして、そのために加入期間が短くならざるを得ないという状況がありましたことも事実です。  ちょうど復帰の時点におきまして私どもは、衆議院の社会労働委員会の理事でありましたが、各党本当に一致して政府とともに、復帰時点におきます特別措置によりまして年金額増額措置を講じるなどの対応策を講じてまいりました。そして、従来からの年金制度の枠内で可能な限りの措置を当時講じたわけでありますけれども、なお本土の年金額との間に格差があることも承知をいたしております。そして、西銘県知事を初めとして沖縄県の方々からあるいは関係団体から何回かことし私も御要請を受けました。そして、現在格差是正を求める御要望につきましては厚生省が検討を行っておられるということを私も聞いております。
  142. 千葉景子

    委員長千葉景子君) お時間ですので、あと一問でおまとめください。
  143. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 どうも済みませんが、一言言わせてください。  それでは最後に、今前向きの好意的な御答弁いただいて大変うれしく思うんですが、格差是正問題が解決しない限り、かつて佐藤総理は、沖縄が復帰しない限り戦後は終わらないと名文句を残されましたが、沖縄の戦後は終わったと言えない。格差問題が解決しない限り沖縄の戦後は終わったと言えないので、具体的に一つ一つ格差を是正してもらいたい、前向きで、そして速やかに。以上重ねて申し上げまして、時間ですのであきらめます。
  144. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今まで、あるいは対馬丸事件につき、あるいは六歳末満児童の問題につき、私どもは党派を超えて議員としても対応してまいりました。政府に入りましてもその姿勢を変えるつもりはございません。
  145. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 まず、法務省に入国管理局の出張所の整理統合の問題についてお尋ねいたします。  本年の一月二十四日の閣議で、この出張所を十五カ所整理統合するという方針が決まっておりますけれども、簡潔にこの整理統合の理由をお聞かせください。    〔委員長退席、理事一井淳治君着席〕
  146. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま委員指摘の整理統合の問題でございますが、我が国の国際化の進展ということに伴いまして我が国への入国者が急増しておる、それからまた在留外国人の活動も多様化しておる、こういう状況のもとで出入国審査業務の重点が相対的にこれまでの海港から空港へと移行しております。また、在日外国人の審査業務が大都市圏に集中するという傾向も顕著になっております。  こういう状況に対応するために、当局といたしましては、全国的な視野から組織体制の見直しを進めて適正な業務処理を図るという観点に立っておりまして、そういう観点のもとで、閣議決定を踏まえました整理統合についての計画を今検討いたしておるというところでございます。
  147. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 その十五カ所というのを選ぶ基準ですね、そういうものがありましたら教えていただきたいのですけれども
  148. 股野景親

    政府委員股野景親君) 私どもとしてこの整理統合についての計画をつくるに当たりまして基準として考えておりますところは、入国管理局出張所の適正配置ということを考えてまいります際に、まず業務量、それから最寄りの出張所からの距離、さらには交通の便などの事情を考慮いたしまして、そういうものを総合的に考慮した上で決定していく、こういう基準で臨んでおります。
  149. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 その十五カ所についてはほぼ決定されているのかどうかということをひとつお伺いしたいのと、またこれは地元の問題も絡んでくるでしょうし、一応平成五年度までというようなめどが出ておりましたけれども、どんな手順でこれからやっていかれるのかも教えていただきたいと思います。
  150. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま御説明申し上げました適正配置の基準というものに基づきまして現在計画を検討しておるところでございます。  私どもとしては、閣議決定の趣旨が大事でございますので、これを踏まえまして計画的に実施するということにいたしておりますけれども、その実施の状況については、できるだけ早期に実施はしたいということでございますが、しかしこの全体の計画を考えていくということについての十分慎重な検討を経ていくべきものと考えております。
  151. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私の地元の福岡、北九州なんですけれども、ここは実は出張所が一市に四つございまして、地元の方から要望が来ておるんです。法務省の方で既にこの四カ所を一カ所に統合していく案が出ているというようなことを聞いておるんですけれども、これは案として出ているのは事実でございましょうか。
  152. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま委員指摘の北九州市内の四カ所の出張所についてでございますが、法務省当局といたしましては、この四カ所について整理統合を行うという方向で現在地元の関係者、北九州市当局等とのお話し合いを進めてその御理解をいただく、こういうことで現在努力をいたしておるというところでございます。
  153. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 確かにこの整理統合という問題は、先ほど御指摘ありましたとおり、国際化時代、また海から空への変化、それから難民問題なんかも含めて出入国管理のあり方が非常に近年変わっているということで、その辺は十分理解できるんです。ただ、北九州市の場合を見ましたら、結局歴史的経過で四カ所ができているんですけれども、四つを一遍に一つにしてしまうというようなやり方ですね。整理統合をどういう形でやるかまだ計画中だとおっしゃいましたけれども、私が聞いた範囲では四つを一つにしてしまうというようなこういう激しいやり方というのは非常に特殊だし、ここだけだというふうに私自身は理解をしております。  そして、地元でこの出入国管理の業務自体が減っているのかということを聞きましたら、業務量自体は決っして減っていない、どちらかというと横ばいか少しふえるような傾向にもあるというようなことを言っております。  先ほど基準で言われたとおり、最寄りの出張所からの距離とか交通の便とかとおっしゃいましたけれども、北九州というところを考えれば、海岸線だけ見てもあそこは百七十キロという一都市としては全国一の海岸線を持っているというような事情もございます。また地元、市はもちろん港湾関係の人たちも、こういうふうな急激な統廃合というのは港湾の管理の著しい低下や地元経済に多大な影響を与えるということで強い反対も起きているということでもございますし、ぜひ地元と話し合った上で慎重にそれこそ対応していただきたいし、安易な整理統合は避けるべきだというふうに私自身は考えております。  この点について法務大臣、御見解ありましたら一言お聞かせ願いたいと思います。
  154. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま委員指摘のとおり、地元の関係者の方々とのお話し合いということは極めて重要であると私どもも考えておりまして、先ほど申し上げましたような方向で検討をいたしておるのは事実でございますが、実際上統合ということによって地元側にできる限り御不便がかからないようにする配慮も尽くすという努力をいたしておりますところでございますので、そういう意味で地元側の方々と十分お話し合いを続けて御理解を得るよう今後とも努力をしてまいりたいと考えております。
  155. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 大臣からも一言お聞きしたかったんですけれども、せっかくいらっしゃっているんで、何か御意見があれば一言聞かせていただけますか。
  156. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) ただいまの御質問につきましては、入国管理局長からお答え申し上げたとおりでございますが、しかし木庭委員の御発言は私の念頭にもとどめておきます。
  157. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ぜひその点はよろしくお願いいたします。  話を変えまして、予備費の問題でお伺いをいたします。  予備費については、一般的になかなか理解しにくいような面もございまして、まず当初予算を編成するときの予備費の額をずっと見ていきましても、三千五百億円という予備費の額でございますけれども、これが昭和五十五年度から十年以上も全く同額になっている。一般会計の予算に占める割合ということで見ていけば、確かに昭和五十五年の〇・八二%から平成元年を見ましたら〇・五八%ということになりますし、そういう意味では減らしていらっしゃるのかなとも受け取れるんですけれども、この予備費を計上するときの何か決定基準というものがあるのかどうかお伺いしたいと思います。
  158. 藤井威

    政府委員藤井威君) 予備費の額でございますけれども、財政法の二十四条によりますと、相当と認める金額を予備費として計上できるという趣旨の規定になっております。  問題は、その相当と認める金額がどの程度であるかということの判断でございますけれども、もともと予備費は予見しがたい予算の不足に充てるという性格のものでございますから、判断基準といいましても、あるいは積算基準といいましても、そういう明確なものを求めるということは極めて困難でございます。実際上の編成作業の上では、今委員が御指摘になりました一般会計の予算規模に対する計上割合、あるいは流動的な諸般の情勢、経済社会情勢の流動の状況、そういうものを総合的に勘案して計上しておるわけでございます。結果といたしましてここ数年三千五百億円ということで毎年計上させていただいているという形になっております。
  159. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ただ、逆に見ていきましたら、例えば五十九年―六十三年までずっと三千五百億円でございますね。ただ、補正予算を編成する際になると今度は同じように大体千五百億から千八百億円ずっと毎年減額なさっている。予見しがたいものというふうに確かにおっしゃったんですけれども、予見しがたいもので三千五百億円を計上していながら、補正予算のたびになると大体同じように半分近くを減額されている。これもよく指摘される話なんです。  こういうのを見ていくと、どうしても一般的な目には、当初予算を編成するときに必要以上に計上している、そして補正予算を組む際の何か財源にしているんじゃないかというような指摘がいつもございますけれども、この点についてどんなふうに考えていらっしゃるかもお聞かせください。
  160. 藤井威

    政府委員藤井威君) 最近の年度におきましては、時期の違いはありますけれども毎年のように補正予算を編成しているということは事実でございます。その編成時点において、仮にいろいろ予算編成後生じた事由によって新たに追加あるいは新たに出てきた財政需要、そういうようなものについては、補正予算の編成時点でわかっている分については極力予算を補正して、それで補正予算という形で国会に御提出申し上げ国会審議を仰ぐ、これが当然の筋道であろうということで、そういう追加財政需要を補正予算に計上しておるわけでございます。  このため、補正予算計上とのいわば見合いといいますか、そういう意味において、結果として予見できなかった財政需要のための予備費を減額できる情勢になった、補正予算の計上とのいわば見合いでそういう現象が起こる、こういうことでございまして、全体としましては、我々としましては財政法あるいは予備費の性格、そういったものに見合った措置であるというふうに考えておるわけでございます。
  161. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 いつもそういう答えに大体なっておるようでございますけれども、何かやっぱり十年間変わらないような面を見ていくと、予備費というものの性格上その辺を当初予算で何とかもうちょっと検討していただけないかなということをいつも思ってしまうんですけれども、それはそれで要望といたします。  もう一つ、これもいつも問題となりますというか、私たちがいつも指摘しております予備費での総理の外遊の問題をお伺いいたします。  例えば外務大臣の外遊というのは外務省の予算計上でございますし、また他の閣僚についても同じように各省庁の予算内で外遊なさるということでございますけれども、何で総理だけ予備費なのかというのは特に一般の人たちにはどうしてもわかりにくいと思うんですよね。その辺についてどういう根拠なのかということをまずお伺いしておきたいと思います。
  162. 藤井威

    政府委員藤井威君) 今委員の御指摘のとおり、例えば外務大臣の外遊にかかる費用は外務省予算で基本的に計上いたしております。各省における外遊の経費につきましては、大臣が行かれるかあるいは事務方が行くか、そういうことを別にいたしますと、行政の必要ということから、年度間にどのような国際会議にどれぐらいの期間、何回ぐらいというようなことが、過去の経験あるいは計画、それらによって事前におおむね予想できるということで、当初予算にその予想されたものを積算して計上する。その中に大臣の海外出張の経費も含めて計上するという処理をいたしております。その予算の範囲内で大臣あるいは事務方の海外への出張の総額を賄ってもらうという執行を各省にお願いする、こういう立場に立っておるわけでございます。  これに対しまして、総理の外国訪問ということになりますと、事柄の性質から見て、訪問先がまだはっきり固まらない、あるいは期間もよくわからない、そういう状況のもとであらかじめ予算を組むということは、むしろ重大な外交的な影響があるというようなこともございますし、なかなか適切な積算もできないということで、積算が非常に困難であるという事情もございます。そこで、従来から総理の外遊につきましては、日程も固まり、どの国とどの国にどの期間行かれるかというようなことが確定した段階で予備費で対処するという処理をしておるところでございます。
  163. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私も、総理の外遊というのは大体どんなふうになっているのかというのでちょっと資料をいただきまして調べてみました。  昭和五十四年の大平内閣から海部内閣までちょうど十年間なんですけれども、総理の外遊を教えましたらちょうど五十回でございました。これは質問とは関係ないんですけれども。一番多かったのは中曽根元総理でございまして、二十三回でございました。五十回を時期別に分析していくと、一月とゴールデンウイークの時期にかなり集中しておりまして、それぞれ九回ございました。また六月、九月という時期がそれぞれ六回というふうに、季節によって歴然としておりまして、これは大体毎年変わらない状況であります。また、海部総理みずからも、一月の時点で外交の懸案問題を片づけるため外国に行くのは慣例のようでもあると言われたようにたしか記憶しております。  さらに、サミットの問題です。これいつも出ますけれども、五十六年以降はもうずっと欠かさず出席されておりますし、こうなると予見できないというふうに本当に言えるのかどうかというのは甚だ疑問だというふうにも感じるんです。そういう意味で、総理の外遊の部分でも、予備費じゃなくて当初に計上しなくちゃいけない部分というのが本当は出てきているんじゃないかというふうに考えておるんですけれども、その点についてもお伺いしたいと思います。
  164. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは事務方からお答えをするより私からお答えをする方が適切ではないかと思いますので、私から答えさせていただきたいと思います。  私は、今の委員お話を伺っておりまして、確かになるほどそういうふうに過去の実績を眺めた場合にそういう御議論が出るのは無理もないなという感じを持ちました。と同時に、その時期というのをお考えをいただきますと、それは要するに国会審議のない時期なんですね。言いかえれば、もっと機動的に総理に対応してもらいたいという希望を政府として持っております場合にも、国会審議その他で動けないという状態がありますために機動的に対応できないという悩みを時々私どもは閣内にいて持つことがございます。その意味では、もう少し総理の外遊というものが機動的に対応できれば私は日本の外交にとってもっとそれは望ましいことではないかということを考えております。  現実には、例えば予算編成後通常国会再開までの間、あるいはゴールデンウイークという日本におけるお休みの集中する時期ではあるが、各国においては必ずしもそうではない時期、あるいは通常会から臨時国会への合間の時期、こうした時期を選んでいわばたまっている案件を処理しているというのが現実の姿でありましょう。そうしますと、その場合に、例えばその時期に海外に出られると予測をいたしておりましても、実は出られなかった例も何回かございます。これは委員御承知のとおり、一月に総理の外遊がなかったケースは過去にも何回かあります。お調べをいただきますと、そのときには国内においていろんな問題のあるときでありまして、現実に総理が動けなかったということであります。そうなりますと、これはやはり経常的に予算にのせられるという性格とは必ずしも言えません。  また、サミット。確かにサミットだけであればこれは予見し得る経費と言うことはできますけれども、実はそのサミットの行きがけあるいは帰りがけに他の国を訪問することが可能な余裕があるかどうか、これによっても全く実は変わってまいります。もっと小さな話を申し上げれば、場所によりましてはチャーターする飛行機の大きさそのものも、近国であれば総理の外遊においてチャーターする機材がより小型な機材で済む場合、しかし遠距離の国であればそれこそ大型機をチャーターしなければならない場合、さまざまな場合がございます。  そして何よりも、やはり首脳外交というものが、例えば予算に計上されて、どこかの国を想定したものが計上されて、何らかの場合にそれが実行できなくなった場合、これは相手国との間に非常に微妙な関係を生じます。いわば予見を与えたものがその予見どおりにならなかった場合には外交上の問題を起こすことも御承知のとおりでありまして、私は各省の閣僚の場合と総理の外遊というものにはおのずから非常に大きな性格の違いがあると思っておりますし、そうした考え方からまいりますと、総理の外遊というものについては私はむしろ予備費で弾力的に対応させていただく仕組みの方がより望ましい。私は閣内におりまして従来からそのように感じておりました。
  165. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もうちょっと聞きたい部分もあるんですけれども、私も余り持ち時間が少ないので。懇切丁寧な御答弁ありがとうございます。  きょうは実は、去る十六日に衆議院の決算委員会において我が党の草川理事がただしました、予備費が一院において承諾を得られなかった場合の政府の責任のとり方の問題をぜひお伺いしたいなと思っておるんです。本来なら大臣は、不承諸にならないよう努力いたしますとか、そうならないように期待しますという答えだけでも本当はいいのでございましょうけれども、草川委員の質問に対して懇切丁寧に答弁していただきまして、私たちにとりましても勉強になりましたし、その意味ではこのことについては心から感謝を申し上げております。  そこでまずお尋ねしたいのは、一院において承諾を得られなかった場合の政府の責任については、実は明文の規定もなくて必ずしも明らかではございません。国会そのものについては、今までの学説で、例えば国会の承諾が得られた場合には内閣の責任が解除されるとか、また不承諾の場合でも予備費支出等の法律上の効果にまで影響を及ぼさないものではあるが、不承諾になった場合の内閣の責任は政治的責任である、国会に対しての一つのこういう学説はほぼ固まっていると言ってもいいんですけれども、一院という問題になりますと全く何もございません。  そこで、さきの草川質疑におきましても、大臣は第五回国会の、昭和二十四年ですね、一部不承諾で両院の議決が一致しなかったということの場合を例に挙げて説明をいただきました。ただ、昭和二十四年第五回国会の例を私もちょっと見ましたら、この場合は衆議院と参議院で議決が違うんですけれども、それとともに衆議院でも一部が不承諾になっておりまして、参議院でも一部不承諸になるというそういうケースでございました。その意味では、今回どうなるかまだ決めているわけではございませんけれども、衆議院では六件とも予備費については既に御承諾ということになっております。ただ、参議院において今回もし不承諾ということが出た場合、こういう二十四年と違った形が出ると思うのでございます。  大臣は、予備費が承諾されなかった場合について草川氏の質疑に対して、内閣に責任が存続する旨を御答弁されたというふうに私は記憶しておるんです。もう少し詰めてお聞きしたいのは、一点目は、衆議院で承諾されたもののうち何件かがこの参議院で承諾されなかった場合なんですけれども、その責任が存続するというのは、参議院だけに対してその責任が存続するという意味であるのか、それとも依然として国会に対し責任が存続するという意味なのかということを、どちらの意味なのかなということをまずお聞かせ願いたいと思うんです。
  166. 藤井威

    政府委員藤井威君) 予備費の支出につきまして事後に国会の承諾を得なければならないということでございます。国会で御審議をいただく趣旨は、内閣の責任において行った予備費支出の当否についての国会の御判断を仰ぐものだというふうに考えております。    〔理事一井淳治君退席、委員長着席〕 その予備費支出につきまして衆議院、参議院各院で意思の表明がなされれば、内閣としては各院の御判断についてそれぞれ真剣に受けとめていくという対応をしなければならないというふうに考えております。  予備費につきまして現在まさに御審議いただいているところでございますので、万が一仮に参議院において不承諸ということになった場合、つまり一院において不承詔ということになった場合を想定して政府の対応について現在申し上げる段階にはない、現段階では差し控えたいと思いますけれども、いずれにしても、各院の御判断が出ればその御判断に対して真剣に受けとめていかなければいけないというふうに考えておるわけでございます。
  167. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ちょっとわかりにくいんですけれどもね。大臣自体が前回の場合、内閣に責任が存続するとおっしゃったものですから、私自身は、参議院でもし不承諾になったとしたら、本院のみというよりは一院でもそういうものが起きた場合は、国会に対しての内閣の責任はまだ解除されないというふうにとるのが当然だろうとも受けとめるんですけれども、その辺についてはどうですか。まだない段階ということもおっしゃってはおられるんですけれども、その辺ちょっとはっきりしなかったものですから、ぜひ教えていただければと思うんです。
  168. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、今次長が答弁を申し上げましたものが今この時点において政府としてお答えをするとすればむしろ正しい態度であろうと思います、まだ院の御意思というものは現に御判断をいただいておるさなかでありますから。  ただ、これはもうまさに私の私見ですけれども、政府の立場からして、一院において承諾をいただいたが他の一院において不承諾の意思表示がなされました場合に、憲法にいう「国会の承諾」を得られたと受けとめることは不遜ではなかろうか、私はそんな感じを持っております。
  169. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 本当にまだ審議中の問題であり、非常に答えにくい部分もあると思うんですけれども、今後いろんな意味で判断していくときに、予備費については管理という意味でいけば大蔵大臣の一応所轄になっておるものですから、ちょっと御無理な面もあるかもしれないけれどもぜひお聞かせ願いたいということで、ちょっと無理な質問だとも思います。  それともう一つ、前回の質疑の中での大蔵大臣の発言の中から教えていただきたいんです。内閣の責任という問題なんですけれども大蔵大臣は草川委員の質問に対して、内閣の責任という問題について御答弁の中で、予備費使用の目的、内容によって判断がなされるものと思う。国民に恥じない使用目的であったかどうかということであろう。またもう一つは、予備費の使用について適切であったかどうかの責任が先ほどおっしゃったみたいに内閣に存続するという旨をたしか御答弁なさったと記憶しております。  ただ、この発言なんですけれども、私が憲法の規定を持ち出すまでもないんですけれども、一応参議院というのは全国民を代表する選挙された議員でこれを組織しておりますし、その参議院がもし承諾を与えなかったという場合、これを国民に対しというような言葉になっちゃうと何か議論のすりかえのようにも感じられるような一面もございます。それから、極端に言っちゃうと、結果として何も責任を果たさないというふうに誤解されるんじゃないかなとも思ったんです、この国民に恥じない使用目的であったかどうかということであろうという発言が。ですから、内閣の責任というのは一体だれに対してとるものなのか、また、もしとるならばいつどういう形で責任をとられるのかというようなことを、私見でも結構でございますし、答えられる範囲で答えていただきたいと思うのでございます。
  170. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これはまさに非常に困難な御質問でありまして、参議院が国民の意思を代表する院でありますと同様に、衆議院もまた国民の意思を代表する院であります。その国民の意思を代表する一方の院において承諾、一方の院において不承諾という事態と申しますものは、これはいわば本当にそのどちらに力点を置いて我々としてお答えを申し上げるべきなのか非常に迷わなければなりません。  ただ、衆議院におきまして今委員が御指摘になりましたような答弁を私は申し上げたわけでありますけれども、私がその時点で頭にありましたのは、不承諸という意思表示がなされるとすれば、それに至るそれなりの理由というものは当然あるでありましょう。そうなりますと、一方の院におきまして総体として承諾をいただきました場合におきましても、他の院において不承諸をいただく理由というものがあるとするならば、政府の立場としては、その御指摘というものを真剣に受けとめながら、自後における予備費の使用についてその御指摘を十分配意しつつ行動するということになろうかと、そのように考えておりました。
  171. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 非常に今のはわかりやすうございました。  それともう一つ、これも大臣が答えていらっしゃる中で、承諾を得られるまで繰り返し提出する意向があるかどうかというふうに草川委員が尋ねたと思うんですけれども、そのときに、もちろんとっさの判断であるというふうに断りながらも、院としての意思表示があった以上は再提出には至らないと考えるという旨の御答弁をされたというふうに記憶しております。ただ、一方、これは新聞報道でまことに恐縮でございますけれども大蔵省が、承諾されるまで何回でも出し直すというような発言も実を言うと新聞報道の中でございました。そういった意味では、再提出されるのかなということにもつながってまいりますし、あの時点から随分日数も過ぎましたし、この場合、責任が存続するということは、この承諾が得られるまで何回も出すということなのかどうかということについてお答え願えれば幸いでございます。
  172. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 実は私はその記事に目を通しておりませんで、今確かにこれを見せられました。仮に大蔵省の事務方がこういうふうな回答をいたしたとしますと、随分私は軽い大臣なんだな、事務方の意思を十分教えてもらえなかったのかなと多少反省をしなければならないかもしれません。  ただ、私は、先日衆議院で申し上げましたように、院としての意思は表明されたわけでありますから、そして予備費というものの性格上、内閣の責任において支出されたという行為は法的に瑕疵を生ずるものではございませんから、その内容をその後において過去にさかのぼって変更することができないとすれば、不承諸という事実が残り、内閣の責任において支出したという事実が残り、それ以上にその状況を変更する事由というものは生じないと思います。そういう観点から考えますと、私はその使用が適切であったかどうかということについての政府の責任というものは継続すると考えますけれども、再提出をして再び院の御判断を仰ぐという事態には至らない。院の御意思もまた変更する事由はないわけでありますから、そういうことから、とっさの判断でありますけれども、私は再提出ということにはならないということを申し上げました。
  173. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 時間になりました。  最後に、先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、もし不承諾となった場合、そういう指摘された事項に真摯に耳を傾けるということをおっしゃられました。  実は我が党としては、この予備費の使用が何もかも不適当だと言っているわけではございませんで、確かに予見しがたいものであるならばやむを得ないということはもちろん考えております。ただ、先ほども例を挙げましたように、私たちといたしましては、総理の外遊旅費の問題、それから補正予算編成上のテクニックとして隠し財産化されているんじゃないかというような予備費計上のあり方、これに対しては、やはり財政民主主義や事前議決の例外としての予備費運用のあり方から見ても問題があるというふうに考えております。  そういった意味では、先ほど大臣おっしゃったように、内閣の責任のとり方というのは、国会において指摘された項目については少なくとも本年度予備費から政府において自粛するとか、例えば次年度予算を編成するときに、指摘された事項を最大限尊重する、そしてなるべく本予算に事前に計上するように変更することだろう、それが私は内閣の責任のとり方だというふうに思っておるんですけれども大臣のもう一回この点についての決意をお伺いして、終わりにしたいと思います。
  174. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 総論として私は委員の今要約をされたことに異論は決してございません。  ただ、先ほど御論議をいただきました、例えば総理の外遊という点について、もしそれを予備費を使用するのではなく予算計上せよということでありますならば、これは私は実態的に難しい。少なくとも私自身が閣内におりまして難しいなという実感を持っておりますだけに、十分研究は当然いたしますけれども、具体的にそれでは次年度予算において総理の外遊のための費用というものを予算計上するとお答えをする自信はございません。
  175. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 時間ですから。どうもありがとうございました。
  176. 高井和伸

    高井和伸君 私は、連合参議院の議員といたしまして決算委員会に代表して参っているわけでございます。そして、現在税制問題等特別委員会の委員といたしまして税制問題についても関与いたしまして、わからない世界で頑張っておるところでございます。今度の決算に当たって、こういった決算委員会でどういうことをすればいいのかというようなことで、いろいろいただいた資料をあちらこちらひっくり返し、そして読み、わからぬところを聞きながら有限の時間で今日までやってきました。  そこで感ずることは、六十一年度の決算によれば歳入決算は五十六兆円余りというような数字が出ております。そういった決算審査をするときに、我々がそういった資料を読み込んで御質問申し上げたい、こう思っていろいろ孤軍奮闘、格闘したわけでございますけれども、なかなか見えてこない。だれかに聞かないと見えてこない。国の財政というか、一番大事な政治の場面における、国民に対するサービスの提供、財貨の提供といったものを審議し、その決算がよかったのか悪かったのか、そして次年度の予算にフィードバックさせていくというような側面から、もっと真剣にわかるように書類をつくってもらいたい、そういうような一般的な感想の点から御質問申し上げるわけでございます。  ある意味では国の予算というものは大蔵省の専門官以外にわからない。国会議員でこのいただいた資料をぱっと見てぱっと読み切れる人は私の見解ではだれもおられないだろう。だれかの手助けで一セクションについて細かいことを聞けばわかるかもしれないけれども、国の財政全体を云々かんぬんできる力は到底私のような新人議員にはないというような感想を持つわけです。  今日までいろんな場面で議論されてきて、また新人議員が同じことを言っておるんじゃないかというようなことも御感想としておありかもしれませんけれども、私、法律家なものですから財政法というのを見ます。財政法を見ますと、なるほど文字どおりこういった書類を出せばよろしいというふうになっているわけでございまして、そういった数字の、まあ羅列という言葉は、事実を申し上げるわけで悪い意味ではありませんけれども、並んでいる数字を見て何を判断したらいいかというときに、やはりそれに対する説明書類、そういったものを見ていかなきゃいけない。そうすると、一般会計がある上に特別会計がある。いろんな根拠法があるわけでございますが、その根処法が単なる条文で示してある。もうそのものだけ見たところで到底だれも理解できない現状がこういった予算、決算において続いているというふうに考えるわけです。  こういった予算書、決算書について私が細かく見るというのは、私も選挙を通じて出てきた立場から、いろいろな議員の方々あるいは候補者の方々が申されるには、あの国道のトンネルは実はおれの業績だというようなPRがいろんなところでなされております。まあ私に言わせますと、国民の金を使って、国会の議決で決まっていったんだろうということを、ある議員さんがあれはおれの業績であるというようなことをおっしゃる。そうすると、いろいろめくってみるとそんなことは予算書にはどこにも書いてない。これはどういうシステムでそういうことが出てくるのかというようなことを私感じていろいろ調べるんですが、到底わからない。予算書自身に明細が、例えば国道○○号線の何々トンネルの工事費というようなことが出ているかといえば、それは出てない。  そういうわけで、私の言いたいのは、もう少し国民サイドから見て予算、決算というものがぱっとわかるようにならないものかということが私の基本的な観点なのでございます。  それで、特に大きいことで、今度の税制問題などで感ずるのは、歳入の部、予算でもそうですし決算でもそうでございますけれども、非常に根拠が淡白に書いてあります。過去の積算に基づいて出すとこんな数字であるという丸い数字がだだっと並ぶわけですね。それが一兆円、何兆円単位で出るわけです。そういったところで当局の積算根拠などがなぜあのように簡単になっているのかというところからお尋ねしたいと思います。
  177. 藤井威

    政府委員藤井威君) 御質問の点だけにお答えいたしますと、歳入予算の中で各歳入項目を、まあ歳入予算そのものも中身は非常に複雑で膨大でございますけれども、その歳入項目それぞれを所管あるいは款、項というふうに分けまして、それぞれについて簡単な積算根拠を示しております。  ただ、さらにそれにつけ加えまして、例えば租税及び印紙収入に関する予算の説明というような説明資料も別途用意いたしまして、できる限りの情報の提供ということには努めておるつもりでございます。
  178. 高井和伸

    高井和伸君 今申されたのは、例えば予算の場合は国の予算、決算の場合ですと決算説明というようなものが出ておりまして、それを読みますと、ただし書きに、これは大蔵省の有志が個人の資格で書いたものである、そこは誤解ないように、いろんな数字も未確定の部分もあるから御承知おき願いたいというようにただし書きでいろいろ書いてあります。  その努力はわかるんですが、国会審議の場において、私に言わせますと、数字以外にそういう積算根拠もぴちっと議決内容にならないものか。一つ格上げですね。参照書だとか添付書類だとか、そういった面で出ておりますけれども国会の承諾を受けるべき予算書自身をもう少しグレードアップした方が国民のためになるんだろうと思うんですよ。当局からいえば、余り拘束され過ぎたんじゃ後の変幻自在な財政運営には支障があるという面もあると思いますけれども、そこらのことについての当局の御見解はいかがでございますか。
  179. 藤井威

    政府委員藤井威君) 予算という形で今後一年間の国全体の活動の方針を、財政を伴うもの、予算を伴うものについての方針を一括してお示しして国会の御承認をいただくというのが基本的に財政民主主義の根本原則であるということはそのとおりでございますし、我々もそのつもりで事務を担当いたしております。  予算書には歳出歳入両面がもちろんございます。歳出につきましては、項という区分につきまして国会の議決をいただいて、その頃の金額はその議決をいただいた額を超えてまで執行するというようなことは原則として行政府は許されないというところから財政民主主義が始まるということで、項の区分を議決科目という形で国会にお願いするとともに、その頃の中身につきまして別途参照書という形で、予定経費要求書という形でお示ししておるということでございます。  一方、歳入面でございますが、歳入面につきましては、これはその金額で拘束するという性格のものと少し違いまして、例えば法人税ならば、歳入予算で計上した額がぴったり入ってこなければだめだとか、それ以上入っちゃいけないというような、そういう意味での議決の拘束力はないというのが通常の解釈でございます。法人税収は、国会でお認めいただきました法人税法を適切に執行することによって入ってきた額、それが当然決算額になるわけでございまして、予算でお示ししておる額はいわゆる拘束力を持たない、見込みであるというふうに理解しておるところでございます。
  180. 高井和伸

    高井和伸君 今の説明の中で、項以下についていろいろ云々するとそれは行政の立場を越えるとか何とかおっしゃいましたね。ちょっとその点もう一回。
  181. 藤井威

    政府委員藤井威君) いや、そういうことでございませんで、項という形で分類した金額、それを国会で議決をいただいて、それでその議決をいただいた金額の範囲内で政府はその予算を執行していくというのが基本であるというふうに申し上げたわけであります。
  182. 高井和伸

    高井和伸君 そうしますと、例えば国道の改修費というような一般、これ項でございますね、その数字の枠だけが国会の議決の対象である、それはそうですね。そうすると、おのおのどこの国道にどれだけ割り振るかということはそれは行政の問題であって国会審議対象じゃないと。まあ審議対象だろうけれども国会で云々かんぬんするのは数字のレベルだけであるということなんですね、簡単に言うと。
  183. 藤井威

    政府委員藤井威君) 今道路の例でございましたが、道路に関する一つの項、ちょっと資料がございませんので正確じゃないかもしれませんが、国道に関しては全体でこれだけ、あるいは道路全体がこれだけというのが一つの項であるといたしますと、それを議決の対象にしていただいておる。  ただ、その判断の材料といたしましては、当然その年間の道路建設事業費がこの程度で適当であるかどうか。財政需要というのは常に若干は不満が残るものでございますから、どの分野でも少しずつ足りない形にならざるを得ない性格のものでもございます。したがいまして、全体のバランスの中でこの金額が適当であるかどうかということを判断する、それはその中身に分け入って御審議をいただくということは当然あると思います。
  184. 高井和伸

    高井和伸君 私の理解するところによれば、国会における予算ないし決算審議は、そういった大きい枠組みの中の御議論を願いたいんであって、個々一々細かいことは行政に任してほしい、こういうことなんでしょう。
  185. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) どうもちょっと議論がかみ合っておりませんようなので、私からちょっと補足させていただきたいと思います。  今次長が申し上げました総枠の中で個別の事項について、予算審議の際に分科会の審議におきましては、例えば国道何号線の改修について本年度の事業の見込みはどうかとか、あるいは例えば何々地域における土砂崩壊の防災事業がどう行われる予定であるかとか、あるいは河川改修、特定の河川名を挙げられ、その河川工事に対してどういう対応をするかということについての御質問等、予算委員会の分科会においては私自身も行ったことがございますし、議員皆さんそれぞれのお立場で御発言をされ、細かい部分をお聞きになるということは当然ございます。ただ、その場合、お呼びをいただく政府委員あるいは説明員とか、個別の事項になりますと大蔵省ではございません。ですから、例えば建設省のそれぞれの所管局をお呼びになりその分科会等において個別の御質問があることは、それを決して拘束するものではございません。  今次長が御答弁を申し上げましたのは、主計局としての立場、予算編成の当事者としての立場で、その範囲でお答えを申し上げることを御理解をいただきたいと思います。
  186. 高井和伸

    高井和伸君 半分わかりました。あと私の勉強の世界でございますから。  続いて、先ほど歳入の場面で、見積もりについては、それは例えば法人税ならば法人税法の執行によって得られる数字であるから、予算の議決という問題とちょっと別問題だと。これはよくわかります。しかし、いろんな場面で、今度の税制問題特別委員会などで歳入の見積もりをするときに、いざ質問しようとしても、出てくる話は予算書と同じように、いろいろ勘案した結果算出した数字はこのとおりというような数字が出てくるわけですね。そういった基礎資料的なものの開陳というのはこういう予算、決算書の中では無理なんでしょうか。  例えば今度の決算書の中の歳入の部分では、非常に伸びたということを租税及び印紙収入というところで述べておられるわけです。こういったものを詳しくするかしないかはかなり裁量なんだと思うんですが、国民の立場、我々立法する立場からいえば、そういった基礎データというのは広くオープンにしていくべきじゃないか、こう考えるわけでございますが、その点いかがですか。
  187. 藤井威

    政府委員藤井威君) 国会で御審議いただくその審議対象になります予算書そのもののつくり方につきましては先ほど申し上げましたが、そこに盛り込まれた法人税収がどうとか所得税収がどうとかということにつきましての基本的な積算の考え方というようなものは、予算書の提出とほぼ同時期に別途予算の説明という文書を作成いたしまして、それで国会の各議員の皆様方には全員お配りして御参考に供しております。  決算の段階になりますと、その予算の説明に相当するものが今先生が見ておられます決算説明ということになるわけでございまして、決算書そのもののほかにそういうデータを用意いたしまして審議の便に供させていただいているというのが実態でございます。
  188. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 委員長、相済みません。一点訂正をお願いいたします。  大変失礼をいたしました。私は実は衆議院所属のために、衆議院の予算審議のやり方で分科会という御答弁を申し上げましたが、正確には参議院でありますと各委員会に対する委嘱審査ということでありまして、この点だけ訂正させていただきます。
  189. 高井和伸

    高井和伸君 私はあと、国債というか、国の借金についてどう考えたらいいかということをお尋ねしたいわけですが、現在、いろいろ数字を見ますと、国の借金は幾らかというようなところを見ますと、百八十四兆円だとか内国債の発行残が百四十七兆だとか、いろいろ数字を拾ってくるわけですが、簡単に言いまして、建設国債と通称赤字国債、これの六十一年度末でも結構ですし、現在の発行残というか借金はどのぐらいあるんでしょうか。
  190. 藤井威

    政府委員藤井威君) いわゆる公債という形で、国の借金といいますと公債のほかには借入金とかいろいろございますが、いわゆる公債ということで申し上げますと、元年度末、つまり現在の予算の執行を終わりました段階で公債の残高は百六十一兆円でございます。そのうち、いわゆる赤字国債、特例公債と言われておりますものが六十六兆円、建設国債の残高が九十五兆円でございます。
  191. 高井和伸

    高井和伸君 今のような数字、国民一人当たりに換算すると少なくとも百五、六十万以上になるんだろうと考えるわけです。  私素人なりにいろいろ考えると、こういう借金はない方がいいと簡単に考えるんですが、難しい議論というか、内需拡大だとか、例えば財政投融資の資金だとか、また建設国債のように将来の国民に負担してもらっても構わない数字があるとかいろいろ申されます。一方、国の資産もたくさんあるわけで、NTT株を売っていけばそれは国の資産として入ってくるわけで、ただ借金だけ見ていてもしようがない。国有地の不動産価格を勘案すれば幾らになるかというような問題もいろいろあります。  そうした中で、大蔵省とされましては、ただいまのような百六十一兆円の発行残、これを将来的に消すというんですか、なくしていくという方向にはあろうかとは思うんですが、どのような認識で把握しておられるのか、そしてどのようにゼロに限りなくしていくんだろうと思う我々の気持ちはそのとおりでいいのか、そこらについてお尋ねしたい。
  192. 藤井威

    政府委員藤井威君) 先ほど申しましたように公債の残高が百六十一兆円にも達している、こういう状態の背景には、昭和五十年度以降の、いわゆる石油ショック以降の経済情勢を反映した財政の危機的状況ということが背景にあって、累積してこういう形に積み上がってきておるわけでございます。  元年度について見ますと残高は百六十一兆円になるだろうということでございますけれども、実は新規に発行する国債、よくこれは我々フローという形で呼んでおりますけれども、フローで言いますと建設国債が五兆七千八百億円、それから赤字国債、特例債が一兆三千三百億円、まだ発行してやっと一般会計の収支を賄っておるというのが現状でございます。今委員が御指摘になりましたように、一番最初に取り組むべきことは、あくまでもこの赤字国債の一兆三千億円というフローの金額、新たにこれを借り増ししていく、これを何とか脱却したいというのが当面第一の目標でございます。それをまず何としてでも来年度には実現したいということで今我々非常に苦労しておるわけでございます。  その後の国債政策についてどう考えるか。建設国債は現在フローで五兆七千八百億円発行しておりますので、建設国債残高はこれから先も累積していく可能性がございます。そういう状況の中で、建設国債であるからいい、これは公共事業とか出資とか貸付金とか将来に資産が残っていく見合いのものは健全でいいんだというふうに単純に考えることのできないものであろうと我々は思っております。  建設国債といえども結局は利払い、元利負担の償還を後世代が負うわけでございますから、どの程度後世代に負担してもらえるかという、そこのところの判断が非常に重要なかぎになるわけでございまして、やはり丸々国債で賄っていくということはいいことではない。可能な限りその発行も抑制していくという財政状況を何とか次の段階として実現していきたい。そうすることによりまして残高の百六十兆円というようなものもまず累積を抑えていく。このままほっておきますと百六十兆円というのは毎年ふえていく可能性がございます。それをできる限り増加のテンポを抑え、将来はできれば何とかしていきたい、できれば減額させていきたいというようなことが、やや長期にわたりますけれども、我々財政当局として考えておることでございます。
  193. 山田勇

    ○山田勇君 ことしに入って多くの難民が我が国に上陸しておりますが、その特徴として、大人数で直接日本を目指してきたものであり、しかも政治的難民というものではなく、よりよい生活を求めて日本へ出稼ぎに来るといった経済難民と呼ばれるたぐいである点が挙げられると思います。  法務省はこの状況をどのように把握しておられるのか。また、難民の実態と申しますか、現状をぜひお聞かせください。
  194. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま委員のお尋ねのございました、本年に入りましてのボートピープルの到着状況について以下御説明申し上げます。  ことしに入りましてから十一月の二十八日現在までに我が国に到着いたしましたボートピープルの総数は三十八件、三千四百九十八名となっております。これらボートピープルの中に、ただいま委員指摘のように、迫害というものから逃がれるためではなくて、経済的な理由で日本に到着したと見られる者が含まれております。さらに、ベトナム難民を装った出稼ぎ目的の中国人が多数いることも判明をいたしております。  これらのうちで偽装難民として退去強制手続をとりました中国人は、十一月二十八日現在で千六百六十六名になっておりますが、これらの中国人については順次中国政府に引き取り要請を行い、送還交渉を行っているという状況でございます。
  195. 山田勇

    ○山田勇君 ところで、経済大国となった日本に対しまして難民の受け入れを求める声も強くなっておりますが、現在問題としておりますのは、政治的難民のことではなくいわゆる経済難民であります。このような経済難民を全面的に受け入れている国はないと思うんですが、法務省としましても、スクリーニング制度を導入して審査を進め、ベトナム難民を偽装した中国人の不法入国に対し強制退去する方針を打ち出しております。また、中国側にも偽装難民の引き取りを要請するなど、今一定の解決の方向も見られております。  法務省としては、この対応の現状をぜひお聞かせください。
  196. 股野景親

    政府委員股野景親君) ただいま委員指摘のとおり、法務省といたしましては、本年の六月に開催されましたインドシナ難民国際会議の合意を踏まえまして、その後本年九月十二日行われました閣議了解に基づいて、ベトナムからのボートピープルについて難民性を判断するために慎重な審査を行うことといたしております。この慎重な審査によって難民性が認められる場合には、これは一時庇護のための上陸を許可するということにいたしますし、また、難民性が認められない場合には、これは退去強制手続をとるということにいたしております。これはただいま委員の御指摘の問題点でございます。  他方、本年に入りまして、先ほど状況を御説明申し上げました中に触れましたとおり、ことし到着したボートピープルの中でベトナム難民を装った中国人というものがおり、そうであると判明した者については、これは不法入国容疑によりまして入国者収容所等に収容をして退去強制手続を進めており、退去強制令書というものが発付された者については順次中国政府に対して引き取り要請を行っているところでございます。このようなボートピープルについての調査は引き続き続行中でございまして、今後もまた偽装難民と判明すればこれは退去強制の手続をとることにいたしております。  こういう状況に対しまして法務当局として新たに多数のボートピープルに対応するという必要が起こっているわけでございますので、まずその多数の偽装難民を収容するために予備費をもちまして大村入国者収容所の収容施設の拡充というものを行いましたほかに、また偽装難民に対する審査等を行うために、各地方入国管理局間の相互の応援、あるいは法務省内の他部局から大村入国者収容所への応援を行うということによって対処いたしておる、こういう実情がございます。
  197. 山田勇

    ○山田勇君 十月三十日の朝日新聞によりますと、十月二十六日、東シナ海で見つかった難民は、日本側が中国政府に対し厳しく出国を取り締まるよう要請していることに対し、そんな事実は全く知らない、今でもブローカーがベトナムの出生証明書を売っていると話しているわけですが、もしこれが事実とすれば、今管理局長が鋭意努力をなさっていることが中国側ではそういう問題とされていない。いわゆる今後も偽装難民船が来る可能性は十分あると考えますが、偽装難民は法を犯し命がけで日本へ来たものの強制送還が確定的ということであれば全くむだ骨を折ったことにしかなりません。法務省としては難民問題解決について中国側に日本の方針、また日本の要請を徹底した方法で伝えるべきだと考えます。  今後の対応についてお伺いしますが、例えば出てくる地域が、ちょっと私も失念しましたが、地域があるそうなんですから、中国の政府に対してここで大いなるPRを、日本へ行ってもだめですよというようなものなぜひ徹底しなければ同じことを繰り返し、法務省もこんなことばかりやっておられないはずなんです。入国管理局の問題としてもこればかりやるわけにいかぬのですから、その対応についてひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  198. 股野景親

    政府委員股野景親君) 中国政府に対しましては、日本国政府といたしまして、累次いろいろな機会をとらえまして日本国政府のこの問題に対する立場というものを明確に伝えております。また中国政府側もこれを十分理解していると考えられます。したがって、我が国がいわゆる偽装難民というものについては不法入国者として退去強制をするという方針は中国側にも十分明確に伝わり、またそれに基づいて現在具体的な送還が実現するよう交渉を双方間で行っており、遠からずそういう送還も実現するという見込みを持っておるところでございます。  他方、ただいま委員指摘のような情報というものが報道の中にあったという点も私ども気づいておりますので、こういう情報もあるということを中国側に伝えまして、そして中国側においてボートピープルが出国をしてくる地域等におけるブローカーの活動といったものを十分取り締まり、対策を講ずるということ、そしてまた中国側において不法出国を防止していくということ、こういうことについて中国側が十分な措置をとるよう強く日本政府として要請いたしております。中国側としても日本側のそういう立場を理解して今後対応していくものと考えております。
  199. 山田勇

    ○山田勇君 一遍現地を見てくるというか、見に行くといいますか、根を絶つということから考えれば一度現地に行く予定はありませんか。
  200. 股野景親

    政府委員股野景親君) この問題は、基本的には中国政府当局がその責任において措置をとるということでございますので、私どもとしては中国側にまず第一次的な役割を果たしてもらうよう要請いたしております。  今後の問題については、これは中国側の考え方というものも大事でございますので、私どもとしては当面はまず中国側の措置を十分見るということ、さらには送還を実際に早く実現するということ、こちらに力点を置いているところでございますが、日本政府側の考え方が中国の関係の地方の当局にも十分浸透するようできる限りの努力を今後とも重ねてまいりたいと思っております。
  201. 山田勇

    ○山田勇君 次にベトナム関係ですが、ベトナム側は基本的に経済難民の帰還については同意していないようですが、法務省としてはこの点についての対応をどうするつもりですか。また、難民定住枠の拡大によって対処するということも考えているんでしょうか。  それと、最後に、今後の難民受け入れの姿勢についてでありますが、日本は狭いし人口は多いし、また特殊な社会というようなことも強調して今まで難民受け入れに消極的な態度を示してきたように思うんですが、インドシナ難民の流出は既に六十万人を超えていると言われており、各国において少しでも多くの難民を受け入れなければならない事態になっているとも考えます。日本に定住する数をふやすべきだとの国際世論も強まっているようですが、今後の難民受け入れの姿勢、対策などについてお聞かせ願いたいと思います。  何か一定の、年間仮に五千人なら五千人は受け入れましょう、そして収容所に入れて難民の場合ですよ技術指導して日本の労働力に寄与してもらう。それはある一定の期間を決めて、三年なら三年、二年なら二年と決めて、そうしてその人は日本の優秀な技術を持って国へ帰ってもらうとか、これは中国の場合でもベトナムの場合でも考えてもらわなければならないときがくるんではないかと思うんです。何かそういう一定枠を決めてそれ以外は絶対だめだというふうなことを今後とも示していかないと、国際世論的にまた批判を受けるときがあるように思うんです。  その点お答えをよろしくお願いしまして、私の質問を終わります。
  202. 股野景親

    政府委員股野景親君) 委員の御指摘になりましたのは難民あるいはボートピープルの問題についての国際協調という面であると思いますが、先ほど御説明を申し上げました我が国としてとっておる対応策というものは、まさにその国際協調という観点を踏まえた対応を行っております。  先ほど御説明いたしました新しい審査方式につきましても、これは本年の六月のインドシナ難民国際会議における合意というものを踏まえまして、日本国政府としても国際協調という観点から新しい審査制度を開始したわけでございます。その審査制度によって一時庇護のための上陸の許可を行うことが相当でないと判断されて退去強制されるということになる者については、これは先ほど申し上げました九月十二日の閣議了解に基づいて、確立された国際法現及びその他の国際合意の進展に留意しながら送還の速やかな実現ということに努めることになります。これが国際的な一つの合意に基づく日本政府としての対応策でございます。  そこで、今度は送還をベトナム政府との関係で実現する必要があるわけでございます。ベトナム側との関係において現在そういう送還が実現するということについての協力をベトナム政府に対しても求めているところでございますが、実際に送還が実現をするというまでの間は、これは入管法の規定によって入国者の収容所に収容を行っていくということでございますので、これについて定住をさせるということは考えておりません。  他方、難民性を認められるところのボートピープル、難民性を認められる者については新しい審査制度のもとでも定住枠というものを活用し、定住の道を開いておるわけでございます。この点は、累次にわたる閣議了解に基づいた定住枠というものを持っておりまして、当面、昭和六十年七月の閣議了解でインドシナ難民については一万人の定住枠をもって対応するということで臨んでおるところでございます。これまで我が国としてインドシナ難民として定住を許可いたした者は、本年の十月三十一日までに六千三百三十七名となっておりますので、そういう意味でも現行のこの一万人の定住枠というものをもって現在の時点においては対応が可能であろうと考えておりますが、引き続きそういう国際協調という観点からの配慮も十分尽くしてまいる所存でございます。
  203. 山田勇

    ○山田勇君 ありがとうございました。
  204. 一井淳治

    ○一井淳治君 お昼を過ぎまして、お待ちいただきまして大変失礼いたしました。  私は、地家裁支部の適正配置の問題につきまして、答申が出ましてから衆議院の法務委員会で質疑がありましたので、そこで論議されていないことにつきまして質問をさせていただきたいと思います。  相関表で対象になっているのが五十八庁ございますけれども、最近何庁残るのかということが話題になりつつありますけれども、どれくらいの庁を残すとか、かなりもう具体的に進行があるのでございましょうか。
  205. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 最高裁において行っております地方裁判所と家庭裁判所の支部の配置の見直しにつきまして、お忙しい国会議員の先生方に何かと御心労を煩わし、また御厄介をおかげいたしておりまして恐縮いたしております。  お尋ねの点につきましては、十月十七日に一般規則制定諮問委員会の答申をいただきまして、その直後から今月の中旬まで地元からの第二次の意見聴取を行いました。その結果を踏まえまして私どもの事務当局レベルとしての意見の詰めは一応行ったところでございます。しかし、何分、統合検討対象支部五十八のうち幾つ残し幾つ廃止するかということは最高裁判所の裁判官会議で慎重に検討され、決めていただくことでございますので、現時点で幾つ残る予定であるということは私の方から申し上げることができないわけでございます。  しかし、もともと検討対象支部五十八出しましたのは、これを全部廃止できるということとか、あるいはそのほとんどを廃止するということを予定して出したものではございませんで、個別事情を十分踏まえながら、その中で残すところ廃止するところをえり分けるという趣旨のものとして出しましたので、今回いろいろ聞かせていただきました個別事情を踏まえていただきまして、最高裁の裁判官会議で、公平な第三者の方がごらんになった場合にバランスのある結論を出されたなと思っていただけるような結論を出していただけるものと、こう私ども考えております。
  206. 一井淳治

    ○一井淳治君 相関表でございますけれども事件数と時間数が書かれておりまして、事件数を重視すべきだという意見といいますか、うわさもあるわけですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  207. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) この相関表におきます基本的指標の所要時間と事件数の一方を重視するということは私ども考えておりませんで、双方を総合的ににらみ、そしてその相関表の位置を見ながら、先ほど申し上げました個別の事情をさらに考慮して決めていくということでございます。
  208. 一井淳治

    ○一井淳治君 管轄というものは本来まんべんなく配置されているといいましょうか、地図で見ますとうまく配置ができているなというふうな感じを受けるようなことが必要ではなかろうかというふうに思います。  今回の相関表を見ますと、二つ連続あるいは三つ連続、特に三つ連続の場合は非常に影響力が多いと思いますけれども、そういうふうに数庁連ねて廃止するような場合は特別の配慮が必要ではなかろうかというふうに思うのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  209. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 御指摘のような配慮が必要であることは私どもも認識いたしております。  今回相関表を出しました際にも、二つつながっているところ、例えば兵庫県の篠山と柏原、あるいは愛媛県の大洲と八幡浜、あるいはその他佐伯と臼杵、脇町と川島などございますが、そういったところにつきましては、御承知のとおり、どちらか一つを残すという意味の相互受入庁ないしは準相互受入庁という形で相関表に掲げさせていただいております。二つ連なっているけれども、受入庁への時間が相関表で引きました太い線の範囲内に入るというところにつきましてはそういう形ではなく出しております。例えば岡山県の新見と高梁というのはこういった例に当たるわけでございますが、その場合におきましても、受入庁から遠い方の支部につきましては裁判所の所在地からの時間で見るということにはなるけれども、管内の奥深いところからの時間を見ると、それについては先生御指摘のような考慮をしなければならない、こう私どもも認識しております。
  210. 一井淳治

    ○一井淳治君 それから交通時間の関係でございます。これは時間だけでなくて交通方法と申しましょうか、陸上がつながっておりますとタクシーで、あるいは近所の人の車に乗せてもらったりして、余り足の便のない人も可能だとは思うんですけれども、船の場合はちょっと代替方法がないので離島を抱えておる場合には特別の配慮が必要ではなかろうか。あるいは既に簡易裁判所が廃止されたようなところについては人情的にもやはり配慮が必要ではなかろうかというふうなことも考えますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  211. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) お尋ねの後の方の点から申し上げさせていただきますと、さきの簡易裁判所の統廃合で簡裁を廃止いたしましたこととの関係におきましては、今回は簡易裁判所は全部存続させるわけでございますので直接的な関係はございません。しかし、簡裁を廃止され、今度また近いところの支部が廃止されるという点についての心情的なものは、私どもも程度の問題はございますが考慮しなければならないと思っております。  それから、今簡裁の関係で申し上げましたが、一点、若干特別の考慮を要しますのは、簡裁を廃止いたしました際にそこの簡易裁判所にございました家庭裁判所の出張所を廃止したところがございます。そして、今回検討対象支部になっている支部にそこの事件を受け入れたという形のところがございます。そういったところにつきましては、その支部をまた廃止するということになりますと、一度遠いところに持ってきて、さらにもう一回持ってくるという形になりますので、特別の配慮が必要かと存じます。  それからお尋ねの先の方の離島の問題でございますが、先生のおっしゃるとおり、交通事情が特殊なものがございますので十分考えなければならないと思っております。ただ、一方では、その離島に住む人口あるいはそこから出る事件数、多くの場合年間二、三件というのが多いわけでございますが、その事件数等を見て決めさせていただきたい。仮に廃止する場合におきましても、裁判所の方の法廷を開く時間を適当に来ていただきやすい時間に調節する等の措置は講じなきゃならないと考えております。
  212. 一井淳治

    ○一井淳治君 今回の支部の適正配置に当たりまして一番心配いたしておりますのは、人権の重要性と申しましょうか、個人にとりましては人権侵害というものは大変な問題でございまして、人権侵害が放置されてはならない。やはりこれはあくまで救済をされなくちゃならないということが忘れられてはならないと思うわけでございます。  衆議院での審議を拝見させてもらいますと、一泊しないとなかなか困難ではなかろうかというところもあらわれそうな雰囲気があるわけでございますけれども、できる限り地域の住民の方々が裁判所へ訴えられる道を残していただくように御努力をお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  213. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 先ほど申し上げました、開廷時間をおくらせたりあるいは閉廷時間を早める等の工夫で、できるだけ一泊しなくても裁判所に来ていただいて帰っていただくというような工夫が必要でございますし、またそのほか、残ります簡易裁判所を住民の方々に利用していただきやすいものにするとか、あるいは廃止するごく一部のところになろうかとも思いますが、家事事件関係での受け付けの機能を持ったような出張所を代償的に置くとか、そういったことを現在検討しているところでございます。
  214. 一井淳治

    ○一井淳治君 衆議院での会議録を拝見いたしますと、来年の四月ないし五月ごろから新しい受入庁の方で裁判手続を進めるというふうなことが書かれておるわけでございますけれども、できるだけ融通をきかせていただきまして、例えば一、二カ月でも待てば大部分の審理が終わってしまうというふうな庁につきましては、大部分の審理が終わるまで待って閉庁するとか、いろいろの御配慮をお願いしたいと思います。その点をよろしくお願いしたいと思います。何かその点でお聞かせいただけましたらお聞きいたしたいと思いますが。
  215. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 委員の御見解も一つの傾聴に値する見解とは存じますが、今回の乙号支部の統合の関係につきましては、私どもはやはり人的、物的設備の整ったところで事件を審理する方が、開廷間隔の問題一つにいたしましてもいい形の審理ができる、こう考えております。そういう関係では、新旧の事件を問わず受入庁で審理させていただくということが今回の適配の趣旨にかなうんだと、こう思っております。ただ、現在係属中の事件につきまして受入庁で審理することになりました場合でも、証拠調べについて出張して行うとかあるいは調停を出張して行うとか、そういった面での配慮の道はあろうと思います。  今回の適配の趣旨その他の人事異動面が円滑にいくこと等を考えますと、せっかくの御意見ではございますが、私ども事務当局としては、一斉にと申しますか、新旧の事件を問わず受入庁で審理するということで踏み切りたいと現時点では考えております。
  216. 一井淳治

    ○一井淳治君 今後ともできる限り地域の人権侵害が救われるという方向での司法行政の発展を希望いたしたいと思います。  裁判所の方はお帰りいただいて結構でございます。どうもありがとうございました。  あと予備費について二、三点だけ質問をさせていただきます。  一月から三月分の予備費につきまして、通常国会、現に継続中の通常国会に出していただければなお一層よいというふうに思いますけれども、これはいかがでしょうか。手続的には私は可能ではないかと思うんですが。
  217. 藤井威

    政府委員藤井威君) 予備費使用調書の提出時期の問題でございますが、財政法三十六条は、「次の常会において国会に提出して、その承諾を求めなければならない。」という規定がございます。この規定の解釈というようなこともございまして現在のような取り扱いをいたしております。  さらに、その上で、一―三月分の予備費使用調書を早期に、まあ次のということではなくて、そのときに開かれておる常会に提出できないかということでございますけれども、御要請につきましては、財政法の趣旨もございますが、今後とも十分検討してまいりたいというふうに思います。
  218. 一井淳治

    ○一井淳治君 できる限りその進行している通常国会に出すということで、私どもも内容を拝見しまして、予備費をまとめる、そして国会に出すという手続はそれほど時間がかかることではないというふうに思いますので、検討いただきましてそういう方向でぜひともお進めをいただきたいというふうに思います。  次に、予備費としての相当の額ですけれども、先ほども質問がなされたわけですが、最近の状況を見ますとずっと三千五百億円が計上されまして、実際に予備費として使用された額は半分以下という状況なわけですね。ですから、思い切って予備費の額を縮減するということはできないんでしょうか。
  219. 藤井威

    政府委員藤井威君) 先ほども、財政法第二十四条の規定に基づきます「相当と認める金額」というのをどういうふうに考えるかということを御答弁申し上げましたが、予備費が予見しがたい予算の不足に充てるという性格上、きちんとした基準で積算するということは事実上困難でございます。現状では、一般会計の予算規模に対する計上割合とか流動的な諸般の情勢等を総合的に勘案してここ数年三千五百億円という横ばいの金額で計上いたしております。  委員も御承知のとおりでございますけれども、実際には使用額はそれをかなり下回っているような現状でございますが、最近の財政運営といたしまして、年度途中で予算編成後に見込まれる追加財政需要ということが常に発生しまして補正予算が編成されるというような財政運営をここ数年続けております。補正予算が編成されるということになりますと、その段階でわかっております追加財政需要は極力この補正予算に計上して国会審議を仰ぐというのが筋道でございますので、そういうものは極力補正予算に計上してきているということがございます。そのために予備費の使用も少なくて済むということにもなりまして、いわば補正予算計上との見合いで補正予算の中で予備費を減額するというような財政運営を行っておりますが、現在のやり方が財政法の規定あるいは予備費というものの性格から、大体そういう性格に沿った処理ではないかなというふうに現在考えているところでございます。
  220. 一井淳治

    ○一井淳治君 予算の現実が補正予算を組むのがもう毎年恒例になっておるわけですから、そういったことを前提に予備費も組むべきではなかろうかというふうに考えます。  ところで、首相の外遊費用の問題でございますけれども、予備費に計上される理由なんですが、首相が外遊するかどうかわからないからということなんですか。もう少し具体的に聞きたいわけなんですが。
  221. 藤井威

    政府委員藤井威君) 内閣総理大臣の外国訪問があるかないかわからないからということよりも、むしろ国際情勢等諸般の情勢を勘案して適時適切に決定されてきておるというのが実際でございますし、また政治的にもそういうふうに運営されておるということでございます。したがいまして、予算編成の時点であらかじめどの程度の経費が必要かというのを積算し予見するということが非常に困難であるということが一つございます。  また、外国訪問が実施される場合には、訪問国とか時期とか期間とか具体的な計画が決定された後でその所要額について予備費で対処するというやり方をやっておるわけでございます。これを当初予算に組むということになりますと、まだ訪問先、時期、期間等が確定しない段階で組むということの持つ外交的な意味ということも考えざるを得ないということもございまして、それらを総合勘案して首相の外遊費用に予備費を使用しておるというのが実態でございます。
  222. 一井淳治

    ○一井淳治君 外務大臣の場合、自分の旅費として予定されている予算を使い切ってしまった場合、そして予想外の支出の必要があった場合には予備費は使えるんですかどうなんですか。
  223. 藤井威

    政府委員藤井威君) 外務大臣を初めとする各省の場合には、その各省における行政の必要上年度間にかなりの国際会議等が従来からもあるし、予算編成をやっている時期においてもそういうことが予測できるわけでございます。ただ、大臣が行かれるか事務方が行かれるかというようなことは別でございますけれども、いずれにしましても、大臣の海外出張あるいは事務方の海外出張合わせまして全体としてどれぐらいのそういう経費が必要かということをある程度予測し、積算して計上することが可能でございます。  実際にそうやって予算に計上いたしまして、基本は、各省において重要度を勘案し、あるいは大臣に行ってもらう会議、あるいは事務方で処理する会議、そういったものを各省で計画を立てて、その予算の範囲内で適切に執行していただくというのが現在のやり方でございます。
  224. 一井淳治

    ○一井淳治君 肝心なお答えが得られないんですが、時間でございますのでこれでやめさせていただきます。御苦労さまでした。
  225. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 午前の審査はこの程度とし、午後三時十五分まで休憩いたします。    午後一時四十一分休憩      ─────・─────    午後三時十六分開会
  226. 千葉景子

    委員長千葉景子君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、福間知之君が委員辞任され、その補欠として三上隆雄君が選任されました。     ─────────────
  227. 千葉景子

    委員長千葉景子君) それでは、休憩前に引き続き、昭和六十一年度決算外二件の審査のうち、法務省大蔵省裁判所皇室費国会会計検査院国民金融公庫日本開発銀行日本輸出入銀行決算及び予備費関係六件を一括議題とし、審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  228. 守住有信

    守住有信君 初めに、最高裁判所関係の方をお聞きしたいと思います。実務的な問題でございますので、私は実務的角度からお尋ねしたいと思います。  最初に、最高裁では地方裁判所及び家庭裁判所支部の適正配置というふうな角度からその見直しを進めておられます。私が思いますのに、三権分立の建前で、地方自治体初め地方住民の方々は行政府のサービスについては非常に密接な関係があって御認識が深いわけでございますけれども、事裁判所ということになりますとほとんど、裁判をみずから起こした経験のある方等々でないと御認識、御理解が少ないわけでございます。  去年は私も法務委員会におりましたけれども、かつて簡易裁判所の統合ということがございまして、いろんな反対運動も起こったということも承知しております。裁判を受ける権利は一番基本的な権利でございますけれども、一方では、裁判が内容を充実してしかもスピーディーに審理が行われるかという内容的な問題も、受ける形式的な権利だけでなくて非常に大事だと私は思っておりますが、冒頭申し上げましたように、地方住民の方々は非常に御関心、御不安もある、また一部では反対運動も起こり出しておる、こうも聞いております。  そこで、私に対する答弁でなくて、いわば地方住民の方々にわかりやすく、もし専門語をお使いになる場合は、なるべく常識的な言葉でこの目的なり趣旨なりを御説明いただきたいと思います。
  229. 秋山壽延

    最高裁判所長官代理者(秋山壽延君) お答えいたします。  地家裁支部の適正配置の目的を一言で申し上げますと、著しく変化した社会事情に合わなくなりました地家裁支部の配置を見直しまして、審理を一層充実したものにし、国民に良質な司法サービスを提供しよう、これが趣旨、目的ということになるわけでございます。  もう少しかみ砕いて申し上げますと、最高裁全体といたしまして、裁判所を取り巻くいろいろな環境の変化、こういったものを認識いたしまして、こういった変化に対応して国民の期待と信頼にこたえるという観点から、近時司法制度それからその運用、いろいろな角度から見直しを図っているところでございます。例えて言いますと、訴訟手続の改善もそうでございますし、また財政当局の理解を得まして、裁判所におけるOA化でございますとか人的機構の充実強化、物的設備の整備充実、こういったいろいろな施策をとっているわけでございますが、地方裁判所、家庭裁判所支部の適正配置というのもこういった総合施策の一つというふうに私ども考えているわけでございます。  つまり、現在支部というのが全国に、比較的小規模な支部、これを乙号支部と呼んでおりますが、この乙号支部が百五十七ございますけれども、そういった多くの庁では事件数が少ないために裁判官がいないわけでございます。また検事さんも対応する検察庁にいない。それから管内に弁護士さんもいない。こういうところで三者が出張して事件を処理しておりますために、御指摘の審理期間が不必要に長引く、あるいは訴訟費用、コストがかさむ、こういったあるべき審理の姿から見まして必ずしも好ましくない状態というものが現出しているわけでございます。そこで私ども、こういった支部というものを一部統合いたしまして、むしろそういったところで扱っていた事件をより人的、物的に充実した裁判所で扱う、このことが国民に対してより良質の司法サービスを提供することになるんじゃないか、こういうようなことが一つでございます。  また、それにとどまりませんで、こういった今乙号支部というものにかけております人的、物的余力の一部というものを繁忙な部門、あるいは先ほど委員の方からも御指摘がありました簡易裁判所の窓口等に人を配置したり物を配置したりしましてそういった充実を図っていく、その余力の活用、こういったようなことも考えておりまして、そういった意味では他の人的、物的充実策というものをバックアップする、こういったような関係にもあるわけでございます。  いずれにしましても、そういった内部努力で、努力できるものは努力いたしまして、より一層国民の期待にこたえるための司法充実策というものを進めていきたい、簡裁に引き続きます地家裁の適正配置とあわせてその他の充実策もあわせて進めていきたい、これが今回の地家裁支部の適正配置の趣旨、目的でございます。  以上でございます。
  230. 守住有信

    守住有信君 今いろんな角度から御説明いただきましたが、私も私の地元をいろいろ耳にしたり調べたりしておりまして、おっしゃるように裁判官もいらっしゃらない、検察官はもちろん、それから肝心の弁護士さんもお見えにならない。そこで三者が御協議になりまして、いつ裁判をやるかということで、どんどん延びてしまう、いろいろお忙しい弁護士さん方、双方でございますから。そういうふうなことで、そういう感じを非常に受けておったわけでございます。  一方では、ただ行政機関の統廃合と同じようなイメージで、行政機関は住民に密着しておりますからこれと同じようなイメージで受けとめられてしまう。かつての簡易裁判所のときもそうでございました。この間簡易裁判所の統合もなさいましたけれども、これについての結果の感じとか、いろいろ不満とか不安があのころ起こったわけでございますけれども、その後はどういう感じであろうか。地元の受けられる一番大事なのはそこでございますので、その点を中心に御説明いただいたらありがたいと思います。
  231. 秋山壽延

    最高裁判所長官代理者(秋山壽延君) 御指摘の点につきましては、今まで存置されていた簡裁、これを廃止いたしました。その簡裁に用いておりました人的、物的余力というものを残った簡裁につぎ込んだわけでございます。また、それのみならず、簡裁の事件というのは弁護士さんに依頼しない素人の方が当事者としてやれる事件というのが非常に多うございます。八割方の事件がそうでございます。  そこで、素人の方でも裁判所に訴状だとか申し立てができるようにということで、私どもあれこれと知恵を絞りまして、定型申し立て用紙及びその記載例というものをすべての簡裁の窓口に備えたわけでございます。そして御相談があれば裁判所の職員がそういった記載の仕方等についても御説明申し上げる、こういった措置もとったわけでございます。またそれから、廃止された簡裁の管内の地元の方々にできるだけ御不便をかけないようにということで、当事者からの御希望があります場合には、その廃止された区域での公民館等をお借りしまして今まで同様裁判官が出張してきて事件を処理する、こういったような措置も現にとっているところでございます。こういったような措置あるいはそういった公民館での手続相談というのもあわせて行っているところでございます。これは廃止された簡裁の大体六割のところで当事者からの、自治体からの希望がございまして今実施しているところでございます。  そういったようなあれこれ努力の最中でございますが、手前みそになりますが、私どものところには直接的に今、簡裁の適正配置の結果非常に不便が生じた、こういう声はいただいていないところでございます。  今回、地家裁支部の適正配置をいたしますと、これは支部の廃止ということでございまして、そこには必ず簡易裁判所というのが併置されてございまして、その簡易裁判所は残るわけでございますが、そういった簡易裁判所も含めましてより一層国民に親しみやすい、利用しやすい簡易裁判所というものをつくり上げていこうと鋭意努力しているところでございます。  以上でございます。
  232. 守住有信

    守住有信君 それから私がもう一つずっと長い間感じておりましたのが、これは民事事件、家事事件が中心でございますけれども、いろいろな住民の方の深層心理として、田園地帯の方でございますけれども、田園文化があるわけです。その中で争いを起こすというのは、自分のそばでというのはだんだん知られるわけでございますね。深層心理で、どっかもっと離れたところ、都会地の中でといいますか、そういう心理も動いておるんだな、民事、特に家事事件になればなるほど親族関係とかいろいろ出てくるわけでございますから。そういうのを実は感じておったわけでございます。  こういう点は、皆さん方みずから実務をずっと長い間やって裁判官の実態とかお声とかもお聞きでございましょうが、どのように受けとめておられますでしょうか。
  233. 秋山壽延

    最高裁判所長官代理者(秋山壽延君) 委員指摘の点は、事件によりましてあるいは当事者によりましては、そういった居住地の近くの裁判所ではなくて他の場所で審理が行われた方がありがたい、こういうふうに思うケースもあろうかと思います。  一例を挙げますと、先ほどちょっと申し上げました公民館を借りての簡裁の廃止に伴う出張事件処理でございますが、これは出張事件処理を希望されるかどうかということを当事者の方に確かめるわけでございますが、その際には、裁判ざたになっているということを余り公に知られたくない、こういうふうなことから当事者が必ずしもそういう出張事件処理を望まないというところもある。したがって、出張事件処理の件数が必ずしもこちら側が期待していたほど、あるいは想像していたほどの件数に上っていないという報告も一部の庁からは受けているわけでございます。  ただ、そうは申しましても、それを一律に類型的に当事者の心理はそうなんだということは申し上げかねますので、もちろん裁判所というのは近くにあればそれは便利でございますので、今回の地家裁支部の適正配置等におきましても、やはり一つの基本的指標としましては、そこが廃止された場合に隣の町までどのぐらいかかるかというふうなことは一つの指標としてとらしていただいたわけでございます。ただ、事件によってあるいは当事者によっては、委員指摘のそういった裁判ざたは表ざたにしたくないという事件があることも事実でございます。
  234. 守住有信

    守住有信君 いろいろお尋ねいたしておりますのは、私の足元の方でもかつて簡易裁判所の統廃合がございまして、役場の中で臨時に実はやっていただいておるという実態もありますし、今度は特に家庭裁判所等も中心でございますので、そういう角度で、何と申しますか、いろいろ裁判所の方が地方自治体等に行って御説明を開始される。そのときもそうでございましたけれども、なかなか地元の有力ないろいろな関係の方々がおわかりにくいという面が他の行政機関とは違うということを非常に感じました。  そこで、いろいろ最高裁判所の方、裁判官が最終的には御判断、御決定でしょうけれども、そのプロセスの中で、地方のいろいろな裁判官の方あるいは弁護士さん方も御一緒になってその辺の実態なりをよく、数字ばかりでなくて、数字は基本でございます、合理的な判断でございます、あるいは交通機関とかスピードとか、いろいろな客観的なデータが基本ですけれども、その中でよく御説明をしておいていただく、これを何回も繰り返していただく、こういうことが一方では裁判を受ける権利という基本的人権でございます。他方では、冒頭申し上げましたように時間がかかる、それから訴訟負担もかかる、いろんな面が訴訟当事者にもかぶってくる、こういうことでございますので、その辺をよろしくお願いいたしまして、次に移らせていただきたいと思います。  引き続きまして、先ほどお昼のころ山田委員からもお話がございました入国管理、難民の問題についてお尋ねをするわけでございます。  いろんなボートピープルの問題が最近まで大きくマスコミ、新聞、テレビ等で話題をにぎわわせたわけでございまして、これは外国人労働者の国内の不法労働なり、いわゆる単純労働をどうするか、技能労働に門戸を広げます大きな問題とかかわっておりますけれども、一応そういう問題は切り離しまして、いわゆる偽装難民と称する人たちが大きく映像の中で飛び込んできたわけでございます。いろいろマスコミでも難民難民、あるいは経済難民と言われておりますが、山田先生のお言葉にもちょっとありましたけれども、本当に政治的に迫害を受けておるのが私は条約上の難民であり、入管法上の難民である、このように見ております。  そこらあたりのところをもう一遍入り口で正確に、条約上の難民とはいかなるものかという定義からまずお話をいただきたいと思います。
  235. 股野景親

    政府委員股野景親君) まず難民について、ただいま委員指摘のとおり、難民条約に規定する難民というものがございます。これは難民条約上の規定としまして、具体的に、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由として迫害を受けるおそれのある者、こういう規定が難民条約上ございますので、これを難民条約上の難民として私ども取り扱っておるわけでございます。別途、これまでの国際社会におきましてインドシナ三国にかかわるものとしてインドシナ難民という概念があり、これについては、条約上の難民そのものではないけれども、これと同様に国際社会で保護を受けることを適当とするものという概念としてインドシナ難民という扱いを従来国際社会の中でなされてきたわけでございますが、これはインドシナ三国での政変とそれからそれに続いた混乱を逃れてインドシナから脱出してきた者の総称でございます。  その中に、ただいま申し上げました難民条約上の難民というものと、それからそうではないけれども国際社会においてひとしく保護を必要とすると考えられるもの、双方がインドシナ難民という概念の中に入っているという扱いでございます。  しかるに、本年の六月のインドシナ難民国際会議におきまして、このインドシナ難民の取り扱いに関しまして新しい国際的な合意が達成され、そこにおいては、基本的に難民条約にいう難民性を持っているものを今後インドシナ難民として定住の道を開く扱いをする、こういう取り扱いがなされるに至りました。したがって、我が国としても、このインドシナ難民国際会議における合意を踏まえた新しい難民としての取り扱いを本年九月十二日の閣議了解をもって決定いたしまして、現在その取り扱いをする体制をとっております。
  236. 守住有信

    守住有信君 もう一つの一面をお聞きしたいんですが、いろいろテレビの中に、沖縄から鹿児島から、私の天草から長崎から多数入ってきて、それは難民というよりも私は密入国者だ、不法入国者ではないのか、こういう角度で実は見ておったわけでございます。いろんな御意見の方、意見は自由でございますけれども、いろいろありまして、あれの応対に出先の入管局の幹部から職員まで奔命に疲れておられたことを知っております。福岡入管の管理職も急病で亡くなられましたし、私はそれはよく知っておったんですが、佐世保の所長さんも亡くなった、こういうふうなことも後ですぐ知りました。その他、大村のレセプションセンターとか、やれ東京の方とか、品川の方でございますな、いろんなことがあります。  一方では、三百万人を上回る海外渡航の時代ということで、成田空港を初めいろんなところで不法の問題もあれば、入管の適正処理、サービスよくいろいろな、何もそういう不法な方だけじゃございません。大部分は健全なといったら変でございますけれども、国際交流、観光その他大いに拡大していきつつある中で、入管職員の苦労ぶりというか、前知っておりましたのが、成田空港がもう一つビルができるとどういうことになるかというふうな、それで一方は御承知の定員削減で、これはこれで厳しい定員削減で臨まなきゃいかぬと思いますけれども、その実態といいますか、特に人間的要素、なかなかこれがコンピューターオンライン処理とか、それから民間委託とか、そういうのができにくい世界だと見ております。  例えば、レセプションセンターなんかでガードマンを雇っておるけれども、これが厳正な対処ができぬ。これは国内法秩序、治安、そういう問題に私はかかわっておると見ておるわけですが、やっぱり入管の資格を持ったきちっとした職員でなきゃだめ。どういう方法があるだろうか、こういうのを自分なりに勝手に考えておりますが、一つお聞きしたいのは、前おりましたときに、十五年計画で不動産業務の登記事務をコンピューターオンライン化する、こういうのを聞いておったわけでございますが、そういう側面から多少でも人を持ってこれぬのかなというふうなことを勝手に考えたことがありますが、その辺の実態はどうでございましょうか。
  237. 股野景親

    政府委員股野景親君) 委員から今大変幅広い見地からの御指摘をいただきました。  ボートピープル、さらにはその中に含まれておった偽装難民という問題で、本年の業務について新しい事態を迎えているということがまずことしについては事実でございます。またその背後に、一般的に最近の日本社会の国際化が進むにつれて国際交流が非常に増して、その結果として、入管当局の扱います外国人あるいは日本人の出入国ということに関連する業務が非常に激増しているということは事実でございます。  こういう中にありまして、ただいま委員指摘のとおり、この入管局の業務というものはまさに人を対象とする業務であるがゆえに、入管当局自体の職員を初めとする体制を整えていくということが非常に重要な仕事になっております。現在大変厳しい行財政改革というものを進めていく使命を政府としても負っておるわけでございますので、そういう中にありまして、まず法務省当局といたしましては、人員配置について最もこれを効率的、合理的に行うという意味での人員配置の見直しを行う。そしてその人員配置の見直しによって最も効率のいい人員配置を行うということに心がけてまいっております。また同時に、業務の電算機導入等による機械化という点も、これも委員指摘のような、その合理性ということに十分着目いたしまして、電算機の活用ということに伴う機械化についても非常に努力をしてまいりました。  そして、そういう中にあって、委員指摘のとおり、入管局の仕事のいわば第一線に当たりますところ、すなわち各種の審査あるいは取り締まりというものを直接所掌する部署といたしまして地方入国管理局がありますが、この地方入国管理局における職員数というものについては、先ほど申し上げました大変厳しい行財政改革という中にあって着実にふやすということに心がけてまいった次第であります。特に、最近におきましては非常に業務量がふえておるということがございますので、この際関係当局の御理解もいただきながら増員措置についても従来には見られなかったような措置というものが図られつつある、こういう観点で今努力をいたしておるわげでございます。  しかしながら、何分にも業務量が激増しておるということは事実でございますので、現行の組織、人員、施設というものでは必ずしも十分な対応ということが確保できないという面もございますので、引き続き業務運営については十分その効率化ということを図り、また機械化あるいは人員の配置等についての最も機動的な努力を払っていくということをしていきますが、そういう中にあって、関係当局の御理解を得ながら所要の人員の確保等について今後とも努力をしてまいりたい、こういう状況で臨んでおるところでございます。
  238. 守住有信

    守住有信君 私は別の角度でその機械化と称するやつをあれしたんですが、まだ入力の最中で、しかも実験段階で、千何百かある登記事務の関係の箇所はまだ数カ所しかそれが入っていないという。まだ十五年先の方の問題だなということも感じたわけです。  総務庁来ておられますか。――行政監察という角度から統合的に各省庁を見ておられると思いますけれども、この入管業務の持つ今日的な長期的な役割、使命、それからこれの管理者に死人まで出ておるわけでございまして、そういうものの実態と行政監察を、いつごろか存じませんがおやりになったと思いますけれども、どういうふうに行政監察の中からおとらえになっておられるか、お話をしていただきたいと思います。
  239. 山岸親雄

    説明員(山岸親雄君) 総務庁の行政監察局におきまして、昭和五十八年一月から三月に地方の入国管理局、支局、出張所につきまして業務運営の実態あるいは組織、定員の状況について調査をいたしております。その結果につきましては五十九年の六月に法務省に勧告をさせていただいております。  内容は、まず一点でございますが、出張所等につきまして業務量の実態、あるいは交通量から見まして隣接の出張所に統合することが可能なものがあるということで、出張所の配置について見直すこと、これが一点目でございます。  それから第二点目としまして、業務量と要員の関係が支局、出張所ごとにばらつきがある、業務量と要員のバランスが悪いということで、要員配置の見直しをするようにということを第二点目として指摘しております。  また第三点目としまして、空港あるいは港でございますが、そこの出入国の審査体制が航空機あるいは船の出入時刻に見合っておらない、あるいは出入国者数に見合っていないという状況が認められましたので、これにつきましても勤務体制を改善するようにということを指摘しております。これが三点目でございます。  そのほか、地方入管局長の権限委譲、出張所長に対する権限委調等について指摘しております。
  240. 守住有信

    守住有信君 オーソドックスなメスの入れ方はそのとおりだと思います。しかし、五十八年ということでございますから、午前中もちょっとお話が出ておりましたけれども、港の方から空へということで、やっぱり合理的なやり方は一方ではやらにゃいけませんけれども、その勧告の中で増員のことは何もありませんでしたか。
  241. 山岸親雄

    説明員(山岸親雄君) 増員について直接触れているところはございませんが、先ほど申し上げました第二点目、要員配置の合理化というところでは、業務量と人員の配置にアンバランスがあるということで、それの見直しをするように、言うならば再配置について検討するようにという指摘をしてございます。
  242. 守住有信

    守住有信君 まずみずからなすべきことは責任を持ってやらにゃいかぬです、もう五十八年時代からでございますので。やはりその見直しというかバランスというか、時代の変化があるわけですから。そして、最近より重要な時代の変化が私は起こってきた、このように認識をしておるものでございます。  そこらあたりも、同じ総務庁の中でございますから、行政監察と行政管理局、定員を把握しております。もしこれが地方公務員で、警察関係であれば相当な手を打っておるだろう。この最近の強大な動き、それから国内の世論、国内に不穏分子がおっているんな問題も起こしておる、こういう問題もあるわけですね。やはりそこを今の時代にふさわしい、総合的な角度から、みずからはみずからとして、入管の中それから法務省の中、これおやりになると同時に、政府全体としての中で、こういう国際間でいろいろ問題が起これば起こるだけに法秩序というものはきちっと――しり抜けになっておるのが今の実態なんですよ。  そこらも十分価値判断の中に入れられて、きょうは総務庁長官お呼びしておりませんけれども、私は法務委員会からずっと見ておりまして、特にことしに入りましてからの動き、あるいは来年、再来年ずっとこういうのをいろいろ予感をいたしますと、入管職員の増員の問題、なすべきことはなさせながら、こういう問題に積極的に取り組んでいただかにゃいかぬ。それこそ省庁の壁を越えて増すべきところは増していく、減すべきところはしていく。しかし総体として要るものは要る。しかも、人権を守る方がみずからの職員の人権問題にもなっておる。私はこのような認識をしておりますので、実務家の方おいでいただいておりますけれども、ひとつ上の方とか幹部の方々に大いに問題意識を持って取り組んでいただきたいということをお願い申し上げたいと思います。  一言何かございましたらよろしく。
  243. 川邊新

    説明員(川邊新君) 先生御指摘のとおり、大変国際化が進展してまいりまして、特にこの四、五年出入国者数が非常に増加しているということは御指摘のとおりでございますし、私ども法務省からるるその間の経緯等につきましてもお話を聞いているところでございます。  そこで、法務省の定員全体につきましてもそうでございますけれども、現在非常に厳しい定員事情のもとにございます。とりわけ最近の入管行政につきましては格別の配慮をしてきているという認識でございまして、例えば平成元年度におきましても国家公務員全体で三千人を超える純減を行っているところでございますけれども、入国管理部門につきましては法務省の御要求どおりの増員を行ったところでございます。  今後ともいろいろな御努力も願わなきゃいけないと思いますけれども、いろんな形で定員配置の適正化なり業務量の動向、いろいろ勘案して適切に私どもとしても対処してまいりたいと考えているところでございます。
  244. 守住有信

    守住有信君 終わります。
  245. 福田宏一

    ○福田宏一君 私は、昭和六十一年度の経済財政についてのお伺いをいたしたいと存じます。  当委員会に現在付託されておりますのは昭和六十一年度の決算でございますが、この決算背景をなしている当時の経済財政を振り返ってみますと、よくあの難関を乗り越えられたなという思いがするのでございます。大蔵省の出された六十一年度の決算説明を拝見いたしますと、「政府は、調和ある対外経済関係の形成に努めるとともに、内需を中心とした景気の着実な拡大を図り、」云々とあります。「この結果、昭和六十一年度の国民総生産は三百三十四兆二千億円、経済成長率は名目で四・二パーセント、実質で二・六パーセントになった。また、物価は引き続き安定した状態で推移し、」云々といって淡々と記載されておりました。この淡々とした記載の裏に当時の必死の政策努力があったことを認めねばならないのであると存じます。  この昭和六十一年という年は、その前年の蔵相会議による合意によって、アメリカのドル高からドル安への政策転換によって円高が進み、不況が差し迫っていました。それゆえ、衆参の同時選挙があった当時、各党は経済政策として円高対策を主張していたのであります。それを見事にやり遂げ、しかもインフレにすることもなかったのでございます。既にあれから三年が経過し、当時の苦しさを忘れ、金融を緩和し過ぎたために地価が上昇したなどと言われもしておりました。また、それ以降長期の経済成長を続けているから、人々は現在の状態が自然にできたかのような錯覚をしておりまするけれども、決してそうではなかったと存じます。  外国人は、日本の経済運営に敬意を表するけれども日本人は、財界を含めて、成功は経営あるいは労働者の勤勉のせいであり、失敗は政府の責任にしがちであるが、当時の大蔵大臣を初めとする財政金融当局に対して感謝すべきだと思うということを言っておりました。この点について当局の御感想をお聞き申し上げたいと存じます。
  246. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 昭和六十一年という年は、ただいま先生御指摘のとおり、いわゆるプラザ合意以降の円高の進展がございまして、かなり当時景気の鈍化が見られておったわけでございますが、その中で、御指摘のようにかなりいろいろな財政金融政策のミックスを展開したわけでございます。  六十一年度中には三回にわたりまして経済対策を講じております。特に六十一年の九月には総合経済対策ということでかなり内容の充実した経済対策を展開したわけでございますが、直接の国費支出がやや少ないのではないか、いわゆる真水論というのがございまして、真水が少ないのではないか、少し出し惜しみしているのではないかといったような批判も随分聞かれたのでございますが、私どもといたしましては、総合経済対策、特に六十一年九月の総合経済対策をある種の確信を持って進めたわけでございます。  その結果といたしまして、六十一年の十一月から我が国の経済は実は拡大局面に入っておったということが事後的にわかってきたわけでございますが、当時はまだその景気の展開というものが十分わかっておりませんでしたので、六十二年五月にも非常に大型の経済対策をさらに追加するという結果になったことは御承知のとおりでございます。もちろん六十二年五月の経済対策も今日までの大型の経済の持続的拡大にかなり大きな力を与えたということは当然でございます。  それから、六十一年中にはさらに金融面におきましても公定歩合を相当連続的に引き下げをしておりました。  もちろん、ただいま先生から評価のお言葉を賜り大変ありがたく存ずるわけでございますが、政府の政策以外にもさらに、原油価格の低下のメリットでございますとか企業の内需転換努力への積極的な対応でございますとかという環境に恵まれたことも事実かと思います。  総合的な経済対策、それから金融面における公定歩合などの政策、それからただいま申しましたいろいろこれを取り巻く原油であるとか企業の対応策であるとかといったもろもろのもの、それらがミックスされて、当時はわからなかったわけでございますが、実に六十一年の十一月から今日に至る三十六カ月という非常に長期の経済拡大の基礎かつくられたのではないか、そのように私どもとしては分析をしておるわけでございます。
  247. 福田宏一

    ○福田宏一君 六十一年度の財政運営と剰余金についての問い合わせでございますが、決算書を見ますと昭和六十一年度は多額の剰余金が出ております。特に、年度途中に法人税の減額をしながらその後当初見込みを上回る税収となりました。この点、財政当局の責任を問う意見も出ておりましたけれども、果たしてそれを見通すことが可能であったでございましょうか。  また、昭和六十一年度予算を審議したときの議論を読み返してみますと、野党の論点は、円高による不況は厳しく政府見通しのように税収は上がらないのではないか、また赤字公債の脱却は六十五年度では困難で再度延ばすことにならないかとかいうようなことがあって、税収は政府見通しより多く見込めるという議論は皆無のようでありました。当時地元の中小企業や労働者が肌身に感じていたことを基に国会で質問されたのでありましょうから、それが当時の実態であったと思われるのです。だが、公共事業の前倒しや金融の緩和で景気が思ったより早く回復したわけでありますが、景気の回復については必ずしも人は声を大にしてはおりません。そこに情報のラグが生じたのではないか。  詳細に感想がお聞きできればと存じますが。
  248. 濱本英輔

    政府委員(濱本英輔君) お答え申し上げます。  六十一年度の一般会計の税収は決算で四十一兆八千七百六十八億円、補正予算が三十九兆四千四百億円でございまして、補正を上回ること決算は六・二%の増収となったわけでございます。  ちょうど補正予算を提出させていただきましたのが六十一年の十月三十一日でございまして、補正の作業というのはその直前の時期に我々が見通し得るデータに基づいて行ったものでございますが、先ほどの福田先生のお話にもございましたし、篠沢総務審議官のお答えにもあったとおりでございますが、当時の景気情勢というのは低迷の気配強いものがございました。そのような状況のもとで、我々は一兆一千二百億円の減額補正をお願いしたわけでございます。ところが、その後景気は回復に向かいまして、石油価格が低下する、金利も下がるというような状況のもとで、法人所得がふえまして、御指摘のとおり法人税収が増収に向かい、さらに株式市況も活況を呈しまして、株式取引から上がってまいります有価証券取引税等も大幅な伸びを示し始める、土地の取引も活況を呈し始めるといったような状況が重なってまいりまして、年度後半に入りますと税収の伸びはさま変わり、特に六十二年三月分以降、三、四、五の三カ月、四半期におきましては近来にない高い伸びを示すに至りました。  その結果といたしまして先ほど申し上げましたような増収を記録することになったわけでございますが、この間大方の論議、先ほどの御指摘にもございましたけれども、むしろこの補正予算に対しましては、これだけの税収は本当に確保できるのであろうかという御心配を方々からちょうだいするというのが当時の状況でございました。私どもといたしましては、税収見積もりの難しさということを重ねて勉強させられた局面でございまして、精いっぱいやったつもりでございますけれども、二兆四千三百億円の実際増収となったということを御報告申し上げ、またこういう難しい作業というものを将来に生かしていきたいというふうに当時感じた次第でございます。
  249. 福田宏一

    ○福田宏一君 それでは、当面の経済政策についてお尋ねをさせていただきます。大臣がせっかくおいででございましたけれども、ちょうど御退出でございますので、まことに残念でございます。  先ごろ日銀は公定歩合を引き上げて、アメリカや西ドイツの金利引き上げの影響から円安がこれ以上進むことへの対策と聞いておりますが、そのとおりなのかどうか。日銀と大蔵省との間に認識の差はなかったかどうか。また、国内経済、特に建設業などただいま人手不足が大変に見られまして、公共事業などの入札難の声も聞かれるわけでございます。これは経済の一部が過熱し過ぎていることを示すものではないか。金融だけではなく財政面での対策を必要とするのではないかと思われますが、御回答をお願い申し上げたいと思います。
  250. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 去る十月十一日に日銀は公定歩合の引き上げをいたしました。五月末に続きましていわば二回目の引き上げということでございまして、三・二五%から三・七五%へ〇・五%の引き上げを行ったわけでございます。  公定歩合は日本銀行の所管事項でございますが、先般の措置は、ただいま先生為替相場の調整のためにというふうにおっしゃられたと思いますが、一義的に為替をどうするこうするということで公定歩合を一々動かした、こういうことではなかろうかと思います。  全般といたしまして、まさにおっしゃった為替相場のほか海外金利の動き、国内の景気、それから人手不足、そのほか多少、物価自体安定しておりますが、いわゆる懸念というものは持っていなければならぬといったような物価問題、あるいはマネーサプライの動向といったようなものを総合勘案していきたい。今申し上げましたようないろいろな状況を反映して、特に国内の短期の市場金利が上昇しております。そういったようなもとで、金融政策の今後とも適切かつ円滑な機動的な運営を確保するために、ここでもう一度上げておいた方がいいのではないかという考えであったように私ども連絡を受けておるわけでございます。  こういったかなりファインチューニングを必要とするような難しい経済情勢のもとにおきまして、金融政策の適切かつ機動的な運営を確保するために、公定歩合を〇・五%引き上げる、これは私どもといたしましてもかなり時宜を得た措置ではないかというふうに思った次第でございます。大蔵省日本銀行の間に認識の相違というものは全くなかったというふうに考えております。  それから財政政策につきましては、主計局から。
  251. 藤井威

    政府委員藤井威君) 公共事業あるいは建設業の関連での現状認識についての御質問がございました。  我が国の経済全体といたしましては、先ほど総務審議官の方から御答弁がありましたように、三十六カ月連続の拡大基調、持続的な拡大ということで順調に推移しているというふうに我々も認識しております。  御指摘の建設業等におきまして、若干労働力需給の引き締まり傾向というものが見られるということは我々も認識しておりますし、注視しておるというようなのが現状でございますが、物価は現状ではまだ安定的に推移していると言っていいというふうに思っております。したがいまして、過去におきまして財政執行の抑制が講じられた際の経済情勢と比較してみまして、現状がそこまでいっているというような感じはまだ我々持っておりません。  公共事業の執行につきましては、現在まあ自然体ということで、物価の動向などを注視しながら、自然体で今執行しておるというのが現状でございますが、引き続きこういう態度で適切な運営に努めてまいりたいというふうに考えております。  また、現在、来年度予算案について編成の事務的な作業を進めておりますけれども、このような経済情勢を踏まえますと、来年度におきましても、積極的な財政政策の発動、積極的な財政運営を行うというような必要はないんじゃないか。我々の財政改革の第一目標であります特例公債依存体質からの来年度における脱却という第一目標の達成に全力を尽くすとともに、限られた財源の重点的効率的な配分に努めていくというような基本的な姿勢が現状の経済から要求されているのではないかというふうに考えております。
  252. 福田宏一

    ○福田宏一君 大蔵省の分につきましてはこれで終了いたしました。ありがとうございました。  次に、皇室行事についてのお尋ねをいたしたいと存じます。  去る一月七日、昭和天皇が崩御され、翌月二十四日大喪の礼が行われましたが、本年は、昭和天皇の御病気と引き続く服喪とで、一月来、新年祝賀の儀を初めとし国事行為としての儀式や恒例的な皇室の儀式、行事が大幅に中止ないしは変更になっております。  来年は、一月七日の昭和天皇の一周年祭の後、喪も明け、即位の礼を頂点に礼官様の御結婚等、国民がともにお喜び申し上げる行事、儀式がとり行われるものと思われます。即位の礼のように現在検討中のものもありますけれども国民が関心を持っておるものを中心に、平成二年に予定されておる皇室行事の代表的なものと時期等について宮内庁当局から御説明を願いたいし、また、昭和天皇の御病気で延期された天皇、皇后両陛下の訪韓等の今後の御外遊の予定についても御説明をお願いいたしたいと存じます。時間がないので簡略にお答え願えればありがたいと存じます。
  253. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) 明年予定されています皇室関係の代表的な行事の時期等についてのお尋ねでございましたが、まず毎年行われております行事について申し上げますと、例年一月一日に新年祝賀の儀、一月二日に新年一般参賀、それから一月中に講書始の儀等が行われておるわけでございますが、これらの行事のうちで新年祝賀の儀につきましては取りやめる方向で検討をされておりまして、新年のそのほかの行事につきましても新年祝賀の儀についての考え方を踏まえて現在検討中でございます。  それから歌会始の儀でございますが、これは行われないということにいたしておりますが、それにかわって二月に昭和天皇をしのぶ歌会をお催しになることと予定をいたしております。  なお、そのほかの行事といたしましては、春と秋の勲章親授式、園遊会、それから秋の文化勲章伝達式、十二月の天皇誕生日祝賀などが予定をされておるわけでございます。  それから次に、喪明け後の行事でございますが、即位の礼が行われることが予定されておるわけですけれども、即位の礼の儀式のあり方等につきましては、大嘗祭を含めまして、現在内閣に設置をされております即位の礼準備委員会におきまして慎重に検討をされておるところでございまして、具体的に申し上げられる段階ではございませんので、御了承を賜りたいと思います。  それから礼宮殿下の御結婚式でございますが、現在オックスフォード大学に御留学中でございますが、御修学が終了後にとり行われる予定でございまして、その詳細につきましては今後検討してまいりたいというふうに考えておる段階でございます。  それから天皇、皇后両陛下の御外遊の件でございますが、この件につきましては、これは政府におきまして検討をし決定されるべき事柄でございまして、現在のところ予定されておるものはまだないというふうに承っております。
  254. 福田宏一

    ○福田宏一君 時間の関係上、一部内容を飛ばしまして次に移らせてもらいますが、次は開かれた皇室という問題でございます。  宮内庁におきましては、俗に表、裏という言い方でその閉鎖性が指摘されることがあります。昨春それぞれに大きな人事異動があり、開かれた皇室への期待感が一層高まったのでありますけれども、一連の昭和天皇の御病状の発表等の動きを見ますと、多くの国民の目からはやはりまだしもの感がぬぐえなかったのではないかと思います。本年八月四日には、従前のように御会見ではなく初めて記者会見という位置づけが与えられるなど、宮内庁当局の御努力の姿勢も理解できますが、天皇陛下自身が新時代にふさわしい皇室のあり方に御努力をされておるところでございますから、それを補佐する事務当局においても今後とも各段の配意が必要ではないかと思います。  皇室新時代にふさわしい開かれた皇室のあり方について宮内庁当局の御認識をお伺いいたしまして、私の質問を終わらせてもらいます。
  255. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) 天皇陛下は、即位後の朝見の儀等におきましてもお言葉の中で申されましたように、常に国民とともに歩もうと、こういうお考え方のもとにいろいろ諸行事等を行っておられるわけでございます。  私ども宮内庁といたしましては、ただいま御指摘ございましたように、表と奥とかいうような議論がいろいろなされないように、またただいま申し上げましたような陛下のお気持ちに沿うような形で十分これからの職務を果たしていかなければならないというふうに考えております。ただいま御指摘がありましたようなことは十分心に体してこれから仕事をしてまいりたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。
  256. 福田宏一

    ○福田宏一君 委員長、ちょっと一言だけ。済みません。
  257. 千葉景子

    委員長千葉景子君) じゃ、最後にお願いします。
  258. 福田宏一

    ○福田宏一君 実は、それのほかに地裁問題、家裁問題等の質問を用意いたしましたけれども、時間の関係上割愛させていただきます。よろしくお願いします。
  259. 諫山博

    ○諫山博君 横浜弁護士会の坂本弁護士とその家族が姿を消して既に二十日以上経過しました。現在では、何らかの犯罪に巻き込まれた、こう見る以外に考えようがありません。今一番大切なことは三人の身の安全を図ることです。  当委員会における私の質問に対して警察庁は、公開捜査、広域捜査に入っている、こういう答弁をされました。その後どういう方法で公開、広域捜査を進めているのか、捜査の方法、経過について御説明ください。
  260. 山本博一

    説明員(山本博一君) お尋ねの弁護士一家失踪事案でございますが、去る十一月十五日に本事案につきまして公開捜査に付するとともに、十七日には約百二十名の体制をとりまして捜査本部を設置し、鋭意捜査を進めておるところでございます。現在も引き続きまして現場付近の不審人物、不審行動等の聞き込み捜査、また失踪者坂本弁護士の取り扱い事件をめぐります紛議などの捜査、さらには公開捜査による情報収集とこの裏づけの捜査等につきまして強力な捜査を行っておるところでございます。  残念ながらいまだに弁護士一家三名の行方は判明しておりませんが、公開捜査に付しまして以来これまでに全国の警察や民間の方々から約五十件に上る情報が寄せられておるところでございまして、これらも参考に現在捜査を進めておるところでございます。今後におきましてもあらゆる可能性を考えながら全国捜査を強力に推進いたしまして、一日も早い本件失踪事案の解決を図ってまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  261. 諫山博

    ○諫山博君 百二十名の警察官というのは神奈川県警だけの警察官でしょうか、それとも全国的な数でしょうか。
  262. 山本博一

    説明員(山本博一君) お答えいたします。  これは神奈川県警におきまして本件事案の捜査本部員として構成されておるメンバーでございまして、現実にこの事案捜査に当たっておる人間は全国警察、たくさんの人間がおるわけでございます。
  263. 諫山博

    ○諫山博君 三人の身の安全について第一義的な責任を負うのはもちろん警察だと思います。しかし、事柄の性質上、多くの国民の情報提供その他の協力が非常に必要だと思います。そのためには、事件関係のあるさまざまな情報資料を警察だけが独占するのではなくて、捜査に支障がない限りなるべく公開したらどうかということを提案したいと思います。  五十件の情報が寄せられているそうですけれども、この中には公表できるものがあるのではないかと思います。例えば、坂本弁護士一家の救出、調査に当たっている同僚の弁護士たちの話を聞きますと、現場からなくなったと報道されているパジャマとか布団などの色とか柄とか、こういうものは知らせてもらってもいいのではないか、こういうものが明らかになれば警察以外の調査というのは非常にやりやすい、これが明らかになればさらに市民から新しい情報が集まってくるのではなかろうかというような話をしています。  そこで、具体的にお聞きしますけれども新聞でも報道されているパジャマとか布団とかこういうものの色とか柄、あるいは現場に残されたという血痕の血液型、こういう問題についてつかんでおられるなら御説明願えないだろうかと思います。
  264. 山本博一

    説明員(山本博一君) 先生御指摘のとおり、今日の捜査におきましては幅広く国民協力を求めてやっていかなきゃならぬことは間違いないことでございまして、私どもこの意味におきましてできる限り情報を公開し、協力を求めていきたいというぐあいに思っているところでございます。  お尋ねの子供のパジャマや布団の問題でございますが、これにつきましては、神奈川県警察におきまして失踪者宅を検分いたしました結果、これらのものが失踪者とともになくなっていると推定される状況にあるわけでございまして、これらにつきましても捜査いたしておるところでございますが、これらの色とか柄等の特徴につきましては、御両親の記憶が余りないということもありまして、必ずしもはっきりしておらないというのが現状でございます。今後の捜査におきましてこれらの問題点が解明されました時点で公開捜査につきましても前向きに検討してまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。  血液の問題でございますが、個々の捜査の内容にわたりますので答弁は御容赦いただきたいと思うわけでございますが、失踪者宅の部屋の中には特に争ったと認められるような状況はなかったということでひとつ御理解をいただければというふうに思うわけでございます。
  265. 諫山博

    ○諫山博君 初めに申し上げましたように、第一義的に責任を負うのは警察だと思いますけれども日本の場合には非常に強力なマスコミもありますし、それからたくさんの弁護団が現に動いておりますから、捜査に支障ない限りどんな小さな問題でも公表していただくということを改めて要望したいと思いますが、いかがでしょうか。
  266. 山本博一

    説明員(山本博一君) 先ほど申したところでございまして、可能な限り国民協力を求めてやっていかなきゃならぬということは痛切に感じておるところでございます。
  267. 諫山博

    ○諫山博君 報道によりますと、現場にオウム真理教のバッジが落ちていたということです。さらに、坂本弁護士がオウム真理教の教団による被害者の救済活動を行っていた、この教団との間に非常に緊張関係が生じていたということが報道されています。さらに、神奈川県警が同教団に事情聴取の申し入れをしたところが断られた、その直後に同教団の麻原代表とその家族及び幹部十数名が西ドイツのボンに旅立ったということも報道されていますけれども、事情聴取の申し入れをしたけれども断られた、その後に教団の人たちが西ドイツに行った、こういう事実はあるんですか。
  268. 山本博一

    説明員(山本博一君) 失踪者の坂本弁護士が御指摘の宗教団体の関係者と交渉するなどの弁護活動を行っていたことは承知しておるところでございまして、現在これらも含めまして同弁護士が取り扱った事件全般につきまして、本失踪事案との関連性について幅広く関係者から事情を聞いておるところでございます。  また、御指摘の宗教団体の幹部が出国した旨の報道がなされていることについての問題でございますが、これにつきましては当方も事実を確認しておるところでございます。
  269. 諫山博

    ○諫山博君 余り慌てて結論を出すのはまずいと思いますけれども、これほどの事実が報道されていますから、やはり捜査の対象として視野に入れるということを要望します。  さらに、警察庁は十万枚の写真を配布したと言っておられるそうですけれども調査に入った弁護士はどこに行ってもそういう手配写真は見当たらないという不満を述べています。これはどういうふうに処理されているんですか。
  270. 山本博一

    説明員(山本博一君) 本事案につきましては、十一月十五日に公開捜査に付しますとともに、全国警察に対する失踪事案の概要、失踪者の手配、さらにはポスターの配布等の措置を講じまして全国的な情報収集に努めておるところでございます。  十万枚のポスターの問題につきましては、十一月十九日に神奈川県警察から全国の警察本部に対し発送しているところでございます。このポスターにつきましては、文書をもちまして警察本部から、管内警察署等に転送をしてほしいということ、さらには警察署、派出所、駐在所、駅、空港、船客ターミナル、ホテル、旅館等の宿泊施設、公共ポスター掲示場、バス、ハイヤー、タクシー、レンタカー等の営業所などに配布し掲示するよう依頼しておるところでございまして、遠隔地の警察におきましても近日中には所定の場所に掲示されるものと考えておるところでございます。
  271. 諫山博

    ○諫山博君 初めにさかのぼりますけれども、五十件の情報が寄せられたそうですけれども、これはいわゆる聞き込みといいますか、物的なものは含まれていませんか。単なる情報だけですか。
  272. 山本博一

    説明員(山本博一君) こういうものがあったとかなかったとかいうことではありませんで、失踪事案に関するもろもろの情報でございます。
  273. 諫山博

    ○諫山博君 法務大臣にお伺いします。  人権擁護に取り組んでいた弁護士一家が二十日以上にわたって所在不明、これはもう大変奇怪な事件で重大な事件です。人権擁護の主管官庁である法務省責任者である法務大臣としての御意見なり感想をお聞きしたいと思います。
  274. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) お答えいたします。  今お尋ねのいわゆる弁護士の失踪事件につきましては、安否が大変案ぜられている状況にございまして、私としても大変深く憂慮をいたしております。もしそれが犯罪に起因するものであるとすればゆゆしいことでございますし、目下捜査当局があらゆる可能性を考えて適切に対処していること、ただいま捜査当局の方からのお答えの中にもあったような状況にあるわけでございます。したがいまして、法務省といたしましては、人権擁護という見地からもとるべきことがあれば適切にこれに対応しなければなりませんので、そういう心構えで今この捜査の成り行きを見守っているところでございます。
  275. 諫山博

    ○諫山博君 次に、福岡県苅田町の公金猫ばば事件について質問します。  福岡地方検察庁は、約八千六百万円の使途不明金があったことは認められる、しかし、いつどのようにしてこの金が使用されたか特定できない、そのために花房元収入役外一名を不起訴にした、こう言っておられました。私は法務委員会などで、検察庁が十分な調べもしないで公金の使途が特定できなかったというのは納得できない、こう言いました。検察審査会は福岡地検の不起訴は不当という決定をしています。  ところが、ことしの十一月二十一日、被疑者とされていた苅田町の元収入役花房正蔵氏が裁判所の支払い命令に対する異議申し立てをして、その中で問題とされていた公金の支出内容を詳細に記載しています。その中には、昭和五十七年十二月ごろ亀井光後援会に二百万円の政治献金をしたという記載があります。町の公金を亀井光後援会に政治献金をしたというわけです。この方は元自民党参議院議員で、福岡県知事をしておられました。こういう事実は検察庁はつかんでいたんでしょうか。
  276. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) ただいま御指摘異議申立書の写しを私も拝見しておりますが、その中に亀井光後援会へ政治献金としまして、「助役」と書いております。これに二百万円という記載のあることは事実でございますが、これが検察庁が把握していたかどうかということは申し上げられる限りではないと思います。ただ、本件につきましては現在検察庁でも捜査中でございますから、当然この事実を前提としてその真偽を判定するものと考えております。
  277. 諫山博

    ○諫山博君 以前から疑惑の焦点に立っていたのは自民党の現職衆議院議員の尾形智矩氏です。異議申立書によりますと、昭和五十八年八月一日に町の金を千五百万円渡した、昭和六十年二月二十七日に二千万円渡した、昭和六十年十月十六日に千五百万円を渡した、合計五千万円を当時町長をしていた尾形氏の指示で尾形氏に渡したと記載されています。当時から公金で五千万円の裏金をつくって選挙資金に充てた、こういうことが広く報道されていましたけれども、この国民的な疑惑が基本的に裏づけられたということになります。  この問題で検察庁は尾形氏に直接確かめられたでしょうか。
  278. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) いつも申し上げることでございますけれども、どういう捜査をしたかということについては申し上げかねる点でございます。
  279. 諫山博

    ○諫山博君 福岡地方検察庁が不起訴にしたのは、八千六百万円の穴があいていることは事実だ、ただ何に使ったかはよくわからないから起訴できなかったということです。ところが今、収入役をしていた人が尾形衆議院議員に五千万円を渡したと、こう述べているわけです。捜査は振り出しに戻らなければならないと思います。しかも、本件は検察審査会が不起訴不当という裁定を下している事件です。  今後どのように捜査を進められるつもりか、見解を聞かせてください。
  280. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) この前ほかの委員会で御説明いたしましたように、検察審査会の議決というのがございまして、仰せのように、不起訴不当ということになっているわけでございます。その点について、今問題になりました五千万円についてどういうふうな使用をしたのか、それについてもう少し徹底的に解明してしかるべきである、こういうふうな検察審査会の御指摘でございます。そして、金員の受け取りを全面否認する尾形供述をもってしても尾形についてなお疑惑が存在するというふうに審査会が言っているわけでございます。  一方、先ほどの答弁書でございますが、先ほど御指摘のように、一千五百万円、二千万円、一千五百万円と三回に分けて五千万円を尾形氏に渡したというふうに花房氏は答弁書で述べているわけでございますが、なおその末尾の方に、尾形智矩前町長がその職務遂行上予備財源を必要としたと思料されるものには次のようなものがありますというようなことで、五千万円も尾形町長がその予備財源、要するに町のために使ったというふうなことをこの答弁書で述べているわけでございまして、答弁書からだけでは業務上横領とか背任とかいうことは判断できないことと思います。  ただ、検察庁といたしましては、先ほど申し上げましたように、この事件は検察審査会で不起訴不当という議決をされているわけでございますし、また別途苅田町の町民十六名から、尾形、花房、これは前収入役でございますが、この二人を相手方としまして告発がなされているわけでございますから、この両件をあわせまして厳正に捜査を進めていくものと考えております。
  281. 諫山博

    ○諫山博君 法務大臣にお聞きします。  この事件の捜査と処分に国民は初めから政治の暗い影がつきまとっているといって批判しておりました。現職の国会議員だから検察庁は手が出せないのか、こういう声も広く出ています。本件の捜査を担当していた東京地検の特捜部の検事が政治的な圧力に抗議をして辞表を出した、これも広く知られている事実であります。私自身もこの事件に対する検察庁の捜査に非常に不満で不当だということを何回か言ってきました。  今検察庁が国民の信頼を取り戻すためには、しかも政治の圧力という疑惑が広がっておりますから、こういう疑惑を払拭するためにも、相手が国会議員であろうとなかろうと厳正、迅速に処理すべきだと思いますけれども法務大臣の見解をお聞かせください。
  282. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) ただいま諫山委員からの指摘のございました苅田町事件につきましては、先ほど刑事局長からもお答えを申し上げているような状況に今ございます。福岡地検におきまして、検察審査会の議決を受けてこの事件を再起いたしまして、また苅田町の住民からの告発をも受理いたしまして現在捜査を行っているというように承知しておりますが、私といたしましては、福岡地検において、検察審査会で指摘されました点などを踏まえまして所要の検討を加え適正に対処するものと信頼いたしております。  ただいまの諫山委員のお考えにつきましても、私は十分これを念頭に置きまして今後これに対処していきたいと考えております。
  283. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) ただいま大臣がお答えになったとおりでございますけれども、ただ一つ御理解を得たいところは、本件の関係した検事が政治的な圧力があってそれに抗議してやめたということが広く行き渡っているというお言葉でございますが、そういうことは一切ございません。その点は十分御認識いただきたいと思います。
  284. 諫山博

    ○諫山博君 その問題には深入りしませんけれども、とにかくまた政治的な圧力でつぶされたというような非難が起こらないような処理を要望しておきます。  今度は別な問題ですけれども裁判所の統廃合の問題について質問します。  地家裁の統廃合を考える場合に基本にならなければならないのは国民の裁判を受ける権利です。そのためには裁判所国民に便利に利用できる状態であることが必要です。今回の地家裁支部統廃合のやり方を見ていますと、国民の裁判を受ける権利、こういう基本的な立場が忘れられて、裁判所、裁判官の立場を優先して検討しているように見受けられます。  そこで、最高裁は支部の統廃合がやむを得ないものであることを国民に納得させるために所要時間と取扱事件数の相関表を公表しました。これは午前中の質疑の中でも出てきたとおりです。今統廃合の対象となっている裁判所支部所在の自治体に対して裁判所説明会を開いているようですけれども、この説明会で裁判所が示している事件数というのは相関表に記載されている事件数でしょうか。
  285. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 説明会ということではございませんが、十月の十七日に一般規則制定諮問委員会の答申をちょうだいいたしまして、その直後から今月の中旬まで地方裁判所所長、家庭裁判所所長に検討対象支部管内の各自治体等の関係機関に回っていただきまして、答申の御説明とあわせまして当該支部管内の特有の個別事情についての御意見を聞かせていただきました。その際にお渡しいたしました資料としましては、基本的には一般規則制定諮問委員会の答申をお届けいたしました。今回の地元からの意見聴取というのは第二回目でございますが、第一回目としましては、昨年の暮れから本年の一月にかけて同様の地元からの意見聴取及び説明をさせていただきました。その際には三種類ぐらいのパンフレットをお渡しいたしたわけでございます。  それぞれの地方裁判所長、家庭裁判所長におきまして、例えば今回の第二次意見聴取の際にどういう細かい資料、御説明をされたかということまで一々報告はとっていないのでございます。しかし、基本的には口頭で五種事件以外の事件数等も説明されているところもございますし、あるいは聞かれて説明されたところもあろうかと思います。その辺の詳細は私どもの方で承知いたしていないわけでございます。
  286. 諫山博

    ○諫山博君 私は地元の福岡地方裁判所に行きまして所長と事務局長にお会いしました。自治体に説明するときには、相関表の数字を示しましたということです。  問題は、この相関表の事件数の書き方です。例えば私の地元の福岡地家裁甘木支部、相関表によりますと一年間の新受件数が百三十三です。ところが、甘木支部が実際に取り扱っている事件はそんな少ないものではありません。相関表に出ていないものとして、保全事件が十五、破産事件が十、執行事件が二百二、甲類審判事件が二百八十、合計五百七件です。つまり、最高裁が公表した資料を見ると、甘木支部は百三十三件しか事件を受け付けていないように見えますけれども、実際は少なくとも五百七件受理している。そのほかに、統計にはあらわれていませんけれども、たくさんの家事相談事件を処理している。これが実情です。  裁判所が実際に扱った事件をなぜ全部公表しなかったんですか。裁判所が実際にやっている事件のほんの一部だけ発表して、この裁判所の扱っている事件はわずかこのくらいです、そうすれば廃止されても大した迷惑はかけないじゃありませんかというような説明をしているようにしか見えません。なぜすべての事件を公表しないんですか。
  287. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) その点につきましては、若干経過を御説明させていただいた方が御理解を得やすいかと思います。  私どもがこの相関表をつくりましたのは、これから支部の配置を見直す場合に検討対象をどのあたりに設定するかということをまず見るための表としてわかりやすい表をつくったのでございます。その場合に、私どもの事務量ということではなしに、支部を廃止いたしました場合に住民にどの程度の御迷惑をかけるかということを一覧表で見たいということでございます。  そんな関係から、事件といたしましては、当該事件の処理に繰り返し当事者の出頭を要する構造となっております訴訟事件二つ、そして調停事件二つ、そして家事乙類審判事件というものをとったのでございます。この事件をとりまして、そして受入庁への所要時間ということで全体的な検討対象枠の設定をさせていただいたのでございます。  それ以外の事件があることは私どもも十分承知いたしておりますし、そしてそういう事件を、個々の支部につきまして廃止するか存続するかを検討する際にはこの五種事件以外の事件数も見なければならないということは、私ども昨年の六月から協議いたしました法曹三者の協議会においても御説明申し上げ、そして保全事件、破産事件、執行事件、甲類審判事件あるいは少年保護事件、そういった事件数の資料も法曹三者協議会には詳しくお出しいたしました。同様のことは今回の一般規則制定諮問委員会にもその五種事件以外の事件数も詳しく出させていただいたのでございます。現に、私どもの最高裁の方へ各地元から陳情に参られる際も、そういった五種事件以外の事件数が多い状況等について地元の市町村長から、うちの支部はこういう事件が多いということを繰り返し強調され、私どももその理由等についていろいろお尋ねしている状況でございます。  決して他の事件のあることを隠してこれだけしか事件がないということを御説明したのではなくて、当事者の出頭を要する構造になっている事件を基本にして相関表をつくるのがまず作業の初めといたしまして合理的である。そして、前回国会の承認を得て行いました簡裁の適正配置の際も全く同様の手法で、簡易裁判所におきましては略式命令事件、支払い命令事件等ございますが、そういう数多い事件で当事者の出頭に余り関係のない事件は除きまして、訴訟事件と民事調停事件という三種事件でとらせていただいたので、それと全く同様の手法を今回も用いさせていただき、あわせて他の事件は個別事情として個々の支部を検討する際に考慮させていただく、こういうことを繰り返し申し上げているのでございます。御理解いただきたいと思います。
  288. 諫山博

    ○諫山博君 公表された資料以外にどのくらいたくさんの事件を廃止対象支部が取り扱っているかということを私の方で調査しました。これが委員各位にお配りした資料です。この内容についてあらかじめ最高裁に正確かどうか検討してもらいましたけれども、間違いがありましたか。
  289. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 数字につきましては一カ所、百五十件ほど違っている点がございます。
  290. 諫山博

    ○諫山博君 それはどこですか。
  291. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) ちょうだいいたしました表の右側の方で下から三分の一ぐらいのところに青森の鰺ケ沢の事件数が出ております。これは足し算の間違いで、四百四十六になるのが二百九十四となっております。それ以外につきましては、五つの種類の事件を五年間平均とるということで、割り算を先に行うか後で行うかで四捨五入の関係で一、二の差は生じておりますが、基本的にはほかは誤りないと私たちは認識いたしております。
  292. 諫山博

    ○諫山博君 私が問題にしているのは、国民との関係、地方自治体との関係です。国民に対しては相関表の数字しか発表していない。しかし、法制審議会などではもっと詳しい資料を出した、こういうことが言われますけれども、問題は国民に対する関係です。  例えば、今お配りした資料の中で新潟地裁糸魚川支部というのがあります。これは最高裁の公表した資料によりますと、取扱事件数は四十六。ところが資料に載っていない事件数が五百六十五です。新潟地裁六日町支部、これは最高裁の公表した資料では一年間の受理件数が七十三。ところが公表された以外に八百十二件の別な事件がある。つまり、実際に取り扱っている事件の一割未満しか公表していないではないか。国民が相関表を見れば、うちの裁判所はこの程度の事件しか扱っていないのか、それならやむを得ないなというように思い込む仕組みになっているということを言っているんです。私は簡易裁判所のときにも同じような問題を指摘しました。  さらに、今の説明の中で、当事者が裁判所に出頭することを義務づけられているかどうかということを一つの基準にしたようですけれども、例えば相関表に戦っていない執行事件、多くの人は裁判所に出向いて申し立てます。金の配分のときなんかは当然裁判所にお金をもらいに行きます。そのための呼び出し状まで裁判所はつくっているわけです。保全事件、破産事件にしても同様です。多くの人たちはこういう事件裁判所に出向くわけです。さらに、公表資料から落とされている甲類審判事件、この中には薬治産の宣告とかあるいは失踪の宣告とか、とにかく裁判所に出向かなければどうにもならないような事件がいっぱいあるわけです。こういう問題を公表資料から外すというのはフェアではないではないか。国民に対する関係で、自治体に対する関係で本当に真実を知らせたことにならないではないかと言っているんです。どうですか、その点は。
  293. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 五種事件以外の事件数につきましても私ども考慮するということは地元の自治体に行きまして御説明いたし、そして地元の自治体等から裁判所に照会がありまして、お答えしているのも少なくないと思います。  今委員が例に挙げられました新潟県の各支部につきましても、新潟県の支部は甲類審判事件の多いのが特徴でございます。先般も、最高裁の総務局に新潟の方からお見えになられました際も、むしろ先方の方から甲類審判事件がこれだけ多いんでということで数を示され、資料を持ってこられました。そういう例は少ないわけではございませんで、いろいろありまして、私ども決してこれを隠すとかいうことではありません。  ただ、いろいろな事件につきまして、簡単に処理できる事件、余り出頭の必要のない事件、それと訴訟の判決まで至るに何回も審理への当事者の出頭を要する事件、それを同じウエートで一として教えていいかという問題がありまして、そういったところから当初の相関表の場合には、一般的にポピュラーでそして当事者の出頭が必要な事件を基本に置かせていただいたということだけでございます。  今の甲類審判事件について申しましても、相続放棄が典型的なものでございますが、これは書面による郵送申し立てもありますし、その相続放棄申し立てが真意に基づくかどうかということにつきまして再度裁判所から住所あてに書面で照会して、そして確認できれば当事者が出頭しないで処理できる事件でございます。新潟の場合はそういった事件が大半を占めておる。そういったやりとりも私ども陳情に来ていただいた際には詳しくしているところでございます。
  294. 諫山博

    ○諫山博君 この問題で自治体とか弁護士会からいろいろ意見が上がっていると思いますけれども、自治体からどのぐらい意見が上がってきたか、その中で賛成、反対の分け方はどうなるのか、弁護士会からはどうか、賛成意見が一つでもあったかどうか、説明してください。
  295. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 今回の第二次の地元からの意見聴取をいたしました結果を申し上げますと、どこがどういう意見だということを申し上げるのは差し控えさしていただきますが、例えば裁判所のございます支部所在地の自治体の御意見といたしましては、二、三の所在地自治体からはやむを得ないという御意見をいただきましたが、その他は押しなべて支部の廃止に反対である、あるいはぜひ存続を希望するという意見をいただきました。しかし、支部所在地以外の、要するに支部管内のほかの自治体からは若干トーンの違う御返事をいただいております。もちろん支部所在地自治体と一緒になって、一丸となって反対の意向を表明しておられるところもございますが、多くのところでは、所在地自治体との関係から私どもも賛成するというわけにはいかないというのが比較的数多いところでございます。中には今どきの時世だからやむを得ないなというのもある程度ございます。  余り時間をとってもあれですが、自治体の関係だけを申し上げさしていただきました。
  296. 諫山博

    ○諫山博君 賛成がどのくらい、反対がどのくらいか言えますか。
  297. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 賛成という表現を用いるといかがかと思う面もございますが、例えば所在地自治体ではやむを得ないという意見を述べていただいたのが三つございます。
  298. 諫山博

    ○諫山博君 反対は。
  299. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 先ほど来申し上げましたとおり、その他は反対ないしはぜひ存置を希望すると、こういう御意見でございます。
  300. 諫山博

    ○諫山博君 その他の数を聞いているんですよ。
  301. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 所在地自治体が五十八ございます。そして三つ引きましたので残りが五十五でございます。
  302. 諫山博

    ○諫山博君 弁護士会の意見はどうですか。
  303. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 弁護士会の意見は、押しなべて支部の統廃合に反対であるという意見でございます。一、二につきましては若干トーンは違いますが、賛成だ、了承すると言っていただいたところはございません。
  304. 千葉景子

    委員長千葉景子君) お時間ですので、これでおまとめください。
  305. 諫山博

    ○諫山博君 では要望します。  とにかくすべての事件数を公表しなさいよ、そうでなければフェアなやり方とは言えませんから。それを最後に要望しておきます。     ─────────────
  306. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 委員異動について御報告いたします。  本日、尾辻秀久君が委員辞任され、その補欠として野村五男君が選任されました。     ─────────────
  307. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 他に御発言もないようですから、昭和六十一年度決算外二件の審査のうち、法務省大蔵省裁判所皇室費国会会計検査院国民金融公庫日本開発銀行日本輸出入銀行決算及び予備費関係六件の審査は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  308. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより予備費関係六件を一括して討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  309. 会田長栄

    ○会田長栄君 会田でございます。  私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました予備費関係六件につきまして、いずれも承諾を与えるべきものと議決することに反対の意を表明するものでございます。  予備費制度は憲法で認められた制度でありますが、内閣の責任で支出を認めると同時に、支出については事後に国会の承諾を得なければならないことを定めるなど、厳格な対応も内閣に求めているところでございます。  これは、申し上げるまでもなく、国の財政が広く国民の利害に深く関与することにかんがみ、憲法第八十三条が、財政に関する国の活動は国会の議決に基づいてなされなければならないと定め、また憲法第八十五条が、国費の支出、国の債務負担は国会の議決に基づくことを必要とすることを定めているように、憲法が要請する国会の事前議決の原則の例外として予備費制度が認められているからにほかなりません。  したがって、憲法の趣旨にのっとり、いわゆる財政民主主義を全うするためには、予備費については、計上額から始まって使用内容に至るまで、それが真に予見しがたい予算と言える費目に限定して使用され、また補正予算提出との関係を十分検討して使用するなど、内閣は慎重な上にも慎重に、かつ厳格な管理運用を行うことが求められているのであります。  しかるに、ただいま議題となっております六件の予備費関係使用状況を見ますと、災害対策費等のほか、法律に基づく義務的経費として、その使用目的、使用理由が真にやむを得ないと認められるものは極めて少なく、反面、我が党を初めとするたび重なる国会での指摘にもかかわらず、内閣は相も変わらず予備費使用を前提とした予算編成を続けるなど、一向に指摘された項目を改めるべく努力しようとしない姿勢は甚だ遺憾であります。  この際、改めて若干の事例を指摘いたします。  予備費使用の実態が予見し得るもの、あるいは当初予算に計上可能なものであるにもかかわらず、依然として予備費で措置していることは、結果的に国会審議権を無視することにもなりかねず、極めて遺憾であります。  例えば、総理の海外出張旅費、なかんずくソウル・オリンピック競技大会開会式出席等に必要な経費使用であります。不足分を予備費で補うのならいざ知らず、予見し得るこれらの経費すべてを予備費に依存することは許されることではございません。  また、警察庁関係警備活動等に必要な経費は、本来ぜひとも必要な経費であるならば、当初予算に計上すべきものであります。警察庁では従来から同種の事例に予備費を使用し、その額も六十一年度は六十七億円、六十二年度は五十億円を超えており、ただいま承諾を求められております六十三年度でも四十七億円を超えるなど、全く経常経費的な運用を行っており、現下の財政事情における省庁間配分のバランスをも崩す見逃すことのできない使用形態となっております。  さらに、農業者年金の給付補助金についても、いわば政府農政の失敗のツケに伴う農業経営者移譲増による年金給付金の増加に対処するためであり、当然予想されるものとして当初予算で合理的な計上を図っておくべきものであります。  そのほか、特別会計におきましても、安易に弾力条項に頼っている例があるなど、財政民主主義の立場から反対せざるを得ないのであります。  いずれにいたしましても、内閣は軽々に歳出需要を予備費に依存することなく、当初予算において措置し、あるいは補正予算により国会審議を求めるなど、予算の事前議決の原則や財政民主主義が絵にかいたもちにならないように深く反省することを求めて、私の討論を終わります。
  310. 守住有信

    守住有信君 当決算委員会委員守住でございます。  私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました予備費関係六件につきまして、いずれも承諾を与えるべきものと議決することに賛成の意を表します。  申し上げるまでもなく、予備費は、憲法第八十七条及び財政法第二十四条の規定に基づいて、「予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて」設けることを認められた我が国の予算編成上の基本的な制度でありまして、具体的歳出権限の内容についてのみ、国会の承諾を得ていない、事前議決の原則の例外とされているものであります。  しかも、予備費計上についての必要性ないし金額については、第一義的には予算編成権のある内閣にゆだねられておりますが、予備費を設置することを含めて、最終的には予算を議決する国会の判断に依存しているのでありまして、いわゆる財政民主主義には毫も反するものではありません。  かかる点につきましては、内閣におかれましても憲法、財政法の趣旨にのっとり厳正な運用を行っているものと評価いたしておりますが、今後ともその姿勢を厳守するようこの際改めて要望しておくものであります。  さて、災害等の緊急事態の発生に際し、これに機動的に対処すべきことは行政の基本的な責務であり、このことには何人も異存はないと思うのであります。また、世界に貢献する日本として、我が国が対外的な関係においても適時適切な対応が求められていることも疑う余地はないと思うのであります。  このような場合、予備費の活用によって所要の対応を講ずることによって極めて大きな効果をもたらすものであります。  問題は、予備費の使用に憲法の趣旨に反するようなことがあったり、予備費の管理、使用が放漫に流れたりすることがないように厳格に運用されているかどうかにかかっているのでありますが、ただいま議題となっております六件の予備費関係につきましては、昭和六十三年一月から十二月までの間におきまして、河川等災害復旧事業等に必要な経費療養給付費等負担金等不足を補うために必要な経費郵便貯金特別会計一般勘定における支払い利子に必要な経費交付税及び譲与税配付金勘定における地方譲与税譲与金に必要な経費増額、ソウル・オリンピック競技大会に関連して日本国内における警備活動等に必要な経費農業共済保険特別会計農業勘定における再保険金不足を補うために必要な経費並びに治水特別会計治水勘定における河川事業及び砂防事業の調整に必要な経費増額等のために使用されたものでありまして、いずれも時宜を得た適切な使用であったと評価できるものであります。  最後に、予備費は、予見しがたい予算の不足に充てるため、内閣に責任支出を認められている憲法上の制度であり、かつ支出実績の相当額が災害復旧関係経費であったり、法律に基づく義務的経費となっているものでありますから、各会派がいずれも承諾を与えるという賢明な判断をされることを期待して、私の討論を終わります。
  311. 諫山博

    ○諫山博君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました予備費承諾案件について討論を行います。  昭和六十二年度特別会計予備費使用調書外二件については、郵便貯金支払い利子等々の義務経費であり、使用目的、予備費使用等の理由に特に問題はないと認められるので承諾いたします。しかし、昭和六十二年度一般会計予備費使用調書(その2)、昭和六十三年度一般会計予備費使用調書(その1)及び同特別会計予備費使用調書(その1)の三件については不承諸の意を表明します。  これらの予備費使用の主なものは、退職手当、災害経費、老人医療給付費、療養給付費、選挙経費等々であり、その使用目的、予備費使用の理由はおおむね妥当なものであり、承諾できるものが多数あります。しかしながら、本予備費の中には我が党として到底認めることができないものが含まれています。  例えば、総理大臣の一連の外国訪問、主要国首脳会議出席等についての支出であります。  一九八八年一月の日米首脳会談で、竹下総理は、世界に貢献する日本の名のもとに、当時のレーガン米大統領が満足を表明するほどの軍事分担と軍拡努力を誓約、また懸案になっていた農産物輸入自由化など、アメリカの要求を次々と受け入れる屈辱的な外国訪問を行いました。  さらに、同年六月のトロント・サミットで、竹下総理は、唯一の被爆国の首相でありながら核兵器廃絶に一言も触れず、逆に軍事同盟としての日米安保条約の強化を図りながら新たな軍拡に乗り出すなどして、許しがたい言動をとったのであります。  警察の警備費について言えば、常駐警備車、小型警備車等々の購入を主としたもので、いずれも警察力の増強につながるものであり、到底承諾できません。  また、沖縄電力の民営化に伴う予備費の支出も承諾することはできません。  以上、承諾できない理由の概略を申し述べましたが、最後に私は、本案件が本院において不承諾となった場合の政府の責任について一言いたします。  もとより、国費の支出は国会の議決に基づかなければなりません。例外として憲法第八十七条は、「予見し難い予算の不足に充てる」場合にのみ内閣の責任で予備費を支出することができるものと定めています。この場合でも国会事後承諾を必要としているのであります。  もし承諾されないことになれば、内閣の予備費支出行為が不当ということになり、その政治的責任は極めて重大なものと言わなければなりません。しかも、国会で不承諾とされる行為は、日米首脳会談を初めとする外交行為であるなど、現在の自民党内閣の基本政策にかかわるものであって、政治的な責任がとりわけ重いことを指摘して、討論を終わります。
  312. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  313. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  まず、昭和六十二年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)について採決を行います。  本件について承諾を与えるべきものと議決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  314. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承諾を与えるべきものと議決されました。  次に、昭和六十二年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書昭和六十二年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その2)、以上二件を一括して採決を行います。  これら二件について承諾を与えるべきものと議決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  315. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 多数と認めます。よって、これら二件は多数をもって承諾を与えるべきものと議決されました。  次に、昭和六十三年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)、昭和六十三年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)、以上二件を一括して採決を行います。  これら二件について承諾を与えるべきものと議決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  316. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 多数と認めます。よって、これら二件は多数をもって承諾を与えるべきものと議決されました。  次に、昭和六十三年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その1)の採決を行います。  本件について承諾を与えるべきものと議決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  317. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承諾を与えるべきものと議決されました。  なお、これらの案件審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  318. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十三分散会